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アポカリプス・ランページ⑱〜事象と驚異

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●蠢くもの
 一つの街を覆うほどの超巨大オブリビオン・ストームを猟兵達は見ただろう。
 フロリダ州タラハシー。
 いくつもの大学がキャンパスを構える学術都市。それがタラハシー。嘗ては『古い町』とも呼ばれた街は今や『フィールド・オブ・ナイン』の一柱である『ポーシュボス・フェノメノン』が全てを覆い尽くしていた。
「嗚呼、嗚呼、俺ノ姿はスっカり変ワっテしマっタ。記憶モ、正気モ、最早定かデはナい……」
 それは無数のポーシュボスが絡まり、蠢き、囁き合う『ポーシュボスの虚』とも言うべき内部から響いた言葉だった。

 すでに声の主は嘗ての姿を喪っている。
「『ポーシュボス現象』。人ガ怪物にナる現象ヲ、私は研究シてイまシた。ソれデも、気付ケなカっタ。そレを認識シた時、私ハ既にポーシュボスだッた」
 また別の声がする。
 それもまた『ポーシュボス・フェノメノン』。
 その恐るべき特性は唯一つ。

 生命の持つ『善の心』に寄生し、少しでも善の心を持つ生物を新たな『ポーシュボス』へと変える。
「誰カ助けテ! わタし、ワたシの赤チゃンを飲ミ込んデしマっタの!  誰か助ケて! アの人トの大切ナ子供が、ワたシに食ベらレてシまウ!」
「コこニいルよ、こコにイるヨ……まマ……」
 親子の声が聞こえる。
 けれど、もうそれは親子でもなんでもなかった。そこに在るのは『ポーシュボス』のみ。あらゆるものの境目が溶け合って消えていく。

「ポーシュボスは『善』ヲ喰らッて成長スる。邪悪ナる者ナらバ、ポーシュボスを殺セる」
『ポーシュボス』と為らぬものは『純粋な悪の存在』のみ。
 それはあまりにも単純なことであった。
 人間という生命であればこそ、その単純さこそが最も難題であったのだ。
「俺ハ凶悪犯罪者だッた。楽シみノ為に、何百人モ慰み者ニしテきタ。……そレでモ駄目だッた! コの俺ニすラ、ほンの僅カな良心、善ノ心が何処カにアっタのダ!」

 それは嘆きの声であったが、同時にどうしようもないことであった。
 人という生命に善悪どちらかというものはない。
 あるのは矛盾。
 それらを抱えるからこそ、人は理解する。

「『世界を救う』為に戦う『邪悪ナる者』。不可能ダ、あリえナい。ポーシュボスを倒スこトはデきナい……」
 覚悟せよ。
 此処は善悪の彼岸――。

●アポカリプス・ランページ
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。フロリダ州タラハシーにおいて『フィールド・オブ・ナイン』の一柱である『ポーシュボス・フェノメノン』が発生した超巨大オブリビオン・ストームが確認されました」
 彼女は瞳を伏せていた。
 それはあまりにも過酷な現状であった。『フィールド・オブ・ナイン』はどれもがカタストロフを引き起こすほどの強大な敵。即ち、一体一体が『オブリビオン・フォーミュラ』である。

 今回猟兵たちが対峙する敵、『ポーシュボス・フェノメノン』は、その中でも群を抜いて単純かつ対抗しがたき敵であった。
「『ポーシュボス・フェノメノン』は生命の持つ『善の心』に寄生し、増殖していくオブリビオンです。すでにタラハシーの街は、膨大な数の『ポーシュボス』にまみれています」
 ポーシュボス化した生命を救うことはできない。
 もはや殺す以外に救う道はないだろう。そして、この『ポーシュボス化』を免れることができるのが、『純粋な悪の存在』のみ。
 心に一欠片とて『善の心』を持つのであれば、それは抗うことのできぬ『ポーシュボス化』によって飲み込まれていくことだろう。

 変異は止められない。
 ならばなんとするか。答えは単純明快であろう。しかし、それがどれだけ危険なことであるかをナイアルテは告げることができなかった。
『ポーシュボス化』しても戦うこと。もしくは『邪悪ナる者』になること。
 それは猟兵にとって苦難の道である。
 けれど、彼女は厳重に保管された一つの宝石を猟兵たちに手渡す。
「あまり長く凝視しないでください」

 覗き込もうとする猟兵たちを手で制し、ナイアルテは告げる。
 それは『ヒューストン宇宙センター』で猟兵たちが確保した宝石『宇宙の幼生』と呼ばれる物体であった。
 その内部には広大な『本物の宇宙の如き光景』が広がっている。
 けれど、この宝石を数秒以上見続けると猟兵であっても発狂してしまう。だから、ナイアルテは覗き込もうとする猟兵たちを止めたのだ。

「これは『宇宙の幼生』。これを用いいれば『ポーシュボス・フェノメノン』は融合し巨大な肉塊と化し、『宇宙の幼生』をくらおうとするでしょう」
 戦うことには変わりない。
 己たちが『ポーシュボス化』するよりも早く、もしくは『邪悪ナる者』になって戦う。けれど、増殖した膨大な数ではなく、単体を撃破するという意味では大きく戦い方が変わってくるだろう。
「危険な戦いであることは承知の上です。ですが、これを討たねば敵はさらなる犠牲者を生むでしょう」

 ナイアルテは『宇宙の幼生』を猟兵たちに託す。
 自分ができることは多くはない。戦いに赴く猟兵たちを送り届けることしかできない。その歯がゆさは言うまでもないことだろう。
 だからこそ、ナイアルテは微笑んで見送るのだ。
 彼女が信じる彼らならば、いかなる困難も乗り越えて、再び戻ってきてくれると――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『アポカリプス・ランページ』の戦争シナリオとなります。

 フロリダ州タラハシーにて発生した超巨大オブリビオン・ストームの内部に存在する『ポーシュボス・フェノメノン』を打倒するシナリオになっております。

 オブリビオン・ストームの内部は膨大な数の『ポーシュボス化』した生命がうごめいていますが、皆さんが持ち込んだ宝石『宇宙の幼生』を認め、融合し巨大な肉塊となって皆さんに襲いかかってきます。
『善の心』を持つ限り、皆さんであっても『ポーシュボス化』は免れないでしょう。
 完全に『ポーシュボス』へとなる前に打撃を加えて離脱するか、もしくは『邪悪ナる者』になり、『善の心』を捨て去って戦うかの二択になると思われます。

 さらに宝石『宇宙の幼生』を喰らおうとする『ポーシュボス・フェノメノン』の特性を利用して戦うこともできるでしょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……『邪悪ナる者』になるorポーシュボス化してでも戦うor敵の巨体や「宇宙の幼生」を利用する。

 それでは、『フィールド・オブ・ナイン』の齎すカタストロフを阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『ポーシュボス・フェノメノン』

POW   :    ポーシュボス・モンストライズ・フェノメノン
自身の【体積】を代償に、【生物をポーシュボス化する現象】を籠めた一撃を放つ。自分にとって体積を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    ポーシュボス・ウェポナイズ・フェノメノン
いま戦っている対象に有効な【武器形態ポーシュボス】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    ポーシュボス・シンパシー・フェノメノン
【ポーシュボスの威容】を披露した指定の全対象に【ポーシュボス化したいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。

イラスト:爪尾

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カツミ・イセ
僕の上さまは言ったよ。『やりたいことをやりなさい。でも、無理しないで』って。
でもごめん、神様。これは僕がやりたいことなんだ。

【似姿】にて召喚したのは生物じゃなし心もないから、ポーシュボス化はまぬがれる。
つまり、僕だけがポーシュボス化の危機がある。でもね、神様はそれを許さないから。常に回復してる。

いこう、僕たち。水流燕刃刀での一斉攻撃を食らわせて、それから離脱する!
僕の神様にまで、影響出ちゃダメだし!

…だってさ、彼らが願ってるんだもの。やらなきゃ。
だから、無茶してでも僕はここに来たんだ。



 黒く蠢く超巨大オブリビオン・ストームの中に煌々と輝く瞳のようなものがいくつもあった。
 それは『フィールド・オブ・ナイン』の一柱たる『ポーシュボス・フェノメノン』の奇怪なる輝きであった。
 その輝きはどれもが『ポーシュボス化』を誘発するものであった。
 善なる心を持つものは、大小関係なく『ポーシュボス』に寄生される。寄生されてしまえば、それらを拠り所としてどんな生命であれ『ポーシュボス』へと変貌するのだ。

 恐るべき能力。
 全にして一つ。個にして全。
「あ、ァ、A、体ガ、変わる、かわっt、行く」
 最早フロリダ州タラハシーにあるのは、生命であって生命ではなかった。全てが『ポーシュボス』へと変貌し、『宇宙の幼生』の気配を感じ取ったのか、群であったものが個へと変わっていく。
 巨大なる肉塊。
 それが『ポーシュボス』であった。

 その威容を見上げるのは、カツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)であった。
 彼女の瞳が見上げる『ポーシュボス』はあまりにも巨大であった。今も尚、彼女の体を苛むのは『ポーシュボス化』の衝動である。
 彼女を作り出した彼女の神は言った。

『やりたいことをやりなさい。でも、無理はしないで』

 きっとこれは神様の言うところの無理なことなのだろう。善なる心を持つ以上、カツミもまた時間が経てば『ポーシュボス』へと変貌してしまう。
 神様を悲しませてしまう。
 それだけはしたくない。
「でもごめん、神様。これは僕がやりたいことなんだ」
 目の前にそびえる『ポーシュボス』の肉塊からいくつもの声が聞こえるのだ。
『殺して』と。
 もはや生命であって生命ではないものたち。救うこともできない生命を前にカツミが己にできることは唯一つだった。

「僕の神様から賜りし水の権能、その一つ。僕と似た者たちをここに」
 彼女が手繰るのは、水の権能、二『似姿』(ニスガタ)。
 その瞳にユーベルコードの輝きが在る限り、その権能は水でできた己とそっくりな球体関節人形を使役する。
 浄化の水によって構成された人形たちは、生命ではない。
 心もない。
 ならばこそ、『ポーシュボス』の影響を受けずに行動することができる。

 浄化の水は常に『ポーシュボス化』に抗うようにカツミの体を回復し続ける。
 意識が断絶しそうになる。
「でも……それでも、彼らが願ってるんだもの。やらなきゃ」
 それが例えどれだけ難しいことであったのだとしても。
 それでも神様ならこうするだろう。いや、違う。

 これは自分がすべきことなのだ。
 己を作ってくれた神の子機である以上、権能で繋がっているのならば、カツミに出た影響が最も大切な神にあるかもしれない。
「そんなことは絶対に嫌だ」
 神様は知っているのだ。
 人間の醜さも、弱さも。
 けれど、同時に美しさも強さも知っている。だから戦う。カツミはその写し身のようなものだ。

 彼女の心が、彼女の足を進めさせる。
「いこう、僕たち!」
 カツミと水でできた人形たちが疾走る。その手には清浄なる水の力を秘めた蛇腹刀が在る。
 それらを巨体たる『ポーシュボス』を取り囲み、凄まじい斬撃を繰り出す。蛇腹剣はまるで水竜の如く『ポーシュボス』の体を刃で持って傷つける。
 浄化の水の力であっても『ポーシュボス化』は拭えない。
「シなせて、こr、して」
 わかっている。

 これがどうしようもないことだってことは。
 自分の心に浮かんだ感情をカツミは殺さなかった。この罪悪も、後ろめたさも、何もかもが自分のものだ。
「も、うイきているのも、辛い、いや、だ――」
 握りしめる力。刃が翻り、カツミの瞳がユーベルコードではなく、意志の輝きに寄って灯る。
 終わらせよう。これがどれだけ無茶なことであったのだとしても。
「やらなきゃ。君たちを救うために僕はここに来たんだ」
 少しでも多くを終わらせる。

 その水の刃がほとばしり、『ポーシュボス』の巨体を瞬時に切り刻み、その巨体に取り込まれ融合した生命を救済するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤・美雨
心を殺すことは出来ないからね
寄生されるのは仕方ない
でも折れてなるものか

『宇宙の幼生』はなるべく見ないように袖の中に隠しておこう
そして相手がこっちに迫ってきたら……まずは逃げる!
幼生を持っている限り、相手は基本的にこちらに接近してくるだろう
そして使ってくる武器もポーシュボスだ
それなら……突然宝石を差し出してやればどうなるかな?

