妖怪は破壊衝動に震えつつ
●怪奇、再び
夜の八王子市の中でも、八王子駅や高尾駅から離れた場所はとても暗い。その暗い中でも、山の方に向かえば周囲を探ることすらおぼつかない暗さだ。
そんな中を、二人の女子高生が懐中電灯を片手に歩いていた。
「ねえ、やっぱり止めようよ。暗いし……」
「何言ってるの、山の上の神社にお参りに行くんでしょ?」
どうやら八王子城跡の頂上にある神社に用があるらしい。この真っ暗な中を進んでいくには、何かの理由がきっとあるのだろう。
だが、しかし。
「ぽ、ぽ、ぽ……」
暗闇の中から声が聞こえてくる。女の声だ。それが、遠くから、密やかに響く。
「ねえ、なにか聞こえない?」
「えっ、なにかって……?」
一人の女子高生が、恐怖に引きつった表情をしながら前方を指差した。もう一人の女子高生がそちらに懐中電灯の光を向けた途端、暗がりの中に白いものが映る。
それは丈の長いワンピースだった。白いワンピースを身にまとうのは、見上げるほどの身長をした青白い肌の女性。白いつば広ハットをかぶった女性が、女子高生を見つけるやその黒い両腕を振り上げて迫る。
「ぽぽぽーっ!」
「ひっ――」
「きゃぁぁーっ!!」
地面に落ちる懐中電灯。その明かりが、ぷつりと切れた。
●銀の雨降る世界、再び
「新世界『シルバーレイン』が新たに発見された、って話は、みんなもう知ってるかな」
グリモアベースにて。いつもの制服姿で猟兵たちを出迎えた猫塚・咲希(過去は人の間を往く・f24180)は、まず最初にその話題を持ち出した。
銀の雨の降る世界、シルバーレイン。世界を覆う魔術防護「世界結界」によって、超常現象を見てもすぐに忘れ去ってしまう人々の住む、UDCアースによく似た世界だ。
「アルバートくんから話を聞いた人もいるかもしれないね。一度平和になって、世界から驚異が根絶されたはずの世界……そこで、人々を脅かすオブリビオンが出現し始めたんだ」
「銀誓館学園」という能力者育成組織が、あの世界にはある。その中からユーベルコードに覚醒し、猟兵となり、この場にやってきた者もいる中で、咲希は柔らかく微笑みながら両腕を広げた。
「そう、つまりはボクたちの出番って言うわけ。銀誓館学園の能力者の皆も、今まではオブリビオンに対抗できなかったと思うけれど……猟兵の力に目覚めたなら、オブリビオンに対抗できるってことなんだ」
オブリビオンの出現に伴い、能力者の超能力は弱体化した。しかしユーベルコードを身に着けたのならその限りではない。再び脅威に立ち向かうだけの力を手にすることが、出来たというわけだ。
そこまで話したところで、咲希が手の中に浮かべたグリモアから映像を映し出す。
「今回現場になるのは、東京都八王子市の八王子城跡。元々はお城だったココを夜遅くに訪れた女子高生たちが、八尺様っていうゴーストに襲われることが分かったんだ」
山の中ということもあって周囲は真っ暗だ。そんな中で現れるゴースト、脅威でないはずがないだろう。
そしてUDCアースなどでよくよく語られるその名前を聞いて猟兵たちがざわつきだす。咲希もこくりと、大きく頷いた。
「そう、背がとても高くて、『ぽぽぽ』って笑う、あの八尺様。でもその能力はオブリビオンになったことで大きく強化されている。油断しないよう気をつけてね」
そう言いながら咲希が映し出した八尺様は、両腕が黒く染まり、肥大化していた。その腕で殴られたらひとたまりもないだろう。
「まずは女子高生たちを含めて、現場にいる人たちに避難してもらわないとならない。能力者であってもオブリビオンには対抗できないからね、きっちり帰ってもらって。そのために……皆には肝試しをやってもらう」
八尺様の映像を消し、再び八王子城跡の映像を映しながら咲希が言った言葉に、猟兵たちは目を見開いた。
肝試しとは。今は11月、涼を得るには随分と遅い季節だと思うのだけれど。
「うん、季節外れな気もするけどね。この寒い中で幽霊みたいなのが出てきたら、大概の人はびっくりして逃げ帰るでしょ。ボクだったらもうそこに近づくのやめよう、って思うもん。そんな感じで山に近づく人を排除したら、オブリビオン退治のお仕事だよ」
そう話しつつ、小さく首を傾げる咲希だ。確かに彼女の言う通り、こんな時分に山で恐ろしいものが現れたら、普通の人間なら近づくことを避けるだろう。
そうして人々を遠ざけたら、いよいよゴーストとの戦いだ。
「八尺様の狂気に感染して、弱いゴーストがオブリビオンになってどんどん出現してくるみたい。今回出てくるのは、くねくねってゴーストみたいだね。あの白くてくねくね動くやつ」
咲希が話すと、もう一度猟兵たちの何人かが目を見開いた。くねくねも都市伝説として、その存在がよく知られている。しかし世界結界の影響なのか、世の中に知られている対処法は正確なものではないらしい。結果として猟兵が、ユーベルコードを以て滅さないとならないわけだ。
猟兵たちが落ち着いたところで、咲希はもう一度口を開く。
「くねくねの退治が終わったら八尺様とご対面。殺戮衝動で凶暴化しているみたいなんだけど、その反面思考能力が落ちてるみたいだから、そこに付け入る隙きがあるんじゃないかな、って思うよ」
曰く、八尺様は「妖獣化」という状況にあるらしく、衝動を強化された状態にあるらしい。今回は特に、未成年の男女への殺戮衝動を強化されているようだ。そうした人物を見つけたら、真っ先に殺しに来るだろう。
説明を終えた咲希が映像を消した。手の中で紫色のグリモアを回転させ、ポータルを開く。
「こんなところかな。それじゃ皆、準備はいい? 新しい世界でのお仕事、無事に終わらせて帰ってきてね」
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
遂に来ましたね、シルバーレイン。
またこの世界に関われることを嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします。
●目的
八尺様×1体の撃破。
●舞台・戦場
(第1章)
東京都八王子市の八王子城跡です。
山には神社や滝などがあり、人里からも離れているため夜には真っ暗です。
肝試しをしながら、山に近づいてくる人々や能力者を避難させましょう。
(第2章)
第1章と同じく、八王子城跡です。
八尺様によって汚染されたゴースト「くねくね」が多数出現します。
(第3章)
第1章、第2章と同じく、八王子城跡です。
妖獣化した「八尺様」との戦いです。
両腕が黒く染まった八尺様は通常よりも強化されていますが、殺戮衝動により思考が単純化されています。
それでは、皆さんの力の篭もったプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『肝試しをしよう』
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POW : 度胸で恐怖を跳ね除ける、大声や迫力で驚かす
SPD : 脅かされそうなポイントを予測する、小道具を使って驚かす
WIZ : オカルト知識で恐怖に勝つ、凝った演技で驚かす
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御鍔・睦心
銀誓館に転校してきたと思ったら、いきなり次から次に仕事が来やがる。
ま、退屈しねぇからいいけどな。
視聴嗅覚で察知されないよう【黒影剣】で闇のオーラを纏いつつ、一般人を捜索。
発見した一般人に触れないよう注意しつつ、しばらく周囲の草陰に石を投げこんで音を立て不安感を煽った後、
変顔+クソダサキメポーズで己の顔を懐中電灯で下から照らした状態で、一瞬【黒影剣】を解いて現われ驚かす。
「ウ゛ェ゛ェ゛ェ゛~゛イ゛」(クソボイス)
その後はすぐ【黒影剣】を再発動し離脱。
……悪ノリが過ぎたか?
