オカルティック・ファンタジー
●モーラットピュアは祈りを捧げる
銀誓館学園、星宮(ほしみや)キャンパス。
大きなもみの木を持ち込んだのは過去、このキャンパスで過ごした学生たちだ。
卒業生の置き土産、ともいう。クリスマスの時期になると誰とも言わずクリスマス装飾を施し始めるのは、定例行事と言っても過言ではない。
しかし――。
「おおい、『シュガー』見なかった?」
「え?『フェザー』ならさっきそこに……あれっ居ない!?」
学生たちは口々に名前のついた何かを探す。
クリスマスツリーのオーナメントでも、モールでもない。
抱っこするのにちょどいい、もふもふで……。
「もきゅっ?」
「ああ!いたー!」
もぐもぐ、とパーティのお菓子をつまみ食いした犯人がふよーっと逃げていく。
待てー、と生徒が追いかけていった。
このキャンパスに住み着いた野良モーラットはいつしか名前を貰っていた。
"フェザー"と"シュガー"。
二匹はとても仲良しでいつも一緒にパチパチ火花を散らして遊んでいる。
このキャンパスに拠点を構える名もなきオカルト結社が少々電飾辺りに悪戯をしたらしい。『普通の電気を繋いで光らせるんじゃあつまらない』
『シュガーとフェザーが居るときだけ、パチパチスパークを散らす仕様に改造しようぜ』
二匹のどちらかがツリー近辺にいる時に限り、軽い静電気が起きてパチパチ光る。
二匹が楽しかったり嬉しかったりするとよりまばゆくパチパチ光る。
そんな不思議なモーラットをツリーの傍から逃さないように立ち回るのがクリスマス期間中のこのキャンパスでの隠れたルール。戦う学生が集まる結社でのみ出回るチェーンメールが届いたヒトのみが知っている、不思議な不思議なモーラットファンタジーである。
●グレートモーラットのパチパチ火花
「銀誓館学園、クリスマスのお知らせを聞いたから皆にも伝えよう」
フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は、伝え聞いた話だからオカルトめいた話かも、と前置いて、紙に書かれた内容を読み上げる。
「"雪降るクリスマス!いいや落雷くらい振らせてやるぜ、俺らのキャンパスはなあ"」
読み上げて、首を傾げたフィッダ。
「……うん、まあ在校生からの招待状的な奴だと思う」
銀誓館学園の校舎は鎌倉市内に分散して建設されていて、集まりをキャンパスごとに分けている。つまり、とても広く、とても多い集まりが在る。
「モーラットを追いかけて欲しい、とか捕まえろッつー話じャなくて電飾ばちばちする不思議なキャンパスで、不思議体験をしてみてはどうだろうか、みたいな!」
スマホなどの小さな機械をいじれば手元がパチッとする事がある。
それは後ろをモーラットが通り過ぎた証。モーラットはどこかにいる。
パチパチ火花を散らしているから、目を凝らせば電気の動きできっと分かる。
「このキャンパスで降る雪は、ちョッととても弱い電気質を帯びている。絶対に」
誰かが組んだ変換術式によるそれか、それともモーラットたちが縄張りとして人には見えない電気を張り巡らせているのか。誰もその全容を知らない。
身体に浴びていたり、その場に少しの時間留まっていると不思議な要素が働くという。
「ずばり、男には"N"な電気が貯まるらしい。女には"S"な電気が貯まるらしい」
ふふふ、と笑うフィッダは楽しそうである。
「どうしてか、このキャンパスでクリスマスに参加するとぴたーッとくッついてしまうんだと。みんなピタッと仲良しさんばかりになるんだッてよ」
男女で別、とは簡単に区別として伝えたが、実際は異なる。
好意を持っていると異なる性質の電気性質へ変化するのだ。
男同士でも女同士でもピタッとくっ付く仕様と、考えてもらって構わない。
「人でもモノでも、だいたいなんでも。お前が好意を抱くなら例外はねェだろうなー」
クリスマスは楽しく!仲良く!そんなモーラットの願いでもあるかのよう。
「まあまあ、クリスマスでパーティとは言うけど電気の雪のせいでくッついた相手とお喋りしたりな時間に当ててもいいんじャね?」
自分が離れたくても、相手の好意が強いと離れるのにはだいぶ大変だが。
まあまあ。場所は外でも、中でもクリスマスツリーが見えるはず。
好きな場所で好きなように、過ごしたらいいんじゃないだろうか。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
メリークリスマス。
このシナリオは一章のクリスマスシナリオです。
●概要
モーラット達や過去在校生の謎の技術により、このキャンパスには電気質な雪が降り注いでいます。そういう集まりがあった為、オカルトに属した現象として記録されている場所のクリスマスです。いいですね、クリスマスです。
