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アポカリプス・ランページ⑩~健全な心体は食事と睡眠から

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●邪神パワーがあれば不眠不休無飲無食でも365日働けます
 アメリカ航空宇宙局、通称NASAの宇宙センター跡地。

「ははっ……今日で365連勤目だァ……光栄だなァ……」

 最早にごりきって死んだ魚どころか加熱調理された魚の目をしたような研究員たちがせっせせっせと働いていた。
 そう、彼らは邪神『ポーシュボス・フェノメノン』の支配を受けた奴隷研究員。
 邪神に尽くすことこそを誉れとせよ、研究を完成させて安寧の地へと向かうべし――そんな洗脳によりこうして不眠不休で酷いとこの研究員のように丸一年働いている。
 なんで生きてるのかは全部邪神パワーのせいって言ってしまえば解決できるからタチが悪い。

「腹減った……腹減った……?どういう感覚だったっけ……」

 生かされている以上腹は鳴り続けるというもので、宇宙センター内にはそれはもうクソデカい腹の音が鳴り続けるが、それも気にも留めることなく研究員たちは研究を続けていたのである――。

●カオスを越えて終末が近づくかの如きブラック企業の有様
「にゃーん、こんなのひどいよう、けんきゅーいんさんたちがかわいそうだよう……」

 あまりにも、あまりにもブラックどころではない奴隷研究員たちの有様を予知したエインセル・ティアシュピス(生命育む白羽の猫・f29333)は今にも泣きそうな顔をしていた。
 人を人とも思わぬあまりにも残酷な仕打ちに心を痛めている。

「せんのーをといてもこのままじゃみんなたおれちゃうにゃーん。
 だから、なんとかけんきゅーいんさんたちにおいしいごはんたべてもらって、おふとんでおやすみしてもらわにゃいとなの!」

 確かに邪神パワーで生かされているとはいえ、単純に目を覚まさせるだけではそのまましめやかに過労死サヨナラ待ったなし。
 無事に救出できるようにする為の体力を蓄えさせる必要があるだろう。
 でも365勤もしてる普通の人間がそれで耐えられるか???という疑問も湧くことだろう――だが、それを何とかできる可能性を秘めたのが猟兵たち埒外の存在の持つ力であろう。
 無茶を言うなって?いやできなくはないですよ猟兵だもん。

「あっでもね、ずーっとたべてなかったらいきなりがつがつたべるともどしちゃうってきいたにゃーん。
 だからおなかにやさしいおりょうりだといいかも……?でもせんのーをとくまえならたべられるかにゃ?
 でもとにかく、おいしいごはんたべてふかふかおふとんでぐっすりしたらきっとげんきになってじゃしんのせんのーもときやすくなるはずだよう!」

 何も摂っていないということはその分精神も疲弊しているということなので、身体共に癒すことが何よりも重要だ、と言いたいらしい。
 健全なる魂は健全なる肉体と健全なる精神に宿ると言うし、あながち間違いではないかもしれない。
 何せこんな世紀末の世界で生きている人々なのだから。

「でもねでもね、アポカリプスヘルはあんましたべものいーっぱいもってくるとオブリビオン・ストームがごわーっておそってくるから、もってくたべもののかずにはきをつけてにゃーん!」

 猟兵たちの接待スキルが今、求められていた。


御巫咲絢
 ※このシナリオは飯テロ睡眠テロシナリオです。
 毎度ご飯が絡むシナリオではその都度検索してレシピ等を確認してから描写しています。
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます、初めましての方は初めまして御巫咲絢です。
 シナリオ閲覧ありがとうございます!御巫のシナリオが初めての方はお手数ですがMSページもご一読くださると幸いです。

 流石早期決着推奨なだけあって流れが早い!遅筆ですがなるはやで終わらせられるように頑張ります。
 というワケで戦争シナリオ3本目でございます。ブラック企業どころか最早混沌(カオス)企業じゃねーかという有様から研究員たちを救ってあげてください。
 人間おいしいご飯とふかふかお布団があれば生きていける(?)!
 研究員たちは邪神の洗脳パワーにより、疲労困憊ではあるもののご飯は問題なく食べられる程度の状態に保たれているので何でも食べさせてあげて大丈夫です。
 たっぷり食べさせてあげた後ぐっすりと眠れば、こんな世紀末の世界でも生きているアポカリプスヘルの人々なので自我をすぐに取り戻すでしょう。

●シナリオについて
 当シナリオは『戦争シナリオ』です。
 一章で完結し『アポカリプス・ランページ』の戦況に影響を及ぼすことのできるシナリオとなっています。
 また、このシナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。

●プレイングボーナス
 研究員の狂気を取り除く。

●プレイング受付について
 現在執筆中のシナリオに目処がついてから受け付ける予定の為、『9/7(火)8:31』より受付とし、締切は『クリアに必要な🔵の数に達するまで』とさせて頂きます。
 日常フラグメントの為、最低ご案内人数は『3名様』、それ以降は不採用の可能性がございますのでご了承の上ご投函をお願い致します。
 また、期間前の投函は全て失効をもってご返却させて頂きます。お気持ち変わらなければご再送をお願いします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ち致しております!
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第1章 日常 『さあ何を作ろうか』

