殲神封神大戦⑭〜蠱毒の贄は死を望む
「殲神封神大戦への参戦に感謝します。リムは戦況を報告します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々と、封神武侠界の人界と仙界の地図を広げながら語りはじめた。
「カタストロフの到来まであと2週間程。大賢良師『張角』を護る結界は今だ破られてはいませんが、彼を守護するオブリビオンをまた1体発見する事ができました」
その名は封神仙女『妲己』。かつて仙界から封神台建立の命を受け、人界に降り立った仙女である。長きに渡り封神武侠界をオブリビオンの脅威から守ってきた立役者と言うべき人物だが、その功績の実態は輝かしいものではなく、数多の穢れに満ちていたという。
「妲己は自らを『蠱毒の贄』となし、万物を魅了し、多くの殺戮と悪徳に手を染めた末に人に討たれました。それが封神台を築くために必要な儀式だったからです」
封神台の完成によるオブリビオンの根絶が後の世に安寧をもたらすと信じたが故の行動であったとしても、その行為は紛れもない悪であり、本人も赦されるとは思っていない。
「そんな彼女にとって、現在の状況はただただ不本意なものでしかないでしょう」
赦されぬ罪を犯し、自らの命を贄としてまで建立した封神台は破壊され、オブリビオンとして蘇生された自分は、あまつさえ封神台を壊した張本人である張角の『異門同胞』に縛られて――生前の行いの全てを否定された今の妲己は、無力感に打ちひしがれている。
「現状に深く絶望した妲己は己の死だけを望んでいますが、彼女のユーベルコードは自動発動型であり、本人の意思とは関係なく彼女への危機を全て阻害し、自死すら阻みます」
これは本来、封神台建立の命から妲己が離反する事を恐れた仙翁達に移植された能力だという。オブリビオンと化した今、それが死ねない呪いとなって世界を脅かしているのは皮肉としか言いようがない。
「さらに妲己が配置された場所は『梁山泊』。いつか遠い未来、人界が大乱に見舞われ、宿星武侠の力が必要とされる時、彼らの拠点として人界に飛ばされる予定だった"山岳武侠要塞"です」
この梁山泊は宿星に選ばれし者以外の侵入を拒む防衛機能が備わっている。要塞からの攻撃と妲己自身のユーベルコード、この2つを攻略しなければ妲己を討つ事はできない。
「梁山泊内部にはところどころ沼のような濁流があり、その中から無数の武器が飛び出して侵入者を襲います。ただし、これらの武器は宿星武侠には攻撃を行わないようです」
なので今回の依頼は宿星武侠にとって比較的有利と言えるが、梁山泊の防衛機能に対処しても妲己のユーベルコードに耐えねばならない。自動発動という特性上、あちらの攻撃が発動する前に先手を取るのはまず不可能だろう。
「万物を魅了する香気、殺戮と欲情を煽る『殺生狐理精』、武林の秘宝『流星胡蝶剣』。封神台建立のために妲己に与えられたユーベルコードはどれも強力で、本人が何もせずにただ座していたとしても、彼女を殺すことは困難です」
それでも何とかして対策を練り、妲己を倒さなければならない。それが彼女自身の望みであり、封神台を破壊した元凶を追い詰め、封神武侠界を救うために必要な事でもある。
「平和な未来の為に罪と穢れを背負い、贄となった彼女の尊厳が、これ以上穢されるのはあまりに忍びないものがあります。どうかここで彼女に引導を渡して下さい」
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、『梁山泊』への道を開いた。
宿星の刻を待つ山岳武侠要塞、その最深部にて古の封神仙女は自らの死を待ちわびる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオは山岳武侠要塞『梁山泊』に侵入し、かつて封神台を築いた伝説の仙女『妲己』を討つ依頼となります。
このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。
プレイングボーナス……無数の武器が飛び回る中で、妲己の先制攻撃に対処する。
梁山泊には侵入者を排除する機能が備わっており、宿星武侠以外の猟兵は無数の武器による攻撃に晒され続けます。
その中で『妲己』は自分が殺されることを望んでいますが、彼女のユーベルコードは本人の意思とは無関係に自動発動し、先制攻撃を行ってきます。
この2つの脅威に対処して、後悔と無念に苛まれた妲己に引導を渡して下さい。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『封神仙女『妲己』』
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POW : 殺生狐理精(せっしょうこりせい)
対象に【殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD : 流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)
レベル×5km/hで飛翔しながら、【武林の秘宝「流星胡蝶剣」】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ : 傾世元禳(けいせいげんじょう)
【万物を魅了する妲己の香気】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
イラスト:碧川沙奈
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フロウヴェル・ゼフィツェン
その罪が苦しみなら、下す罰は救い。
待ってて、仙女様。今、貴女を救いに行くの。
浮遊させたヘレティック・ハーツを基点に、ベルを囲む形で【念動力】の斥力場を形成。これで飛んでくる武器を逸らして躱す。
濁流を迂回、或いは飛び越えて妲己へ接近。
流星胡蝶剣は、前から飛んでくる分はハーロット・イーターを振るっての【受け流し】で回避。
後ろから飛んでくる分はジェノサイド・ソーサーを飛ばしての【武器受け】で防ぐ。
これらに斥力場での減衰を合わせて凌ぐけど、それでも駄目なら【第六感】を頼りに戦闘不能になる事だけは回避。
凌いだらUCを発動、人狼形態になって妲己を攻撃。
でも、痛みなく終わらせられなくてごめんなさい、なの…
「その罪が苦しみなら、下す罰は救い」
封神仙女『妲己』が閉じこもる梁山泊の入り口で、フロウヴェル・ゼフィツェン(時溢れ想満ちて・f01233)はそう呟いた。己が犯した罪の重さと、その結果が無為と化した無力感に苛まれる彼女が望む救いは、もはやそれしか無いのだろう。
「待ってて、仙女様。今、貴女を救いに行くの」
宝珠「ヘレティック・ハーツ」を付近に浮遊させ、赤い瞳で先を見据えながら、要塞に突入するフロウヴェル。すると梁山泊の防衛機構はすぐさま反応し、侵入者を排除すべく無数の武具が濁流の中から現れた。
「道を開けて、なの」
赤黒い光を宿した宝珠を基点にして、フロウヴェルを囲む念動の斥力場が形成される。
これで飛来する武器を逸らして躱しながら、彼女は妲己の元までひた走る。小さな幅の濁流であれば飛び越え、そうでなければ迂回し、梁山泊の深部へ。
「あぁ……来てくださったのですね……」
フロウヴェルの姿を見た妲己は、彼女が己に死を与えてくれる者だとすぐに理解した。
だが、その死を甘んじて受け入れる事を、仙翁に授かったユーベルコードが許さない。仙女の傍に置かれていた霊剣がひとりでに浮かび上がり、切っ先を猟兵に向ける。
「申し訳ありません……避けて下さい……」
楚々と泣く妲己の意思に反して、襲い掛かる2本の【流星胡蝶剣】。武林の秘宝はその銘の通り流れ星のようなスピードで飛来し、鋭き刃でフロウヴェルを切り裂かんとする。
「謝る必要はないの」
フロウヴェルは槍型拷問具「ハーロット・イーター」を振るって、前方から飛んできた1本目の剣を受け流す。だが、その間にもう1本の剣が回り込み、後方から彼女を刺し貫かんとする。
「危ない……!」
「大丈夫なの」
妲己の危惧が現実のものとなるのを阻んだのは、円盤鋸「ジェノサイド・ソーサー」。
フロウヴェルの思念制御により自在に回転飛翔するこの武器は、死角をカバーする盾となって胡蝶剣の奇襲を防いだのだ。
「このくらいなら、耐えられる、なの」
なおも追撃を仕掛ける胡蝶剣と梁山泊の武具の動きを、彼女は第六感を頼りに予測し、槍と円盤鋸で弾く。それでも捌ききれなかった攻撃は斥力場でダメージを減衰――純白の肌とドレスを少しずつ血に染めながらも、妲己に接近していく。
「吸血鬼の姿は自由自在、見て驚くがいいの」
そして遂に敵の先制攻撃を凌ぎきったフロウヴェルは、【形態変異・闇夜種】を発動。
狼耳尻尾を生やした人狼形態に変身して、自らの戦闘能力を強化。その俊敏な脚力にて一気に距離を詰めると、妲己に死をもたらすべく一撃を見舞った。
「でも、痛みなく終わらせられなくてごめんなさい、なの……」
「ッ……構い、ません……」
本来拷問具である「ハーロット・イーター」の形状は、敵に苦痛を与えることに重点が置かれている。鋸状の刃や逆棘に身体を引き裂かれ、しかし妲己は悲鳴を上げなかった。
赦されぬ罪を背負った者には、罰の痛みさえも救いとなる。それは自身が死に近付いている証でもあるのだから――その仙女の眼差しは暗く、深い哀しみと絶望に満ちていた。
大成功
🔵🔵🔵
リオ・ウィンディア
事情はわかったよ
あまりにも悲しい真実だった故に少し言葉に詰まるけれども
私はこの喪服に誓って貴女を眠らせる、永遠に…
無数の武器はダガーと素早い身のこなしで【早業、受け流し、武器受け】で回避また弾き返すわ
先制攻撃にはそうね…私攻撃はしなくないの
だからギターによる【楽器演奏、歌唱、浄化】で仲良くなりましょう
貴女の身に絡まる【呪詛】全てを取り払うことはできないけれども
少しでも慰めの音楽を奏でましょう
そうして、先制攻撃を引き受けたら、次はこちらのターン
UC発動して可能なら【浄化】による攻撃で成仏させてあげたい
どこまでできるかな
死を願う仙人に癒しの引導を
「事情はわかったよ」
封神台建立のために仙女『妲己』が犯した罪、それを無駄にされ絶望する彼女の現状を理解したリオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)は、少し言葉に詰まる。
封神武侠界の平和を支えてきた封神台は、彼女という生贄がなければ生まれなかった。あまりにも悲しい真実だった故に、そのような反応となるのも当然だろう――けれども。
「私はこの喪服に誓って貴女を眠らせる、永遠に……」
成すべきこと、成さねばならぬ事を迷ったりはしない。オブリビオンとして望まぬ復活を遂げた亡霊に、今度は二度と覚めない眠りを与えよう。それも死霊術師の務めなれば。
「お願い致します……私はもう、生きていたくないのです……」
懇願する妲己の望みとは裏腹に、彼女を取り巻く環境と力は外敵を排除しようとする。
