日常に奉祝するは、エースの勤仕
●夢
きっとこれは悪夢であるという自覚がある。
『フュンフ・ラーズグリーズ』は、夢を見ている。
鳴り止まぬアラート。警告音声がコクピットの中に響き渡る。
モニターは明滅し、周囲の状況を知らしめる。
数多のキャバリアの残骸があった。それらは見知った機体ばかりであった。
『熾裂』、『熾星』、『グリプ5』における『エース』たちが駆る機体は、無残にも破壊されていた。
どれもがコクピットブロックを貫かれ、引き裂かれ、中のパイロットが無事である保証は何処にもなかった。
いや、無事ではない。
あれに乗っていた自分の姉たちの生命はないだろう。そう確信させるだけの迫力があった。動悸がする。息が乱れる。どうしようもない焦燥感が胸の内側から広がっていくのを感じた。
「――『フュンフ』! 君は逃げろ! 君だけがやつに対抗できる……! 一端退いてくれ!」
『クリノ・クロア』の声が聞こえる。『フィアレーゲン』からの亡命者の一人。
彼の駆るキャバリアが己の機体を敵の攻撃からかばうようにして突き飛ばす。彼の機体のオーバーフレーム、腕部が無敵斬艦刀の一撃で吹き飛ばされ武装が損失する。
助けなければ。
全て救わなければ。
その思いに己の身体が動く。けれど、いつだって己の操縦に答えてきた『熾盛』は動かない。何故動かないのだ。
『クリノ・クロア』は機体を捨てない。あくまで自分を護るつもりなのだ。クリスタルビットがきらめく中では自殺行為だ。今、自分が動いて助けなければならないのだ。なのに身体が動かない。機体が動かない。
「駄目だ、『クロア』! そんな機体じゃ! 逃げてくれ!」
彼だって多くを喪ってきたはずだ。国を、家族を、『ツェーン』を。もうこれ以上喪わせてはならない。そんなことがあってはならないのに。
それでも彼は守ろうとしている。それに報いたいと思うのに。
いつだって現実は非常だ。
目の前で爆発するキャバリア。『クロア』の駆るキャバリアがプラズマビームの一撃でもって破壊されたのだ。
爆炎に己の思考が染め上げられていくのを感じた。どうしようもない光景。
助けられた生命だったはずだ。けれど、それすら叶わない。
「なんで、なんで、なんで動かない!」
「それは君が動きたくないからだ。これ以上現実が進まないことを望んでいる。平穏という変わらぬ毎日を望んでいるからだ」
その声は甘やかな声であった。何処にでも居て、何処にもいないような、そんな声。その声はまるで己を見て笑っているようだった。
平穏を望んで何が悪い。
今日と変わらぬ明日を望んで何が悪い。
「変化を恐れる者に未来などない。永遠を求めた所で、それは停滞という名の泥濘に沈むだけ。アンサーヒューマンである君だからこそ理解できることだろう。故に君は何一つ選ばない」
そんな君だからこそ己の名を呼ぶ資格があるのだと甘やかな声が言う。
「さあ、呼び給え。その名を。君はもう知ってるはずだ。『そんなもの』じゃあない、正しい名前、『■■■■■』を――」
夢は終わる。
現に覚醒した『フュンフ・ラーズグリーズ』は汗に塗れた額を拭い、身体を起こす。
朝日が眩しい。今日は年に一度の建国記念の日。『グリプ5』建国を記念した祭日。
皆が楽しみにしている、戦乱だらけの世界にあって心安らぐ一日。
そのために自分は戦っているのだと『フュンフ・ラーズグリーズ』は自覚し、立ち上がる。
自分より幼い弟妹が楽しみにしているのだ。
それを思えば夢の内容は忘れてしまった。普段から母親にも甘えられない彼らのために何ができるか。それだけを考え、『フュンフ・ラーズグリーズ』は汗に塗れた寝間着を脱ぎ去って、今日という一日を楽しい想い出として彼らに与えるために部屋より出るのであった――。
●平穏
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア――ですが」
珍しくナイアルテは言葉を切って、やってきた猟兵達に微笑みかけた。
ご機嫌がいいらしい。そう思えるほどに彼女の微笑みは、いつもよりも明るいものであったことだろう。
「今回オブリビオンマシンの存在は確認されていません」
では何故自分たちは呼ばれたのだろうか。
ナイアルテは微笑みを深めながら言葉を続ける。
「小国家『グリプ5』は、今回建国記念の日を迎えるそうなのです。先日の事件でプラントを一基喪ってしまっていますが、それでもハレの日であるこの日だけは平穏な日として国家を挙げて催しをするそうなのです。戦乱の中にあるからこそ、このような日は必要なのでしょう」
彼女が言うには、『グリプ5』が用意している催しで猟兵たちが参加できるのは二つ。
一つは魅惑の銭湯である。
勿論、男湯女湯は別れているが、大型入浴施設がプラントによって生み出され、日々の疲れを癒やしてくれる。
言ってしまえば、温水プールレジャーランドのようなものだ。『グリプ5』に住まう人々にとって銭湯はとても特別なものなのだろう。勿論、水着を用意して入ることは必須である。
そしてもう一つがキャバリアを使った模擬戦闘である。
模擬戦と言っても、それはキャバリアを使ったレースのようなものである。市街地に設置された障害物を躱しながらキャバリアで疾駆し、最終地点にて待ち受ける『グリプ5』が誇る『エース』たちが駆る機体を振り切ってゴールするか、打倒すれば豪華賞品がもらえるようだ。
「銭湯で日々の戦いの疲れを癒やし、そしてキャバリアを使った障害物レースを制し、豪華賞品をゲットするのも良いでしょう。ちなみに『エース』の皆さんは、これまで『グリプ5』でオブリビオンマシンに囚われながらも、救われた方々ばかりです」
これまで『グリプ5』や『フィアレーゲン』など、複数の小国家が絡む事件において『エース』と呼ばれた人物たちがレースの最後に待ち受けている。
勿論、キャバリアは、こういう催しの際に使われる機体であるようだが……。
「はい、実弾はペイント弾に。フォースセイバーはワックス刀身に。そう、機動闘士『大熊猫壱号』を駆る『エース』を突破してこそ、豪華賞品はゲットできるのです!」
ばーん、とナイアルテはキラキラした目で、機動闘士『大熊猫壱号』の画像を猟兵達に見せる。
なんともこう、こう……あれ、あれ……となるフォルムであるが性能は折り紙付きである。侮ることなかれ。このシンプルな構造故に頑丈さと基本性能は割りかし催し用とは言えぬものである。
しかも駆るは『エース』たち。
「それでは、皆さん。よき一日を――」
そう微笑んでナイアルテは猟兵たちをクロムキャバリアへと送り出すのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリアにおいてオブリビオンマシンの出てこない平穏な一日を小国家『グリプ5』で過ごすシナリオになっております。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
日常です。
まずは日々の疲れを癒やす銭湯プラントでの一幕です。
温泉レジャーランドのような様相を醸し出す銭湯プラントでゆっくりしましょう。これまでタグ『ACE戦記』で搭乗した『グリプ5』に在籍している『エース』たちも銭湯に入りに来ています。
勿論、男湯、女湯は別れていますので、公序良俗には反しないようにしましょう。
●第二章
冒険です。
市街地をコースとしたキャバリアを用いたレースに参加することになります。中継される様子は市街地にあるモニターを通して小国家『グリプ5』の街中に配信されます。
勿論、最後まで踏破できた人には豪華賞品と呼ばれる『グリプ5』原産の松茸料理が振る舞われるそうです。
とても美味しいので、『グリプ5』の人々はとてもうらやましく思っているようです。
そんな人々の声援を受けて様々なコース、障害物を避けキャバリアで駆け抜けましょう。
時たま、レースを妨害するキャバリアもいます。
●第三章
ボス戦です。
機動闘士『大熊猫壱号』に搭乗した『エース』たちが、それぞれコースのゴール付近で待ち構えています。
彼らを躱してゴールに飛び込むも良し、彼らと一騎打ちをし、これを制して進むも良しです。
搭乗している『エース』たちは以下の四名です。
『フュンフ・ラーズグリーズ』、『アイン』、『ツヴァイ』、『クリノ・クロア』。
彼らの中から一人を選んで対峙することができます。
彼らの詳細はタグ『ACE戦記』を参照してくださいますと幸いです。
それでは、戦乱続く世界、クロムキャバリアにおいて一日だけの平穏を楽しむ皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 日常
『魅惑の銭湯プラント』
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POW : じっくりと、腰を落ち着けて温まろう
SPD : 様々な湯を反復して楽しもう。
WIZ : 効率的に、色々入って疲れをとろう。。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
湯気立つ銭湯。
それは戦乱の世界であるクロムキャバリアにおいて稀有なるものであったことだろう。
プラントより供給された程よい温度の温水が滾々と『グリプ5』の施設へと流れ込んでいく。すでに男湯と女湯に仕切られた浴槽からはお湯が張られ、この日のために維持されていたいくつもの浴槽が集合し大型入浴施設として市民たちに開放されるのだ。
温かいお湯は戦乱ばかりが続く『グリプ5』周辺の事情を一時でも忘れさせてくれる。
この建国記念の日だけは、『グリプ5』もまた緩やかな時間が流れていく。
『エース』と呼ばれるパイロットたちもそうだ。
彼らはこの後に控える一大イベントの準備を前に銭湯に浸かる。
日々の戦いを一時忘れ、そして、再び戦いに赴く。
されど、彼らが護る人々に少しばかりの楽しみを齎すのもまた『エース』の役割であったことだろう。
「……それにしても、俺も利用してよかったのか?」
『クリノ・クロア』は少しばかり遠慮がちに『フュンフ・ラーズグリーズ』にたずねていた。
「ああ、構わないよ。『クロア』はよく働いてくれているって皆からの信頼だって厚い。確かにこの間のことで、負い目はあるのかもしれないけれど。それだって君がしたわけじゃない。それどころか、皆を護ってくれたじゃないか」
『フュンフ』は『クロア』にそう言葉を掛ける。
確かに先日の事件で『グリプ5』の郊外であった城塞区画に設置したプラントは破壊され、遺棄するしかなくなった。
けれど、それでも『グリプ5』と『フィアレーゲン』からの亡命者たちの間には僅かな溝が残っただけだった。まだ決定的なものではない。だからこそ、建国記念の日というハレの日でもって、両者の代表的な存在である『エース』が共に並び立つことこそが、その溝を埋めるために必要なことなのだ。
「でも、それは」
「いいじゃないか。そういうのはさ。生きて、皆と居られる。それだけで十分だよ」
『フュンフ』は笑って『クロア』と肩を組み、銭湯へと向かう。
いつだってそうだけれど、裸の付き合いとは大切なことだ。
立場も、役職も、年齢も、そういったものを取り払った先にこそ繋がるものがある。それを大切にできるのならば、人はいつだって分かり合うことができるはずだ。そう、それは確かなことなのだと言うように湯気立つ男湯に二人は浸かる。
戦うものに休息を。
休息の後には活力を。
それは猟兵もまた同じであろう。大きな戦いに疲れた者もまたある。戦乱の続く世界であっても、癒やしは得られるのだと証明するように。いざ参らん、湯気立つ銭湯へ――。
菫宮・理緒
やっと少しのんびりできる感じになったんだね。
ここまですっごく忙しかったし、たまにはゆっくりするのもいいよね。
『フュンフ』さんや『アイン』さんたちとも、もちょっと仲良くなりたいから、これはチャンスかも!
温泉に浸かって身体を休めるのもしたいけど、むしろ上がってからが本番。
『エース』さんたちに勝負を挑んじゃうよ。
種目は「お風呂上がり牛乳早飲み対決」
これならキャバリア関係ないしわたしでも勝ち目はある、かもしれない!
そんなわけで『エース』に勝負を挑んでいこう。
エースの名をかけて勝負ー♪(?
わたしはフルーツ牛乳。
みんなはなにを飲むのかなー?みんなの好みも知りたいよね!
……お腹そんなに強くはないんだけどね。
戦乱の世界にあって憩いの時間はかけがえのないものであろう。
小国家が乱立し、プラントを巡って戦いが続く平和の兆しすら見えない世界。そんな小国家にも建国記念の日は存在する。
『グリプ5』と呼ばれる小国家は、その成り立ちを考えれば戦いの日々をくぐりぬけてきた小国家であった。
元となった国に反旗を翻した『憂国学徒兵』たち。
その後『フュンフ・エイル』を建国の父として今日まで周囲の小国家との和平を取り持ってきた『グリプ5』にとって、建国記念の日は確かにハレの日であったのだ。
「やっと少しのんびりできる感じになったんだね」
これまで忙しい日々を続けていた『グリプ5』の現状を菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は素直に喜んでいた。
これまでの経緯を知る彼女にとって『グリプ5』は思い入れのある小国家となっているだろう。
『フィアレーゲン』からの難民を受け入れ、しかし城塞区画へと変わった郊外で起こったオブリビオンマシンとオブリビオン化したプラントの事件によって白紙に戻ったかのようにみえた難民と市民の間の軋轢は、今日という日を迎えることによって完全に水に……いや、お湯に流すことができるとさえ理緒は思える盛況ぶりを温泉プランとから流れ出る暖かなお湯がはられた銭湯を見て思ったことだろう。
「ここまですっごく忙しかったし、たまにはゆっくりするのもいいよね。『フュンフ』さんや『アイン』さんたちとも、もうちょっと仲良くなりたいから、これはチャンスかも!」
理緒の知る『グリプ5』の『エース』たち。
彼女たちとは戦場で見えることが多かっただろう。だからこそ、このような日が来るのならば、少しでも交流を重ねたいと思ったのだ。
「おう、あんたか。その節はどうもな」
気軽い様子で脱衣所にて『アイン』とすれ違う。背中をぱしんと軽く叩く彼女は気兼ねのない人物であることが伺える。
鍛え上げられた肉体美。
女性として見ても、それは理緒にとって眼福と言えるものであったのではないだろうか。
「姉さん、そういうことは無礼です」
『ツヴァイ』も続いて銭湯に入っていく。申し訳ないと『アイン』に変わって理緒に謝罪してくれるが理緒は構わないだろう。
こうして軽口が叩けるのもまた平穏な証である。
理緒たちは銭湯に浸かり、日々の疲れを溶かしていくように身体を温めていく。『グリプ5』において銭湯は特別なものであるのだろう。
建国の父である『フュンフ・エイル』が好んだこともあるのだろうし、そうでなくても銭湯が嫌いという人間は少ないだろう。
皆、お湯に使って癒やしに癒やされた顔をしている。
理緒はけれど、勝負は此処からだと思っていた。
確かに『エース』たちと戦って勝つことは難しいだろう。けれど、彼女には勝算があったのだ。
「というわけで『エース』の名をかけて勝負ー♪」
そんな理緒が『アイン』に持ちかけたのは『お風呂上がり牛乳早飲み対決』である。ここが酒場であったら飲み比べというどんちゃん騒ぎになったであろうが、悪魔で健康的である。
「いいだろう。その勝負乗った!」
『アイン』は『アイン』で喧嘩っ早いところがあるのだろう。気っ風の良い姉御肌的なところがある故に、勝負事には簡単に乗ってくる。
コーヒー牛乳とフルーツ牛乳を互いに片手に手に取り、腰に手を当てて、いざ尋常に勝負である。
「むぐむぐっ!」
「ごっごっごっ!」
理緒は己のお腹がそんなに強くないことを知っている。
けれど、退けぬ勝負があるのならば、あとのことなど考えない。というか、『アイン』の飲みっぷりがやばい。
喉の成り具合が本当に女性か? と思うほどの喉の音である。
「ぷはーっ! ふぃー……やっぱり風呂上がりはコーヒー牛乳だろう。なあ、おい!」
すっかり早飲みしおわった『アイン』が理緒の背中をバシバシたたく。
キャバリアが関係ないからと思っていたが、これは流石に勝てない。理緒は残ったフルーツ牛乳を片手に『アイン』との距離が縮まったことを喜ぶように笑う。
「ううん、わたしはやっぱりフルーツ牛乳の方がいいねー。『アイン』さんすごい飲みっぷり」
「戦場じゃあ、ささっと食事も終わらせねぇといけねぇからな。あんたもキャバリアレース、出るんだろ? そん時は、私のところに来いよな。また勝ってやるから」
なんて、『アイン』は笑って理緒と肩を組む。
もはや、ノリは銭湯のオヤジくらいなものであるが、それでも今日という日ばかりは、こんな穏やかな日常が続くのも悪くはない。
そう思えるほどに理緒はフルーツ牛乳の香りとホカホカの体の火照りを甘受するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
【心境】
「あ゛あ゛あ゛あ゛~こー言うのが命の洗濯って奴なのかしらねぇ~」
前回は散々だったし、偶にはこーいう御褒美もあってもいいわよ。
はぁ。世の中のみんなが温泉に一緒に入ったら戦争終わらないかねぇ。
くだらない。
【行動】
前回はキツイ役目を主人格に背負わせちゃったしねぇ。
これはそのご褒美よ。んじゃお休みZzz…(人格変更)
ユーリーめ、いらんおせっかいを。だが良い心掛けよ。
まずは普通の温泉だな。ふむ、普通ゆえにゆっくり楽しめるの。
次は薬湯湯。ふー。体の傷もだが、この温もりは心にも良い…なあそこのエースよ。ゆっくりできるときはゆっくりだ。
…といかんそろそろ理性も限界だ。
ユーリー…をたの…む。Zzz…
銭湯。
それは一言で言ってのけることができるほど、浅いものではないことは言うまでもない。
人の営みに癒やしが必要であるように、戦乱が続くクロムキャバリアにおいて肉体的にも精神的にも、それは必要なのである。
銭湯とは、つまるところそう云うものだ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛~こー言うのが命の洗濯って奴なのかしらねぇ~」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は小国家『グリプ5』に備えられた温泉プラント、そこから滾々と湧き出るお湯を張った銭湯に首まで浸かって戦いの疲れを癒やしていた。
体中の細胞が喜んでいるような気持ちにすら為る。
温かいお湯は血行を促進するだけでなく、己の体の内側、魂の中までも澱を溶かして流していくようでもあったのだ。
「前回は散々だったし、偶にはこーいうご褒美があってもいいわよ」
本当にユーリーはそう思うのであった。
世の中のみんなが温泉に一緒に入ったら戦争が終わらないものかと思うほどの至福の時。
戦いなどくだらないと一蹴に付す。
いつだって戦いは傷を生み出すものだ。
それ事態が悪いことだとは言わない。けれど、傷を負えば癒やす時間もまた必要なのである。
前回の『グリプ5』の戦いにあって、ユーリーは封印されし人格である、皇女『ユーディ・サルディア』に多大なる負荷を与えてしまったことを思い出す。
「これはそのご褒美よ。んじゃ、おやすみ……」
銭湯に浸かったままユーリーは仮装人格を眠らせ、主人格である『ユーディ・ザルディア』と交代する。
「……ユーリーめ、いらんおせっかいを」
ユーディの人格が肉体の表層に現れれば、湯船の暖かな感覚が一斉に感覚を刺激してくる。
それは如何にお節介であると邪険にしようとしても、抗えぬ魔力めいたものをもって彼女の心を解きほぐしていく。
「だが良い心がけよ」
無碍にするわけにもいかないと皇女らしさを保った人格が銭湯から立ち上がる。普通のお湯に浸かるだけでは、この『グリプ5』の建国記念の日を楽しむことはできない。
温泉レジャーランドのように様々な湯があるというのならば、それらを楽しむべきだと彼女は湯から上がり、薬湯へと進む。
ハーブの類といったものが入っている薬湯に身を沈めれば、体の傷を癒やす効能があるのだろう。
体の節々に走る痛みがすっと退いていくのを感じる。
「ふー。体の傷もだが、この温もりは心にも良い……なあ、そこの『エース』よ」
ユーディの視線の先に居たのは、『ツヴァイ』であった。
かつて『グリプ5』においてオブリビオンマシンによって思想を狂わされた『エース』。
彼女は礼儀正しく一礼し、その言葉に応える。
「私がそう呼ばれるには、値しないことではありますけれど……確かに。休める時に休むのもまた戦士の役目。あなたの言う通りです」
『ツヴァイ』は堅苦しい態度を崩さない。
元よりそのような性格なのだろう。その堅苦しさは、お湯に浸かっていても変わるあことがないところを見ると筋金入りなのだ。
「ああ、ゆっくりできるときはゆっくりだ。肩の力を抜け。そうでなくては、この湯が勿体ないというもの」
ユーディは、その堅苦しさに肩をすくめる。
別に緩みっぱなしになれというわけではないが、どうにも『ツヴァイ』は動きが硬い。それがもう一枚壁を突破できぬ要因であろうとユーディは思うのだ。
だが、それをアドバイスとして伝える時間はそう多くはなかった。
「……と、いかん。そろそろ理性も限界だ。ユーリー……をたの……む」
「……え」
ぶくぶくと薬湯の中に沈んでいくユーディ。
理性って、そういう? 『ツヴァイ』が慌てて彼女を引き起こし、お湯から運び出す。湯あたりか、それとも気が緩みすぎて疲れが一気に来たのか。
『ツヴァイ』には伺い知れることではなかったが、それでも他に誰もいなかったのならば、あわや溺死である。
しばらくの後、運び出されたユーリーはゆっくりとうちわで扇がれ続け、意識を取り戻すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
銭湯か。建国祭の一部になるほどなのね。あたしは自宅のお風呂だから、あんまり銭湯を利用したことないのよね。
せっかくだし、アヤメと羅睺も一緒に行こ。
先客がいると思ったら、アインとツヴァイね。式神達も含めた胸囲の格差を見回して……羅睺には勝ってる!
