殲神封神大戦⑦〜鸞は地から羽撃かず
●創り上げた炎獄を守りし男
幽玄の門の前、番をする男の姿がひとつ。
いにしえの仙界、"紫霄宫(しあいきゅう)"に至るあるひとつの門の前。
それは、人界へオブリビオンを送り込む、オブリビオンの為の道。
ひとは通さず、それ以外の通りすがりも赦さない。
番たる男は馴染み深い仙術を用いて炎の魔法陣を足元に敷き、その上に立つ。
"決して動かず"を条件に――陣の形成を維持する。
「この門を、通りたくば私を屠り倒すがいいでしょう」
ただし――道士たる男の陣から伸びる縛鎖の縁。青龍、玄武、白虎に類する姿をした瑞獣共を捕らえ何らかの恩恵を搾取しているらしい。
「私の力は自然エネルギーに等しきモノ」
霞を喰らう、という言葉があるように。
瑞獣たちから力を吸い取る陣を敷き、仙術の威力を高め微笑んだ。
此処には誰も近寄れない。
いつかの災厄に私自ら成り果てよう。
●阻む朱雀の翼
「ねえ、南蛮門に行ってほしいんだけど……頼めるかな」
狼姫・荒哉(吹雪謳う爪牙・f35761)が語るところによると、人や猟兵を阻む朱色の門があるという。
「本来は不定期に現れる不思議門らしいんだけど、その前に強力なオブリビオンが配置されているみたいでね」
"自然と農耕を司る三皇"がひとり、神農兀突骨(しんのうごつとつこつ)の配下。
将軍として君臨するオブリビオンで真名は忘却してしまった、いつかどこかで無念に没した道士がひとり。
「彼を打倒する事に意味は勿論あるよ、大きく分けてふたつ」
ひとつ、配置された自然界の精気循環を乱す理を介して神農兀突骨への懐へ打撃を加えることが出来ると予想出来る。
ふたつ、強力なオブリビオンは"不思議な絡繰で拘束した瑞獣"の力を利用し、力を高めている為、奪うことはひとつめの条件達成を助長する。
「囚われた檻がある限り、オブリビオンはとても強いから気をつけて」
"術の起点から動かず"。
言葉で敷いた仙術を縛鎖に添えて君臨している彼は動いたとしても同じ場所に戻る。
陣を破壊しても、多重高速詠唱ですぐに陣を引き直す。
破壊は意味がない。陣を踏み続けている限り、瑞獣たちから吸い取った力が彼のうちに溢れているから。
「裏を描いて、美味いこと攻撃の一手を見つけるといいよ」
男を術の起点から動かしたりすれば術が綻び、瑞獣達は逃げ出せるかもしれない。捕獲した瑞獣たちを助け、オブリビオンの力の補填を断ってしまえば弱体化も狙える筈。
「奪い取る総力が減れば、いくら強い人でも強さの限界が発生するからねぇ」
そんな欠点が、発生する可能性を夢見ていない事だろう。
「彼は、術の全てを炎で形成する道士。結界として張っている魔法陣も炎属性だよ――使用する宝貝も、炎の鳥を模しているかな」
瑞獣たちを捕らえ、陣を敷いて君臨する場所は、門からやや南。
南門を守る"朱雀"として、彼はその職務を全うする。
「そういえば……日本の歴史における有名な"朱雀門"というのは、此処らへんの似てる場所が由来の始まりだとかナントカ聞いたような気もするし…………」
本当かな、という荒哉。真偽を応えるものなど居ないが観光ついでに、人助けに乗り出しては如何だろうか。
冬だろうが新年だろうが関係ない。
暑苦しい炎の群れが、君を迎えるだろうから。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
この依頼は戦争に属する1章のシナリオ。
鸞(らん)は地から羽撃(はばた)かず。
プレイングボーナスは絡繰を解き、瑞獣達を助ける。
●簡単な概要
純戦だと思ってもらって、大丈夫。
門の前に炎の術を扱う道士の男が居ます。
男が炎の魔法陣から檻を創り出し、瑞獣たちを捕らえ力を吸い取っています。
仙術の維持のため、男は自分から動いたりしません。一歩、ニ歩と起点から離れさせる度、男が創り上げた檻は綻び脱走する隙を作り出すことが出来ます。
隙を作れば瑞獣達は勝手に逃げます。手を差し伸べてあげなくても、大丈夫です。
●ボス戦の男
生前、戦乱に巻き込まれ故郷を焼かれたことの在る道士。
嘆き、狂い、炎の術を身に着け扱うようになった存在。
全てそのときの光景に等しく、炎の波に荒廃させるおつもりです。
●その他
プレイングの内容によっては真面目だったり軽率に軽くなったりするかも。
なるべく頂いたプレイングは採用できればと思いますが、中華系のあれやそれやあまり詳しいとはいえない為、描写が期待に答えられない場合は、内容に問題なくても採用を見送らせて頂く事があります。
第1章 ボス戦
『焔骸子』
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POW : 比翼煉理
対象の攻撃を軽減する【宝貝『五火雉』との融合体(巨大な火の鳥)】に変身しつつ、【炎の翼】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 千矢万紅
【貫通力の高い無数の炎の矢】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 朱縄朱縛
【右手】から【渦巻く炎】を放ち、【対象を縛り上げること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リンシャオ・ファ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大豪傑・麗刃
ボーナスを得るための方針:車で全速力で突っ込み思いっきり吹き飛ばす
ヒーローカーに乗りこみ気合を入れてスーパー変態人2を発動。車もまたわたしと同様の黄金のオーラに包み込まれるのだ。
ところでわたしのユーベルコード、速度はレベル×100km/hで飛べるわけだが、さすがに車輪にしばられている車にそこまでの速度は望めまい。でもがんばって速度上げてほしいのだ。
で、気合入れて真正面から敵に衝突する。炎の翼はオーラ防御で耐える。そして全力の正面衝突事故発生!!可能なら全エネルギーをダメージではなく吹き飛ばしに費やす感じで!
