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濱の眞砂は盡くるとも

#サムライエンパイア #戦後 #【Q】 #石川五右衛門 #丁稚ノビル #湯屋でのんびりと…… #夕狩こあら

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 京都は鴨川の七条辺に「釜が淵」と呼ばれる地がある。
 其は天下御免の大泥棒『石川五右衛門』が処刑された際、釜煎に使われた釜が流れ着いた場所と云われており、この地域の人々は、五右衛門の処刑日であり命日となった十二月十二日が近付くと、かの義賊を偲んで「五右衛門風呂祭り」を行うようになっていた。
「寒さが厳しくなる頃でもあるんスよね……」
 冬は熱い湯が染みるのだと、風呂釜の中で呟く少年が一人。
 五右衛門風呂で賑わう湯屋に大量の酒を運び込んだ丁稚の彼は、ついでにひとっぷろ、熱い湯に肩まで浸かっている。
 本当の旅客ならば、じっくりと身体を温めた後は二階に上がって涼み、鴨川と高瀬川の合流する景色を眺めてゆっくりするそうだが、それほどの風流は丁稚には愉しめまい。
 そろそろ仕事に戻るべきと風呂から出て脱衣所に向かった少年は、然し、大事なものを失くしている事に気付き、慌てふためいた。
「……なっ、んなっ、ない……自分の眼鏡が無いッス……!!」
 我が相棒、丸縁の眼鏡がなくなっている――!
 あれが無いと帳面が見えないのだと、ぼんやりする視界で手探りを始めるが、何処をどう探しても眼鏡は見つからない。
「んおー! これは盗まれたに違いないッス!」
 少年は裸で駆け出しそうになるところ、慌てて服を着て、湯屋の主人の所へ走った。


「サムライエンパイアの人々はお祭り好きで、国中のあちこちで、いつも何らかのお祭りが行われている。この『五右衛門風呂祭り』もその一つだ」
 実に様々な祭りがあるものだと、感嘆を添えるは枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)。
 義賊と慕われた石川五右衛門を偲ぶ行事だそうだが、寒さが厳しくなる頃である事も相俟って、多くの旅人が五右衛門風呂に入りに来るらしく、酒屋も飯屋も大賑わいとなると説明を足した帷は、ここで幾許か柳眉を顰めた。
「そうして大勢の人で賑わうお祭りの最中に、オブリビオンが乱入する。どうも偲ばれた当人のようだ」
 なんと、五右衛門風呂祭りに本人が登場する。
 かの大泥棒を義賊と親しんでいる者にとっては、もしか嬉しい出来事かもしれないが、非常に迷惑な話とは続く言が示そう。
「やはり彼奴は大泥棒。皆々が風呂に入って油断したところを、脱衣所に置かれた大事なものだけを盗んでいってしまうんだ」
 そこにある物を全て盗んだのでは、ただの物取り。
 天下御免の大泥棒は、主が大事にしている物、最も盗んで欲しくない物を見極めているようで、たとえ畳まれた衣類の上に膨らんだ財布が置かれていたとしても、五右衛門は主が金より大事にしている別の何かがあれば、それを盗んでいく。その驚くべき犯行を止める手立ては猟兵にも無い。
 帷はここで凛然を萌して、
「だが、取り返す手段はある。彼奴が屋根伝いに逃げる所を取り押さえるんだ」
 幸いにしてこの界隈には、祭り影響で「ハレの霊力」が蓄積されている。
 この霊力を借りてオブリビオンの力を、即ち石川五右衛門の力を弱めて捕まえれば良いのだと云った帷は、ぱちんと弾指してグリモアを喚ぶ。
「勿論、彼奴は骸の海を潜った者。仕留められるのは君達しか居ない」
 猟兵の大捕り物を見せて貰おうと、小気味よく頬笑むのだった。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、儀式魔法【Q】「江戸幕府を讃えるお祭り」の結果出現した二章構成のシナリオ(難易度:普通)です。

●戦場の情報
 サムライエンパイア、京都は鴨川の七条辺「釜が淵」。
 石川五右衛門の釜煎りに使った釜が流れ沈んだ所と言われており、当シナリオでは鴨川沿いに立ち並ぶ建物のうち、幾つかの旅館や湯屋を舞台に扱います(全ての猟兵が同じ建物には居ないかもしれません)。

●シナリオ情報(三章構成です)
 第一章『湯屋でのんびりと……』(日常)
 銭湯に入ってリフレッシュ! じっくりお湯に浸かるだけでなく、二階の座敷で休憩もできますが、猟兵は脱衣所での着替えや入浴中に「大事なもの」を盗まれますので、なくなって困るものをプレイングにてご指定下さい。

 第二章 天下御免の大泥棒『石川五右衛門』(ボス戦)
 猟兵の「大事なもの」を盗んだ犯人は、数十年前に処刑された筈の大泥棒でした。
 一部の民には義賊として伝わっているようですが、その実とても残忍な性格。抜け忍であり、煙管を用いた怪しげな術を使います。
 周辺の旅館や湯屋の屋根上での戦闘になるでしょう。

●プレイングのコツ
 第一章で「盗まれた大事なもの」は、第二章で石川五右衛門が所持しています。
 大切なものを取り返す為に、大泥棒を捕まえてやっつけましょう。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。呼び名や関係性があると助かります。
 また、このシナリオに導入の文章はございません。オープニング公開後、すぐにプレイングをお送りいただけます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 日常 『湯屋でのんびりと……』

POW   :    ゆっくり浸かろう

SPD   :    さっぱりするなあ

WIZ   :    しっとり潤う~

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アインズ・ブルゴーン
大事なものは『財布』だな。
今の俺の全財産が入っている。
まぁ、アックス&ウィザーズ世界の通貨だが。

ゆっくりと、浸かろう~。
やはり風呂はいいものだな。
こちらの世界のものは特に質がいい気がする。
さて…。
一仕事前に、もうしばらくゆっくりとしておくか。

口調、その他ステシ準拠。
他の人との絡み歓迎。
迷惑行為は致しません。



 精悍の躯をぐうと屈め、屋号を印した京紫の暖簾を潜る。
 間もなく迎えに來る使用人に手持ちの武器を預けたアインズ・ブルゴーン(冒険者・f35733)は、妙な刀があったものだと目を皿の樣にする男を眦に置きつつ、奥へ進んだ。
 鼻梁を掠める湯の馨りが、世界の疆を超えて旅客を迎えよう。
 扉を開くなり肌膚いっぱいに湯気の温もりを浴びたアインズは、贅沢にも掛け流しに、釜の縁を踊る湯の音にそっと微咲(えみ)を湛えた。
「やはり風呂はいいものだな。ゆっくり浸からせて貰おう」
 己が日々に依頼をこなす世界でも、風呂に入る機会はある。
 然し水の多さはエンパイアが勝ろうか、躰の汚れを流す爲にこれだけの湯を沸かすとは――と唸ったアインズは、肩まで確りと浸かり、その熱さをじっくり味わう事にした。
「……ふぅ」
 不覚えず息が零れるのは、躰の芯から温められるからに違いない。
 流石は五右衛門風呂と云った處か、薪木をふんだんに使って沸かした湯はくつくつと、肌膚からじんわり熱さを伝え、浴(ゆあみ)する者を温もりに包んでいく。
「此方の世界のものは、特に質がいい気がする」
 無骨な手に一掬いし、サラサラと零れゆく湯の柔らかさを見るアインズ。
 奥から三助が伺いに來るも、流しは取らず、心ゆくまで悠揚(ゆっくり)と湯に入った彼は、充分に温まった躯を脱衣所へ、而して異變に気付いた。
「成る程、財布を盗っていったか」
 着た時と何ら變わらぬ籠の中、財布だけが無くなっている。
 其は現在のアインズの全財産を入れたもので、中身はアックス&ウィザーズの通貨――つまり彼がこなした依頼の報酬で、仕事の腕を證左(あかし)するものに他ない。
 蓋し財布を盗られて動搖する男でも無かろう。
「随分と手際の良い事だ」
 アインズはかの泥棒の仕事ぶりを飄々と褒めると、財布以外の物を身に着けて廊下へ、陽気な都々逸が聽こえる二階へ視線を結んだ。
「扨て……。一仕事の前に、もう暫くゆっくりとしておくか」
 これまで受けてきた依頼と同じで、時期が來れば動けば佳い。
 全財産を失ったからと云って狼狽する事も無し、暫し預けて置けば良かろうと踏み出た爪先は、そのまま二階へ――幾人かの旅客が堪能する京の風情を眺めに行く。
 濡れ髪を吹き抜ける風が心地好かろう。
「噫、川辺は涼しいな」
 爽涼の風を連れる窓際に近付き、さやさやと水を轉がす川音に耳を澄ます。
 而して鋭気は充分。聡き聴覚は今に跫音がする筈だと、屋根に意識を向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

ここに来る少し前に、カルタ買ったんですよー。陰海月のおねだりで。
最近、陰海月は他世界のカルタも欲しいと言って…。

湯に浸かってる間に盗まれたの、それなんですよねー。本当に手際のよくて嫌になりますねー。
しかも、かなり的確ですよー?

ええ、これはもう、追いかけて倒すしかありませんね?
相手、オブリビオンなんですし?
ハレの霊力は悪霊的に苦手ですけど、利用できますしね?
(突然ののほほん消失)


陰海月「ぷきゅぅ…(カルタ…)」凹んでる。
霹靂、友達が凹んでてわたわた。
義透たちと陰海月、いわゆる『お爺ちゃんと可愛い孫』みたいなものです。



 而して一人の猟兵が二階に上がった時、着物の男が窓から街の景色を眺めている。
 彼もまた猟兵の一人、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)なる器の表層に出るは第一人格『疾き者』で、先程まで風呂に入っていたという彼は、涼風に搖れる濡れ髪が頬を掠めるのも構わず、膝元で丸くなった『陰海月』を撫でていた。
「……ここに來る少し前に、カルタ買ったんですよー。陰海月のおねだりで」
「……ぷぅ……ぷきゅぅ……」
 手はがっくりと凹んだミズクラゲを慰めつつ、スッと通った鼻梁は窓より覗く小橋へ、湯屋に來る前に通った道を眺むがてら、樂しげだった雰囲気を思い起こす。
 上下の睫は結び合わせた儘、義透は言を足して、
「最近、陰海月は他世界のカルタも欲しいと言っていたものですから」
 義透ら四悪霊にとって陰海月は『孫』みたいなもの。可愛い孫におねだりされたなら、『お爺ちゃん』の財布は直ぐにも緩んで喜ばせたし、実際とても喜んでいたのだが――。
「湯に浸かってる間に盗まれたの、それなんですよねー」
「ぷきゅぅ……(カルタ……)」
「本当に手際がよくて嫌になりますねー。しかも、かなり的確ですよー?」
 何せ忍者である己すら出し抜いたのだ。
 聽けば伊賀の抜け忍とも噂されている樣だが、なるほど唯の物盗りでないとは、財布を残して去る――大事な物だけを竊む狡猾さで理解ろう。
 斯くしてすっかり元気をなくした陰海月には、お友達の『霹靂』も心配して、
「……クルーン……」
 常は義透の影に潜むヒポグリフも出てきてわたわた、何とか励まそうにも肝心のカルタがなく、もどかしそうに傍で翼をはためかせるのみ。
 蓋し穩やかに語る義透とて幾許か感情が滲み出よう。
「ええ、これはもう、追いかけて倒すしかありませんね? 天下御免の大泥棒とやらも、骸の海から現れたオブリビオンなんですし?」
 柔かく語尾を持ち上げる科白は變わらず温容。
 然し漸う五感を鋭く、周囲の賑わいを敏感に感じ取っていく疾き者は、のほほんとした空気を次第に収めていく――。
「……ハレの霊力は悪霊的に苦手ですけど、利用できますしね?」
 今はUDCアースに住む義透達だが、エンパイアのハレの霊力は兩世界に通じるもの。
 お祭りによって昂揚する独特の気配は、實は悪霊を複合させた身には合わないのだが、其は骸の海を潜った者とて同じにて、かの大泥棒の跋扈も確実に阻んでくれるだろう。
「――扨て、時を待ちますか」
 薄く引き結んだ脣を滑る言は、湯浴み後とは思えぬほど冷ややかだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フランツィスカ・フロイデ
「はあ……❤」
※魅惑の入浴シーン

気持ち良かったわぁ……
そして上がってみると、驚くの

下着がなくなっているわ!

