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アポカリプス・ランページ⑱〜蠢くフィラメント

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「集合お疲れ様。今回も大変な仕事を頼みたいんだが……大丈夫か?」
 猟兵達の顔を確認しつつ茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)が口を開く。その重い声色から、今回も戦争の案内で――激戦の案内を始めるつもりだろう。
「目的地はフロリダ州タラハシー。ここに存在する超巨大オブリビオン・ストームの内部に、『ポーシュボス・フェノメノン』がいるのが分かったんだ。ただ……恐ろしいことにポーシュボスは一体だけじゃない。嵐の中で無数に存在しているみたいでな」
 『ポーシュボス・フェノメノン』はフィールド・オブ・ナインの一体ではあるのだが、個体ではないらしい。彼(ないし彼女)は無数に蠢きながら、侵攻の準備を進めているようだ。

「皆には嵐の中に突っ込んで、ひたすら敵を倒してきて欲しい。ただ相手はやっぱり強敵だ、一筋縄じゃいかないぜ。ポーシュボスには生命の『善の心』に寄生し、相手を新たなポーシュボスに変える能力を持ってるんだ。そしてその対象には勿論猟兵も含まれている。つまり――戦場に足を踏み入れた瞬間から、すべての猟兵はポーシュボスの寄生に対応しなければならないぜ」
 ポーシュボスに寄生されてしまえば、とてつもない狂気が襲いかかるだろう。心身が化け物に変わっていく恐怖に苛まされつつも、どうにか戦わなければならない。
「ただポーシュボスは『善の心』がない相手には寄生できないんだ。何かしらの手段で一時的に心を殺す、あるいは相手に自分の心を見せつけて寄生をはね除ける……そんな対処方法もあるだろうな」
 『世界を救う』為に戦う『邪悪ナる者』。ポーシュボスがいないと断言した、そのような存在ならば寄生にすら打ち勝てる。
 『邪悪ナる者』として戦うか、狂気と恐怖に打ち勝つか。その手段は猟兵達に委ねられている。

「……戦場にいるポーシュボスもすべては普通の人間や動物だった。彼らを救うには、殺してやるしかないんだ。そして相手も全力で俺達を、そして世界を殺しに来るだろう」
 ひびきは転移の準備を進めつつ、猟兵達へと頭を下げる。
 今回の戦いも、間違いなく苛烈なものだろうから。
「……気をつけて行ってきてくれ。無事に帰ってきてくれよ」


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 善悪の物差し。

 ※このシナリオは「やや難」です。
  頑張っていきましょう。

●プレイングボーナス
 『邪悪ナる者』になるorポーシュボス化してでも戦う。

 戦場に足を踏み入れた瞬間、ポーシュボスが寄生しようとしてきます。
 寄生されるような『善の心』がないことを証明するか。
 寄生され心身がポーシュボスに変化していく恐怖と狂気に立ち向かうか。
 方法はお任せします。

●『ポーシュボス・フェノメノン』
 フィールド・オブ・ナインの一体ですが、無数に存在しています。
 殺してくれと懇願する言葉とは裏腹に、猟兵達を新たな自分達の仲間にしたり殺そうとしてくるでしょう。
 とにかく数を減らしてください。


 オープニングが出た時点でプレイングを受付開始します。断章の追加はありません。

 シナリオの進行状況などに関しては戦争の詳細ページ、マスターページ等も適宜確認していただければと思います。
 また、プレイングの集まり次第で不採用が出てしまうかもしれません。ご了承下さい。

 それでは今回もよろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『ポーシュボス・フェノメノン』

POW   :    ポーシュボス・インクリーズ・フェノメノン
【ポーシュボスによる突撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【新たなポーシュボス】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ポーシュボス・ナインアイズ・フェノメノン
自身の【全身の瞳】が輝く間、【戦場全てのポーシュボス・フェノメノン】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    ポーシュボス・デスストーム・フェノメノン
【オブリビオン・ストームの回転】によって【新たなポーシュボス】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レイ・アイオライト
耳元で囀る肉塊とか鬱陶しすぎるわ。ほんと邪魔ね。
自身の不幸を他人の耳の近くで喋る暇があったらさっさと死んでくれない?
アンタたちがポーシュボス現象に呑まれたってのは分かるけど。その悲痛の声はただの煩わしい嵐の喧騒と同じよ。早く骸の海に還りなさい。

邪悪なる者になる、ねぇ。
いいわ、その邪悪なる者なら、あたしの力の裏に潜んでる。
UC発動、出てきなさいクラミツハ。アンタに素敵な蹂躙の場を与えてあげるあたしに感謝することね。
『クハハハハハ!!!殺すか!そうか殺そう!!全部殺そう!!形なき肉塊をことごとく磨り潰してくれる!!』
自身をクラミツハに預けて、影を操って『範囲攻撃・蹂躙・暗殺』するわよ。




 嵐の中を突っ切ったのなら、次に響くは人の声、声、声。
 轟く悲鳴を耳にしつつ、レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)は思い切り眉を顰める。
「耳元で囀る肉塊とか鬱陶しすぎるわ。ほんと邪魔ね」
 そう吐き捨てるレイに対し、返ってくるのは悲鳴に近い訴えだ。
 嗚呼、そんナことを言ワナいで。助けテ。許シて。殺してクれ。それらの声に対しても、レイは出来るだけ冷酷に振る舞う。
「自身の不幸を他人の耳の近くで喋る暇があったらさっさと死んでくれない? アンタたちがポーシュボス現象に呑まれたってのは分かるけど。その悲痛の声はただの煩わしい嵐の喧騒と同じよ」
 お互いのためにも、此処は早く骸の海に還りなさい。
 自らの意思を示すように魔刀『篠突ク雨』を構え、レイは迫る敵を睨む。
 きっと彼らは寄生してくるつもりだ。
 どれだけ冷酷な言葉をかけようとも、レイの本質は善人である。これまで背負ってきた業や為してきた戦いを背負っても、本質までは変えられない。
 けれど――邪悪なる者ならば、自身の力の裏に潜んでいる。

