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アポカリプス・ランページ④〜渇きの中で

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●渇き続ける心
 過酷な高温と乾燥に包まれた「死の谷」デス・バレー……。
 既に猟兵たちの侵攻で大きな損害を受けたこの機械要塞で、獲物を探し徘徊する存在がいた。
「『侵蝕プログラム弾』はまだ在る。であれば……」
 『彼』は連れ添う蛇の様な金属生命体をそっと撫でた。
 よく見ればその生命体は人間の骨を部品に使っており、指な骨の様な部位には指輪がはめられている。
「ああ、心が乾く……極限で醜い姿を晒す者でも見て、心を潤したいものだ」

●武装の無効化に対抗しながら敵を倒そう
「集まってくださり、ありがとうございます! 『アポカリプス・ランページ』へ参戦するみなさんにお知らせです」
 グリモア猟兵のユーノ・エスメラルダ(f10751)はグリモアベースに集まった猟兵たちにぺこりとお辞儀をすると、戦場の説明を開始した。
「今回、ユーノから提示できる場所と情報はこちらになります」
 そう言うとユーノはホワイトボードへ一枚の地図を留めてペンで印をつける。
 そこは『アポカリプス・ランページ』の舞台であるアメリカ大陸、その西側……大きな山脈と砂漠を有する地域だ。
 ここはすでに攻略が進んだ場所だが……ここのオブリビオンを排除することで、道路の舗装、つまり『アポカリプスアタック』に用いる資材の運搬が進むことだろう。

「このコンピュータ研究所を兼ねた機械要塞に、オブリビオンが残っているのを発見しました。このオブリビオンは『侵蝕プログラム弾』というものを所持しており、付近を通る者を襲おうとしています」
 そう説明しながら、ホワイトボードへ描かれたのは黒ずくめコートと防具、そして分厚い刃物と盾を携えた奪還者の様な姿。
「彼は従えている金属生命体と連携しながら攻撃を加えてきます。そして今回は彼が手に入れている『侵蝕プログラム弾』への対処も必要です」
 ――それは、あらゆる『武装』を無力化させる力を秘めた弾丸。
「この弾丸の銃弾を受けてしまえば、身につけたあらゆる道具、武器、防具が効果を発揮できなくなります。この弾丸は、体内に仕込んだ銃口や周辺のトラップから発射されるため回避は難しいでしょう」
 避けるのは難しそうだ……であれば対応を割くのは受けた後だろうか?
「そして備考としての情報です。このオブリビオンは生前、恋人を見殺しにされている様です……その恨みからか、人々を追い込み同じ苦しみを味あわせる事に安らぎと愉しみを感じる傾向がある様です。……もしかしたら、これは隙を作るのに活かせるかもしれません」
 ホワイトボードへ書き加えられた蛇の様な金属生命体。
 その姿を構成する骨が、その恋人のモノの様だ。

 説明を終えたユーノは手を組むと静かに祈り始めた。
 すると地面に魔法陣が展開されていく……これに乗れば、そのままデス・バレーへと転移されることだろう。
「ユーノは皆さんの転移のために同行は出来ません。どうか、みなさまにご武運がありますように……」


ウノ アキラ
 はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。
 不利な状態からの逆転……良いですよね。ウノ アキラです。
 このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。


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 プレイングボーナス……武装の無力化への対策を行う。
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 プレイングボーナス……わざと追い詰められたフリをする。
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●お得情報
 人数によっては全員の採用は難しいかもしれません。
 今回は18日(土)、19日(日)、20日(月)の三日をリプレイ執筆に充てる予定です。
 他にもマスター紹介のページは一読頂けると文字数を少し節約できるかもしれません。
 ※オーバーロード時もリプレイの文字数はほぼ変わらない予定です。推敲時間に余裕が出来るため文章は安定すると思います。

●依頼について
 ボス戦になります。
 体内に仕込んだ銃口または周辺のトラップから不意打ち発射されます。
 道具、武器、防具は効果を発揮しなくなるので、別の手段を用意した上でわざと不利になると攻撃や防御が上手くいくことでしょう。

 よろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『『善悪の天秤を弄ぶ者』ダーク・レイダー』

POW   :    『…共に往こう。この醜き世界を嗤いに。』
【剣の乱舞を交えた、大楯を用いる攻防一体の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【従えている『恋人から造られた金属生命体』】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    『知ったような口を…。貴様らに何が分かる?』
自身の【戦闘力を増強】し、【従える金属生命体】が輝く間、【従える金属生命体・片手剣・大楯、其々】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    『苦しいか? 今の内に存分に『それ』を楽しめ。』
見えない【無数の手】と【恋人から造られた金属生命体】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は霧島・絶奈です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大豪傑・麗刃
わたしに何が分かるって?何もわからんのだ。私は一個の武人。ただ闘争をもって語り合うだけなのだ。

刀の二刀流構えてバイクで相手に突っ込み(良い子のみんなは手放し運転はやめましょう)無効化されて事故発生。
で迫る敵に気合の入った演技で無様演じる。

すいません許してくださいなんでもしますから

土下座して色仕掛け(え?)して必要とあれば靴だってなめちゃう。相手の攻撃はひたすら気合と痛み耐性でなんとかする。
最後にはついに耐えかねて

き、きみねえ。
いくら温厚なわたしでもカンニングプロで大暴れなのだダマサレターくん!
違った?えっとダメダコリャーくん!

で武器防具道具いらないユーベルコード(無力化への対策)が発動すると。



●剣は交わらず
 死の谷の底でぶおん、ぶおん、とエンジン音が鳴り響く。
 大豪傑・麗刃(23歳児・f01156)はバイクに跨り、モヒカンがついた丸形ヘルメットとサングラスをかけた姿で谷底を疾走していた。
 その目立つ爆音と存在感は敵をおびき寄せ、眼前の機械要塞の前に早速『ダーク・レイダー』が現れる。
「むっ現れたなダークライダーとやら! しかし何故キミはライダーなのにバイクに乗っていないのか?」
「ライダーではない……レイダーだ……」
 こう答えながら、『ダーク・レイダー』は大楯を構えた。
 それは一見、突撃を正面から受けようとする姿。
 それに麗刃も武人として応えようと二本の剣を――バイクで疾走したまま、ハンドルから両手を離して、二本の剣を抜く。
 しかも『サムライブレイド』と、『バスタードソード』で非常にバランスが悪そうである。
「いざ尋常に勝負なのだ……うおっ!?」
 そこへ横から突如金属生命体が現れ、同時に『ダーク・レイダー』の腕から麗刃を狙って『侵蝕プログラム弾』が発射された。
 現れた金属生命体へ咄嗟にバスタードソードを振るう麗刃だが、着弾した『侵蝕プログラム弾』によって武装が効果を成さなくなり、物理的な干渉が行われずに剣は敵をすり抜ける。
 手応えのなさに麗刃はバランスを崩し、金属生命体の体当たりも受けてバイクごと転倒した。
「ぬぶべべべべべ!?」
 大地に頭をめり込ませながら『ダーク・レイダー』の眼前まで滑っていく麗刃。
 この時テロップには『※良い子のみんなは手放し運転はやめましょう』という表示があったことも付け加えておこう。

「さて……ここからさらに奪ってやろう。腕か、それとも足か……」
 麗刃が地面から頭を引き抜くと、眼前に赤黒い剣が突き立てられる。
 それに対し、麗刃は……。
「すいません許してくださいなんでもしますから」
 土下座で対応。
「必要なら靴だってなめちゃうのだ! だから命はご勘弁をー!」
 もちろんこれは無様な姿の演技。その姿を『ダーク・レイダー』はあざけ笑う。
「ククク……ハハハハ! そうだ、これが人間だ!」
 その様子に麗刃は効果を確信すると、さらに『気合い』を入れて無様な姿を演じていく。
「あっお召し物に泥が、お拭きしますのだ。連れの方もとても美しいお骨で」
「美しい骨だと……知ったような口を……。貴様に何が分かる」
 だが、金属生命体の姿を話題にすると『ダーク・レイダー』は怒りを見せた。
 麗刃を蹴り上げ、幾度と踏みつけてくる『ダーク・レイダー』。
 流石に耐えかねた麗刃は……。
「き、きみねえ……いくら温厚なわたしでもカンニングプロで大暴れなのだダマサレターくん!」
 頭の横で手をひらひらさせながら変顔でダジャレを言い始める。
 そして、そこから間を置かず首をかしげて体を捻りながらさらに畳みかける……!
「違った? えっとダメダコリャーくん!」
 ぴきーん!
 この瞬間、渇いた高熱の地が乾いた極寒の地へと変わった。

