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ユドナリア防衛戦

#ブルーアルカディア #温泉

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#ブルーアルカディア
#温泉


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「温泉に入りたいかーー!」
 集まった猟兵に向かって手を振り上げたミコトメモリ・メイクメモリア(メメントメモリ・f00040)は、薄いリアクションを前に、何事もなかったかのように話を続けた。

「ブルーアルカディアに『温泉国ユドナリア』という国家があってね、その名の通り、浮島のまるまる一つが、温泉リゾートになってるんだ」
 天使核の影響か、効能は確かなものらしい。あらゆる傷の治療を促進する他、軽い病なら浸かるだけで癒やしてしまうほど。
 重い病も進行を遅くする力があり、それを目当てに訪れる者も多いとか。

「勿論美容だって! 入るだけでお肌すべすべ、向こう一年はお肌の張りが約束される温泉もあるみたい――っと、本題にもどろうか」
 ぱちん、と指を鳴らすと、空間に浮かぶ映像が切り替わる。
 文字通り、溢れんばかりのお湯で満たされた島に襲い来る、無数の影。

「効能がある温泉目当てに――――とある“樹”がやってくるのさ」
 “樹”? と誰かがあげた声に、ミコトメモリはうん、と頷き。

「別名『雲の要塞』、『竜の巣』――その正体は『浮遊大陸を覆うほど巨大な大樹型のオブリビオン』だ」
 映像の向こう、遠くに、小さな点が見える。
 目を凝らしてみれば、それが一つの大陸であることが伺える。

「『島喰い樹』と呼ばれるそれにとって、天使核を有し、豊富な温泉が湧き出るこの島はまさしく『栄養源』にふさわしいってわけ。キミ達にはこの島を守ってもらう」

 ◆

「尖兵として現れるのは、『島喰い樹』に巣食う『花兵装鯨の艦隊』だ。名前の通り、花の形をした兵器で武装した、空飛ぶクジラさ。サイズはまちまちだけど、最低でも3~5m、大きいもので数十m。自分が相手を出来る適切なサイズのクジラを迎撃して欲しい。最終防衛ラインまでは、島民や有志の飛空艇で運んでくれる。勿論、自前で飛行手段がある人は、それを使ってくれても構わない」
 基本的には、何らかの飛行手段で近づいて、直接迎撃するか、遠距離攻撃でこちらに来る前に倒す必要がある。
 余談だが、このクジラ、武装も含めあらゆるパーツを何かしらに利用できる、資源としても有用な存在であるらしく、倒した後に一部でも回収できれば、島民は喜ぶだろうとのこと。

「彼らを追い払えば、いよいよ『島喰い樹』を迎撃する。相手にするのは『大陸一つ』と同義だし、『屍人帝国そのもの』でもある。更に恐ろしい戦力を蓄えている可能性もある、申し訳ないけど、死力を尽くして欲しい」
 戦いの規模が、文字通り違う。
 苦戦は免れないだろうが、勝つことさえできれば――――。

「島民はキミたちを歓迎し、あらゆる望みを聞いてくれるだろう。つまり……様々な効能を持つ、温泉に入り放題ってわけさ! 割に合うと思うかどうかは、キミたち次第。間違いないのは、猟兵が戦わなければ、この島にある全てはオブリビオンの養分にされてしまう、ってことだ」
 だからさ、と、ミコトメモリは続けた。

「軽い温泉旅行の準備運動ぐらいのつもりで、ささっと島を救っておくれよ、猟兵諸君?」
 勿論出来るだろう? という笑みは、猟兵に対する信頼の証でもあった。


甘党
 温泉に入りたいか!
 私は入りたいです、甘党です。
 そういうシナリオです、よろしくおねがいします。

◎用語解説◎
 温泉島『ユドナリア』
  島の全域で温泉が湧いている“温泉の島”です。
  強い魔力を含むお湯には様々な効能があり、勇士達の憩いの場となっています。
  が、あまりに効能がありすぎるせいでオブリビオンに狙われる羽目になりました。

◆アドリブについて
 MSページを参考にしていただけると幸いです。
 特にアドリブが多めになると思いますので、
 「こういった事だけは絶対にしない!」といったNG行動などがあれば明記をお願いします。

 逆に、アドリブ多め希望の場合は、「どういった行動方針を持っているか」「どんな価値基準を持っているか」が書いてあるとハッピーです

◆その他注意事項
 合わせプレイングを送る際は、同行者が誰であるかはっきりわかるようにお願いします。
 お互いの呼び方がわかるともっと素敵です。

◆章の構成
 【第一章】は集団戦です。
  襲ってくる『花兵装鯨の艦隊』を撃破してください。
  小さいもので3~5m、大きなものでは数十mとサイズに幅がありますが、やってくる事は同じです。

 【第二章】はボス戦です。
  詳細は、第二章開始時に公開されます。

 【第三章】は日常です。
  無事にボスを撃退したら、温泉に入ることができます。
  木造の風呂から岩風呂、露天風呂はもちろん、サウナも完備。
  家族や恋人用の混浴風呂まで様々な温泉があるようです。
  詳細は、第三章開始時に公開されます。
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第1章 集団戦 『花兵装鯨の艦隊』

POW   :    砲閃華
【背中の花から放たれる硬い種】が命中した対象を爆破し、更に互いを【種から発芽した蔓植物】で繋ぐ。
SPD   :    綿毛花粉機雷
自身が装備する【綿毛兵装】から【無数の綿毛機雷】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【花粉症】の状態異常を与える。
WIZ   :    危険な花園
自身の装備武器を無数の【種類】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 こんこんと湧き出る湯泉がそこいらにあるため、ユドナリアは常に薄く白い湯気に覆われている。島そのものを、雲が覆っているかのようだ。

 天使核が生み出す、特殊な滋養成分を含んだ湯気は、それだけでもそこに暮らすものに活力を与える。

 …………故に。


『ォォオオオオオオオ――――――ン』



 それを“餌”と見る者たちから見れば、それは芳醇な香りを漂わせるごちそうであり、わかりやすい目印となる。

「来たぞー!!!!」
 島民の誰かが叫んだ。空の向こう、数百はくだらない数の影が、一斉にユドナリア目指して向かってくる。
 今はまだ米粒のようなサイズだが、彼らが島にたどり着いたら最後、文字通り『何も残らない』だろう。

「飛空艇を出す、頼んだぜあんたら!」
 島民の一人が猟兵に向かって叫ぶ。
 敵は、花を纏うクジラ。


『オオオオオ――――――――ン…………』


再度、空中に響く鳴き声が、開戦の合図となった。
リア・ファル

温泉かあ。いいねえ(自分に効能があるのかはともかく)
それじゃ、やるよ

対象補足、武装探査…完了
機雷の除去なら、戦艦であるボクの得意とするところ
(情報収集、学習力、戦闘知識)

綿毛機雷を撤去する為に、風と炎の力を借りよう
「ヌァザ、多元干渉接続。電子の魔導書を此処へ」
【すべての魔術は三界に通ず】!
(全力魔法、属性攻撃)

綿毛をまとめて焼き払う、煉獄の華を我が魔術にて行使しよう

後は『イルダーナ』で駆け抜け、空の捕鯨と洒落込もうか
『グラヴィティアンカー』を絡め、魔剣に戻した『ヌァザ』で斬り抜けていくね
(操縦、空中戦、捕縛、ロープワーク、切り込み)

通すわけには行かない
今を生きるユドナリアの人々の明日の為に!



『オオオオオォ――――――ン…………』
 何も知らないものが聞けば、美しい音色だとすら思うだろう。
 しかしその鳴き声は、侵略の合図、滅びのラッパのそれに等しい。

 先駆けて最終防衛ラインに接近してきたのはヒマワリ級、十m以上の体躯を持つ大型の個体だった。

『オオオオォオォ――――ン』
 鳴き声と共に、身体を大きく揺する。
 背部に生えた、体躯と同サイズの花弁から、無数の粒子――――花粉が撒き散らかされた。
 無論、ただの花粉ではない。
 触れた瞬間爆発する、破壊の息吹にほかならない。

『艇を退避させ――――』
 戦域でそれを見た、ユドナリアの飛空艇パイロットが退避させろと、最後まで言い切れなかったのは、空を覆う影に気づいたからだ。

『……なんだありゃ!?』
 この世界の科学ではないもの。
 この世界の理屈ではないもの。

「ヌァザ、多元干渉接続。電子の魔導書を此処へ」
 一人の少女がいた。天に手を掲げ、

 百を超える魔導書が空を舞い――――その中身をぶちまけた。
 ページというページが機雷花粉と同じ量舞い、一つ一つに書かれた呪文に魔力が迸る。

    シンギュラリティ・マジックセオリー
 【すべての魔術は三界に通ず】

 暴風と火炎。
 細かな花粉を、戦場から一掃するだけの熱風が吹き荒れた。
 分散したページが新たな魔法陣を形成し、形成した魔法陣が更に大きな魔法陣を形成する。

『オォオオオオオオオォ――――――ン!』
 その光景を敵対行動と判断した花鯨は正しい。
 だが、遅すぎた。
 爆炎の向こうから、煙を引き裂いて飛翔する一閃。

 流麗なシルエットのバイクと、それに乗り込んだ一人の少女。
 バイクの名は制宙高速戦闘機『イルダーナ』。
 このブルーアルカディアでは、広い空を駆ける“翼”となる。

 少女の名前はリア・ファル。
 機動戦艦ティル・ナ・ノーグの、中央制御ユニットにして――――三界の魔術師。

『オオオオオォォ――――――…………』
 花鯨は大きい、大きいがゆえに、挙動が遅い。
 『イルダーナ』が真横を通り過ぎて、振り向こうと身を捩る頃には、もう全てが遅い。

「グラビティアンカー射出…………さあ」
 不可視の錨が花鯨に絡みつき、その動きを拘束した。
 身動ぎする暇も、花粉を出す暇もない。
 『イルダーナ』の上昇に伴って、花鯨の体が強引に「持ち上げ」られる。

「――――捕鯨と洒落込もうか」
 数十m空を駆け上がった後、斜め下に向かって急降下。
 慣性に従って振り回された花鯨は、その巨大な質量ごと、浮島に叩きつけられた。

「ヌァザ」
 魔導書に変じていた『ヌァザ』が、魔剣としてその手に戻る。
 

『オォォォォ…………ン!!』



「キミ達は資源になるらしいからね、ちょっとそこでおとなしくしてて」
『オォォォォォオオオオオオオン――――!』
 その様子を見て、仲間を守ろうとしたのか、数m……タンポポ級と呼ばれるサイズの花鯨が数匹、リアに接近してくる。

「仲間をやられて怒ってる? でも、ごめんね」
 『イルダーナ』を旋回させ、正面に相対し。

「通すわけには行かない、今を生きるユドナリアの人々の明日の為に!」
 直進。
 魔剣は、その花を容赦なく刈り取り、空に散らしていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

街風・杏花
美月さん(f01229)と

「ふふ、うふふ。頑張りましょう。……温泉。ええ、温泉。楽しみですものねぇ?」
意味深に、からかうように、幼馴染をじぃっと見上げ
うふふふふ、もう、そういうことにしてあげましょう

でも……いちいち雑魚に構うなって、お母様の教えですのよね
だから、任せちゃいましょう

思い切り跳び上がりつつ――白炎蜃気楼を着物に変えて

纏うは「砂かけ婆」の畏れ。花びらの間をすり抜けながら振り撒くは眠りの砂
眠らせて落とす、とはいかずとも、動きを鈍らせるくらいは出来るでしょう?

とん、と鯨の背を蹴り次の鯨へ、またその次
ほらほら美月、美月さん。ちゃんと落としてくれないと、私が危ないですよ――うふ、うふふ!


月輪・美月

幼馴染の杏花(f06212)さんと一緒に行動します

杏花さん、僕たちの使命はここを守ることで……温泉はおまけですから!
それはそれとして様々な効能の温泉……多分、混浴もあると思うんですよね……いや、きっとあるに違いない……僕は……全ての温泉を愛する人の為に、この国を守ってみせる!

二人で連携して戦います。影を纏った断罪輪で、杏花さんを狙っている相手を優先して落として行こうかと。子供の頃から一緒にいるので、連携は得意ですし

……こっちの攻撃はうまく避けてくださいよ、あんまり危ない戦い方もしないで……まあ、言っても無駄でしょうから、こっちでなんとかしますけど



「ふふ、うふふ」
 街風・杏花が楽しそうに笑みを浮かべているときは、大体困ったことになる予兆なのだと、月輪・美月は知っている。
 何か起こったわけではないが、これから何かが起こるのだ。

「……温泉。ええ、温泉。楽しみですものねぇ? 頑張りましょうね? 美月さん?」
「いえ、あの、杏花さん、僕たちの使命はここを守ることで……温泉はおまけですから」
「あら、では…………楽しみじゃありませんの? 私と、温・泉」










「――――――――――………………ええ、杏花さんと、“一緒に行く温泉”は楽しみですけど」
 危ういトラップを仕掛けられていた。一言も『一緒に入る』とは言われていない――何という策略か!

「あら、結構間がありましたわね?」
「そんな事はありません、僕らはこの島を守りに来ました。温泉はですね、あくまでおまけです」
 完璧な解答を出した美月に対して、街風・杏花は、腰を曲げて、わざわざ頭の位置が下がるようにしてから、じぃっとこちらを見上げ。

「――――うふふふふ、そういうことに、してあげましょう」
 敵わない。
 少なくとも、この少女を言い負かすよりは、眼前に迫る巨大な鯨の群れを相手にしたほうが遥かにマシに思えた。

 ◆

 花鯨の中では小さいとは言え、それでも3~5mサイズ――タンポポ級の個体が、空を埋めながら、わらわらと群れをなしてくる。

「一体一体片付けるのは手間そうですね……どうします? って――」
 方針を確認しようとして隣を見た美月は、もう相方がそこに居ないことに気づいた。
 軽い足取りでぽん、と跳ねて、降りる先は花鯨の背の上だ。

「き、杏花さん!?」
 いつの間にやら、杏花の纏う衣服は、普段のバッチバチに桃色を全面に押し出したちょっとえっちなエプロンドレスではない。
 温泉地にふさわしい(?)、白い炎を細部に纏う着物に変じていた。

「ふふ」
 ひらりと身を翻し、着物の裾からふわりとこぼれ落ちた粉が、風にまかれて花鯨達に降り注ぐ。

『オオオオォ――――………………ン……』
 巨体が、ぐらりと揺れる、何体かは浮島に身体をぶつけて、そのまま空の果てに落下していく。

「あら、意外と寝付きがよいんですわね? ほらほら、美月、美月さん、早く早く」
 花鯨の背を足場に飛んで、また花鯨の背中へと。
 そうして動く度に粉がこぼれて、鯨達が眠気の中にいざなわれていく。

『オオォォオオオオオオ――――――ン!』
 杏花が飛んだ先、花鯨がその口を開けて迎え撃つ。
 飲み込まれる、誰もがそう思うだろうタイミングで――――。

『オオオオオオオオォォ――――――――………………』
 巨体の背が裂けて、勢いよく落下していく。
 跳躍と着地が、噛み合ったタイミング。

「あの、杏花さん、あんまり危ない戦い方をしないでくださいよ……」
 美月の影が伸びて、円状の刃となり、花鯨を両断したのだった。

「あら、危ないかどうかは美月さん次第ですわよ? ちゃんと落としてくれないと、私、乗る足場が無くなってしまいます」
「だったらぴょんぴょん飛び跳ねないで――――――――くださいよっ、裾が短いんですから」
「…………どこ見てるんです? えっち」
 軽口を叩きながら、連携は一切揺るがない。
 杏花の足場を、美月が用意し、それを利用してまた跳ねる。

「……まあ、言っても無駄でしょうから、こっちでなんとかしますけど」
 楽しそうに戦場で舞う杏花の姿を、目で追いながら。
 美月は、頭の片隅で考えていた。

(混浴………………多分、あると思うんですよね…………)
(いや、きっとあるに違いない……)
(――――ならば、可能性も少しぐらいは…………僕は、僕は!)




