アポカリプス・ランページ⑬~赫赫たる明日へ
●フルスロットル・ヴォーテックス
荒涼たる大地は、赤々と燃える。恐らく――その男がいる限り。
「時は来た! 人類の終末を越えてなお、黙示録の黄昏にしがみつく者共よ!」
吼えるは、フルスロットル・ヴォーテックス。
大音声と響くのは、その巨躯ゆえ――オブリビオン・フォーミュラであり、ヴォーテックス一族を束ねる男は。
身長五メートルに及ぶ、改造巨人であった。
「我が血潮と嵐と内燃機関に懸けて、貴様らに真実の終末を告げてくれよう! 我が望むは支配にあらず! 君臨にもあらず!」
轟くのは、男が背負う……否、その身体そのものでもあるエンジン。
破壊という言葉を体現するに相応しき男は、なおも続ける。
「――望むは、汝らの尽く命尽きる事のみ。妥協の余地は無い!」
すべてを破壊し、蹂躙し、その果てにあるものとは。
万物の死。強き者にならば覗くことも可能な、死の先にある新たなる生。
オブリビオンという「約束された栄光の道」――男は確かに、そう告げたのだ。
●赫赫たる明日へ
「その正否を、わたくしは存じません。ですが、オブリビオンの在り方に、否を唱えるのが、猟兵の役割でございます」
猟兵達を見つめ、静かにアム・ニュイロワ(鉄線花の剣・f07827)は告げる。
「ただひとつ。疑問や迷い、そのようなものを抱いたまま、対峙できる相手ではございません――かの敵は紛れもなく、此度の戦争の指揮官でございます」
フィールド・オブ・ナインという数多のオブリビオン・フォーミュラをおいて、その筆頭を称するからには、正面から戦うにせよ、あまりに強大。
この戦場において、フルスロットル・ヴォーテックスは全身に搭載した複数のV12エンジンをフル稼働し、超赤熱連続突撃モードへ変異している。
圧倒的なパワー・スピード・重量でただただ突撃してくるのだが。
それがただただ「強い」と言わざるを得ない。
「幸い、皆様の奮闘により、支援はなく……単一との戦いになりますが、正直に申し上げて、不利に変わりはございません」
フルスロットルは、必ず猟兵よりも先に仕掛けてくる。そしてその一撃は、圧倒的だ。運が悪ければ、守りに隙があれば、その時点で倒れてしまうやもしれぬ。
それほどの、圧倒的な力の差――それを如何に埋めるかが重要だ。
それは戦術における工夫。或いは、身体能力における工夫。また或いは――心一つ残れば、良い、という事もあるやもしれぬ。
「オブリビオンの死したる世界よりも……わたくし達は命ある明日を求めるもの。厳しい戦いになると存じますが――どうか、皆様の力をお貸しくださいませ」
アムは真摯な声音で願うと、深く頭を下げて、猟兵達を死地へと送るべく、グリモアを輝かせるのであった。
黒塚婁
どうも、黒塚です。
月末目指してくらいのゆるゆるで……。
(早めに成功数が足りた場合、多少早くなる可能性もあります)
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プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
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フルスロットル・ヴォーテックスは「必ず先制」してきます。
対して、如何に耐え凌ぎ、反撃するかがポイントです。
いわゆる「やや難」のボス敵になりますので、それなりの判定をします。
技能を列挙されるより、具体的な考え・行動の説明が多い方が優位になります。
なおケロっとしてるよりは、重傷負いつつ反撃するタイプのが好みです。
●プレイングについて
公開時より受け付けております。
採用は書けそうなものを書けるだけ。
(受付中タグはつけますが、受付停止とかは書かずに終わると思います)
内容を問わず全採用はいたしませんので、ご了承の上、参加くださいませ。
複数人で参加される場合、ペアまでと制限させてください。
それでは、皆様の活躍を楽しみにしております!
第1章 ボス戦
『フルスロットル・ザ・ランページ』
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POW : フルスロットル・ギガント
【超赤熱連続突撃モード】に変身する。変身の度に自身の【V12エンジン】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
SPD : V12スラッシャー
【全身のV12エンジンによる超加速】で敵の間合いに踏み込み、【V12エンジンの爆音】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ : フルスロットル・チェーンソー
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【炎を帯びたチェーンソーの刃】で包囲攻撃する。
イラスト:あなQ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鷲生・嵯泉
万物の死を望んだ処で叶わぬものと教えてやろう
決して折れぬ、護る為の刃が在る事を知れ
お前が傲慢を以って起とうとも、侮る気は無い
視線、得物の向きに脚捌き、気の流れに筋肉の微動
五感にて得られる情報全てを戦闘知識にて計り
重ね集中した第六感で攻撃起点と向きを見極め見切り
致命と行動阻害に至るものは躱す事に努め
間に合わねばカウンターでの武器受け咬ませて軽減して呉れよう
多少の傷なぞ激痛耐性で捻じ伏せ、膝付かぬ覚悟で前へ出る
狙うは攻撃直後、刹那の隙でも見逃しはせん
武器引く機に合わせ、全力の踏み込みで追って接敵
――遮斥隕征、悉くを砕け
勢い殺さず怪力乗せた斬撃を叩き込んで呉れる
疾く潰えろ、お前に成せる事なぞ無い
●破断の刀
「かかってこい、猟兵よ!」
フルスロットル・ヴォーテックスのV12エンジンが轟音を上げる。熱を吹き出し、熱を纏う。渦を巻く強烈な炎とともに、超赤熱連続突撃モードと化した巨人に、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は正面から迎え撃つ。
「万物の死を望んだ処で叶わぬものと教えてやろう――決して折れぬ、護る為の刃が在る事を知れ」
フルスロットルはそれを一笑に付す。