 ユーベルコード『絶対零度氷河期到来』による、くだらないギャグから発せられる極寒が周辺を包む……。
「この秘技はわたしの自尊心をいためごはん! しかし続けていくのだ! わたしのネタを聴けぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
 次々とネタを披露する麗刃、比例して凍り付いていく周囲。
「……このままではこちらが動けなくなってしまう、止むを得ん」
 この反撃に『ダーク・レイダー』は身を凍り付かせながら要塞の奥へと撤退した。
 ……武装が無効化されたままこれを追うのは危険だろう。
 その背中を見ながら、麗刃は金属生命体――敵の元恋人――の姿を話題にしたことで相手が怒り始めた事を思い出していた。
(わたしに何が分かるって? 何もわからんのだ。私は一個の武人。ただ闘争をもって語り合うだけなのだ)
 言葉どころか剣さえも交える事を拒否されてしまえば、何もわかりはしない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
効果が無くなっても
【演技】に役立てられればそれは有り、かな?

翼による【空中戦】を主体に敢えて★杖を手にして
【高速詠唱】から氷魔法の【属性攻撃】を放ち
凍結で本人の足止めを狙いつつ
基本戦法が杖であると印象付ける

弾を敢えて杖で受け止め
詠唱を唱えても魔法が出せず慌てるフリ
一応【オーラ防御】で身を守りつつも
致命傷にならなければ怪我も覚悟で防戦一方
あぁ、むしろちょっとくらい吹っ飛ばされてあげてもいいよ

人を呪わば穴2つ…
恋人さんを言い訳にしちゃダメだよ
昇華しきれない想いは受け止めてあげる
貴方に出来ないなら、僕が祈ってあげる
貴方の分も

攻撃の隙も、逃げる暇も与えない
【指定UC】の【破魔】で【浄化】を



●祈りの行方
「見つけた……!」
 オラトリオの翼で飛行をする栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は上空から『ダーク・レイダー』の姿を見つけた。
 機械要塞の中層にあった外付けの通路で、己を狙う者をわざと誘う様に進む黒ずくめのコートの姿。
 それを逃がすまいと澪は聖なる杖『Staff of Maria』を振りかざす。
「凍結で足止めを……えーい!」
 放たれた魔法は冷気の弾。
 その攻撃は『ダーク・レイダー』のコートに当たり一部を凍り付かせたが、気づいた相手は建物の中へ隠れてしまった。
 澪はその後を即座に追う。
(……入って来いってことだよね)
 おそらく、中には『侵蝕プログラム弾』を用いたトラップもあるのだろう。
 しかしこのまま見失ってしまっては、逆に狙われて追われる側になりかねない。
 それに、相手の作戦は事前に解っており澪には防戦をする覚悟もある。
 だから。
(あぁ、むしろちょっとくらい吹っ飛ばされてあげてもいいよ)
 そんな風にも思いながら、澪は逃がさぬ様に中へと入っていった。

 機械要塞の中層。その一部屋に入るや澪を金属生命体の鋭い牙が襲う。
 それを空中で巧みに身体をひねり躱した澪へ、『ダーク・レイダー』の大楯が視界を塞ぐ様に叩きつけられた。
「うっ……!」
 それをオーラの守りを重ねて杖で受けると、澪はそのまま高速の詠唱を行い、凍てつく冷気を炸裂させる。
 冷気は目の前の障害を大楯ごと凍り付かせようと薄氷で蝕んでいくが、対する『ダーク・レイダー』は後方へ飛び退き影響範囲から逃れた。
 澪は、そこにさらに冷気の弾を放つと追撃を加えていく――まるで、この杖こそが主な攻撃手段だと言わんばかりに。
 この時、渇いた発砲音が鳴り反応した澪が杖で弾丸を受けると杖が魔法の媒体としての効力が失われた。
「えっ」
「ひとつ奪ったぞ」
 ――『侵蝕プログラム弾』だ。
「そんな……」
 杖を振り、詠唱を試し、うろたえる姿を見せる澪に『ダーク・レイダー』が歩み寄る。
 いつの間にか部屋の扉も金属生命体によって閉ざされていた。
 振り上げられる赤黒い剣。
「次は何を奪おうか……。何が無くなれば、貴様は本性を見せる?」
 そう問いながら『ダーク・レイダー』は澪を守るオーラへと刃を叩きつけていく。
 そんな彼の元へと戻ってきた金属生命体は静かに輝いて従っていた。
「この世界は、『君』を見殺しにした世界は醜い……。貴様も本当は醜いのだろう? 見せてみろ……!」
 澪の肌に痛々しい傷を作りながら、『ダーク・レイダー』が叩きつける刃は次第に乱れ、荒く、大振りになっていく。
 その時だ。

