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観客のいない展示会

#UDCアース

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#UDCアース


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●その色は
 薄暗い部屋の中で、がりがりと板を掻くような音ばかりが響いている。電気も点けられず、カーテンの隙間から差し込む光だけが眩く空気中に漂う埃を照らしていた。
「違う……こんな色じゃない……!」
 ふと、暗がりで爪を噛む男が、低く唸るような声をあげながら髪を振り乱す。その男の周りには、さまざまな画材が散乱していた。
 散らばる画材に一切の統一性はなく、あえていうならどれもがひとつの色を表していることくらい。乱暴に筆を取る男は何度も何度も、その色を求めてキャンバスと向き合っている。
「足りない、足りない足りない! どうして描けないんだ……!」
 あの色も、この色も。求めた色には程遠く。すべてを使い尽くしてなお、その色は表せない。乾き切らないその筆跡をなぞり、男は嘆き続ける。そのさなかで、男は気付いてしまった。
「ああ、」
 まだ試していない色があるじゃないか。
 がり、と一際強く爪をかんだ男の手のひら。流れる赤い血を見ながら、男は笑っていた。これでやっと、あなたに会える。

 ──そして描きあげられた、1点の絵画。
 既に息絶えた男の腕の中で、額に収められた女はそれは美しく微笑んでいた。

●描かれた狂気
「やあ、親愛なる君」
 グリモアベースに訪れた猟兵に、クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)はシルクハットを持ち上げる軽い仕草で挨拶する。そうして再び被り直せば、さっそくと話は本題へ。
「今回僕が案内するのはUDCアースと呼ばれる世界。君にはとあるUDC──アンディファインド・クリーチャーを倒してきてもらいたいんだ」
 UDCアース。それはさまざまな狂気が渦めく怪物たちの世界。太古から蘇った邪神に立ち向かうべく、身の内に孕む狂気にさらされながらも人々が戦い続けているその場所で、またひとりの怪物の発露が予見されていた。
 クリスは顎を撫でるように猫手を添え、少しばかり困ったような表情で猟兵を見上げる。
「ところで君、絵画には詳しいほうかな?」
 恥ずかしながら、僕はあまり絵心がなくてね。
 なんて爪の先で頬を柔く搔いて、気を取り直すようにクリスは猟兵へ詳細を話しはじめる。
「ああ、いや……今回の予見についてなんだけれどね。どうにも邪神が封印されている絵画が、どこかの展覧会で展示されてしまっているらしい」
 この時期、どの美術館でも競うようにさまざまな絵画が展示されていることだろう。多くの絵画の中から件の絵画を探すのは、いささか骨の折れる作業になるはずだ。
 とはいえ、絵画の封印は徐々に弱回っており、その絵画を見たものにも精神異常など何かしらの悪影響が出ているとも聞く。特定に至るためには聞き込みなどの調査も重要になってくるが、件の絵画は見ればすぐに分かるはずだ。
「優れた芸術は見るひとを惹きこむというけれど、その狂気は人の目に触れてはならないものだ。見つけ次第、壊してして来てほしい」
 心苦しいけれどね、と苦笑しながらクリスは手に馴染んだステッキで床を小突く。やがて線を描くようにして現れたグリモアは緩やかな光を帯びて、猟兵を次なる世界へ運んでくれることだろう。
 そうして誰もいなくなったグリモアベースで、クリスはひとりシルクハットを深く被り直して猟兵の健闘を祈るのだった。


atten
お目に留めていただきありがとうございます。
第一章は絵画探しとなりますが、その後には戦闘も控えている依頼になります。


▼ご案内
舞台はUDCアースになります。
まずは邪神の絵画を探し、破壊してしまいましょう。
絵画に描かれているのは美しい女性ですが、観覧の際は気分が悪くなることもありますためお気を付けください。
アドリブOKとあると気持ち盛り込みがちです。
それでは、皆さまの素敵なプレイングをお待ちしております。
よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『狂気の芸術』

POW   :    美術館などをとにかく巡り絵画展を特定する等

SPD   :    聞き込みや美術商の調査で絵画展を特定する等

WIZ   :    絵画の魔力を辿ったり美術知識で絵画展を特定する等

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雪月花・深雨
束の間の暇、或いは親しい方との良き日。
そんな平穏を狂気に満たされてしまう…とても悲しい事です…。