万一一般人が腰が抜けたり失神したりちびったりして下山困難になった場合は、悲鳴を聞いて来た通りすがりを装って介抱し下山を助ける。
●八王子城は、16世紀の武蔵国に存在していた日本の城である
東京都西部に位置する八王子市は都内唯一の中核市であり、東京都の市の中で最多の人口を誇る大都市であるが、多摩ニュータウンや八王子ニュータウンなどの市街地を離れた地域では、夜には真っ暗になる。
そんな真っ暗になった、最寄りの高尾駅からも離れたところにある八王子城跡を、御鍔・睦心(人間の魔剣士・f35339)は刀を担ぎながら歩いていた。
「銀誓館に転校してきたと思ったら、いきなり次から次に仕事が来やがる……ったく」
銀誓館学園に転入してきたのが11月1日、シルバーレイン世界がグリモアベースとつながったのはその前日。結果として睦心は、転入初日からこうして面倒事に駆り出される結果となったわけである。
しかし、それもまた銀誓館学園生徒の日常。そうでなくとも睦心は元々野良の能力者だった。荒事とはすなわち自分たちの領分だ。
「ま、退屈しねぇからいいけどな!」
丈の長いスカートをひるがえしながら、睦心はずんずんと山の中を登っていった。
既に黒影剣は発動している。今の自分を、誰も見ることも、感じることも出来ないはずだ。その状態で一般人の姿を探す。
「とはいえ、こんな夜更けの山に、ねぇ。一般人が、何の目的でなんだか」
ここは住宅街からも離れた山の中だ。近くに小さな集落と、寺があるくらいの場所。よくこんなところに、こんな時間にと思わなくもなくて。
しかしそれでもいる人はいるものだ。睦心が物音を聞きつけてやってきた山道、そこを懐中電灯片手に登る姉弟がいた。
「本当に、こんな暗い山の上に神様がいるの……?」
「本当だって、お姉ちゃん見たんだから!」
不安そうに話す弟は中学生、姉は高校生くらいだろうか。どうやら山の頂上に用事があるらしいが、このままでは戦闘に巻き込んでしまうだろう。
「おっ、発見……んじゃ、始めるか」
そう呟いて睦心は足元の石を拾い上げた。それを姉弟の近くの草むらに投じる。石が飛び込んだ草むらががさりと鳴り、姉弟の足が止まった。
「ひっ」
「なっ、何、今の音
……!?」
びくっと体を震わせる二人の姿に、ほくそ笑む睦心。そのままそうっと、姉弟を追い抜いていく。念の為に近くの草むらを踏み鳴らすようにして、しばらく石を投じながら姉弟の前を行く睦心だ。
「よしよし。頃合いか……んじゃ」
そして姉弟の恐怖心がピークに達したところで、睦心は足を止めて振り返った。黒影剣を解除して、同時に首の下に吊り下げた懐中電灯をオン。変顔を決めて珍妙なポーズも取ったら完璧だ。
「ウ゛ェ゛ェ゛ェ゛~゛イ゛」
そこにダメ押しのクソボイス。地の底から響き渡るような低音ボイスで驚かすと。姉弟が物理的に跳び上がった。
「ヒッ
……!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーっ!?」
姉はびくりと身体を硬直させ、弟は絶叫を上げながら山道を逃げ帰っていった。すぐさま黒影剣を発動させて、睦心は小さく笑った。
「へへ、ここまでやれば逃げて……あん?」
あとはそのまま離脱、と思ったのだが。驚かせた姉弟の姉が、その場にへたり込んで動かない。
「はっ……ひっ……」
どうやら、驚きのあまり腰を抜かしてしまったらしい。これでは自力での下山はできなさそうだ。
「あっ、やっべ……悪ノリが過ぎたか?」
やってしまったことに気がついた睦心が、少女からいくらか離れたところで黒影剣を解除する。そして通りすがりの人物を装いながら声をかけた。
「おーい、叫び声が聞こえたが、どうしたー? 大丈夫かー?」
なるべく威圧感を与えないように声をかけつつ、少女を抱え起こす。睦心に抱きかかえられるようにしながら震える少女は、うわ言のように呟いた。
「ばっ、化けっ、化け物が……」
「おー、そうか。忘れろ忘れろ、そんなもんいねぇよ」
少女の物言いに少しだけムッとしながら、睦心は山を降りていく。弟に彼女を引き渡したら、もう一度山に向かわねば。二人が見たものをしっかり忘れてくれること、それを睦心は願っていた。
成功
🔵🔵🔴
キアラ・ドルチェ
…私、オバケ怖い派なんですが
こ、こわくないこわくない…オバケなんてないさ、寝ぼけた人がゴーストを見間違えただけさっ!?
