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殲神封神大戦⑯〜愛し愛しという心

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●女媧の塒
 封神武侠界の人類の祖とされる神・三皇『女媧』の祠。
 その空間を形成するものは炎と泥と、そして恐ろしい魔力だった。
 どんな風であろうと雨であろうと、その炎を消せはしない。
 どれほど苛烈な陽射しであろうと、その泥を固められはしない。
 だが、女媧はいない。オブリビオンとして蘇っていないのだ。――にも関わらず、そこへ踏み込めば泥が四方を囲み、見る間に固まると美しき彫刻を施された部屋に変わり侵入者を閉じ込める。
 仙界に、女媧の祠に相応しい彫刻はじっくり眺める以上の価値があるかもしれないが、皇帝であろうと仙人であろうと神であろうと出られない。腕力も武芸の腕も仙術も呪術も意味を成さないのだ。
 出る為に必要なものは唯一つ――。

●殲神封神大戦
「“愛を語る事”です」
 にこ、と咲った汪・皓湛(花游・f28072)は「私ならば矢張り」と黒い神剣を鞘から僅かに抜き、黒い刃を覗かせた。
 艷やかな黒色へ誇らしげな微笑を浮かべた皓湛は、剣を鞘に収め直すと「対象は何でも良いのです」と柔らかに添える。
「愛と言いましても、その形はひとつに留まりませぬ故」

 愛する“誰か”。
 それは夫や妻であったり、親きょうだいであったり、友人や名前も知らぬ人だったりするだろう。対象がひとではなく動植物や陸海空の風景、心に強く残る芸術品という事だって。
 そしてそれらに抱く愛は、生涯を共にと思う愛情である事もあれば、永遠の憧憬や友情――または、その存在を思い浮かべるだけで心安らかに――という形を取っている事もある。
 語る愛の形、愛を抱く対象。
 そこに一切の制限はない。
 思うまま浮かぶまま真摯に語る事で、祠に充満する魔力を浄化出来るのだ。

「愛を語る事に抵抗がある、という方。ご安心下さい。部屋は一つずつ区切られており、中の音が外へ漏れる事はございません」
 嘘偽りのない愛を語れば部屋からも出られるだろう。
 そうして女媧の塒を制覇したなら、張角がいる場所への道が開かれる。
「では、皆様」
 微笑んだ皓湛の傍で幽世蝶が楽しそうに舞い、花のグリモアが咲いていく。
「存分に、愛を語ってきて下さいませ」


東間
 殲神封神大戦のシナリオをお届けに来ました。
 愛を語って下さい。東間(あずま)です。

●このシナリオについて
 ①導入場面はありません。
 ②受付期間はタグ、個人ページトップ、ツイッター(https://twitter.com/azu_ma_tw)でお知らせ。送信前に確認をお願い致します。

●プレイングボーナス:誰か(あるいは何か)への愛を語る
 伴侶への愛。相棒への愛。友人への愛。恩師への愛。場所や食べ物に対する愛。
 愛情を抱くものの種族性別タイプ問いません。二次元やフェチでもドンと来い。
 信愛も友愛も愛です。愛の種類も同じく問いません。
 冬の恋人コタツへの愛でも大丈夫。この時期は布団の中の温もりもラブですね。
 ※年齢制限のかかる内容は採用出来ません。

 同行者への愛を語るも、同行者と「これが好き!」とワイワイ語り合うも良し。
 一人もしくは一組ごとに部屋が形成されますので、他に聞かれる心配がなく、お一人様でも安心です。存分に語って下さい。あなたの愛を。

 【その場にいない猟兵さんへの愛】の場合は、トラブル回避の為、【お互いフレンド感情を抱いて(感情を公開して)いる場合に限り採用】とさせて頂きます。ご了承下さい。

●グループ参加:三人まで
 プレイング冒頭に【グループ名】、そして【送信日の統一】をお願いします。
 送信タイミングは別々で大丈夫です(【】は不要)
 日付を跨ぎそうな場合は翌8:31以降だと失効日が延びますので、出来ればそのタイミングでお願い致します。

 グループ内でオーバーロード使用が揃っていない場合、届いたプレイング数によっては採用が難しくなる可能性があります。ご注意下さい。

 以上です。皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 日常 『愛を語らないと出られない部屋』

POW   :    情熱的に愛を語る

SPD   :    淀みなく愛を語る

WIZ   :    語彙を尽くして愛を語る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

凶月・陸井
そうか、こういう戦いもあるんだな
迷いなく祠に踏み込み、泥に囲まれても冷静に
「さて…愛を語る、だな」
目を閉じ瞼に映るのは勿論
風に揺れる金と紫の二色の髪…妻の姿だ

「愛してる、シリル」
柔らかな、時には強く意思を持つ紫の瞳

「どんな戦場でも、傷ついても…俺は、独りじゃないから進める」
春の日差しの様な暖かな優しさに、安心する柔らかな物腰

「心配はかけてると思うし…つい意地悪もしたくなるけど」
困り顔や怒っている顔も、本当に愛しく感じる

「いつも、俺の帰る場所になってくれて…それから、共に戦ってくれて」
違う場所で戦っていても傍にいる事を感じ

「本当にありがとう。愛してるよ」
迷いのない、いつもは照れて言えない本心だ



 泥が流麗に動く。
 土を含んでいる事などないかのように、水そのもののような鮮やかさで滑り、昇り、渦を巻き――そしてものの数秒で部屋となった泥を見る凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)の双眸は、ひどく落ち着いていた。
 そうか、と呟いた自身の肌を濃厚な魔力が絶えず撫でるが、黒の双眸は見事な彫刻を映したまま。冷静にすべき事を振り返る。
「さて……愛を語る、だな」
 話を聞いた時は、こういう戦いもあるんだなと感心したものだ。
 陸井は笑みを浮かべ、静かに目を閉じる。黒色に閉ざされたそこへ映る金と紫――風に揺れる二色の髪を持つ女は勿論、他の誰でもない妻の姿。
「愛してる、シリル」
 そう呟けば、瞼に映る妻が柔らかに微笑んだ。
 だが陸井は知っている。愛する妻は、ただ柔らかに微笑むだけの女ではない。あの紫の瞳は時に強く意思を宿し、望む道を行く為に必要なものを考え、力を揮う。妻もまた能力者であり猟兵なのだ。そしてそんな妻がいるからこそ――、
「どんな戦場でも、傷ついても……俺は、独りじゃないから進める」
 春の陽射しのように暖かな優しさ。
 安心する柔らかな物腰。
 ここに居らずとも、妻が纏う空気や仕草ははっきりと思い浮かぶ。
「心配はかけてると思うし……つい意地悪もしたくなるけど」
 これを聞いたら妻は何と言うだろう。どんな表情をするだろう。困ったように微笑むのか、それとも怒るだろうか? しかし、彼女の困り顔も怒っている顔も本当に愛おしいのだ。そこに嘘というものは一つもない。
 陸井はふと笑みをこぼし、胸に手を当て、妻を想う。
「いつも、俺の帰る場所になってくれて……それから、共に戦ってくれて」
 違う場所で戦っていても。姿が見えなくとも。声が聞こえずとも。
 いつだって彼女は、傍にいる。
 心を照らす陽射しのように、愛という形で自分の傍にいてくれる。
「本当にありがとう。愛してるよ」
 普段は照れて言えない本心だからこそ、その言葉に迷いはなく――美しい彫刻は静かに蕩け、形を失くしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パティ・チャン
■WIZ
これはこれで非常に恥ずかしいですが、幸い部屋の中の事ですし、扉が閉まるというのなら、知られることもないですし。
(部屋の扉が閉まる音)

それでは語りますか。([誘惑、コミュ力]発動させながら)
「最高の出会いのあと、それを抱く所から始まって、意志を通じさせたり、求めたり、優しく指を這わせ、奥底を探りあったり……この高揚感たるや!」
(顔を紅潮させ、照れながら。でも目はキラキラ)

「え?年齢制限?念の為に言っておきますけれど、相手は「本」ですよー。私は「本の虫」を自認してますし。」
(そして好きな本を延々と語り続け。首尾良くドアが開いたとしても、ダダモレしても、もう止められない。)

※アドリブ歓迎



「わ、本当に部屋になった」
 この世界の人類の祖と言われる女媧は、本人ならぬ本神が居なくても、ここまで出来てしまうのか。パティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)は泥であった壁――今は美しい彫刻で素敵な事になっている室内をキョロキョロと観察した。
 この部屋で、愛を語る。
 これはこれで非常に恥ずかしいのだが。
「ま、幸い部屋の中の事ですし」
 後ろを見る。扉も閉まり、扉と壁の接している面が綺麗に消えた。一つになったのだ。
 こうなれば、今したばかりの独り言含めた色々を誰かに知られる事もない。
 パティは自分一人用となった室内をくるりと飛んでから床に下りた。封神武侠界だからか、部屋全体に施されている彫刻はこの世界に似合いの牡丹。気に入りの東洋風衣装とも相性バッチリでは? なんて思いつつ背筋を伸ばす。
「そうですね、まずは出会いから語りましょうか」
 空色の目をキラリとさせ口にした出会い。数多の知識が集い、それを求める者が訪れる場所で、自分達は出会ったのだ。
 多くが在るそこで出会えた理由は、ひと目見た時に覚えた直感や、胸の高鳴りによる所が大きいかもしれない。そしてそれは、紛れもなく最高の出会いだった。
「そんな最高の出会いのあと、それを抱く所から始まって、意志を通じさせたり、求めたり、優しく指を這わせ、奥底を探りあったり……この高揚感たるや!」
 顔を紅潮させ照れながら室内を飛び回るが、目は煌めきに満ち――ぴたっ。ふいに停止する。
「え? 年齢制限?」
 パティはふふっと笑い、大きくターンするように軽やかに舞った。
「念の為に言っておきますけれど、相手は『本』ですよー。私は『本の虫』を自認してますし。あ、そうそう! 最新の“最高の出会い”も語っておきましょうか!」
 依頼で訪れた先にて出会えば持ち帰りからの積ん読が常としても、パティの愛は海のように広く深い。そんな愛は部屋の扉を見事開かせ――たのだが、パティはダダモレ状態に気付かないまま延々と語り続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

