その名は「公団住宅ヨンロク号」
●昭和から平成、そして令和へ
「エッ、ヨンロク号ってまーだ取り壊されてなかったんですか!」
グリモアベースの一角で、猟兵たちを呼び寄せた栢沼・さとる(流星の馭者・f35303)が心底驚いたような声を上げた。
「あ、ごめんなさい! ついびっくりして……説明、始めさせてもらいますね」
さとるはたははと笑いながら、親愛なる猟兵たちへと向き直る。
「かつてシルバーレインの世界では、『人が住まなくなり、常識が失われたことでゴーストの巣窟と化した場所』を『ゴーストタウン』と呼んでいました」
それはもう、日本全国、あっちこっちにあったんですよ? なんてことを言いながら、さとるは説明を続ける。
「で、私たち能力者たちはこうした場所の浄化活動にも精を出していたものです」
どんな危険な罠が待ち受けていようとも恐れず駆け抜け、何なら慣れてくればタイムアタックに挑んでみたり。
そんな、能力者たちにとってはある意味馴染み深い場所で、新たな戦いの気配があるという。
さとるが数枚の束ねられた資料を集まった猟兵たちへと配る。
どうもアナログ人間から脱却できなくてすみません、と笑いながら。
「その場所の名前は『公団住宅ヨンロク号』、かつて私たちがゴーストたちと幾度となく戦った、ゴーストタウンのひとつ――『でした』」
本来ならば、ゴーストたちの脅威も去り、あとは静かに朽ちゆくのみであった、昭和の遺物。公団住宅と呼ばれた、古き良き集合住宅の廃墟。
「ここを今、オブリビオンが支配して、大規模な『ゴーストタウン現象』を引き起こすことが分かったんです! すごいですね、予知ってこんな感じなんですね!」
視えちゃったんですよ、びっくりしました! などと興奮するグリモア猟兵。
まあまあそれが君のお仕事だから、と集まった猟兵たちからなだめられると、さとるはハッと我に返って咳払いひとつ、失礼しましたと話を再開する。
「そこで、親愛なる猟兵さんたちの出番です! さっきお渡しした資料に地図があるんですが、公団住宅ヨンロク号に出向いてもらって、オブリビオンを退治していただきたいんです!」
ググッと拳を固めてそう猟兵たちにお願いするさとる。リスペクトが眩しい。
かつて現役能力者時代にさとる自身踏破したことのあるゴーストタウン、ということもあり、現場の事前情報はかなり詳細だった。
びっくりするほど基本的な間取りは同じ、残された家具の配置がせいぜい微妙に異なる程度。昭和そのものの古臭い、しかしどこか懐かしい家屋だという。
「ゴーストタウン現象が起きていますから、一見普通の建物でも、あるポイントに踏み込むと敵が出てきたり特殊空間に引きずり込まれたりしますから、注意が必要です」
もしかしたら、私が知ってる頃よりも迷宮が複雑化してたり、トラップが危ないものになってるかも知れませんね……などとも言い添え、唸るさとる。
「探索手順はこうです、まずは『ヨンロク号』の一階から四階まで順に、慎重に探索して状況を把握するところから始めましょう! 迂闊に動き回るのが一番ヤバいです」
とにかく、慎重に行動することこそが重要なようだ。
うっかり敵の罠を踏み抜いたが最後、生きては帰れない可能性だってある。
「多分、途中で雑魚敵相手に集団戦になると思うんですよ。ここで事前に地形や仕掛けについて把握しておけば、有利に戦えるかも知れませんね」
例えば敵の攻撃の射線を切って、一方的に攻撃できる位置取りが取れるとか。
考えられる手段はいくらでもあるが、それは現地で確認して欲しいとさとるは言う。
「屋上まで上がりきれば、そこに今回の諸悪の根源がいるはずです! ちょっと良く視えなかったんですけど、きっと色んな意味で強敵です、油断しないでお願いしますね」
戦闘にさえなってしまえば、皆さんならきっと大丈夫。
猟兵たちに篤い信頼を寄せながら、さとるは紫水晶の七支刀を一閃した。
空間が切り裂かれ、その先に見えるのは古びた公団住宅の廃墟。
ゴーストタウンと化した『公団住宅ヨンロク号』に、今度こそ穏やかな眠りを――。
かやぬま
ゴーストタウン、面白かったですね!
もう楽しめないのが残念ですが、当時を知る方もそうでない方も、レッツ探索!
かやぬまです、よろしくお願いします。
●第1章:冒険
元にさせていただいたゴーストタウン『公団住宅ヨンロク号』はこちらです。
http://t-walker.jp/sr/gate/top.cgi?did=d03
絵に描いたような昭和の公団住宅の佇まい、程度の認識で大丈夫です。
この『ヨンロク号』の中は既にゴーストタウン化し、常識では考えられないことが普通に起こります。
フラグメントのPOWについては「一撃で倒せる程度のオブリビオンが出る」感じ。
基本的には『ヨンロク号』の内部を慎重に探索するプレイングをいただければOKです。
●第2章:集団戦
ゴーストタウンなので、当然ゴーストならぬオブリビオンが出てきます。
戦いの舞台は複雑な迷宮、危険なトラップありと色々大変ですが、第1章できちんと探索をしておけば、逆にそれを利用して有利に戦えるかも知れません。
具体的にはプレイングボーナスがつきますので、頑張って下さい!
●第3章:ボス戦
ヨンロク号の最奥にあたる屋上で、皆様を待ち受けています。
何やら『試練』を与えてくる厄介な敵、らしいですが……?
●ご案内
団体様でのご参加などについて記載がありますので、MSページをご一読お願いします。
プレイング受付期間を設けさせていただきます、タグとMSページでご確認下さい。
全体的にゆっくり進行、再送もお願いしてしまう可能性が高いですが、それでもよろしければお付き合い下さいますと幸いです。
それでは、今ふたたびのゴーストタウンへ、レッツゴーです!
第1章 冒険
『オブリビオン迷宮』
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POW : 湧いて出てくる敵を倒しながら進む
SPD : 仕掛けられた罠を解除する
WIZ : 敵の魔力を探知し、ボスの居場所を探す
イラスト:十姉妹
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●最初の試練
廃墟、という響きに、少なからず魅力を感じる者もあるだろう。
けれど此度はその誘惑に呑まれるなかれ。
長い、本当に長い時を経て再び魑魅魍魎が跳梁跋扈する場と化した『ヨンロク号』。
エントランス横に設置された郵便箱を調べても、もうあの時のように鍵はない。
過去の知識がある者こそ心せよ、今やこの『ヨンロク号』は令和のゴーストタウン。
罠も迷宮化もあの時とは全く異なるに違いない、故に、心せよ。
まずは、敵と遭遇した時に不利を取られないよう、現場の探索を念入りに行うべし。
さすれば、いざ戦闘となった時に必ずやその結果が現れるであろう。
布施・命
【狸々亭】
当時の記憶は薄れているが、逆に有り難い。先入観を捨てて、久しぶりの探索に励むとしよう。
しかし本当、よく残っていたな……
●行動
後に動きやすくなるよう、罠の解除を目的の中心にし動く
不意の罠に対し互いをカバー出来るよう、仲間とは固まって行動
技能「式神使い」で武器の式鬼を使役し、先行して罠や様子のおかしな箇所を見つけ伝えて貰おう
発見した罠の解除や破壊が可能と判断すれば、安全な場所からユーベルコードで霊符を放ち破壊、あるいは式鬼の攻撃や囮としての起動で無効化を試みる
わし自身も、警戒怠らず歩はゆっくりと。難しい局面では無理せず安全が確認出来た場所に戻って一息入れるべし。何事も落ち着いた対処を。
御門・儚
【狸々亭】で参加
懐かしいなぁ…
昔は後衛からの攻撃専門だったから
皆の後を必死で追いかけるので必死だったんだよね。あの頃は本棚とか鏡とか罠がかかってたけど今はどうだろう?罠使いの技能を使ってあっちへの罠返しに使えるか観察しておこうかな。あ、でも無闇に触ったりはしないよ。発動したらコントだからね。
罠で無難なのはドアあけたら罠発動だけどここもそうならドアを開けても中に入るのは1呼吸おいてからだね。
敵は基本、しっぽ髪と暗器で受け流しつつ叩くけど、数が多かったら送り梅雨でさくっと爽やかに退治でいいんじゃないかなって思うんだよ。
でも、ここのボスってどんな奴かなー
昔いた奴がオブビリオン化してるのかそれとも全く別の奴なのか、ちょっとワクワクするなあ
●探索開始
布施・命(非日常との再会を憂う卒業生・f35378)と御門・儚(銀雪の梟(もりのふくろうちゃん)・f35472)の二人は、グリモアの転送の力であっという間に件の『公団住宅ヨンロク号』の前へと到着した。
もう、かつてのように東京駅から延々電車に乗って足を運ばなくても良いというのは、便利と言ったものか、それとも風情がないと言ったものか、悩ましいところだった。
(「当時の記憶は薄れているが、逆に有り難い」)
今にも崩れてしまいそうなほど老朽化した公団住宅の廃墟を見上げて、命は思う。
(「先入観を捨てて、久しぶりの探索に励むとしよう」)
そう、今回の任務でもっとも重要となるのは『先入観を捨てる』こと。
その点、同行の儚も抜かりなく。
「懐かしいなぁ……」
感慨深げに命同様『ヨンロク号』を見上げて、図らずも実年齢より十ほど若々しくなった肉体を軽くひねって準備運動。
「昔は後衛からの攻撃専門だったから、皆の後を追いかけるので必死だったんだよね」
さては後衛/積極攻勢ですかね……他の面子が標準や前衛だと大変でしたね……。
儚は命の方をくるりと向いて、何気ない口調で問う。
「あの頃は、本棚とか鏡とか罠がかかってたけど、今はどうだろう?」
「うむ、突然壁を壊してゴーストが出てきた時は正直肝が冷え……と」
命も儚の方を見て、ふと蘇った思い出を語り――いかん、いかんと気を引き締める。
「では、わしは後に動きやすくなるよう、罠の解除を目的の中心とし動こう」
「じゃあ、こっちは特技活かしてあっちへの罠返しに使えるか、観察しておこうかな」
互いの行動指針を確認した上で、互いにひとつ頷き合い、『ヨンロク号』へと向かう。
(「しかし本当、よく残っていたな……」)
当時を知る能力者ならではの思いを胸に、命はもう一度だけ、廃墟を見上げた。
「……とはいえ、別行動にはならないのな」
「不意の罠に対し、互いをカバー出来るよう、固まって行動するのは王道でな」
かたや式鬼「おタヌキ様」&「おキツネ様」を使役し、先行させて罠や様子のおかしな箇所を見つけ伝えるようにと指示を出す命に、かたや己が罠使いの技量で当時より一層老朽化が進んだように思えるヨンロク号を直視していく儚。
「あ」
「どうした、何かあったか」
「この畳の血痕、前もあったっけ?」
「いや……流石に覚えてない……」
「まーでも、無闇に触ったりはしないよ。発動したらコントだからね」
「笑えんわ」
血痕の上には大概残留思念が浮かぶものだが、今は何もかもが怪しく見える。
慎重に、慎重にと行動しつつも、懐かしさからか二人の雰囲気はどこか和んで見えた。
黴臭い、冷えた空気が支配する廃墟の中で、二人の前に一枚のドアが現れる。
命の前に、無意識にか儚が立ち、そっとドアノブに手を掛けた。
「罠で無難なのは、ドアあけたら罠発動――だけど」
命は無意識に息を呑み、儚の次の言葉を待った。
「ここもそうなら、ドアを開けても中に入るのはひと呼吸おいてからだね」
――ぎいぃ。
「……」
「……」
沈黙と静寂だけが、そこにはあった。
「よし、クリア!」
そこでようやく、二人はドアを意気揚々とくぐる。
何となく見覚えのある畳敷きの六畳間に足を踏み入れた時、命の式鬼たちから報せがあった。良い報せか悪い報せかどちらかと問われれば、半々と言う他なく。
「踏み抜くと、盛大に音を立ててゴーストを呼び寄せてしまう床」
命が見るからに傷んだ床板を遠目に眺めて、淡々と呟く。
「あったねー、そんなの」
儚は応えながら、命が己の投擲力を強化する符を貼り付けるさまを見る。
「どさくさでうっかり踏んでしまう前に、対処してしまおう」
そう言うと命は、傷んだ床板めがけて、強い呪力が籠められた「霊符」を投擲する!
――ぎし、べきばきっ!!
「うわ出たぁ!」
「任せていいか、御門」
「いいけどさぁ!」
見て下さいこの見事なしっぽ髪! 何とこれ、武器なんです!(ビシッ)
「むむ、あれはもしや泥田蟲……?」
「あれもオブリビオン化してたの!? ヤダー!!」
まだ低層の敵ということで、暗器「不如帰」の一撃で葬り去ることができたけれど。
「今ので全部?」
「そのよう、だ」
大きな音の罠でやって来たオブリビオンは三体。
数が多ければ派手に奥の手を繰り出してさくっと爽やかに退治でいいんじゃないかな、なんて思っていた儚だったが、それは恐らくもう少し先に持ち越しということだろう。
「引き続き気を緩めず行こう、よろしく頼む」
命自身、警戒を怠らず、その歩みはゆっくりと慎重に。
「もし、難しい局面があれば、無理せず安全が確認出来た場所に戻って一息入れるべし」
「『何事も落ち着いた対処を』、ね? りょーかい」
歩調を合わせながら、儚は首に両手を回し、湿っぽい天井を見上げて呟く。
「でも、ここのボスってどんな奴かなー」
「……」
「昔いた奴がオブリビオン化してるのか、それとも全く別の奴なのか」
「……グリモア猟兵は、よく視えなかったと言っていたが」
「ちょっとワクワクするなあ」
「……」
慎重に、油断なく。
けれど、久々の冒険に心弾まぬはずもなく――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
マオ・イェンフー
魎夜(f35256)と参加
POW
▼心情
確かに枯らした筈なんだが‥オブリビオンってのは厄介なもんだな
ま、周りに被害が出ない内に対処するとしよう
▼探索
特殊空間に引き込まれないよう警戒
過去の知識は参考程度に考え一から慎重に動く
魎夜とはぐれないよう声かけ合って丁寧にクリアリング
▼魎夜に
軽口叩きつつ油断無く探索
「そりゃお互い様さ。数年ぶりの再会がGTってのが銀誓館っぽくて笑うがね」
「ゴーストもどきも出るみたいだな。ツレを呼ばれる前に叩くぞ魎夜!」(二丁拳銃を【クイックドロウ】で抜き【ライトニングフォーミュラ】で雷撃弾をぶち込む)
暗都・魎夜
spd
マオ(f36169)と参加
【心情】
GT、最近動きを見せないと思ってたら、こういうことになってたとはな
思い切りやらせてもらうぜ
【探索】
地縛霊だと不意打ちで特殊空間に引き込まれるのが定石
敵が罠を仕掛けてくる可能性が高いし、部屋に入る瞬間や長い通路は注意だな
マッピングをこまめに行い、前来た場所にそのまま戻れるかも確認
あと、締めきって暗闇になる部屋も探しておきたい
「暗視」「索敵」「情報収集」を使用
【マオと】
※気楽に話してはいるけど、平常心なだけで警戒は怠らない
「来てくれて助かったぜ、さすがに今のGTに嫁連れてくるわけにいかねえし」
「ちがいない」
「よっしゃぁ! やってやろうぜ、マオ!」
●猛者、再び
――ざっ。
「確かに『枯らした』筈なんだが……オブリビオンってのは厄介なもんだな」
RAYBANのサングラスに黒いロングコートを身に纏い、マオ・イェンフー(その漢トゥーハンド・f36169)が。
――ざっ。
「ゴーストタウン、最近動きを見せないと思ってたら、こういうことになってたとはな」
黒い上着を肩に羽織り、炎の如き七支刀を担いで、暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)が。
「ま、周りに被害が出ない内に対処するとしよう」
「おう、思い切りやらせてもらうぜ」
地を踏みしめる音からして、気合いは充分。
ここにまた、歴戦の猛者たちが、埒外の力を携えて『公団住宅ヨンロク号』に挑む。
マオと魎夜がヨンロク号の内部に突入して何より気をつけたのは『特殊空間』。
(「確か、ヨンロク号では『鏡を調べる』ことがトリガーになっていたが」)
マオは記憶を手繰り、そしてすぐかぶりを振る。
過去の知識は参考程度に。
一から慎重に動く、これが肝要。
(「地縛霊だと、不意打ちで特殊空間に引き込まれるのが定石」)
魎夜もまた、敵が罠を仕掛けてくる可能性を十分に考慮し、部屋に入る瞬間や長い通路には特に注意を払う。
「……それは?」
「マッピングさ、前来た場所にそのまま戻れるかも確認しないとな」
という訳で、と言いつつ、ついぞ先程通過したとある部屋まで取って返す魎夜の手には、イグニッションカードから取りだした手帳とペン。
それを見たマオは成る程と思いつつ、なるべく音を立てぬよう魎夜の後を追う。
「よし、大丈夫みたいだな」
かつては家族団らんの場であったろう畳敷きの六畳間。
戦闘になることも多かった記憶があるが、少なくともこの空間は安全らしい。
そこでようやく、二人はまともに顔を合わせて、口の端を上げて笑った。
「来てくれて助かったぜ、さすがに今のゴーストタウンに嫁連れてくるわけにいかねえし」
「そりゃお互い様さ、数年ぶりの再会がゴーストタウンってのが銀誓館っぽくて笑うがね」
「ちがいない」
気楽な口調で言葉を交わせど、これはあくまで平常心がゆえのこと。
警戒は決して怠らず、互いに得物を握る手は力強い。
「ゴーストもどきも出るみたいだな、ツレを呼ばれる前に叩くぞ、魎夜!」
「よっしゃあ! やってやろうぜ、マオ!」
気配は、既にしていた。
この分なら、『今の』自分たちなら瞬殺だろうとは分かっていても、抜かりなく。
一度閉めた玄関のドアを、もはや廃墟なのを良いことに盛大に二人で蹴り破る。
「――!!」
ギターを携えたゾンビには、どこか見覚えがあった。
だが、思い出に浸っている暇はないし、誰よりもマオが早く動いた。
――クイックドロウ。早撃ちの名手。
その漢、トゥーハンド。
超常【ライトニングフォーミュラ】の応用で、雷撃を宿した弾丸を的確に急所へとぶち込む!
「――」
ど、さ。
ゾンビギタリスト、とかつて呼ばれていた過去の残滓は、一瞬で葬られた。
流石だな、と魎夜に肩を叩かれながら、マオはホルスターに愛銃をしまう。
「ところで、二階のこの辺に……」
「倉庫か? 残留思念狙いか?」
「いや、ちょっと……な」
今は鍵なしでも扉が開く倉庫は、締めきると完全な暗闇になる部屋でもあった。
「魎夜、お前は暗視で見えてるだろうが、俺は少し困るぞ」
「悪ぃ、悪ぃ。すぐ出るから、な」
一階はあらかたクリア。
二階に『締めきると暗闇になる部屋』も発見。
マオと魎夜の探索は、非常に順調であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
流茶野・影郎
ゆっくり慌てず前へと進もう
退いたら、危険だ
他の敵と遭遇してどんどん相手がふえてくるからね
それにお仕事も果たさなければならないしね
「いくぜ、ゴースト!」
『メキシカン忍法・疾風怒涛の歩み』
「悪いが、これでも忍者なんだ」
基本的には各個撃破
対集団が減衰される以上、一体ずつ敵を……え、されないんですか?
あと……何かマップ、前と違う気がするけど大丈夫?
まあいい!
ここは突破だ!
死と隣り合わせの青春を終え
まだ戦い続ける俺にとって、新しい現在は慣れないことが多い
こういう時は猟兵の先達に倣いつつ先輩っぽく振舞う差
「強くは無いけど伊達に長くはやっていないさ」
それよりさ……
「運命予報士なら中学女子制服じゃない?」
●リブート・ルチャ影
――運命予報士なら、中学女子制服じゃない?