【POW】

手当たり次第になりますが、柔軟に対応していきたい所です…。
先に、展示会が行われている施設を、往来の案内板で確認致します。

ただ、すでに心を病んでしまわれた方がいらっしゃるのですね。
でしたら、件の絵画が飾られている所は

●どなたも近寄らないか

●興味を惹かれた方々が集っているか

でしょうか。そういった様子の施設を重点的に調べる方針です。


他には、もしも同じ目的の方と遭遇致しましたら、既に調べた所は共有したいと思います。

首尾よく絵画を見つけたなら、斧で破壊し、念のため物陰にかくれて様子をうかがいます…。



●狂気の在処
 冬晴れの昼下がり。
 人々のざわめきが行き交う路地の端にぽつんと佇む、今となっては見向きもされなくなった案内板の前に雪月花・深雨(夕雨に竦む・f01883)は立っていた。
 その雪のように白い指先がなぞるのは、近くで展示会が行われているだろう施設の宣伝広告。まずは開催場所、そして催し物の有無の確認。そのどちらもが案内板を見ればひと目で分かる。日々近代化が進みゆく現代においても、ポスターやチラシといった紙面による宣伝広告は催し物には付き物なのだ。
「この中に、件の絵画もあるのでしょうか……」
  束の間の暇、或いは親しい方との良き日。そんな平穏を狂気に満たされてしまうとしたら、それはとても悲しくて、恐ろしい。まだ見ぬ狂気の絵画を脳裏に思い描くように、深雨はそっと目を伏せる。
 都心に限ったとしても、美術館はさまざまなところに点在している。けれど、絵画の展示会となれば多少の数は絞れるはずだろう。それならきっと、余分なものから除外していけば、自ずと展示場所の候補も絞られてくる。
 張り出された紙たちを端からつまびらかに読み込み、やがて深雨は瞼をしばたたかせてから手元のスマートフォンへ視線を落とす。
「ーー可能性が高い美術館は、この3つでしょうか」
 恐怖感をテーマにした展示会と、現代美術を集めた展示会。そして無名の若手に焦点を当てた展示会。いずれにしても既に被害が出ているならば、その絵画のある展示会の現状はきっと大きく分けて二択。被害を恐れて誰も近寄らなくなっているか、興味を煽られたひとびとが集まるようになっているか。こればかりはもう少し調べなくてはならないーー共有するべく打ち込んだ情報を送信し、深雨は顔を上げると静かに踵を返し雑踏へと紛れていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

エン・ジャッカル
ふむ…絵画ですか。これまでに美術館に寄って鑑賞することは時々ありましたが、その中で一点だけの絵画を探すのは骨が折れそうですね。

となると、スマートフォンで絵を見たら気持ち悪くなるとかそういう噂のを検索するか、美術商に見てるだけで不思議な感覚になる面白い絵を知りませんかと尋ねてみるのが良さそうですかね。

それでも駄目だった場合は、最終手段として美術商の日記や手帳を拝借いたしましょう。許してください、必ず返しますので。

それにしても絵画に邪神ですか。心を込めて描くとその絵に魂が宿るという話は聞いたことはありますが、太古から存在する邪神の場合はその絵が召喚の触媒になったということになるのでしょうか…。



 ぽん。
 手元のスマートフォンが軽やかな音を立てると、エン・ジャッカル(風来の旅人・f04461)は受信した情報に目を通して小さく頷いた。
「なるほど。……ああ失礼、急用だったもので」
 軽い会釈と共に、にこりと余所行きの笑みを向けてエンは携帯を懐にしまい込む。そして気を取り直すように前を向いたその視線の先には、恰幅の良い壮年の男性が座っていた。美術商だ。人好きのする笑みを浮かべた男性はお気になさらずに、と緩く頭を降ってから問いかける。
「それで、どのような絵画をお探しで?」
「そうですね……見ているだけで、不思議な感覚になるような面白い絵はご存知ですか?」
 ーー例えばそう、精神に異常を来たす程に。
 エンの金色の双眸が薄く見据えれば、美術商の男性の指先がぴくりと僅かに戦慄くのが分かった。どうやら何かしら知っているようだと、エンは先を促すようにまた笑い掛ける。しかし、その目は笑ってはいない。
「……はは、眉唾な話ですよ。今の時期は怖い絵画や変わった絵画を挙って展示していますからね、気分を悪くされる方も少なくないのです」
 美術商の男性は大振りな仕草で肩を竦めて、苦笑する。男性としても、美術館の不利益となるような噂を公然と広めることは出来ないのだろう。商いをするものであるからこそ、その口は固い。
 その話を濁すような素振りから話を掘り下げるのも難しそうだと早々に判断したエンは、やがてゆっくりと腰を上げると、そのまま席を立つことを選んだ。
「そうですか。では私も、実際に見てみることにしますよ」
 今日はお時間を頂きありがとうございました、と締め括りエンは振り返ることなく歩き出す。ーーその手に、いつの間にやら見知らぬ手帳を持って。

「やはり、1点だけの絵画を探すのはまだまだ骨が折れそうですね……」
 人混みから離れた路地の裏。その暗がりで、エンは嘆息を吐く。
 彼の手のひらの中、無造作に開かれた手帳にはたくさんの人名が書かれており、またその大半は赤いバツ印で塗り潰されていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

空見・彼方
WIZ

邪神の宿った絵画か……俺も絵心はないからなー、
見てもどう凄いとか理解できっかな?うーん、
とはいえ、俺には虱潰しにあっちこっち巡るぐらいしかできねぇー。

空白?シャーマン?知るか、こちとらこの前まで一般人じゃい。
あ、空白。お前一応は邪神だろ?こう、同じ邪神同士でシンパシー的な?
なんかそう、そういうサムシング?で邪神の魔力とか辿れない?

え、一応は余計?でもやってみる?よっしゃ、じゃそれで行くか!
失敗してもまた探せばいいしな!

