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燈會ジュヱル浪漫

#サクラミラージュ #お祭り2021 #ハロウィン

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 今宵は宴。
 黒に鮮やかな色を差してゆきましょう。

 “トリック・オア・トリート”なんてハイカラな魔法の言葉を唇に。
 空いた片手に、今日だけ特別!硝子南瓜を飾り付けたカンテラを持って、さあ。

 今宵ならきっと、人も影も関係ない。
 ぜんぶぜんぶ、楽しくなる。楽しくなれる。祭りの夜さ、さあわらって―――!


「こんばんわ、灯桜浪漫祭へようこそ。今回は特別、ハロウィーン仕様ですのよ」
 訪れた猟兵に目を細めた壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)が、手のランタンを掲げて微笑んだ。
 “ハロウィーン”。
 それは厳格なものではなく、モンスターやお化けにキャラクター、簡単なものなら人気の紙南瓜の被り物など、様々好きな仮装をして“トリックオアトリート!”を合言葉に夜を楽しむ祭りのようなもの。
 今夜だけは、夜お菓子を食べてもお母様もお父様も乳母だっって怒らない!
 シーツを被る?かぼちゃの被り物にする?天使か悪魔か吸血鬼か!そう子供も大人も盛り上がる宵のお祭りだ。
「この楽しいお祭りに惹かれた影朧の子供達が、どうやら南瓜お化けの仮装を真似て紛れ込むようなのです」
 キラキラした電飾に、誰もが微笑む美味しいお菓子。
 ぱちぱちしゅわしゅわ楽しそうな飲み物や、にこにこ笑顔で街行く人たち。
 ぼうっとした意識しかなかった弱い影朧の目には、さぞ眩い宝石の様に見えたことだろう。惹かれてふわふわ、真似てこっそり居るのだと杜環子は言って。
「わたくし達の力なら“消す”ことは簡単です。ですが幼子……どうかただ、祭りを楽しむ隣に居させてやってはいただけませんでしょうか」
 良ければともに楽しむことも。
 そう言葉を添えてから、小さなチラシを広げて見せた。
「今宵、帝都の御桜通りにて灯桜浪漫祭が開かれます。先に申しました通り、ハロウィーン仕様のランタンを配布されそれを手に常より明かりを落とした街を巡り楽しみましょうというお祭りですの」
 ハロウィーンということでカフェーでは限定オープンカフェーが開かれたり、ラメ入りのアクリルグラスで楽しむワインバー、黒漆の升で味わう日本酒バーや、菓子店では色鮮やかでハイカラなお菓子が並んだりと街全体も賑やかですのよと杜環子は微笑む。
 橙に紫、桃に黄に若葉と電飾は星の様に。
「ゆったり羽を伸ばして楽しんでいただけますれば幸いです。あ、あと……」
 微笑んで送り出そうとした時、何か忘れていたような……という顔をしてから、ハッと思い出し。
「灯桜浪漫祭を楽しんだのち、もし路地裏の小さなお社を見つけたら手を合わせてみて下さい。祈宝珠の神が祀られている、宝石社があるとの噂がございますの」

 特別な夜、ほんの偶然と偶然が出会い開かれる細道があるという。
 常人なら中々気付けぬその綻びも、きっと猟兵ならば見つけられよう。
       ランタン
 かろかろり、燈會の硝子南瓜が笑っている。


皆川皐月
 お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
 今宵は今宵はお祭りだ。
 さあ飲め歌え、トリックオアトリート!

●第一章:日常『灯桜浪漫譚』
 OP記載の通り、
●オープンカフェーwithハロウィンスイーツ
 簡易MeNu
 👻おばけのふわしゅわスフレ
 🦇蝙蝠王のチョコレヰトケェキ
 🩸濃苺の吸血鬼パフェー
 🧪怪異博士のグリーンゼリヰ・・・・・・・・etc

●ワインバー&日本酒バー
 ラメ入りキラキラ&美しい黒漆升にてお楽しみください。

●帝都御桜通り和菓子店
 簡易MeNu
 👻幽霊大福
 🦇焼きたて蝙蝠胡麻煎餅
 👿悪魔の鬼栗饅頭
 👼天使の塩かき餅・・・・・・・・・・etc


●第二章:日常『祈りが宝石に変わるころ』
 の二章構成となっております。



 複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】で大丈夫です。
 IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすいです。
 マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございます。

 もしよろしければ、お役立てくださいませ。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

 お声掛けがございましたら、皆川NPC(杜環子&ニールニャス)もご一緒出来ます。


 最後までご閲覧下さりありがとうございます。
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第1章 日常 『灯桜浪漫譚』

POW   :    狭い裏路地へ

SPD   :    川にかかる橋へ

WIZ   :    桜咲く公園へ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エメロア・エフェトゥラ
【数奇】◎

雪蘭(f31577)と
仮装:書生姿に猫耳(猫又)

(ちらちらと見える南瓜頭の子供に目を細めつつ)

こう言った格好は初めてだからまさに仮装と言う感じだな。猫耳は…似合う?ま、まぁ、俺なら何でも似合うとも!
…もちろん雪蘭も似合っているぞ。うむ、可愛らしい。(自然に笑って)

ワインにパフェか…意外と合うかもしれないな…ワインもいい味だ。
(雪蘭にあーんされるとさも当然のように食べ)
ん、これは美味いな!ほら、雪蘭も食べてみろ!
(さも当然と言うように自分もあーんして)
美味いだろう?

(酔った振りには気付かず寄りかかられると慌てて)
大丈夫か?
(ううっ、可愛いなどと言ったが酔った雪蘭は色っぽくて困る)


麟・雪蘭
【数奇】◎🩸
仮装:はいからさんの猫又
主人の仮装も選ぶ

影朧の童達も楽しそうですねぇ
さぁさ、妾らも行きましょう
大丈夫ですよ、よくお似合いですわ
流石、ご主人
成人男性が猫耳をする事でしか得られないものもありますのよ(遠回しに揶揄う
…こんな愛い姿、本当は誰にも見せたくないけれど
いいえ何でも
あらまぁ、嬉しいお言葉!

二人きりの所で甘味楽しむ
👻や🦇は土産で購入

煌きが美しいですわ(ワインを一口
味も深みがありますね
パフェもどうぞ
はい、あーん
妾にも?ではお言葉に甘えて(ぱく
ロア様が食べさせてくれたので更に美味に感じましたわ

酔ったフリし主人の肩に凭れる

ねぇ、ロア様
少しだけ
このままで

燈會が妖しく揺れる

君は私のもの



●しっぽがゆらり
 こつんと踵鳴らした石畳に、ゆれた二又に分かれた尻尾。
 秋の風に揺れた袴と翻す袖は書生服に揃いのハイカラ乙女。
 きゃあきゃあ走ってゆく南瓜頭に目を細め、エメロア・エフェトゥラ(偉大なる魔女の息子・f31575)と麟・雪蘭(表と裏・f31577)はゆったり街を行く。
「ふむ」
「ご主人?」
 淡くきらめくエメロアの頭上には髪色と同じ三角が二つ。小首傾げた雪蘭が呼ぶ声に反応して、ぴるぴる震えた三角は猫耳。獣人用の袴からはこれまた髪色と同じ二又の尾が覗く。
 不慣れから恥ずかしそうな顔をしたエメロアに、喉鳴らした雪蘭もランタンへ青みがかった光沢返す二又尻尾を揺らしながら、悪戯に微笑んだ。
「影朧の童達も楽しそうですし……さぁさ、妾らも行きましょう。お耳の似合うご主人?」
「……似合う?ま、まぁ俺なら何でも似合うとも!」
 自信満ちた笑顔浮かべたエメロアが“行くぞ!”と前を向けば、はいはいと微笑む雪蘭の耳も楽し気に揺れて。
 でも、雪蘭は知っている。先ほどから擦れ違う少女達が主を見て頬を染め、褒めていることを。
「(こんな愛い姿、本当は誰にも見せたくないんだよ)」
 心の裡で呟いた言葉を呑み込めば、見上げた主の顔の楽しそうなこと――……と、薄明りに輝く主の翠玉が自身を見て柔らかに弧を描き。
「もちろん雪蘭も似合っているぞ。……うむ、可愛らしい」
「―――あら、まぁ!嬉しいお言葉!」
 声が裏返らなかっただけ従者生活の賜物だろう。
 エメロアは自然に無意識に雪蘭の髪に触れた後、歩き始める。ゆらゆら金色の尾はご機嫌で夜色の尾を共に。

 いくつも眺めた煌めきの中、休息に選んだのは路地入ってすぐの雰囲気あるカフェー。イベントメニューは同じだが酒類のみ店に差配が任されていると知り、夜はバーだという此処を選んだのだ。
「煌めきが美しいですわ……ん、味も深みが」
「本当だな、悪くない」
 注文した濃苺の吸血鬼パフェーと合うものを――その言葉に運ばれたのは細長いグラスで微炭酸愛らしい洋梨香る白と、丸いグラス愛らしい葡萄濃く度数も高いワインをベースにしたサングリア。
 サングリアのワインの澱で漬けたチーズを口休めにと添えられ登場したパフェーは、散らされた金箔が薄明りの下、星のように煌めいていた。
 上からも下からも中心に向かって赫色濃いグラスを一掬い。
「はい、あーん」
「ん――」
 雪蘭の差し出した匙をエメロアは迷わずどころか当然の様に口に含むと、パッと瞳を輝かせる。
「これは美味い!ほら、雪蘭も食べてみろ!」
「妾にも?ではお言葉に甘えて……ロア様が食べさせてくれたので更に美味に感じますわ」

 空のグラスを中央に、雪蘭がロアへ凭れかかる。
「……! ――大丈夫か?」
 喧騒眺めていたエメロアが絹越しに感じた雪蘭の温もりに、びくりと震えた。
 見れば、薄明りに蒼く煌めく髪と覗いた紅玉が揺れている……“大丈夫か”と咄嗟に聞いたもののエメロアは見えた色に唾を飲みそうになり。
「……ロア様。 少し。すこしだけ、このまま」
「う、む」

 嫋やかに細まった雪蘭の紅玉がゆっくり伏せられ、静かな吐息が添う。
 誰知らぬソファの影、意識無く絡まった二色の尾が全てを語る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
仮装はお任せ
WIZ

オープンカフェで👻スフレと紅茶をいただきましょう。お酒も気になるけどやっぱりまだ一人でお酒を飲むには怖いし……。
ケーキとつつきながら思うのは、どうしてもこういうお祭りごとは楽しむ皆を眺めて、楽しむほうになりがちと言う事。
騒ぐ事は得意ではないし……ええまあ猫とかもふもふは別ですけども、それでもやっぱり多くはないし。
皆の幸いが私の幸い。そう思う事はもしかしたら誰かの為に生きて死んだと思われる過去の私の影響かもしれないけれど、でもきっと今世のこれは悪い事じゃない。
だって命を賭してと死を覚悟してとか思った事ないんだもの。まだまだいろんなことを経験して生きていきたいから。



●ふわしゅわり
 つい、窓越しに喧騒を眺めるのは癖の様なものだった。
「……おいしい」
 魔女様、賞味期限は30秒です!なんて出された“おばけのふわしゅわスフレ”に夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)が慌てたのも先程まで。
 口に含んだ焼きたての温かさと広がるバニラの香りが鼻に抜ければ、全ての疲れが吹き飛んだ。注文の折お酒を一人で飲む勇気が今日の藍には出ず、悩む姿から勧められたティーソーダは半冷凍のフルーツが溶け出しはじめ、熱々スフレの熱冷ましには丁度良い。
「あら……猫?」
 ティーソーダの余韻に浸る中、ふと目についたのはお化けのようなシーツ被った三毛猫。鍵尻尾揺らし、お化けの猫達と歩くのが不思議と目を惹いた。
 実はでもなく、藍は猫が好きだ。
 ふわふわもふもふで柔らかく、憎めない愛らしさと時折見せる孤高さも良いし、懐っこい猫も可愛らしくて。バチ、と目が合った三毛猫――おそらくケットシーが手を振ってくる。
 知り合いではないし、周りを見れども手を振り返す人はいない。
 私宛かしら?と雑踏の中、一生懸命振られる肉球へ控えめに手を振り返した時だ……ヒュ、と何かが投げられ反射的に握れば、それは紙に包まれた飴玉。
「(“ハッピーハロウィーン!”)」
 そう口パクした三毛猫は笑って手を振ると、止めようとした藍の言葉も聞かずに雑踏へと消えた。