POW   :    得意料理を振舞う

SPD   :    想い出の料理を作る

WIZ   :    自分の好きな食べ物をご馳走する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御園・桜花
「子供の頃から食べ慣れたもの、匂いが1番食べられそうな気がします」

何処へ山籠りに行くんだ?と言われそうな大型リュックで参加
目につくのは大型寸胴鍋3個を無理矢理結んでる辺り…
「此れでも、材料は厳選したんですよ?UCで量は増やせますから」

「アメリカの方はチキンヌードルスープ、東洋の方はお粥が多いと聞きました」
UC「花見御膳」使用
ヌードルをパスティーナに変更したチキンスープと三分粥作成
なお粥は中身を魚粥とアロスカルドに変更
どれも大型の寸胴鍋一杯に作って一個ずつ運ぶ
何れも【状態異常:精神】に対する治療効果付き

「一杯食べて、休んで下さいね」
振る舞ったら皆ベッドへ
子守唄歌いながら軽く背中を叩いて回る


ウィーリィ・チゥシャン
料理は魔法!
元気も、笑顔も、作り出す!

魚介類を具にし、大根おろしを溶かした胃に優しいスープを作り、その匂いで彼らの食欲を思い出させて胃を開かせ、そしてスプーンでスープを口に運ぶ。
まずは彼らの胃の調子を整え、食欲を喚起させる。
ある程度調子が戻って来たら今度は具も食べさせてやる。
これが食べられるようになれば他の猟兵の用意した食事も食べられるだろうから。



●思い出を想起させ、笑顔を生む一番の魔法
 宇宙センター跡は比較的他の施設と比べると状態が非常にまともな方であり、室内設備も比較的以前の文明の名残が見受けられる。
 設備もそれなりに生きており、大人数の奴隷研究員たちがそれぞれ別室で分類は違えど目的を共通とした研究を行っていた――。

 「よいしょっと」

 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はその研究室のうちの一つにたどり着くとよっこいしょ、と背負っていたリュックを下ろす。
 ……あの、山籠りにこられたんですかってぐらいでかくないですかそのリュック。
 特に目につくのがリュックに結んで持ってきた大型の寸胴鍋、しかも3つ。3つである。
 オブリビオン・ストームが発生しないギリギリまで積み込んできたというのが一目見てわかるが……その、重くないです?
 時を同じくして訪れたウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)も流石に華奢な外見の女性がこんだけドでかいリュックに鍋をひっかけてもってきたことには目を丸くした。

「よくそんだけ持ってこれたな?」
「これでも、材料は厳選したんですよ?ユーベルコードで量は増やせますから」
「そうだな、ちゃんとした食材でうまいもん作ってやんねえと。料理は魔法だからな!」

 そう、どんな状況下であれど、たった一杯のスープが元気も笑顔もあっという間に作り出す。
 研究員たちの狂気を取り除くことだって造作もないのだ。

「さて、まずは彼らの胃の調子を整えてやんないとな」

 いくら邪神パワーで問題なく食べられる状態とは言え、いきなりがっつりは胃がびっくりするもの。美味しく食べてもらうならばまず元気にならねば始まらない。
 ウィーリィはユーベルコードも使ってぱぱっと手早く調理を始めた。
 その手際はそれこそ動体視力に優れた猟兵では見られぬ程の早業だが、手順としてはこうである。
 まずは鍋に大根おろし、水、中華スープの素を適量入れて大根おろしを溶かした後に、小さく切った鱈の身、それからえびをすり身にして作ったつみれを入れて塩等で味を整えた後、仕上げに溶き卵を入れてネギを乗せる。
 鱈とえびの旨味たっぷりでかつ胃に優しいスープの出来上がりだ。
 その場で調理されたスープの匂いは研究室に広がり、妄執にとりつかれたかのような研究員たちの鼻孔を程良く刺激する――!

「……何だ、この匂い」
「いい匂いがするな……ああ、何か腹減ってきた……」
「…………あれ?そういや俺たちいつから飯喰ってないんだっけ……」

 先程までブツブツと何かを言いながら死んだ目で研究していた研究員たちの瞳に光が戻る。
 一斉に匂いのする方向を向き、匂いに導かれるかのようにふらふらとこちらへやってきた。
 ウィーリィが笑顔でスープを皿によそって研究員たちに差し出すと、見たのはいつぶりだろうかと言わんばかりに目を輝かせ始める。

「す、スープ、スープだ……!た、食べていいのか……?」
「もちろん!お腹を空かせた奴は放っておけないからな」
「ああ……ありがたい……!」

 研究員たちが各々スープを受け取り、スプーンで掬って一口。

「……う、うま……うまいっ……!!」
「ああ……スープってこんな味だったな……!懐かしい……!」
「おかしいな、あまりにものうまさに寄せては返す波の音が聞こえてくるようだ……」