濁流より飛来する無数の武器も、彼女の体からあふれ出す【傾世元禳】の香気も、全て自動的に発動するもの。そこに本人の意思は介在しない。
「少しだけ待っていて」
リオは水と風の精霊の加護を宿したダガー・ロータスを片手に無数の武器を弾き返し、素早い身のこなしで回避しつつ接近していく。せめて妲己にこちらの音がはっきりと聞こえる距離まで――だがそこは、同時に魅了の香気の効果範囲でもあった。
「どうか惑わされないで……」
妲己の香気は生命体・無機物・自然現象すら含めた森羅万象を魅了する。本人にそのつもりが無くとも他者を狂わせずにはいられない魔性の魅力が、リオの元にも降りかかる。
「そうね……私攻撃はしなくないの。だから仲良くなりましょう」
甘い香気に包まれたリオは握っていたダガーを放すと、代わりにギターを取り出した。
猟兵でさえ妲己の魅了には抗えないのか――そう思われたが、違う。はじめから彼女に妲己への敵意はなく、魅了されていようといまいと思考や行動に変化はなかった。
「貴女の身に絡まる呪詛全てを取り払うことはできないけれども、少しでも慰めの音楽を奏でましょう」
爪弾く指先に合わせて魔楽器・アーケオプテリクスが鎮魂の音色を奏でる。それと共にリオが紡ぐのは浄化の歌。黄泉の国のスタアが披露する音楽は、生者も死者も等しく聞き惚れるほどに美しい。
「まぁ……なんて素敵な……」
かつて酒池肉林に溺れた妲己も、これほど心を満たす音楽には出会った事がなかった。
浄化の音色が妖仙に宿された呪いと穢れを祓うにつれて、魅了の香気も薄らいでいく。
「次はこちらのターンね」
先制攻撃を凌ぎきったところで、リオは【Misericordia Clavel】を発動。浄化の作用をもつ赤いカーネーションを無数に放ち、妲己に包囲攻撃を仕掛ける。可能であればこれ以上苦しみを与えること無く、彼女の魂を成仏させてあげたいと願って。
(どこまでできるかな。死を願う仙人に癒しの引導を)
歌姫の想いと歌声を乗せて花は舞い、幾何学模様を描きながら妖仙の穢れを祓い去る。
絶望に染まる妲己の表情は、それを受けて少し安らいだ様子で。「感謝致します……」と礼を述べながら、力なくその場にへたり込んだ。
大成功
🔵🔵🔵
張・西嘉
宿星武侠である事で自分が戦いやすくなるというならば行かねばなるまい。
対妲己用に作った宝貝や強化した武器もしっかりと準備をしておこう。
悪女と言われてきた彼女の本心に心は揺さぶられるが…ならばきちんと終わらせてやろう。
オブリビオンである身に未来はないのだから。
そんな【義侠心】を持って妲己戦に挑む。
無差別に攻撃してくる武器には当たらないがUCを受け止めたのち『桃風扇』による【破魔】【浄化】【結界術】で殺戮・欲情を抑えることを試みる。
殺戮の衝動にはあえて争わず。
殺すならば殺意は必要だと
【破魔】で強化した青龍偃月刀でUC【青龍破斬】を発動
「宿星武侠である事で自分が戦いやすくなるというならば行かねばなるまい」
星に選ばれし勇士達の為に仙界が築いた山岳要塞『梁山泊』、そこに足を踏み入れるは張・西嘉(人間の宿星武侠・f32676)。彼の来訪をまるで待ちわびていたかのように、要塞内を飛び交う武器はピタリと動きを停止した。
(対妲己用に作った宝貝や強化した武器もしっかりと準備をしておこう)
静まり返った要塞を進む彼の懐には、桃月桃源郷で作成した破魔の宝具、そして手には強化された青龍偃月刀がある。封神仙女『妲己』を討つための備えは万全に整っていた。
「悪女と言われてきた彼女の本心に心は揺さぶられるが……ならばきちんと終わらせてやろう。オブリビオンである身に未来はないのだから」
そんな義侠心を持って此度の戦いに挑む西嘉を、妲己は全てを受け入れるかのように、項垂れながら待っていた。楚々として憐れを誘う儚げな美貌――かつて蠱毒の贄となった伝説の妖仙は、ただ己の死のみを求めている。
「猛き侠の心に感謝致します……ですが、どうかお気をつけて」
そんな本人の意に反して襲い掛かるは【殺生狐理精】。殺戮と欲情を煽るこの精怪は、憑依した対象をつかの間の力と引き換えに自滅へと導く。かつてはこの力で多くの君主や英傑が惑わされ、乱を引き起こしたのだろう。
「備えはしてきた。後は俺自身の心持ち次第だな」
梁山泊からの攻撃を恐れる必要のない西嘉は、妲己ただ一人に目標を定めて前進する。
そこに飛び掛かってきた狐狸精の憑依をあえて受け止めたのち、彼は宝貝『桃風扇』を取り出し、ひと仰ぎする。
「この扇で、貴殿の術を祓う」
「それは……桃源郷の宝貝ですか!」
清浄な気に満ちた桃の花びらが舞い、妖力や魔力を祓う結界を作り上げる。その光景を見た妲己ははっと目を見開いた。人界の穢れを宿した今の彼女にとって、桃源郷の陽の気は相容れぬもの――そして狐狸精がもたらす殺戮と欲情を抑える術にもなる。
(殺すならば殺意は必要だ)
過剰な殺意と情欲を桃風扇の力で抑えつつも、西嘉は殺戮の衝動にはあえて争わない。
確固たる自我と意志で殺意を制御する事ができれば、殺生狐狸精は彼に力を与えてくれる存在にもなる。不老不死の妖仙を討つには尋常の技のみでは足りぬと判断しての事か。
「貴方は、私の色香に惑わされないのですね」
「啖呵を切って来たのでな。無様な姿は見せられん」
何よりも美しい人を彼は知っている。「負けたら許さんからな」と伝えられた時の表情が脳裏に浮かぶ。ふたりで作り上げた宝貝の力を支えにして、妲己の前に立った西嘉は、青龍偃月刀を力強く振りかぶる。
「龍と桃の氣の宿りし一撃。喰らうといい!」
西嘉の想いを乗せた【青龍破斬】の一撃は、桃花の香風を起こしながら妲己を切り伏せた。さらに刃を通じて送り込まれた破魔の氣が、穢れに染まった妖仙を内から破壊する。
「――……見事、です」
鮮血を散らしながら倒れ込む姿さえ美しく、妲己は悲鳴ひとつ上げず賞賛を口にする。
その一撃は彼女が求めた"死"を与えるに足る、確かな傷を彼女の身に刻みつけていた。
大成功
🔵🔵🔵
尾守・夜野
(仙人ども糞かよ
てめぇが贄になれよ
他人に強制する前に)
怒りで目の前が赤くなりそうだ
それでも救いなど死しか与えられないし彼女もそれを望んでるなら向かうしかねぇよな
状態異常は辉夜で防ぐ
状態異常の回復のみに専念させれば相手も回復しちまうが状態異常にするような事しねぇなら意味ねぇ
流星胡蝶剣に対しては黒纏で防御だけするに留める
他飛んでくる物も同上だぜ
攻撃はただ一撃にだけかける
殺生狐理精も攻撃するのが一度であれば何度受けても死にはしない…はず
故に積極的に当たり受ける精神異常は辉夜及び別の人格が対処する
「…すまんな。今解放する…!」
全ての強化と受けた攻撃を利用した積み重ねをもとに一撃を
苦しまないよう綺麗に…
(仙人ども糞かよ。てめぇが贄になれよ、他人に強制する前に)
封神台建立の経緯を聞いた尾守・夜野(墓守・f05352)は、心の中で悪態を吐いた。
その方法もさる事ながら、わざわざ離反を防ぐための力まで植え付けて誰かを贄にするという手口が、彼には許し難かったようだ。
(怒りで目の前が赤くなりそうだ)
今にもはち切れんばかりの憤怒が胸の奥で渦巻く。腹立たしいのはこの感情をぶつける相手がこの世には居ないという事だ。蠱毒の贄として十分に苦しんだはずの妲己を、またオブリビオンとして殺さねばならないのも不本意である。
(それでも救いなど死しか与えられないし、彼女もそれを望んでるなら向かうしかねぇよな)
かくして梁山泊を訪れた夜野の元に、襲い掛かってきたのは【殺生狐狸精】。本人の意志とは関係なく妲己に危害を加える者を攻撃する、自動発動型のユーベルコードである。
この狐狸精が司るのは殺戮と欲情。取り憑かれた夜野の心にも、黒い火のような感情がめらめらと湧き上がってくる。
「流されてたまるかよ」
夜野は竹笛型宝貝「自动乐器【辉夜】」の音色により自身の異常を防ぐ。相手が自動型ならこちらも自動演奏。ひとりでに鳴り響く妙なる笛の音が、彼の正気を保ってくれる。
(状態異常の回復のみに専念させれば相手も回復しちまうが状態異常にするような事しねぇなら意味ねぇ)
竹笛の音とともに移動する夜野に、続いて襲来するのは梁山泊の防衛システムだった。
濁流より飛び出した無数の武器からの攻撃を、彼は身に纏った「黒纏」で防御する。
「下手に反撃すると狐狸精に生命力を持っていかれるからな」
着用者の意思に応じて自在に変化する黒衣が、飛来する刀剣も槍斧も矢も払い落とす。
ここで自分から手を出せば抑え込んでいた殺戮の業に呑まれ、自滅に導かれかねない。妲己本人と対峙するまで力は温存する方針で、ひたすら耐えつつ前進を続ける。
「ああ、よくぞ来て下さいました……」
狐狸精の誘惑にも無数の武器にも屈する事なく耐え、自身の元までやって来た猟兵を、妲己は心から歓迎する。自死の権利すら奪われた彼女にとって、彼らは望みを叶えてくれる唯一の存在なのだから。
「……すまんな。今解放する……!」
運命に弄ばれた憐れな仙女の前で、夜野は悲痛な顔をしながらも強化式【累】を発動。
その身に刻まれた刻印の力を過剰駆動させ、強化術式をオーバーロード。限界ギリギリまで暴走させた上で狐狸精による殺意の衝動も利用し、攻撃力の強化を積み重ねる。
「苦しまないよう綺麗に……」
攻撃はただ一度にだけ賭ける。狐狸精に生命力を吸い尽くされないための方針であり、同時に妲己を過剰に痛めつけないためでもある。竹笛の自動演奏が葬送曲の如く響く中、夜野は全身全霊を込めた怨剣を叩きつけた。
「っ……ぁ……!!!!」
その一撃は妲己の肉体を深々と切り裂いて、官能的な香りと共に血飛沫が辺りに舞う。
死という名の解放をもたらす一太刀を受けた彼女は、悲鳴を押し殺しながらも、安堵と感謝の表情を浮かべていた――。
大成功
🔵🔵🔵
笹乃葉・きなこ
●POW アドリブとかお任せ
相手からのユーベルコードは呪詛耐性、狂気耐性、除霊、浄化で対応
足りないならリミッター解除でアイテム要の紋のリミッターを解除
武器にはジャンプ、空中戦、野生の勘で対応して、武器落としのユーベルコードでなぎ払い
避けられるなら野生の勘を使って避ける
あと、ちと頭を捻るけど無駄に攻撃をしない
相手のユーベルコードの生命力30%の対処が無理そうなので、できるだけ妲己共々ユーベルコードでなぎ払いで攻撃するべぇ
なるべく妲己と武器を同時に狙える位置にいることを心がけるべぇ
両手を動かく感覚で左手は武器をなぎ払って、右手は妲己を攻撃するイメージだべぇ
お上品に倒すこと出来ねーんだ…。ごめんな。
「つれぇべな。すぐに終わらせてやるべぇ」
梁山泊の奥地でうずくまる妲己に、笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)は憐れむような眼差しを向ける。『異門同胞』に操られ、自動発動型ユーベルコードの所為で自死すら叶わず――全ての希望を断たれた彼女には、死こそがせめてもの慈悲となる。
「お願いします……どうか、私を殺して……」
