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殲神封神大戦③〜血戦に煙る辰砂

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●兵馬俑
 土煙を上げて無数の兵馬俑が荒野に走る。
 それは『始皇帝』の擁する『兵馬俑軍団』の姿であった。言うまでもなくオブリビオンである。
 彼等の目的は己たちの主である『始皇帝』の嘗ての威光を取り戻すこと。
 兵馬俑の中に入って高速移動する彼等は一体のオブリビオンを先頭にして大軍でもって大都市長安へと迫っていた。
「あれが長安か。あれを落とすことなど造作もない。我が刀刃拳を振るうに値する武侠が存在していればいいが、そうでないのならば如何に我が主である『始皇帝』の命であれ……」
『撃刃』老龍は蓄えた白髭をなでながら思案する。

 彼に長安の攻略を支持した『始皇帝』はたしかに己の主である。
 けれど、彼はかつて刀刃拳において七生拳の一人として数えられた達人である。その龍の瑞獣としての姿は異様であったが、しかして彼の望むものは殺戮ではなかった。
「我の心を踊らせる武侠との対峙がないのならば、拳を振るうに非ず」
 武人としての矜持か。
 否である。
 彼は無益な殺生を嫌っているのではない。

 ただ、己の拳を磨きたいだけなのである。
 玉を磨くためには玉が必要なように。鍛え上げられた己の拳を弱者の血で染めたとて、彼の望みには一歩たりとて近づくことがないのを知っているからだ。
「――……強者が来るか」
『撃刃』老龍は不敵に笑う。
 気配を感じ取ったからであろう。
 己の背後に追従する『兵馬俑軍団』を下がらせ、彼はただ一人荒野に立つ。

 彼の求める強者たちが封神武侠界へと転移してきたことを悟ったのだ。
「猟兵……面白い。刀刃拳開祖の時代より磨き続けた我が拳。その練磨のために手合わせ願おう」
 全身刃化の局地、刀人化へと至った刀刃拳、その七星拳が『撃刃』老龍が闘気みなぎらせ転移してきた猟兵たちの前にて構える。

 ただ、ひたすらに開祖の至った頂きを目指し、その願いの為に彼は拳を振るうのだ。
 それが如何にオブリビオンという過去の化身へと成り果て歪んだ願いであったのだとしても――。

●殲神封神大戦
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。封神武侠界において、かつて黄巾党を率いて人界を混乱に陥れ、仙界の至宝『封神台』を破壊した張本人である大賢良師『張角』が、恐るべきユーベルコード『異門同胞』を携え、オブリビオン・フォーミュラとして蘇ったのです」
 年始に引き起こされた事態にナイアルテは未だ戸惑っているようであった。

 ユーベルコード『異門同胞』、それは『あらゆるオブリビオンを、自らの支配下に置くこと』という凄まじい効果を持つ。
『張角』以上のオブリビオンさえも従え、封神武侠界にカタストロフを発生させようとしているのだ。
「言うまでもなく、強大なオブリビオン『始皇帝』すらも彼の配下としてカタストロフを引き起こすために行動しています。その一つが大都市長安への侵攻です」
『始皇帝』の擁する『兵馬俑軍団』が長安へと迫っている。
 オブリビオン兵隊たちは皆、兵馬俑の中に入って高速移動している上に、戦闘となれば開いた兵馬俑を装甲として身につけ鉄壁の防御を持って猟兵を苦しめるだろう。

 そんな『兵馬俑オブリビオン』の中でも『始皇帝』より賜った『辰砂』で兵馬俑を武装した精鋭オブリビオンが存在する。
 それが『撃刃』老龍である。
 彼は猟兵たちの転移を感知すると、他の『兵馬俑軍団』を引かせ、猟兵との戦いを望むのだ。
「それは武人としての誇りではありません。ただ、己の拳の研鑽のために皆さんとの戦いを望むのです。無論、みなさんが敗北してしまえば、彼は長安に人々を襲うでしょう」
 それを避けるために猟兵たちは、この『撃刃』老龍を打倒しなければならないのだ。

 だが、それは簡単なことではない。
 次元すら切り裂く拳の斬撃や、知覚不能なる斬撃を拳で打ち出す力、さらには最高の機動力で持って縦横無尽な攻撃を放つなど『撃刃』老龍の力が凄まじい上に『辰砂兵馬俑』が彼の周囲を変形しながら飛び回り、あらゆる攻撃の威力を大幅に減退させるのだ。
「しかし、常に変形する液体金属、『辰砂兵馬俑』……その変形刷る一瞬を捉え、『撃刃』老龍の生身の部位を攻撃しない限り、苦戦は免れないでしょう」
 ナイアルテは頷く。
 握った拳は固く。そして、打ち出す拳は目にも留まらぬ。どんな鉄壁の防御であれ、その一瞬に満たぬ間隙に届かせることができるのならば、打倒できぬ道理はないのだ。

「皆さんならばできるはずです。『辰砂兵馬俑』の防御の変形、その一瞬を捉え、全力の攻撃を届かせることが」
 ナイアルテは猟兵たちの力を信じている。
 いつだって彼等は不可能と思われ、誰もが苦戦をしいられるだろう戦いを制してきたのだ。
 ならばこそ、ナイアルテは彼等を送り出す。
 彼等ならばきっと如何なる強敵にも敗れることはないだろうと――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『殲神封神大戦』の戦争シナリオとなります。

 大都市長安に迫る『兵馬俑軍団』を率いる精鋭である『辰砂兵馬俑』を身にまとったオブリビオンとのた戦いとなります。
『兵馬俑軍団』が長安に至れば、虐殺が起こることは明らかです。
 ここで精鋭オブリビオンを打倒し、『兵馬俑軍団』の侵攻の出鼻をくじきましょう。

『辰砂兵馬俑』は液体金属で出来ており、あらゆる攻撃の威力を大幅に殺す力を持っています。
 ですが、常に変形して飛び回っているため、その変形の一瞬の隙を突きオブリビオンの生身の部位を攻撃すれば打撃を与えることが出来ます。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……辰砂兵馬俑に覆われていない部位を攻撃する。

 それでは、『辰砂兵馬俑』という鉄壁の守りを持つオブリビオンを突き崩し長安の人々を守らんとする皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『『撃刃』老龍』

POW   :    次元撃刃拳
【腕から次元を切り裂きながら飛翔する斬撃を】【放ち、接触部分は次元の裂け目に吸い込まれ】【消える。対象の行動を学び、未知を知る事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    霞飛龍刃・不視
レベル分の1秒で【レベル×10本の知覚不能の飛翔する斬撃】を発射できる。
WIZ   :    飛翔前龍咆哮後虎拳
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【最高の機動力で前後同時攻撃。刃と化した腕】から【敵を背後から襲う飛翔する虎の形をした斬撃】を放つ。

イラスト:watakumo_yuge

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

村崎・ゆかり
何というか、言葉も出ないわ。お偉い神様や勇壮の武将豪傑まで繰り出してくるとはね。
その名を汚すには忍びない。あたしたちで全て討滅してあげるわ。

「結界術」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「呪詛」「仙術」「道術」で、紅水陣。
今回はあたしが「環境耐性」で身を守りながら絶陣の中央に立って、敵が突っ込んでくるのを待つわ。
あたしと手合わせしない限り、この先へは進ませない。さあ、この勝負受けてもらうわよ。

「衝撃波」まといし薙刀で「なぎ払い」、「貫通攻撃」で「串刺し」にしてあげる。
敵の攻撃は薙刀の柄で「武器受け」。
ほら、動きが鈍ってきたわよ。年寄りの冷や水なんてしてないで、大人しく骸の海へ還りなさい。
さあ、お休み。



 オブリビオン・フォーミュラ、大賢良師『張角』の持つユーベルコード『異門同胞』の力は凄まじいの一言であった。
 如何なる力を持つ強大な存在であれ、そのユーベルコードの前には『張角』に忠誠心を持ってしまう。ゆえに『張角』は強大な存在でなくとも、その力を持って世界にカタストロフを起こすことが出来るのだ。
「なんというか、言葉も出ないわ。お偉い神様や勇壮の武将豪傑まで繰り出してくるとはね」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は歯がゆい気持ちであったことだろう。

 過去になった存在であれ、その名を歴史に刻んだ者たちがオブリビオンへと変貌し、さらにはオブリビオンである悪逆の徒に忠誠心を抱く。
 その有り様は嘗ての姿を、名を穢すものであったことだろう。
「その名を汚すには忍びない。あたしたちで全て討滅してあげるわ」
 ゆかりが対峙するのは刀刃拳の七星拳の一人『撃刃』老龍である。
 瑞獣である彼は嘗ては心優しき武侠そのものであったことだろう。拳に宿る力と、その清廉なる精神は様々な武侠を導いてきたはずだ。

 けれど、今はその姿は欠片もない。
 あるのは刀刃拳開祖の居たりし頂きに己もまた至らんとする欲望だけであった。
「名など。花を取るか、実を取るかと問われれば、人は迷わず実を取るだろう。実利を求めるからこそ人である。ならば、我の拳もまた開祖の拳に至る実を必要とする。名など」
 そんなものは必要ないのだと凄まじい速度で踏み込む『撃刃』老龍。
 その姿は捉えることはできなかった。
 ゆかりにはそれがわかっていたし、同時に彼が身にまとう辰砂兵馬俑は容易には敗れるものではないことを知る。

