アポカリプス・ランページ⑥〜劫火の洗礼
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「暴力、無法、底無しの欲望!!」
――それこそが符丁だと言わんばかりに。
鬨の声を上げた、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』に、部下達がはち切れんばかりの歓声を上げた。
傍らに侍らせた攫って来た女達も、手足以下として扱われる奴隷達も、ただただ震え上がるのみ。
「それこそが、終わっちまったこの世界のガソリン! オレがこの世界に生み出した、オレによる理想のエネルギーだ!」
下半身を戦車に改造したデスファイアがキャタピラの前輪を持ち上げ猛る。そして、重量に任せてそれが前触れもなく地に着いた時。下敷きになった奴隷が、赤い液体と共に、骨肉をグシャリと潰れる音を伴わせて四方に飛び散った。
「ああん? ウゼェな! ネズミみてぇに、チョロチョロしてるからこういう事になるんだ。
まさか、オレの部下にこんな無様なヤツぁいないだろうなァ、オイ!」
デスファイアを取り巻く部下達から、潰れた肉塊となった奴隷への哄笑が響き渡る――今まで、何人もの部下が同じように潰され轢かれた光景を目にしても。
「で、だ! 猟兵がここまで迫って来てるって情報が来やがった!
――てめぇら、やることは分かってんだろうな!?」
その言葉に、この場にいた殆どの部下達が、即座にその姿を消した。
「ハッ、猟兵だろうが何だろうが、負ける訳がねぇ。オレが直々に焼き殺してやるぜ!!」
●
「――場所はロッキー山脈。付けられた名称は『鋼鉄要塞デスファイア』。
敵は、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』――猟兵として成すべき事はただ一つ。
デスファイア・ヴォーテックスの抹殺、抹消。以上だ」
その予知を伝えたグリモア猟兵は、流れる血を感じない声で端的に告げた。
「鋼鉄要塞内には手下が配備されているが、猟兵であればその強さは敵ではない。だが、要塞内最奥にいるデスファイアは、下半身を戦車に改造した異形。その周囲には、攫われ身の世話をさせられていた一般人が奴隷として取り残されている。
デスファイアは、己の力に疑いがない為、彼らを人質を取られる事はないが、己が進路に邪魔であれば、容赦なく焼き殺す――部下も、攫われた女性達も、捕まった奴隷達も。
自分以外の全てを焼き殺しても『己の通る通路のゴミを排除した』くらいにしか考えてはいないだろう。
最奥は広場になっており、戦うには支障は無い。対処策は各々に任せるが――……『デスファイア・ヴォーテックス』をスクラップにするまでに。その一般の人々は、可能な限り救ってほしい。
それでは、どうか宜しく頼む」
予知をした猟兵は、そう告げると静かに集まった皆に頭を下げた。
春待ち猫
ご閲覧いただき誠に有難うございます。春待ち猫と申します。
●一章編成の戦争シナリオ、火炎大王「デスファイア・ヴォーテックス」戦です。
大体、油断すると部下も一般人も灼け燃え死ぬような、オープニングの通りのえげつなさで進行できたらと思われます。(一般人が、猟兵の足を引っ張ることはございません)
○プレイングボーナス……無差別火炎放射に対抗する。
シナリオイメージと致しましては、一般人への対処をいただきつつ『デスファイア・ヴォーテックス』への討伐を狙っていただけましたらと思われます次第です。
●戦闘シナリオの為、公開直後からプレイング受付を行います。
今回のシナリオでは、可能な限り書けそうなものから、執筆をさせていただきます。締め切りはシステム上のプレイング再送不可まで。
リプレイのお返しは日数ぎりぎりを想定しております為、ランキングには向いておりません。
また、参加者様多数の場合は、基本的に先に目についたものから執筆を開始しますが、締め切りの日数人数や、作業時間の関係により、採用は運となります。プレイングに全く問題がなくとも流れてしまう可能性がございますので、大変申し訳ございませんが、予めご容赦の程をいただければ幸いです。
(クリア人数に達していない場合は、達成人数までのんびりと受付させていただきます)
それでは、どうか何卒宜しくお願い致します。
第1章 ボス戦
『デスファイア・ヴォーテックス・鋼鉄要塞』
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POW : 火力こそ力だぜ!!
