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殲神封神大戦⑭〜Temptation dancer

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑭ #封神仙女『妲己』

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#封神仙女『妲己』


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●チカラは自分の手から離れて
 山岳武侠要塞"梁山泊(りょうざんぱく)"。
 噎(む)せ返る程香る香気は、仙桃のそれを数倍にも色濃くした穢れ。
 昔一度滅びる前、封神台建築の命(めい)の為行った蛮行、"酒池肉林"により魂に結びつく香りだ。
 オブリビオン化して尚、その香りは封神仙女"妲己"に香る。
 全てのオブリビオンを封印するべく、自身を生贄に封神台建築を遂行した彼女にとってこれは悪夢。
 人々を狂わせた仙人は蠱毒(孤独)の贄となって、封印されたはずなのに。
 償えぬ罪の上塗り、誰かが嘲笑う――夢の続き。
「こうも、奥の部屋に秘されては……」
 梁山泊は、いずれの未来において宿星武侠が大乱によりて集いし時、人界に馳せ参じるべくして構えられた拠点。天魁星(てんかいせい)を含めた星の宿命に呼ばれた者が集う"山岳武侠要塞"とも別名として呼称される。
「ただ座していたとしても、私を殺すことは困難なのでしょう」
 妲己が押し込められた部屋は、広い玄室。
 部屋中に充満する香りは、あらゆる者を狂わせる"酒池肉林の宴の間"――。
 無骨な要塞の壁が身を捩るように踊り、宝石を宿したようにキラキラと輝く。
 無骨な床も、似たような状態だ。
 妲己に魅了されて、キラキラと輝く室内を設けていた。妲己の側近に付いた仙界の羽衣人達の瞳はうっとりと、狂気に充てられて正気を失っている。
 この様相は宴なり。
 羽衣人達は、この空間における"生きた華"。
 踊り狂う、愛らしきもの。
「私の意志ではないのです……」
 ユーベルコードは自動で発動し、空間を侵す。
 万物を魅了する力は、殺伐を導き国の在り方を傾ける力。
「私への危機を阻害して、自死を阻む――この悪夢」
 オブリビオン・フォーミュラーによる『異門同胞』による縛りから逃れられない。
 動かずを貫くことが出来たとしても『あらゆるオブリビオンを、自らの支配下に置くこと』の意には逆らえない。
 彼女は此処に居る。終わらぬ宴を、開き伏目がちに頼むだろう。
「誰か、私を殺してください。もう、生きていたくはないのです……」
 願う。願う――悪夢の果てへ。

●耐性持ちでも長くは保たず
「魅了効果の強い場所。そこに向かッて貰わないといけない」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)が言うところには、敵として存在する女には敵対したい意志はないのだという。
「妲己――封神武侠界における、"封神台"の立役者のようだな。敵の力に縛られて、退場したくとも出来ずに居る仙人」
 オブリビオンを封印する仕組みに一躍を買っていた女。
 そして今は、ただ要塞を堅める毒の華として扱われている。
「可哀想な女だと同情するのはアンタらの勝手だが……妲己のユーベルコードは昔、離反を恐れた者たちが自動化する仕組みを組んだもの」
 妲己が例え戦いを望まず、死を強く望んでいても力は容赦なく振るわれる。
 部屋へ踏み込んだ時、染み渡るように先制して猟兵を襲うだろう。
「自動で繰り出されるんだ。いいか、同情するのはどうにか行動する術を見出してからにしろ。それからでも遅くない」
 相手は会話が出来ない相手ではない。
 ただ、魅了の力が充満している部屋は時間を掛けていてはどんなに耐性を持っていたとしても突破されてしまうだろう。
 女はただの人ではなく武侠界の在り方を、大きく傾けた偉業を成した仙人なのだから。
「アンタらが玄室に訪れた時、そこには魅了されて踊る羽衣人達を見るだろう。それが長く留まったり、魅了された者の末路だ」
 妲己の望み通りに終わらせてやるためには工夫が必要だ。
「ただな、魅了に沈む狂気の宴は、"美しい"らしいぞ」
 言葉にするには、語彙が足りなくなるほど。
 まるで夢のような空間である。
「人が魅了されて踊り正気もない。辛いことのないその空間は誰かの求めた理想郷――"綺麗なんだろうな"」
 理想のような空間でも、いつか終わりが在るべきで。
 夢の終わりは、――いつも突然訪れるもの。
「難しい事を頼んでいるが、まあ……死にたいと望む女の願いを叶えてやッてくれよ」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は戦争に属する一章のシナリオ。

 プレイングボーナスは下記になります。
「酒池肉林の宴」の魅了に耐えつつ、妲己の先制攻撃に対処する。

●簡単な概要。
 妲己が居る場所の部屋の大きさは特に深く考えなくて大丈夫。
 しかし、部屋充満する匂いは無機物・生物・自然現象をも虜にする凶悪な魅了能力持ち。行動が魅了され、踊り子の一員にさせられてしまうやも。
 おおよそ魅了のチカラを出している妲己に、意識がいっちゃいます。
 もしも貴方が『仙界の桃の花で創り上げた宝貝(⑬)』を持っていたりするなら、耐性補正が掛かるかも。『毒手の宴(⑬)』で平和な宴を楽しんできた猟兵なら、『耐性を持っていなくても一つの行動の間だけは正気を保てる』可能性が高いです。
 上記どちらの場合でも内容はどうか、プレイングにお願いします。
 彼女のユーベルコードは自動発動型。たどり着いたときには猟兵へ先に既に発動している感じでしょうか。

●封神仙女『妲己』
 死にたいけれど、死ぬような行動を否定されて自死できない妖狐なお耳持ちの仙人。オブリビオン・フォーミュラーの「死ぬな」という言の葉に縛られてて自力では死ねません。尻尾はあるようですが、出すのは淑女の嗜み的に見せない様子です。

●その他
 OPをご確認ください。プレイングによっては、リプレイに温度差が出ることがあります。公序良俗に反する内容が強い場合は、反映が出来ずお返しする場合があります。なるべく頂いたプレイングは採用できればと思いますが、中華系のあれやそれやにはあまり詳しいとはいえない為、描写の期待に応えられない場合は内容に関係なく採用を見送らせて頂く場合があります。
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第1章 ボス戦 『封神仙女『妲己』』

POW   :    殺生狐理精(せっしょうこりせい)
対象に【殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD   :    流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)
レベル×5km/hで飛翔しながら、【武林の秘宝「流星胡蝶剣」】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ   :    傾世元禳(けいせいげんじょう)
【万物を魅了する妲己の香気】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?

