キスミー、サンデイ
#サクラミラージュ
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月曜から土曜の間は奥さんにキスする貴方だから。
日曜のキスだけはアタシのものだって、思ってたの。
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――芙蓉 アキナ。
正しくは「芙蓉 朱菜」と書くらしいが。
彼女の名前を出した時、顔を赤らめる者と、青くする者がいる。
片や憧れ。恋愛ものをさせたら右に出る者はいなかった、「恋するアキナ」というスタアへの羨望に頬を染める者。
そして片や恐怖。スキャンダルの末にキネマ界の未来を背負って立つはずだった命たちを巻き添えに死んだ、恐ろしい女への恐れ。
芙蓉アキナという名前は、間違いなく誰もの記憶に刻み込まれている。憧れと畏怖、二つの側面を背負って。
焔のような女だった、と語る者がいる。焔のように愛を演じ、キネマを愛した女だったと。だが其の一方で、蛇のようだったと語る者もいる。彼女は当時世間を風靡していたキネマ監督との不貞を噂されていたからだ。
寿々菜島、という島がある。
所有権を放棄された小さな島で、其の中心には屋敷があった。
あった、のだ。数年前には。
だが、其の持ち主は、パーティと称して集まった者すべてを巻き込み、爆弾を用いて壮大な自害をした。
大事件だった。生き残った者はなく、爆発の大きさがうかがえる。警察は数か月にわたって現場を捜索したが、見付かったのは数名の骨、其れも一部ずつでしかなかったという。
持ち主の骨は見つからなかった。或いは彼女は、爆弾の傍で眠ったのだという者もいた。監督の愛人であったというスキャンダルを抱いて。
●
「其れが芙蓉アキナって訳」
「相続で所有権は親族に移るはずだったんだけど、怖がって放棄したんだってさ、全部」
“スタア伝記”の一ページをぱらと捲りながら、ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は言う。
「今回お前たちに向かって貰うのはその寿々菜島だ。影朧――いや、最早オブリビオンと呼んでも良いかもしれない。そのような存在を察知した。――何より、今回は命が掛かっている。実はね、爆破事件の屋敷にはアキナと浮気していた監督は行っていなかったのさ。そりゃあそうだよね、言ったら当然衆目の的だもの。だから彼は生き残ったんだけど、……来るんだって。ずっと。毎年。この時期に。」
――芙蓉アキナからの招待状が。
「監督は怯えに怯えて、とうとう今年は行くと言い出した。言ったらきっと止まる筈だと彼は信じている。寿々菜島はまー、曰くの多い島でね。事件が事件だ、死んだ事を判っていない亡霊が闊歩しているだとか、色々とね、ある訳。そしてアキナというオブリビオンがいる。あたしが見た夢は、監督が食い殺されてしまう夢だ。不思議な夢だった。まるでキネマを再上映するように、パーティが開かれて……燃えるような赤毛の女が壇上に立って、言うんだ」
●
「皆さま、お集まりくださりありがとうございます」
「アタシについて、様々なうわさがあるようですが……敢えて言いましょう、事実であると」
「アタシは愛に生きた。愛を演じ、愛を知りました。そして真実の愛と出会ったのです。真実の愛と、書面上の愛は違うもの。彼とアタシは、間違いなく真実の愛で結ばれていましたわ」
「でも、彼は此処にいない。アタシを初めて拒んだ。……だから」
「だからアタシは皆様にお願いをする」
「一緒に死んで下さらない? 拒否権はもうないのです、残念ながら」
key
お久しぶりです、keyです。
愛に生きる、って壮絶な事だと思いませんか。
●目的
「亡霊パーティに潜入し、芙蓉アキナを撃破せよ」
●導入
寿々菜島に浮かび上がる亡霊の洋館に入るところから始まります。
監督夫妻は帝都桜學府によって保護されており、生きている客は猟兵しかいないはず。
其の筈ですが、ブッフェ形式のダンスホールは満員です。
第一章では亡霊との噛み合わない歓談をお楽しみ下さい。
彼らは皆アキナが「再上映」しているものです。
ユーベルコードの能力値はお好きなもので大丈夫です。
第二章ではアキナがOPの口上と共に爆弾のスイッチを押します。
猟兵はこの爆弾の衝撃程度では死にません。
ですが、此処で死を恐れるふりをしないと、アキナは正体を見せません。
死を恐れて下さい。逃げ惑っても良い、部屋に籠っても良い、兎に角死を恐れるふりをして、突如として突きつけられた最期の日を楽しんでみて下さい。
此処でもユーベルコードの能力値はお好きなものを選んでください。
第三章
アキナを討滅して下さい。リバイバルはもう終わりです。
●プレイング受付
タグ・マスターページにて適宜お知らせ致します
●注意事項(マスターページも併せてご覧下さい)
迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
また、失効日が同一になるタイミングでプレイングを送って頂ければ、こちらとしては助かります。
単独行動希望の方も一言添えて下さると嬉しいです。
●
此処まで読んで下さりありがとうございました。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『彩る泡の傍らに』
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POW : 甘味も頼む
SPD : 軽食も頼む
WIZ : 今日のお勧めも頼む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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ようこそ寿々菜島へ。
屋敷と一面の森以外楽しみのないところではありますが、屋敷内はご自由に歩き回られて結構ですよ。
こちらは主催者が買い求め、森を拓いて立てたお屋敷でございます。中庭には薔薇庭園もございます。中庭のお席にお食事をお持ちする事も可能です。
昼食をお求めですか? ならキッシュなどいかがでしょう。ほうれん草にベーコン、きのこなどございます。キッシュが重いならスコーンをどうぞ。スコーンには紅茶が合いますが、いかがなさいますか? 其れとも珈琲? 勿論ジュースでも。あ、ただ、アルコールは控えて頂ければと思います。主催者の挨拶が後にございますので。
デザートをお求めなら、デザアトコーナーへどうぞ。ケーキにタルト、最近入ってきたマカロンというお菓子もございます。新しいもの好きな方は是非味わってみて下さいませ。さくりとした食感にクリイムがとろり。非常に宜しゅうございますよ。
え? マカロンは最新ではない?