 ふと、過去世を思う。
 “人の為”にあった、藍の生。どんなに傷付こうと、誰かが微笑めば満たされたあの心。
 ころりと掌に転がった見知らぬ三毛猫からの飴玉は、輝く包み紙のせいで宝石のよう。過去世の藍なら“貰ったこと”を泣いて喜んだだろうけど。今は。
「……何か良いことでも起こるかしら?」
 不思議な夜に不思議な経験を一つ。
 きっと今世へ面白い影響があるかもしれない――そうして藍はスフレを一口。先より濃いバニラの味が、燈會の夜を彩った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

雲烟・叶
【烟雨】◎
カフェ:👻

義娘と揃いのスチームパンク風
お勧めされた堕天使の仮装
女の子の浪漫とやらは残念ながら未履修なので種族:堕天使の真似としか思っていない

まあ、甘露が嬉しいなら良いんじゃねぇですかね
南瓜型のランタンを貰って散策
ハロウィンって本来は秋の催しですからねぇ、桜が咲いてるってぇのも何だか不思議で面白いですね
ふふ、そうですね、今夜は魔法の夜ですから

おや、お悩みですか甘露
じゃあ、自分がスフレを頼むんで、半分こでもしましょうか
以前と違って遠慮なく受け取って笑ってくれるそれが、何だか嬉しい
義娘としてから、この子はこうして甘えてくれる

すごい色してますね、これ
ふふ、甘露、唇まで赤いですよ、お前


世母都・かんろ
【烟雨】◎
カフェ:🩸
仮装はスチパン小悪魔
ふふ、叶さん、の、堕天使!

少女小説や映画に出てくる素敵な存在
思わず笑みがこぼれちゃう
こ、れは、女の子、の、ロマン、なのっ

ランタンと共に街を散策
夜桜と電飾がすごく綺麗
だって、魔法の星空

いつ、もの、帝都、じゃ、ない、みたい
こんな、夜も、素敵、ね

カフェの限定スイーツは全部かわいくて迷っちゃう
ふわしゅわスフレはかわいいし
吸血鬼パフェも魅力的

ど、れに、しよ…叶、さん、は?
やった、じゃあ、はん、ぶん、こ、ね

彼に遠慮しなくていいって思えてから
我儘が言えるようになった
叶さん(お父さん)は
わたしを愛してくれるから

わ、わ、叶、さん!
パフェ、真っ赤で、甘酸っぱい…!(はわわ



●機械の国より、
 背で揺れる機械の翼に、黒革のショートジャケットの胸には機械薔薇を。
 細身のパンツには螺子巻き式ベルトと、スモーキークォーツ煌めく煙管入れを下げて。
「……ふふ!叶さん、の、堕天使っ!」
 目を爛々と輝かせる世母都・かんろ(秋霖・f18159)は乙女のよう。
 何せ細身の雲烟・叶(呪物・f07442)に似合うよう見立てたのはかんろなのだ。似合うと思って見立てはしたが、ここまで完璧だなんて……!そう勢いよく口から出そうな言葉は、もう雨霰の如くかんろの白磁の瞳から叶へ痛いほど注がれていた。
「まあ……甘露が嬉しいなら、良いんじゃねぇですかね」
「ふふ。こ、れは、女の子、の、ロマン、なのっ」
 どこか他人事のように叶がわらおうと、かんろは慣れたもの。
 くふくふと嬉しそうに笑えば、たっぷりフリルの上歯車とレース揺れたスカートから覗く悪魔の尻尾がハートを描く。
 頭飾る濃紫の小さな角と合わせれば、今宵のかんろが小悪魔たる証。
 硝子南瓜のランタン揺らした堕天使と悪魔の先行きは、ただ楽しい。

 見上げた夜空は光に近づく度本来の色魅せる桜と色取り取りの電飾が煌めき、まるで魔法のような夜だった。
「秋に桜咲いてるたぁ何だか不思議で面白いですね」
「いつ、もの、帝都、じゃ、ない、みたい」
 今宵二人で眺める秘密の空の下、選んだのは桜の近い一席。メニューに迷いに迷ったかんろに叶の助け舟。
「お悩みですか、甘露。――じゃあ、自分がこっちにしましょう」
「……やった、じゃあ――」
 “半分こ”と言葉重なれば、面白いくらい頬が緩んでしまう。
 運ばれた“おばけのふわしゅわスフレ”は湯気立つ焼きたてのうえ、賞味期限は30秒です!なんて急かされて。
「ふふ、」
「……!」
 勢いよくスプーンを差せば、広がる芳醇なバニラの香り。口に含めばほわりと温かいまま瞬きで溶ける様は“おばけ”のよう。
 見開いた瞳を瞬かせ、幾度も頷くかんろを見た叶も頷いた。なるほど、“おばけ”と。
 冷めたらカラメルをどうぞ、と勧められたゆえ二人でおばけの半身を楽しんだ所で登場したのは眩しいほど赫いパフェー。
「すごい色してますね、これ」
「わ、わ、叶、さん……!真っ赤で、甘酸っぱい……!」
 メレンゲの白牙と赤すぎる色味のコントラストに視線奪われていた叶は、隣で味わい始めていたかんろの無邪気さに目を細めた。
 普段から酷く大人しい“義娘”がこうして寄り添って甘えて、“甘露らしさ”を出している――それが愛らしくて嬉しくて、上がる口角を叶が隠さない。
「ふふ……甘露、唇まで赤いですよ、お前」
「ん、」
 白くも骨張った叶の指が赤く艶めいたかんろ唇を拭えば、瞬いた白磁の瞳が見開いた。

 滴った赫は、煮詰めた木苺の甘さが滲む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季


「ハロウィン限定…それは全制覇しなければなりませんね」

「このメニューの中で、甘いものはどれですか」
まずカフェへ
全メニューどれが甘いか確認
「それではこれとこれとこれをお願いします」
甘いと言われた飲み物1スイーツ2の3品注文
食べ終わったらまだ食べていない3品頼む
スイーツだけで3品になっても問題ないが飲み物だけになった場合は1品ずつ飲み終わってから次を頼む

カフェで甘味メニューを全制覇したら和菓子店へ
「甘い菓子はどれになります?」
「それではその饅頭と羊羮、大福を…それぞれ10個ずつ」
和菓子店でも甘い菓子のみ全種類購入
壺中天にしまいこむ

「イタズラしたい子はいませんか」
菓子出し影朧に呼び掛け
お菓子を渡す



●仙人甘味道中~万聖節編~
 鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は手を上げ呼んだカフェの女中へ微笑んで。
「このメニューの中で、“一番”甘いものはどれですか?」
 尋ねて知れたのは蝙蝠王、スフレ、吸血鬼の順に甘く、最も甘い飲み物はホイップ飾ったココア。
 メイドの情報を参考に順番組み立てた結果――冬季の机上は今宵、欲張らない。
「なるほど、これはこれは……」
 最初は“おばけのふわしゅわスフレ”。
 銀匙を差し入れただけでじゅわりと音を立て、立つ淡白の湯気から香莢蘭が香しい。一口含めば甘く嫋やかながら、するりと解ける味にしつこさの一切が無いではないか。
 食べたはずなのに、不思議ともう一度と味を確かめたくなるような感覚は癖になる。
 次は“蝙蝠王のチョコレヰトケェキ”。
 鏡面の如く艶やかなチョコレヰトを銀の突き匙で壊す背徳感は言葉にし難い。
 切り口から香る木苺は、口に含めば酸味の手綱を加加阿の濃厚な甘さと僅かな苦みが美しいほど纏め、蝙蝠王の冠は透き通るほど煮詰めた柑橘の皮は美しいだけでは無い。噛む度滲む柑橘らしさが全てを引き立てるのだ。
 満ちる多幸感を、ホイップ飾るココアでとろかして。
「(ここは桃源郷の一端になれるかもしれませんね)」
 ふふと上げた口角そのまま、追加する手は緩めない。

 洋の幸福の次は、和の甘味。
 店先で甘いものと尋ねれば、勧められたのは真白い幽霊大福と黒糖皮の悪魔の鬼栗饅頭。更に芋羊羹と彩豊かな餡子玉の話に目を輝かせた冬季は、迷わず即決。
「それではその饅頭と大福、そして芋羊羹と餡子玉を……それぞれ10個ずつ」
 大荷物になっちゃうよ?と心配されれば、大丈夫ですよと微笑み返して。
 両手いっぱいの餡子菓子らしい重さにうっとりしながら、冬季はテイクアウト用に買った洋菓子と共に壺中天へと収めてしまう。
 一つ、小さな紙袋だけを残して。

「イタズラしたい子はいませんか」
『……!』
 人影のない路地で紙袋揺らせば、駆けてきたのは南瓜頭をぴかぴか光らせた子供のお化け。
 そわそわ伸ばされた小さな手があんまり可愛くて。
「ハッピーハロウィーン、お化けくん」

大成功 🔵​🔵​🔵​

百鳥・円
【藍玉】

かじゅーのおねーさん!こっちです……
……って、どうしたんです?ソレ
吸血鬼の仮装にはうんうんと頷けるんですが

頭の上の南瓜は……ふむ、
パンプキンヴァンパイアということですね
重たくないです?置いて行きましょうよ

まどかちゃんの仮装の解説ですか?
んふふー、よくぞ聞いてくれましたね!
わたしの仮装はフランケンシュタインの花嫁ですの!
この襤褸な白ドレスが可愛くないですか?
ぐるっと巻いた包帯もポイントですの

んふふ、わたしはどれにしようかな
蝙蝠王のチョコレヰトケェキ、なんてどうでしょう
ちょっとだけ半分こします?

良いですねえ、ワイン!
わたしたちの仮装にもぴったりですの
ではでは乾杯といきましょーか

かんぱーい!


歌獣・藍
【藍玉】

まどか、おまたせ!
どう?吸血鬼の仮装!
男装にしてみたの!
頭に被ってるもの…?
ぱんぷきんよ!
(被る南瓜の中でドヤ顔している)
はろうぃんの仮装には
南瓜を被らなくては
いけないのでしょう?
…あら、必要ないの?

まどかは何の仮装なの?
まぁ!花嫁!とても素敵ね!
なら今宵は
私がエスコートしなくちゃ!

燈會を受け取り
心と脚を弾ませながら
お店を見渡して

どれも素敵で美味しそうね!
私『濃苺の吸血鬼パフェー』がいいわ!吸血鬼ですもの!

まどかのも美味しそう…!
!えぇ!はんぶんこ、しましょう!

まどか、もうお酒は飲める
歳になったのよね?
ならデザートと一緒に
ワインは如何?
きっとよく合うはずだわ!

ふふ、カンパイ!