クリスマスツリーがあるのは中庭。ぱちっぱちっと帯電しているみたいです。
電力不足でたまに暗くなりますが。そのうち明るくまたぱちぱちします。
電力源のモーラットがきまぐれなのです。
立地は大まかに、カタカナの「ロ」みたいな立地をしてると思ってもらって構いません。
皆さんはどこにいてもいいし、キャンパスごとに学校施設にあるようなものは大抵あるので場所しても可能。学校内なので公序良俗にはどうかご注意を。
●出来ること
(1)モーラット(フェザーorシュガー)に好意もしくは興味を持つことでそれとなーく引き付ける事ができ、離れられなくできれば、中庭の滞在させ続けることが出来ます。
あと、もふもふすることが出来ます。よくパチパチする毛玉です。痛くないよ。
(2)お友達、大好きなもの(人物以外)とピタッとくっついてしまって離れられなくなってしまいました。くっついた箇所は選べます。手とか肩とか選べるバリエーション。
どこがくっついちゃった!というのは、プレイングにお願いします。
好意=好意があると任意で離れることが出来たり、離れられなく出来たりします。
片方の思いが強いと、離れるのがちょっと難しくて苦労する、かも。
(3)上記書かれていないけどできそうだと思うこと。
フラグメント無視はそれほど問題ありません。
●その他
シナリオが崩壊するような危ないことは……大抵の場合起こらないと思うので、自由に過ごせるシナリオを想定しています。指定が無ければなるべく個別返却。想像を越えた事をすると採用できないことがありますので、ご注意頂けますと幸いです。世界観がよくわからなくても、大丈夫。問題有りません。
このシナリオでは、タテガミの配下として活動する5名のグリモア猟兵が暗躍・協賛しています。呼ばれた時のみ、ご一緒致します。
第1章 日常
『銀誓館のクリスマスパーティ』
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POW : 美味しいものを沢山食べる
SPD : プレゼントを持ち寄って交換する
WIZ : 楽しいおしゃべりに興じる
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
七篠・コガネ
圭一さん(f35364)と!
わあ!初めて来ました!ここが銀誓館学園ですねぇ
圭一さんの母校でもあるんですね?楽しみですね!
そんじゃ早速モーラットさんを…ってアレ?
ちょっとー!圭一さんてば、なんで僕の背中にくっつくの!?
白燐蟲さん達までくっついて、僕がツリーみたいになってるですよ
こんなアホみたいな光景ヤだー!離れてよ!
これじゃメリークッツキマスですよ
中庭中を走り回って振りほどけないかな…!
誰か助けてよぉー!
あ!離れたです!よかったぁ~
もう…圭一さんてば、
そんなに僕に好意あっても何もあげられませんよ?
ほら。在校生さん達も見てるんですからしっかりしないと
せっかくのクリスマス。いっぱい楽しみましょうよ
山崎・圭一
コガネ(f01385)に拉致されたぜ…
…コイツといると大体碌な目に合わねンだよな…
にしても懐かしいな。銀誓館学園
次の宇宙へ旅立った時には夢にも思わなかった
まさか帰って来れるなんて…
あァ?おい!なんで背中にくっついてンだコガネ!!
背中同士だと俺の足が床に付かねーだろ!
ゲッ!しかも俺の白燐蟲までくっついてるし!
ま、待て!走ンな。在校生に笑われてンじゃねーか!
恥ずかしいからやめ……
はっ…やっと離れ… Σうおーッ!(植え込みへ吹っ飛ばされる)
チクショウ!なんで俺がこんな目に…
好意!?テメーの方がだろッ!!この疫病神が!
居酒屋を独り飲み歩きする予定だったのに…
なんでこんなガキに振り回されてンだ、俺
●白燐蟲ツリーの発光化現象
「ちょっとちょっとザキヤマさん!此処がそうですか!」
「コガネ……そろそろ襟から手を離して…………」
背丈差三十センチくらいの体格差を利用して、ニコニコな七篠・コガネ(金碧のリュシエール・f01385)に拉致られて男は再び、銀誓館学園の敷地内に訪れた。
ディアボロスランサーで旅立ったのも思えば少し、懐かしい場所だ。
次の世界へ旅立って、戻ることはできないと理解してその道を選んだのに――くっ、人生何が在るかわからないな。
――あの時の俺からしても夢に思わなかったぜ(目に涙らしいモノを浮かべる)。
――また、この地にやって来られるとは。
残念ながら足はコガネパワー(腕力)で浮いている為、地に足は付いていない。ウォーマシンに担がれてる風拉致なのだ。ぷらーん。
「げふ……ちょっと、聞いてる?」
――ほんと、コイツといると大体碌な目に合わねンだよな……!
