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ごめんなさいを言いたくて

#シルバーレイン

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#シルバーレイン


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●誓いを立てたのに
 とある山奥に存在した病院・椿医院。その奥深くにて、誰かが啜り泣く。

「ごめんなさい。ごめんなさい……」

 目の前にいるのは、ベッドに横たわり、顔に布を被せられた誰か。
 一瞬にしてそれが『手術に失敗して死亡した患者』であると、はっきりとわかる。
 ――もっとも、この光景もすべて過去のものではあるのだが。

 施術したであろう女性医者の椿結弦はその患者に向けて、精一杯、謝り続けていた。
 溢れる涙を拭って、感情の奔出を抑えることなく。

「私が……私が出来るよって、言っちゃったから……」

 結弦が何度謝っても、何度泣いても、その患者が戻ることはないことはよく知っている。
 だからこそ涙が溢れて止まることはなく、心がズキズキと痛んでしまう。
 自分が軽率な発言をしたことで、救えない命が増えてしまったと。

「――……」

 何かを呟いた結弦はフラフラと重い足取りで病院内を歩き、階段をゆっくりと登る。
 最後の段を踏みしめて、目の前にある扉を開けば……ざあ、と流れる風の音。

 屋上へとやってきた結弦は、夜空を見るまでもなく真っ直ぐに歩みを進め……止まることはなく、ふらふらと柵の外へと出て……。

「――ごめんなさい」

 その一言を告げて、落ちた。

●時は経ち、廃病院
 やがて人々が当時の話を忘れた、現在。
 実況者と名乗る3人の若者達が山奥に存在した廃病院に訪れていた。

「えー、見えますかね? こちらが夜な夜な啜り泣く医者の幽霊が見えると噂の廃病院です」
「すごいボロボロ……。本当にいるのかね?」
「それを確かめるのが俺達なんだよ!」

 夜になると患者に対して謝りながら泣いている医者の幽霊がいる――というのが、この廃病院で出ている噂。とはいえ、実際に見た人がいなくて真実味が薄いと言われているために見向きする人が少ないのが現状だ。
 そんな現状を覆してやろうぜ! と若者達は勇んでカメラを構えて突撃したそうだ。

「じゃあ、入っていきまーす。ほら、先にいけよ先に」
「ちょ、押すな押すな。行くから」
「ひぃ……床も結構軋んでるなあ……!」

 ビビりながらも若者達は廃病院の中を進む。途中ふざけてナースセンターで遊んだり、備品を叩いてみたりなどしてみたが、特に何も起こらない。

 しかししばらく探索してから、若者達は何かに気づく。
 ――この病院、見た目より広くないか? と。

「……お、おい。なんか、ちょっとやばくね?」
「うん……外から見たときよりも、なんか広くない?」
「ちょ、ちょっと早いところ外に――」

 外に出ようと1人が促したその瞬間、啜り泣く声が耳に届けられる。
 ごめんなさい、ごめんなさい。そんな声と一緒に、後ろから。

 怖くなった若者達は一目散にその場を去ろうと、走り出した。
 だが何故か、広くないはずの病院なのに、入り組んでいない病院なのに、走っている距離がとても長い。

「あ、ああ、ああああぁぁ!!」

 恐怖で錯乱した若者達は一心不乱に走る。
 それでも、啜り泣く声は止まらないし、ずっと耳元で聞こえたまま。

 そして彼らが恐怖の頂点に達した時。
 冷静に、優しげな声で3人にこう告げられるのだ。

「――手術の、お時間です」

●地縛霊と成った者へ
「皆様お疲れさまです。シルバーレインにて排斥してもらいたい事項が出てきました」

 集まった猟兵達に声をかけたエーミール・アーベントロート(《夕焼けに立つもう一人の殺人鬼》・f33551)は、資料を配りながら今回の事件を説明する。

 今回確認されたのは、地縛霊化オブリビオン。固執する場所に何者かが現れると、自動的に出現して対象を速やかに殺すと言われている存在。
 その地縛霊化オブリビオンが確認された場所は、本来世界結界によって認知出来ない人であっても呪いの場所として認知できるようになっており、既にその場所へ向かった一般人が巻き込まれるという事件が発生している。

「啜り泣く医者の幽霊……その昔、医療ミスで患者を死なせてしまった医者・椿結弦が自殺した事により地縛霊が生まれたのですが……タイミング悪く、オブリビオンとも融合してしまったようでして」

 エーミール曰く、今回現れた地縛霊化オブリビオンは自殺してしまった結弦の魂を一緒に取り込んでおり、それが影響して地縛霊化しているとのこと。
 また、その影響で地縛霊化オブリビオンの強さは通常のものよりも格段に強くなっている。
 そのため、結弦が何故その場所で地縛霊となってしまったのか、何故そこから抜け出せないのかの理由を知ることでオブリビオンを弱体化して倒せる可能性があるかもしれないという。

 ただし、現場である廃病院には地縛霊化オブリビオンによって引き寄せられた雑霊オブリビオンが集まってきており、一直線で出向くのは難しいそうだ。

「なので、今回の任務は3つ。集団の雑霊を倒し、廃病院を探索、その後地縛霊化オブリビオンを討伐する……という流れになります」
「結弦さんもその場所に縛り付けられてるのは、さぞお辛いことでしょう。どうか、解放して差し上げてください」

 エーミールはそう頼み込むと、了承を得た者から順に現場へとテレポートさせた――。


御影イズミ
 閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
 シルバーレイン第三弾。シリアスが欲しくてご用意いたしました。
 こちらのシナリオ、キャバリアの使用が全章通して不可となりますのでご注意ください。

 初めての方はMSページをご確認の上、ご参加ください。
 何回か来て頂いてる方も更新が入ってますので再読をお願いいたします。

 なお、MSは『シルバーレイン未履修』です。
 執筆の妨げになりかねないため、参照は第六猟兵内のみとさせていただきます。

●第一章:集団戦シナリオ
 集団敵『死兵』との戦いです。
 現場である廃病院にたどり着く前の山の中で繰り広げられる戦いです。
 森の中なので視界は木々で遮られている状態となっております。

●第二章:冒険シナリオ
 廃病院の中を探索……というところで、奇妙な空間に入り込んだことに気づきます。
 病院の見た目をしていながらも、その中身は迷路のような状態。いわゆるゴーストタウン現象。
 その中で地縛霊と繋がりのある患者達とも会話が行えます。
 その他詳細は断章にて。

●第三章:ボス戦シナリオ
 ボス敵『ドクタードール』との戦いです。
 廃病院内で見つけた地縛霊化オブリビオンとの戦いになります。
 この時、原因となった幽霊『椿結弦』に共感や説得を行うことでドクタードールの弱体化を行えます。
 その他詳細は断章にて。

 皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
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第1章 集団戦 『死兵』

POW   :    ラスト・スタンド
【肉体のあらゆる損壊を無視した状態で攻撃】を放ち、命中した敵を【自身が死亡しても消えない呪詛】に包み継続ダメージを与える。自身が【致命傷を受けた状態で戦闘を継続】していると威力アップ。
SPD   :    ラスト・アタック
自身が戦闘不能となる事で、【直前に自身を攻撃した】敵1体に大ダメージを与える。【仲間】に【敵の情報】を語ると更にダメージ増。
WIZ   :    ラスト・コマンド
自身が戦闘で瀕死になると【体内】から【生者を呪い殺す怨念】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:雲間陽子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

