殲神封神大戦⑮〜おととい来やがれ!
●武者震いを奮え
呵呵。笑わずしてなんとする。
今の世は、なんと"混沌"の有様よ。
渾沌氏が七孔が穿たれた痕を閉じた――すなわち、左眼を得たというではないか。
道理をひとつ、相応しい形に閉じた途端にこれとは。
我が依代、南蛮の魔獣『兀突骨(ごつとつこつ)』が強者に燃えるように震えている。
武者震いというやつか。ああ我にも悦びようが伝わるとも。
この怪物を三国時代に退けた人物が居たとも聞くが、『人』とは実に興味深い。
「人の世よ、美しくあれ、光あれ」
「輝かしき未来を収穫するは、農耕と医療を司る我"神農(しんのう)"の何事にも換え難き喜びである」
聞け。しかし、聴かずでもよい。
感じよ。汝らが思うままに。
「この神農、フォーミュラの決定には逆らわぬが……」
カタストロフによる収穫は拙速に思えるが、決定権を我は放棄しよう。
「異界における強者との戦闘。ザンギャバス氏を退け、ワーム氏を滅ぼす力――侮れぬ」
それすなわち彼らは今の我より強いということの証明だ。
「全力を以て相対し、出来る限りの収穫を、骸の海に持ち帰ろうぞ」
●ワン・クイック!
「必殺剣を携えた神に、君は挑む勇気がある?」
ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)はまず、肩の力を抜くように促した。
「『神農兀突骨(しんのうごつとつこつ)』。彼はそう名乗ってるけどね、神農というのは上半身部分の存在さ。封神武侠界の農耕と医療の祖と言われる神さま」
下半身に獰猛な魔獣"兀突骨"と合体した姿である。
両者を足して、その名を名乗る。実に単純な話だ。
「向かってほしいのは、神農の祠。はは、神様の神威で空間に異常が出ているみたい――とても広い空間が出来ているよ」
たった一人が待ち構えて居るかと言えば少し異なる。
神威が空間に影響を出すならば、兀突骨側の特色も同時に影響を及ぼす事になるのだ。
大量の"「巨大食肉植物"が狂い動き回る空間は、その有り様を不安定な場所として固定する。
「重要なことだから、先に言うね。彼は猟兵が自分に何をするかを気にしている。【決して先制攻撃しない】と思うんだ」
強敵を倒し、退けてきた猟兵の力をその眼で、体感として感じたいらしい。
「珍しいタイプの敵だね、ふふ。でも気をつけて、神様だもの、武器は必殺の剣。その裁定は武器受けなんて出来そうにない」
必殺剣ユグドラシルブレイド。
携えた武器から手を離すこと無く、振るわれたなら一撃のもと倒されてしまうだろう。
回避したとして、一撃の余波を受けても結果は同じく、倒される。
「……だからね、君達が狙うべきなのは先制で倒すコトじゃない」
無傷での戦闘を行えない可能性が高い。
許された攻撃は、――同時に放ち打ち勝てる方法でなければ。
「苦しい戦いになるかもだね……。でも君達なら、どこからともなく勝機を見つけ出すんだって僕は信じているよ」
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
此の依頼は、戦争に属する一章完結のシナリオ。
プレイングボーナスは、下記となります。
必殺剣「ユグドラシルブレイド」に対処する(猟兵が先に攻撃できます)。
●簡単な概要とボスについて
不思議な力でひろーい空間で戦闘。
足元には、ぱっくんとしてきそうなハエトリソウなでっかい食虫(肉)植物。うごうご。
神農兀突骨のうち、上半身の「神農」が主導する戦闘です。下半身は戦える場に在るだけでひゃっはー!って感じなので特に何も言いません。
触れた者を一撃で倒す必殺剣ユグドラシルブレイドを扱いますので、猟兵もまた【一撃】で結果を出すようにしたほうがいいかもしれません。
武器受け・攻撃の痛みに耐えて反撃、はそのまま負けを意味しますのでお気をつけを。例えかすり傷でも、戦闘不能に陥るオーラ的なそれが貴方の意識を奪うでしょう。判定は、普段よりやや厳しいかもしれません。
彼は猟兵の戦闘方法が知りたいのです。
神様にうるせーーー俺の強さはこうだぞーーー!をアピール出来るチャンス!
●怪我
此の依頼では、怪我をする可能性が高いです。ただし、神農は戦う方法が知りたいので、戦闘不能になった猟兵からは戦意を感じない為、追撃してきたりしません。
神様だもの。気まぐれです。
●その他
OPをご確認ください。
プレイングによっては、リプレイに温度差が出ることがあります。公序良俗に反する内容が強いや反映出来ない内容だと感じた時はお返しする場合があります。なるべく頂いたプレイングは採用できればと思いますが、中華系のあれやそれやにはあまり詳しいとはいえない為、描写の期待に応えられない場合は内容に関係なく採用を見送らせて頂く場合があります。
第1章 ボス戦
『『神農兀突骨』ユグドラシルブレイド態』
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POW : 三皇神農・変幻自在剣
【変形させた必殺剣「ユグドラシルブレイド」】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 三皇神農・無限複製剣
自身が装備する【必殺剣「ユグドラシルブレイド」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 三皇神農・絶対制御剣
【必殺剣「ユグドラシルブレイド」】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に生え狂う巨大食肉植物を剣と融合し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夜刀神・鏡介
一撃必殺。それはある意味で剣士の……というか戦う者の理想といえる
とはいえ、まさか問答無用でやってくるのは少々理不尽すぎやしないかと愚痴っても仕方ない
敵が一撃必殺を叩き込んでくるなら、俺も自分に出来る最大の一撃で勝負だ
神刀を引き抜く。相手が俺を見極めにくるのなら、その時間も利用して神気を静かに高めよう
神農と、足場の様子を窺い深呼吸から一息で踏み込む
敵が変幻自在の剣を振るおうが、俺は正面から相手をしよう
絶技【無我】――左腕の神器化、その進行を代償とした一撃
直接本体に叩き込めれば最善だが、無理ならユグドラシルブレイドへぶち当てに行く
全霊を込めた一撃、剣で受けたとしても相応のダメージを受けてもらう
●届け!
