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レイヤードミッション『テンプルナイツの侵略』

#クロムキャバリア #地下帝国 #レイヤードミッション

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#レイヤードミッション


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 殲禍炎剣による空の脅威から逃れるため、また地下の遺跡に散在するプラントを見出したとある国家が、地下への大移動を行った。
 遺跡を中心とした繁栄発展は長きにわたり、100年に及ぶとも言われるクロムキャバリアの戦争を、その影響を受けることなく乗り切ってきたとされている。
 管理者と呼ばれるAIによる統治のもと、レイヤードと名付けられた地下世界は、微睡のような平和と繁栄を約束されたようなものだった。
 それでも、人間たちを見守り、密やかに支え続ける管理者が表向きに不介入であることをいい事に、人々は徐々に権力と資源……即ちプラントを奪い合うようになる。
 政府を牛耳る大企業の台頭。体制に迎合しない地下組織の暗躍。問題は山積みと言ってよかった。
 しかし人々は忘れていた。
 最初に利用したプラントがどうして存在していたのか、よく考えもしなかった。
 なぜそこにそれはあり、そして埋もれていたのか。
『こ、攻撃を受けています! 敵は、地面の底から──ぐわぁ!!』
 切羽詰まった通信が途絶し、遠くに爆音とともにホワイトノイズを残す。
 レイヤード最下層には、広大な空間を伴った砂漠が広がっている。
 未開の古代遺跡を埋もれさせる金色にすら見える砂漠はフロンティアラインと呼ばれる不毛の地であり、調査任務に就く者の生還率は高くないという。
 だが、それにしても、今回のような奇襲の報は、今までのような他企業や地下組織からの襲撃とは雰囲気が違った。
「地面から……!? 嫌な予感がする。総員撤退! このポイントを放棄! ラスコーを目指して!」
 音質の悪い短距離通信を介し、キャバリアに乗り込む隊長レモン・メムダレットは小隊員に指示を飛ばす。
 この無謀の地に於いて無類の生還率を誇る彼女は、とある事件に関わって尚、パイロットを続ける胆力を誇ったがゆえに遺跡調査の隊長を任されていたのだが、それゆえか今回もまた異質な感覚をいち早く察知したのであった。
 これまでにも、フロンティアラインに埋まる古代技術を求めて介入してくる他企業の横やりはよくあったものだが、地面から攻撃してくるという例は聞いたことが無い。
 ここよりも底があるとしたら、それはレイヤードの者ではないという事になるだろう。
「くっ!! ここにも来たか……! こんなところで、死ねないのよ!」
 想定外の敵の出現に混乱する部下たちを励まし、指示を出しながら、謎の襲撃者はついにレモンにも及ぶ。
 しかし、歴戦の傭兵たちの戦いの中で成長した彼女は、辛くもこれを撃破。
 砂漠の中を泳ぐようにして襲撃してきた巨大な魚のような敵は、どうやらそれもキャバリアらしかった。
 レモンが驚いたのは、そのことよりも、撃破した魚型キャバリアから脱出するパイロットの姿だった。
「な、あれって……ロボットの顔!? ……し、しまっ、きゃああっ!!」
 古い映像作品で見たことがる様なロボットの顔から手足が生えた様な、奇妙な機械のパイロットがコミカルに飛び跳ねて逃げるのに目を奪われていたレモンは、突如として吹き荒れる砂嵐に巻き込まれてしまう。
 軽量の量産キャバリアとはいえ、10トンに迫ろうという機体を軽々と舞い上がらせる砂嵐は、この地下世界に天然現象として巻き起こる様なものとは考えられない。
『人間如きにしては、なかなかできる者も居るようだが……この暴風兵器【ストームブリング】の敵ではないな!』
 砂嵐の中からわざわざ説明してくれる律儀な声が通信回線に介入してくる。
『我等が聖地を荒さんとする下等な人類よ。我等『地底帝国ズーガイ』の軍門に降るがよいぞ!』
 強風にあおられる中で、レモンはキャバリアのカメラ越しに、空飛ぶ獣のようなシルエットを見るのだった。

「皆さん、レイヤードの事を覚えておいでしょうか。知らない方の為に説明しますと……まぁ、その、地下にあるプラントを中心に開発して根付いたクロムキャバリアの地下国家の一つなんですが……」
 グリモアベースはその一角、給仕服姿の猟兵、疋田菊月は予知で見た内容を説明しつつ、ううーんと首をひねる。
「あそこは管理社会にも拘らず、オブリビオンマシンが起こす事件以外にも主に内ゲバが多くてきな臭いところなんですが……まぁまぁ、そんな事はひとまず置いといてですね。
 なんとなんと、他所から戦乱を持ち込まれないと思われていた地下世界に、侵略してくる勢力があったようですよ!」
 指を立てて身振り手振り、居並ぶ猟兵たちにてきぱきとお茶を配膳しながらも、早口で捲し立てる。
 今回の舞台はレイヤードの最下層とされる地下の広大な砂漠、フロンティアライン。
 かつての事件で生き残ったキャバリアパイロットのレモンが、謎の地底帝国の襲撃を受ける事から端を発するという。
「彼等は地の底の砂漠の、そのさらに地底からやってきているようです。もともと遺跡の残るような場所ですから、先住民か何かなんでしょうか……でも、予知で見る限りだと、どうもロボットヘッドっぽいんですよねー」
 最後の辺りに聞こえた通信内容からすれば、彼等は『地底帝国ズーガイ』を名乗る、どうやらロボットヘッド種族の者達らしい。
 彼等は量産型の魚型キャバリアによる地面からの強襲を仕掛け、戦列の乱れたところに暴風兵器なる物を用いて砂漠に強力な嵐を引き起こすという。
「これがですねー、厄介なんですよね。というのも、レモンさん達が使っている量産キャバリア。これって、私が使ってるシュタインバウアーと同型なんですよ。
 これが吹き飛ばされるって、相当ですよ」
 おまけに、この兵器を搭載するキャバリアは砂漠の空を飛び、装甲に特殊な毒を帯びているため、生身では対処が難しいという。
「種族的に毒が通用しないとか、キャバリアに搭乗していれば問題ないのですが、しかしこうなると、私の所有するキャバリアを貸し出すのではちょっと頼りないですよね」
 そこで! と、菊月はぴんと指を立て、事前に使えそうな機体が無いかと交渉していたことを明かす。
「今回はシュタインバウアーではなく、スーパーな秘蔵っ子を手配してもらえるそうです。
 なんでも、遺跡から発掘した機体をレストアしたもので、それほど数が用意できないみたいですが、パワーと装甲は並のキャバリアの比ではありません。
 操作も感覚的でシンプルではあるそうですが、猟兵以外にはちょっと手に余る出力みたいですねー」
 もちろん、いつもの量産型がいいよっていう奇特な方はそっちでも大丈夫ですよーっと笑いつつ、菊月は総括する。
 砂漠の底からやってくる敵を蹴散らし、暴風兵器を搭載した空戦キャバリアを撃破せよ。
 端的に言えば今回の作戦はこれである。
「戦果を上げれば、もしかしたら彼の帝国の幹部が現れるかもしれません。その時は、撃破してもらって構いません」
 居並ぶ猟兵たちに信頼を預けた様な笑みを浮かべつつ、エールと共に菊月は転送の準備を始めるのだった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
 地下世界を扱うからには、このシナリオフレームに触れないわけにはいきません。
 しかしながら、いかにもスーパーロボットなシナリオに、アレが元ネタの世界観で大丈夫なんだろうか。
 いいや、ちっちゃいことは気にするな。いつだって乗りでやって来たので、今回も乗りでやっていこうと思います。
 冒頭にフロンティアラインのシナリオでも登場したレモンさんがやられてますが、このシナリオが失敗でもしない限りは、異様な幸運で生き残るのでほっといても大丈夫です。
 さて、今回は集団戦→ボス戦→ボス戦と、盛りだくさんです。
 集団戦は、地元の方々が地底からの攻撃に対応できないので猟兵のみで戦うことになります。
 ボス戦ではいずれも有毒装甲を用いたキャバリアが相手で、生身だとちょっと辛そうです。
 また、2章のボスキャラは、フラグメントとは別に暴風兵器【ストームブリング】なるものでマップ攻撃してくるので、その対処も必要になります。
 3章ボスは幹部です。生け捕りにするも、そのまま破壊してしまうも、プレイングと展開次第です。
 見た目には、ずんぐりした可愛いロボットヘッドで、偉そうなことを言ってもイマイチきまらない感じの可愛い連中です。
 でも倒してしまっても全然構いません。
 今回は、菊ちゃん所有のシュタインバウアーとは別に、いわゆるスーパーロボットも貸与可能です。
 以下スペック。

 機体名『アイアンリブス』
 機体特徴:動きは重たいがハイパワー重装甲。通常兵器も持てる汎用性が無くはないが、FCSの互換性が高くないのか、殴ったり内蔵兵器を使う方が強いらしい。
 搭載兵器:
 ヴァリアントレーザー……頭部アンテナのような角から発される熱光線。
 ヴァリアントアクス……肩から伸びる柄にナノセラミカル合金の両刃斧が形成されるとかなんとか。
 ヴァリアントスマッシャー……胸部装甲を展開してごんぶとビームを放つ。強力だが、発射後冷却のためちょっと動けなくなる。
 備考:
 不確かな情報だが、武器名を叫ぶと威力が上がるらしい。

 例によって、1章の断章は投稿せず、プレイングは最後まで、どのタイミングでも受け付けておりますので、好きな時にお送りください。
 それでは、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作ってまいりましょう。
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第1章 集団戦 『サーモン・マシン』

POW   :    イクラ・ボム
レベル分の1秒で【口からイクラ型の爆弾 】を発射できる。
SPD   :    ヒレ・ウィップ
【振り回した尾ビレ 】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ   :    ボディ・ラッシュ
【水流を纏った高速の 】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【仲間のマシン】の協力があれば威力が倍増する。

イラスト:moti

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メサイア・エルネイジェ
地面の下にはこんな所があったのですわね
しかも更にこの下があるのでしょう?
一体どのような場所なのか検討も付きませんわね

メサイア、ヴリちゃんはガンフューラーで参ります
お魚なのに砂中を泳ぐとは奇怪な…お魚は水辺にいなきゃいけませんのよ!
頭を出した所を狙い撃って…出たり潜ったりで当たりませんわね
イライラしますわ!むきー!
なんですヴリちゃん?なら地面ごと吹っ飛ばせばいいと?
なるほど!
ではこれですわ!ブレイクブラスト!
泳ぐ先にビームキャノンを撃ち込んで地上に打ち上げてさしあげます
泳げないお魚などただのお魚ですわ!
あちらから近寄ってくるなら好都合でしてよ
噛んで掴んで踏みつけて、尻尾で張り倒しますわ



 地下世界レイヤードとは、殲禍炎剣の脅威から逃れるため、地底に眠る古代遺跡を含むプラントを利用し発展してきた、まさしく地下で繁栄したという、一風変わった国である。
 その構造は大きく分けて3層に分かれており、今回の舞台となる場所はその最下層、彼等が地下へと棲家を移してから今日に至るまで未だ謎を残すという空間を伴った広大な砂地の層、フロンティアライン。
 縦横に多くのリージョンを持つレイヤードが、いつからか辿り着いたこの古代遺跡を伴った地下砂漠の層からは、かつて人々を地下へと駆り立てたプラントに通じる類似性を持つ遺跡が数多く散見され、レイヤード発展以前より果ては旧文明が存在していたなどと憶測が飛んだものだったが、その詳細は杳として知れない。
 まあとにかく、古代の文明を感じさせるあれこれが眠っている夢のある黒い砂漠であるらしい。
 レイヤードは、地面に埋もれた傘のように、一本の太いシャフトを中心として、様々なリージョンへと広がっている構造であり、全てのリージョンが地上へと繋がるこのメインシャフトへと通じている。
 それはフロンティアラインとて同じであり、メインシャフトを通らなくては、レイヤードからはアクセスできないとされている。
 地底の暗闇と、黄金のように淡く光ってすら見える砂漠が延々と続くフロンティアラインの要衝、メインシャフトから広がる補給基地を含めた拠点ラスコーを立ち、グリモアによる予知によって齎された襲撃ポイントの予想地点へと向かうのは、一機のキャバリア。
 夜の砂漠とはちょっと違うような、巨大な隙間風のような不安を煽る風の音を響かせる暗い砂漠は完全な暗黒ではなかったが、地下とは思えぬ広さを感じながらも言い知れぬ閉塞感をも覚える不思議な場所であった。
 二足歩行の肉食恐竜を思わせるような黒いキャバリア『ヴリトラ』が砂漠を軽快に駆けつつ、そのコクピットの中では、モニターを通じて延々と広がる砂漠を見渡すメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)がほう、とため息を吐く。
「地面の下にはこんな所があったのですわね。
 しかも更にこの下があるのでしょう?
 一体どのような場所なのか検討も付きませんわね」
 噂の地底帝国とやらは、この地の底の更に下からやってくるという。
 やや仰々しい口調のメサイアは、高貴な口ぶりから察する通りのお偉いさんの血筋であり、猟兵としての力を得てからは、世界を混乱に陥れるというオブリビオンマシンを倒すべく王家に受け継がれるヴリトラと共に奮闘しているらしい。
 一人と一機、初めて国を出てよその国の争いに身を投じ続けるメサイアは、実に多くの国の姿を目にする事になったが、流石に地下に国を築いてあまつさえそのさらに地下に砂漠が広がっているというのは初体験であった。
 これだけ広大で、なおかつ足元には柔らかな砂漠が続いているとなると、天井が落ちて来やしないかと不安にもなるが、よくよく考えてもみれば彼女が搭乗しているヴリトラは数十トンものキャバリアであるわけで、まして今回は射撃戦用にキャノンやミサイルを積んだガンフューラー形態。重装である。
 にも拘らず機体が埋もれず、軽快に突っ走っていられるのは流石はヴリちゃん。……ではなく、この砂漠の層自体が堅固な地層の上に成っているからとも考えられる。
 むしろ、これよりもさらに地下からやってくるというのは、いったいどんなもの好きなのだろうか。
「……! もう始まってますのね! 急ぎますわよ!」
 ヴリトラの足の向く先、そこで戦闘の気配をいち早く察知したヴリトラに促される形で、メサイアは機体のスピードを上げる。
 既に戦闘は始まっている。
 予知の内容で見たおおよそ10機以下の量産型キャバリアが、砂に埋もれる謎の遺跡に追い詰められる形で、敵の襲撃を受けているようだった。
 軽量小型のキャバリアとはいえ、伊達に無謀の砂漠で遺跡探索を行っていない屈強な兵たちが防戦一方に追いやられているのは、敵が砂漠の中から奇襲を仕掛けてくるという古今見ないような戦術を使ってくるからであった。
『た、隊長、敵はどうやら砂の中を高速で泳いでいるようで、我々の装備では攻撃が届かないようです!』
『くっ、探索用の軽装備じゃ、歯が立たないってこと……どうすれば』
 砂の中を泳ぎ回る、魚のようなキャバリアは、それを可能にする装甲を持っており、姿が正確につかめないために、攻撃が入りにくい。
 隊長のレモンは、敵が砂の中を泳ぎ回っているのを利用して、遺跡などの障害物に回り込むことで隊員を逃がしているが、それでも相手の数が多すぎるし、それらを減らせるほどの戦力を持ってはいなかった。
「お待ちなさーい!」
 と、そこへ黒い装甲の武装恐竜、ヴリトラが高々と跳躍して戦場に割って入る。
 新手か! と身構えるレモンたち探索隊だが、恐ろしい形相のヴリトラは彼等の事など見向きもせず、鉤刃の付いた尻尾で荒々しく地面を打ち、周囲を見回す。
 その視線は、水面に波紋を立てるように砂漠をぼこぼこと掘って回る何者かを敵として追いかけているようだった。
「このわたくし、メサイアとヴリちゃんが来たからには、もう安心ですわ!」
『えと、味方でいいんだよね……?』
 言い知れぬ自信と存在感に満ちたメサイアの、まるでコクピットの中で胸を張ってふんぞり返るかのような雰囲気に、かつての事件で自分を救ってくれた凄腕の傭兵たちと同じような気配を感じたのか、レモンの声は僅かに弾んでいた。
 メサイアとヴリトラは、それにも構わず、腕のビーム砲を次々と地面に撃ち込んでいく。
 ビームの光跡が砂の上に幾重にも焦げ跡を残していくのだが、それらが砂の中の敵を捉えることはない。
 やはり敵の正確な位置を把握するのは難しく、たまに顔らしきものを見せたと思っても、ビームを撃つ頃には移動されてしまう。
「この、このっ! ……イライラしますわ!」
 むきー! と歯を剥いて握った拳を振り上げるところまで行ったが、ヴリちゃんをぶん殴るのはダメだと思い直し、振り下ろしどころを失ったメサイアは、むふーっと荒く鼻息を漏らす。
 そんな、ちょっぴり乱暴なお姫様に似て、狂暴な性格をしているらしいヴリトラは、焦れるお姫様に提案する。
「なんですヴリちゃん? ……なるほど! ならば、地面ごと吹っ飛ばせばいいと!」
 名案にごつ。とばかり、背に負った二門の大型ビームキャノンを起動させる。
 上品に一本釣りにこだわることはない。
 これだけ大量にいるなら、投網を撒く方がいっぱい取れてハッピーというものだ。
「ぶっ壊して差し上げますわーっ!」
 腕のビーム砲で敢えて敵の進路を変えさせ、複数体が集まったその行く先目がけてフルチャージのビームキャノンをぶっ放す。
 【ブレイクブラスト】。凄まじい熱量を誇るビームキャノンの照射によって、砂地が爆ぜる。
 その爆発に煽られ、すぽーんと打ち上げられたことで、魚型のキャバリア、サーモン・マシンの姿がようやく明らかになる。
「お魚なのに砂中を泳ぐとは奇怪な……お魚は水辺にいなきゃいけませんのよ!」
 爆発によって無防備な胴体を晒してしまったサーモンマシンを、今度こそビーム砲で仕留める。
 何体かはそれで完全に沈黙したようだったが、ビーム砲の掃射を辛うじて避けた機体は、競り市で暴れる鮮魚の如く体をくねらせ態勢を整えようとする、のだが……。
「泳げないお魚などただのお魚ですわ!」
 水を得ない魚など、俎板の鯉とばかり、ヴリトラの鋭い顎がサーモンの頭部をかみつぶす。
 ぼすんぼすんと小爆発を繰り返す機体を他所に、姿をさらした他の魚群もこの機を逃すまいと一斉に攻撃を仕掛けてくるのだが、敢えて隙を見せたのもメサイアの戦略……ではなく、ヴリトラの戦闘観に任せるが如くだったのだが、いずれにせよ近づいてくるなら好都合でしてよ!
「蹴散らしますわよっ」
 その獣性を隠すことなく、射撃形態など知った事かと言わんかのように、ヴリトラはその顎で、足で、尻尾で、ちぎっては投げ、踏みつけては張り倒していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カグヤ・アルトニウス
〇地中深く反撃せよ

アドリブ歓迎
要するに、今回は潜水艇退治ですね
海のないSSWでは見かけませんが…頑張ってみます。

(乗機)
ホワイト・レクイエム

(行動)
まずは、適度な高度で浮遊して赤外線【迷彩】を装甲に展開します
続いて、トゥインクル・スターから対潜探査ポッドを円陣状に投下して音響と赤外線・磁気の変動を手掛かりにUC…というよりもGOKUの戦術予測を頼みに探査を行います

捕捉したら今度は対象を包囲する様にトゥインクル・スターのゲートを開いて砂中用誘導魚雷を投入して適宜自爆させつつ【誘導弾】で追い詰め、反撃の為に浮上してきた所をソードオブビクトリーのカノンモードによる【砲撃】・【一斉発射】で仕留めます