と言う訳で絵画の魔力を空白の第六感とかで感知
ダッシュでそこに向けて走り出す。

アドリブOK


ヨハン・デクストルム
美術館、素敵ですね。私の故郷にも絵画や彫刻は飾られていましたが、燃えたり朽ちたりでほとんどガラクタと化した後でしたから、こうして綺麗な状態の作品を見るのは新鮮です。役得、という奴でしょうか?
【WIZ】UDC職員に情報を頂いて、ある程度まで候補を絞った後、UCを起動して絵画までの正しい道を教えて貰いましょう。
使用技能:第六感、失せ物探し、聞き耳、忍び足など


ジング・フォンリー
生憎、絵に対する審美眼は持ち合わせてはいないが…美しいものは素直に美しいとは思う。では逆。悍ましいと…そう思うのに知識は必要あるまい。つまるところ俺の場合は数を見て探すしかないということだな。【第六感】を頼りに見て歩こう。
あぁ、この絵。この絵は悍ましいな。よく知ってる臭いがする。血の匂いだ【呪詛耐性】

アドリブ可



 人類防衛組織UDCーーアンダーグラウンド・ディフェンス・コープ、その駐屯場にて。UDC職員に聞き込みを行っていたヨハン・デクストルム(神亡き狂信者・f13749)は、何度目かの聞き込み調査を経て、近しい情報を持っていそうな人物を発見することに成功していた。
「邪神の絵画、ですか?」
「ええ、何か近しい事件や噂などの情報がいただければと思いまして」
 協力関係にある猟兵へ情報を提供するため、手に取った資料を捲りながら確認していくUDC職員の傍らで、ヨハンもまた相槌を返しながら資料をのぞき込むように視線を落とす。さまざまなデータがファイリングされている資料はしばらく捲られ、その指先はあるページでぴたりと止まった。
「これ、という情報は私の管轄では確認できていませんが、近いものと言うとこちらでしょうか」
 UDC職員が指差したそのページには、行方不明者の捜索依頼が綴じられていた。行方不明者、それはUDCアースにおいてそれは残念ながらそう珍しくない案件ではあるのだが、しかしその特異性は行方不明者の人数と共通点にある。
 UDC職員はヨハンを視線で見上げて、その詳細を小声で話していく。
「ジョン・ドウズ失踪事件、と我々は呼んでいます」
「ーー名無しの男たち、ですか?」
「はい。……彼らの共通点は無名の画家であることなのですが、不思議なことに、全員が似たような絵を描かれていたそうですよ」
 知り合いでもなければ、会ったことさえなかっただろうに。そう言ってなぞられる文字を視線で辿りながら、ヨハンは小さく息を呑む。データとして羅列された名前は片手では事足りず、あまりにも多い。これらすべてが失踪した画家だとしたら、確かに異様な事件だ。
 考え込むような仕草で俯いたヨハンに、UDC職員は資料を閉じながらそっとその顔色を伺う。
「あの、大丈夫ですか?」
「っと、すみません。有益な情報をありがとうございました。……ところで、このバツ印たちは?」
 印が付けられた複数の名前たち。緩く頭を振ってヨハンが薄く微笑みを見せば、それに安心したように微笑み返したUDC職員はこともなげに問いかけに答える。ーーああ、それは既に死亡が確認されている方たちですよ、と。

●〇

「あーあ、ここじゃなかったな」
 美術館から離れて、空見・彼方(ゾンビアタッカー・f13603)は小さくぼやくように口先を尖らす。絵心もない自分には見たところで理解しようもないが、とはいえ1点の絵画を見つけるためには虱潰しに美術館を巡るしかない。そう判断してまず彼が駆け込んだのは恐怖感をテーマにしていると言われていた展示会だった。
 1番それっぽいと思ったのに、と呟いた彼方はそう思わないかと同意を求めるように隣を見上げた。そこに立つのはジング・フォンリー(神躯108式実験体・f10331)だ。
「知識がない以上、数を見て探すしかあるまい。次に行くとしよう」
「そうすっかあ……。なあ空白、邪神の魔力とか辿れたりしねえの?」
 ジングの言葉に大きく溜息を吐いて、彼方が次に問いかけたのは誰もいない宙。否、己自身だ。自分の胸の内に住まう別人格に問いかけた彼は、少しの期待を乗せて些か大味な言葉を重ねていく。シンパシー的な。そういうサムシングで。
 はたして、彼の別人格である空白はどう答えたのか。胸の内の言葉は自分自身、彼方にしか分かりえぬことだろう。しかし悪い返事ではなかったのは確かだ。やってみるか、と明るく姿勢を正した彼方は再びジングに問いかける。
「なあ、アンタはどっちだと思う?」
 恐怖感をテーマとした展示会を除いて、残る美術館は2つ。現代美術の展示会か、無名の画家に焦点を当てた展示会。
 どっちの勘が当たるか賭けてみようぜ、と持ちかける彼方を見下ろしてジングも僅かに唇を釣り上げる。そして2人はどちらかともなく顔を合わせると、それぞれ第六感を信じて声を揃えるようにして答えるのだ。
「ーー無名の画家!」
 冬場れの空の下。これじゃあ賭けになんねえ、と笑う声が響いていた。

●赤い女の肖像画
 都心にある、駅からは少しばかり離れたさほど大きくはない美術館。展示会の宣伝広告が大きく張り出されていたそこは、しかし思っていたよりも閑古鳥が鳴いているようだ。ちらほらと観覧しに来た客はいるようだが、ほとんどいないと言ってもいい。
「……おや、」
 展示会の、その出入口。入館後に居合わせたヨハン、ジング、そして彼方は互いに顔を見合わせて視線を交わした。ここにあると当たりを付けたのは、間違いてはなかったらしい。
 手のひらの中で輝く月の霊を帰すように、そっと手のひらを閉じたヨハンは先を見据えて少しだけ眉を顰める。ここからでも見えている、この場に似つかわしくないもの。おそらくこの展示会で主役となる見世物があったのだろう最奥に続く道に、黄色に光る立ち入り禁止を示すテープが貼られていたのだ。
 再び互いに視線を交わした3人は、静かに頷きあうと気配を消して忍び足で最奥へ進んでいく。