…ていうか、父が吸血鬼で母が魔女な私がオバケ怖がってどうするですか(でもがたがた震え
さて、ネミの森の子犬たちを召喚して、あちこちに配置
オバケ役の子たちには布を被せてオバケぽく、人が来たら飛び出させます
他の子は木や茂みの影に隠して人が来たらがさがさして脅かして貰います
ふふ、皆の良い肝試しになりました?(悪戯っ子面
能力者さんは正直に話さないと帰らない、かな
彼らではオブリビオンを倒せない事、私なら倒せるのを話し帰って頂けるよう説得
「ネミの白魔女の名において、必ず事件は解決しますから」
●八王子城は北条氏の本城である小田原城の支城であり、関東の西に位置する軍事上の拠点であった
真っ暗な山道を見上げ、晩秋の冷たさを増す夜風に吹かれながら、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は聖木の杖を握りしめた。
「私、オバケ怖い派なんですが……こ、こわくないこわくない……オバケなんてないさ、寝ぼけた人がゴーストを見間違えただけさっ!?」
本音で言えば怖い。この現場も、いかにもオバケが飛び出してきそうだ。なるべくなら踵を返し、明るい家の中でお菓子を食べていたいけれど。
「……っていうか、父が吸血鬼で母が魔女な私がオバケ怖がってどうするですか……うぅ、でも怖い……」
自分は魔女で、ドルイドで。そういう超自然のものを相手取ることについては本業なのだ。だったらなんとかしなくては、と思うのだが、やはり不安なものは不安である。
しかしここで立ち尽くしていては仕事にならない。ブルブルと頭を振ったキアラはさっと杖を振り上げた。
「でっ、でも、ここで怖がっていたらゴーストが出てきてしまいますものね! お願いします、ネミの森の子犬たち!」
彼女の周囲に、一気にぬいぐるみのコボルトたちが呼び出される。もふもふでふかふかな彼らが可愛らしく右手を振り上げると、キアラはてきぱきと肝試しの準備を進めていった。
何割かのコボルトはオバケ役、白い布をかぶせて外れないように麻紐を巻いてあげる。
「オバケ役の子にはこれをかぶせて……人が来たらぴょんと飛び出してくださいね」
キアラの言葉に、一匹がぴょんと飛び跳ねた。残りのコボルト人形には特に何もしないが、彼らは脅かし役だ。
「他の皆は木や茂みで待っててもらって……ゆさゆさして脅かしてください」
キアラが指示を出すと、こくりと頷いたコボルト人形たちが、わーっと山の中に駆け込んでいく。これであとは、彼らが勝手に脅かしてくれるはずだ。
「さーて、あとは私はここで待っていれば……」
そうしてキアラが石垣に腰掛けて待っていると。山の中から次々に悲鳴が聞こえてきた。
「ひゃっ!」
「きゃーっ!」
悲鳴が上がるや、次々に女子高生や大学生らしき人々が駆け下り、麓へと走っていく。驚かすことには無事に成功したようだ。
「ふふ、皆の良い肝試しになりました?」
「ん……君は」
くすりといたずらっぽく笑っていると、キアラの姿を見つけて歩み寄ってくる集団があった。手には回転動力炉のついた詠唱兵器。
「能力者、か? 銀誓館学園の者だろうか?」
「あ……えぇと、一応そうですね。皆さんも能力者さんですか?」
キアラを見て目を見開く彼らに、返事を返しながらキアラは立ち上がった。聞けば、銀誓館学園に所属しない野良の能力者グループで、ゴーストの気配を感じてやってきたとのこと。
運命予報も失われた昨今、ゴーストの出現は勘や噂話を頼りにする他無い現状だ。それだけならまだしも、オブリビオンは能力者には荷が重い。
「……ということで、出てくるゴーストはゴーストでも、皆さんでは太刀打ちできないものなんです。私たちなら何とか出来ますので、ここは任せてください」
キアラが正直に話して説得するのを、能力者たちは目を見開きながらも真摯に聞いていた。最後のひと押しにと、キアラが胸に手を当てる。
「ネミの白魔女の名において、必ず事件は解決しますから」
彼女の言葉に、仕方がないというように能力者集団のリーダーがため息を付いた。そのまま仲間たちに、引き返すように伝え始める。
「そうか……歯がゆいが、銀誓館学園なら間違いはないだろう。よろしく頼む」
そう言いながら素直に撤退していく能力者集団を見て、キアラはホッと息を吐き出した。
成功
🔵🔵🔴
キング・ノーライフ
ふむ、恐怖させるような物を人に見せればいいのか。
色々やりようはあるが化け物を見せてもつまらん。
変わったゾンビ物にしてみるか。
まず【王の天兵】で信徒召喚、城跡に近づく者達に我の祝福で嫌がる普通の人間(信徒)が恍惚として行き、やがて美形の天使のようになる儀式の【演技】を見せる。
驚く者達を「貴様らも我のしもべにしてやろう」と【威厳】をもって凄む。後は信徒達に一人ずつ捕まえさせ我が【誘惑】、一時的に信徒にする事で天兵に変えてまた逃げたのを引き込ませていく…。適度な情報発信させたら全員捕らえて離れた所に捨てておくか。
事が済めば世界結界とやらで忘れるのだろ?ならここまでやっても問題はあるまい。
●深沢山は華厳菩薩妙行が延喜13年(913年)に山頂で修行した山であるとされる
キング・ノーライフ(不死なる物の神・f18503)は真っ暗な山道を上りながら、端正な口元をほんの僅かに釣り上げた。
「ふむ、恐怖させるような物を人に見せればいいのか」
人々の感じる恐怖は色々とある。不気味なもの、得体のしれないもの、あるいは嫌悪感を抱くもの。色々と考えた結果、キングは一つ案を思いついたようだ。
「色々やりようはあるが化け物を見せてもつまらんな……こうするか」
そう言いながら信徒である人々を召喚する。まだこの時は力を与えていないため、一般的な人間だし翼も生やしていない。そんな彼らを数人、自分の前にひざまずかせる。
と、ちょうどそこに予知に姿を見せていた女子高生がやってきた。遠くからキングたちの方を指差している。
「ね、ねえ、何あれ……?」
「え、えっ……」
彼女たちが見たのは、悠然と佇みながら淡い光を放つキングと、その前にひざまずいて恍惚の表情を浮かべている信徒だ。
「ふふふ……」
「あ、あぁぁ……」
キングが信徒の頭に手をかざすと、信徒の身体も光りに包まれる。そしてその表情がより狂気的なものに変わるや、顔がみるみる美形に変化していった。
「あははは……」
正気を失ったような笑い声を上げる信徒。その背中から、じゃらりと音を立てながら金属製の翼が現れるや、信徒はキングに向かって頭を垂れた。
「我が主よ……どうぞなんなりとご命令を……」
「よし、新たなるしもべよ。ならばこの近くにいる人間を探し出せ」
キングが天使となった信徒にそう告げるや、ちらと女子高生の方を見る。目が合ったことに女子高生二人が震え上がった。
「えっ」
「ひっ……」
得体のしれないものに見られている。その恐怖が女子高生たちを支配する。そこに追い打ちをかけるようにキングが女子高生に言葉を投げかけた。右手を緩く伸ばす。
「貴様らも我のしもべにしてやろう」
「い……っ!」
「嫌……っ!!」
キングの姿に恐怖した女子高生が逃げていった。それを追わせるべく、キングが信徒に指示を出す。
「逃がすな」
「はっ……」
気付けば天使となった信徒たちが何人も迫ってきている。美貌の男女と言えど、得体のしれない存在とあっては恐れるほかない。すぐに一人の女子高生が信徒に捕まってしまった。
「いやっ、いやぁぁっ!」
「我に従え、そして我が為に事を成せ」
キングが手をかざせば、女子高生も美女へと変貌していく。親友が天使に変えられていくさまを、すぐに捕まったもう一人の女子高生が涙を流しながら見ていた。
「あ……あぁぁ……」
「そんな……こんなこと……」
そして女子高生二人を捕らえて信徒にし、他にも山の中に一般人がいたら捕らえて信徒に変え、そして捕まって信徒に変えられた一般人を前にして、キングが満足そうに笑った。
「よし、粗方捕らえたな」
