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アポカリプス・ランページ⑪〜その力を以て

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#アポカリプス・ランページ⑪


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●偽りの神
 頭の中に響く声。
 それは祈り。それは願い。それは償い。
「……煩い……煩い……煩い……!」
 それは痛み。それは悲しみ。それは苦しみ。
「……黙れ……黙れ……黙れ……!」
 頭をかきむしり、男は苦悩する。
「俺は偽物の神。俺はお前達を救えない……」

 だが、人々は彼を神と呼ぶ。

「やめろ!!」

 人には背負いきれない願いという名の業を背負わされ、男は吼える。

「お前達の祈りを消してやる……この音を、消してやる……!!」
 剣を握りしめ、ゆらりと揺れる。
「さもなくば……俺を……」

 ――俺を……殺してくれ……!

●その力を以て
「アイオワ州デモイン。その地を拠点とする『デミウルゴス』への道が開かれましたわ」
 エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)が集まった猟兵達に告げる。
 しかし、どこか顔色が優れない。
 フィールド・オブ・ナインの一人であるデミウルゴスを倒すチャンスである。倒すことが出来れば、戦後のアポカリプスヘルをより一歩平和に近付けることが出来るだろう。
 しばしの沈黙の後、エリルは意を決したように口を開いた。
「デミウルゴスは、あるものを持った者以外の攻撃を、完全無効化する力を有していますわ」
 あるもの。もったいぶったような言い方のエリルであったが、その言動の端々にはためらいが見られた。
 それでも、倒すことを最優先にするのならば……と、エリルが重い口調で言う。
「あるものとは……偽神細胞のこと」

 偽神細胞とは、オブリビオン・ストームを喰らう者、ストームブレイドを生み出す際に移植される細胞として知られている。
 では、ストームブレイド以外は戦うことも出来ないのか?
 そんな疑問が持ち上がった時だった。
「わたくし達は、ソルトレークシティで……手に入れていますわ」

 ――偽神細胞を。

 エリルは重々しい口調で言う。
 現状、猟兵達の手にはその偽神細胞を混ぜた液体、偽神細胞液がある。
 それを注射することで、一時的に『偽神化』する……それがストームブレイド以外の者における、デミウルゴスへの唯一の対抗手段なのだ。
 偽神細胞液は本格的な移植ではないので、長く体内には留まらない。あくまで一時的なものである。
「しかし、偽神細胞の接種は、激しい拒絶反応をもたらしますわ。……命の危険にさらされる可能性すらあるほどに」
 だからこそ、エリルは躊躇った。
 今、これから猟兵達に死のリスクを背負わせ、戦わせようというのだから。

「本来ならば、わたくしが率先してそれを接種すべき……けれど、皆様を送り届ける役目を背負ったわたくしが、それを行うわけにはいかない……」
 苦々しい口調で告げるエリル。
 しかし、やらねばならない。死に瀕したこの世界を、今度こそ救うために。
 覚悟を決めたように、エリルは猟兵達に目を向ける。
「今からわたくしは無責任なことを言いますわ。……皆様、生きて帰ってきてくださまし」
 そして、グリモアが輝き始めた。


G.Y.
 こんにちは。G.Y.です。
 今回はフィールド・オブ・ナインの1体、デミウルゴスとの対決です。

 デミウルゴスは『偽神細胞』を持たない者からの攻撃を一切無効化してしまいます。
 その為、ストームブレイドか、偽神細胞液の注射をすることで『偽神化』した人だけが攻撃を行うことが出来るのですが、その拒絶反応は凄まじいものがあります。
 通常の戦闘だけでなく、拒絶反応との戦いにも気を配る必要があるでしょう。
 プレイングボーナスは、「偽神化」し、デミウルゴスを攻撃する。……となります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『デミウルゴス』

POW   :    デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD   :    偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ   :    デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜刀神・鏡介
自身が救われていないものが、人を救う事なんてできやしない……なんて格好つけても仕方ないけれど
少なくともデミウルゴスには人を救うことはできない
そして、奴を倒す以外の方法で救うこともできないか

