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月光城の不死嬢

#ダークセイヴァー #【Q】 #月光城 #月の眼の紋章

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「ダークセイヴァーの謎に新たな進展がありました。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「リム達の知るダークセイヴァーが『地下世界』だという情報は既にご存知かと思いますが、だとすれば不自然な点がこの世界には多々あります。その1つが『月』です」
 地下であるはずのダークセイヴァーでも、他の世界と同様『月』は空中に見えている。
 衛星のように実体を伴う何かが浮かんでいるのか、人類を欺くためのただの幻なのか、正体も由来も定かではないが、今回それと関連性のありそうな情報を掴むことができた。

「これまで皆様が『第五の貴族』との戦いを優勢に進めた結果、彼らの住まう第五層のところどころに『月光城』と呼ばれる城塞が幾つもあることが判明しました」
 城主不明、建てられた理由も不明。全てが謎に包まれたその城塞群には、共通する特性として「月の満ち欠けに呼応して輝く」らしい。月の謎を突き止める手がかりとしては弱いかもしれないが、調査してみる価値はあるだろう。
「そして今回、リムのグリモアは『月光城』の1つに関する情報を予知しました」
 情報によると全ての月光城には『月光城の主』と呼ばれる強大なオブリビオンが君臨しており、『第五の貴族』の干渉すら阻んで、あらゆる存在の侵入を遮断しているらしい。これまでの第五の貴族討伐と同等、あるいはそれ以上に危険な冒険になるだろう。

「月光城の内部は『ヴァンパイア・シャドウ』と呼ばれる城主の配下が警備しています」
 元は隠密行動や搦め手を得意としており戦闘力は然程高くないオブリビオンだったが、城主の力による強化が施されており侮れない戦力となっている。任務遂行の為には手段を選ばない気質のようで、城内に侵入した者を徹底的に排除しようと襲ってくるだろう。
「さらに城内のあちこちには、近付くと『深紅の棘』が飛び出す罠が仕掛けられていて、刺されると血を奪われます。ですがこの罠は誰でも近づけば無差別に作動するようです」
 敵と罠を同時に対処するのは難しいかもしれないが、逆に罠を利用することができれば戦いを有利に進められるだろう。むしろそのつもりで挑まなければ、この先に進む事などできそうもない。それほどヴァンパイア・シャドウによる警備網は厳重だ。

「月光城の奥に進むと、その先は城主が闇の呪術を掛けた特別なフロアになっています。内部には一切の光がなく、気温は常に氷点下に保たれています」
 まるで巨大な冷凍庫のような、凍える闇の領域。とてもまともな生命が生存できるような環境では無いが、もしそこで灯りを点せば、より背筋が冷たくなるものを見るだろう。
「このフロアには月光城の城主に連れ去られた人間たちが生きたまま氷漬けにされ、絵画や標本、剥製などの形で捕らえられています。城主はここを『人間画廊(ギャラリア)』と呼んでいるようです」
 恐ろしいことに画廊の展示品にされてなお、ここの人間達は生きている。連れ去られた時と変わらぬ姿形のまま、みな恐怖と絶望に歪んだ表情で、悲鳴すら上げられぬ状態で。

「人間画廊の先には城主の玄室があります。その名は『不死嬢イヴマリア』。極めて強大な力を持ちますが、内面は子供のように幼稚で我儘なヴァンパイアです」
 寂しがり屋の彼女は「ともだち作り」に執心しており、気に入った人間を月光城に連れ去っては画廊の展示品にする。そうすればずっと一緒にいられると考えているようだが、つまらない癇癪を起こして展示品を「壊して」しまうこともしょっちゅうのようだ。
「幼稚さゆえに残酷な彼女を月光城の主たらしめているのは『月の眼の紋章』という特殊な紋章の力にあります」
 この紋章はイヴマリアの肉体と融合して、その戦闘力を大幅に強化している。これだけなら他の紋章と同じだが、尋常でないのは強化度合い。グリモアの予知によると月の眼の紋章と融合したイヴマリアの戦闘力は通常時の「66倍」に相当するという。

「とてもではありませんが、このまま敵う相手ではありません。ですが『月の眼の紋章』にも弱点はあり、どうやら人間画廊に捕らえた人間をエネルギー源にしているようです」
 つまりイヴマリアと戦う前に彼女の画廊から人々を解放すれば、そのぶん紋章の効果は弱体化する。予知によると救出率が50%に達すれば、敵の強化は完全に失われるようだ。
「呪術の掛かっている範囲から運び出すことができれば、被害者は自然に解凍されます。こちらが逆に氷漬けになる危険と隣り合わせですが、やらないわけにはいきません」
 月の眼の紋章のエネルギー供給源を絶つことができれば、こちらにも勝機は十分ある。
 強化を無効にするだけなら最悪、展示された人々の「生死」は問われないが――できれば生きたまま解放してあげてください、とリミティアは付け加えた。

「戦闘力が素に戻っても、イヴマリアは元から強大なヴァンパイアです。また、月の眼の紋章には融合者を強化する他にも『飛び出す棘鞭』による攻撃機能があり、本体の攻撃と合わせて対処する必要があります」
 これほど強大かつ特殊な力を持つ城主が座する『月光城』は、やはり第五層でも特別な意味があるのだろう。月の謎を突き止めるという目的を置いても放置できる所ではない。
「危険の多い冒険となりますが、皆様ならば必ず攻略できると信じています」
 リミティアは信頼の眼差しで猟兵達を見つめながら、手のひらにグリモアを浮かべる。
 目的地はダークセイヴァー第五層にたたずむ謎多き魔城。新たなる冒険の幕が上がる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はダークセイヴァーで新たに発見された謎の拠点『月光城』の探索と、その城主の撃破が目的となります。

 1章は城内を守る『ヴァンパイア・シャドウ』との集団戦です。
 搦め手を得意とする隠密部隊で、普通の個体より戦闘力も強化されています。
 また城内の床や壁、天井などあちこちには『吸血する深紅の棘』の罠が仕掛けられており、敵と戦いながら同時に対処する必要があります。
 逆に、罠を利用して敵を嵌めることができれば有利に戦えるでしょう。

 2章は凍える闇に包まれた『人間画廊(ギャラリア)』の冒険です。
 内部は完全な闇に閉ざされており、氷点下の大気が生命を凍らせます。あまり長居すれば猟兵でも危険でしょう。
 ここには氷漬けになった数多くの人間が、生きたまま美術品として飾られています。この章で解放できた人間の数によって、3章の敵の強さが変わります。
 救出した人々はひとまず安全な場所に隠れていてもらって、然る後に城主のいる玄室へと突入することになります。

 3章は月光城の主である『不死嬢イヴマリア』との決戦です。
 寂しがり屋で幼稚で我儘な癇癪持ちという、幼い子供のような性格ですが、吸血鬼としての実力は高いです。『月の眼の紋章』と融合した彼女は手が付けられないほどの強さを誇りますが、2章での皆様の活躍次第で弱体化させる事ができます。
 ただし強化効果が失われても紋章には別途で攻撃機能があるので、本来のユーベルコードによる行動と同時に対処する必要があります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ヴァンパイア・シャドウ』

POW   :    粘り蜘蛛糸
【両手】から【粘着性の高い「蜘蛛の糸」】を放ち、【拘束する事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ハイドインシャドウ
自身と武装を【影】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[影]に触れた敵からは【数秒の僅かな時間であるが、正常な判断力】を奪う。
WIZ   :    バッドラックシュート
【自らの気力】を籠めた【不吉な絵柄のカード】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【幸運度】のみを攻撃する。

イラスト:赤霧天樹

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ロリータ・コンプレックス
ダクセの謎……いい加減トラウマがどうとか言ってられないね。猟兵になって成長したし、今なら戦えるはず!

……運気への攻撃……罠の城内ではなるほど、命取りね。だったらいかに不運でも罠にかからない状況を作ればいい!
UC発動!床にも壁にも天井にも触れないロリータちゃんのお城を造らせてもらったわ!このまま人間画廊まで駆け抜けるよ!
ん?敵さんは招待してないんだけどな。侵入者には御退場願おう!敵を囲う部屋を作って、床だけ消す!月光城の床と部屋を連結させたらどんどん部屋を狭くするよ。そのまま真紅の棘の餌食になってね。ロリータちゃんは先を急ぐから、バイバイ!
……手下とはいえヴァンパイアと正面から戦えるかっての。



「ダクセの謎……いい加減トラウマがどうとか言ってられないね」
 夜闇の中に浮かび上がる「月光城」を見上げて、ロリータ・コンプレックス(ロリータちゃんは以下略だ!・f03383)はぽつりと呟く。過去の辛い記憶からダークセイヴァーでの依頼を避けてきた彼女だが、ついに立ち向かう覚悟を決めたらしい。
「猟兵になって成長したし、今なら戦えるはず!」
 今の自分はもう無力ではない。猟兵としての活動を通じて心も体もきっと強くなった。
 普段通りの自分をキープして、オラトリオの少女は危険な敵の居城へ飛び込んでいく。

「侵入者……排除します」
 城内に入ったロリータを迎えたのは、月光城の警備を担うヴァンパイア・シャドウ達。
 任務に忠実な彼女らは淡々とした様子で侵入者を取り囲むと、不吉な絵柄のカードを投げつけてくる。
「痛っ……くないね」
 カードに当たっても肉体には傷付かないが、代わりに別の何かを奪われる感覚がある。
 このユーベルコードの名は【バッドラックシュート】。対象の幸運度を攻撃する事で、不運を呼び込み自滅へといざなう術だ。

「……運気への攻撃……罠の城内ではなるほど、命取りね」
 この城の中には至る所に罠が仕掛けられているのはロリータも知っている。この連中は自分が"運悪く"それに引っ掛かるのを狙っているのだろう。流石に警備を任されているだけあって、向こうは城の環境を利用した戦い方を理解している。
「だったらいかに不運でも罠にかからない状況を作ればいい!」
「なに……?」
 何をするつもりかと緊張するシャドウ達の前で、ロリータは【ロリータちゃんの絶対領域】を発動。こんな暗くて不気味なお城よりも、もっと自分好みなお城をイメージして、具現化する。するとたちまち戦場の景色が迷路のように書き換わっていく。

「床にも壁にも天井にも触れないロリータちゃんのお城を造らせてもらったわ!」
 戦場のリニューアルによって罠にかかる可能性を排除するという、大胆極まる発想力。
 完成した自分の城の中でロリータは得意げに胸を張りつつ、そのまま駆け抜けていく。目指すは人間画廊(ギャラリア)とその先にある城主の玄室だ。
「っ……待ちなさい!」
「ん? 敵さんは招待してないんだけどな」
 このまま行かせてなるものかと、慌ててロリータ城に飛び込んできたのはシャドウ達。
 ここでは彼女達のほうが招かれざる客である。立場逆転した城主ロリータが視線を動かすとゴゴゴと音を立てて壁が動きだし、敵を閉じ込めるための新しい部屋が出来上がる。

「侵入者には御退場願おう!」
「なっ? きゃああああっ?!」
 ここはロリータのイメージが作り出した領域。術者の想像次第で構造変化も自由自在。
 城主がパチンと指を鳴らすと、小部屋に囲い込まれたシャドウ達の足元の床が消える。悲鳴を上げて落ちていった彼女らの行き先は、本来の月光城の床の上だ。
「そのまま真紅の棘の餌食になってね」
 床に叩きつけられた衝撃で罠が作動し、飛び出した棘茨がシャドウ達を串刺しにする。
 下のほうから聞こえてくる悲鳴をよそに、ロリータはどんどん部屋を狭くして、囲った敵を自分の城から落っことしていく。

「ロリータちゃんは先を急ぐから、バイバイ!」
 床に空いた大穴からシャドウ達に手を振ると、ロリータはさっさとその場を後にする。
 敵はまだ生きているかもしれないが、警備を全滅させる事が今回の依頼目的ではない。人間画廊に捕らえられた人々を救い、城主を弱体化させるほうが優先事項だ。
「……手下とはいえヴァンパイアと正面から戦えるかっての」
 ぽつりと彼女が漏らした呟きは、今だ心に刻まれたトラウマからの本音かもしれない。
 だが、それでも少女はさらなる危険が待つであろう城の奥へと、迷いなく進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
ここが地下世界と知ってから気になってはいたんです。
やはり、お月様には何か秘密があるんですね。
このお城に手がかりがあればいいんですけど……第五層にありながら、城主さんは第五の貴族とはまた別の存在なんでしょうか?

奥に控える敵はこれまで以上に強力なようですし、ここで消耗するのは出来れば避けたいです。
罠を利用する戦い方、試してみましょうか。
罠に掛からないようあまり動かず、敵の蜘蛛糸を敢えて受けて【奇跡の証:原初の傷痕】で自身の力を増幅します。
そのまま、強化された【念動力】と体重移動を利用して敵を糸ごと振り回し、深紅の棘が飛び出る位置に投げ込みます。

うーん……慣れないからか、あまりしっくりきませんね。



「ここが地下世界と知ってから気になってはいたんです。やはり、お月様には何か秘密があるんですね」
 地の底では太陽と同じように見ることが叶わぬはずの『月』。今も虚空に浮かぶそれと呼応して輝く「月光城」を眺めて、レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)は呟く。
「このお城に手がかりがあればいいんですけど……第五層にありながら、城主さんは第五の貴族とはまた別の存在なんでしょうか?」
 あらゆる存在の侵入を遮断しているという話が事実なら、少なくともこの城の主の力が第五の貴族と同格以上なのは間違いない。謎と危険に満ちた敵への警戒感を強めながら、彼女は慎重に城内に突入する。

「猟兵がこの城に何の用です」
 城内を守護するヴァンパイア・シャドウ達は、レナータを見つけるなり攻撃を仕掛けてきた。元は下級のオブリビオンながらも城主によって強化されているのか、身のこなしは並みの吸血鬼以上に素早い。
(奥に控える敵はこれまで以上に強力なようですし、ここで消耗するのは出来れば避けたいです)
 下手に動き回れば罠に掛けられると判断したレナータは、敢えてその場に立ち止まると攻撃を受ける構えを見せた。無防備なオラトリオの少女目掛けて、シャドウ達の両手から【粘り蜘蛛糸】が放たれる。

「身体は縛られても、心までは縛られません」
 粘度の高い蜘蛛糸に絡まれたレナータは、しかし慌てることなくサイキックエナジーを解放する。身体拘束をトリガーに発動した【奇跡の証:原初の傷痕】が彼女の力を高め、増幅されたサイキックは強力な念動力として敵に反撃を行う。
「ぐっ……?! なに、を!?」
 見えざるサイキックの力に糸ごと掴まれたシャドウ達は、目を白黒させながらもがく。
 苦痛や束縛にて力を増す「リベリオンフォース」を保有するレナータに対して、迂闊な拘束は悪手でしかないことを彼女らが知るのは、もう全てが手遅れになった後だった。

「罠を利用する戦い方、試してみましょうか」
 そのままレナータは体重移動と念動力を利用し、敵をぶんぶんと蜘蛛糸ごと振り回す。
 こうなれば強みのはずの糸の強度や粘着性は、使い手にとって仇となる。捕まえたはずが逆に捕まえられた側になっていたシャドウ達は、為すがままに振り回され――そして、罠の仕掛けてある位置に投げ込まれる。
「「きゃああぁぁぁぁぁぁっ!!!?!」」
 床や壁から飛び出した真紅の棘が、本来なら城を守るはずの彼女らを貫き、血を奪う。
 吸血鬼が奏でる断末魔を聞きながら、レナータは自身を縛る糸を念力で引きちぎった。

「うーん……慣れないからか、あまりしっくりきませんね」
 戦果は上々なれども満足とまではいかない表情で、かくりと小首をかしげるレナータ。
 負傷さえも力に変える体を張った戦闘スタイルを得意とする彼女には、罠を使った戦法は性に合わないのかもしれない。消耗を抑えるにはベストだったのは間違いないのだが。
 ともあれ妨害は排除した。敵の増援がやって来る前に進んでしまおうと、彼女は足早に月光城の奥へと向かう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
生きたまま氷漬けにされ、永遠の如き恐怖に怯えながら見世物にされる人々
何て悍ましく、痛ましい
待っていて。必ず救い出してみせるわ
そして、人の命を弄ぶ月光城の主には神罰を

光精ルミナを召喚し、彼女の淡い光を頼りに進む
お願い、あなたの光でこの暗闇を照らして

壁や床、天井に仕掛けられた罠は第六感で怪しそうな場所に目星をつけ
近づきすぎないように注意しながら翼で宙に浮かび移動

自身の周囲に【鈴蘭の嵐】を展開
敵が投げてくるカードに花びらをぶつけて相殺し
残った花嵐で敵を壁際に追い込むように牽制
敵が罠にかかったところへ更に花びらと浄化の全力魔法で追い打ちをかける

行きましょう
この先で今も凍えながら助けを待つ人の許に



「生きたまま氷漬けにされ、永遠の如き恐怖に怯えながら見世物にされる人々……何て悍ましく、痛ましい」
 月光城の人間画廊(ギャラリア)に囚われた人々の苦痛を慮り、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は肩を震わせる。それは被害者に対する慈悲と、加害者に対する怒りの感情の発露であった。
「待っていて。必ず救い出してみせるわ。そして、人の命を弄ぶ月光城の主には神罰を」
 楚々とした面差しに毅然たる決意の表情を浮かべて、彼女は月光城に足を踏み入れる。
 城内は暗く、そして多くの敵意と罠で満ちているが、そんなもので止められはしない。

「お願い、あなたの光でこの暗闇を照らして」
 ヘルガは「光精ルミナ」を召喚し、彼女が発する淡い光を頼りに城内を進む。壁や床、天井などに仕掛けられた罠にも注意を払い、怪しそうな場所に第六感で目星をつけると、そこにはなるべく近付きすぎないように翼で宙に浮かびながら移動する。
「このまま進めれば良かったのですが、そうもいきませんか」
 探索を始めてから程なくして、精霊の光に気づいた警備のオブリビオンがやって来る。
 与えられた任務に忠実な「ヴァンパイア・シャドウ」の集団は、城内への侵入者を発見すると即座に排除行動に移った。

「去りなさい。ここは主の許しなしには誰も入ってはなりません」
 事務的な警告と同時に【バッドラックシュート】を放つシャドウ達。幸運度を奪い去る不吉なカードの乱舞が雨のように侵入者に襲い掛かるが、ヘルガは臆さず敵を睨み返す。
「ここで立ち止まっている暇はないのです」
 彼女が聖奏剣「ローエングリン」を掲げると、その刃は無数の花弁となり【鈴蘭の嵐】を巻き起こす。術者の周囲に展開されたそれは飛んでくるカードを相殺する障壁となり、まるで穢れを知らぬ純白のカーテンの如く、不運も危害も彼女の元に寄せ付けない。

「道を開けていただきます」
「……ッ!!」
 何十枚というカードを全て凌ぎきると、ヘルガは残った花嵐を操作して反撃に転じる。
 城内に吹き荒れる鈴蘭からシャドウ達は咄嗟に退避するが、それは彼女の思惑通りだ。牽制を重ねて移動先を制限し、罠の仕掛けられた壁際へと敵を追い込んでいく。
「ッ、しまっ……!」
 壁から飛び出した真紅の棘がシャドウ達の手足を貫き、昆虫標本のように縫い付ける。
 動きが止まった好機を逃さず、ヘルガは更に花弁と浄化魔法による追い打ちをかけた。

「「きゃぁぁぁ―――ッ!!!!」」
 白い鈴蘭の花弁の一枚一枚に込められたオラトリオの力が、穢れた吸血鬼を浄化する。
 悲鳴の他には灰の一欠片も残さずシャドウ達は消滅し、それを見届けたヘルガは花嵐を聖奏剣に戻して探索を再開する。
「行きましょう。この先で今も凍えながら助けを待つ人の許に」
 目指すは無辜の民を捕らえし人間画廊はこの先に。彼らの苦しみを思えば足取りも自然に早まるようで――光精の灯りに導かれて、雪割草の聖歌姫は月光城の奥に進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「今日は随分忙しい日ね!」

隠密部隊は悪態をつきながら走り回っていた。その額にはびっしりと汗が張り付いている。戦闘力が強化されたとはいえ、休む事無く城内を右から左、壁やら天井を駆け回っていれば、息も切れようというものだった。

「まんまと踊らされた…」
ついに始まった『猟兵』VS『第五の貴族』の戦いはある悪霊のせいで思わぬ劣勢を強いられていた。

事の始まりは猟兵達が月光城に侵攻してきた時より始まる。

カビパンは自分が第五の貴族により生まれた紋章であることを用いて言葉巧みにヴァンパイア・シャドウ達を篭絡し、いつの間にか司令塔として君臨。だが余りにも滅茶苦茶で酷い指令で現場は混乱し、隠密どころではなくなった。



「今日は随分忙しい日ね!」
 月光城の主に仕える隠密部隊「ヴァンパイア・シャドウ」は、悪態を吐きながら城内を走り回っていた。その額にはびっしりと汗が張り付いており、髪もしっとり濡れている。
 主の力で戦闘力が強化されたとはいえ、休む事無く城内を右から左、壁やら天井を駆け回っていれば、息も切れようというものだった。
「まんまと踊らされた……」
 ダークセイヴァー第5層を舞台に、ついに始まった『猟兵』対『月光城の主』。戦力では後者の方が有利だったはずの戦いは、ある悪霊のせいで思わぬ劣勢を強いられていた。

「私、立派な紋章になりました!」
「なんですって?」
 事の始まりは猟兵達が月光城に侵攻してきた時に遡る。城内の混乱に紛れてヴァンパイア・シャドウ達と接触したカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は、自分が第五の貴族により生まれた『紋章』であることを明かしたのだ。
「自律して喋る紋章など聞いたことがありません」
「ですが、確かにこれは……見た目はちょっとヘンテコですが」
 彼女達が仕える『月光城の主』も、紋章を有するオブリビオンの1人である。カビパンの紋章は非常にイレギュラーな事態によって誕生したものだが、本来オブリビオンにしか持ち得ないはずのそれは彼女らの信用を得る十分な証拠となった。

「この城はこのままでは猟兵に攻め落とされる。私が指揮を執ろう」
 カビパンは現在の危機的状況を説明し、言葉巧みに城内の者達の危機感を煽っていく。
 真面目にさえしていれば強烈なカリスマ性を発揮する彼女の言動は、当初は疑いの眼差しを向けていたシャドウ達を籠絡し、謎の信頼を得つつあった。
「私達は隠密部隊。防衛戦は本来得意とするところではありません」
「各自の判断で動くよりも、戦略に長けた方にお任せした方が良さそうですね」
 こうして、月光城に侵入した謎の不審者だったはずのカビパンは、いつの間にか司令塔として君臨していた。彼女はその立場を活用して、指揮下に下った吸血鬼達に命を下す。

「正門から猟兵達が来るぞ。全軍突撃!」
「次は裏門の守りを固めろ。モタモタするな、走れ!」
「左右を警戒しつつ前と後ろをよく見て、上と下も注意しろ!」

 だが、期待されていたカビパンの指揮は二転三転する上どうしようもない内容ばかり。
 余りにも滅茶苦茶で酷い指令で現場は混乱し、隠密能力を活かすどころではなくなる。広い城内を無駄に移動させられて、猟兵と戦う前から疲労は溜まる一方だ。
「とんだ失態です……!」
 有能な敵より無能な味方が怖いとはよく言ったもの。己のカリスマを武器に獅子身中の虫となったカビパンによって、月光城の組織的な防衛力は甚大な被害を受けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
月は人狼病との関係も深く、この世界の謎に大きく踏み込めそうですね

【狂乱の斬り裂き兎】でバニーの姿に変身
死の天使、そして兎は月に縁が深い
この姿はきっと力を発揮しやすいでしょう

警備の吸血鬼を大鎌で迎え撃つ
【怪力】を以って【なぎ払い】、【斬撃波】を繰り出す
強化された【視力】で放たれるカードの軌道を【見切り】、「カードを避けることで移動する先」を計算する(情報収集)
そこにきっと、深紅の刺が仕掛けられている
罠にかかったふりをして、刺が飛び出した瞬間に空中を足場にして【ジャンプ】
刺の流れ弾が当たれば追撃で蹴撃、避けても【体勢を崩した】ところを大鎌で【切断】



「月は人狼病との関係も深く、この世界の謎に大きく踏み込めそうですね」
 ダークセイヴァーが地下世界だという真実が判明してから、新たに浮上した"月"の謎。
 そこに吸血鬼が隠したがる秘密があると睨んで、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は月光城の探索に挑む。
「天来せよ、告死の大天使。月の神秘と魔術の秘奥、そして魂を狩る大鎌を与え賜え――!」
 突入と同時に【狂乱の斬り裂き兎】を発動すると彼女の身体は黒い光に包まれ、普段のシスターからバニーガールの姿に変身を遂げる。その手元に現れるのは「告死の大鎌」。
 これは多数あるオリヴィアの変身態の中でも、敵の命を刈り取る事に長けた姿である。

「死の天使、そして兎は月に縁が深い。この姿はきっと力を発揮しやすいでしょう」
 バニーの俊敏さでオリヴィアが城内を駆けていくと、程なく警備の吸血鬼と遭遇する。
 月光城の主に仕える「ヴァンパイア・シャドウ」は、侵入者とみるや即座に刃を構え、影のように音もなく襲い掛かってきた。
「主の城を汚す不届き者め。死になさい」
「断る! そこを退け!」
 オリヴィアが告死の大鎌を振るうと、斬撃の軌道に沿って凄まじい衝撃が繰り出され、敵を纏めて薙ぎ払う。彼女の膂力は元から並外れているが、この威力は普段以上である。本人の考えた通り月光城に秘められた神秘の力が、今の姿に影響を及ぼしているようだ。

「ッ……なんという力……」
 主に力を授けられた吸血鬼達も、これは流石に正面対決は分が悪いと判断したらしい。
 彼女らが本来得意とするのは搦め手。大鎌と斬撃波の間合いに入らぬよう距離を取り、【バッドラックシュート】による遠隔攻撃に戦法を切り替えてきた。
(このカードに触れるのは不味い……しかし敵は避けられるのも読んでいるはず)
 膂力のみならず視力も強化された今のオリヴィアなら、放たれたカードの軌道を見切るのは容易い。しかし彼女はそこで思考を止めず、「カードを避けることで移動する先」を計算し、敵が自分をどこへ誘導したがっているかまで考える。

(そこにきっと、深紅の刺が仕掛けられている)
 城の警備を任されているなら、敵は罠の配置も熟知しているだろう。カードによる攻撃はあくまで牽制、誘導して本命の罠で仕留めるという、ありきたりだが効果的な作戦だ。
 オリヴィアは敢えてその罠にかかったふりをして、敵が誘導する方向に移動していく。壁際まで追い詰められた彼女を見て、シャドウ達は密かに笑みを浮かべるが――。
「掛かっ――……なッ?!」
 壁から真紅の棘が飛び出した瞬間、オリヴィアは何もない空中を足場にしてジャンプ。
 間一髪のところで避けられた罠は、成功を確信していたシャドウ達へと襲い掛かった。

「この動きまでは計算できなかったようだな」
「ぐぅ……ッ、やられた!」
 告死の大鎌の切れ味だけでなく、空を自在に飛び跳ねる機動力も【狂乱の斬り裂き兎】の特徴である。罠を逆手に取ったオリヴィアの動きを予想できず、棘の流れ弾を喰らったシャドウ達は大きく体勢を崩した。
「その魂、貰い受ける!」
「「きゃあぁぁぁぁーーーっ!!!」」
 すかさずオリヴィアは追撃の蹴撃で敵を蹴散らし、告死の大鎌で首を刈り取っていく。
 断末魔の悲鳴と血飛沫が城内を汚す。ぱたりと倒れた首なしの屍にはもう一瞥もせず、彼女は血塗られた大鎌を片手に城の奥へと駆けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
掌握できれば夜も荒天も自由自在
擬似的な気象再現機能を備えた故郷の宇宙船では、その制御中枢のセキュリティは例外なく厳重でした

囚われの人々の事もありますが…この防備、確かめる価値はありそうです

斥候代わりの機械妖精で城内を●情報収集
罠の所在を●瞬間思考力で●見切りって避けつつ敵と交戦

蜘蛛の糸を機械妖精の頭部レーザーの●スナイパー射撃で焼き切りつつ、敵一人に付き一本程残して糸を電脳剣で●武器受け

剣握る手首関節を360度高速回転
蜘蛛糸を巻き取って引き寄せ、怪力で振り回し『深紅の棘』の罠へ叩き付け

…少し判断が遅かったようですね

格納銃器で罠で動けぬ敵に速やかに止め
剣に残った糸をレーザーで除去し、城の奥へ



「掌握できれば夜も荒天も自由自在。擬似的な気象再現機能を備えた故郷の宇宙船では、その制御中枢のセキュリティは例外なく厳重でした」
 地下と宇宙で環境の差異はあるものの、昼夜の概念が曖昧な世界にいたトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、今回発見された「月光城」を魔法的な気象制御システムの一種ではないかと考察していた。
「囚われの人々の事もありますが……この防備、確かめる価値はありそうです」
 あの『第五の貴族』の干渉すら阻むほどの強固な守りには、相応の理由があるはずだ。
 地の底にありながら不穏に輝く月を見上げ、機械仕掛けの騎士は城の調査を開始する。

「どこに罠があるか分からない以上、慎重に進む必要がありますね」
 トリテレイアは肩部のスペースに格納した【自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード】を斥候代わりに出撃させ、城の情報収集に努める。目的地である人間画廊(ギャラリア)と城主の玄室の所在は勿論の事、隠された罠を見つけ出すのにも彼らは適任だ。
「私は血を吸われる恐れはありませんが、無用な損傷は避けなければ」
 機械妖精の偵察と自身の演算思考を活かして罠の所在を見破り、回避しつつ先に進む。
 ここまでは順調だが波乱はすぐに訪れる。彼の侵入に気付いたヴァンパイア・シャドウ達が駆けつけてきたのだ。