 ほの暗い地底の砂漠には、足元の砂こそ光って見えるほどで、星一つ浮かばぬこの広大な空間には遠からず果てがある。
 そう、誰もこの暗闇の砂漠に空があるとは思っていない。
 地下世界レイヤードの最下層に位置するフロンティアラインは、古代文明の遺跡が沈む広大な砂漠である。
 古代文明などと言っても、そこに沈んでいるのはプラントを擁する遺跡と同質の超技術を用いた旧文明の名残。
 実際にレイヤードではこの砂漠遺跡から発掘された技術を転用したものを活用しているという話も聞く。
 あまつさえ、今回の依頼に貸与を許された機体ですら、これまでの技術体系とは異なる別機軸で作成されたとされている。
 何しろ、ここいらの遺跡から発掘されたものを動かせるように改修したものだというのだから、侮るものではないのである。
 それにだ。
 ただでさえ数十キロも地底にある砂漠の、その更に下から、今回の敵はやってくるという。
 まったく、謎と言うのはスケールに比例しないものである。
 白銀の装甲をもつキャバリア、ホワイト・レクイエムに乗り込んで、この偽りの空を飛びながら、カグヤ・アルトニウス(辺境の万事屋兼宇宙海賊・f04065)は、この不可思議な空間を見渡しながら嘆息するのであった。
 予知の内容を聞くに、もうここの連中と、地底からの敵と言うのは接触している頃だろう。
 わざわざ飛行するのは、地上を走破するのに砂漠という環境があまりよろしくないというのもあるが、連中が地中から奇襲を仕掛けてくるというのなら、見つからぬに越したことはないだろう。
 それに、スペースシップワールド出身のカグヤは、空間戦闘の方が得意な方であるし、ロボットに乗って地上を走るというのは慣れないとしんどいのである。
「……いますね。持ちこたえているようですが、やはり攻撃手段が乏しい」
 センサーで検知できる範囲の交戦状況を見るだけでも、探索隊の劣勢は明らかであった。
 地中に対する攻撃手段が乏しいのは、携行できる火器に限度があるからだろう。
 探索に重きを置く以上、重たい武器は積めない。にもかかわらず、襲撃目的の野盗の皮を被った他企業は、きっちり急襲用に装備を固めたりしてくるので、フロンティアライン探索の任につく者の生還率は低いと言われている。
 だからこそ腕に覚えのあるパイロットしか生き残れない過酷な任地であるわけで、探索隊の技量は決して低くはないはずなのだが……地の利は明確に勝敗を分けつつある。
「ふむ……要するに、今回は潜水艇退治ですね。
 海のないSSWでは見かけませんが……頑張ってみます」
 ここには海どころか砂が延々と広がるのみだが、相手が砂の中を行くというのなら、要領は似たようなものだろう。
 前例がないわけではないし、こんなこともあろうかと、兵装の一部にはそういった相手を想定したものも存在している。
 いったいどういう思い付きで作られたものなのか首をひねりたくもなるが、こんなふうに役に立つ時が来るとは、サイキッカーであるカグヤとて予想だにできなかったことである。
 都合が良すぎる? いやいや、こんなこともあろうかと備えておくことに、何の都合が必要だろうか。
 とはいえ、地中から襲い掛かってくる相手をどのように相手すべきか……。
 潜水艦を相手にするときに重要なのは、どちらが先に相手を発見するかにかかっている。
 水中、また対空にも長射程を誇る潜水艦の火力は脅威だ。仮に同じ土俵で戦うならば、素早く相手を捕捉し、先手を打って沈めてしまわねばこちらがやられてしまう。
 即ち、遠距離からの差し合いを制したものが勝つ!
「まずは敵を知らねば……超空間ゲート展開」
 手始めにカグヤはキャバリアの表面装甲を赤外線迷彩でカバーし、認識疎外を試みると共に、キャバリアに積み切れない兵装をしまい込んでいる機動兵装システム『トゥインクルスター』とを繋ぐ超空間ゲートを展開し、対潜探査ポッドを戦闘領域を囲う様に投下。
 領域内の音響、赤外線、磁気などといった数値を計測し、その変動を見て地中を移動する魚型キャバリアの居場所を掴む。
「では、GOKU……そちらの観測は任せました」
 【Operation "MOMOTAROU"】によって、コクピットにはぬいぐるみのような可愛らしい支援ユニットが3体居り、それらによる戦術支援によって、カグヤの戦力は増強される。
 今回は猿型の汎用型ユニットに戦術予測及び敵機の観測を任せると、カグヤは更にトゥインクルスターから対地中用魚雷を投下し始める。
 本当、なんで惑星のないスペースシップワールドで地中潜行用ユニットを搭載した魚雷が開発されていたのか疑問点はあるものの、使えそうなものを適宜用意しておくのが備えというものだ。
 果たして、GOKUの観測及び戦術予測に基づいた誘導によって、何体かの魚型キャバリアことサーモン・マシンは砂中で爆炎を上げる。
 魚雷が命中したらしい。
 まさか砂の中に対応した兵器で、奇襲する側が奇襲されるなどとは予想していなかったのか、サーモンマシンたちは一気に統率を失い始める。
 魚雷の第一波は成功。しかし、続けざまに当たってはくれまい。
 しかししかし、それも想定済み。
 最初に仕留めたのは見せしめの意味も含めている。
 恐れて逃げるならそれもいい。敢えて魚雷の包囲網に逃げ道を作ってやれば、そこに敵機は集中する筈。
「進路上に邪魔する者が居れば、それを襲いに来るはずですね。ナイスタイミングです!」
 迷彩を解いて彼等の逃げ道に姿を現したホワイト・レクイエムは、既に攻撃準備を終えていた。
 エネルギー複合念動兵器『ソードオブビクトリー』は、剣にも遠隔操作砲台にもなるサイキック兵装である。
 それらが砲門を揃えて構えた先に、彼等はまるで吸い込まれるようにおびき出されたという訳だ。
 魚雷を嫌って逃げ道に選んだ先にはキャバリア。邪魔になるならと、砂の中から姿を現し、口に相当する部分を展開してイクラ爆弾を発射しようと試みるが、既に発射体勢に入っているホワイト・レクイエムのほうが明らかに速い。
「そうはさせませんよ──仕留めます」
 一斉砲撃がサーモンマシンを貫き、口腔に備えたイクラ爆弾が誘爆し炸裂していく。
 オレンジに燃え上がる炎が、白銀の機体を照らすと、そのコクピットの中では、掲げたGOKUの拳をぐっと合わせるカグヤが不敵な笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
スーパーロボットの世界がやってくると、異能生存体が告げたわけですか。

いーんですかそれ。まーなんか、どーでもいーですが(投げ遣り

とりあえずバイブロジェットで空中に上って待機。
こういった場合、垂直戦闘に持ち込むのが楽でいいです。
敵の攻撃はフォックストロットで全部躱して、
貫通攻撃/ライフルで撃ち下ろしましょう。
高出力が売り物のエイストラの射撃、
地面だろうが水だろうがそれなりに貫通しますよ。

こちらには火器より高価な統合センサーもあります。
たとえカメラで見えなくても居場所は丸判りです。



 地下世界に突如として広がる謎の空間と、その眼下の広大な砂漠。
 フロンティアラインの地層には謎が数多く存在するが、人が搭乗できるほどの文明にまで成長し、それだけ高度な文明でありながら100年にも及ぶ戦乱を繰り返し、あまつさえ文明の最たる宇宙進出を果たした形跡を思わせる衛星軌道兵器は、いつからかその砲口を地上に向けるようになった。
 この世界の進んだ文明は、皮肉にもその進んだ技術によって生活圏を狭めているかのようにも受け取れる。
 とかくこの世は無情である。
 などと、物思いに耽りつつキャバリアのコクピットの中でボーっとしているのはノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)。
 グリモアベースで取得した情報を整理すれば、かの地中の敵と交戦するとされる探索隊は、もう地中からの来訪者と接敵しているだろうか。
 どうやらレイヤードと同等の地底世界出身と目されるノエルは、レプリカントである。
 自身がキャバリアの補助パーツであるのか、それともその逆であるのかは定かではないが、表情の変わりにくい少女然としたインターフェースはキャバリアに限らず、あらゆる機械との親和性が高い。
 パーツ換装でなく、リンク機能で行えることを考えれば、わざわざ人型の形態をとるというのは、パイロットとしての用途を考えていたのか。
 なんだ、自分自身もけっこう、謎が多い。
 何かの希望の末に産み落とされたのか、ただの偶然で自分自身を手に入れたのか、ひょっとしたらろくでもない思惑の真っ最中である可能性も捨てきれない。
 が、こうして今はキャバリアに搭乗して、仕事をして日々の糧にありついている。
 自分の生まれはともかくとして、生き方はちょっと変わっているのかもしれないが、キャバリアを駆って戦うことになんら疑問は無い。
 今日も今日とて、お仕事に邁進というわけだ。ただ、ちょっと気になる事も無くはない。
「スーパーロボットの世界がやってくると、異能生存体が告げたわけですか」
 地底の風を浴びて機体に揺れを感じながら、ぽそっと漏らす。
 この世界に空は無い。
 そんな場所を想定して、そういう仕事ばかりが舞い込んでくるものと思い込んでいたのだが、ちょっと想定を超えたというか、考えていなかったというか……変な気分だった。
「いーんですかそれ。まーなんか、どーでもいーですが」
 どこか納得いかないような、無表情にしてはちょっと口の端をひん曲げた様子で明らかに投げやりな息が漏れる。
 クールで無感情なように見られがちなノエルであるが、本人曰く別にそういう訳ではないらしい。
 ともかくとして、ノエルの乗機エイストラはほの暗い地底の空を行く。
 震動フィンにより生じる衝撃波を利用した特殊な推進スラスター、バイブロジェットで砂漠の上空を行くエイストラは、ほどなくして提示された交戦ポイントの目の前に着ける。
 相手が地中から奇襲してくるというのなら、わざわざ地上を走る必要などない。
 追い回されるのは御免なので、素直に上を取って相手の射程外から攻撃するのが楽だろう。
 そんな長時間、飛んでいられるのかという話だが、バイブロジェットはなんと燃料が不要。制御の為に全くの通電無しとはいかないものの、飛ぶだけならエネルギーをほぼ消耗しない。
 もとよりエイストラは高出力な機体をバランスよくまとめたなかなかの傑作機なので、制動用のブースターを使ったとしてもたいした消費無しで曲芸飛行も可能なはずだ。
 では、出力の余剰はどこに回されるのかといえば、それは武装とセンサーになる訳である。
「うまく逃げているようですね。しかし、火器が心許なくては、いずれ数の前に押し込まれてしまいます」
 探索隊を率いるレモンは、実際のところ善戦しているのかもしれない。
 だが、地中に対する攻撃や防御手段があまりにも乏しく、地の利は敵側にある。
 人的被害をほとんど出していないのが奇跡的であった。
 仕事の内容は敵の排除であり、探索隊を助けるのは含まれていない。
 とはいえ、ノエルはレプリカントではあるが無機質な機械ではない。
 空中からエイストラの持つプラズマライフルを、地中を行く敵機目がけて放つ。
 ジェネレーターから大量のエネルギー供給を要する大出力粒子ビームを放つそれは、探索隊の量産キャバリアを追い回す魚型キャバリアを、地中にいるうちに撃ち抜いた。
「十分に通りますね。効くとわかれば、後は的当てです。
 こちらには火器より高価な統合センサーもあります。
 たとえカメラで見えなくても居場所は丸判りです」
 プラズマライフルとしながらも粒子ビームを放つのはともかくとして、続けざまにビームを放ち、地中に居る多数の敵機をボボボボっと破壊すると、流石に厄介としたのか、魚型のキャバリアことサーモン・マシンたちは、狙いを探索隊からエイストラへと変更したようだった。
 空中へどうやって攻撃するのかと身構えるノエルは、レーダーにも意識を割くのだが、彼等がとった手段はなんと、砂の中から飛び上がり、宙返りを打つようにしてその生物そのままにも感じるような尾びれを振りかぶる体当たりを仕掛けてきたのだ。
「なんと、なんと……」
 まさかの質量攻撃に多少面食らったものの、彼等もまた対空への有効手段はほとんどないらしい。
 体当たりのマニューバ自体は、実際の生物のように生き生きとしたものだったが、【フォックストロット】によって絶妙に相手との呼吸をずらした機動でエイストラは空中に舞う羽の如くひらりとそれら体当たりを回避する。
「なんと申しますか。雑、ですね」
 つまるところ、上方を維持している限りは、彼等は体当たりがメインになるという事を悟ったノエルは、あれーっと空振りに終わったサーモンマシンの無防備な姿を見下ろしながら、容赦なくプラズマライフルを撃ち込んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユリウス・リウィウス
煮ても焼いても食えねえって感じの絡繰だな、なあ、おい?
サーモンの振りして、実はトラウトサーモンなんじゃねえのか、ああ?

さて、面倒くせぇが、掻っ捌いていくか。
「降霊」で慨嘆の亡霊たちを喚起。せいぜい怨嗟の声を上げて俺を強化してくれ。

魚どもの突進攻撃を「見切り」かわし、「生力吸収」「精神攻撃」を乗せた双剣の「カウンター」で魚体の側面に二筋の傷を刻み、「傷口をえぐる」。
よく知らんが、これで内部の絡繰仕掛けは破壊出来たんじゃないか?

休んでる暇は無い。次から次へと突っ込んでくる魚を捌かなきゃいけないんでな。
生憎ここは魚屋じゃねぇんだ。居場所は無いぞ。どうせなら骸の海で泳いでろ。
ふん、喰えん魚に用は無い。



 地下遺跡の擁するプラントを頼りに発展を遂げることに成功した地下世界レイヤード。
 クロムキャバリアという世界の中では、地下に落ち伸びたことで他国との戦乱を回避する事に成功したものの、地下で繁栄する事となった人類は、またその内側で勢力争いをする羽目になった。
 この世界に空は無く、外も存在しないもののようなものだ。
 そんな機械の壁と天井に阻まれた世界の中でも、最下層に位置するこのフロンティアラインは、他とは少し雰囲気が違う。
 ほの暗い空間の向こうには、恐らく地層の壁が天井として機能している筈だが、それも遠く暗闇にあっては果てが見えない。
 そして古代遺跡の眠るこの広大な砂漠には、黄金にも似た輝きを持つ不思議な砂が広がっているためか、完全な暗黒にはならないという。
 今でこそ、レイヤードの中心を貫くメインシャフトが到達するにまで繁栄の手を伸ばしているフロンティアラインだが、この場所に足を踏み入れた者は、いずれもこの不可思議な秘境の空気に息をのむという。
 文明の去った墓標のように、自然へと帰依していくかのような、文明の果てを見るかのような儚さ。
 その果てしない虚無の中に、生きる時間の短さを見るか、それとも埋もれる財宝に思いを馳せるかは、価値観の分かれるところであろう。
 さて、この地に足を踏み入れるのは、基本的にはキャバリアを有する者ばかりではあるのだが、最近では猟兵が事件解決に乗り出すことも多く、中には頑なにキャバリア搭乗を避けて身一つで依頼に臨む者も居る。
 ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)もまたその一人であり、自身でキャバリアの都合をつける事はおろか、グリモア猟兵が手配したキャバリアすらも避けて西洋甲冑に身を包んで、完全にいつも通りのスタイルで砂漠に臨んでいた。
 クロムキャバリアの世界に生身で挑むのは初めてではなく、このフロンティアラインに足を踏み入れるのも実は初めての事ではない。
 ただ、あの頃はなんとなく思っていただけだが、改めてこの地下の薄暗い砂漠を目の当たりにすると、妙な安らぎと言うか、懐かしさを覚えるのだ。
 今ならなんとなく説明がつく気もする。
 自身の故郷たるダークセイヴァーは、実は日の届かぬ地下世界であったという事実を知ったのはここ最近の事。
 この黒い砂漠に妙な親近感のようなものを覚えるのは、ここの辛気臭い雰囲気が原因ではないのだろう。
「この暗さに懐かしさを感じるってのは、いよいよそっち寄りになってきたのかね。
 ホームシックみたいなものだと思いたいが」
 ざらざらと巻き上がる砂の軌跡を目線で追いつつ、砂風避けのサバイバルゴーグル越しに足元に視線を戻す。
 よく乾いて体重を吸って潜り込む砂の丘を歩くのは、存外に体力を使うが、気になるのはその程度のもので、ここには毒性のあるような植物や生物の姿や気配がない。
 こんな場所では育ちようもないということなのだろうが、だとすれば同じ地下世界のダークセイヴァーの植生はどうしたものなのか。
 考えても仕方ないが、あちらはあちらの道理があると見るしかない。
 そうしてえんやこらと歩いて砂丘を越えた辺りで、目にした眼下の光景に、爆発が上がるのが見えた。
 どうやらとっくに戦いは始まっているようだ。
「観光してる場合じゃないな、なあまったく」
 踏みしめるような足取りは、すぐに駆け足へと変わり、絡みつくような砂の丘を蹴飛ばすようにしてユリウスは駆け降りていく。
『パースニップ! 応答して! 生きてるんでしょう?』
『……なんとか! フラグを撒いて、凌いでます!』
『残弾は?』
『グレネードがあと3発! マシンガンは、あと2パック!』
『全部使ってもいいから、ここを離脱することを考えて。今の装備じゃ対応できない!』
 爆炎の向こうで、悲鳴のような通信が交わされるも、そこに一人向かうユリウスはそもそも通信機器を備えていない。
 鎧を着込んだ黒騎士が一人、機械人形が戦う中で我が身一つだけを持って駆け込んでくる。
 戦場のあちこちで爆発物による爆炎と粉塵が舞い、それに誘引されるかのように、砂の中から魚型のキャバリアが飛び出しては、再び砂の中に潜り込む。
 まるで砂の中を泳ぐかのようなその様子は、さながらパニック映画でサメに追い込まれるような状況を作り出しているようでもあった。
「でかいな。生物ならさぞ食いでがありそうだが……煮ても焼いても食えねえって感じの絡繰だな、なあ、おい?」
 その様子を見やり、撒き上がる砂を被ってそれらを払いながらも、ユリウスは仲間外れは困るとばかり、両の剣を地に突き立て、ユーベルコードを発現させる。
「無残に蹂躙されし無力なる亡霊たちよ。その怨念、一時我が身に預けよ」
 この砂漠に命を落としたもの数知れず。
 それを悼むではないが、死霊術士でもあるユリウスの降霊によって呼び寄せられた【慨嘆の亡霊たち】が無念の涙を流せば、それは怖気と共に不気味な存在感となって戦場に降りかかる。
 形は見えないが、不気味な何かがこの場に集まる感覚は、この場にいる敵も味方も一か所を見ずにはいられない。
 その渦中のユリウスはといえば、招致した亡霊たちによる自身の強化を試すが如く首をゴキゴキと鳴らしつつ、やっとこっちを向いたなとばかりに突き刺した双剣を手に取る。
「さて、面倒くせぇが、掻っ捌いていくか」
 一本を担ぎ、もう一本で指すように切っ先を向けてやれば、その恐怖は十分であろう。
 恐れとは、何も相手を縮み上がらせるだけのものではない。
 僅かでも、こいつをここに居させてはならないという気持ちを抱かせるのが、それなのである。
 あろうことか、圧倒的有利なはずの5メートル強の魚型キャバリアたちが、こぞってただの生身の人間目がけて突撃を仕掛けてくる。
 なぜそう仕向けられたのか。なぜ生かしてはおけないと思ったのか。その根源が恐怖に起因するとは露知らず、魚型キャバリアことサーモンマシンたちは、ただ一人の生身の相手に殺到する。
 柔らかな砂地を水に見立てた機体が、その流れに乗るようにしての体当たり。
 砂を割って高速で潜行する事を可能にする重装甲。それをまともにくらえば、キャバリアとてまともでは済むまい。
 まして、ユリウスは甲冑を纏っているとはいえ、その装甲はキャバリアに程遠い。
 重量差は、何倍だろう。考える気すら起きない。
 そして、考えるよりも先に、ユリウスはその巨体の体当たりを躱しざま、二本の黒剣を突き立てる。
 躱した? あまつさえ反撃すらして見せるその体術こそ称賛されるべきだが、ただの剣がキャバリアの装甲を容易く断つものか?
『ッ!?』
 赤熱するような刃物の跡を残すサーモンマシンの表面装甲は、その筋こそ残るが内部まで刃が通るようなことは無かった筈だが、交錯した後に転進しようと体位を入れ替えたサーモンマシンの尾びれが明らかにぎこちなくなっていた。
「よくわからんが、お前ら絡繰の連中は、魔法生物ほど融通が利かない。
 よくできちゃいるが、その鎧は本物のサーモンみたいな撓む皮をしちゃいないんだろ」
 体当たりをいなしてその勢いを利用して切り裂く。ように見えていたが、繰り出していたのは無数の突きであった。
 はなからキャバリアの装甲を真っ二つなんて考えてはいない。
 通る場所に刃を入れて、中身を抉って神経を破壊すれば、人も機械も動かなくなる。
 ユリウスは機械の専門家ではない。だが、生物を模した物にも、構造的な弱点はある程度共通する筈と踏んだのであった。
 完全に相手を破壊したわけではないが、亡霊によって強化されたユリウスの剣は、装甲をどうにか出来さえすれば、十分にキャバリアを攻略可能だ。
「休んでる暇はない。こう入れ食いじゃあな。生憎ここは魚屋じゃねぇんだ。居場所は無いぞ」
 相手はオブリビオン。帰るべきは骸の海。
 そして食えない魚には用は無い。とばかりに、次々と巨大サーモンを行動不能に追い込んでいく。
 これが天然ものならば、どれほど大漁か想像もつかない。
 いや、生物を模しているのなら、天然とは言い難いのではないだろうか。
「さてはお前ら、サーモンの振りして、実はトラウトサーモンなんじゃねえのか、ああ?」
 トラウトは、養殖にも用いられるサーモンっぽいニジマスの事らしい。
 味は悪くない筈だが、同じ養殖でもサーモン……天然ならば鮭という方がいいだろうか。
 脂ののった鮭は、格別だ。しょっぱいくらいの塩焼きに酒を合わせると、言葉にできない。
 幾多の絡繰サーモンを破壊しつつ、ユリウスは太陽光どころか川もサーモンも無いような砂漠の真ん中で、本物のサーモンに思いを馳せるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
ようし、せっかくだからスーパーロボットを借りていっちゃうぞ☆
アイアンリブス、発進だー♪

ずんずんずんと歩いてフロンティアラインを探索していくよ。
むぅ、敵はお魚さんキャバリアみたいだけど、どこにいるんだろう?