――バカ言ってないでさっさと行って下さい!
それは、グリモアベースでのやり取り。
流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・f35258)が転送直前に訳の分からないことを言い出したものだから、グリモア猟兵が七支刀の切っ先でつんつん押し出すように、半ば強制的に『ヨンロク号』前へと転送してやったといういきさつがある。
それはさて置き。
影郎は廃墟に足を踏み入れ、慎重に周囲を見回す。
不気味なまでに静まり返った空間が、ただ広がるのみ。
かつては部屋の数だけ家族を抱え、人々が行き交ったであろう玄関の寒々しい広さが、空しさを強調するようで、あまり長く見てはいられなかった。
(「ゆっくり、慌てず前へと進もう」)
影郎はかつての探索を思い出すように、一歩一歩を確かめるように踏みしめる。
急いては、いけない。
退いたら、危険だ。
(「他の敵と遭遇して、どんどん相手がふえてくるからね」)
そう――一度敵と遭遇したら、その時に現れた敵を殲滅することに専念すべきであり。
下手に逃げ回ったりしようものなら、音に誘われて増援を招きかねないのだ。
故に。
廊下を慎重に歩いていただけなのに、ふらふらと湧いて出たゴースト――もといオブリビオンを退治すべく、影郎は身構えた。
「いくぜ、ゴースト!」
すみません、相手オブリビオンなんです!
相手が何者であろうと関係ない、とばかりに影郎が発動させたのは、猟兵たる証のユーベルコード【メキシカン忍法・疾風怒涛の歩み(メキシカンニンポウ・シュツルムウントドランク)】!
影郎はたちまちのうちに疾風に覆われ、敵は影郎の姿を見失い右往左往する。
「悪いが、これでも忍者なんだ」
そう――人は彼を、かつて『覆面忍者ルチャ影』と呼んだ。
その実力の一端を垣間見せる超常で、影郎は一方的にイニシアチブを取り、各個撃破を狙っていく。
(「対集団が減衰される以上、一体ずつ敵を……え、されないんですか?」)
されないんですよ、何なら射程の概念とかぶっ飛ばしたユーベルコードとかわんさかありますよ。
「あと……何かマップ、前と違う気がするけど大丈夫?」
そうですねー、昔は通れた所とか瓦礫の崩落で進めなくなって、ベランダ沿いに迂回しないとダメとかはありますねー。
「まあいい! ここは突破だ!」
慎重に、とは申しましたが、時には大胆さも必要。
影郎は今なお衰えぬ戦闘能力で三体の雑魚をあっという間に屠り、周囲の警戒に再び神経を集中させる。
(「死と隣り合わせの青春を終え、まだ戦い続ける俺にとって、新しい『現在』は慣れないことが多い」)
運命の糸症候群には罹患せず、順当に年を重ねた元・能力者。
こういう時は、猟兵の先達に倣いつつ、先輩っぽく振舞うのだ。
「強くは無いけど、伊達に長くはやっていないさ」
覆面忍者ルチャ影が目ざとく発見したのは――三階へと続く階段に仕掛けられた罠。
上る途中で、天井から鋭利な刃が落ちてくるという凶悪なものだった。
(「……発動させつつ、刃だけ敵にぶつけてやれれば効果がありそうだ」)
どうやら、トリガーは衝撃のようだった。
ゆっくりと階段を下りて戻りつつ、探索を続ける影郎であった。
成功
🔵🔵🔴
六道銭・千里
◎
ゴースト…な、霊であるなら俺の仕事やそれが別の世界でもな
ほんならゆっくりと警戒して行くとしようか
罠が無かったとしても老朽化した廃墟は怖いからな
管狐を召喚して先行、先に行かせて罠がないかの調査や、
念の為催眠振り子も持ってダウジング【道案内】ってな
…もし袋小路とかで罠があれば自分は離れた場所から管狐達に反応させるのもひとつの手か
どういった罠なんか種類に効果範囲とか把握しといて損はないやろうし…
敵が出てきたら空いた手の銭貫文棒に『破魔』の力を込めて…
こっちのゴーストにあの世があるかは知らんけど
あの世への水先案内、六道銭・戦利が仕る
●ゴースト・バスターズ?
「ゴースト……な」
呟きながら、公団住宅の廃墟を見回すのは六道銭・千里(あの世への水先案内人・f05038)。
正確にはかつてゴーストと呼ばれた存在は既になく、今はゴースト『だったもの』たる過去の残滓、オブリビオンと化して現界しているのだが。
「霊であるなら、俺の仕事や。それが別の世界でもな」
出張、ご苦労様です!
「ほんなら、ゆっくりと警戒して行くとしようか」
そう、たとえ罠がなかったとしても、敵がいなかったとしても。
老朽化した廃墟は危険がいっぱい、気をつけるに越したことはないのだから。
「ほな――【管狐(クダキツネ)】」
――狐七化け、狸の八化け……貂の九化け、やれ恐ろしや。
千里の呼びかけに応じて、あっという間に百体もの式神『管狐』が召喚される。
これだけの数がいれば、ほぼ見落としはないだろう。いっせいに先行させ、道中に罠がないかの調査をさせる。
千里自身も念の為にと「催眠振り子」を手にしてゆらゆらダウジング。
管狐と連携を取り協力し合って、かつてのゴーストタウンを探索していく。
「……む」
管狐から都度もたらされる情報の中から、袋小路にあからさまに怪しい罠がある、という情報を得た千里が振り子を揺らす手を止めて唸った。
(「俺は離れた場所から、管狐達に反応させるのもひとつの手か」)
ちょっと可哀想かな、などと思ったかどうかはさて置き、千里は数体の管狐を敢えて罠へと向かわせる。
「「「……!!」」」
「どないした!?」
離れた場所から安全に罠の確認をしようと思っていたはずの千里が、管狐の異変に思わず駆け寄ってしまう。
どうやら、催涙ガスが噴き出す仕掛けになっていたようで、咄嗟に口と鼻を覆う千里。
まともに喰らった管狐たちがぴいぴい泣くのを一体一体回収しながら、罠の種類と効果範囲を確かに把握する。お前達の犠牲は無駄にはしないの精神だ。
『――』
声にならない声が、管狐たちの鳴き声に混ざるのを、千里は聞き逃さなかった。
「……ようやってくれたなあ」
空いた手に千里が握るは冥銭連ねし「銭貫文棒」、破魔の力を通して向き直った先には、かつてゴーストと呼ばれたオブリビオンの姿があった。
「こっちのゴーストにあの世があるかは知らんけど」
催涙ガスの効果はあまり長続きしないらしい、自由に息が出来る今なら十分戦える!
「あの世への水先案内、六道銭・千里が仕る――!」
――一閃。
あまりの歯応えのなさに一瞬呆気に取られてしまうも、振り抜いた銭貫文棒を再び構え直す。
直後、かき消えるようにその姿を消してしまうオブリビオン。
話には聞いていたが、探索の時点で現れる個体は本当に弱いようだ。
還るは恐らく骸の海、それでも。
「もうこんなとこ来るんやないで、成仏しいや」
そう、願わずにはいられなかった。
成功
🔵🔵🔴
儀水・芽亜
【庭園】
◎
懐かしい場所ですね、ここも。一緒に巡った方々は、今どうしているでしょう?
その思い出を守るためにも、一肌脱がせていただきます。
探索中は「歌唱」と小脇に抱えた竪琴による「楽器演奏」で『主に向かいて新しき歌をうたえ』を歌いつつ、「偵察」を進めます。これで万事、友好的に接してもらえるようになりますからね。
罠なんかも勝手に作動してくれるとありがたいです。
演奏してると、両手が塞がるんですよね。圭一さん、アインさん、どちらかマッピングをお願い出来ますか?
各階を慎重に見回って、上へ上へ。鏡の仕掛けはまだありますかね?
落とし穴や吊り天井が追加されていたりとか?
今回私は歌唄いに徹しますので敵はよろしく。
山崎・圭一
【庭園】◎
(命捕網を肩に担ぐように持ち)昭和の遺物にして平成の思い出
いや〜…どれぐらいぶりよ。此処に来るの
ファクシミリ何台ぶっ壊したっけ?けど過去の経験は活かせそうにねぇな
挑ませてもらおうじゃねーの。令和のGT!
(煙草の煙と共に白燐蟲を吹き)暗がりは任しときな
白燐蟲使いの十八番『白燐光』で明かりを確保だろ
ちったァ探索しやすくなるじゃん?
【伽鎖燐】でキャサリンを召喚
怪しい箇所にゃコイツに先陣切ってもらうぜ
五感冴えらせて少しでも情報拾っておきてェところ
一応この一眼レフカメラで写真撮っておくか?
後々活かせる場面が出てくるかもしんねーし
鏡の中の空間とかあったっけなァ。やっぱり今もあんのか?
アイン・ヴァールハイト
【庭園】◎
…確か、鏡調べると別空間に飛ばされた、というのはなんとなく覚えてる
つーか、アスベストとか大丈夫なんこの建物?
猟兵になってから初めての依頼だ…どう変わったかとか確認しながら行こか
曲がり角で出合い頭とかやめて欲しいんで、一旦止まって先を確認する
視界を遮る障害物や壁やらが多かった印象があるんで、隠れながら様子見しつつ慎重に行く
敵は基本、鉄扇で受け流しつつ叩くが、強かったり数が多かったらさよならの指先でえさくっと凍らせて都っと片付ける
此処のボスは屋上に居たんだったか…
雲っぽいのとロボっぽいリリスと紙のドラゴンだっけか?
それのどれかか、もしくは全く別なのか
……抗体化してたら厄介だな…
ムゲン・ワールド
【庭園】◎
(ゴーストタウン、懐かしい響きだ。学生だった頃は祝い事のたびに知り合いに誘われて挑んだものだった。思えば、今回も[銀の雨降る庭園]の仲間に誘われていている。自分からはゴーストタウンに足を運べない性分なのかもな)
などと、過去学生だった頃の仲間を回想し、学生に戻った今ともにいる仲間を振り返り、ほんの少しの間、感慨に耽ります。
誘われてついていくばかりだったので何も覚えておらず自身の記憶が頼りにならないので、一同と歩調を合わせて歩きながら、周囲を警戒する役目を担います。
敵が現れた場合には「悪夢爆弾」で対応します。
皆さんが鏡を特に気にしているようなので、鏡の位置を覚えておきます
●アッこれ完全に全員能力者時代の顔つきだ
(「ゴーストタウン、懐かしい響きだ」)
旅団「銀の雨降る庭園」の仲間たちと共に『公団住宅ヨンロク号』の前に転送を受けたムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)が、感慨深げに目を細めた。
(「学生だった頃は、祝い事のたびに知り合いに誘われて挑んだものだった」)
お祝いでゴーストタウン探索とはまた、中々に面白い動機ですね?
今回は――さながら『猟兵としての初陣』を祝う門出となるのだろうか。今回も、旅団の仲間たちに誘われて、今ここに立っているのだから。
(「自分からは、ゴーストタウンに足を運べない性分なのかもな」)
なんて、かつて学生だった頃の仲間を想う。
そして、文字通り『学生に戻った』今、共にいる仲間を振り返る。
――探索の前に、ほんの少しばかり、感慨に耽っても許されよう。
ムゲンが振り返った先には、三人の能力者にして――猟兵。
「……確か、『鏡調べると別空間に飛ばされた』というのはなんとなく覚えてる」
のっけからかなり核心を突いてきたのは、アイン・ヴァールハイト(コキュートス・f36049)。そうなんです、鏡なんです。
「つーか、アスベストとか大丈夫なん? この建物」
多分ダメなので、そこは埒外たる猟兵パワーで何とか乗り切って下さい……!
「昭和の遺物にして、平成の思い出」
命捕網(みことりあみ)を肩に担ぐようにしながら、しみじみ言うのは山崎・圭一(虫退治ならお任せを・f35364)。
「いや~~~……どれぐらいぶりよ、此処に来るの」
本当に――本当に、懐かしい。
願わくば、二度と騒乱沙汰では来たくなかったけれども、これもみんなオブリビオンってヤツが悪いんだ。
「ファクシミリ何台ぶっ壊したっけ? けど過去の経験は活かせそうにねぇな」
懐かしすぎて死ぬかと思った、ファクシミリ。そう、圭一さんが言うように『ぶっ壊す』行動に走らねば、ゴーストが延々湧いてくるあの忌まわしきファクシミリ!
ちなみにあれはヨンロク号ではなく11号棟の事件なので、おっしゃる通り今回はちょっと参考にならないかも知れないのが非常に残念です。
「ともあれ、挑ませてもらおうじゃねーの。令和のゴーストタウン!」
そう意気込む圭一の横で、静かに、しかし決然と『ヨンロク号』を見つめる乙女が一人。
「懐かしい場所ですね、ここも」
かつて銀誓館学園の精鋭たちの一人として最前線を駆け抜け、猟兵として覚醒した今なお精力的に活動する、儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)。
「一緒に巡った方々は、今どうしているでしょう?」
本当に、どうしているのだろう。
消息が掴めぬものの方が多い中、こうして銀の雨降る時代を駆け抜けた仲間たちと再びこの地にやってこれたことを、運命と思うべきか。
「――その思い出を守るためにも、一肌脱がせていただきます」
芽亜のその言葉が合図となり、一行は『ヨンロク号』へと突入する――!
最初に芽亜が、小脇に抱えた竪琴を皆に示して、ユーベルコード【主に向かいて新しき歌をうたえ(カンターテ・ドミノ・カンティクム・ノウム)】による偵察の支援を買って出た。
清らかなソプラノの聖歌が響けば、抵抗こそ可能とはいえ、基本的に百秒近くの間芽亜に対して万事友好的な行動を行わずにはいられない。
「それで、演奏してると、両手が塞がるんですよね」
「ああ、でしたら私がマッピングを務めましょう」
そう立候補をしたのはムゲンだった。誘われてついていくばかりだったので何も覚えておらず、自身の記憶が頼りにならない――だが、それ故にマッパーの役割を買って出ることで、皆の役に立つことが出来ると考えたのだ。
着々と準備が進む中、圭一は咥えていた煙草の煙と共に何かを吹き出す――白燐蟲!
「暗がりは任しときな」
白燐蟲使いの十八番こと『白燐光』であっという間に廃墟の中に光が満ちる。
「どう、ちったァ探索しやすくなるじゃん?」
そう言いながら、圭一はさらに猟兵ならではの超常を繰り出す。
――【伽鎖燐】と書いて、「キャサリン」。このセンス、なかなかに好みです。
「怪しい箇所にゃ、コイツに先陣切ってもらうぜ」
普段は圭一の右目の中にいる白燐蟲「キャサリン」が、任されたとばかりに元気良く飛び回る中、アインはひとり目を閉じて集中していた。
(「『猟兵』になってから初めての依頼だ……どう変わったかとか、確認しながら行こか」)
ムゲンだけでなく、アインもまた、猟兵として戦に身を投じるのは初めてだった。
故に、初心に返り、油断なく進もうと決意する。
(「曲がり角で出会い頭とかやめて欲しいんで」)
それはものすごくやめて欲しいですね……。
(「一旦止まって先をキャサリンに確認してもらおう」)
上手に連携して、探索を進めれば、きっと上手くいくはず。
「では、参りましょう――」
芽亜の聖歌が響き渡るのが、はじまりの合図。
圭一が明かりを確保しながらキャサリンに斥候を務めさせ。
アインがおぼろげながら確かな記憶で障害物や壁に身を潜めながら慎重に動き。
ムゲンが周囲を警戒しながら発見した事柄を都度マッピングに落とし込み。
「芽亜の歌があっても、抵抗してくるヤツぁいるんだな!」
時折風流を解さない無粋なオブリビオンが迫って来れば、その位置はキャサリンから圭一へと即座に伝達され、雪女の本領発揮とばかりにアインの【さよならの指先】が炸裂する。
「あや、この程度の雑魚だったら、鉄扇で叩くだけでも良かったわ……」
猟兵としての戦いに、ちょっぴり勝手が掴めずつい本気を出してしまったと笑う。
「なるほど、では次に敵が出たら、私が【悪夢爆弾】を使ってみましょう」
何事も実践だと、ムゲンがそう名乗り出て、探索は順調に進んでいった。
三階まで、抜群のチームワークで順調に探索を進めてきた【庭園】の一行。
諸悪の根源は屋上にあり、と聞いてはいたが、確かにこう、言語化できない『嫌な気配』はどんどん強まっていく気がした。
(「此処のボスは屋上に居たんだったか……」)
その辺は変わっていないんだな、などとアインは考える。
(「雲っぽいのと、ロボっぽいリリスと、紙のドラゴンだっけか?」)
ギャーッ思わずゴーストカードで再確認しちゃう! そう、そうです! でも今回の事件の首謀者がそうとは限りませんぞ。お気を付け下さい。
そしてとある部屋の六畳間に足を踏み入れたところで、圭一がこんな提案をした。
「一応、この一眼レフカメラで写真撮っておくか?」
後々活かせる場面が出てくるかもしんねーし、と笑う圭一は少し面白がっているようにも見える。
さすがは撮り鉄、使い古された一眼レフカメラを構えて、皆の同意も待つのが惜しいとばかりに一枚パシャリ。
――きらっ。
「「「……」」」
フラッシュを反射する、何かがあった。
「……どうしました皆さん、まさか鏡でもありましたか?」
突然沈黙した男子三人の様子に異変を感じたか、歌唄いのお仕事を中断して芽亜が問う。
それに対して、こくこくと全力で頷く男子三人。
「落とし穴や吊り天井があっても怖くないつもりでしたが……この鏡は、やっぱり」
怖いですね、と芽亜は微笑んだ。
「『鏡の中の空間』とかあったっけなァ、やっぱり今もあんのか?」
「それは、流石に調べてみないと……」
「待った、迂闊に調べるとヤバいのだけはビシビシ感じる」
しばし、沈黙が下りた。
そして、結論が出た。
――がっしゃぁん!!!
「特殊空間に引きずり込まれるのは、いつの時代も、ヤバい!」
ということで、鏡に関しては『割っちゃう』ことにした庭園一行。
これで少なくとも、この先の戦闘で鏡の罠に嵌まることはないだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
木常野・都月
【KOR】◎
こーだんじゅーたく…
昔ここに人が大勢住んで、今はお化けとゴーストが住んでるのか。
まずは調査か。
皆で歩いて回りましょうか!
俺は…狐の姿で調査しようかな。
必要があれば妖狐に戻るけど、狐の姿の方が、聴覚や匂いも拾いやすいから。
シホさんのいう通り、狭い所も潜りやすいし手がかりが見つけやすいかも。
それに[野生の勘、第六感]も活かせるかもしれない。
あとは風とコンクリート…地の精霊様に頼んで[情報収集]だ。
チィも頼む!
シホさんの連れてるのは…精霊様?
潜霊?
お化けか…(興味深々)
手袋…なら前足につけられるかも?
(それっぽくポーズ)
コヤッ!?
サクラコさん、ここ罠ですか!?
精霊様、罠を破壊して下さい!
シホ・エーデルワイス
【KOR】
◎
ええ
人が住んでいたとはいえ
オブリビオンの巣窟になっているのなら
ダンジョンだと思って挑んだ方が良いでしょうね
サクラコさんは来た事があるのですね
特殊空間に引きずり込まれると聞きましたが
落とし穴などから入る隠し部屋の様な物でしょうか?
分断されると厄介ですね
幽兵さんのスプレー作戦良いと思います
ダンジョンで迷わない様
目印を付けるのは常套手段ですから
【潜霊】の『詩帆』が電話線を介し
各部屋の偵察と索敵
また
フロア図も情報収集して書き出し
仲間に伝える
私は第六感と聞き耳で警戒し
『聖剣』で罠をこじ開けて救助活動し
『聖銃』で援護射撃
都月さんの狐の姿なら狭い所も入れそうですね
詩帆「どちらかと言うと幽霊です」
鏡彌・サクラコ
【KOR】◎
おやさとるさまお久しぶりでいす
積もる話はまた後ほど
今回はまた懐かしい舞台ですねい
ヨンロク号のことならお任せくださいませ
ふふふ目を瞑っても走破してみせますとも
道案内は任されましたので
みなさま道中出てくるやつはやっつけてくださいませ!