「これ以上は通しません」
 交戦体勢に入ったシャドウの部隊は、両手から【粘り蜘蛛糸】をトリテレイアに放つ。
 相手が自分達より武勇に優れているのは一目瞭然。ならば正面きって戦うよりも動きを封じてしまおうという、搦め手に長けた隠密部隊らしい発想か。
「成程。しかし私にも心強い味方がいます……動かしているのは私なのですが」
 トリテレイアが蜘蛛糸に拘束されると、付近を飛んでいた機械妖精が頭部からレーザーを放つ。出力は高くはないものの、集中して照射すれば糸を焼き切るには十分な威力だ。
 対するシャドウ達も追加の糸を放ち、妖精達ごと騎士をぐるぐる巻きにしようとする。

(粘着性も強度も優れた糸のようです。私の腕力でも千切るのは困難でしょう)
 ある程度の自由を取り戻したトリテレイアは、追撃の糸を「電脳禁忌剣アレクシア」で受け払いながら考える。レーザーで焼き切れたので熱には弱いようだが、ウォーマシンの怪力でも切れない糸とは珍しい。城主の影響でユーベルコードも強化されているのか。
「ですが、宜しいのですか?」
「なにを……っ?!」
 不意の問いかけに眉をひそめる敵群の前で、騎士は己の手首を360度高速回転させた。
 握っていた剣もそれと一緒に回転し、防御の際に付着した蜘蛛糸が巻き取られていく。その先端はシャドウ達の両手と繋がったまま。

「しまった……ッ!!!」
 敵は慌てて糸を切ろうとするが手遅れであり、巻き取る力に逆らえずトリテレイアの元に引き寄せられていく。彼はこのために全ての糸を切除せず、敵1人に対して1本程度、わざと剣に付着させたまま残しておいたのだ。
「……少し判断が遅かったようですね」
「「きゃぁっ!!?」」
 そのまま彼は怪力にものを言わせて敵集団を振り回し、近くの壁目掛けて勢いよく叩きつける。そこには事前の調査により把握していた、『深紅の棘』の罠が待ち構えていた。

「「がは―――……ッ!!!!」」
 激突の衝撃に加えて棘に串刺しにされた吸血鬼達は、血を吐いたきり二度と動かない。
 なまじ自分達の糸が強靭であったが故に、それを利用された被害も甚大となっていた。
「失礼、先を急ぎますので」
 トリテレイアはまだ息のある敵に速やかに止めを刺すと、剣に残った糸をレーザーで除去し、城の奥へと向かう。囚われた人々を救い出し、月光城の秘密を解き明かすために、ここで立ち止まっている暇は無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
【創造支配の紅い霧】を発動。

実体のある分身体を霧の魔力で『創造』。
更に、城内を濃密な紅い霧で満たして視界を悪くすると同時に霧の魔力で城内各所の地形を微妙に変化するよう『創造』する事で、敵に罠の位置を誤認。
分身体が戦闘しつつ敵を罠の位置まで誘導し、逆に利用させて貰うわ。

わたし本体は霧を纏って姿を隠し、敵が罠に嵌ったところで雷撃の魔弾【属性攻撃、高速・多重詠唱、誘導弾】や【念動力】で拘束。
後は、罠に嵌めるついでに動けなくなった子を最低一人は捕らえて、【魅了の魔眼・快】魅惑のフェロモンで魅了。
城内の罠の配置や城主及び『人間画廊』の場所を聞き出しつつ、魅了した子を眷属として加えるわ♪



「全てを満たせ、紅い霧…。夢も現実も、全てはわたしの思うまま」
 月光城内に入ったフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は、敵がやって来る前に【創造支配の紅い霧】を発動。周囲を紅い魔力の霧で満たし、環境を自分の領域に変化させる。たとえ敵の城だろうと、この霧の中は彼女の支配下だ。
「罠があるみたいだけど、逆に利用させて貰うわ」
 さらにフレミアは霧の魔力から自分の分身を『創造』し、自らは霧を纏って姿を隠す。
 ただの幻ではない、本体に代わって戦闘行動まで可能な実体のある分身体だ。それは霧と共に城内を移動し、警備の目を引き付ける役割をする。

「なんですか、この霧は……?」
 これだけ規模の大きいユーベルコードを使えば、城内の警備に見つかるのも早かった。
 駆けつけたヴァンパイア・シャドウ達は不可解な紅い霧に首を傾げつつも、その発生源と思しきフレミア(分身体)に襲い掛かる。
「ようこそ、わたしの世界へ」
 分身体は本物そっくりに微笑みながら、真紅の槍を振るって吸血鬼集団に立ち向かう。
 だが流石に多勢に無勢。不運を招く【バッドラックシュート】の攻撃に晒され、徐々に追い込まれていく。

「何のつもりかは知りませんが、これ以上の好き勝手は……っ?!」
 だが、後退する分身体を追い詰めようとシャドウ達が前に出ると、ふいに足元の床から深紅の棘が飛び出した。足を貫かれる激痛と共に彼女らが思ったのは「何故?」だった。
「ここには罠は無いはず……ッ!」
 城内を満たす濃密な紅い霧のせいで視界が悪く彼女らは気付かなかったが、フレミアが『創造』したのは分身体だけではない。城内各所の地形を微妙に変化するよう創り変え、敵が罠の位置を誤認するよう仕向けていた。分身体の役目はそこまで敵を誘導する囮だ。

「謀られましたかッ!」
「気付くのは遅かったわね」
 敵がまんまと罠に嵌まったところで、霧で身を隠していたフレミアの本体が姿を現す。
 彼女は棘の刺さった吸血鬼達を念動力で拘束し、雷撃の魔弾を撃ち込む。完全に虚を突かれた敵にこれを逃れる術はなかった。
「「きゃあぁぁぁぁぁっ!!?」」
 霧中に響き渡る甲高い悲鳴。強烈な雷撃を受けたシャドウ達は黒焦げになって倒れる。
 生き延びた者も棘罠と念動力と感電による三重の拘束で、もはや動ける状態ではない。

「わたしの僕になりなさい……あなたはもう、わたしのトリコ♪」
 勝利を収めたフレミアは少数の敵をあえて殺さずに捕らえ、【魅了の魔眼・快】と魅惑のフェロモンで魅了する。赤く輝く彼女の瞳に見つめられたヴァンパイア・シャドウは、背筋が震えるほどの強烈な快楽を味わい、抵抗を止めた。
「この城について知ってる事を教えて貰えるかしら?」
「はい……なんなりとお答え致します……♪」
 身も心もトリコとなった彼女は、問われるまま城内の罠の配置や城主及び『人間画廊』の場所を教える。情報を聞き出したフレミアは満足げに笑みを浮かべながら、新たな眷属を連れて先に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
第五の貴族とは別の勢力なのかな…?

ミラ達と参加…。

【影竜進化】でミラ達を影竜に進化させて潜入…。
影に潜航して城内に潜入し、影から逆に奇襲を仕掛けて敵を攻撃するよ…。

ミラ達は戦闘中、わたしの影に姿を見せない様にして潜伏…。
敵の攻撃を回避したり、捌いたりしながら、追い込まれたフリをして罠の位置まで誘導し、罠が起動した瞬間にミラ達に影に入れて貰って待避…。
逆に黒桜【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】で罠へ吹き飛ばして押し込み、罠を逆用させて貰うよ…。

敵の影に関してはミラ達は影を操る影竜だからね…。
覆った影を操って引き剥がしたり、逆にその影を逆用して正常な判断力を奪う等、こちらも逆に利用させて貰うよ…。



「第五の貴族とは別の勢力なのかな……?」
 第5層に居城を構えながらも、第五の貴族の干渉を阻んでいるという『月光城の主』。
 新たな謎と共に現れた新勢力に、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は警戒を示す。
「慎重に進もうか……行こう、ミラ、クリュウ、アイ……」
 きゅぅ! と璃奈の呼びかけに可愛らしい声で応えるのは3匹の仔竜達。まだ幼くとも立派な竜であるこの子らの能力を引き出すべく、彼女は【呪法・影竜進化】を発動する。

「我が家族たる竜達……闇の衣を纏いて仮初の進化を得よ……。お願いみんな、わたしに力を貸して……」
 璃奈の呪力を受けた仔竜は影竜に進化し、影を自在に操り同化・潜航する能力を得る。
 この力があれば月光城に忍び込むのも容易い。月の影に潜航して城内に潜入した1人と3匹は、そのまま影伝いに探索を行う。
「侵入者は?」「いや、ここにはいない」
 城内を見回り猟兵の侵入に対処するヴァンパイア・シャドウ達も、影に潜む者にはまだ気付いていない。好機とみた璃奈は彼女らの背後に接近し、影から逆に奇襲を仕掛けた。

「隙あり……」
「きゃっ!?」
 影の中から飛び出した璃奈の初太刀が、敵の1人を背中から切り伏せる。不意を突かれたシャドウ達は一瞬動揺するものの、すぐに奇襲を受けたと気付き反撃の構えを取った。
「賊め、やってくれましたね!」
 武力では璃奈が勝るだろうが、数では相手のほうが多い。自分達の優位な部分を理解しているシャドウ達は迂闊に剣の間合いに踏み込まず、カードによる投擲を仕掛けてくる。
 不吉を招く【バッドラックシュート】を回避し、あるいは魔剣で捌きながらも徐々に後退していく璃奈。その様子は奇襲で敵を倒しきれずに窮地に陥ったように見えるだろう。

「我らが主の棘に裁かれなさい!」
 シャドウ達はそのまま罠のある位置に侵入者を追い込んでいく。だが実際には追い込まれたのではなく、璃奈が敵をここまで誘導したのだ。深紅の棘が起動した瞬間、彼女の姿は影の中に消える。
「棘に刺されるのは貴女達のほう……」
「なッ?!」
 影竜のミラ達は戦闘中もずっと、璃奈の影の中で姿を見せないよう潜伏していたのだ。
 罠から退避した彼女は呪槍・黒桜を振るい、呪いの桜吹雪を城内に巻き起こす。それは標的を見失ったシャドウ達を吹き飛ばし、罠のある場所へ押し込んだ。

「罠を逆用させて貰うよ……」
「ぎゃッ!!」「きゃぁッ?!」
 侵入者を排除するための罠に逆に嵌められ、串刺しになった吸血鬼達の悲鳴が上がる。
 何名かは咄嗟に身体を捻って致命傷を避けたようだが、体勢を立て直す猶予は与えず、璃奈と3匹の影竜が一斉に飛びかかる。
「ッ、不味い、ここは一時撤退して……!」
 形勢不利とみた敵は【ハイドインシャドウ】にて璃奈達の知覚から逃れようとするが、影竜を相手にそのユーベルコードは悪手だった。彼らが爪を軽く振るうだけで、吸血鬼達を覆う影は簡単に引き剥がされる。

「ミラ達は影を操る影竜だからね……。こちらも逆に利用させて貰うよ……」
「なッ……?! あ、あれ……私は一体何を……」
 影竜達に操作を奪われた影の魔力は、逆に本来の使い手たちから正常な判断力を奪う。
 数秒の僅かな時間であるが、戦場で前後不覚に陥った瞬間を璃奈が見逃すはずもない。
「さようなら……」
「「きゃぁああぁぁぁっ!!?」」
 再び吹き荒れた黒桜の旋風が敵集団を一掃し、甲高い悲鳴が風音の中に紛れて消える。
 警備がいなくなったのを確認すると、璃奈と影竜達は再び影の中に潜航し、月光城の奥に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
月光城か。幻想的な洋館。なんか、ワクワクするね。

周囲を解析。罠の場所と性質を理解しながら進むよ。

無差別に作動する罠があちこちに。聞いていたとおりだね。こんなところで警備するなんて大変だね、シャドウちゃん。

『吸血する深紅の棘』を模した罠にかけるよ。ふふ。戸惑ってるね。
「あれ?罠の場所を忘れたの?意外とおまぬけさんだね。」
だんだんと自分の記憶に自信がなくなっていくはず。そうすれば、自由にうごきにくくなる。そこを高速詠唱で狙って攻撃するよ。



「月光城か。幻想的な洋館。なんか、ワクワクするね」
 地の底にて発見された未知の城に、新たな物語の予感を受けてやって来たのはアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)。どんなに危険な場所だと分かっていても、その表情は好奇心に満ちあふれていた。
「無差別に作動する罠があちこちに。聞いていたとおりだね」
 電脳魔法により周囲を解析すれば、辺りには至る所に罠の反応が見つかる。その場所と性質を理解しながら、情報妖精はウキウキと楽しそうな笑顔でお城の廊下を進んでいく。

「こんなところで警備するなんて大変だね、シャドウちゃん」
「侵入者に心配される筋合いはありません」
 そんなアリスに声をかけられたヴァンパイア・シャドウ達は、殺意をもって返答する。
 たとえ小さな少女が相手でも、任務に忠実な彼女らが侵入者に情けをかける事はない。不吉な絵柄のカードに自らの気力を籠め、不運と死をもたらさんと襲い掛かってくる。
「遊びのつもりで来たのなら、自分の甘さを呪いなさい」
 シャドウ達の【バッドラックシュート】は対象の体ではなく運気にダメージを与える。
 幸運に見放された標的を城内に仕掛けられた罠で仕留めるのが、彼女らの常套手段だ。

「甘く見てなんかいないよ」
 アリスは飛んできたカードからひょいと身を躱しつつ、敵を誘うように後ろに下がる。
 シャドウ達は当然追撃を仕掛けようとするが――その瞬間、彼女達の足元から深紅の棘が飛び出した。
「なッ?!!」
 主から月光城の警備を任された彼女らは、城のどこに罠があるかは当然把握している。
 この位置に棘は仕掛けられていなかったはず。だが体に突き刺さる痛みと血を吸われる感覚は、紛れもなく本物だった。

「あれ? 罠の場所を忘れたの? 意外とおまぬけさんだね」
「っ、黙りなさい!」
 からかうようなアリスの言葉に、シャドウ達は恫喝を返しながらカードを投げつける。
 だが動揺したまま放った投擲は大きく的を外し、さらに壁や天井から覚えのない深紅の棘が次々に飛び出してくる。
(ふふ。戸惑ってるね)
 これらの罠は元から城内に仕掛けられていたものではない。アリスが解析した情報を元に【類推的手法による物質変換】で作り出したものだ。模倣とはいえ見た目も性能もオリジナルの罠と変わりはなく、他人が区別するのはまず不可能だろう。

(な、何がどうなって……まさか私達がミスを?!)
 覚えのない罠に何度も引っ掛かるうちに、シャドウ達はだんだんと自分の記憶に自信がなくなっていく。どこに罠があったか確信が持てないと、この城のあらゆる場所が危険に思えてくるだろう。
「そうすれば、自由にうごきにくくなる」
 心理的な萎縮がもたらす行動の不自由と鈍化。そこを狙ってアリスは攻撃を仕掛ける。
 素早い詠唱によって紡がれた魔力は炎の矢となって、動揺する敵集団に襲い掛かった。

「じゃあね、シャドウちゃん」
「きゃぁっ!?」「かは……ッ!!」
 魔力の矢に射抜かれ、深紅の棘の罠に串刺しにされ、次々と息絶えていくシャドウ達。
 血の一滴すらも残さず吸い尽くされた彼女らの骸を置いて、アリスは城の奥へと進む。この先にもっと自分をワクワクさせてくれるものがあることを期待して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
第三層もそうですが、第四層の月の謎といい、この世界は謎が満ちています。一度に解決できない以上、少しずつ前進するしか無いですね。

城内は罠だらけで、敵には翼がある以上、空を飛ぶ方が良いでしょうね。
UC発動して宙に浮かび、第六感で罠が有りそうな箇所に当たりをつけつつ城内を進みます。

敵が来れば見切りで躱したり、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防ぎつつ、衝撃波&念動力で敵を罠が有りそうな箇所に吹き飛ばしたり、罠が有りそうな箇所に誘導したりして対応します。

近接戦では光の属性攻撃を宿した煌月によるなぎ払い&2回攻撃で斬りはらったり、雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で雷を周囲に放つ等で対応します。


鏡島・嵐
未だ世界には謎が多い、ってコトか。
謎は謎のままでイイってときもあるし、暴かれなきゃいけねえ時もある。
……そうだな。コイツは“後者”だよな。
正直怖ぇけど、真実を突き止めなきゃだ。

《我が涅槃に到れ獣》を起動して、クゥに騎乗。
〈第六感〉をフルに活かして攻撃の軌道やタイミングを〈見切り〉、〈武器落とし〉や〈目潰し〉を織り交ぜて向こうの攻撃を妨害。隙を見せたら〈スナイパー〉で攻撃したり、〈援護射撃〉で支援しつつクゥをけしかけたり。
罠も使えるんなら〈地形を利用〉してダメージを与えたり、〈敵を盾にする〉ことで被害を防いだりもする。

もし近くに味方がいるんなら、そっちにも適宜〈援護射撃〉を飛ばして支援。



「第三層もそうですが、第四層の月の謎といい、この世界は謎が満ちています」
「未だ世界には謎が多い、ってコトか。謎は謎のままでイイってときもあるし、暴かれなきゃいけねえ時もある」
 地の底にたたずむ『月光城』を見上げ、肩を並べて語り合うのは大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)と鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)。これまであらゆる干渉を拒んできた未知の魔城には、今だ猟兵達が知らないこの世界の秘密が隠されているのだろう。
「……そうだな。コイツは"後者"だよな。正直怖ぇけど、真実を突き止めなきゃだ」
「一度に解決できない以上、少しずつ前進するしか無いですね」
 謎を解き明かした先に待っているのが新たな謎だとしても、その道の先にはいつか真実が見えるはず。待ち受ける危険に勇気をもって挑む決意を固め、猟兵達は城に突入する。

「城内は罠だらけで、敵には翼がある以上、空を飛ぶ方が良いでしょうね」
 詩乃は【神力発現】により宙に浮かび、床と天井から一定の間隔を開けつつ移動する。
 一方の地上では【我が涅槃に到れ獣】を起動した嵐が、焔を纏った黄金のライオンに騎乗して城内を駆ける。
「おれに空を飛ぶ手段はないからな……力を貸してくれ、クゥ!」
 獅子の俊敏さは単なる移動手段としてだけでなく、罠を回避するのにも役立つだろう。
 さらに三者はそれぞれ第六感をフルに研ぎ澄ませ、罠のありそうな箇所に当たりをつけつつ城内を進む。敵の隠蔽も巧みだが、そう安々と引っ掛かる彼らではない。

「止まりなさい」
 快速で突き進む2人の前に立ちはだかったのは、警備のヴァンパイア・シャドウ部隊。
 侵入者の排除を命じられた彼女らは警告と同時に不吉な絵柄のカードに気力を籠めて、【バッドラックシュート】を放ってきた。
「うおっ、危ねっ」
「あの札に触れるのは危険ですね」
 嵐は咄嗟にスリングショットの弾丸でカードを撃ち落とし、詩乃は「天耀鏡」に神力のオーラを纏わせて防御する。この攻撃自体には肉体的なダメージを与える威力はないが、罠だらけの城内で幸運を失い、不運に見舞われる危険性は二人共理解していた。

「世の為、人の為、これより祓い清め致します!」
 詩乃は宙に浮かぶ一対の神鏡を盾として、薙刀「煌月」を手に吸血鬼達に挑み掛かる。
 光を宿したオリハルコンの刃を一振りすれば、神力で強化された斬撃が敵を薙ぎ払う。神具と巫女装束を身に着けたその勇姿は、神々しいほどに美しい。
「援護する!」
 嵐は近接戦をする詩乃の後方から援護射撃を仕掛け、特に敵の目元や武器を狙い撃つ。
 倒せなくとも隙を作れれば十分。目潰しや武器落としを喰らって隙を晒した吸血鬼を、戦巫女の追撃が斬り伏せた。

「っ、やりますね……ならば」
 直接戦闘は不利だと悟ったシャドウ達は【ハイドインシャドウ】を発動して姿を隠す。
 彼女らの専門は隠密行動。己と武装を影で覆うことで視聴嗅覚での感知を不可能にし、標的から正常な判断力を奪うのだ。
「見えも聞こえもしないのはやべぇな。けど、何処にいるかはなんとなく分かる」
 五感による知覚はほぼ不可能になったが、第六感に優れた嵐は直感的に敵の気配を感じ取ることができた。はっきりとした位置は掴めないが、仕掛けてくるタイミングや攻撃の軌道くらいなら分かる。

「右だ!」
 クゥと詩乃に向けて嵐が警告を発し、それに応じて二者が身を躱す。音もなく忍び寄る吸血鬼の刃は、間一髪のところで空を切った。得意の隠密戦法を完全に見切られたのは、彼女達にとっても驚きだっただろう。
「まさか、見えているのですか?」
「いいや。けど分かるんだ」
「私にも読めてきました」
 一度攻撃を受けたことで詩乃の第六感も敵の所在を捉えたらしい。彼女は薙刀を天井に向けて突きつけると、その矛先から雷を周囲に放ち、潜んでいる敵を炙り出しにかかる。

「くぅっ……!」
 降り注ぐ雷撃から逃げ惑うシャドウ達。その後ろから嵐がスリングショットで追撃し、焔獅子のクゥが追い立てる。三者の巧みな連携は、敵に反撃する暇をまったく与えない。
「嵐さん!」
「分かってる」
 言葉にせずとも二人の狙いは一致していた。逃げるのに必死で敵は気付いていないが、彼らの追い込む先には罠がある。わざわざ敵が設置してくれた物を利用しない手はない。

「これで止めです!」
 罠の近くまで誘導できれば、駄目押しに詩乃が念動力の衝撃波を放ち、敵を押し込む。
 吹き飛ばされたシャドウ達の周囲の床や壁や天井から、深紅の棘が一斉に飛び出した。
「「きゃあぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!!?」」
 断末魔の悲鳴が城内に木霊し、罠に串刺しにされた吸血鬼達は灰になって散っていく。
 まだ潜んでいる奴はいないかと嵐が警戒しても、周囲に敵の気配はひとつも無かった。

「もう近くにはいないみたいだな」
「今のうちに進みましょう」
 警備を撃退した嵐と詩乃は、警戒を緩めぬまま城主の玄室を目指して移動を再開する。
 神力の輝きとともに空を舞う戦巫女と、火の粉を散らして駆ける獅子と青年。この者達の歩みを止められるものは、もうこのエリアには存在しなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
月がどうこうというのも気になるが、
黒騎士としては氷漬けの人々を助けることに専念すべきか。

二門機関銃『バリスタ』を構え他の猟兵とは距離をとる。
剣ほど使い慣れていない手前、誤射が怖い。

UC【錬成カミヤドリ】の【集団戦術】。
念力による【空中浮遊】も併せ自身の周囲に複製鎧を隊列を組ませ進軍。
隠密だろうと城内の警備隊、荒らし回る敵を傍観する腑抜けではなかろう。

そして百を超える頭数で『深紅の棘』が反応しない空間を埋め尽くせば、鎧か棘のどちらかに触れざるを得ない。
敵UCで誤魔化せない聴覚つまり【聞き耳】で複製鎧に接触した敵を感知、近づかれる前にバリスタで【制圧射撃】。
複製鎧はこの場限りのもの、諸共粉砕する。



「月がどうこうというのも気になるが、黒騎士としては氷漬けの人々を助けることに専念すべきか」
 月光城の『人間画廊(ギャラリア)』にて、城主の鑑賞品として捕らわれているという多くの人々を、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は見過ごせない。黒き鎧に宿った騎士の魂が、彼らを救えと訴えている。
「此度はこれを使ってみるか」
 先ずは城の守りを突破せんと彼が取り出したのは天使核内蔵二門機関銃『バリスタ』。
 異世界ブルーアルカディアの技術が導入された、実弾と熱線を撃ち出す魔銃である。

「剣ほど使い慣れていない手前、誤射が怖い」
 他の猟兵達からは距離を取った上で、ルパートは【錬成カミヤドリ】を発動。自身の本体である黒騎士の鎧を115体複製し、自身の周囲に隊列を組ませた上で進軍を開始する。
 念力により浮遊する甲冑の群れが城内を一糸乱れず行進する様はなかなかに壮観だが、そこにパレードのような壮麗さはない。あるのは敵を震え上がらせる威圧感だ。
(隠密だろうと城内の警備隊、荒らし回る敵を傍観する腑抜けではなかろう)
 この大軍での移動は己の存在を誇示する挑発であり、敵と罠をあぶり出す策でもある。
 中身の入っていない複製鎧に『深紅の棘』が刺さった所で大した痛手はない。人海戦術で罠の反応しない空間を探りだしていく。

(不味いですね……ですが、行くしか)
 百を超える頭数が城内を埋め尽くしていくのを、ヴァンパイア・シャドウ達は歯がゆい思いで見ていた。隠密部隊である彼女らには、軍勢との集団戦は明らかに苦手な分野だ。
 だがこれ以上放置もできず【ハイドインシャドウ】により隠密状態となった彼女らは、影で覆われた武器を手に、黒騎士の鎧集団に襲い掛かる。
「来たか」
 隊列の外側から「何か」が鎧を破壊するのを、中央にいるルパートは即座に察知した。
 直接感知する事のできない敵でも、複製鎧に接触した際に生じる物音は誤魔化せない。それを見越して聞き耳を立てていた彼は、音がした方向に『バリスタ』の銃口を向ける。

「おおよその位置さえ分かれば十分だ」
 機関銃が唸りを上げ、鉛玉と熱線の制圧射撃が城内にばら撒かれる。複製が巻き込まれるのもお構いなしの弾幕は、息を潜めていたヴァンパイア・シャドウを蜂の巣に変えた。
「ッ……なんですかあの銃の威力は」「早く仕留めないと……!」
 危機を感じたその他のシャドウは『バリスタ』を持つルパート本体を狙おうとするが、彼の元に辿り着くためにはどうあっても他の鎧や棘の罠のどちらかに触れざるを得ない。
 僅かにでも物音を立てれば最後、容赦のない銃撃が襲ってくる。射手の本体に詰まった燃える鉛を弾薬の供給源としている『バリスタ』には、弾切れの心配もなかった。

「複製鎧はこの場限りのもの、諸共粉砕する」
 鎧を使い捨ての壁兼索敵装置として、押し留められた敵に実弾と熱線を放つルパート。
 城内に銃声と悲鳴が轟き、後に残されるのは複製鎧の残骸と焼け焦げた屍のみ。迅速に障害を排除した黒騎士は、機関銃のリロードを行いながら人間画廊に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
謎が謎を呼ぶって感じだね
この世界がどうなっているのか
少しでもわかるといいんだけど

ともあれまずは目の前の敵を倒そうか
いたる所に罠があるらしいから
不用意には動かない様にしよう

神気で相手の攻撃を防御しつつ
こちらはガトリングガンで攻撃しようか
カードがトリガーであれば
カード自体を停めてしまえば
追加効果は発生しないんじゃないかな

とはいえ正面から以外の戦いになれるだけあって
割と面倒な相手だね

こういう時は纏めて攻撃するに限るね
UCを使用して相手を彫像に変えよう
素早くても見えなくても
範囲内にいるなら纏めて巻き込めると思うよ

目標までの消耗は避けたいし
城内の通路がある程度狭いなら
通路を神気で埋めて進めば多少は楽かな



「謎が謎を呼ぶって感じだね」
 この世界が地下にあるという謎が明らかになったことで、新たに生まれた『月』の謎。
 それを解く手がかりを求めて、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は月光城を訪れた。
「この世界がどうなっているのか、少しでもわかるといいんだけど」
 地下世界を照らす月の正体を突き止めても、また新しい謎が待っているかもしれない。
 それでも真相に近付くためには1つ1つ調査を進めるしかない。これだけ厳重な警備が施された城に、なんの秘密もないという事はないだろう。

「ともあれまずは目の前の敵を倒そうか」
 月光城の内部に侵入してすぐに、晶はヴァンパイア・シャドウの部隊と遭遇していた。
 城内の警備を命じられた彼女らは交渉も説得の余地もなく、侵入者とみれば即座に攻撃を仕掛けてきた。
(いたる所に罠があるらしいから、不用意には動かない様にしよう)
 投げつけられた不吉な絵柄のカードを、避けるのではなく神気で防御する。静謐さを漂わせる邪神のオーラに触れたカードは、空中で固定されたようにピタリと動きを止めた。

「奇妙な技を使いますね」
「そうかな。お返しだよ」
 攻撃を停められて眉をひそめるシャドウ達に、晶は携行型ガトリングガンで反撃する。
 彼女と融合した邪神の物質創造力を利用したこの銃に弾切れの概念はなく、獣の咆哮のような銃声とともに大量の弾丸を撒き散らす。
「くっ……!」
 敵は散開して機関銃の射線から逃れつつ、追加の【バッドラックシュート】を放つが、どれだけ気力を籠めても彼女らのカードは標的に触れる前に神気に停められてしまった。

「カードがトリガーであれば、カード自体を停めてしまえば追加効果は発生しないんじゃないかな」
 苦々しげな敵の表情からして、どうやら晶の予想は当たっていたようだ。外傷ではなく不幸をもたらすユーベルコードは罠と組み合わせれば厄介な事になったかもしれないが、そもそも当たらなければ何の問題もない。
(とはいえ正面から以外の戦いになれるだけあって、割と面倒な相手だね)
 敵の攻撃は防げているが、逆にこちらの攻撃もあまり当たっていない。隠密行動を専門とするが故の身軽さと、城内のつくりを熟知した立ち回りで巧みに銃撃を回避している。

「こういう時は纏めて攻撃するに限るね」
 ガトリングだけでは埒が明かないと判断した晶は、【邪神の慈悲】にて殲滅にかかる。
 宵闇の衣より放たれる神気が強まり、戦場を覆っていく。それは生物非生物を問わず、万物に停滞をもたらす権能の具現だ。
「永遠をあげるよ」
「な……ぁ……?!」「体が……動かな……!」
 どんなに素早くても姿が見えなくても、これなら範囲内にいる敵を纏めて巻き込める。
 神気領域に呑まれたシャドウ達の体は、生きたまま冷たい石の彫像に変えられていく。

