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殲神封神大戦⑰〜儵忽相与遇於渾沌之地

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「南海の帝である儵と、北海の帝である忽が、共に渾沌の地で会した時、その地を収める渾沌は二人を大変よくもてなしてくれたそうだ」
 荘子は應帝王篇に記される『渾沌』を参照する枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)。
 血色の瞳に文字をなぞって幾許、而してそっと睫を持ち上げた帷は、混迷の戦いを前に精悍の表情を揃える猟兵らに小気味よい咲みを注いだ。
「そして今回も、大いに我々をもてなしてくれるらしい」
 場所は仙界の最深部、いまだ形定まらぬ「渾沌の地」。
 足場も景色も常に変化する不可思議な所に、立っているのか浮いているかも分からない状態で待ち受けるのが、渾沌氏――『鴻鈞道人』であると説明した帷は、この者ほど謎に満ちた存在は居ないと厄介を口にする。
「彼奴は己がオブリビオンでないと、【骸の海】であると言い、かつて我々が倒した筈のオブリビオン、或いはまだ戦場にいるオブリビオンさえも【再孵化】して作り出す」
 この者が『骸の海』ならオブリビオンを何度も生み出せるのは可怪しな話では無いが、これは一体どういう事なのか。真相は謎に包まれている。
「幸いにして今回は再孵化を使用せず戦いを挑んでくるので、皆は『鴻鈞道人』そのものと戦えるんだが、これも厄介である事に変わりない」
 渾沌そのものと戦う――。
 その性質ゆえにユーベルコードすら形定まっておらず、鴻鈞道人の攻撃は発動するまで詳細を知る事はかなわない。
「……白き天使の翼、白きおぞましき触手、白き無貌の牛頭、白き殺戮する刃……彼奴は『渾沌の諸相』を無差別に発言させた不定形の怪物に変異して襲いかかってくる。君達はそれを咄嗟に見切って、反撃の刃を突き入れて欲しいんだ」
 現時点で鴻鈞道人を完全に「滅ぼす」方法は無い。
 然し戦闘で「殺す」事は可能なので、彼奴を殲神封神大戦の舞台から引きずり降ろして欲しいと頼んだ帷は、ぱちんと弾指してグリモアを喚ぶ。
「儵と忽はもてなしに報いるべく、渾沌に視聴食息の穴を穿ったと言う。図らずも渾沌は死んでしまったと言うが、なに、君達も穴をくれてやればいい」
 七つと言わず、幾らでも。
 帷が塊麗の微笑を湛えるや、光は渾沌へと投げ込まれた。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 このシナリオは、『殲神封神大戦』第十七の戦場、渾沌氏『鴻鈞道人』と戦うシナリオのうち「その醜い醜い姿は」を元にした、一章のみで完結するボス戦シナリオ(難易度:やや難)です。

●戦場の情報
 封神武侠界、仙界は渾沌の地。
 地形はいまだ定まっておらず、景色は常に変化しているようです。
 ですが地形によって不利を得る事もありません。

●敵の情報:渾沌氏『鴻鈞道人』undefined(ボス戦)
 『骸の海』を自称する存在。
 目、鼻、耳、口の七孔のうち左目しか持たず、思念で話します。
 ユーベルコードの「undefined」は、発動直前(リプレイ執筆時)に変化します。

●プレイングボーナス:『鴻鈞道人の「詳細不明な先制攻撃」に対処する』
 このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
 これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。

●シナリオ攻略のコツ
 見た目を注意深く観察し、事前に伝承などを調査しておくと、渾沌の中にも攻撃方法が限られている事に気付けるかもしれません。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 団体様は【グループ名】を冒頭に記載願います。
 また、このシナリオに導入の文章はなく、公開後は直ぐにプレイングをお送り頂けます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』undefined』

POW   :    渾沌災炎 undefined inferno
【undefined】が命中した対象を燃やす。放たれた【undefined】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    渾沌解放 undefined infinity
【undefined】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    渾沌収束 undefined gravity
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【undefined】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

荒谷・つかさ
詳細不明、とは言ってるけれど……なるほど、「何が起きる」かは見えてる訳ね。
なら、対処のしようもあるってものよ。

鴻鈞道人のコードは「対象を燃やす」ものであり、炎を操るものなのは間違いない
であるならば初撃はできる限り防御しつつ甘んじて受けるわ
それに対しカウンター気味に【炎神憑依・火之迦具土神】発動、焔を纏った真の姿へと変身
私の身に放たれた炎を逆に喰らいパワーアップしながら襲い掛かる(「怪力」を活かした肉弾戦)
太陽光がある場所だと継続ダメージ受けるけれど、その分火力も増す(光熱を喰らう)ので、短期決戦狙いで一気にカタを付ける
(もっとも、理性が飛んでるので元から攻めることしか頭にない)



 仙界の最深部、「渾沌の地」には天地の疆も無い。
 離合集散を繰り返しては絶えず景色を變える無秩序の渦流に降り立った荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)は、目眩しく色が移ろう山河を跋渉して幾許――軈て靉靆と棚引く雲霞を掻き分けた向こうに、白き四翼を生やした怪物を捉えた。
「あの丸っこくてモチモチしてそうな白い塊が……鴻鈞道人で、骸の海……」
 彼奴が自称した通り『骸の海』であるなら、詳細が不明なのも理解る。
 七面鳥の丸焼きのような今の姿も、また姿を變えるのだろうと緋の麗瞳を烱々とさせたつかさは、刹那、四翼の羽搏きが此方に向かって「何かを放つ」のを聢と捉えた。
「……來る!」
 其はundefined――何かを知る事はかなわずとも、何かを放つのは見る事が出來る。
 初撃で見切ろうと半身に構えたつかさは、須臾にも滿たぬ時間の中、白い袋状のものがクルクルと螺旋を描きながら迫るのを捉えると、カッと刮眼して掌手に包み取った!
「挽肉状の餡を小麦粉の皮で包んだ、これは……餛飩(ワンタン)ね」
 其は嘗て「渾沌」とも書かれ、渾沌と語源を同じくすると言われるワンタン。
 つまり渾沌そのものであると納得したつかさは、ワンタンが掌中で赫炎を滾らせるより速くモグッと食べると、その厖大なエネルギーを燃やして眞の姿を解き放ッた!!
「侍の國の神話に記されし炎の神よ、渾沌を贄に、我が聲に應えたまえ」
 祕儀、【炎神憑依・火之迦具土神】(ホノカグツチ・ポゼッション)――ッ!
 轟々と熾ゆる炎に梳られた黑髪は雪華の如き白銀に、煌々と耀く額からは更に羅刹の角が二本、そして手足は血を浴びたように赫々と染まりつつ、鬼の異形と化していく。
 美し妖し女羅刹は、渾沌たる炎を纏って一層麗顔を輝かせよう。
「私に放たれた炎を逆に喰らい、パワーアップさせて貰ったわ」
 感情の色なき佳人は、灼熱に煽られる花顔に今や弑逆の微咲を浮かべるほど。
 強烈な燃焼熱と殺傷力を獲得したつかさは、それから次々と放たれるワンタンを馳走と食べつつ全速前進ッ! 四翼の獸に殴り掛かると、力いっぱい炎拳を叩き付けたッ!
「周囲の渾沌には太陽光もあるようだけど、光熱を喰らうだけ火力は増すから問題なし」
(いたいいだいいだだだだだ!)
「とまれ、盛大な饗應(もてなし)に感謝するわ」
(いだだん゛ん゛ん゛ん゛!!)
 短期決戰を狙うつかさに一切の容赦なし。
 光熱を喰らうごとに理性を手放した彼女は、戰闘種族らしく超接近肉彈戰に持ち込み、羅刹・オブ・羅刹の剛力炎拳をドスドス衝き入れ攻め立てる――!
(おぶぅっ、んばぁ! むぐう、プゴーッ!)
 醜く激痛を絞る渾沌は、己こそワンタンになってしまうと恐怖を叫び続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
物理的なものか、術の類いか
如何なる手段で攻撃してくるのか、今は不明であったとしても
私達の戦いの経験を活かして対処していけるはずです
先制攻撃を凌いだ後の隙を見極めてみせましょう