ははは、ご冗談を。マカロンわは最近輸あ入したものでものでものでものでうるさい食え黙って食えアキナさまのおこころづかいをむだにするな
失礼致しました。
上着を受け取らせて頂きます。招待状はお持ちですか? お持ちですね。よばれたならもってるだろうるさいな
失礼致しました。
では、お寛ぎくださいませ。
ヒース・アーベル
◆再送
孤島に佇む館…質の良い装飾品などを目にできそうですね。館内をゆっくり見てまわりたいものです。勿論、仕事は忘れていませんよ。
それにしても、亡霊が闊歩している、ですか。私はアキナ嬢をよく知らないので、最初は甘味を…特におすすめされたマカロンを食べながら、亡霊たちの話を盗み聞きしましょうか。
時間があれば…とりあえず、亡霊たちに「どの作品がお好みですか?」と尋ねてみたいものです。館にいる亡霊たちは、アキナ嬢の関係者やファンの方々でしょうしね。細かいことを聞かずとも、勝手に喋ってくれるでしょう。まぁ、話は通じないでしょうが。その時は適当に相槌を打ちつつ、時がくるまで待ちましょうか。
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上質なもの、静かなれども美しいものを愛するヒース・アーベル(胡散臭い掃除屋・f35538)は、主催者のスキャンダルよりも調度品に興味があった。
館をゆっくり見て回ってよいというのなら、と、屋敷を見て回ってダンスフロアに戻ってきたが――成る程。確かに壺や窓枠に至るまで、上等なものを使っているようだった。
同時に、僅かに寒気がする。アキナ嬢はこの屋敷を「全て壊す」為だけに用意したのだろうか。そうだとしたら、女性の執念とはかくも恐ろしいものなのか。
「もし」
ヒースは談笑していた亡霊たち――そうは見えないが、彼らが故人だという事は忘れてはならない――に声をかけ、其の輪の中に入ってみる事にした。
「まあ。あまり見ない顔ですね。貴方はもしや、アキナ様に見出された新人の方?」
ベテラン女優らしき顔にそう問われて、マカロンを一つ失敬するヒースの手が止まった。何と答えるべきだろう。此処は恐らく「YES」だ。
「……ええ、そうです。この業界には余り明るくなく……しかしアキナ様はそんな私を見出して下さいました」
「まあ、そうなの! じゃあこのパーティで監督をしている方を紹介して差し上げましょうか。きっと貴方なら、突然主役とは行かなくても準主役にはなれる顔よ?」
「そうでしょうか? しかし演技にはいささか……自信が。皆様はアキナ様のご招待で?」
「ええ、勿論。かの「恋するアキナ」に誘われては、断る方が無粋というもの」
「成る程。では、お勧めのアキナ嬢主演のキネマなどはありますか?」
「まあ! 貴方、アキナ様の出演作を網羅していないの? どれもこれもヒット作ばかりよ。「午後3時の逢瀬」とか……」
ベテラン女優の言葉に、周りはうんうんと頷きながら、これも、あれも、とアキナの代表作らしき作品を挙げていく。が、生憎ヒースには聞き覚えのないタイトルばかりだ。調べればあるのかもしれないが、恐らく昔時の作品だろう。
「ああ、でも……アキナ様といえばあれだな」
炭酸飲料を煽っていた背の高い男が勿体ぶったように言う。
「「キスミー、サンデイ」。あれに勝るものはないだろう」
「まあ! そうだったわ。余りに当たり前すぎて忘れていたわね」
「ほう。……どのような作品なのですか?」
「高名な音楽家の愛人になったオペラ歌手の話さ。キャッチフレーズもアキナ様が考えたという話さ。“月曜から土曜までは奥さんにキスする貴方だから、日曜のキスはアタシの物だって思ってたの”。いやあ、何度聞いても痺れますな」
「そうねえ。あれこそアキナ嬢の真骨頂って感じがするわ。何せ……彼女、其のキネマの監督と良い仲なんだから」
ドリンクを口に含んで呑み込み、ベテラン女優はなんてことのないように口にした。
「招待状も出したけど、来て貰えなかったみたいね。監督はまあ、生活があるも、の、ね、ねねねねね」
ねねねねね、ねねねねねねねねね。
まるで罰せられるようにエラーを吐き始めたベテラン女優に構わず、周りはアキナの代表作について褒めそやし始める。
其れはまるで、禁断に触れてしまった者の末路のようで。
ヒースは適当に相槌を打つと、其の場から離れた。途中までは存外話が通じるかと思っていたが、矢張り。リバイバル上映だけあって、アキナを悪し様に言う役者は許されないようだ。
大成功
🔵🔵🔵
柊・はとり
孤島、曰くつきの館、怪しげな美女
如何にも探偵が喚ばれそうな場所だ
こういう時は必ず誰かが死ぬ
ちょっと前までの俺だったら
進んでこんな所に来る事は無かっただろう
だが今はこの未解決事件にけりをつけたいと
少しだけ思ったから
案内役の態度に眉を顰め
猟兵以外の来客は皆死者のようだが
この洒落た料理も過去の幻影なんだろうか
まあ毒が入ってようがどうせ死にはしない
腹減ってるし食える物は食っとく
キッシュ…食った気がしねえ
やっぱ肉だな
少しでも芙蓉アキナの人物像が掴めればいいが
男と女それぞれの客に彼女の印象を尋ねてみる
色恋沙汰が絡めば性別によって
得られる情報の差異は大きいだろう
…会話が成立するとはあまり期待しちゃいないがね
●
孤島。
曰くつきの館に、怪しげな美女。
如何にも探偵が呼ばれそうな場所だ、と、自ら足を踏み入れた探偵、柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は思う。
こういう時は必ず誰かが死ぬ。――いや? この事件に限っては「誰もが死ぬ」と言い換えても良いかもしれない。
エラーを吐く出迎え役の横をすり抜けてダンスフロアへ入る。賑やかだが、何処か虚ろだ。亡霊たちが群れているとしか見えないからだろうか。
――ちょっと前のはとりなら、進んでこんな魔窟に来ることはなかっただろう。
だが、今は違う。この未解決事件にけりを付けたい。そう、少しだけ思ったから。そう思った時には、魔女が開けたグリモアの扉へと足を向けていた、其れだけの事だ。
そういえばキッシュがお勧めだと言っていたが、この料理も幻影なのだろうか?