「これは……」
 そこに飾られていたのは、美しい女性の肖像画だった。美しい女性が、こちらを見つめて微笑んでいる。それだけのもの。しかし見たものの背筋に走る怖気は、とてもそれだけとは言えない。
「……なんつーか、気持ち悪い絵だな」
「ああ、この絵は。この絵は、悍ましいな……」
 これのどこが、美しいと言えるのか。猟兵の目に映るのは、不気味な触手と、薄らと微笑む気味の悪い女でしかない。その造形がどれだけ美しく描かれていようとも、それは邪なるもの。人在らざるもの。その絵は、この世にあって良いものではないのだ。
「ーーこれ以上、見るべきじゃない」
 肖像画を見上げた2人の視線を遮るように、ヨハンは声を掛けて前に出る。邪神の封印が解けかけているならば、今のうちに壊すしかない。魅入られる前に、狂気に触れる前に。
 そして瞬く間に、ヨハンは手にした短剣で迷うことなくその絵画を切り裂くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『狂気の廃美術館』

POW   :    気合で耐える/美術品を破壊する

SPD   :    感覚を活かし、危険を避ける

WIZ   :    対抗策や安全なルートがないか調べる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

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 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
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●Interval
 その展示会を企画した館長、曰く。
 はじめは少しの好奇心だったらしい。
 安く買い上げた無名の画家が描いた肖像画は、習作とは言うがそれは見事なもので、描かれていた女性は女神のように美しく。これを主役として展示会をしたら、更なる客入りが見込めるはずだとはじめは思っていたそうだ。
 しかし蓋を開けてみれば、その絵画を見た観覧客から少しずつ苦情が入るようになる。
 初めのうちは単なるクレーマーとして処理していたが、その数が十を超えてこれはおかしいと思った頃には既に遅く。精神に異常を来たしたものが出てからは誰もその絵を見れず、触れず、取り外すことも叶わなくなった館長にはその場への立ち入り禁止を決めることしか出来なかった。
 それゆえか、展示物を破損させた猟兵にもお咎めは一切なかった。感謝こそあっても、そこに怒りはない。館長もまた、その絵画により体調を崩してからというもの、ずっと疲れていたという。

 しかし、本題はここから。
 話はこの絵画1点では、終わらなかったのだ。
 館長の話によれば買い上げた作品はあくまで習作の中で出来が良かったものであり、無名の画家が全霊をかけて描いていた絵画、その原画はいまも画家のアトリエに眠っている可能性か高いのだとか。
 ただ、肝心の画家は既に亡くなっており連絡を取りようもないのだと館長は言う。その絵画にも邪神が眠っている可能性を思えば、これを逃す手はないとした猟兵たちはそして件の画家のアトリエがある場所を館長から聞き出しーー亡くなった画家のアトリエへ赴くこととなる。
●壊れたアトリエ
 都心から離れた山奥に、そのアトリエはあった。アトリエはコテージような形をしていて、建てられてから長らく時間が経っているためかやや草臥れてはいたが、人が住むにはなんら問題はない。しかし、そこに人の気配はなかった。
 鍵は開けるまでもなく、扉は鈍い音を立てて開いた。中はまるで小さな美術館のように、壁のそこかしこに絵画が飾られている。だが、ただの美術館を摸したアトリエではない。1歩足を踏み入れれば、すぐその異様さに気付くことだろう。
 右も左も、飾られた絵画に描かれているのはすべて同じ女性なのだ。赤く、赤く、美しくおぞましい赤い女の肖像画。さまざまな向きで、構図で、技法で。すべてを課して描かれているのは、すべて同じ赤い女。そこにある執着ともいえる狂気は、猟兵の精神をも苛むかもしれない。その狂気と向き合う覚悟を持って、猟兵はアトリエの奥へと足を進めていく。
エン・ジャッカル
うーむ、アトリエの中は天井が3m半よりも低そうに見えますので、アヌビス号と合体して入るのは難しそうです。私自身だけで入るとなると、危険察知機能が備えられているAマシンヘルムが頼りですね。

さて、いざ入ってみたのはいいものの、こんなに沢山の肖像画が並んでいては、いくら描かれたものが美しくともおぞましく感じてしまいますね。
そういえば、ホラー小説では肖像画から飛び出して襲ってくる話がありましたね。ここの肖像画もあり得るのでしょうか。これは一層警戒しなければなりませんね。

廊下の角やドアの向こうも警戒しながら進めて行きたいので、影の追跡者を召喚して先に行かせて確認しながら進めて行くことにしましょう。


閂・綮
◾️アドリブ歓迎
【WIZ】

◾️対策
【覚悟】をもって慎重に進む。
【拠点防御】【オーラ防御】【破魔】を使い、自身の周囲に清浄な空間を作り出す。
鳥形のからくり人形「花翼」を飛ばし、狂気に呑まれそうな依頼参加者がいた場合は、その人物に対して【目潰し(目を翼で覆って守る】を行う。動けなくなった者には歩み寄り救助、【鼓舞】する。