「はい!聞いてますよ、わあわあ!初めて来ました!ここが銀誓館学園ですねぇ」
そこそこな数の生徒が小中高の冬服に身を包み、訪れた猟兵を迎えてくれた。好きな所で好きな時間を過ごしてくださいねー!とキラキラ若いエネルギッシュさを存分に笑顔に変えて。
「学生さん達元気そうですよ!見て下さい!それに、圭一さんの母校でもあるんですね?楽しみですね!」
「ほんっと元気そうだな、それにしても懐かしい制服……まさかなァ、帰って来られるなんてなァー」
クリスマス装飾の沢山目立つ学園内の賑わいは、山崎・圭一 (ザキヤマ・f35364)の目にも懐かしい。
青春を謳歌している顔がなんとも懐かしい感じじゃねえの。
「ともあれですね、クリスマスツリー電力確保のため、モーラットさんを……あれ?」
コガネが感じた違和感は、自分の身体からパチパチと所在不明の磁力濃度を感じた事。体を動かすのに必要以上の電力が発生しているような――。
無機物ボディはこの場において、何よりもこの場の磁力を溜めやすかった。ハハハ仕方がないさ。
無機物なその身はコガネである証でもあるのだから。
「あれ?ってなにかな、ねえなにかな。突然の不穏やめてくれる?」
「ちょっとー!圭一さんってば、なんで僕が手を離したのに背中にくっつくの!?」
「え?これコガネがずっと吊し上げているのだとばかり……」
いやなに普通に冷静を装って会話してンだ俺ェ!!?
なんで?なんでコイツの背中にくっついて?あァ?
「確かに襟の苦しさは半減したけどな!?」
背中同士がくっついたら!帰ってきた学園にいつまでも足がつかないんですけど!?
「俺の足が地に付かないとかどんな悪夢よ、ああ、夜空と雪がキレイ……」
「現実逃避止めてくださいよ!」
ふわああ、とコガネの周囲が妙に明るくなる。あれ?雪はこんなに明るかっただろうか?
え、なんで?とよく腕や足を見るとぺたりとくっつく白燐蟲の姿!
圭一の現実逃避的な気持ちにあふれて出てきた蟲たちも、コガネに発生した強めな磁力感に引き寄せられたのだ。
もぞもぞと翅を動かすものの、離れられそうな個体は一体も居ない。
「ゲッ、……俺の白燐蟲までくっついてるし!!ピカピカじゃん!電飾じゃん!!?」
「僕がツリーみたいなことになってるじゃないですかー!こんなアホみたいな光景やだー!離れてよ!」
「お前が電力大量消費しろ!なンとかしろ!」
「これじゃあメリークッツキマスですよ!」
くすくすと笑う学生たちの声が聞こえてくる!うわー助けてくれぇえ!
軽い身のこなしで光り輝く蟲と圭一を貼り付けたコガネは中庭を走り回る。
「走り回ったら解けないかなぁ……!」
腕を振り回したり、自慢の脚で力強く飛び上がったり、趣向を凝らしてくっついたモノを剥がそうと頑張るコガネ。
そして、ぶぉんぶぉんと振り回されるくっついてしまった圭一のジェットコースター気分は随分と落差を生んだ。
「ま、待て!乱暴に走ンな!乗り物酔いするから、俺今日そういう薬もってな……うっぷ」
困った。手が取れないということは口を抑えられな――やば!大ピンチじゃん!?
「在校生に笑われてンじゃねーか!恥ずかしいからやめ……」
「誰か助けてよぉー!」
コガネ渾身の身を捩る攻撃。圭一に対する電磁力が一時的に摩擦に屈して、ひゅーんと何かをふっ飛ばした。
「あ!離れたです!よかったぁ~!」
「はっ……やっと離れ…… Σうおーッ!」
ふっ飛ばされた側の男(四捨五入で三十代)は、激しく植え込みにイン!
「チクショウ!遊園地のアトラクションだってこんなに激しくねーぞ!なんで俺がこんな目に……」
ああ。感動の涙の味がちょっと別のフレーバーを帯びてきた気がする。
「もう、……圭一さんってば」
のっしのしと近寄ってきたコガネは明るい笑顔で笑う。
「そんなに僕に好意あっても何もあげられませんよ?」
「好意!?エラーの間違いでは?テメーの方がだろ!!この疫病神がッ!」
温度差のある会話。
「ほら。在校生さん達も見てるんですし、折角学園の地に降り立てたんですし?」
「今から改めて楽しみましょうよ。あとしっかり学園案内して下さい」
「いや俺居酒屋を独り歩きする予定だったんで……」
まだ間に合うんでもう帰っていいですか。
民衆の視線を独り占めにした、とコガネに称賛され、いや目立ってたのはお前と突っ込みたい圭一は。
差し出された手をぐっと握り返して立ち上がる。
「……くそ、なんでこんなガキに振り回されたんだ、俺」
居酒屋は逃げないが、この瞬間はこの日ばかりの経験といえばそれまで。モーラットと鬼ごっこしながら、行方をくらましてやろう。
コガネの追尾を振り切れたら絶対居酒屋!
