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アポカリプス・ランページ⑪〜Appeal

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#アポカリプス・ランページ⑪


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●ストームがいつか壊した誰かの――
「……煩い…………煩い……煩……い……!」
 誰も居ない場所で、頭を振るう男は、頭を抱える。
 声がする――願う声が。
 声がする――裁きが下るを懇願する声が。
 声がする――赦しを願う幾人もの重なる声が。
 反芻するように。返答を求めるように。
 願い請い、そして責める。答えよ、されば願い続けよう。
「……俺はァ、造られた偽物の神だ。何故願う俺にどうしろと言うんだ」
 狂った教団の、研究成果。その結晶。
 "最強のストームブレイド"を創る研究はこうして大地に立つ男が発生している時点で、叶っている。
 "無敵の偽神"の称号を男は獲得し、実質神に近い存在感を有した。

 しかし――男の問いかけに囁く声は応じない。
 男に負荷を掛けるように、繰り返し願い、咽び泣いて、泣きつく声を頭に直接刻む。
「……黙れ…………黙れ……黙……れ……!」
 鳴り響く雑音に、偽物の神は、響き渡らせる声を持たない。
 偽物である以上力を持つ人間であるだけの男だ。
 縋る願いが、届き続けるとは一体だれの電波(こころ)だ。
 祈りの声が聞こえなくなるまで、戦い続けるしかない。
 斬撃音、破壊音、絶命する絶叫。
 別の音だけを耳に届かせて、相殺を試みよう。
 聞こえ続けるなら、オブリビオン・ストームのように蹂躙しよう。
「殺し尽くすを念頭に置くが、あるいは……俺を殺してくれ」
 いつまでも響く音が、途絶えるように。
 抱える意味を持たない罪悪感から、――救われるように。

●偽神はやがて偽らざる神へ
「狂ッた教団に造られた男の、悲劇の話をしよう」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は軽く目を伏せる。
「アメリカ西部、高原地域の経済的中心地。通称ソルトレーク。……そこでは秘密裏に"デミウルゴス式偽神細胞"を培養し、増殖させる研究が行われていた」
 研究を重ねて創り上げられたオリジナルが、アイオワ州デモインに現れた。
 寄りにもよって――オブリビオン・ストームを引き連れて。
「なんでも最強のストームブレイド、なんだと。アンタ、"偽神細胞"を知ッてる?偶に猟兵の中にも持ッてる奴がいるな。あれの超高密度集合体最高傑作、とか思ッて貰えたらいいよ」
 人間に移植された偽神の力。過去に潰えた、純粋種。
 ソルトレークでの研究は、デミウルゴス信仰強き研究者たちが第二の存在を仕立て上げようとしたものだ。
 失われたのなら、次世代を創り出そう理論。
 破壊しつくされたアポカリプスヘルで、起こり得そうな狂った行動。
 信仰はときに、行き過ぎた現物を創り出そうとして悲劇を生む。

 ストームブレイドはオブリビオン・ストームを喰らい操る能力を得た者。
「しかしな、男はフィールド・オブ・ナイン第8席『デミウルゴス』。そう単純に偽神として創り出されなかッた……喰らい繰る力を呼び起こした側の男だぞ」
 デミウルゴスはうつろわざるもの。不変だ。変わらない。
 信仰により蘇った神々一員に名を連ねた男だ。
 偽神といえど、神と同じ席を共にする。
「男の思惑は……どうにも読めない。でも分かることは一つ在るぜ?」
 男の顔に、妙にチラつく苦悶の表情。
「デミウルゴスには絶えず何かが聞こえていて、振り払おうとして暴れているように見えるな。隙自体は存在しそうだ」
 黒い嵐を引き連れて、世界を切り裂き、破壊して。
 オブリビオンへと次々に変貌させる。
 野放しにしていては、オブリビオン化は流行病のようにあっという間に広がるだろう。
「……男は無敵。ああ、文字通りの無敵だ。"偽神細胞"を持たない者の攻撃が通らない」
 ストームブレイドしか、喰らい付けない相手……ということはない。
「俺様の手元に、試験管が幾つかある。これは偽神細胞液……まあ、奴らの研究施設が崩壊したんで、少し拝借してきたもんだがこれを服用して、"偽神化"するなら話は別だ」
 一時的に偽神化した場合、ストームブレイドに近い存在へと迫るため傷を与えることが出来るだろう。
「液体嫌だのヒトは液を閉じ込めた飴でもやろう。自身ではなく、武器でいいなら……」
 ……"一時的偽神化を齎す試験管"を、どうしようがお前たちの自由だ。
「ただし、使う場合偽神細胞の接種は激しい拒絶反応があッて、絶命の危機があるんだ」
 短期集中決戦を目指せ。きっと其処に、勝機と終焉が混在するから。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 これは戦争依頼に属する【一章で完結する】依頼となります。

 プレイングボーナス……「偽神化」し、デミウルゴスを攻撃する。

 タテガミのシナリオ上では、『試験管』か『飴(味は想像にお任せ)』を使う系、飲む食べるなどの行為がプレイングで描かれていた場合、偽神化が成される判定とします。
 体内に入れることが、重要です。
 ……身体に怖いものを入れるのが怖い人向けに、グリモア猟兵がOP中になにかいっていたと思いますが『その方法』であッても、可能と予め申しておきます。
 ただ使用箇所のみ有効です。何か超科学反応が起こって形状が『一時的にドラゴン要素を獲得する』かもしれませんが、ご了承の程を。

 デミウルゴスのPOWは、小さな細胞竜が一体発生する感じで想像いただければ。身体から離れた"同一細胞(分離した分身体)"が獲得した力は、デミウルゴス本人にも反映されます。実質小規模、オブリビオンストーム、のような竜のイメージ。
 彼が細胞を使うようなユーベルコードはこのシナリオでは龍属性を得ます。不思議。

 猟兵たちは彼にであったところからシナリオが始まりますので断章は特にありません。猟兵のことは、計画を阻むもの、という認識がありますので真っ先に壊すべきものとして、周囲を破壊しながら攻撃対象として歓迎するでしょう。
 雑音をかき消したいから戦います。

 なるべく頂いたプレイングは採用できればと思いますが、全採用を行えない場合もあるので、ご注意ください。プレイングに問題が無くても採用を行えない場合が存在します。公序良俗に反し過ぎる行動も場合により採用できないことがあります。
 ご留意いただけますと、幸いです。
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第1章 ボス戦 『デミウルゴス』

POW   :    デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD   :    偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ   :    デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イージー・ブロークンハート
わははすげえひでえ顔!辛い顔だ苦しい顔だ泣きたい顔だな〜〜。いろんなのが聴こえてわんわん煩いんだろ〜〜!!
……しんどいよな、わかるよ。オレも予知の時いつもしんどいもん。
つーわけで、いーよ、付き合ってやるよ。
偽神細胞とやらを摂取しちゃおう――試験管の中身をさらっと平らげる。代償は、ほら、意地は砕けずで相殺、肩代わりだ。……うわ超しんどいマジ死にそう。あんた良くこれここまで頑張れたな!?

