殲神封神大戦⑨〜赤壁に蔓延るは悪意
●赤壁水上要塞
晋の皇帝『司馬炎』は伝説の怪物と呼ばれる『哪吒(なた)』との戦いにおいて猟兵が鍵を握ることを理解していた。
仙界、人界を巡って在野のユーベルコード使いたちを数多く見てきた彼にとって、猟兵達は彼が知る中で最も優れたユーベルコード使いであった。
だからこそ、この封神武侠界を襲うオブリビオン・フォーミュラ『張角』の元に集った強大な存在たちを打倒するには、猟兵たちを支援することこそが、この世界を守ることであると信じるのだ。
「如何に猟兵達が強いのだとしても、伝説の怪物『哪吒』に立ち向かうには旗色が悪いと見える。急ぎ彼等の支援を急がせねばならない。良いか、長江を進み、彼等を助けるのだ!」
『司馬炎』の号令に臣下たちが慌ただしく伝令を飛ばす。
長江の赤壁――嘗て『赤壁の戦い』が行われたかの地には広大な長江を塞ぐダムの如き要塞が存在している。
本来であれば存在していない要塞であるが、オブリビオンが作り上げたのだ。
名を『赤壁水上要塞』。
如何に『司馬炎』が猟兵たちの救援として出立させた5万もの兵を満載させた『哪吒討伐大水軍』であろうとも、被害を被ることになるだろう。
「だが、それでもやらねばならぬ。人界、仙界と区切ることはならぬ。この世界そのもの危機……猟兵達に頼らざるを得ぬことこそ歯がゆいものであるが、彼等の助力となることを信じねばならぬ」
此処に来て大水軍の損害を気にしてはいられない。
なんとしても伝説の怪物である『哪吒』を止めねばならないからだ。かの存在がどれほどの災厄を齎すのか、それを知るからこそ『司馬炎』は5万の兵をもってこれを打倒せんとしたのだから――。
●殲神封神大戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。封神武侠界、その人界にある広大な長江と呼ばれる川をご存知でしょうか?」
ナイアルテが示したのは広大な河川の姿である。
しかし、そこには本来存在しないものが鎮座しているのだ。それはダムのような巨大な要塞であり、名を『赤壁水上要塞』と言う。
オブリビオンが作り上げた要塞であり、『哪吒』と呼ばれる強大なオブリビオンを討伐するための『哪吒討伐大水軍』が今此処に迫っているのだ。
「晋の皇帝『司馬炎』様が、皆さんと『哪吒』との戦いを優位に進めるために援軍として大水軍を送ってくださったのですが、長江を往く大水軍をオブリビオンたちが要塞にて待ち構えているのです」
当然ながら如何に5万の兵力を誇る『哪吒討伐大水軍』であったとしても、オブリビオンを相手としては分が悪い。
それどころか、損害が大きければ二次的な被害は計り知れないものとなるだろう。
この大水軍の損害を最小にすべく、猟兵たちにナイアルテは『赤壁水上要塞』へと侵入し、要塞下部の『水門』を開けるための『舵輪室』にたどり着いてほしいのだと告げる。
「しかし、この要塞下部に存在する『舵輪室』に至るのは困難であるようなのです」
彼女が苦々しげに告げるのは、要塞内部に存在するオブリビオン兵による妨害だけではなく、この要塞に張り巡らされた『邪悪なる結界』のことである。
それはオブリビオンが敷いた邪悪な結界である。
猟兵たちの動きを鈍らせるだけではなく、襲い来るオブリビオン兵士たちの姿を己の愛おしき人、親しき人の姿に見せるのだ。
幻影であることはわかっているだろう。
けれど、それが猟兵たちの精神にどのような不調を齎すかは計り知れないだろう。
「結界を振り払い、オブリビオン兵士を打倒、かいくぐって要塞下部へと向かうことは困難なことでしょう。ですが、水門を開くことができれば、『哪吒討伐大水軍』の進軍はスムーズになり、彼等の被害も最小に抑えられるのです」
これもまた人々のための戦いである。
援軍はありがたいことであるが、徒に人々が生命を落とすことは、やはり避けるべきであろう。
そうでなくとも、猟兵たちの進撃において『赤壁水上要塞』は無視できぬ障害だ。
これを取り除き、急ぎ強大なオブリビオンである『哪吒』へと迫らねばならない。ナイアルテは猟兵たちに頭を再び下げ、転移を行っていく。
「どうかご武運を」
何度祈ったことかわからない。
けれど、彼女は信じている。猟兵達がこれまで如何なる困難をも乗り越えて勝利してきたのかを。
だからこそ、彼女は邪悪なる結界にも彼等が負けないことを信じ、送り出すのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『殲神封神大戦』の戦争シナリオとなります。
晋の皇帝『司馬炎』によって伝説の怪物『哪吒』と戦う猟兵の皆さんを支援する『哪吒討伐大水軍』が派遣されることになりました。
しかし、その道程にある長江、かつて『赤壁の戦い』があった場所位にはオブリビオンによる『赤壁水上要塞』が建造され、彼等の行く手を阻んでいます。
まともに戦えば、大水軍の損害は計り知れないものとなるでしょう。
大水軍が到達する前に皆さんは『赤壁水上要塞』へと侵入し、下部に存在する『舵輪室』に到達し、水門を開くシナリオになります。
内部にある邪悪な結界によってオブリビオン兵士が皆さんの大切な人の姿に見えることでしょう。
これを躱し、急ぎ要塞下部へと至らねばなりません。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……要塞内の危険とオブリビオン兵に対処する。
それでは、『赤壁水上要塞』に侵入し、『哪吒討伐大水軍』の進軍を助ける皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『邪悪なる結界』
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POW : 気合いで身体を動かし、結界の効果範囲を抜け出す
SPD : 結界を構成する陣や物品を破壊し、術の効力を弱める
WIZ : 仙術や魔術で結界の干渉に対抗する
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メサイア・エルネイジェ
要塞内はオブリビオンで寿司詰ですわね!
ええいお退きなさい!この王笏が目に入りませんか!プリンセスプレッシャー!
そんな杖知らない?(イラッ)そぉい鉄槌制裁ですわ!
はっ…!あれはお父様!?お母様に兄弟姉妹に騎士達に料理長に侍女達に臣下達に幼い頃お城を抜け出した時に遊んでくださった城下町の市井達も!?
…多すぎて久々にお目に掛かった有り難みがちょっと薄いですわ
でも懐かしくてホームシックになってしまいますわ
まあ…そんな…ヴリちゃんまで…
ってヴリちゃんは表で戦っておりますわ!これは妖ですわ!
王族に扮すると不敬罪で打首獄門ですわよ!王笏ハンマー!
わたくしの世直しの旅の覚悟はこんな幻術では揺らぎませんわ!
長江にダムのごとく建造されたオブリビオンによる『赤壁水上要塞』。その威容は凄まじいものであった。
これほどまでの建造物をすぐさま建造したオブリビオンたちの手腕は恐るべきものであったし、これより先に控える強大なオブリビオン『哪吒』の存在がどれほど危険なものであるのかを知らしめるものであったことだろう。
だが、晋の皇帝『司馬炎』もまた座して待つことはしない。
長江を往くは『哪吒討伐大水軍』。
5万もの兵を載せた水軍が『赤壁水上要塞』へと迫っている。
猟兵たちの戦いを支援するために兵を動かした『司馬炎』には感謝せねばならないが、待ち受ける『赤壁水上要塞』の守りは堅牢であった。
ゆえに猟兵たちは『赤壁水上要塞』へと侵入し、水門を開かねばならない。
このまま大水軍が此処に至れば被害は甚大なものとなるだろう。だからこそ、進撃をスムーズにするために水門を開くたために要塞下部にある『舵輪室』へと向かうのだ。
「要塞内はオブリビオンですし詰めですわね!」
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は意気揚々と要塞へと入り込む。
しかしながら、悲しいかな。
彼女の容姿は整い、その気品あふれる……溢れる……溢れている姿にオブリビオン兵士たちが気が付かぬわけがない。
この要塞内部には多くのオブリビオン兵士たちが存在している。
侵入早々に見つかってしまったメサイア。
「ええいお退きなさい! この王笏が目に入りませんか!」
くわっと瞳がユーベルコードに輝く。
これこそが、皇女の威厳(プリンセスプレッシャー)。
エルネイジェ王国の皇女にして暴虐の機械竜の乗り手である彼女の威光は凄まじい。自称でもなんでもいいから社会的に偉い立場にいることを伺わせる彼女の言動と所作はオブリビオン兵士たちをたじろがせるものであったことだろう。
しかし、此処は封神武侠界である。
知らんもんは知らんのである。
「そんな杖知らない?」
あ、イラっとした。メサイアの目がなんとなーくギャグっぽくなっているのは気のせいだろうか。気の所為である。いいね。長いものには巻かれろという言葉を贈ろうではないか。
そんなメサイアをたしなめるのは、オブリビオン兵士に重なる幻影である。
「はっ……!」
鉄槌制裁! とばかりに王笏を振るおうとしたメサイアの手が止まる。
その幻影は彼女の父親と母親。すなわち王と女王である。
そんでもって兄弟姉妹に騎士たちに料理長に侍女に臣下達に幼い頃お城を抜け出した時に遊んでくれた城下町の市井達。多いな!
