千鵠百貨店、新装開店準備中!?
●急募、新店舗に対する現場の意見
神奈川県にある某デパート。ここでは新店舗開発のための意見を全社員から広く募集していた。
この出店はただの新規開発ではない。年単位の時間、十臆単位の金をかけるプロジェクトだ。それ故にあらゆる発想、あらゆる情報を上下全てから吸い上げねばならない。
なぜ本社がこのような決定に至ったかはもちろん末端は知る由もない。もし何か勘づく者がいるとすれば、それはきっと死と隣り合わせの青春を送ったような者のみだろう。
「というわけで、皆も何かあれば書いて出してくださいね」
食料品売り場のマネージャーがスタッフたちに紙を配っていく。ほとんどは書く事なんてないとつまらなさそうに受け取るばかりだが、その中で一人。
「場所も決めてないんスね。うーん……あ、一個だけめっちゃいい場所知ってるッス!」
年若い女性職員が子どものような字でいそいそと何かを書いていた。
●再開、ゴーストタウン
「皆様方、ゴーストタウンと言うものはご存知でござろうか」
集まった猟兵たちに告げるのはシャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)。一般的な言葉としてはもちろん知っている者も多かろうが、どうやらこれは特定の現象を指す言葉らしい。
「それはシルバーレインにおいて「人が住まなくなり、常識が失われたことでゴーストの巣窟と化した場所」。ここはかつて銀誓館学園が浄化活動を行っており、また彼らの修行の場ともなっていた模様にござる。現在では地縛霊化オブリビオンの住処でしばしば発生する時空の歪みと迷宮化、即ち「ゴーストタウン現象」の名前の由来伴っておりますな」
猟兵にも匹敵する大きな戦いを幾度となく繰り返してきた組織。それを支える大きな屋台骨の一つでもあったという。
「この浄化活動、ゴーストの鎮圧に置いて完遂されたと思われていたのですが、ゴーストのオブリビオン化の影響かかつてゴーストタウンだった場所が再びそうなってしまうという事件の発生を、この度【Q】にて察知いたし申した!」
かつて全ての謎が解き明かされ、そして今新たな謎が鏤められたシルバーレイン。その一つを猟兵が見つけ出したは何の運命か。
「皆様に今回向かっていただきますのは千鵠百貨店。静岡県某市の一等地に立つデパートの廃墟でござる」
抜群の立地に立ちながら、時代の流れとゴーストによってすり潰されてしまった歴史ある百貨店。今もって立て替えられぬその建物にオブリビオン化したゴーストが蔓延っているという。
「此度はそのゴーストたちを駆逐して欲しいのですが、ここで心強い協力者が名乗りを上げてくださいました」
徐々にほころびつつあるとはいえ世界結界は未だ健在。とすれば銀誓館学園縁のものとみて間違いないだろう。
「ご想像の通り銀誓館学園卒業者で、現役時代は結構な頻度で千鵠百貨店に通い詰めていたそうでござる。道案内やゴーストの解説など頼めるかと」
猟兵にとっては未知の領域でも能力者にとっては勝手知ったる地。土地勘があるというのはそれだけで心強い。
「無論戦いにおいても手を貸してくれます。ただ能力者としての実力は決して低くはないのですが、猟兵に覚醒していない力を持っております故オブリビオン相手に十全に戦えぬ恐れがあります。過度の期待は禁物です」
続々と新たな能力者が猟兵に覚醒しているが、それでもなお未覚醒の能力者は多い。協力者もそう言った力を持つものだということか。
「差し当たってはまず彼女……ええ、女性にござる、の案内で場に慣れてくだされ。その後『スガリ』という地縛霊オブリビオンの集団が襲ってまいります。それらを駆逐すれば屋上へ駆けあがりそこでボスとの決戦となるのですが……申し訳ありませぬがボスの姿は予知できませんでした。現地の判断で行動してくだされ」
予知とて万能ではない。敵の姿が見えぬこともままあるのだ。
「殲神封神大戦も完勝に終わった所、この気勢に乗って各世界の新たな問題も解決していきましょう。それでは皆様、行ってらっしゃいませ!」
勢いよくそう言って、シャイニーは猟兵たちを銀の雨降る世界へ送り出した。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。まさかゲーム終了後一人で妄想していただけの話をマスターとして書く日が来るとは思いませんでした。
今回はゴーストタウン『千鵠百貨店』(http://t-walker.jp/sr/gate/top.cgi?did=d13)に再び湧いたゴーストを駆逐していただきます。当時を知っている人はあんな感じ、知らない人はデパートの廃墟を探索すると思ってください。
第一章ではここに通い詰めていたという能力者の案内の元、現地に慣れてください。あるいはさらに前、ここがまだデパートとして賑わっていたころに思いをはせてみるのもいいでしょう。ゴーストタウン効果かなぜか9年たっても朽ちないまま商品や設備が残ってたりするので、漁ってみるのもいいかもしれません。
第二章では『スガリ』との集団戦。能力者はよく知っている敵の様で、色々と対策を教えてくれます。もちろん頼らずに自力で倒しても可。そこまで強くはありません。
第三章では屋上でボス戦となります。ボスの姿は予知には見えませんでした。能力者はよく知っていると言っていますが……?
銀誓館学園卒業者の能力者が、自分の目的もあって案内を買って出てくれています。以下詳細。
宮古島・うるみ(26、女) 従属種ヴァンパイアのゾンビハンター。
銀誓館学園の卒業者で、現在は鎌倉で百貨店勤務。外見はせいぜい高校生くらいの童顔低身長。既婚者で戸籍上の姓は違うのだが、能力者活動の時は慣例として旧姓を名乗っている。
複数のジョブを経験しており、猟兵来訪によって一部の能力が制限されたり種族が変わったりしているがメイン武器は使えるので本人はあまり気にしていない。パワー特化の脳筋スタイルで、ハンマーを振り回し撲殺するのが得意。半面学術、魔法関係の才能は絶望的。明るく元気な性格だが物凄い貧乏を経験しており、結婚し定職に就いた今も超のつく貧乏性。
勤務先の新規プロジェクトの建設地に千鵠百貨店跡を提案しており、ここを再鎮静化、買取するために今回の浄化作戦に賛同している。
ぶっちゃけると作者の当時のPC(http://t-walker.jp/sr/status/?chrid=b57318)。
それでは、ゴーストタウンを再殺するプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『先達の足跡を追って』
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POW : 片っ端から歩いて巡る
SPD : メモを取りながら巡る
WIZ : 脳内で想像しながら巡る
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
静岡県某市。駅前の好立地にそこだけ時が止まったかのような廃墟が聳え立っていた。
ここは『千鵠百貨店』。かつてはシルバーレイン能力者たちの修行の場であり、今またオブリビオン化したゴーストたちが発生した『ゴーストタウン』である。
その前で、一人の女性が猟兵たちを出迎えた。
「あ、皆さんが猟兵さんッスね。お待ちしてましたッス! 宮古島・うるみと言いますッス。よろしくお願いしますッス!」
大きく手を振るその女性。一見すれば高校生程度にしか見えない彼女こそが、グリモア猟兵より指定された今回の協力者。銀誓館学園卒業者の能力者であり、今回千鵠百貨店探索の案内人を買って出てくれた26歳の既婚女性である。
「それじゃ早速行くッスよ。昔は入ってちょっと進むとすぐゴーストが出てきたんスけど、今は結構奥まで行かないと出てこないみたいッスね。それじゃそれまで、自分がここについて歩きながら説明しますッス!」
年季の入った巨大ハンマーを担ぎ、一切の遠慮なくどんどん入っていくうるみ。彼女についてゴーストタウンについて学ぶも良いし、あるいは一人で気になるところを探してみてもいい。能力者と猟兵では着眼点も違うだろう。
さあ、9年越しの探索の、その第一歩を踏み出そうではないか。
鈴乃宮・影華
※アドリブ、連携OK
あぁ、あの百貨店ですか
福の神にバイキング船、スイーツ巡り……何か思い出してきました
確か1階入口ですぐ戦闘が――無い!?