●わらう月夜に祝福を
 仮装のはずなのに不思議と見分けられる背格好に、百鳥・円(華回帰・f10932)おーい!と手を振った。
「かじゅーのおねーさん!こっちでー……す?」
「まどか、おまたせ!」
 駆け付けた歌獣・藍(歪んだ奇跡の白兎・f28958)の仮装があんまり不思議で、円はつい聞いてしまう。
「……どうしたんです?ソレ」
「ふっふっふ、どう?吸血鬼の仮装!」
 ババーン!
 仕立ての良い燕尾服にフリル首元のフリルと鮮紅のブローチ……までは、分かる。円がソレと指差したのは藍の頭が収まっている、南瓜の被り物だ。
「うん?ああ、ぱんぷきんよ!」
 ババーン!
 なんとも自信に満ちている。円には分かる、あの南瓜の内側で藍がドヤ顔をしているのが。
「うー……んー……ふむ、パンプキンヴァンパイアで手を打ちましょう。で、その南瓜は重たくないですか?重たいですよね?置いて行きましょうよ」
「あら、仮装には南瓜を被るのが礼儀と聞いたのだけれど、いらないの?」
 長考の末に妥協点を見出すも、やはり藍の南瓜がどうにも嵩張る。南瓜はドレスコードに入りませんよーと円が促せば、きょとんとしながらも藍と南瓜を離すことに大成功。
 開けた藍の視界で最初に目を惹いたのは円の纏う白。
「まどかの仮装は……」
「んふふー、よくぞ聞いてくれましたね!わたしの仮装は、フランケンシュタインの花嫁ですの!」
 くるりと回って見せた円の裾が柔らかに翻り、襤褸と言いながらもデザイン性と縫い付けられたビーズとスパンコールの上質さ。裂けた裾をスリットに覗く包帯のセクシーな雰囲気が円の愛らしさを悪戯に、美しさをより引き立てている。
「この襤褸な白ドレスも可愛いのですが、ぐるっと巻いた包帯もポイントですの」
「とても素敵ね!――なら今宵は、私がエスコートしなくちゃ!」
 花綻ぶように微笑みあって、携えた燈會片手に石畳を蹴る。
 軒や桜に揺れるお化けの電飾の表情違いに気が付いては微笑みあって、隠されたように時折現れるお菓子の電飾を見つけては“ないしょにしましょ”と囁きあう。
 そうして羽休めに選んだオープンカフェーで、藍は吸血鬼パフェー。円は蝙蝠王のチョコレヰトケェキ。半分こしましょ?と頷き合うのは乙女の特権だ。

「それでは、素敵な夜と大人になったまどかを祝して」
「素敵な仮装とわたしたちの楽しいお出かけに喜びを」
 “かんぱーい!”。
 キィン――と響いた硝子の声は、円と藍の思い出に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

槙宮・千空
◎ヨル(f32524)と

ランタン片手に街を散策
連れてきたのは
星色の瞳持つ少女ひとり
迷わねェように気をつけろよ

後ろを振り返りながら歩くも
通行人にぶつかりそうな君
それに気付けば
そっと細い腰を抱き寄せて
その折れそうな程の華奢さに驚いた
(見た目から細いのは知ッてたケド)
ふにふにと確認するように揉んで

──やッぱもッと喰えよ、お前

細すぎだから、と軽々姫抱きする
人目なんて何も気にせず
ほら見ろ、すげェ軽い
なんて揶揄して意地悪く笑う

カフェーでも和菓子でも
どッちでもイイから食いに行こうか
んで、もッと肉つけろ、肉

あ? 決められねェなら
罰としてこのまま連れてくだけだ
腹は正直みたいだしなァ?
なんて猫みたいな目を細めた


幽・ヨル
千空(f32525)と


襤褸シーツを被り、ランタンを手に
千空の背後を着いて歩く
彼の言葉に頷くも
周りの景色に目を奪われ
通行人にぶつかりそうになるも
不意に腰を抱き寄せられ
驚いた貴方を見上げる
……彼の手が大きくて、意識してしまい
心臓の炎は忙しなく
大丈夫だよと笑って誤魔化そうとした矢先
「ひゃぅっ!?」
腰を揉まれて身体が跳ねる
色気もない声を出しつつ目を白黒させながら
気付けばふわりと横抱きにされていて
ぽかんと千空さんの顔を見つめ
意地悪く笑ったその表情に我に帰り
恥ずかしいから降ろしてと慌てるも
彼の腕の中は心地よく

気を遣わなくても大丈夫よと見上げ
然しお腹は空いて鳴ってしまい
彼の表情に何も言えなくなってしまった



●魔法にかけて
 あなたと歩く夜は、ゆめみたい。
 ふわふわで、きらきらで、現実じゃない……みたい、な。

 シーツの隙間から覗いた世界は輝きに満ちていた。
 きらきら、きらきら。
「わ、ぁ」
 心落ち着く燈火揺らすランタンを手に、幽・ヨル(カンテラの灯・f32524)は槙宮・千空(Stray cat・f32525)の背を追う。
 先を行く千空は密かに耳を揺らすヨルを見ていた。
「迷うんじャねェぞ」
「……うんっ」
 きっと今宵の空より美しい生きた宝石が千空の隣に在ることを、千空だけが知っている。……だが、それでいい。
 道が混み、すれ違う人間が近いと千空が振り返った時だ。
「―――あ、」
 ぐらりと傾いたヨルの小さな体。
 人の流れに持っていかれる――そう思った瞬間、千空は細いヨルの腰を引いて抱き寄せていた。
「(やッぱりか)」
 見た目から分かる細さを裏打ちするように、ヨルはいとも簡単に千空を手中に収まった。目を白黒させたままでいるのがあんまり可愛くて、悪戯許される夜だからと託け抱き上げた。
「ひ、―――ひゃぅ?!」
「クク──やッぱもッと喰えよ、お前」
 摘まんだ少女らしい肉付きを揶揄う様に千空が笑えば、藻掻いたヨルの顔は真っ赤なまま、伏せられた耳は震えていて。
「や、め……お、下ろしてっ」
「やだね」
 パーカーの裾をぎゅうと握ったヨルが絞り出すように言えば、ニンマリと悪戯猫のように笑った千空が、人目も憚らず駆けだした。
 軽いじャねェかと笑えば、おろしてと耳伏せたまま。
 眦に溜まった透明な雫は悲しみではなく、千空が思うに恐らく照れ。とーんとん、と、と一定のリズムで駆ける足取りが不思議なほど心地よくて、ヨルが緊張を解くには十分だった。
 流れていくきらきらの景色。
 見えないといえば、きっと千空が足を止めてくれると知りながら、ヨルは照れたフリを続ける。
 止まればきっといつか、現実に帰らなきゃいけないから。
 つめたい国、ホントウへ。

 獣の耳ゆえ聞こえる千空の鼓動が心地よくて、ヨルは纏ったシーツを手繰り寄せる。
「気を、遣わなくても……大丈夫よ」
「あ?」
 ヨル見下ろす目つき悪い視線は、もう慣れている。
 切れ長で吊り目の中に、満月のような千空の瞳が電飾に煌めいたのも束の間――弓形になるや、満ちた月に悪戯な光。
 もう一度、ヨルが“おろして”と言おうとした時だ。
 キュウ、クゥと、先に子猫のような声を上げたのはヨルのお腹で。
「っ、! ……う、あ……ちがっ」
「腹は正直みたいだなァ? ほら、さッさと選べ!」

 まだまだ、魔法のような夜は続く。
 言葉と裏腹な好奇心に満ちゆくヨルの星色に、千空は口角を引き上げる。

 踊ろう、祭りの燈火煌めく宵を。きみと共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎹・たから
【煌々】◎
和菓子:👿

仮装はミニスカ巫女娘
烏天狗と仲良しなのです

かわいいランタンと一緒にお出かけ
幻朧桜がきらきらです
花びらも舞っていて、不思議な光景にぱちくり
普段の帝都がさらに綺麗ですね

影朧を見つけたら声をかけ

ハッピーハロウィンです
たから達とお菓子を食べませんか?
この烏天狗はとっても優しいのですよ
巫女のお墨付きです(きり

ヴィルジール、和菓子がいつもより不思議な形です
かわいいお化けがいっぱいですよ
どれもきっと素敵な味がするのでしょうね

栗饅頭を三人でわけっこ
悪魔とは一体…(もきゅ

…いけません、甘々です
これは歯磨きが必須
大福ももちもちですね

二人とも、おいしいですか?
たから、どちらもすきな味がします


ヴィルジール・エグマリヌ
【煌々】◎
和菓子:👻

鴉めいた面に、修験者の纏い
烏天狗の装いで
妖怪だけど巫女とは仲良しだよ

ランタンを手にゆるりと街歩き
吹く風は冷たいのに
桜はひらひら舞っていて
不思議だけれど好もしい光景だね

影朧には優しく接する

ねえ、君も祭りを楽しみに来たの
私たちはいまから、菓子屋に行くんだ
良ければ一緒に如何だろう

ふふ、私は子供が好きだからね
それに…たからは良い子だから
きっと、朧な君も

うん、可愛い形をしているね
此の形を崩してしまうのは
少し惜しいけれど
折角だから頂こうか
和菓子には馴染みが無いから、楽しみ

いつもの私なら美味しいお菓子は
独り占めなのだけれど
今日はハロウィンだからね
私の分も3人で分け合おう

うん、美味しいね



●君と君と
 烏天狗の装い纏うヴィルジール・エグマリヌ(アルデバランの死神・f13490)の一本下駄がカンと鳴り、短い緋袴の裾を躍らせた鎹・たから(雪氣硝・f01148)がヴィルジールと共に幻朧桜を見上げた時だ。
「ヴィルジール、あれは」
「おや……どうやら悪戯っ子のようだね」
 二人の視線に気が付いた南瓜頭は吃驚したような顔をしてから、たからの手招きに二度三度頷くと桜を下りようとしたはいいが、南瓜頭が引っ掛かってしまう。
 大変だ、と烏天狗の手で救い出され三人でホッと一息。
「君も祭を楽しみに来たのだね?」
「ハッピーハロウィンです」
『……!!』
 こくこくと頷いた影朧が南瓜頭をほわほわ光らせれば、不思議と二人に伝わる“うれしい”という感情。
 影朧して力が弱いせいだろう、言葉を発さない姿を理解したヴィルジールがそっと影朧を地面に下ろせば、楽しかったのかぴょこぴょこ跳ねる。
「この烏天狗はとっても優しいでしょう?巫女もお墨付きです」
『!』
 たからの自信満々にヴィルジールを誉めれば、影朧は南瓜頭をピカピカ光らせぴょこぴょこ跳ねる。“すごい”やら“かっこいい”やら感情と視線をぶつけられ、その純粋さに心が和む。
「私たちはいまから、菓子屋に行くんだ。君も、良ければ一緒に如何だろう」
「たから達とお菓子を食べませんか?」

 南瓜頭がいくらピカピカ光ってみたり柔く点滅しようとも、今宵はハロウィーン。
 誰も気付かず誰も驚かない夜だから、たからとヴィルジールと手を繋いだ影朧は道行く仮装した人々にも、飾られた南瓜ランタンにも楽し気な反応を絶えず返していた。
「ヴィルジール、和菓子がいつもより不思議な形です。かわいいお化けがいっぱいですよ……!」
「! ……!」
 硝子のショーケスにピタリくっ付き興味津々の影朧と楽しそうなたからを見てしまえば、子供好きなヴィルジールの財布が緩む。
「たからはどれにする?」
「む。……む、う……どれもきっと、素敵な味が」
『……! ……?』
 幽霊大福は生クリーム餡と求肥が包まれているという。だが悪魔の鬼栗饅頭の大粒な栗の見事なこと!
 捨てがたい唸るたからを見た影朧が、くいくいとヴィルジールの裾を引く。
「うん?どうか……」
 少し腰屈めたヴィルジールの裾を引いては、シーツに包まれた小さな手でショーケスをぺちぺち叩いては南瓜頭をこてんと傾げる。何か欲しいものがあるのだろうか?とヴィルジールが考えた時、たからがぽつり。
「ヴィルジールは何にするのかと聞きたいのでしょう。ヴィルジール、決まっていますか?」
「ああ……ふふ、なるほど。そうだな、私は――」

 紙袋がかさかさ揺れる。
 ヴィルジールは幽霊大福、たからは悪魔の鬼繰り饅頭で決まりやって来たのは人の疎らな大幻朧桜の近く。
 三人を見ていた店主がサービスしてくれた黒文字で切り分けてしまえば、悪魔の恐ろしさも幽霊の儚さも鳴りを潜めてしまう。
「ヴィルジール、幽霊大福も切ってしまってよかったのですか?」
「今日はハロウィンだからね。私の分も3人で分かち合おう」
「……いけません、甘々です。これは歯磨きが必須」
『……!!』

 ふわふわきらきら、影朧から不思議な光が花のように広がって――“しあわせ”、“たのしい”というこころが、烏天狗と巫女の胸をふうわり温めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】仮装おまかせ

南瓜ランタン、ガラスだわ!
少し小さめね
ゆぇパパのと親子なのかも?
はあい、気を付けるわ

片手にランタン
もう片手はパパと繋いで歩く
今日のパパの仮装もステキね!

