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殲神封神大戦⑰〜そこに停まれ

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#渾沌氏『鴻鈞道人』


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●渾沌の地:前
(【再孵化】せよ。願い。促そう)
(死ぬ事を、許さぬ。【再孵化】せよ)

(私はオブリビオンではない)
(私は常に名乗っており、隠してもいない)
(渾沌氏……すなわち、【骸の海】である)
(生きるために踏みしめてきた全ての過去である)

(お前達が時を生きるならば、絶えず時は刻を運び、全ては土へ還る)
(罪深き刃"ユーベルコード"を刻まれし者達よ)
(相争い、その罪深き刃で終わらせてみよ)
(私の左目に炎の破壊"カタストロフ"を見せてくれ)

●バス・ストップ
「……なあ、アンタはどんな敵でも戦う人?」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は投げやりに語る。
「いいや、そうでなくちャ困るッてだけさ。アンタには、渾沌の地へ向かッて貰いたい」
 仙界の最深部にある、形定まらぬ場所。
 "渾沌の地"。そうよばれ、そうとしか形容できない場所。
 其処にはなぜか有象無象に、ざっくばらんに"生えた"停まれだらけの標識が色んな所に鎮座する。定まらぬ場所で、行き止まりのような風体が敷き詰められている。
「そこには、【骸の海】を自称する"鴻鈞道人(こうきんどうじん)"ッて奴が居るはずだ。渾沌氏と呼んでいた三皇のひとりも居たな、色んな名称がある、……やべーやつな」
 どれでもあってどれか、それこそ混沌を極めるやつなのだと。
「話は最後まで聞いてくれると嬉しいんだが、どうやら予知には俺様が巻き込まれる事が含まれる」
 軽く左目を押さえて、なにか思う事があるのか。
 しかしすぐに話の軌道を修正する。
「形はひとのような渾沌ヤローは、アンタらを現地にテレポート後、俺様を利用するだろう。まあ?俺様はモノ(ヤドリガミ)だからな、そういう扱い(利用)を受ける分には気にしちャいねえ」
 バス停利用のただの客や味方ならまだしも。
 敵に悪用されるのは癪だけど、とは小声で。
「身体に入り込まれて、アンタらを襲う羽目になるようだ。そういうわけだからさ、……悪いね、バス停の名折れて悔しい限りなんだが、俺様のこと"停めて"貰える?助けてとは言わないよ、"停めてくれ"」
 鴻鈞道人の膨大な力によって"渾沌の諸相"、――混沌な力を身に着けて普段では行えない力をグリモア猟兵の犠牲の上で使わされる。
「敵は強敵だ、立ち塞がる相手がどうみても俺様でも油断するなよ」
 たとえフィッダと何らかの"縁"があったとしても、鴻鈞道人にはどうでもいいことだ。
 一切有利に働くことはない。
「俺様は見知ッた顔を見ても自力で手加減さえ出来ないようだから、アンタらもそのつもりで頼むよ。……慣れてるだろ、そーいうのも」
 ただ、グリモア猟兵に融合した敵が、力尽きるまで戦え。
 これは模擬戦闘ではないけれど。
「俺様の得意は、そうだな。炎の魔法と、……部分的な獣化とバス停での攻撃かな。その辺りを悪用されそうだ。多分、転送後に不意打ちみてーな先制でアンタらを狙わされそうな気がするんだよ、気をつけてくれよ?」
 先制に対処する方法は各々出来る範囲で考えてくれ、とフィッダは苦笑で伝える。自分の停め方を伝えるというのは、案外難しい。
「俺様は、ええと激痛には程々に耐えられるクチだしまあ、頑張るからさ。あと……出来ればなんだけど、"俺様のバス停を狙わないでくれる"?」
 本体が一番の愛用武器であるからこそ、戦闘になれば自然とそうなる。
「本体狙いはヤドリガミには致命的なんでね。解るだろ?……そこはどうか頼んだぜ」
 自分の弱点を吐くのも変な気分だが、もしもがあれば大変なので。
「……鴻鈞道人を完全に滅ぼす手段はねェかもだが、よりにもよッて"バス停"を選んでくれやがるんだ。これは一種の好機だろ?」
 渾沌を止めろ。混沌を停めろ。ただそこで停まれ。
 さあ、そこに――停まれ。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は、戦争に属する一章完結のシナリオ。

 プレイングボーナスは、下記となります。
 グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。

●ボスと簡単な概要
 停まれで標識だらけの行き止まりの(混沌の)地。
 OP後テレポートが行われ、猟兵は鴻鈞道人と対峙します。ボスの姿は「白い左目の人」ではなく 【現在は「融合したグリモア猟兵の姿」をしています】。
 POWでの異形化は部分的巨大化と獣化。化術を用いない直接強制変化なので多分痛いです。ボスを戦闘不能にする、推奨。

●フィッダについて
 攻撃方向は炎のブレス攻撃や火球を放つ全力魔法や(炎を纏った)バス停での物理攻撃。先制攻撃だいたい何にでも炎の属性が付いていると思って大丈夫です。
 フィッダの姿はおおよそ化術を用いて変わるため、プレイングの内容指定が出来ます。タテガミが解るような形であれば大丈夫。
 特に無ければ、普段のよく見る姿(真の姿ではない)での描写を行います。
 OP上に記載した通り、なんらかの縁があっても手加減ができません。
 戦闘後に生きていてくれる事を祈る事しかできません。

●その他
 戦闘中なるべく口調を統一します。
 プレイング内に、特に記載が無ければ鴻鈞道人(こうきんどうじん)が応答する可能性が高いです。冒頭に「♪」このマークが有る場合はフィッダが気合で会話に混入します。

●その他2
 OPをご確認ください。
 反映出来ない内容だと感じた時はお返しする場合があります。なるべく頂いたプレイングは採用できればと思いますが、少数での運用になる場合があります。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

樹神・桜雪
【WIZ】🎵

君が珍しく頼み事するなと思ったら…。
いいよ、停めてあげる。思いっきり殴り倒すけど、いいよね?苦情は後で相棒が聞いてくれるって。
内心ものすごく頭に来てるけど冷静に。冷静に。

停めると言ったからには躊躇わない。躊躇いは痛みを増やすだけだ。
さて、どう殴ろうか。炎が厄介すぎるんだよ…。火はどうにも苦手。
難しい事は考えずに殴るか。極力張り付いて薙刀で凪ぎ払い。2回攻撃やカウンターも織り混ぜつつ全力で。
相手のUCが発動したら、こちらも2回攻撃を交えてUCを発動。
強化して回避まで上がる?知らない。逃げ場なんてなくせばいい。