などと調子こいて先行して
見知らぬトラバサミに捕まるサクラコ
ぎゃー!なんででいす?!
シホさまありがとうございますーさすがお強い
むー若干配置が変わっている様子
反省して慎重に参りましょう!
都月さま
はい!そこ罠でいす
あれ?ありませんかねい?
シホさま
そうそう外見と内部で構造が違うので注意ですねい
幽兵おじさん
踊ってると足を踏み外しますよ!
花屋敷・幽兵
【KOR】
◎・
ほう、ヨンロク号か…高度成長時代の公団住宅がモデルになった…アレだな。
朽ち果てた全時代の遺物…俺をおじさんと呼ぶな!おっと取り乱した。
ぴちぴちに若いサクラコと都月とシホと。俺のハーレム集団でこいつを調査だな。
新調に捜査か…スプレーで落書きとかしたら不味いかな?どう思うシホ。「幽兵参上!」…と。
手袋と虫眼鏡で雰囲気を出していくぞ都月。チー。
サクラコ!合わせていくぞ!髭ダンスで闊歩するぞ!トラバサミのアトラクションか。楽しそうだな。
御ふざけはここまでにして…罠とかありそうだから気を付けていくか。
何か出てきたらやっちまおう。そうだろシホさん。
あの盛りの凄いさとるちゃんの名に懸けて!
●うさぎ団のドタバタ珍道中
――おや、さとるさまお久しぶりでいす。積もる話はまた後ほど。
――え? えええ!? サクラコさんって、あのサクラコさん!?
シルバーレインという世界が発見されてから、旧き友との再会を果たす者もちらほらと見受けられる。ここに、再び繋がる運命の糸がまたひとつ――。
「こーだんじゅーたく……」
木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が、見慣れぬ廃墟を見上げて呟く。
「昔ここに人が大勢住んで、今はお化けとゴーストが住んでるのか」
正確に言えば、お化けとゴーストが住んでいたのも今は昔、現在この『ヨンロク号』に巣くうのは無粋なるオブリビオンである。
「ええ、人が住んでいたとはいえオブリビオンの巣窟になっているのなら」
シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が都月の隣に立ち、同じく見上げる。
「――ダンジョンだと思って、挑んだ方が良いでしょうね」
そう言って気を引き締める二人の横で、やや騒がしい二人組の姿が。
「ほう、ヨンロク号か……高度成長時代の公団住宅がモデルになった……アレだな」
「モデルルームじゃなくて実物でいすよ、幽兵おじさん」
「朽ち果てた前時代の遺物……俺をおじさんと呼ぶな!」
おっと、取り乱したな。二人の正体は何らかの形で銀の雨降る時代を識る花屋敷・幽兵(粗忽なダークヒーロー・f20301)と鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)。
「ぴちぴちに若いサクラコと都月とシホと、俺のハーレム集団でこいつを調査だな!」
「はいはい、今回はまた懐かしい舞台ですねい」
今回のパーティの中では肉体年齢で言えば間違いなく最年長の幽兵がご機嫌で先陣を切ろうとするのを、すかさずサクラコがインターセプト。
「ヨンロク号のことならお任せくださいませ、ふふふ目を瞑っても踏破してみせますとも」
という訳で、経験者と書いてベテランと読むサクラコが真のトップバッターとなる。
「道案内は任されましたので、みなさま道中出てくるやつはやっつけてくださいませ!」
うおおおお!
どどどどど!
サクラコが、それに続いて幽兵が意気揚々と『ヨンロク号』へと乗り込んでいく。
「サクラコさんは、来た事があるのですね」
「まずは調査か、皆で歩いて回りましょうか……って二人ともー!?」
真面目な顔つきを崩さずにシホが頼もしげにその背中を見送る一方で、四人揃ってゆっくり探索と思っていた都月は尻尾をふくらませて慌てる。
(「『特殊空間に引きずり込まれる』と聞きましたが、落とし穴などから入る隠し部屋の様な物でしょうか?」)
実際に経験したことのないシホは、特殊空間について自分なりの予想を立てる。
(「……分断されると厄介ですね」)
未知の出来事に対して慎重に推測を重ね、対策を練っておくのは大事なことだ。
わあわあと元気よく先行した元・能力者二人の後を、注意深く追って廃墟へと入る。
「俺は……狐の姿で調査しようかな」
都月が、シホにそう提案する。
「必要があれば妖狐に戻るけど、狐の姿の方が、聴覚や匂いも拾いやすいから」
それを聞いたシホは、ここに来て初めて柔らかな笑顔を見せた。
「ええ、都月さんの狐の姿なら、狭い所も入れそうですね」
「コヤッ!」
賛同を得られた都月は、早速ギンギツネの姿に変身してシホの足元に寄り添う。
「では、私たちも行きましょう」
そうして、残り二人も『公団住宅ヨンロク号』の中へと吸い込まれていった。
「ぎゃーーーーー!!! なんででいすーーーーー!!?」
慎重さとは程遠い、サクラコの絶叫が廃墟の中に響き渡った。
何だ何だとシホと都月(きつねのすがた)が駆けつけると、そこにはトラバサミに脚を挟まれた哀れなサクラコの姿が!
「こんな罠、昔はなかったでいす!」
「トラバサミのアトラクションか、楽しそうだな」
ぴいぴい泣いて「こんなはずじゃなかった」思いをぶちまけるサクラコに、幽兵は助けるでもなく呑気に眺めるばかり。ひどない?
「サクラコさん、今助けます!」
シホが迷わず聖剣「パッシモン(Persimmon)_甲WP」を抜き放ち、サクラコの脚にがっちり喰らい付いたトラバサミの罠をこじ開け、サクラコを救出した。
「シホさまありがとうございますー、さすがお強い」
「いえ……でもサクラコさんの知識が通用しない環境になってしまったのですね」
あいたたた、と足首をさすりながらサクラコが謝意を告げれば、シホは油断ならない現状を即座に把握する。
「むー、若干配置が変わっている様子。反省して慎重に参りましょう!」
サクラコがむん、と気持ちを入れ替えたところで、幽兵がシホに話しかけた。
「慎重に調査か……スプレーで落書きとかしたら不味いかな? どう思うシホ」
それにふむ、と少しばかり考え込んだシホは、やがて真面目にこう答えた。
「幽兵さんのスプレー作戦、良いと思います。ダンジョンで迷わない様、目印を付けるのは常套手段ですから」
「そうか、アリか! じゃあ……」
カシュカシュカシュ、とスプレー缶を振った幽兵が廃墟の壁に記したのは――。
『幽兵参上!』
シホとサクラコ、そして狐の姿をした都月が呆然と目印ならぬ落書きを見た。
そして、ご満悦な様子の幽兵を見た。
――ダメだ、自分たちが真面目にやらねば。
そう決意させるに十分な、ある意味士気を上げる落書きであったという。
(「風とコンクリート……地の精霊様に頼んで情報収集だ」)
自分自身の五感のみならず、精霊様の助力も活用して周囲の探索に精を出す都月。
(「チィも頼む!」)
「チィ!」
主の意を受けた月の精霊・チィも元気良く返事をして、探索に加わる。
「手袋と虫眼鏡で雰囲気を出して行くぞ、都月、チィ」
幽兵が探偵騎士でもないのにそれっぽい格好で都月の横に並ぶ。
(「手袋……なら、前脚につけられるかも?」)
いかんせん都月は狐の姿なので喋ることが出来ない、代わりにポーズだけ取った。
「サクラコ! 合わせていくぞ! 髭ダンスで闊歩するぞ!」
「幽兵おじさん、踊ってると足を踏み外しますよ!」
今度はサクラコに構ってもらおうと話を振るも、正論で返されてしまう幽兵おじさん。
「何か出てきたらやっちまおう、そうだろシホさん」
「はい、今偵察と索敵を開始しますね」
そう答えたシホは、スマートフォンを取り出し、画面に向かって『話しかけた』。
――詩帆、お願いできますか?
――うん……やってみる……その代わり……。
――ええ、黄身ボーロね。
――うん! 頑張る!
かくしてシホのユーベルコード【【潜霊】情報の海を泳ぐ電子幽霊〔薄雪詩帆〕(センレイ・サイバーゴースト・ウスユキシホ)】が発動し、情報の海を自在に移動し情報収集ができる『潜霊』の『詩帆』が廃墟の居間に残された電話線に潜り込む。
別の棟では当時の最先端機器としてファックスが配置されていたが、これは逆に敵の支配下に置かれてしまっていたので、それを逃れた『ヨンロク号』で発動したのはギリギリ成功だったと言える。
「……フロアマップも、この調子ならじきに完成しそうです」
手際良く探索を行うシホの様子を見た都月が、興味津々に近づいていく。
(「シホさんの連れてるのは……精霊様?」)
都月の様子に何か察するものがあったのか、シホは「潜霊ですよ」と告げた。
(「『潜霊』? お化け、か……?」)
都月の脳内が完全に読まれているのか、電話線からニュッと詩帆が顔を出す。
『どちらかと言うと、幽霊です』
「ピャッ!?」
都月の尻尾が、再びぶわっとなった。
「サクラコさん、見た目と出来上がった地図とでだいぶ齟齬があるのですが……」
「そうそう、外見と内部で構造が違うので注意ですねい」
シホが若干の困惑と共にマッピングの成果をサクラコに見せれば、ゴーストタウンとは昔からそういうものだったと「これが正常だ」ということを告げるサクラコ。
「という訳で都月さま! はい! そこ罠です!」
「コヤッ!?(サクラコさん、ここ罠ですか!?)」
突然足元近くを指さされた都月は面食らって、尻尾をぶんぶん振って精霊様を呼ぶ。
(「精霊様、罠を破壊して下さい!」)
「援護します!」
シホも二挺の『聖銃』で援護射撃!
……。
……。
「あれ? ありませんかねい?」
ボコボコにされた古びたタンスからは、何も飛び出して来なかった。
何もないならそれに越したことはないのだが――。
「おふざけはここまでにして……まだまだ罠とかありそうだから気を付けていくか」
幽兵が今日イチのキメ顔で、シホ作成のマップを確認しながら言った。
「あの、盛りの凄いさとるちゃんの名に懸けて!」
訳の分からないこと言ってないで真面目にやろうね、幽兵おじさん!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レモン・セノサキ
あー……、コッチだとゴーストタウンの儘なのね。
出来れば綺麗に整地されて、想い出と共に眠ってて欲しかったなぁ。
ま、今も在るなら此処は私たち"能力者"の出番だな。
どれどれ、郵便受けに鍵とか入ってないかなー?
【乱符・複製偽身符】の偽者達に先行させて偵察
全員、光学▲迷彩を駆使したり▲闇に紛れながら▲忍び足だ
特殊空間が残ってないかと、後はそうだな
あれから大分時を経てるだろうし、昔のルートの足場が
健在かどうかも調べといて。
いいか、音を立てるなよ。……"フリ"じゃないぞ!
なぁんて、私が音立てたら世話無いな?テヘ★
ひーん、DEAD or ALIVEの時間だチクショウ!
……敵の顔ぶれに異変が無いか、も見とくかな
●DAYDREAM
レモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)もまた、形は少々変則的ながらも、かつて足しげく通ったゴーストタウンに舞い戻った元・能力者の一人である。
「あー……」
苦笑いで見上げるその先には、今なお静かにそびえ立つ『公団住宅ヨンロク号』。
「『コッチ』だと、ゴーストタウンの儘なのね」
黒髪をくしゃり、ひとつかき上げて、レモンはため息まじりに言葉を紡ぐ。
「出来れば綺麗に整地されて、想い出と共に眠ってて欲しかったなぁ」
そう。久々のゴーストタウン探索ということで盛り上がる元・能力者たちも多いけれど、本来はレモンのこの願い通り、廃墟という不名誉から解放されるべきなのだろう。
「ま、今も在るなら此処は私たち『能力者』の出番だな」
そう言って、レモンもまた『ヨンロク号』の玄関から堂々と足を踏み入れていく。
「どれどれ、郵便受けに鍵とか入ってないかなー?」
エントランスホール、入ってすぐ左側に設置された郵便受けを覗くレモン。
――二階倉庫の鍵は、どこにも入っていなかった。
「さて、と……」
これまでも複数の猟兵たちが取ってきた探索手段として『偵察機に相当する存在を先行させて情報収集をする』ものがあったが、レモンもまた同様の手段を取る。
「集えよニセモノ――物量戦だ」
発動するは【乱符・複製偽身符(ギシン・カミヤドリ)】、百体を超える自身の分身を生じせしめる超常である。一撃で消滅しちゃうけど、故に物量戦なのだ。
この『ニセモノ』たちに先行させて偵察を行うことにした。
全員、高度な技術で施された光学迷彩を駆使したり、闇に紛れながら忍び足。
「特殊空間が残ってないかと、後はそうだな……」
地縛霊化オブリビオンが万が一特殊空間をいまだに駆使するようであれば、非常に厄介だ。無駄な消耗を強いられ、目的地への遠回りにしかならない。
「あれから大分時を経てるだろうし、昔のルートの足場が健在かどうかも調べといて」
玄関のドアが開かなければベランダ経由で先に進む、なんていうこともあった。
もしも、かつて通れたベランダに大穴でも開いていたら――?
万全を期して、あらゆる可能性を予想し、分身体たちに探索をさせるレモン。
「いいか、音を立てるなよ」
「「「……」」」
「……『フリ』じゃないぞ!」
――がっ、たん!!!
アーッ大きな音しちゃった! 誰!? どの分身体がやらかしたの!?
「なぁんて、私が音立てたら世話無いな? テヘ★」
レモンさんでしたー!! これはテヘペロ案件!!
『……!』
かつてその見た目のおっかなさで、幾多の能力者たちを泣かせてきた鬼火魂さんだ!
「ひーん、DEAD or ALIVEの時間だチクショウ!」
はいBGMスタート!
今にして思えばめっちゃスタイリッシュなバトルBGMでしたね!
(「敵の顔ぶれに異変は……今の所、無いか」)
この先待ち受ける敵はいまだ見えずとも、少なくとも下層に湧く雑魚どもはかつて見た連中と同じと思って良さそうだ。
さあ、張り切ってバトりましょう!
成功
🔵🔵🔴
クーナ・セラフィン
へぇ、何か奇妙な感じのする場所だね。
ゴーストタウンってどこもこんな感じの雰囲気だったのかな。
話に聞く限りでは色々仕掛けがあったりしてたらしいけど…私が来るのは初めて。
だから慎重に探索するかにゃー。
怪しそうなものには興味津々。
見るからに惨劇があった痕跡とかなーんかありそうだよねー。
まあ迂闊に触ったりはしないけども。
呪われたら笑い話にもならないしね。信じてはないけども。
それはさておいてベランダの方も怪しい気がするね。
…ここ垂直にショートカット出来ない?
上見上げたら…何かゴースト降ってきた!?
うーむやっぱり地道に進めって事だよねこれ。
UCで翻弄しつつ撃破して探索再開とするかな。
※アドリブ絡み等お任せ
荒谷・つかさ
まずは探索して情報収集か……面倒ね。
いっそ建物ごとこう、整地したらサッパリするんじゃないかしら。ダメ?
(この女、素手で建物解体する気満々である)
……まあ、そうよね。仕方ないか。
とはいえ探索が得意な訳でもないので、マッピングや探知等は仲間に任せる
私がするのは兎にも角にも戦闘と破壊
持ち前の「怪力」を生かした近接戦闘で並み居る敵をぶち転がし、味方が探索に専念できるよう護衛する
罠も物理的に壊せば何とかなるものなら私が殴り壊す
ユーベルコードは使わず、対多数戦闘訓練のつもりで消耗を抑えながら戦う
ちょーっと建物壊しちゃったけど、問題無いわよね……多分……
●破壊と創造の幾何学模様
「へぇ、何か奇妙な感じのする場所だね」
そびえ立つ『公団住宅ヨンロク号』を、既に探索のために突入していった他の猟兵たちと同じように見上げて、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)が興味深げに呟いた。
「ゴーストタウンって、どこもこんな感じの雰囲気だったのかな」
特に、過去に日本中に点在していたというゴーストタウンを探索した経験のある銀誓館学園の関係者からは、様々な噂を聞くことができたものだ。
「話に聞く限りでは色々仕掛けがあったりしてたらしいけど……私が来るのは初めて」
噂は噂、真に頼りになるのはやはり己の目で確認したものに限る。
「だから慎重に探索するかにゃー」
そう言って気を引き締めて、クーナがいざ『ヨンロク号』へと思った時だった。
「まずは探索して情報収集か……面倒ね」
物騒な台詞にクーナがギョッとして振り向くと、そこには仁王立ちになった荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)の姿があった。
「いっそ建物ごと、こう、整地したらサッパリするんじゃないかしら」
――この女羅刹、素手で建物を解体する気満々である!
「ダメ?」
「小首傾げて可愛く聞いてもダメだニャー」
さすがにそれは、という顔でクーナが首を振れば、つかさは割とあっさり引き下がる。
「……まあ、そうよね。仕方ないか」
「大人しく、地道に探索しとこう?」
という訳で、成り行きで、クーナとつかさの廃墟探索が始まったのだった。
怪しそうなものには興味津々なクーナは、エントランスホールを入ってすぐからしてもう辺りをキョロキョロしまくってお目々をキラキラさせている。
一方のつかさは、指をバキボキ鳴らして完全に臨戦態勢だった。
「とはいえ、探索が得意な訳でもないので、マッピングや探知は任せていいかしら」
「キミ、割とマジで解体屋さんするつもりで来たの!?」
再びつかさを振り返り、意図を問うクーナ。
それにつかさは大真面目にこう答えた。
「私がするのは、兎にも角にも『戦闘』と『破壊』よ」
持ち前の、たったひとつにして最大最強の武器――『怪力』を活かした近接戦闘で、並み居る敵をぶち転がし、クーナが探索に専念できるよう護衛すること。
これこそが、今のつかさの存在意義。
こうまでも、大真面目に宣言されてしまってはお手上げだ。
「……わかった、敵は任せるニャー」
後顧の憂いなく、存分に探索が出来るというのは、悪い話ではない。
万が一雑魚敵が湧こうものなら、それこそワンパンしてもらおう。
「見るからに惨劇があった痕跡とか、なーんかありそうだよねー」
玄関のドアが半壊しているとある一室に足を踏み入れながら、クーナは居間の畳に残った血痕と思しきどす黒いシミを見て、心なしかウキウキで付近を入念に調べる。
(「まあ、迂闊に触ったりはしないけども」)
信じる信じないは別として、うっかり本当に呪われたら、全然笑い話にもならない。
時折、背後でどったんばったん聞こえるのは、きっとつかさが廊下で地縛霊化オブリビオン相手に大暴れしている音だろう。
(「ユーベルコードは使わず、対多数戦闘訓練のつもりで、消耗を抑えながら戦う……」)
つかさはつかさなりに、いい活躍をしていた。
据え付けの消火器が実は罠のトリガーになっていたのだが、それをぶん回して敵ごと粉砕したものだから、中身まみれになる代償と引き換えに罠の破壊にも成功していた。
そんなドタバタを尻目に、クーナが次に興味を向けたのは、ベランダの方だった。
「……ここ、垂直にショートカット出来ない?」
もしそれが可能であれば、罠に怯えることもなく、最低限のリスクで上階を目指せる。
そんな目論見でクーナが上を見上げると――。
「何かゴースト降ってきた!?」
『シャアアアア!』
「うーむ、やっぱり地道に進めって事だよね、これ」
何事もそうそう楽はさせてもらえないな、と。
かつてゾンビ労働者と呼ばれていた過去の残滓を連続跳躍で翻弄し、「ヴァン・フルール」の一撃で撃破。
初心に返って、地道な探索を心がけることにしたクーナさんだった。
「ちょーっと建物壊しちゃったけど、問題無いわよね……多分……」
一方その頃『うっかり』で壁に穴を開けてしまったつかささん。
敵の方も結構軽率に壁ぶち破って登場したりするので、大丈夫だと思いますよ!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『猫女』
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POW : キャットスクラッチ
【猫の爪】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : キャットクロー・ナインデス
自身の【猫の瞳】が輝く間、【猫爪でのひっかき攻撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : キャットミュージカル
【猫っぽい歌と踊り】を披露した指定の全対象に【敵対したくないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:つむら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●第二の試練
令和の世に再びゴーストタウンとして蘇ろうとしている『公団住宅ヨンロク号』を探索する猟兵たち。
ある者は罠を解除し、またある者は利用できそうな地形を調査し、来たるべき時へと備えていた。
『ニャニャッ! 飛んで火に入る夏の虫の気配だニャ!』
一方、オブリビオン側もただ猟兵たちの好きにはさせて置かない。
一撃で屠れる雑魚共はほんの前座に過ぎず、真に立ちはだかるは『猫女』。
かつては『リリス』にカテゴライズされていた、今は過去の残滓――オブリビオン。
けれども緊張感はまるでなく、踊るように無邪気に猟兵たちの前へと飛び出してくる。
『この恐るべきゴーストタウンで、ニャンたちの爪の餌食となるがいいニャ!』
一見愛らしい見た目も相まって、気が抜けそうになる者も居るやも知れず。
しかし油断めされるな、ここは恐怖のゴーストタウン。
猫女だけでなく、周囲の迷宮化やトラップに重々気を付けて戦って欲しい!
