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アポカリプス・ランページ⑰〜Bring back

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 コロンビア特別区、通称「ワシントンD.C.」。
 コンスティテューション通りのナショナル・モール北側に復元された国立公文書記録管理局の本館「アーカイブス・ワン」の前に、その男は立っていた。
「来たまえ、猟兵の諸君。その類稀なる異端の力を見せて貰おう」
 余裕のある紳士の貫禄。
 上質のスーツに軍服を羽織ったナイスガイは、嘗ては大統領だった事もあるそうだが、今はその肩書をさりげなく語るのみで、葉巻を咥えた口元には綽々とした微笑を浮かべている。
 紫電を迸る鋼鉄の両拳が猟兵を待ち構えるが、直ぐに戦いを挑む事は出来ない。
 その男――『プレシデント』の前には、彼のユーベルコードから作られた「アメリカ合衆国シークレットサービス」や「アメリカ陸軍兵」の戦車部隊が黒叢を成しており、猟兵が大統領へ近付こうとしたなら、彼等は躊躇いなく銃を斉射するし、盾にもなる。
 優れた指揮能力で軍勢を配置した男は、だからこそ余裕の笑みを浮かべて、
「私は『全人類のオブリビオン化』の対象外となった諸君の力を見てみたい。諸君であれば、嘗て世界一を誇った軍勢の総攻撃を乗り越え、大統領と呼ばれた男とも対等に会する事が出来ると思っているよ」
 云って、戦車の砲筒を猟兵に向ける。
 鈍色の筒先は間もなく火を噴き、無数の鉄弾を繰り出すのだった。


「大統領と呼ばれた男を仕留めて来て欲しい」
 冷然と口を開いたのは、枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)。
 モール地区の地図を参照しながらそう告げた帷は、直ぐに今回の依頼の詳細を告げた。
「コンスティテューション・アベニューに降り立った君達は、スカルプチャーガーデンの向かいにある『国立公文書記録管理院』前の道路まで迫る大統領の大軍勢を見るだろう。彼等は世界が崩壊するまで、世界一の軍事力を誇った精鋭だ」
 現在、ワシントンD.C.は街並みだけが完璧に復興されている。
 人までを戻す事は出来なかったようだが、往時の景観を取り戻した「アーカイブス・ワン」の階段を登った柱の部分に『プレシデント』が、その周辺を埋め尽くすように大統領の軍勢が配置されており、猟兵は先ず、この包囲網を突破する必要がある。
 帷は説明を続けて、
「軍勢は優れた察知能力があり、且つプレシデントの指揮によって間もなく先制攻撃を仕掛けて来るから、首魁に辿り着くには対策が必須……」
 プレシデント率いる戦車部隊の弾幕を切り抜け、彼奴を守るセキュリティを掻い潜る。
 幸いにして周辺に民間人は居らず、猟兵に攻撃を仕掛けてくる軍勢も「プレシデントのユーベルコードが創造した戦士」にて、攻撃を躊躇する事は無かろう。
 凄まじい弾幕と警備を切り抜けたなら、機械化した両腕を持つプレシデントとの戦いになるのだが、彼の優れた采配を切り崩した後なら、十分に勝機はあると帷は言う。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、と言うだろう。彼奴を護る軍勢を蹴散らしたなら、此度の勝利は敵の得意を潰した君達のものだ」
 云うや、繊指はぱちんと音を弾いてグリモアを召喚し、
「向こうは我々を随分と特別扱いしてくれている。どうせならVIPらしく、堂々と大統領とやらに会ってくるといい」
 と、間もなく光を溢れさせるのだった。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 このシナリオは、『アポカリプス・ランページ』第十七の戦場、国立公文書記録管理局前で大統領の軍勢と戦う、一章のみで完結するボス戦シナリオ(難易度:やや難)です。

●戦場の情報
 アポカリプスヘル、米国はコロンビア特別区、街並みだけが完璧に復興された無人の「ワシントンD.C.」。
 国立公文書記録管理局(NARA)本館「アーカイブス・ワン」の前にプレジデントが鎮座し、彼に辿り着くにはシークレットサービスや陸軍兵等の「大統領の軍勢」による攻撃を凌ぐ必要があります。

●敵の情報:『プレジデント』(ボス戦)
 「フィールド・オブ・ナイン」の一員で、大統領と呼ばれたこともあるという人物です。
 様々な「大統領の軍勢」を創造し、見事な指揮能力で先制攻撃を仕掛けて来ます。

●プレイングボーナス:『大統領の軍勢による先制攻撃に対処する』
 このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
 これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 団体様は【グループ名】を冒頭に記載願います。
 また、このシナリオに導入の文章はなく、公開後は直ぐにプレイングをお送り頂けます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 ボス戦 『プレジデント・ザ・マスディレクション』

POW   :    プレジデント・アーミー
レベル×1体の【大統領の軍勢】を召喚する。[大統領の軍勢]は【アメリカ】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    プレジデント・セキュリティ
レベル×1体の、【眼球】に1と刻印された戦闘用【アメリカ合衆国シークレットサービス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    アーマード・ディヴィジョン
【かつてのアメリカ軍の最新兵器】で武装した【精鋭アメリカ陸軍兵】の幽霊をレベル×5体乗せた【戦車部隊】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リリスフィア・スターライト
量産型キャバリアのワイルド・サンダーに搭乗して挑むね
向こうも最強の軍勢相手だし
無関係の人間を巻き込むこともないから遠慮はしないよ
装甲は頑丈な方だしプレジデント・アーミーによる
攻撃も耐え凌いでみせるね
装甲だけに頼らず建物などの遮蔽物を利用して被弾は抑えるね
そして向こうに十分な時間を与える前に反撃を仕掛けるよ
ライトニング・ライフルに制圧用の電撃弾を込めて
軍勢が集まった所を狙い撃ちするね
電撃弾を撃ち尽くした後はその場に止まらず
再び建物の裏に隠れるなどしてリロードしてから
再度攻撃を仕掛けるよ

「期待には応えたくなるよね」



 鋼鐵の機械掌を胸元で広げ、余裕の表情で猟兵を招く『プレジデント』。
 嘗て世界一を誇った軍勢を擁し、更に其を自在に操れる男には絶対の自信があったが、コンスティテューション通りに響く鐵機の駆動音には、流石に片眉を持ち上げた。
『……なんだ、あれは』
 佳脣に咥えた葉捲を動かし、碧色の瞳に機影を追う。
 其は道路に駐停車する車を優に超える、体高5mの人型兵器『ワイルド・サンダー』――量産型キャバリアの改造機で、クロムキャバリアの小国家では比較的見慣れた機体だ。
 搭乗者は、リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)。
 最強の軍事力を誇る米軍にも無い機体を駆って登場した佳人は、操縦席から人の気配が無い事を改めて確認すると、鴇色に艶めく佳脣に微咲(えみ)を差した。
「向こうも最強の軍勢だし、民間人を巻き込む事も無いなら、遠慮はしないよ」
 湖水の如く澄める青瞳が凛然を萌した瞬間、モニタいっぱいに赫光火華が閃く。
 尋常ならぬ機体の登場に素早く反應した軍勢が、ワイルド・サンダーの爪先から頭頂部までを一斉に機銃掃射するが、装甲に優れた鐵機を貫く事は出来まい。
 而して操縦席に座ったリリスフィアも落ち着いていよう。
 凄まじい銃聲砲音が鼓膜に滿つ中、佳人は美し金絲雀の聲を囀って、
「装甲は頑丈な方だし、機動力もあるから、これだけの彈幕なら充分に耐え凌げるよ」
 云って西側に移動し、連邦政府庁舎を壁に被彈を抑える。
 銃彈は装甲で禦ぎつつ、戰車による砲撃は射線を結ばぬよう回避して――攻撃によって最適な防禦と回避を選び分けたリリスフィアは、敵軍営が殲滅に動き出したのを好機に、連中が十分な時間を得るより速く攻勢に轉じた。
「ここは彈速重視で、ライトニング・ライフルに制圧用の電撃彈を込めて……」
 白磁の繊指が操縦盤を滑ったのも一瞬。
 凛乎たる星眸(まなざし)はその儘、軍勢が密集する地点を捕捉したリリスフィアは、電撃彈発射――ッ! 紫電を迸發(ほとばし)る冱彈を以て敵方の時間を奪った!
「變化をつけていこう。射角も射線も、タイミングも」
 狙撃後は直ぐに移動し、鐵機の巨影を庁舎に隠してからリロード。
 この再装填速度こそ搭乗者の技術に左右されるが、見事な操縦で時間を縮めた佳人は、大統領軍勢が戰闘体勢を整えるより先、二撃目となる電撃彈を撃ち込んだ!
 俄に浮足立つ軍勢を俯瞰し、彼女は實に落ち着いた聲で云おう。
「――期待には應えたくなるよね」
 男は、猟兵に埒外の能力の披瀝を求めた。
 その期待に應じ、殺伐の異世界で生き抜く力を発揮した。
 目下、透徹と澄める青瞳には、幾許にも喫驚するナイスガイの表情が聢と映っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
宇宙バイクに乗って挑む
相手側に防御を固める時間を与えない為に、常に攻撃を続けて攪乱を試みる

