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フォロー・ザ・ムーン

#ダークセイヴァー #【Q】 #月光城 #月の眼の紋章

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#【Q】
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#月の眼の紋章


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●月光
 常闇の世界ダークセイヴァーにありて陽光が差し込むことはない。
 仄かに光を放つのは月光のみ。
 しかし、他世界を知り、このダークセイヴァーの地上と思われていた世界が『地下第四層』であることを猟兵たちは知った。
 ならばそれはおかしなことである。
 此処が地下であるというのならば、天井とも言うべき空に浮かぶあの月はなんだ。
 あるはずのない月が天上にありて地下を照らしているという事実に気がついた猟兵は、手がかりとなる情報を求め『第五の貴族』との戦いを続けてきた。

 その結果、得られたことがある。
『第五の貴族』たちの階層、すなわち『地下都市』の所々に『月光城』と総称される城主不明の謎めいた城塞がいくつも存在しているというのだ。
 この複数存在する『月光城』には形は違えど、共通点が一つ存在している。
『月の満ち欠けに呼応して輝く』
 その特性だけが共通している。

 これが果たして地下世界であるダークセイヴァーに浮かぶ月となんの関係があるのかはわからない。
 もしかしたのならば、徒労に終わってしまうかもしれない。
 けれど、価値はある。
 オブリビオンに支配された世界にあって月光の如きか細い希望であっても、それを手繰ることによって導くことのできる未来があるのならば、猟兵たちは尽力を惜しまないのだから――。

●敗北者の名は
「お前は吸血鬼だな」
『月光城』の一つの内部にて、黒き外套に身を包み、漆黒を溶かしたかのような挑発の男が手にした銀の剣でもって一人の殉教者の首を跳ね落とす。
 目深にかぶった黒い帽子の鍔に隠れた白い顔に浮かぶ表情は知れず。
 憤怒でもなければ、悲哀もなかった。
 ただ事実を告げるように、その正誤を確かめることなく殉教者の首を跳ねたのだ。

 しかし、『破滅の使徒』は首を跳ねられてもなお、それを救済だと微笑むのだ。
「ええ、吸血鬼です。死こそが救済。我等に御命令ください。貴方様の敵を連れて参りましょう」
『破滅の使徒』と呼ばれるオブリビオンたちは皆、殉教者であった。
 救いを齎さんとし、その救いこそが死であると気がついてしまった者達である。
 彼女たちは皆一様に誰かを救いたかったのだ。
 苦痛しか産まぬ世界。
 そんな世界にあって救いとはなんであるかを求め、そして殉教の果てに、苦しみと哀しみから逃れるには死しかないのだと気がついてしまった。

 過去に歪み、彼女たちは絶望にまみれた世界を巡り、未だ救われぬ生命を己の主である『狂気に飲まれた復讐者』へと差し出すのだ。
 それこそが目の前に存在する彼女たちの主にして、『月光城』の主でも在る『狂気に飲まれた復讐者』である。
 すでに名前はない。
 嘗ては吸血鬼に復讐を誓った人間である。
 あらゆる手段を用い、あらゆる力を持って吸血鬼を退けてきたが、彼の中にあったのは復讐だけだった。
 それ以外はなかったのだ。

「お前も吸血鬼だな」
 すでに彼の瞳にはあらゆるものが吸血鬼に見えている。
 復讐の彼方にあるのが、人間性の消失であるというのならば、狂気と復讐だけによって彼はオブリビオンへと変貌する。
 哀れと呼ぶに相応しき者。
 もはや復讐の先に何が見えていたのかも忘れ去ってしまった存在。

 その剣も、手にした銃から放たれる弾丸も、何もかもが復讐と過去に飲み込まれ歪み果てた。
「吸血鬼吸血鬼吸血鬼吸血鬼吸血鬼吸血鬼――吸血鬼を連れてこい」
「はい、仰せのままに。我等が救済を共に」
 そう告げる『破滅の使徒』の首がまた飛ぶ。
 永遠に続く非合理な殺戮だけが月光城の中に死の気配を撒き散らし続け、狂気に苛めれていく――。

●その月を追え
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。みなさんもすでに御存知の通り、ダークセイヴァー世界は地下世界です。その地下世界の謎を追う一端として、『第五層』において幾つか見つけられた城塞――総称して『月光城』の一つを調査して頂きたいのです」
 ナイアルテは、これが危険な冒険になることを猟兵たちに一言断る。

『第五の貴族』との戦いを猟兵たちは優勢に進めてきた。
 ここに来て猟兵たちはさらなる世界の謎に迫るために、見つけられている『月光城』を調査することを選んだのだ。
 しかし、全ての『月光城』には『月光上の主』と呼ばれる強大なオブリビオンが君臨しており、『第五の貴族』の干渉すら阻み、あらゆる存在の侵入を遮断しているというのだ。

「そうなのです。『月光城』は主である『月光城の主』の配下オブリビオンが蠢き、そして数多の罠で溢れかえっているのです」
『第五の貴族』の干渉すら遮っているという事実からも、『月光城』内部の罠が尋常なものではないことは言うまでもないだろう。
 さらに悪いことには配下オブリビオンたちは皆、強化されたオブリビオンである上に、城の内部の罠は不安定な足場であったり、降り注ぐギロチンの刃、毒矢などあらゆる罠が存在しているのだ。
「強化オブリビオンを相手にしながら罠を躱す……とてもむずかしいことかと思われます。ですが、これを抜けて『月光城の主』まで辿り着かねば、この『月光城』がダークセイヴァーにおいて如何なる役割を果たしているのかさえわからないでしょう」

 真実を追い求めるのならば、虎穴に入らなければならないということなのだ。
「さらに『月光城の主』の玄室に続く道はさらに危険な罠が仕掛けられているのです……それだけではなく、この『人間画廊(ギャラリア)』と呼ばれる道には、人々が『絵画』の中に『生きながら捕らえられて』いるのです。どうか、罠を突破しながら彼等を救出していただきたいのです」
 ナイアルテの言葉は無理を承知のことであっただろう。
 けれど、彼女の予知はそれが『月光城の主』と戦う上で重要な要因になることを示していた。

「はい……『月光城の主』と呼ばれるオブリビオンは紋章持ちであり、『眼球と満月を組み合わせた』ような『月の眼の紋章』をその身に融合しており、その戦闘力は……」
 彼女の細い首が音を鳴らす。
 そう、その紋章を持つオブリビオンの戦闘力は『66倍』にも及ぶのだという。
 とてもではないが今の猟兵であっても敵うことはない。
 だが、勝機がないわけではないのだ。

「どうやら『人間画廊』に捕らえられている方々が少なければ少ないほどに弱体化するようなのです」
 人々の解放こそが勝機につながるのならば、猟兵たちも戦いようがあるだろう。
 兎にも角にも危険な冒険である。
 ナイアルテは転移の準備を進めながら申し訳無さそうに頭を下げる他無かった。
 猟兵たちがやるべきこと。
 オブリビオンを打倒し、人々を開放する。
 さらに『月光城』を調査するために『月光城の主』を討つ。

 今まさに途方も無い困難な道が拓かれようとしていた――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はダークセイヴァーに存在する『月光城』に踏み込み、オブリビオンを打倒するシナリオになります。
 世界の真実に迫るため、か細い情報を辿るため困難な道を突き進みましょう。

●第一章
 集団戦です。
『月光城の主』の配下である『強化オブリビオン』である『破滅の使徒』がうごめく、恐るべき『月光城』の内部を突破しましょう。
 城の内部は不安定な足場や降り注ぐギロチンの刃に毒矢、落とし穴、迫る壁などあらゆる罠が皆さんに襲いかかります。
 この罠に対処しながら『強化オブリビオン』である『破滅の使徒』の群れに抵抗しながら城内を進まねばなりません。

●第二章
 冒険です。
『月光城の主』の玄室に続く、危険な罠……毒の沼と一体化した『人間画廊(ギャラリア)』を突破しましょう。
 ここには人間が『生きながら捕らえられて』います。
『絵画』の中に捕らえられた人々を、罠を突破しながら救出しなければなりません。
『絵画』は額縁を破壊すれば人々を開放することができます。
 彼等を解放したら、一先ず安全な場所に隠れてもらい、『月光城の主』撃破の後に助けに戻りましょう。

●第三章
 ボス戦です。
『月光城の主』、『狂気に飲まれた復讐者』との戦いになります。
『月の眼の紋章』を持つ『狂気に飲まれた復讐者』の戦闘力は『66倍』です。このままでは勝つ見込みはありません。
 ですが、紋章のエネルギー源は『人間画廊(ギャラリア)』に捕らえられた人々です。
 解放される度に弱体化していき、50%を解放すると完全に効果を失ってしまいます。
 ですが、その状態でもユーベルコードに加えて『月の眼の紋章から飛び出す棘鞭』による攻撃が追加されています。
 それに対処する必要もあるでしょう。

 それでは、『月光城』を攻略し、人々を開放する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『破滅の使徒』

POW   :    死の抱擁
【魂狩の鎌】が命中した対象を切断する。
SPD   :    滅の壊刃
【魂狩の鎌】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    獣の行進
召喚したレベル×1体の【飢えた狼】に【鬼火】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:キイル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『破滅の使徒』たちは祈る。
 この苦しみと哀しみしかない世界に絶望するからこそ祈るのだ。
「ああ、生きながらにして捕らえられた彼等に救済を。あの哀れなる生命に救済を」
 彼女たちが見つめる方角にあるのは『人間画廊(ギャラリア)』。そこには生きながらにして捕らえられた人間たちがいる。
 この『月光城』の主、彼女たちの主に力を与えるべく、生きながらにして捕らえられ、死ぬときまで解放されることのない絶望の中に浸され続けるのだ。それは彼女たちにとってあまりにも無体な行いであった。

「仕方のないこととは言え、あんまりです。ああ、だからこそ」
「だからこそ、救済を」
 祈る彼女たちは過去に狂っている。
 彼女たちは『死』をこそ救済であると信じて疑わない。
 生きて苦しみ続けることに絶望した彼女たちにとって、『死』こそが絶対なる救済なのだ。
 それを彼女たちは『人間画廊』に捕らえられた人々に与えられぬことをこそ悔やむのだ。

「ですが、代わりがいればいい。愚かな猟兵がやってくる。彼等を変わりに『人間画廊』に。そうすれば、あの者たちに救済を与えられる」
 微笑む『破滅の使徒』たちが、『月光城』内部にめぐらされた罠とともに猟兵を迎え討つ。
『強化オブリビオン』となった彼女たちの力は凄まじく、そしてさらに罠という罠が彼等を襲うだろう。
 だが、それでも進まねばならない。
 この世界の真実を、そしてオブリビオン支配から人々を開放するために。
 猟兵たちは危険を承知の上で、『月光城』へと足を踏み入れるのだ――。
シーザー・ゴールドマン
月光城がダークセイヴァーに浮かぶ月に関係があるのか否か。
月の満ち欠けに呼応している以上、何らかの関係はあるだろうね。
まあ、関係ないとしても人間画廊に月と眼の紋章と一見の価値はある。

『ハーデースの兜』の権能で真正面から侵入。
罠もオブリビオンも悉くを無視して前進。
とは言えあまりさぼるのも考えものかと、良さそうな場所で姿を現わして『破滅の使徒』を適度に狩り、また『ハーデースの兜』を使用して前進。

アドリブ歓迎です。



 月の満ち欠けに呼応して光り輝く常闇の世界にありし『月光城』。
 その輝きは如何なるものを示しているのかを未だ猟兵は知らない。何故、地下世界であるダークセイヴァーに月が浮かぶのか。
 太陽はなく、けれど月は輝く。
 このオブリビオン支配盤石たるダークセイヴァーにおいて、猟兵は仄かに光を放つ月光の元に人々を護るために戦う。

『月光城』の内部は罠だらけであるという。
 それはすでにグリモア猟兵の言葉から知れる。
 一歩を踏み出しただけで、足場が揺らぐのをシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は感じただろう。
「『月光城』がダークセイヴァーに浮かぶ月に関係があるのか否か」
 月の満ち欠けに呼応している以上、何らかの関係はあるのだろう。
 だが、その全容は未だ知れず。
 その全容を、真実を知るために『月光城』の内部へと足を踏み入れるのだ。

 そんな彼を出迎えるのは『破滅の使徒』たち。
 彼女たちはかつては信奉者であり、殉教者に成り果てた存在である。しかし、その今際の際に悟ったのだ。
「『死』こそが救済なのです。この苦しみと哀しみにまみれた世界からの解脱を為すためには、『死』以外の手段は意味をなさない。あなた方もそのはず」
 彼女たちの瞳は狂気に彩られている。
 手にした大鎌は魂を刈り取る刃。
 それを振るい、罠にまみれた『月光城』内部を知り尽くした動きで迫るのだ。

「『破滅の使徒』、か。『死』が救済などと嘯くわりには……」
 シーザーの瞳がユーベルコードに輝く。
 ハーデースの兜(デウス・アーエール)へと己の権能を変え、目に見えず、触れられもしない魔力でもって正面から突破していくのだ。
 触れることのできない体は、如何なる罠をも無意味に変えていくだろう。
 振るわれる大鎌の一撃は、見えぬ魔力の壁に押し止められる。
「あなたは救われたいと思わないのですか?『死』は平等であるというのに」
 目に見えぬはずの己の体を捉える『破滅の使徒』は、その刃をシーザーに食い込ませようと四方八方から迫る。
 彼女たちの瞳には何が見えているのか。

「ほう、私の権能を見破るか。だが、触れられもしないのにどうやって私を救済しようというのだね」
『月光城』に満ちる力。
 それが強化オブリビオンに満ちている。だが、その強化された一撃であってもシーザーには届かない。
 彼の権能は、触れられないもの。
 ゆえに如何なる刃も彼には届かないのだ。
「『死』です。あの方が、必ず貴方に救済を齎すことでしょう。ゆえに、私達は貴方をあの方の元へ――」
 連れて行かねばならないという『破滅の使徒』の言葉をシーザーは遮るようにして魔力の奔流でもって吹き飛ばす。

 罠など今の彼には関係ない。
 見えない。触れられない。そして、狭い空間に入り込む能力を有したシーザーを何者も止めることはできないのだ。
「君等のような殉教者を相手にしているのも億劫なのでね。無視させていただくよ」
 シーザーはそう告げ、『月光城』の内部へと入り込んでいく。
『破滅の使徒』が追いすがろうとも、僅かな隙間に入り込む力は彼女たちの追跡を拒むだろう。
「『人間画廊(ギャラリア)』か。それに『月と眼の紋章』も一見の価値はある。けれど――」

 君等にはその価値はないとシーザーは悠々と『月光城』の中を進むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

亞東・霧亥
最短を突っ切るのが一番早いかな。

【UC】
時速100km超の蚊を肉眼で捉えられるとは思えないし、罠は発動前に通過する。

運悪く俺を見てしまった殉教者は、目玉から入って頭蓋を破壊さして後頭部から抜ける感じになるな。

アドリブ歓迎



 常闇の世界であるダークセイヴァーにおいて、仄かな光を放つ月光こそが明かりの全てであったことだろう。
 何処を見渡しても陽光はなく。
 太陽の光を反射して煌めく月。されど太陽は登らず。
 オブリビオン――ヴァンパイアの支配が盤石なる世界にあって、陽光は必要など無く。
 それ以前にこのダークセイヴァー世界の地上と思われていた世界は、地下世界であった。
 それも『第四層』。ここ『第五の貴族』が存在する地底都市にあって『月光城』は不可侵なる領域であった。
『月光城の主』は強大な力を有するオブリビオンであり、その力をもって『第五の貴族』すらも立ち入らせぬものであった。

「再誕を突っ切るのが一番早いかな」
 亞東・霧亥(夢幻の剣誓・f05789)はユーベルコード、二分の一寸法師(ニブンノイッスンボウシ)によって己の身長を百分の一にまで縮める。
 自身の姿を捉えることが極めて困難になるのだ。
 姿を変じた飛蚊。
 それが今の霧亥の姿であった。

「とは言え……時速100km超の蚊を奴等が肉眼で捉えられるとは思えない」
『月光城』は罠の満載された場所であり、強化オブリビオンである『破滅の使徒』が召喚した鬼火纏う餓狼がうごめいている。
 そんな中を単身で突破するのはできなくはないのだろうが、得策ではないだろう。
 罠も発動する前に飛び抜けてしまえばいい。
 それ以前に百分の一まで己の姿を小さくした者に発動する罠もないだろう。

 だが、それでも敵は強化されたオブリビオンである。
「あなたは救済を求めない方なのですか?」
 百分の一の姿、その飛蚊となった霧亥の姿を捉える『破滅の使徒』。
 一体どのような原理なのであろうか。
 その瞳が狂気に濡れ、侵入者である霧亥の姿を真正面から捉えるのだ。何故、と思うよりも先に体が先に動く。
 凄まじい速度で飛ぶ霧亥は『破滅の使徒』の瞳に飛び込む。
 だが、鬼火纏う餓狼が壁と成って彼の体を阻むのだ。

「時速3桁超の飛蚊は驚異だろう?」
 飛蚊としての姿を得た霧亥を阻むことはできない。餓狼の眼窩から侵入し、頭蓋を割るほどの速度で持って高等部から『破滅の使徒』ごと貫いて飛び去る。
 血潮が噴出する時間すら与えない。
 彼にとって、最短こそが取るべき道であったのだろう。
 この罠が満載した『月光城』にある存在は今の猟兵ですら及ばぬ存在である。
 とは言え、取るべき方策はすでに示されている。

 己を追う『破滅の使徒』たちを振り切り、霧亥はひたすらに飛ぶ。
 目指すは『人間画廊(ギャラリア)』である。そこまでいけば、『絵画』に生きながらにして捕らわれている人間たちを解放することができる。
 人間の解放が『月光城の主』の弱体化につながるのならば、それこそ急がねばならぬことであっただろう。
 ダークセイヴァー世界に生きる人々が支配という日常に囚われているのならば、それを開放することこそオブリビオン支配を揺るがすことである。

 霧亥は追いすがる『破滅の使徒』たちに構うことなく『月光城』の内部にひしめく罠を躱して飛ぶのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリステル・ブルー
はは、この世界はやっぱり胸糞悪い話ばかりだね
念の為に外套を目深に被って潜入するよ
ユール、先行して道案内を頼んだよ
頭上から落ちる罠や先に見えるものはこれで対処出来るはず
毒矢は細剣や外套を利用して叩き落とす
足元は偵察の要領で慎重にね

死が救い…確かに死んだ方がマシ、そんな状況もあるだろうけどね
画廊はお前たちがやったんだろ?
僕に人間に『過去』の救済なんて不要だ
詠唱を重ねて全力でUCで群れごと吹き飛ばす
細剣を使徒に向けることも厭わない

この世界に必要な救済は死じゃない秘匿された謎を暴いて吸血鬼に異端の神々を追い払って…ようやく得られる平穏なんだ
偽りではない空や月や太陽だ

君がいつか安らかに眠れる日を祈るよ



 グリモア猟兵から語られる『月光城』の概要を聞いた時、アリステル・ブルー(果てなき青を望む・f27826)は胸糞の悪い話だと思ったことだろう。
 かつて人狼病に罹った己を育ててくれたのは、このダークセイヴァーの人々であった。彼が望むのはいつだって育ての親たちの幸せな生活である。
 だからこそ、このダークセイヴァー世界をオブリビオン支配から解放することをこそ、望むのだ。
「ユール、先行して道案内を頼んだよ」
 青い鳥の軌跡(ブルーバードトレイル)を辿るようにしてアリステルは『月光城』の中を進む。
 念のためにと目深に被った外套が風に揺れる。

 城内に在りて、その風はどこか生温いような、背中がざわりとざわめくような、とてもではないが心地よいと思えぬものであった。
 風と蒼炎を纏った青い鳥『ユール』の先導がなければ、この『月光城』の中にある罠を突破することは難しいだろう。
 頭上より迫る棘の付いた天井を躱し、迫る毒矢を細剣で叩き落とす。
 踏み出した足の先から崩れる足場は、兎にも角にももろく、飛び退るので精一杯であった。
「――あれはっ」
『ユール』が小さく鳴く。
 そこに迫るのは鬼火を纏った餓狼であった。

 強化オブリビオンである『破滅の使徒』が放った餓狼が『コール』を襲う。
 それをアリステルは細剣でもって切り裂き、護る。彼にとって『ユール』との絆は何物にも代えがたいものであったことだろう。
「何故、止めるのです? 何故阻むのです?」
『月光城』の暗闇より声が聞こえる。
 それは女性たちの声であった。徐々に声が己を中心に囲いを狭めるようにして迫ってきている。

『破滅の使徒』たちは、みな一斉に口を揃えてアリステルに言う。
『死』こそが救済であると。
 この苦しみに満ちた世界にあふれる哀しみから逃れるのは『死』しかあり得ないのだと。
「死が救い……確かに死んだほうがマシ、そんな状況もあるだろうけどね」
 だが、アリステルは否定する。
 否定しなければならない。どれだけ生きるのが辛いのだとしても、それでも前を見て生きる人が今もいるのならば、自分がくじけてはならない。逃げてはならないのだ。

 この『月光城』に捉えられているという『人間画廊(ギャラリア)』の人々を解放しなければならない。
「餓狼はお前たちがやったんだろ?」
「ええ、我が主が求めたがゆえに。あれはとても悲しいことです。ですが、止めては『死』を、救済を齎す事ができませんゆえ」
 使役する鬼火纏う餓狼たちがアリステルに迫る。
 生きながらにして捕らえられた人々。彼等は生かされているだけだ。生きているわけではない。
 オブリビオンの、吸血鬼の、ただの欲望を満たすためだけに生命をもてあそばれている。

「僕に、人間に、『過去』の救済なんて不要だ」
 アリステルは青い鳥の使い魔を掌に乗せる。
 詠唱は重ねられていく。迫る餓狼を細剣で薙ぎ払い、その瞳をユーベルコードに燃やす。
 そう、この世界に必要な救済は『死』ではない。
 秘匿された謎を暴き、吸血鬼と異端の神々を追い払って漸く得られる平穏である。
 彼の掌に乗った『ユール』の放つ蒼炎が極大にまで膨れ上がる。

「救済が不要な生命など無いのです。必ず『死』を、救済を与えなければならないのです」
『破滅の使徒』たちが迫る。
 アリステルは躊躇わなかった。
 彼女たちが言う救済が人々に必要なのではない。
 彼等に必要なものをアリステルは知っている。他世界を知る猟兵になったからこそ見た世界がある。
 この世界にあるものすべてが偽りだと今なら言えるだろう。

「平穏な生活に必要なのは、偽りでない空や月や太陽だ」
 放たれる『ユール』の湛えた蒼炎が迫る『破滅の使徒』たちを薙ぎ払い、一直線に焼き尽くす。
 それは確かな青い鳥の軌跡となって、アリステルは道を征く。
「君らがいつか安らかに眠れる日を祈るよ」
『破滅の使徒』にそれが訪れるかはわからない。
 けれど、過去に歪んだからこそ、『死』と救済を重ねてしまったのだろう。それを悲しむべきであったかもしれない。
 けれど、アリステルは未だ立ち止まれない。
 吸血鬼支配を解き放つための鍵が僅かでも見えたのなら、それはきっとより良い未来につながっていると信じ、今は危険な『月光城』を征くしかないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

肆陸・ミサキ
※絡み苦戦怪我アドリブok

こんな世界で誰に祈るって言うのか知らないけれど
勝手に絶望して、好き放題に暴れてるのは、放っておけないかな
やれやれ、耳が痛い敵だよ、私にとってはね

罠に関してはまずUCの飛行で、足場の影響を無視するよ
迫る壁なら殴って横穴を作る感じで、矢なら光で燃やせばいいかな、私の範囲内に納まれば良いのだけど

生憎、力押しで戦ってきたし、対策って苦手なんだよね
致命傷さえ防げれば多少は無茶で行こうか

使徒に対しては突破を優先で放置……は出来ないかな
近くに仲間がいれば協力して進む
若しくは先に行かせて私は足止めしても良いかもね

しかし、全く、何てザマだ
死んで救われようなんて、ちょっと甘過ぎない?



 常闇の世界に神はあれど、狂いし神である。
 神は人を救わず。
 そして、人の祈りもまた無意味と化す。人々に必要であった救済は、過去に歪み果て、その意味を喪うものである。
『破滅の使徒』とはそういう過去の化身であった。
 救済を求め、殉教した瞬間に悟ったのだ。
 彼女たちの祈りの果てにあるのは確かに救済であった。ただし、それは生在る限り訪れることのないものであると。
『死』こそが平等に与えられた救済。
 生あるからこそ、人は苦しみ哀しみにくれなければならない。
「こんな世界で誰に祈るって言うのか知らないけれど」
 肆陸・ミサキ(終り・f00415)は、その白い髪をなびかせながら『月光城』の内部を進む。

 ユーベルコードの輝きによって纏う白い灼光のドレスと日輪。
 それは白夜(オールライトナッシング)。このダークセイヴァー世界にあっては存在しないものである。
 際限なく上昇していく体温を感じながらミサキは『月光城』内部を飛ぶ。
 脆い足場を気にせず進むために飛行することを選んだのだが、迫る壁や降り落ちるギロチンの刃を己の拳で叩き割る。
 血潮が噴出しながらも、それでもミサキは構うこと無く突き進む。
「あなたに救済を。『死』という平等なる救済を。生きるのが辛くなったのならば、言ってくださいね。私が必ずやあなたに救済を与えましょう」
 迫る『破滅の使徒』が振るう大鎌の一撃をミサキは己の身に纏った灼光と日輪で受け止め、さらに追いかけるようにして飛来する毒矢をも焼き切る。

「どうして抗うのです? どうあがいても生には絶望の苦しみと哀しみしかないというのに」
『破滅の使徒』が振るう大鎌がミサキの拳と激突して火花を散らす。
「勝手に絶望して、好き放題に暴れてるのは、放ってはおけない……」
 ミサキにとって『破滅の使徒』たちの語る言葉は耳の痛いものであった。
『死』こそが救済であると語る『破滅の使徒』たち。
 彼女たちの言葉はこれまでミサキの戦いぶりを見れば生きることの苦しさを示すものであった。

 傷も厭わず、どれだけ己が傷つこうとも構わない戦い方。
 今もそうだ。
 迫る罠を拳で殴り砕き、振るわれる敵の大鎌が身を切り裂いたとしても構わず己の攻撃を叩き込む。
 致命傷さえ防げれば後はなんとでも成るとばかりに、その身に宿した体温が燃えるような血潮と共に体を駆け巡っていく。
「しかし、全く、なんてザマだ」
 ミサキは拳をふるって己の滾る血潮のままに拳を『破滅の使徒』に叩きつけ、霧消させていく。
 全てを焼き尽くすユーベルコード。

 それが今ミサキの中に宿っている。
『破滅の使徒』は言う。
『死』こそが救済であると。
 それは間違いではないのだろう。けれど、ミサキは思うのだ。
『死』は到達点であれど、そこに至る道程は人ぞれぞれ違うものである。
 ならばこそ、己の生命を投げ捨てることなどできようはずもない。
「なぜ、なぜ、なぜ、救われようとしないのです」
『破滅の使徒』の言葉とともに振るわれる大鎌の一撃を拳に受け止めながらミサキは腕を振り抜く。

 血潮が頬を濡らした。
「死んで救われようなんて、ちょっと甘過ぎない?」
 生きることは苦しみにまみれているかもしれない。
 けれど、誰もが求める救いは立ち向かった先にこそ存在しているのだ。
 ミサキはそれを知るからこそ、オブリビオンに立ち向かい、傷だらけになりながらも、その道の先へと至らんと血に塗れながらも前に一歩を踏み出したのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラヴィ・ルージュブランシュ
死は救済?
そうかも知れないわ
ラヴィはそれを否定することはできないの
だってラヴィは平和な国でのほほんと咲いていたから
この世界のみんながどれだけ苦しんでるのか
想像することさえうまくできないわ

でもね!
それでも、死にたいと願ってない人の命まで奪うなんて
絶対にだめ!

身のこなしには多少自信があるけれど
多少罠にかかっちゃっても大丈夫なように自分に【白燐奏甲】をかけておくわ
耳を欹て罠の発動音を聞き分け回避を試みるの
間に合わなければヴォーパルソードで受け止めたり壊したり

蟲にはお前達に不運を齎す力もあるわ
ラヴィにばっかり気を取られていたら駄目よ
ね、お前が踏んでいる床のタイル、そこだけやけに出っ張ってないかしら?