彩・碧霞
「私は今尚、人の子を愛しているようです」
姿同様半端に至りながら
最早全盛期の頃に私を求め、親しみ、大切に敬してくれた子達はこの世にないと知りながら
「もう神などではない、神と名乗るのをやめようと何度思ったことか知れません。しかしこの名ひとつとっても私は神の端くれであるばかり。そして神とは人の子ありきの存在なのです」
香鈴さん
私の、最後の巫女の様な人
あの日、花に憑かれて死に瀕しながらも私に助けを求めた彼女の伸ばした稚い手が私に思い出させた
かつて私に願いをかけた人々の顔を
「いつか本当に消えてしまうまで。かけられた願いに応え続けようと思うのです。愛し子達が笑って泣いて、幸せだったと生を終えてゆけるように」



「私は今尚、人の子を愛しているようです」
 訪れた者を閉じ込める部屋に紡がれた声は、ほ、と柔らかに降るようだった。
 彩・碧霞(彩なす指と碧霞(あおかすみ)・f30815)は淡い碧色の双眸を細め、静かに竜尾を揺らす。泥であった床はすっかり固くなっており、竜尾に撫でられたそこからさらさらと音がした。
 続いて部屋に降った音は、くすりと笑う音。
 碧霞は彼方を懐かしむような笑みを浮かべ、自分の竜体を見下ろす。
「……私は“もう神などではない、神と名乗るのをやめよう”と何度思ったことか知れません」
 自分は姿同様半端に至った身。そして全盛期であった頃に自分という神を求め、親しみ、大切に敬してくれた子らは既にこの世にはいない。神として確かな力を備え、神たる自分よりも遥かに短い生を駆ける命は皆、過去の中だ。
「しかしこの名ひとつとっても私は神の端くれであるばかり。そして神とは人の子ありきの存在なのです」
 文明の発達と共に彼らとの繋がりが薄れ、糧となる竜神信仰を失い弱体化したように、自分は彼ら人の子なくして存在出来ない。
 そんな自分に今、花のような“子”がいる。
(「香鈴さん。私の、最後の巫女の様な人」)
 碧霞の目がかすかに震えた。
 花に憑かれ、死に瀕した少女。まだ稚い年齢であった人の子は、思うように呼吸出来ず苦しみながら、自分に助けを求め稚い手を伸ばしていた。
 脳裏に浮かんだ香鈴は、過去のものとはいえ思い出すだけで胸が痛む。
 だが当時の香鈴が――生きようともがくあの稚い手が、碧霞にある事を思い出させた。

“神様”
“竜神様”

 敬愛と信仰を胸に自分を求め、祈り、願いをかけた人々らの顔。かつての姿、遠き日々に残る温かさを。
「いつか本当に消えてしまうまで。かけられた願いに応え続けようと思うのです。愛し子達が笑って泣いて、幸せだったと生を終えてゆけるように」
 自分の下半身は今も竜体のまま。それでも願われ、求められるのならば――最後の最期まで、神として共に傍に在ろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻


サヨ、私が愛するものはきみだよ
サヨ以外か…そうだね
サヨの好きなのも教えてほしいな

まず、私はパンケーキが好きだよ
あれは衝撃的な美味さだ
あと音楽ならば同志が歌う歌
野菜はトマトがいい
動物なら狸だな
空は朝焼けの空が心地良くて好きだ

花は、桜だ
きみの花
私を何時でも導いてくれる

サヨの好きな物も沢山知れて嬉しい
胸のうちが暖かくなってくる
けれど
何より好きなのは
愛しているのは
やっぱり櫻宵だ
私の龍よ
私の永遠の伴侶(とも)よ
……私の、いとしい巫女(花嫁)よ
ばかでいいよ
この愛は、誠であるからね

桜色に染まった心
あえかに彩るのは──あいするきみが教えてくれた
彩やかな世界の彩

ずっと共に
旅をしよう
きみの隣で笑っていたい


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイ、愛するものを教えて頂戴
…し、知ってるわ……!だからその、私…以外で
あなたの好きなものがしりたいから
うまれて一年も巡ったのだから…愛するものは増えたかしら?

嘗ての『あなた』は桜色にしか染まらなかった
カムイの心には如何なる彩が咲いたのか…気になるの
私も教えるから

パンケーキ!そればかりね
私はチョコレートが好き
ほろ苦い愛の味
あとお肉ね
血が滴るようなやわこいものがいい
魚ならやはりお寿司かしら
色なら白に桜に赫と黒…華やかなのも好きだわ
景色は美しい春暁の空が好き

……カムのばか
私も──あいしているわ
そう、食べてしまいたいくらい
…食べてしまうのも、躊躇われるくらい

愛する私の神様
ずっと、隣にいてね



 華美な噴水――とは泥であった為言えないが、それでも泥の変化は一瞬かつ鮮やかではあった。周囲はあっという間に部屋の形を成し、壁や柱、床と、見えない手があるかのように随所へ彫刻が生まれていく。
「塒の主が不在だというのに、見事なものだね」
 これも女媧という神の力だろうか。
 変化を終えた室内を見渡す朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)は、自分へと注がれる視線へ「どうしたんだい?」と柔らかに微笑みかけた。それを受け止めた誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)も微笑み、ねえ、と指先に触れる。
「カムイ、愛するものを教えて頂戴」
「? サヨ、私が愛するものはきみだよ」
 さらりと告げられた愛に櫻宵は一瞬言葉を失った。
 白い頬に朱が差し、桃色に染まっていく。
「……し、知ってるわ……! だからその、私……以外で」
「きみ以外で?」
「そうよ。あなたの好きなものがしりたいの。うまれて一年も巡ったのだから……愛するものは増えたかしら?」
 うまれる前。嘗ての『カムイ』は桜色にしか染まらなかった。
 けれど一年が経ち、多くの人や場所に触れてきたカムイはどうだろう。
「今のあなたの心には如何なる彩が咲いたのか……気になるの」
 私以外で。
 添えられたポイントにカムイは考える顔をして、双眸に櫻宵を映したまま「サヨ以外か……」と呟いた。じっと言葉を待つ巫女の顔を見つめていた神の瞳が、ふわり和らぐ。
「そうだね。サヨの好きなのも教えてほしいな」
 愛する巫女の事をもっと知りたい。神の純粋な愛情に櫻宵は破顔して頷いた。私も教えるわと楽しげな声、こてんと肩口にもたれてきた頭。幸いの宿った音と重みにカムイは微笑み、絡んだままの指先を、きゅ、と握る。
「まず、私はパンケーキが好きだよ」
「パンケーキ! そればかりね」
「けれどサヨ、仕方ないよ。あれは衝撃的な美味さだ」
 ふかふかとした生地はそれだけでも美味だというのに何とでも合う。バター、蜂蜜、果実、アイス、目玉焼き、ベーコン等々。美味の可能性に満ちたパンケーキ以外で好きなのは――、
「あと音楽ならば同志が歌う歌」
「ふふ、私も好きよ!」
「野菜はトマトがいい」
「あら、トマト?」
 暗闇をも照らす黄金の旋律。サラダにソースにと大活躍の赤い野菜。言葉と微笑み交えた櫻宵は、今度はきみの番だよと微笑まれ、そうねと唇に笑みを浮かべた。
「私はチョコレートが好き」
 ショコラティエとして作る事も、贈られて食べた事もある、ほろ苦い愛の味。去年のバレンタインでは神の手ずから贈られた。それから。
「あとお肉ね。血が滴るようなやわこいものがいい。魚ならやはりお寿司かしら」
 カムイが好きな動物は狸。
 空は朝焼けの空が心地良くて好き。
 櫻宵の好きな色は桜に赫と黒――華やかなもの。
 景色は美しい春暁の空が好き。
 それから――。
「花は、桜だ。私を何時でも導いてくれる」
 カムイの指先が桜角へ優しく触れる。擽ったそうに咲う櫻宵を見つめる眼差しは甘く優しい。櫻宵の好きな物を沢山知れた嬉しさが、胸のうちを暖かくする。
「けれど、何より好きなのは、愛しているのは、やっぱり櫻宵だ」
 禍津神の龍。永遠の伴侶(とも)。
 それから。
「……私の、いとしい巫女(花嫁)よ」
 向けられる愛はどこまでも純粋で真っ直ぐで。だからこそ、櫻宵は一言告げた。
「……カムのばか」
「ばかでいいよ。この愛は、誠であるからね」
 ねえ、サヨ。きみは?
 春陽のように柔らかな眼差しに、答えを求める神に、頬を染めた巫女も応える。耳元に唇を寄せる。少し動いたせいだろうか。梔子の香りがふわりと舞った気がした。
「私も──あいしているわ」
 食べてしまいたいくらい。
 食べてしまうのも、躊躇われるくらい。
 それ程に欲している。愛している。
「愛する私の神様。ずっと、隣にいてね」
 巫女の願いに神は確と頷いた。この心は桜色に染まった。その理由、あえかに彩るものを、あいするきみが教えてくれた。そう言って白い手を両手で包み込む。
「噫、ずっと共に。旅をしよう」
 鮮やかな世界の彩の中、きみという桜の隣で笑っていたい。
 何時までも何度でも共に咲き――そして、愛を結ぼう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、愛を語るなんて無理ですよ。
恋だってまだなのに。
ふえ?別に相手は人である必要はないって、確かにそうでしたね。
アヒルさんさすがです。
それじゃあ、私は・・・帽子愛を語ります。
ふえ?アヒルさんどうしたんですか?滑り落ちたりして。
えっと、私にとって帽子は安心感ですね。
帽子を被っていることでいろいろなものから守られているって感じられるんです。
おしゃれとしての面もありますが、帽子を被っていないと不安になってしまうんです。
あれ?アヒルさんどうしたんですか?ポカンとして私のことを見て。変なアヒルさんですね。