その巨体はますます巨大化し、まさしく大地を揺らしながら、消えた。
嵯泉は隻眼を瞠る――油断したつもりはなかった。
この巨体を、見失うなど、あろうか。先刻まで、フルスロットルの視線、筋肉の微動――気の流れまで、五感で以て、しかと視ていた。
そしてまた、彼の静かなる驚愕は、刹那の内に終わる。その身を襲う熱。爆ぜる血。為す術も無く烈風に身を引き裂かれたような状態に、身を折った。膝を突かなかったのは、直感的に刀でもって身を守ったこと。
金属同士が弾きあい、後ろへと滑り逃れたからだ。
嵯泉の頬は、苦笑を漂わせ、直ぐに消す。滴る熱い液体が足元に落ちる。だが痛みを感じるよりも早く
十メートルに至った巨人の、更なる加速は、一足の踏み込みで矮小なる人間を踏み潰せる。否、ただの人間であるならば――それが動いた、という状態で衝撃波に全身を打ち砕かれる事もあろう。
そんなものが突進しながら、重い回転刃の剣を、大地ごと抉るよう振り上げたのだ。斬撃が作った轍――その痕跡に、嵯泉は今は気付かない。
つまり、それに襲われ、立って受ける事ができただけ、賞賛に値した。
だが、一撃で死なかったと褒められるために、彼は此所に来たのではない。
衝撃を捉えた直後である今――嵯泉の長い金の髪が風に浮き、再び背に触れるまでの時間。全容を捉えておらずとも、触れられる位置に敵がいるというのは、確か。
「お前が傲慢を以って起とうとも、侮る気は無い」
呼気は吐くだけ。止めて、既に抜き身の刀を、手首で返す。
柘榴の隻眼はフルスロットルの巨体――その脚部を確りと捉え、身体は躍動する。すれば、足跡のように、血が落ちた。
「――遮斥隕征、悉くを砕け」
ユーベルコードを無効とする術式を纏う刃が、大樹のような脚へ流れ落ちる。
研ぎ澄まされた達人の一刀、臆さぬ踏み込みは、その柄まで捻じ込む勢いに、深く。
「むう!」
巨人が呻いた。蟻の一噛みなどと、言わせぬ。嵯泉は裂帛の気合いとともに、全身の力を掛けて、刃を埋め――素早く、引く。
ずぶりと肉を裂く手応えは、重く。然れど彼は最後まで、刃を払った。
「疾く潰えろ、お前に成せる事なぞ無い」
迸る血で、全身を朱に染めながら。肉のひと欠片、抉りだして見せた――。
成功
🔵🔵🔴
無間・わだち
俺のいのちは、いびつな生で出来ている
けれど、あなたの新たなる生は
認められない
それを認めてしまえば
あの子のくれたものも
今を生きる人達も
美しくはいられなくなるから
真っ赤な突撃体を
しっかりと見据えて、盾に変形した疑神兵器で受け止める【限界突破
避けられない、避けたくない
-これは、意地だ
痛みになら耐えられる
腕一本以外、四肢が千切れても構わない
そういう躰になっている【継戦能力
俺は、あなたを止めなきゃならない
彼の躰のどこだっていい
掌が触れさえすれば
蒼焔が燃やし尽くすはず【焼却、捨て身の一撃
その死の渦がこれ以上
誰のいのちも奪わぬよう
いびつな生が生まれぬよう
いや
いびつでも
祝福されるべきだから【祈り、優しさ
●悼みの炎
「これ以上の発展は不要。これ以上の暴力は不要。これ以上の歴史も、生命の繁栄も不要!」
フルスロットル・ヴォーテックスいわく、この世界は終点だという。
オブリビオンとしての生こそが、真の道。
――無論、それの勝手な言い分に過ぎぬ。
思うところがないわけではない、と。
身体を分け与えられたからこそ、此所に在る無間・わだち(泥犂・f24410)は、憂う金の瞳を伏せた。
「俺のいのちは、いびつな生で出来ている……けれど、あなたの新たなる生は、認められない」
(「それを認めてしまえば――あの子のくれたものも。今を生きる人達も。美しくはいられなくなるから」)
色の違う、形の異なる妹の眼差しとともに立つ青年は、ひとふりの偽神兵器を手に――覚悟を胸に、巨大な敵を迎え撃つ。
それを無謀と、フルスロットルは罵らなかった。如何なる作戦があろうとも、
「圧倒的な『暴力』で、蹂躙するのみ!」
吠え立て、エンジンを噴かせる。赤で染まり、ますます巨大になった鋼の巨人は、金属の軋みをたてた。
その瞬間、わだちは偽神兵器を盾へと変形させた。相手の姿は見ていたが、それが特別変化する前に、衝撃が襲い掛かっていた。
噴き飛ばされそうな、踏みとどまれない、熱風の壁。
身を覆うような盾で受け、それを耐えるのも――縫い付けた身体がバラバラになりそうな反動があった。前兆で、斯くや。その巨体が、比較するに小さいわだちを磨り潰そうとしたならば、この身は残るだろうか。
それでも。
(「避けられない、避けたくない」)
――これは、意地だ。
長くも思えたが、それは瞬きの時間。気付けば、奥歯を噛みしめ、飛び散る身体を見ていた。
片腕ごと、盾がもっていかれた。片足が大地ごと抉り取られて消えていた。
死した躰に痛みがない訳ではない――しかし、わだちは残る脚で地を蹴り、腕を必死に前へと伸ばす。熱く焼けるようなフルスロットルの脚に触れる。触れなければならぬ。
「俺は、あなたを止めなきゃならない」
触れれば。触れられれば、それでいい――触れた瞬間、掌が消し飛ぼうとも。
新たな痛みが鈍い躰を襲い、わだちは地を転がるように弾き飛ばされた。だが――その視界に、青き極熱の炎に包まれた巨人がいる。
赤いエンジンをも覆い尽くす青の炎は、わだちが巧く立ち上がれなくとも、フルスロットルを苛む。
「グゥ、ウオオオオオォ!」
己が生じるものではない熱に焼かれた巨人は、それを乗り越えようと空を揺らすような絶叫を放つ。
静かなる、わだちの眼差しは。
「その死の渦がこれ以上、誰のいのちも奪わぬよう――いびつな生が生まれぬよう」
オブリビオン・ストームで滅んだ、今までの犠牲者を。以後の世界で苦しんできた人々を――彼らを悼む心が更に青い炎を燃え上がらせる。
ああ、でも。彼は消え入りそうに儚い笑みを浮かべ、囁いた。
「いや……いびつでも。祝福されるべきだから」
成功
🔵🔵🔴
黒葛・旭親
なるほど、判り易くて佳い
毀すだけなら僕も得意だ
御手合わせ願おうか
さてだが如何したものかな
燃える荒野だと云う場を一瞥して
敵の視界がどれだけ関係あるかは知らないけれど、
炎でやや見えにくい場所などに陣取れたら“有利”かな?
先制されるなら場所を見つけるのは後でも佳い
全て躱すことはできないだろうけれど
あんまり多くがいち時に飛んで来るのだろう?
可能な限り接する面を限定し量減らせるよう、
メスを使いつつ誘えたら重畳だ
なに、傷付いても平気さ(勿論痛いけれどね!)
