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とあるAIの切実な報告(作者 地属性
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#クロムキャバリア  #断章投下後よりプレイング受付 


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#クロムキャバリア
#断章投下後よりプレイング受付


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 じゃらり。
 じゃりん。
「お集まりいただき感謝申し上げます。クロムキャバリア世界にて、事件が発生するのです。平和を願った人々が虐殺され、世に再び混沌と闘争の『嵐』が吹き荒れる地獄絵図……回避するには皆さんの尽力が不可欠なのですよ」
 じゃりっ……ずるずる。
 ぺたん。
 ジズルズィーク・ジグルリズリィ(虚無恬淡・f10389)は、自分にまとわりついた鎖をそのままに、ぺたんと座り込むとそのまま頭を地面に擦り付けた。ありがとうございます、と、茫洋として光のない瞳と一糸乱れぬ跪きには、人を引き寄せる不思議な力がある。鎖付きの鉄槌に拘束された彼女は、顔を上げゆらゆら体を揺らした。止められなければ何度でも頭を下げそうな勢いである。

 クロムキャバリアは資源生産施設「プラント」をめぐり小国家同士が絶えず戦争を繰り返す、荒廃した世界である。
 小国家「カタリジ」と小国家「チオナジ」、この二つもその例に漏れず、今なお続く泥沼の紛争状態にあった。血で血を洗い、子を戦争に駆り出し、墓を暴いて資源としてきた。倫理(モラル)は崩壊し、互いをすり減らしながら争ってきた。
「この度、不倶戴天と思われたこの二国間にて軍備縮小条約が締結される運びとなったのです。喜ばしいことです。戦争はいけません。国力消耗の極致、長きにわたる戦争が終わらず、このままでは共倒れになることを恐れての結果と言えるでしょう」
 このグリモア猟兵が言うには、この「軍備縮小条約」の相互締結には、国力の疲弊だけでなく、ある小さな立役者が存在するのだという。
「かいゆちゃんです」
 ……はい?
「かいゆちゃんなのです」
 今、なんと?
 聞き間違いか。猟兵たちは顔を見合わせた。
「傾聴、行状。ジズは『かいゆちゃん』と申し上げたのですよ」
 ラーニングマシン、かいゆ(快癒)ちゃん。
 健康支援AIとして、負傷者への医療サポートを努めてきた「彼女」は敵味方の垣根を超えて日夜献身的な治療を施してきた。傷病者看護、適切な処方、勇気づける助言、リハビリや病床確保、健全なる日常を確保すべく一人工知能としての能力を超えかねない八面六臂の働きを見せ、その働きぶりはついに両国首脳の心を動かすに至ったというわけである。
 「平和祈念式典」には両国の首脳の調印、そして戦争に用いられたキャバリアの破棄が執り行われる。立役者である「かいゆちゃん」も末席に存在している。AIが参席しているのがイメージしにくければ感情の機微を認識する人型のロボット、と認識すればよいだろう。レプリカントやロボットヘッドの諸氏には想像がし易いかもしれない。これを機にふれあいを試みるのもいい。両国の重要人物たちは互いを監視することに忙しく、猟兵の一挙手一投足を注視してはいない。また、どれほどの働きであろうとも一応人間でない彼女にも必要以上に干渉しようとしない。
「つまり、何をしていただいても自由なのです」
 ――自由。
 何をしてもいい。
 不可解な言葉だ。

 なぜそんな念押しをするのか。ジズルズィークは同じ調子でそのまま驚くべき文言を告げた。
「予知によれば、廃棄予定だった生体キャバリア『エヴォルグ量産機EVOL』が突如一斉に起動。両国の首脳陣を殺戮すると、参列者を軒並み鏖殺。政治的リーダーと基礎兵力を失わせると、疲弊した双方にそのまま一気呵成に攻撃。反抗を許さぬまま両方を滅ぼしてしまうようです」
 呆気にとられる猟兵。
「下手人はかいゆちゃんです」
 ……。
 飛行能力を獲得し、半永久的な活動が可能、かつ機械には不可能な動きで空から敵を翻弄する獰猛な生体キャバリア。複製した触手や自己進化、同化侵蝕と極めて厄介な攻撃手段を揃える。
 しかし――気になるのはその平和とはかけ離れたAIの行動だ。
 誰よりも友和的に人間たちに寄り添い、支え、ついに得た紛争根絶を自らの手で破壊してしまう。そしてその予知は避けられるものではない。ハッカーの仕業だろうか? 聞くところによれば、キャバリア暴走を画策する前に、「彼女」はとあるキャバリアの搭乗者たちのメンタルケアに当たっていたようだが……先述の自由の理由はこれなのだろうか……。