あまりにも幻影が見せる親しき人々の数が多い。
マジで多い。
なんていうか、此処だけですし詰めっていうか、街一つまるごと幻影にしているんではないかというくらい冗談じみた光景である。
「……多すぎて久々にお目にかかったありがたみがちょっと薄いですわ」
言うことは言う。
マジで。
しかしながら、メサイアはホームシックになってしまう。懐かしき故郷。自身の国。慕われ、慕い、思い思われる。
そんな素敵な日々。
しかしながら、それを彼女は振り払って飛び出してきたのだ。
そう、目の前にある『ヴリトラ』と共に……。
だって涙で視界が滲んじゃう。皇女だもの。
「……まあ、そんな……ヴリちゃんまで……」
ん? とメサイアの目が細まる。
なんで外で暴れてるはずの『ヴリトラ』が見えるのか。というか、この要塞内部にキャバリアである『ヴリトラ』が入れるはずもない。
ならばこそ、メサイアはこれが幻であると気がつくのだ。
「ってヴリちゃんは表で陽動してくれているのですわ! これはあやかしですわ!」
王族に扮することは不敬罪で打ち首獄門である。
わりと洒落にならん罪である。そんな罪を罰するのはメサイアの振るう鉄槌制裁。王笏ハンマーの一撃である。
「わたくしの世直しの旅の覚悟はこんな幻術ではゆらぎませんわ!」
どっせい! とふるった一撃がオブリビオン兵士の脳天を叩き割る。
わー。すんご光景である。
メサイアのドレスが揺れる度に、『そぉい!』と掛け声が響き渡り、オブリビオン兵士たちがバタバタ倒れていく。
緊迫した事態などつゆ知らず。
皇女メサイアは、己の手にした王笏でもってラジカルなフィジカルでもって要塞下部を目指して、鉄槌を振るいまくるのだ。
きっと後の世に鉄槌皇女とか呼ばれるようになるのだろうがまたそれは別の話である。たぶんきっとめいびー――。
大成功
🔵🔵🔵
アリアケ・ヴィオレータ
アドリブ連携歓迎
「幻影、ってことは見えるだけか?
それとも声とかもすんのかな」
まあどっちにしろ、父ちゃん母ちゃんや島の皆がここに居るわけもねえし、
「一番大事なお前は、オレから離れねえもんな」
背負った『不知火』を構えて目を閉じる。
「というわけで、オレの体は任せたぜ不知火!」
視力を一時的に無くし、代償に戦闘力を強化するUC発動。
幻覚は見えなきゃいいし、そもそもオレが体を動かさなきゃためらいもない。
襲い来る兵士共の鎧を怪力で振るった不知火で貫通させ串刺しに。
舵輪室へは、多分敵が多い方に進めば着くだろう。
他に潜入してる猟兵がいたらそっちのための陽動として一箇所に留まって戦ってもいい。
常に強大な獲物を求めて止まぬ。
それが手にしたメガリスである鋭き銛、『不知火』とアリアケ・ヴィオレータ(夜明けの漁り人・f26240)に共通する唯一つであり、最大のものであった。
大物を打ち倒す喜びは何物にも代えがたい。
世界中を飛び回るのではなく、世界を飛び回る。
それがワラスボの深海人であり、同時に猟兵であるアリアケの人生そのものであった。
そんな彼女が長江にダムのように建造された『赤壁水上要塞』へと侵入したのは、単純にこれほどに大きな要塞を攻略したいと願うからであっただろうし、困難な状況であればあるほどに己の心が燃え上がるからだ。
しかしながら、要塞内部には邪悪な結界が張り巡らされている。
手にした『不知火』と共に進めば、オブリビオン兵士が親しき人の幻影に重なって見えることだろう。
「あれが幻影……ってことは見えるだけか?」
彼女の瞳に映るのは父親と母親であった。
親しき人は皆、此処にいるはずもない。
彼女の知る彼等は皆、他世界であるグリードオーシャンに今もいるだろう。ならばこそ、その幻影に意味はない。
それにアリアケが最も大切に思う『不知火』は手の中だ。
「一番大事なお前は、オレから離れねえもんな」
背負うようにして『不知火』を負えば、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
言葉を発することなく、オブリビオン兵士たちに親しき人たちの姿が重なるというのならば、見なければいい。
彼女のユーベルコードは己の視力を代償にして、棘を生やす。
「というわけで、オレの体は任せたぜ、『不知火』!」
その言葉とともに、彼女の視界は失われる。
しかしながら、不知火照らし(シラヌイテラシ)の力は彼女に視力を失うという恐れを齎すことはない。
どんなに暗闇の世界に落ちたのだとしても、彼女を照らす燈火がある。
放たれた棘が一気にオブリビオン兵士たちを穿ち、その棘から彼等の生命力を吸収していくのだ。
幻影が己に攻撃の手を緩めさせるのならば、見なければいい。
たかが幻影だけである。声を発するわけでもない。ただ、己の視界に姿を顕すだけ。
それが僅かに懐かしさを覚えさせるものであったのだとしても。
『不知火』が己の肉体を操る。
見えずとも戦うことはでき、同時に己の体は最も信頼している絆によって結ばれたメガリスの力によって要塞内のオブリビオン兵士たちを次々と貫き、怪力で持って吹き飛ばしていく。
「さあ、どんどんいくぜ!」
アリアケの叫びにオブリビオン兵士たちは続々と集まってくる。
他の猟兵達がオブリビオン兵士に惑わされぬようにと惹きつけているのだ。それに『舵輪室』へと至る道程はわからずとも、重要な場所である『舵輪室』を守るオブリビオン兵士の数は多くなる。
敵の多い方へ。
ただそれだけを為せば、自ずと要塞下部へと辿りつくはずだとアリアケは視界なき状態で己の肉体を操る『不知火』へと全幅の信頼を置く。
「誰か一人でも『舵輪室』にいけばいい……なら、陽動だって大切なことだよな!」
アリアケは『不知火』と共に迫る敵を穿ち続ける。
どんなに親しき人々が幻影と共に現れるのであっても、今の彼女には通用しない。
もしも、これが声を発するものであったのならば、僅かに動揺したかもしれない。けれど、それはない。
苦境に陥ったとしても、彼女の相棒たる『不知火』さえ居てくれるのであれば、何も恐れることはないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
劉・涼鈴
哪吒かー、色んな宝貝持ってんだろうなー
1個くらい分捕れないかな
要塞をずんずん進む!
結界の中で現れた敵は……
むぉ、パパ(大柄)とママ(小柄)(どっちも牛のキマイラ)だ
それに劉山泊(実家。劉家拳の総本山。その門下生たち)のみんなも
パパにてってってと小走りに近付いて
至近距離で【怪力】【劉家奥義・神獣撃】!
うおりゃー!
今の一撃が避けられないなんて、やっぱ偽者だね!
なら遠慮はしないぞ!
覇王方天戟をぶん回して片っ端から【なぎ払う】!