お魚さんが襲い掛かって来たら、アイアンリブスに乗ったまま、
【スカイステッパー】でどんどんどんっと飛び上がって攻撃を回避!
そのままヴァリアントアクスを展開して落下の勢いを乗せた一撃を叩き込むね♪

くらえー、ヴァリアントアークスかぶとわりだー☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


バーン・マーディ
マーズ搭乗

地下帝国か
この世界でもそういうものはあるのだな

…む、マーズ…?(極めて強い反応に顔を顰め

貴様の知っている者の気配がするというのか…?

【オーラ防御・属性攻撃】
炎のオーラを機体に展開

敵陣へと突撃

【武器受け・カウンター・切り込み・怪力・吸血・生命力吸収】

イクラ爆弾を軍神の剣で受け止め容赦なく打ち返してサーモンを爆破!
敵に襲い掛かり切り裂き
手で容赦なく分断し
破壊の限りを尽くす
尚パイロットは不殺

そして敵の多くが射程範囲に入れば

UC発動
我が十字にて貫かれ果てよ

【砲撃】
で威力増強

一応中のパイロットは捕縛しつつ沙汰はこの国に任せるとしよう

元より此処は地下世界だが更に地下があるのか



 広大な砂漠は、まるで夜闇に浮かび上がるかのように輝いてすら見え、気を抜くともしやここが地の底というのを忘れそうなほど不思議な雰囲気をしていた。
 とはいえ、ここに踏み入るは古の技術を求めた探索者か、或は横取りを企てる盗掘者といったところだろう。
 そのいずれもがかつての文明を踏襲するかのように巨大なロボットに乗り込んで、無謀の砂漠を行こうというのだから、歴史は螺旋を描いているのかもしれない。
 ほの暗い、しかし暗黒とは言い難いほどのフロンティアラインの砂漠の中に、異質なキャバリアが砂漠の僅か上空に佇んでいた。
 黒いキャバリアに焼け付いた様な甲冑を着せて、さらに悪魔のような角を生やしたかのような、それは見る者を圧倒する威容であり、赤熱するような光輪を背負う姿は東洋の神仏のようですらあった。
 腕組みをしたまま瞑目するかのようなその機体の名はマーズ。
 搭乗者であるバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)の意志に応え、虚空よりやって来たという意志あるスーパーロボットである。
 そのコクピットの中、バーンもまた同じように腕組みをしたまま、ちらとモニターに映し出される周囲の景色を見やる。
 どこまでも続くかのような金色の砂漠。たまに見かける朽ちた遺跡に、見飽きるほどの砂丘がちらほら。
 ヒーローズアース出身の彼からすれば、地下に不可思議な領域が広がっていることなど、それほど珍しい事ではない。
 いつの間にか神の座に至っていたとはいえ、彼にもまだまだ未知のものは数多いのである。
 だが、
「地下帝国か。この世界でも、そういうものはあるのだな」
 元は、行き過ぎた正義によって虐げられていたヴィランを救うために敢えて神聖騎士から悪の道を往くことになった男は、その存在を計りかねていた。
 予知の情報から推察する限りでは、あまり友好的とは言い難いようだが、彼等の意図やいかに。
 場合によっては守るべき敵にならんとも限らない。
 その時になれば、迷わずに剣を振るわねばならないが、彼等にも語る口があれば、当たり前に正義を持っているだろう。
 うーむ、と地の底から響くような唸り声を上げるバーンに呼応するかのように、マーズもまた強い反応を示す。
「……む、マーズ?」
 己とは異なる懸念を抱いているらしき乗機の強い反応に、バーンは眉を顰める。
 野生生物が毛を逆立てて威嚇するかのようなそれは、敵意にも似た警戒心だろうか。
「……貴様の知っている者の気配があるというのか?」
 険しく目を細めるバーンの感覚が、何者かの接近を感じ取る。
 まさか、それはもう近くに来ていたのか!
 臨戦態勢のもとそちらに目を向ければ、見慣れぬキャバリアが駆けよってくるのが見えた。
『おーい♪』
 外部音声から拾える声は、妙に年若いというか、幼い子供の声にも聞こえる。
 ……違うな。
 あまりの敵意の無さと、それに反比例して感じる気配の力強さから、直感がそう悟らせる。
 あれはたぶん、同僚だ。
 近づいてくるのは、恐らくグリモア猟兵が話に出していた新型のキャバリアと言ったところだろう。
 確か名を『アイアンリブス』。このフロンティアラインで発掘された機体を改修し、使えるようにしたものである。
 レイヤードで広く普及している量産キャバリアのような無難なデザインとは一風変わった、筋肉質で逆三角形を思わせるそのボディは機械というより、東洋の鬼を思わせる姿であった。
「ふむ、なかなかの迫力だな」
『ふふーん、せっかくだから、借りてきたんだー! よぅし、いくぞーアイアンリブス♪』
 アイアンリブスに乗り込むのは、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)。小さな妖精だが、誰が乗っても感覚的操作で簡単に動かせるという触れ込みはどうやら正しく、ロールアウトしたばかりの機体を、ティエルは早くも手足のように操っているようだった。
 そうして、どこか能天気な様子で手を振り上げて先導するように先を行く姿に、バーンは静かに乗機に確認する。
「あれではないのだろう? ふ、やはりな。で、あるならば……我等も行こう」
 ティエルの乗り込む機体、アイアンリブスには謎が多いようだが……。マーズが気にかけているのは、どうやらそれではない。
 鋭い一本角。その名の通りに、鉄の光沢を放つむき出しの肋骨を思わせる胸部装甲。
 禍々しくも感じるが、乗っているのがいたいけな子供なせいか、砂漠をずんずんと歩く姿はわんぱく小僧のようにも見える。
 姿かたちは鬼のようでも、何も危険を感じないからには、あれはただの道具に過ぎぬのだろう。
 ならば手がかりは、敵中にある!
「あーっ、あそこっぽいよ! 行こう!」
「うむ。慣れぬ機体では、思い通りにはいくまい。手を貸そう」
 鬼のようなアイアンリブスと、黒く染まった騎士のようなマーズが、魚型のオブリビオンを相手に追い詰められている探索隊を発見。
 俺たちも混ぜろと言わんばかりに、その巨体をずんずんと稼働させて彼等の間に割って入る。
「蹴散らすぞ!」
 破壊の力を司るというバーンの乗機、マーズがその背に負う光輪のようなパーツから炎を吹き出し、その機体に纏わせて突撃をしかける。
 その勢いに気圧されて、探索隊を追い詰めにかかっていた魚型のキャバリアことサーモンマシンは蜘蛛の子を散らすように地中へもぐって距離を取る。
「よぅし、ボクたちも負けていられないよね!」
 そのマーズの激しい目立ちっぷりに、ティエルはコクピットの中で鼻息荒く飛び上がって、目の前の光るパネルをたたたんっと叩く。
 アイアンリブスの操縦は、誰でも可能と言われていた。
 それこそ、身の丈がもう少しで22センチになろうかという小柄も小柄なティエルですら操れているのには、その特殊な操縦方法による。
 アイアンリブスのコクピットには、シート以外には特に目立つものは無い。
 今回はティエルではシートにうまく腰掛けられないので、さらに小さなシートを括りつけられているが、それはそれとして、この機体が起動すると、コクピットには触れる光るパネルが浮かぶのである。
 それに触れたり叩いたりして、意志の疎通を図るようにすれば、アイアンリブスは思った通りに動いてくれるのだ。
 それはまるで、意志の疎通を図るかの如く動いている感覚が操縦者にフィードバックされる。
 最初こそその不思議な、頭の中にもう一人の自分が立って歩いているかのような感覚に違和感があったものの、しばらく砂漠を歩いている内にすぐに慣れてしまった。
 たぶん、コクピット内に手をかざせば出てくる光るパネルに寝そべってるだけでも簡単に手足のように動いてくれることだろう。
 それだと気分が出ないので、ティエルはシートの上で騒ぎ立てるかのようにパネルをパタパタ叩いたりしているわけだが。
「うーんと、お魚さんのキャバリア……どこにいったんだろう。どこだー?」
 手を傘替わりに可愛らしく探す仕草は、いかつい鬼のような機体だとちょっと間抜けだが、高い追従性からくるその奇妙な行動は、敵から見ても絶好の隙であるように思えたのだろう。
「む、後ろだ!」
 やや離れた位置から、顔を出したサーモンマシンが、その口腔にオレンジの球体を備える。
 それをいち早く発見したのはバーンであった。
 滑り込ませるようにその進路上にマーズを移動させると巨大な軍神の剣を盾代わりに、発射されたイクラ爆弾を防ぐ。
「ぬう! 返すぞ!」
 炸裂する爆風を凌ぎ、それを振り払うと飛んできたイクラ爆弾はピッチャー返しよろしく弾き返された。
 そのまま口を開いたままのサーモンマシンは、自らの爆弾を返されて爆炎を上げる。
「わ、いいなぁ! ボクも! えーっと、確か肩に武器が……」
 鮮やかな反撃にキャバリア越しでもぱあっと目を光らせるが見えるティエルが、アイアンリブスの肩に格納される柄を取り出すが、
「油断するな。奴らの狙いは奇襲。爆弾で抑え込んだら次はどこから来るか……」
「そっか! 下だね!」
「ここを離れるぞ!」
 タイミングを合わせ、マーズとアイアンリブスはそれぞれ前と上へと跳ぶ。
 炎を引いて突撃するマーズが大剣を振りかぶり、イクラ爆弾の打ち返しをやり過ごしたサーモンマシンへと飛び掛かる。
 一体目を剣で叩き潰し、すかさず近くのもう一体へと掴みかかり力任せに両手で顎から真っ二つに引き裂いていく。
 それはもはや、蹂躙とも言うべき破壊の様相であった。
 だが、そんな凄まじい暴れっぷりを見せつけながらも、バーンはコクピットブロックは破壊しなかった。
 破壊したサーモンマシンから、レトロなロボットの顔をしたロボットヘッドが慌てて脱出するのをスルーするのは、最初からパイロットまで殺すつもりが無いからだ。
「うわ、ホントに下から来た! 追いかけてくるつもりだね! やっちゃおう、アイアンリブス!」
 空中へと飛び上がったティエルのアイアンリブスは、鈍重ながら身軽なティエルの操作についていこうと必死に追従する。
 ティエルからすれば、その機体の重さは冬場に思い切り厚着しているかのような違和感だったが、元からパワーのある機体だけに、アイアンリブスはそのポテンシャルで以てティエルのユーベルコード【スカイステッパー】ですらも再現して見せる。
 空中を蹴りつけ、上昇するアイアンリブスを追って、複数のサーモンマシンが地中から飛び上がってくる。
 今こそ、攻撃の時。
 手に持ったままの武器の柄に、意識を込めてパネルをタッチすれば、柄から流れ出す液体形状記憶金属がナノセラミカル合金の両刃斧を作り出す。
「くらえーっ、ヴァリアントアークス! かぶとわりだぁー!」
 ティエルの元気な叫びに呼応するように、アイアンリブスのヴァリアントアクスが落下の勢いを乗せて振り下ろされる。
 地中からの奇襲に失敗し、空中に飛び出したサーモンマシンは、その魚型のボディが示す通りに空中での制動は利かない。
 肉厚の出刃包丁でアラを取る為が如く、宣言通りに斧がその頭部を叩き斬った。
「うむ! 童よ、もう一度飛べっ」
「! わかったー!」
 ずずーんっと勢いのまま砂に押し込めるように着地したアイアンリブスに、すかさずバーンの檄が飛ぶ。
 大技の予感を察知し、ティエルは再び空へと駆けあがる。
 直後、
「我が十字にて貫かれ果てよ!」
 黒いマーズの装甲の周囲に纏う炎が眩く光ったかと思えば、【Cross of Sort】の発現によって幾筋にも飛び交う十字の閃光が、ティエルを襲おうと飛び上がり、顔を出したサーモンマシンたちを貫く。
 四方八方、見境なく発しているようで、その輝きは実際には敵にしか命中していない。
 ティエルに指示を飛ばしたのは念のためと、敵の誘因も兼ねていたようだ。
 そして、この期に及んでもパイロットブロックを直接狙うことはせず、破損した機体からは続々とロボット頭の兵士が這い出してきた。
「貴君らの沙汰は、この世界の者が行うであろう……それまで正座!」
「いい子にしてるんだよ♪」
 抵抗する機体が見かけなくなると、一応、ロボットヘッドの兵たちを簡単にだが拘束しておく。
 多分協力すれば抜け出せそうではあるのだが、キャバリアを失った兵士たちは、皆一様にしゅーんと項垂れていて、抵抗の意志は見られなかった。
「ふむ……意外にしおらしい。聞いておきたいことは多いが、まだ敵が残っているかもしれん」
「うんうん! みんなを助けに行こう」
 しかし彼等は今は敵。いくら意気消沈しているとはいえ、襲われているレイヤードの探索隊はまだいるかもしれないのだ。
 それにしても、こんな地の底と思っていた場所なのに、まだ地下があり、こんな連中が身を潜めていたのか……。
 消えない胸騒ぎは、まだ見ぬ強敵の存在を予想させていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
機神搭乗
「ご主人サマ!神機シリーズの気配がするよ!」
…おめーの仲間かよ…ロクシアスか?
「…この気配は…多分あの子かな…?なるべく傷つけない方がいいかも」

サーモンマシン!ってこいつ等は小型プラントもってねーのか
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵群の動きと構造
搭乗席の位置把握

UC発動
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体と竜達に付与
光学迷彩と水の障壁による熱源隠蔽

不意打ちが好きとか…気が合いますね
では狩らせてもらいます

竜達
【捕食・切断】
複数で一体に食らい付いてバラバラに
但し搭乗者は不殺徹底

【弾幕・念動力・空中戦】
飛び回りながら念動光弾を撃ち込み破壊
【二回攻撃・盗み攻撃・盗み】
鎌剣で切りかかり金目の物を強奪



 地下世界レイヤード。
 殲禍炎剣から逃れるべく、地下遺跡にプラントを見出した人々が移り住み、繁栄を遂げてきたこの世界に、本物の空は無い。
 繁栄はすなわち人口の増加。それと共に地下世界はその発展と共に、より深く広くその枝葉を伸ばしていった。
 そうして辿り着いた、恐らくは終点ともいうべき層。
 それがこの地下の広大な空間を擁する砂漠の広がるフロンティアライン。
 人がこの世界を見出すよりも前に、恐らくは埋もれて消えた文明の名残を幾重にも残すこの砂漠には未だ謎が多い。
 時には突拍子もない何かが掘り出されることだってある。
 謎の物質、謎の文言、それくらいなら可愛らしいもので、時にはキャバリアそのものが使える形で見つかることもあるという。
 そして先頃、猟兵たちに見せた予知の中では、ついにそれら過去の遺産とも言うべきものの更に奥底から、牙を剥いてきた。
 それは忘れ去られた太古からの使者なのか。それとも、そんなロマンのある物ではないのか……。
『ご主人サマ。それらしい動きを察知したよ!』
 その砂漠の虚空。フロンティアラインの層とレイヤードとを繋ぐメインシャフトを背景に、わずかに光を放っている砂漠を見下ろす形で、暗闇に落ちる空間に浮かぶキャバリア『メルクリウス』のコクピットの中に、愛らしい甘い声が響く。
 濃い金色の翼のようなパーツを背負った神秘的なキャバリアに搭乗するカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、無垢な少女を思わせるその声に応じるよう、示されたポイントを確認する。
 キャバリアに搭載された支援AIにしては、その快活さや言いよどむような機微すら感じさせるのは機能的ではないようだが、それもその筈であろう。
 噂に聞こえるほどの叡智の結晶、賢者の石から構成されるサイキックキャバリア『メルクリウス』は、自ら意思を持ちカシムに手を貸している存在なのだ。
 尤も、カシムからすれば、妙な拾い物に懐かれているようなもののようだが、今のところ超危ない依頼に引っ張られる以外は、命の危険を感じるほど恐れる相手でも、まして嫌っているわけでもない。
 ん、十分やばい気がするぞ。
「……何かあるなら、今のうちに言っといてくれ」
 この広大な暗闇の砂漠の中で、交戦状態に入っているポイントに向かいつつ、カシムは促されたわけでもないが、ひょっとして聞いておかねば下手をすれば命にかかる。
 それを知ってか知らずか、機微を読んでくれたと思ったらしいメルクリウスこと愛称メルシーの気配が華やぐ。
『ご主人サマ! 神機シリーズの気配がするよ!』
 喜色に染まった声で元気よく告げたその内容は、カシムにとって気が重いものとなった。
 神機シリーズ……古来よりどこかからやってきて文明を開いただの、色々と曰くのあるキャバリアらしい。それが神造の兵器なのか、機械の神なのかはわからないし、細かなこともよく知らないが、わかっていることは、その多くがだいたい敵に回ってしまっているということ。
 それから、次いで言うと、カシムの乗り込んでいるキャバリア。そして彼を御主人様と慕う少女もまた、その一機であるという事。
 ひょっとしたらメルシーは、それこそ何か知っているのかもしれないが、彼女が多くを語らぬ事もまた、関係しているのだろうか。
 いや、今はそんな事まで掘り下げる時ではない。
「……おめーの仲間かよ。……ロクシアスか?」
 とりあえず、相手がどんなものであるのか、知っておく必要は大いにあるだろう。
 前にも戦ったことのある相手を引き合いに出してメルシーから情報を引き出そうと考えるカシムであったが、
『この気配は……多分あの子かな……? なるべく傷つけない方がいいかも』
「多分って、どんな相手か知りたいんだが……」
 どうやら同系シリーズのメルシーを以てしても、その気配を正確に読み取ることが困難なほど、距離が離れているのか、その存在を感じづらいようだ。
 しかし、メルシーが反応を示す以上は、接敵は免れまい。
 カシムのそれは、あくまでも勘ではあったが、不思議と外れる気がしないのであった。
 どうやらそれについて考えている余裕は、もうなさそうだ。
 メルクリウスが戦場に到着すると、地中からの奇襲攻撃で探索隊を追い詰めていた魚型のキャバリア『サーモンマシン』の注意が、一気にカシムたちに向くのがわかった。
 何しろ目立つ機体だ。それとも、探索隊のシュタインバウアーには、もはや手を下すほども無いと判断したのか。
 いずれにせよ、砂漠を波打たせるそのうっすらとだけ見える魚群は、どうやらこちらを敵と認識したもの、とカシムは判断し、その乗機であるメルシーも同行から同様の判断を下した。
「データは?」
『あるよ!』
「サーモンマシン! って、こいつらは小型プラントは持ってねーのか」
 以前に遭遇した時は或はそうだったのかもしれないが、今回は別のカスタムでもしてあるのか……。
 とにかく、一体一体なら恐れる相手ではない。
 それに、自分の機体が目立っているという状況。折角だから利用させてもらおう。
「不意打ちが好きとか……気が合いますね。
 では狩らせてもらいます」
 気取ったような口調とその表情が彼等に届いたかどうかはわからないが、それがスイッチであるかのように、カシムは戦闘機動にはいる。
 もとよりカシムは盗賊出身。盗みの腕と自称天才的な魔術で以て貧民時代を生き抜き、盗賊団でも一目置かれていた……筈だ。
 そうして紆余曲折の末、猟兵となった後も弛まぬ努力で研鑽を積み続け、我が道を突き進んでいる真っ最中な訳だが、奇しくも商人や盗賊の神様とも言われる名を冠する謎のキャバリアとも出会った。
 なんだってできる筈だ。
 距離を取るようにして横に飛ぶメルクリウスの手にする笏の様な武器から、魔術の光弾が次々と放たれる。
 カシムの機体を追う魚影の目先を狙ったそれらは砂煙を上げるが、手応えは無い。
「だが、顔を見せたな……!」
 目先を撃ち抜かれるのを嫌ったサーモンマシンたちが、砂煙を破るように飛び出し、その姿を見せたのを狙い、カシムはユーベルコードを発動。
 【帝竜眼「ダイウルゴス」】によって呼び出された百数体にも及ぶ小型の竜の群体。それらが自らに霞を纏って姿を隠す。
 かつてはオブリビオンとして『文明侵略領域』に屯していたというダイウルゴスを模した術をこのフロンティアラインで用いるのは何の因果か。
 それらは砂煙から抜けたサーモンマシンの死角に入り、まるで巨大な獲物に群がる肉食の魚群の如く食らいついては、その装甲を貪っていく。
『中には、人じゃないけどパイロットが居るよ』
「わかってる。コクピットの位置もな!」
 キャバリアという性質上、どんな形状でも基本的にはコクピットブロックは独立しているはずだ。そこさえ避ければ、命には別条あるまい。
 後退しながら光弾であぶり出し、砂煙と霞で見えなくなったダイウルゴスの群体で死角からの不意打ちを仕掛ける。
 当初の予定とは少し違うが、メルクリウス自らが敵を引き付けて見えない攻撃を行うのは、予想以上に効果があったようだ。
 だが、同じ事を続ければ相手も学ぶというもの。
 なるべく探索隊に危害が及ばぬよう距離を取りながら引き寄せたつもりだったが、いくつかの賢い機体が、回り込むようにして近寄ってくるのをメルシーが検知したようだった。
「……それで出し抜いたと思うなよ」
 飛び掛かるサーモンマシンに迎え撃つかのように、魔法の杖の様なメルクリウスの笏から鎌の様な光刃が出力される。
 コクピットの位置は把握している。ならば、と、弧を描くような軌跡がサーモンマシンを三枚におろす。
「金目のものは?」
『イクラがいっぱい!』
「ばっ、それ、爆弾じゃねーか!」
 すれ違いざまについでに何かくすねてやろうと思ったが、モニターにちらつくオレンジのそれらは、通り抜け様に激しく爆発するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『空を目指す者』