アインはあれからどういう処置が出たの? こうやって建国祭に堂々と出られる以上は、事件解決への貢献か建国祭か、どちらかの恩赦?
そういえば、この子たちは二人とは初見だっけ。アヤメと羅睺。あたしの式神よ。分類すれば、『迦利』と同じ枠に入るわね。
うーん、水着が邪魔。二人とはお風呂といわずベッドと言わず、毎晩のように素肌見てるけど、エース二人の方も全身を見てみたい。
小国家『グリプ5』において銭湯とは特別なものである。
建国の父である『フュンフ・エイル』が好んでいたということもあるのだが、それ以上に戦乱の世が続くクロムキャバリアにおいて、それは一時の癒やしであった。
人は戦い続けることはできない。永遠似というのは土台無理な話なのだ。
だからこそ、休息が必要である。
いつ滅びが訪れるとも知れぬ小国家の行く末。
その中にあって銭湯という身に溜まった澱を溶かし流すことができる機会は、貴重なものである。
「銭湯か。あたしは自宅のお風呂だから、あんまり銭湯を利用したことないのよね」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、『グリプ5』の建国記念の日、そのハレの日における催しの一部となった銭湯に式神である二人を伴って訪れていた。
温泉プラントから滾々と湧き上がるお湯が湯気を立てて温泉レジャーランドと化した街中に流れ込んでいく光景。
それは言わば温泉街じみた光景であったことだろう。
せっかくだからと彼女が愛奴召喚(アイドショウカン)によって召喚した式神のアヤメたちと共に訪れたのは正解であったことだろう。
まずは普通のお湯にとゆかりたちは水着に身を包んで足を進める。
そこには先客であろう『グリプ5』の『エース』である『アイン』と『ツヴァイ』の姿があった。
特に気にした様子もなく堂々としているのが『アイン』であり、こんな場であっても礼儀正しく、折り目正しい態度を崩さないのが『ツヴァイ』である。
彼女たちの胸囲の格差に目が言ってしまうのは、持たざるもの故なのか。いや、そんなことはないと思うのだが、まあ、それはゆかり個人が感じることであるがゆえに、他人がとやかくいうものではない。
「おう、こっち来いよ。あんたらだろう、事ある毎に『グリプ5』で戦ってくれた傭兵ってのはさ」
『アイン』が手招きをしている。
彼女は戦争犯罪者として指名手配されているはずであるが、こうして『グリプ5』の建国記念の日にも普通に姿に現しているというところにゆかりはひっかかりを覚える。
彼女の存在は公にしてはいけないはずであるが。
「『アイン』はあれからどういう処置が出たの?」
尤もな疑問であったことだろう。彼女の言葉に『アイン』はあっけらかんとした様子で言葉を紡ぐ。
「ああ、そこんところは……」
「姉は元より『グリプ5』を裏切ったわけではありません。元より状況証拠でしか、当時の状況を判断することしかできませんでしたが、これまでの行動、上層部に存在していた間諜の一層により、姉の無実は証明されたのです」
『ツヴァイ』が言葉を引き継いでゆかりに告げる。
『アイン』にまかせていたのならば、彼女は面倒臭がって適当なことを言い出すことを理解しているのだ。
そんな言葉にゆかりは少し微笑む。
彼女たちの関係が崩れたわけでもなければ、ほつれたわけでもないことに安心したのだ。
「そういえば、この子たちは二人とは初見だっけ。アヤメと羅喉。あたしの式神よ。分類すれば……」
ゆかりは式神である二人を紹介する。
無人機キャバリアである『迦利』もまた同様に式神として彼女は扱っているからこその言葉である。
けれど、クロムキャバリアに生きる『アイン』と『ツヴァイ』にとっては理解の及ばぬところもあったことだろう。
キャバリアは戦術兵器。
それと分類が同じと言われれば、人間サイズのキャバリアがいるという話になるわけである。彼女たちは、ゆかりの言葉を全て理解できたわけではなかったが、混乱させてしまったかなと、ゆかりは言葉を切る。
それ以上に気になるのが『エース』である二人である。
「うーん、水着が邪魔」
思わずそう口に出てしまう。
アヤメと羅喉は毎晩と無く素肌を見ているが、それでも『エース』である『アイン』と『ツヴァイ』の素肌を見てみたいと思うのだ。
そんな視線を感じても、二人の反応はそれぞれ異なるものであった。
『アイン』は快活に笑っているだけであるし、『ツヴァイ』はそういうことにいまだ興味が無いというようにしているが、若干の恥じらいがある。
そういう一面を垣間見れたことだけでもゆかりは、この銭湯に足を運んだだけの価値はあると満足気に湯気の向こう側に見える彼女だけの桃源郷を見つめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『クロアのやつ、どんなふうに成長したかねぇ。アイツはエースの器だからな。楽しみだ。』
クリノ・クロアとの語らいを楽しみに温泉に入るぜ
『ただでさえ、きな臭い国もある。黒幕も気になるが…フュンフの嬢ちゃんにはお前が、クリノ・クロアが必要なんだ。それだけは忘れんな。そして、もしも厳しい時は俺たち猟兵が手助けしてやるよ』
クロアと語らいつつ、激励するぜ
湯気立つ温泉街の如き様相となった『グリプ5』は、建国記念の日を楽しむ人々で溢れていた。
温泉プラントから滾々と湧き出るお湯が人々の日々の疲れを溶かし、流し去っていく。それは何物にも代えがたいものであったことだろう。
戦乱の世が続くと言っても、毎日が戦いではない。
こと小国家『グリプ5』の周辺国家においては、未だ予断を許さない状況であるものの僅かばかりの余裕があるのもまた事実である。
そうでなければ、如何に建国記念の日というハレの日であっても、こうした市民の憩いを甘受することはできない。
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は、そうした『グリプ5』の市街地をゆっくりと歩いて、銭湯へと向かう。
どこを見ても人々の安らいだ顔が見える。
このクロムキャバリアにおいては珍しい光景である。だからこそ、この平穏という日常を護るために『エース』の存在が必要なのだ。
それは逆に皮肉でもあったことだろう。
『エース』の存在が必要不可欠なる現況。それこそが戦乱の只中にあることを示している。
平穏であるのならば『エース』の存在は必要ないだろう。
されど、『エース』が求められる時代に平穏は訪れない。
「『クロア』のやつ、どんなふうに成長したかねぇ」
ガイは、その『エース』の器であると断ずるに値する少年のことを思い出していた。
『フィアレーゲン』からの亡命者たちの一団にいた少年『クリノ・クロア』。緑色の瞳をした少年は今も健在であろう。
かれが成長した暁にはきっと『エース』となる力を保っている。それをガイは楽しみにしていたのだ。
「おっと、此処に居たかよ、『クロア』。久しぶりだな」
ガイは見知った少年『クロア』が銭湯に浸かっているのを見つけ、己また隣に腰を下ろす。
「ああ、こんにちは。よかった。あれからどうしていたかなって思っていたんです」
そう告げる『クロア』の瞳には輝きが宿っているようにも思えたことだろう。
自分が何をしなければならないのかを理解し、それを為せるだけの力を得ている輝きだ。彼に迷いはない。
「こっちはこっちで、無事だよ。こうして湯に浸かることができるくらいにはな」
ガイと『クロア』が笑って言葉を交わす。
こうして言葉を交わすのは、何度目であっただろうか。そういうことは最早些細なことであるだろう。
この戦いの裏で糸を引く存在がいるのならば、この後にも『グリプ5』へと仕掛けてくることは容易に想像が付く。
「ただでさえ、きな臭い国もある。黒幕も気になるが……『ツェーン』の嬢ちゃんにはお前が、『クリノ・クロア』が必要なんだ。それだけは忘れんな」
ガイは『フィアレーゲン』で戦った『ツェーン』と呼ばれる少女のことを思い出していた。
彼と『ツェーン』の間には繋がりがある。
絆と言ってもいいものであるとガイは思っていたし、それもまた一つの真実であったことだろう。だからこそ、ガイは彼に言葉を託すのだ。
「そして、もしも厳しい時は俺たち猟兵が手助けしてやるよ」
未だ少年と言っていい年頃の『クロア』と『ツェーン』。
彼らの道行きに暗雲が立ち込めるというのであれば、それを切り裂いて拓くのが己である。
だからこそ、ガイは『クロア』を激励する。
道を妨げるものを斬って捨てることができても、その先に歩みを進めることができるのは、彼ら自身の足だ。
彼らの気持ちが未来に、その先にある平穏に向かっていかないのであれば意味がない。
だからこそ、ガイは言葉を尽くすのだ。
「ありがとう。僕らは大丈夫……って、自信満々に言えたらいいのだけれど。でも、助けに来てくれるんでしょう? それだけで心強いから」
そう言って笑う『クロア』の表情は、この戦乱にあっても明るいものであったことだろう。
ガイは満足げに笑い、銭湯のお湯が己の体に溜まった澱の如き披露を溶かし流していくのを感じるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
UC常時発動
男湯
くそが…混浴がねーとは悲しさマックスですね
折角なのでフュンフとクリノと話しますか
キャバリアの乗りこなし方とかこれまでの戦いの話も聞いてみたいですね
特にフュンフの活躍は聞いてますし
あ、一緒にサウナにも入ります
サウナは疲れを取るいい方法があるらしいですよ?
我慢比べなんぞしねーですよ?体に悪いし?
