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悪しき血は深みに嵌りて

#ダークセイヴァー #第五の貴族

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#第五の貴族


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●溺れるものは何やらに嵌る
「一度何かに嵌ってしまえば、抜け出すことは容易じゃあない」
 グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは腕を後ろに回し、何処か遠くを見るような眼差しで語り出した。
「嵌っているとそもそも自覚しなければ永遠に囚われたままだ。尤も、藻掻いても抜け出せるかどうかまで、中々気付けないものだが、ね……さて」
 そもそも藻掻いたとしても無駄な時はどうするか――考えを委ねたままに、彼女のグリモアが放つ淡い金色が世界の色を変えていく。

「さぁ語ろうか。舞台は深き夜と絶望の世界、ダークセイヴァー。君達には悪しき紋章の生産を止めに行って貰いたい」

 紋章――ダークセイヴァーのオブリビオンを強化する、寄生型オブリビオン。
 それを産み出す祭壇が存在し、その為に多くの無辜の民を犠牲にしていることは判明しており、今回もまたそれを潰す依頼だ。
「まずは祭壇までこの谷を降っていって貰う」
 紋章の祭壇まで続く道として示された谷はとても深く、文字通りに底知れぬ闇が広がっていた。
 当然、唯の谷ではないだろうという質問にスフィーエは頷き。
「……その通りだ。深さ、険しさも相当だが、犠牲者の怨嗟が渦巻いている。いや、正確に言えばそれを触媒にした呪法だがね」
 紋章を作るにあたり、犠牲となった民の恨み辛みを抜き出し、祭壇に続く谷を守る結界としているようだ。反吐を何度出しても足りない所業に分かり易く怒りを示しつつ、スフィーエはその怨嗟を語る。
 其処に足を踏み入れれば、渦巻く怨嗟がその者の絶望――過去のトラウマなり、今決して起こって欲しくない事態などを鮮明に見せつけたり、犠牲となった民の恨みと憎しみの声を聞かせ続けるのだという。
「容赦なく絶望と狂気に引きずり込んでくる。向き合って凌ぐなり、平穏を保ち続けるなり……無策で行けば精神が壊れてしまう」
 勿論、険しい谷を降っていくのも注意が必要だがねと釘を刺して。

「然る後、祭壇を潰して欲しい。だが囚われた民もいるので、彼等の安全にも気を払っていて貰いたい」
 そう言うと嫌気の差すほどに紅薔薇が敷き詰められた祭壇と、その周囲で怯えて縮こまる数多の力無き民の数々を映し出す。
 そして紋章になりかけたオブリビオン――犬のような姿をし、背中に無数の触手を生やした存在を映し出す。
 大した力はないが、民の方を優先して狙ってくるので、彼等を保護しながら戦わなければならないと語る。

「その後は第五の貴族を叩き潰して欲しい。番犬の紋章を装備している」
 番犬の紋章を装備したオブリビオンは地下都市を守る門番として記憶に新しく、かの同族殺しですら一撃で屠る力を有している。
 当然、その第五の貴族もそれに恥じぬ力を持っており、倒すには紋章を狙って攻撃しなければならないのだが――。
「場所はすまないが、予知できなかったので現地で探って欲しい」
 ちなみに猟兵達の方を優先して襲ってくるので、民については物陰に隠しておけばほぼ心配いらないであろうということを補足し。

「……一つ一つ、確実に。近づいてきてはいるんだ」
 一通りを語り終え、スフィーエは大きく息を吐き出しながら、ぽつりぽつりと語りを再開し始めた。
 それから少々の時間を置くと、気を取り直すように柏手を一つ打ち。
「今、一度力を貸してくれ。では……準備が出来たら声を掛けてくれたまえ」
 ちなみに保護した民については、人類砦の方で受け入れ先が決まっているので大丈夫だとも最後に付け加え。
 グリモアの輝きは悪しき怨念の渦巻く道を静かに開いていくのであった。


裏山薬草
 どうも、裏山薬草です。
 考えれば考えるほど深みに嵌って、逃げられなくなってしまうこと、ありませんか?
 そういう時は酒でも飲んで何も考えずに寝てしまうのが良い……と宇宙海賊さんも言っていました。未成年の人は駄目ですよ。

 さて今回はダークセイヴァーで、紋章を産みだす祭壇を潰しに行って貰います。

●第一章『冒険』
 深い谷を下りながら祭壇まで向かいます。
 犠牲者の怨念が渦巻いており、皆様の恐怖や狂気を容赦なく誘ってきますので、降る方法の他にそれらを耐える工夫があるとボーナスになります。

●第二章『集団戦』
 紋章になりかけのオブリビオン達の戦いになります。
 背中から触手を大量に生やしていますが、戦闘力は大したことはありません。
 ですが生贄にされかけている一般人がいるので、彼等を守りながら戦うプレイングはボーナスになります。

●第三章『ボス戦』
 番犬の紋章を装備したボスとの戦いになります。
 紋章以外の場所は攻撃の通りが悪いので、紋章を狙うとボーナスになります。
 場所については断章から推察してください。

 プレイングの受付状況に関しては、タグにてお知らせします。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
 裏山薬草でした。
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第1章 冒険 『暗く、深い谷の底へ。』

POW   :    頼れるのはこの身一つ、ひたすら降りる。

SPD   :    深淵を恐れるな、空に身を任せ飛び降りる。

WIZ   :    時間はまだある、休憩でもしながら降りる。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

春乃・結希
嵌まる…私が嵌まってるのはwith
抜け出したいなんて思わない
私が海に還るまで、ずっとこのままでいい。このままがいい。
そうやないと、私は私でいられないから

withを胸に抱き締め、谷を下る
恨み、憎しみ…嫌という程伝わってくる…
でも、大丈夫、絶対大丈夫。って、口に出して何度も暗示をかけて
こうして貴方に触れている限り、私の心は貴方が守ってくれる【勇気】

それに私には、いちばん嫌いなものを拒絶する力がある
UC発動
自身の周囲を焔で覆い、伝わる想いを遮断する
うん、もう何も聞こえない。谷にお散歩に来たのと変わらないね

私の大好きな、この世界の希望になるはずだったヒト達
こんな事に利用した事、後悔させてあげます



●君と手を繋いで
 縋るように抱きしめたそれは硬く、どれほどに強く強く抱き締めたとしても、その強さは揺るぐことなく抱き締める者に安心を与えるようだった。
 文字通りに底知れぬ渓谷を降るのに、頼れる物は己の身一つ。そして常に共にあることを名に関した漆黒の大剣。
 嵌っているものはそれ。決して抜けだしたいとは思わないし思えない。
 そこから抜ける時が来るのならば、それは自分がいつしか過去と成り果て海と還るその時のみ。
 ――そうやないと、私は私でいられないから。
 大剣を抱き締め、深き谷を降る春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は、谷間の深き闇と渦巻く怨嗟の響きをそうして抑え込んでいた。
「大丈夫、貴方がいるから」
 腹の底から冷えてしまいそうな、全ての命を憎み呪う声も、大剣を抱き締めて心を砕かれぬように耐える。
 底知れぬ闇と冷たく突き刺すような怨嗟の声を、大剣の冷たい金属の質感は温めてはくれない。だが激しく込められた力にも揺るがないそれは、支柱として結希の心を支えていた。
「大丈夫、絶対大丈夫……」
 されども怨嗟の声は容赦なく結希の心を蝕む。
 ――何故にもっと早く来てくれなかったのかと。お前もこのまま犠牲となってしまえばいいと。
 それが真に犠牲となった者達の声か否かは兎も角として、襲い来る呪詛と絶望の圧迫感は彼女の心を削り――響き続けるそれに耐えかねたか、結希は静かに息を吐き出すと。
「絶望なんて、全部全部、消えてしまえばいいのに」
 広がる翼が赤く谷底の闇を照らす。
 緋色の燃え盛るが如き翼から盛る炎が彼女自身を包み込み、そして焼いていく。
 捕えられ苦しみの果てに絶望を齎す者へと変えられてしまった者の放つ呪詛を、悍ましく絶望を齎す呻き声を。
 伝わってくる無念と行く先を歪められた怨念も、今となっては――
「……うん! もう、何も聞こえない」
 これならば少し深い谷に散歩に来たのと、何一つ変わらない――実際には散歩と言えるほど穏やかな谷とは言えないが、伝わってきた怨嗟の声に比べれば児戯にも等しく、闇の中に於いて尚、晴れ渡る様な笑顔を浮かべ。
 険しい谷と谷の間を鼻歌交じりのスキップで乗り越えていくかのように、軽々と背に広げた緋色の翼をはためかせ行く。
(私の大好きな、この世界の希望になるはずだったヒト達。こんな事に利用した事、後悔させてあげます)
 真に恨み憎むべきは命を弄び、向けられて然るべき怨嗟すらも利用し続けた第五の貴族のみだと決意を新たにし。
 渦巻く呪詛と怨嗟の中を穏やかに大剣を胸に抱き、軽やかに彼女は跳び続けていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四季乃・瑠璃
二人でワイヤーフックを用意し、それを引っかけながら谷を降下。
更にUCの効果で「怨念」(及びそれを触媒とした呪法)を指定。
形無いモノすら殺す力で怨みすら殺し尽くして強引に突破していくよ。

---------------------
過去の幻影(トラウマ)
幼い「瑠璃」達が囚われていた狂った悪夢の様な実験施設。
神をも恐れぬ命を弄ぶ様な狂気の科学者たちの実験。
そこで殺人姫は生まれ、施設の全てを皆殺しにして自由を得た。

瑠璃「思い出したくも無い過去が出てきたね」
緋瑪「あの時、わたし達は全てを殺して決別した…。今更悪夢に囚われはしないよ」
瑠璃「過去に後悔は無い。私達は過去も悪夢も殺して進むよ」



●ルーツ
 フックを谷に食いつかせ、取り付けられたワイヤーを命綱とし確実に下っていく。
 既に十二分に歴戦の猟兵と言って憚らない実力を備えた少女二人であっても、決して油断ならぬ険しきに、難なく見えつつも油断なく挑む。
「よっと……普通に険しい谷だね」
「よっぽど下手を打たなきゃ大丈夫だとは思うけど」
 半身である緋瑪の声に四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)は己の見立てを冷静に語る。
 その言葉通り、多少の苦労はあるだろうが慎重に行けば怪我の一つもなく下れるだろうが。
「これはちょっと、ねえ?」
「だね……」
 ――さぁ殺せ。お前達は兵器。殺せ殺せ殺せ私の意のままに。邪魔となる全てを殺せ。お前達は殺しの道具。殺せ、殺せ、お前達自身を殺せ。
 彼女達に見せつけられるものは、殺人姫としてのルーツ――狂った実験場で人を人とも思わぬ狂気の学者達が繰り返す非道な実験。
 命を命とも思わず神をも恐れない、げに恐ろしきは人という理を思い知らされる幻影を前に、二人で一人の殺人姫達は一時、その瞳より光を消した。
「わたし達に殺せないモノは無い」
 緋瑪の投げ放つ爆弾が、狂気に溢れた眼鏡の中年男の幻影を散らし。
「全ては私達の殺意のままに」
 瑠璃が撃ち込む大型拳銃の弾丸がまた別の脂ぎった男の胸を貫き、その幻影を木っ端微塵にする。
「「さぁ、私(わたし)達の殺戮を始めよう」」
 お前達が逃れられぬと嘲笑う幻影を爆弾で、拳銃で――時に大鎌を器用に、ロープに掴まりながら放ち、振るい続け。
 形無き概念すらも打ち砕く力を得た殺人姫達の、狂気に満ち溢れた過去の幻影は今、打ち壊されていく――