 己の背後に回り込んだ『撃刃』老龍の姿をゆかりは見る必要はない。
 紅水陣(コウスイジン)は既に己を中心に展開される。真っ赤な血のような全てを蝕む強酸性の雨は降り注ぐ。
 どれだけ辰砂兵馬俑が強固な力を持っていると言えど、降りしきる雨は、あらゆるものを腐食させる赤い靄を生み出すあ。
「古の絶陣……だが、我を覆うは『始皇帝』より賜りし辰砂兵馬俑! この鉄壁を前に無意味!」
 放たれる拳をゆかりは薙刀で受け止める。
 あらゆるものを切り裂く刀刃と化す拳。

 それが刀刃拳である。
「あたしと手合わせをしない限り、このさきへは進ませない」
「言うまでもなく! 我の目的は拳の練磨! どのみち殺すのならば、切り裂く手応えを感じたいものであるが故!」
 放たれる拳は鋭く重いたい。
 だが、腐食させる靄の中で如何に肉体を刀刃へと変貌せしめ、辰砂兵馬俑によって攻撃を減退させるのだとしても、その靄は辰砂すらも腐食させていくだろう。

「我を前に持久戦を用いるか」
「ほら、動きが鈍ってきたわよ。年寄りの冷水なんてしてないで、おとなしく骸の海へ還りなさい」
 ゆかりは『撃刃』老龍を前に一歩も引かない。
 打ち据える拳と薙刀が火花を散らす。腐食していく体。しかし、その練磨を否定することはない。
 過去は過去に。

 どうあがいても彼の求める頂きなど至ることができない。
 それがオブリビオンというものである。所以い、そのあがきを持って嘗て為さしめた名を汚さぬことこそがゆかりにできるものであったのだ。
「さあ、おやすみ」
 戦うことを望み、練磨を望む。
 それが武人なのであろう。けれど、そのオブリビオンとして歪んだ在り方は、世界を滅ぼすがゆえに、ゆかりは討ち滅ぼさなければならないと、己の信念の刃を振るうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
練磨の時間はとうに終わっているぞ

状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
破壊の原理から逃れる術、無限の先へ届く道理いずれも無し
要らぬ余波は『無現』にて否定
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

破界で掃討
対象はオブリビオン及びその全行動
それ以外は兵馬俑も「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を『刻真』『再帰』にて無限に加速・循環
全方向への星の数ほどの魔弾の斉射を無限循環
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす

何をしようと結構
そも、無限を超えて初めて入り口。まずは届かせるが良い
至るにせよ及ばぬにせよ、俺は尽く飲み込んで消し飛ばすまで
火力と物量で圧殺する



 戦場を縦横無尽に駆けるは辰砂兵馬俑の煌き。
 液体金属である辰砂で出来た兵馬俑は装甲のようにオブリビオン『撃刃』老龍の周囲を飛び、その刹那の如き踏み込みに付いてきているのだ。
 これこそが刀刃拳が七星拳の一人に数えられた『撃刃』老龍が嘗て練磨に寄って会得した踏み込みの速さである。
 赤い靄は酸性の雨がもたらした全てを腐食させるもの。
 辰砂兵馬俑もまた同様である。
 けれど、それ以上に彼の練磨はあらゆるものを寄せ付けないだろう。

「我の拳を如何に腐食させようとも。我の練磨を止めることはできぬ。求めたるは開祖の拳。あの頂きを見るまで、我は如何なる汚名も恥辱もものともせぬ!」
 龍の瑞獣たる優しさはすでに捨て去った。
 あるのは拳の鬼としての存在のみである。
 それをアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は蒼光を纏いながら見つめる。
 その瞳に輝くのはユーベルコードである。
 あらゆる速度を凌駕する拳の一撃を破界(ハカイ)の力齎す障害を無視し、万象を根源から消去する創生の権能が顕す蒼光の魔弾でもって受け止めるのだ。

「練磨の時間はとうに終わっているぞ」
「否。我の拳は未だ頂きに届かず。ならば練磨を続けるのみよ!」
 辰砂兵馬俑の防御能力は大したものであった。
『始皇帝』がもたらした特別な辰砂による装甲。それはあらゆる攻撃を減退させる凄まじき力である。

 だが、破壊の原理から逃れるすべ、無限の先へ届く道理はいずれもなく。
 要らぬと判断した余波は原理によって否定される。
「何をしようと結構」
 アルトリウスにとってあらゆるものは障害と認識されるだろう。装甲のように飛び回る辰砂兵馬俑もまた同様である。
 原理であると同時にあらゆるものを無視する創世の権能は蒼光の魔弾となって戦場の荒野を飛ぶ。

「我が刀刃と化した拳を受け止めるか! やはり玉! 嬉しいぞ、猟兵!」
『撃刃』老龍は笑っていた。
 闊達に、己の心のままに、欲望のままに笑っていた。どれだけ己が滅びる存在であり、滅ぼされなければならない存在であったのだとしても、その拳が至る道を知っているからこそ、笑うのだ。
 滅びることが恐ろしいのではない。
 何も為さしめないで生を終えることに恐れるのだから。

「そも、無限を超えて初めて入り口。まずは届かせるがよい。至るにせよ、及ばぬにせよ、俺は尽く飲み込んで消し飛ばすまで」
 アルトリウスにとって、それは関心事ではなかった。
 そこにあるのはただ滅ぼす存在としてのオブリビオンのみ。
 圧倒的な火力と物量を世界の枠組みの外から組み上げた魔力で練り上げた蒼光の魔弾が封神武侠界の荒野に降り注ぐ。
 大都市長安の空に降り注ぐ流星の如き、それは『撃刃』老龍を飲み込んであらゆる防護すら貫くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
(ボーナスを得るための方針)
わたしがネタを言う。
こーいう真面目な爺さんはネタを楽しんでくれずバカにするはず。違うなら苦戦以下やボツもやむなし。
ネタを楽しめない相手の速度は1/5になる。近く不能な斬撃の威力も落ちるし、辰砂兵馬俑も遅くしなるので変形に時間かかるのでその隙に斬る。

一介の武人として、敵将に対する敬意からまっとうにいこうかなとも思ったけど、やめた。相手はオブリビオン。なによりわたしらしくないのだ。
ということで敵の前に大喝で先制攻撃

老龍殿か。その御年でその武術。すさまじい鍛錬をしてきたのだろう。
健康にも気を使ってるのだろうな。例えばサウナとか。
その時は当然アレも……

ロウリュ!!

老龍!!



 紅の雨と蒼光の魔弾が空を埋め尽くす。
 その最中に在りながら『撃刃』老龍は未だ立っていた。その身を刀刃と化す刀刃拳において七星拳と称される一人として嘗てあった龍の瑞獣は、その鋼鉄のごとく鍛え上げられた肉体を誇るだろう。
「我の練磨は終わらぬよ。あの日見た開祖の拳、その頂きに我も至るまでは!」
 それが過去に在りし『撃刃』老龍の歪んだ欲望であるのだろう。
 どれだけ高潔な意志も、どれだけ清廉な意志も、過去に沈みオブリビオンとなったのであれば、歪み果てるのが常であり、真理であるというのならば、それは悲しむべきものであったことだろう。

 その哀しみを吹き飛ばすネタがある。
 大豪傑・麗刃(23歳児・f01156)は、それを笑い飛ばす。
「一介の武人として、敵将に対する敬意からまっとうにいこうかなと思ったけど、やめた」
 それは当然のことであったのかもしれない。
 嘗て在りし存在。
 肉体を刀刃へと化す拳。その練磨がたどる道程はあまりにも厳しいものであったことだろう。
 武人であれば経緯に値するものであったはずだ。
 けれど、麗刃は頭を振る。

 どれだけ『撃刃』老龍が過去に高潔な存在であったのだとしても。
 大都市長安に虐殺をもたらさんと迫る以上……いや、過去に歪んだオブリビオンである時点で同情するに値することはない。
「なによりわたしらしくないのだ」
「ならば、なんとするよ。猟兵!」
 それは一瞬の時間にも満たぬ拳であった。
 放たれたことも知覚できない。不可視にして最速の拳。

 オブリビオンと猟兵は互いに滅ぼし合う関係である。
 そこに如何に敬意と同情を見出すことができたのだとしても、彼等は世界を滅ぼす。生命を鏖殺せしめる。
 ならばこそ、麗刃は叫ぶのだ。
「わたしのネタを聴けぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
 それは刹那の時間を遅らせるほどの力。

 瞳に輝くユーベルコードはネタに輝いている。
 そう、『撃刃』老龍の名を見た時からこう言うと決めていた。
「老龍殿、その御年でその武術。凄まじい鍛錬をしてきたのだろう」
 当然健康にも気を使っているのだろうなと推察できる。そう、例えば――。
「サウナとかが秘訣だろうか!」
 じわりと時が動いている。
『撃刃』老龍は訝しんだ。麗刃のネタに戸惑っているのではない。

 この不可視にして知覚不能と言わしめた己の拳が何故、麗刃に至らぬのかをはっきりとした意識の中で感じ取っているのだ。
 それは麗刃の齎すギャグ――ネタを楽しんでいないモノ全てに作用する行動を通常の5分の1にまで貶めるユーベルコードの力。
『撃刃』老龍はこれまで己の拳の研鑽と練磨にだけ費やしてきたからこそ、洒落を理解する心を何処かに落としてきたのだろう。