バイクの速度で接近して、射撃やハンドグレネードで攻撃しては一撃離脱で距離を取る
相手が軍なら、こちらは少数の身軽さを活かす
足止めや包囲をする動きを見たらユーベルコードを発動、飛翔能力を得たバイクで空中へ
相手の頭上からバイクブラスターを発射して反撃し、包囲を離脱すると共に軍勢へ損害を与えたい
陸を駆けていたバイクが急に飛べば不意を突けるかもしれない

その隙に、プレジデント本体へ向かう
頭上を取ったらバイクから飛び降りて、護衛が割り込めない近距離から射撃を見舞う
力が見たい、だったか。こんなものではどうだ、プレジデント



 無数の砲筒がキャバリアを追う中、其を阻害する樣に更なる機影が差し入る。
 コンスティテューション・アベニューのアスファルトに銀輪を切りつける宇宙バイク、ハンドルを握るはシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)。
 ギャァンッと鋭く吼えながら駆け來た一陣の風、カスタムバイク・レラのシルエットを捉えたプレジデントは、身を低く人車一体となって疾る操舵手に烱眼を結んだ。
『バイクか。中々色気のある姿影(フォルム)じゃないか』
「少なくとも戰車よりはな」
 大統領に謁見するにドレスコードは無し。
 シキが猛スピードにジャケットを棚引かせて迫れば、プレジデントは直ぐに鋼鐵の機械掌を翻し、軍勢を分けて彼を追わせるが、レラ専用にカスタムされたウェポンエンジンはシキの操縦によって最高のパフォーマンスを発揮し、続々と迫る銃彈砲撃をテールランプの帯に流すのみ。
 凄まじい爆風と焦熱が車体を煽るが、操縦者も落ち着いたもの。
「防禦を固める時間を與えない。常に攻撃して攪亂する」
 シキは騎乗戰用に最適化したブラスターを展開して迫撃に出ると同時、片手に操舵を、片手に小型ハンドグレネードを持ち、操縦と投擲を巧みに並行して軍勢を搖さぶった。
 單機故の身輕な動きは、手数に勝る敵方と十分に渡り合えよう。
『實に見事なバイク捌きだが、實に小賢しい』
 小型ながら高破壊力を誇る手榴彈に軍勢を亂された紳士が、佳脣に咥えた葉捲を動かす――其處に次なる策戰指示を読んだシキは、【ファイタージェットシステム】を起動し、防護用ビームシールドの出力全開、自身と愛騎レラを閃爍の光で覆った。
「囲繞(かこ)まれる前に、先手を打たせて貰う」
 云うや舗路を摑んでいた銀輪は宙へ、晴朗なる空へと飛翔――!
 最高速度11,300km/h、マッハ9を優に超える速度で空気の層を滑ッた!
『ッッ、な……に……!!』
 プレジデントにとってバイクは地を駆るものだが、抑もレラは銀河を駆ける鐵騎。
 本領を発揮した宇宙バイクの勇姿に不意を衝かれたか、プレジデントの采配が僅かにも遅れた瞬間、シキは高高度からブラスターを斉射した!
『ッ、ッッ……予想外の角度で射線を變えてきたか……!』
 男の眼路いっぱいに猛風が吹き荒ぶ。爆轟が吼え哮る。
 その瞬間にバイクから飛び降りたシキは、護衛すら割り込めぬ至近距離に降り立つや、ホルスターから『ハンドガン・シロガネ』を抜き、喫驚する男の額に突き付けた。
「力が見たい、だったか。こんなものではどうだ、プレジデント」
 而して返答は必要ない。
 鋭い銃聲が「アーカイブス・Ⅰ」前に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
随分と熱烈歓迎してくれるじゃねぇか
にしても、対象外、対象外うるせぇっての

先制対応
見切りと残像で回避
全て避けるのは難しいだろうから
急所狙いを重点的に回避してく
少なくとも、急所に当たらなけりゃ動けるだろ
一応、オーラ防御とジャストガードも併用してく

先制をやり過ごしたら拘束術で反撃
フェイントを交ぜたダッシュで接近して
射程内の全ての敵を鎖で攻撃と拘束
人も機械も関係なく
鎧砕きと鎧無視攻撃、生命力吸収を乗せた華焔刀でなぎ払い
進路を拓いたら、大統領にも拘束術を使用

俺らを対象外にしてる段階で『全人類』じゃないってコト
判ってなかった辺りがあんたの底だよ、大統領殿?

華焔刀に斬撃波もついでに乗せて渾身の一撃を見舞う



『ッッ、矢張り……諸君は「全人類のオブリビオン化」の対象外と成り得る……ッ!』
 喫驚と同時に微笑を浮かべ、須臾に彈かれた銃鉛を眼尻の際へ流す。
 ボクシングのフットワークで限々銃撃を逃れた『プレジデント』は、疾風を巻き起して猟兵を遠ざけるが、その表情は更なる猛撃と埒外の力を待ち侘びるかのよう。
 その余風に翠緑の艶髪を搖らした篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、我が影を捉えるなり銃口と砲筒を差し向ける大統領直轄部隊に、小気味佳い艶然(えみ)を返した。
「随分と熱烈に歓迎してくれるじゃねぇか。どうも俺達はVIPに違いない、と」
 凡そ人に向けられるとは思えぬ火力を前にも、倫太郎は堂々としていよう。
 彼は間もなく閃光火花を散らす軍勢に對して側面へ爪先を蹴り、無数に注がれる砲撃を時計回りに回避していく。
「少なくとも急所に当たらなけりゃ動けるだろ。それでいい」
 鋭い彈道が頬を掠め、渦を成す高熱が肌膚を灼くが、創痍や損耗は覚悟の上。
 己に注がれる筒先から軌跡を見切り、間隙なく繰り出る持続射撃に残像を撃たせながら被彈を輕減した倫太郎は、其を悠然と眺める大統領の賞讃を素っ気なく払った。
『諸君はオブリビオン化の対象外。超克(オーバーロード)に至る道を知るべき存在だ』
「オーバーロード云々は兎も角、対象外、対象外うるせぇっての」
 迸る闘志をオーラと纏いつつ、華焔刀 [ 凪 ]の超速旋回を以て鐵鉛を彈いた勇士は、猛然と烟る黑煙の中から姿影を暴くや、胸元から力強く五指を突き出した。
「人だろうと機械だろうと。平等に縛めをくれてやる」
 総てはユーベルコードが創造した軍勢にて、如何に形を變えようと関係無い。
 敵方が敷いた彈幕を使って接近した倫太郎は、半径113m圏内に配置された兵力の全てを不可視の縛鎖に繋ぎ止めると、連環之計――その機動力を奪って拘束した!
「俺は特別だとか対象外だとかで贔屓はしないぜ」
 言に示すや、華焔刀を振り被って全てを薙ぎ払う。
 防護服も鋼鐵の装甲も等しく一太刀で斬り伏せた彼は、煙を上げながら沈默する戰車を伝ってプレジデントへ、彼も「平等に」拘束した――!
『ッ、如何云う事だ……機械化した剛腕が……何故動かない……!』
 剛力も竜巻も起こせぬ鐵の腕を胸元で止められたプレジデントは、予期せぬ動搖の中、倫太郎の涼しげな佳聲を聽くしかなかろう。
「俺ら猟兵を対象外にしてる段階で、あんたの野望が『全人類』に及ぶ代物じゃなかったってコト。判ってなかった辺りがあんたの底だよ、大統領殿?」
『ッ、ッッぉぉぉおおお――!!』
 底が見えた、と。
 渾身の力で華焔刀を一閃ッ、弧月を描く斬撃波がプレジデントに嚙み付いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