見た目が同じだって、本物と違って鍛え上げた【功夫】ない!
そんなのいくら並べたって私は止められないぞ!
伝説の怪物『哪吒』――その力の凄まじさを物語る数字として、晋の皇帝『司馬炎』は5万の兵をもって、猟兵の支援とした。
しかしながら、その兵力であったとしても長江にダムのごとくそびえる『赤壁水上要塞』は『哪吒討伐大水軍』の行く手を阻む。
もしも、なんの策もなしに水軍が差し掛かれば、オブリビオンの抵抗に寄り損害は免れぬであろう。
そうなっては人々の生命が失われるだけではなく、今後の戦いにも支障がでることは明らかであった。
「『哪吒』かー、いろんな宝貝持ってんだろうなー」
一個くらいぶんどれないかな、と劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)は、『赤壁水上要塞』へと侵入しながら考える。
伝説の怪物。
そのフレーズだけでも涼鈴にとっては魅力的な存在である。
同時に強敵であることもまた伺えるのだが、彼女は要塞の中をずんずんと進みゆく。潜入という文字はおそらく見当たらない。
どちらにしたって襲い来るオブリビオン兵士を打倒しなければならないというのであれば、見つからずに進むよりも強引に進んだほうが良いと判断したのだろう。
「でも、結界があるって言っていたしなー」
どんな幻影がでてくるのだろうと、彼女は首をかしげる。
そんな彼女の前に現れたのは牛のキマイラたちであった。
男女二人組。
彼等のことを涼鈴はよく見知っていた。
「むぉ、パパとママだ」
大柄な父親と小柄な母親。
どことなく面影があるのが血の繋がりを感じさせるであろう。そんな久方ぶりに見る両親の姿に涼鈴は駆け寄っていく。
その道すがら、さらに両親の背後には、梁山泊の門弟たち。
みんな久しぶりである。
「あ、みんなも!」
実家が劉家拳の総本山であるがゆえに、門下生たちは皆、弟のようなものである。
てってってと小走りに近づく。
それは懐かしさが勝るがゆえの小走りであったことだろう。
幻影をかぶせたオブリビオン兵士たちがほくそ笑む。親しき者を手にかけることをためらうのが猟兵であるがゆえに、きっと涼鈴もまたそうであろうと踏んだのだ。
「うおりゃー!」
しかしながら、答えは単純であった。
鉄拳による一撃。
至近距離より放たれた拳の一撃は、凄まじい威力でもって父親の幻影をかぶせたオブリビオン兵士を要塞の壁をぶち破って吹き飛ばす。
えぇ……。
オブリビオン兵士もこれには唖然としていた。
どういうことだろうか。手加減もへったくれもない渾身の一撃である。
「今の一撃が避けられないなんて、やっぱ偽者だね!」
彼女の言い分は最もであった。だが、え、マジで? とオブリビオン兵士たちは慄く。父親であれであるのならば、他の者たちにももしかして同様で?
そんな気配が漂った瞬間、放たれるは劉家奥義・神獣撃(リュウケオウギ・シンジュウゲキ)の一撃。
凄まじい拳の一撃は他の門弟たちの姿をしたオブリビオン兵士たちをもぶっ飛ばしていくのだ。
「偽物に遠慮なんてんしなぞ! 見た目が同じだからって、本物と違って鍛え上げた功夫はない!」
手にした方天戟を振り回し、次々とオブリビオン兵士相手に大立ち回りを演じる涼鈴。
彼女の戦いぶりはまさしく暴風そのもの。
どれだけオブリビオン兵士たちが幻影を見せるのだとしても、今の彼女には無意味だ。
幻影であるとわかっているからこそ、どんなに親しき人であっても涼鈴はぶっとばせる……というわけではない。
彼女の親しき人達は皆、自分の一撃を必ず躱す。
それが出来ぬ以上、本物ではない。
その存在証明こそが、劉家拳の鉄の掟。
彼女はそれに従ったまでのこと。荒れ狂うような方天戟の連撃は次々とオブリビオン兵士たちをぶっ飛ばし、壁に、床に、天上にめり込ませ、要塞下部へと向かうのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
荒珠・檬果
赤壁と聞いて黙ってはおれなかった。
そういえば、時間さえあればこういうの作れるUCありましたねぇ。それで作ったのかな?
で、UC使って。呪縛は呪詛耐性で凌ぎつつ。まあ、理由はあるのです。
親しい人たち…ええ、居候な彼とか、独り立ちする前にお世話になったUDC職員とか見えますね。
ただね、宿してる三人にも見えちゃってるんですよ、幻覚。で、三者三様に見えてるもので…。
一通り騒いで、意見一致したんですって。
『ぶっ叩いてよし』
…まあ、こうなるって思ったからこのUC使ったんですけどね!
七色竜珠を全て合成、白日珠[ハンマー形態]に。おもいっきり叩こうとすると、これなんですよね。
では、邪魔するものを叩いていきます!
長江における赤壁の戦いは、かつて有りした戦いである。
三国志に伝えられる戦いを知る者として、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)はどうしても黙ってはいられなかったし、座して待つ事もできなかっただろう。
「仕方ないのです。こればかりは」
彼女の握った拳が震える。
目の前には赤塗の壁で覆われた『赤壁水上要塞』である。その威容は凄まじく、突如として現れた要塞をオブリビオンが如何にして建造したのかを知らしめるものであった。
きっとあれはユーベルコードに寄って生み出されたものであると檬果は推理していた。
自分たちが扱うユーベルコードにも時間さえあれば城さえ生み出す力が存在している。きっとそれに類するものを使ったのだろう。
しかし、その要塞を攻略するために潜入すると成れば話は別であった。
「まさに、三国よ、鼎立の礎を築け(ソシテシンヘトイタル)、ですね。先の戦いを思えばこそ」
彼女のユーベルコードに寄って、鳳祖王『曹操』、龍先帝『劉備』、虎陽皇『孫権』が体に宿る。
己の身を縛る呪縛は呪詛への耐性でもって耐えしのぐ。
いや、かの英雄たちを身に宿すのであれば、それくらい耐えて見せねばならぬのだろう。なにせ、彼女は三国志に対して並々ならぬ情熱を持つからである。
同時に要塞の中に張り巡らされた結界には、オブリビオン兵士に親しき人達の幻影を見せる力がある。
どんな英傑も親しき人を見れば戦意を解くだろう。
絆されもするだろう。
それこそがオブリビオン兵士たちの目論見である。その一瞬の隙を付いて猟兵たちを撃退しようというのだ。
「……見えますね、ええ。居候な彼とか、独り立ちする前にお世話になったUDCの職員さん……」
懐かしさと親愛の念が檬果の胸に去来する。
すぐさま会いたいとも思えるし、彼等に刃を向けることもできないと思えるものであった。
だがしかし。
そう、しかしである。彼女の体に宿した三人の英傑たちも同様である。幻覚で三者三様に見える幻覚は、混乱を招くだろう。
体の中で三人が揉めにもめている。
ドッタンバッタン騒がしいのを彼女は何処か遠く聞こえていた。
あれやこれやと三国志の知識が下手にあるせいで、どれもこれもがうなずけることばかりであった。
「うんうん、わかりますわかります」
檬果は彼等の言葉に耳を傾ける。
謂わば、ファンミーティング敵なあれである。オーディオコメンタリーとも言うのかもしれない。
そんな幸せな時間はあっという間であるし、そんな隙だかけの彼女めがけてオブリビオン兵士たちが殺到する。
「ああ、でも意見一致しましたね」
彼女の瞳が輝き、手にしたハンマー形態の白日珠が煌めく。
内部での結論は唯一。
『ぶっ叩いてよし』
誰のことを思い浮かべていたのかわからないが、三者に関連のある人物であるのだろう。
放たれるハンマーの一撃は檬果の力を持って放たれる。
その一撃は強烈なる打撃となって迫るオブリビオン兵士たちを吹き飛ばす。
「お許しが出たところで、邪魔する者はみーんな、これでぶっ叩いていきましょう!」
ぶんぶんと風を切ってハンマーが唸りを上げる。
要塞下部を目指して、轟音響かせながら檬果は体の内側で行われる三人の英傑の声を聞くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
董・白
哪吒太子…ですか。
とんでもない大物が出てきましたね。
というか、オブビリオンの手に落ちていたなんて…。
まずは要塞攻略。
あれは、お爺様?
