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アポカリプス・ランページ②〜肉塊異形の哄笑

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #ヴォーテックス一族 #ブラッドルビー・ヴォーテックス #アポカリプス・ランページ②

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 アポカリプスヘル。
 広く、ただ広く。この世界だからこそ存在を表立ち許されている『人間牧場』の敷地内において。
 肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が備えられていた椅子からゆっくりと立ち上がった。
 ぶるんと、全身の肉が醜く揺れる。その周囲には、既にその心は崩壊寸前となった人間牧場に収容されている老若男女が、ゾンビにも似た瞳でただ呆然と肉塊女帝の周囲に立ち尽くしていた。

「ハッ! くだらないねぇ、今更猟兵がなんだい!
 そんなモン、人間とさして変わるモンでもないさ。身体が頑丈だろうが、悲劇を思い、絶望する心がある。なら、『蹂躙しちまえば皆一緒』――ここにいる人間みたいにねぇ!!
 アタイを止められるもんなら、殺してご覧よ。
 ――その間に、この場の人間は『全員動かない肉のゴミ』になってるかも知れないけどねぇ!
 アーッハッハッハッハ!!!!」


「肉でありながら、人間の言葉を話す『醜き肉塊の排除』を願いたい」
 開口一番に、グリモア猟兵は凍り付いた瞳でそう告げた。

「相手の固有名詞は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』。人間牧場の担い手であり、アポカリプスヘルの生者を、物以下として扱う巨塊だ。攻撃手段も、自我が壊れつつある人間を使用する。
 それは今回の戦争、アポカリプス・ランページに現れたフィールド・オブ・ナイン――『全員がオブリビオン・フォーミュラ』である、その中の一体だ。
 ――倒す事に、遠慮は要らない。だが」
 予知をした猟兵は、一息置いて続きを告げた。

「可能であれば、まだ命ある人々を助けてほしい。盾にされ、武器とされようとしている、人々の尊厳を――否、まだ生きているだけでも奇跡である命を守ってほしい」
 そう告げて、予知をした猟兵は静かに、集まってくれた猟兵に向けて頭を下げた。


春待ち猫
 ついにアポカリプスヘルの戦争ですね!
 どうか宜しくお願い致します。春待ち猫と申します。

●このシナリオについて
 今回は一章構成の純戦となります。
 戦闘場所は、広々とした奴隷牧場の一画です。
 しかし敵は『奴隷牧場の主』として、この世界の存在を容赦なく武器に盾にと利用してきます。
 傷付けずに戦うことが出来れば、救える命があるかも知れません。

●プレイングボーナス
 プレイングボーナス……奴隷を傷つけないように戦う。

●シナリオ進行について
 いただきましたプレイングにつきましては、この度戦争の方向性により、
『公開後から、即プレイング受付開始』
『その中で己が書けそうな物を優先に、採用数が青丸のクリア基準に達した段階』にて、プレイングを締め切ります。

 プレイングに全く問題が無くても、採用率は低いです。予めご了承ください。

 それでは、どうかご縁がございましたら、どうか何卒宜しくお願い致します…!
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第1章 ボス戦 『ブラッドルビー・ヴォーテックス・奴隷使』

POW   :    アタイこそが最高の女帝!
【奴隷にした人間達 】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[奴隷にした人間達 ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    行きな、アタイの椅子ども!
自身の【移動速度 】を代償に、1〜12体の【戦闘用の肉体改造を施した椅子担ぎ奴隷】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    肉の壁になりな!
全身を【奴隷の壁 】で覆い、自身が敵から受けた【敵意】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:桜木バンビ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラブリー・ラビットクロー
こんなのユメの国なんかじゃ全然ねーのん
らぶとマザーは知ってる
ここがホントはどんな所かって
【ここはカリフォルニア州アナハイム。有名テーマパークが点在しとても治安が良くて暮らしやすい場所です】
ユメとキボウで溢れたセカイをみんなで取り戻すんだ!
皆に見せるのは沢山のきれいなビー玉
キラキラと光って
覗けばきっと懐かしかった景色が蘇って来る
そんなセカイに帰りたい?
それなら帰ろー
らぶとみんなならできるなん
だから今は瞳を閉じて
らぶにユメを預けてくれ!

皆が瞼を閉じたらキャロットのスタングレネードを敵に向かってぶん投げるぞ
ヴォーテックスをぶっ飛ばせばまた一つユメを叶えられるから
らぶのショーバイの邪魔はさせねーのん!


