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灼滅トライエンブレム -右-

#ダークセイヴァー #第五の貴族

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#ダークセイヴァー
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#第五の貴族


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●薔薇の化身モンストル
「貴方達に価値を与えましょう」
 地底都市はカターニア邸、その敷地たる右方庭園。
 薔薇と鳥籠で彩られた庭に一人立つ少女の姿、彼女の名はモンストル。
 人間ではない、けれどヴァンパイアでもない。その本性は薔薇、その姿は果たして誰の似姿か。
「失敗作でも素材としては高級です」
『ア……アァ……アアァ……』
 そこに立つのは一人、けれどそこに居るのは大勢――倒れ悶える少女達。
 不運にもヴァンパイアによって実験台とされ、余計なモノ――神の部品を埋め込まれた人間。魂を蝕まれ知性を失った生ける屍。
 それがいいのだと、だからこそ役に立つのだと薔薇は言った。異端の神々は高級素材、ただの人間だった頃よりも何倍も価値があると。
 ゆえに彼女達は生贄にされるのだ。
「無駄に死ぬばかりのこの世界で、しっかり成果を残せるのです。幸運ですね?」
 では後ほど――そう言い残して薔薇の化身は去っていった。

 ここは庭園にして製造所。紋章を生み出す祭壇である。

●三つの祭壇を破壊せよ
 『紋章』、それは猟兵達の前に度々現れてきた謎のオブリビオンだ。
 寄生した相手を超強化するそれは、『第五の貴族』と呼ばれる者達が地底都市から地上へ与えていたことが分かっている。
 猟兵達はいくつもの地底都市を探索し、時には第五の貴族とも戦ってきた。結果として多くの紋章を回収することが出来たが、大元については分からずじまいだった。
「だけど、とうとうその場所が分かったよ!」
 それも今まではの話である。

 グリモア猟兵のイデア・ファンタジア(空想の描き手・f04404)によれば、とある地底都市の一角に建つ屋敷、そこが紋章製造の一大拠点であることを予知できたようだ。
「紋章の製造所……祭壇って言うんだけどね、そこにはなんと三つもあるらしいの」
 三つ。三つである。今一実感し辛いかもしれないが、これは大変なことだ。
 今までの経緯からも分かる通り、祭壇は第五の貴族ならば誰でも所持している訳では無い。彼らの中でも限られた一部の者だけの特権だ。
 一つで十分に特別。それが複数ともなれば――当然、その分だけ戦力も多い。
「屋敷の主に、それと特別な配下が二体。合わせて三体も紋章持ちがいるわ……正面突破は不可能ね」
 紋章という弱点以外はほとんど傷つけられない相手が三体。もしも合流されてしまえば万に一つも勝ち目は無い。
 だからこそ、各個撃破の策を練る必要がある。

●庭園へ
「敷地はシンメトリーになってるわ。屋敷の左右にある二つの庭園、良く分からないけど薔薇と鳥籠が特徴みたい? とにかくこの庭園が祭壇にもなってるようね。管理してる紋章持ちが近くにいるはずよ」
 手順はこうだ。まず二手に別れて、敷地をとり囲む森を抜けることで庭園に潜入する。そして今まさに行われている紋章製造を妨害し、庭園――祭壇を破壊。騒ぎを聞きつけた配下を素早く撃破し屋敷の中へ。そのような流れとなる。
「この森だけど、地底都市だからなのか中は真っ暗なの。罠とかは無いみたいだけど気を付けてね」
「それと、生贄にされた人達の救出は無理。オブリビオン化しちゃってるからね」
 ただ、誰も助けられないかと言うとそうでもないようだ。
 この紋章、製造には大量の生贄が必要らしい。今回は彼らが言う所の高級素材が多く捧げられており、その分普通の素材、つまり人間の奴隷が残されている可能性が高い。
 もし見つけたらどうするかは任せるわ――そう言ってイデアは猟兵達を送り出した。


渡来あん
 初めまして、あるいはお久しぶりです、渡来あんです。
 こちらは3部作の内の1本となります。
 もう片方と時系列はほぼ同時ですが、特に制限はありません。

●第1章
 真っ暗な森の中を進んでもらいます。
 転ばないよう、迷わないようお気を付けて。

●第2章
 紋章になりかけているオブリビオンとの戦いです。
 なりかけのため触手が生えていますが見た目だけです。

●第3章
 第五の貴族(の配下)との戦いです。
 断章でも描写しますが、紋章は『右手の甲』です。
 そこ以外はほぼ無敵なのでご注意を。

●その後
 左右共に成功完結した場合、そのまま屋敷に突入する続編を運営します。
 演出上のものであり、繰り返しますが制限を課すものではありません。

 それでは、ご参加をお待ちしています。
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第1章 冒険 『迷い森の夜鳴き』

POW   :    灯りをともして進む。

SPD   :    暗闇をみとおし進む。

WIZ   :    耳をすまして進む。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

朱酉・逢真
心情)暗い昏い真っ暗森かァ。いいね、歩きやすい。この宿(身)は昼に弱く、夜に強い。光より夜闇をよゥく見通すさ。とはいえ、長く歩くだけで息が切れるほど脆弱だ。おシゴトで来てンだからぶらぶら散歩とも行くまいて。
行動)眷属どもよ、俺を助(*すけ)とくれ。〈獣〉よ、おいで。野生の獣がいれば退けて、ひとりは俺を運んでおくれ。〈虫〉どもよ、森に散れ。人間の奴隷を使うならば光がいるだろう。明るいほうへ飛び、道を伝えて。〈鳥〉、フクロウらは上へ。森の上から大まかな道を見て教えておくれ。静かにおやり、俺の仔ら。夜の静寂を破るにゃ早いさ。



