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殲神封神大戦⑧〜堕ちるとこまで堕ちればいい

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑧ #コンキスタドール『編笠』

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#コンキスタドール『編笠』


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 昼も夜もわからぬ暗闇の中、九龍城の地下では煙草と阿片の混ざり合った毒が籠もり漂う。
 時折、新たな緩慢自殺志願者があけるドアが揺るがすも、所詮外もざらつき湿気った空気が漂うだけだ。
 だだっ広い筈の一室には、様々な博打が立っている。
 ブラックジャック、ポーカーといった類いのカードゲーム。
 軋み歪んだルーレットは明らかに目が狂いそうだが、誰も気にしちゃァいない。
 隅っこでは欠けた麻雀牌がかき混ぜられる音が耳障りだ。

 カン……、と、9に入ったルーレットのタマを前にディーラーの女が棒を飲まされたように立ち尽くす。
「……ぃやったぁ! ボロ儲けだぜぇ!」
 一点賭けの男は肉屋の主人。抵当に入れた店は取り戻せたが目の下のクマを見るに相当に阿片にヤられてる。手元が狂って肉斬り包丁で手首を落とすのも時間の問題。
 ディーラーの女は黒ずくめの男に背後から束ねた髪をつかまれる。
「痛い! アタシはちゃんとやったんだ……なのにこのポンコツが狂って止まりやがった」
「言い訳不要。おい、奥に一人連れて行くぞ」
 命じられた配下が博徒を蹴飛ばすように走り奥へ。
「奥だけは、奥だけはいやぁああああああ!」
「なぁに女なら潰さずとも“イロイロ”使える。男じゃなくて良かったなぁ」
 ヒキガエルを潰したような女の悲鳴もここじゃあ日常茶飯事。明日は我が身と囁きながら、どいつもこいつも絶対に自分は大丈夫と慢心している。
 胴元以外は結局誰も儲からない、緩慢に何れは殺される――違法賭場なんざそんなもんだ。
「三不管とはよく言ったものだね。無政府地帯の無法地帯」
 多数の敗者と一握りの勝者、そして甘い汁だけを啜る胴元の香港マフィアがひしめき合う通路を、笠を被った女が過ぎていく。
 粘つく床敷きが足裏に張り付くにぢにぢとした足音も喧喧囂囂に潰される。
 この女が香港盟主だとはまさかまさか誰も思いやしないように、なにもかもが混沌と紛れ混む。
「ここ九龍城砦では誰もが自由」
 編笠は住民達を支配しない。だが、彼らがどうなっても知ったこっちゃない。
「刹那的で自棄でそのくせ都合良く一攫千金を狙うこんな輩に“正しき”心を持つ猟兵がなれるわけがない、そうだろう?」
 傘越しの紅瞳は、ここ九龍城の「霊気」を纏わぬ者を常に探し鋭く昏く輝いている。


 手元に置いたガラスの灰皿に比良坂・彷(冥酊・f32708)は吸いきった煙草を投げ捨てた。
 燻る白を指さして、一博徒である男はこう口にする。
「こんな吸い殻すら、すぐによってたかって拾われる。それぐらい堕ちぶれ爛れた場所だよ」
 編笠は九龍城地下の賭場にて猟兵達を待ち構えている。
「上階からのいろんなモンが流れ込んできて常に噎せるような臭いがするけど、咳き込んじゃァ駄目だよ。すぐに猟兵だってわかっちまうからね」
 そうすれば編笠は即座に猟兵への攻撃を仕掛けてくる。
「ま、勝てねぇよ」
 それを防ぐにはどうするか?
「賭場で遊べばいいさ。軽慮浅謀に命をポイッて捨てんの。楽しいよー?」
 開いたシャツの首元を掴み彷はせせら笑う。
「いつこれが飛ぶかってワクワクしながら賭けてくの。莫迦だよねぇ、そんなとこに行かなきゃ怖い思いしなくていいのにさ」
 編笠の目をくらますには九龍城住民の「霊気」を纏う必要あり、その方法をグリモア猟兵は一言の元に告げる。

 ――莫迦になれ。

「簡単でしょ?」
 編笠から先手を奪えれば勝ちの目が随分あがる。それは、この賭場の遊戯なんかよりずっとずっと。
 戦闘になったら編笠は平気で住民を盾にして巻き込んで、まぁ相当数が無事じゃ済まない。
 何しろ“私は君達を支配しないが、君達がどうなっても知ったこっちゃない”ってわけだから!
 だが予め逃がしたりなんてもっての他! そういうのも呑み込んだ上で赴いて欲しい。
 正義を成すよりは、手を汚すという表現が相応しい仕事だ。
「ま、どうせこんなとこにいる奴は長くはねぇよ。阿片で相当にヤられてるか、何れは負けて死ぬし。ど? 少しは心が軽くなった?」
 なんて嘯いて、グリモア猟兵は九龍城賭場への道を開く。

 ――さァ、堕落と汚泥と涙と無駄死にと、スリルだけはたんまりとある碌でなしの吹きだまりへ、いってらっしゃい。


一縷野望
やったー九龍城だぁああ!
アングラ賭博ネタ大好き一縷野です、オープニングを見ていただきありがとうございます

オープニング公開時点から受け付けています
締め切りはプレイング投稿ができなくなるまで

>採用人数
再送なしで書ける5人+オーバーロードの方(戦争期間内に完結できる人数)
5人の枠まではオーバーロードありなしで採用率は変わりません

>プレイングボーナス
【「九龍の霊気」を身に着け、敵の先制攻撃ユーベルコードをかわす】
具体的には、九龍城内部の賭場で住民らしく遊んでください。詳細はオープニング参照願います

>描写について
「賭場で遊ぶシーン」「編笠との戦闘シーン」が描写されますが、文字数はプレイングの比率で判断します
オーバーロードなしの方はどちらかに絞っていただくの推奨です

>同行について
【チーム名】を記載してください。2名様まででお願いします

>賭場のゲーム
・トランプのブラックジャック、ポーカー
・ルーレット
・麻雀

勝ち負けはプレイングに書いていただいても良いですし、お任せもOK
お任せ希望の方は冒頭に0~99の内好きな数字を一つ指定してください
こちらでダイスロールして【賭博の結果】に反映します。なお、シナリオの成否には一切影響しませんのでお気軽にどうぞ
お任せの方は、賭博ゲームに対する性格などあればアドリブしやすくて助かります

>酒、煙草、阿片
未成年の方は絶対ダメ、流します
運命の糸症候群の方は「ステシに記載された年齢」で判定します(実際は成人済みは通りません)

心地よい汚泥塗れのザラザラ世界にようこそ
プレイングお待ちしています
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第1章 ボス戦 『『編笠』in九龍』

POW   :    編笠暗殺術
自身と武装を【編笠から落ちる影】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[編笠から落ちる影]に触れた敵からは【平衡感覚】を奪う。
SPD   :    九龍乱戦遊戯
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【代用武器とした、九龍城砦の全ての人・物品】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ   :    ドラゴンズ・ドリーム
【煙管の煙から具現化した「紫煙龍」】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【袋小路への迷い込み】を誘発する効果」を付与する。

イラスト:稲咲

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雨倉・桜木
アドリブ連携大歓迎、賭博優先
■賭博
ふふ、正しい、ねぇ。本当に?旅をしてればイロイロあるよ。

ねぇ、そのお姉さんぼくに頂戴。

配下の懐に賭博で稼いだお金を突っ込んでにっこり。無事貰えたら頭を撫でてあげよう、良かったね。

肉屋の主人の側に座ってカード遊びでも誘おうか。此れはイカサマと心理戦。

いずれ辿る彼の行く末を【恐怖を与える】よう語りながら、手札をすり換えていく。頃合になったら、手札を広げて、さぁどうぞ。

今度は君の叫びを聞かせておくれ。

■戦闘
UCで銃弾を【折り曲げ】空中爆発させて命中させないよう立ち回る。多少の破片は容赦なく其処らの住人を盾に。

愛猫への報酬は…あ、久々に生肉(住人)食べるかい?