POW   :    System one
【アンダーカバー射撃や近接戦闘用の爪・手甲】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【防御や回避といった行動】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    System two
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【装甲各所】から【内部圧密流体エネルギーの噴射攻撃】を放つ。
WIZ   :    System three
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【生体部品の体力や精神】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。

イラスト:aQご飯

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ライアン・フルスタンドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 朽ちた遺跡の沈む砂漠を囲う様に、途絶えぬ薄闇の中に幾つもの爆炎を光らせる。
 レイヤードの遺跡探索隊のキャバリアを、地中から奇襲したサーモンマシンは一掃された。
 各所で上がる爆発とは裏腹に、魚型のキャバリアを駆っていたロボットヘッドのパイロットたちは、わーわーと声を上げて脱出しているようだった。
 地底帝国ズーガイなる謎の組織からやって来たというロボットヘッドの尖兵たちは、すっかり戦意を失っているようであった。
 しかし、それも束の間の事。
『むむうう! なんたる有様か。我等が聖帝トウコツ様より頂いた機体を放棄するとは……ロボットヘッドの風上にも置けぬわ!』
 地を轟かせるかのような竜巻が、遺跡周辺を囲う様に巻き起こる。
 それは、探索隊のキャバリアをも撒き上げる暴風を生み出す超兵器によるものであった。
 戦いを避け、咄嗟に遺跡の中に退避した探索隊はなんとかその影響を受ける事は無く、投降してきたロボットヘッドの一部も探索隊リーダーのレモンに促される形で逃げおおせた者も居たようだが……。
 部下のお仕置きと、カッコイイ登場の為だけに巻き起こされたかのような暴風は、一部のズーガイ兵を巻き込んで、この暗闇の砂漠の彼方へと吹き飛ばしてしまう。
『う、うわぁぁぁ!! 飛ばされちゃうよ!』
『ウインチを伸ばす! フックを体に掛けて!』
『か、かたじけねぇ……!』
 強風にあおられて飛ばされそうになるズーガイ兵にキャバリア用フックロープを投げ渡すレモン。
 だが、この竜巻によって開いた地の穴より飛び出した一機のキャバリアは、そのような軟弱な姿に激怒する。
『何をしておるか、下等な人間共の世話になるなど!』
 飛び上がり蝙蝠のような翼を広げるキャバリア。それに乗り込む者もまたズーガイの兵を預かった隊長なのだろう。
『もはや同族とて容赦はせぬ。この暴風兵器『ストームブリング』で吹き飛ばしてくれるわ!!』
 ごうっと、凄まじい暴風が巻き起こり、身体にワイヤーを繋いだズーガイ兵の身体が浮き上がる。
 ロボットヘッドの丸っこい体では踏ん張りが利かず、もはや支えているのはレモン機のウインチから伸びたワイヤーのみ。
 そしてそのレモンのシュタインバウアーも徐々に引っ張られていく。
『その様では、身動きできまい。いい的だぞ』
 空を目指す者、蝙蝠のキャバリアの銃口がレモン機の方へと向くが……。
 それを邪魔するように援護射撃が入る。
『隊長、御無事で?』
『パースニップ……銃弾は少ないんじゃなかったの?』
『無駄弾とは思っちゃいないです。急いで!』
 遺跡から出れば、暴風兵器の影響で吹き飛ばされかねないというリスクを冒してまで助けに出た部下の行動もあり、レモンたちは無事にズーガイ兵を救助できたようだった。
『く……なかなかやるではないか、下等な人間共。だが! この俺の機体を破壊せぬ限り、暴風は止まぬぞ!』
 暴風兵器を搭載した敵リーダーは、何故か遺跡そのものを攻撃する事はせず、それ以上の追撃に出る事は無かったが、それでも戦場は激しい暴風が吹き続けている。
 このリーダー機を倒す以外に暴風兵器を止める手段はなさそうだ。
 また、この暴風は並のキャバリアでは吹き飛ばされてしまうような規格外のもののようである。
 暴風を何とかするために敵を撃破しなくてはならないが、敵を撃破する為にはこの暴風を乗り越えなくてはならない。
『失敗できぬのだ……我等の中に離反者など……今日は、あの方も見ておられる……』
ユリウス・リウィウス
派手にやってくれるな、全く。
だが、この風は使える。
黒い砂漠を匍匐前進すれば、飛ばされることもあるまい。
血統覚醒して呼び起こしたヴァンパイアの力をこんなことに使うのは気が引けるがな。

この暴風なら、自前のセンサー類も使えなくなってるんじゃないか? そこを狙う。

敵機の足に辿り着いたら、足首に黒剣を突き刺してやる。関節なら壊しやすいだろ。
ついでに足首が壊れるよう全力での体当たりだ。
ははっ、いつもの「暗殺」仕事と変わらんじゃないか。
そういえば毒性装甲だったな。直に触れないよう気をつけつつ、影響は「毒耐性」で押さえ込もう。

退避は暴風に乗って。皮翼で上手く風を掴みたい。
それじゃあ、後は任せた。上手くやれよ。



 ごうごうと暴風が吹き荒れる。
 少し前も同じような話を聞いた気もするが、だとするならば、なんという引き出しの寒い事か。
 いいや、それよりも、一応は地の底であるはずの黒い砂漠には、台風の様な風が吹き荒れている。
『フハハハ!! 素晴らしいぞ。この暴風兵器の力は!』
 その嵐の中心、探索隊が逃げ込んだ遺跡の表面をなぞり取るかのようなその暴風の最中に「空を目指す者」は偉そうにふんぞり返っていた。
 気象を操る。これほど強力な兵器があるだろうか。
 このキャバリアに搭載された超兵器は、凄まじい暴風を駆使して敵対するものを暴風で吹き飛ばし、或は身動きを封じる。
 そこへ高機動で空を飛ぶこの「空を目指す者」によるスピードの翻弄……。
 ちょっと装備がちぐはぐではないか?
 そんなことはまあどうでもいい。
 とにかくこの暴風は、ひたすらに強力だ。
 とくにこの砂漠の中でこの兵器を用いれば、膨大な砂が巻き上げられて砂塵を成す。
 高速で行き交う砂粒は微細な金属片なども含むようであり、視界を塞ぎながらキャバリアの計器類も妨害するらしかった。
 故に、この兵器を使っている最中は、空を飛んでいる自身すら中心部から動けなかったりする。
「……派手にやってくれるな、まったく……しかし、これほど強力に吹き荒れると、あいつも動けないみたいだな」
 遺跡の影から様子を伺うユリウス・リウィウスは、やはりこの期に及んでもキャバリアに搭乗する事はせず、自らの肉体で戦うスタンスを崩さない。
 手足と遜色ないほど使いこなし馴染んだ両の剣と、死霊を扱う術。そして泥の様な戦場の中で鍛えざるを得なかった五体のみを頼りにする術は、自らに課した制約であると同時に自信でもあった。
 こういった嵐の中を行くのは初めてではない。とはいえ、今回はその最中に敵を攻撃しなくてはならない。
 実に厄介とは思う。が、勝算が無いではない。
 暴風兵器ストームブリングは、強力すぎるのだろう。
 最大パワーで使えば、それこそキャバリアを吹き飛ばしたりするほどの尋常ではない風を作り出せるようだが、それは自分の機体にも言える事だ。
 ならば、この風、使えるかもしれない。
 奴が調子に乗って、遺跡から探索隊をいぶり出そうとしている今こそがチャンスだ。
 ユリウスの身に着けるもので、恐らくは数少ない文明の利器、サバイバルゴーグルの機能拡張を試してみるが、砂塵の影響で電子機器の利きはいまいちのようだ。
「目視しかなさそうだ。まあ、この状況でそれほど期待しちゃいないがな」
 物は試し。そして、試してみればそれは相手ともほぼ同条件ということだ。
 相手のセンサーの方が高性能であるかもしれないが、それも条件を違えるならば、こちらは生身である。
 つまり、この砂塵の中で生身の人間一人を感知できるかという話になる。
「こちらからすれば、お前の姿は割合、よく見える」
 生身とキャバリアという体格差。しかし、この極限状況という今に於いては、見通しという面でユリウスに分がある。
 とはいえ、この砂嵐の中に敢えて身を晒して空中戦を仕掛けるというのは、さすがに自殺行為だ。
 キャバリアすら巻き上げる嵐を生身で渡る。それを可能にする無茶の答えとは。
 かっと見開くユリウスの瞳が血に染まる。
 湧き上がるヴァンパイアの血統による力が身体を燃やすかのように全身にいきわたる。
 背に生えた蝙蝠の翼を使えば飛べなくはない。しかし、それをやったところで、暴風の中に翼を折られる未来が見える。
 そんな無茶は、よほどのことが無い限りやらないし、この作戦ではまるで蝙蝠ではなく猪である。
 そう、蝙蝠の翼はまだ使わず、これは風よけに身体を包むために使う。
 遺跡の影から外に足を踏み出すだけでも圧を感じるほどの暴風。しかし、その足元の砂が全て巻き上げられているわけではない。
 どんな強力な風でも、地面すれすれでは分散してしまう。
 つまりは、身をかがめて匍匐前進で進めば、風の影響は最小限で済むはずだ。
「血統覚醒して呼び起こしたヴァンパイアの力をこんなことに使うのは気が引けるがな」
 ちらちらと地面付近を浮いたり沈んだりと翻弄される砂粒を見やりながら遅々と進みつつ、ユリウスは呟く。
 その拍子に口の中に砂が入ってじゃりじゃりと気持ちが悪いが、この程度で済むなら安いものだ。
 格好が悪いと笑いたくば笑え。この類の、泥臭い戦術はそれなりにこなしてきたのである。
 騎士だなんだと言われても、暗殺まがいの事だっていくらもやった。
 嵐の嬌声が、戦場の喧騒と重なる。
 口中の砂の味が、口だけでなく心も枯渇させるかのようだった。
 恐らくは、多く者が、この地下砂漠に生身を晒すことなどすまい。
 こんな暗闇の中、砂漠に一人生身でほったらかされたら、生きて帰れる保証もないのだから。
 この戦いは孤独だ。
 でもだからこそ、成る。
「ぷふっ、ペッ! 真下だな。見えていないかな?」
 どれほど時間をかけたろうか。
 空中でふんぞり返る敵キャバリアの真下まで匍匐で接近したユリウスは、その場で立ち上がって空を仰ぐ。
 やはりというか、あのキャバリアの周囲だけは台風の目であるのかのように風の影響がほとんどない。
「絡繰というのも、一長一短だな。大きくなるほど、死角も増えるというわけだ」
 ばさっと翼を広げ、大きく跳躍する。
 死角のからの攻撃。暗殺の手口と同じようなものだ。
 ならば、気づかれない内に最大の戦果を奪わねば。
 真上に急降下するかのように飛び上がったユリウスの剣が、蝙蝠の様なキャバリアのちょうど膝にあたる部分に突き刺さった。
『ぬぅ!? 攻撃を食らっているだと!? 貴様、いつの間に……生身だと!?』
「そうだ。馬鹿にできんだろう、こういうのも!」
 こんなところに、まさしくこんなところにいきなりやって来たユリウスの姿に狼狽するキャバリアのパイロットは思わず機体を揺らしてしまうが、それでもユリウスは振り落とされまいと、更に関節の隙間に剣を突き立てる。
 めり込んだ切っ先の付近で何かがスパークし、小爆発を起こすと、敵が体勢を取り戻すよりも前に、飛び立つ。
「足を一本、貰ったぞ──ぐっ!」
 爆破の衝撃とともに風に乗り、すぐさま離脱を計るユリウスは、猛烈に体のだるさを覚えると共に口の端に血を滴らせる。
 敵キャバリアの有毒装甲の影響であったが、いくらか毒に耐性もあるユリウスは、猛烈な倦怠感に苛まれながらも、風に乗ってその皮翼を広げまんまと逃げおおせる。
「チッ、ちょっと小突いただけでこの調子か。だが、仕事はしたぞ。それじゃあ、あとは任せた」
 うまくやれよ。と、ユリウスは生身でも十分に仕事をこなせば、他の猟兵たちにその活路を託すのであった。
 ……なんだか悲壮に見えるが、ちゃんと生きてるし、なんならまだ戦える余裕はあるぞ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

カグヤ・アルトニウス
〇そういえば、こんな要塞を見た事がありました

この要塞に既視感を感じてましたが、かつて銀河帝国が惑星を改造して作った拠点がこんな感じで、先日の装備群もそこの攻略の為に用意した物でした

アドリブ歓迎
【乗騎】
ホワイト・レクイエム

(行動)
まず、UCで竜巻の風圧を無効化
次いで、ソードオブビクトリーの内二基をビームソードモードにして両手に装備、残りは両肩と腰に装備し、ビームガンモードにして突撃を仕掛けます

テレポート併用の【残像】を伴う【空中戦】とビームガンによる【制圧射撃】で反撃を振り切りながら、ビームソードの二刀による【二回攻撃】+【斬撃波】の連続攻撃で削ります

流石に竜巻ガン無視で来るのは予想外でしょうね



 地の底の砂漠、フロンティアラインには数知れない遺跡が眠っているという。
 それは、かつては栄えた文明を思わせるものでもあり、どこかから落ちてきて地の底に沈んだともとれるくらい、地層に見合わぬオーパーツとも言われていた。
 これがこれという説だけでも目眩がするくらいの議論が交わされ、この地の底の砂漠に沈む文明郡のあらましを事細かく説明できるものは、もはや存在しないのかもしれない。
 それでもこれら遺跡が、ほとんど完璧な姿のまま埋没し、或は出土するのは、この地が空間を伴った広大な砂漠であるからだろう。
 地底からの奇襲を受け、強烈な暴風兵器の前に撤退を選択した探索隊は、先に仕掛けてきたズーガイ帝国の尖兵たちの生き残りと共に、付近の遺跡の中に逃げ込むことで事なきを得た。
 この遺跡はかなり頑丈なようで、まるで宇宙船か要塞のように強固な外殻もあって、暴風兵器の砂塵吹き荒れる中でも、その姿を傷一つ付けることなく耐えている。
『フハハハ!! 我等の先遣隊を片付けていい気になっていたようだが、それもここまでよ! この砂漠に暴風兵器。これほど相性の良いものもあるまい!』
 この遺跡に吹き付ける砂塵を作り出している暴風兵器ストームブリング。
 最大出力ではキャバリアすら吹き飛ばせるとも言うこの兵器を搭載する「空を目指す者」は、嵐の影の向こうで腕組みし、偉そうにふんぞり返っている。
 確かにその嵐の向こう側に到達するためには、暴風兵器をどうにかするか、嵐の中を突っ切るほかないだろう。
 だが、暴風兵器とかのキャバリアの武装とは、まったく別個のものであり、敵は暴風を用いたままでもキャバリアの兵装を使うことが可能である。
「なかなか厄介な事になってきましたが……ふむふむ」
 新雪の如き白銀の装甲をもつキャバリア、ホワイト・レクイエムに乗り込むカグヤ・アルトニウスは、暴風に機体制御を引っ張られながらも遺跡の頭頂に腰かけるようにして機体を落ち着ける。
 有重力下でも活用可能な機体とはいえ、基本的には制御系にカグヤ本人のサイキックを用いているホワイト・レクイエムにかかる機体負荷は、セーフティシャッターが働いているにしても圧迫感として圧し掛かってくる。
 ただの風がここまで機体の負担になるとは、未知の経験である。
 しかしながら、スペースシップワールドの超先進的な科学技術によって特異点エンジンをメイン動力としているこの機体には、相転移装甲がある。
 生半可な砂嵐程度で参ったりはしない。
 だが、機体はよくとも、先ほどのサーモンマシンを破壊する際に用いたソードオブビクトリーは、うっかりすると吹き飛ばされてしまいかねない。
 カグヤはこれらを再び変形させ、ホワイト・レクイエム本体に装着する事で紛失を防ぎ、また武装として反撃準備に取り掛かる。
 問題は、この機体すら地に押し付けてしまう暴風だが、こちらにも対応策はある。
「おや?」
 さて、そろそろ反撃に転じ、そのご尊顔を拝見……と、手を突いた遺跡の質感を見て、カグヤは何かを思い出す。
 最初に埋もれた遺跡を見た時点で、何かしらの既視感はあったのだが、暴風に煽られて周囲の砂が吹き飛ばされたことで、埋もれた部分が浮き上がって全体を掴みやすくなっていた。
「この要塞に既視感を感じてましたが、かつて銀河帝国が惑星を改造して作った拠点がこんな感じで、先日の装備群もそこの攻略の為に用意した物でした」
 サーモンマシンを相手取った時に、実に都合のよい武装をおいそれと出したものだと、自分自身感心していたものだが、似たような例が先にあったのならば、それもうなずける。
 似た状況に、効果のある攻撃をほとんど無意識のうちに経験から割り出していたのだと気付くと、カグヤにも闘志がわいてくる。
 なぜ銀河帝国の風合いを感じさせるような遺跡が、こんな場所に埋もれているかは謎だがこの存在があることで、自分の歩んできた道のりを改めて再認識する。
 経験は無駄にならない。だからいつか、この砂漠で戦った記憶が先に進むための役に立つと信じて。
 なんとしても、こいつに勝たねばという意志が生まれる。
「ダイダロスの本領……見せてあげましょう」
 【ダイダロス・アサルト】即ち、汎用空間戦闘用ユニットとサイキックパワーを用いた戦闘マニューバの応用である。
 有重力下でも空間戦闘でも十分に出力を期待できるスラスターだが、推進機能の前には、抵抗と慣性という壁が立ちはだかる。
 まして人が乗り込むキャバリアは大変な重量である。
 だが仮に、加速に邪魔になるそれらの抵抗が全て亡くなった場合、ダイダロスはどこまで走ってくれるだろう。
 この願いは、ホワイト・レクイエムの周囲にあらゆる空気抵抗や慣性を無視する力場を作り出すことで成る。
 翼を得たかのように、カグヤの機体が暴風の中を無関係に飛び上がり、砂塵の壁に食らいつく。
 さすがに飛び交う砂の勢いまでは殺せないが、両腕に装着したソードオブビクトリーのビームソードは、撒き上がる砂塵の壁を十字に切り裂き、さらにその先へと突撃していく。
『なにっ!? この嵐の中を、どうしてそうも易々と!』
「いけぇぇい!」
 迎え撃つ敵キャバリアも、嵐を突っ切るカグヤの機体に面食らったものの、武装を展開し応戦する。
 砂塵に穴をあけたところを狙い撃ったはずだが、その攻撃が捉えたのは短距離のテレポートの際に残った残像のみ。
 もはや慣性も空気抵抗もなく、曲線的に動いても直進スピードと何ら変わらぬ速度で動き回れるホワイト・レクイエムの突撃を捉えるには、自身も吹き飛ばされかねない暴風兵器の展開中には厳しかったようだ。
『ちぃ、多少はできるようだが!』
 撃って当たらぬなら、格闘を仕掛けるのみ。とばかりに、手甲からプラズマの刃が伸びる。
 ホワイト・レクイエムのビームソードと、敵キャバリアのプラズマがかち合い、激しく光を放つ。
 勝敗を分かったのは、この嵐の中で空中でも踏ん張りの利くカグヤ機であった。
「流石に、竜巻をガン無視で来るのは予想外でしょうね」
『な、なぜだぁ!』
 体勢を崩したのを見逃さず、振り払うビームソードの切っ先が光波となって「空を目指す者」に襲い掛かった。
 そこへさらに追撃をかけようと試みるカグヤであったが、途端に機体が重くなったように錯覚する。
「クッ、セイフティか……」
 サイキックでエネルギー場を形成し、機体を覆い続けるのにはいくらカグヤのサイキック能力を以てしても、戦闘機動で戦い続けられるのはほんの短時間であるらしい。
 無茶をすればもう少しは伸びるかもしれないが、どうやら敵はこいつだけではなさそうだ。
 決めきれなかったのは惜しいが、余力は残しておくべきだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
すんげぇ風ですわ!今日のお天気予報で暴風警報なんて出てませんでしたのに!
あの飛んでる機体の仕業ですわね!
迷惑極まりねぇですわ!