 常闇の世界に在りて神は狂いし異端の神々のみ。
 地に在る者は全て支配される者たち。
 夜の帳が落ち、陽光の煌きすらも忘れ去られた世界に在って、人は何を望むだろうか。
 それは即ち救済である。
 この世界に生きる生命は須らく吸血鬼のためのものである。
 隷属こそが当然のこと。あらゆるものが苦しみと哀しみの中に沈む。ゆえに殉教者たちは祈り願うのだ。
 この苦しみと哀しみを救い給えと。
 しかし、殉教者たちは今際の際に知るだろう。苦しみと哀しみしかない生であったのならば、『死』こそが到達点にして救済なのであると。
「ゆえに私達は救済するのです。生命を、生命を、『死』へと捧げることこそが、救済。さあ、あなたの生命も!」

 強化オブリビオン『破滅の使徒』たちが『月光城』内部に張り巡らされた罠と共に猟兵へと襲いかかる。
 ただでさえ『月光城』には数多の罠が存在している。
 そこに強化オブリビオン『破滅の使徒』たちが群れをなして襲ってくるのだ。
「死は救済? そうかも知れないわ」
 ラヴィ・ルージュブランシュ(甘惑プロロンジェ・f35723)は、それを否定することはできない。
 何故ならば、彼女はアリスラビリンスの小国に在りて、その力でもって民を飢えさせることはなかった。
 恐ろしき怪物も現れることはなかった。
 平和だったのだ。されど、それは退屈と同義であった。狂おしいほどの退屈が彼女の歩みを前に進ませたのだとすれば、それは皮肉なものであったかも知れない。

 今まさに平和を望む人々が苦しみにあえぐ世界にある。
 その平和を彼女は望んで背を向けて歩み始めたのだ。この世界にある者たちが望んで止まぬものを彼女は退屈だと言ったのだ。
「この世界のみんながどれだけ苦しんでるのか、想像することさえうまくできないわ」
 そう、想像すらできない。
「でもね! それでも、死にたいと願ってない人の生命まで奪うなんて、絶対にだめ!」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 白燐蟲を己の体に纏わせ、白燐奏甲へと変貌する。
 迫る巨大な鉄槌をラヴィは軽やかに躱す。そこに飛び込んでくる鬼火を纏った餓狼。その巨大な顎を前にして彼女は身をかがめた。
 瞬間、彼女の頭上を振り抜くのは、つい先程彼女に迫っていた巨大な鉄槌であった。その重たい一撃が『破滅の使徒』の放った鬼火纏う餓狼を吹き飛ばすのだ。

「何故です? 『死』こそが救済。どうして拒むのです」
『破滅の使徒』はわからないというように首を傾げ、次々とラヴィへと襲いかかる。  
 どこかでカチリと何かが噛み合う音が聞こえる。 
 ラヴィは耳をそばだてていたからこそ判ったのだ。
 自分の足が踏み込んだタイル。
 それが罠の発動条件であると知った瞬間、何が起こるのかを彼女は知らずとも、その身に纏った白燐蟲のもたらす力が発言する。

 すなわち、ラヴィの敵対者に対して不幸な事故を誘発させる不運の力。
 それは彼女が意図していなくても発動し、彼女に害を為そうとするもの全てに累を及ぼすだろう。
「救済と死が同じものではないからよ。ラヴィは想像するしかない。みんながどんな想いでこの世界に生きているのかを」
 だからこそ、ラヴィは軽やかなステップで彼女の死角から放たれた毒矢を躱す。それは偶然であったが、『破滅の使徒』にとっては不幸な事故であった。

 彼女の首を刈り取らんと迫っていた餓狼を毒矢が貫き、そのまま『破滅の使徒』の眉間に突き立てられるのだ。
 これが不幸な事故の誘発。
 彼女のユーベルコードの為せる業であった。
「蟲にはお前たちに不運を齎す力もあるわ。ラヴィにばっかり気を取られていたら駄目よ」
 ね? と彼女は首を傾げる。
 疑問に思ったのではない。そう、そこ、と視線で示すようにラヴィは『破滅の使徒』に告げるのだ。
 不運な事故はまだ終わっていないのだと。

「あ――?」
 眉間を毒矢で貫かれた『破滅の使徒』が視線をぐるりと向けた瞬間、彼女は気がついたのだ。
 己が踏み込んだタイル。
「ええ、そうね。お前が踏んでいるタイル。そこだけやけに――」
 出っ張ってないかしら? と。
 瞬間、罠が作動し吊り天井が『破滅の使徒』を一瞬のうちに押しつぶす。

 その肉体は霧消して消えるだろう。
 けれど、押しつぶされた肉体より流れる血潮は、そのままに。まるでラヴィの道行く先を示すように、赤き絨毯が如き道となるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェルンド・ラスリス
あぁ忌々しい。何が復讐者、何が吸血鬼狩りか…。貴様らは俺の仇ではない。たが貴様らの考えこそが俺の怨敵であることに変わりはない。

貴様らの企み、罠なんぞ悉くをうち砕こう。

UC『修羅の道を征く蒼鎧』を使用。
復讐の黒十字架を大剣として用い、黒焔と二刀流で敵を殲滅しながら前進。

※アドリブ、共闘歓迎



『月光城』は罠の張り巡らされた城である。
 ここ、ダークセイヴァー『第五層』に在りて、その存在は異質そのものであった。
 如何に強大なオブリビオンが『月光城の主』であるのだとしても、『第五の貴族』の干渉すらもはねのけるというのは、あまりにも不自然であった。
 この地底世界とも言うべきダークセイヴァーに浮かぶ月。
 それは何故なのか。
 太陽は登らず。されど月光だけが満ち欠ける。

 その意味を知るために猟兵たちは危険極まりない『月光城』内部へと足を踏み入れる。
 ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)もまたその一人であった。
 修羅の道を征く蒼鎧(フルリベンジアーマー)を纏い、復讐の黒十字架たる大剣をもって『月光城』へと突入するのだ。
「あぁ忌々しい。何が復讐者、何が吸血鬼狩りか……」
 ヴェルンドの中に渦巻くのは復讐の炎だけであった。
 地獄の炎を噴出させながら、彼は突き進む。
 罠という罠を踏み砕き、地獄の炎が城内を包み込んでいく。

「苦しみに悶えるのならば、救済を与えましょう。それこそが『死』という結末による癒やしなのですから」
 強化オブリビオンである『破滅の使徒』たちが鬼火纏う餓狼を解き放つ。
 この『月光城』内部の罠を知り尽くした彼女たちが放つ餓狼は、罠を作動させながら次々とヴェルンドへと迫るのだ。
 その牙で、鬼火の炎で、そして発動された罠、鉄槌降り落ちる天井や押し迫る壁、もろくなった足場は彼の足を取るだろう。

 けれど、それでもヴェルンドは構わなかった。
 背中に担いだ大剣を抜き払い、二つの大剣による二刀流でもって鬼火纏う餓狼を切り裂く。
「貴様らは俺の仇ではない。だが、貴様らの考えこそが俺の怨敵であることに変わりはない」
『死』をもって救済とする『破滅の使徒』たち。
 それはいたずらに他者の生命を弄ぶ考えにほかならない。傲慢そのものであるともいえるだろう。

 救いを与えるというお題目をもって、他者に強要する。
 価値観を押し付ける。
 それがどれだけ人を傷つけることなのかを理解しようともしない。不理解という名の暴力こそが迫害を生むのであれば、ヴェルンドを嘗て襲ったものこそ、まさに彼女らのごとき考えを持つ者が為したことである。
「俺の進む道は茨の道だが、俺の望む道だ」
 地獄の炎が爆発するように膨れ上がり、鬼火纏う餓狼をも巻き込んで『破滅の使徒』たちを吹き飛ばす。

 罠など関係ない。
 手にした大剣を振るい、尽くを打ち砕いていくのだ。
「貴様らの企み、罠なんぞこれと変わらぬ」
 容易いことである。
 どれだけ己の道を阻もうとするのだとしても、ヴェルンドには関係のないことだ。
 ただ尽くを打ち砕く。
 復讐心こそがヴェルンドを突き動かす原動力。
 それが底を付かぬ限り、どれだけの傷を受けるのだとしても彼は立ち止まることはないだろう。

 人の意志は絶えず摩耗していくものである。
 されど、彼の身に宿した復讐の炎は尽きることはない。
「退け――貴様らごときが俺の道を阻むな」
 踏みしめた床を踏み抜き、迫る罠を大剣の一閃が両断し、ヴェルンドは進む。
 どれだけの困難が待ち受けるのだとしても、どれもが立ち止まる理由にはなりえない。
 それを体現するように振るう大剣の剣閃が地獄の炎によって照らされ、煌めくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…月の満ち欠けと連動して光るなんて、随分とロマンティックな城ね

人間を喰い物にする吸血鬼や城主が巣食っていなければ…だけど

大鎌の刃に時属性の魔力を溜め周囲を時間停滞のオーラで防御して覆いUCを発動
敵や罠の行動速度を5分の1にして攻撃を受け流しつつ切り込み、
大鎌をなぎ払い体勢を崩した敵を掴み、罠に向けて怪力任せに投擲していくわ

…この刃に触れえざる物は時間がゆるりと停滞する
それは何も生命を持つ者だけに限った話では無い

…罠が恐ろしいのは気付いた時には既に手遅れだからよ
ゆっくり動く罠なんてただの子供だましに過ぎない

…なんて語った処で何一つ聞こえないでしょうけど
お前達の戯れ言が私の耳に届かないのと同様にね



『月光城』と呼ばれる所以。
 それは月の満ち欠けに呼応して光り輝くことにある。常闇の世界ダークセイヴァーにおいて、それは奇異なる存在であったことだろう。
 かつてこのダークセイヴァーの地上と思われていた世界は『第四層』、即ち地下であることが今や判明している。
 ここ『第五層』においても空に浮かぶ月は如何なる存在であるのかを猟兵は未だ知らない。
 あまりにも謎多き世界。
 それがダークセイヴァーなのだ。

「……月の満ち欠けと連動して光るなんて、随分とロマンティックな城ね」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は『第五層』に存在する幾つかの『月光城』の一つをみやりつぶやいた。
 確かに彼女の言葉の通り、月の満ち欠けに呼応して光輝く城は美しいものであったことだろう。
 けれど、彼女の心中は穏やかなものではなかった。
「――人間を喰い物にする吸血鬼や城主が巣食っていなければ……だけど」
 手にした大鎌の刃に時の属性の魔力を込める。
 彼女にとってダークセイヴァーは救うべき世界である。
 吸血鬼狩りの業を持つ彼女にとって、この『月光城』は踏破すべき障害の一つに過ぎない。

 身に時間停滞のオーラを纏い、その瞳にユーベルコードを輝かせる。
「……吸血鬼狩りの業を馳走してあげる」
 それこそが吸血鬼狩りの業・時澄の型(カーライル)である。
 吸血鬼狩りの奥義による刃。
 それを見舞う間、城内に居る全ての『破滅の使徒』の行動速度を減退させるのだ。
「――」
 侵入者に対応した『破滅の使徒』たちが何事かを叫んでいる。
 その手にした大鎌を巨大化させてはいるが、リーヴァルディの速度は、その五倍。当然のことながら、彼女が早くなったわけではない。
 彼女に相対するオブリビオンの全てが彼女の構える大鎌の刃を前にひれ伏すように、その行動を五分の一にまで減退させられているだけだ。

 大鎌の薙ぎ払い、その一閃が『破滅の使徒』たちを切り裂き、その手首をリーヴァルディは力任せにつかみ罠へと向けて投擲していく。
「……この刃に触れ得ざる物は時間がゆるりと停滞する。それは何も生命を持つ者だけに限った話ではない」
 投げ放たれた『破滅の使徒』は何が起こったかもわからなかったことだろう。
 迫る壁が『破滅の使徒』を押し潰し、霧消していく。

「……罠が恐ろしいのは気づいたときには既に手遅れだからよ。ゆっくり動く罠なんてただの子供だましに過ぎない」
 リーヴァルディは言葉を紡ぐ。
 迫る『破滅の使徒』たちを大鎌の煌きと共に一掃していく。どれだけ強化されたオブリビオンであろうとも、張り巡らされた罠さえも時間停滞の魔力の前には子供だましに墜ちる。
 ゆえに、彼女は悠然と『月光城』の中を進む。
 己の手繰る吸血鬼狩りの業を楽しむオブリビオンなど居るわけがない。

 人の営みに割り込み、人に害をなす者全てに己の煌めく大鎌の刃こそが恐怖の象徴として映るように。
 彼女は『月光城』を踏破していく。
 そして、ひとしきり言葉を尽くした後、気がつくのだ。
「……なんて語った所で何一つ聞こえないでしょうけど」
 それは彼女の耳に『破滅の使徒』たちの言葉――戯言が届かないのと同じように。
 例え、その言葉を理解されていたのだとしても、相互理解は存在しない。
 猟兵とオブリビオンは滅ぼし、滅ぼされる関係でしかない。
 世界の悲鳴は人々の悲鳴と同義である。
 失われる生命があるのならば、それを救うことこそ、リーヴァルディの業は振るわれるだろう。

 それがきっと正しい行いであると信じる。
 より良い未来を、多くの希望が残る未来を勝ち取るために、リーヴァルディは『月光城』を征くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
これはまたご大層なお出迎えね。
『死が救い』なんて言ってて、その実自分達の同類が欲しいだけじゃないの? 屍人は新たな屍人を求めるものだから。

「全力魔法」砂の「属性攻撃」「破魔」「浄化」「竜脈使い」「仙術」「道術」で紅砂陣。
いかな餓狼といえども、流砂に飲まれたら抜け出せない。
そしてオブリビオンたちも、この絶陣の中では急速に風化していく。
あたしは「環境耐性」で無効化するわ。
そしてゆっくりと、絶陣ごと前へ進む。
砂嵐を突っ切ってきた相手には、薙刀を振るって相手しましょ。「なぎ払い」に「串刺し」に「衝撃波」。

生ける屍の戯言なんか聞かない。こちらこそ、あなたたちを骸の海へ還して救ってあげるのよ。喜びなさい。



「何故、救済を受け入れないのでしょう。必ず生命は滅びる。必定なのであれば、その道程に満ちた苦しみと哀しみを取り除くことこそ、我等が使命であるというのに。受け入れてくれない」
 鬼火纏う餓狼を従え『破滅の使徒』たちはつぶやく。
『第五の貴族』そらも拒む『月光城』に猟兵たちは次々と踏み込んできている。
 それを彼女たちは知っているし、阻もうとしている。
 いや、阻もうという意志すらないだろう。
 彼女たちにあるのは救済の意志だけだ。『死』と救済をイコールで結ぶからこそ、歪み果てた嘗ての殉教者たちは、己の祈りと共に『死』を振りまくのだ。

 この『月光城』に仕掛けられた罠は未だ膨大なものであった。
 そんな罠と共に『破滅の使徒』たちは次々と現れ、『月光城』に侵入した猟兵たちを迎え撃つのだ。
「これはまた大層なお出迎えね」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はその瞳をユーベルコードに輝かせる。
 紅砂陣(コウサジン)。
 それは全てを急速に風化させる紅い流砂と砂嵐へと無機物を変換する力である。
 迫る罠の尽くを流砂と砂嵐に変える。
 それは罠だけではなく鬼火纏う餓狼であっても同様である。

「『死が救い』なんていってて、その実自分たちの同類が欲しいだけじゃないの? 屍人は新たな屍人を求めるものだから」
 彼女の言葉に『破滅の使徒』たちは首を横に振る。
「いいえ、私達は救いたいだけなのです。苦しみ満ちる世界から生命を。哀しみ満ちる世界から生命を。ただそれだけなのです。なのに、貴方は私達を理解しない」
 彼女たちにとって、救済とは手段ではない。
 目的なのだ。
 だから、『死』を振りまく。
 そして、己の『死』にすら頓着しない。

 あらゆるものを風化させる紅い流砂と砂嵐はゆかりと共に歩みを進める。
 どれだけの罠が襲ってきたのだとしても、無機物である以上ゆかりのユーベルコードによって強制的に変換されてしまう。
「生ける屍の戯言なんか聞かない」
 砂嵐を突破してきた『破滅の使徒』たちの大鎌を薙刀をふるって受け止め、弾き飛ばす。
 さらに迫る『破滅の使徒』を紫の刀身が貫き、その体を無償させる。
「何故です。どうして理解していただけないのです。無理解が苦しみと哀しみを助長させるだけだというのに」
 その言葉をゆかりは一蹴するだろう。

 何処まで言ってもオブリビオンは過去の化身である。
 今という進む時間の中に滲み出てきては行けない存在なのだ。だからこそ、ゆかりは薙刀を振るい、『破滅の使徒』と打ち合う。
 ユーベルコードの砂嵐の中、ゆかりは言うのだ。
「こちらこそ、あなたたちを骸の海へ還して救ってあげるのよ」
 過去は過去のままに。
 今を侵食していい理由などない。ましてやダークセイヴァー世界のように人の生命を弄んでいい理由などない。

 支配によって己たちの欲望を叶えようとするオブリビオン、吸血鬼、『破滅の使徒』たちの行いを打ち払うことこそ猟兵の役目である。
「喜びなさい。あんたたちの仲間はもう増えない。骸の海に沈み、かつての殉教の前に抱いた祈りと願いを思い出すことね」
 放たれた斬撃が紅の砂嵐の中に煌き、その一撃を持ってゆかりは『破滅の使徒』たちを打ち払うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…陽の差さぬ地の底にあって光る月、それに繋がる可能性を掴みましたか。

死こそが救い、事実そうである命も世には在りましょう。
されど過去の残滓と化し、最早血に酔うばかりの化生と変じ、
己の妄執のまま徒に死を振り撒くとあらば其は救済に在らず。
今この日、この時を以て、この不夜城を落としましょう。


UCを発動
落ち着き技能の限界突破、無想の至りにて自らの気配、存在を完全に殺し、
忍び足、残像にて全速を以て駆けつつ野生の勘、見切りで敵の攻撃と罠を感知
怪力、グラップルにて向かってくる敵を迎撃しつつ毒矢やギロチン等の罠には敵を巻き込むよう動く

罠の回避が不可能な場合には地形破壊も交え壁や床を破壊し
逃げ道を広げて突破する



 ダークセイヴァーは陽光無き世界である。
 月光だけが明かり。
 その仄暗い世界にあって人の希望もまた、か細い。
「……陽の差さぬ地の底にあって光る月、それにつながる可能性を掴みましたか」
 月白・雪音(月輪氷華・f29413)は地底世界であったダークセイヴァーの『第五層』の地底都市に佇む。
 彼女の視線が向かう先にあるのは、月の満ち欠けに呼応して光り輝く城……『月光城』である。

 この『第五層』には『月光城』と呼ばれる『第五の貴族』すらも拒絶する城塞が幾つか点在している。
 そのうちの一つが今、雪音の目の前にある城である。
 確かにダークセイヴァーの世界の謎の一端を掴む情報である。けれど、それが果たして世界を救うことに繋がるかどうかはまだわからない。
 それは暗中模索するようなものであり、どうにも頼りない糸のようなものであった。
「ですが、立ち止まる理由にはなっていません」
 彼女は『月光城』に踏み込む。
 そこは数多の罠に彩られた危険なる戦場。迫りくる強化オブリビオン『破滅の使徒』たちは微笑みを湛えたまま、その手にした大鎌を巨大化させ、雪音の首を跳ね飛ばさんとせまるのだ。

 だが、その大鎌の斬撃を雪音のユーベルコードに輝く瞳は落ち着きを払って見切っていた。
「なぜ、躱すのです?『死』こそが救済であるというのに。あなたは救済を求めないのですか? この辛く苦しい、哀しみだけが満ちる世界にあって救いを求めないと」『破滅の使徒』は己たちの斬撃が躱されたことに驚きを隠せないでいた。
 彼女たちは通常のオブリビオンよりも強化された存在である。
 だというのに、雪音はその攻撃をこともなく躱したのだ。しかも、罠であるもろくなった足場さえも気に留めた様子もなく落ち着き払ったまま。

「『死』こそが救い、事実そうである生命も世には在りましょう」
 雪音の声色は何一つ震えてはいなかった。
 強敵を前にしても、彼女の心は静かなものであった。揺れる者など何一つ無い。それが、拳武(ヒトナルイクサ)である。
 彼女の修練が、人の極地の一端こそが彼女の戦に宿る。
「されど過去の残滓と化し、最早血に酔うばかりの化生と変じ、己の妄執のまま徒に死を振り撒くとあらば」
 其は救済に在らず。
 ゆらりと雪音の気配が薄まっていく。

 瞬間、『月光城』の内部に風が走った。
 冷たい風であったことだろう。雪音の白い髪がなびき、『破滅の使徒』たちをして捕らえられぬほどの速度でもって走り抜けるのだ。
 だが、それだけでは『月光城』に張り巡らされた罠を躱すことはできない。
「徒になどと。私達は救いたいだけなのに。あなたも救いたいのです」
 放たれる大鎌の斬撃。
 それらと罠を組み合わせることによって不可避なる攻撃が雪音を襲う。
 けれど、彼女の瞳は落ち着き払っていた。斬撃を己の拳で持って相殺する。激突する衝撃波が『月光城』の中に吹きすさび、雪音を襲う振り子の鉄球の勢いを僅かに殺す。

 けれど、その僅かでは鉄球を止めることはできない。
「今この日、この時を以て、この不夜城を落としましょう」
 握りしめた拳が迫る鉄球に向かって放たれる。
 裂帛の気合が呼気と共に溢れ、彼女の拳が鉄球を砕き、『破滅の使徒』たちを巻き込んで床をぶち抜く。
 彼女の闘争の極地は、尋常ならざる怪力を発揮させるのだ。
 床をぶち抜くほどの一撃は『破滅の使徒』たちを巻き込んで崩落していく。
「過去の残滓……あなたたちは過去に生き、過去に歪みし存在。されど……この身は、今と未来に生きるものなれば」
 砕いた鉄球がつながっていた鎖を手に取り、勢いよく雪音は崩落した床を飛び越えていく。

 目指す先にあるのは『人間画廊(ギャラリア)』である。
 世界を人の手に取り戻す。
 オブリビオン支配盤石たるダークセイヴァーに希望の光を人々に齎すために、雪音は『月光城』の奥へと足を進めるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
実際のところ、どうなのでしょうね。

死こそ救いだと。そう考える人やオブリビオンはこれまでにもこの世界で何度か見てきました。
もしかしたら、死ぬことによって本当に楽になれる……のかもしれませんね。私は死んだことがないのでなんとも。

【絶望の福音】であらゆる罠を察知し、潜り抜けながら月光城を進んでいきます。破滅の使途と出くわしたなら【絶望の福音】で振るわれる三度の攻撃の軌道を『見切り』回避、「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸を撃ち込みます。

ですが、私にその救いは必要ありません。
ともに戦う仲間が居る。それだけですでに救われていますから。



『破滅の使徒』は『死』こそが救済なのだという。
 この常闇の世界ダークセイヴァーにおいて、日々は苦しみと哀しみに彩られている。
 人の生命は隷属し、奪われるだけに存在している。
 吸血鬼は人々にそれを強いる。いや、強いるという認識すら生温い。
 そうであるべきだと言うように彼等は己等の当然の権利を主張することなく、人々の命を弄ぶ。
 そうして何が悪いというように振る舞うのだ。

 それをセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は嫌というほど見てきたことだろう。
「実際の所、どうなのでしょうね」
 彼女が相対するは『月光城』の内部にありし『破滅の使徒』たち。
 彼女たちの瞳は狂気に彩られている。
 嘗て在りし殉教者としての姿はあれど、その意志は全て『死』という救済を齎さんとしている。
 手にした大鎌が巨大化する。
「『死』は変わらぬ救済です。苦しみと哀しみを癒やすのは楽しさや優しさではないのです。それがなんの役に立つというのです。それでは救いになどなりはしない」

 放たれる斬撃がセルマを襲う。
 確かに、と彼女は思う。死こそ救いだと。そう考える人やオブリビオンはこれまでにも、この世界で見てきた。
 もしかしたのならば、死ぬことによって本当に楽になれる……そうした疑念が一度たりとて浮かばなかったかと言われれば、それは嘘になるだろう。

 だが、セルマは今も生きている。今を生きている。
「どれだけ絶望の福音が鳴り響こうとも」
 セルマの瞳にはユーベルコードの輝きが在る。
 迫る斬撃を身一つでくぐり抜ける。
『月光城』の内部は罠だらけである。どうあがいても罠にぶち当たるし、『破滅の使徒』たちの攻撃にもあたるだろう。
 けれど、セルマの瞳は絶望の福音鳴り響く世界にあってなお、まるで十秒先の未来を見てきたかのように既のところで躱すのだ。

「あなたに救済は必要ありませんか?」
『破滅の使徒』の顔が眼前に迫る。
 それを手にしたマスケット銃のグリップをふるってかちあげる。ぐるりと勢いを受けて『フィンブルヴェト』のグリップが掌に吸い付くようにして握りしめられる。
 銃口が『破滅の使徒』へと向けられた瞬間、セルマのトリガーを引く指はためらい一つなく。
 氷の弾丸が『破滅の使徒』を打ち砕く。

 崩れる床を蹴り、セルマは十秒先の未来を見やる。
 振り子のギロチン刃が迫る。それを氷の弾丸で勢いを殺しながら、ギロチンの峰を踏む。
「ええ、私にその救いは必要ありません」
 眼下には崩れる床と共に落ちていく『破滅の使徒』の姿があった。
 彼女たちには絶望しかなかったのだろう。
 けれど、セルマもそれは同じである。このダークセイヴァーに生まれて、生きて、数多の裏切りや背徳を見てきたのだ。

 それでもなお、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
 絶望が如何に彼女の背を追うのだとしても。
 彼女は振り返らないだろう。彼女の隣には彼女と同じ仲間が居る。
「共に戦う仲間が居る。それだけですでに救われていますから」
 セルマは今を生きる。
 どれだけの過去が彼女の足を掴むのだとしても、彼女は立ち止まることをしないだろう。

 彼女の強さは、己の強さを誇ることではない。
 共に在る者たちが隣にいて、己が自身の足で大地に立っているという誇りこそが彼女の強さである。
 凍てつくような氷の弾丸を打ち出す『フィンブルヴェト』のトリガーを引く指は熱く。
 その意志と共に彼女はダークセイヴァーの暗闇の中を歩むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

月の謎に迫るためにも、参りましょうかー。
全く関連がない、なーんて思えませんしねぇ?

ふむ、罠ねぇ。厄介ならば、そのまま利用していきましょう。
【四悪霊・『回』】を手始めに発動しましてー。罠=攻撃ですから、強くなりますよー。
敵に遭遇したら、そのまま漆黒風を投擲して、なぎ払っていきましょうかー。
ふふ、飛翔したとて、私に近づこうとするならば動きは読みやすい。飢えているのならば、なおさらですよー。

ここで立ち止まるわけにはいきませんのでー。通してもらいますねー。



 ダークセイヴァー世界に浮かぶ月。
 それは他世界を知る猟兵からすれば、特段気にすることではなかったのかもしれない。代わりに陽光、太陽が昇ることのない常闇の世界。
 そういう世界もあるのかもしれないと思っただろうし、オブリビオン支配による影響であるとさえ思っただろう。
 だが、事実は違う。
 この地上と思われていた世界が、その実地底にありし地下世界であることを知った時、猟兵たちはその月のいびつさに気がついたのだ。

 地上であると思われていた『第四層』、そしてさらに地下にある地底都市『第五層』、その頭上に輝く月は一体なんなのだと。
 そして、この地底都市に点在する『月光城』の存在。
 まったくの無関係であるとは思えないのだ。
「月の謎に迫るためにも、参りましょうかー」
 全くの関連がないとは思えない。
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』が『月光城』の内部を駆け抜ける。

 確かに厄介である。
 猟兵たちが侵入してくることを見越していたであろう強化オブリビオンでる『破滅の使徒』たちが放つ鬼火纏う餓狼たちが罠を利用して迫ってくる。
 振り子のギロチン刃、毒矢、迫る壁などあらゆる状況を利用して猟兵を撃退しようとしてくるのだ。
「厄介な。ならば、そのまま利用していきましょう。因果は巡りて回る。どこまでも」
『疾き者』の瞳がユーベルコードに輝く。
 四悪霊・『回』(シアクリョウ・マワル)。それは己の体を再構築しながら『読ん悪霊の呪詛』で多い、迫る罠、そして餓狼たちの攻撃に比例して己の戦闘力を底上げしていく。 

 さらに身を覆う呪詛より放たれる生命を吸収する力が増大していく。
 まさに悪霊としての本領を発揮するかの如き姿となった『疾き者』が『月光城』を疾走る。
「ふふ、飛翔したとして、私に近づこうとするのならば動きは読みやすい。飢えているのならば、なおさらですよー」
 己に近づくということは、そのまま生命を蝕まれるということである。
『疾き者』は棒手裏剣を投擲し、次々と鬼火纏う餓狼達を薙ぎ払っていく。迫る『破滅の使徒』たちを躱し、迫る壁の狭い通路を跳ねるようにして進むのだ。

「救済を必要としないのですか。あなたは。私達の救済は、『死』。あなたはもうすでに『死』しているというのに、何故」
 悪霊たる己たちの身を言っているのだろう。だが、『疾き者』は止まらない。
 止まるわけにはいかないのだ。
 彼等にとって『死』は通過点でしかない。

 救済は救われてこそである。
 だというのに、そこに生命なき者の、『死』の先にある救済はない。
 ならば、それは誤ちであると言えるだろう。
「ここで立ち止まるわけにはいきませんのでー。通してもらいますねー」
 そう立ち止まれない。
 この道の先にある『人間餓狼(ギャラリア)』に捕らえられている人々がいるのならば、手遅れになる前に救い出さなければならない。

 今を生きる者たちがいるのならば、それを救うことにためらいはない。
『疾き者』は、その名の通り疾風のように『破滅の使徒』たちを躱し、『人間画廊』へと急ぐのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
更なる謎が姿を現した。月の満ち欠けに呼応して輝く、
謎めいた『月光城』。第五の貴族の干渉を阻む魔城。
考えずとも想像できる……此の城は、序の口に過ぎない。
だがそれでも、有益な情報を探さねばな。
■闘
基本は【残像】を伴った【軽業】の如き軽快な動作で翻弄し、
刃が来たら其れを【見切り】つつ、鎌と罠の双方から逃れるぞ。
足場にある罠は咄嗟の【ジャンプ】でかわし、上や壁から来る
武器系の罠は中距離から【斬撃波】を放ち、装置ごと無力化だ。
余裕があれば、敵の隣を横切り同士討ちを狙おう。

機が熟したら、一気に行くぞ。【念動力】で足を浮かせつつ、
【薙鎌・荒】で嵐の如き【範囲攻撃】を仕掛け、使徒のみならず
罠にまみれた部屋を丸ごと斬り壊すのだ。

此の城は、もうじき落ちる……故に思う存分散らかしても
問題なかろう。

※アドリブ・連携歓迎



 愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は己の眼前に現れた新たなる謎を前にして歩みを止めることはなかった。
 目指すは『月光城』。
 月の満ち欠けに呼応して光り輝くという『月光城』は、この『第五層』の地底都市にありて異質な存在であった。
 あらゆるものを拒むという城。
 その内部はありとあらゆる罠が待ち受けて、強化オブリビオンがひしめいている。
 危険極まりない場所であることは承知の上である。

 さらには『第五の貴族』ですら拒むという魔城。
「考えずとも想像できる……此の城は、序の口に過ぎない」
 この危険極まりない『月光城』に挑む。
 それは情報を得るためだ。地底にありながら天井に浮かぶ月。その異質さを知る猟兵であればこそ、この『月光城』が無関係であるとは思えない。
 たとえ、得られる情報がか細いものであったのだとしても、そこから糸のほつれを引くようにして猟兵たちは世界の真実に迫るだろう。

 清綱は残像伴う軽業の如き軽快な動作で『月光城』の内部の罠を躱す。
「あなたに救いを。救済を。『死』は平等なる救済なれば、あなたも救われなければならない」
『破滅の使徒』たちの手にした大鎌が巨大化し、その斬撃が罠と共に襲い来る。
 吊り天井が落ち、それを躱してもなお迫る大鎌の斬撃。
 それを清綱は斬撃波を放ち、相殺する。
「詭弁を。今を生きる者に『死』が救済などと」
 清綱にとって、それは逃げであったことだろう。己の道から目をそらすことと同義であった。

 それゆえに彼は瞳をユーベルコードに輝かせる。
「構太刀、息吹く刃風はいくさ場の……空直斬りし、荒れ薙鎌」
 薙鎌・荒(ナギカマ)。
 それは神速の剣閃より放たれる嵐の如き真空波。
 荒れ狂う斬撃は『月光城』内部の罠を切り裂き、『破滅の使徒』たちをも切り裂くだろう。
 どれだけの罠が彼を追いすがるのだとしても関係はない。
 彼の放つ剣閃が全てを無に帰すだろう。

「『死』の救済を拒むなど」
「それは意味のない言葉だ。人が救われる時、それは他者の手によって救われるのではない。己自身の手と足で道を歩むからこそ、人は救われるのだ」
『破滅の使徒』が放つ大鎌の一撃を剣閃が切り裂く。
 清綱にとって、『死』は到達点であろう。
 己が剣を振るえば、それだけで死が振りまかれることだろう。

 兵(つわもの)の道とはそうした『死』によって彩られるものである。
 されど、清綱はそればかりではないと知る。
 己の身の周りには『死』が充満している。けれど、それは数多の生命に生かされているということでもある。
 己が超克せねばならぬのは、そうした『死』である。
 生命を活かすために『死』は必要不可欠だからだ。

 己が食する生命もまた『死』。
 ならば、それは救済なのだろうか。答えは否である。数多の生命を喰らい、生きるからこそ生命である。
「人の営みは、そうして繋がれてきた。おまえたちがどれだけ絶望にまみれ、どれだけの殉教の意を以て道を進んできたのかは知らぬ」
 けれど、『破滅の使徒』たちは、己たちの信じる救済を他者に強要するだろう。
『死』こそが救いであると。
 