そうして捕らえた信徒に再び手をかざすと、信徒にされていた一般人から翼が抜けた。顔も元通りになっている。
「は……」
「あ……えっ!?」
何が何やら訳のわからない様子の、信徒化を解除された一般人が困惑する中、彼女たちを本物の信徒が優しく抱き上げた。そのまま抱きかかえて跳び上がっていく彼らに、キングが告げる。
「駅がこの近くにあるのだろう、駅前にでも捨ててこい」
「はい、我が主」
その命を受けて飛んでいく信徒たち。彼らは一般人を駅まで送り届けて、そのままここに戻ってくるだろう。
「事が済めば世界結界とやらで忘れるのだろ? ふふふ」
あとは世界結界が、異常なこととして彼女らから忘れさせてくれるはずだ。そうなればもう、彼女らに対してすることはない。キングは再び、山道を登り始めた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『くねくね』
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POW : 事前くねくね
予め【くねくねしておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : くねくねウェーブ
レベルm半径内に【体をくねらせながら狂気の波動】を放ち、命中した敵から【理性】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : くねくねゾーン
自身からレベルm半径内の無機物を【新たなくねくね】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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●縄張りは北浅川と南浅川に囲まれた東西約3km、南北約2~3kmの範囲に及ぶ
一般人を対比させた猟兵たちは、改めて八王子城跡の本体がある八王子城山を登り始めた。
真っ暗な山道を登っていくと、山頂付近にいくぶんか開けた土地があった。どうやら元々要害だった地区らしい。
その地面から生えるように、白くてくねくねした人型のなにかがうごめいている。
そのくねくねした動きのゴーストは、猟兵たちの姿を見つけるや一斉にこちらに向かってきた。敵意があることは間違いない。
狂気と理性に蝕まれそうになるのを感じながら、猟兵たちは武器を取った。
●特記事項
・現場は八王子城跡の要害地区跡地をイメージしており、比較的平らで開けた場所です。周囲は森になっています。
御鍔・睦心
こんな所に大勢屯しやがって、ゴーストもどきがお城の足軽気取りかよ。
だったら遠慮なく夜襲をキメて、サクッと落城させてやるぜ。
七支刀を掲げ【ヘヴンリィ・シルバー・ストーム】。
万物の稲妻による雷【属性攻撃】の【範囲攻撃】で敵を【蹂躙】し、また優しい雨で周囲を【浄化】。
「どいつもこいつもへっぴり腰で踊りやがって、爺っちゃん婆っちゃんの盆踊りのほうが腰入ってんぞ!!」
絶え間なく電光を閃かせることで暗闇を払い、【闘争心】と【殺気】で【狂気耐性】を増し狂気の波動を撥ね退ける。
……このクネクネダンス野郎共はともかく、城攻めってシチュエーションは正直結構アガるな。
このままの勢いで、逃さず大将首も獲りに行こうぜ。
●要害地区にはいくつもの砦を配し、それらを結ぶ連絡道の要所には深い堀切や竪堀、兵舎を建てるための曲輪などが造成されていた
くねくねが地面から立ち上りながら、その肢体をくねくねとのたうたせる。それを見やりながら、睦心はチッと舌を打った。
「こんな所に大勢屯しやがって、ゴーストもどきがお城の足軽気取りかよ」
ここは元々山城だった場所だ。過去には足軽をたくさん配置し、城の守りに当てていたことだろう。だが、今はそんなもの、まるっきり必要がない。
刀を肩に担ぎながら、睦心はにぃと口角を持ち上げた。
「ハ、だったら遠慮なく夜襲をキメて、サクッと落城させてやるぜ!」
すぐさまに刀を掲げる。くねくねの狂気にあてられる前に決着をつけるべきだ。間髪入れずにユーベルコードを発動させる。
「いくぜ、ヘヴンリィ・シルバー・ストーム!」
刹那、空が光を帯びた。かすかに雲のかかる夜空から、銀色に光る雨が降り注ぐ。その雨が地面に跳ねた瞬間、くねくねの群れに向かって色鮮やかな雷が炸裂した。
万色の雷がくねくねの肢体を砕き、爆ぜさせて消し飛ばす。地面にあたった雨はそのまま染み込み、山の周囲を清めていた。
雷に撃たれて悶えるくねくねを見やりながら睦心は吼える。
「どいつもこいつもへっぴり腰で踊りやがって、爺っちゃん婆っちゃんの盆踊りのほうが腰入ってんぞ!!」
そう言いながら睦心は駆けた。刀を振りかぶり、止めとばかりにくねくねの身体を切り裂く。手にした刀の切っ先は、確かにくねくねの身体にめり込み、その身を真っ二つに叩き切った。
「……ハハ」
笑みがこぼれる。この笑みは狂気のうちか、それとも歓喜の笑みか。わからないが、楽しいという事実が重要だ。
「……このクネクネダンス野郎共はともかく、城攻めってシチュエーションは正直結構アガるな。このままの勢いで、逃さず大将首も獲りに行こうぜ」
山の頂上に視線を向けながら、睦心はもう一度刀を肩に担いだ。
成功
🔵🔵🔴
火土金水・明
「平和になった世界に現れたオブリビオンの存在は許すことはできませんね。」「相手が数でくるのでしたら、こちらも攻撃の手数で迎え撃ちましょう。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【ホーリーランス】を【範囲攻撃】にして、『くねくね』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
●特に、居館地区の南側尾根にある太鼓曲輪は5つの深い堀切で区切られ、南側を石垣で固めるなど、容易に尾根を越えられない構造となっていた
大きなつばの三角帽子を押さえながら、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は城跡にやってきた。辺りでうごめくくねくねたちを見やりながら、その黒い瞳を細める。
「平和になった世界に現れたオブリビオンの存在は許すことはできませんね」
せっかく平和になった世界、そこで新たに事件の種を撒くオブリビオンは許しがたい。何としても倒して見せなければ。
「相手が数でくるのでしたら、こちらも攻撃の手数で迎え撃ちましょう」
そう言いながら、明は杖を高く掲げた。くねくねたちを自分の周囲に引きつけるようにしながら、魔法を唱える。
「悪しきものを貫きし槍を!」
詠唱を発すれば、無数の光の槍が出現して明の周りを飛び回った。聖なる槍はくねくねたちの身体を砕き、その身を霧散させていく。
「そこです、もう一発!」
そこにダメ押しのもう一発だ。再び飛び回る槍が、討ち漏らしたくねくねを捉えてその身体を打ち砕く。
槍が消えたそこには、くねくねの姿は見えなかった。またしばらくしたら現れるのだろうが、これならしばらくは大丈夫だろう。
「私の役目は果たせたでしょうか。さて、上に向かいましょう」
そう呟きながら、明は山頂に向かって歩き出した。
成功
🔵🔵🔴
キング・ノーライフ
正体を正しく認識すると狂いながら踊り出す…だったかこの都市伝説は。
無機物の王であり、従者や信徒を召喚する我にはユーベルコード的にも相性が悪いな。城跡とはいえ無機物は多いしな。しかし手はある。
【鼬川の指輪】で鼬川を召喚。
【誘惑】で引き寄せ、正しく認識しきるギリギリの距離で我が【弾幕】で動きを止めている間に攻撃力全振りの【風刃】の一撃で一体ずつ確実に仕留めてもらうとしよう。
よく考えると元UDCだった鼬川に違う世界とはいえ都市伝説の怪物の狂気が効くのか気になる、気になるが我の可愛い弟分、狂われても困るしな。こういう言い方はらしくないか?でも大事な存在には違いないからな。何だ、まだ褒められ足りないか?
