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夜闇の世界にハロウィンを

#ダークセイヴァー #お祭り2021 #ハロウィン

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「お集まりいただき感謝します。今回はハロウィンパーティに関する依頼です」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「今年のハロウィンは全ての世界を巡る大規模なパレードが企画されていますが、その対象の1つであるダークセイヴァーでは、ハロウィンのお祭りが普及していないそうです」
 この世界の支配者であるヴァンパイアが人類に盛大な祭りなど行わせるはずがないし、また食糧事情の面からも祭りを開けるような余裕はなかった。ゆえにハロウィンは遠い昔にあった「伝承上の存在」とされ、人々の暮らしからは縁遠いものとなっていたのだ。

「ですが今のダークセイヴァーでは、皆様の活躍もあって『人類砦』や『闇の救済者』の領土も増えてきました。今ならハロウィンのお祭りも開催できるかもしれません」
 人々から忘れられつつあった文化を復活させる。今だヴァンパイアの支配力も根強く、終わりの見えない戦いに身を投じている『闇の救済者』の人々の疲れを癒やすためにも、ぜひともハロウィンを行いたいところだ。
「都合の良いことに、リムはこうした地域の近くで、南瓜の群生している場所があるのを予知しました。ただしその場所は辺境で、狂えるオブリビオンが徘徊しているようです」
 ハロウィンといえば南瓜が欠かせないし、人類の生存圏の近くを危険な存在にうろうろされるのもいただけない。そこで今回は狂えるオブリビオンを倒し、ハロウィンの祭り用の南瓜を収穫するのが最初の依頼となる。

「南瓜の群生地を縄張りとしているのは『首跳ね兎』というオブリビオンです」
 見た目は普通のサイズの兎だが、辺境の生物らしく非常に凶暴で、並外れた膂力と凄まじい速度で標的の首を跳ねる。「異端の神々」と称される超存在に憑依され、狂えるオブリビオンと化した事で、その戦闘能力はさらに高まっている。
「伝承ではこの兎一羽にとある騎士団が首を次々と跳ねられ、全滅したこともあるとか。もちろん理性はありませんし、説得が通じるような相手でもないです」
 この危険極まる殺人兎を倒さなければ、ハロウィンの南瓜を持ち帰ることはできない。
 お祭りのためとはいえあまり油断しすぎずに挑んでほしいとリミティアは念を押した。

「無事に首跳ね兎を倒し、南瓜を回収できたら、近くの領土でハロウィンをしましょう」
 ダークセイヴァーの人々はハロウィンのお祭りをやったことがなく、伝承としての知識しかない。つまりハロウィンの楽しみ方も知らないということで、どんな催しなのか説明しながら実際にやってみせたほうが良いだろう。
「ジャック・オ・ランタンの作り方や、トリック・オア・トリートの文化、お化けの仮装や南瓜料理……そうしたものを伝えれば、人々もきっとハロウィンを楽しめるはすです」
 人類による生存圏とはいっても、豊かな暮らしを送るにはまだほど遠い現状、日々の苦労や戦いの疲れを癒やすためにも、彼らにはひとときのお祭りを目一杯楽しんでほしい。

「今回お祭りを開催する領地はヴァンパイアの支配を脱してまだ間もなく、当時の圧政の爪痕が残っています。傷ついた人々の心に、闇に負けない希望の光を取り戻せるように、どうかよろしくお願いします」
 説明を終えたリミティアはそう言って頭を下げると、手のひらにグリモアを浮かべる。
 ダークセイヴァーの人々にハロウィンの喜びを伝えるための、南瓜収穫作戦が始まる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回はハロウィンシナリオということで、これまで余裕のなかったダークセイヴァーで大々的にお祭りをやろう、という依頼になります。

 1章は南瓜の群生地を徘徊する狂えるオブリビオン『首跳ね兎』との戦いです。
 いわゆるボーパルバニー的なやつで、ちっちゃなボディにすごいスピードとパワーで首を刎ねてくる、シンプルに強い猛獣です。元々獣ですし理性はありません。
 こいつに勝利すれば、ハロウィンで使えるような南瓜を大量に入手できます。もちろん食料としても使えます。

 2章では『闇の救済者』の領土でハロウィンのお祭りを開きます。
 ヴァンパイアの支配から逃れたとはいえ、当時の圧政で虐げられた民衆はまだ心身ともに傷ついています。彼らにハロウィンの楽しさを伝え、癒やしを与えてもらえれば幸いです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『首跳ね兎』

POW   :    クリティカル
【咥えた刃物】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    下ごしらえ
【残像を伴う速度の連続攻撃】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【一瞬の隙】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    窮兎首を跳ねる
全身を【血液と殺気】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

火土金水・明
「相手は兎といってもオブリビオンです。気を引き締めてかからないと。」「氷属性で相手の動きを封じ込めればいいのですが(凍結できれば食料にできるかな?)。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【高速詠唱】で【継続ダメージ】と【属性攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『首跳ね兎』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【第六感】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



「相手は兎といってもオブリビオンです。気を引き締めてかからないと」
 ハロウィンの準備のために南瓜の群生地にやって来た火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、首筋が泡立つような殺気を感じて警戒を強める。大きく育った橙色の実の陰から、ひょこりと顔を出したのは一羽の兎。
「キキッ……」
 白いふわふわの毛並みで愛くらい見た目をしているが、異常に尖すぎる眼光と、口に咥えた血塗れのナイフが、ただの動物ではない事を示している。もしもこの『首跳ね兎』を侮ってかかれば、収穫されるのは南瓜ではなく猟兵達の首級となるだろう。

「氷属性で相手の動きを封じ込めればいいのですが」
 明は高速詠唱で先手を取り、七色に輝く杖から【コキュートス・ブリザード】を放つ。
 広範囲に降り注ぐ数百本の氷の矢が、吹雪のごとく標的を襲う。だが首跳ね兎は小柄な体躯と異常な敏捷性を活かし、矢の雨の中をすり抜けながら近付いてくる。
「キキキッ!」
 攻撃を受けたことで明の事を完全に"敵"と認識した兎は、【窮兎首を跳ねる】とばかりに飛び掛かる。全身に尋常ならざる殺気を漲らせ、これまでに殺してきた犠牲者の返り血を纏ったその姿は、まさしく狂えるオブリビオンに相応しい悍ましさだった。

「残念、それは残像です」
「キッ?!」
 だが。兎のナイフに首を切り裂かれたかに見えた直後、明の姿が微笑と共に消失する。
 今のは魔力のオーラで作りだした残像。本物の明は第六感によって敵の攻撃を察知し、氷の矢に紛れて姿を隠していたのだ。
「我、求めるは、冷たき力」
 獲物を仕留め損なった兎の背後から、二度目の【コキュートス・ブリザード】の詠唱が響く。フェイント目的の初手とは違う、魔力を集中させた本気の斉射――極寒の氷の豪雨が標的めがけて解き放たれた。

「ギギィッ!!!」
 首跳ね兎は慌てて逃げ回るが、攻撃を仕掛けた直後で体勢が崩れていたのが災いした。
 兎に突き刺さった氷の矢は、冷気で体から体温を奪う事で継続的なダメージを与える。命中したのは数本だが、明にとってはそれで十分だった。
「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に繋げる事です」
 いかに狂えるオブリビオンとて生物である以上、体温が下がれば運動能力も低下する。
 凍傷を負った体をかばい、続く氷矢の雨から退避する兎の動きは、彼女の目から見ても明らかに鈍くなっていた。

(凍結できれば食料にできるかな?)
 ハロウィンパーティの食卓に、南瓜料理と一緒に兎肉料理を加えてみるのも悪くない。
 口元にほのかな笑みを浮かべつつ、明は氷の矢で首跳ね兎を追い立てる。それはまさに狩猟の風景――夜闇の魔法使いにかかれば凶暴な魔獣さえ、狩りの獲物に過ぎなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
「パンプキンパイ!」
「カボチャのスープ!」
「カボチャの煮つけ!」

どれも美味しいね…。

「きゅ~」(カボチャがじがじ)

ラン達と一緒に参加…。

呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱】で捕縛を狙って敵を追い込み、黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、早業、なぎ払い】と【UnlimitedΩⅡ】による全方位からの一斉斉射で攻撃を仕掛けるよ…。
殺人兎は狩らないとね…。

ラン達も暗器による【暗殺】やブレスで援護をお願い…。

そういえば、狂えるオブリビオンって異端の神がオブリビオンに倒された後、憑依した姿だよね…。
…このウサギ、神倒したの…?

「兎肉のシチュー!」
「兎肉のパイ!」
「兎鍋!」

レン、和風料理好き…?



「パンプキンパイ!」「カボチャのスープ!」「カボチャの煮つけ!」
 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)の連れてきたメイド人形のラン、リン、レンが、群生するたくさんの南瓜を見て弾んだ声を上げる。その表情は実に嬉しげで、パーティに出す料理のメニューを考えているのは間違いない。
「どれも美味しいね……」
「「きゅ~」」
 彼女らの料理の腕前をよく知る璃奈も、期待している様子でこくりと頷く。その隣ではもう待ちきれなくなったのか、一緒に連れてきた仔竜のミラ、クリュウ、アイが、がじがじと南瓜をかじっていた。

「キキッ……」
 だが。美味しい南瓜を収穫するには、まずは狂えるオブリビオンを倒さねばならない。
 殺気立った様子で白い毛を逆立て、こちらを睨み付けている「首跳ね兎」に気づくと、璃奈はすぐに呪槍・黒桜を構える。
「殺人兎は狩らないとね……ラン達も援護をお願い……」
「了解!」「きゅ~!」
 彼女が呪文を唱えると、足元から呪力の縛鎖が蔓草のように伸びて、首跳ね兎を捕まえようと襲い掛かる。同時にメイド達はお仕着せのエプロンから暗器を取り出し、仔竜達は口内にブレスのエネルギーを溜めはじめた。

「ギギギッ!」
 攻撃を受けた兎は【窮兎首を跳ねる】を発動し、素早い身のこなしで縛鎖を切り払う。
 見た目は小さな兎でも辺境に棲息するオブリビオンの一羽だ、簡単に捕まえる事はできないだろう。だが璃奈もそれを見越した上で、捕縛を狙いつつ静かに呪力を溜めている。
「兎肉のシチュー!」「兎肉のパイ!」「兎鍋!」
「きゅぃ!」
 メイドと仔竜も主人の意図を汲み、暗器の投擲やブレスの放射で首跳ね兎を牽制する。
 当然のようにこのメイド達、あの兎もハロウィンパーティの食材にする気満々である。身の危険を感じた敵が「ギィッ!」と警戒の鳴き声を上げた。

「レン、和風料理好き……?」
 先程から煮付けや鍋など和風の献立ばかり提案するメイドの1人に璃奈が首を傾げる、そんな一幕もあったものの、戦いは概ね順調だった。連携の取れた主従による波状攻撃に首跳ね兎は攻め込む好機を見いだせず、じりじりと追い込まれていく。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……! 『unlimited curse blades』……!!」
 この機を逃さず璃奈は無数の魔剣・妖刀を召喚し、手にした呪槍を力いっぱい振るう。
 すると槍に籠められた呪力が黒い桜の花びらのように放出され、南瓜畑に桜吹雪を巻き起こし。その勢いに乗って無数の魔剣達が飛翔し、首跳ね兎に包囲攻撃を仕掛けた。

「ギギィィッ!!!?」
 全方位からの一斉斉射と呪いの桜吹雪、首跳ね兎がいかに素早かろうと逃げ場はない。
 黒い嵐に呑み込まれた兎は全身を終焉の刃に切り刻まれ、甲高い悲鳴を上げる。それをじっと見つめながら、璃奈はふと思い出したようにぽつりと呟いた。
「そういえば、狂えるオブリビオンって異端の神がオブリビオンに倒された後、憑依した姿だよね……。……このウサギ、神倒したの……?」
 名のある領主や吸血鬼ならまだしも、ただの魔獣がそれを成し遂げたとすれば、改めてとんでもない危険性と凶暴性である――それを裏付けるかのように、魔剣の巫女の総攻撃を食らった首跳ね兎は、傷つきながらもまだ戦える様子で呪いの中から這い出してきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
それだけ派手に暴れてるなら、さぞかし良質のお肉が取れそうね。
カボチャと一緒に回収して、後で料理に使いましょう。
まぁ、兎一匹だと大勢の人で食べるには少ないし、後で他に獲物を取ったり、魔城から食材提供とか考えないとだけど…。

ともかく、後で食材として調理するなら、なるべく余計な傷は与えずに仕留めたいところね…。

【ブラッディ・フォール】で「全てを賭けて、究極に挑め」の「大祓骸魂」の姿(衣装)へ変化。
世界すらも殺す懐刀【生と死を繋ぐもの】を複製し、敵を包囲する様に操作して、敵及び憑依した異端の神々諸共まとめて死を与えてあげるわ!

折角のハロウィンですもの。殺人兎は出し物だけで十分。本物は無に帰りなさいな



「それだけ派手に暴れてるなら、さぞかし良質のお肉が取れそうね。カボチャと一緒に回収して、後で料理に使いましょう」
 猟兵達からの攻撃を受けても、まだ殺る気いっぱいで跳ねている「首跳ね兎」を見て、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は笑みを浮かべる。これは彼女にとって戦いであり狩猟、パーティをより豪華にするための下準備である。
「まぁ、兎一匹だと大勢の人で食べるには少ないし、後で他に獲物を取ったり、魔城から食材提供とか考えないとだけど……」
 そんな風に戦う前から勝った後のことを考えている姿にも、余裕と自信が表れている。
 狂えるオブリビオンとはいえ兎一羽に、吸血鬼や異端の神々さえ殺してきた猟兵達が、今更恐れを抱くはずも無かった。

「ともかく、後で食材として調理するなら、なるべく余計な傷は与えずに仕留めたいところね……」
「ギギギギ……」
 食材の下拵えを考えているフレミアに、侮られているとは本能で分かるのか、首跳ね兎が低い声を上げる。全身を血液と殺気で覆われた存在感は小さくとも猛獣のそれであり、油断すれば【窮兎首を跳ねる】とばかりに首を持っていかれるだろう。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 対するフレミアは【ブラッディ・フォール】を発動し、紅いドレスから和風の白装束に衣装を変える。ただ着替えただけでなく、その身からは膨大な妖気と『虞』が溢れ出し、尋常ではない威圧感を放っていた。

「手を抜いたりはしないわよ。人を襲う獣は見過ごせないもの」
 フレミアがゆらありと薄く微笑むと、生じる威圧感はさらに増す。この姿はかつて幽世とUDCアース、ふたつの世界を滅ぼしかけた究極妖怪『大祓骸魂』の力を降ろしたもの――旧き邪神にしてオブリビオン・フォーミュラの力を使うとは、彼女も本気である。
「憑依した異端の神々諸共まとめて死を与えてあげるわ!」
 抜き放つのは世界すらも殺す懐刀【生と死を繋ぐもの】。彼女はそれを幾つも複製し、念力で全てばらばらに操って敵に襲い掛からせる。神智を越えた虞の刃を突きつけられた首跳ね兎は危機を感じ、全身の毛を逆立たせてその場から跳び退いた。

「キキィッ!!?」
 理性無き獣は野生の本能に衝き動かされるまま、機敏に飛び跳ねて攻撃から逃げ回る。
 しかしフレミアはその動きを読んだ上で115本の懐刀を操作し、じわじわと敵を包囲していく。1本2本ならまだしも、これだけの数に取り囲まれればいずれ逃げ場を失う。
「いつまで逃げ切れるかしらね」
 やがて完成された刃の包囲網は、兎の四方八方を鳥籠のようにぐるりと囲う。吸血姫の"狩り"から逃れるのは、やはり獣には荷が重かったか――追い詰められた首跳ね兎が憎々しげに睨んでも、もはや結果は覆らない。