接近してきた武器ポーシュボスが幼生を喰らおうとするなら万々歳
残念だったね、喰らうのは私の方さ
UCで宝石を握る腕を変化させ、こっちからポーシュボスを食らってやる

それでポーシュボス化の負担が少しでも和らげば此方の番
お返しはシンプルに
『火尖鎗』を【怪力】で突き立て燃やしてやるよ!



 人の心には二つが属する。
 陰と陽があるように、善と悪がある。
 それは切っても切り離せぬ表裏一体のものであるのならば、心もつ生命にとってこその天敵が『ポーシュボス・フェノメノン』であったことだろう。
 かの『フィールド・オブ・ナイン』の一柱は、見たものを『ポーシュボス化』する。
 善の心に寄生するという恐るべき力があるからこそ、このタラハシーの街は『ポーシュボス』沈んだ。

 超巨大オブリビオン・ストームの中に明滅する幾つもの目のような器官が煌々と輝いている。
「もう、いやダ。なぜ、こんな、メにAうのだ。俺はナニも悪いことはシていないというのni」
 声が響く。
 それは元はタラハシーの街に住まう人の成れの果て。
 もはや、嘗ての人の原型など何処にもない。あるのは『ポーシュボス』のみ。それを前にした藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は融合し巨大化した『ポーシュボス・フェノメノン』を見据える。

 その巨体が此方を見た。
 確実に見たと美雨は理解しただろう。己の袖の中に隠した『宇宙の幼生』。それを『ポーシュボス・フェノメノン』はいかなる器官によってか嗅ぎつけ、貪ろうと美雨に迫るのだ。
「心を殺すことは出来ないからね。寄生されるのは仕方ない」
 美雨というデッドマンを突き動かす衝動は、まさに心そのものであった。
 だからこそ、善と悪を分かつことはできない。
 けれど、それで敗けていい理由にはなっていない。

 人は殺されてしまうかもしれないが、負けるようにはできていない。

 それを美雨は己の身を持って実践するのだ。
「それ、ソレ、そレはああああ――!!!!」
 怒号のような声が響く。やはりグリモア猟兵の言葉どおりであった。『ポーシュボス・フェノメノン』は『宇宙の幼生』を目掛けて襲ってくる。
 これを利用しない手はない。
 放たれる『ポーシュボス化』した触手の如き身体が弓矢のように引き絞られる。何をと思った瞬間、弾丸のように斬り放たれた『ポーシュボス』の一部が美雨を襲うのだ。

 弾丸にして『ポーシュボス』を放ち、『宇宙の幼生』を喰らおうというのだ。
 逃げる美雨を追うように次々と放たれる弾丸の『ポーシュボス』。それらは一度でも受けてしまえば、美雨すらも『ポーシュボス化』することであったことだろう。
 しかも、弾丸にされた『ポーシュボス』は個体となって追いかけてくる。
「そんなにこれがほしいんならさ!」
 美雨は『宇宙の幼生』を迫る個体の『ポーシュボス』へと差し出す。それを捕食線と大口を開けた『ポーシュボス』の器官。明滅する極光の如き輝き。
 それを美雨は見ただろう。
 けれど、それこそが彼女にとっての最大の好機であった。
「残念だったね――喰らうのは」

 その瞳がユーベルコードに輝く。
 それは、怪物の目覚め(ピーカブー)。美雨の宝石を握る腕が赤黒い目のない怪物の頭部へと変貌を遂げる。
 大口を開ける化け物の顔が顎をもたげ、せまる『ポーシュボス』を喰らうのだ。
 生命力を奪い、その己の苛む『ポーシュボス化』を癒やす。
「あ、ァ、あ、A、お、宇宙、ううちゅちゅ、宇宙が、みえ、あ――」
 呻く『ポーシュボス』を化け物の顎が噛み砕く。

『宇宙の幼生』に何を見たのかを美雨は知らない。
 けれど、己の身を苛む『ポーシュボス化』は一進一退だ。ここで踏ん張らなければ、『ポーシュボス化』した人々が浮かばれない。
 最早救うことができないのならば、終わらせてやるしか無いのだ。
 どれほどの絶望が彼らを遅い、今もなお、彼らの魂を苛む。それはどうしても許せることではなかったのだ。
 悲痛なる悲鳴が己の腕が変化した頭部の顎が噛み砕く度に響く。

 生きていたかっただろう。

 けれど、美雨の瞳には毅然たるユーベルコードの輝きがあった。
「折れてたまるものか」
 そう、己が折れてはだれが彼らを救うというのだ。変形した腕の化け物の顎が迫る『ポーシュボス』を噛み砕き、構えた火尖槍を有り余る膂力で持って巨大化した『ポーシュボス・フェノメノン』へと投げつけられる。
 その一撃は、あの巨大なる肉塊を穿ち、美雨の折れぬ心を持って反撃の狼煙となるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

…彼らが望むのならぱ、そうしましょう。それが私たちの役目。
善性持ってないと、悪霊本能がまずいのでー…幼生利用しましてー、巨大化した相手に対します。巨大化ということは、的が大きくなったということですからねー?

なので、UCつき漆黒風を投擲していきますねー。呪詛も怨みも、私たちが全て持っていきましょう。悪霊ですから。
そして、相手の一撃は食らうわけにはいきませんので、風属性結界で反らしつつ見切りましょう。

ある程度ダメージを負わせたら、引き上げませんと。陰海月と霹靂が危ないです。



 輝く炎の槍の一撃が『ポーシュボス・フェノメノン』の巨大な肉塊の如き身体を穿つ。
 その一撃は猟兵たちにとって強大な敵との戦いにおける狼煙であった。
 これまで猟兵達は善の心を持つ生命に寄生し『ポーシュボス化』するという強力無比為る力を前に苦戦を強いられていた。
 それ以上に彼らの心をえぐるのは、タラハシーの街に嘗て住んでいたであろう無辜の人々の成れの果て。その姿であった。
「いた、い、痛い、痛イ、焼ける。灼けイる。から、から、から、からだが、燃エエ、テテテ、イる!」
 人の意志の残滓であろう。
 もはや救うことの出来ぬ存在。それはわかっていたとしても、猟兵たちの歩みを鈍らせるには十分なものであった。

「ころ、コロ、コ、ろ、シて。殺してクレ――!!!」
 迫る『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯から放たれる一撃が馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その一柱であ『疾き者』に迫る。
 その一撃は『ポーシュボス・フェノメノン』の肉塊の一部を失う一撃であったが、『ポーシュボス・フェノメノン』にとっては痛手でもなんでもなかった。
 なぜなら、相対する者全てが『ポーシュボス化』するのだから。
 すぐに取り戻すことができる。
 だからこそ、考えなしの攻撃を放つことができるのだ。かつての存在であった頃の名残しかない。
 もう生命はそこにはないのだ。

「……彼らが望むのならば、そうしましょう」
『疾き者』は己の役目を理解している。
 己達は悪霊である。けれど、善性を持つがゆえに、彼らは悪霊でありながら猟兵として戦うことができる。
 そんな彼らの身体さえも『ポーシュボス化』する兆しが見えている。
 抵抗は続けても、それは時間の問題であろう。ゆえに、その手に輝くのは『宇宙の幼生』と呼ばれる宝石であった。

 宇宙そのものを思わせるような輝きを内に秘めた宝石を認めた『ポーシュボス・フェノメノン』が咆哮する。
「うちゅ、宇宙ウウ初う……!」
 膨れ上がる『ポーシュボス・フェノメノン』が顎のような器官をもたげ、『疾き者』の手にする宝石目掛けて迸るように宙を掛ける。
 それは言うまでもなく、他の何も見ていない凄まじい速度の攻撃であった。

 けれど、『疾き者』はうろたえることはなかった。
 その瞳に輝くのはユーベルコード。
「さてー、参りましょうかー」
 投擲した黒い棒手裏剣が迫る『ポーシュボス・フェノメノン』に突き刺さる。
 それは己たちの呪詛や怨みを籠めた一撃。

 四悪霊・風(シアクリョウガヒトリ・トノムラヨシツナ)。
 それは打ち込んだ棒手裏剣を基点に、命中した箇所を破壊するユーベルコードである。
『宇宙の幼生』を貪り食わんと迫る『ポーシュボス・フェノメノン』は、その巨体を大きく傾けていた。放たれる一撃は、煌々と輝く極光の如き器官に突き立てられ、瞬時に風の力が解き放たれ、その巨体を刻むのだ。
「呪詛も怨みも、私達が全て持っていきましょう」
 溢れる痛みにあえぐ声。
 それは一斉に奏でられる輪唱のように世界に響き渡る。

 すでに『ポーシュボス化』した生命を救う手立てなど何処にもない。
 あるのは、かつての生命の残滓。
 その意識の反芻のようなものであったことだろう。あれはただの反応である。けれど『疾き者』たち悪霊にとっては違う。
「ア、ァ、あ、痛い、痛い、いた、イよう……!」
 呻くように聞こえてくる数々の悲鳴。
 きっと己たちを恨んでいるだろう。憎悪しているだろう。それらを余すこと無く『疾き者』たちは取り込んでいく。

「せめて、私達を恨むのならば怨みなさい。私達が全て受け止めましょう。悪霊ですから、この程度なんてことないのですからー」
 それしかできることはない。
 放たれ続ける棒手裏剣が次々と『ポーシュボス・フェノメノン』の巨体を風でもって刻み、破壊していく。
 痛みにあえぐ声だけが戦場に響く。
 阿鼻叫喚とはこのことであろう。けれど、ためらわない。己たちがやらねば、他の誰かが犠牲に為るのだ。

 ならば、己たちが全ての呪詛と怨念を受け継ぐ。
 その決意と覚悟こそが『ポーシュボス化』苛む己の身体をつなぎとめるたった一つのことであったのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シズホ・トヒソズマ
ヒーローなので邪悪とか真っ平ですが…
成り果てた人々を楽にさせる為なら
拘りませんよ

UCを発動
帝竜ワームの力を発動
ブレスから白い仮面を作り出し
自分に嵌めます
これは邪悪な心を増幅する仮面
本来は操る為の物ですが自分で自分に使うんですからそこは問題なし


はああ
皆さんそんな酷い目にあってずるい……ずるいから殺しますね

再びワームの力で
巨体であるワームの姿の分身体も出して攻撃させたり盾にします
アレは心はないし元が邪悪でしたし大丈夫でしょう

あ、良いこと思い付きました♪
ミコを◆操縦し◆催眠術使用
各々の意識の人間だった頃の姿を見せます
アハ♪
気が気でなくて集合が乱れてますよ♪面白おい♪

ワームの力で雷撃を敵に浴びせ離脱



 ヒーローとは善の象徴である。
 人はそれゆえにヒーローを仰ぎ見、その姿に己の心の善性を託すのだ。
 ならば、『ポーシュボス・フェノメノン』は恐るべき敵であろう。いかなる敵も『善の心』を一欠片とて持つ以上、『ポーシュボス・フェノメノン』は倒せない。
 その姿を認めた者全てが『ポーシュボス化』する。

 フロリダ州タラハシーの街が、その惨状を良く顕していると言えるだろう。
 超巨大オブリビオン・ストームの中で蠢くは幾つもの『ポーシュボス』が寄り合い、蠢き、練り上げられるようにして巨大化した肉塊の如き巨体。
 明滅する光を放つ器官は目なのか、それとも口なのか。
 それさえもわからぬ輝きの中で人々の変性した悲痛なる声が響く。
「『ポーシュボス』はたお、たお、倒せないいイイいいい……!『善の心』を持たぬ世界を救うものナドいない、いいい」
 ゆえに倒すことの出来ぬ存在。
 それが『ポーシュボス・フェノメノン』である。

 だが、それでも征くのが猟兵である。
「ヒーローなので邪悪とかまっぴらですが……」
 シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は、『ポーシュボス化』した嘗ての人々の姿をみやり、そして同時に彼らが救うことの出来ない存在であることを知る。
 もはや生命ですらない。
 彼らの嘗ての意志を尊重するのならば、殺さねばならぬ。
 ゆえに、彼女は最早己のヒーローとしての有り様などにこだわることはなかった。