播州・クロリア
人を襲うオブリビオンなどに彼女はなりたくはなかったでしょうに…
これ以上の悲劇が起きないよう、早急に解決しなくてはいけません
(死兵の集団を睨みつつ肩幅ほどに足を開き、深く息を吐きながら全身の力を抜いた後{霹靂の旋律}で『ダンス』を始める)
ですからこんな道草を食っている場合ではないのです
準備もできました
強行突破させていただきます
(UC【蠱の翅】を発動し{霹靂の旋律}で生み出した雷とのオーラで体を覆い『オーラ防御』を行うとそのまま廃病院に向かって『斬撃波』を起こしながら最大速度で飛翔する)



●悲劇の幕を下ろすために、私は踊る。
「人を襲うオブリビオンなどに、彼女はなりたくなかったでしょうに……」
 小さくため息を付いて道を進む播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は、今回の事件の詳細を聞いて必ず彼女を――椿結弦を助けなければと決意する。そのためにも地縛霊化オブリビオンのいる廃病院へと向かわなければならないのだが、その途中で彼女は雑霊の群れである死兵集団と鉢合わせてしまった。
 有象無象の兵の群れは地縛霊化オブリビオンによって引き寄せられているようで、治療を施してもらいたいという意思のもとに集まっている。しかしクロリアにとっては邪魔な障害物でしか無いため、彼女は一度立ち止まると肩幅ほどに足を開いて、精神を落ち着ける。
「早急に解決するためにも、ここで道草を食っている場合ではないのです」
 大きく息を吸って深く息を吐き、全身の力を抜いて死兵の動きに合わせたリズムを待つ。死兵はそんな彼女に向けて銃を向けるが、それよりも前に瞬く間に広がる雷光と轟音が辺りを埋め尽くした。
 森の中を駆け巡る雷光は木々の合間を縫って死兵の身体を貫き、轟音がクロリアの踊るリズムを刻む。それに合わせてクロリアは激しく踊り、ユーベルコード『蠱の翅』によって生まれた霹靂のオーラを纏わせる。

「準備も出来ました。強行突破させていただきます」
 十分に踊り、己の肉体に雷で出来たオーラを纏ったクロリアは翅を広げてそのまま廃病院へと向かって最大速度を維持しながら飛翔する。
 あまりにも早い速度で奔るクロリアに向けて死兵達は銃を撃ち続けるが、目標の速度が常人の出せる域を達しているために銃弾が当たる気配が無い。
 それどころか死兵達の身体はクロリアの斬撃波によって寸断され、まともに動かなくなる者ばかり。本来であれば肉体の損傷が酷ければ後退するのだが……死兵達にその考えは全く無く、損壊を気にすることなく銃撃を続けていた。

 銃撃を避け続け、最大速度の飛翔で廃病院を目指したクロリア。
 たどり着いた廃病院の入り口は酷くボロボロで、人が立ち入ることも危険な状態だった。
「……この先は……」
 踏み込もうとしたその瞬間、異質な気配が身体を包み込んだ。間違いなくこの先は、地縛霊化オブリビオンによって作られた迷宮が広がっているとクロリアは確信する。
「……大丈夫です。すぐに、そちらへ向かいますから」
 まるで結弦に向けて安心感を与えるように呟いたクロリア。準備を整えるため、彼女はもう一度深呼吸をして落ち着いたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御門・勇護
アドリブ等歓迎
視界確保の為にペン型ライトを持参

如何に優秀とはいえ人である以上必ずミスは発生するもの。ましてや当人は罪の自責に耐え切れず既にその命を絶っている。
であるならば、どのような結果になろうともやはり救いの手を差し伸べるべきなのでしょうね。

周囲を【索敵】しながら警戒しつつ山中を進んでいく。
接敵後、即座に指定UCを発動
自身は【悪路走破】で距離を取りながら【誘導弾】攻撃を行う。
【呪詛耐性】【浄化】で死兵の攻撃に対抗する。

「彼女は救われなければならない……。そしてその為にも私は進まなければなりません。だからこそ、道を開けなさい死兵共。お前たちはお呼びではないのですから。」



●失敗は恥ではなく、新たな道。
 暗い森の中、1つの小さな明かりが道を照らし出す。さく、さくと枯れた葉を踏み鳴らす音が辺りに響き、誰かが来ることを知らしめる。
「……如何に優秀とはいえ、人である以上必ずミスは発生するもの。ましてや……当人は罪の自責に耐えきれずに既にその生命を絶っている……」
 御門・勇護(求道者・f35310)はペン型ライトを片手に、今回の事件のあらましを振り返りながら廃病院を目指していた。どのような結果になろうと、救いの手を差し伸べるべきであると判断した故に。

 ゆっくりと、ペン型ライトを周囲に向けて索敵を行う勇護。わずかに感じる地縛霊化オブリビオンの気配をたどりつつも、辺りを注意しながら廃病院への道を進んでゆく。
 聞き耳を立て、視線を四方に巡らせて辺りを探る中で、パァンと1つの銃声が勇護の耳に届いた。音の遠さから着弾までに素早く身体を捻じり、飛んできた銃弾を回避してゆく。
「くっ……!」
 少しだけ銃弾が身体を掠めたが、チリチリとした痛みが全身を駆け巡るだけで痛みはない。これならばまだ戦えると、勇護は素早くユーベルコード『天部招来』を使って96体の天部の軍勢を呼び寄せる。
「――救いを求める衆生は此処に……天門よ開け、救済の先駆けよ疾く顕現せよ。救いの手を差し伸べるべき者へ、導きを」
 勇護が死兵の群れに向けて小さく睨むと、天部の軍勢は死兵の群れを敵だと認識。彼が走るための道を開くために、破邪の力を用いて死兵の身体を切り裂いてゆく。
 対する死兵も身体の損壊を無視し、勇護に向けてどんどん射撃。通すものかと恨みの呪詛を勇護へと打ち付けていった。

「……彼女は、救われなければならない……」
 彼はここに至るまでに、椿結弦の事情を聞いている。
 己の自責に耐えきれずに死んでしまっても、ずっと、ずっと苦しみ続けている。
「彼女には……失敗しても、手を差し伸べる人がいなかった。だからこそ、未だに苦しんでしまっている」
 結弦の苦しみは本人でなければわからないだろう。しかし、そんな彼女に向けて出来ることはたくさんあるのだと勇護は自分に言い聞かせて、森を駆けてゆく。

 呪詛を打ち込まれようと、お返しに誘導弾を打ち込んで天部の軍勢を誘導して。
 浄化の力を以て死した者達を倒してゆく。

「――誰かが、手を取ってあげなくてはなりませんね」

 たった1つの決意を胸に、彼は廃病院へとたどり着いたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

冴神・駿介
(不機嫌さを隠そうともせずに舌打ちし)最悪な逃げ方しやがって。テメェのケツもテメェで持てねぇのか。それで過去の化身になんざ囚われてたら世話ねぇな。

さて、邪魔だ雑魚共。見ての通り俺は今機嫌が悪い。道を開けねぇってんなら力ずくで通るぞ。なにせ命を救う技術を持っていながらテメェの命を粗末にしやがった大馬鹿野郎をぶん殴ってやらなきゃなんねぇんだ。

死兵の攻撃は覇気をもって受け流し、ユーベルコードの一撃必殺を使い、一体一体拳を打ち据えていく。

お呼びじゃねぇんだ、眠ってろ。

(アドリブ・共闘歓迎です)



●それが本当に正しい逃げ方だったのか。
「チッ……最悪な逃げ方しやがって……」
 グリモア猟兵から椿結弦の話を聞いた時から嫌な気分でしかなかった冴神・駿介(ゴーストハンター・f35755)は、廃病院を目指すために森の中を歩く。
 自分がやってしまったことに対して、自殺することしか選べなかったのか。贖罪のために選ぶべき道は他にもあっただろうにと苦言を呈しながらも、彼は僅かに感じる地縛霊化オブリビオンの気配を頼りに廃病院へと向かう。