貴方の刃として全うする為に……倫太郎、任せましたよ

先制攻撃は倫太郎の背に回り、納刀して精神を集中して力を溜める
視力と見切りを活用して敵の攻撃手段を確認
基本は残像と受け流しで極力回避、倫太郎が援護する分は動かない
負傷時は激痛耐性にて耐える

彼が負傷しようとも、視線は敵から逸らさず
先制を終えた後の隙を窺い、私が駆け出すのを合図に反撃
早業の抜刀術『静風』に鎧無視・鎧砕きの力を加えて一閃


篝・倫太郎
【華禱】
詳細不明なぁ……
ま、そんでも先制してくるって判ってるならどうにかするさ

往こうぜ、夜彦
あんたの刃は必ず届かせる

先制対処
オーラ防御を展開しつつ
第六感も野生の勘も駆使して見切りと残像で回避
致命傷的な直撃が避けられればいい
夜彦の事はその辺度外視でジャストガードも使ってかばう
同時に敵の攻撃に癖や法則が無いか伝承なんかも参考に注意して観察
気付いた時点で夜彦と情報共有

盾ってな、攻撃を受ける為にあるんだぜ

負傷は激痛耐性と火炎耐性で対処
攻撃には常時生命力吸収を乗せて

防御力強化で篝火使用
敵の先制をやり過ごせたら
夜彦の攻撃タイミングに合わせて
同じ部位を部位破壊乗せて狙って攻撃
華焔刀には鎧砕きと破魔も乗せてく



 渾沌氏『鴻鈞道人』が司る空間には、天地の疆も光闇の彩も無い。
 万物が輪郭を結ばぬ「渾沌の地」に降り立った篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、離合集散を繰り返す雲霞を眺めつつ、其處に小さく溜息を混ぜた。
「undefined(詳細不明)なぁ……己が放つユーベルコードすら未定義なんて前代未聞だ」
 一体何を仕掛けて來るのやらと、目眩しく景色を變える無秩序の渦流を眺める彼の隣、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は靉靆と棚引く雲霞の向こうに烱瞳を注ぐ。
「物理的なものか、術の類いか……兎に角、鴻鈞道人が如何なる手段で仕掛けてくるのか発動の瞬間まで判らずとも、これまでの戰いの経験を活かして対處できる筈です」
「……だよな」
 斯く云う間にも、二人は着実に情報を集めている。
 天地の疆がなければ、地形に頼る戰術は採るまいし、若しか三次元的な機動を得るべく翼を生やしていようかと予想すれば、果たしてその通り――背に白い翼を備えた怪物が、渾沌の合間よりフヨフヨと近付いてきた。
「ん、なんか丸っこくてモッチリしてんな……」
「山海經に記される渾沌の姿に彷彿(そっくり)です」
 其は『渾沌の諸相』を無秩序に発現した姿のひとつ。六脚四翼の異形。
 これも時を経れば變わると思えば、いま見える形状から攻撃を予測すべきかと、逸早く前に踏み出た倫太郎は、夜彦を背に隱し、盾と構えて初撃に備えた。
「先制攻撃は俺が凌ぐ。夜彦、あんたの刃は必ず届かせる」
「貴方の刃として全うする爲に……倫太郎、任せましたよ」
 互いに役儀は心得ている。
 盾は盾として、刃は刃として尽力すべしと、前後列に別れて防禦態勢を敷いた二人は、間もなく耳を掠める羽搏きに全神経を傾注させた。
(「來る。――遠距離攻撃だ!」)
 短い六本の足を使っての攻撃は限られるとの読みは剴切。
 片腕に嵌める『碧水玉』を前に迫り出してオーラを高めた倫太郎は、更に【篝火】――篝の焔、西賀の水、斎雁の風なる三属性の神力を以て我が身の護りを高めると、オーラの厚みを増し、今こそ形を得る先制攻撃に対峙する。
 この時、堅牢にして強靭なるオーラの盾を破れる攻撃は自ず絞られよう。
 風刃や衝撃波で無し、その障壁すら貫いて飛び込む何か楔のようなものを寸でに躱した倫太郎は、眦尻を過ぎる影を聢と捉えた。
「これは……風切羽か! 翼で空気を搏いた瞬間に羽根を射るんだ!」
 宛如(まるで)矢雨だと驚く倫太郎は、頬に裂傷を掠めるも凛然たる表情はその儘。
 赫々とした血滴が烈風に踊ったのも一瞬、渾沌の放った風切羽が忽ち炎と熾えたなら、倫太郎は肌膚を灼く焦熱を手の甲に拭い消しつつ、猶も射掛けられる羽撃に耐える。
 致命傷だけは避けつつ、灼ける痛みを堪える彼に渾沌は問おう。
(罪深き刃を刻まれし者よ。なぜ嗤笑う)
「そりゃ、あんたのユーベルコードが見切れたからさ」
(見切ったなら避ければ佳いものを。私は再び未定義となって攻めるのみだ)
「なぁ。盾ってな、攻撃を受ける爲にあるんだぜ」
 盾に受け続けている裡は“熾える風切羽”は形状を變えまいと、“undefined”の形状と性質を維持しているのだと咲む倫太郎。思念で話す手合いだが、倫太郎の戰術を読む事は出來まい。
 而して彼の背には、納刀したまま精神を極限まで集中させた夜彦が、深く腰を落とし、鼻緒を強く踏み締めて力を溜めている――。
「敵の先制を凌いだ後の隙、必ずや見極めてみせましょう」
 櫻脣を滑るテノール・バリトンの冷艶なること怜悧なること。
 眼前の倫太郎が鮮血を疾らせようとも、彼の右肩口から鋭い光を射る藍瞳は烱々煌々、眞直ぐ純白の四翼に結ばれており、己の外套を切り裂く羽根などは皆目無視だ。
「倫太郎が渾沌の形姿から攻撃手段を絞り、更に先制攻撃を受け切って下さったお陰で、角度、射線、時宜……全てを揃えた一撃が放てます」
 竜胆の士は生地を裂かれた『宵衣』が其處から炎熱を広げゆくのを頬に受け取りつつ、一縷と亂れぬ呼吸の中で抜刀すると、さや、と――驚くほど靜かな劍閃一筋を放った。
「狙うは、刹那」
 仕留めるは、抜刀術『静風』――!
 拇指球を踏み込めた爪先が滑るように躯を進ませた矢先、すらりと抜かれた『夜禱』が曇り無き刃を輝かせる。
 極限まで集中した夜彦の心中を顕すか、明鏡止水の劍閃は忽ち雲霞を吹き払い、その先に飛翔する怪物の六肢四翼を斬ッた――!!
(ッ、ッッ……!! 莫迦な、渾沌そのものである私の輪郭を捉えるなど……!)
「これぞ貴人が言う“罪深き刃”の力。勿論、私だけのものではありません」
(ッ……ま、さか……ッ……!!)
 鴻鈞道人は怪物と化してなお「穴」は一つ、左目しか持たぬものの、我が血に染まれる視界を裂いて飛び込む追撃には、時間(とき)が止まったかのよう。
「倫太郎」
「おう」
 距離を取って先制攻撃を見極めた後は、一足で間合いに踏み込んでの近接戰――!
 夜禱が鋩を眞直ぐに衝き入れると同時、射線を同じくした華焔刀 [ 凪 ]が全き同じ部位を剔抉し、渾沌の渾沌たるを封じる「新しい穴」を穿つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

桃源世界を救う為に…
そして…混沌の化身を討ち倒す為に…
何であろうとやるしかあるまい…!
行くぞ…我が名はアンナ!処刑人が娘也ッ!