 麗刃のネタを楽しむという心などありようがないのだ。
 だからこそ、彼のユーベルコードが嵌るのだ。どれだけ辰砂兵馬俑が鉄壁の力を持ち、変形する瞬間が刹那なのだとしても。
 その刹那はを5倍にまで引き上げるのが麗刃のネタなのである。
「何を――」
 言っているのだと『撃刃』老龍がうめいた瞬間、炸裂するのは必殺のギャグ。

「サウナと言えば当然アレも……ロウリュ!! 老龍だけに!!」
 その言葉を最後に戦場は凍りつく。
 多分、老龍は『ラオロン』と読むのかもしれない。字面だけでは『ロウリュウ』と読んでもおかしくない。
 だがしかし、『撃刃』老龍はそのネタを解することはできなかった。ならば、辰砂兵馬俑の生む隙など麗刃にとっては止まってみるも同然である。

「わたしのネタを聞け(ワタシノネタヲキケ)……でも、理解されてないどころか戸惑われているのはちょっと恥ずかしいというか! だがしかし! 大爆笑がないということは!」
 そう、その一瞬の隙をこじあけた麗刃のサムライブレイドが一閃を放つ。
 鋼鉄の体すらものともせぬ一撃は、『撃刃』老龍へと刻まれ、長安の荒野に鮮血をほとばしらせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…己が修めた武の在り様。そこに定められた答えは無く、貴方が自らの拳に賭ける想いも否定は致しません。
されど、私の武とは業を修め振るうのみならず、その力に呑まれず律す魂の在り様こそ真髄。
故に、今の貴方と私は相容れず。
――我が武を以て、貴方の拳に応えましょう。

UC発動、見切り、野生の勘にて刃が放たれる前段階、『殺意の形』を察知し残像で隙間を走り抜け肉薄
落ち着き技能の限界突破、無想の至りにて極限まで業を練り上げ、
怪力、グラップルでの最大威力、最高速度の正拳を以て辰砂の防護より速く一撃を叩き込む


…或いは液体金属に頼らず、歪む事なく鍛錬を積んだ生前の貴方なら。
地を嘗めたのは、私であったのやもしれませんね。



 その拳が意味することは一体なんであっただろうか。
『撃刃』老龍が嘗て見た刀刃拳の開祖の拳。それが示す先を確かに過去の彼は見たのだろう。
 だからこそ、その頂きを求めたのだ。
 あの頂きに至ることができたのならば、他の何物も要らぬと思わしめるほどの答えを、刀刃拳の開祖は持っていたのかもしれない。
 過去に歪んだオブリビオンであったとしても、その抱いた思いは変わらぬものであったが歪んでしまっている。
 そもそもが間違っているのだから。

 けれど、月白・雪音(月輪氷華・f29413)は否定しない。
 辰砂兵馬俑の装甲が『撃刃』老龍の周囲に展開され、液体金属として変形し続けている。
「……己が修めた武の在り様。そこに定められた答えは無く、貴方が自らの拳に賭ける想いも否定は致しません」
「ならばなんとする。幼き武人よ」
『撃刃』老龍は雪音と対峙する。
 それは嘗ての武人としての誇りがあったからかもしれないし、ただ己の拳を練磨するための存在として認識していたからだけであったかもしれない。

 どちらにせよ、雪音は頭を振るだろう。
「されど、私の武とは業を修め振るうのみならず、その力に呑まれず律す魂の有り様こそ真髄」
 もとより力ある者がそれを制するために武を持って修めることと、力を求めて武を修めることとでは真逆であった。
 だからこそ、雪音は猟兵とオブリビオン以前に『撃刃』老龍と相容れぬことを知る。
 構える姿と想いは対局。
 されど、拳は同じ。
「――我が武を以て、貴方の拳に応えましょう」

 それは刹那の瞬間に起こりし出来事であった。
 凄まじい踏み込みで迫る『撃刃』老龍の姿を雪音は捉えていた。
 自身に宿る野生の勘。
 その直感を信じるのならば、己に迫る『殺意の形』を彼女は見ただろう。残像を生み出すほどの速度。
 踏み込む速度は圧倒的に『撃刃』老龍の方が上である。
 だが、己に向けられる殺意にこそ敏感なのが獣だ。背に迫る殺意に雪音は残像残しながら走り抜け、反転して『撃刃』老龍へと迫る。

 肉薄する互い。
 視線が絡まることはあれど、その瞳が見やるは互いの拳のみ。
 拳武(ヒトナルイクサ)は常に闘争の極地にこそ己の身を置くものである。それこそが彼女の戦の粋である。
「遅い! 我が賜りし『辰砂兵馬俑』の装甲を貫くことなど!」
 迫る拳を雪音は躱すのではなく、前に踏み込むことでもって頬をかすめながら突き進む。

 痛みが頬に走るが、彼女は気にもとめていなかった。
 己の無想は極地に至る。
 身に宿りし獣の力は業と成る。練り上げられた力は、貫く強さではなく。刹那を撃ち抜く疾さとなって放たれるだろう。
「これが私の拳なれば」
 放たれる一撃は『辰砂兵馬俑』の装甲が変形する隙間を一瞬上回る速度であった。

 言う成れば針の穴を通すような精密さと、目にも留まらぬ速度を合わせた拳の一撃。
「ぐ――っ……」
 雪音の拳は『撃刃』老龍の胸を捉えていた。
 鋼鉄のごとく鍛え上げられた肉体。されど、その肉体以上に『始皇帝』より贈られた『辰砂兵馬俑』の装甲を信じるが余り、彼は己の肉体を信じきれずに居た。
 それが勝者と敗者とを分かつ一因となる。

「……或いは液体金属に頼らず、歪む事なく鍛錬を積んだ生前の貴方なら」
 そう、『辰砂兵馬俑』の装甲の重みで生前の速度は出ていなかった。だからこそ、雪音の疾さに対応できなかった。
 もしも、があるのならば。
「地を嘗めたのは、私でああったやもしれませんね」
 雪音の背後で『撃刃』老龍が倒れる音が響く。
 彼女はそれを聞き、振り返ることなく己の道へと邁進するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
へェ、強そうじゃねェか。楽しめそうだ。
液体金属のUDCを纏って狼耳と尻尾を象る。手足にも纏って獣人のような姿になるぜ。
手傷を負ってもギリギリまでUCは使わねェ。その方が愉しそうだからな。
最初は相手の速度に圧倒されるが野生の勘で動きを合わせていくぜ。こっちの攻撃が通らなくても気にしねェ。長く殺し合いができるなら好きなだけ護ってろよ。

互角と思えるレベルまで楽しめたら、ケリをつけるぜ
「どォしたよ、それは護るだけか?」
殺気で恐怖を与えつつUC発動。6倍の速度で圧倒してやる。ジジイの速度を上回って、辰砂すら付いてこれねぇ速度で前爪の一撃をお見舞いするぜ。



 一度は大地に倒れ伏した『撃刃』老龍は再び立ち上がる。
 彼の胸は拳に寄って穿たれていたが、それを護るようにして『辰砂兵馬俑』の装甲が変形を続けながら、高速で飛び回っている。
「見事な拳である……だが、まだ我が求める拳の頂きには遠い!」
 血反吐を吐きながら、龍の瑞獣たる『撃刃』老龍はその瞳に歪んだ欲望の光を湛え、大都市長安の荒野に在りて、猟兵たちと対峙する。

「へェ、強そうじゃねェか。楽しめそうだ」
 水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の中にあるプログラムたる『レイリ』が笑う。
 彼の瞳に映るオブリビオン『撃刃』老龍はたしかに練磨の果てに居たりし極地にある存在である。
 刀刃拳の七星拳に数えられただけはある武人なのであろう。
 練り上げられた闘志は傷を追っても尚、衰えることはなかった。

「活性細胞・強化(カッセイサイボウ・キョウカ)――全力で行くぜ」
『レイリ』の不敵な笑みに『撃刃』老龍は構える。
 液体金属のUDCが『レイリ』の体を包み込み、狼の姿を型どっていく。手足も、変貌し、まさに獣人そのものだ。
「獣が、我の拳を恐れぬか」
 それは一瞬であった。『レイリ』の研ぎ澄まされた野生の勘であったとしても、捉えられぬ一撃。

 背後を必ず取り、その刀刃と化した拳で持って叩き込まれる一撃は『レイリ』の身にまとった液体金属のUDCすらも貫いてくる。
 痛みが体を走り抜けるが、『レイリ』の表情にあったのは苦悶ではなかった。
「ハハハッ! やるじゃねェか!」
 どれだけ追い込まれようとも『レイリ』は愉しげに笑っている。
 圧倒される速度。
 野生の勘すらも追いつかぬほどの練磨された拳。
 それが人の編み出した拳であるというのならば、刹那の内に彼我の力量を推し量るものであった。

「長く殺し合いができるなら好きなだけ守ってろよ!」
 こちらからの拳はまったく届かない。
『辰砂兵馬俑』の装甲に阻まれてしまうのだ。届かないというより相殺されている。だが、ならばこそ、『レイリ』の瞳はユーベルコードに輝く。
 UDCの液体金属が己の体に同化していく。
 ああ、と息を吐き出す。
 己の身を焦がすのは、戦いの最中にある生命のやり取りをするヒリヒリとした感触だけである。

 一方的ではない。
 けれど、『レイリ』は理解したのだ。
 確かに速い。けれど、その拳に鋭さはあっても重さがないのだ。
「当然か。生前の重さは骸の海に置いてきたようだからなァ!」
 咆哮する。
 獣の、狼の咆哮は空気を震わせ、ビリビリと『撃刃』老龍を打つ。同化した液体金属によって身体能力が引き上げられる。
 全ての力が六倍にまで高められる。
 時間はない。
 けれど、一瞬でいいのだ。
「――ッ! まだ力を隠し持っていたか!」