「折角のハロウィンですもの。殺人兎は出し物だけで十分。本物は無に帰りなさいな」
 フレミアがそう告げると、複製された「生と死を繋ぐもの」が一斉に獲物に降り注ぐ。
 真の力を発揮するための時間は足りなかったが、極まれば世界すら滅ぼす邪神の懐刀。万全ならずとも威力は絶大で、触れただけでも魂に傷跡を残す。
「ギギィィィッッ!!!」
 肉体に余計な傷を与えずに『殺す』事に特化した刃雨を浴び、絶叫を上げる首跳ね兎。
 本能で幾本かは切り払うものの、それに数倍する懐刀が次々と命脈に突き刺さる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

やれやれ、物騒な兎がいたものだ
だが、南瓜の為には倒さねばなるまい…生憎と、聖なる手榴弾は無いがな

ナガクニを装備
こちらからはあまり動かず、敵の刃物が迫ってきたら瞬間思考力と見切りで敵の攻撃を見極めてナガクニで受け流し、余裕があればカウンターで反撃も行う

フン、素早さとパワーは確かにあるな…
ならば下手に動くのは得策ではないか

UCを発動
再度こちらに咥えた刃物を向けて迫ってきたら、迎撃する様に無数の刃を地面から出現させて攻撃
相手の勢いが凄まじいほど反動で刃はより深く、その身体に食い込む事だろう

さて、コイツをとっとと倒してパーティーに行くとしようか
…南瓜料理に、兎肉を使うのも良さそうだな



「やれやれ、物騒な兎がいたものだ」
 南瓜の収穫に来てみれば、待っていたのは人も神も区別なく殺める、凶暴な首跳ね兎。
 ハロウィンの準備でこんな怪物と戦わなければならない世界も恐らくダークセイヴァーくらいだろうと、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は肩をすくめる。
「だが、南瓜の為には倒さねばなるまい……生憎と、聖なる手榴弾は無いがな」
 昔聞いた映画の話を思い出しながら、彼女が構えるのは黒革拵えの短刀「ナガクニ」。
 竜の骨粉を混ぜて鍛えられたその切れ味は、首跳ね兎の刃にもゆめゆめ劣りはすまい。

「キキッ」
 刃物を咥えた首跳ね兎は、並みの兎以上のスピードで近付いてくると【クリティカル】狙いの一撃を放つ。猟兵でさえ目で追うことの難しい一閃を、キリカは瞬間思考と見切りのセンスで見極め、ナガクニで受け流す。
「フン、素早さとパワーは確かにあるな……ならば下手に動くのは得策ではないか」
 直後にカウンターを仕掛けるが、必殺の一撃を逸らされた兎はすぐに飛び退いていた。
 あの速度に加えて警戒心の強さ。機動戦に付き合うのは得策ではない。それならここは獣を相手にするに相応しく、罠を仕掛けて待ち構えるのが得策か。

「キキキッ!」
 首跳ね兎が再度こちらに刃物を向けて迫ってくると、キリカは【バール・マネージュ】を発動。傍らに浮かぶ人形「デゼス・ポア」に命じ、敵の進路上の地面に罠を仕掛ける。
「踊れ、デゼス・ポア。貴様を呪う者達の怨嗟の声で」
「キャハハハハハ!」
 呪いの人形が無邪気かつ残酷に笑うと、その身を飾るものと同じ刃が無数に出現する。
 たちまち剣山のような有様になった地面は、それ自体が凶器であり――攻撃のために助走を付けていた首跳ね兎は、慌ててブレーキをかけようにも間に合わない。

(相手の勢いが凄まじいほど反動で刃はより深く、その身体に食い込む事だろう)
 キリカの計算通り、猛スピードで錆刃の領域に飛び込んでしまった首跳ね兎は、自らの速度が仇となって全身を切り刻まれた。異形なるオブリビオンへの憎悪が宿った錆刃は、その身を裂くと同時に激しい苦痛を与える。
「ギギィッ!!?」
「アハハハハヒャハハハ!」
 思わぬ罠にかけられた兎は悲鳴を上げて飛び退くも、デゼス・ポアの哄笑は止まない。
 どこへ逃げようとも刃は戦場の何処からでも出現し、獲物の血の味を覚えたかのように執拗に追い続ける。その攻勢は一度切り付けた者が生きている限り終わらない。

「さて、コイツをとっとと倒してパーティーに行くとしようか……南瓜料理に、兎肉を使うのも良さそうだな」
 早くもこの後の料理の事を考えて、口元に笑みを浮かべるキリカ。それだけ余裕のある彼女とは対照的に、無数の錆刃に追い立てられる首跳ね兎は明らかに切羽詰まっていた。
「ギ、ギィッ……!」
 これまで狩猟者として首を刎ねる側だった兎は、今はもはや狩られる獲物の側だった。
 それでも理性なき獣は野生の本能のままに、白き毛皮を赤く染めて抵抗を続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
今のダークセイヴァーにこそ祭事は重要。
数多の異世界を渡り歩いたからこそよくわかる。

多数の短剣を【投擲】、普段は【誘導弾】用に使う【念動力】を集中し周囲に滞空待機、
戦闘力を増強しようと殺気を纏うなら【第六感】での【見切り】は容易だ、敵が此方に襲い掛かるのに【カウンター】。
その場で滞空させていた短剣を回転振りさせることでUC【映す心断ち割る呪剣】発動、気絶させ次第そのまま短剣を【一斉発射】。【串刺し】にする。
まだ息があるようなら黄金魔剣でトドメだ。

南瓜を手に入れる目的上、いつものように周囲諸共粉砕や焼却とはいかんが……
なに、狩猟は騎士の嗜みだ。兎程度の小動物、手早く仕留めてみせよう。



「今のダークセイヴァーにこそ祭事は重要。数多の異世界を渡り歩いたからこそよくわかる」
 苦難に耐えて難局に挑む精神力を養うために、時には娯楽や祝い事も欠かせないのだとルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は理解していた。弓の弦とて張り続けていれば緩む。心置きなく笑い、喜び、祝う時が人々には必要なのだ。
「キキキッ……」
 そんなハロウィンの準備の妨げとなるのが、狂えるオブリビオンである「首跳ね兎」。
 人の世の理も情も解さぬ獣は、ただ本能の赴くままに縄張りに入った者に刃を向ける。

「南瓜を手に入れる目的上、いつものように周囲諸共粉砕や焼却とはいかんが……なに、狩猟は騎士の嗜みだ。兎程度の小動物、手早く仕留めてみせよう」
 泰然自若とした余裕を以って、鎧の内から多数の短剣を取り出すルパート。そのうちの数本は兎に向かって投擲し、残りは念動力を集中して周囲に滞空させ、ここぞという時のために待機させておく。
「キキッ!」
 投刃に素早く反応した首跳ね兎は【窮兎首を跳ねる】を発動、目にも留まらぬ俊敏さで攻撃を躱しながら距離を詰めてくる。鎧が本体であるルパートは首を刎ねられたところで即死はしないが、あの咥えた刃の切れ味ならば黒鉄とて斬り裂かれるだろう。

「小動物ながらに鋭い牙を持っている。だが殺気を纏うなら見切りは容易だ」
 自己強化の為に兎が撒き散らす殺気が、ルパートの第六感に攻撃の前兆を報せていた。
 敵が此方に襲い掛かるのにタイミングを合わせて、彼はその場で滞空させていた短剣をくるりと回転させる。その奇妙な動きに兎が気を取られた瞬間、【映す心断ち割る呪剣】の発動条件は満たされた。
「捉えたぞ」
「キッ――……」
 黒騎士が振るったのは血肉を斬る刃ではなく、心魂を断つ呪い。黒い短剣より放たれる呪いを至近距離で受けた首跳ね兎は、たちまち意識を刈り取られ眠るように気を失った。

「いかに凶暴な怪物と言えど、こうなれば普通の兎と変わらんな」
 首跳ね兎を気絶させ次第、とルパートは回転する短剣をそのまま一斉発射。円弧の軌道を描きながら飛んでいった幾多の刃は、全て狙い通りに小さな兎の身体に突き刺さった。
「――……ギィッ!!!?」
 串刺しにされる激痛で跳ね起きる首跳ね兎。噴き出す大量の出血が白い体毛を赤く染めていくが、それでも斃れないのは流石は狂えるオブリビオン、と言ったところか。だが、兎を狩る上でも全力を尽くす騎士が、敵の死を確認する前に剣を手放すわけがない。

「まだ息があるか。ならばこれでどうだ」
 振り下ろされたのは「黄金魔剣ルパート」。触れた者の命を炎と鉛に変えて燃え盛る、その呪いの強さも切れ味も先の短剣を上回る。赤き流血に染まった首跳ね兎の毛並みは、今度は青い炎に包まれた。
「ギイィィィィィィッ!!!!」
 蒼炎に焼き焦がされた兎の絶叫が、南瓜の群生地に響き渡る。それでも中々燃え尽きぬしぶとさだけは一級品だが――この戦い、いやさ狩りの行方はもはや決しつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

青葉・颯夏
セフィリカさん(f00633)と

ええ、そうですね
後の楽しみって目の前のことを片づける原動力になると思うんです
こっそり雪紐をハロウィンっぽく吸血鬼の仮装にしてみたけどいつもとあまり変わらない、かも
相棒さんとのやりとりはいつ聞いても楽しい
あたしはセフィリカさんもシェルさんも、全部備わっていると思いますよ?

初撃はセフィリカさんに合わせて、雪紐に黒紅を振るわせる
首跳ね兎をおびき寄せ、フェイントを仕掛けて隙を作ったり
セフィリカさんが攻撃しやすいようにサポート

とどめはやっぱり合わせて花風を撃つ


セフィリカ・ランブレイ
颯夏(f00027)と行動

気分が沈む時程お祭りは大事
沢山のかぼちゃで派手なお祭りに!
食べる、飾る、使い道は色々!

あ、雪紐ハロウィン仕様?
靡くマントが格好いい!
シェル姉も季節の飾り付けする?

『去年の箒扱い、忘れてないわよ私』

相棒の魔剣…シェル姉はため息

敵は可愛くも凶悪
自分の可愛さすら折り込み済みなら怖いね

でも真の可愛さには優しさと気品が備わるの
私や颯夏みたいに!

『セリカ、自己評価見直しなさい?』
そこは褒めてよ!
颯夏は優しいよちゃんと褒めてくれて!

戦いは先手必勝!
【神薙ノ導】で先手をうち颯夏と共に畳みかける!

相手もこちらの反応から学ぶけど、こちらも同じ
互いの動きをより良く理解するのはどちらかな?



「気分が沈む時程お祭りは大事だよね」
「ええ、そうですね。後の楽しみって目の前のことを片づける原動力になると思うんです」
 今も苦しい日々を送るダークセイヴァーの人々にハロウィンを楽しんでもらうために、セフィリカ・ランブレイ(鉄エルフの蒼鋼姫・f00633)と青葉・颯夏(悪魔の申し子・f00027)は晴れやかな表情を浮かべて南瓜の群生地にやって来た。
「沢山のかぼちゃで派手なお祭りに! 食べる、飾る、使い道は色々!」
 セフィリカの頭の中にはもう収穫した南瓜をどうするかのプランが渦巻いている様子。
 隣でそれを聞く颯夏はこくりと相槌を打ちながら、仄かな微笑みを浮かべるのだった。

「あ、雪紐ハロウィン仕様?」
「はい、吸血鬼の仮装にしてみました」
 話の途中でふとセフィリカが視線を向けたのは、颯夏の連れたからくり人形『雪紐』。
 ハロウィンらしく黒の衣装と外套で着飾られた人形は、美しい佇まいで金色の髪を夜風になびかせていた。
「いつもとあまり変わらない、かもって思ったんですけど」
「そんなことないよ。靡くマントが格好いい!」
 気付いてもらえて快く目を細める颯夏に、にこにこと仮装の出来を褒めるセフィリカ。
 ハロウィンを楽しむ権利があるのはこの世界の人々だけではない。猟兵として戦いの日々を送る彼女らも、もちろん祭りを満喫するつもりだ。

「シェル姉も季節の飾り付けする?」
『去年の箒扱い、忘れてないわよ私』
 セフィリカの思いつきにため息混じりに答えたのは、相棒である「魔剣シェルファ」。前のハロウィンで魔女の箒にされたのを根に持っているらしく、口ぶりには不満が滲む。
 ごめんって、と笑いながら謝る少女にふいっとそっぽ(?)を向く魔剣。そんな2人のやりとりを、颯夏はくすりと笑いながら見ていた。
(セフィリカさんの相棒さんとのやりとりはいつ聞いても楽しい)
 ああやって歯に衣着せぬ物言いができるのも、互いに気を許しあっている証拠だろう。
 本当の姉妹のような掛け合いは心和むものだったが、そこに場違いな殺気の風が吹く。敵意を感じ取った彼女らはそれまでの表情を切り替え、即座に臨戦態勢となった。

「キキッ……」
 現れたのは「首跳ね兎」。見た目はごく普通の兎のようだが、口に咥えた刃物と獣にしては異常な殺気がそれを否定する。手負いのため余計に気が立っているらしく、縄張りに入ってきた者は1人残らず首を刎ねてやると言わんばかりだ。
「敵は可愛くも凶悪。自分の可愛さすら折り込み済みなら怖いね」
 油断ならない敵だと判断したセフィリカは気を引き締めるが、気後れした様子はない。
 ここには頼れる相棒と仲間がいる。幾多のオブリビオンを倒してきた自分達が、兎一羽に負けるものか。

「でも真の可愛さには優しさと気品が備わるの。私や颯夏みたいに!」
『セリカ、自己評価見直しなさい?』
 自信満々の宣言にツッコミを入れたのは魔剣シェルファ。手厳しい相棒にセフィリカは「そこは褒めてよ!」と叫び、戦闘の前でも相変わらずな2人に颯夏がくすくすと笑う。
「あたしはセフィリカさんもシェルさんも、全部備わっていると思いますよ?」
「颯夏は優しいよちゃんと褒めてくれて!」
『ありがと。でもあんまり甘やかしちゃ駄目よ』
 緊張も解れたところでいざ兎狩り。青い魔剣を構えたセフィリカからは、それまでと違う剣士としての風格が漂う。同時に颯夏も絲を手繰り「雪紐」に戦いの構えを取らせた。

「戦いは先手必勝!」
 機先を制したのはセフィリカの【神薙ノ導】。土が爆ぜるほどの強力な踏み込みが生む瞬発力は、俊足を誇る首跳ね兎のスピードさえも凌駕し、魔剣の間合いへと踏み込んだ。
「キッ?!」
 敵は咄嗟に跳躍するが、避けきれなかった切っ先が毛皮を掠める。そこに颯夏の人形も畳み掛けるように追撃を振るい――雪紐の持つ黒紅色の刃が、兎の血で深い赫に濡れた。

「合わせます」
「よろしく!」
 人形遣いと魔剣士による連携攻撃が、首跳ね兎を攻め立てる。だがこれで簡単に仕留められるほと敵も軟弱ではない。全身に血液と殺気を纏うことでより素早さに磨きをかけ、咥えた刃物による【クリティカル】の一撃を仕掛けてくる。
(こちらから狙ってきましたね)
 兎が標的に選んだのは颯夏の操る人形だった。初手でセフィリカが見せた早業よりは、与し易い獲物と思われたのかもしれない。しかし彼女は巧みな操作術で踊るように人形を動かし、敵の攻撃をぎりぎりまで引きつけた上で、躱す。

