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常闇の燎原を目指して

#ダークセイヴァー #常闇の燎原

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「今回の依頼は調査です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァーが地下世界だったという情報は既にご存知でしょうか。第五の貴族との戦いを通じて明らかになった新たな事実です」
 これは今までの常識が覆る情報である。なにしろ一般の人々はおろか、支配階級であるヴァンパイアの多くにすら「この世界が階層状の構造をしており、今まで地上と思っていた場所が地下第4層である」ことは知らされていなかったのだから。

「これまで地上と思われていたのが『第4層』なら、第五の貴族がいた『第5層』とは逆に『第3層』に繋がる場所もあるはずです。その更に上には、おそらく本当の"地上"も」
 だが今まで猟兵が冒険してきたヴァンパイアの支配地域や辺境に、それらしい手掛かりは無かった。他階層に関する情報が厳重に秘匿されていたのだから、それも当然だろう。
「手掛かりがあるとすれば、辺境を越えたさらに向こう、『常闇の燎原』だけです」
 そこは人類の居住区域の完全なる外側、おおよそ生物の生存を許さない完全な闇に覆われた区域。今まで近付くことすら試されてこなかったこの地になら、この階層を支配するヴァンパイアにすら知られない何かが隠されている可能性は十分にあり得る。

「『常闇の燎原』に辿り着くためには、広大かつ危険な辺境を越えなければなりません。リムのグリモアの予知によれば、今回の探索で障害になりそうなものは3つです」
 まず1つが『狂えるオブリビオン』。辺境にうごめく『異端の神々』という超存在が、自身を殺したオブリビオンに憑依したものだ。オブリビオンの肉体に神の御霊が宿ったことで正気は失われ、ヴァンパイアにも制御不可能な辺境の脅威である。
「今回遭遇する狂えるオブリビオンはエレーネという名の女吸血鬼です。もっとも異端の神に取り憑かれた今、本人はその名前すら忘れているようですが」
 普段はただただ笑い続けながら辺境をさまよい歩いているエレーネだが、侵入者の気配に気付くと襲い掛かってくる。理性のない強敵のため、彼女からの情報収集は望めない。純粋な障害として排除する他にないだろう。

「2つめの障害は地形です。エレーネを倒して常闇の燎原に辿り着くまでの道のりには、険しい山岳地帯が広がっています」
 既に人類の生存領域から遠く離れたこの場所には道すら存在しない。さらに常闇の燎原に近いせいか、頭上には星明かりひとつ見えぬ、分厚い暗雲に覆われた無明の地である。
 険しい斜面や切り立った岩壁、土砂崩れ等の自然の障害が猟兵の行く手を阻むだろう。
「サバイバルやクライミング等の経験のある方は、どうかその知識を存分に活かして下さればと思います。ここを越えさえすれば、常闇の燎原まであと少しです」
 狂えるオブリビオンに辺境地帯の過酷な自然や天候――いずれも難しい障害となるが、猟兵にとっては既知の脅威でもあり、攻略は不可能ではないだろう。だがリミティアは、最大の脅威はその先にこそあると語る。

「最後の障害は辺境地帯の果てに立つ、『黒い炎に覆われたオブリビオン』です」
 このオブリビオンは猟兵が近付くと全身から「黒い炎」を噴出して襲い掛かってくる。常闇の燎原に迫る者を排除する番人なのだろうか? 何を問いかけようと情報を明かす事は一切なく、ただ猟兵達を抹殺するために剣を振るう。
「予知によると、このオブリビオンは生前『魔装騎士ガイウス』と呼ばれた騎士の成れの果てのようです」
 彼は優れた剣士であると同時に闇の魔術の使い手でもあり、剣を魔力で自在に操る独自の魔剣術を得意とした。オブリビオンとなった現在の実力は『同族殺し』や『紋章』持ちにも匹敵するだろう。

「加えて黒い炎に覆われたガイウスは、剣と魔法に加えて『あらゆる防護を侵食し、黒い炎に変えて吸収してしまう能力』を持っています」
 ガイウスの攻撃を受けた防具は、黒い炎に変わり彼の体力を回復してしまう。防御力がどんなに高くとも関係なく、衣類や肉体等も含めた全ての防御手段がその対象のようだ。
「この能力を防ぐためには攻撃を受けず、見切って回避するしかありません。一切の防護の無効化と回復を両立できる強敵相手に、無策で挑むのは無謀でしょう」
 逆に黒炎化の能力への対処法を実行できれば、猟兵にも勝機は十分にある。この最後にして最大の障害を倒す事ができれば、常闇の燎原への到達はいよいよ目前となるだろう。

「魔装騎士ガイウスを倒し、常闇の燎原までの道を切り開ければ今回の依頼は成功です」
 人類未踏の地である常闇の燎原に一体何が隠されているのか、まだ誰にも分からない。だが世界の真実を解き明かし、光ある未来を取り戻すために、この調査は絶対に必要だ。
 説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、辺境探索に猟兵を送り出す。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回はダークセイヴァーで明らかになった新情報を元に、辺境のさらに果てにある『常闇の燎原』を目指すシナリオとなります。

 1章は辺境をさまよう狂えるオブリビオン『吸血姫エレーネ』との戦闘です。
 常に狂ったように笑いながら、猟兵の侵入に気付くと問答無用で襲ってきます。理性的な会話や説得は通じず、かなりの強敵なので撃破に集中するのが良いでしょう。

 2章は常闇の燎原までの道中にある山岳地帯の攻略です。
 人もヴァンパイアも立ち入らない辺境の奥地にある、夜の山が行く手を阻みます。
 体力にものを言わせて難所を乗り越えるのか、知恵や工夫で安全なルートを開拓するのか、各自で攻略法を考えていただけると幸いです。

 3章は黒い炎に覆われた『魔装騎士ガイウス』とのボス戦です。
 オープニングにありますように、このガイウスは「あらゆる防護を侵食し、黒い炎に変えて吸収してしまう能力」を持っています。この攻撃にうまく対処することができれば、プレイングボーナスが入ります。
 剣と魔法の実力だけでもこれまでの強敵に並ぶほどの相手ですので、どうか全力を以って挑んでください。

 果たして常闇の燎原に第3層の手掛かりはあるのか――。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『吸血姫エレーネ』

POW   :    夜天の鬼
【その身に備わった圧倒的な怪力】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    紅血の姫
自身の【白肌を飾る血紋】が輝く間、【優雅に舞い切り裂く四肢と翼】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    不死の王
自身の【内に溜め込んだ血と命か、下僕達のそれ】を代償に、【蝙蝠や魔犬等の眷属の群】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【不浄の力を纏った爪や牙】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ハイドランジア・ムーンライズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ガーネット・グレイローズ
久方ぶりのダークセイヴァー。この薄ら寒い陰鬱な空気…
変わらないね。いや、むしろ闇は濃密になっている気さえする。
ヴァンパイアの支配すら及ばない領域に、何が待つんだろう。

戦闘は【SPD】で

《戦闘知識》で敵の攻撃の挙動、得意とする間合いを把握
貴族らしい宮廷舞踏を取り入れた動きだが、瞬発力が
獣のようだ。
スラッシュストリングを【念動武闘法】で複製、
《念動力》で操って周囲を切り払って防御し、
敵ユーベルコードに対抗。9度目の攻撃を
ブレイドウイングで《ジャストガード》して
押し返したら、外套の中からヴァンパイアバットを放って反撃。
すかさず妖刀アカツキを抜き、《切断》《斬撃波》で斬って捨てるぞ。



「久方ぶりのダークセイヴァー。この薄ら寒い陰鬱な空気……変わらないね。いや、むしろ闇は濃密になっている気さえする」
 乾いた辺境の風とのしかかるような暗闇を肌に感じながら、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)はぽつりと呟く。最初の来訪から短くない時が過ぎたが、終わりのない夜と吸血鬼に支配されたこの世界の夜明けはまだ遠いようだ。
「ヴァンパイアの支配すら及ばない領域に、何が待つんだろう」
 それは希望か、あるいはより深い絶望か。辺境の果ての先にあるという『常闇の燎原』を目指して荒野を歩き続ける彼女の耳に、風に乗って誰かの笑い声が聞こえてくる――。

「アハハハはははは……」
 愉しげに、無邪気に、狂ったように笑いながら、辺境を彷徨い歩く黒いドレスの少女。
 その名は『吸血姫エレーネ』――かつては名のあるヴァンパイアの1人でありながら、辺境に住まう異端の神々に肉体と魂を乗っ取られ、狂えるオブリビオンと化したものだ。
「あははハハは……誰、ダレ、だれ? イッショに遊びましょウ!」
 ガーネットら猟兵を見つけたエレーネは、踊るような身のこなしで飛び掛かってくる。
 正気を失ったとはいえ【紅血の姫】と謳われた力は健在であり。猟兵への狂気と殺意を隠そうともしない。どうやら戦闘は不可避のようだ。

「力はそのままに狂ったヴァンパイアか。見ていて気分の良いものじゃないね」
 遠い昔に宇宙へ進出した吸血貴族の家紋に連なるガーネットは、狂乱する吸血姫の姿に顔をしかめつつ、まずは敵の攻撃の挙動や、得意とする間合いを把握しようと身構える。
 エレーネは白肌を飾る血紋を輝かせて、優雅に舞うような所作で四肢と双翼を動かす。見た目は可憐で儚げでも、その指先に触れるだけで人間などバラバラにされるだろう。
(貴族らしい宮廷舞踏を取り入れた動きだが、瞬発力が獣のようだ)
 ガーネットは蓄えた知識と照らし合わせて相手の動きを予測し、【念動武闘法】で複製した「スラッシュストリング」を念動力で操る。宇宙怪獣すら切り裂くブレードワイヤーが吸血姫の攻撃を切り払うたびに、戦場にまばゆい火花が散った。

「アハハはハハははは! 楽しイ、愉シいわ!」
 狂った笑い声のトーンを上げて、エレーネの攻撃は加速していく。その指先やつま先、翼端の動きはもはや目で追うことすら困難だが、ガーネットはこれまでの観察に基づいて行動を先読みし、多数のワイヤーを念動力で操ることで猛攻を凌いでいる。
「神殺しの力の一端をお見せしよう」
 神に取り憑かれたヴァンパイアにそう告げると同時に、彼女は9度目の攻撃に合わせて外套の中に秘匿していた「ブレイドウイング」を繰り出した。使い手の意志に応じて自在に液状化と硬質化を行う液体金属の翼が、吸血姫の翼を押し返す。

「あら、アラあら?」
 最速の一撃をジャストタイミングでガードされた事で、エレーネは微かによろめいた。
 その隙を逃さずに、ガーネットは外套の中からヴァンパイアバットを放って反撃する。闇夜に飛ぶコウモリの群れが視界を覆えば、敵の体勢はさらに崩れ――。
「舞踏会は終わりだ」
「ぁ……?」
 すかさず抜き放たれた妖刀・アカツキが閃き、妖気の斬撃波がエレーネを斬り捨てる。
 何が起こったのか分からないように、敵は噴き出す自分の血飛沫を見つめていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
三層への道程、必ず踏破し、征服してみせる!
そのためにも――そこを退け、吸血鬼

吸血鬼はその力もさることながら、性根の捻じ曲がった邪智もまた脅威
正気を失い獣も同然、恐るるに足らず

振るわれる規格外の膂力を【見切り】、聖槍で【受け流す】
【体勢を崩した】ところで、首根っこを引っ掴んで地面へ叩き付ける(グラップル)
蝙蝠を聖槍で【なぎ払い】、魔犬を蹴り飛ばす(踏みつけ・吹き飛ばし)
強力な主と無数の眷属、理性あるまま攻められたら苦戦もしようが、ただ飛び掛かるだけではな!

【全力魔法】で特大の【聖天烈煌破】を放つ
たとえ掠めただけでも、聖なる力は不浄を焼き払う(属性攻撃・破魔・浄化)
眷属諸共、消し飛ぶがいい!



「三層への道程、必ず踏破し、征服してみせる!」
 闇に覆われた世界で見いだされた新たな活路。未知なる第3層を目指す探索行にかけるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の意気込みは相当のものだった。彼女がこの世界を救わんとする人一倍の意志を思えば、それも当然だろう。
「そのためにも――そこを退け、吸血鬼」
「あは? アハハハ、なんで、ナンで?」
 その彼女から鋭い視線で射抜かれても、吸血姫エレーネは無邪気に笑い転げるばかり。
 狂えるオブリビオンと化した者には、説得も交渉も無意味――退かぬとあらば、力尽くで討ち滅ぼす他に選択はない。

「アハハハははは、遊ぼ、遊びまショ♪」
 幼い子供のように、目の前の"オモチャ"に手を伸ばすエレーネ。【夜天の鬼】と畏れられた彼女の身に備わる圧倒的な怪力は、たとえ遊びのつもりでも容易く人体を破壊する。
「遊び相手のつもりか。滑稽な」
 幸いにして敵の動きは技とすら呼べない稚拙なもの。オリヴィアは振るわれる規格外の膂力を冷静に見切り、破邪の聖槍で受け流す。悪を穿ち、邪を破り、魔を切り裂く黄金の穂先が、狂える吸血姫の手のひらをかき切り、数滴の血を流させた。

「あら、あララ……きゃうッ!?」
 うまくオモチャを捕まえる事ができずにエレーネが体勢を崩すと、すかさずオリヴィアはその首根っこを引っ掴んで地面に叩きつけた。これまで笑うしか知らなかった吸血姫の口から、初めて悲鳴が飛び出す。
「吸血鬼はその力もさることながら、性根の捻じ曲がった邪智もまた脅威。正気を失い獣も同然、恐るるに足らず」
 地に這いつくばらせた敵に聖槍を突きつけながら、オリヴィアは冷たい表情で告げる。
 これまで多くのヴァンパイアを狩ってきた彼女は、ただ力任せに暴れるだけの輩などに今更脅威など感じない。

「いたい……痛イ? あははハハハ、痛いイタイ!」
 思わぬ反撃を受けたものの、エレーネはすぐに笑いながら起き上がった。その手のひらからぽたぽたと流れ落ちた血が、コウモリや魔犬等の獣の群れに変化して咆哮を上げる。
 ヴァンパイアの能力と言えば規格外の怪力もそうだが、眷属を召喚する能力も代表的なものだ。それらは主に仇なす者を屠るという本能に従って、目の前の猟兵に牙を剥いた。
「強力な主と無数の眷属、理性あるまま攻められたら苦戦もしようが、ただ飛び掛かるだけではな!」
 だがオリヴィアは動じる事なくコウモリの群れを聖槍でなぎ払い、魔犬を蹴り飛ばす。
 不浄の力を纏った爪牙にだけ気をつけていれば、此れの対処法も通常の野獣と同じだ。軽くあしらいながら、彼女は手元の聖槍に力を集束させていく。

「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らし、遍く邪悪を滅却せよ!」
 高らかな叫びと共に槍を掲げ、放つは【聖天烈煌破】。超高密度に圧縮された聖なる力が特大の光球となって、黄金の輝きで辺境を照らしながらエレーネめがけて飛んでいく。
「眷属諸共、消し飛ぶがいい!」
 たとえ掠めただけでも、聖なる力は不浄を焼き払う。祝福の光に照らされた眷属の群れは蒸発するように消滅し、その主たる吸血鬼の穢れた肉体と魂さえも祓い清めんとする。
「あ……あぁぁぁぁッ!!!?」
 まるで太陽の下に晒されたかのように、エレーネの体が末端から灰と化していく。
 狂気と恐怖をともに表情に浮かべながら、彼女は絹を裂いたような悲鳴を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
夜明け前が一番暗いだなんて使い古されたフレーズだけど。
次に出くわすのは果たして希望か、より深い闇か……

差し当たってはオブリビオン退治。
壊れた神紛い、狂った吸血鬼。惨めなものね
餞別をくれてやる義理も無いけれど、一曲踊ってやりましょう

【暁と共に歌う者】発動
不死鳥と響かせる《歌唱+多重詠唱》により《属性攻撃+浄化+結界術》領域を形成
暁の聖域は敵には《催眠術+マヒ攻撃》の呪縛を、味方には《鼓舞+ドーピング》加護を与える
敵の攻撃は《第六感+戦闘知識》で《見切り》対応
《早業+怪力》発揮し《空中戦》展開
《ダンス》のリードのように《受け流し・カウンター》、
初動を崩し続ける事で優勢を保ち火炎纏う斬撃で斬り刻むわ



「夜明け前が一番暗いだなんて使い古されたフレーズだけど。次に出くわすのは果たして希望か、より深い闇か……」
 『常闇の燎原』を目指して辺境の奥地へと進みながら、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)はそんな事を呟く。未だ誰も到達したことの無い、未知なる第3層への期待と不安がその言葉には現れていた。
「差し当たってはオブリビオン退治」
 答えを得るためには先ず、道程に立ちはだかる障害を退けなければいけない。異端の神に憑依され、狂えるオブリビオンと化した『吸血姫エレーネ』が、その最初のひとつだ。

「ふふ、アハは、アハハハははは……タイ変、歓げいノ用意ヲしなイと……」
 辺境に侵入してきた猟兵のことを客人だとでも思っているのか、エレーネはにこやかな笑みを浮かべる。だがその表情に滲む狂気は隠しきれておらず、ころころと変化する情動は支離滅裂で一貫しない。まさに"狂えるオブリビオン"だ。
「壊れた神紛い、狂った吸血鬼。惨めなものね。餞別をくれてやる義理も無いけれど、一曲踊ってやりましょう」
 カタリナは憐れみに似た眼差しをそれに向けながら、【暁と共に歌う者】を発動する。
 紡がれる歌声に導かれるように、召喚されるのは劫火の身体を持つ不死鳥の群れ。彼らは紅蓮の翼を羽ばたかせながら、召喚主とともに妙なる歌声を響かせる。

「"我在る限り汝等に滅びは在らず、即ち我等が宿願に果ては無し――"」
 カタリナと不死鳥の群れが奏でる歌声は詠唱となり、魔神"暁の主"の領域を形成する。
 この聖域内では不浄なる魔性の力は弱められ、対峙する味方には加護がもたらされる。闇に生きる吸血鬼に対しては効果覿面だろう。
「あら、歌うノ? 一緒に歌いまショ、ララララ……♪」
 聖域に響く歌声にまんまと幻惑されたエレーネは、外れたトーンで自らも歌いながら、優雅に舞うように四肢を動かす。白肌を飾る血紋が輝きを放ち、指先が空を切り裂く――それはパートナーを微塵に切り裂く死の舞踏だった。

「狂っていても、踊りだけは体が覚えているのかしらね」
 踊り狂う【紅血の姫】の攻撃を、カタリナは歴戦の戦士としての経験と第六感を頼りに回避する。敵の動作は恐ろしいほどに俊敏だが、それでも見切れないほどの鋭さはない。
 劫火に照らされて七色に煌めく双翼を羽ばたかせ、聖域の加護を受けて敵の攻撃を打ち払う姿は、まるでダンスをリードしているようだった。
「あはは、アハ、アハハハハハッ!!」
 エレーネの連撃は常に初動を崩され続け、生じた隙に火炎を纏ったカウンターが入る。
 二本の短剣を自在に操るカタリナの舞いは、相手のそれにも負けぬほど優雅で華麗で、相手がどれだけスピードを上げても優勢が覆ることはなかった。

「あはは、楽しイ、愉しいたのしイ♪」
 炎の斬撃で切り刻まれ、全身に火傷と裂傷を負いながらも、吸血姫はなお笑い続ける。
 狂気は苦痛さえも忘却させるのか。それでもカタリナに一太刀刻まれるたびに、彼女の命の灯火は確実に削られていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
舞台はダークセイヴァーの辺境。そこを歩く可憐な私。
長い金色の髪はシルクのように艶やかで、その微笑みは天使と見間違えないばかりの私が歩いている。

そこに現れたガラの悪い目つきの悪い女。正気を失って笑い続けている笑い上戸の名前はエリーナ。なんたる不運!コイツに目をつけられてしまったのだ。悪寒に気づき振り返り目に映った変質者の姿にきゃあと悲鳴をあげる。

「だれか、助けてっ!」

お約束な展開に、現れたのは私。

「カビはめ波!」
「ぎゃー!」

「怪我は無いかいベイビー。それじゃ私はこれで』
「ま、待って!せめてお名前を…」

――カッ!