「このまま通路を神気で埋めて進めば多少は楽かな」
 城内の通路がある程度狭かったのは晶にとって幸運で、敵集団にとっては不幸だった。
 神気を放ったまま移動する彼女から逃れる術はなく、対峙した者は全て彫像に変わる。これには任務に忠実なシャドウ達も戦意を喪失したようだ。
「目標までの消耗は避けたいしね」
「ひぃっ……!!」
 道々に恐怖に歪んだ女吸血鬼の彫像を並べながら、晶は城の奥に向かって進み続ける。
 意図せずその光景は、城主の人間画廊(ギャラリア)への意趣返しのようにも見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
ここが地下であろうと地上であろうとやることは変わりありません、が。
地下にわざわざ月を映すことが何か吸血鬼を利しているのであれば……砕いておくに越したことはありませんね。

姿を消して感知されない状態から不意打ちをされては先んじて攻撃を仕掛けることはできませんが、殺気を感じ取り、第六感で最初の一撃は回避します。

最初の一撃を避けたら【ファンブルの冬】を使用、運を吸い取ることで、私が罠にかからないようにしつつ、ヴァンパイア・シャドウから身を隠します。

これで見えないのはお互いに同じ。ですが……
好みではありませんが、狙いは定めず勘で「フィンブルヴェト」からの射撃を。あちらの運が悪ければ当たることでしょう。



「ここが地下であろうと地上であろうとやることは変わりありません、が」
 人を脅かす吸血鬼が居るなら、それだけでセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)が銃を取る理由には事足りる。だが目の前にそびえ立つ「月光城」には、無辜の人々の他にも大きな謎が囚われていそうだ。
「地下にわざわざ月を映すことが何か吸血鬼を利しているのであれば……砕いておくに越したことはありませんね」
 連中が秘匿する真相を暴き、隠された陰謀を破壊するのも、世界を救う為に必要な事。
 射手は改造マスケット銃「フィンブルヴェト」を携え、息を潜めつつ城内に突入する。

(姿を消して感知されない状態から不意打ちをされては、先んじて攻撃を仕掛けることはできませんが)
 セルマも様々な戦いを経験してきたが、この城を守るのは隠密行動のプロ。潜伏中の敵を発見できるとは思っていない。付け入る隙があるとすれば、敵から攻撃を仕掛けてくる瞬間だろう。
(……来ます)
 姿も音も匂いすら消しても、消し去る事のできない微かな殺気。五感ではなく第六感でそれを感じ取ったセルマはさっと身を躱す。影に覆われた刃物が、彼女の首筋を掠めた。

「……まさか、私が勘付かれるとは」
 【ハイドインシャドウ】による不意打ちを避けられ、ヴァンパイア・シャドウは動揺を隠せなかった。奇襲は最初の一撃が肝心――仕留め損なえば相手の反撃を許す事になる。
「進むか、止まるか、退くか。選んでください」
 敵が落ち着きを取り戻す前にセルマは【ファンブルの冬】を発動、自身の冷気を操る力をもって戦場を氷霧で包む。まるで城の中から雪山に迷い込んだかのような冷たき霧が、敵の視界を真っ白に染めた。

「っ、なぜ城内に霧が……」「あの娘は何処へ?」
 視界を制限する氷霧の中で、シャドウ達は立ち尽くす。城内にはまだ罠が仕掛けられている以上、迂闊に動き回ることもできない。彼女らにできるのは【ハイドインシャドウ】を維持したまま、じっと霧に目を凝らすことだけだ。
「これで見えないのはお互いに同じ。ですが……」
 対するセルマは霧に身を隠したまま、適当な方向にフィンブルヴェトを向け、トリガーを引いた。下手に発砲音を鳴らせば敵に居場所を教える事にもなりかねないが――放たれた銃弾は何かに導かれるように、霧の向こうにいた吸血鬼を捉えた。

「がは……ッ、バカな!」「こちらの位置がバレて……!?」
 シャドウ達はまだユーベルコードを解いていない。攻撃時のように殺気を漏らすようなヘマもしていない。にも関わらず銃弾はヒットした。もし射手がこちらの隠密を看破する手段を得たのでなければ、これはもはや"不幸"な偶然としか言いようがない。
「好みではありませんが」
 狙いは定めず勘で射撃を続けるセルマ。なんの根拠もないはずなのに、彼女が銃口を向けた先にはたまたま"幸運"にも敵がいる。【フィンブルの冬】が生み出す氷霧には敵から運気を奪って不幸を与える効果もあったのだ。

「あちらの運が悪ければ当たることでしょう」
 狙撃手としては運任せの盲撃ちなど普通はしないが、この状況においては必中と化す。
 霧の中から発砲音が響くたびに誰かが倒れる。迂闊に動くことも連携を取ることもできない敵にとって、それは恐怖以外の何者でもなかった。
「きゃぁっ!?」「ひっ……!!」
 やがて霧が晴れる頃には、通路にいるのは夥しい数の屍と、セルマだけになっていた。
 撃ちきった弾倉に弾薬を籠め直すと、彼女は血溜まりを飛び越えて城の奥へと進んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…言われてみれば確かにその通りなんだけど

…長年、地上だと思っていた物が地下だった衝撃に比べれば、
天井に月が浮いている不自然ぐらい、そういう物だとスルーしていたわ

UCを発動して研ぎ澄まされた第六感により吉凶の流れを見切り、
凶兆の配置を戦闘知識に加え罠や闇に紛れた敵等の索敵を行う

…無数の罠に不可知の敵兵。確かに正攻法で突破するのは骨だけど…

…正攻法で無いならば幾らでもやりようがあるものよ。例えば、こんな風にね

敵の好機を奪う幸運のオーラで防御しつつ吉兆の位置に切り込み、
敵の不意打ちは偶然発動した罠で防ぎ大鎌をなぎ払うカウンターで迎撃していく

…あら、そこに罠があったの。引っ掛かるなんて運が悪かったわね



「……言われてみれば確かにその通りなんだけど……長年、地上だと思っていた物が地下だった衝撃に比べれば、天井に月が浮いている不自然ぐらい、そういう物だとスルーしていたわ」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)のようにこの世界との馴染みが深い者ほど、それは見落とされがちな謎だったのだろう。今まで空を見上げれば当たり前に視界に入っていたものを、深く追求しようという考えに至るのは難しい。
「……でもまさか、こんな城があったなんてね」
 5層に存在する『第五の貴族』の邸宅とも雰囲気の異なる、月光に呼応して輝く魔城。
 月の謎を追うことで明らかとなった新たな敵の拠点に、吸血鬼狩人は飛び込んでいく。

「……無数の罠に不可知の敵兵。確かに正攻法で突破するのは骨だけど……」
 奇襲や罠を警戒しつつ城内を歩くリーヴァルディ。その足運びや歩幅は普段とは違う。
 凶兆や悪方位を消す特殊な呪的歩法。道教や陰陽道では「禹歩」と呼ばれる呪術の一種に類似した技法を、彼女は習得していた。
「……正攻法で無いならば幾らでもやりようがあるものよ。例えば、こんな風にね」
 【吸血鬼狩りの業・運否天賦の型】にて研ぎ澄まされた第六感は吉凶の流れを見切り、凶兆の配置――すなわち敵や罠が潜んでいる方位を見抜く。そこにリーヴァルディがすっと視線を向ければ、闇に紛れた吸血鬼と目が合った。

「なっ……見つかった?!」
 奇襲の機会を失ったヴァンパイア・シャドウは驚愕しつつも、こうなれば仕方がないと【ハイドインシャドウ】を維持したまま襲い掛かってくる。たとえ隠密を見破られても、彼女らには標的から判断力を奪う影の異能があった。
「……今の私に死角は無い」
 だが、暗殺者らしく死角や急所を狙った敵の攻撃は、全てリーヴァルディに防がれる。
 回避や防御の際にも一定の歩法を保つことで、彼女は敵から好機を奪い、自分に運気を呼び込んでいる。幸運のオーラに守られたその身を傷つけるのは容易ではない。

「……こんな戦法は想定していなかったでしょう」
「そんな、バカな……がはッ!!」
 焦る敵の攻撃をかわして吉兆の位置に切り込み、漆黒の大鎌を振るうリーヴァルディ。
 "過去を刻むもの"と銘じられた刃は、吸い込まれるように吸血鬼の首を刈り取った。
「やってくれましたね……ッ!?」
 その瞬間、物陰に潜んでいた別のシャドウが、リーヴァルディの背後から飛びかかる。
 敵を倒して気が緩んだところに不意打ちを仕掛けるつもりだったのだろう――しかし、音もなく翔ける彼女の足元から、ふいに『深紅の棘』が飛び出した。

「そん、なッ!?」
 城内にある罠の位置は把握していたはずだった。だがリーヴァルディの運否天賦の型は術者に幸運を、敵対者に不幸を招き寄せ、忘れられていた罠を"偶然"発動させたのだ。
「……あら、そこに罠があったの。引っ掛かるなんて運が悪かったわね」
 棘に串刺しにされた吸血鬼を見て、狩人の少女は素知らぬ顔でとぼけつつ鎌を振るう。
 "過去を刻むもの"になぎ払われた敵は悲鳴さえ上げられず、骸の海へと還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
城に紋章のネーミング、酔狂で月に準えた訳でもないだろう
或いは普通じゃない月と言えば骸の月なんて現象もあったね
まぁ、今は……人に仇為すオブリビオンを狩る、それだけだ

《念動力+情報収集》の力場をセンサー代わりに展開してやれば捕捉は容易い
[世界は我が手の上に]、なんてね?
一応の保険に《ハッキング》の要領で意識への干渉を防ぐ障壁も構築しておこう
棘罠の感知も同様に。
《罠使い+拠点防御》知識を活かして《地形の利用》も一興か
更に敵の動きは《戦闘知識+第六感》で《見切り》、
《空中戦》の要領で三次元的な機動力を発揮して優位に立ち回るよ
攻め手は【空覇絶閃】
概念をも断つ《斬撃波》で纏めて《蹂躙・薙ぎ払い》突破しよう



「城に紋章のネーミング、酔狂で月に準えた訳でもないだろう」
 月に呼応して輝く城塞とその主には、必ず何らかの関連があるのだろうと、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は考察する。城の守りが堅固であると分かれば尚の事、地下世界に浮かぶ月には大きな秘密が隠されていそうだ。
「或いは普通じゃない月と言えば骸の月なんて現象もあったね」
 世界を侵略するために猟書家が作り上げた儀式魔術――ダークセイヴァーではまだ彼らの活動は確認されていないが無関係とも言い切れない。そうでなくても月は古来から神秘と魔法の象徴として扱われてきた天体である。

「まぁ、今は……人に仇為すオブリビオンを狩る、それだけだ」
 ひとまず考察は置いておき、城内に侵入したカタリナはまず念動力を周囲に展開する。
 警備の吸血鬼達が使う【ハイドインシャドウ】は視聴嗅覚での感知を不可能にするが、触覚への対策はないため、力場をセンサー代わりにしてやれば捕捉は容易い。
「[世界は我が手の上に]、なんてね?」
「ッ! 気付かれた?!」
 不可視の力場に「触れた」ヴァンパイア・シャドウに、カタリナは余裕の笑みを見せ。
 隠密を見破られた敵は驚愕と焦りを顔に浮かべながらも、刃を手に襲い掛かってくる。

「バレては仕方ありません。貴女にはここで死んで頂きます」
「遠慮しておくよ」
 その身と同様に影で覆われた吸血鬼達の刃を、カタリナは宙を舞ってひらりと避ける。
 隠密さえ見破ってしまえば後は容易いもの。豊富な戦闘知識と研ぎ澄まされた第六感で動きを見切り、得意の空中戦で優位に立つ。
(捕捉していれば避けられる。一応の保険もかけてあるしね)
 万が一敵の攻撃を受けた場合に備えて、意識への干渉を防ぐ精神障壁も構築してある。
 数秒であろうと戦闘中に正常な判断力を奪われるのは命取り。ゆえに余裕は持ちつつも油断はしない。索敵と同様の力場を用いて、周囲にある罠の配置も全て把握済みだ。

「くっ、素早い……!」
 ヴァンパイア・シャドウにも一応翼はあるが、カタリナの飛行能力には遠く及ばない。
 三次元的な機動力を発揮して敵集団を翻弄しつつ、彼女はダガーを逆手に構えを取る。
「森羅万象、我が刃の前にこそ等しく。天命を知れ」
 攻め手は【空覇絶閃】。100分の1秒にも満たぬ刹那の内に、瞬速の斬撃が放たれる。
 それは剣士としてのカタリナが磨き上げた技巧の局地。ただ"斬る"事だけに特化した、概念さえ断ち斬る斬撃である。

「――なんてね。懺悔は間に合ったかい?」
 刹那の速さで斬撃波が戦場を薙ぎ払い、カタリナは微笑みながらダガーを鞘に収める。
 その直後、彼女の周りにいた吸血鬼達の身体が斬り裂かれ、一斉に血飛沫が上がった。
「「――……!!!?!」」
 一体いつの間に斬られていたのか、敵にはその瞬間を認識する事さえできなかった。
 断末魔もなく静かに血溜まりに崩れ落ちる敵を後にして、閃風の舞手は先へと進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

地下世界と言うだけでも驚きだったが、更には正体不明の月とはな
興味は尽きんが、まずは此処の城主とやらに面会をしてからだな

シガールQ1210とナガクニを装備
敵の接近を銃撃で阻止しながら放たれる蜘蛛の糸をナガクニから発する斬撃波で切り裂く
デゼス・ポアも宙に浮かせて、全身から生えた刃で敵の攻撃に対処させよう
戦闘をしつつ敵の動きも注視しておく
敵も私を罠のある場所に追い込もうとするだろうからな
瞬間思考力も働かせて動いた形跡の有る床や強い血の臭いがする壁などを探り当てて罠の場所を看破しマークしておく

チッ…数だけは多いな!
邪魔だッ!

と言って追い込まれたフリをして罠のある場所まで敵を誘導
罠の付近まで近づいたら乱れ撃ちで弾幕を張り一瞬だけ敵の目を眩ませる
同時にUCを発動
精巧な残像を罠のある場所まで走らせ敵の注意を引き
敵が残像を攻撃したらフルオートにしたシガールQ1210の銃弾でカウンターを叩き込む
さらに罠のある場所まで吹き飛ばし、深紅の棘で止めを刺す

敵味方の区別なく、か…
フン、趣味の悪い罠だ



「地下世界と言うだけでも驚きだったが、更には正体不明の月とはな」
 月の満ち欠けに呼応する「月光城」を前に、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は静かに呟く。この世界が地下にあるという真実から明らかになった新たな謎。太陽はないのに月だけが輝いているのは、確かに奇妙である。
「興味は尽きんが、まずは此処の城主とやらに面会をしてからだな」
 情報を聞く限りでも、月光城の主は強大かつ危険なオブリビオンの模様。謎がなくとも放置してよい存在ではないだろう。右手に強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"を、左手に黒革拵えの短刀"ナガクニ"を装備して、彼女は月光城に突入する。

「止まりなさい、侵入者め」「ここから先へは行かせません」
 城内でキリカを迎え撃つのはヴァンパイア・シャドウの警備隊。隠密らしい身のこなしで素早く距離を詰め、両手から放つ【粘り蜘蛛糸】で侵入者を拘束しようと襲ってくる。
「手厚い歓迎だな。力を貸せ、デゼス・ポア」
 キリカは敵の接近を銃撃で阻止しながら、ナガクニから発する斬撃波で糸を切り払う。
 両の手で対処しきれない相手は、呪いの人形「デゼス・ポア」に命じて迎え撃たせる。
 人形は「ヒヒヒヒヒッ」と笑いながら宙を舞い、全身から生えた刃で吸血鬼共の攻撃を切り裂いた。

「なかなか手強い……」「ですが、1人と1体では」
 戦闘能力ではキリカに劣るシャドウ達だが、それを自覚している故に焦りは見せない。
 突出はせずに数の優位を活かし、標的を取り囲んで拘束を図る。糸の数が十本や二十本なら切り払えても、それが百や二百になればどうか。
「チッ……数だけは多いな! 邪魔だッ!」
 蜘蛛糸と同じ粘りつくような攻勢に、キリカは徐々に後退を余儀なくされる。見るからに苛立った顔で舌打ちしながら、人形を連れて城内を逃げ回るさまに敵はほくそ笑んだ。

(敵は私を罠のある場所に追い込もうとするだろうな)
 しかし表面上の態度とピンチな状況とは裏腹に、キリカの内心は冷静さを保っていた。
 罠が仕掛けられた城内で、敵の狙いを予想できない訳がない。ゆえに戦闘中も敵の動きを注視しつつ、瞬間思考力を働かせて罠の看破に努めていたのだ。
(あの辺りか)
 動いた形跡のある床や、強い血の臭いがする壁など、五感を集中すれば痕跡は至る所に見つかる。探り当てた罠をマークすると、彼女はわざとらしく見えないよう追い込まれたフリをして、敵をその場所まで誘導していく。

「追い詰めましたよ」
「さて、どうかな」
 罠の付近まで近付くと、それまで"逃げ"に徹していたキリカはふいにシガールの銃口を敵に向けて弾幕を張った。秘術で強化された銃弾の乱れ撃ちは、追撃者達の目を一瞬ではあるが眩ませる。
「くっ。悪足掻きを!」
 シャドウ達はなおも逃げる標的を追うが、彼女らが弾幕に対処するその一瞬のうちに、キリカの姿は【ラ・グラン・イリュージョン】による精巧な残像と入れ替わっていた。

「捕らえました……ッ!?」
「何処を見ている?」
 本体と見間違えて敵が残像を攻撃した瞬間、側面からフルオートの銃撃が襲い掛かる。
 残像を囮にしたカウンター戦術。見事に引っかかった吸血鬼達の表情が驚愕に染まる。
「勝利を確信した瞬間にこそ、隙は生まれるものだ」
「「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!?」」
 そのままキリカは敵を罠の仕掛けられた場所まで吹き飛ばし、深紅の棘で止めを刺す。
 壁や床から飛び出した無数の棘が、愚かな獲物の全身を串刺しにする。自分達が嵌めるはずの罠に逆に嵌められたシャドウ達の、断末魔の絶叫が響き渡った。

「敵味方の区別なく、か……フン、趣味の悪い罠だ」
 灰となって崩れ去った敵の亡骸を一瞥したのち、キリカは急ぎ足に城の奥へと向かう。
 こんな罠を用意する城主とは一体どんな輩なのか、このまま面を拝まずには帰れまい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
月の満ち欠けに呼応して輝く、地下都市の『月光城』。
此処には一体、何が隠されているのか?
第五の貴族と同じで、『序の口』に過ぎないのか……
■備
先ずは、御同業に教わった【羅刹旋風】で薙刀をぶん回し、
力を高めていく。
【残像】で遅く見えるほどの速さになるまで回すぞ。

■闘
力を高めつつ、敵が放ってくる糸を武器に合わせ【切断】するか、
軌道を【見切り】つつ違う方向へ向かい、あちこちに存在する
罠を【ダッシュ】や【ジャンプ】を駆使して躱していく。
其れと同時に、『存在する場所』も記憶しておこう。

ある程度敵が集まってきたら接近を図り、【怪力】を込めて
大ぶりな【範囲攻撃】を放ち、両断してやろう。
見破られ易くなっている故、何人かには躱されるだろうが……
まだ終わりではない。

力強く振るうと同時に【衝撃波】を放ち、避けた敵の身体に
直接ぶつけ、『罠がある場所』目がけて吹き飛ばすのだ!

※アドリブ歓迎・不採用可



「月の満ち欠けに呼応して輝く、地下都市の『月光城』。此処には一体、何が隠されているのか?」
 秘められた謎の真相を暴く為、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は敵地へと赴く。
 現状この城について判明している事実は少ないが、恐らく調査は一筋縄ではいくまい。
「第五の貴族と同じで、『序の口』に過ぎないのか……」
 だが、それでも前に進む他に道はない。第五の貴族以上の敵がいようと臆しはしない。
 兵(つわもの)の道を往く者は十全に備えた上で挑むべく、大薙刀「真武」を構える。

「先ずは、力を高めていくとしよう」
 御同業に教わった【羅刹旋風】を使い、清綱は頭上で勢いよく薙刀をぶん回し始める。
 これは予め武器を振り回した時間に応じて力を高める羅刹の戦技。勢いが乗るにつれて薙刀は残像が生じるほどの速さに達する。常人の目には速すぎて逆に遅く見えるほどだ。
「何者です!」
 得物を高速回転させながら移動する清綱の姿は、すぐに警備の吸血鬼に見咎められる。
 尋常ならざる気迫をその回転から感じたヴァンパイア・シャドウ達は、彼の動きを止めようと【粘り蜘蛛糸】を放ってきた。

「来たか」
 敵と遭遇しても清綱はまだ羅刹旋風の構えを解かない。扇風機のように回転する薙刀の刃を敵の放った攻撃に合わせれば、蜘蛛の糸は絡みつく間もなくすっぱりと切断された。
「武器ではなく本人を狙いなさい!」「はいっ!」
 なおもシャドウ達は攻撃を仕掛けてくるが、清綱は彼女らの両手から伸びる糸の軌道を見切って違う方向へと避ける。すると城のあちこちに仕掛けられた罠が作動するが、彼はそれも持ち前の身体能力を活かし、ダッシュやジャンプでくぐり抜けていく。

「止まらないっ?!」「手伝います!」
 糸も罠も躱して猛進する清綱の姿を見ると、シャドウ達の間にも動揺が生まれ始める。
 騒ぎを聞きつけて他の場所からも次々と増援がやって来るが、敵が一箇所に集まるのは彼にとって好都合だった。
「そろそろ頃合いだな。仕掛けるか」
 これまで回避と力溜めに注力してきた清綱は、ここに来てシャドウ達との接近を図る。
 頭上には竜巻の如き勢いで回転する「真武」。青白く輝く刃が円の奇跡を描いている。
 溜めに溜めた回転エネルギーの全てを、彼は鍛え上げた膂力を込めて一気に解き放つ。

「両断してやろう」
「なッ―――!!!?!」
 繰り出された一閃は旋風などと生易しいものではない、真の嵐を戦場に巻き起こした。
 その圧倒的な力と速度を前に、殆どの敵は反応すらできずに斬り伏せられる。とはいえ構えからして動きが見破られやすいのも事実であり、寸前に躱した者も何人かはいた。
「ふっ。そんな大ぶりな攻撃、当たらなければ……」
「まだ終わりではない」
「なッ?!」
 速く、鋭く、力強く振るわれた大薙刀は衝撃波を発生させ、刃を避けた敵に追撃する。
 ただの余波では片付けられぬ規模の暴風を直接ぶつけられた敵の体は、木の葉のように吹き飛ばされた。

「「きゃぁぁあぁぁぁぁ――――ッ!!!!!!」」
 シャドウ達が吹き飛ばされたのは先程、清綱が罠を作動させた場所。彼はただ羅刹旋風の準備を終えるまで逃げ回っていたわけではなく、罠が存在する所を記憶していたのだ。
 嵐に叩きつけられた壁や天井から、深紅の棘が勢いよく飛び出し――憐れシャドウ達は百舌の早贄の如き最期を遂げることとなった。
「もう来ないのであれば、先を急がせて貰う」
 動かなくなった敵を置き去りにして、清綱は薙刀を構え直すと通路の先へと駆け出す。
 月光城の探索はまだ序盤。此処に隠された秘密を明らかにするまで、立ち止まってなどいられない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『凍える夜』

POW   :    強行突破…気合と共に歩む

SPD   :    一刻も早く抜ける為に脇目も振らずに走り抜ける

WIZ   :    魔法で暖や光などを取りながら進む

イラスト:仁吉

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 警備を倒し月光城の探索を行う猟兵達は、それまでとは環境の異なる場所に辿り着く。
 外からの光が遮断された完全なる夜闇の領域。屋内でありながら冷たい風が吹き荒び、寒気が肌に突き刺さる。気温はおそらく零度をはるかに下回っているだろう。

 もし灯りを点す者や、闇を見通す目を持つ者がいれば分かるだろう。
 その空間にずらりと並べられた、おぞましき『展示品』の数々に。

 彫像のようにポーズを取らされたまま固まった男。
 壁に塗り込められるような形で額縁に飾られた女。
 透明な硝子のショーケースに閉じ込められた子供。

 ここは月光城の主が作り上げた『人間画廊(ギャラリア)』。
 生きたまま凍らせた人間達を芸術品として保管する、魔の美術館である。

 斯様な状態に貶められても、この画廊の人間達はまだ生きている。
 生きたまま捕らえ続けることで、城主は彼らの生命を『月の眼の紋章』のエネルギー源として利用しているのだ。

 つまり画廊にいる人間達が死ぬか解放されれば、月光城の主の力は弱まる。
 無辜の民を救うためにも城主を倒すためにも、ここを素通りして行く訳にはいかない。
 だが、闇の呪術を掛けられたこの場所に長居をすれば、いずれ猟兵達の体も凍りつき、展示品の仲間入りをする事になるだろう。救助はできる限り迅速に行わねばならない。

 凍える夜の人間画廊(ギャラリア)で、猟兵達は人々を解放するため行動を開始した。
カタリナ・エスペランサ
度し難い事に変わりは無いけれど……救う余地があるだけ僥倖か
それにしても数が多い。速さ重視で進めるとしよう

【架空神権】で操る事象の《ハッキング+属性攻撃》に特化した黒風は《情報収集》のセンサーであり、呪術の凍結を退ける《破魔+環境耐性+結界術》であり、より迅速に《救助活動》を進める為の補助でもある
【衛生兵特級資格】も活かせれば更に効率を上げられるだろう

もし囚われた人たちに意識があるなら黒風結界の内側に《祈り+歌唱》も響かせよう
《誘惑+催眠術》の要領で意識に干渉し苦痛を和らげ眠らせる
まだ戦いを控えた状態で出来る事は少ないけれど、
今アタシに出来るケアはこれくらい。

……待たせて済まないね。希望の到着だ



「度し難い事に変わりは無いけれど……救う余地があるだけ僥倖か」
 人間画廊に並んだ被害者達の様子を眺めて、カタリナは眉をひそめながら独りごちる。
 罪なき人々への斯様な仕打ちには怒りを覚えるが、それでも生きているのは不幸中の幸いだろう。「展示品」という扱いゆえか、無為に傷つけられてもいないようだ。
「それにしても数が多い。速さ重視で進めるとしよう」
 そう言って【架空神権 ― domination ―】を発動したカタリナは、黒い風を画廊の隅々まで吹かせていく。この風は物理法則を書き換える魔神の権能の具現であり、この冷たき闇に覆われた空間で要救助者を見つけ出すためのセンサーでもあった。

「さぁて、少しばかり書き換えるよ?」
 カタリナは黒風にて被害者を特定すると、凍りついた彼らをそのまま風に包んでいく。
 狙いは架空神権による事象のハッキングで、呪術の凍結を退けること。当然彼女自身も同様の黒風に身を包むことで凍えるのを防いでいる。
「こーんなスキル、出番が無いならそれが一番なんだけど」
 確保した被害者達を黒風で包んだまま床上を滑らせて動かし、画廊の外まで運び出す。
 【衛生兵特級資格】を持つ彼女の救助活動は迅速にして的確だった。黒風の権能を手足の延長線のように操り、培った技能で効率をさらに上げる。

「う、ぅ………」
 城主に掛けられた呪術が解けると、囚われていた人々はうっすらと意識を取り戻した。
 どれだけ長い間ここで凍っていたのだろう。すぐには状況が理解できない様子で、闇に慣れない目でぼんやりと辺りを見回す。
「ここ、は……」「なにか、聞こえる……」
 そんな彼らが最初に捉えたのは、視覚ではなく聴覚への情報だった。冷たい闇の中でもはっきりと伸びやかで美しい歌が聞こえる。それはカタリナから人々に送る祈りの歌だ。

「……待たせて済まないね。希望の到着だ」
 黒風結界の内側に響くカタリナの歌声は、催眠術の要領で人々の意識に干渉し、苦痛を和らげ眠らせる。氷漬けにされていた間の恐怖も絶望も、これで幾らかは薄れるだろう。
(まだ戦いを控えた状態で出来る事は少ないけれど、今アタシに出来るケアはこれくらい)
 優しき歌と風に包まれて、人々が安らかな眠りにつくまでカタリナは穏やかに見守る。
 そして安全な場所まで彼らを運び出すと踵を返し、再び人間画廊の奥へ向かっていく。

「もう少しだけ待ってて」
 すぐに全てを終わらせて、彼らを人の生きる地まで帰してやろう。囚われている人々を1人でも多く救い出し、月光城の主を攻略する――そのためにカタリナは救助を続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロリータ・コンプレックス
リム様から聞いてたけど実際見ると酷いね。やっぱりオブリビオンは滅ぼすべし。
しかしその前に早急にこの人達を救出しないとね。
さっきのUCで城外までのスロープ作ろうかな。凍ってるなら滑らせればすぐ運べるはず。
壊れないようにどこにもぶつけないような作り必須ね。
あとゴールにはもふもふ部屋を用意しておこう。解凍されたら毛布とかストーブで暖まれるような設備も。
うーん。このUC便利だわ〜。
他の猟兵にも協力してもらってちゃっちゃと終わらせるわよ!
こんな寒い所に長居したくないしね!