懇願する妲己の元から飛び出すのは【殺生狐狸精】。それは相手が動くよりも先んじて憑依を仕掛け、内なる殺意と情欲を煽り立てる。妖しくも甘美なこの衝動に、身を委ねた先に待つのは破滅だと、きなこは直感的に理解していた。
「こんなのに惑わされねえべ!」
きなこは湧き上がる衝動に耐えつつ、戦巫女として培った技で狐狸精を祓わんとする。
悪しき精怪の除霊や浄化は、巫女の務めであり得意分野――だが、かの『妲己』が遣わした狐狸精となれば凡百の霊のようにはいくまい。
「足りないならこいつも使うべぇ!」
衝動に呑まれそうになったその時、きなこの体に描かれた「要の紋」が赤く発光する。
この紋には呪詛や狂気等の感情の暴走を抑え込む力がある。そのリミッターを解除する事でどうにか正気を保ちながら、彼女は妲己の元へと駆け出した。
「危ない……!」
近付いてくるきなこに向かって、妲己が警告を発する。見れば梁山泊のあちこちを流れる濁流の中より無数の武器が飛び出し、宿星を持たぬ侵入者に襲いかかろうとしていた。
「邪魔だべ!」
きなこは兎のような脚力でジャンプし、空を舞うが如き身のこなしで攻撃を回避する。
極寒の地で獣達と共に育った彼女には、鋭い野生の勘が備わっている。使い手のいない無機質な殺意にも敏感に反応し、四方八方から飛んでくる武器を次々に回避してみせる。
「奇術を見せてやるべ」
無数の武器を避けつつ妲己との間合いを詰めたきなこは、【笹乃葉式気功術】を発動。
体内で練り上げた未知の生体エネルギーを不可視の波動として放出し、妲己共々周囲の武器をなぎ払う。
「きゃっ……!!」
強烈な"気"の奔流に吹き飛ばされる妲己。同時にきなこの体を凄まじい脱力感が襲う。
いつも以上に力を出せている気がするが、消耗もそれ以上に増している。どうやら憑依したままの狐狸精が悪さをしているようだ。
(撃てるのはあと1,2回ってところだべぇ)
たとえ衝動を抑え込めても、攻撃の度に生命力を失う事については対処しようがない。
そこできなこはできるだけ無駄な攻撃をしないように、妲己と武器を同時に狙える位置にいることを心がける。
(両手を動かす感覚で左手は武器をなぎ払って、右手は妲己を攻撃するイメージだべぇ)
生体エネルギーを精密に操作しての二撃目。迫りくる刃を波動が叩き落とすと同時に、妲己を打ち据える。その光景はまるで彼女の周りにだけ嵐が吹き荒れているかのようだ。
膨大な生命力と引き換えに得られた瞬間的な破壊力は、重く、鋭く、強く、敵を撃つ。
「お上品に倒すこと出来ねーんだ……。ごめんな」
「構いません……罪人である私に、情けは不要です」
きなこの猛攻を妲己は甘んじて受け止める。狐狸精と武器の自動的な反撃を止める事はできないが、せめて自身が無抵抗でいる事で猟兵の勝率を少しでも高めようとしている。
華奢な肢体が不可視の力に殴り飛ばされ、岩壁に叩きつけられる。豪奢な衣と白い肌を鮮血に染めながら、彼女はただただ己の"死"を望んでいた――。
大成功
🔵🔵🔵
シホ・イオア
自らを犠牲にしてまで残した未来を、
貴方の手で壊させたりしない。
第六猟兵のシホが止めてみせる。
対妲己用宝具「天劾魔鏡」を身に着けて魅了に対抗。
さらにシホ自身の【破魔】の力と【呪詛耐性】・【狂気耐性】で抵抗力を強化。
数秒でも時間を稼げたらUCを発動。
ダメージ対象は妲己のみ。
「世界を癒せ、シホの光!」
香気を祓うため【破魔】と【浄化】を、
妲己の心を【慰め】るため【祈り】を込めて放つ。
UCだけで倒せなければ剣・空飛ぶハート・ガトリング砲を使用。
敵の物理的な攻撃は【空中戦】【残像】で回避。
シホの大きさなら動き回れるはず。
ダメージは【オーラ防御】と【見切り】で最小限に。
アドリブ連携歓迎。
「自らを犠牲にしてまで残した未来を、貴方の手で壊させたりしない」
そう語るシホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)の表情には、毅然とした決意があった。生前の行いを無に帰され、絶望に苛まれる妲己を救えるのは自分達しかいない。
「第六猟兵のシホが止めてみせる」
「ありがとう……でも、どうかお気をつけて……」
感謝の言葉を口にしながらも、妲己の肉体からは本人の意志とは無関係に魅了の香気があふれ出している。万物を魅了する【傾世元禳】の香りに乗って、梁山泊に仕掛けられた無数の武器も、侵入者を排除せんと襲い掛かる。
「この時のために準備はしてきたから」
シホは対妲己用宝具「天劾魔鏡」を身に着けて魅了に対抗する。この宝貝に込められた破邪顕正の力と、彼女自身の破魔の力と呪詛・狂気の耐性があれば、いかに傾世とて簡単には心を惑わせまい。
(数秒でも時間を稼げたら十分)
ひらりひらりと空を舞い、香気と共に飛来する武器を躱しながら、フェアリーの聖者は聖痕に想いを込める。妲己の為にもこの世界の未来を守らんとする気高い意志は、虹色の光輪となって彼女の体から溢れ、戦場を煌々と照らし出す。
「世界を癒せ、シホの光!」
発動するのは【レインボーフラッシュ】。香気を祓うための破魔と浄化の光を、妲己の心を慰めるための祈りを込めて放つ。溢れ出す輝きは七色の閃光となり、圧倒的存在感を伴って目標に浴びせられた。
「あぁ……あたたかい……」
暗い闇夜に暁の光が差し込むような、癒しのオーラが妲己の心を照らす。常に魅せる側であった彼女が、魅せられる側になるのはこれが初めてであろう。小さくともカリスマに満ちたシホの威光に、彼女は跪くように脱力し頭を垂れる。
「あと少しだけ、耐えて」
虹の閃光は妲己に大きなダメージを与えたが、まだ倒すには至らない。それを見たシホはプリンセスハート「Light My Fire」を銃に変身させ、両足に履いた「マジカルガトリングブーツ」と一緒に射撃を仕掛けつつ接近を図る。
(シホの大きさなら動き回れるはず)
妲己を守ろうとする武器の間を、体の小ささと見切りのセンスを活かしてくぐり抜け、弾幕で撃ち落とし。霞の残像を作りながら戦場を翔ける姿は、さながら小さな戦乙女だ。
「貴方が犯した罪と穢れも、シホが祓う」
近接を果たしたシホが振るうは「宝石剣エリクシア」。既にその輝きに魅せられた妲己は避けようともせず――破魔の力に満ちた刃が捉え、斬光の軌跡にそって血飛沫が散る。
「感謝……します……」
この苦痛と罰こそ彼女にとっての救い。崩れ落ちた妲己の表情には安堵が宿っている。
聖者の光が与えた慰めを胸に抱きながら、彼女の体は着実に望んだ死へと近づきつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
劉・涼鈴
むぉー……妲己、いい子だったのかー
なら、これ以上の災厄になる前に、私が引導を渡してやる!
それも武を以って侠を為す、武侠の役目だ!
梁山泊を駆け抜ける!(ダッシュ)
むむー、武侠のための武器が私を襲うなんてー!
星こそ宿してないけど、私こそは劉家拳が伝承者! 劉・涼鈴だ!!
だから! 言うこと! 聞け!!
飛んで来る剣を捕まえて、それで次々に【受け流し】ていく!
妲己から飛んで来る胡蝶剣を【野生の勘】で【見切って】、捕まえた剣で弾く!
そこら中に刺さった武器を足場にして(地形の利用)、ぴょんぴょん飛び跳ねて(軽業・ジャンプ)、【功夫】【劉家奥義・鷹爪嵐迅脚】!!
うおりゃー!!
「むぉー……妲己、いい子だったのかー」
伝説で語られる所業から、妲己に悪女のイメージを抱いていた者は少なくないだろう。劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)もその一人だったが、実際の彼女は予想に反して、平和のために我が身を捧げた仙女であり、オブリビオンとなった今も善性を失わずにいる。
「なら、これ以上の災厄になる前に、私が引導を渡してやる! それも武を以って侠を為す、武侠の役目だ!」
いざ征かんと覇気を全身に漲らせて、涼鈴は梁山泊を駆け抜ける。妲己の元へと向かう彼女に襲い掛かるのは、濁流より飛び出す無数の武器。この山は星と天運に選ばれし者達の為に築かれた要塞、宿星なき者は去れとでも言わんばかりに。
「むむー、武侠のための武器が私を襲うなんてー!」
襲い来る武器を躱しつつ、不満げに頬を膨らませる涼鈴。宿星の有無だけで武侠の資質を測るなんて、この要塞はちょっと狭量ではないか。宿星なき武侠にも――否、どんな者にだって天運を動かす資格はあるはずだ。
「星こそ宿してないけど、私こそは劉家拳が伝承者! 劉・涼鈴だ!!」
誇りをもって流派と己の名を叫び、涼鈴は飛んできた剣の一振りをがしりと捕まえる。
星に選ばれぬのならば、道は己の力と志で切り開く。それこそが武侠のあるべき姿だ。
「だから! 言うこと! 聞け!!」
涼鈴は捕まえた剣をしっかりと握りしめて、飛んでくる武器を次々に受け流していく。
その強固でまっすぐな意志を主として認めたのか、剣はそれ以上暴れだすことはなく、持ち手の意に従うようになった。
「梁山泊の武器をも服従させますか……天運にすら抗う、貴女達ならきっと私を……」
その光景を目の当たりにした妲己は、期待を籠めた眼差しで涼鈴を見つめ。されど彼女に与えられた【流星胡蝶剣】はその望みを絶たんとするように、ひとりでに飛翔し外敵に斬りかかった。
「見切った!」
妲己の元から高速で飛来する胡蝶剣を、涼鈴は野生の勘で察知し、捕まえた剣で弾く。
元々はこれも未来の大乱に備えて仙界が用意した武器のひとつだ。武林の秘宝とも打ち合える強度は十分、まさに業物と呼ぶにふさわしい。
「とうっ!」
さらに涼鈴は自らが打ち払った後、そこら中に突き刺さった武器を足場にして、戦場をぴょんぴょんと飛び跳ねる。軽気功と呼ばれる功夫の一種であり、鍛錬を重ねたその身は羽毛の如く軽やかに空を駆け、猛禽の如く鋭く敵を襲う。
「うおりゃー!!」
【劉家奥義・鷹爪嵐迅脚】。烈帛の気迫と共に空中から繰り出された蹴撃が、凄まじい速度で標的に襲い掛かる。これぞ劉家に伝わりし絶技が一つ――もし妲己に抵抗の意思があったとしても、この一撃を見切る事は不可能だっただろう。
「見事です……っ!!!」
直撃を食らった妲己の体は勢いよく吹き飛ばされ、梁山泊の岩壁へと叩きつけられる。
吐息と共に漏れた呟きは、自分を止めてくれた感謝に加えて、鍛え抜かれた武術と功夫への感服の念を表するものであった。
大成功
🔵🔵🔵
黄泉川・宿儺
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妲己殿の為にも、なるたけ早急に終わらせるでござる
飛び回る無数の武器
小生はその攻撃を敢えて避けずに進むでござる
妲己殿の傾世元禳は<狂気耐性>、加えて<根性>で抵抗を試みる
【変異・餓鬼道】を使用──
無数の武器で身体を傷つけられ、魅了に抗いながら
一歩一歩、<覚悟>を以て妲己殿の下に歩を進めるでござる
痛みがなんだ!
こんなかすり傷なんかより、妲己殿の方が100倍辛いに決まってるでござる!
どんなにボロボロになったとしても、絶対にこの歩みは止めないでござる
たどり着いたのち
妲己殿目がけ、全身全霊で<怪力>を乗せた拳撃を放つでござる
小生の呪われた拳で、この悲劇に幕を引くでござる!