それにあれはお爺様の部下の…それに武侠様…。いえ、お爺様方が無くなれてもう何十年もたってるんです。
亡くなった過去はカクリヨファンタズムで経験しています。
超えて見せます。過去は!!
『道術』で『結界術』に干渉し、一時的に真実の姿に戻しました。
大丈夫。ここにいるのは悪しきオブビリオンです!!
むしろ感謝します。
私が過去に怯えることがない。今に生きていけると再認識できたのですから。
だから、もう少しあの世で待っていてください。白はまだ生きています。たとえ、僵尸であっても…。
強大なオブリビオンの存在はいつだって世界を揺るがすものである。
存在するだけで世界の破滅が引き起こされるのが過去の化身の力であるというのならば、その力の強弱は何処で決まるのか。
少なくとも伝説の怪物と呼ばれた存在は、過去より現れし強大な力を有するだろう。
「とんでもない大物が出てきましたね……」
董・白(尸解仙・f33242)はそれ以上にオブリビオンとして過去より舞い戻ったことをこそ嘆くものである。
神仙の類。
しかし、それでも過去に、骸の海に沈めば過去に歪む。
悲しいが、それが世界のあり方であるというのならば、己の大切な者たちもまた過去に沈みし者たちである。
『赤壁水上要塞』は悪しき結界に覆われている。
オブリビオン兵士たちに幻影をかぶせ、対峙した者の親しきもの、大切な者の姿えもって襲い来るのだ。
悪辣と言う他無い。
けれど、それが猟兵にとって最も痛烈なる攻勢であることは認めざるを得ないだろう。
白もまたその一人である。
彼女の目の前に存在するのは彼女のよく知る人物であったからだ。
「あれは、お爺様? それにあれはお爺様の部下の……それに武侠様……」
白は理解している。
己の大切な者が何十年も前に亡くなっていることを。
だが、己の心はそれを否定している。目の前にいるのは自分の祖父であると。だからこそ、心が揺れる。
揺れて、揺れて、そして彼女の心は水面の如く。
如何に波紋が広がるのだとしても。それでも水面は鏡面のごとく。
すでに似たような経験をしているのだ。
過去は異なる世界で克服してみせた。
ゆえに彼女は克服してみせる。
「超えて見せます。過去は!!」
彼女の道術が結界に干渉し、幻影をかぶるオブリビオン兵士たちの姿を白日の元に晒す。
そう、目の前にいるのはオブリビオン。
彼女の祖父でもなければ、大切な者たちですらない。
心が揺れるのならば、その揺れを治める心を持てばいい。
「ここにいるのは悪しきオブリビオンです!!」
彼女の宝貝「五光石」(パオペエゴコウセキ)が疾走る。
光弾が中を走り、オブリビオン兵士たちを打ち据え、叩きのめす。どれだけ己の心が揺れるのだとしても、経験は乗り越えることができる。
それを証明するように白の瞳はユーベルコードに輝くのだ。
「感謝します。私が過去に怯えることがない。今に生きていけると再認識できたのですから」
彼女は揺らぐ。されど、その揺らぎは己の心でもって鎮めることができる。
放たれる光弾の軌跡が描くのは未来につながる可能性である。幻影はもう見えない。
「だから、もう少しあの世で待っていてください。白はまだ生きています」
例え、と小さくつぶやく。
それは遠く消えていく儚いほどのつぶやきであったけれど。
確かに彼女は言ったのだ。
己が僵尸、すでに死した屍に宿る魂であったのだとしても。
それでも『今』を生きていくと決めた光が瞳に宿る限り、歩みは止めないのだと宣言するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
待鳥・鎬
そりゃ分かっていても、ね
うわ
今は亡き親友に、眠っている間の記憶にある彼女の孫やひ孫達……そして、神隠しで一緒にサクラミラージュへ飛ばされてきた末孫まで
時代を越えて、待鳥家の人達が総出だ
他にも昔の友人達の姿が見えるし、皆が徴兵されてるみたいで気分悪い
常に「山吹」の光学迷彩を纏って、すり抜ける時は忍び足で進む
万が一気付かれたらUCで駆け抜けて撒く
囲まれたり回避が困難な時は、薬物撒布型擲弾で強力な睡眠剤をばら撒いて、纏めて処理する
……皆が幻影と向き合って戦っているのは知ってる
これは自分の弱さだと思う
でも、分かっていても、斬りたくないものは斬りたくないんだ
目的は水門を開くこと
雑兵を殲滅することじゃない
悪しき結界が齎すのは、皮肉なことに相対する者の大切な者や、親しき者たちの姿であった。
その姿でオブリビオン兵士たちが襲い来る『赤壁水上要塞』の内部に潜入した猟兵たちは、幻影に惑わされながらも要塞下部に在る『舵輪室』へと至らねばならない。
この長江にそびえ立つ要塞の水門を開かねば、晋の皇帝『司馬炎』が遣わせた大水軍に要らぬ打撃が与えられ、損害を被ってしまうからだ。
「そりゃ分かっていても、ね」
待鳥・鎬(草径の探究者・f25865)は思わずうめいていた。
彼女の目の前にあるのは、今は亡き親友と、自身が眠っている間の記憶にある彼女の孫やひ孫達。
そして神隠しで一緒に異界に飛ばされてきた末孫まで、時代を越えて侍鳥家の者たちが総出で出迎える。
わかっていることだ。
これが幻影。
己が大切に思う者たちをオブリビオン兵士にかぶせただけの存在でしかない。
けれど、その他にも昔の友人たちの姿が見える。
「どうにも、みんなが徴兵されてるみたいで気分悪い」
未だ彼女はオブリビオン兵士には見つかっていないが、彼等の姿どうしても大切な者たちに見えるのは如何ともし難い。
隠れ蓑の効果を持つ羽織物をかぶり、鎬は要塞内部を忍び足で進む。
できることなら争いたくはない。
オブリビオンであるから打倒すべき存在であるのには間違いない。
けれど、鎬はどうしてもそれができそうもないことを理解していた。
自分のことだから、よく理解しているのだ。
「……みんなが幻影と向き合って戦っているのは知ってる」
けれど、と思うのだ。
これもまた己の弱さだと思う。それでも斬りたくないと思う。
こればかりは他の誰にも理解されないことであり、同時に理解を示すことのできるものであったことだろう。
今回の戦いでの目的は水門を開くこと。
敵の殲滅ではない。
ならば、鎬は己の心に従うのだ。その結果、オブリビオン兵士を倒すことなく『舵輪室』へと至るのだとしても、誰も彼女を責めることはないだろう。
誰もが彼女と同じ気持ちを抱く。
しかし、それを弱さと呼ぶ者はいないだろう。弱さも強さもひっくるめて、その猟兵としての個人がある。
戦いを嫌う者がいたっていい。
目の端を通り過ぎていくオブリビオン兵士の幻影は、懐かしさを覚えさせるだろう。
「斬るのは嫌だな……」
要塞内部では何処かしかで戦闘が起こっているのだろう。
それを遠く聞く鎬は、困ったように眉根を寄せる。何処かで誰かが幻影に向き合っている。彼等は強いなとも思う。
己の弱さと向き合うこと。
それもまた強さの一つであるのならば、鎬は手にした薬物散布型擲弾でもって強力な睡眠薬をばらまき、オブリビオン兵士たちを昏倒させる。
「これなら、大丈夫だね。本当の君たちじゃあないのだろうけれど」
それでもおやすみ、と小さくつぶやき、鎬は要塞の下部へと走る。
多くの人が傷つかぬように。
そして、目の前に現れる自分の大切な人達の幻影。例え幻影だとしても傷つけたくないと願う鎬の心は、決して弱いものではない。
彼女は歩みを止めない。
本当に嫌だというのならば、向き合うこともせず、脇目もふらずに逃げているはずだ。
けれど、それをしなかったことこそが、鎬の猟兵としての資質。その本質であったのだろうから――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
本日のライブ会場は赤壁水上要塞なのでっす!