激痛態勢と覚悟で堪えて、捨て身の一撃と残像で素早くケリつけてやりたいな。
音なんか、聞こえなくなるようにさ。
(アドリブ・協力その他歓迎です!)



●それは普遍的普通の敵との出会い方

 男は苦痛の表情を浮かべていた、と思う。
 ずるずると、足を引きずるように歩き、疲れ切ったような様子が目立った。
 当然、それはオレの客観的な感想で。
 もしかしたら異なるのかも知れない。
 壊す事で安らぎを得る怖いタイプのオブリビオンかも……。
 男が手を動かす度に、操作に応じる黒い竜巻が全てを薙いで壊していく。
 彼こそは、フィールド・オブ・ナインが一体"デミウルゴス"。街だろうが人だろうが瓦礫だろうが何もかも終焉と定めた現時点から過去に捨てていく。
「わははすげぇひでえ顔!」
 鏡見たこと在る?そんな軽めの口調で突然出くわした友人に声を掛けるように。
 酒場の店主に声で掛けるようにイージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)は手を軽くあげて男の視線を奪った。
「辛い顔だ、苦しい顔だ、泣きたい顔だな~~」
 うんうん分かるよオレも、そういうのばかりだからね。数日起きに膝から崩れてしまうよ。不思議なことに、そんな出来事に出会いガチなんだ。
『……雑音が増えたか。俺に話しかけるな』
 苛つくような顔をして。
 次には大きな龍の爪のような剣の柄を握りだす始末。
 喧嘩っ早いな。この人~!?
「あ、もしかして色んな音(声)がたくさん聞こえてる系?耳が良いんだ、へえソイツは大変そうだなあ」
 声を掛けた一つでそんなに苛つかないで、落ち着きなよ。
 廃墟気味のこの環境で、余裕を持って話しかけてる一般人感凄いオレみたいなのに逢える可能性低いよ~?
「いろんなのが聴こえてわんわん煩いんだろ~~!!」
『……煩い』
「つい大声になったけどさ、……しいんどいよな、わかるよ」
 気さくに話していたイージーの突然のトーンダウン。
 デミウルゴスもこれには、何事かと眼を見張る。この間に壊そう、終わらせようとしないのは耳障りな音と主張も内容も異なったからだろう。
 久々に聞いた、――願いでも赦しでもない、"何気ない会話"。
「オレもさあ予知の時いつもしんどいもん。これでもばりばりしちゃってる側なの」
 つーわけで、いーよ。大暴れに付き合うよ。
「付き合ってやるよ、その終わりの道行きを」
『……俺を壊すという話か?止めておけ、お前の刃は届かない』
「ご心配無用!用意は十分しているよ」
 はい、取り出したるは何の変哲もない試験管!ぐいっと摂取しちゃおうね!
 男気、こういう時が一番大事。オレの中でも当然、解ってる。
 さらっと平らげて、じわじわと偽神細胞が暴れだす気配がする。
 代償を求めて暴れだそうとする、――のを、意地は挫けず(イッツ・ノット・イージー)で肩代わりさせる。
 偽神化はするが、一時的な龍化は起こらない……代わりに、びりびりとする感覚は棘でも服用した気分。
「……うわ超しんどいマジ今すぐ死にそう。あんた良くこれここまで頑張れたな!?」
『……』
 呑み込んだ液体が、偽神化を起こす薬の一種だと理解したのか、男はすぐに偽神断罪剣を構えて、イージーへと切り込む。
 素早く硝子剣を抜き、応戦の構えを取るが、強度の違いで亀裂を与えられて、剣から破片が散らばる。
「でも少しの時間なら、なんとか……ほんとしんどいけどずっとこの痛みを?」
『……痛みも、声も、音も、耳鳴りも』
「うわー、誰か愚痴る相手でも造りなよ!」
 がきぃんと激しい音。
 目の前に現れた偽神のさらなる偽物を、壊し終わらせようと振るわれる剣は重力を得たように重かった。
 デミウルゴスの表情もコイツでは駄目だなんて、諦めたような目で。
『創る……?』
「この世界色んな技術で色々生み出してるんだよ知らないのか~~?」
 戦車からバギーから、壊しまくって通り過ぎていく風のようなお前には、馴染みはないか。
 フラスコチャイルドたちひとりでも、傍にいたら違っただろうに。
「もっと広い世界を眺め回れって。今日いちばんの開運スポットだから!」
 雑誌で得た知識を口にしたところで、デミウルゴスは止まらない。
 捨て身の一撃で、かきんと合わさった瞬間、急激に身を屈めて――自慢の元気で男が終わりへ至る為の切欠(片道切符)を腹へと刻む。
 ――素早くケリ、つけてやりたいな。
 ――音なんか、聞こえなくなるように、さ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルドラ・ヴォルテクス
⚫︎アドリブ連携OKです

昏い魂の慟哭だ、どこまで昏い風が哭いている。
その嘆きも哀しみも、全て断ち切る。

【祓う光、アストラ】
限界突破、アストラ最大解放!
アストラの解放で、討滅の意思をオーラとして纏い、攻防一体の形態へと移行する。

チャンドラーエクリプス、弩弓形態、アストラの発射口とシールドとして正面に展開、断罪剣を迎え撃ち、必殺の一閃で終わりにしよう。
断罪剣の威力を上回るには、更なる意思の力を、リミッターを解放、勝利への覚悟と闘争心、救済の祈り……全てを力に変え、デミウルゴス、おまえが求める救いと静寂を、おまえの魂に届けてみせる!


シズホ・トヒソズマ
アドリブ連携歓迎

例え被害者といえど世界を滅ぼした一人なら貴方は加害者
お望み通りに、殺してあげましょう

私は着用者を持たない流しのヒーローマスク
事前にストームキャラバンを訪ねて気の合うストームブレイドの方と交渉
世界の脅威を必ず減らすという約束で着用契約をし戦場へ
これで私は肉体には偽神細胞を持つ状態
攻撃は通る筈

UC発動
サージャバウォックの力を使用
斬竜剣ヴォーパルソードを実体化し装備
此れで斬り結びます

敵が射程等を3倍化したらこちらもヴォーパルソードを巨大化
更にイズンを◆操縦しヴォーパルソードに斬竜剣の名からの斬竜◆呪詛を付与し竜属性への攻撃力を強化
偽神細胞製の剣を切り裂き本体にもそのまま突き刺します



●進め穿て壊せ凌駕しろ

「昏い魂の慟哭だ、どこまで昏い風が哭いている」
 これは決して幻聴ではない。
 嵐を連れて歩く男が、胸を張らないのは苦悶の旋律がずっとずっとが叫ぶから。
 歩き壊し行動を続ける必要など、等にないというのに――。嘆くはルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)。
 彼こそは、オブリビオンストームを見定め滅するもの。
 禍嵐を作り出した側の、創られし男デミウルゴス。破壊者を見つけ、ルドラが判別したのは――約束されし終わりへの奉仕。
「その嘆きも哀しみも、全て断ち切ろう」
『……お前から、聞こえないが。それ以上近づくな、喧しい言葉がもっと、もっと聞こえてきそうだ』
 ルドラがフラスコチャイルドのストームブレイドだと瞬き一つで見て取って。
 デミウルゴスは進路妨害の、掃除へと攻撃姿勢を移していく。
 使い続ける"命"の重さ、ルドラが背負う宿命。
 その果ては、頭に鳴り響く声に恐らく重なるものだから。