色々お店もあって迷ってしまうけれど
ハロウィンで和菓子屋さんは珍しい気がする
行ってみない?

ゆうれい大福って、どんなのかな
えっ、ゆうれいさん出てくる?
頼もしい言葉に勇気をだして一口
…おい、しい!

天使の塩かき餅を一緒に食べると
パパ、大変!
甘い塩っぱいで、とまらないわ!

お饅頭もおいしそう
かき餅も如何?
甘味塩味のループにパパもご招待、なんて
はい、あーん
悪魔のお誘いが此方にも!?でも、頂くわ

写真?もちろん!
楽しい想い出を形に残しましょう


朧・ユェー
【月光】仮装お任せ

ガラスの南瓜ランタンはとても綺麗ですね
僕のは大きいから親子ランタンですね
でもガラスですから傷つけないように気をつけて

彼女と手を繋いで
ありがとうねぇ、ルーシーちゃんの姿も可愛らしいですよ

確かに、南瓜は洋風のイメージでしたが和装菓子も美味しそうです
えぇ、行ってみましょうか?

ふふっ、食べたら怨めしやと言ってくるでしょうか?そんなのがルーシーちゃんの所に出たら僕は許しませんけどね
それは良かったですね

甘いのと塩味はどちらも美味しいですから
僕は悪魔の鬼栗饅頭
美味しいですね
おや、悪魔のお誘いですね
でも一口下さいな、天使さん
悪魔のお誘いも受けますか?

嗚呼、後で一緒に写真を撮りましょうねぇ



●桜の下
 今宵、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は三角耳にふわふわ尻尾を揺らす金狐の子。
 ルーシーと手を繋ぐ朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)も、銀色の柔らかな尾と頭上で揺れた三角のふわふわが、銀狐の証。
 借りた折から興味深げにランタン眺めていたルーシーが、ふとユェーの手元を見る。
「ね、ね、南瓜ランタン、お揃いのガラスだわ!」
「えぇ、とても綺麗なランタンですね」
 近づければ、ユェーのよりルーシーの方が二回りほど小さく、まるで。
「ルーシーのとパパの、親子なのかも!」
「そうですね、僕のはお父さんかな?」
 ぱぁ、と表情綻ばせたたルーシーがご機嫌に跳ねれば、“ランタンをぶつけないように気を付けるんですよ”とユェーの声。
「はぁい、気を付けるわ……あ、ねえパパ!今日の仮装とーってもステキ!」
「ありがとうねぇ、ルーシーちゃんの姿も可愛らしいですよ」
 “そこまで子供じゃないのよ!”と頬膨らませたかと思えば、今度は笑顔。表情をころころ変える子狐がとても可愛らしくて、ユェーの口元がつい緩む。
 歩きながら目についたのは、大南瓜を飾った和菓子店。
「和菓子屋さん……ハロウィンで和菓子屋さんって、珍しいわ!」
「確かに、南瓜は洋のイメージですが、和菓子も美味しそうです」
 ルーシーが空の瞳に好奇心が揺れユェーの月の瞳が柔らかに瞬けば、二人の声が重なって。
「行ってみない?」
「えぇ、行ってみましょうか?」

 到着してすぐ、ルーシーは硝子のケースに釘付け。
「かわいいわ……!それに、良い匂いも!」
「ですね。かき餅は揚げたてなのかい?」
 パチパチ油の爆ぜる香ばしい匂いと、蒸し器から立ち昇る湯気は栗の甘い香りで二人を擽る中、じっと眺めた硝子越し。ルーシーは幽霊大福と目が合った気がしてユェーの手を引いた。
「……ゆうれい大福って、どんななのかな」
「ふふっ――食べたら怨めしや、と言ってくるから幽霊なのでしょうか?」
 悪戯なユェーの言葉に、ルーシーは目を見開くや慌てだす。
 つい“美味しそう”と思ったのがバレていたら?いや“食べてみたい”と思ったことに悟られていたら……!
 慌てるルーシーが咄嗟に隠れたのは、ユェーの長い足の後ろ。
「パパ……!」
「おやおや」
『はっはっは!お父さん、子供怖がらせちゃいけねぇよ』
 二人を見守っていた恰幅の良い店主が笹葉結んだ皿に乗せ差し出したのは、小さな幽霊大福だ。
『嬢ちゃん、お父さんと味見に食ってみな』
「折角ですから、頂きましょう。それにルーシーちゃんを怖がらせる幽霊、僕が許しませんから」
 人の良さそうな店主とユェーの言葉に勇気づけられたルーシーは、添えられた黒文字でチビお化けをぷすり!ぎゅうっと目を閉じパクリと食べて――。
「……おい、しい!」
「それは良かったですね」
 白かった頬は今や桜色。餡クリーム包まれた大福は思いの外食べやすく、秘密の求肥と底のザクザクチョコとの食感の対比が面白い。
 折角だからと大福と栗饅頭を一つずつ買えば、おまけだよと揚げたて天使の塩かき餅が付けられた。

 ざくりと齧った塩かき餅の次は、黒文字で小さくした幽霊大福をぱくり。
「パパ、大変……甘いと塩っぱいでとまらないわ!パパも!はい、あーん!」
「おや悪魔のお誘いですか……では一口下さいな、子狐さん?」

 幻朧桜美しい下、分け合った味は格別。
 あとで一緒にと約束した写真が、きっと色濃い思い出になる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸神櫻

灯桜浪漫祭ですって!きらきら綺麗でわくわくしちゃうわね!
手元で揺れる桜ランタンだってかぁいらしくて笑顔が咲くわ

私は黒無垢姿の魔女よ!どう?似合うでしょう
うふふ……カムイだって似合うわよ
紋付袴
私の神様は凛としててカッコイイわねぇ!
日本酒とくればやっぱり和装よ!
黒漆の升で楽しむお酒なんて、粋じゃない
キラキラしてるわ!
酔ったらちょっとしたトリックを仕掛けちゃうやもしれないけど……
隣にいるのがカムイだからいいの

はぁ……おいし
ぽかぽか暖かくてぽやぽやしてきたわ
ゆると指を絡めて甘えるわ
ふふ!仮装じゃないのを着せてくれるの?
かぁいいことを言う神様の唇をつんとつつく

素敵なトリートを、楽しみにしてるわね


朱赫七・カムイ
⛩神櫻

これが桜ランタンか……美しい灯りを放っているね
サヨへ視線をやる度に、頬が熱くなる
きみが着ているのが、花嫁衣装だからだ
黒は、私の色でもあるし……可愛く美しい

私は合わせて紋付袴だが……噫、サヨが褒めてくれるなら、悪くない

お酒?
きみは酒癖が悪い癖に本当に酒が好きだね
今日だけだよ
可愛いおねだりにいつも負けてしまうのは仕方がないこと
黒漆の升で飲む酒はきっと特別だ

ほら、言わんこっちゃない
早速酔って甘えてきた
いいよ
もっと甘えておいで
子猫を甘やかすみたいに可愛がる

……次は仮装ではなく誠を着せたいな
酔っている巫女をあやすように頬を撫でる
噫、楽しみにしていて
驚く程に甘く幸いな、トリートを愛しい巫女へ贈るから



●桜ひらひら
 ランタンを揺らすのは艶やかな黒絹の袖口から覗いた白い指。
「かぁいらしい」
 係員に渡されたランタンを撫で、ふふりと上品に微笑んだ誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)がソレを保っていたのは予約した桜見える座敷の障子が閉まるまで。
「灯桜浪漫祭ですって!きらきら綺麗でわくわくしちゃうわね!」
 突然花咲いた少女の様な様相で、纏った黒無垢を翻してくるくるり。
 敷かれた緋毛氈の上で楽し気に振る舞う櫻宵は朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)は喉を鳴らして笑ってしまう。
「カムイ?」
「いや……今宵のきみも、愛らしいな」
 そうカムイが心から口にすれば、白い頬を桜色に染めた櫻宵が眦をとろりととろかして、魅せる様にゆっくりと衣装を翻す。
「今宵の私は黒無垢姿の魔女よ!どう?似合うでしょう」
「サヨに私の色が似合わない訳がない……可愛く、美しい」
 はしゃぐ櫻宵を受け止めたカムイも熱持った頬そのままに、骨張った指先を櫻宵の頬に滑らせわらう。
 黒はカムイが抱く色の一つ。それを愛しい人が幸せそうに纏うのだ、嬉しくない訳が無い。
 一方で少女然とはしゃぐ櫻宵も揃いで紋付袴を着こなすカムイの姿に鼓動が早くなっている。
「うふふ……カムイだって似合うわよ、紋付袴。流石は――」
「……噫、サヨが褒めてくれるなら、悪くない」
 “わたしのかみさま”と囁く声には心が満ち満ちていた。

 開けた丸窓障子の向こうは、桜と電飾で華やかこの上ない。
 そうして見下ろせば、眼下には人込み賑やかな通りの景色が祭の賑わいと熱気を二人に伝えていた。
「私の凛としてカッコイイ神様と、今日は日本酒よ!黒漆の升で楽しむなんて、粋じゃない」
「お酒?きみは酒癖が悪い癖に本当に酒が好きだね……今日だけだよ?」
 わーい!と喜ぶ櫻宵の顔にカムイはいつも負けてしまう。
 運ばれた升をこつんと突き合わせ、傾けること幾度。甘くも後味に透明感のある酒はとても飲みやすい反面、度数はそれなりに高いようで。
「はぁ……」
 窓辺から祭見ていた櫻宵がゆらりと揺れて、カムイに寄り掛かる。
「ふふ、おいし……カムイ、手」
「ほら……言わんこっちゃない」
 絡めた指先を、握る。
 酒の入った体がどこかほの温かくて、着物越しに聞こえるカムイの鼓動と呼吸は櫻宵には子守歌のように。
「サヨ、おいで」
「んー」
 とん、と撫でた背の細いこと。
 懐っこい猫の子のような櫻宵は今、カムイの手中。どこか楽しそうな微笑み浮かべたこの巫女を見られるのは自分だけでいい。
 桜香る桜鼠の髪に唇を一つ落として呷った黒漆の升。やはり今宵の酒は格別か。
「……次は仮装ではなく、誠を着せようか」
 カムイの独白に近い言葉に眠たげだったはずの櫻宵が顔を上げた。
「ふふ!仮装じゃないのを着せてくれるの?」
「噫、楽しみにしていて」
 かぁいい、と笑ったその微笑みを守ろう。
 驚くほどに甘い神の加護を以って。

 ひら、と窓から入り込んだ桜が漆升の酒に波紋を作る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『祈りが宝石に変わるころ』

POW   :    未来について祈ってみる

SPD   :    現在について祈ってみる

WIZ   :    過去について祈ってみる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●祈石の社へ

 そこは路地だった。
 菓子屋の間を抜け、右へ進んで丁字路へ出たら左手へ。そうして突き当ったら右手へ。人一人分ほどの細い道を抜けたら、開けた通りに出た。
 人影が少ないのに、不思議と感じる賑わい。

 ふと、左へ続く細道の垣根の上、赤い鳥居が見えた気がして。

 どうにも気になって追う最中、幻朧大桜が咲き誇るその奥に、それ在った。


 不思議と真新しく見える朱の鳥居を三つ潜って、石畳の端を歩く。
 “真ん中は神様の通り道なんだって”。
 すれ違った見知らぬ誰かが言っていたから、なんとなく避けて歩いた先。
 ひらひらりと幻朧桜舞う中に、古く小さくも不思議な荘厳さのあるお社が待っていた。

 さぁ、手を合わせて。


 きみの祈りが、“彩”になりますように。




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*ここは祈石のお社
 招かれた者だけが辿り着ける、幻朧大桜咲き乱れる不思議な社。

 そうっと手を合わせて、きみの祈りを伝えてごらん。
 声に言葉にしなくても、きっと“かみさま”は聞いている。

 気付けばその手に宝石が在ったなら―――……。
 願い叶うまで、祈り届くまで、どうかその手に持っていて。

(※アイテム発行はありません。
  シナリオにて描写できるのは祈石を入手するシーンのみになります。)

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世母都・かんろ
【烟雨】◎

甘いものを食べたあとの
不思議なお社は清廉な空気で

真ん中は歩かぬように
けど、叶さんはかみさまだから
歩いてもいいような?

