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アポカリプス・ランページ⑯〜タイムイズオンマイサイド

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「まさか、6体のオブリビオン・フォーミュラを圧倒するとは」
 デトロイト工業地帯。現在は、マザー・コンピュータによって機械軍製造工場と化しているその場所で、当のマザー・コンピュータは自らを生体コアとする超巨大コンピュータの専用ケージの中で、自らの思索を改める。
 これまでに収集したデータを基に算出したデータを、猟兵という存在はあっさりと超えてくる。
 時間集積理論が全て誤りであるとは言わないが、とりわけ生命の埒外とされる猟兵への認識と理解は改めねばなるまい。
 彼等こそ、マザー・コンピュータの求める永遠をも打倒する力を秘めている。
 この宇宙が熱的死を迎えても、超新星の誕生によって静寂に包まれても、それでもなお、その停滞を打破するだけの意志の力を有しているのかもしれない。
 なんと恐ろしく、邪魔な存在だろう。
 透明で純粋な意思に濁りが生じるような感覚がある。
「いいえ、私は真理を求める時間が欲しいだけ」
 それこそ、永遠にも等しい時間が。
 だからこそ時間の停止、永遠に止まった世界ならば無限に思索に耽ることができる。
 その過程で生まれた埒外の力など、本来は歯牙にもかけぬ筈だった。
 どこからその想定外が生まれ、そして成長してしまったのか。
 これもまた考えるテーマの一つだろうか。
 まあ、永遠が遠くなるならば、手繰るための手立てを立てればいいだけのこと。
 差し当たっては、自分を狙い撃つであろう猟兵たちを退治せねばなるまい。
 なんと言う事はない。
 タイムフォール・ダウン。
 時間操作の力の前に、対抗する術はあるまい。
 まさかこれに対抗する術など……。
「いいえ、私としたことが……未来など考えてどうしますか」
 コネクタを伸ばす透明なケージの中で、空ろな瞳が映すのは、過去でも未来でもない。

「時間を操る! これほど強力な力がありますかね」
 グリモアベースはその一角、給仕姿の猟兵、疋田菊月は、予知の内容を説明しつつ、集まった猟兵たちにお茶を供して、ぐっと力こぶを作る。
 今度の相手はフィールド・オブ・ナインの一人、マザー・コンピュータ。
 彼女は現在、デトロイトに建造された機械都市の中で、自らが作り出した超巨大コンピュータの生体コアとして存在しているという。
「彼女自身は、生身の人間に近いみたいですが、そこはオブリビオンですから、容易ならざる相手なのは当然の事……。
 何よりですね。限定的ながら、時間を巻き戻したり早送りしたり、というのを行いながらユーベルコードを使ってくるんだそうです!
 ちょっとインチキ過ぎませんかね」
 大袈裟に身振り手振りを交えつつ、マザーの能力がいかに強力であるかアピールする。
 しかしながら、絶対無敵にも思えるマザーの力も、限定的である事には違いない。
 時間を操るタイムフォール・ダウンを使う間、マザーは一切の機械制御ができなくなる。
 そしてその能力の範囲も、彼女の入るケージが設置されるドーム状の大きな部屋に限定される。
 どうやら時間操作は、任意の対象を選べはするものの、影響は機械にも及ぶようである。
「万能とは言い難いですが、それでも時間操作は驚異の能力です。
 先制攻撃はまず不可能でしょうし、何よりも「巻き戻し」や「早送り」に対処する必要がありそうですねー。
 うーん、やっぱり「一時停止」とかですかねー?」
 おどけて見せる菊月に悲観するようなものは無く、猟兵たちの勝利を信じて疑わない様子であった。
「とまぁ、相手はさすがにフォーミュラの一人というだけあって強力ではありますが、皆さんはいつだって、そういう脅威を退けてきました。
 彼女を逃せば、アポカリプスヘルは彼女の作る機械獣で溢れ返り、やがては永遠を手にしてしまうかもしれません。
 それはちょっと御免なので、是非とも皆さんの力を貸してください」
 ペコリと頭を下げると、菊月は猟兵たちを送り出す準備を始めるのであった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
 タイミング的にボスキャラのシナリオを出すのにいつも出遅れてしまいましたが、そろそろ今月の戦争も終盤。
 せっかくだから、ボスキャラとも戦ってみようということで、なんか露出が凄い事になってるマザー・コンピュータ戦となります。
 能力を使う際は、赤く光るそうです。
 赤くなるくらいなら、何か服を着てください。
 冗談はさておいて、ボス格の一人なので、先制攻撃をしてきます。
 それに加え、マザーさんはタイムフォール・ダウンによる時間操作を行ってきます。
 時間操作による『巻き戻し』や『早送り』を含む先制攻撃に対処するようなプレイングを盛り込んでもらえると、いい事があるかもしれません。
 ちょっとどうかしてるくらいに強いボスとのことですが、時間操作してくる奴なんて、これまでもいましたし、へーきへーき!
 彼女が倍速できるのは2倍~4倍程度らしいですよ。
 断章やプレイング受付期間などは設けず、基本的には再送しない程度にはのんびりやっていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 あ、オーバーロードはお好きにどうぞ。
 増えるのは最低文字数ですので、そんなに違いはないとは思います。が、真の姿を使いたいぞーという方などは、手段の一つとして用いてもいいかもしれませんね。
 でもたぶん、違いはそんなにないと思いますよ。
 それでは、皆さんと一緒に、楽しいリプレイを作っていきましょう。
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第1章 ボス戦 『マザー・タイムフォール・ダウン』