やや、なんとなんと!
ファンの皆様が藍ちゃんくんのアイするおねーさん(f27635)や、親愛なるおにーさん(f06061)、敬愛なるおぼっちゃん(f02666)に見えちゃうのでっす!
これはつまり、楽園ということではないでっしょかー!
となれば、ええ!
テンション上がるがままに、おっきな声で歌っちゃうのでっす!
あやー、なにやら皆さん、腰砕けなようでっしてー?
ところで、ええ。
ヒトを成すのは容姿だけではないのでっしてー。
だまし討ちしようものなら演技も頑張るべきでっすよー?
ではでは水軍の皆様のお迎えライブの準備の為にも舵輪室へゴーなのでっす!
「藍ちゃんくんでっすよー!」
その言葉は長江にそびえる『赤壁水上要塞』より響き渡る声であった。
そう、それは紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)によるライブの掛け声。コールとも言う。
「本日のライブ会場は『赤壁水上要塞』なのでっす!」
いえいいえいとウィンクしながら藍は、要塞にいるオブリビオン兵士たちの注目を独占するのだ。
藍が何故、こんなにも派手に己の姿を晒し、注意を惹きつけているのかは言うまでもない。この要塞に備えられた水門を開くため、要塞下部にある『舵輪室』を目指す猟兵たちの支援のためである。
ライブ会場とは名目に過ぎないのだ。
けれど、藍の瞳に映るのは邪悪な結界による幻影。
「やや、なんとなんと!」
目の前に迫るオブリビオン兵士たちの姿は、結界によって藍の大切な人達、親しき者たちへと変貌する。
藍にとってはファンのみんなと言う名のオブリビオン兵士たちが急に自身の姉や親愛なる兄、敬愛なるおぼっちゃんの姿に見えてしまう。
本来であれば、たじろぐところであろう。
だが、藍は違う。
彼等のことを本当に好きであり、大切だと思うからこそ、目の前の光景は楽園そのもなのである。
テンションが下がるどころではない。
爆上げ、テンアゲというやつである。いつになくテンションマックスな藍は息を大きく、大きく吸い込むのだ。
「つまりこれは楽園なのでっす! ええ! 本当に、此処が楽園なのでっす!」
テンションの上がるままに、ボリュームのつまみが壊れたかのような大音量で持って歌う藍。
「ああなんて素敵!」
止まらない。
止められない。歌うことがやめられない。テンションはアゲアゲマックスであり、もうどうしようもない。
楽しいという思いが幸福を運ぶ青い鳥のオーラを放ち、翼でもってオブリビオン兵士たちを包み込んでいくのだ。
全力の歌を披露する藍に迫っていたオブリビオンたちが皆腰が砕けたように倒れ伏していく。
さもありなんである。
「あやー、なにやら皆さん、腰砕けなようでっしてー? 続けていっきまっすよー!」
藍の歌声が響き渡る。
水上にありて要塞はすでに藍のオンステージ。
誰も邪魔することなど出来ないのだ。
「ところで、ええ。ヒトを成すのは容姿だけではないのでしってー。だまし討ちしようものなら、演技も頑張るべきでっすよー?」
らんららと、ステップを踏みながらウィンクを重ねる。
藍の声はオブリビオン兵士たちに届いているだろう。
けれど、彼等はもうまともには動けない。
戦闘意欲だけではない、大音量でもって心を震わされ、己の戦う意義すら見いだせなくなっているのだ。
「ではでは水軍の皆様のお迎えライブの準備の為にも『舵輪室』へゴーなのでっす!」
それじゃあね、とまたウィンクを飛ばして藍は要塞の内部へと飛び込んでいく。
藍の言葉通り、どれだけ姿形を真似たとしても、意味などないのだ。
何故自分が彼等を大切に思うのか、その気持ちがあればこそ、藍はオブリビオンの悪辣なる罠に騙されることなどないだろう。
軽やかなステップで要塞を往くのは、とても心地よいものであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
ああ、またあの時と同じ
時に幻覚を見せ、時に悪夢の檻に閉じ込めて
偽物の夫の幻影でわたくしの心を折る
卑劣な罠を仕掛ける敵と何度対峙したことか
「お前が傷つき戦う必要なんてない」
「ずっとずっと、俺と一緒にこの楽園にいよう」
「邪魔する者の無い場所へ、二人で逃げよう」
そう語り掛けるように、偽物の彼は作り物めいた笑みを浮かべる
黙れ、痴れ者
彼は決してわたくしの救世の願いを嘲らない
安寧の顔をした怠惰の誘惑に閉じ込め自由を奪うことはない
人々の明日の為、共に立ち向かうと誓った
胸の聖痕に
薬指の指輪に
決して誓いを忘れぬよう心を鼓舞して
虚偽の罪犯す者共に神罰を
裁きの光よ、悉く敵を穿て
二度と悪意に惑わされるものか
これが何度目であったかなどヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は最早数えるのをやめた。
封神武侠界、長江に在りし『赤壁水上要塞』は邪悪なる結界によって、オブリビオン兵士を己の大切な者や親しき者の幻影によって覆い隠す。
彼女の目の前にいるのは、夫。
それが偽物であると彼女は看破している。
「ああ、またあの時と同じ。時に幻覚を見せ、時に悪夢の檻に閉じ込めて偽物の夫の幻影でわたくしの心を折る」
卑劣な罠そのものである。
だが、このような罠と敵とに何度彼女は対峙したことだろうか。
幻聴さえも聞こえてくるようであった。
『お前が傷つき戦う必要なんて無い』
『ずっとずっと、俺と一緒にこの楽園にいよう』
『邪魔する者の無い場所へ、二人で逃げよう』
それらは全て甘言であったことだろう。
偽物の夫は、作り物めいた笑みを浮かべている。ヘルガは、その笑顔をこそ唾棄すべきものであると知っている。
己の知る夫は、そんなことを口にはしない。
怒りに震えるのは体ではなく心だ。涙の日(ラクリモーサ)にも彼女は祈ることをやめなかった。
静謐なる聖歌が響き渡る。
祈りを捧げ、彼女の周囲にありし、彼女の心を惑わし折ろうとする悪辣なる徒をこそ穿つ眩き裁きの光が降り注ぐ。
「黙れ、痴れ者」
ヘルガは迫るオブリビオン兵士たちを一喝する。
どれだけ愛しき者の姿をしているのだとしても、幻聴のごとく響き渡る声は甘やかだ。
されど、ヘルガはかぶりを振る。
「彼は決してわたくしの救世の願いを嘲らない。安寧の顔をした怠惰の誘惑に閉じ込め、自由を奪うことはない」
それは彼女と彼とが立てた誓いに他ならず。
幻影をかぶるオブリビオン兵士たちが決して知り得ぬ真実である。
己たちは猟兵である。
何のために戦うのかなど、その理由は言わなくてもわかるものである。ただオブリビオンだけが、その理由を知らない。
己たちの欲望のみにおいて、力を振るう者たちにヘルガたちが胸抱く決意は理解などできようはずもない。
「それは人々の明日の為、共に立ち向かうと誓った」
胸の聖痕に。
薬指の指輪に。
決して誓いを忘れぬようにと鼓舞する祈り。目の前に迫るオブリビオン兵士たちの姿は愛しきもの。
されど、それは虚偽。
ゆえにそれは彼女にとっての大罪そのものである。ゆえに彼女の瞳はユーベルコードの輝きに満ちるだろう。
「裁きの光よ、悉く敵を穿て」
放たれる眩き裁きの光が再び『赤壁水上要塞』に降り落ち、破壊していくだろう。
オブリビオンたちは最早霧消した。
もう彼女を惑わすものなど存在しない。
これより先に進み、再び幻影が姿を顕すのだとしても。
「二度と悪意に惑わされるものか」
その決意があるからこそ、そして、彼女の心のなかに愛しきものを思う心が在る限り、その幻影は意味をなさないものだと知らしめるように悲哀を拭う光は、悪意を穿つ槍となってはなたれ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
POWで挑む
アドリブや連携も大歓迎だ
「オレ達猟兵のために頑張ってくれている人達がいるんだ。
だったら、オレ達だってやれることをする!