まあ毒が入っていようが、死にはしない体だ。皿とカトラリーを取るとキッシュを載せる。重さは感じる。では味はどうだろう。切り分けてもぐり、と食べてみるが……味がしない。味はリバイバルの対象外という事か? もぐもぐ、ごくり、と呑み込んでは見たが、まるで食べた気がしなかった。これでは奥にあるチキンを切り分けても同じだろう。折角の肉なのに残念だ。
此処は情報収集に励むしかなさそうだ。はとりはそっとキッシュをテーブルの上に置いて、客に声をかける。なるべく男と女が平等になるように。性別が違えば視点が変わる。なるべくなら多くの視点の情報を集めておきたかった。
「アキナ様ですか? 麗しい方ですよね。まるで燃える炎のような……下手に触れると此方が火傷しそうな苛烈な方だ。だが其れだけ、キネマに対する情熱が強いのでしょう。尊敬していますよ。ただ、余りに苛烈すぎて異性として意識できないのが残念ですが」
「アキナ様? ええ! 憧れているんです。あの方みたいに、恋する演技で周囲を魅了してみたいって……私が出来る恋愛の演技なんて、初恋が精々で……恋をした事がないからかしら。アキナ様は色んな恋愛をなさっていると聞いたわ。あれだけ美しいのだもの、きっと引く手あまただったのでしょうね」
「あの手の女優にしては珍しく、特定の監督からの贔屓はなかったように思いますね。まあ、彼女に関する噂はおいておいて、ですが……彼女の演技力は本物だった。故に様々な監督が彼女を起用したがったというのは事実です。現に此処に呼ばれた監督も、恋愛ものを得意とする者だけではないですからね。ホラー、ミステリー、サスペンス、家族ものにノンフィクション。あすこにいる西郷監督は時代物の大御所です。アキナ様が時代物を好いている、という線もありますがね? これだけ多様な監督が彼女の招待に応えているというのが、彼女の実力の証左でしょう」
「……でも、最近は特定の監督を避けているという噂が立っていたわ。そう、あのうわわわわきあああああああいいいいいいいいいいいああああああああああああうわきじゃないほんもののあいだあいするひとのまえでべつのひとをあいせるものかそうだろうそうでしょうそれでは恋するアキナのなにきずがつつつつつ」
「……成る程」
判りやすい女だ、とはとりはアキナ像を思い浮かべる。己の称賛は残し、悪口はエラーとして発言不可にする。苛烈な女にありがちな、感情的な意図だ。
なら――この事件は綿密に練られたものではなかったのかもしれない。感情という最も事件を厄介にするファクターが、真相を見えづらくしているだけで。
形ばかりのチキンを口にしながら、はとりは証言者たちの言を思い返していた。
「(愛する人の前で他の人を愛せるか、……ねえ)」
大成功
🔵🔵🔵
臥待・夏報
やっさん(f18885)と
まともな男、か
普通の生活を営みつつ火遊びで気を紛らわす、まあ凡庸な人生の範疇だろうね
やっさんに比べて、女を見る目が無かったのがご愁傷様かな
……選んだ女と覚悟が釣り合わないよ、こりゃ
女優ってほどの華もないけど、そこはお化粧とかでなんとかしつつ紛れ込む
父娘じゃ場にそぐわないし夫婦でいいかな
パトロン同然の年の差婚なんてこの業界にはありがちでしょ
そして、そういう奴ほど他人の醜聞には群がるものだ
「やだやだ……」なんて溜息吐きつつ
「ほら貴方も。調子に乗っていると今に痛い目を見ますよ」なんて釘を刺して
良識人みたいな顔で話を合わせよう
この宴は……こうなる前から狂ってたのかもしんないな
安喰・八束
臥待(f15753)と
狼憑きに惚れ国を捨てた俺は
色恋で身を持ち崩した…と言えなくも無い身の上だ
まあ、まともな男なら
火遊びに手出そうが、生活は捨てねえのが正解だろうよ
…しかしこいつは、下手すりゃ狼より苛烈な女だな
手厳しいなあ、臥待は
臥待は女優、俺はその贔屓筋上がりの夫…とでも偽って潜り込む
中庭で薔薇と細君でも褒めそやす振り、ついでに事が起きた時の逃路や射線を確認しとくか
再上映の亡霊どもには適当に話を合わせる
「然しあの監督も度胸のない」
「俺かい?射止めた薔薇の、何を恥じる事があるかね」
…俺の世なら兎も角、此処では俺達の年の差は
同じ穴の狢に見えるだろうがな
さて、主催の噂話でも引き出せりゃいいんだが。
●
臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)と安喰・八束(銃声は遠く・f18885)は、中庭で味のしない食事をしていた。ダンスフロアはテーブルがいっぱいで、置き場所がなかったためだ。夏報と八束は夫婦としてこの屋敷に潜入している。――女優と、贔屓筋上がりの夫。きっとアキナの生きた時代では珍しくもなく、そして今も珍しくないだろう組み合わせだ。
「――まともな男、ねえ」
夏報がぽつり、呟いた。
「まともってなんだろうなあ。……俺は狼憑きに惚れて国を棄てた。まあ、其れもまた一つの“色恋で身を持ち崩す”なんだろうが」
「やっさんに比べて女を見る目がなかったんだよ、あの監督は。選んだ女と覚悟が釣り合わなかった」
「手厳しいな」
「客観的事実」
二人の会話は其処で一旦止まる。女優達の一団が、中庭に繰り出して来たからだ。まあ、とお辞儀する女優たちに、夏報はにこりと笑みを浮かべてみせる。懸命に化粧をしたけれど、彼女に劣らず美しくなれているだろうか。
「まあ、まあ! こんなところでお食事ですの? わたくし達も此処でお食事すれば良かったわ」
「ええ。彼女と薔薇を見ながらの食事は最高でした」
八束がしれりと言い放って見せる。やっさん、そんな事言えたんだ……すごいな……という視線を夏報が送ると、気まずそうに視線を逸らされた。ありゃ心にも思ってないな。
「アキナ様に挨拶はされました? 彼女、そういうのには寛容だけれど」
「いいえ、まだ。ご挨拶した方が宜しかったでしょうか?」
「今は無理ですわ。彼女、監督からのオファーに囲まれているから。監督贔屓をしないのはアキナ様の良い所だけど、だから監督がつけあがるのよねえ」