 レイは敢えて衣服を緩め、背中の傷跡を悲鳴の元へと触れさせる。
 これこそが『影憑き』の証。この内に潜む闇黒の操者なら、ポーシュボス現象も意に介さないだろう。
「出てきなさいクラミツハ。アンタに素敵な蹂躙の場を与えてあげるあたしに感謝することね」
『ふん……一時的な降臨、不本意ではあるが……だがこれは面白い!』
 じわり、レイの背中から影が滲む。自分の身体の主導権が移り変わっていくことを感じつつ、レイは改めて周囲を見遣った。
 飛び交うポーシュボス、響く悲鳴。これを終わらせるのに、手段を選んでいられるものか。
『クハハハハハ!!! 殺すか! そうか殺そう!! 全部殺そう!! 形なき肉塊をことごとく磨り潰してくれる!!』
 次の瞬間、レイの身体は凄まじい勢いで宙を舞う。
 寄生しようと飛び込んできた一体を切り払い、そのまま近場の二体目を斬り伏せて。見ればレイの表情は獰猛なものへと変わり、一切合切躊躇のない剣撃を見せつける。
 今の彼女は――『クラミツハ』に身体を預け、邪悪なる者として敵を蹂躙するのだ。
 投げかけられる悲鳴も懇願も、そして感謝の言葉すら切り捨てて、レイはひたすら嵐の中を駆けていく。
『良い気分だ! 好きなだけ蹂躙させてくれるとはな、主殿も罪深いお方だ。クハ、クハハハハッ!!』
 悲鳴と轟音をかき消すよう、高らかに響き渡るのは――影の者の、何よりも楽しげな笑い声だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルドラ・ヴォルテクス
(アドリブ連携OKです)

オブリビオンを破壊する力、俺の偽神細胞が導き出した答えを見せるとしようか。

【邪悪なる暗黒マハーカーラー】
それは偉大なる暗黒、或いは死。
暗黒が、邪悪が、どこまでも滲む。俺は誰だ……?そうか、全てを壊せばいいのだな?

光芒が迫る、あぁ、確かアレが敵だ。巻け捩れ曲がれ、これは嵐、敗け捻れ禍れ。
(タービュランスだったものを振り翳し、突撃をいなす、なにか)

これはなんだ?そうか……あの爛れた金色を……殺しやすい形に変わるのか?
(チャンドラーエクリプスだったものを大鎌に変容させ、蠢く敵陣を薙ぎ払い狩る、なにか)

あぁ、あの光が全て消えれば、黒が……静寂を……。
(全てを狩に暗黒が滲む)




 嵐の内部に渦巻く圧倒的な恐怖と狂気。
 それを目の当たりにすれば、ルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)の頭は一つの考えに支配していく。
 あれは禍風の輩。あれらを見定め、滅ぼすのが己の役割。
 身体に埋め込まれた偽神細胞が脈打ち答えを導き出せば、ルドラの纏う気配は禍々しいものへと一変する。
「オブリビオンを破壊する力、俺の偽神細胞が導き出した答えを見せるとしようか」
 禍津風に列する者よ、終焉を見せてやる。ルドラが転ずるのは邪悪なる暗黒マハーカーラー、偉大なる暗黒、或いは死。
 その気迫に圧されたのか、彼に迫っていたポーシュボス達が悲鳴を上げる。
 怖い、誰だ、いいやあれは何だ。
 その叫びすらも意に介さず、ルドラは勢いよく地を蹴った。滲む暗黒が、邪悪が、軌跡のように彼の後に続いていく。

「俺は誰だ……? 分からない、だがそうか、全てを壊せばいいのだな?」
 昏い瞳で見据えるのは、明滅するポーシュボスの煌めきだ。
 自分が誰だか、あれが何かは分からない。でもやるべきことだけは簡単に理解出来る。
 あぁ、確かアレが敵だ。じゃあ全て滅ぼそう。
 ルドラは闇に染まった機構剣タービュランスを構え、近場の敵をあっさりと振り払う。
 同時に飛び込んでくる相手はさっと回避し、そのまま再び剣を振るえばまたしても肉塊の出来上がりだ。
「巻け捩れ曲がれ、これは嵐、敗け捻れ禍れ」
 ただひたすら浮かび上がっては弾ける意思を胸に、ルドラはひたすら暴れまわる。
 また見えたのは、爛れた金色だ。あれを滅ぼすには、何が良いだろうか。
 そう思って手元を確認すれば、チャンドラー・エクリプスがその中で禍々しく輝いていた。
「そうか……あれを……殺しやすい形に変わるのか?」
 ほぼ無意識にチャンドラーを大鎌へと変化させ、ルドラは再び敵陣の中に突っ込んでいく。
 暴力的なまで振るわれる刃は例え邪神だろうとあっさりと斬り伏せ、そして滅ぼしていくのだ。

 けれど戦いが続けば続くほど、ルドラはルドラではなくなっていく。
 嵐の中に飛び回るのは――既にルドラだった『なにか』になりかけてしまっていた。
「あぁ、あの光が全て消えれば、黒が……静寂を……」
 でも、それでも構わない。これが自分の役割で、使命で、運命なのだから。
 ――嵐の中に真の静寂が訪れるその時まで、破壊の化身は徹底的な蹂躙を繰り返して行くだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リサ・ムーンリッド
社会という利益を得るために一般的な良心を模倣してるだけというタイプの狂研究者

●心情
世界には未来に進んでもらわないと、変化がないなんて退屈だからね
それに、普段は外聞があるからオブリビオン相手でも手段考えなきゃだったけど、この状況なら目立たないかな?
邪神のサンプルがいっぱいだー

●攻撃
UC『特別製のポーション』でポーシュボス化したモノの動きを封じつつ一時的に精神を正常に戻して質問をしよう
気分、手足の感覚、未知の器官の感覚、などなど、メモしていくよ
でもすぐ正気を失っちゃうなあ、暴れだす前に【薬品調合】した毒で機能停止させて次にいこう
正気に戻したのが動物や子供なら会話の要領を得ないのでそのまま処分