自身に偽神細胞液を注射してから、神刀の封印を解く
拒絶反応は偽神細胞が消えないギリギリを見極めて浄化の神気で抑え込む。万全ではないが、なんとか戦える状態だ

この状態で長時間戦い続けるのは厳しいから、俺の使える全力で行く
まずは斬撃波で牽制しながらダッシュで接近してから、奥義【無辺】を使用
敵が振るう大剣を此方の斬撃で迎撃しながら連続攻撃でなんとか押し込んでいき、体勢を崩した所で最後の一太刀を叩き込む



 デミウルゴス。
 ある狂人教団によって生み出され、神として崇められた。
「だが、俺は神じゃない……やめろ、俺に祈るな……!!」
 頭の中に響く、信者達の声。
 助けて、救って、解き放って。
「煩い、五月蠅い、ウルサイ!!!」
 苛立たし気に髪をかきむしるデミウルゴスの姿を見て、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は悲しげにつぶやいた。
「自身が救われていないものが、人を救う事なんてできやしない……なんて格好つけても仕方ないけれど」
 独り言ちながら、手にした偽神細胞液を前に、息を整える。
「少なくともデミウルゴスには人を救うことは出来ない……そして」
 腕に針を刺し、ゆっくりと細胞液を注入する。
「奴を、倒す以外の方法で救うことも出来ないか……くっ……」
 ぐらりと視界が歪むと同時に、内側が燃え上がるように熱くなる。
 震える手で神の刀の封印を解き放ち、浄化の神気を身体に纏う。
「万全ではない……が……なんとか戦える……!」
 ゆっくりと立ち上がり、鏡介はデミウルゴスへ向け、刀を構えた。
 長時間の戦闘は厳しい。であれば、最初から全力を尽くす――。
「はぁっ!!」
 衝撃波を放つと同時に、鏡介が走る。
「……邪魔だ!!」
 デミウルゴスが偽神断罪剣を振り上げて、衝撃波を切り裂く。その間にも鏡介は一気にデミウルゴスへと肉薄し、神刀を振る。
「ぐぅっ!!」
 熱が伝わる。身体に痛みが走る。偽神細胞同士の共鳴とでも言うべきか。理由はわからないが、無敵の身体に確かに傷が入った感覚をデミウルゴスは覚えた。
 だが、動揺はない。やるべきことは、この目の前の存在を消すことに変わりはないのだ。
「……うおぉっ!」
 大剣を振り下ろし、力づくで鏡介を壊そうとするデミウルゴス。だが、それは鏡介も同じこと。
「是は果てなきへと至る剣。即ち――」
 大剣を打ち返し、切っ先を向ける。
「奥義【無辺】」
 壱から捌までの連撃。鏡介の奥義が放たれる。重い大剣を切り払い、腕を裂き、胴を抉る。
 途中で大剣の邪魔があろうと、それごと押し返し、全ての型をデミウルゴスへと叩き込む。
「うぉっ……」
 デミウルゴスが体勢を崩す。その隙こそが、鏡介の狙っていた瞬間。
「終の型……!!」
 一太刀。デミウルゴスの身体を切り裂いて、鮮血が迸る。
「う、ぐ、おおお……!!」
 長らく忘れていた、身体への痛み。デミウルゴスはそれを実感し、血だまりに膝をつくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…っ。これが偽神細胞の拒絶反応…。確かに、長々と闘う訳には…いかなさそうね

…だけど、それならそれで戦い方はある。後先考えず、一気呵成に攻めるまでよ…!

偽神化の反動を事前に付与した肉体改造術式で強引に先延ばしにして受け流し、
「光の精霊結晶」の強烈な閃光で敵の視力を潰し呪詛を纏う大鎌の投擲を行い、
体勢を崩した敵の懐に存在感を消して切り込み一瞬だけ吸血鬼化してUCを発動

…大した無敵ぶりだけど、今ならば届くはず
受けなさい、偽神デミウルゴス。これが私の全力よ…!