全快は無理でも血反吐零しながらだってお前さんを倒すよ
死の先になんて、なにも無いのさ
……否、在ると佳いね
だからお前さんが先に覗いておいで
新たなる生とやらを
●手の鳴る方へ
いずれ青く燃ゆる炎は絶える。絶えど、それが齎した傷は残る。フルスロットル・ヴォーテックスは、己の力に折れぬ猟兵達を凌ぎながら、讃える。
「強者よ、ますます先の汝らを見届けたくなった!」
吼えるものの、自分の暴力の力こそ優位と信じて疑わぬ様子に。
褪せた金の髪、樺色の目をした男は、ほう、と息を吐いた。
「なるほど、判り易くて佳い――毀すだけなら僕も得意だ。御手合わせ願おうか」
黒葛・旭親(角鴟・f27169)は悠然と笑いながら、破壊を体現する巨人を見る。
(「さてだが如何したものかな――」)
視線を巡らせ、戦場を確認する――フルスロットルが焼き尽くした、枯れ地。最後に見るのがこの炎に包まれた世界だと思うと――これでは、何処から地獄に踏み込んだかわからないな、と嘯く。
フルスロットルは辺り一面を見下ろせる程に大きい。大きいが、しかし、死角はあろう。
(「ああ、あの辺り……」)
冷静に“有利”な場所を探る。彷徨う樺色の視線を、フルスロットルはどう捉えたか解らぬが、高笑いを放ちながら、回転刃を起動させる。
あのおぞましき刃は目には止まらぬ速さで回りながら、炎を帯びる。それだけで旭親の周囲の熱も上がったようだ。
否、その刃が無数に展開し、飛翔している。それも軌道を読ませぬかの如き、幾何学を描く飛行。
あんまりな光景だと旭親は惘れつつ、軽やかな跳躍でそれらを誘う。
唯一隙をつけるならば、それはこの身を裂く瞬間だろう。柄の長い――本人がメスと言い張る長刀を手に、駆ける。
行く手を遮るように奔った炎に刀身を合わせ、薙ぐ――が、背を割るように、刃が駆け抜けていった。
痛みを灼熱とよく喩えるが、熱さと痛みを正しく同時に感じる。しかし彼は構わず、大きく抉れた轍の片隅、背を守るように陣取った。
「重畳、重畳」
生きて狙いの場所へ至った。メスを振るう腕も無事。
飄々と振る舞うが、痛いものは、痛い。でもそいつは生きてるってことだろうと、剛毅に笑う。仮令、夥しい血が背より伝い落ちようとも。
其処からは、刃の軌道を打ち返すことができる。そして何より――患部が、よく見える。
「全快は無理でも血反吐零しながらだってお前さんを倒すよ」
炎を纏う刃を総て弾き返すや、戦場は炎に包まれ、フルスロットルの視界から――小さな旭親は姿を隠した。
好機は、一度だけ。確信して、長刀下げて、彼は轍を真っ直ぐに駆け抜ける。
血の匂いを漂わせる傷は、誰か猟兵が成し遂げたものだろう。小さな裂創が死に至らしめることもあるんだよ、闇医者は言い。
巨人の脚を全力で斬り払う。白刃は美しい弧を描いて、傷を更に斬り広げる――。
「死の先になんて、なにも無いのさ……否、在ると佳いね」
炎の晴れ間、周囲に迫る刃を感じながら、戦巫女は言う。
「だからお前さんが先に覗いておいで。新たなる生とやらを」
果たして、此度の骸の海への帰還――その、更に先が、あるのかを。
成功
🔵🔵🔴
コノハ・ライゼ
あは、でっか!
殺気が強い程浮かぶのは子供じみた笑顔
ただただ、ソレを喰らいたい
*第六感研ぎ澄まし*見切ろうとした所で避けきらぬなら
*オーラ防御で衝撃の方向逸らし宙へ飛ばされるよう狙い
*空中戦の要領で衝撃を少しでも削ぎ*激痛耐性で意識を保ち命は守るわ
血が、肉が、どれだけ散ろうと問題ない
喚ぶ声さえ出ればいい
*カウンター狙い派手にまき散らした血肉から【黒涌】生んで
命中重視の*範囲攻撃でその巨体の至る所へ*毒の*属性持つ牙で喰らいつかせ*マヒさせる
素早く*2回攻撃させたら*傷口をしっかり抉り*捕食、*生命力を頂くわ
食べきれないなんてわがまま言わないから、この血肉の代わりに食われて
オレの力になって頂戴
●牙
見上げても追いつかないとはこのことか。フルスロットル・ヴォーテックス、姿形は知らされていようと、一見は百聞にしかず。
「猟兵、世界を跨ぐ客人よ。この地を終点とするがよい!」
何より滲み出る気迫。悉くを暴力で捻じ伏せると断言するのを証明するような無茶苦茶な巨躯。改造によって備わるエンジンの、解りやすい熱気。
「あは、でっか!」
その全てに、コノハ・ライゼ(空々・f03130)は子供のように無邪気に笑った。
とはいえ、それが含む欲求も子供じみている――ただただ、ソレを喰らいたい。それだけだ。
だが――彼もまた、放つ殺気は凄まじい。
輝く薄氷の瞳は期待に満ち、全身は逸る。だが、それ以上に『獲物』は暴力をもって応える。
言葉や殺気で誘うまでもなく――フルスロットルの背では、気筒より炎を噴き上げ、機構は動き轟く。
瞬きの後に、その気筒の数が倍に、体躯も倍にと、また笑ってしまうほど巨大になって、コノハに迫っていた。彼もまたそれを視界で捉えたというよりは、全身を刺すような『予感』によって認識していた。
風圧が紫雲に染めた髪を散らす。立っていられぬほどの圧力に弾き飛ばされそうになりながら――否、弾き飛ばされるのならば、儘、従えばいい。
纏うオーラを前面に固め、空へと躍る。
実態は、衝突した拳に、並みならぬ痛みと共に吹き飛ばされた。自分が吐いた血が舞う様を笑って見送る。防御につかった両腕も、変な風に曲がっている気がする。
――こんな痛みも久しぶりだコト。
切れた唇で笑って、巨人をあらぬ角度から眺める。噴き上がる熱が身体を焼く感覚が、その証拠。
――如何に無様に見えようと、狙い通り舞い上がっている。
(「喚ぶ声さえ出ればいい」)
苦痛は耐えられる。実際、強がりでも無く――瞬間的な痛みは引いて、次はどう行動すべきか、冷静に考えられるくらい意識は冴えている。
「……おいで」
掠れたが、思ったより、確りとした声が出た。
フルスロットルに降り注いだ、コノハの血。それは巨人にとっては汚れと数えるにも微かだったやもしれぬ。それが――牙を剥く。
無数の影狐たちが、コノハの呼びかけに応えてフルスロットルの身体に齧り付く。
「!」
彼らの牙による痛みは殆どなかろう。だが、それらは巨体の殆どを覆い尽くす程、コノハの力で増殖し――命を啜り、毒を穿つ。
適当な地面に着地したコノハは、傷ついた分の力がじわじわと戻るのを感じながら、影狐たちを繰る。それらがいずれ焼き焦がされるのは、解っている。
けれど、貪欲な彼は、更にと求める。
「食べきれないなんてわがまま言わないから、この血肉の代わりに食われて――オレの力になって頂戴」
新しい路に興味は無い――ただ、喰らい尽くす。
成功
🔵🔵🔴
藤・美雨
死の先に道があるっていうのは同意するけど
オブリビオンになるのは間違ってる
私の道は邪魔させないよ
4回攻撃が命中すると死ぬならそれまではギリギリ耐えられる……かな
相手がこっちの間合いに飛び込んでくるんだ
それを活かそう
最初の突撃は受ける
機械の心臓を精一杯滾らせて激痛耐性を
覚悟してたけど一発だけでも死ぬほど痛い
でも気を失ったら意味がない
負けられるか!