 暗い昏ァい森の中。元より陽のない地の底で、一際真っ暗森の中。
 辺りは静寂、生者の気配はシンと無く。葉擦れの音だけざわざわ響く。
 虫は逃げた、獣は隠れた。だって彼らは知っている。
 触れてはいけない。越えてはいけない。立ち去れ、忘れろ、今すぐに。
 ――朱色の羽根には、決して近づいてはならない。

 神がいた。名を、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)。
 病毒に戯ぶ朱き凶星。増えた命を減らすもの。立ち去れ立ち去れこの地の衆生よ、帳尻合わせはまた今度。
 宿の体は夜に強く、一寸どころか一里を見通す。長く歩けぬ身だけれど、それは神威を曇らせぬ。
 神とは傅かれるものであるからして。

「眷属どもよ、俺を助とくれ」
 死、死、死。不吉な災禍の塊に尋常の命は近寄れない。
 だからここに居るのは彼の眷属だけ。疫病を媒介する使い魔だけ。
「〈獣〉よ、おいで。野生の獣がいれば退けて、ひとりは俺を運んでおくれ」
 黒犬が身を伏せ、鼠達は辺りを駆ける。神への拝謁など万に一つも許しはしない。
「〈虫〉どもよ、森に散れ。人間の奴隷を使うならば光がいるだろう。明るいほうへ飛び、道を伝えて」
 拡散する小さき者ども。どれだけか細い光でも、彼らにとっては陽も同然。
「〈鳥〉、フクロウらは上へ。森の上から大まかな道を見て教えておくれ」
 森より明るい空で翼は舞う。木々の切れ目を見逃さず開けた場所をくまなく探す。
 それもこれも全ては主のために。

 さあ行こう、やれ行こう。疫神様のお通りだ。細道などとは申しませぬ、一切我らにお任せを。
 にわかに張り切る眷属達に、けれど神は指を立て、しぃと潜めてこう言った。
「静かにおやり、俺の仔ら。夜のしじまを破るにゃまだ早いさ」
 さあ、おシゴトへ向かうとしよう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ(サポート)
「ハーイ! ワタシがサポートに来た、バルタンデース!」
支援しマース! アドリブ連携歓迎デース!

普段の口調:片言口調で(ワタシ、アナタ、デス、マス、デスネ、デショーカ? デース!)
得意な技能:【奉仕・料理・掃除・裁縫・救助活動】と【一斉発射・焼却・武器受け・残像・カウンター・受け流し】デスネ!

荒事であれば武装を使用してクリアしマース!
移動中や探し物など、その他冒険なら適切な技能でくぐり抜けマース!
単独で進んでもOK、他の猟兵の方の補佐に回ってもOKデスヨー!

公開しているアイテムはどれを使っても大丈夫デース!
バルタンズのお小遣いも支払いマスので、心置きなくどうぞデース!
よろしくお願いしマース!



「ハーイ! ワタシがサポートに来た、バルタンデース!」
 元気な挨拶が森に吸い込まれる。返事はない。ムム、とバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は首を傾げた。
「一人デスカー……でもノープロブレム!」
 清潔なメイド服に身を包むバルタンは一見ただの――ただの?――メイドに見えるが、その実は歴戦の兵士だ。その身に秘めた武装の数々、戦闘も行軍も十八番。
「ワタシの火炎放射器が火を吹きマース! ヴァンパイアは灼滅デース!」
 シュッシュッとシャドーボクシングを繰り出すバルタン。もしもこの場に他の者がいれば、その者は大いに困惑したことだろう。
 まあ、それこそが彼女の術中なのだが。

「そ、れ、に……見えない所でも手を抜かないのが一流のメイドデース!」
 そして、彼女は何も伊達や酔狂でメイド服を着ているわけではない。いや、趣味の結果ではあるのだが。
 趣味だからこそその技能は高い。何なら戦闘より得意な感さえある。
「お掃除の時間デース!」
 改造サングラスをかけたバルタンは特製の掃除機を取り出す。暗闇を見通す視界には、森の大地の大部分を占める落ち葉が映っていた。
 自身に搭載された数々の機能を活用すれば、バルタン一人が目的地に辿り着くことは容易い。ならばそれで十分か?
 答えはノーだ。
 依頼の完遂のためには全力を尽くす、それがバトルサイボーグメイドのポリシー。
 だからバルタンは後続のため、道なき森に道を作る。

 強力な吸引力の割には静かな――メイドが主を不快にさせるなどあり得ない――携行掃除機を転がしながらバルタンが征く。その後に残るのは、塵一つない綺麗な小道。迷わず真っ直ぐ森の先の屋敷へと続いていく。
 その圧倒的なメイド力を、今は月さえ知る由もない――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディアナ・ロドクルーン
SPD
【狼天狗】
へぇ…碌でもない紋章が作っているところが判明したの
なれば、為すべき事は一つ…よね?