光あれ。三皇が一つの名を語り、喋る傑物。
それは自分を神であると言葉に乗せて、訪れる者を待つ。
『我を倒すべく、訪れるものは全て強者であろう』
携えるユグドラシルブレイドに適うものなど居らぬだろう。
南蛮の魔獣の上より声は響く。祠の内で、厳かに。
「それが一撃必殺の剣?それはある意味剣士の……というか戦う者の理想といえる」
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)でも、一度は手にしてみたいと思ってしまう絶対の剣。実在するものなのかと、時間を作り眺められたら良かったのだがそうもいってはいられない。ひとつを手にしていれば、苦しませずにオブリビオンを還して行けるのだがウマい話などそうあるはずもないように。
相応の力と、実力――合わせてチート力だって必要だ。
「とはいえだ、問答無用で向ける気か?」
『兀突骨が武者震いを起こしている、……汝はよほど強いのだろう?示して見よ。我の前で、存分に』
ビリビリと感じる声の圧。
神の文字を頂く存在だというのも、伊達ではない。
神威によって発生している肉食植物達がざわざわと騒ぎ立てる――戦え、と。
「呆れたな。全く、神というのは自由人が過ぎる……」
愚痴っていても仕方がない、鏡介にも分かっていた事だ。
少々どころではない理不尽さ。
気を抜ける隙はあるのに、じわじわと攻撃姿勢を取り始めるのはもう待たないの合図だろう。
『剣を抜け、さあ。そちらが魅せたくなるように、我も存分に奮おうぞ』
兀突骨――下半身が不安定な足場を軽々飛んで、駆けてくる。
ユグドラシルブレイドを突撃槍の形に変じさせて、命中率を効率的に上げる。
『さあどう対処する!選べ!』
一撃必殺の変幻自在剣で、鏡介を誘発してくる。
当たれば敗北は必須だとも、聞いた――ならば。
「勿論、最大の一撃を返すとも!」
神刀【無仭】をすぅ、と引き抜く。真に斬ると定めたからには、森羅万象の悉くを斬り裂こう。
『ではやってみせるがよい!』
互いの攻撃が望めば届く距離から神農は傍観の姿勢と取る。
さあ先に攻撃してみせよ。
さもなくば、舞いの時間は終焉となるだろう。
「……先を譲ると来たか」
神刀から溢れる神気の流れを感じなながら、 静かに汲み上げ高めていく。
足場の様子は蠢くのみ。不気味に鋭い刃が生えた植物だらけのようだが、危害を進んで加えてくる様子はない。
あくまで、神威によって呼び起こされた"彼らの力"の一部なのだろう。
――即席の戦闘空間にしては、悪趣味な……。
深呼吸を深く、それから一息で鏡介は激しく踏み込んで飛び出した!
――いい趣味をしている。
「例え変幻自在の剣を振るおうが、俺は正面から相手をしよう!」
――我が身をただ一振りの刃として――――。
神器化しているない左腕の進行をひとつまた早めるだろう。
代償は小さくない、だが――それ故に絶大。
「――絶技【無我】」
飛び込み構えたその刃、あらゆるものを切断する力を高めた一撃を放つ。
防御など代償分、無視して届けよう。
「この剣技を見て、相応のダメージを受けて貰おう!」
全霊を込めた一撃だ、決して軽くなど無い。
直接本体狙いで叩き込む為の跳躍だったが、神農はあえて身を低くユグドラシルブレイドで受ける。武器で受け、高められた神器の切断する因果の力を手に浴びて、神はくくくと笑いをこぼした。
『成程、成程。一振りならぬ重みと圧力。これは対策のない敵を確かに滅ぼそう』
見て、観察して。ぶわあと神のオーラがユグドラシルブレイドに乗る。
突撃槍化した本体は無傷――だが、物体を通り抜けたダメージが、神農の身体に確かな切断痕を深々残した。
『見事。これは決死の覚悟で行った分の報酬と受け取るがいい!』
振り抜く動作で鏡介は容易く祠が壁に向けてふっ飛ばされる。
切り結ぶ間は長く感じたが――、刹那の時間。
あれは決して攻撃の通らない"神"などではなかった。
成功
🔵🔵🔴
空桐・清導
POWで挑む
「骸の海に持ち帰るだって?
あいにく、この世界のもので
アンタに渡せるもんは1つもない!」
腕を組み、神農に宣言
神農の威圧感を前に
神に挑む[覚悟]と[勇気]が燃え上がる
両手で巨大な炎剣をしかと握り、[力を溜める]
余波で優位の植物は燃え上がる
「超!超必殺!―」
叫びは放たれた轟音で掻き消え、
神農の視界の全てが豪焔に飲まれた
ユグドラシルブレイドが振るわれれば、
その箇所から掻き消える
しかし―
「世界の輝きを物のように扱うアンタに、
この世界を、みんなの笑顔は絶対に渡さない!
