月の満ち欠けに呼応して輝く謎めいた城塞。
その中央部に近い一室でダンピールの少女は粛々と、蝋燭に火を灯していた。
それは闇夜を照らすための行為ではなく、大事な人を守るためであった。
「ごめんねお母さん、今日は火しかもらってこれなかったの。だからご飯は……」
少女が謝ると、歪な形をした蝋燭からくぐもった女性の声が聞こえて来た。
「ぃぃぉ、ぁ……ぉぅ……」
「……褒められるようなことなんかしてないよ、お母さん」
少女は微かに聞こえる声に答えると、残った火で他の蝋燭も灯すべく、涙が流れる目を伏せながら早足で去っていった。
猟兵達が第五の貴族との戦いを優勢に進めた結果、地下都市たる下層には「月光城」と称される城塞が幾つもあるということを突き止めた。
この城塞は共通点として「月の満ち欠けに呼応して輝く」という特性があり、その結果「あの月は本物の月ではない」という発覚が遅れてしまったという。
「まあ、ダークセイヴァー出身の自分ですら知らない情報でしたので……。ただ、分かったからにはしっかり調査をしてきました!」
丸い月を他世界で見てきても「まあ、異世界のことだし」と片付けてしまっていたルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は申し訳なさそうにしながらも胸を張った。
かの城塞には「月光城の主」と呼ばれる強大なオブリビオンが君臨しており、第五の貴族の干渉すら阻み、あらゆる存在の侵入を遮断しているらしい。
「その目には眼球と満月を組み合わせたような見た目の『月の眼の紋章』なる物が嵌め込まれており、目から棘鞭を突き出して攻撃したり、所有者の力を『66倍』にまで引き上げたりする力があるそうです」
この紋章は城の中にある「人間画廊」と呼ばれる部屋にいる人間をエネルギー源としており、そこから人間を「解放」させる毎にその効力を失っていくという。
「紋章の効力が失われるのは大体部屋にいる半数の人間がいなくなった頃……とのことです。ただ人間画廊から人々を逃すには多くの障害があります」
まず一つ目は人間画廊に至るまでの道中である。「一定の重量で崩れる足場」「等間隔に降り注ぐギロチンの刃」などが各地に配置された広い迷宮となっている城内には「怨呪の鉄棺」と呼ばれる人の脳髄を埋め込む事で自律駆動出来るようになったアイアンメイデンが何十体も巡回している。
アイアンメイデンは一度侵入者を見つければ体内で串刺しにするまで侵入者を延々と追いかけ回す。
もし間違った道に逃げ込んでしまえば、乗り越えることすら出来ない行き止まりで鉄棺の餌食となってしまうだろう。
「このアイアンメイデンも月の眼の紋章の効果なのか、今まで確認された物よりも高い性能を持っております。前述した罠に対処するばかりでなく、逆に利用するぐらいでないと鉄棺を封殺することは出来ないでしょう」
次に「月光城の主」こと「穢血のエルンスト」だ。
ダンピールを偏愛する彼は人間の女性を攫っては魅了し、犯し、自分の子を産ます。そして無事子が乳離れをしたら、人間画廊の「燃料」にするのだという。
「人間画廊へ送られた女性達は皆、蝋で固められ、自力で動くことは出来ず、火がついていなければ窒息して死んでしまう……という状態に常に晒されます。この過酷な状況によって女性達への魅了は解けるようですが……時すでに遅しという話です」
そして、火をつけるのは自ら腹を痛めて産んだ子供達だ。
ダンピール達は母親の命を保つために父親の命に従い、様々な悪行を重ね、その対価として蝋を溶かすための火種や食料を得ているという。
「つまり人間画廊の人々は『燃料』兼『人質』というわけです。もし蝋を溶かせたとしてもずっと動けずに体力も筋力も落ちている彼女達が、自力で罠だらけの広い城内からエルンストに気づかれる前に逃げ出すことははっきり言って不可能です」
何より人間画廊はエルンストの玄室……もとい寝室に併設されており、気づかれることなくたどり着き、蝋燭を担いで気づかれる前に早急に撤退、という手は普通の人間ならまず出来ない。
「また、やりたいことは同じであるダンピール達についてですが……ポッと出の我々がすぐに信用を得ることが難しい上にエルンストが破格の報酬を提示して来れば、敵対することは避けられないでしょう。……ただダンピール達もやむに負えない事情があったとはいえ罪人であります。最悪の結果になってしまっても、自分は責めません」
しんと静まり返った会議室に、ルウの吐息の音が響き渡る。
「やることは非常に多いですが……エルンストの悪業を終わらせるため、どうか皆様の力をお貸しください。以上、よろしくお願いします」
平岡祐樹
シリアスフルスロットル。お疲れ様です、平岡祐樹です。
今回はすっかりご無沙汰になった下層にて、高台に浮かぶ「月光城」の制圧と、中にいる女性達(+ダンピール)の解放が目標となります。
なお解放は「この世からの解放」でも構いません。どうしようもなくなった時の最終手段として、頭の片隅に置いてください。
あ、諸悪の根源たるエルンストは問答無用で殺してください。
第1章 集団戦
『怨呪の鉄棺』
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POW : 咎喰い
【伸縮自在の鉄針】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【血の記憶から、過去の咎】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : 怨呪葬
命中した【防御不能】の【全発射鉄針】が【鉄棺内へ引きずり込む怨呪の針】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
WIZ : 荒れ狂う怨みの脳髄
【埋め込まれた脳髄から発する怨み】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
イラスト:塔屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
四王天・燦
至難でも母も子も助けに臨むぜ
ただ紛いなりにも相手は父親…シンドイ仕事になりそうだ
床の軋み具合や、ギロチンが動作する為の溝を暗視と視力と罠使いで見切って回避する
アイアンメイデンに見つからないよう差し足抜き足忍び足…
闇に紛れて忍び寄り神鳴一閃
部位破壊・首で脳髄の入っていると思しき頭部と胴体を切り離す
見つかってしまえば仕方ない
ギロチンの通路に引き返し粘り蜘蛛糸と降りくるギロチンで足止めするよ
怨み爆発は厄介だし犠牲者も可哀想だ
稲荷符による結界術を用いて浄化と慰めの場を構築して感情の爆発を鎮める
足止めが効いている内に炎属性攻撃の狐火を放って紋章を焼却し、脳髄を加熱して破壊して逝かせるぜ
南無阿弥陀仏
「至難でも母も子も助けに臨むぜ……ただ紛いなりにも相手は父親……シンドイ仕事になりそうだ」
話を聞き終わるや否やそう断言していた四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)は月光城に忍び込むと柱の影に隠れながら周囲を窺っていた。
更なる犠牲者を求めて針だらけの腹を開けながら進むアイアンメイデンの姿が城の光に反射して怪しげに光る。
「石造りだから軋むことは無いのがありがてぇが……」
ギロチンが動作した時に刻まれたであろう均一でない溝を持ち前の視力で見破り、罠使いでそれが作動する仕掛けの位置も見破る。こういう時は機械の類が発展してない世界であることがありがたい。
あとはアイアンメイデンや件の娘と思われるダンピール達がこちらに向いていないタイミングに差し足抜き足忍び足で影から影へ移り渡る。
そして僅かな闇に紛れた燦は脳髄の入っていると思しき頭部と胴体の間を神鳴が一閃した。
切り離された頭部が音を立てながら石畳を転がり跳ねる。そのけたたましい音にアイアンメイデンやダンピール達の視線が燦へ集中する。
「誰!」
「見つかってしまえば仕方ない」
挑発するようにニッコリ笑って見せてから燦は踵を返してギロチンが仕掛けられている通路へと逃げ出す。
「まずいまずいまずい! もし侵入者を逃したら1日どころじゃすまない!」
焦るダンピールの声を背中越しに聞きながら燦はわざとギロチンの起動スイッチを踏み抜きつつ、特製の糸玉に吐息を吹きかける。
すると糸玉から強力な粘着性と鋼の強靭さを持つ蜘蛛糸が噴き出し、幾何学模様を描き切る前にギロチンに叩き落とされた。
しかし糸は千切られることは無く、そのままギロチンの刃を地面に接着させて戻らなくさせた。
『盗賊ギルドが再現したアビリティの蜘蛛糸だ。簡単には抜けられねーぜ』
これだけの大きさなら、踏み台でもない限り乗り越えることは出来ないだろう。ギロチンの刃越しに苛立つダンピールの声を聞きながら燦は正面に群れを成してやってきたアイアンメイデンを見遣る。
予め挟み撃ちをするために遠回りしてきたか、それとも騒ぎを聞きつけて持ち場からわざわざ離れてきたか。
アイアンメイデンがカタカタと震え出したところで燦は即座に稲荷符を投げて結界を張り、その中に浄化と慰めの場を構築して感情の爆発を鎮めた。
「怨み爆発は厄介だし犠牲者も可哀想だ」
アイアンメイデンも元はエルンストによって殺された者達が改造された姿だという。
燦はギロチンで閉ざされた通路をダンピール達が乗り越えてくる前に狐火を放つ。
結界によって稼働を停止していたアイアンメイデン達は金属製の本体も紋章も脳髄も等しく焼却されていく。
「南無阿弥陀仏」
ここで死ねても第三層以上があることはわかっているが……せめて彼らがこの呪縛から解放されることを祈り、燦は目を閉じて合掌した。
大成功
🔵🔵🔵
ソフィア・アストレワ
そうか、猟兵となった今ならばグリモアの力に従うことで”帰って”これるのか。
しかし前任の猟兵らが下層から4層へ来れたからといって下層……生前に居た場所の闇が総て祓われたというワケではないのだな。
良いだろう、ならば未だ蔓延る悪辣なる者共を打ち倒し民を助けてみせよう。
まずは城の中を探索せねばならないようだ。
立ちふさがるは棘を備えた鉄棺か。
しかし一刻も早く人々を助け出さねばならぬ以上、鉄棺人形ごときにかかずらっている暇などないっ
鉄棺人形よ、私を止めたくば殺すしかないぞ。
だが私は今や死ねぬ身だ……つまり貴様らに出来る事など何一つとして無いッ!