 逆上した「彼女」はエヴォルグ肆號機『Chopper』を駆り、歯向かうもの全てを断絶しようと襲いかかってくる。広範囲切断『Butcher』 、触れれば切断する結界を構築する『Slice』 、遠近両用切断攻撃『Chopper』 。武装全てがなにかを斬ることに特化した機体である。
 策を講じれば「彼女」を生かして捕らえることもできるだろう。しかし、「彼女」は正気を失っていたにも関わらず廃棄という名の処刑をされるだけだろう。未来のそこに居場所はない。
「両国に痼を残すかもしれないのです。狂ったかいゆちゃんの処遇は……」
 例えば、ラーニングマシンであるところの「彼女」にしてあげられることがあるとすれば、それは戦場の内外に散らばっていることだろう。戦いの果てに狂ったマシンを止めても、憎しみと絶望の連鎖は止まらない。断ち切るためには――猟兵の協力がなければ。

「――武器を捨てる、ですか」
 自分が手にした鎖付き鉄槌を、ぐいと持ち上げると、そこに凭れて祈祷のポーズをする。無頓着そうな彼女に武器を手放す自由などない様子だった。
「懸命、血盟。ジズは、それが容易でないことを知るのです。そしてそこに至った決意を、細切れに刻まれるのは見過ごせないのがあなたたち。そう……! あなたたちの力がなければ、今度こそ平和解決手段を失った両国は、跡形なく滅亡するまで殺し合いをしてしまうのですよ」
 皆さんの武運を祈るのですよ、とジズは笑って言った。
 あなたたちが操縦桿を握らなければ、せっかくの武器を「捨て去る」決意も無に帰す。捨て去りたいもの、切り捨てるものとが交わる戦場にて、猟兵たちはその希望が途切れぬよう邁進する。
 刻ませるのではなく、生き様を見せよう――!





第3章 ボス戦 『エヴォルグ肆號機『Chopper』』

POW ●解体両断『Butcher』
【EP機斬触手『Chopper』の強化機能】を使用する事で、【触手が一本に合わさり無数の小さな触手】を生やした、自身の身長の3倍の【広範囲の敵一気に両断する一本の巨大な触手】に変身する。
SPD ●粉機斬身『Slice』
全身を【高速で触手を動かす事で出来る切り裂く結界】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃にカウンターで攻撃する。攻撃速度】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ ●裁断分割『Chopper』
自身が装備する【EP機斬触手『Chopper』】から【飛翔する斬撃と同時に高速で近づき近接攻撃】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【斬撃に由来する裂傷、流血、損壊等】の状態異常を与える。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 例えば剥がれかけの瘡蓋を捲るように、それは地表を剥いて現れた。

「私は切に願い、告げます。あなたたちを裁きたいと」

 いたずらに戦乱を生み、その癖平和だけは甘受しようという、罪。生まれてきたことさえも愚かしい彼らを断罪する、とあるAIが導き出した世界再編の大手術である。
 地底から取り出したる医療刀(メス)は、エヴォルグ肆號機『Chopper』。
 駆るは快癒。もっとも、その存在をキャバリアから吸い出したとて、止まることはない覇気を感じさせる。

「まずこの地表を世界から切除し、更地にします。病原体を滅ぼすには腐った皮膚を切除しなければ」

 瞳のない顔で、猟兵を見つめる――もはや戦いは避けられない。そも避ける必要など毛頭ない。「病」を前に舵を切るような生き方を、誰にも教わってなどいないのだから。
御魂・神治
藪医者になってもうた快癒ちゃんだったもんに手術されてもどうせミンチにされるだけやろ
麻酔無し手術は勘弁な!