 リサ・ムーンリッド(知の探求者・エルフの錬金術師・f09977)にとって、道徳や良識は社会という利益を得るために必要なものだ。
 良心をきちんと模倣すれば、私は社会から弾き出されない。
 本当はそんなものより自分の興味の方が大切だ。思うままに振る舞えることが出来るのなら、どれほど楽だろうか。
 でも、今は違う。社会にも立場にも縛られる必要はないはずだ。
「普段は外聞があるからオブリビオン相手でも手段考えなきゃだったけど……この状況なら目立たないかな?」
 世界には未来に進んでもらわないと、変化がないなんて退屈だから。目の前で蠢く彼らには、未来のために役立ってもらうのが一番だろう。
 邪神のサンプルがいっぱいだー、なんてニコニコと呟いて、リサは迫る邪神へと手を伸ばした。

「早く逃げテ、君も怪物ニされテしマウ」
 ポーシュボスから見れば、リサはごく普通の女性に見えただろう。
 彼らはリサの心に忍び込もうと触手を伸ばし――そしてあっさりと阻まれた。
「丁度よかった。そっちから来てくれて助かったよ」
 リサは呆気に取られるポーシュボスの腕をひっつかみ、自分の元へと手繰り寄せる。
 そのまま懐から取り出すのは特別製のポーションだ。
 蓋を開け、中身をばしゃばしゃと邪神へ振りかければ――邪神の驚く声は、正常な声色へと変化しだした。
「ぁ、あ……ここは……君は……?」
「時間が勿体ないから手短に聞くね。今の気分は?」
「わ、分からない……私はポーシュボスになって、それから……罪悪感と恐怖でいっぱいで……」
 ふんふんと邪神の言葉をメモを取りつつ、リサは小さく安堵していた。薬の効き目は十分だ、彼らの意識を一時的に『人間』に戻すことには成功している。
 そのまま四肢の感覚や未知の器官の感覚などについても聞こうとしたけれど――。
「ぅ、あ、あァ……マたポーシュボスが頭ノ中に……」
「あー、残念。すぐ正気を失っちゃうなあ、これはもうお終いっと」
 再び相手が狂気に飲み込まれるなら、毒液を振りかけ命を奪う。1つ目のサンプルはこれでおわり。

 物言わぬ肉塊は邪魔なだけだ。抱えていたのをその辺に投げ捨てて、リサは次の相手へと薬を振りかける。
 次の相手は二体の小さな邪神だ。彼らが正気を取り戻した瞬間、聞こえたのはあどけない声に犬の鳴き声。
「お、おねえちゃん誰? ぼく、ダニーと一緒に怪物に飲み込まれて……」
「んー……これはちょっと使えない、かな」
 子供や動物からは適切なが意見が聞けないだろう。相手が言葉を終えるより早く毒薬を振りかけて、次の実験もおしまい。
 けれど気を落とすことはない。サンプルはまだまだあるのだから。
「よーし、もっと頑張って行こう!」
 グッと背伸びをして、リサは次なる邪神へ向かう。彼女の後ろには、きっと無数の肉塊が転がるはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
こいつがポーシュボス……こいつは、およそまともな生物だとは思えないな
そして、善なる者では倒せない……か

神刀の封印を解いて、幽の型【鬼哭】を発動。仄暗い神気を身に纏う事で一時的にオブリビオン化。身体能力を大きく強化(姿はIC風)
普段は理性と浄化の力で侵蝕を抑えているが、今回は敢えてその枷を外して、暴走気味に自身の力を解放する事で、一時的に『邪悪ナる者』と化す

暴走している影響と制限時間がある事を受けて、攻撃重視で前に出る
まずは遠距離から斬撃波で攻撃しながら一気に接近

接近した後も斬撃波を放ちながら力任せに切り込み、なぎ払ってポーシュボスの接近を阻む事で同時に攻撃を防ぎつつ、一匹でも多く殺していく




 目の前に蠢く存在達は、およそまともなものとは思えなかった。
 轟くポーシュボスの嵐を見上げつつ、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は静かに神刀の柄に触れる。
「善なる者では倒せない……か」
 鍛錬により自分の心を制御したり、抑え込むことは出来る。
 けれど善なる心を自ら殺すなんてことは――きっと簡単には出来ないだろう。
 ならば別の手段を取るしかない。鏡介は神刀を引き抜くと、そこから溢れる禍々しい気配に敢えて自分の身を捧ぐ。
「剣鬼解放、加減はしない。幽の型【鬼哭】」
 仄暗い神気と共に悪霊を纏っていけば、鏡介の身体は過去に近しい存在へと変化しだした。
 黒い髪は白く染まり、瞳は燃えるような赤色に。
 この状態に変じても、いつもの鏡介ならば理性と浄化の力で自身を律することが出来る。
 けれど今回は、それもしない。自分を守らず、衝動に身を任せ――ただひたすら相手を切り伏せる剣鬼と化すことで、真なる邪神を退けるのだ。

 予想通り、ポーシュボスは鏡介に接近してきても寄生はしない。
 なら相手が神だろうと、斬り捨ててしまうだけだ。
(だが……この状態も長くは続かない。命を燃やす以上、時間制限は存在している……だからこそ、前へ!)
 半ば無謀だと思うような勢いで、鏡介は嵐の中を突き進む。
 少し離れた位置に敵の塊が見えたのなら、そちらには衝撃波を叩き込んで。
 それで相手の合間に道が出来たのならば、そちらへと突っ込んで。
 一切合切休む間もなく、鏡介はただ刀を振るい続ける。
(身体が燃えるようだ……だが少しでも気を緩めば、手を止めれば終わるのは俺の方だ)
 目の前に飛び込んできた一体に斬撃を食らわせ薙ぎ払えば、相手はゴム毬のように飛んでいく。
 そちらにもすかさず衝撃波を叩き込み、接近。先程投げ飛ばされた一体に押された仲間に、容赦なく剣を振り下ろす。