せっかく相手がこっちまで来てくれたんだ
一発は怪力を拳に乗せてぶん殴る
その間に次の攻撃が来ても限界突破で耐える
そしてこっちは殴るだけが取り柄じゃないのさ
再び殴りかかったと見せた拳を化物に変形
早業と暗殺の技術を活かし不意打ち気味に行こう
命尽きるのはお前の方だ!
●超越
巨人は暴力で蹂躙し、終点を確定させ、強者は次の生を迎えよという。
「もっと、もっとだ! 力を見せよ――」
それを暴力で捻じ伏せてやる、とそれはいう。
煙を吐くように廃熱し、然れど鞴で熱されたように赤い装甲を纏う男は、笑っていた。
「死の先に道があるっていうのは同意するけど、オブリビオンになるのは間違ってる」
大きな瞳で真っ直ぐにフルスロットル・ヴォーテックスを見つめ、藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は告げる。
「私の道は邪魔させないよ」
「よくぞ言った!」
巨人は吼える。吼えたように全身に響く声だ。そして震える。大地ごと、震えている――フルスロットルの全身のV12エンジンが唸りを上げて、いた。暖機状態はとうに終えている。
言葉一つ残して超加速した巨体を、美雨は、驚くべき事に見失った。
だが、最初からその一撃目は受けるつもりであった。
どれほどの衝撃がその瞬間、彼女の華奢な躰を襲ったのか。全身がバラバラになりそうな痛みと、筋肉という筋肉が負荷に耐えられず、破壊された――ような気がする。
彼女が認識したのは、再起動した機械の心臓、噴き出した己の血が霞と漂う視界、それだけだ。
(「驚いたな――今、心臓とまった」)
むしろその状態を冷静に認識できるのは、彼女がデッドマンである――殭屍だから、だ。
(「覚悟してたけど一発だけでも死ぬほど痛い」)
意識が遠くなりそうな一瞬は、もう過ぎた。何よりこのまま、ふらふらして機を逃せぬ――フルスロットルは、今、まさに手の届く位置にいる。
「負けられるか!」
奮起し、美雨は前へと身体を傾けた。一歩踏み込む、身体が重い。制御できない痛みが、全身に鋼の拘束を課してくる。
だが、意識して体勢を整えていたら、爆音を轟かせたフルスロットルの二撃が、来る。なんというか、四発喰らう前に――ゆえに死なず済むだろうが――ダウンするだろう。
彼女は裂帛の気合いと共に、拳を繰る。
空気を穿ちながら、熱された巨人の肩を打つは、鋭き打擲。
膂力任せの、しかし強烈な一撃であったが、巨体は動じぬ。
むしろ、その力を認めるようにニィと笑ったフルスロットルは、美雨を軽く払い落とすように腕を振るった。
――またしても、脳が真っ白に飛ぶくらいの痛みが、彼女を襲う。だが失神はせず、踏み止まる。
己の内側が「魂の衝動」による莫大な電流で焼け焦げそうな程、フル稼働させ――煙を吐きながら、地を蹴った。或いはそれは、巨人の身体であったやもしれぬ。
無我夢中にあって、常と同じ笑顔を浮かべた彼女が、次に振るった拳は。
「そら、驚け!」
拳から先、赤黒い目のない化物へと変じ――巨人の腕に、噛みついた。深々と、その機能を奪うように、深く。
「命尽きるのはお前の方だ!」
倒れるまでは離れない、その意を見せて、やはり娘は笑った。
成功
🔵🔵🔴
シリウス・クロックバード
君に付き合って死の先に向かうつもりはないよ
あれを真正面から受けたら困るかな
義眼も使い、チェーンソーの軌道をよく見て
包囲に初撃はあるのか
首を取られぬよう弓を構え、軌道を逸らす
足りない分は、片腕を餌に手榴弾を
爆風で僅かでも時を稼げるかな
四肢が砕けようとも、継続して戦う。この躰は動くさ
既に死は迎えた身だ
…この世界に生きる意味は無くても
あれが、まだ生きているというのに
俺が死ぬのはむかつくからさ
あれを殺すという衝動がある限り、死にはしない
弓を構え敵を戦場を見据える。炎と鉄であれば諸共射貫く
プロジェクトディーバを起動
この地を脅かす全ての者を撃つための力を
荒唐無稽な願いと共に矢を番える
その道筋、砕かせて貰う
●祈りの矢
焦げたような臭いが、蜷局を巻いて空へと消えていく。油と炎と破壊を纏うフルスロットル・ヴォーテックスは未だ健在と佇む。
その身体に無数の傷が刻まれようと、強面は不敵に猟兵を見下ろす。
――死の先、か。
シリウス・クロックバード(晨星・f24477)はそっと裡で囁いて、新緑の隻眼、あるいはサーバーを埋め込んだ義眼と共に、敵を見た。澄んだ眼差しには、侮蔑も憎悪もない。
「君に付き合って死の先に向かうつもりはないよ」
声音は静かに響く。何も無い大地、破壊の痕跡。
仮初めにも守護者を称したこともあるものとして、この世界をそうたらしめた原因を前に一矢報いたい。
果たせるかな、フルスロットルが回転刃を掲げる瞬間、それは炎となって消えた。幾何学を描く複雑な飛翔を、見届ける時間は、あった。
結った一房の銀髪が躍る。
大弓を首に当て、身を傾ぐ。ひゅうひゅうと風を斬る炎の音は遅れてやってくる――熱が視界を横切り、身を掻く。
さすれば、もう逃げ場は無いように思えた。焦らすようにシリウスの表面を駆け抜けていった刃があるかと思えば、視界の外にある刃が襲いかかる。
右目の義眼が演算し、その瞬間を導き出せど、負荷の頭痛と「だからといってその通りに逃げられない」という事実に、やれやれと肩すくめ。
差し出す右手に、手榴弾があった。
飛翔する刃が最接近する瞬間、それを放り出す。シリウスの極めて近くで爆発が起こる――爆音と爆風の狭間、標的を見失った刃が、ひとたび空を彷徨う。
軽く一瞥した、爆ぜた右手は一応ついてはいた。
だが、爆発でズタズタだった。矢を引き絞れるか――普通は、無理だ。
(「この躰は動くさ――既に死は迎えた身だ」)
それでも、死した躰だというのに、まだこんなに血が出るのかと自嘲する。四肢を裂いていった刃で焼けた傷も引き攣るが、シリウスは軽やかに、駆ける。