「……おやおやぁ~ルドラさんじゃなければいいですか?」
 明るい口調で、暗い雰囲気の戦場に割り込むシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)。
 じゃあ私とか最適ですね、と自己アピールも欠かさない。
「例え被害者といえど、世界を滅ぼした一人なら貴方は既に加害者です」
 反論の余地、無いですよね!
 それから風のうわさ、独り言――聞こえてましたよ。
「お望み通りに、殺してあげましょう」
 猟兵という風が、黒い嵐を吹き払うんですよ。
「ああ、失礼しました。私とは何ぞ、そんな顔ですねいいですよ答えましょう」
 まくしたてる言葉の数々に、デミウルゴスから嫌な顔をされ始めたがシズホはお構いなし。
「私は着用者を持たない流しのヒーローマスク……ふっふっふ」
 当然、この体は偽神細胞を持たない人物の可能性があります。
 いいえ、でも違います。
「ですが"この人"は現地民のストームブレイド、ですから」
 擬似的な偽神化など起こさなくても、ストームキャラバンで約束を取り付けて、此処に来ましたから。
 ――必ず、世界の脅威を減らすと。
 ヒーローマスク故の着用契約を、行った上で此処へ来たシズホ。
「これは、人を救うヒーローの役目というものです!」
『俺は悪……お前たちが正義。いや、そんなものは』
 どうでもいい。
 デミウルゴスは偽神断罪剣を抜く。
 活性化させた剣がみちみちと音を立ててざわめく――まるで竜のうろこでも逆撫でたように。
 急激な威圧感が上昇していく。
 黙れ、黙れ。いいから、黙れ。
 男の考えを反映するように、ばちりばちりと、龍が放つようなオーラを自身と剣に纏う。

「話は終わったか、ならば此処からはじめて、この場にて終えよう――祓う光、アストラ」
 ルドラの解き放たれし力(アストラ)。
 自身の生命を脅かすものだと知りつつ、しかし加減無く限界まで引き出す輝き。
 常に全力で行動し、終焉させる男の取れる討伐を絶対とする意志。
 全てをオーラとして身に纏って、昏いオーラを纏った男とは正反対に白色の輝きが、ルドラを包んだ。
 チャンドラー・エクリプスを手に、その形状は変わっていく。
 偽神兵器は、剣の形から穿ち終わらせる弩弓形態へ。
 アストラの発射口とシールドとして正面に展開。
 ――必殺の一撃を、込めよう。
 ――闘争心、救済の祈り、全てを一つに束ねて力に変えよう。
『力は充填式か。いや、ならばその弾丸が込められる前に壊せばいい……それだけだ』
 剣を振り上げて、勢いよく振り下ろす――がいん、と叩かれた弩弓はやや押されたが壊れるほどではない。
『壊れろ……壊れろ、壊れろ!』
「そんなに壊れそうにないものを、頑張って壊そうとしなくても!さあ此方をどうぞ」
 ご照覧あれ、私シズホの幻影装身(アームドオブリビオン・ミラージュ)。からくり人形をくい、と手繰り寄せて、内側から幻影武装を出現させる。
「人形が吸いし過去の影、我が身に宿りし力となりて、応報を持って因果を制さん!」
 現れたイメージは猟書家サー・ジャバウォック。
 片翼の翼、尾の男だ。
 シズホは斬竜剣ヴォーパルソードを実体化させて握り、構える。
 射程は既に三倍になっている。振り抜かれるだけで、デミウルゴスの剣が届いてしまう。
『過去が過去を食いつぶす。それもまた妨害ならば壊しつくそう、……嵐が通り抜けたように、呆気なく』
 足に力を込めて、デミウルゴスは勢いよく偽神断罪剣を振り抜く。
 偽神など、同じ場所に何体も必要ない。
『龍のオーラを剣の纏ったこの圧力で、体表から崩壊を促そう』
「そこ、まさか波導を使うんです!?……なぁんて、影の力を宿しただけじゃ無いですよ、私」
 宿した力、ユーベルコードを掠めて使う。
 少量だけの再現度だが、猟書家の力を流用するにはこれが精一杯。
 青白き斬竜剣ヴォーパル・ソードを巨大化し、波導を纏って打ち込まんとする刃にオリジナルの要素を組み込む。
 曰く、呪毒生成吸収装填人形『イズン』。
 多様な毒を発生させる『イズン』を使って剣の名称でもある"斬竜"要素を呪詛として爆発させる。
「この剣は、今に限り龍を滅する剣です!力を使う限り貴方はあなた龍属性!」
 呪詛属性を獲得した巨大剣ヴォーパルソードの間合いと、そちらの剣はほぼ同等!
「優位に立った属性が勝ちます!」
 ――偽神細胞製の剣も、"龍属性"……さあ、軋ませて膝を折るのです!
 刺突するように、穿てば、細胞製の剣は脆く崩れる。
 穿った部位を起点に崩れ、デミウルゴスは驚きの表情を隠せない。
 細菌に腐敗侵食されたように呆気なく崩れていくが――剣は即時再生する能力はない。細胞は、細胞なのだ。再構成でき、作り出せる武器――それをシズホは切り捨てて、偽神化した身体をぶん殴るように斬りつけて。
 破壊の嵐が降り注いだデミウルゴスは後ろへ後退を余儀なくされる。
 オブリビオンストームを手招いても、シズホへ差し向けるには間に合わない!スピーディに穿つベストタイミングが生まれた。
 ――ここだ!
 リミッターを更に解除し、力を引き出し込める事をルドラは決意する。
 痛みが胸を叩くが、それどこれころではない。刻一刻と破壊していく使い手を、足止め程度で終えてはならないと叫ぶのだ――身体が。
「デミウルゴス、おまえが求める救いと静寂を、おまえの魂に届けてみせる!」
 声を聞きつけたシズホが飛び退く。目の前に広がる勝利の約束された栄光の道(ストレイト・ロード)は開かれた!
 極光が如き輝きが、一点突破にて放たれる。
 エネルギーはまるで強大な白色のドラゴンのような形をとって、デミウルゴスを食らうように触れた瞬間爆発した。
 竜が踊る、竜が食らう、竜が叫ぶ。
 常人を寄せ付けない、竜殺しの竜(りょうへい)と、哀しみの竜(でみうるごす)。荒ぶる空気は、激しさを増していく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
拒絶反応って痛ェかなァ
わくわくするよなァ

【ゲヘナの紅】の炎が全身を包む
偽神化した今の俺ならそれこそ地獄の炎みてえに燃え滾らせられるかもな
――アハ、やべえ、ちょー痛え
最ッ高に昂っちまいそうだ

大剣を掻い潜り、懐に忍び込んで炎の徒手空拳をお見舞い
心臓がずくずく痛ェわ身体はアホみたいに軽いわ楽しくて仕方ねえ
【激痛耐性】で身体の動きに支障は一切ない
思わず高笑いなんかしたら煩いってガチギレされっかな?