●城全体があまりに広大であったため、落城時には未完成であったという説もある
城跡の石材や地面からくねくねが飛び出し、うねうねとのたうち回るのを見ながら、キングはわずかに表情を歪めた。
「正体を正しく認識すると狂いながら踊り出す……だったか、この都市伝説は」
そう言いながらキングが指輪をはめた右手をかざすと、彼の隣に従者の一人、鼬川・瞬太が姿を見せる。「うげっ」と言葉を漏らしながらキングの隣に立った瞬太が、険しい表情で主人を見上げた。
「どうすんだよご主人様。あいつら無機物を新しいくねくねに変化させちまうんだろ。おまけに生きた人間なんかを召喚して、使役する戦い方だと相性が悪いんじゃね?」
「その通りだな。城跡とは言え無機物は多い……だが手はあるぞ、鼬川」
瞬太の言葉に同意を返しながらも、キングは小さく頷いた。そして瞬太に視線を投げかけつつ言う。
「我があれを引き寄せ、動きを止める。その隙きに御前の風刃で各個撃破しろ」
「げっ」
その一見無謀とも取れる作戦に、一瞬うめき声を発する瞬太だ。まさかそんな、自分を犠牲にするようなことをしてくるとは。しかし確かに、キングになら出来ないことでもない。
「そういうことかよ……分かったけど、無茶はすんなよ!」
「心配するな」
そう言い放って駆け出す瞬太に視線を送りながら、キングはくねくねたちに声を飛ばした。
「さあ来い、我がかわいがってやる」
その魅力的な声と誘惑の力に、くねくねたちが動き出す。徐々に距離を詰めてくるくねくね。取り囲まれつつあるキングだが、その場からは動かない。そして包囲網が形成されようとした瞬間。
「よし、来いっ、ヴァーハナ!」
キングは今だとばかりに声を上げた。自分の後方から装甲車ヴァーハナを呼び出し、即座に内蔵ガトリングを展開。一気にくねくねたちに銃弾の嵐をお見舞いした。
弾幕を受けて、くねくねたちの動きが一瞬止まる。そこを瞬太の、特大の風刃が襲った。
「そこだ、喰らえっ!」
攻撃力に集中させた風刃が、くねくねの身体を真っ二つに両断する。そのまま崩れるように消えていったくねくねを見て、次の風刃を装填しながら瞬太が笑った。
「へっ、どうよ!」
「鼬川、油断はするなよ。我の可愛い弟分に狂われても困る」
そこにキングが、弾幕を維持しながら声をかける。その言葉に、風刃を放った瞬太の身体がびしっと固まった。まさかキングが、自分を可愛い弟分などと言ってくるとは。
そんな内心の驚愕を押し流すように、キングは興味深そうな目をしながら言ってくる。
「よく考えると元UDCだった鼬川に、違う世界とはいえ都市伝説の怪物の狂気が効くのか気になるが」
「お……っ、おまっ、ご主人様、何言い出してんだよ! せっかくちょっと嬉しくなったってーのに!」
その遠慮のない物言いに、頬を赤らめながら次の風刃を放つ瞬太だ。風刃の勢いが増したからか、二体のくねくねが一気に両断される。瞬太の反応を面白がりながら、キングがくすくすと笑う。
「でも大事な存在には違いないからな。何だ、まだ褒められ足りないか?」
「ばっ、いいからあいつらなんとかするぞ! 弾幕止めんなよ!」
ますます顔を赤らめる瞬太が再び風刃を装填した。確かにこれ以上瞬太を混乱させて、攻撃の手が緩んではいけない。後で存分に褒めてやろうと考えながら、キングはヴァーハナのガトリングに弾を充填した。
成功
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レオナール・ルフトゥ(サポート)
誰かの面倒を気づいたら見ているような、
近所のお兄さん、もしくは保護者的ポジションです。
荷物番から料理まで頼まれれば意外になんでもやります。
料理に関しては頼まれなくても率先してやります。
基本的に穏やかな性格をしていますが、甘いわけではありません。
可愛い子には旅をさせよ精神。
全体を見るようにし、必要な場所へ行きます。
無駄な争いは厭いますが、納得できるものであれば容赦はしません
他おまかせします。
●城下町には、武家屋敷のある中宿、刀剣鍛冶職人の居住区である鍛冶屋村があった
何かに導かれるように山を登ってきたレオナール・ルフトゥ(ドラゴニアンの竜騎士・f08923)は、開けた場所でうねうねのたうつくねくねたちを見て、目を見開いた。
「そうかそうか、なるほどね」
そして頷きながら、自身の武器であるドラゴンランスを構える。くねくねの姿を視界に捉えつつ、しかし正面には見据えないようにしながら彼は言った。
「つまりここには僕の力が必要な状況がある、ということだね。分かったよ」
ここにいるのはゴーストだ。それもオブリビオン化している。ならば容赦する必要はない。そう確信してレオナールは眉尻をわずかに持ち上げた。
「無駄な争いはなるべく避けたいのだけれど……これは、避けられそうにはない、かな」
そう呟きつつ、彼はドラゴンランスの先端からオーラの弾丸を放った。
その弾丸はくねくねの身体、地面から生えたような根元にぶつかると、その足元が激しく爆発する。宙に浮き上がったその身体が、レオナールとオーラの鎖で繋がれた。
「くねくね動くと言っても、しょせんはその場で足を止めている……なら、こう出来るだろう?」
鎖を握ったレオナールが小さく笑った。そのまま宙に浮かんだままのくねくねの身体を振り回し、地面に叩きつける。
「はぁっ!」
その先には別のくねくねがいた。地面に激突したくねくねと、そのくねくねと激突させられたくねくね。両方ともが激しくその身を損傷させ、ぼろぼろと崩れ去っていく。
「さあ……残りの子たちも、片付けようか?」
それを見届けたレオナールがもう一度ドラゴンランスを握る。そこから何度か、レオナールによるくねくねの振り回しは続けられた。
成功
🔵🔵🔴
ミク・シィナ(サポート)
POW重視の選択。
使用する技能として、捨て身の一撃76、残像76、吸血76、2回攻撃76、怪力76、カウンター41、なぎ払い40、第六感39、鎧砕き34、念動力34、見切り34、衝撃波34の内、いずれか場面に使えそうなものを便宜使用し参加致します。
集団戦闘となりますので、ユーベルコード「血刃の舞踏会(ブラッディー・ダンスパレード)」を使用し、華麗で優雅に華やかに、敵をぶった切って、嬉々として殲滅していきますの。
しかしあくまで御淑やかに。
「Shall we Dance♪」
例外として、WIZ判定でも十分判定成功する場合のみ、ユーベルコード「滅びの光(コードジェネシス)」を使用してみますの。
●また城下町には、滝山城下から移転した商業地区の八日市、横山、八幡といった3つの宿場があったと言わも言われている
ミク・シィナ(漆黒の令嬢・f03233)は粛々と、城跡の広場にやってきた。居並ぶくねくねがくねくねと踊り狂うのを見ながら、わずかに目を細める。
「あら、随分と珍妙な方がいらっしゃいますのね」
たしかに珍妙だ。顔はなく、手足はうねり、くねくねと踊り狂うだけのその姿。ゴーストでなかったら説明も付けられまい。
しかし、それもまた一興。ゆるりと一礼しながらミクはくねくねに近づいた。
「いいですわ、踊りは得意ですの。共に踊りましょう?」
そうしてステップを踏み、くねくねの動きに合わせて踊り始める、と見た次の瞬間。
「あら、ごめんあそばせ?」
ミクの右ストレートがくねくねの頭を文字通りに吹き飛ばした。そのままもんどり打って倒れ、崩れ去っていくくねくねを一瞥し、ミクは残念そうに肩をすくめてみせる。
「ああ、残念。なら次の方、どなたか踊ってくださる?」
そうして次のくねくねの手を取るミクだ。再び踊り始めた矢先に、もう一度ストレートパンチが叩き込まれる。
「ふふ、失礼?」
こうしてミクは次々に、くねくねの頭を吹き飛ばして消し去っていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
キアラ・ドルチェ
ゴースト退治は銀誓館の役目…さあ始めましょうか
ふふ、周囲は森、ここなら戦いやすい
さあ木々よ、植物たちよ、森の魔女に力を貸してっ!