自身の【下半身の戦車 】を【ファイブデスモード】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD : デスファイアァァァァ!!
【両腕の火炎放射器 】で攻撃する。[両腕の火炎放射器 ]に施された【火力】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ : ヘルファイアァァァァ!!
【炎の雨 】を降らせる事で、戦場全体が【地獄の如き戦場】と同じ環境に変化する。[地獄の如き戦場]に適応した者の行動成功率が上昇する。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アイソラ・グランホエール
無差別火炎放射って…なんで手下が付いて来るんだ?あぁ。手下も似たようなものだからか。
…つまり、なんとしてもここで倒さないといけないやつらってことだね。
火炎放射は、念動力で一般人を浮かせて射線上から移動させる。または、念動力でオーラ防御の盾を作って防ぐ。フォースシューターで吹き飛ばす攻撃などでこちらに意識を向けさせる。
「どこ狙ってるんだ、戦う相手はこっちだぞノーコン」
敵の攻撃は念動力で軌道を逸らして、オーラ防御で盾受けする。
盾受けしながら念動力で自分を飛ばして一気に近づき、星海の剣にUCを刃状に圧縮して重ね、サイボーグの怪力で剣を振るう鎧無視・貫通攻撃を叩きこむ。
猟兵達が鋼鉄要塞内の最奥広場に向かった先。猟兵に追われ、逃げ込むように中へと飛び込んだ己の手下を、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』は容赦なくその炎で焼き払った。
咄嗟に飛び退いた猟兵達は事無きを得る。だが、同時にその場に最初からいたデスファイアの手下達は灼け尽きた手下に狂ったような歓声を上げた。
「おいおい……、本当に自分の手下まで殺して、無差別火炎放射って……。なんで、それで手下が付いて来るんだ?」
咄嗟に、アイソラ・グランホエール(三海操る魔術剣士・f09631)が強化機械鎧オルカを身に、視界の先にいる火炎大王と黒く炭化したその配下を視界に入れた。
しかし、歓声を聞けばその理由も直ぐに理解に到る。
「あぁ。手下も似たようなものだからか」
それはつまり、相手は何としてもここで倒さないといけない存在であるということ。
ここにあるものは害悪などではない――既に『狂気』の類である事をアイソラは理解する。
「ハーッハッ!! オレの前に邪魔なんかありえねぇ! みんな燃えちまいなぁ!!」
立て続けに響く高笑いと共に、猟兵達を目にしたデスファイアの下半身である戦車が、移動力を半減する代わりに、その射程を五倍にまで跳ね上げ、全てを焼き払うべく銃口より火炎を放射する。
「――だけど、少し遅い」
その合間に、広場全体を即座に包み込んだのはアイソラの領域『三海・深淵の海』――サイキックエナジーの固有空間とも言える場を形成したアイソラは、無差別に焼き尽くす炎が一般人に届く前に、彼らの身を宙に高く浮かび上がらせる事で射程から外し。または深海を彷彿とさせる重圧を、誰もが肌に感じる己の念動力場を味方に付けたエネルギー流動によって、炎を対象から防ぎ切った。
「何っ! 当たらねぇだと!?」
その光景に、執拗に一般人を狙い始めた火炎大王に、アイソラは、フォースシューターによるサイキックエナジーで構成された弾体数発をその下半身へと叩きつける事で、相手のキャタピラのバランスを崩し、敵の注意をこちらへと引きつける。
「どこ狙ってるんだ、戦う相手はこっちだぞノーコン」
アイソラが敢えて煽れば、デスファイアは何処までも単純に挑発に乗り、キャタピラの先をようやくこちらへと向ける。
「テメェ! どこまでも邪魔しやがって!」
火炎大王が武器から炎を噴き出し、広間の床を激しく削りながら正面からアイソラへと迫る。
しかし、アイソラの手には。既に得物である夜空を集め煌めかせたかのような輝きを放つ『三海・星海の剣』が両手剣の形を伴いその手に構えられていた。
――両手剣、星海の剣を実質の重量よりも軽々と振り上げる。強化機械鎧オルカを身にしたアイソラは、サイボーグとしての怪力をサイコキネシスに乗せて、突進してきたデスファイアに正面から向き直った。