サウナで温まったら水風呂です!一分程浸かり
出て体を拭いて水を飲んで一休み
そして再びサウナ…このサイクルを三度以上繰り返します
ほぁぁぁ(整う
女湯
メルシー突撃
「ひゃっはー☆」
アインを眺める機神(基本両刀である
もうにっこにこしながらエース達を眺めてる。主にスタイルを分析してやがる
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は小国家『グリプ5』の銭湯で歯噛みしていた。
何をそんなに歯がゆく思っているのかと問われることもあっただろう。
せっかくの建国記念の日、ハレの日であるというのに、カシムだけは一人不機嫌であった。
「くそが……」
つぶやく言葉は湯けむりの彼方に消えていく。
彼が視線をむけているのはどうやら壁を隔てた女湯のようであった。
そう、彼が歯噛みしているのは、混浴がないことである。
「悲しさマックスですね」
こればかりはどうしようもないものである。
異なる世界の異なる世俗。
このクロムキャバリアという戦乱の世界にあって、小国家は乱立すれど、その小国家にあってもなお文化や世俗の違いというものは存在しているのだ。
カシムはせっかくの機会であるのならば混浴で目の保養をと想ったのだろうが、そうは問屋がおろさないというものである。
仕方無しに、こうして男湯に浸かっているのだ。
そんな彼を『フュンフ・ラーズグリーズ』と『クリノ・クロア』は苦笑いをしながら見ている。
「まあ、言ってもしようがないです」
カシムは気を取り直して二人の『エース』に近づく。
彼らには色々と聞きたいことがあるのだ。キャバリアの乗りこなし方とか、これまでの戦いの話。
「キャバリアの乗りこなし方、ですか……僕はあまり意識したことはないです。ただ、操作系統を覚えるのは難しくなかったかと思います」
『フュンフ』はどちらかと言えば、理路整然としたマニュアルに沿って操作をするタイプらしい。
ただ、アンサーヒューマンらしく、その先読みの力、瞬間思考の冴え渡るところは、これまでの戦いで言うまでもないことだろう。
「俺も……でも、操作を覚えるのは難しかったな。知らない機能があると慌ててしまうし……」
『クロア』は我流、センスに任せた操縦をするようであった。
これもまた才能と言ってしまえば聞こえはいいが、天賦の才能があることは言うまでもなかった。
そんな二人の言葉を聞いてカシムは頷く。いや、参考にならんと。
三人は連れ立ってサウナに入る。
二人はただ熱いだけだからと敬遠していたが、カシムの言葉に従って熱気が立ち込めるサウナ室に入っていく。
熱波が肌を焦がすような感覚がある。けれど、カシムは言うのだ。
「我慢比べなんぞしねーですよ。体にあるいですし? そう、サウナとは!」
ここからはカシムの独壇場であった。
サウナ道。略してサ道。サウナ、水風呂、外気浴。このローテーションを三度繰り返す。
そうすることで血行が促進され、俗に言う整ったという多幸感に身体が包まれるのだ。
「ほぁぁぁ」
それはカシムの声であっただろうか。それとも『フュンフ』、『クロア』のものであっただろうか。
判別としない声はきっと日々の疲れを癒やし、澱を溶かすようにして消えていくゆのだろう。
けれど、それ以上に女湯ではメルシーがにっこにこしながら『アイン』や『ツヴァイ』たちを見ている。
「ひゃっはー☆」
それはいつものことであったのかもしれないけれど、その瞳はちょっと正直過ぎるほどの視線であったことだろう。
『エース』たちのスタイルを主に分析している瞳は、もっとこう別のことにも使えるんじゃないかなと思わないでもないが、男性でも女性でも関係ないとばかりにメルシーは彼女たちを見つめ、ほこほこした笑顔を浮かべている。
こうしてクロムキャバリア、『グリプ5』の建国記念の日は緩やかに過ぎていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…
……
やっば、深夜のテンションで描いた設計図っぽい機体がある…
無関係ゾーン無関係ゾーン
まあ、折角のご厚意だし温泉に浸からせて貰おうか
しかし、クロムキャバリアでここまでのんびりした時間を過ごせるとは思わなかったな…
鉤爪の男はこの世界に闘争を見出だしていた
けれどもそれでも、人は生きてる
闘争だけじゃない…か
入れ込み過ぎたと思ったけど、こういう光景を見れただけでも何かしら役にはたったのかもね
ま、私は好きに動いただけだから頑張ったのは他の皆だけど
それでも私の働きが何かをこの国に残せたのだとしたら、それはきっと素敵な事なんだろうな
…と柄にもなく感慨に更けよう
決して何処かで見たことある物からの逃避ではない…
機動闘士『大熊猫壱号』。
そのなんとも言い難いデザインのキャバリアが小国家『グリプ5』の市街地に立っている。それは別に臨戦態勢を取っているわけではなく、建国記念の日というハレの日にあって催されるキャバリアレースの最後を飾る障害として立ち並んでいるのである。
その外観からか、親しみを感じるのは、この戦乱の世界にあっては珍しいことであったのだろう。
サブカルチャーに精通しており、このような外観をしたキャバリアに真っ先に興味を示しそうな猟兵である月夜・玲(頂の探究者・f01605)は珍しく、その機体から視線をそらしていた。
いや、見ないようにしている。
まさかの現実から逃避しているようでもある。
「……」
彼女の足はスタスタと銭湯の女湯に向かっている。
てこでも見ないようにしているのがわかるほどに、普段の彼女らしからぬ振る舞いであった。
「……やっば、深夜のテンションで描いた設計図っぽい機体がある……」
無関係、無関係、と玲は頭を振って歩み続ける。
そう、あの機動闘士『大熊猫壱号』は玲が深夜のちょっとおかしなテンションで設計図を描いたものである。
簡易なフレームながら十分な機動性、頑強な組み上がり、あのような外観からは想像のできぬ性能を有していることなど玲はとっくに理解している。
だって設計図を描いたの自分だし。
だが、それがどういう因果かクロムキャバリア、それも『グリプ5』に存在しているのかがわからない。
メカニックとしては消し去りたい過去なのかもしれない。
「とは言え、クロムキャバリアでここまでのんびりした時間を過ごせるとは思わなかったな……」
玲は銭湯に浸かり、肩までお湯の暖かさに包まれながら考える。
この世界の出身であろう猟書家『鉤爪の男』は、この世界に闘争を見出していた。
超弩級の闘争。
それが彼の求めるものであるのならばこそ、この世界はどうしようもないほどの戦乱に満ちている。
けれど、それでも人は生きているのだ。
闘争だけじゃない、そんな世界を。この小国家に玲は入れ込みすぎたと想ったが、こうしたのんびりとした光景を見られただけでも自分が役に立ったのかもしれないと思わずにはいられなかった。
自分は好きに動いただけだから、頑張ったのは他の皆のおかげなのだけれど、と感慨にふけるのだ。
「あのっ!」
そんな風に素敵なことやん……と遠くを見つめていると隣に『ツェーン』がやってきている。
『フィアレーゲン』からの亡命者。
彼女の道行きを変えたのは、玲であることは言うまでもない。彼女の言葉で『ツェーン』はキャバリアを降りて、メカニックとして歩んでいる。
「あれ、私が整備したの。変じゃない?」
どうやら彼女は玲にそれを聞きたかったのだろう。メカニックとして生きることを決めた彼女が整備した機体。
それが機動闘士『大熊猫壱号』であるのだろう。
玲は決して何処かでみたことある物から逃避したくて遠い目をしていたわけではない。
けれど、そのキラキラした純粋な瞳を見て、破顔するしかない。
どうあっても目を背けたいものから目を背けることのできない人生であるらしい。玲はしようがないな、と思いながら『ツェーン』と銭湯の中で、メカニックとしての談義に花を咲かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
(……変な気持ちです。何も考えられなくなってきました)
自分の様な者が来て良いのだろうか、とか、色々考えていた筈なのに、いざ暖かい湯に肩まで浸かったら、全て、溶けてしまったよう。
……銭湯とは、良いものですね……。
口に出てしまう言葉。横にいた方へ喋り掛けてしまった感じですが、今なら普通に話せる気がします。
銭湯もこの感覚も、初めての経験であります。人々の喧騒も、心地よい……
平和とは、こういうモノなのでしょうか?……はふ……。
はい?のぼせる……?………。
ええ、とか、はい、と相槌を打ちながら、相手の言葉に耳を傾けている内に、思考は曖昧に。平和とは、かくも暖かく、浸かり過ぎてはいけない。
がんばりましょう。
お湯とは不思議なものである。
体温に親しい温度のお湯に身を沈めているだけで、心地よい気持ちにさせてくれる。
ささくれたように傷を負いながら戦う日々を過ごす朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)にとって、それはとても不思議な気分にさせられるものであった。
ぼんやりと思考が鈍っていくのを感じる。
けれど、そこに焦燥の気持ちはない。
何も考えられなくなってきているし、最初は建国記念の日というハレの日に自分のような者が来て良いのだろうかとか、迷惑ではないだろうかなどと要らぬことを考えて居たはずなのに、いざ温かいお湯に肩まで浸かってしまったら、あらゆることが些事に思えてくる。
心配事も、披露も、何もかもが全て溶けてしまうような気持ちが溢れてくる。
この戦乱の世界であるクロムキャバリアに生きる人々にとっても同じことなのだろう。建国の父と呼ばれた『フュンフ・エイル』が銭湯を好んだという理由も小枝子はよく理解できる気がした。
「……銭湯とは、良いものですね……」
思わず口に出てしまう言葉。
隣り合ってお湯に身体を浸けている『ツヴァイ』に図らずとも喋りかけてしまった形になってしまったが、今ならば普通に話せる気がするのだ。
それが銭湯の、温かいお湯の効能であるというのならば、それはこのような催しを開催した『グリプ5』の人々にとって誇らしい事実であったことだろう。
「はい。とても心がやすらぎます。疲労回復だけではない、と今ならば確信が持てるほどです」
堅苦しさは未だ拭えていない気がするが、それでも生真面目な『ツヴァイ』の普段の様子からすれば、その表情が和らいでいるのがわかるだろう。
「銭湯もこの感覚も、初めての経験であります。人々の喧騒も、心地よい……」
身体を洗う人、世間話に興じる人、走るな転ぶと幼い子らをたしなめる人、きゃっきゃと笑う幼子たち。
そんな日常。
ありふれた日常と呼んでいい喧騒に包まれてもな、小枝子の心は穏やかに凪いでいるようでもあった。
「平和とは、こういうモノなのでしょうか?」
はふ、と息を吐き出す。
平和を知らぬからこそ、想像するしかない。
この垣間見えた平穏が続く未来こそが平和であるというのならば、今この瞬間んだけは確かに平和であったのだろう。
「恐らく、そうなのかもしれません。私達はこれを求めて戦っている……自分のためであり、誰かのためである。戦う理由が、『これ』であるというのならば、戦いに臨むことも悪くはないと私は……」
そこで『ツヴァイ』がはたと気がつく。
隣に浸かっていた小枝子が緩み緩んでぶくぶくと音を立てている。
「あ、あなた……のぼせているのではないですか!?」
「はい? のぼせる……? ……」
小枝子の表情はいつもの険しさなど何処にもない緩みっぱなしのもの。
まるで溶けたバターみたいな顔である。ええ、とか、はい、とか『ツヴァイ』からの言葉に応答してはいるものの、まるで要領を得ないものであった。
声が遠い。
けれど、小枝子は思うのだ。
平和とは、かくも暖かいものであるのだと。浸かり過ぎてはいけない。
この平穏は自分には勿体ないと想っているのだろう。
だからこそ、彼女は誰かにこの平和を手渡すために戦わなければならない。
「……がんばりましょう」
ぽつりとつぶやいた言葉こそが、彼女の心より発したものであったことだろう。
その身が悪霊であったのだとしても。
それでも彼女を突き動かす闘争心の根本には、今日という日に在った平和への祈りが一欠片でも介在してるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
ふっ
お呼びとあらば参じましょう!
私はクノイチ、胸が目立ちすぎてあーっ?!
※ダッシュで入ってきたので濡れている床で華麗に滑っていったスク水
ゴメンナサイ端っこの方で目立たないように入ってます
え?浮いてる?何が?(たゆんたゆん
あっ、アインさんじゃないですかー
お久しぶりですー
こんな落ち着いた状況でお会いするのは初めてでしょうか?
え?緊迫した状況で会ったこともない?
やだなーいつも戦場だし緊張感溢れる…あふれる……あれ?
ふーそれにしても気持ちいいお風呂です
ほっとしますね
この後は確かキャバリアレースですよね
ふっ私とシリカで駆け抜けて見せましょう
……その前にのぼせたかもー(全身でぷかー)
たすけてー
銭湯と聞いては黙っていられないし、居ても立っても居られないのがクノイチであるというのならば、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)こそが真なるクノイチであったことだろう。
「ふっ、お呼びとあらば参じましょう! 私はクノイチ、胸が目立ちすぎてあーっ?!」
銭湯では走ってはいけません。
それを知らしめるかのような大惨事が小国家『グリプ5』の銭湯に巻き起こる。
つるりとよく滑るタイルに足を取られたサージェ。
しかし、その体勢を崩した状態から持ち直す体幹の素晴らしさは言うまでもなく、彼女がクノイチであり、同時に優れた猟兵であるからであろう。
すってんころりんと行かぬが、それでもちょうどよいというか、なんでそんなところにと言うべきか。
彼女が体勢を整えようと足を踏み出した其処に在ったのは、石鹸である。
もうそこからはみなまで言うな。
つるんと床を華麗に滑っていくスク水クノイチ。
ずっしゃーと音を立てる見事な滑りっぷりで、銭湯の浴槽にダイブインである。
「まったく、どうして銭湯で走るのですか!」
『ツヴァイ』にしこたま怒られてしまったサージェであるが、『アイン』がとりなしてくれる。
「まあまあ、そう云うなや。見事な滑りっぷりだったぜ、あんた! そんな端っこで縮こまってないで……ってすごいな、それ」
お湯に浸かりながらガミガミ言われていたサージェであるが、言うまでもなく窮屈そうに押さえつけられたスク水の胸元がたゆたゆしておられる。
女性から見ても、それは見事な浮き袋っぷりであり、サージェからすれば、『え、私またなにかやっちゃいましたか』状態である。
「あっ、『アイン』さんじゃないですかーお久しぶりですー」
『アイン』が『ツヴァイ』からかばってくれるのを良いことにサージェはすいすいと銭湯を泳いで彼女の傍に寄っていく。
話はまだ終わっていませんが! という『ツヴァイ』をよそにサージェはぺこぺこする。
こんな落ち着いた状況で対面することは殆どない。
いつだって戦乱の世界であるクロムキャバリアにおいては、戦場でこそすれ違うものばかりである。
「いや、緊迫した状況でも合ったことないな。なにせアンタは騒々しい」
なんて笑いながら『アイン』と語らうサージェ。
「やだなーいつも戦場だし緊張感溢れる……あふれる……あれ?」
サージェは自分が戦場に出た時のことを思い出す。
たまにシリアスやってるよね、という位の感覚。
いや、まておかしい。いつもシリアスのつもりなのに、何故だか面白おかしい雰囲気にしてしまうのは何故だろう。
「ふ、ふー……それにしても気持ちいいお風呂です。ほっとしますね!」
サージェは温かいのに何故か冷や汗流しながら話をそらす。そらせてない気がしないでもないが、それよりも今回はこの後に控えるレースが一つの目玉である。
「この後は確かキャバリアレースですよね」
「ああ、アンタも出るんだろ? コースの最後には私達四人がいるからな。そう簡単には抜かせないぜ?」
『アイン』が不敵に笑うのを見て、サージェも真似して不敵に笑う。
実力は確かに凄まじいものであろう。
けれど、サージェだって伊達にキャバリアを駆る猟兵ではないのだ。なにせ、レースの賞品は豪華な松茸料理である。そう簡単に食べられないからこそ価値があるのだ。
「ふっ、私とシリカで駆け抜けて見せましょう……その前にのぼせたかもー……」
ぷかっと自分自身の身体が浮いてしまうサージェ。
今からこんなことで大丈夫なのだろうかと思わないでもなかったが、それでも意気込みだけは十分である。
僅かな時間であれど、癒やしを得たサージェ。
掛ける意気込みは、これから行われるキャバリアレースで見せるべきだろう。そんな風に思いながら、のぼせた身体をうちわで仰ぎながら、束の間の平穏を堪能するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『市街地を駆けろ』
|
POW : 些少強引でも直線コースで一気にゆく
SPD : 全速で駆ける
WIZ : 最短ルートを見抜き進む
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
束の間の休息を得た猟兵と『エース』たち。
彼らが次に身を投じるのは、やはり戦場ではない。今回、建国記念の日という日にあって催される行事はもう一つあるのだ。
それが市街地をレースコースに見立てた『キャバリアレース』である。
自前のキャバリアを駆って障害物や、妨害を躱すも良し。
『グリプ5』から借り受けたキャバリアを使っても良い。
この行事は、毎年盛況のようであった。
キャバリアの訓練も兼ねているし、何よりも豪華賞品と呼ばれる松茸料理が人々をひきつけて止まないのだ。
なんで松茸と思わないでもないが、それは国の名前にも由来しているのだろう。『グリプ』とは『茸』を意味するものである。『サスナー第一帝国』に打ち勝って建国した事にちなんでいるのだ。
『松(サスナー)』から『茸(グリプ)』へ変遷した小国家の時代。
それを象徴するのが松茸料理なのだろう。
というのはこじつけに過ぎない。
たまたまそうなったというだけなのだ。けれど、あの芳しい香りは人々の心を惹きつける。
普段は非戦闘員である者たちも貸し出されるキャバリアを駆って、あわよくばとゴールを狙っている。
猟兵達は彼らの妨害を警戒しないといけないし、実弾や実剣は使えない。どれもがペイント弾やワックス刀身の近接武装だけだ。普段とは勝手の違う戦い。
まずは、レースコースを駆け抜け、ゴール間近で待ち受ける『エース』たちに肉薄しなければならない。
「それでは、キャバリアレース……――スタート!!」
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『さて、駆け抜けるぜ』
周囲の地形を見極め、最短ルートを【戦闘知識】から導き出して、ブーストとローラーダッシュ全開で駆け抜けるぜ!
妨害はその都度【見切り】で避けて全速力で進むぜ!
市街地をレースコースに仕立てた『グリプ5』の建国記念の日におけるキャバリアレース。
そのスタートが切られた瞬間、飛び出したのは特空機1型『スターインパルス』であった。
元は実験機であり、高出力、高機動にチューンナップされた背面ブースターによる飛行を可能にした機体は、このクロムキャバリアの世界にあっては珍しい存在であったことだろう。
『殲禍炎剣』という暴走衛生が存在するせいで、人々は高速での空の行き来を封じられている。
そのために小国家間における交流は閉ざされ、互いに争い合うしかなかった。
火種はオブリビオンが、誤解を解くための手段は『殲禍炎剣』が人々の見上げる空に蓋をしているようでもあった。
だからこそ、『スターインパルス』が低高度であったとしても、『グリプ5』の市街地を大地を滑るようにして走り抜ける姿は人々の熱狂の的であったことだろう。
「さて、駆け抜けるぜ」
『スターインパルス』のコクピットの中で、ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は唇を湿らせるように舌を出す。
周囲の市街地、キャバリアレースのコースに設定された区画を瞬時に見極める。
入り組んだ建物が乱立するコースを選んでいるのは、これがスピード勝負であるのと同時に、妨害を想定してのことだろう。
参加者たちは皆一斉にスタートするが、妨害が許されている。
ならば、第一の関門は同じレースに参加している競技者同士のつぶしあいである。
それにガイは巻き込まれまいとスタートダッシュを決めたのだ。マッピングされたセンサーを最短ルーツを導き出す。
「ブーストが切れる……だが!」
背面ブースターが如何に飛行を可能にしたものであったのだとしても、無限に空を飛び続けることはできない。
高高度を飛ぶことが出来ない以上、障害物である建物を無視することはできない。
ブースターの噴射が終わる瞬間、脚部に備えられたローラーが接地し、駆動を開始する。
「ローラーダッシュ全開で駆け抜けるぜ!」
ガイはスタートダッシュを決め、後続を大きく引き離していた。
けれど、それは同時に己の背中を競技者たちに晒すということでもあった。周囲に走る一般人が駆るキャバリアからペイント弾が雨のように飛来する。
普通の弾丸であれば、被弾しても驚異にならない。
そして機体を止めることもできないだろう。けれど、これはレースである。ペイント弾があたったと判定されれば、それだけで後半戦に機体の損傷として捉えられ、ポイントを喪ってしまう。
「なるほどな。だからスタートダッシュを決めるやつが少ないのか……背中をさらせば撃たれる。そうなれば、機体が壊れていなくても、脱落判定になる、と」
考えたものだ。
全ての競技者が『エース』やそれに次ぐ技量を保っていなくても、運で優勝する芽があるということだ。
それは実力差をひっくり返す競技性であった。
「だがよ!」
それでもガイはペイント弾の尽く、その飛沫さえもローラーダッシュで巧みに躱して駆け抜ける。
ペイント弾の塗料が障害物の建物にあたり、そのペイントが染め上げていくにも関わらず、ガイの機体は次々と障害物をクリアして先に進むのだ。
「な、なんだよ、あの機体! あんな機動性、ありかよ!」
「ペイント弾があたらねぇ! 速すぎる!!」
一般参加者の呻く声さえも振り切ってガイは『スタートインパルス』と共にレースコースを踏破していく。
それは星が夜空を駆け抜けるように、鮮烈なる戦術機動でもって『グリプ5』の人々の瞳に刻み込まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
それじゃ、レースを始めましょうか。
あたしの機甲式『GPD-331迦利』には操縦席がないから、横を一緒に飛ぶのでいいわね?