「僕は……全ての温泉を愛する人の為に、この国を守ってみせる!」








「邪なことを考えてませんの?」
「何一つ考えてませんとも、ええ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御園・桜花


「植物の生存戦略には、共存か殲滅しかありませんもの。彼等の望みは、とても良く分かるのです」
困ったように笑う

「スピードは勝ると思いますけれど…後は敵の強度次第ですね」
UC「出前一丁・弐」使用
マッハ9越えで飛行し吶喊
ルート自体第六感で選択
敵の攻撃も第六感や見切りで躱す
基本は敵の下に潜り込み腹部側から上部へ突き抜けるトルネード?戦法
ループやインメルマンターンも多用し、敵の強度により腹部真っ向ぶち抜きか鰭や外縁を削り削ぐ当て逃げかを選択

「自らの生存の為に他者殲滅を選択した貴方達とは、何処まで行っても相容れない関係です。だから私も貴方達の殲滅を厭いません」
「さようなら…次は共存出来ますよう」
鎮魂歌歌う



『オオオォォォォォ――――――――ン!!!』
 30mを超える大型個体――ハイビスカス級の花鯨が、仲間を討たれた怒りを込めて、咆哮を上げながら背中を震わせた。
 一つ一つが、大柄な人間大ほどのサイズを持つ種が、背の砲塔から無数に吐き出された。

『船を退げろぉ――――――!』
 射程と威力たるや、遠方に備えていたユドナリアの飛空艇が撤退を選択するレベルだ。
 間にあった浮島も、その散弾を受ければひとたまりもなく砕け散り、大きな岩の塊となって崩れ落ちていく。

 その破壊の嵐の中を駆け抜ける、一台のケータリングカーがあった。
 ケータリングカーが、あった。
 ケータリングカーが…………あった!

「植物の生存戦略には、共存か殲滅しかありませんもの。彼等の望みは、とても良く分かるのです」
 桜色をあしらわれた車体がマッハ9の速度で空域を駆け抜ける。
 慣性に従うこと無く、視界を埋め尽くす種の嵐の中、その全ての軌道をすべてわかっているかのように、一撃も当たらずにすり抜けてゆく。

「ですが、ここは人々の住まう地。見過ごすわけには参りません――――戦場デリバリーと参りましょう」
 ご注文は平和な空、お届けは迅速確実に。
 御園・桜花は己の感性に従いながら、カサブランカ級花鯨との距離をみるみる詰めていった。

 ◆

『オオオオオオォォーン…………!』
 花鯨の感覚器官は、主に視覚と、反響した鳴き声を、砲塔代わりの大きく開いた花弁で受け止める事で距離やサイズを図る、大規模なエコーロケーションだ。
 その感知の網に、ケータリングカーは引っかからない。
 音より早く動く為、反響をキャッチした時点では、もうその場所に居ないからだ。

『ォォオオオオオ――――――』
 速度では明確に勝っている。
 では、火力はどうか。
 ケータリングカーは既に巨体の真下にいた。

「貴方達は、自らの生存の為に他者殲滅を選択しました」
 アクセル全開、ターボエンジンフルスロットル。

「分かち合うことも出来たのに、そうしませんでした」
 廻る、廻る、ケータリングカーが廻る。
 それはさながらライフル弾のような回転だった。
 加速と速度で敵を貫く、躯体そのものを弾丸とした一撃。

「だから――――何処まで行っても相容れない関係です。私も貴方達の殲滅を厭いません」
 突撃。

『オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――――』
 ケータリングカーが、めり込み、止まったのは一瞬。
 外皮を突き抜けて、肉を貫き、一直線に突き破る。
 花鯨を、文字通り貫通したケータリングカーには、血の一滴すら付着していなかった。
 そんなものが残らないほど、勢いだった。

「さようなら――次は共存出来ますよう」
 背に咲く花を、皆で愛でられたら良かったのに。
 花鯨の絶命の声に重なるように、鎮魂歌が戦場に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
(姫からの拝命なら一も二もない。……ロケーションにやや何かを思わない訳でもないが)

(ザザッ)
了承した。
(仮面を被れば、それも思考の外に弾かれる。先ず優先すべきは任務ただ一つ。)

世界はブルーアルカディア
温泉島ユドナリア、無事転送完了した。

ジャガーノート・ジャック、此れより任務を開始する。
オーヴァ。

兵装展開。
砲門解放
ターゲットにロックオン。

弾威は最大設定に。
雷砲弾"Megiddo"――発射。

(轟きの音と共に放たれるのは、特製の広域制圧弾。
着弾地点から
       ソラ
半径100m内の地形を
丸々地獄めいた雷の嵐で閉す砲弾だ。(範囲攻撃×砲撃×スナイパー))

――複数個体の鎮圧完了。
次弾を装填する。(ザザッ)


ヴィクティム・ウィンターミュート


温泉は別にどうでもいいが…仕事ってんなら、やるだけだ
はぁ、しかし……こいつはなんというか、壮観だな
空の向こうからうじゃうじゃ、キモイ色合いのクジラがよォ

演者をここに──『Extra』
俺が演るには高すぎる…そこまではお前らが運びな
ワイヤーアンカーの射程に入ったら、適当なクジラの身体にブッ刺す
そのまま高速巻取り、接敵……身体に乗ろうか
右の仕込みクロスボウを展開、発射──電気の【属性攻撃】
時限式のエレクト・ボルト
それを十数本、ばらけて打ち込む
花びら?ジャマー展開、使わせるわけねーだろ

後は簡単、別のクジラにまた飛び乗って
電撃作動!これの繰り返しだ

悪いけど、こういうの殺し続けて数年
敗けたこたぁねーんだ



 最も大きい、体躯は50mを誇るであろう――花鯨は、ユドナリアではラフレシア級と呼ばれ、恐れられている。
 桁外れのサイズだ、背負っている花の大きさも数も、他の個体とは文字通り物量が違う。
 更には、取り巻きが数十体、タンポポ級が七割、ヒマワリ級が三割。
 アレを全て落とさねば、到底「勝利」とは呼べないだろう。

(ユドナリアを守れ――姫からの拝命なら一も二もない)
 グリモア猟兵は皆そうだ、己が悲劇を見ておきながら、自分では何も出来ない、託すしか無い。
 その無念を預かり、猟兵は戦場へ赴く、この度も例外ではない。

(……ロケーションにやや何かを思わない訳でもないが)
 温泉、温泉いいな。いろんな温泉があるらしいよ。選び放題だって。

(ザザッ)
 思考を切り離す。
 仮面を被れば、「少年」から「騎士」に変じる。そういうふうに出来ている。
 優先すべきは唯一つ。

『ジャガーノート・ジャック、此れより任務を開始する――――オーヴァ』
 背部接続兵装、装填完了。
 武装展開、問題無し。
 訪問解放、ターゲット・ロック。

 弾威は最大。敵を殲滅するための無法を容赦なく浴びせる。

『雷砲弾"Megiddo"、装填』
 アイカメラの奥で、赤い光がギラリと瞬いた。

 ◆

『オオオオオオオォォォォォオオ――――――ン…………』
 体長4mを超えるタンポポ級花鯨の背に、一人の男が座り込んでいた。
 花鯨は抵抗の意思を見せない、もとい……既に抵抗しようとして、それらを全て潰されて、今はもう成すすべがないだけで、完全に勝敗がついている。

「近くで見てりゃあそれなりにでかいものの……こいつはなんというか、壮観だな」
 獲物の上で、あぐらをかいて、遠い空までもを埋め尽くす姿を眺め、こぼすのは溜息にほかならない。

「空の向こうからうじゃうじゃ、キモイ色合いのクジラがよォ――――」
 これが飼い慣らされた軍用犬でもあれば驚異なのだが、連中に『統率』という概念はない。
 図体が大きく、数がいるのをいいことに、本能のままに押し寄せ、暴れるだけの有象無象だ。

『オオォォォオオォォォォ――――――――――ンッ"!』
 乗り物にされた花鯨が鳴く。それは仲間へ救援を求める合図だ。
 事実、次々と遠くに居たはずの花鯨達が、こちらへ向かって空を泳いでくる。


「おーおー、釣れた釣れた。シンプルで助かる。仲間思いなのは美徳だね」
 バタバタバタバタバタバタ、と。
 ヒレで空をかく花鯨達の飛行とは違う異音が、戦場に響く。
 響き続けている。

「『Extra』――仕事をするぜ」
 百体を超える人形機械、アンドロイド。
 エキストラと呼ばれた彼らは、次々とプロペラによって飛翔し、花鯨の群れへと向かっていく。

『オォォォ――――――』『ォォオ――――ン!』『オオオオオ――』
 花鯨達は一斉に、背部の花弁兵装を開いた。花粉弾、種の弾丸、その質量で行うそれらは、それだけで単純な破壊兵器となる。
 だが――――――。

「はっ」
 ヴィクティムは、鼻で嘲笑って指を弾いた。
 エキストラ達の眼が一斉に光る。システム正常作動の証。

「使わせるわけねーだろ、馬鹿か」
 顔無き脇役の軍隊、エキストラ。
 彼らに仕込まれた対ユーベルコードジャマーは、とびきり強力なオブリビオンならともかく、十把一絡げの動物の群れなど相手にしない。
 まして百体以上が陣形を組んで、並列接続による防域エリアを形成しているのだ。
 花鯨が射程圏内に飛び込んだ時点で、全ての決着は自動でついた。
 攻撃、と呼ぶにはあまりにも緩やかな動きで、ヴィクティムはクロスボウを構えた。
 無造作にトリガーを引いても、抵抗できるものはいない。
 放たれた次々とボルトが肉に突き刺さり、花鯨達は更に悲鳴を上げた。

「さて、端役の出番はここまでだ、退散するとしますかね」
 自分が座る花鯨にも、一発ボルトを打ち込んで、エキストラに捕まって戦域を離脱する。なぜなら――――。

「俺が始末してやろうとも思ったが、せっかく“主役”が来てるんだ、そっちに任せるのがオツってもんだろ」
 アンドロイドたちも、同時に戦場を高速で離脱していく。
 これから起こる大惨事に、巻き込まれてはたまらないからだ。

「聞こえるか? 仕込みは上々、後はご随意に」
 通信機越しに一言告げて、悶える花鯨にはもう興味を失ったように、遠くの空にある「次の敵」を睨みつけた。

 ◆

『了解。連携を感謝する、オーヴァ』
 ヴィクティムからの連絡を受けて、準備は整った。
 ラフレシア級はもう5kmの距離まで迫っていた。あの大きさなら、それこそ後、数十秒で辿り着くだろう。
 その前に、トリガーを引く。
 バチリ、と音を立てて、広域制圧弾が放たれた。

『オ――――――――』
 着弾、同時に展開するのは、太陽と見間違うような巨大な雷球だ。
 命中箇所から半径100m。ラフレシア級花鯨を、周囲に居たお供を巻き込み、全て覆い尽くして、なお足りない破壊の嵐。
 雷鳴をほとばしらせながら、中にいる花鯨が焼かれていく、だけではない。

 "Megiddo"からこぼれた雷の一つが、運良く離れた場所に居た花鯨に触れた。
 ヴィクティムが腰を下ろし、足場に使っていた個体だ。
 残滓が、打ち込まれたエレクト・ボルトに触れて、爆発した。

『オオオオオオオオオ――――――!』
 その細い細い雷のラインを通って、"Megiddo"の雷鳴が伝播する。
 端役が仕込んだボルトが、さらに周囲に雷を巻き散らかし、側にいた花鯨に触れる。
 避雷針に雷が吸い込まれていくように、花鯨に穿たれたボルトに引き寄せられて、弾けていく。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』
 空中にクジラたちの絶叫が響き渡った。
 無限に連鎖していく雷の檻は、もはや100mに収まらない。
 空域を埋め尽くす花鯨達、全てを飲み込むまで、その拡大は終わらなかった。

『――――任務完了』
 やがて、放電が終わった時。
 もう、何も残っていなかった。
 黒焦げになった肉の塊が、ただ落ちていって、空の果てに飲まれていって、静かになった。

『……次の戦闘に備え、準備を開始する、オーヴァ』
 不甲斐ない、尖兵の戦いを嘆くかのように。
 “大陸”そのものの影が、遠い、遠い空から近づいてくるのが、確かに見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
島喰い樹と共生関係にあるのかな?どんな生態なのか興味あるかも。

ブライダルベール!さあ、どんなお話を食べさせてくれるのかな。

綿毛機雷をビットから放つビームで撃ち落とすよ。
すごい花粉だね。これはさすがに生身でくらったら花粉症にしばらく悩まされそうだ。

このままビットのビームで鯨を攻撃でし、とりあえず様子見だよ。
お、意外と速いね。その大きさでそんなに動けるんだ。

先回りして大鎌で花兵装を刈り取るよ。これは身体の一部?それとも後天的にまとったものなのかな?調べさせてもらうね。

なるほど。そうなんだね。弱点、見つけたよ。断面にビットのビームを集中だ。これは痛いよね。

仲間がやられたことに怒ってるのかな。群れを守る習性もあるんだ。もっとキミたちのお話、見せてもらうよ。



『オオォォォオォォォォ――――ン』
 その花鯨は幸運だった。雷球の破壊から逃れた、唯一の個体だったと言っていい。
 タンポポ級と呼ばれる、数mサイズの小さな個体だ。
 巨体の影に隠れて、偶然にも猟兵のレーダーにも引っかからず、マーカーを付けられる事もなかった個体。
 本能的な判断で逃走を選んだのもやむをえまい、彼らを率いる最大級の個体も堕ちてしまったのだから。

 ビ、と。
 その行く手を阻むように、突如として、眼前に現れた存在があった。

『オ――――――』
 花鯨が狼狽したのは、それを“見たこと”がなかったからだ。
 人間のような形をしている、だが、金属にとって形造られていた。。
 光で構成された蝶々のような翅で、音もなく空を飛行し。
 周囲には、自分たちが背に抱いているのと同じような、花弁型の兵器が浮遊している。

 サイキックキャバリア、と呼ばれる存在を、この世界のオブリビオンである花鯨は、知らなかった。

「やあ、はじめまして」
 その中に、別の人間が搭乗しているなど、きっと思いもよらなかったに違いない。

『オォオオオオオオオオオオオオオオ――――――!』
 語りかけられた声に、花鯨が行ったのは反撃だった。
 花粉を浴びせ、空から堕とす。大きかろうが、全てを浴びればひとたまりもない――――。
 そんな希望は、あっさりと、文字通り撃ち抜かれた。
 花粉が広がる前に、敵の花弁型兵装から熱線が放たれて、焼けて焦げて、そのまま燃えた。

『オ――――――』
「わあ、すごい花粉だね。プライダルベールに乗ってなかったら、花粉症に悩まされてたかも。その花から出たよね。種を作るためじゃなくて、攻撃用の兵器として生み出しているのかな?」
『――――オオオオオオォォーン!』
 花鯨の判断は早かった、身を翻して、逃げようとした。
 空をかき分けるヒレを、再び熱線が焼いた。
 悲鳴を上げて身悶えている間に、白い巨人はもう花鯨の眼前に回り込んでいた。

「お、意外と速いね。その大きさでそんなに動けるんだ、重さはどうなんだろう、実は軽いのかな」
 び、と手にしていた鎌が振るわれて、背負っていた花弁兵装が身体から切り離された。
 体の一部を失った痛みを嘆く暇もない。
 グラリとバランスを失って、花鯨は緩やかな落下を始めた。

「これは体の一部なのかな、それとも後天的に――あれ?」
『オ、オオオオオ――――』
「あ、わかった。光合成だ。この花からエネルギーを生み出して、空を飛ぶ力にしてるんだ、そうでしょう?」
 花鯨は言葉を持たないが、その推測は正しく。 
 つまり、この個体はもう、残ったエネルギーでなんとか落下速度を緩めるだけが精一杯で、もう空を泳ぐことが出来ないということだった。

「他の個体がやられた時、怒ってたよね。群れを守る習性もあるんだ。興味深いな」
『オ―――――――………………』
 逃げられないし、逃してももらえない。
 花鯨の絶望をよそに、白い巨人から聞こえてくる声は、どこまでも愛らしく、無邪気だった。

「気になることがたくさんあるんだ、もっとキミたちのお話、見せてもらうよ」
 助けて。
 その意味を込めた鳴き声を聞き届けてくれる仲間は、この戦場の、もうどこにも居なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『島喰い樹』

POW   :    緑の巨龍
自身の【枝や種子】を代償に、1〜12体の【島を打ち砕き、飲み込むほど巨大な植物の龍】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
SPD   :    強蝕樹
非戦闘行為に没頭している間、自身の【無限にあらゆるエネルギーを吸い上げる根】が【際限無く浮遊大陸を浸蝕成長していき】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    悠久の時、失われし緑の大地
戦場全体に、【外界より百万倍時間が早く進む果て無き樹海】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はロニ・グィーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 全ての花鯨を迎撃し終えて、まもなく。
 空域に、まるで意思があるかのように、巨大な島が姿を表した。
 ともすればユドナリアよりも大きい、その島には、巨大な大樹が根付き――まるで意思があるかのように、ざらざらと葉が擦れる音を奏でた。
 尖兵である花鯨を一掃された怒りからか、あるいは、餌を目の前にした歓喜からか。

『――――――――――――』
 言葉はない。だが確実に、明確に、ユドナリアへと接近してくる。

『――――――………………』
 ばさばさ、ばさり、と、ひときわ枝が大きく揺れた。
 一枚一枚が人と同じサイズを誇る葉が零れ落ちて、一本一本がラフレシア級花鯨の体躯より大きな根が幾本も絡み合い。