俺の身体は半分以上宿したオウガのモン
今更別の因子が入ったところで死んでなんかやんねーよ
まあそれもあと数年ってトコらしーけど

どっかの死にたがりさんが寿命でもくれねえモンかねえ



●生きてる味

 ――なあ?拒絶反応って痛ェかなァ?
 聞いただけでゾクゾクした。体験できるって?マジ?
 痛みを愛し痛みを欲するジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)にとって、興味は付きない。
 ワクワクが全身を撫でるよう。
 だから、試験管の中身を飲み下すのだって、怖いとは思わなかった。
 どんな痛みが内側で暴れるのかと、そればかりが気持ちを逸らせる。
「わくわくするよなァ、悪魔でも偽神化すりャあ偽魔王ってか?」
 軽口を叩いて。デミウルゴスの反応を期待したが、無言。
 激しい爆風、爆炎に呑まれた後、所々に大きいな負傷を抱えて尚、偽神の細胞が覆い尽くして傷を塞ぐ。
 塞がれた箇所は竜のような鎧を持った。柔くは、見えない。
 トゲトゲしい、竜そのものにいつか至る様相が垣間見えるのだ。
 偽神細胞製の剣を、手に力を集約することで作り出している間に――ジャスパーは、ゲヘナの紅で全身を炎が包んだ。
「なんだ、話しシようぜ?あんたも、あんたもあんたも、全部燃やし尽くシてやるから」
 殺して欲しいんだろ?じゃあ動くなよ、武器の準備をするなよ。
 ――抵抗して痛みを受けいれたいってんなら、止められねェが。
 普段と違い、ゲヘナの炎の超高温は、龍の因子となって暴れて爆ぜる。
 意図せぬ炎の奔流となって、地獄のような熱さをごう、と滾らせた。
 ――アハ、やっべぇ……。
 オウガブラッドとして、扱う炎でもあるはずなのに。
 小さな獣が内側に群がるような、拒絶できない痛みが、始終暴れて回る。体の中だ、飲んだ偽神細胞液のせいだ。答えがわかる故に、ゾクゾクする感覚はピークだ。
 ――ちょー痛ぇ。
 はっ、マジ、最ッ高に高ぶッちまうわ!
 ちろりと覗かせた舌で唇を舐める。
『痛みに耐えて、苦しそうだ。今、楽にしよう』
 偽神化したジャスパーにデミウルゴスは今しがた新しく創り上げた偽神細胞製の大剣から、龍のオーラを爆発的に発生させた。
『首か?背中か?胴体か、聴くだけ無駄だが何処が辛い』
 頭に鳴り響く音よりも、壊す対象の悲鳴のほうが男は気になった。
 どうせ壊すのだ、目の前のそうオルゴール(ジャスパー)は殺せれば、音を止める。
 ではどこだと、問おう。このオルゴールは、壊せば止まる。聴くだけならば、手間にはならない。
『答えないならば、勝手にしろ』
 ずるずると、強毒要素を全面に出した偽神細胞を剣を纏わせて、時に水のように飛ばしてジャスパーの襲撃を開始。
「どこ、どこか……ハハハ、ぜ・ん・ぶ❤」
 びしゃ、びしゃと至るところに張り付いて、溶かす音を耳に聞きながらジャスパーはのらりくらりと掻い潜り、男の間合いの内側へ。
 炎の徒手空拳で、狙う場所は一点。入ってるかなどお構いなしに叩くは左胸。
 ずばああ、と炎が勢いよく焼いた音と叩く音が重なった。ぐらりとバランスを、崩しかけたデミウルゴスだが、細胞が焦げた煙をあげている。
「でも一番はやッぱ、そこ(心臓)。ぐずぐず痛いェわ身体はアホみたいに軽いわ楽しくて仕方がねェ」
 激痛耐性をかなり半端なく身につけるジャスパーにすら、突き抜ける痛み。
 では普段から偽神細胞の痛みと共存するものや、コイツは――考えるだけでニヤりと笑いたくなった。
 ニヤリと上がった口角、あ、ヤベ止めらんねェ。
「ハハハ!マジ、やべえわ!ハハ、アハハハハ!!」
『耳に響く……煩い、黙れ。壊れて消えろ』
 思わず高笑いがでてしまったが、素晴らしい反応速度でのガチギレが返ってきた。
 攻撃速度より、反応が早かった気もする。
 ――身体の痛みより、頭の痛みの方が上?へーーーーえ……。
 デミウルゴスは一撃でも大きな被害をださんと攻撃をやめてなどいない。
 だが、ジャスパーにあしらわれ、気がつくと懐を、何度目かの掌底が叩く。
「俺の身体は半分以上宿したオウガのモン。今更別の因子が多少入ったところで死んでなんかやんねーよ」
 男の胸をゲヘナの紅を宿した手叩く度、痛みを緩和する力を掠め取っている気はする。叩いた分、怒りが上昇しているのもわかる。だから、量は比較して増えている"みえない"なにか。
 ――まあそれもあと数年ってトコらしーけど。
「どっかの死にたがりさんが寿命でもくれねえモンかねえ」
 掠め取った生命力分、手に感触が残っている気がして――吸い込むようにして。
 ジャスパーは悦んで男が"くれたモン"を――呑み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

樹神・桜雪
【WIZ】※絡みとアドリブはご自由に。

事前に偽神細胞液は一気に飲んでおく。
副作用が怖いから速攻しなくちゃ。純粋に力比べといこうか。強そうでわくわくしてきちゃ…つつかないでよ。
…文句と説教なら後で沢山聞くから、安全なとこにいてね。相棒。

さて、どこまで行けるか分からないけれどUCで予め刀は召喚しておく。接近するまでは距離をおきながらUCで攻撃を。近付いて来たらそれに凪ぎ払いやカウンターを織り混ぜて真っ向勝負。
相手のUCが来るならリミットも近いのだし捨て身で攻撃だよ。