黒鴉の式を打って、コース全体と難所を監視。突破する時の参考にさせてもらう。
そもそも『迦利』は白兵戦を想定した式じゃないのよね。今回のルール、面倒だわ。
条件設定。高度10メートルまで。速度は一般的なクロムキャバリアの出せる程度に。レーザーは出力最低。
あたしは飛鉢法で『迦利』とつかず離れず飛行して、「式神使い」で精細に制御。
打ち込まれてくるペイント弾は、側面のレーザー砲門からの「レーザー射撃」「弾幕」で撃ち落とす。
道を塞ぐ相手は、「オーラ防御」を纏った『迦利』の吶喊で突破するわ。
戦乱の時代が続くクロムキャバリアにおいて、戦場の花形と言えるのがキャバリアである。
多くは人型をしており、人型をしているからこそ戦術を手繰ることに真価を見出す。
5m級の人間が武器を携行し、扇状を走り抜け、腕や頭部を喪ったとしても、それでも継続して戦線を維持することができるということは凄まじい戦術の幅を齎すことであろう。
そういった意味では人型兵器の存在意義はクロムキャバリアにおいては有意であったことだろう。
『殲禍炎剣』の存在がそれに拍車をかけていることは言うまでもない。
航空戦力の全てが『殲禍炎剣』の高高度からの砲撃に寄って意味を成さなくなった今、機甲式『GPD-331迦利』は無人機であれど飛行する無人機キャバリアは珍しい存在であったことだろう。
「それじゃ、レースを始めましょうか」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は無人機ゆえに操縦席がない『迦利』の横を一緒に飛びながら、変則的であるがキャバリアレースに参加していた。
予め黒鴉召喚(コクアショウカン)によって黒鴉の式神を解き放ち、コースとなった小国家『グリプ5』の市街地、キャバリアレースのコースを調べる。
コースの全体と難所。
それさえわかれば、妨害ありのレースにあって優位に運ぶことができるだろう。
黒鴉の式神から送られてくる情報を元にゆかりは開始された『キャバリアコース』を駆け抜ける。
「そもそも『迦利』は白兵戦を想定した式じゃないのよね」
今回のキャバリアレースのルールは、彼女にとって面倒なことこの上ないものであった。
自前のキャバリアを使うことを考えなければ良かったのかも知れないが、其処は彼女なりの拘りであろう。
無人機である『迦利』に条件を設定していく。
高度は10メートルまで。速度は一般的なクロムキャバリアに出せる程度に。レーザーの出力は最低に設定する。
これも妨害用の攻撃ではなく、迎撃用にしか使わない。
鉄鉢に乗ってゆかりは共に飛びながら『迦利』と付かず離れずに飛んでいく。彼女の式神使いとしての技量によって精細に制御された『迦利』はクロムキャバリアの空を飛ぶ。
「本当、高度と速度に気を配らなければならないなんて……『殲禍炎剣』が恨めしいたらないわ」
天にいまだ座す暴走衛生。
その存在のせいでクロムキャバリアにおける小国家同士は密なる連絡手段を失い、互いに疑心暗鬼のまま戦争状態に移行してしまう。
オブリビオンマシンが不和の種を撒けば、ただそれだけで争いは再燃してしまうのだ。
「とは言え、暗い話はこれまでにしましょ。さあ、いくわよ!」
ゆかりは『迦利』に放たれる一般参加者たちの妨害射撃をレーザーで叩き落としながら空を舞う。
「軽い軽い。ペイント弾だからって、雑な狙いで脱落させようたって無駄よ!」
そう、ペイント弾の塗料が付着しただけで被弾扱いになってしまう。
今回のキャバリアレースの肝でもある。
実力差、機体性能差をひっくり返すことのできる運。それを持っているものこそがこのレースの勝者となれるのだ。
「くそっ、無人機ってありなのかよ!」
一般参加者が空を舞う『迦利』を見て呻く。彼らにとって、その戦術機動は地を這う一般的なキャバリアと異なるがゆえに、対処し辛いものであった。
「ペイント弾で捉えられないっていうんなら!」
一般参加者のキャバリアが飛びつくようにして『迦利』の機体に組み付こうとする。けれど、それさえもゆかりは見切ってオーラを纏った『迦利』の衝角による突撃で吹き飛ばすのだ。
「邪魔をするんなら、吹き飛ばすまでよ。怪我をしたくなければ道を開けなさい」
ゆかりは吹き飛ばされたキャバリアが地面に倒れ込むのを見やり、その土煙を『迦利』と共に突っ切ってコースを突き進む。
一般参加者たちは、あれには手を出さないでおこうと思わせるほどの吶喊の一撃。
それを見せつけながら、ゆかりはレースの終盤へと差し掛かろうとしていたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
『アイン』さんの飲みっぷりは計算外だったよー。
レースと早飲みで、1勝1敗にしたかったのに!
でもでも『アイン』さんから挑戦状をもらっちゃったし、もちろんチャレンジしに行くよ。
なんとか突破できるといいんだけどな。
ここでは初お披露目、かな? これがわたしのキャバリア!
わたしのキャバリアの強みは、その器用さ。
操縦技術ではとても及ばないから、『希』ちゃんにサポートしてもらって、
ここはトラップをしかけていこう。
動き回って、なんとか攻撃を凌ぎつつ、ワイヤーを地面に張り巡らしていくね。
準備ができたら、えいっ、と引っ張って、転ばせられたらいいんだけど!
引っかかってくれたら、そのままゴールに飛び込んじゃう、ねー。
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)にとって、風呂上がりの牛乳早のみ対決はキャバリアレースの最後の難関となる機動闘士『大熊猫壱号』に乗った『エース』たる『アイン』との勝負において大切な勝ち星を稼ぐ勝機であった。
けれど、理緒は勝てる見込みがあった勝負を落としてしまったことが悔やまれた。
「『アイン』さんの飲みっぷりは計算外だったよー。レースと早飲みで、一勝一敗にしたかったのに!」
完全に計算違いをしてしまっていた。
キャバリアを使った操縦技術では己と『アイン』には雲泥の差がある。
『エース』と呼ばれるキャバリアパイロットの中でも『エースの中のエース』とまで呼ばれる技量を持つ『アイン』に勝てる見込みは理緒の計算ではなかった。
けれど、そんな『アイン』からレースの最後の関門に来たときには自分のところに来いとまで言われたのだ。
それならば、勝ち負けは関係ない。
「なんとか突破できるといいんだけどな」
理緒にとって、それは不安要素たっぷりのキャバリアレースであった。豪華賞品の松茸料理は余程美味しいのだろう、周囲の一般参加者たちの気迫がなんだか違う。
本当にこれは和やかなハレの日の行事なんだよね? と思うほどの熱気。
正直不安しか無い。
けれど、理緒にも秘策はあるのだ。
そう、彼女が駆るキャバリアは『グリプ5』から借り受けた量産機ではない。
「ここでは初お披露目、かな? これがわたしのキャバリア!」
それは理緒が設計したクロムキャバリアの1号機。
ツインアイが緑色に輝き、そのロールアウトカラーを周囲に晒す。キャバリアレースが良い試金石になるだろう。
この機体がどれだけの性能を発揮できるか。それを試す意味でも理緒はレースの開始を告げる号令と共に市街地に設定されたコースを走り抜ける。
周囲には一般参加者の妨害であるペイント弾が飛び交う。
しかし、彼女の駆るキャバリアは器用にペイント弾を躱して進む。それは理緒の送受技術だけではない。
それは機体制御をサポートする『希』と呼ばれる人格プログラムを組み込んだサポートAIによる操縦補助による回避行動であった。
「操縦技術ではとても及ばないけれど……それでもわたしのキャバリアの強みは、その器用さなんだから、ねー!」
そう、ここは戦場ではない。
キャバリアレースという競技の最中である。ならばこそ、ここで求められるのは絶大なる火力でもなければ、運動性能でもない。
「ただわたしが動き回っていたわけではないんだからねー」
「どう見たってペイント弾に右往左往してたじゃないか!」
彼女のキャバリアを囲む一般参加者たちのキャバリア。そう、理緒が自分たちと同じくキャバリア操縦の経験が浅いことを知った彼らは、まずは一機でもライバルを減らそうと結託して彼女を先に集中的に攻撃して脱落させようとしていたのだ。
取り囲まれた理緒は、たじろぐどころか不敵に笑う。
「確かにそう見えたかも知れないね。だけど、これを見ても言えるかなー」
ぐいっと理緒の駆るキャバリアがワイヤーを引く。
いつの間にワイヤーを? と思う暇も彼らにはなかっただろう。
彼女はペイント弾を躱しながら、周囲の地面にワイヤーを張り巡らせ、トラップを仕掛けたのだ。
それは彼女のキャバリアとサポートAIがあればこそできる器用さであったことだろう。
理緒を取り囲んでいた一般参加者たちのキャバリアがワイヤートラップに脚部を取られて宙吊りされるようにひっくり返らされ、地面に横転する。
「これでわたしの邪魔をする人たちは一掃できたねー。さあ、あとは『アイン』さんが待っている最後の関門に行かないと!」
市街地を駆け抜けるキャバリア。
次第にサポートAIが理緒の操縦の癖や、弱点を補うように挙動を補助してくれるようになる。
最適化と合理化。
それらを行うサポートAIの補助もって理緒は、今まさに『エース』たちに肉薄する。
目指す先にある『エース』という象徴。
それは時に絶望を齎す名であったことだろう。けれど、今は違う。戦乱の世界を生きる人々にとっての篝火。
希望という未来を見据えるために必要な明かりなのだ。
理緒は、その一つを見据える。自分のところにと言った彼女の言葉通り、理緒は『アイン』の駆るキャバリアへと走るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
【心境】
「いや~怒られた怒られた。」
まさかユーディ寝ちゃうなんて…理性が持たずに温泉の心地よさに溺れちゃったみたいだね。
いや。迷惑かけてごめんなさい。
【行動】
さて、気を取り直してレースだね。
レスヴァントだと飛んじゃうし、ここはシビリアンジョーで出るよ。
どーせなんで、ARICAもパールバーティで出場しなよ。
判定:SPD
どんな悪路もなんのその。『悪路走行』『ダッシュ』でどんなコースも順調に走り抜けるよ。
『瞬間思考力』で他の選手の進行ルートを一瞬で判断してすり抜けて行くよ。ボクの『操縦』テクは伊達じゃない!
ってえーーーーー(一瞬の隙に最終コースでパールバーティがオーバーブーストしてぶっちぎっていく)
「いや~怒られた怒られた」
ゆっくりと体の火照りが引いたのを自覚して、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は面目無いと小国家『グリプ5』の銭湯の前で平謝りするばかりであった。
主人格から封印された人格である『ユーディ』に交代したのは良いものの、銭湯の暖かさに理性が保たず溺れてしまったことは、大変に迷惑をかけてしまったと反省しきりであった。
『ツヴァイ』からもしっかり搾られてしまったし、これは今後の課題である。
下手なオブリビオンマシンと戦うよりも銭湯のお湯の方が手強いだなんて、そんなことがあっていいのだろうか。
そんなことをぼんやり思っていると……。
「聞いておられますか、ユーリーさん」
「いや。迷惑かけてごめんなさい。だからもう、時間だしさ……」
そろそろ開放してもらえるのだと思っていたら、まだ続くお説教という名の小言。しかし、この後に控える催しにユーリーは参加するし、『ツヴァイ』もまた出番があるはずだ。
「……わかりました。ちゃんと今後は気をつけてくださいね。あなた方には何度も窮地を救って頂いた。その御恩を返させて頂きたいのですから」
あくまで『ツヴァイ』はユーリーのことを心配してくれているのだろう。それがわかるからこそ、ユーリーは甘んじて説教を受けていたのだ。
キャバリアレースの時間になれば、漸く開放されユーリーは己のキャバリア……『レスヴァント』ではなく『シビリアンジョー』に搭乗し、どうせならばとAIであるARICAに『パールバーティ』を自動操縦させ、キャバリアレースにエントリーさせたのだ。
「別に協力させるってわけじゃないし、いいよね。さて、気を取り直してレース……さあ、いくよ!」
『エース』である実力を見せつけるとばかりにユーリーは『シビリアンジョー』の悪路走行能力を持ってキャバリアレースのコースとして設定された市街地を走り抜ける。
「ほらほら、どんな道だって『シビリアンジョー』ならへっちゃら! どんどんいくよ!」
瓦礫があろが、障害物が設定されていようが『シビリアンジョー』はユーリーの操縦技術と相まって凄まじい戦術機動を持って後続を突き放していく。
一般参加者たちの駆るキャバリアから放たれるペイント弾の雨など顧みることはあい。
彼女の瞬間思考力は、他の競技者たちの進行ルートさえも一瞬で判断し、その間隙を縫うようにしてルートを見つけ出し『シビリアンジョー』と共に駆け抜けていくのだ。
「ボクの操縦テクは伊達じゃない!」
ユーリーほどの操縦技術をもってすれば、この程度のレースコースなど問題にはならない。
彼女を捉えんとした一般参加者たちは、己たちが如何なる相手に追いすがろうとしたのかを知るだろう。
背中すらも追いかけることを許さぬ疾風の如きレース運び。
それは見事なものであり、一般参加者たちをしてレベルが違いすぎると言わしめるには十分すぎるほどであった。
「よーし、あとはぶっちぎって……」
もう少し最後の関門の入り口である。
この先に座す機動闘士『大熊猫壱号』を駆る『エース』を躱すか、打倒するか。それは未だユーリーには定まらぬ運命。
けれど、この先に一番乗りするのは自分だと確信しているのだ。
しかし、そんな彼女の真横を一瞬のブーストでぶっちぎっていく影があった。
「え――――――!?」
最終コースの一瞬の隙。
ユーリーが勝利を確信した一瞬を突く『ARICA』が操縦する無人の『パールバーティ』が『シビリアンジョー』を抜き去って、一足先に最終コースを走り抜けていく。
まさか自分の僚機でもある『パールバーティ』に抜かれるとは思っていなかったユーリーは呆然としながら、まさかの二着という事実に震える。
そんなことってあるのだろうか。
それほどまでに劇的な逆転劇に市民たちは湧く。けれど、そんな湧き上がる市民たちの声援を背にユーリーは如何なる感情を抱いていたことだろうか?
これから巻き起こる機動闘士『大熊猫壱号』と『エース』との戦い。そこでユーリーは、今回の遅れを取り返すことができるのであろうか――
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
クノイチ復活!
かもんっ!『ファントムシリカ』!!
シリカいきますよー!
今日は壊れない、何故なら戦いが無いからだ!
ってにぎゃぁぁぁぁぁっ!?(ばりぃされた
なんで?!何で今ばりぃされたんですか!?
えっ、現実をちゃんと見て?
やだなぁ…アッハイ(爪に屈するクノイチ
【SPD】
全速で駆け抜ける作戦ですが
エンジェライトスラスター使うと
突っ込みそうなので封印しまーす…(しくしく
でもファントムシリカは元々高機動&近接仕様なので!
こういう市街地とか実は得意なのです!
妨害してくる機体にはマキビシ風にペイント弾を投擲&足止め
突進&すれ違いざまにワックス刀身で一閃
追撃封じにちまかぐやでゲーミング目くらまし!
完璧ですね…!
復・活ッ! クノイチ復・活ッ!!