「甘く見ないで下さい」
「キィッ!」
 雪紐が即座に反撃に転じると、兎はぴょんと跳躍して回避する――だが、それは颯夏によるフェイント。どんなにスピードに自信があっても、空中ではそれ以上身を躱せまい。
「隙あり!」
 そこに追撃を仕掛けたのがセフィリカ。迷いのない踏み込みから放たれる斬撃は、前回よりも深く標的を捉えた。小さな体からぱっと鮮血が舞い散り、兎の口から「ギイィッ」と苦しげな悲鳴が漏れる。

「相手もこちらの反応から学ぶけど、こちらも同じ。互いの動きをより良く理解するのはどちらかな?」
 セフィリカの【神薙ノ導】は、攻撃が命中した敵の戦闘技能や行動の癖を覚える事で、徐々に威力や精度を増す長期戦向きのユーベルコードだ。颯夏のサポートを受けつつ刃を交わす回数を増やすたびに、彼女の斬撃はより鋭くなっていく。
「キ、キキ……ッ」
 幾合かに渡った応酬の後、ついに首跳ね兎の口から刃物が弾き飛ばされる。その好機を彼女らが見逃すわけがなく、猟兵と魔剣と人形はとどめとばかりに同時攻撃を仕掛けた。

「逃がさないわ」
「二式……全力!」
 颯夏が雪紐に指示を出すと、黒紅の刃がラナンキュラスの【花風】となり、戦場に花弁の嵐を巻き起こす。その風に乗ったセフィリカによる、本日最速の一撃が標的を襲った。
「ギギイィ―――ッ!!!」
 花弁と魔剣に斬り伏せられ、首跳ね兎の小躯が吹き飛ばされる。夜陰に木霊する絶叫は甲高く、深い苦痛が滲んでいて――辺境にて畏れられた狂えるオブリビオンに、最期の時がゆっくりと迫りつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
南瓜の群生地に落ちている紋章。振り返るとすぐ後ろには首跳ね兎の姿。カビパンはこのまま紋章内に避難し、通り過ぎた隙に逃走するつもりであった。

「ウサーッ」
「ギーッ」
そんなカビパンに反して、兎たちは澄んだ瞳で紋章を見つめるだけであった。懐く様にカビパンに顔を寄せてくる。
「ウサーッ!」

正確にはカビパンでは無く、紋章に…

「うわっ。もふもふの毛でスリスリするのやめてー!」
なんだか分からないが独特過ぎる紋章に興味津々のようだ。
「舐めるのやめて―!涎でべったべたになっちゃう!!」

悲鳴をあげる紋章。彼女は洗脳…いや懐かせることで注目を集め、多くの兎たちを惹きつけるのであった。

「みぎゃぁあっ!なめ、なめんなー!」



「キキ、キ……」
 南瓜を取りに来た猟兵達の攻撃により、深手を負った「首跳ね兎」。かの獣はポタポタと血の跡を残しながら南瓜の群生地を駆け回っていたが、そこで偶然、ひらひらした格好でハリセンを持った悪霊に出くわす。
「うわっ、見つかった」
 その者の名はカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。南瓜の群生地に来るなり振り返るとすぐ後ろに首跳ね兎の姿を見てしまった彼女は、咄嗟に自身の依り代である『紋章』の中に引っ込み、なんとかやり過ごそうとする。

(さっさとどっかに行っちゃって……)
 名状しがたい色合いと奇妙な形状をした紋章内に避難し、じっと息を潜めるカビパン。
 彼女の考えとしては、このまま首跳ね兎が通り過ぎた隙に逃走するつもりだったのだが――そんな計画に反して、兎はキラキラと澄んだ瞳で紋章を見つめていた。
「ウサーッ」
 さっきまでお前そんな鳴き声だったっけ、と首を傾げるほどかわいらしい声で、懐く様にカビパンに顔を寄せてくる。正確にはカビパンではなく紋章に。ひょっとしたら新しいオモチャか食べ物だと思っているのかもしれない。

「ギーッ」
「うわっ。もふもふの毛でスリスリするのやめてー!」
 なんだか分からないが独特過ぎる紋章に、興味津々の首跳ね兎。跳ねるための首がないものには意外にも攻撃性を示さないのか、前足でてしてしとはたいたり、鼻先でつんつん突いたり、まるで普通の兎のような仕草で紋章を玩ぶ。
「舐めるのやめて―! 涎でべったべたになっちゃう!!」
 自分の身体を好き勝手されているに等しいカビパンとしてはたまったものでは無いが、かといってここで紋章から姿を見せれば最期、たちまち攻撃されるのが目に見えている。
 彼女にできるのは紋章内から抗議の声を上げる事くらいだが、狂えるオブリビオンにはいかなる説得も交渉も無意味だった。

「ウサーッ!」
 すっかり紋章の事をおもちゃだと認識し、かわいらしい仕草でいじくり倒す首跳ね兎。
 先程まで暴れまわっていた敵がこれほど大人しくなったのは、【ハリセンで叩かずにはいられない女】が戦場をギャグの環境に変化させたからだろう。
「みぎゃぁあっ! なめ、なめんなー!」
 すっかり洗脳、もとい懐かれて注目を集め、敵を惹き付けることに成功したカビパン。
 こうして足止めしている最中に、他の猟兵達が追いついてくるのも時間の問題だろう。涎だらけになった紋章という犠牲を引き換えに、彼女は戦術的勝利を手にしたのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
祝祭を開く余裕が出来た事は喜ばしきこと
是非とも南瓜を収穫したいものですね
人々に笑顔齎せるなら、音に聞こえし聖杯よりも求むるに値します

しかし何故でしょう
あの兎に尋常でない脅威値を算出して…!?

(瞬きの内に盛大に首が飛び)

ウ、ウォーマシンでなければ即死でした…!
早急に対抗策を…

UC起動、電脳禁忌剣で改造された武器は…

聖なる手榴弾…?(電子頭脳に流れる説明書読み)

『騎士を屠る白き怪物を討つトラディショナルな兵装。聖なるピンを抜き、3つ数えて投げること』

…まだ私を恨んでいるのですか、アレクシア様~!!

(オレンジ髪の夫と共にイイ笑顔で夜闇に浮かぶ姿を幻視し抗議)

ええい、南無三…1、2、3!

効きましたね…



「祝祭を開く余裕が出来た事は喜ばしきこと。是非とも南瓜を収穫したいものですね」
 以前はそのような余裕も無い窮状からここまで状況は好転したのだと、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は感慨深い思いを抱く。住民達の苦労をねぎらう意味でも、彼は今回のハロウィンに積極的だった。
「人々に笑顔齎せるなら、音に聞こえし聖杯よりも求むるに値します」
 ありふれたジャック・オ・ランタンも、この世界で灯せば希望の明かりとなるだろう。
 いざ意気揚々と南瓜の群生地までやって来た機械騎士――そこで出くわしたのは殺気を放つ血塗れの白兎だった。

「しかし何故でしょう。あの兎に尋常でない脅威値を算出して……!?」
 トリテレイアがセンサーで目標を精査しようとした刹那。瞬きの内に盛大に首が飛ぶ。
 【窮兎首を跳ねる】。油断もあったとはいえ騎士の反応できないスピードと瞬発力で、その兎は急接近するなり咥えた刃物で首を跳ね飛ばしたのだ。
「ウ、ウォーマシンでなければ即死でした……!」
 胴部にあるコアユニットを壊されなければトリテレイアは死なず、頭部を失っても全身に搭載されたセンサーが視界を補うため戦闘行動にも支障はない。だが対応する間もなく初手で首を落とされたという事実は、普段冷静な彼でも焦らせるのに十分な驚きだった。

「早急に対抗策を……」
 兎の追撃を盾で受け止めながら、首なし騎士は【電脳禁忌剣・通常駆動機構:兵装改造『妖精の導き』】を起動。情報分析専門の妖精型ロボを召喚し、敵の能力を高速で分析。現状に最適な武装を「電脳禁忌剣アレクシア」のデータベースからピックアップする。
「あの方の英知を頼るのは、騎士として少々不甲斐無いのですが……」
 文字通り"顔向けできない"現状でそんな事を言っても仕方がない。トリテレイアを開発した創造主の叡智は電脳剣の内部に遺されており、その機能が「首跳ね兎」を倒すために必要な武装を電脳魔術で改造する。それは――。

「聖なる手榴弾……?」
 手元に出てきたものは、地球で使われている物よりもさらに旧式なデザインの手榴弾。
 同時に電子頭脳に流れてくる取扱説明書を、困惑しつつもトリテレイアは読み上げる。
『騎士を屠る白き怪物を討つトラディショナルな兵装。聖なるピンを抜き、3つ数えて投げること』
 以上、全文。ジョークではないかと疑ったが、本当にこれで全文である。電脳禁忌剣が誤作動を起こした形跡もなし。つまりは本当にコレで狂えるオブリビオンを撃退せよと、創造主は仰せなのか――?

「……まだ私を恨んでいるのですか、アレクシア様~!!」
 普段はオカルティックな幻視とは無縁なトリテレイアの視界に、オレンジ髪の夫と共にイイ笑顔で夜闇に浮かぶ、蒼い髪の創造主の姿が浮かんだ。どんなに抗議しようとも幻はただ微笑むばかりで、「いいからさっさとやりなさい」と言っているような気もする。
「キキッ、キキキッ」
「ええい、南無三……1、2、3!」
 敵も攻撃を待ってはくれない。機械騎士は已むを得ぬ思いで説明書通りにピンを抜き、3つ数えてから首跳ね兎めがけて、「聖なる手榴弾」とやらを力いっぱい投げつけた。

「キキキ……キキッ?!」
 普通に考えればただの手榴弾1つ、首跳ね兎のスピードなら余裕で避けられるはずだ。
 だがそれはまるで神のお導きでもあるかのように、飛び跳ねる兎の頭上にピンポイントに落下し――炸裂した。
「キキィーーーーッ!!!?」
 手榴弾1発にしては派手な、最初から爆薬でも埋設してあったような大爆発が起こり、首跳ね兎が吹っ飛ばされる。その悲鳴は爆音にかき消されてほとんど聞こえなかったが、衝撃的なダメージと驚愕をかの獣に与えたのは間違いないだろう。
「効きましたね……」
 もっとも、その事実に誰よりも驚いていたのは他でもないトリテレイア本人だったが。
 げに恐るべき創造主の叡智と聖なる(?)加護により、悪しきオブリビオンは撃退されつつあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
国臣さん(f07153)とご一緒に

お祭りは心の活力になります
是非とも普及して欲しいものですね
その為にも南瓜の収穫を頑張りましょう

バニーの姿に変身し、戦場から少し離れて【目立たない】ように闇に紛れて身を潜める
【死睨の魔眼】で強化された【暗視】【視力】を以って、国臣さんと首跳ね兎の攻防をハラハラしながら見守る(見切り・情報収集・学習力)

兎が勝利を確信し、増強した一撃を喰らわせようとした瞬間――すなわち兎自身の隙もまた最も大きくなる瞬間、【ダッシュ】と【ジャンプ】で暗がりより跳び出し、告死の大鎌を振るって兎の首を【切断】する
それ以上は――させませんっ!


蔵座・国臣
オリヴィア(f04296)と参戦

別世界ならメジャーどころだが、吸血鬼の仮装なんかは流石にこの世界では悪趣味だろうな。カボチャのオバケくらいコミカルでないと。

いや、兎はコミカルだとは思うが…首兎は凶悪過ぎてシャレにならん。
そして、首刈りバニー狩りのバニーガール…何も言うまい。

ともかく、兎狩りだな。
火力も速度も、仕留めるには心許ないのでな。囮役といかせて貰おう。

装甲任せにカウンター狙い。攻撃を受けつつ反撃を合わせる。可能なら掴んで動きを止めたい。
とは言え、基本は持久戦。ナノマシンによる治療を併用。トドメの一撃は頼りになるシスター…改め、バニーさんが決めてくれる手筈なのでな。



「お祭りは心の活力になります。是非とも普及して欲しいものですね」
 失われた祭事を復活させ、人々に喜びと癒やしをもたらそうと、ハロウィンパーティの開催に意気込みを示すオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。この世界の過酷さをよく知るからこそ、想いも人一倍強いのだろう。
「別世界ならメジャーどころだが、吸血鬼の仮装なんかは流石にこの世界では悪趣味だろうな。カボチャのオバケくらいコミカルでないと」
 一方の蔵座・国臣(装甲医療騎兵・f07153)は、もうパーティでどんな仮装をするか考えているのだろうか。同じ祭りでも世界によって趣も変わる。ここではあまり本格的なものよりも、道化けて笑いを誘える仮装のほうが良いだろうか? 何にせよ楽しみだ。

「その為にも南瓜の収穫を頑張りましょう」
 目的地である南瓜の群生地が見えてくると、オリヴィアはシスター服からバニーガールの姿に変身する。白い肌を大胆に露出し、手には大きな鎌を携えたその格好は、傍目には戦装束ではなく仮装の一種に見える。
「いや、兎はコミカルだとは思うが……首刈り兎は凶悪過ぎてシャレにならん。そして、首刈りバニー狩りのバニーガール……何も言うまい」
 コメントに困る格好についと目をそらしつつ、国臣も戦闘態勢を整える。サイボーグ用戦闘装甲「バトルホワイト」で全身を鎧ったその姿は、異界のヒーローに似通っていた。

「ともかく、兎狩りだな」
 国臣が群生地に一歩踏み入ると、首筋にナイフを突きつけられるような殺気を感じる。
 この地を縄張りとする狂えるオブリビオン――「首跳ね兎」は既にこちらをロックオンしている。野獣にしても尖すぎる赤い眼光と、装甲のヘルム越しに目が合った。
「火力も速度も、仕留めるには心許ないのでな。囮役といかせて貰おう」
「はい。ですがご無理はなさらずに」
 国臣が正面より敵意を受ける一方、オリヴィアは戦場から少し離れて闇と南瓜に紛れ、目立たないように身を潜める。彼女の役目は囮が作った隙を逃さず、敵に致命的な奇襲を仕掛けること。チャンスは一度きりの重大な責務である。

「キキッ」
 2人の猟兵の作戦通り、首跳ね兎はまず国臣を狙って攻撃を仕掛けてきた。手負いながらも今だ恐るべき俊足で戦場を馳せ、口に咥えた刃物を振るう。その動きはまるで獲物を【下ごしらえ】するかのようだ。
「近くで見るとますます速いな」
 残像を伴う速度で繰り出される連続攻撃を、国臣は装甲で受け止めつつ拳を突き出す。
 元より避けられるとは思っていない、ならば狙うは装甲任せのカウンター。攻撃を受けつつ合わせられたカウンターが、小さな兎の耳先をかすめる。

「野蛮だが、これが一番手っ取り早かったりするものだ」
 殴る、蹴る、掴み掛かる等、暴力的で【お行儀の悪い解決策】を次々と繰り出す国臣。相手は理性を持たず交渉も対話も通じない狂えるオブリビオン。そんな時はこれに限る。
「ギギギッ!」
 これで動きを止められれば理想だったが、首跳ね兎もそう簡単にやられてはくれない。掴みやすそうな耳に手を伸ばしても、するりと躱され逆に切りつけられる。ヒットするたびに兎の攻撃は鋭さを増しており、装甲に受ける損傷も徐々に深くなっていた。
(どうかご武運を……)
 そんな国臣と首跳ね兎の攻防を、オリヴィアはハラハラしながら見守っていた。本当はすぐにでも加勢に向かいたいが、今はまだ駄目だ――あの俊敏な敵に確実に攻撃を当てられるように、彼女は【死睨の魔眼】で強化された視力を以って機を窺う。

