骸人形の女領主を討て
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「ああ五月蝿い、五月蝿いわ! これじゃあ赤ちゃんが眠れないじゃない!」
月光に照らされた屋敷の一室で、紫のドレスに身を包んだ女性がヒステリックに叫ぶ。
気品を感じさせる装いに、マスクで目元を隠していても分かる美しい顔立ち。しかし、その身からにじみ出す邪悪な魔力は隠しようがない。彼女がオブリビオンであることは。
「ああ、私のかわいい赤ちゃん。ごめんなさいね、もうおねむの時間なのに」
女性が宥めるように呼びかけるのはその腕に抱いた、おくるみに包まれた人形だった。
とても精巧に作られているが、滑らかな白い肌に生気はなく、口からおぎゃあと泣き声が出ることもない。だが、彼女はその人形を本当の赤ん坊と思い込んでいるようだった。
「すぐにあの喧しい連中を始末して、子守唄を歌ってあげるわ。少しだけ待っていてね」
赤子の人形に対する慈しむような表情とは打って変わって、女性は窓の外に険しい表情を向ける。そこには千に迫ろうかという数の人間が、篝火を焚いて館に迫ってきていた。
闇の救済者(ダークセイヴァー)。人類救済などという世迷い言を掲げ、吸血鬼の支配に反旗を翻した愚かな連中。目につかない所でこそこそしている分には見過ごしてやっても良かったが、まさか群れを作って直接攻めてくるとは。
「なんて煩わしい奴らなの。1人残らず人形の素材にしてやらないと気がすまないわ!」
此の地を修めし女領主ダッチェスは、配下のゾンビチャリオット部隊に出陣を命じる。
これまでにも癇に障ることがあれば、その度に彼女は人間を殺しては人形にしてきた。だが、今回の人間達はこれまでとは訳が違うと、彼女はまだ気付いていなかった――。
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「ダークセイヴァーにて事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「この世界では昨今『闇の救済者(ダークセイヴァー)』と呼ばれる複数のレジスタンス組織が一丸となって、ヴァンパイアの領主に対する大々的な反攻作戦を展開しています」
発足当初は活動の規模も小さい地下組織でしかなかった彼らは、猟兵の力を借りて同志を集め、『人類砦』と呼ばれる独自の拠点も各地に確保。徐々に勢力を増してきた結果、今なら地方の小領主程度なら十分に太刀打ちできる戦力を保有していた。
「吸血鬼にも対抗できる立派な戦闘集団となった『闇の救済者』は、各地の領主と戦い、少しずつですが領土を拡大しています。猟兵もこの作戦に協力しない理由はありません」
相手は地方領主クラスとはいえ相当の兵力を有しているが、連合した『闇の救済者』の兵力も千人近くに達する。ダンピールやオラトリオなどの他種族に、優秀な黒騎士や咎人殺しなどの特殊戦力も集結しており、そこに猟兵が加われば戦力は盤石のものとなろう。
「猟兵の皆様に求められるのは最前線での敵の駆逐です。皆様が先陣を切って活路を開き、その後に『闇の救済者』の猛者達が続けば、大軍も撃破することができるでしょう」
戦争と呼べる規模まで膨れ上がった戦いでは、猟兵だけで全ての敵を倒すのは無理だ。
だからこそ『闇の救済者』達との連携が重要になるだろうとリミティアは語りながら、予知で入手した敵軍の情報を開示する。
「敵軍を率いる領主の名は『ダッチェス』。遺体から人形を制作するのが趣味の人形遣いで、その副産物である骸やゾンビの兵士を率いています」
その性格はヒステリックで思い込みが激しく、問題が多いダークセイヴァーの領主の中でもかなりタチの悪い部類に入るだろう。くだらない理由で彼女の怒りを買い、ゾンビや人形の素材にされてしまった領民は数え切れない。
「人格には難のある女性ですが強大な魔力の持ち主で、領主としてはふさわしい実力者と言えるでしょう。また、チャリオット部隊を中心に編成された彼女の軍も侮れません」
2頭立てのゾンビホースに曳かれ、骸の馭者を乗せたこの戦車隊は、戦場にて生ある者を轢き倒して駆け抜ける殺戮集団だ。その突撃をまともに食らえば自軍の被害は大きく、犠牲者を出さないためにも何らかの対策、もしくは早急に突破する手段を考えたい所だ。
「戦線を突破し、領主のいる館まで踏み込んでしまえば、戦車隊は戦力外となります」
屋内でのチャリオットは性能を発揮できず、馭者は下車して戦わざるをえなくなる。
ここまで来れば『闇の救済者』達の優勢は確定となり、あとは領主ダッチェスを猟兵達が討ち取れば勝敗は決する。彼女が治めていた土地は人類の領土となり、これ以上領主の悪趣味の犠牲となる者もいなくなるだろう。
「ですが、領主を討ち取ってもまだ油断はできません。この世界を地の底から支配する『第五の貴族』は、このような人類の大々的な反抗を許しはしないでしょう」
リミティアのグリモアは、第五の貴族から「人族鏖」の指令を受けた、直属の刺客が送り込まれてくる未来を予知していた。このオブリビオンは主君から寄生虫型オブリビオン「殺戮者の紋章」を授けられており、猟兵以外の者ではとても歯が立つ相手ではない。
「刺客の名は『滅亡卿』ヴォルフガング。自らを『吸血鬼に仇為す者を滅ぼす暴力装置』と定めており、恐れも侮りも油断もなく、徹底的な殲滅と殺戮を行う古強者です」
彼は猟兵を生涯最大最強の天敵と認識しており、あらゆる手段を尽くし「滅亡」させると決意している。言うに及ばず、その暴力は猟兵を滅した後は『闇の救済者』に向かう。一分の隙もない強敵だからこそ、何としても負けるわけにはいかない敵だ。
「領主軍との戦闘から始まり、連戦が予想される厳しい依頼ですが、皆様なら成し遂げられるとリムは信じています」
依頼の説明を終えたリミティアは、信頼のこもった眼差しで猟兵達を見回す。そして、手のひらにグリモアを浮かべると、間もなく戦闘が始まるダークセイヴァーに道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回の依頼はダークセイヴァーにて、『闇の救済者』の軍団と共にオブリビオンの領地に攻め込み、敵軍と領主を撃破するのが目的です。
1章は領主の率いる『死地を駆け抜けるチャリオット』との戦いです。
死者であるために死や痛みを恐れず、果敢に向かってくる彼らの突撃は、力を付けてきたとはいえ『闇の救済者』達の脅威となります。
それでも総戦力では猟兵と『闇の救済者』の連合軍のほうが優位ですので、うまく立ち回れば損害が出ないようにすることもできるでしょう。
2章は領主の屋敷で『ダッチェス』とのボス戦です。
人格的にはあまりお近づきになりたくないタイプですが、人形遣いとしての実力は確かです。強大な魔力を武器に、猟兵達を自ら始末せんと襲ってくるでしょう。
彼女を撃破すればこの領地は『闇の救済者』のものになりますが、戦いはまだ終わりません。
3章は第五の貴族が放った刺客、『滅亡卿』ヴォルフガングとの戦闘です。
授けられた『殺戮者の紋章』の力にも傲らず、全力を以て猟兵と闇の救済者を「滅亡」させんとする強敵です。こちらも全力で迎え撃ち、勝利を掴み取ってください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『死地を駆け抜けるチャリオット』
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POW : 駆け抜け、弾き、轢き倒す戦車
単純で重い【チャリオットによる突撃】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 馭者による巧みな鞭
【絡めとる鞭】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 全力による特攻
自身が操縦する【ゾンビホース2頭】の【身体を鞭で強く打ちスピード】と【突撃による破壊力】を増強する。
イラスト:井渡
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フレミア・レイブラッド
可哀そうにね…。
殺されて人形にされた挙句、副産物でこんなゾンビにされて…。
安心なさい、すぐに解放してあげるわ
【虜の軍勢】で雪花、エビルウィッチ、『雪女』雪華、狐魅命婦、神龍教派のクレリックを召喚。
【ブラッディ・フォール】で「誇り高き狂気」の「ヴラド・レイブラッド」の力を使用(マントに魔剣を携えた姿)。
【平伏す大地の重圧】で突撃してくる視界内の敵全てを超重力で押し潰して突進力を封じ、眷属達のUC(とにかくふぶいてみる、ファイアー・ボール、氷柱散華、フォックスファイアフィーバー、神罰の吐息)や闇の救済者達による弓矢等の遠距離攻撃により仕留めていくわ。
動きたくても動けなければどうにもならないわよね
「可哀そうにね……。殺されて人形にされた挙句、副産物でこんなゾンビにされて……」
館を守るように整列した騎馬とチャリオットの軍勢を見つつ、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)はそう呟いた。ゾンビと化したかの骸の群れも、元はこの地に暮らしていた者の成れの果て。領主の忌まわしき所業の犠牲者達である。
「安心なさい、すぐに解放してあげるわ」
おそらく言葉が届かないことを承知の上で宣言し、彼女は【虜の軍勢】を呼び寄せる。
軍勢には軍勢を――吸血姫の虜となった眷属の集団が、世界の壁を超えてここに集う。
「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
雪女見習いの「雪花」を筆頭に、エビルウィッチ、『雪女』雪華、狐魅命婦、神龍教派のクレリックなどの個性的な面々が召喚される。それを率いるフレミアは【ブラッディ・フォール】を発動し、過去に倒したオブリビオンの能力をその身に宿す。
「お父様、力を借りるわ」
同族殺しと化した父たる『吸血大公』ヴラド・レイブラッドの力を宿した彼女は、背中にマントをたなびかせ、手には巨大な魔剣を携える。その身から溢れるオーラと気迫は、まさに高貴なる血筋にして一軍の将として相応しいものであった。
「駆ケヨ、駆ケヨ、駆ケヨ!」
フレミア達が戦闘態勢を整えるのと頃合いを同じくして、敵の戦車部隊が【全力による特攻】を仕掛けてくる。戦車を曳くゾンビホースを馭者が強く鞭打てば、そのスピードはさらに増し、突撃による破壊力も増大する――だが。
「ひれ伏しなさい」
「「……ッ!?」」
フレミアは動じることなく、戦車隊を睥睨しながら【平伏す大地の重圧】を発動する。
魔力を込めたその視線に捉えられた者どもは、通常の何十倍もの超重力に押し潰され、強制的に大地に平伏させられる。自慢の突進力もこれでは封じられたも同然だ。
「動きたくても動けなければどうにもならないわよね」
さらなる魔力を視線に注いで、敵の足止めに徹するフレミア。その間に彼女が召喚した眷属と『闇の救済者』達が、各自のユーベルコードや弓矢による遠距離攻撃を仕掛ける。
「みんなでいくの~」
「攻撃、開始っ!」