 泥と炎、そして魔力に溢れた空間を訪れたフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、神様不在でも十分恐ろしい空間をびくびくしながら進んでいた。
「ええと、確か、この泥がお部屋になって閉じ込められるんですよね……」
 でも一体いつ――と周りを気にした時。ひっくり返された水の逆再生映像のように、周りの泥が一気に上昇した。
「ふええっ」
 予告無しの変化にフリルはびくっと足を止める。アヒルさんは前後左右と素早く体の向きを変え興味津々だったが、僅か数秒で部屋の中に閉じ込められた事は少し驚いたらしい。
 グワグワ鳴きながら四方を見るアヒルさんと一緒にフリルは目を丸くする。蔦や花、小鳥など、美しく可愛らしい彫刻が目を引く部屋が完成したという事は聞かされたアレをやらなくてはならないのだが。
「ふええ、愛を語るなんて無理ですよ。恋だってまだなのに」
『グワッ、ガァガァ』
「ふえ? “別に相手は人である必要はない”って……確かにそうでしたね」
 さすがですと言われたアヒルさんが満足気に胸を張るのを見て、フリルはほんの少しだけはにかみながら愛について考え、決めた。
「それじゃあ、私は……帽子愛を語ります」
 すてんッ!
 突然アヒルさんが滑り落ちた。どうしたんですかと訊くも、アヒルさんはお目々をぱちくりさせるだけ。気になったが語らないと出られない。フリルは両手をきゅっと握り、ぽつぽつと帽子愛を紡いでいく。
「えっと、私にとって帽子は安心感ですね。帽子を被っていることでいろいろなものから守られているって感じられるんです」
 帽子を被っていないと不安になってしまう自分にとって、帽子は“服に合わせて選ぶお洒落アイテム”の枠に留まらない、大切な物で――あれ?
「アヒルさんどうしたんですか? ポカンとして私のことを見て」
『グワワ……』
「変なアヒルさんですね。……あっ、見て下さいアヒルさん。ドアが開きましたよ」
 抱き上げてもアヒルさんはポカンとしたまま。フリルは首を傾げながらも、まずはお外に行きましょうとぱたぱた駆け出し――二人が出た瞬間部屋は泥に戻り、空気に溶けて消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルヴィア・ジェノス
愛…そ、それじゃ恋人(活性化1)について…
と頬を赤く染めつつ語るわ

私の彼は意地悪だし、何考えているか分からないことも多いし、色々な価値観も違うしで…それで怒ったり悩んだりすることも多いのだけれど

でもね、好き…最愛の人
彼の大きな手で頭を撫でられるのが好き
ぎゅっと抱きしめられるのも好き
座った状態で後ろからぎゅっと抱きしめられるのが特に好き。彼の体に自分の体を預けながら過ごす時間が好き
彼の寝顔を見るのも好き。いつもより少しだけ幼く見えて可愛いの
あの顔は私だけが見られるものだって思いたいわ

彼とこれからもささやかな、でも大切な思い出を作り続けたい
そしていつかは彼の家族に…お嫁さんに、なりたいな



 一瞬で出来上がった部屋に閉じ込められ、その時が来たのだと実感する。
 シルヴィア・ジェノス(月の雫・f00384)は周りをしっかり確認して――うう、と小さく唸った。スカートの裾を摘む指先が落ち着かない。もじもじする。
(「大丈夫、大丈夫よ。今ここにいるの私だけなんだから……!」)
 自分で自分にそう言い聞かせ――顔に集中していく熱へあまり意識を向けないようにして、すう、はあ、と深呼吸を一回。愛について語るのならば、語れるものは大好きなグルメを中心に色々あるのだが。
「……そ、それじゃ恋人について……」
 意を決して口にすれば、かぁ、と頬が熱くなった。
「私の彼は意地悪だし、何考えているか分からないことも多いし、色々な価値観も違うしで……」
 それで怒り、悩んだ事は何度あっただろう。
 正確な回数なんて数えた事がない為、怒って悩んだ回数はわからない。語りながら振り返ってみて、“多かったわね”といえるくらいの回数だった気がする。
 多分。これからも恋人の意地悪に怒ったり、何を考えているかわからず不安になって悩むのだろう。物心ついた頃から現在に至る色々が絡んだ価値観は、一番の難敵かもしれない。
「でもね、好き……私の、最愛の人なの」
 彼の大きな手で頭を撫でられるのが好き。
 ぎゅっと抱きしめられるのも好き。
 座った状態で後ろからぎゅっと抱きしめられるのが特に好き。
 彼の体に自分の体を預けながら過ごす時間が好き。
 それから――、
「彼の寝顔を見るのも好き。いつもより少しだけ幼く見えて可愛いの。……秘密よ?」
 美しい蔦と果実が共に彫られた壁へ囁き、笑う。
 頬の熱は耳にまで行っている気がした。だが、もう気にならなくなっていた。
 可愛くてもっと好きになるあの寝顔。あれは自分だけが見られるものだと思いたい――小さな独占欲を吐露したシルヴィアは、それからね、と頬染める紅色をほんのり濃くさせた。
「彼とこれからもささやかな、でも大切な思い出を作り続けたい。そしていつかは彼の家族に……お嫁さんに、なりたいな」

 怒ったり悩んだりすることも多いのだけれど。
 “恋人の、その先”を願うくらい――彼が、好き。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【鯱兎】
愛…愛か……
語るのはいいんだけど…何聞いてもからかわないでね
絶対だよ、絶対だからね?

あのね、晃君
初めて会った時、何も聞かずに僕を受け入れてくれてありがとう
色んな事を、気づかないフリしてくれてありがとう
皆は何かと心配してくれるし、僕のために尽力してくれる
それに救われる事も多いし嬉しいけど…
やっぱり、申し訳なくなっちゃうから

うん、でも僕、晃君になら虐められてもいいよ
(だって…わかってるから。寂しさも、優しさも。
 大丈夫、傍にいるよ)

隠されてる間はそっと彼の表情を伺いながら
耳を覆う温かさに意識を向けて

僕だけ聞けないのずるーい

拗ねた素振りを見せるもそれだけ

ん…今はいい
話したくなったら、教えて


堺・晃
【鯱兎】
はいはい、大丈夫ですよ
お先にどうぞ

…見て見ぬフリ、ね
君は僕を買いかぶり過ぎだ
君の困る姿を見て楽しんでいるだけ
わかっているでしょう

…ドМですか?

何を言っても笑顔を崩さない澪君の様子に肩を竦め

…少しだけ、失礼しますね

そっと彼の両耳を両手で塞ぐ
笑顔のままいつもより優しい声で

僕は最低な人間だから
君の幸せを願う事ができない
同じ闇を知る者同士
君に理解を求めてしまう
同じ痛みを、与えてしまう

僕は我儘だから
君も…他の奴らも
きっと手放す事はできない
傍に縛り付けてしまう
それでも逃げずに受け入れてくれるなら
ありがとう…ごめんね

そっと手を離し

終わりましたよ
追及しないんですね

(君のそういう所が…眩しくて、苦手だ)