後は後続に任せて撤退。車がまだ動くなら無理させた事を、捨てていくならそれを謝りつつ。
●正面衝突事故現場へようこそ
うぉんうぉんとけたたましい音が響き渡る!
誰が来る、何が来る!あれはそう、猟兵だ!
突然だが説明しよう。
遠く何処かで聞こえる雄々しい馬の高らかな嘶き。
何処かと置く、誰かの鬨の声。
あれはなんだ、鉄の馬(バイク)か?
いいや違うね。ぶわああと砂煙を巻き上げるあれは、前述の通り猟兵の仕業。
よく見ろ、カッコよくアクセルを踏まれたヒーローカーだ!
「この際細かいことは言いっこなしなのだ。話し合いが有意義な時間を齎すとは限らないのだ」
ヒーローカーに乗り込んだ大豪傑・麗刃(23歳児・f01156)は、ガンガン最高スピードまで高まる車に勢いを乗せる。
「見よわたしの超スーパーな怒りの様をー!」
戦闘用ヒーローカーに、ユーベルコードによって発生する力――スーパー変態人2(スーパーレイクンツー)の青白くスパークする専用車両の姿を見よ。
黄金のオーラも全て、強そうに爆ぜて視えるだろう!
――ああ、……始まったばかりのこのドシリアス!
――緊張感ありまくり!なんでこんな所に来たんだろう。
――シリアスブレイクして録画していた新年耐久お笑い番組を見まくりたい……。
考えていることと行動が伴わない麗刃はぐぐっとアクセルを踏み続ける。
車の最高スピードを目指し、ぐわんとハンドルを重きり切って焔骸子――外見から勝手にそう名付けておくへ向けて一直線に突っ走るのだ!
「ああ、良い風なのだ……ところで、わたしのユーベルコードは空を征く速度を付与できるはずだが、地に縛られて飛んでいるようには見えないな!」
速度はレベル×100km/hで飛べる。そうだ、本来は飛べるのだ。
しかし麗刃は理解している。なんか凄い波動的なアレで車が飛んでいたならば、もっとスピードが出ただろう、と。車輪に縛られた車にそこまでの速度は望めまいが、頑張れ。お前ならもっとやれる!
『騒がしい方ですね。一人で大道芸をご披露に?……申し訳ありません、結構です』
伏目がちの道士の男は、対象の攻撃を軽減する宝貝『五火雉』を身体に埋め込むように融合する。
その姿こそ、朱雀が如し。男はこれを、比翼煉理の陣と称した。炎の翼を大きく広げ、最大限の衝撃を抑えるために炎の術を高め、幾重にも羽織る。
「衝突される準備は万端なのだ?じゃあ気合を入れてぇえええ!!!」
ユーベルコードのオーラに加え、重ねるように防御のオーラを前方に重ねる。
正面衝突事故を恐れるものよ!カウンター炎の翼を叩き込もうとする勇者よ!
例え同じ場所に戻ろうとも、麗刃の全エネルギーをふっ飛ばし能力につぎ込んだ全力事故で無傷とは言えまい!
猟兵によって超スーパーヒーローカーと成った車が、道士の男を手加減ゼロで跳ね飛ばした。
男は当然起点からふっ飛ばされる。
歩数にして計測不能。ずど、と門の柱に衝突するほどだ。
ぐらり、と檻の陣も揺らぐ――ぞろぞろと、逃げていく瑞獣たちの助けには確かに成ったのだ。
「ああ、ボンネットが凄いことに……よくぞ頑張ったのだ、最高の勇者はお前なのだ」
戦闘用車両として利用した車から降りてやる事はやったと自画自賛サムズアップ。
――後のことは後続に任せて撤退なのだ。
すぐに離れていく麗刃は、君臨していた男の安否も瑞獣たちの逃げる様にも目もくれない。瑞獣たちがこの隙に逃げ出しまくれば、後続が戦いは楽になる。
乗ってきた車はまだ、動くだろう。エンジンをフル稼働させた分、熱量が周囲にまで溢れまくっている。
「……そうか、よくやってくれたのだ。良い仕事だったのだ。連れ帰れず、すまないのだ……」
だが、燃料漏れはすぐに気がつけた。
男は所定の位置になるべく早く戻るはず。
ならば仕掛け済みの最終兵器が炸裂するまで、五、四、三、――。
どかーん!