スピーリ・ウルプタス
奴隷様方を解放して下さいましたらば、代わりに私めが喜んで虐げられましょう!
――と、喉まで出かかりました。
ええ、お話聞いてはいただけなそうだと流石に把握しました!

UC発動
主に奴隷様方の防御壁として転回させます
ええ数が数ですので、私の見える集中できる範囲のみになりますがっ
攻撃受けたら本壁で受け止め、カウンターとして鎖の鞭で応戦します

基本、防戦です! カウンターで狙うのはボス様のみです!
…大変、大っ変っ、千切れそうな痛みが襲いますね!(悦
とはいえ集中力が切れたら奴隷様方守れませんので
今回は本体はしっかり懐に確保しておきます(ちょっと残念そうに)


グラナト・ラガルティハ
搾取する側とされる側。
どちらも同じ人間であると言うのにこの有様か…人はやはり度し難い…。
グリモア猟兵が嫌悪する気持ちはよくわかる。
人は突き詰めれば肉塊だが。
確かにこの肉塊は醜いな…人間と言うのも烏滸がましい。獣の方が賢い。やはりただの肉塊と言うのが正しいな。

それ以外の生きている『人間』は出来るだけ助けてはやりたいとは思うがさてうまく行くといいんだが…。

UC【炎魔人の裁き】
敵以外の『生きて』いるものを除き全て燃やせ【焼却】だ
弔いの炎となれ。

アドリブ歓迎



「こんなのユメの国なんかじゃ全然ねーのん」
 他の猟兵達と共に、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は人間牧場の敷地を進んでいく。
 ここは、かつてこの地に存在した遊園地を改造した『豪華絢爛な奴隷の働く夢の国』。
 目に映るのは、人心を恐怖で縛る為に繰り返される強制労働。今この瞬間にも、力尽きて転がる死体と、休息を取ろうとすれば首に付けられた電流により地獄のような悲鳴が各所に上がる。
「らぶとマザーは知ってる。
 ここがホントはどんな所かって」
 ラブリーの声に合わせて、彼女の持つタブレット端末『ビッグマザー』が該当知識を言葉に乗せる。
「【ここはカリフォルニア州アナハイム。有名テーマパークが点在しとても治安が良くて暮らしやすい場所です】」
「――ユメとキボウで溢れたセカイをみんなで取り戻すんだ!」
 人間牧場の最奥に建物が見える。情報によればここが、ヴォーテックス一族のひとり、肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』がいる。
 猟兵は一同に走り始めた。
 求める結末は確かに同じ。この場所の巨魁を倒すこと。
 たとえ今、目に映る惨劇を前にして。各々の猟兵の心に――胸に抱く思いが僅か、異なっていたとしても。

「ハーッハッハッハ! ああ、いいねぇ! 下から響く奴隷共の声が今日はまた格別さぁ!
 あ? ――ホラ、あちこちでくたばった人間は、死臭がする前にとっととゴミ集積所に捨てて来るんだよ! アタイの役立たずの椅子どもが引っ掛かったらどうするつもりだい!?」
 建物内部に入った猟兵達の目に飛び込んで来たものは、人間牧場にいる無数の人間を巨大な椅子の脚代わりにして正面に座する、辛うじて人間の姿のバランスを保った肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の姿。