「人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す!」
 瞳がユーベルコードに輝く。
 からくり人形から呼び出されるのは過去に倒してきたオブリビオンの幻影。
 それは帝竜ワームの雲海の如き力であり、雷撃がほとばしるブレスから白い仮面が生み出される。

 それは邪悪なる心を増幅させる仮面。
「なりふりなどかまってはいられません」
 本来は操るためのものであるが、己に使うことによって、その瞳は妖しく輝く。
 そう、そこにあったのは邪悪であった。
 ヒーローという言葉すら危うい存在。
「はああ、皆さんそんなひどい目に合ってずるい……」
 シズホが見つめるのは悲哀の言葉を響かせ続け、『ポーシュボス』の巨体を揺らし迫る肉塊であった。

 彼らは確かに抵抗も何もできぬままに『ポーシュボス化』し、生きたまま己の意志とは無関係に生命という生命を『ポーシュボス化』してきたのだろう。
 増殖する現象。
 止まらぬ被害。
 そのどれもが理不尽そのものであった。ゆえにシズホは、彼らのそんな境遇をこそ『羨んだ』のだ。
「……ずるいから殺しますね」
 羨み、妬む。
 ただその感情のままに振る舞う。それこそが、幻影装身(アームドオブリビオン・ミラージュ)である。
 彼女の力の奔流は、その身にまとうことで発揮されるが、同時に彼女の身体を蝕む。

「あ、良いこと思いつきました♪」
 それはあまりにも残虐なる行いであったことだろう。
 からくり人形が見せる催眠術による幻影。それは『ポーシュボス』化した人々が嘗て人間であったころの姿。
 もはや戻らぬ姿。
 決して、どうしようもない現実。その姿を見せつける。
「あ、お、あ、ど、ウし、手、私、ワタしの姿……なんで」
「あれは!オレの、すすすがたたたた! これは夢、ユメなんだ、ワルいゆめ……!」
「アハ♪ 気が気でなくて集合が乱れてますよ♪ 面白おい♪」

 シズホは笑っていた。
 人の心を傷つけることを楽しんでいた。けれど、それでもひとかけらの善心が残っているのならば、『ポーシュボス化』は止まらない。
 けれど、それでも揺らめくように巨体がゆらめき、肉塊の動きが支離滅裂に為る。
「やっぱり効いてじゃないですか。けれど、もう関係ないですよね?」
 シズホは己の身にまとうワームの電撃を『ポーシュボス・フェノメノン』の巨体に打ち下ろし、離脱していく。

 白い仮面が剥がれた後、きっと彼女はどう思うだろうか。
 後悔にさいなまれるだろうか。いや、その己を苛む感情さえも、彼女はきっと糧にするだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
所持した「宇宙の幼生」や敵の精神攻撃を狂気耐性と、
救世の祈りを唱え続ける事で精神を浄化して耐えUCを発動

…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を

…例え、救済を志す世界が異なっていたとしても…っ
私が歩みを止める理由には、ならない…!

…来なさい、邪神ポーシュボス。この私を容易く取り込めると思わない事ね…っ

召喚した黒騎士の霊達を大鎌に降霊し武器改造を施し、
大鎌を騎士剣に変形させて限界突破した黒炎の魔力を溜め、
極限まで対神属性攻撃を強化した黒炎の斬撃波を放ち敵の巨体をなぎ払い切断する

…来たれ、異端の血を啜る黒剣よ、神々を喰らう黒炎の鎧よ

神殺したる我が手に宿りて、邪神を切り裂く刃となれ…!



『宇宙の幼生』――それは猟兵であっても数秒見つめるだけで発狂を齎す恐るべき宝石である。
 なぜ『フィールド・オブ・ナイン』の一柱である『ポーシュボス・フェノメノン』がそれを求め、貪り食わんとするのか。
 それを知る者は未だ無い。
 けれど、確かなことが一つだけある。
『ポーシュボス・フェノメノン』は、この宝石を狙ってくる。
 ならば、己の取れる択は一つであった。

 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は己の中にある救世の祈りを唱え続ける。
「……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を」
 手にした宝石は輝きを放っている。
 そして、同時に彼女の身を『ポーシュボス化』せんとする『ポーシュボス・フェノメノン』の『善の心』に寄生する特性が彼女の体を蝕んでいく。
 彼女は、それらを狂気に対する耐性を持って抗う。
 それ以上に己の中にある救世の祈りの方が僅かに勝っていた。

 だが、それでも。
 それでも、目の前の巨躯。その肉塊から溢れる嘆きの言葉に彼女は瞳を見開く。
「い、イや、だ。死にたクない。い、やだ、いや、だイヤダイヤダいやだいやだいやいだいやだいやだ――シにたくなイ――!」
 絶叫。
 身も竦むほどの叫びを前にリーヴァルディは、もはや『ポーシュボス化』したものたちが救うことの出来ぬ存在であることを理解したとしても。
 それでも彼らをこそを救わねばならぬと思ったことだろう。
「……例え、救済を志す世界が異なっていたとしても……っ、私が歩みを止める理由には、ならない……!」

 歩みは止めてはならない。
 これまで数多の犠牲の上に成り立っていた世界が、また一つの生命を還すだけだろう。
 けれど、その生命を惜しむことをやめてはならない。
 全てを救うことは叶わぬ。
 そんなことは、わかっているのだ。だが、リーヴァルディは、それを否定する。彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「……限定解放。来たれ、戦場に倒れし騎士達の魂よ」
 巨躯の如き『ポーシュボス・フェノメノン』から放たれる『ポーシュボス化』へのいざない。

 それらを振り切るように、限定解放・血の騎士団(リミテッド・ブラッドナイツ)の力が顕現する。
 折れた黒剣、砕けた黒炎の鎧で武装した怨念の蒼炎で形成された黒騎士たちが蒼炎霊馬と共に駆け出す。
 生命ではない彼らに『ポーシュボス化』は起こらない。
「……来なさい、邪神『ポーシュボス』。この私を容易く取り込めるとは思わないことね……っ」
 溢れ出る不定形な肉体。
 もはや肉塊と呼ぶに相応しい幾つもの『ポーシュボス』が絡み合ったかのような巨体を揺らし、振り下ろされてる管のような腕。
 それを黒騎士たちが斬り裂き、薙ぎ払っていく。

「……来たれ、異端の血を啜る黒剣よ、神々を喰らう黒炎の鎧よ。神殺したる我が手に宿りて、邪神を切り裂く刃となれ……!」
 漲るユーベルコードの力。
 極限まで研ぎ澄まされた対神並走の一撃が黒炎の魔力を放出して、斬撃波となって『ポーシュボス』軒躯体を薙ぎ払う。

 その一撃は、誰のための手向けであったことだろうか。
 死にたくないと願った『ポーシュボス化』した、かつての生命に向けてのものであっただろうか。
 黒炎が一条立ち上り、『ポーシュボス・フェノメノン』の絶叫が戦場に木霊する。
 きっとそれを忘れることはないだろう。
 誰もが願った明日のために。
 リーヴァルディは、救えぬ生命に救済をと、そう願わずにはいられなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・アイオライト
耳元で囀る肉塊とか鬱陶しすぎるわ。ほんと邪魔ね。
自身の不幸を他人の耳元で喋る暇があったらさっさと死になさいよ。
アンタたちがポーシュボス現象に呑まれたってのは分かるけど。その悲痛の声はただの煩わしい嵐の喧騒と同じ、いいえそれ以下よ。早く骸の海に還りなさい。

邪悪なる者になる、ね。
……その邪悪なる者なら、あたしの力の裏に潜んでる。
UC発動、出てきなさいクラミツハ。アンタに素敵な蹂躙の場を与えてあげるあたしに感謝することね。

『クハハハハハ!!!殺すか!そうか殺そう!!全部殺そう!!形なき肉塊をことごとく磨り潰してくれる!!』

自身の体をクラミツハに預けて、影を操って『範囲攻撃・蹂躙・暗殺』するわよ。



「だめダ。キては、ダメだ。こいつに、ハ、『ポーシュボス』ニ、は、勝て、ナい。キてはははははははははは――ッ!!!!」
「いや、だ。痛いノは、もう、イヤだ。身が焼カれる。痛ミが終わらない。終わらない。終わらナイ」
 超巨大オブリビオン・ストームの中心で溢れるは嘗てのフロリダ州タラハシーの住人たちが変貌した『ポーシュボス』たちが捻れるようにして融合した巨魁たる『ポーシュボス・フェノメノン』であった。

 不気味な肉塊となった『ポーシュボス・フェノメノン』は猟兵たちの攻撃を受けても尚、蠢くことをやめない。
 その融合した生命は、もはや個としての区別などなかった。 
 だれもが『ポーシュボス』であり、『ポーシュボス』とは誰のことでもない。

 目の前にいる存在を見上げてレイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)は忌々しげに吐き捨てた。
「耳元で囀る肉塊とか鬱陶しすぎるわ。ほんと邪魔ね」
 彼女にとって、目の前の『ポーシュボス』は邪魔な存在でしかなかったのだろう。
 しかし、それほどまでに同情の入り込むことのない彼女の心の中にも善はあるのだろう。一欠片とて善性が残っていれば『ポーシュボス化』から逃れることはできない。
 陰陽があるように、光と影があるように。
 レイにとってもあるのだろう。
 だからこそ、彼女は邪魔だと言ったのだ。

「自身の不幸を他人の耳元で喋る暇があったら、さっさと死になさいよ。アンタたちが『ポーシュボス現象』に呑まれたってのは分かるけど。その悲痛の声はただの煩わしい嵐の喧騒と同じ、いいえそれ以下よ」
 にべにもなかった。
 レイの言葉は『ポーシュボス化』した生命に突きつけられた現実であった。
 二度と戻ることのない変異。
 殺すしか無いのであれば、レイにとって生命の有所など考えるだけ無駄であった。ゆえに、彼女は告げるのだ。

「早く骸の海に還りなさい」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
『影憑き』に潜む闇黒の操者『クラミツハ』が影より現れる。
「……出てきなさい『クラミツハ』。アンタの素敵な蹂躙の場を与えてあげるあたしに感謝することね」
 レイの背後より現れる『クラミツハ』。
 それは影憑・闇御津羽神(カゲツキ・クラミツハ)によって、レイの身体を操る力の根源であろう。

 その性根は『邪悪なる者』そのものであったことだろう。
『クハハハハ!!! 殺すか! そうか殺そう!! 全部殺そう!! 形なき肉塊を尽く磨り潰してくれる!!』
 レイは己の身体を『クラミツハ』に預ける。
 己の影を操る力の裏に潜む存在。それが『クラミツハ』である。

 そこに善性のかけらはない。
 どんな生命にも善悪があるのならば、『クラミツハ』は、その理外にある存在。
 放たれる闇黒の影が迸る。
「い、ヤ、だ。死にたクな――」
『ポーシュボス』から響く声などレイには最早届いていなかった。
 
 すでに彼女の身体を操るは『クラミツハ』。真に『邪悪なる者』にとって、命乞いなどただの旋律に過ぎないだろう。
 己の繰り広げる蹂躙劇。
 その哀れなる標的だけに過ぎないのだから。

 影の乱舞が『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を切り刻み、内包した嘗ての生命を切り裂いていく。
 救う救わないではない。
 ただ、殺すか、殺さないかの話でしかない。
 そして、『クラミツハ』にある選択肢は一つしかない。すなわち、『殺す』だけである。

 蹂躙劇は終わらない。
 あれだけの巨躯。そこに内包された生命を全て殺し尽くすまで『クラミツハ』は哄笑と共に影の斬撃を放ち続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
ポーシュボス化した人達を元に戻す事はできない
なら、せめてポーシュボスを倒して解放して……せめて、もう同じ事が起きないようにするしかない

宇宙の幼生は目視しないで済むように、マントに包んで持っていこう
ポーシュボスが合体してしまうまでは、ポーシュボス化を受け入れる必要もないので、とりあえず逃げ回って時間を稼ぐ