何か、ね。庭園から嫌な空気を感じる
その時は正気でいられるか
怒りに囚われないか
視野が狭くならないか―― 

そんな不安があれどきっと大丈夫
些末な事と一蹴してくれる友が一緒だから


移動中は敵に見つかりにくくするように黒のマントを纏い、フードも被る

足元に注意し、周囲に害ある者がいないか【聞き耳】で気配を探りながら
【暗視】で森の中をなるべく早く移動しましょう

一緒に同行する彼にそっと話しかける

ああ、この先にどんな敵が出てくるかしら
手応えのある奴らだったら楽しめそう
貴方もそう思うでしょ?ミコトさん


ミコト・イザナギ
SPD
【狼天狗】
ええ、禄でもない
寄生させて半永久的な不死ですか
美しくないですね
命はふらりと消える灯だからこそ良いというのに

ともあれ、喧嘩に貴賎はありません
誰だとて平等に始末して差し上げましょう

――激情に手綱を握らせるのは、まだです
ディアナさん、理性を持って討ち取りに行きましょう
まだその時ではないと肩を叩きます

移動は迷彩柄の外套を準備しそれを纏って
【暗視】も使って物陰から物陰へ警戒しながら移動する
有効か不明だが、念の為五感を共有できる【導きの鳥・八咫鴉】を先行させ
共有した五感を頼りに斥候を行う

――ええ、思いますとも
いつぞやを思い出せるくらい暴れましょうや
手応えも、斃し甲斐もありそうなら尚僥倖です



「へぇ……碌でもない紋章が作られているところが判明したの」
 何でもないように声を上げたディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)だったが、その内は強い感情に揺れていた。
 紋章。猟兵達の前に立ちふさがる謎のオブリビオン。その正体が数多の命の成れの果てというのは少なからず衝撃的だった。
 しかし同時に、それを潰すチャンスがやって来たというのなら。
「なれば、為すべきことは一つ……よね?」

「ええ、全くその通りです。本当に碌でもない」
 ミコト・イザナギ(語り音の天狗・f23042)も不快であると同調する。
 過去が受肉した存在、オブリビオン。今を生きていないがゆえに成長はなく、寿命もない。
 半永久的な不死――世界を滅ぼす云々の前に、その在り方が気に入らない。
「美しくないですね。命はふらりと消える灯だからこそ良いというのに」
 ともあれ、オブリビオンとて殺せば死ぬ。哀れな犠牲者も惨劇の首謀者も平等に始末するとしよう。

 黙々と歩いてどれだけ経っただろうか。不意に、ディアナがぽつりと零す。
「何か、ね。庭園から嫌な空気を感じるの」
 予感があった。この先で凄惨な光景を目にすることになるだろうと。
 その時、果たして自分は正気でいられるだろうか。怒りに囚われ視野が狭くなってしまわないだろうか――そんな不安、あるいは憤りを吐露するディアナ。
 暗闇と静寂が心の闇を増幅する。二人で歩いていたはずのディアナは今、彼女の世界に一人きりだった。
 俯き徐々に語気を強めていくディアナ――その肩を叩かれて、彼女は我に返る。
「――あ」
「――ディアナさん、激情に手綱を握らせるのは、まだです」
 しぃ、と唇に指をあててミコトは諭す。
「気持ちは分かります。ヴァンパイアの非道の数々、許せませんよね。ですが」
 これは喧嘩なのです、と仮面の青年はそう続けた。
「喧嘩なのですから相手が気に入らないのは当然です。怒りに身を任せる、良いではないですか。……ただ、それは最後に取っておきましょう? 今は理性で動く時です」
 オレがついていますよ。そう笑いかける友の顔は、半分以上仮面に隠れていたけれど。優しい目をしていると狼は確信するのだった。

 人は闇を恐れる。それは暗闇と静寂が人を孤独にするから。だから、心の繋がった二人に最早恐れるものは何もない。
「ああ、この先にはどんな敵が出てくるかしら?」
 そっと囁くように相方へと話しかけるディアナ、その足取りは軽く、迷いもない。
 亡霊が嘆きを、怨霊が怒りを、亡者が叫びを食らわせるのは一体どんな相手だろうか。紋章を持つ二体の配下へと、そしてその主へと思いを馳せる。
「手応えのある奴らだったらいいわね」
 紋章持ちはいずれも強敵だが、その中でも更に強いと嬉しい。宴はより盛大に、より賑やかな方がずっと楽しいのだから。
「貴方もそう思うでしょ? ミコトさん」
「――ええ、思いますとも」
 戻ってきた八咫烏の視界から道を割り出していたミコトも相方へと向き直り頷いた。
「いつぞやを思い出せるくらい暴れましょうや」
 脳裏をよぎるのはかつての死合、偽の街で切った張ったの大騒ぎ。
 確かあの時は屍山を築いたか、ならば今度は血河でも作ろうか。応報と呼ぶのもおこがましいが、それ位してもばちは当たるまい。
 悪鬼灼滅。
 ああ、考えるだけで昂ぶってくる。さっきは友へと理性を説いたが、我ながら説得力がないと苦笑する。
「手応えも、斃し甲斐もありそうなら尚僥倖です」
 結局のところ、似た者同士の二人なのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『失敗作の少女達』

POW   :    ひとのからだとさようなら
自身が戦闘で瀕死になると【埋め込まれた外なる神の部品】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    かみさまのちから
【埋め込まれた外なる神の部位】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    ひとのきもち
【人間部分の肉をちぎって投げたもの】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に呪いをばらまき】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:まつもとけーた

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●祭壇:右方庭園
 森を抜けた猟兵達がそれを知覚した時、顔をしかめずにいるのは難しかっただろう。
 目に入ったのは、庭園の至る所にこびり付いた血。肉片。臓物。ぶちまけられたかつて命だった物。だが何よりも悍ましいのはその匂いだ。
 吐き気を催すほどの死臭――ではない。むしろ逆だ、良い香りがしているのだ。
 咲き誇る薔薇の香りが、むせ返るような濃密な芳香が悪臭を押し隠している。
 まるでこの光景が素晴らしいものであると言わんばかりに。

 そしてここには薔薇の他にも存在する物がある。それは、多数の鳥籠。
 グリモア猟兵から話を聞いた時、猟兵達は庭園の芸術的な装飾品を想像しただろうか。だが一目見れば、実態は全く違うと分かる。
 これは牢だ。
 大小様々な鳥籠の中には、人間が何人も閉じ込められているではないか!
 生存者だ! 可能性は示唆されていたが、まさかこれほど近くだったとは!