…すっごく痛い。お兄さん、ずっとこんな痛みを味わっていたんだね。人形でもこれは、きっついや…。
ちゃんと終わらせよう。痛いのは辛いもの。



●自由の翼をあげよう

 標的から少しだけ離れた場所での会話。
 びり、びり、となにか、内側で暴れる気配。
 呑み込んだのだから、内側の何処と特定するのは難しい。
 ただ、全身が針で突き刺されるような痛み。
 これなら、相棒たちにつつく攻撃の的(まと)になったりする日常は可愛いものとさえ思う樹神・桜雪(己を探すモノ・f01328)。攻撃を立てる"偽神化"という状態になる為とはいえ、――これはなんて無茶な作戦だろう。
「いてっ」
 とす。相棒のシマエナガの、先制攻撃。
「副作用が激しく出る前に、速攻して戻るよ。ボクだって、痛いのは、ほら、……ね?」
 つつつつん。鳴きもせずに突いてくる相棒。
「つつかないでよ、既に文句と説教をたくさん言いたいんだって、わかるよわかる」
 でも待っててよ。だってほら、強い人と純粋な力比べだよ?
 偽りの神化した力を受けた一時的パワーアップ状態のボクが、どこまで追い込めるかとか興味がさあ。
 とすとすとすとすとす。過激さは、増す。
「相棒?」
「……じゅり?」
「大丈夫だから。ちゃんとたくさん、きくから。今は安全な所で羽を休めてて?」
 すぐに戻るから。
「――じゅりりりり(またきみはそういうことをいうんだから……)」
 飛んでいったシマエナガを見送って、視線を下ろせば黒い嵐のような男と目があった。此処まで何人の猟兵と打ち合ったのだろう。
 焦げ目や、怪我したような跡が目立つ。
 ほんとうに、猟兵が行ったものか?疑う怪我も幾つか見受けられた。
 ――自分で腕を千切ったような、……そんなワケないよね。
 死にたいけど死にたい死にたがりなんて、そんな顔には見えないよ。
 遠くからでもよく聞こえる声が、桜雪を認識したようで、語りかけてくる。
『鳥の声……今、この辺りに鳥が居ただろう』
「それが?」
 あちらが猟兵だと認識して壊しに来るなら、良いとも応じよう。
 返答は短いわりに、桜雪の判断はほぼ即決。
 ――すぐ戻ると約束したのだし、さっさと実行!
 ――じゃないとお説教時間が延長されちゃう。
 ぶわああ、と桜雪の周りに霊力を帯びた桜硝子の太刀が浮遊させて、あと数歩でも来るなら穿つと先制して威嚇する。こちらも表情は乏しい方だ、これくらいのほうがいっそ、反応がわかりやすいだろう。
 ――来なくても返答次第で、全方集中砲火だけど。
『祈り、赦し。それとは違うただの雑音――それを連れてきた猟兵。お前は、真っ先に壊すべき』
「……えっ、理不尽じゃない?」
『傍に置いている鳥なら、お前を潰すだけで飛び立つだろう』

 じゅりぃ?と首をかしげるシマエナガが空に見えるよう――。
 ――相棒、そういうとこだよ!

 デミウルゴスは桜雪の臨戦態勢に即座に順応して、強毒オーラを乗せた大剣をぶぉんと振るって地面を叩いた。
 ごごごご、と五条に伸びる衝撃は、強毒オーラを受け継いたさながら偽神竜の爪。
 当たれば毒の餌食、あまり当たるのは得策には思えず――レベル×10本の桜花雪月(オウカセツゲツ)を足場代わりに、剣の機動を飛び跳ねて躱す。
 足場がないなら作ればいい。単純なことだ。
 桜雪はミレナリィドールなのだ、幾分かは標準的体格とは不釣り合いにもともと身体は軽い場合もある。
 そうでなくとも偽神化の影響らしいものか、普段より身体は軽く感じた。
 横に逃げるよりも、跳んで躱した方が速いと思うほどに。
 相手が激しく動くなら、激しく動いて、幾何学模様を描き複雑飛翔するUCの攻撃も、風に煽られた桜吹雪のように機動が読み切れまい。
「その武器相手に、真っ向から打ち合う気はないよ」
 ずだだだだ。偽神断罪剣に一気に奇襲を掛けて、デミウルゴスの意識を一点に集中させて。
『煩い、鳥のように喚くな』
「ひどい。ボクはボクだよ」
 喋りたくなったら喋るし。それだけ。
 レベル分残りの手が空いた太刀を、手の合図で背中側に殺到させる。
「これは、魔を絶つ刃だ。死にたいらしいね、その因果ばっさりやっちゃう?」
『――!?』
 まるで鳥の翼があるような形――『V』の字に斬りつけて、捨て身のアタックは刻んでやった――満足感。
 滴る流血で、赤い翼を得たように暫くは見えるだろう。

 対等に張り合える力、偽神化は凄いな、と思いつつ。
 桜雪は自分の息が乱れているのに気がついた。
 ――あー、やっぱり……すっごい痛い。全身が、すごく。
「お兄さん、ずっとこんな痛みを味わっていたんだね。人形でもこれは、きっついや……」
 ばたりと倒れ込んでしまいたいけれど、ちゃんと撤退してから。
 そこまでは、なんとか足を奮い立たせていよう。
 ――この人はちゃんと終わらせてあげるべき人だね……。
 ――痛いのは辛いもの。
 痛み続けるなんて、耐えられないよ。耐えられて――無いんでしょ?

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
試験管の方で構わない、偽神細胞液を一気に呷る
短期決戦は望む所だ
…この姿は、あまり晒したいものではないからな

ユーベルコード発動、狼獣人の姿へ変じ敵へ接近する
細胞竜の捕食は強化した行動速度によって叩き落すか、回避を試みる
捕食されたら細胞竜が強化される可能性があるが、もしされたとしても多少の被害を覚悟して本体への攻撃を優先したい
拒絶反応の問題がある、時間はかけられない

相手が「声」に気を取られた隙に、爪の一撃や蹴撃を叩き込む
いっそ人の心も残らないほど偽神の力に呑まれてしまっていれば、隙を作る事も苦しむ事も無かったのかもしれない
儘ならないものだと、場違いな感傷すら湧くが…それでも手を抜くつもりは一切無い