 あっさりと、かつしっかりとした味わいが胃を癒し、今まで眠っていた食欲を呼び起こす――!
 最初はちまちまとスープをすすっていたのが、最早ごくごくと最早皿に直接口をつけて飲み干すかのように口にしていく研究員たち。
 そんな彼らの腹の虫は勢いよく鳴いていた。胃の調子が戻ってきたと見て良さそうだ。

「お、おかわり……は、ある、のか?」
「ああ、もちろんだ!今度は具もつけるぜ」
「具!?具があるのか!?」

 おかわりとして注がれたスープは鱈の身とえびつみれが入っており、早速研究員たちはそれを貪るように食べる食べる。

「ああ!うまい!おいしい!魚なんて食べたのいつぶりだ!?」
「鱈もこのすり身を丸めた……つみれ、だったっけか?どれも柔らかくてほろほろと溶けていくようだ……!」

 がつがつ、もぐもぐと食べる研究員たちは皆今まで死人のように真っ白だった肌に色が戻り、活力を取り戻し始めている。

「よし、もう大丈夫だな!これが食べられるようになれば桜花の用意した食事も食べられるだろう」
「ま、まだあるのか!?」
「はい。たくさんご用意しておりますよ」

 ウィーリィと入れ替わるように調理を初めていた桜花。彼女もまたユーベルコードを使用し神業とも見紛う速さで仕上げていく。

「子供の頃から食べ慣れたもの、匂いが一番食べられそうな気がします。アメリカの方はチキンヌードルスープ、東洋の方はお粥が多いと聞きました」

 チキンスープは鶏むね肉をさっと水洗いし、寸胴鍋に入れて茹でて取った鶏ガラスープに先程茹でた鶏むね肉を解したものとセロリ、人参、玉ねぎを乱切りにしたものを入れてじっくりことこと煮込んだ後、パスティーナを入れて柔らかくなるまで煮る。
 粥は2種類用意した。
一つは米と水、中華スープの素、生姜、ねぎの青い部分、少量の酒、水気を取った鯛を入れてコトコトと煮込んだ魚粥。
もうひとつは塩胡椒で味付けした鶏肉とにんにく、たまねぎをオリーブオイルで炒めた後、水とナンプラーを加えて煮立たせた後ご飯を米の形がなくなるまで煮込むフィリピン式お粥のアロスカルドだ。
 そのどれもが先程のスープに勝るとも劣らぬ良い香りで研究員たちの食欲をこれでもか、これでもかと刺激した。

「さあ、どうぞ召し上がれ」

 桜花がにこやかに皿に注いだそれを、研究員たちは早速手に取った。
 それぞれ無意識に己の出自に近いものを選んだ辺り桜花が聞いた話は本当だったようです。
 早速研究員たちがそれぞれを口にすると……

「……ぐすっ。母さんが昔作ってくれたお粥と同じ味がする……!!」
「このスープ、ママがいつも私が風邪引いた時に作ってくれてたのよね……ううっ、懐かしい……」

 懐かしき母の味を思い出して咽び泣きながらがつがつ、もぐもぐ。
 あまりにもがっつくので、柔らかめとはいえど喉を詰まらせないようにと桜花は微笑みながら研究員たちに水を配っていった。

「いっぱい食べて、休んでくださいね」
「ありがとう……ありがとう、どこの方かは知らないが、二人のおかげでご飯がこんなにおいしいことを思い出せたよ……!!」
「喜んでくれて何よりだぜ。足りないならまだまだあるからたくさん食べてくれよ!」

 研究室のひとつから狂気が消え、満面の笑顔で満たされた。
 その後、彼らは用意されたベッドに寝かされ、子守唄を歌う桜花に優しく背中を叩いてもらいながら爆睡したという。
 「まるで聖者と聖母が同時にやってきたようだった」と後に語ったとか、どうとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

備傘・剱
ふむ、正気を取り戻させる飯を作ればいいわけだな?
ならば、やって見せようじゃないか
飯屋の実力、見せてやるよ

ある程度の元気はあるとはいえ、疲労困憊ならば、疲れをとる食事の方がいいだろう
鶏むね肉って、この世界なかったから、前に狩ったオブリビオンの蜥蜴の胸肉で代用して、蜥蜴つくねを作ってみよう
と言うわけで、調理開始、発動!

アポカリプスヘルでまともな料理を作る事ができるだなんて、今までのうっぷんが晴れる気分だ!
地産地消で世界にも優しく、研究員たちのお腹も満たせる、そう、オブリ飯とは、そういうものなのだよ!