吹雪や氷柱の嵐を巻き起こす雪女達に、火球を炸裂させる魔女や狐火を乱射する妖狐。さらには神竜の幻影を呼んでブレスを放つクレリックなど、フレミアが今回呼んだ者達はみな遠距離戦に長けている。動きの止まった戦車隊を仕留めるくらい訳もないことだ。
「ギ、ギャ……!」
炎に焼かれ、吹雪に凍てつき、あるいはブレスで吹き飛ぶか救済者達の矢に射抜かれ。死してなお走狗として弄ばれた亡者の魂は、その亡骸の完全な消滅をもって解放された。
敵の第一陣を難なく退けた人類と虜の軍勢は、フレミアを陣頭に進撃を開始する――。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
確かに、ゾンビ馬車による死を恐れない特攻は危険だね…。
でも…止める手段はある…。
【狐九屠雛】を展開し、【呪詛】で強化…。
敵は死を恐れない…それに、突撃の威力を増す為に可能な限り速度を上げてるから、急に止まる事も方向転換も容易じゃない…。
それが弱点だよ…。
全ての【狐九屠雛】を敵進路上の前面に展開…。
後は敵の動きに合わせて霊火の位置を微調整しつつ、敵の突進を待てば良い…。
霊火に突っ込んだ敵は凍結し、凍った馬車や肉体はその動きと速度に耐えきれず自滅する…。
後はそこをみんなで狙い撃ちすれば良い…。
そして、【狐九屠雛】は絶対零度の「炎」…。燃え移った(凍結した)敵の肉体に触れた敵もまた凍結するよ…
「確かに、ゾンビ馬車による死を恐れない特攻は危険だね……」
馬蹄と車輪の音を響かせ疾走する敵の戦車部隊を前にして、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)はぽつりと呟く。敵は領主に操られる亡者故に迷いがなく、己の身を顧みない【全力による特攻】にて、人類の軍勢を蹂躙しようとしている。
「でも……止める手段はある……」
戦車隊がこちらの先鋒と接触する前に、璃奈は九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】を展開。
魂をも凍てつかせる地獄の霊火が、ゆらゆらと虚空に浮かび上がり、薪を焚べるように呪詛を注ぐと、ぞっと背筋が震えるほどの冷気がその火から発せられる。
「敵は死を恐れない……それに、突撃の威力を増す為に可能な限り速度を上げてるから、急に止まる事も方向転換も容易じゃない……」
それが弱点だよ――と告げ、璃奈は全ての【狐九屠雛】を敵進路上の前面に展開する。
後は敵の動きに合わせて霊火の位置を微調整しつつ、敵の突進を待てば良い。飛んで火に入る夏の虫のごとく、ゾンビの戦車隊は自ら極寒地獄に飛び込んでくれる。
「―――ア、ガッ?!」
何も知らずに霊火に突っ込んだ敵は凍結し、凍った馬車や肉体はその動きと速度に耐えきれず自滅する。ゾンビホースの脚がぽきんと折れ、どうと倒れ込んだ衝撃で馭者は戦車から放り出され。辛うじて受け身を取っても、鞭すら凍った有様では反撃の余地もなく。
「後はそこをみんなで狙い撃ちすれば良い……」
「了解です。みんな、いくぞ!」
応ッ! と勇ましい声を上げ、『闇の救済者』達が璃奈の凍らせた敵に矢を浴びせる。
これなら敵の突破力を封じつつ、安全な距離から攻撃を仕掛けられる。ただでさえ凍って脆くなっていたゾンビ達は、救済者達の矢によってあっさりと息の根を止められた。
「マズイ、避ケヨ……!」
これには戦車の馭者達も不利を悟ったようで、軍馬に鞭打ち進路を変更しようとする。
だがその時にはもう遅かった。無知なまま地獄の火に凍らさてれいった彼らの同胞が、第二の罠として機能していたのだ。
「【狐九屠雛】は絶対零度の『炎』……。燃え移った敵の肉体に触れた敵もまた凍結するよ……」
凍結してバラバラになったゾンビや戦車の残骸。それら全てが【狐九屠雛】の冷気を媒介する種火なのだ。戦車で轢き潰してしまおうものならそこから凍結が始まり、軍馬から馭者にまで"燃え移る"。熱と冷気という違いはあれど、炎の性質に変わりはないのだ。
「ナン、ダト……!!」
宙に浮かぶ【狐九屠雛】の本体にばかり注意を払っていた後続の戦車部隊は、かくして先鋒らと同じ末路を辿った。元からフルスピードで疾走していた彼らには、四散した氷の骸を全て避けられるほど迂回するのはどだい不可能だったのだ。
「ア、ガ……!!」
霊火で凍てつき、矢の雨に射抜かれ、ばたばたと動かなくなっていくゾンビの戦車隊。
蹄と車輪の音が止んだ後に残るのは、音すらも凍りついたような冷たい静寂であった。
大成功
🔵🔵🔵
シャオロン・リー
呵々ッ!ええわ、この暴れ竜シャオロン、力を貸したる
ええか、俺は悪党や、せやから義では動かん
悪党を動かすんは私利と私情や!覚えとけ、闇の救済者ども
俺らみたい悪党も清濁飲んで飼いならせ!
それが、お前らの生きる道や!
闇の救世主たちの邪魔はせぇへんように
金磚
翼生やして空中戦や
地を行く戦馬の突撃、空にまで来れるか!
攻撃は見切って躱して、激痛耐性と継戦能力で耐える
無数の槍を炎属性攻撃で一斉発射の範囲攻撃でなぎ払い
複数の戦車を同時に空から串刺しにしたろうやんか
同時に手近な敵に二槍で突きかかる
俺にできるのは暴力でとことんまで蹂躙したることや
これが俺の、悪党の戦い方や
闇の救済者ども、たっぷり目に焼き付けとけや!
「呵々ッ! ええわ、この暴れ竜シャオロン、力を貸したる」
領主の軍に戦いを挑まんとする『闇の救済者』の前に颯爽と現れて、シャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)は笑みを見せる。その態度と表情からは親しみ易さを感じるが、その裏に秘めた凶暴性が戦いの予感にひかれて滲み出していた。
「ええか、俺は悪党や、せやから義では動かん。悪党を動かすんは私利と私情や! 覚えとけ、闇の救済者ども」
オブリビオンの支配から人類を救うという、大層な理想を掲げるのは結構。だが、その実現のためには綺麗事だけでは済まない事にも必ず直面する。本気でこの世界を変えようと望むなら、そのための力を望むのなら、選り好みなどしてはいれないはずだ。
「俺らみたい悪党も清濁飲んで飼いならせ! それが、お前らの生きる道や!」
「……はいッ」
シャオロンの助言――あるいは激励を受けた『闇の救済者』達は、みな神妙に頷いた。
彼らのうち何人かは理解していただろう、善や悪などのしがらみを超えて立ち向かわなければならないほど自分達の敵は強大だと。今回の反攻作戦にダンピールのような異種族や闇の職業までもが参加しているのはそういうことだ。
「結構。ほんなら、暴れ倒したろやんか!」
人々の反応に満足したようにシャオロンは笑うと、敵勢に向き直って【金磚】を発動。
竜の血脈を励起させた彼の背中からは勇壮な翼が生え、重力の軛を振り切って空に舞い上がった。
「地を行く戦馬の突撃、空にまで来れるか!」
チャリオットの【全力による特攻】がいかにスピードと破壊力に優れていても、その力はあくまで地上戦において敵を蹂躙するもの。空中戦を仕掛けるシャオロンに対する術はせいぜい鞭を伸ばすくらいだろうか。
「ギギ……」
軍馬に活を入れるための鞭で空翔ける竜人を絡め落とさんとするゾンビの馭者。しかしシャオロンは巧みに翼を羽ばたかせながら鞭の動きを見切って躱す。多少避け損なう事があっても、武侠として鍛えた彼の肉体にこれしきの攻撃ではまるで痛痒がない。
「そら、お返しや!」
シャオロンは左右の手に構えた禍焔竜槍『閃龍牙』と発破竜槍『爆龍爪』で、空中から手近な敵に突きかかる。同時に彼の周囲には多重分身した無数の槍が出現し、炎を纏って敵の戦車部隊の上から降り注いだ。
「「――……!?」」
避ける隙間もない炎槍の雨に打たれ、戦車ごと串刺しにされるゾンビ共。火竜の氣を込められた炎はただの火とは桁外れの熱量を誇り、焼かれた者は灰すら残さず散っていく。
(俺にできるのは暴力でとことんまで蹂躙したることや)
手ずからニ槍で敵を屠りながら、圧倒的な炎と槍の物量で敵陣をなぎ払うシャオロン。
その戦いぶりに情け容赦は微塵もなく。反撃の暇さえ許さずに殲滅する様を、誇示するかのように力強く勇ましく、遠からんものは音にも聞けとばかりに叫ぶ。
「これが俺の、悪党の戦い方や。闇の救済者ども、たっぷり目に焼き付けとけや!」
時節にあわせて立場を変えながらも、心に宿る矜持は変わらずヴィランとしてのもの。
誰に憚ることない"悪"の勇姿は、この地においては紛れもなく闇を照らす篝火だった。
「俺達も負けてはいられないな」
「ああ、行くぞ!」
悪党からの発破を受けて奮起した『闇の救済者』は、自らも領主の軍勢に立ち向かい、炎槍にて蹂躙された戦線を押し上げ、そのまま突破していく。シャオロンは実に愉快そうな表情でその光景を眺めながら、邪魔はしないように次の前線へと向かうのだった。
大成功
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カビパン・カピパン
安定した職を求めて職安に行ってみた。
すると、受付の人にアンタじゃロクな職は見つからないよと言われた。
ある日、ダッチェスとか言ういい歳して人形を制作するのが趣味な女領主からオファーが。しかし待遇が良かったので屋敷へ面接に行ってきた。
名前:アリサ・シリアス
住所:屋敷に住み込み希望
自己PR:悪霊で部隊指揮経験あり。歌に自信あり。子守も得意。
「採用」
にこりとダッチェスが笑った。
チャリオット部隊とも握手を差し伸べてがっちりと握手。死者はこれだけで分かり合える。これからは同僚だ。友情が芽生える理由としては十分だ。
「貴方達もねぇ、そろそろキチンとした定職につかないと駄目よ」
死者達は将来を恐れるようになった。
「駆ケヨ、駆ケヨ、駆ケヨ!」
猟兵と『闇の救済者』の連合軍を殲滅すべく、チャリオット部隊が死地を駆け抜ける。
亡者の馬に曳かれ、亡者の馭者を乗せて、保身なき【全力による特攻】を続ける彼らに恐怖はない。期待すべき明日も恐れるべき未来も、もはやゾンビには無いのだから。
「あ。私、今日からこちらで働くことになったカビパンという者です」
そんな亡者の群れの中にひとり、雰囲気というかジャンルの違う悪霊が混ざっている。
彼女の名はカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。猟兵であるはずの彼女がなぜ領主の軍に与しているのかと、ゾンビたちはみな困惑を露わにした。
「いえ、安定した職を求めて職安に行ってみたら、受付の人にアンタじゃロクな職は見つからないよと言われまして」
普段から破天荒なギャグとノリで周囲を驚かせているカビパンだが、今になって定職につきたいという気持ちが芽生えたらしい。彼女の口から「安定」という言葉が出てくるのも人によっては驚きかもしれないが。
「それである日、ダッチェスとか言ういい歳して人形を制作するのが趣味な女領主からオファーが来まして。しかし待遇が良かったので屋敷へ面接に行ってきたんです」
話を聞いているゾンビ達はみな(本当か……?)と猜疑の眼差しを彼女に向けている。
そもそもダークセイヴァーに職業安定所なんていう概念はほぼ無いだろうし、気難しい領主が求人を出すとも思えない。彼女が勝手に押しかけたという説のほうが信じられる。