並んで手を合わせて、思うのは
優しい帝都という世界
手にした宝石の彩が綺麗で
これが願いの形なのだと思った

叶、さんは、何、を、お願い、しま、した?
わ、たしは
みんな、幸せ、だと、いいなって

ううん
ちょっと、いい子、ぶり、ました
…一番、は
パパ、が、幸せに、なった、らって
わがまま、言っちゃう
えへへ

あっ
内緒に、する、のね
む、無理、には、聞きません

預けられた祈石
それじゃあ、不公平だから

わた、しの
叶さんに、あげます

ふふ、きっと、叶う、わ

笑ってくれた彼の顔は心からのもので
ああ、すごくうれしい


雲烟・叶
【烟雨】◎

自分は神さまとは違いますよ
何方と言えば物の怪の分類ですからね
この娘は不思議と己を神さま扱いすることがある

手を合わせ祈るのは義娘の幸福
この娘が、自分を義父と呼び慕って甘えて来る
それが何れだけのことかくらい、分かっているつもりですから
呪物には似合わねぇのは百も承知ですがね、祈るくらい自由でしょうよ

(……どうか、この娘の生が、甘露の道行きが幸福であるよう)

さぁ、何を願ったと思います?
お前は、……自分の?
そう、ですか
何だか擽ったくて、視線が僅かに逸れる
……自分の祈石はお前に差し上げますよ、アクセサリーにでもなさいな

自分に差し出された祈石を、そっと大切そうに手の中に
気付けば、笑みが零れていた



●透明な、
 楽しんだ祭らしい熱気とは異なり、幻朧大桜花咲くこの社は不思議と澄んでいた。
 整然とした石畳を、世母都・かんろ(秋霖・f18159)と雲烟・叶(呪物・f07442)は真っ直ぐ行く。
 途中“真ん中は神様”と聞いて以来、ちらりと叶を見ては石畳の真ん中を見るかんろ。その視線の意味をすぐに察した叶がくつりと小さく笑えば、気付かれていることに気付いてハッとしたかんろが落ち着かなくなる。
「甘露、自分は神さまと違いますよ」
「えへへ……」
 白い頬を桜色にして恥ずかしそうに背を縮込めるかんろ。その背がどうにも可愛くて、手を伸ばして叶が撫でてやれば、ふにゃりと垂れた白磁の眦は叶が今まで見た何よりも柔らかい。
 人は、時に物や事象を“神”と定義する。
 叶がヤドリガミたる本質は下手をすれば“そういう物”に当たる。が、かんろが叶を“神さま”というのは、訳が分からないものや恐ろしいものを定義する言葉とは全く違う。
 叶には、分かる。
「(自分を慕うこの娘が、幸せで在ったらいい)」
 石畳を踏む度、思う。
「(こんな呪物が、誰かの幸福を願う日が来るなんて)」
 でも、祈りは自由だから。
 猟兵は甘えの許されない過酷な立場だ。特にかんろはグリモアも扱えるがゆえに、より。果ての無い悪路に立たねばならないこの娘を。
 ―――どうか、神よ。
「(……どうか、この娘の生が、甘露の道行きが幸福であるよう)」
「(パパが。わたし、の、パパ、が……幸せ、で、あります、よう)」
 ―――お願い、かみさま。
 音にしない祈りは純粋に絡み合う。
 かんろは胸に沸いた祈りを静かに願いきって、横目で隣の叶を盗み見る。優しい人。大切なパパ。わたしの、かみさま。
 この祈りを口に出したら、笑われてしまうだろうか。この願いを伝えたら、叶わなくなってしまうだろうか。
 それは嫌だから、かんろが選んだのは世間的に甘い甘い砂糖で包むことだった――けれど。
「叶、さんは、何、を、お願い、しま、した?」
「さぁ、何を願ったと思います?」
 わたしは――そう言いかけたかんろは、言葉を引っ込めた。
 叶の瞳が“秘密”と言ったから。ならばあえて自分も秘密にしてしまおう、きっと察しの良いこの人はいつか気付くかもしれないけれど……それでもいい。
「ああ、そうだ……自分の祈石はお前に差し上げますよ、アクセサリーにでもなさいな」
「わ、あ!あ、そ、それじゃあ、不公平、だから。わた、しの……叶さんに、あげますっ」
 叶からかんろへ託されたのは黒半透明な石の中、一滴落ちた赤が花のように広がる祈石。
 かんろから叶へ託されたのはパープルミルク色をした不思議な淡い温もりを持った祈石。

 互いに交わした微笑みの温度は同じ。
 柔く緩く、二人のこころを蝶結ぶ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
POW
特別神社を訪れる事はそう多くは無く、多分人並み程度の頻度だったけれど。むしろ猟兵になってから訪れる回数は増えたかもしれない。
不思議と懐かしく馴染んで。過去の私は関係者だったのかしら?

何を祈ろう?
過去の私は水底に沈んだ。実際本当に水に沈んだわけじゃないけど、でも確かに想いを沈めた。
そして今の私は伝えたい言葉を伝え、一歩だけ歩みを進めた。……それ以上はまだ歩けない。待つしかできない。
忘れてなかった事にできない想い。成就できないならこの想いが消えて過去になるか、それとも私自身が過去になるか、どちらかの時が来るまで待つの。
先に進むため終わらせたい。いつかこの苦しみが過去にできますように。



●光差す
 幻朧大桜とお社を見た時、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は無意識にほうっと息を零した。
 不思議なことに、この神社をどこか“懐かしい”と疼く胸の奥がくすぐったくて仕方がない。神社を訪れたことなど、今世では人並みの指折り数える程度だというのに。
 しかもこの祈石神社には“初めて”訪れたはずなのだ。
「……過去の、私?」
 藍の過去世。人の幸せを願ったその生は、此処に係りが在ったのだろうか?
 祈石神社の“宝石”に不思議な運命を感じながらも、足りない決定打が藍を惑わせる。だから今宵は、ただ祈りに来た一人になろうと足を進めて。

 桜が舞う。
 薄桃がひらふわ、柔らかくも鮮やかに。
 ひら、と手水舎に幻朧桜が落ちた瞬間――藍の頭を過ったのは“水底に沈んだ”過去世。
「(本当に水に沈んだけわじゃない、けど)」
 しかし確かに“心”は沈めた。“想い”と共に。
 言える口を持ちながら言わなかったことは、過去世の藍には舞う桜ほどあったことだろう。でも、“今世”は違う。
「(今の私は、一歩だけ……伝えたい言葉を伝えられるようになった)」
 ――それ以上は、まだだけれど。
 今の藍は“待つ”ことを選んでいるから。

 そうっと手を合わせる。
 目を伏せて、ただ静かに――……。
「(私が、先に進むため……いつかこの苦しみが、過去に出来ますように)」

 掌の異物感。
 そっと開けば、燈會の光を受け七色のひかり零す涙型の蛋白石が輝いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季


「神…神ですか。困りましたね」
嗤う

郷に入りては、と言う
この地で言う神と、自分達が言う神は違うと分かっているけれど
「神頼み…する側ではなく、される側ですからねえ」
仙は死ねば神に遇される
ゆえにまとめて神仙と称される
自らの願いは自ら叶えるもの
他者の願いには力を貸すもの
「ああ、でもこの地のユーベルコヲド使いをカヴァーにしている以上、この地の人らしく在らねば変ですね」
社に手を合わす

(貴方を頼るもの達の願いを、貴方が過不足なく果たせますよう)
二礼二拍手一礼
祈石が現れたらそのまま社に供える

「願いを叶える貴方の、願いが叶う一助になりますよう」
笑いながら社を後に

「さて、もう少し子南瓜に甘味を分けて帰りますか」



●仙が祈るは
 幻朧大桜の見事な姿を見上げた鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、ふむと顎を擦る。
 秘匿事項ではあるのだが、冬季は人ではない。
 電扱う仙へと至った妖狐である。
「神……神ですか。困りましたね」
 上がった口角と胸中渦巻いた好奇心が、冬季を嗤わせたのは一瞬。
 仙でありながら冬季は“人”の営みを守り“人”の理を介し、“人”の在り方を尊重する―――が、どうにも“神頼み”というのはどこかこそばゆくて仕方がない。
「神頼み……する側ではなく、される側というか……いや、だからですかねえ」
 参ったと困り顔で微笑みながら、学帽の鍔を引く。
 なにせ仙とは死すれば神へ遇される存在だ。
 ゆえに総称として“神仙”と。
 そして先の通り冬季は“仙”へと至った妖狐。――つまり、だ。
「(自らの願いは自ら叶えるもの。他者の願いには力を貸すものですから)」
 ゆえに仙でありながら、冬季は猟兵で在ろうと奔走する。
 ふと、握って開いた自身の手を見て―――一つ、冬季の願いがピンと決まった。

 二礼二拍手一礼。
 背筋伸ばした作法美しく、静かに労りの心を以て冬季は語りかける。
「(貴方を頼るもの達の願いを、貴方が過不足なく果たせますよう)」
 そう祈り瞼を押し上げた時、違和感のある掌。そうっと開けば、石細工が如く繊細に蓮花象られた青玉が静かな光を湛えていた。
「――願いを叶える貴方の、願いが叶う一助になりますよう」
 そう祈る中に、先の“嗤った”冬季はいない。
 ぐうっと体を伸ばして、ふと頭を過ったのは鳥居に隠れているつもりらしい南瓜頭。

「さて、もう少し遊んだら“帰り”ましょう」
 私もあの子も。
 ぴかぴか、橙色の輝きが夜に灯る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

そうですね、お社など昔はいきませんでした
えぇ、神様にご挨拶しないと失礼ですね

足元気をつけてくださいね
彼女の手を取りゆっくり歩く

こちらも手を合わせて
この子が今後ツライ事がありませんように
もし何かあってもこの子が前を向いて歩けますよう、
そして長い時を過ごし幸せを

僕の罪は消えないでしょう
でも願わくば彼女の傍に長く居れれるように
傍で見守れますように

秘密ですか?
そうですね、ルーシーちゃんと同じ事を願ったかもしれませんね?