まあ……そんな……どうしましょう……
何に使うつもりなのかしら……❤

盗んだ人の気持ちを考えるとドキドキするけど
何か適当なものを羽織って犯人を捜しに行くわ
流石に全裸で出歩いたら……きっと気持ち良いのでしょうけど……岡っ引きが捕まえに来るかもしれないし
動くとちょっと羽織ったものが取れそうになるけれど
お風呂上りってことで大目に見てくれるわよね世論?
屋根の上を跳んだりしたら色々とはみ出るけれど
わざとじゃないわ……❤

もし犯人らしき人の姿が見えたら追跡者をけしかけるわ
頑張ってストーキングするのよ



 釜の縁に横溢(あふ)れる湯に、白磁の繊手を潜らせる。
 而して一掬いした温もりを、後れ毛の艶々しく光る頸筋(うなじ)へと注いだ佳人は、薄く開いた紅脣より悩ましい吐息を零した。
「はあ……❤」
 美し妖し甘美の聲を漏らすは、フランツィスカ・フロイデ(歓喜のフラン・f35698)。
 蠱惑に滿ちた肢軆を桃色に上気させた凄艶は、祭りならではの愉しみという釜風呂から出ると、幾分にも滑らかになった肌膚を湯気に秘めつつ、脱衣所へ向かった。
「お祭りに漾うハレの霊力も力強くて、逞しくて、気持ち良かったわぁ……」
 實に良い湯だったと熱の余韻を味わいつつ、服の布地に手を遣る。
 然し服を着ようとした矢先、眞ッ先に身に着けるべきモノが無い事に気付いた彼女は、困ったような、それでいて何處か悶えるような微咲(えみ)を零した。
「……まぁ、下着がなくなっているわ!」
 常人なら狼狽しきる處、埒外な彼女はゾクリとした官能を憶えたか、
「……そんな……どうしましょう……一体、何に使うつもりなのかしら……❤」
 噫、盗んだ者の気持ちを考えるとドキドキと胸が高鳴る!
 危険な妄想に粟立つ肉体をその儘、素肌で出歩けたなら、嘸かし快感が滿ちるだろうと情動が過るが、岡っ引きが捕まえに……お縄にされるかもしれないので止めておく。
「何か適当なものを……これなんて、どうかしら……?」
 とりあえず、客用に準備された簡素な浴衣を羽織ったフランツィスカは、帯の締め方もよく解らないまま廊下を出て二階へ、泥棒ならば屋根伝いに逃げるだろうと、瑞々しい脚を露わに屋根へ昇り出す。
 而してやっぱり、胸元で蝶結びをしただけで隠し通せる豊滿で無し。
「やだ……ちょっと動いただけで開けちゃう……❤」
 そのあられもない姿には、二階で涼んでいた客達も一気にのぼせ上がろう。
 彼等は一樣に慌てふためきながら彼女を止めて、
「ひー! そんな妙齢のお嬢さんが諸々と色々とはみ出して……!」
「お風呂上りってことで大目に見てくれるわよね、世論?」
「よろん」
 二語三音で言い聞かせる。大丈夫かなって思わせる。
「わざとじゃないから……ね❤」
 人差し指を紅脣に宛てて旅客を押し留めた彼女は、大泥棒を追跡すべく瓦を踏む足から漆黑の影を這わせると、己も麗瞳を烱々として四邊(あたり)を見渡した。
「さぁ頑張ってストーキングするのよ」
 而して須臾、影の追跡者と魅惑の星眸(まなざし)が屋根伝いに滑り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

嘗て存在した義賊を偲ぶ祝祭…
死して滅べど人々にその名は残り続けるか…
…そういえば他の世界でも殉教した聖人を偲ぶ祝祭もあれば
死者の魂が現生に戻ってくる祝祭もあったっけ…
どの世界でも死者を偲ぶ祝祭はあるんだね…
…ともかく…五右衛門風呂とやらに入るか…

ガイドブックを読み[世界・流行・グルメ知識]を得て
五右衛門風呂に肩まで浸かってゆったり過ごそう

はぁ…極楽極楽…
たしか侍の世界では風呂に入った時はこういうんだっけ…
かの義賊は釜茹でにされて処刑された…
嘗ての処刑法も今は人々の娯楽か…不思議だなぁ…

はぁー気持ちよかった…何食べようかな…
…?…アンダルシャナ家の紋章が…ない…盗られたッ…!?



 しゅるり空気を掠める布擦れの音が、白磁と透徹る素肌を晒す。
 折に、ぽつりと佳聲が染む。
「嘗て存在した義賊を偲ぶ祝祭……死して滅べど人々にその名は残り続けるか……」
 先に學んだ通り、脱衣所の空き籠に脱いだ衣類を入れた仇死原・アンナ(炎獄の執行人あるいは焔の魔女・f09978)は、扉を開けるや朦々と立ち込める湯気に包まれた。
「……そういえば、他の世界でも殉教した聖人を偲ぶ祝祭もあれば、死者の魂が現生に戻ってくるという祝祭もあったっけ……どの世界でも死者を偲ぶ祝祭はあるんだね……」
 湯気の奥に烱眼を絞れば、漆黑の彩に映るは五右衛門風呂。
 贅沢にも掛け流しに、釜の縁より滾々と温湯を溢れさす風呂を暫し見つめたアンナは、足先から肩へと掛湯した上で、長い脚をスッと湯に潜らせた。
「……ともかく……入るか……」
 慥か座って肩まで浸かるのだったか。
 己の故郷ダークセイヴァーでは、汗を流すにこれだけの湯を沸かす風習は無かったが、全身を湯に浸からせる感覚は悪くない。いや、それどころか――、
「はぁ……極樂極樂……」
 思わず、侍の世界で風呂に入った時に云うらしい言葉が零れる。
 そして身体も悦んでいようか、温湯を滑る肌膚は耀きを増して艶々と、美し桃色に上気する頃には芯から温まっていよう。
 アンナは眞白の頸筋(うなじ)に湯を送りつつ呟いて、
「かの義賊は釜茹でにされて処刑されたと聽いたが……嘗ての処刑法も今は人々の娯楽か……不思議だなぁ……」
 湯屋に來るまでに得た知識では、其は釜茹地獄を再現した刑罰器だったとか。
 かの大泥棒が処罰され、平和になったからこそ祭事となったか、罪人の名を冠した風呂に親しむエンパイアの民の逞しさに驚くアンナ。
 それから身体を流し、髪も洗ってゆったりと過ごした佳人は、「入浴後は二階で涼むのがオススメ」とのクチコミに從うべく、風呂を出る。
「はぁー気持ちよかった……何食べようかな……」
 聖護院大根のおでんは如何だろうと言ちつつ、籠に入れておいた服を着る。
 ブラウスを纏い、コルセットを締め、腕輪を嵌め……漸う処刑人の姿に戻るアンナは、不圖(ふと)、ガイドブック『ぐりもあ』の下に隠していた紋章が無い事に気付いた。
「……? ……アンダルシャナ家の紋章が……ない……盗られたッ……!?」
 かの紋章こそ、呪われし処刑人の一族の證左(あかし)。何より大事なものだ。
 処刑人に戻るも、何處とない心許なさに胸に手を宛てたアンナは、彈かれた樣に廊下を駆け出し、大罪人を捕えるべく烱眼を巡らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
お金より大事、となればこのロザリオでしょうか
盗まれると分かっていて放置するのは落ち着きませんが……まぁ、下着泥棒よりはマシと思いましょう
今はお風呂を楽しむことにします

熱いお湯に浸かって冷えた身体を温め……それにしても、釜茹で処刑とは、随分と手間のかかる方法を使ったものですね
そしてそれを偲んで真似るお祭りとは……これがカルチャーギャップですか

この宿はなかなか眺めが良いですね
それに祭りのおかげで聖なる力――ここでは「ハレの霊力」と呼ぶのでしたっけ――も高まっていて心地よさを助長していますね
身も心も穢れを洗い流せる、良き湯です



 をんなと書かれた暖簾を潜るや、朦々と立ち込める眞白の湯気に包まれる。
 品良い鼻梁に湯の匂いを掠めつつ、するすると布摺れの音を連れて極上の美肌を暴いたオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、空き籠にシスター服を畳み入れる間、大事なものだけを的確に盗んでいくという大泥棒の事を考えていた。
「お金より大事、となれば……このロザリオでしょうか……」
 オリヴィアにとって信仰は心の支えであり、心から湧く力だ。
 手に取るだに珠を繰るほど馴染むロザリオを、ヴェールの上にそっと置いた修道女は、今度こそ全てを取り払って釜風呂へ、滴るほど濃艶な肢軆を温湯に浸からせた。
「盗まれると分かっていて放置するのは落ち着きませんが……まぁ、下着泥棒よりはマシと思って、今はエンパイアの人々が親しむお風呂を堪能することにしましょう」
 釜の縁を踊っては横溢(あふ)れる湯に、肩まで浸かる。
 湯屋に來るまでの風は冷たかったが、今は寒さも吹き飛ぶような温かさで、柔かな湯はオリヴィアの柔肌を潜る度に滑らかに艶やかに輝かせていく。
 心地好い感覚に、ほう、と吐息を零した佳人は、湯面を見ながらそっと呟いて、
「……それにしても、釜茹で処刑とは、随分と手間のかかる方法を使ったものですね」
 聽けばかの大泥棒は、釜茹地獄を再現した刑罰器で処刑されたとか。
 油で煎殺すとは随分グレイトな処刑方法だが、斯くして命を落とした男が風呂の名前になって親しまれるとは、エンパイアの人々も頗る逞しかろう。
「釜茹でにされた賊を偲んで釜湯を真似るお祭り……これがカルチャーギャップですか」
 故郷ダークセイヴァーでは斯くあるまいと零れた苦笑は吐息となって青空へ、ずらりと竝ぶ湯屋の湯気と交じ入る。
 眞白の湯気を追ったオリヴィアは、金彩の瞳を淡く細めて、
「この宿はなかなか眺めが良いですね……」
 然う。鴨川沿いに軒を連ねる湯屋や旅籠は、片側に街の賑わいを、逆側に川のせせらぎを置く風情ある佇まい。
 掛け流しの湯の音から外の世界へと耳を澄ませた佳人は、喧噪に相俟って界隈に滿つ、独特の霊氣――神秘の力も感じよう。
「それに、祭りのお蔭で聖なる力……侍の國では「ハレの霊力」と呼ぶのでしたっけ? その力も高まっていて、心地よさを助長していますね」
 云って、ちゃぷんと頸筋(うなじ)に湯を掛ける。而して目尻を緩める。
「……身も心も穢れを洗い流せる、良き湯です」
 ほうと零れる吐息も温もった頃合い、白磁の肌膚を桃色に上気させて釜を出た凄艶は、實に晴れ晴れとした表情で脱衣所に向かったが、その五秒後、凄まじい霹靂が疾走する。
 なんと、まさか、下着の方が無くなっていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
京の都に来るのは久しぶりだねェ
うーん、なんかいつ来ても都会だ
あ、後で食べよ(屋台でいなり寿司を買い包んでもらう)

天下の大泥棒ね
つーてもオレの所持品って売り物の飴(普段、市井では飴行商が生業)とお金以外にそんな目ぼしい物ないしなぁ
相棒の鸚鵡が『ユキエかな?』
ユキエはモノじゃねーし、自分で逃げられるだろ
『そうね。自在符かな?』あ、それはありそーだねェ
(自在符は畳んだ服に一応隠す)

お湯で暖まった後、上でユキエと合流してホッとする
所持品を検めるとお金も自在符はあるが「櫛羅」がない…(見た目は平静だが内心血の気が引いてる
手甲留め具にしてる指輪だが暗器で師匠からの餞別の品

えー…まさかアレ盗る??

アドリブ可



「うーん、この、いつ來ても都会な感じ……久しぶりだねェ」
 飴行商を生業にお祭りの賑わいに溶け込んだ鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、湯屋へ向かうがてら、京の都ならではの瀟洒な空気を懷しむ。
 風は冷たいが、湯屋へと奔る人々の気忙(せわ)しさにも冬の風情があろう。
 洗髪に黄楊の櫛をさした女と擦れ違ったトーゴは、湯上がりの馨香を鼻梁に掠めつつ、この界隈に現れるという義賊の名を呟いた。
「天下御免の大泥棒ね……聽けば大事なモノを竊むらしいけど、オレの所持品っつーても売り物の飴とお金以外にそんな目ぼしい物ないしなぁ」
 その蜂蜜飴も金子も、仕事で使う分があれば充分にて、決して多くは無い。
 實に竊み甲斐の無い獲物だと云えば、市井では客の呼び込みとして働いてくれる相棒の鸚鵡が、美しい聲を囀った。
『ユキエかな?』
「ユキエはモノじゃねーし、いざとなれば自分で逃げられるだろ」
『そうね。それじゃ天下自在符かな?』
「あ、それはありそーだねェ。葵巴が賊に渡ったら一大事だ」
 幾許の言を交しつつ、湯屋の暖簾を潜り、廊下までは同行する。
 羽根が湿るからと脱衣所の前でユキエと別れたトーゴは、一應は畳んだ服に符を隠し、朦々と湯気の滿つ空間へ――五右衛門風呂を愉しむ事にした。
「あー……ぬくもる……」
 冷たい風に晒された身体を、ぎゅうっと抱き包む湯の温もり。
 掌に一掬いしてはサラサラと零れる湯は柔かく、程良い熱さに肩まですっぽり浸かったトーゴは、漸う肌膚に染む温湯が芯まで温めるまで、じっくりと釜風呂を堪能した。
「五右衛門は地獄を見たらしいが、オレには極樂だった……」
 風呂を出て二階に上がれば、ユキエが窓辺で合流を待っている。
 いつも通り羽繕いする相棒にホッとした青年は、先に屋台で包んで貰ったいなり寿司を広げると、其を口に頬張りつつ、所持品を検める事にした。
「えぇと……財布に、蜂蜜飴……」
『天下自在符もちゃんとあるわね』
 ユキエは安心したように囀るが、荷物を探る手がピタリと止まる。
「あれ……『櫛羅』がない……いや、なくなる筈は……」
 其は鰭や骨を指輪状に加工した暗器で、普段は手甲の留め具にしている装具。
 師匠からの餞別の品とは、一見しただけの泥棒に判然ろうか――。
「えー……まさかアレ盗る??」
 聲色も表情も變わらぬが、トーゴは内心、血の気が失せていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
少し風変わりなお風呂というのも良いものですね……
随分肌寒くなってきていますし、体を温めるには持って来いです

相手の視線が己の簪に向かっているとは気付かず
少し首を傾げながらも微笑み返す
倫太郎、ご機嫌ですね?