「この程度でやられはしないさ。持久戦なら自信がある」
 囮として兎の猛攻を受け続ける時臣の呟きには、まだ余裕があった。装甲を切り裂かれ本体を負傷しても、白く発光する医療用ナノマシンが即座に治療する。彼の本業は医者であり、戦闘と回復を併用しながら粘り強く戦うのには慣れていた。
「トドメの一撃は頼りになるシスター……改め、バニーさんが決めてくれる手筈なのでな」
 こうした戦い方ができるのも信頼できる仲間がいるからだ。それを理解しない敵には、獲物が徐々に追い詰められているようにしか見えないだろう。勝利を確信した兎は大きく飛び跳ね、増強された渾身の一撃を喰らわせようとするが――。

「それ以上は――させませんっ!」
 国臣の首が刎ね飛ばされる間際――すなわち首跳ね兎自身の隙も最も大きくなる瞬間、バニー姿のオリヴィアが暗がりより飛び出した。本物の兎も顔負けの脚力とジャンプ力で一気に距離を詰め、赤銅色に輝く「告死の大鎌」を振りかぶる。
「我が魔眼に魅入られし者、万象等しく滅ぶのみ――!」
「ギギィ―――ッ!!!?」
 魔眼の観測により導かれた奇襲の一閃は、過たず兎の首を捉えた。僅かに間合いが遠く切断にまでは至らなかったものの、斬り裂かれた首筋から噴水のように血飛沫が上がる。おそらくは動脈が傷ついたか――首は落ちずとも致命的には違いない。

「お見事だ、オリヴィア」
「国臣さんが引きつけてくださったお陰です」
 首跳ね兎のお株を奪うような一撃を見舞った兎狩りのバニーに、国臣が賞賛を述べる。
 オリヴィアはそれにはにかみながら感謝を返しつつ、告死の大鎌を構え直す。まだ戦いが終わっていない以上油断はしない。だが、着実に勝利に近付いているのも確かだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
此の世界の情勢が、再び混迷を深め始めた。
度重なる戦乱と紋章の秘密、そして暴かれた世界の構造……
それらは全て、此れ迄の推測を根底から覆すものだった。
■闘
相手の動きは素早い……なれば此方も【残像】を伴う動きで
高速戦を挑もう。
その動きを【野生の勘】を研ぎ澄ませて予測しつつ、一瞬だけ
見える姿を【見切り】つつ気配がしない場所へ緊急退避するか、
咥えた刃物による一撃を【武器受け】だ。
その際は、隙を見逃さないようにするぞ。

好機が来たら刀を構え、一瞬の瞬間移動から【奇刀・烈】を
仕掛け、武器ごと其の身体を【切断】してみせよう!

救済の道は今だ遠し……されど足を止める暇もなし。

※アドリブ歓迎・不採用可



(此の世界の情勢が、再び混迷を深め始めた)
 南瓜の群生地に向かう途中、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)はダークセイヴァーで起こったこれまでの事件を振り返っていた。闇と絶望に支配され、一片の希望も見えなかった世界は現在、猟兵と『闇の救済者』の活躍により大きな動乱の渦中にある。
(度重なる戦乱と紋章の秘密、そして暴かれた世界の構造……それらは全て、此れ迄の推測を根底から覆すものだった)
 今やこの世界の未来を予測できる者は誰もいない。常識さえも疑わしき現状において、それでも戦い続けるには英気を養う事も重要――そして、人々を脅かしうる危険な猛獣を見過ごす道理もないだろう。

「キキ……ッ」
 縄張りへの新たな侵入者を察知した「首跳ね兎」は、すぐさま刃物を口に襲ってくる。
 残像を伴うほどの速さで地を跳ね、隙あらば獲物の首を跳ねる。小動物の見た目に反して殺意に満ちたその動きに、清綱は警戒を強めた。
(相手の動きは素早い……なれば此方も高速戦を挑もう)
 疾さにおいては此方も自信がある。刀を抜きながら第六感を研ぎ澄ませると、一瞬だけ見える兎の姿を見逃さず、気配がしない場所へと緊急退避。その瞬間、直前まで彼の首があった場所を血塗れの刃が薙いでいった。

「いかに速かろうと、獣の振るう刃を見切れぬ道理はなし」
「キキキッ!」
 双方ともに残像を伴う猛スピードで戦場を駆け巡りながら、剣戟の火花を散らす両者。
 殺意を込めて繰り出される兎の連続攻撃を、清綱は第六感による予測と刹那の見切りで躱すか、退魔刀「心切」で受け止める。一瞬の反応の遅れすら許されない超高速の攻防、その中で彼の集中は明鏡止水の域に高められていた。
「キイッ!」
 一方でそのような武人の心を持たぬ首跳ね兎は、いつまでも獲物を仕留められない事態に苛立っていた。気を荒げれば動きに粗が生まれる――普通なら速すぎる故に"隙"と認識することさえ難しいが、同じ速さの領域にいる清綱はそれを見逃さなかった。

「此の太刀、見切れるか?」
 待ち望んだ好機の到来に、清綱は【奇刀・烈】の構えを取り、敵の間合いに踏み込む。
 その速さはもはや瞬間移動の域に達し、首跳ね兎にさえ反応することは不可能だった。晒した隙を立て直す暇も与えず、神速の連続攻撃が放たれる。
「キキィーーーーッ!!!?」
 無数の残像の中に紛れた真の斬撃は4つ。そのうち1つは紙一重で避けられたものの、残りは全て標的に命中する。肉を裂く確かな手応えと共に、兎の甲高い悲鳴が木霊した。

「救済の道は今だ遠し……されど足を止める暇もなし」
 血に濡れた刀を納める清綱。その背後で兎は刃を折られ、血溜まりに倒れ伏していた。
 いかに往生際の悪い狂えるオブリビオンとて、その生命はもはや風船の灯火――決着の時は間近にまで迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
可愛くても倒さなきゃいけない、んだもんね…
狂暴かつ説得もきかないってことなら猶更
だからちょっと可哀そうではあるけど…やらないとね

敢えて【空中戦】で目立つように空を飛びつつ
更に【誘惑】を乗せた【歌唱】で誘き出し
この状態の兎ちゃん達には誘惑というより挑発になりそうだけど
集めたらその分攻撃回避も難しくなるけど
こちらも【聞き耳】で音を聞き取り
相手がどんな速度で来ようとも微かな動作音にも反応できるように
出来る限り回避に専念しつつ念のため【オーラ防御】で身を護る

ある程度集まって来たらまとめて範囲に入れるつもりで【指定UC】
【破魔】の光で優しく温かく【浄化】を

ごめんね、骸の海でどうか安らかに
南瓜あつめる



「可愛くても倒さなきゃいけない、んだもんね……狂暴かつ説得もきかないってことなら猶更」
 ふわふわした白い毛並みを血に染めた「首跳ね兎」を見て、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は痛ましげな顔になる。見境なく人を襲うのも野生の性だとしたら、獣に罪はないのかもしれない――だが人里近くに居座る脅威を、このままにしてはおけない。
「だからちょっと可哀そうではあるけど……やらないとね」
 決意を固めた彼はオラトリオの翼でふわりと空に舞い上がり、澄んだ声で歌い始める。
 敢えて空中で目立てば相手もすぐに気付くだろう。響き渡る誘惑の歌声に誘い出され、飛ぶようなスピードで首跳ね兎がこちらに近付いてきた。

(この状態の兎ちゃんには誘惑というより挑発になりそうだけど)
 手負いでますます殺気立った兎には、美しい歌声もただの騒音としか届かないようだ。残像を伴うほどの速度で駆け寄ると、澪のいる高さまでジャンプして切り掛かってくる。
「キキッ!」
「おっと、っと」
 目で追っていれば絶対に捉えられない速度。澪は聞き耳を立てて兎の鳴き声やジャンプする時の足音など、微かな動作音を聞き取って回避運動を行う。ひらりと身を翻す少年の翼を刃が掠め、白い羽が数枚散った。

「ちょっとでも反応が遅れた命取りだね」
 澪は念のため魔力のオーラで身を護りつつ、首跳ね兎の連続攻撃をひらひらと避ける。
 首を刎ねる前の【下ごしらえ】をするように、執拗に繰り返される斬撃は、だが一度も獲物を捉えることはない。得意の空中戦で回避に徹する限り、彼に一切の隙は無かった。
(近くに兎ちゃんの仲間がいたりはしないのかな)
 音で攻撃を避けつつ視線を周囲に巡らせても、新たな首跳ね兎が出てくる様子はない。
 こんな凶暴な兎が群れで、しかも狂えるオブリビオンになって現れればハロウィンどころでは無いので、出てこなくて良かったと考えるべきか――今は目の前の一羽を倒すのに集中すればいいようだ。

「全ての者に光あれ」
 首跳ね兎の連撃を躱しきったところで、澪は【Fiat lux】を発動。歌うような囁きと共に彼の全身から放出されるのは、魔を浄化する優しく温かな光。そこに込められていたのは殺意ではなく、倒さなくてはならない相手に対する慈悲と鎮魂だった。
「キ、キキッ、キッ……」
 太陽の日差しにも似た浄光に照らされた兎は、折れた刃を口からぽとりと取り落とす。
 苦痛もなく、恐怖もなく。それはあまねく全てを照らし、現し世を彷徨うオブリビオンの魂をあるべき彼岸へと導いていく。

「ごめんね、骸の海でどうか安らかに」
「キキ………」
 そう告げる澪の眼差しの先で、首跳ね兎は光に包まれるように静かに消えていった。
 南瓜の群生地を縄張りとしていた狂えるオブリビオンは、ここに討ち取られたのだ。

「……うん。それじゃあ、南瓜を貰っていこうか」
 兎の消滅を確認してから、オラトリオの少年は地上に降り立つと南瓜を集めはじめる。
 ここには1人では到底収穫しきれない程の南瓜がある。一部を食料の備蓄に回したとしても、十分ハロウィンパーティに使えるだけの量が。
「みんな喜んでくれるかな」
 戦いは終わり、これから始まるのは楽しいお祭りの準備。この南瓜はハロウィンを忘れていたダークセイヴァーの人々に猟兵達から送る、本日最初のお土産になることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『闇に閉ざされた世界に、癒しの光を……』

POW   :    力仕事を手伝ったり、勇壮な英雄談を語る。

SPD   :    破壊させた施設を修復したり、軽妙な話術や曲芸で楽しませる。

WIZ   :    怪我や病気を癒したり、美しい歌や芸術で感動させる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 狂えるオブリビオンを撃破して、無事に大量の南瓜を収穫することに成功した猟兵達。
 彼らがその足で向かったのは、群生地の近くにある『闇の救済者』の領土。その中心地である中規模の都市だった。

「おや、この南瓜は一体……?」

 出迎える都市の人々は、猟兵が持ってきた南瓜の山を見て目を丸くするか首を傾げる。
 この世界の人間にとって、ハロウィンとは伝承で聞いた事があるだけの未体験の行事。なのでいきなり大量の南瓜を見せられてもピンとこないのだろう。

「ハロウィンパーティ……? この南瓜でお祭りをするのですか?」
「そういえば、大昔にそんな祭りがあったいう話を聞いたような……」
「面白そうですね。ですが何をすれば良いのでしょう?」

 猟兵達がハロウィンをやろうと提案すると、人々は戸惑いつつも前向きな反応を示す。
 ヴァンパイアの支配下にあった時代では、人類に祭りを開催する自由など与えられず、困窮した生活事情を鑑みても難しかった。しかし今は僅かながら暮らしに余裕も生まれ、ここに用意された南瓜があればパーティを開くことも不可能ではない。

「この地にはまだ、吸血鬼に支配されていた頃の苦しみから脱せない人も多くいます」
「当時はできなかった盛大なお祭りを開けば、その人達の心も晴れるかもしれません」

 闇に閉ざされた世界で、苦しみ傷つきながらも抗う者達に、ひとときの癒しの光を。
 この祭りを成功させるには、猟兵の協力が不可欠だ。ハロウィンの楽しみ方を知らない人々に、それがどういった行事なのかを伝え、準備を行い、そして共に楽しんでほしい。

 ――希望の失われていた闇の世界に、ジャック・オ・ランタンが灯る日がやって来た。
栗花落・澪
どうせならこの世界でも集められそうな資源でハロウィンしたいよね
例えばなんの変哲も無い布切れだってアレンジして被ればお化けになれるし
羽織れば吸血鬼とかもできそうだよね

僕も南瓜パンツにケープ、ブーツと全部ふわもこ仕様
白いぽんぽん付きゴムでツインテールにしたケセランパサラン仮装
トリックオアトリート
お菓子くれなきゃいたずらするぞー…なんて
今日は僕が配る側もやるよ
魔法で無限湧きできる★飴を渡しますね

あとは会場もう少し華やかにしてみたいね
僕が地面に流し込んだ地面が残留してる間だけだけど…
足場に★花園を生成
オレンジや赤系の色合いの花を中心に咲かせ

あとはハロウィン系の【歌唱】でも【パフォーマンス】しようかな



「どうせならこの世界でも集められそうな資源でハロウィンしたいよね」
 あまり物が豊かとは言えない街で、澪は工夫を凝らした仮装のアイデアを考えていた。
 ハロウィンといえば仮装はやはり欠かせない。そして見方次第ではどんな家庭にもあるようなモノでも衣装の材料になるのだ。
「例えばなんの変哲も無い布切れだってアレンジして被ればお化けになれるし、羽織れば吸血鬼とかもできそうだよね」
「ほうほう、なるほどなるほど」「面白そう、やってみる!」
 今回が始めてのハロウィンで、仮装するのも初挑戦となるダークセイヴァーの人々は、そうした澪のアイデアを興味深そうに聞いていた。特に、普段は恐怖の対象である吸血鬼になりきろうという案は、彼らの中から自然に出てくることは無かっただろう。

「僕の仮装はこんな感じ」
 澪は集まってきた人達に自分の格好も披露してみせる。南瓜パンツにケープ、ブーツと全部ふわもこ仕様で、髪は白いぽんぽん付きゴムでツインテールに。異国の伝承に語られる妖怪ともつかない謎の毛玉生物、ケセランパサランの仮装である。
「トリックオアトリート。お菓子くれなきゃいたずらするぞー」
「かわいい!」「えっと、それを言われたらお菓子をあげるんですよね?」
 愛嬌のあるふわふわの格好は人々からも好評。みんなこぞってお菓子を渡したがるが、あいにくこの街に甘い物の備蓄は少ない。誰かにお菓子を配れるほどの蓄えがある人間は少ないというのが実情だろう。ポッケをさぐって寂しそうな顔をする人々も多々。

「……なんて。今日は僕が配る側もやるよ」
 そんな人々の不安を払うよう、澪はにこりと笑って「Candy pop」の小瓶を取り出す。
 魔力を込めてぽんと蓋を叩くと、中から色とりどりの可愛らしい飴玉があふれてくる。わあっと皆が驚くなかで、彼はそれを1人1人に渡していった。
「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
 もし小瓶の中身が空っぽになっても、魔法で無限に湧かせられる。これなら欲しがる子みんなに行き渡るだろう。飴玉を宝石のようにキラキラと見つめる子、口の中でころころと転がす子――彼らの表情はみな晴れやかな笑顔だった。

