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アポカリプス・ランページ⑧〜今日も空は青かった

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 その日は気持ちの良い快晴で、外に出るにはうってつけだった。

 ここはセントメアリー・ベース。カナダの国境だった場所にほど近い巨大拠点だ。
 内部の暮らしは比較的穏やかで、人々も平和に生活している。
 だからといって、遊んで暮らせる程の余裕もない。
 住民達は手を取り合って、荒廃した世界でもそれなりの生活を営んでいるのだ。

 古びたラジカセから流れる歌姫『マザー』の曲を耳にしつつ、今日も住民達は真面目に働く。
 農作業に勤しむ大人に、洗濯物を干す老人。
 その傍らでは子供達が、より幼い子供達の面倒を見ていた。
 それぞれがそれぞれの役割を果たしながら、緩やかな日々が紡がれていく。

 そのすぐ側にあったのは巨大な倉庫。中にあるのは『マザー』が残した研究論文だ。
 けれどそれは生活に関係がないし、かといって捨てる訳にもいかない。
 量もあまりにも多いから、倉庫の論文はいつまでも手つかずのままだった。


「集合お疲れ様だ。過酷な戦いが続いてるから……今日は単純作業なんてどうだ?」
 猟兵達の顔を見遣り、そう口を開くのは茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)だ。彼の表情は、いつもよりリラックスしているように見えた。
「セントメアリー・ベースって拠点に、マザー・コンピュータの元になった人物……歌姫『マザー』が残した論文があることが分かってな。皆にはそれの回収をお願いしたい。セントメアリー・ベースは比較的平和な場所で、住民達も穏やかに暮らしている。今回の依頼だと戦闘の危険性はないと断言していいだろう」
 『マザー』は歌姫でありながら、優れた研究者でもあったらしい。
 しかし、わざわざ依頼の形で回収を頼まれる論文とは、どのようなものなのだろうか。

「『マザー』が研究していたのは『時間質量論』……プレジデントも口にしていたものだな。時間に質量があるって話は、オブリビオンや骸の海について調べるのに大切な情報だと思うんだ。アポカリプスヘルだけじゃなくて、全ての世界のために役立つかもしれない資料……力を合わせて回収するだけの価値があるものだと思うぜ」
 論文には世界の謎を解くヒントがあるかもしれない。ならば回収を頼むのも自然なことだ。
 けれど、依頼の形として出すにはもう一つ理由があった。
「それで、その論文なんだが……数がとんでもなく多いんだ。収められてるのは大きな倉庫なんだが、その中にびっしりと詰まってやがる。しかも紙媒体、テープにディスク、コンピュータそのままと……種類も多種多様だ。単純に運ぶのがとんでもなく大変だから、皆の力を貸して欲しい」
 埒外の力を持つ猟兵ならば、大量の重い荷物だろうと運べるだろう。
 データさえ壊れないように気をつければ、運搬の方法は自由だ。それぞれが得意な方法で挑めばいいだろう。

「ああ、それから。倉庫の近くでは拠点の人達が生活してる。ちょうど天気も良いみたいだし、外で活動してる人も多いだろうな。戦争の息抜きがてら、拠点の人達に挨拶してくのもいいかもしれない」
 拠点の人々が論文の持ち出しを阻むことはない。
 けれどちょっと挨拶したり何かを手伝うだけでも、彼らが猟兵に抱く印象は変わるだろう。
 それに――守るべき人々を前にすれば、今後の苛烈な戦いの糧にだってなるかもしれない。
「肉体労働とはいえ、戦う必要はないからな。ちょっと息抜きがてら、よろしく頼むぜ」
 ひびきはそう話を締めて、ぺこりと頭を下げるのだった。


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 戦争も終盤な感じですが、ちょっと緩やかに。

●プレイングボーナス
 大量の記録媒体を運び出す。

 大きな倉庫の内部に『マザー』が残した論文が、大量の記録媒体やコンピュータとして残されています。それをどんどん持ち運びましょう。
 紙や電子記憶媒体などは箱詰めされているものが多く、コンピュータは大きいものから小さいものまであります。
 頑張って倉庫から荷物を取り出し、青空の下せっせか運んでいきましょう。

●このシナリオですること・できること
 ・『マザー』の論文データを運び出す(必須)。

 ・外で農作業や家事をしたり、子供の面倒を見ている住人と交流する。
 ・青空の下でのんびりする。
 ・その他、拠点の平穏を乱さない範囲でやりたいことを。

 息抜きがてら、頑張りつつものんびりして頂ければと思います。


 オープニングが出た時点でプレイングを受付開始します。断章の追加はありません。

 シナリオの進行状況などに関しては戦争の詳細ページ、マスターページ等も適宜確認していただければと思います。
 また、プレイングの集まり次第で不採用が出てしまうかもしれません。ご了承下さい。

