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国に必要な物~滅亡の愛姫~ 其の肆 

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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「興味深い……実に興味深い……」
 グリモアベースに黒い陰陽服を着た妖狐の男が1人、何が面白いのか8本の白き尻尾を揺らすと、次の瞬間にはグリモアベースの背景が和風の城下町へと変化する。
「サムライエンパイアにて興味深い事件が起こっているようです」
 黒い陰陽服の男――陰陽師・五行が言うには、犬神藩の国境に近い2つの村と2つの宿場町が、10人程の武者集団に占拠されたと言う。それは――。
 犬神の地元民と多野の難民が暮らす宿場町『三川』。
 多くの蔵が並ぶ宿場町『川上』。
 農地の広い村『鳥山村』。
 普通の村たる『岩野村』。
 そのどれもが、かつて猟兵達が接触した事のある村や宿場町なので、住民は猟兵達に協力的だと言う。
「とはいえ、我らは猟兵、オブリビオンの討伐こそ使命。占拠された村や宿場にいる各10体のオブリビオンの排除をまずはしっかりこなして下さい。それとグリモア猟兵として知ってしまったので先にバラしますが、敵の首魁はさらに50体程のオブリビオンを引き連れ国境より犬神藩の城下町へ向け進軍中です。首魁のオブリビオンは猟兵に会えば『占拠した村や宿場がどうなっても良いのか?』と脅しをかけてくるので……まあ、どうするかは皆さんにお任せ致しますよ」
 五行はそう告げると、ニヤリと口許に笑みを浮かべ。
「さて、この事件のきっかけが、どんな物語を紡ぐのか……それはあなた方猟兵の行動次第です。興味深い、実に興味深い……」


相原あきと
 マスターの相原あきと(あいはら・-)と申します。
 『国に必要な物~滅亡の愛姫~』其の肆、となります。
 このシナリオは複数回のキャンペーンの第四話目となります。
 もちろん第一話~第三話にご参加されてなかったとしても、
 遠慮無くこの第四話から参加して頂いて構いません。
 プレイングはフラグ攻略に終始しても良いですし、
 まったく無関係な事に挑戦しても良いです。自由にお書き下さい。
 猟兵達のみで対処しても良いですし、民や兵を説得して動員するにも可能性の1つでしょう。

●犬神藩
 南に海を持ち、北は平野と山があり食料豊かな藩。多野藩は犬神藩の北にある。
 多野藩の5倍の領土。人口は5倍以上(多野は山間の小藩で人口が少ない)。
 犬神藩の城下町は港街でもある。
 一週間ほど前に大火があり城下の殆どが燃えたが人的被害は最小限に抑えられた。
 他藩に逃げ出す民もいるが、藩主はそれを否定せず、逆に生き残る為にツテがあるなら逃げる事を推奨している。

●一章の敵
 占拠した4か所に各10体ずつ。
 さらに50体程引き連れ敵の首魁が進軍中。
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第1章 集団戦 『落武者』

POW   :    無情なる無念
自身に【すでに倒された他の落武者達の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    欠落の決意
【武器や肉弾戦】による素早い一撃を放つ。また、【首や四肢が欠落する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    妄執の猛撃
【持っている武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第一章予告

 2つの村と2つの宿場が各10体のオブリビオンに占拠され、
 さらに敵の首魁は50体のオブリビオンを引き連れ進軍中……。

 各所のオブリビオンを退治してからでは、敵本隊に城下まで攻め上られ、
 しかし先に敵本隊へ接触すれば、すでに占拠されし4箇所を人質に取られる……。

 はたして、猟兵達は占領された4か所を同時に救う事ができるのか!
 そして敵首魁の本隊を止められるのか!?

『国に必要な物~滅亡の愛姫~ 其の肆 』

 第一章 分断
嶋野・輝彦
第六感で警戒
姫様の護衛
知りたい事もある
俺のやった事考えりゃ笹野の爺様絶対付いてくるだろ?
姫様にも聞かせろお勉強の時間だ

恫喝で人払い
第六感で警戒しつつ二人と話

爺様に
コミュ力、存在感
色々あったが流せ
姫様の命に関わる話だ
白背羅剛、ありゃ人外だよ
多野の陥落からの仕掛けは見えてきた訳だが
なぜ姫様を欲してんのかのなぜが全く見えん
殿様は初代の様だと言い
姫様は昔見た羅剛と違うと言った
狒々堂初代と多野の因縁何かあんのか?
初代がオブリビオンなら多野が生き残れたのもな
話から第六感でヒントを拾う
小さな話でも良い、出せ

養子受けりゃ多野と犬神の権利を持った多野藩主(領地無し
姫様の立場は依然厳しい
今は知識で補強、必要だろ?




 黒道坊による大火によって犬神藩の城下町は多数の怪我人を出し、また家を失った者の数は数多となった。犬神藩藩主の里見・義巳(さとみ・よしみ)は城下の民に対し謎の武者軍団が攻めてくる可能性を公表、結果、親類縁者を頼って犬神の城下町を離れる選択をする民も出始め……。
「人は少なくなった気がするが……それでも、活気はある方、か」
 嶋野・輝彦は半分瓦礫の山となっている城下を歩きつつそう思う。今もどこからかひっきりなしに大工仕事の音が聞こえ、民は生きる事に決して諦めていない事がうかがえた。
 やがて美濃姫に与えられた武家屋敷にやってくると、いつもより警備が物々しく門の前で思わず立ち尽くす。
「なん……だ……?」
「おお、その服装、猟兵のお方ではござらぬか? ご用は御館様に? それとも美濃姫様に?」
 門番が気を利かせて聞いてくる。
「御館様って……藩主さんがここに?」
 犬神城が焼け落ちたため、藩主である里見義巳は焼かれなかった武家屋敷の中で一番大きな屋敷へと移っていた。それがたまたま美濃姫達に与えられていた屋敷だったという事らしい。
「おお、これは嶋野殿、ささ、こちらへ」
 わざわざ出迎えに来てくれたのは元多野藩筆頭家老の笹野だった。わざわざ笹野の爺様が出てくる事に、目を付けられているな、とも感じる。
「(ま、俺のやった事考えりゃ……そりゃそうか)」
 屋敷を広間に案内されるかと思いきや、今、広間の方では里見藩主を中心に犬神の家老達が会議中との事だった。どうやら国境を巡回していた石層宗達が宿場町『三川』と『川上』、さらに国境の村『鳥山村』と『岩野村』が謎の武者達に占領されたとの報を持ってきたとか……。
「被害は出たのか?」
「いやいや、石層宗の僧兵達は異能の存在を身にしみて知っておるとかで、即座に撤退したと言うぞ。まぁ、良い判断だったと思うのぅ、籠城戦の際、あやつらはこちらの足軽10人でやっと1人止められるかどうかであったしな」
 そう言いながら広間ほどでは無いが大きな部屋へと案内されると、そこには打ち掛け姿ではなく、あの逃亡時と同じ若侍の着物を来た美濃姫がいた。
「姫様、その恰好……?」
「おお、輝彦か。いや何、城下の一大事故、妾の持ち物もできるだけ金子に変え民に分け与えるよう売り払ったのじゃ……今必要なのは豪華な着物では無いからの」
 あっけらかんと言い放つ美濃姫に、横の笹野が困った表情で溜息を付く。どうやら言い出して効かなかったパターンだろうか……。
「それに、この服装の方が城下の民達にウケも良いのじゃ」
 実際、ボロボロの打ち掛けで城下の民を避難した姫が、最後は若武者姿となっても避難誘導を続けた……と城下では噂になっていた。ちなみに前者は影武者の功績なのだが……。
「それで、何の用じゃ?」
 チラリと笹野の方を見ると、スッと目を逸らす。どうやら占拠された件について美濃姫には伝えていないらしい。
「まぁいい。少し、知りたい事があってな……笹野の爺様、あんたに」
「儂じゃと?」
「姫様も一緒に聞いてくれ、お勉強の時間だ」
 そう言うとギロッと控えていた女中達を睨み無言で退席するよう促し、部屋内で3人きりになった所で輝彦が切り出す。
「まず、俺がやった事は……とりあえず流せ」
「なんーーっ!?」
 さすがに怒ろうとした笹野を美濃姫が手で制し。
「元は妾の事を思ってじゃろう。それに聞けば妾がいなくなってよりすぐ、狒々堂の藩主自らこの屋敷に来たと言う。あのまま残っていたら一悶着ではすまなかったやもしれぬ」
 美濃姫の言葉に笹野は不承不承と言った風に何かを飲み込む動きをし、先を続けろと輝彦を促す。
「単刀直入に聞く、狒々堂の初代藩主と多野藩に、何かしら因縁があんのか?」
「初代……で、あるか」
 虚を突かれたように笹野が言う。
「多野の陥落からの仕掛けは見えてきた訳だが、なぜ姫様を欲してんのかのなぜが全く見えん。それに姫様は昔見た羅剛と違ってると言った。そして俺ら猟兵から見りゃ……あれは人じゃねぇ、人外の存在だ」
「爺、妾もなぜ多野の地が狙われたのか知りたい。ただ領地拡大を狙っているだけなのか?」
「儂としましても時代が時代ならどの大名も領地拡大を狙うは常、当たり前の事かと存じますが……」
「犬神の殿様は、初代、じゃないか……と?」
 輝彦の言葉に笹野がううむと悩み出す。
「小さな話でも良いんだ、思い出したなら話せ」
「もし、もしもですぞ、今の狒々堂を統べているのが初代狒々堂藩藩主だとするなら……確かに多野との間に因縁はありまする」
「それは?」
「あれはまだ上様による天下統一が成される前の話……」
 笹野が言う話を要約するならこうだ。
 戦国時代、自国の姫を同盟国に嫁がせるのは常識であり、狒々堂の姫も多野へと姫を嫁がせて来たと言う。しかし狒々堂の目的は多野を征服する事であり、狒々堂の姫は間者としての役目を期待され多野へ嫁がされた。もちろん姫が間者なのは戦国の世では当たり前の事であったが……。
「狒々堂は姫の情報を当てにし我らが多野藩へ戦を仕掛けて来たのだが……」
 いざ進軍を開始してみれば、多野の地には多くの多野の兵と更に犬神の兵が陣取っており、狒々堂は這々の体で逃走する事になったという。
 それは、狒々堂から来た姫が実家を裏切り多野と犬神に全面的に協力したからだと言われている。
「あの時代、敵国から嫁いできた姫が実家を裏切るなどよほどの覚悟が無ければできず、また当時の御館様もよく奥方を信じて犬神藩と共闘する道を選んだと、儂は小さいながら感心した記憶がありもうす」
「つまり、もし今の狒々堂を仕切ってるのが初代の白背なら」
「さよう、多野の……十石家に連なる者を皆殺しにしたいと思っていても不思議ではあるまいて」
 サムライエンパイアのオブリビオンは基本的に戦国時代の武将が蘇って猛威を振るう。戦国時代の初代白背が復活し、自国を掌握したと考えるなら……。
「姫様が生きてる限り、狙われるって事か」
 領地や家督、相続に関する謀略ならまだ何とかする事も出来た。現代世界ではそういう厄介ごとの方が多いからだ。
 だが、オブリビオンとして蘇った男の純然たる恨みが元とするなら……。
「あーーっ! くそっ、やり合う道しか残ってねーじゃねーか!」
 輝彦は乱暴に頭をかくと、そう叫ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


「少し……出る」
 そう言って美濃姫は立ち上がると、そのまま部屋の外へ。
 笹野がどうしたのかと付いていこうとするのを輝彦が止め、自分が護衛に付いていくと一緒に外へ。
「どうしたよ?」
「何でも無い……少々、外の空気を吸いたくなっただけじゃ」
山梨・玄信
人質なら幾らでも居る…悪人らしい発想じゃの。

【SPDを使用】
岩野村へ向かうぞい。
先ずは夜に暗視、忍び足を使って斥候に行くぞい。
罠使い、追跡、聞き耳で罠や相手の動きにも注意じゃ。

情報収集で相手の配置と村人の状況を把握するよう努めるのじゃ。
斥候が終わったら他の猟兵と情報共有し、作戦を立てるぞい。

戦闘には褌一丁で挑む。
敵もスピードがあるようじゃが、全力を出させないようダガーで急所を突いて倒す(鎧無視攻撃)ようにするぞい。こっちは最初から全速力で挑めるので有利なはずじゃ。2回攻撃も乗せて手数で勝負じゃ。

敵の攻撃は第六感と見切りとUCのスピードで躱し、避けられなければオーラ防御と激痛耐性で耐えるのじゃ。


プリンセラ・プリンセス
人格アベルで、出立前に里見殿に一軍を用いて首魁の足止めを依頼。足止めのみで積極的な戦闘は要らず。橋を落とすとかの遅滞戦闘を。人質について言われたら交渉を引き伸ばすようにと。
その間に岩野へ向かう。
「誰ぞ来よ。――夜襲の時間です」
出てくるのは10番目の兄ジュスト。黒ずくめの服装と最小限の装備。彼は暗殺者であった。プリンセラの雰囲気が無味乾燥、無感情なものになる。
時間に余裕があれば夜襲する。昼間は村内の配置などを確認。
他の猟兵とタイミングを合わせて夜陰に乗じて奇襲。
ウィザード・バレットでホーミング属性の漆黒の魔弾を撃ち出して攻撃。
人質に危害を加える隙を与えないよう速攻で。
鎮圧したら里見軍に合流。


御剣・刀也
ふむ。何とも見事な軍略だな
敵には優秀な軍師がいると見える。が、そこに付け入るスキがある
敵の首魁を抑えるには、進軍を遅らせればよさそうだ

敵の首魁を止める
堂々と名乗り出て落武者の相手をする
落武者を斬り倒しつつ、包囲されそうになる前に逃げる
逃げて敵がおって来たら、振り向きざまに一番前に出てきたやつを斬って、また逃げる
細い天然の袋小路を見つけたらそこに誘導し、一対一での戦いしかし向けられないようにして一匹ずつ倒していく
「偶には俺だって知恵も使う。あれだけの数、真っ向から相手するわけないだろう。分の悪い賭けは嫌いじゃないが、悪すぎる賭けはする気はないんでな」


吹鳴管・五ツ音
陰陽師殿が予知なさった、人質を取るが如くの戦術は各占拠点と本隊との間に緊密迅速な連絡手段がなければ成立しなさそうなものでありますが…

舵取りや情報の統制は先だっての大火の黒幕が担っていた、という話が偽りだったか、或いは別の手段を確保したか

連絡を担当する兵員が伏せているかもしれないでありますな

敵本隊につかず離れず悟られぬ距離を保ち、連絡や指令の手段を探るであります

道々、先回りして橋を落とすような遅延工作もしたいところでありますが、下手に刺激しすぎて人質戦術に移行されないことを念頭に

敵軍の進軍途中に非戦闘員の方が巻き込まれぬよう、不審な動きや危険な針路を取る場合は早駆けして危機を報せるであります


紺屋・霞ノ衣
湊偲(f01703)と参加

いよいよ進軍してきたか
あいつ等もあの羅剛が連れてきたオブリビオン辺りなんだろう?
人命を取るか元凶を潰すか……この間と似たようなもんさ
絶対、次は負けないよ

【宿場町『三川』へ向かう】
前衛に立って、戦闘は攻守共に怪力
最初は先制攻撃、貪り喰らう狼で敵が町の奴に向かわないよう包囲
湊偲とも連携して防ぐよ
攻撃は鎧砕きと鎧無視攻撃と2回攻撃、敵が多い間は範囲攻撃
敵からの攻撃は武器受けとオーラ防御で防ぐ

恫喝って程じゃあないが町の奴等には少し言わせて貰うよ
力に、恐怖に絶対に負けるんじゃないよ
アタシ達が立ち向かうのは守る相手が居るからこそ
その相手が生きるのを諦められちゃ、たまんないからさ


越喜来・湊偲
霞ノ衣姐さん(f01050)と参加
治安悪すぎなんじゃって思うけど、こいつ等もオブリビオンなんすね
数は多くても落武者なんかには負けないっす!

【宿場町『三川』にて行動】
前衛に配置
町の人達に逃げるように呼び掛けながら攻撃が行かないように
敵の行く手を阻むようにして避難させます
攻撃は霞ノ衣姐さんが範囲で敵を蹴散らしてくれてるので
俺は町の人を狙う敵や弱った敵を攻撃します
体重を掛けて鎧砕きと串刺しでガッツリ行きますよ!
敵の体勢が崩れたり隙が見えたならドラゴニック・エンド
敵からの攻撃は野生の勘で攻撃方向を察知して回避狙い

戦いは力だけじゃなく心も大事なんです
一緒には戦えなくても、気持ちだけは負けないでくださいね


高柳・零
POW
普通の村…引っかかりますねえ。
何故そこを占拠したか。

事前に岩野村の情報収集をします。
里見様やその家臣に村に関する気になる話が無いか。
向かう道中でも村の噂話を聞いてみます。

玄信さんの情報を元に作戦を立てます。
村人と敵の距離が近い時は自分が囮で惹きつけ、他の方が村人と敵の間に割って入ってもらいます。
分散してるなら各個撃破を狙います。

戦闘では前衛で盾役です。
攻撃は盾受け、武器受け、オーラ防御、見切りで自身を守りつつ、かばうで味方も守ります。強力な攻撃はUCで防御。
攻撃は、敵が固まっていれば範囲攻撃。ばらけていれば2回攻撃。
どちらもメイスで行い、相手が欠損しないようにします

アドリブ、絡み歓迎です


コノハ・ライゼ
『三川』へ

先ず敵の配置と町民の状態を把握したいネ
人質取られてる事も考え慎重に『情報収集』
【黒管】が使えそうなら一役買って貰おうか

敵の手が薄く目を盗み町民を避難させれそうなら避難させ
避難が難しい場所があれば
町民の命を最優先に考え其処から奪取を試みる

襲撃の際には町民と敵を分断するように動くヨ
敵に向け【彩雨】を壁の様に撃ちこみ
『オーラ防御』『激痛耐性』で攻撃受け町民を『かばう』
距離詰められたり避難を終えた際には攻勢へ転じ
『高速詠唱』からの『2回攻撃』で【彩雨】を目眩ましに「柘榴」で斬り込むネ
『傷口をえぐる』ように刃を刺しこみ『生命力吸収』できりゃ一石二鳥ってヤツ
町民が襲われない様最後まで注意しとくヨ


御代・燕三
戦に発展すると里見様は言っておられました、その兆しでしょうか。
黒道坊が不在となれば情報統制にもボロが出ますが、攻勢は早まるでしょう

「UC算術式:先見の章」を犬神藩の城下町周辺に展開、調査に終始
4箇所と本隊向けの5つにも飛ばします

開戦となれば商人や貴族達の動向が気になりますね。多野藩と同じ運命を辿る事を最悪とするならば、備蓄や継戦能力が問われることでしょう。商人の裏切りまでの物騒な事が起きるか分かりませんが、人の動きは警戒しておきます。
猟兵を城下から遠ざける策と考え、予想しないところに伏兵が居ると困ります。港町ではありますので、海上や寄港した船の積荷も観察していきます。野良の山賊も気になりますね


レイチェル・ケイトリン
川上というとこで「念動力」で「刹那の想い」をつかってたたかうね。

まず、敵がひとりのとき、空気をうごかし、音がつたわらない真空でかこんでたおすよ。

でも、町の人があぶないとかなら、まとめてたたかうね。

1秒を26分割した時間でうごくわたしの心を「クィックドロウ」と「早業」でさらにはやくして、「範囲攻撃」と「目潰し」と「武器落とし」で敵のうごきを封じ、「フェイント」もかけてあてやすくして攻撃するの。
念動力の攻撃の向きはわたしの位置とは関係ないから、敵を「吹き飛ばし」でまとめとくしね。

町の人があぶないなら「かばう」もつかって敵の攻撃をふっとばすの。

敵をやっつけたら蔵の中身の点検、町の人におねがいするね。


羅賀・乙来
あの火事から暫し経ったものの、何も解決はしていないだろうね
状況を見るに、悪い方へ向かっているのやも
しかしながら乗りかかった船だ
この縁の行く先を傍らで見させて貰おう

攻略先:鳥山村
広い場所なら、この子達を呼べると思ってね
破魔の力を併せ、全力魔法にて双鬼招来
敵は死人の様なものだ、破魔の力はさぞ利くだろう

青鬼は僕や逃げ遅れた人を守り、赤鬼は攻撃に徹して貰おう
前衛で派手に戦ってくれる人が居れば青鬼も戦わせてあげられるが
戦えない人が巻き込まれてしまうのは良い物ではないからね
攻撃を受けて術が解けてしまった時は全力魔法で破魔を付与した霊符で応戦
2回攻撃も併せ、味方が狙っている相手に追撃して支援しよう


月舘・夜彦
ついに攻めてきましたか
多野を襲撃した者もオブリビン、犬神も同じく攻め入るのでしょう
この間、我々が黒道坊を倒した事で羅剛進軍の引き金を引いたも同然
……いずれにせよ、戦う道は避けられません

『鳥山村』にて敵の掃討
東雲を召喚して騎乗して攻め入ります
付近に村人が居るのならば、退避するまでは村人を狙う敵を優先
機動力を活かして敵を錯乱させて先制攻撃、2回攻撃による追撃
敵からの攻撃は武器受け・見切り
避けられない時は一度降りて白兵戦へ持ち込み、残像とカウンターを活用
掃討後は城下町へ

どちらを護るべきなのか、何故選べばならぬのでしょう
この地で戦うと決めた時から何かを手放して往くつもりはございません
どちらも護るのです


涼風・穹
まずは城下町で、大火の時に締め上げた山賊や、誰かの弱みを握って間者に仕立てたような黒道坊の仕込みが残っていないかを確認しておく
大火を起こすのが最終目的でもないだろうから次の一手の下準備をしていた可能性はある
まあ本人が消えた以上は企ても瓦解しているのかもしれないけど、黒道坊が消えたからこそ調べられる事もあるかもしれないし念の為だ

その後は敵本隊の迎撃に加勢する
時間的な余裕があれば敵本体を観察して、首魁と村やらを占領している方々との連絡手段を先に確認して可能なら潰しておく
人質を活用するつもりなら情報のやり取りはしている筈
さて、伝令の早馬か、狼煙か、それとも黒道坊が使っていた式みたいなものなのかな…?


桐・権左衛門
ヴィクトリア(f00408)と共に行動

ウチは川上に向かおか…蔵がよーけあるって事は他の場所より何かを隠せる場所、他より策や物騒なもんを仕込める下地があるって事やしな
第六感で危険場所を探索

宿場町やし情報もよーけ集まる事やし
後は商売人はウチと気が合う可能性が高い!
商売人は損得勘定で動く人も多いしな

どーれもええけど、蔵があると米とか色々なモノ買うて備蓄して値が上がれば売りたくなるわ(ゲーム脳うずうず)買いや!買いー!叩き売れー!
商売人達!あいつらシバイて金稼ぎや
商売人を扇動し気分は一揆

蔵が多いって…これを臨時的に住居に借りることできひんやろか?
城下の殆ど燃えてしもたし…美濃姫に投資する人探そか


逢坂・宵
首魁に対応しましょう
難しいことを考えるのは皆さんにお任せして
僕は僕のできることを成しましょう

ここから先は通しませんよ
僕、少数対多数の集団戦は得意なんです
占拠した村や宿場? はは、占拠しておいて何を仰りますか
このような多勢を引き連れるくらいですから、
なんらかの対策は打っているのでしょう?
それに、各所へは僕らの仲間たちが向かっていますからね
僕は、彼らを信頼しているのです
そして、彼らならきっとなんとかしてくれる
僕はそのために、ここであなた方を止めるのみです

『属性攻撃』『2回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
『天撃アストロフィジックス』で攻撃します
猟兵の仲間とも連携や協力をおこなっていきましょう


ヴィクトリア・アイニッヒ
権左衛門(f04963)と行動。
『川上』の地へ向かう。

美濃姫様の身は心配ですが、まだ敵の手は城下町までは迫ってはいない状況。
今は、犬神藩、多野藩の方や、他の猟兵の方にお任せしても大丈夫でしょう。
…オブリビオンの横暴から民を救う。私は、私に為せる事をしなければ。

蔵が並ぶ地という事は、物流の拠点ですね?
それだけ活気のある地なのでしょうけど…あぁっ、ゴンちゃんさんそんな煽動みたいな真似はっ!?

と、とにかく。オブリビオンを早く除かないといけません。
『神威の光剣』の制圧力で数の不利を補いつつ、確実に仕留めなければ。
民衆を徒に傷つけようとするその悪意、浄化します!
主よ、我に御力を貸し与え給え…!


