殲神封神大戦⑨~其は蒼穹の彼方より
●災厄、兆す
「ちょっと見ない間に、また凄いことになっちゃったなあ」
白金の結い髪をがしがしと掻いて、リンシャオ・ファ(蒼空凌ぐ花の牙・f03052)は言った。季節外れの朱花の下、琥珀の瞳を光らせる少年は、集まった猟兵達を前に拱手する。
「状況は多分、おれよりみんなの方が詳しいと思うから、単刀直入に言うよ。大賢良師『張角』の軍勢に伝説の怪物『哪吒』っていうのがいるんだけど、その哪吒との決戦に向けて、晋の王様が大水軍を組織したんだ。けど――」
怪物・哪吒の討伐を目する五万もの兵は、晋国皇帝・司馬炎の命を受け、軍船に乗って長江を進んでいる。しかし長江の中流――かつて『赤壁の戦い』が起こった正にその地には今、大河を堰き止めるダムが如き、オブリビオンの要塞が立ち塞がっているのである。
鮮やかな朱塗りの要塞は、その名も『赤壁水上要塞』。猟兵ではない晋の水軍がこのまま要塞へ到達すれば、甚大な被害は免れないだろう。
「そういうわけで、みんなには王様の水軍が赤壁流域に着く前に、赤壁水上要塞を攻略してほしいんだ。ただ、相手がちょっと厄介で――」
敵は牛のような二本角を持つ人喰いの怪鳥で、名を蠱雕と云う。当然だけど、と前置きして、リンシャオは続けた。
「そいつらは鳥だから、足場はそもそも必要ない。逃げ場のない水の上でこんなのに襲われたら、晋の兵士達は全滅だ――だからそうなる前に、なんとかしないと」
小舟や軍船など、水上戦に必要な装備は水軍に頼めばいくらでも貸してもらえるだろう。もちろん船に乗らなくても、水上を移動できる手段を確保できるならそれでもいい。彼らの任務は唯一にして単純明快――真紅の壁から飛来する人喰い鳥達を、一羽残らず撃ち落とすことだけだ。
褐色の掌の上、顕れたグリモアが光を放つ。忙しないなと誰かが言えば、ごめんねと笑って少年は応じた。
「おれ、自分のことも、世界のこともまだ何も分からないけど――なんでかな。この世界の人達を、助けたいんだ」
だから頼むよと唇を結んで、少年は猟兵達を送り出す。転び出る先は封神武侠界――殲神封神大戦の渦中なる、長江・赤壁である。
月夜野サクラ
ご無沙汰しております、月夜野です。
今更ながら初・第六猟兵戦争シナリオです。
諸々できる範囲で頑張りますのでよろしくお願いいたします。
・戦争シナリオにつき、1章で完結となります。
・個別リプレイを想定しておりますが、組み合わせた方が面白いリプレイになりそうだな、という場合、まとめてリプレイにする可能性があります。指定の同行者の方以外との連携がNGの場合は、その旨をプレイング内でお知らせください(ソロ描写希望、など)。
・採用人数に上限はありませんので、開いている間はお気軽にどうぞ。書ける範囲で書かせて頂いて、リプレイ返却で物理的に締める予定です。
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プレイングボーナス……水上戦に対応する。
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船から船にわたってみたり、水に飛びこんだり溺れたり助けたり。
良い感じに活躍しつつ、敵を撃退していただければと思います。
皆様のご参加を心よりお待ちしております!
第1章 集団戦
『蠱雕』
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POW : 人喰い
戦闘中に食べた【人肉】の量と質に応じて【さらに狂暴化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 強襲
【角】か【牙】か【爪】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 飢餓増大
【飢餓】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
イラスト:滄。
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヘスティア・イクテュス
相手が空飛ぶ鳥ならわたしの出番!『空中戦』ならお任せってね!
背のティターニアで飛んで相手になるわ!
マイクロミサイルによる『範囲攻撃』で撃墜できれば良し!ダメージを与えてこっちに意識を向けさせられれば上々ね!
鳥の飛行速度、流石にミサイル以上の速さってことは無いでしょ?