 それを遮るように、死兵の群れは駿介を取り囲む。地縛霊化オブリビオンに引き寄せられ、宛もなく彷徨っていた死兵達は駿介を見つけるやいなや、反射的に持っていた銃で彼を撃ち抜く。
「チッ……!!」
 機嫌の悪い駿介は素早く身体を捻じり銃弾を避け、一度木の陰に隠れて死兵の群れの攻撃をやり過ごす。それでも止まない銃弾の雨に、さらにイラつき始めてしまった。
「道を開けねぇってんなら、力ずくで通らせてもらうぞ。今の俺は見ての通り、機嫌悪いんでな!!」
 イライラを通り越してしまった駿介はその覇気を保ったまま、銃弾の雨に突撃。気圧された死兵の群れの銃弾が僅かに逸れていくのを確認すると、素早く気圧された死兵に向かってユーベルコード『一撃必殺』を使った拳の一撃を当てる。
 覇気を練り、拳に一点集中させることで一撃の威力を高め、更に気圧された瞬間の僅かな体勢の崩れにより心臓に一番近い部分を貫く。死兵の肉は一瞬にして弾け飛ぶが、どうやら心臓を潰しただけでは倒れることはないようで。
「チッ……テメェらに構っている暇は無ぇんだよ。こっちは命を救う技術を持っていながら、自分勝手に命を粗末にした大馬鹿野郎をぶん殴ってやらなきゃならねぇんだからよ!!」
 1人、また1人と拳で砕いていく駿介。命を粗末にした大馬鹿野郎――結弦の下に行くまでの邪魔はするなと、声なき拳でどんどん死兵をぶん殴っては吹き飛ばし、道を切り開いていく。

 やがて駿介の前を塞いでいた死兵が少なくなったところで、森が少しずつ開けた。廃病院が近い故か、死兵達も彼を通すまいと死力を尽くして呪詛を与えてきたが、覇気で耐えきっている駿介はそれを無視してもう一度拳を振り下ろす。
「お前らはお呼びじゃねぇんだ。俺の用は、向こうにあるんだよ」
 結弦がいるであろう廃病院に向けて、彼は小さく呟く。

 ――絶対にそこで待っていろ、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴乃宮・影華
※アドリブ歓迎


命の使い方は人それぞれです
死と隣り合わせの青春に身を投じる者(例えば私とか)もいれば
……どうしようもない思いの果てに自分で自分の命を捨てる者もいる
――まぁ、間違い云々の議論はまた今度にして
今は能力者、じゃなくて猟兵の務めを果たしましょうか

UC:黒燐弾・常勝群を起動
蟲達には二つの群れに分かれてもらい
一つには森の中を飛び回り、敵を見つけ次第食らい尽くすように指示
もう一つには私の周囲をぐるぐる旋回してもらい、銃撃に対する盾となってもらいます
後は随時追加の群れを創造しつつ
イグニッションカードから取り出した赤手で心臓とかをガードして前進
撃たれた方向がわかれば詠唱ライフルで反撃です



●私の命の使い方。
「命の使い方は、人それぞれ。死と隣り合わせの青春に身を投じる者もいれば……どうしようもない思いの果て、自分で自分の命を捨てる者だっている……」
 グリモア猟兵から話を聞いて廃病院までの森を歩く鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は、生命のあり方、そしてその使い方について小さく呟いていた。
 己の生命の使い方については、他者に指図されるものでもなければ、自分が他者の使い方をどうこう言うことは野暮というものだ。それでも、結弦の生命の使い方には異を唱えたかったが。
「……ここで色々と言っても仕方有りません。今は能力者――じゃなくて、猟兵の務めを果たしましょうか」
 ふるふると言い間違いに対してゆるく首を横に降って、己の立場を思い出す影華。視界の悪い暗がりの森の奥をゆっくりと進んでいった。

 さく、さくと枯れ葉を踏む音だけが聞こえる。
 ひとつ、またひとつと枯れ葉を踏む度に、影華は神経を研ぎ澄ませる。
 そんな中、パァン、と1つ破裂音が遠くから聞こえてきた。
「……っ!!」
 瞬時に身を屈ませて、飛んできた銃弾の衝撃に耐える。事前に使っておいたユーベルコード『黒燐弾・常勝群』で呼び寄せた黒い蟲の群れによって銃撃の盾になってはもらったが、それでも銃弾の衝撃というのは凄まじい。
 イグニッションカードから試作型戦術強化機巧『暴虐之左』を呼び覚ますと、心臓や喉といった弱点を隠しつつ死兵の群れから少しずつ離れてもう一度来るであろう銃撃に備えた。
「……そこ!!」
 半分に分けた黒い蟲の群れが銃撃が放たれた先へ走り、残りの黒い蟲の群れは影華の盾となって暗い森の中に彼女の身を隠す。しかしそれだけでは、死兵の群れが止まることはない。ならばあとは、銃弾の軌道を読んで反撃するだけだ。
 黒い蟲の群れは影華の指示通り、死兵の姿を見つけては喰らう。死兵の周囲を飛び回り、視界を黒く塗りつぶして影華の姿を隠した黒い蟲は、その身体を小さくちぎって、しかし確実に肉をむしり取って食す。
「あとは廃病院を目指すだけ……」

 相棒とも呼べる黒い蟲の群れに残党を任せ、先へと進む影華。薄っすらと感じる地縛霊化オブリビオンの気配の糸をするすると辿り、暗い森の中を進む。
「……大丈夫。きっと、私にも出来ることはある……大丈夫」
 結弦に対して、自分でも出来ることはある。そう言い聞かせながら、影華はボロボロに朽ちた廃病院へと辿り着いた。
「――よし」

 ――私は、私の出来ることをやろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
手術が失敗して自殺か。時には隠蔽をする輩もいる中で、医者にとっては余程ショックだったのだろうな。
廃病院を訪れた者に迫るのは、手術をやり直そうと――は短絡的だろうか。現状を知らないうちは何とも言えないな。

兎にも角にも、廃病院に辿り着かなければならないか。
軍事演習や実戦時のように一々潜んで撃っては時間を食うからね。
知覚端子を展開して【情報収集】。なるべく敵のいない進路を【ダッシュ】して、距離をとりつつ【制圧射撃】。
木の陰に潜んでいる死兵の居場所を特定し、UCで操作した光学兵器モジュールからの照射で排除していこう。――斃しても、そこから出てくる禍々しいものは勘弁願いたいな。【呪詛】で相殺を試みるよ。



●迅速判断、即時決断。
「手術が失敗して自殺、か……。時には隠蔽する輩もいる中で、彼女にとっては余程ショックだったのだろうな……」
 ふう、と一息ついたマホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)。本来であれば結弦という医者には死ぬ理由は無いはずだが、耐えきれなかったんだろうな、と判断を下す。
「そしてこの近辺の連中は……手術をやり直そうと――は短絡的か」
 そんな中、地縛霊化オブリビオンによって引き寄せられた死兵の群れに対して、現状持ち合わせている情報のみで結論を導き出そうとしたが、実際にそうだとは言い切れないためなんとも言えなかった。