ボクは躊躇わないと言ったよ。…お願いだから耐えてね。フィッダ。



●やるからには全力で

「君が珍しく頼み事をするなと思ったら……」
 樹神・桜雪(己を探すモノ・f01328)の目には普段と変わらずいつものフィッダに見える。しかし、どこか別人みたいな違和感を感じるけれど、それだけ。
 ヒトらしくなくて無機質に近くて、全く彼らしくない。
 相棒が此処に居たならば、全力でシマエナガキックや嘴での連続突きが炸裂してた事だろう。
 "違う"と、勢いに任せて。すごい速さで。
 シマエナガというよりは、キツツキ速度で。
 ――それはそれで見て見たかったけど、フィッダは炎使いだから……。
 "鴻鈞道人(こうきんどうじん)"が彼の力を好きに利用するなら、大変危険だ。
『驚いたか?』
「うん、驚いたね。下手なフィッダの物真似して、楽しい?知ってる?彼はもっとお喋りなんだよ」
 フィッダの口を借りて、真似た口調から感じるものもやはり違和感だった。油断を誘おうとしても、無駄だと頭を振る。
「いいよ、停めてあげる。君が頼んできた事だしさ」
 薙刀を握る手に、力が籠もる。
 殴るとは言った。しかし誰が手で殴ると言った?
『殴れるのか、私を。この者を』
「思いっきり殴り倒すよ。いいでしょ、苦情は纏めて相棒が聞いてくれるっていってたし」
 これはとても横暴だと桜雪だって思う。
『おう。じャあ後で桜雪を敵にするとすんごいこえーッて苦情言うから』
「ハハ、今の皮肉混ざりは間違いなく本人だね、じゃあ約束ってことで」
『どんな絆を持とうと、私には関係ない。この場で死ぬ気で相争え』
 だん、と足で床を踏み急激に発生させる魔法陣の乱舞。
 魔術による、炎の弾丸を空中に装填し、手に握るバス停を合図に一気に桜雪へ向けて放つ。
 融合身体をフル活用した全力の先制攻撃だ。遠慮もない。躊躇もない。ただ嫌がらせをばら撒くようにすごい数の弾丸が放たれた。
「停めると言ったからには躊躇わない。部外者如きが全力で来るのは少々思うところがあるんだけどね……」
 内心ものすごく頭に来ている桜雪は、苦虫を噛み潰す思いを秘める。
 たとえ模擬の戦闘でも、フィッダならばこんな乱暴な戦術を友人に向けたりはしないだろう。
 ――さて、どう殴ろうか。
 考えてる時間はあまりない、降り注ぐ前にキメなくては。
「炎が厄介すぎるんだよ……ボクさあ、火はどうにも苦手で」
 ――どうもないか。とりあえず……!
 打ち払って炎をなかったことにしよう。
 遠距離射撃を行ったフィッダに対して、桜雪が選んだのは難しいことを考えずに、向かってきた火炎を華桜でばさりと霧散させる。
『では喰らえ!』
「嫌だね」
 極力張り付くように接敵し、炎を纏ったバス停の振り抜きを見を低く躱して変わりにカウンターで斬りつける。
 掠めるだけに留めずに、全力でもう一撃。
 近距離を取れば長物に属するバス停を振るわれても間合いが足りず振るえまい。受けるしか無い。それは華桜を振るう桜雪にとっても同じだが、武器は決して一つに非ず。
「痛い?でもフィッダならそれくらいヘーキでしょ?」
『その攻撃が命取りだとは、思わないか』
 刃で傷つけられた分、桜雪より血を流すフィッダの動きが早くなる。
 これは渾沌氏の持つユーベルコードの力――。
「思わないね。そんなに優位に立ったように振る舞えるのが羨ましいよ」
 赤茶色の目を赤く染めたフィッダの炎が強くバス停を覆って、振るわれる。さっきより強い。さっきより、動きが機敏だ。
「強化してさらにボクを襲う?知らない。逃げ場なんてなくせばどんなに強化したって、フィッダはフィッダだよ」
 振り下ろされたバス停を華桜で受けて、色んな所ががら空きの敵の死角を取る刃は桜の華のように縁を描いて。
 淡く光る輝きが、降り注ぐ。
 二回攻撃に降らせる量は尋常ではない数だ。普段が雨なら、豪雨なほど。避けられまい。バス停は飛ぶものじゃないと日頃言う彼に憑いたのがそもそも大間違いだ。
 飛ぶような術がないのだ――大量の桜硝子の太刀の包囲をよけれまい。
「ボクは躊躇わないと言ったよ。……お願いだから耐えてね、フィッダ」
『トーゼンだ、躊躇わずに叩け!桜雪の派手さは、俺様がよく知ッてるからなァ!』
 身体の自由は聞かなくても怖いとは思わない、とフィッダはケラリと笑って応える。あれが激痛に耐えるやつの言葉なのだから信じられないものだが。
「褒め言葉ありがと。でも雨に濡れ続けられても困るし……」
 床を薙刀で一打して、桜雪は身軽にフィッダを横殴りに蹴り飛ばす。
 遠慮なく蹴り、揺らした袖がふわりと揺れた。
 雨の範囲から外へ追い出され、桜雪はうっすら笑って"融合した奴"へ向けて言葉を投げつける。
「ああごめん、殴るっていったのに全力で蹴っちゃったよ。どこよりもがら空きそうだったし」
 なんて謝る言葉でさえ、頼もしい。
 騙すなら味方(フィッダ)からが最適だ。融合している渾沌氏にもダイレクトに痛みがいった筈――重く鋭く、不意を打ち込まれた奴が。
『良いッてことよ。相棒宛の苦情が増えるだけさ』
 吹っ飛んだ先で、口から溢れる血を拭いながら間違いなく本人がそう応えた。視線は操られて睨んでいる、しかし桜雪ならやってもおかしくないと思っていた――聞こえた口調はそんな風に"楽しげ"に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ

人に使われるのを喜びとするヤドリガミですが、こういう使われ方は望みません
あえて言います-絶対助けますから

先制攻撃が来る事は聞いていたので、姿を見た瞬間「念糸」でフィッダさんの身体(翼や触手)に絡ませ威力を下げつつ【オーラ防御】【火炎耐性】【糸編符】で受けるダメージを軽減

同時に【ダッシュ】【天狗靴】で標識を越え一気に接近
バス停を振り回せない位置まで-フィッダさんにしがみついて【援の腕】発動。
今までこんな使い方はしたことないですが…
『フィッダさんから離れて下さい!』
「念糸」で拘束を継続し、「望む答え」をもらえるまで鴻鈞道人に浄化し続ける