「成程、探索し直しですね」
UC:黒燐弾・特務群を起動
「散開してマップを作ってきて頂戴。ゴーストを見つけても手出ししちゃ駄目よ?」
地上6階地下1階、それと屋上でしたっけ
蟲達が何か不自然な物を見つけてくれると話が早くなるんですが、まぁまた特殊空間探してフラグ立てですかねぇ……
〇ところで
宮古島・うるみ先輩、お久しぶりです
以前1度だけ依頼で御一緒した(『声優学校悪夢通り校』)鈴乃宮です
就職及び結婚おめでとうございます。
私は……色々あって今はこんな感じです
ニーニアルーフ・メーベルナッハ
千鵠百貨店、私も時々探索に行っていましたね。
一番よく探索していたのは地下だったりしますが…あの甘いクリームの匂い…。
と、ともあれ、うるみさんと共に探索を進めて参りましょう。
確か直接の面識は無かったと思いますので、はじめまして…と。
店内を共に探索しつつ、うるみさんの思い出話を聞いてみたいと思います。
とはいえ周辺警戒は怠らず。
確か5階のゲームコーナーでしたでしょうか、ガンシューティングゲームの筐体を調べるとゲームの中みたいな特殊空間に引きずり込まれたりもしたのですよね…
…と、そろそろ敵が出てくるでしょうか…?
ゴーストタウン『千鵠百貨店』。そこは能力者たちにとっては修行場であり勝手知ったる地。それ故にその能力者が案内役に立てられていたのだが、当然ながら詳しいのは彼女だけではない。
「あぁ、あの百貨店ですか。福の神にバイキング船、スイーツ巡り……何か思い出してきました」
鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)もまた何度となくここに来たことのあるシルバーレインの能力者。しかも当時の力の一部は失いながらも新たな力を持って再び戦場に立った、現役の猟兵でもあるのだ。
そしてもう一人。
「千鵠百貨店、私も時々探索に行っていましたね。一番よく探索していたのは地下だったりしますが……あの甘いクリームの匂い……」
ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)も元銀誓館学園の能力者であり、この千鵠百貨店にも来た経験があった。特にその中でも地下に広がるスイーツスクエアに思い入れがあるらしき彼女は、思わずうっとりした顔をしてしまう。
「お二人とも能力者なんスね。しかも猟兵になってるなんて、かっこいいッス!」
案内役である宮古島・うるみも同窓生の登場にテンション上がり気味だ。そんなうるみに、影華が改めて挨拶する。
「宮古島・うるみ先輩、お久しぶりです。以前1度だけ依頼で御一緒した鈴乃宮です」
「え……あ、あの悪夢事件の! お久しぶりッス!」
二人は能力者時代、同じ事件で一度共闘したことがあった。その落ち着きの違いからはどちらが年上だか分かったものではないが、実は影華の方が一学年下なのである。
「就職及び結婚おめでとうございます。私は……色々あって今はこんな感じです」
卒業後はある種『普通』の人生を送っていたうるみに対し、影華は決して順風満帆とは言えない過程を経て今は猟兵となっていた。
「ありがとうございますッス。剣士になられたんスね。自分も黒燐蟲つかえなくなっちゃって、代わりに従属の力使い放題になりはしたんスけど……」
複雑な人生を送った者は能力者には多い。語られる以上には深く踏み込まない会話をするのは、ある種能力者の処世術とも言えるか。
「と、ともあれ、うるみさんと共に探索を進めて参りましょう。確か直接の面識は無かったと思いますので、はじめまして……と」
ニーナの方は言う通りうるみと直接会ったことはない。だが、依頼や大規模戦争の報告書、いわゆる『知り合いの知り合い』などで面識はないけど知っている、ということもまた能力者間では多いことだ。
「そッスね、直接お会いしたことはなかったッス。まあ大丈夫ッスよ。それでは行きましょうッス!」
初対面の者との連携は能力者の基本。深く語らずとも互いにベストな動きは出来ようと、三人は早速千鵠百貨店内部へと踏み入っていった。
「確か1階入口ですぐ戦闘が――無い!?」
数歩進んだ所で早速影華が驚きの声を上げる。それもそのはず、入って数歩歩けばまるで出迎えの如くゴーストが現れる。それはある種ゴーストタウンのお約束のようなものであったはず。それが起こらないとなれば、経験の長いものほど驚くのは当然だ。
「そうなんス。中の構造や敵の配置もかなり変わってるんで、ぶっちゃけ新しいGT入ったと思った方がいいッス」
「成程、探索し直しですね」
これは一筋縄ではいくまいと気合いを入れ直す影華。だが、ゴーストタウンが変貌したようにこちらにだって新しい力はあるのだ。
「彼の力を以て世界に請う――来て、私の仲間達!」
影華の声に応えるように、大量の黒い虫たちが一斉に彼女の体から這い出し辺りに散っていった。その様子に、うるみは目を丸くする。
「え、黒燐蟲!?」
「力はなくしたけど、新しい使い方があるんです」
己の『本業』でありながら失われたその力。だが、それを『ユーベルコード』という新たな力として、今までできなかった広域探索に用いた影華。
「散開してマップを作ってきて頂戴。ゴーストを見つけても手出ししちゃ駄目よ?」
あくまで偵察として、影華は蟲たちに交戦を禁じつつ散開させる。
「すごいッス……じゃ、自分たちもいきますか」
そうして自分たちも少しずつ安全圏を確保しながら進んでいく三人。道中では、やはり思い出話に花が咲く。
「地上6階地下1階、それと屋上でしたっけ」
「確か5階か6階のゲームコーナーでしたでしょうか、ガンシューティングゲームの筐体を調べるとゲームの中みたいな特殊空間に引きずり込まれたりもしたのですよね……」
「あー、そうッスね。ガンジャって意外と硬くてめんどいんスよね。アサルトメイデンやチャカゾンビは割とやわこいんスけど……」
「黒燐弾一撃で落とせないのに群れられると手間がかかりますね」
もちろん、死と隣り合わせだった青春の思い出はとても物騒だ。そしてその経験が今も生きていることは、周辺警戒を怠らないニーナの様子からも分かる。
やがて少し進んだ所で、散った蟲たちからの報告を受けたか影華が足を止める。
「蟲達が何か不自然な物を見つけてくれると話が早くなるんですが、まぁまた特殊空間探してフラグ立てですかねぇ……」
どうやら進んではいけない場所にせき止められているのを察したか、これ以上は楽にはいかないと影華の声が一段真剣さを増す。
「……と、そろそろ敵が出てくるでしょうか……?」
それが何か、突破するためにどうすればいいか、それはニーナも分かっている所だ。その準備を整え指定の場所手前まで行ったところで、うるみが二人から離れる。
「分かりましたッス。ここまでは安全みたいなんで、お二人はここで待っててくださいッス。自分はGT慣れしてない人たちを案内してくるッス!」
そう言ってうるみは再び出口まで戻っていき、残された二人は懐かしくも忌まわしい『空間』が広がっているだろう場所を見つめるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
百貨店の跡地、ですかぁ。
色々有ったのでしょうねぇ。
念の為【饒僕】を発動し内部の[情報収集]、不意打ちや相手の潜伏場所等について調べると共に、宮古島さんにご案内と当時のお話を聞かせて頂けるよう願いますぅ。
確認しておきたいのは『エスカレーターと階段の位置』でしょうかぁ。
最終目的地が『屋上』とのことですから、リスクの大きいエレベーターは避けるとしますと、経路はこのあたりでしょうし。
後は、持出しの可否を尋ねた上で『ダイエット器具売り場』等が有れば、ご案内頂けますと?