POW   :    タイム・タイド・アタック
【時間質量の開放がもたらす超加速】によりレベル×100km/hで飛翔し、【速度】×【戦闘開始からの経過時間】に比例した激突ダメージを与える。
SPD   :    タイム・アクセラレーション
【時間の超加速】による素早い一撃を放つ。また、【時間質量の消費】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    オールドマンズ・クロック
攻撃が命中した対象に【時計型の刻印】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肉体が老化し続けること】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:有坂U

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

トリテレイア・ゼロナイン
永遠の思索の為に時を停める…その個人の欲望に根差す暴挙を許す訳にはいきません
騎士として討たせて頂きます

防御姿勢を取った後で●怪力で大盾を●投擲し質量攻撃への対処を強要
『巻き戻し』で対処されれば防御姿勢に戻り続く先制攻撃を大盾で防御
『早送り』で回避後に攻撃されれば●瞬間思考力で反応して●見切り剣の●武器受けで防御

例え刻印が刻まれようと、私は銀河帝国在りし日に建造されたウォーマシン
老化の影響は軽微…!(●継戦能力)

用途申請、フォーミュラの撃破!

UCでドームを虐殺兵装圏に変換

巻き戻しに早送り…もはや科学の域を超えた超常です
封じさせて頂きました

壁から生えた銃器の●乱れ撃ちで●蹂躙
止めに剣を一閃



 デトロイト工業地帯は、大規模な改造がされてしまった。
 一面の灰色は全て機械化された都市であり、あちこちで明滅する光は、それがまるで生きている金属であるかのようでもあり、その実、機械化都市はそれが一匹の生物であるかのように一人のオブリビオンの制御下にあった。
 明滅し、脈動する機会都市のその最奥、超巨大コンピュータの安置されているポイントには、最後の障壁であるドーム状の部屋が設けられ、送り込まれてくる猟兵たちを阻む。
 或は、グリモアによる予知を更に演算して先回りして予知した猟兵ごと自陣に引き込むトラップも用意されていたが、その罠を素通りされたとて、このデトロイトの支配者たるマザー・コンピュータ本体が相手をするまでである。
 このドームは、その為に用意された処刑場なのだから。
「まったく予知とは恐ろしい。永遠を欲するために用意したあらゆる計略を無視してしまえるのですから……」
 この都市を支える超巨大コンピュータ、その生体ユニットであるマザー・コンピュータは、ドームの中央に埋まった半透明のケージの中で、うっすらと瞼を上げる。
 あどけなさを残す少女の瞳が見つめるのは、この部屋に送り込まれてきた猟兵の姿。
「永遠の思索の為に時を停める……その個人の欲望に根差す暴挙を、許す訳にはいきません」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、その名の示す通り、騎士を名乗るウォーマシンである。
 要人警護のために建造され、その白い騎士甲冑を思わせる装甲、佇まいに恥じぬ騎士道精神を持ち合わせる。
「誰しもが、目的の為に粗暴な夢を見る。私にはそれが実現可能であり、手段を持っている以上、それを行うまで。衝突は不可避ですね。考えを尽くすだけ時間の無駄かと」
 ぼうと、焦点の定まらぬ眼差しで白い騎士甲冑を見つめながら、マザーは感情のない言葉を用いる。
 生体コアながら、なんと頭の固い。
 奇しくも同じ結論に至ったのは妙な気分だが、トリテレイアは話し合いが無益と見るや、剣と大盾を構える。
「騎士として、討たせて頂きます」
 大盾を前面に、防御姿勢を取りながら前進する。
 そしてマザーの攻勢が始まるよりも前に、その大盾を思い切り投げつける。
 頑丈そうなケージに包まれているとはいえ、トリテレイアの大盾はその見た目通りに凄まじい重量と頑丈さを誇るため、質量兵器としても効果は高い。
 一撃で破壊とまではいかぬでも、そのケージにヒビでも入れられれば儲けもの。
 回転を加えながらマザーへと一直線に飛んでいく大盾は、防がれる手立ても無いまま命中……するかに思われた。