引きつけて攻撃を躱しつつ、手のアペイロンよりマルチブラスターを冷凍光線モードで発射!
翼とか飛ぶのに必要な部分を凍らして下の水中へ落としていくわ
真紅の城塞から飛び立った巨大な翼が、長江の豊かな流れに点々と黒い影を落としていた。何物にも阻まれることなく川を下る風は強く、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)の長く艶やかな空色の髪をはためかせる。
「来たわね……!」
猛スピードで川下へと飛来する怪鳥の群れを河岸から見上げて、少女はにんまりと口角を上げた。相手が大空を飛ぶ鳥ならば、宇宙を駆ける彼女の出番だ。右手の光線銃を握り締めれば、同時に背にしたジェットパックが白い煙を噴く。
「空中戦ならお任せってね!」
妖精の女王の名を冠した翼は瞬きのうちに、細い身体を空の高みへ連れていく。それ、と突き出した指先の示す先へ小型のミサイルを撃ち出して、ヘスティアは白煙の描く軌跡を睨んだ。
(「流石にミサイル以上の速さってことはないでしょ?」)
機を読み、風を読んで放つミサイルが、川面の遥か上空で爆ぜる。翼を黒く燻ぶらせながら、一羽の鳥が反転した。これはあくまでジャブだ――元々撃墜できるとまでは思っていない。気を引けたならあとは、こちらの土俵に引きずり込むまでだ。
狂った笛の音のような声が、高い空を劈いた。広げた翼で風を切り、猛然と迫る嘴をぎりぎりまで引き付けてから、ジェットパックの出力を落とし、ヘスティアは垂直に落下する。光遮る翼が頭上を突き抜けたのを確かめてから再びエンジンを噴かし、飛び上がれば、巨鳥の尾羽が遠ざかっていくのが見えた。どうぞ的にして下さい、とでも言わんばかりの背中に光線銃を向けて、少女は片目を瞑り、照準を合わせる。
「発射!」
蒼い光線が宙を裂き、飛び行く鳥の翼を射抜いた。音を立てて重く、冷たく凍てつく翼はもはや大空を飛ぶには能わない。遠く川面に大きな水柱が上がるのを確かめて、ヘスティアは再び鳥の群れへ向き直った。
「さあ、どんどん行きましょ!」
乱戦はまだ、始まったばかり。集う猟兵達に応えるように、砦より来るオブリビオン達は続々とその数を増していく。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
桃源世界を救う為に…
悪しき者を討ち倒す為に…!
さぁ行くぞ…私は処刑人…!
[早着替え]で水着に着替え
[水上歩行]で水上を[ジャンプとダッシュ]で
駆け抜けよう
敵の強襲を[見切り]つ水中に潜り
[水中機動と高速泳法]で回避しよう
貪欲な鳥め…ならば…
来い!赤錆びた獣達よ!鳥共を喰らい尽くせ!
【赤錆びた鉄の爪牙】で数多の拷問具を放ち
空に舞う敵群を拷問具の【誘導弾で追跡】し攻撃
[傷口をえぐり継続ダメージで捕食]しよう
苦しむ敵に妖刀振るい角と翼を足を[鎧無視攻撃]で
[切断、解体し部位破壊で]水中に沈めてやろう…
そうして敵群を[蹂躙]し屠ってゆこう…
……水はやっぱり冷たいし寒い…早く温まりたい……
空を横切る翼の群れを揺れる小舟の上から仰ぎ、仇死原・アンナ(処刑人 魔女 或いは焔の花嫁・f09978)は細身の剣を握り締める。
「さぁ、行くぞ――」
桃源世界を救う為。悪しき者を討ち倒す為。世界を蹂躙せんとする過去からの亡霊達を在るべき海へ返す為に、彼女はここへやって来た。黒い外套の留め具に手を掛けて、女は言った。
「私は処刑人……!」
脱ぎ捨てたマントの下は、季節外れの水着姿。揺蕩う冬の川面を軽々と跳ねて、アンナは鳥の群れを目指す。頭上を行き過ぎる鳥達の腹を仰いで、女は右手を高く掲げた。
「来い! 赤錆びた獣達よ!」