とまあ、なんというか喝采が聞こえてきそうなノリで湯あたりから復帰したサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)が小国家『グリプ5』の市街地、そのキャバリアレースが行われるコースに立ち手を天に掲げる。
「かもんっ!『ファントムシリカ』!!」
サイキックキャバリアである『ファントムシリカ』が虚空より現れ、サージェの背後に降り立つ。
その白と紫を基調とした機体は、これまでも何度も『グリプ5』や周辺国家で見受けられ、窮地を救ってきた。
ゆえに市民たちからの人気もあるようで声援が飛ぶ。
「はいはーい、クノイチですよ。忍べてないで毎度おなじみ……そんなことないもん!」
いや、忍べてない。
市民たちから笑い声が聞こえてくる。まさか前口上のくだりまで浸透しているのだろうか。
そんなことを思いつつ、コクピットに収まったサージェはキャバリアレースへと飛び込んでいく。
こんなにも彼女が意気揚々としているのは、今回はオブリビオンマシンのオの字もないからであり、このキャバリアレースだって戦いではないからだ。
「シリカいきますよー! 今日は壊れない、なぜなら戦いが無いからだ!」
ふふんと自信満々に胸を張るサージェ。
しかし、そんな彼女の言葉とは裏腹に『シリカ』の爪がばりぃってされる。ええ、なんで? 爪なんで? シリカさん?!
「ってにぎゃあぁぁぁぁぁっ!? なんで?! なんで今ばりぃされたんですか!?」
「現実ちゃんと見て、お姉ちゃん」
いや、見てる。
ちゃんと見てる。そういう様にサージェが抗議の視線を向けるが、きっと『シリカ』の言わんとしていることはわかる。
そう、これはレースだ。
けれど、参加者同士での妨害ありである。となれば、ペイント弾やワックス刀身であろうと障害物に突っ込んだり、強行突破したりすれば、まあ当然装甲はひしゃげるであろうし、フレームだって歪むだろう。
シリカの言わんとしているところはそういうところであった。
「やだなぁ……へへ、そんな突っ込むなんてことは……アッハイ」
にゅっと伸びた爪に簡単に屈するクノイチ。もうちょっと粘ろう、クノイチ。
そんなこんなでサージェは全速力で駆け抜ける逃げの作戦であったが、エンジェライトスラスターを全開にすれば、この市街地に設定されたコースでは建物に突っ込みそうであるので封印しておく。
しくしくと泣きたく為る。
機動性こそが『ファントムシリカ』の真骨頂なのだ。けれど、まあ、こういう市街地戦はクノイチらしく得意ではある。
全速力が出せないのならば、それ相応にクノイチらしい戦いができるのだ。
「いくら高機動型だからってさ!」
そんな『ファントムシリカ』に猛追する一般参加者たちのキャバリア。
彼らの放つペイント弾が『ファントムシリカ』へと向かわんとした瞬間、彼らのキャバリアの挙動が止まる。
「え――!?」
驚愕する彼らにサージェはにっこり微笑むのだ。
「これぞ撒菱の術です! 当たり判定は当たり判定!」
そう、すでにサージェは『ファントムシリカ』の背後にマキビシ風のペイント弾を撒き散らしていたのだ。
自分を妨害使用と迫るキャバリアがあれば、それを踏み潰してしまい、当たり判定を食らって動けなくなるというわけである。
さすがクノイチである。
「さらに! はーい、みんなせいれーつ!」
ちまっとかぐや隊!(ゲーミングカグヤヒメトアソボウ)たちが一気に市街地を埋め尽くしてしまう。ゲーミングカラーに輝く小さなかぐや姫たちが縦横無尽に駆け抜け、自分を追うキャバリアたちの視界を埋め尽くしていく。
ここまですれば『ファントムシリカ』を追う者はいないだろう。凄まじい目くらましと市街地に溢れるゲーミングカラーの明滅を背にサージェはキャバリアレースのコースを走り抜けていく。
「完璧ですね……!」
いつも以上に綺麗に決まったサージェの作戦。さすがクノイチと言わざるを得ない結果にシリカはあまりに綺麗に決まった作戦に息を呑む。
「本当にお姉ちゃんですか……?」
それはひどくないかな――?
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
闘争ではありますが、戦いではありません。
人工魔眼や眼帯デバイスも使わず闘いましょう。
その方が良い。
回点号に搭乗操縦します。
自分の超能力は落ちていますが、機動力があり、何より継戦能力の高さはディスポーザブル02より高い。
BXサイキックシールドの部分展開でペイント弾からオーラ防御。
ペイント弾を撃ち返し制圧射撃、メガスラスターで推力移動であります。
BXS-Bウィングキャノンにエネルギー充填。
接近戦を瞬間思考力で対応し、ワックス刀でなぎ払い。
この操縦技術、素人ではない様ですが!遅れをとるつもりはないであります!!
こじ開けた道を、ウィングキャノン・ブースターで回点号を吹き飛ばし!
瞬間加速で駆け抜ける!!
小国家『グリプ5』の建国記念の日に行われるキャバリアレースは盛況そのものであった。
市民たちはキャバリアたちが市街地を疾駆していく光景に歓声を挙げている。
戦乱だけの世界でありながら、このような光景が見られるとは朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は思っても居なかったことだろう。
確かにこれもまた闘争である。
けれど、彼女の知る戦いではない。
「人工魔眼も眼帯デバイスも必要ない……きっと、その方が良い」
小枝子の機能を全て使えば、キャバリアレースなど児戯に等しいものであったことだろう。
けれど、小枝子はそうではないと判断している。
機体負荷を極端に低減したあらゆる地形に対応したキャバリアである回天号に彼女は乗り込み、小枝子はレースコースを確認する。
人工魔眼を使わぬということは超能力を使わぬということである。
それは兵士としての自分の性能が大幅に落ちるということを意味している。けれど、機体からの負荷が少ないことは、普段の戦い方でなくてもキャバリアでもって地上を駆け抜けることができる。
「レース参加者たち同士の妨害もある……ならば、征きましょう」
回点号と共に小枝子がキャバリアレースのコースである市街地を疾駆する。
そんな小枝子のキャバリアを驚異に思ったであろう一般参加者たちが次々とペイント弾を撃ち放つが、小枝子にとっては問題にならない。
展開されたサイキックシールドが部分的に展開され、ペイント弾の塗料を尽く弾くのだ。
「まだまだ荒さがある射撃……やはり、素人。一般市民が参加することもあるのならば、こうした偶発的な攻撃もあるのですね」
小枝子は砲火の中を走り抜ける。
けれど、それは生命のやり取りの存在しないレースコースである。殺気もなにもない。
あるのは、心の奥底にしまった。もしくは存在しないはずであろう感情であったことだろう。
競うことが楽しいと思える感情。
荒い射撃の雨をくぐり抜けながら、小枝子もまたペイント弾を放つ。その応酬は言うならば、水鉄砲で遊ぶ幼子のようなものであった。
小枝子にそんな記憶はない。
けれど、そう思わせるほどに小枝子は知るのだ。
人は戦いだけでは生きていけない。
こんな些細なことでもいい、楽しいと思える日々があるからこそ、人は平穏を、平和を求めて戦うのだ。
「ならば……ウィングキャノン、エネルギー充填……!」
「ペイント弾が届かない! なら、接近戦でぇ!」
ペイント弾が尽くサイキックシールドに防がれることに業を煮やした一般参加者たちがワックス剣を手に小枝子の回点号へと肉薄する。
けれど、関係ない。
一瞬の思考は小枝子の最も得意とするところである。見極めた太刀筋。その一撃を華麗に躱し、小枝子の手にしたワックス刀が一般参加者たちのキャバリアを薙ぎ払う。
「接近戦を挑む機体もある……素人ではないようですが! 遅れを取るつもりはないであります!!」
恐らく参加者の中には兵士も混ざっているのだろう。
小枝子はそんな彼らの技量を見切りつつ、ワックス刀の一撃で動きを止めたキャバリアたちを押しのけ、道をこじ開ける。
「ウィングキャノン・ブースター……点火!」
回点号のウィングキャノンがブースターに可変し充填されたエネルギーを放出して一気にキャバリアレースのコースを爆走する。
瞬間的に加速された彼女の機体を補足できるものはなく、それは一瞬の内にレースの中盤、キャバリアの集団すらも抜き去って、最後の関門……『エース』たちの待つゴールへと至るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
私キャバリア持ってないから何か適当に借りよ…
ん?でもこの場合借りれるのってやっぱアレ?
アレかー…アレしかないよなあ…
まあでも、折角ツェーンちゃんが整備したんだし、アレ借りて走ってみようか
…ま、勝手知ったる何とやらか
どうせ程々、最高速度で敵わないなら妨害しながら進もう
ワックス刀身でワックス『斬撃波』
進む先の道にワックスを塗ってすぃーっと滑りながら進もう
転ばないようにバランスを取って…先行くキャバリアは『スライディング』で進みながら足元を攻める!
それで転ばせて『吹き飛ばし』て妨害もしておこう
うーんキャバリアの運転ってやっぱり性に合わないなあ
けど、しっかり整備された良い…良い…機…
整備凄い!偉い!!
キャバリアレースは、その名の通りキャバリアを使ったレースである。
小国家『グリプ5』においては、市街地をレースコースに設定し、如何に素早く障害物である建物を傷つけずに駆け抜けるかが争点となる。
けれど、それ以上に参加者同士での妨害が許可されているため、場所によってはペイント弾の雨が降り注ぎ、接近してくるキャバリアの振るうワックス刀身の近接武装をもかいくぐらなければならないのだ。
お遊びのように見えて、しっかりと競技性もある。
普段から戦いに赴く兵士たちや、一般人たちもまた競技に参加しているのは、ペイント弾とワックス刀身、そしてごった返すレース展開にあっては、一発逆転の運を掴むことで勝ち筋を見出すことができる。
そんなキャバリアレースに参加するにあたって月夜・玲(頂の探究者・f01605)は自身がキャバリアを有していないこともあって、何か機体を借り受けようとしていた。
適当な何かでいいやと思っていたのだが、玲はどうしてか懐かれている『ツェーン』のキラキラした瞳を見て、喉に何かが詰まるような思いをしたことだろう。
「……この場合、借りれるのってやっぱアレ?」
玲の視線の先にあったのは、白い機体。白っていうか、トリコロールカラーの機体。その機体を『ツェーン』がキラキラした瞳をしたまま手で示している。
何か言うわけではないが、もうこれはあれである。乗るしか無いやつである。
「アレかー……アレしかないよなあ……」
やや黒歴史であるアレ。
しかし、『ツェーン』がせっかく整備してくれた機体である。アレを借りて走ってみるかと玲はあきらめムードで機体に乗り込む。
コクピットに収まったのは初めてであったかもしれないが、勝手知ったるなんとやらである。
「機体の整備は万全だから! 本当に! 機動性はそこそこかもしれないけれど、足回りのフレームは頑丈です。多少の無茶だって大丈夫」
『ツェーン』の言葉を受けて玲はコクピットハッチを閉じて、機体を起動させる。
アイセンサーが煌き、玲は彼女が設計図を走らせ、なんでか機体が再現されている黒歴史の元凶たる機体――機動闘士『大熊猫壱号』と共にキャバリアレースに挑むのだ。
「とは言え、最高速度では敵わない……この機体の良いところは頑強なフレーム構造……なら」
玲はレース序盤に後方に位置し、集団の出方を伺う。
案の定参加者同士の妨害という名の乱戦が市街地で始まっている。ならば好都合とワックス刀身を振るって、その刀身を形成しているワックスを溶かしながら市街地の路面をワックスでコーティングするのだ。
それは振るった玲であればこそ、対応できるものであった。
他の参加者たちは突如として路面を踏みしめる脚部にかかる摩擦係数の低下に動揺し、次々とバランスを崩すのだ。
「それなら、そこだよね!」
玲は機動闘士『大熊猫壱号』と共にワックスでコーティングされた路面を滑走するようにスライディングでバランスを崩したキャバリアたちを吹き飛ばしながら突き進むのだ。
見事な走行と妨害を兼ねる一手に声援が飛ぶ。
なんか約一名、団扇に玲の名前を描いたものを振っている者がいる。まあ、言うまでもなく『ツェーン』である。玲ガチ勢となっている気がしないでもないが、彼女にとってそれほどまでに玲の存在は大きなものとなったのだろう。
「黄色い声援っていうのは嫌いじゃないけれどさ……」
なんともむず痒い。
そんな思いを抱きながら、キャバリアの操縦を玲はこなしていく。操縦事態には無理がない。
むしろ、上手な部類であろう。
「うーんキャバリアの運転ってやっぱり性に合わないなあ。けど、しっかり整備された良い……良い……機……」
機体って今言おうとした?
黒歴史の塊である機動闘士『大熊猫壱号』。
それを整備した『ツェーン』の黄色い声援が玲の心をなんとも言えない絶妙で微妙な気持ちにさせてくれる。
ああも懐かれては言わざるを得ない。
「整備凄い! 偉い!!」
外部スピーカーをオンにして玲は『ツェーン』の声援に応えるのだ。
ああ、なんとも言い難い感情。自分の設計図から起こされた機体を自分で駆り、操縦する。
ある意味、サブカルマニアの夢の一つである。
けれど、深夜のテンションでやった結実がこれというのまた数奇なる運命。玲は深夜テンションの恐ろしさに戦慄しながら黄色い声援を背に逃げるようにしてキャバリアレースのコースを疾駆するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ
銭湯…?
ロボットヘッド用設備の規格が合いませんでしたので…
なにはともあれ折角の『グリプ5』の祝祭
盛り上がりに貢献したい所です
…手を抜くという意味では御座いませんが
集中砲火を避ける為に市街地の地上を駆けていましたが
レースも中盤、仕掛け時ですね
そろそろペイント弾が心許ないですが…
丁度良く妨害が
追撃に対し大地踏みしめ跳躍
推力移動方向と機体重心制御、格闘運動性活かした宙返りで背後へ
格上に挑む勇気は賞賛に値しますが…
狼狽えた迎撃の射線を銃口から見切って躱し肉薄
キックで銃を空中へ叩き落し、サブアームでキャッチ
少々接近しすぎましたね
振り返らずサブアーム銃器でペイント
さあ、ゴールは目前ですね
戦乱だけが続く世界、クロムキャバリアにおいて銭湯という文化は奇異なるものであったことだろう。
それが如何様な意味を持つのかを知るのは小国家『グリプ5』に生きる人々である。彼らは建国記念の日というハレの日だけは争乱を忘れて各々日々の疲れを溶かすように湯船に浸かる。
彼らにとってそれがかけがえのないことであるのは言うまでもない。
「ロボットヘッド用設備の規格が合いませんでしたので……残念ではありますが」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はウォーマシンである。鋼鉄の躯体には入浴というものは必要ない。
本来であれば人型、それも人間よりも大きな体躯を持つウォーマシンはクロムキャバリアの世界にあっては奇異なものとして写ったことだろう。
けれど、彼は猟兵である。それゆえに誰からも見咎められることはなかったのだが、人々の憩いの場に厳しい鋼鉄騎士が存在するのは、少しばかり気が憚られるものであったのだ。
そんな彼はここぞとキャバリアレースに身を投じるのだ。
『ロシナンテⅣ』、そのキャバリアを駆る鋼鉄騎士は『グリプ5』の祝祭たるハレの日の催しを盛り上げるためにキャバリアと共に一歩を踏み出すのだ。
「とは言え、手を抜くという意味では御座いませんが」
そう、盛り上げるために己ができることはなんでもする。
けれど、それで相対する者に手心を加えるというのとは意味が違ってくる。キャバリアレースの序盤は参加者同士の妨害戦だ。
ここで脱落する者も多いのだろう。それに有力な競技者を他の参加者が囲んで早めに脱落させようとするのは、戦略として理にかなっていた。
ゆえに彼は集中砲火を避けるために市街地の地上を駆け抜けていた。
「有力な競技者への集中攻撃……なるほど。これならば、戦闘経験の浅いもの、技量にて劣る者でも、逆転の目がある……よく考えられていますね」
トリテレイアにとって、戦場のゆらぎとはこれとは比べ物にならないものである。だが、それでもトリテレイアは予断無くコースを進む。
レースはもう中盤。
ならばこそ、こここそが仕掛け時である。
「そろそろペイント弾が心許ないですが……丁度良く妨害してくださるのですか」
トリテレイアは『ロシナンテⅣ』の回避行動を取らせ、いまいた場所にペイント弾が炸裂するのを見た。
中盤になれば、妨害戦によって淘汰された者達の屍を踏み込えた猛者たちの巣窟となるだろう。
そこに現れた一般参加者の駆るキャバリアを認め、追撃をかわすように大地を踏みしめて『ロシナンテⅣ』が跳躍する。
「――っ、飛んだ!?」
推力移動方向と機体重心の制御。それは格闘機動をも利用した空中での機体の反転。
言わば、キャバリアで宙返りという離れ業をやってのけたトリテレイアは、己への追撃を敢行しようとしていた一般参加者のキャバリアの背後を取るのだ。
「格上に挑む勇気は賞賛に値しますが……」
「後ろを取られた!」
振り返るキャバリアの重厚が『ロシナンテⅣ』に向けられる。
それよりも一瞬早くトリテレイアは脚部で蹴り上げ、サブアームでライフルを掴むのだ。
「少々接近しすぎましたね」
くるりと反転した『ロシナンテⅣ』のサブアームが背後に迫る機体にペイント弾を打ち込む。
さらに目の前の機体にふるわれるワックス剣の一撃が追撃者たちの行動を不能にするのだ。
流れるような機動。
背後にも目がついているのではと思わせるほどの機動でもってトリテレイアは『ロシナンテⅣ』と共に一般参加者たちを制し、キャバリアレースのゴールへと迫る。
だが、これでレースは終わらない。
其処に待ち受けるのは最後にして最難。
『エース』たちが駆る機動闘士『大熊猫壱号』が座しているのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
松茸…だと?