寺内・美月
【鳥山村】救援 ※アドリブ歓迎
1,村の近くで〖影の追跡者の召喚〗を発動して潜入する。
2,敵の動向を確認しつつ、農地の広さを利用して〖戦闘団召喚〗にて召喚した霊で包囲する。
3ア,敵が纏まっており村人と離れているならば〖準備砲撃『地獄雨』発動〗にて敵を撃破する。
3イ,上記の攻撃で村人に被害が出る可能性がある場合は、霊に一斉攻撃を命じて飽和した所を〖完全管制制圧射撃〗と〖剣刃一閃〗にて斬り込んで確実に仕留める。
4,戦闘終了後は工兵大隊をもって村を修復する。敵主力の進軍状況によっては敵主力の撃破に急行する。志願兵があれば来る決戦に向けて練兵を行う。


玖篠・迅
とにかく最初に式符・朱鳥で首魁本隊の位置特定だ
見つけたら目立たないように追跡して、城下までの距離の報告頼むな
後は敵の装備…離れた相手に連絡できそうなものがあるかも見とくよう頼む
思いつくのは馬、鏑矢、花火に式かな…
首魁本隊と鉢合いそうな犬神藩から逃げ出した人がいたら、念話で危ないから道を変えるか隠れてやり過ごすように伝えとく

朱鳥が探してる間に犬神藩主さんに会って初代狒々堂藩藩主の戦のやり方伝わってるか聞いてみる
…犬神藩主さんも吉田さんも、怪我の具合大丈夫かな

首魁本隊とぶつかることになったら占拠してるとこへの連絡手段になりそうなの優先で潰していくな
霊符たくさん投げて視界の邪魔したり、朱鳥で奇襲とか


レッグ・ワート
ドローン高く飛ばして城下に来る集団捜索。その間に侵入者感知用や巻き上げる類の糸罠を藩主達いる敷地内に仕掛けて、避け方諸々話しつつ護衛する。

城下町に近づかれるか、国境側が大丈夫な知らせがあったら出る。道中で数減ってたら喜んで集団側面を鉄骨殴打バイク離脱繰り返すわ。でなけりゃ高速戦用ソナー起こしてベルセルクトリガーで防衛線前に削る。いけるならブレードエピダミスを先に外殻に走らせる。速いか判断する以外の記録系や視聴覚、武器操作も全部圧縮凍結かけるから、設定時間経過かエラー吐かされるまで俺は何も知らねえよ。回路と容量を怪力補強と防具改造の硬軟や各耐性の調整演算速度に全回す。戻ったら即無敵城塞、後離脱。


トゥール・ビヨン
ボクは城下町からオブリビオンが進軍してくる国境までの経路を逆に辿りながら、道中に巻き込まれる人が出ないように避難するよう伝えて回るね
進軍する敵の気配を感じられたら、その場から離れ隠れられそうな物陰から見つからないように敵の戦力や首魁の様子を探るよ

また経路を逆に辿る道中で、必ず敵が通りそうな場所に目星へ付け、そこに目立つように果たし状を置いておくよ

『十石家に連なる者の命が欲しくば、まずは我らが相手となる。
犬神藩城下近くの平野にて合戦を申し込む。
命惜しくば、また昔のように這々の体で逃げるが良い。
我ら多野藩首、美濃姫様と志を同じくする者。猟兵なり。』

と書いておけば、城下が戦場になるのを避けられるかな


ジェフリエイル・ロディタ
領主様達やお屋敷周りの兵士の人達を癒そうと思う。
癒えれば避難できるのに、という人もどうぞ。
軽度の人達には祈りをおくるよ。
重傷者は生まれながらの光なら、
いざという時動けるまでいけるかな。
もし疲れたら輝く僕は寝るから、危なくなる前に起こして。
いやすぐに起きるとも。

もし邪魔にもならず必要な時があれば、
エレメンタル・ファンタジアで濃霧を歌う事も視野に入れるね。
基本的に念動力や回復で僕や皆を守りながらの戦いになるかな。
他に集中して良くなったなら、
エレメンタル・ファンタジアの土の隆起で
土壁や足場を作り出したり、岩塊を招いて落とそうか。
落とした後は念動力で再利用といこう。
相手に連携させないように。




 美濃姫が城下に出ると言うので護衛役とした屋敷に詰めていた羅賀・乙来と御代・燕三も一緒について行く事となった。
 城下は相も変わらず復興中と言った風景であるし、荷車に家財道具を積んで町を出る家族などもチラホラ見かける。初めて犬神藩の城下町に来た頃の、サムライエンパイアらしい活気がありつつも歴史有る町並みは、もう過去のモノだ。
「あの火事から暫し経ったものの、何も解決はしていないだろうね……いや、状況だけ見るなら更に悪い方向へと向かっているのやも……」
 ふと遠くを見つめつつ蚕のような触覚を生やした白き陰陽師、乙来が呟く。
 美濃姫はくるりと海に背を向け、目の前に広がる城下を、ボロボロになった復興中の城下を見つめ。
「全て、妾のせいであった……。狒々堂がこの地を狙ったのは、この町が、この町に住む民たちが辛い思いをしたのも……」
 一緒に護衛として付いてきていた輝彦が渋い顔をする。勉強だと言って姫様の前で全て話させたのは失敗だったか、と。
「だが、妾は戦うと決めたのだ。狒々堂の好きにはさせんし、この地も、この地の民も護りたい」
 美濃姫の言葉に、青い陰陽服を着た燕三が状況のみ淡々と説明するよう。
「先刻、敵の謀略の要たる黒道坊を倒しますれば、今や敵方は情報統制にもボロが出て、すぐにでも攻勢に出てくるでしょう。里見様も戦に発展すると民の前で宣言なされました」
「そうじゃな。再び覚悟を決める暇など……妾には無い、という事か」
「………………」
「乗りかかった船だ。この縁の行く先、傍らには見させて貰う……そして、そう思っているのは僕だけでは……無い」
 乙来の言葉に燕三も頷き、輝彦も視線を逸らしつつ小さく何度も縦に頷く。
 美濃姫はそんな彼らを見回し、そして腰に帯刀している赤磊刀に手を触れ。
「行くぞ。悩んでいる暇など無い。守るために、妾も戦う」


「何かあったのですか?」
 城下で情報収集をすると言うので、もしもの時の連絡用に式を渡していた涼風・穹から燕三は連絡を受け、美濃姫達と別れ城下の番所の1つへとやって来ていた。
「ああ、大火の時に捕まえた流言飛語役の山賊がいただろう。役人に突き出して何か情報を持っていれば教えて欲しいって頼んでおいたんだが……」
 兎に角こちらへ、と穹に促され番所の奥へ。そこでは水責めに合い「もう知ってる事は全部話した! もう許してくれ!」と泣き叫ぶ山賊と、怖い顔した役人達がいた。
 穹は燕三にも天下自在符を出すよう促し、身分を証明した所で山賊に聞く。
「もう一度話せ、黒道坊の仕込みについて、だ」
「だ、だから、俺が知ってるのは……は、話す話す、何度でも話す!」
 穹は黒道坊が大火を起こすのが最終目的でも無いだろうと考えていた。もちろん、大火を起こした際の本当の目的は藩主里見義巳の暗殺だったのだろう、だが、もしそれが成功した後の策についても、黒道坊が用意してなかったとは思えない……。
 もちろん、本人が消えた以上、全てが瓦解している可能性もあったのだが、だからこそ安心する為に全ての不安の芽は摘んでおきたかったのだ。
「だ、だから、黒道坊様に依頼された内容は悪い噂を立てろって話だけでさぁ、で、でも、黒道坊様が俺等山賊でなく、あの無口の怖い侍達に火付けの道具以外に、何か大きなモノを複数運び込ませてたのはチラっと見たんでさぁ」
「それは何だ」
「そ、そこまでは……ほ、本当だ、中身まで見てないんだ! 油にしちゃ大きいなってチラっと箱を見ただけで……!」
 箱の大きさは2mほどの直方体の木の箱だったと言う、それが複数個。この山賊が見たのだけで全部とは思えないから、かなりの個数が運び込まれていた事になる……。
「すまない、そろそろ俺はオブリビオンに備えようと思う、以降の調査は任せていいか?」
「構いませんよ、元々この城下とその周辺の調査を行う予定でしたので」
 そうして後の事を燕三に引き継ぎ、穹は走って行った。
「やはり、倒して終わり……という訳にはいきませんでしたか」
 そう呟き、燕三は懐から数枚の式札を取り出すのであった……。


「おお、猟兵殿……すまぬな、このような場所から話す事、許してくれ」
 犬神藩藩主、里見義巳に謁見を申し出て広間に案内されたプリンセラ・プリンセス(今は三番目の兄アベル人格だったが)は、その様子に丸眼鏡の奥で目を細める。
 屋敷の広間の上座には布団が敷いてあり、里見藩主は寝所姿のままそこから身を起こして肘掛けに身をもたれさせた状態だった。
「里見殿……そのご様子は?」
「先の大火の際、忍びの者に襲われてな……この儂も手傷を負ったのだが……どうも、悪い毒が塗られていたらしい……ゴホッ、ゴホッ、グホッ」
「殿!」
「殿様!」
 周囲の家臣達が心配するも、それを手で制する里見。
「よい、間一髪玖篠殿が駆けつけてくれ、こうして一命を取り留めたのだ。こうやって生きているだけでもありがたいもの」
 そういう藩主の目線の先には、家臣達と同列に座っている玖篠・迅の姿があった。と、そこで気が付く。犬神藩の家臣の数が思ったより少ない……里見藩主を襲撃した忍びにかなりの数の家臣が身代わりとなって倒れたと言う。そう聞かされると、確かに命があっただけでも奇蹟と言える。
「して、今日は何用かな? わざわざ儂に会いに来たと言う事は……ついに、戦の準備か?」
 藩主の慧眼に話が早いとプリンセラ=アベルはコクリ頷き。
「すでに国境の4カ所の村と宿場が敵に抑えられました。さらに敵首魁の本隊がオブリビオン兵50を引き連れこの城下を目差し南下中です。我ら猟兵も占領されし4カ所を解放する為動き始めました。しかし、残念ながら手が足りませぬ」
「ふむ、敵本隊をなんとかする必要がある、か」
「御意」
 プリンセラ=アベルの言葉に家臣達がざわつく、実はさっきまで病床の藩主を中心に緊急会議を開いていたのだ。それは先ほどの4カ所が占領された件をどうするか……。
「実はな、今ちょうど儂等もソレについて話しておったのだ。だが、あの謎の力を使う武者達に、我らは10人集めてやっと1人と渡り合える程度、解決策が出ず困っていた所だ……猟兵殿、具体的な策はあるか?」
 聞かれ、アベルはババッと羽扇を広げ。
「もちろんで御座います。里見殿、すぐに出せる兵の数は?」
「うむ……」
 元々犬神藩の兵力は最大でも1500人程度だと言う。その内、城下町とその周辺から呼び集め、すぐに出立できる兵は役500だと言う。しかし大火で親類縁者の元へ避難した者や、町の復旧を優先する兼業侍も多く、実際には200人ほど少なく300人が良い所だろう、との事。
「300……」
「うむ、謎の侍の力を鑑みるに50人もいるとなると……」
「いえ、何も真っ向から戦って頂きたいとは申しません」
 そう言うと広間に広げられていた地図を見つめ、ササッと近寄ると。
 バッと羽扇を閉じクルリと回転させ持ち手の方で敵本隊から城下までのルートを辿り、ピタリ。
「まずはここ、この大きな河に架かる橋を落として頂きたい」
「ふむ……開戦を遅らせ、その間に兵を集めるという事か」
「犬神藩の本隊は兵300を率いつつ近隣より兵を増員しながら北上、先遣隊には橋を落とす工作を行わせ、もし戦の口火が着られた場合は遅滞戦闘をお願い致します。その間に、我ら猟兵も尽くせる限りの手を尽くし占領された4カ所を解放致します」
 プリンセラ=アベルの策に、里見藩主含め広間にいる家臣一同全員が頷く。
 事前に迅の式符・朱鳥によって首魁本隊の位置と進軍経路を調べ地図に書き込んでいたのだが、敵本隊に何らかの連絡手段が無いか遠目から探してみてもそれを見つける事ができなかったのだ。それが解らない以上、プリンセラの言う通り遅滞戦闘を行なうのが最も被害を最小限に抑えられるだろう。
 ちなみに迅が狒々堂家初代藩主の行う戦運びについて、何か伝え聞いている者はいないか? との質問をしてみるが、さすがに他班の、それも戦国時代の情報を知っている者はいなかった。
 そして……。
「では、儂もおちおち寝ておられんな」
「殿!」
「なりませぬ!」
「ここは私めが!」
 蒼白な顔色のまま里見義巳が立ち上がろうとするのを家臣一同が総出で止める。
 これにはプリンセラ=アベルも眉間に皺を寄せる。兵を集めるとなれば藩主自ら旗印になった方が効果的だ。だが、今の里見藩主では例え無理して戦場に出てもとても士気を上げられるとは思えない……さて、どうしたものか。
 そう、次の一手を考え始めた――その時だ。
 広間に新しい人物が現れ、その人物が凛とした声で堂々と宣言したのは――。


 犬神藩城下町より北、多野藩との国境より南下を開始したのは50ものオブリビオンを引き連れた敵の本隊が進軍して来ていた。
 それをかなり離れた距離に伏せ、双眼鏡で確認するは吹鳴管・五ツ音とトゥール・ビヨンの2人。
 すでにここに来るまでの間、敵が進軍してくるであろうルート上にいた一般人(その誰もが犬神藩を捨てて逃げ出す輩)を非難するよう声かけしておいた。
「敵の戦力は情報通り、かな?」
「武者50の首魁1は確実でありますが……もう1人、鎧が豪奢な者が随伴しているようでありますな」
 五ツ音の言う通り、確かに軍師的なポジションな侍が1人付き添っているようだ。生きている感じは無く、明らかにオブリビオンの仲間だろうが……。
「舵取りや情報の統制は先だっての大火の黒幕が担っていた、という話でありますが……やはり別の手段を確保した、という事か」
「もしそうなら……厄介だね。とりあえず、もうすぐアレを置いておいた場所に付くはずだし、その様子を見てみよう」
 トゥールが言うアレとは、敵本隊の進行方向上に目立つよう設置した『果たし状』である。
 予想通り、配下のオブリビオンの1人が書状を発見、すぐに首魁の刀を8本持った男に渡すかと思いきや、軍師役の侍に一度私、軍師役が目を通した後、首魁の手へと渡った。
「やっぱり、新しい知恵者、かな」
「………………」

 やがて、敵の本隊がとある草原に差し掛かった時、八刀流の首魁が手を挙げ進軍を停止させる。
『貴様か、舐めた真似してくれたのは』
 首魁の目線の先、草原のど真ん中に立つ御剣・刀也に向け言い放つと、首魁は懐から途中で拾った挑発とも取れる果たし状を投げつける。
 刀也はそれをバシッと手で受け取るとさらりと中に目を通す。そこには――。

『十石家に連なる者の命が欲しくば、まずは我らが相手となる。
 犬神藩城下近くの平野にて合戦を申し込む。
 命惜しくば、また昔のように這々の体で逃げるが良い。
 我ら多野藩首、美濃姫様と志を同じくする者。猟兵なり』

「ふっ」
 思わず自然と出た笑みに、八刀流の首魁はそれを肯定と受け取ったか。
『やはり貴様か……しかし、たった1人で我らを止めに来たと言うなら、我らもずいぶん舐められたものだ……』
「で、そのたった1人に、あんたは人質でも使おうって言うのか?」
『くっ、はっはっはっはっはっ! 己惚れるでないわ! 貴様1人程度、正面から叩き潰してくれる! 者ども、かかれ! あの命知らずを後悔させよ!』
「天武古砕流、御剣・刀也! 戦場を……真紅に染めてやろう。いざ、参る!!!」
 そして無謀ともいえるたった1人の最終決戦の幕が切って落とされたのだった。


 宿場町『三川』は、街道の要所でありながらひっそりと静まり返っていた。
 大通りは武者のオブリビオン10体が闊歩し、住民は誰もが家に閉じこもり……もしくは家から出ないよう武者オブリビオン達に厳命されているか……。
「まぁったく、せっかくこの前、犬神の民と多野の難民の一触即発を防いだばかりなのに……」
 コノハ・ライゼがそう独り言ちる。
 事実、この宿場町はかつてコノハが助けた宿場町であった。だからこそ、1度助けた人々が再び危機に晒されているのは放ってはおけない。
「とはいえ、住民が皆家に押し込められているなら、オブリビオンの目を盗ンで批難させるのは難しそうネ」
「ならやる事は1つっきゃないね」
 紺屋・霞ノ衣が拳を打ち鳴らし。「湊偲、あんたも準備できてるね」と口の端を持ち上げれば。
「数は多くても落武者なんかには負けないっす!」
 越喜来・湊偲が遊泳禁止ハンマーを握って覚悟を決める。
「人命を取るか元凶を潰すか……この間と似たようなもんさ。絶対、負けないよ」
 そう言うと霞ノ衣の足元から青毛狼の群れが出現。
「あんた達、狩の時間だよっ!」
 かけ声と共に一斉に村の中に散っていく狼たち、と同時、大通りにいるオブリビオン武者2体に突っ込む霞ノ衣。
 咄嗟の奇襲に武者達が反応できない隙に、霞ノ衣は柄の長いハルバードタイプの大きなバトルアックス――戦刃を振るう。武骨だが圧倒的な威力が敵の鎧を無視して胴を薙ぐ。その一撃に2体いたうち1体は胴と腰を失いそのままぶっ倒れるが、もう1体はなんとか抉られるのみで踏みとどまり。
「ドラゴニック・エンド!」
 湊偲の槍が踏みとどまった武者の頭部を貫き、さらに追撃のドラゴンがそのまま抉られていた胴を貫通、さすがに倒れる2体目。
 湊偲はブンッと槍の血のりを払うと。
「治安悪すぎなんじゃって思うけど、こいつ等もオブリビオンなんすね」
「だから油断は大敵ッショ――彩雨!」
 先ほど貫いて倒したと思った2体目のオブリビオンが立ち上がり、湊偲に向かって背後から襲い掛かろうとした瞬間、その眼前に氷属性の水晶の針が100本前後現れ、勢いあまって針のむしろに突っ込み自ら突き刺さり絶命するオブリビオン。
「『煌めくアメを、ご堪能あれ』ってネ」
「あ、あざっす」
「まだ8体残ってるはずヨ、気合いいれて行きまショ」


 宿場町『川上』はかつて作物の窃盗団を発見しトゥールが追跡した町だった。
 だが、今は家の外に出ればオブリビオンの武者に問答無用で斬り殺される危険な町へと変貌していた。
「ま、外をぶらついとるのは全部敵っつーのは解りやすいん」
 桐・権左衛門の言葉に一緒にいるヴィクトリア・アイニッヒとレイチェル・ケイトリンが同意する。
 3人は蔵や建物の角に身を隠しつつ、巡回するオブリビオンを1体ずつ確実に仕留めていっていた。
「私が……」
 角を曲がった先に1体、オブリビオンがいる事に気づいたレイチェルが2人を制し。
「心のなかで時間よ、とまれ」
 瞬間、レイチェルの体感時間が引き延ばされる、1秒を26分割した時間の中、念動力で敵武者の周囲を真空状態にし、音が伝わらない状態にしてから幾度も空気の弾を連撃にて発動、《刹那の想い》が解除される頃には。
『ぐ……ふ……』
 唐突に大量にぶちのめされたオブリビオンがその場で崩れ落ちる。
「ほあ……こりゃ相当やな」
 レイチェルの瞬く間の攻撃に権左衛門が感心し。
「ゴンちゃんさんも感心してないで戦って下さい」
 そうツッこみを入れるヴィクトリアも、敵を発見するやいなや。
「主よ、我に御力を貸し与え給え! 主の威光よ、悪意を祓い給え!――『神威の光剣』よ!」
 と即座に《神威の光剣》を発動、無数の光剣が天より降り注ぎ敵オブリビオンの武者を刺し貫きその動きを止め。
「それじゃあ狐火行くで~!」
 と、まるで示し合わせたかのような流れる連携で権左衛門がノータイムで動きの止まった敵武者を燃やしトドメを刺す。
「お二人こそ……すごい、です」
 思わず感心したレイチェルに。
「そうでしょうか?」
「せやろー」
 正反対な反応を返す2人であった。


 鳥山村……そこはかつて多野の若者が食べ物を奪い、険悪なムードになっていた村だ。結局は猟兵達の説得で仲直りし無事に問題は解決したのだが……。
 再び、この村の危機を救ったのは猟兵達、という事になりそうだった。
 タタタタタッ、タタタッ、タタタタタタッ!
 逃げ惑うオブリビオンに村を包囲した戦闘団の霊が遠慮なく重火器を使用し掃討する。それは寺内・美月の《戦闘団召喚》によって呼び出された戦闘団の霊たちだ。
 さらに包囲された村の中では、炎を纏った赤鬼と氷で形成した青鬼が暴れまわり、オブリビオン達は握り、潰され、斬り裂かれ、鬼たちから逃げ惑う事しかできず、偶然にも村人が閉じこもっている家に向かって逃げようものなら――。
 斬ッ!
 東雲と名付けられた赤毛の馬に乗った月舘・夜彦によって風の如く先回りされ、一刀に伏されるのだ。
 偶然とは言え、3人の役割分担が完璧にはまっていた。範囲と包囲を得意とする美月の戦闘団に、近接で暴れる上に破魔の力がある双鬼達に対し死人のようなオブリビオン達はなす術無く、そこに機動力重視にフォローに入れる夜彦がいるのだ。オブリビオンの武者達が抵抗むなしく次々に討ち取られて行くのも仕方が無かった。
 やがて、10体のオブリビオンを難なく倒し終わった頃。
「お二人とも、申し訳無いが私は城下へ急ぎ戻ろうかと思う」
 東雲に乗ったままそう告げるは夜彦。
「美濃姫の元へ……かい?」
「ああ」
 乙来の言葉に素直に頷く夜彦に、美月が。
「構わないですよ。こちらの後始末は私と羅賀様でやっておきます」
 まだまだ余力がある、という口ぶりで言う。
「かたじけない」
 そう短く感謝を伝えると、夜彦はそのまま東雲を転進させ城下へと走り去っていくのだった。


 岩野村は至って普通の村であった。
 故に特徴も無く、戦術的に何が有効かと聞かれてもコレと言った決め手は無い。
 だが、逆に言えばオーソドックスに応用の効く行動なら、ベターに有効とも言えた。
 そして岩野村の解放にやってきた猟兵は、村の特製を理解してかしないでか、ともかくそのベターな方法を選択していたのだ……つまり、夜陰に紛れての、奇襲。
 それを可能にしたのは暗視を持つ山梨・玄信と、《ペルソナ・チェンジ》で暗殺者でもあった10番目の兄ジュストに人格を変えたプリンセラだった。
 褌一丁となって《シーブズ・ギャンビット》の効果を最大限まで高めた玄信が、鎧の隙間から急所を確実に突き確殺して行き。
 黒ずくめの服装と最小限の装備で無味乾燥、無感情となり完全に影に同化したプリンセラ=ジェストの暗殺術を組み合わせた魔弾が音もなく1人、また1人とオブリビオンの息の音を止めていく。
 村で振るわれ続ける静寂なりし暴力。
 もちろん、2人が全力で暗殺に注視できるのは、3人目たる高柳・零が常に村人に被害がいかないよう攻撃を捨て、守護にのみ年頭に動いてくれていたから……という内助の功もあるのだが……。
 結局、朝日が昇る頃には岩野村は大きな騒ぎを起こす事なく、オブリビオンの恐怖から解放されたのだった。


「まさかアナログにもほどがありますな……」
 敵本隊より離れた位置で待機していたオブリビオン2体を倒した五ツ音が、思わず口に出す。
 それは狼煙の準備であった。
 かねてより人質を取るが如くの戦術は各占拠点と本隊との間に緊密迅速な連絡手段がなければ成立しないもの、そう考えどのような連絡手段を持っているのか、そして可能ならその手段を潰そうと動いていたのだが……。
「狼煙とは……」
 ザッザッと脚で狼煙の準備を崩して使えなくする。
 今、五ツ音がいるのは敵本隊と岩野村の中間地点だ。この分だと他の3カ所との中間地点にも狼煙要員が配置されている可能性は大だ。
 もちろん、占領された4箇所を解放しに向かった仲間達が失敗するとは思えないが……。
「念には念を入れるであります」
 そういうと行軍喇叭を取り出し
「騎兵隊、駈歩前へ、進め。(喇ッ叭ッ叭ッ叭――っ!)」
 喇叭の音が響き終わると同時、五ツ音の前には軍馬が現れ、五ツ音はその馬にヒラリと騎乗すると。
「いざ。駆け抜けるでありますよ。死の、その果てまでも」
 他の3カ所との中間地点の狼煙役を排除しに向かうのであった。


「ふん、何とも見事な戦術だ……軍略についても勉強してるようだな」
 血だらけになりつつ、未だその手から刀と気力を零さず握りしめる刀也が、敵首魁の八刀流の男に声をかける。
『くははははっ、貴様も武芸者のようだが……残念ながら我も同じよ、戦国の世にて死ぬまで武芸を磨いておった。軍略や集団戦についてなど、我はこれっぽっちも興味が無い』
「はぁ……はぁ……はぁ……その割には、ずいぶんと嫌な所ばかり付いてきやがって」
 敵のオブリビオン達は数にあかして攻撃してくるのが基本なのだが、攻撃手段は常に命中を優先して攻撃してくるのだ。この人数差なら威力も手数も数で賄えると解っている戦い方だ。
 そして刀也は今の問答で「(やはり)」と目星を付ける。
 敵の首魁は戦術等には決して聡い方じゃない。問題は首魁の横に並ぶ豪華な鎧のオブリビオン。雑兵たちが落ち武者だとするなら、あれは軍師の亡霊とでも仮定するべきか……。
 可能なら、この情報を後続に伝えたかったが、たった1人で戦い続ける刀也に、未だ援軍は来ない。
 刀也はここまで包囲されそうになる前に逃げ、敵が追って来たら先頭の1人を振り返り斬り倒し、さらに逃げる……と出来る限り常に1対1となるよう戦って来た。
 しかし、そうやって後退しつつ戦い続けた結果、大きな河まで下がって来た所で行きにはかかっていた橋が破壊されている事に気づき、ここにきて背水の陣となってしまったのだ。
「(遅滞戦闘としては橋を落とすのは悪くねぇ……だが、参ったな)」
 獅子吼を正眼に構えどこから来ても対応できるよう防御の構えを取る。
『諦めたか……』
「俺にだってこれ以上戦況を覆せない事ぐらいわかるさ。これだけの数、真っ向から相手すれば俺は死ぬ……分の悪い賭けは嫌いじゃないが、悪すぎる賭けはする気はないんでな」
 その瞬間、トンッと刀也は後ろへ跳ぶ。
 ドボンッ!
 すぐに大河に飲み込まれ見えなくなる。
『ふっ、我らに串刺しに合うより、流れに身を任せた方が生き残る確率が良いと、そう考えたか……』
 少しの間、刀也が飛び込んだ場所を見つめていた敵の首魁は、すぐに切り替えるよう。
『隊列を組み、お互い流されぬよう支え合いこの川を渡るのだ』
 軍師に指示を出させ、オブリビオンの侍たちが徒党を組んで川を渡り始める。
 その数は合計で45名、あの刀也という剣士によって5体も葬られた事となる。
『(思った以上に時間を食った、これ以上の遅滞はお館様にお叱りを受けるな)』
 そう考えつつ自身も川を渡り始めた……その時だ。

「太陽は地を照らし、月は宙に輝き、星は天に廻る」

 川の音をかき消すように朗々と響き渡る声が聞こえ、進軍先の向こう岸に魔法陣が展開、強大な魔力の高まりを感じる。
『なん……だと……!?』
 魔力はさらに高まり、そして響き渡る呪文が完成。

「そして時には、彼らは我々に牙を剥くのです。さあ、宵の口とまいりましょう――《天撃アストロフィジックス》」
 魔法陣から100をも超える光の矢が降り注ぐ、それはまさに星空の流星群のように無慈悲に、ただ美しく、オブリビオンの武者達を貫いて行く。
 ズンズンッと川の中を強引に進み、対岸に対して『何者だー!』と叫ぶ首魁。
 対して対岸に立つはたった1人の術士――逢坂・宵だった。
「ここから先は通しませんよ」
 そう呟くと更に背後に先ほどと同じ魔法陣が輝き、連続魔とばかりに再び天撃アストロフィジックスが放たれる。
『く、おのれ……者共、急げ! 急ぎ川を渡り切れ! 貴様、たった1人でなんとかできると思っているのか!』
「僕、少数対多数の集団戦は得意なんです」
『貴様……! 解っているのか! こちらはすでに4箇所の人里を占拠している。いつでもそこの民を殺せるのだぞ!』
「占拠した村や宿場? はは、各所へは僕らの仲間たちが向かっていますからね。僕は、彼らを信頼しているのです。きっと占拠された場所を解放してくれている、とね。彼らならきっとなんとかしてくれる……その信頼があるから、僕はここであなた方を食い止められる」
 朗々と話す宵の言葉に、狼煙を挙げるよう指示を出そうとするも今は川中で不可能な事に絶望する。
「では、僕は僕の出来る事を……力が続く限りやり続けましょうか」
 そう言って川を強引に渡って来るオブリビオン兵達に、再び宵は魔法陣を向けるのだった。


