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光明いまだ遠く(作者 紅星ざーりゃ
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#クロムキャバリア 


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#クロムキャバリア


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●それは小さな灯火なれど
 リュテス第五民主共和国首都――"旧"首都、メルヴィン市。
 聖ガディル王国との戦端が開かれたと同時に発生した無差別テロで大きな被害を被り、共和国軍の奮闘虚しく陥落した都市だ。
 以降聖王国騎士団による共和国領侵攻の一大拠点として機能しているこの都市に、悲願たる首都奪還に息巻く共和国北方・中央軍からなる統合軍が迫っている。
 リュテス共和国軍が発動した首都奪還計画、リュミエール作戦。後方の守りを同盟国の多国籍軍に一切委ね、キャバリアを基幹とする陸軍の動員可能兵力をほぼすべて動員しての背水の陣で臨むこの大反攻を前に、予備兵力たる第七騎士団が国内で足止めされ、主力だった第四、第八騎士団をすでに東部の戦線で喪失した聖王国軍の勝利は至難であろう。
 だが、聖王国とて折角奪った敵国の首都を易々明け渡すことはない。首都近郊の守備を担う第三騎士団へ下された命令はメルヴィン市の絶対死守。
 決戦が始まれば、両軍一歩も譲らぬ激戦が繰り広げられよう。そうなれば、生命を落とす将兵も決して少なくはあるまい。
「それを私達はよしとしない。だから、ジョルジオ殿。どうか頼む」
「わたくし共が共和国の志ある方々と講和の道を探るこの試みに、第三騎士団も協力していただきたいのです」
 第三騎士団の紋章を鎧に刻む老将に頭を下げるは、第一騎士団の紋章を嵌め込んだ剣を持つ青年と、第六騎士団の紋章を刺繍した修道服に身を包む女。
 片や聖王国第一騎士団長にして同国最強の個人戦力、"聖剣"ウィルフレド・カステリオ。
 そしてもう一人は聖王国軍の兵站や医療を一手に担う第六騎士団の長たる"聖女"エレーヌ・ロンズフォーン。
 その二人に頭を下げられては、第三騎士団長ジョルジオ・デ・イベリオとて否を突き付けることは難しい。何より第八騎士団と第四騎士団を投じて行われた東部戦線での暴虐によって、ジョルジオ自身本国への信頼が揺らぎつつある。
 信仰と正義で隠しきれぬ祖国の、その指導者たちの悪意。聞けば第四、第八の騎士団長のみならず自らの副官にまで及んでいたオブリビオンマシンの汚染。何か自分の知らぬところで、おぞましいものが蠢いているという確信はジョルジオも得ている。
「講和、か。良かろう。だが本国の耳目たる第五騎士団の手の者がメルヴィンにも潜伏している。諸君が本国の意に沿わぬ動きをしていることをギリギリまで気取られぬため、第三騎士団は本国の命令に従い臨戦態勢で接近する共和国軍と睨み合いを演じることになる」
「護衛戦力は出せない、ということだね。私もエレーヌ殿も、共和国への誠意を見せるためにも機体に乗って出るわけには行かない。あまりにも危険だが――だからこそ安全だとも言える」
「わたくし共に危害が及ぶ――それが両国の未来に害を成すならば、ウィルフレド様のお気に入りの方々……猟兵の皆様がきてくださるでしょうから」
 そうとも、と笑う聖剣の騎士。斯くて一大決戦を前に、不倶戴天の敵であった聖王国から共和国へと講和の使者が送られるのだった。