喰らいつくせと呼び寄せる数多の拷問具は、罪人の血に赤く錆びついて、それゆえ残酷に肉を裂く。腹を鍵裂きにされた鳥が一羽、川面へ墜ちて水柱を上げた。すぐさま襲い来る次の一羽を蔑むように一瞥して、アンナは言った。
「貪欲な鳥め」
捨て置けばその爪、その嘴は罪なき人々を喰らうだろう。そうと分かっていて、野放しにはできない。振るう妖刀で角を断ち、翼をもいで、一羽ずつ着実に屠っては水底へ沈めていく。そして一羽の巨鳥が此方に向けて急降下して来るのを認めると、アンナは躊躇うことなく冷たい川へ飛びこんだ。立ち上る泡を全身に浴びながらゆっくりと浮上し、水面から顔を出すと、鋭い鳥の爪が遠ざかっていく。その翼を見送って、女は小さくくしゃみした。
「……やっぱり冷たいし、寒い……」
禍いもたらす鳥達は手早く狩り尽くして、早く暖を取ろう。そう心に決めて、女は再び赤錆びた刃を呼び寄せる。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
敵は自由に空を飛び、此方は不自由な船の上、か
ま、その辺りの不利は今更と言えば今更か
小舟と、大量の鎖も準備してもらおう
降りてきた敵を狙って、投げ縄のように鎖を投げる。敵の脚にでも引っ掛けてから無理矢理引き摺り下ろして、刀で止めを刺す方向で
こういうのは試した事がないが、何度か挑戦すれば慣れるだろう
もし敵の膂力が想像以上に強く、鎖にぶら下げられて飛ぶ羽目になっても、敵との距離が近付くのでそれはそれで良しだ
上手く身体を動かし、鎖が動く反動などを用いて敵からの攻撃を避けつつ、やはり刀で斬りつけてやる
この場合は流石に少々不自由な体勢なので、十分な威力を乗せづらいが、そこは手数で補ってやろう
「なるほど、確かにこいつは厄介だな」
軍帽を目深に被り直して、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は呟くように言った。大空を自在に飛び回る鳥を相手に、此方は足場の限られた不安定な船の上。これを厄介と言わずして何と言おう。もっともそんなことはすべて承知で、彼らはここにやってきたのだが。
「ま、今更と言えば今更か」
猛スピードで滑空してくる鳥を小舟の正面に捉えて、鏡介は胸の前に両手を掲げた。その掌から垂れた鎖が、じゃらりと冷たい音を立てる。
「行くぞ!」
右手の先に適当な長さを余らせ、投げ縄の要領で振り回して、空へと放る。見事、その鎖が鳥の足にでも巻きついたら、一気に引きずり下ろして止めを刺す――はずだったのだが。
「っ!?」
ぐん、と、手にした鎖が伸びた。重心を落とし抵抗を試みはしたものの、巨大な鳥の膂力は凄まじく、巻きついた鎖ごと鏡介を空へ連れていく。想像以上の力だと青年は舌を巻いたが、この程度のハプニングは想定内だ。
「なかなかやるな。……だが」
距離を詰められれば此方のもの――鳥の足首に絡みついた鎖を腕の力だけでよじ登り、勢いをつけてその背の上へ。鳥の頭を下に見て抜き放った軍刀は、照りつける日差しを受けてギラリと光った。
「力だけでどうにかなると思ったら、大間違いだ」
体重を乗せて垂直に下ろす切っ先が、鳥の頭蓋を一突きに砕いた。傾き落ちていく巨体を蹴って横っ飛びに跳ぶと、鏡介は近場の舟の上に着地する。小さな舟は衝撃に大きくぐらつき、波を立てたが、飛べない人間にしては上出来だろう。ふっと口許を綻ばせて、青年は言った。
「次はもっと、上手くやるさ」
もっと速く、もっとスマートに屠って見せよう――斬るべき敵は尚も多く、この川面を飛び交っているのだから。
大成功
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小烏・安芸