オレはヒーロー!未来の守護者だぁあ!」
[限界突破]は此処からだ
無尽蔵に威力は上昇
その果てにユグドラシルブレイドを神農ごと飲み込む
●手土産無用!
「持ち帰る、だぁ?」
聞き捨てならない言葉を聞いた。
実現させるという断言口調のそれを、ヒーローは決して見過ごさない。
「骸の海に持ち帰るだって?」
『然り。収穫し、持ち帰るつもりである』
神農兀突骨が上半身、"神農"は聞き返された言葉を律儀に空桐・清導(ブレイザイン・f28542)へと返す。
神ならば。強者の言葉にも気まぐれに応じよう。
経験という収穫物に何を申すというのだ。
「あいにくだが、この世界のモンは今を生きてる皆のものでな!」
ビシッと一言投げつけて。
「アンタに渡せるもんはひとつもない!」
腕を組み、清導が堂々と神に向けて宣言する。
みすみす渡すなど、ヒーローが許さない。
『ほう。強い自信を感じるな。汝は相当の自信が、己にあると』
どこに目があるか、など些細な事だ。
強い視線を頭上から感じる、威圧的な視線に空気がパチパチと音を立てるほど。
――これが、空間に影響する神威……!
一筋の汗が、顔を伝うのを拭うのさえ身体が重く感じるほどの重圧。
本当にただ骸の海より悪魔合体して現れたものではないようだ。
ごくりとつばを飲み込んで、清導は自分を鼓舞するだけだ。
「あるとも。自信がなきゃ、此処へやってきていない!」
勇気ある行動。誰かは称賛を送るだろう。
困難に立ち向かう覚悟在る者であると自身を誇ろう。
この場所に踏み入れし者は――神が望む"強きものなのだから"。
『ならば、存分に魅せるがいい。我を堕とす程の強大さを!』
腕部に収束させた炎で包めば発生する両手に強大な炎剣。
しかと握り込む手にも十分以上の力が籠もる。熱く、焼け付くほどに。
ごおつ生まれる炎の余波で攻撃的な蠢く植物が燃え始めて、赤々と燃える炎が広がっていく。
「超!超必殺!――」
『激しい力の本流。成程、これは危険な存在だ……!猛る汝よ、勇ましく飛べ!』
三皇神農・変幻自在の剣を長く解く尖らせる。
レイピア形状に鋭く整え、魔獣"兀突骨"が不安定な足場を無視して飛ぶ!
激しい轟音と一気に襲ってくる剣の到来。
視界全てが沸き立つ豪焔に呑まれても、ユグドラシルブレイドを振るえば消え失せる。剣圧にも神の力が載っている。切り裂かれた以上、猟兵と神農との境を隔てるものはなにもない。
攻撃回数に特化した突きの攻撃が、今度は清導へと向けられる。
じわりと背中を冷や汗が流れる予感――いいや、もっと奮い立て。
「世界の輝きを物のように扱うアンタに、この世界を、みんなの笑顔は絶対に渡さない!」
大きく息を吸って、この言葉と共に限界を越えよう。
「オレはヒーロー!未来の守護者だぁあ!」
無尽蔵に威力を上昇させる火焔の本流は止められまい。
もっと激しく燃え上がれ、消し飛ばされてもバーニング・クリエイション(バーニング・クリエイション)は心の強さに比例するから。
負けない勇気の強さで上乗せして、農耕の祖とされる神をも燃やしつくさん。
清導の視界からはユグドラシルブレイドも、農耕ごと焔に見込まれて見えなくなった。見えるのは燃え上がった炎の波。ごごごと紅蓮の赤い色のみ。
だが――息づく音はどこからともなく聞こえて。
『熱き力だ、兀突骨もまた、これに猛りを思うらしい』
炎の壁を強引に単純な突進で抜けてきた。身を焼かれる負傷など気にしたようすもない。レイピア化したユグドラシルブレイドの刺突こそなんとか避けたが、一撃必殺の剣の神威を纏った剣風が清導を壁まで吹き飛ばした。
熱く燃え上がる勇敢なヒーローの力は――此処に確かに示されただろう。
苦戦
🔵🔴🔴
御剣・刀也
ははは。一撃必殺の剣か
正に俺みたいな武芸者が追い求める理想の姿だな
それが相手となってはいやがおうにも燃えるってもんだ
てめぇの剣と俺の剣。どちらが上か、いざ尋常に勝負!