車の損傷の代わりに引き起こる大爆発。
これで持ち場に即座に戻ることは適うまい――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
巨大な存在から力を借りる事は否定すべきじゃない
だが、無理矢理に捉えて、自分の為に力を奪い取るとは……看過できないな
神刀の封印を解除。灰色の神気を宿して伍の秘剣【灰桜閃】の構え
この技の特性を敢えて告げる。即ち「この刀で4度切られればお前は死ぬ」と
もしハッタリだと思って避けないのなら、そのまま切り倒すまでだ
高速で踏み込みながら火矢を掻い潜り、刀で弾きつつ接近して斬撃を叩き込む
その場から動かずに避けれるような甘い太刀じゃない。避けるなら一時的にでも術の起点から離れる必要があるだろう
敵が離れたなら、出来るだけ元の位置に戻らないよう押し込み、瑞獣が逃れる時間を稼ぐ
十分に力を削ったなら、改めて反撃といこう
●切り結ぶ一閃を華と結べ
ふっ飛ばされた焔骸子は、ヨロヨロと身体を引きずるように起点へ戻ってくる。
『なかなか、人の話を聞かない方もいたものですね……』
ごきり、と外れた肩の関節を嵌めて。陣の起点に、男は戻る。
『少々脱獄されてしまいましたが微量の範囲。問題はそこまで大きく有りません』
「そうでしょうか?」
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は男から感じた気配の正体に、頷く。
「瑞獣達から力を奪っているから問題がないと?本来、巨大な存在から力を借りる事は否定すべきじゃない」
必要ならば、力を束ねる者は存在してもいい。
それが世界に必要とされるものならば、余計に否定などできようがなかった。
道士――つまり術を収めた仙人の端くれ。
「だが、協力を仰ぎ得た物には到底見えない。無理矢理に捉えて、自分の為に力を奪い取るとは……看過できないな」
配下という立場に収まり、護れているモノがあるのなら自分以外のものを滅ぼす権利くらいだろうか。
『やめろ、という口調ですね』
「――当然だ」
神刀【無仭】をその手に携えて、封じの白鞘より剣を抜く。
これ即ち、ユーベルコードの発動の兆し。
「神刀開放。舞い散るは徒桜――」
封じを解く解除の代償は、この場において語るまい。
限界を超える神気にこそ、今此処に在るべきもの。
「灰色の神気を宿したこの構え、お前の瞳にはどう映る」
迫る鏡介の歩法は、神も仙人も恐れぬ歩法。
高速の術を身につけた、伍の秘剣【灰桜閃】(ゴノヒケン・カイオウセン)。
敵の間合いに踏み込まんとする剣豪を、焔骸子はあえて無差別な事を活かし、千矢万紅を矢として放つ。
『身に下ろした力で、私の首を刎ねようとお考えなのでしょうか』
一拍叩いた手の拍子、ずらりと並べる炎の構え。
切っ先向ける先にこそ、敵対者しかその場に居らず。
『では私が先に刎ねましょう。貫き通す炎にて、魂もろとも貫き、無残なほどに破壊いたしましょう!』
――……遅い!
闇を裂く剣閃と共に、灰色の桜を放つ刀をその手に、第一刀を振り抜く。
キィンと澄んだ金属音が耳を爆ぜる。
『首狙いお見事。しかし、わざわざ狙いすましてくるとは……!』
狙われる場所がわかれば、カウンターとして貫く炎を向ける事は実に容易い。
自分の首が飛ぶ前に、刺し貫くのみ――。
「防がれたか。この技の特性を告げよう、今の判断は正しい、俺はこの後全てを外さない――"4度切られたらお前は死んでいた"」
物理、因果を越えてこの刃は必ずお前へ届かせよう。
少々道士を侮った、等とは思わない。
「俺に向けられた炎は全て斬った。焔で俺を殺す事は、叶わないだろうな」
即座に交代し、降り注ぐ炎を刃で弾き、次の攻撃姿勢へ移行する。
「次は外さない。今度こそお前の頭は飛ぶだろう」
『飛ばされては困る。当たらない場に身を逃さなくては……』
胴体ではなく、身を低く鏡介は膝付近に狙いをつけて切り結ぶ。
ふわああと桜が散るように、男は起点から飛びのく様に後退する。構わず重き追撃の後2回も間髪入れずに放ち、後方の死角に気づかれないよう追い込む。
「一歩以上離れたのだ、さあもっと。出来る限りその場を退け!」
4回当たれば死ぬユーベルコードの効果で殺す事は叶わなかったが、力を奪う対象は――ぞろぞろと、大型個体が逃げていったのを確認した。
『甘く見られたものですね、あなたはもっと炎の雨に当たりたいようだ!』
男の反撃を喚んだようで、炎の雨が鏡介の元へ降り注ぐ。
刃があれば、雨に当たることはないが、これでいい。
――保持する戦力を、十分に削られた。
そちらが気がついた頃にはもう遅い。
今度は切り結ぶ。無傷のまま、君臨させてなるものか。
――さあ、考えながらの戦闘を仕切り直し、堂々たる反撃といこう。
成功
🔵🔵🔴
エドゥアルト・ルーデル
どうでもいいけどなんで兀突骨が神農を名乗ってるんでござるかね
野菜食わない蛮族じゃねーか!
拙者も使えるんだよね自然エネルギー
久々にやっか!おう見せてみろよご自慢の仙術とやらを!なんなら【炎の矢】を先打ちしてもいいでござるよ、拙者の方が速い
視線を敵の足元の魔法陣へ向け【グラビティ】発射!足元で突然の爆発を起こして吹き飛ばしてやりますぞ!
タネはあるが仕掛けはねぇですぞ!重力はどこにでもあるものだからな、拙者から見えてればそこにいくらでも爆発が起きる!
ここから反撃許さず連続爆破でお手玉ござる!爆発でぇ!宙浮かせぇ!爆発でぇ!門の端ぃ!トドメの爆発でぇ!決めたぁ!