 ジェフリエイル・ロディタはこの数日間、犬神の城下町において大火で怪我をして人々を歌によって癒し続けていた。その結果、城下での知名度も上がりすれ違う人は誰もがジェフリエイルに笑顔で頭を下げてくれる。中には先生と呼んでくれる者もいた。ただ、生来の気質からか頼られれば頼られるほど限界まで(それこそ自信が動けなくなるまで)人々を癒し、電池が切れたかのようにパタリとどこでも眠って体力を回復させる……そんな生活を続けていた。
 だからその日、道端の影で目覚めて最初に見た光景を、ジェフリエイルは夢か何かだと思ったのだ。
「おや~、これは姫様、凛々しいお姿でどこに行かれるのかな?」
 眠気眼で馬に乗った美濃姫に声をかける。
「美濃姫様はこれより出陣なされる」
「ジェフリエイル殿もご参戦して頂けるか?」
 美濃姫の斜め後ろにそれぞれ馬に乗った笹野と寺島がそう告げる。
「……出陣、だって!?」
 一瞬で眠気が吹っ飛び状況を把握する。
 見れば美濃姫も軽く部分部分甲冑を付けているし、後ろの笹野家老や寺島奉行も武者鎧姿だった。その背後に続く足軽隊や弓隊も皆一様に鎧姿だ。
「まさか……」
 さらに大火時の噂と里見義見が養子にしたとの話も広まっているせいか、城下より続々と美濃姫の列に参列していく者が後を絶たない。
 もちろん、ジェフリエイルにそれを断る理由も無く、共に行きますとも、と合流すれば、そこには猟兵たる穹や迅、2m半もの巨身が目立つレッグ・ワートも参列していた。
「吉田さんも直参したかったみたいだが、残念だな」
 迅の言葉に横から寺島奉行が。
「あの怪我では仕方が無い事、それに外山殿が付いていてくれるとおっしゃった。2人の為にも、我らで武勲を挙げねば」
 多野家の家臣4人は、存外硬い絆で結ばれているのかも……と思う迅。
「あまり良い手だとは思わないけどな、俺は」
 素直に美濃姫が前線に立つ事に不満を述べるのはレッグだ。逃がす事に賭けては誰にも負けない自負があるが、だからこそ自ら危険な場所に飛び込む美濃姫の考えが理解できない。まして、彼女は里見藩主に次ぐ重要人物だ。この城下に残ってその身の安全を確保するべきだ。
「すまんなレグ、だが、そう言ってもお主が付いて来て来るから、笹野や他の家臣も妾の我儘を許してくれたのだ。感謝している」
「………………」
 そうなのだ、美濃姫の参戦にはもちろん家臣一同反対した。だが、頑固に引かない姫の意志と、猟兵達が護衛として付き従う事、その中に逃がし屋の専門家のレッグが居る事が、家臣達をいくばか懐柔したのは間違いなかった。
「とにかく、危なくなったらすぐ逃がすからな」
「うむ、その時は頼むのじゃ」
「はぁ……やれやれ」
 最後は少し笑ったように言うレッグ。
 やがて美濃姫の隊列は城下町を出て北へと進路を取る。
 そこで北の方角から飛んで来たのは妖精のトゥールだ。
 もちろん第一声は「姫様!? どうして!!」だ。
 姫の護衛についていた輝彦が経緯を説明する。渋い顔になりつつも納得するトゥール。
「つまり、狒々堂が狙ってるのは姫様だからって城下を出る……と、そういう事だね」
「すまぬな、それにこれ以降は戦となる。里見殿……いや、父上が病床の今、旗印になれるのは妾しかおらぬであろう」
「それは……そうかもしれないけど……」
「それに、もしもの時はまた、お主とパンデュールが守ってくれよう? アレを!」
 美濃姫が後ろに声を駆けると荷車に乗ったパンデュールが運ばれてくる。偵察時は目立つので置いて行っていたのだが、どうやら城下まで取りに行く必要は無くなったようだ。
「もう、わかったよ。でも、無茶はしないでよ」
「うむ。解っておる」
 そうお互い笑い合いトゥールはパンデュールへと騎乗し参列に加わるのだった。


 犬神の城下町に1人残った燕三は、黒道坊の残り火を探して城下を調査していた。
 山賊から得た情報は、大火の為に運び込まれた火種以外に、何か別の大きな物を複数運び込んでいた……という事実。
 そこから推理されるのは大火後に使う予定だった物だろう。
 さすれば必然的に火によって焼け落ちない場所に運び込んだ事が高かった。
 すでに先見の章たる算術式は占拠されている4箇所や周辺の調査、猟兵達へと飛ばしており、これ以上の使用は体力・心身的に避けたく、結果として燕三は城下の商人達より情報を集める事にし……やがてそれは当たり、いくつかの船(の積み荷)と、港近くの蔵の数件に当たりを付ける事ができた。
 ギギギギギッ……。
 重たい蔵の扉に手を駆け、暗い蔵の中へと足を踏み入れる燕三。
 天窓から僅かに入る日の光でうっすらと蔵内に何があるか解るが……それより先に、異様な匂いが鼻を付く。
 思わず袖で鼻を覆いつつ先へ……。
 すると蔵の奥には大きな直方体の木箱が6個ほど積み重なっているではないか。
「鬼が出るか、蛇が出るか……」
 燕三は一番上の木箱の箱を開けてみる。そして、そこにあったのは……――。
「なるほど、そういう事ですか。これは、ここだけという訳で無いでしょうね……」


 一方、宿場町『三川』にてオブリビオンを全滅させ、宿場町を解放したコノハ、霞ノ衣、湊偲は宿場町の住人に熱烈な歓迎を受けていた。特にコノハは前にこの町の問題を解決した事もあり、住人達の信頼が厚い。
 と、そんな歓迎を受けている最中、調査に出していた黒管狐がコノハの元に戻って来て何かを知らせる。
「何ンだって? 変な木箱?」
 気になるという事で住人達も連れだって宿場町の空き家へとやってくると2mほどの直方体の木箱が20箱ほどみっちりと配置してあった。
「何だ?」
 霞ノ衣が木箱を開けてみると、そこには……――。

「交通の要所たる宿場町にアレを運んでいたって事は、狒々堂が犬神を攻めようっていうのは本気っすね」
 湊偲の言葉にコノハや現場を見ていた住民たちも頷く。
「おい、あんたらちょいと聞きな」
 不安げな顔をする住民たちに、霞ノ衣が言う。
「あんたら、このままで良いのかい? ここにいる半分は多野の民だ、故郷を奪われここに来た。そして残り半分はこの地の生まれだろう。このまま狒々堂を放置していいのかい? それとも、また、逃げるか……」
 一応にうつむく住民たち。
 それを見てチッと舌打ちすると。
「力に! 恐怖に絶対に負けるんじゃないよ! アタシ達が立ち向かうのは守る相手が居るからこそだ! その相手が! 生きるのを諦められちゃ、守るアタシ達はたまんないね!!」
 ビクリと全員が身体を、心を震わす。
「戦いは、力だけじゃなく心も大事なんです……姐さんや俺らと一緒には戦えなくても、気持ちだけは負けないで欲しいっす」
 フォローするように湊偲が優しく言う。
 一応に人々が沈黙した所で、コノハが「とりあえずさっきのは全て燃やしまショ、そして急いで姫サンの所へ」と。
 そして準備が終わり3人が宿場町を出ようとした時だ。
「待ってくれ!」
 3人を呼び止める声。それは宿場町の男衆だった。もともと犬神藩の兼業足軽だった者達は簡易の鎧を纏い、多野藩から流れてきた男たちは手に鍬やか鎌やらだが武器だけ持って。
「俺達も……連れて行ってくれ」
「ああ、もう故郷を失うのはこりごりだ!」
「姫様の為にも、俺達も戦わせてくれ、頼む」
 その数計50名程だろうか。
「ったく、そこまで言ってないだろうに」
 文句を言いつつもどこか楽し気な口調の霞ノ衣に、横で微笑む湊偲。
 コノハは心意気は嬉しいがこの民が被害に遭えば姫サンはきっと心を痛める……と想いつつ、これを止めるわけにはいかないと。
 3人は50人の兵士を連れ敵本隊迎撃に向かうのだった。


 同じ頃、宿場町の『川上』でも、レイチェルが蔵の中身を全てチェックした事で、例の木箱20箱を発見していた。
 急いでウィクトリアと権左衛門に知らせるも……。
「え、と……何をやっているの?」
「いえ、まぁ、そうです……よね」
 町を解放してくれたお礼だと商人達が歓待してくれ、その商人達と意気投合した権左衛門が何やら商人達の親分にでもなったかのように騒いでいるのだ。
 そりゃあレイチェルも困ってしまう。
「あぁっ、もう! ゴンちゃんさん! いい加減にして下さい!!」
「何言うーてるんや、これだけぎょーさん商売人がおるんやで? これで犬神藩の今後は安泰や! っつーか城下があんだけ燃えてなくなったんやし、美濃姫に投資するなら今やでー? ほれ、美濃姫の株を買うなら今やで! 買いー! 買いやー! そして叩き売るんやー!」
 ガッ。
 ヴィクトリアが騒ぐ権左衛門の額をアイアンクローし取り押さえ、しかし笑顔のまま。
「ゴンちゃんさん、いい加減にしてって言いました、よね?」
「お、おおおおう、か、堪忍やー」
 シュンとおとなしくなる権左衛門。とりあえず商人一揆のような空気はシーンとなる。
「あ、あの、実は蔵でとんでもないものを……」

 レイチェルに案内され危ないと思って全て燃やした3人は、どうして……と思いつつ、嫌な気配をぬぐいきれなかった。
「あの、いそいで敵の本隊がきている場所にいこう?……すごく、すごく嫌なよかんがするの」
「それはウチも同じや」
「そうですね……急ぎましょう」
 仲良くなった商人達は何かあったら力を貸すと約束してくれ、急ぎ宿場町を出る3人を見送ってくれた。
 しかし3人の心のなかにはとても嫌な予感が、もやもやとずっと燻り続けたまま先を急ぐ事になるのだった……。


 そして完全制圧した鳥山村でも、後始末を行なっていた美月と乙来が、村外れの空き家で20箱もの2mある直方体の木箱を発見していた。
 むろん、このような物を放置するのは不気味であり、遠慮なく燃やす事にする2人……。
「これを使ってどうするつもりだったのでしょう……?」
「とりあえず、僕達も敵の本隊を迎撃しに行こう。他の場所を救助に向かった皆とも情報交換したいしね」
「……ええ、そうですね」
 乙来の言葉に美月は神妙な顔で頷き、村を出るのであった。


 岩野村を救出しプリンセラはすぐに敵本隊の遅滞戦闘を行なっているであろう里見軍に合流すると出発し、残った玄信と零は、岩野村に残って後始末と事後調査を進めていた。
 そして、2人も例の木箱を20ほど発見、もちろん遠慮なく燃やして処分する。
「しかし、いたい何だったのじゃろう……木箱もじゃが、この何の変哲も無い村を占拠した理由がわからぬぞい」
「あ、それについては……もしかして自分、解ったかも」
「なんじゃと!?」
 零が自身の顔のモニターに周辺の地図を出し、さらに犬神の城下町と占拠された4箇所を表示する。
「この4箇所、犬神の城下町へ攻め入る為だと考えると無意味なのですが……」
 南に下る矢印を表示するも画面に大きくバツが出る。
「逆に考えると効率が良いんです」
 城下町から北へと脱出するルートを矢印で表示すると、そのどれもがこの4箇所から近い場所(2つの宿場町はモロに)を通る事になる。
「つまり、犬神の民を逃さぬ為の要所……というわけじゃな」
「敵がオブリビオンなら、そうやって今を生きる人々を全滅させようとしてもおかしくないと思うんです」
 零の推理が当たっているだろうと玄信が褒める。
 だが、零は浮かない顔をモニターに浮かべ。
「でも、不思議な事が1つ……」
「ん?」
「こんな逃げる為のルートを潰すような要所を、どうして狒々堂の敵が解ったのか……って。頭が良さそうな黒道坊はこの前倒しましたし、まして、これは犬神藩の地理というか地の利を知り尽くしていないと思いつかないと思うんです」
「黒道坊が外山殿から聞いて白瀬羅剛に伝えていた……とか?」
 さもありなんな事を玄信が言うも、零は1人腕を組み。
「そうなら……良いのですが」
 納得いかないように首を傾げる。外山は多野藩の家臣だ。犬神藩の地理にそこまで詳しいとは思えない。
 なら、この作戦はいったい誰が……?
 2人はここで考えてても仕方が無い、とプリンセラを追い里見軍への合流を目指すのだった。


「天撃アストロフィ――ぐっ!?」
 呪文を最後まで唱えられないまま脇腹に突き刺さった打ち刀から逃げるよう後退し、刃が抜けた脇腹を抑える宵。
 すでに大河からも後退し、敵のオブリビオン軍は川を渡り切っていた。
 いや、渡り切るぐらいならまだ何とかできた。問題は、35体ほどのオブリビオン侍達が、豪華な鎧を纏う軍師によって的確に陣形を整え攻めてくる事だった。
 歴戦の刀也が耐えきれなかったのもほとんどの理由がソレである。
 うっすらと敵の姿がぼやけ始め。
「少し……血を流し過ぎました、か……」
 これ以上後退しながら戦っても敗北が見えると、覚悟を決めた宵はスッと背を伸ばし最後の魔法を唱え始める。
 だが、その呪文が唱え終わるより先、腕を失ったオブリビオン侍が急接近する方が早い。
「(もはやこれまで……)」
 そう、覚悟を決めた、その時だった。
 ガキンッ!
 オブリビオンの打ち刀を、夜天に移す銀の月の輝きを持つ刀が打ち払う。
「間に合って良かったです。よく耐えられた!」
 それは夜彦であった。
 宵が斬られる寸前、咄嗟に割って入る事が間に合ったのだ。
「しっかり捕まって!」
 安堵と共に満身創痍で倒れそうになる宵を、今度は無骨なロボットが……トゥールのパンデュールが抱きかかえる。
「このままジェルフィエイルさんの所に連れて行くよ。そっちは任せるね!」
「逃がし役は俺なんだが……」
 入れ替わりで現れるのはレッグだ。同じく夜彦が下がり、レッグ単身が前へ……。
「俺、これ嫌いなんだよな……」
 ボヤキながらレッグが自身の高速戦用ソナーを起こし簡単な判断以外の記録系や視聴覚、武器操作も全て圧縮凍結を開始、回路と容量を全て怪力補正と防具改造、硬化、各耐性の調整燕斬速度に全回しする。
 それはレッグのベルセルクトリガー、スピード&攻撃重視の無差別モードだ。
 次の瞬間、レッグの姿が消え敵オブリビオン部隊で土煙が上がる。
 同時、援護に来たを軍を隠すように濃霧が発生……レッグの足止めと濃霧による連携によって、宵を助けにきた犬神軍は一時的に撤退するのだった。

「ジェフリエイルさん!」
 トゥールに呼ばれ濃霧をエレメンタル・ファンタジアで発生させていたジェフリエイルが、今度は《生まれながらの光》を使い宵の治療を開始する。これならなんとか間に合いそうだ。
 宵が治療を受けつつチラと見れば、夜彦だけでなくプリンセラや穹や迅もいるようだった。プリンセラなど主人格に戻ってどこか怒っている風で、その理由を宵はすぐに理解する。
「美濃姫……様……」
 そう、里見軍――犬神軍を指揮している人物が美濃姫だったからだ。
 プリンセラなどはそれを見た瞬間、主人格へと戻って相当追及したのだろう、少し目も赤い。
「ふぅー、疲れたわぁ。一応最後にドローン使ってワイヤートラップ置いて来たけど……まぁ、足止めにもならんわな」
 レッグがボロボロになりつつ戻って来た所で、両陣営が睨み合う。
 数の上では犬神軍の方が多いが、オブリビオンの兵団という意味では敵本隊の方が強いだろう。
 だが、今までの戦いで敵軍のオブリビオン侍は30体ほどまで減っているようだった。
『まさか多野の姫自らしゃしゃり出てくるとは! 飛んで火にいる夏の虫とはこのことよ!』
 敵将たる八刀流の侍が声をあげる。
『だが、お前達は何もできず我に蹂躙される事となる……知っているか、我らはすでに村2つ、宿場2つを占拠している。その地の民の命が惜しくば選べ――』
「どちらを護るべきなのか、何故選ばねばならぬのでしょう!」
 大声で返すは夜彦。
『何だと?』
「この地で戦うと決めた時から、何かを手放して往くつもりはございません。我ら猟兵、そのどちらも護ると誓ったのです!」
 威風堂々と宣言する姿に、敵将が手を挙げる。
『狼煙をあげよ!』
 オブリビオン侍の一部が狼煙を挙げ、もくもくとたなびく煙が空へと上がっていく。
『後悔するが良い!』
 だが、その合図を引き金にさらに遠くに狼煙が上がるはずが、見渡す限りどの狼煙も上がらない。
「無理だよ」
 空を飛んで来た朱鳥を札に戻しつつ迅が言う。
「他の狼煙役は全部五ツ音が排除したってさ」
『何!?』
「それに、岩野村はもう解放済みです!」
 プリンセラが指差し断言し。
「三川の宿場も助けておいたヨ!」
 声がしたと思うとそれはコノハだ、他に霞ノ衣に湊偲、さらに50の兵士まで連れている。
「川上の方もばっちり助けておいたで! って、美濃ちゃん何で来たんや、危ないやろ!」
 権左衛門の声と共にヴィクトリアとレイチェルもやってくる。
「無論、鳥山村も解放しておいたよ」
 乙来が静かに、しかし響く声で告げ、一緒に美月もやってくる。
「だが、一つ疑問がある。あの木箱は何だ。お前の仕業か?」
 美月がそのまま敵将に向かって言う。
「木箱?」
 穹が疑問を口にすると。犬神軍の後ろの方から。
「言われて調べた木箱ですよ、どうやら他の占拠された場所にもあったようですね」
 声に振り向けばそこにいるのは燕三であった、しかも。
「刀也!」
 ボロボロの血まみれの刀也の肩を担いでいるではないか。
「式を皆さんに放っておいて良かったですよ、おかげで助ける事ができました」
「……金は、ねぇぞ……」
「出世払いで構いませんよ?」
 宵を治療しているジェフリエイルに引き渡しつつ、燕三が話を続ける。
「その木箱の中身は死体でした。それも多野の、侍の死体です。他の4箇所の木箱もそうだったのでは?」
 燕三の言葉に玄信と零が、レイチェルが、霞ノ衣と湊偲が、そして美月が頷く。
「実は1つ、ずっと引っかかっていた事がありまして……前に多野藩が最初に襲われた際の戦場で、五ツ音殿たちが多野の兵士を弔ったと聞きました。桐さんやアイニッヒさんも一緒だったかと」
 話を振られ頷く権左衛門とヴィクトリア。
「しかし、その時ある死体が見つからなかったとの事なのです」
 その言葉にハッとする権左衛門とヴィクトリア。
 もちろん、ここに五ツ音がいれば同じ反応をしただろう。
『くっくっくっ、察しが言いな』
 笑う敵の首魁。
 さらに零が何かに気が付く。
「そうです、今回の事、この地を知っている人だから犬神藩の人が裏切ってる可能性を考えましたが、そうじゃない……そうでなくとも、それぐらいの知識があって当然の人が1人……」
 敵のオブリビオン侍達がその列を開ける。
 敵の八刀流の首魁の側に立つ、豪奢な鎧を来た軍師然とした男がハッキリと見える。
「お姫さま、見てはダメ!」
 レイチェルが声をあげるも、馬の上に乗る美濃姫はその姿をはっきりと見て……そして呟いた。
「ち、父上……」
 それは死体を操られ、敵兵に寝返らされた美濃姫の実の父。
 元多野藩藩主、十石・上埜信(といし・かずのしん)……その人であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『乱世の名将』

POW   :    八重垣
全身を【超カウンターモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    八岐連撃
【一刀目】が命中した対象に対し、高威力高命中の【七連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    永劫乱世
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【復活させ味方】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第二章予告

 美濃姫が軍を率いて敵本隊を向かいうつ。
 だが、その選択は悲しい運命を背負わせる。
 敵の首魁、その横にいる人物によって……。

「そんな……お父様……なぜ!?」

 そう、オブリビオンの首魁の側にじするは、
 すでに死した美濃姫の実の父、十石・上埜信(といし・かずのしん)であった。

『国に必要な物~滅亡の愛姫~ 其の肆 』

 第ニ章 父親
吹鳴管・五ツ音
敵軍の兵力を犬神藩の友軍に換算すれば総勢で九百、本隊に五百

さらに”棺の中の”増援を加えれば、確かに犬神藩を壊滅させるに足る兵力でありましょう

…猟兵の戦力を視野から外すのであれば、という話でありますが

先のいくつかの戦闘で敵方も猟兵の戦力は認識しているはず

にもかかわらず手勢を分散し、敵将が突出して縦深するようなあの戦術は、よほど敵将の戦力に自信があるのか、或いはまるで…

(敵将を討ち取るための舞台が、敵軍の手で整えられている、ような)

…そういうこと、でありますか?
上埜信殿

(ふるりと首を振り)

些か希望的観測に過ぎるでありますな
これ見よがしな進軍が陽動でないとも限りません
里見殿の警護に急ぎ向かいましょう


プリンセラ・プリンセス
人格ヴィルヘルムで開始。
「プリンセラのケーススタディになるかと思っていたのですが、まさかこうなるとは……」
「いずれ僕らも覚悟する時が来るかもしれないな」
それはつまり――

とはいえ今は目の前の敵だ。
「誰ぞ来よ――」
応えたのは16番目の兄姉クリスティーナ。勝ち気な表情と魔導書のついた杖を持つ。
「わかってるわ兄様。酷かもしれないけど決断はしてもらわないといけないものね!」
真っ先に上埜信にウィザードバレットを撃ち込んで火ぶたを切る。
焦らせるのはわかっているが、必要な事は以前に告げてある。
姫ならばきっと決断できる。
だが親殺しまでさせるわけにはいかない。
それは猟兵の役目だ。相手はオブリビオンなのだから。


御剣・刀也
父と娘の再開か
美濃姫には悪いが、親父さんだろうと全力で当たらせてもらうぜ

八重垣でカウンターモードになったら距離を取って体勢を整える。動けなくなっている隙にいろいろ下準備や回復などをする
八岐連撃は一撃目が当たらなければいいので、可能な限り避ける。もし、避けられず受けた場合は獅子吼で受けきる。重心移動と腕力で弾き飛ばされそうになるのを堪えながら。受けきったらカウンターの一撃を打ち込もうと試みる
永劫乱世は気絶死亡しなければ大丈夫なので季節しないように気を付ける
「何の因果か知らんが、父親と娘の対決か。手を出すのは野暮だが、家族同士の殺し合いを見るのは、もっと嫌なんでな」


月舘・夜彦
地を理解し戦い慣れた動き、記憶は共有なされているか
ですが、今の者は父君に非ず
そう思うも美濃姫様には苦しいでしょう

攻撃は2回攻撃、抜刀術『風斬』は威力重視
八重垣は距離を置いて体勢を整える
敵の攻撃は残像、見切りにより回避しカウンター
八岐連撃には警戒、使用時は回避に徹する
回避し切れない時は武器受け
姫様に攻撃が向かうなら身を挺して庇う

どんなに願おうとも叶わないものがある
約束した者との再会も死した者が生き返る事も
もう、届かない
だからこそ今を生きる者の願いを叶えたい
それが過ぎ去った者への手向けだから

姫様は立派になられた
国や人の為に、脅威に負けず向き合っている
どうか……今を生きる者の為に道をお開けください


涼風・穹
……まあ十石上埜信がオブリビオンにされる可能性はあるとは思っていたさ…
その存在を政治利用されれば多野藩、犬神藩どちらも危ないからな…
姫さんの前で、というのは避けたかったけど、戦場で出会えたのは寧ろ千載一遇の好機
確実に仕留めさせて貰う

【行動】
問答無用で『贋作者』で姫さんの前に防壁を作ってどちらからも物理的に近寄れないようにする
……本来ならちゃんと姫さんに説明して納得してからにすべきなんだろうけど、相手が姫さんを精神的に揺さぶりにくるのは火を見るよりも明らかだし、ここで姫さんや『赤磊刀』を奪われれば洒落にならないからな…

後は俺が囮も兼ねて『贋作者』で作った『赤磊刀』の偽物を構えて敵陣へ斬り込むのみ


朧・紅
…あれ、お父さんなのです?
ですか
なら…傷つけずにいたいですね?

十石・上埜信の行動を阻害
死んでるにしても人質や盾にされたらお姫様のダメージが半端ないのです。
なるべく傷付けないように僕の血を通わせ蛇のように動くロープとギロチン刃のロープ部分だけを使って行動を封じて守っておくですよ。
もし倒さなければいけないなら…苦しまぬ様綺麗に首を刎ねるのです
ごめん、ですよ

こちらはお任せなのです
皆さんはボスよろしくですよ

余裕があればモブ兵にギロチン刃でちょっかい出して減らしておくのです


嶋野・輝彦
爺様の話からに
今の羅剛は十石の血を根切りにしたい、経緯から里見にも恨みは…で良いのか?

焼き討ちで動員数を落とした
そこへ来て進軍と人質…
俺が羅剛ならどう動く?
俺なら…今回の進軍を使って猟兵を城下から切り離して時間稼ぎ、で城下を襲撃、里見の殿様の首を取った後、姫様の陣を攻める
って所だが
後は黒道坊が死後についても言及してたから策を仕込んでた可能性もあんのか?
わっかんねぇ
何もなきゃ俺が間抜けだったで済む話か
護衛って言ったが出陣して周りに猟兵いっぱいいるし要らんわなぁ

●城下に残る、屋敷で殿様の警護
「向こうは任せて問題ねぇから俺はサボりだよ、体の方はどうよ殿様」
いざとなったら逃がす段取りとか考えねぇとなぁ


レイチェル・ケイトリン
「天下自在符をわたしたち猟兵にたまわるほどに上様が懸念しておられる世の脅威は亡者などの跋扈。そして……殺されて操られる亡者もいる。そのことはすでに犬神藩主里見さまにもお伝えしています」

そう言って念動力と武器落としと吹き飛ばしの技能で刹那の想いをつかって敵を攻撃するね。フェイントもつかってよけにくくするし。

敵からの攻撃も刹那の想いでふせぐよ。
クイックドロウと早業の技能もつかうしね。

ほかの人への攻撃もふせぐね。かばう技能もあるから。

敵が亡者をけしかけたら範囲攻撃の技能もつかってたたかうよ。


お姫さまはわたしをにくんでもいいんだよ。

多野のお城でお姫さまに幕府の意があると責任をおわせたのはわたしだもの。


紺屋・霞ノ衣
湊偲(f01703)と参加

宿場の落武者も元は多野の奴
そうなれば、姫さんの親父さんも利用されない訳は無いか
……死んでも利用されるなんて、酷いもんだよ

狙うは首魁一択
攻撃には2回攻撃と怪力、隙を見てグラウンドクラッシャー
頑丈な鎧には鎧砕きと鎧無視攻撃
武装状態じゃ姫さんの親父さんも戦ってきそうだが退いて貰うよ
敵からの攻撃は武器受けとオーラ防御
どの攻撃も厄介だ、しっかり受け止める

アタシが気に入らないのは経緯が姫さんの所為になってる事さ
黒道坊が呪われてるとか言いやがって
家族や仲間が殺されて危険な目に遭ったのに仕掛けた奴等が指差して
「こうなったのはお前の所為だ」と
娘がそんな事言われてどうよ、上埜信の親父さん


越喜来・湊偲
霞ノ衣姐さん(f01050)と参加

首魁と戦いに行きたいですけど美濃姫さんも心配です
一緒に来てくれた兵士達にも姫さんを守って貰うようにお願いして
自分は侍オブリビオンの対応に回ります
第一、美濃姫さんの親父さん……上埜信さんが襲って来る場合もあります
親子で戦い合うなんて絶対にやっちゃ駄目です

敵の鎧対策として鎧砕きを使って攻撃
自分の体力が減ってきた時にはC・H・Sで攻撃して体力を回復
上埜信さんには野生の勘で自我みたいな、中身があるのか感じ取りたいです
こんな事をするのが自分の意思じゃないって思いたいんです
仏さんになっても、その体が敵の良いようにされてたなんて悔しいですよ
でももっと悔しいのは姫さんなんです


ヴィクトリア・アイニッヒ
権左衛門(f04963)と行動。

危惧してはいました。ですが、まさか本当にやるとは。
…死者の安らぎすら、冒涜しようというのですか!貴方達は!!