◾️心情
ほう?
封印もせず招き入れるか、余程自信があると見える。見つかる前に、我らを消耗させる腹であろうが。
一一 何、急がず追い詰めれば良いだけのこと。

【鼓舞】
(てのひらでやさしく触れ)
騙されるな。
…よし、よし。そうだ。
此れはお前を陥れるための罠。
虚像であり、決して真実ではない。


ジング・フォンリー
アドリブ絡可

中国では紅は吉祥の色だが。この赤は見ていて気持ちのいい赤ではないな。まるで血のような…この絵画に害があるならば破壊するのみ。精魂込めて描いた画家には悪いが…これはよくない。

【第六感】で致命傷は避けつつ【呪詛耐性】【気合い】で耐える。
そして拳で絵画を破壊。


空見・彼方
WIZ

あんなもん見続けたら気が狂うわな…
え、描き手の執念が見える中々良い絵?空白、お前どうかしてるわ。
とにかく、原画をみつけなくちゃな…空白、引き続き第六感に期待してる。

という訳で対抗策、邪神人格の人形「空白」を先に進ませ、
道中の絵は槍を使って問答無用で破壊。

俺は薬飲んで覚悟をキメて、フードをふかーく被って呪詛耐性を強める。
で空白の後ろを付いていく。
部屋の中とかは空白が部屋を散策してる間扉を開けて閉じ込められない様にしとく。最悪人形の怪力と衝撃波でぶっ壊す

空白、万が一俺が狂気に陥ったら殺して…あ、うん、サムズアップやめて。いつ覚えたの?(狂気に陥ったら死に、UC死ではなく~で復活、正気に戻る)



●狂気の向こう側へ
 物言わぬ気味の悪さばかりが横たわるアトリエの奥へ足を進めようとしたそのとい、突如として、背後の扉が音を立てて閉まるのが分かった。音に驚き振り返ったときには扉は頑として動くことはなく、鍵が掛かった様子はないのにも関わらず、がちゃがちゃとドアノブを回してもまるで開かない。
 殿を務めていたジング・フォンリー(神躯108式実験体・f10331)は、先に立つ猟兵たちを険しい顔で振り返る。壊してしまおうか。
 その問いかけに頭を振ったのは、エン・ジャッカル(風来の旅人・f04461)だった。
「どの道、進むしかない。今は進んでみましょう」
 恐れずに、しかし室内であることから手数が限られたエンはそう言うと、己を守るAマシンヘルムを頼りに先に進むことを提唱する。
 ジングもまたその案を了承するように頷くと、道の奥を見据えるように肖像画が並ぶ画廊を睥睨した。
「中国では紅は吉祥の色だが、この色は見ていて気持ちのいいものではないな」
 既に電気系統は壊れているのか、部屋の電気がつく様子はなかった。しかし吹き抜けた天井から差し込む西日は明るく、橙色の陽光がその赤色を照らしている。
「あんなもん見続けたら、そりゃ気が狂うわな……」
 ジングの言葉に頷くように、空見・彼方(ゾンビアタッカー・f13603)もまた辟易とした様子で肩を竦めていた。この場で肖像画を讃えているのは、彼方が先を歩かせている自律型機械人形、姿なき女の人格を宿した『空白』くらいなものだろう。うえ、と舌を見せた彼方は小さくぼやく。空白、お前どうかしてるわ……。
 そんなやり取りを眺めて、閂・綮(マヨヒガ・f04541)も続くように歩みを進めながらクスリと笑みを漏らす。狂気が蠢く中に置いても、綮の笑みは変わらず湛えられていた。
 しかし、その心には確かな覚悟がある。ちらりと肖像画を一瞥した綮は、共に行く猟兵たちを鼓舞するように言葉を紡ぐ。
「見つかる前に、我らを消耗させる腹であろうがーー何、急がずに追い詰めれば良いだけのこと」
 さあ、進もう。
 その言葉を皮切りに4人は各々に頷いて、アトリエの奥を目指していく。溢れる狂気を止めるために、終わらない狂気を断ち切るために。

●〇

「アトリエとしているだけあって少し変わった形状をしているようですが、これは……」
 これは、やはりおかしいのではないか。
 言いかけた言葉を飲み込み、エンは溜め息として吐き出す。飾られた肖像画を壊しながら進むうちに、分かってきたことがあった。
 まず、アトリエは一見として一般的なコテージとは作りが異なっており、人が住むためのものとしては使っていなかったのだろう。完全に作業場、そして飾る場としてしか使われていないようだ。
 そして、外から見た際の建物はさほど広くなかったにも関わらず、中を歩いてみればまるで空間が歪んでいるかのように構造がおかしい。広すぎるのだ。
 影の追跡者、そして人形の空白が先を行くのを確かめながら進んだ扉の先。そこにまた現れた扉の数は全部で3つ。
 綮が作り出す清浄な空間によってなんとか精神は保たれていたが、いい加減気が狂いそうだと思うのも仕方のないことだろう。ここに来るまでの間に一体いくつの肖像画を見て、そして壊したのか。エンは既に数えることを放棄していた。
「さて、どの扉を進むべきか……」
 すべての扉に誂えたかのように、やはり赤い女の肖像画は飾られている。悩むように先を見据えた、そのとき。
「ぅ、ぐ……っ」
 突然、堪えるような呻きが上がった。
 声の元は後方。いつの間にか歩みを遅くしていた彼方が、深く被ったフードの奥で吐き気を抑えるように口元を抑えた。
 ぐらぐらと、まるで脳そのものが揺れているかのように気持ち悪い。苛まれていく精神の片隅で正常な意識が防衛本能を働かせたのか、彼方はそうして膝を着く。
「空白、万が一俺が狂気に陥ったらーー殺して、」
「ーー騙されるな」
 刹那、揺らぐ視界の中で呻いた彼方の前に、ふわりと翼が広がった。鳥型のからくり人形、それは綮の操る『花翼』だ。狂気に折れそうな目を覆うように翼を広げた花翼と共に、綮もそっと歩み寄り、そして囁く。
「……よし、よし。そうだ。此れはお前を陥れるための罠」
 目に見えるもの、見えぬもの。精神を苛む赤い色。それらすべては虚像であり、決して真実ではない。
 深き森のような、柔らかな声。その声を耳に彼方は乱れた呼吸を直し、震える指先で進む先を示した。いくつもある扉の中のひとつ、その白い扉に誂えたかのように飾られた赤い女の肖像画を。
「……! 皆さん、あの肖像画を壊してください!」
「了解した!」
 真っ先にその意図に気付いたエンが声を掛けるのと同じくして、ジングと空白が駆け出す。
 そして両者ともにその拳を振り抜くように肖像画へ強く叩きつければーーそして、がらがらと音を立てて壊れていく肖像画を残して、がちゃりと音を立てて白い扉が開くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『灼紅の女王・ブラッドクィーン』