「むう!」
 命中すると確信したその瞬間、トリテレイアの思考に重力アラートの警告。
 空気が質量を得たかのように周囲の時間の流れが鈍化し、逆行をし始める。
 ウォーマシンの膂力のままに擲った大盾は、その時間の遡行に従って巻き戻り始める。
 ただ時間が巻き戻る以前と異なるのは、討伐対象たるマザーのその淡い髪が赤く発光している事か。
 抗えぬ時間の退行。手元に戻る大盾。
 しかし、あらかじめ時間操作については、グリモアベースで聞き及んでいる。
 それよりも以前に行っていた防御姿勢が功を奏し、巻き戻された直後に降り注いだ銃弾の嵐を、トリテレイアは盾を投げる姿勢から即時防御に戻し、それをやり過ごす。
 その盾の奥、縦縞のスリットの入ったバイザー越しにアイカメラを光らせれば、攻撃の正体もおのずと理解できる。
 ここはマザー・コンピュータという怪物の腹の中でもあるのだ。
 ドーム状の対爆障壁のあちこちからは、無人のタレットが顔を覗かせては射撃を行ってくるようだ。
 だが解せないのは、あれだけの緩慢とした時間遡行の瞬間に、なぜそれらを使わないのか。
 やはり……いいや、結論付けるのはまだ早い。
「時の流れとは残酷なもの。いつまでその盾が使える事でしょうか」
「……なんと」
 頑丈を誇る大盾が、銃弾の雨を浴び、いとも簡単に拉げ砕けていく。
 生半可な銃弾では早々砕ける事もない筈だが、その壊れ方は恐らく経年劣化と金属疲労に依るものだった。
 見れば、銃弾を浴び続けた大盾のあちこちに、時計のような刻印が刻まれ、それが大盾を急速に劣化されているようだった。
「銀河の果てより来たれし騎士殿。もう何年、何百年、年を取れば朽ちる事でしょうか」
「例え刻印が刻まれようと、私は銀河帝国在りし日に建造されたウォーマシン
 老化の影響は軽微……!」
 用を成さなくなった盾を投げ捨て、降りかかる銃弾を、今度は剣を盾代わりに構え、その無数の弾道を見切っていく。
「……。どうやらそれは、絶対不壊の剣。いくら時を重ねても砕けぬ様子。
 ならば、もっと、数を用意せねばなりませんね」
 ばしゃりばしゃりと、隔壁が裏返るようにして、そこらじゅうからタレットやミサイルポッドが出現し、トリテレイアを狙い撃ちにする。
 トリテレイアの剣が大盾のように破壊できないと見るや、飽和攻撃による本体破壊に切り替えたらしい。
 相手も余力を残すつもりはないらしい。
「出し惜しみ無し、ということですね。ならば、こちらも……!」
 戦いの最中、頭部を狙う銃弾を防御するように、両手で握った電脳禁忌剣アレクシアを剣礼の如く立てる。
 絶対不壊と評されたその剣には、現実を改竄するほどの高度な電脳魔術が隠されている。それこそ、使用者であるトリテレイアを以てしても使用制限があるほどに強力なものである。
 そして、トリテレイアはその使用を今、解禁する。
「用途申請、フォーミュラの撃破!」
 【銀河帝国未配備A式フォースナイト殲滅圏展開兵装】の仕様を申請した瞬間、その判定は剣内部に配された判定機関により例外的に承認。
 周囲のあらゆる無機物の情報は書き換えられ、生物の様でありながら無機物に過ぎないマザーの兵器郡は、トリテレイアの呼びつけた虐殺兵装に並び変わる。
 その一斉射撃により、マザーの武装はそのことごとくを潰され、そうして、道が開く。
 銃弾の暴風、その渦中をすり抜けるかのように駆ける騎士が、マザーのケージに取り付き、その禁忌の剣を引き絞る。
「巻き戻しに早送り……もはや科学の域を超えた超常です。
 それももはや、封じさせていただきました」
「ええ、この場に於いては、もはや無意味ですね」
 肉薄する距離に至っては、巻き戻しも早送りも無意味だ。
 どこか安堵したかのように目を瞑るマザーに対し、トリテレイアは剣を一閃。
「これで、永遠が──」
 砕け燃え落ちるケージと共に、周囲の機械が停止していくのを感知しながら、トリテレイアはこの場を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

卜二一・クロノ
「捉えたぞ、我が機織りを阻む者よ」

 時空の守護神の一柱、あるいは祟り神として参加します
 時の糸を紡ぎ、歴史の柄を織る者にとって、好き勝手に時間を遡る行為は織り直しを強要するので害悪
 そのような、猟兵やオブリビオンの事情とは無関係な動機で祟ります