「あとは会場もう少し華やかにしてみたいね」
 一通り飴玉を配りきると、澪は魔力を込めて聖痕「everywhere garden」をかざす。
 すると暖かな光が周囲を照らし、地面にはオレンジや赤系の色合いの花々が咲き乱れ、あっという間に立派な花園が生成される。
「僕が地面に流し込んだ地面が残留してる間だけだけど……」
「わぁ、きれい!」「すっごぉい!!」
 聖者の奇跡と美しい花園を目の当たりにして、人々は息を呑み、それから歓喜に湧く。
 その喜びに呼応するように花は揺れ、ひらりと舞い散る花弁が祭りのステージを彩る。荒廃の傷痕が影のようにくすぶっていた街も、だんだんとハロウィンらしくなってきた。

「僕の舞台へようこそ!」
 場を整えた澪は花園の中心でぱっと微笑み、【scena】のパフォーマンスを披露する。
 伸びやかなボーイソプラノで紡がれる、ハロウィンにまつわる歌曲。小気味いいリズムに観客も自然に体を揺らし、一緒になって踊りだす者もいた。
「こんなに楽しいの、はじめて!」「アンコール! アンコール!」
 無邪気に笑う子供たち。歓声を上げる大人たち。誰もが皆ハロウィンを楽しんでいる。
 闇夜にぽっと明かりが灯った様なその光景に、少年はにっこりと目を細めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
これは本当にあった怖い話です。
ある日お店を歩いていたら後ろに気配を感じたんです。
振り返ると、棚にぼんやりとシュークリームが。でも陽炎だろうと気にしませんでした。ところが、耳元で

『ワタシ北海道シュークリーム』

振り返ってみると、棚にあったシュークリームが近づいてきていました。私は怖くなって走り出そうとした瞬間、店員に「店内を走るなヴォケ!」とマジギレされてしまったんです。

「ほ、北海道にシュークリームは存在しないはずよ!」
私はシュークリームを蹴り飛ばし、そのまま猛ダッシュで逃げたんです。その後、お店へその話を伝えましたが、北海道にシュークリームがあるわけないでしょプゲラと笑われました。

以上です。



「これは本当にあった怖い話です」
 ハロウィンの準備も着々と進む街の一角で、カビパンが何やら人を集め話をしている。
 その語り口調はなぜか怪談のようで。妙におどろおどろしい雰囲気と気迫に呑まれて、人々は(なにこれ?)と思いながらも話を聞く。
「ある日お店を歩いていたら後ろに気配を感じたんです振り返ると、棚にぼんやりとシュークリームが」
「しゅーくりーむ?」
 この街の人々は恐らく食べたことがない。が、名前くらいは聞いたことがあるだろう。
 ふわふわのシューにクリームをたっぷり詰め込んだ甘いお菓子。なんで突然それが怪談に出てくるのだろうと首を傾げながらも、ともかく耳を傾ける。

「でも陽炎だろうと気にしませんでした。ところが、耳元で――『ワタシ北海道シュークリーム』」
「ひえっ」
 カビパンの語りはやけに上手かった。声色を変えてほんとうに耳元で囁いているように語る時なんて、思わず聴衆の背筋が寒くなったほどだ。その台詞が意味不明だとしても。
「振り返ってみると、棚にあったシュークリームが近づいてきていました」
「しゅ、シュークリームって動くの……?」
 勿論普通は動かない。いや、怪談だから動かないモノが動くことだってあるだろうが、シュークリームが近付いてくるのはあまりにシュールというか――トークの上手さと内容の奇抜さのギャップで、人々はだんだん頭がこんがらがってきた。

「私は怖くなって走り出そうとした瞬間、店員に『店内を走るなヴォケ!』とマジギレされてしまったんです」
「緊急事態なのに?!」
 確かにそれは違う意味で怖いかもしれないが、そもそもその店員はどこから出てきたのだろう、と人々は思った。あと怒鳴り声とマジギレのマネがこれまた妙に上手でビビる。
「『ほ、北海道にシュークリームは存在しないはずよ!』と、私はシュークリームを蹴り飛ばし、そのまま猛ダッシュで逃げたんです」
「けっきょく走るんだ!?」
 店員からのお叱りはなんだったのか。食べ物蹴ったら余計に怒られない? とか様々な意見が出てくる。この辺になると皆も最初のころの神妙な気分はほぐれ、ツッコミどころ満載なカビパンのお話にわいわい茶々を入れていた。

「その後、お店へその話を伝えましたが、北海道にシュークリームがあるわけないでしょプゲラと笑われました」
「そもそも『ほっかいどー』って何処なの……?」
 シュークリームの有無以前にダークセイヴァーの住民は北海道を知らない。なのでこの話の肝もまったく分からないまま聞いていたのだが、結局説明されることは無さそうだ。
 まあ、それについて深く気にする者ももういない。この街の人々の間には「北海道とはシュークリームのない土地」という、二度と使わないトリビアがインプットされた。

「それで、それからどうなったの?」
「以上です」
「え?」
 以上です、と。お店の人にプゲラと笑われた下りで、カビパンの話は唐突に終わった。
 なんやかんやオチを期待して最後まで話を聞いていた人々は見事に肩透かしをくらい、一体なんだったんだと文句を叫びだす。
「北海道シュークリームは?!」
「そんなの存在しませんよ」
「マジでこれで終わり!?」
「以上です」
 わーわーぎゃーぎゃーと騒ぐ人々を、のらりくらりとかわすカビパン。ハロウィンとはまるで関係のない一幕は、ある意味盛況のうちに終わり――その後、街ではオリジナルの北海道シュークリーム怪談にオチをつけるという遊びが、流行ったとか流行らないとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

青葉・颯夏
セフィリカさん(f00633)と

南瓜はくりぬいてランタンを作りますね
小さいものは中に蝋燭を灯して
それなりに大きさがあるものをひとつ、雪紐にかぶせてみようかしら
残った中身はパイにクッキーにパウンドケーキに加工します
これなら多くの人に配れますから

ランタンを雪紐にかぶせたところに来たセフィリカさんの手元を見て思わず固まる
え……あたしが、これを?
ジト目で訴えてみても笑顔のセフィリカさんにはかなうわけもなく
出来上がったお菓子をかごに詰めて、皆さんに配ります
笑顔はちょっと、どこかひきつっているかもしれません……


セフィリカ・ランブレイ
颯夏と(f00027)と行動

ハロウィンの楽しみ方を見せたいね
細かい事は抜き、皆で仮装してお菓子を食べてはしゃいで楽しい夜に!
それで良いよね
お菓子は颯夏がフォローしてくれるから、仮装は私が
皆の友達かぼちゃの妖精をはじめ強い戦士や魔法使いになりきるのもいいね

『怪物やるより、そっちのがこの世界向きかもね』

衣装は【次元格納庫】の中の工房で簡単なの作ろうか

『雑じゃない?作り』
雑でいいの。気軽に楽しむものだし

ついでに私のゴーレムや雪紐君もデコってパレードだ!

更に颯夏にはこれ!
ミニスカ魔女コス!
大丈夫!可愛いし何よりお祭りだもんね!

ううん、この恥じらう姿が…イイ!
めっちゃ可愛いから!もっと堂々としていいよ!



「ハロウィンの楽しみ方を見せたいね」
 この街の住民にハロウィンの事をどう伝えるか。セフィリカの考えはシンプルだった。
 これまでは夢物語だった行事を、本当に夢のような一夜にすればいい。来年もまたやりたい、次も楽しみ――そんな風に未来を期待できるような日に。
「細かい事は抜き、皆で仮装してお菓子を食べてはしゃいで楽しい夜に! それで良いよね」
「はい。素敵だと思います」
 颯夏もこくりと頷いてそれに賛成し、群生地から持ち帰った大きな南瓜を抱え上げる。
 仮装に飾り付けにお菓子の準備。楽しいハロウィンのためにやることは山ほどあるが、彼女らの表情は晴れやかだった。

「南瓜はくりぬいてランタンを作りますね」
 颯夏はてきぱきと淀みない手つきで南瓜の皮をくり抜いて、ハロウィンではおなじみのジャック・オ・ランタンの形に加工していく。まずは小さいものから目と口の穴を開け、中に蝋燭を灯せば、あたたかいオレンジ色の明かりがぽうっと夜を照らす。
「わぁ、かわいい!」「ね、わたしにも作れる?」
「はい。よければ一緒に作りましょう」
 近くでそれを見ていた人達にも作り方を教え、皆で輪になってランタン作りに勤しむ。
 大勢でやれば捗るし、来年また猟兵がここに来られずとも自分達でハロウィンを行えるようになっていれば、それは素敵な事だろう。

「ねー、くりぬいたこっちはどうするの?」
「残った中身はお菓子に加工します」
 ジャック・オ・ランタン作りが一段落すれば、後にはくり抜かれた中身が大量に余る。
 颯夏はそれを材料として集めると、街の住民にキッチンを借りてお菓子作りを始めた。
「これなら多くの人に配れますから」
 パイにクッキーにパウンドケーキ。厨房はたちまち甘い香りに包まれ、子どもたちから「おいしそう!」と喜びの声が上がる。日頃はどうしても節制した暮らしを送らざるをえないこの地の民にとって、甘味はこの上ないご馳走だ。

「お菓子は颯夏がフォローしてくれるから、仮装は私が」
 相方がクッキングに励んでいる間、セフィリカは【次元格納庫】の中の工房で衣装作りの最中だった。本来はゴーレム用の格納スペース兼研究所だが、転用すればハロウィンの仮装準備をするくらいの設備と素材は充分揃っている。
「皆の友達かぼちゃの妖精をはじめ強い戦士や魔法使いになりきるのもいいね」
『怪物やるより、そっちのがこの世界向きかもね』
 シェルファとも相談しつつちょきちょきと布を切っては縫い合わせ、飾り付けには色紙などを張り付けてみたり。他にも木の枝や板で剣や杖などの小物も作ったりと、持ち前の器用さを活かして素早く仮装をこしらえていく。

『雑じゃない? 作り』
「雑でいいの。気軽に楽しむものだし」
 べつに立派な演劇をやるわけでもなし、素人の工作でも真似できるくらいの物のほうが親しんでもらいやすいだろう。出来上がった衣装を見てセフィリカは満足そうに笑った。
「ついでに私のゴーレムや雪紐君もデコってパレードだ!」
 格納庫にしまってあった巨大ゴーレムをデコデコと飾り付け、自分も仮装したところでいざ出発。華麗な剣士の腰のベルトには、ちゃっかり妖精の羽根をくっつけられた魔剣が「……まあ去年よりはマシかしら」と小声で呟いていた。

「颯夏ー、おまたせー」
「あ、セフィリカさん。衣装はできたのですか?」
 工房からセフィリカが出てききた頃、颯夏はお菓子作りも終えて「雪紐」に大きな南瓜のランタンをかぶせているところだった。ちょっぴりサイズが合っていないのか、人形が動くたびにニカニカと笑う頭がカクンと揺れるのがかわいらしい。
「うん、颯夏にはこれ! ミニスカ魔女コス!」
「え……あたしが、これを?」
 そんな彼女の元にセフィリカから突きつけられたのは、少々きわどい丈の魔女の衣装。
 他のものよりも出来栄えがしっかりして見えるのは友人に対する配慮なのか、それとも本人の趣味なのか――にしたってコレはちょっと恥ずかしい。

「あの……」
「大丈夫! 可愛いし何よりお祭りだもんね!」
 ジト目で訴えてみても笑顔のセフィリカにはかなうわけもなく、しぶしぶながら衣装に袖を通す颯夏。理知的で清楚な風貌の彼女がする魔女の仮装は、作り手の見立て通り大変良く似合っていた。
「いいよいいよ! それじゃ行こう!」
「はい……」
 テンションの昂ぶるセフィリカに引っ張られ、颯夏はできたてのお菓子を詰めたかごを持って歩きだす。着慣れない格好が気になるのか、頬はほんのりと赤みがかっていたが。
 その後に続くのはゴーレムと人形の二名。操り手が着替えているうちに、雪紐のほうもしっかりデコられていたのはご愛嬌である。

「「トリック・オア・トリート!」」
「はい、どうぞ!」「慌てなくても、たくさんありますよ」
 覚えたての台詞を口にして手をのばす子供たちに、剣士セフィリカと魔女颯夏は並んでお菓子を配る。素敵な仮装とおいしいお菓子にもちろん皆は大喜びで、それを見る二人の顔にも笑顔が浮かぶ――一方の笑顔はちょっと、どこかひきつっているかもしれないが。
「やっぱりこの格好、変ではないですか……?」
 心もとなく揺れるスカートの丈を気にする颯夏。普段はなかなか見られないだろう友人のいつもと違う格好と表情に、セフィリカは「ううん、この恥じらう姿が…イイ!」と、背中の裏でぐっと拳を握る。

「めっちゃ可愛いから! もっと堂々としていいよ!」
「そう言われても……」
 促されるままにこりと笑顔を作る。それを見た人々からは「かわいい!」と絶賛の嵐。
 とまあ、若干一名に複雑な感情を抱かせつつも、ハロウィンの夜は大いに盛り上がる。
 可憐に仮装した女性陣の傍らでは、操り人形とゴーレムがパフォーマンスを披露して、こちらも好評を博している様子。その賑わいはまるでサーカスがやって来たようだ。
「すごいね!」「ハロウィンってこんなに楽しいんだ!」
 心の底から楽しそうな子供たちの笑い声が、ジャック・オ・ランタンの灯火を揺らす。
 終わらない夜も今日だけは、終わるのが惜しいと思える夜になる。楽しいお祭りはまだ始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
ハロウィンというと、UDCアースをはじめとする他の世界のお祭りと思っていたけれど、この世界にも忘れられて久しいとはいえ、同じような古の祭りがあったのね

お菓子や仮装といった風習も勿論楽しいけれど、元々は年に一度死者の国から戻ってくる祖先の霊をお迎えして敬う行事と聞くわ
懐かしい故郷を目指す彼らが迷わないように、南瓜をくりぬいてそこに灯りを灯してランプにするの

くり抜いた実は料理の材料に
ポタージュにサラダ、パンプキンパイにプディング
南瓜づくしのごちそうが並べば子供たちも喜ぶわ

これまで数多の命が失われた
数多の悲劇に見舞われた
それでも人類は胸を張って生きている
この闇夜の世界に、希望の光を灯しましょう


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
ハロウィンか……この世界では祝い事など稀だからな
人類解放に向けての景気づけにはうってつけだろう

南瓜にナイフを突き立て、大胆かつ慎重に中をくりぬき加工してゆく
こいつの皮は結構固いからな
見様見真似で手伝ってくれる村人たちが怪我をしないように注意して
中が空洞になったら、そこに蝋燭を灯してランプにするんだ
余った中身はヘルガたちに渡して料理を作ってもらおう
出来ればクッキーも多めに用意してくれると助かる
お化けの仮装で訪れた子供たちに配るために

はしゃぐ子供たちに宴に興じる人々
この平和は、誰もが夢に見、多くの犠牲を経て勝ち取ったもの
先人たちの魂が、どこかでこの光景を
遺した人の幸せを見守ってくれると願って