「まあ、何はともあれ廃病院にたどり着かなければならない、か」
 ひとまずの目標を定めたマホルニアは、知覚端子を展開させて五感を遠くに研ぎ澄ます。普段の軍事演習や実践時のように潜って撃ってを繰り返しては時間の無駄であると判断したため、辺りの情報を一気に収集した上で敵のいない進路を探り当てて進む作戦を取った。
 死兵の群れはマホルニアを見つけては銃撃を行い、距離を少しずつ詰めていこうと木々を利用して潜みながらも近づいてくる。流石に隠れられては時間を食うからと、即決してユーベルコード『光り輝く者』を使って1150本もの反射外殻を持つ浮遊型無線光学モジュールを呼び寄せた。
「――CODE:EMISSION//LDF_B_MODULE COORDINATE SHIFT.」
 知覚端子で集めた死兵の居場所を特定させ、モジュールに向けて指示を入力。幾何学模様を複雑に描きながら飛び交う光学モジュールのレーザー照射は的確に死兵の位置を割り出し、素早くその身体を灼き尽くす。
 しかし死兵の群れが灼き尽くされるほど、辺りに漂う空気が淀んでいく。レーザー照射による一撃で死兵は間違いなく瀕死になったのだが、どうやらそれが引き金となって死兵の体内に残る生者を呪い殺す怨念を呼び寄せていたようだ。
「おっと、流石にそれは勘弁願いたいな」
 マホルニアは出来る限り受けないように距離を取り、触れそうになった瞬間には己の持つ呪詛で相殺。モジュールにこの場を任せつつ、彼女は一気に森の中を走っていった。

「――……ここだな」
 廃病院に辿り着いたマホルニアは、空を仰ぐ。
 ボロボロに朽ち果てた病院は既に閉鎖されているため人の気配はないが……地縛霊化オブリビオンの気配はしっかりと残されていた。

 ――此処から先の判断は、慎重に行わねば。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『廃墟探索』

POW   :    端から端まで歩いてみる

SPD   :    不自然に新しい物品や生物の痕跡がないか調べる

WIZ   :    隠れている人物やオブリビオンがいないか探してみる

イラスト:シロタマゴ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 廃病院へと辿り着いた猟兵達は、一歩、病院の中へと入る。
 なんの変哲もない、ボロボロに朽ちた廃墟。一見すればそれは何事も起きていない『普通の物件』でもあった。

 しかし猟兵達にはわかる。地縛霊化オブリビオンはここにいて、椿結弦もここにいると。
 だからこそ前へ進み、彼女の場所まで向かわねばならない。

 ……だが、違和感に気づいたのはすぐのこと。
 廊下を歩いて、階段を登って、すぐの手術室に向かえば良かったはずなのだが……何度階段を登っても辿り着く様子はない。
 何度も場所を確認しても、気配のある場所まで辿り着くことがないのだ。

 猟兵達は気づく。これは『ゴーストタウン現象』だと。
 時空が歪み、外見とは異なった内装へと移り変わっていくら歩いても目的の場所へと辿り着けなくなるというもの。
 幸いにも地縛霊化オブリビオンの気配は僅かに辿ることが出来るため、その気配を辿っていけば自ずと道は開けるだろう。

 ……しかし、その途中で猟兵達は淡く揺らめく白いモヤを見つける。
 どうやら過去にこの病院で起こった出来事が時空の歪みによって見ることが出来るようになっているようだ。
 このモヤに触れることで、もしかしたら結弦に起こった出来事を見えるかもしれない……。

 地縛霊化オブリビオンとの決戦のために、見ておくか否か……。


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 プレイング受付:12/25 8:31~

 死兵の群れを倒し、無事に廃病院へと辿り着くことに成功しました。
 しかし廃病院の中に入ると、廊下や階段が無限ループな状態の『ゴーストタウン現象』に巻き込まれてしまいます。
 廊下は進んでも進んでも端に辿り着けず、階段は登っても降りても同じ階に辿り着くという不思議な構造へと変化しています。

 その途中にいくつかの白いモヤが発生しており、それに触れることで結弦の過去を見ることが出来るようになっています。
 通常のフラグメントの攻略に加え、過去を見るかどうかの記載もお願いいたします。見るかどうかによって第三章の攻略が多少変わってきます。

 なお地縛霊化オブリビオンの気配は薄っすらと感じ取る事が出来ているため、辿り着けないということはありません。そこはご安心ください。

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御門・勇護
アドリブ等歓迎
視界確保の為にペン型ライトを持参
過去の確認を行います。

想像はしていましたが、やはりゴーストタウン化していましたか。
周囲をざっと見渡しつつ溜息を一つ。
対象の気配を感じることはできるので追跡は出来るでしょうが、まずは取り込まれてしまった一般人がいないか確認しましょう。
探索途中で白いモヤを見つけたら警戒しつつ触れます。

なるほど、彼女の過去がわかるのですね。
ならば積極的に探していくことにしましょう。もしかしたらこれが彼女を救う一助になるかもしれません。

探索を終えたら気を引き締めなおし対象の元に向かいます。
 



●"私"はいつもそう。
 明かりのない、真っ暗な廃病院の中。……というのは夜だから暗いというのではない。窓の外は夜というよりも、絵の具で黒く塗りつぶされたような黒が広がっている。勇護はそんな中をペン型ライトで少しずつ照らし、足元の安全を確保してから先へと進んでいた。
 目の前が暗く、視覚的情報が少ないのもあるせいだろうか……地縛霊化オブリビオンの気配を辿って進んでも、その気配に辿り着く様子が何処にもない。同じ距離を保ったまま、ただただ勇護だけが動くという状況だ。
「想像はしていましたが……やはり、ゴーストタウン化していましたか」
 一度足を止め、ふう、と溜息1つ。周囲をざっと見渡して取り込まれた人々がいないかどうかの確認を行った後に、もう一度オブリビオンの気配がある方向へと向き直る。
 天井や床は朽ち果て、壁は壁紙が剥がれて中身が露出している風景が見えるだけで、その先の奥は黒く見ることは出来ない。ゴーストタウン現象に終わりはないのだと知らしめるかのように明かりは届くことはなかった。
 それでも、勇護は歩いた。近づかなければ終わらないのだと、自分に言い聞かせて。

「……うん?」
 ふと、勇護の視界に揺らめく白いモヤが映る。人の姿のようなモヤはうろうろと辺りを彷徨っていたかと思うと、突然勇護に向かって近づいてきた。

「これは……?」
 これが何なのか、この正体は何なのかが気になって仕方ない勇護。多少の警戒をしながらも、モヤにそっと手を触れた。


 見えてきたのは、病院の廊下。
 勇護は一瞬何が起こったのかと慌てたが、これは『椿結弦の過去を見ている』のだとわかると静かにその光景を見守っていた。

 ……視界は廊下を映されているが、しかし、届いた言葉は室内にいるであろう別の医者達から発せられたもの。それに耳を傾けていた。

『あーあ、椿のヤツいなくならねぇかな』
『アレが院長になるのかと思うと、めちゃくちゃ不安だよな。技術も何も無いくせに』
『失脚しねぇかなあ、そろそろ』

 言葉の節々に見える悪意が少しずつ、結弦の中に入り込む。それを必死に受け入れないようにとする結弦だったが、長い間このような言葉を聞いてしまっているのか、心の脆い部分に入り込む。

『……私は……』


 結弦が医者になった理由を声にしようとした矢先、大きく目の前が揺らぎ……勇護の意識は元の廃病院へと戻ってきた。
 そんな勇護にはしっかりと彼女の言葉が理解出来ていた。『私の力で助けられる人を助けるだけなのだ』と。
「……だけど、最後は出来なかった……ということですね」
 出来ると言った、助けられる人を助けられなかった彼女が地縛霊となってオブリビオンと融合してしまったのは、やはりその思いを達成できなかったからなのだろう。再び、この場所で助けたい人を助けたいのかもしれない。