緋色の天使を翳し
[天候操作]で嵐を起こし敵放つ邪悪な混沌の炎を吹き飛ばし
霊剣振るい混沌の炎を[破魔で浄化]したら
我が身切り裂き噴出する地獄の炎の糧として喰らい
[生命力吸収し力溜め]よう

混沌たる炎のもてなしに感謝する…
御礼として…左目を潰してやろう…!

力溜めたら【ゲヘナ・フレイム】を発動し
[空中浮遊]で宙へと舞い敵の顔面に飛び込み
地獄の炎纏わせた霊剣振るい敵の左目に目掛け突き刺して
[怪力で傷口をえぐり]脳漿深く貫いてやろう…!

今はただ混沌に帰れ…ッ!



 仙界の最深部に結ばれた予兆(ヴィジョン)で、猟兵は事の眞相を知った。
 封神台を破壊したのは張角だが、かの小人を使嗾したのが『鴻鈞道人』――この者こそ黑幕だと知った仇死原・アンナ(処刑人 魔女 或いは焔の花嫁・f09978)は、彼奴の罪の重さを靴底に踏み締めつつ、巨劍『緋色の天使』を担いで現れる。
「……人界と仙界、双の世界を救う爲に……そして……『骸の海』を名乗る混沌の化身を討ち倒す爲に……何であろうとやるしかあるまい……!」
 黑々と煌めく烱瞳を投げ込み、絶えず景色を變える無秩序の渦流を睨めるアンナ。
 天地の疆なき渾沌の地、靉靆と棚引く霞の向こうに空気を搏く音を聽き拾った佳人は、間もなく現れた六脚四翼の怪物に、巨劍の鋩を突き付けて云った。
「……お前が鴻鈞道人か……行くぞ……我が名はアンナ! 処刑人が娘也ッ!」
 丸くモッチリしたフォルムは、『渾沌の諸相』を無秩序に発現した姿のひとつ。
 その姿も軈て輪郭を曖昧にしようか、今見る形姿に攻撃方法を見極めんと烱眼を絞ったアンナは、間もなく視界に飛び込む何か白い塊に、須臾、巨劍を盾と差し出した。
 四翼の羽搏きと共に放たれる、湯気を帯びた其は――。
「ッ! ……小麦粉の皮に挽肉の餡を包んだ、これは……餛飥(ワンタン)!」
(然り。餛飥は嘗て渾沌と書かれ、渾沌と起源を同じくする……つまり私そのもの)
 云うや、命中を得た巨劍に轟ッと炎が蹴立つ。
 次いで間隙許さず撃ち込まれるワンタンを刃鳴一閃して薙ぎ払った佳人は、己の周囲に烈々と広がる炎を吃ッと睨めると、今度は力いっぱい巨劍を振り回して嵐を巻き起こし、一気に吹き掃った。
「邪悪な混沌の炎め……我が身を流れる地獄の炎の糧として喰らって遣ろう……!」
 破魔の霊氣を潜らせて浄化した後は、己の熱量として取り込む。
 巨刃を左腕へ滑らせて雪膚を切り裂いたアンナは、濤と繁吹く地獄の炎に渾沌の炎熱を呑み込ませると、白皙を煌々と照らしつつ云った。
「混沌たる炎のもてなしに感謝する……御礼として……左目を潰してやろう……!」
(罪深き刃を刻まれし者よ。私を断獄するか)
「然うだ……脳漿深く抉り貫いてやる……!」
 獄炎に照る花顔麗姿の美しきこと恐ろしきこと。
 鴻鈞道人が唯一の視穴たる左目に見れば、処刑人たる矜持を炎々と熾やしたアンナは、【ゲヘナ・フレイム】――虚空を翔けるや最高速度12,000km/h、マッハ9.6にも及ぶ速さで敵前に踊り掛かり、地獄の炎を迸る赫刃を突き立てたッ!
「今はただ混沌に帰れ……ッ!」
 罪には罰を。目には獄炎と激痛を。
 炎を哮る鋩を深々と沈めた処刑人は、絶叫の代わり夥多しい血量を受け取るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
全てが未知ならば…私は速度で対応したいと思います。
いつものようにリミッター解除後に限界突破と多重詠唱。
速度と威力を継戦能力で維持して【地擦り一閃『伏雷』】。

隻眼ではありますが視認で動きをみているのならば問題ないはず。
普段よりも速度の限界を突破してみようと考えています。
どんな攻撃でも回避してみせる…という意思を籠めて速度を上げます。
目だけではなく感覚でとらえてくるように思っているので。
この存在の片腕くらいは『兼元』で斬り分断しようと思っています。
ロベルタさんとの連携と協力は必須で。私だけでは勝てないと思います。
…あ。考えずにその場の思い付きで攻めてみようと思います。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
身体パフォーマンスを整えた後で封印解いて限界突破。
で多重詠唱しながらダッシュして【雷神の大槌】を。
脚に重量攻撃に鎧砕き鎧防御無視を加えて墨ねーと連撃。

いつもみたいな連携とは通用しない気がするじぇ。多分。
だから。
僕は墨ねーの身体の陰からとか斬撃を潜り抜けてとかする。
斬撃無視して無理やり割り込む形になるから危ないけどねぃ。
こーでもしないとこの片目さんには通用しない気がするんだ。
自分が斬られるよーなギリギリなことしないと触れられない。
初めは墨ねーも驚くと思うけど…解ってくれるはず!
2回攻撃で連撃したりフェイントも加えてみようかな。