巨人が確り補足できる空間。そこに滑り込み――身体を支えるよう、瓦礫に半身を預け、大弓を構える。力を籠めると、傷口が血を吐く。それでも、シリウスは弓を引いた。
「……この世界に生きる意味は無くても――あれが、まだ生きているというのに、俺が死ぬのはむかつくからさ」
ああ、と惘れたような、嗤うような。
明確な怒りを新緑の瞳に燃やし、すっと息を吐く。
「あれを殺すという衝動がある限り、死にはしない」
裡を駆け巡る衝動が、身体にあるフォームを再現した。傷口から血が流れ出ようとも。炎と刃が再びシリウスを捉え飛来しようとも、彼の世界から、それらは遮断されていた。
ただひとつ、繋がるとすれば。ディーヴァの専用回線に、己の願いを流す。
「この地を脅かす全ての者を撃つための力を」
オブリビオン・ストームすら操るというこの敵に。自分の数倍も巨大な、この敵のすべての力を突き破る一矢を撃たせたまえ。
荒唐無稽な願いと共に、番えた剣矢が、賛同者の想いを乗せ、輝く。
炎纏う鋼が幾重に軌道を変えながら、シリウスに向かってくる。しかしただひとつ。巨人だけを見据え、彼は傷ついた右手を解放する。
ビィィン、小気味よい弦の音が、耳元で響く。
「その道筋、砕かせて貰う」
白閃が真っ直ぐ空を貫いていく。
彼が願った通り。剣矢は、炎も刃も打ち破り――巨人の腹を突き抜けていった。
成功
🔵🔵🔴
ラブリー・ラビットクロー
不思議なん
まるで蒼い空を駆ける鳥になったよーな気分
恐怖はない
黒い嵐の中でも
噴き荒れる炎の中でも
らぶの目に視えるのは
セカイの仲間達の姿
みんなが叫ぶ
頑張れ
負けるな
お前ならできる
その声が
らぶを導いてくれたんだな
ラビットブレスから煙幕を出せば直ぐに白いセカイへ変わる
それでも視える
らぶに教えてくれてる
仲間達がそっちは危ないぞ!って叫ぶかの様にチェーンソーの音をウサ耳が拾う
どこに逃げたらいいのか教えてくれる
今らぶは
一人じゃない
感覚が研ぎ澄まされていく
ああ
らぶは自由なんだ…
翼をはためかせて大空へ
嵐を喰らい
更なる推進力を得て
あのヒトは言った
野菜を育ててレストランを開きたい
いつか未だ見ぬ星を見つけたい
お母さんに会いたい
生きていたい!
その声一つ一つが紡がれた光の糸となって
敵の心臓へと導いてくれるんだ
それがみんなの
栄光の道!!
【世界が繋がりました。賛同者の輪が広がっていきます】
切り刻まれてもいい
炎に灼かれたっていい
目が見えなくっても耳が聞こえなくっても構わない
お前の心臓に打ち立てるのは
ヒトの勝利の旗なんだ!!
●希望の旗
大地が燃える、風が燃える、空が燃える――フルスロットル・ヴォーテックスのエンジンは絶えず爆音を上げている。
「むう……」
それが、呻いた。巨人は、血を流している。猟兵達が刻み込んだ傷痕を、その力で覆い尽くしていたが、それは愈々決壊したのであろう。
「しかし未だ届かぬ!」
まだ倒れぬと、巨人は吼えた。定めた終点に向かうのだと謳う巨人は、堂々とそこにある。
じぃっとその巨体を見上げ、らぶはちっぽけなん、と――ラブリー・ラビットクロー(と人類叡智の結晶【ビッグマザー】・f26591)が、ぽつりと零す。
だが、その感想に反して、彼女の目は、明るく赫いていた。
「不思議なん――まるで蒼い空を駆ける鳥になったよーな気分」
強面の強敵を前に、竦む気持ちも、己が失われる可能性に怯える心も、ない。
息苦しさも無い。ラブリーはすべてから解き放たれているかのようだった。
(「黒い嵐の中でも、噴き荒れる炎の中でも――」)
彼女には、『セカイの仲間達の姿』が視えていた。いるはずもない、ビー玉を介して通じる仲間達は。
――叫んでいる。
「頑張れ」
「負けるな」
「お前ならできる」
妄想ではない、と思う。ラブリーを鼓舞する声が、確かに聞こえる。
「――その声が、らぶを導いてくれたんだな」
人は不要と、フルスロットルは言う。ならばそれと、正面から対峙するだけだ。
真剣な眼差しで己を射貫くラブリーを見下ろし、嗤った巨人は、回転刃を起動させる。炎を巻き上げ、次々に飛来する刃は目では捉えられぬ。
それでいいと受け容れ、ラブリーは火炎放射器から煙幕を放射する――辺りは白に染まり、彼女自身の視界も、白いセカイで埋め尽くされた。
(「それでも視える――らぶに教えてくれてる」)
ぴんと聳つウサ耳型偽神兵器が、唸る音の接近を捉える。跳ねるように身体が応じたのは、「そっちは危ないぞ!」と叫ぶ仲間の声が聞こえたからだ。
逃げるべき方角を直感的に知り――それに身を委ねる。
そこに不安は無い。なぜなら、それは、仲間の導きだから。
(「今らぶは、一人じゃない」)
膚に触れる風や熱。耳が拾う音。そして、正しき路へと導く声が響き、その通りに回避すれば、飛翔する刃を紙一重で躱せている。
全ては、無理だ。複数の刃が交差するように加速すれば、刃か、炎か。いずれが触れた。それでもラブリーは夢見心地のような足取りで、柔らかに後ろへ跳ねるや、
「ああ、らぶは自由なんだ……」
彼女の背に、翼が広がっていた。無機質な黒き機械翼は、それでいて優美な動作で、ラブリーを空へと浮遊させた。
翼を大きくはためかせ、何処までも高く、早く上昇する。
さらさらと髪が流れて揺れたが、不思議と火の粉を避けていく。
ラブリーの姿は、炎に照らされ、眩く輝いていた――否、彼女自身から、炎を寄せ付けぬかのように、優しい輝きが放たれていた。
向かう先はただひとつ。
不敵に笑う敵目掛け、願いの光を纏いながらラブリーは炎の刃を潜り抜け、置き去りにする。
「あのヒトは言った――!」
野菜を育ててレストランを開きたい、いつか未だ見ぬ星を見つけたい、お母さんに会いたい――生きていたい!