宝貝『桃花琴弓』はこのときのために作り上げし物。鳴弦にて魅了を弾く結界を。
そして、憑依には私だけでなく、内部三人も抵抗する…この身体は、もはや満員なのですよ。

あなたは、私に似ている。私も、かつてはこの世界出身の母(羽衣人。死に際の技)により自死を封じられていた身ですから。
だからこそ、私はあなたを全力で殺します。それが慈悲。
桃花琴弓にて矢を射かけ、さらにはUCにてその矢を深く刺す。それが…あなただけを害して、周りの者らを傷つけぬやり方の一つですから。

あなたが望めるたった一つのことを叶えるのも、猟兵たる悪霊の仕事です。



●華に慈悲の矢を

 この場所にも、枯れぬ桃花があるのかと幻視するような心地。
 しかし此処に桃源郷は存在しない。
 濃すぎる程の匂いが間隔に魅了を訴えかけて来るために"そうかもしれない"と認知が刻一刻とズラされる。
 四人で一人の複合型悪霊、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の認知がずれるのは異常な事だ。
 内部の三人と魅了深度の"ズレさえある"。
 一人は違うと感じ、二人は正しくあると声をこぼしてくるのだ。
 その中でも"疾き者"が表面から見据え"間違っている"と認識を強める。
「ええ、確かにこれは……とても強い呪いですね」
 のほほんと言葉を転がすが、酒池肉林の宴の場では似つかわしくない。
 それもそのはずだ、ふわりふわり舞い踊る羽衣人に混ざり――寵姫の美貌を持ちながら目を潤ませた力が自動で駆ける。
 殺生狐理精としてふわりと桃色の妖狐の分霊が、義透の中に入り込もうと手を伸ばしてくる。
 あれもまた、悪霊の類。四つの魂が一つに同居する義透の中に、憑依しようと甘い甘い声を転がした。
『たくさんいるのですね?では私とも、一つになりましょう?とぉーってもいい気持ちになれますよ、ふふふ……』
『……惑わされないでください。それは、私では……!』
 同じ声色だが、頭に響く染み込んでくる声は悪意が強い。
「そうでしょうね、あなたはとてもお美しいが――今このように獲物を欲する野獣になりますまい」
 例え過去、この分霊のように人々を堕としたのだろうが――今は関係ない。
 彼女は今や自動で働く殺戮機構に逆らえない、ただ悪用される被害者だ。
「これは宝貝『桃花琴弓』。私にはすぐに染み込みませんよ」
 手に携えた弓型の琴は、破魔の霊力を編み込まれて生まれたもの。
 匂いと同じ桃の花が原点。
 陰の気配より、陽の気配を高めて発生した誘惑に強気ものだ。
 弓を番(つが)える――ではなく、弦を弾き自身の耳に訴えかける。
 ――澄んだ優しき音色が、届くでしょう?
 内部の三人の認知をまず正して、それからリィンともう一度素早く弾く。
「この響きをかき消せますか?」
『あら、あら。耳障りな音……!』
 憑依しようとする分霊の妖狐は、嫌そうな顔をする。
 魅了の力を先に溢れ出させて、あとは乗り込むだけ――そんな簡単な作業を妨害されてイヤな気分にならない殺戮を好む獣は居ない。
「雑音と言いたげですねぇ。そちらのあなたは?どうですか」
『とても、落ち着く浄化の音を奏でますね。きっと眠りを齎す弦としても十分機能するのでしょう?』
「ええ。魅了に特化した悪霊にも、この通りです」
 張り巡らせた音の結界に、悪霊の仙女がガリガリと爪を立てる。
 いいからこの壁を壊せと、口汚く言い募る。
「私からの短い警告ですが、憑依を得意とする機構なのでしょう?やめておくことです、この時間も合わせて無意味ですよ」
 ――あなたは、私に似ている。
 勿論、相対するこの悪霊の化身のことではない。
 こちらのことばかり心配そうにみている、正真正銘本物の"妲己"がだ。
「この体には入る場所(スペース)はないんですよ、内部に三人既にいるんです――そう、抵抗力は魂の数だけあるわけですね。満員なんですよ」
『そちらを一つずつ喰らいます。そうすれば幾らでも場所が開くでしょう』
「ははは、ご冗談を」
 かつてはこの世界出身の羽衣人の母を持っていた。自死を封じられていた身であるからこそ、死ぬに死ねない妲己に感じる感情は――慈悲。
『一度でも、乗り越えた事がある顔をしていらっしゃいますね……ええ、年齢分の階段を』
 本物の妲己は、暴れる悪霊の狐から視線を逸らしはしなかった。
 だが、彼女の目は義透が払い除けると確信した色を映していた――。
「仙人ほどではありませんが、だからこそ私はあなたを全力で殺しに掛かります」
 憑依させずに、獣を射る。
 それは狙い定め言霊を乗せた、桃花琴弓で放つ矢の慈悲ある一射。
『間近で番えて、それで私を射殺して――それでなんといたします?』
「いえ、それが望まれていることでしょう。悪霊ではない"あなた"自身が」
 悪霊は羽衣人のように、ふわりと浮かんで矢から実をよじり、逃げる。
 しかし、そんな矢の動きを四悪霊・『怪』(シアクリョウ・アヤ)、男はポルターガイストのように繰る。
 誘惑に立ち向かう矢を、届ける力もまた魅了されず。
 ただこの一射を願った者の胸に届かせる。
 遠隔で対象を攻撃する矢を、気合一つで加速させ――そして獣を穿った。

 すこん。

 深く深く刺し貫いて、妲己へ向かって笑ってみせる。
「これが、……あなただけを害して、周りの者らを傷つけぬやり方の一つですから」
『……お見事、です』
 こほ、こほと妲己がむせるように息を乱し続ける。穿ったのは分霊の悪霊体とは言え、力の発端は妲己の仙術――本体そのものに、攻撃された力は跳ね返る。
『とても、胸が空く思いです』
「痛いのだと、おっしゃるくらいは構わないと思いますよ?」
 神経系を浄化の矢が内側から焼いていく。
「あなたが望めるたったひとつの事を叶えましたよ――それは呪いではなく、道案内です。猟兵たる悪霊の仕事のひとつですから」
 オブリビオンを本来あるべき骸の海へ――ただその足がかりを。

成功 🔵​🔵​🔴​

レパル・リオン
うわあああーーーん(号泣)
世界平和のために悪い事してきた妲己ちゃん!世界平和のために死んじゃった妲己ちゃん!
しかも怪人(オブリビオン)になって利用されるなんて…
今度はあたしが命をかける番よ!