いえ、少々お土産にしたい方が居まして。
『ゴーストタウン由来のダイエット器具』と聞くと、何か効きそうな気がしますし。
リン・ベルナット
ゴーストタウンかぁ……オブリビオンの住処になってるなら早くなんとかしないとね!よーし頑張るぞー!
UCで準備運動をしてからゴーストタウンに突入するね。
今回はシルバーレインでの初めての探索だし協力者の人に色々と聞いた見ながら進もうかな?
通い詰めていたってことはどんな場所だったとか敵として出てくるゴーストのこととかについても詳しそうだしね。
そういえば今回協力してくれるうるみさんは大きなハンマーがナイスだよね!
私は肉体派ヒーローだから武器はバトンロッドオンリーだけど巨大武器って燃えるよね!
大きな武器をバーン!と振るうとドッカーンってなって敵は一気に一網打尽!格好いい!
武器についてとかもお話したいなぁ。
千鵠百貨店、その創業は戦前にまで遡り、長く地域の経済を支えてきた。
そこにゴーストの介入という不自然があったとはいえ、それが落ちぶれ果て、駅前角地という最高の立地に屍を曝し続けるに至るまではいったいどれほどの時と事件があったのか。
「百貨店の跡地、ですかぁ。色々有ったのでしょうねぇ」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はその時の長さを思いながら、地上6階のその建物を見上げていた。
その隣では、リン・ベルナット(スポーツヒーロー・f17042)が入念に準備運動を行っていた。
「ゴーストタウンかぁ……オブリビオンの住処になってるなら早くなんとかしないとね! よーし頑張るぞー!」
何しろこれから敵地に乗り込むのだ。【念入りな準備運動】をしておく必要がある。
そんな二人の前で、ゴーストタウン入口からハンマーを担いだ女性が一人出てきた。
「あ、皆さんが他の世界から来たっていう猟兵の人ッスね。宮古島・うるみというッス。よろしくお願いしますッス!」
一度銀誓館出身の仲間と奥まで行き、ゴーストタウン経験のない者を案内するため再度戻ってきたと思しき彼女。勢いよく自己紹介を済ませた後、うるみは猟兵二人を連れ再び千鵠百貨店の中へと入っていった。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、女神の僕達よ、私の元へ」
入ってまず最初に、るこるは【豊乳女神の加護・饒僕】を発動、小動物型の僕を放つことで内部構造の把握を図った。
「さっきもそうだったッスけど、猟兵の人ってそんなことできるんスね。サーチャーがいらなくなるッス」
能力者は個人で広域調査ができる能力は余りなかったらしく、それに感心するうるみ。とはいえこの場所自体は彼女の方が詳しいはずだ。
「今回はシルバーレインでの初めての探索だし協力者の人に色々と聞いた見ながら進もうかな?」
「宮古島さんにご案内と当時のお話を聞かせて頂けるよう願いますぅ」
そのことを二人がうるみに尋ねると、うるみは当時を思い出しながら答える。
「そうッスね、ここに出てくるので厄介なのはめっちゃ固いパンダさんッスね」
「パンダ……?」
「乗り物のパンダッス。別に特別な事とかしてこないんスけど、とにかくひたすらタフで強いッス。まあ今はいないみたいなんで安心ッスね!」
通い詰めていたってことはどんな場所だったとか敵として出てくるゴーストのこととかについても詳しそうだし……と聞いてみるが、どうやら色々想像を超える存在がいたようだ。
「それと確認しておきたいのは『エスカレーターと階段の位置』でしょうかぁ」
「エスカレーターは東と西交互についてるッスね。階段は使ったことないんで分かんないッス。もしかしたらないのかもしれないッス」
聞くだに特殊過ぎる構造をしているが、そもそもゴーストタウン自体が往時と構造が変わっていることも多いらしい。実際時折戻ってくる僕からは、迷って上に行けなかったという報告が上がってくる。
「最終目的地が『屋上』とのことですから、リスクの大きいエレベーターは避けるとしますと、経路はこのあたりでしょうし……」
「あ、別にエスカレーターも安全じゃないッスよ。上ったら普通に特殊空間に拉致られるッス。むしろ動けば一気に上に行けるエレベーターの方が楽な時もあるッス」
「想像以上に無茶苦茶だね、ゴーストタウン……」
敵地で密室を避けるのは基本と思いきや、その基本が通じないのもまたゴーストタウンだ。
だが、それでも絶対に信じられるものが一つある。それは己の肉体。
「そういえばうるみさんは大きなハンマーがナイスだよね! 私は肉体派ヒーローだから武器はバトンロッドオンリーだけど巨大武器って燃えるよね!」
特にその肉体を恃みとするリンは、うるみが担ぐ巨大ハンマーにも興味がある。愛用の武器を褒められて嬉しいのか、うるみも上機嫌で返した。
「でっかい鈍器が好きなんス! ぶん回せばそれが一番強いッスから! リンさんは棒使いなんスね……え、変形するんスか? 凄いッス! 自分体力はあるけど細かい運動は苦手だから、憧れるッス!」
「大きな武器をバーン! と振るうとドッカーンってなって敵は一気に一網打尽! 格好いい! 他にも武器についてお話ししたいな!」
「いいッスよ! ハンマーの他には自分は棘鉄球と……」
戦いに身を置く者同士、やはり武器は共通の話題になるのか盛り上がる二人。どうやら能力者は装備にかなり制限があるらしく、その気になれば何でも12種まで持てる猟兵は彼女にはかなり凄いものに映るようだ。
そんな肉体派の話の中、るこるはふと一つの質問を思い立つ。
「持ち出していいならですが、『ダイエット器具売り場』等が有れば、ご案内頂けますと? いえ、少々お土産にしたい方が居まして」
先に自分用ではないとちょっと念押ししつつ、売り場を聞いてみるるこる。誰の土産にするつもりなのかは、あえて問うまい。
「うーん、自分ダイエットなんてしたことないから気にしてなかったッスね。何しろ毎日必要カロリー摂るのにも苦労してたんで……確か4階か5階にそれっぽいものがあった気がするッス。行ってみるッス!」
それ以降ちょこちょこ売り場を覗きつつ、スポーツ器具売り場を探し進んでいく三人。途中うるみはなぜかプライズゲームを弄ったりしていたが、戻ってくるとこれまたなぜか今まで持っていなかったはずの警棒を持っていた。
「すみません、これしか出なかったッス……マークなしなんで期待は出来ないッス……」
専門用語を使われても分からないが、どうやらゲームは外してしまったようだ。申し訳なさげに出して来るので一応リンが受け取っておくが、確かにそれは武器としてはあまり質が良いとは言えない。自前のバトンロッドには及ぶべくもないだろう。
「出てくるアイテムはピンキリッス。いいのが欲しかったら何度もチャレンジッス」
