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それはやがて空へ至る

#ダークセイヴァー #常闇の燎原

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#ダークセイヴァー
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#常闇の燎原


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●魔女は笑う、空へ向かって
『空』を流れる星々に、魔女は楽しそうに笑い声を上げた。
「ああ! なんて素敵な光景なのかしら」
 常闇の空に尾を引く幾筋もの光はあまりにも美しい。この光で世界を埋め尽くすことが出来ればどれほど楽しいだろうか?
 感嘆の息を吐き出して、魔女はくすくすと笑った。
「今回の材料はなかなか良かったわ。でもこれっぽっちじゃ全く足りないのよね」
 困ったと愛らしく小首を傾げて呟く魔女の前には、実験材料にされた犠牲者が折り重なるように倒れていた。
「このわたくしが、スターライトがわざわざ辺境まで出向いてあげたというのに」
 魔女は不満気に口にする。
 魔女は犠牲者に対する罪悪感もなにも覚える事はない。
 だって、魔女は彼女が抱く崇高なる目的――この世を無数の星屑で滅ぼす光景を見る為に、この辺境で活動しているからだ。
 だから、怨嗟を囁く犠牲者たちの魂を一瞥するとその場に背を向けた。材料にならないものに価値はないのだから。
「わたしは星屑の魔女スターライト」
 それはいつか世界に星を降らせる者の名だ。
 たとえ星屑だったとしても、空から無数に星が降る夜はとても美しいに違いない。
「ああ、はやく誰か来ないかしら?」
 ちろちろと魔女の足元で黒い炎が揺れていた。
「誰でもいいわ。わたくしを退屈から救い出してくれないかしら?」
 星を降らせる夢を見て、魔女は退屈そうに呟いた。

●グリモアベースにて
「やあ、忙しい中来てくれてありがとう」
 集まった猟兵たちにむかって、グリモア猟兵アリステル・ブルーは一礼すると早速とばかりに説明をはじめた。
「皆は知っているかな? 僕たち猟兵が『ダークセイヴァー』と呼んでいる世界。地上だと思っていた場所が、実は『地下第4層』だったってこと」
 グリモア猟兵がそう言って提示したのは、第五の貴族との戦いに関する報告書だった。
「ちょっと簡単に説明するね。知ってる人は聞き流してくれて構わない。
 辺境伯と呼ばれるオブリビオンが宿していた謎の紋章を知ってるかな。この謎を追ううちに『地底都市』に辿り着いた人や『第五の貴族』と呼ばれる支配者階級と戦った人もいるんじゃないかな? 紋章の謎とそれに関わる奴らを追ううちに、僕たちが地上だと思っていた場所が実は地下だったって判明したわけさ」

 ぱんと軽く手を鳴らすと、グリモア猟兵は皆の注目を集めた。

「きっとどこかに『第3層』へ繋がる道があるはずなんだ。ただ、この事は僕らだけじゃなく、支配者階級である吸血鬼の多くも知らなかった。なら手がかりは辺境――人類の居住区域を越えた、さらにその先。常闇に覆われた、生命の存在を許さない過酷な区域『常闇の燎原』と呼ばれる場所にあるんじゃないかとされている。危険を承知の上で言うけど、君たちにはそこを目指して欲しい」
 しかし辺境に立ち入れば、彷徨うオブリビオンが猟兵たちを待ち受けているだろう。それはグリモア猟兵が予知した光景にうつり込んでいたのだ。
「そいつは、そうだね『絶望の集合体』とでも言うのかな。過去に消費された絶望の感情が、骸の海より染み出した集合体なんだ。ただ侵入者に反応する、それだけの存在だよ」
 故に、それには理性も何もない。ただ消費された過去がオブリビオンとして出現し、負の感情を撒き散らすだけの存在だ。意思疎通も情報収集すら不可能だろう。
「オブリビオンを倒せば、そこは辺境地帯でもっとも過酷な場所……。今回向かってもらう場所は、魂が彷徨う荒野だ」
 荒れ果てた地に、無数の魂が彷徨っている。
 その大半はその先に待ち受けているオブリビオンの犠牲者だ。その中には、無念のうちに生を終わらせた魂もあるだろう。
「彼らはね、薄い自我がかろうじてまだ残ってるんだ。それに生者に対する憎しみもね。彼らは君たちに恨み言を吐くかもしれない。でも彼らは君たちに対してそれ以上の事はできないよ。だから魂への処遇は現場に向かう君たちに一任するよ」
 同情し慰めるもよし、戯言だと無視するもよし、実力行使しても構わないとグリモア猟兵は言った。
「ああでも、彼らは『魔女』にも恨みを抱いている。そこを利用してみるのも手かもしれないね? とはいえ僕は君たちを危険が伴う現場に送る身だ。だから君たちが猟兵として在る限り、僕は君たちが選ぶ手段を肯定するよ」
 だから、気をつけてとグリモア猟兵は続けた。
「荒野を抜けた果てには、オブリビオンが待ち受けてる。そいつは、星屑の支配者を名乗っている魔女だ。異端の神かそれに類するものだと思う、多分だけど。そいつは辺境にたびたびやって来ては犠牲者を生み出している。だから、気をつけて。支配者を僭称するだけあって、同族殺しや紋章を持ったオブリビオンに匹敵する強さを秘めている」
 何より警戒するべきは、オブリビオンが纏う『黒い炎』だろう。その炎はあらゆる防護を蝕んで行く。
「いいかい? 魔女の攻撃を受けてはいけないよ。攻撃は黒い炎となって君たちの防具も服も肉体すらも蝕み、魔女の傷を癒すだろう」
 それは防具や武器を利用した防御も含まれるのだ。攻撃を受けず、何らかの手段によってその技を見切ったり回避する必要があるだろう。
「だけど、魔女は自分の力を過信しているよ。その攻撃に対処さえすれば……驕った支配者なんて、きっと君たちの敵じゃない」
 そう言い切ると、グリモア猟兵は転送の準備をはじめた。
「僕は信じているよ。この戦いがきっと空へ至る一歩になるってね。そして君たちの幸運と勝利を祈る。どうか無事に帰ってきて」
 転移の光に包まれる猟兵たちに、深々と祈りを捧げた。


いつき
 こんにちは、あるいははじめまして。
 歩みはゆっくりかもしれませんが、これはやがて世界の真実へ至る一歩になる手掛かりかもしれません。

 3章構成になります。
 1章 ボス戦
 理性のない強敵です。意思疎通や情報収集は不可能ですので遠慮なく倒してください。

 2章 冒険
『魔女』の犠牲となった魂が彷徨っている荒野に踏み入ります。彼らを慰めるもよし、蹴散らすもよし、猟兵さんのお好きなように対処してください。彼らは生者と『魔女』への憎しみを抱いています。それを利用するのも一つの手段です。

 3章 ボス戦
 黒い炎を纏った『魔女』が皆様の前に立ちはだかります。
 敵の攻撃は猟兵の皆様の防具や服、肉体を蝕み、敵を回復させます。
 この攻撃への対処法を是非考えてみてください。

 断章にあたるものはマスターページに記載していますのでご参考にどうぞ!OP公開後に投稿いたします。
 プレイングはOP公開後お好きなタイミングでご自由に。
 2章以後は断章を挟み、受付状況など随時タグ及びマスターページにてご案内します。
 期限内返送のゆっくり運営になります。

 連携アドリブokと解釈しているため、NGの方のみ冒頭に×をお付けください。UC/スキルのカッコも省略歓迎です。文字数削減にぜひ活用してください。

 読んでくださってありがとうございました。
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第1章 ボス戦 『絶望の集合体』

POW   :    人の手により生み出され広がる絶望
【振り下ろされる腕】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に絶望の感情を植え付ける瘴気を蔓延させる】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去
いま戦っている対象に有効な【泥のような身体から産み出される泥人形】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    過去はその瞳で何を見たのか
【虚ろな瞳を向け、目が合うこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【幾千という絶望な死を疑似体験させること】で攻撃する。

イラスト:井渡

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●絶望の集合体
 今回転送先として設定されたのは、かつてヴァンパイアたちと戦い敗れオブリビオンと成り果てた『異端の神々』が彷徨う辺境地帯の一地方だった。
 周囲に人の気配はなく、進むほどに草木は枯れ果て、やがては荒れた大地に足を踏み入れることになるだろう。
 常闇の燎原はそのさらに先、未だ誰の支配も及ばぬ場所にあるとされる。

 けれど侵入者の気配を捕らえたソレが行手を遮ったのだ。
『あア、憎い、ニクい……』
『ドウして犠牲ニ?』
『許さなイ、絶対に許サない』
 無数の影と燃える幻影が揺らめいて、口々にノイズ混じりの『絶望』を吐き出した。集まった絶望の量に比例するように巨大なそれは、猟兵を見ている。
 けれど忘れないで。
 それは『過去』にすぎない。
 消費された過去が骸の海から滲み出し、老若男女様々な声色で、記録された過去をただただ再生しているだけなのだから。
『たすけて、ママ』
 絶望の集合体は、やけに明瞭に幼い声の記録を再生した。
 そうして影がか細く小さな手を伸ばす。まるで助けを求めるように。
 けれど忘れないで。それは過去の記録にすぎない。
 それはただの記録の集合体で、自我も意思もない。
 だから伸ばされた手を取ってはいけない。それはあなたを絶望の海に引きずり込もうとする罠なのだから。
 彼らに必要なのはただひとつ。
 手を取ることではなく、速やかに骸の海へ還してやることだけだ。
 絶望の集合体を退けなければ、この先へ進むことは叶わないだろう。
サンディ・ノックス
情報とは大事だね
彼らはもう魂がない、ただの過去の残渣だと知らなければ俺は彼らに手を差し伸べていた
ただ過去を再生するだけの物ならば救われない魂と同様には扱えない
過去(オブリビオン)として骸の海に還してあげるだけさ

けれど彼らの淀んだ黒に俺の悪意の力をぶつけたくはないな
綺麗な力を見せたくなる
さあ、行っておいで「解放・星夜」
空色の水晶で構成された小人達が魔力弾で攻撃する姿を見守る

敵と目が合い死を体験させられれば当然心は消耗する
かつてこの世界で多数の人々に残酷な死を与えてしまった俺
その報いを受けているのだ、そう解釈したとしても
攻撃が終わったら目を閉じる、もう二度と体験したくない
小人達が攻撃するのに任せる