『――――――………………ゲルゴグァァァ………………』
 全てが木々で構成された、巨大な龍が産み落とされ。

『…………グォオオオオオオオオオオオオオオオオオウ!』
 猛り、吼えながら、親たる大樹よりひと足早く、ユドナリアへ向かって飛翔していった。



 ◆ 第二章 ◆

 『島喰い樹』及び、その力で産み落とされた巨大な龍が相手となります。
 大きくわけて二つの行動があります。

 1)島喰い樹を攻撃する。
 島にまるまる寄生する大樹です。多分樹のほうが本体ですが、土台の島を破壊しても倒せると思います。
 サイズが規格外ですので、並大抵の攻撃ではびくともしませんし、半端な絡め手はあんまり意味がありません。
 どのユーベルコードで、どういった影響を与えるつもりなのかが明確なプレイングには、ボーナスが入ります。
 「いや、俺のユーベルコードは強いから島とか壊せるし……」ぐらいの気概があるならそれでも大丈夫です。

 2)樹龍からユドナリアを守る。
 島喰い樹は、ユドナリア攻略のため、先駆けて巨大な樹で出来た龍を先行させています。
 こちらも本体ほどではないですが大きく(横幅50m以上、縦幅数kmぐらい)、放っておくとユドナリアが殲滅されていまいます。
 ただし、地味に有線接続であるため、この龍を倒しても島喰い樹にダメージが入ります。

 「島……どうやって殴るか想像がつかない……プレイングがかけない……」という方や、島を守ったりするシチュエーションの方がやりやすい、という方はこちらをどうぞ。


 プレイング受付中です。
御園・桜花


「木であり竜である、という事は。どちらの弱点も併せ持つ、という事ですね」
「桜鋼扇で殴る程度では、睫毛が転んだ程度のうざったさしか与えられなさそうですから。今回も一つ覚えになっちゃいますけど」

UC「出前一丁・弐」使用
竜が島に近付いたら顔面目掛け吶喊
顎の下、又は横っ面にぶち当て島に噛みつくのを邪魔する

又根なり蔦なりが島喰い樹と繋がっているなら、其の根なり蔦なりに吶喊しぶち折る

マッハ9越えで飛行しているので、飛行ルートも攻撃を躱すのも第六感頼り

ぶち当てる余裕があるなら高速詠唱で炎の属性攻撃も行う

「連作障害どころか此の地自体を喰らう植物…貴方とは共存できません。次に戻る時は、他の貴方でありますよう」



 花鯨を撃墜したままの勢いで、桜花を乗せたケータリングカーは、誰より早く『島喰い樹』の攻撃射程内に突入した。

「あれ程のサイズですと――――桜鋼扇で殴る程度ではっ」
 当然、近寄れば迎撃せんと、樹龍が迫る。
 身動きするだけで大気が震え、あぎとを開けば、その高さは100mを大きく超過する。

『ゴルァゴォオオオオオオオオオオオオオウ!!!』
 喉など無いだろうに、それだけ大きなものが高速で動き、喰らいつこうとすれば、風を切る音が響き渡る。
 果たして、数百トン以上の質量を持つ龍の咬合力で、ケータリングカーはあわやソラの藻屑に――――

『ゴォオオアアアアアアアアアアアアアアウ!?』
 ――――なった、と思ったのなら、それはこの樹龍が与えられた感覚器官より、ケータリングカーが速かった証拠だ。
 あぎとが閉じる寸前で真横に移動し、そのまま横面を殴り飛ばすように突貫。
 ぐらり、と揺れた龍の隙を、一流のパーラーメイドは見逃さないものだ。

「自然とは、循環するものですが」
 出力、フルスロットル。
 タイヤの回転数が増す毎に、言葉と共に紡がれる詠唱によって、桜の文様を交えた魔法陣が、勢いよくケータリングカーの周辺に展開していく。
 身体と車体を一体に扱うからこそ出来る、車体そのものを詠唱加速装置とした高速魔法。

「此の地自体を喰らう植物は、その環の中に入れない――貴方とは共存できません」
 魔法陣が生み出すのは炎だ。樹龍を取り囲み、封じるその炎の量は、砲塔と変わらない。

『――――ルグオオオオオオオオオオオオオォォオオオオオオオオオオオオ!』
 樹龍が、再び大口を開けた。
 いくら炎を生み出そうと、この巨体からすれば所詮小さな灯火でしか無い。
 全て喰らいつくしてやろうと、口が大きく裂けてゆく。

 対する桜花は、車体を急旋回させて、樹龍に向かい合った。
 進行ルートに設置した魔法陣、おおよそ百と二十二。
 全てを通過するのに要する時間は、二秒足らず。

「――――――参ります』
 行く。
 魔法陣をくぐり抜ける毎に、車体が炎に包まれる。
 それは指向性をもった赤き矢だ。
 大口の中に、もはや光球とかしたケータリングカーが飛び込んでいく。

『ガァ――――――――――』
 果たして。
 あぎとを超えて、口腔に潜り込み、その内側を焼き尽くし。
 車体に付与されていた炎全てを、余さず樹龍の中に残して。
 身体を突き破り、外へと飛び出した。

「次に戻る時は、他の貴方でありますよう」
 それが、樹龍に与えられた末期の言葉。
 炎がもたらした崩壊は、本体たる島喰い樹まで及ぶ。

 声を持たぬはずの龍の絶叫が、ソラにこだました。

大成功 🔵​🔵​🔵​

街風・杏花
【2】
美月(f01229)と

うふふ!
島斬りというのも、楽しそうですけれど。ええ、やっぱり私たちは、こっちですよね
十分に分を超えた大きさですが――大丈夫

最近、
(この姿を受け入れてから、)
とても……調子がいいのです。

防御、任せますね、美月。

//
狼耳を出し、黒に染まった姿に身を変じて、振るうのは見たこともない神様の力を宿す雷速
倒して食ってもいない「畏れ」を宿すのはおかしい、負担が大きいからやめろって、師匠――彼の叔母に、言われましたっけ

大丈夫
防御は一切考えずに、端から削っていきましょう

――だって、任せたから。守ってくれますから

「うふふふ。ちゃあんと守ってくれたら、『お礼』をしないといけませんね」


月輪・美月

引き続き杏花(f06212)さんと一緒に行動します
2)樹龍からユドナリアを守る

島を殴りに行くのも、浪漫を感じる所ではありますけど……戻ってきたら温泉……じゃなく、ユドナリアが殲滅されていたら意味がありません
僕達は守る方向で動きましょう
ま、ドラゴン退治も一度はやってみたい男の子の夢ランキング上位ですし

影で強化した肉体で周りの人や杏花さんを守りつつ、樹龍を迎撃します
ある程度動きが鈍ってきたらこちらも攻撃に参加して一気に殴り倒します

……無茶な戦いは……ま、好きにやってください。こっちは勝手に守りますから……さくっと片付けて怪我に効くという温泉にでも行くとしましょう



『ゴルルルルォォォォオォォァァァッァァ――――』
 仲間の一体がやられた樹龍は、怒りの意思を示すように体を震わせた。
 目の位置に当たる場所は空洞だが、明らかにこちらを『見ている』と感じさせる視線が突き刺さる。

「あら、あら、あら、あら」
 普通の人間なら、それだけで恐怖で意識を持っていかれそうなものだが、街風・杏花は生憎と、そのような感性を持ち合わせては居なかった。

「うふふ……島斬りというのも、楽しそうですけれど。ええ、やっぱり私たちは、こっちですよね」
 一方、ね? と同意を求められた月輪・美月は溜まったものではない。
 どう転ぶにしろ巻き添え――もとい、つきあわされるのは目に見えているわけで。
 しかし、ここまで来た以上はやるしか無い。龍か島かと言われたら、気持ち龍の方がまだ楽だ。
 何せ、向こうから来てくれるのだから、移動の手間も省けるし。

「ま、ドラゴン退治も一度はやってみたい男の子の夢ランキング上位ですし」
 結局、売られた喧嘩を買うほうが性分に合っている、ということだろう。

 いつまで立っても受け身でいると尻に敷かれっぱなしだ――攻め攻めで行こうぜ――今なにか言いましたか父さん。

「相当大きいですけど、どうするつもりですか、杏花さん」
「それは勿論、直接」
 にこりと笑んだ杏花は、鞘に収めた刀を抱きしめるようにしながら。

「防御、任せますね、美月」
 そう言い放って――――ソラに向かって跳躍した。

「あ、ちょっと!」
 挙動の起こりから、結果まで、全く目に追えない動き。
 これはもう、だいぶ“盛り上がって”いる。

「…………まったく、きっと無茶するんだろうなぁ」
 確かめなくても、見なくてもわかる。
 フォローが自分の役目だ、影をまといながら、美月は大きく溜め息を吐いた。

 いえ、時々はこっちも攻めてるはずなんですけどね。
 常日頃となると、無理難題ですよ、父さん。

 ◆

 樹龍の牙、一本一本が自身より長く、太い。
 そんなものがずらりと並んだ口腔に向かって飛び込むことに、杏花は全く恐れを感じない。

(なんででしょうね? うふふ――――)
 バチ、バチ、バチリ。
 刀を納めた鞘の中から、空気の弾ける音がする。
 そこに在るはずのないモノ、そこに居るはずのないカミの気配。

『ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオウ!』
 樹龍から、無数の蔦が伸びる。射程内に入ってきた獲物たる少女を貪る為に。

「不思議なことに」
 凛、と乾いた音。

「私、最近、とても…調子が良いのです」
 いつの間にか、金髪の天使だった少女の色は、黒い色彩へ変質していた。
 狼の耳、狼の尾。
 ヒトはそれを、人狼と呼ぶ。

「この姿を受け入れてから」
 いつの間にか、振り抜かれていた刀の軌跡に、紫電が走る。
 カミを宿した刃は、質量という敵をものともしなかった。

「あなたがどれほど大きくても――――――」
 断たれた蔦の残骸を足場に、跳躍。
 樹龍の顔面に、自ら迫る。

「――――斬れないなんて、全く思わないんです」
 速度はまさしく、雷光のそれだった。遠くから見れば、幾条の細い雷鳴が、樹龍にまとわりついているように見えただろう。
 図体の大きさが災いして、全く杏花の動きを捕捉出来ていない。

『オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――!』
 故に、樹龍は“どうなってもかならず当たる攻撃”で対応した。
 自らの身体を構成する樹皮を逆立てて、さながらハリネズミのように、棘とする。
 行為自体は単純でも、それそのものが質量の塊だ。まして島喰い樹から供給される魔力で、樹皮そのものは鋼のように硬い。
 防御など考えず、ただただ斬り刻むその愉悦に身を委ねていた杏花に防御の術はなかった。

「ええ、何の問題もありません」
 ――――なのに、女は平然とその棘を乗り越えて。
 樹龍の首に、たどり着いていた。

 影だ。
 影を纏っている。
 硬質化した影が、杏花を覆うように。

「だって、任せたっていいましたもの」
 柔らかな狂気とでも言うべき笑みを浮かべながら、女は笑う。

「ええ、だから勝手に守りに来ましたとも」
 いつの間にか、その背後に男が居た。
 まるで、影からにじみ出てきたかのように、突然現れて。

「この登場はなかなか格好良くないですか? 杏花さん」
 こともなげにそう言って、自らの影を更に操り、女の刀に纏わせた。

「ええ、ええ、そうですわね。それじゃあ――――――」
 刀が纏う紫電の色が、影を吸って黒く変わる。

『ガ――――――』
 その刃を、樹龍の喉元、逆鱗向けて突き立てる。
 ただ切り落とすだけでは、樹龍の驚異は終わらない、時間をかけて再生してしまう、ならば。

「――――ちゃあんと、『お礼』をしないといけませんね」
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
 黒い雷が、樹龍を通じて島喰い樹に流れ込んでいく。

『ガッガッガッガッ、ガッ――――――』
 訪れたのは、樹龍そのものの放棄。
 このままではまずいと判断した島喰い樹は、自らの力を分けて生み出した樹龍を、自切した。
 もはやほとんど炭と化したその残骸を見下ろしながら、二人は再び、空に躍り出た。

「……はぁ、やっぱり無茶して」
「あら、あら? 信頼してのことですのに」
「それでも、細かな傷はついてますよ、まったく……」
「うふふ、それじゃあ怪我に効く温泉に入って、ゆっくりしませんと」
「……………………ええ、そうですね」
 落下するかもという恐怖などは微塵もない。
 少なくとも、二人でいる限りは無縁だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ケンタッキー・マクドナルド
◯フェルトと
2)

バッッッカでけェウドの大木だなァおい
見てるだけで腹立ってくる
で、お前のこった、いつも通りだろ?
慣れっこだ、後ァ任せろ
オメーは好きに飛んできな

(フェルトが囮役を買って出たなら、俺がぬけぬけやってきた糞共をまとめてブッ潰す。待ち構えるのは戦艦鯨"CA-ONG"一機。)

――。
よくもまァわらわらと来るな
つゥか
でけェし
――頭が高ェんだよウスラトンカチ共がよ見下ろしてンじゃねェぞカスが!!!
つーかどの面下げて俺のオンナのケツ追いかけてンだ糞が!!!あァ゛!!?
(刺激されたコンプレックスにフェルト追い回してる怒りも上乗せして)

燃え散れや雑草が!!
(巨大化した戦艦鯨の集中砲火をブチ撒ける!!)


フェルト・フィルファーデン
◯ケンと
2)
間に合った……!
ええ、もちろんよ、ケン!この島を、そこに住む皆の命を、絶対に守り抜くわ!!

ここはわたしが囮になるから、ケンは迎撃をお願い!
さあ、いくわよ。わたしの騎士人形、アーサー!
5m大のサイズにしたアーサーに乗り込んで飛行形態に変形、高速で飛び回り樹龍の気を引いて島から遠ざける。
ふふっ、【空中戦は得意なの。【フェイントをかけつつ敵の行動を【見切り、矢による【援護射撃でケンの攻撃が当たるように誘導するの!

敵がケンを狙うなら全力で阻むわ。アーサー、出力最大!ケンに襲いかかる全ての敵を切り裂いて!!
【リミッター解除x限界突破】
もう、わたしの彼氏に手を出そうだなんて。……許さないわよ。



『ゴルルルルルルルウォァアアアアアアアアアアアアアア………………』
 樹龍の体躯からすれば、フェアリーという種族など、文字通りの羽虫に等しい。
 ともすれば、あまりに小さすぎて、敵性生物だと判断出来ないほどに。

「オイオイオイ、図体でけェと脳の機能が最低値まで下がンのかァ?」
 果たして、“認識すらしてこない”というのは、ケンタッキー・マクドナルドにとって、よほど侮辱的なことだったらしい。
 いや、脳があるのかすらわからない存在ではあるのだが。

「いィ度胸だ。粉々にしてやる」
 小さな体に、誰よりも尊大な“力”を込めて。

「――――で、お前のこった、いつも通りだろ?」
 今は傍らにいない、自らのパートナーに、通信機器を通して告げる。

「ああ、オメーは好きに飛んできな」
 彼女が、どう空を飛ぶかなど、計算せずともわかる。
 ならば後は、その望みを叶えるために、準備を終えるだけだ。

 ◆

『――――で、お前のこった、いつも通りだろ?』
 理解者がいる、というのはこんなにも心強い。
 25cmに満たない、小さな小さなフェルト・フィルファーデンは今、巨躯となって空を駆けていた。
 騎士人形“アーサー”。愛しき紡ぎ手が姫に与えたその機体は、フェルトが乗り込み操ることのできる、キャバリアとは似て非なる“守護者”だ。

「ええ、この島を、そこに住む皆の命を、絶対に守り抜くわ!」
 力強く宣言する。彼女が“したい”と望んだことを、彼はきっと受け入れてくれる。

「ここはわたしが囮になるから、ケンは迎撃をお願い!」
 少女が囮になる事を、かつての彼ならば拒んだかも知れない。
 だが、今のフェルトには“アーサー”がある。
 それは、ケンタッキーが隣にいるのと等しい、故に。

『オメーは好きに飛んできな』
 そう言って、通信が切れた。

「そうさせてもらうわ……“アーサー”!」
 騎士人形が翔ぶ。
 飛行形態へ姿を変えたアーサーは、戦闘領域外から、領域内に、一気に加速して突っ込み。

    ナ イ ト オ ブ ト ナー
「《弱きを助け強きを挫く》! 我が騎士よ、矜持を示しなさい!」
『《Yes, Your Majesty.》』
 “アーサー”に搭載された砲塔が一斉に開く。放たれるのは一度上空に舞い上がってから、曲射の軌道を持って無数に降り注ぐ光の矢だ。

『ゴオオオオオオオオオオオオオオオオルァアアアアアアアアアアアアア――――――!』
 その時点でようやく、樹龍がフェルトを“敵”だと認識した。
 長い図体を揺るがせながら、大きく開けた口から、高速で“何か”が放たれる。