レナータ・バルダーヌ
吸血鬼さんというのは相変わらず趣味が悪いです。
ここの城主さんに限らず、他人のお花や羽根を毟って着飾ったり……他にも色々いましたが、どれも理解できません。
そう思う程度に見慣れてしまっているのは悲しいことですけど、今回はまだ命を救えるのが幸いです。

地獄の炎は役に立ちそうですけど、この氷は呪術によるものとのこと。
閉じ込められている方を傷つけずに全て融かすとなると時間が掛かりますし、外に運んだ方が早そうです。
【B.G.ブロッサム】で暗闇を照らすと同時に冷気を緩和しながら、壁や床に固定されている部分は氷を融かします。
動かせさえすれば【念動力】で持ち上げられるので、出来れば何人か一緒に運び出したいですね。



「吸血鬼さんというのは相変わらず趣味が悪いです。ここの城主さんに限らず、他人のお花や羽根を毟って着飾ったり……他にも色々いましたが、どれも理解できません」
「リム様から聞いてたけど実際見ると酷いね。やっぱりオブリビオンは滅ぼすべし」
 闇と冷気に包まれた空間と、そこに生きたまま「展示」された人々を見て、レナータとロリータは城主への不快と怒りを抱く。吸血鬼の悪行は今に始まった事ではないが、この人間画廊(ギャラリア)はその中でも指折りだろう。これ以上の犠牲を出さない為にも、月光城の主は必ず撃破しなければならないと確信する。
「しかしその前に早急にこの人達を救出しないとね」
「そう思う程度に見慣れてしまっているのは悲しいことですけど、今回はまだ命を救えるのが幸いです」
 助けられる命を放置しておく事などできないし、彼らの解放は城主の弱体化に繋がる。
 悪夢の画廊に囚われた人々を連れ出すために、二人の猟兵は協力して行動を開始した。

「地獄の炎は役に立ちそうですけど、この氷は呪術によるものとのこと」
 レナータは獄炎の翼を【B.G.ブロッサム】で灼熱の花弁に変え、暗闇を照らして被害者達の凍結状態を確認する。彼女の炎なら自然の氷など一瞬で溶かせるだろうが、ここの環境は特殊らしく、花弁を近づけてもじんわりと徐々に溶けていくに留まる。
「閉じ込められている方を傷つけずに全て融かすとなると時間が掛かりますし、外に運んだ方が早そうです」
 そう判断したレナータは被害者が固定されている壁や床に花弁を集めて、その部分の氷を一気に融かす。ものの数分ほどで固定の外れた彼らは、展示品のポーズのままゴトリと音を立てて倒れこむが――床に叩きつけられる前に念動力でそっと受け止める。

「さっきのユーベルコードで城外までのスロープ作ろうかな。凍ってるなら滑らせればすぐ運べるはず」
 レナータが被害者達を救助している間、ロリータは再び【ロリータちゃんの絶対領域】を使用して画廊の構造を創り変えていた。イメージのままにどんな迷路でも作れるなら、お城の外まで続く巨大すべり台を用意することだって楽勝だ。
「壊れないようにどこにもぶつけないような作り必須ね」
 勢いが付き過ぎると危険なので傾斜を緩やかにしたり、スロープの横幅を広くしたりと安全性にも配慮。強度に関しても問題のない、立派な脱出口があっという間に完成する。

「おーい、こっちこっち」
 完成したスロープの入り口から、ロリータがぱたぱたと手を振る。すると画廊の奥から凍結した被害者達を連れてレナータが戻ってくるのが、灼熱の花弁に照らされて見えた。その身から放出されるサイキックエナジーは、まるで人々を支える無数の手のようだ。
「出来れば何人か一緒に運び出したいですね」
「協力するわ。よいしょっと」
 念動力によって同時に複数人を運搬するレナータに、ロリータが手を貸してスロープの上に乗せる。後はトンと軽く押してやれば、まだ凍りついたままの人々は月光城の外までシューッと滑り落ちていった。

「この滑り台はどこに通じているのですか?」
「ゴールにはもふもふ部屋を用意してあるよ。解凍されたら毛布とかストーブで暖まれるような設備も」
 床も壁もクッションになった部屋で人々を柔らかくキャッチし、さらにはアフターケアの用意も万全。スタートからゴールまでスキのない出来栄えをロリータは得意げに語る。
「うーん。このユーベルコード便利だわ~」
「はい。助かりました」
 レナータとしても、迅速に人々を安全地帯まで運び出せるロリータの協力は有り難い。
 往復にかかる時間や体力等をカットできれば、この先の戦いに備えて力を温存できる。既に十数名の被害者をスロープまで運んだが、彼女にはまだまだ余力があった。

「それにしても……うぅ寒い」
「大丈夫ですか? こちらを」
 救助活動中に2人を襲うのは、人間画廊(ギャラリア)の環境を維持する呪術の冷気。
 どこからともなく吹き込む冷たい風にロリータがぶるりと身を震わせると、レナータは彼女の周りにも【B.G.ブロッサム】を散らす。術者の意のままに動く炎の花弁は、照明であると同時に冷気対策にもなる、この環境下に非常に適したユーベルコードだった。
「あったか~い……よし、ちゃっちゃと終わらせるわよ! こんな寒い所に長居したくないしね!」
「そうですね。急いで皆さんを助けましょう」
 元気になったロリータとレナータは、その後も協力して画廊内での救出活動にあたる。
 彼女らの救った命は何十名にも及び、月光城の主の力はその分だけ弱まるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
ここは月光城の空調管理システムの部屋

「寒すぎる、私は冷え性だぞ!!」
「そう言われましても…凍える夜の人間画廊ですし」
「今の警備のトップは私だ。イヴマリア様からも司令塔として任命されている。こんなに寒いと、辛いだろうが」
「確かに。それでは冷凍システムを停止します」

カビパンはまた言葉巧みに館の従者達を篭絡。
凍える夜の人間画廊の冷凍システムは停止され、徐々に館全体が本来の気温に戻り温暖化しつつあった。

しかし、この部屋だけはカビパンが場をあっためようとしたつまらないギャグが連発され

一発ギャグのようなポーズを取らされたまま固まった吸血鬼。
壁にめり込むような形でカチンとした従者。

違うギャラリアが完成した。



「寒すぎる、私は冷え性だぞ!!」
 猟兵が人間画廊(ギャラリア)での人命救助に励む一方、カビパンは別の部屋にいた。
 画廊とは隣接する位置にあるその部屋には城主の配下らしき下級オブリビオンがおり、突然押しかけてきた彼女に怒鳴りつけられていた。
「ここで空調を管理しているのだろう。早く何とかしろ!」
 それが呪術によるものだとしても、これだけの規模の空間を闇と冷気で覆い続けるには何らかのシステムがあると彼女は考えた。そこで城内の警備を籠絡した際に調査を進め、城主の呪いを補助するこの部屋を突き止めたのだ。

「そう言われましても……凍える夜の人間画廊ですし」
 画廊の空調管理を任された従者は、カビパンの剣幕にしどろもどろになりつつ答える。
 この者はあくまで主から空調の維持を命じられただけ。勝手に設定を変えるような権限は持たされていない。もしそんな事をすれば一体どれだけお叱りを受けるやら。
「今の警備のトップは私だ。イヴマリア様からも司令塔として任命されている」
 だがカビパンは堂々たる態度でなおも命じる。言っている事はもちろんデタラメだが、口ごもりもせず言い切られると、まるで真実のように聞こえる。彼女の謎のカリスマ性はここでも発揮されていた。

「こんなに寒いと、辛いだろうが」
「た、確かに」
 警備を言いくるめた時と同じように、カビパンはまた言葉巧みに城の従者を懐柔する。
 普段のギャグっぷりはなりを潜め、大真面目を装う彼女の威厳は下級オブリビオンには逆らい難く、言っていることも至極まっとうなように聞こえてしまう。
「全ての責任は私が取る。いいからやれ」
「は、はい。それでは冷凍システムを停止します」
 結局籠絡されてしまった従者達の手によって、人間画廊の空調システムは停止された。
 基盤となるのが城主の力である以上すぐに凍結が解ける事はないが、画廊に冷気を送る風は止んだ。それに伴って徐々に城全体が本来の気温に戻っていくのが体感でも分かる。

「こ、これでよろしいのでしょうか?」
「ああ。ご苦労だった」
 へりくだる従者達に鷹揚な態度で頷くカビパン。城内は温暖化――という程もともとの気温は高くないが、身を切るような寒気は薄まりつつある。これで人間画廊にいる被害者の解放も捗るだろう。
「お礼に私のナウなヤングにバカウケなギャグでこの場をあっためてやろう」
「は? ギャグで……ですか?」
 そんな中で彼女が発した一言に、従者達はみな首を傾げる。なんだかよく分からないが嫌な予感がする。今まで感じていた冷気よりもずっとヤバい悪寒が背筋をなぞっていた。

「こんな季節は、かき氷はこーりごーりだわ」

 結構ですと止める間もなく、威厳ある軍人から【ギャグセンス皆無な雪女】に変身したカビパンの激寒ギャグが炸裂する。その圧倒的つまらなさたるや物理的に空気を凍らせ、時間すらも完全に停止させる程だった。
「寒ッ―――……!!」
 憐れ従者達は一発ギャグのようなポーズを取らされ、壁にめり込むような形でカチンと凍りつく。人間画廊の空調は止まっても、この部屋だけは変わらぬ寒さに支配されており――城主が求めていたのとは違うギャラリアがここに完成した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン、先程の罠と同じく、趣味の悪い芸術品だ
救いなのは、彼らがまだ生きている事か…

UCを発動
ボリードポーチに要救助者を吸い込み保護する
氷漬けになった人々を傷つけないように、内部は空調を効かせた暖かい部屋にしよう
部屋にある程度人を入れたら別の部屋へと切り替え、なるべく多くの人々を救助する

ふむ…密室で吹き荒れるだけあって、この寒風も自然の物ではないな
身体が凍り付く速度が速すぎる

アイテムのパーソナルディフレクターを起動し、オーラ防御で全身を包む事で寒さから身を守り
限界まで救助を続け安全地帯まで人々を運ぼう

此処までくればひとまずは安全だ…
吸血鬼を打ち倒すまで、もうしばらく待っていてくれ



「フン、先程の罠と同じく、趣味の悪い芸術品だ」
 人間画廊(ギャラリア)に並んだ憐れな被害者達の姿に、キリカは眉をひそめて呟く。
 氷漬けにされた人々の表情はみな恐怖で固まっており、それさえも芸術と評すならば、なるほど悪趣味としか言いようがないだろう。
「救いなのは、彼らがまだ生きている事か……」
 城主が『月の眼の紋章』のエネルギー源にする為に、彼らを生かしていたのは不幸中の幸いだった。一刻も早く解放するため、キリカは【シャンブル・ミニヨン】を発動する。

「寒かっただろう、もう大丈夫だ」
 キリカが赤いボリードポーチを要救助者の体に触れさせると、彼らはポーチの中に吸い込まれていく。その内部はユーベルコードでできた亜空間となっており、普段は武器弾薬の保管庫等にも使われているが、今回は緊急避難所として機能する。
(氷漬けになった人々を傷つけないように、内部は空調を効かせた暖かい部屋にしよう)
 中に入れた人達の体調にも気遣いつつ、闇中を歩き回り被害者を保護していくキリカ。
 内部がある程度人で一杯になったら、ポーチから繋がる部屋を別の部屋へと切り替え、なるべく多くの人を救助すべく奔走する。

「ふむ……密室で吹き荒れるだけあって、この寒風も自然の物ではないな。身体が凍り付く速度が速すぎる」
 だが救助のために人間画廊に長居する内に、キリカ自身も徐々に冷気に蝕まれていた。
 この暗闇も寒さも城主の呪術によるものだと言うが、だとすれば凄まじい呪力である。
「だが、まだ暫くは耐えられる」
 ミイラ取りがミイラに――ではないが、被害者達と同じ末路を辿る訳にはいかないと、彼女は「パーソナルディフレクター」を起動。エネルギーシールドのオーラで全身を包む事で冷気を遮断し、寒さから身を守る。

(できるだけ多くの人々を助けたいが、無理は禁物だな)
 シールドで耐えられる限界まで救助を続けたキリカは、大勢の人々を収納したポーチを大事に抱えて画廊から脱出する。流石に彼らを保護したまま城主の玄室に向かうわけにはいかないだろう。
「此処までくればひとまずは安全だ……」
「は、はいっ」「ありがとうございますっ」
 安全地帯まで人々を運んでポーチから解放すると、彼らは口々に感謝の言葉を伝えた。
 こうして口を利く事すら二度とできないと諦めていたのだろう。凍結から解かれた彼らの感激ぶりは尋常ではなかった。

「吸血鬼を打ち倒すまで、もうしばらく待っていてくれ」
「お、お気をつけて!」「ご武運を!」
 再び人間画廊に取って返すキリカの背中に、解放された人々から声援が浴びせられる。
 向かうは画廊のさらに先、月光城の主が座する玄室。真の意味で彼らをこの城から解放せんとする、麗しき傭兵の歩みに迷いはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
闇の世界にあって尚深い闇
寒々しさに不安になる心を奮い立たせて

コートを着込み、気付け用にお酒(春宵)を一口含み
カンテラを灯し光源に

【ティル・ナ・ノーグの箱庭】を発動
ルミナに加え水の精霊アジュアも召喚
二人を中に待機させる
ありがとう。次はこの中で人々を助けてあげて

恐怖の表情のまま凍り付いた人たち
何てこと……

彼らに近づき「四季彩の箱庭」を触れさせて中に収納
わたくし自身が動けるうちに限界までUC内に人々を取り込んで
呪術の効果範囲外に出たところで精霊たちに運び出してもらいます

「楽園」の中は暖かく安らかだけど
この後の戦いで「箱庭」が傷つけばどうなるか分からない
出口への道を指し示して
皆さん、どうかご無事で……



「ここが人間画廊……」
 闇の世界にあって尚深い闇、真冬よりも冷たい空気。寒々しさに不安になる心を奮い立たせて、ヘルガは一歩前に進みだす。救いを求める涙すら凍りついた人々がここにいる。だったら、立ち止まってなどいられない。
「ルミナ、アジュア、力を貸して」
 厚手のコートを着込み、気付け用に花酒「春宵」を一口含めば、少しは寒さも紛れる。
 ほのかな酒気で気持ちが高揚したところで、召喚するのは水の精霊アジュア。先刻から協力している光精ルミナとあわせて、2体の精霊が彼女の元に集った。

「ありがとう。次はこの中で人々を助けてあげて」
 ヘルガは【ティル・ナ・ノーグの箱庭】に繋がるハーバリウムペンダント「四季彩の箱庭」をかざし、2人にこの中で待機しているようにお願いする。光と水の精霊はこくりと頷くと、ペンダントの中に吸い込まれていった。
(ルミナがいないと、この先はこれが頼りね)
 再び1人になった彼女はカンテラを灯し光源にして、捕らわれた人々の捜索を始める。
 仄かな光が暗闇から照らし出したのは、恐怖の表情のまま凍り付いた人達の姿だった。

「何てこと……」
 余りにも酷い人々の有様に、思わず息を呑むヘルガ。見回せば辺りには同様の者が幾人も氷漬けで「展示」されている。話には聞いていたものの、実物の衝撃は段違いだった。
「すぐにお助けします」
 急いで彼らのもとに近付き「四季彩の箱庭」を触れさせて、精霊達と同様に収納する。
 このペンダントの中は四季折々の花々が咲き誇る箱庭になっており、暖かな日だまりが凍りついた人々の体を溶かし、透き通った空気や遥かなる歌声が心を癒やす。暗闇の中に囚われていた人達にとって、まさにそこは楽園であった。

「ここは……天国?」
 状況が分からず唖然とする人達を、光と水の精霊が心配ないよと言うように歓待する。
 一方、外の現実ではヘルガがカンテラを片手に人間画廊を歩き回り、発見した被害者を楽園に送り続けていた。
(わたくし自身が動けるうちに……)
 暖かい格好をしていても寒気は容赦なく身体を蝕む。かじかむ手でカンテラを握りしめながら、彼女は限界まで箱庭の中に人々を取り込むと、動けなくなる前に画廊から出る。

「ここまで来れば大丈夫のようね」
 呪術の効果範囲外に出た瞬間、寒さがふと和らぐのが肌で分かった。ヘルガはもう一度「四季彩の箱庭」をかざし、中に収納した人々をルミナとアジュアに運び出してもらう。
(「楽園」の中は暖かく安らかだけど、この後の戦いで「箱庭」が傷つけばどうなるか分からない)
 彼らは出たくないと思うかもしれないが、このまま戦場に連れて行く訳にはいかない。
 光精と水精に連れられて楽園から出てきた人々に、ヘルガは出口への道を指し示した。

「皆さん、どうかご無事で……」
「あ……貴女こそ、お気をつけて」「この恩は忘れません」
 画廊から救出された人々は口々に感謝を伝え、精霊の手で安全な場所に避難していく。
 その背中を見届けた後、ヘルガはくるりと踵を返し、城主の玄室へと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
これが『人間画廊(ギャラリア)』か。興味深い趣向だけど、止まった世界ではお話は生まれないから、ぼくは好きじゃないな。

素早く救出することが重要みたいだね。
高速詠唱で火属性の魔法を唱えることで空間を温め、凍結を解除するよ。
「大丈夫?助けに来たよ。」

さらに、解除された人たちをちびアリスたちに運ばせるよ。
「えっほ。えっほ。」

自分が氷づけにならないように限界を見定めながら次々と救出するよ。



「これが『人間画廊(ギャラリア)』か。興味深い趣向だけど、止まった世界ではお話は生まれないから、ぼくは好きじゃないな」
 暗闇の展示場にずらりと並んだ氷漬けの人々を見て、アリスはそんな感想を口にする。
 物語とは人の生き様や死に様から生まれるもの。口も利けず動くこともできない停滞の中でただ生かされるのは、可能性の否定にも等しい。
「はやく出してあげよう」
 寒風吹き荒ぶ中で情報妖精が詠唱を紡ぐと、手元に熱と光が生じ、空間を温めていく。
 警備のヴァンパイア達を焼いたのと同じ火の魔法。しかし今度のそれは何かを傷つけるためではなく、救うために使われる。

「素早く救出することが重要みたいだね」
 ゆっくりしていたら自分までここの展示物と同じように凍りついてしまう。高速で詠唱を重ねることで、アリス周辺の人間画廊(ギャラリア)の気温はどんどん上がっていく。
 火の魔法による加熱が呪術の冷却を上回ったことで、人々を覆う氷も溶けていった。
「う……私は、一体……」
「大丈夫? 助けに来たよ」
 凍結が解除された人達にアリスは笑顔で話しかけ、具合の悪い者はいないか確認する。
 展示中に『月の眼の紋章』にエネルギーを吸われていた為だろうか、みなやつれた顔をしているものの、命に別状のある者は幸いにしていないようだ。

「いでよ! ぼくの分身!」
 全員の無事を確認すると、アリスはさらに【アリスの世界】を発動。自身をデフォルメして小さくした見た目の「ちびアリス」達を召喚し、人々を画廊の外に運ぶよう命じる。
「うわっ!」「なに、この子たち?!」
「えっほ。えっほ。」
 突然出てきた小さな妖精たちに人々は驚くが、ちびアリスたちは気にせずひょいと彼らを持ち上げ、安全な場所まで運んでいく。その体のどこにそんなパワーがあるのかは不明だが、その連携は実にスピーディなものだった。

「外に出たらしばらくじっとしててね」
「は、はいっ!」「感謝します!」
 そのままアリスは展示された人達を次々と救出し、ちびアリスたちが画廊の外と中をせわしなく往復する。その間も呪術の冷気はじりじりと身体を蝕んでくるが、彼女は自分が氷漬けにならないようにきちんと限界を見定めていた。
「そろそろ先に進もうかな」
 火の魔法で暖を取るのにも限界を感じてきたところで、アリスは救助を一段落させる。
 彼女がここで救い出した人々は何十名にもなり、それ即ち停滞より解き放たれた物語の数であり、同時に『月の眼の紋章』の力を失った城主のエンディングの布石でもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
変身を解除し、シスター服に戻っている
【氷結耐性】を持っていてもなお寒い

強化された【視力】は闇を見通す(暗視)
予知で聞いていましたが……悪趣味極まりない

今必要なのは、敵を焼き尽くす灼熱ではありません
氷の戒めを融かし、凍えた身体を温める、優しい熱……
【トリニティ・エンハンス】で掌に炎の魔力を纏って氷のみを融かし(救助活動・部位破壊)、闇の呪縛を聖なる力で打ち砕く(破魔)

助け出した人々に、簡易救急セットで治療を施し(医術)、携帯保存食を分け与えて体力回復させる(料理)
急いで食べたらお腹を壊してしまうので、ゆっくり食べてくださいね



「氷結耐性を持っていてもなお寒いですね」
 バニー姿の変身を解除し、シスター服に戻ったオリヴィアは、凍えるような寒気に耐えながら辺りを見回す。強化された彼女の視力は闇を見通し、まるで美術品の如く「展示」された被害者の姿を捉えていた。
「予知で聞いていましたが……悪趣味極まりない」
 絵画や彫刻のように様々なポーズを取らされたまま凍りついた人々は、みな一様に恐怖の表情を浮かべており、想像を絶する恐ろしい体験をしたのだと予想がつく。寒さよりも城主の悪辣さに身を震わせながら、オリヴィアは彼らを救出せんと動きだした。

「今必要なのは、敵を焼き尽くす灼熱ではありません。氷の戒めを融かし、凍えた身体を温める、優しい熱……」
 凍結した人間に触れながら【トリニティ・エンハンス】を発動すると、オリヴィアの掌が聖なる炎の魔力を纏う。じんわりと伝わる熱は本体を傷つける事なく氷のみを融かし、城主にかけられた闇の呪縛を打ち砕いた。
「……はっ。私は、一体?」
 長き戒めから解放された人々は、すぐには何が起こったのか分からずに辺りを見回す。
 自由に身体が動かせるのも、言葉を話せるのもいつぶりだろう。久方ぶりに彼らの瞳が捉えたのは、掌に聖火を宿した美しいシスターの姿だった。

「ご安心ください。私は皆さんを助けに参りました」
 オリヴィアは助け出した人々に手短に事情を説明して、簡易救急セットで治療を施す。
 展示品としてある意味では大事にされていた為だろうか、彼らの身体に目立った外傷はない。どちらかと言えば問題なのは心身の疲労と体力の消耗だろう。
「どうぞ、こちらを召し上がってください」
「あ……ありがたい……!」
 荷物の中から携帯保存食を分け与えると、人々は目を輝かせながらそれに食いついた。
 硬いパンやチーズ、塩漬けした干し肉など、豪盛とは言えない食事でも彼らにとってはご馳走だった。保存用の濃い味付けが染み渡り、冷えきった体に熱が戻ってくる。

「急いで食べたらお腹を壊してしまうので、ゆっくり食べてくださいね」
「は、はいっ……!」
 一口一口噛みしめながら保存食を味わう人々を、オリヴィアは慈愛の眼差しで見守る。
 しばらくして食事を終えれば、彼らも立って歩ける程度には体力回復してきたようだ。この場所に居続けてもまた凍ってしまうので、早急に動いたほうがいいだろう。
「これから皆さんを安全な場所まで案内しますので、離れずに付いてきてください」
 掌に炎の魔力を宿したまま歩きだす。暗闇に灯るその輝きは、人々を導く希望の光だ。
 オリヴィアへの感謝と敬意で胸を一杯にしながら、救われた人達は灯火に従って歩く。かくして彼らは無事に人間画廊(ギャラリア)からの脱出を果たしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
【旅神】

趣味の悪ィパフォーマンスアートだなぁ、こりゃ。ココに囚われた人たちはいったいいつからこんなんに付き合わされてきたんだか。
ともかく、放っちゃおけねえ。助けねーと。

あんま時間をかけりゃ城主ってのが黙っちゃいねえ。スピード勝負だ。
詩乃が“作品”にされた人たちを運んでくれるから、まずは画廊の大まかな構造を〈暗視〉と〈野生の勘〉で把握して、詩乃と情報共有。
あとは詩乃と一緒に行動して、効率よく運び出すんを手伝う。
闇の呪術には〈呪詛耐性〉〈氷結耐性〉〈オーラ防御〉を組み合わせて耐える。
詩乃と自分が侵蝕されてる度合いを観察しながら、これ以上は拙いと判断したら《針の一刺、鬼をも泣かす》で治療。


大町・詩乃
【旅神】

(氷漬けにされた人々を見て)何て酷い事を!
急ぎお救いせねばなりません。

時間は掛けられませんね。
嵐さんから情報得て、UC:産巣で壁や床を白熊さん達に変換し、氷漬けにされた人々を呪術の範囲外に運び出します。
白熊さんは氷や寒さに強いだろうけれど呪術には耐えられない。
何度も往復は無理だろうから、変換して人々を安全圏に運び出したところで変換を解き、次々と新しい白熊さんを創っていきます。

自分や嵐さんの周囲には破魔・浄化・範囲攻撃を展開して、呪術の効果を弱めるようにし、更に自身には光のオーラ防御を纏います。
それでも厳しくなってきたら、嵐さんに治療して頂きます。
(ありがとうございます♪と笑顔向けて。)



「趣味の悪ィパフォーマンスアートだなぁ、こりゃ。ココに囚われた人たちはいったいいつからこんなんに付き合わされてきたんだか」
「何て酷い事を!」
 氷漬けにされた人々を見て、嵐は顔をしかめながら呟き、詩乃は思わず大声を上げた。
 月光城の主に連れ去られ、この人間画廊(ギャラリア)の展示物にされた被害者たち。
 闇の呪いに囚われた彼らの肉体は時が停まったように動かない。何年も、或いは何十年も、城主が飽きるまでここに変わらぬ姿を晒し続けるのだ。
「ともかく、放っちゃおけねえ。助けねーと」
「ええ、急ぎお救いせねばなりません」
 これ以上は誰の命も尊厳も脅かさせはしないと、2人の猟兵は即座に救助を開始する。
 1人でも多くここで人々を介抱する事が、ひいては月光城の主の打倒にも繋がるのだ。

「あんま時間をかけりゃ城主ってのが黙っちゃいねえ。スピード勝負だ」
 まずは嵐が持ち前の暗視と野生の勘を活かして、人間画廊の大まかな構造を把握する。
 壁や柱の位置や人々が「展示」されている場所を突き止めれば仲間と情報共有を行い、それを元に詩乃が救助活動を行う。
「あの辺りに10人くらいずらっと並ばされてる。頼めるか詩乃?」
「時間は掛けられませんね。神の理により、此処に生命を創造いたします」
 【産巣】を発動した詩乃は壁や床などの無機物をシロクマの群れに変換して使役する。
 それらは主神の命に従って氷漬けにされた人々を背負い、寒さにもめげずにのしのしと呪術の範囲外まで運び出していく。

「うぅん……えっ、なに? クマ?!」
 人間画廊の外に出ると被害者の凍結は解除され、意識を取り戻した人々は目を開ける。
 そして目の前にいるシロクマを見て仰天するのだが、すぐに詩乃がにこやかな微笑みで事情を説明する。
「心配いりませんよ。この白熊さん達は人を襲ったりしませんから」
 自分達が猟兵で、助けに来たことを伝え、しばらくここでじっとしているように頼む。
 今は下手に付いて来てもらうよりも、隠れていてもらったほうが安全だろう。城主が倒されるまでの辛抱だと言うと、彼らは「は、はい」と戸惑いつつも素直に指示に従った。

(白熊さんは氷や寒さに強いだろうけれど呪術には耐えられない)
 何度も往復するのは無理だろうと判断した詩乃は、一度人々を安全圏に運び出したところで変換を解き、また新しいシロクマを次々と創っていく。こうして定期的にリセットをかけることで、運び手が凍らないようにする作戦だ。
「おれも手伝うよ。見てるだけってわけにもいかねえ」
 嵐も"作品"にされた人達をシロクマが背負うのを支えたり、安全圏までの最短ルートを伝えるなど、効率よく運び出せるよう行動を共にする。日頃から交流のある2人の連携は息がぴったりで、救助活動はハイペースで進んだ。

「それにしても、寒いですね……」
 しかし救助のために画廊に長居すれば、猟兵も呪術の影響を受ける事は避けられない。
 詩乃は自分と嵐の周囲に破魔と浄化の力を展開し、更に自分は光のオーラを纏って呪術の効果を弱めるようにしていたが、それでも時が経つにつれて指先がかじかんでくる。
「これも城主の闇の呪術ってことか。おれ達まで"作品"にするつもりなのかね」
 嵐も呪詛や氷結には耐性があるが、この画廊にかけられた城主の呪力はそれを上回っているようだ。オーラ防御も組み合わせて冷気を遮断するようにしても、じりじりと寒さが肌に染み込んでくるのが分かる。冬の寒さとはまた違う、熱を直に奪われていく感覚だ。

「麦藁の鞘、古き縫い針、其は魔を退ける霊刀の如し、ってな!」
 自分と詩乃が侵蝕されている度合いを観察して、これ以上は拙いと判断した嵐は懐から使い込まれた針を取り出して自分に刺す。すると針に籠められた持ち主の思いと霊力が、彼の心身を蝕んでいた呪いを祓い清めた。
「詩乃も、少しちくっとするぞ」
 効果があるのを確認すれば、詩乃にも同様の【針の一刺、鬼をも泣かす】で治療する。
 芯から凍りつく様な感覚が消え去り、呪いの解けた彼女は「ありがとうございます♪」と嬉しそうな笑顔を嵐に向けた。

「治療が効くならまだ動けそうだし、もうひと頑張りするか」
「はい。1人でも多くお救いしましょう!」
 針をしまって再び辺りを見回す嵐に、笑顔で意気込みつつシロクマを呼び寄せる詩乃。
 この画廊にはまだ大勢の被害者が捕らわれている。体が動くなら休んでいる暇はない。
「それに、さっきより寒さが弱くなってる気もするんだよな」
「城主の呪いが衰えてきているのでしょうか」
 画廊に呪いをかけた城主の力は『月の眼の紋章』と捕らえた人々の生命で支えられている。それが肌で感じるほど弱まっているなら、地道な活動が実を結びつつある証だろう。
 旅人と女神は互いを励まし合うように笑顔を浮かべ、より一層救助に励むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
これは酷いね
月の眼の紋章の事を抜きにしても早く助けよう