あたしには宴で蓄えた陽の気があるわ、さらに溢れる気合でカバー!これなら2行動くらいできる!
まず空飛ぶ剣をキャッチ!うわあああ掴んでも勝手に動くううう
だけど怪力で手を離さないわ!体が動かされる事で、自分から動かなくても全身に電撃パワーが溜まっていくわよ!
キタキタキタキターーー!!!足から放つ稲妻の槍で妲己ちゃんを貫くわ!
ポジトロン!バンカーッ!!!



●稲妻ストライク

 封神仙女"妲己"が居る部屋へたどり着き、入るやいなやうわああああーーんと響く号泣。それは、レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)。
 酒池肉林の宴で会場で、笑みを浮かべ踊る者たちとは対象的に、レパルは加減無く泣き叫んでいる。
「ちょっとちょっとぉ~~!世界平和のために悪い事してきた妲己ちゃんだね!世界平和のために死んじゃった妲己ちゃんだよね!」
 封神武侠界における有名人の話を聞いたレパルの言葉は事実をそのまま告げていた。平和にするための悪事をその手に。
 犠牲になって没した仙女は事実をありのままに頷いて応える。
『それは望まれた必要悪だったのです。私でなければ、ならなかったのだと今では思います』
 この場所に香る桃の噎せ返るほど強い魅了の力が籠もる香りも。
 浴びて人生が壊れた者も、多くいるだろう。
 事実だ。魅了で墜ち潰えた人生の数だけ、この仙女は悪に手を染めた。
 これは猟兵だって長居してはいけない臭気だ。
 レパルは狼で虎でドラゴンなキマイラ――気を反らしていてはいい匂いに人一倍充てられてしまうかもしれない。
「うわぁあん素直ぉ~~~!しかも今は怪人(オブリビオン)になって利用されてるだなんて……!」
 だばだば流れる涙は偽物なんかじゃない。
 本当に、レパルは可哀想だと思っている。
『……私の為に、鳴いてくださるのですか?』
「当然だよ!こんなのってないよ、――待ってて。今度はあたしが命をかける番よ!」
 ぐぐっと涙を拳の裏で脱ぐって、戦闘態勢を取る。

『ありがとうございます。優しい人、どうかその心を強く持って……』
 たどえどんなことがあっても。
 ふわり、と妲己の傍に浮かぶ剣。
 流星のように飛び、胡蝶のように魅了された輝きで敵を射抜き切り刻む刃が悪意に操られて舞い踊る。
 羽衣人が踊るように、剣もまた不思議な機動を描いて飛ぶのだ。
 宴である以上、見栄えは重要視されている。
 ずぶずぶとこの宴の虜になったなら、なにもかもが楽しく思えるのだから――。
「大丈夫!あたしには桃源郷で蓄えたモフに愛される陽の気があるわ!」
 さらに気合を上乗せて!ぐぐっと気合を入れて頬を叩いて準備完了。
『モフ……?』
「そう!みんなモフモフで幸せになれるんだよ!」
 ひゅんひゅんと寒々しい音を立てて剣が飛ぶ。
 みぎ、ひだりと見極めて。空飛ぶ剣を、がしっと掴んだ!
「……う、うわぁああああ掴んでも勝手に動くううう!」
 捕まえた剣が勝手に動く。剣に振り回される。
 掴まれた事を嫌がるように、ジタバタと。
 虫取り網に捕獲された蝶のように、ジタバタと。
 ――逃さないよ!
 ――まだ、あたしはあと一度は自由に行動、出来る筈だから!
 魅了に呑まれないうちに、重い(想い)を届けなければ!
『……暖かい、響きです』
「暖かいよ!気持ちも、心も全部ね!!」
 "魔法猟兵イェーガー・レパル"がそうだと言い切る。
 「悲しそうな顔をする妲己ちゃんだって、悪事以外の好きなことが好きなだけ出来たらいいのに!」
 怪力を発揮して捕まえた剣を離さない。
『そう、ですね……支配下でなければ、良かったのかもしれません』
 犠牲の骸は、骸のままオブリビオン化する事もなかったかもしれない。
 ――この自動の剣があるから、妲己ちゃんは余計に悲しそうなんだ!
 ぱちぱちぱちぱち、小さな音はやがてレパルの力に変わる。
「この剣はあたしが魅了に墜ちるまで動き続けるのかな、……好都合だよ!身体が動かされることで、こうして!全身にパワーが溢れてくるんだもの!」
 自分から動かなくても摩擦で生まれる電撃パワーは、魔法猟兵イェーガーにも馴染みがある!
 ――キタキタキターーー!!!高まる感触!
 ――この一撃こそ、夢から目覚める架け橋へ!
 ふわふわな体毛の逆立つ感触が凄まじい電熱の充填完了させたと確信を持てた。
「妲己ちゃんの願いを絶対!ぜーーったい叶えてあげるんだからァアアア!!」
 大きく叫び、そして放て。
「ポジトロン!バンカァアア――ッ!!!」
 高めた紫電一穿の超圧縮エネルギーを、離せない手ではなく足から放つ。
 稲妻の槍は、蹴りで導かれるまま妲己に突き立だった!!
 決して防御を行えないはずがないのに、妲己はその攻撃を受け止める。
『……ああ、これでまた、死に近づけたのでしょうか』
 痺れたように言葉をもつれさせながら呟く女は自身のちからで自分も魅了されて、この意識も潰えてしまえばいいのにと嘆く。
 彼女は単なる人でも妖狐でもなく、"仙女"であるからこそ簡単に死なないだけで、その身体には迸った雷撃の穴が空いていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
共闘可

なんてむごい…
ここまでしても壊れも狂いもしないのが
真の神仙である証
志と強さあればこそ際立つ無残

毒宴に参加し宝貝も懐にある
これは猟兵にしか出来ない事だ
望まぬ偽りの生に終焉を

入室即UC光蟲の槍起動
集中するだけ威力が上がるし
殺生狐理精を放たれても宝貝の加護と宴の気
そして技能での抵抗の間に
放てるし攻撃力も上がる…逆に丁度良い

目を閉じ可能な限り周囲の様相も遮断し
力を編み上げる
呼び起こし強く想起し、落ち着いて呼吸し
かつて俺が憧れ、望んだ光を手に…そして放つ!