おや、とても綺麗な宝石ですね?
僕の手にも、キラキラと水の雫の様な美しい宝石
アパタイト?
この宝石の意味も絆を繋げ強める
違う宝石なのに同じですねと微笑んで

えぇ、とても素敵な事ですね


ルーシー・ブルーベル
【月光】

お社にいると背筋がのびる気持ち
神様のお家にお邪魔したのだし
お参りしましょう
ゆぇパパと手を繋いで

手を合わせ
音にはのせずに祈る
心に浮かぶはパパのお姿
パパに嬉しい事はたくさん
哀しい事、辛い事は出来るだけ少なくして下さい

そして、神さま
ゆるしてくれますか
ずっと先までパパの傍で生きたいと願うわたしを
どうか

パパは何を願ったのかしら
ルーシーはね、……ナイショ!
ええ
きっと、同じ事を

長く祈った手を解くと
中に薄くて小さくて丸い、白黒の縞瑪瑙
光にかざせば白に見えていた層が
色とりどりの虹色にきらと輝く
イリスアゲートだわ
確か意味は絆を深める、だっけ

パパの宝石も綺麗なあお
同じ意味なの?それってとっても、ステキね…!



●石段跳ねた
「足元に気をつけてくださいね、そう、ゆっくり」
「大丈夫、よっ」
 もうお姉さんだから、背筋を伸ばしたいルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)には見守る朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)が付いているから怖くない。
 神社を“神様のお家”と称したルーシーが緊張していたのは先程までのこと。ユェーの手を借り石段を越えた先、咲き誇る幻朧大桜に目を奪われたのだ。
「きれい」
「そうですね」
 パパの声が優しい。それに桜も綺麗だから、きっとこの“神様のお家”は良いところ。
 そう幼心に直感したルーシーは自然と微笑んだ。漠然とした感覚だが、そう肩肘を張らなくて良い――そう言われた気がして。

 手を繋いで整然とした石畳を終えて、揃って社の前に立つ。
 見上げた荘厳な社に不思議な落ち着きを感じながら、ユェーがルーシーにお祈りの作法を説明すれば、新しいことに目をキラキラさせたルーシーが興味津々に頷いた。
「二礼二拍手一礼、ね?」
「ええ、そうしてから手を合わせてお祈りですよ」
 “わかったわ!”と無邪気に笑う白い頬に眦緩ませながら、ユェーも作法に則り手を合わせて願う。
「(この子に、今後ツライ事がありませんように。もし、もしも、何かあったとしても、この子が前を向いて歩けますよう――そして許されるなら、罪ある僕が、)」
 “――この子の、この彼女の隣に一日でも長く居られますよう。傍で見守ることを”。
 真摯に願うユェーの隣。
 星色の髪揺らすルーシーも、ぎゅうっと目を閉じて願う。
「(パパの嬉しいことが、いっぱい。哀しいこと、辛いことは出来るだけ少なくして下さい。そして神さま――)」
 “パパと。ずっとずっと先までパパの傍で生きたいと願うわたしを―――どうか”。
 ゆるしてと祈ることは違う神さまかしら?と頭の片隅で思いながらも、ルーシーは願う。
 小さな胸の奥でたしかに温めていた祈りを、ゆっくりと読み上げるかのように。

「「……!」」
 二人が示し合わせたかのように瞼を上げれば、手中に違和感。
 そうっと開いてみれば――ユェーの掌には、朝露を落としたような不思議と眩い祈石。小さなルーシーの掌には薄く小さな丸い白黒縞模様の愛らしい祈石。
 ランタンの光に翳せば、きらきらと煌めいた。
「これは――アパタイト、でしょうか」
「……虹が見える。ルーシーのはイリスアゲートだわ」
 互いが“絆”に纏わる石――そう気が付いてユェーとルーシーがお互いを見た瞬間、ふと頬が緩んだ。

 不思議だ、祈石一つでこんなに心が温まるなんて。
 繋いだ今日の手のぬくもりを忘れないように、パパ!と呼ぶ声弾ませたルーシーをユェーの温かい瞳が見守ってゆく。

 穏やかな日々がどうか、つづきますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティル・レーヴェ
【花結】
揃いを灯しあなたの隣
黄色い裾を翻したなら
覗く花咲くレェス
妾の白騎士にも裡へ花咲かせられる?

手甲越しの手は少し冷たい
でも熱る身には丁度いい
今宵もあなたが導いて?
至る先重なる視線に眦緩め

ええ勿論と頷くけれど
遣ること?と
こてり首も傾げつつ

御伽めく今の様にも
咲き誇り添う花と樹の様にも
その時々
ふたりだからの在り方で
互いに互いの幸せな儘
ずうと共にいられますよう

掌には煌めく藤色
添わせあなたの其れと並べれば
揃いの様で少し違うふたり色

名を呼ばれ
見上げるあなたからの言の葉に
向けられた眸に滲む色に
藤色が瞠られ潤けて

言葉に詰まる答えの代わり
あなたをぎうと抱きしめて
口を開くと零れてしまうから
ねぇ、それでわかって


ライラック・エアルオウルズ
【花結】
揃い揺らす桜灯で
石畳の路端照らし
銀鎧で白騎士を装い
揺れるレエスに添うて
裡に花を咲かせたなら
御覧の通りさ、僕のアリス

手甲遮る熱が恋しいが
君と歩むことが嬉しく
爪先かるく祈石の社へ
至れば、眸見合わせて

祈ること、もう決めた?
僕は決めていたよ
祈ることも、遣ることも

アリス導く白騎士めいて
君と夢の涯まで往けるよう
夢のよな、日々が
永遠に続くようにと

祈り籠めた、てのひらで
淡紫の煌めきを柔く包み

ねえ僕の――ティルさん
石畳でなく真赤を歩む先
いつかの結婚式には
薬指に花結ぶだけと限らず
確としたものも要るだろう?

結婚指輪に飾る、輝石
ふたりの祈りで如何かな
問う声に僅かな悪戯
何より愛しさ滲ませて
返る答は、胸抱こうか



●環
 蒲公英色のフリルが揺れる。
「あっ、」
「ティルさん」
 転びかけたティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)を軽やかに受け止めたライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)の鎧がカシャンと音立てた。
 きゅっと握ったライラックの温度が手甲一枚遠くて、少し寂しいけれど……冷たい鋼の裡には、春陽射しのような熱持っていることをティルは知っている。
 ティルの菫色の瞳が柔らかく輝く様が、ライラックには愛おしくて仕方がない。春彩の日差し色纏った、ライラックだけの小鳥。
「さぁ、行こうか。僕のアリス」
「妾の騎士様、今宵もあなたが導いて?」
 手の熱届かない互いの寂しさには、微笑みがあれば十分。
 石畳を歩きながら、近づく社を見つめたライラックが小首傾げて尋ねれば、ドレスの裾をふうわり踊らせたティルは花の様に微笑む。
「祈ること、もう決めた?」
「ええ、勿論」
 もう日も沈み、頼りになるのは手元の燈會と参道の灯篭と――繋いだ二人の掌だけ。
 このゆったりとした一時が一歩一歩短くなるのが惜しい反面、近づく社と授けられる石にドキドキしている自分がいて。
「僕も、祈ることも遣ることも決めたよ」
「(……遣ること?)」

 手を合わせ、願いをそっと心の中で紡いでゆく。
「(僕のティルさんと、夢の涯まで往けるように。この夢の様な日々が、永遠に続きますよう――)」
「(ふたりだからの在り方で、互いに互いの幸せな儘……ずうと共にいられますよ)」
 二人の祈りがほたりと社へ落ちた時、合わせた手中にあったのは煌めきだ。
 きらきら、きらきら。
 “祈石”だと直感的に察しながら、その不思議さと美しさにティルの視線が釘付けになったとき、耳慣れた声が呼ぶ。
「ティルさん」
「あ、」
 ハッと視線を向ければ、愛しい人が恭しく膝を着き小さなティルの手を取った。
 視線ぶつかれば、どこか緊張を隠した甘やかな藤色がゆるりと弓形に。
「ねえ、僕のティルさん。石畳ではなく、真赤な歩む先。いつかの結婚式の日には――」
 幾度も瞬く菫色の瞳を見つめながら、ライラックが無骨な指先が触れた白くて細いティルの薬指。
 整えられた桜色の爪からなぞって、その指先が止まったのはそのつけ根。
「薬指に花結ぶだけと限らず“ふたりの祈り”で、如何かな」
 立ち上がり手を取って、希うライラックがティルの手の甲に額を寄せる直前、ぽすんとぶつかった花の香り。
 そこに言葉が無い――の、ではなく、喜びが胸に詰まってティルは声が出なかった。
 ぎゅうっと力いっぱい抱きしめる。ああ、もう。耳まで熱くて鎧の冷たさではもう足りないとティルは震えていた。

「僕のティルさん、」
 ぎゅうと抱きしめる愛しい小鳥の答えを知りながら、ライラックは呼ぶ。
 掬った淡い春緑の髪に口付けを落としながら。

 ただ愛おしさのままに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

幽・ヨル
千空(f32525)と


_

……私の、祈り

私は孤児で、今の両親に引き取られて
私は彼らの『道具』だった
散々殴られ罵られ
心の底から恐ろしく感じるけれど
でも彼らの愛する子ども──私から見た弟妹と穏やかに暮らしてほしいとも願っている
そこに私の居場所はない
学校にもバイト先にも居場所はない
けどそれに否やはない
私は生まれてくるべきではなかったと
解っているから

…心がぽつりと漏らす
本当は千空さんの側にいたいと
でも甘えちゃ駄目と
勘違いしちゃ駄目と己を叱責
彼はきっと温情で私を拾ってくれた
それだけの事

不意にかき乱される髪
くすぐったくも不思議に思い
彼を見上げ微笑う

両親と弟妹
そして千空さん
祈るは彼らの幸福と安寧を


槙宮・千空
◎ヨル(f32524)と

魔法のような夜を抜け
辿り着いた鳥居の先
荘厳な社を見上げ
へェ、と声が漏れた

祈る事なンて何もない
欲しい物は、全て盗んで
自分のモノにしてきた
それはこれからも変わらない
だけど、──

隣でじっと佇む君を見る
出会った時から傷塗れだった
ガリガリの痩せた身体

父親に暴力を振るわれていた
乱暴な扱いをされていた
見るに堪えずアイツを攫ってきた

それでも幼い頃からの習慣は
彼女に染み付いているようだから
無理やり衣食住を与えてるだけ
俺は、それだけしかしてない

言葉になンてしねェけど
ヨルが笑っていられるように
"普通に生きていけるように"

合わせていた手を伸ばし
ぐしゃぐしゃと髪を掻き乱し
悪戯っぽく笑ってみせた



●まほろばの、
「……わ、ぁ」
 幻朧大桜と社を目の前にした時、幽・ヨル(カンテラの灯・f32524)の中の時間がほんの一時止まった。
 舞い踊る桜色の向こうに荘厳なお社――まるで絵に描いたような世界は、ヨルにとって初めてのもの。
 此処は本当に現実なのだろうか?
 もしかして、夢だったりするのだろうか?
 父に母に殴られた私は、あの時死んでしまったのだろうか?
「(……いや、違う……よ、ね)」
 先程まで槙宮・千空(Stray cat・f32525)に抱えられていた感触がまだ残っているし、今触れたヨルの胸ではパチリと炎が爆ぜたのだから。

 強く胸元を握りしめたまま社を見つめるヨルを、千空は黙って見ていた。
 鳥居の前に着いたところで降ろしてから、ヨルは佇んだまま――その姿に千空は思う。
 初めて出会った時のヨルを。
 傷に塗れ襤褸のようだった、ヨル。“父親”と名乗った男の拳で“躾け”の名目で端から見ても暴力を振るわれていた少女。
 その出会いはただ偶然だった。
 今宵の様な“三日月”が笑っていた日、気分良く夜を駆けた時の事。誰もが寝静まる夜を騒がせていた男と――その陰で身を小さくし、震え許しを乞うていた少女。
 猟兵の直感として、千空には分かった。
 少女の方が遥かに男を凌ぐ力を持ちながら、なにかに束縛され抵抗していないのだと。
「(逃げちまえば良かったんだ)」
 ヨルが全力で駆けたなら、只人の男には決して捕まらないだろうから。
 いつもなら流してしまう程度の騒動が、どうにも目に焼き付いて……観察を始めて暫し、“父親”によって乱暴に投げ飛ばされ昏倒しかけたヨルを千空が矢も楯もたまらず攫った夜も――三日月だった。
 抱えて初めて、千空はヨルが直面している現実を見せつけられることとなる。
 恐ろしく軽いヨルに骨の浮いた身体には、目を覆いたくなるほどの傷口の数。知らぬふりをして“大丈夫か”と問えば、困ったようにわらった――ヨルの扱けた頬。
 それから千空は自分がどこか必死だったと、思う。
 贖罪かと問われればNOだ。憐れみかと聞かれれば頷くかもしれない。何を求めるかと詰められれば―――、ただ。