美濃姫様の安全と、同行してきた犬神・多野の兵の安全が最優先。
そちらに向かおうとする敵兵には、『神威の光剣』で牽制を図る。
…ゴンちゃんさんが、相手の様子を調べるようですし、その意味でも動きは封じたいところ。

姫様、動揺される気持ちは、判ります。
ですが、あの方は…貴方の知る方ではありません!
あれは…本来あるべき意思を捻じ曲げられ、死後の安らぎすら踏み躙られた、傀儡…!
姫様があの方の…お父上の事を思われるのならば。我らにお命じ下さい。お父上を束縛する者を、討てと!


桐・権左衛門
ヴィクトリアと行動を共に(f00408)

美濃ちゃんの領地だけではなく精神的に追い詰める作戦やとしたら憎たらしい程に効果があるわ、敵ながら天晴れやわな

美濃ちゃんあれは父やないで、唯の民を脅かす敵…ちゅうても無理やわな

一切戦闘はせずに上埜信の一挙手一投足を観察するで
何故上埜信だけの死体を操ったのか
もっと数を操れるならそれこそ不敗軍の出来上がりや

媒介はあるのか、術に綻びや怪しい部分はないのか

死体操りなんて永パを繰り返されたら勝ち目なんか到底あらへん
けど、それをせんかった理由がどこかにある筈
【第六感2】【医術1】あらゆる知識を試していくで

戦闘には参加せん、皆には負担を掛けて申し訳ないわ…堪忍したって!


山梨・玄信
(美濃姫を動揺させる作戦かの?)
姫様、あれは父上ではない。オブリビオンじゃ!

【POWを使用】
雑魚→十石殿→首魁の順に相手をするのじゃ。
雑魚は威力の増した気の放出(範囲攻撃)で攻撃。復活したら何度でも破壊するぞい。そうすれば首魁が攻撃する暇が無くなるからの。

反撃は第六感で予測し見切りで躱すのじゃ。避けられなければ強さを増したオーラ防御で受けるぞい。

首魁は情報収集でカウンターの癖を見ておき、見切りでカウンターをすり抜けて灰燼拳をぶちかますのじゃ。容赦なくの。

「死んだ人は生き返らん。それは仏様との約束じゃ」
「あれは過去の亡霊。姫様が乗り越えるべき試練じゃ」
「親は無くとも子は育つ。わしのようにの」


逢坂・宵
やはり、ですか
敵は身内にあり……昔の格言は実に的を射ているものです

姫さま、お気をたしかに
すでに死したはずと言うのならば、あれは父君ではありません
少なくとも、姫さまが父と慕う者そのものではありますまい
我ら猟兵、姫さまのお味方です
このような時にあなたをお支えするためにいるのです
どうぞ、気をしっかりと持って―――この戦いの行く末を、お見届けくださいませ

先ほどの戦で少々無理をしすぎましたか
後方に下がって、負傷者の治療に専念しましょう
天宙アストロメトリーで負傷の激しい者から回復を行います
余裕があれば、この戦況と彼らの目論見について考えたいものですね
お父上が首魁とは思えず……
まだ、誰かがいるのでしょう


コノハ・ライゼ
敵は敵デショ
親子とか死者への情とかオレには分かんねぇし
辛いなら逃げたってイイ、恨んだってイイ
生きてるヤツの想いならいくらでも受けて立つ
「……姫サンを、頼ンだヨ

基本最初から上埜信狙い
『高速詠唱』で広範囲を牽制するよう【月焔】を分散
『2回攻撃』で敵へ接近し炎を集中させ捩じ込む
仲間に合せるよう時折牽制は繰り返し

反撃は『オーラ防御』用い致命傷避けるが
敵の意識が完全コッチ向いたらソレはソレで儲けモノ
牽制と見せた炎を敵へ集中砲撃の上で『捨て身の一撃』
集めた炎を刃の様に繰り敵に刻まれた『傷口をえぐる』よう斬り
『生命力吸収』で命を削ぎ落す

そうだねせめて敵の最後に間に合うなら
見せないように【月焔】で周囲に煙幕を


羅賀・乙来
美濃姫や一緒に来た兵士の近くで後衛から援護
相手はオブリビオン、彼等は戦うよりも姫様を護って貰うのが大事だ

技能は主に破魔と2回攻撃
破魔の力を付与した霊符や手裏剣を飛ばして攻撃
美濃姫側に敵が向かって来るなら立ちはだかり全力魔法で降魔化身術「白龍陣」
……目立つのはあまり好きじゃないが必ず防いでみせるさ

美濃姫、今君が感じるのは父に対する悲しみかい?
国の為に戦った彼の肉体は弔われず、敵の手に渡って操り人形となった
彼の尊厳は踏み躙られ、国を奪った者達に従っている
そして彼等は君の反応を楽しんでいるようだ
……これ程に屈辱的なものはない
此処は怒る所なんだよ
君は、この状況に決して負けてはいけない


寺内・美月
・【八重垣】対策で、発動されたらむやみに近寄らずに〖完全管制制圧射撃〗で攻撃を加える。
・【八岐連撃】を受けた場合は〖剣刃一閃〗を使用する等で耐えきり、〖真鋭なる双刀の魂〗を発動しつつ治療する。
・【永劫乱世】が発動した場合は、此方も〖戦闘団召喚〗で敵兵を抑える。
・状況に応じて〖SSW式治療レーザー〗で味方を支援する。
「…しかし、これは前の『黒道坊』が仕込んでいた種なのでしょうか?」


玖篠・迅
寺島さんか笹野さんに本当にあの人が前藩主か確認する
背格好とか鎧が最後に出陣した時と同じものか
動揺すごいだろうけど、落ち着いて思い出してほしい
…オブリビオンになるには早すぎると思うし、ユーベルコードで何かしてるなら七星七縛符でどうにかできないかな

霊符を敵の顔の近くに投げたり直前にふやして視界の邪魔しつつ「第六感」に「野生の勘」で首魁と前藩主どっちに七縛符を使うか見定める
多野も犬神の人もやりにくいだろうし、前藩主さんの遺体取り戻すか解放できれば…少しは、皆の気持ちも楽になるかな

戦局が決まったら急いで城下に戻るな
月白で犬神藩主さんの解毒をやってみる
吉田さんも怪我してたし毒の危険性あるから見に行くな


御代・燕三
いやはや酷なことをする。
国だけではなく、姫の意志さえも絶えて無くそうとするモノなのか。
さて、出来るか分かりませんが挑戦してみましょう。わたしの行いもまた道理に外れるモノではありますが……

UC「算術式:慈善の章」を使用。敵の首魁には攻撃しない。
戦場では目立たぬ存在となり、ただ一瞬を狙い集中する。

十石・上埜信を復活させ操る術が解かれるか弱まる瞬間に、慈善の章で上書きか再度操ります。そして姫が言われたいと思っていることを伝えて貰いましょう。父から娘への最期の言葉を。その言葉を受けての行く末は見守るしかありません。
わたしの愚かな行いは、聡い方には気付かれるでしょうね。
長引かせぬように算術式を解除します


レッグ・ワート
上手い事使ったな、死ぬか無防備になったら使われる感じか。多野勢が揺れるなら逃げるかきくぜ。好きに諸々果たせばいいが、復興に要る面々欠かすなよ。打点は俺らで稼げる。なら敵は増やすなだが逃がすなだ。

矢届かない高さにドローン飛ばして戦場の全体図を見る。他にいなかったらお姫様の護衛兼退路確保。いれば宇宙バイクで全体被害抑えに動くぜ。危うい味方は少しだけ引っ掛けて立直して貰うか、掻っ攫って手近な奴に預けて退がるように言うさ。糸引っ掛けての敵盾や武器落としや体勢崩し、怪力で鉄骨打ち付けて膝や脚折りでも狙うか。もし対応されそうなら、フェイントやゴッドスピードライドの加速と精度向上で読みを外せるかやってみる。


高柳・零
POW
「玄信さんの言う通りです。姿に惑わされてはいけません。それよりも、周りに注意してください。あなたが死んだら、多野藩の良民と家臣はどうなるか考えてください」ちょっと冷たいですかね…?

手下を範囲攻撃で排除しつつ、首魁に取り付きます。
体の小ささも利用してすり抜けて行きます。

八岐連撃は一刀目をオーラで強化した盾で受けて弾きます。その時に刀にダメージが入るようにし、出来れば折ります。ダメなら後の七撃を無敵城塞で受けます。終わる瞬間に解いて、鎧砕き付き2回攻撃で反撃。味方を少しでも有利にします。

超反撃モードには、見切りと魔道書のオーラ付き盾受けで攻撃を受け流しながら、間を縫って2回攻撃を入れます。


ジェフリエイル・ロディタ
わあ、こちらでその手に会うとは思わなかった。

僕は回復手として控えるね。
近づく敵や攻撃を念動力で払ったり、
押えて他の人が倒す隙を作っていこう。
応急処置で意識が保つ人には歌にのせた祈りを、
そうでない人には生まれながらの光や気付けを贈るとも。
ただ、僕も倒れるわけにはいかないし、
猟兵や意思が特別強い人以外は、再出撃できる程は治さない。

かつて輝いた領主様、そちらに誰を連れていかれても困るよ。
領主様の死後に民を守ったのは、
あなた達が育て共にした美濃姫様と多野の兵だ。
そのお姫様や家臣達が前にいくのなら、道中の障害と
亡骸を動かす邪気とをピュリファイアの火にくべよう。
遺る人が優しい輝きとなるよう、信じてあげて。




「ち、父上……」
 敵首魁の側に佇む多野の旗印を付けた豪華な鎧の男、それは死体となってより操られ、敵に寝返らされた美濃姫の父、元多野藩藩主・十石上埜信(といし・かずのしん)、その人であった。
「危惧してはいました……ですが、まさか本当にやるとは!」
 姫の様子から全てを理解し激高するは陽光の信徒たるヴィクトリア・アイニッヒ。
「死者の安らぎすら冒涜しようというのですか! 貴方達は!!」
「ヴィクトリア……」
 今にも敵軍に飛び込みそうなヴィクトリアの剣幕に、少しだけ我に返る美濃姫。
 そんなヴィクトリアの肩を掴み無言で頷くは桐・権左衛門。相棒の言わんとする事を理解し落ち着くヴィクトリア。いつもは暴走気味の権左衛門を彼女が止める役だが、いざという時は逆のようだ……。
「……あれ、お父さんなのです?」
 状況からもしや? と美濃姫に聞くは朧・紅。他の者が一応確認したいと思いつつ、今までの付き合いからはばかっていた言葉を、初対面でありかつ10歳となる赤髪の少女はスルリと質問する。
「は、はい。あれはまさに……妾の父、十石・上埜信に……違いありません」
 ショックを隠しきれないまま姫様が断言し紅は。
「ですか……なら、傷つけずにいたいですね?」
 紅が美濃姫の方を向き僅かに微笑む。
「そんな簡単じゃねぇデショ。敵は敵、正直オレは親子とか死者への情とかわかンねぇしな……」
「コノハさん!」
 コノハ・ライゼの言葉に、ヴィクトリアが聞き捨てならぬと声を荒げるも。
「でもな、生きてるヤツの想いなら、オレはいくらでも受けて立つ」
 そう言って姫を見る瞳に、ヴィクトリアもそれ以上口を挟めず。
「辛いなら逃げたってイイ、恨むならオレらを恨んだってイイ……」
 そう言うとコノハは敵陣に向かって走り込む。
「……姫サンを、頼ンだヨ」
「言われぬとも!」
 飛び込んでいくコノハの背に、ヴィクトリアが当たり前な言葉を投げるも、明らかに上埜信狙いのコノハの行動に、美濃姫が思わず「父上……!?」と声を漏らす。
「姫様、動揺される気持ちは、判ります。ですが、あの方は…貴方の知る方ではありません!」
「せやで、美濃ちゃんあれは父やないで、唯の民を脅かす敵や」
「それは……」
 権左衛門の言葉に頭では理解できている、と言った風に俯く姫を見て、難しい顔をする権左衛門。
「……ちゅうても、無理やわな。あれぁ美濃ちゃんの領地だけではなく精神的に追い詰める作戦や。憎たらしい程に効果がある……敵ながら天晴れやわな。せやけど……」
 どうしても気になる点があり、小声でヴィクトリアに何か告げる権左衛門。
「解りました。ゴンちゃんさんはそれに集中してください。姫様と犬神・多野の兵は私が……主の威光よ、悪意を祓い給え!」 
 ヴィクトリアが祝詞を唱えると共に虚空から無数の光剣が出現、こちらへとじりじりと近寄ってきていた敵の落ち武者隊を牽制するよう射出、足下に突き刺さる。
「プリンセラのケーススタディになるかと思っていたのですが、まさかこうなるとは……」
 敵部隊が僅かにたじろぐのを見て、ここか……と動くはプリンセラ・プリンセス――の身体に降りているプリンセラの長兄ヴィルヘルム。
「いずれ僕らも覚悟する時が来るかもしれないな。それはつまり――」
 まだ来ぬ未来の暗雲に刹那だけ想いを馳せ、しかし今は目の前の敵が優先だと、いつものキーワードを口にし。
「誰ぞ来よ――」
 次の瞬間、堂々たる王然としたヴィルヘルムの雰囲気が、勝ち気であり自信に満ちたモノに変わる。それは16番目の兄姉クリスティーヌ、服を翻すと共に魔道書と杖がその手には握られ。
「わかってるわ兄様。酷かもしれないけど決断はしてもらわないといけないものね!」
 魔道書が光り杖が振られれば空中にあらゆる属性を持つ複雑色な魔法弾が100も出現し――。
『障害を……排除するわ!』
 プリンセラ=クリスティーヌの言葉と共に、一斉に落ち武者軍団に無慈悲な魔弾が降り注ぐ。
 ズドドドドドドドドドドドドッ!
 魔弾の雨が止んだ頃、直撃した隊の先端部分には敵の四肢が散乱し……しかし、敵落ち武者達は最前列にいる2体こそ木っ端微塵となるも、2列目、3列目は四肢欠損止まり、それ以降はほぼ傷を受けておらず……。
「(やはり……厄介だネ)」
 何が起こったのか敵陣に飛び込んでいたコノハだけは把握していた。魔弾の雨が降り注ごうとした瞬間、上埜信が短く号令を発し、落ち武者達の被害が最低限に収まるよう陣形を動かしたのだ。
 そしてその指示は月焔での範囲殲滅を狙ったコノハの攻撃も適宜いなされ、致命傷を与えられずにいた。
「(さすがは藩主……戦国の世が終わっても軍略は学ンでるって事ネ)」
 このまま敵陣ど真ん中で普通に戦っていれば囲まれるのが落ちだとさっさと判断し、コノハは落ち武者達を牽制し隙を作る事に専念する。
 魔弾の雨が数体の武者を倒すしか至らなかった事に、犬神の兵達に動揺が走っていた。
 だが、それを絞めるべく美濃姫も呆然としており、兵達の動揺は広がるばかり……。
「姫さま、お気をたしかに」
 未だ傷癒えぬ脇腹を抑えつつ、美濃姫の側に立ち声を掛けるは逢坂・宵。
「敵は身内にあり……昔の格言は実に的を射ているものです」
「宵……お主、まだ傷が!」
 姫の心配を手で制し。
「私の心配をして下さるなら、まずは私の言葉に耳をお傾け下さいますか?」
 傷がまだ治りきっておらずズキズキ痛むが、その冷や汗すら押し隠し宵が言う。
「すでに死したはずと言うのならば、あれは姫さまの父君ではありません。少なくとも、姫さまが父と慕う者そのものではありますまい……」
「それは……」
 無情に敵の落ち武者達を指揮する上埜信をチラと美濃姫が見つめる。
「我ら猟兵、姫さまのお味方です。このような時にあなたをお支えするためにいるのです。どうぞ、気をしっかりと持って―――この戦いの行く末を、お見届けくださいませ」
 傷など無いと言わんばかりにスッと背筋を伸ばし、馬に乗る美濃姫の側に立ち戦場を見つめる宵に、美濃姫も何かを堪えるよう言葉を飲み込み、ピンと背を伸ばし戦場を見つめる。
 その姿に、僅かながら兵達の士気が戻る。一番辛く動揺しているのは姫様のはず……その姫様が戦いから目を逸らさずいる姿に、誰もが思う所があるのだろう。
「やはり……あれは本物の前藩主なんだな」
 完全に取り乱している笹野を他の兵士に任せ、兵の士気を戻そうと声を張り上げていた寺島寺社奉行を捕まえ、玖篠・迅は念押しの確認を行う。
「左様、あの姿……今でも目の裏に焼き付いております。あの日、謎の武者軍団を討伐すると兵を率いて出陣なされた御館様……まさか、まさか敵の手に落ち傀儡となろうとは!!!」
 目頭を乱暴に拭いそう断言する寺島に、迅は冷静に言葉を反芻する。
「(背格好も同じ、鎧も最後に出陣した時と同じ……か)」
 懐に手を入れ、とある札を取り出しつつ。
「……オブリビオンになるには早すぎると思うし、何かしらのユーベルコードを使ってるなら……」
「それは、七星七縛符の札でございますね」
 迅の独り言を聞いていたのか、それとも懐から出した札に気付いたからか、そう声を掛けて迅の側へとやってくるは青い陰陽服の御代・燕三。
「ん? ああ、そうだけど」
「ならば、わたしの一計に乗って頂けますか?」
「内容によるな」
「それは受け取り方次第かと……」

 敵の落ち武者達がいる陣地へ歩を進めつつ、襲い来る落ち武者達を念動力を使って武器を落とし、またはその身体ごと吹き飛ばし、ゆっくりゆっくり1人突き進むはレイチェル・ケイトリンだ。
「天下自在符をわたしたち猟兵にたまわるほどに上様が懸念しておられる世の脅威は亡者などの跋扈。そして……殺されて操られる亡者もいる。そのことはすでに犬神藩主里見さまにもお伝えしています」
 その言葉に落ち武者達――元多野の兵だった者達が、返事をする事は無い。
 それでもレイチェルは伝えざるを得なかった、いや、伝えなければならないと思ったのだ。彼らにもう侍としての義も忠も無いとしても、彼らだった者達に、彼らが滅ぼされる正統な理由について知って貰う為に……。
 レイチェルの圧倒的な念動力の技能――力により落ち武者達の陣が乱れ道ができる。
「宿場の落武者も元は多野の奴らだったんだろうさ……そりゃ、姫さんの親父さんも利用されない訳は無いか……ったく、死んでも利用されるなんて、酷いもんだよ」
「霞ノ衣姐さん……」
 敵将を睨む姿こそいつも通りだが、その誰かを思いやる言葉を呟く紺屋・霞ノ衣に、弟分の越喜来・湊偲がどこか複雑な思いを抱きつつ。
 しかし、霞ノ衣はグッと戦刃を肩に担ぐと。
「アタシは首魁をやる。あんたはどうする?」
「自分は……落ち武者達の対応に回ります。美濃姫さんも心配ですから。首魁の方は姐さんに任せます」
「誰に言ってんだい。……それじゃあ、そっちは頼んだよ」
 そう言うとレイチェルによって開かれた道を落ち武者達が再び閉じようとしている所に、霞ノ衣が暴風となって再び道を切り開きつつ敵首魁へと一直線に攻め上っていった。
「上手い事使ったな……死ぬか無防備になったらこっちにも使われる感じか」
 ドローンを上空に飛ばしつつレッグ・ワートが独りごちる。
 すでに猟兵達の突撃で敵陣は乱れ中央突破が計られている、これなら――。
 と、上空のドローンからの映像に違和感を感じ、自身の頭の中で目の前の落ち武者の様子と上空からの全体図を同時に写し、比較し、考察……結果。
「陣形が変わってきてるな」
 中央突破され前線左右に残っていた落ち武者達が敵将を守る動きをせず、そのまま左側の6体が一直線にこちらへ――美濃姫のいる本陣へと突貫する動きを見せ始めたのだ。
 急ぎ仲間の猟兵へと伝達すると――。
「投影」
 涼風・穹が一瞬で集中し言葉を紡ぐと共に、突貫してくる落ち武者達の前に巨大な防壁がせり上がる。
 時間稼ぎは出来たと判断し、レッグは美濃姫達と共にいる兵達に向かって叫ぶ。
「敵は異能、さらには多野の旧友達だ。それでも戦うか? 逃げると言うなら好きにしろ。俺達は逃げる者を恥とは思わない。優先せしはこの後、各々復興に必要となると心得ろ!」
 レッグの声かけに一瞬だけザワつくも、元々集まった兵は犬神藩の者が多く、また城下大火の際にオブリビオンと戦った者も少なく異能を使うオビリビオンに対する恐怖も小さい。結果、レッグの問いは侍として奮起する者こそいれ、逃走する者は1人とていなく……。
 思わずレッグは「(難しいもんだ……)」と困惑する。素直に言葉通り受け取って貰って構わなかったのだが、これがサムライエンパイアの侍達という事か……。
「それにしても、こちらでその手に会うとは思わなかったよ」
 御剣・刀也の傷を回復させつつジェフリエイル・ロディタが溜息を付く。
「まあ十石上埜信がオブリビオンにされる可能性はあるとは思っていたさ……」
「そうなのかい?」
 ジェフリエイルの問いに穹は頷き。
「その存在を政治利用されれば多野藩、犬神藩どちらも危ないからな……姫さんの前で、というのは避けたかったけど、戦場で出会えたのは寧ろ千載一遇の好機、ここで確実に仕留める必要があるだろう」
「……まぁ、そうだろうね……っと、あっちから別の落ち武者が来てない!? 僕は倒れるわけにはいかないし、任せるよ!」
 もうちょっとで戦えるまでになりそうな刀也を連れ、本陣の奥へと引っ込むジェフリエイルに変わり、本陣の前に立つは蚕のような触覚を生やした白き陰陽服の男、羅賀・乙来。
「……目立つのはあまり好きじゃないが」
 そう呟くと複雑な印を組み式札を人差し指と中指に挟むと念を込め。
「降魔化身術――白龍陣」
 宙に放った式札が呪力で型作られた龍と成り、その龍が乙来を飲み込み白き光が爆発する。「この姿となったからには……必ず防いでみせるさ。さぁ、護ってあげようか」
 そこの顕現せしは白き龍、頭から金の角を生やし威風堂々としたその姿は、敵対する者が普通の人間ならば見ただけで萎縮したであろう。 
 だが、回り込んできた落ち武者達(レッグが言うには右側に残っていた6体)は、敵の姿など関係ないとばかりに突き進み刃を振り上げる。
 ガガガガガッ!
 兵達を包むようにスッと胴体を横たえた白龍となった乙来の鱗が、その刃という刃全てを防ぎきる。
 右からの6体を乙来が防ぐ間に、今度は防壁を回り込んで左側の落ち武者達6体が攻め込んでくるも、その迎撃に飛び出すは山梨・玄信と高柳・零のコンビだ。
「姫様、あれは父上ではない。オブリビオンじゃ! 姫様を動揺させる作戦だと考えるのじゃ!」
「玄信さんの言う通りです。姿に惑わされてはいけません。それよりも周りに注意してください。あなたが死んだら、多野藩の領民と家臣はどうなるかお考えを!」
 いつ敵がすり抜け、犬神藩の兵達に被害が出るか解らない。そうならないよう指揮が取れるのは美濃姫だけなのだ。玄信と零はそれが解っているからこそ突き放すように叫ぶ。
「死んだ人は生き返らん。それは仏様との約束じゃ! あれは過去の亡霊。姫様が乗り越えるべき試練なのじゃ!」
「み、皆、敵は普通の敵では無い。不可思議な術と力を持つ化け物の侍達じゃ……気を引き締めよ」
 なんとか兵士達へと指示を出すも、美濃姫自身、自らの中で葛藤が続いているのだろう。その声には拭いきれぬ迷いが見えた。
 もちろん、その声を聞き寺島や犬神藩の兵達の中でも侍頭役の年長者が、他の兵が動揺しないよう指示を出すが……。
「仕方が無い、これは1人も後ろに逃すわけにはいかぬの」
 落ち武者の振るってくる打ち刀を、オーラでガードした拳で打ち払いつつ玄信が呟けば。
「そう……ですね」
 同じく零もオーラを纏った魔道書(盾代わりにもなる)で敵の刃を防ぎつつ、隙を見て落ち武者の四肢が欠損しないようメイスで反撃に転じる。
 さらにこちらから倒す方が効率が良いと判断した穹とレッグ、それに湊偲が駆けつけ。
 穹が風牙によって1体の右足を斬り捨て、レッグがその大きなウォーマシンとしての身体と怪力を活かして左足を握り潰し、落ち武者が《欠落の決意》による一撃を放とうとする寸前、湊偲の振り下ろした遊泳禁止の標識ポールが脚を失った落ち武者を力尽くで一刀両断、破壊する。
「こちらが攻め立てられたら美濃姫さんの親父さん……上埜信さんがここまで攻めて来る可能性もあります。それは駄目っす。親子で戦い合うなんて……絶対にやっちゃ駄目っすから」
 湊偲の思いにそこに居た全ての猟兵が心から同意する。
 それをさせない為に、自分たちがいるのだ、と。


 犬神藩は城下町、美濃姫に与えられた武家屋敷――今や藩主が休む武家屋敷だが……に、軍馬を乗り捨て慌てて上がり込むは吹鳴管・五ツ音。
「さ、里見殿は御無事でありますか!?」
 ぜぇぜぇと息を切らして聞いてくる五ツ音に、屋敷にいた守護役の侍がきょとんとした顔で出迎える。
「はぁ……はぁ……里見殿は、藩主様は、何も……」
「吹鳴管も気になってこっちに来たのか。大丈夫だ、里見の殿様は無事だ」
「え、……これは、嶋野殿?」
「とりあえず中に入れ、無事な殿様の顔を拝めば落ち着くだろうさ」
 そう言って通されたのは寝所であった、輝彦と五ツ音が入ってくるとゴホゴホと咳をしつつ里見義巳が起き上がる。
「別に無理に起き上がらなくても良いって言ってんだろう?」
「いやなに、皆が我が藩の行く末をかけて戦っている中、儂1人床に伏せってばかりはおられぬよ」
 五ツ音が戻るより一足早く、どうやら輝彦も里見義巳が狙われる可能性を考え、すぐにこちらに蜻蛉返りしたと言う。
 しかし、城下にオブリビオンどころか狒々堂の手の者は現れておらず、どうやら取り越し苦労に終わったらしい。
「今の羅剛は十石の血を根切りにしたいって動いてるらしいが、その経緯から里見にも恨みがあって然るべき……って思ったんだがな」
「確かに、自分たち猟兵達も犬神の兵力も全て出払っている今、里見殿を狙うは絶好の機会……」
 五ツ音も自身の思っていた事を吐露し、それが輝彦と同じだったとお互い保管する。
「まぁ、何もなきゃ俺が間抜けだったで済む話だが……」
 自嘲気味に言う輝彦に、里見藩主が「そう言ってくれるな」と。
「儂の身を案じて来てくれた事、儂は心から感謝しておるぞ。あの城が燃えた夜も、お主らの仲間が来てくれなかったら儂の命はそこで燃え尽きておったからな」
「そう言ってくれるなら、俺も気がいくぶん楽だな」
「それに、戻ってきてくれたのは丁度良い、少し、お主らに相談したい事もあったのでな」
「ん?」
「相談したい事……でありますか?」


「はああああっ!!!」
 霞ノ衣が雄叫びと共に巨大で無骨なバトルアックス戦刃を、その柄の端を片手に握り大上段から跳躍と共に振り下ろす。
 八刀流の敵首魁はうち二刀を頭上で交差しその一撃を受け――るも、霞ノ衣の超重量たる一撃に。
 ズンッ!
 と足下にクレーターができ八刀流の両足が地に沈む。
 だが、次の瞬間。

 ――斬ッ!