正面突破でこちらを突っ切り、灼き轢き殺す事しか考えていない相手に、手にする剣を下段に構え。
そして、互いが駆け抜けるように、一瞬の交叉と共にすれ違う――。
響いたのは、デスファイア側の激しい爆発音だった。
アイソラの星空煌めく一閃は、すれ違いざまにデスファイアの下半身の強固な戦車に、パーツの一部を切断する程の斬れ味を見せ、その稼働力を大幅に削り取る事に成功していた。
大成功
🔵🔵🔵
禍神塚・鏡吾
技能:迷彩、空中浮遊、大声、挑発、時間稼ぎ、火炎耐性、カウンター
無差別攻撃が面倒なら、無差別にさせなければ良い
ミラーシェイダー(装備)の光学迷彩で身を隠し、空中を歩いて移動します
デスファイアの頭上まで来たら、大声で高笑いしながら迷彩を解いて挑発します
「見下ろされる気分はどうです? ライターの王様」
「此処に至るまで猟兵の進軍を止められないとは、貴方の暴力とやらも知れたものですね」
「自信がないなら、周りの奴隷を人質にでもしてみてはいかがですか?」
移動せずに真上に向かって火炎を放てば、一般人が巻き込まれる事はない筈
なるべく多言を費やして、彼ら彼女らが逃げる時間を稼ぎます
肝心の火炎は、UCで反射します
他の猟兵の戦いを元に、敵の機動力が大きく低下した事を、禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)は、己では既に変化を許されることのない薄い微笑みと共に眺め見つめていた。
機動力は落ちた。だが敵、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の特徴能力の一つとして、自己強化改造に近い能力がある故に、それがいつ戻るかも知れず。同時に上半身の火炎放射器は健在でもある。
それらは今、デスファイアの傷付けられたプライドと共に、理由も無く誰かを燃やさずにはいられないという気迫に染まっていた。
「ですが、無差別攻撃が面倒なら、単純な話です。
――それを『無差別にさせなければ良い』」
鏡吾の言葉と共に。ふわりと、その身体の周囲に光と視界を乱反射させる無数の細やかな金属片『ミラーシェイダー』が貼り付き、光の反射を利用してその姿を掻き消した。
ヤドリガミである彼は、本体が別にある概念の存在。それは空中の歩行を可能とし、姿を消したままに呻き声を上げているデスファイアの上空へと辿り着く。
敵にも気配察知の余裕は無いのであろう。一切悟られることのない上空の立ち位置で、鏡吾はその光の乱反射で得ていた迷彩、ミラーシェイダーを解き、その場でデスファイアをわざと見下すように高らかな笑い声を響かせた。
「――!?」
気付かなかったデスファイアが、完全な怒りと焦燥を伴って鏡吾を見やる。
「見下ろされる気分はどうです? ライターの王様」
「てめぇ! いつの間に!!」
「しかし、此処に至るまで猟兵の進軍を止められないとは、貴方の暴力とやらも知れたものですね」
現状に於いて煽るにはこの上ない、にこやかな笑みを絶やすことなく鏡吾はデスファイアを煽り続ける。
「テメェ……! 生きて帰れると思うなよ!」
デスファイアが鏡吾のいる上空に向かって、下半身の銃火器から火炎放射を容赦なく噴き上げる。だが、数歩。鏡吾が空中を上がればその程度では届かない。
「おや、その両腕の火炎放射機は飾りですか。それとも、お使いになるにはデメリットでもあるのか……。どちらにしろ、自信がないなら周囲の奴隷を人質にでもしてみてはいかがですか」
鏡吾はその言葉と共に、恐怖に立ち尽くしている一般人へと視線を走らせた。ここに来るまでには猟兵達が通ることで安全の確保されたルートがある。まずはこの部屋から逃げるように。鏡吾がそれを視線で訴えれば、察した一般人達は一斉に最初に猟兵が飛び込んで来た出入り口へと殺到した。
「テメェら! ここで逃げてタダで済むと――!」
「……ああ、失礼致しました。
こちらに向けた微弱な炎――ライターではなく、マッチ棒レベルだとは考えもせず。それでこちらを狙おうとは夢のようなお話で。これはこれは大変な失礼を――」
「いい加減にしやがれ!!