「妲己殿の為にも、なるたけ早急に終わらせるでござる」
生前は封神台建立の生贄となり、今はオブリビオンとして望まぬ役を強いられる妲己。
その心象を慮って、黄泉川・宿儺(両面宿儺・f29475)は短気決着を決意する。この戦いが長引けば長引くほど、かの仙女は余計な苦痛を背負うこととなる。
「情け深い御心に感謝致します……どうか、私を殺して下さい……」
ただ一心に己の死を希う妲己の肉体からは、自動的に【傾世元禳】の香気が溢れ出す。
梁山泊の内部を飛び回る無数の武器も、その香りに感化されたのか、妲己を護るように侵入者へと襲い掛かった。
「すぐに行くでござるよ」
宿儺は妲己の元へ歩を進める。飛来する武器の攻撃を敢えて避けず、受け止めながら。
刃に切り裂かれるたびに、矢が突き刺さるたびに身体からは鮮血が吹き出すが、彼女は微かに顔をしかめるだけで揺るがない。
(痛みがなんだ! こんなかすり傷なんかより、妲己殿の方が100倍辛いに決まってるでござる!)
どんなにボロボロになったとしても、絶対にこの歩みは止めない。そんな覚悟を感じさせる愚直なまでの前進を、使い手もいない武器に止められるはずがなかった。一歩一歩、血に塗れながら着実に近付いてくる宿儺の姿を、妲己は瞳に涙を浮かべて見つめていた。
「あぁ……私の所為で、そんな……!」
「気にする必要、ないでござる」
妲己の罪悪感を少しでも紛らわせようと、宿儺はにぃと笑みを浮かべてみせる。近付くにつれて香気も強くなるが、魅了されないように根性で抵抗する。誰かを助けたいという想いがあればどんな困難にも立ち向かえる、諦めない心の強さこそ彼女の最大の武器だ。
「……お待たせしたでござる」
無数の武器で身体を傷つけられ、魅了に抗いながら、遂に宿儺は妲己の元に辿り着く。
そこで発動するのは【変異・餓鬼道】。武器に刻みつけられた傷口から、赤い血ではなく漆黒の瘴気があふれ出し、彼女の全身を覆っていく。
「■■■■■■■■■■■―――!」
これは宿儺に宿る666の怪異の浸食をより強め、敵から受けた負傷に比例して戦闘力を強化するユーベルコードだ。数多の怪異の力を借りる代償として、発動時は強い飢餓衝動に襲われる。
(――呑まれては、駄目でござる!)
目の前の"敵"を喰らい尽くしたいという狂気じみた衝動を、魂の底でぐっと抑え込む。
ここに来た理由を見失ってはいけない。拳を振るう意味を忘れてはいけない。姿は異形に近付きながらも、少女の瞳は人としての正気を保っていた。
「小生の呪われた拳で、この悲劇に幕を引くでござる!」
瘴気を纏った拳を怪異の膂力でぐっと握りしめ、宿儺は全身全霊を乗せた拳撃を放つ。
轟と唸りを上げたその一撃を、妲己は避けること無く享受し――柔らかな肉を打つ鈍い感触が、拳に伝わる。
「感謝、致します……強き御方……」
打ち据えられた妲己の身体は宙を舞い、大きく放物線を描いた後に力なく倒れ伏した。
生前より誰かの思惑に縛られ続け、罪を犯すことを強要された生。宿儺の呪拳は確かにそれを打ち砕く一打となった。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
【カビパンパンランド計画始動!】
ある日、カビパンは深く悩んでいた。
再び戦乱の風が吹き始めた時勢に、鬱々とした日々を過ごすシュークリーム達を前に、君主カビパンが「カビパンパンランド」の設立を宣言。建設場所は一級地の梁山泊。これにより黴軍と梁山泊が戦争状態になる。
難攻不落の誉れ高い梁山泊に立てこもり、黴軍を一歩も寄せ付けない妲己の前に、シュークリームは犠牲だけを増やしていく。そこでシュークリーム自体にチラシを張り付けた最強で幻の北海道産シュークリーム遊撃隊が、黴軍の援軍に駆けつけ、ゲリラ戦を展開。戦いぶりは瀬田に旗をの如く真の武士(もののふ)であった。
北海道産シュークリームを加え黴軍は新生する。
「うーむ……一体どうすれば……」
それは殲神封神大戦も後半に入ったある日の事。カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は深く悩んでいた。再び戦乱の風が吹き始めた時勢に、鬱々とした日々を過ごすシュークリーム達を前に、何かできる事はないかと考えていたようだ。
「よし。これよりカビパンパンランドの設立を宣言する!」
熟慮の末に至った結論としては、娯楽を提供すれば民は喜ぶだろうという考えらしい。
かくして「カビパンパンランド」計画が始動したことで、君主カビパンの率いる黴軍は新たな行動を開始する。まずはランド建設にふさわしい土地を確保する所からだ。
「建設場所は一級地の梁山泊よ!」
カビパンが目をつけたのは伝説の要塞。これにより黴軍と梁山泊は戦争状態になった。
土地確保のために大量のシュークリーム兵が押し寄せるが、相手は難攻不落の誉れ高い梁山泊。濁流から無尽蔵に飛び出す無数の武器が、侵入者を即座に排除する。
「残念ですが……これでは私を殺せないでしょう……」
要塞の奥に立てこもり、黴軍を一歩も寄せ付けない妲己の前に、シュークリームは犠牲だけを増やしていく。これほどの苦戦を強いられるのは、黴軍結成以来初かもしれない。
「何か手を打たないと……」
このままでは全滅の可能性すらある状況で、敵の武器に囲まれ進退窮まるカビパン。
だが、そこで思わぬ援軍が黴軍の元に駆けつける。それは真っ白いクリームを包み込んだフカフカのシュー。一見同じモノのように見えるが、普通のシュークリームとは白さもフカフカさもレベルが違う。
「あ、あれは北海道産シュークリーム遊撃隊! 来てくれたのね!」
そう、あれこそは最強にして幻と謳われた伝説の北海道産シュークリーム。ご丁寧にも特殊加工された【魅惑の一枚】のチラシを張り付けて、自分達の宣伝も欠かしていない。
彼らの力があればまだ戦線は立て直せる。君主カビパンはすぐに各隊に檄を飛ばした。
「今こそ反撃の時!」
カビパンの指揮の下で北海道産シュークリーム遊撃隊はゲリラ戦を展開。通常のシュークリームを上回る戦力(?)に加え、彼らに張り付けられたチラシは妲己の【傾世元禳】のような魅了効果がある。それは無機物である武器すら友好的にしてしまう力だ。
「な、何が起こっているのですか……?」
得体の知れないお菓子の群れに梁山泊の武器が籠絡されていく様子には、流石に妲己も困惑を隠せなかった。だが、これは紛れもない現実である――北海道産シュークリームの戦いぶりは、瀬田に旗をの如く真の武士(もののふ)であった。
「このまま梁山泊を占領し、我々のカビパンパンランドを築くのよ!」
北海道産シュークリームを加え新生した黴軍の勢いは留まることを知らず、要塞の各所を占拠していく。直接的に妲己を討伐する事には繋がらないが、梁山泊の防衛力の低下は最終的な勝利に近付く布石となるだろう。
「……これは張角にも予想ができなかったでしょうね」
喜ぶべきなのか嘆くべきなのか。複雑な表情をしつつも妲己は様子を見守る事にした。
自分に死を与えてくれるのなら、どんなモノであれ構いはしない。戦後の梁山泊が謎のカビパンパンランドに改造されようと、彼女の知ったことではないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【DARK】
それが望みというのなら、断る理由はないな
エマ、言うまでもないだろうけど、慈悲はかけてやってくれ
一撃だ
苦しむ暇もなく、殺してやろう
武器が飛んで来るなら好都合
飛来する武器を生成する氷で逸らし、妲己の武器と相殺する
軌道計算は頼むよエマ
とはいえずっとこれをやるのも疲れるからな
追撃が来る前に準備を整えよう
【“Níðhǫggr”】――この鱗でエマの盾になる
己が積み上げて来た全てが、何の意味もなかったこと
それどころか嘗ての願いを阻むものであること
その苦しみは痛いほどよく分かる……解放されたいという思いもな
私は死にたくないと祈り、貴様は死にたいと願った
同じ思いの行き着く先として
貴様を、葬ってやろう
ハイドラ・モリアーティ
【DARK】
いいよ
――殺してやる
蟲毒の女王は辛いよな
俺も似たような境遇だからよくわかる
それと、――事を為そうとして、それに囚われた辛さも
兄貴、殺して助けてやろう
同情もしてるし憐れんでもいる、ぶっちゃけ俺の私情マシマシ勝手に共感多め、何なら決意は硬めだ
でも、それがヒトってもんだし
罪を憎んで人を憎まずだろ
対処方法は『兄貴に守ってもらう』だ
俺は一点集中だ。俺の集中力を削ぐわけにはいかなかった
【SLOT】
軌道計算、――飛び回るなら「絶対に貫く」だけだ
苦しめやしないさ。心臓じゃ痛みが残るから、頭を貫いてやる
辛かったよな
悪いってわかってたから、余計にさ
――お前の物語は、ここで『打ち切り』だ
もう、大丈夫だよ
「いいよ――殺してやる」
罪悪感と無力感の果てに死を望んだ仙女に、ハイドラ・モリアーティ(冥海より・f19307)は告げる。山奥の要塞でひとり佇む妲己の姿に、彼女は己の過去を投影していた。
「蟲毒の女王は辛いよな。俺も似たような境遇だからよくわかる。それと、――事を為そうとして、それに囚われた辛さも」
抜け出すことのできた自分とは違って、あの仙女はきっと今も囚われているのだろう。
過去の亡霊――オブリビオンと成り果てた彼女がそこから解放される手立ては、骸の海に還してやる事だけだ。
「それが望みというのなら、断る理由はないな」
同道するニルズヘッグ・ニヴルヘイム(伐竜・f01811)にも、異を唱える気はない。
カタストロフを阻止するために討たねばならぬ相手だ。世界の安寧のために身を捧げた妲己にとっても、オブリビオンとして世界の破滅に加担するのは不本意な事だろう。
「エマ、言うまでもないだろうけど、慈悲はかけてやってくれ」
「ああ。兄貴、殺して助けてやろう」
互いの意見を一致させたところで、二人の猟兵は戦闘態勢を取る。ニルズへッグが前に立って身構え、ハイドラがその背後で蒼い血の入った試験管を外套の内側から取り出す。一方が守って一方が攻める、分かりやすい陣形だ。
「嗚呼……お願いします。早く、私を殺して……」
妲己は悲痛な懇願を繰り返しながら天女の羽衣をなびかせ、ひらりひらりと空を舞う。
本人がどれだけ死を望もうとも、彼女に与えられたユーベルコードはそれを許さない。
梁山泊を守護する無数の武器とともに、武林の秘宝【流星胡蝶剣】が飛翔し、侵入者を排除せんと襲い掛かる。
「武器が飛んで来るなら好都合」
対するニルズへッグは手元から氷を生成し、飛来する武器の軌道を逸らし、相殺する。
ハイドラを狙うものも含めて二人分の攻撃を一手に引き受けるからには、余裕はあまり無いだろう。それでも彼の口元には強気な笑みが浮かんでいた。
「軌道計算は頼むよエマ」
「了解、兄貴」
ニルズへッグに守られながら、ハイドラは妲己の動きを予測する事に思考を集中する。
他のことに集中力を削ぐわけにはいかない。高速かつ不規則な軌道で飛行する標的に、確実に攻撃をヒットさせるには完璧な軌道計算が必要だ。
「――飛び回るなら『絶対に貫く』だけだ」
普段の飄々とした振る舞いはなりを潜め、今の彼女は真剣そのものの表情でそう呟く。
彼女にこんな顔をさせる要因は、やはり目の前の相手が他人とは思えないからだろう。同情もしているし、憐れんでもいる。
(ぶっちゃけ俺の私情マシマシ勝手に共感多め、何なら決意は硬めだ)
そんな感情を向けられても妲己はこちらの事情を何も知らないし、困惑するだけだとは思う。これはあくまでハイドラが勝手に自己投影して、勝手に救いたがっているだけだ。
「でも、それがヒトってもんだし、罪を憎んで人を憎まずだろ」
「そうだな。エマ、一撃だ。苦しむ暇もなく、殺してやろう」
ニルズへッグは兄貴分としてその想いを汲み、武器の攻撃を逸らし続ける。軌道計算が完了するまで此処で踏みとどまるのが彼の役目だ。それまでは矢の一本も通しはしない。
「とはいえずっとこれをやるのも疲れるからな。追撃が来る前に準備を整えよう」
敵の攻撃の第一陣を凌ぎきったところで、ニルズへッグは【"Níðhǫggr"】を発動。身に溜め込んだ莫大な呪詛と引き換えに、蛇竜ニーズヘッグの骸魂と合体する事で、その身を一時的にオブリビオン化させる。