ガチガチに凍ってるみたいだけど
生きてはいるんだね
そういう呪いなのかな

ここで治してもまた凍りそうだし
邪神の聖域に吸い込んで
後でまとめて解呪を考えよう
時が動かない聖域に隔離してしまえば
エネルギーの供給も停まるだろうしね

僕自身は冷気耐性もあるし
しばらくは大丈夫だと思うよ

凍らないというよりは
凍ったまま魔力で体を無理やり動かせるってだけだけど
…邪神の涙で凍るのにも慣れたからね

ここで戦闘になるなら
適当なポーズとって立ってれば
不意打ちできそうだよ
宵闇の衣もあって人形か何かみたいだろうね

冗談は兎も角
凍るのは問題ないから
奥の方とか時間がかかるのは
引き受けるよ



「これは酷いね」
 人間画廊に「展示」された人々の憐れな姿を見て、晶はぽつりと呟いた。月光城の主の手で連れ去られ、生きたまま氷漬けにされ闇の中で鑑賞される――ただの人間には酷いとしか言いようのない所業である。
「月の眼の紋章の事を抜きにしても早く助けよう」
 人々をこれ以上こんな目に合わせてはおけないと、彼女は早足に展示品の元に近付く。
 氷像と化した人体にそっと手を当てると、ひんやりとした感触と生命の気配を感じた。

「ガチガチに凍ってるみたいだけど、生きてはいるんだね。そういう呪いなのかな」
 この人間画廊全体に城主による闇の呪術が掛けられている。生物を生きたまま凍らせるのも、おそらくその範疇とみて間違いはないだろう。それも術の効果範囲から出ない限り継続的にかかり続ける呪いだ。
「ここで治してもまた凍りそうだし、後でまとめて解呪を考えよう」
 被害者の状態を確認した晶は、小さな動作で【邪神の聖域】に繋がる空間の穴を開き、人々を吸い込んでいく。その内部は邪神と眷属以外の時間が停滞する神域となっており、普段は冷蔵庫代わりくらいにしか使えないが、この場合は避難所としてもってこいだ。

「時が動かない聖域に隔離してしまえば、エネルギーの供給も停まるだろうしね」
 通常の空間とはあらゆる意味で隔絶した邪神の領域へと、被害者達を収容していく晶。
 その間も画廊にかけられた呪いは晶自身のことも蝕んでいくが、冷気耐性を持つ彼女はしばらくは大丈夫だという自信があった。
(凍らないというよりは、凍ったまま魔力で体を無理やり動かせるってだけだけど……邪神の涙で凍るのにも慣れたからね)
 邪神と融合したこの体は、既に通常の生物からはかけ離れている。ピシピシと肌が凍りはじめていても支障なく動き続ける様子は、まるで半分氷像が画廊を歩いているようだ。

「ここで戦闘になるなら、適当なポーズとって立ってれば不意打ちできそうだよ」
 凍結が進む自分の体を見て、そんな思いつきをぽつりと口にする。宵闇の衣を身に纏った金髪碧眼の可憐な少女の氷像は、他の"作品"達と同じように人形か何かみたいだろう。
「冗談は兎も角。凍るのは問題ないから、奥の方とか時間がかかるのは引き受けるよ」
 そう言って彼女はまだ救助の進んでいない画廊の奥、他の猟兵達にとっては危険の大きいエリアに踏み込む。凍結を防げるのと影響がないのとでは意味が大きく違う――これも適材適所だろうとの判断の上だ。

「もうしばらく待っていてね」
 晶は氷漬けにされた被害者達に声をかけつつ、空間の穴の中に彼らを吸い込んでいく。
 邪神の聖域は快適とは言い難いだろうが、呪いが解けて城主が倒されれるまで辛抱だ。自らも呪いに蝕まれながらも平然とした様子で、彼女は救助活動を続行する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
悪趣味にも程があるわね…見ているだけで吐き気がするわ

【虜の軍勢】で寒い環境が得意な「雪花、『雪女』雪華」と炎を使える「エビルウィッチ、狐魅命婦」を召喚。

ウィッチと狐魅命婦には火力を調節しつつ、捕らえられた人々の凍結を溶かして救出。
雪花と雪華には解放した人々を開いた異空間の穴から【魔城スカーレット】へ連れて行き、一時的に保護する様に指示(ついでに魔城側に残った眷属(主にシルキーとメイド隊、ヴァンパイアナース達)に解放し衰弱した人々の保護や治療を指示)

自身は少しでも闇の呪術の影響を緩和する為、破魔の聖結界【結界術、属性攻撃、破魔】を展開。
救出完了まで結界を維持し続けるわ

みんな、人々の救出、任せるわ



「悪趣味にも程があるわね……見ているだけで吐き気がするわ」
 月光城の主が作り上げた"作品"の数々を前に、素直な感想を吐露するフレミア。人間を捕らえるだけに飽き足らず、生きたまま凍らせて美術品の如く展示するとは――どこまで尊厳を愚弄すれば気が済むのか。
「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい」
 彼らを迅速に救出するために、フレミアは【虜の軍勢】を召喚する。呼び出されたのは寒い環境が得意な雪女の「雪華」とその見習いである「雪花」、そして炎の術を使える「エビルウィッチ」と「狐魅命婦」だった。

「貴女達は火力を調節しつつ、捕らえられた人々の救出を」
「「かしこまりました、フレミア様」」
 主の命を受けたエビルウィッチと狐魅命婦は、被害者の体を傷つけぬよう慎重に威力を抑えて炎の魔術や狐火を放ち、呪術による凍結を溶かしていく。自由を取り戻した人々はゆっくりと目を開けて、炎に照らされる眷属らと吸血姫の姿を見た。
「あ、あなた達は……?」
「詳しい説明は後で。ここでは寒いでしょう」
 困惑する人々の前でフレミアは【魔城スカーレット】に通じる異空間の穴を開く。画廊にかけられた呪術は解けていない以上、ここに長居すれば一般人はすぐに凍ってしまう。急いで安全な場所まで避難させる必要があった。

「こっちなの~」「さあ、どうぞ」
「は、はい……」
 雪花と雪華に案内されて穴の向こうに連れて行かれた人々は、そこで月光城にも劣らぬ豪奢な城を目にする。吸血姫とその眷属が暮らすこの城では環境調節機構が働いており、居住者はみな快適に過ごせるよう室温も整えられていた。
「ようこそいらっしゃいました」「こちらにどうぞ」
 人々が驚いていると城内に残っていた眷属がやって来て、彼らの保護と治療にあたる。
 シルキーやメイド隊やヴァンパイアナース達など、フレミアの眷属にはもてなしや医療に長けた者もいる。ここに保護されている限り彼らの無事と安全は保障されたも同然だ。

「みな衰弱していますが、命に別状はないようです」
「そう。それは良かったわ」
 眷属からの報告を聞きながら、フレミアは少しでも闇の呪術の影響を緩和する為、破魔の聖結界を展開していた。暗闇の中で煌めく光の領域が、凍結の呪いから眷属達を護る。
 救出完了までこの結界を維持し続ける為に、彼女は意識と魔力の多くを集中していた。
「みんな、人々の救出、任せるわ」
「「お任せください(なの~)」」
 主からの信任に応えるべく眷属達は奮起し、聖結界の内部で人々の救助と保護に励む。
 それぞれが為すべき事を為す、統率の取れた虜の軍勢の活動によって、多くの被害者が人間画廊より解放され、魔城スカーレットに一時保護される運びとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
酷い…すぐにみんなを解放しないと…。

【ソウル・リベリオン】を召喚し、この場に突き立てる事で魔剣が闇の呪術を喰らい続ける事で紋章へのエネルギー供給を遮断…。
逆に、月光城の主からこの場に送り込まれる呪術を喰らい続ける事でわたしと魔剣の力を飛躍的に増加…。

元々呪いには耐性があるしね…。
【ソウル・リベリオン】があれば、闇の呪術も喰らい尽くすよ…。

後は【フォックス・ファイア】で溶かしたり、魔剣の「在るべき姿へ戻す」力で展示品にされた人達を解放…。
【影竜進化】で影竜になってるミラ達に影の中に匿って貰う様にお願いするよ…。

全員助け終われば、今度はこちらの番…。
呪力も随分食べた…必ずこの城は落としてみせる…!



「酷い……すぐにみんなを解放しないと……」
 恐怖に歪んだ表情で凍りついた人々の姿を目にした璃奈は、ぎゅっと拳を握りしめる。
 こんな場所で自由を奪われたまま生かされる苦痛と絶望を想像するだけで、胸が詰まる思いがする。城主のことが無かったとしても、一秒たりとも放ってはおけなかった。
「呪詛喰らいの魔剣よ……彼の者を縛る呪いを喰らい、正しき姿、正しき魂へ戻せ……。彼の魂に救済を……!」
 魔剣の巫女の詠唱に応え、召喚されるのは呪詛喰らいの魔剣【ソウル・リベリオン】。
 あらゆる呪詛や怨念を喰らい力とするその刃を、彼女はこの場にぐさりと突き立てた。

「この人達を凍らせている呪いも、この場所にかかった呪いも、全て喰らうよ……」
 人間画廊の自然ならざる環境を保っているのは、月光城の主がかけた闇の呪術である。
 璃奈のソウル・リベリオンはこの場に送り込まれる呪術を喰らい続ける事で力を蓄え、同時に『月の眼の紋章』へのエネルギー供給を遮断する。
「元々呪いには耐性があるしね……この魔剣があれば、闇の呪術も喰らい尽くすよ……」
 呪術の扱いにかけては彼女も専門家の1人だ。城主の強大な呪力を逆に取り込む事で、呪詛喰らいの魔剣とその使い手の能力は飛躍的に増加していく。それと反比例するように人間画廊を包んでいた闇は晴れ、異常な寒気も薄れていった。

「あとはこの人達を解放するだけ……」
 十分に呪力を喰らったところで璃奈はソウル・リベリオンを引き抜き、展示品にされた人々に切っ先で触れる。すると魔剣が持つ「在るべき姿へ戻す」力により、凍結の呪いが解除されていく。
「……はっ。う、動ける……!」「あなたが、助けてくれたの?」
「良かった、無事みたいだね……」
 人々は突然の解放に当初こそ戸惑っていたが、状況を理解すれば口々に感謝を伝える。
 みな消耗しているが命に別状のある者はいない。璃奈はほっと安堵しつつ、魔剣に加えて【フォックスファイア】の術も使って、まだ凍っている被害者を次々に溶かしていく。

「ミラ達はこの人達を影の中に……」
「きゅい!」
 魔剣と狐火で解放された人々は、璃奈のお願いによりミラ達の潜む影の中に匿われる。
 警備を突破する際に使用した【影竜進化】の呪法はまだ効いており、彼らの影を操る力は健在だ。この中にいれば少なくとも画廊内に居続けるよりははるかに安全なはず。
「本当に、本当にありがとうございます……!」
 涙ながらに感謝の想いを伝えながら、影に吸い込まれていく人々。この辺りに「展示」されていた者は全員助け終えられたようだ。もう残っている人がいないか確認したのち、璃奈は魔剣と影竜達を連れて歩きだす。

「今度はこちらの番……。呪力も随分食べた……必ずこの城は落としてみせる……!」
 人々を救出しつつ『月の眼の紋章』の力を弱体化させた上、こちらの力も蓄えられた。
 万全の状態で璃奈が向かうのは城主の玄室。もう二度とこんな所業は続けさせないと、その瞳は決意で輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…凍らせた人間を展示して有事の際には紋章の贄にする、か

…趣味と実益を兼ねた素晴らしい画廊とでも考えているのかしら?

…いずれにせよ、今日この時をもって悪趣味な場所は閉館してもらうけどね

火の精霊を降霊して冷気を自前の呪詛耐性と全身を覆う炎のオーラで防御し、
肉体改造術式で視力を強化して周囲の闇を暗視して見通し、
魔法陣を浮かべた掌で『展示品』に囚われた人達に触れてUCを発動
彼らを呪詛を浄化する魔力を溜めた常夜の城の一室(暖炉付き)に転送して回るわ

…聞こえている?今から安全な場所に送るから抵抗しないで

…もし動けるようになったら、後から送られてくる人の介護をお願い

…その間に、私達はこの城の主を討ち果たす



「……凍らせた人間を展示して有事の際には紋章の贄にする、か」
 月光城の主にとって最も重要な場所がこの人間画廊(ギャラリア)である事は、恐らく間違いない。美術品の如く飾られた上で、エネルギーの供給源として生かされ続ける人々の姿を眺めながら、リーヴァルディは眉をひそめて呟く。
「……趣味と実益を兼ねた素晴らしい画廊とでも考えているのかしら?」
 これまでに彼女が見てきた吸血鬼の思考からすれば、間違いなくそう考えていそうだ。
 およそ人倫というものを持たぬ彼らの振る舞いは、ただ享楽と私利私欲のために多くの人間を犠牲にする。未知なる月光城の主もそれは同様のようだ。

「……いずれにせよ、今日この時をもって悪趣味な場所は閉館してもらうけどね」
 リーヴァルディは火の精霊を降霊する事で全身を炎のオーラで覆い、人間画廊の冷気を防ぐ。もともと自前の呪詛耐性も高い彼女なら、暫くはここに居ても影響はないだろう。
 さらに肉体改造術式により強化された彼女の視力は無明の闇をも見通し、救出すべき者が何処にいるのかを突き止める。
「……聞こえている? 今から安全な場所に送るから抵抗しないで」
 彫像のような格好で囚われた『展示品』の人達に声をかけながら、そっと手を当てる。
 その掌には血で描かれた魔法陣が浮かんでおり、オーラと共に仄かな光を放っていた。

「……開け、常夜の門」
 リーヴァルディが【常夜の鍵】を発動すると、囚われの人達は魔法陣に吸い込まれる。
 この魔法陣の転送先は常夜の古城にある一室。内部はあらかじめ呪詛を浄化する魔力を溜めておき、暖炉に火も入れてある。ここに居ればじきに氷漬けの呪いも溶けるだろう。
「……もし動けるようになったら、後から送られてくる人の介護をお願い」
 魔法陣を通じて古城に声を届けながら、彼女は画廊にいる人達を次々に転送して回る。
 暖炉の熱に温められ、呪いを浄化された彼らは、部屋の中ではっと自由を取り戻した。

「ここは……そうか、俺はあの人に助けられて……」
 何も見えない闇の中、魂すら凍りつくような冷気の中でも、リーヴァルディの声は確かに届いていた。いち早く呪いの解けた者は、まだ氷漬けになったままの同じ境遇の者達を暖炉の傍に寄せて、解凍を早めるなどの介護を行う。
「自分達にできるのはこれくらいですが……」
「……それで十分よ」
 あれほど酷い目にあいながらも誰かの為に行動する人の心の暖かさを、リーヴァルディは心地よく感じる。この様子なら古城に転送させた人々のことは心配いらないだろう。

「……その間に、私達はこの城の主を討ち果たす」
 発見した被害者を全て転送したリーヴァルディは、画廊を抜けて城主の玄室に向かう。
 人々を本当の意味で解放するために、元凶たる月光城の主を討ち果たす――迷いのない決意の言葉は、保護された人々に希望を与えるのに十分な力強さをもっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
……『第五の貴族』だろうが『月光城の主』だろうが、ヴァンパイアのする事など似たようなものか。
憤る間も惜しい、救助にとりかかろう。

人間画廊周辺にUC【燃ゆる貴き血鉛】を散布。
直接焼くのではなく周囲から青火の熱気を当てて解凍する。
凍る肉体を急速に常態に戻すのは危険やもしれんが、
この鎧(み)の【呪詛耐性】が闇の呪術とやらをいつまで凌げるか判らん以上時間はかけられん。

解凍が出来次第【救助活動】、
事前に「刀身を潰し、触れた相手が自分に対して【生命力吸収】する」ように【武器改造】した短剣を当て生命力を供給しながら呪術の影響の及ばない場所まで運ぼう。
後は当人の生命力を信じるしかあるまい。



「……『第五の貴族』だろうが『月光城の主』だろうが、ヴァンパイアのする事など似たようなものか」
 この人間画廊(ギャラリア)に展示された者達の惨状を見れば、それを強く実感する。
 この世界の何処にいようと彼奴らは人の生命や尊厳を弄ぶ。故にこそルパートのような黒騎士が必要とされているのだ。
「憤る間も惜しい、救助にとりかかろう」
 彼の鎧内から伝う鉛が、静かに青い炎を燃え上がらせながら周辺の床に広がっていく。
 その光と熱は人間画廊を支配する闇と冷気を退ける、騎士のユーベルコードであった。

「我が血はもはや栄光なく、されど未だ闇に消えず……!」
 人間画廊周辺に散布された【燃ゆる貴き血鉛】は、囚われた人達を直接焼くのではなく周囲から青火の熱気を当てて解凍していく。体の一部と言えるほどに扱い慣れたこの力、燃焼の範囲や温度をコントロールするのも自由自在だ。
(凍る肉体を急速に常態に戻すのは危険やもしれんが、この鎧(み)の呪詛耐性が闇の呪術とやらをいつまで凌げるか判らん以上時間はかけられん)
 城主の非道さは許すまじきものだが、その実力は侮りがたい。悠長にすれば自身もまた画廊に並ぶ展示品のひとつにされてしまうだろう。故に彼は迅速さを第一として、人々を捕らえる氷の呪縛を一気に溶かしきった。

「う……ここは……?」
「無事か」
 被害者の解凍が出来次第、ルパートは救助活動に移る。様子を見たところ体に目立った怪我はないようだが『月の眼の紋章』に生命力を吸われていたためか憔悴が激しい。まだ意識を取り戻したばかりで、状況に理解が追いついていないようだ。
「すまんが説明している時間も惜しい。生き延びたければこれを持て」
「は……はいっ」
 衰弱した体を抱え上げながら、被害者の肌に「ブラックスミスの短剣」を触れさせる。
 ルパートの一部でもあるこの短剣は事前に刃を潰した上で、触れた相手が自分に対して生命力を吸収するように改造を施してあった。

「なにか、温かいものが流れ込んでくるような……」
 短剣を通じてルパートの生命力が被害者に供給されていく。土気色だった顔に血の気が戻ってきたのを見て安堵を覚えながら、騎士は呪術の影響の及ばない場所まで彼を運ぶ。
(後は当人の生命力を信じるしかあるまい)
 自分にできる救護はここまでだ。この者の命運がまだ尽きていなければ生き延びる筈。
 安全な場所にそっと被害者の体を横たえると、ルパートはすぐに画廊へと取って返す。

「ここで安静にしていてくれ。じきに戻る」
「か……感謝いたします、騎士様……」
 救い出した人からのお礼を背中で聞きながら、ルパートは今だ囚われている人達の解放に奔走する。その身より滴らせる青火の鉛は、人々にとって希望と救いの灯火となった。
 画廊の闇を払う熱と光は、あたかも城主の力の弱まりを意味しているようだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
故郷の真空の宙と比べればこの場所の活動も許容範囲内
ですが、問題は生かして氷漬けとする魔力です
長居は危険に過ぎる以上、迅速に救助と参りましょう

電脳禁忌剣、眼前に掲げ

用途申請、要救助対象の保護

解禁された空間転移で認識範囲内の『展示品』の元へ瞬間移動
怪力で確保し、安全圏へ再度転移
これを繰り返し救助を遂行

必要とあらば超高速連続瞬間移動で空中に静止
マルチセンサーでの●情報収集で内部の構造と『展示品』の位置を探査

人間画廊(ギャラリア)が如何な広さを誇ろうと、一つ残らず運び出して見せますとも

氷が融けたのですね
ご安心を、皆様の救出に参りました
城主が討たれるまで暫し身を潜めて頂きたいのです

ええ、討伐は必ずや



「故郷の真空の宙と比べればこの場所の活動も許容範囲内ですが、問題は生かして氷漬けとする魔力です」
 宇宙空間での活動を前提に開発されたトリテレイアは、極寒の冷気とて恐れはしない。
 しかし謎多き月光城の主の力は、彼にとっても警戒すべきものだった。強大な闇の呪術に長時間晒されれば、機械の体にもどのような悪影響が出るか分からない。
「長居は危険に過ぎる以上、迅速に救助と参りましょう」
 作戦内容を明確にして、機械仕掛けの騎士は電脳禁忌剣アレクシアを眼前に掲げる。
 創造主に託されたこの剣には、星をも砕く超技術の数々が秘められている。普段は厳密に封印された機能だが、条件次第では一部解除も可能である。

「用途申請、要救助対象の保護」
 トリテレイアの申請は禁忌剣に承認され、【銀河帝国未配備A式連続空間転移兵装】のセーフティが解除される。光り輝く大剣をひと振りすれば空間が切り裂かれ、彼の機体は一瞬で別の場所に移動していた。
「転移座標誤差なし。要救助者確認」
 闇の深さに影響されない彼のマルチセンサーは、画廊内部の構造と『展示品』にされた人々の位置を探査していた。救うべき者の元へ転移した騎士は氷漬けにされた彼らを怪力で確保し、画廊の外の安全圏まで再度転移する。

「脱出成功。どうやら呪術に移動や転移を阻害する効果はないようですね」
 人間画廊と安全圏の往復を空間転移により瞬時に行う事で、闇の呪術の影響を抑えつつ迅速に人々を救出する。それがトリテレイアの作戦だった。このような手段で『展示品』を奪取されるのは城主も想定外だったのだろうか。
「人間画廊(ギャラリア)が如何な広さを誇ろうと、一つ残らず運び出して見せますとも」
 彼はさらに同じ座標に超高速連続瞬間移動する事で空中に静止し、センサーをフル稼働させて精密探査を実行。画廊中に展示された被害者の所在を1人も漏らさず見つけ出し、空間を飛び越えて速やかに救助していく。

「ぅ……ここは……」
「氷が融けたのですね」
 安全圏に運び出された者達の凍結はほどなくして解け、ぼんやりと辺りを見回す彼らにトリテレイアは事情を説明する。氷漬けにされたままずっと暗闇に放置されていたのだ、現状が分からければ不安にもなるだろう。
「ご安心を、皆様の救出に参りました。城主が討たれるまで暫し身を潜めて頂きたいのです」
 自分達は猟兵で、人々の救出と月光城の調査、そして城主の討伐に来たことを伝える。
 画廊を出ても城主が健在である限り、危機が去ったとは言えない。自由の身になっても今暫くの間はここでじっとしているのが一番安全だということも。

「た、倒せるのか? あんな恐ろしい怪物を……」
 ここにいる人達は展示品にされた際、少なくとも一度は月光城の主を見ているはずだ。
 それがヒトには到底抗いようのない強大な力の持ち主である事は本能で理解していた。どんなに希望を思い描こうとしても、あの怪物が倒されるところなど想像もつかない。
「ええ、討伐は必ずや」
 だが、トリテレイアはそれが予定事項のような口ぶりで、ごく自然に彼らに返答した。
 敵を弱体化させるための布石は既に打たれている。これまでにも幾多の強敵と戦ってきた彼が、今さら怖気づくはずもなかった。

「……わかりました。どうかご武運を」
「ええ」
 ここで待っていると決めた人々の信頼の眼差しを受けて、騎士は城主の玄室へ向かう。
 展示品がなくなりがらんとした画廊の中を進む彼の足取りに、迷いは微塵も無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
すぅ……ふぅ……(自分を落ち着かせるために一度深く呼吸)
吸血鬼の城というのは、どこも変わりがありませんね。
違うところといえば、ここは少し冷えますが……まぁ、大したことではありませんね。

何の因果かはわかりませんが、この場所と私は極めて相性がいい(『寒冷適応』『評決体制』)。助けられるだけ……なんてことは言いません、他の方と合わせて目に映る方全員を助けて進みます。

私一人では運ぶ力は足りませんし115体の【冬の尖兵】を召喚、彼らにも手伝ってもらい人間画廊に捕らわれた人たちを運び出し、少しの間待っていてもらいます。

すぐに戻ります。吸血鬼を一人、倒しに行くだけです。



「すぅ……ふぅ……」
 人間画廊(ギャラリア)の惨状を目の当たりにしたセルマは、自分を落ち着かせるために一度深く呼吸する。闇に満ちる冷たい空気を胸一杯に吸えば、熱くなりかけた頭も冷静さを取り戻した。
「吸血鬼の城というのは、どこも変わりがありませんね」
 心を乱さずあくまで冷静に呟く。奴らの醜悪な所業を見るのはこれが初めてではない。
 動揺すれば狙撃の精度も乱れる。だから何を見せられようとも彼女は落ち着いて攻略に挑む――この画廊を作り上げた吸血鬼の心臓に、弾丸を撃ち込むその時まで。

「違うところといえば、ここは少し冷えますが……まぁ、大したことではありませんね」
 氷や雪を操る能力に長けたセルマは、猟兵の中でも高い寒冷地での適応力と氷結耐性を有している。常人なら呼吸するだけで肺が凍りそうな寒気ですら、彼女にとっては「少し冷える」程度のものでしかなかった。
「何の因果かはわかりませんが、この場所と私は極めて相性がいい。助けられるだけ……なんてことは言いません、目に映る方全員を助けて進みます」
 それは無謀でも無茶をする訳でもない。他の者と合わせれば可能だと確信しての宣言。
 闇と冷気が支配する人間画廊で、絶対零度の射手は平然としたまま救助活動を始める。

「ここからは剣の冬、ということで。行きなさい、兵士たち」
 まずは人手を補うために、115体の【冬の尖兵】を召喚。現れた氷の兵士達はセルマの意に従って人間画廊の中を手分けして捜索し、捕らわれた人たちの救出と保護にあたる。
「私一人では運ぶ力は足りませんし」
 展示品にされた被害者を発見すれば、壁や床に固定する氷を銃剣で砕き、後は兵士達に外に運び出してもらう。どれほど強力な呪術でも氷の兵を凍らせる事はできないだろう。使用するユーベルコードまで含めて、セルマはこの場所の環境に完全に適応していた。

「うぅん……はっ。ここは……?」
 画廊の外に連れ出して少しすれば呪いによる凍結は解除され、人々は自由を取り戻す。
 彼らは互いに顔を見合わせて、一体何が起きたのか――どうして自分達は助かったのかと、安堵を抱きながらも驚きや戸惑いも見せていた。
「少しの間待っていてください。ここならひとまずは安全です」
 そんな人達を落ち着かせるようにセルマは穏やかに話しかけ、手短に状況を説明する。
 城内の警備はほぼ一掃されているため、じっとしていれば襲われる心配はないだろう。この城に残っている敵はあと1人、彼らを画廊に閉じ込めた元凶だけだ。

「すぐに戻ります。吸血鬼を一人、倒しに行くだけです」
「た、倒すって……」
 さも当然のようにそう語るセルマを、人々は驚きの表情で見つめる。この月光城の主の力と恐ろしさを実際に体験にした彼らだからこそ、すぐに信じられないのも無理はない。
 しかしセルマは本気だった。これまで何度も狩ってきた"獲物"に、今さら臆する理由もない。画廊にいた人々のほぼ全員を救出した今なら敵の力も弱まり、勝算は十分にある。
「心配いりません。それでは」
 愛用のマスケット銃を手に、人間画廊のさらに奥、城主の玄室へと向かうセルマ。
 その颯爽とした背中が闇の中に見えなくなるまで、人々はずっと見つめ続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
月の眼の紋章は、大いなる力を持っている。
だが、捕らわれた人々を救い出せば、其の力は弱まる……
やるべき事は、決まったな。
■行
【POW】
此の剣と技で人々を救い、進むべき道を拓かん!