適当に合体した所でポーシュボス化を一時的に受け入れてから神刀を抜く
浄化と破魔の神気を身に纏い、侵蝕の進行を無理矢理抑えていく

侵蝕が進む前に、自身の使える最大級の技で叩きにいく
奥義【無辺】――発動すれば、途中で侵蝕が進んでも止まることはない
ポーシュボス(武器)を弾きながら、連続攻撃を叩き込む



『ポーシュボス化』した生命は戻らない。
 救えないのだ。
 決して、救うことが出来ない。
 その事実を前にして夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、ならばと瞳を伏せた。
 マントに包んだ宝石『宇宙の幼生』は『ポーシュボス・フェノメノン』に対する切り札と成りうるものだった。
 何故かはわからないが『ポーシュボス・フェノメノン』は『宇宙の幼生』に強く惹かれ、それを捕食しようと必ず迫ってくる。

 目の前の巨躯たる『ポーシュボス・フェノメノン』が顎をもたげるように捕食形態へと姿を変えていく。
 こうしている間も鏡介は己のみを苛む『ポーシュボス化』の力に抗う。
 いや、受け入れていると言ってもいい。
「わかっているさ。わかっているさ、『ポーシュボス化』した人たちを元に戻すことはできないってことは」
 鏡介は呻く。
 それは己の道にとって、いかなる意味を齎すことだろう。

 殺さなければならない。
 言わば、無辜の生命だ。
 何も咎があるわけでもない。在るとすれば『ポーシュボス化』したという理由だけがある。
 そのためだけに彼は己の刃を振るわなければならない。
 顎のように広げられた『ポーシュボス』の身体が『宇宙の幼生』を鏡介ごと捕食しようと迫る。
「ううううちゅううの、始まリ、終わリの、ない、宇宙ウウう!!!!」
 咆哮の如き叫ぶ声が己を追ってくる。

 己ごと捕食しようと広げられた顎を鏡介は見据える。
 救えない。
 救うことが出来ない。殺すことでしか救済できない。ならば、その瞳に輝くのは覚悟だけであった。
「……せめて、もう同じことが起こらないようにする」
 これまであらがっていた『ポーシュボス化』を鏡介は受け入れる。抜き払った神刀が煌めく。

 それはユーベルコードの輝き。
「是は果てなきへと至る剣。即ち――奥義【無辺】(オウギ・ムヘン)」
 刹那であった。
 己の扱える全ての技を目の前に迫る『ポーシュボス・フェノメノン』に叩き込む。
 壱の型が迫る顎を斬り裂く。続く型が繋がっていく。捌の型を繋いだ瞬間、終の型が壱へと繋がる。

 寄る辺など何処にもない。
 あるのは開放された生命が沈みゆく過去だけだ。
 それを哀れとは思ってはならない。
 迫る『ポーシュボス』をもう鏡介は見ていなかった。もう、見る必要がない。彼の放つ超高速の連続攻撃は、どれだけ己の身体が『ポーシュボス』によって侵食されても、止められない。

 斬撃の嵐が『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を切り刻んでいく。
 浄化と破魔の神気が『ポーシュボス化』の侵攻を無理やり抑え込み、斬撃振るう腕の痛みに体中の筋繊維が引きちぎれても鏡介は刀を振るう。
「この程度で――!」
『ポーシュボス化』した人々のことを思う。

 決して生命は戻らない。
 救うことの出来なかった生命を贖うためには、どうすればいいのか。
 それは彼が言うように同じことが起きないようにするしかない。
「悔恨も後悔も後でいくらでもすればいい! 俺を止められると思うな――!」
 裂帛の咆哮が轟き、『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯に斬撃の痕が刻まれていく。

 それは鏡介の見せる輝きと共に、全ての生命を終わらせる斬撃となって、戦場に煌めくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
【見渡す限り広がる現象は全て敵です】
聴こえる?マザー
らぶを呼ぶ沢山のヒトの声
【ポーシュボスフェノメノンが発する残滓】
でもそれは
【縋る人々の想い】
らぶ達に託された
【最後の希望と】
ユメ
【現象が融合を始めました。顕現します】
行こうマザー
らぶ達を呼ぶ声の方へ

瞼を閉じれば暗かった景色が光り輝くセカイに変わる
もうお前を見なくてもわかる
編まれていく触手の中に手を翳せば響いてくるのはヒトビトの叫び
きっと今らぶ達は一つになろーとしてるから皆のユメが凄く伝わってくるんだな
そのユメが輝く限り
らぶはずっと傍にいるよ
【現象内部にコード︰パルージアを放出します】


滲みだした異物は
セカイを穢す純粋な悪で
ヒトが残した最後の希望



 超巨大オブリビオン・ストームの中心は巨大な肉塊『ポーシュボス・フェノメノン』の領域であった。
 視界に映る全てが『ポーシュボス』である。
 かつてのフロリダ州タラハシーの街、その住人たちであったもの成れの果て。
 怪物とも邪神とも言える身体へと変わった彼らに意志はあれど、『ポーシュボス』となった身体が融合していくことを止められなかっただろう。
「終わら終わら、おわらなななななない、終わらない、苦痛が、おわr、な、い」
 その悲痛な叫びがラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)の耳を打つ。

【見渡す限り広がる現象は全て敵です】
『マザー』の音声がラブリーの意識を引き戻す。
 けれど、それでもラブリーは言う。聞こえる。感じるのだ。悲痛な叫びの向こう側から、己を呼ぶ沢山の人の声が。
 聴こえる? とラブリーは『マザー』に問いかける。

 それは確かに声であったことだろう。
 けれどそれはもはや。
【ポーシュボス・フェノメノンが発する残滓】
 それでしかない。意味はない。そこに在る生命はすでに終わっている。『ポーシュボス化』という終わりを終えているのだ。

 わかっている。
 そんなことはもうとっくに痛いくらいわかっているのだ。けれど、ラブリーはそれでもと言い続けるだろう。
「でもそれは」
【縋る人々の想い】
 きっとラブリーならそう言うだろうと『マザー』は思っただろう。そして、同時にそれはラブリーに託されたものである。

【最後の希望と】
「ユメ」
 ゆえに彼女は見据える。目をそらしてはならない。今から奪うのはたった一つ。生命だ。
 与える者であり続けるために。もう終わってしまった生命を確実に終わらせる。
 迫る『ポーシュボス』が迸る『ポーシュボス化』へのいざないを持ってラブリーの体に触れる。
『ポーシュボス・フェノメノン』は善なる心に寄生する。
 ラブリーはもう理解していたのだ。

 まぶたを閉じれば、そこに己を呼ぶ声がある。
 ためらうこと無くラブリーは一歩を踏み出した。見るものが全てではない。
 感じることができるのならば、それは力である。例え、己の身を侵食する『ポーシュボス』があろうと。
「もうお前をみなくてもわかる」
 ラブリーは手をかざす。そこにあるのはねじれたような『ポーシュボス』の触手である。いや、違う。彼女がかざした手に触れたのは、人々の叫びである。
 一つになろうという想い。
 けれど、同時に逃れろという叫びがある。

 同じなってはいけないという叫び。
 一つになろうとしていながら、相反する叫び。それを感じ取ってラブリーは、そこに己のユメを見た。
「らぶはずっと傍にいるよ」
 輝くのはユーベルコード。

【現象内部にコード:Parousia(ミアズマブロック)放出します】
 溢れるのは高汚染物質。
 文明を荒廃させた原因の一つ。
 戦場の全てを環境汚染最大の異常領域へと変えていく。それは生命を拒絶する環境そのもの。
 もしも、その場で立つことができる者がいるのならば、その異常をこそ正常とみなす機能を持った人造なる生命だけであったことだろう。

「これが世界を穢す純粋な悪で、ヒトが残した最後の希望」
 声はもう聞こえなくなっていた。
 ラブリーは少し悲しくなったけれど、それでもあの悲痛な叫びが少しでも楽になったのならばと、閉じた瞳を開き、砕けた『ポーシュボス・フェノメノン』の一片を握りしめ、霧消させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
布で包んだ「宇宙の幼生」を懐へ入れて、いざポーシュボスの虚へ。

「式神使い」で折紙から作った禽獣の群でポーシュボスを排除し、行く手を拓いて。
「狂気耐性」と「呪詛耐性」でどこまでもつかしら?

集まってきたわね、ポーシュボス。
あたしは数を潰す方が得手なんだけど、一つに融合したならしたで、戦い方は心得てるわ。

「全力魔法」雷の「属性攻撃」「衝撃波」「道術」で、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経! 触手も身体も焼き尽くす。
寄生攻撃を仕掛けてきたら、薙刀で「受け流し」。

全身が寄生ポーシュボスに飲み込まれないうちに、落とせるだけの雷を一杯に放って討滅する。
侵食と落雷、どちらが速いかしら?
そろそろ終わりよ! 疾!



 己の体は何処まで保つだろうかと村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、恐るべき『ポーシュボス・フェノメノン』の力の片鱗を感じながら思ったことだろう。
 折り紙から作った禽獣の群で迫りくる『ポーシュボス』の迫る触手のような、群体のような攻撃を排除し続ける。
 それも僅かな抵抗に過ぎなかったのかも知れない。
 けれど、それがなければ彼女は一瞬で『ポーシュボス化』し、取り返しのつかない事態に叩き落されていたことだろう。

「集まって来たわね、『ポーシュボス』」
 彼女の瞳に映るのは津波の如き『ポーシュボス』たちは、今まさに己の懐にある布に包んだ『宇宙の幼生』と呼ばれる宝石目掛けて襲いかかっている。
 これを貪り食わんとする『ポーシュボス』は、ゆかりの体を蝕む。
 狂気と呪詛への耐性をゆかりは持っている。けれど、それを差し引いても尚、『ポーシュボス化』は阻むことができない。
 やはり、どうあっても。猟兵出逢っても『ポーシュボス化』を完全に無効化するには『邪悪なる者』ではなければならないのだ。
 陰と陽があるように、人の心にもまた善悪が表裏一体に在るものである。
 ゆかりは自身が、己の心が全て善であるとは言わない。けれど、全てが悪であるとも言えない。
 ならばこそ、聞こえてくる悲痛なる叫びを耳にしながらも、歩むことをやめないのだ。

「あナたも、オナじにナりましょう。そうスれば、同ジ、苦しミヲ味わえるるるるるるるっ、ああああああ!!!」
 数多の『ポーシュボス』たちが融合した肉塊の如き巨大な姿をゆかりは禽獣たちと共に切り拓く。
「同じになんて御免こうむるわよ」
 目の前の『ポーシュボス』がどれほどの生命を『ポーシュボス化』したのかはわからない。
 少なくとも街一つを飲み込む超巨大オブリビオン・ストームと化したのは、オブリビオン・フォーミュラたる力の発露であろう。

 その力は否応なしにゆかりを『ポーシュボス化』へといざなう。
 放たれ続ける弾丸のような『ポーシュボス』たちが、ゆかりの行く手を阻む。けれど、それでもゆかりの瞳はユーベルコードに輝いていた。
『ポーシュボス化』した人々は救えない。
 ならば、終わらせることこそが、救済であろう。
 数を潰す戦いが得手である。けれど、一つに融合したのならば、戦い方は心得ている。

「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
 放たれるは超巨大オブリビオン・ストームの中でさえ、暗黒を切り裂く雷の一撃。
 激烈なる落雷の一撃は、『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を穿ち、それでもなお、その融合した『ポーシュボス』でもって復元していく。
 その一撃は、その暗獄のごとき体を焼き尽くし、焼き焦げた肉の匂いを周囲に充満させる。
 膨れ上がる嘗ての生命の残滓がゆかりに襲いかかるも、それを薙刀の一撃で受け流し、なおも彼女は瞳をユーベルコードに輝かせるのだ。
「侵食と落雷、どちらが速いかしら?」
 身を蝕む『ポーシュボス化』は止まらない。

 狂気と呪詛への耐性を持ってしても、止められない。進行を遅らせることさえもできない。
 ならばこそ、己の身体が飲み込まれる前に。
「そろそろ終わりよ! 疾っ!」
 暗黒を切り裂く紫電の一撃が天より落ちる。