POW   :    敵から護る赤黒くおぞましきモノ
【敵対 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【絡みつく赤黒き触手の群れ】から、高命中力の【高粘着性の強酸溶液】を飛ばす。
SPD   :    解放されてはならない狂気の姿
【世界に隠匿された真の邪神の身姿 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    死しても逃さぬ邪悪なる降霊
【 自身に挑んで返り討ちにあい支配された敵】の霊を召喚する。これは【生前に使用したユーベルコード】や【得意としていた武器】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアイリス・スノーキャッスルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Interval
 あれほど広かったはずのアトリエは、いつの間にか一般的なコテージとそう変わらない広さに戻っていた。練り歩いた肖像画ばかりの室内も、何事もなかったかのように普通の生活空間が広がっている。猟兵はその薄気味の悪さを背にして、開かれた白い扉を進んでいった。
 はたして、白い扉の向こうはすっかりと煤けた作業場があった。カーテンの隙間から間から差し込む光だけが、散乱している画材を眩く照らしている。
 その一番奥。豪奢な額縁に飾られていた赤い女の肖像画が、猟兵の視線に応えるように揺らいだ。次の瞬間。
 ずるりと這うようにして現れた赤い女ーー灼紅の女王・ブラッドクィーンはそして、その目を細め、紅い唇を吊り上げて猟兵を迎える。
「ーーようこそ、まつろわぬ者共」
ヨハン・デクストルム
こんにちは、赤の女王。
現世はお楽しみいただけましたか? そろそろお還りの時間です。
UCを使用。窓から入る光を収束させ、レーザーのようにして攻撃します。常に放出するのではなく、短く何度も打ち込む感じで。召喚された霊も同様にして破壊します。
使用技能:串刺し、投擲、第六感、高速詠唱、掩護射撃、カウンター、かばう、激痛耐性、礼儀作法など


エン・ジャッカル
少しだけ予想通りに肖像画から出てきましたね。それにしても、すぐに襲ってこない所は流石淑女といったところでしょうか。おぞましい雰囲気は相変わらずですが。敵意が感じられますので、すぐにでも戦闘に入ることになるでしょうね。
ここは十分スペースがあると思うので、外に待たせている相棒のアヌビス号を呼び寄せて合体し、戦闘態勢に入ることにしましょう。

さて、相手は紅い女性。見る限りではあの足部分にある触手らしきものを武器に攻撃してくる可能性が高いですね。勿論呪詛や魔術を使う可能性もありますので、迂闊に近付かずに相手の攻撃の隙をついて攻撃する戦法で行ったほうが良さそうです。