 放たれる『レイリ』の拳はこれまでの六倍。
 どれだけ『辰砂兵馬俑』が装甲でもって『撃刃』老龍を護るのだとしても、その絶えず変形し続ける性質故に一瞬の隙が生まれるのだ。
 今の『レイリ』ならば、それを捉えることができる。
 放たれる拳はこれまでの比較にもならぬ速度であった。
「どォしたよ、それは護るだけか?」
 圧倒的な拳速。
 放たれる一撃は『辰砂兵馬俑』の装甲ですら防ぐことのできぬ速度。

 暴風のように吹き荒れる『レイリ』の拳は液体金属で出来た鋭き爪を『撃刃』老龍へと突き立てる。
 己の身を削るユーベルコード。
 されど、『レイリ』にあるのは失う恐怖ではない。
 生命のやり取りをするという楽しさ。
 ただそれだけを感じるために『レイリ』は咆哮し、その凄絶なる一撃を再び叩き込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
よう、爺さん。心踊らせる相手をご所望らしいな。なら俺達が相手してやるぜッ!
「…転身ッ!」

雷神霊装を纏ったら引き上げたスピードで一気に距離を詰めて雷撃を纏わせた妖刀で先制攻撃だ。
とはいえ、辰砂兵馬俑でたいしたダメージは入らねえか。まあいい、まずは挨拶代わりよ。

攻撃を繰り返しながら爺さんの動きを見切っていくぜ。
んでもって知覚不能の飛翔する斬撃を放とうとしてきたら結界霊符を前方の地面に貼り結界を展開して防御だ。

「…いって、ヤタ。」
式神【ヤタ】に強襲させて辰砂兵馬俑が変形する一瞬を見切り、引き上げた反応速度で一気に爺さんに妖刀を叩き込むぜッ!
打てる手全て打ってアンタを超えてやるよッ!


【アドリブ歓迎】



 巨岩が砕けて散る。
 それは猟兵に寄る一撃でもってオブリビオン『撃刃』老龍の肉体が激突した結果である。
 大都市長安に迫る『始皇帝』擁する『兵馬俑』身にまとうオブリビオンの軍勢。
 その筆頭である『辰砂兵馬俑』を身にまとう『撃刃』老龍はたしかに精鋭と呼ぶに相応しいオブリビオンであったことだろう。
 激突した巨岩が砕けるほどに研ぎ澄まされた肉体は、鋼鉄以上であり、刀刃拳の七星拳の一人に数えられた龍の瑞獣の鍛錬を知らしめるところであった。
「クハハハ! 心躍るな、猟兵! これほどの強者たちと相まみえることができるとは!」
 彼の欲望は嘗ての刀刃拳の開祖の拳、その頂きに至ることである。

 鍛錬と研鑽、そして練磨の果に至る頂き。
 それを求めて止まぬからこそ、オブリビオンとなった過去の清廉なる武人は歪み果てる。
「もっとだ! もっと我と拳を!」
『撃刃』老龍の身に纏う液体金属の装甲、『辰砂兵馬俑』に激突するのは刃の一撃であった。
 火花散る先にあるのは鬼面を被った巫女の姿。

『よう、爺さん。心躍らせる相手をご所望らしいな』
 カタカタと鬼面の歯が鳴る。
 それは、ヒーローマスクである神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と相棒の巫女である桜であった。
 手にした刀の一撃が液体金属の装甲に弾かれるのを見やりながら、構わずに二人の瞳がユーベルコードに輝く。
『なら、俺たちが相手してやるぜッ! ぶちかますぜ、相棒ッ!!』
「……転身ッ!」
 二人の力を一つにすることで顕現するは天より降り落ちる雷撃。
 その雷撃を纏うは、雷神霊装・二ノ型(スパークフォーム・ツー)。煌めくユーベルコードは紫電の如き雷撃をほとばしらせ、一気に引き上げられた速度で持って雷鳴の如き音を響かせながら、『撃刃』老龍へと迫るのだ。

「我が拳を磨くために雷撃とは大層なことであるが!」
 放たれる知覚不能なる斬撃の如き拳。
 それこそが刀刃拳の真骨頂である。見えぬ拳の一撃は空を裂き、凶津たちへと迫る。
 手にした結界霊符が大地より展開される。
 しかし、その結界は拳の一撃で持って破壊される。
 砕け散る結界の欠片の中を飛び込んでくる『撃刃』老龍。まさに過去の研鑽がどれほどのものであるのかを知らしめる踏み込みであった。
 だが、凶津は知っている。
 これまで何度もオブリビオンとの戦いで知っているのだ。

『確かに速いなッ! だがよ!』
「……いって、ヤタ」
 桜の手より放たれた式神『ヤタ』が空を舞う。
 どれだけ踏み込みが速かろうが、頭上よりの強襲に『撃刃』老龍は気がつく。気がつくということは注意が散漫になるということである。
「我の気を割くか! その程度の小手先で我が刀刃拳を敗れると思うな!」
 振り抜く拳が空を飛ぶ式神を穿つ。

 だが、凶津たちの目的は『撃刃』老龍の注意をそらすことではなかった。
 式神である『ヤタ』の強襲は『辰砂兵馬俑』を反応させることである。液体金属である装甲は攻撃に寄って自動的に変形し反応する。
 ならば、その変形を誘発させ、タイミングを意図的に発生させることができるのだとしたら。
「……そこッ!」
『打てる手全て打ってアンタを超えてやるよッ!」
 二人の瞳は見ていた。

 一瞬の隙。
 雷が落ちる僅かな時間に満たぬ隙。
 だが、彼等はそれを捉え、その刹那に踏み込む術を持っているのだ。そのための霊装。
 大地を踏みしめ、紫電がほとばしりながら二人の力が疾走る。
「……どれだけ練磨しようとも、それ以上にはなりません。それが過去の化身であるがゆえに」
『アンタはこれ以上は進むことができない。それがオブリビオンの定め。未来の可能性無き者なんだからなッ!』
 過去より至りし、未来の可能性を潰す存在を前に凶津の咆哮が雷鳴のように轟き、桜の手にした妖刀が紫電受け煌きながら『撃刃』老龍の鍛え上げられた肉体を袈裟懸けに切り上げる。

 それは過去を凌駕する『今』の一閃であった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
研鑽を積もうという気持ちは別に否定しないが、やって良いことと悪いことがある。止めさせてもらおうか

神刀の封印を解除。神気を纏う事で、自身の身体能力を限界を越えて引き上げる
まずは防御特化。強化した身体能力や技能を使ってどうにか凌いでいこう

カウンターの要領で生身部分に斬撃を放つ。それでも、おそらく兵馬俑に防御されるだろう
だからこそ、敢えて刀を握った手を離し――無の型【赤手】
敵が体勢を整え直す前に、兵馬俑が再度変形を済ませる前に生身の部位に向けて、拳による全力の一撃を叩き込む
手放した刀は落ちる前に手早く回収しておこう

いや、別に刀でしか戦えないとは言った覚えはないからな。騙し討ちもなにもあるまいよ



「フハハハ! 面白い! 実に素晴らしい! 猟兵とは、これほどのものであるか!」
 己の刀刃と化した肉体を切り裂く妖刀の斬撃が上げる血飛沫を見やりながら、『撃刃』老龍は笑っていた。
 鋼鉄に比肩する体をもってしても猟兵の斬撃は耐えることができなかった。
 けれど、彼にとってそれは未知である。
 自身の知らぬ剣技、力。
 それを知ることに寄って刀刃拳の七星拳に数えられた龍の瑞獣は己の拳の練磨を叶えるために血を流しながら長安の荒野に立つのだ。

「研鑽をつもうという気持ちは別に否定しないが、やって良いことと悪いことがある」
 止めさせてもらうと夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、己の手にした神刀の封印を解き放ち、神気を纏う。
 自身の身体能力の限界を超えた力は、肉体をきしませる。
 その練り上げられた神気を前にしてもなお、『撃刃』老龍は笑う。未知なるものを知る喜び。
 他者の力量を羨むのではなく、研鑽の経験となることをこそ彼は喜ぶのだ。

「この闘気……我が刀刃拳の開祖のそれを思わせる。お前達猟兵たちは皆そうなのだな! 善きことだ!」
 迫るは放たれた拳の斬撃。
 それは次元すらも切り裂く斬撃。拳で斬撃を放つことができるのは、刀刃拳の使い手ならば当然のことである。
 肉体を刃と化す。 
 それが初歩であるからだ。その恐るべき斬撃にまで昇華した一撃を鏡介は凌ぐ。次元を切り裂く斬撃は、切り裂いた端から『撃刃』老龍の踏み込みによって連撃となって放たれる。
 手にした神刀で凌ぐのがやっとであった。

「凄まじき練磨だな。だが――!」
 カウンターで放つ斬撃は『辰砂兵馬俑』の装甲に阻まれる。
 装甲は液体金属で出来ていて、絶えず変形しては形を変え自動的に『撃刃』老龍へと放たれる攻撃をガードするのだ。 
 その攻防に優れたるオブリビオンである『撃刃』老龍を前にして鏡介は攻めあぐねるようにして手にした神刀を頼りに防御を固める。
「防戦一方ではな!」
 放たれる斬撃。
 その一撃は絶命の一撃であったことだろう。だが、鏡介はその一撃を前に手にした神刀を手放す。