 揺らめく影の中から、か細く小さな手が伸ばされていた。
 幼子のように丸みを帯びた小さな手は、救いを求めるようにサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)へと向けられている。
「情報とは大事だね」
 青い瞳を伏せて、サンディはそう小さくこぼしたのだ。
 絶望の集合体。
 そのオブリビオンは、名の通り過去に消費された誰かの感情の集合体だ。ただオブリビオンとしての本能だけがあり、そこに自我も意思もなく、記録を再生し続けるだけの壊れた機械のようなものだ。
「…………」
 もしもサンディが、彼らが『過去』の残渣だと知っていなけれきっとこの手を差し伸べていただろう。今にも消えそうなあの手を取って、何か言葉のひとつでも投げかけたかもしれない。
 だけど、現実にはそうはならなかった。
 あれを救われない魂と同様に扱うことはできなかった。絶望の集合体は、ただ記録された過去を再生しているだけなのだから。そう知ってしまったのなら、なおさらのことだ。
 だから。
「俺は『過去』として骸の海に還してあげるだけさ」
 そう零したサンディの手は、けれど暗夜の剣に伸びることはなかった。
(彼らの淀んだ黒に俺の悪意の力をぶつけたくはないな)
 そう考えてしまうサンディがいるのも現実なのだ。
 オブリビオンは変わらず、ノイズ混じりの音声を吐き出していた。声も姿も移ろい続けている。過去から蘇った敵ならば、この剣を握って悪意を持って接してしまえるのに、そうすることを選ばなかった。
「綺麗な力を見せたくなる――解放・星夜」
 さあ行っておいでと発動したユーベルコードは、空色の水晶で構成された小人たちを呼び出していた。小さな彼らは、キラキラとまるで星々のようにあたりを照らす、その様を見守っていた。
『ドウしテ』
 その瞬間、戸惑ったような記録を再生するオブリビオンと、サンディの瞳が交差する。虚ろな瞳は、たしかにサンディを視ていたのだ。
 『過去』はその瞳で何を見て、何を記録していたのだろうか。
 揺れる瞳に映るのは、たすけてと、伸ばした手が誰にも届かなかった光景だ。
 絶望に彩られた誰かの記録を幾度も擬似的に体験させられる。
 かつてこの世界で、多数の人々に残酷な死を与えてしまった。
 その報いを今受けているのだと、そう解釈したとしても、擬似的とはいえ死を体験させられれば心は消耗してしまう。
『ドうシテ』
 声を殺して、深く息をする。落ち着いて、疑似体験の途切れる瞬間に、虚ろな瞳から目をそらした。視線が決して交わることのないようにと目蓋をそっと下ろしたのだ。もう二度と体験したくないと思ったから。
 閉じられた瞳の向こうでは、呼ばれた小人たちの放つ魔力弾が、偽りの空に流星のように尾を描いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「上層へ、そしていつか地上へ向かう道探し、ですか。浪漫がありますよね」
哂う

「つまり、その腕が振り下ろせなくなればいい。違いますか」
「蹂躙せよ、黄巾力士!」
自分は風火輪、黄巾力士は飛来椅で飛行しながらUC使用
敵が振り下ろそうとする腕自体をどんどん爆破して敵がUCを使えない状況に追い込む
黄巾力士にも空中から無差別・鎧無視攻撃での蹂躙命じる
敵の攻撃は黄巾力士にオーラ防御で庇わせる
黄巾力士が爆砕した場合は功夫+仙術で敵の攻撃が届かない場所へ縮地し回避

UC後も空中から雷公鞭振り回し雷属性の属性攻撃継続し敵撹乱

「地を這うこと自体が絶望の第一歩だと思いますが。貴方は何をそんなに絶望したんでしょうねぇ」
嗤う



「上層へ、そしていつか地上へ向かう道探し、ですか。浪漫がありますよね」
 鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)はそう言って哂う。
 これまでずっと秘匿され続けていた真実は、猟兵たちがダークセイヴァーと呼ぶ世界が地下にあったいうものだった。そして今回の依頼は上層を目指し荒野の果てを目指すこと。それは文字通り雲でも掴むような話ではないか、と。
 見上げた先に広がるこの闇に覆われた空の、更に上を目指すことはきっと苦難に満ちているだろう。
 冬季が視線を戻した先、冬季の眼前に立ちはだかるオブリビオンは、記録された絶望を再生しながら腕を伸ばしていた。
(けれど、ああはなるまい)
 この程度で絶望していては、到底叶わぬ目標でもある。目指す『未来』の前には幾度も『過去』が立ちはだかり、猟兵たちはそれを越えていかねばならないのだから。
『もうヤめテ』
 ノイズ混じりの記録を絶望の集合体が再生する。そこに意思はなく、ただ猟兵という存在を排除するというオブリビオンの本能だけがあった。それに従ってだろうか。絶えず移ろい続ける幻影は、いつか誰かがみた絶望の光景を再現していた。
 ――振り下ろされる腕。
 それは誰かにとっての人の手により生み出される絶望の象徴だったのだろう。妖狐であり仙人でもある冬季の目は、その『手』が負の感情を纏っていることに気づく。あれは外れても瘴気を蔓延させ、連鎖的にさらなる絶望を生み出すのだろう。
「つまり、その腕が振り下ろせなくなればいい。違いますか」
 冬季は被造した黄巾力士に命じて飛来椅を用いて空を舞わせる。自身も風火輪で追従し、その手に雷公鞭を握り、空中に陣を描いていく。
「陣を描く、というのがどう言うことか。分かりやすく教えて差し上げましょう」
 ユーベルコード【八卦天雷陣・雷爆鎖】を行使し冬季の描いた陣は、稲妻を生み出しては『振り下ろそうとする腕』に命中させていく。その箇所から冬季自身の神気を流し込み、次々と生み出される『腕』そのものを爆破していく。
 振り下ろすための腕がなくなれば、絶望の集合体もその力を使うことが出来ないのだから。
 それでも敵の攻撃は止まなかった。オブリビオンは冬季と黄巾力士を捕らえようと、なおもその腕を伸ばすから。
「蹂躙せよ、黄巾力士!」
 冬季命に従って、飛行時に発生する衝撃が伸ばされた腕ごと破壊していく。
 冬季自身も手にした雷公鞭振り回し、雷撃を放ち続けた。
 闇雲に振り回される腕に更に一撃をくれてやり、冬季は嗤う。
「地を這うこと自体が絶望の第一歩だと思いますが。貴方は何をそんなに絶望したんでしょうねぇ」
 その言葉に、理性無き絶望の集合体はただノイズ混じりの悲鳴を上げるだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニーニャ・メテオライト
「星屑の支配者……魔女か……。響きだけは素晴らしいけれど、星は誰かに縛られたりしないわ。」

__そしてあなたたちも。
そう呟きながら絶望の集合体を見やる。

「悲しいわね。人間には必ず絶望という感情がある。あなたたちが例え過去の存在だとしても、私は悲しいわ。」

__だからせめて祈りましょう。あなたたちの絶望が少しでも癒えることを。

UC『輝く星の花』を発動。星の花の花びらで絶望の集合体を攻撃。

「願わくばあなたたちに、安らぎが訪れますように。」



 季節が移ろへば見せる姿がかわることも、真冬の澄んだ空で輝く星も、夏を彩る星空も知っている。
 夜空に煌めく星々の美しさをずっと見ていたから知っている。
「星屑の支配者……魔女か……。響きだけは素晴らしいけれど、星は誰かに縛られたりしないわ」
 ロニーニャ・メテオライト(不老不死の星の子ども・f35195)はあの星々に憧れていた。強い憧れを抱いてあの美しい煌めきを見上げていたから。
 あの夜空に浮かぶ美しい星を支配するだなんて、果たして誰が許したのだろうか。
「――そしてあなたたちも」
 ロニーニャは、そう呟きながら絶望の集合体を見やる。
 薄闇の中揺らめく幻影たちは移ろい続け、ただ過去を再生する。幼い声が、年老いた声が、若者の声が口々に何かを吐き出していく。けれどそれはただの過去の記録なのだ。
「悲しいわね。人間には必ず絶望という感情がある」
 人が生きる上で誰しもその感情を抱くことはあるだろう。自身の無力を、あるいは世界の無慈悲さに嘆き悲しむことだって。けれど誰も、あの声の主だって、そうなることを望んでいなかったはずだ。
 そして『絶望の集合体』は消費された誰かの過去が集って生まれた。誰にも望まれなかった、誰かの絶望に支配された、ある種哀れな存在だ。
「あなたたちが例え過去の存在だとしても、私は悲しいわ」
 猟兵と『過去』は決して相容れない存在だ。
 消費された過去――骸の海から滲出したオブリビオンは世界を過去で埋め尽くし滅ぼすために、そして猟兵たちは『過去』と戦い世界を守るべく活動している。猟兵が彼らを見逃すことは即ち世界を終焉へ導くことであり、オブリビオンが猟兵を見逃すことは自らの存在を否定することに繋がる。
 互いに求める『未来』が違うから、両者は共存することも妥協することもできないのだ。
 それでも。
 ロニーニャは焦茶の瞳を閉じて、真摯に祈りを捧げた。
 手を組んで祈る彼女を中心に、ふわりと荒野に星の花の花びらが舞い上がる。
「だからせめて祈りましょう。あなたたちの絶望が少しでも癒えることを」
 あの伸ばされた手を取ることはできない。
 あの手はロニーニャを自らの中へ取り込もうとするだろう。
 そしてなによりオブリビオンである以上見逃すこともできない。
 けれど、けれど祈ることくらいは許されるはずだ。
「願わくばあなたたちに、安らぎが訪れますように」
 ロニーニャの心からの声に応えるように、ユーベルコード【輝く星の花】が生み出した無数の花びらが絶望の集合体を包み込んでいた。
 きらきらとした星の花は、まるで夜空の星々のように煌めいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
《燦々爛々》

記憶ではなく記録だ
延々と続く悪趣味なお涙頂戴映画だわ

爛、巫女同士しっかりと鎮魂しましょ

神鳴に稲荷符貼り付けて武器改造
破魔の炎を宿して絶望を斬るぜ

目は合わせたくねーけど視界に入るわな
斬られ、砕かれ、貫かれ…はっ、痛い疑似体験は問題ねえ
だが不要と罵られ孤独に死ぬ恐怖には蝕まれる…弱点だ

爛、手ェ貸しな
手を繋いでアタシを好いてくれる人を感じて息を整えるよ

独占欲か
アタシにもあるし、向き合う限りそれは醜いものじゃない
可愛い乙女心さ

肉体の限界を凌駕する魂を発露させて薙ぎ払う
こんな死など世界から消してやる!
絶望よ、躯の海で深く眠れ

ん?
何で爛は氷を扱えるんだ…
前世の彼女に才覚は一ミリもなかったぞい?