「――――っ、回避っ!」
 横回転しながら、攻撃軌道を逸れれば、まさに今一瞬前に自分が居た位置を、巨大な質量弾が通り過ぎた。
 “アーサー”は大きい、フェルトから見れば文字通りの鉄巨人だ。
 だが、敵の大きさはそれを遥かに上回り、攻撃の規模もまた文字通り桁が違う。

「あれは…………種!?」
 樹龍が吐き出したのは、直径10mにもなろうかという巨大な種なのだった。フェルトが避けたことで直撃を受けた浮島は、西瓜のように粉々になって、空の果てへ落ちていく。
 直撃すれば、あれが少し先のフェルトの未来だ。

『ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ』
 敵は龍の形をしているが、実際に命を持っているわけではない。
 だから、どんな形にでもなる。例えば、今と同じ種を吐き出す口を、いくつもいくつも作り上げることが出来る。

「向こうも本気ね……だけど!」
 逃げる軌道を翔んでいた“アーサー”が、急旋回し。

「舐めないでよね――――空中戦は得意なのよ!」
 元より、フェアリーという小さな種族だ。
 人間を基準とした世界で暮らすには、翅で空を翔ぶ必要がある。
 上下左右、三次元の世界に身をおいて、体を動かす必要がある。
 空という世界に、フェルトはとっくに馴染んでいて。
 乗り込み操る“アーサー”の視界と身体を繰る事も、ケンタッキーが違和感のないよう施した調整が伴えば、微細な肌感覚まで、そのまま再現することが出来た。

 装甲を――――皮膚すれすれを飛んできた種をかわし、拡散するはずだった光の矢をまとめて樹龍の口腔に打ち込み、離脱。
 光に焼かれた樹龍は怒り狂い、また種を吐き散らかすが、身体の大きさに合わせた“大雑把”な攻撃など、今のフェルトには当たらない。

「さあ、飛び道具じゃ話にならないわよ、どうするの」
 挑発するように、樹龍の顔面を光の矢が焼いた。返答は、耳をふさぎたくなるような咆哮だった。

「ええ、それでいいわ――――来なさい」
 飛び回る羽虫にしびれを切らしたのだろう。
 樹龍は直接あぎとを開いて、“アーサー”に向けて食らいつこうとした。

 ◆

 その人形は一角鯨を模していた。
 長く、力強く、雄大なフレーム。
 空(そら)ではなく、宇宙(そら)を泳ぐための装甲と武装で覆われた、星海の覇者。
 5mという躯体は、この世界の飛空艇としてみれば、小型の一人乗りほどのサイズでしか無いが。
 フェアリーたるケンタッキーからすれば、文字通り“戦艦”に等しい力を持つ。

「よくもまァ、のこのことでてきやがッてよォ――――――」
 既に、“CA-ONG”のカメラは“アーサー”と、それに迫る樹龍を捉えていた。
 このまま待ち構えていれば、射程距離まであと十秒とかからない、その前に牙が騎士人形を砕くかどうかは、タイミング次第といったところか。
 まったく、逐一勘に触る。
 まずもって、機能美がない、アレが驚異であるのは、ただ“大きいから”にすぎない。
 図体を活かすだけの機構があれば、まだ許容できたかも知れないが、アレはそんな上等なものではない。
 人が蟻を踏み潰す際にいちいち足元を気にしないのと同じだ、わざわざ毛虫を踏むための靴を履かないのと同じだ。
 圧倒的質量と重量だけで、力づくだけで、破壊だけで、敵を蹂躙できると思っている。

 そして、奴が見ている虫とは、はるか背後にあるユドナリアであり、そこに住まう人々であり、己であり、そして――フェルトだ。

「――――――頭が高ェんだよウスラトンカチ共がよ見下ろしてンじゃねェぞカスが!!!」
 ああ。
 怒りに身を任せない理由が、どこにもない。
 だから行く。そもそも“アーサー”に攻撃が触れそうな時点で、もはや待つ理由がない。

『ケン!』
 牙が騎士人形に届く前に、近づく“CA-ONG”へ“アーサー”が触れた。
 瞬間、全推力を反転。慣性から生じる艦体への反動を全て無視し。
 あぎとが閉じきる直前に、高く高く、二つの影が舞い上がった。

『どう、上手く誘導できたでしょう?』
「あァ、上出来だ。けどなァ――――――」
 既に“充電”は終わっている。
 我慢はするだけしてきた。
 だが足りない。怒りが勝る。
 だから、戦艦鯨からコードが伸びて、“アーサー”の背部に接続された。

『ケン?』
「つーか、よォ――――――」
 物理法則を置き去りにして、現実を書き換えるのが、ユーベルコードという力のあり方。
 今、世界を捻じ曲げているのは、怒りだった。
 一つは、見下される怒り。
 小さくあることを運命づけられた者だからこそ抱く、絶対的な『大きさ』への怒り。
 ケンタッキーの力は、その感情に応じて、戦艦鯨をありえざる大きさへ変えていく。
 5mでは足りない。10、20、まだ膨れ上がる。
 もはや、本物の鯨ですら、そのサイズには至らないだろう。

 50mの巨躯は、樹龍の直径と、もはや変わらない。

『グ、ゴ、オ――――』
 そこまでになれば、もはやただ「噛み付く」といった行為では攻撃にならない。
 慌てて、種の弾丸を吐き出そうとするが、もう遅い。
 機能性を切り捨てたその図体では、何もかもが。

「――――どの面下げて俺のオンナのケツ追いかけてンだ糞が!!!」
 二つ目は、自分の女に対して、殺意を向けた怒り。
 理由を語る必要すらないだろう、最も純粋で、何よりも激しい感情の名前を、愛と呼ぶ。

『“アーサー”、全エネルギーをケンに譲渡』
 いいわよ、とフェルトの声が、耳元で響いた。

『わたしの分まで、やっちゃって!』
「あァ゛――――燃え散れや雑草が!!」
 全ての砲塔が開き、あらゆる火砲が一斉に火を吹いた。
 銃弾であり、砲弾であり、ミサイルであり、ビームであり。
 つまり――――ありとあらゆる“破壊”を有する、一方的な蹂躙だった。

『ゴ、ガ、ア、ア、ア、ア、アアアアアアゴグアオアアアアアアアアオアアアアアアアアアアア!!!!!』
 物理的に、圧倒的に、徹底的に。
 打ち砕かれ、燃やされ、吹き飛ばされ。
 力づくでねじ伏せられた樹龍は、もはや何も出来なかった。
 数分以上続いた掃射が、ようやく終わった時。














 そこには文字通り、何もなかった。




 ついでに言うなら、射線上にあった、無人の浮島等も、全てだ。
 文字通り、火砲に巻き込まれたモノは、全て粉々に打ち砕かれた。まさしく、怒りが具現化した有様。

「――――――ぁー」
 ちとやりすぎたか、と我にかえったケンタッキーの耳元に。

『ふふ』
 柔らかな、笑い声が響いた。

「……なンだよ」
『ううん、なんでもないわ。ただ……』
 嬉しそうに弾んだ声の調子は、なんでもない、なんてことはなく。

『わたしの為に怒ってくれたのが、嬉しいって言うだけよ?』
 当たり前だろォが、と言い捨てて通信を切ったのは。
 万が一にも、跳ねた心臓の音が聞こえたら格好がつかないという、それだけの理由なのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リア・ファル

(真の姿:SSWの戦艦)
・島喰い樹を攻撃

島を喰う樹
それ自体は自然の摂理なのかもしれないけど
過去の徒となって、今を生きる彼らを脅かすというのなら
その理不尽にボクは抗う

「ヌァザ、虚数空間へ接続。資金から電脳魔術リソース追加、召喚コード読み込み」
『イルダーナ』で蒼空へと飛び、我が妖精郷(真の姿)を喚ぶ

「機動戦艦ティル・ナ・ノーグ……現実空間へ、マテリアライズ!」
(リミッター解除)

各種レーダー、稼働
AIとしての情報連携を行いつつ、一撃の機会を窺おう
氷結弾や重力砲で、龍を牽制し、味方の猟兵を砲撃支援
(情報収集、学習力、時間稼ぎ、弾幕、援護射撃、属性攻撃、集団戦術、拠点防御)

充分に演算解析できたら反撃だ
対象のエネルギーバイパス……即ち、根と幹の結節点を片っ端から撃ち貫く
毒など吸い込んでるようなら、正常な根だけを攻めようか
弱ってくれるのなら御の字さ

魔神すら屠る我が主砲で、かの樹を撃つ!
【魔眼殺しの超電磁砲】!
(スナイパー、部位破壊、鎧無視攻撃、砲撃)


アリス・フォーサイス
おぉ、すごいね。聞いてはいたけど、壮観だ。

近づいて迷路にとらわれたら攻撃どころか、抜け出すのも難しそうだね。メカニズムに興味はあるけど、さすがにこれはね。

外から燃やしつくすのか良さそうかな。ただ、ここまでの大樹。普通にやったのでは燃えないのはわかってるよ。

まずは情報分析するよ。構成物質を解析して、燃えやすそうな部分がないか、探すんだ。
葉とか枝木とか、燃えやすいところを種火にして、火を燃え上がらせられないかな。

プランが決まったら、全力魔法でブーストしたウィザードミサイルを一斉放射だ。500本以上の火の雨、さすがに耐えきれないでしょ。

これだけの大樹、大量の養分を使ってるはずだよね。種火をつけられたら、養分の通り道の要所に燃え移らせられないかな。



『……………………』
 樹は声を発しない。故に、「何を考えているか」など読み取りようもない。
 だが、それは確実に近づいてくる。己が身体の一部を焼き、斬り、引き裂いたモノ達を喰らわんとする。

「おぉ、すごいね。聞いてはいたけど、壮観だ」
 “ブライダルベール”に搭乗した状態でも、島喰い樹は、なお果てしなく大きい。
 距離が縮まるほど、その巨大さがよくわかる。
 例えば、文字通りの“火の矢”を放つ。累計五百本を超える破壊の嵐。
 大樹全体にまんべんなく打ち込まれ、姿が爆炎に包まれていく。
 通常ならばこれで駆除完了、と行きたいところだが……。

「やっぱり、効果はないよね、普通にやったのでは燃えない」
 煙が晴れた向こう、島喰い樹の姿は健在だった。

『………………』
 ただし、興味――というものがあるのかどうかはわからないが、攻撃の対象がこちらになったのは確かなようだった。
 島から零れ落ちていた根が、急速に蠢きだし、ブライダルベールへと向かってきて、機体の右足に絡みついた。

「おっと、とらわれるわけには行かないな」
 手早くその根を切り離し、初撃を追うように迫ってきた追撃が、機体を包む前に戦域を離脱する。
 一定の距離を保っていたのが幸いし、回避は問題なく成功したが、なおも島喰い樹はアリスに狙いをつけているようだった。

「キミもやっぱり“生きて”るんだね。全体に水が巡ってるから、燃えにくい」
 切断した根の一部を“ブライダルベール”で握りしめ、手のひらから情報を“貪る”。

「強い力が注がれてる――うん、でも、それを維持できなくなってきたから、ユドナリアを狙ったんだよね?」
 巨体であるが故に、その存在を保ち続けるのには、莫大なエネルギーを要する。
 末端まで力を注ぐ余裕がなくなっているからこそ、餌を求めているのだ。

「対策はわかった。それじゃあ、少し待っていてね」
 “ブライダルベール”が下がると同時――――遥か後方から。

「キミの相手は、しばらくあの艦がしてくれるよ。きっと仲良く出来ると思うな」
 島を貫かんばかりの威力を持つ光線が、島喰い樹めがけて放たれた。


 ◆


 恐らく、他の猟兵たちと比べれば、だが。
 島喰い樹という存在に、そこまで極端な忌避感を抱いていないのは、リア・ファルだっただろう。

 生命活動、というのはある種での弱肉強食で、そこに善悪はない。
 自然の摂理にしたがって、巨大なモノが、小さなモノを喰らおうとしている、それだけだ。
 けれど。

「キミは、過去だよ」
 いまを生きているわけではない。終わって、蘇った、世界の理から外れた存在。
 だから……見過ごすわけには行かない。

「ヌァザ、虚数空間へ接続。資金から電脳魔術リソース追加、召喚コード読み込み」
 “イルダーナ”を蒼天に走らせ、天を穿つ。

「来たれ、我が妖精郷、真なる姿をここに!」
 空に生じた魔法陣が、亜空間への道をひらく。
 グリモアとは違う理屈で境界を分かつ扉を越える。

 魔法陣を通り抜けた時。
 そこに現れたのは、空駆ける機動兵器に乗った少女ではない。
 星の彼方の妖精郷より来る、全長を計測することすら憚られる巨躯。
 ブルーアルカディアの人々からすれば、飛空艇などという言葉では、到底収まらないその名を。





「機動戦艦ティル・ナ・ノーグ……現実空間へ、マテリアライズ!」





 ティル・ナ・ノーグ顕現と同時に、リアの肉体はコクピットへと移動し、思考は艦体全てを己が身体の様に最適化される。
 砲門一つ一つの作動から、装甲に振れる風の流れ、各種レーダーが収集する情報は、五感と一体化し、数値を感覚として理解できる。
 言葉を持たぬ敵の怒りも、すべての数値が教えてくれる。

「演算開始――――撃ぇっ!」
 元より、宇宙を貪る侵略者、“クエーサービースト”を相手取る事すら想定した武装だ。
 あらゆる環境、あらゆる状態を、強制する砲を備えている。
 伸びる根を氷結弾で凍てつかせ、重力砲で空の奈落へ堕とし、砲撃の雨を縫ってティル・ナ・ノーグに迫る蔦は電磁障壁の第一階層で焼いて潰す。

「――――? データ受信? 友軍機から?」
 そうして牽制と情報収集を続けていると、同じ戦場に居るのであろう猟兵の機体から、通信が送られてきた。

「生体情報分析結果……これは」
 島喰い樹の“根”を、直接『食べて』知ったデータであることなどは、リアには知る由もないが。
 その分析結果だけで、有効な攻撃が割り出せる。



 機能を停止させるには、十分なほどに。



 その判断を肯定するように、ティル・ナ・ノーグの甲板に、一機のサイキックキャバリア――ティル・ナ・ノーグの情報処理システムは、そう判断した――が降り立ち、外部に向けた音声で告げた。

『栄養の循環を断ち切るよ、こっちで樹を燃やすから』
 決定事項を告げるように。
 出来て当然だというように。

『キミは島の方をお願いするね』
 そう言って、キャバリア――“ブライダルベール”が、ティル・ナ・ノーグに先行した。

「――――了解」
 同じ情報を持ち、やろうとしていることが一致しているなら是非もない。

「主砲準備、魔錬徹甲弾、装填」
 ティル・ナ・ノーグ、最大の主砲が、準備を終えた。

 ◆

「あれも面白い機体だね、いつか食べてみたいな――――おっと」
 島喰い樹が繰り出す根をかわしながら、先行した“ブライダルベール”は更に距離を詰めていく。

「キミの事を少し調べたんだ、やっぱり、栄養が足りてないよね」
 火砲が一発、島喰い樹の本体ではなく、よく茂った枝葉の先端を掠めるように放たれた。
 幹や太い枝は、炎の塊が直撃しても揺るがなかったのに。

「だから、体を巡る栄養を、先端にまで回せないんだよね」
 驚くほどに、よく燃えた。焼けた葉が火の粉となって散って、隣の葉に燃え移り、またじわじわと燃えていく。
 その連鎖を再現すべく。
 手を天に掲げる。噴火の様に放たれたエネルギーが。

「それだけの葉を削られたら、キミはどうなるのかな」
 上空で拡散し、島喰い樹を包みこむ、火の雨として降り注いだ。

『――――――――………………』
 火に焼かれまいと、張り巡らされた根を島の外に逃がそうとする。

「もう遅いと思うよ」
 その頃にはもう、“ブライダルベール”は戦域を離脱していた。
 何せ。

「これから、もっと痛いのが来るからね」
 告げられた予言を再現するかのように。
 光が、飛んできた。

 ◆

 照準、確定。
 装填、完了。
 全機能、正常動作。

 あらゆるセンサーがGOサインを出している。
 それは即ち、リア・ファルの認識に置いて、決定された事項を行う段階に入ったことを意味する。

 トリガーを引くのは己の意思。

 故に、叫ぶ。

「……三界を巡り貫け!」
 放たれる魔砲の名前は。

   レールガン・タスラム
「《魔眼殺しの超電磁砲》!」


 電磁加速された実体弾は、音速を超える速度で以て島喰い樹を捉えた。




 ◆



『………………』
 その鈍重な動きでの回避は不可能。
 逃げようとして逃げられるものではない。
 防御のために伸ばす枝葉は軒並み焼かれ、根は断ち切られた。

 だから、砲弾が島喰い樹の基幹たる、“島そのもの”を貫くことを止めることも出来なかった。

『…………………………』
 ブルーアルカディアに数多存在する浮島は、それそのものが浮遊力を持っている。
 その土台を失えば、島喰い樹もまた、奈落へ行くのが道理。

『………………………………!』
 魔眼殺しに貫かれた島は、限界を迎えたように、崩壊を始めた。
 島を構成していた文明の名残が、大地が、崩れ、砕け、塊となって、空の果てへと堕ちていく。
 あまりに大きすぎるせいで、落下速度が恐ろしいほど緩やかに見える。