 霞ノ衣の胴体が三刀目と四刀目で交差するように斬られ、その衝撃で吹き飛ばされ大地に転がる。
「ぐっ……なかなか、やるじゃないか」
 いつの間にか上段で戦刃を防いだ刀は地に落ち突き刺さり、3本目と4本目の刀を鞘から抜きいつの間にか振り抜いた構えに変わっていた。
『奥義――八重垣』
 厳かに首魁が言う。
 自然体の動きのように手にした二刀を鞘に納め、地に刺さった最初の二刀を掴む首魁、ゆっくりした動きであるはずなのに一分の隙も無い動きは、一連の流れ全てが一瞬の出来事だったかのように錯覚させる。
「なるほど、確かに隙が無いようですね」
 霞ノ衣と同じく敵首魁に辿りついた月舘・夜彦が夜禱の柄に手を触れたまま距離を置いて機を伺う。
 今攻め立てれば即座に反撃に遭うと、対峙する誰もが肌で感じ――。

 タタタタタタタタタッ!

 20丁以上の軽・重火器、火砲が一斉に火を噴く。
「火力集中、敵の攻撃を封じ込め」
 寺内・美月の念力により複製された銃火器類が距離を置いたまま掃射され、瞬後、金属を断ち切る甲高い音が連続で鳴り響く。
「撃ち方、止め」
 美月の号令と共に掃射が止まり、すぐに金属が断ち切られる音も止み、八刀流の前には斬られた銃弾の残骸が山となって煙をあげ……。
「まだ、その構えを取るか?」
『いや、貴様がいる限り、ずっとこのままというのは愚策のようだ』
 八刀流がその構えを解き、八重垣を解除。
「一つ聞かせて下さい」
 次は自分が相手だと言うように夜彦が首魁の前に立ちながら。
「地を理解し、さらに戦いに精通せし指揮能力、あの武将は本当に姫様の父君なのですね」
『無論……だが、それがどうした』
 ガキンッ!
 敵の解答に刃を持って答えるよう、抜き放たれた夜彦の銀閃を己が二刀で受け切る八刀流。
「どうも致しません。致しませんとも……しかし、あの者を本当の父君に非ずと思う、思わねばならぬ美濃姫様の心の内を思えば――お前を、許すわけにはいかん!」
 二刀で受け切られた刀を自身の回転と共に滑らせ神速の2連撃目を放つ夜彦。
 その狙いは上段、敵の首。
 だが敵もさるもの咄嗟に夜彦の刃に背を向けると、背負った4本の刀で2連撃目を弾く。
 さらに持っていた二刀から手を離し腰の三刀目・四刀目を引き抜き最小の動きでそのまま背後へ、2連撃目を受けられ僅かに硬直した夜彦へと突き刺――ガガキンッ!
 夜彦に突き刺さる寸前、二刀が上から打ち叩かれ大地を突き刺す事に……。
『貴様、死んでいなかったか』
「てめぇみたいな奴とやり合う機会はそう無いんでね……三途の川を見る前に、とっとと引き返して来たぜ」
 そう軽口を叩きつつ、怪我の冷や汗を誤魔化すように笑みを浮かべる刀也。
 美濃姫のいる本陣でジェフリエイルに言われた「完全に回復させた訳じゃない、無理をすればすぐ傷口が開くよ」との言葉が頭をよぎる――だが、先ほどの言葉は嘘じゃない。強者との戦いに刀也自身、己が内なる修羅が歓喜していると感じるのだ。
「すまない、助かった」
 夜彦が大勢を立て直し刀也に並ぶ。
「なぁに、1人じゃ無理なのは身に染みてるからな。仲間は1人でも多い方が良い」
 刀也の言葉にガッと戦刃を再び肩に担ぎ立ち上がった霞ノ衣も並び。
「まったく、その言葉には賛成だね」
 前衛に立つ3人の背後では相変わらず美月の銃火器が八刀流の隙を狙うように銃口を向けており――。
 敵の首魁が高まって行く緊張感にクツクツと笑う。
『相手との実力の差を理解した上で、それでも勝つ為に多勢を選ぶ……どうやら、猟兵とも侍と言うより戦人であるらしい……』
 ザク、ザク、ザク……。
 八刀流が6本の刀を抜き大地へ突き刺し、残り2本だけ右と左に構え。
『よかろう、ここよりは八限流師範代、八限・次郎丸(やげん・じろうまる)、本気を持ってお相手致そう!』


 美濃姫がいる本陣へ攻め入って来た落ち武者達のうち、左翼の5体は猟兵達が、右翼の6体は白竜に守られつつ犬神藩の兵達によってなんとか倒し切り、さらに敵陣に飛び込んだレイチェルや朧・紅、プリンセラ等の攻勢により上埜信が直接指揮していた16体の落ち武者のうち6体を撃破し、残りの落ち武者は総勢で10体にまで数を減らしていた。
 だが、上埜信が指揮しているせいか、落ち武者達も仲間の3分の2が倒され、その怨念を纏った事でスピードが上昇し、その斬撃は衝撃波となり距離をとっても攻撃が届くようになってしまい、さらにこちらの攻撃をわざと腕で受けたりする事で片腕となり、そのスピードが更に加速されていた。もう、戦いが始まった頃の落ち武者達とは強さのレベルの桁が変わっており、さすがの猟兵達も苦戦を強いられていた……。
「猟兵殿たちが……ならば、今こそ我らが!」
「待て! 行ってはならん!」
 犬神の兵の1人が苦戦の状況を見て多少なりとも力になれればと刀を抜いて、白竜と化した乙来の守備範囲から外れて敵軍に向かって駆けだすも、ピクリとそれに反応した落ち武者の1体が無造作にそちらに向かって刀を振るう。
 たったそれだけで衝撃波が走り、突出して来た兵に――。
 ズザーッ!
 衝撃波が兵のいた場所を斬り裂くも、そこに兵はいない。
「俺達の援護がしたいなら、お姫様を頼む。そいつが一番、俺達の援護になるんでな」
 《ゴッドスピードライド》で自身の宇宙バイクを最速の形に変形させ、衝撃波すら追い越し、そのまま引っ掻けるように兵を助けたレッグが、他の兵達の所に助けた兵を届けて言う。
「レグ! 避けろ!」
 兵を降ろしたばかりのレッグに叫んだのは穹だった。何かと振り向いた瞬間、敵陣の方、3体の落ち武者がこちらに向かって刀を振り下ろしているのが見えた。もちろん、穹の言葉で気づけた今、ゴッドスピードライド状態のバイクに騎乗するレッグは一気にバイクを急発進して回避する事もできる……だが、それをすれば――。
 背後の兵達の事を思い、レッグはバイクのハンドルから手を離し、少しでも衝撃波が後ろに行かぬよう両手を広げ――。
 ズバババンッ!!!
 3つの衝撃波が同時にぶつかる。
 だが、それはレッグにではなかった……。
「よかった……間にあったんだよ」
 レッグの前に展開されていたのは念動力による不可視の壁、それはレイチェルの刹那の想い――コンマ秒という僅かな時間でかつ精密に念動力を操れるレイチェルだからこそ可能な秘技とも言える技の賜物だ。
 レイチェルは離れたレッグだけでなく、落ち武者達と戦う他の仲間への防御もすべからく引き受けていた。いや、高速で動き衝撃波すら放ってくる落ち武者達に、攻撃も防御も両方対応するのはさすがの猟兵達にも難しく、結果、レイチェルがほぼ全ての落ち武者の攻撃から猟兵達を護るという防御の要となっていたのだ。
 かつて敵の武者大将の攻撃から美濃姫を全力で守る程度だった少女が、これほどの強者(つわもの)と化すなど、ここにいた誰が想像しただろう。
「わたしが全部、ふせぐから……みんな、がんばって」
「ああ、頼りにしてるぜ」
 穹がレイチェルの念動力で防がれる事を前提に、全力で刀を振るう。それは《贋作者》で作った赤磊刀だった。落ち武者の1体を袈裟懸けに斬り裂き残り9体とする。
「(本来ならちゃんと姫さんに説明して納得してからにすべきなんだろうけど……相手が姫さんを精神的に揺さぶりに来てるのは火を見るよりも明らかだし、ここで姫さんや『赤磊刀』を奪われれば洒落にならないからな……)」
 美濃姫を納得させる事は他の者に任せ、穹は戦う。ただし、戦いながらも1つだけワザとらしく見せびらかすは己が持つ赤磊刀だ。偽物とはいえ《贋作者》で作ったこの刀は極めて精巧な仕上がりとなっている。戦いの中で見たなら偽物と判別するのは不可能だろう。だからこそ、敵の――上埜信の反応が気になった。
「そぉら、喰らい付け!」
 鮫の頭部に変形させた腕で落ち武者に噛み付き、その生命力を奪って自己回復しながら湊偲も上埜信の事を観察していた。
「(やっぱり……)」
 湊偲が見る限り――半分は野生の勘だが――上埜信は穹の持つ赤磊刀に僅かながらに反応しているようだった。
 もしそうなら、上埜信としての意識が少しでも残っているか……または、地の利や戦術のように知識として赤磊刀についても覚えている故か……。
「(前者であって欲しいっすね……こんな事をするのが自分の意思じゃないって思いたいんで。仏さんになっても、その体が敵の良いようにされてたなんて悔しいですよ)」
 つい思考が長すぎたか、落ち武者の1体が下段から刀を振り上げて来ていた、レイチェルの念動力の壁が下段を防ごうとするも、命中率を優先させた落ち武者の妄執の猛撃は腕をあらぬ方向に曲げて壁を迂回し湊偲の首に迫る。
「でも……」
 避けられない、そう判断した湊偲は咄嗟に落ち武者に身が接する程接近、首を狙った刃が肩に突き刺さるがその痛みを無視し――。
「もっと悔しいのは姫さんなんですよね。だから」
 ドッ!
 鎧を砕く程の衝撃を全身の体重と重心移動だけで弾き出し、ピタリとくっつけた身体から一気に解き放つ。
 落ち武者が弧を描き、鎧を砕け散りつつ吹き飛んだまま動かなくなる。
「させないぜ……姫さんの邪魔だけは」
 肩から刀を引き抜き再び落ち武者達へと踊りかかっていく湊偲は、いつにも増して凄みが感じられるのだった。

「湊偲も気合い入ってるようだね……もう、十分だ。後は他のヤツにやってやりな」
 そう言ってジェフリエイルの治療を切り上げ戦場へ向かうは霞ノ衣。
「いいのかい? まだ応急処置レベルだけど……?」
 ジェフリエイルの言葉に背を向けたまま手を振り答え、霞ノ衣はそのまま落ち武者達の中へと身を躍らせて行ってしまった。
「流星は古来より、人々の望みをその身に受け、そして時には雨となって人々のもとへ降り注ぐ。さあ、あなたに光を捧げましょう」
 ジェフリエイルの横では負傷者の治療に専念する宵の姿があった。横になったままのプリンセラの上に星属性の火球がゆっくり降りて行き、そのままプリンセラに接触するとその前進を暖かな炎が包み、プリンセラの傷が一気に回復していく。
「ありがとう! 感謝するわ」
 そういうとスクっと立ち上がったプリンセラ=クリスティーナが魔導書と杖を手に戦場へと戻っていく。
 逆に治癒用の星魔法を使用した宵は、顔色も悪く明らかに疲労困憊の様子だ。
「回復役が倒れては元も子も無いですよ?」
「いえ、先ほどの戦で少々無理をし過ぎましたから……せめて、皆さんの治療ぐらい、力にならねば……」
 ジェフリエイルの言葉に「まだ大丈夫です」と強がる宵。
 戦況は少しずつ猟兵達へと傾いて来ていた。
 落ち武者達は強化されているがその数を確実に減らし、そろそろ指揮する上埜信へと猟兵の刃が届きそうでもある。
 宵はそんな上埜信を遠目に見つつ。
「(しかし、指揮こそ取っていようと、姫様のお父上が首魁とは……)」
「私も、そう思います」
 ジェフリエイルが宵の心を読んだかのように同意する。
「もっとも、どちらが主導権を握っていようと、かつて輝いた領主様が逝った世界に、こちらの誰かを連れて行かれても困るけどね」
「いや、上埜信はんが連れて行くんは無理やろな」
 ジェフリエイルの言葉に、美濃姫のいる本陣からずっと上埜信を観察していた権左衛門が断言する。
 権左衛門はこの戦いが始まった時から、いや敵側に上埜信がいると解った時点である疑問があった。
 それは『何故上埜信だけを操ったのか』だ。
 死体操りなんて強力な術があったなら、それを繰り返されただけで猟兵達に勝ち目は無い。そうでなくとも、複数体の死体を一気に操れば不敗の軍の出来上がりなのだ。
「(けど、それをせんかった理由が……どこかにある筈)」
 そう、ずっと観察し続けた権左衛門は、とある結論へと辿りつく。
「ウチの推測やけど、上埜信はんは他の落ち武者オブリビオン達に比べて相当弱いって思うんよ……もしかしたら、生前の上埜信はんよりも弱体化しとるかもしれへん」
 もしその通りだとするなら、町や村を襲う際に伏兵として死体を兵士に変え奇襲兵とするのは効果があっても、純粋に正規の軍団として死体兵を使用する場合、一般の兵士達に及ばない強さでは戦でぶつかった際に蹂躙されて終わりだ……もちろん、相当数の死体があれば話は別だが、狒々堂と多野の兵士全員を使ってもせいぜい犬神藩の2倍になるかどうか、それでは少々効率が悪い。
「その仮定を信じるなら、これを使うのは八刀流の次郎丸とか言うヤツの方か」
 七縛符の式札を指に挟みつつ迅が権左衛門の話に乗り、次郎丸を狙って式札を放とうとするも。
「お待ちください!」
 迅の腕を持ち燕三が止める。
「あの策は機を読む必要があります。最後の瞬間まで……待つのです」
「………………ああ、わかった」
 燕三に言われ迅も札を構え直す。
「紅さん……いえ、朧さん、でしたね。なんとか上埜信様の動きを止めてくれますか」
「ああ、俺に任せとけ。一発でやってやるよ!」
 紅――の戦闘中に発言する裏人格、朧が燕三の無茶振りに応える。
 朧は上空へと己が拷問具を放り投げる。それら朧の血を通わせた道具達は、まるで意志持つ蛇のように空中から自在に動き上埜信へと襲い掛かる。よわい10歳とは思えぬ手際で手枷が、猿轡が、拘束ロープが上埜信を捕縛。
「で、どうする? 苦しませないよう綺麗に首を刎ねとくか?」
「いえ、その捕縛を維持し続けて下さい」
「人質や盾にされないように、か? まだ落ち武者達だっているのに……ま、俺には無茶じゃねーけどな! 任せろ!」
 にやりと笑う朧の様子に、燕三は満足げに「お願いします」と釘を刺しつつ、戦場で戦う皆に向かって大声で叫ぶ。
「皆さん、今のうちになんとか八刀流のオブリビオンを! 美濃姫様も、ここが攻め時です!」
 燕三の言葉に即座に反応したのはプリンセラ=クリスティーナだ。
「(美濃姫が迷うのは解ってる。けれど、必要な事は以前に告げてある。だから……姫ならばきっと、決断できる)」
 それは今は引っ込んでいるプリンセラ本人の確信だ。それがクリスティーナの判断に影響を与えたかどうかはわからない、だが、プリンセラ=クリスティーナは敵の首魁への攻撃の邪魔はさせぬと、百以上の魔弾が自身の周囲に展開。
「(だけど、親殺しまでさせるわけにはいかない。それは猟兵の役目だ……なぜなら、相手はオブリビオンなのだから)」
 クリスティーナが一気に魔弾を全開放、落ち武者達へと全属性の魔弾が降り注ぐ――。
「美濃姫、今君が感じるのは父に対する悲しみかい?」
 燕三の言葉を聞きつつも、すぐに決断できなかった美濃姫に白龍となっている乙来が問う。
「それは……」
「君の父は、国の為に戦うも彼の肉体は弔われず、今、敵の手に渡って操り人形となっている。彼の尊厳は踏み躙られ、国を奪った者達に従っている……」
「………………」
 黙る美濃姫にさらに追い打ちをかけるよう乙来が続ける。
「そして、彼等は君の反応を楽しんでいるようだ。……これ程までに屈辱的なものはない」
「………………」
「わかるかい? 此処は……怒る所なんだよ」
 乙来の言葉に美濃姫の中でぐちゃぐちゃになっていた気持ちが纏まっていく。
「姫様……あれは、本来あるべき意思を捻じ曲げられ、死後の安らぎすら踏み躙られた傀儡です!」
 ずっと側で美濃姫を守っていたヴィクトリアが感情を露わにしながら。
「姫様があの方の天…お父上の事を思われるのならば、我らにお命じ下さい。お父上を束縛する者を討てと!」
 ヴィクトリアの言葉に、まるで自分達もそうだとばかりに背後の兵達が一斉に刀に手をかける。
 そして――。
「まったく……その通りであった。父上の死を侮辱する事、その報いを受けさせず何が父上の娘か、何が藩主の娘か!」
 キッと敵軍を見据え、腰から赤磊刀を抜き放った美濃姫が、敵軍を刀で指差し。
「皆の者! 猟兵達を援護し亡者たちを打ち払え! そして猟兵達は敵の首魁を討伐せよ!」
『おおおおおおおおおおおっ!!!!!!!』
「主の威光よ、悪意を祓い給え!──神威の光剣!」
 姫の号令と共に一気に兵達が落ち武者達へと襲い掛かり、同時、兵達に衝撃波を放とうとする落ち武者達をヴィクトリアの放った無数の光剣が牽制、衝撃波を放つタイミングを失わせる。
 ヴィクトリア以外にも乙来は人の姿に戻り、破魔の力を付与した霊符や手裏剣を飛ばし兵を援護。レッグは落ち武者達の上空を宇宙バイクで飛び回りつつ糸を引っ掻け落ち武者達が武器を振るうのを阻害。
 だが、何より効果的だったのは戦術指揮を取っていた上埜信が朧により捕縛されていた事だろう。想像以上の大軍団に攻められ、個別にどうすれば良いか判断できない落ち武者達が、数の暴力に負けるよう次々に討ち取られていく。
「親は無くとも子は育つ。わしのようにの」
 玄信がニヤリと笑みを浮かべつつ混乱する落ち武者を殴り飛ばしつつ八刀流の元へ向かえば、他の猟兵もここが諸根場だと一斉に玄信に続き。
『来るか、猟兵ども……いざ、尋常に勝負!』
 まだまだ余裕の次郎丸が、全身から闘気を漲らせ猟兵達を待ち受けるのだった。


 出された茶を飲みつつ、輝彦と五ツ音は里見義巳の相談に乗っていた。
「つまり、次が最後の戦いになる……殿様は、そう思ってんだな?」
「左様。あの異様な力を持つ敵は、お主ら天下自在符を持つ者……つまり、猟兵達であるお主らを一番の障害だと認識しておるだろう。なれば、奴等は総力を持ってお主らを潰しに来るはず」
 里見義巳の言葉に輝彦と五ツ音は顔を見合わせる。殿様の言う事は間違ってはいない。だが、それは羅剛が自身の目的を最優先にしなかった場合の話だ。
 オブリビオンは通常の生物とは根本が違う、理屈より感情を優先して動かないとは言い切れないのだ。
「里見殿、その考えは早計であります……」
「ああ、敵の目的が多野家の断絶や、犬神藩への仕返しだったら、猟兵潰しこそ後回しにするかもしれねぇ」
 2人の反論にゴホゴホッと咳き込んでから。
「解らぬか?……儂は、最後の戦いにはお主ら猟兵の力を1人たりとて無駄にはできぬ……そう言っておるのだ」
「それは……!?」
 言わんとする事を察してしまい五ツ音が言葉を詰まらせる。
 僅かな間の後、同じく察した輝彦が頭を掻きつつ。
「だがな……殿様、あんたはそれでいいのか!?」
「この身に流された毒は普通の毒では無いらしくてな……日に日に身体が弱っていっているのが儂にも解るのだ。例えこの戦に勝ったとしても、かつてのように溌剌と政務に戻れるとは思えぬ……」
 苦虫を噛みつぶしたような顔になる2人に。
「そんな顔をするな。隠居生活が想像より早くなっただけだ。……だが、もはや隠居しか先の無い儂などより……今も戦っている姫を、この地の為に武器を持つ民達を、そしてなによりこの国の未来を……守って欲しいのだ」
 それと同時、寝所の襖を開けて犬神家の家臣の1人が入ってくる。恭しく2本の刀を持っているが……。
「この2人に、それを」
「御意」
 家臣は里見の命で、持ってきた2本の刀――打ち刀と脇差しを、輝彦と五ツ音の前に。
「どういう事だ」
「何で、ありますか?」
 殿様に変わって刀を持ってきた家臣が。
「これは御館様の戦刀でございます。打ち刀は嶋野様に、脇差しは吹鳴管様に」
 打ち刀と脇差しをそれぞれ差し出される。
「今、周辺の町や村より兵が集まりつつある。お主らにはその兵を率いて美濃姫の本隊に合流して欲しいのだ。そして、儂の変わりに、儂の魂を戦場に持って行って貰いたい」
「何で……そうなんだよ」
「そうであります。自分は……自分達は……」
「頼む、自由の聞かぬこの身故、しかし、養子とはいえ女子たる姫を戦場に立たせてしまったこの儂の……せめてもの武士としての誇りを、どうか、戦場に持って行って貰いたいのだ……頼む、この通り」
 布団の上でゆっくりとだが里見義巳が頭を下げる。
 その言葉は2人に、自分の変わりにこの地を、民を、姫を守り、そして敵を討って欲しいと如実に語っていた。
 輝彦の前に差し出された打ち刀、五ツ音の前に差し出された脇差し。
 2人はその刀を……――。 


『秘技――八岐連撃』
 小さな身体ですり抜けて来た零に対し、八限・次郎丸が必殺の連撃を放つ。
 もちろん零もオーラが強化した盾で受けようとするも、次郎丸の刃は右と左、両手それぞれが同時に迫って来ており、どちらが一刀目か零は刹那といえど逡巡してしまい、即座に無敵城塞モードを発動、強引に全ての刃を受ける覚悟を決める。
 ガガッ、ガガガガガガッ!
 流れるように大地に刀を刺しては抜き、斬りつけ、刺しては抜き斬りつけ、と次郎丸の連撃が次々に零に決まる。だが、無敵城塞にてその威力は限りなくゼロに軽減され、逆に零は冷静に連撃の終わりにカウンターを狙い。八連撃目が打たれた瞬間、無敵城塞を解除し――。
『だろうな』
 まるで零の行動を読んでいたように、零より早く次郎丸の無手の拳が顔面に迫る。狙っていたのは零だけでは無かったのだ。
 だが――。

 ドゴッ!!!

 重たい音が鎧を穿つ。
「ですよね」
 まるで次郎丸の行動を読んでいたように零が呟く。
『なん……だと……!?』
 見れば次郎丸の懐に玄信が入り込み、鎧越しに鳩尾へと《灰燼拳》を叩き込んでいた。
「見事なカウンターじゃろう?」
 地に刺した刀を抜き、そう得意げに言う玄信に牽制の一撃を振るうも、ガクリと脚に来る。
 一度距離を取って……そう考えた瞬間、背後に熱量を感じ八重垣を発動。瞬後、背後から24個の炎の弾――コノハの月焔が打ち込まれ、それを八重垣の超反撃にて全て斬り落とす次郎丸。
『時間差か……』
 24個の焔を斬り捨てた所で構えを解き背後のコノハに向き直ろうとし――その声は思ったおり近くからした。
「ァア、オレ1人のな」
 ドシュッと25個目の月焔を握った手が、先ほど玄信にやられ鎧が破壊された鳩尾へと抉り込まれる。
『ぐあああああああっ!』
 鎧の内部から焼かれる痛みに思わず絶叫をあげる次郎丸。
『おのれ……秘技――』
 再び地に刺した6本と左右の手に持つ2本の計八刀による秘技を発動させようと――。
「させん」

 カッ!

 銀光一閃、美月が地を蹴り二刀の刃を振るい、白鞘と黒鞘へ、繊月と司霊を納刀すると同時、

 キキキンッ!!!