「恋人さんを言い訳にしちゃダメだよ」

 澪の言葉に『ダーク・レイダー』の手が止まった。
「昇華しきれない想いは受け止めてあげる
貴方に出来ないなら、僕が祈ってあげる――」
 これが、『ダーク・レイダー』が吐く世界に対する呪いの言葉への澪の答え。
 しかし『ダーク・レイダー』はこの言葉に激昂した。
「知ったような口を!!!」
 怒鳴りと共に眼前の細い肩を切断せんと力任せに剣を振り下ろすが……その刃は、澪の肉体には届かず視界に溢れる光に包み込まれた。
「――僕が祈ってあげる。貴方の分も」

 澪の全身から光が放出されていた。
 その光は魔を成すもの……心を惑わす誘惑や幻、そして善事を妨げる心をも浄化する――ユーベルコード『Fiat lux』。
(攻撃の隙も、逃げる暇も与えない)
 澪から発せられた光は『ダーク・レイダー』を構成する歪な心、そして何より彼の未練が籠もった金属生命体を浄化する。
 その光から、『ダーク・レイダー』は金属生命体を庇った。
「ぐぅぅ……! まだだ、まだ俺は、納得していない」
 大切な人を守るように、その未練を庇ってオブリビオンは後退をはじめた。
「あ……行っちゃった……」
 澪は傷だらけの姿で呟く。
 言葉と祈りは、届いたのかな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
侵蝕プログラム弾は残っていたのか……他の戦場でもこんなものを使われたりしたら、とんでもない事になるだろう
杞憂かもしれないが、使われる前に処理してしまおう

侵蝕プログラム弾を喰らうまでは、鉄刀を抜いて普段と同様に戦っていく
弾を受けて刀が使えなくなったら、神刀を抜こうとしてやはり駄目だ……と追い詰められたフリ
かつ致命傷にならないように敢えて敵の大盾に突っ込む形で敵の突進を食らって後退。少々キツいが耐えられない程じゃない

武器を封じられた上で攻撃を食らってギリギリの状態……と思わせておいて、敵の方から此方に近付いてきてもらおう
此方の射程ギリギリまで耐えてから、無の型【赤手】で一気に殴り抜ける



●汚すことは出来ない
 「死の谷」デス・バレーに存在する機械要塞……。
 すでにいちど攻略を終えた場を軍服姿の青年が調べていく。
 彼の名は、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)。
「『侵蝕プログラム弾』は残っていたのか……他の戦場でもこんなものを使われたりしたら、とんでもない事になるだろう」
 鏡介は索敵の手法を用いこの場に残っていたオブリビオンの痕跡を辿っていた。
 そして――。
「これだな。杞憂かもしれないが、使われる前に処理してしまおう」
 ――『侵蝕プログラム弾』のケースを発見すると、それを砕き、破壊する。
 他にも隠されていなければ、残りは『ダーク・レイダー』が隠し持つ分のみになるはずだ。
 懸念事項をひとつ片付けた鏡介は改めて機械要塞に残るオブリビオンを探した。
 そして『ダーク・レイダー』を要塞内の廊下で発見する。
 どうやら既に何度か戦闘をしたようで、少々消耗している様だ。

 鏡介は刀を抜き『ダーク・レイダー』に近づいていった。
 『ダーク・レイダー』の方も鏡介に気が付くと、隣に従える金属生命体を撫でた後に大楯を向け戦闘体勢を取る。
「……共に往こう。この醜き世界を嗤いに」