仙術見てからサイコフォース余裕でしたな
●仙人だろうが手玉に取るぜ、おっさんはよォ!
「どうでもいいけど、出会い頭に一言申してもよいでござるか」
神出鬼没の謎のおっさんエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)。
「いいや返事なんて知らないね!拙者こういう時、空気読まずに言っちゃうから!」
普段ど同じ気さくな態度から、ははーんと英国界隈で見かけそうな鮮やかなマウントを仕掛ける男。エドゥアルトは、決してふざけてなどいない。
これは所により標準的ないつもの顔だ。
猟兵に衝突事故だの斬られそうになってるだの、忙しそうな貴方へ。
「そちらの上司的存在?どうでもいいけどなんで兀突骨が神農を名乗ってるんでござるかね????」
拙者の頭の中の歴史認識じゃあ、別人なんですけどどうなんでござろうか。
『……なにを』
「いーやだって、想像するに自然と農耕を司る癖に野菜喰わない蛮族じゃねーか!!」
仙人をも恐れぬ物言いに、さすがの焔骸子も呆気にとられる。
上司たる存在を、今この男はなんと言って愚弄した?
ひとりの一将軍として、配置された道士は男の言葉を飲み込むのに時間を要した。
『それがどうかいたしましたか。その身は仙界に御わすのですから、下々(しもじも)以下のそちらには関係のないことでしょう』
仙人または、召し抱えられたオブリビオンとなってから大きな口を叩くことです。
激怒するでもなく、門番としてエドゥアルトを追い返しに掛かる。
『まあ、私の耳に入れたことは間違いでしょう。貴方は此処で罰を受けていかれるべきです』
炎の翼を持ち、炎と同等の息吹を散らす鳥の姿をした宝貝『五火雉(ごかけい)』を、空に掲げるようにして男は術を起動する。
自身はなるべく、所定の位置から動かず。
しかし、攻撃は『五火雉(ごかけい)』を介して威力を上げて放つのみ。
仙術を練り上げて、放つ技こそ千矢万紅。
上空に向けて大きく吐き出された火炎が、遠心力の通り空から無数の火の矢となって無差別に地面に突き立つ。
場所によって貫き穿つ炎の矢に、狙われて困るものは猟兵しかいない。
「わわわわ!??……なーんてね、それが本場の仙術でござるか?」
ひゅうう、と落ちてくる大量の炎の矢。
しかしそこは腐れ外道のパイロット・エドゥアルト。
「つまりなんやかんやが合わさった自然的な力でござるな、ハハハ。拙者も使えるんだよね、自然エネルギー!」
レアリティ下げちゃってメンゴ!軽くウインクしながら笑うおっさんの破壊力。
「久々にやってやっか!見せてもらったしなぁご自慢の仙術、炎の乱舞!いやあ熱い!暑苦しい!」
『謙遜しながらも余裕そうですね』
「おうとも、当たらなければどうということはないでござるからな!」
先打ちを譲り、余波で熱い熱いと小言を零すエドゥアルトだが、その表情から真偽の判断は難しい。
視線を足元へついぃと向けて、敵の足元の魔法陣へ向け、発射するはグラビティ。
サイコフォースがそれこそふぉーんと広がった。
視認する事で発生する、嵐の前触れを貴様はそう、見送った!
ずどん、と景気良い一発が、道士の足元で爆ぜ、男は思い切り吹き飛ばされる。
足が吹っ飛ぶことはなかったが、不意打ちというやつだ。
『くっ……!』
「リア充宜しく爆発しろ!タネはあるが仕掛けはねぇですぞ!」
そして貴様が地面に足を付けるのは、まだまだ遠い未来のこと――。
ずどん、どかん、と連発する爆撃はグラビティが引き起こすもの。
「重力はどこにでもあるものだからな、拙者から見えてればそこにいくらでも爆発が起きる!道士殿、危機一髪!!」
抵抗しても、仙術で炎の矢をいくらつくりだしても、無駄無駄。
「さあどうでござるか!反撃さえままならず連続爆破で拙者に言葉通りのお手玉キメ込まれてる気分は!!」
爆破で宙に浮かせてから、更に爆発を浴びせて門の端。
「お、……道士殿が陣中央から離れた事で、助かる命もありましたな。拙者の素晴らしい目にその姿がみえる!じゃあそろそろいいか。体を張ったご協力感謝、感謝!」
トドメの爆発で、位置修正。命綱もなにもない紐なしバンジー感を引き立てて、問答無用に門の隅に投げ落とす!ゴーーーーール!そんな幻聴が聞こえそうな、打撃音が周囲に大きく響き渡る。清々しい気分が、おっさんの両肩を軽くした。
「はっはっは、仙術みてからサイコフォース余裕でしたな」
大成功
🔵🔵🔵
蛇塚・レモン
瑞獣達にこんな酷い事をするなんて許せないっ1
今、あたいが助けてあげるねっ!
行くよ、蛇神様っ!(UCで変身)
渦巻く炎を、蛇腹剣から放った衝撃波で掻き消すよっ!
衝撃波に水属性攻撃を加えて津波の斬撃波だーっ!
若しくは鏡盾を起点にオーラ防御+結界術+全力魔法の風の壁で盾受け!
炎を敵ごと吹き飛ばすっ!
更に衝撃波を呪詛+呪殺弾として弾幕の乱れ撃ち+爆撃!
これで動かないなんてありえないはずっ!
空中浮遊+空中戦で敵を翻弄
その間に矛先神楽鈴で呼び寄せるは……雷雲!