 仙界の最深部、「渾沌の地」に降り立つ。
 天地の疆なき其處は光闇も色彩も渾然としており、幽邃の湖畔を見たかと思えば櫻霞が芬々と広がる――消して定まらぬ景色を数歩も進めば、猟兵とて座標を見失うだろう。
「墨ねー……手を繋いでもいい?」
「……はい……あまり……離れ……ない……うに……ましょう……」
 そうっと伸びる小さな手を、優しく包み込むも華奢な手。
 渾沌の地では自分達を座標とすべしと隣り合ったロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)と浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、揃いの麗瞳を周囲に巡らせ、離合集散を繰り返す雲霞の向こうをジッと見た。
 目下、眼路に広がるは残酷なまでの無爲――無秩序の渦流。
 これだけの朦然にあれば、佳聲は互いの存在を確かめるように交されよう。
「……鴻鈞道人は……姿も……ユーベルコードも……全て、が……未知…………」
「うーん。いつもみたいな連携とは通用しない気がするじぇ。多分」
「……強さ、は……勿論……現時点……で……ぼす……手段は……無い、と……」
「そもそもオブリビオンじゃないって本当かなぁ?」
 思い起こされるのは、此處に來るまでに視た予兆(ヴィジョン)。
 小人張角に封神台を破壊させた張本人、『鴻鈞道人』は渾沌であり、世界の外に広がる『骸の海』を自称していた。
 此度、左目を得て存在を顕したらしいが、かの者もまたこの地のように形は定まらず、ユーベルコードすら発動するまで判然らないというのは過去にも例を見まい。
 だが然し、嘗てない手合いだからと怖ける二人でも無かろう。
 墨は濃霧に姿影を遮られる中、ロベルタの繊手をきゅっと握り、而して同じだけの力を返してくれる頼もしい相棒に云う。
「……私、は……速度……で……対應……たい……と……思い……す……」
「う! 僕も臨機おーへんに、機動力を活かしてみるねぃ」
 肝要なのは、初撃を見切る爲の時間(とき)の猶予。
 迅速と俊敏で何とか切り抜けんと、精神集中して己の魔力・戰闘能力を底上げした墨とロベルタは、目眩しく色を移ろわせる渾沌の地を進んで幾許――朦々と靉靆(たなび)く雲霞を掻き分けた向こうに、四翼を羽搏かせて浮遊する怪物を捉えた。
(來たか。罪深き刃を刻まれし者達よ)
 思念を以て話し掛ける無形の異形こそ、渾沌氏『鴻鈞道人』。
 丸っこくモチモチしたフォルムに六脚四翼を備える今の姿は、『渾沌の諸相』を無秩序に発現した姿のひとつで、地誌『山海經』に記される渾沌氏の姿だ。
(「……ロベルタさん。……あの……形態は……近接戰に……向い……ません……」)
(「う。ずんぐりむっくりな脚じゃ蹴れないもんねぃ」)
 今の得意は遠距離戰。攻撃はこの距離で仕掛けて來ようと予測した瞬間だった。
 純白の四翼が強く羽撃いた刹那、空気を搏く音と共に広がるは無数の「ワンタン」で、アツアツの湯気を迸った其が、幾何学模様を描きながら二人へ襲い掛かる――!
(嘗て渾沌と書かれ、渾沌と起源を同じくする餛飥は私そのもの)
 渾沌に搏たれて落命するが佳い、と――唯一の視穴たる左目が鈍色の光を帯びる。
 其は初見では躱しようの無い包囲攻撃であったが、事前對策を充分に、鋭い洞察で攻撃を予測した二人なら、小麦粉を伸ばした四角い皮に包まれる事は“無い”。
「……その左目……無爲の……渾沌が……『視力』を……得た……と、……うこと……」
 隻眼とはいえ、動きを「視認」しているのだと左目を見るは墨。
 視聴食息の穴を得るとは、無爲から有爲へ――渾沌を手放す事に他ならぬと言い切った佳人は、鼻緒を踏むや超スピードで包囲を抜け、ジグザグとした動きで敵を撹亂した。
 而して墨の背に身を隱したロベルタも、絶影の機動を巧みに捺擦ろう。
「ワンタン? とにかくその白いのを、ギリギリで潜り抜けるじょ!」
 進路を違えず。
 座標を一つに。
 包囲網を突破する。
 墨の影に身を置くような立ち回りは、普段以上に技能を必要とするが、攻撃の直前まで引き付けておきたいと神速を追ったロベルタは、間もなく疾る霹靂閃電に息を合わせた。
「……八雷の名の元に……」
 雲霞を颯ッと吹き掃うは、地擦り一閃『伏雷』(フスイカヅチ)――!
 大刀『真柄斬兼元』を抜くや、555m直線上にあるワンタンを悉く斬って駆けた佳人は、雷光を帯びる刃を振り抜き、一瞬で切り離された六脚が宙に舞うのを眦尻に流す。
 どんな攻撃でも回避し、必ずや斬らんという想いが六脚全てを分断したか、鴻鈞道人が痛撃に躯を強張らせた刹那、四翼が一瞬で爆ぜ、無数の羽根が虚空を踊る。
 ――ロベルタだ。
「こーでもしないとこの片目さんには通用しない気がするんだじょ!」
(……ッ、ッッ……ッ――!!)
 インパクトの瞬間を揃えんと目下の斬撃に割り込んだロベルタは、墨の幾許か喫驚した表情を見つつ、【雷神の大槌】(ミョルニル・ハンマァー)ッ! 四翼全てを550m上の射線に捉えると同時、雷槌の如き蹴撃を放って散り散りにした――!
 一瞬でも時を違えれば危険な同時攻撃だが、決して一人では勝てぬ相手を打ち倒すには――undefinedを攻略するには、此方もundefinedであるべきだとも思う。
 故に次なる攻撃は全くの無爲、その場の思い付きで、
「そんでもって……もーいっちょ!」
「……合わ、せ……ます……」
 然しピタリと揃った斬撃と蹴撃が、ずんぐりした躯を虚空へ衝き飛ばすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
唯其処に在るだけならば過去とて害では無かろうが
未来に徒成す骸の海として在るなら放置は出来ん

伝承にある渾沌の姿とは些か異なる様だが
「容」があり「権能」を使うものならば却って対処の仕様がある
うねる炎、伸縮する触手、あの手の代物の動きは能く識る処だ
何より渾沌は「円の動きをするもの」
円描く軌道と直線の伸縮を目安に攻撃方向を見極め見切り
致命と行動阻害に成り得る攻撃は躱すに努め
引く動きの兆候が見えた瞬間こそ仕掛け処
――刑牲逸返、逃しはせん。確と受け取れ
間髪の隙間を縫い一撃でも当たれば十分……
自身の攻撃、全て自身で味わうが良い

今は届かずとも何れ必ず其の身に刃を届かせてくれよう
過去に追い墜とされる未来なぞ無い



 かの者曰く、己はオブリビオンに非ずと。
 次いで曰く、己は万物が生きる爲に踏み締めて來た過去であると。
 而して曰く、己は渾沌氏――即ち『骸の海』であると。

「……炎の破滅を見たいと云っていたが、張角に封神台を破壊させたのも其が理由か」
 仙界に結ばれた予兆で事の眞相を知った鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、かの者の言が全て眞実であるならば、猟兵は新たな局面に立たされようと緋の烱瞳を鋭くする。
 眼路に広がるは、離合集散を繰り返す雲霞――光闇も疆界も定まらぬ「渾沌の地」は、数歩も進めば景色を變える無秩序の渦流にて、かの者の稟性そのものだと冷視した彼は、靉靆と漂う霞の間より現れた隻眼の男に、嚴然と隔絶を置いた。
「唯だ其處に在るだけならば、過去とて害では無かろう。だが未來に徒成す『骸の海』として在るなら、放置は出來ん」
(罪深き刃を刻まれし者よ。相爭う事は出來ても、私を滅ぼす事は永劫かなわぬ)
 思念を介して語り掛けるこの者こそ、渾沌氏『鴻鈞道人』――。
 伝承にある姿とは些か異なるが、これも渾沌の諸相を無差別に発現させた姿の一つで、時を経れば變わるものと佳脣を引き結んだ嵯泉は、「現在の姿」より繰り出される攻撃を予測し、その初動を見極めんとする。
(無駄だ。私は常に渾沌として存在し、ユーベルコードすら定義を得ぬ)
 脳に呼び掛ける言には惑わず、人型の躯、体側に繋がる腕が僅かに動く兆しを見る。
 歴戰の猟兵ならでは、一気に延伸する兩腕を半身を引いて躱した嵯泉は、五指の鋭爪が我が頬を掠めるのも構わず、そのまま鞭と撓り出す触腕を身を低くして遣り過した。
 無窮に伸びる腕を距離でなく高低で躱すあたり、捌きを佳く心得ていよう。
「無形とはいえ作用を齎す時には定義が要る。何より渾沌は『円の動きをするもの』だ」
 延伸する時には螺旋に、伸びては躯を中心に円の軌道を描く筈――。
 渾沌に隱される「方向性」を見事に見切った嵯泉は、側面からの強襲を寸でに躱すと、冱刀『秋水』の鯉口を切るや刀身を鞭状にし、鴻鈞道人の左腕に絡ませる。
「――刑牲逸返、逃しはせん。確と受け取れ」
(ッッ……私の【渾沌解放】を逆に捺擦るようなこの動きは……ッ!)
「己の攻撃、全て己の身で味わうが良い」
(ずぁァァアア嗚呼ッ!!)
 間髪の隙間を縫い、蛇の如く肩口に巻き付いた刃撃が螺旋を描いて斬り刻む――!
 口無き渾沌が痛撃に叫ぶ中、片腕を斬り落とした彼は血濡れた銀刃を突き付け、
「今は届かずとも、何れ必ず其の身に泯滅(ほろび)を置いてくれよう。絶えず運ばれる時に於いて、過去に追い墜とされる未來なぞ無い」
 次は右腕だ、と――。
 云うや鞭撃亂舞が鮮血を躍らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リダン・ムグルエギ
アタシ、事前準備派だから相性悪そうな相手ね…
でも、せっかくだもの
イケメンに見つめられるご褒美のついでに
その眼に一穴穿ちましょうか