●補足
第1章のプレイングとリプレイから、トラップを利用したプレイングをかけることが可能となっております。
個人参加の方は一人ひとつ、団体参加の方々は一組でひとつ、トラップとそれを利用した『戦闘に有利になるようなプレイング』をかけられます。
逆に、第1章で破壊しておいたから難を逃れた、という行動指定も可能です。
有効と判定されれば、プレイングボーナスとして描写致します。
もちろん、無理に組み込もうとしなくても全然大丈夫です。普通に判定します。
ややこしいと感じたら普通に戦ってオッケー、ということです。よろしくお願いします!
暗都・魎夜
spd
【マオ/f36169】
【心情】
元は外見で油断させて、近寄ったところでガブリと来るタイプだがやり口は同じか
それなら…お互い、油断はなさそうだな(マオの様子を見て)
【利用する罠】
『締めきると暗闇になる部屋』
【戦闘】
作った地図をもとに『締めきると暗闇になる部屋』に向かって誘き寄せて逃走
割と俺、GTだとこの戦法取ってるな
暗闇に引き込んで「暗視」「闇に紛れる」「地形の利用」を用いて、「魔力溜め」「リミッター解除」ヴァンパイアストームでなぎ払う
「可愛い女の子に追われるのは嬉しいが、生憎とこちとら既婚者でね」
「後は任せたぜ、マオ!」
しかしこの建物、FAX見かけると言い知れぬ不安に襲われるな
マオ・イェンフー
魎夜(f35256)と参加
▼心情
だな。しかしリリス共か‥本当に元通りのまんま出てくるんだな。
夏の虫はどっちか教えてやるとするか。
▼戦闘
猫女の一団を魎夜の見つけた暗闇になる部屋におびき寄せる
「魎夜、さっきの場所にいくぞ!」
マオは部屋の出入り口付近にUC【シルフィード・クローク】で隠れ
魎夜が攻撃して出口に逃げ込む猫娘を体で通せんぼ
暗闇に慣れてきた目で「暗視」して同UCでなぎ払い
撃ちもらしは二丁の詠唱銃で「2回攻撃、クイックドロウ」で撃つ抜く
「応よ!逃がさねェぜリリス共ッ!これでも喰らえ!」
●地の利を活かすのはどっちだ
ニャンニャカかしましいリリス――化オブリビオン、猫女たち。
その群れに、最初に対峙したのは暗都・魎夜とマオ・イェンフーの二人だった。
「元は外見で油断させて、近寄ったところでガブリ……と来るタイプだが」
魎夜が猫女たちを油断なく見据えながら、マオと並び立って身構える。
「今も、やり口は同じか」
「だな」
マオは愛用のサングラス越しに、同じく猫女たちを睨めつける。
「しかし『リリス共』か……本当に元通りのまんま出てくるんだな」
そう言うと、一歩踏み出して驚くべき速さで二丁拳銃「黒双虎」を両手で抜き放つ!
黒いスーツの裾が翻り、マオの気合いを十分に示しているようでもあった。
「それなら……お互い、油断はなさそうだな」
そんなマオの様子を見て、魎夜もまた七支刀「滅びの業火」を握りしめる。
「ああ、夏の虫はどっちか――教えてやるとするか」
一瞬だけ交わる視線が、戦闘開始の合図だった。
『ああーっ!? このイケメンたち、逃げる気ニャ!』
そう、魎夜とマオはやおら踵を返して猫女たちに背中を向け、全力で走り出したのだ。
『あっはは、追いかけっこだニャ!? いいよいいよ~』
(「くそ、作戦とは言え気に障るぜ」)
(「少しだけの辛抱な、作戦通り行けばコッチのもんだ」)
リリスには私的にただならぬ因縁を持つマオが苦々しげに呟けば、なだめるように魎夜が先導するように駆ける。
二人はただやみくもに逃げ回っている訳ではない。あらかじめ作成した地図を頭の中に叩き込み、きちんとした目的地を目指してヨンロク号を駆け抜けているのだ。
階段をものすごい勢いで駆け下りたところで、マオが『わざとらしく』声を上げる。
「魎夜、さっきの場所へ行くぞ!」
それを聞いた猫女たちが、俄然色めき立つ。
『どこに行っても無駄だニャ! た~っぷりいたぶってから殺してやるニャ!』
耳障りな挑発にも負けず、魎夜とマオは目的地――探索の際に探しておいた『ある場所』へと駆ける、駆ける。
目指すは――二階倉庫!
「うおりゃあああああ!!!」
半ば飛び込むように魎夜が先陣切って転がり込んだのは、締めきると暗闇になると事前調査で判明済みの、そこそこの広さを持つ倉庫であった。
『『『ニャアアアアン!!!』』』
狡猾でありながら陽気で単純でもある猫女たちが、魎夜を追って倉庫内へ殺到する。
一団が倉庫に入ったのを確認して、入り口付近に【シルフィード・クローク】を使用して己の姿を隠し待機していたマオが最後に倉庫へと入り、ドアを閉め切った。
『ニャニャッ!? 見えニャい!!』
『まさか、ハメられた!?』
(「割と俺、ゴーストタウンだとこの戦法取ってるな」)
身体が覚えている、という所か。魎夜が、暗闇に己の身を溶け込ませながら目を凝らす。
暗視の技能に優れる魎夜は、猫の夜目にも負けやしない。
「可愛い女の子に追われるのは嬉しいが――」
ニャアニャアざわつく猫女たちの姿を、闇の中でも確かに捉え。
「生憎、こちとら既婚者でね」
暗闇の中でこそ最大の効果を発揮する超常【ヴァンパイアストーム】を発動させる!
『ニャニャアアアアア!!?』
『コウモリだニャ! ち、血ぃ吸われる!!』
闇の中で大混乱に陥る猫女たちだが、さすがは猫というべきか、若干視界はあるのか。
「後は任せたぜ、マオ!」
故に、魎夜は出口付近に身を潜める相棒へと呼びかける。
「応よ!」
気づいたものはいるだろうか。マオを不可視の存在にしているのが、竜巻だということに。風と共に在るもの――それこそが、シルフィード。その、本領発揮だった。
「逃がさねェぜリリス共ッ! これでも喰らえ!!」
魎夜に遅れること少し、ようやく闇に慣れてきた目で、出口へと殺到する猫女たちを見据える。
そして、竜巻を放って一網打尽!
『『『ギニャアアアアーーーっ!!!』』』
散々吸血を受けて満身創痍の猫女たちを、容赦なく暴風が翻弄する。
それでも難を逃れたとばかりに抜け出そうとする個体がいれば、マオがそれを見逃すはずもなく、目線をくれてやるまでもなく二丁拳銃で脳天と忌まわしいヘビを撃ち抜いた。
「……成功、だな」
「ああ、良い気分だ」
自分たちを追ってきた猫女たちの一団を文字通り一掃して、魎夜とマオが拳を合わせる。
(「しかしこの建物、FAX見かけると言い知れぬ不安に襲われるな」)
そう、『ヨンロク号』とはまた別の棟でも、死闘があったことを覚えている能力者は多い。もしかしたら、電送世界での戦いもまた、再現されるやも知れない――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アイン・ヴァールハイト
【庭園】◎
明かりの代わりにウチの白燐蟲に光って貰う
……本格戦闘につき、確認事項を確認する
敵陣形が崩れたところで重量攻撃で閉じた鉄扇で殴る
引っ掻きは開いた鉄扇で受け流し
触れれば凍らせられる。
そのまま握り潰すか鉄扇で殴って腕を砕く…腕千切れたら、流石に引っ掻けないだろう?
それともオブリビオンは腕生えるのか?
あぁ、足の爪でも引っ掻けるか?なら足も凍らせよう
オブリビオンはどこまで凍らせたら死ぬのか
本音。
猫は好きだが、猫の真似はいらん
彼女が猫耳付けて語尾に「にゃ」付けてたら色々思う所けど
仕事女でもないどこの誰だか知らん女がしたところでかわいいもクソもないわ!
ただの変態女やんか!ドン引くわ!!
儀水・芽亜
【庭園】◎
やっと本気を出せる相手が来たようです。
白馬のナイトメアを召喚して、「騎乗突撃」といきましょう。
蹄で「蹂躙」しつつ、アリスランスで「貫通攻撃」と「ランスチャージ」。
猫女のひっかきは上手く「受け流し」て。
私の役割は、前衛として暴れ回り敵の群をかき乱すことです。指揮を執るような個体は、真っ先にランスの穂先で貫きたいですね。
さて、敵の陣形を崩壊させることが出来たら、残敵掃討を皆さんお願いします。
私は一旦敵陣を突破して、背後から圧力をかけ敵集団を皆さんの間合いの方へ追い込んでいきます。
いわゆる「鎚と金床」戦術です。敵が立ち直る前に、皆さんの全力攻撃をお願いします。
この場は何とか終わりましたか?
ムゲン・ワールド
【庭園】◎
事前に鏡を割っているエリアで戦闘します。
(現れた相手はリリスか。リリスっていうのは可愛くてどうにも苦手だ。可愛い女性を攻撃するのはどうしても気が引けてしまうからな)
とはいえそれで痛い目を見たこともあるので、敵である以上手は抜きません。
【サイコフィールド】を展開し、味方を援護します。悪夢から現れる怪物で敵の気を惹き味方が安全に攻撃出来る隙を作り、もし味方が攻撃を受けても、優しい夢が味方を癒します。
敵が怪物と他の味方に意識を奪われてくれればチャンス。仕込み杖で「不意打ち」を試みます。
「本物のゴーストではないらしいが、安らかに眠ってくれ」
あくまで自己満足の祈りです。
●ニャンニャンじゃねえんだよ
日が傾き始め、薄暗さが目立つようになってきた公団住宅の居間には、旅団「銀の雨降る庭園」の三人がオブリビオンの出現を察知して簡易的な作戦会議をしていた。
戦闘の舞台に選ぶのはここ、あらかじめ鏡を割り特殊空間への対策を取った居間。
灯りのおぼつかなさは、アイン・ヴァールハイトの白燐蟲の輝きで補う。
(「現れる相手はリリスか」)
ムゲン・ワールドはううむと難しい顔で思案する。
(「リリスっていうのは、可愛くてどうにも苦手だ。可愛い女性を攻撃するのは、どうしても気が引けてしまうからな」)
たとえかつてそれで痛い目を見たことがあったとしても、そう考えずにはいられない。
けれども敵である以上手は抜くまいと、いつ接敵しても良いように身構えるムゲン。
「やっと、本気を出せる相手が来たようです」
ニャアニャアとかしましい声を遠くに聞き、儀水・芽亜が不敵に笑う。
『ニンゲンの気配がするニャー!』
『可愛がってやるから覚悟するニャー!』
玄関からドカドカと、猫女たちが上がり込んでくる。
「では、手筈通りに。私が白馬のナイトメアで敵陣に突っ込み攪乱しますので、お二人はその隙に一斉攻撃を……」
「では、私は皆さんの援護をします」
「「え?」」
芽亜が作戦の確認をした所で、ギリギリになって作戦の齟齬が判明した。主に芽亜とムゲンとの認識がズレていたようで、芽亜とアインが思わず変な声を上げてしまう。
だが、既に敵は眼前に迫っている。こういう時こそ臨機応変に動かねば。
「……分かりました、では援護を受けてから突撃します」
そう言って芽亜が一歩退くと、入れ替わりにムゲンが猫女たちの前に立ち塞がる。
「さぁ、見るがいい。これが俺の、甘く苦しい悪夢の世界だ」
今はユーベルコードという超常として発動する【サイコフィールド】は、戦場全体に幻夢を発生させる。
『ニ゛ャー!?』
『怪物だニャ! 怖いニャァー!!』
敵は悪夢より出でし恐るべき怪物に襲われ、味方は甘く優しい心地良い夢を見る。
「効いていますね、では改めて参りましょう」
次は芽亜が、【ナイトメアライド】で純白の白馬型来訪者『ナイトメア』を召喚し、ひらりとその背にまたがる。
(「私の役割は、前衛として暴れ回り、敵の群をかき乱すことです」)
悪夢に囚われ恐慌状態に陥った猫女たちの群れ目掛けて、迷うことなく騎乗突撃!
強靱な蹄で蹂躙しながら、馬上から鴇色のアリスランスで手近な個体を貫いていく。
『みんニャ、落ち着くニャ! これは幻……ッ』
「あなたのような指揮官は、ことさら真っ先に斃しておきたいものです」
ランスの穂先で冷静さを取り戻した猫女の胸元を貫きながら、芽亜は冷静に呟く。
そのまま一度敵陣を突破して、芽亜は振り返り叫んだ。
「アインさん、残敵処理をお願いします!」
「任された!」
混乱を極めた猫女たち目掛けて、閉じた「武扇【血牡丹】」を構えて駆けていくアイン。
『ニャーッ!!』
やみくもに鋭い爪を振り回す猫女の引っ掻き攻撃を、素早く鉄扇を開いて受け流す。
そして空いた反対の手に超常の力を集める――【さよならの指先】、発動!
『ちべたいニャ!?』
「……凍れ、そして砕けろ」
冷え切って凍った指先は、触れたものから温度を奪って凍結に追い込む。
それに留まらず、アインは素早く鉄扇を閉じて凍った猫女の腕を殴り、砕き割った。
『あーん、ひどいニャア!』
「腕千切れたら、流石に引っ掻けないだろう?」
猫女の抗議の声に、アインは冷ややかに返す。
「それとも、オブリビオンは腕生えるのか?」
『ひっ……』
腕を失った個体のみならず、健在な個体も一緒に震え上がってしまう。
「あぁ、足の爪でも引っ掻けるか? なら足も凍らせよう」
『ひ、ひニャあああ!?』
『ダメニャ、逃げ場が……!』
そう、一度敵陣を突っ切った芽亜が反転して、背後から圧力をかけているのだ。
これにより猫女たちは結果的にアインやムゲンの間合いに追い込まれていた。
「いわゆる『鎚と金床』戦術です。敵が立ち直る前に、皆さんの全力攻撃をお願いします」
「良い機会だ、試してみよう。オブリビオンは、どこまで凍らせたら死ぬのか」
悲鳴を上げて逃げ惑う猫女たち。割と可哀想な絵面だった。
そんな中、ムゲンが長年愛用している仕込み杖をすらりと抜き放ち、猫女のひとりを音もなく屠る。
「本物のゴーストではないらしいが、安らかに眠ってくれ」
それは、あくまでも自己満足の祈りではあったけれど――。
「この場は何とか終わりましたか?」
「多分、大体片付けたと思う――んだが」
ナイトメアを送り還した芽亜が問えば、アインが難しい顔で口を開く。
「猫は好きだが、猫の真似はいらん」
「「え?」」
今度は、芽亜とムゲンが変な声を出す番だった。
「彼女が猫耳付けて語尾に『にゃ』付けてたら色々思う所やけど、仕事女でもないどこの誰だか知らん女がしたところでかわいいもクソもないわ!!」
いや、すまんて、今回の猫女のキャラ付けはこのシナリオ限定だから、大目に見てあげて欲しいニャン……。
「そういうとこやぞ!! ただの変態女やんか!! ドン引くわ!!」
「「……」」
思いの丈をぶちまけて、肩で息をして心身共に落ち着こうとするアイン。
芽亜とムゲンは、顔を見合わせてひとつ苦笑い。
さあ、いよいよこの先には諸悪の根源が待っている。
果たして、それと対峙した時、三人はどんな反応を見せるのか――?
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
流茶野・影郎
なんというか……オブリビオンになってもキャラブレないですねえ、この猫
とは言え、そろそろ本番と行きますか
「――イグニッション!」
新しい力、埒外の領域
どこまで行けるかやってみよう
それにしても数が多いな……で、確か階段のところにトラップが有るんだよな
よし!
『メキシカン忍法・疾風怒涛の歩み』
疾風に覆われ、姿を隠し先手を奪いつつ
出来るだけ沢山の相手に拳の連打を叩き込む
威力ではなく、当てることを優先したボクシングでいうジャブ
そして、こっちの技は相手の判断力を奪う
そんなわけでキリが良いところでUCは解除
階段のところで待ち受けて――ひょいっと避けるよ
後はトラップにハマってくれ
残った奴?
他のみんなに任せるよ
●シャドウ・ダンシング
「なんというか……オブリビオンになってもキャラブレないですねえ、この猫」
流茶野・影郎は眼前に立ちはだかる猫女たちのやかましさに苦笑いをしながら、胸元から何やらカードのようなものを取り出す。
「とは言え、そろそろ本番と行きますか」
カードを持った手を天高く掲げ――叫ぶ。
「イグニッション!!」
新しい力、埒外の領域。
能力者をも凌駕するという、猟兵としての力。
(「どこまで行けるか、やってみよう」)
『遊んでくれるのかニャ?』
『うんニャ、ニャンたちが遊んでやるんだニャン』
不穏なことを言う猫女たちを前にして、影郎は思案する。
(「それにしても数が多いな……」)
そして、背後に視線だけを向けて確認する。
(「で、階段のところにトラップが有るんだよな」)
――よし!
「行くぞ、【メキシカン忍法・疾風怒涛の歩み(メキシカンニンポウ・シュツルムウントドランク)】!」
澱んだ空気を吹き飛ばすように、一陣の風が吹き抜けた。
『あれ!? 猟兵が消えたニャ!』
『ホントだニャ、どこに……いたーい!!』
疾風に覆われ、姿を隠した影郎は敵から気取られないことを利用して先手を取り、混乱する猫女たちのボディに次々と、一方的に拳の連打を叩き込む!
威力ではなく、当てることを優先した、ボクシングで言うところの、ジャブ。
『ヤダー! どこから殴られてるのかわかんニャイ!』
『『『わかんニャイ!!』』』
混乱は、やがて思考停止につながる。
判断力を奪われた猫女たちは、とにかく現状が解決することだけを願う。
「――そんなわけで」
『あーーーっ、猟兵いたーーーっ!』
あらよっと、と身を翻して影郎が階段のてっぺんまで駆ければ、猫女たちはこれまでの恨み晴らさでかとばかりに影郎目掛けて殺到する。
「とうっ!」
そこで影郎が階段のてっぺんから階下まで、バク転で一気に着地する。
『逃がすかニャアー!』
「そうかい、ご自由に」
影郎を追って階段を律儀に下りる猫女たち。
その上に――何の前触れもなく、タンスや机や椅子などの家具がどかどかと落ちてきたではないか! 割と命に関わる系のトラップだこれー!?