 勝負を捨てたかに思えた行動に『撃刃』老龍は驚愕したであろう。
 己の命綱とも言うべき刀を手放したのだ。だが、鏡介の瞳はユーベルコードに輝く。
「無手相手だと侮るなよ――無の型【赤手】(ムノカタ・セキシュ)」
 それは、己から距離を詰めるのではなく、敵である『撃刃』老龍に間合いを詰めさせることによって実現する。
 肉薄する敵の瞳を鏡介は見たことだろう。
 歪んだ欲望。
 絶え間ない練磨の果に至る、嘗ての拳の頂き。
 それを追い求めるがゆえに歪み果てたオブリビオンを前に力の象徴でもあり、命を守るものすら手放す鏡介の手にあるものはない。

 無手なる拳を握りしめる。
 変形する兵馬俑を前に鏡介は己の拳を解き放つ。
「刀の使い手ではなかったか!」
「いや、別に刀でしか戦えないと言った覚えはない」
 だまし討も何もあるまい。
 鏡介のはなった拳の一撃は『辰砂兵馬俑』が変形する一瞬の隙を捉え、打ち込まれる。
 全力の一撃は『撃刃』老龍の胴に打ち込まれ、その肉体を吹き飛ばす。
 手放した刀が大地に落ちるよりも早く鏡介は、それを手早く腰に帯びて残身を取る。

「練磨の果てに求めるものがあるのならば、それを目指すのもいいだろう。だがな、お前は超えてはならぬ一線を超えた。己の武が何のために忘れたのであれば、最早、求める頂きは見えぬとしれ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

陸・橘子
わたしたちが勝つことで長安のみなさまを救えるというのなら、喜んで戦わせていただきます。

『辰砂兵馬俑』の隙をつくには【集中力】が大事と見ました。
戦う前に【集中力】が切れないよう【おかしぶくろ】からおやつをだして、しっかり食べておきますね。

戦いは正面からが礼儀でしょうか。
しっかりとご挨拶をしてから、始めたいと思います。

間合いを決めたら【興覇】で攻撃をしかけ、最初は『撃刃』さんと液体金属の動きを【見切】らせていただきましょう。

動きを把握したら、本格的に攻撃いたします。
【2回攻撃】の1撃目をわざと液体金属に防がせ、2撃目を叩き込んでいきましょう。

【怪力】と【衝撃波】で体内を破壊させていただきますよ~。



 大都市長安に迫る『始皇帝』の擁する『兵馬俑』の軍勢を率いる『辰砂兵馬俑』を持つ精鋭オブリビオン『撃刃』老龍は、猟兵との戦いを望む。
 彼の望みは己の拳の研鑽のみ。
 かつて在りし刀刃拳の開祖が至る頂きに己もまた立つために、強者との戦いは必然であったからだ。
「もっとだ! 我の研鑽を! お前達は我の望みを叶えるために!」
 もしも猟兵達が破れたのならば『兵馬俑』を纏うオブリビオンたちは長安の人々を虐殺するであろう。

 それを阻むために猟兵たちは戦う。
 竜の瑞獣たる『撃刃』老龍にとって、人々の鏖殺は副次的なものに過ぎない。そんな些細なことはどうでも良いというように鍛え上げられた肉体でもって猟兵たちを阻むのだ。
「人々の虐殺を止めんとするのならば、我を倒してからにしてもらおう!」
 振るう拳は次元すら切り裂く拳である。
 それが如何なる研鑽の果に生み出されたものであるかなど、想像することもできないだろう。

「わたしたちが勝つことで長安のみなさまを救えるというのなら、喜んで戦わせていただきます」
 陸・橘子(大力放松・f32784)は次元すら切り裂く拳を前にして怯むことはなかった。手にした双錘が唸りを上げる。
 すでに彼女はしっかりとおかしぶくろより取り出したり金平糖を頬張り、集中力をみなぎらせていた。
「正面から行かせていただきます!」
 拱手でもって橘子は礼を失する事無くオブリビオンである『撃刃』老龍へと向かい舞う。

 オブリビオンと猟兵は確かに滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。
 けれど、曲がりなりにも武人である。
 彼を前にして橘子は認めるところがあるからこそ、礼を失することはないのだ。
「来い! 我が拳を受けよ!」
 放たれる拳を橘子は真正面から双錘を叩きつけ、受け止める。
 周囲に飛ぶ『辰砂兵馬俑』の装甲は彼女の重さを活かした打撃を尽く阻む。重さが伝わらないのだ。

 それが『辰砂兵馬俑』の鉄壁たる防御の要であった。
 自在に変形し、常に絶えず動き続ける液体金属の装甲。それを見切るにはもっと集中する必要があった。
 刹那の如き一瞬において見える隙。 
 それを突かねば『撃刃』老龍へと攻撃を届けることはできないのだ。
「我が拳を受け止めるか! 面白い!」
「拳の練磨は素晴らしいものです。ですが~」
 振るう双錘は凄まじい重量を持つ。だが、それでも振るう打撃は鋭いものであった。連続して放たれる双錘の打撃に『撃刃』老龍は舌を巻くだろう。

 女だてらになどと言うことはない。
 だが、それでも橘子の振るう打撃は凄まじいのだ。
「ちょっと痛いのいきますよ~」
 橘子の瞳がユーベルコードに輝く。
 数合に渡る打ち合いで彼女はすでに見切っていた。あの液体金属の装甲の変形、その一瞬のタイムラグとも言うべき刹那を見きったのだ。
「一撃目を受け止めた後の刹那~それが、その装甲の弱点。防御を捨てているからこそ、あなたの拳は鋭く重たい……なら~」

 双錘の一撃が叩きつけられ『辰砂兵馬俑』の装甲がひしゃげる。それは打撃を殺す為に変形するものである。
 だが、その変形こそが橘子の狙いであった。
 すかさず放たれるに連撃。
 叩き込まれた一撃は液体金属の装甲の合間を縫って、『撃刃』老龍へと叩き込まれる。
 瞬間、放たれるはユーベルコード錘撃衝破(スイゲキショウハ)による収束された重力波の一撃。

 彼女の初撃は液体金属を変形させるための布石。
「我が賜りし『辰砂兵馬俑』の隙を突くか!」
「何度も見ましたから~」
 橘子にとって双錘による打撃を防御させることこそが肝要であったのだ。収束された重力波の一撃は大地を割り、『撃刃』老龍を叩きつける。
 その一撃こそが、『殲神封神大戦』への反撃の狼煙として凄まじい衝撃波を荒野に走らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
長安の人々を護る為、頑張ります!

誰かを護る為に振るう武によって貴方を討ちます。
と拱手で老龍さんに一礼。
(神社近辺の健康教室で学んだ)太極拳の構えを取りつつUC発動。

相手は高速飛翔で幻惑しての前後同時攻撃。
こういう時はうろたえてはダメ。
オーラ防御を纏った天耀鏡を滞空させ、落ち着いて第六感で相手のタイミングを読む。
攻撃が来れば、背後に配した天耀鏡を巨大化させての盾受けで虎の斬撃を防ぎ、前からの攻撃はUC効果と見切り・功夫による化勁で受け流します。

密着した状態からカウンターで、辰砂兵馬俑に覆われていない部位に雷の属性攻撃を籠めた発勁(功夫)をUC効果と合わせて撃ち込み、更に衝撃波を拳から放ちます!



 凄まじき重さを持った一撃が『撃刃』老龍を襲う。
 その重力波の一撃は、大地を割り、鍛えられた肉体を容赦なく打ちのめす。倒れ伏したのも一瞬であった。
 次の瞬間にはひび割れた大地を蹴って構える『撃刃』老龍。
 構える姿は、たしかに嘗て在りし刀刃拳の七星拳と呼ばれた頃より衰えを感じさせないものであった。
 けれど、それは過去に歪み果てている。
「良いぞ! 良い! 実にな! 我が拳の研鑽、その練磨に相応しい相手と言わざるを得ない!」
 彼にとって必要なのは殺戮でもなんでもない。

 己の拳を高めるための相手。すなわち強者である。
「私は長安の人々を護る為、がんばります!」
 大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、しかして『撃刃』老龍とは対極の想いで戦う猟兵であった。
 我のために拳を振るう『撃刃』老龍と他が為に戦う詩乃。
 二人は荒野に対峙しながらも、決して交わらぬ平行線に立つ。
 拱手でもって礼を失することのない詩乃は太極拳の構えを取る。その瞳に輝くのはユーベルコード。
 神威発出(シンイハッシュツ)によって彼女の神性が発露する。

「神の威を此処に知らしめましょう」
 神社近辺の健康教室で学んだ太極拳であれど、神たる彼女が扱うのであれば……否。そこに何処で誰に学んだかなど関係ないのである。何故、これまで太極拳が長きに渡り人々に伝えられてきたのかを知るがいい。
「神威……なるほどな。神仙の類と拳を交えてきたからこそ分かる。その拳の重み。歴史の重みというわけか。だが!」
 踏み込む『撃刃』老龍の踏み込みは凄まじいものであった。一瞬で距離を詰めてくる。
 前後同時攻撃。
 本来であれば不可能とも思える攻撃。
 されど、その拳は刃と化す。