ダメージを受けるのは覚悟の上ですが
私もヤドリガミです
器物を壊されるまで私も死にませんよ

それでも昔はヤドリガミの身が失われる事も怖かったし、人を守る為なら自分が壊れてもいいと思っていた。
でも今は……それを悲しんでくれる人たちがいる、と少し自惚れているから。
「一緒に」助かるならどんなにボロボロになってもかまわない

あと少し我慢してくださいね、フィッダさん。



●だいじょうぶだから

「確かに人に使われるのを喜びとするヤドリガミですが」
 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は現状の知り合いが巻き込まれたその姿は、違うと断じて否定する。
「……強制的に使われています。こういう使い方は望みません」
『致し方がないと思いはしても、当人は納得しているようだが』
 フィッダの口を借りて、別の誰かが話しかけてくる。
 左目しか持たぬという『骸の海』を自称する存在。
 融合している鴻鈞道人(こうきんどうじん)、その人だ。
「いいえ。あえて言います――絶対助け(救い)ますから」
 身を低く、構える姿は戦闘態勢、準備万端。
『救うまでに闘(あらそ)え。私はそれを我が左目に映そう』
 バス停を片手に持つものの、刃を持たない見知った顔の背を裂いて、ばさりと生える白の両翼。
 何も持たずの手に白のおぞましき触手が直接生えて、フィッダの顔は苦悶に歪む。
 触手は先端に刃を備えた不可解極まりないもので、肉を破り現れる渾沌の諸相は身体を裂いて現れる。
 どれもが白い。身体を裂いて現れたのに。ぼたぼたと赫は大量に溢れたのに。
 ぼたぼたと滴る赤とは似つかわしくない純白が――カイの視界に現れた。
 融合した身体に合わない力を直接展開するのだから、良いように使われた代償は呪縛としてフィッダ本人を縛る。
 身体を操るのは渾沌氏。フィッダが呪縛を受けようが知ったことではないのだ。
 どれも炎の魔力で覆って、赫々と燃やして攻撃に転じ――るより一拍手前。
 炎を見た瞬間、念糸をフィッダに絡ませて今から行動しようという動きを抑制して、留める。
『……ほおう』
 カイの意志で自由に動く糸は、人形を操るそれと同じ。
 鋭く伸ばしてくる燃える白い触手と刃の接近を、翼を点火するように加速しようとするのを指を爪弾く動きに乗せて――繰る。
 全ては無理だろう。相手はフィッダでも行動思念は別の存在だ。
 だから多少、接近のタイミングをずらし軽減できればいい。
「事前に聞いていましたから、それくらいは!」
 抑制を振り解こうと乱暴に暴れるフィッダの動きを抑制しながら、一気に駆ける。
 隔てる壁のように立ち塞がる標識を、天狗靴で強く地を蹴ることでタンっと一息に躱して超えれば、手が届く距離。
「これだけ近づけば、振り回せませんよね」
『無理やり振るえばいかようにも。炎を焚べて、叩くだけだ』
 武器として振るうバス停は殆どフィッダと同じくらいの背丈程。
 だから、それよりも更に内側に入り込まれては振るう事ができなくなる。
 炎を溢れさせても打撃の威力が落ちるだけ――。
 間合いに入り込んだカイはぐい、と強く念糸を引いて次の攻撃を思いつかれる前にしがみつき、ユーベルコードを容赦なく。
「フィッダさんから離れて下さい!」
 援の腕(タスケノカイナ)。対象へ質問とともに、輝ける浄化の優しい光を放つそれは、諸刃の剣。
 接触して、問う。融合している敵そのものへ。
 何度問うた所で、正しい答えを応える気は無いだろう。
 ――それでいいんです。
『融合を解けと?相争い、苦しむ様を炎の破滅(カタストロフ)に反映しては如何か』
 フィッダの口を借りて喋りだすのは聞き慣れない口調。
 勝手に争い遭えと、身を捩る。暴れる。
「お断りですよ」
『ハハハ聞いたかバーカ!カイは聞く耳持たねーッてよ。てめェが俺様をどう使おうと、諦めねー奴だぞ!』
 同じ口から別の口調。
 そういう奴だと分かっている、普段の口調だ。
「たとえオブリビオンかどうか分からない存在でも、"望まない答え"を言う限りやめませんから」
『ではそのまま傷つけられるといい』
 触手が伸びてくる。刃を持つ、斬りつけられる。
 ぐりぐりとねじ込むように刺さる感触が実に痛い。
「……ダメージを受けるのは、覚悟の上ですが私もヤドリガミです、器物を壊されるまで私も死にませんよ」
 だから離れるようにと問い続ける。納得がいく答えが帰ってくるまで、両腕は【骸の海】だという敵を浄化する光で包み込む。

 痛くないわけがない――激痛には強いとも。
 それでも痛い。ともだちが、俺様のせいで傷ついている。これはいたい。
 俺に生えた得体のしれないもので、傷ついている――。

 両腕から伝わってくるのは、バス停の痛み。
 執拗にカイから逃れようと白の翼を広げて藻掻く、敵の手に落ちている友人。
「――まあ、昔はヤドリガミの身が失われる事も怖かったです」
『ヤドリガミがヤドリガミを滅ぼす。方法は分かってるだろう。ただ単純にす(折)ればいい』
「人を守る為なら自分が壊れてもいいと思っていました。フィッダさんは、――そういうタイプですよね」
 だから、自分に集まってくれた仲間へ、自分ごと討てと言えるんだ。
 本体が無事なら、今回だって死なずにすむかもしれない――ヤドリガミなら、その方法もあるのだろう。
 しかし、カイは泣きそうな顔をする。
 背中や身体に突き立てられた刃への痛みへ、ではない。
 燃える触手に絡まれたから、でもない。
「でも今は、違うんじゃないですか……?それを悲しみますよ、私も」
 ――私にも、私がその方法を選べば悲しんでくれる人がいる、と少し自惚れているから。
『この身を討伐せずに済むなら、最悪の道行きから方向転換して貰えると嬉しいがねェ?俺様一人じャ……』
「だから、あと少し我慢していて下さいね、フィッダさん」
 一緒に、助かりましょう?傷つけられた身体の痛みと、助からないかもしれない不安を一緒に感じてそれでも救おうと粘るから。
 どんなにボロボロになっても構わない。浄化するべきものを、手放さないように――満足するまで光で封殺してやるだけだ。
『痛み分け。争わず、一方的なそれを受けてでも"守る"……実に興味深い』

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオン・リエーブル

鴻鈞道人も欲深い欲深い
フィッダさんがいなくなると
おにーさんはとても寂しいからさ
さっさと退場してもらうよ道人?