『嫌ぁ! 離して、離してよぉ! 誰か助けてぇ!』
 左右から羽交い締めにされた女は髪を振り乱し泣き喚く。無関心を装い賭博に興じる奴らはせいぜい内心イイ気味だと嘲るぐらいだ。
「ねぇ」
 ふらりと進路に割り入ったのは、桜花のように華やかな見目の雨倉・桜木(花残華・f35324)である。
 身の上を問われる前に、浅黒く華奢な指が配下の懐に札束をねじ込んだ。
「そのお姉さんぼくに頂戴」
 折れたり血や垢で汚れた札ばかり、つまりこの賭場で荒稼ぎしたものだ。こんな鶏ガラ女で大金を回収出来るなら越したことはない。
『ほらよ、物好きめ、好きにしろ』
 放り捨てられた女をすかさず抱き留め頭をぽふりと撫でた。
「良かったね。もう自由だよ」
『ねぇ、もっと稼げる下手な場を教えるから、紹介料ちょうだいよ』
 礼もなく媚びる女へ桜木は種銭を残して全部与える。
「紹介はいらないよ。必ず勝てる勝負なんて興味ないしね」
 手順に従い金を儲けても面白くもなんともない。
『アハハ、アタシが勝ったってもう返さないからね!』
 自由を得たのにまた縛られに行く、その神経は理解出来ぬと肩を竦めた桜木は次なる場を見いだし歩を進めた。

 猟兵を求めそぞろ歩く編笠は、不穏にざわつく一角にて足を止めた。
『ひぃッ、おりだ!』
「いいのかい? その掛け金を失ってしまったら、ぼくの語る通りの末路が待っているよ?」
 ――豊かな贅肉は、獣のように解体されて九龍城の住民のお腹を一瞬だけ満たすでしょう。
 ――三人の子を産んだ妻は“玄人”向けの色街へ、娘らは一度だけの春を買いたたかれます。そう、一度の掛けより安い額で。
『娘だけはやめちくれぇえ……!』
 緩急つけた語りに合わせ鷲づかみの指で脅しつける。
 肉屋もギャラリーも息を詰め桜木の“譚”惹きつけられていて、反対の手がカードをすり替えたのに気づきもしない。
「ほら、そんなに怯えるから、3とAを間違えてしまうんだ」
『ふぅん……中々に面白いことをするね』
 イカサマ全てを目にした編笠は、好奇に煽られ顔をつっこんだ。
 ――その頬に、4本の爪痕が刻まれた。
『な……ッ』
 急ぎ構えた小銃の弾丸は全て曲げ潰されてギャラリーの元へ雨よ霰と降り注ぐ。さァ阿鼻叫喚のはじまりだ!
「……随分と叫びが増えてしまったようだ」
『えげつないねぇ、本当に猟兵かい?』
 呆れ声に反し苛烈な弾丸、紫煙龍を纏うた編笠の銃撃は躊躇わずに肉屋の分厚い盾で凌ぐ。
「旅をしてればイロイロあるよ」
 “正しい”を軽々と笑い飛ばし撥を再び三味線へと滑らせれば、住民の血肉で口を汚した一角猫キュウダイが編笠へと躍りかかる!

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンティ・シェア
この陰惨な空気感は、血生臭い方がまだ健全そうです
予め僕の真の姿を模した黒熊スタイルに化けておいて
その辺でそれっぽい羽織でも調達しましょう

賭博をさほど知らぬ身としてはルーレットが簡単そうです
適当な数字を適当に選んで当たり外れに一喜一憂しましょうか
興味のない顔はあまりよくないんでしょう?
編笠とやらの気配を探るくらいはしますけど

仕掛けてきたら、とりあえず躱す努力はします
多少の傷は仕方がないと割り切って
編笠の姿を捉えられたら告白を発動
とりあえず足を止めましょう
武器を持つならその腕も
胸部よりは首筋の方が裂きやすい
誰を盾にしようと関係ないですよ
僕が死なない程度に
僕の視界に居る者を、道連れにしていきますので




 長くしなやかな黒髪を垂らしたエンティ・シェア(欠片・f00526)――アリエルは、伏し目の視界に刻まれる光景に短い嘆息を垂れた。
 悲鳴と怒号を縫うように哄笑が散りばめられた賭場は、血なまぐさい殺し合いの方が健全とすら思えてくる。
 常に感情が冷めている『僕』にはこの場は余りに脂っこくて、佇むだけで胸焼けがする。
 古着屋で買い求めた右側が派手に解れた羽織が下方から引かれた。
『丁度あいたんだ、どうだい?』
 軋むように不安定なルーレットを指さすディーラーに、アリエルの口元がカチリと音立てるように笑みに切り替わった。
「難しくはないですか?」
『数を数えられるならだぁれでも遊べる簡単な遊びさ』
「それは楽しそうですね」
 興味のない顔はよろしくないという、せめて嬉々と見えるよう素早く座った。

 汚れ仕事までの大切な過程だと割り切れば、アリエルの容は驚く程滑らかに変化を繰り返す。
「! ああ、やっと当たりましたよ。良かった、手持ちがなくなるところでした」
『1点駆けのド素人め……なぁんてね? 初々しくて結構結構!』
 笠越し、丸いサングラスが呵々とした笑いにつられ揺れた、編笠だ。
「……」
 人混みの中でも隠しきれぬ尊大な気配は疾うに察知済み――故に、直後にはアリエルは“血に塗れて”いた。
『あぁ? こんなとこで自殺かい、猟兵』
 いつの間にかルーレットの銀弾をつまみアリエルへと向け弾き飛ばそうとしていた編笠はほんの一瞬戸惑う。
 その一瞬が命取りだ。
 ぱくりと右手首の肉が解れるように避けたではないか! それはアリエルが漆黒の肉斬り包丁めいた刃を滑らせた場所と、全く同じ場所だ。
『くッ、まったく珍妙な術を使うね……』
 血止めと腕を口元に宛がった編笠は、立ち上がり様に賭けに興じていた客をアリエルの方へと蹴飛ばした。
 ヒキガエルのつぶれるような悲鳴と血肉をまき散らしミサイルと化した男らも一様に右手首が裂けている。
 手首が折れ突き出た骨にも怯むことはない。アリエルは傷口に黒刃を宛がうと更に荒く引いた。
 すると、ぼぎり、と、男の手は骨ごと断たれ落ちた。高なる悲鳴に合わせて身をよじり、アリエルは難なく男を躱した。
『これでおしまいだよ』
 千切れかけの右手首を押さえるアリエルへ編笠は銃口を定める。
「……胸部より、首筋」
 アリエルは真っ直ぐに編笠だけを見据え、刃を急所の首筋に宛がい叩き斬る。
『畜生……この気狂いめ! 業腹だが一旦離脱だよ』
 畏れ知らずの自傷行為、つきあい続けたら命が幾らあっても足りやしない! 編笠は飛び退くように後ずさると人混みに紛れ逃走した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

司・千尋
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連携、アドリブ可

伝説の鴨ネギとは
俺の事だぜ!
さぁて、どれで遊ぼうかな


・麻雀
雰囲気だけの超初心者
ポーカーフェイスだけは上手い
振り込んでもアガっても余裕な態度


・戦闘
装備してる武器も使い
範囲内を『翠色冷光』で攻撃
回避されても弾道をある程度操作して追尾させる
視聴嗅覚で感知できないなら広範囲爆撃でド派手にいこうか

編笠に盾にされた住民は可能な限り避ける
住民に当たったら
まぁ悪いが成仏してくれ


敵の攻撃は結界術と細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
オーラ防御を鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
割れてもすぐ次を展開
回避や防御、『翠色冷光』で迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用
可能なら住民への攻撃も鳥威で防ぐ




 くるくるまわるルーレットに目を奪われたり、札が叩きつけられる音に惹かれたり……そんな鴨ネギムーブ露わな司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)には方々から誘いが掛かる。
「さぁて、どれで遊ぼうかな」
 ――じゃらじゃらじゃら!
 雀牌のかき混ぜられる音が一番そそったようで。
「大三元の千尋たぁ俺の事だぜ!」
 前回の依頼であがった役満を嬉々と口にして洗牌に混ざった。

『兄ちゃん、ロンじゃい!』
 ぱったりと倒れる牌は索子一色。なんで出すんだと他家の視線が突き刺さる。
「……ッ熱くなっちゃいけないな」
 編笠を倒すのが目的だからな、は心で言うだけ、負け惜しみじゃあないぞ?
 しかしさっきからどうにも惜しい。こちとらピンズがキチキチッと揃っていたのに!
『すっかり染め物屋だねぇ、そりゃあ他所に別のが集まるさ』
 ――実際は“す”の発声の時点で、編笠は眩い燐光に覆われてかき消されていたわけだが。
『素で麻雀を楽しんでたろ』
 蒼色燐光に負けじと光る紅眼と銃身の黄金も、笠の影に飲まれて消失していく。
「ああ、麻雀は楽しいからな」
 一方の千尋はそのまま動かずに手元に戻った烏喙と月烏を受け止める。その指には操り糸が既に掛かっていた。
(「宵、暁――頼む。派手にやってくれ」)
 蒼燐光は2つに別れ、ネズミ花火めいた俊敏さで床を奔った。
『おい、なんだよ?!』
 タップダンスで避ける踏む住民達が奇妙にぐらついたかと思うと、床に倒れていく。平衡感覚を奪われたらしい。
(「生きててくれよ」)
 くんっと糸の通りに仰け反り止まった暁は、漆黒に向かい飛び込んでいった。宵は両手を広げて周辺を灼きに掛かっている。
 その大体の場所から、不意に銃弾が射出される。
「させない」
 千尋が擲った鳥威が弾道上の住民の前で弾を止めた。しかしまだ住民はいる、迷う暇はない……双睛で灼き堕とした。
『本当に甘ちゃんだね』
 編笠の頬には最初についた4本疵。その下に新しく繊細な筋疵が寄り添っている、暁の仕業だ。
『……この生き馬の目を抜く香港租界では、生きづらかろうよ』
 ――だから死ね。
 直後、千尋のこめかみが熱く灼ける。昏倒を覚悟した千尋は、繊細な飾り音が混ざるのに気づいた。
「……ッ! 宵?! 暁!」
 操り糸の先、己が寄せたか来てくれたのか、対の人形が銃身に絡みつき必死に銃身をずらしたではないか!
「……く、命拾いはしたが
 掠めただけでも相当に深手で意識が飛びそうだ。
 千尋は力を振り絞り宵と暁を手元に戻すと再びの攻撃態勢に移行する、が、既に編笠は姿を消していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レテイシャ・マグナカルタ
賭博メインで大負け