「思い出したくも無い過去が出てきたね」
 大まかな過去の幻影を振り払い、悩ましく息を吐き出しながら瑠璃が声を発した。
 ワイヤーロープを握ったままふと止まり、空いている手を何度かに握っては開きを繰り返し、どこか遠い目で谷上を見上げた瑠璃に緋瑪は応える。
「あの時、わたし達は全てを殺して決別した……今更悪夢に囚われはしないよ」
 ――それでも消せぬ過去は過去として積み上げられている。尤も今更に捕らわれるものでもないし、こうして文字通りに吹き飛ばした筈だと主人格に語れば、主人格<瑠璃>はそうだね、と頷いて。
「過去に後悔は無い。私達は過去も悪夢も殺して進むよ」
 ――だから、未練がましく執拗に現れた歪んだ笑みを浮かべた科学者の口へと押し込まれた爆弾が派手に爆ぜて。
 瞳に光を取り戻した二人で一人の殺人姫達は、在りし日の幻影を躊躇いなく【殺し】消し飛ばしていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイ・バグショット
血液生物を先行させ経路探索
嫌な感覚と寒さに身を震わせ祭壇を目指す

叫び声が聞こえたと思ったら耳元で怨みを囁かれる
お前のせいだ君なんていなければ
早く消えてくれ死んだら良いのに
これは全て幻聴だ
いや幻聴か?
元から悪い顔色がさらに悪くなる

遠くで誰かが叫んでいる
酷く怯えてやめろと叫ぶ
耐え難い痛みに絶叫している
怒りと憎しみに罵詈雑言を吐く

誰だっけ?いや、知っている
あれは俺だ
思い出したくもない過去が精神を苛む

愛していると囁き痛みを与えてくるのは赤い髪のヴァンパイア
最も憎くて最も恐ろしい女

ハッハッと浅い呼吸を繰り返し
無意識に体が震えた
恐怖で叫び出しそうになる
鼻を掠めたのは香水の香り
それは狂気に耐えるための安定剤



●痛み止め
 追いかけっこ。
 血で出来た生物を先行させ、安全な道を割り出しながら進む様は、どこか追いかけっこを思わせる。
 黙々と下れども下れども、中々に終わりの見えない闇に挑み、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)は微かに身体を震わせた。

 ――お前の、せいだ。君なんていなければ。何故まだいる? 早く消え去れ。死んだら良いのに。死ねばいい。死ね。死ね。

 嫌な寒気を感じながら、叫び声が聞こえたかと思えば、恨み辛みの籠った囁くような声がジェイの耳を擽った。
「…………幻聴、か?」
 ここに鏡は無いし、あったとしても見えはしない。それでも明らかに体温の引いてしまった顔は雄弁に伝えている。
 元々悪い顔色が更に悪くなってしまった、と。

 ――やめろ! やめろぉぉぉっ!!

 気を取り直すように頬を叩いても、遠くに聞こえる叫びがジェイの足を止めてしまう。
 酷く怯え奥歯を幾度となく打ち鳴らす音が響き、引き出された叫びが鼓膜を震わせ、身体の底から寒気を広げていく。
 叫ぶ声の主に耳を塞ぎたくなるほどの痛みを齎す何かを伴い、苦痛の叫びが響き渡れば猶更に体温は奪われる。
 一体誰が叫んでいる? 否、あの声は――
「あれは……俺だ」
 ――思い出したくもない過去は魂を容赦なく刻む。
 最も憎く最も恐ろしい赤髪のヴァンパイアが愛を嘯き、痛みを与え続ける幻影が目に浮かぶ。此方を見る吸血鬼の紅き瞳と、つり上がった唇から紡がれる言葉、そして。

 ――愛しているわ、私の愛し子……だから。

 ――コレイジョウ、キキタクナイ。ヤ、メ、ロ……。


「ッ……ハッハッハッ……!
 息が荒い。浅い呼吸が繰り返され、命を長らえる筈の呼吸は逆に酸素を取り込むこと能わず、視界が歪み脳髄が押し潰されそうな苦痛に陥る。
 身体は思い出した恐怖に打ち震え、冷え切った身体にも関わらず浮かぶ汗と引きずり出された恐怖に声が挙がりそうになったその時――
「ッ……」
 漂ってくるものは、香水の香りだった。
 程よく甘く香るそれが、荒み切り凍てついた心が溶かされ、身体の震えが止まり汗が引いていく。
 だが精神安定剤にも似た香りの効能はほんの一時の気休め。
 ――それでも。
 永らえた一時がある限り、進んでいける。進まなければならない。ゆっくりと体勢を立て直し、呂色の硝子容器からその香を一気に鼻に吸い込むと。
「……行くか」
 ――歩んでも歩んでも、あの赤髪の吸血鬼の凄惨な笑みと、刻み付けられた痛みが引き出される。
 されど歩みは止まらず、香水の甘き安らぎを借りながら消えぬ過去の傷をやり過ごしていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
このくらいのバンク、ボクのライディングテクニックでひとっ走りだね!
…冗談、冗談だよウィーリィくん?

【暗視】+【視力】で見えづらい障害を発見したり降りにくい場所では【ロープワーク】でロープ伝いに降りたりと二人で協力して難関を制覇していく

でも、この谷最大の難関はここに満ちた怨念
だからウィーリィくんと【手をつなぐ】事でお互いを【鼓舞】し、【勇気】を分け合い、時には温もりを伝えることで【慰め】、どんな絶望も乗り越えてみせる
過ぎた過去への後悔も、最悪の未来への怖れも、ボクたちの前には無力なんだからね!


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
ただでさえ降りるのに難儀しそうな場所なのに怨嗟のおまけつきってか。
【足場習熟】と【地形耐性】で足場を確保しながらシャーリーと協力して谷を降りる。

で、厄介なのは障害として利用されている渦巻く怨嗟だけど。
襲いかかる絶望も狂気も【勇気】と【気合】で乗り切り、そしてシャーリーとつなぎ合った手で互いを【鼓舞】しあい、怨嗟を突破する。
「俺達二人なら、何があっても大丈夫」
その想いが胸にある限り、どんな困難も乗り越えられるから。

お前達の痛みも恨みもわかった。
俺達はそれを繰り返させない為に先に行くんだ。
だからもう少しだけ黙ってくれないか。な?



●下れども不安に
 ただでさえ光の差さぬダークセイヴァーの地、ましてや地下階層の更なる深みに往くというのならば、それは闇という闇を分け入るようなものか。
 適切にロープを下ろしながら、サイバーアイで闇を見透かし、降る崖の状態を見据え、シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)は相方の少年に声を掛けた。
「そこ気を付けてね。崩れやすくなってるから、ロープはしっかり持って」
 ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は彼女の声に頷き、垂らされたロープを確りと手に持ちながら、足をつける僅かな感触の差異から適切な道程を見出し、慎重に崖を降っていく。
「応、助かる……それにしても、なんていうか」
 普通にこうして降りるだけでも、唯でさえ険しく、闇の広がる中は厳しいものがあるが、それは致命的な邪魔となりえない。
 それよりも――脳髄を響かせるような重たい揺らぎに、瞳の奥から鈍痛が走る。
 場に張り巡らされた空気を和らげるように、ウィーリィとシャーリーは導かれるかのように互いの手を握る。
 互いの存在感以外に頼るものが何も無き今、繋いだ手の温もりが襲い来る痛みを落ち着かせ、彼等に平穏の一時を与える。
 暫くの後に、軽く息を吐き出したウィーリィが漸くに言葉をぽつりぽつりと紡ぎ出す。
「最初の【アレ】は結構デカいな。思い出すだけで結構楽になる」
「ただの冗談だったけど……だったら嬉しいよ」
 乾いた笑いを浮かべ、頬を掻きシャーリーもまた思い出す。あれは丁度崖っぷちに転送され、今から降ろうとしていた時のことだった――

* * * * * * * * * *

『任せて! これぐらいならボクのバイクでひとっ走りだよ!』
『えっ?』
 崖の淵につくやいなや、ドンと胸を叩き相棒のバイクを持ち出そうとしていたシャーリーの声に、ウィーリィは崖と彼女を交互に見比べた。
 彼女の操縦技術を信用していないわけではない、わけではないが――深さも分からぬ闇を超えていくのはあまりにリスキー過ぎやしないだろうか。いや、もう一つの障害を凌ぐ方法としてならそれ以上の恐怖で塗り替えるこの方法もアリなのではないか――!?
 ウィーリィの真顔でやや狼狽えた姿に、シャーリーは思わずに噴き出してしまうと。
『……あはは。冗談、冗談だよウィーリィくん?』
『そうか! 流石に冗談だよな!』
 アハハハハハ……と乾いた笑いが響き渡る。暫くの間、これから挑む崖の険しきと張り巡らされた闇の絶望を忘れるかのように。

* * * * * * * * * *

 ……などと、他愛もないやり取りだったが、やはり思い出せば自然と心も温まるものがあり、彼等二人の口元が自然と緩む。
「……でも、分かっちゃいたけど結構キツいなこれ」
 犠牲となった民の怨念――正しくはその怨念を利用し、侵入者の心を折る悪辣な第五の貴族からの結界だが――は容赦なく心を削ってくる。
 自らに襲い掛かった理不尽な死と、第五の貴族の愉悦に虐げられた痛みの声――結界が見せる末期の凄惨な光景。
 崖の険しきはそれに比べれば些細なこと、耐え難い心の重みが身体を震わせ、崖底に身を投げ出してしまい衝動が襲い彼等の胸を焦がす。
「大丈夫だよ」
 それでも。
 乾いた口から絞り出すように、掠れていて尚、何処までも心強く確信したような口ぶりでシャーリーは声を発する。
 変わらずに繋ぎ続けた手はより強く、そして彼を見つめる眼は強く真っ直ぐに。
 ウィーリィの手を包み込むように握りながら、シャーリーは更に言葉を続けた。
「ボク達二人なら、絶対、大丈夫だから」
 ――いつだって、どんな強敵にも、絶望にもこうして立ち向かってきた。
 今回も何一つ変わらない。
 互いに力を合わせ、心を寄り添わせ共に支え合い、立ち向かっていく。
 何を恐れるものがあるものか――休憩もそこそこに、崖下りを再開し進んでいっても、怨嗟の声は留まるどころかより激しさを増すばかり。
 それでもウィーリィは見つめ合った少女の瞳と、繋いだ手の熱を火種とし、心に勇気の炎を燃やしては怨嗟の声に語りかけた。
「お前達の痛みも恨みもわかった。俺達はそれを繰り返させない為に先に行くんだ」
 発した言葉にすれば、互いの心を繋ぎ止める決意はより強固となる。
 それは響く怨嗟の声に心を揺さぶられることが減るということであり、一歩一歩を着実に歩む足取りが軽くなる。
「だからもう少しだけ黙ってくれないか。な?」
 ――元より怨嗟の声は第五の貴族に利用されてのもの。決して声が聞き入れられることはない。それでも。
 それでも……ウィーリィの呼びかけが、未だに残る彼等の恨み辛みを鎮めたと信じたい。今となっては聞こえても心を重く沈ませるに至らなくなった怨嗟の響きに、シャーリーは輝かんばかりの笑顔を向けて。
「――過ぎた過去への後悔も、最悪の未来への怖れも、ボクたちの前には無力なんだからね!」
 後はもう大丈夫、そして彼の誓った言葉を現実にする為に――握り合った手は、慰めから闘志を高め合う激情にその意味を変えて。
 彼等は無事に助け合いながら、渓谷を降り抜くのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
かつて"名も無き神"の狂信者にして導師だった母に刻まれた左眼の聖痕…
「代行者の羈束」に精神を汚染されて異端の大神の依代となり、
"名も無き神"を信仰する数多の邪教徒や他の導師達に傅かれ世界を滅ぼす自身の幻影…