心に決めた圭一がRaptorから逃げられるかどうかは、白燐蟲八十%以上が無理と判断した、とかなんとか。
メリークルシミマス。
逃亡を諦めて、学園パーティを楽しんでいらっしゃい。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】
ふー、流石に外は寒いねぇ
両手を口元に当ててはーっと息を吐く
俺なんて指先まで冷えっ冷えだよー
ほら、触ってみなよ
自分の右手を梓の左手にくっつけてみる
……あれ?
くっついて、離れなくなっちゃった
男にはNの、女性にはSの電気が貯まるって言ってたのに…
ということは梓は女の子だったんだね
そうだね、せっかくだからクリスマスパーティーに参加しようよ
パーティーにはお菓子もあるって話だし
会場へ向かうまでの間
くっついた梓の手がどんどん熱くなっていくのを感じた
あー、こんなに美味しそうなお菓子が沢山あるのに
右手が塞がっているから食べられないー
ねぇ梓、俺の為にお菓子食べさせてよ
楽しげにはいあーんと口を開けて待つ
乱獅子・梓
【不死蝶】
寒くなるの分かっているならちゃんと手袋持ってこいよ
まぁ俺は普段から手袋しているし
いざとなれば仔竜の焔を湯たんぽ代わりにも出来る
うわっ、本当に手冷たいなお前
いつまで手握ってんだ……あれ?
いやいやいや、そのボケは無理があるだろう
確か好意を抱いているとくっついてしまうって……
その事実に妙に小っ恥ずかしくなってそれ以上は口をつむぐ
とにかく!くっついてしまったものは仕方ない
適当に時間を過ごしていればじきに離れるだろう
それまでこの手繋ぎ状態でいなきゃいけないのが恥ずかしいが…
いや、左手使えば食えるだろうが
こいつ、楽しんでやがるな…
ったく仕方ないな
ご要望通り、菓子を綾の口へと運んでやる
●その手はいつも温かい
両手を口元に近づけて、はーっと息を当てて少しだけの暖かさを求める姿。
「ふー、流石に外は寒いねぇ」
灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)はハラハラと降る雪と、身体のじんわりする冷えで手を擦る。
急拵えの暖かさがすぐに逃げてしまう。
「寒くなるのが分かっていただろう、雪が降ってるって言ってたじゃないか」
乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は普段から手袋派。ちょっとたまに夏仕様、冬仕様で内部に多少の違いがでるが、基本的に見た目は一緒。
「来る前に手袋を付けるようにと言った気がするんだが……」
出掛ける前の身だしなみチェック時の梓の一言である。
綾は、ん~と軽い返事をしただけで、普通に忘れてきた模様。
「忘れちゃったよ。だからほら、俺なんて指先まで冷えっ冷えだよー」
ほら、触ってみなよ。
差し出す右手は強ばるように若干震えていて。
「いざとなれば仔竜の焔を湯たんぽ代わりに……って、うわっ、本当に手冷たいなお前!」
梓の左手が凍える手を捕まえて、びっくり。
今さっき手を温めてなかったか?冷えの方が勝ってるじゃないか。
「……あれ?」
「いつまで手握ってるだ……あれ?」
なぜだか手が離れない。握手したような形から、ぴたーっと離れないのだ。
これも、はらはら舞い落ちる電気質の雪の悪戯か。
「くっついて離れなくなっちゃった」
へへへ、面白い。そしてふんわり暖かい。
綾は笑うが、ひとつ予め聞いていた事を思い出した。
「男にはNの、女性にはSの電気が貯まるって言ってたのに……」
手を上に、下に。やっぱり離れる気配がない。
男同士でもピタッとくっついている。不思議なものだ。
「ということは梓は女の子だったんだね」
だってオカン属性がキラキラだもんね。
凄いなあ、遂に父の壁は母に屈したのかー。
「いやいやいや、そのボケは無理があるだろう」
なんでやねん、なツッコミ付きでぺちり。
「確か他にも言っていただろう、確か、好意を抱いているとくっついて、しまう、って……ッ」
――それが事実なら、こうしてくっついたのは……。
事実は奇にして真実。
――妙に小っ恥ずかしい気持ちにさせてくれるじゃないか。
ツッコミを繰り出した手で思わず口元を隠したくなる。
――普段から、サングラス完備で本当に助かった。
「とにかく!くっついてしまったのは仕方がない」
無理に離れようとすればそれも出来ると聞いた。だが、それをするしないも当事者次第。
「適当に時間を過ごしていればじきに離れるだろう」
「そうだねー、せっかくだからこのままクリスマスパーティに参加しようよ」
パーティーにはお菓子もあるという話だ。
クリスマスなご馳走も、学生たちが作っていたり学園の資金でデリバリーしてもらったり色んなモノを揃えているのだとか。
ピザとか、有名店のチキンとか。結構豊富に揃えてくれているらしい。
聞いただけでなんだか気分がポカポカしてくるではないか。
「それはいい、良いんだが……」
ずっと手繋ぎ状態か、と改めて認識するとまあまあ恥ずかしい部分がある梓。
結構な高身長な二人が仲良し離れられない仲と在校生たちに見られ――。
「……っ」
「未成年だけくっついちゃう訳じゃないみたいだし、面白い悪戯日に来ちゃったんだって思っておこうよ」
くっついた梓の手がどんどん熱を持っていくのを感じる。
凍えた手が、寒いともう訴えない。空いた片手にも、同じくらいの熱量が伝わるような気がして。
あっついだともすぐ離れようよとも思わない。二人の手が上手いこと離れなかったのは、実は綾がこのままで、と思っているからだ。
好意と好意の重なりだけれど、やっぱり寒いに勝てる温度は手放すには口惜しい。
――良いでしょ、今日くらい。
会場につくと、ワイワイと生徒たちがくっつきあっている。
勿論、それは電気質の雪のせい。パチッパチッ、と爆ぜる密かな電気の音はツリーからよく聞こえる。
この状況を、何処かに居るモーラットは望んでいるのだろう。嬉しがってピカピカと光らせているのだ。
その場に居てくれたら、クリスマスツリーはずっとキラキラを維持できるのに。
「あー、こんなに美味しそうなお菓子が沢山あるのにー」
皆平等、お好きにどうぞ。在校生たちもそう言ってくれているので、手が空いていたらスナック菓子に手が伸びるのに。
しかし使いたいのは右。今は梓の左手と一緒。
「右手がふさがっているから食べられないー」
「いや大人しく左手を使えば食えるだろうが」
綾の左手はポケットにイン!