まずはテメェから、消し炭にしてやる!!」
その挑発に、完全に頭へと血の上ったデスファイアが、己の両手に積んだ火炎放射機を出力最大限で鏡吾に向かって撃ち放つ。
鏡吾はそれを見越し、瞬時に数多の鏡を周囲の空間に展開させると、その三分の二を相手に翳して業火に重ね、その全てを反射させデスファイアへと弾き返した。
「ぎゃああっ!」
炎を自由に扱えども、火炎大王自身に完全な炎の耐性があるわけではない。自身の炎を真上から浴びたデスファイアから絶叫が上がる。
その隙に鏡吾が視線を走らせれば、完全なる全員とはいかなくとも、一般人の逃亡は順調のように思われた。
炎がこちらに向いている限り、一般人にデスファイアの被害が及ぶことはない、完全なる攻撃の封殺――どこまでもつかは分からない。
しかし、鏡吾のその一手は間違いなく確かな人々の命を救っていく――。
大成功
🔵🔵🔵
地籠・凌牙
【アドリブ連携歓迎】
あんの野郎、俺の目の前で関係ない奴まで巻き込むたァいい度胸してやがる!
人命救助最優先、元々【火炎耐性・環境体制】があるが、人に影響がないようにしたいから【指定UC】を仕込んで炎を相殺できるようにしておくぜ。
炎に巻き込まれそうな人は【かばう】、発生した黒霧を煙幕代わりにして安全な場所に避難させてから反撃だ!
黒霧を全部『穢れを喰らう竜性』で喰らい、【激痛耐性】【継戦能力】と【気合い】で無理やり真っ向から突貫決めて持てる【怪力】全部込めた【捨て身】の【貫通攻撃】だ!
そのまま【グラップル】でしがみついてとにかく【傷口をえぐる】ぜ!
てめえが泣くまで殴るのをやめねえッ!!
目の前で、狂気にすら歓声を上げていた部下達ですら地獄の炎に包まれていく。
それがただの、正気を持たない敵対者達による同士討ちであれば、地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は吐き気を覚えつつも、その心に怒りを宿す事はなかったであろう。
だが、今腕に付けている『極近未来予測システム搭載型スマートウォッチ「LAKHESIS」』は警告音と共に告げる。
――この五分の間に猟兵の干渉が無ければ、次に灰になるのは広場の隅で恐怖に動けなくなっている一般人である、と。
「チッ! ああ、こんなに思い通りにならねぇのは久し振りだ!
まったく、イライラさせやがって。景気付けに、そこらに隠れてる女どもから焼き殺してやる!」
他の猟兵に向いていた火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』のターゲットが、非力な一般人へと向けられた。両手の火炎放射機が、業火の宣告を伴い、集まり震える女達へと激しい炎の赤を揺らす。
「――あんの野郎、俺の目の前で関係ない奴まで巻き込むたァいい度胸してやがる!」
凌牙は先のスマートウォッチの警告から、デスファイアの先手を取り、女達の元へと全力で駆け出していた。走りながら取り出した己のユーベルコードのトリガーとなる鵺のコインを自分の身に張り付ける。そして、叩き付けられる業火と女達との間に両手を広げて立ち塞がれば、凌牙に触れた炎は全て、黒い霧状へと転化されたエネルギーとなって誰の犠牲も出すことなく、彼と女達の姿を覆い隠すように中空に漂った。
「なっ!? オレの炎が!」
「今だ! ここなら後ろに走って霧を抜ければ、広場の出口が見える!」
凌牙の言葉に、黒霧の中で助けを得たと確信し、勇気付けられた女達がその場から走り出す。その場に残っている気配がない事を確認し、凌牙は力強くその身を反転させると、デスファイアの正面へと向き直った。
この場に漂う黒い霧は、凌牙のユーベルコードで敵の炎から転化されたエネルギー。それは同時に、本来であれば複数の生命を奪うはずであった『穢れ』の概念。