酒もあったら、リラックス効果もあるから、俺が持ってきてるのを飲ませてあげよう

アドリブ、好きにしてくれ



●古今東西オブリ飯・アポカリプスヘル編
 先程の二人が訪れたのとはまた違う区画の研究室。
 備傘・剱(絶路・f01759)もまた、オブリビオン・ストームにひっかからない程度の食料を手に訪れ、正気のない研究員たちを目の当たりにする。

「ふふ……ポーシュボス様に栄光を……ふふふ……」

 と自らを洗脳した邪神を崇め、何かしらの怪しい液体を調合したり何か――最早形を成していなさすぎて何かとしか言いようがない――にそれをかけて経過を見たり。
 完全に皆が皆正気とは程遠い顔で、目にはどでかい隈を作って研究を続けている……

「ふむ、正気を取り戻させる飯を作ればいいワケだな?……ならばやってみせようじゃないか」

 飯屋としての実力を遺憾なく発揮するべきと劔はやる気に満ちていた。
 ここで正気を取り戻せる程の美味い飯を作れずして飯屋を運営する資格なし――とまでは流石に大げさだが、腕の見せ所としては十二分である。
 して何を作ろうか、思案する。

「(……ある程度の元気はあるとはいえ、疲労困憊ならば疲れを取る食事の方がいいだろう)」

 と思い劔が目をつけたのが鶏むね肉。
 鶏むね肉は同じ鶏肉であれど、鶏もも肉に比べると低カロリーにも関わらずタンパク質が100g辺り22.3gと多い。
 さらに抗酸化や疲労回復に効果があるというイミダペプチドを何と1223mgと鶏もも肉のおよそ26倍の量含んでおり、鶏むね肉100gを二週間食べ続けるだけで脳の疲労回復に効果があると言われているめちゃくちゃ優れものの肉なのだ。
 ――が、アポカリプスヘルには残念ながら鶏むね肉というものの存在が文明の崩壊と共に彼方に消え去ってしまっている。
 なので、劔が取り出したのは以前狩ったオブリビオンの蜥蜴の胸肉であった。

「これで代用して、蜥蜴つくねを作ってみよう。オブリ飯の神髄見せてやるぜ」

 【調理開始】、発動――!
 そう、劔が最も得意とする料理は自らが経営する遺跡酒場の名物オブリ飯――オブリビオンを食材とした料理である。
 まずは蜥蜴胸肉を細かく切り、みじん切りにするかのように包丁でとんとんと叩く。
 ねっとりしてかつ柔らかくなれば頃合いだ。

「アポカリプスヘルでまともな料理を作ることができるだなんて、今までの鬱憤が晴れる気分だ!」

 と、非常に生き生きとした表情で蜥蜴胸挽き肉に卵白一個分、長ネギのみじん切り、おろししょうが等の材料と調味料、少々の油を加えてねばりが出るまで混ぜて肉だねを作る。
 次にラップの上に出来上がった肉だねを広げて竹串を起き、ラップごと持ち上げて竹串を包むように三角形に仕立ててフライパンでこんがり焼く。
 焼き上がった後に取り出して醤油ベースのとろみのある甘辛タレを煮立てて作り、そこにさっとくぐらせればお手軽おいしい蜥蜴つくね串の完成である。

「地産地消で世界に優しくお腹も満たせる――そう、オブリ飯とはそういうものなのだよ!」

 そう豪語する劔の手際、他の猟兵に勝るとも劣らぬ早業としか言いようのない無駄のない動きであり、あっという間に研究室内を美味しいお肉の匂いで充満させた。

「こ、この匂いは……」
「肉だ……肉があるぞ……!?」

 研究員たちは匂いに導かれるかのようにふらふらとやってきて、蜥蜴つくねを迷いなくその手に取る。
 串に刺している為タレで手が汚れることもない白衣にも優しい仕様。世界に優しいオブリ飯なのだから、当然片手間に食べるといった風に服も手も汚さない食べ方ができるのも当然だ(?)。
 手に取るやいなや早速ぱくりと一口食べれば、噛めば噛む程タレに絡んだ蜥蜴胸肉の旨味と肉汁がじゅわ……っ!と広がり、研究員たちの目がきらきらと星のように輝き始める!

「う、う、うまい……っ!何だこれ、こんな美味い肉料理食べたの初めてだぞ……!」
「何だこのうまさは!噛めば噛む程酒が飲みたくなってくる……!」
「飲むか?」

 流石飲み屋の店主、客に振る舞う酒の準備に抜かりがない。
 手持ちのスキットルから蒸留酒をステンレスショットに注ぎ、研究員たちに手渡す劔。
 もちろん、好きに割って飲めるようにミネラルウォーターもセットである。

「んぐ、んぐ……ぷはーっ!!美味い!!生き返った気分だ!」
「酒なんて飲むの何年ぶりだろう……ああ~、沁みるぅ……」

 酒の持つリラックス効果により、すっかり今までの緊張やこわばりが解れたかのようにふにゃふにゃになっていく研究員たち。
 心行くまで食べて、飲んで、心もお腹もいっぱいになった研究員たちは自然と眠気に誘われ、各々の寝袋や毛布に包まって寝息を立て始めたのだった。
 次に目が覚めた頃には完全に狂気から解放されていることだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーゼロッテ・ローデンヴァルト
※アドリブ絡み歓迎ギャグ可

愛麗絲(アリス)、出番だよ
※ユベコ起動、外見は挿絵準拠

「ハイ!お料理ならワタシにお任せ下さい♡」
薬膳料理は最適だし【マゲイロス】も準備万端♪

「アレ?お姉さま、食料が…」
エインセルきゅんが『だいじょーぶかにゃーん…』ってね
水や調味料以外、前同様に大半降ろしたよ
※『Evol Evange』一章より

ま、心配無用さ
(カチッ)『マトリクス!』

【マトリクス・メモリ】で施設中庭の土や池に
『豊作の発生源』『豊漁の発生源』構築
過程無視のソレで新鮮な野菜・穀類&魚介類確保
肉類はアタシが近隣で狩るさ(愛機に搭乗)