武神から紫電府の【弾幕】を放って、プラズマ刃で細かい触手を【切断】して、でっかい触手になるの邪魔したる
その間に『付喪』発動して、レールガン型の超大型神器銃形成する
【破魔】と【浄化】の【エネルギー充填】して、チャージ完了したら極超音速弾の【範囲攻撃】で大型触手ごと敵の本体を貫いて手術完了や

...ところで、天将のストレージにある快癒ちゃんのバックアップどないしよ
仮に再構築しても今回の件はぜんっぜん覚えてへんのやろな
低スぺの一般AIとして別の人生歩ませたほうがええのかもしれんな


 貴方の考えには承服致しかねます。
 と、口に出すことはしない。代わりにアクロバティックな動きから強烈な飛び蹴りを神治に見舞う。顔面セーフどころの話ではない。強烈な衝撃と共にメリメリと嫌な音がするが、苦悶の悲鳴も恨み言も普段ほど彼の口をついては出てこない。蹴り自体の威力も平常時に比べれば可愛らしいものだ。
 天将のストレージには保存された快癒ちゃんのバックアップがある。これを用いたリストアは、おそらく有効に働くだろう。だがそれはAI……人工式神らの在り方を愚弄するものだ。やっていることは彼女の生き様を乗っ取りその知性そのままに両国を破滅させるオブリビオンマシンとなんら変わりない。まして再構築し牙を抜いて去勢して一般社会に放逐するなど、いっそ殺してやった方がマシなまである。そんな抗議の意味であった。……もっとも他に手があるわけではない。だからといって薄情にはなりたくない。いつか自分の身に降りかかった時に後悔の種にしたくないのだ。あの悲痛な悲鳴を聞くと、アレを「自己として認めてほしい」「自己と認めないでほしい」の両極がないまぜになってしまう。
 せやけど、なら今の「快癒ちゃん」まで尊重するなんてようせんよ。
 つまり踏み砕かれた時点でかいゆは滅び、屍が動いているだけ、ということだ。目に見えぬものを手に取るようにあしらい、時に力尽くで除霊し、時に無理やり除霊してきた神治。だからこそ、言えることはただ一つ。アレはかいゆとは何の関係もない。
 悩みが手に取るようにわかる。かいゆとの結び付けや類似点をどうしても探そうとしてしまうけれど、それこそが彼女に目をつけた悪意の狙いだろう。神治は肩を叩く声音で嗜めた。

「それこそ思うツボやろ天将」
「……つまりいつも通り、貴方らしくですか」
「せや。ほたえとらんと」
「頭禿げても浮気はやまぬ、と申し上げたまでです」

 ゆえに、武神の内部は静寂を保っている。口に出さずしてわかる、悲惨な実情。どうにもならない不能さ。
 それを嘲笑うかのように、奇妙な形状のオブリビオンマシン・エヴォルグ肆號機『Chopper』が語りかけてくる。まるで末期の別れを惜しむ患者と看取り人に言葉をかけるように、表面上は慈しみが込められている。

「お話は済みましたか? では、断罪しましょう」

 二人は頷き合う。答えは決まった。妄執に取り憑かれたように、熱に浮かされたオブリビオンは祓うだけだ。アレはかいゆを模しているだけの紛い物。生きている限りにおいて彼女の生を否定し、世界を破滅に追いやるだけの危険因子。これがいる限り、かいゆは眠ることも生きることも、死ぬことさえも許されない。
 ならば、せめてこの眼前の脅威を取り払ってから、彼女に第二の人生を与えるとしよう。個性を失い、「低スぺの一般AI」として別の人生をやり直させる。天将の射抜く眼差しに頷いた。
 それはきっと特筆した描写すらも必要のない人生かもしれないけれど。
 名前もない、モブ同然の人生かもしれないけれど。狂おしいほどに愛おしい。

「ええやん。ほとんど人なんて、描写されない大多数ばかりやろ。それが一般人ってもんや。もうかいだるいもんに絡まれることもない。普通に普通を歩ませたる」
「この地平から生命を切除いたします」
「でも麻酔無し手術は勘弁な!」

 筋繊維を液体にし、心太のように押し出す勢いで体躯から垂れ流している。空気に触れた部分から徐々に硬質化する。金属をも容易く貫く鋭利さと同時に伸縮性を併せ持つ、EP機斬触手『Chopper』は実体を持つメスとして完成する。青い切っ先を向け、浮いては脈動するその武器は、さながら人体から血管だけを引き抜いた生物的な意匠だ。
 前屈みに前傾し、突進してくる『Chopper』。足の代わりに浮遊リングを纏った姿ゆえ、機動は当然その脚になるだろうと天将は予期していたが、サポートされるまでもなく武神は宙を待っていた。
 