「貴様に名乗る名前はないっ!」

吸血姫以上に理性的な会話も何も通じない相手がいたという。



「うふふ、今日もいい天気」
 暗雲に覆われたダークセイヴァーの空の下、辺境を歩くカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。ここが敵地と分かっているのか、その表情は優雅なものだ。
 長い金色の髪はシルクのように艶やかで、その微笑みは天使と見間違えんばかり。容姿だけなら文句なしに可憐な娘である。ただ1つ、手にハリセンを持っているのを除けば。

「アハハハは……♪」
 そんなカビパンの前に現れたのは、ガラの悪い目つきの悪い女。正気を失って笑い上戸のように笑い続けている、その者の名はエレーネ。"遊び相手"を求めて辺境を彷徨うこの女吸血鬼に、どうやら目をつけられてしまったらしい。
「フフフ……さア、遊びマシょ……♪」
「えっ、誰……きゃあ!」
 なんたる不運か、カビパンが悪寒に気付き振り返った時には、吸血姫はすぐ傍にいた。
 目に映った変質者の姿に彼女は悲鳴を上げ、怯えたように後ずさりつつ助けを求める。

「だれか、助けてっ!」
 警報のかわりにバシバシと鳴らされるハリセンの音。だがここはヴァンパイアの支配も及ばぬ辺境の地、通り掛かる者など誰もいない。同じ依頼を受けた猟兵がいれば別だが、今は不運にも誰も駆けつけられるタイミングでは無かったようだ。
「アハハハ……何して遊ブ? ねえ、ネエ、アハハハ!」
 狂い笑う【不死の王】の周囲からは蝙蝠や魔犬の群れが現れ、新鮮な獲物に牙を剥く。
 このまま可憐なカビパンは邪悪なヴァンパイアの玩具兼おやつにされてしまうのか――どこかお約束感のある展開だが、果たして絶体絶命の危機に助けは現れた。

「待てい!」
「誰レ……?」
 制止の声とともに颯爽と現れたのは、瀟洒な軍服を着こなした凛々しいカビパン大尉。
 なぜカビパンがここに2人いるのか、それは【ハリセンで叩かずにはいられない女】がもたらした世界の歪みである。彼女は「女神のハリセン」の力で戦場をギャグが支配する環境に変化させ、自分が披露するギャグに合わせて世界を塗り替えるのだ。
「カビはめ波!」
「ぎゃー!」
 理不尽で不条理な展開に従って現れた"もうひとりのカビパン"は、エレーネに向かって謎の波動を放つ。ビームにも光の球体のようにも見えるそれを喰らった相手は、召喚した眷属と一緒に『ドカーン!!』とこれまたギャグチックな爆発を起こして吹っ飛んだ。

「怪我は無いかいベイビー。それじゃ私はこれで』
「ま、待って! せめてお名前を……」
 カビパンの窮地を救ったカビパンは、キザな笑みを浮かべて颯爽と立ち去ろうとする。
 それを引き止め、カビパンの名を問おうとするカビパン。いや名前なら誰よりもお前が一番よく知っているだろうとかツッコんでくれる人間は、残念ながらここにはいない。
「私の名前か……」
 質問を受けたほうのカビパンは暫く勿体をつけてから――カッ! と両目をかっ開く。
 そしてこれまでとは一変した居丈高な態度と憤怒の形相で、カビパンを怒鳴りつけた。

「貴様に名乗る名前はないっ!」

 ――吸血姫以上に理性的な会話も何も通じない相手がそこにいた。カビパンに怒鳴られたカビパンは「ガーン!」とショックを受け、それを「泣くなよ」とカビパンが慰める。
 ユーベルコードの異界化が解除されるまで、この理解不能な一人芝居は続くのだろう。早々に吹っ飛ばされて退場したエレーネは、ある意味幸運だったのかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「目指すは常闇の燎原。そして『第3層』、
更に本当の地上。
此処の吸血鬼だけでも手に余ると言うのに……。
それでも見えた光を追う事が出来るなら
進む事は苦じゃない。」

「先ずはあのオブリビオンを倒さないと
いけないか。」
敵の眷属が動くのに合わせシャイントリガーを発動。
目晦ましをすると同時に光で火傷を負わせ行動を制限。
その隙にシャイントリガーの光線で
眷属を多く巻き込める位置まで移動。
狙いを定め2回目の攻撃を放って
眷属を焼き払い。
【ダッシュ】でエレーネに接近。
眷属に妨害されない位置まで接近出来たら
【全力魔法】で高温の光線を放って仕留める。
「俺も足止めを喰らっている訳にはいかないのでね。
此処までにさせて貰う。」



「目指すは常闇の燎原。そして『第3層』、更に本当の地上。此処の吸血鬼だけでも手に余ると言うのに……」
 明らかになった秘密に未知への探索と、目まぐるしく変化したダークセイヴァーの情勢に、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)の心は落ち着かない。地上と呼ばれていた第4層、そして第5層の攻略も途中だと言うのに、更に活動圏を広げようと言うのだ。
「それでも見えた光を追う事が出来るなら、進む事は苦じゃない」
 この先に新たな困難が待っているのは間違いないだろう。だが無意味な苦難ではない。
 夜闇に支配されたこの世界に希望の道筋があるのなら、挑戦する事に迷いはなかった。

「先ずはあのオブリビオンを倒さないといけないか」
 その最初の苦難となる『吸血姫エレーネ』を前に、フォルクはぐっと気を引き締める。
 異端の神に取り憑かれ正気を失った女吸血鬼は、新たな侵入者を見るなり【不死の王】を発動し、内に溜め込んだ血と命を無数の眷属として解き放ってきた。
「アハハハはははは! あなタも遊ンで呉れルノね!」
 狂気に導かれて動きだす眷属達。不浄の力を纏った爪牙を振りかざすそれらに対して、魔術師は両手にはめた黒手袋「フレイムテイル」から【シャイントリガー】を発動した。

「この掌に在りしは天の日輪放つ撃鉄。降り注ぐは浄戎の炎。我に仇為す汝らに、等しく光あれ」
 手袋に封じた炎のラミアの力を操る事で、フォルクは太陽光にも比肩する光線、熱線、電磁波を放つ事ができる。常闇に覆われたダークセイヴァーの辺境に棲まう者どもには、目晦ましの効果は抜群だろう。
『ギィッ!?』『ギャオンッ?!』
 網膜を焼かれた蝙蝠と魔犬は悲鳴を上げ、火傷の痛みにのたうち回る。眷属と言ってもしょせんは獣であり、知性や判断力はさほど高くはない――敵の動きが乱れている隙に、フォルクはより多くの眷属を巻き込めるよう立ち位置を移動して2射目の構えに入る。

「道を開けてもらおうか」
 再び放たれた超高熱の光線が、射線上にいた眷属を焼き払う。不浄なる獣の群れは日輪の輝きの前に蒸発し、その後には一筋の道ができる。彼らを喚んだ主の元へと至る道が。
「あら? あらラ?」
 なぜ眷属が消えてしまったのか、エレーネはまだ状況の把握が追いついていない様子。
 その間にフォルクはダッシュで突破口を駆け抜けて、彼女との間合いを一気に詰める。フードの奥に隠されたその眼差しは、前だけをまっすぐに見つめていた。

「俺も足止めを喰らっている訳にはいかないのでね。此処までにさせて貰う」
 眷属にも妨害されない至近距離まで接近すれば、三度放たれる【シャイントリガー】。
 これまでとは熱量も光量も段違いな全力の一撃が、狂える吸血姫の肉体を撃ち抜いた。
「あ……アアァァァァァっ!!!?!」
 視界を真っ白に染める閃光、そして身を焦がす灼熱に、堪らず悲鳴を上げるエレーネ。
 フォルクはそんな彼女の横を抜けて、振り返ることなく進む。まだ見ぬ常闇の燎原を、そして第3層を目指して――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルル・マーナガルム
辺境の更に向こう側かぁ
まだ見ぬ場所ってだけで
ワクワクしてくるね
『これは先行偵察任務です
我々の持ち帰る情報が
戦局を左右するものと心得ましょう、ウルル』
分かってるよ
そのためにも
初戦から時間かけるワケには行かないよね

速攻を意識する
出来れば気付かれる前に狙撃したいけど
ちょっと難しいかな
『気付かれたとしても
攻撃させなければ良いのです』
ハティの背面から磁場発生装置が展開
敵の攻撃をガード
プラズマの放電に紛れて狙撃を返す
頭を狙う余裕が無さそうなら
手足や翼
攻撃の手数を削げるような部位を撃つよ
今更キミたちに止められるようなボクらじゃないんだ



「辺境の更に向こう側かぁ。まだ見ぬ場所ってだけでワクワクしてくるね」
 これまで誰も調査できなかった未知の領域に、ウルル・マーナガルム(死神の後継者・f33219)は好奇心をおさえきれない様子。楽しそうに微笑む彼女をたしなめるように、随行する猟犬ロボット・ハティが声をかける。
『これは先行偵察任務です。我々の持ち帰る情報が戦局を左右するものと心得ましょう、ウルル』
「分かってるよ」
 小うるさい相棒兼お目付役に肩をすくめつつ表情を引き締める。彼女とて軍人であり、この任務の重要性は理解している。敵がこれまでひた隠しにしてきたこの世界の秘密は、さらに重大な真実の手掛かりかもしれない。危険であれ調査する意義は大いにあった。

「そのためにも、初戦から時間かけるワケには行かないよね」
 ウルルは愛用のマークスマンライフル『アンサング』を取り出し、大型ゴーグルをかけて狙撃体勢に移る。先行発進させた観測ドローンからの情報によれば、今回の障害となるオブリビオンはこの先にいるようだ。
「出来れば気付かれる前に狙撃したいけど、ちょっと難しいかな」
 ドローンとハティが観測した情報がゴーグルに表示され、荒野で踊り狂う吸血鬼の姿が捉えられる。一見して無防備なようだが――銃口を向けた瞬間、ソレはぐりんとウルルのいる方向を振り返り、三日月のような笑みを浮かべた。

「あは、アハハハは! ヨうコソ、友達、トモダチ!」
 視線に気付いたか、ここが潜伏場所の少ない地形だったのが災いしたか。いずれにせよ異常な感覚で狙撃手の存在を察したエレーネは、笑いながら猛スピードで近付いてくる。
『気付かれたとしても、攻撃させなければ良いのです』
「そうだね。頼んだよハティ」
 対する狙撃側の対応も迅速だった。ハティの背面から磁場発生装置が展開され、ウルルはその背後に隠れるように移動しつつゴーグルを遮光モードに設定。ライフルの照準は敵に向けたまま、頭の中でカウントを始める。

『プロトコル3に則り指定装備を展開します。閃光と衝撃に備えてください。着弾まで残り3秒……2……1、着弾』
 狂気に取り憑かれた【紅血の姫】が目の前の猟犬を引き裂こうとした瞬間、緊急防衛用兵装【ヒルドの盾】が起動し、強力なプラズマフィールドが展開される。それはガードした敵の攻撃を無効化すると同時に、強烈な閃光を周囲に放った。
「キャハッ?! あは、目がチカチカすルわ!」
 至近距離で無防備にプラズマの放電を浴びたエレーネは、目をパチパチとまたたかせてよろめく。ダメージは大した事は無いようだが、体勢が崩れて隙が生じれば十分だった。

「今更キミたちに止められるようなボクらじゃないんだ」
 プラズマの閃光に紛れ、ウルルが『アンサング』のトリガーを引き絞る。放たれた銃弾は狙い過たずに標的を捉え――エレーネの片腕と片翼が重なる、その一瞬を撃ち抜いた。
「あ、アァっ?! いた、いたいッ!!」
 1発の狙撃で腕と翼を同時に撃たれた女吸血鬼が、鮮血を撒き散らしながら絶叫する。
 仕留めることは出来なかったが、これで相手の攻撃の手数は大きく減らせただろう――敵が泣き喚いている隙に、ウルルとハティは兵士らしく迅速に離脱するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
吸血鬼達の怖さは力だけじゃなく、その狡猾さにある…。
理性を無くしたのであれば、如何に力があろうと、それは本能で襲い掛かる獣と同じだよ…。

【九尾化・魔剣の巫女媛】封印解放…。
敵の蝙蝠や魔犬の群に顕現させた無限の魔剣と黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い】による攻撃でまとめて吹き飛ばし、掻い潜って来た攻撃はアンサラーによる反射【呪詛、オーラ防御、武器受け】で跳ね返し、本能のまま迫って来る敵を迎撃…そのままカウンターで無限の魔剣を至近距離から斉射して串刺し・侵食…。

敵が苦戦してる間にUCで強化した神太刀の神殺しの刃で不死・再生を封じ、エレーネを討つよ…。

闇の領域だろうと、辿り着いてみせる…!



「吸血鬼達の怖さは力だけじゃなく、その狡猾さにある……」
 何度もヴァンパイアと戦ってきた雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は、この世界を支配する彼らの強さが何であるかを知っている。ただ暴力に秀でた野蛮な怪物ではない、闇の中に陰謀の糸を蜘蛛の巣のように張り巡らせる、邪悪な知性もまた彼らの武器だ。
「理性を無くしたのであれば、如何に力があろうと、それは本能で襲い掛かる獣と同じだよ……」
 目の前にいる『吸血姫エレーネ』には、そうした知性や狡猾さの片鱗も感じられない。
 支配者から獣に堕ちた敵を狩るために、少女は【九尾化・魔剣の巫女媛】を発動する。

「我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 平時は封じている力を解き放つことで、璃奈は莫大な呪力を身に纏った九尾の妖狐へと変身を遂げる。対するエレーネは狂喜を張り付けた笑顔でけらけらと笑い、【不死の王】の力を発現させた。
「あはは、ほろぶ? ほろび? ひゃは、アハハはハハ!!!」
 狂い果てるまでに内に溜め込んできた膨大な血と命が解放され、不浄なる蝙蝠や魔犬の群れが姿を現す。本能だけでこれほどの力を操るとは、元は相当に格の高い吸血鬼だったのだろう――だが、獣の群れに囲まれたところで、璃奈の表情は小揺るぎもしない。

「呪力解放……いくよ、黒桜……」
 璃奈は手にした呪槍・黒桜を大きく振りかぶりつつ、周囲に無限の魔剣を顕現させる。
 刃を一閃すると同時に、解放された呪力は黒い桜の花弁のような形を取って吹き荒れ、射出される無数の魔剣とともに嵐を巻き起こした。
『ギャウンッ?!』『ギィッ!!』
 呪力の桜吹雪と魔剣の豪雨の合わせ技は、眷属の群れをまとめて吹き飛ばすのに十分な威力があった。獣どもは断末魔の悲鳴を上げてなぎ払われて、元の血の滴に還っていく。

「アハハハ、凄いスゴい! キャハハハ!」
 エレーネはその光景を見てなお愉しげに笑いつつ、さらなる眷属の群れを喚び続ける。
 何百という数の暴力でもって攻めれば、呪力の嵐の中をかい潜る獣も出てくるだろう。もはや戦法と呼べるものではないごり押しだが、それなりに脅威ではあった。
「力を貸して、アンサラー……」
 璃奈は呪槍にかわって魔剣「アンサラー」を鞘から引き抜き、その幅広の刀身で眷属の攻撃を受け止める。すると剣に籠められた魔力が、敵から受けた攻撃の威力を跳ね返す。
『グギャァッ!?』
「アハハはハハ!」
 自らの不浄の力によって滅びる眷属。それを見たエレーネは何が可笑しいのかますます笑い、今度は自らの爪牙をもって襲い掛かって来た。完全に狂いきってしまっているが、彼女の膂力や速度が他の獣とは比較にならないことは言うまでもない。

「力だけはあるみたいだね……でも、言ったはずだよ……」
 本能のままに迫ってくる敵を、璃奈は冷静に迎撃する。威力や速度が増したところで、ただ飛び掛かってくるだけの単調な攻撃、やはりアンサラーによる反射は容易だった。
「きゃははハハは……?」
 爪が振り下ろされた瞬間、血飛沫が上がったのは璃奈ではなくエレーネのほうだった。
 きょとんと首を傾げる吸血鬼に、魔剣の巫女媛はそのままカウンターを実行。至近距離から斉射された無限の魔剣が、敵を串刺しにして呪力で侵食していく。
「あは、アハハ? いた、い?」
 狂った思考は苦痛を正しく認識しないが、肉体へのダメージは確実に蓄積されていく。
 全身に剣を突き刺されたままよろめくエレーネに、璃奈はすっと流れるような足運びで間合いを詰め。妖刀・九尾乃神太刀を構え、気魄とともに渾身の一刀を放つ。

「闇の領域だろうと、辿り着いてみせる……!」
 巫女媛の力で強化されたその妖刀には、超常の存在の不死や再生を封じる力があった。
 それは吸血鬼の天敵となる妖力。研ぎ澄まされた刃に斬り伏せられたエレーネの体は、それ以降の再生を停止する。
「あぎゃぁッ?!」
 獣のような悲鳴を上げて、血溜まりの中に崩れ落ちる吸血鬼。全身の出血は止まらず、傷口が塞がることもない。それは狂えるオブリビオンが追い詰められている証だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
わたしを差し置いて吸血姫とはね。
既に理性も無いし、自身の名すら思い出せなさそうだけど…。
せめて、一思いに眠らせて解放してあげるわ。

【吸血姫の覚醒】で真の姿を解放。

真祖の魔力による多属性の魔力弾の連射【属性攻撃、高速・多重詠唱、弾幕、誘導弾、全力魔法】を放ち牽制。【念動力】で瞬間的に動きを拘束し、
本命の魔力砲撃【高速詠唱、全力魔法、砲撃、破魔】で攻撃

敵の攻撃を高速飛行と【見切り】で回避し、こちらも【怪力】と【覚醒】の膂力による攻撃を叩き込み、追撃の魔力弾・魔力砲撃を加えるわ。

わたしも膂力と速度は自身があるのよね

最後は【破魔】と【聖属性】も加えた【限界突破】【神槍グングニル】を叩き込んであげるわ!