「この身は紛いであれど――この鱗でエマの盾になる」
其の姿は怒りのままに全てを蹂躙する暴威、邪悪の体現。されど今は溺愛する妹分を守護する者として、猛攻の前に立ちはだかる。武侠英傑のために用意された武器の数々も、仙翁達から授けられた武林の秘宝も、その鱗を貫くには至らなかった。
「サンキュー兄貴。準備完了だ」
刃の嵐を弾き返す黒蛇竜の後ろで、ハイドラが「Artifact」の試験管を砕く。すると中に入っていた彼女の血が宙に浮いたまま一本の矢の形を取り、妲己目掛けて放たれた。
「苦しめやしないさ。心臓じゃ痛みが残るから、頭を貫いてやる」
「――……!!」
蒼い血液の矢による【SLOT】の一射は、視認した目標を計算通りに自動追尾する。妲己の身体は本人の意に逆らって回避機動を取るが、その挙動さえも含めたハイドラの綿密な計算から逃れる事はできず、矢との距離はじりじりと詰まっていく。
「辛かったよな。悪いってわかってたから、余計にさ」
「己が積み上げて来た全てが、何の意味もなかったこと、それどころか嘗ての願いを阻むものであること。その苦しみは痛いほどよく分かる……解放されたいという思いもな」
被弾の瞬間が迫る妲己に向けて、ハイドラとニルズへッグは穏やかに言葉をかける。
死ぬ事すら自分の意志では決められず、役割に縛り付けられながら、それでも意義はあると信じて、罪を犯し続け、その果てがこの仕打ちだ。死を望む気持ちも理解できる。
「私は死にたくないと祈り、貴様は死にたいと願った。同じ思いの行き着く先として、貴様を、葬ってやろう」
ニルズへッグの蛇体が黒い閃光を放ち、うねりながら戦場を飛翔する。その体躯は黒い巨壁となって妲己の進路を遮り――ハイドラが紡ぐ計算の、最後のピースを完成させる。
「――お前の物語は、ここで『打ち切り』だ」
ハイドラの宣告と同時に、動きの止まった妲己の眉間へと、蒼き血の矢が突き刺さる。
狩人に射られた鳥のように、仙女の肢体は重力に引かれてふらりと力なく墜ちてゆく。
「もう、大丈夫だよ」
「ぁ……りが、とう……」
墜落する一瞬、視線のあったふたりは言葉を交わす。それは別れの言葉のようであり。
絶望から解放されゆく安堵の表情を浮かべて、妲己はまた一歩死に近付いていく――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
この状況は決して貴女の所為では無いわ…。
その行いは赦されず、自らも赦す事ができなかったとしても、貴女は世界の為に成すべき事を命を懸けて成し遂げた。
わたしは貴女に敬意を表すわ。
貴女が真に死を望むなら、その願い、我が吸血姫の名に賭けて叶えましょう
【念動力】の網を展開。
飛び回る武器を絡め捕り、凍結の魔力弾【属性攻撃、高速・多重詠唱、誘導弾】で迎撃。
更に【破魔】の魔術結界【結界術、全力魔法】で殺生狐理精による憑依を防御。
先制を乗り切った後、【真祖の吸血姫】で真の力を解放。
殺生狐理精に憑依された時の事も考え、憑依を逆用(攻撃5倍)して一撃に全てを掛けて【力溜め】【限界突破】全力の神槍グングニルを放つわ!
「この状況は決して貴女の所為では無いわ……」
封神台を破壊され、罪の意識と無力感に苛まれる妲己を、慰めるようにフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は言った。殲神封神大戦を引き起こしたのは大賢良師『張角』であり、彼女に抱え込む咎はない。
「その行いは赦されず、自らも赦す事ができなかったとしても、貴女は世界の為に成すべき事を命を懸けて成し遂げた。わたしは貴女に敬意を表すわ」
それは同情からではない、本心からの言葉。妲己が建立した封神台の力が世界に平和をもたらしたのは事実で、その功は封神台が破壊されても失われるものでは無いのだから。
「貴女が真に死を望むなら、その願い、我が吸血姫の名に賭けて叶えましょう」
「ありがたきお言葉です……どうか、ご武運を……」
地に伏しながら涙を流し、感謝を伝える妲己。しかし彼女に授けられたユーベルコードと梁山泊の防衛機能が止まる事はない。濁流より飛び出した武器が、宿星を持たぬ侵入者を排除しようと襲い掛かる。
「いいわ。そこで待っていなさい」
フレミアは念動力の網を展開し、さらに凍結の魔力弾を放って無数の武器を迎撃する。
飛び回る剣が、槍が、斧が、槌が、不可視の力場に絡め捕られ、魔弾に撃ち落とされ、凍りついていく。
「簡単に取り憑けるとは思わない事ね」
『――……!!』
さらに、武器に紛れて先制攻撃を図る【殺生狐狸精】を、フレミアは破魔の魔術結界で防御する。憑依を阻止された狐狸精は悔しげな様子で結界の外縁を飛び回るが、侵入する隙間などありはしない。
「我に眠る全ての力……真祖の姫たる我が真の力を今ここに!」
敵の先制を乗り切った後、フレミアは【真祖の吸血姫】を発動し、真の力を解放する。
爆発的な勢いで魔力が放出されると共に、彼女の肉体は17~8歳程の外見へ変化を遂げ、背中には4対の真紅の翼が生える。真祖から受け継いだ力の全てを解き放った彼女の姿は、妖しくも神秘的な魅力に満ちていた。
「一撃に、全てを掛けるわ」
真祖の吸血姫は真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を構えると、魔術結界を解除する。
守りを解けば当然、ユーベルコードの憑依を許すことになるが、それは取り憑かれたと言うより逆に取り込んだと言うほうが正しい。殺戮と欲情を煽る殺生狐狸精を逆用して、自らの力を引き上げるつもりだ。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……」
湧き上がる殺意の衝動を力にかえて、莫大な魔力を槍に圧縮。全長数mに及ぶ真紅の魔力の槍を形成し、妲己目掛けて振りかぶる。余計な苦しみを与えるつもりはなく、この状態で攻撃を連発すれば自分の生命も危うい――だからこそ放つのは最大最強の"一撃"だ。
「眠りなさい……!」
限界を超えて振り絞られた魔力を溜めて、最高位の竜種以上の膂力を以って投擲される【神槍グングニル】。それは真紅の流星となって梁山泊の大地を抉り飛ばしながら翔け、過つことなく妲己を穿った。
「ッ、あ――……!!!!」
苦痛すらも即座に吹き飛ばされるほどの絶大な破壊力が、妲己の身に叩きつけられる。
其は絶望より解放する為の一撃。吸血姫が示した圧倒的な武威に仙界の天地は震撼し、封神仙女は言葉を紡ぐ余裕もないまま、ただ感謝の念だけを抱いた――。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
後の世の為に自身すら犠牲にした貴女に、これ以上傷ついて欲しくない…。
貴女は確かに多くの悪を成した…。
それは赦されない事だけど、後の世の為に必要だった事も事実…。
黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】でまとめて飛行する武器と傾世元禳の香気を吹き飛ばし、こちらへ届かせない様にして対応…。
貴女はオブリビオンとなった今も敵意も悪意も無い…。
可能であれば【共に歩む奇跡】で救いたいと思う、けど…。
彼女の意思で、可能であれば【共に歩む奇跡】を使用…。
救えないようなら…【魔剣の媛神】封印解放…。
呪力を込めた神太刀で、急所に一突きさせて貰うよ…。
今の事態は必ずわたし達が止める…。
世界は終わらせない…!
「後の世の為に自身すら犠牲にした貴女に、これ以上傷ついて欲しくない……」
それが、梁山泊を訪れた雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)の偽らざる本音だった。
峻厳なる山岳武侠要塞にて妲己と対峙しながら、彼女は無表情ながらも慈悲のこもった眼差しで相手を見つめている。
「貴女は確かに多くの悪を成した……。それは赦されない事だけど、後の世の為に必要だった事も事実……」
彼女の為した罪と犠牲なくして封神台の建立は成らず、それが無ければこの世界はより多くの乱に見舞われていただろう。今日まで世界の危機を阻止してきた成果は失われない――その妲己が、オブリビオンとしてこれ以上の罪と苦しみを背負うのは間違っている。
「ありがとうございます、お優しい方……ですが、この身に容赦は不要です」
璃奈の言葉に妲己は感謝を述べつつ、どうか全力でこの身を滅ぼしてくれる事を願う。
手心を加えて勝てる相手でない事は璃奈も理解していた。本人の意志とは無関係に拡散される【傾世元禳】の香気は万物を魅了し、未来の武侠達のために用意された武器達は、宿星を持たぬ侵入者を容赦なく排除せんとする。
「武器も香気も、こちらへは届かせない……吹き荒れて、黒桜……!」
璃奈は呪槍・黒桜を一閃すると同時に、秘められた呪力を解放。放出された黒い桜の花びらのような呪力が旋風となって、飛行する武器と魅了の香気をまとめて吹き飛ばした。
「貴女はオブリビオンとなった今も敵意も悪意も無い……可能であれば【共に歩む奇跡】で救いたいと思う、けど……」
呪槍を振るい続けながら、璃奈は武器と香気の中心にいる妲己を見つめて思案を行う。
敵対意思の無い者を共存の為に最適化する。まさに奇跡と呼ぶべきユーベルコードの力を彼女は有している。もし相手にその意思があれば、死以外の救いをもたらすことも可能かもしれない――そんな仄かな期待があった。
「過分なお心遣いに感謝致します……ですが、それは難しいでしょう……」
しかし、妲己は香気を放ったまま首を横に振った。もし彼女がそれを望んだとしても、元々離反を防ぐ為に彼女に移植されたユーベルコードが全力で阻害しようとするだろう。璃奈の【共に歩む奇跡】は、抵抗を行わない対象にしか効果がないのだ。
「私はもうこの世に未練はありません……無意味に生き永らえるよりも、貴方達の手にかかって終わりたい。それが張角の『異門同胞』に縛られた私の、せめてもの抵抗です」
ここで妲己が死ねば張角の結界を守護する者が一人減り、封神台を破壊した元凶に一泡吹かせる事になるだろう。復讐と呼ぶにはささやかなものだが、それでも死を望む彼女の意志は堅いようだった。
「わかったよ……救えないようなら、仕方ない……」
その想いに応えて、璃奈もためらいを捨てて【九尾化・魔剣の巫女媛】の封印を解く。
妖狐の証たる尾が九つに増え、解放された莫大な呪力が彼女の身を包む。これまでとは霊格も雰囲気も明らかに違う姿に、心なき武器さえもたじろいでいるように見える。
「今の事態は必ずわたし達が止める……」
腰から「妖刀・九尾乃神太刀」をすらりと抜き放ち、璃奈は舞うように戦場を翔ける。
この姿に変身した彼女は、所有する魔剣・妖刀の威力を最大限発揮できるようになる。
そして神太刀が有するのは、神や超常の存在の不死や再生力を封じる神殺しの力――。
「――……ッ!!!」
風の如き吶喊に反応する間もなく、急所を一突きにされた妲己の体がびくりと震える。
不老不死の仙人に対しても、神太刀の力は有効だった。貫かれた傷が癒える事はなく、鮮血と共に生命がその身からこぼれ落ちていく。
「世界は終わらせない……!」
「はい……お頼み、します……」
璃奈からの力強い約束の言葉に、妲己は安心したように微笑んでその場に崩れ落ちた。
その様はまるで花が散るように美しく、そして儚く。魅惑の香気が徐々に薄れてゆく。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…この世界の人間では無い私が言っても響かないかもしれないけど
…それでも貴女の為した悪は、この地に住まうより多くの人々を救ってきたはずよ
…他ならぬ"オブリビオンに支配された世界"から来た人間の戯れ言だけど…ね
「精霊石の耳飾り」に風の精霊を降霊して第六感的な視力を借り受け、
無数の武器や敵UCの存在感を暗視して全周囲の索敵を行い、
積み重ねてきた戦闘知識から乱れ撃ちする武器の空中機動を見切り、
最小限の動作による回避や大鎌をなぎ払うカウンターで迎撃して受け流しUCを発動
…このままでは埒が明かないか。ならば…
…来たれ、交わらぬ時の狭間を手繰るⅥの剣
数多の未来を塗り潰し約束された勝利を我が手に…!