 敵を殺せば殺すほど、自分の命も燃えていく。理性が削り取られていく。
 だがそれでも、鏡介は止まらない。
「お前がまともな生物でないというのなら、俺も同じところまで堕ちてやる。その上で全て斬り伏せ、そして勝つ!」
 その叫びは文字通り鬼気迫るもので、思わず邪神達がたじろぐのが見えた。
 彼らが元々人間や動物であったことは知っている。
 けれど容赦はしない。目の前にいる相手は、悍ましい怪物と化しているのだから。
 そして彼らを倒した先にこそ、自分達が進む道があるのだから。
 決意を秘めた剣鬼の斬撃は、尽く邪神を叩き切り――そして道を作り上げていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
液体金属を纏って狼耳と尻尾を象る。手足も覆って獣人のような姿になるぜ。
善だの悪だの知ったこっちゃねーよ。オレは喰いてェから喰って殺してェから殺すんだ。
真っ直ぐ突撃して喰い千切る。でかくて大量、喰いでがあってイイじゃねェか。喰ったそばからUDCが消化するからいくらでも喰えるぜ。
でけェから狙う必要もねェな。攻撃は野生の勘で把握して、他のポーシュボスを足場にして躱すぜ。カウンターで爪で引き裂きそいつも纏めて喰らってやる。
「邪神だか何だか知らねェが、魂までまとめて喰い尽くしてやるぜ、ヒャハハハハ」




 玉虫色に煌めく耳と尻尾を揺らしつつ、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の人格の一人『アノン』も嵐へと足を踏み入れる。
 揺らめく液体金属を更に手足にも纏わせて、獣人のような姿にもなれば準備も万端。
 周囲には――嘆き悲しみ苦しみ悶える、無数の邪神達。けれどアノンからすれば、彼らは皆『美味しそうな餌』だ。
「善だの悪だの知ったこっちゃねーよ。オレは喰いてェから喰って殺してェから殺すんだ」
 善悪を超越した本能に、邪神が取り憑く隙間はない。
 アノンはただ本能のまま前へと突っ込み、邪神の群れへと接近していく。
 彼らの金の瞳が一斉にアノンを見つめるが、それが何だというのだろう。被捕食者が此方を睨もうと、恐れることはなにもない。
「でかくて大量、喰いでがあってイイじゃねェか」
 まずは手近な相手を一体。アノンは獣の腕で相手の身体をひっつかむと、そのまま勢いよく歯を立てた。
 身体を液体金属――UDCと同化させれば毒も鉄も魂も、全部纏めて喰らうことが出来る。
 歯で肉を引き千切り咀嚼すれば、感じたこともない味が口の中に広がっていく。手元の邪神が凄まじい悲鳴を上げているが、そんなのはただのノイズだ。
 ごくんと欠片を飲み込めば、即座にUDCが喰らったものを消化してくれる。
 それは幾らでも相手を喰えるということで――いつまでも腹が満たされないということで。
「もっと、もっとだ! オレにお前らを喰わせろ!」
 これで相手の味は覚えた。アノンは更に獰猛な笑みを浮かべ、邪神の元へと突き進む。

 一度味を覚えてしまえば、その相手をどう喰らえばいいかも理解出来る。
 アノンはひたすらに戦場を駆け回り、次々に邪神を腹の中へと収めだした。
「でけェから狙う必要もねェな、足場にも丁度いいや」
 上空にいる相手を捉えるなら、地上で蠢く相手を踏み越えてしまえばいい。
 協力して此方に突進してくるというのなら、爪で切り裂いてしまえばいい。
 殺した相手は片っ端から食いちぎり、咀嚼し、味わい――けれどアノンの飢えは満たされない。
 そんな彼の心には、やはり邪神が入り込む隙間などないだろう。
 初めての味の甘美さに驚き、満たされない飢えに憤り、その上でただただ楽しげに笑う。
 今のアノンは――邪神より恐ろしい捕食者だ。
「邪神だか何だか知らねェが、魂までまとめて喰い尽くしてやるぜ、ヒャハハハハ」
 嵐の中身が尽きるまで、アノンの食事は終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シノギ・リンダリンダリンダ
私が新たな世界で財宝を手に入れる邪魔をするんですか?
だったら殺します。人間だろうとなんだろうと、オブリビオンだろうと

36全ての世界の財宝を手に入れる為に世界を解放し、その邪魔をするオブリビオンは殺す
全世界全ての財宝は自分の物だから。それは確定事項であり、その為に結果的に世界を救っているのだとしても。その邪魔をするのなら一般人でも関係無い
世界を救うのは過程で、財宝の為
世界を救えば、一般人は喜んで財宝を渡してくれるのでしょう?

【憤怒の海賊】を解放
ドールのガワを捨て、呪詛毒の霧の体を全域に広げる
せめて、黄金像となって死ね
私の海賊船に飾られれば、お前達も幸せでしょう?




 吹き荒れる暴風と人々の嘆きの声。それらを全身で受け止めつつ、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)は飛び交う邪神を睨みつける。
 嗚呼、嗚呼、俺ノ姿はスっカり変ワっテしマっタ。誰カ助けテ。人ガ怪物に。全部終わリだ。
 それらを一蹴するように、リンダは言葉を紡ぐ。
「私が新たな世界で財宝を手に入れる邪魔をするんですか? だったら殺します。人間だろうとなんだろうと、オブリビオンだろうと」
 彼らがただの人間や動物だったのなら、邪魔さえしなければ殺す必要はなかった。
 けれど今の彼らは世界を襲う怪物だ。じゃあ全員が私の道を阻むものだ、殺してしまおう。