 美月が駆け抜けた場所に刺してあった次郎丸の刀のうち4本が一気に両断される。
「これで、その秘技は使えない」
『くっ……!』
「アタシが気に入らないのはね……」
 秘技が封じられても二刀を構え未だ戦う意志を見せる次郎丸に、犬神の兵達と猟兵達による落ち武者狩りたる乱戦の中から、ゆっくり姿を現す霞ノ衣。
「これまでの経緯が、全部姫さんの所為になってる事さ」
『なに?』
「黒道坊のヤツが呪われてるとか言いやがって! 家族や仲間が殺されて危険な目に遭ったのは姫さんだってのに、仕掛けた奴等が指差して『こうなったのはお前の所為だ』と……本当に、気に入らないよ!!!」
 無手の片手を前に突き出し、利き手には肩に担いだ戦刃。そのまま地を蹴る霞ノ衣に対し、二刀で八重垣の構えを取る次郎丸。瞬間、もちろん先に攻撃が届いたのは超反撃状態にある次郎丸の刃だ、突き出された霞ノ衣の手に対して刀を振るい、その手を叩き斬ろうと振り下ろされ――しかし、捨て身で突っ込んでいた霞ノ衣は、その刃をそのまま強引にオーラで包んだ素手で握りそのまま肩を斬らせ肩甲骨で受け止める。
『死ぬ気か!?』
「そんな気はないさ。けどね、この程度の痛み……全部自分のせいだって言われた姫さんに比べりゃ、どうって事無いさ!」
 その叫びは次郎丸へか、すでに倒した黒道坊へか、それとも操られガラス玉のような瞳で美濃姫を見つめる上埜信へか……。
 そのまま動きを止められ回避できない次郎丸に、渾身の戦刃が振るわれ次郎丸の肩口がザックリ斬り裂かれ、右腕がダランと垂れる。
『グオァアァアアア!』
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」
 倒れる霞ノ衣の背後から跳躍して飛び出す影は刀也。次郎丸は残った片方の刀で上段からの刀也の一撃を防ごうとするも――バキンッ!
 刀を両断し次郎丸の額と胸を斬り裂く刀也の刃。
「雲耀の太刀だ。その程度で止められるかよ」
『グッ……ハァ……ハァ……』
 片目も潰れ折れた刀を捨て地に刺したままの2本のうち1本をなんとか掴む次郎丸の前に、その男は立つ。
「どんなに願おうとも叶わないものがある。約束した者との再会も、死した者が生き返る事も、もう二度と届かないものだ……」
 ズザッと引き抜き片手で刃を構える次郎丸の前、夜彦が居合いの構えを取る。
「だからこそ、今を生きる者の願いを叶えたい。それが……過ぎ去った者への手向けだからだ」

 ――我が刃、風の如く――。

 神速の一歩、すれ違うと同時にチンッと鞘へ夜禱を納刀し。
 次の瞬間。
 ゴロリ……。
 次郎丸の首が落ちる。
『おのれ……ここまで、か……兄者よ……お館様のことは……まかせ……』
 首だけになりつつ最後の言葉を語る次郎丸だったが。
「玖篠さん、今です!」
 次郎丸の言葉を遮り燕三が叫ぶ。
「本当に、できるんだろうな! 七星七縛符!」
 迅の手から七星七縛符が飛び死の間際の次郎丸に張り付きその力を封印。
 それは消滅までの本の数秒の合間だった。
 だが、燕三はそのわずかな時間に賭けたのだ。
「施しを、我が呪に従いて!」
 間髪入れずに算術式を飛ばす、その大将は朧によって捕縛されたままの上埜信だ。
「(さて、上手くいくかそれとも……どちらにせよ、わたしの行いもまた道理に外れるモノではありますが……)」


 里見藩主の元を辞して、別部屋にて準備する輝彦と五ツ音。
 お互い刀を受け取ったかの話には触れず、黙々と作業を続ける……。
 ふと、思い出したように五ツ音が。
「敵軍の兵力を犬神藩の友軍に換算すれば総勢で九百、本隊に五百……さらに棺の中の増援を加えれば、確かに犬神藩を壊滅させるに足る兵力でありましょう」
「そりゃ、俺等の事を抜きにすれば、だろう?」
「もちろん、自分達猟兵の戦力を視野から外すのであれば、という前提ではありますが……」
「唐突にどうした?」
 何か言いたいことがあるなら言えと、五ツ音を促す輝彦。
「……狒々堂側も、先のいくつかの戦闘で猟兵の戦力は認識しているはず。にもかかわらず手勢を分散し、敵将が突出して縦深するようなあの戦術は……よほど敵将の戦力に自信があるのか、或いはまるで……」
 そこまで言って自身の回答を心の中で呟く五ツ音。
「(それではまるで……敵将を討ち取るための舞台が、敵軍の手で整えられている、ような……)」
「さぁ、どうだろうな。黒道坊が死後についても言及してたから後々の為に策を仕込んでた可能性はあんだろう……黒道坊が生きてりゃ、棺の中の増援、は十二分に利用されてただろうしな」
 五ツ音の推測を察してか、それとも察しつつ気付かない振りをしているのか輝彦が否定する。
「そうで……ありますな。些か希望的観測に過ぎるであります」
 俯き黙る五ツ音を、チラと見て輝彦は溜息を付く。
「ただ、そう信じたいって言うなら、それは自由なんじゃねーか?」
「……嶋野殿」
 もちろん、それを一番信じるか否かは、ここにいない美濃姫その人なのだろうが……。
 輝彦と五ツ音はふと、遠く空の下の美濃姫の内心を慮るのであった。


 横たわったままの上埜信の様子を見て、燕三がホッと胸を撫で下ろす。
「どうやら、上手くいったようですね」
「どういう事だい?」
「まさか、そんなことが……本当に?」
 同じ術者たる乙来と宵が信じられないと燕三に問う。
「何、敵の首魁の傀儡術が解かれる直前、玖篠さんに強制的に傀儡の術を封印して貰ったのです」
「ああ、ずいぶんと無茶なタイミングだったけどな」
 信じていましたよ、と迅に燕三が笑う。
「せやけど、それでどうして上埜信はんが?」
「そうです。傀儡術を止めたなら上埜信様は元の……戻るはず」
 権左衛門とヴィクトリアが素直な疑問を告げれば。
「ええ、ですから傀儡術が解除された機に、生きて操られている上埜信様へわたしの術を上書きしたのです。もちろん、その為には再び敵の首魁に邪魔されないよう倒した直前であり、かつ上埜信様が暴れないよう朧さんに捕縛しておいて貰ったおかげですが……」
 燕三の言葉に朧――今は紅、が褒められたと照れる。
「ただし、わたしの術もあくまで一時的なものです……それに、上埜信様が声をかけられるのは最も親しいと思っている者に対してのみ、です」
 あとは上埜信様が自然目を覚ますのを待つばかりです、と燕三が告げる。
 プリンセラが姫の背を撫で。
「妾は……」
 戸惑う姫に頷くプリンセラ。
 戦場が沈黙に包まれる中、霞ノ衣は気配を消して後ろの方にいた燕三が何かを懐にしまった手をガッと握るも、僅かに見つめ合い。
「アタシの好みじゃないね……でも、それ以上は何も言わないよ」
 そう言ってその場を離れる霞ノ衣を、どうしたのかと湊偲がついて行く。
 2人が去った後、どこか自嘲気味な表情の燕三の肩を無骨なロボの手が叩く。
「あなたも……何か?」
「別に……」
 肩から手を離し、しかし無言で燕三に並んでレッグも上埜信が目覚めるのを待つ美濃姫を見つめ続けるのだった。

「とりあえず、家族同士の殺し合いは回避できた……俺としてはそれで十分だけどな」
 少し離れた輪の外で刀也が呟けば。
「これも、黒道坊が仕込んでいた種の1つなのでしょうか?」
「さぁ、今となっては……どっちでもいいさ」
 同じく輪の外に居た美月が疑問を口にし、穹がどうでもいいと言い放つ。
「あの、冷たい言い方になってしまいますが、もし上埜信様の意識が戻っても、その後は……」
「そうじゃな、また操られないとも限らぬしのぅ」
 零の言わんとしている事を玄信が引き継ぎ言いにくい事を言えば、「その時はオレがやるっショ」とコノハが月焔の炎を手に言うと、「私も協力致しますよ」とジェフリエイルも賛同する。
 じっと上埜信が目覚めるのを見守る美濃姫の袖を引っ張り、見ればそこにはレイチェルがいた。
「どうしたのじゃ?」
「お姫さまは……わたしをにくんでも、いいんだよ?」
 多野のお城でお姫さまに幕府の意があると責任をおわせたのはわたしだもの……。そう言うレイチェルに、美濃姫は無言でその手を握る。かける言葉は思い付かなかった、だが、その手を離してはいけないと、ただ、そう思ったのだ。
 猟兵が、兵達が、多野の家臣が、そして美濃姫が見守る中、何かを察したように夜彦が告げる。
「姫様は立派になられました。国や人の為に、脅威に負けず向き合っています。どうか……姫様の為に、今を生きる民達の為に、今一度、その目を開き下さい」
「父上……」
 そして、皆が見守る中。
「こ、ここは……」
 元に戻った十石・上埜信が目を覚ますのだった。

 だが、それは永久の別れの前触れ。
 陰陽道の奇跡が見せた、ほんの刹那の邂逅。
 猟兵も、民も、美濃姫も、これが今生の別れになると解った上で……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『燈す日』

POW   :    少し大きめの骨組みで灯篭を作って燈す。

SPD   :    華やかな形をした灯篭を作って燈す。

WIZ   :    高く浮かびやすい灯篭を作って燈す。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●最終章予告

 八刀流のオブリビオン、八限・次郎丸を倒した一行。
 それにより、強引に蘇らされていた十石・上埜信(といし・かずのしん)も、
 元の骸に戻ることに……思ったのもつかの間。

 ある猟兵の機転により上埜信は、
 一時的に元の意識を取り戻し目覚める事に……。

 しかしそれは決して永遠の物では無く、
 今生の別れの前にもたらされた、刹那の奇跡であった。

 故に猟兵達は今生の別れを済ませ、鎮魂の義を行なう。
 もう二度と、敵に利用されないように。
 そしてこれ以降、自分達が前へ進むけじめをつけるために。

 誰もが最後の戦いが近い事を肌で感じつつ、
 この戦いに関わる全ての者が、今一度、
 己の心と向き合うのだった……。

『国に必要な物~滅亡の愛姫~ 其の肆 』

 最終章 鎮魂
高柳・零
親娘の会話を邪魔したくはないので、そっと去ります。
そして、里見様の所へ行きます。

「里見様、失礼ですが血を採らせて頂けませんか?それから、体の症状を出来るだけ詳しく教えてください」
「毒を解析して、可能なら解毒する為です。もちろん、絶対ではないので過度な期待は禁物ですが」
許可をもらえたら医術で採血し(35cc)、症状を詳細に記録します。

血液(15cc)とカルテは、科学や魔法が発展しているSSWとUDCアースとアルダワ魔法学院の研究施設にコネのある猟兵に仲介してもらい送ります。毒の特定と可能なら解毒薬を作ってもらいます。
「1つの国の運命がかかってます。宜しくお願いします」と伝えます。

アドリブ歓迎です


羅賀・乙来
灯篭を作って川に流しに行こう
この行為は死者の魂を弔うものだ
黄泉の国へ迷わず行けるように灯りの標す
亡くなったのは、一人だけじゃないからね
戦いで多くの人が亡くなり、その肉体を利用されてしまった
だからもう二度と利用される事が無いように、命巡り彼の地へ戻れるように
彼等に向けてお祈りをするんだ

美濃姫の父君を一時ながら生き返らせた事、否定もしないが肯定もしない
人は一度与えられたものを再び求めないとは限らない
あの子はまだ若い、寂しさにまた父を求めてしまえば……それは僕達の罪だ
美濃姫が弱い人間ならの話だよ
……寂しさを埋める存在が、此処には居るからね

しかし、感傷に浸る時間も無いようだ
次はきっと、これ以上だろうね


御剣・刀也
POW行動

俺はあんまり器用じゃないんでな。ちょっと大きくなっちまったが、まぁ、それ位大目に見てくれ
とは言え、親は子供より先に逝くもの。最後に会話ができただけでも、救いになるだろうな
俺はまだ親に死なれてないが、それ位は何となくわかる

灯篭を見つつ、自分に問う
まだそんなに人生を生きてるわけでもない俺がそんなことを考えるのは驕りとか傲慢だとか言われそうだがな
それでも問わずにはいられない。俺は嘘をつかないことを信条にしてるが、それを裏切っていないかと
裏切ってるつもりはないが、人によっては嘘つけとなるかもしれない。が、それでも、俺は自分に嘘をついて無いと言える。それさえ無くなったら俺には何も残らんからな


紺屋・霞ノ衣
湊偲(f01703)と参加
二人にさせたいし、姫さんから離れて湊偲と灯篭作りをするよ

善意であれ、此方の都合で親父さんを生き返らせた
それはオブリビオンの奴等と似たような事をしたってことさ
中身も親父さん本人ならいいが、操ってないだろうね

本人だとしても、まだ20にもなってない娘を残して消えちまうんだ
どんなに取り繕っても……未練が無いはずないだろう
もし「消えたくない」と姫さんに言ってたら
アタシ達、どうしたらいいんだ……
それが怖くて、見ていたくなかったんだよ

あーもう、だから考えるのは苦手だよ!
湊偲!素材は用意するから、灯篭100個作りな!
死んだ奴等が眩しがって退散するくらい、この辺ピッカピカにしてやる!


山梨・玄信
わしは親の顔を知らんからのう。
一度だけ見たのは、帝国の幻覚装置に見せられたクソリア充バカップルじゃったし…。もちろん、爆破したが。

親子再開の奇跡は見ずに去り、敵の次の一手を探るのじゃ。
城下、後方と来たら、今度は前線になる国境の近くじゃろうな。
後は移動を制限するために街道に何か仕掛けるかかの。
黒道坊め、この国にどれだけのスパイ網を築いておったんじゃ?

兎に角、国境側の町や村で情報収集を使って怪しい動きや、他所者が何かしてなかったか、変な所で人を見かけなかったか聞きこむぞい。

怪しい情報は逐一他の猟兵に知らせるのじゃ。
情報の共有は大事じゃからの。
わしに出来る事はこれぐらいかの。

アドリブ、絡み歓迎じゃ。


プリンセラ・プリンセス
上埜信を荼毘に付す煙を見上げている。
「私は美濃姫のようにできるのでしょうか……」
死人が蘇るということの事実をまざまざと見せられた。
決して他人事ではない。亡国の姫、そして復興を誓う姫として立場は同じ。
美濃姫には(人格は違うとはいえ)随分と偉そうなことを言ったが自分にできる自信は未だ無い。
なにせ未だに悪夢を見ては泣くのだ。
他人格(兄姉)に言えば厳しい答えも優しい答えも返ってくるだろう。
けどそれではおそらくダメなのだ。
アンヘルとの戦いの記憶が甦る。あのような目にはもう二度とは。
「強く、ならないと……!」
精神的にも肉体的にも、強く。
だからまずは美濃姫を救おう。一歩ずつ目の前から。 


月舘・夜彦
姫様からは離れて見守ります
これが本当の最後の別れ
本来為し得ない事なのですから姫様も父君に伝えたい事が沢山あるはず
二人にさせてあげましょう

生を受けた時点で死は決まろうとも零れそうなものに手を伸ばす
その時の死を遠ざけただけで、今生きる者の大半は先に逝くというのに
人と関わる程、別れは惜しくなるというのに
それでも私は……


姫様にお願いがございます
この先の戦いは今以上に過酷なものとなるでしょう
その為、私に金打の機会をください
金打とは武士の誓い
女性は鏡を打ち合わせ、子供は指切り……言わば約束
多野の者達が再び故郷の土を踏めるように
犬神の地に再び平穏を取り戻せるように
そして、貴女を護る為に
此の刃を振るいましょう


玖篠・迅
とりあえず一息つける状態にはなったんだよな…

笹野さんの取り乱しようすごかったし、落ち着けてるか気になるから様子見に行くな
あと送り火のかわりを頼んだ朱鳥たちをできれば寺島さんに預けて、いったん城下に戻る
寺島さんなら朱鳥預けても安心だし、犬神藩主さんの毒を月白でなんとかできないか試したい
俺が安心したい気持ちもあるけど、毒でしんどいと笑う余裕もなさそうだし、慕ってる家臣の人もそんな姿見るのも辛くなりそうっていうのと
……会えなくなるのは寂しいからなあ

吉田さんも毒に侵されてないか気になるから、改めて様子見に行って解毒必要ならがんばるな


越喜来・湊偲
霞ノ衣姐さん(f01050)と参加
姐さん追っかけて、灯篭作りしようかなって思います

俺も姐さんの気持ちは分かります
そりゃ、俺だって生き返ったら贅沢な飯食ったり友達に挨拶したり
やり残した事やりたいけど、割り切れるのかなって
でも姫さんも親父さんも話せないままなのも辛いって思うんです
やっぱり家族には会いたいでしょうから
それに姫さんは強い人だから、きっと立ち直れるっすよ
寂しくても俺達が居るし、親父さんも安心するんじゃないかなぁ

うぇぇぇ、灯篭100個ですか!?そんなに作ってたら夜明けちゃいますよ
まぁ……死んだ人達を弔う為ってなら、頑張りますけど……
わかりました、素材はちゃんと調達してきて来てくださいよ!


ジェフリエイル・ロディタ
この機会が良いものとなるように僕は祈ろう。

そして今後の僕の光と演奏が一段と輝くために、
元領主様が誰かに向ける言葉をきいて、
振る舞いを見守らせて貰おうじゃないか。
必要なら距離はあけるけど帰らないぞ僕は。
……何せ僕の故郷には珍しいタイプの方だろうからね。
お姫様といい里見様といい。
この世界に来れて良かった、
と思うのはもう少し先にとっておこうかな。

奏でるのはシンフォニック・キュアの鎮魂歌。
余韻の穏やかな輝きの邪魔になりそうなら、
人がいない時間帯に、見聞きした内容も取り入れて奏で歌う。
これまで頑張った人も、これからも頑張る人もよく眠れるように。
その輝きが温かく穏やかに広がって、未来へ繋がりますように。


吹鳴管・五ツ音
上埜信殿の再びの死を知ったなら、葬送の譜を一度、吹鳴します。
彼の方の真意を知る術は、自分にはありませんけれど。
旅立つ方も、送り出す皆さんも、等しく、その死と向き合うことができるよう。
その死の先へ、進むことが出来るように。


……自分は、ただ一介の軍人、ただ一ヶの軍楽器であります。

里見殿の代わりが務まるとは、とても……

……けれど。
ええ、ただ一ヶの吹鳴管でありますから。
吹き込まれた息吹は、魂は、きっと、我が五音にて戦場に響かせましょう。

然る後には、凱旋行進の吹鳴を添えてお返しいたしますので。
里見殿は安らけく朗報をお待ち下さい。

…我が身の呪詛が、里見殿の魂までも戦場に縛りつけるわけには、いきませんから。


御代・燕三
猟兵の皆様は姫様に助言し、寄り添い、共に戦い、生き方を支えてきました。今宵もまた自らを見つめなおし、どう生きるか、この戦いにどう関わるべきか決めているのでしょう。
わたしは、果たして姫様を助けたくて共に居るのでしょうか? わたしの術によって踊る姫様を見たいだけでは? 答えはこの先に……。

もう良いのですか? 美濃姫様、あなたがお望みであれば上埜信様と共に復興を目指すことも出来ますよ。
辛い時,哀しい時、嬉しい時、いつか祝言のお言葉を頂けるかもしれません。常にお傍に居てくださるようなことも、陰陽術で実現できます(虚偽含む)

UC「算術式:慈善の章」を利用。
姫様の決断はどうあれ術は解除します(更新しない)


レイチェル・ケイトリン
お姫さまがにぎってくれた手。
でも、ごめんなさい。わたしはここにいられない。

里見さんのとこにいって念動力と医術の技能で念動力生体形成を発動するよ。

毒でよわっちゃった器官や組織をつくって移植するの。

念動力は消毒なんかいらずに物自体をうごかせる力。
医術の知識もつかって切開や止血とかできるよ。


ほかの猟兵さんはいいよ。
でもわたしはお姫さまによりそえない。

お姫さまに幕府の意があると言ったわたしがちかづきすぎちゃうのはお姫さまの立場をゆるがすもの。

「民のため」、それだけがお姫さまといっしょにいられる理由。

「なんとかします」、わたしはその約束、まもれない。
だからお姫さまのもう一人のおとうさんだけはたすけるの。


桐・権左衛門
ヴィクトリア(f00408)と共に行動

父親か…普段の美濃ちゃんを見てるけどええ親父さんやったんやろうね
親の死に目に立ち会えへんのも辛いやろしな
反面ウチの親父なんか権左衛門とか名前テケトーに付けるわ、酒飲みやわ、碌な事あらんかったけど…
親は親やしなぁ湿っぽいのは苦手やから煙管で一服してこよか

どっちにしても墓はつくったらなアカンなぁ

里見義巳はんの毒のお見舞いにでもいったろかな?
宿場町『川上』で知り合うた商人たちなら解毒薬や滋養強壮に効く薬とかもあるやろし

こんな時やからこそ【第六感2】【情報収集2】【鼓舞1】で里見はんや家臣達、商人、町人に色々聞いてみよ、ヴィクトリアや他の皆がおるし美濃ちゃんは安心


ヴィクトリア・アイニッヒ
権左衛門(f04963)と行動。
ゴンちゃんさんは…そうですか。では、私は姫様の方に付いていますね?

父子の愛、絆。尊く美しい物ですが…これが最期の時なのだと思うと、哀しくなってしまいますね。
だからこそ、思う存分お二人の時を過ごさせてあげたいのは山々なのですが…万が一、という事態もありえます。
姫様のお側に侍り、お守りすることを、お許しください。

二人の時間を見届けた後は、犠牲となった者達の安息を祈りましょう。
そして祈りの後は、決意を新たに前を向きましょう。
…故郷と家族を守らんとした、誇り高き志。その勇士達の死後の安息を踏み躙った者達。
我が主に成り代わって。その悪意、必ず祓ってみせます。


嶋野・輝彦
●姫様に合流
刀についちゃ
殿様の思い確かに戦場に持って行こう
でもよ俺みたいなのが「真っ当な人間の心」って奴を預かってんのは落ち着かねーわ
終わらてさっさと返すぞ

犬神の連中に
猟兵はよくわからん力使える奴も多い
殿様が治る可能性も0じゃねぇ
殿様に事ありゃ姫様はまた自分のせいでって言うだろ?
だから事あらばどんな手を使っても殿様生かせ

で兵士達に
恫喝、コミュ力、存在感、殺気
敵は化けモンだ!お前らなんざクソの役にも立たん!
人の戦も俺は自分が手を汚さない所にいる気はねぇ
だからお前ら使い所がねぇんだよ
肉壁にしかならん
今日死ぬと決めた奴だけ付いて来い

これで少しは兵を残せるか?
ここが殿様の言葉を違えないギリギリだろうな


涼風・穹
湿っぽいのは好きじゃないし、俺がいて姫さんの役に立てる状況でもないので犬神藩藩主さんの所へ勝利の報告をしにいく
それと『スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ』で飛ばすなり何らかの方法で24時間以内に藩主さんの所へ行けるのなら予め姫さんを対象に『影の追跡者の召喚』を使用
俺と影の追跡者は五感を共有出来るのなら、一方通行ではあるけど俺を介して十石上埜信からの言葉を藩主さんへ伝えられる筈だ

後は犬神藩の御殿医にでも藩主さんの症状をどうにか出来るようなものが本当に何もないのか確認しておく
それこそどこのどんなものであろうと俺が取ってきてやる
姫さんに立て続けに二人の父親と死別させるってのはあんまりだしな


レッグ・ワート
……、生体は大変だな。いや悪い意味じゃなくて。

相槌だけでも何かしらため込まずに済むような奴いたら近く行くわ。要は只居るか話聞くだけ。爆発も力になるだろうが、その手の勢いは切れた時怖いし。思い出話でもブレストでも何でもどうぞだ。鎮魂が何だかは今一つわからんが、いた方が良けりゃ参加するぜ。

心配ない時は、城下町の片づけや修繕を怪力やロープワークで手伝う。とは言えこの世界トンチキ建築できるんだっけか。まあ仕切る奴がいるなら従うし、いなけりゃ効率諸々演算かけて提案しながら作業する。複製鉄骨で工事の足場組んだりも出来るしな。

俺の仕事はいつだって逃がす事とその助けだ。拡大解釈込みで、確認なんて今更今更。


逢坂・宵
……お父上が……
僕が姫さまにかける言葉は、今は持ち合わせておりません
ですから……姫さまのなさりたいように、されるのがよろしいでしょう。

灯篭、ですか
サムライエンパイアは僕の故郷ですから、こういう風習は知っていましたが
実際にこの手でするのは初めてですね
……お父上が今度こそ死を侮辱され、操られることのないよう
祈りを込めて、星の灯篭を流しましょう

そして、この間覚えた横笛で
鎮魂の曲を流しましょう
お父上が永劫の安寧に在れるように
ひとの生はめぐり、めぐり
輪廻となって、また世に生まれ落ちます
そのときは、乱世のない世界になっているとよいですね
不肖この僕、姫さまのためにお力になることを、いま再び誓いましょう


コノハ・ライゼ
万一が起きてもイイように
全てが済むまですぐに手を出し対処できる位置で待つ
コレでも死霊の使い手の端くれ、何かあればすぐ気付ける筈

儀に自ら加わりはしないが、手伝いが要れば手を貸すさ
悲しい想いしてるヒトらが無理に動くこたぁないでしょ

失う意味が分からぬ訳でも感情を持たぬ訳でも無いけれど
死したモノへ揺らぐ想いはきっと何処かに失くしてしまった
分からずして受けて立つなど、笑い種だろうが

灯篭が燈ればそれを何処か高い場所から眺める
綺麗だねぇ
それが何の為であっても
目に映る確かなモノの方がずっと分かり易い

(アドリブ等歓迎)




 上埜信が目覚めた時、猟兵達のその殆どが取った行動は同じだった。
 美濃姫と上埜信の邪魔をしない……。
 もちろん、それぞれその場を離れた根幹たる理由は違っていたのだが、それでも結果だけ見れば同じだったのだ。
 そして……ーー。
 犬神藩藩主の里見義巳より『藩の兵力が集まり次第送るので、それまで陣を張って待機しておいて欲しい』と早馬が来た事もあり、美濃姫が率いていた本隊は橋を落とした川の近くにて一時的に陣を張って待機する事となり、後続の兵が合流するまでの時間、美濃姫達は八刀流の八限・次郎丸に操られていた多野の侍達を灯籠を作って弔う事にし……。

「おっと、零殿も死者の鎮魂には参加なさらぬかの?」
「はい、自分は今のうちに城下に戻って里見様を診断できたらって……。あれ? 玄信さんも参加しないのですか?」
「うむ、親子再会の奇跡は悪いことでは無いが、わしは親の顔を知らんからのぅ。どういった顔でその場におれば良いのかわからんのじゃ」
 神妙な顔であごを撫でつつ山梨・玄信が言う。正直、玄信としては帝国の幻覚装置によってクソリア充バカップルを見せられた事があり、それが唯一見た親だとは……信じたくは無い。無論、その時も爆破したが……。
 さらに神妙になる玄信の表情に、高柳・零は「(よほど複雑なんですね)」と勝手に勘違いし。
「それでは、自分は行きますね」
「うむ、すぐに戦いは再開するじゃろう。その時、また」
「はい」
 そうして零は犬神の城下へ、そして玄信はその真逆の方向へ、去って行くのだった……。