 逡巡の時間はない。伏していたオブリビオンが一体また一体と起き上がり、猟兵達へと襲いかかってきた!
朱酉・逢真
心情)カゴの中のァ加工前、生きた人間ってェことでいいンかね? そンなら助けンと。減らされると困るでなァ…大事なのンはバランスさ。
行動)おいで俺の娘。ああ、俺を動かす必要はない。今回はな…。それよかご覧、素敵なとこだろう。無数に咲いたバラは影だらけ。お前さんとは相性最高さ。大きく影で手を作り、〈過去(*オブリビオン)〉を握りつぶしてしまいな。その間に俺は鳥かごの中身を開放しよう。俺の毒は多種多様。金属の腐食くらいワケないことさ。あとは馬にでも乗せて逃がすさ。吊るされてンなら、でかい鳥にでも乗せて下ろせばいい。ただし俺に触らすなよ、この宿(からだ)は病毒のカタマリだ。腐って溶ろけて死んじまうでな。


徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
 サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
 嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!



「あれァ加工前、生きた人間かい。そンなら助けンと」
 鳥籠に囚われた人間達は猟兵達の登場にもほとんど声を上げなかったが、微かに動いている。その様子を額に手を当てて確認した朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は呟いた。
「減らされると困るでなァ……大事なのンはバランスさ」
 生存者の処遇は現場の猟兵に任されている。そちらを優先して祭壇を破壊し損ねる方が後々の被害が大きいからだが、はいそうですかと見捨てるものか。
 ヴァンパイアの跋扈する闇の世界。過保護なくらいがちょうどいい。
「おいで、俺の娘――ご覧、素敵なとこだろう」
 逢真の呼びかけに応えて現れた『娘』――真夜中の女神に庭園を紹介する。奇しくも今は夜、頭上には月――地底なので擬似的な何か――が輝き、咲き誇る薔薇は沢山の影を落としている。
「お前さんとは相性最高さ。過去<オブリビオン>を握りつぶしてしまいな。……さァて、俺はカゴを開けようかね」

 逢真がまず鳥籠の中に注目したのに対して、徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は外に注意を向けた。
 ふらふらと立ち上がってくるオブリビオン。服装こそ違うがサムライエンパイアでもよく見る普通の人間、それに余計な腕が付いた異形の姿。これを創り出した者が邪悪であることは疑いようもない。
「この家光、悪は決して許せぬ!」
 名刀『大天狗正宗』をスラリと抜き放ち構える。その後ろ姿を、彼の背後に浮かぶ大鏡が家光の愛する妻達へと世界を越えて送り届けていた。愛は世界を超えるのだ。
 それに将軍としての責務もある。最近では猟書家なる者達が暗躍しているが、オブリビオン・フォーミュラは家光の世界では既に撃破されており、長きに渡る戦乱は泰平の兆しを見せ始めている。
 けれどこの世界は違う。それなら、やることは一つだ。
「将軍なんだから、戦わなきゃね」

 巨大な影の手が生ける屍をまとめて握り潰す。隙間から命がぼたぼたと零れ落ちるが、次の瞬間、その手は何者かに切り裂かれた。
 影を切り裂いて現れたのは宙に浮く異形の腕。宿主が滅びてなお異端の神は災いを撒き続ける。
「腐っても神ですか……ですが! 愛する者の声が、我が力となる!」
 それを見た家光、声援を受けて覚悟を決めた彼に応えて大天狗正宗が力を帯びる。その力は神殺し、今ひとたび柳生新陰流が一太刀を受けてみよ。
「やああああっ!!」
 裂帛の気合と共に地を踏みしめ飛び上がる。刀を大上段に振り下ろせば摩訶不思議、異形の腕は全て真っ二つ!
 見事なり――けれど残心はとても大事、眼下の地面には先ほど零れた血だまりが。その禍々しい赤黒さ、恐らくは大量の呪いが込められているに違いない。
 呪詛には多少なりとも耐性があるが好き好んで受けたいはずもない。覚悟するしかない――そう思った矢先に家光の体はふわりと受け止められる。
「おっと、ありがとうございます」
 受け止めた影の手、それを操る女神へ家光はぺこりと頭を下げるのだった。

 さて奴隷の解放だ。
 触れた錠を腐食させて扉を開けていた逢真は一息ついた家光に声をかける。
「ちょいといいかい。大体は素直に言うこと聞くンだが、心がやられてンのかねェ、何人か反応しない奴がいる。馬はある、無理矢理ンでも乗せとくれ」
「あ、はい。それは構いませんが……?」
 何か自分で出来ない理由があるのだろうか。そう言外に疑問を呈す相手に逢真は笑いかける。
「俺には無理だ。煙管より重いモンはろくに持てねェし……この宿は病毒のカタマリだ。腐って溶ろけて死んじまうでな」
 助けるのは手がかかるのさ。そう言ってふかした煙が薔薇の香りに紛れてゆく――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蒼月・暦(サポート)
 デッドマンの闇医者×グールドライバー、女の子です。

 普段の口調は「無邪気(私、アナタ、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 嘘をつく時は「分かりやすい(ワタシ、アナタ、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