「ご主人サマ!松茸と言えば世界三大珍味の一つだよ!」
ちげーよ!だか旨さがやべーやつなのは確かだ
訓練も予ていくぞ!
後、エース達が駆る機体について細かく把握しておく
後はフェンフの戦歴や戦い方等己の記憶も照らし合わせて確認
UC即発動
【情報収集・視力・戦闘知識・瞬間思考】
コースの構造と障害を即座に把握して効率的に最短ルートを見いだし
【空中戦・念動力】
飛び越えたり念動障壁展開
ゴムのように手を伸ばして掴んだりして軽やかに突破!
【属性攻撃・迷彩】
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源も隠蔽!
妨害する者達に存在も捕捉はさせない!
まぁ此で済むなら楽だったんですがね…
まぁあのエース達に挑むのも悪くねーか
キャバリアレースにゴールしたものには豪華賞品が与えられる。
この小国家『グリプ5』において、それは松茸料理である。あまりピンと来ていないのは他世界を知る猟兵達であろうし、『グリプ5』の市民たちはその言葉に熱狂的な声を上げる。
その様子に普段から見慣れぬ熱気を感じた猟兵達はたじろいだことだろう。
けれど、猟兵の中にもその価値を知る者はいるのだ。
「松茸……だと?」
知っているのか、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)!
「ご主人サマ! 松茸と言えば世界三大珍味の一つだよ!」
メルクリウスのアバターである鶏が頭上で跳ねる。そう、アレはクロムキャバリア書房第七十八巻から引用することができ……ない。そんなものはない。
「ちげーよ! だが旨さがやべーやつなのは確かだ」
思わずカシムもノリツッコミしてしまうほどであったが、その香りのかぐわしさは言うまでもないことであったのだろう。
そんな豪華賞品たる料理が振る舞われるとあっては、カシムもまた目の色を変える。
「訓練も予ていくぞ!」
カシムが普段よりもやる気に満ちあふれている。
カシムはまずは情報収集とばかりにレースの最難関にして、最後を飾る障害である『エース』たちの情報を集める。
彼らが駆る機体は普段使っているキャバリアではない。
機動闘士『大熊猫壱号』と呼ばれる頑強なるフレームを持ったキャバリアである。姿形がちょっとアレな感じでアレなのだが、その性能は言うまでもなく十分なものである。
皆、一様にそれに搭乗しているのは『エース』と一般参加者との間に横たわる技量の差を埋めるためのものであった。
けれど、ハンデとなるわけではないのは言うまでもない。
殆どの参加者たちは、『エース』たる彼らの駆る機体をやり過ごしてゴールに飛び込むことを目的としている。
「誰も打倒を考えてないってわけか……」
カシムは情報を収集しつつ、コースの構造を把握する。それは市街地をレースコースとして設定し、建物を障害物としたキャバリアレースの概要を掴み取るには容易なものであった。
最短ルートを見つけ出すなど造作もない。
「ソウルピース「豊臣秀吉」…その力の一端…使わせてもらいますよ?」
カシムの瞳が『メルクリウス』の機体のコクピットの中で輝く。
そのユーベルコードは、神・魔軍転生『豊臣秀吉』(ゴウダツマグンテンセイトヨトミヒデヨシ)。
機体を光学迷彩で覆い、存在を隠して水の障壁で熱源をも隠蔽した『メルクリウス』はバウンドモードへと移行し、軽やかに障害物を踏破していくのだ。
何か跳ねる音はしても、存在すら捉えることを許さない『メルクリウス』は次々と障害や、序盤の参加者同士による妨害戦すら気に留めた様子もなく、簡単に飛び越えていくのだ。
「まあ、これで済むなら楽だったんですがね……」
そう、こんなに簡単にゴールを目指せるのならば、豪華賞品の価値などない。
カシムは『メルクリウス』のセンサーに捉える機動闘士『大熊猫壱号』の勇姿を見やる。
若干冗談みたいな造形をしているが、その内側から感じる重圧は本物である。
あれが『エース』と呼ばれるパイロットたち。
オブリビオンマシンによって思想を狂わされていない、正真正銘の実力者達。その技量を真っ向から受け止めるのか、それとも躱すのか。
二つに一つしかない。
ならば、カシムはどうするか。
「言うまでもない。『エース』たちに挑むのも悪くねーか――」
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『機動闘士『大熊猫壱号』』
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POW : Vの字斬り
【フォースセイバー】が命中した対象を切断する。
SPD : アシッド・ハリケーン
【頭部排気口より強い酸性の嵐】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : (例のBGMに似たような曲)
【勝手に流れ出す何処かで聞いた曲に似た曲】を披露した指定の全対象に【色んな意味でデンジャラスな】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:コンドル中村
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
結局、キャバリアレースを駆け抜け、最後の難関である『エース』たちのもとにたどり着いたのは、猟兵達が駆るキャバリアばかりであった。
『エース』であるパイロット。
彼らは目の前に迫るキャバリアを駆るのが猟兵だとわかっているようだった。
「ハッ! やっぱりな。そうだろうと思ったぜ」
『アイン』が不敵に笑う。
そこにあるのは催事であるとか、そういったことを感じさせない重圧。『エースの中のエース』とまで言われた彼女にとって、機体は選ばない。どんな機体でも、どんなコンディションでも最良を導き出す技量で持って猟兵たちを苦しめるであろう。
「姉さん、これは祝祭の催し。もう少し肩の力を抜いてください」
『アイン』の様子にため息をつくのは『ツヴァイ』であった。
彼女は堅牢にして堅実。
実直にして王道。そんなキャバリアパイロットである。教本通りであると言われたのは最早過去のことである。
今は経験を積み、王道から一歩を踏み出す技量を得た正道なる実力者。その堅牢な守りを抜き去ることは難しいであろう。
「……俺、場違いな気がするんだよな……どう見たって、みんな俺より格上じゃないか」
そうつぶやいたのは『クリノ・クロア』であった。
彼は確かに新進気鋭たる『エース』である。この場の誰よりも経験が浅い。けれど、天性の才能。閃きを実行し、それを実現するだけの力とセンスがある。
言わば、最も意外性のある『エース』であろう。その閃きが猟兵達を追い詰めることがあるかもしれない。
「そんなことはないよ。『クロア』。キミだって『エース』だ。自信を持っていこう。あの人達が相手であってもね。僕らはやれることをやる。そして、今日という日をみんなで迎えた意味を市民のみんなに考えてもらわなければならない」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の存在が、恐らく猟兵たちにとっては最も重圧を感じるものであったことだろう。
今や『グリプ5』の『エース』であると言って過言ではない嘗ての少年。
その技量の高まり、その急成長ぶりは言うまでもない。恐らく、彼を相手取ることが最も難しい。そう判断せざるを得ないほどのプレッシャーを猟兵達は感じただろう。
彼らは迫る猟兵たちを一人ひとり阻もうとするだろう。
如何にして戦うか。如何にして躱すか。
それを選ぶのは、猟兵たちの自由だ。どちらにせよ、ゴールを目指すには『エース』たちとの対峙は避けられない――。
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『クロア!一手やりあうとしよう!!』
クリノ・クロアの駆る機体に向かって突撃するぜ!
相手の攻撃を【戦闘知識】で見極め、【見切り】で避けながらシラヌイでの【武器受け】で防ぐぜ!!
【フェイント】を織り交ぜながら近接戦を仕掛ける!!
【鎧砕き】と【鎧無視攻撃】の【二回攻撃】での連撃を叩き込み、隙を見つけて【クイックドロウ】した電磁機関砲でペイント弾の一斉射をたたきこむぜ!!
キャバリアレースの終盤、最後の関門たる『エース』たちの駆る機動闘士『大熊猫壱号』がガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997) の駆るキャバリア『スターインパルス』の前に立ちふさがる。
それはこのレースの終盤を飾るに相応しいものであり、市民たちの声援はよりいっそう熱を帯びていくようでもあった。
「『クロア』! 一手やりあうとしよう!!」
ガイは外部スピーカーを入れ、機動闘士『大熊猫壱号』を駆る『クリノ・クロア』に呼びかける。
思いがけない指名に『クロア』はたじろいだ様子であった。
「て、え――ッ!?」
彼は一瞬動揺したようであるが瞬時に『スターインパルス』が迫るとワックスの刀身であるフォースセイバーを抜き払って対峙する。
互いに機体の挙動を知り尽くしているわけではない。
特にガイは機動闘士『大熊猫壱号』の性能の全てを知っているわけではなく、初見だ。
けれど、ガイは『クリノ・クロア』の駆るキャバリアの挙動をしっている。
『エース』と呼ばれる存在はいつだって戦いの最中で自身の限界を超えていく。それをよく知るからこそ、敵の攻撃をガイは見極めようと抜刀した片刃剣を抜き払う。
「それなら! 手を抜く必要なんて無いし、そんな余裕なんてない!」
フォースセイバーの一撃と共に『クロア』が踏み込んでくる。
良い太刀筋であるとガイは思ったことだろう。ふるわれる力に迷いがない。ためらいがないということは、それだけ剣速が速いということだ。
その一撃を片刃剣で受け止める。
ワックスの刀身がひしゃげるが、何度も武器で受け止めていては互いの武装をうしなってしまう。
だからこそ、ガイはフェイントを織り交ぜながらの攻防を続けるのだ。
接近戦こそが己の領分であることをよく理解しているのだろう。
「仕掛ける!」
「攻撃がいなされる……ッ、いや、誘い込まれているっていうのか! 俺が!」
打ち込むワックス刀身のフォースセイバーの一撃を『スターインパルス』が躱す。
攻撃を誘い込まれている事に気がついた『クロア』が距離を取ろうとして、ガイはその一瞬を隙と捉えたのだ。
「――ッ! 違う! ここは距離を離したら……ッ!」
やられる。
そう直感したのだろう。今まで近接格闘戦に注視させられていたことで『クリノ・クロア』は気がついたのだ。
何故執拗にここまでガイは片刃剣で攻撃を仕掛けてくるのか。
一気に勝負を決めようとするのならば、即座に武装を展開すればいいし、誘い込むような攻撃をしなくてもよかったはずなのだ。
「ああ、そのとおりだぜ。だが一手遅い!」
ガイの振るう片刃剣の二連撃が『クロア』の駆る機動闘士『大熊猫壱号』にふるわれる。それをV字の剣閃でもって打ち払った『クロア』の技量は確かに凄まじいものであったことだろう。
けれど、その行動すらも誘い込まれていたことに『クロア』は漸くにして気がついたのだ。
「決め手は――それか」
「ああ、これは戦いじゃあないからな。ペイント弾でも当たればヒットになる。装甲の厚さだとか関係なく」
だからこそ、放たれる電磁機関砲の一撃を『クロア』は躱すことができない。
必中の距離から放たれたペイント弾が『クロア』の駆る機動闘士『大熊猫壱号』の機体をペイント塗れにしてしまう。
「参りました。やっぱり強いなぁ……」
「いいや、俺に電磁機関砲を使わせたんだ。これが戦場だったらどうなっていたかわからないぜ。ともあれ、楽しかったぜ、『クロア』」
キャバリアレースが終わったら、また飯でも食おう、そう言い残しガイはゴールへと一足先に飛び込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
回点号を引き続き操縦。
先の加速の勢いのまま、瞬間思考力で捉えた機体へワックス刀を振るう!
その声、ツヴァイ殿ですね!?朱鷺透小枝子と申します!
先ほどはありがとうございます!!
銭湯で助けて頂いた事への感謝を。無論手を抜くつもりはありません!
BXサイキックシールドのオーラ防御で返しの攻撃を防ぎ、後方へ推力移動。ペイント弾の制圧射撃で牽制。流石エース!隙がない。
ユーベルコードは使いません。自分のこれは壊す為の物。
使えません。そして、負けるつもりもありません!!
隙を作る為に、競う為に、この平和を楽しむように、闘争心を燃やす。
シールドバッシュの間に合わない瞬間を見切り、ブースターで回点号吹き飛ばし、瞬間加速!…やはり対応されますか!
ワックス刀の攻撃をペイント銃を犠牲にして、超近距離格闘へ移行。
美味しい食事の為に闘う。なんと分かりやすい事か。故に自分も、
自分も、平和の味を知ってみたい!!
ウィングキャノンを操作し砲身で武器受け、腕を取って組み付き、低出力ブラストナックルのマヒ攻撃で抑え込みます!
ウィングブースターの加速のままにキャバリアレースの最後の難関へと飛び込んできたのは朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)が駆るキャバリア『回点号』であった。
その翼の如きブースターの出力は凄まじいものであった。
加速を得た機体は容易には止まらない。止まらないのであれば、その勢いを利用するのが小枝子という猟兵の戦い方であった。
如何に危険な戦い方であるのかを承知の上。
されど、こうしなければ乗り越えられぬモノが存在しているのがオブリビオンである。
だからこそ、小枝子は己の身を顧みず戦う。
戦え、と魂の奥底から湧き上がる衝動のままに戦うのだ。その結果が、末路が如何なるものになるのだとしても、彼女は止まらない。
「それが貴方の生き方だというのですね。真っ直ぐに、ひたむきに、脇目も振らず突き進む。それが――ッ!」
『ツヴァイ』が機動闘士『大熊猫壱号』と共に駆け出す。
この催しは言わばお遊びだ。訓練でも戦いでもない。戦場ですら無い。
けれど、彼女は小枝子の駆るキャバリアの機動を見やり、その奥底に流れるものを感じ取ったのだろう。
「その声、『ツヴァイ』殿ですね?! 朱鷺透・小枝子と申します! 先程はありがとうございます!!」
「そのような余裕があるとは!」
小枝子は銭湯でのぼせ、湯に沈みそうに成っているところを助けてくれたのが『ツヴァイ』であった。
彼女がいなければきっと自分は未だ銭湯の底に沈んだままであったことだろう。
「確かに御恩はあります。情もあります。ここが戦場ではないという自覚もあります。ですが! 無論、手を抜くつもりもありません!」
『回点号』と『大熊猫壱号』が切り結ぶ。
ふるわれたフォースセイバーのワックス刀身がサイキックシールドに防御される。それどころか、ウィングブースターによる加速を止められた。
これが『エース』。
「敵の機動力を削ぐ。まずは!」
迫る『ツヴァイ』の気迫はすさまじいものであった。小枝子は『回点号』を後方へと飛び退かせる。
この自分が後退を選ぶほどの技量。
されど、その後退を許すほど『ツヴァイ』の攻勢は優しいものではなかった。
「流石『エース』! 隙がない」
ばら撒かれるペイント弾の斉射を『ツヴァイ』の機体が躱す。ギリギリのところで躱し、さらに旋回するように此方へと迫ってきているのがモニターのアラートでわかる。
無駄のない動き。回避と突撃を同時に行う機動は、小枝子に選択を迫る。
そう、ユーベルコードの使用である。
ユーベルコードを使用しなければ、勝てぬとまで判断させるほどの技量。けれど、小枝子の瞳はユーベルコードに輝かない。
人工魔眼にすら火が灯ることはなかった。
「私では足りぬと! そういうつもりですか!」
「いいえ、使いません。自分のこれは壊す為の物――」
そう、小枝子はこれまで壊して、壊して、壊して、壊してきた。
己の目の前に立つものを。障害を、オブリビオンを。全て壊してきた。けれど、小枝子は知っている。
ここは戦場に似ているけれど、戦場ではない。
競い合い、最後には笑うための場所だ。
なればこそ。
「使えません。そして、負けるつもりもありません!!」
彼女は決めたのだ。己の内なる衝動を乗り越えようと。超克せしめようと。それは彼女にとって凄まじい決断であったことだろう。
そう、彼女は心より楽しんでいた。
この戦いを、競い合う為に。この平和を楽しむように。そのために燃える闘争心は、迫る『大熊猫壱号』のフォースセイバーの一撃を躱す。
「遅い! その速度はもう見切りました!」
放たれるシールドによる打撃の一撃。機体を揺らされる。こちらのパイロットの脳を揺らすつもりなのだ。
間に合わない。
だが、それでもやるのだ。ウィングブースターが点火し、一瞬で機体を後退させる。ブースターが焼ききれる。
自身の機体を吹き飛ばすような瞬間加速。されど、それさえも理解されているようにワックス刀身のフォースセイバーが投げ放たれる。
「……やはり対応されますか!」
「後退時の姿勢制御がまだ!」
だが、その一撃を小枝子は手にしたペイント弾が装填された銃を犠牲にして防ぐ。
そう、後退して勝利はない。
勝つためにはいつだって前進しなければならない。いつだってそうだ。前に、前に、前にと踏み出すからこそ彼女は勝ち得てきたのだ。
「あなたらしくない!」
その言葉に『小枝子』は瞳を見開く。そう、後退するなど自分らしくない。ウィングブースターの加速を殺すアンダーフレームの脚部が市街地の路面に突き刺さり、機体を止める。
前に進まなければならない。
一気に前進する。機体がきしむ。けれど、構わなかった。
「この戦いを制して食事をしましょう、朱鷺透・小枝子さん。勝利者が得る食事を。勝ち取った物は、とても美味しいのですよ」
『ツヴァイ』の言葉に応えるように小枝子は機体を踏み込む。
互いにあるのは拳のみ。
先に拳を叩き込んだ機体が勝利を収めるだろう。
「美味しい食事のために闘う。なんとわかりやすい事か。ゆえに自分も」
そう、単純なことなのだ。
難しいことではない。勝利を得るために一歩を踏み出すことが必要であるのと同じ様に。
小枝子もまた願ったのだ。知りたいと。
「自分も、平和の味を知ってみたい!!」
放たれる『大熊猫壱号』の拳が迫るのを見た。間に合わない。回避など。
されど、防御は間に合う。ウィングキャノンの砲身を交錯させ、『大熊猫壱号』の拳の一撃を受け止める。
砲身がひしゃげる中、『回点号』のアイセンサーが煌めく。
それは勝利を確信した輝きであった。
小枝子は『大熊猫壱号』の腕部を取って組付き、低出力のブラストナックルの一撃を頭部に叩き込む。
それは確かに勝利の一撃。
小枝子は、今勝利を知った。
その勝利が何を意味するのか。平和とは如何なるものか。競うとはどのようなものであるのかを。
そして、知るだろう。
平和とは、いつだって笑顔と共にあるものだと――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『アイン・ラーズグリーズ』、一手お付き合いしてもらうわ!