「ならば、私が出来ることは……」
 視線を廊下の先へと向けた勇護。その先に映されていたのは地縛霊化オブリビオンの気配が一番強い、手術室だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴乃宮・影華
※アドリブ、共闘OK
過去は見ます


UC:黒燐弾・特務群を起動
蟲達には幾つかの群れに分かれてこの廃病院内を偵察してもらいます
私自身はとりあえず地縛霊化オブリビオンの気配に向けて直進するので
蟲達が何か異物を見つけたらその都度伝令役を私の元まで飛ばしてもらい、報告させます
たぶん今回のゴーストタウンはゲーム風に言うと
『条件を満たすまで同じマップを繰り返す』という感じだと思うので、
何かしらの物品や場所に特定のアクションを行う必要があるんですよ


……白いモヤみたいなものがあった?
その場所に案内して!
私が直に触れたらきっと反応があるわ



●尽きることのない悪夢
 廃病院に足を踏み入れた影華。まず率先してユーベルコード『黒燐弾・特務群』を使い、黒い蟲の群れを召喚して辺りの偵察と情報収集をお願いする。真っ暗で光の届かない病院内を探索するには、人間の五感だけでは限界があると判断した故に。
 明かりをつけた影華の視界には、長く続く廊下。その先に光は届かず、またその道は何処に続いているのかさえわからない。地縛霊化オブリビオンの気配を頼りに真っ直ぐ進めど、廊下の端に辿り着くことはなかった。
「……ゴーストタウン現象、ですか。となれば……」
 一度足を止め、辺りを見渡す影華。条件を満たすまで同じマップを繰り返す……というのがこのゴーストタウン現象の特徴だということを突き止めたのだが、その条件を満たすためのものはまだ見つかっていない。
 異物があれば、報告を。黒い蟲にはそのように伝えているが、少し歩いた程度では見つからなかった。
「ゲーム的に言えば、もうそろそろ何かありそうな気もするんですが……」
 ふと影華の頭に思い浮かべたのは、探索型ホラーゲーム。そのため、影華は一歩床を踏む毎に、とんとん、と足で床をつついたりして、フラグ管理を探ってみた。

 数歩進んだところで、黒い蟲がしゃんしゃんと音を鳴らして影華に情報を伝えた。少し進んだその先に、奇妙な白いモヤがあったと。
「! その場所に案内して! 私が触れたら、きっと……!」
 黒い蟲に指示を出し、白いモヤへと案内してもらう影華。すぐさまその白いモヤに手を触れると、自分が自分でなくなるような、そんな感触を受け取った。


 それが、椿結弦の過去だと知ったのは……目の前に見知らぬ医者がいたから。
 顔が黒く塗りつぶされているのは、彼女の心が壊れないように防衛反応が働いているからなのだろう。目の前の医者の言葉で押しつぶされそうになる結弦の心に、影華は寄り添っていた。

『まったく、本当にお前は……』
『時間無いんだから、あまり診察に時間かけるんじゃない』
『……すみません』

 結弦は自分の力で助けられる人を助けたいと思って、医者になった。だから診察も丁寧にしっかりとやって患者さんの病巣を見つけては取り除いていた。
 けれど、この椿医院では何よりも効率が重視されてしまう。結弦のように丁寧にやる医者は、邪魔以外の何者でもなかった。

 だから、彼女は影でいろいろと言われていた。
 それが積もって、積もって、積み重なって……やがて結弦の心が耐えきれなくなり、小さいけれど大きいミスを犯してしまった。
 そんな結弦に向けて、影華は手を伸ばそうとして……。


「――っ!?」
 気づけば、影華の目の前には地縛霊化オブリビオンの気配が一層強い手術室の前へと立っていた。結弦の過去を見たことで、ゴーストタウンを切り抜けたようだ。
「……今のは……」
 見えたものを思い返し、ふるふると軽く首を横に振った影華。今一度、彼女はしっかりと手術室の扉を見据えていた……。

成功 🔵​🔵​🔴​

播州・クロリア
今から対峙する相手のことを知ることは大事です
ひょっとしたら彼女の魂を救うきっかけを見つけることができるかもしれません
しかし同情しすぎて取り込まれないよう気を付ける必要がありますね
ここは一つ上手くいくおまじないをするとしましょう
(ふぅっと息を少し吐いた後、直立し目を閉じて両腕で自分を抱きしめるようなポーズをした後{白銀の旋律}で『ダンス』を始めた後、UC【蠱の一念】を発動する)
おまじないも終わりました
さぁでは{白銀の旋律}のように真っ白な心で過去に触れあうとしましょう



●白を染め上げる、漆黒。
 クロリアは廃病院に入り、漆黒の闇の先を進む。地縛霊化オブリビオンの気配を辿りその居場所を特定するのが今回の目的ではあるのだが……進めど進めど、その場所にたどり着く気配が無い。
 道を間違えてしまったのだろうかと考えたが、自分の進む道は間違っていなかった。であれば、残るは何かしらを見つけなければ先へ進めないのだろうと考え、クロリアは辺りを見渡した。
「……あれは」
 ふと、黒塗りの世界に白いモヤを見つけた。それは歩くような動きをしており、廃病院の中を彷徨っている。いわば、魂のようなものにも見えた。
「……ひょっとしたら、彼女の魂を救うきっかけを見つけることが出来るかもしれませんね」
 しかしその先に映るものを見て、もし同情してしまった場合が恐ろしい。取り込まれる危険性を考慮したクロリアは小さく息を吐いた後、直立して目を閉じ己を抱きしめるようなポーズを取ると、緩やかに踊りだす。
「この旋律《リズム》――押し通させていただきます」
 しんしんと降り積もる白銀の雪が、朝日によって照らされ光り輝く雪原が、クロリアの旋律《リズム》とともに呼び起こされる。ユーベルコード『蠱の一念』も使い、己の本能の赴くままに踊り……白く、何も描かれていないキャンバスのような心を作り出した。
「さあ、おまじないも終わりました。……貴方の過去を、見せてください」
 そうして雪原のように輝く指が、白いモヤに触れて――。


 気づけばクロリアの目の前に様々な管に繋がれて、ゆっくりと眠る患者の姿があった。モニタに映る様々な数値が患者の容態を正確に記しており、今はまだ患者の容態も安定している。
 クロリア――否、椿結弦は管がたくさん繋がれた患者の肩に優しく触れると、約束は守ります、と小さく呟いて病室を後にした。

 しかし、結弦と患者の約束が守られることはなかった。
 結弦の技術でも全く問題なく出来るはずの手術が、彼女の手で行われなかったのだ。
 椿医院の院長の娘であることを妬んだ上司や同期達が患者を言いくるめ、執刀医の変更を行って彼女と患者の約束を破らせるという、病院としてあるまじき体制が取られていたのだから。

『……ごめんなさい。私の技術不足で』

 患者さんは笑っていたけれど、結弦の心の中は小さな黒い染みが広がっていく。
 それは、積み重なった上司や同期達の悪意がじわじわと彼女を蝕んでいる証拠でもあり……事件の引き金となる医療ミスが起こった原因でもあった。

『……私は……』

 結弦が何か口にしたのを聞き届けた後、視界はやがて白く染まる。


「――……」
 クロリアが戻ってきたときには、既に彼女は手術室の前にいた。地縛霊化オブリビオンはこの扉一枚の向こうにいるのだと、はっきりと実感できる。
 しかし、クロリアは今しっかりと理解した。結弦は責任感が強かった故に、約束を守れなかったという思いが鎖となってこの土地に縛り付けられているのだと。
「…………」
 目の前に映る扉を前に、クロリアは顔を上げる。