 それでは今回もよろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『時間質量論を運び出せ』

POW   :    腕力に任せて一気に運ぶ

SPD   :    乗り物や道具を利用する

WIZ   :    より重要そうなデータを優先して運ぶ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

トゥリフィリ・スマラグダス
わ、平和……。この世界では得難いものですね……。(人々の生活している様子に目を細める)


資料の運び出しはUCで召喚した戦士たちに任せて、自分は御用聞きでもしていましょうか。騒がしくしてしまいますし。
調子の悪い機械はないかとか、家屋で傷んだところがはないかとか。(トンカチやドライバー、レンチくらいの工具は「闇鬼」の力で出せる)
まぁ、洗濯物だとか子どもの相手とかでもいいんですけども。何かしら。


はー……凄く長閑……。早くどこもこんな風になれるように頑張っていかないと。(頬を両手でパチンと叩いて気合いを入れ直す)




 青い空の下でのんびりと生活を営む人々。
 荒廃した世界、戦乱の最中に見ることが出来るとは思っていなかった光景に、トゥリフィリ・スマラグダス(つぎはぎの半端者・f33514)は思わず目を細めていた。
「わ、平和……。この世界では得難いものですね……」
 思わず自分もまったりしそうになるが、今回この拠点を訪れたのは仕事のためだ。
 トゥリフィリは目的の倉庫まで足を運ぶと、埒外の力を発揮していく。
「Code:Cocytus starting.――おいでなさい。戦士達、倉庫の中身の運搬をお願いします」
 トゥリフィリが呼び出したのは何体もの氷の戦士達。
 彼らなら力持ちだし疲れ知らずだ。重い資料だろうとどんどん運んでくれるだろう。
 けれどその作業には時間もかかるし、騒音も伴ってしまう。そこでトゥリフィリ本人は――拠点の人々の元へ足を運ぶことにした。

 誰か困っている人はいないだろうか。トゥリフィリがそう考えつつ歩いていけば、見えたのは数名の大人達だ。
 彼らは何かを囲み、腕を組んでうんうんと唸っている。
「こんにちはー……あの、何かお困りでしょうか……?」
「旅の人かい? いやぁ、このラジカセが妙に調子悪くてなぁ」
 住民達が囲んでいたのはラジカセのようだ。テープか何かを再生しているようだが、その音は確かに掠れたり飛んだりしてしまっている。
「それなら……自分が見てみてもいいですか?」
 トゥリフィリは影の中から幾つかの工具を取り出して、住民達の方へ歩み寄る。
 彼らは笑顔で場所を開け、トゥリフィリを輪の中へ招いてくれた。

 ラジカセの不調は大したことがなかったようで、問題のある部分を修復すればすぐに直った。
 それに住民達は大いに喜び、次々にトゥリフィリへと礼を述べる。
「助かったよ、ありがとう! これでまたマザーの歌が聞けるな!」
「喜んでいただけて何よりです……えっと、他にも何かお困りではないですか? 洗濯物だとか子どもの相手とかでもいいんですけども。何かしら……」
 時間はあるし、工具だってまだ出せる。トゥリフィリの申し出に住民達は更に喜び、暫く手伝いの時が続くことになった。
 お礼は倉庫にあった資料で、ということにしておけばお互い気を使うこともない。

「はー……凄く長閑……」
 のんびり拠点の仕事を手伝えば、自然と心もリラックスしてくるもので。
 けれどこの暖かな時間も永遠ではない。いつこの拠点に危機が訪れるかは分からないし、この世界も今は危機の最中だ。
「早くどこもこんな風になれるように頑張っていかないと」
 ぱちん、と頬を叩いて気合を入れて。トゥリフィリは再び青空の下を進んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
マジックオーケストラを発動し、ねこさんの半分には魔法を使って記録媒体を結界術で保護した上で宙に浮かせて運び出してもらうのです。
影の猟兵には人数を活かして数人でなら運べそうな物や細かいものを運び出してもらうのです。

わたしは残り半分のねこさんを連れて挨拶へ。
こんにちはなのです。何かお手伝いできることないですか?
お料理でも洗濯でもお掃除でも、家事は一通りこなせるので。
子供達と遊んでおいで?わかったのです。みんなの事はお任せあれなのですー。

ねこさん達と一緒に子供達の面倒を見るのですー。(そういう意味ではなかったかもです)

ねこさんいっぱいいるので、みんなで触っていいですよ。とってもふわふわですから。


地籠・凌牙
【アドリブ連携歓迎】
力仕事と聞いて。
資料の運び出しだろうが鍬持って畑作業だろうが何でもやるぜ!
とはいえ人数は必要だろ、【指定UC】でハムスター12匹も呼び出してこいつらにも運んでもらおう。
ハムスターたちも俺と同じ【怪力】の持ち主だからでかくても3匹でひとつを共同作業すりゃ運べるハズだ。
俺は運がうっかり作用してもいけねえから機械とかのデリケートな奴じゃねえのを運んでいこう。