 それを望まぬ者たちにも。
 狂った意志は、ただの虐殺を呼ぶ。
 いつの時代も、どこの世界であっても変わらないことだ。オブリビオンは己の欲望によってのみ動く。
 救済することが救いであるとのたまうのであれば、それは彼女たちの欲望の発露にしかすぎないのだ。
「ゆえに俺の道と交わったのだろう。『死』が救いだというのならば、俺はそのさきへと進もう」
 それが超克、オーバーロードである。

 迫る衝撃波を清綱は荒ぶる剣閃で持って切り裂き、歪なる殉教者たちを霧消させながら罠にまみれた『月光城』内部すらも切り裂き、猛禽の翼を広げ飛ぶ。
「此の城は、もうじき落ちる……故に思う存分散らかしても問題なかろう」
 清綱の剣閃はあらしのように『月光城』に荒び、あらゆる障害を破壊しながら一直線に『人間画廊(ギャラリア)』へと迫るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
絵に封じられたまま
命を吸い取られているのか
酷い話だね

ええ、本当に酷い話ですの
美しくありませんの

分霊の価値観からすると
永遠ですら無いあれは合わないだろうね
と言うか自分らが代わりに封じられるという選択はないんだね
囚われた人は死んでただろうから
結果的には良かったけど

ともあれまずは目の前の敵をなんとかしようか

ワイヤーガンを使って罠を回避したり
敵を攻撃したりしよう
巨大化した鎌は建物を上手く障害物にして躱すよ
絵に当たって大丈夫か分からないし
ガトリングガンは控えよう

そんなまだるい事をする必要ありませんの

死してなお人を救おうとする姿は素晴らしいですの
彫像として永遠を差し上げますの

罠も固定してしまえば無害ですの



『人間画廊(ギャラリア)』とは、『絵画』の中に人間を生きながらにして捕らえ、その生命力を吸い上げる装置のようなものであった。
 それがこの『月光城』の主であるオブリビオンの持つ紋章の力になる。
 そして、この月の満ち欠けに呼応して輝く『月光城』が『第五の貴族』の干渉すらも拒む要因になっているのならば、猟兵たちはこれをこそ排除しなければならない。
「絵に封じられたまま、生命を吸い取られているのか。酷い話だね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はグリモア猟兵より知らされた概要を以て頭の痛くなる話だと思ったことだろう。

「ええ、本当に酷い話ですの。美しくありませんの」
 己の内部に融合した邪神の言葉に晶は、彼女の持つ停滞の権能とどこが違うのかと考える。
 形を永遠のままに。
 そこから搾取することのないところが相違点であろう。邪神の文例の価値観からすると、永遠ではないからこそ、『人間画廊』とは合わないだろう。
「美しくはありませんか? 確かにそうですね。『死』こそが救済。救われるべき者たちが、ずっとあのままであるというのは、私達にとっても喜ばしいものではありません」
 対峙する『破滅の使徒』たちは微笑んでいた。

 けれど、彼女たちは手にした大鎌を巨大化させ、晶に迫るのだ。
 彼女たちはあくまで己の主である『月光城の主』の命令に従う。いつか己の首を刎ねてもらえるようにと。
『死』が救いであるからこそ、彼女たちは嬉々としてそれを受け入れるのだ。
「というか、自分らが変わりに封じられるという選択肢はないんだね」
「ええ、それでは私達の救済が為しえませんから」
 微笑む彼女たちを前に晶はかぶりをふる。

 そうだった。オブリビオンとはそういう存在なのだ。
 生命を弄ぶ。人の生命を生命とも思わぬ玩具と同じである。だからこそ、彼女たちは歪んだ欲望に身を任せ、大鎌を振るうのだ。
 その一撃をワイヤーガンを使って壁へと飛ぶ晶。
「囚われた人は死んでただろうから、結果的には良かったけど」
 まだ救う手立てがある。それが幸いであったのかと問われれば、そのとおりである。ともあれ、晶のやるべきことは変わらない。
 罠によって迫る壁を利用し、巨大化した大鎌を振るい難い場所へと誘導し、晶は『破滅の使徒』たちを翻弄する。
 ガトリングガンで攻撃してもいいが、『人間画廊』の絵画に当たってしまっては困るからと彼女は攻撃を控えていた。

 そんな晶に邪神の分霊は『まだるい』と一蹴する。
「死してなお人を救おうとする姿は素晴らしいですの」
 だが、そのやり方がよくはない。
 邪神の分霊にとって、それだけが唯一の相容れぬ点である。
 静寂領域(サイレント・スフィア)が広がっていく。
 戦場と成った『月光城』を神域に似た環境に変化させ、虚空より森羅万象に停滞を齎す神気を放ち『破滅の使徒』たちを襲う。

「彫像として永遠を差し上げますの」
 どんな罠も、どんな攻撃も時間凍結、固定してしまえば脅威ではない。
 邪神の分霊によるユーベルコード、その静寂だけが支配する領域に在って『破滅の使徒』たちはその動きを止めるだろう。
 どれだけ尊い救済があるのだとしても、手を差し伸べることと、その手を掴むことは止められない。

 けれど、それを押し付けることだけはしてはならないのだ。
 それはきっと悪意へと変わる。
「だから、君たちはここで終わりだ。どれだけ過去に人を救いたいと祈り願ったのだとしても。君たちのそれはもう過去に歪んでしまっている。『死』が救済だというのは」
 そう、それは懸命に生きた者だけが得られるものである。
 他者から押し付けられ、その生命を散らされて得られるものではないのだ。
 だからこそ、それはただの欲望の結実にすぎない。
 晶は神域の神気に当てられ、彫像と化した嘗ての『破滅の使徒』たちを尻目に、『人間画廊』を目指すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 ここが月光城、満月にかかわるもの。何だかとっても嫌な感じね。けれど、ここに囚われている人たちがいて、咎人さんがいるのなら、ゾーヤさんの出番ね!

 【UC:絶凍魔弾】(WIZ)を発動、現れた狼さん達に、鬼火すら凍り付く氷魔法よ。使徒さん達にも〈属性攻撃〉〈多重詠唱〉〈高速詠唱〉の連撃を放っていくわ。降り注ぐギロチンや飛んでくる毒矢は〈武器受け〉で払いのけながら、地形を凍り付かせて道を作るわね!

 死は救済、生は地獄。確かに、この世界ではそうかもしれない。でも、仕方ないって言って、誰かを苦しめちゃいけないわ。わたしは彼らを助けたい、だから咎人さん達、そこをどいて頂戴!

(アドリブ連携等々全て歓迎です)



 人狼たる身において満月とは如何なる意味を持つものであろうか。
 ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)にとって、月は満月に変わるもの。
 ならば、そこに不穏な気配を感じるのも無理なからぬことであったことだろう。
 彼女の村は滅ぼされた。
 このダークセイヴァーの世界にあっては珍しくないことであったのかもしれない。けれど、彼女が唯一の希望であったように、彼女にとってその村は唯一であったのだ。
 行く宛のない旅。
 その道行きの終着点が何処であるのかを彼女は知らない。

 けれど、護りたいと願った力は、今彼女の中にあるのだ。
「ここが『月光城』、満月にかかわるもの。なんだかとっても嫌な感じね」
 だが、ここに囚われている人々がいる。
 それを解放しなければならない。それがゾーヤの願いであり、己の力の使い所であったからだ。
『月光城』の内部は罠が張り巡らされている。
 多くの猟兵たちが先行して進んだせいか、罠は踏み荒らされているが、それでも強化オブリビオン――彼女の言う所の『咎人』が未だ跋扈している。

「なら、ゾーヤさんの出番ね!」
 彼女の言葉に呼応するように振り子のように発動するギロチン刃の隙間から鬼火纏う餓狼が飛び出す。
 オブリビオン『破滅の使徒』が放ったユーベルコードであろう。
 その現れた餓狼たちを前にしてもゾーヤは怯むことはなかった。
 彼女の瞳がユーベルコードに輝き、その氷属性の魔法を解き放つ。絶凍魔弾(フリージング・バレット)の狙いは過つことはない。
 鬼火すらも凍りつく魔弾は餓狼たちを凍結させギロチン刃によって砕かれていく。

「あなたは救済を望まないのですか? その苦しみ、哀しみ、それを私達は救いたいと思うのです」
『破滅の使徒』たちは『月光城』内部の罠を利用しながらゾーヤを追い詰める。
 彼女に迫る毒矢は数多。
 そして、『破滅の使徒』たちが放つ餓狼もまたゾーヤを塗りつぶすには十分すぎるほどの物量であった。
 けれど、ゾーヤの放った魔弾は『月光城』内部すらも凍りつかせ、罠という罠を氷の道へと変えていくのだ。

「死は救済、生は地獄。確かに、この世界ではそうかもしれない」
 ゾーヤにはわかる。
 絶望が嘗て彼女の心を、魂を蝕んだように。
 けれど、彼女は猟兵である。この常闇の世界だけではない、陽光差す世界を知っている。
 何故、ダークセイヴァーだけが常闇に包まれねばならないのか。
 それは言うまでもなくヴァンパイア、オブリビオンの支配が続くからだ。
「仕方のないことなのです。生きるにはあまりにも人の体は脆すぎる。苦しみも、哀しみも抱えきれるものではないから」
『破滅の使徒』の言葉は尤もな言葉に聞こえたことだろう。

 死さえ受け入れてしまえば、それは感じなくて済むのだから。
「でも、仕方ないって言って、誰かを苦しめちゃいけないわ」
 そう、それは理由にはならない。
 己を救うための死は肯定できるかもしれない。けれど、他者を苦しめるための方便に使うなど。
「わたしは彼等を助けたい、だから咎人さん達、そこをどいて頂戴!」 
 ゾーヤの放つ魔弾が『破滅の使徒』たちをも凍りつかせ、一瞬で道を切り開く。
 彼女の瞳にはユーベルコードの輝き以上に、意志の輝きが煌めく。

 力を振るうことにためらいはない。
 彼女は咎人、オブリビオンにこそ、その力を振るうだろう。
 助けたいと願う人々はいつだって苦しみと哀しみにくれている。ならばこそ、ゾーヤはかつて唯一の希望と言わしめられた慈愛を以て、此処に囚われし人々を救うために、その一歩を踏み出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソルドイラ・アイルー
ギヨーム君(f20226)と

人間画廊とは中々に非道い事をやってのけますねえ。そこに芸術的価値を見出そうとする吾輩も吾輩ですが、見に行くにも一苦労であります。罠だけでなく、アーティスト直々にお出迎えとは話が積もりかねません

わかります、わかりますとも。死は救済。それは真理を突いていると言っても過言ではありません
ですがねえ。地を這い泥水を啜りながらも尚生きようと抵抗する生物程素晴らしい存在がありましょうか? まあ価値観はそれぞれですので、貴方が救済だと思えば救済なのでしょうね。吾輩の言ってる事こそが非道です
さあ、愚かな吾輩を切ってみなさい。説いてみなさい
盾は敵愾心を稼ぎ、龍は砂影に剣を忍ばせましたよ


ギヨーム・エペー
ソルドイラくん(f19468)と

ソルドイラくんの言い分にはー、半分は同意するかな
引いてないよ。きみはそういうところあるよなーって思っているだけだから。半分は同意できるし。寧ろそのまま彼女たちを引き付けておいてくれると、わしもやりやすい

ソルドイラくんが盾として、おれをかばってくれている間に詠唱を。鬼火に紛れ込んで攻撃範囲を拡大しつつも餓えた狼をじわじわと狩っていく。罠を破壊するのは出方がバレてからかなー……ソルドイラ君が切られそうになる前には狼の対処を終わらせておきたい。そこからは正面突破で派手にいこうか!

きみたちは救いだろう。でもな、終りを決めるのは自分自身だ。おれたちは抵抗する。きみたちもだ



 月の満ち欠けに呼応して光り輝く『月光城』。
 その内部に在りし『人間画廊(ギャラリア)』には人が生きながらにして捕らえられているという。
 生命を弄び、己達以外の存在など生命ではないというような扱いをするのがヴァンパイアというオブリビオンである。
 彼等の行いはこのダークセイヴァーにおいては恐怖の象徴であったことだろう。
 故にソルドイラ・アイルー(土塊怪獣・f19468)は、その行いを非道であると言う。
「『人間画廊』とは中々に非道い事をやってのけますねえ。そこに芸術的価値を見出そうとする吾輩も吾輩ですが」
 ソルドイラにとって、人の一生とは如何なるものであったことだろうか。
 混沌を好むも崩壊を嫌う。
 たとえ、そこに混じった色がどれだけ汚濁のような濁り方をするのだとしても、ソルドイラにとっては、愉悦を見出すことができただろう。

「とはいえ、見に行くにも一苦労であります」
 彼の前に立ち塞がるのは『月光城』の罠と強化オブリビオンである『破滅の使徒』たちである。
 彼女たちの構える大鎌の一閃は鋭く、さらには城内に張り巡らされた罠すらも利用してくるのだ。

 振り子のようにギロチン刃が交差して迫る中、ギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)は迫る鬼火纏う餓狼をいなす。
「死は救済。我等の救済をあなたがたは受け入れてくださいますか? 私達は救済したいだけなのです」
『破滅の使徒』たちの言葉は、過去に歪みし欲望の発露でしかない。
 彼女たちは『死』という救済に至ったがゆえに、この苦しみと哀しみにまみれた世界からの解脱を望むのだ。
「わかります、わかりますとも。『死』は救済。それは真理を付いているともいっても過言ではありません。ですがねぇ――」
 ソルドイラは頷く。

 ギヨームが放つ魔術の炎が鬼火纏う餓狼たちを吹き飛ばす。
「地を這い泥水を啜りながらもなお生きようと抵抗する生物ほど素晴らしい存在がありましょうか?」
 ソルドイラにとって、生命とはそういうものである。
 足掻き、泥にまみれ、それでもなお生というものに執着する。
 それは確かに救済を齎さんとするオブリビオンにとっては醜いものに思えたのだろう。
 だが、それでも一瞬の虹のような煌めきを齎すからこそ美しいと思えるのだ。

「ソルドイラくんの言い分にはー、半分は同意するかな」
「引いておりませぬか?」
「引いてないよ。君はそいうところあるよなーって思っているだけだから」
 だから、半分は同意できるのだとギヨームは理解し、笑うのだ。ソルドイラだって生きている。自分も生きている。
 こうして交わってなお、半分は理解できるのだ。
 半分は己もまた理解されないだろうとわかっている。だからこそ、ソルドイラの背を護るのだ。

「まあ、価値観はそれぞれですので」
 ソルドイラは迫る『破滅の使徒』たちを無敵城塞のユーベルコードで押し止める。彼の背後ではギヨームが順部をしているのだ。
「何故です? どうして理解できるのにあなたたちは救済を拒むのです?」
「貴方が救済だと思えば、救済なのでしょうね。吾輩の言ってる事こそが非道です。ゆえに」
 己を切って見ろと。
 説き伏せてみせろとソルドイラは言う。
 けれど、それは叶わない。
 ソルドイラは一歩も動かないからこそ、こうしてギヨームを護っているのだ。それは信頼と呼ぶものであったし、どれだけ理解を突き詰めても他者とは全てを相互理解することができないと知るからだ。

 いつかは叶う未来であるのかもしれない。
 けれど、それは今ではないのだ。
「その車輪の轂に太陽は昇る。降り注ぐ御光は輻となり、灯は星と生り円環を回る。紅く咲かせ、日輪の蓮」
 ギヨームの魔術の炎が膨れ上がっていく。
 ソルドイラが敵を惹きつけてくれたおかげで彼の魔術の炎は一万度までに熱を上昇させている。
 système solaire lotus(システムソレールロテュス)の輝きは、いつだって彼に暖かさをもたらしてくれる。

 この『月光城』に満載された罠。
 それらの尽くを焼き切る魔術の炎は、ソルドイラの背後から放たれる。
 正面突破。
 派手に行こうと決めていたのだ。
「君たちは救いだろう。でもな」
 ギヨームの瞳がユーベルコードに輝く。彼が見ているのはいつだって陽光煌めく波の輝き。
 ゆえに。

「終わりを決めるのは自分自身だ。おれたちは抵抗する。きみたちもだ」
 そう、その救済を否定はしない。
 されど、生きたいともがくように願う己の体は止まらない。
 きっと救済しようと願う『破滅の使徒』たちも変わらぬことであろう。
 だからこそ、放たれる魔術の炎に抵抗してもいいと告げるのだ。けれど、それは叶わない。
 放たれた炎は一万度にまで上昇し、相対する全てを焼き尽くしていく。

 開けた道の先にあるのは『人間画廊』。
 多くが捕らえられ、そして『月光城の主』のちからの源にもなっている人々が『絵画』の中にある。
 二人は、その先へと歩みを進め、己と他者との織りなす交わりの軌跡をこそ見つめるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ歓迎

地下世界と知るまでは、普通に眺めていた月なんだよな
果たして、この城に手掛かりはあるのか?

無数の罠は「第六感」で危険を察知し「視力、暗視」で場所を見切ってから「ジャンプ」でギロチンの上に飛び乗ったり「ダッシュ」で罠の駆け抜けたりして回避
破滅の使徒たちが俺を追って罠に巻き込まれれば上等だが

接近されたら指定UC発動、両目が紅のヴァンパイアに変身
至近距離から吸血コウモリの群れを放ち「範囲攻撃、吸血、生命力吸収」で血液を奪うと同時に敵愾心も砕いてやる
あとは黒剣で「2回攻撃」し真正面から斬って沈めるのみ

貴様らの祈りも救済も人類には不要
人類に死を齎すオブリビオンは斬って捨てるのみ!



 ダークセイヴァーの月を知るものは、それが本当の月であると疑うことはなかっただろう。
 常闇の世界。
 それはヴァンパイア支配盤石であるからこそ、陽光登らぬ世界として知られていたのだ。
 けれど、事実は違う。
 己たちが地上であったと思っていた場所は、地下であり、天に浮かぶ月が本物の月ではないと知るのだ。
「地下世界と知るまでは、普通に眺めていた月なんだよな」
 館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は、月光降り注ぐ『第五層』の地底都市に浮かぶ月を見やる。

 その月と関連があるのかどうかはわからない。
 それが『月光城』である。月の満ち欠けに呼応して光り輝く城は、あらゆるものを拒む。『第五の貴族』の干渉すらも拒むという『月光城の主』の力は言うまでもなく強大そのものであろう。
 果たして、この城に世界の真実を暴くための手がかりがあるのかどうかも未だわからない。
 けれど、進まぬ理由など無いというように敬輔は『月光城』へと踏み込むのだ。

「とは言え、敵の数も多ければ罠の数も尋常ではないと」
 敬輔は、己に迫る強化オブリビオン、『破滅の使徒』と次々と作動していく罠の数に息を呑む。
 天井が落ち、床が抜ける。
 それはまだ可愛い方であった。四方八方から毒矢が降り注ぎ、振り子のように鉄球やギロチン刃が迫るのだ。
「『死』は救済。あなたの救済を私達がしようというのです。この苦しくも悲しい生に終わりをもたらしましょう。それであなたは救われるのですから」
 迫る『破滅の使徒』たちが振るう大鎌の一撃が敬輔に迫る。

 その刃の煌きを敬輔は見ただろう。
 けれど、彼の瞳に煌めくのは大鎌の刃ではない。ユーベルコードの輝きである。
 彼はすでに、過去を葬りし吸血鬼(ヴァンパイア・ザ・フューネラル)である。
 その身に秘めた吸血鬼の力を発露し、吸血コウモリを解き放つのだ。
「貴様らの祈りも救済も人類には不要」
 放たれた吸血コウモリたちが、次々と『破滅の使徒』たちの血液と敵愾心を奪い去っていく。
 周囲に満ちる暗闇ゆえに、吸血コウモリたちの力は増大し、『破滅の使徒』たちをひとり残らず吸い尽くしていく。

 だが、それでも後から沸き上がるようにして強化オブリビオンである彼女たちはやってくる。
「人類に死を齎すオブリビオンは斬って捨てるのみ!」
 迫る『破滅の使徒』たちを黒剣でもって斬り捨て、敬輔は無数の罠と踊るようにして躱し、彼女たちを巻き込みながら吸血コウモリたちと共に舞う。
 近づく全てから血液と敵愾心を奪い尽くし、彼は黒剣の剣閃を解き放つ。

「俺の復讐は終わった……だが、まだ苦しむ人々がいるというのならば」
 戦うことにためらいはない。
 彼にとっての戦いとは、ここからがスタートラインなのだ。
 ダークセイヴァー、未だオブリビオン支配から解放されぬ世界。ゆえに、彼の戦う意味は、意義は残されている。
 敬輔は、黒剣を振るい『月光城』を走り抜ける。
 目指す先にあるのは『人間画廊(ギャラリア)』である。

 人の生命を生命とも思わぬヴァンパイアが齎す悲劇は言うまでもない。
 彼等が弄ぶ生命は、失われてはならないものだ。
 救済をという『破滅の使徒』たちの言葉が真実であればこそ、彼等を救うことに意味はある。
 その赤き両眼が煌き、残光と成って月光を切り裂きながら悪しき画廊に突き進むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
厳重な守りの奥には秘密があるもの
そんな御伽噺のような“お約束”がこの城にあるかは定かではありませんが…

危地に踏み入りて囚われの人々を救い出すは義務であり、聖なる杯の如き真実求めるのも騎士の使命というものです

マルチセンサーでの情報収集でトラップ作動音を検知

盾を花弁に変換し、そこから発するバリアでの防御、バリアを空中に浮かぶ足場としての転用…

瞬間思考力で罠の種類を見切り素早く対処

主の破滅の使途達諸共、嗾けられる狼達の顔面に格納銃器の乱れ撃ちスナイパー射撃を浴びせ牽制
動きを止めた隙を切断兵器に転用したバリアや怪力で振るう剣で斬り捨て

その歪んだ救済が必要な者はこの城には皆無
押し通らせて頂きます



「厳重な守りの奥には秘密があるもの」
 それは御伽噺のような“お約束”であったことだろう。
 財宝の山の前には番人として竜が存在するように、ダークセイヴァーという世界の真実を護るのは『月光城の主』であるというのもうなずける話である。
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はそれが真実であると断定することはできなかったが、そのような“お約束”を期待してしまうだろう。

 未だヴァンパイア支配盤石たるダークセイヴァーにおいて、世界の真実は未だ知れず。
 地上であると思っていた世界が地下であり、さらに『第四層』であることが示唆された。
 ならば、地下である『第五層』にありて跳梁跋扈するオブリビオン、『第五の貴族』たちこそが何かを知る者たちなのであり、そして空に浮かぶ月の存在がいびつさを増すのだ。
 地下にありながら浮かぶ月。
 そして、月の満ち欠けに呼応して輝く『月光城』。
 なんの関係もないということはないだろう。

「どうして此処に来たのです? 救済を拒み、我等を打倒するあなたたち。どうして、苦しみに満ちた、危険なる道を選ぶのです?」
 それは苦しみしか生まないだろうと、『破滅の使徒』たちは言う。
 彼女たちの放つ鬼火纏う餓狼たちがトリテレイアに迫る。
「危地に踏み入れて囚われの人々を救い出すのは義務であり、聖なる杯の如き真実を求めるのも騎士の使命というものです」
 マルチセンサーで得た情報を元にトリテレイアはあらゆる罠と踏破し、迫る鬼火纏う餓狼を躱す。

 しかし、それだけでは『破滅の使徒』たちが放つ攻撃を躱すことはできないだろう。
 電脳禁忌剣・通常駆動機構:兵装改造『守護の花』(バリアビット・ブローディア)によって己の盾を無数の花弁によって生み出されたブローディアの花びらを展開し、迫る餓狼を受け止めるのだ。
 さらにそのバリアを足場にしてトリテレイアは『月光城』内部を突き進む。
 追いすがる『破滅の使徒』たちをアイセンサーが捉え、格納銃器の乱れ打ちによって牽制する。
 彼女たちは強化オブリビオンである。
 此の程度では牽制にしかならないだろう。

 だが、その動きは止められる。
「私達はあなたに救済を与えたいだけなのです。人の身ではなく、戦うことを強要された者。そんな苦しみだけが渦巻く体に終わりという名の救済を!」
『破滅の使徒』たちの言葉にトリテレイアは頭を振るだろう。
 確かにそうなのかもしれない。
 戦うだけの存在。ウォーマシンとはそのために生み出されたものであるからだ。
 けれど、トリテレイアを見る彼女たちの瞳にあるのは過去に歪んだ意志だけだ。彼女たちは救いたいという願いと『死』を齎すという願いをこそ同時にはらむ。

 ゆえにトリテレイアはブローディアの花弁と共に発生したバリアでもって『破滅の使徒』たちの体を両断する。
「その歪んだ救済が必要な者は、この城には皆無」
 そう、誰も望まないのだ。
 生きることに疲れることも、生に絶望することも、たしかにあるのだろう。
 思っても仕方のない世界である。

 けれど、トリテレイアは知っている。
 見てきたのだ。
 これまで幾度となく。僅かな希望にすがる者。か細い糸を手繰るようにより良い未来に進もうとする者。
 絶望にまみれてもなお、歩みを止めぬ者たちを。
「ゆえに、押し通らせていただきます」
 トリテレイアの放つ剣閃の一撃が『破滅の使徒』たちを切り裂き、その体を両断しながら霧消していく。

 アイセンサーの先に捉えるのは『人間画廊(ギャラリア)』である。
 生きながらにして捕らえられた人々が待つ、そこへトリテレイアは歩みを進める。
 立ち止まる事は許されないと知るからこそ、彼は『死』という救済願う『破滅の使徒』たちを退け、この歪み果てた世界の真実を求めて手をのばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『毒沼攻略』

POW   :    ユーベルコードを使用して進む

SPD   :    技能を使用して進む

WIZ   :    アイテムを使用して進む

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『人間画廊(ギャラリア)」
 それは『月光城』にありて、もっとも歪な場所であったことだろう。
 回廊は毒の沼に沈み、されど壁に掲げられた額縁の中、その『絵画』には無数の人々が生きながらにして閉じ込められている。

 彼等はまだ生きている。
 けれど、その生命を滾々と吸い上げられているのだ。
 何のためにとは言うまでもない。
『月光城の主』の持つ紋章、『月と目の紋章』のちからの源になっているのだ。彼等を開放することで、今の猟兵をして戦いにすらならぬと言わしめた紋章の力を減退させることができる。

 しかし、此処は毒沼である。
『絵画』の額縁を破壊すれば、捕らえられた人々を救出することはできるだろう。
 けれど、開放した人々は毒沼にありては死に絶えてしまう。
 ゆえに、開放し、人々を一先ず安全な場所へと運び、戦いが終わるまで隠れて居てもらわねばならない。

 やるべきことは多い。
 けれど、それでもやらねばならない。世界の真実に手を伸ばし、人々の生命をも救う。
 それが並大抵のことではないことは、承知の上である。
 戦いに勝利する以上に、人々の生命を救うこともまた猟兵の戦い。
『人間画廊』に広がる毒沼は、猟兵たちの生命を欲するように怪しく仄暗く輝く――。
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦怪我アドリブok

人を救うのか、僕が……
まだ、この世界の人と関わるのは、早いと思ってたけど……仕方ない

質問にも謝辞にも無言で応える
どのみち語るべき言葉を持たないし、きっと私は彼等からしたら化物側の存在だから

依然変わらずUCの飛行で、額縁なんて握って壊せばいい
取り外し出来るなら、そもそも絵画ごと安全地帯まで運んでから解放すればいい訳でしょう

落とさないよう気を付けて、壊したら掴んで運ぶ、それだけの簡単な仕事ね
私の熱位は我慢してよね、毒でぐずぐずに溶け出すよりは百倍優しいわよ



『月光城の主』の玄室い続く回廊は毒の沼に沈んでいる。
 仄暗い光を放つ毒沼回廊は一歩を踏み出せば、それだけで猟兵の体力を奪い去っていくだろう。
 その壁に掲げられた『絵画』は苦悶にあえぐ人々の姿が描かれている。
 いや、違う。
 描かれているのではなく、その『絵画』の中にある人々は全て生きながらにして捕らえられているのだ。
「――」
 呻く声もか細い。
 彼等の全ては例外なく生命を徐々に吸われている。

 その生命力の行く先は『月光城の主』が持つ『月と眼の紋章』に注がれていることだろう。
 かの『月光城の主』は紋章によって戦闘力を『66倍』にまで引き上げられている。今の猟兵であっても戦うことは現実的ではないし、戦って勝てる相手でもない。
 ならばこそ、その紋章の力を減退させるためにこの『人間画廊(ギャラリア)』に捕らえられた人々を開放することが戦いを優位に進めるための方策となるのだ。

「人を救うのか、僕が……」
 肆陸・ミサキ(終り・f00415)は己がこの世界の人々と関わるのは早いと思っていた。
 けれど、戦うためにはこうする他無いと知るのならば、ミサキは仕方のないことだと割り切って白い灼光を纏うドレスと日輪をユーベルコードによって発現させ毒沼の上を飛ぶ。
『絵画』に捕らえられた人々を開放するためには額縁を破壊すればいいと聞いていた。ならば話は簡単である。

 解放されても人々は、この回廊の毒沼で弱って死ぬだろう。
 ならば、額縁ごと安全な場所まで運んでから開放すればいいのだ。
「取り外しができるのなら……」
 力を込める。壁と一体化した額縁がミシミシと音を立てる。ここで破壊しては駄目だと理解しているからこそ、ミサキは慎重に額縁を引き剥がし、次々と毒沼の上を飛び、猟兵達によって散々に破壊された罠の回廊へと降りる。
「私の熱で燃えるかもしれないと思ったけれど……存外丈夫だったみたいだね」
 ミサキは安心するようであり、同時に額縁を破壊する。
 ここならばすでに罠は破壊されているし、他の猟兵達によって強化オブリビオンたちは撃滅されている。

 額縁が破壊され『絵画』の中から人々が解放される。
 誰もが言葉を失っている。
 ミサキにとって、それは当然の反応であろうと思った。自分は彼等からしたら化け物側の存在であろう。
 けれど、彼等の言葉は罵倒や恐れからくるものではなかった。
 白夜(オールライトナッシング)の如き輝きを放つミサキに向かって掌を組み、感謝したのだ。
「ありがとう」
 ただその言葉しか紡げぬのだろう。

 けれど、ミサキは、その言葉に応えることはなかった。
 彼女はまだ彼等の言葉に応えるための言葉を持っていない。
 だから無言で応える。
 語るべき言葉を持っていないのだ。下手に口を利くと彼等を却って脅かしてしまうかも知れないという思いがミサキの中にあるからこそ、ミサキは無言のまま、また『人間画廊』へと戻る。

「ありがとう」
 まだ耳に残る言葉。
 その言葉にミサキは何を思っただろうか。
 これは『月光城の主』を打倒するために必要なこと。わかっている。だから、謝辞もなにも必要ないことだ。
 自分のやるべきことをやっているだけ。

 けれど、その耳に残る言葉は、きっと彼女の胸のうちに如何なる意味に変わるとも知れぬまま、残響するだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
ハハハ、何とも趣味の悪いことだ。

『絵画』の額縁を衝撃波で破壊。
解放された人々を念動力で空中に固定して、ご挨拶。
(話を理解できるほど体力がなさそうなら挨拶は割愛)