 結弦を救うために、自分が出来ることは――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
◇モヤに触れる
また戻って来たか。地形の把握は得意ーーとはいえ、私が使っているのは飽くまでも五感の拡張だからな。こういった元より人を惑わす現象にはどうも使えない。
仕方ないが、幸いにも件の地縛霊化オブリビオンが生前過ごした場所だ。第三者の残した情報もあるかもしれんな。ゴーストタウン現象で辿り着いた先の部屋で気になる所があれば、手早く見てみよう。

……先程から、ーー今度は曲がり角か。移動する度に人の気配がするな。本来行くつもりのない方向だが、他に手掛かりも無いなら行くしかないか。

白い靄。これは何かが漏れている訳ではないのか。UDCであればこのタイプは関わりたくないがーー何かあれば【狂気耐性】で凌ごう。



●"私"はいつも、こうだった。
 廃病院の中を歩き、辺りをくまなく調べてみるマホルニア。普段から地形の把握をしたりするのは得意なのだが、今回は地形の把握を行っても全く意味のなさないゴーストタウン現象が彼女を檻へと閉じ込めていた。
「また戻ってきたか……。もしかしたら、五感に作用するタイプなのか?」
 マホルニアが使用している地形の把握は、いわば五感を拡張させただけのもの。知覚端子を辺りに張り巡らせることで感じ取れる五感の範囲を広げ、それによって地形の把握を行っているだけ。そのため、視覚で手に入れた情報が正しくなければ、マホルニアに届けられる情報も正しくないものとなる。
「だが、仕方ないか。……ここは件の地縛霊化オブリビオンが生前に過ごした場所だ。第三者が残した情報もあるかもしれん」
 それでも、マホルニアは情報収集を怠らない。第三者が残したであろう情報もあるかもしれないと、扉を見つけては中に入って隅々まで確認した。


「……先程から……っと、今度は曲がり角か」
 奇妙な気配を感じるなと、周囲を今一度見渡す。地縛霊化オブリビオンの気配はありありと感じ取っているものの、それ以外の別の存在がこの廃病院の中に存在していることに気づいた。
 本来足を運ぶ場所ではないのだが、第三者による手がかりが見つけられなかった以上はそちらを頼りにするしかないと思い、そちらへと向かう。
「白い……モヤ??」
 何があるのかと思ったら、少しだけ丸まった白いモヤ。まるでそこで誰かが泣いているような、そんな姿が見受けられていた。
 何かが漏れ出したのか? と考えるマホルニアだったが、今はもう、情報がない。このタイプには関わりたくはないがと、ゆっくりと手を伸ばし――。


 マホルニア――椿結弦の視界には、先生、と言って近づいてくる子供達でいっぱいだった。この子達を助けたいという、結弦の気持ちがマホルニアにも伝わってきた。

 しかし、椿医院は効率主義の病院だ。
 子供達と遊ぶ暇はないのだと、彼らと離れた後に上司から怒られてしまう。

『院長の娘だからって、何でも通ると思ったら大間違いだぞ』
『まったく、いいご身分だよな。何もしなくても院長になれるんだし』

 上司や同僚達の嫌味が、チクチクと結弦の心に突き刺さる。
 だから、その日に言われた言葉は涙と一緒に流してしまおうと、誰もいない廊下の片隅でずっと泣き続けていた。

 でも、その日だけは違った。彼女を慰める、優しい言葉があったから。
 病室から抜け出した子供が泣いている結弦にそっと声をかけて、彼女の心を明るくさせる。

 ――結弦はその日に決意した。助けられる人は、際限なく手を差し伸べようと。
 どんなに上司や同期達が嫌味を言おうと、私は私で頑張り続けようと――。


「――今のは……」
 過去が終わった時、マホルニアの視界には手術室の扉があった。地縛霊化オブリビオンの気配も、扉一枚の向こうに存在することがよく分かる。
 そして……そこに、椿結弦もいるのだということも。
「…………」
 手術室のランプを見上げ、思案するマホルニア。扉の先は未だに情報が未知なために、彼女は慎重になっていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ドクタードール』

POW   :    手術のお時間です
自身の【うっすら開いた瞳】が輝く間、【医療用メス】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    消毒のお時間です
近接範囲内の全員を【ふらふら】にする【薬剤】を放ち、命中した敵にダメージと麻痺、味方に隠密効果を与える。
WIZ   :    身体改造のお時間です
【医療用メス】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。

イラスト:儚木こーあん

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ロスティスラーフ・ブーニンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 手術室の先に、地縛霊化オブリビオン――は存在していた。
 椿結弦の『約束を守れなかったという思い』が見えない鎖となって、オブリビオン・ドクタードールをこの地に縛り付けている。

 結弦は同じ医者という性質に引き寄せられ、ドクタードールと一体化してオブリビオンとなり、過去を清算するために今一度椿医院へと戻ってきた。
 だがそれは、彼女の本意ではない。むしろ病院は自分の居場所であり、戻れるのならもう一度戻りたい場所である。
 それでも彼女が現在《いま》から離れた理由は、彼女を蝕んだ余所から流れ込む黒い感情が原因だ。


 守れなくてごめんなさい。
 助けられなくてごめんなさい。
 手が遅い医者でごめんなさい。
 言い訳が多くてごめんなさい。
 
 何も出来ない医者で―――。


 いろいろな謝罪の言葉が猟兵達の耳に届けられる。
 彼女の謝るべき対象は、もうここにはいないというのに。
 それでも彼女は、ごめんなさいを言いたくて言い続けている。
 言わなければ、言っておかなくては、全てに忘れられてしまう気がしたから。


 そんな結弦の影響もあってか、ドクタードールの強さは計り知れない。
 猟兵達の力など、何するものぞといった表情で佇んでいる。

 結弦の『約束を守れなかったという思い』が縛り付けているのは、何も彼女の存在だけではない。
 ドクタードールが結弦と繋がりを持ったのは、彼女の黒い感情を吸い上げ、それを毒として扱うため。それ以外の何でもない。
 むしろ、縛られたことでより一層の吸い上げが期待できると、ドクタードールは喜んだ。強い毒を作り上げるのも簡単に出来るのだと。


 黒い繋がりでこの地に縛り付けられた地縛霊化オブリビオン。
 その討伐を、始めよう――。


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 プレイング受付:2022/1/2 8:31~


 無事にゴーストタウン現象の廃病院を抜け、地縛霊化オブリビオン『ドクタードール』のいる手術室へと到達することが出来ました。
 残るはドクタードールの討伐となりますが、オブリビオンは地縛霊化したことによって通常よりも強力な力を得ております。

 地縛霊化オブリビオンを弱体化させるには、【地縛霊である椿結弦がここに取り憑いた理由を知った上で慰めてあげる】ことが条件となります。
 現時点で理由は全猟兵に知られているため、残るは彼女を慰めることが条件となります。
 この弱体化を行わない限り、どんなプレイングでも苦戦となる可能性が高くなりますのでご注意ください。

 場所は手術室。機材などは全て朽ちているため使用することは出来ません。
 また室内のためキャバリアの使用も不可となります。

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播州・クロリア
(敵の攻撃を『ダンス』のステップで回避しながら呼びかける)
椿さん
失礼ながら貴女の過去を覗かせていただきました
断言します
貴女には何の罪もありません
だから謝罪は不要です
…でも貴女は否定するでしょう
そんな貴女を見ていると私は胸を締め付けられるような思いに苛まれるのです
…どうか私のために自分を許すことを考えていただけませんか?
患者である私を救っていただけませんか?
(UC【蠱の一念】を発動し『衝撃波』で敵の攻撃を弾いた後、離れた敵に向けて『斬撃波』を纏った蹴りを放つ)