血を流さずにダメージを与える方法を考えればいいんだよね?
炎で攻撃してきたら対抗して
おにーさん特製吸熱剤(UC)で対抗だ!
これは熱を吸収して溜め込む属性なんだ
火とは熱と燃料と酸素の三拍子揃って初めて燃えるもの
熱を奪って消火してそのまま鴻鈞道人にぶつけるよ!
炎消すほど蓄熱した吸熱剤はめっちゃ熱いからね
鎧無視攻撃と全力魔法も乗っけて鴻鈞道人を攻撃だ!

フィッダさんは熱いの得意でしょ?
だから大丈夫大丈夫
強い子だから耐えられる!
と軽口を叩きながら信頼を表そう

早く帰っておいでよ
寂しいのは本当だからさ



●君はいつもどおりがいい

 そこで、なにしてるの。
 おにーさんはそんな顔でよく知る顔を見ていた。
 混沌の地へ転送後、身を翻して即座にあちら側へ。
 言った側から現実になった。
「鴻鈞道人とやらも欲深い欲深い」
 その子返してよ。
 リオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)の表情は普段と同じ。
 しかし、目を細めて笑みの下に隠した貌は誰にも見せない。
『丁度よいところに居た。丁度よいところに来た。それだけだ』
「へえ。でもねえ、フィッダさんがいなくなるとおにーさんはとても寂しいんだよ」
 ヤドリガミだから大丈夫とか、そういう話はしてないよ。本体が無事なら大丈夫だとか、身体も大事にしなさいって言われなきゃ君は納得しない?
「だからね、さっさと退場してもらうよ道人?」
 ――血は、……流石に殆ど無傷とは行かないか。
『断る』
 フィッダが身を捩る。
 バス停片手に眼前に添えて、振るえば無詠唱で複数展開する魔法陣の群れから火炎の弾丸を一斉に放つ。
 ――ああ、確かにフィッダさんは詠唱を全部破棄するね。
 力加減は常に全力。だからそんなもの要らないのだと普段の彼なら笑うのに。
 今はフィッダであって半分別だ、知り合いを目の前にして目の色一つ変えやしない。左側の目が赤茶ではなく、青の光を得ている辺りアレはきっと"唯一の覗き穴"。
 一つの目で見て、融合した身体を操っている。
「命中力にも今は自信があるって勢いだね。でも、フィッダさんだっていうならもっと賑やかにやってくれなくちゃ」
 賑やかさが足りないよ。
 バス停だから目立つべきだと、誰よりも存在感を主張して騒いでいると言うのに。
「炎に対しては、やはりこうかな。じゃあ――行くよ」
 対抗して放つ、試験管流星群(ナナイロナガレボシ)。
 ばっと構えた試験管、そこへ用意した試験管内部の薬品マジックをご覧あれ。
『……それ、こッち側から見るの初めてだな』
「だろうね、無駄口叩く元気が在るならおにーさんは一先ず安心したけれど」
 加減の無い大量の火球へ早急の対処を。
 威力調整可能な試験管は、特性吸熱剤の性質を持っていた。
「これは熱を吸収して溜め込む属性なんだ。おにーさん経験豊富でしょ?」
 普段なら合いの手が来てもおかしくない。
 なのに、静かに勝ち誇ったような悪い顔をした少年。
『だからどうした。命中力が高まった炎の群れで焼かれるのみだろう?』
「残念はずれ。火とは、熱と燃料と酸素、三拍子揃って初めて燃えるものなんだ」
『俺様の魔法だから全体的にそれの性質とは違うな』
「フィッダさん、いい所で話の腰をバキバキにしないの!」
 この有様ではリオンも苦笑する。
 身体は操られて居て知り合い相手に全力魔法で強化した炎を放っているのに、やっている事と喋ってる事が違いすぎる。
「まあおにーさんのは研究の成果だから、魔法は魔法で利用出来るよ。いい"材料"だね!借りちゃうね、貰っちゃうね!今日は良いよね」
 熱を奪う性質故に、リオンに放たれた炎から"熱"を奪って消化する。
 あっという間に消し潰された炎に、混沌氏は舌打ちを。
『炎の破壊(カタストロフ)をそちらからつくる気か』
「まっさかー?」
 火を消すほど蓄熱した吸熱剤は凄まじい光熱だ。
 放たれた全力なのだから、当然高められた熱量を抱えていては暴発からの二次被害は避けられない。
「だから、これはおにーさんからのお願いも混ぜてお返しするね!」
 ゆるりゆるりと長い髪を揺らしながら、リオンもまた全力の魔力を載せてやり返す。これくらいは許して欲しい。
 ――君の熱量を、そっくりそのまま返しちゃうよ。
 ――おにーさんのお茶目も添えてね。
「めっちゃ熱いだろうけど、フィッダさん熱いのは得意でしょ?」
 炎を使うのに炎を苦手、なんていわないよね。
 バス停を握る、炎しか上手く扱えない子でしょ。
『ああ、半分以上俺様の炎だ。俺様は問題ねえ!俺に融合してる奴のこたァ知らねえがなあ!』
「よしその調子!大丈夫大丈夫、強い子だから耐えられるよ!」
 ――いつもどおりに話しかけたら、いつもどおりに声が返ってきたね。
 軽口を叩きながらの信頼が、フィッダにもきっと届いている。
『やめろ、やめないか。それは誰かに浴びせかけるものでは……!!!』
 ぶちまけられた吸熱剤をモロにかぶったフィッダから、聞き慣れない痛がる声を聞いた。絶叫、叫び。喉の奥から溢れる"違和感の元凶"。
 あれはフィッダの声じゃない。混沌氏が叫んでいるのだ。
 じゅうう、と音が聞こえる。
 激痛には強い子だ、だから、だから――君なら、大丈夫だと信じているよ。
「……早く帰っておいでよ。寂しいのはさ、本当だから」

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
フィッダさんは友達
友を利用するような屑は殴ってやらないと気が済まないよ
そのために友を殴ることになるのをどう思うか問われるかもしれないけど
生憎、俺はそういう割り切りが得意なんでね
屑を殺すためなら友だって殴れる
たぶんあの屑は友だからどうのというのには無関心だろうけどさ

オーバーロード、真の姿開放
金の瞳の赤き竜人と化す
この変化により俺は人間から、魔力で成り立つ黒水晶で構成される埒外へと変異する
ちょっとやそっとの攻撃で大ダメージを受けることは無くなるよ