「なるほど、それで装備も自分も鍛えられるわけなんだね」
能力者が何度も通ったというのはそれも理由の一つなのだろう。『ゴーストタウン由来のダイエット器具』と聞くと何か効きそうな気がしたが、そう甘い話でもなさそうだとるこるも内心少々残念がる。
やがて三人は、先行した者が待っている場所までたどり着いた。
「どうやら進める道はこのあたりまでの様で……なぜか先に僕が行きたがらなかったのですが」
この先の調査はなぜか僕たちが揃って断念した。その理由は、能力者出身の者は分かっているようだった。
「この先が特殊空間ッスね……敵がいるッス。乗り込むッスよ! あ、ところで……」
いざ行かん、という時にふと思い立ったようにうるみが猟兵たちを見回す。
「皆さん胸でっかいッスけど、猟兵さんって皆そうなんスか?」
それ今聞くことか? と思われるが、この場にいる猟兵を見回せばその疑問も仕方なしかもしれない。
何も答えられないままるこるとリンは顔を見合わせ苦笑いしつつ、最上階への道を駆けあがるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『スガリ』
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POW : スガリツキ
【ベトベトした手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【生命力を吸い取るすがりつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : スガリボディ
自身の肉体を【もっとネバネバした粘液】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : ベトベトフォール
【ベトベトした液体】を降らせる事で、戦場全体が【水辺】と同じ環境に変化する。[水辺]に適応した者の行動成功率が上昇する。
イラスト:風音ちい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
能力者宮古島・うるみの案内の元、千鵠百貨店最上階へたどり着いた猟兵たち。その眼前に広がっていたのは、ガラスのショーケースの並んだ広大な売り場であった。
そのショーケースの中身だが、何と全部ゼリー系スイーツ。確かにデパートにスイーツ売り場は付き物だが、普通それは地下にあるのではないだろうか。
「ゼリーばっかり……分かった、ここの敵はあいつッスね、出てこいッス!」
その景色にたじろぐことなくうるみが言うと、ケースの陰から緑色の小さな生物がちょこちょこと出てきた。
「やっぱり出たッスね。地下からエレベーターで上がってきて特殊空間作ったみたいッス。昔はこっちからそれで地下に乗り込んでたッス!」
どうやら地下にしか生息していないゴーストが、過去能力者が使った道を逆走してやってきたらしい。それはたまたまの事なのか、それともオブリビオン化による思考や行動範囲の強化なのか。
ともあれ、敵が出たのだから猟兵だろうと能力者だろうとやることは一つ。武器を構え、うるみが猟兵たちに自分の知る情報を伝える。
「こいつは『スガリ』、こっちに飛びついて生命力を吸ってくるッス。弱っちいけど結構素早く動くッス。ゼリー状なんで結構形が変わるッス。狙いにくいんで注意ッスね。それと……メロン味ッス!」
いや食ったことあるのか、と突っ込みが入りそうだが、能力者勢は頷いていたりする。結構有名な話なのだろうか。
ともあれ、敵を駆逐しなければ屋上に行くどころかこの場所から出ることすらままならない、それが特殊空間だ。
さあ猟兵よ、新たな力を持つのはゴーストだけでないことをこのメロンゼリーどもに存分に教え込んでやれ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
メロン味というのは気になりますが。
何とかやってみましょうかぁ。
『FAS』を使用し飛行、『FMS』のバリアを広範囲に展開して包囲、相手の逃走を防ぎますねぇ。
そして【餮囹】を発動し『乳白色の波動』を放射し[範囲攻撃]を行いますぅ。
此方は『敵対者の行動阻害』に加え『攻撃と存在の吸収』を行うものですから、『すがりつく』為の接近から阻害と遮断が出来ますし『波動』という性質上『形状』を変えても躱すのは困難ですぅ。
後は『バリアの隙間』等から逃げようとした相手を、『焼夷弾』に換装した『FRS』の[砲撃]で叩きますねぇ。
出来れば『破片』や『周囲のゼリー』等を『FTS』で回収したいですが。
鈴乃宮・影華
※アドリブ、連携OK
シルバーレインのゴースト達が作るこの手の空間は
他の世界の連中と比べるとわかりやすくて良いと思うんです
「出てくる敵性個体を全て倒す。大体それだけで脱出できますから」
さてイグニッションした所で
せっかくですし先輩にもう一つ、新しい使い方をご披露しましょう
UC:黒燐弾・夕立を起動
蟲達にメロンゼリー、もといスガリ共を喰らってもらいます
連中は攻撃時接近してくる必要がありますが、生憎私の今の射程はこの戦場全体ですので
……なんです先輩、剣士ジョブが銃撃ってるのが不思議ですか?
仕方ないでしょう、私の剣才は先生が曖昧に笑うだけだったというお察しレベルなんですから
リン・ベルナット
なんだかゆるきゃらみたいな敵だね。可愛い見た目には騙されずに一気に行くよ!
それにしてもメロン味……一応は敵であるゴーストを食べるとは銀誓館学園恐るべしっす。
こほん。とにかく戦闘だね。
うるみさんからもらった情報を有効活用して戦っていくよ!
ベトベトネチャネチャだし素早い動きで飛びつかれたりしたらゾワゾワってなっちゃいそうだね……
それならこっちはさらに早く!超高速・超反応の戦闘で一気に片付けちゃうよ!
クラウチングスタートの姿勢を取りスプリンタースーツに変身!そのまま一気にダッシュ!
周囲のショーケースは障害競走みたいにジャンプして飛び越えていってジャベリンモードにしたバトンロッドで攻撃していくよ。
ニーニアルーフ・メーベルナッハ
ああ、ここでゼリーといえばスガリですよね…
他のゴーストはいないようなので、そこが幸いと言えそうでしょうか。
ここのゴースト全体的に結構強かったので…。
ともあれ戦闘です。
白燐蟲を操り(【蟲使い】)、【誘導弾】として放って手近な敵から倒していきます。
白燐蟲での攻撃だけで止められない場合は【衝撃波】も併せて繰り出し、敵の手が届く間合いに入らないよう注意です。
うるみさんには、囲まれないよう位置取りに気を付けてもらいつつ、側面や背後を取られないよう此方も注意を払っていきましょう。
纏まった数の敵に対しては、白燐拡散弾での一掃を試みます。
敵は以前より強いですが、此方も強くなってますから…!