服飾師の戦術は…この白一色の世界に溶け込むこと
純白の上着で挑み、現地で周囲の色に早業で塗り揃えるわ
靄をイメージしたような見えづらい催眠模様を施せば
左目で『見て』の攻撃は精度は落ちるハズ
刃や羽の攻撃を予測し防刃強化を施した服で被害を抑えるわ

そして
白い上着を脱ぎ捨て中の赤い服を見せつけるの
白い世界の中に落とした一滴の赤
その塗料を左目に焼き付ける
視界を通した人心操作の催眠術よ

その白けた眼を赤く興奮させ世界を色眼鏡で見なさいな
焦りや怒りが生む事で
後の人が戦い易くなるのを狙うわ



 骸の海が何を切欠に、或いは誰から左目を得たか知らないが、人型に具現化した渾沌氏『鴻鈞道人』は、世界を跨いで活躍するトップデザイナーが出向く程にはイケメンだ。
「成程ね……無造作ヘアから覗く月色の瞳が虚ろげで、中々に雰囲気があるわ」
 仙界の最深部、渾沌の地くんだりまで來た甲斐があると、ふむふむ頷きつつ眼福を得るリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)。
 蓋し事前準備派の己とは相性が悪いとは自覚していよう。
 モデルに勧誘するにも正面きっては不味いと、交睫ひとつして視線を外したリダンは、羊蹄を蹴るや左回りに弧を描くようにして疾った。
(罪深き刃を刻まれし者よ。滅びぬ私に邂逅して何とする)
「殺伐とした毎日に、せめてご褒美を貰おうと思ったのよ」
(ならば呉れて遣ろう。私が望む炎の破滅、その熱き滾りを)
「あら、ありがとう。お熱いのを……あ゛っづい゛!!」
 目下、発動する事で定義を得たのは餛飩(ワンタン)――嘗て渾沌と書かれ、渾沌と起源を同じくするアツアツの物体がリダンを囲繞するが、「あつ!」と悲鳴が響いたのもそれまでの事。離合集散を繰り返す雲霞の向こうに、佳人の姿は見当たらない。
(……何處だ。常に色彩と輪郭を變える渾沌の地に身を隱す場所は無かろう)
 慥か白い衣を羽織っていた筈と、鴻鈞道人は左目を動かして無秩序の渦流を見渡すが、その渾然にこそ溶け込んだリダンを見つけるのは至難の業。
(「世界を塗り込めるでなく、自身を塗り替える。それがアタシが出來る臨機応変よ」)
 絶えず移ろう景色に合わせ、素早く色を操って我が身を馴染ませる。
 更に朦然と靉靆(たなび)く靄も写し取って催眠模様を描いた服飾師は、己を探そうと凝視するうち、餛飩の熱量と操作性を下げゆく鴻鈞道人に、そっと口角を持ち上げた。
(「あなたが左目を得たのは、私にとってもラッキーだったわ」)
 イケメンと具現化した姿を拝めた事か。無論、それもある。
 だがそれ以上に、暗示使いとして「視覚」を攻められるのだと微咲を湛えたリダンは、須臾に上着を脱ぎ捨てると、中に着込んだ赤い服を堂々見せつけた。
(――其處か! 今度こそ、渾沌に……餡の如く……包んで……)
 雲霞が白々と棚引く中に差した一滴の赤が、鴻鈞道人の視線と眞直ぐに結ばれる。
 たった一滴の塗料が、眼路いっぱいに色を広げるように見えるのは、感覚を操られたか――渾沌の中から赫々と滾る焦燥と嚇怒を生み出された鴻鈞道人は、畢ぞ冷艶を手放さぬリダンの佳聲に煽られ、目下、ハッキリと射線を浮かび上がらせた。
 後の人が戰い易くなるなら、彼女は的になる事も躊躇わぬと敵前に立ち、
「その白けた眼を赤く興奮させ、世界を色眼鏡で見なさいな」
 物理的な一穴を穿つのは、面倒だから他の人に任せるけど、と――。
 常と變わらぬダルいテンションで、飄々と云ってのけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

煙草・火花
なんと面妖な……!
しかし、こうして相対したならば全身全霊で打ち払うまでであります!

正体不明とは厄介でありますが、まったく何も分からないというわけでならないのならば打つ手はあるのであります
どのようなものであれ炎で燃やすのであれば耐熱式外套の【火炎耐性】は有効な筈
加えて彼奴めにあるのは左目のみ
その視線の動きに注視すれば多少は狙いの予測も立てられるのであります!
外套で身を包みながら、傷は【覚悟】の上で攻撃の薄い場所を一気に駆け抜け、懐まで踏み込むのでありますよ!

長期戦はするつもりもなし
間合いに踏み込めば全力の一閃をお見舞いであります!
狙うのは無論その左目!



 仙界の最深部、「渾沌の地」に結ばれた予兆(ヴィジョン)を介して事の眞相を知った煙草・火花(ゴシップモダンガァル・f22624)は、本人を直撃すべく現地へ、絶えず景色を變える無秩序の渦流を進み往く。
「これは面妖な……! 桃の園に踏み入れば、一歩にして幽邃の湖畔となるとは!」
 色彩も輪郭も定まらぬ渾然の中、青の彩瞳をぱちくりと瞬く火花。
 その双瞳を凛然と研ぎ澄まして渾沌へ投げ込めば、離合集散を繰り返す雲霞の奥より、張角に封神台を破壊させた當事者が、渾沌氏『鴻鈞道人』がゆうらと影を顕した。
(罪深き刃を刻まれし者よ。滅びぬ私に何をしに來たというのだ)
「……なんと、面妖な……!」
 火花の思念に語り掛けつつ、人型から獸型へと輪郭を移ろわせる鴻鈞道人。
 渾沌の諸相を無差別に発現させた姿の一つ、地誌『山海經』に描かれる六脚四翼の怪物に變容した鴻鈞道人は、左目に火花を捉えるや、四翼を羽搏き何かを撃ち出したッ!
(相爭わぬなら、せめて私に炎の破滅を見せてくれ)
「ッ! しかし、こうして相對したならば、全身全霊で打ち払うまでであります!」
 其は“undefined”、発動するまで定義を得ぬ渾沌であるが、全く判然らないという訳では無いと奮い立った火花は、拇指球を踏み込めて構えると、ヒラリ外套を翻した。
「その短い脚で近接戰は無いと思いましたならば……この熱、この湯気!」
 現在の姿から出來うる攻撃を予測し、空気を搏つ音に合わせて身構える。
 瑠璃色の瞳を烱々として光熱の塊を注視した火花は、外套にポヨンッと命中した白塊にハッと櫻脣を開いた。
「四角い皮で餡を包む、これは……餛飩(ワンタン)!」
(然り。嘗て渾沌と書かれ、渾沌と起源を同じくする餛飥は私そのもの)
 炎熱に耐性のある外套でなければ躯ごと丸呑みにしたであろう餛飩は、着地した地点から更に延焼する爲、火花は炎獄に囲繞されるより速く駆け出す。
 その絶影の機動も間もなく餛飥の連続射出に追い掛けられるが、轟然と蹴立つ炎焔に煽られつつも、佳人は決して冷靜を手放さない。
(「……左目が小生を追っている樣でありますが、片目では死角は大きいかと……!」)
 畢竟、渾沌が左目を得たのは失策であったとは、七◯◯式軍刀丙が知らしめよう。
 渾沌の景色に紛れて鯉口を切った火花は、敢えて烈火の中を駆けて一気に肉薄すると、【帝都桜學府流剣術 桜火ノ型 伍式 飛遊星】――ガスの爆発で得た推進力を乗算して刃鳴一閃ッ! 轟と膨れ上がる赫炎の世界より魚鱗と煌めく刃光を差し入れた!!
「全力全霊の一閃、狙うは無論その左目!」
(――ッ、ッッ――!!!)
 畢竟、叫喚を哮る口穴があれば佳かったものを。
 全身を強張らせた怪物は、視界を眞赫に染めて時間(とき)を止めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
連携・アド可
すまぬな渾沌氏
この戦場のお前は知るべくもないが俺はあなたに取り込まれた恩義がある
…それに報いさせて貰いに来た
…あなたが南海の帝である儵と北海の帝である忽を篤くもてなし
彼等が其れに報いるべくあなたに7つの穴を穿ち、あなたを骸の海に屠ったのと同様に
嗚呼、安心してくれ
俺は、7つもあなたに穴を穿ちはしない
【SPD】
俺が識るあなたの形は、白き天使の翼、白きおぞましき触手、白き殺戮する刃の3つ
なれば戦闘知識と情報収集と経験則で
ある程度その動きを推測出来る筈
想定外の事態も含め現在の状況は常に情報収集し
第六感+見切りで見定めオーラ防御を展開、被害を最小限に食い止めて
周囲の地形を軽業やジャンプ、ダッシュを駆使して利用、本体に肉薄
今のお前の本体は左目
それさえ分かればお前の攻撃の軌跡は読める
蒼月、月下美人を抜刀UC発動
2回攻撃+串刺し+薙ぎ払い+鎧無視攻撃+斬撃波+追撃+カウンター
四刃を決め渾沌氏を殺す
…形無き物に、形を与えること
それがあなたの言う俺達『罪深き刃』を刻む者
の、真意なのかも知れないな