【高速詠唱】で【全力魔法】の森王の槍を打ち込み続けます
新しいくねくねが増えるより早く、倒せば良いだけのお話でしょう?
「自然にお還りなさい」
さ、早くここを越えて元凶を退治しに行かないと
母たちが作り上げた来訪者やゴーストとも共存する世界
それは壊れてしまった
…けれど
「いつかまた、取り返せると私は信じる」
そう信じて、『銀の雨が降る時代』の皆は戦い抜き、そして本当に実現してしまったのだから
「私にだって、できるはずっ!」
『ネミの白魔女』の名にかけて、もう一度平和を取り戻しますっ!
●八王子市文化財課が管理する現在の「八王子城跡」としての範囲は、16世紀当時より狭い範囲に限定されている
残り少なくなったくねくねたち。しかし地面から次々に生まれ出るように、無機物が変換されてくねくねになっていくのを見ながら、キアラは聖木の杖を構えた。
「ゴースト退治は銀誓館の役目……さあ始めましょうか」
これが自分の、これが自分たちの役目なのだ。ずっと前から、世界結界が修復される前から、銀誓館学園はその役目を担ってきた。そして今、その役目が自分たちに回ってきた。
ちら、とキアラは広場の周囲に目を向ける。森の中、草木は生い茂っている。自分にとっては殊更に都合がいい。
「ふふ、周囲は森、ここなら戦いやすい。ヤドリギ使いの本領発揮です。さあ木々よ、植物たちよ、森の魔女に力を貸してっ!」
そう言って杖を振ると、周囲の木々たちがざわざわとざわめいた。応えてくれている。それがキアラには分かる。
「森のディアナよ、汝が慈悲もて我に想い貫く槍を賜らん。万物よ自然に還れ!」
呪文を詠唱すれば、即座に周囲の木々の内から無数の槍が飛んだ。枝、草、蔓で構成された植物の槍だ。それが次から次へと生み出されるくねくねを、余すこと無く打ち砕いていく。
「新しいくねくねが増えるより早く、倒せば良いだけのお話でしょう?」
生み出された最後のくねくねが槍に砕かれ、塵と消えていくのを見て、キアラは走り出した。目指すはこの山の頂上、八王子城跡の天守閣のあった場所だ。
「(母たちが作り上げた来訪者やゴーストとも共存する世界。それは壊れてしまった……けれど)」
けれど、いつかまた取り返せる。そう思案しながらキアラは目を細める。
いつかきっと、世界を救えるはず。そう信じて母や仲間は戦い続けた。そして本当に、それを成し遂げてみせたのだ。
ならば。
「私にだって、できるはずっ!」
決意を込めて発しながらキアラは走る。頂上は、もうすぐそこにあった。
成功
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第3章 ボス戦
『八尺様』
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POW : 八尺様の長腕
【黒い腕】が命中した部位に【霊的エネルギー】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : ぽぽぽぽぽぽぽぽ
【異様に素早い動き】で敵の間合いに踏み込み、【ぽぽぽぽという笑い声】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ : 八尺様に魅入られる
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【見えざる呪いの糸】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。
👑11
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●史跡に含まれていない区域は霊園や私有地が入り組んでいるため、住宅地の中にも多くの遺構を確認することができる
八王子城跡の頂上。それまでの広場よりも更に開けた、広く空が見えるその場所に、白いワンピースに身を包んだ青白い肌をした女性が立っていた。八尺様だ。
「ぽぽ、ぽぽぽ……」
今回の事件の原因、妖獣化したゴースト。それが、猟兵たちを睨めつけながら小さく首を傾ける。
「ぽ、ぽぽぽ、ぽぽぽぽぽ
……!!」
つば広の帽子の奥の瞳が、怪しく輝くのを見た。すぐさま猟兵たちが武器を構えると。
「ぽぽぽぽーっ!!」
奇声のような笑い声を上げながら、八尺様は黒く肥大化した手を振りかざしながら飛びかかってきた。いよいよ、決戦だ。
キング・ノーライフ
未成年への殺戮衝動…鼬川の命を渡す気は無い。
帰ってからもまた褒め倒してやらんといかんからな。
だから我に任せておけ。
真の姿を解放しつつUC使用、女の姿に金属の翼を持つ美女の姿に。
基本は脚力を使った機動を生かした遠距離攻撃と鼬川の【衝撃波】で近づけさせない。なんなら鼬川を抱き上げて【空中浮遊】を使っての木の上に行くとかして逃げつつ攻撃。
それでも相手の間合いに入ったら腕に触れなければいい、大きな腕の攻撃が逆に当て辛い懐に飛び込んで脚力と【怪力】で黒くない二の腕を殴り飛ばすなり蹴り飛ばしての攻撃妨害をして対処しよう。
実は囮だったんじゃないのか?