最上階へ駆けあがった先の異様な空間。そこを支配していたのは『スガリ』なる地縛霊だ。その敵の出現は、この空間がゼリーだらけのショーケースで埋め尽くされていることを見れば分かる者には分かるようなことだったらしい。
「ああ、ここでゼリーといえばスガリですよね……」
ニーナことニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)も場の状況からそれらが出てきたことに頷いていた。
「他のゴーストはいないようなので、そこが幸いと言えそうでしょうか。ここのゴースト全体的に結構強かったので……」
そして敵がスガリしか出てきていないことにも一先ずの安堵をする。彼女を含めかつて能力者がここを探索していたころは、複数種のゴーストが群れを成して出現することが普通だった。だがゴーストもオブリビオンの一種となった故か、猟兵のかかわる事件で出てくるものは皆同種が大量という、異世界の集団型オブリビオンと同じ出現の仕方をしていた。
とはいえそもそもこの世界出身でない猟兵にとっては、むしろその方が見慣れた光景。そしてゴーストに対する前情報や先入観がない故、見たまま、感じたままの感想を持つことができる。
「なんだかゆるきゃらみたいな敵だね。可愛い見た目には騙されずに一気に行くよ!」
リン・ベルナット(スポーツヒーロー・f17042)は群れでちょこちょこ動くスガリを見て、どこか好意的な目をしながらも油断なく武器を構えた。相手がオブリビオンだというのは分かっているのだ。どんな見た目をしていようと油断していい相手ではないことは自明の理。
それでも、可愛らしさの他にどうしてもぬぐえない話がもう一つ。
「それにしてもメロン味……一応は敵であるゴーストを食べるとは銀誓館学園恐るべしっす」
案内人の能力者である宮古島・うるみ曰く、スガリは決して強くはないが存外素早く捕らえづらい、そしてメロン味だという。味が分かっているということは食べた誰かがいるということであり、その誰かが彼女であるという可能性も大いにあるのだ。
「メロン味というのは気になりますが。何とかやってみましょうかぁ」
そしてやはりその部分に食いついているのが夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。何をどう何とかやってみるのか具体的にはまだ不明ながら、とりあえずは宙に浮き戦闘の構えを取ってはいる。
いかに可愛かろうと一体ずつは弱かろうと、相手はゴーストでありオブリビオンなのだ。特殊空間に閉じ込められた今はやるかやられるか、それしかない相手だ。
それでも、シルバーレインのゴースト達が作るこの手の空間は他の世界の連中と比べるとわかりやすくて良いと鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は思う。
「出てくる敵性個体を全て倒す。大体それだけで脱出できますから」
全部殴って片付ければ終わり。それは特殊過ぎる行動や異常な縛りを強要される一部の戦争やユーベルコードに比べれば、遥かに分かりやすくやりやすいと言えるだろう。
「こほん。とにかく戦闘だね」
「ともあれ戦闘です」
その明確な解決法を提示されたことで、とりあえず懐かしい思い出やメロン味の謎からリンやニーナも意識を戻す。
「ベトベトネチャネチャだし素早い動きで飛びつかれたりしたらゾワゾワってなっちゃいそうだね……」
うるみから聞いた情報をもとに改めて相手を見ると、そのゼリー状の体は粘性と柔軟性を同時に持っており、余りくっつかれて気持ちがよさそうには見えない。何よりその名の通りに縋りつきが攻撃手段だというのだ、まともに触っていい相手ではないだろう。
「それならこっちはさらに早く! 超高速・超反応の戦闘で一気に片付けちゃうよ!」
力を溜めるようにクラウチングスタートの姿勢を取るリン。視点が低くなったことでスガリのつぶらな瞳と目が合い思わず魅了されかけるが、それを振り払ってスタートを切る。
「オン・ユア・マークス!……駆け抜けるよ!」
スタートと同時に【フォームチェンジ・スプリンター】でスプリンタースーツに着替え、一気にスガリの群れを突っ切っていくリン。途中にあるいくつものショーケースも次々ハードルの如く飛び越え、一気にスガリたちの後方へ抜けていく。
「すごいッス、めっちゃ飛んでるッス!」
どうやら障害物を飛び越えるということは能力者の戦法に組み入れられることは少なかったらしく、その動きにうるみは感心している。その声を浴びながら、後方のスガリからバトンロッドで一気に突き倒していくリン。
そのリンを追いかけるかのように、何体かのスガリが後方へ向けてちょこちょこと歩き出した。
「おっと、行かせませんよ!」
それに対してはニーナが蟲笛「ヴァイス・リート」を奏で、白燐蟲を差し向ける。それは笛の音に導かれるように迷うことなくスガリにぶち当たり、そのゲル状の体を破壊し飛び散らせた。
攻撃されたことを認識したか、スガリたちは手を伸ばして一斉にニーナを始めとする猟兵たちへ縋りつこうとし始める。笛を強く吹くことで衝撃波を出してそれも押し返していくが、何しろスガリは多い上に自由に形を変えるゼリーボディ。それだけで一掃とは中々いかない。
それを泰然として迎え撃つのは影華だ。
「せっかくですし先輩にもう一つ、新しい使い方をご披露しましょう」
その手にはいつの間にか楽器ケースに内蔵されたライフルが。到底隠して置けるようなものではない巨大な武器もカード一枚の中に収納し、必要に応じて戦闘態勢と共に取り出す銀誓館の秘奥イグニッション。それで取り出したライフルを、影華は天上に向けて構えた。
「彼の力を以て世界に奏上する――あれは、此世に不要也」
引き金を引くとともに銃口から大量に湧きだす黒いもの。それは銃弾か。否。
「蟲達にメロンゼリー、もといスガリ共を喰らってもらいます」
銃口から溢れ出しているのは黒い蟲。それが大雨の如く降り注ぎスガリを侵食していた。
「連中は攻撃時接近してくる必要がありますが、生憎私の今の射程はこの戦場全体ですので」
縋りつきしか攻撃手段を持たないスガリにとって、銃という至高の長距離武器はまさに天敵。
「え、黒燐蟲が銃からッスか!?」
だが、それを見たうるみが驚きの声を上げた。
「……なんです先輩、剣士ジョブが銃撃ってるのが不思議ですか?」
能力者はその能力と結びついた武器しか使うことができない。そして黒き蟲使いも剣士も、銃との親和性は持ってはいなかったはず。
「仕方ないでしょう、私の剣才は先生が曖昧に笑うだけだったというお察しレベルなんですから」
力を失い新たに目指した道に適性がなかった。それ故の選択だと自嘲するように言うが、彼女を見るうるみの目は輝いている。
「すごいッス! 色んな戦い方ができて、めっちゃオリジナルって感じッス!」
この26歳児の素直な感動が影華の心にどうとらえられるか、それは彼女しか分からない所。だが黒き蟲がメロンゼリーを味わうのに対抗するように、白き蟲もまた猛る。
「消えて、なくなってくださーい!」
ニーナの裂帛の気合いと共に周囲に解き放たれた白燐蟲の大群が、負けじとスガリたちを食らい尽くし始めた。
「敵は以前より強いですが、此方も強くなってますから……!」
【白燐拡散弾】は真化しなければおよそ実用に耐えない……というのはもはや過去の話。猟兵の力を得た白燐蟲はより広く、深く、辺りにいる敵を徹底的に食らい尽くした。
だが、食らうと言えば彼女の存在を忘れてはいけない。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、咎人を留め置く扉の鍵を此処に」
るこるは上を取りながら、【豊乳女神の加護・餮囹】を発動した。この技は、周囲に波動を撒いて敵の行動を阻害し、それに巻かれた相手の攻撃と体を吸収する技である。