やあ、初めまして。
君達は運が良い……いや、閉じ込められていたのだから悪いのかな?
まあ、何にせよ、囚われの絵画生活は終わりだよ。
とはいえ、まだ安全ではない。
君達を絵画にした者の討伐が残っているからね。
それまでは、安全なところで休んでいたまえ。

と『ラガシュの静謐』にて解放された人々をシーザーの支配領域に転移。
(そこで手厚い歓迎、介護を受けるでしょう)

しかし、力の源の奥に引っ込んでいるというのは何とも言えないね。



「ハハハ、なんとも趣味の悪いことだ」
 シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は目の前に広がる毒沼と『人間画廊(ギャラリア)』をみやり、そう言葉を紡いだ。
 その言葉は真実、そのとおりであったことだろう。
 他者の存在を拒む毒の沼。
 この『月光城』の主たるオブリビオンが持つ紋章のちからの源となる生きながらにして捕らえられた人々の生命は、こうして維持されているのだから。

「ふむ、ならばこうしようか」
 下手に『絵画』の額縁を破壊して人々を開放しようものなら、回廊に満ちる毒沼に人々は落ちて死ぬだろう。
 ならば、とシーザーは衝撃波で額縁を破壊し、『絵画』よろ飛び出した人々を念動力で空中に固定する。
 彼等は突如として解放されたことに驚きと同時に恐怖するだろう。
 己たちの生命が保証されているのは、この『絵画』の中にあって生命を吸われ続けているからだ。

 それが解放された意味は言うまでもなく、『処分』の一言に尽きるだろう。
 青ざめた顔をシーザーに向ける。
 その顔を見てシーザーは頷く。まだ感情が揺れ動くだけの体力があるのならば、まだ大丈夫であろうと。
「やあ、はじめまして。君たちは運が良い……いや、閉じ込められていたのだから悪いのかな? まあ、何にせよ、囚われの絵画生活は終わりだよ」
 その言葉を彼等は理解できなかったかもしれない。
 己たちの生命を握るのはヴァンパイアである。
 目の前の真紅のスーツを身に纏った美丈夫ではない。だが、それでも未だ己達が救われるということに対して理解が深まらないのだ。

「とは言え、まだ安全ではない。君たちを『絵画』にした者の討伐が残っているからね」
 だから、とシーザーの瞳がユーベルコードに輝く。
 それまでは安全なところで休んでいたまえ、と彼の掌に浮かぶ赤く輝く魔法陣を示す。
 抵抗しなければ、人々はそこに吸い込まれていくだろう。
 いや、抵抗などできようはずもない。ただ場所が変わるだけだと彼等は諦めていたのかも知れない。

 それはラガシュの静謐(デウス・ウルブス)。
 シーザーのユーベルコードによって生み出された安全な場所であり、内部は近未来風都市の様相を広げている。
 そこはシーザーの支配領域であり、その未来風都市の中で生命力を吸われ続けた人々は手厚い歓迎と介護を受けるだろう。
 一先ずは安心と言える。

「しかし、力の源の奥に引っ込んでいるというのはなんとも言えないね」
 シーザーの瞳の先にあるのは『人間画廊』の奥、『月光城の主』の座す玄室である。
 これだけの騒ぎを起こしてもなお、『月光城の主』は己たちを狙ってはこない。
 この『人間画廊』より得られる『月と眼の紋章』の力、その恩恵を知っているからか、あえて出てこないのかもしれない。
 余裕、と捉えることもできる。
 なにせ『月光城の主』のちからは己達の力を遥かに凌ぐ。
『月と眼の紋章』は戦闘力を66倍にまで引き上げるのだから。今の猟兵たちであっても倒すことはできない。

「であればこその、『人間画廊』からの人々の解放……後どれだけの『絵画』が残っているのかはわからないが……」
 全て解放してしまえば、『月と眼の紋章』の力は完全に無効化されるだろう。
 居並ぶようにして飾られた『絵画』は未だ多い。
 シーザーは掌に浮かぶ赤い魔法陣をみやり、念動力でもって毒沼を飛び越え、さらなる人々の救出に尽力するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

亞東・霧亥
UCは決して万能では無いが、やりたい放題もたまには良かろう?
要は、助けた人々を沼に落とさなければ良い。

【UC】
115㎥以内で100人乗れるリヤカーを作る。
これは『100人乗っても大丈夫だが、101人目が乗ると自爆してしまう仕掛け罠』が付いているため、非常に精巧である。

額縁は『解体』して中の人々を助ける。
100人以上いれば往復もしよう。

毒沼でリヤカーを引いて走る。
俺には強力な『毒耐性』がある。
そもそも『毒使い』で毒には精通しているし、『医術』の心得もあれば『早業』で『薬品調合』も可能だ。

「走行中、気分が悪くなったら言え。中和剤を渡そう。」



『月光城』内部、その主の玄室に至る道程は毒の沼で埋め尽くされていた。
 仄暗く輝く沼はひと目で毒性あるものであるとわかるだろう。
 そして回廊の壁に掲げられた『絵画』は人が生きながらにして捕らえられているという。
 それこそが『人間画廊(ギャラリア)』である。
『月光城』の主であるオブリビオンの持つ紋章、『月と眼の紋章』のちからの源である人間の生命力を得るため、『絵画』に捕らえられた者たちは即座に殺される

ことこそなかったが、ゆっくりと死に至る。
 そのやり方こそが、人の生命を生命とも思わぬオブリビオンのやり方であると言える。

「ユーベルコードは万能ではないが、やりたい放題もたまには良かろう?」
 亞東・霧亥(夢幻の剣誓・f05789)は『人間画廊』に足を踏み入れる。
 彼自身は強力な毒への耐性を持っている。ゆえに毒の沼に足を踏み入れることにためらいはなかった。
 彼がユーベルコード、レプリカクラフトによって生み出したのは百人乗れるリヤカーであった。
 百人乗っても大丈夫だが、百一人目が乗ると自爆してしまう仕掛け罠となっている。
 仕掛け罠を作った時にこそ極めて精巧に成るという特性があるがためにあえて罠としてリヤカーを生み出したのだ。
「要は、助けた人々を沼に落とさなけれ良い」

 簡単な話だと彼は次々と『絵画』の額縁を解体し、解放された人々をリヤカーに乗せていく。
 どう考えても百人以上いる。
 他の猟兵たちも人々を開放するために動いているから往復する必要はないだろう。だが、それ以上に解放された人々の衰弱具合が気になる。
 彼等は『絵画』の中に在りて傷つけられることこそなかったが、生命力を紋章に吸い上げられていたのだろう。
 このままでは毒沼の瘴気に当てられて死んでしまう可能性だってある。

「生命力を吸われ過ぎているか……」
 リヤカーを引きながら霧亥は背後を見やる。
 解放された人々は己たちが助かったという自覚もまだないのだろう。活力というものを奪われているのだ。
 リヤカーの台車の上でへたり込む者たちばかりである。
「走行中、気分が悪くなったら言え。中和剤を渡そう」
 毒に耐性があるということは同時に毒を扱うことにも慣れているということでもある。
 彼等を安全な場所まで運ぶことも大切であるが、毒沼の回廊を抜けるまでに瘴気に晒されていれば、容態も急変することだろう。

 霧亥は開放した人々に気を払いながら毒沼を渡って抜ける。
 息が乱れることはなかったけれど、人々を運ぶのもまた手間である。息を吐きだし、霧亥は告げる。
「しばらく此処にいろ。俺と似たような者が訪れるかもしれない。中和剤と、薬を僅かだがおいていく」
 体長が優れなく成った者から飲むといいと他の猟兵たちが開放してきた人々と共に隠れるように指示を出す。

 彼等にとっては救いの手である。 
 頷く人々をみやり、霧亥は再びリヤカーを引き毒沼を行く。
 まだ解放されなければならない人々がいる。グリモア猟兵の言葉では『人間画廊』に捕らえられている半分を救い出せば『月と眼の紋章』の力は無効化されると

のことであった。
 けれど、誰一人として此処に残していく気にはならなかった。
 あの『絵画』は人の生命を吸い上げる。 
 たとえ、この『月光城』の主を打倒したのだとしても、残しておけば再び別のオブリビオンがやってきて同じことを繰り返すだけだ。

「なら、全て救うまでだ」
 霧亥はつぶやき、沼に取られる足を進めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
『人間画廊(ギャラリア)』か、趣味の悪いことをする。
『月光城の主』の力を削ぐとか関係無く、見過ごしてはいけないわ。

毒の沼は「環境耐性」と摩利支天九字護身法で対処しましょう。これで多少の毒は問題ない。

捕えられた人たちを安全に運ぶために、折紙を牛の形に折って「式神使い」で大量に用意する。式の背に乗せれば、毒の沼地に触れることはないでしょう。式神には罠を踏み潰してもらって、安全な道を作りましょう。

人々の固着は、「破魔」と「浄化」で何とかなるかしら。救助した順に、牛の式神に乗せていくわ。
とにかく、絵画の中から連れ出さないと。

月光城の安全な一角へ運び、そのまま式神を護衛とする。アヤメ、ここは任せた。



 人を生きながらにして生命力を吸い上げる装置とも言うべきものが『人間画廊(ギャラリア)』である。
 それこそが『月光城の主』の持つ『月と眼の紋章』の力の正体であり、猟兵たちがかのオブリビオンに対抗するための鍵でもあった。
『月と眼の紋章』が齎す戦闘力は通常の『66倍』にも及ぶ。
 真っ向から猟兵たちが立ち向かったとしても、敵うことのない戦力差である。
 だからこそ、その力の源である『人間画廊』より人々を開放することで、紋章の力を無効化することができるのだ。

「『人間画廊』か、趣味の悪いことする」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)の言葉に多くの猟兵たちが同意したことであろう。
 生かさず殺さず。
 まさにそう言葉にするのがぴったりくる光景であった。
 さらには回廊には毒沼が仄暗い輝きを放っている。『絵画』である以上、額縁を破壊すれば内部にある人々は開放することができる。
 けれど、此処で解放すれば人々は毒沼の瘴気に当てられて、おそらく長くは持たないだろう。
 多くの猟兵がそう考えた通り、この毒沼は猟兵であっても体力を削るほどの猛毒を持っていた。

 一般の、それも生命力を吸い上げられていた人々の弱った体ではひとたまりもないだろう。
 ゆえにゆかりは手にした折り紙の牛を式神として大量に用意し、解放した人々を運び出すのだ。
「オンマリシエイソワカ。摩利支天よ、この身に験力降ろし給え」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
 摩利支天九字護身法(マリシテンクジゴシンホウ)、それは己の持つオーラ防御をさらに高めるユーベルコードだ。
 彼女にも環境に対する耐性はあれど、猛毒に対抗するためにはユーベルコードを使わねばならない。

 多少強引であるけれど、人々を解放することが『月光城の主』の力を削ぐことになる。
 とは言え、それとは関係なくゆかりは人々を救う。
 見過ごせないのだろう。
 さらにゆかりは牛の式神たちに命じて『人間画廊』の外、これまで猟兵たちが強化オブリビオンたちと戦ってきた『月光城』内部の罠という罠を踏み潰し安全な

領域を作っていく。
「『絵画』との固着はないようね……額縁を破壊すれば解放される。けれど、解放された毒の沼に真っ逆さま……面倒なことを考えてくれるわ」
 ゆかりは開放した人々に瘴気が向かわぬようにオーラと破魔、そして浄化の力でもって守りながら式神たちに用意した安全圏へと運ばせる。

 兎にも角にも『絵画』の中から連れ出さなければならない。
「アヤメ、ここは任せたわ」
 ゆかりは式神であるアヤメに解放された人々の護衛を頼み、再び毒の沼続く回廊へと向かう。
 この『人間画廊』の先にこそ、『月光城の主』の玄室がある。
 人々を開放し、『月光城の主』を打倒する。
 多くの猟兵たちが『絵画』より人々を開放している。それによって『月と眼の文相』は完全に効果を喪うだろう。

 けれど、それでもなお『月光城の主』の力は強大であるという。
 油断はならない。もとよりするつもりもない。
 ゆかりが目指すのは人々の解放と真実の一端を掴むことである。
「さあ、行きましょう。偽りの月光齎す世界、そして、この『月光城』を護るオブリビオン……」
 いずれにせよ戦って勝ち取らねばならぬ未来があるというのならば、ゆかりはためらうことなく前に進むだろう。

 これまでも、これからも。
 それは何一つ変わらぬことなのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラヴィ・ルージュブランシュ
毒沼を踏まないように羽で飛びながら【ヴォーパルソード】で額縁を破壊するわ
…ラヴィ元々お花だから、毒はすぐに身体に回っちゃうの
とっても儚いのよ(大剣をぶんぶんと振り回しながら)

救助した人達は【もっと愉快な仲間達】で呼んだ薔薇の小人達と協力して
抱きかかえながら安全なところまで連れて行くわ
既に救助された人達と同じ場所に固まってて貰うのが一番安全かしら?
万一の為に小人達も残しておきましょ
戦えないけど、見張りくらいはできるはず
この人たちに何かあったら、絶対ラヴィに知らせてね!

絵画越しでも感じるわ
苦痛や絶望のにおい
許せないわ、絶対許せないけど――
そこまでして斃したいモノが、貫きたい正義があったのね



『月光城』の玄室に続く回廊は『人間画廊(ギャラリア)』と呼ばれていた。
 その壁に掲げられた額縁、その中にある『絵画』は人間が描かれていた。いや、違う。描かれていたのではなく、まさに『絵画』の中に生きながらにして捕らえられていたのだ。
 彼等はいわば、『月と眼の紋章』の養分である。
 生かさず殺さず。
 その生命力を息絶える時まで吸い上げ、その力へと変えているのだ。

 これが『第五の貴族』すらも拒む『月光城の主』の強大なる戦闘力の正体であった。
 しかも、回廊は毒の沼が敷き詰められている。
 たとえ、人々を解放したとしても生かして返すつもりなどないのだ。
「ああ、これが『人間画廊』……『絵画』の中に人がいるのよ」
 ラヴィ・ルージュブランシュ(甘惑プロロンジェ・f35723)はふわりと花弁が風に遊ぶように羽をはばたかせながら、手にした宝剣『ヴォーパルソード』を振るい、『絵画』の額縁を斬りつける。

 全てを切り裂く刃は、容易く額縁を破壊するだろう。
 額縁さえ破壊してしまえば『絵画』の中に捕らえられた人々は解放される。
 けれど、解放された先に待つのは毒の沼である。
 生命力を吸われ続け、活力を失った人々は瘴気に当てられるだけでも弱り、生命を蝕まれていくだろう。
 けれど、そんな彼等を受け止め、抱えたのはもっと愉快な仲間達であった。
 ラヴィの求めに応じて彼女の国からやってきた陽気な小人たちは、ふんわり柔らかな腕で解放された人々を抱えて、えっほ、えっほと壁と言う壁をトンネルをくり抜くみたいにして掘り進めて他の猟兵たちが用意した安全圏へと運び込むのだ。
「その調子なのよ。ラヴィはもともとお花だから、毒はすぐに体に回っちゃうの」

 とっても儚いのよ、と言いながら彼女は宝剣にして大剣であるヴォーパルソードをぶんぶぶんと振り回しながら次々と人々を開放していくのだ。
「そうだわ、他の猟兵の人達が開放した人達と同じ場所に固まってもらうのが一番安全かしら? ああ、それに万が一のことがあるかもしれないから、お前達、此処に残っておきなさい」
 戦えないけど、見張りくらいはできるはずだと。
 召喚された陽気な小人たちは、いえすまむ! というように敬礼してラヴィを見送る。

 まだまだ解放すべき人々は残されている。
「ラヴィはまた行かねばならないけれど、この人達に何かあったら、絶対ラヴィに知らせてね!」
 そう告げてまたふわりとラヴィは飛ぶ。
 どの『絵画』を見ても伝わってくる苦痛と絶望の匂い。
『絵画』越しでも感じるのだ。

 どれだけの人の苦しみと哀しみが此処に凝縮されているのだろう。
 どれだけの人の生命が失われてしまったのだろう。
 ラヴィにとって、それは初めての経験であったかもしれない。彼女の国は平和であった。おおよそ、此処にあるような感情などなかったかもしれない。
 恐ろしい怪物は現れても、手にした宝剣を振り回せば追い払うことができた。
「でも、この世界の人達は違うのね。許せないわ、絶対許せないけど――」

 同時にラヴィは思うのだ。
『月光城の主』――それは復讐者であるとグリモア猟兵の言葉が言っていた。
 復讐だけしか体のうちになかったからこそ、全てを失って、見失って、狂気だけが胸を占めていったのだろう。
 理解を示すことはできる。
「そこまでして斃したいモノが、貫きたい正義があったのね」
 けれど、過去に歪んだ存在に彼女の言葉は最早届かないだろう。

 それが悲しいことだとラヴィは思っただろうか。
 決して相容れぬ存在。
 猟兵とオブリビオン。世界の悲鳴を聞くラヴィにとって、『月光城の主』は倒すべき敵でしかない。
 この苦痛と絶望だけが渦巻く『月光城』にありて、ラヴィは全てを濯ぐことができないまでも、こんなことが続かぬようにと己の手にした大剣でもって道を拓くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリステル・ブルー
奥の敵も気にはなるけど出来る限り救助に時間を割くよ
協力出来る人がいるなら積極的に力を貸すよ!

とりあえず額縁を丁寧に外せるだけ外して安全な場所で集めて壊すよ
それから祈りを捧げて助けた人に癒しの力を届けるよ
傷付いた心までは癒せなくても肉体的な疲労なら少しくらいは…

僕たちが来たからもう安心だよ
だけどまた吸血鬼は残ってるから出来るだけ隠れていて欲しい
フードを少しだけずらして人狼だってアピールしておくよ

だけどそうだね…ユールをここに置いていくね
僕ほどじゃないけどきっと役立つ
何かあれば彼が教えてくれるし少しなら戦えるから

君たちが囚われないように絶対にこの城の支配者は倒すから
信じてくれたら嬉しいな



 アリステル・ブルー(果てなき青を望む・f27826)は目深に被った外套の奥から、『人間画廊(ギャラリア)』の先に続く『月光城の主』の玄室への道を見つめる。
 気にならないと言えば嘘だ。
 けれど、彼にはやらねばならないことがまだ残っている。
 この『人間画廊』は人々を生きながらにして『絵画』の中に捕らえ、閉じ込め、生命力を吸い上げ続けている。
 そのためにアリステルは他の猟兵たちと協力することを厭わなかった。

 目の前に続く毒沼は、足を踏み入れるだけでアリステルを蝕むだろう。
 猟兵であっても、この毒沼は体力を削っていく。
 ああ、とアリステルは息を吐き出す。此処には悪意と狂気ばかりが充満している。その悪意と狂気が人の絶望や苦しみを生み出しているのだとすれば、アリステルは心より祈るのだ。
「これは僕の覚悟だ。誰かを守ること、道を阻む物を排除すること。僕は強欲だからね、祈りも武器も手放せやしない」
 其れは祈りか神罰か(ササヤカナノゾミ)。
 覚悟も祈りも、どちらも手放すことはない。

 今のアリステルがなさねばならないことは唯一つ。
『絵画』に捕らえられた人々を開放し、無事に救出することだ。
『絵画』の額縁を丁寧に外せるだけ外して抱えるようにして毒沼を歩む。手がかじかむ。足が重たい。目の前がくらむ。
 けれど、幸運の青い鳥『ユール』が送る治癒の風がアリステルの体を蝕む毒素を浄化し続ける。
「祈りは力なんだ。だから、僕は」
 誰一人として諦めるつもりはないと、他の猟兵が用意した安全圏にたどり着き、額縁を破壊し、人々を開放するのだ。

「僕たちが来たからもう安心だよ。だけどまだ吸血鬼は残ってるからできるだけ隠れていて欲しい」
 そう言ってアリステルはフードを少しだけずらして、己が人狼であることを示す。
 少しでも安心して欲しい。
 その一心であった。
 彼にとって、己の姿は人々に安心を齎すものであった。力の象徴でもあったのだ。
「あなたは……まだ行くの?」
 解放された人々の瞳には未だ活力が戻っていない。『ユール』の放つ治癒の風であっても、長期間に渡って生命力を奪われ続けた人々の消耗を完全には癒せないだろう。

 それに傷ついた心まで癒やすこともできない。
 アリステルにできることは肉体的な披露を少しでも解消してあげることだけだ。
「うん。そうだよ。此処に居る吸血鬼を倒さなければ、皆が安心できない」
 だから戦うのだとアリステルは微笑む。
 自分が笑顔でなければ、人々もまた笑顔には慣れないことを知っている。
「だけどそうだね……『ユール』をここにおいていくね。僕ほどじゃないけどきっと役に立つ。何かあれば彼が教えてくれるし、少しなら戦えるから」
 そう言ってアリステルは立ち上がる。

 まだ囚われた人々がいる。
 彼等が安心して眠ることができるようにしなければならない。人々の不安と恐怖にまみれた瞳を見た。
 未だ晴れることはないだろう。
 またあの『絵画』の中にとらわれるのではないかという恐怖が勝っているように思えた。
 だからこそ、アリステルは告げるのだ。
「君たちが再び囚われないように絶対にこの城の支配者は倒すから」

 だから信じて欲しい。
 そうであって欲しい。
 そう告げるアリステルの瞳を見て、人々は頷くだろう。声を発することも難しいほどに衰弱した人々が居る。
 彼等が信じていくれるというのならば、アリステルは何処までも戦える。
 嬉しいとさえ思うのだ。
「それじゃあ、行ってくるよ」
 きっと再び会うときは、安心した顔を見せて欲しい。
 そう願いながら、アリステルは回廊の先へと再び足を踏み出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…通路を毒沼で沈めておいて画廊と呼ぶとは…

…狂気に囚われた者に整合性を求めても仕方がないとはいえ、理解に苦しむわね

「凍結の精霊結晶」に吸血鬼化した自身の血の魔力を溜めUCを発動
射程を5倍、攻撃回数を半減して冷気のオーラで防御した巨大な氷狼を召喚する

…よく来てくれたわね。早速で悪いけど、この毒沼を氷で覆って欲しい

氷狼の氷属性攻撃で毒沼を凍てつかせて無害化した後、
体勢を崩さないように注意しながら囚われた人達を解放して回るわ

…汚れるのが嫌だったから氷漬けにしたけど…足場が悪くなったのは失敗ね

…氷に足をとられて転ばないように気を付けて
私達はこれから城主を討ちに往くわ。貴方達は安全な場所で隠れていて



『月光城の主』の玄室に続く回廊は全て毒沼に沈んでいた。
 あらゆるものの接触を拒むような毒沼の瘴気は、一般人であれば体を侵され、数刻もしないうちに倒れてしまうことだろう。
 猟兵であっても、何の耐性もなく足を踏み込めば体力が削られ『月光城の主』との対決に支障をきたすほどであった。
「……通路を毒沼で沈めておいて画廊と呼ぶとは……」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は『人間画廊(ギャラリア)』と呼ばれる回廊を目の当たりにして、つぶやく。

 狂気に囚われたオブリビオンに整合性を求めるわけではなかった。
 けれど、理解に苦しむ。
 ここが『絵画』に彩られた画廊であるというのならば、『絵画』の中に生きながらにして捕らえられた人々の苦悶の表情は悪趣味と言う他無かった。
 手にした『凍結の精霊結晶』に吸血鬼化した血の魔力を溜め込み、リーヴァルディは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「……限定解放。血の契約に従い、始原の姿を此処に顕現せよ」
 限定解放・血の喚起(リミテッド・ブラッドサモン)によって権限するのは、巨大な氷狼である。

 自然現象の化身である巨大な精霊獣、氷狼は霊気のオーラを纏いながらリーヴァルディの傍に仕えるように身をかがめる。
「……よく来てくれたわね。早速で悪いけど、この毒沼を氷で覆って欲しい」
 氷狼は一つ頷くと咆哮する。
 瞬間、氷狼の咆哮は氷の息吹となって毒沼を凍りつかせていく。
 しかし、それは永続的に続くものではないことをリーヴァルディは理解していた。無害化できるのはそう長くはない。
 他の猟兵達がこの毒沼を凍りつかせた回廊を使うことができるのも、限られた時間だけだ。

 けれど、それでも十分だ。
「……汚れるのが嫌だったから氷漬けにしたけど……足場が悪くなったのは失敗ね」
 凍りついた毒沼は固く、またでこぼこしているために足を取られやすい。
 リーヴァルディは氷に足を取られることはなかったにせよ、『絵画』から解放された人々を歩かせるには忍びない。
 ならばと彼女は『絵画』を額縁ごと引き剥がし運び出す。
 他の猟兵達とも連携し、次々と『絵画』を画廊から引き剥がすのだ。この『絵画』こそが『月光城の主』の持つ『月と眼の紋章』の力の源なのだ。

 人々を半分開放すれば紋章の力は完全に無効化される。
 無効化しない場合は、66倍にも力が増幅したオブリビオンと対峙しなければならない。それは現実的ではない。
 だが、半分開放すればいいと告げられていても、他の猟兵たちがそうであったように、残された人々を捨て置くことなどできようはずもなかった。
 リーヴァルディは『絵画』を他の猟兵が用意した安全圏において、開放し告げる。

「私達はこれから城主を討ちに往くわ。貴方達は安全な場所で隠れていて」
 言葉は少なかった。
 解放されたとは言え、生命力を吸い上げられていたのだ。
 見上げる彼等に自分の言葉が届いているかどうかもわからない。
 けれど、リーヴァルディは構わなかった。彼等を救うことと、オブリビオンを討ち滅ぼすこと。そこに因果があるのだとすれば、彼等を開放したことにより、心置きなく戦えるということだ。
「……灰は灰に。塵は塵に」

 彼女が滅ぼすべきオブリビオンは嘗ての吸血鬼狩り。
 復讐者である。
 吸血鬼を倒すことだけに固執し、歪み果てた器に宿る狂気。
 その末路が過去となって現れるのだ。だが、リーヴァルディは己もまたそうなるとは思わないだろう。
 彼女の中にあるのは復讐だけではない。今を生きる人々を、ダークセイヴァーという常闇の世界にありて、己の意志で立ち上がろうとする者たちが居るのであればこそ、彼女は彼等を守らんとする。

 そのためにリーヴァルディは『人間画廊』の奥、その玄室に座す『月光城の主』にして嘗ての吸血鬼狩りとの対決に挑むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 ここがギャラリア、なのね。なんて酷いことを。一刻も早く、助け出さなきゃ。

 細氷の〈結界術〉を周囲に展開して、毒から身を守りながら沼に入るわ。完全に防ぐことは難しいかもだけど、わたしの十字架に宿る〈浄化〉の力と合わせれば、画廊の人たちを助け出すくらいの時間は得られるはず。

 額縁を〈こじ開け〉て囚われた人を安全圏に運んだら、【UC:祝福の月光】(WIZ)を発動するわ。少しでも彼らの気分が楽になるように〈祈り〉を捧げて光で包むわね。

 辛いかもしれないけれど、あと少しだけ、ここにいてね。咎人さんをやっつけたら、きっとすぐに必ず戻ってくるから。ゾーヤさんとの約束よ。

(アドリブ連携等々全て歓迎です)



 ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)の目の前に広がる回廊は、仄暗い光を放つ毒沼に沈む『人間画廊(ギャラリア)』であった。
 壁に掲げられた『絵画』から滲むのは『絵画』に生きながらにして捕らえられた人々の苦しみと哀しみであったかもしれない。
「ここがギャラリア、なのね」
 ゾーヤは息を呑む。
 あまりにも凄惨なる光景である。人々の苦悶の表情が『絵画』に描かれている。いや、捕らえられている。生かさず殺さず。
 他者の生命をなんとも思っていないヴァンパイアだからこそ為せる業であったことだろう。

 彼等の生命力は吸い上げられ、この『月光城の主』の持つ『月と眼の紋章』に注ぎ込まれ続けている。
「なんて酷いことを。一刻も早く、助け出さなきゃ」
 彼女は己の結界術にて細氷を展開し、毒沼の毒より身を守りながら足を踏み出す。
 完全に防ぐことはできないまでも、彼女の胸に煌めく十字架の翠玉に宿る浄化の力と合わせれば、彼女が毒沼に足を踏みれ、『絵画』に捕らえられた人々を救い出す時間は得られるのだ。
 それに此処には彼女一人ではない。
 多くの猟兵たちが集い、『月と眼の紋章』の力を無力化させる以上に、全ての人々を『絵画』より救い出さんと動いている。

「一人じゃないというのは心強いこと、ね」
 他の猟兵が安全圏を作り出し、毒沼を氷漬けにして歩みやすくしてくれている。
 ゾーヤにとって、これ以上無い援軍であったことだろう。
 画廊の回廊より引きはがした『絵画』を安全圏で破壊し、人々を解放する。彼等は長らく生命力を吸い上げられ続けていたがゆえに、弱りきっている。
 そんな彼等の手をゾーヤは力強く握りしめる。
「大丈夫、わたしが此処にいるわ」

 その言葉と共にゾーヤの瞳がユーベルコードに輝く。
 祝福の月光(パウダースノウ・ムーンライト)は、このダークセイヴァーの天井に浮かぶ月とは異なる暖かい光であった。
 あらゆる傷を浄化し、災厄を祓う聖なる光。
 それを齎すのがゾーヤである。かつての希望。今は此処に在りて、解放された人々の体力を回復させていく。
 柔らかな光は、きっと彼等が望んだ陽光そのものであったことだろう。

 少しでも彼等の気分が楽になるように。
 他者のことを思い、その思いによって光が齎される。
 誰かのために祈ることは尊いことだ。その祈りはゾーヤの信じるものに捧げられ、光とともに集められた人々の心身を癒やしていくのだ。
「辛いかも知れないけれど、後少しだけ、ここにいてね」
 ゾーヤは微笑む。
 彼女の体は疲労に包まれていた。誰かを癒やすということは、彼女にとって代償を強いるものであった。
 けれど、ゾーヤはそれを代償とすら思っていないだろう。

 自分のことではない、誰かのために祈ることのできる彼女だからこそ、そのユーベルコードはこの世界では見たことのない陽光でもって人々の心身を癒やす。
「咎人さんをやっつけたら、きっとすぐにカラず戻ってくるから」
 だから、心配しないでとゾーヤは言う。
 彼女の朗らかな笑顔は、疲労すら感じさせない。悟らせない。彼女が疲れ切った顔をしていれば、皆が不安がるとわかっているから。

 それが例え、強がりなのだとしても。それでも、ゾーヤは約束するのだ。
「ゾーヤさんとの約束よ」
 彼女の齎す光は、ユーベルコードの陽光ではない。
 彼女自身の内側から発露する心の光こそが、人々の心を癒やすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

んー、毒沼ですかー。それでは、私は霹靂に乗りましてー。
【四悪霊・『届』】。中に陰海月を派遣しておきましょう。
霹靂、決して沼に浸からないように。毒耐性があるとはいえ、ね?

四天霊障を加減しながら絵画を壊す。そして、すぐに中へと保護していきましょう。
大丈夫ですよー、ここで果てることはないのですからー。
ええ、私たちは助けにきたんですー。

本当に、『人間画廊』とは趣味の悪い。だからこそ、ここから全力で助けるのですよ。


癒しの陰海月、お部屋調整して、布団敷きながら待ってる。ぷきゅ!
頑張る霹靂、絶対に落とすものか!クエッ!