「ええ、ええ、全く。ラブロマンスなら兎も角、ノンフィクションの監督まで……アキナ様の知名度に乗りたいのが見え見えだわ」
ひそひそと言い合う女優達は、パッと見て話が通じるように見える。
「監督贔屓をしない方なんですか?」
「ええ。アキナ様は作品の内容だけをみて出演を判断されてたみたいでね? ジャンルや監督の知名度は気にしない方みたいなのよ。だから実は芸歴はかなり長いという噂よ。其の資産でこの島を買ったんじゃないかって」
「でもまあ、島を買った時期が……ねえ」
「時期?」
夏報が首を傾げると、そうなの、と女優の一人が手振りを交えて言う。
「噂になっているでしょう? あの監督と。其の時に島を買ったものだから、二人の●●●にするんじゃないかって噂が」
「……? ごめんなさい、今、なんて?」
「え? だから、●●●」
ざざ、とノイズがかかったようになって、女優の声が聞こえない。……まるでアキナの視線が注がれているような気がして、八束は僅かに震えた。
「成る程。然しあの監督も度胸のない。胸を張って招待に預かれば良かったものを」
「もう。そんな事を言って。あなたもいつか痛い目をみるかも知れないんですよ」
夏報が小突く。はは、と八束は笑い。
「射止めた薔薇の何を恥じる事があるかね」
「まあ、睦まじい事。でも気を付けた方がいいわ」
「え?」
「アキナ様、ああ見えて嫉妬心が凄いのよ。後輩たちにぶつけたりはしていないから表沙汰にはなってないけどね?」
「貴方達、境遇が似ていらっしゃるじゃない? だからアキナ様に目を付けられないように注意しなさいな」
「招待客をどうこうするなんて、思えないけれど……」
「このお屋敷では何があっても、アキナ様がもみ消してしまうから」
……。
マカロン美味しかったわねえ、と、散策に去っていく女優たちを見送って、夏報はほう、と息を吐いた。
「まるで見られているようで落ち着かなかったよ」
「俺もだ。多分この上映はまるまる見られてるだろうなあ」
女優達はなんだかんだいってアキナを持ち上げているようだが――これではまるで蛇に睨まれているような気がしてならない。
アキナ様のご挨拶です、と使用人が呼びに来るまで、夏報と八束は味のしない紅茶と珈琲を味わっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『クローズドサークルへようこそ』
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POW : 全員が一ヶ所に集まっていれば何も起きないはずだ。
SPD : 自分以外は信用できない。部屋に籠り外部からの助けを待つ。
WIZ : これまでの事件から犯人を推理し、惨劇を止めてやる。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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「皆さま、本日はようこそ遥々お越し頂きました」
ダンスホールに人々が集まっている。其の多さは間を縫って歩くのも難しいほどで、食事中は色々な場所に散らばっていただけで相当な人数を呼んでいたのだと判る。
――このうち何人が、“リバイバル”なのだろうか。
そんな猟兵の推測をよそに、マイク越しにもよく通る声がする。赤毛を豊かに波打たせた、赤いルージュが蠱惑的な女だった。彼女がアキナ。後に畏怖と憧憬で語られる女優である。
「館と森しかないところですが、此処には皆さま、そしてアタシという華がある。様々な分野の方にお声がけしましたから、どうぞご交流されて下さい。残り少ない時間に、余裕があれば、の話ですが」
――?
ざわり、と観衆がざわめいた。アキナは今、何か妙な事を言わなかっただろうか? と。
使用人は皆揃って、悲し気な顔をしている。アキナの言葉を聞いた途端、泣き出すメイドもいた。徐々にダンスホールが異様な雰囲気に呑み込まれていく。アキナは笑っている。何かを値定めするように。
「最近、アタシについて様々な噂が飛び交っているよう。ええ、断言しましょう。其れは真実です。書面上の愛と、真実の愛は違うのです。アタシは真実の愛を手に入れた。そう思っていた。“月曜から土曜に別の人にキスをしても、日曜には真心こめてアタシにキスしてくれると思っていた”のです」
「でも、彼は来なかった。真実の愛は無かった。彼は結局、書面と体裁をとった。だからアタシは、皆様と共に彼に仕返しをする」
「午前0時に、この館を爆破する爆弾を仕掛けました。今は午後4時。残りは8時間」
「ボートは全て向こう岸へ帰らせました。泳いで帰って見たいならどうぞ、お試しくださいませ」
「貴方がたには拒否権はありません」
「アタシと一緒に、死んでくださいまし」
――呆然、としていた。
爆弾? とぼんやり呟く者がいた。其れはざわめきとなって雨のようにフロア中に広がり、やがて混乱を呼ぶ。わあきゃあと意味のない悲鳴が響き渡り、客はこぞってドアに押し掛ける。アキナはそんな彼らを見ていた。使用人たちも動く様子はない。
これは再現劇。
けれど君たちは、何を思うだろうか。午前0時までの8時間の間に、君たちは何をし、何を思う?
安喰・八束
臥待(f15753)と
この島を二人の…何にする腹積もりだったんだろうな
七日の内の一日を此処で永遠にでもする気かね
日曜日ってのは特別なんだったか?
奴さん、悪趣味の演目を御所望らしい
……慣れん芝居の続きと行くか
長すぎる猶予、避けられぬ死
正気を保つのも難しかろう
「射止めた薔薇」と最期を過ごしたいと思うのは自然な事だろう?
部屋の扉は締め切り窓は塞ぐ
逃さんよ
此処で俺と、最期まで共に居てくれ
…実の所全て爆発への備えなんだが(戦闘知識)
芝居抜きの本音を言やな
何とかお前さんだけでも逃がせんかと思うよ
「惚れ込んだ女」にゃ、何を捨て置いても
生き延びて欲しいもんじゃあないか?