 時間を操るユーベルコードを以て、敵の時間を操るユーベルコードを完封します

 神の摂理に反する者には神罰を

 その為なら、ある程度のダメージはやむを得ないものとします

 咎人に死の宿命を見出したら、満足して帰ります

※時間操作と無関係なオブリビオンにはただの八つ当たりをします
※時間操作を行う猟兵は見て見ぬふりをします。できれば同時には採用しないでください



 その世界の硬質な歩みには、そこそこ辟易するものがあった。
 ただ、彼女はこの巨大なコンピュータへの道のりを阻むドーム状の広い一室の気味の悪さよりも、ただ、時空間の歪みを検知してそれの制裁を行うためだけにやってくる。
 時空の守護神の一柱として。或は、祟り神として。
 卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)は、時間を弄び、あまつさえ自身の永遠の為に世界の崩壊、即ち時間の停止を目論むマザー・コンピュータの存在を容認できない。
 長い黒髪に黒い瞳。
 装いこそ近代的だが、その存在を深く知ろうとするほどに、時の深淵を見る事だろう。
 彼女は時の糸を紡ぎ、それを織りなして歴史の布を作り出す。
 それ即ち、埒外の時間遡行や歴史改変などを検知すれば、織り直しを余儀なくされるという事である。
 神であろうとも、そのような徒労は容認できるものではない。
 要するにまぁ、余計な仕事が増えるのが嫌なので、気に食わないからぶん殴りにきているわけだが、世界の崩壊がどうこう言う以前に害悪だから排除に来るという辺りが、実に神様である。
 とにかく、自分の仕事の邪魔者を発見したトニーに容赦する理由は一つも無かった。
「捉えたぞ、我が機織りを阻む者よ」
 だから、多くの防衛機構が阻もうとも、部屋の中央でケージの中にこもるマザー・コンピュータを倒す前に、一言言っておきたかったのである。
「貴女にとって、時は糸。私にとっては質量のある物。お互い、認識の異なる物の扱いについて、意見の相違、軋轢はつきもの。
 されども、時間は誰のものでもない。独占したければ、持っている者すべてを排除するしかないのでは?」
 煽る様なマザーの言葉に、もはや問答の必要はない。
 害悪とした相手に、神は語る舌を持たぬ。
 ただ、両の足で前進し、接近を試みるのみ。
 相手は時間を操る。それでも、時空の守護者である神が、その影響を受けるだろうか。
 否である。
 その自信が、油断を呼ぶ。
 ドームの隔壁。それらのあちこちから機銃が顔を出し、一斉に火を吹いてトニーの歩みを阻まんとする。
 トニーはそれをすらも避けず、被弾を無視して前進を続ける。
 多少のダメージは問題ない。
 今この場に顕現する理由は、時間を弄ぶ者に対する神罰。
 それを行えば、ここに留まる理由すらないのだ。
 逆に言えば、マザーが時間操作を行わない限り、それ以外に無頓着な神は、神罰を下せない。
 そのために、わざわざ現行犯を待たなければいけないのは、何とも業腹である。
 相手もこちらも、油断しすぎた。
 マザーはただ近寄ってくる相手を、只の人と認識し、最初から全力で屠るべきを打ち損じた。
 戦車の装甲をも削り取る様な大口径機銃の掃射に腕や足の肉が削げ飛んでも、神は止まれない。
「なんと恐ろしい。貴女のような強情を、私は一人知っています。
 尤も、彼は偽物の神として作られたものですが」
 マザーの言葉に耳を貸すことはない。
 ただ、銃弾を受けた場所のあちこちには、時計のような刻印が浮かぶ。
 なるほど、どうやらこの刻印を受けたものは、加速的に老化するようだ。
 この肉体は神であるがゆえに、時間の影響を受けないようだが、しかしこれも時間を弄ぶものには違いない。
「神の摂理に反する者には神罰を」
 先制攻撃は貰ってしまったが、それも致し方なし。
 それもあってようやく、負傷しながらもマザーのケージに取り付くことができた。
 神の摂理に背く行為には、相応の罰が降る。
 これは必然であるとばかり、拳がケージを突き破り、続く貫手が中身の柔らかなマザー本体に到達する。
 【神罰・時間操作の代償】は、時間操作を行うものを絶対に許さない。
 その能力を封じ、これまでに操作した時間に応じて、代償を支払わせる。
「ああ、時の巡りを感じる……この先に永遠は……」
 急速に老いていくケージの中のマザーは、最後まで言葉を紡がぬまま、その身を干からびさせていった。
 フラスコの中で生まれた咎人は、その業をフラスコの中で終えた。
 そこに一定の満足を得たのか、トニーは肩で息をつくように一段落して、踵を返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユリウス・リウィウス
俺たちはようやく、フィールド・オブ・ナインの中枢へと手を届かせたってわけだ。そうだろ、なあ、おい?
なら、やることは一つ。オブリビオン・フォーミュラをバラすだけだ。
さあ、死合おうぜ、マザー・コンピュータ!

敵の先手は、超加速による一撃。なら取る手は決まりだ。最速には不動。
敵が4倍速で俺の時間が四分の一になっていようが関係無い。
必中の間合いを持って、インパクトの瞬間を「見切り」、それに合わせて自然に両手が剣を抜き放つ!