 金色混じりの焦げ茶の羽毛が美しいヒポグリフ『霹靂』が毒の沼の上を飛ぶ。
 それに跨るは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)である。彼は毒沼に沈む『月光城』の回廊、『人間画廊(ギャラリア』の影響を受けぬようにと『霹靂』の力を借りたのだ。
「『霹靂』、決して沼に浸からぬように」
 毒への耐性があるのだと言っても、体力は削られる。
 そうなれば次なる戦いに支障をきたすことだろう。
 そういい含めて『疾き者』は、その手に小さなねじれ双四角錐の透明結晶を手にする。
 それは、四悪霊・『届』(シアクリョウ・トドク)。

『疾き者』の生み出したユーベルコードである。
 その内部には夕焼けの空が続く、可変式日本家屋があるのだ。そこに『絵画』より解放した人々を収納し、保護していこうというのだ。
「『人間画廊』に毒沼……どちらにせよ生きて返すつもりなどないのでしょうねー」
 開放すれば毒沼に人は沈むだろう。
『月光城の主』の持つ『月と眼の紋章』の力のために生命力を吸い上げられた人々は、毒沼に沈み浮かんでくることはなかっただろう。

 ヴァンパイア、オブリビオンであるからこそ人の生命に頓着しないやり方であった。
『疾き者』は『絵画』の額縁を霊障でもって破壊する。
『絵画』自体に傷をつけることはしてはならない。中の人々に如何なる影響があるかわからないからだ。
「うっ――……」
『絵画』より解放された人々が呻きながら『疾き者』の腕の中に抱えられる。
 彼等の瞳は突如として解放されたことに対する戸惑いと、ついに自分たちの生命が奪われるのだと覚悟するものであった。

 けれど、『疾き者』は微笑んで告げるのだ。
「大丈夫ですよー、ここで果てることはないのですからー」
「じゃあ、あんたは……」
「ええ、私達は助けに来たんですー」
『疾き者』の言葉に人々はやはり戸惑うばかりであった。己たちの生命は塵芥と同じであったからだ。
 この常闇の世界ダークセイヴァーにおいて人の生命は軽いものだ。
 どうあってもヴァンパイアにもてあそばれるだけの生命でしかない。その生命が今、救われるのだと言われても信じることはできなかっただろう。

 それだけの仕打ちを彼等は受けてきたのだ。
「本当に……?」
「ええ、ですが今一度貴方達を別の場所に移しましょう」
 彼等を『疾き者』はねじれ双四角錐の透明結晶に触れさせる。彼等は吸い込まれ、そして見ただろう。
 ふわふわと浮かぶ『陰海月』の姿と夕焼けに沈む日本家屋を。
「ぷきゅっ!」
『陰海月』が可愛らしく鳴き、招き入れられた人々を次々と介抱していく。

 暖かな布団に寝かしつける。
 彼等にはこれまで得ることのできなかった環境であろう。本当に助かるのかという疑心は暖かな布団と夕焼けに溶けて消えていく。
 生命力を奪われ続け、衰弱していた彼等は泥に溶けるように眠りに落ちていく。
 それを『陰海月』はかわいそうに思いながら、安心させるように小さく鳴く。

 このユーベルコードの中では誰もが安心して眠れる。
 外で果敢に飛ぶ『霹靂』と『疾き者』がいるかぎり何も心配することはないのだというように優しく布団を駆けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…絵画に捕らえ命を奪い、その外には毒の沼。
なんと残忍で、醜悪な所業であることか。
空を翔ける術を持たぬ身には些か不利な地形です、
迅速に事を運ぶ他ありませんね。


UCを使用し、残像にて壁を駆けつつ額縁を破壊、
助け出した人間を抱えて即座に沼の外へ
沼に踏み入る事が避けられなければ悪路走破、ジャンプを交え迅速に離脱
毒を受ける場合は継戦能力、落ち着きによる精神集中にて血流を抑え
出来る限り行動時間を伸ばす


…火急ゆえ、些かの無礼をお許し願います。
私共の目的はこの城に住まう主の討伐。これはその力を削ぐ為のものでもあります。
故に戦はこれより更に激しいものとなりましょう、今暫く身を潜めて頂けますか?



 悪辣とは此の事を言うのだと月白・雪音(月輪氷華・f29413)は思ったことだろう。
『月光城』の『人間画廊(ギャラリア)』は生きながらにして人を捕らえ、その生命力を吸い上げる。
 生かさず殺さず。
 まるでそういうかのように人々を飼い殺しにし、『月光城の主』の持つ『月と眼の紋章』の力に変える。
 人々は死にはしないが、生きているとも言い難い表情で『絵画』の中に捕らえられている。彼等の苦悶は無為なる己の生命を自覚させられるからであろう。
「……『絵画』に捕らえ生命を奪い、その外には毒の沼。なんと残忍で、醜悪な所業であることか」

 雪音は己が空を飛ぶ術を持たぬことを承知の上で、『人間画廊』へと挑む。
 人々を開放するためには『絵画』の額縁を破壊しなければならない。けれど、『絵画』から解放された人々は生命力を吸い上げられ続けていたせいで衰弱している。
 毒沼の瘴気に当てられてしまえば、よわった体に鞭打つことになるだろう。
「迅速に事を運ぶ他ありませんね」
 雪音はその瞳をユーベルコードに輝かせる。
 拳武(ヒトナルイクサ)は、このためにある。
 己の拳は、脚は、ただ敵を打ち倒すためだけにあるのではない。呼吸を整える。
 視線は『人間画廊』の壁面。

 床は毒沼。
 ならば往く道は唯一しかない。
 雪音の足が床を蹴った次の瞬間、彼女は足は壁面を蹴っていた。三角跳びの要領で壁面を蹴りながら跳ねるようにして『絵画』を飾る額縁を拳で叩き砕く。
 瞬間、彼女の腕には解放された人々が抱かれるだろう。
「……弱きヒトが至りし闘争の極地こそ、我が戦の粋なれば」
 己の腕に抱えた人々は驚くほど軽かった。
 まだ生命が在ることを知らせる体温に雪音は息を吐き出す。壁を蹴り、凄まじい速度で毒沼の外へと降り立つ。

 まだ直近の絵画であれば毒沼に落ちることはない。
 けれど、遠くになればなるほどに毒の沼に足をつけなければならない可能性は高くなる。
 けれど、それでも雪音はやらねばならない。
 解放した人々を抱え、壁を蹴って奥へ奥へと進み『絵画』の額縁を破壊しては人々を救う。
 己の怪力が今ここに活きている。
 ならばこそ、己が毒沼に浸かることも厭わぬのだ。

「――……」
 足が毒沼にふれる。
 けれど、解放された人々を毒の瘴気に触れさせてはならぬと雪音はその白い髪を瘴気に汚しながらも毒沼を蹴って飛び越えていく。
 身に染み入る毒の瘴気。
 呼吸を整え、精神集中により血流を抑える。
 体に毒が周り切らぬようにコントロールするのだ。
「う……」
 呻く声が聞こえる。
 解放された人々が己の置かれた状況を徐々に理解し始めているのだろう。
 雪音は彼等の生命がつながったことに安堵し、他の猟兵たちが設えた罠のない安全な場所へと彼等を横たえる。

「……火急ゆえ、些かの無礼をお許し願います」
 雪音は手短に告げる。
 彼等は意識が戻って幾ばくもない。混乱もするだろう。けれど、雪音は行かねばならない。
「私どもの目的は此の城に住まう主の討伐。これはその力を削ぐ為のものであります。ゆえに戦はこれより更に激しいものとなりましょう」
 雪音は『月光城の主』の力を知っている。
 解放された人々がすでに半分以上に達していることはわかっている。紋章の力は無効化されているだろう。
 けれど、それでも強大なオブリビオンに変わりはないのだ。

「今暫く身を潜めていただけますか?」
 頷く人々に雪音は瞳を伏せる。
 彼等は一刻も早くこの城から脱出したいだろう。けれど、脱出したところで『月光城の主』を討ち果たさなければ、きっと元の木阿弥である。
 それが彼等もわかっているからこそ、恐怖に耐えてうなずいたのだ。
 その心中を慮り、雪音は立ち上がり再び壁面を蹴って、『人間画廊』の奥、『月光城の主』の玄室へと向かうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
普通の絵のように見えるけど
人が封じ込められてるんだよね

壊すのは簡単だけど
毒の沼は面倒だね

大丈夫ですの
邪神の繰り糸で人形になって頂ければ
毒の影響を受けませんの

生身だと危険なのは事実だけどね

あら、こちらの方はとても可愛らしいですの
いっそ永遠にしてしまいたいですの

まあ、趣味も入っているよね
UDCアースならすぐ止めるけど
明日をも知れぬこの世界だと悩ましいね
少女一人で生きてくには厳しい世界だから
身寄りがあればいいんだけど

言ってるだけなら害は無いから
助けた人を安全な場所に誘導しよう

あら、晶も毒沼は体によくありませんの
人形にして差し上げますの

邪神の体がどうこうなるとも思えないけど
ありがたく受け取っておこうか



「普通の絵のように見えるけど、人が封じ込められてるんだよね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は目の前に広がる毒沼と『人間画廊(ギャラリア)』に飾られた『絵画』を見やる。
 一見するとただの絵だ。
 精巧に描かれた人の絵だと普通は思うだろう。
 けれど、そこにあるのは生きながらにして『絵画』の中に捕らえられた人間にほかならない。
 彼等は死なない代わりに生命力を吸い上げられ続けているのだ。
 この『月光城の主』の持つ『月と眼の紋章』の力を維持するために。『人間画廊』はそのための装置とも言うべきものであった。

『第五の貴族』の干渉すら拒むという『月光城の主』。
 その力を示すような膨大な数の『絵画』。一体どれだけの人が囚われているのか。
「壊すのは簡単だけど、毒の沼は面倒だね」
 そう、額縁を破壊すれば『絵画』に捕らえられた人々は解放される。けれお、生命力を吸い上げられ続けた人々は毒沼の瘴気に当てられただけで衰弱死してしまう可能性がある。

「大丈夫ですの。邪神の操り糸で人形に成って頂ければ、毒の影響を受けませんの」
 邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)というように身に融合した邪神の分霊が現れ、協力を申し出る。
 確かに邪神の権能で人を人形に変えるのならば、毒沼の瘴気の危険はなくなるだろう。
 生身で毒沼にいることが危険なのは事実だ。
 けれど、晶はどうにも腑に落ちない。まだ腑に落ちないと思っているのならば、己の中にある人間性は確かなものであろう。
 そんな晶の葛藤を他所に邪神の分霊は『絵画』に描かれた人々を次々と解放しては、次々と人形に変えていく。
「あら、こちらの方はとても可愛らしいですの。いっそ永遠にしてしまいたいですの」

 そんな言葉が聞こえてくるから、完全に同意できないのだ。
 晶は邪神の分霊の完全な趣味が入っていることを理解しながら、ここがダークセイヴァーであることに感謝もしていた。
 例えば、ここがUDCアースであったのならば止めに入るところだけれど、ここはダークセイヴァーである。
 明日をも知れぬこの世界であるのならば、幼い少女が一人で活きていくには厳しし世界である。
「身寄りがあればいいんだけど……」
 一つの問題が解決すれば、もう一つの問題が浮上する。

 とは言え、時間も無限ではないのだ。
「言ってるだけなら害はないか……さ、こっちに。大丈夫」
 晶は解放され、人形化でもって毒沼を切り抜ける人々を誘導していく。そんな晶に邪神の分霊がにっこり笑って人形化する。
「あら、晶も毒沼は体によくありませんの。人形にして差し上げましたの」
 完全な厚意なのだろうけれど、普段の彼女を知っているからどうにも素直に受け取れない。
 邪神の体が今更毒程度でどうこうなるとは思えないけれど。
 それでも微笑む邪神の分霊の姿を見てしまえば、否定する気も起こらない。

 これが絆されているということなのならば、仕方のないことであったのかもしれない。
「ありがたく受け取っておくよ」
 これも恩返しの一つなのだろう。 
 晶はそう思うことにして、人々を連れて毒沼を先導し、他の猟兵たちが設えた安全な場所まで導くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソルドイラ・アイルー
ギヨーム君(f20226)と

ふうーむ……ふむ。ふむ。これは、吾輩とはズレてますね。センスは感じますが惜しいとは思えない。閉じ込めるだけ閉じ込めて、希望は与えず活かすだけですか
吾輩の為の作品ではなかった、のは善き事かな。いえいえ吾輩の為だったでも破壊しましたがね? 弁えていますとも!
ん? 土と毒のどっちが強いか、ですか? 物量が多い方ですかねえ……

毒沼に城を築いても、地盤が腐っていれば沈む泥船。なのでどこか事前に拠点を作っておいておくべきでしたねえ。今からでも遅くないので建築を。ここに無き罠が飛んできても壊れぬ牢を新たに生成致しましょう
後で迎えに来ますので、どうかご安心を。よくぞ耐え抜きました!


ギヨーム・エペー
ソルドイラくん(f19468)と

毒沼かー……宇宙バイクで走れないかな。車輪に氷の層を作って機体へのダメージを軽減させるか、進む道を事前に魔力で凍らせてみるとかやってみよう
ソルドイラくんの土も毒沼を軽減するのに使えないか試してもらいたいよなー。こう、レンガみたいにできたりしないか? ああだが建築優先で! おれもおれなりに動くから

バイクに乗らずとも一気に運べる人数は三、いや二人かな。往復は惜しまないが、行きは迅速に。運ぶ際は慎重にだ
額縁を破壊する手間が惜しいから、片手が塞がっている時は水の精霊に援護を求めるよ。…………太陽。きみ、人間運べたりしない? おれより腕力あるよなきみ。一人持ってみないか



「ふうーむ……ふむ。ふむ」
 唸るような声が聞こえる。
 それは『月光城』の内部、『人間画廊(ギャラリア)』から聞こえてくる唸り声であった。
 唸るというより首をかしげているような。
 つまるところ、目の前に広がる光景、その『絵画』の在り方についてソルドイラ・アイルー(土塊怪獣・f19468)が己の感性と照らし合わせて納得しかねるような声を漏らしているのだ。
 床には毒沼。
 壁面には生きながらにして捕らえられた人々が描かれた『絵画』。
「これは、吾輩とはズレてますね。センスは感じますが惜しいとは思えない」

 人々を開放するためには『絵画』の額縁を破壊しなければならない。
 そうなれば必然『絵画』は失われてしまうことだろう。それを実際に見るまでは惜しいなと思っていたのかも知れない。
 けれど、ソルドイラは実物を目の当たりにして惜しいとは思え成ったようである。
 閉じ込めるだけ閉じ込めて、希望は与えず、活かすだけ。
「吾輩の為の作品ではなかった、のは善き事かな」
 もしも、これが自分の為にあるような作品であったのならば話は違っていたのかも知れない。

「ソルドイラくんはさぁ……」
 そんな彼をギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)のジトっとした目が襲う。
 ギヨームはどうにかして毒沼を攻略できないかと頭をひねっていたのだ。
 宇宙バイクではしれないだろうかとか、車輪に氷の層を生み出して車体へのダメージを軽減させるかとか。
 進む道を魔力で凍らせてみるとか、そんなふうに工夫を凝らして人々を救わんとしていたというのに、ソルドイラは絵画鑑賞に勤しんでいるのだ。
 しかも、自分が好みであれば残しておこうかという雰囲気まで出していたのだから、ジト目程度では優しいものであった。

「いえいえ吾輩の為だったとしても破壊しましたがね? 弁えていますとも!」
 そんなふうにソルドイラは慌てて弁解する。
 本当かなーとギヨームは疑問の眼差しを向けている。
「ソルドイラくんの土も毒沼を軽減するのに使えないか試してもらいたいよなー。こう、レンガみたいに」
「ん? 土と毒のどっちが強いか、ですか? 物量が多い方ですかね……」
 とは言え、毒沼に彼のユーベルコードで城を築いても、地盤が腐っていれば沈む泥舟である。
 であれば、事前に拠点を作っておいておくべきであったとソルドイラは悔やむ。
 とは言え、今からでも遅くはない。

「では、吾輩は解放された人々を守るための不夜城『神無月』(パラダイス)の建設に勤しむといたしましょう」
 ソルドイラの瞳がユーベルコードに輝き龍を象った土人形たちでもって次々と罠を完全に破壊された場所に城を築きはじめる。
「ここに罠が飛んで肝て壊れぬ牢を新たに生成いたしましょう!」
 ソルドイラの指示にしたがって次々と土人形たちが堅牢なる拠点を作り出していく。

 その間にギヨームはゴッドスピードライドによって速度を上げた宇宙バイクでもって毒沼を駆け抜ける。
 この『月光城』の『人間画廊』に捕らえられた人々の数は膨大である。であればこそ、行動は迅速に。
 運べる人数が限られているのならば、それは当然のことであった。
「だけど運ぶ際には慎重に、だ」
 なにせ此処は毒沼である。瘴気が衰弱した人々に触れれば、それだけで人々は弱り続けてしまう。
 額縁を破壊する手間すら惜しい。
 それに宇宙バイクを運転しているからどうしても片手が埋まってしまう。
「……太陽。きみ、人間運べたりしない? おれより腕力在るよなきみ」

 そういってギヨームは水の精霊に援護を求めるのだ。
 何事か疑似精霊である『太陽』が不満をもらしたようであるが、ギヨームは聞かぬ振りをした。
 水の体を持っているがゆえに、毒沼の瘴気で濁ることを気にしたのかも知れない。
 けれど、今は緊急である。
「ほら、頼んだぜ」
 ギヨームの言葉に渋々というように従い、『太陽』が人々を抱え、宇宙バイクと共に毒沼を突っ切っていく。

 解放された人々をソルドイラの築き上げた土の城へと運び込む。
「さて、ソルドイラくんよ、行くとするか」
 ギヨームは他の猟兵達が半分以上の人々を介抱したことを知ると、ソルドイラに告げる。
 ええ、とソルドイラが頷く。
 しかし、彼は言葉を紡ぐ。どれだけ堅牢な城であると言えども、ここはオブリビオンの敵地である。
 人々の不安はあるだろう。だからこそ、ソルドイラは告げるのだ。
「後で迎えに来ますので、どうかご安心を。よくぞ耐え抜きました!」
 ソルドイラの言葉は激励の言葉でもあった。
 混沌を好むも崩壊を嫌う彼らしい言葉であるとギヨームは笑い、そして二人は『人間画廊』の奥、『月光城の主』の座す玄室へと向かうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
惨い光景です、一体どれ程の人を捕えて…
さて、救助の問題は毒沼をどう避けるか、という事ですが…

UCの隠蔽外套を纏い、触手と吸盤の機能を活用
本来の用途…隠れ潜む事も今は不要でしょう
頭に昇る血などこの躯体には皆無
床を走るが如く天井や壁面を疾走

…騎士らしい姿かと問われれば、首を横に振らざるを得ませんが
為すべきを為す為、格好は気にしませんとも

怪力で振るう剣で壁ごとくり抜き『絵画』を回収
幾つか集めればワイヤーアンカーで束ね、纏めて運搬

ご無事ですか?
騎士として皆様を救出に参りました
どうぞご安心ください

まだ救助が終わっておりませんので…少々失礼
(勢いよく天井に張り付き画廊に戻り)

…驚かせてしまいました



『人間画廊』は『絵画』にあふれていた。
 床は毒沼。瘴気立ち込めるように仄暗い光を放つそこは、おおよそ悪辣と呼ぶに値する場所であったことだろう。
 回廊の先に続くのは『月光城の主』の座す玄室である。
 この『人間画廊』こそが、『第五の貴族』の干渉すら拒む強大な力を持つ『月と眼の紋章』の力の源だ。

 人々を殺さず、生きながらにして『絵画』の中に捕らえて置くことによって生命力を吸い上げ続け、生かさず殺さずで飼い殺しにしているのだ。
「惨い光景です、一体どれほどの人を捕らえて……」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は目の前に広がる光景をそう評した。
 オブリビオンにとって人間とは生命ですらないのだろう。
 弄び、使えなくなった捨てる。
 その程度の存在なのだ。だからこそ、此のようなことができる。
『絵画』に捕らえられた人々を開放する術は既に得ている。『絵画』の額縁を破壊すればいいのだ。

 しかし、毒沼の瘴気は捕らえられ衰弱している人々にとっては強烈な毒である。 
 それだけで生命を落としかねない。
「ウォーマシン用最新鋭特殊装備との触れ込みでしたが…騎士らしくないのは兎も角、どうにも生物の印象が拭えませんね…」
 トリテレイアは、特殊潜入工作用試作型隠蔽外套(エクステンションパーツ・スキッドコート)の姿形にどうにも気に入っていなかった。
 どう見ても海の生物『イカ』のような形になっているからだ。
 しかし、本来の用途である隠れ潜むという機能ではなく、触手の吸盤による吸着を利用するのだ。

「頭に昇る血などこの躯体には皆無」
 吸盤の力によってトリテレイアの体が『人間画廊』の壁面や天井を這い回るようにして疾走する。
 此の姿を見た物が己を騎士だとは思わないだろう。
 自身であってもそう思う。客観的に見て、正直騎士ではない。何か得体のしれないものとしかうつらないだろう。
 けれど、トリテレイアは為すべきことを為すために格好には拘ならない。

 手にした剣でもって壁ごと『絵画」をくり抜き回収し、即座に次に映る。ワイヤーアンカーで絵画を束ね纏めて運搬するためだ。
「他の猟兵の方々が用意してくださった安全な場所まで運びましょう……助かりますね」
 トリテレイアは他の猟兵が築き上げた安全な場所へと絵画を運び込むと、そこで額縁を破壊して人々を開放する。
 彼等は皆、長きにわたる時間生命力を吸い上げられ続けていたがゆえに意識も朦朧としているだろう。
「ご無事ですか? 騎士として皆様を救出に参りました。どうぞご安心ください」

 己の風貌は鎧騎士として映ることだろう。
 猟兵として在るからこそ、違和感を与えることのない現象にトリテレイアは感謝しながら人々が頷くのを見る。
 生命力を吸い上げられ続けていた弊害で頭も回らないだろう。
 ここならば安全だといい含めて、トリテレイアは即座に壁面を触手の吸盤でもって吸い付かせる。
「まだ救助が終わっておりませんので……少々失礼」
 吸い付かせた吸盤ある触手が勢いよく伸縮し、トリテレイアの巨躯が天井に張り付き、その人間離れした離れ業でもって『人間画廊』へと戻っていく。

 それは正直な所、生理的におぞましさを感じさせる動きであった。
 遠くから悲鳴のような声が聞こえたことをトリテレイアは後悔したことだろう。害はなくとも、己の行動は他者に驚きを与えたかも知れない。
「……驚かせてしまいました」
 反省は後にしようとトリテレイアは決めた。
 今は迅速に行動しなければならない。きっと後で自責の念に駆られるのだろうけれど。
 それでも今は為すべきことを為す。
 己の騎士としての矜持であると『人間画廊』の天井を凄まじい勢いで疾駆するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【一応SPD】
アドリブ大歓迎

生かさず殺さず額縁に封じ込めて絵画にするとは
…悪趣味にも程がある

一端ヴァンパイア化解除
改めて指定UC発動し白い靄を纏いつつ漆黒の「オーラ防御」で脚を覆ったら
「地形の利用、視力、ダッシュ」で毒沼につかっていない床を探し高速移動
万が一毒沼に足を踏み入れたらオーラと「毒耐性」で耐えるしかないか

額縁は力を入れつつ優しく慎重に剥がそう(怪力、優しさ)
閉じ込められた人々を驚かせないよう、その命を奪わぬ様、慎重に
…今助けるから、少し待っていてくれ

救出した人々は怪力で抱えて安全地帯まで運ぼう
…今はまだ、礼はいらない
それはこの城の主を討ち、皆で帰ってからだ
ひとまずここで待っていて



 猟兵たちの活躍によって次々と『絵画』に閉じ込められた人々が救出されていく。
 すでに半分以上の人々が解放されている。
 オブリビオンと戦うだけであったのならば、全ての人々を解放しようとするのは時間の浪費であったことだろう。
 けれど、『月光城の主』の持つ『月と眼の紋章』を無効化する以上に猟兵たちは、この非道なる行いを赦してはおけなかったのだ。
「生かさず殺さず額縁の中に封じ込めて『絵画』にするとは……悪趣味にも程がある」
 館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は己の力の発露である吸血鬼化を解除し、魂魄解放(コンパクカイホウ)をもって、黒剣がかつて食らった魂を纏う。

 それは白い靄であり、漆黒のオーラでもって足を覆う。
「食らった魂を、力に替えて」
 毒沼にためらいなく踏み込む。
 オーラの防御をもって毒の沼を駆け抜け、毒沼に使っていない床を探す。されど、この『月光城の主』に至るための回廊の尽くは毒の沼に沈んでいる。
 悠長に探している時間はないと敬輔は判断し、己の身に宿る毒への耐性を信じ突き進む。

 生きながらにして『絵画』に囚われた人々を救い出すためには額縁を破壊すればいいとすでに知っている。
 ゆえに敬輔は慎重に額縁を引き剥がす。
 もしも、こちらの行動が『絵画』の中の人々に見えているのならば、無用に恐怖させる必要もないであろうと判断してのことであった。
「……今助けるから、少し待っていてくれ」
 閉じ込められた人々を驚かせないように、その生命を奪わぬように、慎重に。
 それは己の体を蝕む毒の痛みなど関係ないことであった。

 己の体は他よりも頑強に出来ている。
 毒への耐性もまた同じだ。
 だからこそ、強き力を持つ者は他者に優しくあらねばならない。この常闇の世界ダークセイヴァーにおいて力は生きるために必要なものであったことだろう。
 けれど、優しさがなければ生きる資格すらないことをヴァンパイアは忘れている。
「……もう大丈夫だ」
 敬輔は人々を介抱し、怪力で持って抱えて他の猟兵が用意した安全地帯へと駆け込む。
 人々は長らく生命を吸い上げられ続けたせいか衰弱している者が多い。

 彼等は瞳だけで敬輔に何かを伝えようとしている。それがわかるからこそ、敬輔は頭を振るのだ。
「……今はまだ、礼はいらない」
 そう、まだ半ばだ。
 これで終わりではないことを知っている。

「それはこの城の主を討ち、皆で帰ってからだ」
 だから、一先ずは此処で待っていてくれと、敬輔は己の体を叱咤する。
 オーラの防御で軽減されているといっても毒沼は己の体を蝕む。されど、人を救わぬという理由にはなっていない。
 不利は承知の上である。
 それでも成さねばならないことがあると知るからこそ、敬輔は『人間画廊』の奥、『月光城の主』が座す玄室を目指す。

 人々を生かさず殺さず捕らえ、その力によって他者からの干渉を阻むオブリビオン。
 その歪なる存在を赦してはおけないと、敬輔は毒沼を突破するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
紋章の力の源は、絵画に囚われた人々。
其の力を弱めるには、多くの人々を救うことが肝要。
進むべき道は一つ。只々『救う』のみ!
■行
【SPD】
だが、問題はこの毒沼だ……一歩間違えれば、大惨事になり得る。
ここは、絵画を沼から引き離すべきか。

絵画のある場所目がけて【無刃・渾】を放ち、『額縁の
接合部』のみを【切断】して取り外し、【怪力】を込めて
キャッチし回収だ。
持ち運べる限界まで集めたら、安全な場所に運んでから
絵画を斬り伏せる。

救出の際は全身に【オーラ防御】を纏うが、それでも毒を
浴びた際は自身の【毒耐性】を一気に解放し強引に消し去る。
むむ、助けた人々が揃いも揃って困惑しているな。

※アドリブ歓迎・不採用可



『月光城の主』の持つ『月と眼の紋章』の力は絶大である。
 グリモア猟兵の言葉を信じるのであれば、紋章の力によってもとより強大なオブリビオンの力は『66倍』にまで膨れ上がるのだという。
 おおよそ現実的ではない数字。
 戦って勝てるかどうかという問題ですらない。
 ゆえに猟兵たちは『人間画廊(ギャラリア)』の人々を開放する。
 生きながらにして捕らえられ、生命力を吸い上げられ続けた人々があってこその紋章の力であるからだ。

「紋章の力の源は、『絵画』に囚われた人々。其の力を弱めるためには、多くの人々を救うことが肝要。進むべき道は一つ」
 愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は己の道行きを知る。
 唯一つのことを為せばいい。
 そう――。
「只々『救う』のみ!」
 清綱の眼前に広がる回廊は毒沼に沈んでいる。
 多くの猟兵たちがそうであったように、此の沼に解放された人々が落ちればおそらくひとたまりもないだろう。
 それ以上に瘴気に当てられただけでも人々は生命力を奪われているがために衰弱死してしまうかもしれない。

 一歩間違えば大惨事。
 だからこそ、清綱は己の刀を抜き祓う。
 それは居合。己の刃は原理や概念を立つ刃である。放たれるユーベルコード、無刃・渾(ムジン)の斬撃は『絵画』を壁面に停めている額縁の接合部のみを切断し、清綱の手の中に『絵画』を落とすのだ。
 猛禽の翼が此処で生きるとは思わなかったことだろう。
「こうすれば毒沼に嵌る必要もなし……急ぎ全てを回収しよう」
 紋章の力は人々を半分解放されば無効化される。けれど、清綱も含め多くの猟兵がそれを是としなかった。

 彼等が目指したのは『月光城』に捕らえられた人々全ての解放である。
 後もう少し。長く時間を掛けてはいられないが、それでも多くの猟兵たちが集まっている。そこに清綱は賭けるのだ。
「これが限界か……む、あれは」
 清綱は『絵画』を持てるだけ運びながら空中を飛ぶ。
『人間画廊』を離れて、これまで自分たちが突破してきた『月光城』内部の破壊され尽くした罠の一角に他の猟兵が設えた安全圏が見える。

 あそこならば毒沼の瘴気を気にする必要はない。
「ありがたいことだ。では……」
 清綱の抜き払った刀の斬撃が額縁を破壊し、『絵画』に閉じ込められていた人々を開放する。
 彼等は生命力を奪われ続けていたためにぐったりとしていたが、己たちが解放されたことに驚きを隠せないでいる。
「困惑している所申し訳ないが……どうかこのまま此処で待っていて欲しい。この城の主を討ち果たさなければならぬゆえ」
 それまで待っていてくれと、困惑しきりの人々に清綱は告げる。

 無理もなからぬことであった。
 人々にとって、『絵画』の中で過ごした時間のほうが長い。
 生命を生命とも思わぬオブリビオンによって捕らえられ、いつまで続くかもわからぬ無為なる日々を過ごしてきたのだ。
 清綱の言葉もどこか滑り落ちるようにしか聞こえぬことであろう。
 ダークセイヴァーはオブリビオン支配盤石たる世界。
 その弊害を目の当たりにして、清綱は己の拳を握りしめる。今彼等にしてやれることは、己にはあまりにも少ない。
 だからこそ、清綱は猛禽の翼を広げる。

 己の翼がなんのためにあり、そして何を為すために刀を握ったのかを思い出す。
 目指すは、『月光城の主』の座す玄室。『人間画廊』の奥である――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
どうしてこうも吸血鬼というのは似通った趣味をしているのでしょうね。
とにかく……やるべきことはやっていきましょうか。

毒の沼は捕らわれた人だけでなく私にも有害ですし、早いうちに対策はしておきましょうか……少し、絵にはなりませんが。
【氷雪地獄】を使用。猛吹雪を起こして毒の沼を雪で埋め尽くし、さらに雪だるまアーマーにより防護を行います。