今回の戦場は水場かー……器物のお手入れ的にあんましよろしくは無いんやけど、これもお仕事や。船やら援軍やらでお膳立てして貰っとる分も働かんとな。
そういえば今回は船だけや無くて鎖も貸してもらえるんやっけ? 敵を騙して船同士を鎖で繋がせて動きを封じた……って逸話にちなんでやったか。
ならウチもそれに習ってみよ。普通の鎖やと流石に無理やろうけど、呪詛の籠った落魂ならいけるやろ。
動きを封じてこっちの間合いに引っ張り込むのに加えて、切り込むための足場も確保できて一石二鳥や。水上戦というか空中戦になるけど、敵同士を繋げば次の敵に向かうのも楽やしな。巨大化した身体を遠慮なく足場にさせてもらお。
「今回の戦場は水場かー……器物のお手入れ的にあんましよろしくは無いんやけどな」
朱塗りの要塞へ向けて前進する舟の上、額の上に手をかざして怪鳥飛び交う空を見上げ、小烏・安芸(迷子の迷子のくろいとり・f03050)は言った。
「そやけど、これもお仕事や。船やら援軍やら、お膳立てして貰っとる分も働かんとな」
強敵との決戦に赴く猟兵達のためにと援軍を向かわせてくれた皇帝・司馬炎に報いるためにも、ぼやいている暇はない。ここは歴史に名高いかの赤壁――呉・蜀連合軍が『船酔いを防ぐため』と謀って敵軍の舟を鎖で繋ぎ、火攻めに処した戦場だ。ならばと飛ぶ鳥の翼を見つめて、安芸は悪い笑みを浮かべた。
「ウチもそれに習ってみよ」
飛ぶ鳥と鳥を普通の鎖で結びつけるのはまず無理だろうが、呪詛の鎖であれば話は別だ。地面から川面を伝って伸びる錆びた鎖の形の呪いは、巨鳥の脚を絡め取って繋いでいく。地面に近い一羽から、その背を伝って上へ上へ――跳ねるうちに視界はいつしか空色に変わっていく。ほらできた、と笑って、安芸は来た道を振り返った。
「――ほんまに凄い眺めやなあ」
眼下には揺蕩う大河と無数の舟。異形の鳥と切り結ぶ、古今東西の猟兵達。それらすべてが形作る絵巻物の只中に、彼女はいる。
パーカーの白いフードが風を孕み、癖のない黒髪が零れて舞った。力尽き、落ちていく鳥達の背を蹴って、ヤドリガミの少女はさらなる空の高みへ登っていく。
大成功
🔵🔵🔵
汪・皓湛
個別
小舟を何隻かお借りして長さに余裕ある縄で繋ぎ、
水上の足場を確保
使い潰す可能性が高く、申し訳ないのですが…
その分、蠱雕を狩る事で報いましょう
では行こうか、万禍
友である神剣を黒桜の花弁に変え
鳥の動き、船や水面に落ちる影を意識しながら
花弁と共に小舟から小舟へ飛び移る
丁度良い所にいたなら蠱雕をも足場に
接近されれば朔月で翼に一太刀浴びせ機動力を削ぎ
嘴や爪も同様に朔月で
失礼
お借りした小舟を早々に沈められては困ります
食われるのも、御免ですからね
ですが、腹が空いて苦しいのならば手を貸しましょう
…その苦しみは私もよく知っております故
多くを巻き込むべく敢えて船上に留まる
捉えたならば
手向けの黒桜を送りましょう
「これでよし……と」
数隻の小舟を船首と船尾で一箇所ずつ、舫い綱で結びつけ、汪・皓湛(花游・f28072)は吐息した。筏のように括った舟は、水上戦になくてはならない足場だ。折角の舟を使い潰してしまうのは少々心苦しいが、猟兵達を信じ、支えてくれる人々のためには、蠱雕を狩ることで報いるより他にない。
万が一にも綱が解けて離散しては意味がないともう一度結び目を確かめて、麗しの神仙は空を仰ぎ、胸の前に掲げた剣へ微笑いかける。
「では行こうか、万禍」
蓮花咲く浅葱の袖から伸びる手に誘われて、滑るように鞘から落ちた神剣が玄い桜に姿を変える。舞う花弁をその身に纏わせて、皓湛は舟から舟へ助走をつけ、まだ新しい舳先を踏み切って跳躍した。見下ろす川面に飛び交う黒い影であたりをつけ、跳べば真っ向から一羽の鳥が皓湛を目掛けて降りてくる。