●灯火を覆う闇
「皆よか? 仕事の話ばするよ」
 集まった猟兵を前に、佳奈恵はその長身を屈めて依頼の説明を始める。
「場所は旧リュテス第五民主共和国首都、メルヴィン市。今は戦争状態にある隣国、聖ガディル王国の支配下にある街やね。その郊外にある、観光客向けの高級ホテルに行ってもらうよ」
 かつてリュテスが王政だったころ、王族の別荘だった建物を改装した高級ホテルだ。そこで、聖王国の要人と共和国臨時政府の高官による和平交渉が行われる。
「ばってん、聖王国にも和平反対派が居るっちゃんね。というか好戦派が主流やけどね。共和国の高官に先駆けて現地入りして、そん人らの妨害を阻止するとが皆の仕事ばい」
 特に諜報担当の第五騎士団がこの和平交渉の情報を嗅ぎつければ、最悪の場合両軍の要人が軒並み暗殺された挙げ句、その犯人を互いに擦り付けられ停戦など望めなくなる。
「というか、皆が行ってくれんかったら十中八九そうなる。やけん、よろしく頼むよ」
 ようやく見えた戦争終結の糸口を失うわけにはいかない。責任は重いが、やり遂げれば多くの命を救うことができる仕事だ。
 佳奈恵の開いた転移門は、任務成功の先に待つ未来を示すように眩い輝きで猟兵たちを飲み込んだ。





第2章 集団戦 『60式量産型キャバリア『ユニコーン』』

POW ●密集狙撃陣形【ファランクス・シフト】
【防衛戦線を死守すべく敵を狙撃する仲間 】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[防衛戦線を死守すべく敵を狙撃する仲間 ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD ●武器切替即掃射【スイッチ・バースト】
【RS-AL-059 アサルトライフル 】から【弾幕】を放ち、【その威圧効果】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ ●虚空からの一刺し【ユニコーン・チャージ】
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【RS-SL-058 スナイパーライフル 】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵による厳戒態勢のなか、シュヴィク中将がホテルへと到着する。
 ここまでで聖王国第五騎士団は不気味な沈黙を保ち続け、対象的に活発に活動を見せた共和国レジスタンス、第六共和準備会はしかしその素人に毛が生えた程度の練度の低さに加えてあくまで有志による抵抗組織に過ぎないという未発達な指揮系統のため統率を欠き、各個にホテルへ散発的なテロ攻撃を企図しては猟兵により撃退され続けている。
「ありがとう。諸君らの尽力に感謝する」
 穏やかな紳士の顔を軍人のそれに変えてホテルの玄関を潜るシュヴィク中将。護衛のマルタン情報局特務大尉がそれに続く。
 そうしてエントランスホールを固める猟兵たちとすれ違いざまに、特務大尉は敬礼を投げかけ、その功労をねぎらってゆく――斯くしてリュテス第五共和国と聖ガディル王国教典派将校団との停戦交渉が秘密裏に開始された。