陰海月、霹靂。決して出てこないように。
先制攻撃でテロリスト…同じ穴の狢といえますけどー。攻撃に対して、四天霊障による限界突破な結界術を構築してダッシュで駆け抜ける。
なお、指定UC(攻撃力重視)発動可能になったら、逆に攻撃を受けることにします。
ええ、陰海月と霹靂が、『馬県義透』を認識してますのでねー?

再構築しますし、攻撃は最大の防御…というわけで。風属性纏わせた漆黒風を貫通つきで投擲していきますねー。

負けるわけにはいかないんですよー。それこそ、私たちの誓いでもあるんですから。
生きるものを守る、というね。



『ずゥ……ッ! 矢張り諸君からは超克(オーバーロード)に至る道が見える……!』
 弧月を描く斬撃波を、拘束された両腕を盾にして受けるプレジデント。
 猟兵の進入を待ち受け、彼等を品定めするかのように冱撃を受け止める狂気を前にした馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、爆炎と猛風、そして轟音に滿つコンスティテューション・アベニューに歩みを進めた。
「――陰海月、霹靂。決して出てこないように」
 閃光火花に疆を搖らす影に添える、悠然としたハイ・バリトン。
 聲の主は、『疾き者』――悪霊を複合する彼の中で、唯一の忍者たる外邨・義紘。
 軍勢が巻き起こす砲煙彈雨を飄然と進んだ男は、何の變哲もない棒手裏剣『漆黒風』を手にするや、草履の鼻緒を強く踏み込めた。
「……同じ穴の狢といえますけどねー」
 科白は緩々と、蓋し身は颯の如く。
 凄まじい彈幕の中を駆けた黑影も、間もなく大統領直轄軍のスコープに捕捉されるが、四人格の無念によって構築された『四天霊障』が、強固な結界を敷いて被彈を禦ぐので、義紘の颯の如き迅速が止められる事は無い。
 而して国立公文書記録管理局の敷地に入った義紘は、ここが頃合いかと四悪霊・『戒』――我が身を戒めていた呪詛を解き放ち、同時に敵の砲撃を“受ける”事にした。
 これには集中砲火を指示していたプレジデントが喫驚こう。
『命中を得るようになった……攻撃を甘んじているのか……?』
「ええ、陰海月と霹靂が、『馬県義透』を認識してますのでねー?」
 其こそが今の行動の答えだ。
 馬県義透は四人で一人の複合型悪霊で、生前は戰友だった者達の集合体。
 そして当初、己の影に潜むよう言を添えていたミズクラゲの『陰海月』とヒポグリフの『霹靂』こそが、四人の名前を足して割った『馬県義透』を認識する限り、かの男は攻撃を受ける度に身体を再構築し、解放を得た呪詛を以て攻撃力を増していく。
 身に纏う昏闇は黑々としているが、彼は變わらず暢達(のんびり)と聲を滑らせ、
「攻撃は最大の防御……というわけで。投げていきますねー」
 硬質の指で紡いだ風を『漆黒風』に乗せ、軍勢へ向けて投擲する。
 其は最早、鋭利な鐵の棒に非ず。最新鋭の重戰車も防護服も穿ち貫く埒外の兵器にて、命中を得るやユーベルコードで創造された最強の部隊を次々と紫黑の狭霧に變えた。
 而して義透は、首魁を前にしても飄々としていよう。
「……負けるわけにはいかないんですよー。それこそ、私たちの誓いでもあるんですから。生きるものを守る、というね」
 その爲には骨身を惜しまず。
 四悪霊の総意が、嘗て世界を統べた軍事・警察力の結晶を組み伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
1:多数に持ち込むのは有効な戦術
さてどうやって牙城を崩すか

鞄の≪モモ≫に声をかけ本来の成竜体に戻そう
モモ、お前は空から攪乱だ
急降下・旋回後に炎のブレスで牽制を
危険を感じたら[竜脈を使い]大地を変動させて敵の照準をブレさせろ

俺は前面に[結界術]の障壁を斜めに張り銃弾や炎を空へ逃がして行く
モモのお蔭で敵集団は意識全てを俺に向けられない筈
ある程度近づいたら[ヘヴィクロスボウ]からワイヤーを射出、最前列の奴らに巻き付け[ジャンプ]
滞空中に己の炎を≪冥府の槍≫に存分に纏わせ、着地と同時にUCを発動し[焼却]を

この勢いのまま行こう
モモは奴の後方から、俺は前から挟み撃ちだ
1:多数は有効な戦術だからな



 無数の銃筒砲口が火を噴き、爆風と轟音で滿ち溢れる「アーカイブス・Ⅰ」前。
 猛煙が数歩先を覆い隠す惨憺の中、コンスティテューション・アベニューに降り立った鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は、足許に置いた鞄を開き、そっと低音を囁いた。
「――モモ。遠慮しなくて佳い、存分に羽翼を広げろ」
「クー!」
 ひょこり首を覗かせ、はたはたと双翼を動かしたのは、ヘキサドラゴンの『モモ』。
 お利巧な仔竜が可愛らしく一鳴きすれば、その躯はみるみると大きくなって成竜体に、喉に六芒星の痣を印した立派な姿を金彩の瞳に差し出す。
 相棒の艶やかな竜鱗を撫でた相馬は、ここで長い睫を上に、晴朗の空を仰いで、
「モモは空から攪亂だ。炎を吐き、竜脈を辿って大地を怒らせろ」
「ぐぁー!」
 云えば、心得たとばかり精悍な竜翼が羽搏く。
 風を摑むや一気に烟幕を抜けたモモは、急降下しては灼熱のブレスを軍勢に吹き付け、銃口が一斉に己へと結ばれれば、連中の足許を掬うよう大地を搖らして牽制した。
「これで照準がブレる。指揮にも影響が出るだろう」
 而してモモに遅れを取る男では無い。
 交睫ひとつして地上に視線を戻した彼は、黑手袋に覆われた手を胸元から突き出すと、己の前面に結界を“斜めに”構築し、不断に飛び込む銃彈砲撃を空へと逸らした。
 知覚に優れた相馬なら、蒼白い光壁が受け取る衝撃に、火力の分散を感じよう。
「……モモのお蔭で全てを注力する事は出来ないか」
 意識するものが多くなれば、指揮も戰術も難易度は上がる。
 扨て、どうやって牙城を崩すか――。
 その答えに近付きつつある相馬は、重弩からワイヤーを射出すると、最前線に配された重戰車の鐵の装甲を貫穿すると同時、巻き取る力を使って一気に接近した!
『ッ! この彈幕を躊躇わないとは……異端だからこそ超克が許されようか』
 これぞ超克(オーバーロード)へと至る異端者の姿――!
 嘗て大統領と呼ばれた男が相馬に何を見たかは知れぬが、男の喫驚を金の烱瞳に映した相馬は、軍勢を飛び越える最中に『冥府の槍』へ紺青の炎を纏わせると、プレジデントに肉薄すると同時、熾々と然ゆる鋭鋩を大地に突き刺した――ッ!
「勢いは充分。モモは奴の後方から、俺は前から挟み撃ちだ」
 目下、天を衝いて轟然と噴き上がる【劫火境】――紺青色の火柱が合圖で目印。
 ここに竜翼を搏って急旋回したモモが火焔を吹くや、前後を囲繞されたプレジデントは蒼炎と赫炎の檻獄に捕われ、上質のスーツいっぱいに焦熱を浴びる。
「お前も識る通り、1:多数は有効な戰術だからな」
 悲鳴すら灼く炎獄の中、佳脣を滑るカヴァリエ・バリトンだけが冷涼としていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…かつてのお前がどれだけ偉大な人物だったとしても、
世界の全ての人々をオブリビオン化して良い理由にはならない