『『『ギニャーーーーーーー!!!』』』
割と可哀想な悲鳴を背に、影郎はその場をクールに立ち去る。
「残った奴? 他のみんなに任せるよ」
成功
🔵🔵🔴
木常野・都月
【KOR】◎
猫女…つまり……猫?
猫女を捕まえる?
よし、俺は猫女を罠まで追い立てようか。
猫女は、多分なんとなく猫だ。
なら強い猫を出せば逃げるはず…はずだ。
幽兵さん…虎…ですか。
虎に…よし。
[化術]で虎に化けてしまえ。しかもビックサイズだ。
化術、練習したんだ。きっと出来るはず!
上手く化られるか分からないけど、まずは
「がおー!(ガブっとするぞー!)」
怖いだろう?怖いだろう?
え、シホさん…俺、可愛いですか?
可愛いは褒め言葉…きっと良い感じだな!
サクラコさんのライオン…迫力満点ですね…
ライオンと一緒に「がおー!(がばっとするぞー!)」ってしながら、猫女を追い立てよう。
上手く追い立てられますように!
鏡彌・サクラコ
【KOR】◎
むむ!敵はすばしっこいようでいす!
こんなこともあろうかと予め罠にかかっておきました
でかいトラバサミをどっこいしょ
これを仕掛けて敵の動きを止めましょう
力仕事は幽兵さまに任せました!
敵に合わせてこちらもネコ科を用意!
ライオンライドで勝負することにいたしましょう
都月さまの虎と並んで迫力満点!
って罠をどこに仕掛けてるんですかねい!
シホさまさんきゅでいす!
危うくもう一回踏むところでした
幽兵さま
死んでませんからっ
もうちょっと真面目にやってくださいませ!
猫女をうまく誘導できたらやっつけましょう!
ハクナキがすらりと日本刀を抜いて
さあやって…サクラコのセリフを取らないでくださいませ!
花屋敷・幽兵
【KOR】
◎猫娘か?良く分からんが結構エロイな。こちらはとっても健全だぜ。
都月が変身するのか…虎だ、お前は虎になるのだ!レッツゴー都月。
よし俺も行くぞ…そそくさとサクラコの前にトラバサミを仕掛ける。
あいつはいい奴だったよ。ひどない?いやひどくない(反語)
真面目にやらんとシホに映す価値無しにされてしまうのでスチームエンジンで強化して
猫娘に対峙する。退治する為に対峙(決め顔)槍で牽制し接近戦を避け、罠へ誘導していく。
真面目にやらんとウサギ団に死体が出来るからな。
ハクナキやっておしまい!見てろよ銀雨より大きくなったさとるさん。
気のせいだった。
俺の槍使いをみてくれ、こいつを……どう思う?
シホ・エーデルワイス
【KOR】
◎
猫女は妖獣ではない?…二種類も動物が混ざっているのに
どういう区分け方なのかしら?
幽兵さん?…成程…
確かにこの手の敵は健全な青少年にとって刺激的な青春になるでしょうね
トラバサミに誘導して動きが止まった所を集中砲火ですね
それなら聖剣をフェイントで【華霞】の花弁を舞わせて
敵の気が足元に行かないようおびき寄せ
掛かったらそのまま花弁を貫通攻撃させます
虎にライオン!何て迫力満点!
って!サクラコさん危ない!
『狐蔓』でサクラコさんのライオンさんごと優しく引き寄せて救助活動
幽~兵~さん…(←ジト目)
…熟練の槍捌きだと思います
都月さんの虎
怖いよりどこか可愛い感じがするのは
普段の彼を知っているからかしら
●信じて託したトラバサミが……!
旅団「Knights of Rabbit」の良心ことシホ・エーデルワイスは困惑していた。
「猫女は妖獣ではない? ……二種類も動物が混ざっているのに」
どういう区分けなのかしら? と愛らしく小首を傾げるシホ。強いて言うならかつてリリスに区分されたゴーストは、みんな快楽を吸い上げるための器官でもあるヘビを持っていた、という所だろうか。
現在オブリビオンとなった元ゴーストたちはその種族ごとの特徴が薄れている、というのは既に広く知られるところではあるが、この猫女に関してはかつての名残が強く残っている、ということなのだろう。
「猫娘か? 良く分からんが結構エロいな」
こちらは平常運転の花屋敷・幽兵、品定めをするように猫女たちを眺める。
それから己が引き連れる(?)頼もしい仲間たち三人を振り返り、
「こちらはとっても健全だぜ」
至極真っ当な感想を述べた。
「幽兵さん? ……成程……確かにこの手の敵は健全な青少年にとって刺激的な青春になるでしょうね」
真面目なシホは、そんな幽兵に律儀に付き合ってあげる。やさしい。
「猫女……つまり……猫?」
木常野・都月も、シホとはまた違った理由で首を傾げながら、猫女たちを見る。
「むむ! 敵はすばしっこいようでいす!」
そういうことだと、鏡彌・サクラコが身を乗り出してズバリ敵の特徴を指摘した。
「こんなこともあろうかと、予め罠にかかっておきました」
「「「ほんとぉ?」」」
あれは不慮の事故ではなかったのですか? という三人の視線もものともせずに、サクラコは不屈の精神で先程足を食われたでっかいトラバサミの罠をどっこいしょする。
「これを仕掛けて、敵の動きを止めましょう。力仕事は幽兵さまに任せました!」
「よし任せろ」
トラバサミを受け取った幽兵に運命を託し、残りの三人が罠に追い立てるために動き出す。
「猫女を捕まえる? よし、俺は猫女を罠まで追い立てようか」
都月は考える。猫女は、猫女というくらいだから、多分なんとなく猫だと。
(「なら、より強い猫を出せば逃げるはず……はずだ」)
そこで、トラバサミを持った幽兵が話しかけてくる。仕事はどうしたの。
「都月が変身するのか……虎だ、お前は虎になるのだ! レッツゴー都月!」
「幽兵さん……虎、ですか……」
幽兵本人は単純にノリと勢いだけで言ったのだろうが、サクラコにはきちんとした考えがあった。
「敵に合わせてこちらもネコ科を用意! 【ライオンライド】で勝負することにいたしましょう」
そうして都月に先立って、サクラコは巨大な黄金のライオンを召喚する!
「虎に……よし」
それを見た都月は意を決し、虎に変じる自分をイメージする。
(「『化術』で虎に化けてしまえ、しかもビッグサイズだ」)
するとどうだろう、都月の姿が徐々に膨らむように虎の姿へと変じていく。
(「化術、練習したんだ。きっと出来るはず!」)
――気づけば、都月は四つ脚で立つ虎へと完全に変身していた。
「虎にライオン! 何て迫力満点!」
シホが感嘆の声を上げ、サクラコも黄金のライオンに騎乗して虎都月に並ぶ。
(「よし……上手く化けられてるかどうか確認だ」)
「がおー!!(訳:ガブっとするぞー!)」
前脚を勢い良く上げて、咆える。
『『『ニャー! でっかいネコチャンだニャー!』』』
何となく、怖がられているというよりはウケているような気がするのは何故だろう。
「都月さんの虎、怖いよりどこか可愛い感じがするのは……」
普段の彼を知っているからかしら? なんて。シホはくすりと笑う。
「え、シホさん……俺、可愛いですか?」
虎の姿のまま、都月はキョトンとする。
(「可愛いは褒め言葉……きっと良い感じだな!」)
うん、そういうことにしておくのがきっと良い感じだろう。
(「サクラコさんのライオン……迫力満点ですね……」)
これは負けていられない、今度は黄金のライオンと一緒に息を合わせて――。
「がおー!!(訳:がばっとするぞー!)」
今度は背中の毛を逆立てて、咆えた。
『『『ニャ~~~ン、こわ~~~い』』』
大丈夫? これ完全にナメられてない?
「ほらほら、いつまで余裕ぶっていられますかねい!?」
見かねたサクラコが、黄金のライオンを駆って猫女たち目掛けて突っ込んでいく!
『『『ニャアアアアア!!! ライオンこわあああああい!!!』』』
今度はうって変わって猫女たちが逃げ惑い始めた。迫力が違いますもんね。
「よーし、このままトラバサミの所まで追い立て……ぎゃーっ!?」
猫女たちを追い回しながら、幽兵に信じて託したトラバサミまで誘導しようとしたサクラコが悲鳴を上げた。
何故なら。
トラバサミは、スッとサクラコの前に置かれたからだ――!
「って! サクラコさん危ない!!」
シホが咄嗟に「『狐蔓』アイビー(Ivy)の捕縛網_γPS」から捕縛網を射出して、サクラコをライオンごと優しく引き寄せて救助活動に励む。
「幽兵さん! 罠をどこに仕掛けてるんですかねい!!」
シホさまさんきゅでいす! と謝辞を述べながら怒るサクラコ。これは怒っていい。
「あいつはいい奴だったよ……」
「「「……」」」
それに対して全く反省の色が見られない幽兵に、三人からの冷ややかな視線が刺さる。
「ひどない? いやひどくない」
「幽兵さま、死んでませんからっ。もうちょっと真面目にやってくださいませ!」
そろそろ真面目にやらないと、主にシホから本気で制裁を喰らいかねないと、愛用の槍「ダイタク=ヘリオス」に蒸気エンジンを搭載し、破壊力を増加させた幽兵。
「猫娘に対峙する。退治する為に対峙する(キリッ)」
ツッコまないぞ、もうツッコまないぞ。
改めて真面目に設置したトラバサミに向けて、猫女たちを槍の長いリーチを活かして牽制しながら、徐々に誘導していく。
『ミギャッ!? 足を挟まれたニャ!!』
こんな見え見えの罠にも引っかかるのか……というのはさて置き、適切な場所に置かれたトラバサミは的確に仕事をし、猫女をガッチリ捕らえた。
「真面目にやらんとウサギ団に死体が出来るからな」
幽兵がようやく心を入れ替えたか、真面目な台詞を放つ。
「シホさん、俺の槍捌きを見てくれ。こいつを……どう思う?」
「……熟練の槍捌きだと思います」
真面目なシホからは、真面目な答えだけが返ってきた。
「では、やっつけましょう!」
「はい!」
サクラコはからくり人形「白名鬼(ハクナキ)」を巧みに操り、すらりと日本刀を抜かせる。シホもそれに合わせるように、聖なる剣を抜き放つと超常で刀身を銀に輝くエーデルワイスの花弁へと変じさせ、同時攻撃に備える。
「さあ、やって……」「ハクナキ、やっておしまい!!」「サクラコの台詞を取らないでくださいませ!!」
あーもうめちゃくちゃだよ。なお、猫女はシホさんが花弁で切り裂いてやっつけてくれました。
「見てろよ、銀雨より大きくなったさとるさん」
メタな話しますと、登場出来ないシーンでグリモア猟兵に話を振られても大変困るので、時と場所を選んで下さいませ、幽兵さん。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
山崎・圭一
×◎
そいえば泥田蟲って今の俺なら操れるのかな
それはともかく…
今更能力者がゴーストタウンを恐れると?
生命が1つも存在しないあの宇宙に比べりゃ、床がある時点で生温ィンだよ
体から出すは雪虫の白燐蟲
燐光で猫ちゃん達も誘ってやるよ。迷宮に
俺は【無我霧蟲】で姿をかき消してと…
無我夢中になって俺を見つけてみな
危うくなったら目に向けて『裁縫毒針』投擲
罠ありそうな箇所…撮影してたかな。一眼レフを確認
撮影した所と似た場所見たら白燐蟲で誘って敵ハメてみる?
どっちが火に飛び入る夏の虫だァ?
まだいンなぁ。面倒臭ェ
一瞬だけUC解除して姿見せンぞ
固まったままこっち来な。ムカデ型呪殺弾で囲ってやる
母ムカデが卵を守るようにな!
●道を究めし
団地内のあちこちで、戦闘音が聞こえてくる。
既に、複数の猟兵たちが猫女たちと交戦しているのだろう。
ここからは一人で行くと決めた山崎・圭一もまた、猫女の一群と接敵しようとしていた。
「そいえば泥田蟲って、今の俺なら操れるのかな」
圭一が自負するは、蟲に対しての絶対的なアドバンテージ。
恐らく、その気になればかの不気味な蟲も支配下に置けることだろう。
「それはともかく……」
圭一の気配を察知してか、猫女たちの騒がしい声が廊下の曲がり角から聞こえてくる。
「今更『能力者』がゴーストタウンを恐れると?」
――笑わせる。
「生命が一つも存在しないあの宇宙に比べりゃ、床がある時点で生温ィんだよ」
ディアボロスランサーと共に次の宇宙に旅立った経験からの、パワーワードだった。
『いたニャ! 一人だニャ!』
『囲んで袋叩きのネコパンチだニャン!』
――おうおう、騒がしいこって。
そう内心で呟くと、圭一は体内から雪虫型の白燐蟲『フレデリカ』たちを解き放つ。
(「燐光で猫ちゃん達も誘ってやるよ――迷宮に」)
『あっ、猟兵消えたニャ!』
『おっかしいニャア……?』
発動したのは超常【無我霧蟲(ムガムチュウ)】、フレデリカたちが巻き起こす氷霧により圭一本人の姿を不可視のものとするユーベルコード。
効果はてきめん、猫女たちは唯一視認できるフレデリカたちの煌めきだけを頼りに、ふらふらと周囲をさまようばかり。
(「『無我夢中』になって、俺を見つけてみな」)
ほら、気を逸らしてうっかり圭一に勘付きそうになった賢しい猫ちゃんは――。
『ミギャアアア!!』
猛毒の血が付いた「裁縫毒針」が、くりくりお目々にスマッシュヒット☆
そうして悠々と姿を隠しながらも、圭一は愛用の一眼レフカメラを確認する。
(「罠ありそうな箇所……撮影してたかな」)
液晶モニタに映し出された光景は、不自然なまでに傷んだ、ベランダへ続く畳。
(「――よし」)
ちょうどその、傷んだ畳がすぐそばにあるではないか。これを利用しない手はない。
白燐蟲をふわふわとそちらの方へ飛ばして、猫女たちを誘う動きをさせる。
さあ――どっちが火に飛び入る夏の虫だァ?
『『『ニャァーーーーーン!!!??』』』
ふらふらと無防備に白燐蟲の煌めきに惹かれた数体の猫女たちが、畳を踏み抜いて階下へと落下していく。
落ちた程度では死なないだろうけれど、当分ここまでは戻って来られまい。
「まだいンなぁ、面倒臭ェ」
『な、な、なんてひどいことをするんだニャ!』
仲間たちがあっという間に罠に嵌められたことに憤慨する猫女だが、これも立派な戦い方というもの。恨むなら恨むがいい。
勝ちを半ば確信した余裕か、圭一が一瞬だけユーベルコードの姿隠しを解いてその姿を晒す。そして、クイクイと片手で挑発的な手招きをした。
『『『むっぎゃー! 生意気ニャー!!』』』
そうそう。
固まったまま、こっち来な。
それは、母ムカデが卵を守るように、ムカデ型呪殺弾が迫り来る猫女の群れを囲う!
――後には、何も残らなかった。
稀代の蟲使い、山崎・圭一の圧勝であった。
大成功
🔵🔵🔵
御門・儚
【狸々亭】
神主(f35378)と一緒
アドリブは歓迎
なんだろね、GTは懐かしいんだけどここまで沢山出てくるとただのハロウィンパーティーに近い気もする。
それになんだか俺達以外の声も聞こえてるような…
皆GT好きだもんね~
ランキングとかもあったね~
【戦闘】罠を解除した場所まで誘き出して戦おうって思ってるよ
UC【送り梅雨】なら攻撃だけじゃなくて回復も出来るから使おうって思うんだよ。
猫女はね~…
猫耳生やしたら良いってもんじゃないって教えてあげないとね。
猫萌なら猫変身。さらに白地にピンクのトラ猫っ、つまり!
俺のっ!奥さんのっ!猫変身がっ!
1番可愛いっ!(4倍角)
魅了対策についてはヨンロクのガラス窓を引っ掻こうかと。
って、はわー!ガラスの引っ掻き音ヤダー!
神主!確りするんだよっ!
(三十路パンチという名の平手打ち)
布施・命
【狸々亭】
出るわ出るわ懐かしの相手が
加えて確かに、人の賑やかな声がする
わしも実際懐かしさで飛び込んだしなあ
今後も残るならまた最短……いや、無いな
わしらが安全を確認した空間まで誘導して、思いきり戦おう
技能「式神使い」で、武器の式鬼を使役
敵のけん制、歌や踊りの妨害を頼む
わしは常に戦場を動きながら符術「火蜂」の火球をマシンガンの如く相手に撃ち続ける
敵攻撃が猫っぽい歌と踊りならば、そんな暇は与えん!という狙いだ
それでも許した場合は、羽織で己の視界を遮る
踊りは見ない!歌は式鬼の妨害頼みだが、わしや儚が我を失うなら体当たりなり、ガラスを引っ掻いて目を覚ましてくれと予め式鬼に伝える
その際は恨みっこ無しな、儚
●団地の中心で愛を叫ぶ
俄然騒がしくなってきた『ヨンロク号』内には、布施・命と御門・儚の姿もあった。
「出るわ出るわ、懐かしの相手が」
他の猟兵たちの方へとまっしぐらに駆け抜けていったうっかりさんな猫女を見遣って命が苦笑いをすれば、儚もううむという顔をする。
「なんだろね、ゴーストタウンは懐かしいんだけど、ここまで沢山出てくるとただのハロウィンパーティーに近い気もする」
先程の猫女が向かった方向から、やがて賑やかな声と音とが聞こえてきた。
「それになんだか俺達以外の声も聞こえてるような……」
「加えて確かに、人の賑やかな声がする」
間違いなく、別の猟兵たちが猫女たちと接敵したのだろう。
「わしも実際、懐かしさで飛び込んだしなあ」
「皆、ゴーストタウン好きだもんね~」
のんびりと言葉を交わしているだけのように見えるだろうか。
そうではない。
命と儚は、自分たちをこそ付け狙う猫女たちを、そうとは悟られぬようにある場所へと誘導していたのだ。
「ランキングとかもあったね~」
「今後も残るならまた最短……いや、無いな」
こつ、こつ、こつ……ぴたり。
『思い出話は終わりかニャ? 猟兵』
「うん、もういいよ」
何も知らない猫女たちの声に、儚がにっこりと返す。
ここは、二人が罠を解除して、安全確認まできっちり行った空間。
「待たせたようだな、思い切り戦おう」
命も符を指に挟むと、いよいよ猫女たちへと向き直る。
『うむ、ここで会ったが百年目と知るがいいニャ!』
わっと飛びかかってくる猫女たち。それを見越した命が、式神使いの技能で瞬時に式鬼たちを召喚し、迎撃に当たらせた。
「いいぞ、そのまま歌や踊りの妨害を頼む!」
コミカルなお姿をなさった式神たちが、サムズアップしながら奮闘する。
儚もユーベルコード【送り梅雨(オクリツユ)】を発動させ、万色の稲妻で猫女たちを攻め立てていく。
「猫女はね~……」
自らは優しい雨に濡れながら、しんみりと儚が噛み締めるように呟いた。
「猫耳生やしたら良いってもんじゃないって、教えてあげないとね……」
どうやら、猫ちゃんには一家言あるご様子であった。
「援護、感謝するぞ! 儚!」
こちらも傷を負ってもすぐに回復できる雨に打たれながら、命が奥の手である【符術「火蜂」(フジュツ・ヒバチ)】を発動させる。
発火符を発動させて生じた灼熱の炎は火球となり、マシンガンの如く猫女へと撃ち放たれるのだ。割と容赦がない!