 誰も罰する必要のない戦い。
 けれど、天よりの落雷はあらゆる善の心に寄生する『ポーシュボス』をこそ滅ぼさんと打ち放たれ、ゆかりの力の限界まで振り絞った力を発露させる。
 轟く雷鳴と己の身を苛む『ポーシュボス』に耐えながら、ゆかりはギリギリの瀬戸際まで『ポーシュボス・フェノメノン』を討ち滅ぼし続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイミィ・ブラッディバック
戦闘機械たる私にも、「善の心」は確かにあります
ですが…その善の心はシャットダウンが可能、それこそが私の利点
「ジェイミィ、私が請け負う。良心なき機械に徹しよう」
WHITE KNIGHT…お願いします

(UC起動、主導権がWHITE KNIGHTに切り替え)
…JM-Eメインプログラム、シャットダウン完了
補助システム含め全て私が掌握した
邪悪なる者としての資格は十分だろう…今の私はただの戦闘機械なのだから
故に、ポーシュボス化現象は無効だ

しかし接近されると厄介だ、搭載武装の一斉射撃で射撃戦主体の戦闘を行う
近寄られる前に弾丸やミサイル、レーザーを叩き込む

ディアブロ…これほどこの名を皮肉に思ったことはないな



 ウォーマシンに宿る人格は、人を模したものであればこそ『善の心』もまた同様であろう。
 影に光が必要なように。光に影がつきまとうように。
 それは表裏一体でありながら、心というものを保つがゆえに待ち構える不条理であったのかもしれない。
 ゆえにウォーマシンであったとしても『フィールド・オブ・ナイン』の一柱、『ポーシュボス・フェノメノン』の保つ特性『善の心に寄生する』力によって『ポーシュボス化』はまぬがれぬ現実。

 フロリダ州タラハシーの街に広がる超巨大オブリビオン・ストームの中に蠢く『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を前にジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)は冷静であった。
「助け、テ、痛、イ、イタい。身が、ヨジれる」
「ああ、アノ子が、私の子どモが! 引キ裂カれル!!」
 悲痛なる叫びが世界に木霊する。
 それを聞いて、ジェイミィは確かに己の心が揺らぐのを感じた。けれど、それはこの戦場にあっては致命的になるものである。
 だからこそ、彼は己の心をシャットダウンする。それができるのがウォーマシンの利点であるというのは皮肉でしかなかった。

「DIABLO OS 2.0.0 (シロキシサイリン)ACTIVATED. REBOOT COMPLETED」
「ジェイミィ、私が請け負う。良心無き機械に徹しよう」
 己の身体の主導権をWHITE KNIGHTへと明け渡す。それは彼のユーベルコードにして、この非情なる戦場を駆け抜けるために必要な措置であった。
 あらゆる負債を押し付ける形になってしまうが、それでもジェイミィはあの悲痛なる声を解放したいと思ったのだ。
「WHITE KNIGHT……お願いします」
「……JM-Eメインプログラム、シャットダウン完了。補助システム含め全て私が掌握した」

 それは嘗ての白き騎士の再臨。
 器は猟兵であれど、その中身は邪悪そのもの。世界を破壊する存在、その戦闘機械が『ポーシュボス』へと迫る。
 放たれる膨大な波のような『ポーシュボス』の器官。
 触手と呼んでいいのかもわからぬほどの膨大な体積を消費して放たれる一撃は、ウォーマシンの身体では受け止めきれぬであろう。
 けれど、白騎士に在るのは未来予測演算である。
 あらゆる事象を演算し導き出される攻撃予測。

 その者は確かに『邪悪なる者』であったことだろう。
 けれど、疾走る戦闘機械の身体は、世界を救うための者。ならばこそ、『ポーシュボス化』はこの機体には無意味であった。
「接近されると厄介であるが」
 展開された搭載武装が一斉に火を噴き、放たれた『ポーシュボス』を打ち払っていく。
 戦術機動は言うまでもない。
 未来予測によって、そこに来るとわかっていたのならば、一手先をすでに知っているようなものだ。

「ポーシュボス化した群にして一。そのような存在に駆け引きなど無意味」
 ゆえに白騎士は疾走るのだ。
 弾丸やミサイル、レーザーがほとばしり、『ポーシュボス』の肉体を焼き切る。己を取り込もうとする『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯は数多の猟兵たちの攻撃に寄って削られてきている。
 その体積こそが『ポーシュボス・フェノメノン』の最も有効な打撃であろう。
 だが、その体積の尽くを攻撃に寄って喪っていけば、その威力も半減するというものである。

「同情も憐憫もいらぬであろう。なにせ、今の私は」
 情けなど必要ない。
 今の己は機械。機械は考えない。機械は疑問に思わない。
 ゆえにそこに善悪はない。猟兵が生命の埒外であるというのならば、己こそは『ポーシュボス』の理外にあるもの。

 ゆえに白騎士は火線引きながら『ポーシュボス・フェノメノン』を圧倒し続ける。
「ディアブロ……これほどこの名を皮肉に思ったことはないな――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
何人殺そうが大切な物が一つあると
良心の欠片になるんだろうな
だから俺は例え犯罪者でも
完全に悪と断じきる事はできない
奴の侵食は免れないだろう

だがこいつは危険すぎる
不死の身すら無意味でも
放置はできない

UCの使用目的はあえて視力を失う事
宇宙の幼生は見なければいいが
俺が俺でいられる時間は限られている
一瞬で致命傷を与える

宇宙の幼生は俺が持ち
偽神兵器を自爆装置に変形
一体に融合したポーシュボスが
俺ごと宇宙の幼生を喰いにくるよう仕向ける

喰われる瞬間は第六感で解るだろう
俺の意識が絶たれる寸前
奴の体内で自爆装置を起動
氷属性攻撃の爆発で内部から破壊する

俺自身は氷結耐性で耐えるが
動ける状態かは分からない
悪いが送還は頼む



 残虐な殺人犯と言えど、どれほどの狂気に満ちた殺人を行おうとも、その心に譲れぬ物がある限り、善悪が存在する。
 悪があるから善があるのか。
 それとも善があるから悪があるのか。
 どちらが先に発生したのか。その答えは出ない。誰もの心に在るものであるがゆえに、決着は人間という生命が在る限り付かぬのかもしれない。
「何人殺そうが大切なものが一つあると両親のかけらに為るんだろうな」
 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は、探偵である。
 探偵に殺人はつきものである。

 あるものは義憤にかられて。
 あるものは復讐にかられて。
 あるものは悲哀の末に。
 殺人を犯す理由は様々である。だからこそ、はとりは例え犯罪者でも完全に悪と断じることができないでいた。
 ゆえに彼にとっ『ポーシュボス・フェノメノン』は最大の強敵であり、如何ともし難い存在であったことだろう。
『善の心』に寄生し、『ポーシュボス化』を促す存在。
「やつの侵食は免れないだろう」
 勝てない。わかっている。けれど、だからなんだというのだ。

 そんなものは理由にならない。
 犠牲者の悲哀を聞く探偵であるからこそ、己は捨て置け無い。
「だがこいつは危険すぎる。不死の身すらも無意味でも放置はできない」
 今此処で倒すしかない。
「ア、ア、お、あ、お、かしい、な。身体ガ、変ダ。手足のカンカクがあるのニ、腕モ、アシも、ない!」
「俺の!俺の!からだが!かかかかかかからだがががががが!!!!」
 悲哀に満ちた叫び。
 かつてのタラハシーの街の住人であろう。変貌した異形となった身体が融合し、一つの巨魁のごとき肉塊になった『ポーシュボス・フェノメノン』から響き渡る。

 第九の殺人『黒鉄館』(クロガネカンノサツジン)。
 ああ、と思い出すのだ。
 消えた凶器。不可能なる殺人。されど、必ず行われる殺人。増える犠牲者。己の手にした偽神兵器『コキュートス』が装置へと姿を変える。
「消えた凶器はずっと俺たちの目の前に在った」
 指で弾くようにして、はとりは宝石――『宇宙の幼生』をきらめかせる。それは『ポーシュボス・フェノメノン』にとって何よりも優先されるものであった。捕食。捕食しなければと『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯が、はとりへと迫る。

 それでいい、とはとりはユーベルコードの輝き満ちる光を喪った瞳を向ける。
 何も見えない。
 けれど、己の研ぎ澄まされた第六感が告げる。確実に己毎『ポーシュボス・フェノメノン』は『宇宙の幼生』を喰らおうとするだろう。
 わかるのだ。
 己の死の瞬間。
 もたげられた顎が開かれ、はとり毎丸呑みにする『ポーシュボス・フェノメノン』。

 死の瞬間?
 そんなものはすでに乗り越えたのだ。
「俺が俺でいられる時間は限られている。だが、その一瞬、刹那で十分だ」
 偽神兵器『コキュートス』が変貌した装置は自爆装置。
 そう、己を飲み込んだ『ポーシュボス・フェノメノン』の体内で起爆される装置は一瞬で、その巨躯の内部から刺し貫く氷爆。
 巨躯が膨れ上がり、黒き体内から吹き飛ぶようにして氷結した、はとりの身体が排出される。

『コキュートス』の名の通り、その氷結した身体は氷に覆われ、タラハシーの街に落ちる。
 人であれば死んでいる。
 確実に致命傷であった。けれど、はとりは呻くようにして立ち上がる。
 凍結によって喉が動かない。
 呼吸もできない。けれど、その苦しみは最早無意味だ。絶叫が聴こえる。数多の生命が喪われていく。
「――」
『ポーシュボス・フェノメノン』の巨体が体内から貫く氷槍によってうごめいている。それは苦痛にあえぐようでもあり、変異した己たちの生命、救うことの出来ぬ生命に対する救済に感謝するようでもあった。

 探偵にはもう犠牲者の声は聞こえない。
 事件は終わる。ならば、犠牲者が上げる声はなくとも、安らかなる眠りだけが訪れるべきなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
亡国の主に搭乗。
ポーシュボス、敵だ。
それ以外の何者でもない。そうだ、何者でもない!
戦え、戦え、戦え、それだけが、自分の為すべき事だ!!

【熾火の塵芥】闘争心の黒炎を放ち焼却範囲攻撃。
念動力で複数のRSパルスガトリングを操縦し、弾幕を形成。ポーシュボスを押し返す。

善心も、悪心もない。心の全てを闘争心で塗り潰しただ戦うだけ。ポーシュボス化など、敵と一つになる事など、ありえない。

溢れる黒炎を亡国の主の中に集め、呪詛ブレス攻撃。崩壊霊物質の熱線を放ち、ポーシュポスを穿つ!

破壊衝動の塊を邪悪ナる者というのなら構わない!敵を壊せるなら!!それで!!!