三皇神農・変幻自在剣で剣が変形して襲いかかってきたら、腕の動きを注視し、それから軌道や位置を推測し、第六感、見切り、残像で避ける
こちらの攻撃は、勇気で反撃を恐れず、グラップルとダッシュで食虫植物の床を駆け抜け、捨て身の一撃を叩き込む
「お前の剣ほどじゃないが、俺の剣も結構効くだろ?一撃必殺といかないのが、悔しいがな」
●武芸者が望むもの
息を大きく吐き出す音。
身体に想像より熱が温まってきたのか、神農兀突骨は次の訪れるものを待つ。
冷める前に訪れよ。
熱く戦うものであれ。
「ははは、まるで幽玄の武人だな」
姿形こそ魔獣と合体した異様な姿ではあったが、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は気さくに対応する。
それこそ神が骸の海より戻って来る際に必要だと感じた姿なら。
此処に居るべき姿なのだろう。
上も下もどちらにも、意識が在ることは愉快と笑い飛ばさずなんとしよう。
――こんなの、笑い草だろ。
「んでも、一撃必殺の剣だって?正に俺みたいな武芸者が追い求めてやまない一振りじゃないか」
『我の剣が欲しいと?』
「いいや、そんな仰々しいもんより慣れてる方でいいかな」
鋭く振るう剣と心通わせる存在なら、一撃にて石だって絶つ。
鋼の刃が刃こぼれせずに行えるのだ。
要は力の向け方、扱い方。武器の性能に合わせた"持ち主"の力も必要となる。
「理想の剣では在るが、それだけだ」
『我がユグドラシルブレイドを、求めよう者なら本気で穿ち終わりを齎すところであった』
嘘か真か、その言葉の意味は測りかねる。
ただ、神様の気まぐれで試練のような事を行われても刀也はやはりいらないと答えただろう。
「そいつが相手となってはいやがおうにも燃えるってもんだよ」
それが戦い。
刃を持つ者同士の、正しい姿。
「構えろよ。てめぇの剣と俺の剣。大小差があったとしてどちらが上か、いざ尋常に勝負!」
『こちらは待つつもりであったが、来いと言われては致し方がなし……』
三皇神農・変幻自在剣を此度は大太刀に。
相手に合わせ変形させた必殺剣を引っさげた上半身と、魔獣の息のあった攻撃が刀也へ向けて大きく振るわれる。
神威の風が剣風に乗り振るわれる――ユグドラシルブレイド産の見えない風の刃さえ吹き荒れる。
『見えぬどれかに当たって即座に気絶など、笑えぬ事をするでないぞ!』
「ご忠告どうも」
刀也は見る――神農の振るう腕の動き。力の入れ方、振るい方。
巻き起こる余波のただの風と、神威の旋風の見極め方は――自身の生い立ち、天武古砕流を思い起こさせる。
決して型は似ても似つかないが、『一撃必殺の剛剣で両断する』そんな気風を感じるのだ。
馴染みのある気がする気配。
これには、自ずと残像を残して風の刃を躱せよう。
見切り、ただの風の中を刃を持ち駆け抜ける!
足元に何が在るか等、気にかけてやるものか!
どうせ見た目は正気じゃないものばかり!
壁代わりに凄まじい威力のグラップルで引っこ抜き、目眩まし代わりに大型個体を投げつける!
蛮勇は、時として正しい勇気として働くのだ。
道なき道は、――駆ける足を勇ませる。そして、思い切り踏みつけてガランと空いた神の前で刃の一撃を。
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」
持てる力を振り絞り、その刃は電光でも奔るように煌めいた。
上段から一気に振り下ろす捨て身の雲耀の太刀(ウンヨウノタチ)!
「お前の剣ほどじゃないが、俺の剣も結構効くだろ?一撃必殺といかないのが、悔しいがな」
『よくぞ届かせた。一撃ではないが、重いモノよ……』
喉を鳴らすような音。ああ、敵が笑っている。刀也は斬り裂く事に注力したことで、大太刀の振り下ろしに僅かに遅れ――武器受けする形で弾かれる。
ぐぐ、と入り込む確かな手応えがあった。間違いなく、傷を負った。
神の身体にその刃は――届いただろう。
成功
🔵🔵🔴
樹神・桜雪
【WIZ】※アドリブ等はご自由に。
すごい空間だね。相棒、ボクが戦ってる間に食べられちゃわないようにね。
さて、すごく、楽しそう。
強い相手に真っ向勝負を挑めるなんてワクワクしちゃう。どう攻めようか。
うん、真っ向勝負。だって、それが一番分かりやすいでしょ?後の事は考えないわけじゃないけど、無傷で済まないなら突っ込んじゃえ。
極力至近距離まで近付いてからUCで攻撃。ユグドラシルブレードは受けたらこっちがまずいし、使えるものは全部使って空に逃げる。
自分の武器とか敵さんとか自分のUCとか。
その為に近付いたのだし、全力で飛ばないと。
上手くかわせたら2回攻撃を絡めてもう一度UCを撃ちたいな。
●光の雨を此処に
「うーわ……」
流石に表情が希薄なミレナリィドールも、不安定な足場が蠢く様は形容し難い気分を抱く。がちんがちんと牙らしき葉を喰む音など仙界のとある塒(ねぐら)に置ける音とも思えない。むしゃりと喰らう音があるよりは、まだマシかもしれないが、それでも神が居る祠とは到底思えないのだ。
悪堕ちした神様ならこういう場所を好むだろう。
「……でも、君は別に悪堕ちしてはいないんだよね?」
『然り。戦う意志のある強者にのみ我らが刃(ブレイド)は向かうだろう』
つつんと相棒のシマエナガがしゃきっとしろ、と突いてくる。
樹神・桜雪(己を探すモノ・f01328)は白い毛玉をもふ、と宥めて強気な声色で返答するだろう。
「……すごい空間だね、相棒。油断したら最後、ボクなんてぱくっとやられちゃいそうだよ」
相棒だとひと呑みかな?とさらりといえばヂィイイと反発の声。
桜雪と相棒は、こんな場所でも普段どおりの二人の世界。
「戦っている間に変なちょっかいをださないんだよ?」
猟兵に対して完全な驚異ではないとはいえ、大型食肉植物は普通サイズのシマエナガにとっては当然桜雪よりデカい。
相棒のピンチを助けに行くのは構わない桜雪だが、この戦場の特殊性は聞いている。かの聳える魔獣の下半身、そしてユグドラシルブレイドを構えた上半身の"神農兀突骨(しんのうごつとつこつ)"は、こちらの出方を伺っているようだ。
動けば動く。その判断に間違いなど無いだろう。
桜雪が動かないから、視線のみをこちらによこして伺っていのだ。
耳を済ますように気配を探るように上半身が動いている。
体中をなんだか言いようのない空気が撫でていくような気さえする。
――これが神威?