 さらには『辰砂兵馬俑』によって鉄壁の防御も備えている。
 しかし、詩乃の心は落ち着いていた。
 太極拳の健康教室でも言っていた。大切なのは心の平静である。心が乱れれば、体も乱れる。ゆえに心の平静を保つことができたのならば。
「百戦危うからず。ですね、先生」
 教室の先生の言葉を思い出し、詩乃は瞳を開く。
 放たれた拳はオーラの力で持って防ぐ。しかし、結界の如きオーラは拳に砕かれた。
 それでも詩乃の心は穏やかなものであった。

 いつもどおりすればいいのだ。
 背後に迫る拳の気配。完全なる一撃。その拳を受ければ己の身が砕かれることだろう。されど、詩乃はこころを乱すことはしなかった。
 前後同時の一撃。
 砕かれながら迫る拳を詩乃は手のひらでそっと受け止めた。
「化勁――!」
「背後から来ることはわかっていましたから」
 手のひらから放たれた拳の力が大地に流れていく。殺しているのではない。抵抗すること無く力を受け流し、その大地へと流し彼女の体に貯まることなく通り過ぎていく。

 背後に迫る虎の如き斬撃を鏡が受け止める。
 彼我の距離は零。
 ならばこそ、受け流した力は大地より反復して手のひらから流れ出す。力を全て消すことなどできない。
「ならばこその化勁。あなたの練磨した拳をこそ、あなたを砕くものだと知りなさい」
 反復により増幅した力。
 手のひらが『撃刃』老龍の胸に当てられる。
 瞬間増幅した力が大地の力を受けて放たれる。それは魔法でもユーベルコードでもない。

 人の歴史が練磨した武術の粋というものである。
 放つ一撃は『撃刃』老龍の刀刃と化した肉体すら駆け巡って、凄まじい衝撃となって吹き飛ばすだろう。
 己の拳だけでは至らぬとも。
 人の歴史が紡ぐものは、悠久の刻を経て神威にまで到達することを詩乃は知らしめるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
長安進行…もしそれを許せば大虐殺ですか…。
猟兵に課せられた使命。重いですが…重いという理由で諦めたり逃げる口実にはなりえません。
『撃刃』老龍。
御覚悟を!!

一瞬の隙…残念ながら未熟な道士である私にはそのような神業は荷が重いです。なら、点ではなく、面で攻めます。
『結界術』で防御しつつ、宝貝「五火神焔扇」を『道術』で強化し『範囲攻撃』して『撃刃』老龍を全身を焼き払います。
当然、辰砂兵馬俑とやらが覆う部分はたいしてダメージを与えれません。
それは承知の上。全身なら、覆う部分も焼けば、覆っていない部分も焼けます。
はい、やけくそです。
私の意地と貴方の体力。どちらが上回るか…です。



「長安侵攻……もしそれを許せば大虐殺ですか……」
 その使命の重さに董・白(尸解仙・f33242)は息を呑む。
 猟兵に課せられた使命。
 それは世界を守ることである。同時に生きる者たちを護る戦いでもある。
 己が失敗すれば失われる生命は数十を軽く超えるであろう。それだけの兵力を『兵馬俑』を纏うオブリビオンの軍勢は持っている。

 オブリビオンを倒すことができるのは猟兵だけである。
 だからこそ、自分たちは世界の悲鳴を聞くのだ。しかし、実際に上がる悲鳴は人々のものである。彼等の悲鳴は己の耳をひどく打ち据えるだろう。
 だからこそ、彼女は一歩を踏み出すのだ。
「重いですが……重いという理由で諦めたり逃げる口実にはなりえません」
 後退することはなく。
 踏み出した一歩は僅かな一歩であったことだろう。だが、その一歩こそが必要なことであると知る。

「ならばなんとする」
『撃刃』老龍が構える。
 彼はこれまで猟兵たちの攻撃に寄って打撃を身に受け続けていた。刀刃と化す肉体を誇り、何度打ちのめしても立ち上がってくる。
 彼の欲望は歪み果てたとしても、その身に宿した練磨が彼を裏切ることなどない。
「『撃刃』老龍。御覚悟を!!」
 最早言葉は必要ない。
 どれだけ己が未熟な道士であったとしても関係ない。
『辰砂兵馬俑』の鉄壁の防御、その一瞬の隙を突くことが神業の如く思えたのだとしても。どれだけ荷が重いと思ったのだとしても。

 それでも退くことだけはしてはならぬと白の瞳が輝く。
 迫る『撃刃』老龍の前後同時攻撃。
 それは凄まじき速度が生み出す拳を刃に変える一撃であった。
 結界術の防御が砕かれる。意味をなさぬほどの攻撃の力。重たい拳。それがこれまで練磨してきた彼の拳の力なのだろう。
 
「この炎は全てを焼き尽くし、この風は全てを吹き飛ばす。舞い散らんこの世の儚さよ…」
 ゆえに白が選んだのは点での攻撃ではなく面の攻撃である。
『辰砂兵馬俑』が常に変形しながら体を覆う防御であるというのならば、絶えず放たれる猛火と狂風によってその一瞬の隙を逃さぬ攻撃とするのだ。
「炎と風……! だが!」
「ええ、承知の上です。覆われている部分は焼けないでしょう。液体金属の装甲に守られた部分は焼けない。ですが、宝貝「五火神焔扇」(パオペエゴカシンエンセン)なら!」
 己の力の限り白はユーベルコードに瞳を輝かせる。

 そう、やけくそである。
 彼女の体力のあらん限りと使って、白は己に迫る『撃刃』老龍の体を焼く。どれだけ『辰砂兵馬俑』の装甲が体中を覆うのだとしても、常に変形する一瞬だけは宝貝の炎と風が入り込んで『撃刃』老龍の体を焼くだろう。
「私の意地と貴方の体力。どちらが上回るか……です」
 白は一歩も退かなかった。
 自分が退けばどうなるかなどわかっている。だからこそ、多くの命を守るために彼女は力を振るう。

 それが彼女の道である。
 なんのために戦うかなど問われるまでもない。
 我ではなく他のために。
 その思いは意地となって振るう宝貝が生み出す炎と風となって『撃刃』老龍を包み込み続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「こういう敵さんの血は美味しいんだよねぇ。」
という事でさっさと殺り合いを始めようか。

UCで吸血鬼して戦う。
敵さんの攻撃は殺気を第六感で感じ取り、その軌道を見切る事で回避。
んでもって、吹っ飛ばされた部位は即座に再生しながら戦闘を続行。
全身を一瞬で塵一つ残さず消滅させるくらいじゃないと当たってもそんなに意味ないしね、今の僕。

しっかし、このうねうねしたのめんどくさいなぁ…。
めんどくさいし敵さんの血を操作して無理やり血を引き摺り出して奪うかな。
身体の中まで覆われてる訳じゃないだろうしねぇ。タブン。

「食前の運動は済んだし、ご飯の時間にしよう。」
初めての敵さんだし味が楽しみだねぇ。



 炎と風が『撃刃』老龍の体を包み込み続ける。
 どれだけ鉄壁を誇る『辰砂兵馬俑』の液体金属装甲であろうと、絶えず変形し続けるがゆえに一瞬の隙を生み出す。
 その一瞬を突かねば打撃を与えることすらできない。
 けれど、その炎と風は『辰砂兵馬俑』の一瞬の隙に潜り込み、彼の体を焼くのだ。
「見事な意地である! だが、我の拳が目指す頂きは――!」
 大地を踏みしめる瑞獣の肉体より放たれた衝撃波が炎と風を吹き飛ばし、その焼かれた肉体でありながら『撃刃』老龍は不敵に笑うのだ。

 彼の目的は、欲望は、己の拳の練磨である。
 対峙する猟兵が強者であれば、あるほどに喜ぶ。
「こういう敵さんの血は美味しいんだよねぇ」
 須藤・莉亜(ブラッドバラッド・f00277)は舌なめずりをする。目の前の『撃刃』老龍はたしかに生前は高潔な存在であったのだろう。
 刀刃拳、七星拳の一人に数えられたほどの存在である。武人としての格も相当なものであろう。
 だからこそ、その血の味を想像し莉亜は喉を鳴らす。

 己の吸血衝動を律するために敵――すなわちオブリビオン以外の血を吸わぬという成約を課す彼にとってオブリビオンとの戦いは吸血衝動を解放できる唯一の場であった。
「全力で殺してあげるね」
 その瞳が金色に輝いた瞬間、原初の血統(オリジン・ブラッド)が目覚める。
 吸血鬼としての姿を発露し、その手繰るあらゆる血液を操作する力でもって眼前に迫る拳を見切る。
 頬をかすめる拳。
 笑う。
 ああ、これがオブリビオンとの戦いである。しかして、莉亜にとって、それは戦いである以上に耐え難い吸血衝動の発露でもあった。

「悪鬼が。我が拳を見て、そうも笑うか!」 
「美味そうだなと思ってね」
 瞬間頬をかすめた拳の放つ衝撃波が莉亜の体を吹き飛ばす。頬がえぐれ、首と肩がえぐれる。
 刀刃拳は、己の拳を刃と化す拳である。
 かすめただけでもこの威力。即座に再生させながら、莉亜は笑った。これだけの攻撃を受けてもなお、わらっているのだ。
「全身を一瞬で塵一つ残さず消滅させるくらいの打撃じゃあないと……そんなに意味ないしね、今の僕」