「わたしを差し置いて吸血姫とはね」
 真祖の血を継ぐ元名家の令嬢であるフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は、"姫"と呼ぶにはあまりに無様な醜態を見せるエレーネに眉をひそめる。称号が被ったのはただの偶然だが、それでも同列にされたようでいい気分はしない。
「既に理性も無いし、自身の名すら思い出せなさそうだけど……」
 異端の神々に肉体と魂を奪われた狂えるオブリビオンに、もはやかつての面影は無い。
 もし自分達がここを通らねば、彼女はずっとこのまま辺境を彷徨い続けたのだろうか。そう思えば少しだけ憐れに思う気持ちもわいてくる。

「せめて、一思いに眠らせて解放してあげるわ」
「アハハハはは! いやよ嫌イヤ、まだねムたく無いモの!」
 それが真に誇りある吸血鬼の姫としての振る舞いだろうと、フレミアは穏やかに笑う。
 対するエレーネは狂った笑い声を荒野に響かせて、子供のように無邪気に飛び掛かる。【夜天の鬼】たるその身に備わった怪力を、手加減する理性などあるはずもない。
「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
 この狂姫を迎え撃つために、フレミアは【吸血姫の覚醒】で真の姿を解放。幼げな容貌から17~8歳程の外見へと成長を遂げ、背中には4対の真紅の翼を広げる。爆発的な魔力を身にまとったその姿には、誰もが畏怖を禁じ得ぬほどの存在感と美しさがあった。

「アハハハは! さあ踊りましょウ!」
「ええ、遊んであげるわ」
 策もなくまっすぐに突っ込んでくるエレーネに、フレミアは牽制として魔力弾を放つ。
 真祖の魔力を込めた多属性の弾丸は、牽制とはいえ油断ならない威力があるが、相手はそれを全身に受けながら一直線に進んでくる。
「理性のない相手に駆け引きはあまり意味がないようね」
 ならばとフレミアは念動力を発生させ、力尽くでエレーネの動きを拘束しようとする。
 覚醒した吸血姫の強力な思念波が物理的な力となり、見えない糸に絡まったように敵が足を止めた。

「あら、あらあラらラ? なになになぁに?」
 見えざる手に捕まったエレーネはきょとんとしながら強引に拘束を振り解こうとする。
 彼女の怪力を考えれば止めていられるのはあくまで瞬間的なものだろう。だがその間にフレミアは詠唱を行い、本命となる魔力砲撃を放つ準備を整えていた。
「喰らいなさい!」
「きゃうッ!!?」
 真紅に輝く巨大な魔力の砲弾が、拘束を解いた直後の標的に直撃する。これには流石のエレーネも堪えたらしく、悲鳴を上げて大きくのけぞった。常に笑っているため把握し辛いが、かなりのダメージになったのは間違いない。

「あは、いたい、オモシろい、イたオもしロい!」
 エレーネはすぐに体勢を立て直すと、これまで以上に鬼気迫る笑みで"遊び相手"に掴みかかる。対するフレミアは真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を構え、正面から迎え撃つ体勢を取る。
「わたしも膂力と速度は自信があるのよね」
 瞬間移動と見紛うほどの速さで空を翔け、乱暴な敵の攻撃を躱しざまに反撃の一突き。
 覚醒中の吸血姫の膂力は、高位の竜種と同等かそれ以上であり、胸を突かれたエレーネの体は破城槌でも受けたかのように吹っ飛ばされた。

「なに、なになにナに!!?」
「まだよ」
 目を白黒させるエレーネの元に、追撃の魔力弾・魔力砲撃の弾幕を浴びせるフレミア。
 逆襲の機会を与えずに純然たる力で敵を完封する姿は、強者としての風格を示すもの。為す術もない相手を見下ろしながら、彼女は魔槍に真祖の魔力を集束させていく。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……」
 限界以上に圧縮された魔力が形成するのは、全長数メートルに及ぶ真紅の槍。フレミアはそこに破魔の力と聖属性を加えることで、神殺しの槍をさらなる段階へと昇華させる。

「消し飛びなさい……! 神槍グングニル!!」
 完成した吸血鬼殺しの神槍を、フレミアは渾身の膂力をもってエレーネへと投擲する。
 それは紅い流星の如く戦場を翔け抜けていき、避ける間もなく標的に叩き込まれると、地形が一変するほどの大爆発を起こした。
「―――――ッ!!!!!」
 爆心地で神槍の直撃を受けたエレーネは、爆音に紛れて言葉にならない絶叫を上げる。
 その胸には大きな風穴が穿たれ、かつての栄光の象徴だったドレスもボロボロに破け、見るも無惨な姿となっていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
隠されていた大きな謎の一つが、遂に暴かれた。
階層状の世界と、知られざる『常闇の燎原』。
だがそれでも、『真なる敵』には未だ届かず……
■闘
あれは、狂えるオブリビオン……異様な力を感じるな。
何か訊けることがあればよかったが、今は討つ事に専念すべし。

先ずは、召喚される眷族たちに対応せねばな。
次々と襲い掛かる者達の動きを【野生の勘】で読みつつ、
薙刀をぶん回し【衝撃波】を発しながら大群へ潜り込む。

上手く入り込んだら薙刀を放り投げ、【早業】の抜刀術から
【破魔】の力を込めた【空薙・舞】を放ち、【範囲攻撃】で
全員纏めて斬り祓う!
此の路の先には、一体何があるというのか……

※アドリブ歓迎・不採用可



「隠されていた大きな謎の一つが、遂に暴かれた」
 それがダークセイヴァーでの戦いに大きな進展を与える出来事であると、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は強く感じていた。100年に及ぶヴァンパイアの絶対的な支配が、"地上"ではなく"地下"で行われていたとは、まさに世界観の一変する真実である。
「階層状の世界と、知られざる『常闇の燎原』。だがそれでも、『真なる敵』には未だ届かず……」
 如何にすればこの世界を敵の支配から解放できるのか。その答えはまた遠のいたように感じられる。だが、ここで歩みを止めれば真実はまた常闇の中だ。闇の向こうにある真実を見極めるため、進み続ける以外の道を彼は考えもしなかった。

「あれは、狂えるオブリビオン……異様な力を感じるな」
 辺境の果てを目指す清綱の前に現れたのは、異端の神に憑かれた『吸血姫エレーネ』。
 理性を失った彼女は狂った笑みを表情に張り付けたまま、喜と楽が入り混じった殺意を猟兵に向ける。
「何か訊けることがあればよかったが、今は討つ事に専念すべし」
「アハハ、あなタも遊んデくれルの? アハハはハハ!」
 清綱が戦いの構えを取ると、闘志に反応したエレーネは翼をバタバタと羽ばたかせる。
 すると、これまでの戦いで流れた血溜まりがボコボコと泡立ち【不死の王】の眷属たる蝙蝠や魔犬の群れが召喚された。

「先ずは、あの眷族たちに対応せねばな」
 狂える主に仕える魔獣の群れは、不浄の力を纏った爪牙を剥き出しにして襲い掛かる。
 織久は大薙刀「真武」を手にこれを迎え撃たんと、眼光鋭く敵集団の動きを見極める。
「本能のままに暴れる獣ならば、動きも読みやすい」
 向けられる殺意を鋭敏に察知する野性の勘が、どう対処すべきかを彼に教えてくれる。
 青白く輝く刃ををぶおんと大きくぶん回すと、豪快な斬撃が衝撃波を生み、押し寄せる大群を薙ぎ払った。

『ギギャァ!?』『ギャウッ!!』
 斬り祓われた眷属達の悲鳴が響き渡る中で、織久はさらに薙刀を振るい、寄りつく敵の悉くを退けつつ大群の中へ潜り込んでいく。雲霞の如き猛攻を押し返し、前に進み続けるその技量は卓越したものだ。
「ここならば良かろう……全員纏めて斬り祓う!」
 上手く敵中に潜り込めたところで、彼は薙刀をばっと放り投げ、目にも留まらぬ早業で佩刀「心切」を抜き放つ。神速の抜刀術が描いた軌跡が、闇夜の辺境に一条の閃光を生み――それは無数の斬撃波となって戦場に踊った。

「この刃からは逃れられまい……秘儀・空薙」
 其れは清綱が鍛錬の末に編み出した奥義のひとつ。虚空より生じた無数の刃は幾何学的な軌道を描きながら複雑に飛翔し敵を切り刻む。彼があえて敵陣に身を投じる危険を侵したのは、技の範囲内に全ての敵を捉えるためだった。
「きらきら、きらきら……きゃぁっ?!!」
 斬撃の嵐は数多の獣を斬り祓うのみならず、その召喚主たるエレーネの元にも届いた。
 舞い踊る刃にその身を切り裂かれ、吸血鬼の黒いドレスが真っ赤な血に染まっていく。

「此の路の先には、一体何があるというのか……」
 清綱が刀を再び鞘に納めた時には、周辺にいた不浄の獣はことごとく一掃されていた。
 彼の視線は血溜まりに膝をつくエレーネと、その先にある常闇の地に向けられている。その道程は未だ遠く――だからこそ、ここで立ち止まっているつもりは無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
少し、哀れみを覚えますね

●瞬間思考力で四肢と翼の高速の連撃を見切り、怪力で振るう剣と盾で捌きなながら相手の挙動を●情報収集し分析
理性無く戦術も使えぬ以上、こちらの行動にどのような反応をするかは一定の域を超える事は無いでしょう

さて、粗方パターンは見た以上…一曲、お付き合い頂きます

UCにて実現する「自身の挙動で相手の攻撃や防御を誘発する」挙動で敵の行動を完全に制御
好機と思い込んで勢いづいた攻撃も、手の内が筒抜けならば最早脅威足り得ず
予定調和の連撃を踊るように躱し、受け流し、そのままターンして背後に回り

…虚しいものですね
骸の海にて眠って頂きます

剣で両断

この先の真実を、私は確かめねばなりませんので



「少し、哀れみを覚えますね」
 狂えるオブリビオンと成り果て、かつての威光も理性も失った吸血鬼に、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は独りごちる。敵とはいえこのように肉体も魂も奪われ、辺境を彷徨う姿には騎士として心苦しいものがあった。
「アハハはははハ……♪」
 だが、そのような同情など今のエレーネには関係ない事だろう。かつての【紅血の姫】は狂った笑みを浮かべて、傷ついた体を優雅に動かす。まるで舞踏会の姫のような所作だが、輝く血紋に彩られた手足には殺意が宿っていた。

「さア、踊りまショ……♪」
「ダンスをご所望ですか」
 吸血姫による殺戮の舞踏を、トリテレイアは両手に構えた「電脳禁忌剣アレクシア」と「重質量大型シールド」でガードする。正気を失えどもヴァンパイアの身体能力で繰り出される超高速の連撃は脅威だったが、彼の瞬間思考・演算速度であれば対応できる。
(理性無く戦術も使えぬ以上、こちらの行動にどのような反応をするかは一定の域を超える事は無いでしょう)
 高速演算で四肢と翼の動作を見切り、武具の強度とウォーマシンの怪力で捌きながら、相手の挙動を冷静に分析する。本能の侭に暴れる怪物は知恵を以って制する――御伽噺の騎士も時として強敵を討つために策を弄するものだ。

「さて、粗方パターンは見た以上……一曲、お付き合い頂きます」
 分析を完了したトリテレイアは【機械騎士の舞踏先導】を発動し、自らの視線や挙動に幾つかのフェイクを混ぜ始める。理性のない相手でも分かるよう、時としてあからさまなほど大胆に、仕掛けてくるのを誘っている。
「あはハハは! えエ、踊りマしょウ!」
 騎士兜の中でゆらゆらと動く単眼センサーの翠光に惹かれ、攻撃を仕掛けるエレーネ。
 トリテレイアは大盾でそれを防ぎつつ、よろめくようにぐらりと体勢を崩してみせる。相手からは彼が攻撃を受け損ない、隙を晒したように見えるだろう。

「アハハはハハ! 楽しイ、愉シい!」
 好機と思い込んだエレーネは嬉々として勢いづくが、既に手の内が筒抜けである以上、もはや彼女の攻撃が脅威足り得ることはなかった。予定調和の連撃をトリテレイアは踊るように躱し、受け流し、そのままターンして背後に回り込む。
「あハハは……あラ?」
「……虚しいものですね。骸の海にて眠って頂きます」
 ふいに視界から"ダンスパートナー"の姿が消えて、エレーネがきょとんと首を傾げる。
 狂い笑う吸血姫とは対照的に、彼の声色は冷めたもので。完全に思惑通りに動かされ、致命的な隙を晒した狂えるオブリビオンに、白銀に煌めく電脳禁忌剣が振り下ろされる。

「この先の真実を、私は確かめねばなりませんので」
「あ……ああアアアアッ!!!?」
 辺境に響く甲高い絶叫。トリテレイアの一撃はエレーネの片翼と片腕を両断していた。
 崩れ落ちる敵をよそに、機械騎士の目は既にこの先の領域を――『常闇の燎原』に至る道筋を見据え、決意の輝きを放っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…まさか、私達が地上だと思っていた場所が地の底だったなんてね

…正直、今までの常識が崩れそうで困惑しているけど、うん
一先ず、今は眼前の敵に集中しましょうか

…思い悩むのは、この世界の果てを見てからでも遅くは無いのだから

過去の戦闘知識から敵が眷族を召喚する前に「黄金の楔」を投擲して武器改造を施し、
巨大な球形の拷問具で眷族ごと敵を捕縛する早業で動きを封じてUCを発動

…お前自身に何か怨みがある訳じゃ無いけど、今は虫の居所が悪いの
この気持ちを晴らす為に、八つ当たりさせて貰うわ

「写し身の呪詛」の残像で円陣を形成して限界突破した魔力を溜め、
高温高圧の核融合のオーラで防御ごと敵を浄化する核熱属性攻撃を行う



「……まさか、私達が地上だと思っていた場所が地の底だったなんてね」
 高位の吸血鬼らによって秘匿されてきた真実は、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)に少なからぬ衝撃を与えていた。この世界の救済と人類の繁栄のために長く戦い続けてきたが、その世界自体への認識が根本から違っていたとは。
「……正直、今までの常識が崩れそうで困惑しているけど、うん。一先ず、今は眼前の敵に集中しましょうか」
 顔に出そうになった動揺を押さえ込んで、彼女は毅然とした表情で吸血鬼と対峙する。
 戦いの最中に心を乱すのがどれだけ危険な事かは知っている。狂気に堕ちた吸血鬼とはいえ、油断すれば足元をすくわれるだろう。

「……思い悩むのは、この世界の果てを見てからでも遅くは無いのだから」
 この辺境を越えたさらに先にあるという『常闇の燎原』、そこに必ず辿り着いてみせるという決意を秘めて、拳を握りしめるリーヴァルディ。その道程を阻む吸血姫エレーネは満身創痍となりながらも戦いを止める気配はなく、耳障りな笑い声を上げている。
「アハハはハハ……モッと、もっト、遊びまショ……♪」
 彼女の体から流れ出した大量の血液は、足元で大きな血の池を作っており、その水面がぼこぼこと不気味に泡立ち始める。リーヴァルディはそれが眷属を召喚される前兆だと、過去の戦闘知識から判断した。

「……狂っていようがいまいが、お前達の手口は同じね」
 リーヴァルディが投げ放つのは魔法黄金で製造された「黄金の楔」。鋭い軌道を描いてエレーネに突き刺さったそれは、流れる血潮を啜り巨大な球形の拷問具に形状を変える。
「きゃッ?! なニ、なにナに……?」
 召喚したての眷属ごと黄金の球体に捕らえられた【不死の王】は、困惑しつつガリガリと引っ掻く。だがナイフのように鋭い吸血鬼の爪牙でも、それに傷をつける事はできても破壊するのは容易ではなかった。

「……お前自身に何か怨みがある訳じゃ無いけど、今は虫の居所が悪いの。この気持ちを晴らす為に、八つ当たりさせて貰うわ」
 捕縛した敵を鋭い眼光で睨め付けて、リーヴァルディは【吸血鬼狩りの業・天墜の型】を発動。予め仕掛けておいた「写し身の呪詛」により作成した自分の残像達で、敵を取り囲むように円陣を形成する。
「……元素変換、術式反転」
 複数の分身達と共に彼女が組み上げるのは黄金錬成の反転術式。黄金の楔の素材である魔法黄金を触媒に、臨界を越えた魔力で元素変換を起こし、太陽の力を顕現させる奥義。仮に科学的にその現象を解釈するのなら――常温核融合による擬似太陽の生成である。

「天より墜ちよ、太陽の輝き」

 術式の完成を告げる結びの一言と同時、目を開けていられない程の光が戦場を照らす。
 闇に支配された地下世界に顕現する、超高温高圧の疑似太陽――それは重力に導かれて直下のエレーネ目掛けて落ちていく。
「ひッ……い、イヤ、いやあああァァァァァァァッ!!!!?!」
 たとえ正気を失っていても、本能で理解する吸血鬼の天敵。その燦然たる輝きの前ではいかなる防御も意味を成さない。喉が裂けるような絶叫を上げながら、不浄なる吸血鬼の肉体は浄化の陽光に焼き焦がされていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
吸血鬼も、神も。こうなってしまえば獣と変わりありませんね。
尤も、理性のない獣であろうと立ちふさがるのであれば、排除して通るのみです。

両手に「デリンジャー」を構え、氷の弾丸の『乱れ撃ち』による『威嚇射撃』で吸血姫エレーネの足を止め、接近しての攻撃をさせないようにしつつ、地面を凍らせることでUCの布石を打ちます。

地面をある程度凍らせることができたら敢えて連射を抑え、敵が接近できるように。露骨な罠ですが、理性のないその身ではそれも分かりはしないでしょう。

敵が凍った地面を踏んだら【氷槍弾】、足元からの氷の槍で敵を『串刺し』にし縫い付け動きを封じたところを氷の弾丸で撃ち抜きます。



「吸血鬼も、神も。こうなってしまえば獣と変わりありませんね」
 かつての威光は見る影もなく、辺境を彷徨う怪物と成り果てた狂えるオブリビオンを、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は冷ややかな目で見つめていた。アレもかつては傲慢な領主だったのだろうが、ああも落ちぶれては怒りさえ湧かない。
「尤も、理性のない獣であろうと立ちふさがるのであれば、排除して通るのみです」
「ア……あハは……ハハはハハ……!」
 対するエレーネは息も絶え絶えでありながら、三日月のように歪んだ笑みを浮かべる。
 死期迫れども恐れる風もなく、奔放に破壊と殺戮を撒き散らそうとする様は、まさしく狂獣であった。

「夜ハ終わらなイわ……さア、遊びマしょウ、アハハはははは!!」
 若い乙女の姿に理外の膂力を漲らせ、【夜天の鬼】が迫る。その血塗れの細腕で戯れにひと撫でされるだけで、人間はたやすく壊れてしまう。セルマはそれをよく知っている。
「近寄らせませんよ」
 彼女は両手にデリンジャーを構え、敵の足元を狙って氷の弾丸を乱れ撃つ。どんな怪力だろうとただ殴り掛かるしか能がないのなら、接近されなければ全く脅威にはならない。この距離は射手の支配する間合いだった。

「きゃッ?! アハはは、冷タい!」
 氷の弾丸が足元に着弾すると、エレーネは反射的に後ろに下がる。狂気で恐怖感がマヒしていても、本能で危険を避ける事はあるようだ。それを見たセルマは威嚇射撃を続け、敵の足をその場に釘付けにする。
(あまり長くは続けられませんが)
 秘匿携行を重視したデリンジャーの装填数は少なく、乱射すればすぐに弾切れになる。
 スカートの中にもう二丁ほど予備を隠し持っているが、それでもどこかのタイミングで装填を挟まなければならない。その隙をあの狂った猛獣は見逃さないだろう。

(そろそろ頃合いですね)
 しかしセルマは涼しげな顔を崩さぬまま、"仕込み"を済ませると敢えて連射を抑えた。
 射撃の勢いが弱まれば、敵はチャンスとばかりに「アハハハは♪」と笑いながらこちらに接近してくる。なぜ彼女が手を緩めたのか、その意図を考えもせずに。
「仕込みはすでに済んでいます」
「あハ……っ?!」
 威嚇射撃でばら撒かれた氷の弾丸により、両者の間にある地面は凍りついている。そこにエレーネが踏み込めば、足元から勢いよく飛び出した氷の槍が、彼女を串刺しにした。

「露骨な罠ですが、理性のないその身ではそれも分かりはしないでしょう」
 全てはセルマの作戦通り、まんまと【氷槍弾】によるトラップに引っ掛かった獲物は、氷の槍で地面に縫い付けられる。手足や翼や胴を貫通するほど深く突き刺さったそれは、吸血鬼の怪力でも簡単には抜けない。
「あれ、あれレ? どうシて? ナんで……?」
「こんな所で時間をかけている暇はありませんから」
 もがきながら困惑するエレーネに、絶対零度の射手がデリンジャーの銃口を向ける。
 2発の発砲音が続け様に響き、放たれた氷弾が標的の眉間と心臓を的確に撃ち抜いた。

「アはハハ……終ワリ……? そう、これで終わりなのね……」

 最期の瞬間に吸血鬼はまた笑みを浮かべ、氷の槍と地面を赤く濡らしながら息絶える。
 その遺骸は灰となって崩れ落ち、辺境の風に散らされていく――吸血姫エレーネの死を見届けたセルマは、腿のホルスターに銃を収めると、辺境の果てに向かって歩き始めた。
「先を急ぎましょう」
 第3層の手掛かりを求め、未知なる『常闇の燎原』を目指す探索行は始まったばかり。
 狂えるオブリビオンを倒しても、次なる脅威はすぐそこで猟兵を待ち構えていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『未明の山岳地』

POW   :    岩壁を登り体力頼みの最短ルートで向かう

SPD   :    足場の崩れにくいルートを目視で探す

WIZ   :    天気や地形情報から安全なルートを割り出す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 狂えるオブリビオンと化したエレーネを倒した猟兵達は、辺境のさらに奥地へと進む。
 次に彼らの前に立ち塞がったのは、オブリビオンではなく自然の脅威――天を貫かんとするかの如くそそり立つ、峻厳な山々の連なりであった。

 草木も生えぬごつごつとした山肌に風が吹き付けて、獣の唸り声にも似た音を奏でる。
 岩壁が空を遮るためか、あるいは『常闇の燎原』に近付いている証か、山中は平地よりも暗く見通しが悪い。おまけに見上げればいつ天気が変わってもおかしくない空模様だ。

 天然の要害と呼ぶべきこの険しい山岳地を、猟兵達はどうにかして越えねばならない。
 坂を越え、岩壁を登り、崖を飛び越え、時には土砂崩れや荒天等のトラブルにも対処し――オブリビオンとの戦闘とは勝手が異なるが、これも知識と技と力が試される戦いだ。
 なるべく自分にあったルートを考え、それを選択すれば幾分か攻略も楽になるだろう。