可能であれば技能等フル活用して抵抗を続け直接攻撃も

俺でも誰でも倒しきれたなら
送還の前にそっと黙祷を
「さよなら…今度こそゆっくり休めたら良いね…」


凶月・陸井
共闘可

悪夢を見せられ、起こさせられる気持ちも
本当に救いの無い話だと思う
だからこそこの手でその悪夢を止める

桃の花で創り上げた桃華の根付は仲間達を想って作ったけど
今は妲己を止める為に、俺を支えてくれるように祈る
「…妲己を止める為に、力を貸してくれ」

玄室に入ったら即座に【戦文字「縛」】を使用
自動発動の攻撃でも多少でも動きを阻害できればいい
後は兎に角接近して命を刈取りに行く
「少しだけ我慢してくれ。すぐに、終わらせてやる」

武器受けに零距離射撃を使用して離れないように戦い続け
隙があれば、即座に急所を狙って命を刈る
「これで…終わりだ」

悪夢が終わって、眠れることを祈る
「後は俺達に任せて…安心して眠ってくれ」



●それを夢の向こうに託して

 それは妲己がいるという部屋の前。
「……相棒、聞いたか?」
「ああ」
 葛城・時人(光望護花・f35294)と凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は言葉をかわす。
 自動発動のユーベルコードが本人の意志と関係なく襲ってくるというのならお互いの意志が正常なうちに確認するに限る。
 ほのかに香るこの匂いは、それこそ毒の香。扉越しで薄まっているものの、大本から放たれるそれは、これの比ではないだろう。
「成し得た偉業が壊されて、悪夢を再現する為に無理やり起こされて――本当に救いのない話だと思う」
「酷い話だよな。救いを求めて、――殺してほしいと願っているんだそうだ」
 切実に死にたいものなどどこにいる。生きた人ではなく、一度滅びて還ってきた者から殺してくれと願われる等……。
「俺たちの全盛期でさえ、そんな酷い事はなかったっていうのに……」
 しかし、それが真の神仙である証だろう。
 ただ悪事を働いた仙女ではない。
 自己犠牲で平和を得ようとした仙人の末路にしては残酷が過ぎた。
「確かにゴーストとは違う。でも、……ここまでされても精神崩壊しないのが、凄いな」
 自己崩壊に耐えきれず、殺してくれと狂うはずだ。
 全て壊れろと、暴君に墜ちるものだ。
「志の強さがあればこそ際立ってしまうな――彼女の無残さというものは」
「だからこそ、この手で悪夢を止めてくれよう」
 此処で相棒にであったのは心強い。
 扉の向こうにある光景は、おそらく"本当の悪夢そのもの"だろうから。
「祈るなら、今が最後のチャンスだが?」
 時人は想う――毒宴に参加して、平和な宴は確かに行われた。
 敵から溢れるだろうとされる陰の妖気を少しでも打ち消さんとする願いがあった。
 別の宴にも赴いて、宝具を創造する手も貸して――それは今や懐に。
 飾り気のない素朴な木のような質感の笛『桃仙花笛』を携えて、静かに願う。
 ――これは猟兵にしか出来ないことだ。
「時間ならあるというわけか」
 陸井が考えていたことは桃源郷の景色と、それから桃華の根付のこと。
 組紐のストラップに揺れる、自分と仲間への魔を払う宝貝。
 あの場所で願った力の向きは望んだ通り。
 しかし、陸井は間逆な事を願う。
「……妲己を止める為に、力を貸してくれ」
 支えてほしいと願いをぶつけると、ふわりと浄化と破魔の白に光って。
 二人の気分を和らげる。
 此処は仙界、桃源郷からはやや遠いが――理想郷であるべき場所。
「さあ、行こうか」
「望まぬ偽りの生に終焉を」
 互いに拳をぶつけ、いざ挑む。

 玄室に入った瞬間、同時に発動するユーベルコード。
「今は遠くても、力の記憶は俺の中に」
 光蟲の槍(コウチュウノヤリ)を手元に集め始める。
 室内がどうあろうと、鎮座するものが妲己その人。
『宴に武器を持って訪れるなんて、勇敢な方なのですね?』
 ずおお、と彼女から何かが離れ時人へ迫る。
 白面が狐、そんな印象を受けるがよおく覗き込んでいては思うつぼだ。
『……無謀を携えてやってきたのですか?此処は狂気の宴の最中……』
 嘆く女と、自動で放たれた殺生狐理精の動きはまるで違う。
 時人の持つ笛に阻まれるように、一度弾かれた狐の残影姿を確かに見た。
 宴に参加してきた回数分、その身に打ち消す力を纏ってきた時人に触れられない悪意の塊。
 フゥウウウと威嚇するように唸り、もう一度と繰り返すも弾かれる。
「――」
 僅かな効果を引き伸ばす継続能力で、破魔と浄化の力で敵の攻撃を弾くその間。
 落ち着くようにと息を整えて、大きく吐く。
 ――覚悟なら、出来てる。
『身を委ねて暴れたって良いのですよ。私が力を与えます』
 時人が聞いている声は、遠く座る妲己のものではない。
 甘く囁く悪意の塊が囁くのだ、ただ身を委ねて堕ちよと。
「お断りだよ」
 目を閉じて、更に集中を深める。可能な限り周囲の様相からも自分を遮断して。力を編み上げ続け、穿つべき瞬間まで力を編み上げ――高める。
 此処には相棒がいて、……彼がその瞬間を創り切り開くだろうから。
「ああ。すぐに終わらせるとも。この部屋は危険だ。だから……そこから動くな」
 戦文字"縛”(イクサモジ・シバリ)を奔らせる。
【縛】の文字を書き起こし、攻撃に転じて飛ばした。
 ピタリ、と陸井の傍に静止した剣の切っ先は喉笛を狙っている。
 ひら、ひらと流星胡蝶剣の名に相応しい優雅な幻想的な動きで、縛りを逃げ出さんとあがくのだ。