…だけど、そんな未来が訪れる事は決して無い

…私は死んでいった多くの人達から想いを託されて此処にいるもの

…未だ魂が鎮まらないならば、私に力を貸して欲しい
貴方達の無念を晴らす為に、そして、この世界を覆う闇を祓う為に…

UCを発動し周囲の怨霊を吸収して魔力を溜め、
彼らの怨嗟は精神同調時に暗視した宿敵への殺気で耐え、
呪詛のオーラで防御しつつ空中機動で谷底に向かう

…ああ、そこにいたのね。見つけたわ



●薔薇の導師へと
 ――張り巡らされた怨嗟と、それを触媒とした呪詛は無理矢理にも呼び起こす。
 そっと左目に指を添え刻まれた聖痕を想う――名も無き神の狂信者、己という存在を文字通りに世に生み出した者が刻み付けたそれを。
 そして呼び起こすのだ。在り得たかもしれない、そして望まぬ未来の光景をありありと、強く強く。
 それは代行者として心を蝕まれ、異端の神の傀儡となり果てて――多くの狂える信者に、導師に傅かれ、世界の破壊者となる光景を。
「……そんな未来が訪れることは無い。私は死んでいった多くの人達から想いを託されて此処にいるもの」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は怨嗟を振り切るように頭を振った。
 ――それは極々僅かな可能性であったかもしれないが、もしかしたら在り得た未来。
 だがその未来に今はもう繋がらない。
 託された想いがこの身にある限り、自分が世界の破壊者となる未来は決して訪れないと決意を固め。
 闇の中に揺らめいた白銀の輝きも静かに、左目の聖痕が谷間に満ちる怨嗟へと向けられて。
「……未だ魂が鎮まらないならば、私に力を貸して欲しい。貴方達の無念を晴らす為に、そして、この世界を覆う闇を祓う為に……」
 ――汝ら、この瞳をくぐる者、一切の望みを棄てよ。
 場に満ちる怨嗟の念――既に自由意志も死して尚奪われ続け、怨嗟の持つ力のみを吸い上げられ利用され続けた念が聖痕に吸い込まれていく。
「ッ……ぁ!」
 されども取り込んだ怨念と心を同調させることは、より多くの狂気と絶望を齎す――世の全てを嘆き狂気を齎す耐え難き叫び声が脳の髄まで響かせる。
 だが狂気を耐え抜く力となるは、確かに視えた【導師】――四つ薔薇の名を冠する異端の神の狂信者。
 ――必ず殺す。
 薔薇を散らしたかの存在の姿への殺意を以て、魂を侵す絶望と狂気から己が心を奮い立たせ守る。
 殺す、必ず、絶対に。
 全てに嘆き憎む怨嗟の声を、向けられて然るべき場所へと向けるように、迎え入れた怨嗟をその先に控える男への殺意と為して。
 絶望の病を齎す怨嗟の声を、何処までも聖痕に取り込み己が糧とし、取り込んだ呪詛の力を以て己の身を守り場に巡らされた結界の呪詛を阻み、防ぎ切り。
「――……ああ、其処に、いたのね。見つけたわ」
 漂うは遠きに、それでいてなおここまで来ても香る甘い薔薇の香――空を滑り翔け抜けて。
 谷底から噴き上がる風をも軽やかに割り、リーヴァルディは谷底へと己が身を斬り込ませていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルパート・ブラックスミス
地に足つける必要はない。【ジャンプ】で谷へ飛び降りる。

渦巻く怨嗟が、常日頃抱く不安を煽る。

こうして目の当たりにした犠牲の中に、生前のルパートの知己がいたのではと。
記憶を喪った俺はそれが判らず、あるべき憤怒も悲嘆も抱けず。
誰よりも先に俺が気づくべき声を顧みず無感情に流す、そんな惨い仕打ちをしているのではと。

UC【騎士示すべき克私無想】。
【覇気】【狂気耐性】で精神の平静を維持、
目的地と思しき場所を見つけ次第青く燃える鉛の翼を展開し姿勢制御、着地する(【空中浮遊】【落下耐性】)

感傷を踏み潰せ。
想い抱けず、顧みず、無感情に流すしかできないなら。
俺が為すべきはただ敵を討ちこの惨事を止めることだけだろう。



●もしも……
 見下ろしても見下ろしても、文字通りに底知れぬ闇が広がっていた。
 底が見えないという時点でその深さは十二分に脅威であると伺い知り、これまた谷間の深き闇に吸い込まれそうな黒鎧が一歩を踏み出した。
「……」
 黒鎧――ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)が行うことは、地に足をつけて着実に崖を降りて進むことではない。
 ただ黙ってその身を投げ出し、深き谷を飛び降りる――!
 逆風がマントを強く煽り立て、飛び降りる中に見える光景は延々と闇が深くなるばかり――ただ鋼鉄の身体を圧する大気の壁だけが己が飛び降りているという実感を与えてくれる。
 されども――谷間を渦巻く怨嗟と、定められた全てを呪う声は、ルパートの鎧を重く鈍く響かせ、彼の魂をも揺さぶる。
 ――アア、イタイ、イタイ……。
 ――ヤメテ、コロサナイデ。
 ――ドウシテ。
 片言な嘆きと憎しみの強き声、鎧の中をも重たく響かせる哀しくも悍ましい声が胸を打ち、ルパートの常日頃に抱き続ける不安を煽る。
「もしかしたら――」
 この中に【生前】のルパートの知己がいたのではないだろうか。
 かつての記憶も肉体も失った今では、それが分からない。
 あの声か、あの叫ぶ声なのか、はたまた声を挙げられぬ悲しみの気配か――全く分からない。
 気付かぬ内に、気付くべき声をもしかしたら無視し、救うべき哀しい御霊を踏み躙ってしまっているのではないか。
 ――ヨクモ、ムシシタナ。
 ――カナシイヨ、ルパート。
 頭の内部を渦巻く不安を更に更に煽り、絶望を齎すかのように怨嗟の声が重たく響き渡る。
「そうだとしても」
 ――感情を踏み潰せ。
 現在に抱くべき憤怒も悲嘆も抱く為の過去もなく、顧みられずに、無感情に逃がし続けるしか道がないというのならば。
 出来ることは進むことに他ならない。歩みはもう止められない。
 鎧兜の隙間から消えていた筈の青白い焔が輝き、ルパートの背から噴き上がる炎が谷底の闇を照らす――降り立ち進むべきは、そこだと見出し。
「……俺が為すべきは」
 只、その先に控える敵を討ち、これ以上の悲劇を止めること。
 例え犠牲者にルパートの知己がいようともいまいとも、只一人の騎士として彼は進む。進む道に迷い許されぬ騎士道精神の下に。
 それが過去も無き彼の確かな【現在】なのだから――背に広がる青白い鉛炎の翼を広げ空を滑るようにし、ルパートは静かに地へ足を着ける。
 そして彼は往く――この悲劇を齎した、悪辣な第五の貴族を打ち倒す為に。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『オルトロス』

POW   :    くらいつく
自身の身体部位ひとつを【もうひとつ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    ほえる
【悲痛な咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    なかまをよぶ
自身が戦闘で瀕死になると【影の中から万全な状態の同一個体】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:夏屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●薔薇の祭壇
 深き谷を越え、猟兵達は祭壇に続く通路を進む。
 見果てぬ闇であった時と打って変わって、何かしらの魔術だろうか、祭壇までの道程は不思議な灯に照らされていた。
 故に迷うこともなく、灯の導くままに祭壇に足を踏み入れた猟兵達の鼻腔を、噎せ返るほどの薔薇の芳香が満たした。
 鮮やかに敷き詰められた薔薇の、何処か濁った血の色を思わせる赤色と、薔薇の芳香に混じり漂ってくる生臭い匂いは行われていた非道を強く想起させる。
 周囲を見渡せばボロ布を纏わされ、全身に痣や擦過傷を与えられ、生気を失っている人間達がいる。彼等が恐らくはこれから生贄に捧げられようとしている民なのだろう。
 まずは彼等を保護しようとしたその時――振り向けば猟兵達の目に映ったのは、正しく【番犬】であった。
 揺らめく黒き炎のような身体の背には、悍ましく蠢く触手が与えられ、獰猛な獣の性質を剥き出しに唸る番犬がやってきたのだ。
 彼等の視線の先には怯え身体を寄せ合う民がいる――このままでは紋章になりかけている彼等に民は喰らい尽されてしまうだろう。
 番犬の紋章となりつつある番犬を打ち倒し、民を救うために――猟兵達は戦闘を開始するのだった。
春乃・結希
ずざぁー!って感じで、傷ついたヒト達と、犬の間に割り込む
はーい、わんちゃん達ー、ここから先はペット禁止ですよ~?

向かって来る犬達に拳を打ち込み、同時に焔の鎖を繋いでいく
よしっ、ちょっと私とお散歩しよ?
みんなから引き離す為にも【怪力】と【ダッシュ】で引き摺り回す
犬がこちらへ攻撃しようとしたら、自ら鎖を引き寄せてタイミングをずらし、また殴り飛ばす
うまくいかなかったら噛まれるかもだけど…
いっ…たくない!【激痛耐性】こらっ、ヒトを噛んだらダメっていっとるじゃろ!
そのまま地面に叩きつけたり、空いてる腕か脚で引き剥がす