大水軍の被害を減らすためにもやらせてもらうぜ。」
要塞に飛び込み、下部を目指して走り出す
途中にあるトラップは破壊できるものはサンライザーの[誘導弾]を
走りながら発射して破壊する
壊せないものは[オーラ防御]しながら、[気合い]で避ける
「父さんや母さん、兄弟にダチ。
本当にたちが悪い結界だな!」
わかっていても、やっぱ攻撃はできねえ
「なら!手は一つ!近道を作る!」
ディゾンネイタ―に炎を灯し、[衝撃波]と共に床をぶち抜く
次々と道を作り、舵輪室を見つけだす
「もう、来たくねえな。」
晋の皇帝『司馬炎』は5万もの兵をもって大水軍を長江の『赤壁水上要塞』へと派遣した。
それは殲神封神大戦を戦う猟兵たちを支援するためである。
彼は猟兵たちの力を知っている。
在野にありしユーベルコード使いのどんな者たちよりも強力な力を振るう彼等をこそ戦いの主軸に置くべしと考えるからこそ、猟兵たちの消耗を抑えるべく己たちの持てる力をもって支援すると決めたのだ。
その采配は確かに名君と呼ぶに相応しいものであったことだろう。
だが、敵はオブリビオンである。
『赤壁水上要塞』はそのままでは大水軍に甚大な被害を齎すだろう。
そうなっては猟兵達が戦う意味こそが失われてしまう。
「オレ達猟兵のために頑張ってくれている人達がいるんだ。だったら、オレ達だってやれることをする!」
空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の瞳は決意に燃えていた。
大水軍の被害を最小限に抑えるために要塞に飛び込み、下部にある『舵輪室』を目指して駆け抜けるのだ。
真紅の鎧より放たれる太陽の如き炎が、要塞内部の罠の尽くを破壊していく。破壊できるものは全て破壊していこうというのだろう。
それだけの騒ぎを引き起こせば、要塞内部のオブリビオン兵士たちをひきつけてしまう。
けれど、それは清導にとっては望むところであった。
「『ブレイザイン』は負けやしない! どこからでもかかってこい!」
清導の真紅の鎧が炎をまとって燃え上がる。
オブリビオン兵士たちを寄せ付けぬ炎は、しかして止まる。
どれだけ分かっていたとしても、どうしてもオブリビオン兵士がかぶる幻影にたじろいでしまう。
そこにあったのは彼の両親や兄弟、そして親友たちであった。
目の前に彼等の顔がある。
彼等の幻影だと理解していたとしても、襲い来る彼等に対して清導は攻撃を仕掛けることが出来なかったのだ。
どうしてもできない。
「本当にタチが悪い結界だな!」
手が震える。
もしも、という可能性が頭をかすめる度に手が止まってしまうのだ。しかし、この要塞下部にある『舵輪室』へと向かい、水門を開かねばさらなる人々が犠牲になるだろう。
優先順位を間違えてはならない。
彼は巨大なハンマーを手にする。彼の意志に反応し、炎が噴出する。オブリビオンの暗躍が人々に累を及ぼすというのならば、それを許さぬとする意志が炎となって燃え上がるのだ。
「なら! 手は一つ! 近道を――」
作る! と咆哮するブレイザインの体が黄金のオーラに包まれていく。
スーパージャスティスたる己の心が炎となって噴出していく。振るい上げたハンマーの一撃がオブリビオン兵士に放たれることはなかった。
その一撃は床をぶち抜き、下部へと至る道を作り出すのだ。
噴出する炎が『赤壁水上要塞』の天上すらもぶち抜く炎となって立ち上がっる。衝撃波がオブリビオン兵士たちを吹き飛ばす。
「流石に硬い……けど!」
さらにハンマーをふるって、まるで削岩するように清導は『舵輪室』を目指す。
彼は止まらない。
オブリビオンが無辜なる人々に齎す悪意を知っているからこそ、立ち止まることは許されないのだ。
それでも小さくつぶやく。
「もう、来たくねえな」
己の大切な人々の幻影で迫る敵。
それは己の心にこそ痛烈なる打撃を与えるものであったから。それをかき消すように立ち上る炎と共に清導はブレイザインとして要塞下部を目指すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
事前にUCを発動し「黒炎鎧、御使い、呪避け、暗殺者、
狂気避け、破魔、闇夜、迷彩」の呪詛を付与
結界による自身の弱体化を●呪詛耐性の●オーラで防御して受け流し、
強化した●狂気耐性と両眼に●破魔の●力を溜める事で真実の姿を暗視して見切り、
自身の姿や存在感を消す●迷彩術式で●闇に紛れて先に進み、
道中の敵兵は死角から切り込み大鎌で首を切断する●暗殺術で対処する
…こんな場所にあの人が独りでいるはずが無いもの
事前に幻だと分かっていれば見破るのは造作も無い
…だけど、私の心に土足で踏み込んだ罪は重いわ
私の怒りに触れた以上、このふざけた要塞を築いた者には必ず、
相応の報いを与えてあげるわ。ええ、必ず…ね
吸血鬼狩りの業・千変の型(カーライル)は術式を換装するユーベルコードである。同時に術式に宿りし呪詛をもって己の力を強化する型。
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は長江の『赤壁水上要塞』に侵入する際に、内部に張り巡らされた結界による己への弱体化を呪詛への耐性でもって受け流す。
「……術式換装」
小さくつぶやく。
彼女は、その瞳に狂気への耐性を宿す。
これより足を踏み入れる要塞内部は、オブリビオン兵士が満載されている。
彼等の姿が己の親しき人、大切な者の姿をかたどるというのであればこそ、彼女は万全なる体勢をもってこれに望まなければならない。
「……」
息をゆっくりと吐き出す。
己が瞳が捉えるのはオブリビオン兵士だけである。
どれだけ結界が強固なものであったとしても、破魔の力を溜め込んだリーヴァルディは己の両眼に映るものが、偽りであると知る。
「……こんな場所にあの人が独りでいるはずが無いもの」
どれだけ破魔の力や耐性を上げたとしても、要塞内部に張り巡らされた結界の力は強力であった。
リーヴァルディの視界にあるのは、大切な人。
幻だと判っている。
心は揺れない。事前に幻であるとわかっていれば、見破ることは造作もないこと。揺らぐ幻影がオブリビオン兵士の姿を暴き出す。
「……だけど」
一歩を踏み出す。
それは大切な人に近寄るものではなかった。
己の敵を討つための一歩であったのだ。死角より踏み込む一瞬。もしも、目の前のオブリビオン兵士が本当に大切な人であったのならば、如何に己が気配を消していたとしても、気がついたことだろう。
ならば、逆説的に目の前の幻影をかぶる存在は己の大切な人ではないのだ。
振るった大鎌の斬撃。
その一撃が暗闇から煌めく。首が要塞内部に飛ぶ。
「私の心に土足で踏み込んだ罪は重いわ」
リーヴァルディの瞳は怒りの燈火を宿す。
幻影であるとわかっていたとしても、幻影を見破ったとしても。
己の中にある大切なものに触ったのだ。オブリビオンが。
「私の怒りに触れた以上、このふざけた要塞を築いた者には必ず相応の報いを与えてあげるわ」
人の心を弄ぶ術。
それを齎すオブリビオン。これまで何度と無く見てきたものである。
敵は、これが猟兵に対する最も有効な戦い方であると理解しているのだろう。
悪辣と呼ぶに相応しい。
だからこそ、リーヴァルディは容赦などしない。
次々と闇に紛れ、迷彩術式でもって姿を隠しながら要塞下部を目指す。舵輪室に居たり、必ず水門を開く、迫る大水軍の進行を助けなければならない。
そして、この要塞の主であり、オブリビオンの首魁に己の刃を届かせるのだ。
「ええ、必ず……ね――」
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
私に対して結界が選んだ幻影は……やはりアレクシア様でしたか
(紫髪の宿敵女性)
遥かな昔、かの人の想い人を私が殺め
その憎悪で私を壊して死した我が創造主
騎士を目指す猟兵として、オブリビオンとして蘇ったのは悪い冗談のようです
尤も…兵士全員が同じ顔という、この光景の滑稽さとは比べるべくもありませんが
剣と盾を振るい蹂躙
蘇った彼女が私へぶつけた憎悪…その程度の形相と怨嗟だと?