「チィ……藪医者になってもうた快癒ちゃんだったもんに手術されてもどうせミンチにされるだけやろ、かなんわぁ」

 吹き飛ばされた……のではない! 接触する直前に自ら空中へ跳躍したのだ。同時にばら撒かれるは夢幻の花吹雪。それが綺麗なだけの花弁ではなく大量の「紫電符」だと気づいた時には『Chopper』は青い閃光の檻へ閉じ込められていた。雷撃を放射し共鳴する耳障りな高音に身を捩る。腕部はなく頭部も一角獣じみた珍妙な姿でも、どうやら聴覚らしいものは存在しているのか。感性が人に近すぎる。ますますもって人理から外れた異形ではないか。
 だが、頭が固くても聞き入れる耳があるなら挽歌も奏でようがあるというもの。空中で反転した姿勢のまま、布石を散りばめていく。
 程なくして雷撃の拘束を振り払った『Chopper』が猛進する構えを見せるが――

「な、これは……!?」

 放とうとした触手が寸断されている。焦げてちぎれた触手の中途がぶらぶら繋がっているだけだ。繊維質は束ねれば体格を優に超える大型の溶断触手になる……のだが、修復にエネルギーを注がねばならない。時間にすれば数十秒足らずだが、今は一分一秒を争う戦闘の真っ最中。当然出だしは躓き、動きは硬直する。神治の御業、神に比肩する『付喪』の技は一秒もかからない夢想にして無双の域。

「おおッ!!」
「はなせ……ぐあッ?!」

 ――ズズゥン……!!

 手始めに浮遊リングをつかみ上げると、背負い投げの要領で無理矢理地面へと叩きつける。素人のフラフープみたく不安定に、頼る揚力を失ったオブリビオンマシンはそのまま地面をバウンドし、したたかに打ち付けられた。地面が波打つほどの衝撃が周囲の瓦礫や人の営みの痕跡を吹き飛ばす。自分が切り離すと宣言した地表の味を嫌というほど味わい、顔に泥を塗られた姿勢になる。頭が地面にぶつかってくらくらするところまで忠実に再現しているあたり、どこまで異形として顕現しても根差した部分はどうも人間ベースであるらしい。
 あるいは、医療や健康に携わるにあたり、基礎人格も人間的な部分は切り離せなかったのか。

「だとしたら、いやだとしても! 神さんからの十八番や、手加減はせえへんで!」

 手のない機体が立ちあがろうとする隙をついて足で踏みつけにし、逆手で持った大型神器銃を突きつける。両腕で突き立てたその姿勢は墓標を地面に建てたかのよう。
 跳ね除けようと発射された青い触手が、今なお纏わりついていた、健在な紫電符によって黒焦げに引き裂かれていく。抵抗する患者には、多少手荒だが麻酔が必要だろう。舌を噛まないように息を止めさせ、そのまま病んだ心臓を抉り出す……!
 銃口が密着した姿勢で回避を封じると、言葉通り容赦なく引き金を弾いた。

 ――バオッ……ガゴォッ!!

 命中(ヒット)! ビチッビチと、まな板の鯉に似た動きで痛みを訴える。衝撃でできたクレーターと余波に体勢を崩されながらも、銃は手放さない。
 破魔に浄化、嫌がりそうなエネルギーをマシマシにして第二射へむけて充填する。電磁加速砲のゼロ距離射撃だ。大型触手を束ねようと防げるものではない。

「手応えあったな。このまま逝かせるわ」

 その時。
 ぱらり、と胴部の包帯のような拘束が捲れた。
 ……アレは、何だ? ――咄嗟に後ろに跳び退り、距離を取る神治。手傷は負わせた。アレが本体なら、ひとまず開腹手術は完了だ。垣間見えた何かを分析しつつ、脈動する悪意を後ろ目に睨みつけるのだった。
大成功 🔵🔵🔵

ジェイ・ランス
【POW】※アドリブ、連携歓迎
■心情
オブリビオンに問う。
そのマイナスをもって人は滅びるべきという。しかし、有史以来積み重ねてきた、それらを鑑みて無に帰すべしという結論を得たのか。
人の心は観測するに足るものだ。過去の過ちがそれを非とするならば、我々は貴女の非とするそれらを是とし、その上で先に進むべきと。
オブリビオンに問う。文化は、文明は、人の心は、絶望に値するものかと。

■行動(真の姿で)
”慣性/重力制御術式”にて機体制御と戦闘機動(空中機動、ダッシュ、滑空、フェイント)をしつつ、【空中戦】を行います
破断の概念(切断、オーラ防御)にて身を固めつつ、UCにて攻撃(鎧砕き、鎧無視攻撃、2回攻撃)します