 無音に近い、建物の中で人々の苦悶の声が響き渡る。
 その光景に、同行していたスピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)から、思わず己が性癖に正直過ぎる発言が零れた。
「奴隷様方を解放して下さいましたらば、代わりに私めが喜んで虐げられま――!」
 存在の概念として『苦痛に快を覚えるヤドリガミ』という特殊さ故に、こればかりはどうしようもないものだ――しかし、幸いにしてその言葉は、周囲が内容を理解して全力で引く前に、ブラッドルビーがスピーリにぶん投げた巨大ハイヒールの片割れによって見事に喉まで出掛かったところで中断された。
「ブフォッ!!」
 巨躯に対して靴はさほど大きくないが、顔面から溢れる大きさがヒットし、スピーリが軽く吹き飛び後退する。
「あん? またゴミムシが増えたようだね。とっとと叩き潰してやるよ!
 ――ホラ、お前らチンタラしてるんじゃないよ!! アタイの靴を拾ってくるんだ。ついでにあのゴミも潰してきな!」
 集まっていた猟兵から距離を置く形になったスピーリに、ブラッドルビーの号令の元、足元の椅子からヨロヨロと、無為に長い鎖に繋がれた、敵の座る椅子脚を支えていた内の六名程がスピーリにゾンビの如く向かってくる。
「ええ、これはお話聞いてはいただけなそうだと、今流石に把握しました!」
 ようやく、若干の正気宣言。スピーリは声と共に、己の器物本体に手を掛け、そのページを堅く封じる鎖を撫でた。瞬時にスピーリの周囲に、九十冊を超える自身の本体である本が鎖ごと湧き上がる。その姿が、幻影から模倣という名の実体へ。それらは、スピーリの周囲を浮かび縦横無尽に旋回するように巡り、傍らに落ちた大きさからは靴とは考えたくない品を回収しようと、こちらに襲い掛かって来る奴隷達の力無い攻撃を次々に本の壁で弾いていく。
 元々統制など取れていない行動と、弾かれ生まれたその隙間を狙い、スピーリは本から伸びる鎖『命の連鎖』を奔らせ、一直線にブラッドルビーを狙う。
 鋭い鎖の攻撃が、敵の腕を激しい裂傷と共に確かに捕らえた。しかし、
「フンッ!!」
 ブラッドルビーはそれを物ともせずに、捕らえられた腕を一気に自分の方へ引き寄せる。
「……ッ。
 大変、大っ変っ、千切れそうな痛みが襲いますね!」
 それはスピーリ個人としてはご褒美であるが、此処でその悦に浸ろうものならば、こちらに迫っている奴隷達を引きつけることは出来ない――そう、ブラッドルビーの靴を狙い、こちらに攻撃しようとしている間だけは少なくとも『加重で人が死ぬ程の、椅子を支える負担』から奴隷達を守ることができるのだ。
 集中力だけは途切れさせることは出来ない。
 決して本体にだけは影響を及ばさぬよう。無数の複製が飛び交う中、スピーリは無意識に己の身の危機を感じ取り、その本体を懐にしまうと、少し残念そうながらに最低限の安全だけは確保する。
 しかし、このままでは消耗戦にしかなり得ない。
 ――瞬間、スピーリの視野外より爆ぜた、神域の時代にまで遡る炎が彼を狙う奴隷達を一斉に弾き飛ばした。

 服に燃え移るかと思われた炎は、地面で呻き声を上げる奴隷を焼く前に一斉に消え去った。
「……度し難い」
 炎が爆ぜ飛んだ方を見れば、そこには手にしていた魔法杖を精霊『火炎蠍』に戻した戦神、グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)の姿があった。
「搾取する側とされる側。等しく『同じ人間であると言うのに』この有様か……。
 ――そこに強者が持つべき慈愛もなければ、弱者と言えど死して尚守りたいと言える誇り一つもありはしない。あまりにも、人はやはり度し難い」
 周囲に散る炎の燐片。しかし瞳には先の炎とは対照的とも言える氷にも似た怒りを宿してグラナトは告げる。
「グリモア猟兵が嫌悪する気持ちはよくわかる。
 人は突き詰めれば肉塊だが――」
「ゴチャゴチャと五月蠅いねぇ! 行きな、アタイの椅子ども!」
 先にスピーリをいつまでも仕留めきれないのが気に入らなかったのであろう。ブラッドルビーは号令と共に、己の移動を完全に止める代償に、更なる奴隷をグラナトへと差し向けた。
 向かってくる奴隷の一人が、こちらへ辿り着く前に、よろめき倒れグラナトの数歩手前で事切れた。脆いまでに酷使されたそれは、もう二度と動く事は無い。

「――、確かにこの肉塊は醜いな。……人間と言うのも烏滸がましい。
 もはや獣の方が賢い。やはり――ただの肉塊と言うのが正しいな」
 悟る。皆殺しを躊躇う理由のなくなったグラナトの前に奴隷達が立ち塞がった。
「妻と子供が人質に取られてるんだ! 大人しく死んでくれ!!」
「言うこと聞いてれば、俺のばあちゃんだけは助けてくれるって……邪魔すんなぁ!!」
 武器すら持つことも許されない奴隷達。だが、グラナトの目にするその瞳は、未だ人間の在り様を持つものが残っていた。
「……」
 思考を、僅かに改める。この場に『まだ人間がいる』のであれば、それはまだ助けてやりたいと。
 しかし、中には――目が、心が完全に死に絶えた者がいる。
 言うことを聞くだけに堕ち、死んでいないだけの人間でもない傀儡を救えるか。
 神は思案する――だとすれば、それにもせめて、弔いを。