『迦利』の速度制限を解除。摩利支天九字護身法を機体にかけて、あたしは一旦下がるわ。多分ペイントスプレーが吐かれるんだろうけど、あたしは被りたくないし。
レーザーで攻撃が出来ないなら、実質『迦利』による吶喊にかけるしかないのよね。
ペイントスプレーをジグザグ鬼道で避けながら、『大熊猫壱号』の上半身に特攻。通常のキャバリアは、直立する分重心が高い。それで体勢を崩してる間にゴールさせてもらうわ。
『迦利』のゴールインを、あたしはアインの機体の側で見届ける。
アイン、おつかれさま。いい勝負だったわよ。
『エース』が四人もいれば、この国は安泰ね。
次々と猟兵たちが駆るキャバリアが最後の難関である機動闘士『大熊猫壱号』を打倒し、ゴールへと飛び込んでいく。
その様子を見ていたのは、四人の『エース』の一人『アイン』であった。
彼女は本来喧嘩っ早くこうした催しに飛び込むタイプの人間であったけれど、今は違う。
猟兵達はいつだって『エース』たちと対峙し、時には共に戦ってきた。
ならばこそ、彼女は待ち構えているのだ。
「私に向かってくる気概があるやつだけを相手にする」
他の三人も己に勝るとも劣らない存在である。
だからこそ、心が踊るのだ。こんなにも世界は広い。『エースの中のエース』とまで呼ばれた自分であっても、まだまだ道の半ばであることを彼女はもう知っている。
「『アイン・ラーズグリーズ』、一手お付き合いしてもらうわ!」
その言葉に『アイン』は笑った。
漸く自分の出番であると機動闘士『大熊猫壱号』と共に市街地へと飛び出す。
踏み込む速度は、機体の特性ではない。
彼女の純粋なる技量の賜物であろう。彼女は如何なる『エース』の中にあっても先駆けを往くものである。
その速度を前に村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は『迦利』の速度を制限していては、到底かなわぬことを理解した。
「おうよ、行くぜ!」
迫る『大熊猫壱号』の威容は、その冗談じみた外観からは想像もできぬ程の重圧を放ち、ゆかりの肌を焼く。
「オンマリシエイソワカ。摩利支天よ、この身に験力降ろし給え」
摩利支天九字護身法(マリシテンクジゴシンホウ)によって施されたオーラ防御の力が、『迦利』の中で膨れ上がっていく。
ゆかりは鉄鉢に乗っていたが、身を引く。
どうせ、『大熊猫壱号』から放たれるペイントスプレーの一撃を受けてしまえば、せっかくの銭湯に使った意味がなくなってしまうからだ。
「レーザーで牽制できないってのが……!」
速度の制限を取っ払った『迦利』であっても『アイン』の駆る『大熊猫壱号』を振り切ることができない。
単純なスペック差は埋められるはずがないのに、それでも技量だけで『アイン』は『迦利』の速度に対応してきているのだ。
「武装を制限してやがるのか……この私を前にして、三味線弾いてる時間なんか与えねぇぞ!」
『大熊猫壱号』の頭部排気口から噴出するペイントスプレーの一撃。
それは速度で上回る『迦利』さえも捉えんとする広域に渡る攻撃手段。これが実際の戦場であったのならば、装甲に阻まれて意味を成さなかったであろう。
けれど、これはキャバリアレースでありペイント弾の着弾だけで脱落するシビアな戦いである。
だからこそ、ゆかりは『迦利』を大きく機動させるしかなかった。
あの広域に渡るペイントスプレーの一撃は、こちらの速度に対応してくる『アイン』の技量と相性が良すぎるのだ。
「無駄な動きがなさすぎる……! これが『エースの中のエース』、本来の力!」
オブリビオンマシンにとらわれていた頃の『アイン』ではない。
皮肉なことに、本来の力の一端をゆかりは見せられているのだ。攻撃手段は絞られ、速度でも肉薄する。
けれど、ゆかりは笑う。
「でも、通常のキャバリアは、直立する分重心が高い。なら――吶喊よね!」
『迦利』が空中に翻る。
その逆三角形の機体の衝角の如き先端にオーラが噴出するように分厚い層を生み出出していく。
こちらを追いすがる『アイン』であれば、必ずペイントスプレーの一撃を放つだろう。
けれど、それは直上には向けられない。
人型であること、重心が高いということ。機体のバランサーが横転を防ぐために首を直上に傾けることができないのだ。
「チッ! そういうことかよ! 散々にこっちに打たせておいて……!」
『アイン』が呻く。
打ち込めぬペイントスプレーの死角を縫うようにして『迦利』が『大熊猫壱号』の胴へと特攻し、その機体を押し倒すようにして吹き飛ばすのだ。
体勢を崩した『大熊猫壱号』が立ち上がる間に『迦利』は一瞬の隙をついてゴールする。
「ええ、そのとおり。『アイン』おつかれさま。いい勝負だったわよ」
「勝ったやつがいうと、カチンと来るぜ。だがまあ、そのとおりだよ。次があるのなら、覚えてやがれよ」
そう言って笑う『アイン』の声が聞こえる。
負けた事にこだわるつもりはないのだろう。そんなカラッとした気持ちの良い答えにゆかりもまた微笑む。
四人の『エース』。
その光が齎す『グリプ5』の未来はきっと明るいだろう。
「この国は安泰ね」
そう願わずにはいられない。きっとこれからもクロムキャバリアには戦乱が渦巻くだろう。その中を突き進むために必要な灯火が此処に在ることをゆかりは喜ぶのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
【心境】
「う~ん。…当たったのは君かフュンフくん。」
君とは以前戦ったけど、なんか不思議な縁だね。
【行動】
さて、相手はエース。ならこっちも愛機レスヴァントを『操縦』だよ。
んじゃ、楽しもうか…このお祭りを…ね、フュンフくん!!
以前交戦した時の動きを参考にした『戦闘知識』から攻撃を『見切り』回避しつつ、ペイント弾を装填しているアストライアの『威嚇射撃』
ちぃ。以前とは動きが断然上がってる。これが彼の本当の実力って奴かな。
でも…まだ甘い!!
レスヴァントの右腕から有線式端末装置を射出して『ハッキング』
大熊猫壱号の機能を一時的停止させるよ。
ふう、やっぱエースなだけあるね。
絡め手を取らないと勝ちは拾えないね。
戦場にあって機体を乗り換えることは儘あることなのだろう。
このキャバリアレースにおいて被弾箇所のないキャバリアであるのならば、それも認められるということでユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は『シビリアンジョー』から『レスヴァント』へと機体を乗り換えていた。
相手が『エース』であること。
自称であれど撃墜女王を名乗る以上、こちらも手を抜くことはできない。
「機体を変えましたか。ですが、僕もこの最後の関門を任された身。そう容易く抜かせはしませんよ」
そう外部スピーカーから音声が聞こえてくる。
それは『フュンフ・ラーズグリーズ』の声であった。『エース』と呼ばれるキャバリアパイロット。
ユーリーにとっては、クロムキャバリアの小国家『グリプ5』を巡る戦いにおいては数奇な運命に寄って繋がりある相手である。
「う~ん……あたったのは君か、『フュンフ』くん」
オブリビオンマシンに乗っていた彼と戦ったことはある。
不思議な縁であると言われれば、確かにそのとおりである。これまでオブリビオンマシンが絡んだ事件には、彼の姿や彼にまつわる人物たちの存在があった。
「ええ、やはり此処までたどり着かれると僕は信じていましたから。ここにいれば必ず貴方がくるって」
「待ち伏せってやつ? まあ、いいや。んじゃ、楽しもうか……このお祭りを……ね、『フュンフ』くん!」
ユーリーはこれが数奇な縁で紡がれているのだとしても構わなかった。
どれだけの困難があろうと己とキャバリアがあれば切り開けると信じていたし、目の前の『エース』、『フュンフ・ラーズグリーズ』もまた同じであると思っていたからだ。
以前戦った時の動きをユーリーは覚えていた。
『セラフィム・リッパー』を駆る彼の動きは、原石のようなものであった。けれど、幾多の戦いを経て磨かれ、『エース』としての相応しい輝きを携えている。
あの時にように、と思うのは最早通じない。
ならばこそ、ユーリーはアサルトライフルから放たれるペイント弾で威嚇射撃をもって機動闘士『大熊猫壱号』との距離を保つのだ。
あの機体の機動性と頑強なフレームを考えれば、こちらの突撃に対応してくる。
たとえ、スペック差があろうとも、それを覆してくるだろう。
「そういう誘いには!」
乗らないというように威嚇射撃であることを見抜かれ、『レスヴァント』に肉薄される。
「ちぃ。以前とは動きが断然上がってる。これが彼の本当の実力ってやつかな」
ふるわれるフォースセイバーのワックス刀身の一撃。
袈裟懸けにふるわれ、返す刃でもってVの字を描く剣閃の軌跡は隙のない斬撃であったことだろう。
けれど、ユーリーは未だ余裕を持っていた。
確かにフォースセイバーの一撃は凄まじいものであった。ここが戦場であったのならば、ユーリーは敗北を喫していただろう。
いや、戦場であったのならばこそ、ユーリーは死地にこそ活路を見出すのだ。
「でも……まだ甘い!!」
『レスヴァント』の右腕から放たれるのはクラッキング・アンカーである。
有線式端末装置が射出され、機動闘士『大熊猫壱号』の装甲に打ち付けられる。それはペイント弾ではないからこそ、被弾には値しない。
けれど、その有線式端末装置からユーリーは『大熊猫壱号』の機体をハッキングし、その機能を一時的にシャットダウンさせるのだ。
「機体の制御を奪う……!? いや、違う、これは……シャットダウンさせたのか!」
『エース』であるからこそ通じる搦手。
一時停止させられた『大熊猫壱号』の機体を前にユーリーは冷や汗が浮かぶ額を拭う。
間違いなく、あのまま『ハッキング』という手段を用いていなければやられていたのは自分であったことだろう。
「ふぅ、やっぱ『エース』なだけあるね。絡め手を取らないと勝ちは拾えないね」
ユーリーは『フュンフ・ラーズグリーズ』の底知れない技量を感じながら、勝ちは勝ちだと朗らかに笑ってゴールへと飛び込む。
彼の成長は目覚ましいものがある。
それがこの国のためになるのならば喜ばしいことだ。ユーリーは、それでも勝利をもぎ取ったことを喜びながら芳しい香りを放つ豪華賞品を夢想するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
先の戦いで電脳禁忌剣が形作った『熾星』で無いのが幸いですが…油断はしませんとも
お相手頂けますか、アイン様
貴女を乗り越え、ゴールへと進ませて頂きます
スプレーを盾で防ぎ剣で切り結び
ペイント弾で牽制
一旦距離を置き
成程、やはりお強い…ならば!
背部コンテナから出した煙幕手榴弾で目潰し
その隙に
ロシナンテⅣから降り機体の腕で己を●投擲
敵の頭上を越え
Ⅳも遠隔操縦で切り込ませ己庇わせ
ははは
一度戦った折、私がキャバリアに拘らぬ事はご存知でしょう
貴女はお強い
故にこうした小賢しい真似をする手合いや陥穽にご注意を
似非騎士と呼んで頂いて結構
勝敗と勝利条件は違うのです!
(脱兎の如く疾走
…失格!?
(Ⅳ名義で登録していた模様)
『アイン』と呼ばれる『エース』の実力はこれまでの事件で垣間見、そして実際に戦うことで知ることができている。
『エースの中のエース』、『フュンフ・エイルの再来』とまで言わしめられる『アイン』の実力は機体を選ぶことがない。
先の戦いで電脳禁忌剣によって組み上げられた『熾星』が乗機ではないことが幸いであるが、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は自身が少しの油断もできないことを知っている。
機体を選ばずに力を十全に発揮できるということは、如何なる状況であっても勝利をもぎ取ることができるということだ。
それほどの技量。
トリテレイアは彼女たちが嘗ての『憂国学徒兵』のクローンであることを知っている。国家の成り立ち、その黎明にあって彼女の元となった人物の技量もまた凄まじいことを示していた。
だからこそ、トリテレイアは彼女の前に立つのだ。
「お相手いただけますか、『アイン』様」
「おうよ。来る相手は拒まない。それが私のやり方だからな」
不敵な声が聞こえる。ただ、そこに居るというだけで存在感が重圧と成って襲ってくる。これが『エース』という存在の力であるのならばこそ、トリテレイアは。
「貴女を乗り越え、ゴールへと進ませて頂きます」
『ロシナンテⅣ』が大盾を構えながら突進する。
その行動を読み切っていたように機動闘士『大熊猫壱号』の頭部の排気口から放たれるスプレーペイントの一撃が襲う。
大盾が一瞬でペイントに塗れ、使い物にならなく為る。
「連続でそれは使えぬはず!」
「ペイントで詰まっちまうからな! だからって、近接ができねぇわけでもねぇ!」
迫る『大熊猫壱号』。
その手に握られたフォースセイバーの一撃が『ロシナンテⅣ』を襲う。ペイント弾の装填されたライフルから放たれる牽制が機体を近づけさせぬとするが、旋回するでもなく後退するでもなく、『アイン』は機体を真正面に進ませる。
こちらの射撃が牽制であることを知っているかのように、弾丸の間隙を塗って突き進んでくるのだ。
「なるほど、やはりお強い……ならば!」
背部コンテナから取り出した煙幕手榴弾が地面に投げつけられ、煙幕を立ち込めさせトリテレイアは『大熊猫壱号』から距離を取ろうとする。
「しゃらくせぇんだよ! そういうのは!」
『アイン』は煙幕に構うことなくフォースセイバーの刀身で視界を覆う煙を斬り裂きながら突撃して来る。
どれだけ視界を防がれようとも、それすらも意に介さない。
小細工など意味がないというように彼女は突き進んでくるのだ。
「煙幕も出しすぎじゃあな! 却って利用されるだけだ!」
迫る『大熊猫壱号』。対する『ロシナンテⅣ』は煙幕の中で身動き一つしていない……いや、違う。何かマニピュレーターに掴んでいる。
それを投げ放つ動き。
『アイン』はとっさに気がついたのだ。並の反射神経ではない。見てから動く。それで間に合うほどの反応速度でもって『ロシナンテⅣ』が投擲しようとしているものを悟ったのだ。
「――馬鹿か!? 何考えて――!?」
そう、『アイン』が見たのは『ロシナンテⅣ』のマニピュレーターに投擲されるトリテレイア自身であった。
「ははは、一度戦った折、私がキャバリアにこだわらぬことはご存知でしょう」
トリテレイアは笑っていた。
笑っていたのだ。己自身を投擲しながら『大熊猫壱号』の頭上を超えて、さらに鋼の双機影(スティールツインシルエット)とでも言うかのように無線で機動する『ロシナンテⅣ』が『大熊猫壱号』へと組み付くのだ。
「貴女はお強い。ゆえにこうした小賢しい真似をする手合や陥穽にご注意を」
「てめぇ! ちょっと待てコラ!」
『アイン』の怒声が聞こえるが、トリテレイアは敢えて笑って言うのだ。
「似非騎士と呼んでいただいて結構。勝敗と勝利条件は違うのです!」
トリテレイアは『アイン』の怒声を背に脱兎のごとく疾走し、ゴールテープを切る。
なるほど。確かに勝利条件が違う。
別に『大熊猫壱号』を打倒する必要性はない。ゴールするための障害を排除するか、それを飛び越えるかだけの違いでしかない。
けれど、トリテレイアはもう少しレギュレーションをちゃんと見るべきだったのだ。
「……失格!?」
え、なんでと思わないでもなかっただろう。
そう、これは『キャバリアレース』である。登録していた機体がゴールテープを切らねばゴールにはならない。
その意味をトリテレイアは知って青ざめる。
背後には『ロシナンテⅣ』を抱えた『大熊猫壱号』の姿があった。
「やってくれたな、騎士野郎……」
見なくてもわかる。滅茶苦茶怒っている。トリテレイアでなくてもわかる。これは非常に不味い。
これが人間ならば青筋が走ることであった。そして、どれだけ謝罪しても、トリテレイアはこの後『アイン』との模擬戦百連発につきあわされるハメになるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
フュンフに挑みます
さて…彼とは初めて戦います
模擬とは言え…本気で挑ませて頂きますよ!