狐裘・爛
《燦々爛々》
私の友達で墓守の、ああいう魂じゃない。もう形にもなってないけど、せめて綺麗に燃やしてあげる
ええ、そうね巫女として! 一つ残らず鎮めましょ、燦

泥に影って相性サイアク! 燃えないし斬れないし、なにより全然綺麗じゃない!
焼却と浄化の炎操道術を繰り出すけど、さすがに目線なんて全部防げないわ

痛いのもヤだけど私、独りで死にたくないよ。だから束縛してでも手元に置きたいの
醜い独占欲に満ちた私を知られたら……そう。これが絶望なのね……

堪らず燦の手を握るわ
あたたかい言葉。この温もりがあれば、怖いものなんてない!

悴む指先から氷を放つ
レディのようにお淑やかにね
「わたくしはわたくしであってわたくしでない」の



 絶えず姿を変え移ろい続けるそのオブリビオンが吐き出すのは、記憶ではなく記録だ。ただ狂ったオブリビオンは記録された通りに感情を再生し、場面に合わせて姿を変えるだけなのだから。
 だからほら。
 か細く助けを求めるように伸ばされていた腕が振り上げられて、誰かの絶望の象徴へ姿を変える。
(まるで延々と続く悪趣味なお涙頂戴映画だわ)
 腕がかき消えればすすり泣く女の姿が現れて、次の瞬間には慟哭する男の姿へ変じていく。これら全てが誰かの絶望の瞬間の、ただの記録なのだ。そこに当人たちの意思が伴うならばどれほど良かったか。
 ただ。それが例え空っぽの存在だったとしても、四王天・燦(月夜の翼・f04448)の巫女としての矜持が、見捨てることを許せなかったのだ。燦はその光景から視線を外し、傍らの狐裘・爛(榾火・f33271)を見遣って声をかけた。
「爛、巫女同士しっかりと鎮魂しましょ」
「ええ、そうね巫女として! 一つ残らず鎮めましょ、燦」
 応える爛も、その赤い瞳をオブリビオンへと向けていた。
 オブリビオンは爛の友達の墓守が連れている、ああいう魂とは様子が違っていた。あの愛らしい姿ではなく、もはや元の姿さえとどめてはいないけれど。
「せめて綺麗に燃やしてあげる」
 浄化の炎で『過去』を骸の海へ還してやる。
 それが爛の巫女としての役割であり、今出来ることだろうから。
 二人は互いに視線を交わすと覚悟を決めたように頷いた。
 燦は澄んだ音を立てて神鳴を抜刀すると四王稲荷符を貼り付けて、その刀身へと破魔の炎を宿す。そこに込めるのは、巫女として眼前の哀れな生き物を鎮魂するという覚悟だ。

「泥に影って相性サイアク! 燃えないし斬れないし、なにより全然綺麗じゃない!」
 美しいものが好きだから、綺麗なものを愛でたいからこそ、爛にとって今回の敵は相性がよろしくなかったのだ。移ろう姿に『綺麗』のかけらひとつ見いだせない。だけど、そう口にしながら爛もまた一歩踏み出して浄化の炎操道術を繰り出した。
 斬ると、戦って浄化するとそう決めた以上、二人の金と赤の瞳と虚ろが交差するのは仕方の無いことだったのだ。
 『過去』は果たして、その瞳で何を見たのか。
 二人に与えられたのは、いつか誰かが経験した絶望な死だった。
 幾度も繰り返したオブリビオンとの戦闘で、傷を負ったことだってあるだろう。けれど、何度も何度も斬られ、砕かれ、貫かれ、絶望に彩られた死を繰り返し経験したことなんてないのだから。
「……はっ、痛い疑似体験は問題ねえ」
 それよりも不要と罵られ孤独に死ぬ恐怖のほうが爛の心を蝕んでいく。
 その温もりが欲しくて、必死に伸ばした手が届くより前に拒絶され命が尽きた、その光景。弱点だと認識する部分を突かれて、腹の底がじわりと冷えていくのを自覚していた。
「痛いのもヤだけど私、独りで死にたくないよ」
 隣で零されたのは爛の悲痛な願いだった。
 独りで死ぬのはきっと寂しい。束縛してでも手元に置きたい。
 けれど。
「醜い独占欲に満ちた私を知られたら……」
 それが酷く恐ろしいのだ。
 こんなみにくい私を愛してくれるだろうか。
 孤独という絶望に蝕まれそうになる爛をみて、
「手ェ貸しな」
 燦がかけたその言葉に、爛は堪らず差し出された手を握った。
 疑似体験とはいえ孤独な死を経験させられたのだ。いくら猟兵といえどその毒に、二人の巫女の心は悲鳴を上げていた。
 けれど、繋いだ手が互いの温もりを伝えてくれるのだ。
 決して自分たちは独りではないのだと。

 差し出した手を握り返されて、燦は笑って息を整えた。
 大丈夫。アタシを好いてくれる人は今隣に確かにいるのだから。
「独占欲か」
 それは多かれ少なかれ誰でも持っている思いだろう。好きな人には自分を見てもらいたい、一緒にいて欲しい。そうした欲求はごく自然なものなのだから。
 燦だって例外ではない。
「アタシにもあるし、向き合う限りそれは醜いものじゃない。可愛い乙女心さ、だろう?」
 投げかけられた暖かな言葉に、爛もまた心を奮い立たせる。
 繋いだ手から伝わるこの温もりがあれば、怖いものなんてない。
 二人で顔を見合わせて笑うと、自然とそれぞれが『絶望の集合体』へと立ち向かう。もし再びあの死を与えられたとしても、きっと二人ならば今のように支え合って、励まし合って越えられるのだから。

 燦は【肉体の限界を凌駕する魂】を発露させて、迸る紅の電撃があたりを赤く染めるながら刀を薙ぎ払う。
「こんな死など世界から消してやる!」
 そこに込められたのは、骸の海で眠れという願いだった。
 爛もまた、未だ悴んだままの指先を、絶望の集合体へ向ける。
 覚悟を決めたから、自身のユーベルコードを発動させたのだ。
「わたくしはわたくしであってわたくしでないの」
 普段とは別人のようにお淑やかな口調で【乖炎戯・魂魄凍結】を発動させた。
「ん?」
 放たれた氷を視界の端で捉えて、燦は小さく声を上げた。
(何で爛は氷を扱えるんだ……)
 彼女が扱えるのは炎だったと燦は記憶していた。
「前世の彼女に才覚は一ミリもなかったぞい?」
 燦は懐で眠る琥珀にそっと触れながらそう疑問を零したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
ここを通してくれ…と言っても聞いてもらえる相手じゃなさそうだね
なら、いち聖者として…うち払い、この先へ進むのみ

相手の呼び声はある意味精神攻撃であり、呪詛のようなものでもあるのだろう
相手は過去の存在、耳を傾けてはだめだ
落ち着きを持って対処、手元より飴を取り出しUCを発動させる

命無き物(無機物)よ!地と火の疑似精霊となれ!
多重詠唱で2種の疑似精霊を同時召喚する

まずは自分の手前に地の力で岩壁を作り出し敵の視線を遮断する
壁に呪詛耐性も施しておけばさらに安全だろうか?
これで相手の攻撃は受けずに済む

その上で火の力で頭上に火球を作り出す
破魔の力も付与した火球で敵を焼き払う
全てを焼き尽くし浄化してあげるよ



「ここを通してくれ……と言っても聞いてもらえる相手じゃなさそうだね」
 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)はそう零したのだ。
 ここへ至るまで数々の攻撃や祈りを受けても『絶望の集合体』はその道を譲ろうとはしなかった。誰の問いに答えるわけでもなく、ただ過去の記録を再生し続ける。いくら注意深く観察したとしても、そこに何かの意思を感じることはできないだろう。
 ほら、今もまた。誰かの絶望を吐き出している。
「なら、いち聖者として……うち払い、この先へ進むのみ」
 せめて会話ができる相手ならば、いくらかの手段があったはずだ。その身が抱えた絶望を癒やす手段を探すことが出来たかもしれない。たとえ必ず倒さなくてはならないオブリビオンだとしても、だ。
 聖者として、猟兵として。
 あの過去の化身を骸の海へと還すことがひりょの役目なのだと覚悟を決める。
『イタいのはいやダ』
 それに応えるように再生されたノイズ混じりの幼い声は、ある種の精神攻撃であり、呪詛そのものだった。それがたとえただの『記録』だったとしても、救いを求める声を、伸ばされた手を振り払うことが、まるで誰かを見捨てるような気持ちになり、良心を蝕んでいくのだ。
 けれどあのオブリビオンは過去の化身なのだ。
 理性も意思もなくこのまま放置しても、世界を過去で埋め尽くすその瞬間まで記録された感情を再生し続けるだけなのだから。
 それを終わらせることが出来るのは、今この場にいる猟兵だけなのだ。
(耳を傾けてはだめだ)
 振り切るようにひりょは頭を振って手元から飴を取り出した。
「命無き物よ! 地と火の疑似精霊となれ――固有結界・黄昏の間!」
 ユーベルコードを発動し多重詠唱と共に召喚するのは二種の疑似精霊だ。すぐさま地の疑似精霊へ命じ、自身の前に岩壁を作り出す。
 直感が告げているのだ、あのオブリビオンの虚ろな瞳を見てはいけないと。幾多の戦いを切り抜けてきた猟兵としての経験が警鐘を鳴らす。念には念をと、そこへ呪詛に対する術も施してそっと視線を合わせぬよう気をつけながら様子を伺う。
「頼んだよ、行け」
 次いで、火の疑似精霊にも命じて『絶望の集合体』の頭上へと火球を生み出した。
 そこに込めるのは破魔の祈りだ。
「全てを焼き尽くし浄化してあげるよ」
 言葉と共に、ゆらりゆらりと姿を変えるオブリビオンを火球が飲み込んでいく。