 迫る触手がシノギの心に忍び寄ろうとしても、それはあっさり払い除けて。その行為すら鬱陶しい、自分の一欠片だろうと誰にも渡したくない。
「いいですか。36全ての世界の財宝を手に入れる為に世界を解放し、その邪魔をするオブリビオンは殺す」
 黄金の右腕で、まずは手近な敵を退ける。懇願する悲鳴も、シノギの耳には届かないだろう。
「全世界全ての財宝は自分の物だから。それは確定事項であり、その為に結果的に世界を救っているのだとしても。その邪魔をするのなら一般人でも関係無い」
 再び心に忍び寄る相手なら、掌から放つ弾丸で撃ち落として。まるで羽虫のようだな、とつい思ってしまう。
「世界を救うのは過程で、財宝の為。世界を救えば、一般人は喜んで財宝を渡してくれるのでしょう?」
 それは、既に怪物と化した貴方達でも。
 シノギの言葉に邪神達が震えた。嗚呼、そウだ。幾ラでも身ヲ捧げヨう。だかラ私達を殺シてクレ。
 その懇願も――シノギは笑い飛ばし、同時に彼女の身体から鋭い警告音が発せられた。
「身を捧げる? ああ、大丈夫です。わざわざそんなことをしなくても……全部奪い取っていきますから」
 Emergency,Emergency。そこに顕現するのは人形の女性ではなく――何よりも強欲な、憤怒の海賊だ。

 シノギはフレームを脱ぎ捨て、死霊海賊の王へと姿を変えた。
 そのまま嵐の中を飛び回り、目についた邪神達へとありったけの呪いを注ぐ。
 彼女の身体を構成する霧が呪詛へと変わり広がっていけば――邪神達はあっという間に黄金像へと変わり果てた。
「道行きを邪魔する者達よ。せめて、黄金像となって死ね。私の海賊船に飾られれば、お前達も幸せでしょう?」
 外敵の蹂躙と財宝の奪取。その双方を叶える呪詛の中心で、海賊の女はただ笑う。
 その強欲は巨大な嵐すら呑み込んで、そして全てをすっぽりと自分の手へ収めてしまうのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリア・ルート
【指定UC】発動、真の姿に。

善の心など私は捨てられる。
私はただ、我が覇道のために戦うのみ。貴様らがその道を塞ぐから殺すのみだ。

――私は、器の力を使い人の形を取った『破壊の怪鳥』!
貴様らを破壊し、破滅を齎す者だ!

救いを求む声や同情を誘う声が出ても『狂気耐性』で踏み躙る!
下らない感情で私を動揺させようだと、そのような堕落した存在に私は倒せぬ。雑草如きが人の言葉を口にするな!
私が殺した父様は言っていた、ウイルスに侵された内臓は切り離さればならぬと――わかるか?貴様らのことだ!

どれだけいようと所詮は烏合の衆、【指定UC】で『範囲攻撃』、殲滅してくれる!
攻撃は『野生の勘』『残像』のみで回避だ!




 善なる者は心を喰われ、化物と化す。
 だから💠マリア・ルート(紅の姫・f15057)は、自らの心を捨てることにした。
 真紅のドレスを身に纏い突き進む彼女は覇道を往く者。己の進む道のためならば、善の心など捨てられる。
「私はただ、我が覇道のために戦うのみ。貴様らがその道を塞ぐから殺すのみだ――私は、器の力を使い人の形を取った『破壊の怪鳥』! 貴様らを破壊し、破滅を齎す者だ!」
 マリアが高らかに声を上げれば、邪神達は一斉に彼女の方へと迫りくる。
 お願イだ、殺しテくレ。私はたダ家族ヲ守りたかッタのに。聞こえてくるのは懇願や絶望、嘆きに狂気。
 けれどその全てに、マリアが耳を貸すことはない。

「下らない感情で私を動揺させようだと、そのような堕落した存在に私は倒せぬ。雑草如きが人の言葉を口にするな!」
 憤怒と共に放つのは、容赦のない爆発と魔力の波動だ。
 それは悲鳴ごと邪神達を呑み込んで、この世界から消滅させていく。
 同時に思い返すのは憎き父親の顔だ。けれど今なら、彼の言っていたこともよく分かってしまう。
 自分の進む道は、あいつと変わらないのかもしれない。それでも――進むことはやめられないのだ。
「私が殺した父様は言っていた、ウイルスに侵された内臓は切り離さればならぬと――わかるか? 貴様らのことだ!」
 マリアが大きく手を振るえば、また爆発と波動が周囲を揺らす。
 邪魔をする者は燃やす。
 嘆きに身を堕とす者は潰す。
 彼らに手を差し伸べることになんの意味がある。
 救いようのない者、目障りな者。その全てを殲滅し、突き進むのが私の覇道だ。

 ポーシュボスと化した人々は絶望のままマリアの攻撃を受け入れるが、邪神の部分はそうもいかない。
 彼らは本能的に身体を束ね、うねらせ、マリアを殺そうとするが――。
「私を倒すことはほぼ不可能だ。何故かわかるか?」
 本能として研ぎ澄まされたマリアの勘が、その攻撃を回避する。触手が打ち据えたのは後に残った影だけだ。
 そうして振り下ろされた触手も爆発させ、ただただマリアは前へと突き進んでいた。
「貴様らのような存在が、私に届くと思うな!」
 怒りは爆発に。叫びは衝撃に。マリアの通った道の後には、邪神の欠片すらも残らない。
 怒れる覇王の進軍は――全ての敵が殲滅し、彼女の怒りが収まるまで続いていくだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
……自ら、身体を割いて。真の姿を、解き放つ。
朽ちた身体の中に閉じ込められた、凝り固まった怨恨。
ひとの手で殺された、最期の憎しみ、悪感情のかたまり……
手に届く生者をすべてとり殺す『邪悪ナる者』、悪霊。

大嵐が吹き荒れて。ポーシュボスが、生まれる。回復していく。
生に満ちている、その姿が。憎い。にくらしい。
あたしは無残に死んでいるのに。どうして……お前らみたいな存在が。
生きて、殖えて、はびこって。許せない。ゆるせない。
……死ねっ!あたしのように、ずたずたになって死んでしまえ!
憎悪の炎が燃え上がる。増殖した無数の目線を、邪悪な力に変えて。
潰して、引き裂いて、死のこちら側へ引きずり込んでやる!