「あ、疑ってます? これ先方に見せた面接シートですけど」
困惑と疑惑の視線に晒されたカビパンは、綺麗に折りたたまれた一枚の用紙を見せる。
そこに書かれていた内容はしごくシンプルなもので、名前、住所、自己RPの3点のみ。
名前:アリサ・シリアス
住所:屋敷に住み込み希望
自己PR:悪霊で部隊指揮経験あり。歌に自信あり。子守も得意。
なおアリサとは彼女の本名である。流石にカビパン・カピパンとかいう明らかな偽名で面接に行ったりはしなかったようだ。それ以前の問題が多くあるような気もするが――。
『あたくしの子守唄にかかればどんな赤ん坊もすぐに寝入ってしまいましてよ』
彼女は【黒柳カビパンの部屋】を使って面接に挑んだという。降霊術によって獲得した伝説級のトーク力と謎のプレッシャーのお陰で、領主との対話を有利に進められたのだ。
『採用』
最終的にダッチェスはにこりと笑ってそう言ったそうな。どこまでが真実でどこまでが与太かは分からないが、それを聞いたゾンビ達も黒柳カビパンの話術にかかり、すっかり話を信じ込んでしまう。
「というわけでよろしく」
近くにいたチャリオット部隊の馭者達と、カビパンは手を差し伸べてがっちりと握手。
死者はこれだけで分かり合える。これからは同僚だ。友情が芽生える理由としては十分だ。矢継ぎ早に繰り出されたトークとギャグに惑わされ、相手もそんな気になってきた。
「アア……ヨロシク……」
なんとなくいい感じの雰囲気が流れ、悪霊とゾンビの友情が結ばれたかに思われたが。
直後にカビパンはこれまでの友好を台無しにするような一言をしれっと言ってのける。
「貴方達もねぇ、そろそろキチンとした定職につかないと駄目よ」
「「―――……!!!!」」
いつまでもフラついた子供を心配するオカンのような発言が、ゾンビの心を傷つけた。
何も恐れる物のなかった死者達は、カビパンに関わってしまったことで人間性を得て、そして将来を恐れるようになった。その動揺は戦車隊の動きに露骨に現れる。
「将来……ドウシヨウ……」
しょせん自分達は使い捨てのコマ。お払い箱にされればどうやって生きて(?)いけばいいのかという不安で動きが鈍る。彼らが【全力による特攻】を恐れるようになった事で『闇の救済者』達は逆に勢いづき、結果的にカビパンの行動は味方を利する事となった。
大成功
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春乃・結希
一対一なら、チャリオットの突撃力にも負けない自信は有るけど
数が多いし、体力はまだ残しておきたい
それに、一緒に戦うヒトたちも、こんなにいっぱい居るんだ
真正面から行くと見せかけて、狙うのは馭者
wandererの蒸気魔導を移動力に回し前線へ【ダッシュ】
馬を飛び越えざまwithを振り抜き、馭者を叩き落とす【重量攻撃】
地面に降りると数に飲まれて動けなくなってしまうかもだから
荷車や馬を足場にして、次の戦車を狙っていく
馭者の居ない戦車は制御を失い、突撃力も落ちるはず
強くなった皆なら、突破してくれるって信じてる
だから後ろは振り向かず、ただ剣を振る
この地も希望が手に入れる
今までだって、負けた事ないんだから
(一対一なら、チャリオットの突撃力にも負けない自信は有るけど。数が多いし、体力はまだ残しておきたい)
そんな事に考えた春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は、向かってくる領主の軍を見据えながら漆黒の大剣を構える。この愛剣『with』にかかれば、どんな敵でも斬り伏せてみせる――だが、今はまだ自分1人が無理をすべき状況ではない。
「それに、一緒に戦うヒトたちも、こんなにいっぱい居るんだ」
他の猟兵達や『闇の救済者』達もいる。敵も大軍だが、自分達は決して孤独ではない。
ふっと口元に微笑を浮かべながら、漆黒の大剣使いはまっすぐに前線へと駆け出した。
「蹂躙、蹂躙、蹂躙……!」
主君に与えられた指令を果たさんと、【駆け抜け、弾き、轢き倒す戦車】が疾走する。
単純ゆえに重い突撃を敢行するその戦車に、結希は真正面から挑む――と見せかけて、実際は戦車を操る馭者に狙いを絞っていた。
「アルダワの技術、使わせて貰います」
脚力強化するガジェットブーツ「wanderer」の蒸気魔導回路を【リアレンジメント】で組み換え、移動力を格段に強化してダッシュ。黒き一陣の風となった彼女はまたたく間に距離を詰め、重い大剣を持っているとは思えない身軽さで跳躍する。
「失礼します」
「ナニ……!?」
爆走するゾンビホースを飛び越えざま『with』を横一文字に振り抜く結希。驚愕に目を見開いたゾンビの馭者は、分厚い漆黒の刀身に切り払われ、戦車の上から叩き落された。
彼女は敵を倒したかどうかを一々ふり返って確認しようともせず、車体と騎馬を足場にしてさらに跳躍。こちらに向かってくる次の戦車を狙っていく。
(地面に降りれば数に呑まれて動けなくなってしまうかもだから)
駆けて、跳ねて、大剣を振るい、馭者だけを次々となぎ倒しながら先へ先へと進んでいく結希。単独で突出しているように見えるが、後から続いて来てくれる者達がいることを彼女は確信していた。
(馭者の居ない戦車は制御を失い、突撃力も落ちるはず。強くなった皆なら、突破してくれるって信じてる)
その信頼に応えるように、結希の後方では『闇の救済者』達が敵の戦車と戦っていた。
操る者がおらず、馬だけで暴走するチャリオットなど、今の彼らの敵ではない。闇の中で雌伏の時を過ごしてきた彼らの実力は、十分に怪物とも渡り合えるものとなっていた。
「今さらこんな所で、立ち止まっていられるかっ!」
馬の脚や車輪に集中して攻撃を仕掛け、速度が落ちたところを腕利きがとどめを刺す。
個々の力量だけではなく連携も完璧で、かつての小さなレジスタンス集団は、今や立派な"軍"と呼べる戦闘集団と化していた。
「この地も希望が手に入れる。今までだって、負けた事ないんだから」
頼もしい希望がついて来ているのを感じる。だから結希は振り向かず、ただ剣を振る。
馭者を落として敵の戦力を削ぎながら、領主のいる屋敷まで一目散。この地を支配する魔性を斬り伏せ、勝利を掴み取るその時まで、彼女の歩みが止まる事はないだろう――。
大成功
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キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
死人の戦車と言えどこれだけ並べば確かに迫力はあるな…
迫力だけは、な
シルコン・シジョンとデゼス・ポアを装備
ダッシュでチャリオットの周囲を駆け巡りつつ、ゾンビホースや御者の頭を銃弾で吹き飛ばす
構造上小回りが利きずらいだろうから、撹乱するように接近して攻撃を行おう
さらにデゼス・ポアも周囲に飛ばせてUCの下準備も行う
フン、こちらに向かってくる気か?
やめておいた方が良いと思うがな
敵が突撃すると同時にUCを発動
事前にばら撒いた操り糸を敵集団に絡ませて、突撃の勢いで切断する
UCの都合上、闇の救済者達には遠距離攻撃での援護をお願いしよう
言っただろう、やめておけと
…もう聞こえはしないだろうがな
「死人の戦車と言えどこれだけ並べば確かに迫力はあるな……迫力だけは、な」
濛々と土煙を上げて驀進する敵の戦車隊を見ても、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)の表情には余裕があった。傭兵として様々な世界の戦場を渡り、これよりも凶悪な軍勢を見たこともある彼女だからこそ抱ける感想だろう。
「行くぞ、デゼス・ポア」
「ヒヒヒヒヒヒッ」
神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"を構えながら呟くと、傍らに浮かんだ呪いの人形「デゼス・ポア」が不気味な笑い声を上げる。この1人と1体で敵の部隊を撹乱すべく、女傭兵は颯爽と走りだした。
「お前達の相手は私だ」
両脚に履いた「アンファントリア・ブーツ」の機能で強化されたキリカのダッシュ力は軍馬の速度にも負けず、さらに機動力では上回る。身軽さを活かしてチャリオットの周囲を駆け巡りつつ、ゾンビホースや馭者の頭を狙って小銃のトリガーを引く。
(構造上小回りが利きずらいだろう)
聖書の箴言が込められた弾丸が敵の頭部を吹き飛ばし、曳く者や乗り手を失った戦車は制御を失って横転する。一度歩兵に側面に回り込まれてしまうと騎兵以上に脆弱なのは、チャリオットの大きな弱点のひとつ。彼女はそこを突いて的確に敵を撹乱していた。
「オノレ……」
それでも敵軍は【駆け抜け、弾き、轢き倒す戦車】による突撃を諦めようとはしない。領主の操り人形である彼らの腐った脳には、ただ目前の敵を蹂躙せよとの命令しか詰め込まれていないのだろう。愚かしいまでに単純だが、その一撃の重さだけは侮れない。
「フン、こちらに向かってくる気か? やめておいた方が良いと思うがな」
しかし当然、キリカはその対策をすでに講じている。銃撃で敵を攻撃するのと同時に、デゼス・ポアにユーベルコードの下準備を行わせていたのだ。そうとも知らぬゾンビ達は彼女の警告に耳を貸そうとせず、軍馬に鞭打って戦車をがむしゃらに走らせる。
「狂え、デゼス・ポア。死を与える歓喜と共に」
敵が突撃すると同時にキリカは【マリオン・マキャブル】を発動し、事前にばら撒いておいた操り糸をチャリオットに絡める。それは不可視と言える程に細く見え難いが非常に頑強であり、戦車の突撃をもってしても引き千切れない。
「グ、ガ……!!?」
糸が絡んだまま走り続けようとした敵は、自らの突撃の勢いによって糸に切断される。バラバラになった馬の、戦車の、馭者の骸が散らばり、惨憺たる光景が辺りに広がった。
「言っただろう、やめておけと……もう聞こえはしないだろうがな」
骸の海に還っていくゾンビの亡骸を見届けて、シルコン・シジョンを構え直すキリカ。
後方からは『闇の救済者』達が弓矢による遠距離攻撃を仕掛け、糸により隊列の乱れた敵軍に追い打ちをかけていた。
「行ってください!」
「ああ、感謝する」
彼らの援護を受けてキリカはデゼス・ポアを連れてさらに先へ、領主の館へと向かう。
この死人の戦車隊を切り抜けて敵将の元に辿り着く道筋が、彼女にはもう見えていた。
大成功
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トリテレイア・ゼロナイン
友軍の被害抑える為には脚を奪うのが最優先ですが…
(チラと電脳禁忌剣見つめ)
やはり戦闘員同士の戦いでは『圧倒的劣勢』でなくば通常駆動のまま…と
…騎士として戦ってきたこれまでと、変わりはありませんね(笑って)
剣と盾背負い機械馬に騎乗
手には馬上槍とUCを構え
それに今回はこれで十分です
UCの乱れ撃ち射撃(射撃反動は怪力で制御)
高速弾の着弾で地面を地形破壊
馬の脚や車輪を捉え突撃戦法に不向きな地形へ
脚を痛めた戦車など恐れるに足らず!
弓兵隊、攻撃開始! 歩兵隊、迎撃用意!