大鎌に武器改造を施し真の姿の時間抹消の神剣化を行い限界突破した時の魔力を溜め、
時間流のオーラで防御や過程を無視して首を切断した結果を残す時属性攻撃を放つ
…約束するわ。貴女の心を操り利用した張角とやらには、相応の報いを与えると…
…だから、もうこれ以上苦しむ必要は無い。眠りなさい、安らかに…
「……この世界の人間では無い私が言っても響かないかもしれないけど」
蹲る妲己をじっと見つめながら、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は声をかける。かの仙女はかつて酒池肉林に溺れ、数多の人間を殺戮と欲情に駆り立てたという。本人はその悪事を赦されぬものとして悔い続けているようだが――。
「……それでも貴女の為した悪は、この地に住まうより多くの人々を救ってきたはずよ」
彼女の悪と犠牲によって建立された封神台は、長きに渡りオブリビオンの脅威からこの世界を守ってきた。それで罪が帳消しになる訳ではないが、功績が失われる訳でもない。たとえ封神台が破壊されても、それは紛れもない事実だ。
「……他ならぬ"オブリビオンに支配された世界"から来た人間の戯れ言だけど……ね」
或いは、そんな世界の出身だからこそ彼女の業績の偉大さをよく理解できるのだろう。
リーヴァルディの言葉に少しは慰められたのか、妲己は深々と頭を下げ感謝を述べる。
「……お心遣いありがとうございます。異世界の猟兵よ」
妲己にもう戦う意志はないが、それでも与えられたユーベルコードは抵抗を強要する。
手元からひとりでに【流星胡蝶剣】が飛び立ち、梁山泊から現れる無数の武器と共に、外敵を排除せんと襲いかかる。
「……一体何百本あるのかしら」
リーヴァルディは「精霊石の耳飾り」に宿した風の精霊の力を借り受け、霊感にも似た特殊な視力で全周囲の索敵を行う。そして四方八方から飛来する武器攻撃を察知すると、大鎌「過去を刻むもの」を振るって叩き落とす。
「あっ、危ない……!」
「……心配はいらないわ」
乱舞する無数の武器の空中機動を全て見切るのは容易ではないが、積み重ねた戦闘知識があれば無理ではない。見守る事しかできない妲己の前で、彼女は最小限の動作で回避や迎撃を行い、全ての攻撃を受け流す――だが、幾ら対処しても武器は次々に襲ってくる。
「……このままでは埒が明かないか。ならば……」
この状況を覆す為に、リーヴァルディはユーベルコードを発動。「過去を刻むもの」に時の魔力を送り込んで変形改造を施し、【代行者の羈束・時間王の神剣】を顕現させる。
「……来たれ、交わらぬ時の狭間を手繰るⅥの剣。数多の未来を塗り潰し約束された勝利を我が手に……!」
大鎌の真の姿であるその神剣は12本が存在し、それぞれ異なる時間操作能力を持つ。
今回彼女が呼び出したのは「抹消」を司る6番目。柄を両手でぎゅっと握りしめると、刀身から莫大な時間流のオーラがあふれ出し、戦場の時を歪めていく。
「これは……!!」
過去の具現であるオブリビオンとなったが故に、時すらも操る超克(オーバーロード)の凄まじさが妲己には分かる。本能的な危機感を察して、流星胡蝶剣が彼女を護るように刃の盾を作り上げるが――。
「……そこにいなさい。すぐに終わるから」
間にある数多の武器を意に介さず、リーヴァルディは妲己のみを見つめて声をかける。
どうやってこの刃の中をくぐり抜け、こちらの刃を届かせるのか。そんなことに思考を費やす必要はもはや無い。ただ全身全霊を以って、Ⅵの神剣を一閃するのみ。
「――……ぁ……!?」
何が起きたのか理解する者はない。気が付いた時には妲己の首に血の線が走っていた。
時を抹消する神剣の一撃は、過程を無視して、「首を斬る」という結果だけを残した。
いかなる物理的手段でも防御する事のできない、不可避にして必殺の時間攻撃である。
「……約束するわ。貴女の心を操り利用した張角とやらには、相応の報いを与えると……」
リーヴァルディは血の付いた神剣を元の大鎌に戻すと、静かな声で妲己に呼びかける。
殲神封神大戦の元凶であり、妲己に絶望をもたらした大賢良師『張角』。その罪の重さは妲己の比ではなく、赦しておくつもりなど微塵もない。
「……だから、もうこれ以上苦しむ必要は無い。眠りなさい、安らかに……」
「ありがとう……貴女達になら、未来を任せられます……」
封神台なき後でも彼女らのような猟兵がいれば、この世界の安寧は守られるだろう――妲己は安堵と感謝に満ちた微笑みを浮かべながら、首から鮮血を噴き出して崩れ落ちた。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
折角の再びの生なんだから絶望に抗って欲しいなぁ…
アタシの嫁は戦っているだけに、妲己様を絶望に負けたままにしたくねーや
大妖狐と勘違いもしたが割と敬意は抱いているよ
対妲己様の為に⑬にて三日三晩寝ることも忘れて宝貝改造した四王稲荷符をド派手にばら撒く
念動力で空間に固定、結界術で武器や胡蝶剣を捕縛して時間を稼ぐよ
胡蝶剣ほどの業物を簡単に捕らえられると思わんが妨害にはなるっしょ
あとは神鳴で叩き落とすまでだ
いい業物だ、余裕あらば後ほど頂戴しよう
守りが薄くなってる内に妲己様に詰め寄って(時にジャンプで掴みかかる)胸倉掴むぜ
死ぬなよ、利用されるなよ、我儘になれ、アタシに賭けろ!
過去の存在を現在の存在として転生させる術を探しているんだ
それまで貴女の魂をアタシに預けてよ、何をしでかすのか真摯に打ち明けるぜ
稲荷符を貼り付け、自動発動UCを浄化で切り離し『一人の女性』である妲己様を魂喰らいの接吻で迎える
力とかそういうの要らねえ
ただ女の子が幸せになる可能性を消したくなかっただけさ
さあ張角殴り倒すとこ見せてやんよ♪
「折角の再びの生なんだから絶望に抗って欲しいなぁ……」
簡単な事ではないと知りつつも、それが四王天・燦(月夜の翼・f04448)の本音だ。
過去の行いを無に帰され、無力感に打ちひしがれるのは分かる。それでも、再び得た生でまた誰かを救うために懸命に頑張っている者もいる事を、彼女は知っている。
「アタシの嫁は戦っているだけに、妲己様を絶望に負けたままにしたくねーや」
優しく、儚く、そして愛しい恋人の顔を思い浮かべながら、燦は封神仙女と対峙する。
本人がそれを望んでいたとしても、このまま彼女を絶望と後悔に苛まれたまま死なせるのは我慢できなかった。
「大妖狐と勘違いもしたが割と敬意は抱いているよ」
「このような咎人相手に、敬意など勿体ないお言葉です……」
自らが作った血溜まりの中に座り込んで、己の死を待ちわびる妲己。その彼女の周囲を武林の秘宝【流星胡蝶剣】が飛び回り、梁山泊を守護する武器群が侵入者に襲いかかる。
「対妲己様の為に三日三晩寝ることも忘れて宝貝改造したとっておきだ!」
対する燦は用意していた「四王稲荷符」をド派手にばらまく。桃源郷の桃の木の枝葉や樹皮から和紙と墨を作り、桃の花弁を練り込んでこしらえた特別製だ。清浄なる桃の気をたっぷりと宿したそれは、人界の穢れをまとった妲己に対抗する最大の武器となる。
「この香り……懐かしいですね……」
桃の香をかもしだす稲荷符の結界により、無数の武器が空中でピタリと動きを止める。
妲己が見惚れる一方で、流星胡蝶剣だけは飛び続けていたが、その挙動は明らかに鈍くなっている。
(胡蝶剣ほどの業物を簡単に捕らえられると思わんが妨害にはなるっしょ)
速度さえ落とせれば見切る事も可能。燦は稲荷符を念動力で空中に固定したまま、愛刀「神鳴」を抜き放つ。その銘の通り雷の如き早業で閃いた刃が、胡蝶剣を叩き落とした。
「いい業物だ、余裕あらば後ほど頂戴しよう」
敵の先制攻撃を凌いだ燦は、守りが薄くなっている隙を突いて妲己の元へと詰め寄る。
空中で捕縛された武器の狭間をくぐり抜け、時にはジャンプで飛び越えて。うなだれる仙女の前までやって来ると、その胸ぐらにぐっと掴み掛かった。
「死ぬなよ、利用されるなよ、我儘になれ、アタシに賭けろ!」
「ぇ……?」
突然怒鳴りつけられた妲己は、胸ぐらを掴まれたまま目を丸くしている。全てに絶望した彼女の瞳と対照的に、燦の瞳には燃えるような気魄が宿っていた。それは今を諦めない意志の堅さであり、未来を信じ続ける想いの強さである。
「過去の存在を現在の存在として転生させる術を探しているんだ」
自分が何をしでかすつもりなのか、燦は真摯に打ち明ける。サクラミラージュのようにオブリビオンが新たな命を得て生まれ変わる事例は存在する。その法を人為的に行うことが出来るようになれば、多くの傷ついた過去の亡霊達を救うことができる。
「それまで貴女の魂をアタシに預けてよ」
今はまだ彼女の発案は机上の空論である。だが未来永劫不可能と決まった訳でもない。
だから転生の術が見つかるまでの間、妲己の魂を己の裡で留めておきたい。それが燦の提案だった。