理由を知れば、瞬きした後に笑って
ふふ、なるほど……そういうことでしたか
気遣って頂けるのが嬉しいもので、つい

湯から上がると愛用している刀が見つからず
慌てて周囲を探るも、それは倫太郎も同じようで
いいえ……私も、夜禱と嵐が見つかりません
……二本とも、ですか

倫太郎は何を……は、早く取り戻さなければ駄目でしょう!
冷静に話している場合ではありません
着替えたらすぐに探しに向かいましょう……!


篝・倫太郎
【華禱】
温泉と違って手足伸ばせないのが残念だけど……
でもこの季節にのんびり長湯なんてちょっとした贅沢だよな

隣でにこにこしてる夜彦にそう声を掛け
簪がいつも通りに髪を彩ってるのを確認すれば
俺は俺でご機嫌になっちまうんだけどサ

え?
だって、簪になんかあったら困るデショ?
主に、俺が

そう告げたら夜彦が瞬きしてから蕩けるように笑う
その顔は反則だと思うんだけど、ダンナサマ?

そんな風に普段通りに過ごして
湯から上がれば……

あれ?夜彦、ここに置いといた巾着袋知らない?
ここ、と言いながら服の脇を指し示して確認

え?うん
結婚指輪が入ってるから

呑気にしてる訳じゃないけどさ
急いで着替えて探しに行かなきゃな
あんたの夜禱と嵐も



 釜の縁を踊っては零れる湯の中へ、長い脚を潜らせる。
 そのまま腰を落とし、じんわりと肌膚を抱き包む熱さを感じつつ、肩まで浸かる。
 而して全身に染み渡る温もりに、ほうと吐息を零した篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は、眞白の湯気を挟んで微笑を結んだ。
「温泉と違って手足を伸ばせないのが残念だけど……うん、これはこれでヨシ」
「慥かに。少し風變わりなお風呂というのも良いものですね……」
 仲良く竝んだ釜に入り、五右衛門風呂を堪能する二人。
 お互いに体格に恵まれた故に、同じ釜に入る事は憚られたが、漸う温まる腕を伸ばして拳をこつん、輕く挨拶が出來る距離が懷(ゆか)しかろう。
 そちらの湯加減は如何、と艶笑を交した倫太郎と夜彦は、朦々とけぶる湯気につられて睫を上に、凛と澄み渡る冬の空を見上げる。
「冬の京でのんびり長湯なんて、ちょっとした贅沢だよな」
「ええ、このところ肌寒くなってきていますし、体を温めるには持って來いです」
 暖簾を潜るまでの寒さが嘘のよう。
 空気の冱える冬こそ温湯が戀しくなるものだと、弓張月の如き美しい横顔を見せる夜彦の髪には、竜胆の簪が色褪せぬ花色を咲かせており、その優艶を瞶める倫太郎はふくふくと頬笑む。
「綺麗だな」
「はい、眺めも良く」
 藍彩の髪を纏めた事で晒される頸筋(うなじ)の白きこと美しきこと。
 湯気越しに会話を少々、琥珀色の精彩を柔かく搖らす倫太郎が己の簪を愛でているとは気付かぬ夜彦は、品佳い鼻梁をついと向けて首を傾げた。
「倫太郎、ご機嫌ですね?」
「え? だって、簪になんかあったら困るデショ? ――主に、俺が」
 聽けば、今日び現れるは天下御免の大泥棒。
 かの男は人が何より大事にしているものを竊む手練れにて、竜胆の簪に万一があってはならぬと、倫太郎はいつも通り艶髪を彩る簪に安堵する。
「大切なものがちゃんと居てくれるから。俺は俺でご機嫌になっちまうのサ」
 飾らぬ科白が實に彼らしい。
 滿面の咲みの理由を知った夜彦は、目瞬きした後にふうわと破顔して、
「ふふ、成る程……そういうことでしたか。気遣って頂けるのが嬉しいもので、つい」
 眸を迴らし一笑すれば――とは正にこの事。
 淡く上気した塊麗の微笑を目の当たりにした倫太郎は、もう蕩けるしかあるまい。
「……その顔は反則だと思うんだけど、ダンナサマ?」
「倫太郎?」
「これ、上せるわ」
 長湯にではなく、誓いを立てた愛しき花簪に。
 随分お熱いのに中てられたと諧謔を零した倫太郎は、そのままズブズブと釜湯に沈み、いつにも増して昂ぶる夜彦熱を遣り過すしかなかった。

  †

 斯くして充分に温まった倫太郎と夜彦は、頃合いに釜より出て脱衣所へ向かう。
 この後は二階でゆっくり景色でも眺めて涼もうと、ほわほわの微笑を交して籠を寄せた二人は、不圖(ふと)、可怪しな事に気付いた。
「あれ? 夜彦、ここに置いといた巾着袋知らない?」
 ここ、と服の脇を指し示した倫太郎が夜彦を見れば、彼もまた訝しげに、翠緑の麗瞳をきょろきょろと四邊(あたり)に巡らせている。
「いいえ……私も、夜禱と嵐が見つかりません」
 脱いだ衣類の傍に置いた筈の刀が無い――。
 曇り無き刃の愛刀も、蒼銀の刃が美しい霊刀も掛け替えのない一振りにて、常に帯する双刀の紛失に焦る夜彦は、服を着る手も止めて溜息を吐く。
「……二本とも、ですか」
 脳裏に過るは、矢張り『石川五右衛門』なる盜人。
 聽けば伊賀の抜け忍と噂される男は、如何な竊盗術を使ったというのか、二人の猟兵に気取られず籠を漁るなど、尋常ならぬ腕前を持っている。
 漸う烱瞳を鋭くした夜彦は、流眄に隣の籠を瞥て、
「倫太郎は巾着が見当たらないのですね?」
「え? うん。あの中に結婚指輪を入れておいたから」
「――ッ!?」
 倫太郎を見て、籠を見て、また倫太郎を見る。而して蒼褪める。
 結婚指輪と云えば、あれだろう。陽の光を湛えた宝石を内に祕める銀環は、誓いと禱りを込めて夜彦が贈った『双誓華禱』に違いあるまい。
 優艶のテノール・バリトンはいつになく狼狽を滲ませて、
「は、早く取り戻さなければ駄目でしょう!」
「いやね? 呑気にしてる訳じゃないけどさ」
 焦眉警急を告げられた倫太郎はと云うと、着るものを着なくては廊下にも出られぬと、夜彦に先駆けて布地を――戰闘装束を整えていく。
「冷靜に話している場合ではありません。着替えたら直ぐに探しに向かいましょう!」
「ああ、絶対見つけ出さなきゃな。あんたの夜禱と嵐も」
 而して夜彦も急ぎ着替え、廊下に出るなり猛ダッシュするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
冬季ということもありますが最近は特に寒いです。
丁度いいのでロベルタさんと湯屋へ行きましょうか。
「…湯屋…に、いき…せん…か?」

「ふぇえ?!」
湯殿へ進む前に道具など身支度をしっかりと整えてます。
身体にタオルを巻いて髪を結って私の準備ができました。
隣から妙な視線を感じて不思議そうに振り返ると…。
『やっぱり、墨ねーはせくしーだじぇ~♪』の声が。
「…そ、そ…な…と…いい…で…準備…お願…しま…!」
はぅ…。私の身体って…そんなに凄いのでしょう…か…。

ロベルタさんに湯殿での決まりを教えながら身体を洗い。
湯を張った浴槽で肩まで浸かってのんびりしましょうか。
故郷サムライエンパイアの湯は久々なので落ち着きます♪
両腕や両脚を伸ばせるくらいの人数ならば伸ばします。
「…あ。浴槽…で、遊…ない…でく…さい、ね…」
ちゃんと守っていますが一応ロベルタさんに言っておきます。
「…ふ…ぁ…ぅふ♪」
いい湯なので思わず気持ちがいい声が。ふふ♪いいお湯です。
●盗難:『粟田口国綱』(残り二振りは無事)


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
「う? 湯屋?」
初めは解らなかったけどお風呂のことだったんだねぃ。
日中でも身体が冷える時期になってきたし丁度いいよね。
ふーん。サムライエンパイアでは湯屋ってゆーのかぁ~…。
そーいえばアリスラビリンスにお風呂…あったっけ?

墨ねーのやることを見様見真似で真似しながら脱ぐじぇ。
…。おぉー!夏の時も思ったけど墨ねーって…。
「やっぱり墨ねーもせくしーだよねぃ~? 脱ぐと凄い♪」
僕もそれなりだけど墨ねー凄いじぇ。からかい甲斐がある!
からかいながら準備して終わったら墨ねーとユドノへごー!

「おぉお…。でっかいねぇ~…これがユドノ…!」
少し駆けたくなる衝動はあるけど抑えて墨ねーを見習うじぇ。
髪と身体を洗って…あ。墨ねーの髪と背中洗おうかな~♪
すっごく大人数入るからこんなに大きいんだね…。なるほど。

お湯は熱いかなと思ってたけど程々の温度でいい感じ♪
僕は墨ねーの真似をして腕と脚を思いっきり伸ばすじぇ~!
…気持ちよさそうな声だけは墨ねーの真似できなかった…。

〇盗『プリンチペッサ・ロッソ』



 京の冬は、特に風が冷たい。
 雅人なら「懷しき底冷の京」と風情を詠んだか知らぬが、小橋を渡る人々は身を縮めて足早に、釜風呂で温まろうと湯屋の暖簾を潜っていく。
 木枯に襟の合わせを詰めた浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)も寒さが染みようか、洗髪に黄楊の櫛をさした女と擦れ違うなり湯の馨りに触れた彼女は、ここで不圖(ふと)、眞砂路を歩く足を止めた。
「あの、ロベルタさん……湯屋……に、いき……せん……か?」
「う? 湯屋?」
 繊細い佳聲を拾うは、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)。
 墨の少し先を舞うように輕やかに歩いていた少女は、耳馴染みない言葉に振り返るが、ことりと首を傾げるなり嚮導かれた人差し指の方向に、朦々と立ち昇る白煙を見る。
「……火事、じゃないよねい?」
 其が湯気だと判然ったのは、行き交う人の賑わいから。
 これぞ『五右衛門風呂祭り』――師走の始め、湯屋が挙って釜湯を焚くお祭りなのだと界隈の聲を聽いたロベルタは、滿面の咲みを以て「是」を示した。

  †

「なぁんだ、お風呂のことだったんだねぃ。エンパイアでは湯屋ってゆーのかぁ~」
 初めて知った、と興味津々に湯屋の暖簾を潜るロベルタ。
 目に映る何もかもが稀有しいと、空色の瞳をキラキラ輝かせる少女の隣、來客を迎える使用人にペコペコと挨拶した墨は、かぶりを上げるや久々の感覚に包まれた。
「最近……特に……寒く……なって……したし……丁度……良いと……って……」
「う! 日中でも身体が冷える時期になってきたし、あったまりたいねい♪」
 早速中へと入ったロベルタは、墨の案内に從って履き物を預けると、好奇心の赴く儘にパタパタと廊下を掛けて行く。
「あっ、……待っ……」
 いつも通り履き物を揃えていては間に合わない。
 番台の者に湯銭を払うなりロベルタを追い掛けた墨は、「をんな」と書かれた長暖簾を潜るなり溢れた湯気に、故郷ならではの情緒を思い出した。
「……この……ふんだんに……薪木を……って……湯を……沸かす……匂い……」
「ふーん。このモワモワが湯屋らしい香りなんだね?」
 ほんのり口角を持ち上げる墨を見て、ロベルタもすんすんと匂ってみる。
 慣れぬ自分には、脱衣所を取り囲む材木の匂いを感じるだけだが、果たしてこれだけの湯気に埋もれる事はあったろうかと、白く烟る中で思い起こす。
「……そーいえばアリスラビリンスにお風呂……あったっけ?」
 あれば愉快な仲間が一緒に入ってくれたろうか。
 或いは人喰いバスタブに食べられていたろうか。
 残酷なメルヘンワールドでゆっくりとお風呂に浸かる時間は無かったかもしれないと、雲のように漾う湯気の中を進んだロベルタは、墨をお手本に風呂を樂しむ事にした。
「空……ている……籠、に……脱い……服を……畳み……入れ、ます……」
「ふむふむ。籠はどれでもいいのかな?」
 見樣見真似で籠を寄せ、墨の隣で衣服を脱ぐ。
 しゅるり布摺れの音を空気に掠め、素肌を暴いていく佳人を暫し見つめたロベルタは、彼女の肢軆の優艶なラインに、二、三度、ぱちくりと睫を瞬いた。
 悪戯な微咲(えみ)を浮かべたのは、それから間もなくの事。
「……。おぉー! 夏の時も思ったけど、墨ねーって……」
「……?」
 白磁と透徹った肌膚は絹のように滑らかで。
 あらわに開かった胸の豊滿なるは重たげに。
 花車な肩と細く絞られた柳腰が双の膨らみを殊に際立てようか、少女の佳瞳に映された墨の姿態は美しく艶かしく、宛ら月の如く耀いている。
 斯くも悩ましい身体はタオルに巻き包まれ、次いで墨は射干玉の黑髪を結い上げるが、後れ毛を残しながら暴かれる頸筋(うなじ)も滴るほど濃艶であろう。
 ロベルタはそんな彼女に漸う素肌を擦り寄せて、
「やっぱり墨ねーもせくしーだよねぃ~? 脱ぐと凄い♪」
「ふぇえ?!」
「僕もそれなりだけど墨ねーも凄いじぇ? ココとか、ココとか♪」
「そ、そ……な……と……いい……で……準備……お願……しま……! ひゃ……っ」
 つんつん。つうー。
 實に揶揄い甲斐があると、奔放な指先は月白の美肌を滑り、或いは捺擦って、「ふぇ」とか「ひぁ」とか可愛い聲を漏らす墨を弄ぶ。
「は……は……やく……湯殿……へ……!」
「うんうん。ユドノへごー!」
 そうして墨の反應を一頻り堪能したロベルタは、きゅっと手を引かれて湯殿へ、皆々が愉しむ釜風呂へと向かうのだが、揶揄われた方は堪らない。
「はぅ……。私の……身体って……そんなに……凄いのでしょう……か……」
 墨はまだ湯に潜らぬ裡に色味を帯びる頬に手を宛てつつ、そっと、語尾を持ち上げるのだった。