違うな、我に惚れ直させる為に見せつけたかっただけさ。
●北条氏康の三男・氏照が1571年頃より築城し、1587年頃に本拠とした
八尺様の視線が、キングをかばうように立つ瞬太に向けられる。
「ぽぽぽ……」
その口元が、ニィと三日月のように吊り上げられる。表情を固くする瞬太の肩に、キングが手を置いた。
「鼬川」
「なんすか」
瞬太がちらりとキングに視線を向けると、至極自然にキングが瞬太の前に身体を入れた。逆に瞬太をかばう形になったキングが、瞬太へと微笑みを向けた。
「帰ってからもまた褒め倒してやらんといかんからな。だから我に任せておけ」
「なっ」
その言葉に瞬太が目を見開く。そうして一歩足を踏み出しながら、キングは真の姿を解放した。
「食らった物の力を使うか」
さらりとした緑色の髪、その背に生えた翼、両手両足の指の間に出来上がった水かき。蛙の力を持った美女の姿になったキングが、地面を蹴って飛び出す。
「ぽぽ……!」
飛び出したキングを迎え撃とうと、八尺様が手を振り上げる。それを跳び上がって避けつつ銃を撃ったキングが、上を見上げている瞬太に言う。
「鼬川、お前は遠距離から風刃を放て。必要に応じて我の手を借りろ」
「う、うっす!」
その言葉を受けて、瞬太も動き出した。風刃を何度も放ちながら、八尺様に捕まらないように動き出す。遠距離攻撃の嵐にさらされ、八尺様はなかなか二人に近づけない。
「ぽぽーっ!」
「ふん」
業を煮やした八尺様がキングに向かって手を伸ばす。その手の下に潜り込んだキングが、一気にその腕を蹴り上げた。真っ黒でいびつな手が跳ね上げられる。
「ぽぽ……っ!」
その一撃で八尺様が怯んだ。その攻撃を目にした瞬太が目を見張って声を上げる。
「ご主人様……!」
「問題ない。せいっ!」
キングを心配してかけられた声だが、それに対して笑みを見せたキングが再び蹴りを放つ。その脚が八尺様の胴体を捉え、身体を大きく吹き飛ばした。
「ぽ……っ!」
その一撃でだいぶ余裕が出来た。風刃で追い打ちをかけながら、瞬太がぼそりと言う。
「ご主人様、実は囮だったんじゃないんっすか」
「違うな」
だが、彼の言葉にすぐさまキングは首を振った。再びノーライフを撃ったキングが、にんまりと笑ってみせる。
「我に惚れ直させる為に見せつけたかっただけさ」
「んなっ」
そうして発せられた言葉に、瞬太はまたも言葉を失うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
御鍔・睦心
城主気取りのクソデカブツ、てめぇは「もはやこれまで」だ。
覚悟キメやがれ!!
懐中電灯を灯して未成年の男女を狙いたがる敵を誘い、その攻撃を周囲への二次被害が出ない方向に誘導。
「現役バリバリ天然モノJKのお出ましだぜ、来やがれ木偶の棒!!」
誘った所で敵を灯すように懐中電灯を近くに放り投げ、鞘の無い刀を手に【黒影剣】発動。
【リミッター解除】した刀の内蔵回転動力炉で【エネルギー充填】し、【闘争心】と【殺気】を闇のオーラに転換。
踏み込んで足を【薙ぎ払い】【切断】し【生命力吸収】、動きを止めてから更に攻撃。
敵の乱撃は【野生の勘】で【受け流し】て凌ぐ。
気を抜かずしっかりシメて、後で神社に戦勝報告と行こうぜ!!
●麓には2012年に完成した八王子城跡ガイダンス施設があり、展示解説スペースのほか、休憩、レクチャースペースがある
刀を肩に担ぎながら、八尺様を見やり睦心はにやりと笑った。
「城主気取りのクソデカブツ、てめぇは『もはやこれまで』だ。覚悟キメやがれ!!」
城跡の最上部、ここにいて陣取るならそれは城主か。とはいえど、そこにいるのは紛れもなくゴーストである。
カラリと笑いながら言い放つ睦心に、八尺様が口角を持ち上げつつ嗤う。
「ぽ、ぽ、ぽ……!」
その嘲るような声色に、日本刀を肩に担ぎながら睦心が言った。
「は、現役バリバリ天然モノJKのお出ましだぜ、来やがれ木偶の棒!!」
その言葉の内容か、あるいは睦心自身を弱者と見たか。八尺様は両腕を振り上げながら睦心へと向かっていった。
「ぽー!!」
「へ……っ!」
その黒い手による攻撃を、睦心は紙一重でかわす。そしてカウンターを叩き込むようにして、自身の右手を強く握って吼えた。
「はぁぁぁぁっ!!」
「っ、ぽ……!」
顔に叩き込まれた一撃に、さしもの八尺様も普段通りではいられない。
顔面の不快感がどこまであるかは別としても、ゆるゆると頭を振りながら顔を押さえる八尺様に、睦心はにっかりと笑ってみせた。
「っし!」
普通ならありえない反応に、にやりと笑う睦心流れはこちらにある、それは間違いない。
「気を抜かずしっかりシメて、後で神社に戦勝報告と行こうぜ!」
己の拳を互いににぎりしめながら、睦心は強く吼えつつ再び右手を振りかぶる。
引き裂かれた獣毛と奥の筋肉が脈動する中、もう一撃がその胸元へと吸い込まれていった。
大成功
🔵🔵🔵
梁樹・叶(サポート)
覚醒者になったばかり、シルバーレインより
人間の精霊術士 × どろんバケラー、年齢 21歳の男。
慣れない場所で戸惑いながら、素は元気でお調子者。
慎重に行くあまり、突然のことに対応が遅れると声を張り上げながらも剣を振るう。
【攻撃】【受け流し】を剣と扇で使い分け、
【属性攻撃】が効く相手には精霊の力を借り受けて全力魔法を叩き込む。
ユーベルコードは指定した物どれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●甲斐国の武田信玄軍に攻められた際、滝山城の防衛の限界を感じて本拠を八王子城に移した
山の上に現れた梁樹・叶(覚醒者・f35321)は、目の前の状況と立ちはだかる敵を見て目を見開いた。
「呼び戻されたと思ったら……こんな事になってるとか」
グリモア猟兵に請われて現場に向かえば、辺りは真っ暗闇の中。そして目の前には青白い肌をした異形の腕を持つ女。どう考えたって厄介な状況だ。
「ぽぽぽっぽ……!」
「しかもただのゴーストじゃないって? 厄介極まりないですね……」
口を三日月に歪めながら笑う女に、叶は表情をわずかに歪めた。まだ猟兵の力に目覚めて間もないと言うのに、状況は容赦をしてくれないものだ。そんなの、この世界は昔からちっとも変わっていない。
だが、馴染みの深いシルバーレイン世界での仕事。勝手は概ね分かっている。レイピアを抜き放ちながら声を張った。
「ですが馴染みのある場所で安心しました。共に行こう、ヴォルフボウス」
「グルル……」
自分の隣に白銀の巨狼を喚び出す。叶が見上げるくらい大きな白銀の狼は、八尺様に向かってうなりながら身を低くした。その背に叶が跨るや、八尺様が一気に距離を詰めてくる。
「ぽぽぽぽぽぽぽ」
「くっ!」