最近運動不足やったんやない?背中から根っこ生えちゃってるよ
もうちょっとお散歩しよっ



●ドッグファイト
 炎の揺らめきと共に、現れた狼の形をした番犬たちが唸りを挙げていく。
 ゆっくりと四肢を一つ一つ前へ出し、怯え逃げ惑う民に身体を近づけ――
「ひ、ひえっ……」
 怯えた民が縮こまり、嬉々として番犬たちが飛び掛かったその時だった。
「はいぃぃぃぃーーーっ!!」
 それは正に滑り込むといった表現が正しく、民と番犬たちの間に挟まる姿があった。向けられようとした牙は、ガチンと盛大な音を立て大剣の腹が受け止め、文字通りに歯が立たぬ現実に追い込むように、割り込んだ女――結希は手早く拳を番犬たちの腹へ、脳天へと撃ち込んでいった。
「わんちゃん達ー、ここから先はペット禁止ですよ~?」
 撃ち込まれた拳に盛っていた炎が渦を巻き、喰らいつくかのように鎖と化して番犬たちの首と結希の身体を繋いでいく。
 撃ち込まれた爆発を伴う拳の苦痛と、主以外の存在に繋がれた屈辱か、番犬たちは身体を揺らし鎖を揺さぶり、その先にある結希を揺さぶった。そしてそれを彼女は晴れやかに笑って見せると。
「おー、元気いいねぇ。それじゃあ……よしっ、ちょっと私とお散歩しよ?」
 散歩というにはそれは苛烈であり、繋いだ鎖を引っ張り結希は番犬たちを引き摺って行った。民を番犬たちから引き剥がす為に。
 多くの番犬を繋いだにも関わらず大剣を振り回せる結希の力量の前には軽いものであり、駆け抜けていく度に床の固きと敷き詰められた薔薇の棘に番犬の身体が擦れその身へと傷が刻まれていく。
 されども番犬たちも流されるままに非ず、咄嗟に立ち上がり結希へと牙を向けるも、クロスカウンターの如く突き出された拳が突き刺さり、爆ぜて文字通りに牙を折っていく。
 だがそれでも、数の利を以て漸くに彼女に牙を突き立てても――
「いっ……たくない! こら! ヒトを噛んだら駄目っていっとるじゃろ!」
 それを気合で激痛を掻き消し、噛み付かれたままの腕を振り上げ――盛大に身体を陥没させるほどに力強く、石畳の床へと叩き付ける!
「最近運動不足やったんやない?」
 目を回し倒れ伏す番犬たちの身体を、結希は鎖で引っ張り上げ強引に引き起こすと、笑顔を崩さぬまま声を掛けた。彼女の目線の先には、紋章になりかけの証として生えた触手があり。
「背中から根っこ生えちゃってるよ。もうちょっとお散歩しよっ」
 お散歩と書いて地獄の引き回しと読むかのように。
 敷き詰められた薔薇の花弁も勢いよく散らしていくほどに、鎖に繋がれた番犬たちを彼女はまた引きずり回して葬っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
(囚われの民たちを背にして)
動くな。まずはこの番犬を狩り尽くす。

片っ端から燃やすといきたいが薔薇が邪魔か、引火して人々が火に巻かれかねん。
UC【錬成カミヤドリ】による【集団戦術】。
囚われの民を【かばう】のを兼ねて複製鎧で敵を分断・包囲。一体に対して多数で【グラップル】。
本体である自分は民達の前から離れず複製鎧が雁字搦めにした敵を【投擲】用短剣【誘導弾】の【弾幕】で各個撃破。
万一突破してきた敵がいるなら黄金魔剣で【なぎ払い】【吹き飛ばし】ていく。

囚われの民たちには背を向けたまま。…今は、他人に巧く声をかけられる気がしない。
今、騎士が務めるべきは嵐。この血薔薇と獣を根こそぎ吹き飛ばす嵐だ。



●騎士は黙して何も語らず
 ――紅き薔薇にその黒々とした存在感、どこか暗き青を覗かせる黒き鎧の存在は非常に祭壇の中に映えるものだった。
 金属の軋みと硬き靴底が石畳の床を鳴らし、存在感のある身体がその背に無辜の民を覆い隠していた。
「動くな」
「ッ……」
 鎧――ルパートの静かな声に、彼に隠された形となった民は更に縮こまり、身を寄せて。ただこの場に唯一頼れるルパートの背を縋るように見つめていた。
「まずは、この番犬を狩り尽くす」
 そんな彼等を振り向くことなく、ルパートは唸り声を挙げている番犬達を視界に収めると思案する。
 兜の格子から覗く青白が揺らめき、彼の存在を照らす熱で一気に――
(片っ端から……は、まずいか)
 と、思ったが足元の薔薇に目を向ければ、それに引火した時が恐ろしい。自分が熱に晒されるだけならば兎も角、守るべき民を巻き込むのは忍びない。
 故に彼が選んだのは包囲戦術だった。一瞬の内に現れた無数の黒鎧、ルパートと瓜二つの鎧の集団が百を超える軍団となって番犬達を取り囲む。
 統率のとれた動きで以て民を背に守りながら、数と質の利を十二分に活かし、決して油断なく一体を複数で以て押さえつけ。
 番犬達の統率でさえも物の見事に、黒鎧の複製による壁を以て分断し数の利を埋めさせまいと務めながら、本体であるルパート自身は変わらず民を背にし。
 投擲用の短剣を取り出すと狙いを澄まし、着実に複製達が押さえつけている番犬の額をばら撒くかのように解き放つ――それはまるで導かれるように番犬を貫き、その存在を霧散させ仕留めていく。
 それでも、この圧倒的な包囲網を抜けてきた番犬たちが、ルパートの横をすり抜けその牙を無辜の民へと向けていった。
「させん」
 だが突破してきた番犬の身体は、呆気なく両断されていた――ルパートの手にはいつの間にか黄金の魔剣が握られ、それが勢いよく薙ぎ払われていた。
 そして遅れて発生した剣風が紅薔薇の花弁を舞い上げ、炎とも犬ともつかぬ番犬の身体を一気に霧散させ吹き飛ばす――黄金の魔剣を振るい、マントを靡かせる黒騎士に目を奪われ、おずおずと守られた民は声を掛けた。
「あ、あの……」
「…………」
 どう声を返してやればいいのだろうか――大丈夫だ? 安心しろ? 必ず自分が守ってみせる?
 そのどれもが相応しいようで相応しくないようで、何もルパートは言葉を紡げず、振り向き彼等の目を見ることも能わず。
 しかし。
 言葉で示せぬのならば行動を雄弁に――血薔薇と獣を吹き飛ばす一つの嵐として、民を守らんと黄金の魔剣がまた一つ、薔薇と番犬の身体を吹き飛ばしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季乃・瑠璃
緋瑪「…タイミングの悪い犬コロだねー」
瑠璃「私達、少し気が立ってるんだよね。命が惜しくない子から掛かっておいでよ」

UCで分身

表面上は普段と大差ない状態で笑みを浮かべながら【殺気】を振り撒きつつ、緋瑪は大鎌を揺らしながらゆっくりと犬達へ。
瑠璃は両手に拳銃を握りながら人々の方へ。

敵が噛みつきに飛び掛かって来るタイミングを【見切り】、緋瑪が大鎌の機巧【推力移動】を作動させ、すれ違いざまに一気に番犬達の首や胴を斬り裂き【切断】、瑠璃が両手のK100二丁による高速連射【ドロウ、早業、弾幕】で追撃。
最後は生命力の高さを見越して念入りに接触式ボム【範囲攻撃、爆撃、早業】で爆砕して粉々にするよ



●命に到らずは無傷と不等価
 確かに。確かに、だ。乗り越えた筈の過去であり、歩みを止めるに至らぬものであろうとも、決して思い出してしまったことの痛みは少なからずある。
 普段と変わらない笑顔の仮面に、やり場のない複雑な感情を覆い隠し、悍ましい触手をうねらせて歩み寄る獣達の姿を、二人で一人の殺人姫達は冷たく見据えていた。
「……タイミングの悪い犬コロだねー」
「私達、少し気が立ってるんだよね。命が惜しくない子から掛かっておいでよ」
 ――笑顔の仮面を被り隠していても、揺さぶられた傷跡は痛みを起こし、瑠璃と緋瑪の身体から膨大な殺気という形で振り撒かれていた。
「「我が敵全てを殺し尽くすまで、我等の歩みを止めることは叶わず。さぁ、私達の殺戮を始めよう」」
 前線に立つ緋瑪がゆらり、ゆらりと大鎌の刃を揺らめかせ、唸る番犬達へと歩を進めていく。矮小な存在ならばそのまま命を失いかねない、濃密な殺気が振り撒かれ番犬達の足を一歩退かせる。
 そして後方に控える瑠璃は大型拳銃をその手にし、怯える民に寄り添う――尤も瑠璃から発せられる殺気は、彼等自身に向けられたものでないにしろ彼等の顔を青褪めさせるには十分で。
 漸く迸る殺気の膜を破るかのように、番犬達が吼え力強く緋瑪へと飛び掛かっていく。
 されど――飛び掛かった筈の番犬達は、爆発音が一つ奏でられたかと思えば次の瞬間には悉くその身を別たれていた。
「手応え、全然ないね~……その程度?」
 手に持つ大鎌より、仕込まれた機構の爆ぜた証の煙を揺らめかせ、その場に刃の閃いた残影を遺し。
 緋瑪によって振るわれた大鎌が一瞬の内に番犬達の身体を断ち切り、首と胴を綺麗に分けていたのだ。
 そしてそこへと間髪を入れずに、瑠璃が向けていた大型拳銃が火を噴き、一発一発が重火器にも比肩しうる重く鋭い銃弾の掃射が番犬の身体を蜂の巣と変えていく。
 攻撃の苛烈さと裏腹に、一切の躊躇いも油断もない様は、彼女達が如何に殺しに長けているかを物語る。
「ごめんね。あなた達は決して悪くないんだけど……ね」
 顔を青くする民に一応に詫びを入れてから、更に瑠璃は拳銃から解き放たれる弾幕が揺らめく体の番犬を吹き飛ばし、床に二、三度ほど打ち付けさせ。
「行くよ、緋瑪」
「行こう、瑠璃」
 それでも彼女達は油断なく、倒れ伏す番犬達の生命力を警戒し、その手に必殺の爆弾を握り――それを同時に投げ放って。
 カチン、と打ち合った爆弾が一斉に光を発し爆ぜ、熱と衝撃の圧が立ち込める――舞い上げられる薔薇の花弁も焼き尽くし、迸る爆風が跡形もなく番犬の身体を消し飛ばしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
俺の手は誰かを救うには小さいかもしれない。
けど、二人の手を合わせればより多くの人を助けられる。
行くぞ、シャーリー!

襲われそうな人の元に【ダッシュ】で駆けつけ鉄鍋を盾代わりに【かばう】形で割って入り、【カウンター】で【シールドバッシュ】でその鼻面に一撃食らわせてその間にシャーリーと協力して囚われた人達を一か所に集め、守りを固める態勢を取る。
そして手分けして群がる敵を【飢龍炎牙】で薙ぎ払い、敵がもう一つの頭部を作り出したら【部位破壊】と【二回攻撃】で両方の頭を叩いて回復を阻む。

そして、背を向けたまま囚われた人達を【鼓舞】する。
「最後まで諦めず信じていれば助けは来る。……もう大丈夫だぜ」


シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
海賊は自由を愛する者!
だから人の自由を奪う存在は海賊の敵!
という訳だからボクたちの手で「自由」というお宝を奪い返そうね!

「困った時のサメ頼み、だよっ!」
【制圧射撃】+【弾幕】で敵を足止めしている間にウィーリィくんと一緒に一般人を一か所に集めてボクたちで守れるようにする
その後はウィーリィくんと手分けして【クイックドロウ】+【乱れ撃ち】+【範囲攻撃】で近づく敵を片っ端から撃ち抜いて、立て続けに熱線とビームをお見舞いして倒す敵がUCで身代わりを召喚する前に
「さーて、そろそろ平らげちゃおっか?」
敵の数が少なくなったらウィーリィくんとタイミングを合わせて【ワールド・タイフーン】で一気に全滅!