  †

「おぉお……。でっかいねぇ~……これがユドノ……! すっごく沢山の人が入るから、こんなに大きいんだね……。なるほど!」
「……折角……ですから……ゆっくり……温まって……きましょう……」
 天下御免の大泥棒は地獄を見たそうだが、現今の釜湯は極樂だ。
 寒さの嚴しくなる師走、京の冬を堪能するに温湯はもってこいだとロベルタを嚮導いた墨は、銭湯デビューとなる少女に湯の作法から教える事にした。
「……足元……が……濡れて……ので……気を……けて……くだ……さい……」
「う! 墨ねーを見習うじぇ」
 滑って轉んだりしては大變だと云う墨の心配はよく理解る。
 ロベルタは広い空間に行儀よく竝んだ大釜を前にワクワクと、思わず駆け出したくなる衝動を抑えつつ、湯気越しに墨をようく見て手順を習った。
「……掛湯……は……足先……から……手先へ……」
「う。心臓から遠いところからするんだねい」
「……少し、ずつ……で……いい……ですから……」
「あちち。でも気持ちいい!」
 手桶を使って掛湯し、身体を湯に慣れさせる。
 ちゃんと準備を整えれば、じっくり長湯を味わえると云う墨に頷きつつ、我が身を漸う熱に馴染ませたロベルタは、たっぷりと時間を使って髪や身体を洗う事にした。
「墨ねーの髪と背中、洗ってあげようかな~♪」
「……あ、の……一人……でも……大丈……」
「おてつだいだじょ♪」
 湯屋は社交の場。湯殿では誰もが仲良くするのが決まり。
 身体の清潔を保つだけで無し、心も裸に、触れ合いが大事なのだと知ったロベルタは、自身の魅力に気付いていない墨に代わり、慈しむように丁寧に洗ってあげる。
 而して身も心もサッパリした後は、二人で釜湯へ――。
 五右衛門風呂ならではという大きな鐵釜に空きを見つけた墨とロベルタは、円い縁から踊るように湯を零す釜へ、そっと、繊麗の脚を潜らせた。
「……あ。浴槽……で、遊……ない……でく……さい、ね……?」
「もっちろん。危ないことと、皆の迷惑になることはしないよー」
 これまでもよく守っている少女に微咲を置きつつ、釜の底に腰を落とす。
 途端に釜の縁を滑る湯は贅沢にも掛け流しに、墨とロベルタの肩のあたりを搖らせば、その温もりを味わった二人が揃って吐息した。
「久々……の……故郷、の……湯……落ち……着き……ます……♪」
「うーっ! 少し熱いかなと思ったけど、程々の温度でいい感じ♪」
 柔肌をじんわりと包む湯のサラリとして柔かいこと!
 墨もロベルタも、これまで数多の世界を旅した歴戰の猟兵だが、これほどの湯を沸して温まることの出來る世界は、此處と、UDCアースの他にどれだけあろう。
 冬の京の忙しなくも懷しい情景を味わいながらの湯は芯に沁みて、二人は時間を忘れて極上の心地に浸りゆく。
「……二人……しか……居ませんし……手足を……伸ばしても……構いません、ね……」
「僕も墨ねーの真似をして……思いっきり伸ばすじぇ~!」
 より自由に兩腕兩脚を伸ばせば、開放感は抜群。
 まろやかな湯の感触を全身で味わった墨は、思わず法悦の聲を零した。
「……ふ……ぁ……ぅふ♪」
「墨ねー?」
「……ふふ♪ ……いいお湯です……」
 其は甘く蕩ける樣な吐息。
 白磁の繊手に一掬いした温湯を頸筋へと送る佳人を見たロベルタは、自身も「ふうー」とか「んふ?」とか真似してみるものの、墨のような色気は零れず――。
「……気持ちよさそうな声だけは、真似できないじょ……」
 これが通(ツウ)なのかな? と少し羨ましそうに眺めるのだった。

  †

 而して彼女達はまだ気付かない。
 脱衣所に黑影が蠢いたのは何時だったか、決して「をんな」の暖簾を潜ってはならぬ者が棚に近付くと、籠やその周辺に置かれた物品を漁っていく。
『――これか』
 ひとつは、ロベルタの『プリンチペッサ・ロッソ』。
 幾重にも魔術式を刀身にあしらった、数多の精霊を宿すショートソード型の魔法劍は、理不尽に投げ出された世界で少女が生き抜く爲に振った武器のひとつで、どの世界を渡るにしても大切なもの。
 そしてもうひとつは、墨の『粟田口国綱』。
 小柄な彼女が振うにしては随分と勇ましい大刀は、叔父から譲り受けたもので、幾度と窮地を切り開いた其は、刃の乱れ刃文も天然木黒呂塗の鞘も、主の手に馴染んでいる。
『はっはっは! 大事を盗ったり!』
 彼女達に代わって劍と刀を腰に差した大男は、それから素早く姿を消すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
石川五右衛門ですか……。
名ばかりは聞いた事がありますが、随分な人気であるらしい。

しかし大見得を切って退場した役者が再び現れるのは如何なものか。


さておき、誘き寄せる手立てがあるならそれに従いましょう。
家宝の太刀、『鞍切正宗』を湯屋の番台に預け、脱衣所で着物も脱いだら暫し俗腸を洗わせて頂きます。

湯と一緒に酒は――この後を考えれば我慢しておくべきでしょうね。
……ええ、我慢できますとも。

刻々と寒さが骨に沁みる季節ですが、それだけに熱い湯の有難みが分かるというもの。
静かに浸かっていれば、江戸と違って上国の赴きというべきか、神妙な風儀が整っているのが感じられる気がします。

思えば京に足を運ぶのは常に任務あってのものでしたし、いずれは純粋な見物の為に滞在したいものですな。

そうして湯から上がって後、預けた太刀について確認すれば、恐らく消え失せているという話になるでしょうが、こちらにとっては目論見通り。

気にせぬよう言い含めておいて、捕物へと向かいましょう。



 師走の風に京の底冷を憶えつつ、眞砂路を歩く。
 寒き中にも昂揚を感じるのは、祭りの気運か――賑々と人を集める湯屋に視線を結んだ鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は、呼び込みの者が高らかに云う名を佳脣に拾った。
「天下御免の大泥棒、石川五右衛門ですか……」
 其は数十年前、三条河原で煎り殺されたという盗人。
 豊臣秀吉が実権を握った時分に世を荒らし回った賊の首領で、その処刑と壮絶な死は、徳川が天下を取った現今も語り継がれている。
「名ばかりは聞いた事がありますが、祭りになるとは随分と人気な」
 伝説の泥棒は、時の反逆者として民に受け容れられ、今や「義賊」と慕われるほど。
 謎の多さが人々の想像を掻き立てようか、民衆文化・習俗にも馴染みつつある存在感に感嘆を憶えた景正は、活況に招かれるように湯屋へ向かった。
 皮肉めいた竊笑が零れたのは、ちょうど暖簾を潜った時。
「しかし大見得を切って退場した役者が、再び現れるのは如何なものかと」
 文芸になりつつあるとは、畢竟、過去のものとなった證左(あかし)――。
 嘗ては京都所司代の前田玄以に捕われたと聽くが、玄以亡き今は猟兵が召し捕るべしと踏み進んだ景正は、家宝の太刀『鞍切正宗』を番台に預けると、脱衣所へ向かった。

  †

 品佳い鼻梁をふわり掠める湯の馨りが快い。
 猟兵として数多の世界を駆け巡る景正だが、風呂に入るにこれほどの湯を沸かす文化は然うあるまいと微咲(えみ)を零した彼は、しゅるり布擦れの音を連れて着物を脱ぐと、引き締まった躯を湯気の奥へ嚮導いた。
「扨て、竊邪を誘き寄せる手立てがあるなら其に從いまして……今は暫し俗腸を洗わせて頂きましょう」
 手桶を取り、爪先から脛へ膝へ、掛湯は入念に。
 客の気配に気付いた三助が奥から來るも、流しは頼まず、手ずから躰を洗った景正は、此度「ハレの霊力」の源となっている五右衛門風呂に脚を潜らせた。
「――噫、五臓六腑に染み渡る」
 腰を落とし、肩まで浸かれば、全身が心地好い温もりに抱き包まれよう。
 おのず吐息を漏らした彼は、ここで不圖、己が口にした科白に渇きを覚える。
「湯と一緒に酒は……この後を考えれば、我慢しておくべきでしょうね」
 地酒でも愉しめれば最高なのだが、戰闘を控える身では然うもいくまい。
 贅沢にも掛け流しに、釜に溢れては零れゆく湯の音を長い沈默に浮き立たせた景正は、細顎を持ち上げて吐息ひとつ、
「……ええ、我慢できますとも」
 と、メチャクチャ惜しそうな聲を湯気に混ぜた。

 蓋し湯にも漾う京の風情が、酒精に代わって彼を慰めてくれよう。
 刻々と寒さが骨に沁みる季節、それだけに熱い湯の有難みが分かると、手櫛に濡れ髪を掻き上げた彼は、それからゆったりと、じっくりと長湯に耽る事にした。
「……こうして心靜かに浸かっていれば、江戸と違って上国の赴きというべきか、神妙な風儀が整っているのが感じられる気がします」
 云って、掌に湯を一掬い。
 而してサラリと滑る湯の柔らかさに視線を落とした彼は、時間の流れを感じられるのも久々だと目尻を緩めた。
「……思えば、京に足を運ぶのは常に任務あってのものでしたし、いずれは純粋な見物の爲に滞在したいものですな」
 京には古都ならではの、四季折々の懷しさがある。
 雅人は研ぎ颪されて來る風にも風情を詠むらしいが、無骨の士が詠もうとしてのぼせてはならぬと諧謔を零した景正は、後ろ髪を引かれつつ釜湯から上がった。

  †

 服を着て廊下に出た折、湯屋が何やら騒々しい空気に包まれている事に気付く。
「お武家さま。あのぅ、それが……。……あれが、その……でして……」
 番台がもじもじと言い難そうに口を開くが、景正にとっては目論見通り。
 最も大事にするものが順当になくなったのだと解した彼は、涼しげに言を代わった。
「……家宝が無くなったと」
「もーしわけありませーん!」
 番台は預かった筈の太刀が礑と消えて終ったと四途路筋斗(しどろもどろ)に話すが、他にも大勢の客が不滿げな表情を揃えて集まっているのを見た景正は、成程、かの大泥棒が結構な数を竊んでいったものと予想立てる。
「番台殿の失態ではありませぬ。どうか己を責められぬよう」
「? それは如何云う……」
 気にせぬよう言い含め、長い睫を上に、二階を仰ぐ。
 これだけの人が集まっている今、玄関から出ていく事はなかろうと烱眼を絞った士は、キョトンとした儘の番台に更に一言を添えた。
「屋根をお貸し願えますか」
「屋根? お頼みされては断りませんが、そりゃ如何いった料簡で?」
 了解を得るや、爪先は直ぐに階段を駆け上がって二階へ。
 喫驚の表情で迎える客の間を擦り抜けるなり、窓辺に脚を掛けた景正は、颯爽と屋根へ上り、スタコラと走り去る大柄の男を眼路に捉えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『天下御免の大泥棒『石川五右衛門』』

POW   :    煙管の一撃
【手にした煙管】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    煙遁の術
対象のユーベルコードを防御すると、それを【手にした煙管に煙として封入】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    天上天下の叛逆
戦闘力のない【貧しき民の霊】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【彼らの応援と天下転覆の気運】によって武器や防具がパワーアップする。