運悪く上から迷い込んだ世間知らずの娘って設定でソコソコの金と服装で現れる
一通り遊ぶがドレもカモにされて持金は直ぐに尽き、店に借金して負け続ける(ワザとの部分もあるが、そもそもそこまで強くない)
最終的に熱中し過ぎて身を乗り出してデカい胸で手牌倒しペナの借金で限度達して裏に連れて行かれる(嫌がる演技はする)

女なら売り飛ばす前の約得と店員が味見しようと迫ってくる
胸に手を伸ばしてくるので触られる直前に本気を出し、魔力で強化されている怪力で拘束を破壊し殴りつけて、うめき声も上げさせず一撃で昏倒させる

他の捕まってる奴(猿轡されて声は出せない)を助ける気はないが『偶然』鍵が、時間かければ届くかどうかの所に『落ちる』事はあるかもな
……救う気は無いが、可能性くらいあっていいだろ
後は自身の命を燃やして足掻け

店の裏からなら死角になる筈
戦いが始まったら隙を突いて飛び出す

周りを利用すんのはお前さんだけの十八番じゃねぇぜ!
牌は飛び道具
カードは刃物
ルーレットは蹴って盾代わり
店員は棍棒代わりだぜ




 先ほど、猟兵仲間に助けられて、すんでの所で『奥の部屋』行きを免れた女がいる。
『さぁ! こっから成り上がるよぉ!』
 札束目当ての若い男を左右に侍らせカードゲームに興じる様に、レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)は危うく冷めた本音を晒しかけてしまう。
(「結局は元の木阿弥、また『奥の部屋』送りになるんだろうな」)
 そして次は救いの手は伸びない。そもそもが胴元の黒服を含めてコンキスタドール編笠のオモチャだ、それまで生きていられるかどうか。
『そこのお嬢さん、ここは初めてかい?』
 黒服の猫なで声に振り返ったレテイシャは、この九龍城には些かそぐわぬコートに身を包んでいる。
「……はい。お父様にここで待っているようにと言われたんですが」
 いつもと違った殊勝な演技で装うは世間知らずの娘。
『そうかいそうかい。ならお父さんがくるまで遊んで待ってりゃいい』
「! 麻雀なら私知ってるわ」
『そりゃいい、ついといで』
 ――この女を見つけたのは俺だ、だから俺が一番に味見する権利がある、そう心でほくそ笑む黒服である。

「まぁ、すごいわ! これって役満よね?!」
『よ! 大三元のレテイシャちゃーん!!』
 捨てられた中であがり上機嫌のレテイシャ。
「くっそー!」
 なんて悔しがる男は仕込みだ。
「私って麻雀の才能あるのね!」
 上機嫌で鼻歌交じりなお嬢様に対し、黒服は他の3人へ目配せする。飴の時間は終わりだ。
 ――。
『ロン! 30000よこしな』
「!!」
 大きい役ばかり狙うレテイシャはただのカモだ。そもそも麻雀は知ってるがそこまで強くはない。
「……ごめんなさい。もうお金がないんです」
『なんだい、じゃあこれをもらうぜ』
 対面からレテイシャの胸ぐらをむんずとつかみコートをひっぺはがす。
「きゃあ!」
 薄手のブラウスごしに豪快に揺れる胸が男達の目を釘付けにした。
「いやぁ返してぇ!」
『勝って取り替えしゃあいいんだよ』
『大三元一発でおつりがくるぜ?』
「ううぅ、わかったわ。お金も取り返さないとパパに叱られちゃう……」
 なんて言いつつ、本音はこうだ。
(「他で遊ばなくてもスッちまえそうだ、麻雀以外も遊びたかったがこういう流れじゃあ仕方ないか」)
 さて、ゲーム再開である。
「……あ」
 ぱたり。
 気を張って牌を取ろうとしたら胸に押されて手元の牌が倒れてしまった。
 男達は倒れた牌よりご立派な胸を食い入るように見ていた、なので背後の黒服がボソリと声をあげた。
『反則だ! ゲームが続けられぬミスは万死に値する』
「自分の牌を見せてしまっただけだわ」
『ここ九龍城の麻雀ルールはそうなんだ、よ!』
「いたぁい!」
 ぐいっと鮮やかな金髪を握り無理矢理立たせて抱き寄せる。
『この女は“奥”に連れて行く。払えねぇんじゃあ仕方ねぇからな』
 悲鳴を上げばたつくレテイシャを引きずり去って行く背中へ、卓の男はヒソヒソ。
『あー、味見する気満々だな。てか潰しちまうんじゃねえか』
『あんなべっぴんを売らずに殺っちまったらコトだぞ?』
『だから勝ち分が口止め料なんだろ』

 奥の間に引きずり混まれたとたん、レテイシャは堪えきれずに咳き込んだ。
 男はここで解体されるのだろう、血と臓物の臭いが染みついている。孤児院育ち故、お綺麗じゃないものには耐性があるが、それにしたって酷い。
 奥からはうめき声が響く、誰かが捕まっているようだ。
『さぁて……』
 ドンッと比較的綺麗な寝床に突き飛ばされる。倒れ込んだレテイシャを前に男は乱暴な手つきでネクタイを毟り上着ごとシャツを脱いだ。
『ちゃあんと売り物になるか確認しとかねぇとなああ……』
「いや、いやぁ……」
 胸を隠し後ずさるもすぐ壁にぶちあたる。
『具合が良かったら、手と足をもいでうっぱらって達磨でずーーーっと使ってやるよ。だいじょうぶだぁ、阿片で痛みなんてふっとんぢまわぁ!』

『――はは、そりゃあイイ趣味だね』

『……?!』
 いつの間にか侵入していた編笠が、医薬品置き場の棚の上に腰掛けくつくつと喉を鳴らしていたではないか!
『どうぞ、続けてくれていいよ』
 煙草をつまみ指さす、紫煙越しの黒服はぽかんと口をあいているも、すぐに目の前の“二山のご馳走”を思い出して手を伸ばす。
 はしり。
 レテイシャは男の手首を掴むと渾身の力でもって編笠へ向けて投げ飛ばした。
「……はぁあぁッ!」
『な?!』
 飛び道具:黒服。
 壁に頭をめり込ませた編笠の額から一筋の血が流れ出した。
『……お前、猟兵だな?』
「今頃気づいても遅い!」
 男が落とした鍵をひっつかみ奥へと投げつける。面倒見るのはここまで、後は自身の命を燃やして足掻け!
 そうして、黒服や囚われの者から引き離すように、わざと姿を見せて裏口から飛び出していく。
「周りを利用すんのはお前さんだけの十八番じゃねぇぜ!」
 賭場に戻り麻雀牌を握りこむと編笠へと投げつけた。
『ははははー! 戦い方は同類じゃないか、乱暴でいいねぇ、そぉれ!』
 人が連なるルーレット台を編笠が引っ掴み投げつけてくる。それを蹴飛ばしひっくり返す。その度に下敷きになる博徒達の悲鳴が煩い――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ポエトリィ・テクスフィールド
●心情
まぁ、無関係な人に被害がってのに心が痛まないっていうと嘘になるけど……
いうて、私の身内でもないしね。
とりあえずやれることやってこーか。
お酒?いただくよ、美味しいお酒はいいよねぇ!
阿片?阿片は……まぁ、元手が増えたら考えるかなぁ。