吹き飛べ!道を開けろ!
(ユーベルコード【暴風】使用、鉄棺を吹き飛ばし進む。あるいは吹き飛ばした先に罠があれば、そこを避けて進むことになるだろう。その逆もまた然り。
鉄棺からの針はハルバードで弾き、あるいは受け。捌ききれずに己が身を貫く針もあるだろうがソレで足を止めることは無い……矜持と覚悟を持って進み続ける、魂人であるが故に絶命すら永劫回帰でもって覆す)
「そうか、猟兵となった今ならばグリモアの力に従うことで”帰って”これるのか」
盲点だった、と言わんばかりに目を見開いてソフィア・アストレワ(戦慄の騎士・f37611)は自らの膝を叩く。しかしそれに対するルウの反応は冷ややかな物だった。
「いえ、常闇の燎原って一方通行じゃないんで。狂った神々を蹴散らせるだけの実力があれば自力でも戻れますよ」
「……そうなのか?」
「ええ。ただ常闇の燎原が第3層のどこにあるかなんてつい最近まで分からなかったことですし、ソフィアさんが知らなくても仕方がないことではありますよ」
「なるほど」
ゆっくりと噛み締めるように呟いたソフィアは壁に立てかけて置いていた、自らの愛機であるハルバードを持ち上げる。
「つまり前任の猟兵らが下層から4層へ来れたからといって下層———生前に居た場所の闇が総て祓われたというワケではないのだな。良いだろう、ならば未だ蔓延る悪辣なる者共を打ち倒し民を助けてみせよう」
そうして決意を固め直したソフィアはエルンストが治める月光城へと脚を踏み入れた。
「立ちふさがるは棘を備えた鉄棺か……」
本来ならば騒ぎにならないよう、身を隠して進むべきだろう。しかし一刻も早く蝋の中に閉じ込められている人々を助け出さねばならぬ以上、鉄棺人形ごときにかかずらっている暇などない。
「鉄棺人形よ、私を止めたくば殺すしかないぞ。だが私は今や死ねぬ身だ……つまり貴様らに出来る事など何一つとして無いッ!」
堂々と大声をあげながら目立つ場所に飛び出したソフィアに対し、アイアンメイデン達は一斉に突進を仕掛けていく。
しかしそのまま衝突してくるのではなく、自ら蓋を開けて大量の人の生き血を吸ってきた鉄串を露わにしてきた。
「吹き飛べ! 道を開けろ!」
物理法則を無視して伸び、ソフィアを貫こうとする鉄串がハルバードで弾き飛ばされ、その本体自体も高々と跳ね上げられる。
宙を舞った鋼の巨体は激しい音を立てて地面に墜落し、動かなくなった。恐らく脳震盪を起こして意識が飛んでいるだけであろう。
しかし悠長にとどめを刺せる余裕は今はない。今の戦闘音に気づいてまた新たなアイアンメイデン達が集ってきた。
だが吹き飛ばした先に罠があれば、そこを避けて進むことになるがその逆もまた然り。アイアンメイデンが転がっても何事も起きていない通路へソフィアは全力で突っ込んでいく。
これをひたすら繰り返し続けていれば逃げ切れず捌き切れずに己が身を貫く針や刃もあるだろう。だが矜持と覚悟を持って進み続けるソフィアがその程度で足を止めることは無い。
なぜなら彼女は魂人であるが故に絶命すら【永劫回帰】でもって覆せるからだ。
「ああもう、今日は一段と騒がしいわね! なんでこんな時に限って私の当番なのよ……!」
一つ上の階からソフィアの姿を見つけたダンピールが呻き声をあげながら階段に向かって走り出す。
あのダンピールも、この奥に捕らえられた女の子供だという。彼女達にとっても、いくら自らの命を繋ぎ止めてくれるとはいえ、あの子供は忌々しき存在なのだろうか。
生殺与奪の権利を握られている今、娘達の存在は非常に重い。だが自由を取り戻し、娘達の庇護が必要ではなくなってからは?