 ここは避けられない難所だが、逆に越えられさえすれば目的地まではあと一息となる。
 徐々に深まる闇の気配を肌で感じながら、猟兵達は各自登山の準備を始めるのだった。
カタリナ・エスペランサ
ある種の最果て、一つの区切りを目指すんだもの。
これくらいの障害は立ちはだかるものよね
未踏領域も望むところ。
何が待ち構えていようと照らし、切り拓くのが暁の道行よ

【架空神権】、事象《ハッキング》に特化した黒風を纏い《空中浮遊》して進むわ
この黒風は周囲を解析する《情報収集+見切り》のセンサーであり、
同時に悪影響全般へのフィルターを兼ねた《環境耐性+オーラ防御》でもある
続く味方への手助けとこの領域に及ぼせる影響の確認も兼ねて
黒風の侵蝕による地形改竄、安全な階段や通り道の作成も試してみましょうか

……此度の目的地まであと少し
常闇の燎原。神紛いの領域みたいに特殊なオブリビオンの縄張りなのか、それとも……。



「ある種の最果て、一つの区切りを目指すんだもの。これくらいの障害は立ちはだかるものよね」
 眼前に現れた天然の障害を見上げ、やる気は十分といった笑みを見せるのはカタリナ。
 或いはここに生きた人間が立ち入るのは自分達が初めてかもしれない。先人の足跡なき土地を攻略するにあたり、彼女の中では恐れよりも探求心が勝ったようだ。
「未踏領域も望むところ。何が待ち構えていようと照らし、切り拓くのが暁の道行よ」
 それは彼女と同化した"暁の主"が、未来を導く事を至上の存在意義とする魔神だったのも無関係ではあるまい。後に続く者達の先駆けとして、大きく、大きく、翼を広げる。

「さぁて、少しばかり書き換えるわよ?」
 カタリナは【架空神権 ― domination ―】を発動し、黒い風に身を包んで攻略を開始する。この風は事象の書き換え(ハッキング)に特化した魔神の権能で、周囲を解析するセンサーであり、悪影響全般へのフィルターを兼ねた防御手段でもある。
「これで進みやすくなるでしょう」
 山岳を吹き抜ける強風を遮れるのは勿論、黒風に乗って空中を浮遊すれば地形の起伏も気にせずに移動できる。落石等の前兆があれば事前に察知し、進路変更で危険を避ける。山に入って早々に訪れる難所を、彼女は悠々と越えていった。

「この領域にどこまで影響を及ぼせるかも確かめておかないとね」
 黒風による危機回避に慣れてくると、カタリナはそこから更に一段階踏み込んだ権能の使用――即ち地形そのものの改竄を試みる。事象を好きに書き換えられるということは、理論上はこの山岳地帯を平坦な土地に変えてしまうこともできる筈なのだ。
「流石にそこまでは私のキャパシティが足りないけど……」
 山肌を撫でるように黒風を吹かせると、進路を塞ぐ土砂がひとりでに滑り落ちていき、急勾配の斜面には階段が出来上がる。魔神本来の力と比べればささやかな書き換えだが、今のカタリナが負担なく行使できるのはこの程度。そして十分な成果であった。

「これで続く味方への手助けにもなるでしょう」
 カタリナが改変した山の地形は、本人が移動してもすぐに元通りになるわけではない。もし他の猟兵が自分と同じ道を通る事があれば、その時は幾分と楽に通過できるはずだ。
 満足げに笑みを浮かべつつ、彼女はこの辺境の果てで自分の権能がどこまで及ぶのか、確かめるように風を踊らせる。未踏領域の攻略を楽しみつつも決して油断はしていない。
「今はこの程度かしらね」
 道なき道を閃風の舞手が通り抜けていった後には、細くも確かな通り道が出来上がる。
 これが"暁の主"の道行。彼女は道を辿る者ではなく、常に道を切り拓く者であった。

「……此度の目的地まであと少し」
 山を越えた先を見据えるカタリナの瞳は真剣で、微かな異変にも反応できるよう感覚は研ぎ澄まされている。険しくともここはあくまで通過地点、迂闊な消耗は避けるべきだ。
「常闇の燎原。神紛いの領域みたいに特殊なオブリビオンの縄張りなのか、それとも……」
 かつてない脅威を想定し、その上で乗り越える覚悟を決め、先に進み続けるカタリナ。
 この先に待ち構える底知れない常闇の気配を、彼女の黒い風は感じ始めていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「えっと、ハリセンにシュークリームに…」
自然の脅威を前に必要なものを鞄に詰め込んでいく。カビパンは荷造りをこなしていた。その理由はいたってシンプル。山岳地を超えたくないからである。まったく、こんな山を登山なんて冗談じゃない。そんなものは馬謖だかラインホルト・メスナーだかがやってればいいのよ。

「ん~カレーうどんはいらないわ」
夜逃げの準備が整ったカビパンは帰った。帰り道はとても険しかった。坂を越え、岩壁を登り、崖を飛び越え、時には土砂崩れや荒天等のトラブルにも適切に対処し敢然と自然の驚異に立ち向かう。帰宅部のエースである彼女が見せる魅力は、鮮烈な輝きを放っていた。

帰宅先が常闇の燎原だとは知らずに。



「えっと、ハリセンにシュークリームに……」
 見る者を圧倒する自然の脅威を前にして、必要なものを鞄に詰め込んでいくカビパン。
 荷造りの内容はまるで遠足の準備のようだが、果たしてそれで山を登れるのだろうか。そんな疑問に対する理由はいたってシンプル――彼女は山岳地を超えたくないのである。
「まったく、こんな山を登山なんて冗談じゃない。そんなものは馬謖だかラインホルト・メスナーだかがやってればいいのよ」
 確かに目の前にそびえ立つのは、十分な備えをしてもなお危険と隣合わせの山ばかり。
 山を舐めてかかって事故にあい、そのまま生命を落とす登山家の例は枚挙に暇がない。なので彼女の判断は常識的とも言えるが、依頼からもここで離脱するつもりだろうか。

「ん~カレーうどんはいらないわ」
 以前はあれだけこだわっていたはずのカレー屋もやめてしまったのだろうか。どんぶりを山の麓に置き去りにして、夜逃げの準備が整ったカビパンはなんと本当に帰りだした。
 だがここは既に辺境の奥地であり、引き返すにしても簡単なことではない。帰還を決断したカビパンの行く手には、とても険しい帰り道が待っていた。
「ちょっと邪魔しないで頂戴。私は家に帰るのよ!」
 だが帰宅にかける彼女の意気込みはこれまでとは違う。何に邪魔されても絶対に帰るんだという決意の元で勇ましく困難に立ち向かっていく。できればその情熱の1%だけでも普通に前に進むために使って欲しくなるが、今それを言っても詮の無いことだろう。

「帰宅部のエースである私の実力を見せてあげるわ」
 今日のカビパンは有言実行だった。意外なほど高い身体能力で坂を越え、岩壁を登り、崖を飛び越え、疲れたらシュークリームを食べて一休み。土砂崩れに襲われればハリセンでしばき飛ばし、天気が荒れてくればギャグの力で風も暗雲も吹き飛ばす。
「あぁ……めんどくさい。でも帰宅するために頑張らないと」
 進むにつれて道はどんどん険しく――否、もはや道すらない荒れた大地だけになるが、どんなトラブルにも適切に対処し、敢然と自然の驚異に立ち向かう。自称帰宅部のエースの名にふさわしく彼女が見せる魅力は、戦列な輝きを放っていた。

「それにしても家はまだかしら。なんだか暗くなってきたけど」
 なかなか目的地につかない帰路に疑問を覚えつつも、カビパンはテクテクと先に進み続ける。険しい坂を、聳え立つ岩壁を、地を裂く崖を、土砂崩れや荒天すら越えていき――家に帰るはずが、逆に『常闇の燎原』に向かって山路を進んでいることに気付かぬまま。
 いったいどんな方向音痴か、あるいはこれもお得意のボケの範疇なのか。自分の帰宅先がこの世の果てだと知らずに、彼女はまっすぐ"帰路"を進み続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルル・マーナガルム
ロープもシャベルも持ってきたし
雪山での長距離行軍訓練に比べれば
全然余裕だよ
パパッと登って
次に備えなきゃね
それじゃ
ムーンドッグ部隊、出撃!(UC使用)
何匹かに先行してもらって
行く先の地形や天候を
細かく調べてきてもらおう
収集した地形情報や
ドローンから送られる観測データは
ハティが精査
算出されたルートの幾つかが
ゴーグルに表示されるよ

でもここって地下なんだよね
それなのに天気が変わるって事は雲があって…
つまり天井まで結構な高度があるって事?
もしくは
天候も再現する箱庭みたいな空間だったり?
『いずれにしろ予測できるのは
第3層へ至る道のりは長く険しい
という事です』
その道を切り拓くのがボクら(猟兵)ってワケだね



「ロープもシャベルも持ってきたし、雪山での長距離行軍訓練に比べれば全然余裕だよ」
 立ちはだかるのが敵から過酷な山岳に変わっても、ウルルには油断も不安も一切ない。
 軍隊仕込みの訓練経験は彼女の血肉となり、猟兵活動においても大いに役立っている。登山具に忘れ物がないか最終チェックを行った後、マウンテンジャケットの前を閉める。
「パパッと登って、次に備えなきゃね」
 未知なる『常闇の燎原』を目指して、少女は意気揚々と山を登りだす。そのお供には相棒のハティに加え、彼と同じ外見をしたロボット犬の「ムーンドッグ部隊」が付き従う。

「それじゃ、ムーンドッグ部隊、出撃!」
 【ムーンドッグス・ア・ゴーゴー!】の指令と共に、数匹のロボット犬が本隊から先行して走りだす。彼らの役割は斥候――行く先の地形や天候を調べて、ルートを割り出す為のデータを集めるのが仕事だ。
『狼の狩りをご覧にいれましょう』
 搭載された各種センサーや観測ドローン『M.N.N.』を活用し、地形情報の収集に務めるロボット犬。その観測データは独自の無線通信を通じて親機であるハティの元に送られ、一括で精査が行われる。彼らは1つの部隊にして頭脳を共有した群体でもあるのだ。

『データの精査が完了しました。このルートであれば比較的危険は少ないかと』
 ハティが算出したルートの幾つかが、ウルルの被ったゴーグルのディスプレイに表示される。地形の起伏は少ないがやや風の強いルート、岩壁などの難所を避けて遠回りをするルートなど、一長一短のある選択肢の中から、最終的にはウルルが決定を下す。
「じゃあこのルートにしよう。ナビゲートよろしくね」
『了解。ムーンドッグ部隊は引き続き偵察を行います』
 現実の視界と重なるように表示される案内の矢印に従って、道なき山路を進むウルル。
 ハティとムーンドッグ部隊は移動中もリアルタイムで変化する山岳地の状況を調査し、その都度ルートの修正や迂回路の算出を行う。

「うん。これなら余裕だね」
 命綱となるロープを腰に結び、安全第一かつ迅速に。比較的安全いルートを選択できたこともあって、山の危険度はウルルの想定を超えるものではなかった。もちろん油断などするはずもない――万が一気が緩んでも、口うるさいお目付け役が傍にいる。
『少し天気が荒れそうです。ここで一旦休憩しましょう』
「わかった」
 観測ドローンによる天候予測に従って、雨風を凌げる場所に身を潜める。ほどなくして上空の暗雲からぱらぱらと雨が降りだし、ぴゅうぴゅうと冷たい風の音が山に木霊する。

「でもここって地下なんだよね。それなのに天気が変わるって事は雲があって……」
 荒れた天気が落ち着くまでの間、ウルルは頭上を見上げてこの世界について考察する。
 ここが地上ではなく地下4層だという事実は、これまで猟兵すら気付いていなかった。それは夜明けがない点を除いて、この地の環境は地上をほぼ再現していた事を意味する。
「つまり天井まで結構な高度があるって事? もしくは、天候も再現する箱庭みたいな空間だったり?」
 どちらにしても途方も無い話だ。これほど広大な空間が地下に、それも何層にも渡って存在すると言うのだから。この環境を作り出すのに何者かの意思が介在しているのなら、人知を超えた力の持ち主だと言う他ない。

『いずれにしろ予測できるのは、第3層へ至る道のりは長く険しい、という事です』
「その道を切り拓くのがボクらってワケだね」
 任務の難しさを改めて認識しても、ウルルの表情に迷いや不安はなかった。困難を乗り越えて未知なる地を制覇する――実に猟兵らしい任務だと、寧ろワクワクしてさえいた。
 雨宿りを終えて風が止むと、彼女らはまた行軍を再開する。ぬかるんだ地面も、険しい障害も、その足を止めることはできなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
新天地を目指すなら、敵を叩いてお終いというわけにもいきませんね

元よりこの世界の住人、見通しの悪い視界には慣れています(暗視・視力)
風の魔力を身に纏い(オーラ防御)、悪条件を少しでも緩和(環境耐性)
服が風ではためかないよう、パイロットスーツの姿(地形耐性)に変身しておく

足場が崩れないルートを見極め(情報収集・悪路走破・足場習熟)、しっかり岩を掴んで【クライミング】
領主の館に忍び込むのと比べたら、難易度が段違いですね……!

風の音に耳を澄まし(聞き耳)、突風の前兆を感じ取れば、
【トリニティ・エンハンス】【全力魔法】【属性攻撃】で風の魔力を解き放ち相殺する(カウンター)



「新天地を目指すなら、敵を叩いてお終いというわけにもいきませんね」
 第3層への探索行はある意味でここからが本番だと、気を引き締めなおすオリヴィア。
 眼前にそびえ立つ山々は険しく、まるで巨大な城塞のようにも見える。闇夜に覆われた暗さがその危険度をさらに増しているが、彼女は臆するふうもなく踏み込んだ。
「元よりこの世界の住人、見通しの悪い視界には慣れています」
 黄金に煌めくダンピールの瞳には、進むべき道がはっきりと見えている。相棒たる破邪の聖槍を杖の代わりにして、慎重ながらも迷いのない足取りで道なき山路を進んでいく。

「思ったよりも風が強い……着替えておいて正解でした」
 今のオリヴィアは強風ではためきやすいシスター服から、体にフィットするパイロットスーツの姿に変身している。登山着としては異質に見えるが、持っている服の中ではこれがベストの格好だった。
「悪条件は少しでも緩和していきましょう」
 さらに彼女はスーツの上から風の魔力を纏う事で、吹き付ける山颪から体を保護する。
 この大気の層は一定の断熱効果もあり、平地よりも低い山の気温から体温を維持する、環境防護服のような役割も果たしていた。

「これで多少は快適になりましたが……」
 それでも、山越えの険しさに変わりはない。オリヴィアは足場をよく見極めて崩れないルートを探し、石突でつついて強度を確かめながら進む。こうした悪路や不安定な足場に対応する技能も身につけているが、それでも気を抜くのは許されない難所だった。
「領主の館に忍び込むのと比べたら、難易度が段違いですね……!」
 山路に続いて立ちはだかったのは、ほぼ垂直に近いのではないかという急勾配の岩壁。
 どんなに警戒心の強い領主の拠点でも、これほど堅固な城壁はなかった。ぼやきつつもこれまで以上に手がかり足がかりを慎重に調べ、張り出した岩をしっかり掴んで登る。

「ふぅ。なんとか登れました」
 吸血鬼との戦いで鍛えられた身体能力に物を言わせ、無事にクライミングを成功させたオリヴィア。だがほっと息吐く間もそこそこに、次なる自然の猛威が彼女に襲い掛かる。
「この音は……!」
 ふいに彼女の耳に飛び込んできたのは風の音。これまでより強い突風の前兆を感じる。
 背後にはたった今登ってきたばかりの崖――ここで吹き飛ばされれば転落は免れない。いくら頑丈な猟兵でも「痛い」では済まない傷を負うだろう。

「大いなる風の加護よ!」
 オリヴィアは一瞬の判断で【トリニティ・エンハンス】を発動。身に纏っていた風の魔力を強化して解き放ち、山頂からの突風を迎え撃った。風と風の衝突により双方の風圧は相殺され、人を吹き飛ばすほどの力を失う。
「危ない所でしたね」
 微風にまで弱まったそれをひらりと受け流し、スーツに付いた泥や土埃を払いのける。
 進むにつれて厳しさを増す山の脅威は、だがそれでも彼女の歩みを阻む事はできない。徐々に慣れてきた様子でペースを上げて、オリヴィアは山登りを続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
※アドリブ歓迎

随分と寂しい場所に来てしまったな。ここではヴァンパイアの支配も行き届かないだろうが…異端の神とやらが、どこかで私達を眺めているんだろうか?

マシンウォーカーを《操縦》して、山岳地帯を進んでいこう。星明かりさえない闇の中、二足戦車のライトだけを便りにするのは心許ないか。【パイロキネシスα】を発動させ、周囲にサイキックの火球を発生させよう。これを松明の代わりにしよう。これで周囲を照らせば、かなり明るくなるはずだ。あとは惑星の探査と同じ要領でいこう。《悪路走破》《環境耐性》《地形耐性》などを駆使して前進していくぞ。《足場習熟》で道なき道を踏み越え、熱線で砕いた岩石を退けながら進もう。


雛菊・璃奈
ここを超えるのは時間が掛かりそう…。
みんな、お願いね…。

ミラ達を【影竜進化】で影竜に進化させ、影に潜航…。
影の中に潜った状態で、山岳地帯の岩山等の影を伝って進んで行くよ…。

影の中なら地形の影響どころか荒天も土砂崩れの影響すら関係ないからね…。
ちょっとズルなところだと、こっそり他の猟兵の影に入って運んでもらえば楽ちん…。

「きゅ~♪」

一応、入れさせて貰ってる猟兵のヒトが土砂崩れとかでピンチになった時、いざとなったら影の中に引き込んで助けるセーフティーの役割もできるから、ギブ&テイクにもなるしね…。
影の中は完全な安全地帯だから、休憩所としても提供できるよ…。

まぁ、それでもズルイって言われそうだけど…



「随分と寂しい場所に来てしまったな」
 人間どころか生物の気配のない山岳地を見渡して、ガーネットはぽつりと呟く。ここで聞こえるのは自分の声を除けば、風と岩の音ばかり。荒涼とした空気からは侵入者を阻む意思のようなものさえ感じるのは、流石に気のせいだろうか。
「ここではヴァンパイアの支配も行き届かないだろうが……異端の神とやらが、どこかで私達を眺めているんだろうか?」
 辺境は異端の神々の蔓延る地。この地帯を縄張りとする神がいてもおかしくはないが、今は刺激しないほうが良いだろう。先に進むことをまず最優先として、彼女は山に挑む。

「ここを超えるのは時間が掛かりそう……。みんな、お願いね……」
 同じ頃、璃奈は同行する仔竜のミラ、クリュウ、アイと共に山越えの準備をしていた。
 彼女が【呪法・影竜進化】の呪文を唱えると、仔竜達は呪力により一時的に急成長し、影竜へと進化を遂げる。暗闇が特に濃いこの一帯では、彼らの能力はうってつけだろう。
「影の中なら地形の影響どころか荒天も土砂崩れの影響すら関係ないからね……」
 璃奈は影竜達と共に近くの影の中に潜ると、そのまま岩山等の影を伝って進んでいく。
 まるで水中を進む潜水艦のように、影に潜航する影竜の力。影のある場所に移動先は限定されるものの、その快適性は地上を行くのとは比較にならない。

(ん、あの光は……?)
 すいすいと影伝いに山路を進んでいると、璃奈は前方に自然のものではない光を見る。それはガーネットが操縦する二足歩行戦車、マシンウォーカーのライトの明かりだった。
「星明かりさえない闇の中、ライトだけを便りにするのは心許ないか」
 ガーネットは二足戦車を操縦しながら【パイロキネシス・α】を発動し、サイキックの火球を発生させて松明代わりにしている。これらとライトの相乗効果で彼女の周囲は明るく照らされ、暗い山中でも視界の確保は万全だった。