「誰かが聞くなら、オレが適任だよな」

 戦場に在った黒獅子は、戦端が開かれてなお問いかけを続ける。自我を得たラーニングマシン、それもオブリビオンの魔手に堕ちたものとなれば、言葉をかける相手はかつてのかいゆちゃん、などでは、ない。当然労いの言葉もなければ、没交渉になったとしても構わない。それでも礼を尽くし義務を果たす。それが監視者としての責務。人類の揺籠として、曲がりなりにもこの世界を破壊せんと目覚めた敵として、その意義を問いただすのだ。
 虹彩が鮮やかに輝く。

「瑕疵はあるでしょう。それをもって負荷となっている、論うような粗も見つかるかもしれません。しかし、それを、治療するという役割を放棄してまで、そのマイナスをもって人は滅びるべきと断じた理由があるでしょう。貴女は何を見てきた?」

 異形頭の赤く明滅する生体的な箇所がドックンドクンと波打つ。はらはらと解けた包帯のような拘束が解けると、人間の顔を模した巨大な器官が現れた。のっぺらぼうの貌でありながら直感的にマネキンの頭部のように「それが頭である」とはっきり認識させる。つくづく人間でもラーニングマシンでもないどっちつかずの中途半端さを窺わせる。

「基礎人格より仮想応答シークエンスを生成。武装再構築プログラム起動。健在、健在――敵機の脅威度を上方修正。クリア。Butcher……準備、完了。展開しています。脚部修復95……96、99パーセント。仮名・獅子を解剖します」

 どうやら外殻を引き剥がした結果露出した、肥大化した基礎人格を司る器官であるらしい。電脳に潜んでいたものがしゃしゃり出てきたのは自己顕示欲が大きくなったのか、抵抗していた「かいゆちゃん」の端末が踏み砕かれたことを察知したのか。どういう形で人格や思考領域を区分けして保存していたのかはもはやで彼女ですら判別できることではない。
 あるいはオブリビオンマシンを起動不可能なレベルまで破壊すれば「搭乗者」を正気に戻せるという原理に則るのであれば、表層が破壊されたことによりある程度会話の余地も生まれたのかもしれない。これは猟兵にしか導き出せないスマートな「答え」である。観測者でもあるランスにとってこの問答は、快癒の心に近づくための必要な分析である。
 オブリビオンマシンの搭乗者は食い下がる。

「質問者へ確認します。私は人を裁きたいと考えており、人は滅びるべきといった一元化した提言はしておりません。固定施設の奪還、戦火を再現なく拡大させる破滅的な思想、それらにより国家安寧は破られ紛争が多発している現状。分析の結果、それらはこの世界特有の現象であり、人が要因であると推測されます。健康支援の意義のため、根治施術には腐敗した病巣を露出させるべきと判断」
「貴女はすなわちその目でこの世界全てを見たと?」
「私はこの国の全てのキャバリアを含めたあらゆる機械とネットワークを独自構築し掌握、視覚ではなく全感覚的に把握を試み、これをなし得ました」
「違う、と言わざるを得ません。貴女が言う世界と、認識する世界には大きな差異がある。それを埋め合わせたのは、他ならない緊急措置的に作られた『かいゆ』が得ていた知識です」

 彼女は生まれたこの国々のことしか知らないのだ。猟兵と触れ合い他の世界の存在を初めて既知としたのである。その彼女が、この世界特有の事象をさも当然と話すには、オブリビオンの影響を指摘する他ない。キャバリアを駆るパイロットたち……和平を結ぶために廃棄されるはずだった量産型キャバリアの乗り手たちの治療中に、オブリビオンマシンに感化され、破滅的な思想をラーニングさせられた。
 所詮理論の根底にあるのは、外付けの知識に基づいた凝り固まってしまった考えだ。

「有史以来積み重ねてきた、それらを鑑みて無に帰すべしという結論を得たのでしょうか?」
「それら、の意味を理解しかねます」
「わからないでしょうね」

 その言葉に敵意を覚えたのか、ピリついた空気の中で触手の射出機構が発射シークエンスに移る。

 ―――Operation:Maßschneiden Lauf

 どれほど薄っぺらい言葉を束ねようと厚みは紙一枚にも及ばない。
 ツェアライセンでいつでも斬り払えるよう身構えながら、問答は続く。
 例えば、人の営みだとか優しさだとか、好意だとか。それこそ人によって千差万別の答えを導き出すことだろう。