「……まあいい、どうするかは彼女達に聞いてからだな」
仕掛けを踏み抜いたことで、鎖に繋がれた刃が勢いよく落ちてくる。しかし全力で何ふり構わず走り続ける半透明の体を間一髪の所で捉え切れず、硬い石畳にぶつかって鈍い音をたてた。
金属が擦れ合う音を立てながら刃が天井に仕舞われ、隙間が出来た瞬間にアイアンメイデンは体内の串を伸ばしてくる。
だが刃が道を塞いでいた間に距離を十二分に取れていたソフィアは振り返って迎え撃つ構えを取れており、無闇に突き出された串を起点にしてアイアンメイデンを吹き抜けになった空間へ弾き飛ばした。
成功
🔵🔵🔴
エリー・マイヤー(サポート)
ごきげんよう、グリモア猟兵さん。
掃除が必要と聞いて手伝いに来ましたエリーです。
【念動力】で掃除できる相手なら任せてください。
とりあえず、念動力で敵の攻撃を防ぎつつ反撃する感じですかね。
単純に念動力で押したり曲げたり捻ったり千切ったりとか、
集めて一塊にして纏めてぶん投げたりとか、
あるいは重い物を掴んで振り回すのもありでしょうか。
尖った力で貫いたり、鋭い力で切り裂いたりとかもできますよ。
重力を相殺して浮かべて動きを封じたりとか、
逆に地面に押し付けて潰したりもいいかもですね。
まぁ、状況次第でそれっぽく戦えますので、適当にこき使ってください。
精神攻撃なんかは対処が苦手ですが…
やれるだけやってみます。
頭部に埋め込まれた脳髄から発せられる怨みの感情の爆発に比例し、アイアンメイデンがその大きさを増し、ギロチンを押し除けるように通路を突き進んでいく。
「恨み辛みは理解できますが、無関係の私達にその矛先を向けないでいただきたいですね」
眉間に皺を寄せて煙草を燻らせるエリー・マイヤー(被造物・f29376)は向かってきたアイアンメイデンを念動力で浮かすと、すぐ横の壁へ豪快に叩きつけた。
巨大かつ硬い物体の衝突によって、石造りの壁は音を立てて崩れていく。
出来たばかりの空間も使って四方八方から取り囲むように詰めてきたアイアンメイデン達も強い重力で押し潰され、歪んで出来た穴から脳髄だった物とみられる赤い液体を噴き出させる。
だがダンピール達は歯を食いしばって引かなかった。
自分よりもはるかに強い存在が成す術なく壊されていく様を前にして、自分達では相手にならないと分かっていてもなお、なぜ彼らは引かなかったのか。それはこの月光城で日常的に行われていたある事が理由であった。
ダンピールという種を愛する父はどれだけ役に立てないような子供でも決して自らの手で殺すことはない。
だが代わりにその子の母親を殺す。役目も果たせぬ者を産んだ劣等種として、無惨に、残酷に。
「役立たず」となってしまった腹違いの家族はその様を目の前で見せ続けられ、自分の魂の灯火がジワジワと消されていく絶望と恐怖か、自らを救えなかった子への怨嗟に満ちた母の視線や言葉に発狂し、大抵自ら死を選ぶ。方法ならこの城にいくらでもあるからだ。
そして、その遺体を処分するのも子供達の仕事の1つ。
私語を交えず淡々と掃除を行いながら彼らの脳裏に恐怖と共に強い決意が刻まれる。「自分はこうはならない・なりたくない」という強い思いが。
だから彼らは引かなかった。自分の母の口からあの悲鳴や罵詈雑言を聞きたくないという一心で。
だがそんな悲壮な覚悟程度で、猟兵を圧倒できるならダークセイヴァーはすでに滅亡している。
「一応、可能であれば生かしておけと言われたんでね……。グリモア猟兵さんに感謝なさい?」
エリーは口から煙混じりのため息をつき、空を見上げる。そこには無重力にされた空間で前にも後ろにも動けずに浮かばされたダンピール達が罵詈雑言を並べ立てていた。
成功
🔵🔵🔴
白百合・リア(サポート)
旅行してる気分で様々世界を気ままにぶらりしながらついでに依頼もこなしてる元能力者で現魔女な妖狐
魔女っぽく荘厳に振る舞っているが、気を抜いたりびっくりしたりしたらすぐに素の口調に戻る。
基本的に人がいいので命や心を大事に行動し相手の心に寄り添おうとする、例えそれが敵であっても(倒すときはしっかりと倒す)
魔女として色んな物を召喚したりグレートモーラットのすたーと鴉の雅と共に協力したり戦う
極偶に元詠唱兵器でちょうちん妖怪・百合桜雲の灯篭(愛称:ゆさぐも)もカタコトで助言だったり冷やかしだったりして手伝う
自分だけでいい&すたーと雅が危険と判断したら自分だけ戦う。
共闘OK
過剰なエログロNG
「月の満ち欠けに応じて光る城か。どうしてそうなってるのかは分からんが中々に面白い建造物じゃあないかい」
花がついた百合の茎を回しながら、白百合・リア(白百合よ桜よ吹雪け咲き乱れよ・f37508)は回廊を歩いていく。
「でも、天井に連なってるこのギロチンと、人の脳髄を埋め込んで動かしてるとかいうアイアンメイデンは遠慮したいねぇ。あと、人を閉じ込めて作った蝋燭もあるんだったか。ここの持ち主、本当に趣味が悪いねぇ」
救出隊というよりも観光客のような感想を呟きながらリアは作動スイッチに触れない様に気をつけながら、仄かに光る石畳を進んでいく。
そこへ人を串刺しにしながら閉じ込める腹を大っぴらして見せつける一体のアイアンメイデンが迫ってきていた。
「……言ってたそばから来ちゃったか。まぁ、しょうがないか」
金属と石が擦れ合う音で接近に気づいたリアは手に持っていた百合の花に息を吹きかける。
花弁はあっさりと茎から離れ、宙を舞う。それは時間が経つごとにどんどん枚数を増し、地面に触れた物から新たな百合の花が伸びて咲き誇る。
そしてそれらがアイアンメイデンに轢かれると、辺りには百合だけでなく桜に似た花弁も舞い始めた。
視界が塞がれるほどの花吹雪に包まれたアイアンメイデンは少しずつ動きを緩め、やがて完全に停止する。目の前が見えなくなって周囲を警戒したのではなく、完全に意識を喪失したのだ。
「脳髄だけにされたとはいえ、意識はある。疲れなくはなったかもしれないが……直接信号で『眠れ』と命令されたら抗えまい」
リアはアイアンメイデンの頭を指で弾くが、アイアンメイデンは目覚める気配はない。
「我は命や心を大事に行動し相手の心に寄り添おうと思ってるのだよ、例えそれが敵であっても。ただ……お主が好き好んでなったとは到底思えぬのだよ」
問いかけても答えが返ってこないのはわかっている。そもそも聴覚が残っているかどうかも怪しい。
「もし、自ら希望してこの体になったのだとしたらすまぬな。だが、我はこれ以上お主のような者を見たくないのだよ」
そう言ってリアはアイアンメイデンによく分からない機械を取り付け、スイッチを押す。
すると機械から引き起こされた高周波によってアイアンメイデンは激しく揺れ出し、中にあった脳髄はぐちゃぐちゃに砕けて頭部に開いていた穴から滴り落ちていった。
成功
🔵🔵🔴
ウィンザー・ワンドゥーム(サポート)
☆お任せになります☆
『俺の名はウィンザー!しがない戦車乗りだ!』
サイボーグの戦車乗り×ハイウェイスター、27歳の男
外見 青い瞳 普通の肌
特徴 ミリタリー 特徴的な髪型 ワイルドな顔立ち 家電マニア
普段の口調は「スラム式会話術(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」
敵には「スラム式挑発術(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
愛車であるタンクキャバリア『認識票』を用いてガンガン突撃する脳筋な戦いを好みますが作戦に応じて柔軟に対応可能です
「へぇ、この世界にもサイボーグがいるのかよ」
ウィンザー・ワンドゥーム(|超巨大砲台搭載型可変式重戦車《ガラクタ》・f38643)は青く光る目を丸くしていた。
ウィンザーの故郷であるサイバーザナドゥでは脳髄以外全て機械という者はそこら辺に歩いているため、見慣れた存在である。
しかしいくら貴族階級の手先とはいえ、サイバーザナドゥよりも文明が劣ると聞いていたこの世界で遭遇するとは全く想像していなかったのだ。