「これで良し。あとは惑星の探査と同じ要領でいこう」
 ライトと火球で煌々と辺りを照らしながらマシンウォーカーが前進する。元は未開惑星調査用に開発されたこの機体は、過酷な環境・地形に耐える頑丈さと高い走破性を備え、道なき道を物ともせずにズンズンと踏み越えていく。
「む、道が塞がれているな……だが問題はない」
 行く手に巨大な岩石が転がっているのを見ると、ガーネットは操縦桿を動かして戦車用熱線銃を発射。個人武装を超える出力のビームが障害物を粉砕して道を切り開く。宇宙で生まれた超技術の兵器を阻めるものはなく、探索は極めて順調であった。

「む? この振動は……」
 だが、未開の土地では予期せぬ事故は常に起こりうるもの。ドドドドという不気味な振動音に気付いて辺りを見回すと、近くの斜面で地滑りが起こり、大量の土砂がマシンウォーカーの元に押し寄せて来た。
「これはいかんな」
 取り乱しはしなかったものの、ガーネットの表情が険しくなる。咄嗟に土石流から逃れるように機体を操縦するが、果たして間に合うか――その時、足元が抜けるような一瞬の浮遊感と共に、彼女の視界は真っ暗になった。

「なんだ? 土砂に埋もれた……訳ではないか?」
「突然ごめんね……」
 ガーネットが引き込まれたのは、自分の戦車の影の中。そこには「きゅ~♪」とかわいらしい声で鳴く影竜達と、その主である璃奈がいた。影から外の様子を窺っていた彼女らは、味方のピンチをみると咄嗟にこちら側に潜航させ、土砂崩れから退避させたのだ。
「ではあなたは、ずっと私の影の中に隠れていたということか」
「うん……ちょっとズルいところだけど、こっそり運んでもらえば楽ちんかなって……」
 強い光は大きな影を同時に作りだす。照明で辺りを照らしつつ移動するガーネットは、影竜達の潜伏場所としては最適だったのだ。もちろんタダ乗りさせて貰うだけではなく、危険があった際にはこうしてセーフティの役割を果たすつもりも璃奈にはあったが。

「影の中は完全な安全地帯だから、休憩所としても提供できるよ……。まぁ、それでもズルイって言われそうだけど……」
 予め説明せずにこっそり潜伏していた負い目なのか、バツが悪そうに目をそらす璃奈。
 しかしガーネットもこれで怒りだすほど狭量な人物ではない。影に潜まれるという行為で此方にリスクやデメリットがあったわけではなく、こうして助けてもらってもいる。
「何も問題はない。助けてくれて感謝する」
 貴人としての度量をガーネットが見せると、璃奈は安心したようにほっと息を吐いた。
 元々この山を越えるという目的は共通しているのだ。なら仲違いするよりこのまま協力したほうがお互いにとって得だろう。

「では、探索を再開しようか」
「うん……休憩したい時はいつでも言ってね……」
「きゅ~♪」
 土砂崩れのあった場所から少し移動した後、ガーネットはマシンウォーカーと共に影の中から出ると、足元の影には璃奈と影竜達を潜ませたまま道なき山岳を突き進んでいく。
 悪路を苦にしない走破力は随行する者達にとっては頼もしく、一方で休む暇もない自然の猛威に対抗できるセーフティゾーンを確保しているのは、操縦者の安心にも繋がった。
 かくして2人と3匹は地上と影から連帯し、悠々と『常闇の燎原』に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニクロム・ヘドロ(サポート)
嗚呼、アァこんにちは見ての通りの悪堕ちヘドロ怪人です
とは言えボクも猟兵ですのできちんとわきまえた行動をします
基本的に戦場へはさ迷い現れます、相手をヘドロの底に沈めることがボクの楽しみです
こんな見た目ですが理性は残っているので連携や防衛や護衛等は問題無く出来ます
基本温厚ですが改造や人道を無視した実験なんかは許して置けませんね
戦場では基本みんなと連携して指示にも従います
単独でやる時は周りにヘドロを撒き散らすかもしれません
どうぞよろしくお願いします


フレミア・レイブラッド
ここを強引に超えようとすると流石に疲れそうね…少し楽させて貰おうかしら

【ブラッド・オブリビオン】で「荒野に飛来する氷鳥達」の「氷雪の鷲獅子」を召喚。
【騎乗】して飛んでいくわ。
他に乗っていく子がいれば、一緒に乗せて行っても構わないしね♪

【念動力】を自身と鷲獅子(及び同行者)を包む様に纏わせて気流や天候の影響を軽減させ、風の魔力【属性攻撃、高速詠唱】で天候自体を制御または抑えるか、障壁で影響を遮断する様にして鷲獅子の飛行を補助。
鷲獅子に飛行を任せる分、わたしは念と魔力の制御に集中できるしね♪

他、必要があれば地上を進む班の援護で土砂崩れを【凍てつく息吹】で堰き止めたり、救助したりもするわ



「ここを強引に超えようとすると流石に疲れそうね……少し楽させて貰おうかしら」
 狂える吸血鬼を倒した先で待ち構えていたのは、頂上が見えないほどの峻厳なる山々。
 登り切るだけでも一苦労だが、ここはまだゴールではなく、あまり疲労したくはない。そこでフレミアは自分の力だけではなく、眷属の力を頼ることにした。
「血の隷属を用いて命ずる……。フレミア・レイブラッドの名の下に、嘗ての力を以て骸の海より戻り、わたしに力を貸しなさい」
 過去に血や体液を摂取したオブリビオンの霊を召喚する【ブラッド・オブリビオン】。
 その力をもって呼び寄せられたのは、雄々しき白銀の翼をそなえた「氷雪の鷲獅子」。凶暴なるアックス&ウィザーズの魔獣が、盟約に従ってひとときの吸血姫の乗騎となる。

「貴方の翼なら、こんな山でもひとっ飛びでしょう?」
 フレミアが鷲獅子の背に跨って毛並みを撫でると、彼は嘴から甲高い鳴き声を上げる。
 そして極寒の風纏う翼を羽ばたかせれば、その巨躯は主を乗せたまま悠々と空を舞い、山岳地帯を越えんとぐんぐん高度を上げていく。
「ここまで高いと風も冷たいわね。でも問題はないわ」
 もともと寒冷地の生物である鷲獅子は勿論のこと、フレミアも念動力による障壁を自分と乗騎を包むように纏わせて、気流や天候の影響を軽減している。普通なら防寒着が必要になる高度でも、ドレス一着で平然としていられるのはそれ故だ。

「風よ、雲よ、雨よ、わたしに従いなさい」
 さらにフレミアは風の魔力で天候自体に干渉して、空が荒れないように制御を試みる。
 流石に広大な山岳地帯の全域をカバーすることは困難だが、自分達の飛んでいる周辺の雨や風を抑えるくらいは十分に可能だった。
(鷲獅子に飛行を任せる分、わたしは念と魔力の制御に集中できるしね♪)
 移動を鷲獅子が、天候対策をフレミアが行う完璧な役割分担によって、彼女らは順調に山岳を飛び越えていく。吹き荒ぶ風も突然訪れる雨も、その道行きを阻む事はできない。そして当然、山そのものに起因する障害――岩壁や崖や土砂崩れ等とも上空では無縁だ。

「……あら? 誰かいるわね」
 ふとフレミアが上空から山を見下ろすと、急な斜面を登っていく小さな人影が見えた。
 その者の名前はニクロム・ヘドロ(悪堕ちヘドロ怪人・f34633)。かつては反抗の竜チタノの加護を受けて戦う戦士だったが、とある敗北を機に怪人化した少女である。
「嗚呼、あぁ……敵、敵はどこ……」
 体からはドロドロと緑色の汚液を垂れ流し、鼻が曲がるような悪臭を放つ、見るも異様な怪奇人間と成り果てても、彼女はまだ猟兵としての使命を忘れてはいなかった。それは無自覚に猟兵であることに縋り付いているのかもしれないが、偽りのない意思であった。

「はやく敵をヘドロの底に沈めてやりたい……」
 この山を越えた先に敵がいると聞いたニクロムは、よろよろと彷徨うように山を登る。
 その肉体から撒き散らされたヘドロは【反抗堕落】により生命を与えられ、あるものは並外れた硬度で盾となり、あるものは驚異的な怪力で障害物を押しのける。創造主に忠実なこれらヘドロの民の助けがなければ、この山岳地帯の攻略は難しかっただろう。
「どっちかなどっちこっち? アァそう」
 ルートの選択についても知性を強化したヘドロ民の助言を聞き、カタコトで頷きながらよろばい歩く様子は、少し不安になるが――それでも探索は順調であるように思われた。

「あぁ、なに? 地面がグラグラってぐらららら」
 しかしこのまま通り抜けられるほど辺境の山岳地帯は生易しい場所ではない。ニクロムがふと顔を上げると、崩れた崖の上から大きな岩が転がってくる。ヘドロの民の力でも防ぎ止められないほどのサイズと勢いで、このままではみんな纏めて地面のシミだ。
「危ない!」
 彼女の窮地を救ったのは、上空から様子を見守っていたフレミアだった。氷雪の鷲獅子が【凍てつく息吹】を放つと、雪風により大岩は堰き止められ、凍りついた地面を滑ってあらぬ方向に転げ落ちていった。

「大丈夫かしら?」
「嗚呼、アァありがとうございますコンニチハ見ての通りの悪堕ちヘドロ怪人です」
 高度を下げて心配げに尋ねるフレミアに、ニクロムはぺこりと頭を下げて挨拶をする。
 怪人化していても普段の彼女は温厚な性格であり、理性も残っているので味方への礼儀は忘れない。見た目のインパクトにさえ慣れれば、意外と話のできる人物だった。
「良ければ貴女も乗っていく? わたしは構わないわよ♪」
「エッ、いいんですか」
 そんな彼女にフレミアは自分の後ろを指して、一緒に鷲獅子に乗らないかと提案する。このまま地上を進むよりは間違いなく快適だし、鷲獅子の能力ならもう1人くらい乗員が増えても心配ないだろう。純粋な気配りからの提案だった。

「でもボクが乗ったらヘドロで汚してしまうカモ」
「あら、こうすれば平気よ」
 どこか不安げに視線を泳がせるニクロムは、怪人化していてもまだ15の少女だった。
 そんな彼女をフレミアは念動力でひょいと持ち上げ、自分と同じように障壁で包んで鷲獅子に乗せる。気候の影響から保護する為だが、同時にこれならヘドロが散る事もない。
「さあ、行くわよ♪」
「ハ、はいデス、アハハ」
 にこりと微笑みながら鷲獅子を飛ばす吸血姫に、ヘドロ怪人もぐにゃりと笑みを返す。
 こうして2人と1頭に増えた猟兵達の道行きは、これまでと同じかそれ以上に快調で。雨も風も山も越え、『常闇の燎原』に向けてまっすぐに飛んでいく――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

愛久山・清綱
一歩足を進むたびに、『闇』へ近づいていくのを感じる。
此の闇を超えた先に待つのは、新たなる謎だろうか?
其れとも、此の世界の謎を解くカギが存在するのか……
■行
【WIZ】
答えは、其れを超えた先にある。

しかし暗い上に、空模様もおかしい。飛んで移動するのは危険か。
【暗視】や【野生の勘】を用いつつ、慎重に進むとしよう。
基本は杖代わりにした大太刀と目視を用いて地形を探り、
『危険な通路』を見破りつつ、着実に足を進めていく。

他にも何かが落ちてくる・流れて来るような音にも注意し、
それらしき物体が向かってきたら【無刃・渾】で瞬時に断つ!

■他
万一体力の消耗を感じたら、『兵糧丸』で補給するぞ。

※アドリブ歓迎・不採用可



(一歩足を進むたびに、『闇』へ近づいていくのを感じる)
 ピンと張り詰めた感覚と野生の勘でそれを認識しながら、清綱は静かに山岳地を行く。
 この地の果てのさらに向こうにある『常闇の燎原』。まだ誰も踏み入れた事の無いであろう領域に、猟兵達は迫りつつある。実感が湧くにつれて緊張と警戒もまた強まった。
「此の闇を超えた先に待つのは、新たなる謎だろうか? 其れとも、此の世界の謎を解くカギが存在するのか……」
 問いを発しても言葉はただ闇と風に溶けるのみ。ここに答えを返せる者は誰もいない。
 あらゆる生命を拒むかのような自然の城塞。そびえ立つ山々が無言で道を阻むのみだ。

「答えは、其れを超えた先にある」
 猛禽の如き鋭い眼差しで闇を見据え、戦地に赴く時のように感覚を研ぎ澄ませる清綱。
 彼の山歩きの作法は本人の実直な性格をそのまま現したように、慎重かつ堅実だった。
(暗い上に、空模様もおかしい。飛んで移動するのは危険か)
 翼による移動は控え、頼りとするのは二本の足と杖代わりにした大太刀「空薙・剛」。
 とんと地面を鞘でつついて足場を確かめ、夜目が利くのを活かして辺りの地形を探り、崩落等の恐れが高い"危険な通路"を見破りつつ、着実に足を進めていく。

(危険は目に見えるものだけではない。音にも注意しろ)
 目視による警戒だけではなく、清綱は耳を澄ませて遠くからの音にも気を配っていた。もし何かが落ちてくる・流れてくるような音が聞こえれば、それは危機を告げる予兆――さっと振り返れば、横手の斜面から岩を含んだ土砂が流れ落ちてきていた。
「何処かの地盤が雨で緩んだか」
 登山における最悪の脅威のひとつとも言える土石流。だがそれを前にしても清綱は落ち着き払ったまま瞬時に大太刀を構え、抜き放つ――邪を祓うために研ぎ澄まされた刃が、闇の中で閃いた。

「……奥義、無刃」
 居合の動作より放たれた一閃が、土石流そのものを断つ。鍛え上げられた剣豪の技と、混沌の心との共鳴によって、清綱の斬撃は原理や概念さえ断つ刃にまで昇華されていた。
 脅威を文字通りに切り払った彼は、逸れていく土砂を横目に移動を再開する。まだまだ先は長く、こんな所で足止めを食らっている暇はない。
「『闇』が迫っている。この先で間違いはないようだ」
 斜面や岩壁をひとつ越えるごとに、辺りは不自然なほどに暗くなっていく。だが気持ちが逸ることはなく、警戒は緩めず慎重に。突発的に訪れる落石などの脅威を刀1本で退けながら、淀みなく前進する様はまさに兵(つわもの)だった。

「もう暫くは山路が続くか……体力にも気を遣わねばならんな」
 移動の途中、清綱は荷物の中から「兵糧丸」を取り出して補給を行う。まだ消耗はさほど感じないが、山を越えて終わりではない以上、極力万全の状態をキープしておきたい。
「データによれば『二粒食べれば十分』とのことだったな」
 丸薬状の保存食をふたつ口に放り込み、栄養が体に染みるのを感じると再び歩きだす。
 疲れなどおくびにも出さぬ表情と、迷いのない力強い足取りが、闇を突き進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
荒天による体力消耗は戦機の●継戦能力で苦にせず、マルチセンサーでの●暗視含めた情報収集で登山や下山ルートを●瞬間思考力で即座に導き出し

道なき道や断崖の手や足の置き場を瞬時に●見切り
時に脚部スラスターの●推力移動で跳躍、疾走

さて、種族特性と機能のお陰ではありますが山岳地帯の移動には問題ありませんね
宇宙出身とはいえ、このような環境は数多の世界を渡って幾度も踏破して来たのです。徒に時間を掛ける程のものでも…

……この振動は……

!?

(突発土砂崩れに対し大盾構え生き埋めに。暫くしてゾンビ宜しく手が土より生え)

…無敵城塞が無くば危うかったですね
やはり自然は侮れません

(怪力で自力で這い出しいけしゃあしゃあと)



「各センサー異常なし、視界良好」
 夜闇に覆われた道なき山路に、ぼうっと浮かび上がるカメラアイの翠光。荒れた大地に重々しい足音を響かせながら、トリテレイアは登山の最中だった。ウォーマシンである彼の顔色を窺うことは難しいが、足取りからは余裕の色が感じられる。
「この程度の環境や地形であれば、十分対応は可能です」
 宇宙の果てから海の底まで、様々な環境での戦闘を経験し、機能をアップグレードしてきた彼には、険しい山岳地帯とて大きな障害とはならない。ここで戦闘を行う場合はまた話が変わるだろうが、突破するだけならただの"通り道"である。

「ルート算出完了。最短でこの山を抜けるのであれば……こちらですね」
 暗所にも対応した「全環境適応型マルチセンサー」と電子頭脳の瞬間思考力によって、最適な登山・下山ルートを即座に導き出したトリテレイアは、道なき道を迷いなく進む。
 人間より頑丈なボディとパワーを有する彼は、人間には選択できないルートも採る事ができる。オーバーハングになった岩壁も、深く裂けた地割れも、通行可能な"進路"だ。
「ここで足止めを受けるようでは『常闇の燎原』の探索も困難でしょう」
 どこに手や足を置けばいいかを瞬時に見切り、巨体でありながら見事なバランス感覚で断崖を登り。時には脚部スラスターによるダッシュや大ジャンプで裂け目を跳び越える。しかも、それだけ激しい運動をしていながら、機械である彼は息を荒げることすらない。

「種族特性と機能のお陰ではありますが、山岳地帯の移動には問題ありませんね」
 実際に幾つかの難所を越えたことで、トリテレイアの自信は確信となった。気を緩めた訳ではないが、この山岳地帯の環境は粗方脅威にはなり得ないのは客観的な事実である。先程から天気が荒れてきているが、ウォーマシンの継戦能力ならばそれも苦にならない。
「宇宙出身とはいえ、このような環境は数多の世界を渡って幾度も踏破して来たのです。徒に時間を掛ける程のものでも……」
 まるで体力を消耗していない様子で、雨に打たれながら軽快に山を突き進む機械騎士。
 だが。突如訪れた荒天は、そんな彼にも予期しなかった事態を引き起こしてしまった。

「……この振動は……」
 彼方から徐々に近付いてくる、ドドドドと地を震わす振動音。それは雨で緩んだ地盤が崩れ、大規模な土石流が発生した音だった。トリテレイアが異変を察知した時にはもう、それはすぐ傍まで迫っていた。
「!?」
 この突発的な土砂崩れに対し、彼は咄嗟に大盾を構えるのが精一杯だった。泥水と一緒に勢いよく斜面を滑り落ちてきた大量の土砂は、あっという間に機械騎士を呑み込み――白亜の機体はすぐに見えなくなってしまった。

「―――……」
 土砂崩れが終わり振動が止んで、山に聞こえる物音が再び風と雨の音だけに戻ってから暫くして。残された大量の泥土の下から、ボコッとゾンビ映画のように手が生えてくる。
「……無敵城塞が無くば危うかったですね」
 生き埋めにされても窒息しない機械の体と、あらゆる攻撃に耐える【無敵城塞】の力がトリテレイアの命を繋いだ。持ち前の怪力により土の中から這い出してきた彼の体には、泥まみれなのを除けば傷一つない。

「やはり自然は侮れません」
 いけしゃあしゃあとそんな事を言いつつ、トリテレイアはすぐにまた登山を再開する。
 この経験もひとつの教訓である。今後は音や振動にもより気を配るようセンサーの反応に注意しようと、記憶のチェックリストに追記しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
なるほど。これでは先ほどの狂える神がおらずとも、常闇の燎原が前人未到の地と呼ばれることでしょうね。
ですが、ここを越えなければ始まりません。
超えて常闇の燎原へたどり着き、そこから第3層へ至ったとしても、地上……第1層へはまだ遠いのですから。

そのためにも、長く居れる地ではありませんが、確実に進みましょうか。
【スノウマンアーキテクト】により、100体を越える雪だるまを呼び出し、ともに進みます。
落石や土砂崩れが来たなら彼らの氷属性の攻撃によって凍らせるor岩を砕くことで対処します。
崖を登る、飛び越える必要が出たらその時は彼らの本分。氷でできた橋や階段を建築してもらい、それを利用して進みます。



「なるほど。これでは先ほどの狂える神がおらずとも、常闇の燎原が前人未到の地と呼ばれることでしょうね」
 眼前に聳え立つ峻厳な山麓を見上げ、独り言ちるセルマ。ただの人間は言うに及ばず、常識外の力を持つ猟兵やオブリビオンですら、ここを越えるのは困難だろう。このような辺境地帯の自然の脅威こそが、長きに渡り世界の真実を隠してきたのだ。
「ですが、ここを越えなければ始まりません。超えて常闇の燎原へたどり着き、そこから第3層へ至ったとしても、地上……第1層へはまだ遠いのですから」
 目指すべき目標はまだ遥か遠く。だからこそ少女に歩みを止めるつもりは微塵もない。
 偽りの地上から真の地上へ。長い長い道程に続く一歩を、絶対零度の射手は踏み出す。