暴風に飛ばされないように致しませんと…
ヴリちゃん!ラースオブザパワーですわ!
大きな岩や瓦礫を掴んでそれを重りにしますわ
でもこのままでは動けませんわね
闇雲に撃っても風のせいで当たらなさそうですわ
ここはじっと我慢の時ですわ
掴んだものを盾にして攻撃を凌ぎましょう
あちらが近寄ってきたところを狙って攻撃致しますのよ
掴んでいた重りを振り回して驚かせてさしあげますわ
怯んだらビームキャノンで吹っ飛ばしてやりますわ


カシム・ディーン
【情報収集・視力・戦闘知識】

敵の動きとパターン
そして機体構造と中の人の状況も分析

【属性攻撃・迷彩】
光学迷彩継続
水で熱源隠蔽

UC詠唱開始
【弾幕・念動力・スナイパー・空中戦・武器受け】
飛び回りながら念動光弾を乱射
距離を保ちつつ猛攻
敵の攻撃は鎌剣で防御

更に回避が難しい状況であえて姿を現し
UC発動
回避に気絶寸前レベルの代償を必要とする困難さで打ち放つ

回避したところを
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
自分を犠牲にするってのは中々きっついですね

コックピットを避けて切断と破壊を狙い

可能ならそのまま引き抜いて搭乗者の捕縛を試みる

中身が美少女ならよかったんですがねっ

「えーこの子も可愛いじゃんー☆」



 地底の砂漠フロンティアラインには、文明の層が天蓋となっているため、この世界は常に薄闇に染まっている。
 完全な暗黒とならないのは、この地の砂漠を構成する砂が黄金にも近い光を帯びているからであろう。
 普段から穏やかに積もりに積もり、高度な文明を思わせる遺跡を浮かべては沈める墓土の役割を担っていたそれらが、今は牙を剥いていた。
 燃え盛る炎のように音を上げる暴風が、敵キャバリアの暴風兵器によって形成され、猛烈な砂塵が黄土色の壁のように立ちはだかり、それは金属の塊であるキャバリアですら吹き飛ばしてしまいかねない。
 さしもの凄腕傭兵として参戦した猟兵たちのキャバリアとて、この規格外の暴風には、動きを止めざるを得ない。
 攻撃の有効範囲からかなり離れなければ、機体が流されそうになるという、それはもう驚異的な暴風であった。
「すんげぇ風ですわ! 今日のお天気予報で暴風警報なんて出てませんでしたのに!」
 メサイア・エルネイジュは、相棒の肉食恐竜のような黒いキャバリアのコクピットに映し出される光景が黄土色の嵐に塗れ、外部収音センサーから拾う音声が軒並み雑音になってしまうことに、早くもうんざりしていた。
 多くの射撃兵器を積載し、粒子砲の出力に堪え得るだけの太い両足を備えているにもかかわらず、ヴリトラはたかが暴風に煽られているという状況に、たたらを踏んでいる。
 流石に戦うどころではないと、探索隊の逃げ込んだ遺跡の一部、掴みやすそうな柱に、ちょっとかわいいポーズでしがみ付くことで安定を得る。
「うぐ、ぐ……まさか、風で機体がこうも流されるとは」
 ヴリトラが立ち往生するすぐ近くで、別のキャバリアもまた、この暴風に煽られた影響で動きを封じられていた。
 カシム・ディーンの駆る銀髪美少女……もといメルクリウスは、この風を利用して飛び回る戦法を考えていたが、想像以上の乱気流に晒されて、踏ん張っていないとあらぬ方向に飛ばされそうになっている状態であった。
『ちょ、ちょっとまって……練習が必要かも』
 さしもの賢者の石、メルクリウスも予想外の風量を前に、何やらキャパシティを食っているようだった。
 何やらいっぱいいっぱいのメルシーは、ひとまず置いておいて、吹き飛ばされないように風の影響の受けにくいところから、カシムは敵の観察に徹する。
 メルシーの支援無しでは、どの道この砂塵の中を飛ぶことは難しいだろう。
 彼女が待てというのなら、答えを出す筋道を立てている真っ最中という事だ。
 口に出すことはないが、まかり間違っても軽率に口を滑らせることは無いのだが、カシムは実際のところ、メルシーの知性を信用している。
 普段はかなりアホっぽい雰囲気をしているので忘れそうになるが。
 ならば、その操者たるカシムができる事と言えば、なんだろう。
 この人一人がようやく入り込めるようなコクピットの中でカシムが可能なことは、自らの魔術の構築……そして、自分の周囲にある様々な事象の観察。
 観察して得た情報を、自身の戦闘知識を加えて、現状に落とし込んでいく。
 そうして構築する作戦が成るように、動けないなりに準備を重ねていくのである。
 カシムの得た帝竜眼には、幾多の帝竜の魔力が込められている。
 そこから再現するかつての強敵の得意技は、いずれも必殺級だが、果たしてこの状況に最も効果のあるものは……。
 焦りが生じ始めるカシムの近くで、遺跡の柱にしがみ付く狂暴な獣のようなキャバリアが喉を鳴らすのが見えた。
「あの飛んでる機体の仕業ですわね!
 迷惑極まりねぇですわ!」
 ヴリトラの中では、メサイアが腕を振り上げんばかりに憤りをあらわにしていた。
 あまりにも頭に血が上ったのか、王族らしからぬお下品なお言葉になっておりますわよ。
 勢いついでに腕のビーム砲で砂塵の向こうに見える機体へ射撃を試みるが、闇雲に撃たれたそれは、あまりにも分厚い砂塵の壁をぼすぼすっと抉るのみ。
 自ら輝きを帯びるほどのこの砂漠の砂に吸い込まれるように消えていって、まるで効果が見られない。
 そもそも射程範囲外からでは、通り抜けたとしても大したダメージには至らないだろう。
「ぐぬぬ、もう少し近づかないとダメですわね……でも、暴風に飛ばされないように致しませんと……」
 ぜんっぜん当たらねぇ。とばかり拳をぷるぷるとさせるメサイアだが、茹で上がりそうになった頭を、彼女はいったん沈める。
 王族たる者、常に紅茶を嗜む程度の余裕を持たねばならない。
 誇りが、冷静さを取り戻す。そこでようやく、力押しだけではイカンと思い直したところで、メサイアは周囲を見回すと、足元に転がる壊れた遺跡の部品を見つける。
 ヴリトラがしがみ付いている柱とよく似ているそれを見て、メサイアは思いつく。
「ヴリちゃん! 【ラースオブザパワー】ですわ!」
 嵐の向こう側を威嚇するように唸り続けていたヴリトラだったが、【憤怒の剛力】の号令を受けたところ、すぐにその意図を理解し、前足を器用に展開して壊れた柱をよいしょと持ち上げる。
 メサイアの思いついた作戦。それは、重そうな岩や瓦礫を持って、自らの重量を増して耐えるという戦法だった。
 だが、その作戦にはちょっとした問題がある。巨大遺跡の部品はかなり重たい。持って歩くのは凶暴なヴリトラでもしんどそうである。
「ヴリちゃん。ここはじっと我慢の時ですわ。
 掴んだものを盾にして攻撃を凌ぎましょう」
 ほとんど身動きが取れない。しかし、わずかずつだが相手に近づいていく。
 これで相手が焦れて攻撃に転じた時が、こちらの勝機!
 そしてメサイアたちの攻防を見ていたカシムもまた、別の発見をしていた。
「さっきのビーム……直撃はしなかったようですが、相手が動いた」
『ん-、わかったー! 最大パワーのときは、自分も吹っ飛んじゃうから、自分の周りだけ台風の目にしてるんだよー!』
「やはり! で、わかったっていうのは?」
 目ざとい盗賊の本領発揮か、カシムはあのわずかな攻防で暴風兵器の運用に欠陥があることを見抜いていた。
 そして長考から復帰したメルシーが上げた歓声は、説明内容とは別の事のようだった。
『もう飛べるよ。全部覚えたから』
「覚えたって……この乱気流の流れ全部か?」
 現場を観察していたのはなにもカシムだけではなかった。
 答える代わりに、暴風の中をメルクリウスはその流れに身を任せるかのように飛び、わずかなスラスター調整のみでスピードに乗り、失速せずに舞って見せることで応える。
「よし、これなら有利に立ち回れますね。先ほどと同じ手で行く」
『了解ー!』
 属性魔術で機体を隠蔽し、その姿を覆い隠すと、嵐の中から魔法の光弾を次々と放つ。
『むう!? こちらが見えているのか? 馬鹿な、なぜこの風の中で、こうも正確に……くうっ!?』
 続けざまに高速で飛び回りながら撃ち込まれる光弾を捌いていくが、大きく避け過ぎると、自身が作り出した安全地帯である台風の目から逸れて、自らも暴風兵器の影響を受けてしまう。
 苦し紛れに反撃に転ずるも、その姿を捉える事も手応えも無い状況に、カシム機は関係なく嵐の中から攻撃を放ってくる。
 もう限界だ! とばかりに、ついに「空を目指す者」は暴風兵器の出力を弱め、猛烈な砂塵を解除する。
 舞い散る砂粒の中に、不自然な質量を伴う影。
『見つけたぞぉ、そこだぁ!』
「う、しまった……」
 異常なほどの正確なアンダーカバームーヴ。肩の装甲から放たれる射撃が、迷彩を一時的に解いたメルクリウスを完全に捉えた……かに見えた。
 必ず成功するかに見えた射撃を、敢えて成功に導く形で姿をさらしたのは、ユーベルコードで打ち破るための布石であった。
 攻撃の瞬間は即ち隙。その瞬間にこそ、最大パワーを叩きこめ。
「帝竜眼よ……我が呼びかけに答えよ……!」
 【外典帝竜眼「碎輝」】による、練り上げられた詠唱から繰り出される光り輝くブレスが、絶対成功の射撃と交錯する。
 直後に身を逸らしたため、敵の射撃はすんでのところで回避したが、相手どうだろう。
『ぬぅおおお!?』
 輝く雷に呑まれるその姿を、確かに見た。
 今こそ追撃の時。とばかり、メルクリウスの鎌剣を手に追撃を仕掛けようとするが、再び撒き上がる砂塵が、それを阻む。
 いまさら砂塵など……とも考えたが、「空を目指す者」は咄嗟に砂を巻き上げて自らにまとわりつく雷を散らしているようだった。
 そして目くらましと共に距離を取ろうと地表すれすれまで下降したのだが、その向きがいけなかった。
「お待ちしておりましたわー!」
 砂に塗れた何かが、黒い顎をばくりと開けて雄叫びを上げたかと思えば、その手に持った巨大な柱が横薙ぎに振るわれ、まるでピッチャー返しのようにゴシカァン! とぶん殴る。
 砂塵の中で耐え忍んでいたメサイア駆るヴリトラが、我慢の鬱憤を晴らすかのように重りの柱を振り回し、そのまま手放したかと思えば、背中にマウントしたビームキャノンをこれでもかと連発する。
『わぁ、まてまて! 待った待った! 今嵐、作り直すからー!』
「そうはさせませんわ! ここで、吹っ飛ばして差し上げますわーッ!」
 獰猛な獣さながらに蝙蝠のキャバリアを追いかけるヴリトラの姿に、完全に入り込む隙を見失ったカシムは、逃げ回りつつ悪態をつく敵に対し、嘆息する。
「あれで、中身が美少女だと……ううん、しかし聞こえるのは、熱血少年ボイス……」
『えー、これはこれで、可愛いと思うけどなー☆』
 若干やる気が削がれる思いに腕が重くなるが、それでもあれを止めない限りは、騒ぎは収まるまい。
 雑念はひとまず置いておいて、キャバリアを仕留める事に気持ちを切り替えるカシムであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バーン・マーディ
暴風か
宜しい
その蹂躙に叛逆しよう

【戦闘知識】
暴風の中の突破口の把握

UC発動
【オーラ防御・属性攻撃】
炎のオーラ障壁を機体に展開

マーズよ…耐えよ

【武器受け・運転】
可能な限り何度も回避と軍神の剣による防御でいなし続け
敵の攻撃が更に高まるのを分析
回避できず傷つきながらも致命は避け

その威力が此方を破壊するレベルまで高まった所で

UC発動
【カウンター・二回攻撃・怪力・鎧無視攻撃・鎧破壊・生命力吸収】
敵の高まり切った力をも乗せてのカウンター攻撃!

恐るべき攻撃だ
故に…その蹂躙に我らは叛逆しよう

更にエネルギーを容赦なく吸収して此方のダメージ回復も図る

尚搭乗席は避けて不殺徹底

随分と追い詰められているようだな?



 度重なる猟兵たちの猛攻を前に、蝙蝠型のキャバリア「空を目指す者」は、決して少なくはない手傷を追っている。
 しかし、いずれもあと一歩のところまで追い詰めながらも、決めきれていない。
 何故ならば、「空を目指す者」には絶対的な武装、暴風兵器ストームブリングの巻き起こす暴風が健在であり、攻めようによっては何度か解除させることにも成功したが、それをまだ破壊に至ってはいない。
 やはり基本的には軽装の空戦キャバリアであるためか、天候を操るという超兵器の戦略的優位性は、たとえちょっと残念な雰囲気のあるリーダー機とて理解しているのだろう。
『予想以上のダメージを食ってしまった! ええい、サーモンマシンの者どもは何をやっているのだ!』
 暴風兵器の再起動によって猛烈な砂塵の防壁を作り出した「空を目指す者」が苛立ったように機体の損傷を鑑みる。
 もはや地上で直立するのは難しい。これで飛行ユニットまで失ってしまえば、自力での帰還すら危うくなってしまう。
 いかん。これはいかんぞ。上司の査定に響いてしまう。
 地底帝国ズーガイは縦社会である。
 尖兵たる自分たちには、サーモンマシンのような量産型しか卸されない中、数少ない聖域進出の機会とあって搭乗を許された特殊型。
 まして、今回の遠征に際し、暴風兵器などという最新鋭の装備まで付けてもらっておきながらのこの体たらく。
 あたら部下を失っただけでも既に降格は免れまいが、この上で機体を失いでもしたらどうなることか。
 それなら部下に当たらなければいいのに。などというのは、今更なお話である。
『む、奴らめ……まだ諦めないというのか……ええい、何としてでも戦果を上げなくては!』
 この暴風の中を、キャバリア単体で歩んでくる剛の者がいる。
 最大出力で繰り出される暴風は、キャバリアをも吹き飛ばすほどの猛烈なもののはずだが、奴らはそれを様々な手段で掻い潜ってきた。
 もはや油断はすまい。
 それは、さながら黄土色の渓谷に挑むかのような光景であった。
 差し詰めここはその谷底で、薄暗い黒い砂漠には、まるで巌の様な砂塵が列をなしている。
 吹き付ける風が、何十トンもの砂を伴って凶器と化する。
 その最中を、バーン・マーディ駆るマーズは、膝のあたりまで砂に埋もれながら遅々と歩んでいた。
「重いか。流石に重かろう。侮れぬものよ、暴風。
 宜しい。その蹂躙に叛逆しよう」
 戦の神の名を冠すマーズにまとわりつくかのように、砂の嵐が固く重くのしかかる。
 赤熱する石炭の様な装甲に吹き付ける砂塵は、大波の様な凄まじい力を持っている。
 前に進むにも、関節のあちこちがぎしぎしと悲鳴を上げているようだった。
 だがしかし、バーンにとって逆境は日常。悪の道を往くからには、後ろ指を指されるは日常。
 向かい風、何するものぞ。
 その強い意志に応えるかのように、マーズもまた、手にする大振りの剣を地に突き刺し、着実に歩みを進めるのであった。
『フハハハ、どうした風来坊。風当たりが強いようだな?』
 ふと見上げれば、そこには敵の姿があった。
 マーズの剣の届くはるか先の上空に、腕組みをしてふんぞり返る蝙蝠のキャバリア。
 この暴風を操り、空という優位に立つその姿は脅威という他ない。
「そうだな。好かれる事は少ない。お互い様だと思うが?」
『その様で、いつまで減らず口が叩けるものかな!』
 しゃらくさい、とばかり、蝙蝠の肩に備えた装甲からエネルギー砲が出現し、身動きできないマーズへと射撃される。
 おそらくは対地性能に秀でたそれを、直前に地に刺した剣を抜き放ち、斬り払う。
 指向性を失って光の粒となって消えるエネルギー弾。
 しかし、大振りの剣を存分に振り回すには、今という環境は厳しい。
 支えを一つ失ったマーズは、バランスを崩して風にあおられながらも数歩後退するのみに留まった。
 一発二発程度なら、まったく問題なく相手の攻撃をいなせる。そう、一発二発程度なら。
『無様じゃないか。まるで新兵のようだ! これでも、その余裕を維持できるか!?』
 続けざまの射撃。今度は、周囲の足場を踏み荒らすかのような掃射である。
「マーズよ、耐えよ……!」
 降りかかる光の格子を、致命的なものだけ選んで払い、あるいは後退して弾道から逸れる。
 その動きは熟練の騎士さながらの足運びであるが、質量を伴う砂塵の最中では、どうしても動きが窮屈になってしまい、いくつかは完全に防ぎきれずに、マーズの装甲が悲鳴を上げる。
 そのたびに、マーズのアイカメラ、その双眸が血走ったかのように輝き、背負った光輪に火が灯る。
『どうしたどうしたぁ! 後がないぞ!』
「ぬ、くく……そちらこそ、どうした? その程度の打ち込みでは、我の命には届かぬぞ」
 加虐の色を含むその声を、更に煽り立てるかのように、バーンはマーズの顎をしゃくらせる。
 既にその装甲はいくらか罅割れ、黒い騎士じみたその鎧からは崩れるその隙間からマグマでも噴出しそうなほどであった。
 確かにマーズの動きは、この暴風の最中でさえ、致命には届かぬほどの防御力をもっていた。
 それは、十分に相手との距離があるからこそ可能であるわけで、こちらが抗うだけの力を削がれたならば、たとえ装甲が厚くとも、仕留める手段はあるだろう。
「それとも、何か。その恐ろしい天候兵器だけなのか。貴様のそれは」
 それが決定的であった。
 機体越しであっても、「空を目指す者」から愉悦が消え、怒りをあらわにするのが見て取れた。
『ならば、今、狩ってやろう! いいとも、そろそろ的当てにも飽いてきたところよ!』
 宙返りをうつ蝙蝠が、その手に展開した手甲の先からプラズマの爪を生やして、降下してくる。
 それと同時に、向かい風が更に強くなり、マーズが後ずさる。
「耐えよ。その先に、活路あり」
 バーンの強い意志が、マーズを踏み止まらせる。
 その実、マーズは破壊に重きを置くキャバリアなのであろう。
 激しい攻撃を受け続ければ、神機の名にもかかわらず破壊されてしまうはずだ。
 絶対的な力など存在しない。
 故に、優勢と劣勢には翼があるのだ。
 相手の優位性は語るべくもない。ただ、激しい攻撃を防御し、いなし続けるうちにバーンは相手の攻撃が苛烈を極めるタイミングを待っていた。
 いつか決めに来る。
 そして、彼の暴風兵器は、どうあっても魔法の力などではなく、それは自分だけ効力が及ばないなどという都合の良いものではないことも看破していた。
 即ち、近接攻撃を仕掛けてくる、こちらを仕留めに来るその瞬間こそが、活路なのだと。
 そして、マーズにかかる風の枷がふと軽くなる瞬間がやってきた。
「恐るべき攻撃だ。故に……その蹂躙に、我等は叛逆しよう」
 ごう、とマーズの背負う光輪に炎が上がり、打ち付ける砂塵が風を失ってほどけていく中に炎の障壁となって傷ついた機体を補うかのように纏う。
 それを最後の悪あがきと受け取ったか、「空を目指す者」の一撃がマーズを捉える。
 いや、その軌道を直前に見切ったマーズの方が半歩分だけ踏み込んでおり、相対距離の分加速したバーンの【大いなる叛逆】がカウンター気味にその大剣に乗って炸裂する。
『ぐおおっ!? う、動けたのかぁ!?』
 火を吹くような交錯。もはや回避不能のカウンターを貰った「空を目指す者」がその身を裂かれてあらぬ方向へ吹き飛んでいく。
 渾身のカウンター。それで仕留めるつもりであったが、不殺を徹底したが故か、芯を捉える剣筋を逸らす羽目になった。
 だがしかし、もはや片腕となった機体は、空中でもバランスの維持は難しいだろう。
 そして、天候を操るという暴風兵器というのは、やはり凄まじいエネルギーを食うのだろう。
 自らの意志を持つという神機マーズは、切り裂く最中にその暴風を作り出すエネルギーを炎へと変換し、吸収していた。
 奪い取ったエネルギーが、罅割れた装甲を瞬く間に修復していくと、打って変わって大分傷み始めたままの状態でなお空を飛ぶ蝙蝠へと剣を伸ばす。
「随分と、追い詰められているようだな?」
 受けた言葉を返すかのように、バーンの言葉が地の上から空を見下ろしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
プラズマライフルが粒子ビームを撃つのは初代系の仕様です。
プラズマは荷電粒子の集合なので間違ってもいないんですが、
紛らわしいので後に「レーザーライフル」に代替わりしました。

誰に通じるんですかこんな話。それはともかく。

エイストラの推力なら暴風にも抗せますが、運動性が激減します。
ここは遺跡に張り付いて風に耐えつつ狙撃するとしましょう。
索敵/先制攻撃/スナイパー/鎧無視攻撃/貫通攻撃。
直撃すれば要塞も貫通し得る戦域兵器のご挨拶をお受け下さい。

一撃で済まなければジャミング/エネルギー充填/見切り/軽業/
推力移動/オーラ防御(と称する衝撃波装甲)/おびき寄せ/
2回攻撃(二発目)。距離に構わずいきますね。


ティエル・ティエリエル
むむむっ!仲間だったロボットたちにも容赦なしだね!!
そんな悪い子はボクが懲らしめてやるぞ☆

ふふーん、この重装甲ハイパワーなアイアンリブスなら暴風にだって耐えられるはずだよ!
まずはヴァリアントレーザーで空中に飛んでる敵リーダーを牽制するよ♪
こちらに注意を引き付けたところで【妖精姫のタライ罠】で回りのサーモン・マシンの残骸を
1個の激重のタライに変えてどかーんだ!