『……………………――――――』
 根付く島を失った、ただの大樹。
 もはや、沈んでいく以外の運命を、持ち合わせていなかった。
 堕ちていく、落ちていく、おちていく――――――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック

(ザザッ)

巨大だな。
本機もそれなりに場数は踏んできたが
島ほどの大きさの敵と対峙した経験は少ない。

――が、何も問題はない。
やる事はそう、いつもと変わらない。
本機の本機たる所以を顕すのみだ。
此より作戦の実行に移行する、オーヴァ。(ザザッ)

――さて、あれだけ巨大ならば全力でいかねばなるまい。

衛星砲召喚。
ターゲット:"島喰い樹"――ロックオン完了。
エネルギー充填開始。

充填完了まで鎧装の攻撃機能を制限。
発射後外装解除を条件に全出力を衛星砲に譲渡。

――さて、木龍は攻撃無しで回避しないといけないが
他の猟兵に協力を仰げば何とかなるだろうし
機動力迄は死んでいない、最悪でも空中ダッシュと残像展開とでどうにかなるだろう。

兎に角本機は衛星砲のエネルギー充填に集中し――

充填完了と共 全エネルギーを島喰い樹に叩き付ける。

島一つ程度、毀せぬ道理があろう筈もない。

本機は
ジャガーノート・ジャック。

そして
此こそが
ジャガーノート
圧倒的破壊だ。

(スナイパー×レーザー射撃×エネルギー充填×砲撃×蹂躙×焼却)


ヴィクティム・ウィンターミュート
○2

オーオー、なんだありゃあ世界樹か?
馬鹿みてーにデカくなりやがって…そろそろ伐採が必要だな
使い道?ンッンー、割り箸でいいんじゃね?使い捨てで後腐れないのがいいだろ、多分
さてと…完璧に勝つには、些細な傷も残しちゃならねえ
何より俺は、攻めるよりも守る方が好きなんだ
敵の意気がそがれるのを見ると、楽しいからな

まぁ、簡単だよ ギリギリまで引きつけて
──冬寂の魔弾をくれてやるのさ
『そして、全ては魔弾が黙らせた』
停滞と鎮静は被弾者の全てを騙され、有線接続された樹にも影響は出るだろう はい、あとはタコ殴りで終いだな
可燃液を付けておいたボルトを、右の仕込みクロスボウから木龍へ撃ち込む
ありったけ、満遍なく仕込んでおいて…最後にファイア・ボルトで起爆するのさ
一度点火されればもう止まらない 炎の侵食は爆発的に進行する
切り離した方が良いぜ、じゃないと本体まで炎が伸びちまうだろうからな

ストリートではウィズワームに手を出すな、なんて誰でも知ってる警句だが
残念、俺はイカれてるから関係なく手を出しちまうんだな、これが



 巨大すぎるがゆえに、浮遊大陸の栄養を、根こそぎ吸い上げなければ、生命を維持出来ない。
 産まれた瞬間から、その宿命は決まっていた。宿主たる大陸なくしては生きられないが、その生命活動の最中で命を吸い上げ尽くして滅ぼし、自らもまた空の果てへ落ち、オブリビオンとなってしまった哀れなる大樹。

 今や、根付く島を失った島喰い樹は、かろうじて己の中にある天使核のエネルギーで動いていた。
 葉を燃やされ、空中に放り出された大樹は、根を周囲の浮島に伸ばすことで、空間を蜘蛛のように這い回る有様だった。

「オーオー、なんだありゃあ世界樹――にしちゃゲテモンだな」
 彼のよく知る世界樹というのは、その下に国が起こり、街が栄え、人が暮らすモノであるのだが。
 あの樹からは、生命の気配というものを何一つ感じない。
 共存、という概念が存在しない、ただ貪るだけだ。

「引っこ抜かれてまで蠢いてんのは、もう植物の“分”を超えてるだろ――――伐採が必要だな」
 元より殲滅は前提であったが、それにしたって生き汚さがすぎる。
 さっさと木材にでも加工したほうが、有用というものだ。

『伐採してどうする? 家でも作るか?』
 通信機越しに聞こえてきた、同僚の言葉に、ヴィクティム・ウィンターミュートは鼻で笑った。

「割り箸でいいんじゃね? 使い捨ての方が後腐れないだろ」
『一般的な感性においては、あれを口に含む事に対して拒否反応を示すと推測する』
「OK、それじゃあ焼却処分だ、クエイカーズをしこたま打ち込んでやろう」
『方針は?』
「俺が足止めてチューマがトドメ、いつも通りだろ? 牽制で燃え尽きなきゃだけどな」
『一つ確認したいことがある』
「“思い切りやって”も被害は出ない、調査済みだ」
「…………了解、作戦行動に移る。オーヴァ』
 ノイズとともに通信が切れる――今回の頼れる相方だ。任せておけばいい。

「ストリートではウィズワームに手を出すな、なんて誰でも知ってる警句だが」
 そうして会話をしている合間にも、島喰い樹はみるみる接近してくる。全体を視野に収められていたのは、短い時間に過ぎなかった。
 もっとも、追い詰められた島喰い樹からすれば、最優先目標はユドナリア本島だ。
 木っ端人間一人にかまっていられない、というのが本音だったろう。仮にヴィクティムを絞って血を吸ったとしても、文字通り砂漠の一滴にすらなりはしない。
 浮島を根で掴んで、破壊しながら、ロープワークのように「進軍」する巨大樹。

 が。

「残念、俺はイカれてるから関係なく手を出しちまうんだな、これが」
 鼻で笑ったその瞬間、莫大な質量を有し、移動の度にとんでもない運動エネルギーを発生させているはずの島喰い樹の動きが、空中で“びたり”と止まった。
 まるで時間そのものが止まっているかのようだった……静寂の冬が訪れているかのようだった。
 自我なき、本能のままに赴く島喰い樹には理解など夢のまた夢だろう。
 実際には、それは止まっているのではなく、限りなく止まっているのと近い速度で――遅さで、極めて緩やかに“動き続けている”のだった。

「おっと、これだけデカすぎると効き目も鈍るのか? まぁいいか……もう終わったしな」
 ドローンに捕まって、ひょいとその場を離脱する。
 何せここは“射程圏内”だ、とどまっていたら飛び火を食らう。

「仕込みは上々、後はご随意にっと」
 飛び去っていくヴィクティムは、視界の隅で、島喰い樹に“火”がついたのを確認した。
 予め、島喰い樹が根を伸ばすであろう浮島に仕込んでおいたワイヤーを引っ張って、瓦礫に混ざった可燃液がしこたま降り注ぐ。
 根に伝えば、幹に取り込まれていくのは道理。

「でかい焚き火になりそうだ。あたっていく奴はいなさそうだが」
 何せ温泉があるんだもんなぁ、と他人事のように、戦場の端役はつぶやくだけだった。

 ◆

 目標が、空中で完全に静止しているのを、ジャガーノート・ジャックは確認した。
 理屈は不要、理解も不要、やると言ったことを宣言通りに共闘者が実行した以上、自らの役目を果たすのみ。
 スコープの中では、まだ全体が収まっている島喰い樹だが、全武装のカタログスペックをどう換算しても、あれを「消滅」まで持っていくのは困難だろう。

 ――が、何も問題はない。
 やる事はそう、いつもと変わらない。

『本機の本機たる所以を顕すのみだ』
 思えば。
 この“ジャガーノート・ジャック”というカラダは、随分と変化してきた。
 破壊の権化たる、野獣のような豹躯も今や昔。
 機能が洗練された結果として、いびつだった装甲は流麗な丸みを帯び、角を削った代わりに鋭さを手に入れた。
 無骨な四肢は細く絞られ、一切の無駄を廃している。

 しかし、見るものが見ればこうも思うだろう。

 “細くなった分、出力は落ちているんじゃあないか?”と。

 その答えが、これからわかる。



 ――――其れは本来、星間を跨ぐ戦いで使われるものだ。
 星と星、宇宙と宇宙、そういった規模を想定しているものだ。

 この場で問題なのは、その出力の是非ではなく。
 その破壊をもたらすのが、『個人』という単位の枠を越えていない大きさのそれであるという点である。
 テイル・ユニットを砲塔に突き刺し、四肢を食い込ませ固定する。
 全機能を『撃つ』事だけに特化させていく。



 ――――視界の中の島喰い樹は、少しずつ、わずかにでも、動き、もがき、足掻き、生きようとしている。



 枝を伸ばす、根を伸ばす。まるで意思ある生物のように、燃えていく葉を揺らして叫ぶ。
 そこにたどり着けさえすれば希望はあるのだと。
 ユドナリアにはびこる生命をくらい尽くせば再起はできるのだと。
 まだ、やり直せるのだと、絶望ではないのだと。


 その、儚いと言うにはあまりに暴力的な願いを。



『充填完了』
 ジャガーノート・ジャックは、否定する。

 まずは、細い細い熱線が走った。
 島喰い樹の、それこそ細い枝の一本にも満たない、僅かな光。
 それは、目標を補足するための導線であり、今からその道を、破壊が通るという意味だった。

 トリガーを引く。

 熱線から遅れて、そのラインを追うように、砲撃が放たれた。
 高すぎる熱量がスパークして、青白い光の尾となって、一直線に島喰い樹へ向かう。

『……………………』
 迫りくる熱源に、島喰い樹は根を伸ばした。
 高いエネルギー、追い詰められたオブリビオンは、もはや自分を焼こうする熱にすら生存の機会を見出そうとした。
 静止を強制する束縛から、なんとか根の先端だけでも解き放ち、炭化していく根を、それでもガムシャラにからませて、吸い上げようとする。生きようとする。

 その有様を見ながら、衛星砲というのは、つくづく欠陥のある兵器だと、ジャガーノート・ジャックは思う。
 何せ、威力が高すぎる。
 地上(――たとえブルーアルカディアであったとしても)で放てば、その余波だけで周囲にどれだけの被害が出るかわからない。
 だから、直接撃つなどもってのほかだ。

 特に、生命が蔓延る世界では、セーフティを厳重に設ける必要がある。

 例えば――――発射口を、遠ざけるなどしてだ。





『!』
 島喰い樹を焼く砲撃の熱量が、不意に消失した。
 それは、エネルギーを食い尽くした、島喰い樹の勝利を意味する…………わけでは、当然なかった。



 ビギ、と空間に亀裂が入った。


『目に焼き付けろ』
 何のことはない、最初に放たれた砲撃は、単なる導火線に過ぎない。
 堰を切ってダムの水が流れ出るように、エネルギーの奔流を留めている“何か”に刺激を加えて、誘発させるための、きっかけに過ぎない。
 予め準備されたセーフティ・ネットに過ぎないのだ――即ち、今、ようやく火薬に火がついて、爆発が起こるということなのだと。

 島喰い樹が認識する機会は、永遠に訪れなかった。

『此こそが――――――――』
 島一つを支配し、食らう大きさを有する島喰い樹を。
 その数倍もの直径を持つエネルギーの塊が生じて、一瞬で飲み込んだ。
 爆発は、ほんの一瞬だった。流れ星が、空でちかりと明滅して、光るぐらいの、そんな短さだった。

 その短さで、全てが終わった。
 空間内にあったものは、何もかもが一瞬で蒸発して、消えてなくなった。

 大気すらも例外ではなく消え失せたその空間に、周囲の空気が、逃げ場を求めるように一斉に飛び込んだ。
 生じたのは、島喰い樹の破壊など、話にならないほどの圧倒的な爆縮だった。
 衛星砲の余波で、なんとか崩壊しなかった浮島の数十個が、その反動で粉々に砕け散った。
 ヴィクティムが予め、その射程内に生命体の存在が無いことを確認していなかったら、絶対に使用できなかった。
 その名は。

       ジャガーノート
『――――――圧倒的破壊だ』







 


 かくして、島喰い樹の驚異は去り。
 ユドナリアの民は、歓喜の声をあげた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『空の湯でひと息』

POW   :    ゆっくりお湯に浸かり、身体を温める

SPD   :    打たせ湯で身体をほぐす

WIZ   :    雄大な景色を眺めて楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 温泉国というだけあって、ユドナリアには、古今東西、世界各国、ありとあらゆる温泉が存在する。

 浸かればお肌つるつるすべすべが約束される美肌の湯。
 傷や万病に高い効能を持ち、身体に活力を与える癒やしの湯。
 ガレオノイドや機械種族御用達、歯車やパーツ、メモリの汚れやノイズを洗い流すマシンオイルの湯。
 魔力を漲らせる効能を持ち、失った力を取り戻せるとされる、召喚獣御用達の精霊の湯。

 その他にも、様々な効能を持つ温泉が、様々な形で提供されている。
 一人でのんびり個別の露天風呂に入るも良し、公衆浴場で裸の付き合いをするも良し、家族風呂で水入らずの時間を過ごすのも良し、温泉プールで遊びながら浸かるも良し、まだ見ぬ秘湯を探すも良し……。

 おおよそ、「温泉」というワードから連想できる、あらゆる過ごし方を出来る場所、ユドナリア。
 民たちは、猟兵を歓迎し、心からのサービスをしてくれることだろう。

 ♨ ♨ ♨

 ◆ 第三章 ◆

 皆さんのお陰でユドナリアは救われました、ありがとうございます。
 第三章は日常フラグメント、いわゆる温泉タイムです。
 一、二章に参加していない方でも参加いただけます、お気軽にどうぞ。

 1)温泉に入る
  メインイベントです、温泉に入ります。
  ありとあらゆる温泉があるそうなので、「ある」といいはった温泉があります、ご自由にどうぞ。
  混浴や家族風呂などもありますが、プレイングは公序良俗に反さない範囲でお願いします。

 2)リゾートを楽しむ。
  温泉地ということはリゾートもあります。
  サウナと水風呂を行き来してととのったり、マッサージチェアでダラダラしたり、エステを受けてみたり……。
  温泉プール施設もあるので、友達とかとワイワイ遊ぶときはこっちの方が良いかも知れません。
  おおよそ「温泉」と聞いて思いつくことなら何でも出来ると思います、公序良俗を守って清く正しくどうぞ。


 プレイング受付中です、リプレイの執筆は11/2(火)からとなる予定ですので、それ以前に来たものは一度再送お願いするかも知れません。
 



 
御園・桜花


「こんな空の上で温泉巡り出来るなんて…素敵ですよね」

美肌や打たせ湯、泡ぶろ、薬草入り等々、目立ったものは片っ端からお試し
景色の良いぬるめの露天風呂見つけたらそこをメインに
500数えて上がって水飲みつつ涼んだら変わり湯に浸かり休憩して戻ってぬるめの露天に浸かりを繰り返し温泉巡り
可能なら手をいれるだけ足をいれるだけであっても全部の温泉を堪能したい
湯中りしそうになったらUC「花見御膳」
よく冷えた珈琲牛乳とフルーツ牛乳出し他の参加者にも配る

「そう何度もこれる場所でもなさそうですから、体験できるだけ体験して回りたいと思ってしまうんです…貧乏性ですよね」
温泉の素っぽいものがあったらお土産に買っていく



「美肌の湯――ですか? わぁ……」
 最初に見つけたユドナリア自慢の美肌湯は、軽く手を浸しただけでも十分な効能を感じられたものだ。
 何せ、軽く浸しただけの手が、驚くほど滑らかになっている。それでいて、ヌルヌルとした不快な感覚は一切ない。
 迷わず全身で浸かれば、すべすべが過ぎて、湯から上がった後は、羽織った着物が肩からずり落ちそうになるほどだった。

「これ、全部泡なんですか?」
 泡風呂、といえば、お湯の上に泡が浮いているものを指すと思っていたが、ユドナリアではなんと泡100%の不思議なお風呂だった。
 身体が浮いている感覚がなく、ふわふわとした泡に全身を包まれる感触は、他にはない無二の味わい(?)だった。

「不思議な匂い……薬効があるんですね? 少し試しても……」
 浮島で採れる希少な薬草を、絶妙な配合でブレンドした薬草風呂は、独特の香りに慣れてさえしまえば、体が芯からあたたまる素晴らしいものだった。
 戦闘中に行った、車体の急激な軌道で痛んでいたはずの身体は、いつのまにか、いつもの調子を取り戻していた。