――いい趣味だね。
「相棒は別に、戦意ある存在じゃないでしょ」
『敵として立ちはだかり翼を広げるなら我は猟兵と同等の存在と受け取ろう。しかし、兀突骨は受け取らぬようだ』
「だって」
ヂィイイと反発の声、二回目。敵にまでただの鳥扱いされたシマエナガであった。
(注:シマエナガは円な瞳が素敵な小鳥です)
「さてね、……凄く、強(たのし)そうだ」
強い相手に真っ向勝負を挑める。
相手の胸を借りるつもりで加減のない全力を出していい、なんてワクワクする。
しかも相手は神様級。こんな機会はそう訪れるものではない。
「どう攻めようか」
『どこからでも、訪れるが良い』
絶対制御剣をその手に携えて、神農は攻撃の構えを取った。
『我が一撃必殺が刃、どう防ぐ?』
「真っ向勝負、だからねえ。一番わかりやすくてボクも助かるよ」
なにしろ、怪我をしない方法を考える事のほうが難しい。
相棒には危なくない場所に待機して貰うとして(既に物陰へ羽撃いていった)。
「先は貰うよ、あとは成るように成れ、だね!」
不安定な足場を問答無用で踏みながら、飛び石のように桜雪は跳ねる。
まるで慣れているかのような、不安定さをもろともしない飛び方に神農は流石に感嘆の声を零した。
『それを恐れぬのか』
「いい足場じゃない。生々しいけど」
噛まれる前に飛び退いて、次の口を踏みつけて無理やり閉じさせる。
ぐええと植物から声が聞こえるが、――聞こえないふりを。
一番至近距離まで近づいて、思い切り踏みつけて一気に跳躍。
少々足りない足場は、魔を絶つ刃――桜花雪月(オウカセツゲツ)で保管する。
「これはボクの進む道さえ照らす道しるべ」
ふわああと仄かに光る刃の上に立ち、敵めがけて包囲の構えを取った。
『進む先に光あれ。ただし、我が進む先に汝の道は無いだろう』
――やっぱり動くよね……。
桜雪の接近に合わせ、振り抜いたユグドラシルブレイドは――不発した。
刃の上を飛ぶように渡り空中戦を見せつける桜雪は、このための足場とするために展開させたようなもの。
不発したユグドラシルブレイドが地面を叩き、巨大食肉植物たちの一部を絡め取る。あぐあぐと生体兵器を搭載した刃など、不吉が過ぎる。
「そうかな?道ならどこまでも作れそうだけどね!」
絡みつき、融合した植物が蔦や蔓をぐんぐん伸ばし"ユグドラシルブレイド"として属性を持って追いかけてくる。
絶対制御剣の他、あれに噛まれても今度は気絶まっしぐらだろう。
「剣に剣を交えないって、結構不義理だと思うんだ」
だからさ、と言葉を残し。
『……なにを』
「言ったでしょ。ボクのこれは、"魔を絶つ刃"だって。魔獣を依り代にそうして君臨する以上神様だって"魔"だよ」
うまく躱した桜雪は、刃の増産を行うだろう。
すなわち二回攻撃による桜硝子の太刀の再到来。
しかも足場とした刃とは別陣のフルセットだ。
「一撃必殺なんてもったいないよ」
にのうちいらず?ひとつあればことたりる?
「そんなの、――面白くないじゃない」
再発動した刃の群れが、今度こそ無慈悲に神農に一斉に襲いかかるだろう。
どれかは刺さりどれかは躱されるかもしれない。
この雨が降った後、斬撃が腹を襲う可能性さえある。構わないことだ。
だが桜硝子の"光る刃"の雨は、――。
「浴びて損はないよね?君さあ、"光あれ"そういったじゃない」
望んだだろう?じゃあ思う存分浴びてゆけ。
大成功
🔵🔵🔵
尾守・夜野
「…けっ!神様ってのはどいつもこいつもこうなのか?」
悪態つきつつUC発動
遠距離を封じる
これで俺が気を付けるべきは剣の間合いのみ
余波は気にする必要なくなった
また一対一を強いてるから
俺を攻撃する限りは植物に対して何かは出来ねぇ
強化も防げる筈
発動と同時に友から貰った召喚宝石で呼び出す
言う事聞かねぇがそれこそが鍵
一対一しかできねぇ空間で乱戦を行う
呼び出すだけだから何かあっても残るんじゃね?という思惑もある
距離を取り植物なり召喚獣なりの攻撃を受け敵の攻撃可能な瞬間というのを減らす
何ならあえて突っ込む
攻撃可能なタイミングのみNagelで攻撃してくぜ
「どうしたよ手が止まってんぜ?」
挑発も合わせオーラでも攻撃
●一対一に持ち込め!
「……けっ!神様ってのはどいつもこいつもこんなんばっかかよ!」
尾守・夜野(墓守・f05352)は訪れるなり悪態を吐いた。
神農が魔獣を依り代にして合体してる?下半身の南蛮の魔獣"兀突骨"が戦いの訪れに悦び振るえ、上半身が喋り戦う?