吐いた熱線でなぎ払い、ポーシュボスの肉体を更に焼き尽くす。



 其処に在ったのは破壊の意志だけであった。
 善悪の彼岸に在るというのならば、その意志は確かに善悪に左右されるものではなかったことだろう。
 破壊する。
 戦って破壊する。
 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)はジャイアントキャバリア『亡国の主』を駆り戦場を駆け抜ける。
『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯が蠢くのが見える。
 彼らは全てが嘗ての生命であった者達。

『ポーシュボス化』によって変貌した異形が連なり、ねじれ、重なった巨魁。
 それは見る者全てに『ポーシュボス化』を促すものであったし、善の心を保つ者にはどうしようもない存在でも在った。
 抗えぬ『ポーシュボス化』は、猟兵であっても長く戦えるわけではなかったからだ。
 己の身が変貌していく感覚すら小枝子は振り切って進む。
「戦え、戦え、戦え、それだけが、自分の為すべきことだ!!」
 その瞳に輝くのは善悪ではなく、ユーベルコード。
 熾火の塵芥(フューリアス・レギオン)が如き黒炎が噴出し、己に群がる『ポーシュボス・フェノメノン』の触腕を薙ぎ払う。
 念動力で無数のパルスガトリングガンの引き金が引かれ、弾幕が形成される。
 波のように迫る触腕を押し返しながら、小枝子は吠える。

 もはや善悪の是非を問うまでもない。
 その身は悪霊である。世界を救う戦いをしながらも、そこにあったのは善悪の判断基準ではない。
 壊すか、壊されるか。
 ただ、その二つだけが小枝子の基準であった。
「善心も悪心もない。私の心は全て――!」
 闘争心でまみれている。
 黒炎が『亡国の主』へと集約していく。装甲の中に溢れる呪詛の如き霊物質が崩壊の力を溜め込んでいく。

「イヤだ。終わりタクない。私ハまだ、モっと、研究を――!」
 為したいことがあるのだろう。
 悲痛なる叫びを『ポーシュボス化』した嘗ての生命が叫ぶ。けれど、小枝子はその叫びを塗りつぶす。
 善悪よりも何よりも己の中にある破壊衝動が勝る。
 其処に欠片とて善悪はなかった。
 破壊する。その衝動を開放するようにして『亡国の主』より放たれるのは、崩壊霊物質の熱線の一撃であった。

 放たれる熱線が『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を穿つ。
「破壊衝動の塊を邪悪ナる者というのなら構わない! 敵を壊せるなら!! そえrで!!!」
 迸る衝動。
 それこそが小枝子の本質であったことだろう。どれだけ言い繕っても、己は破壊者でしかない。
 何も救わない。
 だからこそ、『ポーシュボス化』に飲み込まれること無く小枝子は破壊を振りまくためだけに力を振るうのだ。

 悲鳴も、絶叫も聞こえない。
 良心の呵責など必要ない。心無いものだと言われようとも構わないのだ。オブリビオンは破壊する。
 それだけが小枝子の望み。
 薙ぎ払われた熱線が『ポーシュボス・フェノメノン』の巨体を焼き尽くしながら両断し、小枝子は己の破壊衝動に咆哮するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
……ポーシュボスの、威容も。『宇宙の幼生』も。
どちらも、直視しちゃ、いけないもの。
だったら、視界を、闇に、閉ざす。
目を伏せて……義眼の機能、完全に、切って。

闇の中。囁きが、聞こえる。手招きが、目に映る。
……大丈夫。闘う、意志を、絶やさない。

『宇宙の幼生』が、手元に、ある、おかげで。
闇の中、彷徨って、敵を、探しあてなくても。
向こうから、向かって、来てくれる。
向こうから、こちらへ、沢山の、視線を。注いで、くれる。

無数の、眼を、受けて。
膨れ上がった、力を、ヴォルテックエンジンの、回転に、込めて。
幼生を、奪いに、やってきた、一塊の、やつらに。
高電圧を、まとった、一撃を。お見舞い、して、やる!



『ポーシュボス・フェノメノン』――それは『善の心』に寄生する恐るべき敵である。
 けれど、その驚異を前に対抗する術がないわけではない。
 それはとてつもない労力が徒労に変わるかもしれないことであったが、それをためらう猟兵はいなかった。
 マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)もまたその一人であったことだろう。
『ポーシュボス・フェノメノン』のねじれ上がったような巨躯を彼女は見ていなかった。直視しては、彼女もまた『ポーシュボス化』を免れなかったからである。

 そして、同時に『ポーシュボス・フェノメノン』に対抗する術である『宇宙の幼生』と呼ばれる宝石もまた直視してはならない。
 猟兵であれど、数秒見つめるだけで発狂してしまうと言われる宇宙を内包したかのような輝きを放つ宝石。
 それこそが『ポーシュボス・フェノメノン』の求めるものであった。
「だから、視界を、闇に、閉ざす」
 目を伏せるも溢れる涙は止まらない。その涙は己と同じく喪った明日に焦がれる『ポーシュボス化』したタラハシーの街の住人たちを思ってのことだっただろうか。

「タすけテ。イタい、イたい。痛い。痛い痛い痛いいたいいいいいいいい――」
 度重なる猟兵たちの打撃に寄って『ポーシュボス・フェノメノン』は、その威容を大きく損ないはじめていた。
 押し込むのならば今しかない。だからこそ、マオは己の義眼の機能すらも断ち切る。
 闇の中。
 囁きが聴こえる。痛みにあえぐ己と同じ明日を喪った者達の声。
 手招きが闇の中にあってなお、マオを引き入れようと伸ばされる。

 けれど、マオは閉じた瞼、その暗黒の中でさえ、彼女のユーベルコードは輝くのだ。
「……大丈夫。闘う、意志を、絶やさない」
 己の手には『宇宙の幼生』が在る。
 どれだけ悲痛な声を己に聞かせようとも、『ポーシュボス・フェノメノン』は『宇宙の幼生』を貪り食わんとすることは止められない。
 闇の中をさまようのだとしても、探さなくても向こうから自分へと向かってきてくれるのだ。

 視線が刺さる。
 この不死の身体。死を乗り越えた身体に突き刺さる視線。
 それは『ポーシュボス・フェノメノン』が保つ無数の目と呼ぶにはあまりに奇怪な器官より発せられるものであった。
「……―――ッ!」
 己の全身を負の感情が覆っていく。
 無数の視線。
 見ないでくれと願う心すら無視するようにマオの姿を捉える無数の目。目。目。目。
 それは彼女の心を傷つけるものであった。

 二律背反する感情(アンビバレンツ・マインド)。

 自分を見て欲しいという思いと、見ないでくれという感情。その背反する感情。自分は此処にいると叫ぶ心が、己のデッドマンたる身体が、それらを拒絶する。
 拒絶は衝動となってヴォルテックエンジンに流れ込む。
 魂の衝動でもってデッドマンは電流へと変換する。
 己の手の中にある『宇宙の幼生』を奪わんと迫る『ポーシュボス・フェノメノン』をマオは感じ取っていた。
「あたし、から、もう、なにも」

 疾走る電流。
 負の感情が膨れ上がっていく。己のヴォルテックエンジンに集約された衝動の全てが激烈なる雷のように迸る。
 それは『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を容易く吹き飛ばす一撃となるだろう

「何も――奪わ、ないで」
 マオの閉じた瞼からも涙は溢れてやまない。
 もう涙をこぼすこともできない『ポーシュボス化』した人々。その救われぬ人々の涙を代わりに流すように彼女は魂の衝動のままに雷纏った拳を『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯に突き立て、その寄生者を滅するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
完全な悪に自信はないから『ポーシュボス』になる前に倒してしまうほうでいくね。

『ポーシュボス化』けっこうキツいね。
でも自分が『純粋な悪』でなくてよかったよ。
飲み込まれるまでどのくらい時間があるのかわからないから、ここは速攻かな。

わたしは【セレステ】に乗っていくね。

『宇宙の幼生』をセレステの全部にエンブレムのようにつけて、
わざと『ポーシュボス・フェノメノン』に見せつけよう。
それを喰らおうと狙ってきたところを【テスカトリポカの鏡】で迎え撃つよ。

何が『善』で、何が『悪』なのか、誰が決めてるのかもわからないし、
わたしは自分が『善』である、なんて言えないから、
わたしは、わたしが守りたいもののために戦うよ!



 完全なる悪とはいかなる存在を言うのだろうか。
 その答えを明確に保つものはいないだろう。生命である限り、陰と陽があるように、光と影があるように善悪もまた表裏一体であるのならば、ひとかけらの善すら持たない存在はいない。
 そして、同時にひとかけらの悪すら持たぬ者もまた同様なのだ。
「自信ないなぁ……だから、『ポーシュボス化』する前に倒してしまおう!」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、自分の中に悪があることを知っている。

 善が在ることも知っている。
 己の身を蝕む『ポーシュボス化』の痛み。
 その痛みが理緒にとっては安堵の痛みでもあったのだ。自分が『純粋な悪』ではないという証拠でもあったからだ。
 この衝動の中に己がどれほどの時間で飲み込まれてしまうのかはわからない。
 だからこそ、彼女は速攻を心がけるのだ。

 彼女は空色の戦闘艦を駆り、『宇宙の幼生』と呼ばれる宝石をエンブレムのように掲げる。
「ううううちゅううううの幼生……!!!」
 叫ぶ声が重なる。
 輪唱のように喚く叫びは『ポーシュボス化』された人々の声帯を用いたものであり、意志ではないのだろう。
 もはや、ただの反応でしかない。救うことの出来ぬ生命を前にためらう心こそ、それが善の心であるというように理緒の身体を蝕む『ポーシュボス化』。
 それを前に理緒は瞳をユーベルコードに輝かせる。

 敗けて為るものかと、彼女は見据えるのだ。
 己の『セレステ』に取り付けられた『宇宙の幼生』、その輝き目掛けて捕食線と迫る『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯。
 これまで猟兵たちが打撃を与え、消耗させてきた巨魁がある。
 決して無駄ではなかった。
 救われぬ生命があることなど承知の上だ。それでも、救済はできなくても解放することはできる。

 まるで阿鼻叫喚地獄のような有様となった超巨大オブリビオン・ストームの中、理緒の瞳が輝くユーベルコードは、まさにテスカトリポカの鏡(テスカトリポカノカガミ)のように燦然たる輝きを増幅させる。
 それは『セレステ』に装備された大口径主砲。
 展開された発射形態へと移行した砲身が顕になり、輝きを湛える。
「何が『善』で何が『悪』なのか、誰が決めてるのかもわからないし、わたしは自分が『善』である、なんて言えないから」
 理緒は己の行いこそ、問われるべきものであると思っていたことだろう。

 自分で答えを出せるものではない。 
 善悪の基準など、相対するものによって変わる。だからこそ、理緒は己が絶対なる『善』であるとも『悪』であるとも言えない。
 ゆえに、解き放たれる砲撃の一撃が正しいと言い切ることもできない。
「けれど、わたしは、わたしが守りたいものの為に戦うよ!」

 そう、それしかできない。
 彼女はそうやって戦ってきたのだ。どれだけ心無い言葉に晒されたっていい。
 自分が思うものがあれば、彼女は戦うことができる。
 護るための存在があるからこそ、人は強くなれるのならば、理緒の放つユーベルコードの輝きは、極光のようにきらめいて、その一撃を『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を穿つ。

 悲鳴が聴こえる。
 絶叫が聴こえる。
 どうしようもない痛みにあえぐ声が聞こえた。けれど、それらの全てから目をそむけることなく、理緒は『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を焼き滅ぼすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
【心境】
「宇宙の幼生…正直もうすでに理解を超えてるわ。」
考えるな感じろ…ってことか?

【行動】
善の心ねぇ。
悪いが、心当たりはねぇ。

寧々頼むわ。
寧々の『仙術』で善性をプライドと一緒に捨てる。
理性は投げ捨てるものッ。おかげでいい気分だぜ(寧々「本当にそうかの?」)
『覇気』を込めた覇気と『破魔』を纏わした拳で殴って殴りまくる。
善を捨てた。ならば迷いも躊躇いもない。殴り殺す。
受けたダメージをユーベルコードの効果で回復&『激痛耐性』で耐えて攻撃続行。
くきゃひゃっはっはっはっは~



『宇宙の幼生』と呼ばれる宝石があった。
 それは宇宙を内包したかのような輝きを放つものであり、それを覗き込むだけで数秒と立たずに猟兵であっても発狂を齎す危険な物体だ。
「宇宙の幼生……正直もうすでに理解を超えてるわ」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は、もう考えるな、感じろってことか? と半分呆れたように己では持て余す事実にため息を吐き出す。

 しかし、目の前の超巨大オブリビオン・ストーム、その中にある『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯が数多の猟兵たちの攻撃を受けて大きく傾ぐのを見て、名捨はためらわず飛び込んだ。
 人という生命にあって善悪は表裏一体である。
 光と影が常につきまとうように、切って離すことができるものではないのだ。
 だからこそ、『ポーシュボス・フェノメノン』は生命では打倒することの出来ぬ難敵であると言えるだろう。
 誰も倒せない。
 誰もが『ポーシュボス化』してしまう。

 そして、それを止めることはできないのだ。
 だからこそ、このフロリダ州タラハシーの街は『ポーシュボス』に沈み、今まさに猟兵たちをも取り込まんと巨大な個体へと変貌を遂げ、襲いかかるのだ。
「善の心ねぇ。悪いが心当たりはねぇ」
 名捨の頭の上で『寧々』がぴょんこと跳ねる。
 頼む、と名捨は己のプライドをかなぐり捨て、彼女の戦術でもって己の潜在能力を開放する。