終わったらハムスターずに乾燥させておいたかぼちゃの種を……え、それより頭噛みたい?あだだだだ(噛まれる)
子供たちがハムスターに興味を示したら触らせてあげよう。俺の頭以外は噛まないから大丈夫だ。もふもふだぞー。




 拠点の倉庫には貴重な資料がいっぱい。けれど運び出すのは大変だ。
 地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)と七那原・望(封印されし果実・f04836)は倉庫の前で顔を合わせ、改めてその事実を実感していた。
「資料の運び出しだろうが鍬持って畑作業だろうがやってやるつもりだけど……これは人手が必要そうだな」
「そうなのです。皆で力を合わせて頑張るのですー」
 ちょうど良いことに、二人共頼もしい仲間にはアテがあった。
 望はゆるりと白いタクトを振って、凌牙が己の幸運を代償に仲間へと声をかける。
「さぁ、開演なのですよ! ねこさんに影さん、一緒に資料を運ぶのです!」
「よし、頼むぜジャンガリアンズ! お、俺の頭じゃなくて倉庫の中をまず頼む!」
 ぽんっ、とその場に現れたのは無数の白猫の軍勢に影の猟兵達、そして12体のジャンガリアンハムスターズだ。
 どことなく緩い雰囲気にはなっているが、これだけの人手が集まれば荷物もテキパキと運ぶことが出来るだろう。

 それから暫くは、皆で倉庫の中身の運び出しが続いた。
 ねこさん軍団が魔法で記憶媒体を守り、そのままふわふわと外へ運び出す。
 その横では影の猟兵さん達が引っ越し屋さんのように箱詰めされた資料達を持ち出していた。
 ハムスター達も見た目より遥かに力持ちで、三匹一組になってせっせか箱を運んでいる。
 望が仲間達にどんどん指示を出す傍らでは、凌牙が己の不運で荷物を巻き込まないよう頑丈なものを中心に持ち上げていた。
 作業はつつがなく進んでいき、皆も自分達の仕事に慣れてきている。
「……これで倉庫の方は大丈夫かな。結構運び出せてるし」
「はい、なのです。せっかくだから拠点の方にも挨拶に行きませんか? 資料をいただくことにもなるですし」
「そうだな。ちょっと行ってみようか!」
 休憩や息抜きも兼ねて、猟兵達は拠点の方へと歩を進める。
 二人の側にはねこさん達とハムスター達もついてきていた。

 青空の中を進んでいけば、日課に勤しむ人々の姿も見えた。
「こんにちはなのです。何かお手伝いできることないですか? お料理でも洗濯でもお掃除でも、家事は一通りこなせるので、何か出来ればと思うのです」
「俺も力仕事とかなら任せてくれ! 何でもやるぜ!」
「おお、ありがとう。そうだなぁ……ちょうど子供達が昼寝から起きてくる時間だし、一緒に遊んであげてくれないか?」
 住民が指差したのは、少し開けた場所ではしゃぐ子供達の方角だ。
 ここは比較的安全な場所とはいえ、いつどんなトラブルが起きるか分からない。猟兵が子供達を見てくれれば、大人もきっと安心するだろう。
「わかったのです。みんなの事はお任せあれなのですー」
「そういうのも大事だよな。子供の相手も任せてくれ!」
 二人は元気いっぱいの笑顔を浮かべ、動物達と共に子供の元へ向かい始めた。

「みなさん、こんにちはなのです。ねこさん達と一緒に遊ぶのですー」
 先に声をかけたのは望だ。ふわふわねこさん達と共に子供達へと手を振れば、皆興味津々である。
「みんなで触っていいですよ。とってもふわふわですから」
「わぁ! おねえちゃん、ありがとう!」
「私ねこさんって初めて見た! 本で読んだ通りふわふわだ……」
 アポカリプスヘルでは猫も珍しいのだろうか。子供達は楽しげに猫とスキンシップを取り、貴重な一時を楽しんでいる。
 望も皆の輪の中に入りつつ、危ないことをしている子はいないか、猫に不慣れな子が困っていないかを確認していた。
「ねこさんはですねー、こうやって撫でると喜ぶのですよ」
「う、うん……ほんとだ、まったりしてる……」
 ふわふわもふもふ。ねこさんも子供達に囲まれて嬉しそうだ。

 そんな様子の傍らでは、凌牙が皆に乾燥させたかぼちゃの種を配っている。
「こいつら、さっきまで仕事を頑張ってたんだ。だから皆でおやつをあげてくれないか?」
「うん、わかったよお兄ちゃん!」
 子供達は凌牙の真似をして、どんどんハムスター達に種をあげている。
 もぐもぐ食べる様子が微笑ましいのか、皆くすくす笑っていて。その様子に凌牙も微笑みを浮かべようとした瞬間――。
「……あだだだっ! お、俺の頭を噛むんじゃねえ! 皆が種くれてるだろー!」
 ハムスター達は器用に凌牙の頭に上り、小さく歯を立てている。不思議と噛みごこちがいいらしい。
 その様子を見て、ビックリしたり笑ったり。慌てて凌牙は子供達へと視線を送りフォローに入った。
「み、皆は大丈夫だからな! こいつらが噛むのは俺の頭だけだから!」
 そんなトラブルはありつつも、なんだかんだで平和な時間が流れていく。