…どの道、気配を絶っても察知されるなら発想を逆転させる

…真向勝負よ。そのご自慢の軍勢を正面から切り裂いてあげるわ

大鎌に武器改造を施し双剣化させて「怪力の呪詛」に限界を突破した魔力を溜め、
積み重ねた戦闘知識と肉体改造術式で強化した動体視力で敵の弾道を暗視して見切り、
弾幕を双剣による早業の受け流しと「怪力の呪詛」のオーラで防御しつつ切り込みUCを発動
双剣から無数の斬撃波を乱れ撃ちして集団戦術を行う軍勢をなぎ払い、
大鎌に戻した双剣を怪力任せにプレジデントに投擲する闇属性攻撃の追撃を放つ



 吸血鬼が絶対の支配を敷く常闇の世界に、民意で選ばれる統治者は居ない。
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)には、眼前のナイスガイとやらが云う大統領は知らずとも、唯一つ、間違いなく言える事があった。
「……嘗てのお前がどれだけ偉大な人物だったとしても、全世界の人々をオブリビオン化して良い理由にはならない」
 如何なる存在も、命を操作してはならぬ――と。
 双眸に宿る紅紫の彩を煌々耀わせ、怜悧にソプラノを綴るリーヴァルディ。
 漆黒の大鎌を手に現れた可憐の前、我が身を取り囲む炎獄を凄まじい竜巻に打ち消したプレジデントは、件の計画の“対象外”となった存在を品定めするように言を返した。
『諸君は其々が別種の存在。一意見として耳に入れておこう』
 話は聽く。然し、受け容れるかは別。
 猟兵の連撃を受けながら、猶も泰然を崩さぬ男に対峙したリーヴァルディは、彼を取り囲む軍勢が、己に無数のレーザーサイトを投げ込むのを見て、佳脣に小さく囁いた。
「……どの道、気配を絶っても察知されるなら、発想を逆転させる」
 赤外線センサーやらサーモカメラやら、連中にも独自の探知方法があるという。
 防衛の爲には他を容赦せぬ、世界屈指の軍事警察力を再現したユーベルコードを前に、凛然を萌した佳人は、大鎌を双劍へと變化させると同時、基礎術式『怪力の呪詛』を以て防禦力と身体能力を底上げした。
 彼等が技術を駆使するなら、リーヴァルディも彼女ならではの方法で対抗しよう。
「……眞向勝負よ。そのご自慢の軍勢を正面から切り裂いてあげるわ」
『――來たまえ、迎え撃とう』
 鋼鐵の両腕、機械の指が地平を擦った瞬間、銃聲砲音が吼え哮る。
 大統領の指揮で軍勢が最大火力を出力する中、極めて優れた動体視力で彈筋を見切ったリーヴァルディは、颯爽たる体捌きで躱し、繊手に握る双劍に受け流し、或いは板金鎧並の防禦力を得たオーラで耐えつつ、直ぐに反撃に出た。
「……魔刃を放つ双劍で、切り込む」
 閃くは、【吸血鬼狩りの業・乱舞の型】(カーライル)。
 無数の斬撃波が戰場を疾ったのも一瞬、黑鐵の戰車群に鮮血が躍ったのは、佳人が切り刻んだ鐵塊を「鮮血の花葩」に變えたから。
 半径114m圏内の黑叢を赫々たる血潮とした彼女は、其を白皙に受け取って云った。
「……吸血鬼でなくても、お前が過去から來た者なら。結末は變わらない」
『ッ、ッッ――!』
 その細腕にどれほどの力があろうか。双劍から大鎌へと戻った『過去を刻むもの』が、闇黑に染まる斬撃を放ち、男の機械掌に深く鋭い創痍を刻むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジョン・フラワー
戦車君と、兵隊君と、あとなんだかいっぱい?
全部やっつける必要はないんだろう!
おおかみと遊ぼうじゃないか! まずはおいかけっこでね!

攻撃を避けながら大統領君の周りを大きめにぐるっと一周!
鬼さんこちらー! なんて言いながら夢の痕跡を残していこう

無事一周できたら宣言するよ!
『相談時間は終了しました! 投票タイムに移ります!』
『速やかに投票しておくれ!』
大統領君って投票が好きなんだろう? いっぱい票が入ってるはずさ!
今日の処刑先投票のね!

ゲームは途中で止まらないよ!
処刑先が確定すればあとはドーンでジャキーンだ!
遺言はルールで許されているから何かあれば聞こうじゃないか!
なければ首とさよならさ! またね!



 此處は往時の姿が再現されたコンスティテューション・アベニュー。
 プレジデントが創造したのは景観のみで、命の気配は無かった筈だが、銃聲か砲音しか響かぬ殺伐の空に、軈て民衆の喧噪と狂熱が張り裂ける事になる。
 事の発端は、ピンク色のふわふわの髪をした「おおかみ」が首を傾げた事だったか――ジョン・フラワー(夢見るおおかみ・f19496)は屈託無い微笑を浮かべながら、大統領と彼を取り囲む軍勢を眺めていた。
「えぇと、戰車君と、兵隊君と、あとなんだかいっぱい?」
 目下、NARA前には嘗て世界一を誇った軍事警察力が黑叢を成すが、おおかみにとっては其が如何な最新技術と攻撃手段を擁するかは重要では無い。いっぱいが分かれば佳い。
 彼はふくふくと咲みながら爪先を蹴ると、須臾、風を集めて疾り出した。
「全部やっつける必要はないんだろう! それなら、おおかみと遊ぼうじゃないか!」
 先ずはおいかけっこだと、砲煙の立ち込める舗装路を駆け走る。
 然れば無数のレーザーサイトが赫緋一条を注ぎ、その影を撃たんと鐵彈を繰り出すが、疾風と化したジョンは疾く、迅く、7thストリートからペンシルバニア・アベニューを巡り9thストリートへ! 實にNARA周辺をぐうるり一周して敵軍を撹亂した。
「鬼さんこちらー! 尻尾のほうへー!」
 敷地内に配された複数の部隊がジョンを追うが、彼の目的は別にある。
 これだけの俊敏と機動性を有する彼が「道」を選んだのは、「夢の痕跡」を残す爲で、思いの儘に模られる形は漸う自由を愛する米国民となり、続々と道に溢れ出した。
 而して再び正面に戻ったジョンは、ここに高らかに宣言しよう。
「相談時間は終了しました! 投票タイムに移ります! さぁ速やかに始めておくれ!」
『相談? 投票? ……如何云う事だね』
 軍勢と交戰する訳でも無し、伸びやかなテノール・バリトンを響き渡らせるおおかみを訝しんだプレジデントに、間もなく答えが返って來る。
「大統領君って投票が好きなんだろう? おめでとう、いっぱい票が入ってる筈さ!」
 斯く云う間に紙片は集められ、嚴重に公正に集計された「結果」が具現化する。
 刹那、殺伐の空に手品めいて顕現れた銀の巨刃が、鈍色の光を彈いてギラギラと、二本の軌条に導かれて最多得票者へ、大統領の頭部を切断せんと降り落ちる――!
「さぁ、本日の処刑者が決定した! あとはドーンでジャキーンといこう!」
『ッ!! ギロチン、だと……!?』
 投票(ゲーム)に不正は無い。故に結果も止まらない。
「遺言はルールで許されているから、何かあれば聞こう! 無ければ首とさよならさ!」
 重力に從って落下する刃の下は、貴族も大統領も人民も平等。
 余裕の微笑を浮かべていた男が、ここに初めて蒼褪めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロゼ・ラビットクロー
【兎爪】
ラブリーのことはラビィと呼ぶ。
口調は普通。ラビィ以外には敬語。混ざっても問題無し。

大統領の軍勢か。
先手を取られたので、乗ってきた【武装トレーラー】を盾にしよう。
この大型車なら僕とラビィを守るには充分な大きさだ。
運転席に居たら死ぬのですぐ降りたけど、この位置で大丈夫だろうか。
マザーがなんとかしてくれっかな?