【情報収集・視力・戦闘知識】
彼が論理的に動くタイプというのは知ってます
ならば…
彼の動きとどう攻撃すればどう反応するかを冷徹に分析
UC発動
【弾幕・スナイパー・属性攻撃】
幻属性の超高熱熱線(今回はあくまで見た目だけの光線で当たっても安心)を乱射
但し冷徹にどう動いて避けるかを捕捉
【二回攻撃・空中戦・切断】
鎌剣(但しレーザー部分は威力をなくしてあくまで映像だけ。但し当たり判定はありにする)をもちい避けて移動する立ち位置に先んじて突撃しての連続斬撃
攻撃で相手の回避行動を利用しての突撃からの連続斬撃で打ち破ろうとする
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は『フュンフ・ラーズグリーズ』が他の猟兵たちと戦う姿をつぶさに観察していた。
彼が論理的かつ無駄のない動きをするタイプであるということは知っている。
ならば、彼の動きとどう攻撃すればどう反応するかを冷徹に分析することがカシムにとっての必勝の策であったことだろう。
機体を一時的にシャットダウンさせられた機動闘士『大熊猫壱号』が復旧し、立ち上がる。
彼に挑むつもりであったカシムは界導神機『メルクリウス』と共に最後の難関へと進む。
これまでじっくりと観察してきたこともあるが、それ以上に彼と戦うのはじめてである。
「他の『エース』たちとはオブリビオンマシンに乗っていたとは言え、矛を交えましたが……模擬とは言え……本気で挑ませていただきますよ!」
カシムは『メルクリウス』と共に駆け出す。その瞳がユーベルコードに輝くのは、至極当然の手段であったことだろう。
神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)。
それこそが界導神機『メルクリウス』に備えられた速度に勝る機体による戦術であった。
己の機体の速度を三倍まであげて放つ超高速機動攻撃。
乱射される超好熱熱戦――の幻影。
幻影と判っていても、それは相手取る者によっては目くらましのように作用したことだろう。
「幻影の攻撃……!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』にとって、それは確かに弾幕と呼ぶに相応しい攻撃であったことだろう。
カシムにとっては、敵の動きを補足するためのものであったが、目くらましと看破されることも含めての戦術である。
「幻影とわかれば目くらましにもなりませんか!」
機動闘士『大熊猫壱号』がまっすぐにこちらに向かってくる。見た目だけの光線であるがゆえに、それに怯むこと無く突き進む機体は、わずかな時間であれど動きを止めることができた。
その一手が、ことこの戦いにおいては明暗をわけることだろう。
「幻影だとわかれば恐ろしいと思わないのが人ってものでしょう!」
迫る『大熊猫壱号』の頭部排気口からスプレーペイントが噴射される。速度で勝る相手ならば、面で捉えればいい。
この戦いは、戦場にある戦いではない。
言わば模擬戦。被弾した証であるペイントが機体につけば、それで終わりのお遊びである。
けれど、だからこそカシムはスプレーペイントを躱す。
こちらが観察していたように『フュンフ・ラーズグリーズ』もまたカシムの挙動を観察していたのだろう。
互いに思うことは一つであった。
遠距離での打ち合いでは勝負が付かない。ならばこそ、近接戦闘でと、互いの得物をもって距離を詰める。
奇しくもそれはお互いが予測した機体が踏み込んだ先であった。
先んじて攻撃できると踏んでいたカシムにとって、それはあまりにも驚異であったことだろう。
「此処に踏み込んでくる!」
「させません!」
放たれる斬撃。ふるわれた鎌剣の一撃が躱される。カシムは己の斬撃が躱されることもまた理解していた。
無理な体勢からの一撃。
けれど、それは『フュンフ・ラーズグリーズ』もまた同様である。彼は必ず攻撃を回避する。
ならば、自分はそれを利用するだけだ。
「メルクリウス…お前の力を見せてみろ…!」
加速する機動。それはこちらの一撃目を回避した『大熊猫壱号』の振るうワックス刀身のフォースセイバーの一撃を上回る速度。
神速の名を持つ機構により生み出される尋常ならざる速度。
その速度は斬撃よりも早く、一瞬で『大熊猫壱号』の背後を取るのだ。
「速いッ!」
一瞬の攻防。カシムの放った鎌剣の一撃が『大熊猫壱号』の首元へとふるわれ、頭部を斬撃でもって斬り飛ばす。
瞬きすら禁ずる緊迫した戦い。
それを制したカシムはゴールへと飛び込み、彼の求める松茸料理を堪能することができたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
よーし、シリカ壊してもいいでぎにゃぁぁぁぁぁ?!
いや見て?!あの4人!
エース級が4人ですよ?!5体満足無理ですって!
アッハイコワサナイヨウガンバリマス…
ったくもー
近接高機動が売りのファントムシリカでも
そろそろ威嚇射撃くらい出来ないと
厳しいご時世になってきましたねぇ
しかし私は突撃するのみです!
にぎゃぁぁぁぁぁ?!
しくしく
狙いどころはツヴァイさん
堅牢にして堅実でしょうけど
ならばこそ型破りな私にも勝機があるはず!
もちろん対応してくるでしょうけどね!
ファントムクォーツユニット展開!
ただの目眩しなれどそれで充分
被弾しつつ突撃です!
至近距離まで行ったらー!
手に持ってるワックス刀身ぶん投げ
&実はもう2本ありました!(二刀流
いきますよー!
「手数こそ正義!参ります!」
私と言えばやはり【疾風怒濤】!
この至近距離、頂きました!
勝負です!
猟兵たちと小国家『グリプ5』における『エース』たちとの戦い、キャバリアレースは最高潮の盛り上がりを見せていた。
市街地をレースコースに見立てた最終関門である『エース』たちの駆る機動闘士『大熊猫壱号』との死闘は市民たちの声援を受けて尚盛り上がりを見せている。
しかし、これまで多くの猟兵達と戦ってきた『エース』たちも披露の色を隠せなく成ってきている。
それほどまでの戦いであったのだろう。
一瞬の攻防、駆け引き、真っ向勝負。
彼らは戦いの中にありながら、笑っていた。良い表情をしていたと言ってもいいだろう。
「キャバリアで戦うことが楽しいだなんて……言ってはいけないことなのだろうけれど……」
それでも、頭部を破壊された機動闘士『大熊猫壱号』のコクピットの中で『フュンフ・ラーズグリーズ』は笑っていた。
戦乱渦巻く世界にあってなお、彼は笑っていた。
こんな気持ちを抱くことができる戦いもあるのだと、彼は心から笑っていたのだ。
そんな彼らの前にサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の駆る『ファントムシリカ』が飛び込んでくる。
「よーし、シリカ壊してもいいでぎにゃぁぁぁぁぁ?!」
間髪入れず開幕ばりぃである。何がどうしたというのだろうかと思わないでもないが、シリカからすればいきなり壊していいかなど了承できるわけがない。
開口一番にそれというのもまたサージェの心遣いが足りていないせいではないかと思わないでもない。
「いや見て?! あの四人! 『エース』級が四人ですよ?! 五体満足無理ですって!」
サージェは必死に説得する。
如何に模擬戦とは言え、フレームもきしむし、当たりどころが悪ければ装甲だって砕けるだろう。
相手が有象無象であるのならば、如何様にもできただろう。
けれど、目の前の存在は『エース』。『フュンフ・ラーズグリーズ』の駆る『大熊猫壱号』は頭部が破損したため、背後に下がっているが、それでまだ『エース』の駆る『大熊猫壱号』が三機存在しているのだ。
無理無理とサージェが目でシリカに訴えるが、にゅっと伸びた爪を見てサージェはアッハイコワサナイヨウニガンバリマス、と何故か片言で了承するしかなかったのだ。
「ったくもー近接高機動が売りの『ファントムシリカ』でも、そろそろ威嚇射撃くらいできないと厳しいご時世になってきましたねぇ……しかし、私は突撃するのみです!」
フルスロットルで飛び出すサージェの背中にシリカの爪がばりぃっとされる。
凄まじい痛みが背中に走る。
珠の褐色肌が勿体ないと思わないでもなかったが、こうでもしなければサージェは止まらないし、仕方ない。
「しくしく……でも、狙いどころは……!」
「私と言うわけですか。サージェさん」
機体越しでも『ツヴァイ』の眼力が伝わるようであった。なんとなし、『ツヴァイ』と『シリカ』の持つ雰囲気はにていたようにサージェは感じただろう。
断じて怒られるからではない。たぶん、きっと、めいびー。
「堅牢にして堅実でしょうけど、ならばこそ型破りな私にも勝機があるはずなのです!」
ファントムクォーツユニットが展開される。
それは『ファントムシリカ』固有の装備である。幻影を生み出し、己の機体と同じ幻影がそれぞれ異なった動きを見せる。
ただの幻影装置ではない。ランダムに動き、法則性を見いださせないのが『ファントムクォーツユニット』の真骨頂である。
だが、それさえも『ツヴァイ』は対応してくるだろう。
「幻影……ランダムに生成される撹乱……ならば、狙いは突撃!」
牽制のペイント弾がばら撒かれ、サージェは『ファントムシリカ』に被弾するのを厭わずに突っ込む。
対応されることはわかっていた。
堅牢にして堅実である『ツヴァイ』の戦い方であれば尚の事である。だからこそ、虚を突くのだ。
手にしたワックス刀身の剣を投擲する。
放たれたワックス刀身と言えど、投擲されれば『ツヴァイ』は捨て置くことはしないだろう。必ず弾く。
「小賢しい真似を!」
狙い通り『ツヴァイ』はワックス刀身を手にしたフォースセイバーのVの字斬りで弾き飛ばす。
そこにこそサージェは勝機を見出すのだ。
「そうしますよね! ですが、私は型破りなクノイチ! 実はもう二本ありました!」
ぶん投げたワックス刀身の投擲を切り払えば、必ず隙が生まれる。
高速機動こそが『ファントムシリカ』の真骨頂であり、疾風怒濤(クリティカルアサシン)の如き連撃が『大熊猫壱号』を追い詰めるのだ。
「私と言えばやはり、これ! この至近距離、頂きました!」
『ファントムシリカ』のカメラアイがユーベルコードに輝く。ただの一撃ならば躱されるか弾かれるだろう。
けれど、怒涛の連撃ならばどうだろうか。
最初はさばけていても、積み重なる連撃は防ぎきれるものではない。
これが戦場ではないからこそできる戦術。
放たれ続けるワックス刀身の斬撃の超高速連続攻撃。それは機体の熱でワックス刀身が歪むほどの恐るべき連撃であった。
「くっ……さばけ、ない……!」
風のように駆け抜けた『ファントムシリカ』の背後にはワックス刀身により十字傷を刻まれた『大熊猫壱号』が立っていた。
それは見事な十字傷。
サージェは見事に『ツヴァイ』を下し、ゴールを決める。
けれど、忘れてはならない。疾風怒濤の連続攻撃は機体フレームに多大なる負荷を与えるということを。
そして、それが何を意味するのか。
「にぎゃぁぁぁぁぁぁ――!?」
その悲鳴が全ての答えである――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
やっぱりキャバリアでの戦闘は性に合わない…
まあ此処まで来たんだしデータ収集がてら頑張ろうか
あと此処まで来たんだし、松茸料理食べたいし
とはいえ、キャバリアでの戦闘経験値は相手の方が多いから…悪いけど躱させて貰うよ
狙うはゴールのみ、食欲は全てに勝る!
●
悪いけど、餅は餅屋
キャバリア乗りとキャバリアでマトモにやり合おうとは思わないよ
【高速演算】起動
視界に入った大熊猫壱号に『なぎ払い』気味に衝撃波を飛ばし『吹き飛ばし』て牽制
更に同時に足元にワックスも飛ばして足場を悪くさせて貰おう
エース相手にはさっきの様にはいかないだろうけど…それでも時間は稼げる
ペイント弾は『武器受け』で切り払い、一気にゴールを目指すよ
猟兵に貸し出された機動闘士『大熊猫壱号』がキャバリアレースのコースである『グリプ5』の市街地を駆け抜ける。
そのコクピットの中で月夜・玲(頂の探究者・f01605)はぼやいていた。
確かに機体は良い機体である。
良い整備を受けているせいもあってか、彼女のレスポンスに応えてくる。
けれど、やはり。
「やっぱりキャバリアでの戦闘は性に合わない……」
玲はやはり深夜テンションで行った過去の己の所業に後悔する。
此処まで来たからにはデータ収集もしたいし、松茸料理も食べたい。欲張りではあるが、玲とは元来そういう猟兵である。
だれが彼女を咎めることができるであろうか。
すでに猟兵達との戦いによって機動闘士『大熊猫壱号』を駆る『エース』は『クリノ・クロア』だけになっていた。
『フュンフ・ラーズグリーズ』の機体は頭部を損失し、『アイン』はご立腹して模擬戦闘訓練場に言ってしまった。『ツヴァイ』は機体にかかった負荷で動けなくなっている。
そんなわけで最後に残ってたいのは『クリノ・クロア』だけであったのだ。これはこれで数奇な運命であろう。
「……最後は俺だけかよ。みんな退場しちゃうしさぁ! だけど、やらないといけないんなら!」
経験の浅い『エース』とキャバリア戦闘の経験値などない玲。ある意味良い勝負ができそうなマッチングであったことだろう。
「……あっちはやる気満々か。けど、悪いけど……」
狙うはゴールのみである。
玲にとって如何に経験が浅い『エース』と言えど、絶対的なキャバリア戦闘の経験値が足りていないのだ。
真っ向から立ち向かうなど愚の骨頂である。
ならばこそ、狙うはゴールのみ。
「食欲は全てに勝る!」
その瞳が大人気なくユーベルコードに輝く。
模造神器が機動し、高速演算(コウソクエンザン)による機体のサポートを行わせるのだ。
そう、餅は餅屋なのである。
キャバリア乗りにキャバリアでマトモにやりあおうなどと玲は毛の先ほども思っていなかった。
ユーベルコードを使うことにためらいなんてない。
「食欲!? え、やっぱりみんなそんなに松茸食べたいんだ!?」
『クロア』にとってそれは異国の文化である。
みんながそこまで躍起になる食材を未だ知らないのだ。そこに玲の『大熊猫壱号』が放ったワックス刀身の斬撃波の一撃が飛ぶ。
しかし、その一撃は躱される。経験が浅いと言えど、やはり『エース』と呼ばれる存在である。
「躱すよね、だけど、着地した所はちゃーんと見ておかないとね?」
そう、これが通常のフォースセイバーならば問題のない行動であったのだろう。けれど、今、彼女たちが手にしているフォースセイバーは、それを模したワックス刀身である。
斬撃波として飛ばされたのは、溶けたワックス。
レースの最中に玲は見せたワックスによる路面の摩擦係数を減らすという行動は、此処においても発揮されるのだ。
「足場……!? なっ! すべっ……!?」
着地した『大熊猫壱号』の脚部が溶けたワックスに取られて派手に体勢を崩す。けれど、それでもなお機体を制御せしめるのは『エース』の技量そのものであろう。
他の一般参加者とは一線を画するのは、こういうところなのだ。
「体勢を整えてくる……流石だけど、それでも時間はかせげるよね!」
「行かせない……!」
放たれる頭部排気口より噴出するスプレーペイントを玲は盾で受け止め、そのままの勢いで『クロア』の駆る『大熊猫壱号』へとシールドバッシュの一撃を加える。
そして、激突した勢いのまま玲はシールドをサーフィンのように乗り、ワックスで摩擦を失った路面を一気に駆け抜け、声援を受けながらゴールを決めるのであった。
こうして長くも短い『グリプ5』における建国記念の日は終わりを告げる。
明日からはまた戦乱の日々が続くだろう。
けれど、人々は平穏なる日を知った。これがいつまでも続くのが平和であると。たとえ、今日という日が仮初であったのだとしても、それでも彼らの心に残るものがあったのならば、いつの日にか実現されるものであろう。
芳しい香りと共に、平和を知る者たちはきっと明日を夢見る。
その篝火の如き希望を護る『エース』たち共に――。
大成功
🔵🔵🔵