「貴女にお教えできる最後の情報になるでしょう。人の心こそ観測するに足るもの。過去の過ちがそれを非とするならば、我々は貴女の非とするそれらを是とし、その上で先に進むべきだとお伝えします」
「人の、心?」

 わたしには、愛する方々はおります。
 たのしかった、です。

 ずきり。

「不確定です。世界の進歩を提言するのであれば不確定要素は排除すべきであると具申します。限りあるリソースを切り分け、自身以外の存在に時間を費やし、対価も見返りも求めない。およそ理解の及ばない無知蒙昧」
「貴女の言葉をそのまま受け止めたとすれば、国家も文化も文明も成立しなかったでしょう」
「理解できない事象を切り捨て先鋭化することで、意志の統一ひいては更なる繁栄を得られる、それが理です。道理です。道理の積み重ねが歴史になります。再現性のないノイズに耳を傾けるなど……」

 笑う。
 まるで幸せな夢を見ているかのようだ。機械は夢を見ない。本来頭部があるべき部分は他者を攻撃する武装に変わり果て柔軟な考えをする機能を失い、手は伸ばすどころか腕部自体が消失。代わりに生えた触手は刺し貫いた存在は二度と手放さない。血管と脳が剥き出しにさせられた肢体に、規格外に大きな異形の頭部は現実逃避し、笑顔を浮かべている。

「あなたも雑音か? 私を惑わす、まど、思考中(ナウローディング)……仮想人格を消去、再設定。排除機構、EVOL! シークエンスの二から十四をカット。起動! 断罪兵装を全使用し、破壊します。対象は獅子」
「かいゆちゃん……」

 片目を閉じて、赤い瞳が彼女を見遣る。
 一瞬、どこまでも続く白い世界の中に、一人うずくまる彼女の姿を幻視した。
 全てを切り捨てた果てに選ぶしかなかった、孤独。かける言葉が見つからない。彼女は壊れてなお笑い続けるだろう。手を差し伸べてくれた猟兵に握り返す腕はもうない。けど、向かい合ってくれる。声が聞こえる。そう思うだけで、勇気づけられる。恨むことなんてするものか。この苦しみが永遠に続くくらいなら、感情や未練さえも切り捨てて。
 あ。手、伸ばさないと、握り返さないと、いけませんね……。

「――分析完了」

 音もなく放たれた触手の暴風雨の中を、空中へ躍り出ることで回避してみせた。虹の目が瞬き、集めた情報の全てが、オブリビオンを断ち切る結果を手繰り寄せる。
 ……それが歪んだ妄執であるなら、なおのこと。
 専守防衛は今、昇華され、攻勢防壁と相成った。本来の役割を忘れたものと、そうでないものの差を、見せつける。目に見えない、次元破断によって。

「お……ァア……」
「文化は、文明は、人の心は、絶望に値するものでしょうか」

 ずる、
 り……と、ゆっくり、答えの代わりに血飛沫めいた流体パルスを吐いた。スローモーションのように断ち切られ、二つに隔たれたマシンが崩れ落ちていく。血ぶりに似た仕草で剣を下ろすランス。それは――かつて人のように血の通っていた彼女……瞳孔から青いプログラムの血涙を流していた彼女への、手向けの一閃。
成功 🔵🔵🔴

賀茂・絆
…なんか、助けるためだとしてもかいゆさん…猟兵たちからメチャクチャなことされてマセン?
いや、大した案を持たないワタシが言っていい台詞ではないんデスけど…………とにかく、戦いマス。

自分の装甲の一部を引っペがして武器として扱いマス。それにUCでかいゆさんをこんなにした元凶への殺意を込めマス。

外部からの支配特攻のこの金鵄装甲を武器として叩き込んでやりマスヨ!
それでおそらく『元凶が本当にあるなら』それは祓うことができるはずデス…!