捕らわれた人がいる絵画を見つけたら「フィンブルヴェト」からの銃撃で額縁を破壊し、助け出します。助け出したらその人にも雪だるまアーマーで防護を行い、しばらくの間他の方と一緒に隠れておいてもらうようお願いします。

……恰好は気にしないでください。性能は確かなんです……



「どうしてこうも吸血鬼というのは似通った趣味をしているのでしょうね」
 呆れを通り越していた。
 度し難い光景であったからだ。『人間画廊(ギャラリア)』は人を生きながらにして捕らえ、その生命力を吸い上げることによって『月光城の主』の持つ『月と眼の紋章』の力を維持する。
 其の力は絶大であると言う他無い。
 もとより強大なオブリビオンの力を『66倍』にまで増大させる紋章の力は、今の猟兵をして戦うのは現実的ではなかった。

 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はゆっくりと息を吐き出す。
 この度し難い思いを息を吐き出すことで沈める。
 ここで己が怒りに身を任せてもしようのないことを知っている。冷静であれ、常に。
 その教えは常に彼女の心の中にあるだろう。
 とにかく、やるべきことを一つ一つやっていかなければならない。
 目の前に広がる毒沼は捕らえられた人々だけではなく、セルマ自身にも有害である。如何に猟兵であると言っても、備えなく踏み込めば毒の力によって体力を削られてしまうだろう。
「早いうちに対策はしておきましょうか……少し、絵にはなりませんが」

 セルマの瞳がユーベルコードに輝く。
 毒沼を包み込む猛烈な吹雪が発生し、毒沼を雪で埋め尽くし凍結させていく。さらに己の体を包み込むのは可愛らしい雪だるまアーマーであった。
 これでセルマの毒に対する耐性は整った。
 けれど、彼女はため息を吐き出す。
 絵にならぬといったのは、己が今身につけている雪だるまアーマーのことである。クールな彼女の表情の下、体はまん丸い雪だるまである。腕も足もそうなのだ。
 言ってしまえば、雪だるまに手足が生えて、セルマの頭が乗っかっているような様相である。

 だがしかし、これでいい。
 絵にならなくても為すべきことを為せるのだから文句は言うまいとセルマは他の猟兵達と共に多くの『絵画』を手にしたマスケット銃から放つ弾丸で持って額縁を破壊する。
「氷雪地獄……とても便利なのですが……」
 解放された人々を即座に雪だるまアーマーでもって包み込み、抱える。
 人々は驚きとともに己の体を包み込む冷たくない雪だるまアーマーに驚くことだろう。
 かなり面食らっている。
 なぜなら、目の前にいるセルマもまた同じ格好をしているからだ。
「い、いったいどういう……?」
 人々の疑問も尤もである。セルマにとって、それはどう答えていいものかわからないものであった。
「……格好は気にしないでください」
 姿形はともかくとして、性能は確かなのだ。

 セルマは次々と残った『絵画』から人々を解放し、次々と雪だるまアーマーを纏わせていく。
 周囲を見回すと、この『月光城』の『人間画廊』に囚われた人々は全て救い出したことがわかる。
 画廊にはもはや一枚の『絵画』も残ってはいない。ただ『月光城の主』を打倒するだけなのならば、『絵画』の半分だけでよかった。
 けれど、多くの猟兵たちが望んだのはすべての人々の解放である。
 それを彼女たちは為したのだ。

「さあ、こっちです。あの土の城……わかりますか? あそこならば安全です。暫くの間ですが、他の方と一緒に隠れてください」
 後で必ず迎えに来ますから、とセルマは人々に告げる。
 解放された人々の瞳に不安が宿っているのがわかる。無理もないことだ。だが、それでもセルマは約束を違えるつもりはなかった。
 これより向かうのは恐ろしくも強大なるオブリビオンである。
 けれど、セルマにとっては獲物であることに変わりはない。彼女がスコープを除く時、其処に在るのはオブリビオンという討ち果たすべき敵だけなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『狂気に飲まれた復讐者』

POW   :    闇夜に濡れ血を断つ
技能名「【不意打ち、早業、暗視、暗殺、二回攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD   :    狩場
【罠】が命中した対象に対し、高威力高命中の【弾丸】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    飛来する銀の雨
【歴戦の感覚】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【無数の銃弾と跳弾】で攻撃する。

イラスト:善知鳥アスカ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが『人間画廊(ギャラリア)』の人々を開放し、其の奥にある玄室――即ち『月光城の主』が座す戦場へと足を踏み入れた時、黒き外套に身を包み、漆黒を溶かしたかのような挑発の男が手にした銀の剣が剣呑に煌めいた。
 目深に被った帽子の奥にある瞳の色はうかがい知ることができなかった。
 能面のような表情だけが、其処に張り付いている。
「お前は吸血鬼だな」
 底冷えするかのような冷たい声が響く。

 尋ねる言葉ではなかった。
 かの『月光城の主』はオブリビオンにしてヴァンパイアへと成り果てたが、彼の目に映るのは等しく吸血鬼であった。
 猟兵たちの姿は一人ひとり違う。けれど、『狂気に飲まれた復讐者』にとって、それは問題ではなかった。
「お前も、お前も、お前も、お前も、お前も――」
 全てが吸血鬼に見える。

 彼が何を思い、何を失い、吸血鬼に復讐を誓ったのかは、もはや彼自身にもわからぬことであった。
「――お前も吸血鬼だ」
 其の胸に輝くは『月と眼の紋章』。
 すでに『人間画廊』から人々を開放しているため、『第五の貴族』の干渉すら阻む『66倍』にも至る戦闘力の増加は失われている。
 だというのに、それを失ってなお『狂気に飲まれた復讐者』の力は強大そのものであった。

「お前が吸血鬼だ」
 一歩を踏み出した瞬間、猟兵たちの身を襲うのはおぞましき狂気の重圧。
 紋章の力は失われど、その胸より溢れ出す棘鞭は『狂気に飲まれた復讐者』のユーベルコードと共に猟兵へと襲いかかるだろう。
 だが、猟兵たちは退かない。
 どれだけ狂気に飲まれ、恩讐の果てに至り、その身を憎むべき吸血鬼に堕するのだとしても。
 それでも猟兵たちは知るのだ。
 己を見失わぬ意志があればこそ、人は人のまま怪物を打倒することができる。

 それを猟兵たちは知らしめるように、『狂気に飲まれた復讐者』と真っ向から対峙するのであった――。
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦怪我アドリブok

狂ってしまったのね、人格も生き様も
他人事とは思えない所はあるけれど、でも、仕方ないよね、今は敵同士
喜びなよ黒い人、お望みの吸血鬼だ

POWで
とんでもなく厄介な方法で攻撃してくるみたいだけど、私の眼でも残像くらいは捉えられるかしら

首を落とすことに執心してる風だし、近付いてくる可能性は高そう
狙いが首だって予測はしつつ、黒剣での防御が間に合えば御の字、かな

銀に黒が勝てると良いのだけど

ただ、まあ、銃使われると困ってしまうな

強い敵には捨て身で、腕一つ捨てるくらいの気持ちでいなきゃ

吸血鬼を殺すのだもの、この気持ち、わかるでしょ、貴方にも



『人間画廊(ギャラリア)』を突破した先にある『月光城の主』の玄室に座す『狂気に飲まれた復讐者』がゆらりと立ち上がっている。
 目深に被った帽子の奥にある表情は能面のような動きのない白い顔であった。
「お前は吸血鬼だな」
 ただそれだけ。
 正誤など関係ない。あるのは己の目に映る全てが吸血鬼であり、己は吸血鬼を鏖殺せしめなければならないという強迫観念にも似た狂気だけである。
「お前は吸血鬼だ吸血鬼だ。吸血鬼だ。吸血鬼に違いない」
 狂ったように言葉を紡ぐ『狂気に飲まれた復讐者』が大地を蹴った瞬間、彼の目に映る吸血鬼――即ち、猟兵、肆陸・ミサキ(終り・f00415)へと銀の剣と『月と眼の紋章』から迸る棘鞭が襲い来る。

「狂ってしまったのね、人格も生き様も」
 ミサキは左右で違う瞳で復讐の果てに居たりし者の顔を見つめた。
 他人事とはとても思えないところがある。
 けれど、仕方のないことだとミサキはつぶやいた。
 今此処にいるのは猟兵とオブリビオンである。滅ぼし、滅ぼされる間柄以外の何物でもない。
 ゆえに、ミサキは告げる。
 迫る白銀の剣の刀身に映る己の姿をして、『狂気に飲まれた復讐者』に告げる。

「喜びなよ黒い人、お望みの吸血鬼だ」
 笑うでもなく、悲しむでもなく。
 ただ、ミサキの瞳は告げる。お前の獲物は此処にあると。ただそれだけを告げ、瞳をユーベルコードに輝かせる。
 迫る白銀の剣は尋常ならざる速度であった。
 時にして僅かな一瞬。されど、その一瞬でミサキは彼我の力の差を知る。
 己の目でも残像くらいは捉えられるかと思ったが甘かった。

 追えない。だが、かの『狂気に飲まれた復讐者』の狙いは判っている。
 己たちを吸血鬼だと断定し、首を落とすことに執着している。ならばこそ、其の斬撃は見えずとも、己の首に迫っていることを知るのだ。
「――ッ!」
 それは彼女の身に宿った反射的な動きであった。
 黒剣が銀の閃光と化した剣を受け止める。いや、受け止めたまではよかった。けれど、銀の剣の一撃の重さたるや凄まじものがあった。
 まるで鉄塊で殴られているかのような重さ。

 これまで『狂気に飲まれた復讐者』がどれほどの研鑽と執着で持って吸血鬼をおい続けていたのかをミサキは知るだろう。
 銀に黒が勝てると良いと思っていた。
 其の目算すら甘かった。だが、同時にこうも思ったのだ。
「銃を使われると困ってしまうと思っていたから、そう来てくれてよかった」
 受け止めた黒剣。それをへし折り、さらにはミサキの利き腕すらもひしゃげさせ銀の剣の一撃がミサキへと叩き込まれる。

「お前は吸血鬼だ」
 告げる言葉が冷たく頭上より迫る。
 頭を上げた瞬間『狂気に飲まれた復讐者』の斬撃がミサキへと襲いかかる。早い。速すぎる。そう思えども、ミサキの瞳に輝くのは絶望ではなかった。
 それはユーベルコードの輝きにして、赫灼たる絶焼(カクシャクタルゼッショウ)。
「くれてやる――」
 強敵には捨て身でことに挑むのがミサキの流儀である。
 腕一つが何であろうか。
 そう、己は吸血鬼を殺すダンピール。
 ヴァンパイア支配、そのオブリビオンの欲望の全てに終焉をもたらす赫灼たる絶対なるの炎。

 彼女の利き腕は使い物にならない。
 だが、それでも彼女の拳はユーベルコードに輝く。
「遠慮なく受け取ってよ――」
 わかるでしょ、とミサキは小さくつぶやいた。
 眼前に迫る『月と眼の紋章』より放たれる棘鞭をも焼き尽くしながら振るわれる絶技の一撃。
 単純なる拳の一撃であれど、その光はヴァンパイアを焼き焦がす光。

 腕一本程度なら安いものだ。
「だって吸血鬼を殺すのだもの、この気持ち」
 まさしく、ミサキは嘗ての復讐者と思いを同じくしていただろう。
 奪われるだけの存在ではいられない。
 赦してはならない存在が今も跋扈しているという事実が、失われたがゆえに虚となった心の中を支配していく。

 その狂おしさをして、ミサキは己の燃える赫灼の拳をもって『狂気に飲まれた復讐者』へと叩きつけ、その焦がれるような思いを打ち込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 いいえ、咎人さん。わたしは吸血鬼じゃないわ。わたしはゾーヤ、あなたに囚われた人を助けるために来たの。彼らが待ってるから、最初から全力で行くわ。

 【UC:慈悲なき冬、来たれり】(WIZ)を発動、〈全力魔法〉をお見舞いするわ! 胸の紋章を狙った氷槍を放って、〈寒冷適応〉が無ければ動くこともままならない厳冬にするわね。吹雪で視界が悪いから、きっと銃も当てにくいはず。〈属性攻撃〉で氷塊を放って追撃をするわね。

 きっと、とても酷いことがあったのね。この世界の吸血鬼って、いつもそう。でも咎人さん、憎しみで我を忘れて皆を苦しめる今のあなたも、彼等と同じ。だから、ここで終わりよ。

(アドリブ等々全て歓迎です)



 赫灼たる拳の一撃に『月光城の主』である『狂気に飲まれた復讐者』の胸は焼け焦げていた。
 肉の焼ける匂いが玄室に立ち込める。
 されど、その一撃を受けてなお『月と眼の紋章』は輝く。
 猟兵たちの活躍により『人間画廊(ギャラリア)』に囚われた人々は解放された。もとより強大なオブリビオンである『狂気に飲まれた復讐者』の力を66倍にまで引き上げる紋章の力は失われてもなお、その力の発露を霞ませることはなかった。
「お前は吸血鬼だ」
 告げる言葉は断定。
 ただ、其の瞳に映る者全てが吸血鬼に見えるという狂気に飲まれた彼にとって、正誤は関係ない。

 ただ吸血鬼を殺す。ただそれだけのために生きてきた人生であった。その末路が、吸血鬼に身を堕すことであると彼は知っていただろうか。知ってなお、その身を復讐の炎に焦がしただろうか。
 それはわからない。わからないのだと、ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は思ったことだろう。
 ゆえに彼女は言うのだ。
「いええ、咎人さん。わたしは吸血鬼じゃないわ。わたしはゾーヤ、あなたに囚われた人を助けるために来たの」
 そこにあったのは憐憫の念であったのかもしれない。

 憐れみであったのかも知れない。
 けれど、『狂気に飲まれた復讐者』には関係ない。どれだけ否定しようとも、彼の瞳に映るのは全て吸血鬼だからだ。
 吸血鬼は殺さなければならない。
 手にした魔銃より銀の弾丸がばらまかれる。玄室に跳弾し、凄まじき戦歴ゆえにその跳弾の全てを計算にれたかのように胸の紋章より放たれる棘鞭がゾーヤを襲う。

 だが、彼女とて負ける理由もなければ、退く理由もない。
「彼等が待っているから、最初から全力で行くわ」
 それは、慈悲なき冬、来たれり(ジャッジメント・コキュートス)。
 ゾーヤの瞳がユーベルコードに輝く。
 告げる言葉は静謐を檻を破りて飛来する氷の槍。

「たしの運命は氷、氷あるところに雪は降る。ここはもう、わたしの領域。――慈悲なき冬は此処に来たれり!」
 跳弾する銀の弾丸がゾーヤに迫る。
 だが、其の尽くを氷の槍が防ぎ、砕けていく。圧倒的な力の差。紋章の力を無効化してなお、これである。
 しかし、彼女のユーベルコードは氷槍を放って終わりではない。
 彼女の放った氷の槍は余波で氷雪を降らせ、厳冬と同じ環境へと変える。彼女にとって、この厳冬の如き環境こそが自陣そのもの。

 足を踏み出す。
 どれだけの戦歴があろうとも、どれだけの力があろうとも、吸血鬼に身をやつすのだとしても。
 それでも彼女以上にこの厳冬のごとき環境に適応できる者はいなかっただろう。
 迫る跳弾の弾丸も、全てが凍りつき動きを止める。
「お前は、吸血鬼だ」
 変わらぬ視界。其の瞳に映るのは絶望と狂気だろう。
 ゾーヤは知っている。人はいつだって絶望に足を取られ、諦観によって足を止めてしまう。
 止まった足を動かすことは、どんなことよりも難しい。
 ゆえにゾーヤは告げるのだ。

「きっと、とても酷いことがあったのね。この世界の吸血鬼って、いつもそう」
 ゾーヤの言葉は敵対者に向けるものではなかった。
 凍えるような冬の中にあるて、暖炉の傍の火のように暖かなものであったことだろう。
 もしくは、この世界に未だ見えることのない陽光のような暖かさが在った。
 現実は辛く厳しい冬の如く。
 されど、ゾーヤは頭を振る。

「でも咎人さん、憎しみで我を忘れて皆を苦しめる今のあなたも、彼等と同じ」
 悲しいことがたくさんあったのだろう。
 辛いことが重なってしまったのだろう。
 心が壊れてしまったのだろう。全ては憶測に過ぎないことだ。何処にも真実は見えないかもしれない。
 けれど、ゾーヤは己の心の中より発露する光とともに告げるのだ。

「だから、ここで終わりよ」
 降り注ぐ氷の槍が棘鞭を引き裂いて『狂気に飲まれた復讐者』へと叩きつけられる。
 それは手向けであったことだろう。
 陽光知らぬダークセイヴァーに生まれ、失い、そして失意と狂気によって堕した存在への、ゾーヤの心の光が導く唯一つの優しさであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラヴィ・ルージュブランシュ
目的のために誰かを犠牲にしてもへいちゃらなんて
お前の思考こそが邪悪な吸血鬼そっくりなのよ
抱いた望みが闇に包まれて醜く変わっていっちゃうのは
救えなかったアリスによく似ているわね
手遅れなのも、そっくり

暗闇からの暗殺に特化した戦闘スタイル
追いかけて仕留めるのは茎(骨)が折れそうね
ならいいわ、どうぞ好きにラヴィを狙って
薔薇みたいに真っ赤な“吸血鬼”の血
今のお前にはチョコレートの噴水より甘く馨しいのでしょう?

ラヴィの血
仲間の傷
捕らえられていた人々の苦痛
その全てがこの剣をより研ぎ澄まさせる
お前がどんなに強くとも
この剣は絶対に狙いを違えないわ

いつか
生き残った者達が
お前の真に望んだ世界を作り上げる
…待っていて



 打ち込まれた氷の槍が『月光城の主』たる『狂気に飲まれた復讐者』の体を縫い止める。
 だが、胸の紋章『月と眼の紋章』が輝き、溢れ出る棘鞭の一撃が氷の槍を砕く。砕かれた氷雪が、この仄暗い世界にありて月光の輝きを受けて煌めく。
「お前は吸血鬼だな」
 ただその言葉だけを紡ぐ。
『狂気に飲まれた復讐者』にとって、目の前にある者全てが吸血鬼に映る。
 己の身が既にオブリビオン、ヴァンパイアと変わらぬものに成り果ててもなお、その心にあるのは狂気と復讐心だけであった。
 あらゆるものを捨ててきた。
 己の失ったものを埋めるために、吸血鬼を鏖殺するために、手段を選ばず、犠牲にしてきたのだ。

 その末路。
 それを目の前にしてラヴィ・ルージュブランシュ(甘惑プロロンジェ・f35723)は言い放つ。
「目的のために誰かを犠牲にしてへいちゃらなんて、お前の思考こそが邪悪な吸血鬼そっくりなのよ」
 全ては吸血鬼を殺すために。
 白銀の剣は、かつては誰かを守るためにあったのだろうとラヴィは思う。想像するしか無い。けれど、彼女は知っている。
 目の前のオブリビオンが何をしてきたのかを。
『人間画廊(ギャラリア)』でみてきたのだ。吸血鬼を滅ぼすために吸血鬼へと堕した存在が、守るべき人の生命を吸い上げてきたのを。

 だからこそ、彼女は告げる。
「抱いた望みが闇に包まれて醜く変わっていっちゃうのは、救えなかったアリスによく似ているわね」
 そう、傷ついた魂を持つアリスたち。
 彼女たちの心を癒やすためのアサイラム。不思議の国はそんな場所。けれど、救えなかったアリスたちもまた『狂気に飲まれた復讐者』と同じだ。そっくりなのだ。
 何もかも。手遅れなところも含めて、全てがそっくりなのだ。

 ラヴィは何を思っただろうか。
 残念だと思っただろうか。けれど、それは胸に秘めて。
 闇に紛れる『狂気に飲まれた復讐者』の姿を探す。氷雪の煌きの中にさえ、彼の姿を見出すことは難しかった。
 元は力で劣る人間が吸血鬼を凌駕するために磨き上げられた技術。
 気配を立ち、死角から放つ必殺の一撃で持って吸血鬼を屠る力。それをオブリビオンとなった『狂気に飲まれた復讐者』はラヴィに放つのだ。
 追いかけて仕留めるのは茎が、骨が折れると彼女は感じていた。ああ、けれど。それでもラヴィはため息をはつくように、そして同時に困ったような顔をする。

「ならいいわ、どうぞ好きにラヴィを狙って。薔薇みたいに真っ赤な“吸血鬼”の血……今のお前にはチョコレートの噴水より甘く馨しいのでしょう?」
 その言葉が最後であった。
 瞬間煌めく白銀の刃。
 その斬撃が彼女の背を切り裂く。噴出した血は己の翼よりも真赤に羽撃くようであった。
 痛みが体を走り抜ける。
「吸血鬼吸血鬼吸血鬼吸血鬼吸血鬼吸血鬼――お前は吸血鬼だ」
 その言葉が何よりも虚しいことをラヴィは知っている。

 彼女の視界に映るは自身の血。
 そして想起されるは己の仲間の傷。捉えられていた人々の苦痛。その表情。全てがラヴィの手にした宝剣にして大剣たる『ヴォーパルソード』の刃を鋭くする。
 より研ぎ澄まされた刃は、その刀身に黒く染まった『狂気に飲まれた復讐者』の姿を写すだろう。
「お前がどんなに強くとも、この剣は絶対に狙いを違えないわ」
 ラヴィの瞳がユーベルコードに輝く。

 そう、その力の名を知らしめよ。

 其の名は――鋭絶ブロワイエ(エイゼツブロワイエ)。

 鋭きを以て、絶対を打ち砕く刃。
 ユーベルコードは煌めく。ラヴィの心のなかにある多くの者たちの傷を抱え、そして己に刻まれた背の傷、血潮を以て研ぎ澄まされた宝剣『ヴォーパルソード』の煌きが放たれる。
 狙い過たず。
「――ッ!?」
『狂気に飲まれた復讐者』は見ただろう。
 己の姿を捉えていないはずのラヴィの放つ剣閃の一撃。全てを切り裂く斬撃。
「いつか」
 ラヴィの言葉はひらひらと落ちる花弁のように彼に届いたことだろう。狂気に飲まれたがゆえに届かぬ光。聞こえぬ言葉。

 されどユーベルコードの輝きは絶対なる一撃。
「生き残った者達が、お前の真に望んだ世界を作り上げる」
 放たれた斬撃は『狂気に飲まれた復讐者』の体を袈裟懸けに切り裂く。鮮血が迸る。
 それは奇しくもラヴィの背中に刻まれたものとは真逆。胸に疾走る剣閃の一撃は痛烈なるものとなって『月と眼の紋章』が放った棘鞭すらも切り裂いて、その身に痛手を打ち込む。

「……待っていて」
 いつだってその願いと祈りはは哀しみと切なさをラヴィに齎す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

亞東・霧亥
佇まい、雰囲気、俺と同じ生粋の暗殺者か。

闇に溶け込み、音も無く近付き、必中必殺を狙う手法は俺もやるから種は割れている。

『暗殺』の知識、『戦闘知識』、『目立たない』動きや『闇に紛れる』手法など、様々な知識から暗殺の手口を考え、対策を練る。

決め手に欠く状況を続ける事で、復讐者としての執念が冷静さを失う要因になると考え、敢えて隙を作り『残像』を攻撃させる。

【UC】
大きな傷は要らない。
ほんの過擦り傷程度を奴の首筋に刻む。

どう隠れようが無駄だ。
俺はお前を逃さない。
ヴォーパルソードは必ずやお前の首を落とす。
「今夜は月が綺麗だが、お前はとりあえず死ね。」



 剣閃煌めく『月光城』の玄室にありて、ユーベルコードは輝く。
 袈裟懸けに振るわれた斬撃の軌跡は血飛沫を上げ、床を濡らす。未だ『月光城の主』、『狂気に飲まれた復讐者』は倒れない。
 どれだけの鮮血が傷跡から溢れ出るのだとしても、彼は倒れないだろう。
 その身が砕けて霧消する時まで、彼の瞳に映るのは吸血鬼ばかりであった。
「お前は吸血鬼だ」
 ゆえに殺す。
 ゆえに鏖殺する。ただそれだけのためにあらゆる手段と、あらゆる矜持を捨ててきたのだ。

 ときには子供を犠牲にした。ときには村一つを囮にした。
 本当に守りたかった事全てを犠牲にして吸血鬼を殺さんとした『狂気に飲まれた復讐者』は、オブリビオンへとなり、ついには忌むべき吸血鬼にすら堕したのだ。
「佇まい、雰囲気、俺と同じ生粋の暗殺者か」
 亞東・霧亥(夢幻の剣誓・f05789)は『狂気に飲まれた復讐者』に己と同じものを感じたことだろう。
 けれど、決定的に違うことがある。
 胸に抱いた紋章、『月と眼の紋章』は、誰かの生命を吸い上げてきたからこそ今も怪しく蠢動するのだ。

「お前は吸血鬼だ。吸血鬼だ。吸血鬼に違いない」
 傷跡からあふれる血潮など気にも止めず、手にした魔銃より放たれる銀の弾丸が壁や天井、そして床すらも跳弾し迫る。
 さらには紋章よりあふれる棘鞭が霧亥を取り囲み、銃弾から逃れるコースを潰していくのだ。
 彼に与えられた選択肢は、銃弾か棘鞭か。
 そのどちらかであった。

 けれど、わかっている。
 身に宿した暗殺の知識。戦闘知識。目立たない動きや闇に紛れる手法など、様々な知識が彼の中に宿っている。
 考える時間はない。
 刹那に判断しなければならない。
 潤沢な時間は敵は用意してはくれないのだ。
 如何に暗殺の生業を知るとしても、一瞬の判断が誤ちを引き当てる。だからこそ、冷静さは必要なのだ。
「大きな傷は要らない」

 霧亥は『狂気に飲まれた復讐者』の冷静さを喪う瞬間を作り上げる。
 残像を生み出し、姿を増やし、己の姿を吸血鬼に見えるという特性を活かす。彼が欲するのは吸血鬼の生命だ。
 目の前に獲物が増えれば、どうなるかなど火を見るより明らかである。
「吸血鬼吸血鬼吸血鬼吸血鬼吸血鬼――!」
 そう、生涯を捧げた相手。
 吸血鬼を殺すということだけに固執したがゆえに狂った嘗ての復讐者は、それゆえに暗殺を行うものセオリーを欠く。

「その首、貰い受ける」
 己の手にした斬竜剣を振るう。
 僅かに首筋に傷を刻むだけでいい。いや、それが精一杯であった。これだけ敵の冷静さを崩してなお、彼の放った斬撃は『狂気に飲まれた復讐者』の首筋に僅かなかすり傷しか残せなかった。
 もとより強大なオブリビオン。
『月光城の主』たる力を前に霧亥の力は及ばなかったのかも知れない。

 しかし、それは断じて否である。
「どう隠れようが無駄だ」
 拡大介錯(カクダイカイシャク)、それは己を狙い続ける限り手にした斬竜剣の斬撃を与え続けるユーベルコード。
「俺はお前を逃さない。ヴォーパルソードは必ずやお前の首を落とす」
 鮮血が迸る。
 小さな傷であったはずなのだ。『狂気に飲まれた復讐者』は理解できなかったことだろう。
 彼の首筋につけられた僅かなかすり傷。
 そこから無数の斬撃が与えられ続け、其の傷を徐々に深くしていく。

「今夜は月が綺麗だが、お前はとりあえず死ね――」
 それが最後に聞いた霧亥の言葉であったことだろう。
 もはや届かぬ言葉であると知りながら、それでも『狂気に飲まれた復讐者』は、その瞳に映る吸血鬼を恨み、そして己の復讐を遂げんと咆哮するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…怪物と戦う者は、みずからも怪物とならぬように心せよ

…その心構えを忘れ、狂気に堕した時点でお前は狩人である資格を失った

…だからこそ、かつての先達であるお前にはこの言葉を贈るとするわ

…さあ、吸血鬼狩りの業を知るが良い、ヴァンパイア

UCを用いて敵の罠や攻撃を見切り紙一重で回避して受け流し、
大鎌をなぎ払う早業のカウンター主体で立ち回り、
敵が体勢を崩し隙を見せたら大鎌を武器改造して手甲剣に変型させて切り込み、
魔力を溜めた刃を怪力任せに胸に突き刺し爆発させる闇属性攻撃の追撃を行う

…無駄よ。骨子の無い業で私を捉える事はできない

…去るが良い、世界の敵よ。闇を払い、過去を踏み越えて私達は夜明けを目指す



 打ち込まれた猟兵のユーベルコードによって、『月光城の主』、『狂気に飲まれた復讐者』の首筋からとめどなく血潮が溢れ出す。
 通常の存在であれば致命の一撃。 
 されど、此処にあるのは通常のオブリビオンではない。猟兵たちの働きにより紋章の力を無効化されてなお強大な力を持つオブリビオンなのだ。
「お前は吸血鬼だな」
 その目深に被った黒い帽子より除く双眸はギラギラと輝いていた。狂気に苛まれた瞳。そこにあるのは正気ではない。

 吸血鬼を憎み、吸血鬼を追い、吸血鬼を殺す。
 如何なる手段も、如何なる犠牲をも払ってでも殺す。そうした存在が過去に沈んだ結果が今である。
 彼が何を守らんとしていたのかは、最早知る術はないだろう。
「……怪物と戦う者は、みずからも怪物とならぬように心せよ」
 静かな言葉が溢れる。
『狂気に飲まれた復讐者』の瞳に映るのは吸血鬼であった。しかし、猟兵でありダンピールであるリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の瞳は冷ややかなものであった。

 そこに激高はなく。そして失望もない。
 あるのはただ己と『狂気に飲まれた復讐者』が敵であるという事実のみ。
 目の前の存在は先達である。けれど、忘れてはならぬ心構えを忘れた狂気に堕した存在である。其の時点で目の前の先達は狩人である資格を失ったのである。
「……だからこそ、かつての先達であるお前にはこの言葉を送るとするわ」
 彼女の瞳がユーベルコードの輝く。
 リーヴァルディはダンピールである。だが、そのユーベルコードは代々続く己の名を冠する。

「……さあ、吸血鬼狩りの業(カーライル)を知るが良い、ヴァンパイア」
「――お前が吸血鬼だ!」
 そこにある狂気が迸るように咆哮とともにリーヴァルディに襲いかかる。
 迫る白銀の刃は紙一重で躱される。
 すでにリーヴァルディの姿は、そこにはない。紙一重で躱した斬撃を後にして、彼女は『狂気に飲まれた復讐者』の背後に回る。
 手にした大鎌の斬撃が『狂気に飲まれた復讐者』に振るわれる。それを胸の紋章からあふれるようにして飛び出した棘鞭が受け止める。

 何もかもが軽いとリーヴァルディは感じたことだろう。
 目の前の嘗ての先達に彼女は伽藍の如き空虚を感じた。振るわれる斬撃の全てが早いけれど、軽い。
「……無駄よ。骨子のない業で私を捉えることはできない」
 あらゆる攻撃をリーヴァルディは予想する。そう、吸血鬼狩りの業は、いつだってヴァンパイア支配にあえぐ者たちのために振るわれてきたのだ。
 復讐という私欲に走った時点で、その骨子は失われている。

 どれだけ強固な意志があろうとも、過去に沈み狂気に歪んだのであれば、骨子無き理念はねじれる。
「お前が、お前が、お前が!」
 叫ぶ『狂気に飲まれた復讐者』の斬撃が周囲に仕掛けられた罠を作動させる。トラバサミのように迫る紋章より放たれた棘鞭がリーヴァルディの体を捕縛せんと迫っている。 
 さらに手にした魔銃の銃口がリーヴァルディへと向けられていた。
 躱すことができない絶命の一撃。
 されど、リーヴァルディは瞳を伏せた。すでに見る必要もない。
 己を捉えることはできない。同じ吸血鬼を狩る、狩った者同士。その理由をリーヴァルディはすでに得ているからだ。

「……去るが良い、世界の敵よ」
 そう、すでに目の前の敵は吸血鬼狩りですらない。ゆえに彼女は大鎌の一閃で棘鞭を薙ぎ払い、踏み込む。
 己を狙う弾丸を紙一重で躱し、彼女の髪がはらりと千切れて飛ぶ。
 彼女の手の中で大鎌が手甲剣へと変わり、その切っ先を突き出す。躱しようのない刺突の一撃。

「闇を払い、過去を踏み越えて私達は夜明けを目指す」
 常闇の世界ダークセイヴァー。
 その世界に一筋の光明が差し込むのだとすれば、それは希望である。世界の謎を紐解き、必ずや偽りの月光差し込む世界を越えていく。
 ただその一念においてのみが『狂気に飲まれた復讐者』とリーヴァルディを分かつたった一つの答え。
 突き立てられた剣が貫き、その能面のごとき復讐者の瞳にリーヴァルディは虚無をみやり、その体を吹き飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
ミイラ取りがミイラになったか。その姿、鏡で見せてやりたいわ。

『太極図』、展開。この先、お互いにユーベルコードは使えない。地力の勝負よ。

冷静に「覚悟」を決めて。この先頼れるのは自分の実力だけ。
「式神使い」で『鎧装豪腕』を顕現。茨棘はこれで受ける。

銀剣の一撃を薙刀で『鎧装豪腕』で「武器受け」「受け流し」、「貫通攻撃」で「串刺し」に。
銃口があたしに向いたら、「衝撃波」伴う「なぎ払い」で狙いを逸らす。
少しでも気を抜いたら返り討ちね。笑いが零れるわ。死と隣り合わせの状況だからこそ、生きてる実感が感じられる。
あなたはどうかしら、オブリビオン。――いえ、聞くだけ無駄だったわね。

叩き潰しなさい、『鎧装豪腕』!