 仙界の最深部、渾沌の地に降り立つ。
 ――いや、此處は天地の疆も無き無秩序の渦流にて、己が靴底が何を踏み締めるのかも判然らぬと、霞を漾わせるばかりの足元に視線を落とした猟兵が、朦然の中を往く。
 ひとたび幽邃の湖畔に踏み入れば、もう一歩を進めた時分には碧玉の天壇と變わる――決して定まらぬ景色を眦尻に流しつつ進んだ彼は、軈て離合集散を繰り返す雲霞の奥に、茫乎として立つ『鴻鈞道人』を見た。
 自ず開いた佳脣は、かの者に短く言を置く。
「――すまぬな渾沌氏」
 其は玻璃の如く澄めるテノール・バリトン。
 聲の主たる北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は、颯ッと吹き抜ける涼風に艶髪を梳らせながら、搖れる前髪の奥、冱ゆる黑瞳に無形の異形を映して云った。
「この戰場のお前は知るべくもないが、俺はあなたに取り込まれた恩義がある」
 その恩義に報いに來た、と――眞直ぐに射られる双瞳に一縷の曇りは無し。
 我が身を抜身の刀の如く、月光と白む殺氣を滾々と迸發(ほとばし)らせた優希斗は、『荘子』は内篇應帝王篇第七『渾沌』に記される伝承を借りて誓いを立てた。
「南海の帝である儵と北海の帝である忽に倣い、あなたに死竅を鑿つ」
(……儵と忽か)
 どちらも僅かな時間しか持たぬ者だと、初めて思念で語る鴻鈞道人。
 儵と忽は饗應(もてなし)に報いるべく日に一竅を鑿ち、無爲を有爲に、七日にして渾沌を死に至らしめたと云われるが――、
「嗚呼、安心してくれ。俺は、七つもあなたに穴を穿ちはしない」
 七竅七日も要らぬと、懸瀑と立ち昇る闘氣に麗顔は愈々白む。
 而して烱々と研ぎ澄まされる優希斗を見た鴻鈞道人は、絶えず色彩と輪郭を移ろわせる無秩序を白翼の羽搏きに混ぜると、輪郭を朧ろにした無数の羽根を撃ち出したッ!
(儵忽がその後、如何なったか知っていようか)
「――ッ」
 眼路いっぱい襲い掛かる渾沌の羽根は、實は優希斗は知っている。
 凝縮された時間の中で己が培った戰闘知識を逸早く汲み上げた彼は、距離でなく高低で躱すが剴切と、身を低くして轉がりざま、かの者の次なる變化を注視する。
(「俺が識る限りでは、白き天使の翼、白きおぞましき触手、白き殺戮する刃の三つ」)
 其の全てが『渾沌の諸相』を無秩序に発現した姿だとは知識が、その形態に應じた攻撃を仕掛けて來るとは経験で學んでいよう。
 視覚より得られる情報から攻撃を推測した優希斗は、磨き上げた勘と感で見切りつつ、雲霞を裂いて飛び込む羽根を回避し、或いは鞘に払い落としながら、己の動きに合わせて動く「左目」に戒心を萌した。
(「今のお前の本体は左目……骸の海が具現化する発端となった視竅だ」)
 視線は光の軌道であり攻撃の軌跡であると、彼は視覚を有する者として識っている。
 如何に變幻と姿を變えようと、左目に「視る」限り其は搖らがぬと確言した優希斗は、次いで六脚四翼の怪物と化した鴻鈞道人に向かって一氣肉薄――! 腰に収まる妖刀魔刀の鯉口三寸を押し拡げた。
「其は、生でもなく、影でもなく、只、虚空の死を与えし蒼穹の舞踊」
 刃鳴閃々、【秘技・蒼龍昇滅覇】――ッ!
 拇指球を踏み込むなり縮地を得るのも業なら、彈ッと踵を蹴るや柳腰を内捻して二刀を抜くのも業。而して暴かれる『蒼月・零式』と『月下美人』の白光も妙々たるもの。
「泯滅(ほろび)を與える事はかなわずとも、殺す事は出來る」
 繊麗の躯を輕々と躍らせて虚空を舞った優希斗は、宛如(まるで)秋水を遡上る魚鱗の如き白線一条に渾沌を払うと、全てが白く變わりゆく世界に閃々、刃を飜す――!
(ッッ……正に儵であり忽であると……!)
 左目に光の舞踊を見た六脚四翼の怪物は、斬撃を疾らせる魔刀に刹那を、刺突する妖刀に須臾を映したか。次いで透徹たる刃と白銀の鋩が赫く染まるまでを見る。
(……ぐッ、ぁ嗚呼ッッ……ッ!!)
 或いは若しか、悲鳴を叫ぶ口竅があれば佳かったものを。
 蒼穹の残影を放つ蒼龍昇滅覇は二刀二閃して合計四回、四刃全て命中を得れば死を齎す冱撃だが、そのうち三刃を喰らうだに怪物はどぶり鮮血を迸る。
 一刃に六脚を全て斬られ。同時に閃く一刃に四翼の悉くを切り離され。
 身を切り裂くような激痛に躯幹を強張らせた異形は、幾許の時間を止めたか解らぬが、輪郭を解いて別なる姿を得るより速く「左目」に鋭鋩を沈められる。
 而して濤と繁吹く赫々しき血を白皙に受け取った優希斗は、猛然たる斬撃とは眞逆に、靜かに穩やかに科白を囁(つつや)いた。

「……形無き物に、形を与えること」

 品佳い鼻梁は鋭刃に裂かれた左目に結ばれた儘。
 生温い血に滑る手は強く強く柄を握り込んで。

「それがあなたの言う俺達『罪深き刃』を刻む者の、真意なのかも知れないな」

 漸う肌膚を伝う血潮が、涼風に撫でられるうち熱を手放す――生々しく冷ややかな感触を感じつつ、一語一句を確かめるように云った彼は、片や言葉にならぬ叫喚が我が思念に滿ちて消えるまで、沈默の裡に聽き届けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
伝承や神話の類は苦手でね。勉強はお断りだ。
無謀だって?なに、今までの戦場でも散々やってきた事さ。