「……封神台も破壊された今、私に未練はありません……新たな封神台を建立する為に、またあのような所業に手を染めるのは、二度と……」
思ってもみない提案を急に持ちかけられ、妲己は困り顔を見せる。かつては酒池肉林に溺れ、多くの殺戮と悪徳に手を染めたものの、本来の彼女は穢れなき仙女であり、私欲と言うものに乏しい。急に「我儘になれ」と言われても何をすれば良いのか分からない。
「ここで私が死ねば、張角を護る結界も消える……それをせめてもの復讐にできれば満足だと、そう思っていましたが……」
自分にはない"熱"を持つ、強欲で我儘な人界の者の眼差しが、胸を捕らえて放さない。使命ではなく、ただ己の心のままに行動するその姿は眩しくて、抗えない魅力があった。
「……貴女がそれをお望みであれば。この魂の一部を委ねましょう」
「そう来なくちゃな」
燦は懐にしまっていた稲荷符を妲己の胸に貼り付ける。桃源郷で作った最後の一枚だ。
常に放たれていた魅了の香気が、浄化の気で相殺される。自動発動ユーベルコードから一時的に切り離され「一人の女性」になった妲己を、燦は【魂喰らいの接吻】で迎える。
「んっ……」
その口づけは対象の精気と魂を奪い、自らの裡に取り込む。妲己という女性が存在した証はこれで保存され、燦の命が尽きるまで共に現世に留まる事になる。転生させる手段が見つかる時まで、その魂の一部は彼女の中で眠り続けるだろう。
「私の魂が、せめて貴女の力になれば幸いです……」
「力とかそういうの要らねえ。ただ女の子が幸せになる可能性を消したくなかっただけさ」
魂魄の一部を譲り渡したことで、妲己の存在は希薄になりつつある。蜉蝣のように儚げな微笑を浮かべる仙女に対し、燦は相変わらず溌剌とした笑みで応える。どこまでも自分の気持ちに忠実な、燦らしい返答であった。
「さあ張角殴り倒すとこ見せてやんよ♪」
自分の中に取り込んだ魂の存在をはっきりと感じながら、意気揚々と拳を振りかざす。
女の子に絶望を与えたツケはきっちり支払ってもらう。そのザマを見せつけてやれば、彼女の魂も少しは前向きになってくれるだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
泰平の為、他者と己を殺してまで捧げ尽した
その不惜身命の決意を踏み躙り辱めるとはな…
集中力を高めて常に自分の周囲を観察する
武器が飛び出てくるならその前兆として沼の水面にも変化があるはずだ
注意深く観察し、その動きを見切る
飛び出た無数の武器は軽業を使用したアクロバティックな動きで回避する
刃の峰や槍の穂先を踏みつけで足場にしたり掴んだりする曲芸のような動きであれば激しい動きの中でも次々に回避できるだろう
更に瞬間思考力を高め、妲己の動きにも注視
ナガクニを使った武器受け、あるいは飛び出てくる無数の武器その物を逆に盾として使用し、流星胡蝶剣の攻撃を防ぐ
お前が悪を為し、人を救ったのであれば
私もまた、忌わしきこの邪龍の牙で人々を救おう
UCを発動
ナガクニの封印を解き太刀へと姿を変え流星胡蝶剣を弾く
そのまま宙に浮かせたデゼス・ポアと連携、威力が強化された斬撃を妲己へと叩きつける
オブリビオンは我々人類にとっての敵だ、それは変わらない
…だが、貴女の魂の行く先に幸いがあるように、心から祈っているよ
「泰平の為、他者と己を殺してまで捧げ尽した、その不惜身命の決意を踏み躙り辱めるとはな……」
あまりに無情な仕打ちに、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は哀しげに眉をひそめる。胸に宿るのは妲己に対する憐れみと、彼女を貶めた張角達への怒りだ。
「情けは不要です……どうか私を斃し、張角めに引導を……」
満身創痍の姿で願いを口にする妲己。それを阻むために飛翔するのは【流星胡蝶剣】。
梁山泊の防衛機能も今だ鎮まってはおらず。止めを刺すまでのあと一歩が、まだ遠い。
(武器が飛び出てくるならその前兆として沼の水面にも変化があるはずだ)
キリカは集中力を高めて自分の周囲を注意深く観察する。梁山泊の各所を流れる濁流の水面が波打った瞬間、刀剣や槍など様々な武器が飛び出してくる。その動きを見切って、彼女はさっと身を翻した。
「まぁ……!」
妲己が警告を発する必要もなかった。軽業めいたアクロバティックな動きで、キリカは無数の武器を回避する。刃の峰や槍の穂先を踏みつけて足場にし、さらに別の武器を空中で掴み取ってみせるなど、その動きはまるで曲芸だ。
「問題はない。全て凌いでみせよう」
キリカは激しい動きの中でもさらに瞬間思考力を高め、妲己の動きにも注視していた。
本人の意思とは無関係に発動するユーベルコードの力は無抵抗を許さず、自律行動する胡蝶剣がひらりひらりと宙を舞いながら斬りかかってくる。
「危ない……!」
「心配は無用だ」
武林の秘宝に恥じない鋭い連続攻撃。だがキリカは飛び出てくる無数の武器そのものを逆に盾として相手の手数を減らし、短刀「ナガクニ」を鞘から抜き放つ。戦場に閃く刃の輝きが火花を散らし、二人の女の顔を照らした。
「お前が悪を為し、人を救ったのであれば。私もまた、忌わしきこの邪龍の牙で人々を救おう」
流星胡蝶剣と鍔迫り合いながら、キリカはナガクニに施された【影打・國喰】の封印を解く。この刃を鍛える際に用いられたのは、邪龍と呼ばれるまでに堕ちた悪しき竜神の骨――その力が解放される時、短刀は禍々しき太刀へと姿を変える。
「そして呪われたこの力で、お前を呪縛から解き放とう」
威力を増した邪龍刀はつかの間の解放を歓ぶように、流星胡蝶剣を彼方へ弾き飛ばす。
攻撃を凌ぎきったキリカはこの機に乗じて一気に駆けだし、妲己の元へと踏み込んだ。
「行け、デゼス・ポア」
呪いの人形「デゼス・ポア」がキリカの動きと連携し、妲己の周りの武器を切り払う。
全身から生えた錆びついた刃物を振りかざし、ふわりふわりと宙に浮かぶ様は、まるでダンスを踊っているようだ。
「キャハハハハハハ」
戦場に木霊するは無邪気な人形の哄笑。露払いも終えた今、両者の間を阻む物はない。
太刀の間合いまで辿り着いたキリカは、儚げに佇む妲己へと渾身の斬撃を叩きつけた。
「オブリビオンは我々人類にとっての敵だ、それは変わらない……だが、貴女の魂の行く先に幸いがあるように、心から祈っているよ」
邪龍の牙と化したナガクニの刃は、妖仙の肉を裂き、骨を断ち、臓腑を抉る。その感触をしかと握りしめながら、キリカは慈悲の言葉をかけた。それが意外であったのか、妲己ははっと目を丸くして――それから、血にそまったかんばせを微笑に綻ばせた。
「感謝致します……」
穢れきったこの身にも、まだ冥福を祈られる資格はあるのか。迫りくる死を感じつつも仙女の気分は安らかで、絶望と無力感に満たされていた心は穏やかな境地に達していた。
大成功
🔵🔵🔵
春日・釉乃
魅夜(f03522)と一緒に
なかなか難しい相手だね、今回
けど…魅夜にだから、最愛の吸血姫にだからこそ頼めるだまし討ちの作戦があるの
あたしに力を貸してくれるよね、魅夜♥
梁山泊内部システムは早業の盾受けでシールドスレイヴを一斉発射して適宜ガード
妲己に近づいていく中で、手を繋いだ最愛の相方へ優しさと祈りを込めて僅かでも魅了に耐えるようにして
その刹那に、先に堕ちた彼女にされるがままに━━。
だって王子様はお姫様を傷つけるんじゃなくて、護るためにいるんだから
お姫様の為になら身を捧げるのも厭わない
その信念と覚悟の元に今際でUC【世界を革命する力】を発動し、彼女に革命剣を託すの
あとは任せたよ…魅夜
へへ、ちゃんと致死量ぎりぎりの所まであたしの血を吸ってよね?
黒城・魅夜
釉乃(f00006)と共に
二人の場合、口調はステシと異なります
やっぱり嫌
いくら作戦でもあなたを傷つけるなんて
まあ二人の夜はいつもあなたをいじめているけど……
それとこれとは別の……
……もう、仕方ないわね
懐に「53枚の死神札」を忍ばせつつ
あえて敵の攻撃を受け
殺戮と欲情に身を任せるわ
対象はもちろん釉乃
ああ、誰よりも美しい、誰よりも愛おしい釉乃
その白い宝石のような肉体を
私の牙できらめく朱に染め切ってしまいたい
うふ、ふふ……ああ、なんて美味しいの
魔性の私にとって釉乃の女神の血はこれ以上ない極上の舌触り
陶酔し……昂ぶり……
そして私の内なる力は次元を超えて増大する
神魔合一──世界を革命する剣を!
無尽蔵のこの力の前には体力の減少など無意味
飛び交う無数の武器など釉乃の革命剣で叩き落すわ
釉乃の血を吸って紅く煌めくこの牙が
妲己、今、魂ごとあなたを滅ぼすの
……魅了反射の死神札の力で
何とか自我は保てたわね
おかげで致命傷にならない程度にあなたを傷つけ
吸血して狂乱する作戦も成功したけど
釉乃はもう少し自分を大切にね?