「敵以外の『生きて』いるものを除き、全てを燃やせ」
 威厳と共に手を天上に掲げたグラナトを中心に、一瞬にして周囲全範囲を烈火が駆ける。それは、牧場のあちこちで力尽きて腐りゆくだけとなっていた死体を巻き込み、消える事のない浄化を伴って燃えていく。
 炎は赤く、煙はようやく己の行き場を悟ったかのように天へと昇る。
 だが、その炎が、心死した在り様がゾンビにも近い者に辿り着こうとした先。
「待て! 待ってくれのん!!」
 飛んできた声が宿す必死の思いに、グラナトはユーベルコードを制御し、声の主ラブリーの方を見やる。
「何故止める?」
「まだ、まだ助かるかも知れないからなん!
 心に何かあっても……助けて、生きて――命さえあれば!!」

「ぎゃああ! 人の屋敷で、誰の許可得て火なんか使おうとしてるんだい!? 危うく焼け焦げるところだったじゃないかい!
 ええい、奴隷共! 早く戻ってアタイを守るんだよ!!」
 肉塊女帝の号令が飛ぶ。
 しかしラブリーは、奴隷を使うことしか能が無いと判断したブラッドルビーへ躊躇いなく背を向けて、奴隷達との間にその身を飛び込ませた。
「なあ、これ見て!」
 ラブリーが、戸惑う奴隷達に見せたのは、様々に光り輝く『きれいなビー玉』――どこかの明るく、楽しく、美しい世界を次々に映し出す、投影型の小型端末。
 それに誘われるように覗き込んだ奴隷達は目が釘付けになった。この残虐な世界と化したアポカリプスヘルにも、過去確かにそんな光景があったはずだ。目を奪われた者がいる。あまりの輝かしさに嗚咽し泣き出す者が現れる。
「そんなセカイに帰りたい?」
 返事はない。心に不可能を植え付けられた者の闇は簡単に取り払えるものではない。
 しかしラブリーは悟る。この沈黙は、肯定であると。
「それなら帰ろー。らぶとみんなならできるなん」
 それでも、ラブリーは諦めない。本当の世界は、こんな人々のひとつひとつの『ユメ』で輝いている。この世界に生まれ、ラブリーはそれを確信しているからだ。
「お前ら、何してるんだい! 早く戻って来るんだよ!」
 ブラッドルビーの罵声に、奴隷達が震え上がる。
「――ユメを叶えるのん! だから今は瞳を閉じて、らぶにユメを預けてくれ!」
 その瞬間。奴隷達は、肉塊女帝の罵声よりも、目の前の少女が映した世界を信じた。

「さっきからうるせー、くらっとけ!」
 奴隷達が目を閉じたのを見て、ラブリーはブラッドルビーにキャロット型のスタングレネード『Love It』を全力で投げつけた。直撃した爆弾は激しい閃光を伴い、爆音と共に肉塊女帝の絶叫を奪う。
「らぶのショーバイの邪魔はさせねーのん!」
 炸裂する痛烈な一撃。ヴォーテックスを倒せば、またラブリーはユメを一つ叶えられる。
 そして、それは確かに猟兵達全ての希望にも繋がるものでもあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

テリブル・カトラリー
【迷彩戦機】を予め発動。武器:アンカー射出兵器を装備。
目立たないように空中浮遊で空から情報収集。周囲の人間の位置を把握。

…戦いに余計な感情は、持ちこむべきではない。だが……。

スナイパー、アンカーをブラッドルビーへ向けて射出し貫通攻撃。捕まえる。

コイツは、度し難い。

怪力でアンカーの鎖を引き、推力移動、ブースターで一気に鎖を引き揚げブラッドルビーを一本釣り。予め把握しておいた、奴隷のいない場所、地に向けて叩きつけ奴隷達から引き離す!