 炎が揺らぎ、大地を覆う泥が足を取る。
 だが、足元の不安定さが在ったのは女媧の塒を訪れてから数秒後までの事。
 たちどころに部屋となり自分達を閉じ込めた泥と変化の速さに、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は目を丸くした後、むう、と少しだけ唇を尖らせた。
「愛……愛か……」
 そのリアクションで澪が何を考え、そして次に何と言うか想像するのは容易くて。ふ、と笑った堺・晃(元龍狼師団師団長・f10769)は、すかさずこちらを見た澪へと完璧な微笑みを返した。その微笑みを、少々不満げな顔をした澪が見つめ返す。
「語るのはいいんだけど……何聞いてもからかわないでね。絶対だよ、絶対だからね?」
「はいはい、大丈夫ですよ。お先にどうぞ」
 相変わらず綺麗で余裕たっぷりの微笑みを、澪は静かに真っ直ぐ見つめ――「あのね、晃君」と、自分の中に在る一つの愛を伝え始める。
「初めて会った時、何も聞かずに僕を受け入れてくれてありがとう。色んな事を、気づかないフリしてくれてありがとう」
 初めて会うよりも前、どこでどう暮らしていたのか。どうしてここへ連れて来られたのか。晃はそれらを一切自分に尋ねはしなかった。穏やかな日々でなかった事など当時の自分の様子からすぐ判っただろうに、晃は見えた様々なものに一言も触れず、顔にも出さなかった。
「皆は何かと心配してくれるし、僕のために尽力してくれる。それに救われる事も多いし嬉しいけど……やっぱり、申し訳なくなっちゃうから」
 今そこに居る澪の今だけを。表に出している部分だけを拾い上げる。そんな晃の接し方にも、澪は救われていた。だから。
「ありがとう、晃君」
「……見て見ぬフリ、ね。君は僕を買いかぶり過ぎだ」
 伝えられた言葉が心からのものだとわかったからこそ晃はそう言い、唇に微笑みを浮かべたまま、目の前の存在から静かに視線を外す。会話の中、ついでのように壁を彩る彫刻を眺め、再び澪を見て薄らと笑った。
「僕は君の困る姿を見て楽しんでいるだけ。わかっているでしょう」
「うん、でも僕、晃君になら虐められてもいいよ」
「……ドMですか?」
 笑顔での返答に、さすがの晃も少しだけ目が丸くなる。その目はすぐ微笑みとリンクして細められるが、澪の笑顔は崩れない。
(「だって……わかってるから。寂しさも、優しさも。大丈夫、傍にいるよ」)
 ふふ、と笑いかけられた晃は肩を竦めた。
「……少しだけ、失礼しますね」
 両腕を広げ、掌を澪の頭に寄せていく。澪の瞳は掌に向くが、身構えるでも嫌そうな顔をするでもなく、晃のする事を待つ――そんな澪にほんの一瞬だけ。当人にしかわからない幽かさで晃の瞳が揺れ、両手が澪の両耳を塞いだ。
「僕は最低な人間だから、君の幸せを願う事ができない」
 浮かべる表情は笑顔のまま。
 いつもより優しい声は澪の耳には届かず、晃の鼓膜を震わせ、部屋に落ちていった。
「同じ闇を知る者同士、君に理解を求めてしまう。同じ痛みを、与えてしまう」
 知っているなら、同じなら、解るだろう。
 知っているなら、同じなら、そのままで。
 だから自分は、澪の変化を、幸せを願えない。
「そして僕は我儘だから、君も……他の奴らも、きっと手放す事はできない」
 言葉や行動で、傍に縛り付けてしまう。
 自分がそれを実行した時、そっとこちらの表情を窺う澪や、他の皆はどうするのだろう。
「それでも逃げずに受け入れてくれるなら」
 傍に――居て、くれるなら。
「ありがとう……ごめんね」
 告げた言葉がただただ静かに落ちた後、澪の世界に音が戻ってくる。
 終わりましたよと告げられ、耳覆う温かさが離れた事は少し残念な気がしたけれど。
「僕だけ聞けないのずるーい」
「追及しないんですね」
 拗ねた素振りを見せただけの澪に晃が問えば、円な目がぱちりと瞬いた。
「ん……今はいい。話したくなったら、教えて」
 その時、部屋中を彩る彫刻がとろりと薄れた。気付いた二人の目が向いた瞬間、四方がパシャンッと音を立てて崩壊してただの泥になり、完全に消えるまで数秒とかからない。始まりと同様に終わりもあっという間だ。
「部屋になった時の逆再生みたいだったね。それじゃあ行こ、晃君」
 変わらない笑顔が向けられる。ぱたぱたと先を行く後ろ姿も華奢だ。目は――前を見続けるのだろう。今までのように、誰が、何が在っても、変わらずに。
(「君のそういう所が……眩しくて、苦手だ」)
 両手で耳を塞ぐには少し遠いから。抱いたそれに愛だ何だといったラベルは付けず、ただ、胸の奥にしまい込む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

好きだ可愛いって言うのはしょっちゅう伝えてるけど
改まってどこがどうってのはあんま言った事ないから
照れくさいけど
たまにはいいのかもしんないな

最初は頼れるお姉さんだと思ってたけど
必ずしもそうとは限らなくて
臆病な癖強がりで頑張り屋で
そんな瑠碧をずっと側で俺が守りたいって願うようになった

分かんなかった愛って感情も瑠碧のお陰で分かるようになって
一緒に居ると
色んな事が楽しくて
幸せで

例えば今
瑠碧が居なくなったら
今の俺は俺じゃなくなる
なんて
そう思う

俺の為に知らない事を知ろうとする健気な所も
俺にだけたまに大胆な所も
全部可愛くて愛しくて
知れば知る程
好きになればなる程
もっと好きになってく

勿論今もな
頬に触れ


泉宮・瑠碧
【月風】

私も…好き以外は感覚なものなので
…恥ずかしいですが

理玖を可愛いと思った時に
そう伝えるとご不満らしいのですが…
私が理玖を可愛いと思うのはときめいたり
好きの意味も入って想うからです

ふとした仕草や様子…
甘えてくれた時や、心がきゅっとした際にも
可愛いって出る事があります
ときめく際に出た言葉が「可愛い」と言いますか

勿論
ただ可愛いって出る事もありますが
理玖に言う可愛いは愛しさです

それに
格好良いのは傍目で分かりますから
可愛いとも思えるのは少し特別感で

…理玖は可愛いと言うのに
私が愛しくて可愛いと言うと駄目なのは狡いです

つまり
理玖は格好良いけれど、私には可愛い時もあるのです

頬の手を重ね
お互いの特権、です



「好きだ可愛いって言うのはしょっちゅう伝えてるけど、改まってどこがどうってのはあんま言った事ないから、照れくさいけど……たまにはいいのかもしんないな」
 少しだけ頬を染めながらも明るく笑った陽向・理玖(夏疾風・f22773)に、泉宮・瑠碧(月白・f04280)も笑みを浮かべながらゆっくり頷いた。自分達は既に出来たばかりの部屋の中。絶対に語らなければならないとわかっていても、胸の高鳴りと共に照れくささが湧き上がる。
「私も……好き以外は感覚なものなので……恥ずかしいですが」
 私から。
 小さくはにかんだ瑠碧に、今度は理玖が頷いた。
「私、理玖のことを可愛いと……そう言うことが、ありますが」
「ああ」
 可愛いと伝えた時の理玖が“可愛いよりも”と、他の言葉を望んでいる事は知っている。ただ、瑠碧が可愛いと言うのは、そこに確かな想いがある為だった。
「私が理玖を可愛いと思うのは、ときめいたり、好きの意味も入って想うからです」
 ぽっ。瑠碧と理玖の頬が染まる。
 理玖の顔と自分の手元を交互に見た瑠碧の双眸が、淡い煌めきを浮かべて理玖だけを映す。
「ふとした仕草や様子……甘えてくれた時や、心がきゅっとした際にも、可愛いって出る事があります」
「そ、そうなのか?」
「はい。ときめく際に出た言葉が“可愛い”と言いますか」
 理玖が見せてくれたもの。その様に心が高鳴った時。そこにピタリとはまる言葉が“可愛い”だったのだと思う。そうか、それで――と理玖は当時を振り返り、
「勿論、ただ可愛いって出る事もありますが」
「えっ」
 驚き、つい声を上げた。
 そんな様子も瑠碧の中で“可愛い”を生むのだが、理玖に言う可愛いは愛しさと繋がっている。 それに、理玖が格好良いという事は傍目で分かる。そこから“可愛い”とも思えるのは、理玖が自分にだけ見せてくれるものがあるという、ちょっとした特別感。だからこそ。
「……理玖は可愛いと言うのに、私が愛しくて可愛いと言うと駄目なのは狡いです」
 つまり。瑠碧にとって“理玖は格好良いけれど、可愛い時もある”。
 頬を染めながらも愛を語り終えたなら、次は理玖の番だ。んん、と照れくささを消すような咳払いの後、理玖の口が開かれる。
「最初は頼れるお姉さんだと思ってた。あの頃は、瑠碧姉さんって呼んでたな」
 だが、必ずしもそうと限らないのだと知った。
 物静かで、落ち着いていて――けれど臆病な癖、強がりで、頑張り屋。共に戦い、共に出かけるようになって知った瑠碧の表情に、どんどん惹かれていった。
「そんな瑠碧をずっと側で俺が守りたいって願うようになった」
 そして、分からなかった“愛”という感情も、瑠碧のお陰で分かるようになった。どんな音で、どんな熱で、どんな心地なのかを。
「瑠碧と一緒に居ると、色んな事が楽しくて、幸せで……」
 だからこそ、浮かぶものがある。
「例えば。例えば、なんだけどさ」
「はい」
 瑠碧の手が理玖の片手に触れ、包み込んだ。
 大丈夫。
 その想いが伝わる温かさに理玖は目を細め、瑠碧の手にもう片方の手を重ね、握り締める。
「今瑠碧が居なくなったら、今の俺は俺じゃなくなる。……なんて。そう思うんだ」
 これもきっと、愛を知った事で得たものだろう。
 例えばの時を想像すると心臓の奥が音もなく熱を失くして、冷えていきそうだ。
 だが、それを上回るほどのものが同時に生まれ、体中に溢れていく。
「俺の為に知らない事を知ろうとする健気な所も、俺にだけたまに大胆な所も、全部可愛くて愛しくて……瑠碧の事を知れば知る程、好きになればなる程、もっと好きになってく」
 柔らかくて、あたたかくて、熱くて、優しいもので全てが埋まって、そこからまた新しい愛情が芽を出して、涙や笑顔や、喜びや――愛を伝う行動に変わっていく。きっと、これに終わりは無い。それが嬉しくて幸せだった。
「勿論今もな」
「お互いの特権、ですね」
 理玖の手が瑠碧の頬に触れる。
 瑠碧の手が、頬へ触れる理玖の手に重ねられる。
 白い頬に紅を灯す熱と触れた手から広がる温もりは静かに交わって、微笑みとなり――甘く優しい煌めきが、互いの双眸で静かに瞬いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

重松・八雲
ふ、何度挑んでも漲る戦場だのう!
(愛と勢いが有り余り過ぎたのか、愛しのたぬこさまと共に再び意気揚々と乗り込み!)