騎士として歩めと、この剣を私に託した情念の重さは…その程度の再現度と?
上辺だけの化粧など、笑う他ありません
電脳禁忌剣より超巨大光刃を形成し要塞の防備を破壊
故郷の危機と身を投じた大水軍の兵士達の為、歩みを止めはいたしませんとも
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は己の電脳がハッキングを告げていることを知る。
アイセンサーから伝わる情報に誤った物が流れ込んできていることに気がついてはいたが、目の前のオブリビオン兵士が自身の良く知る存在に見える事実だけはいかんともし難かった。
「……やはりアレクシア様でしたか」
小さくつぶやく。
寂寞の思いがこみ上げてくるかもしれない。
立ち止まる両の足。
鋼鉄の体であったとしても、目の前の存在を無視することなどできようはずもなかった。
はるかな昔、かの人の想い人を己が殺めた。
その憎悪でトリテレイアを壊して死した創造主。
それがアレクシアという女性であった。紫の髪が揺れている。騎士を目指し、騎士たらんとする己が猟兵へと至ったのは必然であったのかもしれない。
オブリビオンとして蘇った創造主。
まるで悪い冗談のようだと思っていた。だが、たしかにトリテレイアは動揺したことであろう。
それはオブリビオン兵士たちにとって悪い意味で、であったが。
「尤も……兵士全員が同じ顔という、この光景の滑稽さとは比べるべくもありませんが、悪い冗談のようです」
トリテレイアは躊躇わなかった。
手にした剣と盾でもって己が創造主と同じ姿をするオブリビオン兵士たちを蹂躙する。
彼女の己にぶつけた憎悪は、この程度のものではない。
今も尚電脳にこびりつく形相と怨嗟を知るからこそ、トリテレイアは立ち止まらない。
己の中に流れるは騎士道精神。
「私に騎士として歩めと、この剣を私に託した情念の重さは……その程度の再現と?」
あり得ない。
そんなわけがない。他ならぬトリテレイア自身が理解している。
彼女の情念はこの程度ではない。己の躯体に修められたそれを知るからこそ、目の前の幻影全てが偽物であると知る。
「上辺だけの化粧など、笑う他ありません」
託された電脳禁忌剣より迸るエネルギーが巨大な光刃となって『赤壁水上要塞』の天井を穿つ。
立ち上がる光柱。
それは電脳が振り絞ったトリテレイアの怒りという感情であったのかもしれない。齎すは破壊。
されど、彼が刃を振るう理由は唯一である。
「故郷の危機と身を投じた大水軍の兵士たちの為、この歩みは止めはいたしませんとも」
巨大な光刃が一気に振り下ろされる。
どれだけオブリビオンが人々の安寧を勝ちとらんとする歩みを止めようとするのだとしても。
それでも猟兵たちは駆けつけるであろう。
オブリビオンが存在する限り、オブリビオンが悪意を持って人の営みに介入しようとする度に己たちは剣を振るうだろう。
「それが願われた者の果たすべき責務」
『赤壁水上要塞』の赤塗の防壁を引き裂き、光刃が振るわれる。
破壊が、オブリビオン兵士たちを吹き飛ばしていく。
どんな幻影が己を惑わすのだとしても、胸に抱いた思いは陰ることはないのだ。
それを示すようにトリテレイアは電脳禁忌剣を振るうのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
司馬炎さんも動きが早いなあ
援護はありがたい
けどそれを阻む水上要塞…よくもまあ、こんな物を作り上げたもんだ
おまけに結界?
神仙とかの術かな?
時間があれば解析してみたいけど、あんまりのんびりも出来ないしサッサと突破してしまおう
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
更に【神器複製】を起動
こっちの動きを鈍らせるなら手数を増やし、目の前に敵が出て来たら『念動力』で飛ばして即攻撃
私も手近な敵を『なぎ払い』、倒して奥へと進んで行こう
所謂幻惑…か
確かにどっかで見たような身内や戦友、今まで関わって来た色んな人の姿が見える
…けども、悪いね
私程度に簡単に斬られるような人は偽物だって直ぐわかるんだよ
『哪吒討伐大水軍』の動きは素早いものであった。
即座に5万の兵力を動かす決断もさることながら、その用兵こそが名君と呼ばれた晋の皇帝『司馬炎』の本来の姿と力であるといえるであろう。
伊達に大陸統一を果たした器ではない。
「『司馬炎』さんも動きが早いなあ。援護はありがたいけど……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、『司馬炎』の手腕に感嘆しつつも、目の前に広がる長江を堰き止めるかのごとき巨大な『赤壁水上要塞』の威容に息を吐き出す。
「大水軍の被害は確実……よくもまあ、こんなものを作り上げたもんだ」
赤塗の防壁。
巨大な要塞は、一日二日で生み出せるものではない。これもまたおそらくユーベルコードに寄るものであったことだろう。
さらには結界が張り巡らされているという。
内部に満載したオブリビオン兵士たちの姿を対峙する者の大切な者や、親しき人の姿として見せる幻影である。
おそらく神仙の術の類であろう。
「時間があれば解析してみたいけど、あんまりのんびりもできないし」
さっさと突破してしまおうと、玲は模造神器を二刀振り払う。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「さあ、私の研究成果のお披露目だよ!」
抜き払った模造神器が空に浮かぶ。
いや、違う。彼女の手には以前二振りの模造神器がある。ならば、その空中に浮かぶ模造神器は一体なんであろうか。
答えは簡単である。
神器複製(コード・デュプリケート)――ないなら複製してしまえばいい。
念動力でもって複製された模造神器を放ち、玲は要塞内部へと飛び込む。目に映る瞬間からオブリビオン兵士を模造神器の刀身が襲う。
敵と認識した瞬間に、玲は模造神器を飛ばす。
問答無用であった。
それが幻影であることは理解している。
「いわゆる幻惑……か」
確かに何処かで見たような身内や戦友の姿が見える。
今まで関わってきた様々な人々の姿が視界の端に移り続けるのだ。
「……けども、悪いね」
玲は笑うでもなく、端的に告げるのだ。
己の視界に映る全てが偽物であると。己の模造神器はたしかに強力無比なるものである。
蒼い刀身が煌めく度に幻影を貫き、霧消させていく。
それは同時に彼女の知る者たちではないということの証明である。
「私程度に簡単に斬られるような人は偽物だって直ぐわかるんだよ」
どれだけ精巧な幻影であろうとも。
それで玲は止まらない。心をすり減らす幻影であったとしても、彼女の心は容易く折れることはない。
己の手繰る模造神器の蒼い残光が雨のようにオブリビオン兵士たちへと降り注ぐ。
「幻影は幻影。話すこともできなければ、彼等と同じことができるわけでもない……つまらない真似は、さっさと切り抜けさせてもらうよ」
玲は幻影を一蹴する。
どれだけ人の心を弄ぶ術策に長けていたのだとしても、それを踏み越えることのできるのが人の強さである。
ましてや、玲は躊躇わない。
蒼い残光は己の研究成果である。彼女の持つ力は万が一にも間違えない。
彼女が出会ってきた者たち全てが大切な経験そのものである。それが形作った模造神器は、まやかし全てを切り裂いて、その路を開くのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
【視力】『眼倍』起動。地形把握に、
外見ではなく【第六感】にて敵を判別。
久しいですね兄妹壊れろぉおおおお!!!!
という訳で久しぶりに見た同じクローン仲間な兄弟姉妹達の姿に少ししんみりとした気持ちを抱きつつ姿を偽るオブリビオンへの怒り、【闘争心】で躊躇なく騎兵刀を振るう。
眼倍で得た情報を【瞬間思考力】で即座に解析し攻撃を避け、叩き斬る
この手の奴は過去にも遭遇した!絶対に許さん!!