●海賊と料理人
 ――確かにこの手に救えるものは小さなものかもしれない。自分一人だけだったら、目の前にいる区画の人間は助けられても、他の区画の人達は無理かもしれない。
 でもそれは救うことを諦めない理由にはならない。傍にいる彼女がいれば一人よりは多くの人が助けられる、他の区画は他の仲間がやってくれる。だから。
「行くぞ、シャーリー!」
「援護射撃はお任せ、だよっ!」
 今にも牙を向けられ、餌食となりそうになっていた民の下へウィーリィは紅の残像を遺し、颯爽と駆け寄っていった。
 悍ましい獣の牙が無辜の民を食い千切らんとしたその時、磨き抜かれた鉄鍋の表面がその牙を折り、壁となり民を守っていた。
「大丈夫か?」
「あ、あ……」
 民を気遣うようにウィーリィが声を掛けるも、守られた民は腰を抜かしてその場に座り込んでしまっていた。
 それに対し苛立ちを交え、防がれた挙句に牙を折られた形となった番犬は更に低く恐ろしい声を唸らせ、執拗に追撃をかけに飛び掛かった。
「悪ィがちょっと引き下がってな!!」
 が、その鼻先を盛大に打ち据えるものがあった――飛び掛かるタイミングに合わせて振るわれた二度目の鉄鍋の殴打が、番犬の身体を吹き飛ばしていた。
 文字通りの出鼻を挫かれ、そのヘイトをウィーリィに向けたか、悍ましく背の触手を蠢かせ番犬達は数を以て圧さんと殺到する。
 これには流石にウィーリィも骨も残さず喰らわれる――とはならず、彼の横と頭上を無数の煌びやかな光線が通っていった。
 光線の持つ熱量が番犬達を貫き、乱れ飛ぶ弾幕と化しているそれが防壁のように立ちはだかり、番犬達を貫き牽制し続ける。
「困った時のサメ頼み、だよっ!」
 この状況下で輝かんばかりの笑顔と共に、マスケット銃を手にシャーリーが決めてみせていた――無論、決めても尚油断することなく。
 次々と、飛び掛からんと駆けていく番犬の額や脚を、張り巡らせた熱線の弾幕を以て貫き番犬達の機先を制し続けていた。
 有言実行というが相応しいシャーリーに向けてウィーリィは親指を立てる。
「ナイスアシスト。よし、みんな来てくれ!」
 力強く張り上げられたウィーリィの声に、我に返った民達は弱弱しくも立ち上がり、彼の導きに従いシャーリーの後方へ向かわんと走り出す。
 当然、それを見過ごす番犬達ではなく、背を向けた民を捕えんと背の触手を伸ばす。
「させるかよ! 喰らい尽せ炎の顎!!」
 大包丁を掲げたウィーリィが解き放つ、紅蓮に燃え盛る炎の龍が唸りを挙げ、触手諸共に番犬の頭部を食い千切る――!
 咄嗟に番犬が新たな頭部を生やし、再生を試みようとしてもウィーリィの操る炎の龍はもう一つの頭部をも軽々と食い千切り、番犬の身体を灰と化していく。
 そうして彼等が担当する区画の民を一か所に集め終えると、シャーリーは変わらずに熱線とビームで番犬達を牽制しつつ彼等に語りかけた。
「暫くの間ここに居てね」
「どうして、そこまで……」
 優しく微笑んだシャーリーの声に、怯え未だに消えぬ民の一人がおずおずと声を発して問いかけた。
 見ず知らずの存在であるのにも関わらず、どうして助けても何にもならない自分達を命を賭けて救わんとするのか――不当な扱いを受け続けたが故に卑屈になりかけていた民の問に、シャーリーは自然と流れるように言葉を返した。
「……海賊<ボク>はね、自由を愛してるんだ。だから自由を奪う敵は許せない」
 海賊が海賊であることは自由であること。自由であり続けること。
 自らの欲望の為に多くの自由を不当に奪い踏み躙る者、大切な宝を侮辱する存在に海賊としての矜持は叫ぶのだ。それを許すな、抑圧を強いるならば解き放ってやろうと。
 彼女の言葉に何処か光差したかのように目を見開く民に、ウィーリィが同じく確かな頼もしい笑顔を以て更に続ける。
「最後まで諦めず信じていれば助けは来る。……もう大丈夫だぜ」
「だから、ボクたちの手で【自由】というお宝を奪い返そうね!」
 ――その為にまずは、民を脅かす者を全て屠るように。ウィーリィの操る炎の龍が、シャーリーの張り巡らせる光熱の弾幕が容赦なく番犬達を喰らい、射抜いていく。
 見る見る内に数を減らしていく番犬達の総数をざっと見回すと、今が仕掛け時かとシャーリーはウィーリィに持ちかけた。
「さーて、そろそろ平らげちゃおっか?」
「ああ。やっぱり残さずに、だよな」
「それって料理人だから?」
「応!」
 海賊の矜持に料理人の矜持を以て応え、確かな少年らしき快活な笑顔に只管に頼もしさを感じながら。
 気が付けばたどたどしくも応援の声を挙げつつある民の声を背に、二人は頷き合うと。
「さぁ、世界サメ大戦の終結はぁーっ!」
「炎の顎で、喰らい尽す!!」
 番犬達が吼え、影の中から援軍を呼び出そうとしても遅く。
 精緻な幾何学模様を描き規則正しくありながら、何処までも獰猛な鮫を象った光の刃が飛び交い、番犬達の身体を斬り刻み。
 破片となって散った番犬の身体も、数多の鮫型の刃の隙間を巧みに潜り抜け翔ける炎龍がその顎門の中に呑み込み。
 此処に民を脅かす番犬達は微塵も残さずに刻まれ、喰らい尽されていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェイ・バグショット
噎せ返るほどの薔薇の香りに混じる血の匂い
まるで香水や芳香剤を混ぜ回して仕上げたような酷い有様だ

クセェな…
嗅ぎなれた不快な臭いに悪態だけはつく
生け贄らしいヤツらを一瞥し位置を確認
自ら積極的に助けなくても他の猟兵が守るだろう。俺が動くとしたら何かあった時の保険だ

ドッグランかよ…
自由に駆け回る番犬に遊び相手でもやろう
そぅら、お友達のお出ましだ
一緒に遊んでくれよ

刻印から生み出したのは二体の血液生物
猟犬は獲物を駆り立てるように襲いかかる
その動きに合わせて、召喚した七つの『荊棘王ワポゼ』が高速回転することで傷口をえぐる

あー、これがフリスビーってヤツ?
ちゃんと咥えて戻って来いよ

まぁ咥えた瞬間口無くなるけどな



●死の遊戯
「クセェな……」
 祭壇の中に足を踏み入れたその時、鼻腔を刺激したものは耐え難い匂いだった。
 嗅ぎ慣れている匂い。噎せ返る様な薔薇の芳香の中に、生臭く耐え難い血の匂いが混ざり合ったそれは、乱雑で要素を重ねたそれが長所を殺し合い、嫌な面を嫌な形で際立たせていく匂いだった。
 感想を悪態混じりにそのまま口に出してしまうのも無理からぬことか。
「ドッグランかよ……」
 怯える者や抗おうとする者、諦めて殉じる覚悟の者――様々な者もいるが、その全ては仲間が何とかしてくれるだろう。尤も万一の時はどうにかするが。
 それよりも、ここで自分に向かってくる番犬気取りを打ち倒す必要があるか――ジェイへと今にも牙を向けかねない番犬達を一つ見回すと、彼は体内の刻印を用い。
「そぅら、お友達のお出ましだ。一緒に遊んでくれよ」
 呼び出したものは二体の血液生物<猟犬>だった。
 異質な犬に対しては異質な犬を――同じ異質ではありながら、似て非なるというにも性質の異なる犬と犬。
 二匹の犬と数多の犬が向かい合い、唸り声による牽制を続け――そして弾かれるように、ジェイの呼びつけた猟犬が飛び掛かった。
 完全な不意打ち気味に爪と牙が掠り、番犬の口元に裂傷が刻まれる。それを皮切りに数の優位を以て襲おうとしても、質という絶対的な差を以て追い返し、喰らいつく。
 一度喰らえば番犬の味と匂いは確かに刻まれる――嗚呼、やっぱり美味しいものではない。
 だが覚えた。
 覚えれば後は簡単なこと、内なる獣は獲物を駆り立てる猟犬のように、番犬達を追い回す――まるでジェイが言ったドッグランのように。
 尤も実態はそんな長閑なものではなく、死へと導く為のデッドヒート。何処へ逃げようと、優先して民を襲いに行こうとしても先んじて回り込み、追いやる。
 主の命に従い、忠実に番犬達を猟犬は追い詰め――そしてその間にジェイは呼び出していた。
「あー、これがフリスビーってヤツ? ちゃんと咥えて戻って来いよ」
 尤も、それはそう称するにはあまりにも凄惨な棘を備えた鉄の輪――七つに分かたれた其れが番犬達を目掛けて飛び。
「まぁ咥えた瞬間、口無くなるけどな」
 口はおろか、そのまま頭部の上半分を丸ごとに消し飛ばされるのも、其れもまた自然なことか。
 警戒して咥えようとしなくとも、自動で動くそれは自ら飛び込むように番犬の傷口に、口周りのそれに付け入り、その身体を凄惨に抉る。
 その結果が番犬達がどうなったかは――言わずもがな、である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…紋章の贄にさせられそうになっているのに、
主の敵を倒そうとするなんて大した忠犬ぶりね

…この地にあの男が居ると分かった以上、此処で悪戯に消耗するのは愚策

この薔薇を使うのは気が進まないけど…致し方ないわね

敷き詰められた薔薇に触れ闇の魔力を溜めて武器改造を施しUCを発動
切断した対象の生命力を吸収する長大な茨の魔剣を形成する

…我が手に宿れ、闇の理。血染めの茨を刃に変えよ…!