●せめて医者として
 手術室の中、地縛霊化オブリビオンとなったドクタードールが医療用メスを向けてクロリアに『手術』を施そうとしていた。
 しかしクロリアは得意のダンスを用いて、医療用メスを避け続けている。それは猟兵としての本能、オブリビオンを倒すという強い意志を持ち、なおかつ椿結弦を救うという決意のもとに踊り続けている。
「……椿さん」
 くるり、くるりと踊る中、クロリアはドクタードールと繋がってしまった結弦に向けて過去を見てしまったと謝罪をした後に、断言した。貴女には何の罪もない、謝罪は必要ないと。
 だが……それでも、謝罪が止むことはないことはクロリアも承知だった。むしろ、声をかけてしまったことで結弦はそれを否定した。最終的に起こってしまったことが、全てなのだからと。
『私が、私がいた、から……』
 その否定に重ねるように、クロリアは結弦に向けて声をかける。ただし、立場を助ける側である猟兵としてではなく、結弦が助ける患者側に立った言葉で。
「でも私はそんな貴女を見ていると、胸を締め付けられるような思いに苛まれるのです。……どうか、私のために自分を許すことを考えていただけませんか?」
『それ、は……』
 結弦が少し戸惑うような声をあげると同時、ぐらりとドクタードールの身体が揺らぐ。結弦の悲観的な意識が少しだけ修正されたことが影響しているのか、ドクタードールの動きも若干変わり始めていた。
「私は、貴女という医者に助けて欲しい。患者である私を……救っていただけませんか?」
 柔らかに微笑みかけた表情とは裏腹に、クロリアの動きは更にキレを増してゆく。自分を救うのはこの病院にいた椿結弦であり、彼女の死後に取り憑いたオブリビオン・ドクタードールではないのだと言いたげに。
 そのひと押しとしてユーベルコード『蟲の一念』を使って反撃能力を高め、ドクタードールの攻撃に合わせて衝撃波を放って吹き飛ばし、距離を取った。

「この旋律《リズム》、押し通させていただきます」
 もう一度、今度は強いリズムを取って斬撃波を纏った蹴りを披露するクロリア。
 その衝撃によってドクタードールは暗闇の中へと溶けるように消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
地縛霊化オブリビオンと“彼女”は分けて考えるか。オブリビオンの行動は人を傷つけるもものだが、彼女には後悔があっても来た人間を傷つける理由がないからな。
分離……は出来ないだろうが、オブリビオンとしての行動に疑問を持たせるようにするよ。

疲弊していれば、いつかはヒューマンエラーが起こってしまうもの……本来は組織全体でフォローする筈のものだけれどーー、長い間一人で耐えてきたのね。
子供達や患者たちのことを覚えている?貴方には病状の不安をよく話したり、退院したら何をしたいか――とか、そんな話をしたのではないかしら。
それで隠れていた病気を見つけたり、子供達や保護者の不安も取り除くことができたのなら――それが貴方のしてきたことで、『何もできない医者』ではなかった筈。
貴方がやりたかったのは病院に来た人間を傷付けることーーだったかしら。

こういう時に浄化なり出来れば良いのだが、私は呪う事しか出来ないからね。オブリビオンに対して【呪詛】の侵食で攻撃。ドクタードールの黒い繋がりの摩耗を狙うよ。



●貴方は何も出来ない医者ではなかった。
 手術室の中、ドクタードールの攻撃を軽々と回避するマホルニア。地縛霊化オブリビオンと椿結弦を分けて考えなければならない、という結論を自分の中で構築していた。
「オブリビオンの行動は人を傷つけるものだが、彼女には後悔があってもここに来た人間を傷つける理由がないのだからな……」
 そう、元はと言えばこの事件は世界結界によって記憶を失うはずの一般人達が、オカルト物件と称して見に来たところを惨殺されたところから始まっている。
 しかし全ての情報を手に入れた今、結弦には訪れた人々を殺す理由はなく、ただただこの地に未練を残して縛り付けられたところに、同じくこの地に縛り付けられたドクタードールと融合してしまっただけ。彼女に罪はない。
 それならば、2つは分けて考える必要があり……声をかけるならば結弦の方だと判断し、ドクタードールの攻撃範囲から距離を取りつつマホルニアは結弦に向けて声をかけた。
「疲弊していれば、いつかはヒューマンエラーが起こってしまうもの……本来は組織全体でフォローする筈のものだけれど――……貴方は長い間、1人で耐えてきたのね」
 優しく、寄り添うように声をかけるマホルニア。僅かだが結弦が啜り泣くような声が聞こえた気がして、更に声をかける。今度は、自分がやってきた行いは間違いではないと答えるように。
「ねえ、子供達や患者達のことは覚えてる? 貴女には病状の不安をよく話したり、退院したら何をしたいか――そんな話をしたのではないかしら?」
 きっとその会話の中では結弦は隠れた病気を見つけたり、子供達や保護者の不安を取り除いたりと、他の医者がやってなかったことをやっていたのではないかと問いかける。その言葉に対し結弦は何も答えなかったが、マホルニアはひと押しの言葉を結弦に渡した。
「貴女がやってきたことは、とても素晴らしいこと。色々あっただろうけど……それでも貴方は『何も出来ない医者』ではなかったのよ」
 親が子を慰めるように声をかけたマホルニア。直後にドクタードールの手が伸びてきたが、それをマホルニアはユーベルコード『逆しまの樹』で根を張り、膨張した呪詛の奔流に飲み込んでオブリビオンと結弦の繋がりを侵食し、摩耗させるように操作した。

「貴方がやりたかったことは……この病院に来た人間を傷つけること、だったかしら?」
 最後の問いかけは、結弦の心にゆっくりと響く。
 いつしか辺りに響き渡っていた啜り泣く声は、聞こえなくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴神・駿介
妬み、嫉み……なんだ、何も悪くねぇじゃねぇか、アンタ。
アンタは全うしなかったんじゃなくて、全う出来なかった。周りのテメェの事しか考えねぇ奴らの所為で。……悪かったよ。だから、ぜってぇにブン殴る。そいつを養分にのさばる過去ってヤツをな。

この拳届かせる為にを使用。
薬剤、医療用メス、全部当たらなければどうという事は無い。
軽業を使った体捌きと、見切りによる回避、覇気による受け流しで敵の攻撃は捌き、グラップルによる拳の一撃を何度でも叩き込む。
覚えておくよ……だからアンタも抗ってくれ。アンタをいいようにする、過去ってヤツに。



●過去に抗って欲しい。
「妬み、嫉み……なんだ、何も悪くねぇじゃねぇか、アンタ。……悪かったよ」
 様々な情報が頭に流れ込んできた駿介は、大きくため息を付いた。最初は結弦を殴りに行こうと決起していたが、流れ込んできた情報が己の予想とは遥かに違っていたことから、小さく謝罪の言葉を述べる。
 だからこそ、結弦を助けるために必ず地縛霊化オブリビオン・ドクタードールを殴ってやると誓った。結弦をこの場に縛り付けた悲しみの想いを養分にして現存する過去を、代わりにぶん殴ってやると。