「何の冗談だ。ふざけやがって」
ユグドラシルブレイドとかいう一撃必殺剣とかもうチートかよチート。
つい口が悪くなる。喋り倒す中で、祠の内側を夜野のユーベルコードが包み込む。
「四(死)を徒らに歪ませ重ね――、時すら曖昧に。例え神威だろうとなんだろうと、全て全て紅蓮と宵闇の狭間に閉ざせ」
――四辻回廊大禍時(イカイ・ヨツジカイロウ)。
「此処に境界と交わる条件は揃い敷いた、なれば俺を核としてなせ」
広がれ、広がれ大禍時。
『……ほう』
「これで俺が遠くを気にする必要は無くなった」
紅蓮が爆ぜ、宵闇が四辻のうちに戦いの場を映す。
これは夜野の策。歪んだ四辻はかなりの強度を誇り、一撃破壊は出来ないだろうと踏んだのだ。
気をつけるべきを剣の間合いだけに制限し、相手に"常に一対一の近接戦闘"を強いる。
「じゃあ来いよ、俺はNagelの具合ても確かめてっから」
――足元に生えていた不安定な奴らは……。
一緒に閉じ込められればそれで夜野の策は同時に幾つも相手の行動を潰せた。だが、大型食肉植物の群れはゆらゆらと動いていて、神農の下半身兀突骨は跳躍の動きを魅せている。狭められた攻撃範囲のために、ではと勇んで必殺剣を振るいに躍り出てきていた。
植物共、あれは動くが"猟兵"に敵意があるわけではないのだ。
いわば、口に落ちてきたモノを誰でも喰む植物――。
「チッ……そう簡単にはいかねーってか」
まあいいや、と次の手段を矢継ぎ早に。
握りしめる召喚宝石から、動ける味方を喚び出す。
それはまるで大鷲のような姿をしていたが不思議と姿はBUGっていてよくわからない。
空を翔ぶなにか。空を翔ぶ召喚獣。
『我らを撹乱するつもりか?』
「どうかなー、撹乱になるかなー」
――言うこと聞かねェが、勝手に戦うだろ。
これこそがこのユーベルコードを発動したキーパーソン。
遅れて現れた真打ちである。
『……!』
ぴたりと影を縫われたように獣の足、兀突骨の動きが止まった。
夜野が動き、召喚獣が翔ぶ。
神農は一対一を強いられて、両方狙う事ができなくされているのだ。
「どうしたよ手が止まってんぜ?」
挑発的な言葉と、オーラを弾丸に乗せて撃つ。
手動装填の都合上、夜野は動きを止めない。
装填して、撃つ。
『止まったからといって、それは少々考えが甘いのではないか?』
「……なに」
一対一しか出来ない空間で乱戦。
縮図は二対一というわけだ、こちらが優勢だと夜野は当然思っていた。
『我は神農であるが、ではこの下半身は何だと思っている?』
「……あ?」
兀突骨は何も言わないが、意志がないとは確かに聞かなかった。
剣を持つ神農は腕をすううと振り上げる。
『如何に我が歩みが止められようと、同一ではない存在に敵意を向けたならば――不可能ではないと思わぬか?』
――まさか、獣は獣に一対一を強いて。
――コイツは俺へ一対一を強いられて……?
同時に一対一が成立しているなんて、そんな馬鹿な、と思うと同時。
無慈悲に刃は振り下ろされる。振るわれた必殺剣の間合いにおいて、遠距離を封じた事で逃げ場を失っていた夜野は胸を思い切り薙がれ――まるで鈍器のような鈍い痛みが襲い、そして意識を失った。
召喚獣は確かに仕事を果たし、夜野が意識を失ったと同時に消え失せる。UCが解除され――祠にまた、元の静けさと厳かな神威が広がった。
苦戦
🔵🔴🔴
黄泉川・宿儺
POW ※アドリブ連携等歓迎です
神農兀突骨──強敵でござる
まともにやりあえば確実に小生が負けるでござろうな
だとしても、小生は「猟兵」
相手がどんな強敵だったとしても
「オブリビオン」にだけは負けられないでござるよ!
相手は後の先を取って必殺剣を仕掛けてくる
だったらもう回避なんて考えない
ユグドラシルブレイドより先に必殺の一撃をぶつける
ただ、それだけに集中するでござるよ!
相手は遥か格上。相打ちになる<覚悟>を決めろ。
今ここで、<限界突破>でござるよ!
ギリギリまで攻撃はしない
<第六感>で氣の起こりを読んで、致命打を狙えるタイミングを待つ
……ここでござる!【UC:絶壊拳撃】!
これが、小生の全身全霊でござる!