イラスト:やまひつじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠銀山・昭平です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――時に。
 大切な眼鏡を失くしてしまった丁稚の少年は、よく見えぬ目を「33」のようにして、湯屋の主人に物凄い勢いで訴えていた。
「これは重大な窃盗事件っす! 犯人を探して欲しいんスー!!」
 必死なのは彼だけで無い。
 他にも大勢の客が「金子を盗られた」だの「御守を失くした」だのと押しかけており、晴れやかな祭りの空気に包まれていた湯屋は、今や騒然としている。
『ふっふっふ。人が一階に集まり出したようじゃ』
 その騒然を足元に敷いて嗤笑う男が一人。
 人々が集まる足とは逆に、二階から屋根に上った男こそ、かの大泥棒『石川五右衛門』――何やら丸縁の眼鏡をかけている樣子。
 それもその筈、天下御免の大泥棒は湯屋で竊んだものを身に着けており、腰に何本かの太刀と巾着、懐に財布を沢山、そして侍の國では見た事のない稀有しいものを幾つかと、手に指輪……まさか下着は穿いてなかろうが、とまれ、皆々の大事なものを纏って逃走を図っていた。
『どわっはっはっ! 忍者でもなければ屋根を渡れる者は居まいて!』
 己は伊賀の抜け忍にて、屋根を走るもお手の物。
 このままスタコラサッサと逃げ遂せば万事解決、問題ナシと爪先を彈いた五右衛門は、然し、己を追う漆黑の影に続いて、複数の猟兵が屋根伝いに走り來る姿に目を剥く。
『むむっ、追手!? 随分と手練れの樣だが、ここで捕まっちゃあ御仕舞いよ!』
 先ずは屋根をひとっ飛び! 少し離れた旅籠の屋根へ逃げる。
 この距離を跳んでは來れまいと嗤笑った大泥棒は、脇目も振らず走り出すのだった。
フランツィスカ・フロイデ
ダンサーの身体能力を馬鹿にしてはいけないわ
追跡者のお陰で位置は割れているはずだし
屋根の間を跳ぶのだって、四つん這いになって(お尻と太腿を露出しつつ)跳べば安定して着地(胸も揺らしつつ)できるわ

guten tag.日本の大泥棒さん、

DeutscherJäger
ドイツの猟兵がお相手するわ
(※フランはドイツ人)

「お越しください、絶対かわいい明王!」

とにかくUCを当てるわ
そうすれば音に聞こえし大泥棒も
初心な男の子になってしまうの

あとはお仕置きの時間よ

浴衣をはらりと落として…
生まれたままの姿で抱きつき押し倒すのよ
そのまま抑え込む…堪らないわ❤

貧しい民の霊にも五右衛門さんのかわいい所を見せてあげましょう❤



 大泥棒の足跡を最初に捉えたのは、影の追跡者(シャドウチェイサー)を疾らせていたフランツィスカ・フロイデ(歓喜のフラン・f35698)。
 時に紫水晶と煌めく彩瞳にも大柄な男を映した彼女は、屋根を飛び渡った竊邪に続いてひとっ跳び! 湯気の漾う冬の空に艶かしい肢軆を躍らせた!
「ダンサーの身体能力を馬鹿にしてはいけないわ」
『な、に――!』
 常はステージを華麗に舞う踊り子は、亂次無(しどけな)く打ち纏った浴衣をその儘に輕々と跳躍し、颯然の風に衣を躍らせながら、瑞々しい太腿が裾より覗くも構わず屋根を飛び渡る。
 勾配のある瓦屋根は常人なら轉げ落ちる處だが、四ツ這いで着地したフランツィスカは安定を得るや、スッと頭を擡げ――事も無げに挨拶をした。
「guten tag.日本の大泥棒さん。仕事は随分と上手くいったようね」
『ッッ……その察知力、身の料(こなし)……其方、くのいちか!』
「DeutscherJäger、ドイツの猟兵がお相手するわ」
 狙った獲物を前に衣紋の亂れを直しもせず、魅惑の太腿も臀部も顕わに、開けた襟より覗く双の膨らみを重たげに搖らす度胸(性癖)は尋常で無し。
 標的を間近に愈々凛然を萌した凄艶は、五右衛門が身構えるより疾く繊手を天に掲げ、一陣の風を連れる羽搏きを喚んだ。
「お越しください、絶対かわいい明王(パーフェクト・カワイイ・ガイスト)!」
「――チィチィチィ!」
 佳聲に招かれるは、これまた愛らしく鳴くシマエナガ。
 体高四尺にも及ぶかなりでかい雪の妖精は、冬天を滑り來るやズドンと敵に体当たり、KAWAIIの塊を叩き付ける事で、五右衛門を雲雀の如き美少年へと變えていく――!
「明王に愛されては、音に聞こえし大泥棒も、初心な男の子になってしまうの」
『!? 噫、如何云う事だろう……目の前のお姉さんがいかがわしく見えてくる……!』
「私の下着を盗んだ泥棒猫ちゃん……ここからは愉しいお仕置きの時間よ……」
『くっ、何かとてもいけない感じがする……!』
 本能で抗った五右衛門は、己を義賊と慕う民の霊を召喚するが遅い。
 フランツィスカは軒下に集まる者を「観客(ギャラリー)」と受け容れるや衣を脱ぎ、一糸纏わぬ柔肌が寒天に冷えるより早く、美童の肌膚で温まる事にした。
「さぁ、観客の皆さんにも五右衛門さんのカワイイ所を見せてあげましょう❤」
『なっなにをする……アッー!』
 云うや懐に手を滑らせ、盗まれた下着を取り返す。それから色々剥く。
 竊邪が逃げぬよう巧く取り押さえたフランツィスカは、仲間が揃うまでの時間を奔放に過ごすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:漆黒風

さて、出てきましたか下手人。カルタを取り返すためにも、行きましょうか。
忍者はここにいますしね?

【四悪霊・『廻』】。これを防御しようが、あれは相手が利用できないんですよ。オブリビオンのみを攻撃するのでね。
であれば、まあこのままUC使用して、逃げ足を少しでも遅くしましょう。視界不良だと、思うように動けませんしね。
漆黒風投擲していきましょうか…まあ、痛覚なければ、何されてるかわかりませんでしょうが。

それに、何も追手は屋根伝い、だけではありませんよ?
例えば、空とかね。


凹み陰海月、影の中で大人しくする。
霹靂、空からの急襲する。友達凹ませた奴、許さない。クエエッ!



 黑影に足跡を追わせていた仲間に続き、竊邪『石川五右衛門』の行先を捕捉したのは、重力を感じさせぬ跳躍で屋根を飛び渡った馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)。
 音もなく着地した彼は、事も無げに面を持ち上げ、
「扨て、漸と出てきましたか。陰海月のカルタを竊んだ下手人」
『くっ……足場の悪い瓦屋根を易々と……!』
「それは勿論、忍者ですから」
 飄と告ぐは『疾き者』――引き続き器を預かった外邨・義紘は、掌指に挟める棒手裏剣『漆黒風』を爪のようにして攻め掛かり、またも逃げんとする元忍者に踵を踏ませた。
(『っ、っ! 疾迅い――!』)
 初動の兆し無く飛び込んだ鋭鋩に素早く煙管を嚙み合せた五右衛門は、鈞ッと鏘々たる音を響かせて眦に流すと、表情ひとつ變えぬ義透を間際に、ニッと嗤笑を結び合せる。
『小気味佳い男じゃ。益々これは返せぬ』
「いいえ、返して頂きます。陰海月が元気まで失くしてしまいましたから」
 竊んだのはモノだけで無しと、紡ぐ科白は刃の如く鋭利い。
 目下、我が影で大人しく搖蕩う陰海月(凹み中)を想った義透は、素早く手首を返して第二撃を衝き入れると同時、屋根を覆う程の闇黑を放ッた!
「四悪霊・『廻』――廻れ廻れ。この霧よ、我らが敵に」
 手印も結ばず召喚されるは、いかにも呪われてそうな黑い球体。
 骸の海を潜った者への果てしない怨嗟は球体と膨れ上がるや、屋根全体を狭霧に包み、大泥棒が逃げる道を隠してしまう。
『何と奇妙な術を使う……が、其も煙に巻いて遣ろうじゃあないか!』
「竊んだ處で扱えませんとも。この呪詛霧はオブリビオンのみを攻撃するんですから」
 云うや、答えは現象として顕れよう。
 朦々たる霧の中に聲を拾ったのも一瞬の事、五右衛門は鏃の如く飛び込む『漆黒風』を今度は脇腹に喰らい、痛撃を感じるより先、懐からカルタを掏り抜かれる。
 正しく云えば、痛覚は後々も感じる事は無かったろう。
「まぁ、何をされてるのかも判然らないでしょうが……」
 五右衛門の周囲を巡る濃霧は、視界不良を齎すと同時に感覚を鈍麻させ、ややもすれば逃げに回る賊を囲繞して、仲間が追いつくまでの時間を繋ぎ止める。
「それに、何も追手は屋根伝い、だけではありませんよ?」
 譬えば――と続く科白に被さるように差し入る大きな羽音。
 冬天に双翼を翻した霹靂は、眼下に捉えた大泥棒めがけて嘴撃爪撃を繰り出し、
「――クエエッ!」
 友達凹ませた奴、許さない! と、陰海月に代わって竊邪を仕置くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アインズ・ブルゴーン
バトルアックスとバスタードソードを構え、無敵城塞のユーベルコードを使用。
味方の盾となるため、前に出て囮となる。

「貴様が俺の全財産を盗んだヤツか。」
「しっかし、この世界じゃ使えるわけない金盗んで、楽しいかねぇ?」

煙管の一撃の攻撃を、仲間の盾となるように一身に受け、尚も会話を続けます。
中には挑発するような言動も入れますが、さて、のってくるやらどうなるやら。

ともあれ、まだまだこの業界じゃ新人にも等しい俺だしな。
今はまだ、黙って壁になっておこうじゃないか。



 初動は追跡力と機動性に優れた猟兵が、竊邪『石川五右衛門』の遁逃を阻む。
 人数が集まる迄は敵の座標の維持を――即ち逃げぬよう留めておくのが最良と判断したアインズ・ブルゴーン(冒険者・f35733)は、躊躇わず拇指球を踏み込んだ。
「生憎、忍者では無いが……足場が悪いからと諦める世界で育っちゃいない」
 幾許の諧謔を風に乗せ、屋根から屋根へと飛び渡る。
 冬天に躍った瞬間、軒下を歩く者達が喫驚の表情を揃えるのが見えるが構わず、人々の「ひゃあ」とか「ひぇっ」とかいう聲を聽きながら着地したアインズは、慣れぬ瓦が靴底を搖らすも、其も輕やかに往なして獲物に近付いた。
「――扨て、貴樣が俺の全財産を竊んだヤツか」
『むむっ、新たな追手が現れたか……執拗い者達め!』
「一應は取り立てようと思ってね」
 飄と語尾を持ち上げつつ、手に握るバトルアックスとバスタードソードを構える。
 急勾配ながら根が生えたように立ち開かるアインズは、間合いの異なる武器の構え方も物言いも熟れており、迂闊に逃げて背は見せられまい。
 幾合か闘り合った隙に機を図るべきかと、スッと煙管を構えた五右衛門は、その大柄な躯からは想像も出来ぬ瞬発力でアインズに踊り掛かった!
『ハハ、これは滑稽な! 全財産を掏られた男の顔が拝めるとは!』
「噫、俺も間抜けの顔が見られた訳だ」
『なにっ!?』
「寧ろこの世界じゃ使えない金竊んで、樂しいかね? って嗤ってた處だ」
 劍戟の音に言葉の應酬を添えるも妙々。
 戰斧と劍刃、そして煙管の角逐は鏘鏘と屋根に響き、この音を聽いた街道の通行人らがわらわらと付近に集まり始める。
 而して猟兵の仲間も続々と屋根を伝って揃い始めよう。
 動もすれば逃げ出す大泥棒を召し捕るに、なるべく囲繞したいと思案したアインズは、【無敵城塞】――己が機動力を代償に、仲間の盾に壁にと攻撃を集める事にした。
「預けた金だ。利子を付けて返して貰おうか」
『利子ィ!? 莫迦な事を言っちゃいけねぇ!』
 挑発は――ノッた。踵が瓦に付いているのが其の証拠だろう。
 煙管の一撃は煽られるほど回数を増やすが、アインズは「引き付けられたなら重畳」と一身に打撃を受け取り、仲間に差し入る機会を與えていく。
(「まだまだこの業界じゃ新人にも等しい。默って壁になっておこうじゃないか」)
 目的を果たす爲の役割は心得ている身だ。
 囮となった彼は、而して須臾、側面から差し入る冱撃に口角を持ち上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
この騒ぎにわざわざ屋根を移動…あいつかー!
【軽業/忍び足/追跡】で身軽に屋根や櫓、塀に垣根、植木も足場に追う
相棒に耳打ち【動物と話す】
ユキエ、あいつの頭上を飛んで場所教えてくれ
オレ以外にも被害に遭った猟兵いると思うし
…危ないと思ったら逃げろよ
ユキエは意気揚々『うん、やってみる』

オレには思い入れのあるモンだがオッサンには大して価値も無い手甲留めだぜ
返して貰う…!