 ――その一方。メルヴィン市に潜伏する……否、メルヴィンに取り残された、あるいは自ら残留することを選んだ共和国市民からなるレジスタンス、第六共和準備会の面々もまた、次なる段階に踏み込もうとしていた。
 爆破、狙撃、あるいは自殺めいた突入計画まで、同志による聖王国騎士団長暗殺をあらゆる手段を阻止された彼らは、いよいよ切り札を投じる選択をしたのだ。
『……"パストゥレル"、あんたがどこからこんなブツを仕入れたのか、なんで俺たちを支援するのか……そいつは聞かない約束だが、それでもあんたのお陰で俺たちは行動することが出来たんだ。礼を言うぜ』
 薄暗いどこかの倉庫で自動小銃を担ぎ、対キャバリア擲弾筒を抱えて揃いのバンダナを袖口に巻きつけるレジスタンスたち。
 老いも若きも男も女も、誰もが決意を秘めた眼差しで自分たちの抵抗を支援し続けてくれた仮面の女に頷き、感謝を示す。
『皆聞いてくれ! もうすぐ共和国軍が聖王国を破ってメルヴィンに雪崩込んでくる。それを支援するために、後方で最大限の混乱を起こすのが俺たちの目的だ! そして、その上で呑気にホテルで寛いでいやがる聖王国の騎士団長どもの身柄を抑える! 奴らを人質にした交渉で俺たちの生まれ育ったメルヴィンを、俺たちの手で取り戻そう!』
『『応ッ!!』』
 リーダー格の、警官の制帽を被った男の発破に拳を突き上げるレジスタンス達。
 同志たちが乾坤一擲、最後の攻勢となるだろう行動を開始するべく倉庫を駆け出していくのを見送ってから、リーダー格の男は後ろを振り返る。
 "パストゥレル"から供与された経済連合製の量産型キャバリア。素人の自分たちが乗って聖王国の騎士を圧倒できるようなハイエンドの最新鋭機ではないがそれでもたった一機、聖王国に一泡吹かせるための貴重すぎる戦力だ。
 これを動かす時が来た。シミュレーターでの訓練は十分に熟したはず。同志たちの助力があれば、主力騎士団が軒並み出撃し、警備のために少数残された聖王国のセレナイトを撃破することも不可能ではあるまい。
 だが、いざとなれば地下に逃げ延びることのできる同志と違って目立つキャバリアで行動するリーダーの男はタダでは済むまい。
 正規軍人相手に多対一で生き延びられると思えるほど、男は自身の訓練が万全であったとは思っていない。それでも行かねばならないと、頭上の制帽のずれを直して改めて決意する。
『親父、あの世で見守っててくれ。俺が必ず仇を取る……! "パストゥレル"、最後になるが世話になったな。あんたのお陰で俺たちはここまで来れた。きっとあんたはあんたの望みのために俺たちを利用したんだろうが、それでも恩に着るぜ』
『その通りです、ミスター・ウェブスン。私は私の為に貴方たちレジスタンスを利用しただけ。感謝される謂れはありません。――ですが、スポンサーとして一言だけ。……ご武運を。貴方たちが本懐を遂げ、第一、第六騎士団長を拘束することができれば……それは私たちの望みに繋がります』
『ああ、任せておけ…………なんて言えるほど自信はないが、俺たちも俺たちの故郷を取り戻すために最善を尽くす。……あばよ、最後にあんたの素顔を拝みたかったぜ。きっと口説きたくなる美人だろうからな!』
 男――ウェブスンは、キャバリアのコックピットに身を躍らせハッチを閉める。
 主電源が起動し、ジェネレーターが唸りを上げて機体に活力を行き渡らせる。始めて乗り込んだ実機特有の振動と浮遊感にかすかに目を瞠って、ウェブスンは倉庫の屋根を景気よく突き破って白昼のメルヴィン市に出撃する。
 その遠ざかってゆく機体の背中を見送り、仮面の女は踵を返す。
 彼らは所詮捨て駒の陽動。本命はこの手で自ら――最初からそのつもりでパストゥレルは第六共和準備会に接触したのだ。
 だが、何故だろう。
 今は、ウェブスンたちがその戦術目標を果たす果たせぬは置いても、満足の内に果てることを。もう一つ望むならば、生きて帰ることを、心のどこかで望まずにはいられない。
『……私たち、から逸脱しつつありますね。この任務を終えれば再調整っが必要でしょう。それでも、この任務が終わるまでは、私はバルトアンデルスではなくパストゥレルで在りたいと思ってしまう』
 ――轟音。第三騎士団の接収した旧共和国陸軍メルヴィン基地を、レジスタンスの別働隊が襲撃した音だろう。
 格納庫が爆破され、泡を食って飛び出してきたセレナイトは至近からの対キャバリア擲弾を食らってバランスを崩したところをウェブスンの駆るType-60の狙撃で胸郭コックピットを破壊され四散する。
 知らず停戦を阻むため利用され、それでも愛する故郷と失われた家族の為に生命を賭けるレジスタンス最後の攻勢が、いままさに開始されたのだ。