抜き放つ二の刃は、鏡の如く世界を映して見る者を惑わす朔月の太刀――吹けば飛びそうな人の形をしたものに浴びせられた剣撃は見えず、翼を断たれた鳥は成す術もなく墜ちていく。失礼、と翡翠の瞳で一瞥して、皓湛は鳥の頭をひと蹴り体勢を立て直し、小舟の筏へ舞い降りる。
「お借りした小舟を早々に沈められては困ります。あなた方に食われるのも、御免ですからね」
けれども空腹の辛さは、皓湛にとて分かる。清流が如き瞳の奥、けたたましく鳴き叫ぶ鳥達に一欠片の憐憫を揺らして、青年は言った。
「腹が空いて苦しいのならば手を貸しましょう。……その苦しみは、私もよく知っております故」
痛みもなく、空腹もない。すべての苦痛から解き放たれる世界へ、葬ってあげる。四方より迫る鳥達の中心で鮮やかな緑の衣を靡かせて、花仙は微笑む。その細身を取り巻いて、黒い桜が舞い上がった。
「では、共に咲こう」
名を呼べば応えるように、黒花の群れは密度を増して、角持つ鳥達を飲み込んでいく。
大成功
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鳴宮・匡
空の上からの襲撃か
――まあ、水上からでも墜とせないわけじゃないけど
後続の船に目を付けられるのは避けたいしな
なら、方法は決まりだ
握り締めた掌の中、影の弾丸を精製
足元の影に落とす
行けるよな、ノーチェ――ああ、いい返事だ
思う存分飛んでいいぜ
常に飛行は、相手の頭上を取るように
単純に自分より大きく、自分より高く飛ぶものは脅威だろう
近づいてくるやつは噛み千切っていいぜ、ノーチェ
こちらは撃ち下ろすような軌道で翼を射抜き、続け様に頭を潰す
一射一射、無駄なく確実に、精確に
多少狂暴になっていたところで構わない
その分動きは直線的で短調になるし、狙いも読みやすい
悪いが、一匹も後ろには通さない
ここで墜ちてもらうよ
「おお、やってるやってる」
川幅は数キロメートルにも及ぶという大河長江の岸辺に立ち、鳴宮・匡(凪の海・f01612)は淡い蒼穹を見つめていた。川面すれすれに切り結ぶ舟の上の猟兵達と空を駆ける鳥達の攻防は、今もなお続いている。
「水上からでも墜とせないわけじゃないけど……後続の船に目を付けられるのは避けたいしな」
猟兵達の後背には、司馬炎の水軍が近づいている。無用な犠牲を避けるためにも、前線に出る猟兵達の立ち回りは重要だ。であれば、匡が取るべき行動は一つ。
決まりだ、と笑って右手に力を込めれば、開いた掌には黒い弾丸が一つ。開いた拳の隙間から滑り落として、青年は言った。
「行けるよな、ノーチェ」
落ちた弾丸が白昼の陽射しにきらりと光り、足元に伸びる影へと吸い込まれていく。代わりに昇り出でるのは、体長数メートルは下らぬ黒の蛇竜――猛る声にはいい返事だと笑って、匡は言った。
「思う存分飛んでいいぜ」
掬い取るように主をその背に乗せて、黒い竜は空を昇っていく。高く、雲の端にかかるまで高度を上げて見下ろせば、眼下に行き交う鳥達は思っていたよりも小さく見えた。
「近づいてくるやつは噛み千切っていいぞ」
応じる鳴き声は頼もしく、青年は拳銃の引き金に指をかけた。破裂音が一つ、二つ――一射一射を無駄なく精確に狙い澄まして放つ弾丸は、撃ち下ろすような軌道で鳥の翼と頭蓋を射抜いていく。獰猛な鳥達が多少興奮したところで、障りはなかった。憤ればその分、動きは直線的になるし、狙いも読みやすい。
「悪いがここは通さない」
一羽残らず、墜ちてもらうよ――不敵な呟きと共に銃を構える青年を乗せて、竜は怪鳥の群れの中を分けていく。
大成功