自身はセンサーでの情報収集で地形把握
機械馬の推力移動で無事な足場を跳躍し突撃
馬上槍で敵を仕留めつつUCチャージ
後続の敵軍を纏めて吹き飛ばし
「友軍の被害抑える為には脚を奪うのが最優先ですが……」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は敵の戦車隊に対する最適解を考えつつ、チラと「電脳禁忌剣アレクシア」を見つめる。宿敵となった創造主より託されたその剣は、星をも砕くと謂われる超技術の産物だが――現在、その機能には使用制限が課せられており、任意に扱える代物ではない。
「やはり戦闘員同士の戦いでは『圧倒的劣勢』でなくば通常駆動のまま……と」
言い換えればこの程度の戦闘は封印を解くまでもないと、剣が判断したということだ。
これくらい自力で何とかしてみせなさいと、この制限を設けた彼女が言っているような気がして、機械仕掛けの騎士はふと穏やかに頷いた。
「……騎士として戦ってきたこれまでと、変わりはありませんね」
トリテレイアに人間のような表情はないが、その時の彼は笑っているように見えた。
剣と盾を背負い、機械白馬「ロシナンテⅡ」に騎乗。手には馬上槍と【コアユニット直結供給式対人・対艦兼用電磁投射砲】を構え、死地を駆けるチャリオットと対峙する。
「それに今回はこれで十分です」
マルチセンサーで標的の構造強度を計測し、クロスボウ型電磁投射砲の照準を合わせ。
放たれた弾丸は電磁加速により凄まじい速度で飛んでいき、敵部隊の前方に着弾した。
「……!?」
着弾の衝撃によって地面が爆ぜたのを、馭者は爆弾でも使われたのかと思っただろう。
トリテレイアは矢継ぎ早に電磁投射砲を乱れ撃ち、敵部隊の進路上の地形を破壊する。
彼がわざわざ敵ではなく地面を先に狙った理由は明らかだ。敵の戦車はデコボコになった地形に馬の脚や車輪をとられ、最大にして唯一の武器である突撃戦法を封じられる。
「脚を痛めた戦車など恐れるに足らず! 弓兵隊、攻撃開始! 歩兵隊、迎撃用意!」
「「はいっ!!」」
一帯の破壊工作を済ませたトリテレイアは『闇の救済者』に号令を出す。既に戦闘集団として豊富な練度を重ねてきた彼らは統率された動きで矢を射掛け、のたのたと近付いてきた敵を槍で突き倒す。突撃さえ喰らわなければ、この程度の雑兵は十分に対処可能だ。
「電力チャージ開始、必要量到達まで推定20秒」
闇の救済者達が敵を押し留めている間に、トリテレイアは機械白馬に乗って突撃する。
乗馬には向かない荒れた地形だが、そもそもは彼自身が破壊したもの。まだ無事な足場をセンサーで把握し、騎馬に搭載されたスラスターも駆使して飛ぶように戦場を駆ける。
「ガハッ!!」
馬上より放たれるランスの刺突は強壮で、ゾンビの馭者を一撃で仕留める威力を誇る。
だが、それさえも目的は時間稼ぎ。片手に持ったままの銃器に充分な電力が供給されたタイミングを見計らって、機械騎士はその砲口を後続の敵軍に向ける。
「チャージ完了……発射!」
騎士の指がトリガーを引き絞った瞬間、雷光の軌跡が戦場を翔け抜ける。放たれた弾丸の威力は先程地面を破壊した時とは比較にならず、脆弱なゾンビに耐えられる訳もない。
「―――……!!!!!?」
敵軍が纏めて吹き飛ばされていった後には、屋敷まで続くまっすぐな道が出来上がる。
さらなる後続が前を塞いでしまう前に、機械騎士は颯爽とその道を駆け抜けていった。
大成功
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ニクロム・チタノ
圧政に逆らう大反抗・・・正に反抗の竜が降り立つべき戦い、ボクも反抗者として加勢させてもらうよ!
チタノ私に反抗の祝印を
闇の救済者のみんな助けに来たよ、先代反抗者のみんなも一緒に戦ってくれるよ
チタノボク乗せて、相手は高い機動力を活かして突撃する気だね?なら
闇の救済者のみんなボク達が重力で敵の動きを鈍らせている隙に敵の側面に回って奴らの横っ腹を食い破るんだ、陣形が乱れた所に先代反抗者を突撃させてボクはチタノに乗って空中から攻撃するよ、チタノよろしく
この戦いに勝ってこの世界に反抗の光を灯すよ!
「圧政に逆らう大反抗……正に反抗の竜が降り立つべき戦い、ボクも反抗者として加勢させてもらうよ!」
反抗の竜チタノに選ばれし者、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は今回の作戦にあたり意気揚々と参戦を表明する。闇の支配を打倒すべく皆が立ち上がったというのに、反抗の申し子たる自分が黙っているわけにはいくまい。
「チタノ私に反抗の祝印を」
彼女が【十三番目の加護】を発動すると、胸に埋め込まれた印から守護竜チタノと先代の反抗者達が現れる。反抗する者達を導き、守護し、道を切り拓く、頼もしき戦士達だ。
「闇の救済者のみんな助けに来たよ、先代反抗者のみんなも一緒に戦ってくれるよ」
「おお、ありがたい!」
顔の左半分を面で覆った少女が、援軍として反抗者の戦士達を引き連れて推参すると、『闇の救済者』達は歓声を上げた。領主の軍勢と正面から事を構えるにあたって、味方は1人でも多ければ多いほど良い。それが真なる闇の救済者――猟兵であればなおさらだ。
「チタノボク乗せて」
十三番目の加護を発動中は、ニクロム自身は戦闘に参加できない。そこでチタノの背に乗って空を飛び、俯瞰視点から戦場の模様を観察する。闇の救済者と反抗者達の連合軍は精強だが、対する敵のチャリオット部隊もなかなかに手強そうだ。
「相手は高い機動力を活かして突撃する気だね? なら……」
ニクロムがチタノに指示を出すと、反抗の竜は上空から敵部隊に向けて重力波を放つ。
通常の1Gの何倍にもなる超重力の波動が、軍馬や馭者の上にズシンとのしかかった。
「闇の救済者のみんな、ボク達が敵の動きを鈍らせている隙に敵の側面に回って奴らの横っ腹を食い破るんだ」
「了解した!」
既に多くの戦いを経験している闇の救済者が、敵の突撃が止まるチャンスを逃すはずが無かった。重力の軛に捕らわれた敵の横に回り込み、慣れた連携で次々と撃破していく。
「敵の陣形が乱れてきたね。先代反抗者のみんなもよろしく」
一本の銛のように救済者達が敵の布陣を突き破っていく様子が、ニクロムの視点からはよく見えた。ここが攻め時だと判断した彼女は先代反抗者達を突撃させ、傷口を抉るように敵軍の被害と混乱を拡大させていく。
「チタノよろしく」
もちろん彼女自身も見ているだけではない。反抗の竜に乗って指示を飛ばし、空中から攻撃を仕掛けていく。しょせん地面を走ることしかできない敵は、チタノの放つ重力波に押し潰され、あるいは蒼焔に焼き尽くされて、断末魔と共に骸の海に還っていく。
「この戦いに勝ってこの世界に反抗の光を灯すよ!」
「「おおーーーッ!!」」
反抗の御旗を掲げてニクロムが高らかに叫ぶと、地上から救済者達も鬨の声を上げる。
悪しき領主を倒し、闇を払わんとする彼女らの意志は今、完全にひとつとなっていた。反抗の竜に導かれるままに、人々は領主のいる屋敷に向かって進撃を続けるのだった。
大成功
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オリヴィア・ローゼンタール
燃え盛る叛逆の炎、このまま圧政者を焼き尽くしましょう!
黄金の獅子を駆り、戦車の軍勢へ向かって吶喊(騎乗・騎乗突撃・ダッシュ)
獅子の爪牙を以ってゾンビホースを引き裂き、御者台に飛び乗って鞭を振るえない至近距離から【怪力】で殴りつける
闇の救済者へ迫る別の戦車へ向けて聖槍を【投擲】
車輪に噛ませて強制的に止めて転倒させる
起き上がる前に吶喊して獅子に御者を【踏みつけ】させ、聖槍を回収
【巨神射殺す星辰の強弓】を召喚、強化された【視力】で狙いを定める
全力疾走で特攻してくる戦車どもの悉くを撃ち穿つ
来るがいい、片っ端から撃ち抜いてくれる!
「燃え盛る叛逆の炎、このまま圧政者を焼き尽くしましょう!」
戦場に集った『闇の救済者』達の前で、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は力強く宣言する。彼女が破邪の聖槍を掲げると、人々は「おうッ!」と大きな雄叫びで応える。みな、この戦いにかけた想いと覚悟は同じのようだ。
「この炎の前では、亡者の群れなど恐るるに足らず!」
オリヴィアは簡易召喚した黄金の獅子を駆り、人々の先頭に立って戦車の軍勢へ向かって吶喊する。その敏捷性は戦車を曳くゾンビホースよりも遥かに高く、燃えるような鬣をなびかせて敵陣に迫る。
「殲滅……蹂躙……?!」
死せる軍馬に鞭打って【全力による特攻】を挑んだ馭者は、その勇姿に驚く事となる。獅子の爪牙がゾンビホースを引き裂き、その背中から御者台に飛び移ったオリヴィアは、相手が鞭を振るえない至近距離から白銀のガントレットで殴りつける。
「止まれ!」
「ゴァッ?!」
人間離れした怪力に殴り倒され、馭者はピクリとも動かなくなる。一台の戦車を停止させると彼女はすぐさま周りを見て、『闇の救済者』に迫る別の戦車に向けて聖槍を投擲。回転する車輪に柄を噛ませて強制的に突撃を止め、転倒させる。
「彼奴らの突撃だけは脅威。気をつけてください」
「た、助かりました!」
戦車から放り出された馭者を獅子に踏みつけさせ、投げた聖槍を回収するオリヴィア。
窮地を助けられた人々はその勇士に見惚れ、足手まといにはなるまいと一層奮起する。
「あの人が俺達を導いてくれる! 臆さず進め、遅れを取るな!」
「「おおーーーっ!」」
横倒しとなった戦車を破壊し、馭者とゾンビホースが起き上がる前に止めを刺しながら前進する『闇の救済者』達。個の練度では猟兵に及ばないとはいえ、戦闘集団として経験を積み重ねてきたことで、ここまで敵軍に引けを取らない戦いぶりを見せていた。
「我ラガ主ノ命デアル……滅ビヨ……」
だが、骸であるが故に死を恐れぬ敵は、何騎討ち取られようと全力の特攻を繰り返す。
馬を潰しかねない勢いで驀進させ、同胞と一丸となって戦場を駆け抜ける。この場所が死地だとでも言うように、彼らの騎行には一切の迷いがない。
「顕現せよ、星辰の強弓。不死暴虐の巨神さえ、汝の一撃を耐えるに能わず」
全力疾走で特攻してくる戦車共の増援を見たオリヴィアは【巨神射殺す星辰の強弓】を召喚。闇を見通せるよう強化された視力で狙いを定め、虚空より現れた弓に矢を番える。
常人の力では弦を引くことさえできない英雄のための強弓を、ぐっと大きく引き絞り。いかなる防御も打ち砕くという願いを込めて、矢を放つ。
「ゴ―――ッ!!!」
轟と唸りを上げて飛んでいった星辰の矢は、射線上にいた戦車数台をやすやすと貫通。
相手を轢き殺すよりもはるか手前で、風穴を開けられた馭者と軍馬は活動を停止した。
「来るがいい、片っ端から撃ち抜いてくれる!」
オリヴィアはすぐに次の矢を番え、目についた戦車の悉くを撃ち穿っていく。巨神をも射殺すと謳われた強弓より放たれる矢の雨を、名もなき屍人共が抜けられるはずもなく。
並み居る敵軍を寄せ付けもせず、彼女は黄金の獅子に乗って戦線を突き破っていった。
大成功
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瀬河・辰巳
ゾンビホースは……うん……早く帰って可愛い馬に癒やされたいかも……。
さて、動き回って厄介なら機動力を削ぐまで。鞭に捕われたら厄介だから、範囲外の木の上等に身を隠し、ダミーの影攻撃と共にUCを発動。全身を燃やしてゾンビホースや馭者を脚から灰にしてやろう。