 廊下に差し込む光を反射して打ち合わされるのは細い刀と太い片手剣。
 鏡介は相手の重い剣を重心を反らして受け流し返す刃で切り返していくが、相手は大きな楯で身を隠しながらも死角を片手剣で補い刃を振り返してくる。
 次第にそのタイミングにも慣れ見切り始めた鏡介だが、決め手がまだ掴めない。
 その時だ。
 渇いた発砲音がして『ダーク・レイダー』の膝から硝煙の煙が上がった。
 すると鏡介が扱っていた『鉄刀【無銘】』が物理的な干渉を行えなくなり、受けた筈の敵の剣がするりとすり抜ける。
 鏡介は、咄嗟に片足を軸に体を捻ってそれを避けると、いちど後方へと飛び間合いをとった。
(――『侵蝕プログラム弾』!)
 鏡介が身につける武装、その一切合切が今この時より効果を成さなくなる。

 後方へ飛び間合いを離した鏡介はもう一本の刀『神刀【無仭】』の柄へと手をかけたが、しかし抜けない。
 その様子を確認した鏡介は、表情を困った様子へと変えて。
「やはり駄目だ……」
 と、追い詰められたフリを開始するのだった。
「ククク……どうした? もう終わりか」
 あざけ笑いながら『ダーク・レイダー』は剣を乱舞させていく。
 回避行動に専念する鏡介の肩、腿、頬へと傷が生まれて血が滲む。
 何れも致命傷には至らないものの、それは動きのキレを奪っていった。
 そこれ『ダーク・レイダー』は壁に向けての大楯による踏み込みと突進を加える。
 ガンッ、という大きな音と共に、鏡介は側面の壁へ飛ばされた。
 しかし、その苦悶の表情に比べ鏡介のダメージは大したものではない。
(少々キツいが耐えられない程じゃない)
 先ほどの突進も自ら前に出ることで、加速による衝撃と打撃のタイミングをズラしていたのだ。
 それに気づかず『ダーク・レイダー』は廊下の壁を背にうずくまる鏡介へ近づいた。
「命乞いをするなら今の内だ……最も、その前に貴様の大事なものを奪わせてもらうがな。……そこに何か、術式を組み込んだモノがあるな」
 そう言い、『ダーク・レイダー』は鏡介に近づくと軍服のポケットを物色せんと手を伸ばした――。

 ――無手相手だと侮るなよ。

 うずくまるような姿勢から立膝の姿勢へ移ると、鏡介は伸ばされた相手の腕を上へ跳ねのけた。
 そのまま、跳ね上げた時の捻りをバネとして拳に加速を与える。
 それは座る姿勢での抜刀による逆袈裟切りから、突きへと繋がる体捌き。
 剣術の体捌きを応用した徒手空拳――『無の型【赤手】』。
 低い重心で繰り出された超高速の一撃が『ダーク・レイダー』の身体を宙へと浮かせ、廊下の反対側の壁へと突き飛ばした。
「おお……!?」
 コートの下の装甲を歪にへこませて、『ダーク・レイダー』は窓から外の谷底へと落下した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
&
【Ahnenerbe】で連携
武装の無力化ねえ……
(基本的に無手か魔法。守りは魔力障壁《オーラ防御》である)
嫌がらせに適当な銃や剣を用意。無力化されて「バ、バカな……」とかいいつつ絶奈、ラファエラと「こんな話は聞いてねえ」とか仲間割れっぽい小芝居をノリノリで打ちます。
追い詰められたふりをして敵の攻撃が雑になった瞬間を狙いすまして『魔力解放』。超音速で間合いを詰めて、魔力を籠めた拳による痛恨の一撃。(貫通攻撃×功夫)
「カカカ、どうだい、俺達の芝居は? なかなか捨てたもんじゃないだろう?」
後は連携を取って怒涛の攻勢です。


ラファエラ・エヴァンジェリスタ
【Ahnenerbe】で連携

武装の無効化か…私は大した武具も持たぬゆえ構わぬが
オーラ防御で身を守りつつ、「黒薔薇忌」を振り鳴らしても怨霊どもが現れぬことに狼狽えた様を見せようか
何だこれは?聞いていない、こんなことになると知っていたなら貴公らの誘いになど乗ってはおらぬものを!などと、アレクサンドルと小芝居を
いやはや、楽しいな

敵の隙が見えたならUCで騎士を召喚
貴公の武装へ影響はあるものだろうかね
あるのなら…素手で殴れ
オーラ防御を施して全力魔法で強化して送り出す

ふふん、助演女優賞は我が物ぞ
嗚呼、絶奈…主演は貴公に贈ろうか
存分に暴れる様を見届けよう


霧島・絶奈
&&

【Ahnenerbe】で連携

◆心情
I looked,and there was a black horse.
Its rider heid a pair of scales in his hand.
『ヨハネ黙示録』

判っている筈です
其の嘲笑が自身に向けた物であり、人を試すのは極限でも諦めない意志が見たいからだと…

自身や皆の心に無かった其こそが、恋人を救う為に必要だった最後の物資…
貴方は今でも其を求め、手に入らぬ事で「仕方なかった」と自身を慰めるのでしょう?