血の魔力を溜めた怪力の掌打と同時に生命力を吸収する魔杭を放ち武器改造
敵に突き刺した魔杭から無数の血棘を放ち体内を乱れ撃ち追撃を行う



 デミウルゴス。偽物の神と自称する男には特殊な能力がある。
 偽神細胞を持たない者からの攻撃を無効化する力である。
 それに対抗する方法は、ソルトレークシティで手に入れた偽神細胞液を注入すること。
 だがそれは、激しい拒絶反応との戦いともなってしまう。
「……っ」
 注射液を注入したリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、その苦しみに顔をしかめた。
「これが……偽神細胞の拒絶反応……」
 頭がぐらぐらと揺れ、沸騰するような身体に鈍くも強い痛みが走り始める。
「ぐぅっ……! 確かに、長々と闘うわけには……いかなそうね」
 事前に肉体改造を施したおかげで反動の先延ばしは出来ている筈なのに、それでもこれだけの痛み。普通に戦っていては先に自分が参ってしまうだろう。
「……だけど、それならそれで戦い方はある……!」
 まっすぐにデミウルゴスを見つめ、リーヴァルディは大鎌を握り締めた。

「まずは……!」
 リーヴァルディは光の力を秘めた精霊結晶を取り出すと、間髪入れずにそれを投げつける。
「うぅっ……!?」
 デミウルゴスが小さく呻く。結晶が弾けると同時に、強い閃光が戦場中に広がり敵の眼をくらませたからだ。
 そのほんのわずかな一瞬で構わない。リーヴァルディは大鎌に呪詛を纏わせてそれを投げつけると、一気に駆ける。
「うっ……くっ……!」
 偽神細胞の力を得たリーヴァルディの攻撃は、牽制ですら効果が生まれているようだ。デミウルゴスは大鎌を剣で弾き返すが、纏わりついた呪詛に身体を蝕まれ、僅かに身体を捩る。
「……限定解放」
「何っ……?」
 そんなデミウルゴスのほんの僅か目の前でリーヴァルディの声がした。事実、眼前にはリーヴァルディがいた。しかしそれを感知できなかったのは奪われた視覚や呪詛のせいなのか?
 勿論そうだ。だが、更にリーヴァルディは、その存在感すらも影に溶け込ませていた。三重の策が、デミウルゴスを完全に出し抜いたのだ。
「……大した無敵ぶりだけど、今ならば届くはず」
 リーヴァルディの姿が吸血鬼のそれへと変わってゆく。ほんの一瞬だけ、力を解放し、血の魔力を拳に籠める。
「受けなさい、偽神デミウルゴス。これが私の全力よ……!」
 どぅ、といった鈍い音と共に、デミウルゴスの胸へ掌打が打ち付けられた。
「……刺し貫け、血の聖槍……!」
「ぐっ……あ!!」
 直後、掌より魔の杭が突き出て、デミウルゴスを刺し貫く。だが、それだけでは終わらない。
「乱れ飛べ……!」
 デミウルゴスの体内で、魔杭の周囲にこびりついていたリーヴァルディの血の魔力が無数の棘となって放たれた。
「うっ……ごあぁっ……!」
 口から大量の血を吐き出すデミウルゴス。偽神細胞の力は確かに、無敵の偽神を打ち倒すものであると実感した瞬間である。しかしそれと同時に。
「ぐっ……!!」
 先延ばしにしていた痛みが、リーヴァルディを襲った。彼女もデミウルゴスと同様に、口からつぅ、と血を流す。それは、強烈な拒絶反応が猟兵を蝕んだことを物語っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

藤・美雨
細胞を注射して戦いに向かおう
拒絶反応は想像以上
身体が内側から崩れそう
でも【激痛耐性】には自信があるんだ
無理矢理にでも笑って進もう
負けるもんか
必ず生きて帰ってやるんだ

想いを闘志に、それを気に
無理やりにでも前進し敵に接近するよ
相手の身体に私が触れてしまえば、ユーベルコードが真似されちゃう?
でも……お前には負けられないとか生き抜きたいとか
そういう気持ちはあるのかい?
殺してやる、殺してくれ
そんな想いばかりだろう
闘争心はあるかもしれない
でも意志の力なら……私の方が強いのさ!

痛みを堪え、持てる力を全て発揮
そう長くは戦えないだろ
だからぶちかますなら一撃で!
機械の心臓から迸る電力を【怪力】に変えて殴りぬくよ!



 藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は笑っていた。
 デミウルゴスを相手にするには、偽神細胞液を注射する必要がある。
 しかし、偽神細胞液には、想像を絶するほどの拒絶反応がある。
 デミウルゴスを前にして、美雨もそれを打っていない筈はない。身体がバラバラになるほどの痛みを感じている筈だ。
「でも……」
 美雨は笑っていた。
 無理やりにでも。痛みを押し込めて。
「負けるもんか」
 足を前に出す。腕を振る。そして思いを込める。
「必ず生きて帰ってやるんだ」

「うぅうっ……うおおおっ……!」
 近付いてきた美雨に、デミウルゴスの身体が反応する。ぼこ、ぼこと筋肉が膨れ上がり、美雨の力を取り込もうと身体を変化させてゆく。
「……あれに触れたらユーベルコードが真似されちゃう?」
 美雨は予知で知ったデミウルゴス・セルの力を振り返る。だが、美雨は笑って全身を続けた。
 だって。
「お前には負けられないとか、生き抜きたいとか、そういう気持ちはあるのかい?」
「……な、に、を」
 美雨の問いに、デミウルゴスは理解できないという様子で言葉を返す。
「殺してやる、殺してくれ……そんな想いばかりだろう」
 正解であった。デミウルゴスに生きたいという意思はほとんどない。
 戦い、殺すうことで、頭に響く声を消したいと願うデミウルゴスならば、闘争心はあるだろうが……。
「でも、意志の力なら……」
 どん、と全身にオーラを纏う。闘争心を練って生み出したそのオーラは、生き抜きたいという美雨の意思に反応し、輝きを爆発的に上昇させてゆく。
「私の方が強いのさ!」

 美雨は、既に死んでいる。
 しかし、生きたいという精神は生者よりも遥かに強く、貪欲であった。
 眼前のデミウルゴスの何倍も、何十倍も。

「持てる力を全て出し切る!」
 機械の心臓がバクバクと脈打つ。そこから生まれる電力が迸り、美雨の腕に集中した。
「此処で終わる訳にはいかない、終われない!!」
 全ての力を籠めた拳が、一気に突き出された。
 拳はデミウルゴスの顔面を強かに捉え、激しい衝撃と共にデミウルゴスを吹き飛ばす。
「ぐ、があっ……!!」
「これが、生きたいっていう意思の力さ!」
 痛みに顔が歪みそうになるのを堪えて、美雨は笑うのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・フォーサイス
熱い熱い痛い!身体が燃えるように。でも、諦めない!ハッピーエンド(幸福な死)を!

偽神断罪剣の攻撃をあえて受けて、デミウルゴスくんの偽神細胞を取り込むよ。うぅ......熱いよぉ、痛いよぉ......。

でも、これで理解したよ。ワンダーランドの妄想の雨を降らせ、デミウルゴスくんが望む、神の力から離れた、ありふれた日常の光景の妄想を見せるよ。

さあ、この景色のもとに帰るといいよ。



「熱い熱い熱い!」
 アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)が涙目で叫ぶ。身体をかきむしりたい衝動に駆られ、のたうち回りたい気分ですらある。
 ソルトレークシティで手に入れた偽神細胞液を注入したアリスの身体は、強い拒絶反応に苛まれていた。
「でも、諦めない!」
 この力が眼前のデミウルゴスを倒す為に必要な力なのだと、アリスは奮起する。
「ハッピーエンド(幸福な死)を!」
 死を求めるデミウルゴスに相応しい終わりを与える為に、アリスは立ち向かう。

「死……ね……!!」
 デミウルゴスが大剣を振り上げる。偽神細胞で作られた『偽神断罪剣』である。巨大な剣ながら、それを軽々と振り回し、接近するアリスを迎え撃つ。
「あっ……!」
 刃が、アリスを切り裂いた。アリスの身体に、偽神断罪剣の刃から強毒性の偽神細胞が注ぎ込まれる。
「うぅ……熱いよぉ、痛いよぉ……」
 自身に注入した細胞だけではなく、デミウルゴスからの偽神細胞……2つの細胞からの拒絶反応を受けて、アリスの身体はいよいよバラバラに裂けてしまいそうなほどになっていた。
「うぅ……あぁ……」
「……その声を、消せ……!!」
 デミウルゴスが唸る。目の前の声がこれでやっと一つ消える、その安堵も僅かに含まれていたが、同時に一つ消えたところで変わらない、という諦観の念も押し寄せる。
 どちらにせよ、早く消えろ、と、剣を振り上げた時であった
「……でも」
「……?」
 アリスがデミウルゴスに笑いかけた。
 涙がとめどなく溢れ、ぐしゃぐしゃな表情。それでも必死で笑顔を作って、アリスはデミウルゴスにこう告げた。
「これで理解したよ」
「な、に……」