●剣には拳を
神農兀突骨の前に進み出て、それから見上げる。大きく、尋常じゃないほどの威圧的なオーラがばしばしと、身体を叩くようだった。
「その程度ではビビらぬでござるよ?」
黄泉川・宿儺(両面宿儺・f29475)は不敵に笑った。
「まともにやりあえば確実に小生が負けるでござるが」
強敵の前に立ったなら、通せぬ通りにだって立ち向かえる。
勝つか負けるか、一つの答えのみが横たわるだろう。
『恐れ戦かぬか、肝の座った女よ』
「褒めたってなんもでないでござるが……ああ」
攻撃する拳の一つなら、くれてやるか。
そのために来たとも。
――小生は"猟兵"。
――相手がどんなに強敵だったとしても、過去は過去。
「オブリビオンにだけは負けられないでござるよ!」
『よく言った。では我らを敗北に導く手管をご披露頂こう』
――やはり先制を取り、挑発してこないでござるか。
ユグドラシルブレイドを握り、宿儺の出方を見てから振るうに違いない。
「小生相手にはどんな必殺剣を見せてくれるでござるか?」
聞いてみようと思い付いて声に出す。
神農――オブリビオンでも話す相手は神様なのだから意外と答えてくれるかもしれない。
『望むのなら望むように。鞭でも、槍でも大剣でもの、ユグドラシルブレイドを変形させるのみ』
形を変えてもそれは変幻自在の剣ならば。
どんな別の武器の形を模しても剣は剣。
『そちらに武装は、……』
「まあ、答えて貰ってもそれを小生が見るのはホンの僅かな時間でござろうが!!」
宿儺にとっては、何でも構わない。
ユーベルコードの衝突に、回避なんて考えて無駄なのだ。あれはそういう武器であり概念。必殺剣によって一撃必殺の刹那、雌雄が決するのだ。
では、形状なんて構うものではないだろう。
「先は小生が頂いたでござる!押し勝てばよいでござるからな……」
集中しろ。その手に、拳に全神経を研ぎ澄ませ。
不気味な草のギャアギャアと喚くような叫びも。
兀突骨が興奮するように、しかし不気味に唸るような音も。
ユグドラシルブレイドを携える、刃物のような冷たい空間を裂く音も。
宿儺には関係ない。
『然り。人の世は美しくあらねばならぬ、光あらねばならぬ。輝かしき未来の力を此処に』
示せ。
遥か格上の相手であると見定めて。
神農兀突骨へ向けるのは、自身が積み上げてきた怪異との付き合い方。その使い方。膂力と類稀なる修練の結果に編み出された"魔拳"を持って立ち向かわん――さあ限界を超えよ。
「そんなの、――そちらが決めることではないでござるし!」
ガッ、と問答無用に不気味な食肉植物を足蹴に翔ぶ。
助走速度は十分。むしろそちらも同時に攻撃体制をとって当たりに来い!
「オブリビオンが勝手なことを上から目線で言うんじゃないでござるよ!!」
相打ちになる覚悟なんて、ハナから出来てる。
『よくぞ言った!』
兀突骨が、足元を無視して一気に間合いを詰めてくる。
祠の内で一番戦いに最適な場所を選ぶ魔獣は、宿儺が真下を陣取って攻撃力に要素を割り振った正真正銘"剣"としてのユグドラシルブレイドを構えさせる時間をつくる。飛び上がった彼女が落ちてくる、最大攻撃を打ち込んでくる場所に向けて振り抜くのみ。
『だが、我は語り聴かせよう。この傑物"兀突骨"が飛びつかぬように』
「それはそれで結構!小生は――望むところでござるとも!!」
ギリギリまで攻撃をしないその姿勢。
神威を垂れ流す神農の纏う氣の流れは、何故か瞳に映ってよく見える。
台風の目のように、鎮座するように凪の中に佇むだけの敵の姿が。
多くの神威が纏われているのは、間違いなくユグドラシルブレイドだ!
狙え。それこそが、決定打を狙い、相打ちになるだけの力が必要な場所を。
『――ここでぇええござろぉおう!!』
唸れ、絶壊拳撃(スクナックル・オーバーブレイク)!!
――小生、一世一代の全身全霊の拳をその身で味わうでござる!
宿儺の負傷を無視した拳に宿る、逆巻く勇気が乗った拳はユグドラシルブレイドへ思い切り叩き込まれる。
ミシミシ、と必殺剣から響く音を確かに耳にいれた。
ギチギチ、と剣が悲鳴を上げたのを聞いた。
剣を振り抜かれ、ふっ飛ばされてしまったとしても――それはもう、絶対を支配するだけの刻を残さぬだろう。
間違いなく拳はすべき事を成し遂げた。
満足げにニヤリと笑い神農の剣圧に全身で押され――意識から手放した。
大成功
🔵🔵🔵
アイン・セラフィナイト
こういう神様こそ、油断大敵だよね。猟兵たちに決して油断してないんだから。
ザンギャバスとワームの撃破をなんで知ってるのか訊きたいところだけど、ボクたちとの戦いにしか興味がないみたいだし……。
狙うは一撃。たとえ傷を負うことになっても……貴方に一矢報いるよ!
『神羅の鴉羽』で『空中戦』、食虫植物の不安定な足場から離脱する。
そして【烏の魔杖】を発動、神農とボクの間の空間を切り取り、神農の攻撃を回避……なんてするわけがない!