「まぁ、いいか。とにかくこいつらをブッ飛ばして雪崩れ込めるようにすればイイんだろ!」
愛機である|認識票《ドッグタグ》の無限軌道が回り出し、すでに繰り広げられている戦闘によって砕け散った月光城の外壁やアイアンメイデンだった物を踏み潰しながら城内へ突入していく。
「寝室の近くに撃っちゃダメだとは聞いたが、こんなだだっ広い城で玄関先に自分の部屋を置くヤツはいねぇよなぁ!」
立派な砲塔から放たれた砲弾が月光城の壁に大穴を穿つ。当然、蝋に包まれた女性の影はその裏にはない。だが代わりに現れた|鉄の乙女《アイアンメイデン》の体内から飛び出した鉄の針は認識票の決して薄くない装甲を貫いた。
「うおっ、マジかよ!?」
運転席に座っていたウィンザーの目前に飛び出てきた鉄針が怨呪を帯びながら変形し始める。
そしてアイアンメイデンは鉄の針を巻き取り始め、認識票を自らの体内に引き摺り込もうとしてきた。
逆に引きずり返してやろうとウィンザーはアクセルを踏むが、履帯は前に進むどころか少しずつ後退し始める。抗おうと回る車輪から嫌な音が聞こえ始め、ウィンザーは歯を食いしばった。
「俺の認識票よりも強い力を出せるなんてやるじゃねぇかよぉ……! だが、これで勝ったと思ったら大違いだ!」
認識票の装甲から開いた穴から青い炎が噴き出し、鉄針を通してアイアンメイデンに引火する。
鉄針が炎の熱で溶けたことで認識票の拘束は解け、込められていた怨呪もアイアンメイデンに逆流する。しかしウィンザーの炎と自らが抱いていた怨呪によって身も心も焼かれながらも、アイアンメイデンは発狂することなく自ら飛びかかってきた。
だがその姿は照準の中央に捉えられていた。
「今度は声が出せる様に改造してもらうんだな、じゃあな!」
轟音と共に月光城の壁にまた、新たな穴が開いた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『脱獄や脱走の手助けをする』
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POW : ●『破壊』:腕力や火力、強靭な体力で設備などを破壊する。
SPD : ●『工作』:開錠の技量や、素早い身のこなしで施設に潜入する。
WIZ : ●『かく乱』:魔法や計略、巧みな話術で見張りなどを排除する。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
追手のアイアンメイデンやダンピール達を振り切り、罠にかかることなく城の奥深くまで潜り込んだ猟兵達はほんの少しだけ開いていた扉の隙間から、月光城の物とは異なる光を見つけた。
大人1人の体重をかけてようやく動いた扉の奥には、女性を模った悪趣味極まりない蝋燭が所狭しと並べられていた。
炎の熱気を感じながら蝋燭のそばで耳をそばだてると自分の物とは違う呼吸音が僅かながら聞こえてきた。
もう迷うことはない。
こここそが、エルンストの力の源である人間画廊であると。
蝋の奥に囚われた女達を救い出すか、魅了されていたとはいえ吸血鬼に身を捧げた裏切り者として処すかは、猟兵達次第である。
四王天・燦
怒りが込み上げるが先ずは全員救出あるのみだ
エルンストに通ずる扉は結界術で塞いで時間稼ぎを施すぜ
この蝋獄から、雁字搦めの現在から助けにきたと鼓舞して救助活動開始
フォックスファイアの熱で蝋を融かし呼吸を確保して
生身を傷つけないよう厚みを見切って蝋を削ぎ落とす
逃げる力のない母子には夢匣に入ってもらい
邪魔するダンピールには此処まで到達した実力をアピールし説得
居て欲しくないが、父親を愛する子だけは符術で気絶攻撃する…
全員に対しエルンストの財と物資を山分けして生きる場所と糧を保証するよ
無責任に自由を押し付けない、脱出したら全員で生き方を考えようと寄り添う
もしも母子の絆がなくとも生きて現状を変えようぜともね
燦は舌打ちをしてすぐ、奥の扉を結界で塞いだ。こんな時に棺桶でグーグー寝ているとは思えないが、万が一に備えておくに越したことはない。
「先ずは全員救出あるのみだ」
「ぁぇ……?」
初めて聞く声に、蝋燭の中から疑問の声が漏れる。込み上げてくるエルンストへの怒りを押さえながら、燦は掌に炎の球を浮かび上がらせた。
「安心しな。この蝋獄から、雁字搦めの現在から助けにきた」
【フォックスファイア】の熱で呼吸路を塞ぐ蝋を融かす燦の姿に気付いたダンピールの少女は気づかれないように息を殺しながら燦へ襲いかかる。
しかし短剣から巻き起こった旋風によって容易く吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「義姉上!」
不意の激突音と悲鳴に驚いて振り返れば、ダンピール達が思い思いの武器を構えていた。
燦は狐火を一旦消し、臨戦態勢のダンピール達へ宥める様に話しかける。
「落ち着け。アタシはお前達のお母さんを助けに来たんだ。此処まで到達した実力を信じてくれないか?」
「し……信じられるか! そう言ってやってきて、父上に返り討ちにされて、アイアンメイデンにされた奴が何人いたことか!」
エルンストによって殺された者達の成れの果てとは聞いていたが、どうやら犠牲者達はこの地で蛮勇を持って挑み、散っていったらしい。
「それじゃあエルンストを倒したら信用……いや」
「父上を倒すだと……愚か者め!」
燦の言葉を遮り、ダンピール達が襲いかかる。しかしオブリビオンでも猟兵でもない彼らは符術によって鎮圧させられた。
「まだやるかい?」
義理の兄弟姉妹が呆気なくやられた様を見て、残りのダンピール達も首を激しく横に振り、手にしていた武器を地面に落として降伏した。
気絶したダンピール達を糸で締め上げたところで、燦は短刀で生身を傷つけないよう厚みを見切りつつ、へばりついた蝋を削ぎ落としていく。
蝋による支えを失った女性は自力で立ち続けられるほどの体力も筋力もなく、その場に崩れ落ちた。
燦は羽のように軽い、華奢な女性の体を抱き上げると蝙蝠の紋章が模られた箱の元へ運んでいった。
「いったんこの中に避難してもらうよ。大丈夫になったら3回ノックしてから引き上げるから」
そう言って燦は女性を箱の中に入れる。その娘とみられるダンピールがすぐさま後に続き……すぐに顔だけ出して驚愕してきた。
「ど、どうなってるんだこの箱は!? 見た目と中身が一致していないぞ!?」
「ふっふーん。アタシの愛する彼女が選んだ素敵な箱さ。無事倒したら、ここにある財と物資を山分けして生きる場所と糧を保証するよ」
「ふざけるな……!」
自慢げに誇っていると地を這うような声が聞こえてくる。その方を向けば、捕縛していたダンピールがこちらを睨みつけていた。
「父上よりも悪辣な者がこの地を治めたら……そうなったら我々はどうやって母上を守れと言うのだ!」
ダンピールが父を敬愛しているのではなく、母のためには今を維持するのが一番だと固く信じていることに安堵しながら燦は狐火を再び灯した。
「無責任に自由を与える気はないさ。脱出したら全員で生き方を考えよう。もしも母子の絆がなくとも生きて現状を変えようぜ」
「だからどう考えても今が一番……おい、聞いてるのかおい。……おい! 聞け人狼モドキが!」
それからずっと喚き続けたダンピールは救出が一通り終わった後に、雁字搦めのまま箱に押し込まれた。その手つきが雑だったのは言うまでもない。
成功
🔵🔵🔴
徳川・家光(サポート)
冒険においては、基本的に「羅刹大伽藍」による力仕事か、名馬「火産霊丸」を召喚し、騎乗技能を駆使した早駆けを利用したスピード勝負を得意としています。
また、冒険では「鎚曇斬剣」をよく使います。頑丈で折れにくいので、鉈や斧、岩盤に打ち込むくさびの代わりに重宝しています。
他には「念動力」技能で離れた場所の物体を動かして驚かせたり、ロープを浮遊させて対岸にくくりつけたりできます。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!
徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は怪訝な表情を浮かべて視線を上に向けていた。
天井から一滴の雫が落ちて床に跳ねる。その一部始終を目で追っていた家光は左手につけていた籠手を撫でた。
この周囲にあった蝋燭はすでに溶かされ、中にいた人々も避難済みだ。だがまだ見逃して取りこぼしている人がいないかどうか、数人の猟兵が見回っていた。
「……すいません、一旦この場から離れていただけますか」
そんな彼らの足を止めさせて、家光はお願いをした。
特に断る理由もなく、猟兵達は互いの顔を見合わせはしつつも家光の周りから距離をとった。
「……【羅刹大伽藍】」
突き出された籠手が巨大化していき、甲冑へと変貌していく。そして家光の体がその中心部に収まると肩上が閉まり、目の部分が発光した。
「いざ!」
家光は腰を捻り、大伽藍の拳を豪快に打ち込む。すると天井に空いた穴から蝋が吹き出し、大伽藍の頭へまるで滝のように降り注いだ。
「……やはり定期的に補充されていましたか」
蝋という物は炎に触れるとその熱で溶けていく。だから、ダンピールが炎を灯すことで中の母親は呼吸をすることが出来た。
しかし溶けた蝋は焚べられ続けていれば蒸発して無くなるはず。にも関わらずこの場にある人間蝋燭はどれだけ時が経とうとその形を維持し続けた。
ならばエルンストが何らかの小細工を施したに違いない。
そして先程見た雫が「白かった」ことで家光は1つの仮説に至った。
「ただの雨漏りなら、透明でしょうからね」
この部屋は寒い。冷え切った部屋の中で放置されていれば勝手に固まっていく。
ならば天井から大量の蝋を貯め、一定の量に達したところで浴びせかけて炎を消すと共に溶けた蝋の補完も行っていたのだろう。
もしこの場でエルンストと戦うことになった際、不意にこれを浴びせかけられたら一部の猟兵はその重量と圧に負けて倒されてしまうかもしれない。
ならば今のうちに破壊して放出させてしまおうというのが家光の策であった。
蝋の滝から出てきた大伽藍の体のあちこちから蝋が滴り落ちる。しかし衰弱した女性達とは違い、その動きが強張ることはなかった。
成功
🔵🔵🔴
ソフィア・アストレワ
さて、首尾よく辿り着けたわけだが。
一人でも多く助け出すならば、やはり人数が肝要となるだろうな。
此処は騎士団を招集し、頭数を稼ぐこととする。
蝋を溶かすための火が要るんだったか。
ならば火打石……紅玉髄と火打金だな。サバイバルの心得はある故、火起こしも術もまた備えている。
あとは火種を紙に着けて、と。
では、騎士団を半々に分ける。
半数は蝋を溶かし、救助。もう半数は救助班の護衛だ。
女性らの身の安全を最優先とし、素早く、しかし確実に脱出するぞ。
ご婦人方、皆様を此処から連れ出します。
後の事はまた検討しましょう、まずは御身の安全を。
皆様の娘さん方については、皆様の意向に沿いましょう。
「さて、首尾よく辿り着けたわけだが……」
ダンピール達とアイアンメイデンの追跡を振り切ったソフィアは人を閉じ込めた蝋燭自身が発する光に照らされた室内をざっと見回す。
いったいどれだけの女性を誑し込んできたのか、蝋燭のあった跡を除いても両の手の指一周では数えられないほどの蝋の塊がそこには並んでいた。
「蝋を溶かすための火が要るんだったか。ならば火打石……紅玉髄と火打金だな」
サバイバルの心得はある故、火起こしの術もまた備えている。
1人呟きながら擦りつけていると、武器も鎧も殆どボロボロにして傷と痣に塗れた素肌を晒した魂人の女性騎士達が駆け足で入ってきて、ソフィアの前へ滑り込むように片膝をついた。
「アストレワ様、遅くなって申し訳ございません」
「別に構わん。ここまで死なずに済めたか?」
「少なくとも私は」
他の騎士達も同じような反応だ。しかしその過程で激戦を繰り広げていたのは装備の消耗から察することが出来た。
散っていた火花が解された藁に引火し火種となる。
「あとは火種を紙に着けて、と……」
焦って消さぬよう紙に当てて風を手で送って火を大きくして、さらに燃える物を近寄らせていく。
そうして出来上がった炎を前に、ソフィアは騎士達の顔を一人一人しっかりと見てから口を開いた。
「では、騎士団を半々に分ける。半数は蝋を溶かし、救助。もう半数は救助班の護衛だ。女性らの身の安全を最優先とし、素早く、しかし確実に脱出するぞ」
「はっ」
「ソフィア様、こことは別の画廊はいかがされますか」
「他にもあるのか……。ちなみにそこに猟兵はいたか?」
「はい、おりました」
「なら彼らに任せよう。無闇に手を広げず、ここに囚われている者に尽力すべきだ」
「かしこまりました」
ここから一人でも多く助け出すならば、やはり人数が肝要となる。
ソフィアの命を受けた炎担当の騎士達によって蝋が溶かされ、中にいた女性達が解放されていく。
自力で立つことも出来ず、その場に倒れ込んだ女性の腰に手を入れて一息に持ち上げたソフィアは恐怖と不安に引き攣る顔に微笑みかけた。
「ご婦人方、皆様を此処から連れ出します。後の事はまた検討しましょう、まずは御身の安全を」
「あの、娘は……」
娘という言葉の音程が、ソフィアの心を揺さぶらせる。
自分にも娘はいたが、今はもう会いたくもないし写真や絵姿だったとしても見たくない。……だが、彼女にとっては違うのだと思うと胸の奥が苦しくなってしまったのだ。
「……皆様の娘さん方については、皆様の意向に沿いましょう」
そう絞り出すように言うと、女性はホッとしたように笑みを浮かべた直後に意識を失った。
呼吸の有無を確認すれば弱々しいながらも胸がわずかに上下に動いている。どうやら安心から気絶してしまったらしい。
遺言では無かったことにソフィアは安堵の息を吐いた。
成功
🔵🔵🔴
エリー・マイヤー(サポート)
どうもグリモア猟兵さん。エリーです。
手が必要そうなので、手を貸しに来ましたよ。
ということで、【念動力】で解決できる事ならお任せください。
そう、遠くから押したり引いたり掴んだりとか、
持ち上げたり回したり投げたりとか、
そんな感じに遠隔で力を加える系のあれです。
動かした感触は何となくわかるので、
微弱な力を撒いてソナー代わりにも使えますよ。
後はスプーンを曲げに曲げてコルク抜きにしたりとか、
タネなし手品で子供を喜ばせるとかも朝飯前です。
や、子供は煙草の臭いで嫌がるかもですが…
ともかく、物理的な問題なら、状況に応じて色々やれますよ。
魔法的・心理的な問題は苦手ですが…
まぁ、やれというならがんばりましょう。
「うーん、話に聞いてはいたものの」
煙草を燻らせながらエリーは蝋から解放されて自分達が担ぎ込まれる順番を座り込んで待つ女性達を眺めていた。
どの女性の手足も骨と皮しかないように見えるほど痩せ細っている。
これが骨折とかだったら対処出来たが単なる栄養失調、運動不足による体の衰えは手術をしても治る物ではない。
となると自分も念動力で女性達を浮かばせて、異空間に繋がっているという不思議な箱の中に入れるか外まで運び出すかと考えていると閉まっていた扉が勢いよく蹴り開けられた。
「やはりここにいたか侵入者め!」
威勢の良い言葉と一緒にダンピール達が入ってくる。どうやらアイアンメイデンはここまで引っ張って来れなかったらしい。
先頭にいたダンピールが手に持っていた銃でおもむろに撃つ。
その弾は念力によって減速し、蝋まみれの床に転がったがエリーは目を細めて首を傾げた。
「おやおや、危ないじゃないですか。もし私が避けるしか出来なくて後ろの方に当たったらどうするつもりだったんでしょうか」
「ふん、別にそこの女が死ねばその分炎を取り合う人数が減るからな!」
「ふむ……」
どうやらダンピール側もこの人間蝋燭が父親の力の源である、ということは知らないらしい。知っていたら少なくとも今のような発言はしないだろう。