たぬこさまのこの愛嬌たっぷりな仕草!
見ておるだけで心洗われる無邪気さ!
何度でも高らかに叫ぼう!
可愛いのう!!可愛いのう!!
(でれでれ)

立てばもふもふ!
座ればもふもふ!
遊ぶ姿はふるもっふ!
ふわふわほわほわきゅるんきゅるん――!
最早存在しているだけで可愛い!
全身全霊で愛でるしかなかろう~!
(ここまでほぼ息継ぎなし)

そして今日はおまけにじゃ!
儂とたぬこさまが共に愛してやまぬおやつも用意してある!
ああ、共に幸いを分かち合う尊さよ!
たぬこさま万歳!!
愛しておるぞ~!!
(腹と心の底から全力主張)



 重松・八雲(児爺・f14006)が女媧の塒を訪れ、部屋に閉じ込められるのは今回が初めてではない。故にその姿は堂々としたものであり――胸のうちはそれはもうドッカンドッカン。愛がと勢いが溢れに溢れ有り余ってのお祭り騒ぎ。落ち着くどころか、さあ語るぞと漲るやる気元気で目はぴっかぴかである。
「ふ、何度挑んでも漲る戦場だのう!」
 わははと豪快に笑う八雲の腕の中で、八雲が愛してやまないたぬこさまもキュートな鼻をぴすぴすと天井に向けていた。
「おお、たぬこさまもか?」
 こくこくっ。
 冬毛で大変真ん丸ふるもっふボディでの頷きに、八雲はでれでれしながらたぬこさまを両手で抱え上げた。ああこれはいかん、これは全世界に発信せねばならぬ可愛さよ! ――という事でサバンナの住民もびっくりの高さで掲げ、告げる。
「たぬこさまのこの愛嬌たっぷりな仕草!」
 お手々で鼻先をこしょこしょ!
「見ておるだけで心洗われる無邪気さ!」
 彫刻に果実を見付けてお目々がきらっ!
 神の塒だろうと閉じ込められていようと、たぬこさまはエブリデイグレイテストプリティ。故に愛も叫びも止まらない止められない。ならば高らかに叫ぼう何度でも!
「可愛いのう!! 可愛いのう!! 立てばもふもふ! 座ればもふもふ! 遊ぶ姿はふるもっふ! ふわふわほわほわきゅるんきゅるん――! 最早存在しているだけで可愛い! 全身全霊で愛でるしかなかろう~!」
 息継ぎなしで愛を叫んだ八雲だがまだ終わらない。そもそも八雲のたぬこさま愛に終わりなどなかった。
「そして今日はおまけにじゃ!」
 えっ何々? ぴこっと反応したたぬこさまのお目々が期待で輝く。可愛い。
「儂とたぬこさまが共に愛してやまぬおやつも用意してある!」
『!』
 クゥクゥソワソワッ。喜びと興奮で落ち着きを無くしたたぬこさまの可愛さといったら。
 ああ、そんな可愛くて愛しいたぬこさまと共に幸いを分かち合う尊さよ!
「たぬこさま万歳!! 愛しておるぞ~!!」
 おお、いと尊き真ん丸ふるもっふよ!
 八雲は愛を腹と心の底から全力主張させた。すると部屋全体が震え、飴細工のようにドンガラガッシャンと容易く崩れ落ちる。
「ふ。矢張り敵ではないのう。儂とたぬこさまの“完・全・勝・利!”じゃ~!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【愛好会🍊】
姐サン、オレと二人でココに来てくれたってコトは…!遂に――!(ごくり)



しってた…っ(がくり)
てか何姐サンに密着してんのズルイ!
あとけだまもふもふ愛でてるのもズルイ~!

ねぇ…オレは放置?
姐サンが愛多きオトメなのはわかるヨ?
でも何?オレは炬燵に負けたっていうの…??
くっ…コレも愛の鞭(?)とか愛情表現の内(?)とかそんな感じだよネッ

うわ~ん!何二人の世界(おこた)に入ろーとしてんの!
オレも帰ったら恋人(おこた)にあっためてもらうもん不貞寝にそっと寄り添ってもらうもん…!
オレを優しく包んで癒してくれるのは炬燵だけだヨ~!(悲哀というか悲愛の叫び)

いやソレはソレってか何で知って…!?


花川・小町
【愛好会🍊】
またそんなに目を輝かせちゃって、可愛いこと
そうね、もうお分かりでしょう?

――愛と哀は別物だって
(哀れみの眼差しで微笑み)
それに、二人は二人だけれど――

(もふり)

ふふ、あったかくてふかふかで最高ね
そうだわ、あったかくてふかふかで猫ちゃんといえば、炬燵も良いわよね
暖を取りながら雪景や猫ちゃんを愛でたり、お酒やお鍋を愉しんだり――ああ、堪らないわ(うっとり夢でも見るかの様な表情で)

まぁ、流石ちょこの旦那様ね
猫ちゃん目線の愛好ポイントも愛らしくて素敵

ええ、是非――泥も消えた事だし、続きはおこたで語らいましょう

あら伊織ちゃん、ぴよこちゃん達に愛を囁きながら炬燵も恋人だなんて…本当に浮気性ね


鈴丸・ちょこ
【愛好会🍊】
(小町の羽織の中でもぞり
色んな意味で仕事の時間を察し)
――おう、正確にゃ二人と一匹だな

(ひょこり!)

ふ、今日は気分が良いからな
特別に愛玩動物扱いを許そう
で、何だったか
語るんだったか
おう炬燵な、あれは良い

食卓にして良し、寝床にして良し
あれを囲っての晩酌や蜜柑&鍋戦争は醍醐味だ
んで満腹になりゃ、そのまま気儘に丸くなったり伸びたり溶けたりするも一興
俺も思わず愛用しちまう逸品だ
(何か言っている伊織を横目に炬燵愛好会たいむ)