攻撃に耐えたら反撃だ。
トレーラーに積んであった武装で反撃…
え? 機銃しか残ってないの?
僕、銃はド下手糞なんだけど?
AI【首刈り兎】の自動射撃に任せるか。
上手く大統領のボディを狙ってくれよ…

それにしても武装トレーラーは毎回ぶっ壊れるな。
また荒野のゴミを増やしてしまったか…


ラブリー・ラビットクロー
兎爪

転送されて直ぐに戦車が火を吹くのん
全ては一瞬
何が起こったんだ?
気づけばクロゼのトレーラーがらぶ達を庇ってくれたみたい
【クロゼの車輌とリンクしています。緊急事態に基き遠隔操作を行いました】
マザーが助けてくれたんだ
【ネットワークに繋がります。世界が視てますよ】
助けられてばっかり
ししょー
軍はらぶ達が引き受けるのん
大統領は任せたぞ

セカイはまだ真っ暗だけど
朝日は直ぐそこまで昇ってるんだ
皆のユメも必ず叶えられる
だから
今はらぶに託してほしーの
だってらぶはヒトのユメを叶える大ショーニン
行くぞみんな
未来を切り拓くんだ!
【各拠点より防衛システムの権限が送られてきます。拠点間ミサイル発射用意。目標︰アメリカ軍】



 白薔薇のグリモアが花葩を一片ひとひら開き、中に秘める黑影を暴く。
 靉靆と帯を引く玲瓏の光を解きつつ、コンスティテューションアベニューに降り立ったラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)と、彼女が師と仰ぐクロゼ・ラビットクロー(奇妙なガスマスクの男・f26592)は、須臾、閃々と爆ぜる赫耀に光闇の疆を際立てた。
 ――いや。
 轟然たる砲撃に姿影が切り出されたのも一瞬のこと、二人を隠すに充分なサイズの武装トレーラーが側面を差し出した事で、先制攻撃を免れた命が佳聲を零した。
「? 何が起こったんだ?」
「……これが大統領の軍勢か」
 喫驚に瞳を瞬く少女の隣、彼女を引っ摑んだ青年がガスマスクに科白を籠もらせる。
 到着直後、NARAに布陣した大統領直轄軍が二人に砲撃を浴びせたが、其を逸早く眼路に捉えたクロゼが、大型車の座席からラブリーを連れて脱出したのだ。
 而してトレーラーを動かしたのは、如何な劍呑にも聲色ひとつ變えぬ『ビッグマザー』――彼女は銃撃砲音が滿ちる中でも、流麗に流暢にメッセージを綴ろう。
【クロゼの車輌とリンクしています。緊急事態に基き遠隔操作を行いました】
「マザーが助けてくれたんだ……」
 ガスマスクに覆われた佳脣がホッと吐息を零したとは知るまいか、マザーは更にネットワークを構築してリンクを広げ、その様子を視覚化して真赭の麗瞳に届ける。
【ネットワークに繋がります。世界が視てますよ】
「……助けられてばっかり」
 マザーの聲に應えるように、繊麗の指に液晶画面を捺擦(なぞ)るラブリー。
 一方、強化硝子をも一瞬で破片と躍らせる敵の圧倒的火力を目の当たりしたクロゼは、あのまま運転席に居たら蜂の巣になっていたろうと、足許に轉がった赤熱片を瞥すると、不圖(ふと)視線をトレーラーへ、様々な武装を搭載するコンテナを仰いだ。
「先手は取られたけど、攻撃に耐えたら反撃だ。ここに積んである……武装で……」
 然し手に触れたのは、機銃ひとつ。これだけ。
 幾許か焦った手がササッと周囲を滑り、アンバーの彩瞳をガスマスク越しに巡らすが、どうにもこれしか残っていないと帰結した彼が、そっと語尾を持ち上げる。
「……僕、銃はド下手糞なんだけど?」
 自ずと視線を結ぶは、ドット絵で動くAI【首刈り兎】(ボーパルバニー)。
 規則正しくジャンプする無言の白兎に睫を落とした青年は、射撃を任せるべく自動戰闘プログラムを起動した。
「たぶん僕より働いてくれる」
 間もなくトレーラーが自動運転で動き出せば、其を盾にして移動を始めたラブリーが、スッと通った鼻梁を大統領軍に結びつつ、凛乎たる聲で云った。
「軍勢はらぶ達が引き受けるのん。ししょーは大統領を任せたぞ」
「よし、任された」
 マスク越しに星眸(まなざし)を交し、戰術を共有する。
 首都の景観を取り戻して猶も砲撃は止まず、爆轟が科白を掻き消す色気無い世界だが、黙示録の黄昏(アポカリプスヘル)を生き抜く意志を玲瓏の彩に湛えたラブリーは、吃ッと軍勢を見据えた。
「……セカイはまだ真っ暗だけど、朝日は直ぐそこまで昇ってるんだ」
 少女の双眸には昏闇を裂く払暁が見える。その虹彩は明々とした色に耀いている。
 最早、荒唐無稽な希望ではなくなりつつあると、繊手をぎゅうっと握り込めた少女は、【Dawn of the WORLD】(プロジェクト・ディーヴァ)――“ヒトのユメを叶えたい”という願いを、美しく燿く光と溢れさせた。
「皆のユメも必ず叶えられる。だから、今はらぶに託してほしーの」
 だってらぶは。
 ヒトのユメを叶える大ショーニンだから。
 澎湃と溢れる閃爍を現実とリンクさせるは、マザーが構築した高速ネットワーク。
 ソーシャル・ネットワークサーバーへの接続に成功した彼女は、今も拠点(ベース)で戰い続けるアポカリプスヘルの人々を結び、彼等のユメごと繋いでいく。
 光と疾った己のユメが、空に幾丈の筋を描いて集まるのを仰いだ少女は、美し電子音聲を囀るマザーと聲を揃えた。
「行くぞ、みんな! 未来を切り拓くんだ!」
【各拠点より防衛システムの権限が送られてきます。拠点間ミサイル発射用意。目標︰アメリカ軍】
 上空から射線を結ぶは、ラブリーのユメに懸けた拠点からの「支援」。
 マザーによって統禦されたミサイル群が軍勢めがけて降り注ぐ中、その迫撃を指揮したプレジデントに、須臾、閃光火花を噴き上げる機銃斉射が迫った。
『迫撃砲を……――ッッ、なにッ!』
「上手く大統領のボディを狙ってくれよ」
 武装トレーラーを盾と迫り出した儘、弧を描く樣に豪快に自走(ドリフト)させつつ、機銃の射線をプレジデントの胴部へ注ぐクロゼ。
 戰車の砲筒が対空射撃に移行する今、水平方向に注ぐ銃彈は禦げまい。
 一瞬の隙を強襲されたプレジデントは、鋼鐵の機械掌でガードする間もなく、鋭彈を受け取るしかなかった。
『ッ、くッ……ッッ!』
「ああ、やっぱり僕より巧い」
 上質のスーツを血斑に染めた【首刈り兎】の腕を褒めた彼は、次いで若干世紀末寄りなプログラムが、ドリフトの遠心力によって腹を露わにしたトレーラーを叩き付ける景に、既視感を過らせる。
「それにしても、毎回ぶっ壊れるな……」
 また荒野のゴミを増やしてしまったかと、マスクの下で涼しげなテノール・バリトンが滑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
お薬さん/f15222