何、女房が此処に居たらそうしたって話さ
臥待・夏報
やっさん(f18885)と
刻限が迫っても、何か種明かしがあるでもない
……僕が、割り切った結婚で安穏としているタイプの女だとしたら
思い通りにならない時はまず「怒る」だろうな
ああもう!
どうして他人の痴話喧嘩に巻き込まれなくちゃならないの
男でしょうが、どうにかしてくださいよ貴方
今からでも船を探すなり……貴方、一体何をして……?
癇癪(演技)のついでに棚の食器を割って捨てておく
空っぽの棚を爆風の遮蔽に使おう……
ま、これも気休めだな
こらこら、奥方に言いつけるぞ(小声)
夏報さんだって猟兵だし、爆発程度じゃ死なないよ?
……でも、やっさんの言ってることは正しい
本当に誰かを大事に想える人なら……そうするんだろうね
●
見られている、気がする。
何処からかは判らない。誰かははっきりと判る。
アキナはしかし異邦人である八束と夏報に構わず、再現劇を続けている。
八束は夏報を騒然としたダンスフロアから連れ出した。
パニックに陥る者、押しのけて海岸に走る者、其れ等を横目に自分たちにあてがわれた部屋へ行き、夏報を押し込むと扉を締め切る。
「貴方!? 貴方、何するの!」
この怒りは演技だ。
割り切った結婚で安穏としているタイプの女だったら、と夏報が仮定した感情だ。行き場のない怒りを夫に怒鳴るという形で発散する。うん、これが一番其れらしいだろう。
「ああもう、どうして他人の痴話喧嘩にこんな形で巻き込まれなくちゃならないの……! どうにかしてくださいよ貴方、……男でしょうが! 今からでもいい、船を探すなりなんなり」
「船は全部向こうへ返したって言ったろう。泳いでも無駄だ、此処は遠洋。其れにアキナ嬢の言葉を信じるなら、爆破は島全体に及ぶんだろうな」
「……貴方、何をして……?」
怒り任せに夏報が棚の食器をばらばらと床にばらまく。高級そうな陶器の皿がぱりんと割れて、しかし其の棚を八束が動かし始めたので夏報は目を瞠る、ふりをする。
爆破への備えなのだろう。この屋敷が残るとも思えないが、万が一硝子が飛散しても怪我をしないように、窓を塞ぐ。
「逃さんよ。……最期まで共にいてくれ」
「……貴方……」
言うと、八束はあらかたやれることをやり終えたとばかりに、ベッドに腰を下ろす。そうして、ふ、と素の顔を見せた。
「芝居抜きで言やな」
「……」
「お前さんだけでも、何とか逃がせんかと思うよ。“惚れこんだ女”にゃ、何を捨て置いても生き延びて欲しいもんじゃあないか?」
「こらこら、奥方に言いつけるぞ」
揶揄うように夏報が返す。けれど、其の言葉には“わかるよ”という意味が込められている。君が言っている事は、きっと人として正しい。
「夏報さんだって猟兵だし、爆発程度じゃ死なないよ」
「判ってるさ。……何、女房が此処に居たらそうしたって話だよ」
「……そうだね。本当に誰かを大事に想える人なら……そうするんだろうね。でもアキナは、……多分、半分は来ないと思っていたんじゃないかな」
八束が顔を上げる。
「爆弾を置いた真意は判らないし、もしかしたら例の監督が来ても起動したのかもしれないけど……まあ、アキナは愛に生きて、招待客は二の次のタイプだった訳だ」
「……日曜日ってのは、特別だったのかね」
「アキナにとってはね」
六日を無為に過ごすくらいなら、一日を永遠にしたかった。
全く、女と愛は切り離せないし、女というものは愛がかかわるとかくも恐ろしくなるものか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヒース・アーベル
アキナ嬢の口上、『キスミー、サンデイ』のキャッチフレーズと同じですね。映画の内容も実体験と変わらなかったのでしょうか…
「こんなことになるくらいなら、アキナ嬢の名作をこの目で見ておきたかった…」と嘆いたふりをしましょう。できれば、最後の時を『キスミー、サンデイ』を見ながら迎えたいですね。設備が有れば、ですが。
もしなければ、パンフレットをお借りするか探すかして、詳しいあらすじの確認をしたいですね。
その映画が実体験の投影ならば…彼女を説得させるヒントになりそうです。
「ああ、こんな素晴らしい作品を撮った監督がいらっしゃらないなんて、アキナ嬢が可哀想」…なんて、嘘ですけれど。嘘泣きは得意ですから。
●
「嗚呼、こんな事になるくらいなら、アキナ嬢の名作をこの目で見ておきたかった」
遠くで誰かの悲鳴が聞こえる。“崖から落ちた”と、言っている。
ヒースは其れが過去の造影だと知っているから、嘆きにくれて聞こえないふりをした。自分が本当にこの場所にいられたのだとしたら、何か変わっていたのだろうか。例えば皆に、落ち着いて行動するようにと言うとか――
今考えても仕方のない事だ、と頭を振る。ヒースは自分のものではない客室を覗いては、アキナの資料を探していた。アキナ嬢の名作に囚われた人のふりをしながら。
閉まっている部屋は無理に開けない。きっと誰かが恐れて中でうずくまっているから。死して尚、死に怯える人をむやみに刺激したくなかった。
――空いている部屋に、一枚のパンフレットがあった。
「キスミー、サンデイ」
そう題されたパンフレットは、映画ではなく舞台のもの。
「舞台化までされていたのですか……余程人気だったのでしょうか」
当然主演は芙蓉アキナ。相手の男役は高名な音楽家という設定からか、割かし年配の俳優であった。
――高名だが、偏屈な音楽家がいた。
彼には一応妻がいて、子どももいた。だが、其の夫婦生活は冷え切ったもの。妻は音楽家の遺産目当てで嫁入りしたようなものだった。
音楽家は構わないと思っていた。自分が死したのちの金など、妻にも鼠にもくれてやる。子どもにも愛情はない。ただ、どうしても完成させたい譜面があった。
どうして完成しないのか、認めたくないが判っている。音楽家は其れを探した。そして、女が一人道端で歌っているのを見止めた。其の瞬間彼は理解した。この女こそ譜面の最後の音符だと。
女と音楽家は、坂を転げ落ちるように恋に落ちて行った。されど其れは道ならざる恋。誰も許してはくれなかった。音楽家は日曜に出かけるふりをして、オペラ歌手となった女のもとへ通った。けれど最後の日曜日、オペラ歌手の女が出迎えたのは――
「……男が到着した時、女は息絶えていた。其のかんばせに、笑みを乗せて」
あらすじを読み終えて、ページをめくる。後は名場面集、各キャストのコメント、と言ったところだった。流石に公然の場である、アキナのコメントも当たり障りのないものだった。
――アキナは、こんな風になりたかったのではないか。
最後の日曜日を抱いて、本当はあの監督と一緒に死にたかったのではないか。
「……この作品では、妻はとことんまで悪役なのですね」
ぱたん、とパンフレットを閉じて、ヒースは壁掛け時計を見上げる。
じきに刻限が来ようとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
柊・はとり
死が恐ろしくなかった事なんかない
何度死んでも痛みは一緒だ
俺もあの女と同じだな
死して尚リバイバルを上演し続ける
探偵という名の滑稽な喜劇役者
俺は『殺された』から
舞台を降りる事さえできない
あの女は愛の為己さえも『殺した』から
ああも勝手気侭に振る舞える
その情熱がある意味羨ましくもあるよ
なら俺も同じ舞台に乗ってやる
この状況で柊はとりはどうする?