 どれも興味深く、心地よいものだったが――――。














 とぷん。

「はぁん♪」
 思わず鼻歌が出てしまうほど気持ちがいいのは、やっぱり、景色を眺めながら、身体を思い切り投げ出せる、広い露天風呂だった。

 この世界の空は、広い。
 地平線ならぬ空平線の果てに太陽が沈みゆく真紅の空と、光を失うことで紫に染まる満天の夜。
 二色に塗りつぶされた不思議な空を、遮るものなく、眺める事ができる。

「こんな空の上で温泉巡り出来るなんて……素敵ですよね」
 冷えてきた風も、湯に浸かっているなら心地よい。
 温めのお湯が、戦いに使った神経の一本一本に染み渡り、心地よい暖かさが全身を包んでいく――――。

 片手でお湯をすくって、肩まで流す、という行為を何度も繰り返す。
 薄い膜になった温泉が、身体に浸透していくような錯覚、繰り返せば繰り返すだけ、疲れが溶けてでていくような気がする。

 ほう、と溢れた柔らかな吐息が、白い湯気に混ざって、空気に溶けて消えた。
 このまま身を委ねて、眠ってしまいたい――そんな誘惑が鎌首をもたげて離さない。

 けれど。

「―――――500」
 きっちり500秒を数えて、桜花は立ち上がった。
 身体のくびれや膨らみに溜まっていたお湯が、一拍遅れて零れ落ちて、パシャリと飛沫を上げた。
 タオルを巻き直しながら歩くだけで、すぐさま心地よい風が熱を奪っていく。
 数分もしていれば寒くて凍えてしまうだろうが、今はまだ、身体に熱が残っている――その間に向かうのは、別の変わり湯だった。
 なんと、全身を泥で包みこみ、デトックスしてくれる温泉があるというのだ。是非体験してみたい。
 メインと変わり種を交互に味わう、忙しなく見えても、それが桜花の温泉の楽しみ方だった。

 ♨

「はふ…………」
 そんな温泉巡りを、二時間は続けただろうか。
 水分を補給しながら、体を冷やしながらとはいえ、流石に身体に熱がたまり過ぎた。
 どれだけ気持ちよくっても、湯中りしてしまっては台無しだ。
 それでもまだまだ、行きたい温泉は残っているというのに…………。

「あの」
「はい?」
 ロビーの、誰でも利用できるチェアに身を預けていた桜花に、不意に声をかけてきたのは、同い年ぐらいの、若い女性だった。

「その……島喰いの大樹と戦ってくださった方ですよね、私、ユドナリアの住人で……本当に、ありがとうございました」
 見ているだけしかできませんでした、と添える女性に、桜花は柔らかく微笑みながら、

「あら、お気になさらず。これが私の仕事、ですから。それに、戦った分は、温泉を満喫させてもらっています」
 ぐったり力が抜けた状態で、チェアにもたれかかっている姿を見れば、それが嘘ではないとわかるだろう。
 女性は苦笑しながら、隣のチェアに腰掛けた。

「でも、まだまだ温泉を巡りたいんですよね……出来るなら、全部堪能したいんです、足湯だけでも……」
「それは………………ちょっと難しいと思います」
「やっぱり、そうでしょうか」
「ええ……ユドナリアには、大小含めると、三万を超える温泉がありますから……この施設だけでも、百以上は」
「三万」
 膨大な数だった。六泊七日の休暇を取ったところで、施設内をコンプリートするのも至難だろう。

「でも、ここの温泉は特に疲れに効いて…………あ、そうだ、よかったら、これをどうぞ」
 女性が差し出したのは、手のひらサイズの、花弁のかたちをした、白い塊だった。

「これは……石鹸?」
「いえ、入浴剤なんです。春になると、桜の花の温泉が湧くんですけど、その成分を使ったもので――お姉さんも、ほら、きれいな桜の飾りをつけているから」
 それは、飾りではなく、本物の桜で。
 対面している相手が、人間ではなく桜の精だと知ればどんな顔をするだろうか。

「……素敵な香り、でも、よろしいんですか?」
「勿論です、この程度じゃ、お礼にもならないかも知れませんけど……」
「ふふ、そんな事ないです、ありがとうございます……じゃあ、私からも」
 どこから取り出したのか――それはパーラーメイドたる彼女の秘密。
 瓶に入ったフルーツ牛乳と、コーヒー牛乳。
 湯上がりには欠かせない、最重要アイテムと言ってもいいだろう。

「よかったら、ご一緒に」
「……わ、ありがとうございます、いただきます」
 かちん、と瓶を打ち合わせてから、蓋を外して。
 喉を通り抜ける、甘く、冷たい感覚が、身体にこれでもかと活力を注ぎ入れる。

「…………ふふっ」
 良い思い出になった、良いお土産も貰った。
 それに――――戻るまでは、もう少し時間がある。
 百の全てとは言わずとも、まだまだ巡れる温泉はあるだろう。
 瓶を飲み干したら……第二ラウンドを始めよう。
 
 桜花の得た戦いの報酬、ちょっとした休暇は、まだ始まったばかりなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
政務に追われているらしいセフィリカ(f00633)を連れて

普段と違う事を続けて疲労を溜めていると見え、声に疲れが滲んでいる
遅れた分の処理は手を貸すので一度休むといい
手伝いは然るべき時に?そうか

特に疲労回復の効果が高いと噂の温泉へ
人に疲れない程度の場所
自分には必要なさそうだと思いつつ、なしと言われれば誘った手前否定もできない
まあ暇潰しの話相手は欲しいか
適当な湯浴み着など借りて同席。無ければ自力で創るか

仕事の話は振らずにおこう
肩くらいなら揉んでやれるが……おや
眠ってしまった様子
起こすのは申し訳ないのでそっとしておく
湯に沈まないように隣に控えておくか

危険は起こさせないつもりだ
そこは信用して貰いたい


セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君と

声が疲れてるって余計なお世話と言いたいけどまあ…ね

今はコネ作りと利益の擦り合わせな段階だし
まず私の味方を増やすの

手伝いは然るべき時に、ね

でも温泉は良いね!
外れの露天風呂が疲労に効くと。実に今向き

天然温泉の雰囲気出てるなー
水着持ってきててよかった!

で、君は何。「俺は疲労とは無縁だが?」
って顔してるけどこれで入浴なしはないよ

その服脱げないとかじゃないでしょ、入るよ
水嫌いのシェル姉はそこの木陰でお留守番ね
『はいはい、ごゆっくり』

んー、程良いぬるま湯と自然の息吹が染み渡る…これは効く…

『やけに静かになったと思ったら寝てるか。アンタとなら滅多な事はないって安心なのかもね』



「セフィリカ」
「ん~~~~~~?」
 とある日の、昼過ぎぐらいのことだった。
 仕事に追われていたセフィリカが、名前を呼ばれて生返事をしたところ、

「声に疲れが滲んでいるが」
 アルトリウスは、特に言いよどむことも無ければ遠慮することもなく、不躾にそう言い放った。
 一方、言われたセフィリカはというと、一瞬じとりと目を細めて男をにらみつけるものの……。

「そんなの余計なお世話…………って言いたいけど、まぁ……そうかもね」
 強く言い返しきる前に、へにゃり、と身体から力を抜いて、壁に持たれかかってしまう有様だった。

「必要なら手を貸すが?」
 何でもないように言うアルトリウスであるが、おおよそ、“何でも出来る”男が言うのだから、確かに手伝ってもらえば楽にはなるだろう。
 それがわかっているからこそ、セフィリカは小さく首を振った。

「いいの、今はコネ作りと利益の擦り合わせな段階だし、私が頑張らないと」
 世の中には手伝ってもらう意味があることと、ないことがあって、今はまだ、前者の段階だ。
 今ある目標も、障害も、セフィリカが自分の手で何とかしなければならない代物。

「だから、手伝いは然るべき時にお願いするから、ね?」
「そうか」
 一人で大丈夫、と言い張るなら強引に手を出すことも検討するが、『お願いする』とセフィリカが口にしたのであれば、それは曲げられることはないだろう。
 頼られた時に、手を貸せば良い。そういう話だ。

「だが、疲労が溜まっているのも事実だろう」
「それはまあ、そうだけど」
「では、少し力を抜きにいくか」
「うん――――うん?」




 かぽーん。

「うっわ、広い! 凄い! 大きい!」
 そもそも、好奇心が旺盛なセフィリカである。
 ブルーアルカディアの空に目を奪われることもさながら、島全てが温泉、という環境は大いに興味を抱かせた。
 どこを見ても温泉温泉温泉である。曇っていると思ったのは、そこかしこから湯気が立ち上っているからで、鼻をくすぐる不思議な香りは、それら一つ一つに薬効があるからなのだろう。
 案内図を見れば、少し離れたところには秘境の露天風呂がたくさんあるらしい。
 たくさんある秘境の露天風呂ってなんだろう。

『これ、どの温泉にも入っていいの?』
 セフィリカの腰に携えられた魔剣、シェルファが尋ねると、アルトリウスは静かに頷いた。

「先日、大きな戦いがあってな。その報酬として、猟兵ならば誰でも自由に、ということらしい」
『ふうん、まあ私は遠慮しておくけど……』
 人の姿もとれるとはいえ、そもそもシェルファは魔剣である。
 もっと雑なくくりをすると金属である、水に浸かる、という文化はあんまり得意ではないし、多様な成分に満ちた温泉は錆びないはずの刀身を曇らせかねない。

「露天! 露天風呂に行こう、あ、シェル姉はお留守番ね」
『だから、そう言ってるじゃない。木漏れ日を浴びたいから、適当な木陰にでも連れて行ってくれる?
「はーい、それじゃいこっかアルトリウスく――――って」
「ん?」
「なんでしれっと帰ろうとしてるの?」
「帰ろうとしていたわけではないが……」
「立ち去ろうとしてるじゃない」
「茶でも飲みに行こうかと」
「ここまで来て私一人で放置?」
「シェルファがいるだろう」
「だからシェル姉はお留守番だってば、大体、『俺は疲労とは無縁だが~?』みたいにすました顔してるけど、これで入浴なしはないよ」
「………………」
「大丈夫、水着持ってきてるから!」
 ここまで来て、俺は持ってきてない、とは言えなかった。
 まあ、なければ作ればよいだけなのだが……。

 というわけで。

 湯浴みの準備を整えて、少し歩いたところに(厳密に言うと歩かずに、なんかこう、アルトリウスがなんかしたらもう着いていた)ある森の奥には、岩場に囲まれた天然の露天風呂があったとさ。
 二人で浸かるには十分な広さだった。主に疲労回復の効果があるそうで、淡く吹く風が木々を揺らす音と、小鳥の囀りがその効能をさらに高めてくれる。
 加えて、屋根のように空を覆う枝葉のドームは、太陽の光をまばらに遮って、シェルファがリクエストした木漏れ日を一帯に作り出していた。

「ん~~~~~~、ふぅ、はぁ………………」
 足元から、ゆっくりと浸かっていけば、熱すぎず、温すぎない絶妙な温度のお湯が、じわじわと身体に染み渡ってくる。
 あっという間に温泉の虜になったセフィリカは、ぐったりと力を抜いて、身体を自然に任せるままに委ねてしまった。

「気持ちいいー…………これは…………効く…………」
「何よりだ」
 水着姿の、それもとびきり美しく、魅力的な少女と一緒に入浴しておきながら、表情と態度に一点の曇りもないアルトリウスは、それでもかたわらの少女が力を抜いているのを見て、小さく微笑んだ――――気がした。
 息抜きになったのであれば何よりだ、目的は達成できたと言える。
 数分、お互い何も言わず、温泉の感覚を味わっていたが……誘っておいて黙っているのもどうか。
 だがここまで来て仕事の話をするのもどうかと思う、そもそも仕事から離れるための湯治なのだ。

「…………肩ぐらいなら揉んでやれるが……む」
 そんな訳ででてきた案だったが、いい切る前に、自らの肩に重みを感じた。

「……くぅ……」
 お湯に身を任せたまま、寝顔を晒し、セフィリカは淡い眠りについていた。
 体重を横にいるアルトリウスに委ねて……年若い婦女子としては、まったくもって、無防備がすぎる。

『アンタとなら滅多な事はないって、安心なのかもね』
 岩場の、木漏れ日がよく当たる場所に置かれたシェルファが、からかうようにそんな声を零す。

『ありがとね、息を抜けって言っても、聞きやしない……というか、他のことを考えられないのよね、根が真面目だから』
「それが、彼女の美徳だろう」
『長所は短所、短所は長所ってね。だから無理やりつれてきてくれ助かったわ。こうでもしないと休まないもの』
「……なら、たまにはこういう時間を設けよう」
『ん?』
「セフィリカが、休める時間を」
『…………ん、お願いするわ。アンタのやることなら、ま、文句は言っても、従うでしょ』
 勿論、その分色々、こんな風につきあわされると思うけど、と添えたシェルファに、アルトリウスは、相変わらずの無表情で返した。

「彼女がそれを望むなら、応じよう」
 セフィリカが目を覚ますまで、おおよそ二十分。
 それまでは、柔らかなお湯の中で、安らぎの時間が続いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
 へえ、ガレオノイドや、精霊用のお湯まであるんだ。ブルーアルカディアらしいね。いろいろ探索してみたいな。迷惑をかけない範囲でだけど、利用している人のお話も聞けたらいいな。

 さあ、温泉巡りだ。
 へえ、マシンオイルの湯ってそんな風に入るんだね。ぼくは入れないけど、気持ちいいの?へえ、そうなんだね。
 これが精霊の湯か。やっぱり、普通のお湯と違うの?それって、ぼくが入っても大丈夫なのかな?
 そして、これが癒しの湯か。硫黄の匂いがして、これぞ、温泉って、感じだね。ちょっとここでゆっくり入ろうかな。
 あ、ユニットバスもある。これ、面白いよね。

 温泉プール施設もあるんだね。こっちは水着を着て入るのか。こっちも行ってみよう。
 こっちは家族連れとか、友達どうしで来ている人が多いんだね。みんな、楽しそう。



「へえ、ガレオノイドや、精霊用のお湯まであるんだ」
 ユドナリアを見て回るアリス・フォーサイスの目には、様々な温泉が興味深く映っていた。
 例えばガレオノイドの為の風呂は、天然のオイルを利用したもので、軽く指で触れてみれば、油の様な嫌な匂いはなく、サラサラとした肌触りだったりする……が、オイルというだけあってなかなか高温だった。
 なので、さすがに入浴することは出来ないが、気持ちよさそうに浸かっている人たちから話を聞くことは出来た。

「ええ、なんてたって最高よ、歯車の奥の奥まで染み渡って、疲れとか古くなった汚れが綺麗サッパリ!」
「この当たりでこんな高品質なオイル湯に入れるのはここぐらいのもんさね! どうだい! あんたも!」
「馬鹿、普通の子にゃ熱すぎるって!」

 精霊用の温泉、というのもあった。
 ブルーアルカディアに住まう召喚獣達は、性質も属性も多種多様だが、魔力を主な燃料とする性質は共通しているらしい。
 天使核からにじみ出た、高濃度の魔力に満ちたお湯に浸かって、誰も彼もご満悦だった。

「俺はサラマンダーなんだけどね、このお湯なら浸かっても火が消えないんだよ」
「私はドリアード! もう、ず~~~~っと浸かっていたいわ!」
「キミも入りたいの? うーん……普通の人間とは違うみたいだけど、悪影響がないとは言い切れないなあ」
 なるほど、やっぱり色々、難しいようだ。

「ん」
 というわけで、多少なりとものんびりするために、ユドナリア自慢の癒しの湯にやってきたのだった。
 実体があるとは言え、“バーチャルキャラクター”に適した温泉であるかどうかはわからないが……。
 濃い硫黄の匂いは、まさに『温泉!』と言った具合で、お湯に浸かる、という行為に非日常感を与えてくれる。
 露天形式だが、他に客は居らず、小さな手足を伸ばしても、スペースは有り余るほどだった。

「ふう」
 と、小さくこぼれ出た吐息が、湯気に紛れて見えなくなっていく。
 温かいものに全身を包まれている、というだけで、こんなにも力が抜けていく。
 バーチャルキャラクターだって、例外ではなく取り込まれてしまう、これが温泉の魔力というものか。
 島喰い樹が、文字通り全てを振り絞って求めた、いのちの泉。

「…………」
 興味深いことは沢山あるが、今回得た『物語』は、オブリビオンのもつそれでは無く、ユドナリアという国が育んできた文化だった。
 仮に島喰い樹に『餌』としてユドナリアが食われた時のエンディングにも、興味がなかったわけではないが……。

「どうせなら、お風呂に入れるほうがいいよね、気持ちいいもの」
 それにしたって、ハッピーエンドだって、好ましいものなのだ。
 温泉というものは、リラックスがつきものだ。
 客は皆、力を抜いて、笑顔だった。

「うん、みんな、楽しそう」
 なら、守ってよかったものだと、そう思える。

 ……そういえば、温泉プール施設もあるらしい。
 そちらは、のどかで静かな温泉気分とは程遠いだろうが、楽しくはしゃぐ家族連れや、友達連れの姿を見れそうだ。

「そっちも楽しそう、見に行ってみようかな」
 スライダーや流れるプールまであるらしい。
 まったくもって、興味は尽きない。
 せっかく助けたのだから……そこで生まれる物語を満喫しきる権利が、きっとアリスにはあるはずだ。

「もう少し、くつろいでからね」
 そして、慌てる必要もない。
 人々の営みは、止まること無く。
 物語もまた、続いているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・ファル

リゾートを楽しむ

ボク自身は温泉宿での浴衣のようなレイヤーに衣装チェンジしてっと…
(早着替え)
温泉リゾートの醍醐味を全力プロデュースしようか

サクッと猟兵向けの業務提携をさせてもらって、
猟兵さんには卓球台やらレトロゲームやら温泉饅頭やら…まで
ご提供しようじゃないか!
(取引)

モチロン、お風呂上がりの飲み物もあるよ
スタンダードなビン牛乳から、コーヒー牛乳、フルーツ牛乳だって完備してるさ

マッサージチェアもあるから、日頃の疲れを落としていくと良いよ
「Dag's@Cauldron」を今後ともご贔屓に!