まずは暗夜の剣を鎖鎌に変形させてUC青風装甲で敵に急接近
先制攻撃は相手の動きから飛んでくる位置が【見切】れるなら躱すし
無理ならそのまま受ける、突撃はやめない
生身が欠けるわけでもないしダメージは致命的ではないだろう
そして鎖鎌をバス停に投擲し絡め取り、戦場外へ放り投げる
屑は武器を奪って攻撃手段を減らさせた、くらいにしか思わないだろう
勿論目的はフィッダさんの本体を攻撃に巻き込まないのが狙い
以降はUCによる高速移動と攻撃の重みを活かしヒット&アウェイで攻める


ジルバ・アイト


よう、兄弟
兄として弟を”停め”に来たぞ

あんたは俺よりずっと強いからな、心置きなく全力で行けるよ

だがあんたが俺より強くとも、俺はあんたの兄だからな

どんなに痛かろうが熱かろうが、弟の攻撃は命がけで受け”停め”てやらなくちゃな……!(本体であるバス停で先制攻撃を【武器受け】)

その後はフィッダの本体を巻き込まないように『兄弟用『召喚石』』で歪んだバス停を俺の元に召喚しつつ、周囲に生えている停まれ標識全てをバスに変換し、突撃させる

「さあ、俺達バス停にとってのお迎えがやってきたぞ。武器としての意識が強いあんたにとってはそうじゃないかもしれないけどさ……」

だから一緒に帰ろう、兄弟

後でアイス買ってやるからさ


吉備・狐珀
グリモア猟兵と融合とは…
停めてくれと願うのならば全力で停めてみせます

先制攻撃は月代とウカの衝撃波でフィッダ殿を吹き飛ばし体制を崩させたり、近づけないようにして対応。
ただし、フィッダ殿が血を流さない程度に威力を弱めて。そうすれば相手の威力は3倍にならず、攻撃が当たってもウカの結界で耐えられるはず。

【協心戮力】使用
その炎、利用させてもらいます。
制御が難しい術ですが、問題ありません。
私の練りだす冷気を勝手に燃やして下さればいいのですから。
協心戮力で作り出すのは濃霧。
ただし、ただの霧にあらず。
冷気に忍び込ませた麻痺性の毒が飛散する霧です。

動けぬ体に融合しても仕方ないでしょう?
とっとと出てお行きなさい!


ルパート・ブラックスミス


先制攻撃の内
炎のブレスや魔法は鎧の【火炎耐性】頼みに凌ぎ
バス停と敵UCには、縄状に変形させた燃える鉛で結んだ幾つもの【武器改造】短剣【誘導弾】を【一斉発射】しフィッダ殿の身体を巻き込んで周囲の標識に磔にする。
【ロープワーク】と【地形の利用】を活かした即席のネット【捕縛】術だ。

先制攻撃を阻んだらUC【青炎模る濁竜の翼腕】展開、篭手と翼腕の四拳で【怪力】【乱れ撃ち】。
どんな異形が繰り出されるか判らない以上、【限界突破】した戦闘力での格闘戦で速攻だ。
反撃を喰らおうが【覇気】と【闘争心】に任せ意に介さず【捨て身の一撃】、お前が停まるまで殴り続けるのみ!

痛いのはお互い様だ、堪えてもらうぞフィッダ殿!


禍神塚・鏡吾
アドリブ連携歓迎

技能:集中力、残像、迷彩、闇に紛れる、言いくるめ、ブームの仕掛け人

ヨクセムさんには宿敵に関わる任務でお世話になりました
及ばずながら私も加勢します
『本体を狙うな』と注文を付けられたのも、何だか身につまされましてね……

渾沌氏の先制攻撃は、空振りを狙いましょう
ギリギリまで惹きつけてから、装備のミラーシェイダーを利用した迷彩と電脳魔術による自分の立体映像を併用して、私の居所を錯覚させます

姿を現したらUCを使用し味方に伝えます
「見えた! 今のヨクセムさんは渾沌と融合している……即ち弱点は左目です!」
本当に弱点かどうかは存じません
しかし、聞いた人が納得してくれれば、UCの効果は発動しますよ



●友達だから容赦なく
「悪いんだけどね、フィッダさんは友達なんだ」
 返してほしいんだよね、融合を解いて追い出せばいいでしょ。
 胸の前で殴る動作を一つ見せつける。
『友を殴ってでも、私を追い出すと?そのためにこの者を殴る?矛盾していないか』
 面白い縁の持ち方だ、と自称【骸の海】、鴻鈞道人(こうきんどうじん)がフィッダの口を借りて語りだす。
 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)にとっては、それも気になることだ。乗っ取られている。知っているはずの友人が、知らない物に変容している様が。
「……そうかもね、でもそれで良いんだよ」
 ちょっと小突ける間柄になってもいいでしょう?
 やり方が全力だったとして、フィッダは怒ったりしない筈。
「生憎、俺はそういう割り切りが得意なんでね。フィッダさんだって納得してくれると思うんだよ」
 武器である事を常日頃強く口に出す彼なら。
 それが"必要なこと"であると理解できるなら、間違いなく受けるを選ぶ筈。
 ――フィッダさんも変わったヒトだから。
「屑を殺すためなら、友だって殴れる。それに――」
『なにか』
 くすり、と口を歪めてサンディは軽く笑って魅せる。
「いいや?フィッダさんは利用されてるけど、"標的になることで自分の仕事を全うしてる"と思っただけ」
 ――"誰かの目印"。それがバス停だって、いつも言ってたからね。
 ――勤勉なのも自分に興味を持たないように振る舞うのもいつも通りに見えるよ。
『そうか。だがそれは私には一切合切関係のないことだ』
「だろうね」
 この屑はそう判断するとは思っていたサンディに落胆はない。
 好都合ではあったが、それだけのこと。無関心ならそれでいい。
 真の姿を開放し、サンディの瞳は金の色を帯びる。
 赤き竜人と化して、人間から魔力で成り立つ黒水晶で構成された埒外への変容。
「俺にも関係ないってだけは共通していて――」
 ――なんか笑えちゃうな。
「思うところが出来るだけだね」
 ちょっとやそっとの攻撃で、大ダメージを受けることは無くなった。
 じゃあ先に攻撃すれば?態度で示して暗夜の剣を鎖鎌に変形させて、瑠璃色の旋風で自身を覆う。
 駆け出す急激な接近に、先制して放たれるものが何であろうと見切ってやると自信のある笑みを口元に讃えて。
『では存分に相争え。私は一番間近の閲覧席で体感しよう』
 次の瞬間、ぞわぞわと、バス停を持たない手が白の異常に覆われて。
 肉を喰らい貫く渾沌の諸相が爆発的に規模を盛り上げて白き大きな獣の手へと捻じ曲げる。
 変化などではない、あれは侵食――それから汚染。
 望んで思い描いて変化させるなんて、化術のそれではない。
 変わった先からその獣の手からぼたぼたと溢れて溢れる流血が骨格から異常を発生させられたのだと解る。
『この者の得意な戦術を私なりに利用しよう』
 炎を大きな獣手に纏わせて特大の業火の火急を生成し、ぶん投げる!
 雑な戦術――だが、大型に生成し、時差で小粒に破裂させて降らせる先制攻撃。
 大きい火球で驚かせて、追撃を加えて必ず充てる――サンディでさえ、フィッダが行いそうな陽動だと思った。
「ひとつめに意識を裂かせて、ふたつめの追撃を隠して。でも違うよねそれは」
 動きを読んで、サンディは笑う。そう、笑うのだ。
 違う、そうじゃない。飛んでくるのは炎、だがフィッダなら選びそうなのは――。
「……その炎を存分に纏ったそれ(バス停)でフルスイングでしょ」
 炎の到来をサンディは躱す。フィッダに融合したモノがどれだけ強敵で小賢しい相手でもホーミング機能のない魔法弾に当たってやるほど愉快な趣味を持ち合わせていないから当たっていてもさほどの意味さえ持たない。
 だから、突進をやめなかった。
 ――魔弾を爆発させる悪知恵を、思いつかないでくれたのは助かったね。
 ――これなら生身が欠けるわけでもないし。