昔、ヘマこいてとっつかまった時の事を思い出しつつ。

●麻雀に参加
賭場に入る前にUCにて自己強化
なんとなくの流れで適当にツモったり鳴いたり
いい手牌の時とかはびみょーそうな演技したり
たまに相手を箱にしちゃうこともあるかも
(運だけで引くタイプ)
「あー、おにーさん、それだす?だすのね?やったー!ローン!」

●戦闘
基本的には戦闘は苦手なので、適当な物陰から[衝撃波]で他の人の攻撃とかのタイミングを見ながらちまちま編笠に攻撃を加える。
あー……近くで巻き込んじゃいそうな人がいたら気休め程度に[高速詠唱][結界術]にて保護を。
まぁ、破られたらそん時はそん時で。

「まぁ、自由ってそういうものじゃしね!」

(共闘・アドリブ大歓迎です)




 わんっと耳を打つ喧噪。その中にいる者達は、それぞれナニカに酔っている。
 ある者は勝利、
 ある者は敗北、
 ある者は酒、
 ある者は阿片、
 またある者は――なんて、数え上げるだけで日が変わってしまう、と、ポエトリィ・テクスフィールド(Recordare Atratus・f01100)は藍色の扇子を閉じた。
 カチリというくっきりとした音は余りに明瞭で、まるで酔えないこの女を示すよう。
(「雰囲気には酔いたいんだけどねぇ」)
 しかしまぁ、みんな愉しそうだが瞳の淀み具合ときたら! 色々あった奴隷時代によく顔をつきあわせていた奴らと瓜二つだ。どいつもこいつも死相が浮かんでいる。
 これから起こる猟兵とオブリビオンの戦いに、一体幾人が命を散らすのか――考えると少し後ろめたい気持ちにはなる。
(「いうて、私の身内でもないしね」)
 ただそう割り切れぬ小娘でもない。年相応に酸いも甘いもかみ分けては来たしと、皺もなく若々しく見える女は麻雀卓に降り立つのである。

「お酒? いただくよ、美味しいお酒はいいよねぇ!」
『なら、8000点よこせ』
 冗談口だが目は真剣だ。万点棒と引き替えにした酒は工業用の据えた質の悪い味がした。つまり美味しくはない。
『ねぇちゃん、これもあるぜ?』
 掲げたパイプ、るりるりと何かを丸める手つきの男へは肩をすくめた。
「阿片? 阿片は……まぁ、元手が増えたら考えるかなぁ」
 肩に落ちる黒髪を指にくるりと巻き付けて、卓を囲む奴らを確認する。
 阿片でヤられた虚ろな目つき、牌を混ぜる手は震えおぼつかない。骸骨のように落ちくぼんだ目元にドブ色まざった顔色は、占い師じゃなくても死相をが出てると言うだろう。
「私が親だね」
 ダイスをつまみ対面の山に景気よくぶつけた。その刹那、ポエトリィの躰が水膜を通したかの如くぼやけたのだが、誰も認知すること叶わない。
「――……うわ」
 山を開いたポエトリィは、うんざりと呻きを漏らす。ため息交じりにつまんだ牌を捨てる手つきは力ない。
『ははん! 俺ほどになると、視線と表情で大体の手がわかっちまうんだぜぇ?』
 ならば何故必要牌の東を捨てるのか。それは“運悪く”乾いた指で牌を取り落としたからだ。
『……ッと、別の牌だ戻すぞ』
「ポーン! もう捨てたよね?」
 ちなみにこれで東混一トイトイテンパイ、色々ひどい。
 捨て牌が二段目にさしかかる頃に、すとんっと引いた牌を手元に晒す。
「ツモっちゃったから三暗刻もついて、みんなからお酒一杯分ずつね? あー……点棒の方がいい」
 だってお酒は不味いから。

「あー、おにーさん、それだす? だすのね? やったー! ローン!」
「カン! 暗カンだしドラめくってね……わ、のっちゃった! あれ、嶺上でツモ!」
「ダブロンあり? ありでいいよねー? はい、同じ待ちでローン!」

 年齢不詳の女は愉しそうにバンバンあがる。男達は“たまたま選択をミスったり”“リーチをしたら一発で当たり牌をつかんだり”と、不運が続く。まるで流れが全て彼女に来ているようだ。
(「ユーベルコードで流し込んだもんね、ごめんね、おにーさんたち」)
 上機嫌で2人の箱を空っぽにした所で、少し離れた所で耳をつんざく破砕音が場内を揺らした。
(「あ、編笠だ……相手は猟兵、だよね……」)
 編笠がルーレット台をぶん投げれば、金髪の娘が蹴りで叩き落とす。その度にやたらと豊満な胸が揺れるのが遠目にもわかる。
(「私は編笠とお揃いだって? 大きなお世話」)
 2人はそこいら中のゲームを壊し、どんどんこちらへと押し寄せてくる!
 ポエトリィは素早く席を立ち人垣に紛れ込んだ。戦闘はどうにも苦手、だから編笠との直接対決は避けたいところ。
「そろそろ届くかな……」
 半開きにした扇子で扇ぐ素振りで、己を囲む水の魔力を招き蓄える。
『逃げ回るのが上手いな! 今度こそ外さないよ』
 畳を持ち上げ喜色満面で振り回す紅色チャイナレディ、周辺の人間がオモチャみたいに吹き飛ばされる中に紛れてポエトリィは地を蹴った。
 かちん!
 その最中、扇子で小気味よい鳴らせば、編笠の肩口の生地が破れ皮膚ごと剥がれて吹き飛んだ。
『……つッ』
 かん、と、直後に血染めのカードが落ちるのを編笠は目で追い腑に落ちる。
『まるで2人から攻撃されたような深手だ……参ったね』
 一方、人垣の中で倒れたフリをするポエトリィは安堵する。仲間に合わせて放った衝撃波は気取られずに済んだようだ。
 そのやり口で何度か衝撃波を編笠に喰らわせる。
『ひぃぃ!』
 一方、ようやく逃げる同卓の男達。阿片でお釈迦の運動能力じゃあ足は水の中のように重たく緩慢だ。あれじゃあ巻き込まれてお陀仏が関の山。
「――」
 扇子越しの詠唱で蜘蛛の巣めいた不可視の結界が男らを覆う。ルーレットの銀弾が不自然に逸れたのに編笠は血塗れの唾を吐き捨てる。
『やっぱりか! ネズミがもう1人いるね?』
「……三十六計逃げるに如かず」
 身をかがめたポエトリィは背を丸めて脱兎の如く撤退――その後の住民は自助努力頑張れと内心呟きながら。
「まぁ、自由ってそういうものじゃしね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
なんて悪趣味な場所かしら!
弱い者を食い物に鬼畜どもが肥え太るこの空気
不思議の国とは食べ方が違うけれどよく似てる
ああ、だからこそ――とっても素敵
だって、復讐するに相応しいってことだもの!

今のメアリはただのアリス
怖いものも世間も知らない
迷い込んだ少女の【演技】
敢えて少し浮くよう小奇麗な服装に身を包み
上階からちょっと悪い遊びをしに来ただけの
場違いな「カモ」の振りをする

遊ぶはトランプでポーカーを
説明はけっこう、ルールぐらい知ってるわ
最初のうちは一喜一憂はしゃいで見せて
だけれどやがて、賭けに溺れて、勝ちに驕って
喰いに来た、と気付いた時にはもう遅い
いいえ、演じるアリスは気付きもしない
もう一回、次は勝てるんだからと喚き散らして
無様に負けてお終い!

さあ、本番はここからね
いったいどんな食べ方をされてしまうの?
そんな哀れなアリスの無様な姿
きっと、九龍城の住民に相応しい筈だから

そうして敵に爪牙が届く時が来たならば
残念だけれど【雌伏の時】はもうお終い
オーバーロードで真の姿に
半獣半人の人狼と化して敵に喰らいつく!




 食べ物の殻や人の欠片で粘つく床敷きが、歩く度ヒールの踵に張り付く。丁々発止のやり合いをする博徒はどちらも弱者。彼らを食い物に肥え太るのは胴元のみ。
(「なんて悪趣味な場所かしら!」)
 雪色うさぎを思わせる真っ白なコートに身を包んだメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)は、陶然とした心地で身が震えるのを必死に隠す。
 別世界から呼びつけ散々に恐怖を与えてから食べるか、埃ほどの勝利を与えてから奈落に突き落とし食べるか――不思議の国と九龍奈落の賭場は食事の作法こそ違えど根本はよく似ている。
 汚らしい場では存在からたち上る“白”は目を惹くはずだ。
 おどおどとした素振りで、だがそれぞれのゲームを見回す瞳の好奇は隠さずに、メアリーは鬼畜からの誘いを待つ。
『フヒッ、お嬢さん、ここは初めてかぁい? 遊び方を教えてやるぜぇ?』
 早速躙り寄ってきた肥えた黒服は、不思議の国のオークを思わせる。
「説明はけっこう、ルールぐらい知ってるわ」
 メアリーが……いや、今はアリスだ、アリスが視線を向けたのはポーカー卓。
『じゃあ俺がゲームに入れるよう口を効いてやるぜ』
 気が強く金も持っているお嬢さん、なんて美味しそうなカモだ! 心の声の欲望丸出し。なんて純粋な畜生だ。
 卓につく前にメアリは今一度賭場全体を視界に収める。やはりやはり、この空気はとっても素敵。心置きなく、復讐するに相応しいってことだもの!