 ――雨が降った。

 崩れた街並みは無く、穏やかに風が吹いた。
 痛みは無く、頭の中に声が響かない。
 ありふれた日常だ。だが、デミウルゴスはつぅ、と一筋の涙を流す。
「これが、デミウルゴス君の望む世界なんだね」
 デミウルゴスの背で、アリスが笑う。
「……これは……」
「これは、妄想の景色」
 アリスの作り出した、妄想の世界であった。
 降らせた雨が、この光景を見せたのだ。
「さぁ、この景色のもとに帰るといいよ」
 アリスが魔法を放つ。偽神細胞の力を得て、アリスの魔法はデミウルゴスを貫く。
「……!!」
 膝をつき、倒れるデミウルゴス。しかし……。

「違う……」

 デミウルゴスは立ち上がる。そして、妄想を剣で薙いで、アリスに告げる。
「俺は、あの光景には戻れない。そんなことくらい……わかっている」
 悲しき実験体でありながらも、最悪のストームブレイドとして、アポカリプスヘルに災厄をもたらした。そんなデミウルゴスが行ける場所はもう、地獄しかないのだ。
「そっか……残念だね」
 痛みをこらえてアリスが笑う。求めるべき安らぎを拒否し、デミウルゴスは再び猟兵に立ち向かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マリア・ルート
ええ、では望み通り殺してあげる。
デミウルゴス――造物主。その名は『創造』の力使う者として許せないから!

体が焼けそうで、私の身を引き裂いて私の中のフレースヴェルグが今にも飛び出しそうな痛み――『激痛耐性』で耐えるのも手だけど、いっそ解放しちゃえ!

必要最低限の『オーラ防御』と『残像』による回避だけ考えて、【指定UC】で怒りのまま勝負!インファイトで速攻あるのみ!
相手がコピーしてもこれなら真っ向からのぶつかり合いよ!

あまりの痛みに感覚がなくなってくる。でも、痛覚も何もないなら、自分の痛みとか気にせず存分に攻撃できる!

デミウルゴス、あんたは許せない!
ソルトレークで感じた苦しみ、全てぶつけてやる!



「祈りの声が聞こえなくなるまで、俺がお前を殺し尽くしてやる」
 デミウルゴスはそう言った。届けられる祈りの声は、神でない者には苦痛しかない。
 だから、もう一つこうも言った。
「あるいは、俺を殺せ……!」

「ええ、では望み通り殺してあげる」
 マリア・ルート(紅の姫・f15057)がデミウルゴスへと向かって冷たく言い放った。
(「デミウルゴス――造物主」)
 マリアはそのオブリビオンに名付けられた名の意味を思い返す。
「その名は『創造』の力を使う者として許せないから!」