目視しUCの蜂を前方3後方4に分け挟み撃ち
蜂に追随し接近
クナイを【念動力で投擲】攻撃と敵煙管の防御【武器受け】
【カウンター】で接近し指ごと奪還するつもりで斬りつけ

無言だが
撃ち合いが羅刹的には段々楽しく…
Σあ!(我に返る)
物返せっ

アドリブ可



 隙あらば遁逃する相手に對し、接触の間際まで影を隠す。
 二階の窓に足を掛けるや、湯屋の裏手、鴨川沿いに連なる土塀を伝って大泥棒を追った鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、ちょうど屋根を飛び渡る男の姿を捉えた。
「この騒ぎにわざわざ屋根を移動する……あいつかー!」
 腰に何本もの刀や劍を差した灰髪の男こそ、天下御免の大泥棒『石川五右衛門』!
 烱眼を屋根に結びながら塀を駆け走ったトーゴは、旅籠屋の生垣を輕快に飛び越えるや小さく囁いた。
「ユキエ、あいつの頭上を飛んで居場所を教えてくれ」
『うん、やってみる』
 科白を拾うは、すぐ傍を飛ぶ黄芭旦のユキエ。
 他にも被害に遭った猟兵が居る筈と、漸う動き出す仲間の気配を読み取ったトーゴは、間もなく最初の劍戟が閃くと言ちた後、己と揃いの彩瞳を一瞥する。
「……危ないと思ったら逃げろよ」
 是の返事を羽搏きと變えたユキエは忽ち上空へ、吹き颪す凍風を裂いて冬天を目指す。
 而して後、彼女の帆翔を合圖と受け取ったトーゴは、古びた針を取り出すなり【虚蜂】(ウロバチ)――目には視えぬ七匹の大型蜂を降ろした。
「オレには思い入れのあるモンだが、あのオッサンにゃ大して価値も無い手甲留めだぜ。必ず返して貰う……!」
 繊翅の羽音を抑えつつ、前方に三、後方に四と、二手に分けて向かわせる。
 仲間の挑発に乗ったのが好機か、竊邪が踵を付けた瞬間に前後の挟撃に掛かった蜂は、不可視の針(文鳥の尾サイズ)を頭に尻に刺し、野猪の如き激痛を叫ばせた。
『ギャァァアアッ! 何ッ……何だ今のは……!? 吹き矢か……?』
「何なら指ごと鹵掠(うば)うまでだ」
『ぬぉぉおッ!!』
 間隙許さぬ側面強襲――ッ!
 蜂に追從して接近した彼は、念動力で加速した手裏劍を視界いっぱいに飛び込ませると同時、握り込めたクナイを五右衛門の手の甲に突き立て、朱々と鮮血を躍らせるッ!
 斯くも術に長けたトーゴの攻め口には、元忍者ならば興奮を覚えよう。
『嗚呼、實に趣(おもしろ)いッ! 盗れるものなら盗ってみやがれ!』
 五右衛門は創痍を受けた手に煙管を握り直すや、濤と躍る血滴を挟んで應戰し、而してトーゴも羅刹の血の滾る儘に研ぎ澄まされ、血を浴びつつの鬩ぎ合いを樂しむ。
 我に返ったのは、五右衛門の手が真っ赫に染まった時のこと。
「――……あ! そうだ物返せっ」
 今ならと衝き入れた逆手は、血の滑りに合わせて『櫛羅』を取り返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
こんな日に屋根に上がってんのは盗人と俺らくらいだろ
逃げる敵を視界に収めたら追走

逃がしゃしねぇよ!

敵が射程内なのを確認して拘束術使用
鎖での先制攻撃と拘束

同時にフェイントを交えつつダッシュで接近
斬撃波を乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃
攻撃は逃亡阻止の意味も込めて
部位破壊を乗せて下肢を狙う

拘束が解けないように適時重ね掛け
ついでに煙管を持つ手も拘束して動かし難くしとく
制限されれば動きも読み易い
接近戦になる夜彦の助けにはなるだろ

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御でジャストガード

俺の巾着と夜彦の刀、返せってんだ

あ、ハイ……おこだよな、夜彦
そゆトコに惚れ直すんだけど、黙っとこ


月舘・夜彦
【華禱】
普通は屋根には上がりませんからね
視力で敵の位置を捕捉し、走って追いかけましょう

刀は奪われてしまいましたが、今回ばかりは己が肉体が武器
倫太郎の術で援護して貰い、私は少しでも早く敵に近付きましょう

段差は跳んで躱し、敵からの攻撃は見切りと受け流しで回避
敵との距離を詰めた所で灰燼拳
敵の攻撃を回避した直後ならば反撃
いずれにしても怪力で力を上乗せして思い切り拳をぶつけましょう

敵からの攻撃は極力受ける可能性があるもの
妨害程度であれば倫太郎に任せて敵との距離を維持

私の愛刀もですが、倫太郎の指輪を返して貰いますよ
これでも怒っているのですからね
手加減は絶対にしません



 或る者が黑影に足跡を追い、また或る者が退路を隱す。
 別なる者が壁と立ち開かれば、また別なる者が戈を突き立てる。
 言わずとも連携する猟兵に遁逃の路を鎖された大泥棒『石川五右衛門』は、猶も続々と屋根を伝い來る猟兵に焦燥したか、遂に聲を荒げた。
『可怪しい、可怪しい! 忍でも無し、斯くも易々と屋根を渡れようか!』
 不安定な瓦屋根に加え、この急勾配!
 街道を見下ろす高さも常人なら足が竦むものを……と齒切りした竊邪は、冬天に颯然と身を躍らせる篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)に、チッと舌打ちした。
 目下、旅籠の屋根に飛び渡った二人は事も無げに言を交して、
「よっと! ――こんな日に屋根に上がってんのは、盗人と俺らくらいだろうな」
「普通は屋根には上がりませんからね。旅籠屋の主人にも、後で断りを入れねば……」
 と、云う間に瓦の感覚を馴染ませ、揃いの烱眼を五右衛門に結ぶ。
 更なる手練れが二人も加われば、愈々囲繞(かこ)まれると焦った五右衛門は、咄嗟に踵を返して逃げに回るが、次なる屋根へ移ることは許されまい。
 大泥棒が拇指球を踏み込むより先、夜彦は鋭い洞察で逃走方向を読み、
「視線が大棟に……向こう屋根に渡るに、高さを得ようとしているようです」
「了解! 逃がしゃしねぇよ!」
 而して倫太郎も心得たもの。
 彼は五右衛門が大棟に向かって走り出す瞬間に【拘束術】――不可視の鎖を擲げ放ち、大柄の躯をぐるり一巻きして戒める!
「泥棒は大人しくお縄になるもんだ!」
『むうっ! なんのこれしき、屁の河童よ!』
 視えぬ鎖を避ける事は出來ないが、「縄脱けの術」を使って拘束を解いた五右衛門は、からからと嗤笑いつつ棟に向かって走り出す。
『こちとら天下御免の大泥棒よ! 簡單に捕まって堪るかい!』
 蓋し、言った傍からだった。
 竊邪が駆け出した大棟の方向には既に夜彦が回り込んでおり、強く握り込まれた空拳は迎撃の【灰燼拳】を一發ッ! 進路に向いた瞬間の鼻頭を強襲する。
「逃がしはしないと云った筈です」
『んばっ!!』
 稲妻が閃いたような激痛が疾駆し、目を白黑させる五右衛門。
 体勢を崩した隙には、軒から倫太郎が駆け上がり、更に棟から夜彦が下り來て挟撃! 二人掛かりで連撃を叩き込んでいく――!
「刀は奪われてしまいましたが、だからと云って戰わない選択肢はありません」
『ぬっ、をお! 刀を失くした侍が悄然(しょげ)んのか!』
 此度は己が肉体を武器とした夜彦は、常とは異なる立ち回りとは思えぬほど烈々と拳を閃かせ、防禦に差し込まれる煙管ごと押し込む力技。
「今日の夜彦は容赦無いぜ? 夜禱と嵐も盗られた上に、腰に差されてるんだからな」
『ッ、ふンむ! 火に油を注いでしまったか……!』
 而して倫太郎が普段と變わらぬ間合いを取った事にも助けられたか、華焔刀 [ 凪 ]は冬天に美しい刃紋を輝かせつつ一閃ッ、刃を返してもう一閃と、特に下肢を狙って竊邪の機動力を削いでいく。
『儂が押されるとは、奇怪な、面妖な……ッ!』
 五右衛門の煙管捌きも妙々たるものだが、いかんせん手数が足りない。
 伝説の大泥棒は我が身を木の葉の如く、煙管を操って何とか致命傷を遁れるが、特に、間近に見る夜彦は研ぎ颪される風より冱々としていよう。
 竜胆の士は倫太郎の巾着が奪われた事にこそ瞋恚を示して、
「これでも怒っているのですからね。絶対に手加減しません」
「あ、ハイ……おこだよな、やっぱ。凄く大切なものだし」
 襟を正すは盗人でなく倫太郎。
 かの指輪は、我が盾と信を預けた者のみが身に着けるものと、一撃一打に意志を籠める夜彦の拳は凄まじく、無刀の彼を援護する間にも犇々と愛の無窮なるを感じる。
(「そゆトコに惚れ直すんだけど、……默っとこ」)
 云えば吃ッと見据えられそうなので、緩々と結ぶ口元に留めるのみ。
 抑も“怒りの夜彦ぱんち”は、盗んだ本人が受け取るべきだと凛然を萌した倫太郎は、夜彦が距離を詰めた瞬間、呼吸を、闘志を、戰術を合わせた。
『くッ、おおぉおお――ッッ!』
 須臾に炸裂した【灰燼拳】を雁首に受け止めた五右衛門は、然しその瞬間にこそ手首に巻き付いた【拘束術】に煙管ごと絡め取られ、否應にも脇を開けてしまう。
 時が止まったような感覚が押し寄せたのは、間もなくの事。
「私の愛刀もですが、倫太郎の指輪を返して貰いますよ」
「俺の巾着と夜彦の刀、返せってんだ」
 冷艶の聲が揃ったのは流石と云うべきか。全き同時に踏み込んだ二人は、棟側から夜彦が二刀を抜き取り、また軒側から倫太郎が懐へ潜って、遂に巾着を奪取した!
『――……んなぁぁああああっ!!』
 一陣の風が驚愕の叫びを掻き消し、而して後、冷たい空気が竊邪の頬を撫でる。
 質を取り返した今、盗人に一切の慈悲無しと、訣別の刻を同じくした夜彦と倫太郎が、針の如き冷眸を注いでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタ(f22361)さん。
「…わ、私…刀…返し…貰いま…」
相手は盗賊。素早い動きに対応する為にこちらも最速の技を。
多重詠唱で速度と威力を上昇させた【地擦り一閃『伏雷』】です。
もし速度が足りない場合はリミッター解除のうえ限界突破を。
速度と斬撃の威力維持に継戦能力を使おうと考えます。

鯉口を切る愛刀は『真改』を…あ。それは控えましょうか…。
五右衛門さんを斬ると盗品を傷つけてしまうかもしれません。
私は彼の後を追跡する形で追い込もうと思います。
ロベルタさんが前に控えていてくれているでしょうから。
もし反撃された場合は懐に潜り込んで手刀で腕を狙いましょう。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)。
おっちゃんの駆ける動きを見切って野生の勘で回避予測して。
身体のパフォーマンスあげた重量攻撃と2回攻撃の【錠前】で蹴る!
胸と顔をすれ違いざまにスナイパーと零距離射撃をクイックドローで。
脚を狙って逃げ足を遮って胸を蹴って怯ませる感じになるといいな。
盗んだものを壊さないようにしっかりと確認して蹴るじぇ~♪
特に顔は蹴らない。確か眼鏡って凄く高いって墨ねーから聞いたし。

「盗ったもの返してもらうじぇ。…そして、またお風呂に入るじょ」
折角温まったのにこの時期の風は直ぐに身体を冷やすんだよねぃ。
終わったらまた墨ねーと一緒に湯屋に入り直すよ。