「さあ、いらっしゃーい! “Dag's@Cauldron”ユドナリア出張店だよ!」
 ほんわかした湯気を感じ取れそうな浴衣に、いつの間にか着替えたリアは、旅館を切り盛りしていた。



 一瞬、なんのこっちゃとお思いだろう、実際、宿のスペースを貸している老女将もそう思っているのだから仕方ない。



「というか、お嬢ちゃん、くつろいでいかなくていいのかい……? その、ウチみたいな宿を手伝ってくれるのは助かるんだけども……」
 温泉国ユドナリアは、その名の通り、ありとあらゆるところで温泉が湧き出る島だ。
 必然、周囲の島からの来客で収益を得る、観光リゾートとしての色合いが強くなるわけだが、競合他社が周囲に溢れかえっている以上、どうしても栄える宿と寂れる宿が出てくるのは、仕方ないことなのだ。

 どこにでも温泉があるということは、言い換えればそれ以上の付加価値がなければ、選ばれない、ということである。

 例えば、リアが選んだこの宿は、小さな平屋で、年季も入っていて、露天風呂も極端に広いというわけでもない、平たく言えばそんなに人気のない所である。

 普段島を利用する飛空艇乗りたちは勿論、ユドナリアの救世主である猟兵達には、この島にある全ての施設を好きなだけ堪能して良いことになっているが、わざわざこの宿を選んで止まるような者はいないだろう。

「うん、せっかくだから、何をしようかなって考えたんだけど…………」
 穏やかな表情ながら非常に心踊った様子で、びしっ、と指を立てた。

「温泉リゾートの醍醐味を、全力プロデュース! したいなって」
 リア・ファルは機動戦艦ティル・ナ・ノーグの『ヒューマンインターフェース(HI)型、中央制御ユニット』である。
 自らがくつろぎ、安らぎを得る――という「機能」も当然有して入るが、本質的には戦艦運用の為に、艦員との円滑なコミュニケーションや様々なケアが本来の役目なのである。

 翻って、ここは温泉地だ。
 どちらかというと、自らのリラックスより、他者をリラックスさせようという意識が働いたのだろう。

 今はティル・ナ・ノーグに搭乗員はいないのだが――なんかその分が溢れたのかも知れない。

「リゾートって言ってもねえ――ウチは大手みたいなもてなしはできないし……」
「古いところには古いところなりの良さがあるよ、それを求めてくる人だって居るはずさ」
 …………というわけで。





『ウオオオオオオオオ! もっかい! もっかい!』
『ハッハァ! 俺はもう極めちまったぞォ!』
 まず導入されたのは、リアの持つデータから復元したレトロゲームの数々である。
 定番の対戦格闘型ゲーム・ギャラクシーファイターⅡや横スクロールシューティングゲーム・スペーシアンといった往年の名作がずらりと並ぶ。
 猟兵……島の救世主がなにかしている、ということで興味本位で訪れた飛空艇乗りの一団がその罠にハマった。
 なにせ文化が違えば文明も違う。イメージとは若干異なるが、新しい形式の娯楽はブルーアルカディアの住人を夢中にさせるのには十分だった。


『これウメェ、なんての? アンコー? マンジュー? いいじゃん……』
 温泉土産といえば温泉まんじゅうであるが、なんと驚いたことにユドナリアには『まんじゅう』という文化がなかった。
 島々で文化が異なる世界であることもそうだが、なにより『餡』がなかったのだ。
 リアがもたらした新たな味覚は、宿の名物として客を呼び込むのに十分な要素だった。


『ハイヤー!!!!(スパァン!)』『ダッシャラァイ!!!!(ドルルルルル)』
 何故か卓球と極めて近い文化はあったようで、あれば遊ぶのが人の性というものだ。
 その日の卓球台は夜通し空くことはなかった。

 そうして日頃の疲れを落とし、遊び通せば、それはそれで心地よく力尽きるもので。

「まいどありがとうございました」
『へっへっへ……やっぱこれだよなぁ!』
 売店にちゃっかり立ったリアの手から、次々とビン牛乳が手渡されていく。
 温泉宿で喉が渇けば、冷たい牛乳は必殺の弾丸となる。
 普通の牛乳は勿論、コーヒー、フルーツといった三種のバリエーションが飛空艇乗り達の心をつかんで離さない。

『ここは俺の場所だ……今までも、そしてこれからも』
『ずるくないすか!?!?!?!?』
 リラクゼーションルーム(畳敷き八畳半)に設置したマッサージチェアに至っては、艇長が絶対に譲らなかった。
 みかけは簡素ながら、スペースシップワールドの技術が惜しげもなく注ぎ込まれた極上のモミ玉がコリを掴んで離さないのである。
 そんなこんながあって。

「“Dag's@Cauldron”を今後ともご贔屓に!」
 リア・ファルが呼び込んだ客達は、大いに満足したのである――――。





「あれまぁ、予約でいっぱいだよ」
「よかった、迷惑になってなければいいけど」
「そりゃとんでもない、仕事ができるならウチは嬉しいとも」
 噂が噂を呼び、話題が話題を呼ぶ……島の救世主である猟兵プロデュースともなれば、ある酒盗前の帰結とも言える。
 老女将は名前がびっしり書き込まれた宿帳を見て、困ったような嬉しそうな、複雑な表情を浮かべた。

「ありがとねえ、化け物退治をしてくれただけじゃなくて、宿の面倒まで見てもらって」
「ううん、ボクも楽しかったし――ただ」
 どことなく満足げなリアもまた、柔らかく微笑んで。

「これからも、猟兵さん達が来たら歓迎してくれるかい?」
「そりゃあ勿論、いつだって大歓迎だよ。お嬢ちゃんもね、今度は客として来てくれないと、もてなすことすりゃできやしない」
 猟兵は、この世界の島々を巡る。
 今までの戦歴も考えれば……きっと遠くない将来、世界すべてを巻き込んだ“戦争”も――――起こるだろう。
 そんな時、心や身体を、いっときでも休められる拠点があれば、何かの助けになるだろう。
 勿論、打算だけで行ったわけではないが――ここで稼いだ資金及びプロデュースによる定額報酬はティル・ナ・ノーグの凍結解除のために運用されるのだが。

「よかった。その時が来たら、よろしくね」
 ターゲット撃破。
 リラックス完了。
 拠点作成、完了。
 資金調達、完了。
 目標達成。

 さあ、星の海に帰還しよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

街風・杏花
【1】〇
美月さん(f01229)と

「はいはい。じゃあ、いよいよ本番、ということで――いってみます? 家族風呂」
内心の迷いを見透かしたように、にんまり笑って見上げて
へー、ふーん、家族みたいなもの。いいですけどぉ~?
「うふふ。私もさすがに、他の人が入ってきたら恥ずかしいですし。……美月さんも、嫌ですものね~?」

そうしてやってきた家族風呂
といっても、さすがに湯浴み着は着ますけど。

傍らで浸かる顔を見上げて。あら、あんまり見ませんのね。
肩まで浸かって――
「あ、浮いちゃった」
うふふ。

「あんまり緊張しなくても良いでしょう? 初めてじゃないんですし」
なんて、温泉迷宮のことを思い出して
まあ、あの時は偶然でしたけど――

……へえ。ふぅん。兄妹みたいな。

「ならいいんですけど。……それとも、初めてのことします?」
なんて。
にま、と笑って、間近に迫るように身を乗り出して、顔を近付けて――

「背中、流してあげましょうか」
うふ、うふふ。やったことありませんよね、これは。

――背中に字でも、書いてやりましょうかね。ばか、とか。


月輪・美月

引き続き杏花(f06212)さんと一緒に行動します

さて……ここからが本番……なるべく自然に……いい感じに混浴系のお風呂に入る……いくつか案は用意してあります

まずは怪我に効くという温泉に誘って……
……えっ、家族風呂ですか、ええと……いいんじゃないですかね、幼馴染とか家族みたいなものですし

じろじろ眺めたりはしませんよ。戦いの疲れを癒やし、お互いの無事を祝ったり、そういうのをですね…………まあちょっとぐらいは見ますけど……見たら絶対気付くんだよなあ、杏花さん……全く見ようとしなかったらそれはそれで文句いいそうだし

べ、べつに緊張なんてしてませんし……僕にとっては年の近い兄妹みたいなものですし
お風呂で初めての事……? あ、はいはい……背中流してくれるんですね、分かってました、そうじゃないかなーって思ってました
男の子の憧れですが、中々実現しない展開……ぜひお願いします



 ユドナリア、とある温泉旅館のロビーにて。

 月輪・美月にとって、花鯨との戦いだとか、島喰い樹との戦いだとかはあくまで大事の前の小事、前座に過ぎない。
 勿論、ユドナリアを守る、というのが大前提はあったものの――――。

「さて……ここからが本番……なるべく自然に……」
 そう、ここは温泉国ユドナリア。
 多種多様、数多の温泉が湧き出るリゾート・アイランド。

 若い二人である。
 激戦の後である。
 まして『怪我に効く温泉に入って、ゆっくりしませんと』なんて言った後である。
 ちょっとぐらいいい目を見たって、バチは当たらないだろう!

 杏花相手に、如何にして、さり気なく(※1)、下心を気づかれず(※2)、自然な会話運びで持って(※3)――――混浴に持ち込むめるかどうかが勝負の鍵となるのだ!

「『人づてに聞いたんですけど、山の上にとびきり怪我に効く秘湯があって……お互い今回は苦戦しましたからね』……これなら違和感なくいけますね……話を聞いた段階では知らなかったことにすれば良い……完璧だ……よし」
「なにがよし、なんですか?」
 背後から声をかけられて、耳と尻尾が逆立って、軽く身体が飛び上がりかけた。
 怪訝そうな顔をした杏花が、首をかしげながら立っていた。
 まだ戦いの余波で汚れた服も着替えてないし、髪も肌も煤けている。
 ありていに言って、『埃っぽいし疲れたし、早く温泉に入りたい』という態度を隠していなかった。

「――――――――いえ、なんでもありませんよ、はい」
 が、表情だけは崩さない! 何事もなかった風を貫く!
 これが出来る人狼って奴だ、そうですよね父さん。

「ところで、杏花さん――――」
「旅館の方から聞いたんですけど、裏の山を少し登ったところに、怪我によく効く温泉があるそうですよ」
「…………………………」
 はい、全部終わった。
 お疲れ様でした。

「特別に貸し切りにしてくださるそうなので――――」
「わかりました…………わかりました、じゃあごゆっくり…………」
 まあ、世の中そううまくは運ばないものだ。
 半分ぐらいこういうオチも予測してたしね? うん、悔しくなんてないってば。
 せっかくの温泉だし、こっちはこっちで満喫してやる畜生――――






「――――――いってみます? 家族風呂」
「…………………………」
 その時、美月は自分自身がどんな顔をしていたのか、鏡がないのでわからなかった。
 ただ。

「――――――うふふ」
 にんまり、それはそれは嬉しそうに笑っている杏花の顔を見る限り、彼女の期待通りではあったらしい。





 ※1 無理。
 ※2 不可能。
 ※3 出来ない。

 ♨

 こんこんと湧き出る濁り湯から立ち上る湯気が、周囲をを白く染め上げる。
 木製造りの、簡易な男女別の更衣室と、簡素な洗い場は用意されているものの、山の中の秘湯というだけあって、石造りの天然温泉に柵や囲いはなく、自然の木々がその役割を果たすのみ。
 それでも…………。

「………………あぁ…………」
 準備というものは色々あって、男より女の方が時間がかかるものだ。
 美月の方が身だしなみを整えるのが速かった……という理由で、一足先に湯に浸かっているわけだが。
 激戦と、ついでに長い(?)心理戦のあとのお湯だ、体に染みないわけがない。
 三十秒も温まれば、思わず眠気が湧いてくるほどだった。

「うふふ、寝ちゃダメですよ?」
 もっとも、そんなもの、声と気配を感じ取っただけで、一気に吹き飛んでしまうのだが。
 二人が触れないほど離れて、手足を限界まで伸ばしきっても、まだ余裕があるぐらいには大きい風呂なのだが、杏花は、当然の用に美月の隣から温泉に脚を差し入れ、そのままゆっくり、身体を沈めていった。

 ちゃぷ、ぴちゃ、とぷん。

 お湯が肌に触れて奏でる音が、静かな森の中に響く。

 勿論―――美月も含めて―――湯浴み着を着てはいる。
 年頃の男女が混浴するにあたって、最大限、配慮された形をとってはいる。
 だが、それにしたって…………。

「ほう……」
 湯に浸かって、上気する頬と、むき出しの肩、甘く溢れる吐息を前に、どう冷静でいろというのか。

「ん…………あぁ、気持ちいいです……傷に染みないし、じんわり温かくなって……うふふ」
 何かを見透かすように、お湯をすくいながら、ちらりと杏花の視線が美月に向けられた。

「……あら、あんまり見ませんのね」
「そりゃあ、じろじろ眺めたりはしませんよ、杏花さんだって嫌でしょう」
 抜けていた力が全身に戻り、まっすぐ顔を固定した姿は、杏花から見れば、なんともいじらしく映ったことだろう。

「あんまり緊張しなくても良いでしょう? 初めてじゃないんですし。それに――――」
 きっと、意地悪な顔をしているのだろう。
 見なくてもわかる、だって、そういう声の色をしている。

「――――美月になら、見られてもいいですわよ? うふふ」
「…………いえ、紳士ですからね、僕は」
 律儀に己が矜持を貫こうとする美月に、杏花はぷぅ、と少しだけ頬を膨らませた、気配を感じる。
 だからといってチラ見したりはしない。

 いや、チラ見したい気持ちが0か10かでいえば100なのだが。

 そして、見られていることに絶対気づくが、見られなかったら見られなかったで拗ねるのが杏花という少女なのだ。
 よく知っている。
 家族みたいなものだから。

「んー………………あ」
 ふと、何かに気づいたような声。
 わかっている、これは罠だ、同時に誘いだ。
 これをきっかけに、少しぐらいなら見てもいいんですよ、という、甘い甘い罠。
 見えている罠にはまらないのが一流だ、かつて賢い狼は、人のし掛けをことごとく見抜いたとされ――――。

「浮いちゃった」
 見てしまった。
 それは本能の導きだった。
 無理じゃんそんなの。
 見るよ。
 男だもん。

 はたして。

 少年の視界に入ってきたのは、膝を抱えるように湯に身体を浸し、淡い汗を顔に浮かべ、ほんのりと肌を赤らめながら――これ以上ないほど、にんまりと笑う、家族同然の、少女の表情と。
 浮力に従って、ふわりと浮かび上がり、湯浴み着を押し上げている、それはそれは豊満な――――。

「み、つ、き」
 不意に、顔を寄せられた。
 鼻と鼻がくっつきそうな距離、体の温度が伝わる距離。
 体重をかけて、触れ合って、密着する近さ。
 言葉を失った美月に対し、どこか艶のある声で、囁くように――――。

「はじめてのこと、しません?」
「はじ、めて」
 うふふ、という微笑みも、今は違う意味に聞こえる。
 二人きり、お風呂の中で、誰も見ていない、この状況で、初めての。













「……背中、流してあげましょうか」
 ああ、たしかにそれは、したことはなかったな。

「ぜひ、おねがいします」
 そう返す余力があっただけ、褒めてもらいたいものだった。

 ♨










「……何か、背中に書きませんでした?」
「さーあ、気の所為ですわ、きっと」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ケンタッキー・マクドナルド
1)
◆フェルトと

(なんだかんだと言ったところで恋仲の相手とこういう所に来たからには入らないのも……という訳で、「どォせだから寄るか」とフェルトに声を掛けはしたのだ。説明終了。)

……あるンだな妖精サイズの温泉……召喚獣?だか何だかいるっつゥから小型のそれ向けか?