そんなことをぼんやりと考えていると、ダンピールが後ろにいた弟から受け取った新たな銃の銃口をこちらに向けようとしていた。
どれだけやっても無駄だと分からない愚かな兄弟が引き金を引く前にエリーは念動力を使って銃を上に跳ね上げる。
急激な力にひっくり返されながら撃ってしまった弾丸は天井に当たり、生じた穴から裏に溜まっていた蝋が噴き出してダンピール達の体に吹きかかった。
口に入ってしまった蝋を唾と共に吐いたダンピールの体がふわりと宙に浮かび上がる。
「はーい、大人しくしてくださいね? 天高く放り投げられて地面にめり込みたくなければね」
まるで子供をあやすような発言にダンピールは反射的に怒鳴り声をあげようとしたが冷淡そのものなエリーの目からその本気度を感じ、二の句を継ぐのをすんでのところで止めた。
成功
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第3章 ボス戦
『穢血のエルンスト』
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POW : 降りかかる火の粉は払わなければいけないね
【高い殺傷能力を持つ黒い霧】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 私の可愛い娘達よ、か弱き父を助けておくれ
戦闘用の、自身と同じ強さの【配下の少女ダンピール】と【配下の成人女性のダンピール】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ : さあおいで、君は私の籠の鳥
【魅了攻撃を仕掛け、自分に対する好意】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【殺傷力のない黒い霧】から、高命中力の【自動的に対象を捕らえる巨大な鳥籠】を飛ばす。
イラスト:瓜うりた
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「マヒル・シルバームーン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ふふ、やはり男のダンピールは劣等種が多い」
そんな嘲るような声と共にダンピールの少女達が全身を使って大きな扉がゆっくりと開く。
その先には燕尾服に身を包んだ「穢血」の異名を持つ吸血鬼———エルンストが肩を竦めながら立っていた。
「まさかこれほどに招いた覚えのない客人が来るのは初めてだよ……私の花嫁の体を焼く火の粉は払わなければいけないね」
そのモノクルの奥には眼球と満月を組み合わせたような見た目の目がキラリと輝いていた。
ソフィア・アストレワ
(「娘」。先だって救出した女性の言葉を反芻する。
死に別れてからおおよそ10年が経つ、そして過酷なる上層でも下層と同じように闘い続けてきた代償として大半の記憶が改竄され尽くした。
母として、娘を思う気持ち自体を失った訳ではないのだ……しかし、いざ娘を思い出そうとすれば『心的外傷と化した思い出』が蘇り、それだけで気が狂いそうになる。
娘を愛せなくなってしまった自身の不甲斐なさと、娘を愛せる女性への羨ましさとが涙となって零れ落ちる。
そこに、吸血鬼が現れた。)
いや、貴様は我々を“招いた”のだ。
民の……人々の思いを、尊厳を踏みにじり顧みぬ行いこそが我々を招いた。
そして覚悟するが良い、もはや貴様は許しを請える立場に無いのだから。
(斧を振るえば暴風が巻き起こる。先の鉄棺の如く、黒い霧もまた吹き飛ばされるだろう。
或いは霧が彼女の身を蝕むこともあるだろう、だが彼女が歩みを止めることは無い。
苦痛を覚悟で塗りつぶし、永劫回帰で以て死をも覆す。
そうして道を強引に切り開き、仇敵吸血鬼を圧し切り潰さんと迫る。)
「『娘』か……」
先だって救出した女性が発した言葉を反芻する。
今もなお下層にいるか、自分を追って上層に来てしまったかは定かでないが、ソフィアには一人娘がいた。
だが死に別れてからおおよそ10年が経つだろうか……過酷なる上層でも下層と同じように闘い続けてきた代償として、ソフィアの大半の記憶は改竄され尽くしていた。
母として、娘を思う気持ち自体を失った訳ではない。……しかし、いざ娘を思い出そうとすれば『心的外傷と化した思い出』が蘇り、それだけで気が狂いそうになるのだ。
本当は楽しい思い出だったのか、それとも元々忌むべき記憶だったのか……それすらも曖昧だ。
ため息が漏れる。その頬には娘を愛せなくなってしまった自身の不甲斐なさと、娘を愛せる女性への羨ましさが混じった物が伝う。
そして無意識のうちに呟かれた4文字の固有名詞は重い扉を開いた時に生じた摩擦音によって掻き消された。
「ふふ、やはり男のダンピールは劣等種が多い」
燕尾服に身を包んだ「穢血」の異名を持つ吸血鬼———エルンストの発言で思い返してみると、確かにここに来るまでに対峙したダンピールは男が多かった気がする。
しかしエルンストの後ろに侍る女のダンピールの人数を見ると、単純に男が外回りをやっていたせいで猟兵の餌食にあっただけのように思える。
しかしエルンストは結果だけを重視して、息子達の不甲斐なさに肩を竦めているように見えた。
「まさかこれほどに招いた覚えのない客人が来るのは初めてだよ……私の花嫁の体を焼く火の粉は払わなければいけないね」
「招いた? いや、貴様は我々を“招いた”のだ」
ソフィアは目を擦り、エルンストを睨みつけながらハルバードを構える。
「民の……人々の思いを、尊厳を踏みにじり顧みぬ行いこそが我々を招いた。そして覚悟するが良い、もはや貴様は許しを請える立場に無いのだから」
「ほうほう、ずいぶん威勢の良い女人ではないか。堕落させて私の手に弄ばれる様を想像しただけで胸が熱くなる」
眼球と満月を組み合わせたような見た目の目が瞬き、黒い霧が辺りに立ち込め始める。
控えていたダンピール達が散り散りに距離を取る中、ソフィアによってすでに横倒しにされていたアイアンメイデンがそれに触れた瞬間、震えながら女人を模った目から大量の血の涙を流し出した。
娘達が蜘蛛の子を散らすように逃げたのを見るとあの涙は強化による代償ではなく攻撃を受けた結果だろう。
ソフィアは柄を握る力を強めて片足を半分浮かせながら腰を捻り、斧を振るう。
『吹き飛ぶが良いッ!』
巻き起こった【暴風】が先の|鉄棺《アイアンメイデン》の如く、エルンストも黒い霧も周囲から四散させる。
体を浮かすことはなかったが、抵抗する間も無く朧げに光る城の壁に叩きつけられたエルンストは止まった息を吐き出すと同時に笑い出した。
「なるほどなるほど。ただの肌の白い女人ではなく相応しい胆力も持ち合わせているか! 私の遺伝子を与えた子を宿すに相応しい!」
「黙れ!」
エルンストの恍惚を一喝し、仇敵吸血鬼を圧し切り潰さんとソフィアは迫る。
その身を受け止めんばかりにエルンストは再び霧を形成し出す。
その度にソフィアはハルバードで霧散しにかかるが、完全に散り切る前の塊が彼女の顔面に当たって目や鼻、喉を蝕んでいく。
だが彼女が歩みを止めることは無い。
苦痛を覚悟で塗りつぶし、【永劫回帰】で以て死をも覆す。それが魂人となった彼女の不屈の戦い方だ。
「さぁ、来なさい。可愛がってあげようではないか」
まるで誘い込むような仕草に虫唾が走る。ソフィアは拒否の念を込めながら、その端正な顔面に斧刃を叩きつけた。
大成功
🔵🔵🔵
ラハミーム・シャビィット(サポート)
シャーマンズゴーストのUDCメカニック×戦場傭兵、25歳の男です。
口調は、掴みどころの無い変わり者(ボク、キミ、デス、マス、デショウ、デスカ?)