もう一度言う。『体を吸収する』技である。
波動にまかれたスガリたちはゼリーの体を波打たせ、上に向かって吸い込まれていく。その吸い込まれて行く先でどのような過程をたどるのか不明だが、最終的な行く先はるこるのカロリーである。
「なるほど、メロン味ですねぇ」
先達の言葉に偽りなし。だが流石にここまで喰われまくってはスガリも身の危険のようなものを感じ始めたのか、一斉に体を伸ばして逃げるような姿勢を取り始めた。
それに回り込むようにるこるがバリアを張ってその縁で砲撃しながら妨害し、リンもケースを飛び越えて回り込んではバトンロッドでかっとばしていく。
「うるみさんは囲まれないよう位置取りに気を付けてもらいつつ、側面や背後を取られないよう此方も注意を払っていきましょう」
「了解ッス!」
さらに逃れたものが縋りついてこないように、そして彼女自身も囲まれないように、背面の守りをうるみに指示するニーナ。その読み通り全員より後方まで逃げたスガリが縋りつこうとしてくるが、うるみがハンマーをフルスイングしてそれをかっ飛ばす。
「ナイスショット!」
戦場の反対側、リンの頭上を越えて壁に叩きつけられ潰れるスガリ。その綺麗なアーチに思わずリンも喝采を送る。
ゾンビハンターの基本技【ロケットスマッシュ】、目の前の相手を殴って吹っ飛ばす単純な技だが、対単体としての使い勝手はピカイチだ。ジョブと武器から一対一の殴り合いこそ彼女の真骨頂なのは、能力者であるニーナや影華には一目見ればわかることであった。
そこからも能力者の技を活かした対ゴースト戦闘と、猟兵としての肉体や技を活かした対オブリビオン戦闘の両面から五人は敵を攻めたてていく。前から、奥から、そして上から色々な意味で食らい尽くされ、スガリたちはメロンのにおいを撒き散らしながら砕けてその場に散っていった。
やがて動くゼリーが戦場からなくなった時、突如として空間が揺らぎ辺りが下階と同様の荒れ果てたデパートに戻った。あれだけあったショーケースも一つもなく、周囲には壊れたゲームの筐体が並ぶばかりとなっていた。
「出来れば『破片』や『周囲のゼリー』等を『FTS』で回収したかったのですが……」
残念そうに呟くるこるに、うるみが答える。
「ゴースト全部ぶっ倒したら特殊空間は消えちゃうッス。代わりにこれが残ってたんで持ってってくださいッス」
代わりにパクチーを差し出して来るうるみ。特殊空間が消えた後はその残滓として何かしらのアイテムが残っていることが多いと、影華とニーナが言い添える。まあ戦闘中にスガリ本体を吸収できたので、とりあえずはそれでよしとしておくべきだろう。
「たしか、屋上に最後の敵がいるんだよね」
そう言うリンの視線の先には、最上階からさらに上に続く階段が。
「そうッス。屋上だけは階段で行けるんス」
屋内のどこにも階段のなかった千鵠百貨店。唯一の階段がボスへと続く道ということか。
「確か、ボスの内二体は屋上にいましたね」
「ええ、スイーツ探訪の時も屋上に来ておくといいことがありました」
その分苦労もありましたけど、と顔を見合わせる能力者二人。
ともあれ、屋上がこのゴーストタウンにとって要となる場所であることは間違いあるまい。
その先は天国か地獄か。最後の場所へ向かう階段を、猟兵と案内者は駆けあがっていくのであった。
大成功
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第3章 ボス戦
『八尺様』
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POW : 八尺様の長腕
【黒い腕】が命中した部位に【霊的エネルギー】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : ぽぽぽぽぽぽぽぽ
【異様に素早い動き】で敵の間合いに踏み込み、【ぽぽぽぽという笑い声】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ : 八尺様に魅入られる
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【見えざる呪いの糸】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。
イラスト:anじぇら
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
地縛霊『スガリ』の群れを倒しその特殊空間を脱出した猟兵たち。ボスが控えるという屋上への階段を上がり、屋外へ続く扉に手を掛けながら案内者である能力者、宮古島・うるみが説明を始める。
「ここのボスは『逆福の神』ってやつッス。福の神みたいな見た目をしてるけど不幸を呼ぶのが大好きなゴーストで、ここが潰れたのも直接はそいつのせいッス。攻撃力をゼロにして来たり回復を封じて来たりとにかくバステが強力ッスけど、力は弱いんで強引にパワーでぶっ飛ばしてやれば……」
自身の経験をもとに敵の特徴と対策を説明しつつ、屋上の中央、イベント会場へと猟兵を案内するうるみ。果たして、そのステージの上には巨大な人型の何かが堂々と立っていた。
「ぽ」
白いワンピースとつばの広い帽子。一見すれば清楚な淑女と言った服装だが、2メートル半はありそうな巨躯と闇を塗り固めたかの如き真っ黒な両腕がその女が異形の類であることを如実に物語っている。女は謎の奇声を上げ、高い位置から猟兵たちを見下ろしていた。
これが『逆福の神』か……? そう思い猟兵たちがうるみの方を見ると、彼女は信じられないという表情で女を見て固まっていた。
「知らないッス……こんな奴見たことないッス……ここでも、他のゴーストタウンでも……依頼でも戦争でも!」
最後の決戦まで最前線で戦い抜いたうるみをして知らないと言わしめるその存在。だが彼女が知らないのも無理はない。このゴーストの名は『八尺様』。能力者たちの活動が一度終わりを迎え、休眠の時代に入っていた時に流れた都市伝説、ネットミームから生まれた新たなる時代のゴーストだ。
話を要約すれば、彼女は一度見初めた者をどこまでも追いかけ、命を奪い去るという恐ろしき怪異。ある一族が総出で封印を施し魅入られた末代を守ったが、村落に閉じ込めておく結界が何者かに破壊されたというところでその話は終わっている。そのような結末を持つが故に、都市部のデパートという噂とまるでかけ離れた場所さえ平然と支配することができたのか。
大いなる決戦以降世界の裏側から遠ざかっていたうるみにとってはまさに未知の相手。だが、その期間はまさに猟兵が各世界を飛び回りあらゆる伝説、怪物を相手にしてきた時代だ。ゴーストが世代交代を迎えるよりずっと早くから、時代の最前線を戦い続けてきたものこそ猟兵だろう!
「……よくわかんないけど、どうせあのでかい手で何かしてくるに決まってるッス! あとあんだけ足長けりゃめっちゃ早く歩けるだろうし、バステだって一個くらいは何か持ってるッス!」
敵が目の前にいる、その事実によって自らを震わせハンマーを構えるうるみ。今度は彼女に猟兵が教える番だろう。新しい時代の異能者たちよ、現代の敵と戦うための新たな時代の力を存分に振るうのだ!
リン・ベルナット
情報にない敵でも正義の心でぶつかればきっと勝てる!気合い入れていこう!
うるみさんの言う通り注意すべきはあの黒くて大きな腕だね。
リーチが長いから振り回すだけでもかなりの攻撃範囲になりそうだし注意して戦わないとね。
ただあれだけ長い腕なら大振りの攻撃の後は隙きができると思うんだ。そこを一気に攻めるよ!
ジャベリン形態のバトンロッドで間合いを生かして戦いつつ敵の大技を誘うよ!
敵が薙ぎ払うように腕をふるってきたらそこがチャンス!スライディングで回避して敵の懐に潜り込むよ!
そしたらUCを発動!