無邪気で明るい性格をしていて、一般人や他猟兵に対しても友好的。
可愛い動物とか、珍しい植物が好き。
戦闘では、改造ナノブレード(医療ノコギリ)を使う事が多い。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 月明かりに照らされて、少女と少女が対峙する。
 片方はオブリビオン、失敗作の少女。そしてもう片方、金髪碧眼の少女は蒼月・暦(デッドマンの闇医者・f27221)だ。身の丈ほどもある改造ナノブレードを構え、相手と一触即発の空気を醸し出していた。
「……元は可愛いのに、こんな姿に改造しちゃうなんて。ぜんぜん可愛くないよ!」
 むう、と口を尖らせる暦。庭園自体も元々の造形は良いのに、地面の血だまりといい鳥籠の中身といい、屋敷の主のセンスはどうかしていると言わざるを得ない。
 いや、ヴァンパイアに期待する方が間違っているか。そもそも奴らは悪だった。

『ア……アア……』
 可愛くない相手であるところの失敗作の少女、改造によってその肩から生えた異形の腕が不意にぐいんと伸びる。
 いや、伸びたように見えた。残像を発生させるほどの鋭い突き。手数を重視した高速攻撃だ!
「その動き、私には良く見えるよ!」
 しかし改造されているのは何も相手だけじゃない。暦の改造された眼球と視神経は視力も、動体視力も、夜目だって抜群だ。
 見切った! 次々と繰り出される爪を紙一重で回避し続ける暦。そして敵の腕が伸びきったその瞬間を狙い、改造ナノブレードを振り下ろす!

 手ごたえあり。次の瞬間には異形の右腕が落ちて――人間の右腕も外れて落ちた。
「えっ、あれ!? 間違った!?」
 まさか医療ミスか、慌てる暦を他所に人の右腕だったものが溶けて、相手の足元に黒い水溜りを作る。
 それは専門外な暦でもはっきりと分かるほどの呪い。迂闊に踏み込むのは危険だ。
 けど大丈夫、暦には切り札がある。
「この改造された肉体に、恐れ戦くが良いよ」
 背中にジェットエンジンを装着、飛行モードだ! 暦はそのまま空を駆け――急降下から一閃、残りの左腕も切り落としたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディアナ・ロドクルーン
【天狗狼】
何ともまた素敵な光景
臭いを誤魔化そうにも逆に際立たせているよう、不快だわ
(眉を顰めて周囲を見遣り

いい様に奴らに殺され使われ苦しめられるのもお終い
哀れだと思えども手を抜くわけにはいかない
徹底的に殺す、それがせめてもの追悼
手早く片して祭壇を壊しに行かなくちゃ

敵を片付けないと鳥籠の人たちを出せないわね

薔薇の園には薔薇の花
彼女らに捧げる花として
――刻みなさい、亡者を

鳥籠付近にも注意を払い、近づいてくる敵にはマヒ攻撃を交えた一撃を
敵の攻撃は第六感で回避と、敵を盾にして凌ぐ

動くオブリビオンがいなくなったら籠に入っている人達を出し
外に行くように伝える

生きたいのなら外に行きなさい、此処に居ては邪魔よ


ミコト・イザナギ
SPD重視

【天狗狼】
顔を顰める事なく
普段と変わらない飄々とした振舞いで庭園に入っていく
何分、これより酷い光景ばかり見れるし作れるので何とも
それにそもそも人間がどうなろうと知った事ではありません
気に入った個人以外は正直どうでも良いのです

――正直な話、別のルートでは人狼が実験台だったと聞く
そちらでなくてよかったと、同行者のディアナを見て心底思う

生存者は気にせず、眼前の障害物に注力
可能であれば起き上がる前かの存在から
【貫通攻撃】で攻撃を仕掛ける
獅子奮迅のディアナに注目されるのは自然なので
意識が彼女へ向いているものへは【暗殺】で攻撃
そうして自身ではUCで攻撃を図る

慈悲です
鬼火に灼かれて逝きなさい



 どれだけ濃密に香ろうと、その中に紛れた錆臭さはなくならない。鋭敏な感覚でそれを嗅ぎ取ったディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)は眉をしかめ、足早に庭園へと入り込んだ。
「何ともまた素敵な光景……不快だわ。誤魔化そうにも逆に際立たせているよう」
 皮肉の直後に本心が出るのは内なる激情の表れだ。諭されたから今は抑えているが、それは貯め込んでいるだけ。必ず後で叩きつけてやると決意する。

 一方でミコト・イザナギ(語り音の天狗・f23042)の足取りは普段と変わらず、相方の後ろで飄々としていた。
 この程度の光景はミコトにとっては見慣れたものだ。それも温い方。何なら作ることも出来る。そもそも気に入った個人以外がどうなろうと知ったことではない。
 ただ。
 今の自分を見られなくて良かった、反対側でなくて良かったとは強く思う。
 反対側の犠牲者、人狼の少女達。それ自体には何も思わない。ディアナとの共通点は多いが、だから何だという話だ。
 けれどディアナ、今も囚われの人々を解放しようとする彼女。彼女に自分の無関心さを知られたら。
 彼女が似たような境遇の犠牲者に己を重ね、それにさえも冷淡なミコトを知ればどう思うか。それは気がかりだった。