今まで聞いてきた、仲間のユメ。
「らぶはヒトのユメを叶えるショーニンなんな!」
彼女の耳に響く声は、ひとつひとつ光の糸となってラブリーを導く。
――敵の心臓へ。一条と伸びる、温かく美しい光を信じて辿ればいい。
「それがみんなの、栄光の道!!」
【世界が繋がりました。賛同者の輪が広がっていきます】
ビッグマザーの声が希望を読み上げてくれる。
爆音に聴覚を潰されても、視界を遮るほどにフルスロットルが噴き出す炎が、彼女の身体を焼こうとも。
いつしかラブリーの手には、光を束ねた槍があった。否、これは槍では無く――。
「お前の心臓に打ち立てるのは――ヒトの勝利の旗なんだ!!」
お前が不要といったもの。お前が暴力で破壊しようとしているもの。
彼らの思いが、お前を超克したという標しを立ててやる――巨人に比較し、小さな光は、何者にも遮られることもなく。
大きく反りながら、ラブリーは旗を突き刺す。
人々の希望は、フルスロットルの装甲に覆われた胸を、容易く貫いた――。
大成功
🔵🔵🔵
柊・はとり
望むは汝らの尽く命尽きる事
成程
黒幕に相応しい独白ありがとよ
躾のなってない息子共は全員しばき倒しておいた
俺はあんた達世紀末殺人鬼に対抗する為
人々の願いが産み出した『殺しても死なない探偵』
柊はとりだ
故郷を守ろうと走り回り
漸く己の有り様を受け入れられた
あんたへの告発を以て全てを清算する
偽神兵器を盾に突撃を受ける
熱だけで溶けそうな身体を凍結させ繋ぐ
何とか持ってくれ
最後まで業火に炙られ続けるのか
一体俺が何をしたのだと
ちらつく弱気は気迫で吹き飛ばし
上等だ
俺の味わってきた氷獄が
お前らの産んだ地獄を終焉させてやる
幾度も変身されたら厄介だ
一撃に全てを賭ける
連続突撃を敢えて避けない事で油断を誘いつつ
その間奴の動きを学習する事に集中
第六感も頼りに敵が止めを刺しに来る瞬間を見切ったら
完璧に躱して背後に回り込む
UC使用
自供を認める
真犯人はお前以外ありえない
例え体が絶たれ
例え命が絶たれても
俺の全ての力を込め
凍てつく斬撃で神の背に罪を刻む
探偵なんて最悪だとずっと思ってた
だが今なら
少しだけこの汚名を誇ってもいい気がした
●殺しても死なない探偵
巨体が、愈々血を吐いた。
炎が揺らぐ。猟兵達が積み重ねてきたフルスロットル・ヴォーテックスへの攻撃は、何一つ無駄ではなく。確実に着実に、この強大な敵を追い詰めている。
それでも――煩い程にエンジン音を轟かせ、フルスロットルは克己する。
「我は言葉を改めはしない。我が血潮と嵐と内燃機関に懸けて、貴様らに真実の終末を告げてくれよう!」
吼えた男に、冷ややかな一瞥をやり、
「望むは汝らの尽く命尽きる事――成程、黒幕に相応しい独白ありがとよ」
斜に構えた柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)が、口の端を持ち上げた。
追い込まれながらも諦めぬふてぶてしさも、なるほど黒幕に相応しい。
言葉一つで心を乱すような相手ではないと知りつつも、はとりは敵を睨めつけ、告げる。
「躾のなってない息子共は全員しばき倒しておいた。俺はあんた達世紀末殺人鬼に対抗する為……人々の願いが産み出した『殺しても死なない探偵』、柊はとりだ」
「世紀末殺人鬼、か」
面白い言い回しだと思ったのか、巨人は笑った。
世界を殺し、文明を殺し、命を殺す。
喩えてみたものの。一介の探偵が担うには重すぎる大事件だ。
はとりは不遜を装って、年相応の少年らしい不安を覆い尽くし――辿り着いた真相、真犯人を逃さぬような慎重さをもって、呼吸を継いだ。
「故郷を守ろうと走り回り、漸く己の有り様を受け入れられた――あんたへの告発を以て全てを清算する」
大きく身を傾ぐ。身体ごと凍りづけにするような偽神兵器の大剣は、周囲の空気を凍らせるほどに育っている。
命を食って――一体何処にそんな命があるのか、自嘲しつつ――大地を揺るがす轟きを迎え撃つ。
フルスロットルの加速は目に見えぬ。あの更に大きくなった巨体が、捉えきれぬ速度で、こちらに突進してくる。爆音すら置き去りに、まず衝撃が来る。
果たして、はとりが構えた大剣が初撃に触れた。
剣を支える腕どころか、全身を刺し貫かれたような衝撃に、呻いた。敵の纏う赫熱に、はとりの死した躰を繋ぐ氷が融けそうだ。
血が噴き出す。瞬時に凍り付く。赤と透明のクリスタルが己に生えたように、デタラメに身体を冷やすようコキュートスに許可を出しながら、追撃に備える。
(「何とか持ってくれ」)
耳が音を失う。至近で巻き上がった烈風が、熱を伴い、はとりの腹で爆ぜた。
殴られた、と認識するまでに、一拍必要だった――それ以上に、熱い。エンジンが吐き出す炎が、自分を逃がさぬように囲っているようだ。
(「最後まで業火に炙られ続けるのか……一体俺が何をした」)
苦痛では表現しきれぬ様々な感覚に、弱気が滲んだ。再度の死のヴィジョンが吐き気を呼ぶ。俺は何度死ねばいい。
赤、緋、朱――視界が夕暮れに染まる。
『柊 はとり あなたが 死んだ回数は』
コキュートスが何かを言っている。聞こえない。何も聞こえないが、感覚すらおぼつかぬ一歩を前へ踏み込む。
「上等だ……俺の味わってきた氷獄が――お前らの産んだ地獄を終焉させてやる」
鬼気迫る殺気を滾らせ、振り切る。その声も、巨人には蚊の鳴くようなものでしかなかったであろう。お終いだと言わんばかりに振り上げられた回転刃が、凄まじい音を立てて振り下ろされるのを、待つ。
大地に刃を噛む。そこに哀れな死骸はなく。
氷を纏ったはとりは巨人の背で、大剣を掲げていた。
「陳腐だが、敢えて言うぜ――その技は、見切った」
不敵な微笑みは血に濡れて。身体は氷像かのように氷で包まれている。これを解除したら、バラバラの惨殺死体の完成だ。
「自供を認める――真犯人はお前以外ありえない」
動機、能力、自供。全てが揃っている。
よって、これ以上の証明は不要。
世界を……否。
柊はとりを殺したのは――フルスロットル・ヴォーテックス!