▼先制攻撃への対処
冴木:初動のカバー役
矢来:上記の影を利用・隠密・背後を取る

お薬さんには直接囮になって頂きます。
弾丸を貫通させないように頑張ってくださいね。
体や広がった液体の影を使って《闇に紛れ》ます。
死体があればそれも使って進みましょう。

本当の標的はたったひとり。
大統領を名乗るからには《暗殺》も覚悟の上でしょう。
どうせコイツも何度も死んでますって。
今更一回や二回殺される回数が増えようと誤差です、誤差。
恐怖や痛みのないよう殺してあげます。
優しさですよ。
ウソですけど。
気づかれるとうるさいんで静かに殺してるだけです。

――よく働いてくれました。救急箱さんにランクアップですね。


冴木・蜜
美少年さん/f14904

転移後、即座に『無辜』
毒性を高めた上で
身体を液状化

伸ばした腕を引き戻したり
体を跳ねさせ
予測しにくい挙動を意識
弾丸はしっかり溶かし攻撃を躱しつつ
行く手の軍勢を私の死毒で融かしてしまいましょう

物理攻撃である限り
液状化していれば多少の負傷は問題ないですしね

軍勢を翻弄しつつ
なるべく最短で大統領の元へ
単身そのまま接近戦を仕掛けましょう
まずは腕の一本を不能にしたい所ですが

御機嫌よう、大統領閣下
失礼ですが毒物の扱いの心得は?
あっても素直に扱われるつもりはないんですが

本来私は前線向きではありません
ええ
言われなくとも理解しています
だから私は"単独"で此処まできたのですよ

ね、美少年さん



 靉靆と棚引く光の帯を解き、濃灰の舗装路に降り立つ。
 往時の景観を取り戻したコンスティテューション通りは、目下、朦々と燻る黑煙の中に銃聲砲音が吼え哮る、實に色気無い世界が広がっていたが、その惨憺に相對した男たちも肝が据わっていたろう。
 その一人、吹き荒ぶ熱風に濡羽色の艶髪を梳らせた矢来・夕立(影・f14904)は、前髪の奥、烱々と光を湛える緋瞳を眦に送りつつ、マスクの下で佳聲を零した。
「囮を頼めますか」
 短く鋭く言を置く、冷艶のテノール・バリトン。
 鼻梁が向く先、大統領直轄軍は絶えず猛煙の中にレーザーサイトを投げ込んでいるが、幾丈の赤色光が我が身を滑ろうと動じず。
 而してレーザーも直ぐに遮られよう。
「……私が怪物となる事で救われるものがあるのなら」
 分厚いレンズ越しに流眄を受け取った冴木・蜜(天賦の薬・f15222)は、肌膚にヒヤリと触れるようなバリトンを囁(つつや)くと、華奢の躯に秘める毒性を高めて液状化し、人ならざる姿影を暴いた。
「美少年さんは私の影へ」
 蜜のゲシュタルトを變貌させるは【無辜】(ポワゾン)――万物を融かす致死性の蜜毒そのものと爲った彼は、腕を自在に伸ばしては引き戻し、時に身体を鞠の如く跳ねさせ、規則性の無い挙動と形状變化で砲撃を引き付けた。
 蜜毒の天蓋に守られた夕立は、漸う広がる翳陰に紛れて移動を開始し、
「お薬さんは彈丸を貫通させないように頑張ってくださいね」
 否、心配などしていない。
 致死性の死毒で構成される蜜の『黒血』は、身に触れる万物を即座に苦悶に突き堕して融解する劇薬にて、無論、彈丸もその結末からは逃れられぬ。
 目下、無数の銃彈砲撃が蜜に射線を結ぶが、爆熱と衝撃を秘めた其が彼の躯に沈むより早く形状を解くのを見た夕立は、佳脣に先人の知恵を捺擦(なぞ)った。
「寄らば大樹とは云ったものです」
「物理攻撃である限り、液状化していれば多少の負傷は問題ないですしね」
 創痍や損耗を厭う身では無いが、足止められる要素が無いのは重畳。
 蜜は我が身に集まる猛撃を一手に引き受けつつ、進路を眞直ぐNARAへ、プレジデントに接近戰を仕掛けるべく最短距離を進んだ。
 集中砲火をものともせぬ蜜には、軍を指揮したプレジデントこそ喫驚を示そう。
『自己防衛と我が軍勢の撹亂を同時に行う、と……特別な者にしか出来ない贅沢をする』
 矢張り猟兵は「全人類のオブリビオン化」の“対象外”――。
 其々の個体が別種の存在たり得る彼等は、遅かれ早かれ超克(オーバーロード)の道に到るだろうと、瞠目した碧瞳には賞讃の色すら覗かせる。
 而して蜜も、嘗て最大の民意を集めた男に敬意を示すべく、丁寧に挨拶をした。
「御機嫌よう、大統領閣下」
 伸び出る手に精鋭を組み敷き、科白と共に猛毒を零す――死の怪物。
 これまで見た事のない異形と相對したプレジデントは、然しまだ余裕があった。
 故に会話にも應じよう。
「失礼ですが、毒物の扱いの心得は? あっても素直に扱われる心算はないんですが」
『大統領を暗殺するに劇物を使うのかね。毒を薦められて飲む者は居るまい』
 落ち着いた聲とは裏腹に、鞭の如く迫る冱撃をガードする。
 機械化した片腕に蜜の毒手を巻き付けたプレジデントは、鋼鐵が急激に腐食していくのを感じつつ、角逐はその儘、不敵な嗤笑(えみ)を浮かべた。
『毒を弄するには時間が要る。君は私の前に來るべきでは無かった』
「ええ、言われなくとも理解しています」
 前線向きでは無いと、誰より己が辨えていよう。
 互いに紳士の語調を崩さず、鐵の腕と毒の腕をギチギチと押し合った両者は、この時、蜜の靜かな言を以て抗衡を破った。
「だから私は“單独(ひとり)で”此處まで來たのですよ。――ね、美少年さん」
 時にして須臾。
 そうっと語尾を持ち上げた蜜に、返事が來る。
「――ええ、よく働いてくれました。救急箱さんにランクアップですね」
 果して万能の薬であったと、怜悧な聲に先駆けて鼓膜に触れるは【否無】(イナナキ)――大統領の背後から影を滑らせた美少年が短刃を手に、文字通り『災厄』を置いた。
「オレは腕が伸びないんで、お陰樣で届きました」
 先ずはフォワードグリップ&エッジアウト、聢と握り込めた鋭刃を首筋へと斬り付け、疾ッと繁吹く血滴がシャツの襟に斑を染ませるより迅くリバースグリップ&エッジイン、掌で素早く回轉したナイフを鎖骨に沈ませる。
『……な、ん……! 一人では無かったか……ッ!』
 先制砲撃時より身を潜めていた夕立を把握していなかった大統領は、全き間際で刃光を暴いた彼に時間(とき)が止められるよう。
 余裕の微笑から一轉、固く表情を強張らせた大統領には、冷然と皮肉が添えられ、
「大統領を名乗るからには命を狙われるのは覚悟の上。今更一回や二回、殺される回数が増えようと“誤差”と思いましたが……。……些少(すこし)震えているような」
 其が驚愕か怒りかは夕立には判然らない。而して如何でも良い。
 ただ無数に味わった死の内、今回は恐怖や痛みの無いよう殺して遣ろうと――實の處は気付かれると煩いので靜かに殺そうと、確実に急所を捉えた鋩が根本まで沈んだ。
「これは優しさですよ」
 ウソですけど。
 嘘を嘘と言って憚らぬ佳脣が、濤と繁噴く鮮血に濡れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
大軍を揃えた処で結果は同じと教えてやろう
何を見る事も成す事も叶いはせん
必ずや此処で絶ってくれる