「―――かえりたくない」
「(帰したくない)」

 戦慄いたヨルの唇。
 呑み込んだ千空の言葉。

 今宵の夢のフィナーレは近い。
 分かっている。ヨルも、千空も。
「お祈り、していくか」
「……うん。あ、のね、私、その……両親ね!弟と、妹とっ、そっ、それとっ!」
 無意識に早口になるヨルを千空は丁寧に待つ。そうかと相槌を打って、否定の一つもなく、ゆっくりと。
「それと、ね……千空さんにも。“今日はありがとう”」
「――そりャあ僥倖、ッてな」
 ぐしゃぐしゃと千空の大きな手がヨルの髪を乱す。
 やめてようとわらう少女の眦の涙の痕に、気付かないフリをして。

 神様神様、いらっしゃるのならば――どうか。
「(ヨルが笑って“普通に生きていけますように”)」

 ころりと手中へと落とされた爪先程の恒星のような赫石が、静かに二人の手中で息衝いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エメロア・エフェトゥラ
【数奇】◎
変わらず猫又書生姿で

雪蘭。酔いは覚めたか?
夜風にあたれば少しマシになるかもしれないな。
(心配げに雪蘭の手をとりあるいているとお社を見つけて)
…とても魔力に満ちているな。グリモア猟兵が言っていた場所だろう。

祈り…願い…
僕の願いは…母上が帰ってきてくれますように…そうしたら雪蘭と母上と僕の3人でーー
(祈れども願えども『形』にはならず眉を寄せる)
(そんなに叶えられない、聞き届けられない願いだと言うのか?)

(自分の祈りは形にならなかったが雪蘭の祈りは形になったようで)
…雪蘭の願い。叶うと良いな。


麟・雪蘭
【数奇】◎
仮装は一章同様

…ええ、ロア様
ご心配おかけしましたわ
もう大丈夫ですよ

(本当は端から酔ってなどいなかった
一切疑わずに…愛い子ね)

手を握った儘、酒気を飛ばす様に共に歩く

不思議な社ですねぇ
妾にも何かが満ちているのが分かりますわ(桜舞う様子に目細め

ご主人様の願いは、やはりそうなのですねぇ
あの頃も幸せでした
けれど、もう還らないのですよ(私が殺めたから)
…本当は分かっているでしょう?(儚げに笑う
従者である妾がロア様に”まだ”このような寂しい想いをさせてしまっている…不甲斐ないですわ
妾は
妾だけは
ずっとロア様の傍でお仕えしますから
妾の祈りです

(願いは、君が完全に私の所へと堕ちるまで
何度でも
念入りに、)



●きみのとなりで
 ゆら、ゆら、と尻尾が揺れる。
「雪蘭」
 耳慣れた、それでいて愛しい声色が自分を呼んでいる。
「雪蘭、少し夜風に当たろう。そうすれば、少しはマシになるかもしれない」
 優しい。この愛しい主はどこまでも。
 日常の中でだって“当たり前”に呼ばれている名前。フリのつもりが雰囲気に酔ってしまったかしらと内心で零しながら、麟・雪蘭(表と裏・f31577)は少し寄り掛かったまま歩いていたエメロア・エフェトゥラ(偉大なる魔女の息子・f31575)からふわりと離れ、いつものように微笑み返す。
「……ええ、ロア様。ご心配をおかけしましたわ」
 “もう大丈夫ですよ”と雪蘭が微笑めば、“良かった”とエメロア・エフェトゥラ(偉大なる魔女の息子・f31575)が眦を柔らかくした。
 その優しい顔が、少しだけ雪蘭の心臓を擽ってならない。……本当は、端から酔ってなどいなかった。ぜーんぶ、フリ。少し――ほんの少し沸いた悪戯心だったから、そう雪蘭は自身に言い訳をして。
「(一切疑わないのだね、――愛い子)」
 繋がれたままの手。
 二人で幻朧大桜舞う中を行けば、荘厳な社へとたどり着く。

「不思議な社ですねぇ……妾にも、何かが満ちているのが分かりますわ」
 桜舞う中のお社は、ひどく静謐な空気を纏っていた。
 まるで此処へ来た者の祈りへ真摯に耳を傾けるかのように、ひそやかで。
「祈り……願い……か、―――僕は」
 “母上が帰ってきてくれますように”。
 そうエメロアの唇が紡いだ瞬間、雪蘭は空いた手をきつく握りしめた。微笑み耳を傾けながら、ギシリと骨軋むほど。
「ご主人様の願い……ですものね」
 雪蘭は“ロア様”と、言えなかった。
 何せ―――そう、何せ、主と呼ぶ彼の願いは、祈りは。
「……母上と、雪蘭と、僕と……三人で――」
「もう還らないのです……」
 三人。
 そう、“未だ”三人。
 社を真っ直ぐ見据えたまま雪蘭は言った。まるで全てを知るかのように、酷く冷えた声で。だがエメロアは心の片隅が雪蘭の声に引っかかるのを、分からないフリをした。
 手を合わせ、きつく目を閉じて祈る。
 “何故か”従者さえ否定する母の帰還を、一心に。

 その姿を横目に雪蘭は唇を引き結んだ。
「(―――不甲斐無し。妾は、ああ妾だけは“ロア様”のお傍に)ずっと」
 堕ちるなら堕ちよう。
 どこまでも、この夜さえ覆う黒い淀みであろうとも、何処までも“共に”。


 堕ちてくるのならば、さあ。
 きみの為に飾った揺り籠は、私の手中にあるのだから―――。

 ロアの手に在った透明な石は触れた瞬間さらりと崩れ、雪蘭の手中には一粒。黒に似た赤き石がころりと転がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鳥・円
【藍玉】

おねーさん、こっちですよう
祈石のお社ですって
お祈りに応じて宝石に出逢えるかも
んふふ、どんな宝石でしょうねえ

おねーさんのお祈りは何でしょう
なんて、不躾なことは尋ねませんよ
わたしもおんなじですもの
心の内で唱えるだけ

わたしたちの願いのかたちは
宝石として現れるはずだから

ささ、お祈りをしましょうか
このキレイな社周辺も堪能したいですし、ね

わたしが願うのは――、
『幸せに生きられますように』
合わせた手のひらの内に宿るのは蛋白石
まるで百色の煌めきを視るような
とっても美しいオパールの宝玉

おねーさんの色合いは……わあ、サファイア?
淡いピンクのも、とっても可愛いですねえ

たからもの、またまた増えちゃいましたね?


歌獣・藍
【藍玉】
ここが例のお社なのね!
まぁ、お祈りすると宝石が?
それはとっても魅力的ね!
ふふ、まどかの宝石も
私自身のも
とっても気になるわ。
早くお祈りしましょう!
(ぴこぴこ耳を揺らし)

えぇ、そうね。
これから出会う宝石が
きっと私たちを
導いてくれるでしょう
ふふ、じゃあお祈りが終わったら
この周辺も探索しましょ!

そっと手を合わせてお祈り
『多くの人と親密な関係を築き、
素敵なアイを沢山見つけられますように。』

ーー勿論、隣の貴女とも。

手の内で光るのは
パパラチアサファイア。
蓮の花や一途な愛
信頼関係を意味する宝石
というのを本で見たことがある

まぁ、ふふ。
まどかの宝石も
眩く輝いていて素敵…!

えぇ!とっても大事な宝物だわ!



●キラキラ一粒
「おねーさん、こっちですよう。祈石のお社ですって」
「ここが例のお社なのね!」
 ついたー!と笑った百鳥・円(華回帰・f10932)に歌獣・藍(歪んだ奇跡の白兎・f28958)がパァっと瞳を輝かせた。
 うねる石段を二人でぴょんぴょんと越えて、幻朧大桜咲く荘厳なお社を遠目に見れば藍の瞳はよりきらきらと、それこそ宝石のように輝けば円の頬も柔らかに緩み。
「お祈りに応じて宝石に出逢えるかも、って」
「お祈りすると宝石が?とっても魅力的だわ!」
 早く早く!と急かす藍に円が“どんな宝石でしょうねえ?”と小首を傾げれば、“早くお祈りしなきゃね!”と耳をぴこぴこ。
 長い石畳を並んで歩いて見上げたお社は、荘厳だった。

「大きいです」
「本当ね」
 舞う幻朧大桜がよりお社を不思議に見せて、ほうっと溜息を一つ。
 ちらりと隣の藍を伺ってから、円は不躾なことは胸の内へ仕舞い込む。“お祈りは何でしょう?”と聞いていいのは子供まで。
 藍も円も、そっと手を合わせたのは自然な事だった。
 不思議と心と体が落ち着いて、そうっと手を合わせて――祈る。
「(――幸せに生きられますように)」
「(多くの人と親密な関係を築き、素敵なアイを沢山見つけられますように)」
 “アナタと出会えた幸運と共に”。
 二人が顔を上げたのは自然な流れだった。示し合わせたわけでもなく同時に瞼を上げて、確認するように隣を見て。そうしてふっと吹き出し合う。
 きゅっと手中の違和感を握りしめて、円がにやり。
「ねえおねーさ……んは、手にどんな石がありました?」
「私?私は……わぁ、きれい」
 覗き込んだ円がランタンを掲げオレンジ色の燈火を揺らせば、浮かんだ薄桃の煌めき。
 まるで朝焼けの一部を切り取ったような色合いに藍が頬を緩めると、以前読んだ本の記述が鮮明によみがえる。
「これはパパラチアサファイアっていうの。蓮の花や一途な愛、信頼関係を意味する石……って、本で読んだことがあるの」
「淡いピンクなの、とっても可愛いですねえ」
 頷く藍が、そういえばまどかのは?と小首を傾げれば、ゆっくりと円の手が開かれた。
 現れたのは白の内に七色の煌めき奔らせた夢のような色の蛋白石。
「これは……オパール、ですよねえ。とってもきれい」
「まぁ、ふふ……まどかの宝石も、眩くて素敵……!」
 見つめ合って、微笑みあえば互いの幸せを分け合ったような心地。
 宝物が増えた明日は、きっといい日になる。
「たからもの、またまた増えちゃいましたね?」
「えぇ!とっても大事な宝物だわ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィルジール・エグマリヌ
【煌々】◎