  致命傷にはならない。

 判断したなら、赤い竜の身で、纏った風を利用して。
 想像通りに炎を纏ったバス停を構え、サンディの到来を待ち構えるような姿勢をとったフィッダに向けて鎖鎌を投げつける。
 狙いは身体、ではなく武器の方――。
 絡め取り、即座に引っ張って戦場外へ放り投げる!
 たとえ念動力を扱うのがヤドリガミだって知ったことか!
 いまなければいみがない。
『だからどうした。この者は炎弾を得意とし、炎を纏う肉弾戦を得意とするぞ。よらば傷がつく。相対すれば傷つくぞ』
「だからどうした、は俺の台詞」
 ――屑だね。武器を奪って、攻撃手段を減らされた、くらいにしか思ってない。
 目的は当然本体を巻き込まないようにしただけ。
 後で当人から多少の苦言を受けるかも知れないが、戦場での事なら納得してくれるだろう。
 ――どうせ、君も自分を雑に扱うんだもの。
 笑ってしまう予想できる返答を想像するのは後回し。
「じゃあ、これで堂々殴り合えるでしょ」
『迎え撃つ。そして捕らえ潰してくれよう』
 瑠璃色の旋風を纏う赤の竜が飛び回る。
 速さに重さを載せて、渾沌氏を翻弄し始める――。


●同じ詠唱銀生まれの兄として
「よう兄弟、忙しそうだな」
 ――ああでも今は少々、対応出来る感じじゃなかったな。
 ジルバ・アイト(落トシ者・f03128)は当然の努めを果たしに来た。
 兄弟のバス停として、兄貴として。
「あんたは俺よりずっと強いからな、心置きなく全力でいける」
『そうな、俺様はジルバよか強い。……んで今は俺様"より"強い』
「かもな。だが特殊性なんていいのさ、途方もないくらい強くとも、俺はあんたの兄だからな」
 普通に応じてくる軽口は、いつもどおりのフィッダの声で。
 だが、気配は日常感じるものとは違っていた。
 意思疎通できない獰猛な猛獣と対面しているような、息苦しさ。
 鴻鈞道人(こうきんどうじん)によって縁さえ無き、ただの敵として相対する辛さ。
 不自由な身体に、困惑する気配だって感じないわけじゃない。
「おいおい、気にしなくていいぞ、俺の弟は俺が面倒見るから」
『……ああ成程?そいつはいい、傑作だ。よおし気前よく持ッてけよ!』
 愛用武器であり本体が手元から消えたとして、あのバス停は止まらない。
 本人が停めろと願っていた通り、停めてやるのが優しさだろう。
『何を言っている?』
「フィッダの本体、間違いなく俺が預かってやるって言ってるのさ」
 サンディのヒット・アンド・アウェイを躱し、誰よりも多く流す血の量に比例した打撃力を歪んだバス停に乗せて、轟々燃やしてジルバを襲う。
 命中率に割り振っている分、ジルバよりも先制を取った怪力任せの打撃は受けるには重すぎる。
「……でもなあ、これだけは言わせてもらうぞ渾沌氏。バス停は、――本来武器じゃないんだよ!!」
 メラメラと間接的に全力火炎が舞う中ジルバは文字の掠れた同じ性質を持つはずのバス停で、弟の重い一撃を停めて立つ。
 膝が笑おうと関係ない。弟が求めたことは、此れであるはずだ。
『武器だとこの者は自称しているが?』
「そうだな!俺も武器だ。ヤドリガミだしな、……でも、フィッダはそっちの意識が強いか、…………だから余計に別の手段を幾らでも敷く慎重大雑把派なんだよ!」
 ちゃき、とジルバが手元に輝かせる召喚石。
 まさかこんなときに役立てられる日が来るなんて。
『何をする気だ……?』
 ――もしもの時は力(本体)を貸すから、アンタの本体も俺に貸せ――。
「アンタは別に知らなくていいさ。フィッダ、借りるぞ!」
 敵対するフィッダの手元から、フッ、と歪んだバス停が消えて即座にジルバの手元に現れる。
 フィッダの本体を召喚する局地的限定召喚。目の前で奪うやつがどこに居る!
「周囲にこんなに愉快なモノがあるのも、フィッダに融合した余波か?ハハ、俺の弟は想像力豊かだからなあ」
 歪んだバス停を手に、ジルバは借りた分相応で扱う。
 ぶわあ、と本人由来の炎が舞い踊り、自分由来の風が舞う。
「さあ、俺達バス停にとってのお迎えを呼んでやるぞ。此処が地獄の三丁目――」
 Zerstörer Bus(ツェアシュテーラー・ブス)。
 周囲に生えた標識を、どれもこれも乗車可能な無人大型バスへ換えてしまおう。
 今日は兄弟の魔力を横領して、大規模に奮発してみせようバス停が兄弟バス停を使って何が悪い。
「バス停がバスを使って何が悪い?俺達は結構自由な世界の生まれの筈だから此れくらいでいいんだよ」
『そうな、派手にやれよ兄貴。俺様もその方が気分がいい!』
「それ自分が今から受ける側で言う台詞か?」
 武器としての側面が強い弟にとって、それは喜ぶべき部分かもしれないが。
 決して戦闘狂でもないのを、ジルバは知っている。
 バス停として呼ぼう、大量のクラッシャーバスを弟(フィッダ)のもとへ。
「一緒に帰ろう、兄弟。後でアイス買ってやるからさ」
『……約束だぞ。大量に買わせるからな、覚えてろよ兄貴(ジルバ)』
 がしゃーーーん、とフロントガラスが割れる音。
 大量に響き渡る硝子の割れる音に巻き込まれた弟を、兄としてどう思えばいいかは分からない。
 しかし、この場に訪れた者たちが力を合わせたなら。
 融合した相手にも相応の嫌がらせを仕掛けられるはずだ。
「お、……みんな弟の知り合いか?じゃあ、望むとおりに頼むよ」