今、我々が其を示し、貴方と恋人へと捧げましょう

◆行動
服の下に【各種耐性】を高めた【オーラ防御】を展開し無力を擬態
仲間割れを演じつつ味方の盾になり、追い詰められた風を演出
「武器が!ど、どうしましょう? た、盾にしないで下さい!」
…少し悪ノリが過ぎましたか?

隙を見て<真の姿を開放>
『涅槃寂静』にて「浄化」属性の「劫火」を行使し【範囲攻撃】

負傷は【生命力吸収】で回復

『黒』き飢えに乗る第三の騎手よ
貴方と恋人の渇望は此処で終わりです
…安らかに眠れ



●谷の底で
 戦いに敗れ、谷底へ堕ちて行く黒いコートの男。
 彼は嘗て、奪還者であった。
 その腕前で物資を持ち帰り人々を救う立場であった。
 しかし、恋人が病に倒れたことを契機に彼は転がり落ちていく。
 なかなか進まぬ治療の中、物資の不足が重なり拠点(ベース)では彼女の回復を諦める声が増え始めたのだ。
 そして、資源温存のために見捨てる事が決定する。
 オブリビオンとして蘇った今、彼は何を思うのだろう。
 その胸中に秘めるのは恨みか、それとも――。

 落下していく男の姿を、霧島・絶奈(暗き獣・f20096)はじっと見ていた。
「判っている筈です。貴方が人びとへ向ける嘲笑が本当は誰に向けたものなのか」
 堕ちて行く過去の化身、オブリビオンを追って絶奈は谷底に下っていった。
 死を与え、在るべき場所へと還す為に。

「よぉ、忙しそうなところ悪いが次は俺達の相手をしてもらうぜ」
 谷底へ落下した『ダーク・レイダー』をアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)が剣を片手に待ち構えていた。
 同様にラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)も、このオブリビオンを逃さぬようにと取り囲む。
「ふふ、どちらが先に狩るか。それを競り合うのも悪くない」
 ラファエラがチリンと手振鈴の『黒薔薇忌』を鳴らせば、澄んだ音と共に付き従う様に怨霊が現れていく。
 そしてもう三方のうち残る一方には、絶奈がアリスランスの『【Innocence】』を手に降り立った。
「貴方の命運もここまでです。観念していただきましょう」
 高温と乾燥に包まれた死の谷の上空に雷雲が生まれ、雨が降り出した……。

●仕掛け
 死の谷に珍しく雨が降り注ぎ、雷が鳴り響く。
 雨雲は日光を遮り、雨がさらに視界と足場を悪化させていた。
 その中で三名の猟兵に包囲された『ダーク・レイダー』は大楯を手に対処法を思考する様子を見せている。
 そんな状況で先陣を切ったのがアレクサンドルだった。
「それじゃ、お先にいくぜ」
 素早い剣捌きが高い身体能力から繰り出される。
 しかし、アレクサンドルの主な攻撃方法は自身の持つ膨大な魔力を用いた魔法と、魔力を込めた格闘……つまりこの剣は『侵蝕プログラム弾』を視野に入れたダミーである。
 その剣戟を『ダーク・レイダー』は気合いと共に大楯のシールドバッシュではねのけると、生まれた隙へと赤黒い片手剣を突き立てる。
「うおっ!?」
「……ちっ!」
 しかしその突きは『ダーク・レイダー』の腕へ絡みつく怨霊たちに阻害され、その援護を以てアレクサンドルは回避することが出来た。
「ちょっと油断したか。助かるぜ」
「大口を叩いた割に、やられそうだったではないかアレクサンドル」
「なんだあ、せっかく礼を言ったのに」
 仲間を煽りながら怨霊で威圧をかけていくラファエラ。
 しかし彼女も本来は武具にさほど頼るような戦い方ではない。
(武装の無効化か……私は大した武具も持たぬゆえ構わぬが)
 怨霊を呼ぶたびに鳴らす『黒薔薇忌』も無効化を前提としている。
 続けて絶奈も槍を手に攻撃に加わり。
「二人とも、喧嘩をせず連携をお願いしますよ」
 とアレクサンドルとラファエラに注意を促しながら『ダーク・レイダー』をけん制していく。
 絶奈に小言を言われた両名は、不満そうになにやら耳打ちをするが……内容はこうだ。
(ここまで小芝居すりゃ、そろそろじゃねえか?)
(ここから武装の無効化となれば、仲間割れも自然であろうな)
 手の内を出し切っていないとはいえ『ダーク・レイダー』の戦闘行動は手堅く三人がかりでも正面から崩すのは難しい……それを実感しながら、三人はかねての作戦通り隙を誘う芝居を続けていくのだった。