「そのためにも、長く居れる地ではありませんが、確実に進みましょうか」
 セルマの道行きを共に進むのは、【スノウマンアーキテクト】により呼び出された雪だるまの大群。その数は100体を超え、雪の体から発せられる冷気のせいか、辺りの気温は余計に寒く感じる。氷使いであるセルマにとっては気にするような温度ではないが。
「何事も人数はいたほうが頼もしいですし……と、早速ですか」
 彼女らが山に足を踏み入れてから程なくして、横手の斜面から大きな岩が落ちてくる。
 すると雪だるま達は素早く陣形を組んで、吹雪や氷のつぶてを一斉発射。被害が及ぶ前に落石を砕き、破片を吹き飛ばしてみせた。

「助かりました。この調子でお願いします」
 セルマはそうしてトラブルへの対処を雪だるま達に任せ、安全にじっくりと先に進む。
 あまり強そうには見えない外見に反して、雪だるま軍団の戦闘能力は決して低くない。同じような落石が、時にはより規模の大きい土砂崩れが来ても、一糸乱れぬ氷の連携攻撃で凍り付かせて退ける。山をのしのしと行進する雪だるまの姿は頼もしさすらあった。
「今度は崖ですか」
 かくして順調に前進していたセルマ一行の行く手を次に阻んだのは、垂直に切り立った岩壁だった。剥き出しになった岩肌は滑りやすく、手掛かりになりそうな部分も少ない。クライミングの技能に自信がなければ、迂回するのが安全策だが――。

「こんな時こそ彼らの本分ですね」
 セルマがそう言ったかと思うと、雪だるま達が崖下にわらわらと集まりだして、岩壁に氷を吹き付けたり凍った石を削ったり、なにやら作業を始める。実は"アーキテクト"の名が示す通り、彼らが最も得意とすることは戦闘ではなく建築にこそあった。
(カチコチ)(カンカン)(ガリガリ)
 熟練の大工のような手際の良さと連携により、彼らは崖を登る氷の階段を作り上げる。
 一見壊れやすそうな見た目だが、十分な時間さえあれば城や街すら築ける彼らの技術は確かだ。完成したそれに手と足をかけて、セルマは楽々と崖の上にあがった。

「建築に時間はかかりますが、迂回して進むよりは早いでしょう」
 その後も崖には階段を、地割れがあれば橋をかけ、天気が荒れれば即席の雨宿り所を。人の手が及ばぬ未開の地だからこそ、スノウマンアーキテクトの活躍の機会は多かった。
 雪の建築家達の力を大いに活用し、セルマはまっすぐに辺境の果てへ迫っていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…あれこれ悩みはしたけど、私の為すべき事に変わりはないのよね

…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を…

…この先の第三層、あるいはさらに先に世界を救う手段が、
オブリビオン・フォーミュラが居るならば是非も無い
…世界の果てまで駆け抜けるだけよ

事前にUC【常夜の鍵】の魔法陣を小石に描いておき、
「写し身の呪詛」に血の魔力を溜めUCを発動
実体化した分身に小石を持たせて吸血鬼化した能力任せに登山を行わせ、
自身は【常夜の鍵】内の城内で分身が目的地に付くまで休憩する

…いくら険しいとはいえ、今の貴女なら唯の山道ぐらい余裕でしょう?

…それじゃあ、私は次の闘いに備えて休んでいるから、後はよろしくね



「……あれこれ悩みはしたけど、私の為すべき事に変わりはないのよね」
 辺境の果てへと続く山岳地帯の前で、リーヴァルディはぽつりと呟く。狂える吸血鬼を倒した後も、自分なりの考えを纏めていたのだろう。それまでの常識が覆るような真実を受け止めても、変わらない"答え"はひとつだった。
「……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を……」
 心に、いや魂に刻みつけたこの誓いこそが、リーヴァルディ・カーライルの行動原理。
 依然として闇が支配するこの世界を救わんとするならば、進むべき道は明らかだった。

「……この先の第三層、あるいはさらに先に世界を救う手段が、オブリビオン・フォーミュラが居るならば是非も無い……世界の果てまで駆け抜けるだけよ」
 その過程にどんな脅威が立ちはだかろうが関係ない。悩みに答えを得たリーヴァルディはこれまでより強い決意を瞳に宿し、先ずはこの山岳地帯を抜ける為にユーベルコードの詠唱を始める。
「……限定解放。仮初めなれど満ちよ、影なる器に血の祝福を」
 唱えるのは【限定解放・血の眷族】。普段は戦闘力のない囮等に使う"写し身の呪詛"の分身に、吸血鬼化した自身の血の魔力を注ぎ込む事で、実体のない残像を眷属として一時的に受肉させる御業である。

「……いくら険しいとはいえ、今の貴女なら唯の山道ぐらい余裕でしょう?」
 本体からの問いかけに、外見はリーヴァルディと瓜二つの分身はこくりと無言で頷く。
 擬似的な吸血鬼化により相応の能力を獲得したこの分身ならば、人間には厳しい難所も軽々と越えていけるだろう。身体能力に限れば平常時の本体よりも高いかもしれない。
「……それじゃあ、私は次の闘いに備えて休んでいるから、後はよろしくね」
 そう言ってリーヴァルディは分身の手のひらに小石をひとつ乗せる。ここまで来る道中にあらかじめ拾っておいたもので、表面には血液で複雑な魔法陣の模様が描かれている。

「……開け、常夜の門」
 リーヴァルディが呪文を唱えると【常夜の鍵】が起動し、ただの小石は空間を越える門となる。その向こうは古城となっており、休憩・避難所として十分なスペースがあった。
「……目的地についたら報せて」
 彼女は門の入り口を分身に持たせたまま、小石に吸い込まれるように城内に転移する。
 分身が登山に励んでいる間、自分はここで体を休めておけば、この先で何が待ち構えていても万全のコンディションで迎え撃てるというわけだ。

『…………』
 合理的な判断とはいえ山登りを丸投げされる形となった分身は、手渡された鍵の小石を少しの間じっと見ていたが。やがて背から紅い魔力の翼を広げ、山に向かって飛び立つ。
 吸血鬼相応の体力とタフネスや闇を見通す目、そして鳥よりも速い飛翔能力があれば、真夜中の山岳地帯を飛び抜けるのも難しい事では無かった。
「……それほど時間はかからなさそうね」
 分身が山を越える間、リーヴァルディは装備品の手入れなどを行いながら休憩を取る。
 前人未到の領域にて彼女らを待つものは何か。答えはもう目前に迫りつつあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『魔装騎士ガイウス』

POW   :    魔剣術の奥義
【闇の魔術】によって、自身の装備する【魔剣デスブリンガー】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
SPD   :    魔剣術の絶技
自身の【柄頭の魔石】が輝く間、【魔剣デスブリンガー】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    魔剣術の神髄
【闇の魔術】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【魔剣デスブリンガー】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はセシリア・サヴェージです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 険しい山岳地帯を各々のルートで乗り越えた猟兵達は、ついに辺境の果てに到達する。
 人外を含め、ここまで辿り着いた第4層の住人はほとんど居ないだろう。茫漠たる荒野に立つ一同からほんの少し先に、完全なる闇の領域――『常闇の燎原』が広がっている。

「……よもや、此処に来る者が居ようとはな」

 だが、その領域に至るまでの最後の荒野に誰かが立っている。漆黒の鎧で全身を隙間なく覆い、禍々しい魔剣を携えた騎士――その者は猟兵達の姿を見ると静かに口を開いた。

「如何なる理由があるかは問わぬ。だが、来たからにはここが汝らの死に場所と心せよ」

 黒き騎士が殺気を放つと同時に、その全身から凄まじい勢いで『黒い炎』が噴き出す。
 自然のものでは無いのは勿論、ブレイズキャリバーが操る地獄の炎とも似て非なる――まるで闇そのものが燃えているような、禍々しい炎だ。

 グリモアによって得られた情報によれば、あの炎にはあらゆる防護を侵食し、同化吸収する効果がある。それが物理であれ魔法であれ、衣類や肉体等を含めた全ての防御手段を食い破り、本体の体力を回復してしまう、極めて危険な力だ。

「我が名は『魔装騎士ガイウス』。此れより先に進みたくば、我を討て」

 全身を黒炎で覆った騎士は、厳かな調子で名乗りを上げると、魔剣を宙に浮かべる。
 その名はかつて公明正大なる騎士として謳われ、優れた剣技と闇の魔法を使いこなし、剣を魔力で自在に操る独自の剣技にて人々に希望を与えたという。だが、現在の彼が既にオブリビオンと化し、忠義を尽くす相手を吸血鬼に変えたのは間違いない。

 闇に堕ちた黒炎の魔装騎士。この者こそ『常闇の燎原』に至る最後にして最強の障害。
 辺境の果てに至った猟兵は、それぞれの戦闘態勢を取る。果てのさらに果てにある未知の世界――まだ見ぬ第3層を目指す探索行は、ひとつの山場を迎えようとしていた。
ガーネット・グレイローズ
遂に辿り着いたか。ここが第4層の最果て、常闇の燎原か。
まるで、宇宙の未踏領域に挑むような旅だった。
ダークセイヴァーの世界構造を知る、ヒントが見つかればいいんだが…。

あの騎士を覆う黒い炎…本来の奴の力ではないということか?
何者かから与えられた能力か…防護を破るとは厄介だ、
ここは回避に徹しよう。

《仙術》を応用した【グラビティマスター】で飛行能力を得て、
闇の魔術攻撃への回避力を上げて戦う。
序盤は遠距離戦を想定して、クロスグレイブによる《レーザー射撃》。
飛び道具で攻撃しつつ距離を詰め、本命はスラッシュストリングによる
接近戦。糸を《念動力》で高速震動させ、糸鋸の要領で
甲冑を切断する《鎧無視攻撃》だ。



「遂に辿り着いたか。ここが第4層の最果て、常闇の燎原か」
 間近にあるのは一条の光すら通さない完全なる闇の領域。見つめれば自分が盲になったような錯覚すら感じる、こんなことはブラックホールを目撃した時以来かもしれないと、ガーネットは深い感慨を覚えた。
「まるで、宇宙の未踏領域に挑むような旅だった。ダークセイヴァーの世界構造を知る、ヒントが見つかればいいんだが……」
「手掛かりなど与えはせぬ。汝らがこの地で得られるのは死と絶望のみよ」
 だが感慨に耽る暇もなく、黒炎に包まれた『魔装騎士ガイウス』の魔剣が襲い掛かる。
 この旅路が真の終わりを迎えるには、あとひとつ――最大の障害を超えねばならない。

(あの騎士を覆う黒い炎……本来の奴の力ではないということか?)
 闇の魔術により操られた魔剣をさっと躱しながら、ガーネットは敵の様子を観察する。
 少なくとも生前のガイウスがあのような炎を操ったという情報はない。オブリビオン化により新たな能力に目覚める事例はあるが、それにしても異質かつ強力すぎる力だ。
(何者かから与えられた能力か……防護を破るとは厄介だ、ここは回避に徹しよう)
 いかなる防御も無効化する攻撃なら、そもそも当たらないよう立ち回る。仙術を応用した【グラビティマスター】を発動した彼女の身体は重力の軛から解き放たれ、闇夜の空にふわりと飛び上がる。

「封神武侠界で修行をした成果を見せてやろう!」
「異国の呪法か。面妖な」
 仙人の如く自在に空を飛び回るガーネットに、【魔剣術の神髄】を繰り出すガイウス。
 黒い炎を纏った「魔剣デスブリンガー」は誘導ミサイルのように標的を追いかけるが、それを躱す方の飛行技術も巧み。ただ逃げ回るだけではジリ貧だと理解している彼女は、隙をみて「クロスグレイブ」による反撃も仕掛ける。
(序盤は遠距離戦になるな)
 巨大な十字架を模した砲塔デバイスからビームが放たれ、地上にいるガイウスを襲う。
 だがそこは名うての魔装騎士と言うべきか、甲冑とマントで砲撃を受け流しながらも、遠隔操作された魔剣の挙動が鈍ることはなかった。

「この程度か」
「いいや、まだだとも」
 ガーネットはレーザー射撃を継続して敵を牽制しつつ、距離を詰める隙を窺っていた。
 執拗に迫る魔剣の攻撃を潜り抜け、空中を泳ぐように少しずつ、少しずつ。そうやってギリギリまで魔装騎士に接近したところで、彼女はスラッシュストリングを抜き放つ。
「こちらが本命だ」
 強靭なブレードワイヤーを念動力で高速振動させ、糸鋸の要領で切断力を更に高める。
 極めて細く鋭利な刃が、灰薔薇の血族の娘の指先に合わせて踊るように襲い掛かった。

「その黒い炎と同じだ。私の糸も生半可な防護では防げない」
 ほとんど目で捉えられない刹那の軌跡を描いて、ガーネットの一撃が甲冑を切断する。
 鋼の亀裂からぱっと吹き出したのは、人間のそれと同じ赤い血。痛打を受けたガイウスはふらりとよろめきながら、数歩後ろに下がった。
「……なるほど。ここまで辿り着くだけの実力はあるか」
 魔剣デスブリンガーを手元に呼び戻した騎士の態度からは、強い警戒心が感じられた。
 彼もまた猟兵を強敵と認め、全力を以て排除する意思を固めたのだろう。戦いはまだ、始まったばかり――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・ヘドロ
嗚呼、あぁ黒い炎が燃え盛っていますねボクは火は苦手ですよ燃えてしまいますからネ
しかしこの世界は反抗を望んでいます、ナラバ元反抗者としてこの強敵に抗って見せマショウ
近づけさせませんよ、ボクのかつての名、ニクロム・チタノの名を以て
流石の絶技ボクのヘドロを凄まじい速度で切り裂くとは・・・しかしボクの狙いはアナタの弱体化ナノデス
ボクの攻撃ではアナタに有効打を与えられないでしょうですが猛毒ヘドロから出る悪臭にもヘドロ同様猛毒が含まれているのです
ヘドロを切り裂き燃やせても臭気に含まれる猛毒は防げないでしょう?
加えてヘドロ化の効果でアナタの纏う頑丈な鎧も防御力が低下しているのデス
ボクはみんなを信じて託すだけ



「嗚呼、あぁ黒い炎が燃え盛っていますねボクは火は苦手ですよ燃えてしまいますからネ」
 黒い炎から放たれる禍々しい熱気を肌で感じ、ニクロムはヘドロ塗れの顔をしかめる。
 あらゆる防護を無効化するあの能力は、彼女にとってあまり相性がいいとは言えない。下手をすれば燃えるゴミのように焼却処理され、成れ果てから燃えカスにされてしまう。
「しかしこの世界は反抗を望んでいます、ナラバ元反抗者としてこの強敵に抗って見せマショウ」
 かつての反抗の意志の残滓と、猟兵としての使命感が、彼女をこの場に留まらせる。
 心まで完全な怪人と化してしまわないために――仲間達よりも一歩前に踏み出した。

「近づけさせませんよ、ボクのかつての名、ニクロム・チタノの名を以て」
「同胞を庇うつもりか。ならば先ずは汝からだ」
 魔装騎士ガイウスは殺気と共にそう告げ、魔剣デスブリンガーの切っ先を突きつける。
 対するニクロムは名乗りを上げたその口を上空に向かって大きく開き、大量のヘドロを吐瀉物のように吐き出した。
「アナタもヘドロまみれになればいいのデス」
 戦場全域に撒き散らされたヘドロの雨は、ガイウスの頭上からもぼたぼたと降り注ぐ。
 距離が離れていても鼻が曲がりそうな悪臭に、騎士は兜の奥で不快げに顔をしかめた。

「小癪」
 剣の柄頭に埋め込まれた魔石が、鮮血のように赤い輝きを放つ。その刹那、ガイウスは目にも留まらぬ早業で魔剣デスブリンガーを振るい、降りかかるヘドロを吹き飛ばした。
「流石の絶技ボクのヘドロを凄まじい速度で切り裂くとは……」
 魔装騎士の【魔剣術の絶技】を見せつけられたニクロムは、感嘆を禁じ得なかった。
 飛び散ったヘドロの雫すらも黒炎に蒸発させられ、すえた悪臭を残すのみ。渾身の大技を完封されたヘドロ怪人は――されど、まだ絶望してはいなかった。

「しかしボクの狙いはアナタの弱体化ナノデス」
「何……? ぐッ、この臭いは……」
 その言葉に違和感を覚えたガイウスは、兜の上から鼻や口元を押さえるが、気付いた時にはもう遅かった。ニクロムが【反抗を忘れた世界】によって撒き散らしたヘドロには、強い毒性があったのだ。
「ボクの攻撃ではアナタに有効打を与えられないでしょうですが猛毒ヘドロから出る悪臭にもヘドロ同様猛毒が含まれているのです」
 敵もまったく毒の可能性を疑わなかった訳ではないだろうが、まさか臭気にすら猛毒が残留するとは思わなかっただろう。臭いという形で吸い込まれた毒素は、騎士の体を内側から蝕んでいく。

「ヘドロを切り裂き燃やせても臭気に含まれる猛毒は防げないでしょう?」
「ぐッ……迂闊だったか」
 まんまと策に嵌められた事を悔やみながら、地に片膝を突くガイウス。だがニクロムの作戦はそれだけではなかった。猛毒の臭気に晒され続ける騎士にさらなる異変が現れる。
「なんだ……我が鎧が……?」
「ヘドロ化の効果でアナタの纏う頑丈な鎧も防御力が低下しているのデス」
 ニクロムの有毒ヘドロに触れたモノもまたヘドロと化す。それはあらゆる防護を黒い炎に変換するガイウスの能力と、奇しくも類似した状態異常だった。ヘドロの毒素に汚染された黒鎧は、もはや本来の強度を保ってはいない。

「ボクはみんなを信じて託すだけ」
 毒による本体の弱体化とヘドロ化による鎧の脆弱化。二重の妨害を成し遂げたニクロムは満足げに前線から後退していく。弱らせさえすれば必ず仲間達が奴を倒してくれると、彼女は疑いなく信頼していた。
「ッ……待て……!」
 せめて追撃をと剣を取るガイウスだが、まだ残留するヘドロの悪臭がそれを許さない。態勢を万全に整える間もなく、彼は次なる猟兵との対峙を余儀なくされるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「問答無用か。なら此方も手間が省ける。
如何にしても、踏み越えさせて貰う。」

「これだけのレベルでの剣と魔術の融合。
そして何よりあの黒炎。此方も出し惜しみする余裕はないか。」
一撃が致命傷となる事を悟り。
【全力魔法】でALL OUTを発動。
【残像】を発生させつつ黒翼を使って絶え間なく翔け、
魔剣を躱しながら具現化させた剣に炎属性を纏わせて攻撃。
敵が炎の剣に対応する間に呪装銃「カオスエンペラー」で銃撃。
【呪詛】による幻覚、マヒで攪乱。
敵に隙が出来たらその間に更に炎の剣の数を増して敵を包囲。
一斉に攻撃を仕掛ける。
「此処で終わって貰おうか、魔剣の騎士。
いや、すでに終わっていたのかも知れないが。」



「問答無用か。なら此方も手間が省ける。如何にしても、踏み越えさせて貰う」
 己の事情を語らず、ただ絶対抹殺の意志を掲げる魔装騎士ガイウスに対し、フォルクも徹底抗戦の決意を示す。ここまで来て今更逃げるつもりはさらさらない、すぐ目前に待つ『常闇の領域』に辿り着くために、全身全霊を以ってここを突破する。
「させぬと言った」
 ガイウスの返答は端的で、向けられた魔剣と炎が言葉よりも雄弁に殺意を示していた。
 彼が魔力を込めれば魔剣はひとりでに宙に浮かび、標的の心臓を貫かんと飛んでいく。その刀身にはいかなる防護も焼き払うという、黒い闇色の炎が宿されていた。

「これだけのレベルでの剣と魔術の融合。そして何よりあの黒炎。此方も出し惜しみする余裕はないか」
 【魔剣術の神髄】にかかれば一撃が致命傷となる事を悟り、フォルクは【ALL OUT】を発動。霊力覚醒体に変身することで全ての術を強化し、全力で迎撃する態勢を整える。
「我が身に宿りし魔性、今此処に全て解き放ち。剣を成し盾を成し、黒き冥府の翼すら従え。如何なる敵をも討ち果たす無双の力と成さん」
 ローブの内側から溢れ出す魔力は幾つもの剣を具現化させ、背中には冥府の気を纏った黒翼が生成される。力強い羽ばたきと共に彼の身体は空に舞い上がり、黒き魔剣の強襲を辛くも回避した。