●弱点を教えてあげましょう
「ええ。さあ、そろそろヨクセムさんをお返し頂きましょう」
 宿敵に関わる事件を見たと、禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)が聞いた時は驚いたとも。
 報告書が手元に残っている――事件解決の一躍を担ってくれた。世話になった、と鏡吾が思うのも無理はない。そう、あのときの日を忘れていないから。
 ――及ばずながら、私も加勢します。
 "本体を狙うな"と、直接言い添えられた事は当然のことにも思えた。
 でもフィッダの兄弟が本体であるバス停そのものを奪ってしまったなら、攻撃の手段は一気に減らせたようなもの。
 彼は魔法攻撃を、主軸に置くと聞いたから――。
「それでもほんとうに、身をつまされる思いです……が、これだけ集まったのは縁あってこその話」
 注文を付けられる程、仲間を信頼していただけのことかも知れないが鏡吾にしてみても胸が痛い話だ。
『どうする。私の手で相打ち以上になってみるか』
「お断りです。他の方もそういっていたでしょう?」
 吠え声は、まるで獣そのもの。
 決して魔獣たり得ないのに、怒号のような威嚇する声はフィッダから本当に発されたものか?
【骸の海】を自称する、融合した誰かが脅しているだけではないか?
「それほど血に塗れて、武器を取られても優位だと威張れるのですね?」
 大きく息を吸い込んで、灼熱の波として炎が吹き付けられる。
 単純でありながら全力魔法でのブレス攻撃は拡散域が広くなる。

 ――グリモア猟兵と融合とは?
「……停めてくれと願うのならば知った顔が停めるべきでしょう。――フィッダ殿、参ります」
 吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は心を強く持つ。
 予知する力があるから狙われた?敵に良いように使われるハメになった?
 そんな話が在ってたまるか。
「月代、ウカ!同時にお願いします!」
 先制攻撃が放たれたのを見て、手で示す。二体同時の衝撃波を浴びせて、その場に立てずにしてしまえばそれ以上の追撃は狙えまい。
 炎抜けて、フィッダ本人狙いの先制返し。
『う……!?』
 炎の勢いが上がろうと、狐珀はお構いなしに体制崩しを狙ったのだ。
 衝撃を身体にモロに受けても踏みとどまろうとしているのは、鴻鈞道人(こうきんどうじん)の意地か。
 それとも停めて欲しいと願った本人の意志か。

「吉備さんの衝撃波を浴びては、流石に目標を定められないでしょう?」
 念動力で操作する無数の金属板、ミラーシェイダーを利用して鏡吾もまた、自分の居場所を誤魔化す。
 鏡に映った偽の事象。それを焼かれた所で怪我の一つも反映されないとも。
「私はこちらですよ、ヨクセムさん。狙うのならばしっかり狙わないといけません」
 電脳魔術と迷彩を組み合わせた技法を展開させて、不発を狙う。
 遠距離魔法だけでは、相対する図さえ不成立になるように。
 ――こうして私の残像を場に残しておきました。
 ――私そのものが戦場のどこに居るかを見失うことでしょう。
 ――どこにでもいて、どこにも居ない私から皆さんへ。
 ――意識をどうぞ集中していて下さい。
 鏡吾当人が爆煙に紛れて影を潜めたのを、狐珀は当然見逃さない。

「それ以上の流血を必要最低限で済むようにすることも中々容易ではありませんが」
 威力はなるべく弱めていた。だからフィッダが吹っ飛ばなくても仕方がない。
「ですが、威力の上昇はそれ以上を阻めます」
 轟々と燃える炎が狐珀を囲みだすのをちらりと見た。
 当たらずならば地域一帯を炎の海に焚べようという算段らしい。フィッダ諸共、猟兵を倒せれば渾沌氏は程々の所で逃げてしまえば両者が傷つけ合うだけに留まる。
 なんと悪意的な行動だろうか――。
『相対し、そして地を踏みしめ生きる様を見せて貰おう』
「では早々のお帰りを」
 ――フィッダ殿、炎を利用させて貰います。
 ――鏡吾殿もどうか、お気をつけを。
 協心戮力(ココロヲアワセチカラヲヒトツニコトヲナス)。
 これは制御の難しい術だ。分かっている。
 知り合いの炎相手に、上手く働く保証はない。だが仔竜の月代、倉稲魂命『ウカ』の力を借りて、暫し理想の形が保てればいいのだ。
「ご存知ないのですか?フィッダ殿は冷たい環境が大変お嫌いです。それに……」
 二つの力は一つの力を発揮する。狐珀のもとに集い、望む形へ姿を整える。
 狐珀が扱う冷気を勝手に燃やしてくれればそれでいい。
 ――協心戮力で作り出すのは、濃霧。
 さぁああと広がる氷が蒸発して発生する濃い霧の中。
 震えるほど温度を下げるだけであるはずもない。
 ――ただの霧にあらず。
『これ、は……』
「毒に対する耐性もない様子。それは特別な麻痺性の毒の効果です、どうですか?」
 寒さに合わせ、麻痺毒を喰らい――目に見えてフィッダの動きは鈍った。
 身軽に行動しようにも上手く動けず、強ばる顔にも嫌そうな表情が浮かんでいる。
「思うように動けぬ体と融合していては、みたい物だって見えません。其処に居ても仕方がないでしょう?」
『……成程、知っているからこその策か』
「とっとと出てお行きなさい!」

「……ええ、見えましたよ。鏡の"目"は誤魔化せない」
 姿を現し、告げる言葉に信憑性を持たせるように朗々と語るべし。
 言いくるめてしまえばこちらのもの。
 魔法の鏡(スレイブ・イン・ザ・マジックミラー)。
 鏡吾の本体、喋る鏡は嘘をつかず、真実を持って語る者。
「攻撃を放つ度、左目が赤茶から青に光っています。今も何度か融合している身体を動かそうとご自身の力を押し通そうと試していますね?青に光っています。――それは今のヨクセムさんに発生している一番の渾沌と呼ぶべき原因であり、元凶の情報と合致しています」
 鴻鈞道人(こうきんどうじん)の特徴。左目しかない。
 語る口も他の要素もすべてフィッダの体で補っているにすぎない。
「これ即ち、弱点は左目以外の何物でもないでしょう!」
 ブームの仕掛け人、先にいい出したもの勝ちの理論というものもある。
 たとえ違っても、弱点じゃなくても。
 融合したもう片方の面影を残す場所は、極めて妖しい。
 共感した対象すべてに、戦闘力を高める暗示を掛けてしまえ。
「狙うのなら左目が一番直接効くでしょう!」