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ロータス・プンダリーカ
おっきな鳥さんだにゃ
人を食べちゃうならボクなんて丸呑みされちゃうかにゃ
でもネコとしては鳥には負けられないにゃ
まずは敵の居るエリアまでは水軍の船をお借りして行きますにゃ
接敵からUC発動と同時に船から水の中に飛び込む
水流を纏い、魚雷の様に水中を進む
鳥が水面近くに降下してきた所を狙い、水面からロケットの様に飛び出て体当たりして落としてやるにゃ
基本ヒット&アウェイ
同様に突き上げる様に撃ち落としては水に潜るを繰り返すにゃ
流石に向こうは水には潜れまいし、にゃ
向こうに迎撃されそうになっても零距離からの銃撃浴びせてやるのにゃ
他の猟兵さんで鳥に襲われそうなのいたら、斜め下から滝登り食らわして助太刀しますにゃよ
「おっきな鳥さんだにゃあ」
小舟の船尾で櫂を漕ぎながら、長くふさふさとした尻尾を緊張に揺らし、赤い毛並みのケットシーが一匹――ロータス・プンダリーカ(猫の銃形使い・f10883)は感嘆を込めて口にした。体高五十センチにも満たない猫からすれば、人間の大人をも喰らう鳥は化け物と呼ぶより他にない。
(「人を食べちゃうならボクなんて丸呑みされちゃうかにゃ」)
けれども猫の矜持にかけて、鳥風情に負けるわけにはいかないのだ。操る小舟が鳥達の飛び交う水域に十分近づいたことを確かめてから、ロータスは舟の縁を軽やかに蹴り、えいやと水へ飛び込んだ。
「滝を遡ること鮭の如しだにゃ!」
一般的に猫は濡れるのが得意ではないが、遡上する鮭の力を得たロータスにとって、水は恐るるに足らぬものだ。流れを味方につけた猫は撃ち出された魚雷のように猛スピードで水中を直進し、水面近くまで降下してきた鳥を目掛けて一気に飛び出す。滝をも登る勢いでぶつかる濡れた毛玉の一撃は愛くるしい見た目に反して重く、ロケットのように突き上げては、直撃を受けた鳥を冷たい川面へ撃墜する。
それを繰り返すこと十数回、ヒット・アンド・アウェイの要領で次々と飛ぶ鳥を撃ち落として、猫は水に潜った。
(「流石に向こうは水には潜れまいし、にゃ」)
立ち昇る泡を赤茶の毛並みに纏わせて、仰ぐ水面を巨大な翼の影が横切る。今だと小さな足で水を蹴り、再び飛び出したその先は。
「おおっと」
少し、深く潜り過ぎたか。タイミングを逸した猫の目に、巨鳥の嘴が映り込む。奇声を上げ、大口を開けて向かってくる鳥に向けて拳銃を構え、けれどもロータスはニヒルな笑みを浮かべた。
「ただの猫じゃあにゃいんでね」
体当たりを外したからと言って、取って食えると思ったら大間違い。鳥の口に手を突っ込んで放つ零距離射撃は、瞬時に巨大な頭骨を粉砕する。昇る硝煙をふっと吹き飛ばしたら、すぐに次の敵へ――猟兵達の戦いは終わらない。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
赤壁水上要塞か。赤は魔除けの意味があるけど、オブリビオンに使われてもね。
さあ、鳥を落としていきましょうか。飛鉢法で離陸、「空中戦」に入るわ。
とにかく我武者羅に敵陣深くへ突入し、水軍や他の猟兵が巻き込まれないことを確認してから、「全力魔法」衝撃の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「浄化」「破魔」で風吼陣展開。
あたしの周囲の安全地帯以外は、暴風の渦よ。こんな時に飛ぶなんて自殺行為。さあ、生命なんて顧みないオブリビオンなら、躊躇わず向かってくるでしょう。
あたしの敷いた絶陣の前に、無為にその生命を散らしなさい。
終わったみたいね。水面もかなり揺れたかもしれないけど、水軍は大丈夫かな? 確認が必要ね。