『狂気に飲まれた復讐者』の体には数多の傷跡が残る。
 首筋からはとめどなく血潮が流れ出す。袈裟懸けに切り裂かれた傷跡は塞がることを知らない。
 そして胸に穿たれた刀剣の一撃は焼け焦げた体を、さらなる消耗に引きずり込む。
 ここまでしてなお、『狂気に飲まれた復讐者』は止まらない。
 彼の瞳にあるのは狂気だけである。
 目に映る全てのものが吸血鬼に見えてしまう。それは嘗て、復讐のためにあらゆる手段を講じて吸血鬼を殺し続けた業故であろうか。

 因果がめぐるというのならば、これほどまでに皮肉なことはないだろう。
 過去に歪み、今まさに『狂気に飲まれた復讐者』は己自身がヴァンパイアへと変星た。
 だというのに。
「お前は吸血鬼だな」
 傷だらけになりながらも、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)を睨めつける。
「ミイラ取りがミイラになったか。其の姿、鏡で見せてやりたいわ」
 ゆかりにとって、それはまさにそう言葉にするしかない惨状であった。
 見ていられない。狂気に飲まれた者はいつだって、その姿に哀れみを漂わせる。自分でも気づくことのできないほどに、歪み果ててしまっている。

「万物の基は太極なり。両儀、四象、八卦より生じし森羅万象よ。その仮初の形を捨て、宿せし力を虚無と為し、悉皆太極へと還るべし! 疾!」
 ゆかりの首にかかった太極図の立体ペンダントトップから戦場に機能を持たない、涙無き終焉の霊気が迸る。
 それは、宝貝『太極図』(タイキョクズ)である。
 全てのユーベルコードの使用を不能にする力。互いにユーベルコードは使えない。己の式神である鎧装豪腕を呼び出し、薙刀を構える。

 覚悟を決めた。
 確かに目の前のオブリビオンは強大な存在である。
 ユーベルコードに頼らない、紋章から放たれる棘鞭もある。でも、だからなんだというのだ。
「この先頼れるのは自分の実力だけ。なら、やってやろうじゃない」
 迫る棘鞭を鎧装豪腕で受け止め、ゆかりは疾走る。
 それ以上に素早く『狂気に飲まれた復讐者』が背後に回り込んでいる。棘鞭はブラフ。
 視界を埋め尽くす棘鞭の群れを囮に背後に回られている。
 もとより、己より強大な存在を討ち果たすための暗殺技巧。それが今まさにゆかりへと牙をむく。
 銀の刃がゆかりの首に振るわれる。
 それを薙刀で受け流そうとして、凄まじ力にゆかりはふきとばされる。

「お前は吸血鬼だ」
 狂気迸る言葉とともに棘鞭がふきとばされたゆかりへと迫る。
 紋章の力は無効化されてもなお、この棘鞭の厄介さは言うまでもない。銀の銃弾が装填された魔銃が轟音を打ち鳴らす。
 来た、とゆかりは思っただろう。
「少しでも気を抜いたら返り討ちね……ふふ」
 笑いが漏れる。死と隣り合わせ。
 直ぐ側に死神がいるような気配すらするようであった。背筋が凍りつく。薙刀の放つ衝撃波が銀の銃弾を弾き飛ばす。

 けれど、次の瞬間そこにあったのは能面のごとき無表情の『狂気に飲まれた復讐者』の顔があった。
 振るう銀の剣はゆかりを両断せんと振り下ろされる。
 その一撃をゆかりは薙刀で受け止める。骨がきしむほどの重さ。
「こんな状況だからこそ、生きてる実感が感じられる。あなたはどうかしら、オブリビオン」
 その問いかけに答えはない。
 ただ、吸血鬼だ、といううわ言のごとき言葉が聞こえるだけである。

「――いえ、聞くだけ無駄だったわね。叩き潰しなさい、『鎧装豪腕』!」
 ゆかりの言葉とともに頭上より飛来する式神『鎧装豪腕』の鉄槌の如き一撃。
 それはこれまでゆかりが敵の意識を惹きつけていたからこそできた頭上よりの不意の一撃。
 それは『狂気に飲まれた復讐者』を地面に叩きつけ、めり込ませる。
 息を吐き出す。
 心がひりつくような戦い。
 その最中にありながら、ゆかりは微笑んだ。今を生きるという実感に体が震え、過去より滲み出た存在が感じることのできない生を今、噛みしめるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェルンド・ラスリス
あぁ、俺の体に流れる半分の血は吸血鬼だ。そして俺はお前と同じ復讐鬼だ。だがな!貴様の復讐に他者を巻き込むのは違うだろう!

UC『覚醒する怨嗟の復讐鬼』を発動。

小細工はいらない、真正面から斬り捨てる。

貴様は外道に堕ち過ぎた、復讐ってのは己と倒すべき因縁。この2つで完結させなきゃならん。無辜の民まで巻き込んで、暴れるのは外道ってもんだぜ



「お前は吸血鬼だな」
 その言葉は半分が正しく、半分が誤りであったことだろう。
 告げる『狂気に飲まれた復讐者』はオブリビオンである。言うまでもなく『月光城の主』だ。
 かのオブリビオンの胸に輝く紋章の効力は猟兵たちの尽力によって無効化された。
 もとより強大なオブリビオンの戦闘力を66倍にまで高めるという『月と眼の紋章』は、そのままであれば真っ向から戦うことなど現実的ではなかった。

 しかし、ここまで引きずり出したのだ。
 ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)は、ダンピールである。
 寄る辺無き者もまた放浪と復讐の旅路に足を踏み込む。彼と『狂気に飲まれた復讐者』の違いは何処にあるのだろうか。
「あぁ、俺の体に流れる半分の血は吸血鬼だ。そして俺はお前と同じ復讐鬼だ」
 認めるほかない。
 まさしく同じ。
 他ならぬ己自身がそう認めてしまっている。母を失った。殺された。何故、己の親しい人が殺されなければならなかったのかという思考が頭の中を支配する。

 怒りが渦巻く。
 どうしようもないほどの感情が地獄の炎となって噴出するだろう。
 人は言うだろう。それだけが全てではないと。だが、違うのだ。
 ヴェルンドにとって復讐とは全てだ。復讐を果たすことができるのならば、明日すら必要ないと言い切ることができる。
 迫る銀の刃は早い。目で追うことすらできぬほどの踏み込み。
 これまで数多の猟兵達が消耗させてなお、この業の冴えである。凄まじいと言う他無い。

 けれど、ヴェルンドは、その必殺の銀閃を受けてなお咆哮するように言うのだ。
「だがな! 貴様の復讐に他者を巻き込むのは違うだろう!」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 切り裂かれた体から噴出する血潮は獄炎の血。
 覚醒する怨嗟の復讐鬼(デッドライン・アヴェンジャー)は、その痛みを噛み殺し、咆哮するのだ。
 それは咆哮ですらない。
 怨嗟だ。己の復讐を阻む者全てを破壊し続ける復讐鬼が上げる怨嗟は世界すら震わせるだろう。

 もはや小細工は要らない。
 真正面から切り捨てるのみであるとヴェルンドは剣を構える。
「貴様は外道に堕ち過ぎた、復讐ってのは己と倒すべき因縁」
 その二つのみで完結しなければならぬものである。それを『狂気に飲まれた復讐者』は守らなかった。
 あらゆる手段を講じ、あらゆる犠牲を払ってなお、復讐を果たそうとした結果がこれである。
 誤ちは正せばいい。

 けれど、遅きに失することもあるだろう。
「無辜の民まで巻き込んで、暴れるのは外道ってもんだぜ」
 その言葉はきっと届かない。すでに正気を失い、狂気だけに飲み込まれた復讐者には何も言葉は届かない。
 己が守るべきものを失せ、見失った存在にとって、その言葉はただの音似すぎないのだから。
 ならればこそ、ヴェルンドは爆発的に増大した肉体を駆り、寿命を削るような戦いを繰り広げる。

 迫る棘鞭を切り払い、肉薄するのだ。
 そこにあったのは能面のごとき『狂気に飲まれた復讐者』の顔であった。何も浮かんでいない。
 痛みも、苦しみも、哀しみも。
 そこにあったのは虚無だけだ。復讐の果てに過去に歪んだ者の末路の姿がそこにあった。
「じゃあな、名も知らぬ復讐者」
 振りかぶった黒い剣の一閃が嘗て在りし過去を切り裂く。
 復讐が歪み果てれば、それは堕するのみ。
 その一閃によってヴェルンドは歪なる存在を振り払い、己の明日がつなぐ復讐の道をまた往くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリステル・ブルー
吸血鬼なんかに間違えられるなんて本当に心外だね
いいや、僕は吸血鬼じゃない。僕はただこの世界の平穏む望む者だ
無駄だろうけど否定し続けるよ
僕は猟兵アリステル、吸血鬼を、オブリビオンを打ち倒して平穏を勝ち取るこの世界の住人だ
お前に何があったかなんて知らないけど、悪いね
無辜の人々を犠牲にした以上、今のお前はお前が憎む吸血鬼と同じ存在だ

普段はユールに頼りっきりだから一人で戦うのは久しぶりだね
黒の細剣を抜いて戦うよ
とにかく動き回って詠唱時間を稼ぐよ
遮蔽物があれば利用したいところだけど…まあ仕方ないさ
魔力を編んで防げる弾は防ぐよ、多少の負傷は覚悟の上さ
相手が剣を使うならこっちも剣で受け流す努力をしようか
大丈夫この程度の痛みなら耐えられる!
剣の間合いに入ったならカウンターを仕掛けるよ
詠唱時間が稼げたら僕の魔力を全部乗せてUCを使う
犯した罪はきっちり償って貰うよ!

いつか僕が狂気に飲まれたとしてもこうはなりたくないなぁ

全部終わったらユールを迎えるついでに助けた彼らの元に行きたいな
僕にその元気があれば、だけど



 猟兵たちによって放たれた攻撃は、そのどれもが『月光城の主』である『狂気に飲まれた復讐者』の身に刻まれている。
 そのどれもが浅からぬものであったし、通常のオブリビオンであったのならば霧消していてもおかしくないものばかりであった。
 けれど、それでも『狂気に飲まれた復讐者』は立っている。
 存在を示すように、その狂気にまみれた瞳を目深にかぶった黒い帽子からギラギラと輝かせながら告げるのだ。
「お前は吸血鬼だな」
 ただそれだけである。
 それ以外の言葉はない。あるのは狂気に彩られた嘗ての復讐の末路のみ。

 失われたものは戻らない。
 どんなことがあっても、それは変わらぬことである。時が逆巻くことがないように。
 ゆえに、アリステル・ブルー(果てなき青を望む・f27826)は頭を振る。
「いいや、僕は吸血鬼じゃない」
 否定する。どんなに狂気に彩られているのだとしても、吸血鬼に間違えられるのは心外であった。
 否定することに意味がなかったのだとしても、アリステルは構わなかった。
 己の在り方を示さなければならない。
 どんなに目の前の存在が強大なオブリビオンであったのだとしても。それでも彼は立ち向かう。

「僕はただこの世界の平穏を望む者だ。僕は猟兵アリステル。吸血鬼を、オブリビオンを打倒して平穏を勝ち取るこの世界の住人だ」
「いいや、お前は吸血鬼だ」
 アリステルの言葉を遮るように魔銃より放たれる銀の弾丸が跳弾の嵐となってアリステルに迫るだろう。
 凄まじい弾丸の数。
 それらの全てが壁や天井、床に跳ねて迫るのだ。さらに紋章より放たれた棘鞭が彼を追う。

 四方八方から迫る攻撃の手。
 黒の細剣を引き抜いて、棘鞭を切り払う。銀の弾丸は跳弾し、あらゆる方向からアリステルを襲うだろう。
 歴戦の感覚故であろう。こちらを追い込むように銃弾を打ち込んでくるのだ。実力の差は歴然であった。
 普段は『ユール』に頼り切りであったから、一人で戦うこと自体久方ぶりであった。
 心細いと思ったかも知れない。けれど、今『ユール』は救い出した人々を護っている。ならば、己が奮起しなければなんとする。
「お前に何があたかなんて知らないけど、悪いね」
 アリステルは見てきた。『人間画廊』で『狂気に飲まれた復讐者』が何をしていたのかを。

 人々を『絵画』に閉じ込め、その生命力を吸い上げていた。
 生命を生命とも思わぬ所業を見てきたのだ。だからこそ、アリステルは赦してはならないと思った。
 どれだけのものを失ったのかはわからない。けれど、越えてはならぬ一線がたしかにあったのだ。
 迫る棘鞭を躱す。
 銀の銃弾がアリステルの足を貫く。激痛が体を走り抜ける。魔力を編み上げてもなお、防ぐことのできない一撃。
「お前は吸血鬼だ」
 その言葉はどこか己の行いを正当化するような響きすら感じさせるものであった。

 目に映る全てが吸血鬼に見える。
 復習するは己に在り。ゆえにこの行いは正当化されるのだというように魔銃の銃口がアリステルに向けられる。
「……それでも、お前は」
 アリステルは歯を食いしばって、足を踏み出す。貫かれた足から血が噴出する。耐えようのない激痛が体を走ったのだとしても構わなかった。
 手にした黒い細剣と共にアリステルは『狂気に飲まれた復讐者』が放つ銀の刃と打ち合う。
 力負けしている。
 噛み締めた歯が鳴る。痛みは耐えられる。どれだけ傷つけられても、アリステルは耐えられる。
 失われた生命を思えば、それは簡単なことだった。

「お前は、無辜の人々を犠牲にした。今のお前はお前が憎む吸血鬼と同じ存在だ」
 だから、許せない。
 復讐の果てがこんな結末だなんて、赦してはならない。ゆえに彼の細剣が銀の剣を跳ね上げる。
 絡め取るようにしてガードを跳ね上げたのだ。

「犯した罪はきっちり償って貰うよ!」
 アリステルの瞳がユーベルコードに輝く。
 指差すは天。
 迫る棘鞭の軌跡がゆっくりと見える。痛みは耐えられる。己の四肢を棘鞭が捉えるのだとしても、それでも己は超えて行かねばならぬ。
 それこそが超克にしてオーバーロード。

 輝く瞳は裁きの光を宿し、掲げた指が示す敵を穿つ。
「いつか僕が狂気に飲まれたとしても、お前のようにはなりたくはない。ただそれだけが、僕の超えるべき道」
 救った人々に会いたいと思った。
 体が軋む。迸る光は、天より降り注ぐ光。『狂気に飲まれた復讐者』を穿つ一撃である。

 例え、骸の海に還ったのだとしても、彼が失ったものは戻らないだろう。
 決して戻らない。それがわかっているからこそ、アリステルは悼む。暖かな生命がまだ己の中に流れている。
 天からの光が極大の柱となってオブリビオンの存在を飲み込んでいく。
 ああ、と息を漏らす。
「僕は果たして笑ってあげられるだろうか。それだけの元気が残っているだろうか」
 アリステルはどうせならば、救った人々に笑顔を向けたいと思った。
 月光だけが煌めく世界。
 陽光を知らぬ人々に向ける笑顔こそが、今アリステルが齎せる唯一の光であったから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
『疾き者』にて
危ないので霹靂は引っ込みました

狂気の果ての磨耗と言いましょうか…。ここで終わらせるが慈悲というもの。

四天霊障による探知結界と、己の忍としての戦闘知識で不意打ちに対処していきましょうか。
四天刀鍵がありますから、それでの武器受けでー。

まあ、ある程度は攻撃受けてもいいのですがねー。指定UC(攻撃力重視、認識は陰海月と霹靂担当)もありますしー。
そうして、四天刀鍵で薙ぎつつ、漆黒風を合間に投擲していきますかー。

四悪霊が怪物にならぬのは。ただ、己を見失わぬようにしているから。
最近は陰海月や霹靂にも助けられてますけどねー。見失ったら、ただの迷惑千万な大厄災運んでくる四つの怨霊ですからねー。



 咆哮が光の柱より轟く。
 それは『月光城の主』、『狂気に飲まれた復讐者』の上げる咆哮であった。
 彼の瞳に映るのは猟兵ではない。
 全てが吸血鬼に見えてしまう。復讐に身を焦がし、あらゆる手段とあらゆる犠牲をもって吸血鬼を鏖殺線とした因果であろう。
 それを咎めるつもりは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――彼等にはなかった。
「狂気の果ての摩耗といいましょうか……」
 彼等の瞳に映る『狂気に飲まれた復讐者』の姿はあまりにも哀れである。

 失ったものがあるのだろう。
 それは己たちも同じである。いわば、過去に歪みし悪霊とも言うべき存在が目の前の『狂気に飲まれた復讐者』だ。
 身に刻まれた傷跡は無数。
 体の至る所に猟兵達の攻撃を受けてなお、その身は滅ぼることを拒んでいた。
「お前は吸血鬼だ」
 何故ならば、吸血鬼が目の前にいるからだ。
 滅ぼさなければならない。己が、如何なる手段を講じても滅ぼし、この世の何処からも消し去らなければならない。

 その意志を感じ、『疾き者』は頷く。
 それは四悪霊の総意であったことだろう。
「ここで終わらせるが慈悲というもの」
 霊障による結界が不意打ちを防ぐ。けれど、『月と眼の紋章』より放たれる棘鞭が無数に放たれ、霊障を砕いていく。
 紋章の力を無効化してなお、この力である。
 もとより強大なオブリビオンであることはわかっていたが、その狂気は猟兵を圧倒するものであった。

「ある程度は攻撃を受けてもいいのですがねー」
 迫る白銀の刃が『疾き者』の首に迫る。しかし、それをあえて受けるほどの余裕もなければ、不意打ちをあえて受けるという選択肢もなかった。
 それをしてしまえば、『狂気に飲まれた復讐者』は、まさしく狂気に飲まれていくだろうから。
 手にした刀で白銀の刃を受け止める。
 火花が散る。
 間近に対面した『狂気に飲まれた復讐者』の瞳は狂気だけに濡れていた。
 能面のような表情。
 もはやどうしようもないほどに過去に歪み果てたがゆえに、そこに何の感情も見出すことはできなかった。

「我等が怪物にならぬのは。ただ、己を見失わぬようにしているから」
 目の前の『狂気に飲まれた復讐者』とは違う。
 誰も彼を止められなかったのだろう。誰も彼もが忘れ去ってしまったからこそのオブリビオン。
 それは必定であったのかもしれない。
 復讐にまみれたから狂気に飲まれたわけではない。彼という存在を人々が忘れ去ってしまったからこそ、『復讐者』はオブリビオンへと堕したのだ。

 ゆえに。
 己たちは違う。己たちを認識するものが居る。己等の総意を知るものがいる。
『陰海月』も『霹靂』も。
 彼等が助けてくれるからこそ、己たちは怪物へと変貌しないのだ。
 四悪霊・『戒』(シアクリョウ・イマシメ)とは即ち、己たちを認識する者たちの意識を持って、内側から沸き上がる呪詛を制御するものである。
「四悪霊は滅びず」
 見失ってはならぬものを知る。
 それだけでいいのだ。己等を縛るは、結界でもなければ、憎悪でもない。

 他者から見た己達。
 その認識こそが己たちを怪物ではなく猟兵と認識させる。
「見失ったら、ただの迷惑千万な大厄災運んでくる四つの怨霊ですからねー」
 呪詛を載せた刀の一撃が『狂気に飲まれた復讐者』の体を切り裂く。
 忘れ去られし者への手向け。
 それが今の彼等にできる唯一なのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
ふむ、どうやら実りある会話は出来そうにないか。
吸血鬼への異常な憎悪。オブリビオンとして再生した時からその状態であるならば『人間画廊』を君が作成したとも思えないが……
その様子だと月光城の仕組みや月と眼の紋章についてなども話せそうにないね。
よろしい。それでは憎悪とこの世界から解放してあげよう。

『アイオーンの隔絶』を発動。
無数の銃弾をすべて受け止めてそれを戦闘能力(魔力)へと変換。

人間画廊なしでこの力は大したものだ。それでは、その力、己の身で受けたまえ。

輝きの増したオーラセイバーで大上段からの一撃を放ちます。



 数多の猟兵たちの攻撃にさらされてなお、『狂気に飲まれた復讐者』は立っている。存在している。
 ただそれだけで脅威に値するものであったことだろう。
 猟兵たちの働きにより、戦闘力を66倍にまで引き上げる『月と眼の紋章』の力は無効化されている。
 だというのに、その紋章からあふれるようにして蠢く棘鞭は未だ健在であり、些かも『狂気に飲まれた復讐者』の力をかげらせることはなかった。
 手にした魔銃が紅の美丈夫――シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)に向けられる。

「お前は吸血鬼だ」
 吸血鬼でしかありえないと、その瞳に映るもの全てが吸血鬼に見える彼は言う。
 そこには狂気しかない。
 嘗て在りし失われしもののために戦った存在は、どこにもいない。
 あるのは狂気と妄執の器だけである。
「ふむ、どうやらみのりある会話はできそうにないか」
 シーザーは呆れ果てる。
 吸血鬼への異常な憎悪。オブリビオンとして過去より滲み出た時から、その状態であるのならば『人間画廊(ギャラリア)』を彼が生み出したとは、とても思えない。

 何故ならば、彼はすでにこのダークセイヴァーに在りし時から狂気に囚われている。
 人もオブリビオンも猟兵も関係なく吸血鬼に見えているのならば、生かさず殺さずなどできようはずもない。
「その様子だと『月光城』や『月と眼の紋章』についてなど話せそうにないね」
 その言葉を遮るように棘鞭と銀の銃弾が放たれる。
 壁、天井、床を跳ねるようにして嵐の如き銃弾がシーザーに迫る。
「お前は吸血鬼だ」
 消耗していてもなお、歴戦の感覚は冴え渡るのだろう。

 目の前の敵を殺すために、どうすべきは体が覚えている。
「よろしい。それでは憎悪とこの世界から開放してあげよう」
 シーザーの瞳がユーベルコードに輝く。
 それはあらゆる攻撃を吸収する魔力。銀の弾丸であろうと棘鞭であろうと関係ない。
 彼の魔力に触れた瞬間にエネルギーに変換され、凄まじい勢いでシーザーの戦闘力へと変換されていくのだ。

「来たまえ」
 短く告げる。
 白銀の刃がシーザーの背後を取る。いつの間にと思う暇もなかっただろう。
 アイオーンの隔絶(デウス・アルムム)たる力がなければ、その一撃で勝負は決して居ただろう。
 凄まじい斬撃は力へと替えられ、シーザーの手にしたオーラセイバーの輝きを増す。
 己のユーベルコード、そのオドたる魔力の壁が軋む。
『人間画廊』より供給される『月と眼の紋章』の力なしで、この斬撃である。これが吸血鬼を鏖殺せしめるためだけに練磨された力。
 その練磨の代償は大きかったのだろう。

 失ったものを贖うことはできず。
 けれど、失いゆくばかりの人生。それは心を摩耗させるには十分すぎるものであった。ゆえに、人間性など何処にもない。
 ただ吸血鬼に死を齎すだけの装置へと成り果てたのだ。
「『人間画廊』なしでこの力は大したものだ」
 だが、存在してはいけないものである。
 オブリビオンは存在しているだけで世界を破滅に導く。ゆえにシーザーは手にしたオーラセイバーの輝きを以て示すのだ。

「それでは、その力、己の身で受け給え」
 掲げた輝きの一閃は極大。
 これまで紡いできた練磨の果て。それをシーザーは力に変えて放つ一撃を手向けとする。
 黒衣の先にある『狂気に飲まれた復讐者』の容貌は見えない。
 そこに何も浮かんでいないことをシーザーは知る。空虚そのもの。宛などない旅時の果てがこれであるというのならばこそ。
 シーザーは強敵に相まみえるがゆえに、一切の手を抜くこと無く、光の斬撃を振り抜くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
(男は鋭い牙をちらつかせ、おぞましい笑みを浮かべていた)
……運良く生き残っておきながら、愚かな奴め。
其の怒りに満ちた顔を絶望に染めてやろう。
■闘
↑の台詞を告げて自身を吸血鬼と思わせ、戦闘へ。
銃口を向けられたら【残像】を見せつけて狙いを定めにくく
しつつ接近し、剣を振るってきたら【怪力】を込めて腕を
【グラップル】して封じ、噛みつきかかる。
相手から強い力を感じられたらあえて真っ先に受け、そのまま
斬るなり撃つなり好きにさせる。

……だが、此処からが全ての始まりだ。

止めを刺された直後に【無刃・反】を発動し、『身体が塵と
消えた』と見せかけ、敵の死角へ潜り込み真の姿に変身。
そこから気づかれないよう【破魔】の力を込めた一太刀を浴びせ、
痛みを与えず其の魂を斬り祓う!

