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アポカリプス・ランページ⑩〜狂気の自販機チャレンジ！！

作者：バートレット

●旧テキサス州ヒューストン リンドン・B・ジョンソン宇宙センター
　かつて有人宇宙飛行の研究が行われていたヒューストンのリンドン・B・ジョンソン宇宙センター。今ではその役割は忘れ去られ、フィールド・オブ・ナインが一人、邪神ポーシュボス・フェノメノンの本懐を遂げるための施設として利用されていた。研究員は日夜自覚がないまま狂気の研究を続けており、放置しておけば危険な状態になりかねない。

　そんなある日のこと。

「ふふふ……できた……できたぞぉ！！」

　一人の研究員が自らの発明に酔いしれていた。パッと見、それは普通の自動販売機であった。だが、この自動販売機、恐るべき事に「何が出るかはわからず、しかも通常の自販機では出ないようなものもワンコインで購入可能」であるのだ。

　本来、彼が作りたかったものは「自分が望む食べ物や飲み物を、ワンコインで入手できる」というものだった。しかし、

　もちろんアポカリプスヘルで通貨という概念は失われて久しいが、実のところコイン状の物体ならば何でも良いらしい。極端な話、コーラ瓶の蓋でもOKとのことである。しかし、狂気の発明、もちろん何かが起きないはずもないのである。

●狂気の自販機、当たりが出たらもう1回……！
「まぁその、なんですか、本当に何でも出るらしいんです、その自販機」

　グリモア猟兵のジェイミィ・ブラッディバック（脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697）は複雑な感情を声色に載せて、居並ぶ猟兵相手に説明していた。

「グリモアの予知を利用して、誰かが試行するところを見たんですが、凄かったですね……こちら、出てきた物体のリストになります」

　ジェイミィはそう言うと、自販機から出てきた物のリストを公開した。

　・コーラ
　・たこ焼き
　・チキンナゲット
　・コーヒー牛乳
　・ワッフル
　・アレ系の雑誌
　・TCG「デュエリストブレイド」のカード
　・エアコンのリモコン
　・10年前のガラケーのモックアップ
　・食塩(2kg)
　・UDCアースで発売された限定品プラモデル
　・金のインゴット
　・アックス＆ウィザーズの伝承で語られる聖剣
　・↑のDX玩具版(「光る！動く！音が出る！」のキャッチフレーズつき)
　・札束
　・犬
　・ネコ
　・ワイバーン
　・F-14D スーパートムキャット
　・90式戦車
　・神(を名乗る老人)
　・UDCアースの邪神
　・自分が描かれた等身大抱き枕

「……ね？　何でもありでしょう？」

　その何でもありっぷりには思わず集まった猟兵達も仰け反るほどであった。

「で、この開発者の方、実験相手がいないと大騒ぎしていまして。まぁ、それで、実験に付き合ってあげてください」

　ある程度実験の内容が出揃えば、そのあまりにも奇妙な結果に正気に戻るだろう、と期待してのことであった。

「そう言えば、希望したものがあれば念じてみるといいかもしれませんね。微妙に出る確率が上がるみたいなことがあるかもしれませんよ」

　もちろん、統計的な根拠はないが、とジェイミィは断りを入れつつ、ブリーフィングを終えると猟兵たちを送り出した。

「いいもの、貰えると良いですな。ちなみに当たり機能付きらしいので、幸運に恵まれればさらにもう一つゲットできますよ」

　そんな、役に立つんだか立たないんだかわからない情報が追加され、ポータルをくぐる猟兵たちの表情は複雑であったという。

第1章 日常 『自販機』

POW   :    一服する SPD   :    出た物で遊ぶ WIZ   :    当たり付きルーレットじゃないか！当てよう 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●当たりが出たらもう一本……というわけではなく
「お、自販機やないか。動くモン見るのは初めてやなぁ」

　研究所に鎮座するその自販機を見て、ツキカ・アシュヴィン（星追いの渡り鳥・f24375）は快哉を上げる。アポカリプスヘルでは基本的に自動販売機は都市の廃墟に佇む残骸しか見たことが無かった彼女だったが、まさかこんなところで動く自販機に出会えるとは、と感慨にふける。