 資料の運び出しは順調で、子供達もすっかり猟兵達に懐いている。
 こんな穏やかな時間がずっと続けばいいのに、と思うけれど今は戦争の最中だ。
 いつかきっと、本当にこんな平穏が得られますように。そう信じて、猟兵達は穏やかな時を過ごしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
“死は二人を別つ。でも愛は永遠⎯⎯”
なんだかステキな歌
ウタヒメのマザーはこの歌を唄う時一体どんな想いだったんだろ
ホントにセカイの終焉を祈ってたんだ?
セカイが終わっちゃえば
歌も止まっちゃうのに

【コンピュータに接続しました。データの抽出を開始します】
大切そーな資料だけでいーからなマザー
【保護されたデータのみを選択しました】
うんうん
らぶのマザーはお歌は唄わないなん
きっと別人のん

その間らぶはお外で皆とお喋り
野菜を作って楽しそー
らぶもお手伝いできるかなんな?
皆のステキな笑顔を見てると心が癒やされちゃう

そーだ!
最後にみんなのユメってなーに?
良かったららぶに教えて
だってらぶはね
ユメを叶えるショーニンなんな




 傍らに置かれたラジカセから、響くのは初めて聞く歌。
 そのメロディと歌声がラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)の耳を楽しませてくれていた。
 死は二人を別つ。でも愛は永遠――歌詞のテーマも歌姫の研究内容に沿っているらしい。
(なんだかステキな歌。ウタヒメのマザーはこの歌を唄う時一体どんな想いだったんだろ)
 巡り巡って過去と化した彼女は、本当に世界の終焉を祈っていたのだろうか。
「……セカイが終わっちゃえば歌も止まっちゃうのに」
 ぎゅっとタブレットを握りしめ、ラブリーは目的の倉庫を目指す。ウタヒメの足取りを探すために。

 倉庫内部の運搬作業は続いているが、どうしても大きなコンピュータは後回しになっているようだ。
 ラブリーはそのうちの一台に目をつけて、ビッグマザーの端末を起動する。
「マザー、このコンピュータのデータを持って行って欲しいのん」
『了解しました。コンピュータに接続しました。データの抽出を開始します』
「大切そーな資料だけでいーからなマザー」
『保護されたデータのみを選択しました』
 時間はかかるようだが、必要そうなものはしっかり確保できそうだ。
 頑張って働くマザーを眺め、ラブリーは小さく頷く。相も変わらず、外からは歌姫の歌が聞こえてきていた。
「……らぶのマザーはお歌は唄わないなん。きっと別人のん」
 端末を邪魔にならない位置に移して、残り時間を確認。待ち時間も有効活用してこそのショーニンだ、ラブリーは意気揚々と倉庫の外へと足を運ぶ。

 倉庫の近くには大きな畑があり、数人の住民達が農作業に勤しんでいるようだ。
 大変な作業をしているのに皆イキイキしている。ラブリーも彼らの輪に入るべく、畑へと近づいていく。
「らぶもお手伝いできるかなんな?」
「ああ、ありがとう。それじゃあ水やりを手伝ってくれるかな。天気が良い分、水もしっかりあげないとだし」
「わかったのん」
 気のいい住民達の笑顔に囲まれると、なんだか自分も元気になるようだ。
 慣れない作業は大変だけど、ラブリーも皆と一緒に暫しの時を過ごしていく。

 仕事がひと段落する頃には、マザーの作業も終わる頃合いになっていた。
「そーだ! 最後にみんなのユメってなーに? 良かったららぶに教えて」
「夢? どうして?」
「だってらぶはね、ユメを叶えるショーニンなんな。いつかみんなのユメを叶えるお手伝いもしたいのん」
 その言葉に住民達は楽しそうに頷いて、そして言葉を紡ぐ。
「ここの野菜を他の拠点にも……いや、それだけじゃない。レストランなんかを作って、皆に振舞えたらなって思うよ」
「ステキな夢なん。レストランができたら、らぶにも宣伝させてね」
 この世界にもまだまだユメがある。それが何よりうれしくて。
 ラブリーは住民達に別れを告げて、マザーを迎えに行く。
 最後の挨拶はさよならじゃなくて、またね、だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
佐藤くん(f12005)と合同で

(記憶媒体を眺めて)
うわーなかなか壮観だ
これを壊せっていうならまだしも、壊さず運べって言われると夏報さん一人じゃお手上げだな
身体能力は普通そのものだからね
佐藤くんのほうが力強い……