そんなものありませーん、と言いたげにニコリと笑って。
「ねえ梓、俺の為にお菓子食べさせてよ」
いいでしょ?だっていま手が使えないもん。
楽しげに、そしてあーんと口を開けて待つ。
――こいつ、この状態を存分に楽しんでやがるな……。
「ったく、仕方がないな。どれだ?」
今視線が落ちていた場所。スナック菓子をひょいと手に。
ご要望通り、菓子を綾の口に運んでやる。
学生たちの視線は気にしないようにしよう。
「おいしー。あ、あれもたべたーい」
「はいはい」
こんなクリスマスの楽しみ方だって、あるだろう。
ずっとくっついたままの手を、ぎゅっと握り込んでおけば。
ただ仲のいい関係に見えるだけさ。クリスマスって、そういう日でもあるだろう。
メリークリスマス。君の手は、とっても暖かいキズナの一つ。
離れても、またその手を取ろう。
寒い冬の中も、別の季節でも、その手をきっと捕まえよう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
もふも…モーラット大好きなので…!
くっつけると聞いて来ました…!
もふもふ歓迎カムオンです
……英語よくわかんないけど使い方合ってる??
電気の跡を追って少しうろうろしてみようかな
もふもふ大好きとは言ったけど、単純に一緒に遊びたいから
あ、モーラットって飴とかも食べれるのかな?
もし運よくモーラット達とくっつけたなら
至福の気持ちは心に潜め
優しくもふもふ撫でながら★Candy popを見せてみます
君達、これ食べれる?
一緒に食べよっか
大きいままが危ないなら杖でえいやっと砕いてあげる
えへへ、くっついたままだとちょっとくすぐったいね
美味しい?
よかったぁ、僕の手作りなんだ
メリークリスマス
君達も楽しんでね
●パチパチ火花(スパーク)大開放!
たたたた、と軽い足取りで掛けてきた表情はニコニコ。
多少ぱちぱちと粒の大きい雪だとしても、構わない。
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は頬をほのかに赤く染めて。
ぎゅ、と握った手は触りたい手触りを想像するかのよう。
「もふも……モーラット大好きなんで……!」
あのフォルム、可愛らしさ全て二重丸!
「捕まえるとか、仲良くなれるではなくてくっつけると、聞きまして!」
来てしまいました。良いクリスマスじゃないですか。
最高ですね、それでモーラット達はどこでしょう?
「もふもふ大歓迎カムオンです!」
英語の意味は実はよく分かっていない。
流暢で滑らかな外国圏の人が喋る言い回し的にはこれで良いはずだけど。シンフォニアである澪は耳が良いので、リスニング的にはバッチリという自負はある。
ただし、意味まではちょっと――。
「あれ?……ええと、使い方、合ってる??」
一応在校生の子たちに恐る恐る訪ねてみたり。
「あってるよー!」
「さあきなさーい、って気持ちなんだね!」
ふふふと笑ってくれた在校生たちのおかげで、英語の意味を理解した。
今日はなんて素敵なクリスマス。
「ツリーは今はあんまり光ってないみたい。ううん、遠くに行っちゃったのかな……」
中庭に置かれた機械類。電飾。
ぱち、ぱちと音を立てている様が、電気の跡であるのなら。
白くてもふもふな子たちはその場を通ったか、近くにいるはず。
少し、中庭からキャンパスに入る廊下あたりをウロウロしてみよう。
お散歩と、それから散策と。
「もふもふ大好きとは言ったけど……」
単純に遊びたい気持ちがあるので、まだ見ぬモーラット達は何が好きかなー、と思考する時間に充てる。やっぱり此処に住んでるようなものなら、なにかしらモノを食べるのかな。
「あ、モーラットっと飴ってすんごく可愛いんじゃない?」
モノを食べるなら、飴とかお菓子類だって食べられるのではないだろうか。そう思うと、是非その瞬間を見たくなるじゃないか?