「ハイ!ああ…ステキです、お姉さま♡」

あ、エインセルきゅん達のおやつも頼むよ♪



●王朝饗饌満漢全席
「よし、この辺りかな」

 大きな音を立てて宇宙センター痕施設の中庭に止まったのは、リーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)が駆るキャバリア搬送式フィールドキッチン『マゲイロス』。
 医者であり猟兵である彼女は薬膳料理にも当然精通しているし、そのスペシャリストにもアテがある。
 これだけの大きな自走機能のついた食料庫をオブリビオン・ストームの影響なしに持ってこれるのは、この『マゲイロス』が彼女の"武装"であるからに他ならない。

「愛麗絲(アリス)、出番だよ」

 指をパチンと鳴らしてユーベルコードを発動。
 瞬く間に姿を現したのはリーゼロッテを姉と慕う元仙女のバイオロイド、愛麗絲である。

「ハイ!お料理ならワタシにお任せください♡……あれ?」

 愛麗絲は早速慕っているお姉様ことリーゼロッテの期待に答えようと張り切って食料庫を開けるのだが……食料は大分すっからかんであった。

「お姉さま、食料が……」
「ああ、エインセルきゅんが『だいじょーぶかにゃーん……』ってね」

 それもそうだろう、いくら『マゲイロス』とはいえ、食料まで大量に持ち込んでしまうとオブリビオン・ストームの発生は避けられない。
 必要な水と調味料以外の食材の大半を降ろして向かうしかなかったのだ。

「ま、心配無用さ。――『マトリクス』!」

 そこで出番となるのがかのカクリヨファンタズムの新し親分謹製の【発生源の記憶】を司る可変式記録媒体【マトリクス・メモリ】だ。
 中庭の手頃な土や池に対して行使することで、『豊作の発生源』と『豊漁の発生源』を構築させ、野菜と穀類・魚介類の確保が可能である。

「これでこの辺りは足りるでしょ?」
「ハイ!これならたくさんお料理を作って差し上げられますわ!」
「OK。肉類はアタシが近隣で狩るさ。その間に作れるものはぱぱっと作っちゃっといて」
「ハイ!ああ……ステキです、お姉さま♡」
「あ、エインセルきゅんたちのおやつも頼むよ♪」
「かしこまりました♡」

 愛麗絲は颯爽と愛機『ナインス・ライン』に搭乗し一狩りしに行くお姉さまの姿にうっとりした後するに調理に入った。
 両面を焼いたイワシにみじん切りにした三つ葉、ニラ、らっきょう、しょうがを加えて作ったソースをかければイワシの香味野菜ソースがけは肩こりと頭痛に効果抜群。
 トマトとアボガドを1.5cmの暑さに切り、火にかけて香り立てたにんにくとオリーブオイルで焼いたものにバルサミコ酢と柚子胡椒を混ぜて煮立たせたソースとみじん切りにしたパセリをちらした焼きアボガドとトマトのホットサラダは美肌効果と疲労回復効果による超絶アンチエイジング。

 リーゼロッテが肉類を調達して戻ってきたら早速それと免疫力に効果のあるキクラゲとしいたけとその他数種野菜を混ぜ合わせた餃子や、シンプルに大根と牛肉をくったくたに煮込んだ肩こりや貧血に効果的なおでん。
 玄米の上ににんにくで香り付いたごま油で炒め、コンソメと香辛料、塩で味付けた肉類とイモ類を乗せた玄米ボール等々、様々な効能のある薬膳料理がぱぱぱぱぱっと出来上がっていく。
 デザートの薬膳スイーツはシンプルにいちじくと蓮の実、洋梨とクコの実を組み合わせてのコンポート等フルーツを直接摂取できるモノを中心に用意した上で、それらにアレルギーがあった場合の為のアレルギー源を取り除いた版まで取り揃えたメニューを愛麗絲は完璧に用意してみせた。
 アレルギーに配慮しての品も用意している辺り、医者としてのリーゼロッテから受けた教えをきっちりと活かしたまさに至れり尽くせりのフルコースである……!!