●終点停留所
「ああ、それならば問題は多くなかろう。鏡吾殿、弱点狙いは当方が受け持とう!」
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は知り合いの顔を見て頷く。
「炎のブレスも、フィッダ殿が得意な炎を受けた事は無いが……」
 火炎耐性で耐えられない程高火力であるとも聞き及んだことがない。
 鎧の内側で燃える鉛より、全力魔法で生成した火炎が熱いだなとと勝負の土台に乗せたこともない。
 比べるものではない。個性であり手段。それだけだ。
『では浴びるように受けよ。私が言える事はそれだけだ』
『アンタなら大丈夫だよ、つか絶対ルパートの炎のが熱いわ!』
 ハンドスナップで炎のエネルギーを可視化させるフィッダは常に全力。武器を持たないのに弓のような形に炎の形を引き伸ばし、矢を射るようにただ放つ!
 大きな炎を一射して、少しした後にハンドスナップで炎を大規模に爆発させる。
 爆発した欠片は火炎の雨となり、炎の繰り出し方には法則性がない。
『こればかりは自由な戦闘過ぎるとは思うんだが、同じャつまんねーと思わねェ?』
 ――確かにフィッダ殿はパフォーマンスを重視する……。
 鴻鈞道人(こうきんどうじん)がフィッダの経験を横から融合した分使っているならば頷けること。臨機応変に変更する魔法の使い方だ。
 実に厄介だが――共通している魔法の炎。それだけは事実として変わっていない。
「当方にはさほど重大なダメージを齎せぬな、火力が足りない!」
 大見得をきって、次の行動を誘発する鎧にも迷いはない。
 挑発に乗りやすいフィッダの個性にもし敵が引きずられるならば、有用な作戦の一つとして上手く隙を作れる。
『ではこれでどうだ。火力ではなく、純粋な力だ!』
 動いていない様子の片手を無視し、もう片手を利用する。
 バキバキと骨を砕く音と共に発現する白の肥大化していく獰猛そうな不気味に広がる獣の手。二倍以上に膨れ上がった巨大で異常な獣の手に、炎が纏われる。
 どんな形状だとしても、炎を主軸に置くのはどことなくフィッダらしいと言えなくもなかったが――。
 生物としてそんな生き物を目撃した記憶がルパートにもなかった。
 大雑把に言えば犬ではない。猫でもない。
 フィッダが化術で見せるようなハイエナのような斑有りの脚でもない。
 ――違う。どれでもない。あれは何だ……?
 ――あれが【骸の海】には在ると?
 肉を喰らい、貫く不定形のそれへの代償を身体の持ち主に払わせる悪行。異形化した手が、ルパートに振り下ろされる。虫でも叩かんとする、怪力任せの雑な一撃が。
「純粋な力のために、嘆く声が聞こえるようだ!」
 縄状に変形させた鉛で結んだ幾つもの短剣をずらりとならべ、一斉射撃。
 真っ直ぐ飛べ。囲め。
 ――本体は既に此処にない……!
 ががが、と一気に突き立てて。
 フィッダの身体を巻き込んで、標識が兄ジルバの力でバス化(廃車)した表面へ磔る!相当な衝撃が身体を襲っただろう。だがそれでいい。
 縄状鉛で結んだ輪に捕らえられて磔られては、どんなに巨大な手を晒した所で届くまい。ユーベルコードを再発動したとして、焔でルパートに勝てず、ルパートに手が届かなければ攻撃できない。
『くっ……!』
『……へへ、良い判断だ。俺様はそこまで器用にできてねェし。狐珀にやられたぶんビリビリすッから痛くは……いや、うん、痛いは痛いわ』
「当方とて痛みはある!」
 逃げようと暴れるのは、敵だけだ。
 ――要らない客が自分(バス停)に留まっている状態。
 ――この状態から、フィッダ殿なら絶対"逃げない"。
 ユーベルコード発動。込める拳に自分が感じる痛みも載せよう。
 青炎模る濁竜の翼腕(ビルドビィベルセルク)――片手を使えず状態の、磔にした相手にマウントを取ろう。
 篭手と翼腕の四拳、これの乱れ打ちを巨大化させすぎた獣の手では防げるうはずもない。限界突破して、殴り続ける事だけを拳に燃やし叩き続けるべし。
 だだだだ、と連続して殴る音が響く。
『この者はっ!……し、知り合いなのではないのか!?本気でぶつければ……!』
 この者が死ぬぞ。
「然り。しかし、こうするべきと言ったのもまた、フィッダ殿だ!」
 左目の顔面狙いの拳を織り交ぜて、一番の弱点を此処ぞとばかりに狙い続けるルパートに加減の言葉はない。
『ハハ、その通り。多少の期間、ヒトの形を少々失ッたりした所で俺様ァ困ッたりしねェよ……!』
 反撃の手立ては間近での炎のブレス――覇気と闘争心に任せ意に介さぬ鎧相手では火力不足は深刻となる。
 ――いかに膨大な魔力を持っていたとしても、そろそろ使いすぎだ。
 火力が目に見えて落ちる。
「痛いのはお互い様だ、堪えて貰うぞフィッダ殿!」
 格闘技に置いて反則よりのマウントで、殴り続けるルパートにフィッダの顔が僅かにニヤリと笑った。
『痛くねェは空元気だがよ、……それでいいんだよ、気にすんなッて』
「さあ停まれ!停まれ!此処は此度のお前の!終着駅だ!」
 殴り続けて廃車が陥没する程の重く重く激しい一打を打ち込んで、――敵対する意志が燃え尽きるような気配を感じた。
 融合していた異常さが、散らされてなくなったような曖昧な気配。
 自称【骸の海】はそのまま拳の威力で圧殺されてくれただろうか。
 拳の痛みが強くて、実感があまり沸かない奇妙な戦闘であったと言えるだろ。

 ルパートが見る限りバス停の少年の息はあるようだが、意識は昏迷に落ちている。
 真実がどこへ行き着いたかは――彼が起きてからでなければ分からないだろう。
 起きたところで、真実は闇の中かもしれないが――……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月26日


挿絵イラスト