「アリスはベットするわ、さて、ついてこれるかしら?」
 アリスの置いた札に対面の男が鼻白んだ。親子ほど年の違う男が冷や汗をかくのが可笑しくって!
(「まだまだつり上げるわ、だってフルハウスですもの!」)
『くっそ、舐めやがって! のるぞ』
 有り金叩いた男はスリーカード。敗者は喰われるのみ、舌なめずりの黒服に連れ去られていった。
「フフッ、あんな半端な役で勝負するなんて莫迦みたい。まだブタの方がマシよね? ねーえ、全然役が出来ないみなさま?」
 ディーラーがシャッフルする間、アリスは勝負からおり続ける面々へのからかいも忘れない。
『さっきは負けたって凹んでたじゃねえの』
「そりゃあ勝負ですもの……ずっと勝ち続けるのなんてインチキよ」
 クスンと鼻を鳴らし札を開いた。7と9なんてカス札だが、同じハートだしストレートの目もある。
『ほおら姉ちゃん、さっきの儲け分をよこしなぁ?』
 さすがにオリを宣言しようとしたら“奥”に敗者を届けて戻ってきた黒服が芋虫みたいな指をアリスの肩に置いた。
『ここで勝ったら俺がご祝儀出してやらぁ! その代わり場代はこっから5倍だぜ』
「なによそれっ。いいわ、アリスは勝負するわよ。場代がそんなに高いんならおりてられないもの」
 嗚呼、なんということでしょうか?! あの日の不思議の国のように九龍城賭場が喰らいに来たのを、哀れなアリスは気づきもしないのです――。
 場のカードはAK3A……スートすら合わず、先ほど莫迦にした奴に全ての金が奪われる。
「……ッ、まだよ。もう一回、次は勝てるんだから!」
 喉枯らす叫びと共に探るポケットはスッカラカン。青ざめた少女はぐぇとアヒルのような悲鳴を漏らした。
『ヒッヒッヒー、美味しそうなお嬢ちゃんだぁ。おぉ涙がしょっぺえぜ』
 黒服に首を羽交い締めにされて、臭い息の舌で頬を上に下にと舐められる。恥辱と息がつまる苦しさで手足をばたつかせる哀れで惨めな白うさぎ。
「い、やぁ……はな、じ……ッでぇ」
 錦上添花なる容は鼻水と涎と涙で穢れ今や見る影もなし。誠に下層の九龍城の住民に相応しい。
『こりゃあまた上玉がハメられたもんだね』
 面白い見世物と人が集まるところに彼奴は編笠は現れる。
 キセルを揺らしぷかりと煙を吐いて、住民に馴染むように振る舞うも、獰猛で俊英なる紅眼はどうしたって隠せやしない。

「――………………あは」
 さよならアリス、こきげんようメアリ。
 残念だけれど、雌伏の時はもうお終い。

 たれみみうさぎのように袖をひらつかせるコートが虚空を舞った。
 続けて、オークめいた黒服が人垣をぶち抜き後方へと吹っ飛ぶ。彼は食べてあげられない、だってアリスを食べる怪物じゃなかったから。でも首の骨が折れちゃったかも? だったらごめんなさい?
『あん?』
 直後、胡乱げに片目を眇めた編笠の胸元が爪の形にこそがれた。そしてなんと! あのコンキスタドールが人形のようにぱったりと倒れてしまったではないか!
 身をかがめ着地したメアリは、膨れあがった獣の爪にこびりついた血肉に舌を這わせる。
 頭頂には猛々しい三角の耳、年相応の胸の膨らみと対照的な蠱惑の臀部からは狼の尻尾がふさりと生えていた。
『……ッ、最初から全力とは生き急ぐものだ』
「そうよ、とっても九龍城の住民らしいでしょう?」
 すんなり伸びたメアリの蹴爪は盾にされたボロ屑女の胸に突き刺さった。血花を頬に受けた獣のメアリは女の心臓ごと足をさしぬき跳躍するも、編笠は逃げおおせてしまったようだ。
「まさか編笠、あなたがアリスだなんて!」
 ――だって、脱兎はアリスの役回りだもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
『00』
まっ、生きてる内に味わうなら、天国の方がイイですよね~。
天獄ですもの。夢見るは自由。
…どうせ墜ちるはおんなじ地獄。
ソレなら尚更、ねぇ?

僕?
負けず嫌いの傲岸不遜。得意科目は札とイカサマ。
ま、後者は嗜み程度。アソぶなら、身一つの方がオモシロいですからね♪

酔えぬ酒気を傍らに。札を片手で畳んでは拡げ。
艶美に笑んでは相手を惑わす。
ほら、ポーカーフェイスって何も、無表情だけじゃあないでしょう?
それに…愉しいなら哂わなきゃあ!

持ち札、相手の捨て札。
心音。表情。僅かな筋の動きから汗の一滴に至る迄…
視て、見切り。経験してきた“戦”は、何も血肉の世界だけじゃない。
けれど…はてさて、何を賭けよか?
財?身包み?中身?
それとも…一夜の退廃的な極楽浄土?
何一つ渡す気は無いですけどねー、なんて内心舌を出す。
だって今の僕、莫迦ですもーん。

編笠越しにも判るイイオンナ。
ねぇ、其処往く紅の公?
ナンパ宜しく声掛け、叶うなら腰に手を回し抱き寄せて。
貴女ならどれを切る?と札を開き水を向ける。

…ま、僕が何れ斬るのは貴女ですが




 地べたを這いずる人生からの逆転、夢に夢見るのも自由だ。
(「まっ、生きてる内に味わうなら、天国の方がイイですよね~」)
 悠然とした足取りで過ぎるクロト・ラトキエ(TTX・f00472)の耳には常に丁々発止のやりとりで溢れてる。
 彼らは命が堕ちた先の未来からは目を逸らしている。けれど、てんごく~天獄~しか堕ちる先がないのなら、泡沫浮かれてもバチは当たるまい。

 ところでこの男、賭け事には非常に偏った運を持つようで……。
 まず辿り着いたのは、ブラック・ジャックの卓。
(「どうにも向いてなさそうですねぇ、今宵の運には」)
 使い込まれた紙の札は、しわくちゃだったり折れてたり。3ゲーム終了時点で半分以上憶えてしまった。
 そうするととたんにつまらなくなる――相手はディーラーだけ、押し引きハッタリが効きづらい。つまりどこまでいっても運頼り。
 見切りをつけ立ち上がるクロトへ、
『おやおや、逃げるのかい?』
 ディーラーは手のひらを上にして退去のお代をねだる。
 細く形良い眉を持ち上げてから、有り金の半分を雑に抜き投げ渡した。
「後でその分勝ちに来ますよ。だから下手な腕で融かさないようにしてくださいね」

 続けて、客層がマシ――と言っても服が縫ってある程度だが――なポーカー卓に立ち寄った。
 流石に毎回新品のトランプとはいかないが、端正なテカりのカードはまだ新しい。