よし、興が乗った
帰ったら早速炬燵で晩酌がてら、続きの雑談と洒落込もうじゃねぇか

何だ伊織
先日はぴよこや亀にでれでれ癒され愛でまくってたじゃねぇか
炬燵に浮気とは良い度胸だな



 女媧の塒、訪れた者を閉じ込める部屋に二人。
 無言で絡んだ眼差しは、花川・小町(花遊・f03026)によって静かに外される。しかし、呉羽・伊織(翳・f03578)の瞳は小町へと熱く――期待いっぱいのキラキラを浮かべ注がれていた。
「姐サン、オレと二人でココに来てくれたってコトは……! 遂に――!」
「またそんなに目を輝かせちゃって、可愛いこと。そうね、もうお分かりでしょう?」
 くすり。微笑んだ唇が言葉を紡ぐ。
 それを見た伊織は喉をごくりと鳴らした。
「――愛と哀は別物だって」
「……」
 アレッ?
 連続した“あい”にぴたり止まったキラキラ眼差しへ、哀れみを宿した微笑みが向く。
「それに、二人は二人だけれど――」
「おう、正確にゃ二人と一匹だな」
 ひょこり!
 色々な意味で仕事の時間かと察して顔を出した鈴丸・ちょこ(不惑・f24585)の頭を、小町の手が優雅にもふりと撫でる。
「……」
 伊織が沈黙している間に、再びもふり。そして。
「しってた……っ」
 伊織はその場にがくりと崩れ落ちる。
 何の邪魔も現れないまま小町と女媧の塒を訪れ、二人一緒に“真摯に愛を語るまで出られない部屋”に閉じ込められるなんて、おかしいと思ったのだ。いつもだったら、と振り返りかけた悲しい過去を伊織は「ええいくそー!」と遠くに放る。
「てか何姐サンに密着してんのズルイ! あとけだまもふもふ愛でてるのもズルイ~!」
「ふふ、あったかくてふかふかで最高ね」
「ふ、今日は気分が良いからな。特別に愛玩動物扱いを許そう」
 喉の下。顔。花のように微笑んだ小町からのもふもふ撫で撫では大変宜しく、ちょこは目を細め、受け入れる。
「で、何だったか」
 女媧の塒に行く。
 閉じ込められる。
 それから、
「語るんだったか」
「そうだわ、あったかくてふかふかで猫ちゃんといえば、炬燵も良いわよね」
「おう炬燵な、あれは良い」
 小町はちょこの同意に微笑み、ちょこの頭から背中までを丁寧に撫でていった。室内をぐるりと見ても、見事な彫刻はあれど炬燵はない。猫ちゃんなちょこがいるのだから炬燵があれば良かったのに。残念に思うが、他にも足りないものがある。
「暖を取りながら雪景や猫ちゃんを愛でたり、お酒やお鍋を愉しんだり――ああ、堪らないわ」
「全くだな。食卓にして良し、寝床にして良し。あれを囲っての晩酌や蜜柑&鍋戦争は醍醐味だ」
 緩やかに目を細めたちょこは思い浮かべ――「ねぇ……オレは放置?」――伊織が何か言っているが、始まったばかりの炬燵トークは止まらない。
 ぬくぬくの炬燵はそれ単体でも素晴らしいが、色艶も味も良い蜜柑や、具材の旨味がとけあった鍋が合わさった時の素晴らしさといったらない。温まりながら美味いものが楽しめるというひとときは、冬だからこその魅力に溢れている。
「んで満腹になりゃ、そのまま気儘に丸くなったり伸びたり溶けたりするも一興。俺も思わず愛用しちまう逸品だ」
「まぁ、流石ちょこの旦那様ね。猫ちゃん目線の愛好ポイントも愛らしくて素敵」
「ふ。ありがとよ」
 あれも。これも。炬燵愛好会たいむはまだまだ止まる気配はなく、こっちを見てもくれない二人に伊織の心はしおっしおになっていった。
「姐サンが愛多きオトメなのはわかるヨ? でも何? オレは炬燵に負けたっていうの……??」
 いや待てよ。違う方面から捉えたら――?
 捉えてみた伊織は、くっ、と小さく呻く。
「コレも愛の鞭(?)とか愛情表現の内(?)とかそんな感じだよネッ」
 悲しみを乗り越えた、その時だった。
「よし、興が乗った」
 えっ何が。
 伊織が目を丸くしてる間に炬燵愛好会トークはまだまだ続くようで。
「帰ったら早速炬燵で晩酌がてら、続きの雑談と洒落込もうじゃねぇか」
「ええ、是非――泥も消えた事だし、続きはおこたで語らいましょう」
「うわ~ん!」
「なぁに」
「どうした」
 じ、と向けられる微笑みと大人な眼差しを、伊織は不満いっぱいの目で睨んだ。泥が消えた、じゃなくて、そうじゃなくて――!
「何二人の世界(おこた)に入ろーとしてんの!」
「あら、やきもち?」
「ふ。まだまだ青いな」
「くっ……! いいもんいいもん、オレも帰ったら恋人(おこた)にあっためてもらうもん不貞寝にそっと寄り添ってもらうもん……! オレを優しく包んで癒してくれるのは炬燵だけだヨ~!」
 わあっと悲愛の叫びを響かせる伊織に、微笑んだ二人の優しさが向く――わけがなかった。
「何だ伊織。先日はぴよこや亀にでれでれ癒され愛でまくってたじゃねぇか」
「あら伊織ちゃん、ぴよこちゃん達に愛を囁きながら炬燵も恋人だなんて……本当に浮気性ね」
「いやソレはソレってか何で知って……!?」
「ふふ、どうしてかしら。ねぇ? ちょこの旦那様」
「何でだろうなぁ。ああそうだ、この世界の酒を買って帰らねぇか?」
「待って待って、凄い気になること残して先に行かないで!?」
 なぜ世界はこうも厳しいのだろう。
 伊織は唇を噛み締め、愛しいものを想った。
(「ううっ、ぴよこ! 亀! おこたと一緒に、オレを癒やしてッ!」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リヤン・サクリフィス
あたしね、ミツがだいすき
何かにイライラしてる時もかっこいいけど
あたしにはずっと優しいの

あたしが血と肉で汚れてても、抱きしめてくれる
一緒にお風呂に入るのもすき
美味しいものを一緒に食べるのもすき
内緒話をして一緒に眠るのもすき

あたしは、こんなだから
可愛くない時もあるの
…きっとずっと、可愛くないの

でも、リヤンが可愛くない時はないんだって言ってくれるの
あたしに嘘つかないって約束してくれた人

あたしが時々ミツを忘れてしまっても
すぐに思い出させてくれる
だから、こわいけど、こわくないの

ミツはあたしに綺麗な言葉で愛を囁いてくれるのに
あたしはずっと、いっぱいいっぱい

でも愛してる
たくさん、たくさん愛してるの



「あたしね、ミツがだいすき」
 閉まったままのドアへ背中を預けているリヤン・サクリフィス(戀慕・f34991)の言葉が、一人ぼっちの室内へと密やかに落ちる。
「何かにイライラしてる時もかっこいいけど、あたしにはずっと優しいの」
 自分以外誰もいない部屋。あるのは何か凄そうと思える彫刻くらい。それでも、愛する気持ちを音にして言葉に変える、という行為は慣れなくて――静かな部屋に、手持ち無沙汰な両手を擦り合わせる音がした。
「ミツは、あたしが血と肉で汚れてても、抱きしめてくれる」
 そんな彼と一緒にお風呂に入るのもすき。
 美味しいものを一緒に食べるのもすき。
 内緒話をして一緒に眠るのもすき。
 今はここにいない彼への“すき”が順番に溢れ、同時に、ちくりとした痛みも生まれた。いつの間にか出来ていた傷に気付いた時のような、ささくれに触れてしまった時のような。
 リヤンは歪な彩の翼が生えた傷だらけの両腕と両足を見下ろす。
「あたしは、こんなだから。可愛くない時もあるの」
 ――ううん、違う。
 傷跡や翼を隠すように、リヤンは自分を抱き締めた。
「……きっとずっと、可愛くないの」
 翼の彩が揃っていたら。
 傷だらけじゃない綺麗な肌だったら。
 魔獣の血肉と匂いじゃなくて、花とか、そういう素敵な香りだったら。
 “こう”じゃない自分を思い浮かべた心は束の間の夢を見る。だが、何よりも明るく温かくさせるのは彼の言葉だった。
「でも、“リヤンが可愛くない時はないんだ”って言ってくれるの」
 彼は、自分に嘘をつかないと約束してくれた。彼は、自分が時々彼の事を忘れてしまってもすぐに思い出させてくれる。言葉で、眼差しで、手の熱で。
「だから、こわいけど、こわくないの。ただ……ミツはあたしに綺麗な言葉で愛を囁いてくれるのに、あたしはずっと、いっぱいいっぱい」
 もっと上手に、言葉に出来たなら。
 願い事や欲しいものはどんどん増えていくのに、全然上達してくれやしない。増えていくだいすきと一緒に自分へのきらいも増えて、止められない。
「でも、愛してる」
 そう。これだけは変わらない。
 彼からの言葉が揺らがないように。
「あたしも、たくさん、たくさん愛してるの」

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
体制崩して部屋の外に…
眼鏡落とした(凹

他人から見れば普通の伊達眼鏡の筈なんですけどね?
実際、掛けてない方が遠くも見えたりしますがね。
アレ、特注品なんですからー!
…いえ、元は買ったわけじゃ無いですけど。

今でこそフリーですが…
組織に属してた頃。
魔術方面(あまり才能無かった)の師というか…
僕の“役割”の先代――うん。こっちのがしっくりくる――から、
あまり外すなって着けられたんです。
今でこそ、命を守る為だったと解りますが、当時は意味不明でね…
ん?あ。アレ、生命力を魔力に変えない為の安全装置。
最近でこそ外している事が多いですけど。
あの人…カイには、感謝してるんです。

傭兵としての技能、戦闘、心構え…
そういうものを(物理的に)叩き込んでくれやがりました団長――
アレも、師と呼んで良いものか…。
兎に角アイツと違って。
本当はもっと、深層ではタチが悪くて、敵にしちゃならない相手で、
けれど団長との友情…絆と、仕事への思いは本物で。
…尊敬、してたんだと思う。