 偽神細胞液を注射し、マリアの身体に強烈な痛みが走る。
「くっ……うぅっ!!」
 身体が焼けそうに熱い。痛みが全身を巡り、彼女の体内の力が暴れ出す。
「ぐぅっ……今にもフレースヴェルグが飛び出しそう……!!」
 マリアの中にある力の一つが、自身の身体を突き破ろうとしている。それを押しとどめることも出来なくはない、しかし。
「この力を……いっそ、ぶつけるわ!」
 マリアはデミウルゴスを睨みつけ、一気に駆ける。
 怒りのままに、その力を爆発させる。オーラでの守りや残像を引き連れながらも、理性は吹き飛ばす。
 それは破壊衝動。フレースヴェルグ。
「ぐっ……うぐぅっ……!!」
 突進してくるマリアに、デミウルゴスの身体が変化する。マリアの力を取り込み、模倣しようというのだ。
 その行動はマリアも理解していた。しかし関係ない。真っ向からぶつかるのみ、とマリアは向かってゆく。
「デミウルゴス! あんたは許さない!」
 もはや全身を蝕む痛みはあまりに強すぎて、肉体を麻痺させていた。
 であれば、これも利用しない手はない。痛みを顧みず、マリアはデミウルゴスへと向かってゆく。
「ソルトレークで感じた苦しみ、全てぶつけてやる!」
「おおおっ!」
 デミウルゴスも変化させた肉体でそれを受け、喰らい付く。
 力をコピーし生み出したフレースヴェルグが、マリアのものと互いに衝突し合う。
「速攻、あるのみぃっ!!」
 力と力がぶつかり合う。超攻撃力同士の衝突に、衝撃波が巻き起こり周囲の地面がひび割れる。土煙が上がる。二つの影がぶつかり合う。
「はぁっ……はぁっ……」
 そして、最後に立っていたのは……マリアであった。
 勝因は怒りの力。それが明暗を分けたのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

カイム・クローバー
死の可能性のある拒絶反応。その状態で無敵の偽神と一戦交えて、生きて帰って来い、か。ハハッ、そうじゃなきゃ面白くねぇ。
困難な依頼ほど、燃えるのさ。さぁ、偽神の面を拝みに行くか!

拒絶反応は内部から焦がされるような熱。内側から炙られてるような痛みと熱。だが、俺は此処に【覚悟】を決めて来てる。アレを止めるならこのぐらいは必要経費さ。
痛みを出さずに口元に浮かべるのはいつもの笑み。
よぉ、旦那。今度は俺と戦ってくれよ?まさか、疲れてる、なんて言わねぇよな?
UCで紫雷の猟犬を召喚。猟犬を援護する形で二丁銃を構えるぜ。
本命は奴に繋がる紫雷の鎖。態勢を崩した奴を【怪力】で引き寄せ、銃を手放し、魔剣で斬り付けるぜ。



「死の可能性がある拒絶反応……」
 カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は注射器を見つめて呟いた。続けて、前方で猟兵達と闘っているデミウルゴスを見やる。
「その状態で、無敵の偽神と一戦交えて、生きて帰ってこい、か」
 無茶苦茶な話だ。誰もがそう思うだろう。
「ハハッ」
 だが、カイムは笑って、注射器を自身の身体に突き刺した。
「そうじゃなきゃ面白くねぇ」
 どくん、と身体の奥から熱が膨れ上がる。直後、身体を内部から炙られ、焦がされるような痛みが広がりはじめた。
「はははっ……!!」
 痛みに顔を歪めながらもカイムは笑い続ける。
「困難な依頼ほど、燃えるのさ……!」
 ざ、と力強く大地を踏みしめて、カイムが叫ぶ。
「さぁ、偽神の面を拝みに行くか!」

 猟兵達の攻撃を受け、デミウルゴスが後退する。
 状況は猟兵有利、偽神細胞液による偽神化は猟兵達を蝕んだが、同時に無敵のデミウルゴスにも十分なほどのダメージを与えていた。
「……はぁっ……はぁっ……!!」
 デミウルゴスが息を荒げる。これだけの負傷は、この身体を得てから初めてだ。体内の偽神細胞が暴れまわり、危険を訴える。
「黙れ……! お前まで俺を……!」
 そんな時であった。
「よぉ旦那」
 二丁拳銃を構え、カイムが飛び出してきたのだ。
「今度は俺と戦ってくれよ。まさか、疲れてる、なんて言わねぇよな?」
 銃弾を撃ち出しつつ冗談めかした口調で挑発するカイム。
「……」
 デミウルゴスは無言のまま、銃弾を剣で弾く。その瞬間、カイムから放たれた紫電の猟犬がデミウルゴスへと喰らい付いた。
「狙った獲物は逃がさねぇ」
 じわりと脂汗が滲む。猟犬を呼び出すだけでも、身体への負担は想像を絶していた。しかし、カイムも既に覚悟は出来ていた。
(「アレを止めるなら……このぐらいは必要経費さ」)
 笑って、猟犬によって繋ぎとめてた紫雷の鎖を掴む。
「……な、にっ」
 ぐん、とデミウルゴスが引っ張られた。銃弾も猟犬も、全ては牽制。
「本命は……こいつだ!」
 引き寄せられるまま、デミウルゴスが宙に舞う。その瞬間を狙い、カイムは魔剣を抜く。
 『神』殺しの魔剣は、偽の神すらも。
「だぁあっ!!」
 切り裂いた。