『アチチチチチ! 毛が焼けるニャア!』
「歌と踊りで攻撃? そんな暇は与えん!!」
そんな悠長な攻撃で損害を受けてたまるかという気持ちもなくはない。
だが、猫女たちも必死だ。懸命に身体をくねらせて、それっぽい仕草を見せてくる。
「くっ……!」
危険を察知した命が、漆黒の生地に雲の柄をした羽織で己の視界を遮った。
(「踊りは! 断固として! 見ない!!」)
ここまで来ると鋼の意思であった。歌は式鬼たちが必死に妨害してくれているが……。
――いいか、式鬼たち。
――わしや儚が我を失うなら体当たりなり、ガラスを引っ掻くなりで目を覚ましてくれ。
『ンニャ? 何か我慢してるのかニャ? いけない子だニャ~』
命の意図を察したのか、猫女たちが隙を見ては歌と踊りを繰り出そうとしてくる。
そこで、儚のクソデカ大声(フォントにすると四倍角はある)が響き渡る!!
「猫萌なら猫変身。さらに白地にピンクのトラ猫っ、つまり!」
手近なガラス窓に爪を立てながら、儚は腹の底から、叫んだ。
「俺のっ! 奥さんのっ!! 猫変身がっ!!! いっち番可愛い!!!」
ぎいいいいいいいいいい。
「って、はわー! ガラスの引っ掻き音ヤダー!」
自分で引っ掻いておいて予想以上の不快な音が出たものだから、儚が思わず耳を塞ぐ。
「……」
同じく反射的に耳を塞いだ表紙に、逆に羽織の隙間から猫女の蠱惑的な踊りを見てしまった命が、ふらふらと挙動不審になり始めたではないか。
これはいかんと、儚は迷わず命の前に立ちはだかり――。
「神主! 確りするんだよっ!!」
「結構痛い!!」
出たー! 三十路パンチという名の平手打ち! みことは しょうきに もどった!
という訳で、お互い恨みっこ無しなと、二人仲良く猫女たちを殲滅したそうな。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『試練の漢女』
|
POW : 漢女の祝福
【試練を耐えぬいた者への称賛の気持ち】から【昂る感情を抑えきれずに奇声】を放ち、【力加減を一切考慮しない全力のハグ】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 漢女の贔屓
【好みの人物(老若男女問わず)へ投げキッス】を放ち、命中した敵を【強化(全能力微上昇)しつつも、全身を悪寒】に包み継続ダメージを与える。自身が【体表の80%以上を露出】していると威力アップ。
WIZ : 漢女の試練
戦場全体に【試練の為の特殊空間】を発生させる。レベル分後まで、敵は【様々な試練と称した現象】の攻撃を、味方は【召喚した、戦闘力の無いサポーター】の回復を受け続ける。
イラスト:ひゃく
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フィン・スターニス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●最後の試練
猟兵たちは知恵と勇気を総動員して、次々と立ちはだかる困難を乗り越えてきた。
そうして『公団住宅ヨンロク号』が再びゴーストタウンと化した、その諸悪の根源が待つ最上階――屋上へとたどり着く。
そこで、猟兵たちを待ち受けていたものは――。
『す……す……すんばらしいわぁ~~~~~!!!』
巨躯を誇るおと……お……漢女(おとめ)……? が、感極まった様子でその身を打ち振るわせ、クネクネさせていた。
『待ち受ける罠、襲い掛かる敵、それら全ての障害をものともせずにここまで来た! 合格、文句なしに合格よッ!!』
合格。
なら、この件は一件落着ということでよろしいか?
『という訳で、アナタたちにはこのアタシという『最終試練』を乗り越えてもらうわ!』
ふざけたことを抜かしよる、そう思わせながら試練の漢女から立ちのぼる殺気は本物。
どうやら、お望みの通り完膚なきまでに叩きのめしてこそ、この事件は解決するようだ。
思う所は色々おありかとは思いますが、強敵なので本気で頑張って下さい!!
●追記
団体様で、オーバーロードありとなしが混在している方がいらっしゃいます。二度ほど書いてみましたが、〆切や文字数配分などの都合でやはり色々と難しいです。
MSページ「合わせプレイングについて」にも記載がありますが、オーバーロードをするなら『全員する』、しないなら『全員しない』で統一をお願い致します。
その他、MSページは随時更新しておりますので、お手数でも都度ご確認を頂ければ幸いです。恐れ入りますが、よろしくお願い致します。
マオ・イェンフー
【魎夜/f35256】
▼心情
激しく意表をつかれたが…殺気は本物だな。
一般人の被害が出ないよう確実に神様気取りは葬っておこうか。
▼戦闘
「しゃーねーこれも仕事だ。やるぞ魎夜!言動はアレだが実力はヤベェぞ!」
敵の動向を【落ち着いて】見極め拳法の動きで【受け流し】つつ
UC『シルフィード・クローク』で体を覆い姿を見づらくして【不意打ち】する。
敵の言動には軽く反応を返すが、あくまで倒す障害として立ちはだかる物言いをする
終わったら互いの家庭や嫁の話をしながら帰る(描写できたらでOK)
「大歓迎さ。うちの子も紹介させてくれよ」
暗都・魎夜
spd
【マオ/f36169】
【心情】
ゴーストタウンから帰還しますか?
→はい
いいえ
教室で噂聞いてると、1月に一度は見かけるよな、こういうタイプ
まあ、マジな話、自分の能力をフルに使える状態にして、強力な攻撃使えるから、結構強いんだわ
【戦闘】
アレ相手に真面目に戦えるマオ、本当に偉いよ
UCで足場を作り、自由自在な移動と「見切り」で敵の攻撃を回避する
「リミッター解除」からの「2回攻撃」を叩き込む
俺も銀誓館で「かつての戦い」を戦った身
依頼があれば戦うさ
だから、これは俺の……個人的パァァァンチ!!
【戦闘後】
死闘を演じた後でも切り替えて世間話
「最近は夫婦で日本戻って来たし、今度そっちの店にも寄らせてくれよ」
●本当に申し訳なく思っている
システムメッセージ:
ゴーストタウンから帰還しますか?
→はい
いいえ
「待て待て待て待て魎夜、気持ちは分かるが!」
それはもう美しいターンを決めて『試練の漢女』に背を向け、暗都・魎夜がその場を颯爽と立ち去ろうとしたものだから、マオ・イェンフーがガッと肩を掴んで引き留める。
「いや、分かるぜ? 教室で噂聞いてると一月に一度は見かけるよな、こういうタイプ」
過去にもいたし、現在にもいるし、きっとこの先の未来にも現れるのだろう。
だから魎夜は現実と向き合う腹を決めて、マオと二人改めて並び立つ。
「激しく意表をつかれたが……殺気は本物だな」
サングラス越しに油断なく、眼前でクネクネする漢女を真顔で観察するマオ。
「一般人の被害が出ないよう、確実に神様気取りは葬っておこうか」
そして構える二丁拳銃。臨戦態勢はバッチリである。
「アレ相手に真面目に戦えるマオ、本当に偉いよ……」
一方の魎夜はげんなりした気持ちを隠すことなく表に出しつつも、己を鼓舞するように両の頬を手のひらでぺちんと張った。
「まあ、マジな話、自分の能力をフルに使える状態にして強力な攻撃使えるから」
そして、両手で拳を作り、ググッと握りしめた。
「――結構、強いんだわ」
もはや魎夜はおうちかえるモードから、マオと同じく戦る気に満ちあふれていた。
それを見た漢女ときたら、テンションダダ上がりである。
『ンンンンンン、アタシという過酷な試練に立ち向かわんとするその意思! 全身からビシバシ伝わってくるわァ! イイわ、すごくイイ!!』
「なあマオ、やっぱ帰っていいか!?」
「しゃーねーこれも仕事だ、やるぞ魎夜! 言動はアレだが実力はヤベェぞ!」
漢女が指先を己の唇に添える仕草に、攻撃を喰らう前からゾクッとしながら、二人はいよいよ戦闘へと突入するのだった。
『ン~~~~~、チュッチュチュチュチュ!!! 受け止めて、アタシの試練!!!』
かつて、この世にここまで嬉しくない投げキッスが存在しただろうか。
どういう理屈か放たれた投げキッスはハートの形をして可視化されている。ひどい。
「せいっ!!」
魎夜は相手をまだ間合いに捉えていないにも関わらず、虚空に向けて炎を宿した拳を振るう。何故か? 拳の軌跡が燃え盛る太陽のようなエネルギーとなって、足場として利用できるからだ。
迫るハートをギリギリの見切りと作った足場とで回避して、魎夜は自在に宙を舞う。
一方のマオは、相手の異様なテンションに巻き込まれることなく冷静に、拳法の動きで絶対に喰らいたくないハートを受け流す。
『あらァんいけず、そんな必死になって避けなくてもイイじゃな~い』
「立派な飛び道具で攻撃じゃねえか、冗談でも喰らってやる義理はねえな」
漢女がぶーぶー不満を述べると、マオが正論で殴る。殴りながら、竜巻を起こして二丁拳銃ごと己を包み込み、漢女の前から突如姿を消したものだからさあ大変。
『ヤダ!? 貴重なイケメンが消えたわよォ!?』
この時、魎夜とマオはどこに居たか?
魎夜は足場を蹴って思い切り漢女の頭上を取り。
マオは不可視の存在になったのを活かして背後を取り。
(「俺も銀誓館で『かつての戦い』を戦った身、依頼があれば戦うさ」)
魎夜は気取られることも厭わず、握った拳にごうっと炎を纏わせる。
『ごッはァ――!?』
「魎夜――行け!!」
マオが漢女の背後から全力で竜巻を飛ばして巨体をくの字に曲げてやりながら叫ぶ。
(「だから、これは、俺の」)
魎夜は己が持てる全ての力を解き放ち――、
「喰らえ、個人的パァァァンチ!!!」
『痛ッたァ~~~~~い!!!』
顔面を躊躇なく二発殴ってやったはずなのに、漢女ときたらまだ立っている。
効いていないわけではないのだが、さすがは強敵というべきか、さらなる攻撃が必要なようだった。
「……マオ」
「おう」
「最近は夫婦で日本戻って来たし、今度そっちの店にも寄らせてくれよ」
「大歓迎さ、うちの子も紹介させてくれよ」
じり、じり。
世間話をしながら、徐々に後退する。
決して逃げるのではない、彼らは栄えある先鋒であり、後を仲間に託すのだ。
あと、実際お二人共素敵な能力者の奥様がいらっしゃるので、こんな所で負ける訳にはいかないのだ。
『アッ、アンタたち逃げる気!? 漢女の顔に傷をつけておいてそんな!!』
「うるせえ知るか!」
「流石にこれ以上は付き合ってられん!」
戦略的撤退、である。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
六道銭・千里
◎
試練ね、クリアしたらなんか貰えるんやろうか?
まぁ、ええわ。倒しゃ解決手っ取り早くてな
その試練とやら乗り越えさせてもらおうか
今回はちっと後方で支援的に立ち回らせてもらおうわ
斉符慈祓・浴費凶歓
冥銭をばら撒き敵へダメージを与えながら、味方を回復する『結界術』を
後は指弾で硬貨を『投擲』で前衛の『援護射撃』を
漢女のキッスは管狐を俺に化けさせて【化術】、分身【残像】
『受け流さ』せてもらうわ
悪いな、もう予約済みやからそういうんは受け取れんわ
クーナ・セラフィン
◎
えー…凄い熱視線を向けられてる人いるけど大丈夫…?
きっと私は好みから外れてるから大丈夫…な…はずだけど?
別方向で好みかもしれないけど私にそう触っていいのはあの子だけなんだから触ったり立ち上がる気力なくなる位に滅多刺しにしてくれよう!(ヤケ)
…見た目不審者だけどかなりやるねこのオブリビオン。
切り込む隙が中々…実は妖怪くねくねの正体だったとかじゃないよね!?
投げキッスは全力でお断り…逆にこっちから投げキッス返してみよう。
落ち着け私、漢女でもそれらしく優雅に返さないと。
そんなに薄着だと風邪を引くよとか何とか言いくるめ上着を被って貰い威力減らせないか試す。
隙を見つけたらUCで華麗に刻んであげようか。
●クネクネしやがってこの野郎
六道銭・千里は、試練の漢女相手でも飄々とした態度を崩さなかった。
「試練ね、クリアしたらなんか貰えるんやろうか?」
そんな千里を、漢女は熱い眼差しで見つめている。
『あらそれ聞いちゃう? この試練を乗り越えた報酬は――』
「まぁ、ええわ。倒しゃ解決、手っ取り早くてな」
言わせないし聞きたくもないとばかりに、台詞をぶっ被せて千里は冥銭を手に取った。
「その『試練』とやら、乗り越えさせてもらおうか」
(「えー……凄い熱視線を向けられてる人いるけど大丈夫……?」)
漢女と千里のやり取りを、ハラハラと見守るのはクーナ・セラフィン。
(「きっと私は好みから外れてるから大丈夫……な……はずだけど?」)
いやしかし油断はならない、何がどう漢女の琴線に触れるか分からないのだから。
(「別方向で好みかもしれないけど私にそう触っていいのはあの子だけなんだから触ったり立ち上がる気力なくなる位に滅多刺しにしてくれよう!」)
脳内ノンブレスで、半ばヤケクソになりながらクーナも優雅に戦場へと踏み込んだ。
クーナの姿を認めた漢女は、あらぁ可愛いネコチャンとだけ言うに留まった。どうやらクーナの予想通り、ダイレクトな好みには触れなかったようだ。
そんなクーナを盾にしようという意図は決してないのだが、千里はこんなことを言い出した。
「今回は、ちっと後方で支援的に立ち回らせてもらうわ」
「それがいいかもね、よろしくお願いするよ」
クーナが承諾すれば、千里は任されたと冥銭をピンと跳ね上げる。
「悪しきには罰を、味方には恵みを、ってな」
――【奥義『斉符慈祓・浴費凶歓』(サイフシハライ・アビキョウカン)】!
ばら撒かれた破魔の力宿りし冥銭は漢女に襲い掛かる一方で、千里とクーナには癒やしの霊力を与えてくれる。
「よし、これなら……!」
銀槍を携えてクーナが漢女へと突撃すると、突如ハート型の投げキッスが飛んできた!
「に゛ゃっ!!?」
間一髪、ケットシーの身軽さを最大限に活かしてハートを躱し、漢女をキッと見据える。
『イイわよォ、ネコチャン。その勇敢さ、気に入っちゃったわァ』
「……見た目不審者だけど、かなりやるね、このオブリビオン」
そう、クネクネと身をよじる漢女の動きはなかなかに捉えがたい。もしも投げキッスの妨害がなかったとしても、槍の穂先が漢女に触れていたかどうかは正直怪しかった。
「切り込む隙が中々……実は妖怪くねくねの正体だったとかじゃないよね!?」
しかし、困ったことになった。千里の結界術があるとしても、投げキッスはお断りだ。
「……そうだ!」
――ちゅっ。
想像してみて欲しい。
優雅な騎士の格好をしたケットシーが、優雅な所作で投げキッスをする所を。
『アアアアアアアアン!!! ネコチャンチュッチュ!!!』
思いつきでやってみた投げキッス返しが、クーナの予想を結構上回る勢いでウケていて、これはこれでちょっと引く。
(「落ち着け私、漢女でもそれらしく優雅に返さないと」)
「えっと……そんなに薄着だと風邪を引くよ?」
『キエエエエエエエ!? カワイイネコチャンが紳士的!?』
これ、布面積的に全然足りないかも知れないけど、なんて言いながらクーナが己の上着を漢女に差し出せば、あまりのときめきに上着はギュッと抱きしめられる。
(「これで、多少は肌面積減らせたかな」)
(「上等や、ほな一気に畳み掛けよか」)
漢女が感動に打ち震えている隙に、千里が指弾で硬貨を投擲しビシバシ攻撃する。
『あ痛、ちょっと何すんのよ! イケナイ子♥』
これで殴りかかってくるのならばまだ分かる、だが何故投げキッスなのか。こわい。
怖いので千里は管狐を己に化けさせて生贄……ならぬ、受け流しを図った。かしこい。
「悪いな、もう予約済みやから、そういうんは受け取れんわ」
『イヤーーーッ、アナタもうイイ人が居るのーーーッ!?』
居たら悪いのか、という顔になる千里の横をここぞと駆け抜け、クーナが迫る!
「さあ――クーナの槍さばき、とくと味わうといい」
『あ~~~~~れ~~~~~! 切り刻まれる~~~~~』
ユーベルコード【騎士猫は旋風のように(エレジー)】が完全に入った!
でも、切り裂かれているのは主に漢女の衣装な気がするのは……気のせいだね!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
流茶野・影郎
(お前は何を言っているんだ???)
(この現実に俺は帰った方が良いかもしれないけれど)
一応、ゴーストタウンですからね
終わらせましょう
終わることない亡霊の連鎖を
過去の残滓を打ち砕くことで
イグニッション
そしてカウンターの前蹴り!
来るなコラぁ!
相手の肩口狙ってガンガン吹き飛ばして距離あけるぞ
それで、上を警戒したら膝めがけて蹴り
膝、脛、弁慶!
筋肉のつかない骨を叩く
こっちも痛いがあっちも痛い
かーらーのー
アタック!
ジャブを相手の肩口から顎
相手に足に当てるだけの蹴り
上と下に攻撃を振って、どっちに攻撃来るか惑わせといての
『ルチャキック』
頭を蹴っ飛ばす
フェイントっていうのこうやってやるものなんですよ。
●屋上に浮かぶ三日月
「……お前は何を言っているんだ???」
『何をって、決まってるじゃなァい! 誰もが気軽に過酷な試練を受けられるステキな場所を提供するべく、アタシがこうして立ち上がったってワ・ケ♥』
「……」
流茶野・影郎が試練の漢女相手に率直な疑問をぶつけたところ、知りたくもなかった犯行の動機(?)を聞かされて、いよいよ目眩を覚えてしまう。
(「この現実に、俺は帰った方が良いかもしれないけれど」)
それはもっともだ。猟兵たちがやれ懐かしいやら新鮮やらの気持ちを抱えて繰り広げてきた探索の果てに、こんなモノが見つかってしまうだなんて、嘘だと言って欲しい。
「……一応、ゴーストタウンですからね。終わらせましょう」
影郎は懐にスッと手を差し入れながら、漢女を見据えて決然と告げた。
オブリビオンの趣味嗜好など、知ったことか。
「終わることない亡霊の連鎖を、過去の残滓を打ち砕くことで」
取り出され、天高く掲げられるイグニッションカード。
――イグニッション!!
『イイわよ、アナタとってもイイわ! キョエエエエエエ!!』
数々の試練という名の探索や戦闘を乗り越えて、影郎はここまで来た。
それを、漢女が称賛しない訳がない。昂ぶる感情のままに奇声を発しながら、影郎の逞しい肉体を全力でハグするために両手を広げて突進してくる!
だが!
「来るなコラぁ!!」
それを見越した影郎の、見事なカウンターの前蹴りが漢女の肩口に決まった。
右、左、右、左。勢いに乗って前蹴りを繰り返し繰り出して、漢女との距離を取る。
『やるわね、イイ蹴りよォん……! でも、っ!?』
漢女が上半身に意識を向けた瞬間、影郎の姿が『消えた』。
ガッ!!
『~~~~~!!!』
明らかに痛そうな音が、ヨンロク号の屋上に響いた。
影郎が、お留守になった漢女の膝を思いっきり蹴っ飛ばした音だった。
それだけでは終わらない。
膝! 脛! 弁慶! 筋肉のつかない、骨を叩く!
影郎は痛くないのか? 痛くない訳がない。だが、こっちが痛ければあっちも痛い。
「かーらーのー」
アタック!!
ジャブを漢女の肩口から顎めがけて繰り出す。
かと思えば、足に当てるだけの蹴りも織り交ぜる。
そう、上半身と下半身とに攻撃を振って、次はどちらに攻撃が来るか、惑わせて。
『くっ……次は、どこから……ッ!?』
がくん。
漢女が突如体勢を崩す、下半身に蓄積されたダメージが響いたのか。
その瞬間を見逃さず、影郎は――跳んだ。
「ルチャキック!!!」
三日月の牙が、今、蘇った。
鋭い蹴りが、試練の漢女の頭部を痛烈に打ち据えた。
「フェイントっていうの、こうやってやるものなんですよ」
華麗な着地を決めてそう告げた影郎の言葉に、漢女は答えることができなかった。
成功
🔵🔵🔴
儀水・芽亜
【庭園】◎
ああ、こういう落ちでしたか。
すみません、帰って洗濯しないといけないので、ここまででいいですか?