 すでに陣は完成し、犬神藩の兵は思い思いに休憩している。
 また、多野藩の家臣であった笹野・寺島の両名を中心に死者を送る灯籠の作成準備も着々と進んでいた。
 そんな人々の誰にも協力する事無く、美濃姫や上埜信が視界にはいる場所で佇むは一時的にせよ死者たる上埜信を生き返らせた張本人、御代・燕三だった。
「あんた、1つだけ聞かせな」
 剣呑な雰囲気を纏って声をかけて来たのは紺屋・霞ノ衣。その後ろには少しおろおろしている霞ノ衣の弟分、越喜来・湊偲もいる。
「わたしに答えられる事でしたら」
 その空気に気付かない振りをし青い陰陽服の男が振り返ると。
 羅刹の女はガッとその胸元を掴み、顔を近づけ。
「あの親父さん……あんたが『操って』は、いないだろうね」
「姐さん!」
 慌てて湊偲が霞ノ衣を引きはがそうとするも、燕三はなんとも思わないような表情で。
「あなたは、何と答えればわたしの言葉を信じてくれますか?」
「っ!!!」
「そういう事です。わたしの言葉が信じられないのなら、わたしの答えは意味がありません」
「あんたが……例え善意であれ、此方の都合で親父さんを生き返らせたのは変わりない。それは、オブリビオンの奴等と似たような事をしたってことを、あんたはわかってるんだろうね!」
「姐さん!」
 多少本気で湊偲が力を入れ、なんとか霞ノ衣を燕三より引きはがす。
 燕三は乱れた胸元を直しつつ。
「怒らせるような物言いになってしまった事は謝罪致します」
 そう言って頭を下げる燕三の横に、スタッと降り立つように現れたのは蚕のような触角を生やした白い陰陽服の男、羅賀・乙来だ。
「家臣の方が僕たちを呼んでる。来れるかい?」
「……ええ、行きましょう」
 そう言って陰陽師2人が見せた背に、霞ノ衣が苛立ちを隠そうともせず2人とは違う方向に歩き出す。
「湊偲! アタシ達も行くよ」
「え、何しにっすか?」
「灯篭作りに決まってるだろう!」
 湊偲は勢い良く姐に返事し、小走りにその背を追うのだった。

 霞ノ衣と湊偲の2人から離れてより、乙来は燕三に言う。
「美濃姫の父君を一時ながら生き返らせた事、僕は否定もしないが肯定もしない」
「………………家臣が、というのは嘘ですか」
「次はきっと、これ以上の戦になるだろう……感傷に浸る時間も無いぐらいに、ね。だから今、仲間同士で剣呑な空気になっている暇は無い」
「一応、感謝致しますよ」
「そこまでの事をした覚えは無いよ……ただ、僕たちみたいのは勘違いされやすいからね」
 そう言う乙来の声はどこか寂しげだったが、その表情から何かを読み取る事はできそうになかった。もちろん、燕三に読み取る気があれば……だが。
「まったく……生体は大変だな。いや悪い意味じゃなくて、だぞ」
 そんな2人の陰陽師によぅと手を上げて声を掛けてきたのは、身長2m半のウォーマシン、レッグ・ワートだった。
「それは、わたしに対しての言葉ですか? それとも……」
 燕三が足を止め、ちょうどそこから遠目に見える位置にいた美濃姫と上埜信を見つめ、言う。
「どっちも、だ。俺は元々敵側の量産機でな、鹵獲され改造されて今がある。お前が復活させたお姫様の父親と似たようなもんだ。悩む気持が理解し難いんでな」
 幸か不幸か、それは生きてきた世界が、時代が、その認識の差を生むのかもしれない。だが、だからと言ってその誰もが解り合えないわけでもない。
「話ぐらいは聞くぞ。思い出話でも、ブレストでも、何でも構わん」
 燕三が溜息を付き、乙来がフッと微笑む。
 理解し難い……生きてきた世界が違うから解り合えない……それはそうだ。だが、見た目も過去も何一つ共通点の無い目の前のウォーマシンが、それでもこうやって多種多様な仲間といられる訳を、2人の陰陽師はなんとなく感じ取る。そしてそれが、中々難しい生き方なのも……。
「自然、でそれな事には尊敬しますよ」
 乙来が言い、燕三も空を仰ぎ、どこか遠くに語りかけるよう自身の心の声を吐露する。
「猟兵の皆様は、姫様に助言し、寄り添い、共に戦い、生き方を支えてきました……此度もまた自らを見つめ直し、どう生きるか、この戦いにどう関わるべきか決めるのでしょう」
 乙来もレッグも黙って燕三の本音に耳を傾ける。
「わたしは果たして、姫様を助けたくて共にに居るのでしょうか?」
 燕三の問いに、残りの2人は返事も相槌も打たない。
 燕三は空から視線を下ろし、遠く美濃姫を見つめ。
「それとも、わたしの術によって踊る姫様を見たいだけでは?」
 兵達の声も、川のせせらぎも、陣を通り抜ける風の音すら聞こえないかのように。
 やがて、自問自答を繰り返す燕三の傍から乙来は音も無くいなくなり、レッグも大きな手で燕三の方をぽんぽんと叩いて無言のままいなくなる。
 ただ1人となった燕三は意を決するように歩き出す。
「(その答えは……この先に……)」


 川縁の大きめの石に腰掛け、プカプカと煙管で一服しつつ父親の側にいる美濃姫を遠目で見るは花魁のような着物を着崩した桐・権左衛門だった。
「父親……か。普段の美濃ちゃんを見てるけど……ええ親父さんやったんやろうね」
「そうですね……ゴンちゃんさんのお父様は、違ったのですか?」
 すぐ側で同じように美濃姫を見ていたヴィクトリア・アイニッヒが、権左衛門の言葉に自嘲気味な物を感じ取って聞いてみると、権左衛門は一息大きく吸ってから長く煙を吐き。
「まあ、権左衛門とか名前テケトーに付けるわ、酒飲みやわ、正直……碌な事あらんかったけど……親は親やしなぁ」
 何かを思い出すように空を見上げる。
 それに吊られるようヴィクトリアも空を見上げ。
「父子の愛、絆……尊く美しい物ですが、これが最後の時なのだと思うと哀しくなってしまいますね……」
「せやけど、親の死に目に立ち会えへんのも辛いやろしな……これで、良かったのかもしれへん」
 そう言うとカカンッと煙管の火を落とすと立ち上がり。
「ウチ、少しばかり出てくるわ。美濃ちゃんの事は頼むで」
「……そうですか。では、私は姫様の方についていますね」
 それ以上は語らず、権左衛門はふらふらと陣を抜けどこぞへと去って行った。
 もちろん戦が始まる頃には戻ってくるだろうし、ヴィクトリアには権左衛門がただ遊びに行ったわけではないという確信もあった。だが、姫様が父親と再開しているのを見ていられなかったのも……と思いつつ、それ以上の詮索は頭から追い出す事にする。
 そしてヴィクトリアは自分に言い聞かせるようーー。
「思う存分お二人の時を過ごさせてあげたいのは山々なのですが……万が一、という事態もありえます」
 と呟くと、美濃姫と上埜信の元へと護衛に向かうのだった。

 忙しく灯籠の準備の指揮を取っている多野藩の家臣たる笹野の爺さんに「いいのか、あっちで一緒にいなくて」と、美濃姫と上埜信の方を目で差しながら言うは玖篠・迅だった。
「おお、玖篠殿。いやいや儂は御館様の出陣時に後を任せたと言われておりますからな。あの言葉を頂いた以上、今さら御館様の心を煩わせるわけには参らぬ」
「そうか」
「はは、それは笹野殿の強がりよ。先の戦いで敵側に御館様の姿を見た時の笹野殿の取り乱しと言ったら……それこそ御館様の心を煩わせるほどの乱れっぷりでーー」
「なんじゃと! 寺島! そこに直らんか!」
「ははっ! これは失言、申し訳ありません。自分も御館様の心労とならぬよう、お声がけはいたしませぬ故」
「う、ううむ」
 同じく多野家の家臣たる寺島が来て笹野をからかうが、それは本当なら上埜信と話したい笹野の心の内を思っての事だろうと、短い付き合いながらも迅は理解でき。
「はは、とりあえず笹野さんも落ち着いたみたいで良かったよ。それじゃあ寺島さん、こいつらをお願いできるかな」
「これは?」
 迅が寺島に託すは送り火の変わりを頼んだ朱鳥たちだった。後で死者を送る際に使って欲しいと言われれば、寺島も「承知した」と快諾する。
「しかし、玖篠殿はどこかに出かけるのですかな?」
 笹野に言われて迅は。
「いったん城下に戻ろうかと思うんだ。犬神藩主さんの毒を、なんとかできないかって思ってさ」
「里見様の毒を……そんな事が?」
 寺島が驚いて聞き返す。
「解らないけどね? でも、毒でしんどいと笑う余裕もなさそうだし、慕ってる家臣の人もそんな姿を見るのは辛いって思うんだ。まして……会えなくなったら、寂しいからさ」
「それは……是非とも治せると良いですな」
「ま、俺が安心したいって気持ちもあるんだけどさ」
 そう照れ隠しに笑うと、笹野と寺島が「頼みましたぞ」「こちらはお任せ下され」と迅を送り出すのだった……。


『美濃、お前がそのような恰好をするとは……知らぬ間におてんばになって』
「妾にもいろいろあったのじゃよ、父上」
『そうか……そうかも知れぬな。しかし、今年の正月にはその母親譲りの公家口調を直そうと思っておったのだが、やれやれ、その分だと笹野は何も言わなかったと見える』
「なんじゃ、父上。そんな事を考えておったのかえ!?」
 目を覚ました十石・上埜信(といし・かずのしん)と楽しそうに話す美濃姫の側には、もしもの時に治癒のできるジェフリエイル・ロディタが上埜信の背後に、美濃姫の護衛役としてヴィクトリア・アイニッヒが姫の背後に控え、2人のどちらに何があっても対応できる位置にコノハ・ライゼが見守っており、そして……それ以外の猟兵達はこの場にいなかった。
 できるだけ最低人数に絞り、姫と父親が2人でゆっくり話せるよう気を遣った……そういう猟兵が多かったのだ。護衛に残ったヴィクトリアですら「万が一のため姫様のお側に侍り、お守りすることをお許し下さい」と、会話中は邪魔をしないので、と念を押し先に美濃姫に断りを入れる程だったから……。
 だが、上埜信の背後に控えるジェフリエイルだけは違っていた。
「(この機会が良いものとなるように僕は祈ろう。そして今後の僕の光と演奏が一段と輝く為に元領主様が誰かに向ける言葉を聞いて、その振る舞いを見守らせて貰おうじゃないか……何せ僕の故郷には珍しいタイプの方だろうからね)」
 と、もちろん必要なら2人との距離は開けるつもりだったが、この治癒役の位置は譲るつもりはなかった。
 今、2人の猟兵の目の前で美濃姫と上埜信はたわいの無い親子の会話を続けていた、しっかりご飯は食べているのか? 毎夜眠る事はできているか? 健康には気を遣っているのか? 生き残った家臣達はどうか? 多野の地は? 民は……? そして、今もお前は元気でいるか? と。
 美濃姫はそれに正直に答え、まるで生前のように、いや生前より多弁なぐらいに父親へと声を掛ける。
 そんな2人の様子を見て、コノハは自身の懸念が杞憂で終わりそうだと感じつつも、油断だけはしないよう緊張の糸を切らさず見守り続ける。
 死霊使いの端くれたるコノハは、上埜信に何かあればすぐに気づける自信もあり、彼に万一が起こった場合に手を出せる位置にて待機していたのだ。だが、どうやら燕三の術は完璧に敵が使った術式を上書きし、本当の上埜信の意識を維持させているようだった。
「(コレなら大丈夫そうだネ……)」
 父親と娘の会話は続き、ちょっと見ない間に美濃姫が父親たる自分の知らない知識や経験を得ている事に、どこか嬉しいような悲しいような表情を見せる上埜信が。
『……もう、私の知っている美濃では、無いのかもしれぬな』
 我が娘が成長したのだと気付き微笑み。
「うむ! 妾に、たくさんの人が協力してくれて、仲間になってくれて、友達もーー」
 そう言った所で自分と同い年ぐらいの猟兵の少女を幾人と思い浮かべ、チクリ、と胸が痛む。結局、レイチェル・ケイトリンは自分の握る手をふりほどきどこかへと行ってしまった。彼女を友人だと思っていたのは……。
『どうした、美濃?』
「え、いいえ、なんでも……ないのじゃ」
 父親の問いかけに心配させまいと笑顔で返す。
 燕三は上埜信が意識を留められるのは仮初めの一瞬だと言った。
 ならば、父上にはせめて心配掛けず喜んで貰ったまま……ーー。
「そうじゃ父上! 雪で遊具が作れるのをご存じかぇ!?」
『雪で遊具とな?』
「うむ♪ なんと大きな雪の山をソリ板で滑り降りるのじゃが、それがもうーー」
 嬉しそうにはしゃぐ美濃姫の話を、今度は上埜信が笑顔で聞き始める。
「(お姫様といい里見様といい。このような光景を見れるのなら……僕はこの世界に来れて良かった……いや、そう思うのはもう少し先にとっておこうかな。まだまだきっと、僕の知らない光景が……)」
 当初の思いはどこへやら、微笑ましい2人の親子に心が暖められるかのようにジェフリエイルは思う。今は2月、いつ雪が降っても可笑しくない季節だと言うのに。


 灯籠造りを行っている場へ、自分たちも作るからと混じっていった霞ノ衣と湊偲だったが、遠くで語り合っている美濃姫と上埜信をチラリと見ては、見てられないとばかりに霞ノ衣が視線を外す。
「姐さん……」
「親父さんが本人だったとしても、まだ二十歳にもなってない娘を残して消えちまうんだ……どんなに取り繕っても、未練が無いはずないだろう!?」
「姐さん……俺も姐さんの気持ちは分かります。そりゃ、俺だって生き返ったら贅沢な飯食ったり友達に挨拶したり、やり残した事やりたいけど、割り切れるのかなって……でも、姫さんも親父さんも話せないままなのも辛いって思うんです。やっぱり家族には会いたいでしょうから」
 優しげに遠くの美濃姫と上埜信を見つめつつ湊偲が言う。だが、霞ノ衣は「そういう事を言ってるんじゃない」と苦虫を噛みつぶしたような顔で吐き。
「もし『消えたくない』と親父さんが姫さんに言ってたらどうすんだい?」
「それは……」
「そんな事になったら、アタシ達はどうしたらいいんだよ……アタシは、それが怖くて、見ていられなかったんだよ」
 自分が思っていた以上に姐は先を、美濃姫と上埜信の事を想いやっていたのだと気づき、叶わない……と思いつつ、しかし自分から見た姫様の印象から、それは違うんじゃ……と思い、思わずそれが口に出る。
「それは……違うんじゃないっすか」
「なんだって」
 かなり険悪な空気で睨んでくる霞ノ衣だが、湊偲はそちらを見ず姫と父親を見つめたまま……。
「俺が知ってる姫さんは強い人だから、きっと立ち直れるっすよ。姐さんは姫さんに対して甘いっすから」
「アタシが……姫さんに、甘い?」
 キョトンとした顔の姐に「気付いてなかったんすか?」と驚き返す湊偲。
「まあ、それに……姫さんがいくら寂しくても、俺達が居るじゃないっすか。だからあの親父さんも、安心するんじゃないかなぁって、俺は思うっす」
 湊偲の言葉に、今度は目を逸らさず美濃姫と上埜信を見つめる霞ノ衣。
 やがて、ばりばりと頭を掻くと。
「あーもう、だから考えるのは苦手だよ! 湊偲! 素材は用意するから灯篭百個作りな!」
 突然の無茶振りに。
「うぇぇぇ、灯篭百個ですか!? そんなに作ってたら夜明けちゃいますよ!?」
 湊偲が全力で拒否しようとするも。
「うるさいね! 死んだ奴等が眩しがって退散するくらい、この辺ピッカピカにしてやるんだよ!」
「ま、まぁ……死んだ人達を弔う為ってなら、頑張りますけど……」
 文句があるのか、と睨んでくる姐に、湊偲は意を決し。
「わかりました! わかりましたよ! 素材はちゃんと調達してきて来てくださいよ!」
 そうして2人は騒がしくしつつ灯籠を作る兵達に混じり、大量の送り灯籠を作成したのであった……。


 犬神藩の城下町とその近隣から集まった兵はすでに美濃姫と共に前線にいるが、遺りの犬神藩の兵約1000名は後から増援として送られる事になっていた。
 その内、すでに集まった半数は、里見藩主より脇差を預かった吹鳴管・五ツ音が率いてすでに出発しており、残った半数について後で藩主より打ち刀を預かった嶋野・輝彦が率いる事になっていた。
 しかし、残り半数はまだ完全に集まっておらず、輝彦は未だ犬神の城下町で足踏み状態となっており、なんともならない居心地の悪さに藩主のいる武家屋敷内をウロウロしていた。
「(刀についちゃ、殿さまの想いだ……確かに戦場には持っていくさ。でもよ、俺みたいなのが『真っ当な人間の心』ってやつを預かってんのは……やっぱ、落ち着かねーわ)」
 さっさと終わらせて返却しよう、そう心のなかで何度目かの誓いを立てる輝彦。
 いつの間にか屋敷を警備する侍達の休憩所に近づいていたのか、警護の者達の声が聞こえてくる。
「しかし、このままじゃお館様は……そうなったらどうなっちまうんだ?」
「おい、めったな事言うんじゃない。まだ死ぬって決まったわけじゃないだろうが」
「でもよぉ……」
 どうやら里見藩主の病床を心配してようだが……。
 面倒なので聴かなかった事にして去ろうとする輝彦だったが、カチャリと預かっている打ち刀が鳴り、渋い顔で脚を止めると踵を返す。そして――。
「おい、犬神の侍ども」
「こ、これは猟兵の……嶋野殿!?」
 休憩所に顔を出す輝彦、休んでいた侍達がバッと立ち上がり姿勢を正す。
「1つだけ言っておく。猟兵の中にはよくわからん力使える奴が多い。その力を持ってすれば、殿様が治る可能性もゼロじゃねぇ」
「そ、それは本当でござるか!?」
「や、やった!」
 パアアっと喜びだす侍達に、まだ確実にそうなるって解ったわけじゃねー、と釘を刺しつつ。
「だが、殿様に事がありゃ、美濃の姫様は『また自分のせいで』って思うだろう? 俺はそれが気に食わねぇんだ。……だから、お前らに言っておく。殿様を生かせ! どんな手を使ってでも、だ!」
 輝彦の剣幕にびびる者もいくらか居たが、それでも大多数が共感する部分があったか――。
「無論、言われるまでも無く!」
 と異口同音に返事をするのだった。

「里見様、失礼ですが血を採らせて頂けませんか?」
 急ぎ犬神藩の城下町へと戻って来ては、藩主がいる武家屋敷に飛び込み里見・義巳(さとみ・よしみ)に開口一番そう言うはテレビウムの零だった。
「高柳殿、それはいったいどういう……?」
 猟兵達に理解ある犬神の家臣が零に問う。
「毒を解析して、可能なら解毒する為です。もちろん、絶対ではないので過度な期待は禁物ですが……」
「なんと!?」
「あ、それから、身体の症状をできるだけ詳しく教えて下さい」
「お館様……」
 どうするべきか里見義巳に判断を家臣が仰げば、藩主は布団から上半身を起こし。
「構わぬ……猟兵殿が言う事だ、何かしら手があるのだろう」
「では……」
 そうして零がカルテを医術の知識から作成していると、新しく猟兵が到着したと案内されて来たのは迅とレイチェルだった。
「里見さん、だいじょうぶ?」
「これはレイチェルさん……うーん、なんといえば良いか……」
 歯切れの悪い零をどかすように、里見の布団の横に迅が立ち。
「頼む」
 言うと同時、懐から取り出した式札が真っ白な鳥と変化しトプンと水面に落ちるかのように、里見の身体の中へと落下し消える。
「今のは?」
「毒や病を癒す式だ……これで良くなるはずだぜ?」
 迅が自信満々に言うが、里見の身体に融け込んだ白い鳥は、1分も経たずと再び里見の身体から飛び出し迅の肩に止まると、やがて式札へと戻ってしまう。
「もう……なおった、の?」
 レイチェルの言葉に迅が不審げな顔をする。
「いや、治ったというか……毒が、無かったみたいなんだけが……?」
「やっぱり!」
 迅の言葉に自信の推測に確信を得た零が叫ぶ。
「実は自分が診察した結果も、毒の効果は無くなっているんじゃって思ってたんです。よかった、誤診じゃなくって……」
「念のためだ。あの時一緒に怪我してた吉田さんはいるかな? というか吉田さんは毒にやられてないの?」
 迅の言葉に金山奉行の吉田がやってくるも……。
「この吉田鋼、敵の刃に毒が塗ってなかったのか、運良く生き永らえておる」
 と、斬られた部分の包帯こそしているが、どうやら毒による症状は出ていないらしい。一応、迅が念のために《月白》を発動させ、再び白い鳥となった式札が吉田の身体を調べるも、やはりそこから毒は見つけられなかった。
「やっぱり毒は無いか」
「と、すると……」
 勝手に納得する猟兵に対し、全てを見ていた犬神藩の家臣が「どういう事です?」と聞くと。
「つまり、里見様の体内に毒はもう無い、という事です」
 零がそう結論を伝える。
 もちろん、敵の刃には毒が塗られていたのは間違いない。ただ、その毒はオブリビオン特有の物で、オブリビオン本人が消滅した事で、毒もまた消滅したと考えられる……と里見義巳に説明する零。
 零は解毒の為、本当は採血した血を別の化学や魔法の発達した世界にある研究施設に送り、コネのある猟兵を仲介しつつ、毒の特定と解毒薬の作成を依頼するつもりだった。しかし、その当の毒が無いのでは……。
「だが、実際にわしの身は……」
「たぶんですが、敵の攻撃で付けられた傷から破傷風になったか、それとも、いろいろガタが来ていた所に傷を受けて、気力・体力の緊張の糸が切れて一気に体調を悪化させたか……」
「すこし、失礼するよ」
 レイチェルが里見藩主に向かって手を向けると、念動力で誰に触られる事なくスルスルと上半身に巻かれた包帯が剥ぎ取られ、未だジクジクとした傷口が露わになる。
「とりあえず、傷口をなおすよ」
 レイチェルが集中すると念動力と医術の技能にて傷口の中で壊死した部分を取り除き、取り除いた部分は《念動力生体形成》によって里見義巳の血から作り出した器官や組織を使って代用、針も糸も無く念動力で縫合し再生させて行く……。
「とりもどすことはできない……でも、あたらしくつくることはできるから」
 そうして、里見義巳を蝕む原因は全て取り除かれたのだった……。

「犬神の藩主さん、国境より南下して来た狒々堂藩の兵達は、美濃姫率いる本隊がみごと撃破したぜ。そして今は後続の部隊と合流する為、川の近くにて陣を張って待機中だ」
 少しだけ元気になり、しかし未だに布団に上半身を起こした状態で話を聞く里見藩主に、ちょうど伝連役として報告に来た穹が告げる。
「そうか……猟兵であるお前達は八面六臂の活躍だったのだろうな」
「いや、皆の活躍があってこそさ」
 そう伝えつつ、本当なら一時的に復活した上埜信の言葉を伝えたかったのだけどな……と少し悔しそうに思う穹。
 実は上埜信に問いかけて見たのだが、上埜信は美濃姫の問いかけには答えるのに、穹の言葉には何一つ答えてくれなかったのだ。
 後で術を上書きした燕三に聞いて知る事になるのだが、どうやらあの術で生きかえった者は、最も親しかった者にしか言葉を遺せなくなる……との事だった。陰陽術は万能ではない、とも……。
「それで、藩主さんはこれからどうするんだ? 兵を率いて戦場に向かうか?」
「うむ……毒も無く、病の原因も取り除いて貰った今、このまま布団に横たわっている訳にはいくまい……そうは、思っているのだが、な」
 どこか遠くを見つめながら呟く里見藩主は、かつて石層宗の事件時ほどの活力は……少なくとも、穹の目には見られなかったのだった……。

 一方、犬神の城下町へと戻って来て少しでも城下町の復興に力になれればと作業をするはレッグだ。
 その怪力を使って瓦礫をどかし、《複製》にて増やした鉄骨を工事の足場にするようくみ上げたりし、復興の為に指揮を取る大工の頭領たちを手伝う。
「おい、いいのかいカラクリの兄ちゃん? 姫様達は前線で戦をしてるって言うじゃねーか? お前さん、さぞ強いんだろう、こんな所に居ていいのか?」
 頭領の1人がそんな風に聞いてくると。
「俺の仕事はいつだって逃がす事とその助けだ。拡大解釈込みで……だがな。まー、そういうわけだ、俺的には戦うよりこうやって人助けする方が性にあってる」
「まあ、こっちは助かるけどな! ありがとうよ!」
 そう笑顔で返された。
 だが、そうやってレッグが手伝いをやっていれば放っておいても目立つわけで……。
「お、おいおい、なんだお前らは!?」
 大工の何人かの声が上がり、やがてレッグが呼び出しを受ける。
 何かと思って行ってみれば、そこには見た事のある顔が並んでいた……。
「確かお前達は……多野の」
「ああ、多野藩から逃げて来た者だ。その中でも俺達ぁ元鉱夫よ!」
 数にして100名程はいるだろうか、レッグはそれらを見回して。
「その鉱夫達がどうしたんだ?」
 と聞けば。
「頼む、俺達も一緒に戦わせてくれ!」
「何?」
「聞けば美濃姫様が指揮を取って、攻めてくる謎の侍達と戦ってるって聞くじゃねーか……あの姫様が戦ってるって言うのに、俺達が姫様におんぶで抱っこなんてしてらんねー!」
 そうだそうだ! と鉱夫達の中から多数の声が上がり、どうやらこの勢いは止められなさそうだ……と感じ。
「わかったわかった。とりあえず犬神藩の藩主様に打診してみる。話はそれからだ」
 と一度鉱夫達を納めるのがレッグには精一杯なのであった。