彼は告発を叫びながら、最初にして、最後の一刀を振るう。恐るべきはこの巨人のエンジンは更なる駆動をもって、はとりを振り返るよう、刃を薙ぎ払ってきた、ということか。
(「例え体が絶たれ、例え命が絶たれても――俺の全ての力を込め、神の背に罪を刻む」)
望むところだ、はとりは氷が砕けるのを承知で、大剣を振り下ろす。
斜めに走った一閃は――巨人の誇る内燃機関を悉く破壊し、凍り付かせていく。
巨人が、世にも恐ろしい絶叫を放った。
はとりの斬撃が肉に届いたことを示す、何よりの証拠だった。ただし、一矢報いた彼自身は、すべての力を失って落下の最中にあった。
(「探偵なんて最悪だとずっと思ってた――だが今なら」)
「……少しだけこの汚名を誇ってもいい、かもな」
誰にも聞こえぬようひとりごちた『殺しても死なない探偵』は――赤き氷の結晶を散らしながら、微笑んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
ヴァシリッサ(f09894)と
成程、愚直が過ぎるのも考えものだな
そう彼女の挑発に同調、激昂させ視野狭窄を狙う
まず遠距離から射撃で攻撃
間合いに踏み込まれたら左右に分かれ撹乱を試みる
ヴァシリッサへの攻撃時は牽制射撃で妨害
回避や防御の支援、また気を引き自分を狙わせ庇う
自分が狙われたら攻撃の瞬間に零距離射撃を合わせて軌道を逸らし回避したい
避けきれなくても急所は庇い、体が動く限り交戦続行
勝手はお互い様だと笑って
ヴァシリッサへ大丈夫だと強がり、気力で踏みとどまり反撃
自分が倒れれば彼女へ攻撃が集中する、それは避けたい
…今のままでは厳しいか
真の姿を解放(月光に似た淡い光を纏う。犬歯が牙のように変化、瞳は夜の獣のように鋭く光る)
更に獣人へ変じ、負傷で鈍る動きをユーベルコードで補い、ヴァシリッサに合わせ敵に急接近
こちらの攻撃は射撃だけではない
真正面から爪の一撃を叩き込み、ヴァシリッサの攻撃の為に注意を引く
彼女なら、俺が力尽きる前に必ず攻撃を成功させると信じて
さっさと失せろ
明日への道は今を生きる者達の為に在る
ヴァシリッサ・フロレスク
シキのダンナ(f09107)と
終っちまってる分際でガタガタ五月蠅いねェ、“Boneshaker《ポンコツ》”が
ストレイトロード、ねェ
聞いたかいダンナ?
ま、ポンコツだから真直ぐしか走れないンだろ、お似合いじゃないか
ゴタクはイイからガス欠になる前に掛かって来なよ?
あ、ガソリンも疾っくに腐ッちまってるかい?
軽口で煽りながら初撃を見切り、散開しディヤーヴォルの弾幕で反撃
なンだい、チャンと曲がれンじゃないか
シキの援護を頼りに攻撃を辛うじて躱しつつ反撃の為に情報収集
シキ……ッ!?
己をかばうシキへ4回目の攻撃が迫れば、激痛耐性で被害を顧みず早業の武器受けで割り込む
馬鹿野郎、また、勝手な事すンじゃないよ
……馬鹿野郎
手負いの此方へ仕掛けてくれば、シキと併せて攻勢に出る
直撃の寸前で真の姿に覚醒、左は紅い不死王の眸、右は黄金の狼眼に
超常の膂力と生命力、魔狼の疾さを得る
奴の攻撃で巻き上がる砂塵や瓦礫に紛れUC発動
一気に背後へ切り込みスヴァローグで頭部へ怪力任せの一撃を狙う
オーバーテイクだ
過去(むこう)で廻ッてな
●約束された栄光の道
――おおお、遠吠えにも似た絶叫が上がる。
フルスロットル・ヴォーテックスの身体は暴走したように赫と燃えている。恐らく、内燃機関に何らかの傷が入ったのだろう。
「――今ぞ、我が超克の時か」
血と炎を撒き散らすも、巨人は赤の大地に立ち、最後に対峙する猟兵を見た。
然りとて諦めた様子は無く――いっそ敵愾心を漲らせ、それは笑う。確かに、残る二人を蹴散らせば、まだ栄光に向けた道筋はあるのだろうか。
「終っちまってる分際でガタガタ五月蠅いねェ、“Boneshaker《ポンコツ》”が」
Ha、ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)はそれをせせら笑うように顎で示す。
「ストレイトロード、ねェ――聞いたかいダンナ? ま、ポンコツだから真直ぐしか走れないンだろ、お似合いじゃないか」
「成程、愚直が過ぎるのも考えものだな」
言葉を振られたシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が首肯する。ある種、生真面目にも見える反応であるが、それが敢えて神経を逆撫ですることも、あろう。
フルスロットルは外見に似合わず――その言動には一貫した、一族への誇りのようなものがある。無論、それは猟兵からすれば、ひどく身勝手な独善であるが。
自信に満ちた巨人は、追い込まれても尚、その強者然とした余裕を、維持するか。
(「いいから、とっとと掛かってこいッてンだ――」)
別に苛立ったわけではない。
ヴァシリッサは煽るに煽る――視野の狭窄を招くべく。
「ゴタクはイイからガス欠になる前に掛かって来なよ? あ、ガソリンも疾っくに腐ッちまってるかい?」
「よかろう!」
巨人は吼えた。相変わらず、大地が震えるような大声音であった。
そして、更に轟きは強くなる――フルスロットルのV12エンジンは高らかに鳴る。空を突き抜けるような唸りを上げて、風よりも早く巨人は奔った。