 いいように使われ殺され苦しめられる、そんなお話はもうお終いにしよう。
 哀れな犠牲者達は速やかに、徹底的に殺す。それがせめてもの追悼だ。
 さあ、舞台の幕を上げよう。
「薔薇の園には薔薇の花。彼女らに捧げる花として――刻みなさい、亡者を。その身を赫く染め上げろ」
 ハロ・ライラ、夜の夢が花開く。ガラスの薔薇の花弁が舞い踊り、失敗作の少女達を取り囲む。庭園の先輩方に嫉妬するように、赤を寄こせと切り刻む。
 ぶんぶん振るわれる異形の腕。ダンスの相手を抱きしめようなんて無粋なお方、ガラスの令嬢達はするりと逃げた。
 舞踏会の中心はもちろんプリンセス。紫の寵姫、その名はディアナ。一曲踊っていただけますか、群がる有象無象を受け流す。

 さてさて、注目を集めるディアナの身の安全を確保するのがミコトの役目。敵の意識の隙間を縫って、絶影、目にも止まらぬ技はまるで瞬間移動。
 そして背後から手刀で点穴をグサリ。刹那、敵が燃え上がる。
「慈悲です、鬼火に灼かれて逝きなさい」
 青白い炎は彼岸への送り火。肉は灰に、魂は冥府に。迷える死体を灼き滅す。
 ところが燃え残る物があった。人間の肉体が滅びてなお宙に浮かぶ異形の腕、異端の神の一部分だ。果たしてこれに慈悲は必要だろうか――まあいい、平等と決めてある。
「畢竟、全ての命は逃れる術なく、やがて死へと辿り付く」
 あらゆるものはいずれ滅びる、神も例外ではない。一撃、二撃、両の腕を叩き折ってやれば相手は為すすべなく燃え尽きた。
 未だ伏したままの寝坊助を燃やし、しつこく姫に詰め寄る慮外者を燃やす。彼女はお前達には勿体ない。
「……ああ、そろそろ終わりですね」
 見れば敵も残りわずか。宴もたけなわでございますが、ここらで一度お開きを。なあに第二幕はもうすぐです――。

 幕間。
 庭園という名の祭壇をミコトが破壊している間、ディアナは鳥籠をこじ開けて囚われた人々を解放していった。
「生きたいのなら外に行きなさい、此処に居ては邪魔よ」
 素っ気ない物言い、けれどその裏には優しさが隠されている。そうでなければそもそも助けたりはしないのだから。
 また生存者の何名かは、戦いの中でディアナが彼らへの被害を気にしていたことに気付いている。
 まだやることがあるから、今は手を貸せないからこその態度。
 それを感じ取った人々は口々にお礼を言うと、森の方へと離れていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『死薔薇のモンストル』

POW   :    食事にしましょう
自身の装備武器に【触れたものの体力を吸う茨】を搭載し、破壊力を増加する。
SPD   :    なんでしたっけ、これ
自身の【つけているリボン】を代償に、【巨大な動く薔薇】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【猛毒の花粉、茨の鞭】で戦う。
WIZ   :    刈り取りましょうね
【種子の弾丸】が命中した対象に対し、高威力高命中の【発芽した茨による拘束を行い、更に鎌の斬撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:kae

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アリエル・ポラリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ROSE OF DEATH 『MONSTRE』
「ひどい人達。彼女達の死は無駄になってしまいました」
 猟兵達が祭壇を破壊し、生存者を避難させた少し後。姿を現したモンストルは状況を理解してそう言った。
「けれど慈悲を与えましょう。央の祭壇へ連れて行ってあげます」
 化身の少女、その右手の甲には紋章が。茨の巻き付く大鎌をかざし、定命非定命の区別なく諭す。
「灰は灰に、塵は塵に。塵が形を残せるのなら、それはとても素晴らしいこと」
 その視線は救済の慈悲。人を忘れた人でなしは善意で害を振りまき続ける。
「六番目の猟兵達。貴方達も過去となり、永遠に残り続けましょう?」
朱酉・逢真
心情)アア悪ィが俺に慈悲は無用だよ。与える側なモンでね。《過去》になンざァならずとも、暗がりは永遠に其処に在る。意味理由価値すべて不要さ。
行動)バラが好きなら差し上げよう。ここに飛び立つは一羽の小鳥、どこにでも居るか弱いいのち、お前さんの鎌でたやすく死ぬさ。されど秘めたる恋心、いかなる慈悲より美しく。茨よ伸びろ、狙うは右手の甲。鋭く貫き血を吸い上げて咲け。体の中に根を伸ばし、株を増やして大いに咲き誇るがいい。その隙に俺は、中央の祭壇を病毒で腐食・崩壊させておこう。後から追いついてきたらそれはそれ、この宿(からだ)はあらゆる病毒のカタマリだ。突き立てた武器ごと腐らせてやるさ。目的は祭壇だからな。



「悪ィが俺に慈悲は無用だよ。与える側なモンでね」
 モンストルの言う慈悲――未来なき永遠を病毒の神、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は拒絶する。
「過去になンざァならずとも、暗がりは永遠に其処に在る。意味理由価値全て不要さ」
「いいえ、人は暗がりを恐れ病魔を疎みます。いずれそれらは根絶され、貴方の居場所はなくなる。そうなる前に時を止め、世界を不変とするのです」
 会話が成立していない。所詮はオブリビオン、よほどの事情がなければ行動原理は覆らないか。
「人はそこまで弱くねェよ……ンでナカの祭壇かい、連れてってくれるってか」
「うふふ、動けないよう細かくした後でですが――ね!」
 言うが早いか大鎌を振り抜くモンストル。だが、二人の間に割り込んだ者がいた。

 翼を絶たれて堕ちたそれ。どこにでもいるか弱い命、一羽の小鳥が息絶える。
 されど秘めたる恋心、いかなる慈悲より美しく。
 『どうか幸せに』とは末期の言葉、嗚呼素晴らしきかな、素晴らしきかな。
 ならばその想い、結んでやろう。