『先制攻撃を見事縫い止めて見せたのは懸命な判断だったことでしょう』
 ……しかし、と狐な耳を持つ女は首を振る。
 ひとりでに飛翔する剣を文字で縛れたとして、対一刀の斬撃を防いだだけだ。ぷるぷると揺れる剣はしばらくすれば逃げるだろう。
「なあに、多少でも阻害できればと思っていた」
 だからこれでいい、と陸井は良い、羽衣人達が踊る横をすり抜けて。
 動きを制限した剣に追いかけられるように妲己へ迫る。
 目的は、はじめから"妲己"ひとりのみ。
 どんな力で挑まれようと、陸井は構わなかったのだ――願いはただ、彼女の悪夢よ此処で終われとそれだけで。
「少しだけ我慢してくれ。すぐに、終わらせてやる」
 追いかけてくる胡蝶剣を短刀銃『護身』で反らす。
「護りに趣が置かれた無骨な短針銃で、逸らされる程剣に殺しの力はないらしい」
 妲己ではなく、剣を煽り――狙いを一人に釘付ける。
 狂わされた羽衣人に等当たらせてたまるものか。
 それはもう、彼の意地だっただろう。
「全く、零距離で射撃しても壊せぬ硬さか……これもまた、"護"を制御するものか?」
 聞いた所で女は答えまいが。
『……どうでしょうか、私は護られているようには思いません』
 よく見れば女の体は怪我だらけ。他の猟兵たちもまた、彼女の終わりに協力しているらしい。
 だがまだ、眠る事はできていないらしい。
『この"宴が続くように"新しい堕落者を連れ込みたいだけでしょう……終わりが、訪れる事を願うばかりです』
「それもまた願いか。……ではこれで、終わりだ」
 相棒の攻撃が、そろそろピークに達すると――長い付き合いがある陸井には分かっていた。引きつけていた分、攻撃が真っ直ぐ疾走れる道のりを――確かに創り上げたところだ。

 ――強く、強く想起し、落ち着いて。
 呼吸を乱すな。ただ落ち着けて、ただ思い描き続けろ。
「これは、かつて俺が憧れ、望んだ光――!!」
 時人が行える最大攻撃。限界まで高めた光の槍が飛んでいく、殺生狐理精を貫いて霧散させた。
 そのまま真っすぐ飛んでいく光の槍は女の腹を貫き止まる。
 壁に縫い付けて、座することさえままならぬ体制へ磔る。
『……なっ!?』
「そこからなら、座って見えない宴の様子もみえるんじゃないかな。もっと、笑った方が良いと思うよ」
「同感だ。内容がどうあれ宴は宴。楽しまずして過ごすものではない」
 後は俺たちに任せて、眠るべき刻を待つといい。
 "継続ダメージが続く光柱"が魅了されて効力を失っても、きっとこの女はまだ眠らない。なにもかもが、妲己という女に魅了されて"楽しく踊って魅せている"のだから意識在るうちは、女の前に宴が在ることだろう。
「安心して眠れるよう、こちらも最善を尽くしたつもりだ」
「さようならは此処で言うべきかな。もし眠れたなら、今度こそゆっくり休めたら良いね……」
 二人の優しさ籠もる言葉に、妲己はうっすら涙を零す。
『そうですね。そうであることを願っています……』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
宝具作りも沢山したし
毒の宴も沢山行ったけど…時間が無いから絞るね

★杖には仙人さんがその場で結んでくれた桃花のリボン
僕自身が元々持つ【誘惑】も耐性代わりになればと思いつつ
【高速詠唱】で風魔法と組み合わせた【オーラ防御】
自分の周囲に風のバリアを張り、一時的でも香りを遮断

死にたいのに死ねないのは辛いから
それが貴方の望みなら、終わりにするね

いざという時は翼の【空中戦】で回避できるよう警戒
足場に★花園展開
さぁ…踊って

妲己さんの心の安寧を【祈る】【歌唱】と共に【指定UC】
色香は花の香りで誤魔化して
操る花弁の斬撃と共に
【多重詠唱】による風魔法で花園の花弁も舞上げ
刃として上乗せする【全力魔法】

貴方に届くように


蓮池・大輝
☆アドリブ・改変歓迎。WIZ

「おや、もふもふな宴(⑬)から逃げ出した羊さんを追いかけていたら、いつの間にかこんなところに……」

ううっ……なんだか凄く美しくて……酷く狂った場所ですね?

(そういえば敵のオブリビオンにそんなのがいると聞いたな……と思い出しつつ)

「これはのんびりしている場合ではなさそうです。」

__華はいつか散るもの。しかし散るからこそまた咲くもの。

「ならばそんな華を散らす風となってみせましょう。」
UC発動。周りの羽衣人たちは傷つけないよううまく遠ざけつつ、妲己に対して猛烈な旋風を放つ。

「これが貴方を救う道となるのなら、僕は躊躇いません。さあ、骸の海にお還り。」



●匂いを払う風が吹き抜ける

「宝具づくりもたくさんしたよ!」
 桃源郷で桃花の匂いを、髪に翼に衣服に吸わせてきた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は晴れやかに宣言した。
 色んな所に澄んだ桃の花の花びらが、付いている。
 場における自動発動ユーベルコードの悪意を、妖気をじわじわと和らげる。
 杖"Staff of Maria"には盲目な仙人がその場で結んでくれた、織り込まれたばかりの桃花のリボン。
 もともと在ったリボンを邪魔しないように、細めのリボンは揺れていた。
 願われた祈りを編み込まれた、日からまだ日は遠くない。
「だからね、僕をすぐに堕とせるだなんて思わないでね……!」
 他にも身に纏う宝貝はあるけれど、どれもが強い魅了の前では加護の力を発揮することだろう。
『……ええ。どうか気を確かに持って』
 封神仙女は、澪の傍を浄化する力の正体に気がついた事だろう。
 幾重にも重なった願い。幾重にも高められた"陽"の気配。
『油断は足を掬います。私のこれは、いつ貴方を蝕むものか……』
 澪が元々持つ膨大な誘惑の力が、呑み込めるものなら飲むと良い。
 万物を魅了する妲己の香気であろうと。麗しい寵姫のひとりであろうとも。
 別の性質とはいえ、衝突する似て非なる歌う寵姫の力を喰らって堕とす事は容易ではないはずだ。
「一時的にでも、香りを遮断できればと思っていてね」
 想定以上に浄化されて澄んだ空気を吸えているような……。
 しかし、いつ突破されてもおかしくないのは事実。
 高速詠唱によって滑らかに、素早く風の魔法を編み込んだオーラの障壁(バリア)を展開し、遮る。
「死にたいのに死ねないのは辛いよね……」
『……正気を失っていく皆様を、見ていることしか出来ないこの歯がゆさをご理解くださるのですか?』
 必要悪だったとはいえ、それは過去に起こした蛮行の再現に近い。
 妲己がそれを起こしたのは変えがたい事実。
 今の妲己が、それを再び起こしたいかと言えば――澪は顔を見てすぐ分かる。
 否であると。傷だらけの身体で、泣きはらした頬を染める女が、この光景を望んで居ないと。
「……それが貴方の望みなら、終わりにするね」