「次は此方の番だ」
 フォルクは魔剣を躱しながら具現化させた剣に炎属性を纏わせる。敵の騎士を覆う黒炎とは対照的に、煌々と戦場の闇を照らすその炎を、彼は上空から勢いよく撃ち降ろした。
「汝も炎の使い手か。奇遇なものだ」
 ガイウスの鎧は他の猟兵の攻撃により脆弱化している。この上から炎剣の直撃を喰らう事を嫌った彼はさっと身を翻して回避を行う。だが本人が防御に意識を裂けば、そのぶん魔剣術による攻撃の手は緩まる事になった。

「君がどれだけ優れた騎士でも、魔術の腕で遅れを取るつもりはない」
 残像が発生する程の速度で絶え間なく空を翔け、魔剣の追撃を振り切りながら剣を放つフォルク。霊力覚醒体に変身中は魔力が尽きぬ限り、新たな剣は幾らでも具現化できる。
 矢継ぎ早に上空から降ってくる炎の剣に、ガイウスは防戦を強いられる状況にあった。
(このまま押し切る)
 この有利はあまり長くは続かない。炎剣による攻撃に敵が対応し始める前に、フォルクは呪装銃「カオスエンペラー」を抜く。数多の死霊を顕現させて弾丸とするこの銃には、通常の弾丸にはない様々な呪詛を与える効果があった。

「ぐッ……なんだこれは、呪いか……?」
 炎の剣の動きに慣れてきたところに、突然放たれる銃撃。黒鎧を撃ち抜いてガイウスの体に突き刺さった死霊弾は、呪詛による幻覚や麻痺を引き起こして彼の意識を撹乱する。
 【ALL OUT】の効果で死霊術や呪詛の効力も強化されている。たとえ相手が狂えるオブリビオンと同格以上の強敵だとしても、一時的に隙を作りだす事はできるはずだ。
「……今だ」
 その隙を逃さずフォルクは持てる全魔力を費やし、多数の炎の剣を一気に具現化した。
 何十何百という燃え盛る刃が、蟻の子一匹通さぬ布陣で敵を包囲する。たとえ呪詛から立ち直れてももう遅い――此処を死地とするのは猟兵ではなく、彼奴の方だ。

「此処で終わって貰おうか、魔剣の騎士。いや、すでに終わっていたのかも知れないが」
 静かな宣告と共に一斉攻撃を仕掛けるフォルク。ガイウスは咄嗟に魔剣で切り払うが、四方八方より迫りくる攻撃全てを凌ぐことはできず、炎の剣が次々と全身に突き刺さる。
「がは……ッ!!」
 兜の奥から呻き声が漏れ、血肉の焼ける臭いが辺りに立ち込める。黒炎と魔剣を操れど熱と刃に無敵という事はあるまい。深手を負わせた確かな手応えがフォルクにはあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
帰り道に黒い鎧。しかも宗教勧誘みたいな長話が始まった。めんどいから途中で「そうよ貴方の信じた道を行きなさい!何が正しいのか何が間違っているのか、己で考えて行動するのが人生よ」と立ち去ろうとしたら黒い鎧に「なに、名言っぽいこと言って立ち去ろうとしてるのだ」とかツッコまれた。

私は「ヤダヤダ帰る、聞きたくない!」とジタバタ駄々こねるも、無理矢理話の続きをくどくど聞かされた。途中で「汝らの死に場所~」とかいうので、手を上げて「あの…あたくしもう死んでいるんですが」とか質問したら微妙な空気にしてしまった。悪い事をしたような気もしたし、もしかしたら私有地を通り過ぎるのかもしれないと思い土下座して謝罪した。



(なにかしらアイツ。急に宗教勧誘みたいな長話を始めて)
 帰り道のつもりで『常闇の燎原』の目の前まで来てしまったカビパンは、立ちはだかる黒い鎧に胡乱な視線を向ける。彼の話にも目的にも何故ここにいるかについても、興味はさらさらない。彼女はただ帰宅したいだけなのだ。
「汝らの実力は認めよう。だが、何者であれここを通すつもりは――」
 ドンパチが始まってもなおグダグダと口上を述べる魔装騎士ガイウス。いい加減黙って聞いているのも面倒になってきたカビパンは、ずかずかとハリセン片手に話に割り込む。

「そうよ貴方の信じた道を行きなさい! 何が正しいのか何が間違っているのか、己で考えて行動するのが人生よ」
「………?」
 何か含蓄がありそうでその実今の状況に余り関係なさそうな発言に、思わずガイウスも首を傾げる。敵の口上を中断させた当のカビパンは、言うだけ言ってもう満足したのか、スタスタとその場を立ち去ろうとする。
「じゃ、私はこれで」
「なに、名言っぽいこと言って立ち去ろうとしてるのだ」
 ――が、それは流石に騎士にツッコまれた。なんか微妙な空気のどさくさに紛れて帰ろうとしてもそうはいかない。ここに来た者を全て抹殺するという敵の宣言は有効であり、たとえ戦う意志を見せないハリセン女教皇だろうと例外はなかった。

「言ったであろう。理由は問わぬ、だが来たからにはここが――」
「ヤダヤダ帰る、聞きたくない!」
 改めて厳粛な態度で宣言しようとするガイウスに、カビパンはジタバタ駄々をこねる。
 いっそ斬り捨ててしまえば手っ取り早いだろうが、こうも見苦しく戦意を見せない相手を斬るのは堕ちたとはいえ騎士の矜持が咎める。
「貴様もここに来たからには一角の人物なのだろう。覚悟を決めよ」
「ヤダヤダヤーダー」
 何を言っても子供のように駄々をこね続けるものだから、騎士の話も余計に長くなる。
 逃げようとしてもぐるりと回り込まれ、無理矢理くどくどと話を聞かされるカビパン。それでも彼女は往生際が悪かった。

「文句を言っても事実は覆らぬ。ここが汝らの死に場所――」
「あの……あたくしもう死んでいるんですが」
 だがガイウスが再三宣言しようとしたその時、またもやカビパンが話を遮る。学生のように手を上げて口にした質問は、彼女が死してなお現世に留まる悪霊ゆえの問いである。
 しかしそんな事情を向こうが知る筈もなく、周囲は再び微妙な空気になってしまった。
「えーっと……」
 急に相手が黙ってしまい、流石のカビパンも少し悪いことをしたような気がしてきた。
 それにもしかしたらここは誰かの私有地で、自分達はそこを通り過ぎようとしていたのかもしれない。そう考えた彼女はとりあえず謝ることにした。

「他の人はどうなってもいい! 私だけは助けて!!」
 恥も外聞も風評もプライドも捨てた土下座と謝罪。【どうかお助け下さい!】という切実な思いだけが籠められたポーズに、ガイウスはある意味(悪い意味で)心を打たれた。
「なんと……恥知らずな……」
 汚い人間の深淵に触れてしまった影響は、敵の心に少なからぬ心理的ダメージを与え。
 彼がドン引きしている間に、カビパンはそそくさと土下座したまま下がっていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
わたしの死に場所を勝手に決めないで貰えるかしら?
わたし達はどんな障害があろうと突き進む。
貴方が嘗てどれだけの騎士だったかは知らないけど…障害になるのならば討ち滅ぼすのみよ

【ブラッディ・フォール】で「天使と悪魔携える軍神」の「上杉謙信」の服装(フレミアにアレンジした感じ)に変化。
【毘沙門刀車懸かり】で12本の『毘沙門刀』を纏い、高速移動と【見切り、第六感】で攻撃を回避しながら接近。
樹や地の刀で敵の動きを阻害し、雷、氷、聖の刀で攻撃を仕掛け、【毘沙門刀連斬】を繰り出すわ!

防御を侵食されるのであれば、全て回避すれば良い!
それだけの事よ!
東方の軍神の剣技と貴方の剣技、どちらが上か試してみましょうか!



「わたしの死に場所を勝手に決めないで貰えるかしら?」
 すでに未来が確定しているかのような魔装騎士の物言いに、フレミアは少々憤慨する。
 未知の強敵や能力だろうと、彼女らはそんなもの何度も撃破してきた。目的地を目の前にして死を宣告されたところで、諦める理由になりはしない。
「わたし達はどんな障害があろうと突き進む。貴方が嘗てどれだけの騎士だったかは知らないけど……障害になるのならば討ち滅ぼすのみよ」
「……そうか。ならば私も全力を以って汝らを滅殺するのみだ」
 闇に堕ちた騎士は静かにそう応え、闇の魔術を唱え魔剣を宙に浮かべる。その身に滾る殺意と黒炎の熱を肌で感じながら、高貴なる吸血姫も高らかにユーベルコードを唱えた。

「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 発動するのは【ブラッディ・フォール】。フレミアの身を包む真紅のドレスが、白と青を基調とした和風の軍装に変化する。その装束はかつてエンパイアにて名を馳せた武将、『上杉謙信』の力と格好を模したものだった。
「異国の将軍か。だが何者であれ我が魔剣は全てを焼き斬る」
 対するガイウスは【魔剣術の神髄】を披露し、黒炎を纏う魔剣デスブリンガーを放つ。
 奴の攻撃にはいかなる防御も無意味。ならばとフレミアは【毘沙門刀車懸かり】の構えを取ると12本の「毘沙門刀」を纏い、猛スピードで加速して黒炎の魔剣を回避した。

「防御を侵食されるのであれば、全て回避すれば良い! それだけの事よ!」
 軍神の愛刀であった12の属性を宿す刀達と共に、疾風怒濤の勢いで駆けるフレミア。
 その中から地と樹の刀を手に取って地面に突き立てると、グラグラと地震のような揺れが起こり、植物の根や蔓がガイウスの足元から絡みつく。
「む……大地と草木の力を秘めた剣か」
 揺れと束縛が魔装騎士の動きを阻害し、その間に吸血姫が新たな刀を構えて接近する。毘沙門刀の属性を活かした多彩な攻撃は、謙信も得意とした【毘沙門刀連斬】の剣技だ。

「東方の軍神の剣技と貴方の剣技、どちらが上か試してみましょうか!」
「面白い……!」
 始めて目にする異国の剣技に、1人の武人として血が滾ったか。斬り掛かるフレミアに対してガイウスも魔剣を手元に呼び戻し、激しい剣戟を繰り広げる。双方一歩も譲るつもりはなく、その剣の技量もまた拮抗していた。
「金属の武具を身に着けた敵……なら、使うのはこれよ!」
 フレミアが雷の毘沙門刀で斬りつけると、ガイウスは黒炎の魔剣でそれを受け止める。
 だが刀が帯びた電流は魔剣の刀身や鎧を通じて伝わり、本体に感電ダメージを与える。兜の奥で敵が顔をしかめるのが気配で分かった。

「3つ目の属性とは……」
「まだまだあるわよ」
 反撃にとガイウスが黒炎の熱を高めれば、フレミアは氷の刀の冷気でそれを相殺する。
 敵の弱点に応じた毘沙門刀を次々に繰り出す、それは軍神・上杉謙信の戦法として有名な「車懸りの陣」を剣術にて再現したかのようだった。
「そして闇に堕ちた騎士には、聖なる力よ!」
 氷刀にて黒炎を切り払った直後に、彼女が抜き放ったのは最も輝かしき光の毘沙門刀。
 裂帛の気魄とともに、常闇を照らす聖なる一閃が、邪悪なる魔装騎士に叩き込まれた。

「ッ……見事……!」
 真っ向からの剣術勝負に遅れを取ったガイウスは、苦痛を堪えて対戦者の技を讃える。
 胸甲に当てられたその手の下には、聖なる刀に受けた傷が深々と刻みつけられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
嘗ては人々の為に戦ったはずなのに…。

【九尾化・天照】封印解放…。

何人たりとも光に触れる事はできない…。
貴方の闇はわたしが祓う…!

「黒い炎」を光速化で回避しつつ、光を集束したレーザーで牽制しつつ、バルムンク【呪詛、切断、力溜め、鎧無視、鎧砕き】で攻撃…。

相手の魔剣を見て、途中から少し思案し、一度元に戻り【九尾化・魔剣の媛神】へ再度封印解放…。

無限の終焉の魔剣を顕現させ、溢れる九尾の呪力を付与して高速一斉斉射し、敵本体及び魔剣デスブリンガーを呪力で侵食…。

侵食した呪力【呪詛】を通じて魔剣の媛神としてデスブリンガーに呼びかけ制御を一時的に奪取…。
バルムンクと奪ったデスブリンガーの双剣で斬り裂くよ…。



「嘗ては人々の為に戦ったはずなのに……」
 騎士の忠義も魔剣の力も闇に捧げ、人類の敵として立ちはだかる魔装騎士ガイウスに、璃奈は悲しげな眼差しを向ける。オブリビオンとなった彼がかつての誇り高き騎士に戻ることは難しいだろう――だが、このまま闇に堕ちたままにしてはおけない。
「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
 【九尾化・天照】の封印を解いた璃奈の身体は光に包まれ、毛髪の色は太陽を思わせる黄金に、尾の数は九つに変わる。光を自在に操り、光の速さで戦場を駆けるこの姿こそ、この戦いに相応しかろう。

「眩き者よ。汝の清き魂もまた、我が黒炎にて焼き尽くそう」
 戦場を照らす光の主へ、ガイウスは【魔剣術の神髄】を放つ。襲い掛かるは闇の魔術で操作された魔剣デスブリンガー――全ての防御を無力化する「黒い炎」を纏った斬撃を、されど璃奈は光の速さで回避する。
「何人たりとも光に触れる事はできない……」
 残光だけをその場に残し、炎と刃を躱す天照の巫女。彼女は光を集束させてレーザーを放ち、敵を牽制しつつ距離を詰めていく。手には竜殺しの魔剣「バルムンク」を携えて。

「貴方の闇はわたしが祓う……!」
「否……何人にもこの常闇は晴らせぬ!」
 レーザーを躱した直後、光速で切り込んできた璃奈の斬撃を、ガイウスは黒炎の魔剣でガードする。速さでは遥かに勝る相手の動きに対応できたのは、騎士として卓越した技量の為せる事だろう。
「魔剣デスブリンガーよ……汝の力を示せ!」
 騎士の呼びかけに応じて魔剣はさらに深い闇と黒炎を纏い、光さえ呑み込まんと唸る。
 かつては人を守るために振るわれた剣も、今は闇に堕ちた使い手の元で、破壊と死の力を余すところなく奮わされていた。

「………」
 魔剣の巫女である璃奈は、それを見て何か思うところがあったのか――数合切り結んでから一旦距離を取ると、少し思案して【九尾化・天照】を解除する。髪の色が銀に戻り、辺りを照らしていた太陽の光も消える。
「……何のつもりだ?」
 なぜ元の姿に戻ったのかとガイウスは訝しむが、その答えはすぐに示される事となる。
 彼女は戦法を変えたのだ。天照から【九尾化・魔剣の媛神】へ。再び九尾の妖狐に変じた少女の身体より溢れ出すのは、光ではなく膨大な呪力であった。

「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……!」
 璃奈の詠唱により呪力からは無限の魔剣が顕現し、敵の騎士目掛けて一斉斉射される。
 溢れる九尾の呪力を付与された魔剣達は豪雨のように襲いかかり、圧倒的な物量で捌き切ることも許さず、敵の鎧を刺し貫いた。
「ぐぅッ!!」
 苦悶に呻きながらも魔剣を操り反撃を仕掛けようとするガイウス。だが剣に籠められた媛神の呪力は、彼の魔剣デスブリンガーをも侵食し、闇の魔法による制御を妨げていた。

「魔剣の媛神として願い奉る……堕ちた騎士の闇を祓うために、力を貸して……」
 璃奈は侵食した呪力を通じてデスブリンガーに呼びかける。魔剣を祀り、鎮める役目を代々担ってきた巫女の請願は、騎士の手から一時的に魔剣の制御を奪取する事ができた。
「馬鹿な……裏切るのか、デスブリンガーよ……!」
「裏切ったんじゃない……嘗ての役割に戻っただけ……」
 魔装騎士の手から離れた魔剣は巫女の元に。バルムンクと合わせて双剣の構えを取った璃奈は、目にも留まらぬ神速の歩法で敵との距離を詰めると、渾身の斬撃を叩き込んだ。

「その闇を斬り裂く……!」
「ッ―――がはぁッ!!」
 まっすぐな眼差しに迷いのない太刀筋。デスブリンガーを振るう璃奈の勇姿には、かつてのガイウスが抱き、そしてオブリビオンと化した今は失われてしまったものがあった。
 愛剣に叛逆された騎士の身体から血飛沫が上がり、常闇の地を赤黒く染めていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
夜闇の果てに真実を求める為に…
私の名は騎士トリテレイア、お相手願います

いざ!

魔剣が飛び立つと同時、重しとなる大盾を投擲し無手の騎士の行動牽制
マルチセンサーでの情報収集で接近方向を見切って炎纏う剣の突撃を回避

成程、擬似的な二対一がその技の神髄
剣の飛来を躱そうと、貴方の攻撃まで裁き切れぬ…という事ですか
得手の“受け”の腕を披露出来ぬのは残念ですね

幾度かの攻防で剣を躱し、背後を騎士に取られ…

ですが、私も正道の騎士とは言えぬ戦いが得手でして

背部装甲開き騙し討ちUC
ワイヤーの●ロープワークで捕獲し切り刻み
同時に剣の軌道を瞬間思考力で見切って柄を掴み、怪力で無理矢理保持

不作法はご容赦を!

二つの刃で刺し貫き



「夜闇の果てに真実を求める為に……」
 立ちはだかる魔装騎士の前にすっと進み出て、トリテレイアは電脳剣と大盾を構える。
 闇に堕ちたとはいえ相手も騎士。互いに譲れぬ理由を掲げて立ち合ったのなら、是非は剣に問うのが彼らの作法。
「私の名は騎士トリテレイア、お相手願います」
「……魔装騎士ガイウス、相手仕る」
 決闘前のような清廉な佇まいに、敵も魔剣を構えて応じる。緊張した空気が両者の間に流れ、騎士達は暫し微動だにせず互いの動きを読み――直後、合図もなく同時に動いた。

「いざ!」
「来るがいい!」
 ガイウスの手から魔剣が飛び立つと同時に、トリテレイアは大盾を全力で投げつけた。
 クルクルと回転しながら飛んでいく質量の塊は無手となった魔装騎士の行動を牽制し、同時に今回の戦いでは無用な盾という重しを手放した機械騎士は脚部スラスターを起動。
「敵攻撃接近、軌道算出」
 黒炎を纏う魔剣の接近方向をマルチセンサーにて見切り、地面を滑るように回避する。
 だが、その動きを読んでいたかのように、大盾を躱してきた魔装騎士が間合いを詰め、自らの拳にも黒炎を纏わせて打ち掛かってきた。

「成程、擬似的な二対一がその技の神髄。剣の飛来を躱そうと、貴方の攻撃まで裁き切れぬ……という事ですか」
 トリテレイアはスラスターの出力を上げ、黒炎の拳を辛くも避ける。相手に大盾を躱すためのロスがなければ彼の装甲は焼かれていただろう。斬撃や打撃などの種類を問わず、魔装騎士のあらゆる攻撃はこちらの防御を無力化する。
「得手の"受け"の腕を披露出来ぬのは残念ですね」
「貴卿の実力は疑いようがない。ならばこそ全力で仕留める」
 生前より磨き上げられた【魔剣術の奥義】に黒い炎の力を合わせ、ガイウスは容赦なく相手を攻め立てる。トリテレイアも果敢に電脳剣を振るうが、防御手段を限定された上で剣と本体との二対一を強いられては不利は否めない。

「……ここが卿の墓場だ」
 幾度かの攻防を経て、黒炎の魔剣を躱したトリテレイアの背後にガイウスが回り込む。
 白兵戦で背後を取られるのは絶体絶命の窮地。この時魔装騎士は勝機を感じただろう。そして機械騎士は――彼とまったく同じものを感じていた。
「ですが、私も正道の騎士とは言えぬ戦いが得手でして」
 トリテレイアの背部装甲が開き、中から【収納式ワイヤーアンカー・駆動出力最大】が射出される。ウォーマシンの武装は両手に持つ得物だけでは無い事を、確実に騙し討ちを決められるこの瞬間まで彼は秘匿していたのだ。

「まさか斯様な隠し玉を……ぐぅッ?!」
 第3の腕として稼働するトリテレイアのワイヤーは、不意を突かれた標的を縛り上げ、高速振動により切り刻む。ガイウスはしてやられたと呻きながらも魔剣デスブリンガーを遠隔操作し、拘束を断ち切ろうとするが――。
「させませんとも」
 機械騎士はその軌道を瞬時に見切り、飛行する剣の柄を掴み取る。手の中から逃げようとするそれをウォーマシンの怪力で無理矢理保持し、電脳剣と共に二刀流の構えを取る。よもや愛剣を二度も奪われるとは思わなかったか、兜の奥で敵が驚愕するのが分かった。

「不作法はご容赦を!」
 使命の為ならば形振り構わぬ手練手管で勝機を掴み取るのが、機械騎士の合理的思考。
 渾身の力で突き出された二つの刃が魔装騎士の黒鎧を刺し貫き、「ガハッ!!」と喀血したガイウスは堪らずその場に膝を突く。それでも彼が卑怯者などと相手を謗らぬのは、闇の道に堕ちた自分にその資格がないことを自覚しているからだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
全て覚悟の上。例え、如何なる艱難辛苦が立ち塞がろうとも、
如何に恐るべき事実を知ろうとも、我等は只前に進むのみ。
拙者、愛久山清綱。其の路、押し通らせて頂こう!
■闘
『空薙・剛』に【破魔】の力を宿し、戦闘に入る。

あの剣は力によって『操作』されているようだ……
なれば、此処は【フェイント】や【残像】を用いた予測し辛い
動きをガイウス殿本人に見えるように退避しつつ接近を図ろう。
接近の際は常時【野生の勘】を働かせ、剣が少しでも近づいたと
感じたら、至急その場から離れる。

接近に成功したら、此の技を見せる時。
心を無にして【夜見・慈】を放ち、ガイウス殿の身を纏われた
『黒い炎』ごと斬り祓うのだ!