「ハイ!お姉さま、こちらがご所望の【王朝饗饌(インペリアル・フィースト)】ですよ♡」
「……うん、待って?何人で食べればいいのさコレ???」

 ただし、明らかに数人では完食なんてできたもんじゃねえ量だった――!!
 いくつかは日持ちしそうなので持って帰ってしばらくの食事に困らない分食べれそうではあるが……と、その時。

「ああ……何だこれは、見たことない料理がいっぱいだぞ……!」

 調理中の『マゲイロス』から漂っていた匂いが研究室にまで届いたのか、次々と洗脳されていた研究員たちがぞろぞろ、ふらふらとやってきた。
 365日不眠不休で働けるとはいえ、腹は延々鳴り続けていた彼らの食欲を刺激し、彼ら自身の意志を僅かでも呼び覚ますには十分だったようである。

「(食欲で狂気に抗うなんて……やっぱりこの世界の人たちは逞しいもんだね)」

 文明崩壊しまさに終わりを迎えようとしていたこの世界で生きていた人々の精神は、きっと自分たちが思っている以上に強いもので。
ほんの少しでもきっかけを与えれば邪神の狂気にすら抵抗することも可能なのだろう――そう改めて実感させられる。
故に、この世界はまだ終わらない、終わらせないという気概にこちらもなれるというものだ。

「いらっしゃい。好きなだけ食べていきなよ、アタシらだけじゃどう考えても食べ切れないからね。愛麗絲、お茶出しよろしく♪」
「かしこまりました、お姉さま♡」

 ロースヒップティーを人数分注ぎ、愛麗絲は研究員に食事を渡して周り、それを眺めながらリーゼロッテもせっかくなのでと作ってもらった一品を口にする。
 宇宙センター跡施設の中庭は、この一時だけまるで屋外レストランのように賑やかな活気に満ち溢れていた……

 因みに余談ですが、グリモア猟兵や同じ旅団の皆さんへのおやつは薬膳ティーポットを使って抽出した紅茶とミルクを混ぜたミルクティーで作ったなめらかプリンだそうです。メープルシロップをかけてお召し上がりください。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
365連勤か…いつかどっかで聞いた、
派遣社員25連勤の話よりも更に恐ろしいな…

美味い飯を振る舞えばいいんだな、任せろ
持ち込んだ材料と調理セットを取り出す
米、野菜類、魚介類、調味料などなど
オブリビオンストームに目を付けられない程度に

エプロンも着用し準備万端
今回作るのはずばり、雑炊だ!
美味しい、柔らかくて食べやすい、消化に良い
調味料次第で色々な味が楽しめる、作り方も鍋で炊くだけ!
これなら綾でも一人で作れるだろう
手分けしてどんどん作っていくぞ

優しい味わいの卵雑炊
洋風に仕上げたトマトチーズ雑炊
おーい、綾はどんな感じだ……待て待て待て!
弱っている人間に劇物食わせる気かお前は!
激辛ソース没収


灰神楽・綾
【不死蝶】
不眠不休疲労困憊で365日働き続けるよりも
しっかり週休2日取って元気ハツラツで働いた方が
絶対仕事の効率は良いと思うのにねー
邪神さんは脳筋なんだろうね、仕方ないね

やったぁ、梓お母さんの雑炊だー
俺の分も宜しくね~ …と言おうとしたら
俺も作る流れになってしまった

何がいいかなーとスマホ取り出し
「雑炊 アレンジ」などで検索してイメージ膨らませる
おっ、キムチ雑炊とかいいね
ニラや白菜とご飯をぐつぐつ炊いて、キムチ鍋の素と卵を入れて…
…うーん、美味しいけどなんかパンチが足りないような

そうだ、と取り出したのは激辛ソース
辛みは食欲増進効果もあるしね~
ドバーッとソースを鍋に入れ…(ようとして梓に没収される



●梓お母さんと綾くんの数分クッキング~デスソースは片隅へ~
「……いつかどっかで聞いた派遣社員25連勤の話よりもさらに恐ろしいな……」

 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は研究室で生気のない顔で研究し続けている研究員たちを見て、当時聞いた話を思い出す。
その時も恐ろしさで震え上がったものだが、今回はそれをひょいっと一回り二回りなんてレベルじゃねえぐらいで上回る365連勤。
丸々一年不眠不休とかそれもう死んでてもおかしくないんだよなあ……と思うとぶるりと寒気が止まらなくなる思いだ。

「不眠不空疲労困憊で365日働き続けるよりもしっかり週休2日取って元気ハツラツで働いた方が絶対仕事の効率は良いと思うのにねー」

 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)も何でそんなになってまで働かせるのか理解が全く及ばないといった顔で肩を竦める。
 人間というものは本当に週2日は休日がないとやってられない生き物なのだ。
いや本当にね……10連勤でさえ悲鳴を上げそうになるのに25連勤とか365連勤とか無理だよ。というかマジで邪神パワーないと死んでますからね今回に限っては。

「邪神さんは脳筋なんだろうね、仕方ないね」
「まあ邪神だし、人間の耐久力とかそういうものに理解がないのもままあることだろうな」

 邪神に対する痛烈な風評被害。

「とりあえず美味い飯を振る舞えばいいんだな?任せろ」
「きゃー梓お母さーん」
「お母さんって呼ぶんじゃありませんってこれ言うの何度目だっけなあ!!!」

 と言いながらも梓は早速持ち込んだ材料と調理セットを準備。
 米、野菜類、魚介類、調味料などなどエトセトラ。オブリビオン・ストームに目をつけられずに済む範囲で持ってこれる限り持ってきたのである。
 そして調理セットは中々に年季が入っており、長いこと彼が料理をしてきたのが一目で伺える程だ。
 エプロンの紐をきっちり結んで準備万端な梓さん、今回は何を作るんですか?