●赤き偏執
 ずりずりと床を舐めるように、女が身に纏う艶やかなドレスから這い出た触手が蠢いている。カーテンの隙間から差し込む西日に照り返すその色は赤黒く、おぞましくも血の香りを漂わせていた。紅い唇を指先でなぞるように笑みを深めた女は、血の香りさえ霞む薔薇のような美しさを湛えて猟兵を迎え入れ、自らを仇なすものを前にしても悠々とした表情を崩す様子さえない。
 灼紅の女王・ブラッドクィーン、彼女こそが死した画家がその命を課して描き上げた狂気の集大成。狂気の絵画――狂信者の血と信奉を媒介として、不完全と言えどもこの世に復活を果たした邪神の1柱である。
「こんにちは、赤の女王」
 迎え入れたブラッドクィーンに怯むことなくそう返したのは、ヨハン・デクストルム(神亡き狂信者・f13749)だ。白皙の貌に薄らと笑みさえ浮かべて、恭しくもヨハンは礼儀正しく腰を折って礼を尽くしてみせる。
「流石は淑女、といったところでしょうか」
 その横で。エン・ジャッカル(風来の旅人・f04461)もまた、おぞましくも損なわれることのない美しさを前に、僅かに感嘆したような呟きを漏らした。不意打つように攻撃を仕掛けられてもおかしくなかったこの場で、あえて仰々しく猟兵を迎え入れたのは余裕の表れだろうか。それとも。
 笑みの裏で思考をめぐらせ、エンは礼を終えたヨハンと束の間の視線を交わす。そして。
「モードチェンジ!」
 けたたましい音を立てて呼び寄せられた宇宙バイク、アヌビス号と合体したエンが戦闘態勢に入るや否や、ヨハンもまた細やかな指先を操り宙をなぞる。
「現世はお楽しみいただけましたか? ――そろそろお還りの時間ですよ」
 ブラッドクィーンにどのような企みがあるのだとしても、戦うならば先手必勝というもの。戦闘は、すでに始まっているのだ。
 ゆえに、襲い来る赤黒き触手の群れをモードチェンジした巨大な足で踏み潰すエンと同じくして、瞬く間もなく。差し込む細やかな光は収束し、凝縮された光はレーザーとなってブラッドクィーンに放たれる。ヨハンが放った、音さえ置き去りにしてしまうほどの光速の一撃は、まっすぐに狙いをブラッドクィーンに定めていた。
 しかしブラッドクィーンもまた、音もなく出現させた霊を肉壁としてその熱線から自らの身を守り、熱と消えた霊の奥で赤い目を細める。
「……ふふ、随分なご挨拶だこと。けれど、嫌いではなくてよ」
 たおやかな細腕で紅の口元を隠すように、ブラッドクィーンは笑みを零す。くすくす、くすくす。その上面だけを見れば、毒々しくも美しい女性の姿がそこにある。死した画家も、この美しさに神を見ていたのかもしれない。
 けれど、その本性は間違いなく邪なるもの。ドレスの下でずるりと這う触手こそが、ブラッドクィーンの真の姿の一端といってもいいだろう。
「お気に召していただけたようで、何よりです」
 たとえ初撃を防がれても、ヨハンが焦ることはない。エンもまた、蠢く触手を視界の隅に納めながらも常に注意深く隙を伺っていた。
 そして、ブラッドクィーンが攻勢に出ようとしたその瞬間――、
「では、次は私の手番……ッ!?」
「おっと、それはいけませんね!」
 戦いにおいて、順番などあってないようなもの。この場では、速さがすべて。そうしてブラッドクィーンによって支配された霊が出現するよりも、僅かに早く。エンが触手を吹き飛ばし、ヨハンの高速詠唱によって再び収束した光の軌道はまっすぐに線を描いて、ブラッドクィーンを焼き貫く。
「――申し訳ないですが。あなたの手番はありませんよ、赤の女王」
 神威覿面。それは、聖者の織り成す自然の息吹。
 おぞましい赤色を打ち消すほどの眩い光を送り、目を見開いたブラッドクィーンへ向けて、ヨハンはそっと微笑むのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

空見・彼方
助かった。あのままだったら空白に正気に戻されてた。
扉先のボスと対峙する前に、手持ちのドリンク剤を呑んで平静を取り戻し
【空道】発動、ボトルから俺は異空間へ

ボスには人形の空白のみで対峙。
オーラ防御で強化した短槍を怪力で振るい、
もう片方の短槍の代わりに片手にネイルガンを持って戦う

空白もしくは味方へ敵が強酸か、真の邪神姿で攻撃を放ったら
空白の手先から俺が飛び出てかばう。死亡して【死人塚】発動

支配されてやんねぇ、俺の致命傷、お前に返すぜ。

致命傷をボスに再現し【彼岸花】発動。
人形の空白と、空白が持ってた武器を花びらにし攻撃する内に
俺は死人塚を解除し【夢死】で復活、ボス目掛けてだまし討ちで
短槍を突き立てる。



 ブラッドクィーンと対面するよりも以前に正気を取り戻していた空見・彼方(デッドエンドリバイバル・f13603)は、その赤色と見合う前に懐から取り出したドリンクボトルの蓋に手をかけた。
 空道、カラノミチと呼ばれたそのドリンクボトルは一見どこにでもある既製品にも見えたが、その実ユーベルコードで作られた特別な代物である。飲み口に触れた先から吸い込まれるように異空間に身を潜めた彼方を見送り、その殿を務めるのは彼と共にあった自律型の機械人形。姿なき女が宿るその人形『空白』は、短槍を手にブラッドクィーンと対峙していた。
「……ふぅん、妙な真似をするのね。けれど――、」
 所詮はお人形。持ち主と離れたなかで、どこまで動けるものかしら?
 細腕に見合わない怪力で振りかぶられた短槍の矛先を触手でいなし、ブラッドクィーンは血のように赤い瞳を細める。自分は安全な空間で高みの見物とは、単なる臆病者か、それとも勝機を狙う策士の成すところか。意図の先を探るように辿る赤い瞳は、しかし間もなく伏せられた。
 どちらでもいいわ、音もなく唇が息を吐く。
「お人形遊びにはもう、飽きたわ」
 ブラッドクィーンが再び目を開いたとき。その目は赤黒く濁り、底のない闇のようなものへと変化していた。血の色は瞳から消え、まるでどこまでも続く深淵がこちらを覗いているような薄気味の悪さだけがそこにある。
 人間の顔を見るとき、第一に印象付けるのは瞳とされる。だからこそ死した画家も、何よりその瞳を血のように赤い鮮やかさで描いていた。であれば、目は口ほどにものを言うとするならば。いまや瞳に虚無を映したその姿は、なにを物語るのか。
「あぁ、ぁあぁぁあ――!」
 薔薇のように美しかった貌は、もはや枯れ果てていた。
 そこにある虚無の色こそ世界に隠匿されていた、画家さえも描くことのなかった狂気の果ての姿。
 不完全なままに復活を果たしたゆえか、真の姿を晒したことで理性を失ったブラッドクィーンが獣のような声をあげる。警戒して空白が間合いを取れば、その間にもずりずりと這いずるおぞましい触手はいつの間にやら数を増やし、絡みつきあいながらもその切っ先を研いでいた。触手はやがて、再びブラッドクィーンの叫びに応えるように動き出す。
 そして。
 動きを変えた触手に足元をすくわれた空白に強酸が襲い掛かろうとした、そのとき。
 切っ先に手のひらを向けた空白の手先から、彼方は現れる。