寒さを生来の【継戦能力】で耐えつつ、【暗視】能力を
用いて捕らわれた人々を探る。

発見したらすぐさま刀を構え、【破魔】の力を込めて
【剣祓】を放ち、人々の身を覆う氷のみを【切断】せん!
万一、『氷を解かすだけでは助けられない者』を発見したら
【ダッシュ】と【ジャンプ】を駆使してすぐさまそこへ向かい、
脱出の妨げになる部分を己の技のみで断ち斬るのだ。

周囲にこれ以上人々はいないか、身体が凍えかかったと
少しでも感じたら、先に進もう。

■他
救出した人々は、安全な場所に隠れて貰う。
また、手持ちの食糧(※兵糧丸など)を惜しみ無く渡そうか。

※アドリブ歓迎・不採用可



「月の眼の紋章は、大いなる力を持っている。だが、捕らわれた人々を救い出せば、其の力は弱まる……やるべき事は、決まったな」
 見過ごす事のできない非道な所業と、それを利用して己の力を高める『月光城の主』。
 この先に待ち受ける脅威と惨状に対して、清綱はすっと刀の鞘に手をかけて宣言する。
「此の剣と技で人々を救い、進むべき道を拓かん!」
 無辜の民を解放する事が、城主を打倒する布石になるのだ。迷う理由はひとつも無い。
 彼は猛禽の如き鋭き眼光で『人間画廊(ギャラリア)』の闇を睨み、中へ踏み込んだ。

「この寒さで人々を凍らせているのか……だが、この程度ならば耐えられる」
 過酷な戦場を戦い抜いてきた清綱の生来の継戦能力は、常人のそれより並外れている。
 吹き付ける冷気にも屈せず進み、暗視能力を用いて闇を探れば、捕らわれた人々の所在はすぐに見つかった。
「今、お助けする」
 まるで絵画や彫刻の如く「展示」された人々を発見すると、彼はすぐさま刀を構える。
 鞘内にて刃に破魔の力を込め、精神統一――其れは清綱が新たに編み出した破魔の剣。

「大いなる海原の元へ……秘儀・剣祓」
 目にも留まらぬ早業で退魔刀「心切」を抜けば、放たれるのは荒波の如き斬撃波。全てを洗い清める海のように、その波動は城主がかけた呪いを祓い、人々の身を覆う氷のみを切断した。
「――……わわっ!?」「動ける……?」
 砕け散った氷の破片の中から、解放された人々が信じられないといった顔で出てくる。
 助けを訴える事もできない囚われの身で、もう心すらも凍りつきかけていたのだろう。そこに訪れた救いの一太刀は、彼らにとって青天の霹靂だった。

「無事か。助けに来たぞ」
 清綱は解放した者達に1人ずつ声をかけ、肩や手を掴んで励ます。たとえ暗闇の中でも力強い言葉や手の温もりは感じられるだろう。人々が忘れていた希望を思い出すのには、それで十分だった。
「もう駄目かと思っていました」「なんと感謝すればいいか……!」
 口々に感謝の想いを伝える人々に、男は刀を鞘に収めながら「立ってくれ」と告げた。
 ここはまだ安全な場所ではない。再び呪いで凍らされる前に、画廊の外に脱出せねば。

「ま、待ってください。娘を、私の娘を見ませんでしたか?」
 その時、清綱の着物の袖を掴んで、1人の女性が震えながらに訴える。聞けば我が子と共にこの月光城に連れ去られ、氷漬けにされてからずっと行方が分からないままらしい。
「まだ囚われた者がいるのか」
 それを聞いた清綱はさっと視線を巡らせて捜索の範囲を広げる。目線を水平から少し上に向ければ――いた。天使のようなポーズで空中に細い糸で吊るされた幼い少女の姿が。

「悪趣味な真似を」
 清綱はすぐさまその少女の元へダッシュで駆けつけると、助走の勢いのまま跳躍する。
 そして空中で再び刀を抜くと、一閃。人を吊るす強靭な糸を、己の技のみで絶ち切る。
(氷を解かすだけでは助けられない者もいるのだな)
 敵からすれば展示の趣向を凝らしたつもりだろうか。つくづく趣味の悪い嗜好に顔をしかめながら、宙吊りから解放した娘を抱えて床に着地する。その後、母親から咽び泣きと共に溢れんばかりの感謝を彼が告げられたのは言うまでもないだろう。

「……此処まで来れば安全だ」
「光だ……!」
 それから清綱は救出した人々を連れて、無事に人間画廊の外に脱出する。身を切るような冷気が消え、闇が晴れると喜びの声が上がった。地下の暗さも冬の寒さも、今の彼らにとっては日だまりに居るが如しだろう。
「暫くは此処に隠れていてくれ。腹も空いているだろう、これを食べると良い」
 清綱は兵糧丸や栄養食といった手持ちの食糧を惜しみなく渡して、彼らに身を潜めるよう伝える。城主はまだ健在である以上、下手に城内を動き回るよりはそのほうが安全だ。

「画廊の中にこれ以上人はいないようだ。俺は先に行く」
「どうかご武運を……」「助けてくれてありがとう!」
 人々の感謝と声援に背中で応えて、清綱は人間画廊の先――城主の待つ玄室へと進む。
 謎多き月光城での探索もいよいよ終着点が見えてきた。気力は充実、体力もまだ十分。万全のコンディションのまま彼は決戦の地へと赴くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『不死嬢イヴマリア』

POW   :    おなかがすいたの
レベルm半径内に【自身の翼から“深紅の棘"】を放ち、命中した敵から【再生力の糧として血】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
SPD   :    まだ眠くないもん
レベルm半径内を【無数に複製したツギハギ蝙蝠のぬいぐるみ】で覆い、[無数に複製したツギハギ蝙蝠のぬいぐるみ]に触れた敵から【生命力】を吸収する。
WIZ   :    ひとりはやだよ
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【真っ赤なリボン】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。

イラスト:せつ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は神埜・常盤です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あれれ? あなたたち、どうやってここに入ってきたの?」

 人間画廊(ギャラリア)を抜けて玄室に着いた猟兵達を迎えたのは、少女の声だった。
 玉座におわすは豪奢なドレスに身を包み、銀色のツインテールをなびかせた女吸血鬼。容貌は可憐な少女だが、全身に走る疵がまるでツギハギの跡のように見える。

「もしかして、イヴのともだちになりに来てくれたの? わぁ、嬉しいな」

 月光城の主『不死嬢イヴマリア』は、心からの笑顔を浮かべて猟兵達を歓迎する。
 その態度は無邪気にして幼稚。殺気はまるで感じられないが、その身から溢れる膨大な魔力に一同は既に気付いていた。これまで道中で戦った下級の吸血鬼共とは、格が違う。

「さいきん、ギャラリアにいるともだちも減ってきたからさびしかったの。また探しにいこうかと思ってたのに、じぶんから来てくれるなんてすてき!」

 イヴマリアは完全に猟兵の事を新しい「ともだち」候補として認識しているらしい。
 あの画廊に飾られていた大勢の人々も、同様に彼女に気に入られて城に招かれたのか。

「にんげんはもろくてすぐに壊れちゃうから、だいじにかざっておくの。それならずっと長くいっしょにいられて、ひとりぼっちじゃないもの」

 名案でしょうとばかりに語られるその内容は、吸血鬼らしい残忍なエゴに塗れていた。
 あの画廊は「ともだち」の展示場であり保管庫でもあったわけだ。人間をモノのように扱いながら孤独を紛らわす友と呼ぶ、その精神性は致命的なまでに歪みきっている。

「でもイヴはぶきようだから、うっかりともだちをこわしちゃうこともあるの。だから、いつも新しいともだちを探してるの。あなたたちは、すぐにこわれないといいな」

 幼稚で寂しがり屋、おまけに情報によれば癇癪持ちときている彼女の「ともだち」になった者の末路など今さら考えるまでもない。これまでに一体どれだけの人間が犠牲になってきたのか、想像に余りある。

「だいじょうぶ。ギャラリアにいれば、イヴがまもってあげるよ。イヴ、とっても強いんだから」

 イヴマリアの自信の源は、その胸に融合した『月の眼の紋章』だろう。
 人間画廊に閉じ込めた「ともだち」の数に応じて、戦闘力を飛躍的に向上させる紋章。
 だが、本人の知らない内に画廊にいた人間は全て猟兵達の手によって解放されている。紋章は既に効果を失っているはずだ。

 逆に言えば素の戦闘力の状態で、彼女はこれだけの格を保っているということだ。
 さらに紋章自体にも「飛び出す棘鞭」による攻撃手段が備わっているとの情報もある。
 詰めの段階で油断すれば、全てを失う事になるのは猟兵達のほうだろう。

「さあ、イヴとあそぼうよ」

 かつんと軽やかに靴音を響かせて、玉座より立ち上がる『不死嬢イヴマリア』。
 幼稚にして残酷なる月光城の主を討ち取らんと、猟兵達は戦闘態勢を取った。
ロリータ・コンプレックス
……なんかデジャヴ。あ、アリスオリジンたん様に似てるんだ。ふふ。貴女がダクセでの最初の『お相手』で良かったわ。免疫あるし怖くない。うん。(膝ガクガク)
そうオトモダチになりに来たんだよ。イヴたん様はオトモダチをよく壊しちゃうのよね?じゃあロリータちゃんもイヴたん様を壊さないと。ちゃんとおんなじように大切にするからね。
《癒光》の聖痕は人間の痛みや苦しみを吸収し続けるの。ギャラリアの人達も辛かったって。これはそのオトモダチの痛みよ。【全力魔法】で灼熱の光弾にして分けてあげる。
真っ赤なリボン?運命共同体ね♪このリボンが切れるまで【祈り】を捧げよう。オトモダチみんなが救われるように。UC……使うね!



「……なんかデジャヴ。あ、アリスオリジンたん様に似てるんだ」
 対峙した『不死嬢イヴマリア』の言動に、かつての強敵の姿を思い浮かべたロリータ。
 子供っぽい残酷さと底知れぬ欲深さ――己の望みのままに理不尽を引き起こす点では、確かにあの不思議の国の女王と似通う部分があるかもしれない。
「ふふ。貴女がダクセでの最初の『お相手』で良かったわ。免疫あるし怖くない。うん」
 そう言う割に膝はガクガク震えていて、本当は恐怖を押し殺しているのは明らかだが、目線はまっすぐ敵から外さないあたり腹は括っている様子。ここまで来て逃げられる訳がない、かつてのトラウマと正面から立ち向かう時が来たのだ。

「あなた、ふるえてるよ。イヴがつれてきたともだちといっしょね」
「そうオトモダチになりに来たんだよ。イヴたん様はオトモダチをよく壊しちゃうのよね?」
 無邪気な笑顔を浮かべるイヴマリアに、ロリータは強がりの笑みを返す。恐怖に震える人々を人間画廊(ギャラリア)に閉じ込め、一方的な友情を押し付け、癇癪でぶち壊す、そんな理不尽には報いが必要だ。
「じゃあロリータちゃんもイヴたん様を壊さないと。ちゃんとおんなじように大切にするからね」
「あはは。うれしい! でも、できるかな? イヴ、つよいもん」
 イヴマリアは瞳を爛々と輝かせながら手を振りかざす。戯れのつもりの攻撃だろうと、吸血鬼の力はたやすく人間を破壊する。過去に何人もの"ともだち"を壊してきた一撃――その刹那、ロリータの体は光に包まれた。

「きゃっ。なぁに?」
 満月よりも眩い輝きに目がくらみ、思わずイヴマリアが手を止める。その光はロリータの身体に刻まれた聖者の証、「≪癒光≫Agony Receptor ―世界の苦悩を癒す少女―」の聖痕より放たれていた。
「《癒光》の聖痕は人間の痛みや苦しみを吸収し続けるの」
 取り込んだ苦痛の量が多ければ、そのぶん聖痕も輝きを増す。これほどの力を集められた理由は言うに及ばぬだろう――人間画廊に囚われていた人々の心身の苦痛や負の感情が今、彼女の力になっているのだ。

「ギャラリアの人達も辛かったって。これはそのオトモダチの痛みよ。イヴたん様にも分けてあげる」
 ロリータがそう言って指を突きつけると、聖痕よりあふれる光輝は灼熱の光弾となる。
 小さな太陽の如きその弾丸は、過たずイヴマリアの体を灼いた。再生力に優れる吸血鬼と言えど、聖なる力によるダメージは簡単には癒やせまい。
「きゃっ! あつい……でも、つかまえたっ」
 これまで"ともだち"からの反撃など許した事のなかったイヴマリアは悲鳴を上げるが、同時にその身を包むドレスから真っ赤なリボンがしゅるりと伸びてロリータに結びつく。不覚を取ってもただではやられないのは、流石に月光城を統めるだけの実力者であった。

「ひとりはやだよ。これでずっといっしょ」
 イヴマリアのリボンは繋がれた両者の生命を共有させる。どちらか一方が致命傷を負っても双方が同時に死なない限り死ねない、呪いにも似た運命を強いるユーベルコードだ。
「真っ赤なリボン? 運命共同体ね♪」
 だが、そんな理不尽を押し付けられてもロリータはお茶目に笑ってみせる。もちろん、一緒に死んであげるつもりなどさらさら無い。こちらからリボンが切れそうになければ、相手から切るように仕向けるだけだ。

「オトモダチみんなが救われるように。ユーベルコード……使うね!」
 不死嬢の被害を受けた人々への祈りを捧げながら、ロリータが発動するのは【死天使の妙なる冥界への誘い】。先ほどの攻撃で敵に与えた僅かな動揺――それを膨れ上がらせ、精神を衰弱させるほどの焦燥に変えるユーベルコードだ。
「なに……? 胸が、ざわざわする……」
 イヴマリアの胸の奥から湧き上がる言い知れぬ不安。それは彼女が今まで一度も感じたことのなかった「死の恐怖」に近い。ロリータの傍にいればいるほどその焦燥は強まり、幼い精神を蝕んでいく。

「やだ……あなた、なんかやだっ!」
 イヴマリアは自分で繋いだリボンを自ら切ると、ロリータの元からぱっと飛び退いた。
 月光城の主になるほど強いヴァンパイアが、自分から逃げた。その事実を目にした時、気付けば少女の膝の震えは止まっていた。
「ふふ。どう? 貴女なんてちっとも怖くないんだから」
 猟兵として他世界で積み重ねてきた多くの経験は、確かにロリータを成長させていた。
 その実感を戦果として得られた時、彼女の恐怖心は少しだけ和らいだような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「さあ、イヴとあそぼうよ」
イヴマリアが玉座より立ち上がった瞬間、凄い早さでカビパンはその玉座に座った。
「わたしがほんとうのイヴマリアよ」
争いは同じレベルの者同士でしか発生しないが、遊びも同様であった。

「ほら、こっちよ!」と二人は城内で遊び回った。イヴマリアも無邪気に「うわっ、ずるいわっ!」とか言って大好評。

「おなかがすいたの」
「しゅーくりーむがあるわ」
仲睦まじく遊ぶ二人は、実の姉妹の様であった。

「そろそろわたしかえらないと」
「ひとりはやだよ」
「じゃあこれいらないからあげる」
「えへへ」
カビパン紋章を渡した。イヴマリアは嬉しそうな顔をしながらソレを装備して本当の『お馬鹿』になってしまったという。



「あなたはイヴのおともだちになってくれる?」
 一人目との"遊び"がうまくいかず、玉座に戻ったイヴマリアは別の猟兵に声をかける。
 その相手というのはカビパン。常に我が道を行くイメージのある彼女は、何を考えたかにこやかな笑顔で首を縦に振った。
「いいわよ」
「やったぁ!」
 快い承諾にイヴマリアもニコニコ笑顔を浮かべ、新しい"ともだち"ができた事を喜ぶ。
 遊び気分の幼い吸血鬼とシリアスを蹴っ飛ばす女教皇。まるで相性の予想できない二人である。

「さあ、イヴとあそぼうよ」
 そう言ってイヴマリアが玉座より立ち上がった瞬間、凄い速さでカビパンはその玉座に座った。背もたれに深く腰掛けて、さも自分がここの主であるかのようにふんぞり返り。
「わたしがほんとうのイヴマリアよ」
「えっ? イヴがイヴマリアよ!」
 椅子を取られたイヴマリア(本物)は慌てて飛びかかるが、その前にカビパンはさっと玉座から下りる。そして玄室をてってけと走り回りつつ、不死嬢にひらひら手を振った。

「ほら、こっちよ!」
「あはっ、鬼ごっこね。イヴが鬼よ!」
 捕まえてご覧なさいとでも言うように袖を振って走るカビパンを、イヴマリアが笑顔で追い駆ける。単純な走力でいえば吸血鬼の方が遥かに優れるが、捕まる寸前にカビパンはくるりと振り返って「女神のハリセン」をひと打ち。
「きゃうっ!」
 まるきり油断していたイヴマリアはスパーンッ! と張り飛ばされ、床に尻餅をつく。
 ダメージはほとんど無いがビックリさせる事はできた模様。その間に【ハリセンで叩かずにはいられない女】は逃げていく。

「引っかかったわね」
「うわっ、ずるいわっ!」
 とか文句を言いつつイヴマリアは無邪気にカビパンとの追いかけっこを楽しんでいる。
 争いは同じレベルの者同士でしか発生しないが、遊びも同様であったらしい。もともと殺意のなかった彼女はすっかり相手のギャグのペースに染まってしまっていた。
「おなかがすいたの」
「しゅーくりーむがあるわ」
 城内で遊び回って疲れたら、カビパンの持ってきたシュークリームを一緒に食べる。
 仲睦まじく遊ぶ二人の様子は種族の垣根すら超えて、まるで実の姉妹の様であった。

「そろそろわたしかえらないと」
「えーっ!」
 だが楽しい時間はすぐに過ぎるもの。カビパンだっていつまでもここにはいられない。
 帰り支度を始めた彼女を見て、イヴマリアは悲しみに満ちた顔で不満げな声を上げた。
「ひとりはやだよ」
「じゃあこれいらないからあげる」
 また独りになるくらいなら、今までの"ともだち"と同じように閉じ込めておこう――。
 そんな考えをイヴマリアが実行する前に、カビパンは己の本体である「カビパン紋章」を渡した。

「えへへ」
 無邪気なイヴマリアはたちまち機嫌を直し、嬉しそうな顔をしながらソレを装備する。
 カビパンの力と魂が宿った「紋章」を宿した者は、ギャグ的な意味で精神を汚染され、色んな意味で残念に――平たく言えば『お馬鹿』になってしまうとも知らずに。
「うれしー、ありがとー」
 こうして知力も判断力も一段階レベルが落ちてしまったイヴマリア。この精神的デバフが今後の戦況にどう影響を及ぼすのか、それを見届ける前にカビパンはさっさと帰った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン、そこまで言うなら遊んでやろう…
嫌と言うほどな

シルコン・シジョンで攻撃
大口径のライフル弾をフルオートで叩き込む
蝙蝠のぬいぐるみに対してはオーヴァル・レイも銃と使用して触れないように遠距離から始末する

フッ、こいつらもおともだちか?
いいだろう…遊んでやれ、デゼス・ポア

ぬいぐるみに囲まれたらUCを発動
視認してぬいぐるみ達を切り裂き突破口を作る
そのまま一気に敵に肉薄して攻撃と見せかけてフェイント
紋章から飛び出た棘鞭を早業で振るったエギーユ・アメティストに絡ませ、敵の動きを止めたらデゼス・ポアを切り込ませ串刺しにする


遊びに付き合ってくれた礼だ、帰りは送ってやろう…
深い骸の海の底へとな



「フン、そこまで言うなら遊んでやろう……嫌と言うほどな」
 この期に及んで遊戯気分な月光城の主に思い知らせやろうと、不敵に笑うのはキリカ。
 彼女が構えるのはVDz-C24神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"。聖別を施した大口径ライフル弾のフルオート射撃が、雨のように標的に襲い掛かる。
「きゃっ! びっくりした」
 轟く発砲音に驚いて、ぱっと身を躱すイヴマリア。そのうちの何発かがヒットするが、身体に空いた銃創はすぐに塞がり始めてしまう。どうやらこの吸血鬼は同族の中でも特に再生力に長けた個体のようだ。

「あそぶのはすきだけど、うるさいのはきらい」
 喧しい銃声を止めようと、イヴマリアは抱えていたツギハギ蝙蝠のぬいぐるみをぽいっと宙に放る。すると1体のぬいぐるみからそっくりの複製体が無数に出現し、バサバサと翼を羽ばたかせてキリカに襲い掛かった。
「我儘なお姫様だな」
 キリカは銃の照準を変更し、さらに卵型の浮遊砲台「オーヴァル・レイ」も起動して、遠距離からぬいぐるみを撃ち落とす。アレは明らかに近付かれるとまずい類の使い魔だ、触れないように始末するのが賢明だろう。

「イヴ、のどがかわいてきちゃった。あなたの血をちょうだい?」
 イヴマリアはそう言ってユーベルコードを継続する。複製できる数に限度はないのか、玄室はすっかり蝙蝠のぬいぐるみに覆われてしまっていた。ふざけた力業だが、ここまで数が増えすぎると流石に撃ち落としきれない。
「フッ、こいつらもおともだちか? いいだろう……遊んでやれ、デゼス・ポア」
 大量のぬいぐるみに囲まれたキリカは、しかしまだ不敵な笑みを失ってはいなかった。
 彼女の呼びかけに応じて呪いの人形が浮かび上がり、不気味な笑い声を上げる。その躰を飾る錆びた刃が鈍く煌めいた瞬間――空間を切り裂いて数多の刃が玄室に飛び出した。

「ヒヒヒヒヒャハハハハハ!!」
 デゼス・ポアの哄笑が響く中、キリカが視認する全ての敵が同時に刃に切り裂かれる。
 千里眼の刃【ラム・クレアボヤンス】が発動した後には、視線に沿った一筋の突破口ができる。新たなぬいぐるみがそこを埋めてしまう前に、キリカはすぐさま走り出した。
「今度は渡しからプレゼントだ」
「わぁ、なになに?」
 一気に肉薄して攻撃の構えを見せる彼女を、イヴマリアは期待に満ちた目で身構える。
 その胸に融合した「月の眼の紋章」からは紅い棘鞭が飛び出し、本体を守るかのようにキリカを狙う。

「掛かったな」
 攻撃と見せかけたのはフェイント。紋章から飛び出てきた棘鞭を、キリカは純白の革鞭「エギーユ・アメティスト」に絡ませる。絡み合う2本の鞭で2人は繋がる状態となり、回避しようとしていたイヴマリアの動きが止まる。
「遊びに付き合ってくれた礼だ、帰りは送ってやろう……深い骸の海の底へとな」
「キャハハハハハ!」「きゃぁぁぁっ!!?」
 その好機に切り込んだのはデゼス・ポア。錆びついた刃が不死嬢の躰を串刺しにする。
 憎むべき異形を貫いた歓喜に人形は嗤い、耐え難い激痛にイヴマリアは悲鳴を上げる。幼き少女のそれに似たふたつの声が、重なりあいながら月光城の玄室を満たした――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
ああ、この娘にとって「ともだち」は替えのきく人形と同じ
人の命も、自由も、尊厳も、何とも思ってはいない
わたくしたちとは決して相容れぬ価値観

あなたが欲しいのは「ともだち」ではなくただの「おもちゃ」でしょう?
そんなものにわたくしはなってやれない
いいえ、誰ひとり「おもちゃ」になどさせない

リボンや棘鞭による攻撃を第六感を働かせて感知し
翼飛行で空を飛びながら(空中戦)出来る限り距離を置いて見切り回避
自身の周囲に【鈴蘭の嵐】を展開し、
避けきれないリボンや棘鞭は花びらをぶつけて叩き落とし
残った花びらでイヴマリアを包み込んで
甘い毒で彼女を死出へと誘う

さようなら
人の命は、自由への意志は、誰にも踏み躙らせはしないわ



(ああ、この娘にとって「ともだち」は替えのきく人形と同じ)
 幼稚で無邪気な振る舞いの裏に隠された『不死嬢』の本質に、ヘルガは気付いていた。
 どれだけ好意的な態度を取ろうとも彼女は吸血鬼。人間のことを根本的に対等の存在と認識していない。あからさまな悪意や軽蔑が無いぶん余計にたちが悪いとすら言える。
(人の命も、自由も、尊厳も、何とも思ってはいない。わたくしたちとは決して相容れぬ価値観)
 あちらにとっては大切に扱っているつもりでも、相手を慮る気持ちに欠けたその行為は監禁と虐待でしかない。己の行動の邪悪さに気付いていない、最も忌まわしき悪である。

「あなたが欲しいのは『ともだち』ではなくただの『おもちゃ』でしょう?」
 険しい目つきでイヴマリアを睨みつけながら、ヘルガは毅然とした態度で口を開いた。
 その腕に抱いているぬいぐるみと同じ。彼女はただ寂しさを紛らわせる玩具を欲しているだけだ。そんなものを集めたところで、本当の意味で孤独が癒えるはずなど無いのに。
「そんなものにわたくしはなってやれない。いいえ、誰ひとり『おもちゃ』になどさせない」
「……? あなたの言うこと、むずかしいわ。ともだちとおもちゃって何がちがうの?」
 幼きイヴマリアには理解できない。分かるのは目の前の相手に拒絶されたということ。
 こういう時、彼女の対応はふたつ。力ずくで"ともだち"にするか、壊してしまうかだ。

「ひとりはやだよ。ずぅっといっしょにいて?」
 イヴマリアはドレスから真っ赤なリボンを、胸の紋章から紅い棘鞭を放ち、"ともだち"を捕まえようとする。その動きを第六感を働かせて察知したヘルガは、翼を羽ばたかせて宙に飛び上がり、危ういところで拘束を避ける。
(出来る限り距離を置くべきね)
 棘鞭も危険だが特にあのリボンに繋がれた者は、強制的にイヴマリアと生命を共有することになる。ここで一緒に死んでやるつもりはないし、一緒に生き続けるつもりもない。今日、ここで死ぬのはただ独り――月光城の主だけだ。

「にげちゃだめ!」
 怒ったように目をつり上げながら、上空に向かってリボンや棘鞭を伸ばすイヴマリア。
 執拗な攻撃をいずれは避けきれなくなると察したヘルガは、聖奏剣「ローエングリン」を抜き放ち【鈴蘭の嵐】を発動する。
「逃げるつもりなんてないわ。あなたはここで倒すから」
 優美な細身剣の刀身が無数の鈴蘭の花びらへと変わり、彼女の周囲をひらひらと舞う。
 華麗なる花吹雪は聖歌姫を守護する障壁となり、呪いのリボンや棘鞭を叩き落とした。

「人の命を、自由を、尊厳を弄ぶ、月光城の主に神罰を」
 ヘルガがさっと腕をひと振りすると、残された花びらが舞ってイヴマリアを包み込む。
 可憐な見た目に反して、鈴蘭の花には毒がある。多量に取り込めば生命の危険すらあるほどの毒が。ましてやユーベルコードとなれば、その毒性は吸血鬼の肉体すら蝕む。
「こほっ……う、頭がいたい……っ」
 急な頭痛や目まい、嘔吐感などの症状に襲われたイヴマリアは、胸をぎゅっと押さえながら鈴蘭を振り払おうとする。だが、どんなに強い力で払っても花はただ舞い散るのみ。死出へと誘う甘い毒から逃れることはできない。

「さようなら。人の命は、自由への意志は、誰にも踏み躙らせはしないわ」
 猛毒の花と香りに包まれてへたりと座り込んだイヴマリアに、頭上から告げるヘルガ。
 無邪気な悪意から人の尊厳を守らんとする意志が、月光城の不死嬢を追い詰めてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
ともだちか。いいよ、なってあげる。ぼくを捕まえられたらね。

追ってくるぬいぐるみを、量子テレポートにより、かわし、別の所から現れるよ。

鬼さんこちら。ほらほら、捕まえられるかな。

癇癪を起したところで、そばに現れ、ゼロ距離で全力魔法を放つよ。あらら、ぼくが捕まえちゃったね。



「ともだちか。いいよ、なってあげる。ぼくを捕まえられたらね」
 孤独な月光城の主にそう告げて、どこか悪戯っぽい満面の笑顔でアリスは駆けだした。
 それを聞いたイヴマリアはキラキラと目を輝かせ、ヴァンパイアの翼を大きく広げる。
「ふふ、鬼ごっこね。じゃあイヴが鬼よ!」
 これも遊びの一環だと捉えたのだろう。彼女が蝙蝠のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめると、無数の複製が出現する。それらはパタパタと翼を羽ばたかせ主の望みを叶えるべく、逃げるアリスを追跡しはじめた。

「すぐにつかまえちゃうんだから!」
 逃げる者が1人なのに対して追っ手は無数の蝙蝠ぬいぐるみ。明らかにフェアではない鬼ごっこだが、公平に競うつもりなどイヴマリアにはないようだ。あっという間にアリスは取り囲まれてしまうが――。
「それは残像だよ」
 捕まったと思われた刹那、彼女の体は【ファデエフ・ポポフゴースト】で量子化され、現実空間から消失する。「あれっ?」と敵が首を傾げるうちに、アリスはまったく別の所に再出現を果たしていた。

「鬼さんこちら。ほらほら、捕まえられるかな」
 ぱんぱんとからかうように手を叩いて、にこりと笑みを浮かべるアリス。イヴマリアはすぐさまぬいぐるみを殺到させるが、彼女はそれを量子テレポートによりかわし、別の所から現れるのを繰り返す。
「あれれ? なんでつかまらないの?」
 痺れを切らしたイヴマリア本人が追いかけても結果は同じだった。彼女はぬいぐるみより速くて強いが、その行動パターンは既に情報分析が完了している。予測通りの動きしかしない幼稚な吸血鬼から逃げるくらい、アリスには容易いことだった。

「もうっ! にげないでよっ!」
 何回やってもアリスを捕まえられず、次第にイヴマリアは地団駄を踏んで怒り始める。
 精神的に幼くて我儘な彼女は、思い通りにならないことがあるとすぐに癇癪を起こす。ただの遊びならかわいいと言えなくもないが、戦いの最中にそれは迂闊としか言えない。
「やあ。呼んだ?」
「――……わっ?!」
 そこでアリスはイヴマリアの傍に現れ、ゼロ距離から全力魔法を放つ。量子テレポートを逃走ではなく奇襲に利用した不意打ちに、虚を突かれた相手はまったく反応できず――炎と閃光が吸血鬼を包み込んだ。

「あらら、ぼくが捕まえちゃったね」
「きゃぁぁっ!!!?」
 悲鳴を上げて倒れ込んだイヴマリアに対し、アリスはにこりと楽しげな笑顔を見せる。
 "遊び"による勝負はどうやら彼女のほうが一枚上手だったらしい。現実と量子の狭間を渡り、情報妖精は月光城の主を翻弄する――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
【旅神】
お、お断りだそんなん! 要はテメェの玩具にされるってことだろうが!
……くそ、見た目がアレでも強ぇってのはイヤでも伝わってくんな。やっぱ怖ぇや。
それでも、コイツを突破しねえことには、ここまで来た意味が無え……!

《忠義貫く犬の祝福》を起動して、詩乃と自分にコインを貼り付けておく。

棘鞭ってどんな攻撃かはわかんねーし、〈第六感〉をフルに活かしてなんとか躱すようにする。無理そうなら〈オーラ防御〉でダメージだけでも減らす。
どうせぬいぐるみの群れは動いてくるんだろうな。〈逃げ足〉活かして間合いを保ちながら、詩乃の動きを見て〈援護射撃〉を撃ったり、〈マヒ攻撃〉でイヴマリアって奴の動きを止めるなりする。


大町・詩乃
【旅神】
何らかの原因で彼女が歪んでしまったのか、オブリビオン故に最初から歪んでいたのかは判りませんが、多くの人々を犠牲にしてきた報いは受けてもらいますよ!とUC:神性解放を発動。

棘対策では、大型化した天耀鏡に光のオーラ防御を籠めて周囲を照らす事で暗闇を消し去った上で、一つを自分に、もう一つを嵐さんに配して、盾受けで対応。
ぬいぐるみ対策では衝撃波+念動力で吹き飛ばして近づけません。
いずれも最終防御にUCによる若草色のオーラで浄化消滅。

攻撃時では相手と棘とぬいぐるみの動きを見切り、残像を残しつつUCの飛行効果で一気に接近。
煌月に光の属性攻撃・神罰・破魔を籠めての鎧無視攻撃・なぎ払いで斬り伏せます!