●醜き世界
 ひときわ強い轟音が空を引き裂き、視界を一瞬覆った。
 距離があり直接の被害は無くとも、落雷の音と光は小さな行動を隠すのに十分な目くらましだ。
「……ん?」
「武器が! ど、どうしましょう?」
 アレクサンドルの剣と絶奈のランスがその効力を突如失い、物理的な干渉を及ぼさなくなった。
 そこには鉄の棒きれとしての手ごたえさえ無く、なにも傷つけず、そして防ぐことも出来ず敵の刃を通してしまう。
 先ほどの明滅と轟音の間に、『侵蝕プログラム弾』が着弾したのだ。
 ラファエラも同様に『黒薔薇忌』の効力が失われて呼び出した怨霊たちが消えてしまっていた。
「何だこれは? 聞いていない」
 鈴を幾度と鳴らして狼狽えて見せるラファエラ。
 これを不満の噴出の切欠とするようにアレクサンドルも仲間割れの演技を開始する。
「バ、バカな……おい、こりゃどういうことだ?」
 アレクサンドルはそう言いながら、絶奈の首根っこを捕まえて盾のように扱いだした。
 その行動に、絶奈は抗議を行う。
「た、盾にしないで下さい!」
「自業自得だろう?」
 『ダーク・レイダー』は、この隙を逃すまいと攻勢に転じていく。
「そうだ。それが見たかった!」
 歓喜の声と共に『ダーク・レイダー』は剣でアレクサンドルを狙った。しかしその乱舞の刃は、盾にされている絶奈で遮られ、そのまま絶奈へと容赦なく浴びせられる。
 纏うオーラと防御姿勢で直撃こそ避けられているが、打撃が痣を作り、通った刃が肌を傷つけ血を滲ませていった。
 加えて、後方のラファエラを無数の見えない手が伸びて動きを阻害し、金属生命体が鋭い顎で切断せんと追い回していく。
「こんなことになると知っていたなら貴公らの誘いになど乗ってはおらぬものを!」
 逃げまとうラファエラもまた、絶奈を責め立てた。
 『ダーク・レイダー』は絶奈とアレクサンドルをまとめて大楯で吹き飛ばすと、今度は逃げるラファエラを狙って殴打し、三人を一か所へとまとめていく。
 すると、ラファエラは無傷のアレクサンドルへ矢面に立つよう言い放ち、誰が被害を被るかで三人は言い争いを始めた。

 雷雨の止まった曇天の空模様の下で、まさに『絵に描いた様な』仲間割れと混乱の様相が繰り広げられていった。
 その様を『ダーク・レイダー』は舐める様に眺め、攻撃の手を止めた。。
「ククク……そうだ、これが人間だ。今の内に存分に『それ』を楽しめ」
 それはまるで、癒しを求めるかの様でもあった。
 ……だがその見世物もここまで。この最大の隙を、三人は待っていた。