「――我々としては、教典派が聖王国の主流となって和平路線に切り替えてくれるのならばそれを支援しない選択はない。だが、現状対聖堂派戦線に戦力を送るという手段は極めて非現実的であると言わざるを得まい」
「もちろん、それは共和国軍人の皆さんの対聖王国感情を考慮してもそのとおりでしょう。ですから、共和国領内に残り撤退を受け入れないだろう遠征軍聖堂派残党の討伐に我々を参加させていただきたい。その中で多国籍軍……同じ王政を敷く女王州連盟に協力を仰ぎたい、というのが我々の隠さざる本音です」
「十約同盟は宗教的に我が国とは相容れず、経済連合を味方につける資金力は我々第六騎士団を抜きにしたとしても聖堂派のほうが数段上。助力は必要ですが、それを頼めるのは女王州連盟か東方同盟戦線のみ……国力からも、おなじ王政国家という共通点からも、可能性があるのは女王州連盟でございましょう
「なるほど、教典派の描くヴィジョンは理解しました。共和国軍を代表して、この講和が成立した暁には女王州連盟派遣軍とのコンタクトを助力いたします。では次、そう……聖堂派残党の討伐という話ですが――」
 もともと結論の決まっていたような講和会議は恙無く進行し、両軍はそれぞれに納得できる落とし所へと着地しつつある。
 護衛のためにシュヴィク中将の後ろに立ち、会議の流れを見守っていたマルタン大尉はひとまず胸を撫で下ろす。その彼女のインカムへ、傍受した聖王国軍の通信が怒涛のように流れ込む。
「……これは。閣下、カステリオ卿、ロンズフォーン卿! 退避を! メルヴィン基地の聖王国警備部隊が所属不明機の攻撃を受け壊滅、そのまま敵はこちらに向かっていると!」
「……! わかった、我々は地下のルートから脱出しよう。マルタン大尉、護衛と先導を!」
「了解! 猟兵、聞いているか!? まもなく所属不明機がホテルに突入してくる! 絶対に地下のトンネルに敵を浸透させるな! 頼んだぞ!」
 マルタン大尉からの通信を受け、戦闘態勢を整える猟兵達。
 その眼前に、不退転の決意を秘めたType-60とその随伴歩兵たるレジスタンスが現れる。
『我々は第六共和準備会である! メルヴィン解放のため、聖王国打倒のため、ウィルフレド・カステリオ第一騎士団長ならびにエレーヌ・ロンズフォーン第六騎士団長の身柄を頂戴する!』
ファルルカ・ウェレマイン
メイファンさん(f33513)と

予測されたとおりの展開…
1機だけ。あれは正規の兵隊ではないレジスタンスの所属…なのでしょう
さすがにキャバリエとはいえ随伴歩兵のように、生身のレジスタンスの人の援護もあるのかも
…血を流すことは望みません、だけど止めなくては――

…【月虹陣】。宝貝により、戦場を一時的に月面環境に堕としキャバリエをはじめ、集団の無力化を図ります
あまり長くはつかえません。ボクも動けませんし何より、レジスタンスの方の命も無駄に奪うことは…したくありません
「メイファンさん。なので――…あとの事を、お願いします」
覚悟も思想もなく。ただ甘いと云われるのかもしれない。けれど…


楊・美帆
ファルルカ君(f32779)と

でっかいのがきたネェ。声からして乗ってるのはオジサンかな?うーん……なんか悪いヤツって感じでもないナー。ファルルカ君はどう思う?

とにかく出来るだけ傷つけないようにやってみよう!ただ壊すより難しいけど、猟兵のみんなもいるから大丈夫だよネ。

狙撃されたら殺気を感じて【オーラ防御】。ファルルカ君に飛んできた分も体で受けるヨ。頭を撃たれても死なない、僵尸だカラ!

宝貝が発動したらキャバリアの後ろに回りこんで、膝部分に蹴りを入れて【鎧砕き】。体制を崩したところで前に回って、コックピットのハッチを掠めるように【一撃必殺】のアッパーカット!こういうときは割れない拳が役に立つってネ!