 人々には「義賊」と親しまれる男だが、畢竟、石川五右衛門は盗人。
 其々が大事に思うものを竊み遂せた大泥棒に戰う「利」も「理」も無し、隙を作っては遁逃せんとする竊邪を捕えるに、此方も迅速でなければなるまい。
「……先ず、は……逃走を……防……爲に……二手、に……別……ましょう……」
 唯だ追い掛けるでは逃げられる、と策を打つ浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)に對し、直ぐにも二階の窓から屋根へと上がるロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は颯爽たる身の科(こなし)。
「う! 身体も輕くなったことだし、僕が先行するじょ♪」
 湯上がりの肌膚に衣服を纏い、盗まれたもの以外の装備を整えた二人は揃って屋根へ、既に隣の旅籠屋へと渡った五右衛門を追う。
 先に黑影を滑らせていた猟兵が足跡を明らかに、また別なる猟兵が朦々と立ち込める霧に退路を隠したなら、天下一品の逃げ足も弱まろう。そして、周囲に滿つハレの霊力も、彼奴には枷となっているに違いない。
 カタカタと鳴く瓦の上を輕やかに駆けたロベルタは、直ぐにも敵影を捉え、
「……! 視えたじょ! 幾人かの猟兵さんと戰闘中みたい」
「……前……を……頼、み……ます……!」
 而して墨が云った瞬間だった。
 任を預かったロベルタは、活き活きと花顔を輝かせながら全速力、大棟へ駆け上がるや高さを得て冬天へ、湯屋から旅籠屋の屋根を元気いっぱい飛び渡る――!
「盗ったもの返してもらうじぇー!」
 軒下に集まった者達が、喫驚の指を結んでいるのが見えるが構わない。
 湯殿で駆け回れなかった分、溌溂と跳躍したロベルタは疾走の勢いをその儘、ちょうど猟兵に盗品を取り返された瞬間の竊邪に【錠前】(セッラトゥーラ)! 咄嗟に差し出た左臂ごと押し込むよう蹴撃を放った!!
『!! 次から次と……ッ!』
「もっかい!」
『ッ、ッッ――!』
 打点を軸に繊麗の躯を捻って、二撃目!
 屋根の急勾配を物ともせぬ大泥棒をぐうらり搖るがした超絶キックは、先と同じ部位に命中してダメージを乗算し、餘りの激痛に膝を折らせる。
 斯くして腰を屈めた隙を逃す墨では無い。
「……わ、私……刀……返し……貰いま……」
 繊細く囁(つつや)いた時は、慥か湯屋の屋根に居た筈だが、地擦り一閃【伏雷】――八雷の力を降ろした佳人は、はつはつと電氣を帯びるや忽ち光矢の如く、瞬きの裡に屋根を跳び渡って五右衛門に肉薄した。
「……駆け抜け樣……胴を切り払いたい、處ですが……それは……控えましょうか……」
 限りなく凝縮された時間の中でも佳人は冷靜沈着。
 帯にはまだ何本か盗んだ刀劍を差しているし、懐には一般客から掏った財布等も隠していようと推察した墨は、盗品ごと傷つけてしまうかもしれぬと気遣い、先ずは手刀で腕を打ち払う。
『ずぁ嗚呼ッ!』
 天下御免の大泥棒も、閃光の翔ける疾迅さは見えまい。
 愛刀『井上真改』の代わり最高速度で懐裡に潜り込んだ手刀は、真改と遜色ない威力で五右衛門を打ち据え、かの大柄な躯を屋根にごうろり轉がす。
『やれ、伝説の大泥棒が外見(みっとも)無い!』
『ほれ、大見得切って天下を盗ると云っておやんなさい!』
 目下、軒下では五右衛門を信奉する民の霊がせっつくが、彼等と同時に集まった者たち――実際に五右衛門に財布や御守などを掏られた客が猟兵の応援に回ろう。
 今を生きる彼等こそ猟兵の活躍を支援して、
「こりゃ大捕物だ! 美人さんもお嬢ちゃんも、彼奴を引っ捕えてくれよ!」
「天下自在符を持ってるって事は猟兵さんッスね? 盗人をとっちめて欲しいッス!」
 その中には、丸縁眼鏡を奪われたという少年の姿も視えようか。
 嘸かし困っていようと軒下に視線を遣った墨とロベルタは、交睫ひとつして彩瞳を結び合わせると、跫音を置き去りに再び疾駆した。
「……竊んだ……もの……全て……取り、返……ます……」
 我が大刀と、ロベルタの魔法劍、そして民が奪われた全てを奪取する。
 詠唱を重ねてスピードを臨界へ、雲を疾る稲妻より迅速く瓦屋根を駆けた墨は、声援に立ち上がる瞬間の五右衛門めがけて手刀を一閃! 相手が煙管を構えるより疾く其を叩き落とし、可爛ッと瓦屋根に轉がした。
『ッッ、儂の得物が……!』
 最早、煙に巻く事は許されまい。
 五右衛門が足元へ落ちる煙管を目に追った矢先に膝が崩れたのは、墨なる雷光に次いでロベルタが侵襲したからで、不安定な足場の上、事も無げに足払いを放った少女は、自ず屈める胸を蹴り上げ、今度は巨躯を大きく反らせた。
「うー、さぶさぶ! 折角温まったのに、師走の風は直ぐに身体を冷やすんだよねぃ」
 佳脣を滑る科白は輕やかだが、少女の連撃も配慮に滿ちていよう。
 眼鏡は凄く高いのだと墨に聽いたロベルタは、盗人の顔は蹴らず、鞭のように撓らせた脚を強く靭く側面へ叩き込む。
「終わったら、また墨ねーと一緒にお風呂に入り直すんだじょ♪」
 その爲の一撃は、伝説の大泥棒を鞠のようにブッ飛ばすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
(親なし学校なしなので衣服は見様見真似で覚えた。下着の概念を得たのは猟兵になってから)

余計なことを言ったばっかりに……!
雪女の姿の時は穿かず付けずでも気にならないのに、洋装だと途端に気になります……!

とにかく服を着て、屋根の上に跳……下を気を付けて【クライミング】
風で捲れないようにしっかり押さえて【追跡】、屋根から屋根へ【ジャンプ】
走るに難はありません(悪路走破・足場習熟)が、やり難いことこの上なし……!

いざ追いついても、蹴りや大きなアクションが封じられては……!
さらに召喚した霊の応援で強化されて……ここは逆転の発想、彼らの力を借りましょう
【傾城傾国の艶美】――私の下着、返してください

天下転覆の義賊として盗む物が女の下着って……という霊たちに応援どころか非難されることによって強化は不発、逆に弱体化でもしてくれれば儲けもの
渋々、懐から取り出したのを受け取って……その瞬間、顔面に【怪力】で肘打ちを叩き込んで【吹き飛ばす】

穿かれていなかったのは幸いですが……生暖かい……しっかり洗わないと……



 全身を極上の煖もりに抱き包まれたオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、仄り闌ける肢軆より零れる吐息に混ぜて独言を――大事な物だけを竊んでいくという伝説の大泥棒も、下着泥棒よりはマシだと零した。
 而して竊邪は、下着だけを盗っていった。ジーザス。
「……よ、余計なことを言ったばっかりに……!」
 衝撃の餘り、巻き付けたタオルを落としても気付かぬか、桃色に上気した濃艶な姿態を晒したオリヴィアは、脱衣時と變わらず御行儀良く佇むロザリオと、ずっと深くに隠した筈の下着の不在に、蒼褪める心地がした。
「と、とりあえず、眼鏡を掛けましょう……」
 紅のアンダーリムを掛け、良好な視界で籠を探るが見当たらない。
 一枚一枚を確かめるよう服を着ていくが、矢張り、見つからない。
「……籠が元通り、空になってしまいましたか……」
 冷靜を繕うほど焦るのは、彼女が下着の概念を持っているからだ。
 絶望が統べるダークセイヴァー、常闇の世界に産み落とされたオリヴィアに親は無し、學び舎に通うことも無く都市の闇を駆けていたが、吸血鬼の狩り方も、神への祈り方も、衣服の着方も……生きるに必要な事は見樣見眞似で身に付けた彼女である。勿論、その中には貞操や羞恥(はじらい)だってあろう。
 また、いつしか猟兵と覚醒めていたオリヴィアは、身に纏う衣装によって能力や特性を活性化させるのだが、よりによって今日は慎ましい修道服……下着は必須だ。
「和装の時は穿かず付けずでも気にならないのに、洋装だと途端に気になります……!」
 エンパイアなら雪女の姿で訪れても良かったのに!
 いやいや、そもそも精神的な拠り所を攻められると思ったのに、物理で攻められるとは思わなかったと不覚を憶えたオリヴィアは、然し、多くの者が迷惑を被ったと騒ぎ立てる聲に気付き、脱衣所を出て二階へと向かった。
「……とにかく、犯人を追わなくてはいけませんね……!」
 客の目に隠れるようキョロキョロと、そろそろと窓辺から屋根へ上る。
 湯上がりで瑞々しさを増した脚を隱すように、それこそ太腿を擦り合わせるようにして屋根に上がったオリヴィアは、冬の京ならではの研ぎ颪された風に捲られぬよう聢と裾を抑えつつ、双眸は烱々と――旅籠屋へと跳び渡る竊邪『石川五右衛門』の姿を捉えた。
「大柄で、灰髪の……あれが下着泥棒……!」
 一刻も早く取り返さねばと、駆け出す爪先は不安定な足場も躊躇わず。
 カタカタと鳴る瓦の感覚も、伝統家屋ならではの急勾配も何のその、数多の戰場を戰い抜いた精鋭は迅速機敏に駆け走り、ハレの霊力に滿つ冬天に颯ッと身を躍らせた!
「走るに難はありませんが、やり難いことこの上なし……!」
 常ならばハードル選手の樣に腿を上げて跳んだろうが、事情により両脚でぴょん。
 傘を差す貴婦人の如き可憐さで旅籠屋の屋根に渡ったオリヴィアは、己を斯くもさせた張本人にトルリョチャギ(回し蹴り)のひとつやふたつブチ込みたい處だが、生憎、下着なくしては蹴撃は閃かぬ。
「くっ……下着は敵の手に……ここで蹴りを封じられるとは……!」
 オリヴィアがぐっと佳脣を引き結ぶ間にも、五右衛門は民衆の霊を軒下に集め、大捕物に抗う勇姿を見せて応援を、支持を集めようとする。
『どわっはっは、儂に盗めぬ物は無し! 今に天下も盗ってやるわい!』
『おおーっ、それでこそ石川五右衛門! 天下御免の大泥棒よ!』
 喝采(やんや)と屋根に声援を送る霊達は、怪傑を期待しているのだろう。
「……ここは逆転の発想、彼らの力を借りましょう」
 強化を得る五右衛門を前にピンチでなくチャンスを探り得たオリヴィアは、湯上がりの濃艶を惜しげもなく晒し、敵を前に莞爾と咲んで見せた。
「――私の下着、返してください」
『ハイ、よろこんで!』
 かの大泥棒も二つ返事で下着を差し出す魅了術こそ、【傾城傾国の艶美】(ファムファタール・テンプテーション)。
 塊麗の微笑を注がれた五右衛門は、腹巻の中に手をぬんと入れるや、可愛らしい下着をしっかと摑み、元の持ち主へ――オリヴィアへと返してやる。
 その樣子は軒下に集まった霊の目にもバッチリ視えよう。
『ええ……天下転覆を狙う義賊が女の下着を竊んでたのかい……?』
『それ下着泥棒やんな? ガッカリしますわ……』
 スン……と応援の聲が止み、「ほな」と解散してしまう民衆の霊。
 中には霊でない、騒動に駆け付けた通行人も居たのだが、彼等は一樣に「幻滅した」と非難を浴びせ、五右衛門の大泥棒たる矜持を弱めていく。
『いやっ、これはっ、一番大事なモノを竊んだ結果で、下着が欲しかった訳ではっ!』
 靜まり返った一角に竊邪の辨明が虚しく響くが、次いで響いた打撃音は實に鮮やか。
 衆目に晒された下着を渋々と受け取ったオリヴィアは、手渡しで近付いた瞬間に渾身の肘打ちを叩き込み、屈辱も、含羞も、何もかもを込めた一撃で顔面を痛打したッ!
「てぇぇぇえええい!!!」
『ずびばせんでしブァッ!』
 乙女の冱撃を喰らった五右衛門は胴ッと衝き飛ばされ、かの巨躯が瓦屋根に強かに打ち付けられるのを視界の端に置いた佳人は、そっと溜息をひとつ。
「穿かれていなかったのは幸いですが……生暖かい……しっかり洗わないと……」
 漸と手に戻った下着のホカホカした温かさに、むむ、と翠眉を寄せるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
聞きしに勝る軽捷な身のこなし。
元は伊賀の抜け忍だそうですが、かの深山幽谷の地で鍛えられたのなら、屋根を渡るくらいは児戯なのでしょう。

が、道なき道くらいは武士にも切り開けるというもの。


客間の窓から身を躍らせ、呼び寄せた夙夜に【騎乗】
そのまま【鬼騎乗崩】にて宙を駆け、同じ舞台へ登りましょう。

石川五右衛門! 平安や鎌倉の世には、捕物に来た武士を逆に討ち果たす猛々しい盗賊が数多いたと物語に聞くが、貴様は逃げるばかりか!

そう大音声で挑発し、祭りの演目が如く振る舞えば、民衆が面白がってハレの気もより高まるでしょうか。

追い付き射程に捉えれば弓を構え、彼に目掛けてあらん限りに矢を降り注がせます。

太刀が無ければ弓が、馬が、この五体すべてが我が得物。
しかし奪われた太刀は我が父の武功の象徴、北条の夢が潰えた後、徳川に召し出され鞍馬再興の切欠となったもの。

是が非でも返させて貰う。

……いえ、昔父上に本当にこの太刀は正宗なのかと問えば何とも言えない表情で目を逸らされた事がありますが。
それはそれ! これはこれ!