(アポカリプス・ランページ⑮〜幻影と黒炎等)
眼倍できちんと確認して分かりきってる。故国の者達はクローンも人も皆死んでる。ここにいる筈がない居てよくないさっさと壊れろ「家族を冒涜してくれるなオブリビオオんンんんん!!!!!」
「――眼倍(ガンマ)起動」
それは小さく。
そして静かに響き渡る。『赤壁水上要塞』にあって朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
すでにその瞳が得るのは、要塞内部の情報である。
あらゆる通路、そして要塞下部に存在するという『舵輪室』へと至る経路を見出すのだ。
小枝子は一直線に走る。
脇芽も振らない。
時間がないのだ。この『赤壁水上要塞』に至る『哪吒討伐大水軍』は、5万もの兵を持って派遣されている。
この長江を往く彼等の行く手を阻む『赤壁水上要塞』に至れば、犠牲はやむを得ないだろう。
しかし、水門を開くことに寄って、その犠牲が最小限に食い止めることができるというのであれば話は別である。
小枝子はひた走る。
己が存在する意義は唯一である。オブリビオンの破壊。破壊のみが彼女の足を止めぬたった一つの理由であったからだ。
「――!」
目の前に現れるのは、オブリビオン兵士。しかし、彼等の姿が違う。
要塞に張り巡らされた結界による幻影。
それは彼女の嘗て見たクローン仲間である兄弟姉妹たちの姿であった。懐かしさを覚える。しんみりとする。
しかし、心に燃える破壊への衝動だけは燃え尽きることはない。
「久しいですね兄妹壊れろぉおおおお!!!!」
それは咆哮に等しい叫びであった。
己の兄弟姉妹たちの姿を偽るオブリビオンへの怒り。
滾る闘争心が騎兵刀の振るう腕に躊躇いなど生むはずがなかった。
己の瞳が告げているのだ。
あれは偽物であると。幻影であると。
己の心を蝕むためのものでしかないのだと。だからこそ、小枝子は躊躇わなかった。
放つ斬撃は過たず兄弟姉妹たちの姿をしたオブリビオン兵士たちを断ち切り、両断する。
「この手の奴は過去にも遭遇した! 絶対に許さん!!」
猟兵達にとって、この手の攻撃が最も効果があるとオブリビオンは知っているのだろう。
誰であれ、親しき者を斬ることに躊躇いが生まれる。
躊躇いが生まれれば迷いが生まれる。例え、迷いの果てに敗れるのだとしても、猟兵の心に癒えぬ傷跡を残すことになるからだ。
「わかりきっている――故国の者達は、クローンも、人も、皆死んでる」
わかっているのだ。
そう、言われるまでもない。どれだけ姿が精巧なのだとしても。事実は消えないのだ。
彼女が求めた親しき者たちは。
「ここにいる筈がない居てよくないさっさと壊れろ」
小枝子の瞳がユーベルコードに燃える。
魔眼が燃えるように熱を持っている。これこそが、己の戦う理由だというように小枝子の咆哮が要塞内部に迸る。
目の前の幻影は全てが小枝子の心をえぐるものであった。
けれど、その痛みは己だけのものである。
だからこそ、小枝子は躊躇わず騎兵刀を振るうのだ。
何故ならば。
「家族を冒涜してくれるなオブリビオオんンんんん!!!!!」
そう、冒涜でしか無い。
彼等の行いは、小枝子の兄弟姉妹たちへの侮辱と冒涜。姿を借りるだけでも度し難いものであった。
幻影を断ち切る。
どんなに苛むのだとしても、小枝子は怒りと共に乗り越えていく。悪辣なる者全てを切り裂く刃そのものとなって、要塞下部を目指し、これから傷つきながらも誰かのために戦うと決意した兵士たちを守るために突き進むのであった――。
大成功
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村崎・ゆかり
よくまあ、こんな水上要塞を作ったものねぇ。この世界からしたら、オーバーテクノロジーじゃない。
まあ、いいわ。水門を開ければいいのよね。
転送と同時に「目立たない」よう摩利支天隠形法を使って姿を消しましょう。
守備兵自身が認識出来ない相手だと、見ている側が親しい人間を勝手に見るのか、敵がこちらのイメージを読み取ってその幻影を纏うのか、どちらかしら?
どちらにしろ、大切な人は霊符の中にいる。今更惑わされないわ。
守備兵の動きを見て要塞の構造を頭の中で組みながら、水門目指して下っていくわ。
そろそろ力押しが必要かしらね。隠形を解いて炎の「属性攻撃」を「全力魔法」で撃ち放つ。
さあ、道を空けてちょうだい。
長江を堰き止めるが如き巨大な赤塗の要塞。
それこそがオブリビオンの建造した『赤壁水上要塞』である。その威容はあまりの巨大さゆえに、この封神武侠界の大水軍でもって被害なしには押し通ることのできぬ要所であった。
「よくもまあ、こんな水上要塞を作ったものねぇ。この世界からしたら、オーバーテクノロジーじゃない」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はしかしながら、よくよく考えてみれば、神仙の術の類、すなわちユーベルコードであるのならば、この巨大さもまた建造可能であることに気がつくだろう。
これら全てはユーベルコードで生み出されたのかもしれない。だが、事実として、『哪吒討伐大水軍』を阻む要塞として機能しているのならば、これに侵入して水門を開かねばならない。
「まあ、いいわ。水門を開ければいいのよね――オン アニチ マリシエイ ソワカ。陽炎の御仏摩利支天よ、我が身我が姿をその陽炎にて隠し、人の目に映らざるものとなし給え」
彼女は摩利支天隠形法(マリシテンオンギョウホウ)によって揺らめく陽炎で己の体を覆う。
それは視聴嗅覚での己の存在の感知を不可能にするのだ。
要塞に満載したオブリビオン兵士たちから感づかれることなく、要塞下部まで至るためには、この方法が最も適していると判断したからだ。
しかし、ゆかりはこの要塞に張り巡らされた結界の意味を知る。
対峙する者に親しき者たちの幻影を見せる結界は、オブリビオン兵士がゆかり自身を認識していないものであっても、ゆかり自身には彼等が己の大切な人達の姿に見えるのだ。
「でも、わたしの大切な人達は霊符の中にいる」
今更であると彼女は頷く。
懐にある霊符の中には、式神たちがいる。
彼女たちのことを思えば、どれだけ今、眼前に彼女たちの姿をした存在があるのだとしても、惑わされることはない。
オブリビオン兵士たちの動きをよく見て、要塞の構図を把握する。下部にある『舵輪室』こそが目指すべき場所である。
これまで多くの猟兵達がオブリビオン兵士をひきつけたり、打倒したり、さらには下部までの近道をぶち抜いていたおかげでゆかりは陽炎と共に下部へと容易に至る。
しかし、下部にある『舵輪室』を守るオブリビオン兵士たちだけは如何ともし難い。
「力押しが必要かしらね。でも、この程度の数なら!」
陽炎がゆらめき、ゆかりは姿を顕す。
その光景にオブリビオン兵士たちはたじろぐだろう。突如として現れた猟兵の姿。さらには己達の姿にどうじた様子もないことにもまた、彼等は驚愕する。
そんな彼等に放つ炎の一撃は痛烈そのもの。
「今更なのよね、こんなこと。言うまでもないことだけれど……さあ、道を開けてちょうだい」
放つ炎がオブリビオン兵士たちを吹き飛ばし、『舵輪室』の扉を開く。
そこにあるのは機械装置。
水門を制御しているものであろう。ゆかりは、それらを操作し、水門の一つを開く。
これで多くの『哪吒討伐大水軍』の兵士たちが消耗無く進むことができるだろう。
「戦いはまだ始まったばかりだけれど……それでも、被害は少ないにこしたことはないわねよね」
ゆかりは開いていく水門を見やり、次なる戦いに備える。
未だ有力なオブリビオンへとは至れていない。
しかし、猟兵たちの牙は必ずや彼等の喉元へと突きつけられるだろう。大水軍の兵士たちのように、己たちの戦いの背を推してくれる存在がいるのだから。
それを思い、ゆかりたち猟兵は、開いた水門を確認し、次なる戦場へと飛ぶのであった――。
大成功
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