って、こんな想いもアリ?
眼鏡が無いと何か自信が減る様な…



 出来上がったばかりの部屋の壁へ力なくもたれ、そのままずるずると座り込んだクロト・ラトキエ(TTX・f00472)の表情は沈痛一色に染まっていた。それは、愛(?)を失ったからである。
「体勢崩して部屋の外に……眼鏡落とした」
 厳密にはまだ部屋の外にある(筈)なので100%失ったわけではないのだが。
 そして普段掛けている眼鏡は部屋の外。取りに行くには愛を語らなければならないが、しかし、あの眼鏡がないと“物の輪郭ボヤボヤフェスティバル開催!!”なんて起きないのだが。
「他人から見れば普通の伊達眼鏡の筈なんですけどね? 実際、掛けてない方が遠くも見えたりしますがね」
 クロトは部屋に向けて言い、うすらと笑う。
 しかし落とした眼鏡をそのままに出来ない理由があった。
「アレ、特注品なんですからー!」
 特注。それは有料。
 今は離れ離れの特注眼鏡への愛しさやら切なさやらを胸にクロトは黙り――思い浮かんだ姿へ、かすかな笑みを浮かべる。
「……いえ、元は買ったわけじゃ無いですけど。……今でこそ僕はフリーですが……組織に属してた頃があって」
 そして魔術方面――“あまり才能のなかった”の注釈が付く――の、師、と言えばいいのか。クロトは少しだけ姿勢を直し、座り心地を良くしてから口を開いた。
「僕の“役割”の先代――うん。こっちのがしっくりくる――から、あまり外すなって着けられたんです。アレを、特注品の眼鏡をですよ?」
 クロトの命を守る為に与えられたのだと今でこそ解るが、当時のクロトには意味不明の四文字しかなかった。アレと呼ぶ伊達眼鏡でなぜ命を守れるのか。その理由は、眼鏡そのものに抑制と封印の力が籠められており、魔力上限制限の術式を視覚から直接得る事で、生命力を魔力に変えず活動出来るからだ。
「安全装置ってやつですね。最近でこそ外している事が多いですけど」
 だがそれは。そこは。空っぽではない。
「あの人……カイには、感謝してるんです」
 生命力を魔力に変えない為の安全装置を寄越してきた人。自分に、傭兵としての技能・戦闘・心構えといったものを、物理的に叩き込んでくれやがった団長。
「アレも、師と呼んで良いものか……」
 頬杖をついて考える。
 ――今決めなくてもいいか。
「兎に角アイツと違って。本当はもっと、深層ではタチが悪くて、敵にしちゃならない相手で、けれど団長との友情……絆と、仕事への思いは本物で」
 だからこそ、“胸の中に浮かぶもの”がある。
「……尊敬、してたんだと思う」
 “それ”の呼び方は、多分、これだろう。
 語り終えたクロトは静けさに包まれて――っぱ、と部屋中央に現れた光にきょとりとした。まるでそこだけ光が当たっているようなそれの正体は、見上げてすぐ目に入った天井の穴。穴は溶けゆく氷やチョコのような滑らかさで広がっていく。
「こんな想いもアリなんですか?」
 眼鏡が無いと何だか自信が減るような気がして、それが語り口に出ていたのだが、部屋が消えゆく様からしてアリだったらしい。
 まあもしダメでも語れる愛はありますけどねとクロトは笑み、支えにしていた壁が無くなる前に立ち上がる。面積を減らしゆく壁の向こうでは、感動の再会を待つアレがキラリと光を弾いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンティ・シェア
【花面】

シェルゥカ
私は、君が大好きだよ
君が居ない日々は耐えがたいし、君が離れていくのも恐ろしい
依存してる。執着してる
認めよう。私はかつて、私が定義した『恋』を君に抱いているとも
…でも、それ以上に
自由な君を、何よりも愛おしく咲く君と言う花を、そのままにしていたい
どこにでも行ける君の傍に、私が、寄り添いたい
この気持ちに付ける言葉を、私は見つけたよ

私はまた、君を泣かせてしまうかもしれない
辛いも、悲しいも、無くせるとは言わない
それでも、それを取り除く努力をするから
だから、私と一緒に生きて欲しい

いくらでも待つよ
何せ、語らねば出られぬ部屋だ
教えておくれ、君の気持ちを
君が選んで望むなら、拒絶だって構わないんだ、私は

……うん
大丈夫。言っただろう、いくらでも待つと
君がそう言ってくれただけで、私は十分、満たされた
安心して君の傍に居られるよ
また、遊びに行こう
のんびりと過ごそう
そうして沢山の私を、知っておくれ
そして、君を教えておくれ
何度でも同じ思いを告げるから、何度でも、聞いてくれていいよ
ありがとう、シェルゥカ


シェルゥカ・ヨルナギ
【花面】

君の視線と言葉になんだか落ち着かなくて
これから告げる言葉に安心していてほしくもあって
君の両手に触れる
強くは握らないけれど、離さないように

エンティ
…今はフィルオールと呼ぼうか
俺も君を大好きだよ
大好きだし、一緒に生きると言いたい
言いたい…けれど
君の言うような大好きを、自分の事として真剣に考えたことが無かった
それにまだ少し心がざわついていて
そんな状態で一緒に生きるという大切な約束をしたくない

君をこれからも知りたいし一緒の思い出を作りたい
笑顔を見たいし心が安らいでいてほしい
俺が全てを忘れていたら、おかえりを言ってまた君を教えてほしい
…だから時間を
落ち着いて気持ちと向き合う時間を、俺に

きっとそんなに待たせない
ここで今君の言葉を聞いて
一緒に生きるときっと言える…言いたいと、思えたから
どうか少しだけ、待っていて

ちゃんと語れたかな
君に伝わったかな
もしまだ部屋を出られなくても
こうしてゆっくり向き合えるから構わないのだけれど

久し振りの君の笑顔に晴れやかな声
ねぇ、少しの間
このままただ眺めていさせて



「シェルゥカ。私は、君が大好きだよ」
 一人だけに向けられた優しい声が名前を、愛を綴る。
 エンティ・シェア(欠片・f00526)の表情にはただただ相手を愛おしむ彩だけがあり、ささやかな、けれど確かなそれが、シェルゥカ・ヨルナギ(暁闇の星を見つめる・f20687)の双眸に宿る深い紅に映っていた。
「君が居ない日々は耐えがたいし、君が離れていくのも恐ろしい」
 これは依存であり、執着だ。
 そして自身が口にした言葉は、もう一つの事実を連れてくる。
「認めよう。私はかつて、私が定義した『恋』を君に抱いているとも。……でも、それ以上に。自由な君を、何よりも愛おしく咲く君と言う花を、そのままにしていたい」
 どこにでも行けるシェルゥカに依存し執着しているが、彼を一処に縛るのではなく、その傍に、自分が寄り添いたい。ずっと抱いていたこの気持にどんな言葉を付ければいいか、長く迷ってきたが――「見つけたよ」とエンティは呟いた。
「私はまた、君を泣かせてしまうかもしれない。辛いも、悲しいも、無くせるとは言わない。それでも、それを取り除く努力をするから。だから、」
 私と一緒に生きて欲しい。
 エンティの『恋』が、視線で、言葉で、向けられる。それが何だか落ち着かず、しかしシェルゥカはエンティの両手へと手を伸ばした。エンティの手を強く握りはしないが、指先も掌も、エンティの手にしっかりと触れ――離さない。
 そんなシェルゥカの心の動きはエンティに見えていて、触れる手へと注がれる視線はとても柔らかかった。
「いくらでも待つよ。何せ、語らねば出られぬ部屋だ」
 そして“この部屋だから”という理由以上に待つ理由がある。エンティの視線が手から顔へと緩やかに移り、深く暗んでいく紅色に新緑色を交えた。
「教えておくれ、君の気持ちを。君が選んで望むなら、拒絶だって構わないんだ、私は」
 ほんの少しだけ、シェルゥカの手に力が入った。そっと、かすかに握る程度だった感覚の後、「エンティ」と呼んだシェルゥカの唇が閉じて静寂が落ちる。
「……今はフィルオールと呼ぼうか。俺も君を大好きだよ。大好きだし、一緒に生きると言いたい」
 “言いたい”。真摯に愛を語らねばいけない部屋だが、そうでなかったとしてもシェルゥカは同じ言葉を口にしただろう。スノードームを作っていた時のように、言わなきゃと思う心がそれだったのだから。
「……けれど、君の言うような大好きを、自分の事として真剣に考えたことが無かった。それにまだ少し心がざわついていて、そんな状態で一緒に生きるという大切な約束をしたくない」
 自分が伝えるものを一つずつ受け止め、受け入れる目の前の存在にする約束だからこそ、シェルゥカはざわつく心と向き合いながら、自分の想いと願いを欠片も偽らず、伝えていく。
「君をこれからも知りたいし一緒の思い出を作りたい。笑顔を見たいし心が安らいでいてほしい。俺が全てを忘れていたら、おかえりを言ってまた君を教えてほしい」
 一つを伝え、また、一つ。
 そうして伝えた全てが、シェルゥカが心から抱くものだった。
 今まで見た表情、聞いた言葉、感じたもの、行った場所。それらをそれで終わりにしたくない。今よりも後の、もっとずっと後の日々も、存在していてほしい。だから。
「……だから時間を。落ち着いて気持ちと向き合う時間を、俺に」
 その時間がどれくらいのものになるかはわからない。
 未来予知の力もない。
 だが、迷いなく言える事が一つあった。
「きっとそんなに待たせない」
 心からの想いと願いを告げられたから、そう言い切れる。
「フィルオール。ここで今君の言葉を聞いて、一緒に生きるときっと言える……言いたいと、思えたから。どうか少しだけ、待っていて」
 伝え終えたシェルゥカの唇が閉じていく。すう、と静かな呼吸を繰り返す。
 ――ちゃんと語れたかな。
 ――君に伝わったかな。
 そんな不安を胸に新緑の双眸を見る。出る為に必要だと聞いた事が上手く出来ていなかったとしたら、この部屋に二人閉じ込められたままになるのだろう。それは、一般的には困る事態ではあるのだが。
(「もしまだ部屋を出られなくても、こうしてゆっくり向き合えるから構わないのだけれど」)
 その考えは胸の内にこっそりしまっておく事にして――、
「……うん」
 頷いたエンティの手がシェルゥカの手を軽く握る。
「大丈夫。言っただろう、いくらでも待つと。君がそう言ってくれただけで、私は十分、満たされた。安心して君の傍に居られるよ」
 また、遊びに行こう。
 のんびりと過ごそう。
 これからの事を思い描き、願いを口にした男は、離されないままの手へと再び視線を向けた。
「シェルゥカ。そうして沢山の私を、知っておくれ。そして、君を教えておくれ」
 君が大好きだ。
 君に恋をしている。
 それだけで、出来る事がどんどん増えていく。
「何度でも同じ思いを告げるから、何度でも、聞いてくれていいよ。ありがとう、シェルゥカ」
 そう言ったエンティが浮かべた笑顔は、いつ振りに見たものだったろう。晴れやかな声だって、そうだ。シェルゥカは双眸をほんの少しだけ震わせて、フィルオール、と噛みしめるように名を呼んだ。そこに滲んだ願いの彩に、エンティの表情がひどく優しく和らいだ。
「何だい、シェルゥカ」
「ねぇ、少しの間。このままただ眺めていさせて」
 部屋はどんどん形を失くしていっている。
 それでも、少しでいい。もう少しだけでいい。
 紡がれた願いにこくりと頷きが一回返り――そして、二人を隔てていたものは静かに静かに消えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
【花結】

彫刻の壁は窮屈だが
愛語るならば欠かせない
『僕だけが知る君』のこと
場に秘めてくれると思えば
何とも心強くもあるもので

指を絡めて引き寄せて
侭に君と添うも魅力的だが
自ずと愛は零れゆきそう
暫し付き合ってくれる?