えっ、救急車乗せてくれるの!?
佐藤くんの救急車カッコいいと思ってたんだよなー

などと言いつつマッピングを担当するよ
まずは拠点をさっさか歩き回って情報収集
救急車の通れる幅がある通路、乗りつけられそうな場所、運搬に使えそうな台車とかの位置を把握
【切って貼って瞬いて】
今まで『視』てきたものを繋ぎ合わせて、巨大な地図を念写する

あとは救急車に乗せてもらって、助手席でナビかな
安全運転、信頼してるよっ


佐藤・和鏡子
臥待・夏報(f15753)さんと合同です。
夏報さんを乗せるので救急車は事前に車内清掃や洗車します。
道案内などは夏報さんに任せて私は積み込みや運転に専念します。
現地の地理に明るくないので夏報さんがいて助かりました。
拠点の人たちに医薬品の提供や現地の医師の手伝いなど、看護用モデルとして何か協力できないかやってみます。
ガジェットショータイムで作ったトレーラーを救急車に接続して記憶媒体を大量に積み込んで運び出します。
運ぶ際に壊さないように大切に持って運んだり、運転する際は急発進・急ブレーキなどの急な操作をしないように注意します。
重量のある記憶媒体も機械(私と救急車)の力を使えば簡単に運べますから。




「うわーなかなか壮観だ」
 倉庫の中を覗き込み、臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)が呟いたのはそんな素直な一言だ。
 これらを全部破壊しろ、というなら簡単だが、今回の依頼の趣旨はその逆。壊さず運べって言われると自分ひとりじゃお手上げで。
 夏報はUDCエージェントだが、得意とするのは肉体労働ではない。でも今日は心配しなくても大丈夫だ。
「佐藤くんと一緒で安心したよ。君の方が力強いからね……」
「ありがとうございます。私も夏報さんが一緒で心強いです、現地の地理には疎いですし……」
 返事は倉庫の傍に駐車された年代物の救急車の中から響いてくる。
 見れば窓から顔を出した佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)が、夏報へ笑顔を向けていた。
「もうすぐ車内清掃と洗車が終わりますから、もう少し待っていて下さいね」
「お疲れ様だよ……ん、車内清掃?」
「はい。夏報さんも一緒に乗りますから、しっかりしておかないと、と思いまして……」
 その言葉に夏報はぱぁっと笑みを浮かべる。まさかの申し出が嬉しいのだ。
「えっ、救急車乗せてくれるの!? 佐藤くんの救急車カッコいいと思ってたんだよなー」
「そう言ってもらえると嬉しいです。一緒にお仕事、頑張りましょうね」
「うん、頑張ろう。まずは拠点の方、かな?」
 和鏡子の作業が終わる頃を見計らい、二人で一緒に拠点の方向へ進んでいって。
 夏報が向かうのは帰路にあたる通りの方で、和鏡子が向かうのは人々の生活圏。
 またあとで、と声をかけて二人はそれぞれ目的地へと向かっていく。

 和鏡子は住民達の集まりへと顔を出し、丁寧に挨拶を行うことにしていた。
「こんにちは。倉庫の荷物を頂きに来まして……代わりにお困りのことがあれば力になりたいな、と」
 そう言いつつ和鏡子が取り出すのは救急箱。中には様々な医療品や必要な道具が詰められている。
「もし必要なものがあれば提供できればと思います。医療の心得もありますので、何かあれば申し付けてくださいね」
「わぁ、ありがとう。凄く助かるよ……!」
 ここは平和な拠点とはいえ、生活物資はいつ無くなるか分からない。和鏡子が提供する道具や治療は、住民達にとっても大変ありがたいものだっただろう。
 ある程度そちらの仕事が終わったのなら、今度は積み込みの方だ。
 和鏡子は倉庫の前まで戻ると、ぱんぱん、と小さく手を叩く。
 その呼びかけに応じて現れたのは――立派なトレーラー型のガジェットだ。
 トレーラーと救急車を結び付ければ準備も万端。和鏡子は倉庫の中に足を踏み入れ、どんどん荷物を運んでいく。
「よいしょっと……」
 少女らしい見た目とは裏腹に和鏡子はとても力持ちだ。
 大きなコンピュータも頑張ってトレーラーまで積み込めば、救急車まで簡単に運んでいける。
「あと少し……頑張りましょう」
 柔らかな笑みを浮かべつつ、和鏡子の作業はまだまだ続く。