それを凌牙は空中で霧散する前に、己の固有能力である穢れ喰い――『穢れを喰らう竜性』でそのエネルギーごと喰らい尽くして呑み込んだ。
「てめぇ! 邪魔しやがって!!」
デスファイアには、何が起きたのか理解する余地はない。同時に、次の瞬間を以て理解したものは、己の放った炎の力を全て喰らった凌牙が、その強化された身体能力によって、まるで弾丸の如くこちらに向かい、弾けるように飛び込んでくる姿だった。
即座に連続して撃つ事の叶わない火炎放射の代わりに、デスファイアは通常の金属弾を凌牙へとばら撒き放つ。しかし、凌牙は己が身を傷付けながらも、その特攻の足を止めることはない。
「うぉらアァ!! これでも、喰らえェッ!!!」
弾丸の雨を抜け、デスファイアの懐に飛び込んだ凌牙が、本来ならばキャバリア用であるはずの『ブラスティングリボルブパイルバンカー』を、己が持つ黒竜の爪牙に備えられた渾身の力全てを振り切り、その胸元で炸裂させた。
デスファイアの胸中心を、巨大な鉄杭が貫いた。だが、それを受けて尚、事切れる様子なく暴れる相手に、凌牙は密着したまま離れることなく、溢れる血の流れる身に残った傷に、更なる痛みを刻み込んでいく。
「てめえが泣くまで――いや、泣いても喚いても! てめえが殺して、死んでいったヤツの思いを理解するまで――俺は絶対殴るのをやめねえッ!!」
大成功
🔵🔵🔵
柊・はとり
間に合わなくてすまなかった
飛び散る肉片と血の臭いは
幾度も目にしたがいつ見ても痛ましい
被害者達の無念を晴らす為に俺が居る
【第六の殺人】
今まで奴に殺された者達の力を借り
殺人トリックを仕掛ける
単純なすり替えトリックだ
奴の火炎放射機を放水機に変え
火炎放射をする度広場が水びたしになるようにする
自ら消火活動とは殊勝じゃないか
少しは頭冷やしたのか
挑発し俺に意識を向けている間に
奴隷達に避難しろと目で合図
手下達にも退いてろと殺気を送る
火炎放射以外の攻撃は継戦能力を活かし
致命に至らない程度に受け流れ弾を阻止
俺が来たからには誰も死なせない
お前以外な
水を浴びた敵へ全力の氷属性攻撃
こうするとよく効くだろ
頭以外も冷やしな
「――間に合わなくてすまなかった」
戦況も、見渡す広場に於いて鎬を削る場をも、見る間に変化していく中で。
柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は焼死以外の死因と分かる、己の存在に於いては見慣れるまでに到ってしまった、圧殺された人間だったものの残痕を見つめていた。
はとりは、その痛ましい残骸へ、一時静かにその青の瞳を閉じ。そして、黙祷と共に心に誓う。
――このような、被害者達の無念を晴らす為に俺が居る――と。
「ぐげは……っ。どいつもこいつも――邪魔ばかり……タダじゃ死なねぇぞ! この場の人間を皆殺しにするまでオレは死んでも死にきれねぇ!」
「――死んでも死にきれないのは、果たしてどちらだろうな?」
「何っ!?」
そこでようやく、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』が、はとりの存在に目を向けた。上半身には穴が開いているが、その下半身の戦車は再構成を繰り返し、見た目を貧相にしながらも、既に初期と変わらぬ性能を保ち直している。
はとりに向け、デスファイアの戦車が再び構成タイプを組み替える。そこに生まれたタイムラグに、はとりも己のユーベルコードを発動させた。
はとりの周囲の空間が歪む。
――デスファイアは殺した人間の顔も覚えてはいない。だが、そこに殺され現れた『被害者』達は、どこまでもその存在を覚えている――はとりは、既に相手に殺され死したる者の力をこの場に喚び起こす。しかし、己の救出が間に合わずに死した者の存在に頼ることは、はとりの探偵としての尊厳に関わる事だ。