頭をぶつけて落ちてきたところを、いっけー、ヴァリアントスマッシャーだ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



 黒い砂漠を覆い尽くさん勢いを見せた暴風兵器による巨大な砂塵も、度重なる猟兵たちの活躍により、その出力を落とし始めている。
 とはいえ、いくらかダメージを与えたところで、肝心の暴風兵器を完全破壊するには至っていない。
 どうやら敵のリーダー機である「空を目指す者」を破壊してしまわない限り、この暴風は止みそうにない。
 相手もその優位性を心得ているようで、そのシステムの破壊を何としてでも阻止しているらしかった。
「むむむっ! 仲間だったロボットたちにも容赦なしだね!!」
 そびえ立つような砂塵の中を、鬼のようなキャバリアが突き進む。
 おおよそ数十トンにも及ぶかのような砂と伴う暴風の最中を、ティエル・ティエリエルが乗り込む遺跡のキャバリア、アイアンリブスは堂々と姿を見せて歩む。
 キャバリアを吹き飛ばしてしまいかねない暴風の吹き荒ぶ中を敢えて姿を見せて歩み出るのはリスクでしかない。
 しかし重装甲ハイパワーを誇るアイアンリブスならば、その風もへっちゃら……とまでは言わぬでも、動きを制限されながらその歩みは力強さを感じさせる。
 操縦が簡単でも、並のパイロットでは持て余すパワーというのは、どうやら誇張ではないらしい。
「そんな悪い子はボクが懲らしめてやるぞ☆」
 部下を使い捨てる非情さを見せた「空を目指す者」の行動に憤るティエルが、上空の砂塵の向こうに隠れる敵を指さして宣言する。
 ごつごつと尖ったパーツの付いた、やたら目立つ機体で行うその挑発ポーズは、ティエルのちゃっかりとした可愛らしい宣言も相まって、実に敵側から目につくことだろう。
 それはティエル本人の狙いでもあったが、味方からも当然目立っていた。
「自ら的になるつもりですかね……大した自信ですが、それが可能な装甲なのでしょう」
 カッコイイポーズで堂々と表を行くアイアンリブスを遺跡の物陰から覗いていたノエル・カンナビスの乗り込むエイストラであった。
 子供の声で宣言するので、ちょっと心配になってしまうのだが、ああいったスーパーロボットというものに乗り込むのは、やはり少年少女が相応しいのか。
 人間が自身のパーツの代替として機械を取り入れるサイボーグとは違い、機械が人の資質を得る過程とも言うべきレプリカントであるノエルは、しばしば戦闘には余計な思索に耽る。
 やはりこういうものはお約束と言うべきなのか。考えてもみれば、どのフィクションに於いても、戦場に駆り出されるのは年若い女子供であることが多い。
 エンターテイメントには見た目と設定にセンセーションが必要なのかもしれないが、敢えて熟練の年かさを積んだ戦士が主役足り得ないのはただの流行の煽りなのか……などと考えるのはナーバスなのだろうか。
 いやいやいや、今はこの迷惑な嵐をどうにかせねばなるまい。
 遺跡を盾に暴風を避ける位置につけているノエルにも、作戦はある。
 この暴風の中でも、ノエルのエイストラならば空戦も不可能ではない。
 ただ、影響がまるでないというわけにもいかず、運動性能は著しく低下してしまうと予想できる。
 相手の間合いに入り込めれば別だろうが、それを対策していない筈もないだろう。
「とすれば、無理に悪天候に飛び込むより、プラズマライフルで狙撃を……」
 と呟いたところで、ふとノエルは明後日の方向を向いてコクピットの中で指を立てる。
「プラズマライフルが粒子ビームを撃つのは初代系の仕様です。
 プラズマは荷電粒子の集合なので間違ってもいないんですが、
 紛らわしいので後に「レーザーライフル」に代替わりしました」
 誰に説明しているのだろう。わかった。のちのハイレーザーライフルな。知ってる知ってる。
 そんな一部の人間にしか通用しないようなプレイングをどうやって拾ったものか考えものだが、とにかく愛されているがゆえにネタにされやすいアレに近いプラズマライフルによる狙撃。
 それこそがノエルのプランであった。
 どうでもいい話だが、貴重なプレイングの文字数を、そんなことに割いて良いのか。
 ただし、この作戦にもちょっとした問題がある。
 狙撃の弱点は、狙撃ポイントが特定されやすいことにある。特に、この嵐を避けている状況では、動き回るのにそう容易くはない。
 下手をすればこちらの方が狙い撃ちされかねない。
 とまぁ、そんな時にティエルとアイアンリブスの存在が大きくなるのである。
「ふふーん、出てこないつもりだね! じゃあ、炙り出してやるもんね! 行くよ、ヴァリアントレーザァァァァ!!」
 ティエルが更に相手を煽り立てるかのように、攻撃を開始する。
 元気よく武器名を叫び、繰り出されたのはアイアンリブスの頭部から前方に突き出た一本角より照射される真っ赤な熱光線。
 発射口がそれでいいのかという根本的なツッコミはさておいて、この砂塵の中にどうやらそのレーザーはあまり効果的ではない。
 分厚い砂嵐を切り裂くように薙がれるレーザーの軌跡は、すぐに再生するように塞がってしまう。
 だが、ダメージを与えられなくても別にいい。注意を向けさせ、何かしらのリアクションを起こさせて、場所を特定するのが目的なのだから。
 行き当たりばったりに見えて、ちゃっかりしているティエルは、その戦い方からしてアドリブの多いものなのかもしれない。
 そして、その意図を見出したノエルは、砂塵が切り裂かれるたびに自前のレーダー機能を活用し、砂塵の向こう側にいる敵の位置の把握を優先する。
「むーん、だいたいあの辺りかなー?」
「……見つけました」
 それはほぼ同時。
 いや、攻撃に移るのはノエルの方が速かった。
 リアクターから直接エネルギーを供給する事で大出力のビームを発射できるライフルに、今度の一撃は貯蔵分のエネルギーをつぎ込んで更に強力な一撃とする。
「直撃すれば要塞も貫通し得る戦域兵器のご挨拶をお受け下さい」
 射撃姿勢に固定した状態でも、機体が反動で押し戻されるほどの大出力。
 【インクリーザー】。発射されたビームは光の束となって砂塵を突き破り、一瞬にして砂粒を融解せしめる。
 そしてそれは、「空を目指す者」へと直撃……はしなかったが、その付近を通過しただけでも、その煽りを食らって機体の制動を揺るがす。
『うおわっ!? 何故こちらの位置が!? 砂塵によるジャミングが効かんのか!?』
「角度がきつい……もう一射」
 狼狽した様子の敵キャバリアの様子など構わず、ノエルはすかさず次の一撃を放つべくエイストラを飛ばす。
 下からよりも、高度を合わせる方が、誤差が少ない。もはや、風向きがどうとか構っていられない。
『ぬう、撃たせるものか!』
「いーや、今度はこっちだよ♪」
 反撃の体勢に移る「空を目指す者」だったが、そういえば周囲が急に暗くなったのに気づく。
 いや元から暗い砂漠ではあったのだが、急に真上に傘でもかかったかのような明度の落ち方であった。
 それは、ティエルの悪戯っぽい声と共に、出現した。
 元はその辺に散らばっていたサーモンマシンの残骸を利用し変換されたそれは【妖精姫のタライ罠】。
 要するにまぁ、キャバリアが水洗いできるほどのでかいタライであった。
 ずどん、とおおよそタライとは思えぬ衝撃音と共に、蝙蝠型のキャバリアの頭部にタライの底がめり込んだ。
「──発射!」
 時が止まったかのような、それこそ冗談のような隙が生まれ、ただマイペースだったノエルが【インクリーザー】の二射目を放った。
 マップ兵器さながらに蝙蝠を捉えた粒子ビームが、黒光りする蝙蝠の皮膜翼を消し溶かし、浮力を失った機体は落下をし始める。
「よぉーし、いっけぇー! ヴァリアントスマッシャーだぁー☆」
 そこへすかさず、アイアンリブスの胴体を覆う、あばら骨の様な銀色の装甲が展開し、ごんぶとビームが照射され、「空を目指す者は」その名を評すことなく空に散る事となった。
 それでようやく、嵐は収まった。
 ちなみに、パイロットのロボットヘッドは、ノエルの二射目が命中した直後に脱出していたようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『護城神機『ミネルヴァ』』

POW   :    EP-BS攻性障壁『アイギス』
全身を【護る光盾を構え石化光線を打ち出せる状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    EP-F『グラウクス』/島投げ
【梟型索敵ユニットの超広域索敵】が命中した対象に対し、高威力高命中の【敵の上空より島に匹敵する大質量の岩石】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    戦術報復機構『輝く瞳を持ったもの』
自身の【RXキャバリアグレイヴ『エリクトニオス』】から、戦場の仲間が受けた【損害】に比例した威力と攻撃範囲の【超高速連続刺突と弾幕の如き光弾】を放つ。

イラスト:柿坂八鹿

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はテラ・ウィンディアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『嗚呼、情けなしや……』
 暴風兵器ストームブリングを積んだ敵リーダーのキャバリアは、完膚なきまでに破壊された。
 それにより、遺跡を覆う様に吹き荒れていた猛烈な砂塵は収まり、これ以上の戦いはもう無いものと安堵した空気が流れ始めたときであった。
 突如として響き渡る声と共に、遺跡の周囲の砂漠が揺れ始める。
 砂丘のように盛り上がったかと思えば、その一部が砂時計をひっくり返したみたいに一点から沈み込んでいく。
 砂漠に大穴が空いたのだと理解する頃には、その中から女性の顔を模した円盤が顔を出した。
 いいや、それは女性の顔を埋め込んだような丸盾で、その周囲には蛇が睨みつけるかのような意匠が見て取れる。
 そしてそれを先頭に、やがてその盾を携えたキャバリアの全貌がすぐに明らかになる。
 全身が輝く鏡の様な、白銀の機体。その手に槍と盾を持ち、肩にはフクロウを模した支援機を乗せるその姿は、ロボットというより、西洋甲冑にも見える。
『あたら兵を失い、あまつさえ持たせてやった超兵器すら失うとは……なんと無能な。いや……精強なる我が軍勢を退ける汝らを讃えるべきか……』
 自信に満ちたその声は、いささか自分自身に酔っているようにも聞こえた。
 よくよく周囲を見てみれば、今しがた撃破したキャバリアに乗っていたらしいロボットヘッドのパイロットが、居心地悪そうに膝をついて項垂れていた。
『まあよい。兵たちを痛めつけぬ、汝らの心遣いには痛み入る。その者たちへの沙汰も、追って伝えよう』
 えらく尊大な態度を崩さず、礼とも聞こえぬような手前勝手な物言いは、やはり自信の表れだろうか。
 その様子から、彼とその機体が、地底帝国ズーガイに於ける幹部であるらしいことが伺える。
『おっと、話を急ぎすぎたかな? ふふ、まあよいよい。せっかくの挨拶だ。
 神たるこのミネルヴァを駆るテンプルナイツが一人、白銀頭将オディーコが、汝らに戦いというものを教えてやろう』
 陶酔するような名乗り口上から、槍を持つ手の指を立てる。
『哀れなる汝らに、一つアドバイスしておこうか。
 このアイギスの光盾で、君らの攻撃は防ぐぞ』
ユリウス・リウィウス
味方にも同系統の機体があるようだなぁ、あれ。
それよりあれはオブリビオンマシンなのか? そうでないなら、人間(?)同士の争いに猟兵が介入する理由はないはずだが。たとえ地底国家と地底帝国の争いだろうとな。
まあ、今回は乗りかかった船だ。最後まで任務は果たそう。

いい加減、素朴な戦いも飽きてきたところだ。亡者の力を借りよう。
銀河帝国亡霊兵団を喚起。「集団戦術」で指揮を執る。
揚陸艦から速やかに下りて、敵機を全周包囲。対キャバリア戦闘の用意。
熱線銃で攻撃を仕掛けろ。距離を詰められるなよ。
出来れば推進器などの開口部を狙え。
この砂漠で機動力を落とせれば、撃破も楽になるはずだが?

さて、操縦者はあの機械頭か?



 完全な闇ではない地底の砂漠の中で、それは自ずから輝いているかのような白銀であった。
 キャバリアという存在が、何者によって齎されたものであれ、それが被造物である事には恐らく違いは無い。
 だというのに、ミネルヴァという名を持つそのキャバリアの醸し出す神性たるや、なんと表現したものか。
 いやそれよりも、その神像の如き佇まいはさておいて、この場に於いてただ一人、キャバリアを持たずにこの場にいる猟兵、ユリウス・リウィウスは無精ひげを撫でるように顎に手をやり、何やら思案顔をする。
「味方にも同系統の機体があるようだなぁ。あれ」
 ほのぼのとした言葉とは裏腹に、その眼差しは真剣なるものだ。
 それはほとんど建前、というよりあんまり気にしていない。
 敵対するものであるならば、倒せばいいだけの話。
 それだけシンプルな話のはずだった。
 そう、問題点はそこだ。
 あれはオブリビオンマシンなのか?
 猟兵であるならば、それをすぐに察知できて然るべきであろう。
 いや、たしかに倒すべきはわかる。
 恐らくはそうなのだろう。
 この世界の猟兵としての素養を持たぬ者がわからぬというのならばいざ知らず、猟兵としてこの場にいるのなら、倒すべき敵を、恐らくは本能的に理解している。
 であるにも拘らず、ユリウスは本能とは異なる理から、あれを敵としていいかどうか考えてしまう。
 この世界にどこからともなく生じてしまうオブリビオンマシンとは、搭乗者の思想を捻じ曲げてしまい、平たく言えば破滅的な思想に至るという。
 どのような平和主義で高潔な思想を掲げるようなものであったとしても、ひとたびオブリビオンマシンに洗脳されてしまえば、この世界を破壊しようとするという。
 クロムキャバリアで起こっている事件のほぼすべてが、それを発端としている以上、猟兵ならばそれを止めねばならない。
 だがしかし、目の前にいる地底帝国とやらの連中は何だというのだろう。
 彼らが襲ってきたのは、あくまでもこのレイヤードであろう。
 言うなれば国家間、人類(?)同士の戦いというのなら、猟兵の介入は不要なのではないだろうか。
 というのも、彼らズーガイの連中は、進んで戦いを望んでいるようにしか見えない。オブリビオンマシンによる思想侵略、関係あるのか。
 それになんかアホっぽいし。
「……まぁ、乗り掛かった舟だ。最後まで仕事は果たそう」
 連中が組織立ってオブリビオンマシンを駆る様な国だとするならば、それはそれで倒さなくてはならない相手だ。
 オブリビオンを用いて戦う猟兵も当然いるが、こいつらの刃が向く先には、無辜の民がいる。
 戦場に立つたびに、もうたくさんだとうんざりするものだが、生憎とユリウスには戦う力が残されている。
「いい加減、素朴な戦いも飽きてきたところだ。亡者の力を借りよう」
 たとえ、彼我の戦力差に大きなものを抱えていようとも、そんなものは日常なので、なんとかその差を縮めて倒すしかない。
 猟兵として戦地を駆け抜けてきたユリウスは、いつだってそうしてきた。
 体格差や戦力差など、今更語るべくもない。
 単一の質には、膨大な物量で対応する。
 ユリウスはただ一人の黒騎士に留まらず、泥沼の戦場を逆手に利用する死霊術の使い手でもあるのである。
「星辰の彼方を彷徨う死にきれぬ敗残兵どもよ。一時我が言葉に応じ、今は亡き帝国の武威を示して見せよ」
 遥か彼方、戦い過ぎて星すら消えて失せた宇宙の亡霊たち、【銀河帝国亡霊兵団】を、ユリウスはその船ごと呼び出して見せる。
『なにぃ、揚陸艇だと! どこから出てきた!?』
 宇宙航行を主戦とする強襲揚陸艦の突如としての出現は、5メートル規格のキャバリアからすれば、驚くべきことだが、砂漠の底から飛び出してきた者たちの驚くべきことなのだろうか。
「対キャバリア戦闘、用意! 速やかに降下し、包囲しろ!」
 うっすらと透けて見えるような亡霊の艦船から降下してくるのは、熱線銃で武装しパワードスーツを着込んだ未来の兵士たち。
 かつて宇宙を支配下に置いたという銀河帝国の亡霊を使役するユリウスは、その圧倒的な支配を可能とした精強なる軍隊の指揮を執る。
 彼のキャバリアには、「空を目指す者」と同様の猛毒の装甲が施されているため、ユリウス本人が直接攻撃を加えるのは愚策であろう。
 だが、キャバリアを用いぬとはいえ、亡霊が立ち向かうなら毒も何も関係ない。
 元から、ロボット同士の殴り合いをさせるためだけに用意されたかのような、誰もがもう記憶の片隅に忘れてそうな猛毒装甲にも、抜け穴はいくらでもあるのである。
『ほう、小型のキャバリア、というよりパワードスーツと見た。だが、歩兵の火力で、我がミネルヴァの守りを抜けるものかよ!』
 揚陸艦から次々と降下し、隊伍を組んで取り囲むパワードスーツ郡の動きは洗練されたものだが、それ以上にミネルヴァ自体があまり動こうとしていないために、包囲は容易に行えてしまう。
 人間サイズの相手に後れを取る筈がないという傲慢。
 守りには絶対的な自信があるという傲慢。
 それが操縦者を増長させているのだろう。
 事実、それら一斉の熱線射撃を受けても、大きな丸盾に施された何かしらのエネルギーが、盾の分厚い表面装甲にすら熱線を到達させない。
 それどころか、守りの体勢のままその奥で振るわれる槍穂から生じる光弾が雨のように降り注ぎ、パワードスーツの軍勢が地形ごと吹き飛んでいく。
『フハハハ、圧倒的ではないか!』
「白兵戦のみじゃない。ちゃんと飛び道具も備えているか……だが、予想済みだ。距離を詰められるなよ! 相手の機動力を奪ってしまえば、針の筵だ」
 最も恐れるべきは、堤を破られる事。
 それをさせず、撃ちこむ続ければ必ず壊せる。
 被造物はいずれ壊れるさだめにある筈だ。
 奴が増長しているうちに、機動力の要となっている推進機関などを破壊できれば、後は数が勝敗を決してくれる。
 質量差で強引に陣形を抜けられることさえなければ、数が多い方が最終的に有利になるのだ。
 敵はキャバリア戦を想定しているだろうから、初めから体格差の基準を考えていなかったのだろう。
「さて、搭乗者はあの機械頭か? ……頭でっかちの割に、考えが固いな」
『くっ、こやつら……ええい、無駄だというのがわからんのかっ!!』
 焦れたように槍を振るうが、絶妙に距離を取りつつ包囲網を崩さない亡霊軍団の陣形は強固であり、愚直なようでありながらじわりじわりと鉄壁の守りを貫いてくる。
 銃弾やエネルギー兵器に対抗するような、鏡面装甲にも何らかの加工がしてあるようだが、それも永遠ではない。
 どうやら、戦いというものを教える前に、戦いのベクトルからまずは土俵が違ったらしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
なんか神々しいのが出てきましたわ
戦い方をご指導されると?
間に合ってますわ!エルネイジェの女子の嗜みはキャバリア道でしてよ!