「今まではこじ開けて使えそうなモン貰っとったんよねぇ……で、こいつはコインっぽいモンを入れてボタン押せばええんやな」

　コインならちょうど拾い物がある。これを入れてボタンを押すだけという簡単作業だ。

「ほな、ポチっとな」

　すると自販機はガタガタと動き、やがて商品排出口から包装された銃弾のパッケージが出てくる。ちょうど自分の銃で使えるものだ。

「お、ええモン出たやん！　そろそろ補充せなあかんな思とったから丁度良かったわー」

　喜びの声を上げながら弾薬のパッケージを取るツキカ。すると、キンコーン、と鐘の音がなる。

「おめでとうございます、大当たりが出ました」
「おっ、ラッキーやな。ってことは銃弾がもう一箱貰えるんかな」

　その予想は外れる。再びガタガタと動いた自動販売機からは……ほかほかのフライドチキンにハンバーガー、ポテトとよく冷えた紙コップ入りのコーラというセットメニューがファストフードの如く、トレーに乗って出てきた。

「……待て待て待て待てーい！」

　唐突にバリューなセットが自販機から出てきて焦るツキカ。

「いやどっから突っ込めばええねん！　銃弾買うて大当たりがファストフードのお得セットってどういうこっちゃ！　……ん？　大当たり？」

　唐突に思い返す。グリモア猟兵は「当たり」としか言っていない。即ち、本来のアナウンスは「当たりが出ました」の筈なのだが、今聞いたのは「大当たり」。

「……まさか、大当たりになると微妙に豪華になるんかこれ」

　ホットスナックの自販機があるというのはUDCアース出身の猟兵から聞いたことはある。恐らく当たりの場合はフライドチキンかハンバーグのどちらかが出るのだろう。しかし、大当たりを引いた彼女はこうしてファストフードのセットメニューを手にしている。つまり、微妙に豪華な形で出てくるらしい。

「ラッキーなんやろうけどなんか釈然とせぇへんなぁ……ま、折角やし腹ごしらえ、するかぁ……いただきます」

　手近にあったテーブルに腰を下ろすと、トレーを置いてもぐもぐとフライドチキンを頬張る。ふつうに美味しい。

「……銃弾とホットスナックが一緒の自販機から出てくるとか、よう考えたらこれ……カオス過ぎへん……？　しかもファストフードみたいな形態って。どないな理屈で出来とるん……？」

　ハンバーグもフライドチキンもポテトもコーラも美味しかったのだが、それはそれとして釈然としないもやもやが頭をもたげて仕方がない。うーん、と首をかしげながら、腹を満たしたツキカは銃弾のパッケージを片手に立ち去るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●ニアピンって一番どう反応していいかわからないよね
「聖剣がもらえると聞いてきた」

　鼻息荒く自販機の前に立つアディリシア・オールドマン（バーサーカーinバーサーカー・f32190）。

『アディ……』
「止めてくれるなダフネ」

　何か言いたげな別人格の狂戦士・ダフネを遮って早口気味にまくしたてるアディリシア。これではどちらが狂戦士なのかわからない。

「コイン一つで聖剣が手に入るなど、お得だぞ？　よしんば聖剣でなくても魔剣や妖刀、不思議な武器なら大成功だ」

　アディリシアのその弁に、ダフネは盛大に溜息を一つついた。

『たぶんね、そう狙い通りでないと思うよ？　ジェイミィさんのリスト見たでしょ、食べ物とか飲み物とかいっぱいあるよ？』

　狙い通り武器を引き当てる確率はそこまで高いものでもない。それにもしエラいものを引き当ててしまったらどうするのか。ワイバーンとか。

「知ったことか。何も考えず、無心で挑めばガチャは出る」
『欲望にまみれてるから！　下心に満ち溢れてるからね！？』

　もはやアディリシアを止めるものは何もない。自販機を作り出した研究員もハラハラしながらやり取りを見守っていたが、勇んで自販機の前に立ったアディリシアを見て、おずおずと実験用のコインを渡した。

「と、とりあえずこれを」
「あぁ！　見ていろ研究員！　ワンコイン投入、行くぞ自販機ッ！　うおおおお！！」

　研究員からひったくるようにコインを受け取り、自販機に投入、裂帛の気合とともにボタンを押した。

　すると、ゴージャスな聖剣……型のキャバリアソードを装備した量産型キャバリア「オブシディアンMk4」が出現。

「……なんだろう、コメントに困るな。私が扱うのではなくキャバリアが扱うのか」
『そもそもあの剣本当に聖剣なのかどうなのか』

　首をかしげながらも、ひとまずそれっぽいのは手に入れた、ということで良しとしよう、という結論に達するアディリシアであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●当たらないなぁと思ってると、意外と当たるもんです。
「えっ、何でも……ですか？いいんですか？じゃあ……これからの戦いに備えて自分用のキャバリアが欲しいんですが……当たるかなぁ」