「ハロウィンというと、UDCアースをはじめとする他の世界のお祭りと思っていたけれど、この世界にも忘れられて久しいとはいえ、同じような古の祭りがあったのね」
 この地に限らず、様々な世界にハロウィンやそれと類似の祭りがあったという事実は、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)にとって意外だった。しかしそれは悪い意味ではなく、むしろ良き報せだった。
「ハロウィンか……この世界では祝い事など稀だからな。人類解放に向けての景気づけにはうってつけだろう」
 彼女の夫であるヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)も、今ここで祭りをするのに大いに意義を感じていた。夜闇の世界にハロウィンを復活させるために、夫婦は揃って準備を始める。

「お菓子や仮装といった風習も勿論楽しいけれど、元々は年に一度死者の国から戻ってくる祖先の霊をお迎えして敬う行事と聞くわ」
 まず最初に始めるのは、ハロウィンと言えば定番であるジャック・オ・ランタン作り。
 何をするのだろうと興味を引かれてやって来た人々に、ヘルガがハロウィンとランタンにまつわる謂れを説明する。
「懐かしい故郷を目指す彼らが迷わないように、南瓜をくりぬいてそこに灯りを灯してランプにするの」
「へぇ……そんな意味があったんですね」
 ハロウィンについて「昔あったお祭り」という程度の知識しか無かった人々は、神妙な顔で彼女の話に耳を傾けていた。ここにはヴァンパイアの圧政により近しい人を亡くした者も多い。死者の慰霊と鎮魂のための行事と聞けば、他人事とは思えないのだろう。

「こいつの皮は結構固いからな」
 話をするヘルガの隣では、ヴォルフガングがランタンの作り方を実践してみせていた。ずっしりと立派な南瓜にナイフを突き立て、大胆かつ慎重に中をくり抜き加工してゆく。
「中が空洞になったら、そこに蝋燭を灯してランプにするんだ」
「えっと、こうかな?」「ぐぬぬ~……っ!」
 その周りでは「自分でもやってみたい」と手を挙げた住民達が彼の手伝いをしている。
 見様見真似なので失敗もするが、幸いにも材料となる南瓜なら山ほど用意されている。それよりも怪我をしないようにだけ注意して、狼騎士は作り方を手ほどきするのだった。

「できました! どうですか?」
「ああ、上出来だ」
 人々と一緒に作り上げた個性豊かなランタンの数々を見て、ヴォルフガングは満足げに笑う。そして彼らが作業した後には、くり抜かれた南瓜の中身がいっぱい残されていた。
「この余った中身で料理を作ってもらおう。頼めるか」
「ええ、任せて」
 夫から南瓜の実を受け取ったヘルガはにこりと微笑み、近くの家の者に台所を借りる。
 これだけ沢山材料があれば、作れるレシピも沢山ある。その中からハロウィンに相応しいものを選んで、彼女は包丁を手にとった。

「南瓜づくしのごちそうが並べば子供たちも喜ぶわ」
 小気味いい調理の音とヘルガの鼻歌が鳴り、厨房はすぐに南瓜の甘い香りであふれる。
 出来上がるのはポタージュにサラダ、パンプキンパイにプディング。盛り付けなどにもこだわった素敵な南瓜料理の数々だ。
「美味しそう……あの、私達にも作り方を教えてくれませんか?」
「もちろんですわ、一緒に作りましょう」
 日頃からこの地の台所を担っている女性達の手も借りれば、1人では賄いきれない量も作れる。いつもは質素な暮らしを送っている人々も、お祭りの日くらいは好きなだけ食べたいだろう。食べ盛りな子供たちともなれば尚更だ。

「出来ましたわ、ヴォルフ」
「おお、美味そうだ」
「すっごぉい!」「ごちそうだ!」
 ヘルガ達が料理を運んでくると、ヴォルフガングはほうと口元を緩め、待っていた人々からは歓声が上がった。これで必要なものは全て揃い、楽しいハロウィンの宴が始まる。
「「いただきます!」」
 腕によりをかけて作られた料理はどれも優しい味がして、お腹も心も満たしてくれる。
 夢中で食べる人々の表情や「おかわり!」の声は、それを作った者にとってなによりの報酬となった。

「トリック・オア・トリート!」
 そんな楽しい宴の席を訪れ、大人に声をかけて回るのはお化けの仮装をした子供たち。
 キラキラした目で覚えたてのフレーズを口にするその子らに、ヴォルフガングとヘルガはクッキーを配る。
「多めに用意してくれて助かった」
「ふふ、子供たちの一番の楽しみですもの」
 こうなることを予想して、ヘルガが料理と一緒に作っておいたお菓子。南瓜やお化けやコウモリなど、ハロウィンらしい型取りをされた"トリート"を受け取った子供たちは、「ありがとう!」と満面の表情で笑い、自分たちもご飯を食べようと宴に混ざっていく。

「この平和は、誰もが夢に見、多くの犠牲を経て勝ち取ったものだ」
 はしゃぐ子供たちに宴に興じる人々を眺めつつ、ヴォルフガングはふと静かに呟いた。
 こうして祭りができる程の自由と安定を得るまでに、どれほどの血が流れ、どれほどの苦難があったことか。彼ら夫婦はそれを痛いほどよく知っている。
「これまで数多の命が失われた。数多の悲劇に見舞われた。それでも人類は胸を張って生きている」
 今日のこの光景は猟兵と『闇の救済者』、そしてこの世界に生きた全ての人々の懸命な努力によるものだ。終わらない夜に泣くことがあっても、決して絶望に屈さなかった彼らのことを、ヘルガは心より尊く感じた。

「この闇夜の世界に、希望の光を灯しましょう」
 今だ苦難は多くとも必ずや良き未来が訪れるように祈りを込めて、【聖霊来たり給え】と歌う。鳥のさえずりのように澄んだヘルガの歌声は宴に響き渡り、人々の喝采と重なりハーモニーを奏でる。
「先人たちの魂が、どこかでこの光景を。遺した人の幸せを見守ってくれると願って」
 愛する妻の歌に耳を傾け、楽しむ人々の笑顔を目に焼きつけ、ヴォルフガングは呟く。
 今宵はハロウィン。生者と共に死者をも癒やす祭り――彼らの魂の安息を願いながら、彼は【守護騎士の誓い】を新たにするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

無事に南瓜も手に入ったな
では、ハロウィンパーティーを始めようか

手に入った南瓜を使って料理を皆に振舞おう
足りない食材があったらUCを使って取り出すか
まずは南瓜の中身をくり抜き、表面に三角の眼をしたオバケの顔を彫る
ブツ切りにした兎の肉と一口大にした玉葱・南瓜の中身・茸類を炒めたら、潰したトマト・牛乳・バター・小麦粉・水と一緒に煮て、くり抜いた南瓜に注ぎオーブンで焼けば

ハロウィンシチューの完成だ
ジャック・オ・ランタンに注がれた真っ赤なシチューはインパクト抜群だな

味も…うん、美味い
トマトの優しい酸味が南瓜の甘味を引き立たせているな

こんな依頼も久々だしな…
ゆっくりと羽根を伸ばすとしようか



「無事に南瓜も手に入ったな。では、ハロウィンパーティーを始めようか」
 苦労の末収穫した南瓜を持ち帰り、『闇の救済者』達の領土にある街を訪れたキリカ。
 市内では着々とパーティの準備が進められており、仮装を作っている最中の子供たちがてけてけと近寄ってくる。
「ねーねー、そのカボチャ、たべるの?」
「ああ。これを使って料理を皆に振舞おう」
 無邪気な子供たちの問いかけにそう応えてウィンクするキリカ。普段はなかなかお腹いっぱい食べられる機会のないだろうこの子らにも、たんとごちそうを振る舞ってやろう。

「流石に南瓜だけでは足りない食材があるな」
 厨房に立ったキリカは腰のボリードポーチに手を入れて、その中にある異空間【シャンブル・ミニヨン】から必要な食材を取り出す。肉や野菜、牛乳やバターなどが次々と出てくる様子を、子供たちが不思議そうに見ていた。
「まずは南瓜の中身をくり抜き、オバケの顔を彫る」
 刃物捌きはお手の物。包丁を巧みに振るって分厚い南瓜の皮に切り込みを入れていき、上のほうから中身や種を取り出してから表面に三角の眼や口を彫る。あとは蝋燭があればジャック・オ・ランタンの完成だが、今回はこれを料理の器として使う。

「次にブツ切りにした兎の肉と一口大にした玉葱・南瓜の中身・茸類を炒める」
 先程倒したばかりの首跳ね兎を思い出しながら、食べやすいサイズに切ったお肉に火を通し。じゅうじゅうという肉汁の音と、他の具材と一緒になった匂いが食欲を刺激する。
「まだ? まだ?」
「もう少し待っていてくれ」
 待ちきれない子供たちを宥めつつ、玉葱が飴色になった頃合いで潰したトマト・牛乳・バター・小麦粉・水を加えてコトコト煮る。十分煮えたら先程のくり抜いた南瓜に注ぎ、オーブンの中へ。焦がさないよう火加減に気をつけて丁寧に焼き上げれば――。

「ハロウィンシチューの完成だ」
 ピピピとタイマーが鳴るのに合わせてオーブンの中から出てきたのは、ジャック・オ・ランタンに注がれた真っ赤なシチュー。具材に加えたトマトの色が鮮やかに出て、まるで血のようにも見える。
「インパクト抜群だな」
「「すっごーーいっ!」」
 ハロウィンらしく見た目にもこだわった自信の一品にキリカは笑みを浮かべ、子供たちの歓声がそこに重なる。器からゆらゆらと立ち上る湯気は厨房の外にあふれ、美味しそうな匂いがいっぱいに広がっていた。

「では、いただこう」
「いただきまーす!」
 キリカは完成したシチューを人々にふるまい、一緒にテーブルを囲みながら匙を取る。
 ずっと作るところを見ていた子供たちは勿論、匂いにつられてきた者達も、どんな味がするのかとわくわくしながら赤いシチューを口に運ぶ。
「……うん、美味い。トマトの優しい酸味が南瓜の甘味を引き立たせているな」
「ほんとだ、おいしい!」「これ、うちでも作れないかしら」
 それぞれの具材が一つのランタンの中で調和を取り、最高の味わいを作り上げている。キリカが出来栄えに満足そうに頷くのと、人々の喜びの声が上がるのはほぼ同時だった。

「カボチャってこんなに美味しいんだね」「ハロウィンっていいなー」
 初めてのハロウィンを大いに楽しみ、料理に舌鼓を打つダークセイヴァーの住民たち。
 賑やかな宴の光景を眺めながら、キリカはスプーンを片手にふと優しい笑みを見せる。
「こんな依頼も久々だしな……ゆっくりと羽根を伸ばすとしようか」
 普段は戦いの日々を送る傭兵や猟兵にも、年に一度の祭りを楽しむ権利はあるはずだ。
 この一時だけは使命を忘れ、戦場傭兵は人々と一緒に和やかな時間を過ごすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
明「さて、せっかく首跳ね兎を仕留めたことですし、兎肉を使った料理を作ってみましょうか。」
調理場をお借りして料理を作ります。
明「ここは、兎肉をいれたお雑煮を作りましょう。」
クロ「ハロウィンと関係ない気がするにゃ。」
明「ある世界の作家さんも兎肉入りの雑煮を食べて新年を祝ったいいますし、この都市の方達にも新しい時代へ歩んでもらいたいので。」
この都市で手に入りそうな野菜を購入して、できる限りたくさんの人に食べてもらえる量を準備します。
明「ところで、クロは何を作っているんですか?。」
クロ「アートにゃ。」
爪を器用に使って、カボチャのランタンを作っています。
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



「さて、せっかく首跳ね兎を仕留めたことですし、兎肉を使った料理を作ってみましょうか」
 パーティの準備中の街にやって来た明は、近隣の住民から空いている調理場を借りる。
 ハロウィンの定番といえば南瓜だが、それしかないのも味気ない。彼女の手には綺麗に解体と下ごしらえがされた兎の肉が袋に包まれていた。
「ここは、兎肉をいれたお雑煮を作りましょう」
「ハロウィンと関係ない気がするにゃ」
 調理器具を揃えて台所に立つ彼女にツッコミを入れるのは、使い魔である黒猫のクロ。
 兎肉を使った料理なら他にもいくらでもありそうなのに、なぜ雑煮なのか。その理由を明は得意げな顔で語りだした。

「ある世界の作家さんも兎肉入りの雑煮を食べて新年を祝ったといいますし、この都市の方達にも新しい時代へ歩んでもらいたいので」
「正月みたいなものってことかにゃ」
 今回のハロウィンはこの世界にとって新年と同じひとつの節目、苦しい過去を乗り越え未来に進む象徴的な祝い事になるだろう。それを記念する意味を込めてのお雑煮である。
「できる限りたくさんの人に食べてもらえる量を準備しましょう」
 近くにあった市場から、この都市で手に入りそうな野菜は購入済み。トントンと慣れた包丁さばきで食材を切り、味付けをして鍋に放り込んで煮込む。程なくして調理場からは美味しそうな匂いがただよい始め、パーティを待ち望む人々の期待も膨らんでいく。

「ところで、クロは何を作っているんですか?」
「アートにゃ」
 明が雑煮の仕度を整えている間に、クロは収穫してきた南瓜相手に爪を振るっていた。
 シャッシャッと器用な手さばきで皮に切り込みを入れ、中身をくり抜いて、三日月のように笑うジャック・オ・ランタンを作り上げる。
「どうにゃ」
「お上手ですね」
 本当に猫の手で作ったとは思えないほど見事な出来栄えだった。自信作を前にして黒猫はふんすと鼻を鳴らし、気を良くして次のアートに取り掛かる。群生地から回収してきた大量の南瓜は、こうしてランタンの山に姿を変えたのだった。

「はい、こちらも出来ましたよ」
「美味そうにゃ」
「「ごはんー!」」
 明が雑煮の鍋を持って調理場から出てくると、待ってましたとばかりに歓声が迎える。
 特に食欲旺盛な子供たちのはしゃぎようは一際大きく、キラキラと目を輝かせていた。
「熱いので気をつけてくださいね」
「お肉だ!」「おいしー!」
 沢山用意しておいて正解だったと思いながら、明はお雑煮を器によそって人々に配る。
 野菜の旨味がよく滲み出た煮汁に、柔らかくほぐれた兎のお肉。新しい時代を記念するのにふさわしい絶品の仕上がりに、皆は夢中で舌鼓を打っていた。

「好評みたいでなによりです」
 明はふふっと微笑みながら自らもお雑煮を口に運びつつ、ランタンに魔法で火を灯す。
 ぽうっと闇夜を照らす幾つものジャック・オ・ランタン。その幻想的な光景は、きっとこの地の人々にとって、お雑煮の味とともに忘れられない思い出になった事だろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
【虜の軍勢】で盛り上げ子供枠として雪花、閉幕のアリス、座敷童(非戦闘員/狂乱無法の霧事変)、黒猫ちゃん(癒しのペット枠/ドラゴンねこをなでろ)。
調理・指導役としてシルキー(非戦闘員)、「万能派遣ヴィラン隊」(総勢多数)を召喚。

子供枠の子達が都市の子供達を誘ってハロウィンを教えたりして先導役となり、シルキーやヴィラン隊が大人達側の指導やハロウィン料理・パーティの準備を行う事でお祭りを盛り立てるわ♪