人と少しずれた感性を持っていて、面白そうならどんな事にも首を突っ込む、明るく優しい変わり者です。
戦闘時にはクランケヴァッフェや銃火器の扱いは勿論、様々な近接格闘術などでド派手に暴れ回ります。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
「父様……」
エルンストが殴られたのと、黒い霧が晴れたことで遠巻きに眺めていた女のダンピール達がそれぞれ近づいてくる。
それはソフィアに追随するのではなく、彼女を殺すためであった。
母親のために渋々協力している者もいれば、心の底から父親を尊敬している者もいる。そしてエルンストも自分に反抗の機運を見せない者のみを側仕えとしていたのだ。
「オット、ここは通しまセンヨ?」
その行く手をラハミーム・シャビィット(黄金に光り輝く慈悲の彗星・f30964)は大槌の頭を垂直に床へ叩きつけて遮った。
「……どけ」
抑揚のない声でダンピールが突き出してきた槍の穂先を大槌で弾き返す。
しかしダンピールは反撃を喰らう前に体勢を素早く立て直し、すぐさま追撃してきた。
「オヤオヤ、どうやら外回りの子達と同じとはいかないようデスネ?」
長く伸びた赤い嘴から口笛を吹きながらその一撃を捌いたラハミームはカウンターから一転して、長年の経験で培ってきた超高速連続攻撃をしかけた。
その速度にダンピールは目を見開きながら槍で応戦する。ただ武器の質量の差は使い手の力量で埋め切ることは出来ず、木製の柄は一発を喰らうたびにしなり、ヒビが入り、最後には砕けて床に落ちた。
「さすがキミのお父様が護衛に指名するだけの実力者と言えマスネ? でもコチラもキミのお父様を野放しにするわけにはいかないンデネ?」
青い瞳をキラリと輝かせ、ラハミームは大槌を掌の中で回転させて柄の先端部でダンピールの鳩尾を突く。
強烈な一撃ながら広範囲の骨や内臓を潰さぬ一撃にダンピールは白目を剥いて崩れ落ちた。
「最悪このまま殺してもイイそうですが……アナタのお母様が生きて欲しいと願うならそれを尊重せねばなりませんカラネー。命拾いしまシタネ?」
返事が戻ってこないと分かりつつも声をかけたのは背中越しに感じる視線に対する牽制だ。
「サテサテ、アナタ方はどうしマスカ?」
問いかけに対する答えは無言。衰える気配のない殺気に肩を竦めながらラハミームは振り返った。
成功
🔵🔵🔴
スカーレットスター・クリムゾン(サポート)
「自分から殺されに来たんだ、怨むのは違うだろ?」
「正義や悪でしか判断できないのか?……なら『お前の意志』は何処にあるんだ?」
「ちょうど濃厚なワインが飲みたかった所だ、この後は上質なヴィンサントも控えている、楽しみだよ」
貴種ヴァンパイアであり大規模マフィアファミリー『知恵の蛇』を束ねる女帝。
マフィアとして自由に動くの為にパラディンとして爵位を得る。
武器の大鎌は『知恵の蛇』の女帝、聖槍はパラディンとしての言葉にしない意思表示。
雪の様に真っ白な長髪
高身長でスレンダーな美人。
服装は黒主体の露出しない上流階級の布質のパンツスタイル
冷静沈着で冷酷
誰も選べない事も即決する。
【NG】R15以上のエロ、恋愛描写
眼球から涙のように生えた棘が斧刃によって砕かれた顎を固定する。そして常人……ならぬ常吸血鬼離れした回復力がエルンストの顔を元に戻した。
「ふざけた身体能力だな」
感心半分嫌悪半分の感想を述べながらスカーレットスター・クリムゾン(マフィア『知恵の蛇』を束ねる女帝・f39213)は漆黒の大鎌の柄で床を叩く。
上手く嵌まったかどうか確認するように顎を掴んで左右に動かしたエルンストはスカーレットスターの雪の様に真っ白な長髪で覆われた口から覗く長く伸びた犬歯を見つけ、喜色満面の笑みで尋ねてきた。
「その歯……おやおや、貴女も吸血鬼ではないですか。私を助けに来てくださったので?」
答えは当然、沈黙である。
自分の誘惑に靡かない様が自分との敵対を示すことだと分かっていたエルンストは心底残念そうに目を細めながら首を横に振った。
「……ただの火事場泥棒でしたか。ですよねぇ、この月光城を領地に得ることは私達にとっての名誉でもありますから。……なら、せめて私の腕の中で死になさい」
エルンストは再び黒い霧を展開して部屋の中を埋め尽くさんとする。対するスカーレットスターも大鎌を軽く一回しして黒い霧を放ち出した。
「誰が誰を殺すって? もう一度言ってみな?」
その言葉を最後にスカーレットスターの姿が黒い霧の中に消え、紋章が刻み込まれた目をもってしてもその姿を捉えることが出来なくなった。
スカーレットスターの黒い霧はエルンストの物とは性質が違う。エルンストが外面に作用するなら、スカーレットスターのは内面に作用する。
1つはスカーレットスターを視聴嗅覚での感知することを不可能にする。もう1つは生命力の減少だ。
黒い霧も人々を誘惑しながら縛り上げる目も脅威だが、どんな傷でも数分も経たずに治ってしまうあの回復力は厄介この上ない。
自分から黒い霧を出してくれたおかげでスカーレットスターの霧はその中に紛れ込み、エルンストの体を自覚を持たせないままジワジワと蝕んでいく。
あとは他の猟兵がエルンストを討つ前に自分が倒れないだけだ、とスカーレットスターは袖で自分の口を覆った。
成功
🔵🔵🔴
キャロル・キャロライン
子を、恋人を、妻を攫い、魅了してダンピールを生ませる
まったくいい趣味をしているわね
ここにいる貴方の子供達を全員斬り捨てたら、少しは奪われる痛みや苦しみを感じるのかしら?
……それとも、また生ませればいいだけと捨て去るか
挑発になるか、本性を露わにするか、さてどちらかしらね
周囲に《弾》を生成し、遠間から攻撃
敵が《弾》に対応している隙に《移動回路》で加速し、間合いを詰める
魅了の力や霧は《真眼》で見切り、右手に生成した《剣》で受け止め、切り裂き、余波は《バリア》で防御
《剣》と《弾》の同時攻撃で隙を伺い、《移動回路》で視界外に転移
《剣》を突き刺し、消えることのない呪焔を放つ
貴方も蝋燭にしてあげるわ
「子を、恋人を、妻を攫い、魅了してダンピールを生ませる……まったくいい趣味をしているわね」
向かってきたダンピールを返り討ちにしたキャロル・キャロライン(処断者・f27877)は霧の中にいるであろうエルンストへ語りかける。
「ここにいる貴方の子供達を全員斬り捨てたら、少しは奪われる痛みや苦しみを感じるのかしら?」
「ふふ、私の遺伝子を受けたにも関わらず貴女方に負けるのは女の劣等な部分を多く継いでしまったからでしょう。そんな者はどれだけ切り捨てられようと構いません。貴女方ごときを圧倒出来なければこの地を、この世界を統治することなど夢のまた夢なのですから!」
自分の力と教育に絶対の自信があるのか、霧の中から現れたエルンストはそう高らかに謳い上げる。
偏執的なダンピール信者だと聞いていたが、どうやらエルンストが抱いている愛情は世間一般の愛情とは同意でないらしいと内心で断じたキャロルはオーラを練り上げて弾を大量に生成すると、遠間から一斉に放った。
エルンストが両目から棘を伸ばしてそれらを叩き落としている隙にキャロルは体内の移動回路を起動させて加速し、エルンストとの間合いを詰める。
そしてオーラを集中させて作り上げた剣を右手に握りしめて斬りかかったが、エルンストは量を増した棘で刃を受け止め、ぐるぐる巻きにしながらキャロルを自分の懐へ引き摺り込んだ。
「どうです、貴女も私とこの世界の次代を担う者を作りませんか?」
「蝋まみれの老後なんてお断りよ」
魅了の力が自分の思考を蝕む前に心眼で察知して顔を背けたキャロルは刃にオーラをさらに込めて、縦横ともにその大きさを増させる。
その急激な変化に追いつけなかった棘が弾け飛んでキャロルにぶつかってきたが、オーラのバリアを事前に貼っていた肌や服に傷がつくことはなかった。