 ――。
 畳んでは広げ川札を睥睨するクロトは、かすかに鼻を鳴らした。
(「この臭いは……脂汗。荒れて却って規則的になる息づかいは大勝負への興奮……」)
 隣の男が震える指で銭を弄っている。血走った瞳で食い入るように見据える川札はハートが3枚。成程、ハート5枚のフラッシュか。
 クロトは不意に声をあげた。
「ルールを教えて欲しいのですが。もし、同じフラッシュが2人いたら、掛け金は半分ずつですか?」
 ギョッと目を剥き汗の臭いが深まった、なんとわかりやすいことか!
『いいや、一番高い札を比べて上の方が勝ちだ』
「つまり、Aを持っていれば総取り、と。わかりました」
 クロトは無造作に掛け金5倍分の金を投げ置いた。他方の手ではぱたりぱたりと札を扇ぎ「ハートのA」と思わしき札を見せつける。
『!! お、お前……』
「なんでしょう?」
 ふふりと瞳を下げて微笑み、手のひらを上にして促す。
「是非是非、勝負しましょう。さぁ、さぁさぁ……!」
 咲き誇り散る寸前の桜花思わせる容は勝利への確信を隠しもしない。
 男が指を動かせば、クロトのしなやかな指も糸ではなくて財布をなぞる。まだ出せると匂わせるように。
「足りないようでしたら、財ではなく、身包み、中身でも構いませんよ? なんでしたら此方も同じものを出しましょうか?」
 何一つ渡す気ないのにいけしゃあしゃあ。
 ま、一夜の退廃的な極楽浄土……は、彼からもらっても面白くなさそうだし選択肢からは外しておく。
『……………………オリだ』
 男はフラッシュが確定した手札を伏せ項垂れた。最大のカードはJ、決して弱くはない、だがAには絶対に勝てないカードでもある。
「ここまで賭けたのに、残念でしたね……おっと」
 銭をかき集める素振りで落ちたカードは『ダイヤのA』
『なッ! てめぇ騙しやがったなぁ?!』
 乱暴なつかみかかりには、纏わり付かせた指を絡ませねじり上げ。
「僕の札を盗み見たんですか? くわばらくわばら」
 ――後は散るだけの花なんて、地に落ちて踏みにじられるだけ。なのに怯えて逃げたのはそちらでしょう?
 なんて嗤って嘯き男を解放、そして琥珀色したグラスに口をつけた。
 エチルだかメチルだか……そんな組成のヤバイ酒だろうが酔わないし躰が病む事もない。けれど、相応に溺れた素振りも纏わせないとと、口元をだらしなくあいてゆるい三日月。
 千差万別の笑いを操り巧みに隠す、ポーカーフェイスはなにも無表情だけではないのだ。

 しこたま儲けた所で席を立ち、お次とついたのは麻雀卓だ。
 ほらやっぱり此処だ。彼草色の笠が過ぎた。白磁の頬にぷかりと咥える細いキセル。なんというイイオンナ。
「――ねぇ、其処往く紅の公?」
 なんと、不意を打たねばならぬ相手に話しかける大胆不敵。
『あぁ?』
 紅袖に包まれた華奢な腕をとり腰を抱いた。彼女が愛銃を出す前に耳元に唇を寄せる。
「貴女ならどれを切る?」
 前門の国士無双、後門の清一色。おまけに対面は待ちがわからぬ単騎待ちときた――つまり、どれを切っても当たりそう。
 場の状況を一瞥で把握した編笠は、面白がるように一萬ほつまみあげた。全員への本命牌だ。そしてクロトも切ろうと思っていた、つまり“今宵は悪い(そういう)運のツキ”
『これが当たらなかったら褒美をあげよう。ただしフッたら“全て”をもらうよ』
 つまんだ牌が輝いた。はて? この光僅かな掃きだめでかい? そう、疑わねばならなかったのだ編笠は。
 つぃんと、空気が鳴る音と同時に薔薇の花びらが雀卓に降り注ぐ。同時に、白い牌も葵い牌も他も全部、真っ赤に染まる。
 一歩遅れてごとりと落ちたのは、一萬と編笠の右の手首だ。3人全ての当たり牌だが、皆ロンとは言えずゴクリと喉を鳴らす。
「――さすがに、4つは入れさせてくれませんか」
 残念と丸めた手元には輝き描いた糸が血をつれ伝っている。
『……ッ、猟兵! またしても、くぅぅッ』
 掴んだ麻雀牌を投げつけて瞬間に紛れて去って行く。クロトは綺麗なまま、そして、置き土産は手首。
「もう少し遊びたかったのですが」
 血のように紅いあなたを、もっともっと染めあげたかったのに至極残念です。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
自前のチャイナドレス着用して九龍城に乗り込む。

『哭きの竜』『まあじゃんほうろうき』『ムダヅモ無き改革』を読んで麻雀を学んだ私に死角は有りません!(ホントか?)
※数年前に神職さん達と正月明け休みに雀卓囲んだ時、勝ちすぎて顰蹙買ったので、以後自制してた。
根が真面目なので、やる時は本気でやるタイプ。

第六感で切る牌を選び、第六感・読心術で相手の引っ掛けや当たり牌を予測し、幸運で己の当たり牌を引き寄せて上がる。
配牌が今一つの時は、竜ばりに鳴いて上がったり、オープンリーチから幸運でツモ上がりしたりで勝つ。

編笠さんを引きずり出す為、心を鬼にして打ちますよ。

編笠の先制攻撃は第六感・見切り・功夫による(神社近所の健康教室で習った)太極拳の体さばきで軽やかに回避し、オーラ防御で護りを固める。

UC:花嵐を発動。
花びらを操作して人々を巻き込まぬよう編笠を攻撃。

更に空中浮遊で浮かび、自身への念動力と空中戦能力で自在に空を舞い、花びらで身を隠して頭上から接近。
雷の属性攻撃・衝撃波・功夫・鎧無視攻撃で発勁を放ちます!




 ドアをあけると綴じられた退廃と堕落がむわりと噴き出してくる。札の叩きつけられる音、軋んだリールの巡る音、他全てが尖り心に爪を立ててくる。
(「これは……神職さん達と遊んだ正月明けの麻雀とは何もかもが違い過ぎます」)
 膿んだような場に、目に眩しい翡翠の花を咲かせた大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、チャイナドレスの裾を翻し賭場を進む。
 時に和やかに笑い遊ぶ。勝ちが過ぎた時は流石に顰蹙を買ったが、殺気立ちはしなかった……それでも、以降自制を必要とするぐらいには勝ってしまったのだが。
 この場の雰囲気は、むしろヤクザ絡みのゴト師がやたらカンしてはドラをのせる漫画の世界に近い。住民は軽口に乗せられ嵌まっていく漫画家と重なる。政治や国を巻き込む別の漫画は大概だったが、まず笑いが先に来た。
 ……神様、予習しすぎ。

 詩乃が足を止めたのは、この賭場の中でも比較的裕福そうな奴らが囲む卓だ。恐らくは九龍城の商店主だろう。
「よろしくお願いしますね」
『ねぇちゃん、負けても金は出しちゃあいけねェぜ』
「と、いいますと?」
 手牌を起こす。3枚暗刻が2組に、2枚対子が2組――随分と偏っているが、彼らがイカサマをした感じは全くない。
『ここで金を失うのは、地獄に堕ちるに等しいのよ。わかるか?』
 真向かいに座る別の男が淀んだ目で牌を捨てた。いきなりの真ん中に、詩乃の背中がぞわりと泡立つ。この男の手は育てさせてはいけない。
『色々と“使われて”二度と見られぬ姿にされちまう。死んだ方がいいって奴だ』
「――…………ポン」
 次の牌を引きたくない――心の警笛に従い3枚の同種牌を晒す。
 次の牌は詩乃にとってはどうあっても使えぬもの、だが対面の男の必要牌に違いない。
 下家(次の番)の男は引いた危険牌を手の内に入れつつ、下卑た視線は胸元を舐める。
『安心しな。ここの卓についてんのは、みぃんな紳士だからよ。お嬢さんを囲ってやるよ』
 詩乃は見た目通りの小娘ではない。それこそこの男達が産声をあげる遙か昔から、酸いも甘いも噛み分けてきた。
(「さて、編笠を寄せるにはどのような態度が良いのでしょうか」)
 思考は一瞬、自分の牌を切り捨てながら浮かべるは、笑み。
「でしたら、私が勝ったらこのあなたの暮らす九龍城の階を丸ごとくださいね」
 強気に出れば左右の男は水を打ったように引いてしまう。しかし対面はにやつきをますます深めた。
『いいぜェ。あんたは賢い取引をする、俺の女になったってそれは叶うんだからよ……なぁ、ご両人』
 対面の男は軽快に真ん中の牌を捨てていく、端っこの一九と字牌を集める国士無双で確定だ。
(「他のおふたりは警戒して当たり牌は切らなさそうです」)
 良かった、阿片で溶けきった脳みその人達ではなくて。
 詩乃は手元で囀る一索の鳥3枚をちょんとつつく。これが当たり牌になる可能性は高い。
「わかりました、その勝負受けましょう」
 ――答えた手元では4羽目の一索を引き寄せている。幸運超えたまさに豪運。
(「……既にテンパイしてらっしゃるならば、わたしがあがりを捨てての引き分けでしたが。ごめんなさい」)
 余り絶望を与えたくはないのだけれども、ここは心を鬼にして。詩乃は「カン」を宣言しくるりと鳥を4羽晒す。
 瞬間、悦に入っていた男の目が皿のように見開かれる。国士無双は泡と消えた、手元に残るはなんの役にも立たないクズ牌のみだ。
「嶺上開花、ツモりました。トイトイ、三暗刻、ドラが3枚で倍満です」
 ――役満でない辺りが却ってリアルだ。
 不意に、
「やぁ、綺麗なその手をいただくとしようか」

 はしり、と、詩乃の手首に血染めの指がかかる。
 否、修正する“かかったように見えた”