ご立派な盾でございますわね
二連装ビームキャノンで吹っ飛ばして差し上げますわ
…吹っ飛びませんわね!固いですわ!
なんですヴリちゃん?パイルブレイクを使えと?
なるほど!ヴリちゃんは賢いですわね!
石化光線を受けないよう障害物に身を隠しながら距離を詰めますわ
相手方は何故か動こうとしませんから楽々ですわ
近付けたらクローで盾をキャッチですわ
そこにパイルブレイクをぶち込んで綺麗なお顔を木っ端微塵にして差し上げますわ
後は殴る蹴る噛み付く撃つのフルコースでスクラップ待ったなしですわ


カグヤ・アルトニウス
〇白銀のキャバリア、推して参る

アドリブ歓迎

戦闘力を奪う事を最優先にしてますので機体中枢は攻撃対象から外しているので、「ここで使える火力」ではパイロットは死ぬ事は無いでしょうけど…手加減はしてません

(乗騎)
ホワイトレクイエム

(行動)
まずは、敵周囲にトゥインクルスターのゲートを展開してエネルギー砲の【マヒ攻撃】でけん制して敵が動き出したらUC発動…そのまま一気に接近戦に持ち込みます

石化光線は機体周囲に展開したアブソリュートウォールの表面を【オーラ防御】で鏡面に変えて防ぎ、「島」は寸前で【カウンター】テレポートでかわします
後は、ソードオブビクトリーのビームソードで【切り込み】、削っていきます



『ぬうう!! どけどけーい!』
 地底の底より登場した敵幹部の乗り込むキャバリア、ミネルヴァとの戦端を切ったのは、まさかの一対一ではなく亡霊たちによる物量作戦であった。
 相手は支援機を従えているとはいえ、基本装備は槍と盾。白兵戦を主体とすると踏んだために物量作戦に乗り切ったようである。
 果たしてその作戦は、相手の初動を完全に封殺し、強大な防衛システムを誇るがゆえに初手から防御を選択せざるを得ず、本来備えている筈の機動性を大きく削ぐ形となった。
『これが、こんなものが策だと……! 笑わせるんじゃない! 我等の戦いは、このような無様である事など許されぬぅー!』
 それがズーガイ幹部のプライドを傷つけたかどうかはわからないが、一杯食わされたのが相当気に食わなかったのはこの場にいる猟兵たちにも見て取れた。
「初動で片が付くかと思っていましたが……やはり、敵方の機体も一筋縄ではいかない」
 キャバリアを持たぬ者ながら見事な包囲作戦に目を見張っていたカグヤ・アルトニウスであったが、どうやら相手のタフさと基本性能の水準の高さからして堤を抜けるのも時間の問題と見越していた。
「それに、白銀のキャバリア。戦わずして帰るには、惜しい気もしていたところです」
 鏡面の如き白銀の甲冑騎士を思わせるミネルヴァのフォルムは、神を語るだけあって美しく洗練されている。
 同じく白銀のパーソナルカラーを持つカグヤの『ホワイト・レクイエム』にとっては、お株を奪われたとも感じてしまうほどに、嫉妬がまるで無いといえば嘘になろう。
 どちらがより相応しい白銀か。それは自分だと、証明しておくべきだろう。
「推して──」
「あらぁ~、なんか神々しいのが出てきましたわ」
 熱くなりかけたカグヤが気合を入れて飛び込もうとする丁度そのタイミングで、ひょっこりとプレーリードッグよろしく黒い獣の様なキャバリアが砂の丘から顔を出す。
 肉食恐竜を思わせるキャバリアの凶暴な双眸がぎらりと光ると、『ヴリトラ』に乗り込むメサイア・エルネイジェは、ほんのり呑気な声を上げる。
「ええと、たしか……戦い方をご指導されるとか」
 コクピット越しでも、より生物的な所作が見て取れるヴリトラ越しに至ってすら、その失笑は見て取れるかのようだった。
 ぼっ、と周囲によく聞こえるほどのマイクノイズが入るのがわかった。つまりは、大音量にしているのだろう。
『間に合ってますわ! エルネイジェの女子の嗜みはキャバリア道でしてよ!』
 耳をつんざくほどの宣言は、乙女の宣戦布告であった。
 しかしながらキャバリア道とは。きっと、人の死なない競技に違いない!
『ぶっ飛ばして差し上げますわー!』
 勇猛果敢に突撃するメサイアの乗るヴリトラは、機体を大きく揺らしつつも背に負った二連装ビームキャノンを撃ち込んでいく。
『フッ、甘いぞ! 先に宣言したはずだ。このアイギスの光盾で君らの攻撃は……いや、まて、聞け、聞けーい!!』
 大出力のビームキャノンは、しかし女性の顔の象られた巨大な丸盾より生じるエネルギーフィールドに弾かれてしまう。
 しかしそれでも構わずビームを連発して撃ち込むその猛攻を前に、どうやらメサイアは敵幹部の口上など聞こえてはいまい。
『ええい、聞けと言うておろうが!』
 ミネルヴァの盾に刻み込まれた蛇の意匠。その瞳が怪しく輝くと、見つめるような細い光線が幾重にも放たれる。
「これはまずい!」
 それまで攻撃一辺倒だったヴリトラだったが、それを察知し獣の俊敏性で近くの瓦礫に横っ飛び隠れる。
 そして完全にとばっちりのカグヤも、エネルギーフィールドを展開し、対光学兵器用の鏡面モードで逸らしつつ、射線から逸れる。
 その光がぶつかったあちこちが、白い煙を上げて白化していく。いかなる科学技術なのか、その光線を浴びれば、物質はたちまち石と同じようなものに覆われてしまうらしい。
「アイギス、そして盾に描かれた蛇……とくれば、やはり石化ですか」
 古い神話との符合は不可思議なものであるが、カグヤの得ているデータから参照すれば、かつて女神アテナは、石化の視線を持つ蛇の頭を持つメデューサを討伐する事をペルセウスに命じ、討ち取ったその蛇女の頭を盾にはめ込んだという。
 アテナの別名、それこそミネルヴァ。
「やはり、あの盾は近づくのに厄介ですね」
『……吹っ飛びませんわね! 固いですわ!』
「そりゃあ、盾ですからね。しかしながら、弱点もある」
『ますます、ぶっ壊したくなってきましたわ』
「話聞いてます?」
『わたくしが、何としてでもあの盾、ぶっ壊して差し上げますわ!』
「……了解、お嬢様。ならば、現場までエスコート致しましょう」
 ただ闇雲に突っ込むだけでは、石化光線の防衛網に捕まりそうになってしまい、瓦礫や遺跡の物陰に隠れたりして回避は可能でも、なかなか決定的な距離にまで近寄れない。
 焦れるメサイアに作戦の立案を持ちかけようとするカグヤであったが、なんかこの人、ムキになってしまったみたいで難しいことはできそうにないようだ。
 ならば紳士たるもの、即座に代案に切り替えるべきである。
 言うなればプランB。メサイアの様なタイプは、下手に何か仕事を投げるよりも、得意分野でお任せする方が、かえっていい働きをしてくれる。
 であるならば、彼女の突破口を活路とする事こそが、成功への近道となろう。
「それで、具体的にどうやってあの盾を貫くと?」
 カグヤの質問に答える代わり、ヴリトラは自らの腕部を掲げて見せる。
 マニピュレータの袖にあたる部分には杭打機の様なものが内蔵されている。
 それを使えと言わんばかりに突起をあらわにし、自らの搭乗者とカグヤに見えるように。
『なんですヴリちゃん? それは、パイルブレイク! なるほど! ヴリちゃんは賢いですわね!』
「なるほど、それなら行けるかもしれませんね。けど、かなり近づかないと」
『エスコートして下さるんでしょう?』
「お嬢様は、無茶をお言いだ!」
 はっと笑い飛ばすカグヤは、しかし言葉ほど無茶と思ってはいないらしい。
 ホワイトレクイエムが飛び上がり、その武装を展開する。
「トゥインクルスターゲート展開」
 超空間にアクセスするカグヤの号令のもと、敵機体ミネルヴァの周囲を囲う様に、空間を割ってエネルギー砲の援護射撃が降り注ぐ。
「牽制をかけます。何も考えず突撃してください」
『あーら、ロマンチックですこと』
 降り注ぐ流星雨の様な弾幕支援のもと、メサイアの乗るヴリトラが砂漠を駆ける。
 カグヤの指示は、極めてシンプルだった。シンプル過ぎて、アホだと思われてるのかと疑ってしまうほどだ。
 だが、そのシンプルさがいい。他は自由だという事だろう。
 それに実のところ、メサイアの頭はかなりの猪である。シンプルさこそ望むところだ。
「……よし、相手は防御に回ればほぼ動きが取れない筈。残すは──」
 カグヤの懸念すべきことはまだある。
 故に、敢えてメサイアとはテンポをずらして行動する。
「多次元確率変動演算完了……現実反映開始。次元を超えたインチキここに罷り通ります」
 時空演算をも可能とする汎用空間戦闘用ユニット、ダイダロスの機能により、この弾幕の中を潜り抜ける道を何万とシミュレートする。
 あとは、それを現実に反映する事により【ダイダロス・ウルトラマニューバー】は成る。
 未来予知にも近いその戦闘機動に誤りは出ない筈だ。
 メサイアはそのセンスと、ヴリトラに備わった野生生物の様な反応速度とでこの弾幕を掻い潜り、押し込めているミネルヴァに突撃を仕掛ける事ができている。
 だが、あくまでも防衛システムを狙いに行く以上、大した脅威とは思うまい。
 続いてその盾を受け持ってくれるメサイアではなく、本体へ攻撃を使用とする者へは……あの肩に止まっている支援機が見逃すまい。
 カグヤの懸念はそれであった。
 高速で回り込むホワイトレクイエムが、ミネルヴァの背を見るが、それと同時に片に停まるフクロウ型の支援機の首がグリンと回り、ホワイトレクイエムの接近を察知した。
「やはり、電子戦闘型の支援機ですか……!」
『なにっ、後ろにもいたのかっ!?』
 一拍遅れてミネルヴァの中の人も気付いたようだが、この距離ならばと肉薄しようとするカグヤは、ふと唐突に接近アラートが反応したのに気づく。
 それは、支援機の発した索敵レーダーによってロックオンされ、召喚された巨大岩石であった。
 唐突に頭上に生じたそれを、しかし、ダイダロスの演算は予期していた。
 流石に単純な質量兵器を咄嗟に破壊する事は難しいが、事前に読んでいたのならば、それを乗り越える術は用意できる。
 短距離ワープ。一瞬、岩石の落下に巻き込まれたかに見えたホワイトレクイエムは、気が付けばミネルヴァの目前にまで迫っていた。
『ぬう、させるかぁ! なにっ!?』
 回り込むホワイトレクイエム。それを盾で払い、槍で応じる手はずであったが……肝心の盾が動かない。
 見れば、その盾には、黒い爪がかかっており、がっちりと固定されていた。
『捕まえましたわ』
『し、しまった。離れろ、野獣めぇ!!』
『離してはダメですわよ、ヴリちゃん!』
 赤く輝く狂暴なアイカメラが、盾越しに睨みつける。
 そして、エネルギー攻撃に絶大な防御力を誇る筈の盾にあしらわれた美しき怪物の意匠に、黒い獣の手が重なる。
『その綺麗な顔を吹き飛ばして差し上げますわっ!』
 【パイルブレイク】。凄まじい打ち込みと共に射出された杭打機が、シールド発生装置も兼ねる盾の顔を撃ち貫いた。
『くおっ!? やめ、やめろぉ!!』
「おっと、こちらもお忘れなく!」
 これはたまらんと槍でヴリトラを引き剥がそうとするところに、カグヤのホワイトレクイエムが躍りかかった。
 もはやヴリトラ単体にかかりきりだったミネルヴァは隙だらけだ。
 ソードオブビクトリーを装着したビームソードが、無防備な女神を一閃する!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
突っ込み所が多い敵機ですね……。

まあいいです。エイストラは単なる高出力機ではありません。
開発陣をして「ドラッグレースでもするのか」と言わしめた
馬鹿パワーを存分に生かすため、内外装も殆ど新設計です。

超音波暗視装置のスピーカーが音波兵器に流用できるように、
ECM出力を上げれば、安い電子機器は物理的に灼けます。
軍事用索敵機であろうと照射中はまともに動作しませんよ。

限界突破/ジャミングを自動追尾で照射しながらの高速戦闘。
誘導弾/ミサイルを垂直発射して直上から攻撃しつつ、
貫通攻撃/ライフルないし範囲攻撃/キャノンとの二回攻撃、
一人時間差ならぬ一人十字砲火をお見舞いしましょう。

盾は二枚欲しかったですね。



 自ずから光を帯びているとも言われるレイヤード地下空間の砂漠。
 小さく光を帯びるような砂粒を浴びながら、その白銀のキャバリアは、尚も鏡面の様な光沢を帯びていた。
 古代の戦士の様な、大きな丸盾に槍を携えたスタイルは、その名前に由来する女神というよりかは、勇名を馳せたアキレウスのようでもある。
 ただ、それをわざわざキャバリアでやる必要はあるのか。
 伝説になぞらえているのか、その特徴的な盾には蛇や怪物の蛇女を模したかのような意匠すら見受けられる。
 何らかの仕掛けを内包していると見られるのだが、それ以上に凝ったデザインの報についつい目が行ってしまう。
 この機体、自らを神と語る理由はまさに、戦うためというより美術品としての側面のほうが強いからではないのだろうか。
「突っ込み所が多い敵機ですね……」
 ノエル・カンナビスは、その華美とすら見受けられる機体の在り様に少々呆れてすら居た。
 レプリカントとして生まれ出でた彼女にとって、キャバリアというものはボディの拡張機能であり、優先すべきはスペックである。
 そこに機能を優先したが故の機能的美はあるのかもしれないが、それが見目に麗しくある必要性は感じない。
 コンセプトは理解できるものの、必然性に納得がいかない。デザインの為に機能を落とす必要性が何処にあるのだろうか。
 などと、ついつい詮無い事を考えてしまう。
 まぁ、その、こんなことを割と真面目に考えてはいるものの、ノエル本人も自覚は無くとも美少女に見える辺りには、製作者の何らかの意図を感じるものだが、それはひとまずさておいて。
 ノエルもまた猟兵、キャバリアを駆る一人の傭兵である。
 戦いにあっては、その切り替えはきちんとしている。筈だ。
 相手の機体スペックは、神を語るだけあって高いようだが、その機体性能もコンセプト次第であろう。
 両手に持つのは槍と盾。
 それだけ見れば相手の得意分野は白兵戦であることは、容易に想像がつく。
 ただ、初戦で槍から光弾をばら撒くのを見ているだけに、ただの白兵戦用という訳でもないのだろう。
 それに、着目すべきは、その肩に停まるフクロウ型の支援機。
 あれは恐らく、電子戦もこなせる索敵ユニットに違いない。
 白兵戦に夢中になっても、立ち位置を見失わない事は大切だ。常に、自分自身を鳥瞰できるという視線を持ち続けるには、別の機体からの観測がシンプルでわかりやすい。
 以上の事から、あの機体は、自分一人で暴れるために構築されたと見るべきだろう。
「まあ、機体スペックで勝負というなら、エイストラも負けてはいませんが」
 突っ込み所に関してはこれ以上は言うまい。としつつ、しっかりと対抗意識は燃やすノエルは、無表情の中に闘志を灯す。
 実際問題、ノエルの乗り込むエイストラは、汎用機としつつもその基本性能の向上をひたすらに追求したものである。
 どれをとっても超一流。平均点で満点を取れることを念頭に開発されたそれは、一見すれば単なる高出力機とも言われそうなものだが、開発陣をして「ドラッグレースでもやるのか」と言わしめたほどだという。
 高出力機と見られるのも、その有り余るパワー故のことであり、出力に堪え得る機体構成は内外共に全く新しい設計を余儀なくされたという。
 装甲やスラスター出力、のみに限った話ではない。
 電子戦に於いても、他に引けを取らぬエイストラならば、あのフクロウを出し抜くことも不可能ではあるまい。
 夜の森の中を音も無く飛び、枝葉にぶつかることも無く獲物を捕らえる正確無比な能力。それを再現したフクロウの支援機とて、あれも機械。
「さて、相手の索敵ユニットの能力や如何に」
 機体出力を上げ、エイストラの機体速度は瞬時に上昇、おおよそクロムキャバリアの空では出せぬような速度で、敵機ミネルヴァへと飛び込んでいく。
『む、正面からくるか! 馬鹿め、このミネルヴァを白兵戦のみの機体と侮ったな!』
 迎え撃つミネルヴァは盾を構え、その肩に乗るフクロウの支援機が首を向けてロックサイトにエイストラを捉えんとするが……、
 強烈な妨害電波が、ミネルヴァに降りかかる。
 エイストラの機体は、その内外共に基準以上のスペックを求められ作成された。
 今や限界を超えてジャミングをかけながら突撃する様は、有視界以外のセンサーには捉えられぬほどまでになっていた。
「超音波暗視装置のスピーカーが音波兵器に流用できるように、
 ECM出力を上げれば、安い電子機器は物理的に灼けます。
 軍事用索敵機であろうと照射中はまともに動作しませんよ」
 あらゆるセンサーに、情報の許容量というものがあるのならば、それを超えた情報量は処理できぬものとして機能を失う。
 風向きを見る風見鶏が、台風の中で効力を持たぬように。
『ど、どうした!? なぜ島を呼べぬ!?』
 強力なジャミングによって目を回すフクロウに、もはやエイストラの姿は捉えられない。
 その隙に垂直に撃ちあげたミサイルが、人知れずミネルヴァの上空で多弾頭に分かれ、フクロウがうまく機能しないミネルヴァは、正面に迫るエイストラの構えるライフルに対し盾を構えるしかない。
 プラズマライフルの射撃は盾に生じるエネルギーフィールドで対応できるが、横滑りするような回り込みから挟み込まれる大口径プラズマキャノンの衝撃は殺しきれず、後ずさりしてしまう。
『だ、だが、正面からの攻撃なら──うおおっ!?』
 正面防御に徹したまさにその瞬間、真上から時間差で降ってきたマイクロミサイルによる爆撃に晒され、ミネルヴァはたまらず膝をつく。
「防御が剥がれた……!」
 さらに踏み込むエイストラのプラズマライフルが、ミネルヴァ本体に狙いをつけるが、その瞬間にフクロウのくるくる回る頭部がピタッとエイストラを見つめた。
「ッ……!」
 【フォックストロット】。咄嗟の空中でステップを踏む様な機動。その合間に、突如として出現した岩塊が砂漠に落ちた。
 射撃の瞬間、一瞬でも外れたジャミング照射の隙を逃さず、即応して攻撃してきたらしい。
「やはり、照射し続けてないと、ダメですね」
 一人時間差ならぬ、一人十字砲火は効果があった。
 しかし、冗談のような機体であっても、相手の機体スペックを侮ってはいけない。
 次は確実に仕留める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
むむむー、やっつけたと思ったらさらに1体出てきたぞ!
今度こそラストバトルだ!

それにしても、なんだか偉そうなやつだね!
でも、ボク達の方が強いってこと見せつけてやるぞー!おー!

上空より落ちてくる岩石に対して、ヴァリアントスマッシャー!
でも、岩石を直接狙わずにヴァリアントスマッシャーの反動で機体を飛ばして岩石を回避しちゃうよ♪

岩石が落ちたことによる土煙を利用して、【スカイステッパー】で一気にミネルヴァより上空に飛び上がったら
落下速度を加えたキックをお見舞いしちゃうぞ!