 一方、夏報は拠点の周囲を歩き回っていた。
 何も知らない状態で見れば、訪れた旅人が散歩しているようにも見えるそんな道行き。
 けれど夏報からしてみれば、これも大切なマッピング作業だ。
 ぱちぱちと瞬きと共に周囲の景色を眺め、埒外の力を発揮しようとする直前――ふいに声をかけられた。
 声の方に顔を向ければ、畑から帰ってきたと思しき女性が立っている。
「お姉さん、さっきから色んなところを歩いているようだけど……探し物かしら?」
「探し物……言われてみればそうかも。ちょっとこの辺りを大きな車で通りたくて。進みやすい道とかを教えてもらってもいいかな?」
 自分の目も戦力だが、こういう時は現地住民の声だって大切だ。
 話しかけてきた女性からしばし話を聞いて、感謝と別れを告げて。夏報は再び歩を進めていく。
 その最中に見たあきれ返るほど長閑な光景を、改めて網膜に焼き付ける。
「このくらいかな、よし」
 帰り道になりそうなルートを確認できれば最後の仕上げだ。
 夏報が手元に意識を集中すると、そこには何枚ものポラロイド写真が生み出されていく。そこに映し出されたのは、今まで見た光景だ。
 それらを元の道を同じように組み合わせていけば――完成するのはお手製の地図。
 それをしっかりと握りしめ、夏報も倉庫へと戻っていく。

「佐藤くん、マッピング終わったよ」
「お疲れ様です、夏報さん。ちょうどこちらも積み込みが終わりました」
 猟兵達は再び笑顔を向けあって、帰る準備を進めていく。
 救急車の運転席には和鏡子、助手席には夏報。こんな風にシートで隣り合う経験なんて滅多にないから、不思議と楽しい。
「ナビは夏報さん任せて。安全運転、信頼してるよっ」
「はい、荷物を壊してもいけませんからね。気を付けて進んでいきます。それでは……」
 帰り道は和鏡子の安全運転で快適だ。その隣では夏報が、地図と記憶を頼りに進む道を案内していく。
 二人とも作業は真剣だけど、友達と一緒のドライブは楽しいもので。
 抜けるような青空が、ぐんぐん進む救急車を見守ってくれているようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
実は俺は戦闘と探偵案件以外の事になると
あまり役に立たなかったりする
重要なデータの在処位はUCでわかるが
力も人並みだし…地道に運ぶか

偽神兵器に追加パーツを付け台車に変形
お前も偶には善行しろ

しかし長閑だ
戦いは終わったと錯覚しちまう
…気を引き締めないと

途中泣いてる子供を見かけ
倉庫の中で遊んでたら宝物を無くした?
泣くなって
ついでに探してきてやるから

地味な失せ物探しをしてると不覚にも落ち着く…
よしこれだな
…ん
ふと隅に放置されたロボット掃除機が目につき
懐かしいなこいつ
まだ動くじゃん

何故か子犬のようについてきて
ラジカセの前をうろつく姿が
何かを思い出させる

依頼の礼か…
このロボ使わないなら貰っていいか
ありがとな




「っと、なかなか重いな……」
 抱えた箱を所定の場所へ下ろしつつ、柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は身体に籠めた力を抜く。
 探偵で猟兵でも、今回のような仕事は人並みに頑張るしかない。
 優れた第六感で重要そうな物の場所は分かるけれど、あとはひたすら作業をするしかないだろう。
 しかし人手だけでは限度がある。何か荷台のようなものがあれば……。
「そうだ、コキュートス。お前も偶には善行しろ」
 そこで作り上げたのは、偽神兵器にパーツをくっつけた簡易な荷台だ。元が元だけに造りはしっかりしている。
 そのまま何度か倉庫と集積地点を往復し、資料を運んでいると気持ちもまったりしてしまう。
 けれど戦いは続いているのだ、気を引き締めないと。そうして作業を続けると――探偵というのは、こういう時にも事件に遭遇してしまうものらしい。

 目に入ったのは泣いている子供と、保護者らしき女性だった。
「どうした?」
「そーこで遊んでたら、たからもの、なくしちゃって……」
 子供が指さしたのは何度か出入りしていた倉庫だ。確かに人の気配は感じていたが、猟兵以外に誰かいたとは。
「泣くなって。ついでに探してきてやるから」
「いいんですか? お忙しそうですけれど……」
「別に構わない。すぐに見つけられるだろうから」
 頭を下げる女性の姿をちらりと見遣り、はとりは倉庫へ向かっていく。
 力仕事より地味な失せ物探しをする方が不思議と落ち着く、なんて思いつつ。

 件のブツは簡単に見つけられた。どうやらぬいぐるみだったらしい。
 それを拾い上げようとした瞬間――小さな物音がはとりの耳に入ってきた。
 そこにあったのは、小さなロボット掃除機だ。
「……ん。懐かしいなこいつ、まだ動くじゃん」
 後で拠点の人に教えようか。そう考えつつぬいぐるみを拾い上げ、はとりは倉庫を後にする。
 すると―-その後ろに、何故か先ほどのロボットがついてきていた。
 此方の歩調に合わせてスピードを増減させたかと思えば、マザーの歌が流れるラジカセの周りをくるくるしてみたり。自由なヤツだ。
 その様子に少しだけ目を細め、はとりは子供達の元へと向かう。後ろから響く音も、別に不快じゃなかった。