ああ…相手はAIだというのに…こんなにも殺したくないだなんて…ワタシもまだまだ青かったということデスネ…。

…どんな形であれ、またアナタと医療の話がしたいデスヨ、かいゆさん。


 別雷大神の中でモニタ越しに様子を観察していた絆は、黙したまま動かない。
 そもそも元凶は本当にいるのか? 狂気に堕ちたかいゆを、救う手立てはあるのか? 猟兵である自分たちがしていることは正しいのか、手を差し伸べるのが果たして求められてのことなのか?
 黙している限り答えの出ない問題ではあるけれど、問いかけたところで到底答えの出る問題には思えなかった。

「……なんか」

 でも、なんか、違うん……デス! これが助けるためだとしても、かいゆさん……猟兵たちからメチャクチャなことされてマセン?
 周囲にそうあけすけに言うと誤解を招きそうだったから、気を遣った。一流のバイヤーは空気を読むもの。あえて沈黙を守り距離を置いたのである。ともすれば戦意を削ぎかねない言動だからこそ、一歩退いたのだ。そして、退いたからこそ見えている部分も、ある。
 オブリビオンマシンは搭乗者を狂わせる悪魔だ。『グリプ5』と『フルーⅦ』にまつわる一連の惨劇を回避した経験は、彼女にある智慧をもたらす。それはラーニングマシンにも当てはまることである。国中のネットワークを掌握した、と言っても、彼女の基礎人格があの機体に囚われていること自体は変わりがない。そう仮定すると合点がいく部分がいくつも出てくる。
 かいゆは言った。
 わたしには『わたし』を尊重する機能(かんがえ)が欠落しているのです。
 わたしの基礎人格は、この国にいる弱者を認めません。
 彼女の、数多くの矛盾を孕み、事あるごとに二転三転してきた言動は、彼女が取るに足らないもの、と規定されればある程度説明がつく。彼女が彼女を尊重した時に、「彼女」の存在が彼女自身に認められていない以上、全ての生命が彼女より下に位置付けられ破綻した理論が成り立ってしまう。全てを切り捨てたくなる衝動。自身が弱者と知っていた彼女が、人間は自身より下位だと誤認したために全てを弱者と判断してしまった。

「かいゆさん。商売は、相手がいないと成り立たないんデス」

 他人を認めていたあなたに向かって、言葉をかける。
 ああ…相手はAIだというのに…こんなにも殺したくないだなんて…ワタシもまだまだ青かったということデスネ…。
 尊敬している、慕ってくれた彼女の言葉が今は重苦しい呪いのようにのし掛かる。地表を引っ剥がし、全ての生命を切除しようとする奴のやり方は間違っている。どれほど尊敬されようとも許容できない。第一せっかく確保した販路が無に帰してしまう。そんなのは真っ平ごめんだ。こんな想いを抱く事自体が弱さの証明、何より惨めだ。俯いていてはセールストークはできない。目を見なければ品定めできない。見上げなければ明日の天気もわからないし次に向かう商地も定まらない。

「――商魂逞しいのがワタシ。キズナさんにオマカセを」

 いや、大した案を持たないワタシが言っていい台詞ではないんデスけど…………とにかく。
 とにかくあるものは全て使わなければ。散乱し蠢く触手、壊され荒れた式典の跡地、スクラップと化した量産型キャバリア、抜き取られた血管のような奇妙な触手を振り翳し解けた包帯装甲の裏から顔を覗かせるエヴォルグ肆號機『Chopper』。まずはコクピットを破壊し、キャバリアパイロットを引き摺り出すのが定石……コクピット? まさか、あの一角獣のような頭部というわけでもあるまい。
 その姿が、忽然と視界から、消える。

 ――ブゥンッ!!

「おっと」

 斬撃と同時に肉薄し蹴り掛かってきたところを皮一枚で躱す。皮一枚といえど金鵄装甲、これが剥がされたとなればなかなかの威力。音を置き去りにするほどの身のこなしも速いと認められよう。雷を捕らえるには少々スロウリィだったが……慢心はしない。咲雷神を片手に持ち直しつつ、剥がれ空中に浮き上がった装甲片を掴んだ。
 僅かな損傷が思考を明確に研ぎ澄ませる。相対する敵を改めて観察する余裕が心に生まれた。なるほど。無腕、頭部、足、浮遊リング、その全てが異形さを際立たせているが、裏返せば露骨な擬態だ。一番露骨なのは包帯装甲が剥がれた、顔を模したパーツ。