 しかし、莉亜は攻めあぐねていたことだろう。
 拳を振るわれた瞬間にカウンターではなった大鎌の一撃は『辰砂兵馬俑』――液体金属の装甲によって防がれていた。
 一瞬の隙を突かねば『撃刃』老龍に打撃を与えることはできないと聞いていたが、ここまで面倒くさいものだと思いもしなかった。
「己の身が砕けても無関係とはな……面倒な相手であるな」
『撃刃』老龍もまた同様の思いであったことだろう。
 拳を叩き込んでも、即座に再生する吸血鬼としての覚醒を果たした莉亜には、消耗戦にならざるを得ない。
 彼と対峙した時点で、その泥沼のような戦いに引きずり込まれたことを彼は知るのだ。

「食前の運動は済んだし、ご飯の時間にしよう」
 莉亜の瞳がユーベルコードに怪しく煌めく。
 それは他者の血液すら操作する力。どれだけ肉体を鍛えたのだとしても、その肉体が覆う鎧となった下にある血流は鍛えようがない。
 ましてや、これまで他の猟兵たちとの戦いで手傷を負った『撃刃』老龍は、血潮を流している。
「初めての敵さんだし、味が楽しみだね」
 手繰る血液。
 はなたれ続ける打撃を受け止めながら莉亜は、無理矢理引きずり出して血液を奪い続ける。

 傷を負いながらも、即座に再生する肉体。
 鍛え上げられた嘗ての高潔なる存在の血潮。その味は言うまでもない。想像通りの味だ。歴史と練磨、研鑽。弛まない凝縮した人生が得も言われぬ芳醇でありながらすっきりとした味わいを齎す。
「ああ、このために敵さんと戦っているといっても過言じゃあないよね」
 躊躇いなく振るう拳と拳。 
 激突して砕けても構わなかった。莉亜は幸せに打ち震えながら、目の前の敵との戦いという名の食事を楽しむのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
あたら命を散らす真似など、騎士として看過出来ぬ筈も無し
その血塗られし研鑽を更に望むなら、先ずは私達を越えて頂きましょう

電脳剣と大盾は背に
両の手に握るは次元に呑まれようと再生可能なUCの光刃
マルチセンサーでの情報収集と瞬間思考力による見切りで拳と刃を捉え、足捌きを用いて躱しつつ二振りの刃の斬撃放ち
辰砂兵馬俑を切断出来ねば刀身を消して食い込みから逃れ

成程、確かに堅固な守り
そして、こちらの動きを学ばれる程に私の勝ちの目は遠ざかると

なればこそ、その勝機
掴んで見せましょう!

UCの刀身を変形
鎌かショーテルの如き刃で辰砂兵馬俑を躱して生身に刃届かせ
動きを止めた隙にスラスターの推力移動乗せ足のセイバーで斬撃



 殲神封神大戦を戦う猟兵達の勢いは止まらない。
 彼等の目的は世界を救うことである。されど、それは大きな目的であることに違いはないだろう。彼等が最も力を発揮するのは無辜なる生命を救う時であることは言うまでもない。
 これまでがそうであったように。
「あたら生命を散らす真似など、騎士として看過出来ぬ筈もなし」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、その鋼鉄の躯体を持って『撃刃』老龍と対峙する。

 その体を覆う『辰砂兵馬俑』の液体金属装甲は確かに鉄壁を誇る。
 しかし、これまで他の猟兵達がそうであったように一瞬の隙を付いて、もしくはそれ以外の手段でもって彼を追い詰めてきていたのだ。
「我が賜りし『辰砂兵馬俑』の鉄壁を抜けて打ち込む打撃、素晴らしい。お前達猟兵は誠に素晴らしいな! 我が拳の研鑽が今尚続くことを喜ぶべきであろう」
 構える『撃刃』老龍の放つ重圧は凄まじいものであったが、トリテレイアは己の手にした電脳禁忌剣と大盾を背に追い、手にするのは大出力可変式/足部隠蔽収納式擬似フォースセイバー(フォースセイバー・イミテイト)であった。
 両の手に握りしめた光刃。

「ほう、光刃か。面白い。我が拳は肉体を刃と化す。どちらが上か!」
 迫る拳の一撃をトリテレイアはマルチセンサーでの情報とウォーマシンであるがゆえの瞬間的な思考でもって躱す。
 足さばきは互いに一歩も譲らず。
 互いの拳、光刃は空を切る。
『撃刃』老龍は笑っていた。これまで穿たれた傷跡など気にした様子もない。庇う素振りすらない。
 鉄壁の『辰砂兵馬俑』がありながら、彼がこだわるのは強者との戦いただ一つであった。

 そのために過去の化身と成り果てたと言っても過言ではないだろう。
「楽しいな! 猟兵! 強者との戦いとは、練磨の連続である。その経験が、その力量が、我が拳を高みにいざなうのだ!」
「それは血塗られし研鑽であると何故わからぬのです。更に望むのなら」
 トリテレイアは光刃を振り切る。
 これまでの『撃刃』老龍の動きから見出した一瞬の癖。それを先回りして振るう光刃の一撃が完全に捉えたと思った瞬間、『辰砂兵馬俑』の装甲に阻まれる。

「――先ずは私達を超えて頂きましょう」
 やはり硬い、とトリテレイアは理解しただろう。
 だが、同時に己の不利をも悟るのだ。戦いが長引けば長引くほどにこちらの動きを学習されてしまう。
 己の勝ちは遠ざかっていくのだ。
「なればこそ、その勝機!」
「見出すか、猟兵! 我が拳と、『辰砂兵馬俑』の装甲をかいくぐる手を! 見せてみろ! その一手を!」
 笑う『撃刃』老龍が迫る。
 その拳はあらゆるものを切り裂く拳。

 次元すら切り裂く一撃を受ければトリテレイアと言えど無事ではすまないだろう。
 だからこそ、踏み込むのだ。
 何かを掴むためには一歩を踏み出さなければならない。
 痛みをこらえることも、痛みを得ることもためらってはならないのだ。
 手にした光刃の刀身が変形する。
 振るい挙げられた瞬間に形を変えたがゆえに『撃刃』老龍には刀身の変形が見えなかっただろう。
 けれど、構わなかった。

『辰砂兵馬俑』は液体金属の変形によって防御を為す力である。どんな攻撃であれど、変形の一瞬を突かねば打撃など与えられない。
 けれど、トリテレイアの描く光刃の変形は彼の想像を超えるものであった。
「掴んでみせましょう!」
 放たれる一撃は弧を描く。

 否。
 弧を描くのは、刀身であった。
 それはショーテルの如き形。過去の歴史から紡がれた練磨の果て。
 湾曲した刀身は『辰砂兵馬俑』の装甲を超えてその背後へと刃を迫らせる。一瞬の隙を突くのは何も人の肉体に宿る技術だけではない。
「紡がれてきた歴史が、戦いが、あらゆる伝手を持って今に繋がれる。それが人の戦い。例え過去になりしものであったとしても」
 それは貴方も同じことであると告げるようにトリテレイアの一撃は『撃刃』老龍の背後へとスラスターの推力を載せて放たれる。

 斬撃は肉を焼き、血潮を吹き散らしながら『撃刃』老龍』の肉体を引き裂くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
辰砂兵馬俑……液体金属に寄る防御か……かなり興味はある…
…よし、あとで解析をしよう…

…自分の周囲に術式組紐【アリアドネ】を張り巡らせて結界を生成…
無論…これ自体はあの拳刃には破られるだろうけど……
…破った事に反応して遅発連動術式【クロノス】で【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…
…相手の速度を利用してカウンター気味に氷の魔剣を突き刺そう…
これで生身に刺さればよし…液体金属に刺さったら凍らせて機能不全にさせる…攻撃自体は全力の障壁で防御だね…
…そして背後からの斬撃に対しても【クロノス】により残りの魔剣を進行方向に生成…凍結で更に動きが鈍った所に生身の部分を狙って魔剣で攻撃を加えるとしようか…



 光刃の一撃が『撃刃』老龍の背を焼き切る。
 血潮さえも焼け焦がしながら、その傷跡は深く残るだろう。されど、『撃刃』老龍は笑っていた。
 己の求めた戦いが此処にあるのだと。
 求めたのは研鑽。虐殺でも殺戮でもない。強者との戦いこそが、彼の心を踊らせるのだ。
「これだ、これこそが我の求めた戦いである!」
 強者との戦いに寄る練磨。
 それによって至る頂き。己が師事した刀刃拳の開祖。彼が見た頂きへと己もまた至るのだと言うように、傷を負いながらも彼は闘気を発露させる。

「『辰砂兵馬俑』……液体金属による防御か……かなり興味はある……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は未だ破られぬ液体金属装甲の鉄壁の防御を見やり興味深げに頷く。
『辰砂兵馬俑』は液体金属によって絶えず変形し続け、如何なる攻撃も大幅に減退させる力である。
 圧倒的な攻撃力を誇る『撃刃』老龍の攻撃と噛合、その力は強大そのものと言うべきであったことだろう。
「お前は我に何を見せてくれる、猟兵!」
 迫る『撃刃』老龍の拳。

 それは不可避なる前後同時攻撃。
 凄まじき踏み込みこそが実現可能とする拳の一撃をメンカルは見ただろう。
 張り巡らせた術式組紐『アリアドネ』による結界など、きっと砕かれてしまうだろう。
 だが、メンカルは己の知性でもって戦う猟兵である。
 術式を誇るのではない。
 誇るべきは己の知である。
「破られるだろうけど……」
 前後より迫る拳が『アリアドネ』の結界に触れた瞬間、刀刃と化した拳は容易くそれを破るだろう。
 そこまではメンカルの読み通りである。