　自分でも扱える汎用性の高い量産型でいいんです、と手を合わせる二條・心春（UDC召喚士・f11004）。早速研究員から実験用のコインを受け取りボタンを押すと……。

　当たってしまった。それも予想より豪華なものが。

　あからさまにワンオフ機。出自不明のクロムキャバリア、即ちハイエンド機が手に入った。しかもなんと心春のために誂えたかのようなシートと操作性を完備する、ほとんど専用機状態。

「わ、わー……やったー……！　え、でもこれ、えっ、どうやって持ち帰りましょうか。乗っていくしかないのでは？」

　あまりのことにテンパっていると、ふと頭をよぎる「当たり」の件。つまりもう一度キャバリアが出てくる可能性もあるわけで。

「いや２台も要らないし持ち帰れないですよ！　お願いですから当たらないでくださいね！？」

　その祈りも虚しく、ファンファーレが鳴り響く。

「おめでとうございます、当たりが出ました」

　声にならない悲鳴を上げる心春。

　だが、次に出てきたのは。

「……本、ですね。あれ？　当たりって再抽選なんですか？　同じものがもう一本出るわけではなく？」
「本来そのつもりだったんですけど、何故か違うものが出てくる仕様になっちゃいまして」

　研究員が頭をかきながら説明する。心春が獲得したのは普段通っている大学のレポートを書く時、参考図書として欲しいと思っていた学術書だった。なんかラッキーだったな、と思いつつ、何故UDCアースの書籍がこんなところで手に入ったんだろう、と首を傾げながら、研究員に研究所の裏手のグラウンドを借りる許可をもらい、キャバリアの操縦練習を始めるのであった。

「持ち帰るためには、とりあえずこれを乗りこなさないと……！」

　新たなキャバリアパイロットの爆誕である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●全ては、そう……クッキーなのだ
「フム、コイン形状ならなんでもOKと。ではコレでも」

　ルキヴァ・レイヴンビーク（宵鳴の瑪瑙・f29939）は1枚のクッキーを手に自販機の前に立っていた。彼の脳裏によぎるのはもう半年以上も前にカクリヨファンタズムで発生したクッキー騒動。何を隠そう、今彼が手にしているのはあの時生成されたクッキーの1枚なのである。結構物持ちが良かったらしい。

「何が出て来マスかね」

　鼻歌交じりでクッキーを投入すると、何やらハイテンションな音楽が。俗に言うEDMと呼ばれるジャンルの音楽である。

「ジュークボックスでしたっけ、これ」

　首を傾げながらも、押せとばかりに約1680万色に輝くボタンをポチッと押す。するとどうしたことだろう、デジタル表示が突然「７７７」になったかと思うと、大量のクッキーの「払い戻し」が発生した。目の前にこんもりと積み上がるクッキーを見て、流石のルキヴァも目を丸くする。

「Why......！？　……これ、ベガスのホテルでルックしたアレに似てますが」

　これは当たったと言えるのだろうか、いや、しかしなんだかクッキーを吐き出す瞬間あちこちのライトが派手に点滅を起こしていたので当たっていたのだろう。そう思考を進めたルキヴァは山から再びクッキーを拾い上げると、もう一度クッキーを投入。今度は昔なつかし、昭和の日本におけるパチンコ店でよく流れていた軍歌のアレンジBGMが流れ出す。

「せめてアニソンになりマセンか」

　ノスタルジックなBGMに文句をつけながらも、再びゲーミングな色に輝くボタンを押す。すると再び「７７７」の表示が出た後、「Bonus Multiplier」の文字が流れ出し、ついで表示されたのは「x1000」。即ち、何らかのボーナス条件を満たし、通常の払戻に1000倍の補正がかかることになる……ということで。

「あ、またクッキー出て来…ちょ、多過ぎ――！？」

　再びジャックポットを見事引き当てたルキヴァは、自販機から止めどなく排出される大量のクッキーの山に飲み込まれ、そのまま研究所の外へと運び出されていくのであった。その時、ルキヴァの耳には老婆の笑い声が何故か聞こえていたという……。