 そこに善性などというものは不要であり、無用の長物である。
 だからこそ、捨てる。
 己は魔人。
「理性は投げ捨てるものッ」
 破王(ハオウ)たる風格を携えし、名捨はまさしく魔人であったことだろう。清々しいまでの気分。
 体に漲る力はあらゆる力をはねのける。
 今ならば世界だって破壊することができそうなくらいに、名捨は心より笑ったのだ。

「くきゃひゃっはっはっはっは~!」
 けたたましい笑い声と共に名捨は疾走る。
 目指すはあのデカブツである。どれだけ悲痛な叫びが聞こえたとしても、今の名捨には聞こえていなかった。元より聞くつもりもない。
 ただの雑音でしか無い。
 己ができることは、殴り殺すことだけだ。
「っせーんだよッ! 泣き叫ぶだけじゃあ、なあ!!」
 放たれる覇気と破魔の力を宿した拳が『ポーシュボス・フェノメノン』の体を穿つ。
 ただの拳が内包した『ポーシュボス』を一撃のもとに絶命せしめる。
 なんの感慨もない。

 あるのは感触だけだ。生命を壊したという感触。だが、善を捨てた名捨にとって、それはどうでもいいことだ。
 この大切な何かを壊したという感触が己の背筋を震わせる。
 それ以外の何もない。
 壊して、壊して、壊して、殴り殺す。ただそれだけのために、名捨は己の拳が砕けようとも『ポーシュボス・フェノメノン』の巨体を穿ち続ける。
 身を焼く太陽の輝きも、なにもかもが心地よい。

 一心不乱。

 そういうのが相応しいほどの形相で名捨は、魔人としての責務を果たすように拳を叩きつけ、『ポーシュボス・フェノメノン』を終わりへと導くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎

内から外から沸き出す話を聞きながらてくてくと歩いて
うんうん、それは大変だったねえ
あー、分かる分かる
うん。でももう大丈夫
お待たせ

●対策:宇宙の幼生をぽんっと放り上げて相手が纏まったところを、浸蝕され切る前に0秒で無限にぶっ飛ばすUC(選択は攻撃力強化)でドーーンッ!!

きっとキミは人の内から出た、とっても人らしいモノなのだと思うよ
善と悪の区別なんていうのは生物の自己保存本能の先にあるキミたちの勝手な考えに過ぎないよね
何が善で、何が悪かを知るのは己であるって傲慢と憶断だ

でも、それは強い心だ
その気遣いや関心、何かをよしとするその思いを
そう生きると決めた覚悟を
ボクは愛しく思う



「イたい、痛い、痛い痛いいたいいいいいいいい」
「ダメだ、此処にキては、なら、なあああ、ならない、ならない」
「誰モ、『ポーシュボス化』を止めらレナイ。誰モ、ナニも、止めらレない」
 それは超巨大オブリビオン・ストームの中と外から響き渡る声であったことだろう。
 悲痛な叫びに聴こえるのは、聞くものが善なる心を保つからであり、同時に悪の心をも内包する存在だからである。
 もはやどうすることもできない存在に成り果てる。
 それが『ポーシュボス化』である。
 救うことは出来ない。共に戻すことはできない。その事実は猟兵たちの心をくじくものであったかもしれない。

 けれど、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はその声を聞きながらなんでもないように振る舞っていた
「うんうん、それは大変だったねえ。あー、わかるかわる。うん。でももう大丈夫。おまたせ」
 彼にとって『ポーシュボス化』は恐怖には値しないのだろう。
 手にした宝石『宇宙の幼生』を放り投げ、それを貪り食わんとする『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を見つめる。

 それはもはや本能的と言ってもいい動きであった。
 変貌した元の人間たちの意識というものはなかった。あるのはただの反応でしかなかった。
「きっとキミは人の内から出た、とっても人らしいモノなのだと思うよ。善と悪の区別なんていうのは生物の自己保存本能の先にあるキミたちの勝手な考えに過ぎないよね」
 ロニの拳が一瞬で放たれる。
 0秒で撃ち込まれる無限の拳。
 それは刹那よりも那由多よりも長きに渡る拳。

 ただの神パンチ(カミパンチ)でしかない。
 けれど、生命を絶命させるのに時は必要ない。
「何が善で、何が悪かを知るのは己であるって傲慢と億断だ」
 ロニは断じるだろう。神としての立場から言うだろう。
「でも、それは強い心だ。その気遣いや関心、何かをよしとするその思いを、そう生きると決めた覚悟をボクは愛しく思う」
 放たれる拳は最早目に見えるものではなかったことだろう。

 超巨大オブリビオン・ストームの中心を歩むロニはゆっくりと『ポーシュボス・フェノメノン』とすれ違う。
 それはまるで散歩の途中で出逢ったもの掛ける言葉のように気安いものであったことだろう。
 だが、それでいいと彼は思ったのだ。
 何も臆することはない。
 ありのままでいいというロニの言葉と共に無限の如く放たれた拳が『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を打ち据え、その体を変形させる。

 どれだけ『ポーシュボス化』する力を持ち、善なる心に寄生するのであったとしても、善悪の彼岸にある者には届かないだろう。
 触れることも、触れられることも許さぬユーベルコードの輝きは、その彼岸より放たれるものであったのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
あの“現象”を大地に一片たりとも残してはおくわけにはいきません
呑まれた“声”に騎士として応えるには、それしか…!

用途申請、人の善性と尊厳貶めるオブリビオンフォーミュラ“現象”の消滅

充填開始…!

宇宙の幼生を物資収納スペースに格納(●物を隠す)
敵を集合巨体化させマルチセンサーでの●情報収集で体躯を計測
●推力移動で攻撃躱し、時に怪力で振るう剣盾で打ち払い

三十秒経過…

生じる非論理的思考を自己●ハッキングで形成した自己診断プログラムで監視し破棄と否定繰り返し

その身が宇宙に由来するとしても、私の故郷は畏れはしません
住まう星すら砕いた愚かな証左
この一撃で、討たせてもらいます

破滅光を電脳剣より発射



 恐るべきは『ポーシュボス・フェノメノン』。
 それは生命である限り持ち得る善と悪の心を蝕む“現象”であった。
 あらゆる生命に善の心が在る限り『ポーシュボス化』は免れぬ現象そのものであったことだろう。
 超巨大オブリビオン・ストームの中に人々の悲痛なる叫びが木霊するようであった。
 それをマルチセンサーでつぶさに感じながらトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は救うことの出来ぬ生命の成れの果てを前に懊悩する時間すらも惜しいと駆け出していた。

「あの“現象”を大地に一片たりとて残しておくわけにはいきません。呑まれた“声”に騎士として応えるには、それしか……!」
 彼のマルチセンサーは捉えていた。
 数多の声を。
 狂気に苛まれた声を。
 救われぬ声を聞いたからこそ、彼は己の電脳禁忌剣を抜き払う。
「用途申請。人の善性と尊厳を貶めるオブリビオン・フォーミュラ“現象”の消滅」
 彼のアイセンサーが煌めく。

 其処に在ったのはまさしく善性を齎す意志であったことだろう。
 だが、悲しいかな。
 その善性の発露こそが『ポーシュボス化』の取り入る隙でしかない。人の善なる心に寄生する『ポーシュボス』は、その一欠片でさえも餌にするように入り込んでいくのだ。
 だからこそ、止まらない。それは“現象”として伝播していくのだ。
 膨れ上がる『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯。
 それを前にトリテレイアは目をそらしてはならぬと思ったことだろう。あれだけの巨躯。どれだけの生命が成り果てたのかなど、考えるまでもない。

 けれど、己のマルチセンサーはそれらを精確に計測していた。
 街一つ全てが飲み込まれた。
 その生命の全てが、己の物資収納スペースに格納された『宇宙の幼生』たる宝石を狙って迫っているのだ。
 それは狙い通りである。
「ううううちゅううううの、幼生、それ、それそれそれがっっっっっっっっ!!!!」
「ああ、トマらない! 体g、とまらな、イ!」
 叫びが聴こえる。
 もはや体どころか意志も魂も歪められた存在が助けを求めることすらできずに“現象”と成り果てている。

 迫る触腕を大盾で防ぎ、打ち払う。
 その度に悲鳴が上がる。痛みにあえぐ声が聴こえる。どうしようもない。けれど、それでも。
 非論理的思考が己の中を埋め尽くしていく。
 それが『ポーシュボス化』だ。トリテレイアは、それらを自己診断プログラムで都度監視し、破棄と否定を繰り返していく。
 それでも思考を染め上げていく速度のほうが速い。

 だからこそ、彼は30秒と定めたのだ。
 己の電脳禁忌剣に籠められたエネルギーの充填する時間を。これ以上は己の『ポーシュボス化』を止めることはできない。
「その身が宇宙に由来するとしても、私の故郷は畏れはしません」
 そう、己が在ったのは星の海を征く世界。
 無限に広がる暗闇と星々。
 しかし、その星々ですら砕く惑星破壊兵器があった。

「住まう星すら砕いた愚かな証左……この一撃で討たせてもらいます」
 銀河帝国正式配備・普及量産型惑星破壊兵器(アレクシアウェポン・プラネットブレイカー)。それが愚かしき人の行く末なのだとしても。
 それでもトリテレイアは剣を振るう。

 その力を生み出したのが人ならば、今まさに人を救うために振るうことは許されるだろう。
 例え、成り果てた生命を奪う行いであったのだとしても。
 それでもトリテレイアはためらわない。
 振り上げた電脳禁忌剣より放たれる破滅光が放たれ『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を斬り裂き、蒸発させていく。

 これで救われたなどとは言えないのかもしれない。
 トリテレイアは騎士として、己の責務を全うするために破滅光の中、消えていく“現象”を見送るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
厄介な相手だね
でもまあ手段が無い訳じゃないから
皆と協力して倒そうか

宇宙の幼生を放り投げて
注意を惹いている間に
ガトリングガンで射撃してできるだけ削ろう

こちらに寄生しようとしてきたら
邪神の繰り糸を自分に使用
心の無い人形に変わってしまえば
寄生する事はできないんじゃないかな

ここからは先に予測しておくしかないけど
武器形態である以上攻撃方法は
物理的なものに限られるはずだから
回避行動しつつ射撃を続けるようにしておこうか
的が大きいからこちらの攻撃が外れない様に戦うのは
難しくなさそうだしね

飛び道具で攻撃してくるなら
神気で停めて防ぐつもりだよ

ポーシュボスが滅んだら元に戻るようにして
後は地力に任せて戦う事になるかな



 破滅光の一撃が『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を叩き伏せる。
 その光景をみやり、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は滅びゆく邪神の姿を瞳に焼き付けたことだろう。
 厄介な相手であるとしか言えない『ポーシュボス・フェノメノン』。
 その特性である『善の心に寄生する』という力は、防ぎようのないものであった。生命である以上、善悪は表裏一体。
 ならば、切り離すことはできず、ひとかけらも善と悪の残らぬ者は存在しない。
 だからこそ、『ポーシュボス化』は止められないのだ。

 勝てる見込みのない戦いであったかもしれない。
 けれど、それでも猟兵達は戦いに挑み続けたのだ。
 己たちが戦うべきと見定めたからこそ、無理を承知で戦いの中を走り続ける。その結実が今まさに訪れようとしていた。
「弱っているね……そんな中でもこれに反応するかな?」
 晶は手にした宝石『宇宙の幼生』を投げ放つ。
 途端に『ポーシュボス・フェノメノン』は、その宝石目掛けて顎をもたげるようにして捕食せんと疾走るのだ。

 それらをガトリングガンの射撃で削るように攻撃しながら、晶は疾走る。
 己に寄生しようとするのはわかりきっていた。
 彼らは『善の心』に寄生する。それがどんなに小さな欠片のような善であっても関係ないのだ。
 ならば、どうすればいいか。
 答えは簡単だったのだ。
「心を無くせばいい」
 それは、邪神の繰り糸(オーダード・マリオネット)。晶の体は瞬時に人形化の呪いを受け入れ、先行入力した動きをトレースする人形操りの魔法に寄って己の体を心なき人形のままに、寄生されることなく『ポーシュボス・フェノメノン』へと攻撃を解き放つのだ。