……身体には。すべて、終わるまで、戻らない。
脳細胞があって。刻まれた記憶があって、人の心が灯った、肉の枷。
戻ってきた、ときには。震え上がる、かも、しれないけれど。
あれは、確かに、あたしで。この心も、やっぱり、あたし。だもの。




 聞こえる悲鳴、轟音、その他諸々。
 それらを前に、マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は丸ノコを握りしめる。
 ここにいる邪神達を倒すなら、これがきっと一番だから。衝動を電力に変えて丸ノコを起動したら、刃を立てるのは――自分自身だ。
 次の瞬間、マオの身体から圧倒的な気配が溢れ出す。
 凝り固まった怨恨、最期の憎しみ、悪感情のかたまり。ひとの手で殺されて、それから朽ちた肉体に閉じ込めていたあらゆる想い。
 それを具現化して飛び出すのは――手に届く生者をすべてとり殺す『邪悪ナる者』、悪霊としてのマオだった。

 マオの出現に呼応したのだろうか。オブリビオン・ストームは更に強まり、ポーシュボス達もエネルギーを発しだす。
 それはとても禍々しいものだけれど、マオにとっては眩しくもあるものだ。
「ああ、ああ……ポーシュボスが、生まれる。生に満ちている……憎い。にくらしい」
 例えそこにあるのが絶望だとしても。救いようの嘆きだとしても。彼らはまだ生きている。生命力を溢れさせ、増殖を続けている。
 そんな光景に手を伸ばすよう、マオは一歩前へと進む。その瞬間に新たなポーシュボスが悲鳴のような産声をあげた。
「あたしは無残に死んでいるのに。どうして……お前らみたいな存在が」
 何故自分は殺されたのに、あんな化け物が好き勝手に生きているの、殖えているの、蔓延っているの。
 そう思った瞬間、マオが纏う気配はより濃厚なものへと変わる。
 許せない。ゆるせない。どうして。なんで。お前たちが、そうやって命を満たすというのなら。
「……死ねっ! あたしのように、ずたずたになって死んでしまえ!」
 その叫びに呼応して、マオの周囲に青い炎のような光が揺らめいた。
 それは嵐の中にあろうとも、邪神達の黒い身体に囲まれようとも強く強く揺らめいて、燃え滾る。
 感情と共に溢れる涙すら、マオの魂を焦がす炎に変わるだろう。そしてそれは――蔓延るすべての邪神から見ても、恐ろしく、美しい。
「あノ炎ハ……?」
「嗚呼、私達を殺シに来テくレたのカ……」
 邪神へと変えられた人々から見れば、マオの存在は有難いものだろう。けれどその感謝の眼差しすら忌々しい。
 もちろんポーシュボスとしての、こちらを値踏みするような視線はもっともっと鬱陶しい。
 やめろ、見ないで、あたしから目を逸らすな、殺してやる。
 二律背反する感情を爆発的な力に変え、悪霊は嵐の中を飛び交い始めた。

 そこから先に起こったのは、シンプルなまでの蹂躙だ。
 マオは圧倒的な力を以て手あたり次第邪神を捕らえ、潰し、引き千切り、殺す。
 ここにいる奴等は全部死のこちら側へ引きずり込んでやる。ただそれだけのため、マオは徹底的に邪悪な者と化していく。
 視線を下へ向ければ、そこには倒れ伏す自身の身体があった。そこに戻るのは、全部が終わった時だ。
(脳細胞があって。刻まれた記憶があって、人の心が灯った、あたしの肉の枷)
 あそこにいるあたしは、悪霊としてのあたしが戻ればきっと後悔する。自分のした行いに、抱いた感情に怯え、震えあがるかもしれない。
 でも、それでも。
「あれは、確かに、あたしで。この心も、やっぱり、あたし。だもの」
 止まった心臓はもう動かない。湧き上がる負の衝動がこれからも衝動と化すだろう。
 そして生きている者を眩しく思うのも、ひたすら憎いと思うのも、どっちも紛れもない本物の気持ちだ。
「だから……これからも、あたしはあたしでいるために、ここでお前たちを殺す。全部全部、死んでしまえ!!」
 湧き上がる感情のまま、悪霊の少女の蹂躙は続く。
 自分を見つめる視線がすべてなくなるまで、ただひたすらに続くのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…本来は私が気絶したり精神に何か変調があった時の物なんだけど…

…只管に敵を狩る必要がある今回は、おあつらえ向きの術式よね

事前に「吸血鬼狩りのペルソナ」による戦闘人格により自我を封じ、
積み重ねてきた戦闘知識から機械のように行動する事で善心への寄生を無効化し、
右腕に「影精霊装」を巻き付けて陽光を遮りながら切り込みUCを発動

…戦闘用人格リーヴァルディ02起動
目標、邪神ポーシュポス・フェノメノン撃破

…陽光遮断完了。右腕魔力収束

完全に吸血鬼化した右腕に限界突破した血の魔力を溜め、
極限まで強化した怪力任せに大鎌を残像が生じる超高速で乱れ撃ち、
敵の攻撃を全周囲を覆う無数の斬撃のオーラで防御して敵群をなぎ払う




 溢れかえる狂気と絶望。それらと戦うには、並大抵の手段では難しい。
「……本来は私が気絶したり精神に何か変調があった時の物なんだけど……」
 飛び交う悪意を前にして、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は静かに目を伏せる。
 彼女の手元には、特別な術式の準備が整えられていた。
「……只管に敵を狩る必要がある今回は、おあつらえ向きの術式よね」
 そうして心に被るのは戦闘人格の仮面、『吸血鬼狩りのペルソナ』。
 積み重ねてきた技術と経験を活かし、機械のようにただ殲滅するだけの人格。
 その心には、邪神が入り込む隙間すら存在しないだろう。
「……戦闘用人格リーヴァルディ02起動。目標、邪神ポーシュポス・フェノメノン撃破」
 いつもよりも無表情に、声色も冷徹に。戦闘用の人格を起動したリーヴァルディは、右腕に闇のような影精霊装を纏わせ戦いの準備を進めていく。
 その布の下では――白い右腕だけが、完全なる吸血鬼と化していた。
「……陽光遮断完了。右腕魔力収束」
 血の魔力に溢れる右腕で『過去を刻むもの』を握りしめ、リーヴァルディは勢いよく地を蹴飛ばす。
 本来ならば右腕を吸血鬼化した際は、全身で制御し暴走しないように努めるが――今回に限ってはその必要もないだろう。
 ただただ、迫る敵を薙ぎ払えばいいのだから。