「探し物はこれか?」
 ぬいぐるみを手渡せば、子供は満面の笑みを返し、女性は何度も頭を下げてきた。
「お兄ちゃんありがとう! これね、ママが作ってくれたんだ!」
「本当にありがとうございます! 何かお礼を差し上げられればいいのですが……」
 女性の申し出に、はとりは小さく唸る。そして視線を後方へ向ければ、例のロボットが変わらずカタカタしていた。
「……あのロボ使わないなら貰っていいか。倉庫にあったやつでな」
「ええ、構いません。きっともう誰のものでもないですから」
「そうか、ありがとな」
 少しだけ笑みを浮かべ、はとりはロボットを抱き上げる。なんだか子犬みたいだな、とふと思った。
 新たな仲間を手にしつつ、またしても一つの事件が解決するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冬原・イロハ
交流もできるんです?
じゃあ

色鉛筆と厚紙を持って子供達の所へ
こんにちは
箱詰めされたものにタグ付けをしたいので、この荷札にですね、お絵かきしてもらおうかなって
星やお日様、音符などの簡単なマークを好きに描いてもらいます
渾身の作もあったり?
私ははさみでチョキン、厚紙をタグの形に切っていきますね
子供達、少しは楽しんでくれるかしら?

お手伝いありがとうございますね
可愛らしいタグがたくさん出来ました♪

それが終わったらお仕事を!
怪力を駆使して運び出しましょう
箱を開けたら、これはケーブルの束、これは名無しのディスクがいっぱい
お手伝い頂いたタグに中身のメモを書いて貼りつけます
何がどこにあるか分かりやすくなったかな




 今回の仕事では、現地住民達と交流をしてもいい。
 それを聞いた冬原・イロハ(戦場の掃除ねこ・f10327)はいそいそと準備をして、拠点の中を歩いていた。
 彼女が探していたのは――遊んでいる子供達だ。
「こんにちは、よければお手伝いを頼めませんか?」
「んー、お手伝いー?」
 子供達はお客さんに興味津々。次々にイロハの元へと集い、様子を伺っているようだ。
 そんな彼ら彼女らへイロハが差し出したのは、たくさんの色鉛筆と厚紙。
「箱詰めされたものにタグ付けをしたいので、この荷札にですね、お絵かきしてもらおうかなって」
「わぁ、楽しそう!」
「色鉛筆きれいだねー」
 お絵描き大会というのは子供にとっても楽しいものなのだろう。皆はきゃっきゃとはしゃぎつつ、次々に厚紙と色鉛筆を手に取っていく。
 描いてもらうのは星やお日様、音符のマークなどの簡単なものを。それでも個性というのは滲み出るから不思議なものだ。
 そんな様子を眺めつつ、イロハも自分の作業に手を付ける。子供達が描いた紙を受け取って、ハサミでチョキンとタグを作り上げるのだ。
 完成した品はどれも可愛らしくて、ついつい見入りそうになってしまう。中には思わぬ渾身の作もあり驚きだ。
「……あら、これは何の絵でしょうか?」
「これね、マザーだよ! すっごく綺麗でお歌が上手な人なのー」
 ニコニコ笑顔でそう告げる子供に、イロハも笑顔を返す。
 今のマザー・コンピュータは凶悪なオブリビオンだ。けれど生前の彼女の歌は、今も人々を癒し続けている。
 そしてそう思う余裕があるということが、この場所が平穏である証拠に他ならないのだから。

 しばらくすれば、たくさんのタグがイロハの手元に集まってくる。
 子供達も完成した品々を眺め、嬉しそうにはしゃいでいた。
「お手伝いありがとうございますね。可愛らしいタグがたくさん出来ました♪」
「こっちも楽しかった! ねこのおねえちゃん、ありがとう!」
 笑顔で別れを告げたなら、今度はお仕事の時間だ。
 件の倉庫にはたくさんの荷物が詰まり、外に運び出される時を待っている。
 ためしにひとつ覗いてみれば、ケーブルの束に名無しのディスク、他にも細々としたものたちがいっぱい。
 それらの名前をタグに書き、箱に付ければ分かりやすい。可愛らしい絵たちが、作業に勤しむ人々を癒してもくれるはずだ。
「これで何がどこにあるか分かりやすくなったかな……頑張って運びましょう!」
 見かけによらない怪力を発揮して、イロハは次々荷物を運んでいく。
 こうした作業の積み重ねが、いつか世界全体の平穏に繋がることを祈りつつ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真月・真白
拠点の方々にはきちんとご挨拶
少ないですが手土産にこの世界に持ち込んで大丈夫な量の物資を

歌姫マザーの『歴史』を調べているんです
(方便ではなく僕個人の話)
棄てなければいけない過去を歴史として記すのが僕の存在意義
時間質量論は彼女の『過去(じんせい)』の一部ですから…
そしてもし許可が下りるのならば彼女の歌の音源データもコピーさせていただけたらと思っています
歌姫としての生きざまもまた、彼女の『歴史(じんせい)』の不可欠な一部分ですから
ラジオの曲に耳を傾けつつ、住人の方に伝わる歌姫のエピソード等も聞けたら嬉しいです(具体的な情報等は不要です)
彼女は歌姫としてどのように生き、そして時間質量論の研究に没頭するに至ったのか。その果てに機械に組み込まれる事になった顛末とは…それらを知った時、フィールドオブナインとしての彼女の真意も見えてくる気がします