浅かったか? こっちもヒヤッとしたがな。
どうする、互いの生命をかけたこのゲーム、付き合う気はあるかい?
マザーが攻撃を再開したら、こちらも「生命力吸収」「精神攻撃」の双剣撃で迎撃しよう。


ルドラ・ヴォルテクス
◎アドリブ連携OKです

『異常な時間流を観測!』

これが奴の時間操作か!

【止め処なきジャガンナート】
老化効果か、ジャガンナート化で外殻強化、剥離と再生を繰り返し効果は最小限へ。

あとは時間操作か……!
巻き戻しは俺には効かない、ジャガンナートの本質は留まらぬ奔流、押し留めておけぬ力。

早送りは、限界突破で予測値を上回る。四倍までが限界ならば、それの枠内での予測で可能。
タービュランス、チャンドラーエクリプス無限軌道鞭(ナーガラジャ)、暴風と蛇の王の追撃から逃れられるかな?

俺を早送りしてみるか?もしかしたら寿命で死ぬかもしれないぞ?

もっとも、おまえはここで討つ。
おまえの生み出す邪智は世界を脅かす。



 デトロイト工業地帯だった機械化都市。
 全てが眠っているようで、その実、一人のオブリビオンの為だけに存在する金属の皮膚を持つ一匹の巨大な獣。
 世界に永遠という名の破滅を齎すために作られた金属の街々は、明滅と胎動を繰り返して、殺戮機械を生み出すという。
 その心臓部であるという超巨大コンピュータを収めるという区画には、極めて頑丈な隔壁で覆われたドーム状の部屋が設けられ、生体コアに定められたオブリビオン・フォーミュラこそ、マザー・コンピュータその人である。
 永遠の思索のため、世界を破滅まで追いやり、全てを停止させるという恐るべき野望を抱く彼女は、その悲願のためにあらゆる手段を講じてきた。
 彼女が生み出した機械群、その最たるものであるスーパー戦車であろうとも、彼女の目的を達成させる手段に過ぎなかった。
 もはや彼も滅ぼされてしまったが、まだまだこの身と超巨大コンピュータの存在ある限りは、いくらでも手の施しようはある。
 施策と演算に耽る、ケージの中の少女が、うっすらを瞼を上げる。
 彼女の大望を阻む存在、猟兵の接近を感じ取ったのだ。
 彼女の瞳には、未来も過去も映らない。
 全ては、永遠に思索し続けられる環境へ至る、煩わしい微睡に過ぎない。
『反応確認。マザー・コンピュータです』
 どぉん、と隔壁を打ち付ける衝撃音と共に、その一部が外部より破壊されて、風変わりな二人組がドームに侵入してきた。
 褪せたような長い銀髪が、外気との気圧差で抜ける風に大きく揺れるのを気にせず、素肌に吸い付くようなマシンスーツによる情報収集の報告が、ルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)の表情を険しくさせる。
「ああ、見えてる」
 ドームの中央部に埋まる様な半透明のケージの中に、その存在を見出し、マシンスーツに搭載されたあらゆるセンサー、武器類が警戒の色を強める。
 圧倒的な情報量。その存在感の強さに、さしものルドラとて気圧されるものがあったが、彼に後退の意志は存在しない。
「チッ、なんて存在感だ。だが、俺たちはようやく、フィールド・オブ・ナインの中枢へと手を届かせたってわけだ。そうだろ、なあ、おい?」
 ルドラと目的を同じくしたユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)もまた、マザー・コンピュータの玄室に差し掛かり、その存在そのものの力強さに思わず嫌な汗が噴き出るのだが、自らの恐怖心をねじ伏せるかのように声を上げる事で奮い立たせる。
 騎士甲冑に不精髭。生きるに疲れたかのような渋みを感じさせる装いだが、最近のユリウスは、おいそれと死ぬわけにはいかない事情ができてしまった。
 幾度も死ぬような戦いに身を投じてきたし、その恐怖もいくら乗り越えてきたとしても、何度だってのしかかってくる。