 オブリビオンが伸ばした腕はついぞ届かなかった。
 視線が合った者たちは、与えたはずの幾多の死を耐えて反撃を繰り出した。振り上げた腕は止められ、新たに生み出すたびに阻害される。
 雷が、氷が、炎がその身を苛む。
 だけどそれだけではなかった。
 あたたかな祈りが、浄化の意思が『絶望の集合体』を包み込んだのだ。
 絶望の集合体は機械的に自身の記録を手繰り続ける。痛みも死も絶望も膨大に記録されている。冷たくて寂しくて痛い。そんな記録こそあれど、このようなあたたかさはひとつもなかったのだ。
 独りは嫌だから手を伸ばした。あの時は届かなかったけれど、欲しかったものが今ここにある。


 絶望の集合体が突如動きを止めた。
 闇雲に振り回されていた腕は崩れ落ち、何かの前兆かと猟兵たちが警戒し反撃に備えようとした時だ。
 移ろっていた幻影も、ノイズ混じりの記録もまたぴたりと止まる。
『――――――』
 訝しむ猟兵たちの前で、それは理解出来ぬ何かを再生した。
 その意味こそわからなかったが、絶望に満ちた声ではないことだけは確かだった。
 そうしてオブリビオン『絶望の集合体』は完全に灰となり、今ひとたびこの地から消滅したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『彷徨う魂』

POW   :    持ち前のタフネスや生命力で呪詛に耐え、命の力を見せつける。

SPD   :    魂を縛り付けている何かを見つけ出し、それを示したり破壊することで魂を解き放つ。

WIZ   :    魂の精神に寄り添い、祈りや聖句などで浄化する。

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●彷徨う魂
 オブリビオンを退けて、猟兵たちが向かうのは今回訪れた辺境地帯でもっとも過酷な場所とされる場所だった。そこには猟兵たち以外の生命は存在しなかった。辺境はもとよりヴァンパイアたちですら手を出しかねている、異端の神々が彷徨う地だ。
 ヴァンパイアに敗れたといえど、神は神。
 ただの人が生きて行くには、狂える神々の前にあまりにも無力で。
 ただの人が生きて行くには、草の生えぬ地ではあまりにも難しい。

 あなたならば気づくかもしれない。
 この地には無数の魂が彷徨っている。それらは擦り切れてぼろぼろになった魂たちだ。その大多数は生前運悪く『魔女』に捕まり犠牲になったものだ。その悪行に立ち向かった者もいれば、辺境に迷い込みその生を終えた者もいるだろう。いずれにしても、望んでその生を終えた者ではない。失意に、絶望に、魂はもう弱り切っている。
 もはやあなたが手を下すまでもなく、放っておけばやがて消えるだろう。
 ただわずかに残った自我が、生を渇望している。今を生きる者たちを羨んで、ぼろぼろの魂はあなたへその恨みを告げる。錯乱した魂があなたを『魔女』と認識しその憎しみを投げかけるかもしれない。
 ただその魂たちができるのはそこまでだ。
 彼らはあなたへ、それ以上の害を成すことが出来ない。
 この魂たちはあなたの前ではあまりにも無力だ。
 だから、生命の強さを見せつけて先を行くも、実力で排除しても、真摯に祈りを捧げるのも。その他の手段も含めて選ぶのはあなた――猟兵次第だ。
 あなたがもし何らかの目的を持って探すなら、きっと目当ての魂が見つかるだろう。

 この荒野を抜ければそこは常闇の燎原が目前に迫る。
 消えぬ黒い炎が大地を焼いて、星を支配する魔女が待ち受ける場所へ。
 そこへ至るために、まずこの荒野を抜けよう。
ロニーニャ・メテオライト
☆改変、アドリブ大丈夫です。

「ここはとても荒んだ場所ね……それに当てもなく彷徨う魂も沢山いるみたい。」
荒野を歩きながら辺りを見回す。

「こんな場所ではきっと花も咲かないのでしょうね。死んでしまった後も安らぎすらないなんて、それは余りにも悲しいわ。」

___過去とは相容れない、それでも。それでもロニーニャは祈る。この魂たちの未来のために祈る。

「私には祈ることくらいしか出来ないけれど。あなたたちの往く先に花と星が溢れていますように。」

『星たちよ、共に踊り、歌いましょう。数多の魂が海に還り、再び産まれてくることを願って。』

UCを発動。荒野を星の花で埋め尽くす。



 どこまでも荒れ果てた大地が続いていた。
 大地は枯れていて、こんな場所ではきっと花も咲かないのだろうなと、ロニーニャ・メテオライト(不老不死の星の子ども・f35195)は考えた。
「ここはとても荒んだ場所ね……」
 進めば進むほど肌寒さを覚える。辺境に踏み入ってからずいぶんと経った気がする。ロニーニャはいつだって星と一緒だったから、空を見上げても星のひとつない常闇の世界ではどうしても時間感覚が狂うのだ。
 それに。
「当てもなく彷徨う魂も沢山いるみたい」
 茶の髪を揺らして再び見据えた前方には、無数の魂が彷徨っているのが見える。
 それは一目でわかるほどに弱り果てていた。風に吹かれる蝋燭の灯火のように、次の瞬間には消えてしまいそうな程に。近づいて耳を澄ませば、魂たちの小さな声がロニーニャまで届く。
 こんなはずじゃなかった。生きたかった。まだ死にたくなかった。
『助けて』
 口々にそう告げる声に、もう休みたいと救済を求め嘆く声に、思わずその手を伸ばした。
「死んでしまった後も安らぎすらないなんて、それは余りにも悲しいわ」
 実体は持たないはずなのに、氷に触れるように指先が冷たい。
 魂が行くべき場所へ向かわず、死してなおこんな寂しい場所を彷徨っているのはあまりにも悲しかった。
 過去と相容れることはない。だって、ロニーニャは猟兵で、未来へ向かって前へ進む者だから。いつだって後を着いてくる『過去』の手を取ることは不可能だ。
 それでも。それでもロニーニャは祈るだろう。
 小さく冷たい魂を手招いて、そっとてのひらで包み込む。刺すような冷気がてのひらを伝うけれど、潰さぬように、怯えさせぬように気をつけて、その魂を優しく抱きしめた。足下で星の花が一輪揺れる。
「私には祈ることくらいしか出来ないけれど。あなたたちの往く先に花と星が溢れていますように――星たちよ、共に踊り、歌いましょう」
 ロニーニャの祈りに、願いに呼応するように、夜空を幾多の流星が流れていく。
「数多の魂が海に還り、再び産まれてくることを願って」
 その星々に込められたのは真摯な祈りだった。魂がどうか安らいで眠れるようにと願いを込めて。
『嗚呼、星はこんなにも綺麗だったの』
 傍らの魂がそう囁いた。きっとこの魂が最期に見たのは『魔女』が降らした星なのだ。悪意と冷たさに満ちた星しか知らなかった魂は、ロニーニャのてのひらを離れると、小さな声でありがとうと告げると、ふっとどこかに姿を消した。
「どうかあなたに安らぎがありますように」 

 魂を見送って、ふと視線を向けたのはロニーニャが歩いてきた道のりだった。乾いた土の上に、猟兵たちの、ロニーニャの足跡がしっかりと刻まれていた。
 暗夜の世界で終点は未だ見えないけれど、その足跡こそがロニーニャが未来へ向かって歩んだ証だった。
 それを確かめると、ロニーニャは無垢の大地に足跡を残すように再び歩き始めた。
 彼女の星座盤はその未来を告げるだろう。
 進む道のその先に――過去が待っていると。

大成功 🔵​🔵​🔵​

狐裘・爛
《燦々爛々》
おいで、うふ。体も心も魂も。永遠に、輪廻しながら綺麗さを保てるように……
熱く爛れるように、内から凍りつくように、魂を鎮めますわ

この口調に氷の姿?
あなたと交わり祈りに応えた結果、かしらね(唇を指差し)