料理に必要なお肉や穀物、野菜等、足りない食材は【魔城スカーレット】の備蓄も提供するわ。
大人の人達にはワインとかお酒も必要かしらね♪

後は準備できたら眷属の子達一同や町の人達とパーティを楽しみましょうか♪



「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
 楽しいハロウィンパーティを行うには、準備のための人手や盛り上げ役が欠かせない。
 そこでフレミアはまず、自らの眷属である【虜の軍勢】から必要な人員を呼び寄せる。
「おねぇさま、来たの~」
 異空間にある【魔城スカーレット】から真っ先に現れたのは、雪女見習いの「雪花」。
 続いて閉幕のアリス、座敷童、黒猫たちなど、愛らしい子供や動物の姿をした眷属らがパーティの気配に惹かれて飛び出してきた。

「ハロウィンパーティのお支度ですね」「畏まりました。ただちに準備致します」
 次に出てきたのは西洋妖怪のシルキーと、万能派遣ヴィラン隊のメンバー達。普段から家事仕事に携わる彼女らの仕事は、飾り付けの準備や料理などの他、ハロウィンについてまだ詳しく知らないこの地の人々への指導という役割もある。
「みんなで協力して、お祭りを盛り立てましょう♪」
「「はーい!」」
 主君であるフレミアの号令の下、眷属達は各々の役目を果たさんと都市に散っていく。
 準備役の眷属は調理場やパーティの会場予定地へ。子供枠の眷属は子供たちの元へと。

「ねーねー、ハロウィンってなにするの?」
「ふふ、教えてあげる!」「みんなで一緒にするの~」
 雪花やアリスや座敷童のように、年格好も精神性もヒトの子供に近い眷属は、同じ目線から都市の子供たちをハロウィンに誘う先導役にぴったりだった。近い年頃の子から楽しそうに語られるハロウィンの話が、聞き手の好奇心をかき立てる。
「みんなで仮装して、お菓子をもらうの」「くれなきゃいたずらするの~」
「わぁ、おもしろそう!」
 きゃっきゃとはしゃぐ子供たちに、「いっしょにやろ?」と誘う眷属達。その傍らでは黒猫たちが触り心地の良いもふもふの毛並みですり寄り、「かわいい~!」と子供たちに癒やしを提供していた。

「料理に必要なお肉や穀物、野菜等、足りない食材は魔城の備蓄も提供するわ」
「助かります、フレミア様」
 子供枠の眷属達が交流を深めている一方、フレミアとシルキーは料理に勤しんでいた。
 吸血姫の城には各世界で集めた食料物資や名物が貯蔵されており、その量は街中の人々に振る舞っても余るほどだ。品質も状態も素晴らしい食材の数々と、収穫したての南瓜を使って、家事妖精が鮮やかな手付きでハロウィン料理を作り上げていく。
「こちら、パーティ会場の設営も間もなく完了致します」
 調理場の外ではヴィラン隊の手によって、テーブルと椅子の準備や飾り付けが行われている。万能の名に違わず主人のあらゆるニーズに対応する事をモットーとした彼女らは、てきぱきと迅速な手際で街の広場を立派なパーティ会場に様変わりさせつつあった。

「住民の皆様のご協力もあって、予定より速く完成させる事ができました」
「いやあ、姉さん達の教え方が上手かったからだよ」
 話を聞いたこの街の人々も、ヴィラン隊と一緒にテーブルを運んだり飾りを作ったりと準備を手伝ってくれている。最初はハロウィンと聞いて何をすればいいか分からなかった彼らへの指導も、ヴィラン隊は上手くやっているようだ。
「あの……その料理、私達にも教えてくれないかしら」
「ええ、勿論です。パーティが終わった後も、お子様達にぜひ作ってあげて下さい」
 厨房に立つシルキーの元にも、ハロウィン料理のレシピを学びたいという者が現れる。
 大人達がハロウィンのやり方を学べば、猟兵が去ってもまた来年同じようにパーティを開くことが出来るだろう。そうして新たな行事がこの地に根付いていけば幸いだ。

「準備できたようね。それじゃあ、皆でパーティを楽しみましょうか♪」
「わーい!」「待ってました~」
 かくして滞りなく準備は完了し、集まってきた子供と大人と眷属の前でフレミアが開催の音頭を取る。テーブルの上には人々が見たこともないようなご馳走が並び、たくさんのジャック・オ・ランタンの灯火が会場を明るく照らす。
「これ、おいしいの~」「ほんとだ!」「美味いなあ」
 仮装した子供たちはお友達になった眷属の子らと一緒になって、夢中で料理を頬張り。
 大人達は流石にがっついたりはしないが、楽しそうに談笑しつつ料理を味わっていた。

「大人の人達にはワインとかお酒も必要かしらね♪」
「おお、ありがたい!」「では乾杯といきましょう!」
 そこでフレミアがふふっと笑いながら高級な酒瓶を取り出すと、大人達は歓喜に沸く。
 人数分のグラスがすぐに行き渡り、芳醇な香りを漂わす紅い雫がなみなみと注がれる。
「この世界の未来に!」「乾杯!」
 喝采と共に掲げられたグラスの音は、懸命に生きる人々を祝福する音色にも聞こえて。
 立派な会場と絶品料理に、ほのかな酒精を加えたパーティは、ますますの盛り上がりを見せるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
ラン達の他、もう一組、ミア達も呼び寄せてパーティ準備…。
主に町の人達と一緒に料理やお菓子作りしたりで準備を進めるよ…。
(ミラ達も飾り付け手伝ったり、都市の子供達とパタパタ遊んだり)

わたしはわたしで大人達や子供達にハロウィンの説明したり、子供達の衣装の用意手伝ったり…。

後は…折角だからね…。
来年も再来年も、この幸せが続く様に…【天照・限定解放】…。

都市の畑部や南瓜の群生地で【理想郷】を発動し、恵みと町の人達の平穏と繁栄が続くよう、お祈りするよ…。

この太陽の光がみんなの心を晴らしてくれると良いな…。

その後は都市の人達とラン達が作った料理やお菓子をもぐもぐと堪能…。
あ、しっぽがぼさぼさに…(悪戯)



「お待ちしておりました」「合流です」「メイドのお仕事の時間です」
「ん……来てくれてありがとう……」
 南瓜の群生地から『闇の救済者』の領地まで戻ってきた璃奈は、そこでラン達とは別にもう一組、メイド人形のミア、シア、ニアを呼び寄せていた。都市ひとつを巻き込んでのパーティの準備なら、普段から生活のお世話を焼いてくれる彼女らの力は欠かせない。
「お料理!」「ランタン!」「飾り付け!」
「きゅ~♪」
 首跳ね兎との戦いから同行しているラン達や仔竜のミラ達も、もちろんやる気は十分。
 楽しいハロウィンを迎えるためにやる事は山程ある。町の人にも協力してもらえるよう声をかけて、魔剣の巫女とメイドと仔竜は作業を始めた。

「「ジャック・オ・ランタン!」」
「きゅぃ~!」
 まずはラン達が収穫した南瓜の中身をくり抜き、目や鼻や口を刻んでランタンを作る。
 蝋燭の火を灯したそれを抱え、ミラ達が飾り付けのためにパタパタと町を飛び回れば、見上げる子供たちから「可愛い~!」と歓声が上がった。
「料理を山ほど」「子供用のお菓子も沢山」「作り甲斐があります」
 ミア達はランタン作りの後に残る南瓜の中身を使い、料理やお菓子作りに励んでいる。
 仕事が多くてどこか嬉しそうにも見えるのはメイドの性なのか。暗器や仕込み箒の扱いだけでなく包丁さばきも慣れた調子で、3人でてきぱきと台所を駆け回っていた。

「ハロウィンっていうのは、死者の霊を祀るためのお祭りで……」
 仲間達がそれぞれに準備のため奔走する一方で、璃奈はこの都市の人々にハロウィンの説明をしていた。伝承でしか知らない昔の祭りをやると言われても、急には乗れない人もいるだろう。行事に対する理解が深まったほうがパーティもより楽しめるはずだ。
「子供達は仮装してトリック・オア・トリート……『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ』って言ってね……そうしたら、お菓子をあげるから……」
「お菓子!」「ほんとに!?」
 普段は甘い物なんてなかなか食べられない子供たちは、それを聞くなり目を輝かせた。璃奈は彼らからやってみたい仮装のアイデアを聞いて、その衣装作りのお手伝いもする。
 大人達の方も「面白そうだな」と好印象な様子で、説明を聞いて手伝いを申し出てくれる者もおり、お陰で準備はよりハイペースに進んでいく事となった。

「後は……折角だからね……」
 人々への説明を済ませると、璃奈はふらりと都市の中心地から郊外の畑へと足を運ぶ。
 太陽の恵みを望めないこの世界の農業は苦労の連続だ。それでも人々は懸命に畑を耕し続けてきた。今日という日の幸福があるのも、全て彼らの努力あってこそだ。
「来年も再来年も、この幸せが続く様に……天照・限定解放……」
 そんな地の恵みと町の人達の平穏と繁栄が続くよう、祈りを込めて【天照(限定開放)・理想郷】を発動すると――夜空を覆う暗雲からしとしとと恵みの雨が降り、雲の切れ間からは暖かく柔らかな日の光が注いだ。

「わぁ……!!」
 この世界では本来ありえないはずの、ハロウィン以上に伝説の存在である、太陽の光。
 それを見た人々はこぼれ落ちそうなくらい目を丸くして、その暖かさに体を震わせる。絶望を想起させる夜闇の冷たさではない、希望に満ちた喜びの熱が心を満たしていく。
「この太陽の光がみんなの心を晴らしてくれると良いな……」
 そんな璃奈の願いが叶ったかどうかは、街の人々の表情を見ればすぐに分かるだろう。
 この慈雨と日の光には、生き物や作物が豊富に育つ理想郷に環境を変える効果もある。彼女は畑と同じように南瓜の群生地の方にも出向き、来年もまた南瓜が実るよう祈った。

「完成です」「できた!」「きゅぃ!」
 祈りを終えて璃奈が都市に戻ってくると、ちょうどメイド達が準備を終えた所だった。
 住民達とも協力した結果、街の広場に設営された会場にはランタンを始め色とりどりの飾り付けが為され、南瓜料理を中心としたご馳走がずらりと並んでいる。
「とっても美味しそう……いただきます……」
「「いただきます!」」
 住民達と声を揃えて、みんなが作った料理やお菓子をもぐもぐと堪能する。優しい南瓜の甘みと旨味が口の中に広がれば、いつも無表情な璃奈の口元もほんのりとほころんだ。

「あ、しっぽがぼさぼさに……」
「えへへ。トリック・オア・トリート!」
 そんな風に料理に夢中になっていると、いつの間にか子供たちが尻尾にじゃれていた。
 悪戯とお菓子、どっちもやっていいとは説明しなかったはずだけど――まあいいかと、璃奈は悪戯っこたちにお菓子を渡す。
「はい、どうぞ……」
「「わーい!」」
 クッキーや飴玉を宝物のように持って、次なる悪戯相手を探しに駆けていく子供たち。
 その笑顔は先ほど見た太陽の光にも負けないほど、キラキラと晴れやかに輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
国臣さん(f07153)とご一緒に

想定内ですっ!
純粋に遊ぶのは、また今度の機会にしましょう!

簡易救急セットで治療のお手伝い(医術)
うーん、これはきっと古いお魚に当たったんですね
こちらの方は農作業中のケガですね、消毒します

治療を終えて帰られる方に、お薬と一緒に南瓜の煮物を差し上げる(料理)
栄養たっぷりで身体も温まるので、どうぞ召し上がってくださいね

患者さんが一段落したら、私たちも南瓜料理をいただきましょう!
とっておきのかぼちゃプリンです!


蔵座・国臣
オリヴィア(f04296)と参加
ハロウィンらしさの欠片も無い事に付き合わせてしまってすまんな。だが、助かる。

キャンプを設営。医療支援を行う。
可能な限りこの世界で用意できる道具だけで治療して、やり方も指導しよう。無論、重症者や手間の大きい者に関してはユーベルコードでさくりと済ます。メインはハロウィンだからなぁ、あまりお医者さんに時間かけたくなかろうさ。
医食同源、と言ってな…いや、小難しいのはいいか。
なかなか難しいかもしれんが、穀物、野菜、肉や魚を偏りなく食べましょう、ぐらいに思ってくれれば良い。

まぁ、私達も、食事くらいはな。ゆっくりしようか。



「ハロウィンらしさの欠片も無い事に付き合わせてしまってすまんな。だが、助かる」
「想定内ですっ!」
 猟兵や住民達がパーティの準備に駆け回っている中、国臣とオリヴィアは都市の一角にキャンプを設営し、医療支援を行っていた。最近まで吸血鬼の領土だったこの土地には、傷病者の数も少なくない。これを国臣は医師として見過ごす事はできなかったのだ。
「純粋に遊ぶのは、また今度の機会にしましょう!」
「そう言って貰えると有り難い」
 住民の生命と生活を第一に考えた行動に、オリヴィアとしても異議があるはずがない。
 流石に本職ほどでは無いものの、ショルダーバックから簡易救急セットを取り出して、やる気と準備は万端だ。

「可能な限りこの世界で用意できる道具だけで治療して、やり方も指導しよう」
 国臣が志すのはただの治療ではなく、次に繋がる予防と知識の伝授だった。そもそもの医療知識自体が遅れているこの世界では、些細な傷や風邪が重症化することも多々ある。そんな時に自分がいなくても彼らだけで正しい措置ができるようにしておきたい。
「縫い針で傷を縫う時は消毒を忘れずにな。傷口を清潔に保つことも大事だ」
「ははあ、なるほど……勉強になります」
 国臣の理路整然とした語り口は素人にも分かりやすく、その豊富な知識と優れた技術に人々はしきりに感心していた。この指導を元に彼らがある程度治療できるようになれば、この地の死亡率は格段に減少するだろう。

「先生……うちの家内も診てくれませんか……」
 救急キャンプに運ばれてくるのは軽症者だけではない。この世界の医療では治せない、重い病気や怪我に苦しむ者も中にはいる。そうした重症者を見ると国臣の表情はいっそう引き締まり、すぐさま【戦線緊急治療】を開始する。
「時間がない。この場で治療する」
 最新科学に最新魔法学を少々トッピングした医療用ナノマシンが、患者の病気や怪我を高速治療する。この他にも治療の手間の大きい者に関しても同様に。ユーベルコードの力をもってすれば、本来なら手術が必要になるような傷病もさくりと済ます事ができた。
「メインはハロウィンだからなぁ、あまりお医者さんに時間かけたくなかろうさ」
「ああ、ありがとうごぜえやす……!」
 怪我や病を治してもらった人々は心からの感謝を伝えて、ハロウィンの会場に向かう。したくともできなかったパーティに参加できる喜びで、その顔は晴れやかに輝いていた。

「うーん、これはきっと古いお魚に当たったんですね」
 国臣が難しい患者を扱う一方で、オリヴィアは比較的軽症な者の治療にあたっていた。
 健康への意識と認識が浅ければ、些細なことから体調を崩す者も出てくる。先述の通りそれが悪化する恐れもある以上、今が軽いからといって甘く見ることはできない。
「こちらの方は農作業中のケガですね、消毒します」
「いやはや、助かります……」
 傷口を消毒して包帯を巻くなどの作業をてきぱきとこなす銀髪のシスターにも、人々は口々にお礼を言う。彼女のたたえる柔和な微笑みは、治療に来た者達の心さえも癒やし、診療所の雰囲気を明るいものにしていた。