 ポーシュポス達はリーヴァルディの心に忍び込むことが出来ないが、彼女の命を喰らうことくらいは考えただろう。
 彼らは蠢き、轟き、一斉にリーヴァルディの元へと向かう。
 その様子を紫の瞳で捕らえ――まずは一閃。
 極限まで強化された右腕からは、目にも留まらぬ斬撃が繰り出された。
 それらが大波のように邪神達を打ち据えたのを見遣り、リーヴァルディは一気にそちらへ飛び込んでいく。
「……目標確認。殲滅続行」
 移動中も常に大鎌を振るい、斬撃のオーラを展開。リーヴァルディの進む道行きには、無数の邪神の残骸が溢れていく。
 そして更に大群の元へと辿り着けば――。
「……限定解放。右腕魔力再収束。斬撃、展開」
 身体への負荷もお構いなしに、リーヴァルディはただひたすら大鎌を振り回す。
 その度に生まれる斬撃と衝撃波が嵐の中の嵐のようで、あらゆるポーシュポスを切り刻んでいくだろう。
 聞こえてくる悲鳴も感謝も嘆きも絶望も、仮面を被った心が意に介すことはない。
 冷徹な最速最多の連撃は、悍ましき神々すらも超えていくのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
善だの、悪だの…「今の俺」にはどうでもいいことだ
そもそも線引きの必要が無い されるつもりもない
俺はただ、目的を果たすだけだ それ以外には何もいらない
他がどうなろうが知らん 勝てばいい
結果さえ伴えば、それ以外の全ては容認されるものだ

巻き込まないようにする?
必要が無い 無駄なことだ
誰が死のうが 消えようが どうでもいい
──『Void』
範囲内の全ては消滅する 簡単で、明確で、最強の攻撃手段だ
群がるならば、ただ消す
そうでなくても、俺が近づいて消せばいい
如何に強い攻撃手段を持とうが、俺が周囲100m以上をクリアしてしまえば終わる
それだけだ 何の感慨もありはしない

「未来で悪魔となった可能性」の俺は、こうして勝利を積み上げた
感情も情動もノイズでしかない 勝利という結果に悦びすら無い
言ってしまえば、勝つ為のシステムなんだ
命をただの物としか見ていない 消費しても何も感じられない
俺にはこの行いが、善なのか悪なのかは分からないが
誰にとっての善でも悪でも無い存在が
本当の邪悪と呼ぶのかもしれん──消去、消去、消去




 嵐の中、ポーシュボス達が新たな猟兵の存在に気付く。
 彼らは金の瞳を爛々と輝かせ、そちらに手を伸ばそうとするが――彼らがその正体を視認することはなかった。
 そこにいたのは、悪意も善意もなくただ進む一人の男。
 真の姿に転じたヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)だった。

 粛々とポーシュボスを消し去る最中、耳に入るのは戸惑いと歓喜の声だ。
 彼ハ何者だ。まっタく心ニ入り込メナい。『世界を救う』為に戦う『邪悪ナる者』が来てくレたんダ。
 そんな声のすべても『今の』ヴィクティムにとってはどうでもいいものだ。善だの悪だの、そんなものを考える必要はない。
 むしろ線引きすら要らないのだ。その物差しを他人に押し付けられる気もさらさらない。
 感情のない瞳をポーシュボスに向けることもなく、ヴィクティムは淡々と準備を進めていく。
(俺はただ、目的を果たすだけだ。それ以外には何もいらない。他がどうなろうが知らん、勝てばいい)
 必要なのは結果だけ。そのためにはそれ以外の全てを厭わない。
 ヴィクティムは粛々と電脳デバイスを起動させ、必要な術式を展開していく。
 ポーシュボスの正体が何で何を言っているかも、この嵐の中には誰がいるかも、そんなことはどれも些細なこと。
「NO.008ヴォイド、フューミゲイション」
 プログラムの起動と同時に、ヴィクティムの周囲の景色は一変した。
 飛び交う邪神達も吹き荒れる嵐も、全ての物質がデータと化してあっさりと消え去ったのだ。
 その隙間をすぐに邪神と嵐が埋め尽くすが、再びプログラムを起動すれば彼らも消え去る。
 そこに他の猟兵が立っていれば、巻き添えになって消えていたかもしれないが――それをいちいち考えて確認するなんて、必要のない無駄なこと。
 誰が死のうが消えようが、どうでもいい。群がる相手に対処するなら、簡単で、明確で、最強の攻撃手段である『消滅』を浴びせればいいのだから。

 ヴィクティムが嵐の中を進む度、周囲はどんどん変質し消えていく。
 キーを叩いて発動されるコマンドのように、ただただ単純な『消去』がひたすらに繰り返されるのだ。
 その光景には何の喜びもない。悲しみもない。ヴィクティムは勿論、消え去るポーシュボスにも何かを思うことはなかった。
 普段のヴィクティムなら、これだけの成果を生み出せば何かしらの感情が生まれるはずだ。笑顔で誰かと喜び合うことだってあるだろう。
 けれど今の『未来で悪魔となった可能性』の彼にとっては、これも積み重ねてきた結果の一つ。
 そこに何かの感情や情動を抱く行為はノイズでしかない。勝利という結果に悦びすら無いのだから。
 彼自身が既に勝利という結果だけを生み出すシステムのようなものなのだ。命を消すことにも、消費することにも躊躇はない。
(俺にはこの行いが、善なのか悪なのかは分からないが……)
 そしてその行いに審判を下す者も、きっと誰もいない。
 現にポーシュボス達は戸惑いのまま、或いは何かを思う間もなく消滅し続けているのだ。
 僅かに聞こえる嘆きも感謝も全てかき消し、ただただ嵐を進みつつ、ヴィクティムは少しだけ目を伏せる。
(誰にとっての善でも悪でも無い存在こそが、本当の邪悪と呼ぶのかもしれん)
 その心の内の呟きも、感慨ではなくただの思考だ。
 一度走り出したシステムは止まらない。起動したプログラムに停止ボタンはない。
 ひたすら繰り返される消去、消去、消去。
 嵐が消え去るまで、ヴィクティムの歩みは続く。彼の進む道行きには、真っ黒な口を開けた虚無だけが残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
○絡みNG・アドリブOK