鎮魂を続けましょう
荒ぶる御霊たちを、冷たい褥に包んで口づけを
ぼろぼろの魂、錯乱した魂。ええ、醜いなんて思いませんし、むしろカタキも取りたくなるというもの

燻る榾火は不完全な転生体、本来なら姿を見せるのもご法度ですわ
わたくしもこの魂たちと同じ狐裘羔袖。悪魔召喚士の召喚術に呼応し、溢れた魂の欠片を補う一柱、でしてよ

うふ。冗談ですのよ。わたくしはあなたの友達で、家族のようなものですの


四王天・燦
《燦々爛々》

魂と命が結びついて生物は構築される―ってのが持論だ
命を得る途に着けず彷徨うのは哀しいな

爛の魂…どこで氷の力を得たんだ?
薄々気づきつつも声にして問うぜ

懐に隠した雪女・スノゥを封じた青い琥珀を撫でるよ
あの場の全員が交じりあったのか
理を超越できる願い・想いの力を感じるよ

魂たちがお出迎えだね
眠れよ、次の命に迎えられるときまで
慰めの符術で弔うぜ

鎮まれぬ魂は―
呪詛と式神使いの応用で怨嗟を符に集めるぜ
アタシが魔女に届けると約束する
怨み晴らしてスカッと昇天しよーぜ

なあ、爛は親友で妹分でそして狐裘・爛だよ
帰ったらアタシらを交えて生まれた爛としての半生を教えてよ
同じでねーから良いのさ
懐に隠した二人もね



 魂と命が結びついて生物は構築される――それが四王天・燦(月夜の翼・f04448)の持論だった。
「眠れよ、次の命に迎えられるときまで」
 神社の巫女でもあるから、命を得る途に着けず魂が彷徨うのは哀しく感じるのだ。ましてこんな何もない、光も差さない場所に留まる魂を無碍にしたくないから、燦は慰めの符術で弔うことにしたのだ。
 いつかその魂が再び命を得ることが出来るように願いを込めて。
「おいで、うふ」
 その傍らで狐裘・爛(榾火・f33271)は楽しそうに笑っていた。
「体も心も魂も。永遠に、輪廻しながら綺麗さを保てるように……」
 熱く爛れるように、内から凍りつくように。生きる者への妬みも魔女に対する怨みも、様々な怨嗟を吐き出す魂たちを鎮めようとしていた。それらを上手くあしらいながら、爛は凍った狐火を身に纏い優雅に振る舞い続けていた。
 だから。
「爛の魂……。なあ、爛。どこで氷の力を得たんだ?」
 燦は薄々気付きつつも、疑問を声にして問うたのだ。
 燦の知る『彼女』であれば炎を扱うはずだが、爛が今振るっているのは氷の力だ。そっと懐に隠したスノゥを封じた青い琥珀を撫でる。先の戦いでも垣間見た彼女の振る舞いは、どこかこの『友人』を思い出させるのだ。
「この口調に氷の姿?」
 狐火を纏った爛は、少し考えるそぶりを見せると楽しげな声を零した。
「ええ、あなたと交わり祈りに応えた結果、かしらね」
 爛は意味深に自身の唇を指差し、おまけに優雅に片目を瞑って見せる。
 永遠を願って交わした温もり。それはおそらく二人だけに通じる約束の証だ。
「……あの場の全員が交じりあったのか」
 それを理解して、燦は納得したように頷いたのだ。
 ああ、強い願いや想いの力は、定められた理すら超越できるのだと。
「なあ。爛は……っと、魂たちがお出迎えだね」
 続けようとした言葉を名残惜しく打ち切って、燦は四王稲荷符を手にする。
 二人の前に再び荒ぶる魂たちが迫っていたのだ。
「ええ、鎮魂を続けましょう」
 応えるように爛もまた笑って、その両手を伸ばして魂たちを冷たい褥に包んだ。
 魂たちは酷く弱り切っていた。ぼろぼろの魂も、錯乱した魂も、深い怨嗟に囚われている魂すら、爛は醜いなんて思いもしなかった。
「燻る榾火は不完全な転生体、本来なら姿を見せるのもご法度ですわ」
 むしろ、この魂たちをここまで追い込んだ元凶を思い、余計にカタキを取りたくなって、口づけを交わす。
「わたくしもこの魂たちと同じ狐裘羔袖。悪魔召喚士の召喚術に呼応し、溢れた魂の欠片を補う一柱、でしてよ」
 魂と命が結びついて生物が構築されるのであれば、溢れた魂がある者はどうなるのだろうか、と。
 それでもなお鎮まれぬ魂は、傍らで燦が複数の術式を応用し、怨嗟を符に集める。
「アタシが魔女に届けると約束する。だから、怨み晴らしてスカッと昇天しよーぜ」
 新しい旅路に向かうのに、怨みや悲しい思いを抱えたまま向かうのはふさわしくないと思ったのだ。そんな重い荷物は現世に置いて、身軽に旅立って欲しいのだと。
 かわりにその荷物は必ず魔女に届けると、燦は快活に笑うと彷徨える魂たちにそう約束したのだ。

 魂たちを鎮めてあたりが静寂を取り戻した後。
 爛と燦は二人並んで荒野を歩いていた。
 光の差さない世界で果てを目指し、いつか空へ至るであろう旅路はきっと長く険しい。その旅路と、魂が巡って再び生まれ落ちるのと、果たしてどちらが険しい道程なのだろうか。
「なあ、さっきは言い損ねたけど。爛は親友で妹分でそして狐裘・爛だよ。帰ったらアタシらを交えて生まれた爛としての半生を教えてよ」
 アタシらと強調して告げる燦は、懐に隠した二人にそっと触れる。燦が蒐集するモノは様々な美しさや輝きを持っている。懐の彼女たちもまた、それぞれが個を持っていた。
 同じでないからこそ良いこともあるのだと、燦は知っているのだ。
「うふ。冗談ですのよ。わたくしはあなたの友達で、家族のようなものですの」
 その言葉に、爛は笑って頷いたのだ。自分だって、同じ気持ちなのだから。
 不思議な縁だけれど、爛自身と青と赤の琥珀、そのどれもを尊重してくれる燦に巡り会えてよかったと、ころころと笑い声を上げたのだ。

 二人が残す足跡のそばに、また別の二つの足跡がそっと残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「ここに居ても、貴方は何者にもなれませんよ。ここを離れ、貴方らしい貴方になりなさい」

近寄って来た者達の話は一応耳を傾ける
傾聴して昇天できるならそのまま話を聞き、そうでない場合は破魔を乗せた属性攻撃で跡形もなく吹き飛ばす

「ここに居ても貴方の死は覆らない。貴方の望みは叶わず、苦しみだけがいや増すばかり。ここから離れ、次の生を目指しなさい。貴方が望むなら、いつかの生でそれは叶うことでしょう。世界はここだけではありませんから」
攻撃は狂気耐性や呪詛耐性で対応
物理的な攻撃は黄巾力士にオーラ防御で庇わせる

「世界は広く、ここにとどまり続けるのは無為な時間でしかありませんから。さすがに私も哀れに思うのですよ」



 星の光もない世界で、魂たちは彷徨っている。
 荒野を彷徨う彼らは弱々しくて、彼らが口々に囁くのは嘆きと怨嗟だった。あまりにも突然に終わりを迎えそれを受け入れられず、あるいは、終わりを与えた者を恨んで。
「ここに居ても、貴方は何者にもなれませんよ。ここを離れ、貴方らしい貴方になりなさい」
 彷徨う迷い子たちの声に耳を傾けながら、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)はそう口にした。
「ここに居ても貴方の死は覆らない。貴方の望みは叶わず、苦しみだけがいや増すばかり」
 話を聞いてくれると思ったのだろうか、近寄ってくる魂へ冬季はそう告げる。
 この場所には何も無かった。この先も命が芽吹くこともない大地がただただ広がり、そこに漂うものは嘆きと怨嗟の声を上げている。
 こんな場所に留まり続けるのはきっと良くないことがそれだけでわかる。
「ここから離れ、次の生を目指しなさい」
 冬季は魂のひとつを手招いて、そっとてのひらの上にのせる。
 魂に重さがある、というのはどの世界の逸話だったろうか。刺すような冷たさを感じながら諭すようにそう続けた。
 今この手に感じるものがその重さなのだろうか。
「貴方が望むなら、いつかの生でそれは叶うことでしょう。世界はここだけではありませんから」
 一年中美しい桜の花が舞う地を訪れたこともあれば、銀河や荒野、空の世界を駆けたこともある。
 存在は耳にしてもまだ訪れたことのない世界も、見つかっていない場所だってあるのだ。
 また新たな生を歩み始めれば、きっとどこかの世界でその魂が抱えた願いは叶うだろう。
 そうやって諭すように声をかけ続ければ、弱っていた魂がてのひらの上でふるりと動いた。
『魔女の炎に気をつけて』
 てのひらの中で、揺らめく魂はそれだけ告げる。
 冬季が口を開くより前に、ふっとてのひらから重さが消えた。
 刺すような痛みも失せて、空っぽになった手の上へ青い目が向けられた。
 おそらくは。次の世界へ向けて旅立ったのだろう、と。
「世界は広く、ここにとどまり続けるのは無為な時間でしかありませんから。さすがに私も哀れに思うのですよ」
 そう口にすると、冬季はまた歩み始める。
 荒野の果てで待ち受けるであろう『過去』へ向かって、その足跡は大地へ残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
魔女に対する恨み、今の現状を嘆く苦しみ…生きる者達を羨む気持ち…
辛い…よね

貴方達に害を成した存在は今から俺達が倒しに行く
それで貴方達の無念が全て晴れるわけじゃないだろうけれど…
貴方達という存在がここに居た事、俺は決して忘れないし
貴方達の想いを魔女にぶつけて来るつもりだ

だから…、もし、それを見守ってくれるというのなら、俺についてきて欲しい
俺の契約している疑似精霊の中には闇の属性を持っているものもいる
力を貸してくれる魂達には闇の疑似精霊の元、ついて来てもらおう
それを願わない楽になりたい、という魂には寄り添おう
光の疑似精霊の力で浄化し魂を癒してあげよう

貴方達に俺は危害を加えたりするつもりはないから



 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)が荒野に踏み入ってから、いくつもの声を耳にした。
『まだ死にたくなかったの』
 誰かがその死を嘆いて。
『もう怖いのは嫌だ』
 誰かが恐怖に震える。
 魔女への恨みを口にする者もいれば、ひりょに対して『どうしてあなたは生きているの』と直接羨望をぶつける者もいた。
「辛い……よね」
 心優しい聖者の青年ひりょはそう口にして、全ての声に耳を傾けていた。
 魔女に対する恨み。今の現状を嘆く苦しみ。生きる者たちを羨む気持ち。そのどれもが無視するにはあまりにも重く、荒野を彷徨い続けるのが悲しかったのだ。
「貴方たちに害を成した存在は、今から俺たちが倒しに行くよ。それで貴方たちの無念が全て晴れるわけじゃないだろうけれど……」
 ひりょが視線を向けた先、この荒野の果てには全ての元凶である『魔女』が待ち受けているという。
 少なくともそのオブリビオンを討てば、次に骸の海から滲みでるまでは犠牲になるものもいなくなるはずだった。
「貴方たちという存在がここに居た事、俺は決して忘れないし、貴方たちの想いを魔女にぶつけて来るつもりだ」
 猟兵とオブリビオンは相容れない関係であるけれど、何よりも無辜の命を奪ったことは許されることではない。
 この道程、耳にした言葉の数々をひりょはしっかりと記憶していた。場に合わせて再生する記録ではなく、その魂が抱える願いも思いも全てを抱える覚悟で。
「だから……、もし、それを見守ってくれるというのなら、俺についてきて欲しい」
 ひりょの契約している疑似精霊の中には、闇の属性を持っているものもいる。
 ユーベルコードで呼び出しその力を借りれば、共に魔女の元へ辿り着くことができるはずだった。
「もしももう楽になりたいというなら、その願いを叶えるよ」
 けれど、恐怖に震える声があったことも覚えている。
 この中には魔女と相対し終わりを迎えた者もいるだろう。再びその姿を目にし、過度の恐怖を抱く必要も無いはずだ。
 安らぎを求めるのであれば光の疑似精霊の力で浄化し魂を癒してあげようと考えたのだ。
 申し出に揺らぐ魂のうち幾人かは安寧を求め、ひりょは真摯にその願いを叶えた。
「貴方たちに俺は危害を加えたりするつもりはないから」
 共に行く覚悟を決めた魂たちを庇護しながら、言い聞かせるようにひりょはそう口にして歩み始めた。
 全ての元凶、魔女の元を目指して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
魂達の声に耳を傾ける
生者への恨み?
構わない
生きたいという願いを叶えてあげることはできないけど、聞くことがが彼らへの慰めになると信じている
魔女への怒りをぶつけてきてもいい
恨み事を言って僅かでも気持ちが晴れるならそうしてほしい

埒外の存在としての俺は魂を喰らわなければ生きられない魂喰い
だからかな、魂が持つ念がよくわかる
悲しいんだね、悔しいんだね、許せないんだね
共感して彼らの気持ちを少しでも晴らしたい