過去の戦闘知識を基に敵の殺気を捉えて攻撃の機先を見切り、
残像が生じる超音速の早業で鞭のように闇属性攻撃の魔剣を乱れ撃ち、
囚われた人達を護衛しつつ中~遠距離から茨剣で敵群をなぎ払う

…貴方達は巻き込まれないように後ろに下がっていて



●血染めの薔薇
 ――感じる。あの男が近づいている。流石にこの異変に気付いているのだろう。
 決戦は近いことをありありと感じ入りながら、リーヴァルディは無辜の民と番犬の間に挟まると。
「……貴方達は巻き込まれないように後ろに下がっていて」
 怯える民を後ろへと下がらせ、リーヴァルディは唸り声を挙げて触手を蠢かせる番犬達を見回した。
 獰猛な唸りの響きは地下世界の重たい空気を嫌な形で揺さぶりつつ、獲物へと伸ばした牙を阻まれた形の番犬の怒りと、冷たくそれを見据えるリーヴァルディの視線が交錯していた。
「……紋章の贄にさせられそうになっているのに、主の敵を倒そうとするなんて大した忠犬ぶりね」
 ましてそれが【番犬】の紋章というならば――それに変えられる末を知るか知らないかは兎も角、皮肉交じりに呟いて見せる。
 それに対して番犬達は彼女の言葉を解したか、分かり易く地に爪を立てたまま低く唸ってみせた。
「…………」
 永劫にも等しい、睨み合いの時が過ぎる――実際は時間にして数瞬なれど、あまりに濃厚な一時。
「……致し方ないわね」
 この薔薇を使うのは気が乗らない、だが此処で悪戯にあの男の戦いを前に消耗するのは愚策――故にリーヴァルディは足元の薔薇に触れると。
「……魔剣錬成」
 触れた薔薇が一瞬、淡く光る――黒光り、というのだろうか。リーヴァルディの掌に籠められた闇の魔力に呼応し、漆黒の揺らめきが薔薇に纏われると。
「……我が手に宿れ、闇の理。血染めの茨を刃に変えよ……!」
 敷き詰められた薔薇が吸い寄せられるようにリーヴァルディの手に束ねられ、墨を染み込ませたように黒く染まった其れが圧縮され、そして――彼女の手に現れたのは、茨を備えた深く昏い紅の長大な魔剣だった。
 正しく薔薇を剣と変え、リーヴァルディはそれを一つ振るう。
 すれば痺れを切らし、今にも襲い掛かろうと床を蹴った番犬達の身体が両断され崩れ落ちていく――振るわれた魔剣の軌跡の深紅も鮮やかに、リーヴァルディは更に続けて剣を振るう。
「……逃がさない」
 媒介とせし薔薇は元よりこの戦場にあったもの。故に茨の剣は何処までも軽く、目にも見えない早業が番犬達の首を刈っていく。
 振るわれ大気の壁を破る音を遅れて発生させる程に鋭く、そして速き斬撃が延々と薙ぎ払われ、番犬達はリーヴァルディが背に守る民に接近すらも許されず消し飛ばされていき。
 それは剣というよりも最早鞭という方が正しい程に、しなやかに、そして手早く――数多の番犬達を薙ぎ払う。
 魔剣と変えられなかった薔薇も軽々と散らし、悍ましき薔薇の紅も舞い上げ、番犬達の身も斬り伏せて。
 薔薇の敷き詰められた床が顔を全て出す頃には、既に番犬は全て蹴散らされていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『導師・フォアローゼス』

POW   :    薔薇の魔剣
敵を【吸血鬼の魂を喰らう魔剣】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
SPD   :    吸血鬼教団の残影
技能名「【吸血】【呪詛】【早業】【残像】【範囲攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    教団の御業・血染の型
【吸血鬼の血で創造した呪詛の薔薇】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象を吸血鬼化して従属させる血の契約】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:蒼夜冬騎

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリーヴァルディ・カーライルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●死<四>薔薇の魔貴族
 無事に番犬の紋章となりかけていたオブリビオンの群れを撃破し、生贄に捧げられようとしていた民を守り抜いた猟兵達。
 一時の休息もそこそこに、猟兵達は囚われの民を祭壇の目立たない物陰の後ろに集めて隠す。
 すぐに連れ出したいのは山々であるが、そういう訳にはいかない。何故ならば――
「時は既に遅かった……か」
 石畳と打ち鳴らす音を立て、祭壇に現れたのは一人の青年だった。
 一目見れば薔薇を纏い一振りの剣を持った優男――されど剣の持つ危険な空気と、何よりも青年自体の纏う圧倒的な闘気が只者ではないと伺わせる。
 彼こそがこの地を支配する第五の貴族、導師フォアローゼス――彼は猟兵達を値踏みするように見回すと、溜息を吐いて。
「よくも台無しにしてくれたものだ。作るのは楽なものではないのだが」
 散らされた紅薔薇と、死体すらも残らない紋章となりかけの番犬の存在のことを指しているのだろうか。
 猟兵達の敵意に改めて彼は向き合うように目を動かして。
「さて、君達は恐らく私を倒し、彼等を救い出す……と考えているのだろう。だがそうはさせない。君達の命を捧げ、台無しにされた物の補填とさせて貰おうか」
 そう言ってフォアローゼスは剣の刃を煌めかせ、猟兵達へ向けて凄まじく濃厚な殺気を解き放った。
 それに対し猟兵達もまた戦意を固め、一斉にフォアローゼスを見据え、猟兵達とオブリビオンの視線の間に火花が散る。
 暫くの間の睨み合いが続いた後に、わざとらしくフォアローゼスは猟兵達から遠くの影を見遣り。
「君達もよく見ておくといい。辿るべき未来というものを、ね」
 ……恐らくは見せしめの為に、保護した民には手を出さないだろう。その点についてだけは安心できるかもしれない。
 だが敵は腐っても第五の貴族、番犬の紋章を備えた彼には如何な攻撃も効果は薄いだろう――唯一通せる所があるとすれば、番犬の紋章そのものを突くこと。
 その場所については不明だが――左手の甲に只ならぬ気配を感じる。恐らくはその辺りにあるのだろう。
 今一度、囚われた民を守り抜き解放する為に。
 第五の貴族との死闘が今、幕を上げる――!
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
あんま仰々しい事を口にするのはガラじゃないけど。
「みんなも見ておきな。これが『希望』ってやつだ」
大包丁を構え、第五の貴族と対峙する。

弱点は左手の甲の紋章。
だが、確証はない。
だからシャーリーの援護射撃を受けながら奴の攻撃を鉄鍋の【盾受け】で凌ぎながら炎の【属性攻撃】を付与した大包丁で反撃する。
例え刃が奴に届かなくても、炎が奴の手袋を焼き焦がせばいい。
【物を隠す】でその意図を隠しながら【部位破壊】で大包丁の炎が奴の左手を掠める様にする。
そして手袋が焼けて紋章が露わになったところで奴の攻撃を【見切り】、【カウンター】の【捨て身の一撃】で【料理の鉄刃】を紋章に繰り出す!


シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
やっぱそう簡単にお宝を見せてはくれないよね
でも、宝探しなら海賊にお任せっ!

【援護射撃】+【制圧射撃】でウィーリィくんを援護しながら【乱れ撃ち】+【クイックドロウ】でボスを攻撃
【宝探し】+【見切る】で敵の避けようとする動きから紋章の位置を推察、左手の甲で間違いないと確信したらウィーリィくんにアイコンタクトで伝え、そのまま【弾幕】でボスの攻撃をしのぎながら劣勢を演じて油断させる
紋章の場所が明らかになったら反撃の時間だよ!
ウィーリィくんの攻撃に続けて【クイックドロウ】+【スナイパー】+【乱れ撃ち】で紋章を集中攻撃!



●抗える力という至宝
 ――確かにこんな仰々しいことを言うのは柄ではないのかもしれない。
 それでも、今も怯えているであろう彼等に示さなくてはならない。自由を勝ち取り、自分が自分らしく生きられる権利を勝ち取る為のものを。
 故に突き出す剣<大包丁>は勇者の聖剣が如く、第五の貴族の喉元に切っ先を突き付け、ウィーリィは背中で語った。
「みんなも見ておきな。これが『希望』ってやつだ」
「ではその『希望』が潰える時を見るといい」
 炎と薔薇、二つの赤と赤が視線で火花を散らし、向かい合い――そして、弾かれるかのように剣と大包丁が打ち合い激しく火花を散らした。
「しゃっ……!」
「ふっ……」
 打ち合いを一つ制したはフォアローゼス、生来の力量差で一撃の重みに勝り、ウィーリィを引かせる。
 そこへ剣を突き出すも、ウィーリィは咄嗟に盾を――頑強な鉄鍋を取り出し、その曲面に火花散らしながらもそれを受け流す。
 そしてその隙へと割り込むように、フォアローゼスへ大気を電離させる熱量の閃光が迸る――シャーリーが放った無数の熱線だったが、それも軽々とフォアローゼスは残像を用い空振りさせる。
(やっぱそう簡単に宝探しはいかないよね)
 マスケット銃の狙いを定めながらシャーリーは内心息を漏らした。
 言葉では言い表せない気配は確かに、フォアローゼスの左手の甲に紋章があることを告げている――が、確たる証拠もない。
「だからこそ、海賊は燃えるものだけどねっ!!」
 弾かれるように引いた引鉄が、新たにマスケット銃より熱線を迸らせ、フォアローゼスの動きを牽制していく。
 僅かに怯んだ隙に、ウィーリィの大包丁が重たく鋭い斬撃を落とそうとしても、フォアローゼスは剣で受け止め弾く。
 だがそこへ割り込むようにシャーリーの熱線が撃ち込まれれば、敵を退かせウィーリィは体勢をすぐに立て直す。
 しかしそれほどの連携を見せて尚、戦況は二人にとって不利だった。こちらの攻撃は殆ど当たったとしても効果が無いのにも関わらず、フォアローゼスの放つ攻撃は確かなダメージとなり得る。
 無数の残像を伴うほどの高速移動と共に、魂をも喰らう魔剣が振るわれ猛威を振るうも、ウィーリィとシャーリーはそれを必死に凌ぐ。
 されどこの激戦の中から、目聡く“宝”を見つける為の海賊の目は確信していた。自然と避ける風に見せて、そこだけは極力被弾を避けるように、最悪他の身体で隠してでも受けるようにしていることを。
 完全にそこにあると確信し、ウィーリィとフォアローゼスの間に熱線を割り込ませ、一時フォアローゼスの目を隠しながら、シャーリーはウィーリィの目を一瞬見据え。 
 ――ウィーリィくん、間違いないよ。
 ――応、やっぱりそこにあるな。
 目は何よりも言葉を雄弁に語り、確信を得るとウィーリィは改めて大包丁の柄を握り。
 ウィーリィの斬り込みを援護するかのように、シャーリーは熱線による弾幕を張り巡らせ、フォアローゼスの動きを縛っていく。
 しかし番犬の紋章以外を撃ち込んだ攻撃の効果は薄く、弾幕を物ともせずに突っ切りウィーリィの下へと踏み込み剣を振るう。
 だがウィーリィも鋭く斬り込まれたフォアローゼスの横薙ぎの一閃を、鉄鍋で叩き落すと入れ替わるように――大包丁へ紅蓮の業火を盛らせ。
「――見切ったッ!」
 意趣返しの如く、フォアローゼスの放った横薙ぎにも勝るとも劣らぬ力強く、熱い大包丁の一閃が襲う。
 されど彼の踏み込みが一歩及ばなかったか、寸での所でフォアローゼスは身体を逸らし、ウィーリィの斬撃を躱す。
 渾身の一撃を凌いだフォアローゼスが軽く笑い、返しの刃として突きを繰り出せば、咄嗟に鉄鍋で受けたウィーリィの身体を後方へ吹き飛ばし。
「悪くはないが、まだまだ甘い……!?」
 しかしフォアローゼスの目には焼け焦げ、落ちた手袋があった。
 顕となった紋章に、あの攻撃はそれを狙っていたのか――と、すぐ様に彼等の狙いにしてやられたと舌打ちする。
「簡単に手は届かないのかもしれないけれど――」
 届くはシャーリーの声、咄嗟に弱点を顕にされた動揺から立ち直り、撹乱しに残像を産み出そうとするも遅く。
「だからこそ価値があるんだから!!」
「くっ」
 放たれた熱線の弾幕がそれを悉く貫き、狙い澄まされた熱線の一条が紋章を目掛けて飛ぶ。
 それを咄嗟に手を動かして凌ぎつつ、立ちはだかるウィーリィをそのまま斬り伏せんと剣を振り下ろす――が、力強く重たい大包丁の一撃がそれを横から打ち据えて逸らし。
 防御も何もかもを投げ打ち、攻撃に全てを割り振った勢いを乗せ、紋章を力強く大包丁で斬り上げる――!
「諦めなければ、どんなお宝にだって届くんだよ!」
「これが、俺達の! みんなに示す希望だ――!!」
 そのまま膝をついたフォアローゼスの手の甲へと、極めに極めた料理人の、幸福の道筋を切り裂き開く刃が鋭く斬り込まれ。
 番犬の紋章を深く切り裂かれた激痛に叫ぶ第五の貴族へと、宝を決して逃さぬ海賊の目が狙い澄まし撃ち込んだ数多の熱線が突き刺さり。
 希望を取り戻す戦いの始りを、彼等二人は見事に制するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
私から血を奪うのは不可能です
傷を塞ぐ焔が牙を拒むから
呪いの言葉は雑音でしかありません
私の心はwithとの思い出でいっぱいだから
でも、あなたの早さは認めます。私では追えません
だから最初から追わない。【カウンター】を狙う