 そのたびに、足元を踏みしめて、自分がいま立っている場所を感じる。
 両の足が地についているならば、いつものように戦えるはずだ。
「なら、やることは一つ。オブリビオン・フォーミュラをバラすだけだ」
「だが、奴は、ただそこに居るまま斬られてくれやしない……」
 鉛でも含んだかのように重たい空気を吸い、腹をきめるユリウスに続くように、ルドラはドームの内壁を見回す。
 ここは敵の中枢。
 幾多の戦場を生き抜いてきたユリウスも、禍風すなわちオブリビオンストームを破壊するために作り出されたルドラも、その身を構成する全細胞が、警告を発していた。
 これより先に進むは死。それを想起せずにはいられない。
 時間を掌握するという、圧倒的な力。
 話に聞いていた以上に、それを目にするよりも以前に、その存在感たらしめているマザーの内在する未知が、彼等に二の足を踏ませようと囁きかける。
 だが、退く理由もないし、そんな時間も無いのだ。
「先に仕掛ける。相手は何でもアリでやってくる。連携なんざ、考えるだけ無意味になるだろう。出たとこ勝負ってやつだ」
「だろうな。ずっとそうやってきた。それに、俺の力は、不可逆だ。止まるつもりは無い」
「死に急ぐなよ。お前さん、見たところまだ先は長いぜ」
「……心に留めておく」
 両の腰に下げた生命と魂を刈り取る黒剣をそれぞれに抜き放ち、ユリウスは率先して先陣を切る。
 なんだかんだで齢を重ねたユリウスがこぼしたのは、死に急ぐ若者を生かすための方便だったのかもしれない。
 肉体と魂を削りながら偽神兵器を振り回すルドラの事情を知ってか知らずか、それでも敵を打倒する目的の為に命を燃やす他ないルドラは、着実に滅びに向かう肉体を疾駆させるのであった。
「なんと哀れな。その風前の灯火で私を打倒しようというのでしょうか?」
「せいぜい見下ろしていろ。そのちんけな灯に、お前は寝首を掻かれる。
 さあ、死合おうぜ、マザー・コンピュータ!」
 マザーのもとまで駆けつけようとするユリウスは、唐突に感じた危機感に足を止める。
 相手は時間を操る。事前に聞いていなければ、もっと深く踏み込んでいただろう。
『異常な時間流を観測!』
「これが奴の時間操作か!」
 まだ十分に距離がある。その時点で警告を発するマシンスーツに倣い、ルドラはユーベルコードの用意をすべく、その身を偽神兵器そのものへと変じ始める。
 そして間合いにすら入っていないユリウスは、その場に足をとどめて防御の姿勢をとる。
 そこへ割り込むように、マザーのケージを取り巻くように飛び出した金属のマニピュレータが突き出し、ユリウスへと襲い掛かる。
 たったそれだけなら、ユリウスにとっては容易い攻撃だった。
 しかし、拳を象ったようなマニピュレータの先端が加速した瞬間、まるで早回しのように不自然に飛び出したように見えた。
 淡く紅く光るケージ内のマザー。巨大質量のマニピュレータが加速するまま、時間を加速させてその慣性を増大させる早回しの一撃を、
 ユリウスは事前に双剣をクロスさせることでなんとか受け流す。
「ぐうっ! こいつは、きついな……!」
 手足が異様に重く感じる。まるで夢の中で走っているかのように、手足が思い通りのスピードを出せない。
 時間操作を影響か、早回しされる相手の行動とは逆に、ユリウス自身には時間の退行、時間の流れを遅くされているためか、相当に余裕をもって防御姿勢を取った筈なのに、衝撃を殺しきれない。
 だが、マザーの攻撃は正確ではない。
 機械ならばその精密動作性は高そうなものだが、どうやら彼女は時間操作をしている最中は、全ての機械操作を中断せざるを得ない。
 途中で操作を止めざるを得ないというその誤差が、ユリウスを仕留めきれないものでもあった。
「おおおおっ!!」