「なかなか難しい相手だね、今回」
万物を魅了する封神仙女と、それを守護する山岳武侠要塞。この堅固な備えを自分一人で打ち崩すのは困難だと、春日・釉乃(蒼薔薇のPrince・f00006)は素直に認める。
「けど……魅夜にだから、最愛の吸血姫にだからこそ頼めるだまし討ちの作戦があるの」
彼女はそう言って、傍らにいる黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)をじっと見つめる。
この二人なら可能な、この二人にしかできない作戦がある。だがそれにはリスクが伴う様子で、協力を求められた魅夜のほうは浮かない顔をしている。
「あたしに力を貸してくれるよね、魅夜♥」
「……やっぱり嫌。いくら作戦でもあなたを傷つけるなんて」
凛々しい笑みでウィンクする釉乃に、魅夜は気が乗らない様子でふるふると首を振る。
この作戦が上手くいけば確かに敵の裏をかけるだろう。だがもし力加減を誤ったら――取り返しのつかないところまで堕ちてしまう可能性もゼロではない。
「まあ二人の夜はいつもあなたをいじめているけど……それとこれとは別の……」
ごにょごにょと踏ん切りがつかない様子で口ごもる、その振る舞いは普段とは異なる、ふたりの時にだけ見せる態度。それだけ気を許している、大切な相手だという証だろう。
「へへ、ちゃんと致死量ぎりぎりの所まであたしの血を吸ってよね?」
そんなためらいや不安をみんな笑い飛ばすように、釉乃は魅夜の手を握って歩きだす。
梁山泊の奥に進めば防衛機能の攻撃を受ける。濁流から飛び出してきた無数の武器を、彼女は無線誘導端末「シールドスレイヴ」を一斉展開して受け止める。
「……もう、仕方ないわね」
こうなれば相方も覚悟を決めるしかない。城壁の如く並んだ九基の端末に護られつつ、魅夜は懐に「53枚の死神札」を忍ばせて共に行く。皮肉な事にこれから行う作戦よりも、一人で行かせる事や、一人で置いていかれる事のほうが、ずっと嫌だった。
「仲睦まじいのですね……その想いを寄す処にして、どうか惑わされないでください」
近付いてくる二人の猟兵を見つめて、妲己は祈るようにそう語りかけた。彼女の体から常にあふれ出す香気は、本人の意思に関わらず近付くものを魅了しようとする。封神台を建立するための贄として、彼女が溜め込んだ穢れの一部だ。
(あたしが我を忘れちゃいけない……大丈夫、耐えられる)
釉乃は手を繋いだ最愛の相方への優しさと祈りを込めて、僅かでも魅了に耐えるように心を強く保つ。どんなに魅力的な香りでも惑わされはしない――だって自分の心はもう、彼女に魅入られているのだから。
「ああ、誰よりも美しい、誰よりも愛おしい釉乃」
その刹那に魅夜が釉乃の肢体に腕を絡め、かき抱くように引き寄せる。その漆黒の瞳は爛々と輝き、貌には恍惚とした笑みを浮かべており、明らかに普段の彼女と様子が違う。
妲己に与えられたユーベルコードは香気だけではない。紛れこんでいた【殺生狐理精】からの攻撃に、彼女は取り憑かれてしまっていた。
「その白い宝石のような肉体を、私の牙できらめく朱に染め切ってしまいたい」
狐狸精の力で殺戮と欲情を煽られた魅夜は、湧き上がる衝動に身を任せて襲いかかる。
先に堕ちてしまった相方から牙を向けられて、しかし釉乃は抵抗も制止する事もせず、されるがままに身を委ねる――。
「うふ、ふふ……ああ、なんて美味しいの」
白くなめらかな首筋に牙を突き立て、したたる赤い雫で乾きを潤す、その甘美な味わいに酔いしれる魅夜。魔性の彼女にとって女神の生まれ変わりである釉乃の血はこれ以上ない極上の舌触りであり、一度味わえば忘れられるものではなかった。
「あぁ、そんな……!」
固く結ばれているように見えたふたりがあっけなく仲間割れを始めたのを見て、妲己は悲嘆に暮れる。しかし釉乃のほうは一切反撃をせず、血を吸われても悲鳴すら上げない。
「だって王子様はお姫様を傷つけるんじゃなくて、護るためにいるんだから」
お姫様の為になら身を捧げるのも厭わない――大量の失血で意識が朦朧とし始めても、その信念と覚悟だけは釉乃の中で揺るがなかった。愛する者に対する無上の愛と献身は、【世界を革命する力】を生み出す源となる。
「気高き魂(ココロ)の薔薇よ、今こそあたしの祈り(ネガイ)答えて!」
釉乃が最後の意志を振り絞ってユーベルコードを発動すると、胸元から燦然たる煌きがあふれ出す。それは誰かに引き抜かれるのを待っているように、胸の奥から輝いていた。
「あとは任せたよ……魅夜」
釉乃が気を失うのと同時に遠隔操作されていた端末が墜落し、盾に護られていたふたりは再び無数の武器攻撃に晒される事になる。ひとり取り残されるかたちとなった魅夜は、迫りくる刃には目もくれず、自身の腕の中で眠る王子様を見つめて――。
「神魔合一──世界を革命する剣を!」
その胸元の輝きに手を伸ばし、一息のもとに引き抜く。現れたのは一振りの美しき剣。
それは釉乃の理想が具現化された革命剣。真に心を通わせ合った相手がいなければ顕現させることのできない、祈りと愛の結晶が今、魅夜の手の中にあった。
「釉乃……あなたの祈り(ネガイ)、確かに受け取ったわ」
愛おしき者の血で唇を染め、託された革命剣を握りしめて、魅夜は凛然と立ち上がる。
釉乃から与えられた力はこの剣だけではない、衝動のままに吸った女神の血は、彼女にこの上ない陶酔と昂りをもたらすと共に、その内なる力を次元を超えて増大させていた。
「無尽蔵のこの力の前には、体力の減少など無意味」
軽く剣をひと振りするだけで、周囲を飛んでいた武器が木の葉のように叩き落される。
殺生狐狸精は攻撃のたびに憑依した相手の生命力を失わせるが、今の魅夜は失った以上の生命力が常に湧き上がっている状態だ。これぞ魔と神の融合――神魔合一の力である。
「釉乃の血を吸って紅く煌めくこの牙が、妲己、今、魂ごとあなたを滅ぼすの」
「……なんと凄まじきお力でしょう。それが貴女達の想いの強さなのですね……」
飛び交う無数の武器を無敵の革命剣で払い散らしながら、魅夜は妲己の元へ足を運ぶ。
畏れすら感じるほどの圧倒的な力と凄絶な美。今の彼女にはどんな抵抗も無意味だと、誰もが悟るだろう――もっとも妲己に最初からそのつもりは無かったが。
「穿ち抜け無情の牙、身も心も運命さえも貫き通す欲望の輝きよ」
【飾り立てよその魂、優美なる牙の傷をもって】。神魔の力を宿した牙が獲物の喉笛に突き立てられ、その肉体と魂の双方を穿ち破壊する。真っ赤な鮮血を噴水のように撒き散らしながら、妲己は「感謝します……」とのみ告げて、その場に崩れ落ちた。
「……魅了反射の死神札の力で、何とか自我は保てたわね」
相手が起き上がってこないのを確認すると、魅夜はほうと息を吐き、懐にしまっていた死神札に触れる。53通りの怨念によって魅了攻撃を反射するこのトランプが無ければ、彼女の意識は完全に衝動に呑まれ、理性なき怪物と成り果てていただろう。
「おかげで致命傷にならない程度にあなたを傷つけ、吸血して狂乱する作戦も成功したけど」
終わってみれば全て上手くいったとはいえ、一歩間違えばどうなっていたか分からない作戦だった。魅夜はもう一度ふうとため息を吐くと、この自己犠牲的な策を企てた王子様の元に戻り、倒れている彼女をそっと抱き上げる。
「釉乃はもう少し自分を大切にね?」
その声色は説教と言うには優しく、気を失ったままの彼女を見つめる目は愛おしげで。
後できっちり言い聞かせたほうが良いだろうか、などと考えながら魔性の姫は王子様と共に帰還の途につくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
似ている、と
演算が弾き出す
銀河帝国に囚われ英知を利用され、数多の流血産む戦機と兵器造った創造主
想い人を殺した私の完全破壊と、世に仇成す己の再びの死を望んだあの方と
両手に握るは電脳禁忌剣と義護剣ブリッジェシー
飛来武器を格納銃器で撃ち落とし剣で切り払い
義護剣の破魔の刃で迫る殺生狐理精を斬り祓い
己を赦せ、とは申しません
…私もそうなのですから
ですが貴女は罰を受けた身
再びの死が嘗ての贖罪であってはならないのです
香気の為、要塞から外へ出た事は無いのではありませんか
貴女は知るべきです、己の死が何を護るのか
涙拭って救うは御伽の騎士の務め
御伽の騎士になれぬのならば…
己が騎士を模倣する兵器である証左
機械竜の姿に
UC起動
仙界貫き人界へ至る巨大光刃にて
微細機械の偵察衛星全土へ放ち
今も戦い続ける兵士達
香港租界の喧騒
仙人飛び交う秘境
生まれ出る赤子
汚くも美しき封神武侠界の“今”を見せ
制御過負荷で思考演算停止
事前プログラムに従い仙女へ剣振り下ろし
一抹の慰めか
唯の無為か
その行為の結果を絡繰りは知れず
生涯その正誤に悩み続け
(……似ている)
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)の演算が弾き出したのは、眼前でうずくまる仙女への既視感。銀河帝国に囚われ英知を利用され、数多の流血を産む戦機と兵器を造った己の創造主と、あの妲己という女性は似ている。
「想い人を殺した私の完全破壊と、世に仇成す己の再びの死を望んだあの方と」
オブリビオンとして復活した創造主と対峙した、あの時の記憶は決して忘れはしない。
あの再会は、全てを忘れていた機械仕掛けの騎士が、己を再認識する大きな契機であり――自覚した罪の重さと懊悩は、今も続いている。
「己を赦せ、とは申しません……私もそうなのですから」
両手に握るは電脳禁忌剣と義護剣ブリッジェシー。普段の剣と盾のスタイルではなく、双剣の構えをもってトリテレイアは妲己に迫っていく。梁山泊はその歩みを阻むように、濁流から無数の武器を現出させるが――。
「ですが貴女は罰を受けた身。再びの死が嘗ての贖罪であってはならないのです」
彼は飛来する武器を剣で切り払い、体躯に格納された銃器で撃ち落としながら、視線は一瞬たりとも妲己から逸らさない。このまま彼女を罪悪感と無力感に溺れさせたままで、ただ死を与える事は、騎士として、また一個人としても望むところでは無かった。
「……これ以上の罰は必要ないと、そう申されますか? そんな事は……」
妲己がその身に受けた傷は既に致命に達していた。己が血に塗れた仙女はかすれた声でささやき、全てを受け容れた様子で目を瞑る。彼女に与えられたユーベルコードはそんな状態でも自動発動するらしく、トリテレイアが近付くと【殺生狐狸精】が襲ってきた。
『ギギ……――ギャッ!?』
機械の身にすら取り憑き、電子頭脳を殺戮と情欲で暴走させようとする邪な狐狸精を、トリテレイアは破魔の力を宿した義護剣で一刀のもとに斬り祓った。其方に手間を掛けている暇はないと、言外に示すような所作で。
「香気の為、要塞から外へ出た事は無いのではありませんか。貴女は知るべきです、己の死が何を護るのか」
妨害を排除して項垂れる妲己の前に立ったトリテレイアは、穏やかな声で語りかける。
同時に彼のボディは騎士を模した外観から、より攻撃的で剣呑な姿に形を変えていく。
「涙拭って救うは御伽の騎士の務め。御伽の騎士になれぬのならば……」
超克(オーバーロード)により露わとなるのは、己が騎士を模倣する兵器である証左、忌まわしき機械竜の姿。ある意味では己の罪の証明とも言える形態をさらけ出しながら、彼は電脳禁忌剣を天に掲げる。
(数多の居住可能惑星滅ぼしたテクノロジーを、ただ一人の涙拭う為だけに使うのです。滑稽な非効率の極みで、愉快な御話でしょう? 我が創造主)
機械竜の力をもって起動するのは【電子と鋼の御伽噺】。数多の惑星破壊兵器を封じた電脳禁忌剣"アレクシア"を最大駆動状態に移行させ、星すら砕く膨大な出力を破壊ではなく悲しみを拭う為に使う。壮大な浪費にして非効率の極致、故にこそ解禁されし権能。
「何を――……!!!!」
目を開いた妲己の前で、トリテレイアの掲げた剣から巨大な光刃が天へと伸びていく。
それは梁山泊から仙界を貫き、時空の壁すら越えて人界へと至ると、光の粒子のような微細機械の偵察衛星を大陸全土に放った。
「御覧下さい。汚くも美しき封神武侠界の"今"を」
偵察衛星が捉えた各地の様子は、リアルタイムでトリテレイアと妲己の元に送られる。
今も戦い続ける兵士達。香港租界の喧騒。仙人飛び交う秘境。そして生まれ出る赤子。血腥くも懸命に"今"から"未来"に向かって生きる人間の営みが、そこには映っていた。
「これが……嗚呼、これが……!!」
妲己の罪と犠牲により封神台が築かれなければ、この光景は大きく違っていただろう。
望んでいた安寧の世では無かったかもしれない。それでも、今日まで世界が在り続けたのは事実。オブリビオンとして彼女が討たれるのは、この世界を未来へと繋げるためだ。
(……ここまでですね)
妲己が食い入るように現世の光景を見つめる一方、トリテレイアの意識は限界に達していた。電脳禁忌剣の力を制御する為にかかる過負荷に耐えきれず、思考演算が停止する。
一抹の慰めか、唯の無為か。その行為の結果を絡繰りは知れず、生涯その正誤に悩み続けるだろう。兵器の身に余る御伽噺に手を伸ばした、それは代償であった。
「――…………」
思考停止した機械竜は、事前設定していたプログラムに従い、仙女へ剣を振り下ろす。
砕けていく光刃から剥き出しとなった白銀の刀身。その一撃を、妲己は避けることなく享受する――。
「――……嗚呼、良かった。私はこの為に……」
骸の海に還る刹那、絶望に染まっていた仙女の表情には、確かな安堵と喜びがあった。
猟兵達に感謝と勝利、そして愛する世界に安寧を祈りながら、妲己は消え去っていく。
――かくして梁山泊における戦いは終結し、猟兵達はまた一歩戦争の勝利へと近付く。
全ての元凶である大賢良師『張角』との対峙も、既にそう遠くはない所まで来ていた。
大成功
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