詳細不明のUC。あっさりやられて一発退場、なんてダサい真似は勘弁だ。
放たれるUCは【見切り】で補う。魔剣で黒銀の炎の【属性攻撃】をぶつけて【焼却】。相殺を狙うぜ。
…へぇ、その炎、アンタの神話や伝承に由来するモンかい?勉強不足で悪いが、どうやらこの先も読む事は無さそうでよ。由来の一つでも教えてくれよ。

言葉を袖にされても別に気にしない。肩を竦めて見せるだけ。
変わりと言っちゃなんだが。俺のUCも披露するぜ。こいつの由来はな――『気に入らねぇヤツをぶちのめせ』っていう俺の魂の叫びさ。
不利な状況は既に含まれてる。UCの詳細が不明って部分だ。
上昇した身体能力で一足で間合いを詰める。至近距離で顔らしきモンに、右手の銃口を向けるぜ。銃口に紫雷がバチリと爆ぜて。極大の一発を放つ瞬間にヤツの片目に映るのは俺の笑みってワケだ。

ハハッ。折角、顔面が綺麗に無くなったんだ。次はもっとイケメンに作り直すのをオススメするぜ。



 凡そカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)という男は、試験の前にせっせと本を読み、默々とペンを走らせるような勉強家では無かろう。
 一夜漬けの知識より、これまで培ってきた度胸の方が遙かに役立つと経験で識る彼は、目下、眼路いっぱいに広がる無秩序の渦流を悠然と見渡した。
「桃の園に踏み入ったと思えば、もう一歩踏み進めた時には幽邃の湖畔に變わる、と……こう景色が定まらないのも、飽きなくて佳いんじゃねぇか」
 ホストに招かれたなら、先ずは家を褒めるのがゲストのマナー。
 天地の疆も光闇の彩も無し、万物が輪郭を定めぬ「渾沌の地」も中々に面白い場所だと余裕の微咲(えみ)を浮かべた麗人は、肝心の主は迎えに來ないのかと片眉を持ち上げ、藤紫の麗瞳を雲霞の向こうに注いだ。
「左目を得たんだろう? 見に來いよ」
 アンタが云う『罪深き刃を刻まれし者』が來たのだと、兩手を広げ姿を見せつければ、伸びやかなテノール・バリトンが澄み渡って幾許――渾然の空間を司る主が、離合集散を繰り返す雲霞の間から影を現した。
(私が左目に見たいのは相爭競食であり炎の破滅である)
 何故、泯滅(ほろび)を見ぬ私に刃を向けに來た、と――。
 思念に語り掛けるこの者こそ、渾沌氏『鴻鈞道人』。
「……へぇ、所々精彩を欠いてはいるが、左目を得ただけでこれだけ纏まるもんかね」
 茫乎として立つ姿も、虚ろげな色を搖らす左瞳も「悪くない」と端整の脣に弧を描いたカイムは、然し己の來訪を快く思ってはいないであろう彼が、間もなく白翼を動かすのを烱瞳に捉える。
(お前達が生きるために踏みしめてきた過去に蹂み躙られるが佳い)
 白き天使の翼が無秩序の空間を混ぜ、而して輪郭を得たものを撃ち出す――!
 其こそ“undefined”、発動するまで定義を得ぬ“何か”は、無数の小さな白塊となって湯氣を帯びるや、凄まじい熱を放ちつつカイムに襲い掛かッた!
 刹那、紫の麗瞳いっぱいに眞白き何かが映るが、その色は搖れず。
 寧ろカイムは明鏡止水――凪の如く落ち着いていよう。
「あっさりやられて一発退場、なんてダサい真似は勘弁だ」
 異形とはいえ、人型では攻撃手段と方向はある程度絞られる。
 足の形状から速度や俊敏を用いる手合いで無し、遠距離から何か放射して來ようかと、持ち前の戰闘感と経験則で攻撃を予測していたカイムは、拇指球を踏み込めて構えると、『神殺しの魔剣』を盾と差し出して命中を禦いだ。
「詳細不明のユーベルコードを攻略する。――なに、無理難題は散々やってきたさ」
 渾沌恐るるに足らず、と麗顔に差す挑発的な咲みが小気味佳かろう。
 麗人は魔劔に射線を手折られた熱塊が、我が足下に轉がって炎を蹴立てるのを見ると、何處かで見た事のある形状だと烱瞳を絞る。
 挽肉状にしたアツアツの餡を四角い小麦粉の皮で包んだ、これは――。
(餛飩だ。嘗て渾沌と書かれ、渾沌と語源を同じくする……つまり私そのもの)
「ワンタン? ……へぇ、そりゃアンタの神話や伝承に由來するモンかい?」
(無論、これも私が有する『渾沌の諸相』のひとつに過ぎぬ)
「ハッ、俺には弄戯化(ふざけ)ているようにしか見えないぜ」
 だってワンタンは食べるものだろう? と幾許の諧謔を零しつつ、魔劔より黑銀の炎を迸發(ほとばし)り、炎を帯びる餛飩ごと灼き尽す。
 斯くして猛炎を轟炎に呑ませたカイムは、盾越しに覗く端整の顔を煌々と照らしつつ、当初に湛えた笑顔の儘――鴻鈞道人を煽るように云った。
「どうも伝承や神話の類は苦手でね。ここは勉強不足を詫びる所だが、どうやらこの先も本だの何だの読む事は無さそうでよ。出たとこで教えて呉れればそれでいい」
(常より名乗り、隠しても居ない私を「知らぬ」と云うか)
「興味の問題さ」
 やっと左目を得た者が「感情」を持つかは分らないが、とまれ寡黙では無いらしい。
 口竅は無いものの会話は愉しめる男だと、肩を竦めて皮肉を零したカイムは、自ら由來を語ってくれる親切に報いるべく、己も手の内を明かす事にした。
「代わりと言っちゃなんだが。俺のユーベルコードも披露するぜ」
 さぁ御覧じろと、気前よく発聲したカイムが右拳に胸を搏く。
 その心臓の鼓動に呼應して昂ぶるは、【魂が叫ぶ誇り】(バーニング・ソウル)――!
 伝承、神話、故事、奇譚。そんなモノに強さは裏打ちされぬと、塊麗の微笑に一蹴したカイムは、其を學ばぬ不利を黑銀の炎に熾やしてエネルギーに、己の身体能力をみるみる飛躍させていく――!
「こいつの由来はな――『気に入らねぇヤツをぶちのめせ』っていう俺の魂の叫びさ」
(ッッ、速疾い――!)
 何せ左目しか持たぬ相手だ。
 目に見えぬものは「視える」ようにした方が親切だろうと、魂の叫びを速度に變換したカイムは一足で間合いを詰め、月色の瞳いっぱいに己の嗤笑(えみ)を映させる。
「そして、魂が叫ぶ誇りは今こそ爆ぜる」
 冷ややかな言と共にヒヤリと突き付けられるは、魔銃オルトロスの銃口。
 繊麗の指が忽ち銃爪を引いたなら、黑き銃身に差す金色一条が綺羅と耀いたのも一瞬、銃口がバチリと紫雷を爆ぜて銀彈を撃ち出した。
(――ッ、ッッ――!)
 極大の一發が放たれた瞬間。
 左の視竅にはカイムの艶笑が慥かに映っていたろう。
 かの麗顔を瞭然(ハッキリ)と虹彩に映した鴻鈞道人は、然し視界どころか無貌の頭部ごと爆破四散し、己が如何なったかを視ることもかなわぬ。
「ハハッ。次はもっとイケメンに作り直すのをオススメするぜ」
 綺麗サッパリ首を削げ落とした渾沌の前に、カイムは飄々、親切を呉れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

劉・涼鈴
鴻鈞道人!
名前聞いた時点でやべーと思ってたけど、極めつきだ!!
お前が封神台を壊させたんだな! せっかく戦争起こんないように色々頑張ってきたのに!!!
ド許さん!! ずったずたのぼっこぼこにしてやる!! 泣いて謝ってもぶちのめす!!