「しっかり焼いて土へ還してあげないとな」
「馬が走れなければ轢きようがない、だろ?」
機動が落ちたら、闇に紛れつつ弓矢で攻撃。鞭を持てない奴がいる場合は、影で防御しつつ、他の敵の鞭に注意しながら、馬共々頭を直に切り落とそう。
「ゾンビホースは……うん……早く帰って可愛い馬に癒やされたいかも……」
死斑により青黒く変色し、腐った皮膚と肉から悪臭を撒き散らしながら疾走する敵の馬を見て、瀬河・辰巳(宵闇に還る者・f05619)は気分を損ねたように口元をおさえる。動物達を友として心を通わす彼も、さすがにゾンビとは仲良くなれそうに無いらしい。
「さて、動き回って厄介なら機動力を削ぐまで」
すぐに気を取り直した彼は、戦車の突撃も馭者の鞭も届かない木の上に身を隠し、影の「オトモダチ」による遠隔攻撃を仕掛ける。ゆらゆらと歪な形で戦場を駆けるそれらは、在りし日を共に過ごし、戯れに奪われた「友達」の意志を宿す影法師であった。
「退ケ……」
近付いてくる影の動物を見ると、敵の戦車隊は【馭者による巧みな鞭】捌きでそれらを絡め取る。速度を活かした突撃が本領とはいえ、それ以外に能がない訳でも無いようだ。
(あれに捕らわれたら厄介なことになってたな)
やはり範囲外に潜んでおいて正解だったと、木の上の陰から敵の動きを観察する辰巳。
向かわせた影達はほとんどが捕まってしまったが、そちらはダミーなので問題はない。本命となるのは【亡者の激情】――鞭に絡まった歪な影が、黒い焔を上げて燃えだした。
「しっかり焼いて土へ還してあげないとな」
憎悪の具現である黒い業火は、時折動物の形になりながら瞬く間に戦場に燃え広がり、ゾンビホースや馭者達を足元から灰にしていく。ただの火傷ではなく呪いとしての性質を兼ね備えたそれは、対象を完全に灰化させるまで消えることはない。
「……?!」
屍人故に痛みこそ感じないだろうが、猛る黒焔に焼き焦がされた戦車隊の動きは明らかに鈍る。特に戦車を曳く馬の脚がダメージを負うのは、この部隊にとって致命的だった。
「馬が走れなければ轢きようがない、だろ?」
敵の機動が落ちたのを確認すると、辰巳は「樹海の祈り」と名付けた弓に矢を番える。
闇に紛れて放たれた曲射は、過たず馭者の脳天を射抜き。操る者がいなくなった戦車はフラフラと蛇行したすえに黒焔に焼き尽くされて動きを止める。
「オノレ……」
馭者も反撃しようとはするものの、焔と呪いの侵食はもう脚から腕にまで達している。
四肢を失い、鞭を振るうことも戦車を操ることもできない馭者が現れ始めると、辰巳はまだ動ける敵からの攻撃を警戒しつつ、そうした連中の元にすっと近寄っていく。
「安らかな眠りを、永久に」
宵闇の影を身に纏った青年が、漆黒の狩猟刀を無造作に振るう。ざん、と肉と骨を断つ鈍い音を立てて、馭者と馬の首は共々に切り落とされた。ごろりと地面に転がった頭も、どうと倒れ伏した胴体も、すぐに灰となって土に還っていく。
「さっさと終わらせたいな……」
愛する動物たちに癒やされたい自分にも、望まずしてゾンビにされた彼らにも、それが最良だろう。黒焔にて焚き狩猟刀にて介錯する、彼の葬送を止められる者はいなかった。
大成功
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リーヴァルディ・カーライル
…彼らもまた死を弄ぶ領主の犠牲者なのかもしれない
…だけど、だからこそ加減はしないわ。必ずや、その呪わしき生を終わらせてあげる
UCを発動し全身を限界突破した真紅のオーラで防御して覆い全長17mの魔竜に変身
事前に集めておいた救済者達を背中に載せて空中機動の早業で敵陣の上空に切り込み、
血の魔力を溜めた生命力を吸収する闇属性攻撃のブレスを空中からなぎ払い、
救済者達の追撃で敵陣を乱れ撃ちする集団戦術を行う
…腕の良い弓や銃の使い手がいたら此方に来て
貴方達には空から敵を狙撃してもらう
どうやって飛ぶのか?……こうするのよ
…貴方達の仇は私達が必ずとるわ。だから今は眠りなさい。二度と目覚めること無く、安らかに…
「……彼らもまた死を弄ぶ領主の犠牲者なのかもしれない」
向かってくる亡者の戦車隊を見つめて、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はぽつりと呟く。この地の領主は人形作りが趣味だと言うが、アレもそのための"素材"を抜き取られた領民の成れの果てなのだろうか。
「……だけど、だからこそ加減はしないわ。必ずや、その呪わしき生を終わらせてあげる」
領主までの道を阻むのであれば何れにせよ倒すしかない相手だ。忌まわしき走狗として酷使される者に安らかな眠りを与えん――決意と共に彼女の体からは紅いオーラが迸る。
「……腕の良い弓や銃の使い手がいたら此方に来て。貴方達には空から敵を狙撃してもらう」
「空から? ですがいったい……」
「どうやって飛ぶのか? ……こうするのよ」
事前に集めておいた闇の救済者達の前で、リーヴァルディは【限定解放・血の魔竜】を発動。あふれ出す真紅のオーラは繭のように彼女の全身を覆い、肉体を変化させていく。
「……限定解放。真紅の鱗、鮮血の躯体、悪しき光を羽撃かせ、現れ出でよ血の魔竜」
詠唱の完成と共に姿を現したのは、全長17mに及ぶ魔竜。背中には血色の魔力の光翼を持ち、真紅の鱗でその身を鎧った、大いなる幻獣の王への変身。怪物や魔獣の類は見慣れているはずの救済者達も、その威容には思わず息を呑んだ。
「……さあ、乗って」
「は! はいっ!」
魔竜の口から元と同じリーヴァルディの声がすると、闇の救済者達ははっと我に返り、弓や銃を持って彼女の背中に乗り込む。運搬可能な限界人数まで載ったのを確認すると、血の魔竜は光翼から魔力を放出し、戦闘機の如く戦場の空に飛び立った。
「オォォ……?!」
死地を駆け抜けるチャリオットの部隊とて、空中まで突撃を仕掛けることはできない。
上空に切り込んでくる真紅の影を見ても、彼らは動揺するばかり。対空手段を持たない敵軍を睥睨したリーヴァルディは、竜の顎に魔力を溜める。
「……なぎ払うわ」
極限に達した血の魔力が、浴びた者の生命力を奪う闇のブレスとなって解き放たれる。
上空より降り注いだ真紅の闇に呑み込まれた戦車隊は、軍馬も馭者も悉くかりそめの命を吸い尽くされ、干からびたミイラのように塵に還る。
「な、なんと凄まじい……! 俺達もやるぞ!」
竜の背中からその光景を見ていた闇の救済者達は戦慄しながらも、ブレスのなぎ払いから生き延びた敵に追撃を乱れ撃つ。慣れない空中からの騎射となるが、事前に選抜された射撃の腕利き揃いなだけはあり、安定した精度で馭者を撃ち抜いていく。
「……貴方達の仇は私達が必ずとるわ。だから今は眠りなさい。二度と目覚めること無く、安らかに……」
闇の救済者達と連携した上空からの集団戦術により、迅速に敵の戦車隊を一掃しながらリーヴァルディは悼みの言葉をかける。肉体も残さぬほど完全に滅ぼされた屍人たちは、もはや領主の悪趣味に利用されることも無いだろう。
「ウ……ァァ……」
力尽きる馭者のフードが脱げ、その下から覗いた表情はどこか安らかなように見えた。
戦場をなぎ払う真紅の魔竜は、悪しき領主のいる屋敷に向けて颯爽と飛んでいく――。
大成功
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愛久山・清綱
『闇の救済者』は、更に勢いを増してきている。
だが、それと同時に新たな敵が次々と姿を現し、
この世界に隠された『謎』が次々と深まっていく……
■闘
先ずは俺が斥候になり、敵を攪乱せん。
敵軍に対しあえて単騎で突っ込み、敵兵が最も密集している
場所目掛けて中距離から【空薙・舞】を放ち、幾多の【斬撃波】
による【範囲攻撃】を仕掛け隊伍を乱すのだ。
攻撃後は残った敵に反撃される前に後方へ全力【ダッシュ】、
闇の救済者と合流し再び攻撃へ!
■令
味方には動きが鈍っている・打ち損じた敵の撃破を要請。
また、『馬を鞭打った兵士』を見かけた場合はすぐに離れ、
決して正面に立たないよう伝える。吹き飛ばされる故。
※アドリブ歓迎・不採用可
「『闇の救済者』は、更に勢いを増してきている。だが、それと同時に新たな敵が次々と姿を現し、この世界に隠された『謎』が次々と深まっていく……」
百年に渡る支配を盤石としてきた闇の深さを、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は改めて実感していた。地上の領主を打倒したとて、地底にはそれに勝る脅威が数多あり、影から世界を支配している。どうすればこの戦いは終わるのか、答えはまだ見えない。
「だが、歩みを止める訳にはいかぬ」
ここで諦めれば、ようやく燃え上がった希望の火もまたたく間に消えてしまうだろう。
兵(つわもの)としての道を、務めを果たさんがために、彼は今宵も戦場へと赴いた。
「先ずは俺が斥候になり、敵を攪乱せん」
戦車隊で編成された敵軍に対し、清綱はあえて単騎で突っ込み、敵兵が最も密集している場所目掛けて居合の構えを取る。すると何もない空間から千を超える斬撃波が発生し、複雑な幾何学模様を描きながら戦場を踊り舞う。
「この刃からは逃れられまい……秘儀・空薙」
まだ突撃を受けるには遠い中距離から仕掛けられた範囲攻撃は、【全力による特攻】を仕掛けるしか能のない敵軍には効果的だった。一撃で仕留められずとも、幾多の斬撃波によって馭者の鞭さばきや馬の足並みが崩れれば隊伍は乱れる。それが彼の目論見だった。
「初撃の成果は上々といったところか」
残った敵に反撃される前に、ひと当てした後は後方に全力疾走。『闇の救済者』と合流した清綱は破邪の大太刀「空薙・剛」を抜き放つと、味方と共に再び攻撃へ打って出る。
「貴殿らには動きが鈍っているか、打ち損じた敵の撃破を頼みたい」
「承知した!」
要請に応じた黒騎士や咎人殺しが、斬撃波にかき乱された敵陣で武勇を振るう。力では劣るとはいえ、今日まで反抗のために牙を研いできた彼らもまた兵(つわもの)である。隊伍の乱れた敵の戦車を、巧みな連携で各個に撃破していく。
「『馬を鞭打った兵士』を見かけた場合はすぐに離れ、決して正面に立たないように。吹き飛ばされる故」
「それはぞっとしないな……分かった、警戒しておく!」
戦車隊の特攻の合図を見逃さないように伝えつつ、清綱は自らも大太刀を振るって敵を斬り伏せていく。車上にいる馭者を迎え撃つのに刃渡りの長い大太刀は相性がよく、幾戦もの戦いを経て進化を遂げた切れ味をもってすれば、ゾンビの軍馬を両断するも容易い。
「押し通らせて貰うぞ、屍人の兵士達よ」
まさしく一騎当千の兵ぶりを示し、並み居る敵を退けて猛進する鬼獣の巫。味方と一丸になったその勢いはもはや止められるものではなく、領主の館はもう目前に迫っていた。
大成功
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安寧・肆号
救済者!素敵な響きね。救いのためには、悪いものは退治されなきゃ。
小さなお人形だって、手を貸すわ!
ご挨拶ねお馬さん!
ポケットからクッキーを出したら「盲目ネズミ」を召喚。
ねぼすけネズミ、夢を見せて。
チャリオット部隊の近くに、あたしたちの幻覚を投影。互いを衝突させるよう幻覚を見せるわ。
形勢が崩れたらそのまま追撃。
プリンセスハートによる一斉発射、オーラ防御で救済者側を援護よ。
まあ、まあ!
赤ん坊の鳴き声が聞こえない?
耳鳴りかしら?
どうか、ご機嫌を損ねないで。
救済者が来たのよ!