「ふふ、みんなと遊ぶの、たのしい。ねえ、あなたもイヴのともだちになってくれる?」
「お、お断りだそんなん! 要はテメェの玩具にされるってことだろうが!」
 無邪気に笑う不死嬢イヴマリアからの誘いを、嵐は青ざめた顔で拒絶する。見てくれは子供のように無垢な仕草でも、彼の直感は誤魔化されない。戦いへの恐怖心が人一倍強い彼は、それだけ敵の脅威にも敏感だった。
「……くそ、見た目がアレでも強ぇってのはイヤでも伝わってくんな。やっぱ怖ぇや」
 紋章の強化は無効化された筈なのに、それでもこのプレッシャー。身体ががたがた震えそうになるのを抑えるので必死だ。今まであらゆる存在の侵入を遮断してきた、月光城の主の名は伊達ではないらしい。

「それでも、コイツを突破しねえことには、ここまで来た意味が無え……!」
「はい、その通りです」
 勇気を振り絞って己を奮い立たせる嵐に、隣にいる詩乃が同意する。月の謎を突き止めるためにも、人間画廊に捕らわれていた人々のためにも、ここで逃げる訳にはいかない。
「何らかの原因で彼女が歪んでしまったのか、オブリビオン故に最初から歪んでいたのかは判りませんが、多くの人々を犠牲にしてきた報いは受けてもらいますよ!」
 勇ましい宣言と共に【神性解放】を発動した詩乃の身体は若草色のオーラに包まれる。
 植物と活力を司る女神アシカビヒメとしての神性の解放。それは彼女も全力を以って敵を討ち果たさんとする決意の現れであった。

「どうしてこわがるの? なんでおこってるの?」
 二人の態度が理解できない様子でイヴマリアが首を傾げていると、『月の眼の紋章』から紅い棘鞭が飛び出して猟兵達を襲う。本人はともかく紋章は彼らのことを明確な"敵"として識別したらしい。
「詩乃!」
「はい!」
 嵐は第六感をフル稼働させて攻撃を察知し、警告を受けた詩乃は大型化した天耀鏡に光のオーラを籠めて周囲を照らし、一つを自分に、もう一つを嵐の傍に盾として配置する。
 しなる棘鞭がバシンと打ち据えるが、強硬なヒヒイロカネ製の神鏡はビクともしない。だが、敵の攻撃はこれだけで終わりではなかった。

「イヴ、おなかがすいてきちゃった」
 イヴマリアがそう呟くと、その翼から城内で見かけた罠に似た"深紅の棘"が放たれる。
 あの棘には吸血効果があるのは既に確認済み。嵐と詩乃は被弾しないように神鏡の盾に隠れながら玄室を駆け回り、オーラで身を守りつつ反撃のチャンスを窺う。
「逃げちゃだめっ」
 不死嬢は更に二人を追い詰めようと、複製した蝙蝠のぬいぐるみで周囲を覆い尽くす。
 ツギハギだらけのファンシーなデザインのぬいぐるみだが、これだけ大量にあり過ぎるとただ不気味としか思えない。

(どうせ動いてくるんだろうな)
 という嵐の予想に違わず、ぬいぐるみの群れは猟兵達の血を求めて襲い掛かってくる。
 嵐が持ち前の逃げ足を活かして距離を取る一方、詩乃はその場に留まった。彼女が薙刀をひと振りすると念動力の衝撃波が吹き荒れ、ぬいぐるみを吹き飛ばしていく。
「これ以上は近付けさせません」
 彼女が纏う若草色のオーラは、危害ある全てを浄化消滅させる守護の威光。天耀鏡と共に暗闇を照らす、その輝きを浴びたぬいぐるみ達は影法師のように跡形もなく消滅した。

「今のうちに向こうに隙を作らねーと」
 防御面においては詩乃が鉄壁だが、いつまでも守ってばかりではいずれ押し切られる。
 戦況が拮抗している内に打開を図ろうと、嵐はスリングショットで敵に狙いをつける。
(あのイヴマリアって奴の動きを止められれば……)
 無数のぬいぐるみが飛び回る戦場で、一番遠くにいる敵に弾を当てるのは至難の業だ。
 だが、できるという勝算はあった。射撃の腕前もさることながら、今の自分にはささやかな幸運の助けがある。腕に貼りつけた「禍福の忠犬シロ」のコインがその証だ。

「正しき者には恵みの花を。不義の者には裁きの枷を。ここ掘れワンワン、なんてな!」
 【忠義貫く犬の祝福】を受けた嵐の射撃は幸運の導きにより障害物の間をすり抜けて、イヴマリアに的中した。麻痺のまじないを込めた弾丸は一時的に標的の身体を痺れさせ、身動きを封じる。
「きゃっ! なんだか、びりびりするっ」
 本体が止まれば棘とぬいぐるみの動きも鈍る。その隙を詩乃が見逃すはずはなかった。
 オーラを全開にして宙に浮かび上がった彼女は、その場に残像が残るほどのスピードで邪魔者をかいくぐり、一気にイヴマリアに接近した。

「人々を世界を護る為、全力でお相手致します!」
 詩乃を輝かせる神気の源は、人々や世界を護りたいという想い。その光は太陽のように闇を消し去り、討つべき吸血鬼の姿を明らかにする。ここは既に彼女の薙刀の間合いだ。
「ひっ……」
 彼女の剣幕に怯えたようにイヴマリアは紅棘を放とうとするが、戦闘で破壊された床に足を取られてバランスを崩す。不運としか言いようのないその偶然は、禍福の忠犬がもたらしたもの――詩乃の腕には嵐のそれと同じ、忠犬のコインが貼り付けられていた。

「お覚悟を!」
 破魔の光を籠めた「煌月」による神罰の一薙ぎが、イヴマリアを正面から斬り伏せる。
 無防備な体勢で詩乃渾身の一撃を喰らった彼女は、真っ赤な血飛沫を噴き上げてその場に崩れ落ちた。
「あ、あれれ……?」
 信じられないといった顔で自分から流れだす血を見る。無敵の力をもって月光城に君臨していた彼女は、ここにきて少しずつ「生命の危機」というものを感じ始めていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
お月様やこのお城のことを教えてくれたら……といいたいところですけど、元より吸血鬼さんと仲良くできる自信はありませんし、あの場所を見てしまったら尚更です。
お友達なら骸の海に還ってから好きなだけ探してください。

余力はあるのでいつもより無理がきくとはいえ、棘はまともに受けたら再生力で押し負けそうですね。
背中の翼の痕からロケットのように炎を噴射し、【C:J.ディストラクション】の軌跡で暗闇を照らしつつ速度を活かして回避、躱しきれなくても念動力場で破砕して防ぎます。
紋章の棘鞭も忘れていませんけど、多少の傷は覚悟で突撃しましょう。
念動力場が敵の体を掠めるだけでも、少なからぬダメージを与えられるはずです。



「お月様やこのお城のことを教えてくれたら……といいたいところですけど、元より吸血鬼さんと仲良くできる自信はありませんし、あの場所を見てしまったら尚更です」
 情報を聞き出すのはすっぱりと諦めて、レナータは臨戦態勢で月光城の主と対峙する。
 あのような人間画廊(ギャラリア)を戯れに作り出すような非道な輩と、友好を結ぶ気なんて微塵もない。
「お友達なら骸の海に還ってから好きなだけ探してください」
「いやよ。まだあそびたいもん」
 はっきりした拒絶にイヴマリアはふくれっ面を浮かべて、翼をばさりと羽ばたかせる。
 この我儘な不死嬢が諦めるはずはない。嫌がるなら力尽くで"ともだち"にするだけだ。

「わたし、おなかがすいたの」
 これまでの戦いで流した血を補給しようと、イヴマリアは翼から"深紅の棘"を飛ばす。
 城内で罠として仕掛けられていた棘とよく似た形状だ。こちらがオリジナルだとすれば威力も吸血効果もあれ以上と考えるのが打倒だろう。
(余力はあるのでいつもより無理がきくとはいえ、棘はまともに受けたら再生力で押し負けそうですね)
 レナータは全身を念動力場で覆い、背中の翼の痕からロケットのように炎を噴射する。
 爆風と衝撃波を辺りに巻き起しながらの飛翔は、たちまち敵の攻撃を置き去りにした。

「なんでにげるの?」
 【C:J.ディストラクション】の軌跡で暗闇を照らしつつ飛行する標的に、イヴマリアは棘の追撃を浴びせる。だがレナータは飛行速度を活かして大半を回避し、躱しきれなかったものも身にまとう力場で歪曲・破砕して防ぐ。
「逃げる気はありません」
 彼女はそのまま玄室内を周回して加速すると、最大速度に達したところで進路を変更。
 深紅の棘の雨をくぐり抜けて、イヴマリア目掛けて猛烈なスピードで突撃を仕掛けた。

「わっ!?」
 急に突っ込んできた相手にびっくりして目を丸くするイヴマリア。本人の思考より早く胸に融合した『月の眼の紋章』から棘鞭が飛び出し、接近する脅威を迎撃しようとする。
 それは先程の深紅の棘よりも鋭く、念動力場でも瞬時には破壊しきれない。彼我の相対速度もあって深くレナータの身体に突き刺さり、鮮血が火の粉とともに散った。
「この程度、何ともありません……」
 しかし彼女の勢いは止まるどころか加速する。紋章の棘鞭の存在を忘れていたわけではなく、多少の傷は覚悟の上で飛び込んだのだ。負傷箇所から噴き出した地獄の炎が更なる推進力を生み出して、鞭を焼き千切りながら敵に衝突する――!

「きゃぁぁぁっ!!!?」
 ギリギリで直撃は避けたものの、念動力場が掠めるだけでイヴマリアが受けたダメージは甚大だった。膨大な運動エネルギーの激突と力場による歪曲で、彼女の片腕はもう使い物にならないほどに折れ曲がっている。
「あの場所で皆さんが受けた苦しみに比べれば、まだ足りませんが」
 刹那の内にその場を飛び去ったレナータは、なおも厳しい表情で吸血鬼を睨みつける。
 罪なき人を護る為、悪しき城主を討つ為に、翼を失ったオラトリオは獄炎を翼に変え、戦場を翔け続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
“ともだち”はご遠慮させて頂きましょう
人々閉じ込めたその悪行、騎士としてその応報を与えに参りましたので

(あの様子では月光城の情報は望めませんね。ですが…)

『おなかがすいた』…ですか

(稚気が幸いし、血が無い事をまだ悟られていません。接近すれば話は別ですが…)

その一瞬で十分…!

剣と盾で降り注ぐ深紅の棘を弾きつつ疾走し距離を詰め
幾つか身体に刺さっても…血が吸収出来ぬと訝しんだ瞬間が好機

盾を捨て、脚部スラスターを起動し推力移動で一気に肉薄
格納銃器を展開し乱れ撃ち、剣で切り払い棘鞭減らし
棘鞭の護り突き破るUC力場纏わせた左手の貫手繰り出し

流石は紋章付き、貫徹には至りませんか

紋章にエネルギー流し込み



「"ともだち"はご遠慮させて頂きましょう。人々閉じ込めたその悪行、騎士としてその応報を与えに参りましたので」
 月光城の主からの誘いをトリテレイアは丁重に、なおかつ断固とした態度で拒否する。
 己の罪を自覚すらしていない非道な吸血鬼を、騎士が許すはずがない。だがイヴマリアはなぜ断られてばかりなのか分からない様子で、不満げに唇を尖らせる。
「みんなどうしていじわるばかり言うの? わたし、もうおなかがすいちゃった」
 "ともだち"にならないなら食べてしまおう、ということだろうか。幼稚な吸血鬼がばさばさと翼を羽ばたかせると、無数の深紅の棘が機械騎士目掛けて矢のように発射された。

(あの様子では月光城の情報は望めませんね。ですが……)
 降り注ぐ深紅の棘を剣と盾で弾くトリテレイア。紋章による強化は失われたとはいえ、敵は依然として高位の吸血鬼に相応しい実力を備えており、しかもまともな対話は望めないときている。厄介な相手だが――彼の興味はイヴマリアのある発言に向けられていた。
「『おなかがすいた』……ですか」
 この棘には城内で見たのと同じ吸血効果があるのだろう。こちらから奪った血を再生力の糧にしようとしているのも分かる。だがトリテレイアの種族はウォーマシン。その身を流れるのは循環液や冷却液などで、赤い血は一滴も通っていない。

(稚気が幸いし、血が無い事をまだ悟られていません。接近すれば話は別ですが……)
 そこに攻略の糸口を見つけたトリテレイアは盾を前面に押し出し、深紅の棘を弾きつつ疾走する。敵との距離を詰めればそれだけ攻撃も激しさを増すが、怯む様子は一切ない。
「ふふ、いただきます……あれ?」
 ついに数本の棘が防御を抜けて騎士の身体に突き刺さるが、前述の通り血は流れない。
 吸血が出来ずにイヴマリアが訝しんだ瞬間、追撃の手が止まり反撃の好機が訪れる。

「その一瞬で十分……!」
 トリテレイアは盾を捨て、脚部スラスターを起動。その推進力で一気に敵と肉薄する。
 そして装甲の各部から格納銃器を展開し、ありったけの弾丸を至近距離から乱れ撃つ。
「きゃっ!?」
 思わぬ奇襲に驚いた彼女を護るように、『月の眼の紋章』から真紅の棘鞭が飛び出す。
 だがそれは銃撃を防ぐのに手一杯で反撃の余裕はない。機械騎士はこの機を逃さず攻勢を継続し、電脳剣で棘鞭を切り払う。

「奥の手……の一つに過ぎませんが」
 銃撃と斬撃で棘鞭の護りを減らした上で、トリテレイアは盾を捨てた左手の指先に自身の残存エネルギーを一点集中。無色透明の力場を纏わせた【鋼の手槍】を繰り出した。
 腕力に加えて前腕部の伸縮機構を稼働させることで威力とリーチを高めたその一撃は、綻んだ護りを突き破り標的の胸に突き刺さった。
「あぐ……っ!!?」
 イブマリアの胸から血飛沫が噴き出し、表情が笑顔から苦痛に歪む。鋼の手槍は彼女の胸と融合していた『紋章』だけでなく本体の肉と骨を貫き、心臓付近にまで達していた。

「流石は紋章付き、貫徹には至りませんか」
 それも予想済みだと言わんばかりの様子で、トリテレイアは左手の指先に力を込める。
 彼が貫手に力場を集中させたのは貫徹力を強化するだけではない。貫いた標的の内部にエネルギーを直接流し込むためだ。
「きゃあぁぁぁぁーーーっ!!!!?」
 膨大な量のエネルギーを『紋章』と体内に注がれ、堪らずイブマリアは悲鳴を上げる。
 紋章はオブリビオンに力を与えると同時に弱点にもなる。この月光城の主もそれは同じなのか、穿たれた胸の傷が再生する様子はなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
無邪気故の残酷……よくある話だが、吸血鬼の力を以ってすれば微笑ましいでは済ませられない
城の秘密も聞き出せそうにない、遠慮なく打ちのめす

聖槍を【なぎ払い】、【衝撃波】を起こして、放たれる深紅の棘を【吹き飛ばす】
強化された【視力】で飛び出す棘鞭を【見切って】躱し、伸び切った瞬間に棘鞭を掴み、【怪力】で振り回して壁や地面に本体を思い切り叩き付ける(地形の利用)
力が強くとも、戦闘の組み立てが稚拙だ!

瓦礫から這い出るまでに聖槍に魔力を集中、白き稲妻を纏わせる
出てきた瞬間、胸の紋章を【串刺し】にし、全身全霊(破魔・属性攻撃・全力魔法)の【灼烈轟雷槍】を放ち、稲妻で内側から【蹂躙】し【焼却】する
消し飛べッ!



「無邪気故の残酷……よくある話だが、吸血鬼の力を以ってすれば微笑ましいでは済ませられない」
 目の前にいる『不死嬢イヴマリア』が幼稚な我儘でどれだけの非道を働いてきたのか、オリヴィアは既に見てきている。罪に無自覚であるが故に己を省みもせず改めもしない、そんな輩にかける情けは無用だろう。
「城の秘密も聞き出せそうにない、遠慮なく打ちのめす」
「あなたも、ともだちになってくれないの?」
 イヴマリアは寂しそうにそう問いかけるが、鋭い眼光で聖槍を突きつけるオリヴィアを見れば、言葉にせずとも返答は明らかだ。彼女には敵と馴れ合うつもりなど微塵もない。

「なら、もういいもん。たべちゃうから」
 相手の対応に拗ねたように頬を膨らませたイヴマリアは、翼から深紅の棘を発射する。
 一本一本が吸血効果を持ったそれは、遠距離からも獲物の血を奪える無数の牙と同じ。ここで敵に再生力の糧を与えるわけにはいかないと、オリヴィアは破邪の聖槍を振るう。
「舐めるな!」
 ブオンッと勢いよくなぎ払われた聖槍は衝撃波を起こし、深紅の棘の雨を吹き飛ばす。
 ばらばらになって散りゆく棘の中で、彼女の強化された視力はまだこちらに迫る攻撃を捉えていた。『月の眼の紋章』から飛び出した棘鞭が、心臓目掛けて伸びてくる。

「力が強くとも、戦闘の組み立てが稚拙だ!」
 フェイントも策もない単調な追撃など、オリヴィアならたやすく見切って躱す。そして目の前で棘鞭が伸び切った瞬間に掴み取ると、人並み外れた腕力でぐいと引っ張った。
「きゃぁっ!?」
 イヴマリアの膂力も人外ながら、不意を突かれれば小柄な体躯は簡単に引きずられる。棘鞭と紋章は彼女の肉体と融合しており切り離すこともできない。そのままオリヴィアは彼女をぶんぶんと振り回して、壁や地面に思い切り叩きつけた。

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!?」
 地形と激突するたびにイヴマリアの口から悲鳴が上がる。今までは『月の眼の紋章』のお陰で無敵に近い力があったゆえか、再生力に優れていても痛みへの耐性は低いらしい。
「喧しいな」
「きゃうッ!!」
 勢いが付いたところでオリヴィアが棘鞭を手放すと、投げ出されたイヴマリアの矮躯は玄室の壁に叩きつけられ、そのまま崩れた壁の瓦礫に埋もれる。月光城の主としての威厳などまるでない、何とも無様なやられようだった。

「轟け閃光、彼の者どもを灼き穿て――!」
 敵が瓦礫から這い出てくるまでの間に、オリヴィアは破邪の聖槍に魔力を集中させる。
 詠唱とともに金色の穂先に収束された魔力は白き稲妻となり、異境の神話にて謳われる主神の槍を再現する。
「もうっ! なんてことするの!」
 準備が完了した直後、瓦礫を赫棘で吹き飛ばしながらイヴマリアが立ち上がる。流石にモノのように振り回されたのは腹に据えかねたのか、顔を真っ赤にしてお怒りの様子だが――その怒りをぶつける暇は与えられなかった。

「もう許さないんだから……っ、え?」
 瓦礫から出てきた瞬間、稲妻を纏った破邪の聖槍が『月の眼の紋章』を串刺しにする。
 唖然とするイヴマリアの目の前で、オリヴィアは槍の柄をぐっと握りしめ、全身全霊の【灼烈轟雷槍】を解き放った。
「消し飛べッ!」
「―――……ッ!!!!!?」
 凄絶なる白き稲妻が吸血鬼の肉体を内側から蹂躙し、焼却する。全身を神経を駆け巡る激痛は脳の許容値を超え、イヴマリアは悲鳴を上げる事すらできずに地面に倒れ伏した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
『バリスタ』の弾丸充填に画廊の人々への生命力供給。
中身を使い過ぎたな、欠乏を自覚できる。
元を取らせて貰おう。
なに、やることは今迄の貴様と似たようなことだ。
思い知れ。

UC【黒騎士呑み込む青き業火】を展開し【ダッシュ】。
床や壁、敵UCの"深紅の棘"を接触した端から燃える鉛に変換(【焼却】【地形破壊】【武器落とし】)
変換した鉛による【エネルギー充填】、そのまま戦闘力を【限界突破】。
更に言えば燃える鉛が周囲を照らせば、敵UCの威力上昇を妨害できるはずだ。(【地形の利用】)
【怪力】込めた手刀で【串刺し】にし焼き殺しにかかる。

お遊びはこれまで。皆、元居た場所へお帰りの時間だ。
貴様も骸の海に還るがいい。



「中身を使い過ぎたな、欠乏を自覚できる」
 『バリスタ』の弾丸充填に画廊の人々への生命力供給。ここに辿り着くまでに少なからず己自身を消費してきたルパートは、万全とは言えぬ状態で城主イヴマリアの前に立つ。
「元を取らせて貰おう。なに、やることは今迄の貴様と似たようなことだ」
 強いられてきた消耗分の清算、そして城主がこれまでに為してきた非道に応報すべく、彼は【黒騎士呑み込む青き業火】を展開して走り出す。踏みしめた床に青い炎の足跡を残しながら。

「なにを取るのかわかんないけど、とっちゃやだ! こないで!」
 子供らしい我儘を喚き散らしながら、イヴマリアは接近する黒騎士に深紅の棘を放つ。
 だがそれはルパートの鎧に触れた瞬間、突き刺さる前に形を失ってどろりと溶ける――正確には溶かされたのではなく、溶けた鉛に変換されたのだ。
「我が血はもはや栄光なく……されど未だ我が業と炎は消えず……!」
 今のルパートに触れた物質は、全て彼の体内に詰まっているものと同じ「燃える鉛」に変換される。建物の床だろうと壁だろうと、敵のユーベルコードだろうとそれは同じだ。
 そして変換した鉛からエネルギーを充填する事で彼は失った力を取り戻すだけでなく、限界を超えて爆発的に戦闘力を増大させ、さらなる強化形態へと変身を遂げた。

「ひっ……お、おばけ……?」
 青き業火と鉛を纏った黒騎士の凄まじき威圧感を受けて、思わず息を呑むイヴマリア。
 ルパートが1歩進むごとに足元を通じて燃える鉛が玄室に広がっていく。こうして青炎で周囲を照らせば敵のユーベルコードの威力上昇を妨害できることも織り込み済みだ。
(暗闇のない場所では奴の棘は力を失うようだからな)
 体感としても延焼範囲が広がるにつれ、飛んでくる棘の速度が落ちているのが分かる。
 これでは黒騎士の鎧を貫通する事などできはしない。逆に再生と強化の為の糧を与えるだけだ。彼が奪うものは血ではないが、その戦法は確かに吸血鬼への意趣返しと言えた。

「お遊びはこれまで。皆、元居た場所へお帰りの時間だ」
「い、いやっ……」
 怯えた表情で後ずさるイヴマリア。彼女が開けた数歩分を、ルパートは一歩で埋める。
 城内の警備にあたる配下は全て倒され、人間画廊(ギャラリア)の囚人も解放された。彼女の孤独を紛らわせる"ともだち"は、もう誰もいない。
「貴様も骸の海に還るがいい」
 黒騎士は無造作に見えるほど自然に手刀を放つ。渾身の怪力を込めたその一撃は槍のように鋭く敵に突き刺さり――何度も立て続けに攻撃を受け、傷ついた胸を串刺しにした。

「ぁ、いた、ぃ……あ、ぁぁぁっ、あつい、あついあついあついッ!!!!」
 胸を貫く激痛にうめき声を上げるイヴマリア。だがそれはすぐに絶叫と悲鳴に変わる。
 ルパートの手刀から流れ込んだ業火が、内側からその身を焼き殺しにかかったからだ。
「思い知れ」
 変換のユーベルコードにより敵から手に入れた炎と鉛を、ルパートは冷徹に送り込む。
 青き炎に包まれた吸血鬼の叫びは、長く、長く、月光城の外にまで響き渡るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
自分の都合だけ一方的に押し付けて何が友達だろうね
寒い、身動きがとれない、元のような暮らしが出来ない。
相手の嫌がる事をしたらいけない、初歩も初歩の道徳だ
要するに……罪悪には制裁を。悪い子にはお仕置きの時間さ

敵の動きは常に《第六感+戦闘知識》で《見切り》
《空中戦》で敵UCのぬいぐるみ接触を回避
【神狩りし簒奪者】発動、
《属性攻撃+焼却+継続ダメージ+地形破壊+蹂躙》の黒炎で諸共に薙ぎ払う
紋章の棘鞭は白雷槍の《属性攻撃+クイックドロウ+早業+カウンター+武器落とし》で弾き対処
死角から影鎖の《属性攻撃+目立たない+騙し討ち+捕縛》で捕らえ、
火炙りと磔刑さながらに黒炎と白雷槍で畳みかけUCごと仕留めようか



「自分の都合だけ一方的に押し付けて何が友達だろうね」
 我儘で残酷な城主イヴマリアの"ともだち"に対する扱いを、カタリナは鼻で笑った。
 幼稚というレベルを超えて、この吸血鬼は根本的に友という言葉を履き違えている。
「寒い、身動きがとれない、元のような暮らしが出来ない。相手の嫌がる事をしたらいけない、初歩も初歩の道徳だ」
 善悪を教える者もおらず人間を対等の存在として認識していない彼女には、そんな事も分からないだろう。無知と無自覚のままに重ねてきた罪はもはや許されるものではない。

「要するに……罪悪には制裁を。悪い子にはお仕置きの時間さ」
「や……やだっ!!」
 お仕置きという言葉に敏感に反応したイヴマリアは、抱えていたツギハギ蝙蝠のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。するとまったく同じ見た目をしたぬいぐるみの複製が無数に出現し、彼女の周囲を埋め尽くしていく。
「ワガママな子だ」
 持ち前の第六感と戦闘知識でその動きを読んでいたカタリナは、自慢の翼を羽ばたかせて空中に退避する。あのぬいぐるみは触れた相手から生命力を奪うためのモノ、下手に近付こうとすれば逆にこちらが餌食にされるだろう。

「なら、アタシも手の内を見せようか」
 不死嬢のユーベルコードに対抗すべく、カタリナが発動するのは【神狩りし簒奪者】。
 魔神の権能を解放した彼女が翼を広げると、黒炎の嵐がぬいぐるみの山をなぎ払った。
「きゃっ……あついっ!」
 この炎は術者が解除するまで燃え続け、触れたものを焼き尽くすまで決して消えない。
 無数の蝙蝠ぬいぐるみはたちまち大量の火種となり、熱に炙られたイヴマリアは慌てて逃げ出した。

「もう、やめてよっ!」
 危うく大火傷するところだったイヴマリアは空中のカタリナをきっと睨みつけ、今度は『月の眼の紋章』から棘鞭を放つ。標的を引きずり降ろそうと蛇のように伸びたそれは、しかし獲物を捕らえる前に弾き落とされる。
「仕込みは上々、この戦場はもうアタシの掌の上さ」
 カタリナの手の中にはいつの間にか、煌々と輝く白雷の槍があった。余裕の表情で空中から睨み返すと、その視界に収めた影が縛鎖へと変じ、お返しとばかりに敵に絡みつく。

「んんっ?! は、はなして……!」
 死角から影の鎖に縛られ、ジタバタと暴れるイヴマリア。普段ならこんな鎖くらいすぐに引きちぎれるはずのに、何故か力が出ない。『月の眼の紋章』が無効化されているだけではなく、この鎖自体に対象を弱める異能封じの力があるのだ。
「――さあ、仕留めようか」
 敵を捕らえたカタリナはにやりと笑みを浮かべ、黒炎と白雷槍で一気に畳み掛ける。
 もはや向こうはぬいぐるみを出して盾にすることもできない。吹き荒れる猛火の嵐が、今度こそイヴマリアの身体を包み込んだ。

「あ、つい、あついあついあついッ!!!」
 火炙りにされる罪人の如く、燃え盛る炎の中でもがき苦しむイヴマリア。なまじ再生力が高いゆえに苦痛も長く続き――追い打ちをかけるようにカタリナは白雷槍を投擲する。
「これがキミへの制裁だ」
「あぐ―――ッ!!!!」
 光に等しい速度で突き立てられた雷槍は、磔刑さながらにイヴマリアを串刺しにする。
 迸る稲妻と雷鳴と共に、言葉にならない城主の悲鳴が、月光城の隅々まで響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
私にとってこれは遊びではありませんが……そちらがそのつもりならそれでもいいでしょう。
吸血鬼に人と同じ感性など求めません。

【ニヴルヘイム】を使用。周囲を絶対零度の冷気で覆い、敵が複製したツギハギ蝙蝠のぬいぐるみを凍てつかせます。
どれだけ数を増やそうと、この空間内では全てが凍る、無駄なことです。

紋章から飛び出す棘鞭は『見切り』回避しつつ「フィンブルヴェト」からの絶対零度の弾丸で敵を狙います。それで決められればいいですが強力な敵です。ニヴルヘイムを展開できる時間は限られますし、遠距離からの攻撃で攻めあぐねるのであれば多少の負傷は覚悟し銃剣で棘鞭を払いながら接近、『零距離射撃』を撃ち込みます。



「私にとってこれは遊びではありませんが……そちらがそのつもりならそれでもいいでしょう。吸血鬼に人と同じ感性など求めません」
 内心で渦巻く怒りや不快感を抑えながら、冷たい態度でセルマは告げる。この手の人を舐めた吸血鬼の相手をするのは初めてではない――遊び気分で戦いに臨んで後悔する事になったとしても、こちらは一向に構わないのだから。
「ふふっ……なにしてあそぼう? ぬいぐるみはすき?」
 イヴマリアはその言葉を消極的同意とでも受け取ったのか、笑みを浮かべてぬいぐるみを複製する。玄室中を埋め尽くすように何十体も、何百体も――ソレは他者から生命力を奪い取る使い魔に近いモノだ。

「私が限界を迎えるのが先か、あなたが斃れるのが先か……勝負といきましょうか」
 大量のツギハギ蝙蝠ぬいぐるみに接触される前に、セルマは【ニヴルヘイム】を発動。自身の周囲を絶対零度の冷気で覆い、敵が複製するそばからぬいぐるみを凍てつかせる。
「へくちっ……なにこれ。うぅっ、さむいわ」
 人間画廊(ギャラリア)の気温さえ遥かに下回る冷気に、身体を震わせるイヴマリア。
 絶対零度の空間で様々なポーズのまま凍りついたぬいぐるみ達は、彼女が作った悪趣味な画廊への意趣返しにも見える光景だった。