 鶴の翼のように軽やかに詩乃の手は編笠から逃れた。直後、この昏い掃きだめに咲くはずのない桜花が虚空を埋め尽くす。
『またしても猟兵か……ッ! ますますその腕が欲しくなったよ』
 怒りと焦りで握りしめたキセルを振り上げる編笠の元から紫煙龍が嘶きをあげる。
『ひ、ひぃぃい!』
 おたおたと尻餅をつき慌てる男達の前に桜花が集まり盾を形作った。
「逃げてください、はやくっ」
 あがり役を踏みしめ天井へ、掲げた手のひらに更なる桜花の群れを生み出すして編笠へ向けて放った。
『ははは、二度と出られぬ袋小路に閉じ込めてあげるよ』
 堕ちろ! と、情念を込められた紫煙龍が桜花を食い荒らし駆け上ってくる。
「そうはいきません」
 軽やかに龍の額を踏みつけ宙返り、更に生み出された桜が龍を書き換えなおすように量を増やした。
『ちっ! 戻れ、紫煙龍』
 編笠は短く舌を打った。視線は桜花に釘付け、それほどに天蓋を埋め尽くす桜は見事だったのだ。
 だが、桜花は魅せ札。
 音もなく着地した詩乃は、ゆるくしなやかな手つきで握った拳を大きな一歩と共に編笠の背にねじ込む。
 発勁。
 震わせる力を乗せ、相手の躰に打を浸透させる。
『……なっ……あ、れ……?』
 かくりと膝を膝をつき呆然とする編笠の頭上にて護りの龍が霧散した。
『……ッ』
 はらりひらりと降り注ぐ桜花の中を、腰砕けの編笠が這い逃げる。
「待ちなさい」
 追いすがる詩乃だが、引きこかされた人を咄嗟に庇う。その間に編笠は人混みに紛れ逃げおおせた。だが充分な損傷を喰らわせはしたしなにより被害がでなかったのは行幸と言えよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
莫迦に、ねぇ
ナニカに「なる」のはお手の物
存分に遊ンでやろうじゃナイ

見た目だけは華やかな身なりでふらふら物色
遊ぶならカードかルーレットかしら
疎い振りで調子に乗せて(乗せられて)小金稼いだり
アタシの代わりに賭けてと浪費したりさせたり

冷静さは奥深くに隠し
負ければ不貞腐れ
勝てば小さくてもご覧とばかりに自信の笑み
手持ちがなくなったら?
この身で払うってぇのはダメかしら
(子細お任せ「50」)

敵が仕掛けてきたら気配見切り避け負傷は最小限に
周囲のヒトは可能な限りモノで庇うわ
正しさ?ご冗談を
食材の生き死に決めるのはオレってだけのコトよ

【翔影】でくーちゃんらを喚び、いつも通りにと住人らの保護を任せる
袋小路には素振りだけは困った風に
攻撃は冷静に見切り躱しカウンター狙い
右目の「氷泪」から雷奔らせ
攻撃手がヒトなら死なない程度に生命力を頂くわ
ケドこんな安物じゃあ満足しない
第六感併せ編笠の気配捉えたなら
目の前の攻撃はオーラ防御と激痛耐性で凌ぎ無視してでも
二回攻撃で狙い雷撃ち傷口をえぐって
遠慮なく生命力を頂かなくちゃね




 中庸の数字50はどちら側とも仲間面が出来る。それはナニカに「なる」のはお手の物のコノハ・ライゼ(空々・f03130)とどこか重なる。
(「莫迦に、ねぇ」)
 賭博莫迦、未来なぞ見ずに刹那の勝ち負けに人生をぶん投げる。
 理知的な軍師の衣より、やはり此方でしょうと花緑青のアオザイを纏った。編笠は今回其方に譲りましょ。
 蜉蝣色の肩掛けを翻し歩く艶美なるコノハは、この掃きだめでは大層目を惹く。
『よぉ別嬪さん、コレどうよ? 奢ってやるぜぃ』
 細いキセルを掲げる男の前には札がたんまりと詰まれていた。
「へぇ、景気良いじゃナイ」
 キセルは白魚の指でちょいと避け、ゲームをのぞき込む。キリキリと耳障りな軋みでもってルーレットがまわる。
『ははは、俺様は運を“持ってる”側の人間だからなぁ』
 卓上ランタンで阿片を炙り胸一杯に吸い込む男の隣に、コノハはひょいと滑り込んだ。
 ……この男も他の敗者も変わらない。みんなで仲良く薬漬け。そうやって金が掛かる躰にされた時点で、人生は取り返しのつかぬ域まで破綻している。
「遊び方がよくわかンない。好きな数字を言えばイイ?」
 己の財布は出さずにしわくちゃの札を1枚つかむコノハを、男は孫でも愛でるように目を細め見る。
『おうおう、そうそう』
「真ん中が好きよ、これだとー……18かしら?」
 莫迦の素振りで指折り数え不作法に金の全部を鷲づかみして18へ、男は目を剥いて硬直した。
「ダメだったかしら?」
『……………………当てりゃあいいんだ、そうだ、なぁ!』
 冷ややかな空気の中、投げ入れられた銀弾は当たり前だが18を外れた。
『こんの疫病神めぇえええ!』
 怒りで蟹色に茹で上がり掴みかかるが握力は阿片でヤられて子供のようだ。優しい手つきで引きはがしておいて、男の儲けの軽く3倍の金の入った財布を見せびらかす。
「遊び方も分ったし、これからが本番よ」
 金が正義の賭場である、泣き喚く男は黒服に引きずられ退場と相成った。

『黒の13』
「ほら見なさいよ、ちゃんと当たったわよ!」
 ふて腐れで腫れていた頬が歓喜で緩んだ。
 手を叩き子供めいた態度ではしゃぐコノハの前に投げ戻された金は掛け金の12倍。1点掛けが当たれば36倍が正しいから完全にボられている。
 無論コノハは気づいているが、聡明さは隠し上機嫌で金をかき集めた。
「ふふふ、いーっぱい戻ってきたわ、次はどれに賭けようかしらねぇ……」
『イイことは続くって言うぜ?』
「あら、じゃあアンタが13に賭けたら? アタシはー……7と28で、誕生日なの」
 大嘘だ、この場に一切の真実を持ち込む気はない。
 ――再び、黒の13。
 鼻歌交じりに置いた全財産は、見事に外れて全没収。
「! なんでよ、2カ所に賭けたのに。13が続くなんてインチキじゃないの!」
 さて、今までは膨れ顔もご愛敬と流してくれたが、一文無しとなったなら話は変わる。
『こい』
 黒服がぐいと頭を掴む、それに対し震える演技は忘れない。
「いったぁい! 汚い手で触らないでよ……あるわよ、払えるものなら」
 紫の組紐で止めた部分から指を滑らし素肌の部分に宛がって、蠱惑的な流し目。
「この身で払うってぇのはどう? 吸い上げたお金より、余程高価なシロモノよ?」
 なんて嘯きつつ、黒服のポケットの札入れに指をかけた。片目を閉じてねだれば、財布は抵抗なく引きずり出される。
 嗚呼、地獄に転げ落ちる第一歩。勝ち目のない賭博で借金は肥え太り、己の躰は“文字通り”どんどん軽くなっていくというのに!
 文字通りコノハのワンサイドゲーム。
 青ざめる黒服を背後に、無邪気に景気よく人の金を使い尽くす。そんなコノハの笑い声は、既にかなり負けが込んでいる編笠のカンに甚く障ったようだ。

『この世の春といい気になってる君の全てをいただくよ』

 天井に翳したキセルより顕現した紫龍を前に、コノハはルーレット台を蹴飛ばし盾にした。
「くーちゃん、お願い!」
 一瞬の隙で召喚した黒狐は、紫煙龍に負けぬ巨大さで羽ばたき食らいついていく!
『まったく……猟兵への認識をとことんに書き換えないといけないらしいね!』
 強化しそこねた編笠は煙管でコノハを斬りつける。素早くしゃがんだ横顔、氷の泪が黄金の糸を引き細い煙管を見事に断ち切った。
『猟兵ってのは、まったく正しくないって、ね!』
 回し蹴りへは雷が絡む。とたんにバランスを崩す編笠へ、コノハはぺろりと舌なめずり」
「正しさ? ご冗談を。食材の生き死に決めるのはオレってだけのコトよ」
 しかし美味しくない。これも全て過去物故か。
 紫煙龍はくーちゃんを躱すため迷宮の先へと引きこもる。戸惑うくーちゃんへ苦笑い。そろそろ勝負を決めないと、囚われっぱなしでくーちゃんにもしものことがあったら寝覚めが悪い。
『よそ見するとは余裕だね、先ほど猟兵から習ったこれで仕留めてあげようじゃないか』
 ――よそ見は罠、喰らうつもりで誘ったのだ。
 オーラを突き破ってきた掌底で胸を打たせりゃ至近距離。いとも容易く雷で目潰し。仰け反り晒された手首の断面、血が乾いたのにご愁傷様。思い切り柘榴を突き立て抉り回してやろうじゃあないか!
「ぎゃああああああ!!」
 一帯を揺るがすような悲鳴が編笠の口から迸った。一方のコノハも啜った生命力では到底足りぬ損傷を受けた、だが膝を折らず確り立っている。
「くーちゃん、みんなを守って、あげて……」
 ヤケになった編笠が逃走ついでに何をするかわからない。管狐を横に張り付かせて警戒。
「うっとうしいね、全く」
 折れた煙管を吹いて出した紫煙龍を盾にして編笠は身をくらます、それが精一杯。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイニィ・レッド
この終わっちまってる空気
懐かしいですね