 めええと響き渡るのんきな声が幾つか。
 妲己と澪は呆気にとられる。
 この場にそんな音があっただろうか。
 踊り子と、踊り狂う壁や床。
 おかしな声は一体どこから――。
 どーんと、扉を推してたくさんの生き物が入場してきたような気配。
「……おや?」
 しばし、目をパチパチと。
 蓮池・大輝(のんびり屋の羊飼い(?)・f35542)はいつの間にやら迷い込んでいた。
 此処は桃源郷ではないような。どちらかと言えば山岳武侠要塞で、草むらや木々の温かみなどそんな要素はどこにもない。
 梁山泊。その名を聞いても、ピンと来ないことだろう。
「いつの間にかこんなところに……ああ、いつの間にやら大冒険、ですね」
 もふもふな宴から羊たちがどどどっと移動を始めたものだから、大輝はその後をおいかけてやってきた。
 なんと、自力でこの地にたどり付いた稀な猟兵である。
 桃源郷から大移動の間も楽しかったのだろう、ちゃあんといつもどおりの姿に戻った今も、表情は穏やかだ。
「……此処はまさか、室内桃源郷なのでは?」
 仙界の中にこの場所は存在する筈。そういう事もあるのではないか?
「美しい者が踊っていますね、……ううっ、なんだか凄く酷く狂った場所のような気がします」
 あまり直視したり、考えていたら自分も狂った一員にされてしまうだろう。
 どっぷりと狂う、濃すぎる桃花の香りに意識が引き込まれそうになる。
 ――ああ、確かに。
 ――聞きましたね、敵のオブリビオンに"凶悪な魅了の使い手"が居るのだと……。
「これは流石に、のんびりと過ごしている場合では、無さそうです」
『のんびりと、平和な宴をご所望なら……どうかこのまま去るのです』
 去った方が貴方のためだと、仙女妲己は言う。
 とても優しく、蜂蜜のようにとろける声で。
『でも、でも。居たいと願うなら、ずっと居たら良いでしょう……死ぬまで、必ず看取りますから』
 傾世元禳(けいせいげんじょう)に散布、拡大される香りが染み込んでくる。
 華のような香り。甘い甘い、妲己の言うままに成りたくなる気持ち。
 魅了を形にしたような仙女の言葉は、どうにも抗いがたい――。
「それは嬉しいようで、怖い言葉ですね……幻の花は綺麗に見えます。この風景はあなたが作り出したものでしょう」
 室内のはずなのにそよ風が吹いてくる。
 突風注意報の前兆を、起こしているのは大輝だ。
『ええ。私がいつか夢見た、理想郷……素敵でしょう、綺麗でしょう?』
「ですが……枯れない華(命)も、いつか散るものと良いましょう?散るからこそまた咲くもの」
 ひゅううと吹き込む風に、香気が載っている。
 踊れ狂え、堕ちろ、堕ちろと手を引いてくる――。
「風はどこにでも吹き込みます。華を散らす風となって、見せましょう」
 ぶわああ、と吹き込む風は猛烈な旋風。
 抗いながら室内に入り込んできた大輝を中心に荒れに荒れて渦巻く!
 風に煽られて羽衣人達を、風のマフラーでふわふわと逃がしながら、風を一つに束ねた一撃を妲己に見舞う!
「これが貴方を救う道となるのなら、僕は躊躇なく貴方を狙いますよ」
 さあ、骸の海の潮騒が聞こえたりしませんか。
「僕が羊を数えて差し上げましょうか?」
『それも……いいですね、眠るときには、必要なものです』
 ふふふ、と笑う妲己は、本当に攻撃の姿勢を見せなかった。
 大輝の旋風の流れを利用して、浮かび上がった者がひとり。その姿をみつけていてなお、何もいわない。澪は翼を広げて空中に身を投じた澪は足場に魔力で作った花園を広げ、舞台を整え歌うように声を転がす。
「さあ……もっと踊って」
 祈る力は数々の宴に参加してきた事で力を大いに増していた。
 キラキラと煌く白色輝きを纏って、澪は歌いながら解き放つ――歌声で繰る無数の花弁の刃を。
 花園から誘幻の楽園へ。
 色香を華の香りで誤魔化して、吹き抜ける風のように一直線に向かわせる。
 地面沿いに飛んでいく花弁の刃は一面に美しい花畑を咲かせて進む。
 澪は多重に詠唱し、風魔法で広がりゆく花園の花弁を舞い上げて、刃を上乗せして妲己の上から大雨のように強襲。
 女は逃げる気などなかった。大輝の旋風に呑まれながら、澪の刃も浴びたのだ。
 風が鋭利さをガンガン上げて、仙女へ著しいダメージを与えるだろう。
 殺してくれるなら――その身に祈りを受けて死への道を辿ろうとする。
 ずたずたに切り裂かれ、女の肌は血が浮かぶ。
 叫ぶことすら忘れるほど、歌声と花の匂いに覆われて――伏せた瞳が空いた時、何を見るだろう。
「貴方に、きっと届くと願ってる――」
 攻撃の嵐を受けながら死の一番近くで――この宴が終わるべきを、祈りながら。
「……羊が45匹、羊が46匹。あ、今いっぺんに飛んでいたから49匹でした」
 大輝がのんびりと本当に羊の数を数えていた事にだって、妲己は感謝することだろう。危ない場所へわざわざ凶悪な力に耐えて訪れたことを。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
宝具もなければ宴にも足を運ばなかった
兆しの鈴の音色から【浄化】を試みるが魅了の完全無効は見込めん

最悪【空中浮遊】する翼と剣握る片手があればいい
身体が勝手に動き出せばその度自傷、先制攻撃から【覚悟】と【狂気耐性】で正気の一片を死守し短剣【誘導弾】に兆しの鈴をつけ【投擲】、敵に命中次第【生命力吸収】とUC【心暴き唄う音叉剣】

綺麗な夢など見てる場合か
お前に煽られるまま、黒騎士ブラックスミスが逢いに来たぞ
妲己、お前は俺に何を望む

死を望む妲己の思念を受け己を【鼓舞】し敵のUCを妲己への殺意に固執する【呪詛】として自身に転用

宝具も陽の気配もない
俺は、お前の希死念慮こそを背負う!