赤毛の女と、白銀の男は、左右に散開した。しかし、ただ駆ける、ということがここまで不自由となるだろうか――風圧の壁に引き寄せられそうだ。
独特の油が燃える臭いが、鼻につく。ぶわっと胸元に走った一撃で、身体が浮いた。痛みを感じる前に血を吐いていたようだ。真っ赤な飛沫が視界を斑に染めていた。
だが、直撃しなかったのは、『視て』いたからだ。目を逸らさず、捉えていた。
「なンだい、チャンと曲がれンじゃないか」
ヴィシリッサは笑いながら、軽々担ぐ身の丈ほどもある重機関銃のトリガーを引く。弾帯が素早く呑み込まれていく――弾幕が金属の躰の前で弾けて火花を散らす。
別の方角から、立て続けに銃声が響く。
排気口を徹底的に破壊すべく、的確に穿つような巧みな銃撃は、シキの仕業だ。
然れど、まずは目の前の獲物を屠らんと思ったか、ヴァシリッサへと鋭く次撃を叩き込む。逃げ場を奪うような、強烈な突進に、彼女は岩肌のような大地を転がって逃れる。
(「嫌になンね――飛び道具の間合いが、向こうに負けるのかい」)
苦笑が溢れる。武器は手放さなかったが、立て直しは、間に合うか。
その時、フルスロットルの額を、銃弾が掠めゆく。
「女ばかりを狙うのが、ヴォーテックスの『暴力』か?」
静かな問い掛けは、爆音の最中でもよく通った。いつしか、先程までヴァシリッサがいた地点に、シキが回り込んでいた。
彼の挑発を、呵々と笑い飛ばしたフルスロットルは、振り返りの力も籠めて、大仰に回転刃を薙いだ。剣風などという表現では温い、ハリケーンのような鉛の一撃がシキを正面から襲う。
大地が更に割れた。
目にも止まらぬ乱撃を叩き込まんとする巨人の手元は、深く抉れて、見えぬ。
「シキ……ッ!?」
ヴァシリッサが珍しく、焦りの声をあげた。
いらえは、銃声が返した。
男は静かに銃撃を続けて巨人の手元辺りを跳躍した。しかし、血だらけだ。彼は何事もなかったかのように、淡々としているが――。
素早く滑り込んで、重い一撃を機銃で受けた。ミシリ、軋んだのは武器ではなく、彼女の身体だ。
「馬鹿野郎、また、勝手な事すンじゃないよ」
「勝手はお互い様だ」
罵声混じりの叱責を、さらりとシキは受け流す。微笑みすら浮かべた彼は「大丈夫だ――来るぞ」と敵へと注意を促す。
解ってるッ、怒り混じりにフルスロットルを睨みながら、小さく吐き捨て、前へと躍る。
シキは敢えて攻撃を引きつけた。銀の尾まで赤に染めておいて、大丈夫、は嘘だろう。
「……馬鹿野郎」
その声は、シキに届いたか。届いたところで――彼は振り返らぬ。
「女と侮るンじゃないよ――アタシを……ッ」
血が燃える。髪が逆立つような感覚がある――まるで獣のように。
その双眸が、色違いに輝いている。
左は紅い不死王の眸、右は黄金の狼眼――やや前に構えた姿勢、放たれる妖気たるや、尋常ではない。
相棒の覚醒を、気配で察し――シキは一度、瞠目した。負傷は深い――だが、機を逃すわけにはゆかぬ。その姿を思い起こすのは、限りなく理性が拒絶する――然れど。
「……今のままでは厳しいか」
シキの身体が、月光に似た淡い光を帯びるや、その犬歯が牙のように伸び、青の瞳は、夜の獣のように鋭利と光った。
「最後にクタばッてなきゃ、“勝ち”だろ――来いッ、“Boneshaker”!」
ヴァシリッサの誘いに、巨人は真っ直ぐ答えた。
エンジンの爆音よりも煩い咆哮を放ちながら、刃を振り下ろす。叩き潰そうとする渾身のスイングは、果たせるかな、大地に亀裂を走らせ、瓦礫を巻き上げた。
「――ついて来れるかい?」
口の端を歪める笑み。魔狼の如き速さで散った瓦礫を足場に疾駆し、魔眼は煙幕の中でも狙いを外さない。
同時にシキも――跳んでいた。
真の姿を解放した月光の人狼は、獣性を解き放って、強かに地を蹴った。巨人の頭上に届く程の跳躍を可能とする――ヴァシリッサよりも早く。彼女の奇襲を確実なものにするために、真正面から飛びかかり、数弾撃つ。
弾かれるや、銃は捨て、獣のように身体を捻った。乱暴に薙ぎ払われた刃を蹴って、穴の開いた胸の鋼目掛け、シキは己の爪を振るった。強靱な狼の爪は、金属を易く掻き裂く。
「さっさと失せろ――明日への道は今を生きる者達の為に在る」
ぎらりと、人狼の瞳を輝かせ、夥しい血が噴き出るを更に上へと馳せて、喉元へもう一撃、振り下ろした。
「ガァアア!」
獣じみた叫び声が、厭うようにシキを振り払う。乱暴な突進だったが、火事場の馬鹿力とでもいおうか。はたき落としすら、強烈な衝撃でシキを襲う。
(「だが――」)
巨人は膝を突いた。そして、その頭上で。
色違いの光が、不吉の象徴のように、赫いている――。
ヴァシリッサが大上段に掲げるのは、重機銃。銃床部に備わる接近戦用の凶器が、炎に鈍く照らされている。
「ナンだっけ? ストレイトロード……」
ハッ、と最後に彼女は嗤い。
「オーバーテイクだ。過去(むこう)で廻ッてな」
ヴァシリッサは一呼吸で、その頭蓋を、思い切り叩き割った――。
死の向こうにある新たな進化も。約束された道などクソ食らえと悪しく罵り、猟兵たちは凱歌を謳う。
――輝ける明日も、栄光も、終末のその先、今を生きる人々にあらんことを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