辺りは豪雨に!
あたいはスピリットヒーロー!
自然界の汎ゆる事象を掌握してる証、今見せてあげる!
敵頭上へ神罰の落雷(マヒ攻撃
トドメは至近距離でUCの一閃!
●道士に与える蛇神の神罰は動かずを強いるもの
「ちょっと大丈夫!?」
今の音痛そうだったよ!と敵の心配をわずかに顔に出した蛇塚・レモン(白き蛇神憑きの金色巫女・f05152)。
でも現在起点をふっ飛ばされたその隙を見て、戦場に割り込んだのだ。
門番が瑞獣を捕らえた炎の檻を維持する起点を離れているこの時に。
畳みかけろ、今この時に!
「ちょっと!瑞獣達にこんな酷い事して!許せないよ!」
痛そうな打撃音を響かせた焔骸子の心配と、これまでやっていた悪さは別の問題。
「今、あたいが助けてあげるからね!行くよ、蛇神様っ!」
蛇塚家一子相伝の剣舞神楽。しゃらりしゃらりと、鳴らせ蛇腹剣クサナギ!
人の身のまま神へと至る業により、蛇神様の霊体がすぅうと背後に現れる。
「憑装(ソウルユニゾン)、蛇塚シロオロチ神楽。お願い蛇神様、あたいと一緒に踊って……!」
レモンの全身を覆う黄金に輝く霊能力オーラが溢れ出し、眩い輝きが門の前を照らす。存在感が、元気印の歩く太陽。
「あたいはスピリットヒーロー!自然界のあらゆる事象を掌握している証、今見せてあげる!」
――仙術?道術?そんなのあたいには関係ないよっ!
空中浮遊する勢いに乗せて、恐怖を与える言霊を乗せる。
空中戦は既に始まっていて、言葉から敵を翻弄する。その間に、握り込んだ白蛇神の鋒先神楽鈴で呼び寄せるのは――天候を引き裂く雷撃。周囲の空は晴れていた。しかし、だんだんと雨雲が展開されて、みるみる雨が降り出した!
彼はまだ、実は一言だって返答してはいないけど。
雨に振られてもレモンの勢いは留まるところを知らない。
『はあ。随分と、賑やかな方が乱入していらっしゃいましたね……』
身体に掛かった痛みに、黙っていた男は漸く言葉を返した。
『先程の方々とはだいぶ異なる。――少々静かにして貰えますか?』
右手をかろうじて上げた男は、その手から得意な術を発生させる。力の元は、既に奪っていた瑞獣たちの自然エネルギーこれが、風もないのによく燃えた。
『朱縄朱縛……さあ、燃え上がれ』
渦巻く炎の縄は放たれた。空を駆け、登る炎の蛇のように。
雨粒を無視している。じゅううと蒸発させて炎の蛇は翔ぶ。
轟々と炎の鳥の姿をした宝貝『五火雉(ごかけい)』の力を借りて、燃え続ける。
「強い炎なんだねっ!でも――」
澄んだ音を響かせながら、放つ蛇腹剣は周囲の水気を絡め取り、オーラに水属性を加えて振るわれる度水の属性を強める。
「さざ波、潮騒を刻め!津波よ、広範囲に弾けて襲え!」
振るい続けた蛇腹剣、放つ攻撃は白蛇神降ろしの巫女へ姿を変えたレモンの最大威力。津波のように覆いかぶさる斬撃が、男に直接振り下ろされる。
広範囲に広がった一撃を、覆い被せてレモンはニヤリと笑う。
津波に飲まれて炎の渦は消え失せた。
敵頭上、そこは何もなく空白のみが微笑む領域。
指差して、ただその場に願うのだ。
「仙人なら甘んじて受けなさい!神罰の落雷<ゴッド・ライトニング>を!」
激しい音を立てて、豪雨の切れ目から降り注ぐ稲光。
簡単に死なずの力を持った道士とはいえ、激しい攻撃を受け続けたなら起点の位置へ戻れまい。
「さあ逃げて!あたいが此処で食い止めているうちに!」
玄武姿の瑞獣が、のっしのしとゆっくり逃げていく様が横目に見えていた。
たくさん時間を稼ぐ必要があったのだ。
レモンの活躍で、多くの足の遅い者たちは余裕を持って逃げ出し、道士の力の減退は留まるところを知らないだろう。道士が気力を持ち直し、持ち場に戻った所で吸い取れる力はだいぶ損失している。気がついた時にはもう遅いのだ。
門は護れていても、陣は何一つ護れていないのだと――。
成功
🔵🔵🔴
ルパート・ブラックスミス
つまり執拗に魔法陣から引き摺り出せばいいというわけだ。
UC【神・黒風鎧装】で真の姿と青く燃える鉛の翼を展開、漆黒の旋風を纏っての超音速【空中機動】。
旋風での相殺と鎧の【火炎耐性】で敵UCを凌ぎつつ【グラップル】、敵を掴み空中へ攫う。
どうした朱雀?
飛べもしないし走れもしない、火に巻かれるだけが貴様か?