だが、これ以上の被害を一切出さない為であるならば――はとりにとって。この名探偵としての誇りなど、いくらでも捧げる覚悟は出来ている。
そして顕界した死者達は、骸の海を介し、己が殺された以上の奇想天外とも言える行動により、自分達を殺したデスファイアの所持する火炎放射機を放水機へと切り替えた。
「何をちょこまかしてるんだか知らねぇが、全部燃やし尽くしちまえばそれまでだ!!」
デスファイアが叫ぶ。そして、組み替えられた戦車から攻撃回数を跳ね上げた炎を辺りにまき散らそうとして。
それらは、全てが水と化し。辺り一帯が水浸しとなった中で、今まで己が撒いた床の炎の残火までをも消していく。
「自ら消火活動とは殊勝じゃないか。
少しは頭冷やしたのか」
「てめぇ……!!」
デスファイアが、碌に相手にしていなかったはとりへ、溢れんばかりの殺意を向ける。
その隙を狙い、はとりは恐怖に腰を抜かしている奴隷達に視線で出口への避難を訴え。同時に状況理解の出来ていないデスファイアの部下達には、手に抜き放つ氷の大剣『コキュートスの水槽』と共に、殺気を込めた目でその存在を射抜く。
「火炎放射ばかりが全てだと思うんじゃねぇぞ!」
一時水に封じても、再度の攻撃は否定できない。しかし、即時発動はやはり難しいのか、デスファイアは火炎放射に代わり、はとりへと銃撃の雨を降らせた。
はとりは、大剣を構え奔らせた冷気のみで周囲の水を凍らせながら、一直線に敵へと駆ける。
弾丸はその身を傷付けるが、まるで脳裏の思考が導くままに、その身体は行動不可の致命傷のみを避けていく。
「俺が来たからには、誰も死なせない。
――お前以外な」
コキュートスの水槽は、はとりが駆け抜けた後の濡れた床を凍らすと共に、空気中の水分すらも凍らせ、その結晶を恐ろしくも幻想的なまでに周囲へと散らす。
はとりはそれを両手で構えると、迸る魔力を伴ってデスファイアに向け一気に振り下ろした。
一筋の斬撃が、大きな円形状に氷結の範囲を纏い、水浸しのままに稼働していたデスファイアを直撃し、その身を完全に凍り付かせて動きを止める。
「こうするとよく効くだろ――頭以外も冷やしな」
それこそ、燃された被害者の代わりに――脳髄からその臓腑に到るまで。
大成功
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レイ・オブライト
拳(突き)の起こす『衝撃波』で炎を割り裂き、一般人の避難路をつくる
通りの手下は手当たり次第のしてきた。逃げる奴隷に絡む元気もないだろう
ああ、オレとしても外野がいねえ方がやりやすい
好きに暴れられる
自身・後方へ及ぶ炎は『覇気』の『オーラ防御』で遮断
生身の小回りを活かし、戦車の側面~背面をとるよう走り距離を詰める。『悪路走破』で瓦礫等高低差ある足場を利用すりゃ遮蔽にもなるか
車体に飛び乗ると同時『枷』を巻いた拳を叩き込む
痒くもない? ハ、そうだろうよ
【UC】
一番の狙いは、戦車変形の影響を受けない、敵が背負う燃料タンクを杭で破裂させての爆発だ
火葬の手間が省けるな。初めてテメェを羨ましく思ったぜ
※諸々歓迎
先の猟兵の攻撃により、身体を白く凍り付かせた火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』から音がする。張り付いた氷が罅入る音、氷片の落下音。動きを止めていたその中で、一際大きな音がすると、その身から全身の赤々とした血と共に、氷が一気に弾け飛んだ。
「ち……っ、くしょう……!
皆殺しだ! この場には、この世界には!