悪い夢は退治されなきゃいけないのよ。
「救済者! 素敵な響きね。救いのためには、悪いものは退治されなきゃ」
血腥い戦場では不釣り合いなまでに無邪気な微笑みを浮かべて、安寧・肆号(4番目・f18025)ことアンネはかく語る。いつだって前向きで過去への執着も薄い彼女は、特段の恨み辛みがある様には見えないが、明るい未来のために悪者と戦う者たちは好ましい。
「小さなお人形だって、手を貸すわ!」
無垢でおてんばな振る舞いに惑わされてはいけない。彼女も経験を積んだ猟兵の1人。
怒涛の勢いで迫る戦車の群れ、その敵意と殺意を感じてなお笑っていられるのだから。
「ご挨拶ねお馬さん!」
腐臭を漂わせながら【駆け抜け、弾き、轢き倒す戦車】の部隊に、まずは軽く一礼を。
メルヘンチックな仕草でポケットを叩くと、中から出てくるのはお茶菓子のクッキー。それを対価にアンネが召喚するのは、いつだってうたた寝な【「盲目ネズミ」】。
「ねぼすけネズミ、夢を見せて」
クッキーを渡して囁くと、ネズミは眠たそうに目をこすりながら幻覚能力を発動する。
甘いピンク色の靄が辺りにかかったかと思うと、向かってくるチャリオット部隊の近くに、アンネ達にそっくりの幻覚が投影された。
「轢ケ、潰セ、殺セ……!」
突如現れた幻を本物と見分けられるほど、ゾンビの感覚は鋭くない。単純に敵に突撃するしか能のない彼らは、軍馬に鞭打って猛然と戦車を走らせ――そして互いに衝突する。
「「……!!?」」
アンネはこうなることを狙って幻覚を見せる位置を計算していたのだ。単純ゆえに重い自分達の突撃の威力を自ら味わうことになったチャリオットはバラバラに砕け散り、激突を免れた後続の者達も、隊列が乱れて速度が落ちる。
「形勢が崩れたわ、追撃よ」
「わかった、行くぞっ!」
そのまま胸部の「Anne*Core」から、魔力の一斉発射を放つアンネ。『闇の救済者』も好機とばかりに前進し、態勢を立て直される前に敵軍を蹴散らしていく。突進による突破力を活かせない乱戦に持ち込まれれば、戦車の脅威は激減である。
「あら、あら。はりきりすぎて転んじゃだめよ」
進撃する救済者達の後をとことこと、アンネは盲目ネズミを連れて追いかける。彼らが思わぬ反撃で傷つかないよう、オーラの護りで援護しつつ。マイペースに見えて実は冷静な彼女に隙はなく、一度崩れた敵陣はみるみるうちに瓦解していく。
「まあ、まあ! 赤ん坊の鳴き声が聞こえない?」
領主の軍勢との戦いも佳境に入ったそんな時、アンネはふと目を丸くして声を上げた。
常識的に考えれば、喧騒に満ちた戦場で聞こえるはずのない声。近くにいた救済者達もなんの事かと首を傾げる。
「私達にはなにも聞こえませんでしたが……」
「耳鳴りかしら?」
アンネ自身そう考えて首をかしげるが、耳をそばだててみると、やはり聞こえてくる。
哀しげに、苦しげに、何かを訴える様に鳴き喚くその声は、領主の館の中からだった。
「どうか、ご機嫌を損ねないで。救済者が来たのよ!」
赤ん坊をあやす声色で、アンネは優しくも高らかに告げる。この世に救いをもたらし、未来を切り拓く闇の救済者。彼らが来たからにはもう泣く必要はないのだと、暗い過去には終止符が打たれる時なのだと、憂いなどひとつもない表情で。
「悪い夢は退治されなきゃいけないのよ」
そして、ここにあるのはアンネが捨ててきた悪夢でもある。人形たる彼女のはじまり。
悍ましきゾンビのチャリオット部隊を退けた果てで、領主との対峙の時は迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ダッチェス』
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POW : Cry baby
【抱いている人形が布】を脱ぎ、【泣き喚く巨大な赤ん坊】に変身する。武器「【拷問具】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
SPD : Maultasch
自身の【魔力】を代償に、1〜12体の【相手の姿を模倣した人形】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ : Cheshire puss
自身の【魔力】を代償に、【使い魔(黒猫)】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【相手のトラウマに変身すること】で戦う。
イラスト:ち4
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「安寧・肆号」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ああ、なんてことなの! 役立たずの腐肉共、せっかく継ぎ合わせてあげたのに!」
死地を駆け抜けるチャリオットの部隊との戦いを制し、館への突入を果たした猟兵達。
そこに居た女領主『ダッチェス』は、猟兵を見るなりヒステリックに叫ぶ。領主らしい落ち着いた態度ではなく、マスクの下からでも分かる刺々しい敵意を隠そうともしない。
喪服を連想させる暗い色のドレスに、背後に控える不気味な猫型の使い魔、そして両腕に抱いた赤ん坊の人形――事前の情報から彼女が此の地を治める領主なのは間違いない。その地位に相応しいだけの実力を持つことも。
「貴方達、一体なにをしに来たの? 私からこの赤ちゃんを奪うつもり? そうなのね、そうなんでしょう!」
布に包まれた人形を大事そうに抱え、相手の言い分も聞かずに思い込みで喚き散らす。言葉は通じても会話が成り立たない類の相手なのはすぐに分かった。己の領地を脅かす者――と言うよりは大事な人形を脅かしにきた者、と彼女の中では解釈されているようだ。
「許さないわ、絶対に、絶対に! 貴方達全員人形にしてあげる!」
これまでに何人の民が彼女のヒステリーに殺され、人形の素材にされてきたのだろう。
横暴極まる所業にはここで終止符を打ち、此の地をオブリビオンの支配から開放する。敵軍の残党は『闇の救済者』達に抑えられており、今なら余計な邪魔が入る心配もない。
骸人形の製作者にして狂乱する女領主を討つために、猟兵達は再び戦闘態勢を取った。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
フン、いちいち喧しい奴だ
お前のような奴と同じ人形遣いとは思われたくは無いな、まったく
エギーユ・アメティストとデゼス・ポアを装備
ダッシュと見切りを駆使して敵の拷問具の攻撃を躱し、カウンターで鞭を巧みに振るい、先端の紫水晶を巨大化した人形に叩き込む
更にデゼス・ポアの刃で斬り付けて、ダメージを重ねていく
親の因果が子に報い…と言うつもりはないな
お前達二人とも、救い難い悪党だ
UCを発動
巨大化した人形の手足を刃で串刺しにして動きを止める
武器をナガクニに持ち替えたら、ダッチェスに切り込んで攻撃
同時に動きを止めた人形にデゼス・ポアの刃を更に叩き付ける
子守歌なら好きなだけ歌うがいい
骸の海の底でな
「フン、いちいち喧しい奴だ」
人形を我が子のように愛でながら、ヒステリックに喚き散らす女領主を見て、キリカは不快そうに鼻を鳴らす。この世界で悪辣なヴァンパイアと対峙するのはいつもの事だが、今回の相手は奇しくも"人形遣い"である。
「お前のような奴と同じ人形遣いとは思われたくは無いな、まったく」
風評被害も甚だしいと、彼女は呪いの人形を傍らに浮かべ、紫水晶を先端に取り付けた白い鞭を構える。仮にも領主なら相応の強敵だろうが、同じ職能で遅れを取る気はない。
「ああ、私の赤ちゃん、あいつらを蹴散らして!」
ダッチェスが叫ぶと抱いている人形が布を脱ぎ、泣き喚く巨大な赤ん坊に姿を変える。
異様なる【Cry baby】はその体格に見合った拷問具を振りかざし、猟兵達を嬲り殺しにせんと襲い掛かってきた。
『オギャァ、オギャァ!』
「ますます喧しくなったな」
やれやれと肩をすくめながら、キリカは拷問具の攻撃をダッシュで躱す。赤ん坊の動きは緩慢かつ単純で、攻撃を見切るのはさほど難しくはない。相手が次の攻撃に移る前に、女傭兵は鞭を巧みに振るってカウンターを仕掛け、先端の紫水晶を赤ん坊に叩き込んだ。
『オギャァァァァ!!?』
"蠍の尾"の異名をとる紫水晶の針に打たれて、人形がひときわ大きな泣き声を上げる。
そこにデゼス・ポアが「キャハハハハハ」と笑いながら斬りかかり、全身から生やした錆びた刃でダメージを重ねていく。
「なにをするのッ?!」
"我が子"を傷つけられて激昂するのはダッチェス。人形を巨大化させる代償として理性を失いつつある彼女は半狂乱になって怒鳴り散らすが、それでキリカが怯むはずもない。狂乱とは真反対の冷静かつ冷ややかな眼差しで、歪んだ親子を睨め付ける。
「親の因果が子に報い……と言うつもりはないな。お前達二人とも、救い難い悪党だ」
発動するのは【苦痛の嵐】。デゼス・ポアの躯から幾つもの錆びた刃が放たれ、巨大化した人形の手足を串刺しにする。それは次元すらも超えて忌むべき異形どもを切り裂き、耐え難いほどの苦痛に悶えさせるのだ。
『オギャァ! オギャァ! オギャァァ!!』
四肢を刃で縫い留められ、身動きの取れない赤ん坊の泣き喚く声が屋敷中に響き渡る。
それを尻目にキリカは武器を白鞭から短刀「ナガクニ」に持ち替えると、巨大な人形の横をすり抜けてダッチェスの元に切り込んでいく。
「子守歌なら好きなだけ歌うがいい。骸の海の底でな」
「こ、来ないで……ッ!!」
拒絶の叫びは虚しく響き、キリカの振るった短刀がダッチェスの体を深く斬り裂く。
同時に、動きを止めた赤子の人形へと、デゼス・ポアの刃がさらに叩き付けられた。
「嗤え、デゼス・ポア。貴様に出会った不運な者達を」
「ヒヒヒヒャハハハハハハハハ!」
親子の苦痛の叫びすらかき消すほどに、呪いの人形の哄笑は高らかに戦場に鳴り響く。
人形遣いとしての力量と個人としての実力を、決定的に見せつける戦いぶりであった。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
何が許さないだよ、今まで罪の無いヒト達を散々ヒドイ目にあわせてきて
ボクはアナタを許さないよ覚悟して!