 ホテルを前にライフルを構える所属不明機。その姿に、レジスタンスの活動を察知していたファルルカは唇を噛む。
「予測されたとおりの展開……血を流すことは望みません。だけど、止めなくては」
 狙撃仕様の量産型キャバリアを近接戦の間合いにまで近づけたのは、その主張をウィルフレドら聖王国騎士団長らに届ける意味合いもあろう。
 だが、ファルルカはその戦術的合理性より政治的意図を優先する動きにType-60のパイロットが正規の訓練を受けた軍人ではないことを見抜いた。
 故にその動きは時としてファルルカの予想の範疇にない。この局面でレジスタンスが総力を投入することは予測できても、素人同然のパイロットがどんな戦闘機動をとって、どこを狙いどの程度の火力を投射するのか――それは一般的なキャバリア運用の理論の上にないのだ。
 不用意に手を出せば、予想しない行動とぶつかり不要な犠牲を出すかもしれない。だが、だからといってレジスタンスに好き勝手に動かれるのではこの講話自体が白紙に戻るような事態を招きかねない。
 犠牲を抑えたいという猟兵の思いを逆手に取るような戦力運用。これがパストゥレルなる謎の人物の描いた構図であるならば、悔しいがその絵図に乗るしかないのか。
 そんなファルルカの思索を遮ったのは、あまりにもお気楽な美帆の言葉だった。
「でっかいのがきたネェ。声からして乗ってるのはオジサンかな? うーん、悪いヤツって感じでないナー」
 ファルルカ君はどう思う? と水を向ける美帆に、小柄な少年は軽く目を見開いてから、そうですね、と首肯する。
「きっと、正義感が行き過ぎてしまっただけで悪い人ではないでしょう。なのでメイファンさん、ボクはあの人達の命を無駄に奪うことはしたくありません」
「好的! 任せて、とにかくできるだけ傷つけないようにやればいいんだヨネ!」
 ファルルカの頼みとあらば、と快活に引き受ける美帆。随伴するレジスタンス歩兵の持つ小火器程度ならば、この僵尸の肉体に対して脅威にはならない。流石にキャバリアの持つ数十ミリ口径の火砲が直撃すれば
タダでは済まないだろうが、それでも注視しなければならないのが敵機だけならばなんとでもなる。
「ありがとうございます。なら、ボクの宝貝で一瞬集団の動きを止めます。その間にメイファンさんが奇襲を掛けてください」
 市街に出ていたファルルカと美帆は、奇しくもレジスタンスの後背を突くポジションに陣取れている。この好機を逃すわけには行かない。
 勝負は長くとも一分半。それ以上はファルルカの命が保たないことを、美帆も知っている。故に、彼が詠唱を開始すると同時に僵尸の娘は勢いよく地を蹴り飛ばしてレジスタンスの背後より襲いかかる。
「“Moon Side”Surface――覚悟も思想もなく、ただ死なせたくないだけのボクは甘いと云われるのかもしれない。けれど……」
 人造仙人たるファルルカに埋め込まれた宝貝のひとつ、月虹陣が起動する。月の陰気が世界を満たし、一時的に重力が軽減し大気は薄く、日輪の陽気と月の陰気のバランスが崩れたことでヒトの生まれ持つ力が十全に発揮できない環境が現出する。
 そして陰とは死であり、女である。――即ち死せる娘、僵尸たる美帆の力は生者たるレジスタンスと反比例するが如く高まり、希薄化した重力の下を弾丸さながらの凄まじい速度で駆け抜けた。
 膝をつくレジスタンス民兵の狙撃をその掌で豆でも受け取るように掴んで止め、ファルルカを狙うものはその身を盾に投げ出してでも阻止してのける。
「ボクはファルルカ君の甘さは好きだヨ。眩しくて――ダカラ!」
『後ろからだと……! 生身でキャバリアが止められるかよ……止められなかったんだよ……ッ!!』
 一陣の雷光と化してType-60に襲いかかる美帆。膝関節部を狙う蹴脚を、ウェブスンはブーストジャンプで強引に飛び越え回避――予想外の低重力環境に想定以上の大跳躍をしてしまった機体は、殲禍炎剣を回避するべく強引な逆噴射急降下で着地し僅かにバランスを崩す。
 量産機と言えど軍用のキャバリア、バランサーが働き直ちに姿勢を立て直すが、そのときには美帆は既にその着地点に回り込んでいた。
「ファルルカ君の願いのためニ、君の願いを挫かせてもらうヨ!!」
『クソったれのバケモノめ、猟兵、お前たちがあの時もっと大勢で助けに来てくれれば親父は――』
 美帆の飛び上がるようなアッパーがType-60の胸部装甲に突き刺さる。激しい金属音とともに後ろ向きに倒れる敵機。だが、その背が地に触れる寸前で狙撃砲が発砲された。
 それが暴発だったのか、ウェブスンの意地で撃たれたものなのか。ついに宝貝の発動限界を迎えて膝をつくファルルカをめがけて飛翔する大口径スナイパーライフルの砲弾。
「――――させないッ!」
 発砲と同時に飛び退った美帆が砲弾の横腹に掌底を叩き込む。砲身のライフリングによって螺旋の回転を与えられたそれは、触れたそばから鑢のように美帆を削り取ってゆく。
「メイファンさん!!」
 轟音とともに弾き飛ばされた砲弾が放棄区画の廃ビルを貫き、破裂しそうな心臓を押さえてファルルカが美帆に駆け寄ってくる。
「大丈夫ダヨ、この程度じゃ死なない。僵尸だカラ……!」
 片腕をごっそりと持っていかれたことでバランスを崩し、倒れ込みながらもファルルカに微笑む美帆。
 先制攻撃は痛み分けだった。だが、彼らの勇気ある行動によって、ホテル側の猟兵たちによる反撃のための時間は稼がれたのだ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ジェイミィ・ブラッディバック
アイアンズ社長、諜報班の人員と共にVIPを連れて市内から脱出を。
「わかった、諜報班に車両を確保させた上で撤収する。避難先は先方の意向に従うが、指定なき場合はヘルメスか」
えぇ、現状用意できる最善の避難場所です。