 デミウルゴスの胴に深い刀傷が刻まれ、鮮血が噴き出す。
「ぐ、おぉ……!!」
 痛みに膝をつき、デミウルゴスの顔がみるみる苦悶の表情に変わってゆく。

 対し、カイムは笑っていた。
 痛みも、苦しみも隠して。生きて帰るという願いを叶えるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レテイシャ・マグナカルタ
救う必要なんざねぇよ、オレも、オレの家族(孤児院の養父と義弟妹達)もお前に救ってもらうつもりなんてねぇよ!

偽神化の影響か、生まれつき体内に保有している膨大な魔力が溢れだして周囲を蒼く染め上げる
角、翼、尻尾が二倍に巨大化、手足の末端からまるで竜のような肉体に変貌し始める
「うらああああああっ!!!!!」
普段の気迫とは全く異なる獣に近い咆哮をあげて敵に殴り掛かる
UCの威力で敵を吹き飛ばすも、コピーされてこちら右半身を吹き飛ばされ、けれど瞬時に魔力で肉体が再生される…がその肉体は蒼い鱗に覆われている異形のもの
(拒絶反応で魔力が暴走し、竜になりかけている)
そのまま殴り合って吹き飛ばして吹き飛ばされて即時再生してを繰り返して完全な竜へと変じかける…が、その寸前にドラゴニックハンドが独りでに右手に装着され、大切な人達の姿が浮かんで…元に戻る
拒絶反応は未だに体を苛むが、もう負けねぇ、オレはヒトの、マグナカルタ孤児院の娘、レテイシャだ!
頭を殴りつけ
「お前も神じゃねぇ、只のヒトだ、もう休ませてやる…休め」