 命の残滓から何かが芽吹いた。相手がそれに気づいた時には、既に茨は大きく成長し、鋭い梢を彼女の右手に向けていた。
 グサリと、紋章ごと貫かれる右手。後から後から溢れ出る血は茨を伝い、地へ達する前に全て吸われていく。
 そして紋章の一時的な不活性化に伴い防護を失った化身、その体内を根が伸びていく。それは薔薇を食らう薔薇、咲き誇る緋恋の結末。
「これは、きつい、ですが……本体ががら空きですよ!」
 ふらりと身を傾けるも踏みとどまったモンストルが大鎌を再び振り上げ――その切っ先が逢真の肩口に突き刺さった、次の瞬間。
「あ、が、ああアアアっ!?」
 絶叫――ただしモンストルの。病毒そのものである逢真の体から吸い上げたのだから当然だ。
 紋章の自己修復、再度の活性化まで悲鳴は響き続けた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オトハ・リュウグウ(サポート)
※アドリブ・連携歓迎

オウガブラッドの元アリスです
オウガの影響で、水を生み出して操作する能力と水からお魚を創造する能力が使えます

基本的に困っている人は見過ごせませんし、
オウガのように人を襲うオブリビオンは許せません
出来る限り、悲しい犠牲者や被害が出ない様に頑張りたいです

戦闘では水を操作して作った武器や、創り出したお魚を駆使して戦います
水は単純な武器は勿論、武器以外にも様々な形状が取れるので自由度が高い戦法が取れますよ
敵の攻撃に対しては、直接回避する以外にも水を瞬間的に硬化して障壁にしたり、
流れる水で逸らして受け流す事が多いですね

他の猟兵に迷惑をかける行為や、公序良俗に反する行動はしません



 腐食して使い物にならなくなった刃先をへし折り、若干短くなった大鎌を構え直す薔薇の化身。
 彼女がどんなつもりだろうと、多くの犠牲者が出た事実は変わらない。オトハ・リュウグウ(幻想のアクアリウム・f20387)はそれが悲しいし、許せないと思う。
「せめて、あなたはここで止めてみせます!」
 創り出した水を無数の刃に変えて、オトハは悪に立ち向かう。

 甲高い音がいくつも響く。
 振るわれる大鎌は次々と刃を叩き落とし、潜り抜けて命中したはずの刃も湿った音を立てて弾け飛ぶ。
 右手の紋章が弱点――けれどそれは相手も良く知る所。ただ一人では物量で押そうとも厳しいか。
「それなら! みんな、お願いね!」
 それなら一人でなければいい。魔力で大量生成した水を変化させ、空飛ぶ幻想魚を創り出すオトハ。
 彼らの一体一体が思考能力を持つ。有機的な縦横無尽の襲撃はさしもの紋章持ちでも簡単にはあしらえないはずだ。

「さあ、一気に駆け抜けるよ!」
 別の幻想魚、空泳ぐサメに乗ったオトハが戦場を駆け抜ける。
 敵も覚悟を決めたか、小魚――ピラニアだが――を無視して彼女一人に狙いを絞る。
「水の力、見せてあげます!」
 だが変幻自在の水の底力はこれからだ! 空を飛んでいた小魚達が水に戻り、大粒の滴となって降り注ぐ!
 目晦ましの水がシャワーの様にオブリビオンを濡らしたその瞬間。
「あ――?」
 その瞬間、薔薇の化身はわずかに、しかし決定的に隙を見せた。

 ――自分がまだ人の姿を取る前。誰かにこうやって水を貰っていた気がする。

 混乱の理由を知る猟兵はおらず。数拍遅れで振られた大鎌がオトハに突き立つ寸前、鮫牙が右手を紋章ごと噛み砕いた!
 カランカランと大鎌が地に落ちて鳴り響く。もはやその刃が閃くことはない。

成功 🔵​🔵​🔴​


●彼女のリボン
 紋章が復活しても砕かれた右手は癒えない。最早大鎌を振ることは出来ない。
 ならばとリボンに手を伸ばし――ふと考える。
「……なんでしたっけ、これ」
 何か、この姿――『彼女』にとって意味のある物だった気がするが。
「……まあいいです。ここからはこの子が相手ですよ」
 覚えていないし思い出せない。なら別にいいか。そんな軽い気持ちで無造作にリボンが引きちぎられる。
 地面に投げられたリボンはたちまち姿を変えて、五メートル近い巨大薔薇となってしまった!
ディアナ・ロドクルーン
【天狗狼】

…無駄にしたのは貴方でしょう?

反吐が出るくらいお優しいのね
なれば私たちはその屑にもせずにお前を海に沈めましょう
お前こそ何ら価値のない、形も残らない、塵、屑以下だと教えてあげる


ねえ、ミコトさん。どちらが先に仕留めるか競いましょうか?
ただ倒すだけじゃつまらないでしょ

刻印を発動させて、その効果は彼にも

紋章を宿す右手を狙い攻撃するわ
傷を負うのも厭わずに刃を振るう

競うと言ったけど本当はどうでもいい
ただ奴を倒せれば、それで、いい

ヴァンパイアも、その眷属も、嫌いよ

何度でも、いくらでも、刃を突き立てようか

(己の血か、敵の血か、はたまた彼のか…分からぬほど血に塗れ)
…もう、お終い?口ほどにもないわね


ミコト・イザナギ
【天狗狼】

ええ、無駄になりますよ
アナタは此処で何も残せない侭息絶えるのですから

慈悲など不要です
敵に施しを与えようだなんて
アナタ、余程の阿呆か底知れぬ痴愚ですね

ですが、第六の猟兵とは何の事です

おや、競争ですかディアナさん?
これで詰まらい無意味な実験破壊じゃなくて
愉しいアナタとの逢瀬を過ごせるなんて

(仮面を外し)
それじゃあはじめよ?
命を捨てて競争(あらそ)いをしよう

オレはね
ディアナと一緒に戦えればそれでいいんだからね

戦闘開幕時に【三摩耶形】を使用
妖刀【姫殿下】から精力を取り戻し細身の躰が蘇る
あとは只管、自慢の躰で蹴って殴って引き千切るのみ

嗚呼、なんて快感
命を削って友と競い合う事の何と甘美なんだ!