「さあ、鳥を落としていきましょうか」
鮮やかな戦巫女の盛装に身を包む村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)を乗せ、鉄の鉢が空を飛ぶ。大河を横切って聳え立つ赤壁水上要塞はその名に違わぬ鮮紅に塗られて、青い空によく映えた。赤には魔除けの意味があるというが、それを用いるのがよりによってオブリビオンというのは、なんとも皮肉だ。
突っ込んで来る鳥達をすいすいとかわしながら、ゆかりは敵陣の奥へとがむしゃらに切り込んでいく。危険も顧みず突き進むのには、二つほど訳がある――できるだけ多くの敵を巻き込むことと、味方を巻き添えにしないことだ。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。天上までも響き渡る破壊の風よ、その身に宿せし無限の剣刃により触れるもの悉くを裁断せよ!」
疾、と結ぶ呪言に応えて、流れる風が動きを変えた。十絶陣が一つ、風吼陣と名付けられたその領域では周囲五百メートルにもわたり、術者を取り巻く安全地帯以外のすべてが暴風の渦に飲み込まれる。吹く風にばたばたと結い髪を暴れさせて、ゆかりは強気な笑みを浮かべた。
「あたしの絶陣の前に、無為にその生命を散らしなさい!」
どこからともなく現れた剣や刃が飛び交う風の中を、的に最適な巨体で突き抜けようとはまさに無謀、自殺行為。けれどもオブリビオンである彼らが、自らの生命を顧みることはない。
突かれ、刺され落ちてゆく鳥達はそれでも躊躇いなく向かってくる――だからこそ、待ち構える範囲攻撃の効果は絶大だ。ただそこにいるだけで、鳥達は彼女を目掛け飛来し、そして切り裂かれて川に落ちる。
噴き上がる水柱を横目に見ながら、ゆかりは来た道を振り返った。
(「水軍は大丈夫かな?」)
飛び交う鳥と応戦する猟兵達のダイナミックな動きを受けて、長江水上は混沌を極めていた。しかし夥しくも空を覆った鳥達は、開戦当初からすれば着実に数を減らしている。敵味方の入り乱れる戦場を見渡して、ゆかりは声を張り上げた。
「さあ、一気に畳みかけるわよ!」
大成功
🔵🔵🔵
「このお水、しょっぱいのかしら……?」
流れる長江を空の上から見下ろして、城野・いばら(白夜の揺籃・f20406)は小首を傾げた。お喋り花の娘にとって、塩水は毒のようなものだ――幸い潮の匂いはしないけれど、それでも海のように広い河は少しぞっとしない。浸からぬように水面から少し距離を取って見渡せば、遮るもののない地平には突き立つ山と緑の森が広がっている。
雄大な景色を遥かに眺め、白いレースの空飛ぶ傘でのんびり、ゆったり、空中散歩――と洒落込めたならどんなによかったか分からないが、残念ながら今日はそうは言っていられない。日傘の縁から透けるまだらの陽射しを編み上げブーツの爪先に受けて、いばらは淡い笑みを浮かべた。
(「この世界のアリス達を助けるためだもの」)
オブリビオンの脅威に晒される世界を、放ってはおけない。無辜の人々を救うためならば、日傘を差して何処へでも――指揮者のように宙を切った指先に誘われて、吹き込む風は花の娘を赤い壁の聳える方へ運んでいく。進む小舟の舳先へ音もなく降り立てば、色とりどりの薔薇を飾った長いスカートがふわりと膨らんだ。
「だから、いばらも頑張るわ」
白いフリルの袖から取り出したのは、一枝の薔薇。瞼を伏せ、握った掌に魔力を集めてゆけば、薔薇は見る見るうちにその枝を伸ばし、鮮やかな蕾をつけていく。そこへ吹き損ねた笛のような声を上げ、迫り来る鳥一羽――あら、と花の如き咲みを向けて、いばらは言った。
「オニさん、こちら」