考えるまでもない
必ず事件を解決しようとする
芙蓉への説得は無駄だろう
島内に安全な場所もない
なら目指すのは爆弾の捜索と解除一択だ
本当に解除したら拙いのは承知してる
ふりだけしとくぜ
俺の役は
『謎を解けず失意に沈む悲劇の名探偵』…
『迷』の方が適切か
降参だよ名女優
いや…名犯人
●
死が恐ろしくなかったことなど、一度とてあるものか。
はとりは其れをよく知っている。自身もまた“探偵もののリバイバル”として生きているからこそ、知っている。死は恐怖だ。何度通り抜けても耐え難い、吹雪のような恐ろしさだ。救いたかった。救えなかった。そんな場面なんて死ぬほど見てきた。
――滑稽だ。俺も、あの女も。
俺は“殺された”から、舞台を降りる事さえ出来ない。
あの女は愛の為に自らさえも“殺した”から、ああも勝手気ままに振る舞える。
ある意味羨ましい事だ、凄まじい情熱だ。
なら俺は探偵として、同じ舞台に立ってやる。――何をすべきか? 考えるまでもない。“必ず事件を解決しようとする”。
はとりは皆が駆け出し、誰もいなくなったダンスホールに戻っていた。
アキナは此処から出て行ったはずだ。主賓室には彼女はいなかった、既に確認済みだ。ならば何処へ行ったかなどと、一つしか想像がつかない。
アキナが立っていた場所に立つ。あの場には目撃者が多数いた。隠し扉のようなものは恐らくない。
ダンスホールから扉を抜けて行く。あの赤が良く似合う女のヒールの音を追うように、はとりは歩を進める。
「あら」
そうして、はとりは辿り着いた。もう、0時にはあと5分というところだった。
屋敷の地下室、簡素な部屋だがアキナの容姿はまるで其処に咲く毒華のようだった。色鮮やかに目に焼き付いて離れない。
「いらしたのね」
アキナはゆったりと爆弾らしき巨大パイプに持たれていた。まるで初めてデートをする少女のようにはにかんでみせた。
「……もう、解除には間に合わないけどな」
「ええ、そうね。5分で解除できるほどチャチなものは作らせなかったもの。……貴方が最初よ、名探偵さん。みんなみーんな、自分の命の方を大事にしたの」
「解除できないなら、迷探偵という言葉が適切だ。何も出来ないんだからな」
「あはは! そうねえ。……やっぱりみんな、自分の命が大切なのね」
呆れた、とアキナは呟く。
其れは全ての命を踏みにじる発言だ。
「……誰か一人くらい、アタシを説得して下さるかと思ったの。でもね、皆、言うの。“向こう岸に人を残してきた”って。……アタシの為に言ってくださる人なんて、ひとぉりも! いなかったわ」
「……」
「だから、アタシは皆さんと心中する。貴方とも一緒にね。期待の名探偵死す、って新聞に乗るかしら」
「俺なんかよりも、あんたの方が大きく紙面に乗るだろうな。名女優死す……いや、名犯人といった方がいいか?」
「ふふ。お上手。……ああ、もう時間ね」
ちき、ちき、ちき。
秒針が鳴る。
はとりは踵を返した。逃げるのではない。次の戦場はきっと地上だと思ったからだ。この程度の爆発で猟兵が、ましてやデッドマンである自分が死ねるとは思っていない。
次はきっと、“アキナの残骸”という名前のオブリビオンと――
――閃光が闇を切り裂いた。
――轟音が、全てを持っていった。
――死神が、数十という命を刈り取った、音がした。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『影竜』
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POW : 伏竜黒槍撃
【影竜の視線】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象の足元の影から伸びる黒い槍】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 影竜分身
【もう1体の新たな影竜】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 影界侵食
自身からレベルm半径内の無機物を【生命を侵食する影】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:芋園缶
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――君たちが目を覚ますと、其処は荒野だった。
正確には、古びた欠片が広がり、緑が徐々に屋敷の跡を侵食しつつある“現代の寿々菜島”である。
耳鳴りが、風の音を遮っている。再上映とはいえ、音や気配は本物そっくりだった。君たちは体を動かす時に、まるで突風に打たれた跡のような軋みを感じるだろう。
「どうしてえ」
そして、そいつはいた。
最早ヒトの形を成していなかった。黒い靄が凝り固まって、まるで翼のようなものがあって、ヒトでなく、竜とも呼べない巨大な何かが君たちを見下ろしていた。
「どうしてしんでないの、どうして」
其れは誰に対する問いなのだろうか。
目の前にいる猟兵か、其れとも、何度もリバイバルする自分になのか。
「アタシ、ただ、あの人に……アタシ アタシ うああ あああああ」
赤い雫がぼろぼろと落ちる。其れは彼女のルージュの色によく似ていた。
もしかしたら、一番傷付いていたのは彼女なのかもしれない。
何度も歴史を繰り返し繰り返し、何度も「あの人が来なかった」事を思い出し思い出し、……そうして、今に至るのだ。
けれど、誰をも殺させる訳にはいかない。芙蓉アキナはもう過去のものなのだ。
影朧ではなくオブリビオンとなってしまった彼女に、引導を渡してやらなければ。
そうしなければ、誰も、報われない。
ヒース・アーベル
可哀想に、あの映画のような結末を迎えたかったのですね。現実と虚構は別物なのに。…どうしても、と言うのなら、物語のように一人で死ねば良かったのに。罪無き者を巻き込み、延々と再演し続ける貴女が大団円を迎えられるとでも?