早業、浮遊砲台、ミサイルランチャー、機関銃を展開し一斉発射。
奴隷を巻き込む心配はない。集中砲火を叩き込む!
加減は、無しだ。


柊・はとり
人を傷つけずに戦うってのも中々骨が折れるが
探偵としてあんたと同じ所に堕ちる訳にはいかない
UC【零の殺人】を使用
ブラッドルビー・ヴォーテックス
あまりにも明白な事実だが
あんたをこの人間牧場事件の真犯人に指名する

巨悪に立ち向かう勇気と覚悟を込め
奴隷…もとい被害者達を説得する
こんな世だ
悲嘆に暮れる気持ちもわかる
もう何もしたくないと自暴自棄に陥り
こんな奴の言いなりになる事もあるだろう
だがそれで良いのか疑ってくれ

絶望する心があるなら
希望を信じる事はまだ出来る
信じてくれ
俺の攻撃は『真犯人以外には当たらない』
氷属性を乗せたなぎ払いで敵を切断

無実の誰かを救う為なら
俺は己の犠牲なんか厭わない
何度だって死んでやるさ



「お前らがぁ……! お前らがサボってるからアタイの珠の肌に傷がァ!!
 次こそはちゃんと肉壁になりな! もう一度でもサボれば、今度こそお前らの家族の首をねじり切るよ!!」
 猟兵の攻撃により、その肌に煙を上げた肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が怒号を発する。
 次はない、言葉に脅された奴隷は再びどこからともなくブラッドルビーの肉壁となり全身を包み込む。奴隷に包まれた肉塊女帝は既に異形の様相となり、その姿に護りと己の攻撃力を強化させていく。

(さて、どこから切り崩す?)
 その様子を、ユーベルコードでほぼ完全に己の存在情報を断ち、空中までをも可動領域としたテリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)が肉塊女帝の上空から様子を窺っていた。
 集まる猟兵と、捕虜、ブラッドルビーがいる位置の把握。
 そして『誰もおらず、何にも利用されていない空間』を見つけると、テリブルは作戦を秒速で組み上げた。
 手にする武器はアンカー射出兵器――しかし、その初手が決まらない。肉塊女帝に集まる奴隷の数が多すぎるのだ。このままでは何をしようと奴隷の犠牲は避けられない。
 作戦を組み替えるべきか。テリブルが思案したとき。
 ブラッドルビーの正面に、一人の猟兵が立ち塞がった。

「人を傷つけずに戦うってのも中々骨が折れるが――。
 探偵としてあんたと同じ所に堕ちる訳にはいかない」
 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)。死して尚、己を取り巻く呪いと共に探偵であり続ける彼――その存在は、再び集まる奴隷を目にブラッドルビーを力強く睨み付けた。
 正面に立つからには、そこには勝算の計があると判断したテリブルは、上空から改めてはとりの位置を計算に組み直す。

 はとりは小さく、デッドマンとなってから機能しているのかも分からない肺に息を込める。
 そして吐息は、告発へ。
「ブラッドルビー・ヴォーテックス。
 あまりにも明白な事実だが――。
 あんたを【この人間牧場事件の真犯人】に指名する」
 それは、はとりの持つユーベルコードの引き金。
 同時に巨悪を落とすのに必要なものは、目の前にいる洗脳にも近く扱われ続ける、奴隷という名の『被害者』の願い――。

「聞いてほしい。
 こんな世だ。悲嘆に暮れる気持ちもわかる。
 もう何もしたくないと自暴自棄に陥り、こんな奴の言いなりになる事もあるだろう。
 だが――それで良いのか疑ってくれ」
 被害者の声が無ければ、犯罪は正義として黙認されてしまうのだ。はとりにおいて、それだけは認める事など出来るはずがない。
「場所は確認済みだ。人質に取られている存在がいるなら、必ず救出してみせる。
 ――絶望する心があるなら、
 希望を信じる事はまだ出来る」
 瞬間、はとりの言葉を掻き消すように、女怪の哄笑が響き渡った。
「ハッハッハ!! ちゃんちゃら可笑しいねぇ!!
 奴隷達! そう言って皆で逃げようとしたお前達の仲間がどうなったか知ってるだろう?
 ――そう、皆アタイが自ら八つ裂きにしてやったのさ! この世界じゃ強い者だけが全てなんだよ!!
 この坊は、同じことを言ってお前達を殺そうとしているのさ!!」
 その場に、奴隷達の嘆きと嗚咽が、嘲笑う声の中を、かろうじて零れ落ちた。
(……戦いに余計な感情は、持ちこむべきではない。だが……)
 ――コイツは、度し難い。
 テリブルがトリガーに手を掛ける。