かかってこい、その翼は飾りでないと見せてみろ。
此方のUCの【呪詛】は弱い意志や無意識の反応を封じる、言い換えれば「念頭に置いた事しか反応できなくなる」。
自分の【言いくるめ】・【挑発】に敵が乗ってくれば瑞獣達の脱走の隙になるだろう。
後は真っ向勝負、黄金魔剣を手に【空中戦】だ。
●ヒトとは"動く"べきモノなり
猟兵により門まで退けられ、攻撃を受け続ける道士の男。
敵対する存在感が衰える事はなく、神通力ともいえる力で致命傷を避けている。
しかし、疲れは顔に出ている。頑丈を創造しようと、人型である以上痛いものは痛い。鳥の姿をした宝貝『五火雉(ごかけい)』を繰る事で得ている特殊な力なのか。
はたまた、これまで吸い取り続けていた有限の力である瑞獣たちから奪ったものの力か。不明点は多いが、男は決してこの場を離れようとせず守護している。
それが答えなのだろう。
「つまりだ。貴殿が如何に戻ろうと執拗に攻撃を続けて魔法陣から引き摺り出せばいいというわけだ」
何度追い出されようと、男は魔法陣の起点に戻ろうとする。
己が発揮した陣から伸びる縛鎖の炎を維持するために。
まるで、その場こそが唯一赦された存在証明であるかのように。
部下たる将軍の座に収まる代償に、自身を縛りつけているかのような盲信で。
ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は、眼前に墜ちる陰の気配を払うべきと睨むばかり。
『そう何度もやらせはしません。単純な火遁ならば、そう力を込めずに済みますから』
指を鳴らし、道士は自身の体の周囲に炎の仙術を漂わせ、詠唱する。
宝貝を扱う者が、限界突破する力を編むのに告げる聞き取れない言葉の一節。
それは不死鳥が泣き叫ぶ声であったのかもしれない。
――胸の深き底で輝き続ける己が魂を見せよう。
過去に未来を失って光見失いし者よ。
神・黒風鎧装(ロードレッドロゴス)を纏う、青く燃ゆる鉛の双翼を大きく広げた鎧の男に何を想う。漆黒の闇の旋風を纏い、負傷する人間台の青き炎の鳥を見て――道士は生唾を飲んだ。
戦場全体に弱い弱い、呪詛の力が舞い落ちる。オブリビオンは動かないと聞き及び、その通り"起点"に立ってルパートを見上げてくる。
まるでそれ以上成すべき事が無い子供のような無力感。
絶望に似た表情を、微かに感じるばかりだ。
――降り注ぐ呪詛を払う事も容易くできよう。
――しかし、咄嗟の反応を縛られては如何に頭の回転が疾くとも。
即座に行動に移す事ができなくなる。
時間を掛け、ユーベルコードを発動することは出来るだろう。
その間に敵の攻撃を許すことにはなるが、――咄嗟ではなくなる為、意図した積み重ねた力その効力は発揮できる。
青の翼は超高速で空を飛び回り、比翼煉理――宝貝と融合した巨大な赤き炎の鳥姿となって尚、ルパートに気圧されたのだ。
攻撃の利欲を軽減する姿で、大きく広げた赤の翼で叩くようにルパートの接敵を拒絶したのに。
ルパートの手は、道士の眼前に展開されていた。
「見事な打撃。しかし己が力でありながら己自身ではないのだろう?」
漆黒の旋風が間接的に男を刻む。
しかし道士は逃げない。まだ囚われの瑞獣がいる。
力を徐々に吸い取り続ければ、負ける筈がないと考えているのだろう。
『……ええ。私は道士。仙人ではありますが、ヒト科の枠から逸脱できませんので』
「良い火力では在るだろう。だが当方、この通り火炎には慣れている!」
空を制する者の前で、空を飛ばずの雉は討たれるばかり。
ガッ、と勢いよく襟を捕まえて。ルパートは空へ飛び上がる――起点から離れ、空に攫われた男は哀れなものだ。
「どうした朱雀?」
――声も出ないようだな。
『良い景色ですね』
「違う。飛べもしないし走れもしない。今のその身は仙人でも怪鳥でも、朱雀ですらありはしない。雛のなりそこないでしかないだろう――貴様、その姿で尚、火に巻かれるだけか?」
重苦しい空気を燃やす音を立てる青の翼。
片や、ルパートに掴まれて空を追従させられている飛ばぬ赤の翼。
「かかってこい、その翼は飾りではないだろう――見せてみろ!」
勢いよく投げ飛ばすその前に。
ルパートのユーベルコードが充満するこの空で、男に言い聞かせる。
それは挑発のような、言いくるめ。
――お前は戦う術を用いて飛べて、一人の道士であり戦士だろう。
言うだけ言って、投げ飛ばす。
そのまま墜ちるだけの鳥ならば、起点から離した分だけ捕まった虜囚の瑞獣共は脱走していよう。
『……いいでしょう、青く燃えるよだかの星(よろい)よ。戦いを望む天駆ける流星のような貴方』
仙術を合体した、創造の姿に巡らせる。大きな炎の鳥は翼を広げ、空で翻り――ルパートに向けて炎の弾丸を吐き散らすだろう。
「赤く爆ぜる羽撃かぬ鸞よ、地に今一度墜ちるまで――存分に羽撃け!」
真っ向勝負、覚悟は良いか。
黄金魔剣ルパートが、その翼と火焔を心ゆくまで斬り伏せて。
赤の巨鳥と青の巨鳥の戦闘が火花を散らす度、まるで敷かれた魔法陣が綻ぶようだった。"術の起点から動かず"の成約を無視し、まるで獣の用に戦うさまは――門番として相応しい姿ではないのだ。