UCで視界を覆ってしまいましょう。見えない状態で反撃してもまともに当たらないでしょうし…せめてもの情けです。今の姿を隠して、本来の姿を思い出させましょう。
それでも思い出せないなら…いえ、思い出したとしても『炎を纏う投擲用ダガー』を投擲して、攻撃があたり次第呪文を発動させましょう。屋敷を爆破させた時のような、燃え盛る炎の中で彼女に問いましょう。
「それは本当に真実の愛だったのですか?」
●
「可哀想に」
其れは心底からの呟きだった。ヒースは悲し気に、龍のような影のカタマリとなったアキナを見る。
「あの映画のような結末を迎えたかったのですね。……現実と虚構は別物なのに。どうしてもというのなら、物語のように一人で死ねば良かったのに」
――罪なき者を巻き込んで死に、延々と其れを再演し続ける貴方が、大団円を迎えられるとでも?
ヒースの周囲に、竜の周囲に霧が満ちる。
「ドコ、ドコ……アア、アアア」
じりじりと竜の声音にノイズが走る。繰り返される再演に、オブリビオンとしてのアキナさえ耐えられなくなってきているのか。痺れるような毒の不快さに、竜が暴れまわる。生み出した竜に噛み付き、翼を引きちぎる。其れこそがお前の出来る“手伝い”だとばかりに己を蹂躙する竜は、まるでままならないアキナの心のようで。
「アタシは、アタシはただ、……ただ! あの人にもう一度……」
「……其れでも、屋敷に呼んだ人々を巻き込んで良い理由にはなりませんよ」
ヒースが投擲する。炎を纏うダガーは、霧の中でさえ存在を主張する漆黒に命中した。そうして呪文を発動させれば、炎が一気に漆黒を燃え上がらせる。
「あああああああ! 熱い、熱い……!」
のたうち回る影は、まるでコマ送りのように時折女の姿に変わる。豊かな髪を振り乱しながら暴れまわる女は、芙蓉アキナの幻影。
「アキナ嬢。――其れは、本当に真実の愛だったのですか?」
キスミー、サンデイ。
あの音楽家が恋をしたのは、女にだったのか? 其れとも、楽譜を満たす音符にだったのだろうか?
アキナが恋をしたのは、監督にだったのだろうか? 其れとも、禁断という甘い果実にだったのか?
大成功
🔵🔵🔵
リオ・ウィンディア
アドリブ絡み歓迎
影には影で
もう終わりにしよう?
あの人は来ない、そんな悲しい事もう繰り返させたくない
誰も…救われない、なら
引導を渡す事で救われるのなら、猟兵として、それが私の使命
そして死を尊ぶ私の役割
(繰り返す人生に、それでも違う花があるから生きていられるのに)
【早業、第六感】で先制のUC発動、先に無機物を嵐に変えてしまいましょう
呪詛を浄化に変えて
嵐と言っても恐ろしいそれではなく、悲しみの全てを飲み込む優しい音の闇の音
幾度め?
同じ音色にもう疲れたでしょう
さぁいきましょう
最後のステエジ
貴女のための…葬送曲を
闇に紛れてダガーを握る
【2回攻撃】で刃を返して仕留めにかかるよ
「お疲れ様」
裾を摘みで一礼を
●
リオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)はまるで涙のようにあちこちに赤を滲ませる影竜を見た。
「もう終わりにしよう?」
あの人は来ない。私達が止めたから。
もう悲しい事は繰り返させない。私達が此処に居るから。
こんな事をしても、誰も救われない。貴方に引導を渡す事で救われるのなら、猟兵として、其れが私の使命。
何度も生と死を繰り返して、燃え盛る花を何度も抱いて、焼け爛れてしまったような。アキナだった影竜が吠える。リオは先んじて周囲の瓦礫を音の群れに変えて、闇竜を包んだ。其れは呪詛ではなく浄化。恐ろしい嵐ではなく、彼女の悲しみを抱いて癒し、飲み込むかのような優しい闇の音。子どもたちを緩やかに眠りに引き込む、優しい夜の音の群れ。
「あの人は来ル!!! 何度繰り返しテモ、繰リ返したら、いつか、いつか!! ――嫌よ!! アタシ、どうして死ネないの!! 名誉なんて要らない、喝采なんて要らない、アタシは、アタシはただ……」
「……何度も繰り返したのね。同じ音色にもう疲れたでしょう。もう良いの、これが最後のステエジよ」
――貴方の為の葬送曲を、奏でましょう。
リオの刃が振るわれる。一撃、音の群れごとすれ違いざまに影竜を裂き。二撃、刃を返して影竜を貫く。
「――」
高い高いソプラノのような、今際の叫びのような、カナリヤの声のような音を聞きながら、リオは静かに、かつての大女優へと裾を摘まんで一礼した。
大成功
🔵🔵🔵
臥待・夏報
やっさん(f18885)と
『舞台』の上での彼女は、何の疑問も後悔もない華麗な悪役のように見えた
その本音がこれだったって言うなら
芙蓉アキナは確かに名女優だよ
【2012/8/19】
やっさんありがと、影は任せた……僕はアキナと対峙する
呪詛のとっかかりを得るには、相手をちゃんと見なくちゃならない
君は何を後悔するんだろうな
演じる生き方を選んだことか
つまんない男を愛したことか
それとも単に僕らを殺し損ねたことかな?