※排出されたクッキーはスタッフが、そしてスタッフでも間に合わなかったのでポーシュボス・フェノメノンご本人が呼びつけられ皆で頑張って美味しく頂きました

大成功 🔵​🔵​🔵​

●マッドサイエンティストは自販機がお好き
「何ですかその自販機内部で物質生成しているのでしょうかコンコンコンにも通じるものがむしろこの自販機が欲しいのですが」

　早口でまくしたてる水鏡・怜悧（ヒトを目指す者・f21278）を構成するいち人格にして科学の徒、ロキ。しかし当然ながら、自販機を所望するというロキの願いは研究員から丁重にお断りされて敢え無く散る。

「ダメですか。仕方ありません……」

　表情こそ平然としているものの内心の落胆が隠しきれず、肩を若干落としている。声色もどこか暗い。だが気を取り直したかのように頭を振ると、きっ、と前を見据えた。

「では……アポカリプスヘルのヤバイデータが入ったデータ端末を所望します」

　宣言し、UDC液体金属を円形に形成してコインとする。それを投入し、ボタンを押した。すると、ガタガタと音を立てた後、ひとつの小型記録媒体がコトン、と商品排出口から出てくる。

「おっ、何やら興味深そうなものが」

　データを検めようとその記録媒体を手に取る。特にその後は商品が排出される気配はない。当たりは引かなかったようだ。

「どれどれ……研究員さんも一緒に見ますか」
「拝見しましょう」

　まず見つけたのは、デス・バレーの研究所で研究されていたコンピュータウィルスのソースコードだった。どうやら、「禁断のコンピュータウイルス」の試作品のようだ。他にも、別の研究所で調査されていた試製型偽神細胞の設計図と実験記録なども入っている。

「あー、これ聞いたことあります。この培養方法だと高温環境下では偽神細胞の固着化が出来ずに崩壊してしまうんですよ。この問題が解決できずにアプローチ方法を変える結論に達したようで」
「ふむ……成功例に迫る成果は挙げているんですがねぇ」

　研究員の解説を受けて先へ進む。他にも、スーパー戦車のAIの一部を構成するプログラムに関するソースコードなどが見つかる。

「色々と役立ちそうなデータでしたねぇ」

　ついでに自販機の内部解析も試みてみたが、肝心要の部分はロキでも読み取れないほどに厳重なブラックボックス化が行われていた。研究員にも理論を聞いてみたのだが、途中から狂気に取り憑かれてしまったのか、無我夢中で内部機構を構築しており、肝心要の部分は後から自分で再現しようにも出来なかったのだという。

「どうしてこうなったのか……」

　ロキは困惑している研究員から、彼が辛うじて遺していた手書きのメモのコピーを貰った。研究員も「何かわかったら連絡してください」とロキの頭脳に全てを託し、頭を下げる。ここから謎を解いていくのも悪くはない、とロキはメモのコピーを手に、探究心に火をつけたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●ホットスナックの自販機っていいよね
「……この自販機、なんかやばいアーティファクトじゃないのかい？」

　何でもランダムに出てくる自販機。そのヤバさに震える藤・美雨（健やか殭屍娘・f29345）はしかし好奇心と義侠心を胸に、自販機の前でコインを持って立っていた。

「ま、錯乱してる人を助けられるなら挑む甲斐もあるだろう……流石に命の危険はないよね……？」

　一抹の不安はあるが、それでも、とコインを投入する。

「ここは無難に『たこ焼き』をお願いしようかな。ホットスナックの自販機ってこう……ロマンがあるじゃん……！」

　UDCアースやヒーローズアースで見かけたホットスナックの自販機。加熱中のワクワク感や、ホッカホカの温かい商品を取り出す時の高揚感は計り知れないものがある。そんな期待を胸にボタンを押す。

　ガタガタ、と自販機が動き、出てきたのは……。

「あっ、惜しい！　でもこれはこれで！」

　出てきたのはお好み焼き。一応タコが入っているらしく、その意味では本当にニアピンであった。しかしその後、「おめでとうございます、当たりが出ました」のアナウンスとともにガタガタと音を立てて出てきたのは……。

「……これ、どうしよう」

　なんとペルシャ猫であった。見たところ普通のペルシャ猫であり、自販機から出てくるなり優雅に毛づくろいをしている。

「あ、でしたら私が引き取りますよ。ちょうどペットが欲しかったもので……研究中の心の癒やしがね」
「そうかい？　じゃあ、この子は任せるよ」

　運良く引き取り手が見つかり、ほっと胸をなでおろす美雨。もしもワイバーンとかが出てきたらどうしようと内心で思っていた。

　お好み焼きを頂いて、腹ごしらえもばっちりだ。美雨は研究員とペルシャ猫に別れを告げると、次なる戦場に向かうべくその場を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●新たな助手、そして
　何でも出てくる自販機。ただし中身はランダム。そんなブツにリーゼロッテ・ローデンヴァルト（リリー先生って呼んでよ・f30386）が飛びつかないわけがない。