人形使いなら接近してしまえば、なにこの黒猫はお前からやられたいのか
なに黒猫の形が変わっていく?え、お前は・・・そんな倒したはずのブラキエルが何でここに
ブラキエル戦での石化されたトラウマが甦る
イヤ・・・嫌だ、もう石になんてなりたくない、止めてー
恐怖のあまりその場から逃げ出そうとするが石化の光を浴びて徐々に石化していく、苦し紛れにUC発動するが防がれてしまう
イヤだ石になんてなりたくない降伏するからもう逆らいませんから
うぅ反抗者が圧政者に屈するなんて
え、ボクを人形にそんな
その後魔力で洗脳され操り人形化
「何が許さないだよ、今まで罪の無いヒト達を散々ヒドイ目にあわせてきて」
自らの悪行をまるで顧みない女領主の発言に、ニクロムの反抗心が轟々と燃え上がる。
反抗の竜チタノに与えられし妖刀を握りしめ、仮面と刃に炎を灯し。まっすぐな眼差しと毅然とした表情で、彼女はダッチェスに宣言する。
「ボクはアナタを許さないよ覚悟して!」
「ふん。虫ケラ風情に許されなくて何だというの!」
人間のことをあからさまに見下した傲慢な態度に、少女の反抗衝動はますます昂ぶる。
その気持ちに衝き動かされて彼女は駆け出し、まっすぐに敵の首級を狙いにかかった。
「人形使いなら接近してしまえば……なにこの黒猫は」
ひと息に領主を切り捨てようとしたニクロムの前に立ちはだかったのは、ダッチェスの魔力を代償に呼び出された黒猫の使い魔だった。お前からやられたいのかと威嚇する彼女にニヤニヤと笑いかけながら、それは能力を発動させる。
「なに、形が変わっていく? え、お前は……」
猫から人に――いや、正確には天使の姿に。白い翼をまとい、片手には長剣を携えた、その美しい青年にニクロムは見覚えがあった。それまでの威勢はウソのようにかき消え、刀を握った手がガタガタと震えだす。
「そんな、倒したはずのブラキエルが何でここに」
大天使ブラキエル。それはかつてアックス&ウィザーズに侵攻した猟書家の首魁であり、猟兵達との決戦のすえ討ち取られたはずの存在だった。ニクロムは以前彼との戦いで石化させられた事があり、その記憶は今もトラウマとして心に刻まれていた。
「イヤ……嫌だ、もう石になんてなりたくない、止めてー」
ダッチェスの黒猫が化けたそれは、まさに彼女のトラウマを蘇らせるための姿だった。
相手が最も恐れるトラウマに変身することが、【Cheshire puss】の特殊能力なのだ。
「ひぃっ」
ニクロムは恐怖のあまりその場から逃げ出そうとするが、その寸前に大天使の光輪から光が放たれる。それは前にも彼女が食らったことのある石化の光――避けきれずに浴びた四肢の末端から、体が徐々に石になっていく。
「う、うわぁっ、やだぁっ」
悲鳴を上げながらユーベルコードを発動し、反抗の竜を喚んで反撃を仕掛けるものの、そんな苦し紛れの攻撃が通用する相手ではない。チタノの放った光線は防がれてしまい、お返しとばかりに浴びせられた天使の光によって、身体の石化がさらに加速する。
「イヤだ石になんてなりたくない降伏するからもう逆らいませんから」
「あらあら、私のことを許さないんじゃなかったのかしら?」
石になった手ではもう妖刀も握れない。トラウマに完全に支配されてしまった少女は、嘲り笑うダッチェスに見下されながら、みっともなく床に這いつくばって命乞いをする。惨めさを自覚していても、今の彼女にはそれしか出来ることがなかった。
「うぅ反抗者が圧政者に屈するなんて」
「身の程を弁えない反抗の末路なんてこんなものよ」
半仮面の下からこぼれ落ちた涙が、石になった肌の上を滑っていく。そんな哀れな少女を踏みつけにして、女領主は高笑い。こうなってしまってはもはや反抗の手立てもない。
「さあ、ではまず貴女から人形にしてあげるわ」
「え、ボクを人形にそんな――」
その後、ニクロムはダッチェスの魔力により洗脳され、あのゾンビ達と同じ操り人形にされてしまう。この人形化を解く術は、他の猟兵にダッチェスを倒してもらうしかない。
ぽいとモノのように部屋の片隅に放棄された彼女が、解放されるのはいつだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
「アリサ―!貴女の出番よ、何とかしなさい!!」
「誰の事かしら。私の名前はヴォルフガングよ!」
休憩中なのにやぁねぇと嘆く。
ダッチェスが煩かったので、仕方なくピンチだった所に現れる。
「アリサ、何とかしなさい!」
「ダッチェス。何をこんな奴等に手間取っている。貴様は仮にも領主、この程度の敵など軽く片づけて見せろ!」
「え、ごめんなさい…」
つい謝ってしまう領主。
「フン――まぁ、いい。今回は特別大サービスだ。『滅亡卿』ヴォルフガングの戦いを見せてやろう!」
そんな中で、カビパンはゆっくりと歩みを進めていく。
一体何が始まるのか、全員が固唾を飲んでいた。
それはそれは芸術的な土下座と謝罪と命乞いであったという。
「まったく……闇の救済者とか言ったかしら。面倒な連中ね」
斬り裂かれたドレスと流れた血をなぞって、怒りと不快感に顔をしかめるダッチェス。
領主としての安泰な暮らしを、そして"我が子"の安息を乱す者は許せない。だが自分がいちいち手を下すのも億劫だと、彼女はこんな時の為に雇っておいた配下を呼び出す。
「アリサ―! 貴女の出番よ、何とかしなさい!!」
「誰の事かしら。私の名前はヴォルフガングよ!」
休憩中なのにやぁねぇと嘆くのは、アリサ改めヴォルフガングもといカビパンだった。
女領主の所に面接に行って採用されたという話は、どうやらガセではなかったらしい。
雇う側からすれば目障りな猟兵を同士討ちさせられれば良いとか考えていたのだろう。しかし問題は雇った相手がとんでもないくせ者だったという事だ。
「アリサ、何とかしなさい!」
カビパンが渋っている間にも猟兵は次々と屋敷に突入してくる。現状でもせいぜい五分といった所のダッチェスが、このまま持ちこたえられるかは極めて怪しい。本人はそれを分かっているのかいないのか、ヒステリックに叫び散らして"アリサ"を呼びつける。
「煩いわねぇ、やれやれ」
仕方なくカビパンは重い腰を上げるが、かといって彼女が素直に領主に加勢するかと言えばそんなことはない。戦場に姿を現した彼女は急にキリッとした立ち居振舞いを取り、狼狽えているダッチェスを大声で一喝した。
「ダッチェス。何をこんな奴等に手間取っている。貴様は仮にも領主、この程度の敵など軽く片づけて見せろ!」
「え、ごめんなさい……」
雇われのクセして領主よりも偉そうな態度に、つい謝ってしまうダッチェス。いつの間にか瀟洒な軍服姿に着替えていた彼女は、真面目にしていれば凛々しい女軍人に見える。その外面の良さで衆目を引き人心を掌握するのが彼女の処世術のひとつである。
「フン――まぁ、いい。今回は特別大サービスだ。『滅亡卿』ヴォルフガングの戦いを見せてやろう!」
謎のカリスマによって本当の領主さえ一時的に萎縮させたカビパンは、居合わせた者達が困惑する中でゆっくりと歩みを進めていく。一体何が始まるのか、この状況では誰もが固唾を飲んで様子をうかがう他にない。
そして彼女は――土下座した。
「他の人はどうなってもいい! 私だけは助けて!!」
【どうかお助け下さい!】と額を床に擦り付ける、それはそれは芸術的な土下座と謝罪と命乞いであった。周囲の緊張はたちまち呆れと困惑に変わり、戦場の空気が弛緩する。
「な……なにをやっているの貴女は……?」
「こちらの領主なら煮ても焼いても構いません!」
「ちょっと?!」
雇い主を庇おうという素振りすらカケラも見せず、むしろ全力で売っていくスタイル。
あまりにも汚い人間の深淵に触れてしまったダッチェスは、腹が立つのを通り越して、だんだん気分が悪くなってきた。
「これが人間のやることなの……? 愚かすぎるわ……」
恥も外聞も風評もプライドも捨てたカビパンの命乞いは、結果的にダッチェスの精神にダメージを与えていた。回りくどい経緯ながらも結果的に猟兵を利す形になったようだ。
そして彼女が動揺から冷めやらぬうちに、猟兵の攻勢はより激しさを増していく――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
大鎌を武器改造して銃剣に変形して"吸血鬼狩りの銃"と二刀流を行い、
"闇の精霊結晶"を投擲して周囲の戦場を暗闇で覆い自身に闇の魔力を溜めUCを発動
…ふむ。私の姿をコピーしたのは驚きだけど…それだけでは片手落ちよ?
それを今から教えてあげるわ。御自慢の人形を使って…ね
"精霊石の耳飾り"に闇の精霊を降霊して闇中の人形達の集団戦術を暗視して見切りつつ、
完全に闇と同化して闇から闇へ瞬時に転移する早業で敵の死角に切り込み、
闇に紛れて告死の呪詛を纏う弾丸を乱れ撃ちして敵陣をなぎ払い、
本体の死角に転移して追撃の死属性攻撃を行う
…互いに相容れないと認めた以上、手向けは不要ね
…この暗い世界を解放する礎となるがいい
「ああ煩い、煩いわ! お前達の相手なんてこれで充分よ!」
猟兵に攻め込まれたダッチェスは、苛立ちを隠そうともせずに【Maultasch】を発動。
召喚された人形が、猟兵達を模倣したカタチに姿を変えていく。その標的とされた者のひとりに、リーヴァルディがいた。
「……ふむ。私の姿をコピーしたのは驚きだけど……それだけでは片手落ちよ?」
見た目だけなら自分そっくりの人形と対峙し、彼女はそう言って大鎌"過去を刻むもの"を銃剣に変形。元から所持していた"吸血鬼狩りの銃"と合わせて二刀流の構えを取る。
吸血鬼狩人の実力は、身につけた技と多彩な装備にある。姿形だけを真似られようと、彼女が恐れる理由は何ひとつ無かった。
「……それを今から教えてあげるわ。御自慢の人形を使って……ね」
「なにを……?!」
訝しむダッチェスの前で、リーヴァルディは身につけた"精霊石の耳飾り"に闇の精霊を宿し。暗闇の中から迫る人形達の動きをはっきりと見通して、その集団攻撃に対抗する。
【吸血鬼狩りの業・告死の型】。自身を完全に闇と同化した彼女は闇から闇へ転移する能力によって人形の攻撃を避け、同時に敵の死角に瞬時に切り込んだ。
「……さあ、大人しく運命を受け入れなさい」
影法師の如く人形共の背後に現れたリーヴァルディの両手には、二丁のマスケット銃。
引き金を絞れば呪詛を纏った弾丸が4発、立て続けに乱射され――その全てが過たず、自身を模した人形にヒットした。
『―――!!』
弾丸に込められていた呪いは"告死の呪詛"。1発毎に対象の寿命を4分の1ずつ削り、全て命中すれば死を与える必殺の魔弾。その力は生物ではない人形にさえ効果を及ぼし、崩壊という"死"をもたらした。
「な……なにが起こったの?!」
銃声が響いたかと思えば人形達が塵になって消えていく、その光景に最も衝撃を受けたのはダッチェスだ。精妙に相手を模倣したはずの人形達が、まさか手も足も出ないとは。
リーヴァルディからすればこの結果は当然。自分の似姿が朽ちていく様にも動揺せず、敵がまばたきした瞬間にはもう、転移によって視界から姿を消している。
「ど、どこへ……!」
狩人の次なる転移先は女領主の死角。彼女のマスケット銃には仕掛けがあり、銃身内部に弾丸を転送することで即座に再装填と連射が可能になっている。人形をなぎ払った後の二丁の銃口には既に弾が込められ、その照準を人形の操り手に合わせている。
「……互いに相容れないと認めた以上、手向けは不要ね」
「ッ!!」
酷薄なまでに冷たい言葉に、ダッチェスが振り返る。だが遅い。彼女が何かアクションを起こすよりも、リーヴァルディがトリガーを引き絞るほうが。二連装の口径二丁から、告死の追撃が放たれた。
「……この暗い世界を解放する礎となるがいい」
4つ分の銃声が屋敷に鳴り響き、4発の弾丸が闇を貫く。そのうちの2発をダッチェスは辛うじて躱したものの、残る2発は彼女のドレスに穴を開けるだけでなく、その肉体を撃ち抜いた。
「かは……き、貴様ッ!!」
告死の呪詛により寿命の半分を一瞬にして失った女領主は、怒りと憎しみを込めて射手を睨みつける。その視線をいつもと変わらぬ冷静沈着な顔で受け流すと、リーヴァルディは再び闇に紛れて追撃の機会を窺うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
春乃・結希
あなたの子供を取ったりしませんよ
私が欲しいのはwithと私の子供ですし
わぁ。私の人形っ?
うーん、さすが私…人形になっても可愛い!