この嵐の中に、住んでるんだね
ここからでも分かる、邪悪なオーラ…
でも、こわくないよ
そういうのには、慣れてるの

きっと、概念での「邪悪ナる者」なんて、存在できないの
でもね、「純粋な一つの意思」なら、「善」を感知できないハズなの
使いたくないけど、ぼくには、ただ一つの意思を再現できるの

みんな、ぼくに近づかないでね?
首輪を外せば、ぼくは、止まらないから

出番だよ、音狼
今は、きみの「破壊」の意思に、全部、任せてあげる
UC発動(メキメキと音を立てて巨大人狼へと変身する)
そのまま理性を手放すよ
後に残るのは、目の前の敵を破壊する意思のみを持った、狂える狼

全身を満月の魔力による【オーラ防御】の【結界術】で防御し
宙空に念動剣の様に浮かせた三本の破邪結界の剣【ルプス】を従え、
突撃してくるポーシュボスを迎撃
咆哮による【高速詠唱】【全力魔術】の各種【属性攻撃】を中心に、ルプスで力任せの斬撃
おまけに狼の瞬発力(【ダッシュ】【残像】【ジャンプ】)と爪牙の攻撃

力を使い果たして倒れるまで続ける




 吹き荒れる嵐を見上げ、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は小さく息を呑む。
「ここからでも分かる、邪悪なオーラ……」
 人狼としても魔術師としても、ロランはそのような気配に敏感だ。
 けれど恐れてもいない。そういうのには、慣れているから。
 この中に潜む者達を倒すには『邪悪ナる者』が求められているらしい。そんな概念は存在できないな、とロランは思う。
 だからこそ目指すのは別のアプローチだ。『純粋な一つの意思』があるとするならば、そこに邪神達は『善』は感知出来ないはずだ。
 相手が入り込む心の隙間さえ生み出さなければ、きっと対等に渡り合える。
(使いたくないけど、ぼくには、ただ一つの意思を再現できるの)
 ほぅ、と小さく息を吐いて周りを確認。よかった、自分の近くで戦う猟兵の姿は無さそうだ。
 そして戦いが始まってからも、誰も自分に近づかないことを祈る。
 首輪を外せば、ぼくは、止まらないから。

 嵐の中を本格的に進みつつ、ロランは意識を内側に向ける。
 そうして呼びかけるのは、いつも共に戦う『音狼』だ。
「出番だよ、音狼。今は、きみの『破壊』の意思に、全部、任せてあげる」
 次の瞬間、漆黒の嵐の中に眩い月光が弾けた。
 その中央に立つロランは身体から鈍い音を立てて姿を変えていく。あどけない少年の姿から成長した青年の姿へ、そして巨大な半人半狼の姿へ。
 全身を武装する魔術回路が満月に似た光を放ち、冷ややかな視線は静かに敵を睨む。
 けれどこの狼には――音狼の正体には、首輪がない。
 彼にあるのは純粋な破壊の意思だけ。理性すら手放し、目の前の敵を破壊する意思だけを抱え――狂える狼は、嵐を終えに来た。

 展開した満月の魔力のうち、いくらかは全身を覆う結界術に。残りも破邪結界として練り上げ、天狼の魔剣【ルプス】へと再構築。
 三本の剣と結界を携え、ロランはただひたすらに嵐の中を駆け回る。
 優れた聴覚が捉えるのは敵の接近や攻撃の音、そして邪神だった人々の嘆きと喜び。
 嗚呼、何ダあれハ。『邪悪ナる者』でモない。デも心ニ入り込メない。早ク殺シてクれ。
 いつものロランならば、その声に心を痛めていただろう。その上で決意と覚悟を抱き、彼らに立ち向かったはずだ。
 けれど今のロランには、そもそも彼らの言葉が届いていない。何を言おうと、何を為そうと、相手はただの動く邪魔なものだ。
 相手が飛び込んでくるならば、淡々と迎え撃つ。ルプスのそれぞれの状態を使い分け、的確に敵を倒していくのだ。
 突撃するものには刺突剣を構え、群がるものは長剣と大剣で薙ぎ払う。最適な破壊の手段を、ほぼ無意識に選択していた。
「ウゥ……ウォォォオオンッ!!」
 ロランが激しく咆哮をあげたのならば、更に魔力は高まっていく。
 そのまま剣を振るい、放つ斬撃で敵を薙ぎ払い――残った相手に接近し、ロランは腕を振り上げる。
 振り下ろしと同時に近くの邪神を捕らえ、爪を立てながらの噛みつき。普段のロランならば絶対にしない、荒々しい戦い方だ。
 殺した敵もそのまま放置はせず、投げ飛ばして別の一団へ。再び地を蹴りそちらへ向かい、蹂躙を繰り返す。
 これだけ敵の数が多ければ、ロランが被弾する機会もままあった。けれど邪神の攻撃では、満月の防御は超えられない。
 そちらが此方を壊そうというのなら、それ以上の『破壊』で圧倒してやればいいのだから。

 こうしてロランは嵐の中を駆け回り続けたが……とうとう限界の時がやってきた。
 人狼は糸が切れたように倒れ伏し、元の少年の姿へ戻る。
(もう、限界なの……)
 けれどその小さな身体に迫る触手は存在しなかった。
 猟兵達の活躍により、嵐は既に消え去って――邪神もまた、殲滅されていたのだから。


 こうして猟兵達はそれぞれの戦い方でポーシュボスを滅ぼした。
 超巨大オブリビオンストームも消え去り、乾いた風と日の光が皆を包み込む。
 そこには善も悪も関係なく、ただただ穏やかな時間が流れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月21日


挿絵イラスト