●死に餓えた耳を立て

 指差して、選んだのは試験管の方。
 無味無臭だろうが、果物味だろうが、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が構わなかった。
 どうせ疑心化を齎す"薬物"なのには変わらない。
 攻撃を届かせる手段だというなら、躊躇というものがシキにはない。
 ぐい、と一気に飲み込んで、飲んだ側からじわじわと嫌な痛みが肌を刺す。
「……短期決戦だろ、望む所だ」
 ざわり。ざわり。
 少し遠くのオブリビオン・ストームが起こす風ではなく。
 偽神化状態のシキからあふれる偽りの神が如き禍々しい力が風を起こした。
 風貌を変えるのは、ユーベルコード:アンリーシュブラッドのチカラだが――。
「……この姿は、あまり」
 晒したい姿では、ないから――ああ、今日が満月ではないだけ良しとしよう。
 銀の毛並みを持つ狼獣人姿へ。時折ぐるる、と喉の奥が鳴る。
 姿を変えて誤魔化せるものは、何もなく、変わらずずきずき痛む痛みとの共存。
「生き方そのものを否定はしない。創られたのなら、拒否権すら無かったはずだ」
 蘇る、呼びかけに応えた。
 それが、デミウルゴス。お前の落ち度。
 頭に鳴り響く音。誰かの声。
 煩いと掻きむしる頭、手当り次第にオブリビオン・ストームを向かわせてゴミ掃除でもしているあんた。
『……その視線は、なんだ』
 自分が受けた負傷分の捕食――偽神細胞の竜が壊れた瓦礫、等を貪る。到底人が食べられぬもの。しかし硬質で、硬さを得るならば手っ取り早い摂取活動。
「そんな人足り得ないモノで強化して、どうする」
『人なら、目の前に喰われに来た』
「……戯言を」
 発生した細胞竜が、シキの腕にいつの間にか張り付いていて。
 あんぐり開けた口で、噛み付くギリギリ。
 当然、素早くシキは振り払ってやる。
 思い切り腕を振って、細胞竜を瓦礫の山へふっ飛ばした。
『逃げるか、そうか。でも、細胞というモノを甘く見ているようだ』
 シキの視線の先。先程瓦礫にふっ飛ばした細胞竜が居ない……びしゃりと水のように解けて黒い滲みへと変わっていた。
 偽神細胞の拒絶反応より痛くはなかったが――デミウルゴス・セルが行う行為はデミウルゴスへ伝播する。
 ずずず、と黒い細胞が盛り上がり頭上に獣の耳が立つ。
 ずずず、と偽神細胞が尾のような形状を揺らす、"偽狼獣人"。
『喰らおう。止めよう。全てを、――壊そう』
 音の現況全てを止めるため、デミウルゴスがシキに似た姿を取った。
「偽はどこまでいっても偽の神、か」
 鏡でも見ているようだった。しかし一時だ、シキが偽神化している時間より更に短いわずかの時間の変貌。
 ――時間の切り取り。
 ――細胞の急激な酷使。
 ――到底良いことなど起こるまい。
 細胞竜を無視してでも、本体のみを狙うに決めた。
『殺し尽くす事でしか、創られた意味など分からないがな……!』
 偽神の獣と、偽物の獣モドキの素早い殴り合いへ状態はもつれこんだ。射程距離を代償に得た行動速度と攻撃力、握った拳は相手を叩きつける弾丸足り得る。
「意味。そうだなそのまま"人間の言葉を聴く神であればいい"んじゃないか」
『願うな……!』
 瞬間――意識してなかった破壊意識の中に雑念が混入しはじめた。
 デミウルゴスの発した言葉に、頭の中の音が反響する。
 頭を抑えて、足を止めた。ひび割れんばかりに"願う声が鳴り響く"のだ。
「いや、願おう。破壊対象と対等の会話に応じてしまう偽物の神は貴重だろう」
 ずど。シキの爪は、男の肩口を貫き刳り、片腕を千切り捨てた。
 激しくどぼどぼ、と流血――ではなく黒い泥のような細胞液が散らばる。
 ――そのまま液体になって死ぬ事も、あんたは出来ないんだろう。
 儘ならないものだ。
 ――いっそ人の心も残らない程、偽神の力に呑まれた怪物へ至っていれば。
 救われたいとも、死にたいとも願わなかっただろうに。
 壊すだけの兵器。その姿こそ、創り出された本当の姿なのかもな。
 ――始終心を惑わす隙と同居することも、苦しむ事も無かっただろうに。
 ――場違いな感傷すら湧くが。
 腕一本奪った所で死なないのだから、あんたの強さは偽物ではないのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
拒絶反応はともかく、どう使えばいいかは既に龍に叩き込まれている。

偽神細胞の入った試験管を冑の中に呑み込み
UC【黒騎士体現せし竜身】の(「アポカリプス・ランページ⑤〜終幕のドラゴンズハート」のメカドラゴンを模倣した)「偽神化」形態に変身。

青く燃える鉛の翼での【空中戦】。
UCで【武器改造】した両腕から雷撃【属性攻撃】【砲撃】で敵UCの細胞竜を【武器落とし】つつ高速【空中機動】で接敵
敵が此方の能力をコピーしようがそれを上回る変身を繰り返し【限界突破】した戦闘力と創造した武器で畳みかける。
既に命がけだ、今更寿命を惜しむ程腑抜けではない。

その身に刻め。貴様を殺すのは、貴様と同じ力で完全に至った龍の力だ。



●Inheritedドラゴンズハート

 片腕を、落とされたデミウルゴスは、細胞に寄る再生での治癒を試みていた。怪我の部位を治療ではなく創り変えて生やす。
 偽りの神、壊す側の力しか持たぬものの――男にはそれしか無く、それ以外に自分を形作るだろうモノを胸に抱けなかった。
 頭に直接響く音の群れとて、男を救わない。
 神父でさえ逃げ出しそうな夥しい数々だ。嗚咽し、咽び泣き、いずれ誰もが死にたいと懇願するだろう壊れたラジオをデミウルゴスは聞かされ続ける。これならば、オブリビオン・ストームの暴風が壊し尽くす音を耳に入れるほうがまだマシというもの。
『……此処に、拒絶反応まで含まれなければ良いものを』
「拒絶反応はともかく。どう使えばいいかは既に"龍"に叩き込まれている。では当方が教えよう、ヤドリガミの当方が!」
 偽神細胞の入った試験管を冑の中に流れるように呑み込み、準備の第一段階を終える。ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は冷静だ。
 燃える鉛の中に、物質を焚べてやった。
 反応しようがしまいが、"起きる"はずだ。
 拒否反応に苦しんだ"完全体"の、動力(しんぞう)が。
『……なにを』
 囁きのような声だとデミウルゴスは思った。兎に角この鎧のこえは聞き取りにくい――砂嵐の中で、声を掛けられたように。
 怪電波(ジャミング)は"龍"が属性が蠢きだした起床の現れ。
「我が身に龍脈はなく。されど……竜の雄姿は我が魂に刻まれていると言った!」
 黒騎士体現せし竜身(ドローアップディラテーションドラゴン。
 ルパートの鎧を這うように、表面上に禍々しいオーラが発生しだす。
 刺々しい竜が如き属性が、輝ける流動鉛の上に鱗とも取れる部位を形成しだすのだ。
 よく目起こらすなら、オーラの発生源が鎧の内側だと気づく事もできただろう。
 鎧の上に偽神竜の鎧を。
 ――偽神化細胞を浴びた竜の心臓は、鉛に混ざり此処にあり。
 ――活性化せよ。偽神化形態として、再び空を往こう。
『人を止めた生き物か。人を止めさせられた俺と同じか』
「当方は、……騎士。生物か非生物かはどうでもいい事だ」
 青く燃える鉛の翼を広げ、空の優位な空域として座す。
 オブリビオン・ストームを差し向けられようと、刻一刻と翼を覆っていく竜が属性が飛翔速度を上回って飛び退くのみぞ。
『仁王立ち……煩わしいものだ、地面こそ最適な居場所だろう鎧だと、いうのなら!』
 胸を掻きむしるように、偽神細胞から一体の細胞竜を作り出して、空へ向かわせた。
 デミウルゴスから見ても、ルパートから見ても大きさは小竜。
 脅威にはなりますまい。
「しかし、喰らう事が仕事なのだろう?細胞は。では……」
 両腕を覆う龍属性は合わせる事で、龍が口腔の砲門となる。
 大口を開けた竜――あの時の機械竜の顔が重なるようだ――――が砲撃から、放たれるべき属性は熱き鉛に成らず。
 発電するは偽神細胞、ルパート自身でもない。
「暴れまわる竜の先達として、仔竜に負けはしない!」
 雷撃の突撃槍(ランス)を作り出し、迫りくる小竜を翻弄するルパートは、何処までも騎士だった。
 竜が如き爪を形成侵食されていたとしても、空を舞う青い翼の騎士(りゅう)だった。
 喰らいつくのみを攻撃とした細胞竜は、武装としてあまりに不出来。
 噛まれる前に、飛翔速度で翻弄し――背後をとって空から蹴り落とす!
 騎士にあるまじき、状況から、ルパートはめらりと鉛の炎を散らして、そして宣告しよう。
『偽者の、偽物ができるだけだ。何故拒む』
「此方の能力をコピーしようが、当方は構わない」
 構わないと言うルパートだが、男に奪われない心意気(空の支配者)を持続させるため二度、三度の限界を越えた変身を行った。
 普段の身長よりもだいぶ大きな鎧製の鉛龍がデミウルゴスを見下ろしているのだ。
 今、ルパートは――メカドラゴンと同じ末路をすれすれを辿っている。
 原型は人型の鎧で有りながら足や手元は見事に爪の形状を獲得。
 それにバイザーがぎりぎりと竜のオーラに引きずられ、誰も見たことのない新生竜産化が止められない。
 ――これ以上は危険。この先は当方さえ引きずられるだろう。
 ヤドリガミであるからこそ多少の機能不全が起ころうと目を瞑っていたルパートだ。だが、己の崩壊までを挑むつもりは、ない。
「その身に刻め。貴様を殺すのは、貴様と同じ力で完全に至った龍の力だ!」
 雷撃の固定砲台、龍がブレスを放つ砲台(よろい)として立ち塞がろう。
 終わりたい偽りの神よ。
 ――そちらもずっと命掛け。
 ――こちらとて、既に命掛けだ。今更寿命を惜しむ程腑抜けではない!
 ビームとして、最大威力で穿て!ばっさりと、薙ぎ払い一刀にて両断せよ。
 集められる限界までのエネルギーを、龍が竜を殺すエネルギーよ、飛んでゆけ。
 偽神細胞の塊が如き男の身体を、抉る雷槍が通り抜けていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
わたくしにとって、痛みは熱さ。
偽神細胞で活性化した内側の焔が器を焼かんと暴れている。
髪が、指が、仮初に編まれた肉と骨とが灰と化して崩れていく。
そんな痛みを噛み締めながら地面を踏みましょう。