踏み続けても、瑞獣たちから奪えた力は男の怪我を癒やさないだろう。
ただそれは檻としてのみ機能する――。
大成功
🔵🔵🔵
月白・雪音
…過去の残滓と化し歪まされ、生前己の居場所を焼いた炎の災厄と成り果てようとは、
なんと皮肉で残酷な定めである事か。
この場所は此度の戦における要所。この世界の民を脅かし阻むとあらば、
我が武を以て推し通らせて頂きます。
UC発動、怪力、踏みつけ、地形破壊にて陣ごと地面を破壊し、
詠唱による修復の隙に残像にて距離を詰めグラップルにて相手を掴み陣の中心から投げ飛ばす
投げ飛ばした隙に瑞獣達が拘束を逃れれば残像にて再び距離を詰め、怪力、グラップルでの格闘にて仕留める
敵の攻撃は野生の勘、見切りにて感知し回避
…炎に囚われるは、何よりも貴方自身。
その魂を骸の海へ…、貴方が生きた故郷の眠る過去へと『帰し』ましょう。
トリテレイア・ゼロナイン
…用途申請、非戦闘員の救助
電脳禁忌剣の機能を解放しUCを発動
周囲の大気を●蹂躙
故郷の宙(そら)にありふれし、されど全ての命を奪いし“真空”…その属性帯びた“竜巻”を産み出し
剣を一振りして操り、男の炎へとぶつけて相殺
…戦う覚悟無き者を戦場に連れ去り、己が力とする外法
もはや騎士として看過も容赦もいたしません
如何な覚悟、事情を抱えようと……討たせて頂きます
●怪力で振るう大盾を鈍器として大地に叩き付け●地形破壊
大量の岩石を生み出し、重き岩の刃として竜巻に巻き込み威力増強
男を陣より後ずらせ、その隙に脚部スラスターの●推力移動による疾走で一気に肉薄
逃げる瑞獣、背にかばいつつ剣を振り抜き叩き飛ばし
●同士よ、自由に羽撃いて過去(そら)へ還れ
ほかの猟兵と競り合った羽撃かぬ鳥は、威圧に押し負けて墜ちる。
留まるべきだと己に枷を嵌めて、狂う心をその場に停めて居る男だ――。
自由に飛べる翼を持ってしまったら、それこそ驚異以外の排除対象のいち員に加わってしまう。
破壊という愉しさに、心を壊して浸ってしまうと分かっているような達観し疲れた目だと機械騎士のは気がついた。
そんな分析ができたのは、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)の演算機構が想像させたから。
もしくはこれまで戦ってきた経験から算出したANSER。
「――……用途申請、非戦闘員の救助」
願う銀河帝国未配備A式天災再現兵装(アレクシアウェポン・ディザスター)。
それは電脳禁忌剣アレクシアの権能を開放し、発動する許可を。
「"用途論理判定――例外承認"」
「"申請者処刑機構――解除確認"」
超技術を秘める不壊の剣、その内部機構からの応答は承認解除という形が取られた。現実をハッキング、改ざんする禁忌の力を大いに奮えと――応えた。
『貴方もまた、私を此処から排除させたい一人なのですね』
宇宙(ソラ)に高く向けた剣が、大気を震わせて属性を巻き上げる。
遠き故郷の地より集まれと、呼びかけ集う属性は――"真空"。
生物の命を奪う空気などの物質がない、何もない空間を冠するトリテレイアには馴染みのある要素。
束ねあげて、竜巻と織りなす。
封神武侠界により相応しい姿へ変貌させるとしたら、それは龍。
瑞獣の中でも未だ檻の中より長い胴体を逃せずに居る個体たちのそれに近い。
魔法に類する力を束ねないぶん制御は難しく、そして暴れる属性は色の在る風や旋風よりも獰猛だ。
使用する場所はなるべく彼らより遠くが望ましい。
されど道士に向けて狙うべき精密さを求められる――。
『危ない力を行使しておられるようだ。ここで散らしてしまいましょう』
宝貝を左手に預け、右の手を広げ道士の男は渦巻く火焔を発生させた。
耳障りな怪奇な声を宝貝『五火雉(ごかけい)』があげている。
炎の有り様、その大きさ。激しさ――支配し、制御しているのはあの宝貝だ。
道士は仙術を放つ事だけに集中している。決して動かず、力をただ使うのみ。
渦巻く炎と真空の竜巻。
衝突は、トリテレイアが剣の一振りで真空をぶつけたことで起こり両方とも相殺して消えていく。
「……戦う覚悟無き者を戦場に連れ去り、己が力とする外法。もはや騎士として看過も容赦もいたしません」
幾ら猟兵たちの連携で、ほとんどの瑞獣が逃げおおせていたとしても。
力奪い行使した事実を消すことはできない。それは罪の烙印だ。
「如何な覚悟、事情を抱えようと……討たせて頂きます」
――過去の残滓――――。
そうだ、あれは今を生きるものではない。
潰えたもの、終わっているもの。過去となった存在。
「……既に歪みに堕ちて、生前己の居場所を焼いた炎の災厄と成り果てようとは」
月白・雪音(月輪氷華・f29413)には、宝貝『五火雉(ごかけい)』は呪いの鳥に視える。
兵器の一つ、鳥の姿。炎の熱と波を生み吐き出すモノ。
「なんと皮肉で、残酷な定めである事か」
動かずを誓い、仙術による陣を敷き――訪れた妨害者を焼く門番など滑稽だ。