そこへさらにおかわりの弾丸が飛んでくる。それらの対処に追われ、意識が分散した隙をついてキャロルはエルンストとの距離を取り直した。
しかし着地した先にあった、床にこびりついた小さな蝋の塊にバランスを奪われて尻餅をついてしまった。
痛みというよりも羞恥で顔を歪ませたキャロルは尻を摩りながら起き上がり、自分をこんな目に合わせた蝋を見つめる。そしてあることに思い当たった。
「……そっか。やられたことが無いから平気でそんなことが出来るのか」
「なんです?」
エルンストが笑顔を見せながら首を傾げる。だがわざわざ説明してやる気はキャロルにはなかった。
「……貴方も蝋燭にしてあげるわ」
移動回路を使ってエルンストの頭上に転移したキャロルはその頭頂部に深々と刃を突き刺す。
そして棘に捕らえられる前に飛び退いて指を鳴らすと、剣は消えることのない呪焔に包まれた。
エルンストは絶叫しながら両手と棘を剣に伸ばすが、棘は巻き付いたそばから炎に飲まれて焼け落ち、一息に刃を抜こうとしても腕の長さが足りない。
熱さに悶えながらエルンストは刃を手の内で滑らせて少しずつ剣を抜いていこうとするが、遠目からその様子を眺めるキャロルは剣に更なるオーラを加え、その刀身を伸ばしていった。
成功
🔵🔵🔴
四王天・燦
|紋章《借物》の力に溺れ、死体を冒涜し、女の尊厳を踏み躙り、我が子に悪事を働かせ挙句に劣等種…
魅了された女性がいなけりゃ怒り任せに突っ込む所だ
人間の盾ほど厄介なものはない
配下に破魔と浄化の稲荷符を乱れ撃ちで撒き散らし魅了を掻き乱して退避を促す
正気でエルンストを慕う者には気絶攻撃の符で昏睡させるよ
(野郎なんて真っ平御免だが)魅了は狂気耐性で抗いながら
アークウィンドを振るって旋風で外した稲荷符を舞いあげる
風と浄化で霧を祓うぜ
掌への自傷で意識を覚醒させ、見え見えの鳥籠を回避撃墜の算段だ
ダッシュで詰めらば大理石の剣を(あわよくば紋章の眼球に)ブッ刺して石化の呪詛を浴びせる
身動き封じて精気循環の符を貼りつけレベルドレインで石化への抵抗力を更に奪うよ
いくら下衆でも父親
子供の手前、一思いにトドメは刺す
エルンストの城や資産、奪ったレベルは力に溺れないよう諭した上でダンピール達に振り分けるぜ
二章で人狼モドキなどと他種族を見下す言葉を使った子は性根を叩き直すべく徹底的に鍛えてやる
お母さん護れるよう強くなれよ
「|紋章《借物》の力に溺れ、死体を冒涜し、女の尊厳を踏み躙り、我が子に悪事を働かせ挙句に劣等種……」
エルンストの所業に燦の堪忍袋の緒は切れかかっていた。魅了された女性を盾にされてなければ怒りに任せてまっすぐ突っ込んでいたくらいには。
故に頭に燃え盛る剣を突き立てられて苦悶の声をあげている今の姿は溜飲が下がる物だったが、一方で自分の身を焦がしてもなお助けようとする娘達がいるのはショックだった。
「全員が全員嫌々従ってるんだと信じたかったけどな……」
剣が娘達の手によって抜かれ、地面に投げ捨てられる。すかさず大穴が空いた頭頂部を埋めるべく棘が張り巡らされたが、その回復速度は初めよりも格段に鈍っていた。
「剣か炎に何らかの細工が仕込まれていたのか……!」
引かない痛みにエルンストは顔を歪ませる。しかし見覚えのある女性の姿に気づくと焦燥の色を引っ込ませて、これまで多くの女性を狂わせてきた笑みを浮かべた。
「おや、いとしの君よ。なんでこんなところに出てきているんだい?」
蝋に閉じ込められた苦痛で醒めたとはいえ、魅了への耐性はついていない。目から光が消えると同時に女性は頬を綻ばせながらエルンストの元へ歩き出した。
「マッズい……!」
人間の盾ほど厄介なものはない。燦は女性の顔にぶつける勢いで破魔と浄化の稲荷符を乱れ撃った。
符が当たった衝撃かその効能のおかげか、正気に戻った女性はすぐに慌てて後ろに下がった。
「なぜ離れていくんだい? さあおいで」
エルンストが手招きすると同時に黒い霧の中から巨大な鳥籠が浮かび上がる。棘だらけの拷問用ではなく単純に閉じ込めるためだけに作られた物体はその役目を果たす前に横から割って入った燦の跳び蹴りによって壁に激突してひしゃげた。
「お父様の邪魔、許さない」
「ああもう、次から次へと!」
矢継ぎ早にくる刺客に苛立ちながら燦は気絶の稲荷符を展開し、襲いかかってきた娘達を手当たり次第に昏倒させていく。
「この程度なら殺すまでもないということですか。この娘でも力不足というのなら……今度は猟兵とでも組み合わせてみましょうか」
そう呟かれた瞬間、燦の視界が明滅して思考や記憶が黒く塗り潰され、その後にピンク色の液体をバケツでぶち撒かれるような感覚が脳内で暴れ出した。
「……っざけんな!」
野郎なんて真っ平御免だ、と燦は自分の掌に爪を突き立てる。その痛みで勢いが弱まった瞬間に妖精の祝福を受けた短剣を抜いた。
地面に落ちていた符が短剣から起きた旋風で舞い上がり、部屋に滞留する霧と混ざって浄化しながら散らせていく。
完全に消え去る前に悪足掻きの如く鳥籠が落ちてきたが、燦は捕まる前にエルンストに向かって蹴り飛ばした。そして鳥籠が打ち落とされる隙に駆け出しながら白い魔剣を抜き、その切っ先をエルンストの右目に突き刺した。
「貴様、私の、大切な、紋章を……!」
エルンストは眼窩を襲う激痛に左目を最大限にまで見開き、怨嗟の声をあげる。だが燦は一呼吸置く間も無く魔剣の柄から手を離すとすかさず新たな符を取り出してエルンストの額に叩きつける。
『御狐・燦が命ず。符よ、此の者の力を奪い取れ!』
真っ白だった符が金色に染まり出すと同時に右目の辺りからエルンストの体が真っ白な石へと変わり出した。まずは視界が真っ白に染まり、困惑の声を上げようとした時には唇も舌も固まった。
「いくら下衆でも父親は父親。子供の手前、一思いにトドメは刺してやんよ」
エルンストは反射的に両腕を上げたが、燦を掴む前に完全な石像と化してしまった。
エルンストから剣と符を外し、押し出すように蹴る。たったそれだけでバランスを崩した石像は地面に衝突して砕け散った。
自分達が去った後に別の吸血鬼が住み着かないよう、猟兵達は月光城を破壊し、アイアンメイデンの中に残された脳髄を埋葬し、城の中に蓄えられていた装飾品や美術品を粗方回収して皆当分の生活が出来るように分け与えていく。
中には父親に殉じようとする者もいたが……その母親も子を自分の子供だと頑なに認めようとしなかった。それも父親に傾倒していた理由の1つだったのかもしれない。
「これで全部終わりか」
金色に染まっていた符が真っ白に戻ったところで燦はダンピールの額からそれを外す。
エルンストに付けた符———精気循環の符は力やを奪い取るだけでなく、奪ったそれを他の者に移し替えることも出来る。その効果を用いて子供達に父親の力を分け与えたのだ。
だが月の眼の紋章は受け継げなかったらしく、文字通り「目の色が変わる」者は現れなかった。
「力が漲ってきたか? でもその力を弱者を甚振るためには使うな。自分自身と、大切な人を守る時にだけ使え。もし約束を違えた時はアタシが直々に手を下しに来てやるからな」
そうしっかり釘を刺してから燦はダンピール達を皆解放した……かに見えた。
「ちょっと待て、お前にはまだ用がある」
離れようとした少年の頭をガッチリホールドする。
「よくもさっきは『人狼モドキ』などと他種族を見下す言葉を使いやがったなぁ? その性根叩き直してやる」
どうやら乱暴に箱の中に突っ込む程度では腹の虫は治っていなかったらしい。燦は母親の元まで少年を引きずっていくと、事情を話した上で拉致した。
「お母さん護れるよう強くなれよ〜」
そんな言葉をかけられながら行われたブートキャンプを完遂させられた少年は母親から同一人物か疑われるほど礼儀正しくなった……という。
大成功
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