(とかなんのかんの言いつつ、膝の上にフェルトを乗せつつ入浴中。)

……まァこォいうのも偶にァ悪くねェだろ
特にオメェ仕事となると肩筋入りすぎるしな……のんびり疲れとっとけや

……ところで顔赤くねェか?
のぼせてやしねェだろな。
水飲むか??
……それとも緊張でもしてンのか?

(暫く前ならこっちの方がこの状況下ならぎこちなくなってたろォが、もう色々と振り切れたしむしろ真顔でベタベタしにいく有様の無愛想な妖精だった。)

ならいいが。
のぼせてねェなら肩まで浸かっとけ、体冷えンぞ

あ?……しゃあねェな
(ぶつくさ言ってるが全然満更でない。お姫様抱っこで丁重に運びつつ)

……随分と贅沢なご褒美だな。
(などと言いつつ、微塵も遠慮する事なく唇を味わい尽くしにいく)


フェルト・フィルファーデン
1)
◯ケンと
(なんだかんだで恋人同士だし、これまでも一緒に入ったことあるし……
という事で多少恥ずかしさはあるけども「ええ、いいわよ」と自然に了承したの。説明終了!)

そうね、ちょうどいいサイズで助かったわ!
(なんて言いながら、自然にケンの膝の上へ収まる。最近2人でいる時の定位置だったりする)

もう、ケンったら心配しすぎ!ケンのおかげで充分元気だし、それに貴方の彼女になってからそれなりに経つのよ?ちょっとお膝の上に座ったくらいで……全然恥ずかしくなんてないもの!
(本当は恥ずかしい)(顔も赤い)(でもそれはそれとしてケンともっと一緒に温泉を楽しみたい)

肩まで浸かるなら、もうちょっと深いところまで一緒にいきましょうか。
(ケンの方を向いて抱きついて)運んで、くれるわよね?

ふふっ、ありがとう、ケン!
そ、それじゃあ、ご褒美、あげるわね……?
(抱きついたまま、唇を重ねて)

気にしなくていいのよ、だって、あなただけの唇なんだから。
……大好きよ、ケン。愛しているわ。



 人からすれば、少し深めの水たまりに見えるだろうが、フェアリーであれば思う存分――――それこそ普通の人間と変わらない感覚で堪能できる温泉まで、ユドナリアには存在していた。
 本来は、小型の召喚獣のためのモノなのだろう。滾々と湧き出るお湯は尽きること無く、贅沢に湯船から溢れ続けて、周囲に湯気を浮かべていた。
 澄み切った夜空の向こう、月と星がよく見える絶好のロケーション。

「……………………」
「……………………」
 そんな温泉の中に、ケンタッキーとフェルト、二人のフェアリーが居た。
 沈黙である。
 お互いの顔を、上手く見られない。

 肩が触れるほどぴったり寄り添って、手を握り合っているのに。

 そもそも、ここに至るまで――――。


 ♨

『ふう、強敵だったけど、なんとかなってよかったわね、ケン!』
『あァ、ったく、無茶しやがって』
『それはお互い様でしょ? ……あ、ねえ、見て、私達でも入れる温泉、ありそうよ』
『ふゥン? …………………………どォせだから寄るか』
『えっ? ……ええ、いいわよ、勿論』
『…………なンか貸し切りも出来るみたいだな』
『貸し切り? ……そう、それじゃあ……他の人は居ない、のよね』
『だな。……………………じゃあ、行くか』
『ええ、行きましょう』
『…………』
『…………』

 ♨




 一緒に入ろう、とかそういうことをわざわざ口に出しては言わなかった。
 お互い、それを明言するのを避けていたように思う。
 避けていながらも、貸し切りの温泉だったこともあって――――脱衣所に入るのも一緒だったし、お湯をかけて身体を洗うのも一緒だったし、タオルを巻いて、湯船に浸かるところまで一緒だった。

「………………」
「………………」
 別に、一緒にお風呂に入るのだって初めてじゃないし、だいたい、恋人同士だし。
 この程度で、今更照れが生じるほど、浅い関係でもないし。

 それでもどこか、もじもじとしていたフェルトが――やがて意を決したように、立ち上がった。
 胸が浮かないように、ぐっと押さえながら――身体の膨らみを伝う雫が、ぱちゃぱちゃと落ちて湯面を叩いた。
 そのまま、少し横に移動して、ケンタッキーの膝の上に、スポッと収まる。
 密着の具合は、もはや手と手どころではない。
 お湯より熱い体温を、べったりくっつけた背中で感じながら――――。

「……まァこォいうのも偶にァ悪くねェだろ」
 先に口を開いたのは、結局ケンタッキーで。

「……ふふっ、そうね」
 定位置に収まって、ようやく微笑したのが、フェルトだった。
 一度緊張がほぐれれば、あとはリラックスする余裕も出てくるというものだ。
 体重を預けてくるフェルトの、湯に浸った髪をすくい上げながら、ケンタッキーは口を開いた。

「特にオメェ仕事となると肩筋入りすぎるしな……のんびり疲れとっとけや」
「むぅ……それは貴方もでしょ、ケンこそちゃんと休んでちょうだい」
「だァから、今回はフェルトの方が無茶してたろ」
「ケンだって、私の目はごまかせないわよ?」
「いやいや……」
「いやいや……」
 そんな言い合いも、軽く頬を突いたり、お返しに唇に指をあてがう程度ならば微笑ましい。
 戯れは、やがて口数を少なくして、その分、お互いに触れ合う時間が増える。
 指が肩を撫でて、お返しの様に首筋をくすぐる。

 やがて、見つめ合う時間が増えて、視線が交えただけで何をしたいのかがわかってくる。

 ――――少女の顔は、真っ赤だった。
 ――――恥ずかしくないわけでは、無いのだろう。
 ――――けれど、触れ合って、同じ熱を感じたかったのだろう。

 ――――男の顔は、無愛想だった。
 ――――けれど、何も感じていないわけではない。
 ――――彼の愛情表現のかたちを、少女は心で知っている。

 どちらから、というでもない。
 フェルトが、ケンタッキーの首に腕を絡めるのと同時に、唇が触れ合って、重なった。
 求められて、拒む理由がなかったから、男が求めるだけ、少女は与え続けた。

「はっ――――」
 息継ぎの合間に、男が苦笑して呟く。

「……随分と贅沢なご褒美だな」
 貪られて、瞳を潤ませた少女は、小さく笑いながら。

「そうよ――あなただけしか知らない、あなただけの唇なんだから」
 次にキスを求めたのは、フェルトの方からだった。
 軽く啄むような触れ合いのあと、照れくさそうに、だけど本心から。

「……大好きよ、ケン。愛しているわ」
 ぱちゃり、とお湯が弾ける音がする。
 のぼせそうだった、だけど……まだもう少し、誰も邪魔できない、二人の時間が続いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

零井戸・寂
◯ 1)
[>メメと

……は、反動キツい奴使うのは間違いだったかもな……

(もやし……と言うにはここ数年で鍛え直してそこそこ見映えはする様になったけど とりあえず久々の運動が祟ってしまったひ弱オタクの如き挙動の眼鏡が一匹。
内情としては先刻ブッパした兵器の反動が響いてる感じである)

くそっ
プラン通りにいけば鎧解除で「動けない」の反動も帳消しにする筈が生身になっても支障来たすとは……これじゃ折角温泉が勿体ない

いやまぁ十分御利益には肖ってるんだけどさ
(まぁ湯に浸かるのもその他も、頑張ったし多少はいい目を見てもいいんじゃない……かな?多分。)

【※特段グリモア兵の参加に関する記載がなかったけどご自由にと言う事だったのでメメを連れてく風にしてます。

メメのリアクションやリプレイ内容については全面的にお任せしますのでご自由にお書き下さい。
ダメそうなら端役あたりがソロ参加だったらそこにくっつけるなりソロ入浴させるでも大丈夫なのでお好きなようにお書き下さい!】



「ぐ、が、ぎ、ががががが…………」
 お湯に浸かってそうそう、零井戸の口から溢れたのは、快楽の声ではなく、苦痛の叫びだった。
 なにせ反動がキツかった。大技を連打したのも有るが、最後の一発はものすごくデカい。

 ほとんどゲームやってたばかりの頃と比べたら、そりゃあ鍛え直してはいるものの、猟兵レベルの視点から見れば、『最近、ちょっとスポーツ頑張ってる少年』ぐらいであるからして、限界を超えた駆動を何度も繰り返した身体はバッキバキのボッキボキなのであった。

「くっそ……プラン通りなら『動けない』反動も帳消しに出来るはずだったんだけどな……」
 そうそう上手くは行かないし、代償は踏み倒せないから代償というのだということを、文字通り身にしみて思い知らされる。
 まあ、それでも。
 頑張った甲斐も価値も、ちゃんとあった。

「…………まったく」
 湯けむりの向こう、揺らめく人影がある。
 ちゃぷ、とお湯が揺れる音がして。
 
「そこまで無茶をしてほしいとは、お願いしてなかったはずなんだけどね」
 先に湯に浸かり、彼を待っていた少女――ミコトメモリは、困ったように笑いかけた。

「そりゃあ、無茶の一つぐらいしますとも?」
 湯が濁湯である事や、普段のドレス姿を鑑みれば、露出という面では普段とさして変わらないやも知れない。
 一緒に温泉、というシチュエーションも、初めてというわけではない。

「メメと、一緒に来れるチャンスだったわけだし」
 それでも、やっぱり同じ彼女とお湯に浸かっている、というのは男子としては、テンションが上がること必然。

「ボクとしては、送り出すだけで何もできなかったのに、温泉だけをこうして満喫しているのは、申し訳ない気がするんだけどね」
 対するミコトメモリは、どうにも居心地がよくなさそう……というより、所在なさげだった。
 気持ちはわからないでもない、グリモア猟兵は――自分も、経験がある――起こる悲劇の予知はできても、阻止はできない。
 誰かにその行く末を委ねる事しかできないのに、その恩恵だけ預かる……という行為に、後ろめたい気持ちが湧いてくるのは、わからないでもない。
 が。

「メメ」
「うん?」
 声をかけて、振り向かせる。
 熱い湯の中で、二人を隔てるものは、あまりない。

「これは、僕が望んだ、僕にとってのご褒美だから」
「…………うん」
「一緒に楽しんでくれないと、僕が困る」
 真剣に、なんてことを言ってるんだと、我ながら思うものだが。

「……………………そっか」
 少し考えた後に、少女は、零井戸の隣に移動して。

「まぁ、二人でゆっくりするっていうのは……久しぶりだもんね」
 くったりと、身体を預けて、寄りかかった。
 肩と肩が……長い髪の毛が、お互いの肌に触れて、くすぐったい感覚。
 熱を触れて感じて、吐息が聞こえる距離に居る。
 それを、羞恥や、下心ではなく。
 純粋に嬉しいと感じるようになったのは、彼女と出会って、どれぐらい経ってからだったか。

「そうそう、メメにもリラックスしてもらわないと」
「キミこそ、根を詰めすぎないでおくれよ、やる事が増えたのはいいことだけどさ――――」
「少なくとも、今日はお預けだ。メメとの時間にする」
「……ふうん? だったら……ボクも貰ってばかりじゃ悪いかな」
「…………メメ?」
 細い指が、少年の胸に触れた。
 傷跡をなぞるように這って、それから、少し力が籠もり、ぱしゃりとお湯が弾ける音がして、二人の顔が近くなった。

「一番欲しいのは、これだよね……違う?」
 違わないから、こちらからも近づけた。
 触れ合って、感じる熱は、温泉よりも――熱く、熱く――――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
はい、お終いっと
このままさっさと帰ってもいいが……まぁせっかくだ、休んでから帰っておくか
サイボーグにも効く湯くらい、あるだろうしな

もちろんおひとり様で頼むよ
一緒に入るような奴もいねーし、急所を晒して他人とどうこうは出来ねぇ

ふぅー……悪くない心地だな
仕事終わって温泉で力抜くなんざ、俺も随分と丸くなったもんだ
…変わりすぎた、とも言えるかね
とはいえ根っこは変わってないさ

悪党であることには変わりない
猟兵なんて付加価値があるだけで、相も変わらず世界の毒のままだ
だから………そう、これでいい
これでいいから、ああするしかなかったんだよ

あーあ、しかし……中には恋人と温泉なんて洒落込んでる奴もいるのかね
ハッハー!幸せそうでいいことじゃねえか
やっぱ幸福ってやつは、他人が美味そうに食ってんの見るのが一番だな
特に知り合いのは良い
こっちまで満たされたような気分になるからな
だからそう………幸せ者どもよ、良い人生を歩みたまえ
辛く苦しい試練はあるだろうが、最後にお前らは掴むはずさ
端役はこっち側から、そう願っているぜ



 その温泉の成分は、生体に影響を及ぼさず、かつ機械部の駆動を潤滑にする効能があるという。
 にわかに信じがたい話だったが、浸かってみて納得した。
 じんわりと染み渡る、というのは比喩ではなく、複雑な機械である身体の細部にまで、文字通り湯が巡っていく。
 浸透性が高いと言えばいいのだろうか。

「ふぅー――――――………………」

 なかなか、悪くない。
 立地もいい、木々に囲まれた森の奥で、年距離から狙われても射線が通らない。
 そのくせ、空を見上げれば月明かりだけはよく見える。
 景色を楽しむ風情ぐらいは、持ち合わせている――ただ、その感性を表に出すことが、憚れるだけだ。
 ――――人前では。

「…………仕事終わって温泉で力抜くなんざ、俺も随分と丸くなったもんだ」
 かつて、根城にしていた場所に湧いた温泉のときは、全くリラックス出来なかったというのに。
 自分以外の誰かが居る所で、弱所をむき出しにし続ける事など、彼にとっては精神的な拷問に等しい。

 ……今も、そうだろうか?






「いや、変わってないさ、俺って奴は」

 馴染みはした。
 馴れ合いもした。
 友と呼んでいい奴も、まぁ出来た。




 それでも――――ヴィクティム・ウィンターミュートは、骨の髄まで、悪党だ。




「……だからよ、幸福ってやつは、他人が美味そうに食ってんの見るのが一番だな」
 戦いの最中、顔見知りの姿があった。
 適度に共闘し、適度に支援して、そして会話はしなかった。
 連れ合いが居る相手のところに、わざわざ顔を出すほど野暮ではないし。
 彼らが幸せにしていれば、端役として立ち回る己の価値も、少しはあるというものだ。

 今頃、同じ月を見ているんだろうか。
 淡い光は、恋人たちも、悪党も、平等に照らす、自然の作り給うたスポットライトだ。

「俺には――――不釣り合いすぎる」
 だから、これでよかった。
 これでいいから、ああするしかなかった。
















(くふふ、あの時のキミは、面白かったねえ。大慌てで)
 からかうように笑いながら、梅色の瞳を細めて。

(どうだい? 今なら…………少しは、くつろげるかい?)
 傍らに、居たかも知れない影が。

(だったら、■■は嬉しいのだけど――――)
 ちゃぷん、と、お湯が揺れる音がした。













「――――キ?」
 人は寄り付かないが、獣まで来ないとは、この場所を教えてくれたユドナリアの住民も、言っていなかった気がする。
 体長30cmもない、白い体毛の猿だった。
 右肘から先が義手になっているから、誰かのペットか、それとも治療を施された野生の獣か。
 お湯の中をすいすい泳ぎながら、心地よさそうに目を細め、先客の顔を見て、首を傾げた。

「…………ハッ」
 ざば、と湯から身体を出す。
 結局、これが性分だ。
 例え害のないであろう獣ですら、警戒し、油断できなくなってしまう。
 リラックスは終わり、悪党の歩みが再開する。
 たった、それだけのことだった。

 テクスチャを張り替えて、着替えは一瞬で終わる。
 未だ首を傾げる猿を置き去りに、端役は、月を見上げ、笑った。



 ――――行かないでくれ、と言ってしまった。
 ――――だからこそ、女は行ってしまった。



 何もかも遅く、だからこそ、止まる理由を探せない。

「ハハッ、幸せ者どもよ! どうか笑えるぐらいの未来を掴んでくれよ!」
 きっと同じ光の下、幸せを紡ぐ者達がいる。
 彼らはきっと間違えない。
 自分のようには、ならないだろう。

「ああ――――端役はこっち側から、そう願っているぜ」
 それでも、願わずにはいられない。
 人も、思いも、儚いものだと。
 誰よりも、悪党だからこそ、知っているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月14日


挿絵イラスト