ヘルメス、各キャバリアの射出を要請します。高度に注意してください。TYPE[JM-E]にはWHITE EAGLEの装着を。

飛行速度から考えてTYPE[JM-E]は一足先に到着するはず。
到着を待つ間、携行マシンガンを威嚇射撃して随伴歩兵に投降を促します。
TYPE[JM-E]の到着後、搭乗してWHITE EAGLEをパージ。指定UCで一斉に敵機を無力化します。その上で改めて投降勧告ですかね。


ヴィクター・ホリディ
やはりこのタイミングか、待機していた甲斐があったな
プレケス、出るぞ!

■方針
市外の待機地点からUCを発動し緊急出撃
情報収集/戦闘知識で敵のルートを算出
ホテル襲撃のその背後から奇襲をしかける
まさか市外から飛んできて奇襲をかける阿呆がいるとは思うまいよ

状況を考えれば攻め手はレジスタンス
であれば本命はこの後か
まったく悪趣味な戦争を仕掛けてくれる

奇襲時、瞬間思考力で敵の配置を確認
弾幕/制圧射撃で足止め、Type-60に推力/重量/貫通/部位破壊で行動不能を狙う
レジスタンスは可能な限り殺さん、甘かろうと何だろうとな

「憎しみを捨てろなんて事は言わんさ、だが命の使い時を見誤るなよ」



「やはりこのタイミングで来るか、待機していた甲斐があったな」
 敵が動くならば、目標であるシュヴィク中将と第一、第六騎士団長が一同に会し、そしてすぐさまには動けないであろう会談の只中を狙うはずだ。
 それまでの攻撃はあくまで嫌がらせ程度であろうと推理していたヴィクターの考えは正解であったのだろう。
 間借りしていた飛行空母がけたたましいアラートをかき鳴らしながら浮揚し、主機関に火を灯したことを振動で感じ取り、歴戦の傭兵は操縦桿を握りしめる。