 猟兵達による、決死の攻撃を受けて、デミウルゴスの偽神細胞は崩れつつあった。
 それでも、デミウルゴスの力は強大で、それでもなお剣を構える姿に、隙は見られなかった。
 だが、頭に響く祈りの声はより大きくなり、デミウルゴスは顔を歪めて一人叫ぶ。
「やめろ、やめろ、やめろ……!」
 この声に応えることは出来ない。だが、その声を無視することも出来ない。
「俺は、お前達を救えない……!!」
「救う必要なんざねぇよ」
 そんなデミウルゴスの前に立ったレテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)は、静かに告げた。
「オレも、オレの家族も……お前に救ってもらうつもりなんてねぇよ!」
 思い浮かべるのは、レテイシャが育てられた孤児院の養父や、義弟、義妹達。
 その誰もが、デミウルゴスになど救いを求める筈はない。
 レテイシャは注射器を握り、身体に突き刺す。
「ぐっ……うううっ!!」
 偽神細胞がレテイシャの身体の中で暴れまわる。
 翼がメキメキと音を立てて巨大化してゆく。続けて、角が、尻尾が。レテイシャの体内に秘める膨大な魔力を溢れさせながら形を変えてゆく。
「うぉおおおっ!!」
 手足から蒼い鱗が生えはじめ、爪が鋭く伸びてゆく。
「うらああああああっ!!!!!」
 激しい咆哮と共にデミウルゴスへと突進してゆくレテイシャ。その咆哮は獣のようで、本能のままにデミウルゴスへ拳を突き付ける。
「ぐっ……があああああっ!!」
 その拳を受け止めるべく、デミウルゴスの偽神細胞が激しく蠢き始める。そして肥大化した腕はレテイシャの拳へと向けられ、レテイシャを包むように広がった。
「……うおおおっ!!」
 だが関係ない。レテイシャはそのまま拳を振り抜いて、デミウルゴスを偽神細胞ごと吹き飛ばす。
「が、あっ……」
 だが、先に呻き声を上げたのはレテイシャの方であった。偽神細胞に包まれた右半身が喰われ、失われていたからだ。
「ふー……ふー……!!」
 ぎんとデミウルゴスを睨みつけるレテイシャ。その瞳は血に飢えた獣のようで、右半身が失われようと、その闘志は消えるどころか、さらに燃え上がる。
「うぁあああっ!!」
 レテイシャが咆哮を上げる。同時に、失われた右半身に膨大な魔力が渦巻き、肉体を修復してゆく。
 しかしそれは蒼い鱗で覆われ、人の形では無かった。それは異形。それは竜。レテイシャの秘めた魔力は、偽神細胞による暴走の末、レテイシャを竜へと変貌させようとしていた。
「ごああああっ!!」
 異形の姿へと変わり、さらに爆発力を上げて突っ込んでゆくレテイシャ。デミウルゴスも、レテイシャから奪った力を偽神細胞で再現し、それを迎撃する。
 一発一発が、肉体を崩壊させる程の破壊力。その都度レテイシャの姿は竜へと近付いてゆく。
 最初は腕が、身体が、胴が。そして顔にまで蒼い鱗が覆われはじめると、次第に理性も失われたか、口から出るのは獣のような咆哮ばかり。
「人が人の力を越える時、その姿は人ではなくなる……か」
 姿を変えてゆくレテイシャに、憐れむようなまなざしを向けるデミウルゴス。神を目指し造られ、異形と化した自身と重ねたからだろうか。
「……じゃねえ」
「……?」
 拳を突き出し、レテイシャが呟く。その腕には、気付けば『ドラゴニックハンド』と呼ばれる手甲が装着され、そこに刻まれた刻印が輝いていた。
「一緒に、するんじゃ……ねぇ……!!」
 顔を覆う蒼い鱗がぼろりと剥がれ落ちる。
 それを皮切りに、レテイシャの身体の鱗が剥がれて落ち始める。
 もとの姿へ戻りながらも、殴るその速度は変わらない。いいや、かえってその勢いとエネルギーは増しているように思えた。
「……なに……!」
 デミウルゴスの偽神細胞が吹き飛ばされて霧散する。続く左の拳で、再びデミウルゴスの身体を砕く。
 拒絶反応は未だにレテイシャを蝕んでいた。だが、そんな苦痛を表に出さず、魔力を込めた一発一発を叩き込む。
「……何故、こんな力が……!」
 デミウルゴスはレテイシャに翻弄されながら呟くように言う。
 その問いに応えるようにレテイシャが叫ぶ。
「見えたんだ。俺の大切な人達の姿……!」
 彼女を育てた、義父の顔。妹、弟の顔。全ての大切な人達。
 彼らの声は聞こえない。だが、確かに感じる絆があって。
「オレはヒトの……」
 彼らの願いや、祈りが、レテイシャの力となった。
「マグナカルタ孤児院の娘……レテイシャだ!!!」
「!!!!」
 顔面に、拳が突き刺さる。デミウルゴスは血を吐き出しながら、大きく吹き飛ばされる。

 デミウルゴスは動かなくなった身体で、今受けた拳の力を、ぼんやりと考えていた。
 確かに、レテイシャだけではない誰かの力も混ざっていた。
 祈り……願い……。聞こえていないはずのレテイシャは、それを力に変えた。
 自分とは違う、互いに信じあう心。それが、彼を偽物の神たらしめるものだったのだろうか。
 もし今も聞こえる祈りの声に、応えようとしたのなら、偽の神とはならなかったろうか?
「お前も神じゃねぇ、只のヒトだ。もう休ませてやる」
 レテイシャの言葉に、はっと我に返る。魔力が高まった拳に、デミウルゴスは死を悟る。
「……あぁ……ありがとう……」
 口から出たのは、感謝だった。
「……休め」
 レテイシャの拳は、デミウルゴスの身体を砕き、骸の海へと還すのであった。

 こうして、デミウルゴスは撃破された。
 その他の猟兵達の働きもあり、もう蘇ることもないだろう。
 今度こそ、祈りの声を聞かない静寂の中で、静かに眠れるに違いない。

 そして間もなく、アポカリプス・ランページは終焉を迎える。
 猟兵達は最良の結末を求め、ひた走るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月20日


挿絵イラスト