彼女自身の過去を映したポラロイド写真の群れが燃え盛る
真実の愛なんて最初からないよ
器でもない奴にそれを求める時点で、君も相手を見ちゃいないんだもの
君はそんなの承知の上で
狂った世界を焼いたんじゃないの
安喰・八束
臥待(f15753)と
影朧でなくば、「芙蓉アキナ」は此処には無い
あれはもう、特別の一日を繰り返すだけの
救えん、半矢の魍魎か
…いや
俺のような男は、割り切れんままが相応しかろうな
「アキナ」は臥待に任せた
俺は残りの影を相手取る
ゆっくり見抜くだけの時間は稼ごう
「狙い撃ち」
まずは照明弾、頭上から照らして侵食の影を此方に寄せ付けんように
舞台に当たる光で目が眩んでいるうちに通常弾で
新たに喚ばれた影竜を射抜く(スナイパー、だまし討ち、援護射撃)
臥待の邪魔は…否
「女優達」の邪魔は野暮だろう?
どの道臥待が火を放てば影など近付けんさ
…矢張り手厳しいな、臥待は
真実の愛なんざ傍から見りゃ盲の狂気
判っちゃいるんだが、な
●Crank up
「嫌だ、嫌だ、嫌だ!! あの人に会えないまま死ぬのは嫌だ!! 捨てられて、惨めに死ぬのは嫌だ!!」
「――ねえ、やっさん」
めりめりと分裂しながら、周囲の瓦礫を影に変えていくアキナ"だったもの"を見ながら夏報は八束に言う。
「“舞台”の上での彼女は、自分のやってる事に何の疑問も後悔もない華麗な悪役のように見えたよ」
「……ああ。俺もだ。少なくとも、望んでそうしているのだと思ったな」
「其の本音がこれだったっていうなら、……芙蓉アキナは確かに名女優だよ」
「――。俺は分裂した方の影をやる。臥待」
「わかってる。僕は芙蓉アキナを斃す」
二つの影が、影という舞台の上で笑っている。所々に滲む赤からは、青黒い灰が燃え上がるように吹いていた。
ありがと、と夏報が言う。其の手には色褪せたアルバムが一つ。呪詛のとっかかりを得るには、相手をちゃんと見なくちゃならない。
「どうして! どうして! どうして! どうしてあの人はコナイノ!? ドウシテアタシに答エテクレナイノ!!」
「――君の後悔は、何だい」
夏報は静かに問う。
「演じる生き方を選んだ事? つまんない男を愛した事? 其れとも単に、僕らを殺し損ねた事かな」
「チガウ、……チガウ……アノ人ハツマンナクナンテナイ……アタシハ、後悔ナンテシテナイ……」
悲し気に響く“芙蓉アキナ”の声を聴きながら、八束はもう一体の物言わぬ影竜に対峙していた。
銃を天に向け、一発放つ。閃光を放つ照明弾は、命を喰らおうと這い寄る影を一蹴した。影の舞台は阻まれて、影竜達が眩しそうに身を捩る。八束はそのまま銃を真ん前に構え直し、物言わぬ方の影竜の頭へと照準を合わせた。
「臥待の邪魔は――いや、“女優達”の邪魔は野暮ってもんだ、そうだろう? もっとも……」
今はもう、近付けんだろうがな。
燃え盛るポラロイド写真、其れ等を見ながら八束は、吠えて突っ込んでくる影竜の一撃を後ろに跳んでかわした。
芙蓉アキナという女の人生を移したポラロイド写真の群れが燃え盛る。アキナは笑っていた。どの写真でも、華やかな笑みを浮かべていた。
――アタシが初めて、キネマという世界に入った時。
――アタシが初めて、主演の舞台に立った時。
――アタシが初めて、賞を取った時。
――アタシが初めて、あの人に出会った時。
――……奥さんがいると、知った時。
其れでも、芙蓉アキナは華やかに笑っていた。そう、アタシは笑ってみせたわ。“奥さんから貴方を奪うのも一興よね”って言って、笑ってみせたの。
貴方にも判るでしょう? そんな事を想える女なんて一人もいないのよ。どうして奥さんより先に貴方に出会えなかったんだろうって悔やんだわ。憎んだわ。怒ったわ。運命はどうして、アタシに茨の道を敷いたんだって嘆いたわ。
ああ、ポラロイド写真が突き刺さる。燃え盛り、アタシの体を焼いていく。苦しい。悔しい。痛い。辛い。其の感情さえ、繰り返す一日の中で薄れていた。長い長い繰り返しのキネマ。
キスミー、サンデイ?
馬鹿らしい。
結局はね、月曜から土曜のキスを貰ってる方の勝ちなのよ。
「真実の愛なんて、最初からないよ」
女が言う。
「器でもない奴に其れを求める時点で、君も相手を見ちゃいないんだもの」
「君はそんなの承知の上で、狂った世界を焼いたんじゃないの」
男が「矢張り手厳しいな、臥待は」と苦く笑っている。そうね。真実の愛なんて、何処にもなかった。男の方、貴方は其れを見付けたのかしら。
アタシが恋したのは、どっちだったのかしらね。アタシを捨てて、奥さんを取って、結局数年経っても来てくれなかったあの人と。演じ続けて、笑い続けて、化け物みたいになったアタシ。そのどちらに酔い痴れていたのか、もう判らないわ。
もう判らないの。真実の愛なんてない、そう言ったあの日のアタシが何を思っていたのかすら、もう思い出せない。
――ああ、でも、もうあのキネマは終わりなのね。
もう、あの人が来ない苦しみを感じなくて済む。沢山の人を巻き込んだ負い目を感じずに済む。――……なんて言ったら、貴方達は怒るかしらね。
ねえ、貴方。其れでもアタシは言うわ。
真実の愛があると、確かに信じていたの。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