「どれだけ数を増やそうと、この空間内では全てが凍る、無駄なことです」
 使い魔の複製を封じたセルマはそのまま攻撃に転じ、「フィンブルヴェト」のトリガーを引く。絶対零度の冷気を宿して超強化された弾丸は、真白き弾道を描いてイヴマリアの身体に突き刺さった。
「きゃっ!? つめたいっ!」
 銃撃を受けた部位は瞬時に凍りつき、体温と生命力を奪い取る。それでもまだ倒れないのは尋常ならざる再生力故だろう。既に相当の深手を負っている筈なのにタフなものだ。

「おかえしっ!」
 今度はイヴマリアと融合した『月の眼の紋章』から、鮮血色の棘鞭が飛び出してきた。
 新たな"ともだち"を絡め取ろうとするその動きを、セルマは冷静に見切って回避する。
 【ニヴルヘイム】を発動中の彼女は絶対零度を操るだけでなく、身体能力も大幅に増強されている。攻撃を躱しながらでも精度が落ちないほど、射撃の腕前も卓越している。
(それで決められればいいですが強力な敵です)
 それでもなお攻めあぐねる敵の再生力の高さにより、時間は刻一刻と経過していく。
 このユーベルコードの欠点は代償の重さと1分39秒の使用制限。展開できる時間は限られている以上、早急に決着を付ける必要があった。

(多少の負傷は覚悟しましょう)
 意を決したセルマはマスケット銃を槍のように構えて走りだし、銃剣で棘鞭を切り払いながら敵に接近する。間合いを詰めればそれだけ敵の攻撃は激しくなる――捌ききれなかった棘が肌を掠めるが、出血にも痛みにも彼女は怯まなかった。
「今度は何してあそ――」
「いいえ、ここまでです」
 迎え入れるように腕を広げたイヴマリアに、セルマは渾身の膂力で銃剣を突き立てる。
 絶対零度の冷気を帯びて氷の結晶のように煌めいた「アルマス」の刃は、吸血鬼の胸を深々と穿った。

「遊びの時間は終わりです」
 冷たくそう告げたセルマは、銃剣をを突き立てたまま「フィンブルヴェト」のトリガーを引く。遠距離からでは決めきれなかった銃撃も、この零距離でなら威力はさらに増す。
「きゃ、あ、ッ――……!!!?」
 倍化した弾丸の衝撃と、体内に直接撃ち込まれた絶対零度の冷気。心の臓まで凍りつくようなダメージに襲われ、悲鳴を上げたイヴマリアは衝撃に吹き飛ばされていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
貴女は間違ってる…。
友達は無理矢理連れてくるものでも飾っておくものでも無い…。

【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…。
九尾の呪力で呪力の縛鎖を放ち拘束し、無限の終焉の魔剣の連続斉射による集中攻撃…。
棘や蝙蝠を迎撃し、魔剣を撃ち込みつつ、終焉の呪力で侵食して弱体化…。
神太刀で再生力を奪い、隠し玉の「飛び出す棘鞭」を最大限に警戒し、発動と同時に神速と凶太刀の高速化による超神速で切り払い、迎撃…。
【神滅】で「紋章」と核を斬る事で力を奪うよ…。
この技は相手の命を奪う技じゃないからね…。
リボンで繋がれても効果は無いよ…。

…敵意は、無い…。
【共に歩む奇跡】の条件を満たしてはいる、けど…。
彼女を救う事はできるか…



「貴女は間違ってる……。友達は無理矢理連れてくるものでも飾っておくものでも無い……」
 先刻の人間画廊(ギャラリア)で見た悲惨な光景を思い出しながら、璃奈は月光城の主に告げる。あんな事をして孤独を紛らわせようとしても、不幸と悲劇を生むだけ。囚えるのではなく対等の関係であらなければ友達とは言えない。
「じゃあ、ともだちってなに……? わかんない、わかんないよっ!」
 幼稚で我儘、そして寂しがり屋のイヴマリアは、癇癪を起こしたように髪を振り乱す。
 彼女に友の作り方を教えられる者はいなかった。こうする以外の方法を知らなかった。強大な力と人格の歪みにより自覚なきまま他者を蹂躙する、無邪気な怪物がそこにいた。

「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 これ以上の非道を止めるために、璃奈は【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解き、九尾の妖狐に変身する。取り乱す吸血鬼にすっと手をかざせば、その身からあふれる莫大な呪力が縛鎖となって放たれた。
「きゃっ!?」
 たちまち拘束されたイヴマリアに襲い掛かるのは、虚空より顕現する幾百幾千の魔剣。
 終焉の呪力を宿した無限の魔剣による連続斉射が、月光城の主に集中攻撃を仕掛ける。

「きゃぁぁぁぁっ?! やめて、やめてってば!」
 魔剣の嵐を受けたイヴマリアは悲鳴を上げてじたばたと暴れる。身体は拘束されていても翼からは深紅の棘が放たれ、さらに複製されたぬいぐるみが戦場を埋め尽くしていく。
「やめないよ……貴女を止めないといけないから……」
 璃奈は魔剣の斉射を続けて棘とぬいぐるみを迎撃し、敵本体に魔剣を撃ち込んでいく。
 狙いは終焉の呪力による敵の弱体化。突き刺さった刃を通じて、猛毒のように体を侵食していく呪いは、イヴマリアの力を少しずつ弱めていた。

「再生力は高いみたいだけど、残念だったね……」
 ある程度まで敵の弱体化が進むと、璃奈は妖刀・九尾乃神太刀を抜いて接近戦に移行。
 この妖刀には神々や超常の存在が持つ不死性や再生力を封じる力がある。神速の早業で斬りつけられた吸血鬼の傷は、再生することなく血を流し続ける。
「いたっ……もう、いじわるっ!」
 痛みと怒りの入り混じった叫びを上げるイヴマリア。その感情に呼応するかのように、『月の眼の紋章』から棘鞭が飛び出す。それは強化を無効化された紋章に残された隠し玉だったのだろうが――事前に情報を得て、最大限の警戒を払っていた璃奈には通じない。

「無駄だよ……」
 璃奈はもう一振りの妖刀・九尾乃凶太刀を抜いて二刀流の構えを取り、目にも留まらぬ速さで棘鞭を切り払う。封印解放による強化に凶太刀が秘める加速の呪力が加わる事で、彼女のスピードは神速をも超える領域に達しつつあった。
「つかまえた……っ!」
 だが、璃奈が棘鞭を捌いた刹那の間隙に、イヴマリアは真っ赤なリボンを絡めてきた。
 【ひとりはやだよ】という不死嬢の願望が具現化されたこのリボンは、繋がれたものと命を共有する。どちらか片方が死んでも、もう一方が生きている限り死なない呪いだ。

「ずっといっしょにいて? もっともっとあそぼうよ」
 無邪気にそう語るイヴマリアの姿は、仕草だけを見ればただの子供のようでもあった。
 彼女はあくまで遊び相手を、孤独を埋められる"ともだち"を求めているだけ。どこまでも幼稚で無垢なその態度に、璃奈はある悩みを抱く。
(……敵意は、無い……。【共に歩む奇跡】の条件を満たしてはいる、けど……。彼女を救う事はできるか……)
 確かにイヴマリアに敵意はない。だが、それでも彼女が人間と共存可能な存在であるとは言い難い。敵意がないからこそ彼女は己の罪を自覚せず、改めようという意識もない。オブリビオンとしての致命的な人格の歪みまで、果たして璃奈の奇跡は救えるだろうか。

「……。ごめんね……」
 長い刹那を悩んだ末に、璃奈は意を決したように【妖刀魔剣術・神滅】の構えを取る。
 九尾の莫大な呪力をさらに強化し、妖刀に籠めて放つ一撃は、神をも滅ぼす呪殺の刃。
「ぁ――……??」
 痛みはない。神滅の一太刀が断つのは肉体ではなく対象の力の根源。『月の眼の紋章』を切り裂かれたイヴマリアは呆然と目を見開いて、力が抜けたようにかくりと膝を突く。

「この技は相手の命を奪う技じゃないからね……。リボンで繋がれても効果は無いよ……」
 存在の核を斬られ、力を奪われた吸血鬼にそう告げて、璃奈は真っ赤なリボンを解く。
 人を人として見ない彼女と共に歩むことはできない。そして共に死ぬこともできない。それが魔剣の媛神からの訣別と断罪であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
貴女が本当の意味で友達を理解していたなら、友達になるのも吝かではなかったでしょうにね…。
友達にはなってあげられないけど…最後に全力で遊んであげるわ!

【吸血姫の覚醒】で真の力を解放。
超高速で飛行し、真祖の魔力による焔弾【全力魔法、属性攻撃、高速・多重詠唱、誘導弾】で棘やぬいぐるみを焼き払い、攻撃。

接近したら、魔槍【早業、切断、怪力、2回攻撃、串刺し】で棘鞭を受け止め、魔槍と膂力による接近戦を実施。
魔槍での攻撃を仕掛けつつ、隙をみて零距離で魔力砲撃【高速詠唱、全力魔法、砲撃】を叩き込み、追撃で全力の【限界突破】【神槍グングニル】を叩き込むわ

生まれ変わったら、今度は真に友達になれると良いわね



「貴女が本当の意味で友達を理解していたなら、友達になるのも吝かではなかったでしょうにね……」
 "ともだち"という言葉を根本的に間違えてしまった幼き吸血鬼に、フレミアは憐れむような眼差しを向ける。孤独という誰もが持ちえる苦しみを癒そうとして、彼女は致命的に手段を間違えてしまった。それはもう、取り返しのつかない罪となって。
「友達にはなってあげられないけど……最後に全力で遊んであげるわ!」
 そんな同族へのせめてもの慈悲として、フレミアは【吸血姫の覚醒】を発動すると共に宣言する。解き放たれた膨大な魔力の中で、彼女の肉体は17~8歳程の外見まで成長し、背中には4対の真紅の翼が生える。その姿はまさに夜を統べる紅き姫である。

「あそんで、くれるの? やったぁ……!」
 深手を負った身ながらも、イヴマリアは嬉しそうに微笑んで"ともだち"に襲い掛かる。
 広げた翼から真紅の棘が矢のように放たれ、同時に複製されたぬいぐるみが牙を剥く。寂しさを紛らわす遊び相手から、生命を奪おうとする矛盾に彼女は気付いていまい。
「ええ。貴女も全力できなさい!」
 対して真の力を解放したフレミアは、瞬間移動と見紛うほどの高速で玄室を飛び回り、真祖の魔力を焔の弾丸に変えて放つ。機関銃さながらの勢いで撃ち出される焔の弾幕が、棘やぬいぐるみを尽く焼き払い、上空からイヴマリア目掛けて降り注ぐ。

「あついっ……これもあそびなのね。もっと、もっと!」
 焔に焼かれては即座に再生を繰り返しながら、イヴマリアは翼を羽ばたかせ"ともだち"の元へと飛び立つ。フレミアもそれに応じるように高度を落とし、二人の戦いは接近戦に移り変わる。
「もっといっぱいあそんで!」
「貴女が付いてこれるならね」
 不死嬢の『紋章』から棘鞭が飛び出す。吸血姫はそれを魔槍で受け止め、切断する。
 覚醒した吸血姫の強みは速度や魔力だけではない。並のヴァンパイアを遥かに凌駕する膂力で槍を振るえば、小柄な敵では受け切ることができずに弾き飛ばされる。

「きゃっ! きゃはははははっ!」
 それでもイヴマリアは楽しくてたまらないと言うように、拳打や蹴りで反撃してくる。
 技術もなくただ手足を振り回しているだけに近い幼稚な暴力。身体能力に優位に立てる相手にはそれも有効だろうが、今のフレミアには通じない。
「隙だらけよ」
「きゃぁッ!!?」
 右手で槍を振るって攻撃を捌きつつ、空いた左手に魔力を溜めて、相手の前にかざす。
 閃光と共に放たれた魔力砲撃は、零距離からイヴマリアの身体を彼方に吹き飛ばした。

「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……。消し飛びなさい……!」
 地面に叩きつけられた敵に、フレミアは迷わず追撃の【神槍グングニル】を叩き込む。
 限界を超えた魔力を魔槍に集束して放つ全力の一撃。全長数メートルに及ぶ巨大な槍が吸血姫の手から投じられ、送別の言葉とともに不死嬢に突き刺さった。
「生まれ変わったら、今度は真に友達になれると良いわね」
「――……ァ!!!!!」
 槍の形に圧縮された膨大な破壊力のカタマリは、吸血鬼の再生力を遥かに超えている。
 城を揺るがすほどの爆発と衝撃の中心地で、イヴマリアは言葉にならぬ絶叫を上げた。それが苦痛の悲鳴なのか歓喜の叫びなのか、分かっているのは本人だけだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
無邪気故に残酷
多少の同情はできるような
生い立ちなのかもしれないけれど
見過ごすわけにはいかないね

画廊の奥まで救助に行って長く居た分
体が凍ったままだけど
「ともだち」と認識させるには丁度良いかな

一緒に遊ぼうと親し気に話しかけ
相手にとっては遊びという雰囲気にしよう

神気で軽く麻痺させたり防御したりして
致命的な攻撃は防ぎつつ
適度に攻撃を受けて相手のUCを誘おう
お互い死ななくなるのはとても都合がいいからね

リボンで結ばれたらこちらもUC使用
相手が違和感に気付く頃には手遅れになるよう
遊びにつき合いながら少しずつ凍らせていこう

相手の動きが鈍ってきたら
ともだちならお揃いにするのもいいよね
と言いつつ後ろから抱き着いて一気に凍らせにいこう
…羽交い締めとも言う

抱きついても暖かくも柔らかくもない
むしろ硬くて痛いだろうけど
すぐにそっちも同じ硬さになるから問題ないさ
ともだち達の気持ちをしばらく味わってみようか

そのまま倒せそうなら氷の像に変えてしまおう
死ぬのではなく別の物になるだけだよ
きっと溶ける事も砕ける事も無いだろうね



「無邪気故に残酷。多少の同情はできるような生い立ちなのかもしれないけれど、見過ごすわけにはいかないね」
 たとえ子供であろうと許されない事はある。度を越した幼稚さゆえの悪行を止める為、晶は月光城の玄室を訪れた。その視線はまっすぐに不死嬢イヴマリアを見つめている。
(画廊の奥まで救助に行って長く居た分、体が凍ったままだけど「ともだち」と認識させるには丁度良いかな)
 戦闘への支障は特にない。こういう時ばかりは邪神と融合した身体に感謝するべきか。
 動く氷像の如き姿のまま近付くと、イヴマリアは「あら?」と怪訝そうに首を傾げた。

「あなた……どうして出てきちゃったの?」
 思惑通り、イヴマリアは晶のことを人間画廊(ギャラリア)にいた"ともだち"の一人と誤認したらしい。自分が閉じ込めた者達の顔もきちんと覚えていれば、見間違うはずなど無いが――やはり彼女にとって人間などその程度の存在なのか。
「一緒に遊ぼうよ」
 何にせよこちらには好都合だ。半凍結状態の晶が親しげに話しかけると、イヴマリアはぱっと表情を明るくして、血塗れの身体で立ち上がる。遊び相手を見つけた子供らしい仕草と、ぐずぐずと再生を続けるキズだらけの身体とのギャップが、酷く不気味であった。

「そんなにイヴとあそびたかったの? しかたないね!」
 嬉々とした顔で"ともだち"に飛び掛かるイヴマリア。本人にとっては遊びという雰囲気だが、その細腕に宿る怪物の膂力で撫でられたら、凍って脆くなった身体は簡単に砕けてしまうだろう。
「遊び疲れるまで相手してあげるよ」
 晶はヴァンパイア・シャドウと戦った時と同様に、邪神の神気で敵の攻撃を防御する。
 流石に高位の吸血鬼が相手では完全に防ぐことはできず、動きを麻痺させて威力を軽減する程度だが、致命傷を防げれば十分。適度に攻撃を受けて相手を調子に乗せておく。

「うれしいな。もうぜったいにはなさないから」
 気を良くしたイヴマリアは【ひとりはいやだよ】と囁いて、晶の腕に真っ赤なリボンを結びつける。このユーベルコードで繋がっている限り、両者は同時に死なない限りは何があっても生き続ける――これを敵に使わせるのが、晶の密かな狙いであった。
(お互い死ななくなるのはとても都合がいいからね)
 リボンで結ばれたらこちらも【邪神の慈悲】を発動。相手のお遊びに付き合いながら、漆黒のドレスから停滞をもたらす神気を放ち、気付かれぬよう少しずつ侵食させていく。

「ふふふ。ずっとずっとあそびましょ!」
 イヴマリアは壊れない"ともだち"と遊ぶのに夢中になって、密かな反撃に気付かない。
 間近で神気を受けた身体は末端から徐々に凍りつき、動きを鈍らせているというのに。
「……あれ?」
 ようやく違和感に気付いた頃にはもう手遅れだ。凍りついた自分の手や足を見て、きょとんと目を丸くするイヴマリア。その隙を突いて晶はするりと彼女の背後に回り込んだ。

「ともだちならお揃いにするのもいいよね」
 晶はそんなことを言いつつ後ろから抱きついて、イヴマリアを一気に凍らせにかかる。
 脇の下から通した両手を首の後ろで組み合わせて動けなくする、完璧な羽交い締めだ。一度決まってしまったら、腕力に差があっても振りほどくのは非常に困難である。
「抱きついても暖かくも柔らかくもない、むしろ硬くて痛いだろうけど、すぐにそっちも同じ硬さになるから問題ないさ」
「つめたっ……なに、なんなの?!」
 凍結した体を密着させながら耳元でささやくと、イヴマリアはびくっと肩を震わせて、背中に感じる悪寒からじたばたと逃れようとする。しかし晶は腕の力をまるで緩めない。

「ともだち達の気持ちをしばらく味わってみようか」
 そのまま晶は至近距離から神気を浴びせ続けて、敵を氷の像に変えてしまおうとする。
 奇妙なくらい優しげで冷たい言葉。それは身体で感じる悪寒よりも、イヴマリアの背筋をゾッと震え上がらせた。
「死ぬのではなく別の物になるだけだよ。きっと溶ける事も砕ける事も無いだろうね」
「い、いや……っ!」
 初めての"恐怖"を抱いた彼女は、腕がもげそうな位の勢いで晶の拘束を振りほどく。
 結果、完全な氷像になることだけは避けられたものの――邪神の慈悲により凍りついた半身は元に戻ることなく、彼女が犯した罪の証のように残り続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…知っている?友達というのは、対等な関係で初めて成り立つものよ
貴女が好き勝手して、護ってばかりいたのでは本当の友達にはなれないわ

…だから、私が貴女の"ともだち"だった彼らの代わりに教えてあげる
氷に閉ざされて物のように扱われ、気紛れに壊される恐怖と絶望を…

等と挑発して注意を惹き付けた隙に「光の精霊結晶」を砕き強烈な閃光で敵の視力を潰し、
敵UCや棘鞭のカウンターを「写し身の呪詛」による存在感のある残像を囮に受け流し、
体勢を崩した敵の死角から切り込み真の姿の吸血鬼化を行いつつUCを発動

…来たれ、この暗き世界を覆う大いなる力よ
我が手に宿れ、氷雪の理。其は全てを凍てつかせるもの…!

右掌に闇属性の魔力を溜め凝縮した"闇の凍結"球を怪力任せに叩き付け、
限界突破した呪詛のオーラで防御ごと敵を捕縛して氷漬けにする闇属性攻撃を行う

…良かったわね?これでお前も"ともだち"と同じ気分を味わえるわよ

…なんて言っても、もう何も聞こえてはいないでしょうけど



「……知っている? 友達というのは、対等な関係で初めて成り立つものよ。貴女が好き勝手して、護ってばかりいたのでは本当の友達にはなれないわ」
 友という言葉の意味を履き違えた吸血鬼に、リーヴァルディは険しい表情で告げる。
 彼女の行いはただ相手を都合のいい玩具にして、孤独を紛らわせようとしているだけ。その結果相手がどんなに辛い思いをしているのかも知らず――考えた事すらないだろう。
「……だから、私が貴女の"ともだち"だった彼らの代わりに教えてあげる。氷に閉ざされて物のように扱われ、気紛れに壊される恐怖と絶望を……」
 声を上げる事すらできなかった者達の無念を晴らすべく、不死嬢イヴマリアに報いを。
 吸血鬼狩人の眼差しには、あの人間画廊の寒気にも負けぬ、冷たい決意が宿っていた。

「イヴがまちがってたって言うの? そんなはず、ない……!」
 自身の行いや価値観を全否定されたイヴマリアは、癇癪を起こしたように声を荒げる。
 そんな酷い事を言うのなら、"ともだち"になってくれないなら、もういらない。彼女は短気のままに目の前のニンゲンを縊り殺そうと手を伸ばし――。
「……こんな挑発に乗るなんて。見た目だけでなく中身まで子供ね」
「ッ?!」
 うまく注意を惹きつけた隙を突き、リーヴァルディは隠し持っていた「光の精霊結晶」を床に叩きつける。音を立てて砕け散った結晶から、封じられていた精霊力が解放され、月光よりも強烈な閃光が城内を照らした。

「いたいっ! めが、いたいよぉ……っ!」
 閃光に目を灼かれたイヴマリアは、両手で顔を覆いながら悲鳴を上げる。ドレスを彩る真っ赤なリボンがほどけて乱れ、その胸に宿る『月の眼の紋章』からは、寄生主の苦痛に反応して棘鞭が飛び出した。
「イヴはただ、ひとりがいやなだけなのにっ!」
 彼女はその棘鞭とリボンを振り回すが、視力を失ったまま当てもなく反撃したところで当たるはずもない。リーヴァルディはひょいと身を躱しつつ「写し身の呪詛」を使用し、存在感まで再現した自らの残像を作りだす。

「きょうふ? ぜつぼう? そんなのしらない、わかんないっ!」
 まだ視力の回復しないイヴマリアは、気配を頼りに棘鞭を振るう。だがそこにいたのは写し身だけで、本物のリーヴァルディはその間に死角へ回り込んでいる。オーバーロードにより真の姿を解禁した彼女の瞳は赤く染まり、真の吸血鬼と化していた。
「……限定解放。テンカウント」
 切り込みをかけつつ発動するのは【限定解放・血の教義】。吸血鬼のオドと精霊のマナを一つにして様々な現象を引き起こす、制御は困難ながら絶大な威力を誇る秘術である。

「……来たれ、この暗き世界を覆う大いなる力よ。我が手に宿れ、氷雪の理」
 詠唱と共にリーヴァルディの右掌に闇の魔力が集まっていく。それを起点にして周囲の空気が凍りつき、ダイヤモンドダストがちらちらと舞う。ひやりとした悪寒にイヴマリアがはっと振り返った時にはもう、彼女はすぐ傍まで迫っていた。
「其は全てを凍てつかせるもの……!」
 凝縮した闇の凍結球を、吸血鬼の膂力に任せて思い切り叩き付ける。どれだけ防御力や再生力の高い相手でも、全てを凍てつかせる闇の原理の前では無意味だ。直撃を喰らったイヴマリアの肉体が、みるみるうちに凍結していく。

「い、いやあぁぁぁぁぁ……ッ!!!!?」
 氷漬けにされる自分の体を見て、悲鳴を上げるイヴマリア。今さらどれだけ泣き喚いたところで結末は変わらない。末端から消えていく体の感覚や、胸の奥から奪い去られていく体温――迫りくる凍死の予感をまざまざと感じることしかできない。
「……良かったわね? これでお前も"ともだち"と同じ気分を味わえるわよ」
 自らの犯した行為が人々に与えた恐怖、苦痛、絶望を、万分の一でも思い知るといい。
 リーヴァルディの唇から紡がれる声は真冬の吹雪のように冷たく、一片の慈悲もない。

「……なんて言っても、もう何も聞こえてはいないでしょうけど」
 くるりと踵を返して吸血鬼化を解除し、その場より颯爽と立ち去るリーヴァルディ。
 指の先から骨の髄まで凍りついたイヴマリアの氷像は、まるで救いを求めるかのように彼女に向かって手を伸ばし、恐怖に歪んだ表情のまま固まっていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
よく聞け、イヴとやら。俺は其方の『本当のともだち』が
居る処を知っているぞ。
其方も寂しいと思うなら、彼等の元に行ってやるといい。
■前
一部の者しか知らない、俺の蛇毒(【毒使い】)を用いるぞ。
左腕に牙の毒を仕込み、血に存在する毒と合成し強化だ。

俺自身の毒故、【毒耐性】がなくとも平気だ。

■闘
紋章は健在……先ずは、彼女の懐を目指さねばならぬな。
紋章から次々と飛び出す棘鞭を次々と【切断】しながら
イヴの懐まで【ダッシュ】で進むぞ。
同時に、紋章の棘鞭に紛れたイヴの『深紅の棘』を探るのだ。

接近の最中に其れを発見したら棘を【グラップル】して掴み、
左手に刺して先ほど仕込んだ毒を送り込む。
一度其れが身体に入ったら、たとえ吸血鬼と言えども身体が
【マヒ】することは免れられまい。

イヴの動きが鈍ったことが確認できたら『心切』に【破魔】の
力を与え、雑念を払いつつ【夜見・慈】を放ち、これ以上の苦痛を
与えることなく『在るべき海』へ送るのだ。

向こうで、愉しくやるといい……

※アドリブ歓迎・不採用可



「よく聞け、イヴとやら。俺は其方の『本当のともだち』が居る処を知っているぞ」
 凍りついた月光城の主の前に立ち、厳粛な口調と隙のない構えで話しかけるのは清綱。
 "ともだち"と称して人々を弄び、数多の非道を為した吸血鬼ではあるが、癒やせぬ孤独に苛まれた少女という側面が、せめてもの慈悲の念を彼に抱かせたのだろうか。
「其方も寂しいと思うなら、彼等の元に行ってやるといい」
『……とも、だち……』
 かの吸血鬼の命運はもはや尽きかけていたが、彼女に寄生した『月の眼の紋章』はまだ生きている。動かない唇の奥から微かな声が漏れた瞬間、紋章の中から棘が飛び出した。

「紋章は健在……先ずは、彼女の懐を目指さねばならぬな」
 清綱は退魔刀「心切」を抜き放ち、紋章から飛び出す棘鞭を次々と切り落としていく。
 あちらも本能的に追い詰められているのは分かるのだろう。切断されても次々と紋章から飛び出してくる棘鞭の動きには、どこか必死さが感じられた。
「此れは生きたいという本能か、或いは『ともだち』への執着か……」
 冷静に鞭を切り払いながら前進する清綱。視線は敵から切らさずに何かを探っている。
 刀一本で猛攻を凌ぐ技量は、戦いの中で研磨された不屈の精神性に支えられたものだ。

『ひとりは……いや……ともだち……』
 対するイヴマリアはうわ言のように囁きながら紋章の棘鞭を操る。氷漬けにされた体はほとんど動かせないというのに、食い下がるのは大した執念、或いは妄執と言うべきか。
『ほんとうのともだち……おしえて……』
 広げたまま凍りついた紅翼から"深紅の棘"が生成され、近付いてくる清綱を狙い撃つ。
 血も、命も、全てを自分のものにしたいという歪んだ執着がそこにはある――されど、それしきの凶気で兵(つわもの)の歩みを止めることはできない。

(ここは俺の蛇毒を用いるぞ)
 じりじりと目標との距離を詰めながら、清綱は徐ろに袖を捲ると、自分の左腕を噛む。
 傍目には理解できぬ自傷行為だが、この状況で彼が意味のない行動を取るはずがない。
 牛と大鷲、そして蛇のキマイラである清綱の牙と血には毒がある。これは一部の者しか知らない秘密だ。牙の毒と血の毒を体内で合成することで、その毒性は更に強化される。無論、自らの毒で死ぬ蛇がいるはずもなく、彼自身は平気であるが――。
「……見つけたぞ」
 接近の最中、紋章の棘鞭に紛れたイヴマリア本人の"深紅の棘"を発見した彼は、さっと空中でそれを掴み取り、自分の左手に突き刺した。城内の罠にも設置されていたように、この棘には吸血効果がある。即ち、離れていても自身の毒血を相手に送り込めるのだ。

『………ッ!!!?』
 イヴマリアの体と『月の眼の紋章』がびくんと痙攣を起こす。清綱の隠し玉とも言えるそれが一度体内に入ったら、たとえ吸血鬼と言えども体が麻痺することは免れられない。
 赫棘の射出や棘鞭の動きが止まったのを確認できれば、清綱は「心切」に破魔の力を与えながらイヴマリアの懐まで駆け寄り、精神を統一して雑念を払う。
「秘伝……夜見」
 一切の敵意を捨て去った状態より放たれる一太刀の名は【夜見・慈】。これ以上の苦痛を与えることなく、過去より来たりし者を『在るべき海』へと送る、殺意なき剣である。

「向こうで、愉しくやるといい……」
『……ぁ……』
 見惚れるほどに流麗な一閃が、凍りついた吸血鬼の首を刎ねる。最期の瞬間に彼女が浮かべた表情は、苦痛でも、恐怖でも、絶望でもなく――安堵にも似た穏やかな顔だった。
『ともだち……また……できるかな……』
 そう言い残して『不死嬢イヴマリア』は砕け散り、無数の細氷となって虚空に消える。
 主をなくした玄室は静寂に包まれ、窓辺から降る月の光が、戦いの跡を照らしていた。



 ――かくして、猟兵達は謎に満ちた月光城の攻略を見事成し遂げた。
 ダークセイヴァーの月の秘密が明らかになるかは今後の調査次第だが、強大な吸血鬼を討ち取り、人間画廊(ギャラリア)に囚われていた人々を救っただけでも大戦果だろう。
 やがて世界の真相を解き明かし、光ある未来を取り戻すまで、彼らの戦いは続く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月28日


挿絵イラスト