侵逮畏刻――仕事だ火烏、私に付いて動け
周囲に羽を散らして攻撃の動きを止め、抜けてくるものがあれば炎で落とせ
間に合わねば斬り落としてくれる
戦車の砲口の向き、反応速度に駆動音の変化等
確認し得る情報の全てを戦闘知識にて計り
配置の死角と攻撃間隔の隙間を見極め
第六感重ねて斬り拓く道を見切り推し通ってくれよう

首魁が見えたなら機は逃さず、全力の踏み込みで以って接敵
なぎ払いのフェイント絡めて隙を抉じ開け、素っ首刎ね飛ばしてくれる
既に意味を失った銘と共に、骸の海へと沈むがいい
今を生きる命が未来を築く為に――疾く、潰えろ



 猟兵の背襲を受け、上質のスーツを鮮血に染めた『プレジデント』が蹌踉めく。
 嘗て最大の民意に支えられたであろう男の躑躅を見た鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、人の名を含め、多くを喪失(なく)したという彼に冷嚴と口を開いた。
「……持たぬ者ほど抱えると謂うが、大軍を揃えた処で結果は同じ。最早何を見る事も、成す事も叶いはせん」
 言外には「全人類のオブリビオン化」を目論む彼の野望を否定していよう。
 黙示録の黄昏(アポカリプスヘル)を生き残った人々には、其々に未來があると語気を強めた嵯泉は、硬質の指を懐へ、外套の裏地に滑らせた。
「識らぬなら教えて遣る。然して其の狂氣、必ずや此處で絶って呉れよう」
 刹那、大統領が流血した事で愈々殺気立った精鋭が銃筒を揃える。
 然し夜帳を潜った五指が取り出すは、銃では無く紙片――黑く塗り潰された『黒符』が炎を帯びるや、赫々と光熱を熾やした。
「侵逮畏刻――仕事だ火烏、私に付いて動け」
 主に呼ばれて形姿を得るは、双翼三肢の炎の鳥。
 太陽の化身、嚮導の標たる威容を顕現した火烏は、力強く羽搏くや赫炎の羽を散らし、目下、嵯泉へと射線を集める銃彈砲撃を超高熱に爆ぜさせた!
「悉く薙ぎ払え」
 猶も吼え哮る連続射撃にも、嵯泉は眉ひとつ動かさず。
 佳脣が冷ややかにバリトンを囁(つつや)くや、上空より吹き荒れる炎の息吹が彈雨を組み敷き、爆熱と衝撃を秘めた其を両者の中央で炸裂させた――!
「火烏は高度を保った儘、後方から支援を頼む」
 是の返事は逞しき羽音より受け取って。
 朦々と烟る黑煙の奥、慥かに在る狂氣の塊へ進路を結んだ彼は、周囲に滿つ爆轟も烈風も躊躇わず爪先を蹴ると、それこそ彈丸の如く駆け疾った。
「二度と蒙昧を語れぬよう、素っ首刎ね飛ばして呉れる」
 隻眼は辰砂の精彩を烱々と、居並ぶ戰車の砲身の向き、彈速や射撃間隔、駆動音の變化を具に読み取り、五感から伝わる情報の全てを反應に變えていく。
(『迅速い――ッ!!』)
 慥かに大統領の采配は優れていたが、自身より死線を潜った男を仕留める事は出来ず、而して遂に、地理的・間隔的な死角を抜けた嵯泉の肉薄を許してしまった。
「――時間だ。既に意味を失った銘と共に、骸の海へと沈むがいい」
『なッッ、にをッ……!』
「今を生きる命が未来を築く爲に――疾く、潰えろ」
 彈幕を斬り、黑風を裂いた『秋水』が魚鱗の如く閃爍(きらめ)く。
 鋼鐵の巨腕が盾と差し出れば、冱刃は「邪魔だ」とばかり其を斬り落していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
大国、まるごと、ひとつが、敵。みたいな、もの、なのかな。
強大な、相手、でも……今更、引くなんて、選択肢は、ないもの。
ひとりぼっちの、女の子が、あなたたちの、相手だ。

レーダー、センサーが、無数に積まれた、兵器たち。
近代戦は、刻々と変わる、戦場の、情報を読む、戦い。
あなたたちの、装備に、備え付けられた。目。目。目。
そこに、あたしは。ゴーストは……どんな風に、映っている?

攻撃する、無数の目の、視線に、晒されて。力が、膨れ上がる。
見ないで。みないで。見るな。暴こうと、するな。
相手が、多ければ、多いほど。より、識ろうと、するほどに。
あたしは、命を、霊魂を、吸い上げながら。
敵を、無数の目を。破壊する。



『ぐっ、ァ嗚呼ッ!』
 盾と構えた機械腕の片方を斬り落とされる『プレジデント』。
 この瞬間、一度は蹴散らされた軍勢が再び大統領を取り囲んで攻勢に出るが、黑煙烟るコンスティテューション通りに降り立ったマオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は、銃聲砲音の吼え哮る中に、ほつり、佳聲を紡いだ。
「大国、まるごと、ひとつが、敵。みたいな、もの、なのかな」
 一滴一滴、涙雫を置くように囀る――宛如(まるで)歌を忘れた金絲雀。
 渇きを知らぬ青藍の麗瞳に、嘗て世界一と謳われた軍事警察力を映した佳人は、爆風と轟音が吹き荒ぶ渦動の中心へ爪先を進めた。
「強大な、相手、でも……今更、引くなんて、選択肢は、ないもの」
 目覚めた場所が黙示録の黄昏(アポカリプスヘル)だった。
 畢竟、あの時から引く選択肢は無かった。
 いつも涙に濡れて束となっている黑艶の睫を凛と持ち上げたマオは、慟哭も嗚咽も知る佳脣より、美しくも物哀しい物語を滑らせた。
「ひとりぼっちの、女の子が、あなたたちの、相手だ」
 爆炎に揉まれる猛煙の中を征く。
 目下、ぼろぼろの制服に幾丈の赫光――レーザーサイトが投げ込まれるが、進路を眞直ぐNARAへ結んだ儘、電動丸ノコを手に進むマオ。
「……近代戰は、刻々と變わる、戰場の、情報を読む、戰い」
 赤外線センサやらサーモカメラやら、世界を支配した軍事技術が繊麗の躯を捺擦るが、己に集まる無数の兵器を見渡した彼女は、次第に一語一句の語気を強めた。
「あなたたちの、装備に、備え付けられた。目。目。目。そこに、あたしは。ゴーストは……どんな風に、映っている?」
 厖大な目に晒されて生まれる【二律背反する感情】(アンビバレンツ・マインド)。
 己に結ばれる視線という視線に負の感情を膨れ上がらせたマオは、叫喚ぶように鋸刃を高速回轉させると、熾ゆる如きオーラを迸發(ほとばし)らせた。
「見ないで。みないで。見るな。暴こうと、するな」
 相手が多ければ多いほど。より識ろうとするほどに――!
 ギャァンッと泣き喚くような駆動音を響かせた『バズソー』は、マオ自身を電源にして出力全開! 射線を、いや視線を結ぶ目という目を挽き斬って力を増幅させていく。
「あたしは、命を、霊魂を、吸い上げながら。敵を、無数の目を。破壊する」
 生前より鈍重な心と身体に俊敏は無い。而して必要も無い。
 慥かな歩みで「目」を蹂躙したマオは、而して最後に残されたプレジデントの碧瞳に、万斛の涙を湛えながら丸ノコを衝き入れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オブシダン・ソード
ジェイ/f01070と

スケール大きすぎるとついてけないんだよね……
ま、とにかく目の前の状況を何とかしようか

相棒を守る盾役を担うよ
キャバリアに搭乗、ジェイの事を庇う立ち位置で、分厚い装甲と僕のオーラ防御を駆使して壁になろうか
銃弾くらいは何とかなるかもしれないけど砲弾はちょっとやば…あー!

最悪ぶっ壊れても鉄塊として壁が担えればそれでよし
こんな献身的な剣、他にいないと思う
凌げたら反撃だね
キャバリアの武装か、無理なら炎の魔術で範囲攻撃だ

うまく行ったら器物の剣をジェイ預ける

相手にとって不足無しってやつ? いいねえ、君の腕を見せてもらうよ
斬撃に合わせてUCを発動!