男が立つ場所は、此度の戦場における要所。
陣取られていては困るのだ。
鳥の姿をした宝貝を持つのだから、飛ばぬ鳥でいる必要もない。
『定められた魂の末路。これを替えるすべも私にはありませんからね、ただ此処で焼ける光景に心を殺して果てるのみ――』
「我れらが武と叡智において、推し通らせて頂きます」
アルビノの髪を揺らし、言葉通りの白虎の仔は宣言通りにユーベルコードを発動する。燃えよ拳、唸れよ魂。武を積み重ねし時間を此処に展開せよ。
「……弱きヒトが至りし闘争の極地こそ、我が戦の粋なれば」
ぐっと握る拳に力が湧き上がる。
代わりに男がどのような常態か、冷静に落ち着きながら見渡せる――視野が広がり、呼吸を整える余裕を増やす。
「準備完了。さあ、同時に事を起こすべし」
『なにを……いや、考えずともわかることですね。此処に吹き荒れ、穿て抉れ緋の燕"千矢万紅"!』
男は何かを察した。上空に向けて、宝貝に灼然を吐き出させ術の操作で炎の矢を大量に生成し戦場全体に降り注がせる。
無差別攻撃できる最大範囲まで、ギリギリまで広げて炎の矢を大量にだ。
起点から自身が大きく動く事になる――そんな予感を身に感じて、大きく荒立てる災厄を起こす。
この場に留まる事ができなくなっても"かつての故郷のようにこの場を火の海に落し終わらせよう"。
猟兵は同時に動き出した。
一呼吸で、力を足に込めた雪音は大胆にも道士の立っていた地点を気合一つで破壊した。
女の子と侮る無かれ。
踏み抜き一つで、脆くなっている魔法陣など蹴り壊せよう。
そう、破壊したのだ。とんでもない一撃を身に浴びるくらいなら敵は間違いなく避ける――見通して行ったことである。
――陣の破壊は意味がない。
――すぐに修復されてしまうから、なら……。
『本当に、猛虎のように恐れ知らずの白虎殿だ、――!』
――本当に詠唱を開始ましたね。
「幾ら詠唱に慣れていても、安全な場所で行うべきです。私から武の体現者を相手にしたときの欠点としてお伝えします」
道士が認識していた雪音の姿が霞のようにかき消え、彼女はすぐ真横に出現した。
身体を低くした姿勢で掛けてきて、がしりとグラップルにて掴み。
陣から動かずでいる姿勢を思い切り崩す!
それは、男をつかんで陣の中心から投げるという単純でシンプルな解答だった。
飛ばした先は――大きな機械騎士が、動き出した方向へ。
瑞獣たちの檻、縛鎖の鎖の間に割り込んで大盾を突き立て陣の破壊を行ったトリテレイア。突き立てた威力は地形ごと破壊し大量の岩石を、自然生成で生み出した。
トリテレイアは巨大な体躯を大いに活かし、地面を割ったのだ。
「先程は届かずでしたが、これなら届く――その身で十分過ぎるほど罪の重みを識ると良いでしょう!」
重き岩の刃として真空の竜巻に巻き込み、今度は岩の属性を孕んだ真空の龍として差し向けて投げ放つ!
『……なっ!?』
炎の魔法陣を修復し、しかし身体は浮いていて身動きはかなり制限されていた男。
このときばかりは自身に翼がないことを悔いた。
羽撃ける翼が在ったなら。本物の朱雀として、悔いも抱えて燃える緋色の鳥で有れたなら。
真空の龍に身を八つ裂きに遭おうとも、共に飛んできた岩の刃で嬲られても正しい気持ちを持てたはずなのに。
道士が言えた言葉は、地から羽撃けぬ過去に没した男の嘆き。
『また、私は何も出来ないまま……』
「これ以上まだ事を起こす気ですか?それとも」
嘆く鳥に言葉はこれ以上語らせまい。
トリテレイアのユーベルコードを受けて、男は既に陣より後ずらせる事を成功させている――ならば取るべき行動はひとつのみ。脚部スラスターを全開に、自身こそが疾風であるように肉薄し、大きく一撃。剣を振り抜き斜めに一閃し、推力移動するその足で叩き飛ばすように叩き飛ばした!
叩き飛ばした方向は、――彼女が居る。
「……炎に囚われるは、何よりも貴方自身」
悔いている事だ。終わった人生の中で強力に焼き付いてしまった歴史だ。
替えることのできない苦しみ――炎の呪い。
「その魂を骸の海へ今一度。……終わりの火ではなく、貴方が生きた故郷の眠る過去へ"帰し"ましょう」
故郷に火の手が襲う前。
"在りし日の姿が在った場所へ"。
振りかぶった拳に迷いはなく、無口な雪音は瑞獣達全てが逃げて檻の中に何も居ないのを見た。
だれもいない。だれももう、苦しまない。
苦しんでいるのは――羽撃く自由を忘れた男。
「鳴く仔は帰る時間ですから」
残像を残しながら接敵し、力いっぱいの拳が渾身の一撃として放たれる。
意識の昏倒と一緒に、道士(世界)よ沈め――!
顔面に放たれた怪力は道士の意識を奪い、骸の海への片道切符を約束した。
ぱらぱら。
猟兵達が破壊した地面が音を立てていたが――此処で傷ついたものはない。
居たのは、無力を嘆き炎となって燃え続けていた朱雀の残影。
いつの間にか宝貝は壊れ、失われていた――。
眠るように骸の海へ、羽撃いていったのだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