それならやることは一つ、ユグドラシルブレイドを振りかざしたその瞬間、神農がいる空間を気付かれないぐらいほんの僅かにずらす。(全力魔法)
ボクが倒れると同時にユーベルコードの力は消えて空間は元に戻るけど……そのまま元に戻れば、空間のズレが問答無用で神農の身体を斬り裂く。
上手くいくかどうかは別として、この方法でしか打開できそうにないからね。
たとえオブリビオンでも……貴方が人とその世を想う心に敬意を払うよ。
●一撃必殺の終わらせ方
剣の調子に思うところがあるのか、どうも様子がおかしい。
アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)の直感はそう告げる。この異常な広さを誇る空間を染め上げる神威も。荒々しい呼吸をする兀突骨や、蠢く食肉植物達でさえ、もはや背景だ。
神農――あの存在だけが、威圧的にアインを見下ろしてくる。
――こういう神様だからこそ、油断は大敵なんだよね。
武器のことを気にしているが、隙がない。
猟兵に対する認識は、自身より脅威を行う存在と豪語するだけあって、慎重だ。
「それは決して油断を見せない神様としての姿勢?」
『強き者へ敬意を払おう。未来へと歩む者、光になろうとする者とあればなおさら』
可能な限りの"収穫"対象であると告げて、剣の不調から気をずらしアインへと視線を改めて下ろす。
完全に気を向けて、何をするかと見定める。
「一応尋ねるけどね、会話は……」
『語る口が欲しいなら、相応で無ければならぬだろうが……』
戦う前の少量ならば、と気を緩ませた。
かみさまは、きまぐれだ。
最終的に目的さえ果たせれば、その過程は一旦棚にぶん投げることさえある。
「ザンギャバスとワームの撃破をなんで知ってるの」
『……』
「答えてよ」
『過去は過去なりに今(現在)を見る。汝らが追い返した後のことなど海の向こうで揺蕩うのみだ』
答えているのか、答えてないのか曖昧だった。
『さあ、問答は以上にて終い。兀突骨が突然飛び掛かる前に汝が力を示すことだ』
――本当に、戦いにしか興味がないんだな……。
――魔獣と合体なんかしてるから、戦いに意識が行ってるのかな。
「大型魔獣より大きいのに飛び掛かるなんて、恐ろしい事を……」
狙うは一撃だよ、たとえ――傷を負うことになっても。
「貴方に一矢報いるよ!」
『よく行った。そうでなくてはならぬ』
会話しながら魔力を汲み上げて背にふわあ、と漆黒の翼を広げる。
黒翼は神羅が翼。広げ、空中を飛べば足元の不安定さ等視界の隅の背景だ。がうがうと牙を鳴らす植物達は悔しいかもしれない。
白翼の杖が、空間を切り取る鴉羽の巨杖へと変じて、異変と事象に干渉を開始。
「一気に畳み掛けていくよ、――その攻撃は、君の後ろの空間に繋げてみようか」
飛び上がったアインを見て、攻撃が始まると勇んだ兀突骨の勢いに任せて絶対制御剣を手に襲撃を図ろうとする神農。
――掛かった。
ユーベルコード烏の魔杖(レイヴンズ・ロッド)の真髄は、神農とアインとの間の複数の時間連続帯をモザイクのように切り貼りして繋げる。
まるで多数の空間をバズルのように汲み上げたなら、次元の壁を束ねるようなものだ。
即座の攻撃、直接の剣戟など不可能なほど回避率を大幅にあげる、――それが本来のユーベルコードの作用だが、アインはそれさえ利用する。
時間にして連続体数十秒の短い刹那の間にて。
ユグドラシルブレイドを振りかざした瞬間、神農兀突骨が駆け出したタイミングで大幅な瞬間的切り貼りを行った。
それは全力魔法で補った偉業。
神の視点、神の感覚をもってしても気づかなかった。
魔獣の視点、魔獣の戦闘意識をもってしても気が付かなかった。ほんの少し、居るべき場所から、ほんのごく僅かに世界をずらして貼り付け直す。アインはこの対処なら、打開が可能だと見出していたのだ――上手くいくかは別として。
『今、何をした?そこまでして、それだけか』
輝かしいなにかの発動を確認したものの、それらしい反応も影響も遅延遠距離攻撃もない。拍子抜けしたと声のトーンを落した神農は、それでも振るう刃を止める事無くアインをなぐ。
「たとえオブリビオンでも神様……なんだよね」
意識が途切れるその前に。
「……貴方が人とその世を想う心に敬意を払うよ」
だから、この戦いの終わり方を良しとして溶けるように還って欲しい。
願いは其処まで。ユグドラシルブレイドで弾かれては、その先の光景を見ることは敵わないけれど。
終わっていたら――見たらすぐに解るはず。
『他愛ない』
最初に気がついた違和感は、神農の発した言葉にズレがあったこと。
耳慣れないズレ方をしていなかったか。
『……違う。これが 先程したこと か』
アインのユーベルコードが解除されたようで、空間は元の形に戻る。
ただし、神農兀突骨が居るべき場所は"そこではない"。
空間のズレに押し込まれ、ずぶずぶと身体中の至るところから空間に切り刻まれる。今、上半身と下半身がズレて、落ちた。
顔が、足が、腕が、無残な部品と成り果てて崩れ落ちる。
時間と空間の連続体から置き去りにされ、隙間に置き去りにされた神農が元の空間に戻るすべはない。ただ置き去りの狭間にて、終わりゆく身体に無念さを抱くこと以外にできることがなかった。
戻れなければ、ずぶずぶと空間の間で圧死の道を歩むだけ。
最初に悲鳴を上げたのは、こともあろうにユグドラシルブレイドだった。空間の圧力に耐えられくなった剣が、バキン、と激しい音を立てて折れる。
次に悲鳴を上げたのは、これまで攻撃を受けた流血する部位すべてだ。
何事もなく振る舞っていたが、切り刻まれ続ければあっというまに致命傷の進行は進む。猟兵より受けた攻撃の中にも在ったはずだ"切断"を用いた攻撃が。
ゆっくりその進行が進む――空間と間で、身体が割れる。終わる。当然兀突骨も道連れだ、満足する戦いを行えたのか――それは魔獣が語らずを貫くので分からない。
しかし、持ち帰えらせない程バラバラに引き裂けたなら――神はこの場で猟兵という脅威をこれでもかと味わえたことだろう。
何も持ち帰らせるものはない。未来へ向けて歩む者たちは、過去が何度攻めてこようと――必ず骸の海へ送り返すのだから。
空間の主が時間の藻屑になって消えたなら。
祠の内に生えていた植物たちは順番に消えていくことだろう。
意識を失った猟兵達が起きた時。
きっとそこには"神農兀突骨"なんて、跡形もなく消えている。
涼やかな風が、何かが居たと教えてくれるだけ――。
空間の主と神は、次元の隙間で滅ぼされて、消え去ったのだ。
猟兵の力を思い知ったか。
神だかなんだかしらないが、――おととい来やがれ!
大成功
🔵🔵🔵