掌底アッパーで敵を上空に打ち上げたらジャンプで追撃!太ももで相手の頭をがっちり固定して一気に地面に投げつけちゃうね!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
未知の相手ですかぁ。
よくあることですし、参りましょう。
『FAS』を使用し飛行、『FMS』のバリアで周囲を覆いますねぇ。
更に【耀衣舞】を発動し『光の結界』を展開、既出の品と『FGS』を除く『F●S』各種、先程吸収したカロリーをエネルギー供給に回しますぅ。
『FGS』は『巨大な分重力の影響を受け易い』であろう相手の行動阻害を行い、『光速突進』を往復双方に使って『ヒット&アウェイ』を繰返せば『腕』を躱すことも容易ですぅ。
『光速で飛び回る相手』は目眩ましにも良いでしょう。
『頭』等の上の部位を中心に狙い、隙を見て『反動』も許容した上からの『光速突進』で[重量攻撃]を仕掛けますねぇ。
ニーニアルーフ・メーベルナッハ
そういえば、オブリビオンにはかつてのゴーストとは関係のないものもいるのでしたね…
ですが、いずれにせよ打ち倒すのみです!
敵は大型ですが、うるみさんの見立て通り素早そうです。
ここは【蟲使い】で操る白燐蟲を【誘導弾】として飛ばして攻撃しましょう。
どちらかというと、機動を制限する為の牽制の意味合いが強いですが、命中時はそのまま白燐蟲を敵の中で潜り込ませて内部を食い荒らす【継続ダメージ】を与えていきます。
此方に突っ込んできたならば、私もブレンネン・ナーゲルを構えて迎撃準備。
振るわれた腕に、紅蓮撃を叩き込みにいきます。炎と霊的エネルギーの衝突で爆発を起こし、それを浴びせてやりましょう。
鈴乃宮・影華
※アドリブ、連携OK
……うん、ちょっと驚きましたが
初見の怪異に挑むのも生身でデカブツを相手取るのも
以前から割とよくあった事では?
ではそろそろ猟兵としての私を披露しましょうか
轟蘭華起動、R.I.P、ウルカヌスⅡ展開
伍光を照射した箇所へと「落ちる」事で疑似的なブースト移動ができるようになった私の一斉発射を食らえー!
ふふふ、恨むなら的がデカく生まれた自身を恨む事ですね……!
……なかなか死にませんね、何らかの強化?
ならば指定UCを起動
蟲達から分けてもらった力を込めた黒の葬華を構え、疑似ブーストで加速突貫
「『彼女』には遠く及ばないけれど――これが、私の魔剣です!」
千鵠百貨店屋上イベント会場、そこに現れたボス『八尺様』は、多くの能力者たちがここを探索していた時代には存在しなかったゴーストだ。
まさに当時ここを訪れたことのある能力者、ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)……ニーナも、当時このゴーストを見たことはなかった。
「そういえば、オブリビオンにはかつてのゴーストとは関係のないものもいるのでしたね……ですが、いずれにせよ打ち倒すのみです!」
オブリビオン化したゴーストは9年前の存在ばかりではない。だが、それがどうあれやることは変わらないと武器を構えるニーナ。
「……うん、ちょっと驚きましたが、初見の怪異に挑むのも生身でデカブツを相手取るのも以前から割とよくあった事では?」
同じように鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)も初めて八尺様を見る能力者。だが彼女の言う通り、そもそも初めて訪れるゴーストタウンならばボスが初見なのは当然の事であったし、依頼や大規模戦争などではより強大な相手とぶっつけ本番で戦うのも日常のことであった。そう考えれば、まさに当時を再現して戦えばいいだけの事。一度は戸惑った案内人、宮古島・うるみも同じ能力者からの言葉に落ち着きを取り戻す。
「そ、そうッスね! デカブツとしばらくやり合ってなかったんで焦っちゃったけど、確かにこのくらいの奴初めてでも何回もぶっ飛ばしてきたッス!」
彼女もまた大きな戦いを潜り抜けてきた者。当時の感覚を思い出し、改めてハンマーを強く握りしめる。
「未知の相手ですかぁ。よくあることですし、参りましょう」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の言う通り、情報のない敵と戦うのは猟兵にとってもまた日常。そういう時にどうすればいいか、それは各々の体と心に染みついている。
「情報にない敵でも正義の心でぶつかればきっと勝てる! 気合い入れていこう!」
リン・ベルナット(スポーツヒーロー・f17042)も未知の敵に対するいつものスタンスを崩さず、八尺様に向かい合う。
「ぽぽ、ぽ、ぽぽぽ……」
敵襲を認識しているのか、奇声を発する八尺様。何よりもまず目立つのはその巨体と、それをもってしてなおアンバランスな大きさを持つ黒い腕。
「うるみさんの言う通り注意すべきはあの黒くて大きな腕だね。リーチが長いから振り回すだけでもかなりの攻撃範囲になりそうだし注意して戦わないとね」
「それに敵は大型ですが、うるみさんの見立て通り素早そうです」
大きいことはいいことだ、それは戦いにおいて一つの真理。そして恵まれた体躯はそれ相応の瞬発力や機動力を生み出す。そこに注視したのはリンやニーナ、そしてうるみが重ねてきた戦いの経験則からか。
まずはニーナが蟲笛を吹き、白燐蟲たちを弾丸として飛ばした。それはやや曲がった軌道で八尺様に攻めかかり、その足まわりに連続で着弾する。八尺様は長い脚を機敏に動かしそれを躱す素振りを見せるが、直撃こそしないものの周囲を取り囲むような弾丸に囲まれその足で一足飛びに近づくことができないでいた。
そこにリンがジャベリンモードにしたバトンロッドで遠間から突き、相手の上半身さえも攻めていく。
「ぽ、ぽぽぽぽぽぽ」
ならばこれだとでも言いたいのか、前傾になってやはり長いその上半身を降り、これまた巨大な手を振り回し掴みかかり始めた。
長い胴から伸びる長い腕はその場から動かずともまるで鞭の如くあたりを薙ぎ、猟兵たちを捕らえんとする。
「おっと、危ない!」
二人は一旦それを距離を取って回避する。それに入れ替わるように出てくるのは、空中に浮いたるこるだ。その体にはバリア『FMS』が纏われ、さらに重力制御装置『FGS』を差し向ける。
「ぽぽぽぽ……」
八尺様の細長い巨体は重力によって折れ、腰を大きく曲げる。それにより、自慢の高さを生かすことができず有利を折られた形だ。
能力者たちは飛行手段はほとんど持っておらず仮に無理矢理飛んでも不利を被ることが多かったが、るこるはむしろ不可能な状況でもない限り必ずと言っていいほどに飛行する。サイズが分かりやすく力になるのと同様、高さも本来はそのまま力になるのだ。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて舞を捧げましょう」
そこから【豊乳女神の加護・耀衣舞】を使い、残る兵装を差し向ける。摂取カロリーを乗せられるその技に乗せるのは、先ほどスガリたちから吸収したメロンゼリーの糖分だ。
「ぽ、ぽ、ぽぽ……」
大きな手を振り回し、攻撃を防ごうとする八尺様。そこに銃を構え、影華が狙いをつける。
「ではそろそろ猟兵としての私を披露しましょうか」
能力者としての力の一部は失われた。だが、その代わりに得た力がある。
影華はスポットライトを持つドローンを八尺様にむけ、真っ直ぐ投光させた。八尺様は光に顔をしかめるが、直接ダメージがある様子はない。