 美濃姫と上埜信の会話は長く続き、しかし、その時間は決して永遠では無く……。
 ちょうど後続の増援のうち半分がやって来たようだと、逢坂・宵が報告に来て、やがて兵を率いてやって来た五ツ音が美濃姫の元へとやってくる。
「里見藩主殿より預かった犬神の兵500、さらに御許可頂ければでありますが、石層宗約100名もまた、共に戦いたいとの事であります」
 美濃姫の前にやってきてそう報告する五ツ音を、美濃姫は「ご苦労」と労い共に戦ってくれる兵達(と石層宗の僧兵達)に感謝を述べるのだった。
 そして、それが美濃姫の中で決断の機となったのか、やって来た宵にふと尋ねる。
「宵、そろそろ……お別れの時間にした方が、良いじゃろうか……」
 少し寂し気に問うてくる美濃姫に、宵はふるふると首を横に振り。
「今、僕が姫さまにかける言葉は持ち合わせておりません。ですから……姫さまのなさりたいように、されるのがよろしいでしょう。もちろん、決断も含め……です」
「お主は……時々、とても厳しいのじゃ」
 泣き笑いのような表情でそう告げる姫に、宵はなんとも言えない表情で返す。
「じゃが、いつまでも想い出にすがっているわけにはいかぬからな……今はまだ、戦の真っ最中なのじゃし……」
 どこか決意したように言う美濃姫に、何かを察したのか近くで見ていたのか、此度の復活劇の主格、燕三がやって来て言う。
「……もう、良いのですか?」
「良い……わけでは無いが、いつまでもこうしておるわけにはいくまい」
 そう諦めたように言う美濃姫に、燕三は淡々と。
「美濃姫様、あなたがお望みであれば上埜信様と共に復興を目差す事も出来ますよ?」
「なんじゃと!?」
 燕三の言葉に驚いたのは美濃姫ばかりではない、その場にいた宵や五ツ音、護衛で控えていた者達も、その全員が息を飲む。
「辛い時、哀しい時、嬉しい時、このまま上埜信様と道を歩めば、いつの日か祝言のお言葉すら頂けるかもしれません。姫様がお望みになるのでしたら、常にお傍に居て下されるよう陰陽術でそれを実現致します」
「………………」
 美濃姫の胸に去来していた父親との思い出の日々と違い、今度は見果てぬ未来の光景が浮かぶ。戦が終わって多野を復興させる道、此度の戦で無くなった親しい者達を父親と共に送る道、懐かしい多野の城下町を2人で立て直す日々、もちろん、燕三が言うように自身の祝言も父はお祝いしてくれるだろう……それは、諦めた未来、もう二度と敵わないと覚悟を決めた遠い世界の出来事。
 それを、この目の前の陰陽師は実現できると言う。
 諦めないでも良いのだと……。
 だが、ふと先ほどのある光景が美濃姫の脳裏を過ぎる。
「1つだけ、聞いても良いか?」
「なんなりと」
「先に穹が父上に質問した時、父上はその問いに答えなかった……いや、もともと妾の声以外が父上は聞こえていないようだが……それはどういう事だ?」
「今の上埜信様は最も親しい者の声にしか耳を傾けず、語り掛ける事もできない存在だからです……」
「陰陽術にも限界はある、という事か」
「いいえ、姫様が望まれますのならば……――」
 さらに言葉を紡ごうとする燕三を美濃姫は手で制す。
「もうよい、十分じゃ……」
「しかし、姫様さえ望むのでしたら如何様にも」
「そうなってしまっては、もう妾の知る父上では無かろう?」
 そう言いじっと見つめられ燕三は何も言い返せなかった。
 なぜなら……『その通り』だったからだ。
 もちろん、それが解らぬようなら、例え望まれても術を解除する予定だった。
 もし解った上で術の更新を望むなら、その時は……とも思った。
 だが、この目の前に立つよわい14の姫君は、わかった上で解れを望んだのだ。
 ならば――。
「ははー、この御代燕三、しかと承りました」
 脚を折り膝を地に付け、礼を持って姫の命を受諾する。
 そんな燕三に「うむ」と頷き、最後の言葉を交わす為に上埜信へと向き直る。
『美濃……』
「父上、そろそろお別れの時間じゃ……じゃが、父上には最後に1つ、言っておかねばならぬ事がある」
『なんだ、遠慮なく申してみよ』
 優しく微笑む父親に、美濃姫は父が見た事もないような人の上に立つ者の顔でキリと見据え。
「多野藩の再興については諦め下され」
 そう断言する。
『それは……どういう……?』
「今の妾は犬神藩藩主里見義巳殿の養子と相成り申した。そのせいか狒々堂の侍達は犬神の城下を焼き、今もなお大勢の民を苦しめております。妾は父上たる里見義巳の娘として、我が藩の復興に従事する義務があります」
 美濃姫の宣言を黙って聞きつつ、たた一言「多野の民はどうする」と告げる上埜信。
「狒々堂によって占領された多野の地より、落ちのびた民も家臣達も、今は皆犬神の地にて安住を得ております。その民達の為にも、妾はこの地を護り通す責務があるのです」
 迷いなくそう断言した自身の娘に、成長と故に感じる距離感を持って、上埜信は言葉を返す。
『ならば、我は多野藩最後の藩主として答えましょうぞ。里見美濃殿……我が藩の民と家臣を、お頼み申す』
「……無論、言われずも……がな、じゃ」
 父親からの最後の言葉に、美濃姫が言葉を詰まらせ、涙声で返す。その両目はキッと上埜信を見つめるが、我慢しきれなかった涙が伝う。
 同時、燕三が《慈善の章》を解除、上埜信は糸が切れた人形のようにその場にドサリと倒れ、もう二度と口を開く事は無かった……。

 時刻は夕暮れ、赤から紫へと変わり薄暗くなっていく空へ、荼毘に付された上埜信の煙が昇って行く。
 サムライエンパイアの普通は土葬だが、それでは再びオブリビオンに利用されないとも限らず、操られていた多野の兵と一緒に、上埜信の遺体も火葬される事となったのだ。
 美濃姫は涙を流さず、じっと空へ昇る煙を見つめていた。
 ふと、その視界の下の方を、いくつもとりどりな光が流れて行く。
「あれは……」
「灯籠……ですね。こういう風習は知っていましたが、実際にこの目で見るのは初めてです」
 川を流れていく灯籠の光を見つめる美濃姫に、宵が説明する。美濃姫自身、多野の地ではこの風習が無かったと言っていたが、想像以上に綺麗な光景に思わず見とれているようだった。
「灯籠は死者をあの世に正しく送る為の送り火との事です……お父上が今度こそ死を侮辱され操られることのないよう、その祈りを込めて、正しき星へ導かれるよう、灯籠の火が標となるのです」
「そうじゃな……今度こそ、迷わず極楽へ、そして母上の元に向かって欲しいのじゃ……」
 叭――ッ叭ッ叭ッ叭―――ッ!
 喇叭の音が響き渡る。突然大きな音というより、少しずつ大きくなって、この地に、戦場に、染みわたるような喇叭の音であった。
 それは五ツ音の吹鳴であった。葬送の譜、死者を弔う吹鳴の音。
「(彼の方の真意を知る術は、自分にはありません……けれど、旅立つ方も、送り出す皆さんも、等しく、その死と向き合うことができるよう。その死の先へ、進むことが出来るように……)」
 そんな五ツ音の想いは喇叭の音と共に人々に伝搬し……。やがて、その喇叭の音に重なるように宵の横笛の音が、鎮魂の曲が静かに、静かに、響き渡っていくのだった……。

 暗くなり灯籠流しが始まった頃、荼毘に付された上埜信の煙を1人に見上げるのはプリンセラ・プリンセスだった。
「私は美濃姫のようにできるのでしょうか……」
 それはプリンセラ自身の言葉だった。
 ついさっき、死人が蘇るということの事実をまざまざと見せられた。
 それは決して他人事ではない。
 亡国の姫、そして復興を誓う姫としてプリンセラは立場を同じくする美濃姫に共感し、協力して来た。
 美濃姫には(人格は違うとはいえ)随分と偉そうなことを言ったが、自分にできるかと言えば……。
「(私は、あんなに強くなれるとは思えない……それに、決断ができるかと言われたら……)」
 純粋な力や異能においてはある程度の自信はある、だが、純粋に復興を目指す姫として、美濃姫ほどの覚悟を自分が持てるかと言われたらなら……正直、今はまだ自信が持てなかった。
「(なにせ私は……未だにあの日の悪夢を見ては、泣いてしまっているのだから……)」
 他人格の兄姉に言えば厳しい答えも優しい答えも返ってくるだろう。
 けれど、それではおそらくダメなのだ。
 蘇って来るはアンヘルとの戦いの記憶。

 ――あのような目には……もう、二度とは。

 フッと記憶から現実に意識を引き戻し、高く昇って行く煙を見つめプリンセラは呟く。
「強く、ならないと……!」
 それは誰にも共有できない、しかし、復興を目指す姫としてのプリンセラにとって大事な、大事な一歩であった。

 夕日が沈もうという頃、ちょうど灯籠流しが始まった本陣へと戻って来たのは権左衛門であった
 なぜか商人数人と肩を組み、酒壺を片手に赤ら顔なのは……完全に酔っている証拠である。
 権左衛門は仲良くなった宿場町川上の商人達に、解毒薬や滋養強壮に効く薬を調達して貰い、里見藩主のお見舞いに行く予定だったのだが、なにやら城下の方に向かった数人の猟兵達が里見藩主の毒を治療したとの報が入ったのだ。
 もともと情報収集は得意な方であり、それが耳聡い商人達と組んだだけはあり、その情報は誰より早く入手したと言えた。
 そして「やる事なくなってもーたわ」と愚痴ってると、商人たちが寄って来て「自分らも何か協力させてくれ!」との声が重なり、商人たちの財力と資源を美濃姫の為、前線で戦う侍達の為に使おう、というノリの話になったのだった。
 権左衛門の人柄と川上を救ってくれた恩、酒のノリ……というのも多分にあるが、そこは実利を取る商人たちだ、多野が滅んだ状況を鑑みての決断だったと言える。
 なんせ占拠された多野の地では、その地に残った者達が平穏に『生きている』という噂が全くなく、逃げて来た者の情報をまとめるに、狒々堂は多野の地を占拠したと同時、多野の地に残っていた侍も一般人も商人も農夫もその全てを無差別に斬り殺したと言うのだ。
 犬神藩が占拠されれば、それと同じ事が繰り返されるのは必然、逃げる道が無い商人たちにとっては、美濃姫達の犬神軍が勝利する事、それ以外に生きる道は無いと判断したのだ。
「桐殿、これはいったい!?」
 笹野が商人や大量の荷を運んで来た権左衛門一行にそう問うと。
「戦に必要なのは人だけやないやろ? この川上の商人たちが後方支援の物資調達と、多少なりとも軍資金に協力してくれる言うてるのや、悪い話やないやろ?」
 微妙に舌が回っていないが、まったくありがたく、また正論を言っている事にコクコクと笹野は頷き、兵達に物資の運搬と商人たちを安全な後方へ回るよう誘導するのだった。


「余所者が何かしてなかったか、変な所で人を見かけなかったか、何か思い出したら何でも良い、教えてくれんかのぅ?」
 国境の村や町で1人敵側の情報収集を行なうは玄信。
「(城下、後方と来たら、今度は前線になる国境の近くじゃろうな……)」
 と、1人で調査を行なっているのだ。
 もちろん、移動中の街道に何か仕掛けられていないかも旅人に聞き込みして下調べを行ない、また黒道坊を見なかったか、という証言も集める。
 だが、黒道坊の策略はさすがに棺桶に死体を入れて配置しておいた事が最後のようで、それ以上の情報は集まらなかった……。
「あ、そういえば……」
 多野の地を抜けて来たという旅人が、最後に何かを思い出したかのように玄信に呟く。
「あれぁ、おらの見間違いだと思うが……」
「何か気になる事が?」
「いやいや、きっと夢だぁ、あんな事あるわけねぇ」
 そう言って手をヒラヒラさせ笑う旅人。
 しかし、玄信の第六感が警鐘を鳴らし、旅人に夢でも良いから話してくれと詰め寄ると。
「いやぁ、実は……巨人を見たんだぁ」
「はぁ、巨人とな?」
「んだぁ、城程もある巨人が遠くを歩いてるのを見て……でえだらぼっちでも見たのかと……まぁ、きっと幻でも見たんだと……」
 玄信は嫌な胸騒ぎがして旅人に一言礼を言うと急ぎ踵を返す。
 これは……大変な事になるかもしれぬ、と。


 兵士達と一緒に灯籠を作り、川面へやってくるは御剣・刀也だ。
「俺はあんまり器用じゃないんでな。ちょっと大きくなっちまったが、まぁ、それ位大目に見てくれ」
 他の侍が作るより少し大きめの灯籠に火を入れ、刀也はゆっくりと川面へを置く。
「親は子供より先に逝くもの。最後に会話ができただけでも、救いになるだろうな……俺はまだ親に死なれてないが、それ位は何となくわかる」
 ふと、荼毘に付した煙が上がった方を見て刀也が呟く。
 やがて何十もの灯籠が川に浮かび、ゆっくりと流れにそって川下へと流れていく。
 その幻想的な光の群れを眺め、刀也は独り言ちる。
「俺はまだ、そんなに人生を生きてるわけでもないが……そんな俺がそんなことを考えるのは、驕りとか傲慢だとか言われそうだな……。でも、それでも問わずにはいられない。俺は嘘をつかないことを信条にしてるが、それを裏切っていないか、と」
 それは刀也の中にある譲れない物だ。それに恥じない生き方をする、それが折れる時は自らの身も折れる時だと……少なくとも、それぐらいの覚悟はある。
 流れゆく数多の光に、死んでいった者達に、刀也は自分がまっとうに生きられているかと、そう問うてしまうのだった……。
 美濃姫と上埜信の別れを離れて見守っていた月舘・夜彦は、本来為しえない事が起こり、故に姫様も父君に伝えたい事が沢山あるはずと2人の邪魔をせぬよう身を引いたのだが……。
 それはもしかしたら、自身の過去に囚われ、故に2人を見ていられなかったからかも……と、その無意識に夜彦は気づかない。
「この行為は死者の魂を弔うものだ」
 川に流れゆく灯籠たちを見つめつつ乙来が夜彦の横に並んで呟く。
「弔い……」
 夜彦が言葉を繰り返し、乙来は言葉を続ける。
「黄泉の国へ迷わず行けるように灯りの標す。亡くなったのは、一人だけじゃないからね……戦いで多くの人が亡くなり、その肉体を利用されてしまった。だからもう二度と利用される事が無いように、命巡り彼の地へ戻れるように、彼等に向けてお祈りをするんだ」
 灯籠の光に導かれていく死者たちに黙祷する乙来。そして再び目を開くと。
「人は一度与えられたものを再び求めないとは限らない。あの子はまだ若い、寂しさにまた父を求めてしまえば……それは僕達の罪だ。もちろん、美濃姫が弱い人間ならの話だよ?」
 乙来がふと夜彦の方を見つめていた。解っているのかい? と問うかのように。
「生を受けた時点で死は決まろうとも、零れそうなものに手を伸ばす。その時の死を遠ざけただけで、今生きる者の大半は先に逝くというのに……人と関わる程、別れは惜しくなるというのに」
「人だろうと何だろうと、その気持ちは一緒だろう」
「しかし、しかし……それでも私は……」
 どこか絞り出すように言う夜彦に対し、乙来は遠く美濃姫達がいる方を見つめ。
「忘れてはならない……今の彼女には、寂しさを埋める存在が……たくさん居る、という事をね」
 それ以上、語る事は無いと乙来は再び視線を灯籠に戻しやがて黙祷を始める。
 夜彦は乙来との会話を反芻し、クッと顔を上げると美濃姫のいる方へと歩いて行くのだった。
 灯籠が流れていく光景を、吹鳴を止め見つめていた五ツ音がふと気が付けば、奮起する侍や、涙を流す兵など、皆の様々な様子に思わず目線をそらす。その中には自分が里見藩主の名で連れて来た500余名犬神藩の兵士と、石層宗100名も存在するだろう……。
「(……自分は、ただ一介の軍人、ただ一ヶの軍楽器であります。里見藩主殿の代わりが務まるとはとても……。けれど、ええ、ただ一ヶの吹鳴管でありますから。吹き込まれた息吹は、魂は、きっと、必ずや我が五音にて戦場に響かせましょう)」
 自身の役目を、それはヤドリガミとして意志を持つ前から続く、確固たる責務を、五ツ音は心に刻む。
 目の前の兵達は明日にはどうなっているか解らない、もしかしたら明日の我が身を想い灯籠を流している者だっているかもしれない。そして、灯籠によって見送られた英霊たち……彼らに対し、自分達ができることはあまりに少なく、そして限定的だった。
 それでも、五ツ音は思うのだ。自分にできる事はただ1つだと。
「然る後には、凱旋行進の吹鳴を添えてお返しいたしますので……里見殿は安らけく朗報をお待ち下さい」
 そう呟き、己が分身たる喇叭を腰に差し。
「(……我が身の呪詛が、里見殿の魂までも戦場に縛りつけるわけには、いきませんから)」

 川に流れる幾つもの灯籠たち、それを小高い丘の上から眺めるは美濃姫と上埜信の別れを見送ったコノハだった。
 荼毘に付してからは他の猟兵達も美濃姫の元へと集まって来たので、自分の役目ごめんだとこう1人になれる場所へとやって来たのだ。
 遠く死者を弔う光が幾筋も稜線を描き流れていく。
 自分は、失う意味が分からぬ訳でも感情を持たぬ訳でも無い……けれど、死したモノへ揺らぐ想いはきっと何処かに失くしてしまった。
 だから、そんな自分が、死者を悼む想いの欠落した自分が皆と共に並ぶなど、それほど笑い種は無い……。
 ただ、流れゆく灯籠たちは想いも感情も過去も無関係に、煌びやかで美しい。
 それが何の為であっても、目に映る確かなモノの方がずっと分かり安く……そして。
「綺麗だねぇ……」
 誰に言うでもなく、コノハは呟くのだった。

▼回復した里見義巳と会話
・レイチェル・ケイトリン:里見義巳になぜ姫の傍にいないと聴かれる
※高柳・零と玖篠・迅がいても名前のみ
・涼風・穹:犬神藩主と会話

 犬神藩は城下町、里見義巳が武家屋敷の縁側に、ちょこんと足を投げ出し座るは人形の少女、レイチェルだった。
 あの時、自分の手を握ってくれたお姫さまの手を……自分は振り払ってしまった。
 振り払ってここにいる。
「(わたしは、あそこにはいられないから……ごめんなさい)」
 もう心の中で謝るのは何度目か……。
「茶菓子が余ってしまってね……どうだね?」
 背後からそう声をかけられ、思わず拒否しようとするも、その声の主が誰か気づいてレイチェルが佇まいを直す。
「里見さん……!?」
「そう硬くならずとも良い……ここに、座っても良いかな」
 レイチェルがどうぞと言うと、里見義巳は茶菓子を間に置き、同じく縁側へと足を投げ出すように座る。
「お主等猟兵というのは、誰も彼もそうなのかね? まったく、本当に、おせっかいと言うべきか」
 笑いながら言う藩主に、レイチェルは思わず疑問顔になる。
「ははは、他の者がいないからここだけの話にしてくれるか? 実はな……敵の毒に倒れた時、わしはどこかホッとしていたのだ」
「……え?」
 唐突な告白にさすがのレイチェルも驚く。
「わしは最愛の妻を半年前に亡くしていてな、あまりに愛していて側室すらずっと拒否しておった。だが、あれとの間に中々子が生まれんでな……あれが病で亡くなってからは、家臣達から後妻を取れ、跡継ぎを為せ、と更にうるさく言われるようになって……」
 それでも里見義巳は一周忌が過ぎるまでは……と家臣達を黙らせていた、だが、一周忌が来たら……それ以上、引き延ばすのはさすがに無理だろう、藩主として跡継ぎななければお家断絶は不可避、それを回避する事が必須なのは誰より理解しているのだ。
 だが、そんなときに多野が襲われ、美濃姫が亡命して来た。そして狒々堂からの無茶な要求……猟兵達の案に乗り、美濃姫を養子に迎えると宣言した時、義巳はどこかで安堵したのだ。これで、跡継ぎ問題を考えなくて済む、と。
「正直な所、あれがわしの全てだった。故にあれが無くなってからは空元気に気を張り詰めていて……自身の身がボロボロになっているのをどこかで気が付きつつ、心の鎧がそれを漏らさなかったのだ」
「それが、毒で倒れて……」
「あくまで、きっかけに過ぎぬがな……お主等のおせっかいで毒が無い事が解り、わしが弱っているのは気力の問題だった家臣達が喜んでおったが……本音を言うなら、隠居させて貰いたいぐらいだ」
 屋敷の庭を眺めつつ、言ってはいけない本音を語る義巳に対し、レイチェルも同じく庭を見つめつつ。
「どうして……わたしに、そんなこと……?」
「わしがこう思うようになったのは、美濃姫が犬神の地を護ると言い出したからだ。その美濃姫が心配しておったのを思い出してな……責任ある自分が戦場に立つ事は構わない、けれど、好意で助けてくれる友を、一緒に連れて行く事になるのは心苦しい、と」
 もちろん、成人した大人はそうではないし、サムライエンパイアにとって男子は成人しておらずとも、その誇りは一端だ、姫もそれを傷つけるような言い方はしない。ならば、美濃姫が心配する友とは……。
「ほかの猟兵さんはいいよ……でも、わたしはお姫さまによりそえない」
 うつむき呟くレイチェル。
「ふむ……」
「……わたしは、お姫さまに幕府の意があると言った、言ってしまった……そのわたしが、お姫さまにちかづきすぎちゃうのは……お姫さまの立場をゆるがすことになってしまう」
「なるほど……もっともだな」
 素直に頷く義巳。
「『民のため』……それだけがわたしがお姫さまといっしょにいられる理由なの。だから、前にお姫さまに言った『なんとかします』という約束を……わたしは、まもれない」
 ――だから、お姫さまのもう1人のおとうさんだけはたすけた……のだ。
 胸の内を全てさらしたレイチェルに、里見義巳は縁側に茶菓子を置いたまま立ち上がり。
「茶菓子には茶菓子の役割があり、また刀にだって刀の役目がある。それらはその事を全うする為に存在するのだから。……しかしな、美濃姫はお主の事を友と呼んでいた。友とは物や道具と違い、たった1つの役目しかないわけではない……」
「それは……」
 思わず側に置かれて茶菓子を見る。しかし、美濃姫はそうじゃない。そして美濃姫も自分の事をそうは思っていないのなら……。
「隠居を目指す年寄の戯言だ。気にしないでくれ……ただ、どうしても藩主などというものをやっていると、心を許せる友という者が少のぅてな……存外、わしもおせっかいなのかもしれぬ」
 そういうと里見義巳は笑いながら縁側から去って行った。
 本当に美濃姫に対して自身は距離を置いた方が良いと思うなら、これ以上この戦いに関わるべきではないのかもしれない……。
 だが、それは本当に自身の本心なのかと……レイチェルは、ふと、遠く空の下の美濃姫を想うのだった。

 縁側を去って行った里見義巳だが、部屋に戻ろうとした所で廊下の角に穹が隠れ立っていた事に気づく。
「これはまずい事を聞かれてしまったかな」
「あんたとは石層宗の事件の時からの付き合いだ……さっきの隠居の話、本当か」
「家臣達には言わんでくれ……いずれわしの口から伝えるつもりだが、今は戦の真っ最中だ、毒も無く病も無くなったが、精魂尽き果て気力を失ってしまったのは事実、実質、戦の指揮を取れる身では無いからな……」
「それでも自身の言葉は士気に響く……解ってるんだな、その事は」
「これでもこの犬神の地の藩主だからな」
「……死ぬ気は、無いんだよな?」
 真剣な表情で穹が聞き、里見義巳はその瞳を真正面から返し。
「無論、無い」
 二言は無いとばかりの覚悟が宿る瞳に、穹はコクリと頷き。
「わかった。あとは俺達に任せてくれ……姫さんに、立て続けに二人の父親と死別させるってのはあんまりだったからな」
 そう言って穹は藩主に背を向け屋敷を出る。
 後顧の憂いはいくばくか、しかしあとはもう『戦に勝つ』、それだけであった……。


 美濃姫自身も灯籠を流し、川面にはいっぱいの光の線が流れていく。
 その美濃姫の側で、ジェフリエイルが異国の鎮魂歌を奏でる。
 それは余韻の穏やかな輝きを邪魔しない、そんな歌であった。
 ジェフリエイルが美濃姫に起こった出来事を、この戦いの始まりを、村や町の人々の想いを、里見藩主や多野の家臣達、多野の民、犬神の民、そして共に戦い続けて来た猟兵達の想い。
その全てを内容に取り入れた歌だった。
 皆の輝きが、温かく穏やかに広がり、そして未来へ繋がるように……と。
 そしてジェフリエイルの奏でた歌が終わると同時、ザッと美濃姫の周囲にいた猟兵達が――。
「美濃姫様、故郷と家族を守らんとした、誇り高き志に私は誓わせて頂きます」
 片膝を付き頭をたれてヴィクトリアが言う。
「私は、その勇士達の死後の安息を踏み躙った者達を、我が主――美濃姫様に成り代わり、必ずや祓ってみせます」
「ヴィクトリア……」
 そして胸の前で手を折り宵が続ける。
「お父上が永劫の安寧に在れるように、ひとの生はめぐり、めぐり、輪廻となって、また世に生まれ落ちます。そのときは、乱世のない世界になっているとよいでしょう」
 そして僅かに会釈し。
「不肖この僕、姫さまのためにお力になることを、いま再び誓いましょう」
「宵……」
 さらに並ぶは異界の姫らしくスカートを両手で摘むプリンセラだ。
「私も、まずは美濃姫を救います。もちろん姫様の為でもあるけど……それは私の目的の為の一歩だから。だから絶対、必ず、勝ちましょう」
 プリンセラが礼と共に手を差し伸べ、美濃姫は「うむ」と短く、しかし力強くその手を握り返す。
 ふと、美濃姫が側にいた刀也に聞く。
「此度の戦、勝てると思うか?」
 それは決してわからぬ未来の話。まして、相手はオブリビオンの軍団、こちらのいくら兵が集まろうと劣勢は必死だ。
 そしてその問に対する答えは、嘘を付かず、自分の言葉で誰かを裏切らない事を信条とする刀也に取って、かなり重たい問だった。
 だが、刀也は言う。
「勝つさ。俺は自分に嘘はつかない。それがなくなったら俺には何も残らねぇ……だから、自分に誓って、この戦、勝つ。これはきっと、俺だけじゃなく、猟兵全ての答えだろうぜ」
「……うむ、そうじゃな」
 どこか自身あり気に美濃姫も同意し、僅かに笑みが広がる。
 そして最後に夜彦が片膝を付き、美濃姫を見上げ告げる。
「姫様にお願いがございます」
「なんじゃ?」
「この先の戦いは今以上に過酷なものとなるでしょう。その為、私に金打の機会をください」
 金打……それはサムライエンパイアに伝わる武士の誓いだった。
 女性は鏡を打ち合わせ、子供は指を切る……言わば約束、誓い。
「わかった」
 そう言うと美濃姫は金打を行なう……。
「多野の者達が再び故郷の土を踏めるように、犬神の地に再び平穏を取り戻せるように、そして、貴女を護る為に……私は此の刃を振るいましょう」


 灯籠流しが続く本陣には、夜のうちに続々と兵が集まって来ていた。
 輝彦が連れて来た後続の500、レッグが許可を得連れて来た元多野の鉱夫100、五ツ音が連れる石層宗100、さらに多野の侍だった者達も50合流し、今や美濃姫の軍は1600もの大所帯となっている。
 そんな大所帯に向け、里見の打ち刀を手に嶋野が叫ぶ。
「敵は化けモンだ!お前らなんざクソの役にも立たん! 人の戦も俺は自分が手を汚さない所にいる気はねぇ。だからお前ら使い所がねぇんだよ! 言っておくが、お前らは肉壁にしかならん!」
 輝野の恫喝とも言える叫び声に兵達が黙る。
 そして兵が静まり返った所で最後に。
「だから……今日死ぬと決めた奴だけ付いて来い! この地を、守る為に!」

『おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』

 そして……最後の戦が、始まる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月24日


挿絵イラスト