まとめてぶった斬ってあげよう


ジェイ・バグショット
オブシダン/f00250と

全人類のオブリビオン化ねェ…
上に立つヤツは考えるスケールがちげーな

盾役は相棒へ任せる
本人は剣らしいが盾役も出来るなんてハイスペックだなと感心
影のUDC『テフルネプ』(縄状の影複数)によるカウンターで応戦

ったく随分とド派手な歓迎だよなァ
もてなしが弾丸の雨なんてヒデェじゃねーの

拷問具『荊棘王ワポゼ』七つを宙へ召喚
傷口を抉る高速回転で敵を引き裂く範囲攻撃
UCで手数を増やし
数減らしに少しは役立つだろう

初めてアンタを使うには上等すぎる相手だと思わないか?
黒曜石の剣を片手にいつもの軽口

集団相手に横薙ぎの一線
斬れ味の良さに株も上がる
はは、俺の腕が良すぎたか?
冗談混じりに目指すは首魁



 往時の景観を取り戻したコンスティテューション・アベニューに降り立つ。
 蓋し人の気配は無し、喧噪の代わりに猟兵を迎えた爆炎、猛風、轟音……それら惨憺を巻き起こす特種精鋭部隊と、彼等を指率する『プレジデント』を、黑烟の切れ間に捉えたジェイ・バグショット(幕引き・f01070)は、美し金彩の瞳を鋭く細めた。
「全人類のオブリビオン化ねェ……上に立つヤツは考えるスケールがちげーな」
「全世界の人類を、だっけ? スケール大きすぎるとついてけないんだよね……」
 言を継ぐは、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)。
 佳脣を滑る優艶のハイ・バリトンも、吼え哮る銃聲砲音に直ぐに掻き消される――實に色気無い戰場に溜息を零した男は、フードの下で長い睫を持ち上げた。
「……ま、とにかく目の前の状況を何とかしようか」
 黑烟の中から投射されるサイトスコープに『黄昏色の外套』を捺擦らせたのも一瞬。
 彼は自前の鐵騎『オブシディアンMk4_ソードカスタム』に幾丈の光条を代わらせると、須臾に閃光火華を炸裂させる斉射を一手に引き受けた。
「僕が盾になろう。大事な相棒を守らないと」
 自律走行で射線を割ったキャバリアを壁にしつつ、颯爽と搭乗して操縦桿を握る。
 分厚い装甲に魔力を張り巡らせて防禦力を強化した機体は、嘗て世界一の軍事警察力を誇った米國の軍勢を相手に、アイギスの如く立ち開かった。
 その堅牢に護られたジェイは、夜帳の如く艶めいた黑髪に烈風だけを受け取りながら、盾にもなる「劍」の優秀さに幾許の微咲(えみ)を湛える。
「随分とハイスペックだな」
 紅脣が口角を持ち上げ、小気味佳い賞讃を添えた時だった。
 異世界の鐵騎に烱瞳を結んだプレジデントが、戰車にMRSITOT(同時着彈射撃)を指示し、152mm砲が火を噴いて迫れば、流石のオブシダンも喫驚の色を見せよう。
「銃彈は何とかなるかもしれないけど、砲彈はちょっとやば……あー!」
 左右に迫り出た肩部を撃たれ、機体を大きく搖すられる。
 この時、左腕ガトリングが撃ち落とされるが、最悪、鐵塊として壁役を担えれば良し、オブシダンは戰車を上回る高度からNARA周辺を見渡しつつ、飄と囁(つつや)いた。
「こんな献身的な劍、他にいないと思う」
 我が挺身を自賛しつつ、自嘲しつつ、反撃に肩部ビームカノンを放射する。
 赫緋の光条に前衛を薙ぎ払えば、刹那、整然と居竝ぶ戰車部隊が爆炎を噴き上げるが、その焦熱を白皙に掠めたジェイが、時を置かずして畳み掛けた。
「ったく、随分とド派手な歓迎だよなァ。もてなしが彈丸の雨なんてヒデェじゃねーの」
 VIP待遇ってこうだっけ? と鴇色の脣が皮肉を添えたのも一瞬の事。
 戰塵舞う鋪路を靴底でノックひとつ、昏闇に潜めるUDC『テフルネプ』を覚醒させた彼は、縄状の影を放射状に放って敵軍勢へ、戰車を操る精鋭の兵士を殺めていく。
 而して足許を脅かすだけでは無い。
 噴煙の立ち込める蒼穹に紅月を浮かべたジェイは、【大殺戮の夜】(キリングナイト)――七つの鐵棘環『荊棘王ワポゼ』を召喚すると、彼等の頭上に赫々と鮮血を躍らせた。
「数減らしに少しは役立つだろ」
 可恐しい、蓬々(おどろおどろ)しい拷問具は攻撃回数を飛躍させ、凄惨に相應しく。
 目下、NARA前は爆轟に血煙と叫喚が混じる、地獄絵宛らの景が広がった。
 斯くして天地から軍勢を撹亂したジェイは、この間、ガトリングを手放したキャバリアが掌より『黒耀石の剣』を運ぶのを見て、コックピットを仰ぐ。
「大統領に仕掛けよう。“僕”を使うと良い」
 一塊の黑耀石から削り出した原始的な劍は、オブシダンそのもの。
 信頼する相手にこそ「一つの武器」として振るわれることを望んだ彼に對し、其を硬質の指に握り込めたジェイは、塊麗の微笑に輕口を添えて答えた。
「初めて“アンタ”を使うには上等すぎる相手だと思わないか?」
「相手にとって不足無しってやつ? いいねえ、君の腕を見せてもらうよ」
 電子音聲と届けられる科白にも、吃々たる竊笑が聽こえようか。
 相棒の聲に雄渾を萌したジェイは金瞳を煌々、赫黑く熾え滾る陰惨の景に正對すると、拇指球を踏み込めて横薙ぎに一閃ッ! 玲瓏なる閃爍一条を放った――!
「……佳い劍筋だ」
 其は“本人”が見惚れるほど。
 強化硝子を隔てた操縦室で、不覚えず感嘆を零したオブシダンは、斬撃が疾るに合せて【僕が君の剣になる】(ハンドオーバー)――我が身に在る全権能を委ねると、10,609m圏内の視認対象を、畢竟(つまり)NARA敷地内の全軍勢を建物ごと搏っ斬った!
 これにはジェイも快哉の微笑を浮かべよう。
「なんつー斬れ味……はは、俺の腕が良すぎたか?」
「全てはユーベルコードで再現されたもの。遠慮する事は無いよ」
 良い劍だ、佳い腕だと、冗談交じりに褒め合いつつ、爪先を首魁へ。
 軍勢を盾にして今の衝撃を凌いだ大統領も、流石に損耗甚だしいか――鋼鐵の機械腕は破砕し、上質のスーツには血斑が染みて、嘗て最大の民意を獲得したであろう男の失墜を目の当たりにした二人は、聲音を落として鋭く云った。
「君が掲げた『全人類のオブリビオン化』は受け容れられなかったと云う訳さ」
「――扨て、刃殺か銃殺か。大統領閣下に敬意を示して選ばせて遣る」
 一時でも彼を支えたであろう民意を穢さぬよう、直ぐには殺さず。
 唯だ嚴然と「敗北」を突き付けた二人を前に、血塗れの両手を挙げたプレジデントは、去り際にも不敵な微笑を浮かべた。
『……両方を甘んじよう。私は其々が別種の存在たり得る諸君の力を見る必要がある』
 猟兵を全世界・全人類のオブリビオン化の“対象外”と自ら認めたのだ。
 遠からず超克(オーバーロード)の道に至るであろう彼等の可能性を認めた己を信じるべきだと、会敵当初の余裕のある艶然(えみ)を見せるプレジデントに首肯いた二人は、望み通り、訣別の一撃を揃えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月18日


挿絵イラスト