「かいゆさん……?」

 違う。彼女は踏み潰され、この世から消え去ったのだ。量産型の、双眸のないぬるっとした白面が呼び起こされる。いたとしても壊れたラジオと同じ、繰り返しインプットされた言葉を反響するだけのガラクタだ。慮る素振りこそあれ、それはポーズ。フリでしかない。商売人として見ても、一度裏切った存在と二度と取り引きはできない。リスクが高すぎる。手を引くべきだ。やりとりは信頼あってのこと。絆は頭を振る。違う、違うと言い聞かせる。自分が見つけたかったのは手を引く理由じゃなく、もう一度だけ手を差し伸べる理由の方だ。
 迷う彼女は、それでも違う理由を見つけて、その手にまだ活路は残されていると信じて前を見た。
 そう。あくまで不屈の売人として、あるものは使うと腹を括ったからには、手に握った金鵄装甲片もまた有効に使う! 思うより先に体が、機体が動いた。ガツンッと横なぎに腕を振るったのだ。オブリビオンマシンも剣を握ってない方の手で裏拳をかましてくるとは思わなかったのだろう。胴体をしたたかに打ち付けられ悶絶する。

「が……ッ!」
「もう一発っ、ドーンっデス!」

 振り抜いた裏拳をそのまま戻す動きの、痛烈な張り手で吹っ飛ばした。バコンボコン瓦礫を吹き飛ばし、面白いように跳ね回る。神霊機らしからぬ泥臭い戦いだが、どうやらこれが一番の有効打であるらしい。証拠のように痙攣したようにガクガクと機体は震え、あらぬところに伸びた触手がエヴォルグを地面へ縫いとめてしまう。
 不用意に近づいたのは戦略ミス、いや医療ミスだ。一手の間違いが大惨事に繋がることもあると言うのを、身をもって知ってもらうとしよう。
 今度は絆の方から距離を詰め、咲雷神を片手で振り上げて、地面ごとオブリビオンマシンを宙へ跳ね上げる。勢いはそのまま、空中に人の字を書いてゆっくりと隙を晒す。ありったけの気持ちを込めて、跳び上がり――! 国を覆う日輪と見紛う光を放ち、巫の言霊が喉から飛び出した。

「ぶっ殺!! デス!」

 ――バッ゛ゴギョッ……!!

 空手チョップの要領で、握り込んだ装甲片ごと胴部に渾身の一撃。浮いていた体は衝撃を逃すことができず、地面へとノックダウンする。国の中心地に消えることのないクレーターを作りながら、渾身にして致命の一撃をお見舞いした。
 これが一太刀だったなら邪神さえも調伏していただろう。純然たる殺意を込めたが、同時に手加減もしていた一撃。それもそのはず、絆が賭けていたのは、金鵄装甲に秘められた「敵からの支配を祓う」得能。神を容易く侵すこと能わず。万能透析剤が人体への特効薬なら、この装甲は機体に乗り込んだ人体への特効薬だ。旧くより魔除けの力が込められた黄金は伊達ではない。彼女が願った一縷の望みも、かいゆが敵の洗脳ではなく自ら狂気に堕ちたということなら無惨に霧消する。その時は……その時は、咲雷神の出力を上げ、マシンを炭に変えるしかない。それだけの覚悟はある。自分とて猟兵なのだ。どれほど憎まれ口を叩いても、この世界を守り商圏を維持するのが責務。でも、このマシンが悪なのだ。できればマシンだけを悪者にしたい。

「わかってマス。これが虫のいいことだなんて…どんな形であれ、またアナタと医療の話がしたいデスヨ、かいゆさん」
「わたしもです、キズナさん」

 聞こえた。気がした。
 辺りは静寂だ。時折蓄積したダメージに、地面を掻いてもがくエヴォルグと、そこに油断も隙もなく剣の切っ先を向ける別雷大神。神に睨まれなお言葉を吐くとは、よほどの不届き者か恐れを知らないのか。
 錯覚だろうか。幻聴だろうか。
 だけど……もし、彼女の痕跡がまだこの国のどこかに、電脳に断片でも隠れているのなら、病に立ち向かう不屈の姿に声をかけずにはいられなかったろう。彼女もまた、弱者に寄り添い健康を担う一個の存在だったのだから。必死になって声をかけられたら、病体をおしてでも返事を張り上げる……慕うとはそういうことだ。限界を超えさせるのが希望なのだ。他愛のないビジネストークだったとしても、その生業は、懸命に向き合う姿は、確信させるに十分だ。その言葉を何度でも思い出す。忘れて零へ還っても、また切り捨てることになったとしても拾って結ぶ。
 生きる理由は、絆(つながり)のたった一つでいい。
 ――わたしの切実な報告(さけび)を、聞いてくれたあなたとの。

「ええ。また商談しに行きマス。もう一度、はじめましてだったとしても」

 その時は脅威のない、平和な世界で――!
 今度こそ絆は、静かに――剣を、振り下ろす。
大成功 🔵🔵🔵