だって絶対可愛いじゃないですか、それって。
廊下の角を曲がって、モフッとした何かにぶつかった。
『もきゅ?』
ふよーっとふわふわ移動していたモーラットをなんと身体できゃっち。
「わあ、運良く逢えたよー!」
こんにちは、はじめましての挨拶を二匹へ。上質なもふもふした毛並みを撫でて、ふわあと胸が物理的に暖かくなるのを感じる。
――ああ、これが至福の喜び……。
頬が緩むのも仕方がない、心に潜めて置くべきだがもふもふの前ではこれが礼儀だ!
「突然くっついちゃってごめんね?」
『もきゅーっ!』
ぺぺぺぺ、と短い手で澪にアピールする。さながら突然ぎゅーってするなよぉ、とでも主張するかのような勢いだ。でも安心して欲しい。決して全力イヤイヤしているわけでは、ないから。
「まぁまあ、落ち着いて。そしてこれを見て欲しいのだけど」
手にはくっつく前から持っていた小瓶。Candy pop。
小瓶を揺らせばカラコロと、軽くて甘い誘惑の音を立てる。
「君達、これ食べれる?」
『もきゅ!』
もう一体のモーラットがぺたっ、と澪の頭のフィットするようにくっついて上も下ももふもふだ。
防寒着要らずのあったかさに、頬が既に蕩けてしまいそう。
『きゅー……』
一緒に食べたいようで、しかし彼らの口は結構小柄。
貰っても口に含めそうにない、と分かったようでちょっとマユゲが垂れ下がる気配。そしてぺちちち、と小瓶を叩く振動。
「ふふふ、ちょっと大きいのが多いからね。ちょっとだけ待って」
愛用の杖をバトンのように短くして握り、聖なる加護を付与するようにこつんと飴を叩いて砕く。
ポップな飴をキラキラエフェクトを発生させながら割れば、あら不思議。モーラット二匹がとても喜んで手をパタパタしているではないか。
ねえねえ頂戴ちょうだーい!とお願いポーズをしているみたいだ。
「えへへ、くっついたままだとちょっとくすぐったいね」
もふもふパチパチ、静電気までおまけについて来る。
砕いた飴を二体に渡せばむぐむぐ、とすぐに口に含んでくれた。
「美味しい?」
『もきゅー♪』
『きゅぴっ♪』
嬉しそうな声で体を揺らして喜んでくれる二体。
「そっかよかったぁ、僕の手作りなんだよ」
ねえもうちょっと入れくれる?僕と一緒に、ツリーのところへ行こうよ。君達も二人で楽しんでいるのかな、ふふ。
メリークリスマス。
君達が居るとキラキラが余計に増えるっていうキラキラポップなツリーを見せて? 君達のお気に入りの場所とか、よかったら教えて?
モーラット達がもっと飴を頂戴、とパタパタ手を揺らすので澪とはもう少し一緒に居てるようだ。外はモーラットみたいな雪が降っている。騒がしく、そして自由気ままな毛玉の隣人と暫く愉快な時間を共有すると良い。澪がいれば、中庭の明るさは最高を誇るだろう。
君の飴で、色んな人が楽し笑顔でクリスマスを過ごせるはずだ。
談笑の中で、ぱちっ、ぱちっ、と弾ける火花(怪我をさせるようなものではない)が色んな所で爆ぜた。
二人も楽しんで、と願う澪の期待に応えるようにシュガーとフェザーと呼ばれるモーラットが楽しがって余計にパチパチ悪戯しているのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴァン・ロワ
【黒】2
アドリブ◎
あれれ〜?ご主人サマ、俺様が賢すぎてどこ出身だか忘れちゃった〜?
ダークセイヴァー育ちなもんで、これが初めての学校かなぁ〜
揶揄いながら頭の端で磁力の事に思考を巡らせる
…ははっ面白いじゃん
僅か一瞬挑戦的な笑みを浮べ
ご主人サマの手に手をくっつける
いや〜離れないねぇ〜
あ〜どころかもっとくっついちゃう
ごめんねご主人サマ♡
終始笑ってはクロウに抱きつくようにしながら
頬やらをくっつける
…反発して無いってこと、気づいてんのかねこの人は
なぁんだそんなお誘いかぁ
ん〜別にご主人サマに害はないよ
特に企んでるわけでもないし
効果はそのまま
ただ力ってのは無尽蔵じゃないからね
砂時計がひっくり返っただけだよ
杜鬼・クロウ
【黒】2
俺、銀誓館学園って初めて来たわ
もし通ってたらどんな学生生活送ってたンだろうなァ
犬っころは学校行ってたのか?