「お疲れ様でした。良ければこちらをどうぞ」
 さらにオリヴィアは治療を終えて帰られる人達に、薬と一緒に南瓜の煮物を差し出す。
 群生地で収穫した南瓜を使って、彼女自らが料理したものだ。素朴ながらも丁寧な調理と味付けがされているのが見た目からも分かる。
「栄養たっぷりで身体も温まるので、どうぞ召し上がってくださいね」
「医食同源、と言ってな……いや、小難しいのはいいか」
 それを見た国臣は横から医師としてのアドバイスを加えようとして、こほんと咳払い。
 ここで栄養バランスなどの複雑な知識を無理に詰め込んでも理解されまい。せっかくの料理を前に無粋でもある。

「なかなか難しいかもしれんが、穀物、野菜、肉や魚を偏りなく食べましょう、ぐらいに思ってくれれば良い」
「わかりました! おいしくいただきます!」
 国臣からの忠告に人々は笑顔で答え、オリヴィアの煮物を大事に持って去っていった。
 最初はひっきりなしに来ていた患者の列も今は途切れ、どうやら一段落といった様子。ここまで働き詰めだった二人はほうと息を吐いて、椅子の背もたれに体を預けた。

「これでおおよその患者は診終わったか」
「では、私たちも南瓜料理をいただきましょう!」
 器具を置いた国臣の前に、オリヴィアが差し出すのは煮物とは別に用意していたもの。
 笑顔で「とっておきのかぼちゃプリンです!」と見せたその甘味を一緒に食べるのを、彼女はきっと楽しみにしていたのだろう。
「まぁ、私達も、食事くらいはな。ゆっくりしようか」
「はい!」
 国臣は少しだけ気恥ずかしそうに言い淀みつつ、ささっと用意されたスプーンを持つ。
 ひとさじすくって口に運べば、しっとりとなめらかな口当たりと、濃厚な南瓜の甘みが広がる。しっかりと甘いのだがそれでいてしつこくない、とても食べやすい味わいだ。

「どうですか?」
「ああ、美味い」
 端的だが嘘のない国臣からの答えに、オリヴィアは「良かったです」とまた微笑んで。
 傷病に苦しむ者に希望をもたらすために尽力した彼らにも、ハロウィンの祝福は別け隔てなく訪れるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
……首が飛んだお陰で図らずも首無し騎士の仮装となってしまいましたね

ああ、ご安心ください。『仮装』ですので
(現地住人に念押し)

魔性が活発となる季節、敢えて化け物の仮装をし彼らに紛れる事で災いから身を護る…という由来があったそうです
細かい事はさて置き、くり抜いた南瓜をランプにする事で祝祭の灯りとすれば子供達も喜ぶ事でしょう

物資収納スペースからナイフ取り出し、南瓜くり抜き
様々な愉快な表情のジャック・オー・ランタンを高速、大量に作成

精密動作は十八番というもの
くり抜いた中身は南瓜料理にお使いください
…私の兜(頭)は何処に?

(南瓜ランタンに混じって小さな子供達に持っていかれて)

…か、返してください~!



「……首が飛んだお陰で図らずも首無し騎士の仮装となってしまいましたね」
 兎に跳ねられた頭部の修理が済まぬまま、トリテレイアは闇の救済者の領土を訪れる。
 自分の首を小脇に抱えて通りを歩く騎士の姿を見ると、道行く人々はぎょっとするが。
「あ、あの騎士様、そのお姿は……」
「ああ、ご安心ください。『仮装』ですので」
 首が取れても平然とした様子でそう念押しされると、ハロウィンの仮装について詳しい知識を持たない住民達は「な、なるほど……そういうものですか」と返すしかなかった。

「魔性が活発となる季節、敢えて化け物の仮装をし彼らに紛れる事で災いから身を護る……という由来があったそうです」
 まだよく知らないこの世界の人々に向けて、トリテレイアは簡単にハロウィンの由来や手順等を説明する。まさに迫真の首無し騎士の『仮装』をした彼の語りは分かりやすく、そして説得力があった。
「細かい事はさて置き、くり抜いた南瓜をランプにする事で祝祭の灯りとすれば子供達も喜ぶ事でしょう」
「ふむふむ。それで皆さんこんなに南瓜を沢山……」
 群生地から猟兵が持ち帰った大量の南瓜に視線をやり、人々は得心がいった顔で頷く。
 ハロウィンの飾りも色々あるが、ジャック・オ・ランタンはやはり欠かせないだろう。

「まずは私が実演致しますので、宜しければ皆様も作ってみてください」
 トリテレイアは物資収納スペースからナイフを取り出すと、精密機械さながら――いや事実その通りの正確な動作で南瓜の中身をくり抜き、皮に表情を彫り込んでジャック・オ・ランタンを作り上げる。刃物を当てて完成までに、ものの数分とかかっていない。
「すごっ。めちゃくちゃお上手ですね!」
「精密動作は十八番というものです」
 寸分狂わず任意に破壊結果を調整・再現できる【機械騎士の精密攻撃】を応用すれば、この程度はお手の物。彼はまだ山ほどある南瓜を使って、様々な愉快な表情のランタンを高速、大量に作成していく。

「くり抜いた中身は南瓜料理にお使いください」
「あ、ありがとうございます。いったい何食分になるかしら……」
 大量のランタンを作った後には当然、くり抜かれた南瓜の中身が大量に残る。今は平穏とはいえ決して潤沢な余裕があるわけではない、この都市にとっては貴重な食料だろう。
 街の女性たちに持ち帰られたそれは、スープやパイやサラダなど、様々なレシピに姿を変えてパーティの食卓を賑わせることになる。
「うーん、難しいな。皮がけっこう硬くて……」
「力を入れすぎて、刃物で手を切らないようにご注意ください」
 また、トリテレイアのランタン作りを見ていた者の中には、自分もやってみようとする者もいる。流石にお手本ほど上手に素早く作ることはできないが、なかなか器用である。
 首なし機械騎士は彼らにもしもの事がないよう目を配りながら、作り方が分かるようにゆっくりと披露してみたりと、作業を通じて交流を深めていった。

「おや……私の兜は何処に?」
 そんな具合にランタン作成に専念していたトリテレイアは、ふと脇に置いていたはずの自分の頭が消えているのに気付く。一体いつの間に――と辺りを見回してみれば、小さな子供たちが作りたてのランタンを持って走っていく。
「カボチャのランプだ、かわいい!」「こっちは騎士の兜だよ、かっこいいだろー!」
 その中に混じって自分の頭があるのに気付いた彼は、一瞬フリーズしたように固まり。
 それから弾けるように立ち上がり、顔がなくても分かるほど慌てた様子で駆け出した。

「……か、返してください~!」
「「あはは、トリック・オア・トリート~!」」
 無邪気に笑いながら首を持って逃げる子供たちに、あたふたと追いかける首なし騎士。追う方は必死だが、傍から見れば微笑ましい光景に、見ている者からは笑顔があふれる。
 ――結局、このイタズラっ子たちから首を取り戻すために、トリテレイアは貴重な対価(お菓子)を支払うことになったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
こうした世界に『こそ』、娯楽の存在は重要となるからな……
後世に遺るほど、盛大な祭りにしたいものだ。

■行
【POW】
俺も祭りの準備をするとしよう。資材運びは【怪力】全開で行い、
往復を少な目に。
先ずは開場造りだな、飾りを置く場所を決め、真ん中に焚火の
準備を……むむ?おっと!
危うい形をした石材があるではないか(手刀で綺麗に【切断】)
他には……そうだ、使い辛い資材を集め、焚火を更に大きくしよう。
むむ、大きすぎないかと?……大丈夫だ、恐らく。

準備が整ったら、祭りが始まる前に【八江】の舞を踊ろう。
これが何かって?邪なるモノを祓うための儀式にござる。

※アドリブ歓迎・不採用可



「こうした世界に『こそ』、娯楽の存在は重要となるからな……」
 祭りの準備風景を眺めながら、清綱はしみじみと思う。常から戦いに身を置く彼だからこそ、斯様な心休める時の大切さも分かる。過酷な日々を送ってきたダークセイヴァーの人々であれば尚更の事だろう。
「後世に遺るほど、盛大な祭りにしたいものだ」
 人々にとって良い意味で"忘れられない夜"にできれば何よりだろう。皆がこの行事を気に入り、また来年もやりたいと思えば、ハロウィンという文化はこの地に根付いていく。

「俺も祭りの準備をするとしよう。先ずは開場造りだな」
 持ち前の怪力を全開にして、設営のための資材や飾りを持ち運ぶ清綱。大の大人が数人がかりで運ぶような大荷物も彼にかかれば朝飯前。往復の頻度も少なめにできるだろう。
「飾りはここに置き、真ん中に焚火の準備を……むむ? おっと!」
 てきぱきと配置を進めていると、ふと何かに躓きそうになる。見れば誰が置いていったのか、角の尖った石塊が放置されており、このままだとうっかり誰かが怪我をしそうだ。

「危うい形をした石材があるではないか」
 清綱はすっと手刀を一振りして、石材の角を綺麗に切断して形を整える。本人にとってはさしたる事でもない小技だが、見事な達人技に人々から「おおっ!」と声が上がった。
「他には……そうだ、使い辛い資材を集め、焚火を更に大きくしよう」
 彼自身はそんな声を気に留めもせず、生真面目にハロウィンの準備に精を出している。
 今成形した石材をはじめ持て余されていた資材を真ん中に運び、バランスを考えながら積み上げる。最初は小さな焚火が、またたく間に祭壇のように大きく立派になっていく。

「はあ、こりゃすごい……でも少しデカすぎやせんか?」
「むむ、大きすぎないかと? ……大丈夫だ、恐らく」
 途中から興が乗っていたのか、完成した焚火を改めて見る清綱。確かにちょっとばかり大きな代物になったが、火事を避けるための石の囲いも組んであり、問題はないだろう。
「わぁ、すごい!」「あったか~い」
 闇夜を照らす火の明るさに引かれた人々も集まってきて、焚火の傍で暖を取っている。
 どうやら住民の多くからは好評らしい。あちこちに吊るされたジャック・オ・ランタンと共に、焚火は煌々と祭りの会場を照らしていた。

「準備は整ったか。ではいざ舞わん……八江乃舞」
 全ての仕度が滞りなく済むと、清綱は祭りが始まる前に焚火を前に立ち【八江】の舞を披露する。手には刀を携え踊るそれは流麗にして力強く、神秘的な霊威さえ感じさせた。
「素敵……でも、あんな舞いは見たことないわ」「いったい何ていう踊りなんだろう」
「邪なるモノを祓うための儀式にござる」
 とある山奥で密かに伝承されていたこの剣舞には、実際に邪を祓う霊力が宿っている。
 空を斬る刃の動きにあわせて吹いた風が、人々の心身から"悪しきもの"を吹き飛ばし、健やかな癒やしをもたらす。

「これで良し。後は存分に祭りを楽しまれるが良かろう」
 剣舞を終えて清綱が一礼すると、見ていた人達からぱちぱちと大きな拍手が送られた。
 こうして邪祓いが済んだ上で始められた祭りに、もはや不幸や悪が入り込む隙はなし。仮装した人々が飲めや歌えやと騒ぐ様子を眺め、鬼獣の巫は満足げに頷くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
多数の南瓜の中身を短剣で刳り貫き定番のランタンと被り物。
興味をもった子供達に手渡し、ランタンには自分の青火を灯して街を練り歩こう。
黒騎士に率いられての行進は、この世界の子供たちにはいいイベントだろう。
引率など柄ではないが…まぁハロウィンだ。それぐらいの【パフォーマンス】は吝かではない。

事前に此方で用意した菓子を渡しておいた家に周りトリックオアトリート
悪戯の流れになったら被り物を脱いで家の前に並べてやろう。
ちょっと邪魔なジャックオランタンの置き土産だ。


祭りの終わりにはランタンを回収し自身の炎で【焼却】処分する。
…ハロウィンは元々死者の祭りだ
今日を迎えられなかった者たちへの供養、その篝火にしよう。



「黒騎士さま、何を作っているの?」
「ランタンと被り物だ。ハロウィンでは定番のな」
 群生地から収穫してきた多数の南瓜を並べて、短剣で中身を刳り貫いていくルパート。好奇心で近付いてきた子供達に囲まれて、彼は祭りの為の装飾を次々に作り上げていた。
「興味をもったなら、ひとつやろう」
「わぁい、ありがとう!」
 完成したランタンには騎士の鎧内に燃えている青火が灯され、それを受け取った子供は嬉しそうに笑う。戦場においては敵を焼き滅ぼす恐ろしい劫火も、ハロウィンでは祭りの雰囲気を高める幻想的な灯りとなるだろう。

「では征くか」
「はーい、騎士さま!」
 被り物が完成するとルパートは兜の上からそれを被り、青火のランタンを持った子供達を連れて街を練り歩く。ちょっと不気味で可愛らしい、ハロウィンパレードの始まりだ。
(黒騎士に率いられての行進は、この世界の子供たちにはいいイベントだろう)
 尊敬と憧れの対象でありながら、普段はなかなか接することのない黒騎士と、こうして祭りを通じてふれあえる。子供達の喜びはその笑顔を見れば明らかだった。さながら騎士の従者になった気分で、おそろいの被り物をした子らがてくてくと列をなす。

(引率など柄ではないが……まぁハロウィンだ。それぐらいのパフォーマンスは吝かではない)
 被り物の下でそんな事を考えながら、ルパートとその御一行は最初の家にやって来る。
 ここは事前に彼が用意しておいたお菓子を渡しておいた家で、その証として玄関口には灯りが点いている。
「「トリック・オア・トリート!」」
「あらまあ、かわいいオバケたちね」
 覚えたてのセリフを言って子供たちが籠を差し出すと、家人は笑顔でお菓子を入れる。
 クッキー、キャンディ、チョコレート。一行が家を周るたびに籠の中身は増えていく。

「おやすまない、お菓子はもう他の子にあげてしまってね」
「ほう、では致し方ない」
 時には灯りが点いているのにお菓子をくれない家もある。そんな場合は悪戯の流れだ。
 ルパートと子供たちは玄関口でおもむろに被り物を脱いで、でん、と家の前に並べる。
「ちょっと邪魔なジャックオランタンの置き土産だ」
「おおう、こりゃ参った!」
 オーバーなくらいのリアクションで弱り顔をする相手。菓子を渡すときに悪戯についても説明してあったのだろう。本気で困ってはいないだろうが、普段は見られない大人達の情けない顔に、子供たちは「イタズラ成功!」と喜ぶのだった。

「ハロウィンって楽しいね!」「またやりたいなぁ」
 こうしてお祭りを満喫した子供たちの心には、ハロウィンの思い出がしかと刻まれた。
 この日の喜びが明日を生きるための支えとなり、また来年もと願ってくれれば何より。引率を無事に終えたルパートも、表情こそ見せないもののどこか満足げである。
「では貴殿らも、気をつけて帰るように」
「うん! またね騎士さま!」
 遊び終えた子供達を家まで帰すと、黒騎士はくるりと踵を返して来た道を戻っていく。
 気付けば祭りもそろそろ終わりの時間。装飾の役割を果たしたランタンの火を消して、通りや家々から回収していく。



「……ハロウィンは元々死者の祭りだ」
 そのままルパートが向かったのは都市の郊外。誰もいない静かなその場所で、彼は回収したランタンを纏めて【燃ゆる貴き血鉛】で焼却処分する。鎧から伝う燃える鉛は瞬く間に南瓜を包み、青い炎で焼き尽くしていく。
「今日を迎えられなかった者たちへの供養、その篝火にしよう」
 煌々と闇を照らす青火、そして天に昇っていく煙はきっと天国の死者にも届くだろう。
 騎士は篝火の前で鎮魂の祈りを捧ぎ、ハロウィンの夜はしめやかに更けていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月01日


挿絵イラスト