硬い嘴が舟の腹を砕いても、娘は風に吹かれる花のように揺らめいて、舟から舟へ飛び移る。ならばと鳥達は数を増して、左右から襲い掛かるのだが。
「だけど、ごめんなさいね」
倒すべき敵は、彼らだけではない。この水辺で戯れるのも悪くはないが――そろそろ、終わりにしよう。
音もなく伸びる薔薇の枝が、二羽の頸を絞め落とす。砂埃を払った日傘に両手を添えて、いばらはにっこりと笑った。
「それじゃあ、次に行きましょうか」
気付けば空を飛び交う鳥達は姿を消していた。けれども、戦いはまだ終わらない。押し寄せる新たなオブリビオンに立ち向かうべく、猟兵達は赤壁のその先へ赴くのであった。
城野・いばら
いばらもね、この世界のアリス達を助けたい
だから頑張るわ
日傘を差して何処へでもなのよ
このお水、しょっぱいなら浸かるのは良くないの
空飛べる日傘で空中浮遊し
お船と空中、行き来しつつ臨機応変に戦うわ
【フルリール】なら鳥さんにも追いつけるし、囮役にだって
オニさんこちらって、視線をお誘いし
向って来た所を
不思議な薔薇の挿し木伸ばして捕縛し、生命力吸収
群れで来たら
魔法の風起こして属性攻撃
吹き飛ばして、
距離を取ったり体勢を崩すように仕向け
共に戦うアリス達も狙い易い様に
飛翔力活かして、鳥さん達のお邪魔虫しつつ誘導を
水に落ちそうなコがいたら蔓で掴んだり(グラップル)
挿し木で武器受けてかばうわ
*アドリブ・絡み歓迎です
「このお水、しょっぱいのかしら……?」
流れる長江を空の上から見下ろして、城野・いばら(白夜の揺籃・f20406)は小首を傾げた。お喋り花の娘にとって、塩水は毒のようなものだ――幸い潮の匂いはしないけれど、それでも海のように広い河は少しぞっとしない。浸からぬように水面から少し距離を取って見渡せば、遮るもののない地平には突き立つ山と緑の森が広がっている。
雄大な景色を遥かに眺め、白いレースの空飛ぶ傘でのんびり、ゆったり、空中散歩――と洒落込めたならどんなによかったか分からないが、残念ながら今日はそうは言っていられない。日傘の縁から透けるまだらの陽射しを編み上げブーツの爪先に受けて、いばらは淡い笑みを浮かべた。
(「この世界のアリス達を助けるためだもの」)
オブリビオンの脅威に晒される世界を、放ってはおけない。無辜の人々を救うためならば、日傘を差して何処へでも――指揮者のように宙を切った指先に誘われて、吹き込む風は花の娘を赤い壁の聳える方へ運んでいく。進む小舟の舳先へ音もなく降り立てば、色とりどりの薔薇を飾った長いスカートがふわりと膨らんだ。
「だから、いばらも頑張るわ」
白いフリルの袖から取り出したのは、一枝の薔薇。瞼を伏せ、握った掌に魔力を集めてゆけば、薔薇は見る見るうちにその枝を伸ばし、鮮やかな蕾をつけていく。そこへ吹き損ねた笛のような声を上げ、迫り来る鳥一羽――あら、と花の如き咲みを向けて、いばらは言った。
「オニさん、こちら」
硬い嘴が舟の腹を砕いても、娘は風に吹かれる花のように揺らめいて、舟から舟へ飛び移る。ならばと鳥達は数を増して、左右から襲い掛かるのだが。
「だけど、ごめんなさいね」
倒すべき敵は、彼らだけではない。この水辺で戯れるのも悪くはないが――そろそろ、終わりにしよう。
音もなく伸びる薔薇の枝が、二羽の頸を絞め落とす。砂埃を払った日傘に両手を添えて、いばらはにっこりと笑った。
「それじゃあ、次に行きましょうか」
気付けば空を飛び交う鳥達は姿を消していた。けれども、戦いはまだ終わらない。押し寄せる新たなオブリビオンに立ち向かうべく、猟兵達は赤壁のその先へ赴くのであった。
大成功
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