可愛い巫女と
南瓜頭の影朧を連れて
私も、影朧の手を引こうか

随分と立派な鳥居だね
宇宙には無いものだから
厳かな気分になってしまうな

神社には一度
たからと行ったことがある
確か、手を合わせて礼をするのだっけ

当たり前だけど
君は年々成長してゆくね
大人になるのが楽しみだ

私は商売繁盛を祈っておこう
家業のカジノは末長く続けたいからね
ふふ、ありがとう、また遊びにおいで

たからの希いは優しいね
君らしくて素敵だと思うよ

勿論、朧な君の転生だって希おう
私も遍く子どもは幸せであるべきだと
そう想って居るからね

次に廻る生は
傷みと無縁のものになりますように
掌の石を握り締めつつ
最期の時を見守って
また、一緒にお菓子を食べようね


鎹・たから
【煌々】◎
烏天狗と影朧の三人で

はぐれないように
手を繋ぎましょう(影朧に手をのばし

はい、とても綺麗な鳥居がみっつも
サムライエンパイアとは
また少し雰囲気が違います

初詣も懐かしいですね
あの時より身長が伸びましたよ(ぴょんこ
はい、手を合わせてお辞儀です

影朧のあなたもお願いごとをしましょう
きっと叶いますから

艦長の船はとびっきりきらきらですからね
賑やかな人の笑顔と
不思議で素敵な世界があります
たからも、長く続いてほしいです

願ったのは影朧の転生と
全てのこども達、大切な人達の幸せ
あなたのお願いごとは
なんでしょうね

掌に乗った石と、消えゆくあなたを交互に見て
また生まれた時は
三人でハロウィンを楽しみましょうね



●また明日
 ヴィルジール・エグマリヌ(アルデバランの死神・f13490)、影朧、鎹・たから(雪氣硝・f01148)と並んで手を繋ぐ。
 ご機嫌なのか、ぴかぴか南瓜頭を光らせながらぴょんこぴょんこと跳ねる様に歩く影朧をヴィルジールとたからは微笑ましげに眺めていた。
 お菓子を分け合った時からより分かりやすくなった影朧の感情は、シーツ越しの小さな手と繋げばより明確に伝わってくる。
『(うれしい)』
『(たのしい)』
「よかったですね」
「何よりだ」
『(ありがとー!)』
 ぴかー!と感情豊かに光る南瓜頭に、ヴィルジールもたからもつい口角が上がってしまう。

「随分と立派な鳥居だね。宇宙には無いものだから、厳かな気分になってしまうな」
「はい、とても綺麗な鳥居がみっつも。サムライエンパイアとは、また少し雰囲気が違います」
 石段を越えた時、ふむと顎を擦ったヴィルジールが鳥居を見上げて瞬きを一つして故郷を思い出せば、同じく鳥居を見つめて頷いたたからも故郷を思い返した。
そうして続いた初詣の思い出話に花を咲かせれば、影朧がそわそわし始める。
『(うちゅー?さむらい?)』
 二人の間に居た影朧は首をくりくり、二人をきょろきょろ。
 サクラミラージュ生まれの影朧には耳慣れない言葉だったのだろう。その様子に気付いたたからが、大きな瞳で弧を描いた。
「あなたもお願いごとをしましょう。――きっと叶いますから」
「さて、私は商売繁盛を祈っておくとしよう」
 ヴィルジールがひょいと腕を上げるのにたからも合わせれば、影朧がぴょーん!と高く跳ねたよう。
 ぷわわわ、と明かりを燈したご機嫌さんと共に辿り着いたお社は、遠くで見るより遥かに荘厳であった。
 お祈りの作法は近くの説明看板に従って、慣れるより習う方向で影朧と共に二礼二拍手一礼を。
 たからもヴィルジールもぱふぱふと小さな拍手で手を合わせて―――たからをちらちら。ヴィルジールをちらちら。
 どうやら“真似っこ”らしい。
 緩んでしまう頬を二人とも何とか繕って、祈るのは―――……。
「(この小さな影朧が、無事転生できますように。世界の遍く子供達が、幸せでありますように)」
「(影朧が転生できますように。世界中の子供達が、頑張っているたからの大切な人が――幸せでありますよう)」
 きら。

 きらきら。
 ぴかり。
『(ありがとー! またおまんじゅーしよーねー!)』
「「っ、!」」
 子供の声。
 ハッとヴィルジールとたから、二人揃って顔を上げた時―――二人の間に在った輝きは、余韻だけを残し消えていた。
 小さな金色の南瓜の釦を二つ、残して。

「……そうですね。また――また、お饅頭をしましょう」
「そうだな――また。次は宇宙の饅頭でも持ってこようかな」
 一緒にと空を見た宝の掌に、黒曜に朝日の如き一閃差した不思議な石。
 きっと驚くな、と笑ったヴィルジールの掌に、呼吸する星の様な息衝く石。

 宝石を握る手には、不思議な夜の思い出も共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

此処が社か……やはり、社の空気は心地がいいな
鳥居の真中を歩むのは癖のようなもので
噫…
避けた方がよかったかな
怒られるだろうか?

巫女が手を引いてくれるから、優しいその手に指を絡める
転ばないよう捕まえておかないと
酔うとサヨは、酔っている間の記憶を飛ばしてしまう癖があるからね
だからきっとこれは私だけの思い出になってしまう

甘える姿は可愛らしい
愛しくてたまらない
それでいいと思いつつも寂しさに心が痛む

きっと……これでいい…
カラス?
舞い降りた前世の化身たるものの意を汲んで笑う
いいわけがないね
誠の花嫁衣装を着せたい、と
想っているだけでは駄目なんだよ

私には時を超えて抱く祈りがある

叶えるのは私自身だが
神に見届けてもらうのはアリか

櫻宵(きみ)が、幸いに生きていてほしい
ずっと隣にいたい
きみと笑いあっていたい

──櫻宵、私の花嫁になっておくれ
私の桜よ
ずっとずっと愛しているよ

ちゃんと言葉にして傳えるよ
禍津神の花嫁なんて…嫌だろうか

え、櫻宵……
掌の祈石はきみと同じ愛櫻の彩
触れたやわこさに染まる頬も、同じさいわいの彩


誘名・櫻宵
🌸神櫻

うふふーカムイー
ふわふわして心地いい
酔うと私と私の境目が曖昧になるような…甘えたくて堪らなくなる
大丈夫よう
カムイは私の神様だもの
堂々と真中をいきなさい!

指を絡めて身を寄せる
梔子の香りに安心するのは、昔からずっとだ
「私」として生まれる前…前世といわれる時からずっと
あなたの横は心地がいい
すりと甘えてから、お祈りをしよう
私が祈るのは私の神に、よ
でも見届けてもらうのもいいと思うの

あら……?カグラ?
カムイの傍にいる竜神人形…前の私の御魂の欠片宿る彼が笑った気がして桜吹雪と紛れる
ふと、御魂の奥に桜が咲いた
彼の龍神も私の中、共にいる心地がして
酔いにふわつく頭が花霞が晴れるよう鮮明になる
…ずっと酔いに呑まれて神の祈りを愛を
全部落としてしまっていたから

ええ、慶んで
私の神様
私を花嫁にして頂戴な
あいしているよと囁いて
弱音紡ぐ唇を塞いでしまいましょ
共に乗り越えていきましょう
どんな厄災も

手のひらの宝石に笑みをむける
カムイのほっぺと同じ色

禍津神の花嫁、ね
私のいよいよ年貢の納め時なのかしら!なんて……照れ隠し



●桜祈の宵に星瞬く
 絡めた指が解けぬ様に繋ぐ手は、酒精のせいか温かくて。
 ふわ、ふわ、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)はどこか夢見心地で石畳の上を歩んでいた。
「サヨ」
「カームイー?」
 低くも耳心地の良い声は櫻宵の聞き慣れた朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)のもの。気遣いと愛しさの籠ったカムイの声の、気持ちの良いこと。
 二人でより添い歩く石畳、帰りゆく参拝者から聞こえた“真ん中”の話に、ふとカムイの足が止まれば不思議そうに小首傾げた櫻宵が振り返る。
「カムイ?」
「……その、真中をを――」
 “避けた方がよかったかな”と言い終わる前に櫻宵の人差し指がカムイの唇を塞ぐと、とろんと柔い桜色の瞳が悪戯っぽく弧を描き、微笑んだ。
「うふふー、だいじょうぶ。大丈夫よう。だって……」
 幻朧大桜が舞う。
 荘厳な社を背に、カムイの愛しい巫女は花より艶やかに微笑んで。
「カムイは私の神様だもの!」
「……噫」
 そう言ってくるくるふうわり花弁のように歩き出そうとする櫻宵を捕まえて、カムイは“危ないから”と寄り添い歩き出す。
 この甘える愛しい巫女は、酔いの記憶を残さない。
 これはきっと自分だけの思い出になってしまうから―――……だからこそ、カムイは己の中に焼きつける様に記憶する。
 ふと宵の空、視界の端を飛んだ黒一羽の存在をカムイはわらった。
 カァと鳴いたその意味も、愛おしいと思うと同時に沸き起こる不思議な隙間のような寂しさも。全て全て把握して、わらう。
「……分かっているとも」
 座敷で言った誠の話。
 ほんとう?なんて微笑んだ櫻宵の顔を、カムイは忘れない。何せ――この願いは時を越えているのだから、忘れるはずも無い。

 カムイが心の奥で願い確かめ噛みしめる中、櫻宵はカムイの梔子の香とその鼓動に耳を澄ませていた。
 心から安心する、“私の神様”の香と鼓動。
 なぜこんなにも心安らぐのかと問われれば、昔からとハッキリ言える。この香と鼓動に、昔から心許していたのだ、と。
 絡めた指に力を入れれば、握り返される。
「……ふふ」
 愛しい。
 愛しい、“私の神様”。
 どうか見届けてと、祈りを折々重ねて開いて。

「──櫻宵、私の花嫁になっておくれ」

 一声。
 カムイの一声が、花舞う瞬きの間に櫻宵の酒精を霞の如く吹き飛ばす。

「私の桜よ……――ずっとずっと、愛しているよ」

 晴れた櫻宵の視界には、幻朧大桜舞う中愛しい神がどこか緊張したような面持ちで自分を見つめていた。
 どく、と耳元で聞こえるかのような大きな心音。花舞う中一瞬だけ見えた御霊の欠片分けた人形の薄い微笑み。
 舞う桜花に感じた寿ぎ。胸の裡で花開いた桜。よいと赦されたような感覚。
 言葉にし難い全て全てを、呑んで。

「――ええ、慶んで」

 眦緩ませた櫻宵の神様の愛らしいこと。
 櫻宵は思う。きっと、この神様の弱音紡ぐ唇は自身だけ。そしてこの神様の――カムイと共にならば、どんな厄災とて乗り越え祓えると。
 半面、酔いが醒めたせいか櫻宵の髪で隠れた耳の先まで火照っていた。
 嬉しいけれどじわりと鎌首擡げ始めた気恥ずかしさというものが、なんとも言葉にし難いのだ。
 目の前の愛しい人の幸せそうな、満足そうな微笑みを見られて嬉しい。が、心からの答えを出した。ちゃんと出したのだが、これがなんとも現実の今の自分に戻ってしまうと気恥ずかしくて仕方がない。。
「禍津神の花嫁、ね……私もいよいよ年貢の納め時なのかしら!」
 くすくす笑った櫻宵が照れ隠しにそう口にした。
 そう言えば恐らくカムイがしょんぼりする危険はあったものの、少しくらい言ったって―――良くは無かった。先程まで凛々しくも喜びに満ちた輝きを湛えていたカムイの瞳が、不安気な揺れと共に僅かにしゅんと沈んだのだから。
「禍津神の花嫁なんて……嫌、だろうか」
「ま、禍津神の花嫁なんて……私にしか務まらないと思うわよ!」
 カムイにしゅんとされては櫻宵に勝ち目はない。
 愛おしい。自分の一挙一動に心を動かす櫻宵の神様の繊細さが、心から愛おしい。その愛おしさと地面を落とされた視線を上げてほしくて、櫻宵がカムイの頬に口付けを一つ。
 パッと慌てたように上がったカムイの視線が微笑む櫻宵を捉えれば、白磁の頬は瞬く間に薄紅に色付いた。

 花のようなその色は、二人の手中にあった祈石と同じ色。

「サヨ」
「なぁに、カムイ」

 わらって、わらって。
 あなたと並べば恐ろしいことなど、只の一つもありません。
 私はただ、あなたの無事を、あなたの達者を、あなたの明日を無事で在れと願うのです。

 さいわいを祈る。
 さいわいを願う。

 どうかどうか“私の愛しい人に幸在れと”。

 揺らした燈火を導に真中通る神様が、隣を歩く巫女が、同じ歩幅で行けるようにと。
 祈石のお社へ一つ、祈りを置いたのです。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月05日


挿絵イラスト