あなたが殴り付けるたび、願いと祈りは増えていく。
だからそれを消すためにあなたは刃を振りかざす。
そうやって世界が滅ぶなんてやりきれないでしょう。
…救われない繰り返しはここ終わりにします。

この身が焼けていくのであれば。
零れ落ちる焔をこそ、加速へと転化いたしましょう。
踏み込みに合わせ爆発を起こし、弾丸となってデミゴウルスを刺し貫きます。

もう何も聞かなくていいんです。
目を閉じれば、あなたの望んだ静寂がやってくる。



●苦悩抱く男

 ――わたくしにとって、痛みは熱さ。
 穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)は事前に施した作用の結果を胸に抱く。
 偽神細胞の拒絶反応が、とんでもなく早かった。
 少しだけ、何事もないかと思ったものだが――そんなことはなかった。
 息を呑む間もなく焔を焚べたかのように、ずっと熱を帯びている。
 ――髪が、指が、形を虚ろにしておりますね。
 ほろほろと、仮初に編まれた身体に綻びを感じた。
 肉と骨とが内側より激しく焼かれ、悲鳴でも上げているのだろう。
 偽物の神の前に、物に宿る神が立つ。
 このことはどれほど意味があるだろう。
 デミウルゴスにとって、ヒトもモノも猟兵に括ってどうせ大差はないのだ。
 ――ならば。ならば。
 痛みを噛み締めて、ここに立たなければならない。
 神楽耶は唇を一度だけ強く食んだ。
「皆、言葉の掛け方は違ったかと思います。しかし」
 フィールド・オブ・ナインが一角、"デミウルゴス"を呼び止めろ。
 このまま路を歩ませ続けても、通らせてもいけない。断じてこの地を踏み続けさせろ。想いは燃える、痛みとともに。
「壊すだけの路は苦行でございましょう。足をお留めになっては?」
『止めた所で、煩い音は終わらない。煩い命も終わらない』
 ならば破壊を行おう。殺意を高め、道を塞いだお前を殺そう。
 ほかの猟兵に切り裂かれ、砕かれた身体は、龍のような偽神細胞の皮一枚――で繋いでいた。
 流血はない。しかし、人の要素は殆どない。二足で歩き、両手で剣を使う。その動作に一つたりとも、ぎこちない動作はなかった。
『そして……お前も相応に、喧しい女だろう』
「……失礼なおかたですね」
 傷つけるような言葉(呪詛)を吐いて、竜神のような足で。
 男は鋭く地面を蹴り龍属性をふんだんに纏った剣を振り上げて殴りかかる。
 物理で壊す事を選んだのだ。龍が強大で凶悪な腕力を持って、殴りかかるような衝撃。受けるは本体、白銀が結ノ太刀。
 威力こそ受けて、刃で流し受け流す。
 寄せては返す波のように、女が姿は形のみではないと知らしめるため、のらりくらりと受け流す。
「あなたの破壊行為は、何を生じさせて居るのでしょう?」
『……』
「苦悶の表情です。受けるているのは全てわたくしで、その表情を浮かべるのは……」
 破壊行為である"殴る(壊す)"を行う度に、頭の中で流れる音は音量を上げているようだった。
 神楽耶の声を聞いていないわけではないだろう。
 しかし、願われる言葉、兼ねて欲しいと祈りの文言。聞きたくないものが、濁流のように溢れてくる。
『……黙れ』
「だから、それを消すためにあなたは刃を振るうのでしょう。わたくし(神刀)には見えます、刃を交えればわかります」
 振るう人物の感情が、どのような感情で刃を振るうのか。
 見て取る色は何処までも闇。光の入る隙間さえない、純度の高過ぎる完璧な黒。
 デミウルゴス、あなたは本当は――自分がすることの無力さに、嘆いてくじけて居るのではないですか?
「そうやって、自己犠牲の上で世界が滅ぶなんてやりきれないでしょう」
 迷いなき破壊の攻撃は、どうしても行動の否定に繋がります。
「……救われない繰り返しは、此処で終わりにします」
『黙れ。戯言に過ぎない。お前もまた、俺を止められない!』
 ぎらんと輝くその目に龍が狂気が宿ったのを見た。最大の一撃が降り注ぐ、この一撃が恐らく最大のチャンス。
 ――この身は刻一刻と、焼けていく。
 はらり、はらり。咲いて色を受ける花びらのように。
 ――零れて焔は落ちてだんだん、軽くなる。
 踏み出しは、偽神化も手伝って恐ろしく軽く身を飛ばした。
 踏み込みに合わせて爆発を起こし、弾丸として跳び構えた冴えた一撃を。