「愉快な自販機だねえ、愉しませてもらうよ♪」

　「ゴールド・セキュア」で供出したプラチナ貨を投じ、彼女が念じるのは。

「自我を持ち情報処理優秀な、可愛い女子型アンドロイドが欲しいなぁ……コレは研究員もビビるかな？」

　と、ある意味欲望ダダ漏れな要求であった。そんな強い思いが通じたのか、次の瞬間排出口からすぽん、と出てきたのは……。

「おぉ～っほっほっほっほっほ！　よくぞわたくしを引き当てましたわねぇ！！　このスーパーアンドロイド『ギガ・アトランティックGX-3』のご主人さまは貴女ですわね！！　ユーザー登録が完了しましたわよ！！」

　ゴージャスなドレスに身を包み、金髪ストレートで吊り目の美少女が姿を表した。ご主人さまとリーゼロッテに従う素振りを見せてはいるものの、めちゃくちゃハイテンションで高飛車なお嬢様と言った性格設定がどことなくミスマッチ感がなくもない。スペックを聞き出してみれば情報処理能力は抜群。

「お嬢様なのにご主人様って呼んでくるのか……」

　唖然としながらもスペックデータには満足気に頷く。

「しっかしまぁちんまいですわねぇ！　食生活は大丈夫ですの！？　何だったらわたくしが何か作って差し上げますわ！」

　ついでにオカン属性、妙に世話焼きときている。

「ちんまいは仕方ないでしょ、これちょっとした事故なんだから」
「まぁまぁお気になさらないで！　これからは3食きっちり面倒を見て差し上げますわよ！　万事このギガ・アトランティックGX-3にお任せあれ！」

　愛でるつもりが、逆になんか愛でられそうだ。その、子供の世話的な意味で。引きつった笑みを浮かべながら、リーゼロッテはギガ・アトランティックGX-3(当人希望愛称：ギガお嬢様)にずーりずーりと引きずられていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●その発想はなかった byグリモア猟兵
「自販機っていうか、当たりつきガチャってことかな。何が出てくるか解らない、ということは……一攫千金の可能性もあるってことだよね！」

　期待に心を膨らませる月灘・うる（salvage of a treasure・f26690）。トレジャーハンターの彼女は、持ち前のチャレンジ精神でこの狂気の自動販売機に挑む。そして、彼女の頭脳はひとつの名案を生み出してしまったのだ。

「このガチャでユーベルコードの『ゴーイング・マイウェイ』使ったらどうなるんだろう？　ワンコインで当たり連打とかなっちゃうんじゃないかな！」

　恐ろしいことを考えるものである。そう、金貨を代償にしてあらゆる行動に成功するという、今この時においてまさにうってつけのユーベルコードを彼女はこれから使おうというのだ。自販機の神様が震え上がっている。

「ふだんあんまり使わないし『クリーピングコイン』をあるだけ使って、100連ガチャとかやっちゃうよー！」

　コインをどう代償にするかと言うと、それはもう簡単である。目の前に投入できる機械があるではないか。最初の1回はコインをきちんと入れて、ボタンをポン。たちまち金貨が100枚に増える。さらにポン。今度はUDCアースで売れば時価数千万円はくだらない上質な宝石が。以降、チャレンジするたびにスペースシップワールドの希少性の高い宇宙船のパーツであるとか、クロムキャバリアの高級機体であるとか、アックス＆ウィザーズの伝説の宝玉であるとか、各世界のお宝がザクザク増えていく。

「売り切れまで行っちゃうよー！」

　そんなわけで、気づけばうるの周辺は各世界の数々のお宝で溢れかえり、うるは高笑いが止まらない。研究員はラインナップの数々を見て完全に正気に戻り、「次は再現性の高いものをきちんと作ろう」と固く、固く心に誓うのであった。

　なお、その後。

　うるが各世界を飛び回ってお宝の数々を換金した結果、一部世界では微妙に世界経済に影響を与えたとか与えてないとかいう事態も発生したが、それはまた別のお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年09月15日