速い。目にも留まらぬ速さで間合いに飛び込んで腕を振るってくるゴーストを睨みつけながら、巨狼に飛び退かせて攻撃を躱す叶だ。レイピアでいなすことも考えたが、あれは折られる可能性もある。
「速いな、もう!」
八尺様が縦横無尽に振り回す腕を躱しながら、叶はぎりと歯噛みをする。思わずスの口調も出てしまうのは焦り故にか。しかし攻撃はくらわずに済んでいる。八尺様が動きを止めた瞬間、巨狼が一声吼えた。
「グォゥッ!」
「頼んだ、進め!」
その背を軽く叩けば、矢のように飛び出す巨狼。そのまま八尺様の左腕に噛みつき、牙を突き立てた。
今こそ好機、叶もレイピアを突き出す。
「はっ!」
「ぽ……!」
繰り出されたレイピアが八尺様の眼前に迫る。額に赤い刺し傷を作ると同時に、白い鍔広帽が宙に舞った。
成功
🔵🔵🔴
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。
逆恨みで怒ってる?…気のせいデスヨ。UCの逆恨みじゃアルマイシ。
戦闘は、範囲系ユーベルコードなら集中砲火、単体攻撃なら可能な限りの連続使用。
必要に応じて、カウンターでタイミングをずらしたり、鎧破壊で次の人を有利にしておく。
……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)
●このとき、織田信長の築城した安土城を参考に石垣で固めた山城構築を行った
城田・紗希(人間の探索者・f01927)は八王子城跡の頂上までやってきたところで、猟兵たちと相対するそのゴーストを見た。
黒く染まった両腕がいびつに変形し、肌は夜空の下でもそれと分かるほどに青白い。
「おぉー、なんかすごくおどろおどろしいことになってるんですね、八尺様」
まさしく、おどろおどろしい。紗希の言葉に誤りはないだろう。これもまた、オブリビオンに変質したゴーストの成れの果てか。
そして紗希の姿を認めた八尺様が、目を大きく見開きながら笑った。その黒い指先で紗希を指差してくる。
「ぽぽぽ……」
「あっ、もしかして私、狙われてます? そうですよねー、現役ピチピチ女子高生ですもんね」
その動きにハッとした表情で手を打つ紗希だ。八尺様は年若い男女を狙って殺す。18歳の紗希はまさしくターゲットだろう。
自分を狙ってくるなら上等だ。猟兵として、自分を狙ってくる敵に相対するのは日常のこと。むしろ向かってきてくれるなら都合がいい。
「上等ですよ、返り討ちにしてやります!」
「ぽぽぽーっ!」
紗希の言葉に八尺様も甲高い声を上げた。そのまま目にも留まらぬ速さでこちらに駆けてくる。
悠長に構えてはいられない。紗希は懐に手を入れた。
「出てこい、私の必殺武器!」
そこから腕を引き抜くと、ずるりと飛び出してきたのは巨大な棍棒だ。木製バットのようにも見えるそれは長さも重量もあり、ちょっとのことでは折れなさそうな強さがある。
そうこうするうちにも八尺様は紗希の傍まで迫ってきていた。黒く染まった腕が振り上げられる。
「ぽぽぽぽぽぽ」
「くっ!」
自分に向かってくるその腕に、紗希は棍棒を叩きつけた。みしりと嫌な音がして、八尺様の左腕が弾き飛ばされる。その強烈な一撃に目を見開く八尺様だ。
「ぽ……!」
「そういうことですか。まぁ確かにこういう攻撃をしてくる敵さんなら、殴り飛ばすのが早いですよね!」
その反応に紗希も笑う。剣や刀で斬ったところで、再生されたら元の木阿弥。こういう鈍器で防御しながら殴れば、ダメージも与えられるし攻撃も防げる。一石二鳥というわけだ。
「せいやっ!」
「ぽ――!!」
そこから今度は紗希が距離を詰める。胴体めがけて棍棒を振るえば、その先端が八尺様の腰を捉えた。くの字に身体を折り曲げる八尺様に、にやりと笑い返す紗希だった。
成功
🔵🔵🔴
スピレイル・ナトゥア(サポート)
精霊を信仰する部族の巫女姫です
好奇心旺盛な性格で、世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をするために戦っています
自分の生命を危険に晒してでも、被害者の方々の生命を救おうとします
技能は【第六感】と【援護射撃】と【オーラ防御】を主に使用します
精霊印の突撃銃を武器に、弾幕を張ったり、味方を援護したりする専用スタイルです(前衛はみなさんに任せました!)
情報収集や交渉のときには、自前の猫耳をふりふり揺らして【誘惑】を
接近戦の場合は精霊の護身用ナイフで【捨て身の一撃】を繰り出します
マスター様ごとの描写の違いを楽しみにしている改造巫女服娘なので、ぜひサポート参加させてくださると嬉しいです!
●麓の村では城山川の水で米を炊けば赤く米が染まるほどであったと伝えられる
スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)は八王子城跡の頂上までやってくると、肩で息をする八尺様の姿を見て悲しげに目を細めた。
「この世界にもオブリビオンは蔓延っているんですね……」
このシルバーレインの世界にも、オブリビオンは跋扈している。ならば、オブリビオンのいない平和な状態に、なんとしてでも戻さねば。
そう決意を固めて突撃銃を握るスピレイルの姿を認めた八尺様が、一気に距離を詰めながら腕を大きく振りかぶる。
「ぽぽぽぽぽ」
「なっ……驚かせないでください!」
笑いながら急に接近してきた八尺様に、驚いて身を引くスピレイル。と、その瞬間に彼女の周囲を紅蓮の炎が取り囲んだ。炎の精霊が現出したのだ。
「ぽ
……!!」
燃え盛る炎に身を焼かれ、八尺様が動きを止める。その隙きに改めて、突撃銃を構えたスピレイルが声を上げた。
「精霊さん、よろしくお願いします!」
炎の弾丸を放ち始めるスピレイルの声に合わせ、召喚された炎の精霊が舞い踊り、八尺様を炎で焼いていく。身動きも取れないままに爆炎に包まれた八尺様の身体が、だんだんと崩れ始めた。
「ぽ、ぽ、ぽ……!」
苦悶の声を上げながら焼き尽くされていく八尺様。その胸に、スピレイルは照準を合わせる。
「これでおしまいです……さようなら」
そして引き金を引けば、放たれた弾丸が八尺様の胸に風穴を開ける。それがトドメの一撃となり、八尺様の崩壊が急速に進んでいった。
「ぽ……」
小さい一声を残し、その身体が塵となって消えていく。炎の精霊が発した炎を消すと、辺りは暗闇に包まれた。空で無数の星々がまたたいている。
「ふう……さて」
息を一つ吐いて、スピレイルは後ろを振り返る。そこには八王子城跡の頂上にある神社が、静かに佇んでいた。そちらに、深く頭を下げる。
「騒がしくしてすみませんでした……ありがとうございます」
これで、この地は静かで安全な場所になるだろう。この神社に祀られる神も、心穏やかに人々を見守ってくれるはずだ。スピレイルはそう感じながら、山を降りるべく来た道を戻っていった。
成功
🔵🔵🔴