――オレ以外は、必要ねぇ!! 皆燃やし尽くしてやる!!」
激しすぎるまでの雄叫びが響き渡る。受けた傷が塞がらない以上、デスファイアの命は長くないであろう。だが、それでも当人はその可能性を考えない。己の下半身を更に再構築し、その攻撃力を五倍に跳ね上げ、今にも破損の可能性を孕んだ移動力ではなく、その装甲を半減させる。
そしてキャタピラから激しい煙を上げると共に、今になって、ようやく逃げ出すだけの気力を取り戻した奴隷達に向けて、受ければひとたまりも無いであろう激しい業火を吹きつけた。
「――フン」
その様を、他の猟兵より遅れ広間に入って来たレイ・オブライト(steel・f25854)は全て目にしていた。明らかに逃げられない奴隷達を狙い済ました噴き上がる火炎放射。レイはその奴隷達と襲い来る火炎の前に身を置くと、放電するように小さな雷を纏う己が拳を握り込み、正面の視界すら奪わんとする炎に向けて正拳突きを放った。
轟。一般人の目には留まらない勢いで向けられた正拳突きは耳を押さえんばかりの激しい風圧と音を伴い、敵の炎を阻害して、レイの背後を安全圏とした脱出通路を生み出していく。
「た、助かった! あんがとな、アンタ!!」
恐怖と嘆きでグシャグシャだった顔を僅かな希望に変えて、レイの後ろを奴隷達が他にも逃げ損ねていた一般人を連れて逃げていく。――ここに来るまで。レイが遅れたのは、要塞内にいたデスファイアの部下達を、目についた手当たり次第に足腰立たなくなるまで叩きのめして来たからだ。そこに戦う力の無い一般人が通ってももはや、部下達に邪魔する勢いなど残ってはいないだろう。
「無事逃げられたら、恩返しさせてくれ! アンタは命の恩人だ!」
「――オレとしても外野がいねえ方がやりやすい。
……好きに暴れられる」
「ちくしょう、畜生――! どこまでも! どこまでもぉッ!!」
デスファイアの叫びが炎の勢いを跳ね上げる。奴隷達の逃亡の阻害となるもの、そしてレイ自身に届きかねない威力となった炎は、その両腕にある煌めく銀の鎖を、爆ぜるような音と共に揺らし広げれば、それ自体がエネルギーを伴い炎の進行を妨げた。
「その程度の鎖如きでッ!!」
冷静であれば、そこには気迫だけで人を害することも可能であろうレイの覇気が見えたかも知れない。しかし、既に怒りに我を忘れた火炎大王には、その様が見えていない。恐らく己のこれからの未来なども。
生存していた一般人の避難が、一人残らず完了する。広場に残るは無数の煤で染まった今までの戦闘で破壊され溢れた瓦礫の山。
「タダで済むと思うんじゃねぇぞ!!」
「――」
相手の雄叫びに応える義理も無い。小さな瓦礫を無視して弾き飛ばそうとも、等身にまで崩れ山積みに落ちたものは無視できないのか、それを避けようとするデスファイアの惨めさを上書きするように。レイは華麗に山積みの瓦礫に駆け上がると、それを足に掛け、弾けるようにデスファイアの下半身戦車の背後へと飛び移った。
僅かな雷光を纏い、流れる白銀の『枷』を巻き付けた右拳を打ち付ける――だが、デスファイアには反応がなく、まるで拍子抜けであるかの如く笑い始めた。
「ハーッハッハッ!! その程度、痒くもないぜ!!
どんなお子ちゃまの拳でちゅかねーッ!?」
流れる血による死の間際の昂揚もあるのだろう、デスファイアが狂ったように嘲笑う。既にそのままでも死ぬであろう致命傷は受けている。だが、放置してのんびり死を待ってやる優しさなど、誰も持ち合わせてはいないのだ。
拳にまかれていた、神聖さすら伴う白銀の『枷』――瞬間、それはレイを取り巻く百の煌めきへと散り爆ぜた。一秒にも満たない時間に、それらは鋭い光纏う杭へと変化し、拳を命中させていたデスファイアに――正確には、その相手が背負う燃料タンクに一斉に突き刺さった。
「へ――?」
何とも、悪人らしい疑問符だった。自分に何が起こったのかが分からない。だが、
――次の瞬間、レイがその場を飛び退くのと同時に、背負い続けていた燃料タンクが苛烈なまでの爆発を起こし、デスファイアを容赦なくその中に呑み込んだ。
「ギャ! なん――!」
続いていたであろうデスファイアの言葉は、誰の耳にも届くことはなかった。下半身の戦車の電子機器を巻き込み、誘爆を重ねた結果。
――最終的に、そこには何も残りはしなかったのだから。
「火葬の手間が省けるな。初めてテメェを羨ましく思ったぜ」
レイの言葉が、今確かに――デスファイア・ヴォーテックスの死を確かなものとして示し出した。
そうして猟兵の活躍により、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』はアポカリプスヘルより、その存在を消滅へと至らしめた。
戦いは未だ続く。しかし、この戦いにより救われた人々の数は多く、それに与えられた希望の数は計り知れない――。
大成功
🔵🔵🔵