 ドクタードールとの距離を詰める前に、ユーベルコード『この拳届かせるために』を発動。己の身体能力の向上を図り、近距離戦闘の技術をより精確に高める。
「そのメスも薬剤も、全部当たらなければどうということは無いんだろう?」
 ニヤリと笑った駿介はドクタードールが放つ薬剤を軽業を応用した体捌きで回避しながら、わずか数ミリという距離まで詰めてグラップルの要領でドクタードールに拳を与えた。
 一撃、また一撃と拳を当てる中、駿介はところどころ息を整えつつも結弦に向けて声をかける。それはこの地に縛られた結弦の魂を解放するためでもあり……彼女のことを忘れないという意思表示でもあった。
「なあ、聞こえてるか。色々あったが、アンタのことは俺は絶対に忘れない。覚えておくよ。……だから、アンタも抗ってくれないか」
 グラップル応用の拳の一撃を連続して叩き込み、辺りに飛び散る薬剤を払いながら出来るだけ声が届く距離を保ちつつ、過去に打ち勝ち結弦を支配している者――ドクタードールに抵抗を示してくれと、声を荒げる。
 その声がしっかりと結弦に届いているのか、ドクタードールの動きが少しずつ鈍る。薬剤の散布も上手くいかず、頭を押さえつけてはフラフラと手術室内を歩く。

「テメェはぜってぇに、俺が、ぶん殴る。テメェは……過去をいいように操った、それだけでな!!」
 たった1人の医者の悲しき過去。それを養分として手に入れ、無害な人々を殺し、己の力に変えたドクタードールには制裁を。

 強く、大きな衝撃が手術室に響き渡ると同時、ドクタードールの身体は手術台へと叩きつけられた。

成功 🔵​🔵​🔴​

御門・勇護
人を救わんとした医師の想いと後悔。それを悪用されるのは何とも気分が悪いものです。なんとしても彼女の心を救い上げたいものですね。

接敵後、【指定UC】を使用。【転輪蝶】と【告死蝶】を周囲に漂わせながら【慰め】つつ説得を試みましょう。

どうか医師を志したときの気持ちを取り戻してほしい。貴女に罪がないとは言えない。けれど貴女一人の罪ではないのです。貴女は確かに救おうとした。けれど周囲の悪意がそれを許さなかった。ただそれだけなのですから。

弱体化後は【誘導弾】【弾幕】で消し飛ばすとしましょう。



●なんとしてでも、救い上げたい。
「……人を救わんとした医師の想いと後悔。それを悪用されるのは……なんとも、気分が悪いものです」
 手術室でドクタードールと対峙する勇護は少しだけため息を付いた。本来であれば地縛霊としているだけだったはずの椿結弦の魂が、このような形でオブリビオンと融合して発現してしまうのは良い気分ではないと。
 すぐさまユーベルコード『神気発露【神樹顕現】』を発動させ、手術室を一本の藤の巨木で埋め尽くし、舞い踊り続ける藤の花を咲かせた。
「――我が祈りは劔、我が願いは鎧。我が腕は天を覆い、我が脚は大地を抱く……」
 ふわりと花が咲き、辺りに藤の花の香りが広がると同時に黒い翅の告死蝶と白い翅の転輪蝶がひらひらと周囲を飛び回る。それを切り裂こうとドクタードールは医療用メスを振り回すが、藤の花によって視界が塞がれ絡みつかれて動きを阻まれていた。
 どんなに切り裂いても、どんなにもがこうとも、藤の花はドクタードールを逃さない。

「……聞こえますか? 椿さん」
 その合間にも勇護は結弦に語りかける。少しでも彼女を慰め、説得することでドクタードールの力を弱めるのが目的だ。
 結弦からの返答はない。しかし気にすることなく勇護は語り続ける。彼女にこれまでの自分を思い出してほしいと言葉を強め、しっかりと言い切るように声をかけた。
「貴女に罪がないとは言えない。けれど、貴女1人の罪ではないのです……」
「貴女は確かに誰かを救おうとしていた。けれど、周囲の悪意がそれを許さなかった。……ただ、それだけ。それだけなのです。己の罪だけが全てではないのですよ」
 結弦の罪は確かにあるだろう。しかしそれは結弦が周囲の悪意によって彼女の意志を潰したのが原因だ。全てが結弦の責任ではないのだと、勇護はきっぱりと言い切った。
 その言葉が結弦に届いたのか、ドクタードールの動きが鈍る。地縛霊化オブリビオンとしての力を失っているのだろう、先程よりも緩やかな動きになっていた。

 勇護はその隙に連続攻撃を叩き込み、ドクタードールを叩き伏せる。
「目を向ける場所、それを間違えてはいけませんよ」
 唯一つ、言葉を残して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴乃宮・影華
※アドリブOK


全てはもう、どうしようもなく終わってしまっている話です
骸の海に沈んだ過去の一つに過ぎない
ねぇそうでしょう、椿結弦さん?
――気づいてますよね、貴女を追い詰めた何もかもがもう何処にもないと
――わかってますよね、貴女が謝るべき相手はもう此処にいないと
貴女が医者だったから助からなかった命があると嘆くなら、
貴女が医者だった事に感謝した人がいた事を思い出して下さい

UC:黒燐弾・常勝群を起動
蟲達に医療用メスを受け止めてもらっている間に
「さぁ――『ごめんなさい』も、終わりにしましょう?」
長剣の斬撃波をオブリビオンに叩き込みます



●これで、おしまい。
「――全てはもう、どうしようもなく終わってしまっている話です」
 そう語る影華はユーベルコード『黒燐弾・常勝群』を発動させて、呼び寄せた黒い蟲の群れに地縛霊化オブリビオン・ドクタードールの医療用メスを受け止めてもらっている。
 今はまだ椿結弦の影響もあってドクタードールの力は強力だ。それをどうにか弱体化させるため、影華は結弦へと語りかけていた。
「骸の海に沈んだ過去の1つ。それはもう二度と始まることはなく、誰かが無理矢理に呼び起こしたのです。……ねぇ、そうでしょう? 椿結弦さん」
 医療用メスを振りかざすドクタードールの動きは止まることはない。けれど、影華は続けざまに言葉を紡ぐ。

 ――貴女を追い詰めていた何もかもは、何処にもない。
 ――貴女が謝るべき相手は、此処にはいない。

 ――貴女はもう、救われてもよいのだと。

「貴女が医者だったから助からなかった命があると嘆くのなら……逆もまた然りです。貴女が医者だったことで助けられた人々、その方々からの感謝があったことを思い出してください」
 優しく語りかける影華の言葉が結弦に突き刺さり、ドクタードールの動きを鈍くしていく。自分がやってきたことは間違いではない、自分の行いで救われた人がいるという救いの言葉は結弦にもしっかりと届いているようだ。
 その証拠にドクタードールの視界は徐々に狭まっているようで、黒い蟲の群れ以外が見えなくなっている。既に影華の姿を捉えることも難しくなってきており、蟲達の動きについていくのが精一杯の状態だった。
 それでも、ドクタードールは気配を辿って無理矢理に影華に噛みつこうとしている。見えなくなる前に、自分が倒される前に、せめて未来を守ろうとする猟兵を手術して世界から取り除いてやろうと。
 
「結弦さん、もう貴女の過去を前に進める必要はありません。ここで『ごめんなさい』は終わりにしましょう?」
 そう言うと影華は黒の葬華を構え、大きく振り下ろす。まるで結弦を縛り付ける鎖を解き放つかのように、大きな斬撃波を生み出してドクタードールの身体を思いっきり吹き飛ばし――。



●やっと言えた一言
 猟兵達の説得により、椿結弦の無念、悔悟の念は消えてゆく。
 それを繋ぎ止めていたドクタードールの身体も、彼女の意識が空へと溶けると同時に砕け散って消えていった。

 最後に、結弦は消える間際にただ一言だけ猟兵達に残した。
 助けてくれてありがとう、と……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月06日


挿絵イラスト