運ぶのはUC発動し、運搬道具トラックを再演します
防水や梱包をしっかりして大切に積み込みますね




「こんにちは、僕は旅の者で……此方の拠点に興味があって来させていただきました」
 ぺこりと頭を下げて、そう人々へ挨拶するのは真月・真白(真っ白な頁・f10636)だ。
 幾つかの物資と共に丁寧に挨拶する真白は、すぐに住民達に快く迎えられた。
「君も倉庫のものを取りに来たのかい? 使ってないものばかりだし、好きに持っていって構わないよ」
「ありがとうございます。そちらにも後で行かせてもらいますが……その、少しよろしいでしょうか」
 案内の最中、真白が足を止めたのは穏やかな曲を流すラジカセの前だ。
「僕は歌姫マザーの『歴史』を調べているんです。彼女について、この拠点に来れば何か分かるかなと」
 その言葉に住民達は嬉しそうに笑みを浮かべ、うんうんと頷きを返してきた。
 この拠点が平穏なのは『マザー・コンピュータ』の影響もあるのだろうが、それ抜きにしても歌姫『マザー』は人々に好かれているらしい。
「いいよ、何でも聞いてくれ……といっても俺達もあんまり詳しくは知らないんだがな」
「どんな些細なことでもいいんです。よろしくお願いします」
 そう言いつつ頭を下げる真白の表情は真剣だ。
 彼は拠点を訪れる方便としてではなく、純粋にマザーに興味を持っている。
 嘗ては歌姫として名を馳せ、研究者として成果を残し、そして今は機械と共にオブリビオンと化している――。
 そんな数奇な運命を辿った女性というのは、人々が紡ぐ『物語(じんせい)』を愛する者として非常に興味深いのだ。
 論文を読めば研究の内容は分かるだろう。けれどマザーという女性を知るならば、セントメアリー・ベースを訪れ自分で確かめるのが一番だ。

 改めてラジオの前に腰掛ければ、響いてくる歌声が心地よい。
「あの……良ければ歌の音源データもコピーさせていただけないでしょうか。歌姫としての生きざまもまた、彼女の『歴史(じんせい)』の不可欠な一部分ですから」
「勿論いいよ。君なら悪用したりしないだろうし、好きなだけ聞いてあげてくれ」
「ありがとうございます。それにしても……良い歌ですね」
 データのコピーをしてもらう最中、ゆるりと音楽に身を委ねれば不思議と心も落ち着く気がした。
 それから先も、続いたのはマザーに関する話題ばかりだ。
 住民達が知っているのも古い情報――歌姫として、研究者としてのマザーの活動記録ぐらいではあった。
 それでも彼女について語る住民達は皆楽しそうで。その様子に、真白も小さく笑みを浮かべる。
 歌姫として奏でられるマザーの曲。『時間と質量』というテーマで世界に迫る幾つもの論文。それから先の――今の彼女に至るまで。
 その全てに思いを馳せて、真白が見つめたのはデトロイトの方角だ。
(彼女は歌姫としてどのように生き、時間質量論の研究に没頭するに至ったのか。その果てに機械に組み込まれる事になった顛末とは……少しだけ、見えた気がします)
 無限、永遠――フィールド・オブ・ナインと化した彼女が求めているものは、そのようなものらしいのだが。
 今まで得てきた情報を再確認すれば、より深く理解出来るだろうか。
 そのためには、やはり倉庫の中身を運び出さなければならない。

「お話、ありがとうございました。データも大切にします」
「こちらこそ、色々話せて楽しかったよ。物資もありがとう」
 データをしっかりと受け取って、真白は住民達と別れを告げる。
 そして倉庫へ足を踏み入れれば――見えたのは幾つもの荷物達。既にかなりの量が運ばれているが、もうひと頑張りする必要がありそうだ。
「『過去(おもい)』の、『歴史』の再現を……これで大丈夫かな」
 歴史書から再現したトラックを呼び出せば、用意としては十分だ。
 大切な荷物達をしっかり防水仕様に梱包しつつ、真白は小さく息を吐く。
「帰ったら……この中身も、しっかり読んでみたいですね」
 まだまだ触れられるマザーの『物語(じんせい)』。それを目にすることを楽しみにしつつ、真白は作業を続けるのだった。


 こうして猟兵達は手分けして倉庫の中身を運び出し、『時間質量論』の一端に触れることになった。
 拠点の住民達も猟兵達の手助けを受けて大いに喜んだことだろう。

 そんな猟兵の活躍と人々の営みを、青空が優しく見守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月20日


挿絵イラスト