早すぎるから攻撃はほぼ勘で防ぐしか無い
いつかはwithを弾き飛ばされるかも
でも追わない
攻撃を受けた方向に踏み込み、どこでも良いから掴む【怪力】
残像を追うことは出来なくても、攻撃を受けた瞬間なら、本体を捕まえられるかも
捕まえたら、左手に手を伸ばして掴む
with!お願い!
自身の腕がどうなろうと構わない【覚悟】
呼び寄せたwithで紋章を貫きたい

そう、未来を辿るのはあのヒト達
過去は海に還れ



●繋ぐ時の理
 紅薔薇の花弁を伴う白刃と、重厚な鉄塊の如き巨大剣が激しく打ち合い火花を散らし合っていた。
 祭壇の薔薇を舞い上げ、黒き疾風となり数多のヒット&アウェイを繰り返すフォアローゼスの攻撃を、結希は懸命に大剣で受け、時に流していく。
 永劫にも等しい程に濃密な打ち合いの中、忌々し気にフォアローゼスは眉間に皺を寄せ吐き捨てる。
「君からは何も奪えない」
「ええ。……私には、いっぱいですので」
 ――仮にその身に牙を突き立てようと地獄使い(ブレイズキャリバー)の身体に流れる血は炎と化して、突き立てられた牙を灼く。
 教団の残影が産み出す悍ましき呪詛が心を蝕みに掛かろうと、共にある<with>の思い出は強く心を支える柱となり蝕みを無に変える。
 唯一に残影を伴う素早さのみは見切れず追い切れはしないが、野生めいた勘に頼りつつも一撃一撃の僅かな隙間を察し懸命に剣の腹で防いでいく。
「では奪いはしない。潰すのみだ」
 されど攻撃の苛烈さはそれでも尚凌ぎ切れるものでなく、フォアローゼスの剣が大剣と手の隙間に潜り込むと、梃子の原理を以て引っ掛け結希の手からそれを弾き飛ばす。
「withッ……!」
「最早頼る者も無し、かな」
 この優位に一気にトドメを刺しにいくように――勝利を確信し、剣を結希の胸へと目掛け突き出していたフォアローゼスは次の瞬間には目を見開き慄いていた。
「!!?」
 何故ならばその手首を強引に引っ掴み、逸らしていた結希の姿がそこにあったから――それはあまりにも危険な賭け、手首を掴み逸らすタイミングが僅かでもずれれは胸を貫かれ命を絶たれていた決死の賭け。
 だがそれを彼女は見事に制し――そして叫ぶ。
「――with! お願い!」
 結希の声に応えるかのように、大剣が勢いよく風を切り裂き、旋回しながら飛んで引き寄せられていく。
 生来の力量の差を以て強引に振り解こうとしても、強引に振る手に引っ張られ悲鳴を挙げる彼女の腕の音を聞き入れながら、フォアローゼスは叫ぶ。
「止せ……! どうなっても知らんぞ!」
「そんなものは、覚悟の上ッ!!」
 ――過去は過去。所詮は過ぎ去りし者。それが現在を侵すことなど、在ってはならない。故に彼女は覚悟し、踏み込む。己の今を犠牲にすることも厭わずに。
「そう、未来を辿るのはあのヒト達。過去は海に還れ」
「このっ……!」
 藻掻き続ける過去の亡霊の手の、番犬の証が刻まれた甲を共に在る心の大剣が覚悟に応えるかの如く、強かに斬り裂いていた――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季乃・瑠璃
緋瑪「どうせ手間だけ掛かって大して役にも立たないんだし、良いんじゃないかなー」
瑠璃「確かに紋章は脅威ではあるけどね。私達猟兵が今までどれだけの紋章持ちを倒してると思ってるの?」
緋瑪「わたし達に殺せない者は無い。行くよ、瑠璃」
瑠璃「紋章も第五の貴族も全て殺すよ。行こう、緋瑪」

UCで分身

二人でK100二丁持ちで連射【ドロウ、早業】。
右は凍結魔術【属性攻撃】、左手は雷撃魔術を付与した弾丸を浴びせる事で、切り払われても雷撃と凍結で敵の動きを鈍らせていき、追撃の凍結式ボム【属性攻撃、範囲攻撃、爆撃】で一時的に完全に動きを止め、左手の甲に
【限界突破】【ジェノサイドブレイカー】を発射するよ!



●留まらぬ殺し
「わたし達に殺せない者は無い。行くよ、瑠璃」
「紋章も第五の貴族も全て殺すよ。行こう、緋瑪」
 ――さぁ、わたし達の殺戮を始めよう。
 命を削ることも厭わず、殺すべき者を殺す決意が産み出す、膨大なオーラが彼女達を覆い、彼女達の殺しの力を極限までに高めていく。
 真の力に目覚めた瑠璃と緋瑪は、フォアローゼスが剣を構えると同時に、それぞれに二挺拳銃を取り出し銃口を向ける。
 すれば一斉に、拳銃から放たれる弾丸の纏う限りない極低温が大気の塵を凍てつかせ、弾ける音響かせ飛ぶ。
 咄嗟にバックステップでフォアローゼスがそれを躱せば、撃ち込まれた箇所から白く広がる霜が祭壇も、紅薔薇も凍てつかせ、極低温の猛威がフォアローゼスに向けられていった。
 そして同時に放たれた弾丸は薄暗くもあった祭壇を鮮やかに照らす、激しい稲光を纏った弾丸だった。
 測定するも馬鹿げた圧と量を備えた雷が迸り、極低温の生み出した超電導を伝い容赦なく牙を剥く。
 いずれも命を振り絞り生み出された力を纏い、一発一発が必殺の領域と化しフォアローゼスを追い詰めていくが。
「一筋縄ではいかないか。だが……これまでの手間の補填とする価値はある」
 ニヤリと唇の端を釣り上げ、フォアローゼスは弾丸を斬り払いながら己の昂ぶりを示した。
 必殺の銃弾を斬り払えるのは流石であるが、やはり極低温と流し込まれる雷の影響は無視もできないものであり、次第に躱し斬り払う動きにも鈍りを見せていく。
 それでも尚、油断せずに銃弾を撃ち込みながら殺人姫達が第五の貴族の言葉に返す。
「どうせ手間だけ掛かって大して役にも立たないんだし、良いんじゃないかなー」
「確かに紋章は脅威ではあるけどね。私達猟兵が今までどれだけの紋章持ちを倒してると思ってるの?」
 ――確かに敵は強大、封じ込められている手応えがあって尚、予断を許さないほどの相手。
 されどそのような相手など幾らでも屠り去ってきた身、故に瑠璃と緋瑪は凍てつき雷に痺れるフォアローゼスへ爆弾を投げ込んだ。
 極低温の暴風が弾け飛び、本格的に彼の身を氷の中に閉じ込めると、一斉に銃を――銃口に膨大な魔力を束ねた銃を突き出した。
「でもまあ、補填の前に清算して貰うものがあるよ」
「そう、見たくもないものを見せてくれたお礼を、ね」
 振り絞った生命の力を全て束ね、彼女達は引鉄を引く――狙いは左の手の甲に悍ましく存在感を放つ番犬の紋章。
 銃口から解き放たれた全てを滅する破壊の閃光は、一瞬にして紋章諸共にフォアローゼスを包み込み、その身を激しく灼く――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
……ああ、貴様の言う通りだ。
見せなけばならない。辿るべき未来を。

黄金魔剣を振り抜き、【斬撃波】で散っていた紅薔薇を巻き上げながら【切り込み】鍔競り合いに持ち込む。

無論、力押しだけで優勢をとれるわけもない。
巻き上げた紅薔薇に紛れて(【地形の利用】【目潰し】)UC【黒と青の舞刀曲】の短剣【誘導弾】を【投擲】。
狙うは薔薇の魔剣を握る左手。在るであろう紋章を傷つけ同時に剣振るう握力を奪う。(【部位破壊】【武器落とし】)
首尾よく敵を弱体化できたならそのまま競り合う黄金魔剣を押し込み【なぎ払い】だ。

俺が見せなけばならないのは、己の感傷でも不安でもない。
民に未来と在るべき希望を示す!それが黒騎士の務めだ!



●黒騎士の示す未来
 示す未来。その言葉に黒騎士の兜の隙間から青白く灯が一つ揺らめきを見せ、佇んでいた騎士<ルパート>は確かな一歩を踏み出した。
 その手に黄金に輝く魔剣を握り、フォアローゼスへ切っ先を突き付けて。
 背に受ける視線を感じながら、ルパートは今、確かに固まった決意の心を第五の貴族へと示した。
「……ああ、貴様の言う通りだ。見せなけばならない。辿るべき未来を」
 そして言うが早いか、ルパートは力強く床を蹴り出すとフォアローゼスへ黄金の魔剣を以て斬り込んだ。
 振り抜かれた魔剣と踏み込みの持つ激しい風圧が、敷き詰められた花弁を巻き上げ散らす中、黒騎士と貴族の魔剣が打ち合う火花が迸る。
「ッ……、敗北の未来を、か?」
 足の一歩も揺らぐことなく、僅かに腕を振るわせつつも真っ向からルパートの魔剣を受け止め、鍔迫り合いの様相を呈したフォアローゼスが嘲笑う。
(力押しだけでは無理か……)
 そこは曲がりなりにも強大な第五の貴族というだけのことはあり、押し合っていて感じるは確かな不利。程なくして自分は恐らく負ける――だが彼に秘策はあった。
「……我が名に栄光はもはやなく」
 鍔迫り合いを続けながら、フォアローゼスの嘲りに動ずることもなくルパートは呟く。
 フォアローゼスよりの押し込みがルパートの身を僅かに退かせ始めたその時、今だ舞い上げられ続け満たされた薔薇の花弁の一部が、僅かに揺れ――番犬の紋章に激しい熱が撃ち込まれる。
「されど、我が剣の輝きは未だ鈍らず!」
「ッ、おぉっ……!?」
 番犬の紋章を灼いていたものは、青白く燃える鉛を纏った短剣だった。
 意のままに翔る、熱く焼けた鉛を纏った投擲短剣を舞い上げた薔薇の花弁に隠し、鍔迫り合いに眼を向けさせたまま密かに番犬の紋章へと突き立てていた。
 黒騎士ルパートの剣技、その極致の妙技が確かな楔となり、フォアローゼスの力を奪う――面白い程に、押し合いで感じていた劣勢がもはや感じられない。
「俺が見せねばならないのは……」
 ――己の感傷でも不安でもない、掛けるべき言葉も見失っていた民にその背で今度こそと語るように。
 故に今、力を彼は振り絞る――黄金の魔剣を握る手に、一際に力を籠めて。滾る力の限りを以て、一気にフォアローゼスの身体へと押し込む!
「民に未来と在るべき希望を示す! それが黒騎士の務めだ!」
 薙ぎ払われた黄金の軌跡を彩るは敷き詰められ散った薔薇の鮮やかな花弁と、数多の民の血を吸い上げ虐げた悪鬼の血飛沫の紅。
 眩くも力強い、黒騎士の魅せた輝かしい未来と希望の色を示すような黄金の斬撃が、身を大きく斬り裂かれた第五の貴族を盛大に壁へ叩き付けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイ・バグショット
へぇ、コイツが第五の貴族…ねェ。
ヴァンパイアに異端の神々、魔物に紋章と第五の貴族とは…故郷ながらどうしようもねぇな
ただの人が生きるには過酷過ぎる