……はぁ、冗談ですよ。受けたお勤めは最後までこなしてこその能力者――猟兵です。
「結界術」「全力魔法」深睡眠の「属性攻撃」「呪詛耐性」「浄化」でサイコフィールド展開。敵には眠りを、味方には癒やしを。
特に投げキッスの状態異常を「浄化」することを重視。
こちらの攻撃で目が覚めようとも、結局それはフィールド内。すぐにまた睡魔が襲ってきますよ。どれだけ眠らずにいられますか。無理しないで、眠ってくれていいのですよ。
投げキッスが間違って私に飛んできたら、裁断鋏『Gemeinde』の腹で「受け流し」ましょう。
ムゲン・ワールド
【庭園】◎
儀水さんは敵を眠らせてくれる、ヴァールハイトさんは遠距離攻撃をする。
なら私は前衛で攻撃をするべきでしょうね。【メガリス・アクティブ】で、グリードオーシャンを訪れたらメガリスとしての機能を取り戻した実はメガリスだった「「教会」時代の仕込み杖」を蛇腹剣に変化させ、近接攻撃による「切断」を行います。
もし睡眠効果が想定より持続せず目を覚まされた場合も蛇腹剣を相手を囲うように振るうことで「逃亡阻止」し、攻撃を引きつけます。
「今時はこういう発言も問題かもしれないが、投げキッスは可愛い女の子だけでいいのだ! うちの莉出瑠のようにな!」
莉出瑠は使役ゴーストのサキュバス・キュア。現在は猟兵として別行動
アイン・ヴァールハイト
【庭園】◎
……。
うん、まぁ…モデルのバイトしとった時はこういう人ようおったけど
メイクさんとかスタイリストさんとか…敵で遭遇は初めてやろか
独特な人多いけど、差し入れとして作った菓子の感想は必ず言うてくれるえぇ人達やったなぁ
まぁ…敵ならば容赦する必要はない
白い闇をまとって、後衛から遠距離攻撃
視覚嗅覚で感知できなくなる様なので、
移動時に音立てない様に気を付けつつ死角から暗殺による不意打ちも狙ってみようか
回復役である儀水に向かって行くようなら結晶輪かUC使って援護射撃
投げキッスは鉄扇で受け流せるだろうか…なるべく受けたくない…
そう言う性的指向なのは分かるが俺はそういうのはない
同じ指向の人とやってくれ
●おうちかえりたい症候群
儀水・芽亜は理知的な女性なので、少なくとも表向きは非常に冷静であった。
けれども、己の胸中に対しては非常に正直であった。
「ああ、こういう落ちでしたか」
折角の懐かしのゴーストタウン探索の果てに待つものが――コレとか、あんまりだ。
「すみません、帰って洗濯しないといけないので、ここまででいいですか?」
『ちょっとちょっとォ、さっきから何で皆して帰ろうとするのよゥ!?』
丁寧に戦闘の辞退を申し出られて、試練の漢女はクネクネと身をよじらせながら叫ぶ。
その姿に絆されたとかそういうのは断じてないが、芽亜はため息ひとつ、首を振った。
「……はぁ、冗談ですよ。受けたお勤めは最後までこなしてこその能力者――」
戦う事務のお姉さんは、凜とした表情で臨戦態勢に入る。
「いえ、猟兵です」
「……」
戦う決意を固めた芽亜の隣で、アイン・ヴァールハイトが複雑な顔をしていた。
「うん。まぁ……モデルのバイトしとった時はこういう人ようおったけど」
十人十色、特に個性的な人材が集う業界では、試練の漢女を思わせる言動の持ち主も少なからず見受けられたのだろう。
(「メイクさんとかスタイリストさんとか……でも、敵で遭遇は初めてやろか」)
アインが今まで触れあってきた『そういう人たち』は、悪い人たちではなかった。
確かに独特な人が多かったけれど、たとえばアインが差し入れとして作ったお菓子への感想は欠かさず伝えてくれるような、いい人たちばかりだったなぁ、なんて。
――でも、今、眼前に居る存在は、違う。
「まぁ……『敵』ならば容赦する必要はない」
アインもまた、立ち向かう意思を明確にした。
「今時はこういう発言も問題かもしれないが、事実真実なので敢えて言おう!」
そこで、ムゲン・ワールドが決然と試練の漢女に向けて言い放つ。
『な、何!? どうしちゃったのこの子』
「投げキッスは、可愛い女の子のものだけでいいのだ! うちの莉出瑠のようにな!」
説明しよう! 莉出瑠さんとはムゲンさんの元使役ゴーストで、サキュバス・キュアだ! 今は神隠しでサクラミラージュのパーラーメイドとして働く、カタコト気味の口調がどちゃくそ可愛い立派な猟兵なのだ! あーサキュバス・キュア幼女可愛い!
『フ――』
ムゲンの熱弁に、漢女は激昂するでもなく、ただ不敵に笑うのみ。どうしたことか。
『ならば、アタシの試練を乗り越えて――新しい世界の扉を開くといいワ!!』
ヤバい! 変な方向に火が付いた! 総力戦で早くやっつけよう!!
最初に動くのは芽亜、勝手はさせぬと持てる力のほとんどを注ぎ込んだ、鴇色の陽炎を纏ったドーム状の結界を【サイコフィールド】によって展開させた。
「敵には眠りを、味方には癒しを――さあ、私の世界でどこまで抗えますか?」
『ぐッ……! 強烈な眠気がアタシを襲う……! やるじゃない、試練上等よ』
よろめきながらも獲物を狙う眼光は鋭い漢女に対し、アインは【白い闇(ホワイトアウト)】を発動させることでその視界から己を消す。
光を乱反射する雪粒子の吹雪に包まれた今のアインを視覚や嗅覚で見つけるのは至難。漢女がアインを見失って狼狽えている隙に、音を立てぬように漢女の死角へと徐々に移動していく。
『仕方ないわネ、見える相手から最終試練の開始よ――!』
「……っ」
『戦場全体を支配して、己に有利な状況に持ち込む。立派な戦術よ、好き!』
「おっ……お断りです……!」
漢女に直球で好きと言われて、投げキッスを喰らう前から悪寒に襲われる芽亜。
続いて本当に投げキッスをぶん投げられそうになった、その時だった。
「させません――!!」
「やらせるか――!!」
ムゲンが「「教会」時代の仕込み杖」を抜き放ち、即座に蛇腹剣へと形状を変化させ、試練の漢女の動きを拘束するように切り裂いた!
たまらず漢女がよろめいた所へ、間髪入れずアインの結晶輪が飛来して鳩尾へとメガヒットする。色々な意味でとっても痛そうだった。
(「フィールドに浄化の力を付与しておいて良かったですね……」)
受けた悪寒がすぐに癒やされるのを感じながら、芽亜は小さく息を吐く。
『うぐッ……常に眠気に襲われるというのが、こんなにも恐ろしいことだなんて……』
攻撃を喰らえば目も冴えるかと思いきや、展開した領域は敵対者を逃さない。
(「それにしても……この仕込み杖とも長い付き合いですが、まさかメガリスだったとは驚きです」)
銀誓館の能力者にとって、メガリスを所持するということは一大事を意味する。
異世界では結構軽率に手に入ると知れた今でも、その感覚だけは変わらない。
「大人しく寝てしまっても、いいんですよ!」
強烈な睡眠効果に抗い続ける漢女に、ムゲンは頼もしいメガリスである仕込み杖を再び蛇腹剣にして、巧みに振るってその動きを束縛していく。
「ムゲンさんの言う通りです、無理しないで眠ってくれていいのですよ」
『うぐぐぐぐぐ、試練……! これは間違いなく、アタシへの試練ね……!?』
何か勝手にシチュエーション萌えしちゃった試練の漢女、燃える投げキッス。
(「うっわ、鉄扇で受け流せるだろうか……なるべく受けたくない……」)
アインが姿を隠しつつ、地味に飛んできたハートを鉄扇で撃ち落とす。出来た。
(「困ります……何かの間違いでは?」)
自分目掛けて飛んできたハートを、芽亜は二振りの軍刀を組み合わせた裁断鋏の腹でつるんと受け流す。お見事。
そろそろ頃合いかと、アインが漢女の首元に鉄扇を突きつけた。
「そういう性的嗜好なのは分かるが、俺はそういうのはない」
『! ど、どこから……!?』
「同じ嗜好の人とやってくれ」
――骸の海で、な。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
木常野・都月
【KOR】◎
(筋肉…少し羨ましい)
お、俺だって!筋肉の精霊様が付いてる…はず!
特に尻尾辺りに!(尻尾ぶんぶん)
(幽兵さんがチューを投げてきた!分からないけどキャッチ!)
(分からない。どうしよう…とりあえずポケットにそっとしまっておこう)
俺は、[野生の勘、第六感]で敵の動きを[情報収集]しよう。
そして皆が動きやすくなるように[援護射撃、範囲攻撃]で敵の注意を引きつけられたら嬉しいな。
敵の隙を見つけたらUC【精霊召喚】で筋肉の人に縋りついて貰おう。
敵の攻撃は[カウンター、高速詠唱、属性攻撃]で対処しよう。
氷の精霊様なら…寒くなってもきっと多分平気…?
もし、精霊様ダメそうなら、俺が直接殴りに行こう。
鏡彌・サクラコ
【KOR】◎
都月さまが筋肉に見惚れてる?
まさかあんな気持ち悪いのに?!
幽兵さまの変態魂火がついた?!
ムーンウォークは後ずさり!
こういう輩への対処法はいったん気持ちを置いておいて冷静に見極めることが大事ですねい
大きく呼吸をして
じー
見切ったでいす!
UC展開
108枚の銅鏡の半分を敵に向かわせます
もう半分は味方の防御に
シホさまが無防備になったところに
させません!鏡でバリアーします
敵に向かった銅鏡で相手の露出した肌を隠します
見せないよ!という感じ
この敵は肌を隠して仕舞えば力が弱まりますねい!
銅鏡の間からチラチラ見えるのがかえってキモいですが置いといて
やってしまおうでいす!
ハクナキが日本刀で斬りかかります
シホ・エーデルワイス
【KOR】
◎
遠い眼差しで
そうですね…
猫女さん達もそうでしたが
今回の敵も今一つ緊張感に欠ける上
あまり関わりたくない類です
空気がおかしいのは
幽兵さんと敵が妙な対抗意識で闘志を燃やし
盛り上がって時空が歪んでいるからかしら?
私も援護射撃で支援します
【迅奏】で幽兵さんのリクエストに応え
勇壮なファンファーレを楽器演奏し皆を鼓舞
誘導弾で敵のみをスナイパーします
演奏に集中する為
無防備になりますがサクラコさんの鏡バリアを信じて頼ります
幽兵さんはあの様に言いますが
私は確保し損ねた美味しい蟹の鋏を分けてくれた紳士でもあると知っています
都月さんは敵の筋肉に惚れているのね
いえ
私達まで漢女にしないで下さい(←ジト目)
花屋敷・幽兵
【KOR】 ◎今度は良く分からん禿ひらマッチョか。良い筋肉だ。パワー! その程度で俺に変態で勝つつもりか?上等だぜ。”闘い”の時間だオラァ! 全身タイツ!顔まで覆う!そしてムーンウォーク! 皆!ここは俺が抑えるから俺ごとやっておしまい!(都月へ投げキッス) スチームエンジンで強化して槍で刺す!俺の拳(槍)を受け止めろ! 反撃を受ける場合は右から左へ受け流す。ムーディ幽兵だ! 継戦能力を無礼(ナメ)るなよ…? シホやハクナキ…ふよふよ鏡…もとい本体のサクラコや都月の攻撃でハゲが怯んだら ダイタクヘリオスで一撃「飲み込んで…俺のエクスカリバー…」 俺の…俺たちの方がより”漢女”だったようだな…?
●変態頂上決戦
旅団『Knights of Rabbit』が誇る常識人ことシホ・エーデルワイスは、遠い目になった。
(「そうですね……猫女さん達もそうでしたが、今回の敵も今一つ緊張感に欠ける上、あまり関わりたくない類です」)
だが、ここまで来た以上、きっちりとお仕事は果たさなければ。
真面目なシホがそう心に決めた横で、ハイテンションな声が響いた。
「今度は良く分からん禿ひらマッチョか、良い筋肉だ」
パワー! と、見る人が見ればすぐ分かるモノマネを披露しつつ、花屋敷・幽兵が現れた! ダメだ、もうこの時点でカオスの予感しかしねえ!
「その程度で俺に『変態』で勝つつもりか? 上等だぜ……」
『お待ち、誰が変態ですって!?』
「『闘い』の時間だオラァン!!」
試練の漢女のどうフォローしたらいいのか分からない反論もものともせずに、幽兵はバッと右腕を高々と天に突き上げる。すると――!?
「全身タイツ! 顔まで覆う! そしてムーンウォーク!!」
「それはただの後ずさりですねい!?」
突然のトランスフォーム! 言い逃れの出来ないレベルで変態な外見になった幽兵に、リーダーこと鏡彌・サクラコが鋭いツッコミをぶちかます。流石はリーダー。
『へ、へ、変態よーーーーーッ! イヤーーーーーッ!』
事もあろうに変態から変質者扱いされる始末。これはさすがに幽兵さんが気の毒だ。
「……空気がおかしいのは、幽兵さんと敵が妙な対抗意識で闘志を燃やし、盛り上がって時空が歪んでいるからかしら?」
シホさんもこの奇妙な空気にあてられて、思考がやや怪しくなる。落ち着いて!
「皆! ここは俺が抑えるから、俺ごとやっておしまい!」
変た……幽兵が果敢にもそう言い放つと、一連の怒濤の展開について行けず呆然としていた木常野・都月目掛けて投げキッスを飛ばした。
「!」
幽兵の投げキッスは、流石に漢女のそれとは違い攻撃力もなければバフデバフもつかない、何の変哲もない愛情表現なのだが、都月はそれを律儀に形あるものとして受け取る。
(「幽兵さんがチューを投げてきた! 分からないけどキャッチ! ……したけどやっぱり分からない……」)
純粋な都月は、幽兵の投げキッスを持て余す。ある意味、当然の反応であった。
(「と、とりあえず、ポケットにそっとしまっておこう」)
懐にものを収める仕草だけして、都月はふと眼前でクネクネする漢女を見る。
「筋肉……少し、羨ましい」
「都月さまが筋肉に見惚れてる? まさかあんな気持ち悪いのに!?」
サクラコが、正気に戻れと言わんばかりに叫ぶが、都月の視線は試練の漢女の鍛え上げられたボディに釘付けである。
「お、俺だって! 筋肉の精霊様が付いてる……はず! 特に尻尾あたりに!」
そう叫び、ふさふさ尻尾をぶんぶんする都月を見て、漢女は愉快げに笑った。
『あらァんキツネちゃん、アタシが羨ましい? アタシの最終試練を乗り越えれば、筋肉も思うがままよォ?』
「なっ……」
「騙されちゃいけませんでいす!!!」
「都月さんは、敵の筋肉に惚れているのね」
筋肉の誘惑に揺らぐ都月を、必死に引き留めるサクラコに、温かく見守るシホ。
「こういう輩への対処法は、いったん気持ちを置いておいて、冷静に見極めることが大事ですねい。さあ、大きく深呼吸――」
サクラコが都月とシホと共にすーはーしている間にも、戦いは始まっていた。
「行くぜ! ダイタク=ヘリオスに【スチームエンジン】での強化を付与っ!」
『この変態! 漢なら拳でかかって来なさいよォ!!』
「ああ! 俺の拳(槍)を受け止めろ!!」
何やかやで相当互角の、熱い競り合いになっている!
「幽兵さんのリクエストに応えるのは……今です」
シホが二丁の聖銃を構え、深呼吸で整えた平常心で、勇壮なるファンファーレを――何と聖銃の発砲音だけで高速演奏してのけたのだ!
放たれた弾丸は、誘導弾の属性を持ち、的確に試練の漢女のみを狙って飛んでいく。
『あら素敵な音色! 昂ぶっちゃう! でもちょっとおいたが過ぎるわねェ?』
幽兵と一騎打ちを繰り広げていたところに飛来した弾丸の主――シホへと視線を向けた漢女。しかし、サクラコはその展開までしっかりと見越していた。
「ユーベルコード【錬成カミヤドリ】発動でいす! 出でよ、銅鏡の写し身!」
宣言と同時に、サクラコの本体である銅鏡の複製が百を超える数現れた。サクラコはその半分を試練の漢女へ、もう半分をシホへと向かわせる。
「させません! シホさまをお守りします!!」
『くっ……この鏡、邪魔なだけでなく、アタシの肉体美まで隠して……!?』
「肌の露出が多い程攻撃の威力が強まるのなら、隠してしまうまで、でいす」
えっへんと平たい胸を張るサクラコ。銅鏡の間からチラチラ肌が見えるという絵面がかえってキモいでいす、と言いたくなるのをグッと堪える。
徐々に乱戦模様を呈してきた戦況を、都月は少しばかり引いた場所から冷静に見極めようとしていた。
幽兵からの攻撃をいなしながら、シホを狙うもサクラコの銅鏡に阻まれ、今は膠着状態と言えた。
(「ここで俺が一撃入れれば、状況が打破できるかも」)
それは研ぎ澄まされた猟兵としての勘であり、感覚であった。
「――精霊様、ご助力下さい」
念じることで超常【精霊召喚】を発動させれば、ごばぁ! という轟音と共に屈強なゴーレムを思わせる土の精霊様が現れ、漢女を羽交い締めにしたではないか。
『なっ……!? この屈強な使い魔、邪魔だけどたまらなく、イイ……!!』
「……」
この漢女、守備範囲と好意の解釈が広すぎる。
せっかく登場した土の精霊様が、帰りたいという顔で都月を見ている。
「う、ううっ……仕方ない! 精霊様、ありがとうございました!」
これはさすがに無理はさせられないと、都月は瞬時に土の精霊様を下げ、代わりに果敢にも杖を振りかぶって己が殴りかかりに走り出す!
「えい!」
――ばきっ。
『あらァ、杖が折れちゃったわねェ?』
たいへんだ! すぐ直ると思いますがエレメンタルロッドが筋肉に負けて折れた!
「都月さま、下がって!」
サクラコの声が飛ぶ。繰るからくり『ハクナキ』が日本刀で斬りかかり――折れた!
「えええええーーーーー!? どんな筋肉してるんでいすか!?』
「くっ――」
シホは演奏に集中するため、これ以上の支援ができない。
万事休すか――!? そう思われた時だった。
「オラァン、こっちだ禿マッチョ!!」
『失礼ね、この変態全身タイツ!!』
破壊力が強化された幽兵の槍だけが、辛うじて漢女の肌に傷をつけている!
『そういうことを言う悪い子でも、試練を乗り越えたいい子……だから、こうよッ!』
間合いに入っていた幽兵を、巨腕で抱きしめようとする試練の漢女。
だが、まるで優雅にダンスでも踊るかのごとく、するりとそれを躱す幽兵。ムーディ幽兵だ!
「継戦能力を無礼(ナメ)るなよ……?」
『(キュン……)』
戦場の空気は最高潮におかしなことになる。早く終わらせないと……!
(「幽兵さんはあの様に言いますが、私は知っています」)
シホは、幽兵へ信頼の眼差しを向けながら思う。
(「確保し損ねた美味しい蟹の鋏を分けてくれた、紳士でもあると」)
「うおおおおお! シホやハクナキ、都月の攻撃で怯んだな、禿マッチョ!」
巨大な魚に銛を打ち込まんばかりの勢いで、ダイタク=ヘリオスを構える。
「飲み込んで……俺の、エクスカリバー……」
意味が分かると割と最低な台詞と共に、誰もが傷付けられなかった漢女に、強烈な一撃をぶちかましたのだった。
「俺の……俺たちの方が、より『漢女』だったようだな……?」
「いえ、私達まで漢女にしないで下さい」
カッコいい決め台詞を放ったつもりの幽兵に、ジト目のシホからの一撃が入った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レモン・セノサキ
トラバサミやら「ペンキ塗りたて」な落書きやらですっかり遅くなっちゃったな!