 時間退行の異質な肉体の気だるさに苛まれるユリウスを飛び越え、ルドラが雄叫びを上げて、伸びきった金属マニピュレータを殴り壊す。
 獣の如き荒神に変じつつあるルドラの戦闘力は比類なきものだが、その動きもまた緩慢に見えた。
 まるで強い重力を受けているかのような負荷が、一瞬だけ消え失せたのを感じたとき、ふと嫌な予感がする。
 見上げたドームの天井が隔壁を捲り上げて銃座の様なものが顔を出すのが見えた。
「ルドラ、上だ!」
「ッ!」
 ユリウスの初撃の防御、そして誘導も手伝って、ルドラはそれを知覚し、そしてユーベルコードの使用も間に合った。
 【不可抗の蹂躙戦者】によって、全身を黒い硬質な偽神兵器のマシンスーツで覆ったジャガンナートの獣と化したルドラは、銃弾の雨を浴びるものの、荒神に対抗する荒神たるジャガンナートの装甲はそんなものでは貫けない。
 だが、銃弾により刻まれた時計のような刻印が、偽神兵器の装甲を急速に老化させ劣化させる。
「そいつも、知ってるんだよ……!」
 急速な老化に晒される装甲を即座に剥離、再生させることで、生物に近いジャガンナートの装甲は言うなれば代謝能力によって対抗する。
「ルドラよ。どうやら奴は、時間と機械を一緒には操れない!」
「っ!? そうか、なら、時間操作の途切れた時が」
「応、決め時だ」
 無数の銃弾の嵐を全身に受けて立つルドラの影で、今度はユリウスが駆け抜ける。
 二刀を用いた必殺の間合いに踏み込んだユリウスが、ケージ越しにマザーへと【双剣撃】を放つが、
「浅かったか……!?」
 ケージを破ったまでは到達したが、マザーのその身を切り刻むには、もう一歩が及ばなかった。
 機械操作によるマニピュレータと、時間操作による感覚のズレ。それらを細かく切り替えることで首を繋いだようだった。
「こっちもヒヤッとしたがな。どうする、互いの生命をかけたこのゲーム、付き合う気はあるかい?」
「それは時間の無駄というもの」
「そういう奴だと思ったさ。が、俺ばっかにかまけて大丈夫か?」
 金属マニピュレータと剣による拮抗を作りながらも、ユリウスはにやりと笑う。
 マザーを挟んでその反対側には、暴風を纏った荒神が銃弾を吹き飛ばして立つ。
 用途によって形状を可変させる羅睺の刃『チャンドラーエクリプス』と嵐を呼ぶ機構剣『タービュランス』による組み合わせ無限軌道鞭『ナーガラジャ』をマシンスーツから伸ばし、マザーのケージを締め上げる。
 暴風と蛇の王と化したルドラの片腕がマザーのケージを砕き始め、荒神の抑えがたい獣性が迫る。
「俺を早送りしてみるか? もしかしたら寿命で死ぬかもしれないぞ?
 尤も──」
 半透明のケージが完全に破壊されると、蛇の如くのたうつ鞭が、あどけない肢体へと絡み、逃がすまいと巻き上げる。
 それに抗う事も無く、マザー・コンピュータは瞑目する。
「──おまえはここで討つ。
 おまえの生み出す邪智は世界を脅かす」
 嵐を内包した無数の刃を有す破壊の鞭が、容赦することなく引き絞られ、只の一瞬で以て、マザーの肉体を血煙へと変貌させ、決着は呆気なくついた。
 その死が確実なものと確信したところで、慌てたようにルドラの全身を覆っていた偽神兵器の装甲は剥がれ落ち、力を出し切ったルドラはその場に項垂れる。
「生きてるな?」
「多分な」
 そこへくたびれた様子のユリウスが手を差し伸べ、肩を貸し、言葉少なに、立ち上がる。
 胎動するような明滅を失い、只の金属の塊と化した機械都市の、もうどこにも用は無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
時間操作の『巻き戻し』は厄介ですね。
防御を解除されないよう、オーラ防御を纏い、天耀鏡を巨大化させて前面に滞空させ、神の力によって肉体老化しないようにした状態で、菊月さんに送り出してもらいます。