「……無駄にしたのは貴方でしょう? 反吐が出るくらいお優しいのね」
 溜め込んだ怒りはもはや臨界。ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)の刻印は既に薄っすら輝き始めていた。
「ええ、無駄になりますよ、アナタがね。アナタは此処で何も残せない侭息絶えるのですから」
 全く、敵に施しを与えようだなんて余程の阿呆か底知れぬ痴愚だ。そんな輩の末路など決まっているとミコト・イザナギ(語り音の天狗・f23042)も呆れ返る。
 けれど薔薇はどこ吹く風。
「それこそ無駄ですよ。水面の月は砕けません」
 オブリビオンは因果を断ち切らない限り何度でも蘇る。二人に断ち切ることは出来ないが、だがそれでも。
「……ならお前は。今ここにいるお前だけは、屑にもせずに海に沈めましょう。お前こそ何ら価値のない、形も残らない、塵、屑以下だと教えてあげる」
「次があろうと関係ない、ここでの経験を持ち帰ることなどさせません。……ですが、六番目、第六の猟兵とは何の事です」
「ふふ、それは主様へどうぞ。答えが返るとは限りませんが」
 屋敷の主、『世界の真実を知るもの』カターニア。かの吸血鬼が何を知り何を語るのか――今は神にさえ分からない。

 分かっているのはこれから殺し合いが始まるということ。そしてそれだけで十分だ。
「ねえ、ミコトさん? 競争しましょう、どちらが先に仕留めるか」
「――素晴らしい、ディアナさん。愉しいアナタとの逢瀬を過ごせるなんて」
 輝く刻印と高まる胸の鼓動、それらに押されたディアナからの甘美な提案にミコトは震える。
 競争、競争だ。言葉通りだけじゃない、その裏に隠された真意こそがミコトとディアナを繋ぐ絆。
「それじゃあはじめよ? 命を捨てて競争い<あらそい>をしよう」
 仮面を外し、天狗は狂気の笑みを浮かべた――。

「あはははは! ほら、ほぅら!」
 月下に女の叫びが響く。振るうは刃、狙うは斬る――斬る、切る、きる。相手取る巨大薔薇との体格差など初めから考慮に値しない。
 だって、斬れば死ぬのだから。
 茨の鞭が肌を裂こうと、猛毒の花粉で血を吐こうと止まらない。先の赫さが残る刀身を一閃一閃また一閃。
 恋よりも高鳴る鼓動、舞踏会より足音高く。女は踊って薔薇を刈る。

 ミコト、骨の浮く細身は仮の姿。【姫殿下】から取り戻した精力が滾り、精悍なる羅刹の本性が顕れる。
 仮面を外した今、取り繕う必要はない。只々、蹴って殴って引き千切るのみだ。
 巨大薔薇と対峙するディアナを出し抜きモンストルへと肉薄する。振るう剛腕、無手の相手はただ逃げるだけ。
「張り合いのない、少しは足掻いたらどうだ!」
「言われなくとも……!」
 放たれた迎撃の種子、そこから瞬時に芽吹いた茨に巻き付かれたミコトは。
「そぉらあ!」
 ブチブチブチと、溢れる膂力で引き千切る! そしてそのまま紋章を蹴り砕き、ついで胴を蹴り飛ばす!
 おっと、今度はそこへディアナが駆け寄った。抜きつ抜かれつ、この感覚よ!
「嗚呼、なんて快感! 命を削って友と競い合う事の何と甘美なんだ!」
 激しい炎を灯しながら、命の蝋燭が短くなっていく。
 構うものか。自分より先に相手が死ねばそれでいい――!

 けれど天狗は気付かない、狼が秘めたるその想い。
(本当はね、どうでもいいの)
 競争も、自分の命も、付き合う彼の命さえ。どうなったって構わない。ただ奴を倒せれば、それで、いい。
(ヴァンパイアも、その眷属も、嫌いよ)
 快の哄笑のその裏で、研ぎ澄まされた不快の刃。突き立てる、突き立てる、幾度も憎悪を突き立てる。
「……もう、お終い? 口ほどにもなかったわね」
 一夜の狂騒、これにて閉幕。

●花は次代の種をまく
 紋章を貫かれること幾度目か。とうとう化身の命運も尽きたようだ。
 その身を赤より赫く染め上げて、ふらりと萎れるように崩れ落ちた。
「……ここまでですか。けれど私は終わりません、終わるわけにはいかないのです」
 空を向き横たわる薔薇少女。ひと時枯れて見えようと、それは次への準備期間。

「ああ誰か。誰か、彼女に幸運を――」

 この貌の持ち主のことはもう忘れてしまったけれど。
 何度でも蘇り、その姿を残し続けよう。
 人の心を知らない花に出来ることはそれくらい。

 ――そして、薔薇は散る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月19日


挿絵イラスト