 瞬間、遅発連動術式『クロノス』が展開される。幾つもの術式が空中に浮かぶ。
 それは空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)である。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
 相手の速度が凄まじいのであればこそ、その剣の一撃は相対的に強力な威力となって突き立てられる。
 しかし、液体金属の防御である『辰砂兵馬俑』を抜くことは出来ない。
 けれど、それでよかったのだ。

 どれだけ鉄壁の防御であろうと液体である以上凍りつく。
 彼女の手繰る魔剣は触れた端から凍結する力を持つのだ。
「『辰砂兵馬俑』が凍る……! 凍るものなのか、これは!?」
 身を覆う液体金属の装甲の動きが止まる。
 絶えず変形を繰り返す液体金属であるがゆえに、一瞬の隙を突かねばならなかったのだが、メンカルのユーベルコードはそれを強引に堰き止めるものであった。
 変形はさせない。
 そのための凍結の力である。

 変形した一瞬。
 その隙間の生まれた場所を固定する。そして、体を追う液体金属の装甲は、凍りつくことに寄って『撃刃』老龍の動きを止める牢獄となるだろう。
 自身の背後に迫っていた彼にメンカルは振り返る。
「確かに速かった……けど、その動きの速さを誇るのならば、それを利用してやればいい……簡単な物理だね」
 飛来する魔剣の列が『撃刃』老龍へと迫る。
 動きを止められ、こじ開けられた液体金属の装甲の隙間へと殺到する魔剣の群れ。

 生身へと打ち込まれた魔剣は『撃刃』老龍の傷を広げることだろう。いや、広げたとしても、その身を凍りつかせる魔剣の力は、これまで弛まない練磨によって鍛え上げられた肉体を凌駕する。
「どんなに決定的に不利な状況でも……それを覆せるのが人の知というもの……その液体金属装甲、後でじっくり解析させてもらうよ……」
 メンカルは凍結していく『撃刃』老龍を見やり、己の知らぬ未知を知り、彼と同じく心を踊らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
『撃刃』拳術に秀でた者!付き合って頂きます!

人工魔眼の超動体【視力】で観察、騎兵刀で老龍へ斬り掛る。
【瞬間思考力】老龍の腕斬撃【見切り】避ける・武器で【受け流し】【継戦能力】致命傷にならないギリギリを見極め、二刀を『断裂波』で振るい巨大【斬撃波】で飛翔斬撃も纏めて斬り払う。

敵を壊す為、自分はキャバリアも、剣でも、なんでも強くならねばならない!

自分も老龍で剣を磨くのだ。
【情報収集】敵の拳術、闘気と液体金属の流れ、体の動きを学習し、刀がより早く鋭く、確実に隙へと叩きこめるよう修正。

……!刀が折られた。
【学習力】学習した刀刃拳を模倣し【オーラ防御】サイキックシールドを身に纏い斬撃から致命傷を防ぎ【カウンター】貫手で液体金属の隙間へ【貫通攻撃】

これでッ!模倣で勝てるかぁあッ!!

【早業】貫手を掌打に変更。シールドのサイキックエネルギーを【衝撃波】にして、刀人化した身体の芯に響くように叩き込む内部破壊攻撃。
再度、出現した騎兵刀を手に、老龍へまた斬り掛る。

まだだ、まだ戦えるだろう!壊れるまで戦え!!



 己の体を覆う氷を砕きながら『撃刃』老龍は一歩を踏み出す。
 彼は己の拳を誇ることはなかった。
 確かに彼は七星拳とまで数えられる武人であったことだろう。けれど、その生涯において、一度も拳を誇ったことはなかった。
 他者はそれを謙遜であり、同時に奥ゆかしさを感じていた。
 けれど事実は異なる。
「我の拳は誇るに値せず。真に誇ることができるのは、我が刀刃拳の開祖、かの者の拳のみ」
 あの拳が見せる頂きまで己もまた至りたい。
 ただそれだけを願った結果が今である。

 彼にとって、その頂きを見ることだけが欲望であった。
 ゆえに彼は拳を振るう。練磨と研鑽を得るために。あのいただきに己も至るために。
「そのためには――、もっと、もっと、もっとだ! 猟兵」
 咆哮とともに放たれるは感知不能なる拳の斬撃。
 空を舞い、あらゆるものを断ち切る拳は絶技と呼ぶに相応しいものであったことだろう。
 だが、その拳を受け止める者がいる。
「『撃刃』剣術に秀でた者! 付き合っていただきます!」
 その不可視なる斬撃を見るのは、人工魔眼。
 超動体視力とでも言うべき、凄まじき力を持つ朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)が戦場に走り込む。
 手にした騎兵刀の一撃が『撃刃』老龍へとふるわれる。
 だが、その一撃は『辰砂兵馬俑』の液体金属の走行によって防がれてしまう。

「その瞳、魔眼というやつか。面白い!」
 放たれる不可視の斬撃。
 それを魔眼は捉えている。放った騎兵刀でもって薙ぎ払い、叩き伏せながら小枝子は迫る。
「敵を壊す為、自分はキャバリアも、剣でも、あんでも強くならねばならない!」
 その在り方は『撃刃』老龍と酷似していたことだろう。
 己の目的を為すためになりふり構わぬ。
『撃刃』老龍が猟兵との対峙でもって、己の拳を練磨しようとしているのならば、小枝子もまた同様であった。

 戦いの中で成長する。
 悪霊である己が出来ることは戦い、壊すことだけである。
 ならばこそ、小枝子は吠え猛るのだ。
 己もまたそうであると。己も『撃刃』老龍という過去の化身との戦いで持って己の剣を磨くのだと。
 放たれる闘気で肌が焼けるようでもあった。叩きつける一撃を防ぐ『辰砂兵馬俑』の圧倒的な速度で持って変形し続ける鉄壁は騎兵刀の一撃でもって穿つことができない。
「楽しいな、猟兵! こんなに楽しいのは! ああ、我が拳の練磨を感じる。お前も喜びに震えているのだろう、猟兵!」
 放たれる拳と騎兵刀がかちあい、火花を散らした瞬間、騎兵刀が折れて空中を舞う。

「……!」
 折られたと解った瞬間、小枝子は迷わなかった。
 騎兵刀が折られたことは彼女にとって衝撃ではなかった。己の魔眼が見つめるのは刀刃拳。
 見ていたのだ。
 何度も打ち合い、火花散らす攻防を。ならばこそ、小枝子の魔眼は模倣する。
 放たれる拳はサイキックシールドをまとい、打ち合う。
 拳と拳は刀刃に至り、火花を散らすだろう。激しい痛みが小枝子の体を駆け巡っていく。

「我が刀刃拳を模倣するかよ! そんな付け焼き刃で勝てるほど我は甘くはない!」
 不可視なる斬撃。
 それすらも小枝子は模倣し、拳に乗せて打ち出し相殺していく。しかし、『撃刃』老龍の拳は、模倣すらも噛み砕くようにして小枝子に迫っていく。
 血潮が吹き出す。
 痛みが己の思考を染め上げていく。

 模倣は模倣でしかないというのならば。
 それは誤ちである。模倣があるからこそ、人は其処から新たなる道を開いていくのである。
 どれだけ開祖の拳に至らぬのであったとしても、己の道の頂きが別の場所にあることを知らねばならない。
「これでッ! 模倣で――」
 勝てるわけがない。己が乗り越えねばならぬものがなんであるかを小枝子走っている。

 超克。
 己のをこそ超えていかねばならないと知るからこそ、彼女の瞳はオーバーロードに輝く。
 模倣を超えて、その先に至るためには『今』の自分すらも乗り越えていかねばならない。
 放つ貫手の一撃が『辰砂兵馬俑』の液体金属装甲の隙間へと突き立てられる。変形する液体金属装甲が小枝子の腕をひしゃげるようにして変形する。

 それでも彼女は躊躇わなかった。
 一瞬の判断であった。全てを貫く貫手を掌打に変える。
 切っ先が触れた『撃刃』老龍の肉体へと僅かな距離しかない。勢いは付けられず、力を伝える術はない。

 されど、小枝子の魔眼が煌めく。オーバーロードの炎に燃える。
 できないということは、できるかもしれないという可能性に満ちている。僅かな距離であっても己の力を伝える術を見出す。
 サイキックシールドのエネルギーを衝撃波に変換し、刀刃と化した肉体に響かせる。鋭さではなく波。
 伝える波は伝わる毎に揺れて巨大なものへと変わるだろう。
 それを小枝子は、この僅かな戦いの中で知る。
「硬いということは、張り詰めているということ。張り詰めたものは、いずれ、引きちぎれるということ」

 そのエネルギーの奔流は『撃刃』老龍の肉体の内部へと伝わり、その鋼鉄の肉体を内側から破壊するのだ。
「まだだ、まだ戦えるだろう!」
 小枝子の魔眼が煌めく。
 己の頭の中に響く言葉は唯一。

 戦え。

 己の身が壊れ果てても戦えと叫ぶものがある。
 見上げる『撃刃』老龍を小枝子は見ただろう。手にしたのは虚空より現出した騎兵刀。
 その刃が放つ一撃は、巨大な斬撃波。
 天を染める一撃は、あらゆるものを断ち切る一撃。
「名付けるのならば――そうだな。断裂破(ダンレツハ)。征くがいい、猟兵」
 小枝子の咆哮が轟く。

 その一撃は『撃刃』老龍を一刀両断のもとに霧散させる。
 練磨の果に在るものがなんであれ、小枝子は燃える魔眼と共に『今』の先、可能性溢れる未来を見据えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月05日


挿絵イラスト