「ぐ、……ッ」
 触手の鋭い切っ先に体を貫かれて尚、彼方は枯れ果てた虚無の色を見据えていた。
 狂気はいまも、そこにある。ぐらぐらと脳みそごと煮えているように突き刺さる熱さだけが、狂気に触れた彼方の精神を繋ぎとめていた。
「――支配されてなんて、やんねぇよ。俺の致命傷、お前に返すぜ……ッ!」
 その言葉を合図として、ぶわりと周囲の空気が変わる。
 死に至るほどの痛みをそのまま相手に返すその力こそ、彼方が成しえた死人塚。ぼとりと音を立てて落ちた触手に、そして彼方は痛みを吹き飛ばすように力を振り絞り短槍を突き立てるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジング・フォンリー
アドリブ絡可

元凶のお出ましか。
血のように赤いな…いや…血そのものか?お前の姿は人の精神を侵す。これ以上の犠牲者を出すわけにはいかないからな。
消させてもらう。

【第六感】で攻撃を避けつつタイミングがあったら【二回攻撃】最後は【鳳凰天昇撃】を叩き込む。


閂・綮
◾️アドリブ、苦戦描写など歓迎

◾️戦闘
依頼参加者の回復・支援に専念

同行者を【かばう】、「花翼」による【範囲攻撃】で敵の攻撃の相殺を試みる。【学習力】を用い、道中で行った「狂気への対策」を行いつつ周囲を警戒。罠にも注意する。

◾️心情
(一一 赤。
色褪せた空間に、異様な程鮮やかな赤が映える。
どろりと脈打ち、鉄臭さの残るそれは。かつてこのアトリエの主人であった者の 、)

同じく人の手で産み落とされたとはいえ。
お前のようなものに、歓迎される謂れは無い。…己の贋作で遊ぶのは飽きたのか?
一一それは、好都合。

さて。“邪神”とは、如何程か。



●黒き終焉
 体の消耗ゆえか、それとも失くした理性ゆえか。無差別に当り散らすような触手はブラッドクィーンの身を守るように、絶え間なくその数を増やしていた。
 むせ返るような血の香りに隠すことなく顔を歪め、ジング・フォンリー(神躯108式実験体・f10331)はその切っ先を見下ろす。
「……お前の姿は人の精神を侵す。これ以上の犠牲者が出る前に、消させてもらうぞ」
 血のように赤いのか、それとも血そのものか。カーテンから差し込む光ばかりの色褪せたこの空間に、その色は異様な程鮮やかに見えることだろう。画家の血液で描かれたブラッドクィーンはまさにその名に相応しい色を身に纏っていたが、しかし真の姿を晒した姿は既に美しさとは程遠い。
「同じく人の手で産み落とされたとはいえ……、」
 なんと哀れなことか。それを言葉にすることは、しない。
 ただオレンジ色の瞳で静かにその虚無を見据えて、閂・綮(マヨヒガ・f04541)は花翼を操る。道中にあった絵画さえ狂気を宿していたならば、ブラッドクィーンは謂わば狂気そのもの。精神を苛む穢れの温床。共に戦うジングの支援に務めるべく指先を踊らせた綮は、注意深く戦況を見ていた。
 赤黒くおぞましき触手、邪悪なる降霊。代わる代わるに喚び込まれる、ブラッドクィーンの手足による壁は確かに厚い。しかし、身を守るその行動はよりブラッドクィーンの消耗を現していると言ってもいいだろう。
 ジングと目を交わした綮はひとつ頷き、その背を押すように密やかに囁く。
「……我が露を払おう。お前はその先に行くが良い」
 ばさりと羽を広げた花翼が、宙を駆けていく。差し迫る触手から守るように買って出た綮に、ジングは僅かに目を見張るも視線で頷き返し、花翼の後を追うように駆け出した。そして。
「あぁ、ぁ――」
「――鳳凰天昇撃!」
 ジングの行く道を開けるように、花翼は触手たちを退けていく。理性を失くしたブラッドクィーンに、避けることはできない。花翼の影を潜るように素早い身のこなしで駆けたジングはそして、すべての元凶たるブラッドクィーンに拳を叩き込み、合わせるように喚び寄せた鳳凰はおぞましい赤色をかき消すほどの眩い黄金色を以ってブラッドクィーンを炎の息吹で燃やし尽くすのだった。

●その名は
 色褪せ煤けた部屋に、燃え尽きた額縁が転がっている。
 収められていた絵画も焼き焦げて、何が描かれていたのかさえもう分からない。あれほど鮮やかだった赤色も、今は煤けた黒色に沈んでしまったのか見る影もなかった。
 それでも。
 確かにそこで、女は美しく微笑んでいた。
 確かにそこで、男は信じた神を描いていた。
 今となっては。
 猟兵の記憶に残る女の笑みだけが、名も知らぬ画家が残した遺作である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月19日


挿絵イラスト