魔女を許せないのなら俺と一緒に来る?
俺はこれから魔女を骸の海に還しに行くんだ
魔女と戦うとき俺の身体の中に潜んでいればいい
そうすれば消える心配もないし共に魔女に引導を渡せるよ
(魂を宿すことに抵抗は無いです)



 目指す場所が常闇の燎原と呼ばれているからだろうか、前へ歩めば歩むほど闇が濃くなってゆく。
 終わりが見えはじめた荒野を歩きながら、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は静かに魂たちの声に耳を傾けていた。荒野をそろそろ抜けるからか、あるいは、満足し浄化され輪廻の輪へと戻ったのだろうか。次第に周囲の魂の数も減っていた。けれど未だ彼の周囲を彷徨う魂は口々にその思いを囁いているのだ。
 現状への嘆き。元凶への怨み。
 そして。
『羨ましい』
 僕はまだ生きていたかったのにと、その魂はサンディへ淀んだ感情をぶつけていた。
「……構わないよ。その生きたいという願いを、俺は叶えてあげることはできないけど」
 耳を傾け聞くことが、彼らへの慰めになるとサンディ信じていた。
 抱えた恨みを嘆きを羨望を吐き出して、彼らの気持ちが僅かでも晴れるならそうしてほしいとさえ考えていた。
『ただ僕たちはひっそりと暮らしていたかったのに』
 黙したまま歩む彼に付き従うようにしてその魂は思いを吐露していた。
 辺境の片隅でささやかな平穏を過ごしていた。例え常に脅威にさらされていても息を潜めるような生活が続いていたとしてもだ。
『魔女は突然あらわれて、僕たちを連れ去った』
 どこからかやって来た魔女は集落を襲った。ささやかな平穏は一瞬にして奪われ、彼らはその生を踏み躙られたのだ。
『許せない』
 魂だけの存在となってなお鮮烈な怒りをあらわにする魂をサンディはよく理解できた。埒外の存在としての彼は、魂を喰らわなければ生きられない魂喰いだ。
 だから、彼には魂が持つ念がよくわかるのだ。
「悲しいんだね、悔しいんだね、許せないんだね」
 突然の終わりを迎え、命すら踏み躙られて、あの魔女を許せないのだと語る言葉に共感して、彼の気持ちを少しでも晴らしたいと願ったのだ。
「魔女を許せないのなら俺と一緒に来る? 俺はこれから魔女を骸の海に還しに行くんだ」
 伸ばした指の先が示すのは荒野の果てだった。
 闇がより色濃くなり、その中でより一層強大な力を感じるその場所を。
「あの向こうに魔女がいる。魔女と戦うときは俺の身体の中に潜んでいればいい」
 そうすれば魂は消える心配もないはずだ。
 サンディの提案に、逡巡するように魂が揺らめいた。怒りを怨みを吐き出して、少し自我を取り戻したのかもしれない。
『いいの?』
 戸惑う問いかけに、構わないと頷いた。
 サンディの体へ魂が入り込む瞬間冷気が身を貫いたけれど、彼は痛みごと、その魂を自らの内へと受け入れたのだ。
 これで共に魔女に引導を渡せる。
 魂ひとつ分重くなった体を確認して、サンディは荒野を抜け常闇の燎原へと踏み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『星屑の魔女』スターライト』

POW   :    【指定技能:盾受け・武器受け】プチダストトレイル
【指定技能を使用しなければ防御不可の、星屑】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    【指定技能:野生の勘・第六感】スターシュート
レベル×5本の【指定技能を使用しなければ回避不可能の、星】属性の【小さな彗星】を放つ。
WIZ   :    【指定技能:全力魔法・限界突破】夜空を纏う
【指定技能を使用しない敵からの攻撃の】【ダメージを激減させる効果を持つ、星屑の】【衣を纏う。また、星屑の衣の魔力強化能力】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●そして荒野の果てへ辿り着く
 猟兵たちは誰も歩みを止めなかった。
 彷徨う魂たちへ祈りを捧げ、魂を慰め、怨嗟を祓った。
 真摯にその声へ耳を傾けその願いを引き受け、あるいはその魂を共に連れて。
 その道中を共にする魂が、魔女について語った。

『黒い炎に気をつけて』
 曰く。
 魔女は黒い炎を纏っているのだという。
 彼女の攻撃はあらゆる防護――防具も服も肉体すらも蝕み、引き換えに魔女の傷を癒してしまう。
『だから、あの攻撃を受けないで』
 果敢にも魔女に立ち向かった魂は、彼女が特殊な攻撃をしてくるのだと教えた。
 特定の動作でしか回避できない技を使うのだと。
 けれど、魂は告げた。
 強烈な記憶を刻まれた魂はその瞬間のことをありありと思い出せるのだ。
『その動作と似たような状況を作れば回避できそうだ』と。
 例えば――十数秒先の未来を知ることができるのならば、小さな彗星の軌道を予測し避けることができるかもしれない。
『あなたたちならできると信じている』
 幾多の戦場をくぐり抜けた猟兵ならばきっと大丈夫だと魂は言った。

 そうして猟兵たちは彼女の元へ辿り着くだろう。
 常闇の中佇む、魔女の元へ。


●『星屑の魔女』スターライト
 周囲は濃い闇に包まれている。
 けれど、あなたは長く荒野を歩いていた。
 だから視界は闇にすっかりなれていて、きっと行動に支障はない。

 空を流れる星からあなたへ視線を向けて魔女は笑った。
「あらあら! いらっしゃい猟兵さんたち」
 驚いたわと、どこか浮かれた様子で魔女はあなたを見ていた。
「わたくしあまりにも退屈で退屈で……どなたかが遊んでくださるのを待っていたの」
 好奇心に満ち無邪気にはしゃぐ魔女の姿に反して、あなたの猟兵としての経験が警鐘を鳴らすだろう。
 魔女の足下には彷徨う魂が語った黒い炎があった。
 その炎は異様な光を放って常闇の地を照らしている。
 あなたがもし、同族殺しや紋章の話を耳にしたことがあるならば、彼女がそれに匹敵する力を持つオブリビオンだと、即ち強敵だと理解するだろう。

 猟兵たちと共に来た魂が囁いた。
『あなたが望むなら』
 魂たちは、力を貸してくれるという。
 自分たちは新たな旅路へ向かう。その時間が少しばかり早くなるだけだ。いずれ遅かれこの世を去る運命なのだから。ここまで連れて来てもらえて、自分たちの思いを、願いを引き受けてくれて嬉しかったから。
 だから。
『あなたの盾となってもいい』
 彼らの多くは、魔女の攻撃を見たことがある。
 弱った魂ひとつではたった一度限りしか防ぐことは出来ないけれど、その一度の機会さえあれば猟兵が道を切り開くことができると彼らは信じている。
 魂たちは強大な敵へ立ち向かうあなたの身を案じているのだ。
 そして、猟兵へ、あなたへ希望を託している。
 あなたが望むなら、彼らの力を借りることが出来る。
 断ったとしても、決して悪い方向へ向かうことはないだろう。

 このオブリビオンを退けなければ、猟兵たちは『第3層』を目指すことは出来ない。彼女を退けることこそが、空へ至る物語の一歩となるだろう。
「わたくしは、星屑を支配する魔女。ねえ、猟兵さん。わたくしと、スターライトと遊んでくださるかしら?」
 魔女は笑ってその手を振り上げた。
ロニーニャ・メテオライト
☆改変・アドリブ大丈夫です!

「こんばんは、星屑の魔女さん。」

ロニーニャは魔女へと言葉を投げかける。
その焦げ茶の瞳には明らかな怒りの色が浮かんでいた。

「貴方が生むその偽物を消し去って、この世界に本物の星空を取り戻すために戦うわ。」

__星は何かに支配されたりしない、自由で気高い存在。ロニーニャはそれを知っている。だからこそ星のカケラで命を奪うなんて許せなかった。

黒い炎には「物見の星座盤」 で対処。第六感は無いけれど、きっと攻撃の当たらない安全な場所を教えてくれるはず。

そしてUC【シンギング・オーロラ】発動。

「オーロラは宙の裾野、七色に光るカーテン。少しでもこの暗い場所を照らして!」

「オーロラの歌声」で周りの猟兵や小さな魂たちを癒しながら、魔女に「高電磁波」で攻撃。



 あたりは濃い闇に包まれていた。
 けれど不気味な炎がちろちろと大地を舐めている。
「こんばんは、星屑の魔女さん」
 寂しい光景を目にしながら、ロニーニャ・メテオライト(不老不死の星の子ども・f35195)は魔女『スターライト』へと言葉を投げかけた。
 これまでずっと祈りを口にして、優しさを宿していた彼女の瞳には明らかな怒りの色が浮かんでいた。
「ええ、こんばんは猟兵さん」
 その焦げ茶の双眸に見つめられて、魔女はからからと笑い声を上げた。
 魔女にとって怒りを抱いた生き物は格好のおもちゃに過ぎないのだから。
 適度に憎悪を煽れば、ひとは勝手に魔女の元へやってくる。そうすれば退屈から逃れられるのだと、スターライトは知っているのだ。
「とても素敵な良い夜ね! ……と言いたいところだけど、もう空には星屑しかないわ」
 新しく作らなくてはと微笑んで呟く魔女に、
「いいえ」
 とロニーニャは力強く否定した。
 いいえ、その必要はない。
 ――星は何かに支配されたりしない。自由で気高い存在なのだ。
 手の届かないほど空高く、夜空に煌めく星々の美しさをずっと見ていたから、ロニーニャはそのことを知っている。
「貴方が生むその偽物を消し去って、この世界に本物の星空を取り戻すために戦うわ」
 だからこそ、その気高い星のカケラで命を奪うなんて許せなかった。
 これ以上偽物の星が生み出され、誰かを傷つけることが許せなかったのだ。