 窓の框に手を掛け、身を乗り出して屋根を見る。
 このとき冷たい外気に触れた耳は、軒下の通行人のワッという響動めきを拾うと同時、冬の空に躍るや旅籠屋の屋根に渡った男の高笑いを聽いた。
『どわっはっは! 天下御免の大泥棒が簡單に捕まって堪るかい!』
 誰もが「落ちる!」と目を眇める高さと勾配を、木葉の如く、ふわり。
 瓦という不安定な足場を事も無げに疾る姿もらしかろうか、これぞ『石川五右衛門』と通行人が喝采(やんや)の聲を上げれば、男の俊敏を目の当たりにした鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)も成る程と呻った。
「聞きしに勝る輕捷な身の料(こなし)。元は伊賀の抜け忍だそうですが、かの深山幽谷の地で鍛えられたのなら、屋根を渡るくらいは児戯なのでしょう」
 所司代も随分悩まされた事だろうと往時の紛擾に思いを巡らせた景正は、而して幾許、竊邪を映せる竜胆色の瞳を烱々と研ぎ澄ました。
「……が、道なき道くらいは武士にも切り開けるというもの」
 云うや否や、客間の窓から身を躍らせる。
 須臾、二階で涼んでいた客らが恟ッとして駆け寄るが、急いで下を見るも影は無し――彼等は颯然の風に結ばれる先、青毛馬に跨って空を駆ける侍を見た!
「さぁ、夙夜。同じ舞台へ登るとしましょう」
 嘶聲を連れて翔るは【鬼騎乗崩】(キバジュウリン)。
 愛馬『夙夜』に跨った景正は、紺糸の具足に剛弓を提げたる立派な武者姿で空を翔け、軒下に集まった通行人や、次いで湯屋から出て來た客達の喫驚を集めた。
「なにーっ!! 馬が? ……ハァ? 翔ぶ……!?」
「どひゃーっ! 騎馬武者が空を駆けてるッスー!!」
 其は最高速度11,000km/h、マッハ9を優に超える爆速にて、流石の五右衛門も天馬を出し抜いて逃げられようかと冷や汗をかく。
『なっ、なんちゅう男じゃ! こりゃ眞正面(マトモ)に闘り合っちゃ損だわい……』
 煙を巻いて遁げようかと、直ぐに踵を返すのが盗人だろう。
 泥棒の本懐を果たした五右衛門に戰う「利」も「理」も無し、忽ち遁逃の路を探し出す竊邪には、その稟性を見極めた景正が大音聲で呼び掛ける。
 鴇色の佳脣を滑るテノール・バリトンは、京の寒空に冱々と澄み渡り、
「石川五右衛門! 平安や鎌倉の世には、捕物に來た武士を逆に討ち果たす猛々しい盗賊が数多いたと物語に聞くが、貴樣は逃げるばかりか!」
『むぅっ……っ!』
「嘗て民の心を奪った義賊の勇、見せてみよ!」
 旅籠屋を中心に、円を描くように駆けて聲を張る景正に對し、五右衛門は苛立たしげに眉を顰めるが、この祭りの演目が如き景色は、民衆が手を叩いて歓迎する。
「面白い話になってきた! 大捕物か脱走劇か、兎に角いいモンが見られるよ!」
「自分はお侍さま推しッス! 商売道具を盗んだ大泥棒をとっちめて欲しいッス!」
 伝説の大泥棒なら遁げ遂せろ、と拳を突き上げる通行人が居れば、その傍らには実際に金子や御守を盗られた者達が景正を応援する――實に祭りの日らしい入り亂れよう。
「この“ハレの霊力”の昂ぶり……お借りしましょう」
 長い睫を伏せて街道の昂揚を瞥たのも一瞬、艶々しい黑を縁取る其を再び五右衛門へと結んだ景正は、同じく凝乎(ジッ)を睨め返す男を射程に捉えるなり弓を構えた。
「太刀が無ければ弓が、馬が、この五体すべてが我が得物」
 冷嚴と滑る言は風に乗り。
 ひやうと放たれた矢は風を裂いて。
 ハレの気運に射速を加速させる――!
『……ッッ、ッ――!』
 五右衛門が息を呑むのも已む無し、眼路いっぱいに飛び込む矢鏃は雨の如く降り注ぎ、ひとつの鏃を遁れても、別なる鏃が赫々と血滴を躍らせる。
 而して竊邪が激痛を受け取った時だった。
「我が家宝、是が非でも返させて貰う」
『ぬ、っ――!』
 速度を自在に、己が放った矢を追って馳走した景正は、五右衛門が体勢を崩した瞬間に滑り込み、擦れ違いざま腰の一振りを奪取した――!
『!! 盗んだものを盗り返されるとは、天上天下、後生一生の不覚……!』
 蹄音も無く駆ける夙夜は宛ら一陣の風。肌膚に触れた處で摑めるもので無い。
 駆け抜けるも颯爽と、愛馬と共に屋根の頂に至った景正は、竊邪に敗北を突き付けるに豪壮として沸豊かな大太刀を掲げ見せ、
「鞍切正宗は我が父の武功の象徴……北条の夢が潰えた後、徳川に召し出され鞍馬再興の切欠となったもの……決して他の者の手に渡ってはならぬ、歴史そのものです」
『くっ……正宗……正宗だと……!』
 そうして大泥棒の矜持を折られた五右衛門は、口惜しげに瓦を叩いて大太刀を仰ぐが、不圖(ふと)、冬天に掲げられた正宗に、二、三度、ぱちぱちと目を瞬く。
 その反應に嘗ての自分を重ねた景正は、急ぎ口を衝いて、
「……いえ、昔父上に本当にこの太刀は正宗なのかと問えば、何とも言えない表情で目を逸らされた事がありますが……それはそれ! これはこれ!」
 噫、父と同じ樣な表情をしていまいかと、幾許か口跡が搖らぐ。
「…………ええ! 正宗ですとも!!」
 あれだけ小気味佳い立ち回りで観衆を魅了した景正だが、狼狽えながらも語気を強める彼には、何故だろう、軒下より集められる視線がほっこり緩むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

義賊、五右衛門とやら…
庶民から盗むだけでなく剰え処刑人から盗むとは…
…いい度胸じゃあないか…相応の覚悟はあるんだろうな…?
逃がすまいぞ…我は処刑人が娘也!!

[ジャンプ]で屋根に上り
[足場習熟しダッシュ]で敵を[追跡]しよう

邪魔するなよ…先に首を落としてやろうか…?

妖刀抜き構えて霊共を[殺気]籠めて睨みつけ
[恐怖を与え破魔]の力で退散してもらおう

今一度…その身で味わった処刑とやらを再現してやろうぞ!

仮面を被り真の姿に変身

【公開処刑】により
地獄の炎で熱した巨大な釜を召喚
鎖の鞭振るい敵を[ロープワークで捕縛]し
そのまま振りまわし釜の中の煮えたぎる熱湯にぶち込んでやろう

熱湯による[継続ダメージと生命力吸収]で
じわじわと煮詰めて息の根を止めてやろう…!

ゆっくり浸かるがいい…
味わうのは極楽ではなく地獄だがな!

ぐつぐつと煮える五右衛門…
…ぐつぐつ煮える…おでん…聖護院大根のおでん…
まだ食べれるかな…



 ミシミシと喰い込む位の力で框を握り、二階の窓から顔を出す。
 而して覗ける屋根上に邪影を捉えるや、漆黑の麗瞳に煮え滾るほどの炎を燈す。
「あれが……義賊、五右衛門とやら……」
 アンダルシャナ家の紋章なくして処刑人の姿容に戻った仇死原・アンナ(炎獄の執行人あるいは焔の魔女・f09978)は、目下、颯ッと旅籠屋の屋根に跳び渡る竊邪を捉えると、その影を追うように屋根へ上がった。
 紅脣は薔薇の如く美しいが、滑り出る科白は鋭い荊棘を帯びていよう。
「……庶民から竊むだけでなく、剰え処刑人から竊むとは……いい度胸じゃあないか……相應の覚悟はあるんだろうな……?」
 心火を燃やす佳人は、不安定な足場もお構いなし。
 カタカタと鳴る瓦屋根を押し默らせるようズンズン踏み進んだアンナは、大棟から軒端までの急勾配を利用して全速力ッ、高さをものともせぬ大ジャンプで屋根を渡る!
「決して逃がすまいぞ……地の涯てまで追い回して遣る!」
『んなっ! この俊敏、その度胸……くのいちか!?』
「我は処刑人が娘也!!」
『!? ッ、処刑人!?』
 優美の躯を冬天に躍らせ、洗い上がりの艶々しい黑髪を風に搖らすは天女か修羅か。
 冷たく鋭い星眸(まなざし)を宙空より注いだアンナは、旅籠屋の屋根に着地するや、ジャリと音を立てた鎖の鞭を一振り! 先端の棘付き鐵球を五右衛門に打擲けた!
「貴樣の罪は理解っていような……」
『んばっ……! 畜生ッ……力が入らん……!』
 初撃が成功したのは、仲間が竊邪の足を留め、囲繞し、座標を保った事もあろう。
 加えて界隈に滿つハレの霊力も、ややもすれば遁逃に回る五右衛門の走力を弱めたか、アンナが擲げた鐵球は屋根上を庭とする男の体勢を打ち崩し、更に大柄の躯に巻き付いて身動きを奪った。
『ぬ、くくく……くく……!!』
「……さぁ、紋章を返して貰おうか……」
 お縄ならぬ、鐵鎖にギチギチと戒められる五右衛門。
 この時、軒下に召喚した民の霊が、伝説の大泥棒の脱出劇を応援すべく聲を上げるが、『縄を緩めろ!』『逃してあげて!』という懇願は、処刑人の帽子の鍔より覗く冱ゆる瞳に封じられる。
「邪魔するなよ……先に首を落としてやろうか……?」
『ヒィ……ッ!』
 逆手に握る妖刀『アサエモン・サーベル』の鋩を突き付けられた霊たちはスンと默り、而して靜粛を得たアンナは、五右衛門の腹巻から紋章を取り返すと同時、騒動を聞きつけ集まった通行人や、五右衛門に大事なものを盗まれた湯屋の客が出て來るのを見ながら、再び言を継いだ。
「竊盗を繰り返した大罪人、石川五右衛門に言い渡す……貴樣の罪は人々の大事なものを竊んだのみならず、人々の心を奪い、義賊と親しませた騙りにある……」
 罪状を竝び立てる光景は、エンパイアの人々も馴染みあろう。
 竊邪の罪を明らかにしつつ、紋章を着けて完全なる処刑人の姿を取り戻したアンナは、更にその麗顔をペストマスク風の仮面に覆うと、目も覚めるような蒼炎を迸らせた。
「さぁ、今一度……その身で味わった処刑とやらを再現してやろうぞ!」
 真の姿によって幕開くは【公開処刑】(エクスキューション)!
 煓々熾々と然え上がる地獄の炎、悪魔の舌がぬらぬらと搖れ立つ炎の上に巨大な釜を召喚したアンナは、鎖鞭に縛れる五右衛門をブンと振り回してIN! ぐつぐつと煮え滾る油の中へブチ込んでやる!
「じわじわと煮詰めて息の根を止めてやろう……!」
『ぎゃぁぁぁぁああああ熱いいいいイイイイ!!!』
 嘗て石川五右衛門は三条河原で煎り殺された。
 而して此度は烹煮刑に使われた釜の漂流地「釜が淵」にて同樣に煮らようとは、竊邪も思ってもなかったに違いない。
『この苦痛ッ、この屈辱ッ! 豈然(よもや)二度も味わおうとは……ぐおおおお!』
 肌膚を灼き剥がすかの如き焦熱と、骨肉を溶かさんばかり灼熱。
 忘れもせぬ紅蓮と劫火を再び肉体に味わった五右衛門は、過去と現世の疆界を曖昧に、処刑人アンナに嘗ての所司代、前田玄以の顔を重ねて叫ぶ、哮る。
「ゆっくり浸かるがいい……味わうのは極樂ではなく地獄だがな!」
『畜生め、畜生め! 濱の眞砂は盡くるとも、永劫と甦生ってやるぞぉぉおおっ!』
「噫、何度でも來い……その度に煮殺してやるまでだ!」
 天下の大泥棒でも最後は捕えられて釜煎にされる――。
 五右衛門の命日たる十二月十二日を逆さに書いた札には、如何な泥棒も同じ結末を辿るとの意味が籠められていると、入湯中に京の風習を學んだアンナなれば、正にその通りにすべきと、濤と迸發(ほとばし)る地獄の炎で釜を煮る、煮る、煮るッ!!
『んぎゃぁぁぁあああ!! 死ぬぅぅうううう!!』
 斯くしてぐつぐつと煮えゆく五右衛門の最期を見たアンナは、不圖、言ちて、
「……ぐつぐつ煮える……おでん……聖護院大根のおでん……」
 紋章を盗まれて失念していたが、然うだ、おでんを食べようと思っていたのだ。
 薬膳としても重宝される聖護院大根は、ぎゅうと出汁を吸って極上に巧いのだとガイドを思い出した佳人は、ぐう、と鳴るお腹を宥めるように擦り擦り、
「……まだ食べられるかな……」
 と、爪先を再び湯屋へ向けるのだった――。

 濱の眞砂は盡くるとも。
 斯く叫んで熱釜に消えた五右衛門だが、果たして再び現世に甦る事はあるのか――。
 京は釜が淵、立ち竝ぶ湯屋より昇る湯気が白々と冬天に烟るばかりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月09日


挿絵イラスト