【捨て身の一撃】を繰り出す!



●憐れと言わずなんと言う

 特殊な加護を、得るばかりの猟兵ばかりではない。
 異変を聞きつけて、訪れた者だって存在する。
「確かにこれは……」
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)の身体に感じる異変。普段と条件の異なる場における、特殊な効果だろう。
「……魅了、だったか」
 勝手に手が、動き出す。
 片手が魅了に堕ちた。だがまだ、――ぴたり、と足が止まる。
 独り歩きする鎧の足が、独りでに止まった。
『はい……勝手に止まり、勝手に動く。それは間違いなく…………』
 女の申し訳無さそうな声がする。
『お気をつけを、止まったならば貴方を侵す狐が襲いましょう』
 白く光る輝きが女から別れて、ルパートの元に一直線に駆けてくる。
 二足は見えるが後方は、大きな尾と人まとまりの脚……狐だ、殺戮を好む狂気の狐狸精。
 自動発動し、ルパートを狂わせんと舌舐めずりする殺戮の獣。
 ――兆しの鈴が在る方は、動く……。
 白銀の鈴が揺れる側は、浄化の力が働いているのだろう。
 範囲こそ広くはないが、自由が効いた。
 ――鈴が付いた剣を握る手は動く。
 ――ああ、確かに動くのだな。
「完全無効化は確かに難しい、剣を握る片手以外が使い物にならなくなるのも時間の問題だろう」
 しかし鎧の背には、マントを既に返事させた翼がある。
 耐えられる僅かな間だけ加速を促す青の燃える両翼があれば、妲己に手が本当に届くかもしれない。
 ルパートを飛び越えんとすっ飛んできた獣が覆いかぶさるように憑依する――がたりと、異常な動きを鎧に齎して。
 あれは仙術と妖力の間に編まれし力の権化。
 それが宿ったならば――魅了で勝手に動いた剣を保たぬ手が、ルパートの首をガッと締める。
 魅了から殺戮へ情報が書き換えられたのだろう。
 憑依してきた獣が望むのは自己崩壊。自分の手で壊れろと、ルパートの青の鉛を勝手に燃やして猛るのだ。
「中に人間が居たのなら、それで窮地は完成していたな」
 本体が操られたとして、構わず自傷して止めればいいだけだ。
 首を掴んだ手に構わずげんこつを食らわせて怯ませる。
『へえ~、耐えるのですねェ~狂い壊れて踊れば宜しいものォ~』
 不況な音質を持った狂った声。それこそが憑依した存在の声だろう。
 妲己の声などではない。
「当方にも、狂わされぬと強く燃やした覚悟がある」
 魅了はともかく、狂気に対する耐性も。
 これが狂気を呪う"呪術"に相当するのなら、豪と燃やし続ける覚悟で多少は反逆出来よう。
「……しかし、相応に時間がないとは感じるな……」
『どうか、どうかすぐにこの部屋からでるのです。そうすれば……』
「そういうわけにも、いくまい……!」
 正気の一片を死守し、ブラックスミスの短剣が一振りの鈴を鳴らし、力強く真っ直ぐ投げる。
 妲己が死にたがり、逃げずであることは周囲に飛び散る血痕がら想像は安い。
「長く生きた過去を持つのだろう。犠牲に成った偉業と重ねた悪行があるのだろう」
 ――当方のしらない、封神武侠界の裏側で活躍した仙女に告げる。
「鈴は清く鳴り響くだろう」
 ぐさりと突き立ってすぐに――澄んだ音を高らかに響かせて宴の会場で鳴り響く。
 刺さった剣は変形し、妲己本人を蝕む邪剣と変じて直接浄化の音を鳴り響かせて魅了の力を和らげる!
「此処で綺麗な夢など見ている場合か」
 動かずならばそれで良い。殺戮狐理精が憑依しているせいで、相応の痛みが身体を襲った事だろう。
 ルパート自身にもそれは、疲れという形で出ている。
 投擲しただけで、膝を折るほど疲れを感じる等ありえないのだが……。
「お前に煽られるまま、黒騎士ブラックスミスが逢いに来たぞ。妲己、お前は俺に何を望む」
 身体を引きずるように進もうかとも黒騎士は考えたが、翼を広げ空中浮遊するように妲己の前にやってきた。
 仙女よ、求める声に返答を。
『私は……』
『やはり願うのです。終わらせてほしい、と……私がこの場より、動き出し被害が拡大する、その前に』
 ためらいがちの本物の声と、死を望む妲己の思念を確かに聞いた。
「了解した。真実それが願うことであると」
 己を鼓舞し、望まれた力をもう一度此処に転用しよう。
 ――動け、動け!
「すまない。当方もその言葉は言わねばならない」
 騎士として、誇りの掛ける蛮行かもしれない。
『……いいえ。自動で憑依したのですから、相手を選ばぬ自動機構がいけないのです』
『おきになさず。優しい騎士様』
 宝具も陰の気配に打ち勝つ陽の気配もその身にはなく。
 燃え続ける炎が、太陽が如き熱量を持って温度を上げる。
「俺は、お前の希死念慮こそ背負う!」
 心暴き唄う音叉剣(クロシェットシングコシエンツァ)で同時に吸収していた生命力。その力を大いに活用して、短剣を握り炎を伝えて業と女を燃やす!
 これが捨て身の一撃。普段より熱く劫火の熱で夢から醒めよ。
 終わりの海に、戻るべきだと――終わりかけの身体に、しかと教えるが良い!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソフィア・エーデルシュタイン
わたくし、愛することにかけては自信がありますの
魅了の香気などなくたって、貴方が愛しくてたまりませんわ!
どうぞゆるりとお待ちくださいましね、妲己さん
愛しい者の願いを叶える
当たり前のことを、わたくしは努めてまいりますわ

わたくし、それらしい耐性は何も持ちませんのよ
ですので、素直に妲己さんの傍に侍るつもりで近づきますわ
飛び交う刃は、出来る限り躱したく思いますけれど…
わたくしが傷つくことを厭わずとも、妲己さんは、悲しむでしょう?