 黒い炎を纏った彗星を、ロニーニャは的確に回避しながら戦場を駆け回った。
 第六感なんて便利なものはなかったけれど、手にした物見の星座盤は的確に彼女が必要とする場所を指し示す。そちらは危ない。ここならば大丈夫だと、彼女が好きな星たちが教えてくれる。
 常闇のこの地では彼女が知る本物の星こそ見えない、だけど、星たちはロニーニャへ味方しているのだ。
 冷たくてただ傷つけ命を奪うためだけに降る星なんて知らなかった。
 気高い星たちはどれほど冷たく見えても、夜空を流れるその瞬間人々の願いを叶えるくらい慈愛に満ちた存在なのだから。
 だから。
「――オーロラは宙の裾野」
 決意をもって彼女は口を開いた。
 美しい歌声が力ある言葉を紡いでいく。
「七色に光るカーテン。共に歌いましょう、少しでもこの暗い場所を照らして!」
 偽りの夜空を、七色のオーロラが優しく彩る。
 願いを込めたシンフォニアの歌声に共鳴して、揺らめくオーロラがこの地を包み込んでいた。
「わたくしの空に何を……!」
 魔女が怒りの声を上げて腕を振り上げる。無数の星屑が宙へ浮いてロニーニャを射抜かんばかりに狙いを定めていた。
 だけど。
 いつだって、気高く優しい星たちはロニーニャの味方なのだ。
 星に憧れを抱いて、祈りを捧げて、あの星々のようになりたいと願ってずっと空を見上げていたから。
「空は、星は貴方のものじゃないわ」
 あの星が誰かに支配される未来を否定した。
 彼女が必要とする瞬間を、自由な星々が星座盤を通じて教えてくれる。
 魔女が腕を振り下ろすよりも速く、ロニーニャの高電磁波が命中する。

 物見の星座盤はいつだって、彼女が欲しいものを指し示してくれる。
 常闇に包まれたこの辺境の地でだって、迷うことなく行く先を導いてくれる。今までもこれからだってそうなのだ。
 星座盤はまた囁いた。悲鳴を上げる魔女の隙を教えてくれるのだ。
 ロニーニャは大きく息を吸い込むと、再び口を開いたのだ。
 辺境の大地に、歌声を響かせるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
(魂に)ありがとう
その気持ちはありがたく受け取る、申し出を受けさせてもらうよ
作戦はこう
俺はしばらく防戦する
でもいつか死角を取られるはず
その時まで君は俺の中に潜んでいて、このタイミングで飛び出し俺を庇ってくれないかな
敵は俺を仕留めたと油断する
その攻撃を君が止めて、敵が状況を理解できぬ間に奴の懐に飛び込んで勝負を決める

攻撃回数を重視した解放・宵により、敵の攻撃に反応できる速度を確保して攻撃を全て黒剣で受け止める
後は魂に話した作戦通り
攻撃が止め切れず、敵が俺を仕留めたと慢心する一瞬でUCを攻撃力重視に切り替えて懐に飛び込み、急所と思われる胸を一突きにする

一緒に来てくれてありがとうと魂との別れは惜しむ



 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)の視線の先では魔女が笑っていた。
 ――退屈で退屈で仕方がないところに、新しいおもちゃがやってきたのだから。たくさん遊んで、その後は彼女の崇高な目的のために活用してやろうとでも考えているのだろう。
 振り上げられた腕が黒炎を纏っている。

『あなたの盾になってもいい』
 魔女を目にしたとき、サンディの体の内に宿る魂がそう申し出た。
 うちから響く声には、魔女への怒り、そして恐怖がありありと滲んでいた。サンディにはその魂が抱く感情を痛いほど理解できる。自らの体内へ招き入れたからだろうか、あの荒野で言葉を交わした時以上に。
「ありがとう」
 猟兵として立ち向かおうとするサンディへの気遣いであることもわかっていた。
 だから。
「その気持ちはありがたく受け取る、申し出を受けさせてもらうよ。一緒に、魔女に引導を渡そう」
 手にした黒剣を構えて、サンディは大地を蹴った。

 魔女が放つのは小さな流星群だった。
 幾多の星屑で構成されたそれは、魂たちが触れてはいけないと警告する炎を纏っている。少し先の未来を見て、あるいは軌道を予測し回避し続けるがサンディは防戦を強いられていた。
(――作戦はこう)
 すぐ横を掠める星屑をかわして戦場を駆け抜ける。魂ひとつ分の重みを感じながら、必ずこの剣を魔女に届けるために。触れれば蝕むという星をすり抜けて前へ進むが、それでもいつかは限界が来るのだ。
「……っ!」
 立て続けに降る星をステップを踏んで避けたが、視界の隅から降り注ぐその星までは間に合わない。
「もう終わりかしら?」
 魔女は勝利を確信していた――放った流星の一部は確実にサンディを貫くだろう。
 魔女の放つ黒い炎はあらゆるものを蝕んで、彼女の力となるのだ。例えサンディが魔力を編んでも、武器で受けようともそれすらを貫く。そう彼女は確信している。
 星が、大地へ向かって落ちた。

(でもいつか死角を取られるはず)

 ずっと共にあった冷たさが消えてしまった。
 一緒に来てくれてありがとうと、小さな声で口にしてサンディは飛び出した。
 ほんのわずか、魂ひとつ分だけ体が軽くなる。わずかな時間と言えど体を共有していたのだ。その別れは名残惜しかったけれど、恐怖に負けずに作り出された、たった一度だけの機会を逃すわけにはいかないから。
 巻き上がる土煙を越えてきた猟兵に、魔女は目を見開いていた。
(――その時まで君は俺の中に潜んでいて、このタイミングで飛び出し俺を庇ってくれないかな)
 あの魂は約束を果たしたのだ。サンディの刃が魔女へ届くための時間を生み出す。
 ユーベルコードを発動して、その隙を突くように攻撃を重ねる。
 一気に距離を詰められて慌てる魔女に反撃の隙を与えぬようにたたみ掛けて肉薄する。
 引導を渡すと約束したのだ。
 狙うのは胸。人体の急所と思われる場所めがけてサンディは渾身の力で剣を突き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​



 星屑の支配者を僭称するオブリビオンは、遭遇したことのない事態に心から喜んでいた。
 何故なら『今回』の自分に刃向かった者は誰も彼女に勝てなかったからだ。この退屈で退屈で仕方のない辺境にいるのは、話の通じぬ神々か、神々の領域を侵す吸血鬼ども。それから両者に支配されるか弱いヒトしかいなかったから。
 身を焦がす電磁波に歓喜の悲鳴を上げて、胸から滴る熱にすら笑みを浮かべた。
「嗚呼、楽しい」
 あんなにもか弱いヒトが星屑にはなったのだ。
 世界から選ばれた猟兵ならば、オブリビオンの敵である猟兵ならば。
 どれほど美しい星になるだろうか。
「ああ、楽しいわ。わたくしとても退屈していたから……猟兵さんたちと遊べて嬉しいわ」
 空へ向かって、魔女は楽しそうな笑い声をあげていた。
 ここにいる全員を使って星にするのだと。
 今度こそ本当に星屑の支配者になるのだと。
 夢に浮かされた口調で魔女は語るのだった。
鳳凰院・ひりょ
ここで、終わらせよう

ついて来てくれた魂達の為にも、魔女をここで!

くっ、相手の攻撃は一撃たりとも受けるわけにはいかなさそうだ…
っ!?俺の盾となってくれるというの?

そこまでの覚悟をしてくれているのなら、俺もその想いに応えたい
わかったよ、皆、力を貸してくれ!
俺も出来る全力を出す!オーバーロード!

敵の攻撃を魂達の助けも借りつつ喰らわないように回避し
その間に詠唱を続ける
俺の全力魔法力を込めて…いや、限界突破した最大の一撃を食らわせてやる!

見ていてくれ、皆
行くぞ、疑似精霊達、俺と力を合わせて…奴を打倒す!
精霊光照射!超最大火力だぁぁっ!
まだだ、まだ…、俺の全部を出し切り、限界を超えて…

魂達が作ってくれたこの好機、絶対に無駄にしない
皆の想いに自分の全てを賭けて魔女へとぶつける!



「ここで、終わらせよう」
 だから、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)はそう決意した。
 オブリビオンは倒さなくてはいけない存在だ。放っておけばその本能に従って『過去』で世界が埋め尽くされてしまう……それは『世界の終わり』を意味するのだ。
 けれどそれ以上に、あの魔女の思考が許せなかった。
「ついて来てくれた魂たちのためにも、魔女をここで倒そう!」
 ぎゅっと拳を握りしめて、ひりょは自身と周囲の魂たちを奮い立たせるように思いを言葉にした。傍らで怯えていた魂が落ち着きを取り戻す気配を感じる。
 魔女をここで倒さなければ、きっとこの魂たちのように新たな犠牲者を生み出すだろう。倫理観も罪悪感も、彼女は何も抱かない。自身の崇高なる目的とやらのためならば、村のひとつやふたつ犠牲にすることになんの躊躇いもないだろうから。

 夜空を纏った魔女の攻撃は執拗だった。
 星屑の力で自身を強化し、そして例の黒い炎と共に攻撃が繰り出される。放たれた小さな彗星を咄嗟に作り上げた岩の壁で防ぐが、その壁を黒い炎が蝕む。その様に息をのんだ。
(くっ、相手の攻撃は一撃たりとも受けるわけにはいかなさそうだ)
 あの炎はきっとひりょの身を焦がすだろう。けれど今歩みを止めるわけにはいかないのだ。ここまで繋いできた願いや想いを無駄にしたくない。その一心で矢継ぎ早に疑似精霊を召喚し、火球をあるいは風の刃を向ける。けれどそれは魔女の纏う『夜』――星屑の衣がその威力を大きく減衰させてしまう。
 ほとんど無効化された攻撃にひりょが見せた一瞬の動揺を魔女は見逃さない。
 振り上げられた腕。放たれる黒い炎を纏った攻撃。
『あなたの盾になるよ』
「っ!?」
 避けられないはずのそれを受け止めたのは、共に来た魂のひとつだった。
 あとはあなたへ託すよと、あなたなら未来を切り開いてくれると信じているよと、そう願って。
「俺の盾となってくれるというの?」
 今にも消えそうなほど弱り切っていたのに。あれほど怯えていたというのに。
 そこまでの覚悟に、ひりょは刀を握る手に力を込めた。
 その想いに、応えたい。
 ただその心からの想いが願いが、ひりょの限界を超えさせるのだ。
「わかったよ……皆、力を貸してくれ!」
 わきあがるそれはすべてを超克するための力。立ちはだかる困難を乗り越え、明日へ向かうための一歩を踏み出すための<オーバーロード>だ。
「俺も出来る全力を出す!」
 真の姿を解き放ち白と黒、一対の翼を背に、彼は駆け出す。
 攻撃を避け、魂たちの助けを借りながら詠唱を続ける。
 それはひりょの奥の手とも言えるユーベルコードだった。
 疑似精霊の力を束ねて放つそれはあまりにも強大で、生身の体では耐えられない。
(見ていてくれ、皆)
 けれど今ならば耐えられるはずだ。ひりょの持つ力を、魂たちの想いを込めて詠唱を完成させる。
「行くぞ、疑似精霊たち、俺と力を合わせて……奴を打倒す!」
 ひりょが持てうる全ての力を込めて放たれる精霊光照射は、七色の光を纏って一直線に魔女へ向かう。
 咄嗟に魔女は黒い炎で障壁を作り上げようとする、が。
「まだだ、まだ……、俺の全部を出し切り、限界を超えて……!」
 魂たちが作ってくれた好機がこの一撃を放つに至ったのだ。
 絶対に無駄にしない。その強い想いにひりょの全てを賭けて魔女へとぶつける。