人皆有七竅、以視聴食息。此独無有。嘗試鑿之
お前のその目、自分で生やしたの? それとも――与えた黒幕がいる?
お前に左目を穿った儵と忽は、誰だ? その目ん玉で何を見る?
まぁ、答えるわけないか! なんにしたってお前をぶっ潰すのは確定だ!!

人型をしてっけど、たぶん見てくれだけだよね
それに囚われてたら、きっと意表を突かれる!
正体不明ってことを忘れないようにして! むぉー! 突撃だー!!

天覇強弓で触手を射抜く!(貫通攻撃)
降ってくる殺戮の刃の腹を蹴って弾く!(踏みつけ)
【野生の勘】を頼りに、気配や殺意(存在感)を感じ取って、よく分かんない炎を躱す!
覇王方天戟で翼を叩っ斬る!!
逃がさん! 顔面の高さまで【ジャンプ】!
【劉家奥義・神獣撃】!!
劉家の拳! 渾沌に刻み付けてやる!!



 仙界の最深部、「渾沌の地」をドスドス踏み進む。
 先に此處に結ばれた予兆(ヴィジョン)より、殲神封神大戰の眞相を知った劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)は、頬をぷっくりと膨らませながら雲霞の中を歩いていた。
「鴻鈞道人! 名前聞いた時点でやべーと思ってたけど、極めつきだ!!」
 やっぱりやべー奴だったと、嚇怒を露わに翠玉の天壇を蹴る。
 天下無双のキックを喰らえば、豪奢な天壇も一瞬で塵芥となる處だが、ボフッと輪郭を曖昧にした其は色彩を混ぜ、形を變え、今度は何食わぬ顔で仏像となる。
「むおー! 手應えなし!!」
 決して定まらぬ景色を眦尻に流しつつ、天地の疆なき無秩序の渦流をプリプリと進んだ涼鈴は、軈て離合集散を繰り返す雲霞の奥に、茫乎として立つ人型の影を捉えた。
「あっ! お前が張角に封神台を壊させた黑幕だな!」
(斯く云うお前は、罪深き刃を刻まれし者か)
 口竅を欠く爲に思念を介して答えるこの者こそ、渾沌氏『鴻鈞道人』。
 而して無貌の面に唯一存在する「左目」が、骸の海を具現化させる発端となったものか――月色の瞳は、當事者を前に愈々心火を燃やす少女を映し続ける。
「せっかくこの世界に戰爭が起こんないように色々頑張ってきたのに!!!」
(そうか。だが私の左目は今に炎の破滅を見よう)
「うんおーっ!! ド許さん!! ずったずたのぼっこぼこにしてやる!!」
 腕をブンブン、拳をシュッシュと動かし、ズタボコにする気まんまんの涼鈴。
 この繁星花(ペンタス)のように可愛らしい少女にも、罪深き刃(ユーベルコード)が刻まれているのだと左目を絞った鴻鈞道人は、兩腕を前に突き出すと同時、一気延伸して涼鈴を捕縛せんとしたッ!
(お前も骸の海に沈めば、張角のようになれようものを)
「よし!! ことわる!!」
 触れる事も許さぬと、彈ッと爪先を蹴って後方へ飛んだ涼鈴は、直ぐさま『天覇強弓』を構えて射角を斜め下に、己を捕まえようとした掌手をブスリと射抜いて止める。
(「人型をしてっけど、たぶん見てくれだけだよね……それに囚われてたら、きっと意表を突かれる! 天壇が仏像に變わったみたいに!!」)
 少女が戒心を鋭くした時だった。
 掌を楔打たれた鴻鈞道人は、伸びきった腕をぶうらり脱力させると、其の輪郭を景色に混ぜて溶かし、触手攻撃の起点となった自身の形姿も變えていく――!
(私は定まった姿影を得ぬ。故に泯滅も得ぬ)
 渾沌を倒すは不可能と、思念に呼び掛けながら六脚四翼の怪物に變わった鴻鈞道人は、四翼を羽搏かせて浮遊すると同時、羽根を刃にして上空から降らせた!
「正体不明ってことを忘れないように……! むぉー! 突撃だー!!」
(……いま忘れていなかったか)
 殺戮の刃が降り注いだのは、奇しくも涼鈴が吶喊した時。
 刹那、驟雨と注ぐ刃を横っ飛びに躱し、また回し蹴りに彈いて致命傷を遁れた少女は、幾つかの刃が地に突き刺さるや猛然と炎を広げるのを見て、素早くその場を離れた。
「あちち、あちー!」
(発動してから定義を得る、これこそが【渾沌災炎】……炎の牢獄に囚われるが佳い)
 悪魔の舌と伸びる猛炎を輕妙に動いて躱した涼鈴は、不圖(ふと)、六脚四翼の怪物と變わっても存在する、己の影を追って視線を動かす「左目」に違和感を覚えよう。
「……お前のその目、自分で生やしたの?」
 今の形姿は地誌『山海經』に描かれる渾沌の姿に近いが、かの異形に竅は無い。
 次いで少女は『荘子』内篇應帝王篇、第七『渾沌』に記述される伝承を思い起こすと、南海の帝王たる儵と北海の帝王たる忽が、中央の帝王である渾沌の饗應(もてなし)に報いるべく、二人が相談した時の話を振り返った。

 人皆有七竅、以視聴食息(人皆七竅有りて、以つて視聴食息す)。
 此独無有。嘗試鑿之(此れ独り有ること無し。嘗試みに之を鑿たん)。

「もしかして……お前に視竅を、左目を与えた黑幕がいる?」
 黑幕の黑幕が居るのではと、燃えるような紅玉の瞳を煌々とさせた涼鈴は、五感を鋭く羽刃と炎熱の気配を読み取り、此度の大戰で飛躍した戦闘勘と経験則で躱し、捌く。
 その俊敏な少女を異形の左目は聢と追おう、
「鴻鈞道人! お前に左目を穿った儵と忽は、誰だ?」
(儵忽は共に僅かな時間しか持たぬ者。絶えず運ばれる時に於いて現世に居ようか)
「じゃあさ、お前はその目ん玉で何を見る?」
(相爭競食、炎の破滅だ)
 その爲に小人張角をして封神台を破壊せしめた、と――鴻鈞道人に口竅は無いものの、問えば答えるほどに言葉は持つようだ。
「ま、なんにしたってお前をぶっ潰すのは確定だ!!」
(……其はお前が世界の安寧を願って奔走したからか)
「そうだ!! 泣いて謝ってもぶちのめす!!」
 然う、涼鈴は殲神封神大戰が勃発した当初からプンプンに怒っていたのだ。
 封神台を破壊した下手人・張角は絶対にボコるし、かの小人を嗾けた黑幕・鴻鈞道人も絶対にブッ飛ばすと、正義に燃える闘志は紅く赫く、少女に強靭なる力を與えていく。
「いくぞ! 全身全霊で――ぶ ち か ま す !」
 彈ッと爪先を蹴るや矢の如く虚空に向かい、六脚四翼の怪物を眼下に組み敷いた瞬間に『覇王方天戟』を一閃ッ! 飛翔の優位を得る翼を悉く斬って散らす。
(……ッ、なん、と……ッッ!!)
 ぐうらと身を傾けて墜下する異形に合わせて降下した涼鈴は、無貌の顔面、左目の位置に高さを揃えて【劉家奥義・神獣撃】!! 小さな拳から山をも砕く鐵拳を衝き入れた!
「劉家の拳! 渾沌に刻み付けてやる!!」
(ぬっ、どわぁぁぁああ嗚呼嗚呼っっ!!)
 其は涼鈴の精一杯の瞋恚、渾身の嚇怒。
 矮躯から繰り出た鐵拳連打は巨躯を吹ッ飛ばすと同時、凄まじい衝撃を爆裂四散させ、全ての輪郭を解くことで「やっつけた」のだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月28日


挿絵イラスト