「それでも……信じてくれ。
 絶望の先には、希望があると。
 俺の攻撃は――『真犯人以外には当たらない』」
 ――まるでこちらの存在を感じ取り、その攻撃を押し留めるかのように。
 はとりの断言と共に、そこに吹き上がる攻撃の気配を感じ取る。テリブルは引き金を引くタイミングを計り直し、冷静を敢えて伴い、もうしばらくの手出しを控える事とした。

 場に広がる――被害者の嘆きと無念を。誰も否定する者はいない。
 それは、犯罪立証の最後の証言。
 はとりが背負う氷の大剣『コキュートスの水槽』が周囲の空気を凍らせ、結晶と共に光り輝く。
 冷気と共に、被害者から聞き出した説得による悲嘆を乗せて、両手で掲げ持ち振り下ろされた氷刃の衝撃波。それは、はとりが『真犯人と名を指し示した敵にのみ届く』特大の一撃。
 それは、はとりの言葉通り、奴隷達を一人も傷付ける事なく、中心にいたブラッドルビーを激しく斬り裂いた。
 つんざき響く、肉塊女帝の絶叫。蹲るその仕草に合わせて、奴隷達の壁が一斉に崩れ散り散りとなった。
 代償は、戦闘不能となる自分の身――。
 死して尚、生き返っては何度この身を傷付けてきたことだろう。
 はとりは、猟兵として生きるほぼ全てのユーベルコードに、己の犠牲という対価を払い続ける。
 それでも、はとりは疑わないのだ。
(無実の誰かを救う為なら、俺は己の犠牲なんか厭わない。
 ――何度だって、死んでやるさ)

「痛い! 痛い痛い痛い!!
 何で、何で奴隷共は無傷なのに! ええい、この役立たず!!」
 
 場に、はとりが力尽きて倒れ伏した先。脂肪のついた腹に目を背けたくなる程の裂傷を刻みながら、ブラッドルビーが喚き当たり散らす。
 手に触れた奴隷の足を掴んで、八つ当たり的に身動きの取れないはとりへと投げ叩き付けようとした先で。
「後は任せておけ」
 小さく、合成の機械音声が呟かれた。

 奴隷の囲いは既に無い。テリブルの障害は一切排除された。
 ようやく、指を掛け狙い澄ましていたアンカー射出兵器の引き金を引く。
 射出されたそれは、蹲るブラッドルビーの背中から胸を貫き、その先で鋼鉄の華が咲くように楔が開かれ固定される。
「ガッ、ハ――ッ!!」
 何が起きたのか、肉塊女帝には理解が出来ない。
 真赤の血を吐き散らすブラッドルビーに、テリブルはアンカー射出機の鎖をそのままに『スラスター&ブースター』の出力とウォーマシンとしての力強さを兼ね合わせて、上空へと一気に数百キロでは済まない相手の体躯を吊り上げた。
「――ギャ、ア!!」
 可能なまでに天井に近く持ち上げ。先程確認した『人もおらず、何にも利用されていない空間』へと、一直線に地へと叩き落とす。
 高さ五メートルにもわたる体躯は、高所落下を受けて無事であるはずもなく、肉だけでは緩衝しきれなかった衝撃分、肉塊女帝から無数の骨が折れる音が鳴り渡る。
 ――猟兵も、奴隷も、誰もいない。捕殺せよ、と言わんばかりの空間を、テリブルは遠慮も容赦も無く、徹底的なまでに利用した。
『アームドアクセル』の機能により、日常では状況に応じて喚び出し利用してきた、空中砲台『アルタミラ』『ロートレック』を始めとした、持ちあわせる武装の全てを、テリブルの立つ上空全てにブラッドルビーを取り囲むように配置する。
「加減は、無しだ」
 ありったけの銃火器による一斉集中砲火――テリブルのその言葉が、肉塊女帝ブラッドルビーの耳にした最後の言葉となった。
 集中砲火の光と煙、爆音が全て消失した時。そこには、塵ひとつ、血痕ひとつ残されてはいなかった。

 完全なる蒸散。そうして、持ち合わせていた体躯の末路に相応しい状況を以て『肉塊女帝ブラッドルビー』は消滅し。
 猟兵達の活躍によって、人間牧場の本拠地は完全に破壊。奴隷達は皆、全て解放されたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月05日


挿絵イラスト