「今回作るのは――ずばり、雑炊だ!」

 おさらいしようッ!!雑炊とは日本料理の一種であり、醤油や味噌などの調味料で味をつけ、他の食品などと共にご飯を煮たりお粥のように柔らかく炊き上げた料理のことであり、おじややこながきとも呼ばれるもののことである。
 端的に言うと美味しい、柔らかくて食べやすい、消化に良いの3つを取り揃えており病み上がりに抜群な上、調味料次第で色々な味が楽しめる中々奥深い料理。
 しかも何と親切なことに!作り方も鍋で炊くだけ!!なんて素晴らしい!!

「やったあ、梓お母さんの雑炊だー」
「これなら綾一人でも作れるだろう」
「あっ俺も作るの?」
「当然だろ。手分けしてどんどん作るぞ」

 「俺の分もよろしくね~」と言おうとしていたのを見抜かれたのかそれとも偶然か、とにかく任せようとしたら先手を打たれてしまった綾。
 自分がつける分の黒いエプロンが用意されていた辺り最初から梓は自分にも作らせるつもりだったかー、とか思いながら何が良いかなとスマホでレシピ検索から入ることにした。

「……おっ、キムチ雑炊とかいいね」

 これにしよう、とスマホでレシピを開いて手を洗って早速調理開始。
 作り方はとっても簡単、炒めた牛肉とニラとご飯をぐつぐつ煮込んでキムチ鍋の素をいれ、味がいい感じに染み込んだら溶き卵を回し入れるだけ。まあ簡単!
 お好みでごまも入れるとなお良しなおいしいキムチ雑炊がここに完成した。

「いい感じにできたんじゃないかなー?」

 どれどれと綾は小さなスプーンで掬って味見をする。
 キムチ鍋のスープに牛肉とニラの旨味がたっぷりと詰まったちょっとピリっとした味だ。つまりおいしい。

「……うーん、美味しいけどなんかパンチが足りないような」

 この場合パンチ、とは大概において辛みを指差すだろうか。
辛味は味覚と痛覚両方で感じて味わうものである。
ぴりっとした感じをあまり感じないならそれはマイルドな辛さなので年齢問わず食べられるのだが……少なくとも綾はもうちょっと辛いなり刺激があるなりした方が良いのではないかと思ったワケである。

「あ、そうだ」

 そこで思い至ったのが激辛ソースの存在。
 一部では商品名であるデスソースの名でも親しまれるそれはまず入っている瓶のラベルが総じて食用とは思えぬ見た目をしていることに定評があったりするのだが……とりあえず原材料がハバネロならまだマシなんじゃないかな!!!

「辛味は食欲増進効果もあるしね~、どばーっt「弱ってる人間に劇物食わせる気かお前はッ!?!?」

 今にも蓋を開けようとしたタイミングで気づいた梓お母さんがデスソースを取り上げた。
これにより研究員の内何人かが救われただろう(味覚的意味で)。

「全くどんな感じかと思って様子を見にきたら……これは没収だ没収!」
「いやあ、パンチが効いた方がいいかなって思って」
「効かせなくていい。普通においしそうなのができてるんだからこれでいいんです。OK?」
「はーい。梓お母さんは何を作ったんですかー」
「お母さんじゃないっつってんだろ全く。丁度今完成したところだ」

 火を止めたばかりの鍋二つ。
その中にあったのはだしと醤油であっさりめに仕立てた優しい味わいの卵雑炊。
そしてトマトとチーズの芳醇な香り漂う洋風トマトチーズ雑炊の二種類だ。
 綾のキムチ雑炊と合わせ、事実上和洋中が折衷したどの地域の出身者にも食べてもらいやすい仕上がりになったと言っても過言ではないだろう。

「り、リゾット……リゾットだ……!!」

 早速匂いに釣られて一時的に正気を取り戻した研究員が一人。
 他にも、梓の愛竜である焔と零が「キュー!」「ガウ!」と研究員たちの服の裾を咥えて引っ張ってきて、匂いを嗅いで一時的に目に光が戻る者も。
皆がいい匂いに導かれるかのように自然とスプーンを手にとって貪るように食らいついていく。

「う、うまい……うまい……っ!」
「食事だ、まともな食事だ……っ!」
「辛いのあまり得意じゃないけど、これはそんなにピリっとしなくて食べやすくてすごくおいしい……!!」

 いつしか研究室の一室もまた、他の一画と同じように暖かな雰囲気が漂い始めていた。
 お腹いっぱい食べた研究員たちは次々と眠気を感じ、泥のように爆睡。いびきが室内に元気よく響き渡っている……
 が、恐らく元々他の区画と比べて人が少なかったのか、トマトソース雑炊とキムチ雑炊が丁度一杯分だけ残っていて。

「せっかくだから俺たちも食べるか。もったいないし」
「じゃあ俺トマトソース雑炊食べる」
「なら俺はキムチ雑炊を。焔と零も食べような」
「キュー(ガウ)!」

 いびきが響く中での食事というのも何であるが、せっかくなのでと違いに作った料理を口にし、その味を堪能する二人であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五ヶ谷・グレン
あーよしよし、泣くな泣くな。
俺ががっつり魔女ってとこと薬のヤバさ見せてやるからな、その優しさちょっともらうからな
(エインセルさんをなぜなぜしつつ、魔女の力でエインセルさんの願いを分けてもらう)