「と、とととtまらなあアイイイ!!」
 叫ぶ声も最早、晶には聞こえていなかった。
 感じる心すらなくした人形はプログラムされた攻撃動作を繰り返すだけだ。
 振るわれる触腕を躱し、ガトリングガンを撃ち放つ。
 あれだけの巨躯である以上、弾丸を外すようなことはないだろう。
 心無くば寄生する隙はない。

 それ以上に幸いだったのは、救いを求める声を聞かなくて済むことであろう。
 人形に耳はない。
 あるのは、晶の身に宿した呪いと、先行入力によって得られた行動だけである。
「――終わル、終わる、生命がおある、――」
『ポーシュボス化』した人々の声が潰えていく。
 終わりは来る。
 どんなものにも終わりは来るのだ。晶の身に宿した邪神の権能、停滞と固定であったとしても、永遠という終点はある。

 だからこそ、彼らをこのまま永遠にしてはいけないという想いこそが晶を駆り立てるのだ。
 望んだわけではない。
 そこに意志があったわけではない。あるのはただの現象でしかなかったのだろう。
 ならばこそ、晶は変貌した彼らの生命こそを開放し、永遠に続く狂気から解き放たんと人形化した体で戦い続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
〇方針
完全にポーシュボス化する前に打撃を加え離脱する

時代や場所によって善悪の定義も変わる。ポーシュボスは何を持って善や悪としているのか……多少気にはなりますが、そんなことを考えている時間はありませんね。

宇宙の幼生と「フィンブルヴェト」を手に戦闘。
宇宙の幼生やポーシュボスにより引き起こされる狂気は常に冷静であろうとする狙撃手の矜持と『狂気耐性』で抑えます。

時間はかけられません、チャンスは一度……!
武器形態ポーシュボスを銃剣で『武器受け』もしくは避けて機会を窺います。
チャンスがきたら宇宙の幼生を頭上に放り、ポーシュボスの意識がそちらへ向いたところを【凍風一陣】で撃ち抜きます。



 人の心には二面性がある。
 だが、時代や場所によって善悪の定義は変わるものである。
 人の営みがあるからこそ存在できる現象、それが『ポーシュボス・フェノメノン』であったのならば、その判断基準は何処にあったのだろうか。
 今となっては最早理解することすらできないだろう。
 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、それをキにかけている時間はないと戦場となったフロリダ州タラハシーの街を走る。

 超巨大オブリビオン・ストームは次第に、その規模を弱めている。
 これまで集った猟兵たちが戦った軌跡故であろう。あれだけ強大であった『ポーシュボス・フェノメノン』の姿は、巨躯でありながらどこか弱々しいものであった。
「イたい、クルしい。もう、イやだ。どうして、自分ダケがコン、あめに遭わナければナラナイ――」
 悲痛なる声が響き渡る。
 もはや取り戻すのこと出来ない存在。救われぬ存在を前にしてもセルマはためらうことはなかった。

 自分がためらえば、それだけ『ポーシュボス化』の侵食を許すことになる。そうなれば戦えなくなるだけではなく、『ポーシュボス・フェノメノン』の力を増す切っ掛けにしかならない。
 割り切っている。だからこそ、一瞬で終わらさなければならない。
「身体が、ネジ、ねじれれれえれれれれるる!!!」
『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯がねじれ上がり、錐のような形状になる。それはセルマを狙っていた。

 当然だろう。
 彼女の手には『宇宙の幼生』と呼ばれる宝石があった。
『ポーシュボス・フェノメノン』はそれを狙ってくる。必ず捕食しようとするのだ。ならばこその攻撃行動。
 己を取り込み、同時に『ポーシュボス・フェノメノン』すらも捕食しようとする。
 狂気が己の思考を侵食していく。

 けれど、彼女の瞳は『ポーシュボス・フェノメノン』を見つめていた。
 常に冷静たれという教えがあった。
 彼女は思い出す。いつだって思い出す。己は何だという問いかけがあった。
 己は狙撃手である。
 その矜持はどれだけ狂気に侵されたのだとしても、潰えることのないものであるのならばこそ。
「時間はかけられません、チャンスは一度……!」
 放たれる錐のような鋭い『ポーシュボス・フェノメノン』の一撃を彼女の瞳は見ていた。

 悪魔で敵の狙いは『宇宙の幼生』。
 ならば、その一点を見定め、マスケット銃に装着された銃剣『アルマス』が、その一撃を受け止める。
 火花を散るように回転する『ポーシュボス・フェノメノン』の錐の切っ先。
「『寒い』と思う暇も与えません」
 そのつぶやきと共に放たれるはユーベルコードの輝きであった。
 手にした宝石を頭上に放つ。
 瞬間、『ポーシュボス・フェノメノン』は生物的に反射し、『宇宙の幼生』を求め、錐のように形状変化した身体を展開し、空中に飛ぶ『宇宙の幼生』を捕食せんとする。

 それこそが千載一遇の好機。
 セルマは見誤ることはなかった。
 疾走るは凍風一陣(イテカゼイチジン)。
「――狙いは外しません」
 放たれる弾丸は『ポーシュボス・フェノメノン』を一撃のもとに貫き、その絶対零度の冷気でもって、その全身を凍りつかせていく。

 救われぬ生命があるのならば。
 せめて終わらせなければならない。セルマの一撃は狙撃手としての矜持のままに、『ポーシュボス・フェノメノン』という人の善性を語る悪意を凍てつかせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ等歓迎
ポーシュボス化現象……
そう、死すら取り上げられてしまったのね、あなた達は
もうあなた達を元に戻す事は叶わないけれど……それならば、せめて奪われた死だけでも取り返すわ
少しばかり戦場から離れていたけれど、行けるわね? ヒルデ

■戦闘
聞いた限り、あの現象からは例え悪霊であっても逃れられない
厄介な相手ね
だけど、私にも死を扱う者としての矜持があるの
あの中に死を願う者がいるのなら、何としても心を強く持ってポーシュボス化に抗うわ
ヒルデ、貴女も意地でも耐えなさい。これは命令よ

そのままヒルデに護衛して貰いながら、詠唱で【UC】を準備
詠唱が完了した時点で【宇宙の幼生】をヒルデに遠くへ【投擲】してもらい、
肉塊と化したポーシュボスが宝石を捕食しようとしたところへ、
【UC】によって呼び出した、巨大な死者の船による【重量攻撃】で圧し潰すわ

そこで離脱しても良いけれど、あの幽霊の戦士たちは言葉すら忘れて自我もほぼ残っていない存在
無理なら即座に送還するとして、可能なら彼らに指示を出して一気に仕留めましょう



 凍てつく風が『ポーシュボス・フェノメノン』と呼ばれた現象たる存在を凍りつかせていく。
 超巨大オブリビオン・ストームはすでに嵐としての体裁を取り繕うこともできないままに消え失せようとしていた。
 だが、凍りついた身体を震わせるようにして悲痛なる叫びと共に『ポーシュボス・フェノメノン』は、未だ終わらぬとばかりに『ポーシュボス化』の囁きを響かせるのだ。
「あああななんあんたも、一緒に、いいっしょに、ななななろうううう」
「怖くハない。恐れル必要ナド何もない、ただ、みをまかせれれば」
 その様相は最早生命と呼ぶことも憚られる狂気に染まりきっていた。

 あれが『ポーシュボス化』の成れの果てであるというのならば、死という救済すらもない。
「『ポーシュボス化現象』……そう、死すら取り上げられてしまったのね、あなた達は」
 レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)は満月の如き日傘をくるりと弄び、アポカリプスヘル、嘗ての街であった場所に降り立つ。
 彼女の瞳が見るのは『ポーシュボス・フェノメノン』に取り込まれた人々の姿であった。

 もはや生命ですらない。
「もうあなた達を元に戻すことは叶わないけれど……それならば、せめて奪われた死だけでも取り返すわ」
 行けるわね、とレナーテは従者である巨大な骸『ヒルデ』に語りかける。
 無論というように『ヒルデ』が首をもたげる。目指す先にあるのは『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯。
 これまで猟兵たちが紡いだ戦いの軌跡が其処に在る。

 あれだけ巨躯であった身体は数多の猟兵たちの放った攻撃で奪われた死を持って、穿つ。
 その異形なる姿は、形を変えて不定形なる姿をさらけ出している。
 あらゆる器官の如き極光放つ目も、全てが弱々しい。
 その姿に憐憫を思うのであればこそ、人の心に一欠片とて善性があることを示す。それは悪霊であったとしても抗うことのできぬ現象。
 厄介であると言う他無い。
 だからこそ、レナーテは『超えて』征くのだ。
 
「あの中に死を願う者がいるのなら、なんとしても」
 そう、己は死を扱う者。
 死霊術士であるのならばこそ、自分がやらなければならない。心に強く思う。
 限界を超える。『ポーシュボス化』が抗えぬ衝動であったのだとしても。
「『ヒルデ』、貴女も意地でも耐えなさい。これは命令よ」
 傍に控える従者たる『ヒルデ』がうなずいたような気がした。もはや、そのような余裕など何処にもないだろう。
 けれど、彼女の主が告げる言葉のままに『ヒルデ』は『宇宙の幼生』と呼ばれる宝石を投擲する。

『ポーシュボス・フェノメノン』は、『宇宙の幼生』と呼ばれる宝石を捕食する特性を持っている。
 それがいかなる理由からかなど、今は考えている暇はない。
 あるのは、これが逃してはならぬ好機という事実のみ。

「来たれ、黄昏の海を駆ける船よ。その忌まわしき姿を此処に現し給え」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 超巨大オブリビオン・ストームの残滓たる暗澹たる曇天を割って招来されるは、終焉の時より来たる船(ヴェルトエンデ・ナグルファル)。
 それは巨大な死者の船。

 死を取り上げられた者たちに手向けられた宿命。
 その巨大な質量による船の圧殺が『ポーシュボス・フェノメノン』に落ちる。凄まじい衝撃が生まれ、『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯が大地に釘付けられるようにして叩きつけられる。
「人の善性を――そこに付け込むというのならば、貴方の死を持って償いなさい。無辜なる人々を取り込み、その生命を弄んだことを、善性と悪性を知るのならば、わかるでしょう」
 レナーテの瞳が輝いていた。

 そこにあったのは『超克』の輝き。
「ひひひかりが、ある。見える、見える、光が、未来が」
「うば、ワレた、輝きが、ああああああ――」
 悲痛なる叫びは、終わりを迎えることへの歓喜か。それとも。レナーテは解らない。死は悲しむだけのものではないけれど。
 それでも、彼女は人々が求めた未来や希望の明日に続く道を見つめる。

 ならばこそ、彼女は示さなければならない。
 死は終点ではないのだと。通過点であるのだと。その先にこそ。
「『オーバーロード』……!」
 レナーテの瞳が極光の如き輝きを解き放つ。死者の船より溢れるは穢れた剣と槍、弓で武装した元の姿も言葉も忘れた、朽ち果てた姿の戦士たち。

 終わりを齎す存在。
 何もかもを奪われ、死すらも奪われた者たちに終わりを与える者たち。
 ゆえに『死者の爪』を意味する葬列。
「やりなさい、『ヒルデ』! 此処で決着を付ける……!」
 叫ぶレナーテに答える様に『ヒルデ』が動く。その身に宿した死霊、そして死者の船より溢れ出した戦士たちの質量をもかけ合わせた巨腕が振るわれる。

 それは『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯よりも巨大なる鉄槌であったことだろう。
『超克』の力は永遠すら破壊せしめるのならばこそ、レナーテは『オーバーロード』の力を持って限界を超えて征く。
 正しき死というものが人にあるのならば、『ポーシュボス化』は誤った死だ。
 奪われたのならば、取り返さなければならない。

 振り下ろされた『ヒルデ』の巨腕が『ポーシュボス・フェノメノン』の巨躯を完膚なきまでに叩き潰す。
 その一撃を持ってレナーテは取り戻したのだ。
 霧消する巨躯。
 その中から解き放たれていく者達。正しき死。
 決してもう囚われぬ。
「……もう往きなさい。此処は貴方たちの居るところではないのだから」
 それこそが、救われぬ者たちに唯一与えられたものであるのならばこそ、レナーテは輝く瞳でもって、彼らを送るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月19日


挿絵イラスト