不思議な電気に関して自分には関係ないと断言出来る
(俺もだがアイツが俺に好意持ってる訳ねェし)
と思ったら手がくっつく
あ?何引っ付いてンだ駄犬が
離れろ暑苦しい(離れた
俺で遊ぶなや
背中やほっぺなど離れてくっつく
…オイ、ホントにくっついてる訳じゃねェよな?(混乱し焦る
…今回、誘ったのは聞きたいコトがあったからだ
お前が俺の誕生日に贈ったあの力
使わせてもらったが、…犬っころがくれたヤツにしては(捻りがねェというか
言いたかねェが助けにはなった
あの効果、本当はなンなんだ
教えろ
てんめ…何企てやがる?
●Hourglass spills
頭に綿のようなボタ雪がふわ、ふわと降りてくる。
湿気の強いものではない。むしろ乾きすぎている。
このキャンパスにだけ妙に滞るゴースト性電気も相まって、なんだか乾燥しがちの空気だ。
体感の話であって、肌寒い事には対して強い意味を出すことはない。
人にとっては、ちょっと不思議。
モーラットやゴースト、妖獣なんかが好む性質の霊的電気だと思うと良い。それが降り注ぐ、知らず識らずに蓄えなくていい悪戯電力をその身に帯びたとしても――。
「俺、銀誓館学園って初めて来たわ」
第一声、男から出たのはそんな言葉。
「ガッコーね。もし通ってたらどんな学生生活送ってたンだろうなァ」
杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)のオッドアイの瞳に映ったものは、在校生たちがパタパタ楽しげな声でグループを組んでいる様子。
クラブだか結社だか、委員会だか、何らかの集まりなんだろう。
事前に聞いた不思議な力の電気質のせいで不意にピタッとくっつきあっては、其処に笑いが生まれている。
高校生から小学生まで、幅広い年代がキャッキャとはしゃいで楽しそうなもんで。
ヤドリガミである事を思えば、あれくらいの年代で通っていたとすると――。
生まれ世界とこの世界の発展性の違いも在る。
これくらい近代の学校なら、とクロウは想像してそこそこ活発に運動部にいたかも知れない。
この学校、ソフトボール大会なんかもあるので、二番エース三冠とかキメていたかも知れない。
あくまで、聞いた話から想像しただけだが。
「もし通ってたら?今から通えば良いんじゃない?」
猟兵は全員、希望すれば確かに入学できるらしい。
年齢層は運命の糸症候群で見た目相応でない学生がいるせいで、何歳でも問題ないような環境でさえある。実に、実にややこしい仕組みの学校だ。寺子屋ならもっとスパッとわかりやすいのに。
「今更誰が通うか!んで?……犬っころは学校いってたのか?」
クロウが尋ねれば飼い犬は笑うばかりだ。
「あれれ~ご主人サマ、俺様が賢すぎてどこ出身だか忘れちゃった~?」
パタッ、と頭上の耳をわざとらしく揺らすヴァン・ロワ(わんわん・f18317)。
「ダークセイバー育ちなもんで、制服だなんだって聞いてもイマイチピンと来ないかな~」
これが初めての学校訪問。
校風的は明るいようでどこか暗い影を落とし、能力者な学生は青春と隣り合わせ。
明日居るはずの誰かは偽身符であることがある。
それは、本人そっくりの偽物だ。不在を誤魔化す札の力だと言っても良い。
居るはずの誰かは戦いへ、しかし普段の日常はいつもどおり続いていく。
ヴァンはこの学校の有り方はまあ、嫌いじゃない気はした。
彼基準で在るため、嫌いじゃないの秤の振り幅は誰が関わっても多く見通すことはできないだろう。
訪れた学校が異様なほど大規模のマンモス校で、それもそのうちひとつのキャンパスにやってきた。
なんてわりと何を言われているかよくわからない。何この規模。常識的に考えて可笑しくない?
普通じゃない所だらけ。変なトコとは思う。思っただけだが。
――で、なんだって?
――此処で雪を浴びると身体が磁力を帯びる?