 影追白雨(カゲオイハクウ)。


 振り抜きは風のように、切れ味は爆炎をなぞる烈火が如し。
「……もう何も聴かなくていいんです」
 何度目かの身体が切り捨てられ、別れ墜ちる音がデミウルゴスに届く。
 壊されたとして。偽の神たる身体は簡単には死なない。
 望まぬとも、"形だけは戻ろうとする"。
 絶対死ぬな、宗教的に完成するまで死ぬほど呪詛で塗り固められたような男である。
 胴体がずれて、倒れようとも。意識は、朧。
 目は霞んでも、途絶えない。音は――何よりも明確に頭を叩いた。
「目を閉じれば、あなたの望んだ静寂が……やってきますよ」
 きっと、あなたは猟兵の言葉を信じたりしないのでしょうが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペイン・フィン
こんにちは

自分は、ペイン・フィン、という
指潰しという、拷問具で、怨念喰らい、だよ
負の感情……、苦痛とか、絶望とか、そういうモノを喰らい、力に変える
そういう、存在、だよ

今回は、ね
貴方を、終わらせに来たよ

「偽神細胞液」を注射
そして、コードを、使用
自分の属性を、怨念の力を、反転
浄化の属性へと、変わる

……自分は、貴方がどんな存在だったのか、よく知らない
でも、ね
祈りに押しつぶされ、苦しんだその怨念と恐怖を
造られ、偽物の神として虐げられたその憤怒と憎悪を
救う力を持たず、無力だったその悲哀と絶望を
細胞の拒絶反応の痛みと一緒に
自分が、全部、食べていこう

だから、そう
貴方の痛みは、此処でお仕舞い、だよ

お疲れ様



●翼と連れて逝く

 ずずず、とバラバラの身体がくっつく様子。
 それはとても奇妙で、とても人型の行う行為には見えなかった。
 急激に働かせて、男はそれで、再び立ち上がる為の行動としていた。
「それ、……何度目?」
 ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は尋ねる。
 静かに、事実として問う。
『何がだ』
「ああ、こんにちは。自分は、ペイン・フィン、という、指潰しという、拷問具で、怨念喰らい、だよ」
 少しだけ、ズレた解答を返事として、口を僅かに噤んだ。
『……なにが、いいたい』
 すう、と指差すのは大体胸がある場所。
「負の感情……、苦痛とか、絶望とか、そういうモノを喰らい、力に変える、そういう、存在、だよ」
 死にたいけれど死にたい苦痛。
 聞きたくないと耳をふさいでも、直接響くデミウルゴスの頭に流れ続ける誰かの救済を願う声。
「何度目、っていうのは、そう。細胞を酷使した、回数、かな」
 いくら再生できたとしても、必ず完璧に戻るわけではない。
 そんはずはないのだ。過去、どうしてデミウルゴスは死しているのか。
 細胞を活性化させて、戻して更に凶悪に強さを誇る偽りの神になっていっているだけだ。
『……』
「覚えてない、くらい、ね。成程。……今回は、ね」
 懐を探り、キラリと光る駐車を取り出す。
 ペインの知り合いは、もっと穏便な方法を用意していたけれど。
 此方の方こそ、自分には合っているとさえ思ったのだ。
 ぐさり、と自分に突き刺す。中身は当然"偽神細胞液"だ。此処から偽神化を始める。
「貴方を、終わらせに来たよ――ねえ、あなたは、どんな物語を、歩みたかった?」
 誰かの手で創り出された偽物の神となり、破滅を連れて破壊に準じる呪いの忌み子。
 そんなふうにペインには映る。
 望まなかった結末だろう?誰も救わない破壊の神様だもの。
 終わらせて欲しい、と望むんだろう?
『……俺は、別に…………』
 質問とともにペインの持つ怨念の力を反転させて。
 浄化の属性へと色と在り方を変える。バサバサと袖を揺らしてツバメ型紙飛行機が飛んでいく。
 哀しみに向かって飛ぶ翼。今ココにある終局の破滅感はどこまでも、ダイウルゴスにのみ向く。
「……自分は、貴方がどんな存在だったのか、よく知らない」
『では何故!破壊されろ、猟兵。俺の目的はそれだけだ!』
 失われた片腕を、偽神断罪剣を握る手ごと造り出し巨大な大剣まで細胞を急速に収束させる。
 デミウルゴスの身体は、断たれたり、穿たれたりした場所を偽神細胞で繋いでいる――どこも竜化し、人間要素は垣間見えない。
 龍が腕のように逞しい腕、鉤爪。
 哀しみを強める力は、殺すための力に尖っていて。
 どんどん人間要素を失わせて、偽の神として確立させる。
「その事を、――あなたが、一番、苦痛に思っている、よね」
 男への返答代わりに、向かっていく飛行機はデミウルゴスの龍腕と龍剣等気に留める様子もなく、ズタズタに切り裂く。
 剣が細胞性の剣ならば。腕も剣も同じもので、出来ている。
「……でも、ね。自分が思うに、祈りに押しつぶされて、苦しんだその怨念と恐怖を」
 ――造られ、偽物の神として虐げられたその憤怒と憎悪を。
「救う力を持たず、無力だったその悲哀と絶望を」
 説明する口も、自分を壊すだけの剣先でさえ。
 届かせることは、出来ないだろう?
『……やめろ』
 与えよう。負ではなく、可能性の感情を。
 自分の願いが叶うと僅かでも、デミウルゴス自身が信じてしまったら。
 偽神細胞は、自我崩壊を起こすだろう。摩耗し、疲れ切った活性状態から、真逆の感情を継ぎ足されたら。
 耐えられない。身体が、細胞が、今度こそ悲鳴をあげよう。
 壊れ方は、穏便だが――決して、優しくない"赦し"を此処に与えよう。
 ――細胞の拒絶反応の痛みと一緒に。
 身体に強烈な痛みが、意識さえ揺さぶってくるけれど。
 ――自分が、全部、食べていこう。

 これは読者が見たいのは痛快な物語(ユビツブシデモデキタコト)。
 潰すのは当然指ではなく、今に対しての攻撃。生存。デミウルゴスを偽の神のまま、偽りの神のまま、正しい終わりの輪に戻してしまおう。

「だから、そう」
 男は戦いを諦めた。許されて良いのだと、悟って目を閉じた。
 だから細胞はだんだん男を殺していく。
 活動を止めて、終わるべきだった形にずぶずぶと、液体化して、崩れ落ちていく。
「貴方の痛みは、此処でお仕舞い、だよ」
 ペインに正しい感情の攻撃を受け続け、デミウルゴスはポツリと零すだろう。
『……なんだ、偽の神でも救われていいのか』
「うん」
 満足する、満足していいと思える答えだった。
「お疲れ様」

 その歩みも、音も。
 今日限り、この場で止まる――さあ、誰も邪魔できない静かな眠りを貴方に。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月19日


挿絵イラスト