さて、死んだ魚の方がまだ活きが良いよなぁ、
取り敢えずはだ、俺は下地づくりだな。
大釜にUCでたっぷりと栄養満点導眠効果マシマシの魔女の薬。
怪しさを煽ったし、見た目もおぞましい感じにケミカル、匂いもヤバい。

正気か俺。

しかもUC効果で掴み出せばカップに入ってるしお手軽だよな。
後は替わりが来るから最後の仕事とか言ったら飲んでくれるだろう。駄目なら正気

俺用の布団なら雑魚寝なら数は行けるから寝たら順繰り運ぶ後は任せた



●願いを叶える魔女の秘薬
「さて」

 五ヶ谷・グレン(竈の魔女はだいたい筋力で解決する・f33563)はまだ猟兵の手が及んでない区画の研究室を訪れ、最早ゾンビが徘徊してるかのような研究光景を見て一言。

「……死んだ魚の方がまだ活きが良いよなあ」

 本当にそう、としか言いようがない。死んだ魚だって種類にはよるが生で身を食べられる程度に活きが良い。
 だが目の前にいる研究員たちはどうだろうか、生気がないなんてどころの話じゃないレベルで肌は真っ白、目の下には隈、長いこと食事していないおかげで頬骨すら見え始めている始末。
そんな光景を予知してしまったらそりゃ今回のグリモア猟兵のような子供は泣きそうな顔をするのも当然であり、故にがっつりと魔女ってとこと薬のヤバさの見せ時であろうとこの場に馳せ参じたのである。

「とりあえずはだ、俺は下地作りだな」

 そうして早速取り出したのは魔女御用達の大釜。
 巨人には手頃なサイズであるが、人間からしたらクソがつく程でかいその大釜に転移する前に分けてもらった願いを投入し、触媒としてその願いに応じた魔女の秘薬を作り上げるのだ。
 ユーベルコード【ウィッチクラフト(物理)】によりまるで泉が湧き出るように生み出される栄養満点導眠効果マシマシの魔女の薬。
 ある意味この光景は邪神の研究を進めている状態には似つかわしく、仮に研究員たちが疑問を抱いたとしても気にしないことにするだろう。
 仮に疑問を抱いたとしても相当怪しさを煽ったし見た目もおぞましい感じにケミカルかつ匂いもあきらかにヤバい感じに仕立てれば、邪神に捧げる何かだと言ってごまかすのは簡単だ――もっとも、研究員たちはそんなことを考える思考すら奪われている状態なのだが――。

「…… …… ……

 正気か俺」

 おっとまさかの賢者タイム突入。
 確かに正気かと思いたくなる匂いと見た目と怪しさは抜群だが効果はとっても身体に優しいお薬だし邪神の研究をしてる施設に潜入するには一番最適な方法を取っているのでセーフ扱いでいいと思うんです。

「ユーベルコードの効果で掴みだせばカップに入ってるしお手軽だよな……」

 としみじみ思いながらグレンは人数分の薬をカップに注ぐ。
 コップの中であってもそのおぞましい感じのケミカルさは健在、匂いは当然充満するワケで、流石にそんな匂いが漂ってくれば狂気に取り込まれてても振り向くものであり。

「……何だこの匂いは。これは?」
「交代がもうすぐくるからな。最後の仕事だ」
「……なる程、これで邪神様を一つになればいいのか……わかった……」

 邪神的な意味でお神酒か何か、言い換えれば人体にとっては劇薬のようなものと思い込んだようで迷いなく口にする。
 劇薬と思われたのは正直複雑なところがなくもないが、飲んでくれさえすれば万事解決なので問題ないということにした。
 グレンは研究員の一人ひとりに最後の仕事だ、と告げて魔女の薬を手渡し、飲ませていく。

「………………ぐぅ」

 飲み終えれば何ということでしょう、ばたーん!!と卒倒したかと思いきや大きないびきを立ててぐっすりすやすや爆睡を決め始める。
 グレンは彼らを起こさない程度に優しく抱き抱え、順繰りに運び用意した巨人対応サイズの布団に寝かせていく。
 敷布団一枚でも人間が数人雑魚寝できる程度のサイズなので、全員問題なくおふとんに包まれて眠ることができるというワケだ。
 当然使われている羽毛等も巨人に合わせてのものなので、羽根の一枚一枚がきっと人間の上半身までもふっと覆えることだろう。
 つまり、人間サイズであればとんでもなく夢見心地で眠れることは確かということだ。

「よし、これでもう大丈夫だろう」

 あとは目を覚ませば自然と狂気から解き放たれ、研究員たちはそれぞれの家族、あるいは知人の元へ戻るだろう。
 彼は今回も魔女として、グリモア猟兵から出された依頼という"願い"を叶えたのだ。

 ――かくして、宇宙センター跡を覆う狂気は消え去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月13日


挿絵イラスト