恋うように、応えるように
僕を見つめる藤の眸
指先梳くも心地良く思うよな
やわらかな秘色の髪
この腕に収まる華奢な身を
抱くときに伝わる、甘い花香

あなたのもの、と囁いて
小さな手が頬に触れる
そのたび、眩くほど嬉しく
いとおしさの溢れるばかり
ほんとうなら離すことなく
僕の傍にとらえていたい

そんな姿だけでなくて
日ごと、艶も足して増しゆく
愛らしさは心捉えて離さず
子猫めいて戯れるさまに
馨しい華めいて誘うさまに
容易く裡を乱されながらも
幾度も好きを刻み直すよう

けれど、何より好きなのは
連ねた言葉を受けとめて
温かに返してくれる柔い声
我儘を甘く叶えてくれては
告げてもくれる儘の心
高潔に強くあろうとすれど
時折に明かしてくれる弱さ

挙げれば、終の見えぬほど
いっそ全てと紡げるほどに
彼女を、――いや

最愛のきみを
愛してるよ、ティル


ティル・レーヴェ
【花結】

閉じ込められるということは
まだ少しばかり怖いけど
其れもあなたとならば
不思議と心地よさすら覚えるから
あなたはやっぱり特別

繋ぐ手に寄り添う身
あたりまえと在れること
その全てが愛おしい
あなたとならば
暫しと言わずいつまでも
なんて
愛しの色を眸に乗せた
悪戯めく音も半分本音

愛し彼の好きなとこ

花の色した淡き眸が
彼の『好き』を映す度
瞠られたり細めたり
煌めく様もあどけなく
逃げるよに動くのも
捕らうよに熱持つのもすき

この手がすぽり収まる大きな手
骨張る指が柔く触れるのも
忙しく動く先から生まれる物語も
くいと引く力の優しさと頼もしさもすき

一見細身の体躯もね
知っていて?
抱き包まれると
見目よりずっと逞しく
夜着の隙間から覗く様は
どきりとしてしまうのよ?
夏の姿も
独り占めしてたい程

妾もね
あなたのお声がすき
こうして愛を紡ぐ音も
この名を呼んでくれる響きもすき

でも
いっとうすきなのは
妾の傍で
儘とあってくれるそのお心
変わらぬとこも
変わりゆくとこも
強さも弱さも愛も欲もなにもかも

ねぇ、ライラック
あなたの全てを愛してる
愛し愛し妾のあなた



 炎と泥と、濃密な魔力に満ちていた世界が、魔法のような鮮やかなさで美しい部屋に変わる。壁を含めた室内を彩る彫刻は美しくも窮屈で――しかし、それが今のライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)には有り難い。
 真摯に愛を語らねば出られない部屋。
 となれば自分が語る愛は当然、日々愛らしい様を見せてくれるひと――『僕だけが知る君』の事となる。それを外へ漏らさず秘めてくれると思えば、窮屈な部屋が何とも心強くもあった。
(「けれど――」)
 君は、大丈夫? そう案じる優しい眼差しに、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は頷いて咲った。
 鳥籠の外へ、何にも縛られず羽ばたける日々を得ても、“閉じ込められる”というものには未だ少しばかり怖さを覚える。
「でもね。其れもあなたとならば、不思議と心地よさすら覚えるのよ」
 こうして夜が明けるまで過ごす事になろうとも、それは変わらないだろう。
「だから、あなたはやっぱり妾の特別」
 甘く咲いた言葉に、ライラックは仄かに頬を染めはにかんだ。見上げる藤彩を見つめながら、自分よりもずっと細くしなやかな指に指を絡め、引き寄せる。
 こうして手を繋ぎ、寄り添う事が二人の間に当たり前のものとして在る。それはとても幸せで魅力的で、何もかもが愛おしくなって――意識せずとも、愛が零れてゆきそうだ。
「暫し付き合ってくれる?」
「あなたとならば、暫しと言わずいつまでも」
 提案した眸も、それに悪戯めいた音を半分本音と共にのせた眸も、宿す色は儘の愛。
 紡がれる愛待つ楽しさを現すように揺れた翼にライラックは柔く笑み、自分を見上げ微笑むティルを双眸に映す。嗚呼、かんばせに在る二つの藤色は今日もなんて綺麗で、甘い。
「恋うように、応えるように、僕を見つめる藤の眸」
 指先でティルの顔にかかる髪を柔く払い、目尻を撫でる。指先からの優しさと擽ったさにティルの唇から笑みがこぼれる中、ライラックの手が頭に触れ、指で髪を掬っていく。
「君の、秘色の髪」
 可憐な花を咲かせた秘色の髪はやわらかくて、梳けば指の腹や指の間をさららと流れ、藤花のように揺れて落ちる。その度に自分はこうして心地良く思うばかりで――そして、この腕に収まるティルの華奢な身を抱く時に伝わる、甘い花香もまた、君への愛おしさを募らせるのだと一音ずつ綴っていった。
「それから」
 絡めたままだった指を、小さく握る。
 “あなたのもの”。君がそう囁き、この手が頬に触れる。その度に眩くほど嬉しくて、いとおしさは溢れるばかりなのだと告げ――眼鏡の奥。愛しい姿を映した眸が仄かな欲を浮かべた。
「ほんとうなら離すことなく僕の傍にとらえていたい」
 この身この心全てを彩るような姿だけでなく、日毎、艶も足して増しゆく愛らしさだって、自分の心を捉えて離さない。
「子猫めいて戯れるさまに。馨しい華めいて誘うさまに。僕は容易く裡を乱されるんだ」
 そして幾度も“好き”を刻み直すような心地に包まれる。
 けれど、何より好きなのは――。
「連ねた言葉を受けとめて、温かに返してくれる柔い声。我儘を甘く叶えてくれては、告げてもくれる儘の心。高潔に強くあろうとすれど、時折に明かしてくれる弱さ」
 きみが、きみで在るという何よりの輝きが――。
 綴り終えたライラックの口から、ふ、こぼれた幽かな息。お疲れ様でしたと労うようにティルは眸を愛情たっぷりに細め、妾はね、と白い頬を淡く春色に染めて語りだす。
「花の色した淡き眸があなたの『好き』を映す度、瞠られたり細めたり……煌めく様もあどけなく、逃げるよに動くのも、捕らうよに熱持つのもすき」
 レンズ越し。何も掛けていなかった時。瞬間瞬間で藤色に浮かぶ心だけでなく、自分の手がすぽりと収まる大きな手も、愛し彼のすきなとこ。骨張る指が自分に柔く触れる事も、忙しく動くその先から世界へと生まれる物語も。
「さっきのよに、くいと引く力の優しさと頼もしさも、すき」
 そうっと囁いた瞬間目尻の朱を少々濃くさせた様にティルは咲い、ライラックの事を、じ、と見る。
「知っていて?」
 何だろう。小さくきょとりとした表情は大人なのにどこか幼くて――彼がそんな表情を見せるのは自分だけなのだという嬉しさに、ティルはささやかな悪戯彩も交えて微笑み、声を潜めた。
「一見細身に見える、あなたの体躯もね。抱き包まれると見目よりずっと逞しく、夜着の隙間から覗く様は、どきりとしてしまうのよ?」
 夏の姿も独り占めしてたい程。
 秘密を一つ打ち明けたその次は、あなたと妾、お揃いの話を。
「妾もね、あなたのお声がすき。こうして愛を紡ぐ音も、この名を呼んでくれる響きもすき。でも、いっとうすきなのは……」
 指先が、そうっと胸元に触れる。
「妾の傍で、儘とあってくれるそのお心」
 出逢ってから変わらない所も、変わりゆく所も。
 強さも弱さも、愛も欲も、なにもかも。
「妾は、あなたが、すき」
 紡いでも、重ねても、足りない程。
「ねぇ、ライラック。あなたの全てを愛してる」
 ずっと、もっと伝えたい程に想いは生まれ――ライラックもまた、あれほど自分だけが知るティルの愛しい所を挙げたのに終の見えぬ程。いっそ全てと紡げる程に自分は彼女を――いや。
「最愛のきみを、愛してるよ、ティル」

 愛し、愛しと想いが心に溢れゆく。
 それを成すのは、この世に唯一の――自分だけの、彩なのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月01日


挿絵イラスト