「轟蘭華起動、R.I.P、ウルカヌスⅡ展開」
力を補佐する強化外装を纏いながら、影華は自らもその光の中に飛び込んだ。その瞬間、影華は八尺様に向かい真っ直ぐに『落ちて』いく。
この光はその中だで重力の方向を捻じ曲げる。そこに飛び込めば、自由落下と同じ速度で一気にその方向下移動することができるのだ。
「疑似的なブースト移動ができるようになった私の一斉発射を食らえー!」
高速で接近しながらありったけを打ち込む影華。それは落ちながらという狙い定まらぬ状況ながら、八尺様の巨体もあってそのほとんどが相手の体に着弾する。
「ふふふ、恨むなら的がデカく生まれた自身を恨む事ですね……!」
高速移動、距離詰めの類もストームブリンガー以外の能力者には縁遠かった能力だ。
そこで揺らぎ動きが止まった体に、一気にニーナの白燐蟲が襲い掛かる。今度は行動抑止ではなく、明確に足を狙いそこから相手の体を食い荒らし物理的に機動力を削いでいく。
そこに加えてるこるは光速突進をたたきこむ。流石にボス級とあってそれにも反応こそできるが、ヒットアンドアウェイのその動きには大きな腕を振り回しても捕まえるには至らない。
そして振り回されたその腕をスライディングで潜り抜け、リンが八尺様に肉薄する。
「コンボ攻撃で一気に決めるよ!」
掌底アッパーでその巨体を強引に打ち上げ、八尺様の巨体を宙に舞わせる。そのまま自分も跳躍し、太く逞しい太腿でその頭をがっちり固定、体を捻って足のバネを使い相手を地面に勢いよく投げつける【コンボアタック・ブロウ&スロウ】を決めた。
床を砕きながら叩きつけられた八尺様。そこにるこるがユーベルコード効果で膨れた体での光速プレスをかけ、追撃を決める。頭部を狙ったその一撃は、肉に挟まれ投げられた頭をさらに肉で潰す強烈な追い打ちだ。
正に猛攻。ボスであってもこれだけ受ければ普通は倒れるだろう。だが八尺様もやられているばかりではない。影華がぶつかってきた瞬間、その体に見えざる呪いの糸を結び、彼女と自分の命を結び付けていた。それにより、影華が生きている限り八尺様もまた死なぬ身となっている。
「……なかなか死にませんね、何らかの強化?」
その不死身が自分に紐づいたものだと察した影華は、ならば自分が解くべきと黒燐蟲の新たな力ももう一つ解放する。
「彼の力を以て世界が消える――綺麗になぁれ!」
赤黒く輝く呪いの力を長剣『黒の葬華』に込め、影華は再び重力光に飛び込んだ。
「『彼女』には遠く及ばないけれど――これが、私の魔剣です!」
師となった人物を思いながら、【黒燐装攻・禍祓】で自分と相手を繋ぐ呪いの糸を断ち切らんとする影華。
それを見たうるみがハンマーを構える。
「よーするに死なないのもなんかの特殊効果なんスね。なら自分も手伝うッス!」
体を丸め、目にも止まらぬ速さで回転しながら飛翔突撃を行いハンマーで八尺様を殴りつけるうるみ。それは傍目にも分かるほどにクリーンヒット、八尺様をとりまく呪いの力を揺らがせ、罅を入れたように見えた。
「なるほど、ローリングバッシュですか」
「最近使い放題になったッス!」
ユーベルコードにならなかった力。それでも物理頼みなら未覚醒者でも振り回せる。
入った罅に呪いが流れ込み、同じ呪いの糸を切った手ごたえが影華に伝わった。最早敵は不死にあらず。
「ぽ……ぽぽぽ……ぽ!」
なれば一人でも道連れにと、八尺様が強引に黒い腕を振り回す。それを迎え撃つは赤い腕。
「この一撃で、決めます……!」
ニーナがラバースーツと共に纏った『紅炎手「ブレンネン・ナーゲル」』が、クロスカウンターの如く八尺様に叩き込まれた。いかに八尺様の手が長かろうと、赤手のサイズは人間の体程。それは黒い腕が届く前に八尺様の体を穿ち、大爆発を起こした。
「ぽ、ぽ……!」
【紅蓮撃】、これも十年以上前から能力者と共にあった技。その大爆発の中で、八尺様はその巨体を崩れさせていった。
爆炎が収まった時、それに呼応するように千鵠百貨店一体が正常な空気に包まれる。ボスゴーストを倒せば配下のゴーストたちも消滅し、ごく短い間なれど平穏を取り戻す。これもまたゴーストタウンの常識であった。
それを確認するとうるみは八尺様が消滅したあたりに急いで駆け寄り、何かをごそごそ探し始める。
リンとるこるは不思議そうにそれを見るが、影華とニーナはやはり分かったような顔。
「ああ、ボスを倒しましたからね」
影華が簡単に説明するに、どうやらボスのいた場所から戦利品を漁っているらしい。しばらくしゃがみこんでいたうるみだが、色々なものを手にしながら首を傾げはじめた。
「え……何スかこれ?」
その手にあるのはタピオカドリンクにハンドスピナー、リング型のゲームコントローラーにボルダリング用スポーツタイプハーネス……いずれも2013年以降に流行、あるいは出現したものばかりだ。確かにどれもデパートで売っていておかしいものではないが、平成の時代に二つの意味で幕を閉じたこの千鵠百貨店には似つかわしくないものばかり。下階では9年前から取れたものしか見つからなかったはずだが、これはどういうことか。
「なるほど、固有も更新されているのですね」
ゴーストタウンにはそこでしか取れないアイテムがある。その顔触れも復活に合わせ入れ替わっているのかと、ニーナが頷いた。
「やっぱりゴーストタウンにも個性があるんだね」
「色々巡ってみたいところですがぁ」
一口にゴーストタウンと言っても色々だと、リンとるこるもその奥深さを改めてしる。
彼女もまたそれを理解したらしいうるみが、拾ったものを猟兵たちに配って回った。
「夢ヶ枝さんはダイエット器具欲しいんすよね、ソフトも一緒だったんで持ってってくださいッス! リンさんはボルダリングはやるッスか? もしやるならどうぞッス! ニーナさんはスイーツスクエアがお好きなんスよね。これまだ食えそうなんでどうぞッス!」
うるみはるこるにリング型コントローラー、リンにはハーネス、ニーナにはタピオカドリンクを渡す。こんな所に放置されていたのにどれもまだ使えたり食べられたりしそうなのもゴーストタウンの不思議の一つか。もっともゴーストタウン効果で魔改造されていたりすることも、また稀にあるのだが。
「えっと、鈴乃宮さんは……これしかないんスけど、いります?」
最後に申し訳なさそうに影華にハンドスピナーを差し出すうるみ。流石の彼女もこれが何かの役に立つものではないということくらいは分かるらしい。だが戦利品を同行者に配るのもゴーストタウン探索の礼儀。それを知っている影華は黙ってそれを受け取った。
「どうやら一回クリアしたくらいじゃ終わらなさそうッスね。まあ、どーせゴーストタウン探索なんて一回で全部済んだ試しなんてないッス。全部ぶっ潰してここにお客を呼べるようになるまで何度でも来るッスよ。それじゃ皆さん、ありがとうございましたッス!」
最後に大きく礼を言いながら一礼し、先行して階段を降りていくうるみ。
この千鵠百貨店のみならず、日本、あるいは世界中でゴーストタウンは復活している。新たな探索、そして戦いの場がまたシルバーレインに広がったのだ。それが全て鎮静化するのはいつの日になるか。それはまだ分からない。だがともあれ、この場所には一時ながら平穏は戻ったのだ。
千鵠百貨店、CLEAR!!
大成功
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