頭の隅で磁力の事を思い浮かべるヴァンの表情に揶揄う言葉以上の色合いは含まない。クリスマスでも、いつもどおりを装っている。
「……ははっ面白いじゃん」
僅か一瞬の猟奇的で挑戦的な笑みだって、クロウは見ることは叶わなかった。
既に十分溜まった筈だろう、雪なら踏んでる分も降ってくる分もある。
「不思議な電気に関しては関係ねェし、……」
学生たちの楽しそうな様子を見てもこちらは状況が違うはずだと断言できる。
クロウが狗へ、ヴァンが飼い主へそういう好意を持ってる訳がない。
つん、と手が当たる感触。
「あ?」
「あ~ホントだ。関係ないのにご主人サマの手とくっついちゃったや♥」
くっついた手をこれみよがしにクロウまで持ち上げて見せつけるヴァンの顔はとっても笑顔。
「いや~離れないねぇ~困ったねぇ~」
「何引っ付いてンだ駄犬が」
無理やり剥がそうとして、しかし簡単には離れられずむしろ流れず逆らわないヴァンが絡みついてくる始末。
「ごめんねご主人サマ❤」
くっついた場所は手から抱きつく形へ。
流石にクロウの耳に幻聴でぶち、と何処かから聞こえるようだった。
「離れろ暑苦しい」
仲良くくっ付く性質が在るなら、反発磁力だってある当然だろ。
それがクロウの主張だ。いとも簡単に離れてやれば、証明できるだろ。
「え~不可抗力でしょ~?」
始終笑って、ついでに頬をくっつけて余計にぐりぐり。
不思議な力でなんだか妙にからかいがいがある。
ついでに背中越しにもべったりしてやろう。
「俺で遊ぶなや」
「ええ~?」
――良い玩具が何を言って……。
「……オイ、ホントにくっついてる訳じゃねぇよな?」
「そんな訳ないでしょ~」
パッと離れておもしろ要素で遊びして、舌舐めずり。
――"反発"はしてないんだって事。
――ぜーんぜん目に入ってないのかなぁ~?
――ご主人サマってば気づいてないね、これは。
ただ戯れられた、そう思っているに違いない。
そう観えても可笑しくないように、してみせたのだから当然だが。
「……今回、誘ったのは聞きたいコトがあったからだ」
真面目なトーンで語る口調に、今度はくっつき斃しておくかと思うヴァン。
「なになに?」
「お前が俺の誕生日に贈ったあの力――」
「なぁんだそーいうお誘いかぁ」
ヴァンの軽い落胆。
もっとユカイなことかと思ったのに。
「言いたかねェが助けにはなった」
「ふうん、それは良かったね~」
何処の誰を助けるためにその力を使ったのか。
尾の毛ほども興味など持たないのだが。それを言う場面ではないはず。
「あの効果、本当はなンなんだ」
「ん~ご主人サマに害はないよ」
クロウは裏があると睨んでいる。
いや、きっと裏は在るはずなのだ。
しかし"クロウに害はない"は嘘ではない――それだけは視える。
「てんめ……何企んでやがる?」
だからこそ、何が裏にあるのかを知らねば。
お祭りの雰囲気に乗じ口を割らせて、欠片でも聞き出さなければならないと。
「毎度必ずは企んでるってキメて掛かるのはどうかな~」
――読みは正しいけどね~。
「特に企んでるわけでもないし、素直で可愛い贈り物でしょ?」
誕生日に贈るには最適な形だし。
贈り物という所がポイント高いでしょ。
「効果はそのまま」
使ったんなら、見たよね。ああいう代物なんだけど。
なにか不満が?
「ただね、力ってのは無尽蔵じゃないからね」
ねえみて。クリスマスツリーの電飾、死ぬほど光ってる。
この場の電飾担当が、中庭で楽しくやっているのだろう。
眩しくて見ていられない。さっきまでそんなコト、なかったのに。
"誰かのために"なんてお人好しな誰かもいたもだなあ。
「砂時計がひっくり返っただけだよ」
逆さ時計の天秤は、その砂を返し始めた。
その意味が、賢い賢いご主人サマには分かるかな~?
「分かってもわからなくても良いけど~クリスマスにする顔じゃないよ、それは」
メリークリスマスって、誰かにその顔で言えるの?
子供たちを怖がらせるんじゃない?"命"とか落としそう。
「……駄犬の癖に」
始終笑うヴァンが再度手を触れて、今度は無理にでも離れてやらない。
何をしてもだーめ。だから精々答えが出るまで考えて♥
「狗らしく大人しくしてるよね~?」
混乱する主人に優しくしてあげる俺様って懐深いよね~?
ねえクロウ。そうでしょ~?
●after that
雪が降る。しんしんと。
ホワイトクリスマスらしく、パーティの賑わいを白がじわじわと埋めていく。
モーラットのちからでパチッパチッと音を立てる電飾も、その明るさを保ったまま。誰かが付けた足跡をまた新たな雪で隠して、誰かと誰かが不思議な力でくっついて賑わいはずっと続く。お菓子に、お喋り。それから、それから――。
このパーティのおしまいは、クリスマスという日のおしまいまで続く。
学生も、学生じゃなくても無礼講。
ただし、この場限りのお約束だ。先生たちもそれは見逃せない。
お家に帰る時間になったら寄り道せずに真っ直ぐに帰りましょう。
猟兵だって、パーティ参加者なら例外はない。
学生たち同様、真っ直ぐうちに帰ることを推奨される。
不思議な磁力が解けるのは、星宮キャンパスを離れた時。
不思議な縁を結ぶ力を可視化したら、距離感はだいたいこうかも知れない。
ただしそれは人間基準ではなく――。
モーラット基準の話だが――。
大成功
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