「アイアンズ社長、諜報班とVIPの護衛に。市内を抜けて脱出を」
「わかった。諜報班各員は先行して車両の確保! 避難先は先方の意向に従うが……マルタン大尉、あては?」
 アイアンズの問いにマルタン特務大尉は首を横に振る。
「あるにはある。だがこの状況だ、どこも安全と断言はできない」
「ならば我が社の母艦にご案内しましょう。中将閣下、両騎士団長閣下もよろしいか?」
 頷き合い、諜報スタッフの先導を受けて地下室に駆けてゆく護衛対象たち。ホテルの正面玄関に陣取りマシンガンの威嚇射撃でレジスタンス歩兵の足を遅らせながらその背を見送って、ジェイミィは母艦への通信を繋ぐ。
 市内に出ていた猟兵が後背を突く形で奇襲を仕掛けたことで、若干の時間の余裕が生まれたのだ。ウォーマシンであるジェイミィが自身の機体のみで迎撃に出る選択肢もあったが、それを選ばず済むのであればそうするに越したことはない。常人を超越する戦闘兵器の身体であろうと、その倍以上の体躯を誇る機動兵器を相手に互角に渡り合うには若干火力が足りぬのだから。
「ヘルメス、状況は伝わっていますね? 各キャバリアの射出を要請します」
 了解の旨を返す母艦から支援砲撃の要はあるかと聞かれれば、ジェイミィは否と言い切った。
「彼らは軍人ではありません。できれば殺傷ではなく鎮圧を試みたいのです」
 敵は戦時国際法の庇護を受けることの出来ない民兵だ。兵士でないのに武器を手に蜂起した彼らが死んでも、法と秩序は彼らの自業自得と断ずるだろう。
 それでもジェイミィはそれを望まない。祖国を思い立ち上がった彼らの想いを踏みにじれば、大多数の共和国民の猟兵に対する感情は失墜するだろう。そして打算を抜きにしても、彼らのような人々を死なせたくないと思うのだ。
「アイアンズ社長はおそらくヘルメスに移動を命じたでしょう。合流ポイントの候補から推測する航路と、殲禍炎剣の感知高度を避けての射出軌道から予測するに――TYPE[JM-E]が先行して到着するはず」
 高らかに跳躍したジェイミィを、地に倒れた姿勢のままType-60がスナイパーライフルで砲撃する。
 掠めただけで木っ端微塵に粉砕されそうな大口径砲弾が衝撃波を伴い至近を飛翔するのを振り返ることもなく回避して高度を上げれば、予想通りの軌道で飛来する己が愛機が陽光を受けて鈍く輝く。
『キャバリアか! まっすぐ飛ぶだけなら俺にだって墜とせるんだよぉッ!』
 狙いをジェイミィから飛来する機体に切り替えたType-60が狙撃砲を振るい、その照星に白銀の戦闘機型キャバリアを捉える。――トリガー。
「やらせんよ! こいつは母艦で飲ませてもらったコーヒーの礼ってところだ!」
 その弾道に割り込む黒銀の機体。全身の至る所に設置されたスラスターを器用に噴射して軌道制御しつつ[JM-E]に追随するはヴィクターのプレケスだ。
 超音速でまっすぐ飛翔する砲弾の軌道に滑り込んだプレケスは陸戦機故の不慣れな空中機動でありながらも、両腕のフィールドで砲弾を受け止め弾き返す。
 だが空中で受けた着弾の衝撃で戦場へ突入する軌道から離脱させられた機体は堕ちてゆく。
「本命はやつじゃない。この後に仕掛てくるぞ……!」
「承知しています! だからこそ最小の被害で彼らを止めなくては……!」
 ヴィクターの捨て身の防御で撃墜を免れた[JM-E]に飛び乗り、戦闘機型に機体を偽装していた空力カウルをパージ。
 自身をそのまま大型化させたようなキャバリアを駆って急降下したジェイミィがプラズマソードで斬りかかれば、ウェブスン操るType-60はアサルトライフルで弾幕を張りながら不格好にバックブーストでその一撃を回避――即座にジェイミィに襲いかかる、歩兵からの対戦車ロケット。
 それらを空戦機特有のスラスターの強烈な噴射で無理矢理に散らして、更に突進して振るう斬撃がType-60のレーダーユニットを斬り飛ばす。
「いい動きをしますね……!」
『いいようにやられてられねぇんだ……!』
 素人にしてはよく動く。ジェイミィは音声ユニットを震わせて舌を巻く。首都陥落から今日までおよそ一年、さして長い時を経たわけではない。レジスタンスが結成され、パストゥレルが彼らを支援し始めたのは更に最近のことだろう。その期間でここまで腕を磨き上げたのはウェブスンの才覚か、あるいは怨念に基づいた執念の賜物か。
「お前の憎しみは分かるぜ。だから捨てろとは言わん。だが、この悪趣味な戦争で命を使うのは間違いだぜ」
 ジェイミィの斬撃を受けつつも左腕でアサルトライフルを構えるType-60。その横っ面を殴り飛ばすように、墜落後出しうる最大戦速の強行軍で市内に突入したプレケスが乱入しそのまま体当たりをぶちかます。
 レジスタンス歩兵の集団から機体を引き剥がすように弾き飛ばすと、二機のキャバリアはさらなる敵の襲来に備えるように武器を構えた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