※アドリブ歓迎・不採用可



「全て覚悟の上。例え、如何なる艱難辛苦が立ち塞がろうとも、如何に恐るべき事実を知ろうとも、我等は只前に進むのみ」
 真実への道行きを阻む黒炎の魔装騎士に、清綱は断固たる決意と不退転の意志を語る。
 引き返すつもりがあるならとうに逃げていた。臆さず退かず、己の信ずるものを貫いてこそ兵(つわもの)たるべき資格がある。
「拙者、愛久山清綱。其の路、押し通らせて頂こう!」
「……ならば見事、我を討ち取ってみせよ」
 大太刀に破魔の力を宿して戦闘に突入する清綱を、敵は【魔剣術の奥義】で迎え撃つ。
 魔装騎士の手元を離れ、自在に浮遊する「魔剣デスブリンガー」。黒き炎を纏った禍々しき刃が、標的の心の臓に狙いをつけた。

(あの剣は力によって『操作』されているようだ……)
 なればと清綱はフェイントや残像を用いた動きをガイウス本人の前で披露しながら退避する。あの魔剣は自律しているのではなく、あくまで使い手の意思で動いているのなら、撹乱するのも有効だろうと考えたのだ。
「……此方の隙を窺っているな」
 予測し辛い動きに惑わされて魔剣は揺らぎ、彼の戦巧者ぶりにガイウスは感嘆を抱く。
 だが、それでも騎士は隙を見せない。魔剣とは別に自らも移動して間合いを測りつつ、相手が近付いてくる素振りを見せれば即座にデスブリンガーを飛ばして牽制する。

「やはり一筋縄ではいかないか」
 清綱は接近のチャンスを図りつつも常に野生の勘を働かせ、魔剣が少しでも近付いたと感じたら至急その場から離れる。あらゆる防護を無力化・吸収する黒炎の力を敵が握っている以上、被弾のリスクは最小限に抑えるべきだ。
「だが……それでも押し通ると言った!」
 野の獣か鳥の如く俊敏に、かつ不規則な挙動で駆ける。ガイウスの目からは彼が何十にも分身したように見えただろう。無数の残像の中から相手がこちらの姿を見失う一瞬――そこに全てを賭けて、鬼獣の巫は一気に接近を図った。

「そこか……ッ」
 ガイウスがフェイントを見破った時には一手遅く、清綱は既に一足一刀の間合いの内。
 己が最も得意とする距離に遂に踏み込んだ彼は、大太刀を強く握りしめて構えを取る。
(今こそ、此の技を見せる時)
 炎の如く荒ぶる闘志を捨て去り、己の心を無にする。凪いだ水面の如く穏やかな境地に至る時、彼の奥義は最終形態に至る。其は荒ぶる魂を斬り祓う、殺意なき慈悲の剣――。

「御覚悟を、ガイウス殿。秘伝……夜見」
 繰り出された【夜見・慈】の一閃は、身に纏う黒い炎もろともガイウスを斬り祓った。
 霊験に満ちたその刃が斬られた者に痛みを与える事なく、「空薙・剛」には血の一滴も付いていない。だが、斬り伏せられたガイウスはがくりと膝をついた。
「見事なり……ッ!」
 闇に堕ちた者にさえ慈悲をかける清綱の心意気こそが、騎士を強く打ちのめしたのだ。
 呼び戻した魔剣を支えにして立ち上がるも、その動きは鈍く。決着の足音が段々大きくなっている事に、どちらも気付いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
黒い炎……その炎をあなたはどうやって得たのか、誰があなたにそれを与えたのか、問いに答えるつもりはありますか?

いずれにせよ、先に進みたければ討てと言うのであればそうしましょう。
黒炎を纏っての剣技を一切受けれない、というのは脅威ですが……グリモアでの予知でそれが分かっている以上致命ではありません。やりようはあります。
【ニヴルヘイム】を使用し絶対零度のを放出、魔装騎士ガイウスを凍てつかせることで動きを鈍らせます。
動きの鈍った敵へフィンブルヴェトからの足を狙う『威嚇射撃』で近寄らせないように戦い、足を狙う弾丸が命中し動きを止めたところを絶対零度の弾丸で撃ち抜きます。

私の死に場所は、ここではありません。



「黒い炎……その炎をあなたはどうやって得たのか、誰があなたにそれを与えたのか、問いに答えるつもりはありますか?」
 未知の力を目にしたセルマからの問いかけに、ガイウスは無言で魔剣に炎を纏わせた。
 やはり答えるつもりは無いようだ。この騎士について分かっているのは『常闇の燎原』に迫る者を抹殺するという意思だけ。冥土の土産すら持たせる気もないときている。
「いずれにせよ、先に進みたければ討てと言うのであればそうしましょう」
 それほど期待はしていなかったのか、返答がないと見るとセルマは即座に銃を構える。
 スコープを覗き込むその横顔に、死を受け入れるような諦観の色はカケラもなかった。

「そうだ、それで良い……我もまた全力で汝らを滅ぼすのみ」
 魔剣の柄頭を輝かせ、【魔剣術の絶技】の構えを取るガイウス。鮮血のごとき紅い光と闇色の炎を纏った魔剣デスブリンガーは、敵対者の生命を刈る死神の刃そのものだった。
「黒炎を纏っての剣技を一切受けれない、というのは脅威ですが……グリモアでの予知でそれが分かっている以上致命ではありません。やりようはあります」
 既にその炎に対する策を練っていたセルマは、【ニヴルヘイム】を使用して絶対零度の冷気を放出する。その余りの冷たさに大地は凍り、大気には雪と氷の粒子が舞い、そして騎士の身体を覆う黒鎧すら凍てつかせた。

「……まるで氷の地獄だな」
 身を切るような寒さを肌で感じながら、ガイウスは冷気の元凶を止めようと前に出る。
 すかさずセルマは改造マスケット銃「フィンブルヴェト」を彼の足元に向けて発砲し、足止めを仕掛けた。
「私が限界を迎えるのが先か、あなたが斃れるのが先か……勝負といきましょうか」
 放たれた氷の弾丸にも絶対零度の冷気は付与されており、当たれば確実に無事では済まない。だがこのユーベルコードは強力故に代償も大きく効果時間も99秒と限られている。出し惜しみをして勝てる相手でもない以上、短期決着あるのみだ。

「覚悟は万全か。受けて立とう」
 竜巻のような勢いで魔剣を操り、銃撃を切り払いしながら前進しようとするガイウス。
 近寄らせまいと威嚇射撃を行いながら、絶対零度のフィールドを展開し続けるセルマ。
 彼我の力関係は当初の内は互角か、あるいはガイウスの方がやや優勢のように見えた。だが【ニヴルヘイム】の限界時間が迫るにつれて、その関係性は逆転し始める。
(……動きが鈍ってきましたね)
 態度では平然を装っていても、この冷気に晒され続ければ身体に相当の負荷がかかる。
 凍てついた腕で振るう剣技は冴えを失い、動きも徐々に鈍くなっている。その隙を狙ってセルマが放った弾丸が、ついに標的の足に命中した。

「捉えました」
「……ッ!!」
 片足が凍りつき、ガイウスの動きが止まる。残り時間はあと数秒――再装填から再照準までの流れを淀みなく行うと、セルマは最後の1発を魔装騎士の心臓に向けて発射する。
「私の死に場所は、ここではありません」
 クールで毅然とした宣言と共に、放たれた絶対零度の弾丸は過たず標的を撃ち抜いた。
 騎士の胸に大輪の氷華が咲き、噴き出した鮮血さえもが凍りつく。会心の一撃を受けたガイウスは声もなくその場に崩れ落ちると、大地を冷たい血で染めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
驚いたな、口が利けるのか
先の吸血鬼と同じく、狂っているものかと思ったが……まぁ、情報を吐かぬのならどちらでも変わらぬか
道を塞ぐというのなら、叩き斬って罷り通る

白き翼の姿に変身
敵の特性を考慮し、いつもは防御に回している分の魔力を機動力と攻撃力に転換
縦横無尽に空を翔け(空中戦)、聖槍で魔剣と斬り結ぶ

回復持ちを相手に長期戦を挑むつもりはない、一気にカタを付ける
聖槍に聖なる力を集中・圧縮(属性攻撃・全力魔法・限界突破)し、【赫怒の聖煌剣】を形成
全霊を以って振り下ろし、万象斬り裂く黄金の【斬撃波】を放つ
我が聖煌剣に斬れぬものなし! 今度は貴様が防御手段を食い破られる側になる番だ!



「驚いたな、口が利けるのか」
 魔装騎士の口から意味のある言葉が発せられた時に、オリヴィアは多少なりと驚いた。
 斯様な辺境の果てに居座っていれば、正気などとうに失ってもおかしくないだろうに。彼奴からは堕ちたとはいえ騎士としての矜持や使命感らしきものが感じられる。
「先の吸血鬼と同じく、狂っているものかと思ったが……まぁ、情報を吐かぬのならどちらでも変わらぬか」
 何れにせよそれでオリヴィアの行動が変化する事はなかった。聖槍を構え、対峙する。
 その姿は普段のシスターでも登山時のパイロットスーツでもなく、白き翼を備えた天使の如き姿に変わっていた。

「道を塞ぐというのなら、叩き斬って罷り通る」
「我が魔剣の錆となる覚悟あらば、来るが良い」
 オリヴィアが飛び立つのと、ガイウスが【魔剣術の神髄】を放つのはほぼ同時だった。
 闇の魔術によって矢のように飛翔する黒炎の魔剣と、聖槍の担い手は空中で斬り結ぶ。
(敵の特性を考慮すれば、守りを固めるのは無意味か)
 いつもは防御に回している分の魔力を転換することで、彼女は機動力と攻撃力を大幅に強化していた。騎士もさらなる魔力を剣に注ぎ込む事で対応し、純白と漆黒は縦横無尽に空を翔けあいながら、互いを撃ち墜とそうと激しく鎬を削った。

(回復持ちを相手に長期戦を挑むつもりはない、一気にカタを付ける)
 黄金の穂先と漆黒の刀身が火花を散らす中、オリヴィアは聖槍に力を集中させていく。
 彼女の変身にはそれぞれの格好でのみ使用するユーベルコードがある。現在の天使の姿においては聖なる力を極限まで高めた【赫怒の聖煌剣】が、それに該当した。
「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らし、怒りの刃で遍く邪悪を斬り伏せよ!」
 高らかなる宣言と共に、超高密度に圧縮した力が聖槍より迸り、光の大剣を形成する。
 その刀身は揺らめく炎にも似て、煌々と戦場を照らし――夜明けを告げる太陽のように闇夜を白ませた。

「それが、汝の切り札か……!」
 直視する事も叶わぬほどの聖光から、ガイウスは思わず目をかばう。視線が切れた事で魔剣の制御が疎かになれば、オリヴィアはその隙を突いて空中から聖煌剣を振りかぶる。
「我が聖煌剣に斬れぬものなし! 今度は貴様が防御手段を食い破られる側になる番だ!」
 全霊を以って振り下ろし、放つは万象斬り裂く黄金の斬撃波。破邪の聖槍とその担い手が持つ聖なる力の全てを集束したその一撃は、射線上にある一切全ての存在を切断する。

「この一閃にて、道を斬り拓く!」
「―――……ッ!!!!」
 オリヴィアの裂帛の気迫に圧されたかのように、ガイウスの回避は僅かに間に合わず。
 黄金の斬撃波は大地を『常闇の燎原』の根本まで深く斬り裂きながら、彼の片腕と片足を奪い去っていった。
「見事、だ……!」
 断面から激しく血を噴出させながら、騎士の身体はぐらりと斜めに傾ぐ。苦悶を堪えて発された言葉には、自身を斬り伏せた聖煌の天使への、心からの賛辞が込められていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
我が名はカタリナ・エスペランサ。貴方を超え未来へと進みましょう
――名を騙る非礼にはご容赦を。かつての騎士様?

ほどく三つ編みは魅了権能の《封印を解く》トリガー
この姿を見る事、声を聴く事、存在の全てが《誘惑+催眠術》となり
知覚と思考を惑わせ行動の精度を落とす
《第六感+戦闘知識》の《見切り》と《空中戦》の機動力を活かし攻撃を回避
《情報収集+学習力》で見切りを補正し十分に《時間稼ぎ》
【解演】から【失楽の呪姫】発動――オーバーロード。

劫火の嵐は《属性攻撃+ハッキング+焼却+蹂躙》、
森羅万象を終焉の概念で塗り潰し焼き尽くす
私の……魔神の扱うこれは世界の理を拝借したもの、その再現だけれど。
これ“も”と言うべきかしら?(絡繰を探るように黒炎を見て)
侵蝕し喰らい合う炎。互角以上なら相手を寄せ付けないよう攻め立てるし、
不利なら逆に攻勢に出る相手の不意を突く好機。
あらゆる護りを滅する“黒”は此方にもあるのよ
放つ黒雷槍は《属性攻撃+鎧砕き+貫通攻撃+串刺し+神罰》
体勢を崩し黒雷の《全力魔法+弾幕》で畳みかけるわ



「我が名はカタリナ・エスペランサ。貴方を超え未来へと進みましょう」
 『常闇の燎原』への道を阻む黒炎の魔装騎士に、堂々たる名乗りを上げる閃風の舞手。
 かつて騎士物語に憧れたゆえか、その立ち居振る舞いには凛とした気品が感じられた。
「――名を騙る非礼にはご容赦を。かつての騎士様?」
「……構わぬ。斯様な地に非礼を咎める者も居はすまい」
 対する敵は罅割れた声で静かに返すと、片膝を突いたまま剣に魔力を送り込んでいく。
 その身は既に満身創痍。長い探索行における最後の戦いにも、決着の時が迫っていた。

「それでは、相手して貰おうかしら」
 優雅な笑みとともにカタリナは髪を結んだ三つ編みを解く。その動作は封じられていた魅了の権能を解くトリガー。この姿を見る事、声を聴く事、存在の全てが催眠術となる。
「良いだろう……汝の策謀、実力、全てを我に見せてみよ!」
 堕ちた騎士とてそう簡単に誘惑にかかりはすまいが、知覚と思考を惑わせ行動の精度を落とす事はできる。脳に霞が掛かるのを自覚しながらも、ガイウスは【魔剣術の絶技】を発動。残された力の全てを振り絞って、眼前の猟兵を屠らんとする。

「片手片足を失おうと、魔剣術の冴えには些かの衰えもなし、か」
 柄頭の魔石を輝かせて舞い踊る魔剣デスブリンガー。闇に閃く無数の斬撃を、カタリナは研ぎ澄まされた第六感と戦闘知識、そして自慢の翼による機動力を活かして回避する。
 相手が予測から外れた動きを見せれば、すぐに学習しこちらの動きも補正。全力を以て見切りと回避に徹する。その全ては身に宿した魔神の権能を解き放つための時間稼ぎだ。
「本来チカラの行使というものには然るべき順序というものが存在する。つまり――」
 【解演:括目せよ、是こそは神なる御業】により「第二神権」を解放する事で、彼女の保有するユーベルコードの性能は数倍に向上する。準備が整えば満を持して発動するのは【失楽の呪姫】――天より放逐させし魔神の権能にて、閃風の舞手は超克に至る。

「"正規発動"という訳だ。とくと御堪能あれ」
 3対の翼に頭上の光輪。真の姿を見せたカタリナが手をかざすと炎の嵐が巻き起こる。
 それはかつて魔神が盗み取った終焉(ラグナロク)の火の欠片。森羅万象を塗り潰し、焼き尽くす、劫火の権能だ。
「我が炎を炎で迎え撃つか……!」
 対するガイウスは黒炎を滾らせ、乱舞する死の魔剣にて劫火の嵐を切り払わんとする。
 紅蓮の炎と闇色の炎の激突は二頭の猛獣が喰らいあう様にも似て、余人には立ち入れぬ灼熱の領域を形成した。

「私の……魔神の扱うこれは世界の理を拝借したもの、その再現だけれど。これ"も"と言うべきかしら?」
 彼我の力が拮抗する中で、カタリナはその絡繰を探るように黒炎を見る。終焉の炎にも抗いうる以上、尋常の力でないことは明らかだが――オーバーロードにより魔神の化身に近付いた今の彼女の目をもってしても、その本質を読み取ることはできなかった。
「もはや語る言葉はなし」
「そうね、終わらせましょう」
 双方の炎はより激しく互いを侵蝕し喰らい合う。だが時とともに勢いを増すのは黒の側だった。あらゆる防御を無力化する黒き炎は、終焉の炎すら黒に染めてカタリナに迫る。

「あらゆる護りを滅する"黒"は此方にもあるのよ」
 だが。失楽の呪姫は押し寄せる黒炎にも笑みを見せ、黒き稲妻をその指先より放った。
 かつて魔神が神々より奪い取った権能は劫火のみに非ず。黒炎の攻勢の中をすり抜けるように飛んでいった黒雷の槍は、過たず標的を刺し貫いた。
「ぐぅ……ッ!!?」
 魔装騎士の身を守り続けてきた鎧も、守護貫通の権能を有した神撃ばかりは防げない。
 堪らず体勢を崩したガイウス目掛けて、カタリナは畳み掛けるように雷を撃ち込んだ。

「これが私の本気よ」
 古来より神罰の象徴とされる雷が、弾幕となって魔槍騎士の頭上より無数に降り注ぐ。
 ガイウスにその全てを斬り払い、焼き尽くすだけの力は残されていなかった。中天にて雷と劫火を従えしカタリナを見上げて、彼は絞り出すように言葉をかける。
「――……見事だ。よくぞ我を討ち破った、猟兵達よ」
 直後、騎士の鎧は貫かれ、死の魔剣は折られ、黒き雷と紅蓮の劫火が全てを焼却する。
 それがかつての英雄にして『常闇の燎原』の番人、魔装騎士ガイウスの最期であった。



 かくして最後の障害を倒した猟兵達は、ついに『常闇の燎原』に踏み入る資格を得た。
 一寸先すら見通せない暗黒の領域が彼らの前に広がっている。この先に本当に第3層に通じる手掛かりが存在するのか、それを確かめるのはいずれまた別の依頼となるだろう。
 ダークセイヴァーの真実の入り口に立った一同は、ここまでの成果を報告するために、辺境の最果てから帰還するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月29日


挿絵イラスト