くらえー、スーパーアイアンリブスキィィィック!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



 またまたおかしな奴が出てきたぞ。
 サポートしてくれるいい奴がいたならば、そういうふうに警告してくれたかもしれない。
 ともあれ、地底帝国による奇襲の一団は無力化に成功したはずだったが、なんだかおまけみたいに追加の敵キャバリアが出現してきた状況に、さしもの自由な妖精さん、ティエル・ティエルエルも驚いた様子だった。
 乗り込むキャバリアは、特別に支給された重量級スーパーロボットのアイアンリブス。
 いましがた対決したロボットの砂塵を真正面から受けていたため、全身砂まみれであるが、大きな損傷は今のところない。
 冬場にありったけ着込んだみたいに動きは重たいが、まだまだオブリビオンマシンと対決する余力はあるはずだ。
「偉そうな奴! でも、ボク達の方が強いってこと、見せつけてやるぞー! おー!」
 あの白銀のキャバリア『ミネルヴァ』は、ここにいるすべてを下に見ているように思えた。
 それは、子供心にも嫌な気分であった。
 自分たち猟兵を下に見るのは、実力を知らないから仕方ないのかもしれない。
 だが、自分たちの部下を、精いっぱい戦った戦士たちを見下すような真似は、すごく気分が悪く感じたのだ。
 卑怯な奴らだったかもしれない。侵略は許されざる事なのだろう。でも、許せなかった。
 身分や階級というものは、他者を虐げる為にあるものではない。
 立場に飽かして力に陶酔するのは、しばしば己の立ち位置を見失う。
 つまりまぁ、お前はそんな場所に立つ器じゃない、という気に食わない気持ちが、ティエルを通じてアイアンリブスの鬼の形相を光らせる。
 感覚的な操縦システムに伴い、振り上げた拳に倣う様に、鬼の様なキャバリアもまた全身に絡みついた砂を振り落とすかのように拳を突き上げた。
『まだいたのか! フン、どうやら祭事用の古い機体を持ち出したらしいが……そのような旧式で、神たるミネルヴァを打倒出来るものかよ!』
 どうやら敵機体ミネルヴァに乗り込むオディーコ将軍は、アイアンリブスの事を知っているらしいが、そんなことはもはやティエルには届かない。
 重装甲ゆえの重量を感じさせる力強いフォルムで、愚直に突進を仕掛ける。
 その動きは、ティエル本来の素早さと比べるとあまりにも鈍重であるが、質量は数百倍、いや数千倍にも及ぶだろう。
『遅い遅い! 古臭い機体は、古いまま埋まっておるがよい!』
 ミネルヴァの肩に停まるフクロウ型の支援機が、くるくる回る頭をピタッと止めて突っ走るアイアンリブスをロックオンする。
 狙いを定めたのならば、次の瞬間にはその進路上に目がけてどこからともなく岩山の様な塊が降ってくるのが、接近アラートを通じて明らかになる。
「古いって? そんなことないよ。キミは生まれ変わったんだ! ぶち抜くよ、アイアンリブス! ヴァリアントスマッシャーだ!」
 ざんっと砂漠を蹴りつけて飛び上がるアイアンリブスが、大げさな縮こまりポーズから大の字に全身を伸ばし、胸部装甲のあばらの様なパーツを開放。
 野太いビームが広域照射され、落下する岩山を焼きにかかる。が、それが本題ではない。
『フハハ、無駄だ無駄だ! そんな旧型兵器で押しとどめられるものか!』
 それに、そんな決め技を岩山なんかに使うようでは、息切れしてしまうぞ! などというアドバイスじみた説明セリフは吐かない。敵に塩を送る必要などないのだから。
「それはどうかなっ♪」
『ぬぅ、なんだとっ!?』
 真正面からヴァリアントスマッシャーで岩山の直撃を避けたように見えたそれは、巨大ビームを放ちながら空中をスライド移動していた。
 岩山にぶつけたごんぶとレーザーの反動は、そのまま空中のアイアンリブスに返ってくる。
 バックブースターで反動軽減を行わないアイアンリブスは、岩山の質量とヴァリアントスマッシャーの反動をそのまま受けて、移動方向だけをスライドさせ勢いをつけ……ミネルヴァの方へと飛ぶ。
 重装らしからぬ空中機動と加速。常からの体感スピードが高い水準に居るティエルの反射神経がなせる技であった。
「さあ、ボクについてきて、アイアンリブス!」
 ヴァリアントスマッシャーの発射後で胸部パーツは開いたまま、機体各所から冷却のため熱気を排出するスチームが溢れ出る中で、尚も肋骨の巨人は空中で加速する。
 背後で落下した岩山がもうもうと砂煙を上げる中、ティエルの気合と共に【スカイステッパー】で無理矢理空を駆け上がる古代のキャバリアが煙幕を突き破る。
『く、奴はどこへ!? む、あんな高くに!?』
「くらえー、スーパーアイアンリブスキィィィック!」
 運動エネルギーを存分に蓄え、重力落下すらも味方につけた重装甲ボディーが渾身のドロップキックの体勢で飛び込んでくる。
 そのスピードと質量、もはやフクロウのロックオンから岩山を呼び出す暇はない。
『ぐおおおっっ!?』
 凄まじい勢いでぶつかる機体と機体。その詳細がわからなくなるほど、激しい砂の波を立てて数百メートル単位で滑っていく。
 命中したミネルヴァは途中でどこか弾き飛ばされてしまったようだが、延々滑っていたアイアンリブスは、かっこよく立ち上がり、そこでようやく開いたままの胸部パーツをぱしゅうっと元に戻した。
「えっへへ、決まった! ……あれ、敵は?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・ゴッドハンド
「しゃぅもぉ!どらごんさんやきゃばりあさんとあそぶ〜!」
「はっちみっつ♪はっちみっつ♪お〜いし〜いなぁ〜♪」

フェアリーの力持ち×力任せによるただの拳伝承者の女の子
年齢5歳、身長15㎝

《パワーフード》の妖精蜂蜜を小さな壺から取り出して『食事』し、フードとUCで怪力をx倍化して《超怪力》を発揮

敵の攻撃は避けずに《極めて強靭な妖精の体》で真っ正面から受け止め【ただのでこぴん】で反撃

武器も防具も武術の心得も持たない極小美幼女が、素手と圧倒的な怪力だけで巨大な敵を次々と薙ぎ倒して行く様子を重視して描写して貰えると嬉しいです

あとはおまかせ。よろしくお願いします!
「またあそぼぉね〜!きゃっきゃっ♪」



 地下世界に生活の場を移して有余年、大きな争いも無く発展したレイヤードの最下層、空間を伴う広大な砂漠に埋もれる遺跡群をめぐる攻防戦は、そろそろ佳境を迎えるところであった。
 地下世界のさらに地底からやって来た謎の地底帝国ズーガイの侵略。その先遣隊を打ち破ったところ、更に登場したのは幹部を名乗る将軍オディーコの乗り込む神機ミネルヴァであった。
 ロボットヘッドの軍勢、ズーガイの歴史を以てしても、その発端を謎にするという出どころの知れぬキャバリアは、通常のオブリビオンマシンとは異なり、地上を恐怖に陥れる筈であったが、猟兵たちの活躍により、未だこの地の底の砂漠に押しとどめられている。
 そして、ここにもう一人、その強大なキャバリアを前にし、敢えてキャバリアを用いず五体のみを頼りとした猟兵が、悪のキャバリアを討滅せんと降臨するのであった。
 シャルロット・ゴッドハンド(全裸幼精の力持ち×力任せによるただの拳伝承者・f32042)は、一糸纏わぬその姿を、砂漠の上空に浮かせてやってくる。
 彼女は幼く、そして何も持たない。ただ、生まれながらに持っている比類なき腕力で以て、巨大な相手を構わずにぶちのめすだけだ。
 そこに矜持は無く、恐らくは善悪を判断するほどの道徳も身につく間もなく、ただの興味本位のままに、自身の怪力でもなかなか壊れない相手を壊す遊びをするためだけに、恐らくは満足を得るべくやってくるのだ。
 言うなればそれは幼い災害。生まれながらに比類なき力を持っているからこそ起こりうる災厄。
 まさに、オブリビオンにとってはそうであろう。
 願わくば、それが平和を抱く者に対して向かぬ事を祈るばかりである。
 それほどまでに彼女は無垢であり、ただただ身に帯びる力を振るうことに際し、抗いがたい衝動に駆られるだけである。
 それは幼い彼女にとって、必要な儀式。体験する事全てが、彼女にとって必要なイニシエーションであり、力を振るうための大義名分である。
 無論、その哲学や生き様を、幼い彼女自身が知性を伴って理解しているわけではなく、彼女はあくまでも己の力の根源、本能のままに、衝動のままに、力を持つものの場所に現れて、災害の如く敵を倒すためにやって来るに過ぎない。
 善も悪も無い。力を振るう者がいて、力を振るってもいい相手がいる。
 ただそれだけあれば、彼女にとっては十分であった。
「はっちみっつ♪はっちみっつ♪お〜いし〜いなぁ〜♪」
 その身の丈は人の腕の中に納まるほどしかないために、生半可なキャバリアの探知センサーには映らない。
 それゆえに、敵の真ん前で堂々と、彼女は己の闘争心を最大限に高める儀式を行う。
 蜂蜜。妖精郷の花の蜜を多分に含んだそのパワーフードを嚥下する事により、それは成る。
 常識では考えられぬ膂力。世界を破壊する程の筋力。ありとあらゆる障害をその身で受けるほどの耐久性。
 それを維持するためには、大量のカロリーでも必要なのだろう。
 或は、糖分による昂揚効果だろうか。
 とにもかくにも、戦う前に蜂蜜を摂取する事により、その怪力は何十倍にも高められることになる。
 だとしても、体格差ゆうに数百倍。そんなものを相手に、武術も武装も持たぬ妖精が一人でできるものだろうか。
 できる、できるのだ。
「しゃぅもぉ!どらごんさんやきゃばりあさんとあそぶ〜!」
 甘い息を吐く小さな妖精は、あろうことか、はしゃぎたてるような声を上げて敵キャバリアへ向かって猛進する。
 今回の相手は、生身で戦うことを推奨されていない。
 何故ならば、おおよそキャバリアに搭乗していなければ、その身を蝕むであろう猛毒の装甲を備えた相手であるからだ。
 いいや、そんなものは関係ない。
 我こそこの世界の法律と言わんばかり、『極めて強靭な妖精の体』の頑丈さに飽かしてただただ猛然と飛び込んでいく。
 彼女にはただただ、無邪気な遊び心しかない。
 壊してもいいオモチャで遊ぶ程度の気持ちで、キャバリアや竜と戯れる。
「えいっ」
 その猛烈な膂力を活かして使う技は、なんと【ただのでこぴん】。
 指で爪弾き、最新鋭、或は旧来に失われた超技術で編み上げられた歴史を、いとも簡単に弾き飛ばす光景は、幼心に痛快であった。
 その力があれば、拳で岩盤を割ることも、或は、相手のコアブロックを締め上げて捩じ切ることも可能であろう。
 だが、そんなものはただの技術だ。
 女々しく打算的な技術など、力の前には不要。
 何しろ彼女は、ただ、遊びたいだけなのだから。
「またあそぼぉね〜!きゃっきゃっ♪」
 吹き飛ぶキャバリアを前に、手を振りながら、彼女はただ鈴を転がすように笑うだけであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
「ミネルヴァちゃんだー!あの子もオブビリオンになっちゃったかー…あの子は防衛型の神機だよ☆」
……やべーな此奴
防衛メインっぽいが攻撃もやべー…!

【情報収集・視力・戦闘知識】
梟型ユニットの索敵能力の把握



UC発動

【属性攻撃・迷彩・念動力】
光水属性を機体に付与
光学迷彩と水の障壁で熱源と嗅覚も隠蔽
念動障壁で音を隠し超音波も吸収し反射させない

島投の射程にミネルヴァを巻き込めるまで距離を詰め
おでぃっ子とかいったか
僕から言える事は一つです

神なんぞ碌なもんじゃねーぞ?
「白銀に黄金はいいよね☆」

【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・スナイパー】
鎌剣による連続斬撃から梟型ユニットの強奪or破壊を試みる


バーン・マーディ
(激しい反応を示すマーズ

…マーズよ
あれが貴様の見出した輩か

成程…貴様と対極にある機神か


【戦闘知識】
敵神機の動きと癖
乗り手の性質と立ち回りを冷徹に観察

【オーラ防御・属性攻撃】
炎のオーラを機体に展開
防護強化

UC発動

対SPD
なんという不条理
なんという悪夢か
…良い
我は…我らはその蹂躙を粉砕しよう
【カウンター・切り込み・鎧無視攻撃・運転】
敵の大岩に対して点として突撃して岩を貫通して突破を試みる

マーズよ
貴様が此処まで荒ぶるならば
打ち破れ
その力を以て

【鎧砕き・二回攻撃・怪力・吸血・生命力吸収】
軍神の剣にての猛攻
その障壁
打ち破って見せよマーズよ

連続斬撃から切り結び
敵の反撃は【武器受け】で堪え激突!



 もうもうと砂煙が上がる。
 既に猟兵たちとの激しいぶつかり合いによって、いかに神機と呼ばれるキャバリアであっても、その機体は無事では済むまい。
 だが、生命の埒外とされる世界に選ばれた存在である猟兵たちとの激しい戦いを経た今ですら、神機ミネルヴァのコアブロックに決定的な攻撃は届いていない。
 いや、或は仮にダメージが通っていたとしても、ミネルヴァは健在であった。
 光を帯びるような砂粒が舞う中、煙で曇る視界の奥に、輝く機兵の双眸がそれを示す。
 鏡面の様な美しい装甲に幾つも傷を作りながらも、その機体のどこにも決定的な打撃は見受けられない。
 いや、見えないだけなのか。
『──』
 この地底の砂漠に響き渡る様な、稲光のような激しい燃焼音。
 バーン・マーディの乗るマーズ。自らの意志を持つという神機であるマーズはミネルヴァと浅からぬ因縁を持っているようである。
 背に負った光輪からは煮え立つマグマの粘性を持つかのように密度の高い炎が吹き上がる。
 それは表情を持たぬキャバリア自身が、まるで不倶戴天の仇敵を得て喜ぶような怒りに震えるかのような、そのような強い反応であった。
「……あれが、貴様の見出した輩か。マーズよ」
 興奮を示すかのような機体の昂ぶりに、バーンはその正体に思い至る。
 同系統の気配は察していた。
 風合とでもいうのか、自ら触れ、共に戦ってきたものと似た者というのは、その関係性があるほどわかる物なのだろう。 
 そしてそれは、同じく神機を乗機としているカシム・ディーンもまた同じであるようだった。
『ミネルヴァちゃんだー! あの子もオブビリオンになっちゃったかー……あの子は防衛型の神機だよ☆』
「げー、やっぱそうなのか……ヤベーな、あいつ」
 メルクリウスの反応も同様であったが、マーズ程強い敵対的な反応は見せていない。
 それどころか、この状況にむしろ寂しそうな雰囲気すらある。
 やはり意志を持つだけあって、その関係性もそれぞれ違うのだろう。
「成程……貴様と対極にある機神か」
 メルクリウスこと、メルシーの発言にあった防御型という言葉に、バーンも合点がいく。
 これほどの猛攻を受けて尚、戦い続けられるタフネスは、一機のキャバリアとしては強力すぎる。
 拠点防衛にあのような機体があれば、攻め入る上では恐ろしい脅威となろう。
 問題なのは、どうしてこんな地底の底から襲撃にやって来たかという話だが、それは操縦者に聞いてみない事にはわからぬ話だ。
 とにかく、敵として立ちはだかる以上は、同情は一切できない。
 被害を出す前に、一刻も早く破壊するしかない。
 ただ、
「頼みがある」
「バーン、まさかと思いますが……」
「うむ、我とマーズに任せてほしいのだ」
 重みのある言葉で頼まれたとあっては、カシムとしても断りづらい。
 神機との因縁は、わからぬ話でもないからだ。
「もとより、僕たちだけでは手に余ると思っていたところです。お供しますよ」
「すまぬ」
 全幅の義。そうとしか言えぬ、鉄芯のように分厚い信念を思わせる意志を、ほんの少しの言葉の中に言い含められるのは、カシムとしては妙な気分だった。
 メルシーが全幅の信頼を与えるのは、それは僕としてのものであろう。言うなれば一種の契約のもと、たぶん花嫁みたいな気分で信頼を寄せているのはわかる。
 だが、基本的に誰も信じてはいけない貧民街育ちの性分に、こうも信じてみたくなるほどの雰囲気というのは、なかなかお目にかかれない。
 ただの馬鹿であるのか、それとも愚直に信念というものに忠実に生きてきた人生そのものに裏打ちされているのか。
 軽い気持ちで、神機を得ているならいざという時には矢面に立ってもらえる程度にしか計算に入れていなかったカシムではあったが、不思議と心に疼きを覚えるものであった。
「だがしかし、どうしましょうかね。見た目通りに白兵戦のみではない」
「むう……彼奴もまた、神である前に乗り手に駆られる走狗。つけ入る隙はあろう」
 これまでの戦いの中で、かのミネルヴァが単なる白兵戦と防衛線特化の機体であるとは思っていない。
 槍から生じる不可思議な光弾。そして、支援機によるバックアップは、単一の機体を見るには大きすぎる敵だ。
 だが乗っている人間は一人。正確にはロボットヘッドなのかもしれないが、一人が操っている以上、こちらの手数と攻め方の前に、対応を割かねばなるまい。
 あくまでも正面から、堂々と踏み入るマーズの行進。それを支援すべく、カシムとメルクリウスは魔術による不可視の霧を纏う。
 厄介なのは、最も範囲の広い支援機による索敵であろう。
 こちらの狙いが察知されれば、順番に対応されてお終いだ。
 故に、あちらがフクロウ型の支援機のセンサーを完璧に騙してしまう絡繰りが必要だ。
 カシムは盗賊。それも魔法を使うルーンシーフを名乗るほどの努力家である。
 気配の遮断、音の遮断、臭気や熱源、無論視覚的な隠蔽も魔法でこなす。
 誤解が無いように言っておくが、鍛錬による身体能力でも代替可能なことであるが、今はほらキャバリア乗ってるから。別に、魔法の方が手軽だからその辺りをサボっているとかそういう事は無いぞ。
 とにかく、暴風兵器のない今、その存在を希薄にする手段は容易い。
 銀と金の神機は、その姿を砂漠の虚空に忽然と姿を消し、音も無く近寄る。
 願わくば、その接近をフクロウに察知されなければいいのだが……。
 幸いにも、燃え上がる炎を障壁のように展開するマーズの周囲は激しい熱源であり、周囲に陽炎を作るほど視界を歪ませ、サーモセンサーはほとんど仕事をしないだろうし、その注目度の高さは、まるでマジシャンが視線誘導でもするかのようであり、メルクリウスの隠行をより確実なものとしてくれるはずだ。
 果たして、堂々とした足取りで近寄るマーズの歩みに、フクロウは即座に反応を見せる。
 ロックを受けたアラートがバーンに届くと共に、島と見紛う岩山が頭上に呼び出される。
「なんという不条理
 なんという悪夢か」
 シンプルな質量攻撃。そのシンプルさを可能にする出鱈目な、まさに神がかりの攻撃方法に、脅威を感じると共にバーンの心にも叛逆の火が灯る。
「──良い。
 我は……我らはその蹂躙を粉砕しよう」
 一人と一機の意志が重なり、ただ一つ手にした大剣『軍神の剣』を構えて一点突破を図り突撃。
 一刻の内に天然の城塞を築く出鱈目な島投げを、圧倒的な破壊の力で粉砕せしめるそれは、まさしく対極の戦いと言えるだろう。
「……よし、奴はバーンしか見ていない。加速装置起動! お前の力を見せてみろ!」
 隠れたメルクリウスの【神速戦闘機構『速足で駆ける者』】を起動させ、敢えての索敵範囲外から、カシムは凄まじいスピードで肉薄する。
 それはもはや、フクロウの索敵からロック、攻撃への展開までのプロセスがまるで間に合わない超速度による接近であった。
 気が付いた時には、メルクリウスの手にある鎌剣の光る切っ先が迫り、フクロウのよく回るその首を刈り取らんとしていた。
『うおっ、いつの間に近づいたのだ!?』
 緊急回避とばかり、フクロウがミネルヴァの肩から飛び上がるが、円を描くような鎌の動きは、更にもう一周、飛び上がったフクロウへとその刃を届かせ、ついにその身を両断せしめた。
「値打ちものと思ったんですが……仕方ない」
 盗む気だったのか、それ。
 いや、それならばついでの腕の一本でも刈り取れば。
 とも考えたが、それは流石に無粋に思ったのだろう。
 何しろ──、
 砂漠を分け入るかのような岩山を打ち砕いて飛び出すマーズは、自ら炎と化したかのように燃え上がり、戦いの神、火の星の名に相応しいほどの荒々しい姿をしていたのだ。
 ここに水を差すような真似はすまい。
「マーズよ。
 貴様が此処まで荒ぶるならば、打ち破れ。
 その力を以て」
『くう! だからとて、譲るものかよっ!!』
 フクロウの支援を失ったミネルヴァは、もはや範囲攻撃を持たない。
 火器管制を司る索敵ユニットを欠けば、槍からの光弾も満足に狙いを付けまい。
 だが、相手は火を纏い、大剣を手に振って来るのみ。
 わざわざ格闘を仕掛けてくるというのなら、守りに長けたミネルヴァの領域でもある。
 負けるものか。
 怪物の首をはめ込んだ不壊の盾を前に、槍を引いて迎撃に出るミネルヴァ。
 そしてマーズは、剣を振り上げた姿勢で炎を纏って降ってくる。
 その対極を傍から見ていたカシムは、迷彩を解き、ふっと息をつく。
「おでぃっ子とかいったか?
 僕から言える事は一つです」
 破壊の化身とも言うべき一刀両断の一撃が、これまでの戦いで大分傷ついたアイギスを粉々に粉砕する。
『な、なんだとぉっ!? ア、アイギスがぁ!?』
 万物を分解する破壊のオーラ【城壁の破壊者】を纏ったマーズの剣の前に、絶対防御の盾はあえなく粉砕。
 そのあり得ない光景の前に動揺したオディーコは、咄嗟に槍で迎撃することも失念していたようだ。
 すかさず振り抜いた軍神の剣の返す刀が、ミネルヴァの胸から上を斬り飛ばすのを見送り、
「神なんぞ、碌なもんじゃねーぞ」
 勝利を確信すると共に、メルクリウスの鎌を肩にかけるカシムであった。
 で、当の神ことメルシーは、長いこと隠れていたためか、改めて露になった自身のボディを確認する。
『うーん、やっぱり、白銀に黄金はいいよね☆』
 銀一色もいいけど。と、何を言っているんだこいつは。
 ともあれ、今度こそ敵の増援は無いようだ。
 念のために周囲を確認していたところ、破壊されたミネルヴァのコクピットブロックから、ずんぐりとした人影が這い出てくるのが確認できた。
『……私の負けだ。だが、何故だろう。妙に清々しい気分だ……まるで、夢でも見ていたかのように……』
 ロボットの頭から手足が生えた様なロボットヘッドの将軍オディーコは、まるで憑き物が落ちたかのような爽やかな様子で、自らを打倒した猟兵たちの姿を見やるのであった。
 この戦いにより、レイヤードは、意図せぬ客人を迎えることになり、最前線であるフロンティアラインはまた大きな謎を抱える羽目になって、波乱を呼んだりするのだが、それはまた別の話である。
 これより先、かの帝国ズーガイが攻め入って来るかどうかは、まだわからない。
 しかし暗い話ばかりではない。
 相手が得体の知れぬ出どころのロボットヘッドだろうと、構わずに命を張って助けようとしたのは、紛れもなくこのレイヤードに育った意志であるとも言える。
 もしかしたら、地下に根を張った者たちにとって、この出会いは新たな発展につながるのかもしれない。
 が、それもまた、猟兵たちにとっては別の話であるかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月31日


挿絵イラスト