猫女戦終わっちゃったの?
えーーしょげぽよ……じゃない、流石頼れる後輩たちだ★
……え。ほぼ同期ばかりって、マジ?
さとるちゃんはあぁ言ってたけど、黒幕はどうせアイツだろ?
さぁ成仏の時間だクラウドガイsうわぁぁ変態だーー!?
(オリジナルの)彼氏の女装癖(癖じゃない)で耐性付きの私でも目に厳しい!
「詠唱銀塊」の▲魔力溜めで「幻符」を強化
▲存在感の増した幻の自分をトカゲの尻尾切りみたいに利用
敵の攻撃から紙一重で逃げ回りつつ、「STACCATO.357」の乱射で応戦しよう
投げキッス?
げぇ、キンモー!
霊感とはまた違う悪寒だぞコレ
射手の手が震えちゃ商売あがったりだ
「トラップコイン」を一枚爆ざし、極薄い神経▲毒を吸う
震えを▲マヒで無理やり紛らわせたい
弱点らしい弱点は無さそうだけど
腹筋が有る奴は取り敢えず焼けばいいか、後輩の狐くんもそう言ってたし!!
お前に相応しいユーベルコードは決まった!
隕石の魔弾、奥義ぃ!(奥義じゃないけど)
●星を墜とせ
「ぜえ、はあ……トラバサミやら『ペンキ塗りたて』な落書きやらで、すっかり遅くなっちゃったな!」
息を切らせて屋上へとたどり着いたレモン・セノサキが、足を止めて息を整える。
「猫女戦、終わっちゃったの? えーーーしょげぽよ……じゃない、流石頼れる後輩たちだ★」
これは後に知る所となるのだが、レモン以外に今回の『ヨンロク号』事件解決のためにやって来た猟兵たちのほとんどが『元・能力者』――即ちほぼ同期ばかりであったのは、中々に面白い事実であった。
ひと息ついたところで、レモンは意気揚々と屋上を闊歩する。
「さとるちゃんはあぁ言ってたけど、黒幕はどうせアイツだろ?」
そして立ち止まり、不敵に笑んでレモンは身構えた。
「さぁ成仏の時間だ、クラウドガイs」
『ハァイ♥』
「うわぁぁ変態だーーー!!?」
背後から突然現れた『試練の漢女』に、思わず絶叫してしまうレモンさん。
『失礼しちゃうワ、変態だなんて! 試練、与えちゃうわヨ?』
「あ、あわわわわ……」
ヤバい。これはヤバい。歴戦の猛者たるレモンさんでもヤバい。
レモンの『オリジナル』の彼氏の女装癖(?)で間接的に耐性を得ているはずなのに、視線に入れるのだけでもぶっちゃけ厳しかった。
『そ~れ♥ 受け止めてイイのよォん!』
チュッチュチュッチュ! 荒ぶる投げキッス! 乱舞するハート! 地獄かな?
「投げキッス!? げぇ、キンモー!!」
憚ることなく不快感を顕わにし、飛び交うハートに対抗すべく、レモンは詠唱銀塊に溜められた魔力で「幻符」を強化して解き放つ。
符は存在感が本物に限りなく近いレモンの幻影となり、ハートを引き寄せるデコイとなって散っていく。
これを繰り返し、トカゲの尻尾切りのようにハートに対処していくのだ。こうして紙一重で逃げ回りながら、反撃は二挺ガンナイフ「STACCATO.357」でガンガン攻める。
――だが。
(「霊感とは違う悪寒だぞ、コレ」)
ハートが掠ったか、ガンナイフを持つ手が己の意思とは関係なしに震えてしまう。
(「射手の手が震えちゃ、商売あがったりだ」)
レモンは咄嗟に「トラップコイン」を一枚ピンと跳ね上げ、中空で爆ぜさせた。
そして発生した極薄い神経毒を敢えて吸い、手の震えをマヒで無理やり紛らわせるという強硬策に出た。
『ウッフフフ、どうかしら? アタシの試練、気に入ってくれたかしらァ』
「……」
この変態、変態のくせに純粋に強い。侮ってはいけない相手だ。
(「弱点らしい弱点は無さそうだけど」)
レモンは頬を伝う汗を拭うことなく、ただ思考を巡らせる。
「腹筋が有る奴は取り敢えず焼けばいいか、後輩の狐くんもそう言ってたし!」
そういえば、何かそんな論説もあったような気がする。
「お前に相応しいソイ……ユーベルコードは決まった!」
決断したレモンは、右手に握った方のガンナイフを天高く掲げる。
「天の星こそ私の弾丸、いざ仰げ! 【爆裂する隕石の魔弾(メテオバレット)】!!」
隕石の魔弾・奥義(▲▲▲)が、令和のゴーストタウンに今、再現された――!
『範囲攻撃なんて卑怯よーーーーーッ! アアーーーーーッ!?』
筋肉はとりあえず焼けばいい、という戦法、この先流行るんでしょうか……?
大成功
🔵🔵🔵
布施・命
【狸々亭】
あっ、今回はこういう……危険な予感しかしないぞ(鳥肌
あのガスを相手にしたほうがまだマシな気が
まあ、ともあれ強敵相手となれば一撃大きいのをぶち当てるまで
諸々込めた、全力の『退魔呪言突き』を狙おうか!
霊符と結晶輪での遠距離攻撃でけん制しながら、センヒキ様・破に恨みの念を凝縮
この地ならば、恨みの念はさぞ濃かろう
現在進行形で儚も相当な恨みを生んでいるのは、うん、好都合なのだが無茶するなよ儚!?
わしもボスが仕掛けるであろう理不尽な試練も!かつての戦を乗り越えた自信で耐え、躱し、受けを試み、その試練への恨みすら呪言突きの糧に変えていく!
限界まで恨みを凝縮したら突きの構えへ
分かりやすく放ちはしないぞ
さあ行くぞと一声、敵をこちらに惹きつけたならば、『式神使い』で使役し力を溜めさせていた式鬼に『退魔呪言突き』で、死角からボスを攻撃させる
恨みの念は武器に込める。それは式鬼も例外ではないという事で
いわば、式鬼との三連退魔呪言突き
重い重い恨みを喰らえっ!
昔のヨンロクじゃこんな疲れ方はしなかったわな……
御門・儚
【狸々亭】神主(f35378)と一緒
連携、アドリブは歓迎
…(ガン見)あれぇ?おかしいなぁ
ここのボスは確かファクシミ…げふん。
(黒笑)あのね?それって見せ筋だよね?本来なら付くべきじゃない場所に付く筋肉は無駄筋とも言って嬉しくないものなんだよ。
しかも俺、元々気魄低かったし筋肉付かなかったし…荒事はUC頼みなんだ…そんな!俺の前に見せ付けるように筋肉晒すなぁ~~っ!
喰らえ!この日の為に電撃と麻痺をモリモリ強化したビリビリむちを!
怒りのリミッター解除で漢女の行動を見切って受け流してありとあらゆる罵詈雑言を呪詛として傷口をえぐるように吐き続けるよ!
締められても激痛耐性とこじ開けと怪力で脱出するもん!
か弱い?否!惜しげも無い筋肉晒して今更何言ってるのかな!
そもそも!男なの?女なの!?
ハッキリするといいよっ!
(全怒りを込めた楼籠景射・絶)
…GTってこんなに疲れるもんだったっけ?
神主~
なんだか他のGTが気になってきたよ…
アミーゴとかどうなってるか今度見に行かない?
●恨み骨髄に徹すれば
屋上にたどり着いた布施・命と御門・儚の二人は、傷つきながらもなおその筋肉を見せつけるようにポージングを繰り返す『試練の漢女』を見て、同時に凍りついた。
(「あっ、今回はこういう……危険な予感しかしないぞ」)
命は湧いてくる鳥肌を抑えることが出来ないでいた。本能的なものだからね、しょうがないね。
「あのガスを相手にした方が、まだマシな気が」
「……」
この『公団住宅ヨンロク号』の本来のボス敵であったクラウドガイストなる地縛霊のことを思い出しながら命が本音を呟けば、隣では儚が漢女をガン見していた。すごい。
「あれぇ? おかしいなぁ。ここのボスは確かファクシミ……げふん」
ファクシミリドラゴンはサブ2のボスだから厳密には違うのだが、今はそういうことを言っている場合ではなかった。
実際、儚としても些事とみなしたのか、すぐにその表情を暗黒微笑に変えた。
「あのね? それって見せ筋だよね? 本来なら付くべきじゃない場所に付く筋肉は『無駄筋』とも言って、嬉しくないものなんだよ」
どうした急に。
「しかも俺、元々気魄低かったし筋肉付かなかったし……荒事はユーベルコード頼りなんだ……」
あっ(察し)。
「そんな! 俺の前に見せ付けるように!! 筋肉晒すなぁ~~~っ!!!」
儚の魂の叫びを、命はとてもやさしい目で、見守っていた。
『良く分からないケド、アナタたちも、アタシの最終試練を受けに来たってワケね?』
「どうしてそうなるのかは分からんが、とにかくひとつ手合わせ願うぞ!」
かつて『除霊建築士』と呼ばれた人々が愛用したそれと酷似した「センヒキ様・破」を手に取って、命は空いた方の手で霊符と結晶輪を用いた遠距離攻撃で牽制を狙う。
(「まあ、ともあれ強敵相手となれば、一撃大きいのをぶち当てるまで」)
狙いはひとつ、諸々を込めた全力の【退魔呪言突き】である!
(「この地ならば、恨みの念はさぞ濃かろう」)
そう考え、チラと隣の儚を見た命は――想像を超えた光景を目の当たりにした。
「喰らえ! この日の為に電撃と麻痺をモリモリ強化した「ビリビリむち」を!!」
ホントだ! モリモリだ!(ステシをご参照下さい)
怒りのリミッター解除で、漢女の行動をことごとく見切っては受け流す儚。
『試練を乗り越えようと頑張る姿! いとおしいわァ!! キエエエエ(猿叫)』
「じゃかましい! ちょっと筋肉で勝ってるからってその上から目線が気に入らないんだよ!!」
漢女としては割とマジで儚に対してリスペクトを覚えてのハグ狙いなのだろうが、儚からしてみれば何もかもが気に入らない。
ありとあらゆる罵詈雑言を呪詛として、漢女の傷口をえぐるように吐き続ける。
「ぐ……っ!」
『ホ~~~ラ、捕まえちゃった♥』
何たることか、儚が漢女のハグに捕らえられてしまった!
「現在進行形で儚も相当な恨みを生んでいるのは好都合と思って見守っていたら!?」
「ぐ、ぐぎぎぎぎぎ!!!」
激痛耐性で強烈な締め付けに耐え、怪力によるこじ開けで漢女のハグを振りほどいた!
「……うん、好都合なのだが無茶するなよ、儚!?」
「大丈夫だもん!」
身を案じる命に対する儚の返事が割と可愛いのはさて置き。
全力のハグを振りほどかれてちょっぴりさみしそうな漢女が次に目を付けるのは、当然命の方である。
『アナタ、いい感じに試練を乗り越えてくれそうな顔してるじゃない』
どんな顔を見ればそういう感想が出てくるんだろう。
そう命が思った瞬間――割とシビアな『試練』が突如降りかかってきた。
くまさん、うさぎさん、ネコチャン……。
それはもう愛らしいぬいぐるみたちが、巨大化して、襲いかかってくる。
(「な……何、これ……!?」)
特徴欄の「実は:可愛いものが好き」を盗み見られたか? そうとしか思えない。
「う……う、うおおおお……っ!!」
ぬいぐるみというのは、表情が愛らしいまま変わらないから性質が悪いと思う。
悪気がないのでは? 実は大した力はないのでは? 様々な可能性が、攻撃の手を躊躇わせる。
だが――相手は、歴戦の能力者、布施・命であった。
「お前が理不尽な試練を仕掛けるであろうことは想定の範囲内!!」
叫ぶと共に、センヒキ様・破を一閃。かつての戦を乗り越えた自信を支えに、ぬいぐるみの愛らしさに耐え、躱し、攻撃をいなし、このような卑劣な試練を与えた漢女への恨みすら、この後の呪言突きの糧に変えていく――!
そうして、ぬいぐるみたちが綿の塊に変じたのを背にして、命は立っていた。
現界まで凝縮された恨みを確かめながら、突きの構えを取る。
(「分かりやすく放ちはしないぞ」)
何せ必殺の一撃だ、外すことは許されない。
「さあ、行くぞ!」
『――来なさい!』
試練の漢女の意識は、完全に命本人に向いていた。
故に、式神使いで使役されて力を溜めていた式鬼の存在に気付かなかった。
「退魔、呪言突き!!」
『あぐ……ッ!?』
恨みの念は「武器」に込める。
それは、式鬼も例外ではない。
「いわば、式鬼との『三連・退魔呪言突き』! 重い重い恨みを喰らえっ!!」
『アアーーーーーッ! か弱い漢女になんてひどい!!』
ドドドッ! と、強烈な一撃を三連続で喰らいながらも、なお倒れない漢女。命が苦い顔をした、その時だった。
「か弱い? 否! 惜しげも無い筋肉晒して今更何言ってるのかな!」
恨みの連鎖は止まらない――儚だった。
「そもそも! 男なの? 女なの!? ハッキリするといいよっ!!」
今日イチの怒りを込めた【楼籠景射・絶(ロウロウケイシャ・ゼツ)】が、命の攻撃で消耗していた漢女にクリーンヒットした。
掌底からは気が伝わり、筋肉を無視した肉体の内部破壊でダメージを与えるのだ。
『おみ……ごと……』
ここに来て、遂に試練の漢女が膝を付いた。撃破まで、きっとあと少しだろう。
「……ゴーストタウンって、こんなに疲れるもんだったっけ?」
「昔のヨンロクじゃ、こんな疲れ方はしなかったわな……」
儚の問いに命が答えると、儚がへろへろと近付いてきた。
「神主~、なんだか他のゴーストタウンが気になってきたよ……」
アミーゴ横須賀とかどうなってるか、今度見に行かない?
そう言われて命は苦笑いで返す。
「それも悪くないが……ちと、日を改めような」
今日は――流石に、疲れてしまったから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
山崎・圭一
×◎
特殊空間か。試練だァ?
呪殺弾で応戦…けどやりきれねェ…ボコスカ当たる
となりゃ大元叩く!全力疾走で駆け寄ってみるけど
あのガタイの良い変態は俺の顔面に右ストレート決めンだろな
…………。
やったな?クソカマ野郎
あー…痛ェ…左目まで見えなくなったらどーすンだ
でも浸透の良い手先に付いたろ?俺の『血』が
じっとしてた方がいンじゃね?動く程毒回るぜ?
俺もここまでダメージ喰らえばもう良い頃合いだな
『蟲使い』として命令する
骸の海から蘇り今一度、かつての主たる俺の元へ還って来い
【白燐葬甲】
敵の顔に毒ナイフ投擲。ナイフに注意行くだろ?
よし今!白燐蟲達に光量最大の白燐光を指示
目眩まし狙ってみっか
で、俺はその隙に…この毒手でさっきの右ストレートお返しして…やンよッ!
毒+ドレインのおまけ付きで
もう幕引きにしようぜ。極大蟲型呪殺弾お見舞いしてやる
ゴ キ ブ リ 型!公団住宅ならいるだろ
最後に言っとくけど…俺に試練与えていいのは俺だけだ
俺は何物にも課されないし縛られない。故に旅人
じゃあな。ヨンロク号
此処は俺には狭すぎる
●試練を乗り越えて
事ここに至り、試練の漢女も己の劣勢を悟る。
そして、最後の猟兵を、本気で迎え撃つ覚悟を決める。
『ようこそ、勇敢なる猟兵サン――アタシの『最終試練』、楽しんでいってネ♥』
かくして、山崎・圭一が屋上に足を踏み入れた時には、既に一帯が特殊空間と化していたという。
(「特殊空間か。試練だァ?」)
特殊空間という存在自体には、圭一も元・能力者として慣れていた。
だが、蟲使いたる圭一に対して、こともあろうに様々な蟲たちが襲いかかってくるのだ。
(「呪殺弾で応戦……けど、やりきれねェ、ボコスカ当たる」)
蟲の外殻が身体のあちこちを打ち据え、徐々に傷付けていく。
このまま手をこまねいていては、呑まれる。
(「となりゃ、大元叩く!」)
思い切って全力疾走で駆け寄ってみるけれど。
まるで、未来予知の力でも手に入れたかのような感覚。
分かってしまったのだ。
――あのガタイの良い変態は、
ガッ……!!
――俺の顔面に右ストレート、決めンだろな。
盛大に吹っ飛ばされ、数度屋上の床を跳ね、ようやく止まる。
「……、……」
空は黄昏、日暮れも近い。
特殊空間から、帰ってきたのだ。
「やったな? クソカマ野郎」
『威勢の良い子は好きよォ? でもネ、勢いだけじゃどうにもならないコトもあるの』
身体をくねらせながら、もっともらしいことを言う漢女。変態のくせに生意気だ。
「あー……痛ェ……左目まで見えなくなったらどーすンだ」
割と真剣に不味いことを言いながら、圭一が服の埃をはたいて立ち上がる。
したたかに打ち据えられたにも関わらず、圭一の表情には余裕があった。
「でも、浸透の良い手先に付いたろ? 俺の『血』が」
『……ふゥん』
「じっとしてた方がいンじゃね? 動く程『毒』回るぜ?」
漢女はそこでようやく悟る。この青年は、ただ闇雲に暴れていた訳ではないと。
筋肉の力ではどうしようもない、神経が冒されていく感覚がそれを教えてくれた。
(「俺もここまでダメージ喰らえば、もう良い頃合いだな」)
「『蟲使い』として、命令する」
――じ、じじ。
「骸の海から蘇り今一度、かつての主たる俺の元へ還って来い」
そうして発動するは――【白燐『葬』甲】!
回復だなんて、そんな優しいことは致しません。
ただ主の負傷度合いに応じた戦闘力の増強と、生命力吸収能力を与えてくれる超常。
『イイわね、盛り上がってきたじゃなァい!』
漢女が再び迫るところに、圭一が顔面目掛けて躊躇なく毒の塗られたナイフを投げる。
漢女は首の動きだけでそれを躱すが、注意を向けられるだけで上等だった。
「よし、今!」
『うおっまぶしっ!!』
白燐蟲たちに、光量最大の白燐光を指示すれば、こうかはばつぐんだ!
「これは――」
圭一は手を一度握って、開いて、また握って――駆けた。
「さっきの、お返しして……やンよッ!!」
『あぐふ……ッ!!』
ただのグーパンではない。毒に満ちた手に、生命力吸収の力も付与した、完全なる反撃、リベンジ仕様であった。
試練の漢女は、蓄積していたダメージも相まって、遂に尻もちをつく。
それを見た圭一は、己の役目を理解した。
「もう、幕引きにしようぜ」
――極大蟲型呪殺弾、用意。
「ゴ・キ・ブ・リ・型、だ!! 公団住宅ならいるだろ!!」
――発射!!
『い、い、いやああああああ!!!』
見るもおぞましい光景が繰り広げられ、それが収まった後には――何も、なかった。
「最後に言っとくけど……」
屋上に一人残された圭一が、誰へともなしに呟く。
「俺に試練与えていいのは、俺だけだ」
かつては『次の宇宙』にまで飛び立った身。
「俺は何者にも課されないし、縛られない。故に、旅人」
煙草に火をつけて、煙を肺いっぱいに吸って、ふぅと吐く。
「――じゃあな、ヨンロク号」
踵を返し、静寂を取り戻した廃墟を後にする圭一。
「此処は――俺には狭すぎる」
大成功
🔵🔵🔵