もうよかろう、其方の大願は果たされたのだ。
『在るべき海』に還り、安らかに眠るといい……

※アドリブ歓迎不採用可・技の秘密は明かしません



 それは過去に在りしことであったのかもしれない。
 目の前にいるのは吸血鬼である。
 間違えるはずがない。
 鋭い牙、血色の悪い顔を悍ましい笑みに歪ませながら、己に告げる。
「……運良く生き残っていながら、愚かな奴め。其の怒りに満ちた顔を絶望に染めてやろう」
 思い出せない。
 それがいつのことであったのか。 
 それともこれが現実であるのかさえも『狂気に飲まれた復讐者』には理解できない。

 何故ならば、すでにその心の中にあるのは空虚だけであったからだ。
 器にも似た空虚に流れ込むのは狂気のみ。失ったものばかりであるがゆえに、その人間性は摩耗して失せた。
 過去の化身として存在していたとしても、それは変わることはない。
「お前は吸血鬼だ」
 その言葉を受けた愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は頷く。
 放たれる銀の銃弾を躱しながら、清綱は疾走る。
 残像疾走るほどの速度でありながら、『狂気に飲まれた復讐者』は己の姿を捉えている。

「いくさ場に道理の二字は無し……」
 そう、ここは戦場である。わかっていることだ。けれど、清綱は未だ刀を抜かず。迫る『狂気に飲まれた復讐者』の放つ弾丸を躱し、踏み込むのだ。
 白銀の刃と共に棘鞭が迫る。
 それを掴みかかり、神付きにかかる瞬間、蹴り飛ばされる清綱の体。
 骨がきしみ、内臓が痛みを告げる。
 血反吐を撒き散らしながら清綱は見据える。

 目の前にあるのはただの空虚に狂気を埋めた存在でしかない。
 迫る白銀の刃を見やる。
 斬撃が己の体を切り裂く。痛みはある。当たり前だ。痛みを忘れることができるのならば、それはもはや人ではない。
 己は人である。
 吸血鬼ではない。けれど、目の前にある存在は己を吸血鬼であると認識しているのだ。
「お前は吸血鬼だ。吸血鬼、吸血鬼吸血鬼!!」
 狂乱するかの如く斬撃が振るわれ続ける。
 痛みが走り、苦痛に顔が歪む。その苦痛に歪む顔を見た時、ようやくにして能面の如き『狂気に飲まれた復讐者』の瞳に狂気以外の感情を見た――気がした。

 気がしただけなのかもしれない。
 その感情を言葉に表す術はない。安堵と怒りと、喜びと、そして報われない何かが混じり合った感情の色。

 それを見た瞬間、清綱のユーベルコードは輝く。
「……だが、ここからが全ての始まりだ」
 無刃・反(ムジン)。
 それは己の限界の先にあるもの。ユーベルコードであれど、その力が覆すのは勝敗の概念。
 切り歪めた概念は、たしかにトドメをさした清綱の体を霧消させる。
 超克に居たりし道は此処にある。
 清綱は見るだろう。己の敗北を覆す刃の輝きを。破魔の力がみなぎる。猛禽の翼は広げられ、手にした刃は痛みすら与えずに、その空虚なる器に在りし魂を切り払う。

 死角よりの斬撃。
 それは肉体に傷を与えるものではない。
 同時に魂すら傷つけるものではないのだ。その刃が断ち切るのはいつだって、魂を穢すものである。
 手にした刃は切り祓う為にある。
「もうよかろう、其方の大願は果たされたのだ」
 いいや、果たされてはいないと『狂気に飲まれた復讐者』の瞳が告げる。まだ殺し足りないと。奪われた生命以上の吸血鬼を葬り去らなければ、これまでの行い全てが無駄になるという強迫観念に駆られた存在が言う。

 それを哀れと言うことなかれ。
 清綱は己の刃を以て示すのだ。
 哀れなどではなかったのだ。奪われた、理不尽に殺された、その生命全てが哀れではなかったのだ。
 殺されてしまうかも知れない。
 けれど、人の生命は殺しきれるものではない。次につなぎ、託し、そして連綿とつないでいくからこそ、紡がれる何かがある。

 それを知っているからこそ、清綱は告げるのだ。
「『在るべき海』に還り、安らかに眠るといい……」
 打倒するのではなく、願うこと。
 それが人の営みにありて、敵の無き道を歩むためのたった一つこと。
 清綱は、静かに瞳を伏せ、『狂気に飲まれた復讐者』の末路が、せめた最期だけはと願わずにはいられなかったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
違います。
……オブリビオンとなり、狂気に捕らわれたあなたへ言っても仕方のないことなのでしょうが、その勘違いだけは否定させてもらいます。

ここの城が何のためにあるのか、その紋章はどこから来たのか。知るためにここに来ましたが……あなたも放置してはおけません。

罠でも剣でもなく、撃ち合いが望みとあれば、そのように。
「フィンブルヴェト」を手に、あちらの持つ銃の向き、周囲の地形から銃弾、跳弾の軌道を『見切り』、『スナイパー』の技術と【イージスの弾丸】で弾丸を撃ち落としていきます。

月の眼の紋章から棘鞭が伸びてきたら銃剣で切り払い、棘鞭の根本、月の眼の紋章を狙い、氷の弾丸で撃ち抜きます。



『狂気に飲まれた復讐者』の体は虚のごと空虚。
 その器の如き肉体に宿るのは狂気のみ。
 何処までいっても、その瞳が映すのは吸血鬼だけであった。
 殺さなければならない。
 奪われた生命、己が斬り捨てた生命、それらの全てを贖わさせなければならない。そうでなければ、己の生きた意味すら感じられないから。
「お前は吸血鬼だ」
 そうに違いない。
 目の前にいる者全てが吸血鬼だ。殺さなければならない。殺して、殺して、殺し尽くして、この世界の全ての吸血鬼を応札して初めて、己は失ったもの全てに許されるはずであるから。

 けれど、その言葉を対峙したセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は否定する。
「違います」
 どんな事情があろうとも、どのような過程があるのだとしても、セルマはそれを認めるわけにはいかなかった。
 同時に何を言っても仕方のないことであるとも思っていた。
 オブリビオンとなり、狂気に囚われた存在。
 それが『月光城の主』にして『狂気に飲まれた復讐者』である。

「ここの城が何のためにあるか、その紋章はどこから来たのか。知るためにここに来ましたが……」
 セルマは『狂気に飲まれた復讐者』の胸に輝く紋章を見やる。
『月と眼の紋章』。
『人間画廊(ギャラリア)』から吸い上げる人々の生命を持って戦闘力へと変える紋章。
 その効果はすでに無効化されている。 
 だというのに、目の前にいる『狂気に飲まれた復讐者』の力は衰えを見せない。数多の猟兵達によって満身創痍となりながら、未だその手にした魔銃を構えることはやめないのだ。

「……あなたも放置してはけません」
 迫る銀の銃弾をセルマは視認した。
 跳弾を利用し、胸の紋章より放たれる棘鞭さえも囲いとして己を逃さぬように引き金を引いている。
 追い詰めるつもりなのだとセルマは瞬時に理解しただろう。
 罠でもなく剣でもなく。
 銃での打ち合い。それを意図して選んだのかはわからない。けれど、それならば己が何を遠慮する必要があろうか。
 手にしたマスケット銃、その瞳をユーベルコードに輝かせる。

 彼女は見ていた。
 尋常ならざる動体視力でもって、跳弾を繰り返す銀の銃弾をみやり、そのイージスの弾丸(イージスノダンガン)を解き放つ。
 予備動作の全てを見切っていた。
 跳弾を続ける弾丸を撃ち落とし、性格な銃の早打ちは絶技のそのさらに先へと向かう。
 己に向けた魔銃の銃口。
 その動作、仕草、あらゆる環境すらもセルマは見切る。
 見えているのだ。あらゆるものが。同じく銃を扱う者だからこそわかる。その動作、所作の全てが練磨されている。
 極限まで高められた技巧。
 ゆえにセルマもまた、その領域にまで至る。

「――今です」
 駆け抜ける。弾丸を弾丸で持って撃ち落とすのではなく踏み込む。
 跳弾はブラフだ。
 派手な見た目でもって己の思考の領域を圧迫させるために跳弾させている。さらに棘鞭だってそうだ。
 あえて弾丸でもって仕留めるという意志を感じさせる。
 ゆえにセルマは踏み込んだのだ。距離を開かせるのではなく、踏み込むことでもって『狂気に飲まれた復讐者』の思考を、技巧を上回るのだ。

 迫る棘鞭を銃剣『アルマス』が煌き斬り捨てた瞬間、『フィンブルヴェト』の銃口が、その胸に抱いた紋章へと突きつけられる。
「お前は――」
「いいえ、違います。その勘違いだけは否定させてもらいます」
 恨み、憎しみ、その全てが復讐に行き着いた存在。
 それを目の前にしてセルマは引き金を引くことを躊躇わなかった。

 それをすることは、その摩耗していった人生に泥を塗ることであると知るから。
 ゆえに、セルマはその瞳をユーベルコードに輝かせる。
 迫る跳弾の全てを撃ち落とし、放たれた氷の弾丸が『狂気に飲まれた復讐者』の胸を撃ち貫くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソルドイラ・アイルー
ギヨーム君(f20226)と

おや吾輩も吸血鬼判定ですか。お揃いになってしまいましたねえギヨーム君、嬉しいでしょう?
事前にデバフを掛けても重たい空気に含まれる狂気自体は緩和しづらいものです。相手が狂気を体現するそのものであれば尚の事。場に呑まれて、合わせる必要がありますか?
敬意無き相手に敬意を向けても、飛んでくるのは棘鞭や弾丸ですよ! いやはやリラックスした態度で受け入れようにも失敗すると被害は二倍ですからねえ。恐ろしや恐ろしや。盾として仁王立つのも苦労します。どきませんがね。どきませんよ? ギヨーム君の他にも守らねばならぬ人々が、砂山でお待ちしております故
此処で破滅するのは吾輩ではなく貴方です


ギヨーム・エペー
ソルドイラくん(f19468)と

そうだ。半分だけだが、おれは吸血鬼の端くれだ
あー、うん。そだねー。嬉しすぎて返事が雑になるね。守ってくれるのはありがたいが、無茶はしないでくれよ!!
リラックスできなくなったら引いて。落ち着いたらまた前をよろしく

UCは攻撃力を意識して発動を。相手は、殺す事に特化しているな。月光城の主に相応しい暗闇を向けてきて、行く手を斬り落とそうと阻み来る
しかし弱体化していてこれの速さに硬さか! これを前にしてくつろぐのもまた狂気だよな! おれも人の事言えないが!
狂気を持ちながらも正気を持つって、一人じゃあ難しい。きみも、誰かと一緒に居れば、片方は吸血鬼ではない事に気付けた。かな



 胸に穿たられた穴は、氷の弾丸の一撃。
 胸に抱いた紋章は砕け、棘鞭が霧消していく。されど、『月光城の主』は未だ倒れず。
 その体を揺らがせながら、満身創痍たる体をもって猟兵たちに対峙する。
 そこにあったのはただの狂気だけであった。
 体は空虚。されど、注がれる狂気だけは底なし。
 滾々と沸き上がる憎悪が狂気に歪められ、その体を、躯体を動かすのだ。
「お前は吸血鬼だ。お前も、吸血鬼だ。全て、全て、吸血鬼だ」
『狂気に飲まれた復讐者』は言う。
 目の前在る全てが吸血鬼であると。正誤は関係ない。吸血鬼を殺すためだけに存在する己という復讐者がいればこそ、全ての吸血鬼を鏖殺せしめるのだと。

「そうだ。半分だけだが、おれは吸血姫の端くれだ」
 ギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)は告げる。
 否定はしない。確かに半分だけ。ダンピールであるが故である。けれど、それを否定することは己を否定することになる。
 ゆえにギヨームは頷くのだ。

「おや吾輩も吸血鬼判定ですか。おそろいになってしまいましたねぇギヨーム君、嬉しいでしょう?」
 ソルドイラ・アイルー(土塊怪獣・f19468)の言葉にギヨームは、あー、うん。そだねーと生返事になる。
 嬉しすぎて返事が雑になったと後で言い訳するかも知れないが、それでも迫るオブリビオンの脅威は変わらない。
 棘鞭は失われているが、それでも『狂気に飲まれた復讐者』はもとより強大なオブリビオンである。
 その練磨された戦術技巧は力で劣る人間が吸血鬼を討ち果たすために生み出されたものばかりである。

 即ち罠と不意打ち。
 狂気によって、そのどれもが精度を欠くのだとしても、吸血鬼化した『狂気に飲まれた復讐者』には関係ない。
 これまで弱者であった彼が持つ戦術技巧は、吸血鬼の肉体によって絶技へと昇華したのだ。
 ソルドイラは重たい空気を感じる。
 狂気をはらむ眼の前の敵は、ただそれだけで場に飲まれてしまいそうになるだろう。
「相手が狂気を体現するそのものであれば尚の事。場に呑まれて合わせる必要がありますか?」
 彼は己の体をリラックスさせる。敬意無き相手に敬意を向けても飛んでくる攻撃は変わらない。

 オペラツィオン・マカブルたるユーベルコード。
 完全なるリラックス状態であれば、どんな攻撃を受けても無効化する。
「護ってくれうrのはありがたいが、無茶はしないでくれよ!!」
 ギヨームの言葉にソルドイラは苦笑いするだろう。
 失敗したのならば被害は二倍。恐ろしい恐ろしいと言いながら、盾として仁王立ちする。
 どんなに悪態をついても、軽口を叩いても、それだけは変わらない。
「どきませんがね。どきませんよ?」
 放たれ続ける『狂気に飲まれた復讐者』の斬撃の数々。
 そのどれもがソルドイラには通用しない。そういうユーベルコードであるのだ。無効化した斬撃は、そのままからくり人形から放たれる。

「お前は――」
 吸血鬼だと言う『復讐者』の言葉にギヨームは意識を集中させる。
 ソルドイラが攻撃を一手に引き受けてくれているからこそ、己が集中できる。un tournesol(アントゥルヌソル)は水の精霊、氷の魔力、火の魔術でもって己の力を底上げしていく。
 敵の攻撃は全てが一撃必殺であろう。
 必ず殺すという意志を感じる。これまで積み上げてきた吸血姫殺しの練磨が伺える。一体どれだけの研鑽を詰めば、人の身でここまで磨き上げられるのだろうか。

「弱体化して、この速さ――……これを前にしてくつろぐのもまた狂気だよな!」
「ええ、たしかに。ですが、ギヨーム君の他にも守らねばならぬ人々が、砂山でお待ちしておりますゆえ」
 ソルドイラは退かないだろう。
 例え、どれだけ攻撃を無効化することに失敗したのだとしても、ソルドイラは退かない。
 己が誓ったことを為す。
 どれだけ愉悦と混沌を愛すのだとしても、その根本は変わることはない。だからこそ、ギヨームは安心して前を任すことができるのだ。
「俺も人のことを言えないが!」
 ギヨームがソルドイラの前に飛び出す。
 手にした氷の魔力が水の精霊の力を得て増大していく。そして、手繰るは火の魔術である。

「お前は吸血鬼だ!」
 滅びろと叫ぶ声が聞こえてくるようでも在った。だが、ソルドイラは頭を振る。
「此処で破滅するのは吾輩ではなく貴方です」
 そう、己の背後から飛び出したギヨームがいる。
 その拳に込められた氷の魔力と火の魔術が入り混じった膨大なる一撃を水の精霊が形を保ったまま維持しているのだ。

「狂気を持ちながら正気を保つって、一人じゃあ難しい」
 もしも、『狂気に飲まれた復讐者』に誰かが一緒に居たのならば。
 もし、そうであったのならば、こんな形で出会うこともなかったのだろう。己とは違う伴するソルドイラのことを吸血鬼ではないと気がつけたはずだ。

 けれど、そうはならなかったのだ。
 だからこそ、万感の思いを込めてギヨームは拳を叩きつける。
 膨れ上がった空気が押し出され『狂気に飲まれた復讐者』の体を叩き伏せる。失っても、失っても、人は前に進むしか無い。
 それはたった一人では難しいことだからこそ、心を犠牲にする。それを悲しむからこそ、その拳は重たく。
 復讐者を叩き伏せるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
オブビリオンになるって本当に惨いね

あれは留めるべきではないものですの
早く解き放ってあげるべきですの

今回ばかりは同意だね

相手の銃撃は神気で時を停めて防御
銃弾は高速故に脅威なのであって
速度を失えば大した事ないからね
自分の周囲を覆うから
跳弾が死角から来ても防げるよ

相手の攻撃を防ぎつつ
ガトリングガンで反撃
範囲攻撃で確実に削りながら
相手の回避方向を制限し
選択肢を狭めていこう

回避が難しくなったら
UCを使用し捕まえるよ
動けなくしたらそのまま締め上げていこう

何があったのかはわからないし
同情できるような身の上なのかもしれないけど
まだ生きている人達の未来を奪う事は
絶対に許されないんだ
大人しく過去に還ってくれるかな



 復讐と妄執の果にいたるのが狂気であるというのならば、『狂気に飲まれた復讐者』の姿は惨いの一言に尽きるだろう。
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は少なくともそう感じていた。
 惨い、と。
 オブリビオンに成り果てたがゆえに、最も憎んだであろう吸血鬼に身を堕す。
 それはあまりにも皮肉な結果であると言えるだろう。
「お前は吸血鬼だ」
 そうに違いないと、その瞳が告げる。

 身は数多の猟兵たちの攻撃を受けて満身創痍である。
 胸にいだいた紋章は砕け、もはや棘鞭は襲い来ることはない。
「あれは留めるべきではないものですの。早く解き放ってあげるべきですの」
 融合した邪神が告げる。
 彼女が求めるのはいつだって美しいものだ。それ以上でもそれ以下でもない。その矜持を知るからこそ、晶はこのときばかりは彼女の言葉にうなずいたのだ。
「今回ばかりは同意だね」
 放たれる銀の銃弾。
 その全てが壁や床、天上に跳弾し、己を囲う嵐のようにして迫りくる。

 棘鞭の攻撃がなくなったのは幸いであったが、それでも脅威は変わらない。
「その弾丸の動きを停める――!」
 神気がほとばしり、跳弾する弾丸を停止させる。だが、それよりも早く『狂気に飲まれた復讐者』の放つ銀の弾丸が晶の眼前に迫っていた。
 けれど、それさえも無意味である。
 晶の身に融合した邪神の持つ権能は、停滞。
 ゆえにあらゆる速度を持ったものは神気に触れた瞬間に停止する。銃弾は高速ゆえに脅威である。
 停止してしまえば、恐れるに足りないのだ。

「お前は吸血鬼だ」
 依然変わらず、『狂気に飲まれた復讐者』は銀の剣を抜き払ってせまるだろう。こちらが放つガトリングガンの弾丸を躱すのは、紋章の力を失っても尚、強大そのものであると言わしめるには十分なものであった。
「何があったのかはわからないし、同情できるような身の上ではないのかもしれないけれど」
 晶は迫る『狂気に飲まれた復讐者』を見やる。
 あらゆるものを失ってきたのだろう。あらゆるものを捨ててきたのだろう。だからこそ、オブリビオンに成り果てた。
 忘れ去られし者。
 それがオブリビオンであればこそ、晶は言う。

 言葉は届かないかもしれない。
 わかっている。対話などできよはずもないのかもしれない。
 けれど、それでも言わねばならぬことがある。
「まだ生きている人達の未来を奪うことは――」
 放たれるは、試製電撃索発射銃(エレクトリック・パラライザー)から飛び出したワイヤーであった。
 それは『狂気に飲まれた復讐者』の体に巻き付き、電撃を奔らせる。
 これで終わるとは思えない。
 その狂気にまみれた瞳が告げている。お前は吸血鬼だと。
 誤ちも、正しさもない。

 あるのは狂気だけ。ゆえに晶は言うのだ。
「絶対に許されないんだ。おとなしく過去に還ってくれるかな」
 きっと届かない。
 疾走る電撃が『狂気に飲まれた復讐者』を消耗させていくだろう。悲しいと思う心がある。
 美しさを感じる心だって在る。
 けれど、それでも目の前のオブリビオンは存在してはならない。
 在ってはならないからこそ、晶はかの狂気を悲しく思うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
その技巧、一体どれ程の死線を潜り抜けて……!
……ですが、忘我の戦士は正当なる復讐者足り得ず
その狂気がこれ以上の悪夢を世に生み出す前に、騎士として引導を渡します

容易く暗殺者を見失うようでは護衛用ウォーマシンの名折れ
マルチセンサーでの情報収集と瞬間思考力で動体と生体反応を検知
敵の行動を見切って迎撃

放たれる棘鞭をUCの赤熱ワイヤーアンカーにて切り刻み
銃弾を盾で受け止め、剣を怪力にて振るう電脳禁忌剣にて叩き落し

未だ此方の手札は残っておりますよ

至近距離にて頭部格納銃器を展開しスナイパー射撃
脚を撃ち抜き再度の暗殺の為の離脱を阻止
ワイヤーアンカーでのロープワークで捕縛し

月の狂気も、今宵で最後です!

剣を一閃



 猟兵と『月光城の主』との戦いは苛烈を極めた。
 数多の猟兵たちの攻撃をもってしても、『狂気に飲まれた復讐者』は霧消しない。
 その身に宿した狂気の発露は止まること無く。
 しかし、じりじりと消耗させていることだけはわかるであろう。
 これまで如何にして『狂気に飲まれた復讐者』が戦術と技巧を磨いてきたのかを知る由はない。
 誰も知らない。
 誰からも忘れ去られし存在であるからこそ、オブリビオンへと歪み、己自身も吸血鬼へと成り果てたのだろう。

 なんたる因果。
「その技巧、一体どれほどの死線を潜り抜けて……!」 
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は迫る白銀の刃が描く軌跡の鋭さをみやり、息を呑むだろう。
 想像することもできないほどの死線をくぐり抜けたがゆえの技巧。
 それに圧倒されることもあったかもしれない。
 けれど、トリテレイアは躊躇わない。
「……ですが、忘我の戦士は正当なる復讐者たり得ず。其の狂気がこれ以上の悪夢を世に生み出す前に、騎士として引導を渡します」

 迫る白銀の刃を見切る。
 すでに紋章より溢れ出す棘鞭は猟兵の攻撃によって失われている。だからこそ、トリテレイアの電脳はマルチセンサーから送られてくる情報の処理に余裕を持つことができた。
 そうでなければ白銀の刃を躱すことはできなかったことだろう。
「お前は吸血鬼だ」
 滅びろと、その憎しみと狂気宿す刃がトリテレイアに迫り、その全てを紙一重で躱し続ける。
 瞬間思考とウォーマシンとしての性能をもってしても尚、『狂気に飲まれた復讐者』の斬撃は鋭いの一言であった。

「容易く暗殺者を見失うようでは、護衛用ウォーマシンの名折れ」
 収納式ワイヤーアンカー・駆動出力最大(ワイヤーアンカー・ヒートエッジモード)を解き放ち、白銀の刃を絡め取る。
 放たれる銀の銃弾を盾で受け止め、トリテレイアは己の躯体の出力を上げる。
 自在に操られるワイヤーアンカーは赤熱し、放たれる銀の弾丸を弾き飛ばすのだ。
「お前は――」
 振るう銀の刃をトリテレイアは見ただろう。

 一瞬の判断であった。
 おそらく『狂気に飲まれた復讐者』は死ぬまで剣を手放さないだろう。
 その妄執、執念。
 それらがきっと仇である吸血鬼を討ち果たしてきたのだと知る。ゆえに、トリテレイアは己の手にした電脳禁忌剣を振るうのだ。
「吸血鬼め! お前は! 滅びるべくして滅びるのだ!」
 放たれる銀の銃弾を剣が弾き飛ばす。
 互いの手札は尽きた。いや、否である。

「未だ此方の手札は残っておりますよ」
 至近距離で打ち合ったからこそわかる。すでに『狂気に飲まれた復讐者』の手数は失われている。
 されど、トリテレイアはウォーマシンである。
 人の体では在りえぬほどの武装は内蔵することを可能とした機体であるがゆえに、格納された銃器を展開し、その銃口を向け弾丸を撃ち放つのだ。
 だが、その弾丸を切り払う銀閃。
「なんたる……!」
 なんたる技巧であろうか。あまりにも人の領域を逸脱している。それは皮肉なことに吸血鬼の、オブリビオンとしての肉体を得たからこそ成さしめるものであった。

「ですが、月の狂気も、今宵で最期です!」
 迫る赤熱したワイヤーアンカーで動きを止める。軋むワイヤーが引きちぎられる。一瞬にも満たぬ拘束。
 だが、それでいい。
 其の僅かにこそトリテレイアは勝機を見出すのだ。

 手にした電脳禁忌剣の刀身が煌めく。
 月光を思わせる剣の軌跡が弧を描き、『狂気に飲まれた復讐者』の体を切り裂く。
 その血潮は赤かった。
 月光に煌めくまでもなく、トリテレイアはそれを見ただろう。復讐に駆られ、妄執の果に己が憎むべき存在に堕したオブリビオン。
 その熱き血潮は空虚なる器に狂気とともに呑まれる。
 それを開放する一撃をもって、トリテレイアは騎士としての手向けとするのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ大歓迎

その銀の刃は
かつては吸血鬼に向けられていたのだろうな

【魂魄解放】解除後、改めて指定UC発動
両瞳が紅のヴァンパイアに変身しながら復讐者に接近

「吸血鬼」はここにいるぞ
討ち取りに来い!

復讐者を「挑発」しながら「第六感」で危険を察知しつつ「視力、暗視」で罠の位置を看破し避ける
罠と弾を凌いだら、吸血コウモリの群れを復讐者に群がらせ「吸血、生命力吸収」で血液と敵愾心を奪わせよう
あとは黒剣を「2回攻撃、怪力」で振るい斬り刻むだけだ!

棘鞭は発射の直前に紋章に「衝撃波」を叩き込み一気に散らそう
発射される場所がわかっていれば事前に叩き潰すだけだ!

月光城の主よ、復讐者よ
月明かりの下で沈め!!



「その銀の刃は、かつて吸血鬼に向けられていたのだろうな」
 館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は、赤き血潮を傷口からとめどなく溢れさせ、その黒衣を染め上げる『月光城の主』にして『狂気に飲まれた復讐者』を見やる。
 満身創痍。
 そう呼ぶに相応しい姿に成り果てている。
 胸は穿たれ、身には傷跡が刻まれ続けている。光と炎が身を焦がし、何度も立ち上がる度に叩き伏せられた体はボロボロであろう。
 胸にいだいた『月と眼の紋章』は砕け、溢れ出ていた棘鞭は霧消して消え果てた。

 だというのに。
「お前は吸血鬼だな」
 変わらない。
 どれだけの傷を追い、消耗したとしても『狂気に飲まれた復讐者』は変わらない。
 あるのは、目の前の吸血鬼を滅ぼさんとする意志。それは狂気そのものであったことだろう。
 どれだけのものを犠牲にすれば、こうなるのだろうか。
 己の存在も、己に類する全てをかなぐり捨てても尚、足りないと思わせる力。これがオブリビオンとしての存在であることを敬輔は知るだろう。

 過去を葬りし吸血鬼(ヴァンパイア・ザ・フューネラル)にはそのおぞましさがあわかることだろう。
 己の姿をヴァンパイアに変え、双眸を紅の瞳に変える。
 ダンピールではなく、ヴァンパイアとしての姿。だが、『狂気に飲まれた復讐者』には変わらぬことだ。
 目に映る全てが吸血鬼。
 ゆえに彼の復讐は終わらないのだ。
「『吸血鬼』はここにいるぞ、討ち取りに来い!」
 敬輔は黒剣を構える。

 一瞬で踏み込んでくる。肉薄する銀の刃を紅の瞳で居詰める。
 至る所に罠が仕掛けられているであろう。わかっている。人の身でもって吸血鬼を打倒するなど並大抵のことではない。
 だからこそ、目の前の男はすべてを捨てたのだ。
 あらゆる手段を、如何なる犠牲を払ってでも殺す。吸血鬼は殺す、そのただ一念においてあらゆる力の差を凌駕してきたのだ。

「それは哀れだとは言わないさ」
 吸血コウモリが『狂気に飲まれた復讐者』に群がりその血液と敵愾心を奪い去る。
 だが、それだけでは『狂気に飲まれた復讐者』の身に宿る脅威にも似た、吸血鬼に対する憎しみは消えない。
 わかっていたことだ。
 目の前の存在が終わるのは、その復讐を終えた後である。
 しかし、倒すべき敵も見えず、全てが怨敵に見えるのならば、それは果てなき闘争にほかならない。

 魂が摩耗しても、肉体が朽ち果て、過去よりにじみ出たとしても尚、薄れることのない狂気。
 それを宿した敵を前にして敬輔ができることなど唯一しかない。
「『月光城の主』よ、復讐者よ」
 静かなる声の奥底にあるのは、かつての己の姿であったかもしれない。
 復讐に終わりを告げることが出来たものは幸いである。
 区切りをつけることも出来ず、新たなる歩みも見いだせなかった者が目の前にいる。

 そんなものに与えることができるのは、ただ一つしかない。
 そう、終わりである。
 過去を終わらせることができるのは、『今』を生きる者だけだ。ゆえに猟兵はオブリビオンを打倒する。
 過去が今という可能性を潰すことはさせてはならないのだ。
 今を侵食すれば、過去は過去のまま。
 何も変わらず、何も終わらず。
 新たなる始まりをも見出すことはできない。

「月明かりの下で沈め!!」
 振るわれる黒剣の斬撃が十字に刻まれる。終わりは来る。
 どんなものにだって訪れるのだ。永遠に続く復讐など、空虚なる虚にすぎないのだと、その十字の傷跡が『狂気に飲まれた復讐者』に告げるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…過去の残滓と化し、狂気に呑まれなお揺るがぬ復讐の念。
それは嘗て、貴方を繋ぐ最後のよすがであったのでしょう。
復讐に身を染めるに至るまで繋いだ、今は忘れた縁もまた。
そうまで絶望を啜らされた貴方が、今は吸血鬼に堕ちて復讐の形まで歪まされようとはなんと皮肉で、残酷な定めであることか。

…視界が揺れる、やはり十全とは参りませんか。集中を切らさば毒が体に回りますね。
これが最後です、気を入れて臨むと致しましょう。


UC発動、怪力、グラップル、残像を用いた格闘戦にて戦闘展開
野生の勘、見切りにて相手の仕掛ける罠を感知し回避
徐々に回る毒は継戦能力による血流操作で引き続き進行を抑え、
落ち着き技能の限界突破、無想の至りにて極限まで技を練り上げ
怪力、グラップル、残像、そして殺人鬼としての技巧を交え
最大速度、最大威力を以て相手の急所を寸分違わず外すことなく撃ち抜く


貴方が我々をどう見るか、それを断じる事は致しません。
先の彼女らの説いた救いに殉じるわけでは御座いませんが…、
――その魂を、骸の海へと還しましょう。



 人はどうしようもないほどに弱い存在である。
 容易く壊れ、容易く折れる。
 肉体は朽ち果て、心は溶けて消えていく。
 どうしようもないほどに弱い。
 しかし、弱さを知るからこそ強さがあるのだと知る。苦しみがあるからこそ、楽しみが在ることを知る。
 復讐は何も生まぬことはない。
 己の心に区切りを見つけることができるからこそ、人は完遂した後の道を歩むことができる。

 生命を奪うことは生きること。
 ゆえに、赦す赦さざるは関係ない。終わらせること、完遂することこそが、人の生き方に価値をもたらし、意味を見出す。
「……過去の残滓と化し、狂気に呑まれなお揺るがぬ復讐の念」
 月白・雪音(月輪氷華・f29413)は『人間画廊(ギャラリア)』にて受けた毒の瘴気を身に受けながら、呼吸を整えることによって克服しつつあった。
 しかし、視界が揺れる。
 どんなに呼吸を整えても、未だ完全ではない。だが、集中を切らした瞬間毒が体をめぐることを知っている。
 ゆえに、これが最期であると雪音は息を吐きだし、『月光城の主』にして『狂気に飲まれた復讐者』に相対する。

「お前は吸血鬼だ」
 十字に刻まれた傷跡、身に打ち込まれた猟兵たちの攻撃の痕を見てもなお、何故消えぬのかと思うほどの苛烈な戦いを続ける『狂気に飲まれた復讐者』。
 そこに雪音は痛ましさを覚えなかっただろう。
「それは嘗て、貴方をつなぐ最後の寄す処であったのでしょう」
 復讐に身を染めるに至るまでつないだ、今は忘れた縁。
 吸血鬼とは、彼にとって憎むべき存在であり、同時に失ったものを想起させるものであったはずだ。

 その相反する感情によって摩耗したのが魂であるというのならば、それは皮肉であった。
「そうまで絶望を啜らされた貴方が、今は吸血鬼に堕ちて復讐の形まで歪まされようとは……」
 皮肉であり、残酷な定めである。
 余人には最早終わらすことしかできない。
 ただ、それだけしかできない。あまりにも弱き者。それが人であるというのならば、雪音は拳武(ヒトナルイクサ)によって極地へと至る。
 その瞳は揺れている。
 毒に侵されながらも、超克の道へと至るのだ。彼女は与えられるのではなく、自身の力によって道を切り拓く者である。

 迫る『狂気に飲まれた復讐者』。
 その手にした魔銃から放たれる弾丸の奇跡を雪音は見ただろう。
 己に向かう弾丸。それらは数瞬にも満たぬ間に己の頭蓋を割るだろう。その未来が見える。
 だが、その未来を否定する。
 超えるべき道はすでに彼女の前にあるのだ。足を踏み出す度に血液がめぐる。毒が体に周り、身を蝕もうとしている。
 けれど、それら全てを彼女は克服するのだ。
「お前は吸血鬼だ。そうでなくては」
 銀の弾丸が頬をかすめる。痛みは知らない。躱した弾丸はブラフ。己の瞳の前に剣の切っ先が迫っている。

 今度こそ躱せない。
 己を貫く刃が見える。だが、それでも超える。超克の先に在るものを、その戦の先にある極地を雪音は知るからこそ、限界を超える。
 誰かが言う。
 すでに限界であると。
 だが、それを否定する。己の限界は己で決めるべきものだ。誰かに決められるものでもない。
 ならばこそ、雪音の瞳はユーベルコードに輝く。
「貴方が我々をどう見るか、それを断じることは致しません」
 雪音は思い出しただろう。

『破滅の使徒』たちの言う救済を。
 それに習うわけではない。殉じるつもりもない。迫る己の死を前にして、その精神は完成される。
 無想。
 それは無を想う。限りなく零に近づく。極限に至りて尚、見えぬ先が在ることを知る。
 道はまだ半ば。
 ゆえに雪音は己の身に宿る膂力、拳、身のこなし、その技術の全てを持って、道を往く。
 己が律する殺人衝動。
 それすらも捨てずに往く。

「――その魂を、骸の海へと還しましょう」
 その拳は最大。
 速さも、力も。雪音が歩んだ道の全てを持って放たれる一撃。
 全てに終わりは在る。
 ゆえに無想。刹那の瞬間に那由多を見た雪音の道、オーバーロードの先にこそ、彼女の拳は届くことだろう。

 放たれた拳を前に『狂気に飲まれた復讐者』は霧消して崩れ行く。
 そこにあった空虚なる器は、狂気失せ果て。
 その恩讐の彼方に終わりを見せる。それが唯一つの救いであるというように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月18日


挿絵イラスト