 炎が光を蝕むよりも速く、光が魔女を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

狐裘・爛
《燦々爛々》
私は消えない。この魂たちも、そう
改めて決心しますわ
内助しましょう。この苦境を切り抜けなければ

扇で口を隠しつつ、煌びやかな光景を前にして努めて冷静に燦へ語りかけます
臆せず進みなさい。ただし見入るのはわたくしだけにしなさいな
……視覚に頼るな、ということですのよ。嫉妬を煽るなんて、淑女の振る舞いではありませんわ
氷よ。冷たき褥となりて、わたくしの御友を守ってくださいまし

己の体温と引き換えに野生の勘と第六感を働かせ、後方からの回避指示に集中しますわ
体温の代償? お生憎様
見ての通り氷の肉体、何より温めてくださる方がわたくしにはいますのよ、おわかり?

ステキなダンスのお誘いね、喜んで
この真の姿の、氷の掌、握り返してくださる?
燦の名前を呼んで手を握り、その温もりで葬送します
この一撃は魂たちの手向、綺麗な友情の結晶でしてよ

今宵、「特別」になれたのですもの。先ほどの無理無茶は大目に見ますわ
えへ、たまには情熱的なのも悪くありませんわね♪


四王天・燦
《燦々爛々》

魂で彩ったのかな
綺麗だが寒々しいステラリウムだね
命を弄びやがって…誰も消えたくなんてねーっての
転生前の爛の言葉が蘇る

爛、実はな―魔女さんの顔にも見入っちゃった、てへぺろ☆
お前さんこそ無茶するなよ

目を閉じる
視覚は第六感への不純物だ
条件反射ではなく、必要なのは直感と爛の言葉に身を託す覚悟だ
行くぜ!

アークウィンドと怨嗟の籠った稲荷符を手にいざ突撃
来ると思った場所に風属性攻撃の衝撃波を当てて彗星雨を撃墜するぜ
けしてヤマ勘ではなく対術士の戦闘経験に基づく予感さ
って数が多いから爛も手伝ってー!

目を閉じても爛が敵の場所を教えてくれる
黒炎を斬り肉薄すりゃあ呪詛の稲荷符を貼り付けてやらあ
怨嗟で蝕みその場に縫い付けりゃ仕上げに爛と手を繋ぎ、全霊込めた封印儀式で永久氷壁を召喚してスターライトを閉じ込めるぜ
いつか赦され輪廻に逝ける日まで退屈に縛られな

この一戦も戦闘経験にするよ
なんて甘いこと言っちゃうけどね

魂たちの怨みは晴れたかな?
彼らが空に還るよう祈る

爛を背中から抱いて暖めましょ、今日は特別だぞい?



「これは魂で彩ったのかな」
 懐のふたつの琥珀に触れながら見上げるのは、綺麗だけれど寒々しいステラリウムだった。
 別の世界で見る景色は美しいのに、この場所のそれはあまりにも寒々しい。
「命を弄びやがって……誰も消えたくなんてねーっての」
『私は消えない』
 ふっとあの時の言葉が蘇る。
 今でも四王天・燦(月夜の翼・f04448)が忘れられない過去の出来事のひとつだ。
 魔女スターライトが奪った命は、誰も望んでそうなったわけではないはずだから。荒野で彷徨う魂たちは、誰もがまだ生きていたかったと訴えていたのだ。だからどうしたって、燦は転生前の彼女の嗚咽混じりの言葉を、姿を思い出してしまうのだ。
 消えてやるもんかと泣いていた彼女の姿を。
「燦」
 狐裘・爛(榾火・f33271)はそっと燦の名を呼んだ。
 きっとあの時を思い出しているのだろ彼女を気遣って爛はオブリビオンを見据えていた。
「私は消えない。この魂たちも、そう」
 そう、あの時のようにもう自分は不安定な存在ではないのだ。
 だってもう自分は狐裘・爛として生を得て、約束を果たし彼女の隣に存在しているのだから。
「内助しましょう。この苦境を切り抜けなければ、臆せず進みなさい」
 扇で口を隠しつつ、星降る煌びやかな光景を前に努めて冷静に燦へ語りかける。
「ただし見入るのはわたくしだけにしなさいな」
 もちろん釘を刺すことは忘れない。だって。
「爛、実はな――魔女さんの顔にも見入っちゃった、てへぺろ☆」
 そういう返答が来ることが予想できたので。
 燦はそれに笑いかけて、お前さんこそ無茶するなよと返す。
「……視覚に頼るな、ということですのよ。嫉妬を煽るなんて、淑女の振る舞いではありませんわ」
 その応えに笑いながら燦はその両眼を閉じる。
 視覚は第六感への不純物だから。今この場に必要なのは条件反射ではなく、自身の直感と爛の言葉に身を託す覚悟だということを、燦は知っている。
「行くぜ!」
 アークウィンドとそして届けると約束した四王稲荷符を手に駆け出す足取りに迷いはなかった。
 魔女の攻撃が来ると思った場所にはアークウィンドに宿る風属性攻撃の衝撃波を当て彗星雨を次々と撃墜する。それは決してヤマ勘ではなく、燦の幾多の世界を渡り歩いた猟兵としての、そして対術士の戦闘経験に基づく予感だった。
「って数が多いから爛も手伝ってー!」
「仕方がないですわね。さあ、氷よ。冷たき褥となりて、わたくしの御友を守ってくださいまし」
 助けを求める声に笑って己の体温を代償に、爛は自身の感覚を研ぎ澄ませて行く。
 燦は自分を信じて、その命を預けてくれたのだ。だからほら。
「次は右ですわ」
 彗星の落ちる位置を教えれば、彼女は躊躇なくそれに従って戦場を軽々と踊るように駆け抜けていく。
 爛の力は使えば使うほど冷たく燃えるけれど。
「お生憎様」
 呟く爛は自身の手に視線を落とす。氷の肉体であるし、そして何よりも、失った以上にその温もりを分け与えてくれる人がいるのだ。彼女のためならばこの程度なんてことはない、何も恐れることはなかった。
 燦もまた、爛を信じていた。彼女ならばきっと自分を目的の場所へ導いてくれるのだと半ば確信めいていたから声に従ったし、事実そうなったのだ。
 襲い来る黒炎を斬り捨て魔女へ肉薄し、一瞬の隙をついて四王稲荷符を貼り付けてやる。途端、たくさんの怨嗟を封じた稲荷符からあふれた怨嗟が魔女を蝕む。
「わたくしを離しなさい!」
 不利を悟って逃走を目論む魔女は、けれど魂の怨嗟たちがその身を縫い付け逃がさない。
 そこに二人がわざとゆったりとした足取りで距離を詰めていく。
「さあ仕上げと行こうじゃないか」
 目配せに、爛はくすりと笑った。
「ステキなダンスのお誘いね、喜んで。この真の姿の、氷の掌、握り返してくださる? 燦」
「もちろんさ、爛」
 二人は名前を呼び合って、差し出されたその手をしっかりと繋いだ。
 独りでは立ち向かえなくても、二人、いや『彼女たち』ならばどんな困難だって越えられるのだから。
「この一撃は魂たちの手向け、綺麗な友情の結晶でしてよ」
「御狐・燦の霊力をもって彼の者を封じよ!」
 繋いだ手は互いの体温を分け合っていく。温度差もやがては溶け合って境界線も曖昧になるだろう。
 燦の全霊込めた封印儀式で永久氷壁を召喚する。その様に、魔女は怯えた様子で助けを乞おうと手を伸ばす。
 けれど、おかした罪は償われるべきなのだ。
「いつか、赦され輪廻に逝ける日まで退屈に縛られな」
 それがせめてもの贖罪だと言わんばかりに、儀式が先に完成した。

「この一戦も戦闘経験にするよ……魂たちの怨みは晴れたかな?」
 彼らが空に還るよう祈りを捧げると、傍ら立つ爛を背中から抱きしめた。
 伝わる体温は冷たいけれど、自分の体温を分け与えればいのだ。
「今日は特別だぞい?」
「ええ。今宵、「特別」になれたのですもの。先ほどの無理無茶は大目に見ますわえへ、たまには情熱的なのも悪くありませんわね♪」
 目線を合わせると二人はくすくすと笑い合ったのだ。

 それは魔女の夢があっけなく潰えた瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●それはやがて空へ至る
 祈りは常闇の大地を優しい七色の光で照らしていた。
 魂の願いを乗せた一太刀は魔女を貫き、想いを込めた一撃は確実に魔女を追いやった。信頼は困難をはね除ける力となって魔女を無力化する。

 あなたの攻撃を最期に、魔女は悲鳴を上げた。
「そんな、わたくしが、わたくしが負けるなんて……!」
 今回の『スターライト』は誰にも負けなかったのに。
 その現実を魔女は認められなかったのだ。
 けれど、彼女はあなたたちの前に敗北することになった。
 命を軽視して驕ったが故に、命を大切にしたあなたたちに叶わなかった。


 あなたの活躍により、探索を妨害するこの地のオブリビオンは排除された。
 けれどこの『ダークセイヴァー』と呼ばれる世界は、多くの謎に包まれている。
 あなたが辿り着いたのは『常闇の燎原』もそのひとつだし、常闇の世界を照らす『月』の謎もまた同じく。
 今回の依頼では『常闇の燎原』へ辿り着くことが目的だったけれど、あなたの前には未だ未踏の大地が広がっている。この先の探索はまた別の予知を待つ必要があるだろう。
 これは、やがて空へ至る物語のはじまりに過ぎない。
 けれど確かな第一歩のはじまりの物語なのだから。

最終結果:成功

完成日:2021年12月08日


挿絵イラスト