舞い手の一員となろうとも、わたくしは終言で煌きを呼びますわ
ほら、この玄室に相応しく、美しい
どうぞ満たされて
貴方の為だけの燐灰石
優しい誘惑が呼ぶ多幸感を、どうぞ味わってくださいまし



●凶悪な魅了とただ包み込む慈愛

「どうして……ひとりで、泣いていらっしゃるの?」
 酒池肉林の宴の場において、似つかわしくない音鼻を啜る音を聞いて。
 ソフィア・エーデルシュタイン(煌珠・f14358)は純粋に問う。
『こんなにも、無残な女に会いに来てくださる方がいるなんて……』
 焼き焦がされ、風穴を開けられて。
 体中傷だらけに成りながら、女は未だ死なぬまま。
 呼吸こそ荒い封神仙女"妲己"は嘘等口に出さない。
 言葉の選びによって、傾国の姫と呼ばれた事が在ったかもしれない。
 悪女と呼ばれた悪知恵のある狐だと、人々に指さされたことさえあるかもしれない。それらは皆、妲己より自動で発動する力が魅了に溺れさせて"終了させた"。
 妲己に口答えしてきたものは桃花の園を物理的に穢して、穢して穢して――。それは袖を涙で濡らしたくもなる。自分が行ってきた罪の清算は蠱毒送りの贄としてで終わった筈。
 悪意を増したこの宴を、自分の手で終わらせる事ができないなんて。
 歯がゆいとも。訪れた者が皆狂う、この光景は。
「わたくし、愛することにかけては自信がありますの」
 踊る羽衣人たちの間をすり抜けて、声を掛け続ける。
「魅了の香気などなくたって、貴方が愛しくてたまりませんわ!」
『……えっ』
「どうぞ衣服を正して、ゆるりと宴を楽しんでお待ちくださいましね」
 ニコリと笑うクリスタアンは、壁や天井などよりもキラキラと輝いてみえた。

 ふわり。
 蝶の飾りが付いた胡蝶剣が音もなく妲己の傍で持ち上がり、不穏な刃の煌めきを讃えて動き出す。
 速度を上げて空中を飛ぶ秘宝の名に相応しい輝きをソフィアにも見せつける。
 その数は二つ、交差して、輝いて。
 切り刻まんとする様が、自動でなくては何なのか。
「わたくし、それらしい耐性は何も持ちませんのよ」
 ソフィアは視線は剣を追う。蝶のように緩やかに飛びながら、手を出したら砕かれてしまいそう。
『でも、貴方は……』
 正気で対応しているソフィアが、何故魅了に落ちないのか妲己は不思議で堪らない。
 どんなに耐性持ちでも。
 どんなに妖気に対して浄化を強めて接しても。
 妲己の香気は誰の防衛も突破し、陥落させてきた。
 例え強い王や仙人であっても。
 例え強い武将、勇士であっても。
「邪な思いなど、わたくし持ってはいませんの」
 素直に愛する一人として、侍るつもりで慈愛の心を見せつける。
 邪な力がこの身体を狂わせても、想う心は渡さない。
 語りながら、刃の到来を避けて。
 ふわり、と儚く脆い自身の身体で踊るように間に滑り込む。
 今の動作をソフィアは意識していない。
 ――傷つく事は厭わないのですが……。
 彼女が悲しそうな顔をするのが、想像できた。
 どこか身体が羽衣人たちの踊りに合わせて動いただけのようにも思える。彼女の宴の、踊り手のひとりとして溶け込めただろうか?
『どうして……?』
「わたくしは、最初に申し上げましたのよ?いつまでも、幸せに――愛すると」
 ユーベルコード、終言(メデタシメデタシ)。
 踊りての一人として、言葉の花を咲かせよう。
 掲げた手のひらが、燐灰石の欠片をキラキラと蒔いていたとして誰もそれに気に留めまい。
 この場における正気の女を除いては。
『本気で、おっしゃっているのです、ね……』
「ふふ。ほら、この玄室に相応しく、美しい貴方?」
 どうぞ、満たされて。
 剣と踊る、貴方の為だけの燐灰石。
 強い強い、貴方の香気の中で優しい誘惑で呼ぶの。
『……ふふ、言葉の上手い方ですね』
「そうでしょう?だってだって、愛しいのだもの!」
 貴方もどうぞ、わたくしと笑って。
 抵抗力は無いけれど。それでもソフィアは、手をのばす。
 いつしか妲己がソフィアに手を伸ばしていた。
『初めてですよ、貴方のような人は』
「貴方の力も貴方だもの。愛していたはずなのよ?」
 でも、わたくし以上に多幸感を一気に与えたクリスタリアンはいないのではないかしら。
 傷だらけのあなた。終わりたいあなた。
 もういいの、いっぱいいっぱい満たされて。
「眠そうな貴方が、安心して眠れるように」
 いつのまにか剣はぽとりと落ちていて。
 ソフィアの胸に仙女を抱きとめて。優しく頭をなでて。仔を可愛がる母のように、ソフィアは慈愛を込めて。
「おやすみなさい、愛しい人。気を張らなくて、もういいの」

『……そのようですね』
 仙女は脱力して目を閉じる。
 これまでの大怪我で、一層疲れていた女が目を閉じて無防備を晒せば――身体は限界を知らせて崩れ出す。はらはらと、花弁のように女は散リ征く。枯れぬ桃花の実ばかり食べていた仙女は、枯れぬ樹と同じようには至れなかった。
 桃花となって散っていく女を送る宴は、やはり妲己のための宴だったのだろう。
 人を魅了してやまない女が、別の女の誘惑にあえて乗って。終わらぬ日々に、殺してほしいと願ってよかったと、優しい涙をこぼした。

『おやすみなさい』
 訪れた強い者たちへ。
 踊りに踊る狂ったものたちへ。
 静かに呟いて、宴はパタリと終演を迎えた――。
 暫くは強い香りが部屋に遺るだろう。

 その匂いも愛おしそうに微笑む女がいた。
 それすらも、愛おしいのだと言わんばかりの優しい表情で――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月20日


挿絵イラスト