賭博の類は嫌いじゃねェ
ポーカーでもしましょう
手持ちは大して無いのでモツでも賭けましょ
ッつっても実は自分モツ殆ど残ってないンすけど
眼球はあるし 血もありますから使い道はあるでしょう
まァ負けねェから問題ないですが

目の動き、息遣い、心臓の音…
相手の肉体の全て読めば冒険せずとも勝てると思いますが
折角です スリルを求めて勝ってやりましょ
ヤクで頭イっちまってるような奴らに負ける気はしません
相手の性格・性質も踏まえて圧掛けながら
インチキ無しでギリギリまで踏み込んで
文句のつけどころのない勝ち方をしてやります

追い詰められたテメェが何するか見せてみろよ

さて
気分よく勝ったら本業もしましょ
派手な勝ち方すりゃ奴さんも覗きに来るでしょ
そこをすかさず純粋な『暴力』で仕留めてやります
まァ巻き込まれちまうものは仕方ないですからね
構わず刻んでやりますよ

うるせェな
過去の産物がグダグダ言ってンじゃねェよ
テメェも 此処も正しくねェ

だから失せろ
消えちまえ




 ドアをあけ一歩踏み込んだなら、緩く重く大気が纏わり付いてくる。雨と共に或レイニィ・レッド(Rainy red・f17810)は、陰鬱さの共通点に懐旧を抱いた。
 しかし低いところで常に安定する自分比べたら、この匣の奴らはどうだ? 悲喜を尖らせ切っ先で相手をなじる。互いに痛めつけ合いながら、足下の泥濘み――地獄行きからは徹底的に目を背けてやがる。
『赤い兄ちゃん、どうだい? 丁度一人飛ンじまったんだ』
 黒服に引きずられていく男は左右の足から血の筋を残しぐったりしている。
「ありゃあ生きてるかわからねェな」
『おっと怖いのかい?』
 げてげてと煽り莫迦にした嗤いが巻き起こった。だがレイニィは意に介さず席に着き黒服に視線を向ける。
「手持ちは大して無いので……」
 す、と腎臓から撫であげて細い紅目で人差し指を止めれば、籠に入った金が投げ渡された。同卓の客らがせせら笑う辺り相当に足下を見られたのだろう。
「ありがたく」
 と云っても、レイニィの腹に大したモツは残っていない。騙し合いは既に始まっているのだ。

 ポーカー・テキサスホールデムは、自分の2枚の手札と段階的場に開示される5枚のカードを合わせて手役を作るゲームだ。
 男達は場のカードが捲られる度に知らず情報を垂れ流す。
 喜色に曲がる目、自分の手札と何度も見比べては荒くなる呼吸音……一方のレイニィは何が来てものっぺりとした表情を変えない。
(「負けねェとは思ってはいましたが、こうも手応えがねェのもつまらないものです」)
 3ゲームを制したら種ゼニは潤沢、ならば同じ土俵でスリルを貪るとしようか。
「すっきりしましょうや」
 一番負けている男の前に負け帳消しの金を置いた。
「そちらは有り金で充分です、サシ馬と参りましょう」
 更にレイニィは手札2枚を開示する、スペードの3と7だ。
「そっちは伏せで構いませんよ」
 ちなみに男の手札は『ハートのAとクラブのQ』と勝負手である。
 それでも、ぎょろりと左右に動く目と緊張感、更にはゲームからおりた他の奴らの顔色も合わせれば、大凡の強さは見透かせる。
「そうですね、なんならアンタは3分割ずつで賭ければいい。逃げたきゃオリれば少しは残ります――まぁ、自分に勝って借金帳消しって夢は消えますが」
 破格の条件でもまだ尻込みしているようなので、レイニィはわざと露悪的な口ぶりで吐き捨てた。
「……そんなんだから負けるんですよ」
『!! てめぇも場札がめくれる度にもっと賭けろ! それがポーカーのルールだ』
 いけしゃあしゃあと欲をかき、男は最初の場代を叩きつけた。
「いいでしょう」
 その提案、駆け引きの材料が増えるのだからレイニィには願ったり叶ったりでしかない。
 ――……。
 川には4枚までカードがめくれている。
 スペードのK、クラブの4、ハートの9、スペードの6。
「さぁ、どうしますか?」
 ベッドを積み上げたレイニィは球のような脂汗を浮かべる男へ水を向ける。
「自分の手はこの通りブタです」
『け、けどッ! フラッシュもストレートもあるじゃねぇか!!』
「ではオリますか? ブタ相手に?」
 今の台詞でワンペアすら出来ていないことが完全に透けた。
 まぁそもそも、他の男達の嗤いや嘲りから、この男が欲しいAはそれぞれに散っていそうだと、やはりレイニィは見え透いていた。だからあそこまで相手に有利な条件を出して“退路を断った”のだ。
(「とはいえ、スペードないしは5が来なければ自分の負けなんですけどね……」)
 イカサマなし故に、勝負の結末はレイニィとて制御できない。
「三分の一に減った端金でここを無事出られると思うのなら、オリればいいでしょう」
『くっそ! 吠え面かかせてやる!』
 男が全額を擲った所で勝負は最後の局面に至る。

 ――ひらいたカードは『クラブの5』レイニィの手にストレートが成立した。

 突っ伏す男の前で金をつまみ集めながら一言。
「……そんなんだから負けるんですよ」
 勝負に突き落としたのと同じ台詞で煽る――さぁ追い詰められたテメェが何するか見せてみろよ!
『―――――――――ぃいあぁ!』
 ヴァイオリンをデタラメに奏でたような叫び。
 ヤクが切れて緩慢な男の脳内に怒りからの麻薬が満ちたか、黒服の腰から青竜刀を奪うとレイニィを真っ直ぐに刺し貫いた。
「…………ッ、残念……」
 そこにモツは、ない。
 したたり落ちる血の筋はるりるり流れ、レイニィの腹をいたずらにあたためるだけだった。

『同じ台詞で真逆の煽りとは、随分とイイ性格をしているね。気に入ったよ』

 苦しげだが軽妙な響きの口ぶりで耳の後ろに息が触れた。
 あぁ、
 大立ち回りがお気に召したか30cm未満の至近距離にまで、来た!
「……」
 空っぽの腹の疵を抑える素振りで、腰のホルスターに潜めた鋏を引き出し即座に背後に向けぶっ刺した。
『……は、ははは』
 諦めた様な嗤い声に取り合わず鋏から指を離しターン。紅いコートが弧を描き、揃いの色した液体が編笠の足下に溜まりを作る。
 粛々と仕事を執り行うレイニィの指には既に別の鋏、開いた刃でサングラスごと瞳を刺し貫いた。
『あーあ、ここに来た猟兵は“間違いだらけ”だ、ロクでもない外道どもめ……』
「うるせェな、過去の産物がグダグダ言ってンじゃねェよ」
 編笠から蕩けるように滴る闇の向こうへ隠れようとする腕をひっつかみ、またまた別の鋏を突き立てる。
『う、ぁは、あぁ……』
 包帯が解け、先のない手首が晒された。そこをジョキジョキと紙工作めいた手つきで切るレイニィは、ふっと指を止めた。
「テメェも 此処も正しくねェ」
 俄雨に現われる赤ずきんは何時もの言葉を呟いて、編笠の――被害者の絶望の容に視線をあわせる。憶えているために。
「………………だから失せろ」
 刺した鋏を抜く度に、命脈尽きたオブリビオンの方々から夥しい血が噴き出す。白いシャツも紅色に染め上げて男は投げ遣りに言い捨てた。
「消えちまえ」
 同時に、糸が切れた人形のようにコンキスタドールの躰は前のめりに倒れ伏した。
 血の雨だなんて誤魔化しもいいとこだ。ここは地下、雨なんて降らない。
 ひくひくと痙攣するそれに背を向けて、雨男はさっさと地下賭場を出て行くのである。

―終―

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月25日


挿絵イラスト