●上演はここまで
「……なぁんてな。『魔力開放』――」
 黄金に輝く魔力が曇天を照らしたかと思えば、ユーベルコードで強化されたアレクサンドルの拳が黒いコートの装甲へと突き刺さる。
 そこは事前の戦闘で大きな打撃を受け、脆くなっている箇所でもあった。
「カカカ、どうだい、俺達の芝居は? なかなか捨てたもんじゃないだろう?」
 確かな手ごたえを感じつつアレクサンドルが引けば、入れ替わるように白銀の兜の騎士の剣が『ダーク・レイダー』の胸を突き刺した。
 この騎士はラファエラが新たに召喚したもの。
「く……」
 『ダーク・レイダー』は苦し紛れに騎士へ『侵蝕プログラム弾』を打ち込むが、今しがた身を貫いた傷が塞がる訳でもない。
 騎士は武具を捨てるとラファエラの元へと駆け戻り、彼女を狙った金属生命体を素手で殴り退ける。

 無防備であれば直撃を当てやすく、比例して致命傷も与えやすいものだ。
 先ほど大きな隙を晒した『ダーク・レイダー』がまさに、その直撃を受けて大きな傷を受けている。
 息も絶え絶えに血を流すその姿は、三人の演技が上手くいったことの証左だろう。
「ふふん、助演女優賞は我が物ぞ。いやはや、楽しいな」
 とラファエラは上機嫌に言葉を紡いだ……そして。
「嗚呼、絶奈……主演は貴公に贈ろうか。存分に暴れる様を見届けよう」
「……少し悪ノリが過ぎましたか」
 傷だらけの姿で座り込んでいた絶奈が立ち上がった。

..●始まりの為の終わり
 武装が無力化されたまま『ダーク・レイダー』へ近づいていく絶奈。
 動けない『ダーク・レイダー』を守るように金属生命体が牙で挟みこむが、絶奈は真の姿を解放しオーラの守りを高めてそれを凌ぐ。
 いいや――凌いでいるのではなく、触れる部位を通して生命力を吸収していた。
 攻撃を意に介さない様な振る舞いで傷を回復させながら瀕死の『ダーク・レイダー』へ迫っていく絶奈。
 同時に解放した真の姿は、どこか死を彷彿とさせるもので生気がない。
 死の気配と共に回復しながら近寄る様子は、見るものに死を告げる神を連想させることだろう。
「判っている筈です。貴方が人の醜さへ向ける嘲笑は、自身に向けたものであることを。人を試すのは極限でも諦めない意志が見たいからだと……」
 絶奈が紡ぐ言葉は、オブリビオンとなった彼が未だに囚われているモノ。
 その執念を断ち切るための言葉を、絶奈は告げる。
「自身や皆の心に無かった其こそが、恋人を救う為に必要だった最後の物資……。貴方は今でも其を求め、手に入らぬ事で「仕方なかった」と自身を慰めるのでしょう?」
「……まだ俺は、納得していない」
 しかし、『ダーク・レイダー』は絶奈の言葉を否定する。
 それでも絶奈は言葉を続けた。
「この戦局を見てなお、諦めない人々の意志を信じられないというのなら……今、ここで其を示し、貴方を恋人へと捧げましょう」
 この言葉を最後に、絶奈はユーベルコードを発現させた。

 ユーベルコード『涅槃寂静<<ヨクト>>』――その力によって、死の谷の底に浄化の劫火が燃え広がった。
 其れは世界を焼くとされる大火。
 其れは世界の生成の前に発生する終焉。
 其れは終わりであり、始まり。

 大火は雲を散らし再び大地に光を呼び込んだ。
 同時に、大火が『ダーク・レイダー』の未練を浄化し焼いていく。
 先に消えたのは従っていた金属生命体。
 指輪が大地に転がると、彼は弱弱しくそれを拾い上げ、そして、動かなくなった。
 ……絶奈はその終わりを見届けた。
「『I looked,and there was a black horse.Its rider heid a pair of scales in his hand.(『ヨハネ黙示録 6章5節』)』――『黒』き飢えに乗る第三の騎手よ。貴方と恋人の渇望は此処で終わりです」
 火に包まれ消える最中、マスクの下で彼はどんな表情をしていただろうか。
 少なくともオブリビオンとして蘇り、現世の苦しみを重ねることはもう無いだろう……。

 事を終えた絶奈がふと見上げると、空には白く巨大な雲と虹が現れていた。
 死の谷に満ちた火が、雷雨がもたらした潤いを天へ還したのだろう。
「……安らかに眠れ」
 死を象徴し死を与えた彼女は、最後にそう願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月20日
宿敵 『『善悪の天秤を弄ぶ者』ダーク・レイダー』 を撃破!


挿絵イラスト