ここで倒さなければ同じことの繰り返しだろうな
紋章が増えれば被害も増す
そうなれば顔見知りの一人や二人巻き込まれてもおかしくない

不幸の芽は早く摘むに限る
幸い、雑草取りや害獣狩りは得意なんだ。
なァ?と再び刻印による猟犬二体を顕現させる

狙うは紋章
先の戦いで気配は犬どもが覚えている
喰らいついたら決して離すな
食いちぎるまでがお前らの仕事だ

そして草刈りは俺の仕事
召喚した七つの拷問具『荊棘王ワポゼ』
高速回転しながら飛翔
ひとたび命中すれば
肉を弾き飛ばすように傷口を抉る



●毒草刈り
 一見すればただの優男にも見える、流麗な青年をまじまじと見、ジェイは思わずに呟いた。
「へぇ、コイツが第五の貴族……ねェ」
 此の世界は唯の人が生きていくには、あまりにも多くの困難があり過ぎる。
 吸血鬼、異端の神々、唯でさえ貧しい大地――数多の魔物と紋章、そしてこの目の前にいる第五の貴族。
「どうしようもねぇな」
 故郷ながらに――ジェイという男が吐き捨てるのも無理からぬことで。
 されどここで倒さねば時は数多に繰り返され、新たな災厄は増やされて、被害に遭う者も増える――その内に知己が含まれないとも限らない。故に。
「不幸の芽は早く摘むに限る」
「全く以て同意だ。私は少々遅かったかもしれないがね……」
「だから手遅れになる前にすれば良かったろうに」
 不愉快を隠そうともせずに吐き捨てるフォアローゼスに対し、ハッと鼻を一つ鳴らし。
 刻印よりジェイは再び二頭の血液で出来た猟犬を召喚する――今からお前を狩るぞ、と言わんばかりに。
「幸い、雑草取りや害獣狩りは得意なんだ。なァ?」
 ――行ってこい。紋章の気配は【なりかけ】を喰らったことで十二分に覚えている筈だ。
 忠実な猟犬がしなやかに身を躍らせ、第五の貴族へと狙いを定める――執拗に、兎にも角にも執拗に狙うは左手の甲。
 耐え難き血の匂い、多くの無垢な命を吸い上げて作られたそれに、脇目もふらず猟犬は喰らいつきにいく。
「しつこいな。全く、本当にっ……!」
 教団の残影が如何に猟犬を振り払いに行こうとも、決して猟犬は逃がしはしない。
 残影の隙間を掻い潜り、覚えた匂いを辿り導かれるように舞い飛ぶ花弁の紅に紛れながら一切の動きに無駄がなく、その牙をフォアローゼスの手の甲に刻まれた番犬の紋章へ届かせにいく。
 一頭が空振りに終わっても、もう一頭が回避の先に構え、その牙を以て番犬の紋章を食い千切る――!
 苦痛の叫びを挙げるフォアローゼスの様を見、ジェイは口元を緩め猟犬達を労うと。
「嗚呼、よくやってくれた……後は俺の仕事だ」
 旋回する拷問器具の風切音も鋭く、大罪断つかのごとく七つの拷問具が唸り、旋回し威容を放っていた。
 大気すらも削り取らんばかりに激しく旋回による唸りを挙げ、茨は清算に傷口へ、猟犬によって傷つけられた番犬の紋章へ突き刺さり抉る――!
「雑草は根から取った方がいいだろ?」
 肌を切り裂き血肉を抉り、敷き詰められた紅薔薇の花弁に血飛沫を紛れさせ、確実に第五の貴族へ裁きを下しながら。
 “草刈り機”の旋回する刃は確かに、第五の貴族を貫き通っていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…まさか、こんな地の底にいるなんて思いもしなかったわ

…ようやく会えたわね、導師フォア・ローゼス

今さら過去に、復讐心に囚われたりはしないけど、
お前達に殺された人達の怨みは晴らさせて貰うわ

肉体改造術式により強化した動体視力で敵の攻撃を見切り、
積み重ねてきた戦闘知識から最小限の早業で攻撃を回避しつつ、
左眼の聖痕に名も無き神の力の欠片を降霊して、
限界突破した時属性の魔力を溜めUCを発動

…私が誰か分からない?まあ、無理も無い
お前達が生贄にした人間を一々覚えているはずが無いもの

…ならば、その両の眼を見開いてとくと見るがいい
今からお前に刻んであげるわ。辿るべき未来というものを、ね

時間の連続性が断たれた"静止した時の世界"に切り込み、
左手の甲に零距離から銃撃を乱れ撃ちして紋章を破壊した後、
前章で取り込んだ犠牲者達の霊魂を吸収した大鎌をなぎ払い、
怪力任せに首を切断する時属性攻撃を行いUCを解除し聖痕に魂を取り込むわ

…喜びなさい。今度はお前が、ご主人様の贄になる番よ
汝、この瞳をくぐる者、一切の望みを棄てよ



●最終地獄の果てに
 戦いは佳境に差し掛かり、息を荒げて尚落ちることなく闘気を滾らせるフォアローゼスの前に、片目の色を変えた女が現れた。
「……ようやく会えたわね、導師フォア・ローゼス。今さら過去に、復讐心に囚われたりはしないけど、お前達に殺された人達の怨みは晴らさせて貰うわ」
 リーヴァルディ・カーライル――第五の貴族フォアローゼスに只ならぬ宿縁を持ち、魔の血脈に連なり魔を滅する者が向き合った。
 只ならぬ彼女の闘気はフォアローゼス自身のそれに勝るとも劣らず、陰惨で冷たい空気を熱く火照らせる。
 リーヴァルディの言葉に首を傾げながらも、フォアローゼスは一瞬考え、牽制に薔薇を投げつけた。石をも容易く貫くそれをリーヴァルディは軽く躱すが、その先へフォアローゼスは魔剣を以て深く斬り込む。
 だがそれを正確に、振り下ろされた剣が寸前で落ちる程の際どい間合いに跳びながらそれを躱し、フォアローゼスの様子に彼女は告げる。
「……まあ、無理も無い。お前達が生贄にした人間を一々覚えているはずが無いもの」
「その通りだ。記憶力が悪い方ではないが、何分、多過ぎてね。覚え切るには少々疲れるものだ。捻じ伏せ糧とすればどの道同じことだがね」
 肩を竦めわざとらしく掌で何かを握り潰すような動作をし、フォアローゼスは語る――そうしてきたのは数え切れぬと。
 嘲笑うかのように投げ込まれる薔薇を、極限まで強化した動体視力を以て正確に軌道を見切り、最低限度の動きを以て石畳に薔薇を根付かせるよう仕向け。
 傲慢極まりない愉悦に満ち溢れた表情を冷たく睨みつけると。
「……ならば、その両の眼を見開いてとくと見るがいい。今からお前に刻んであげるわ。辿るべき未来というものを、ね」
 リーヴァルディの左眼に埋め込まれた聖痕、そこに降臨せし名も無き神――時空を支配する正に神の力の一片を降ろし、限界を超えて溜め込まれた力を今解き放つ。
「……聖痕解放。至高の天より、深淵の獄を賜わん事を……」
 解き放たれた力が時空の連続性を切り離し、その眼に映る世界を時の流れから離断させる――即ち、一時、彼女の眼に映る世界は全て時の流れを停止する。
 こうなれば最早独壇場、制止したフォアローゼスの手の甲、番犬の紋章へと銃口を押し当て、あらん限りの弾丸を撃ち込み、加護を完全に打ち壊すと。
「……今こそ力を貸して」
 振り上げられた大鎌に纏う力は怨嗟の声――フォアローゼスに命を啜り上げられ、結界の贄とさせられた怨嗟の力。
 報われぬ弄ばれた想いの報いを刻み付けるかのように、恵まれた剛力を以て振るわれたそれが呆気なく、紋章を抜きにしても頑丈であった第五の貴族の首を刎ねる――!
 だがそれだけに終わらず、リーヴァルディは異端の神の力を収める。
「……喜びなさい。今度はお前が、ご主人様の贄になる番よ」
 断たれた時空が繋がり、世界が時の流れを歩み出したと同時、紋章を破壊された挙句に胴と隔離された首のまま、かつて導師と呼ばれていた者は目を見開いた。
 此処までされれば如何に第五の貴族といえど消滅は免れず、それまでの僅かな間も絶え間なく響く怨嗟の声が魂を蝕み、今わの際にも安らぎを与えぬまま。
「――汝、この瞳をくぐる者、一切の望みを棄てよ」
 零れ征く魂を骸の海へ還す前に、聖痕の輝きがそれを捕え――死後の安らぎも与えぬが如く、聖痕の中にそれを取り込み。
 宿る魂の感覚を確かに聖痕に感じると、リーヴァルディは一つ息を吐き、物陰に隠れている民へと目を向けて。
「……終わったわ。全部、ね」
 ――その言葉で気を緩めた民が躊躇いがちに出てくる様に、一つの因縁に決着をつけた女は安堵したように肩を落とすのだった。


●嵌った深みより抜け出して
 全ての戦いに決着はつき、猟兵達は囚われの民を連れて地下都市を抜けていく。
 消耗故か足取りは覚束ない様子であったが、それでも一歩一歩、嵌ってしまった深みから抜け出させるように囚われの民を猟兵達は連れていく。
 ここに全ての決着はつき、数多の命を吸い上げられた悪しき血の結晶は打ち砕かれたのだ。
 谷間に残された怨嗟も第五の貴族が亡くなったことで程なくして解放されるだろう。
 後は彼等を受け入れてくれる場所へ護送するのみ――尤も、これまでの困難に比べれば困難というにも烏滸がましい簡単な仕事であったが。

 やがて地下都市を抜け、人類砦に赴いた猟兵達は、あらかじめ話を通しておいた代表者に囚われの民を紹介する。
 既に同様のケースが多くみられているだけあって、快く彼等は受け入れられ、場所や程度は違えど隷属を強いられ続けて来た者の痛みを分かち合う声が届き――解放された民は静かに涙を零した。

 絶望の深みに嵌っていた民達は、改めて己が解放されたことに噎び泣き、猟兵達に礼を述べていく。
 失われた命は戻らない、されど今を生きる命の解放と死後に囚われた怨嗟も解き放てたことは確かであり。
 何時までも終わらぬ歓喜の声に漸くに戦いを無事に終えられた喜びを感じ入り、猟兵達は暗き世を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月15日
宿敵 『導師・フォアローゼス』 を撃破!


挿絵イラスト