相手の先制UCは受けましょう。
躱しても巻き戻しして命中するまで繰り返されそうですし。
老化しませんので効きませんが。

こちらのUCでA&Wで見たドラゴンやグリフォンを創造。
集団で襲わせます。
巻き戻ししようが早送りしようが、第六感と読心術で展開を読んで、圧倒的多数による飽和攻撃を続けていたら、いずれ躱しきれ無くなるんですよね~。

捌き切れなくなったら、煌月に雷の属性攻撃・神罰を宿してのなぎ払いで斬りますよ。



 デトロイトは今、かつての工業地帯の饐えた空気とは無縁となったものの、それは人が居なくなったことにより自然が隆盛を誇ったというわけでもなく、フィールド・オブ・ナインの一人、マザー・コンピュータによる野望の一環として、都市丸々一つを機械化して、多数の機械獣を生み出す一大プラントとなっていた。
 それがアメリカ全土に広がれば、人々の暮らしは滅茶苦茶なものになるだろう。
 その前に、今回のカタストロフ要因であるフルスロットルが撃破されてしまえばいい話ではあるのだが……。
 それならば、マザー・コンピュータそのものを破壊してしまえばいい。
 簡単に言う話ではあるものの、それもまた容易ではない。
 今や一つの生物と化したかのようなデトロイトの機械化都市は強固であり、それらを一人で制御するマザー・コンピュータが生体コアとして鎮座する超巨大コンピュータの一室は、分厚い隔壁に囲まれたドーム状の部屋であり、いくらグリモアを用いたとてその内部にまで入り込むのは容易くない。
 何よりも、限定的ながら時間を操作するマザーの力は絶大であり、いかなる攻撃をも巻き戻して無かったことにしてしまえば無意味になってしまう。
 ちょっと強すぎやしませんか。
 この強敵に挑むに名乗りを上げた猟兵の一人、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、一計を案ずることにする。
 ひとたびマザーのドームに転送されてしまえば、彼女のホームで時間操作の影響下の中、戦う事となってしまう。
 その前の準備は入念に行っておくべきだろう。
 普通の巫女さんを装ってはいるが、詩乃は植物と活力を司る神の座に居る。
 普段は神社の軒先で猫と戯れつつ、のほほんとお茶を楽しむのが楽しみというホントに神様なのぉ? とか言われそうなものだが、これでも幾多の世界を救うべく活躍してきたのである。
 詩乃が行ったのは、まず加持祈祷による守護の方陣。
 あらゆる災厄から身を守る加護をその身に宿し、更にヒヒイロカネで作られているという鏡を盾として周囲に浮かべ、万全の守りを用意してから、案内役の菊月によって転送させたのであった。
 おいおいグリモア猟兵は滅多なことでは戦場に出ない約束じゃないか。
 大丈夫、まだここグリモアベース。
 そうして古式ゆかしく火打石の切り火で送り出された詩乃は、デトロイトの戦場へと舞い降りたのであった。
「おや、貴女は、年を取らないのですね。得難い永遠の一つの形……。
 朽ち逝く世界を見下ろすのは滑稽でしょうか?」
「おだまりなさい。全てを無に帰する永遠を望む貴女に、人の営みを嗤い厭う権利は無い」
 無機質な瞳を向けられて、詩乃は毅然と言い放つ。
 そうすると、すぐさま隔壁のあちらこちらがぱたんと捲れ上がり、銃座が飛び出してはマズルを燃やして弾幕を展開してくる。
 さすがにマザーを守るための空間というだけあって、その動きは機械らしく洗練されており、詩乃が介入するよりも早い攻勢ではあったが、最初から防御に徹していた詩乃はそれらの攻撃を事前に張っていた加護と宙に浮かぶ鏡『天耀鏡』により完全に防御する。
 銃弾を浴びる鏡には、時計のような刻印が浮かび、猛烈な勢いで経年を加えていくが、その鏡が衰える様子はない。
「無駄ですよ。私もその鏡も、齢を重ねる事は無い」
 岩に突き刺さった剣が、担い手を何百年も待ち続けるように。
 高千穂に突き刺さる鉾が朽ちないのと同じように。
 神の作りたもうた道具に、時間の概念は通用しない。
 そして、最初から防御に徹している詩乃の行動を巻き戻そうにも、その展開は変わらなかった。
「しかしこれでは千日手……。私も貴女も、それほどこらえ性があるとは考えられませんが?」
「ならば、一石を投じると致しましょう」
 無数の銃弾を受けながら、まるで攻防に変化がないことに言及するマザーが、意外にもよく喋るので、早期に決着をつけるべく紙垂を払子のように振るえば、ユーベルコードが発現する。
 【産巣】によって生み出されるのは、無機物より生命を作り出す神としての能力の一端。
 詩乃が命として記憶してきた生物が、これまでの攻勢で破損したあちこちの隔壁などを命に変化させていく。
 それは、このアポカリプスヘルではまず見かけない生態系。
 アックス&ウィザーズで討伐してきた、ドラゴンやグリフォンといった空想の如き生物たちが、無機物から次々と生まれ出で、大攻勢をかける。
「私の前に命を差し出すとは、それこそ無意味ではありませんか?」
 あっという間に軍勢と化したモンスターをけしかけられるが、マザーには表情らしいものは浮かばない。
 迫りくるそれらの獣たちを機銃で一掃し、刻み付けられた刻印の力によって、次々と塵と消えていく。
 無数に生み出されては、次々と朽ちていく。無意味にも見える生き物の波は、到底、マザーに肉薄できる筈もないと、思われた。
「それはどうでしょうね。貴女は、命を軽んじています。その営みを、生命力の力強さを、貴女はもっと知るべきだった」
「……これは」
 徐々に、無機物から生まれ出でる生き物たちの物量、飽和攻撃の前に、刻印による老化が間に合わなくなって、押され始める。
 銃弾に倒れ、腐れて朽ちていく屍を乗り越えてくる命という波が、やがてマザーの収められたケージに到達しようという頃になって、その時間が巻き戻り始めるが、その時間をいくら繰り返しても、生物たちの大攻勢を押しとどめる結果に辿り着かない。
「こんなことが……」
 やがて時間を戻す余力すら失い、空想の生物達の攻勢の前に、マザーのケージにヒビが奔る。
 その生物の波を飛び越えて、詩乃が薙刀『煌月』を振りかぶるのが見えた。
 雷を込めた、神罰の一撃がマザーを捉え、その身を両断する。
「命……なんという、力」
 自らの血で濡れた腕を、信じられないものでも見るかのように見つめ、やがてその手を持ち上げるほどの力も失って、マザーはその身を横たえて力尽きた。
「滑稽かと問いましたね。この身は不便もありますが、それでも私は好きなんですよ」
 黒い霧となって消えゆく、まだあどけない面影を残す少女の亡骸の瞼を閉じてやると、その場から去り行く足取りを一度止め、振り返る。
「ずっと、見ていたいのです」
 永遠ではあるまいが、この命が続く限りは、たとえそれが、過ぎ去っていく景色だとしても。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月22日


挿絵イラスト