…でも可愛さだけでは駄目なんですよ
心が無いなら、想いが無いなら、私は私で居られんから
UC発動
そう…だから翼も生やせない
もし力や技を完璧に模倣していたとしても
心で生やす翼の分だけ、私の方が絶対に速い
自身の怪力は知ってるから、囲まれて捕まらないように一撃離脱を繰り返す
痛みで怯まないのも知ってるから、急所を狙って一撃で倒したい
踏み込みも、斬撃も、私が先に届かせる
withの恋人は、私以外ありえんから
大切な赤ちゃんと離れるのが嫌なら
海に還ればずっと一緒に居られますよ、きっと
「これは私の赤ちゃんよ! 誰にも渡さないわ、絶対に、絶対に!」
「あなたの子供を取ったりしませんよ。私が欲しいのはwithと私の子供ですし」
窮地に立たされて人形を抱きながら喚く女領主に、結希は最愛の剣を握りしめながら、さも当たり前のごとく言った。人と剣とでは普通子を成すことはできないが、そんなのは些細な事だとばかり。紛れもなく純粋だが、余人には理解しがたい"愛"である。
「そんな鉄の塊が恋人のつもり? 滑稽ね、近寄らないで!」
少なくとも人形を我が子と愛でるダッチェスにそれをどうこう言う資格はなかろうが。
思い込みの激しい彼女は【Maultasch】を発動し、魔力を代償に相手そっくりの人形を数体作り上げ、自身の代わりに襲い掛からせた。
「わぁ。私の人形っ?」
見た目だけなら対象の姿を完璧に模倣したダッチェスの人形を見ると、結希も流石に驚いたようで――いや、驚いていると言うよりは、その反応はむしろ喜んで感心していた。
「うーん、さすが私……人形になっても可愛い!」
「は……? なにを言っているのよ、貴女は」
逆に清々しいクラスの自画自賛。それは幾重にも重ねた『自分は強い』という自己暗示の結果、自身の理想化であり、辛い時でも彼女の心を支える呪縛であり処世術であった。可愛いと思うこと、自分を肯定することは、何であれそのまま彼女の強さに繋がる。
「……でも可愛さだけでは駄目なんですよ。心が無いなら、想いが無いなら、私は私で居られんから」
自分の似姿と愛剣で斬り結ぶうち、結希の顔つきが戦士のそれに変わる。人形にはない心の力、自己暗示の力が彼女を真の姿へと近付けていく。全身から紅蓮の焔が立ち上り、さながら不死鳥の如く【緋色の翼】を広げ。
「そう……だから翼も生やせない」
もし力や技を完璧に模倣していたとしても、心で生やす翼の分だけ、自分の方が絶対に速い。その確信こそが彼女に驚異的な反応速度とスピードを授けた。巨大な剣を手の延長のように振り回し、数で迫る人形達を手数の差で押し返す。
「な……なにをやっているの、さっさと始末なさい!」
焦ったようなダッチェスの声が聞こえる中、結希の集中力は最大まで高められていた。
目の前の人形がどう動き、どんな技を繰り出すのか、手に取るように分かる。だって、それは自分だから。『withと共に在る』ために積み重ねてきた理想の過程だから。
(自分の怪力は知ってる。痛みで怯まないのも知ってるから)
囲まれて捕まらないように一撃離脱を繰り返し、急所を狙って一撃で倒す。速度で勝るだけでなく、対"自分"を想定した結希の戦法は人形達を翻弄していた。似たような武器を使って、似たような動きをしても、常に半歩以上の差が両者の間にはあった。
(踏み込みも、斬撃も、私が先に届かせる。withの恋人は、私以外ありえんから)
どれだけ巧みに似せられても、心のない偽物には負けられないという想いが、結希の焔をさらに燃え盛らせ。戦場を煌々と赤く照らしながら、彼女は全ての人形を斬り捨てる。そのまま『with』をくるりと振り回し、遠心力を活かして人形の操り手の元に。
「大切な赤ちゃんと離れるのが嫌なら、海に還ればずっと一緒に居られますよ、きっと」
「な――……!!!」
地面スレスレを飛翔するように、焔翼を羽ばたかせて急接近した結希の斬撃が、反駁の間も与えずに敵を斬り伏せる。その一撃は重く、速く、鋭く――そして迷いがなかった。
愛する"我が子"と共に斬られたダッチェスのドレスが、赤い血に染まっていく。彼女の末路が結希の言葉通りになるのは、このままなら遠い未来でもないだろう。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
何人もの領民を人形やゾンビにして虐げておいて…いまだに認識できていないとはね。
呆れた様に一つ溜息を吐きつつ、爆炎の魔弾【属性攻撃、高速詠唱】を手にした人形へ向けて高速で一発。
敵がUCを使うと共に、こちらも【神滅の焔剣】で真の力を解放。
へぇ、わたしの姿をした人形ね…よくもこんな粗悪品を嗾けてくれたものね…真祖の吸血姫を舐めるな!
自身の魔力【属性攻撃、高速詠唱、全力魔法】と併せて一気に神滅の焔を放出。
手近な数体を業火で焼き払い、焔のカーテンで状況把握ができなくなってる間に高速移動で一気に飛び回り、自身の模倣人形を全てレーヴァテインで焔断し、そのまま敵本体も人形ごと串刺しにして焼き尽くしてやるわ!
「何人もの領民を人形やゾンビにして虐げておいて……いまだに認識できていないとはね」
呆れたように一つ溜息を吐きつつ、フレミアは敵が手にした人形へ向けて爆炎の魔弾を詠唱する。高速で放たれたその一発から、ダッチェスは慌てて"赤ちゃん"をかばった。
「熱っ……何をするのよ、私の子に!」
ダメージは軽い火傷程度だが、人形を狙った攻撃は彼女を激昂させた。血の混じった唾を吐いて金切り声を上げながら、女領主は敵対者の姿を模倣した人形の群れを召喚する。
「へぇ、わたしの姿をした人形ね……よくもこんな粗悪品を嗾けてくれたものね……」
ダッチェスが【Maultasch】を使うと共に、フレミアも【神滅の焔剣】を発動して真の力を解放する。真祖の魔力をまとい、具現化させた神殺しの焔を剣の形に圧縮しながら、その眼差しは自分を模した人形どもをきつく睨みつけている。
「真祖の吸血姫を舐めるな!」
ただ姿形を模しただけの木偶にプライドを侮辱され、今度は彼女が憤慨する番だった。
燃え上がる焔は彼女の怒りを体現するかのように、真祖の魔力と併せて一気に戦場へと放出される。誇り高き吸血姫に対する無礼を、灰と死によって贖わせるために。
『――……!!』
オリジナルに飛びかかろうとしたフレミアの人形が数体、業火によって焼き払われた。
最も不運だったそれら以外の人形も、戦場を覆った焔のカーテンによって分断される。敵が状況把握ができなくなっている間に、フレミアは背中から4対の真紅の翼を生やし、目にも止まらぬ速さで戦場を飛び回る。
「こんなもの、灰すら残さないわ」
吸血姫がその手より放つのは、神魔をも滅ぼし焔断するという神焔剣レーヴァテイン。
絶大な熱量を極限まで圧縮したその刃は、人形どもの躯体をバターのように焼き切り、塵一つ残さず燃やし尽くした。
「な……何が起こっているの……?」
めらめらと燃える焔のカーテンに阻まれて、状況を把握できていないのはダッチェスも同じだった。ただ、焔の中で人形の反応が次々と消えていくのは分かる。最初は12いた人形はいつの間にか半分に、そして3体、2体、1体――。
「次は貴女よ」
「なッ!?」
カーテンの向こうから飛び出してきたのは、怒りの焔をまとったフレミア。その手の剣には自身の模倣人形のうち1体を貫いたままだ。覚醒によって竜種以上の膂力を共に得ている彼女は、その体勢でもまったく速さが落ちない。むしろ加速しているように見える。
彼女はその瞬間移動と見紛う速度で敵に接近し、そのまま焔剣の切っ先を突き立てた。
「人形ごと焼き尽くしてやるわ!」
「や、やめ、なさ……あ、あぁぁぁぁぁッ!!!!!?」
レーヴァテインに串刺しにされたダッチェスの絶叫が、焔に熱された大気を震わせる。
神滅の焔に内から焼き焦がされる痛みは、ただ斬り殺されるよりも遥かに苦痛だろう。フレミアの怒りに触れてしまった女領主には、後悔や懺悔の機会さえ与えられなかった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
許さないのはこちらだよ…
幾人もの人々を犠牲にした貴女は決して許さない…
幻影術式【残像、呪詛、高速詠唱】と呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱】を起動…。
黒猫が襲い掛かって来たのを幻影を囮にし、呪力の縛鎖で拘束…。
【unlimitedΩⅡ】を発動し、黒猫を串刺しにして床に縫い付けて更に拘束し、終焉の呪力で侵食…
敵が更に模倣人形や赤子を仕向けて来たら、こちらも更に【unlimitedΩ】【unlimitedΩⅡ】を発動し、一斉発射…!
終焉の魔剣による嵐で敵人形達を串刺しにしてなぎ倒し、自身も模倣人形を凶太刀、神太刀で切り払って始末し、最後は敵本体に魔剣の一斉斉射を叩き込むよ…!
人形程度じゃ止められないよ…
「きいいぃぃぃぃっ! 許さない、許さないわよ、お前達ッ!」
「許さないのはこちらだよ……」
自身と"赤ん坊"が傷つくたびにヒステリーを悪化させ、罵声を吐き散らすダッチェス。
その醜態に璃奈は冷ややかな視線で応じ、二振りの妖刀を構える。女領主の悪辣な所業を見せつけられ、怒りが溜まっているのはこちらも同じことだ。
「幾人もの人々を犠牲にした貴女は決して許さない……」
「煩いっ! あんな奴らどうなったっていいのよ!」
領民を虫ケラ程度にしか考えていない吸血鬼に、踏みにじられた命の重みを理解できるはずもない。女領主は身勝手な怒りのままに【Cheshire puss】を璃奈にけしかけた。
「自分のトラウマに襲われて死ぬがいいわ!」
「お断りだよ……」
変身能力を持った黒猫が襲い掛かって来るのを見ると、璃奈は呪力による術式を起動。まずは幻影に紛れて姿を隠しながら、自分によく似た幻影を出現させ、攻撃の囮にする。
『ウニャッ?!』
爪を立てた標的に手応えがなく、黒猫が困惑した直後。足元から呪力の鎖が飛び出し、敵を縛り上げた。いかに特殊な能力を持っていようと、発動する前に拘束してしまえば、たかが使い魔一匹恐れる必要もない。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
黒猫の拘束に成功すると、璃奈はユーベルコードを発動。無数の魔剣・妖刀により敵を一斉攻撃する、彼女が得意とする技のひとつの改良版【unlimitedΩⅡ】を叩き込む。
『ギニャァーッ!!?』
放たれた魔剣達は矢のように黒猫の全身を射抜き、串刺しにして床に縫い付け、拘束をより完全なものとする。さらに剣に込められた"終焉"の呪力には、標的を侵食し力を奪う効果もあった。
「ちっ、役立たずめ……!」
使い魔を無力化されたダッチェスは舌打ちしつつ、さらに璃奈の姿を模倣した人形達を差し向けてくる。だが、不気味なほど自分によく似た人形に囲まれても璃奈は動揺せず、こちらも更に魔剣を顕現させて迎え撃つ。
「人形程度じゃ止められないよ……」
改良版の【unlimitedΩⅡ】だけでなく、純粋な威力の高い【unlimitedΩ】も併用し、一斉発射。極限まで呪力で強化された終焉の魔剣による嵐が、敵の人形達を串刺しにしてなぎ倒していく。自分と同じ顔をしていようが、そこに容赦は一切ない。
「私の人形が……!」
「次は貴女の番だよ……」
璃奈自身も妖刀「九尾乃凶太刀」と「九尾乃神太刀」を振るい、魔剣の嵐から逃れた敵を切り払って始末していく。バラバラになった模倣人形の残骸が散らばり、それ以上邪魔をする者がいなくなると、彼女はいよいよ魔剣の切っ先を敵本体に向ける。
「『unlimited curse blades』……!!」
「が、ぁ……っ!!?」
叩き込まれた魔剣の一斉斉射は、女領主の四肢や胴体を次々と射抜き、鮮血を散らす。
ぽたぽたと滴り落ちた雫が床に赤い華を咲かせ、絨毯を汚していく――それでもまだ、彼女は大事な"赤ん坊"を取り落としはしなかった。
大成功
🔵🔵🔵
シャオロン・リー
キイキイ喧しわ、その口引き裂いたろか
俺のトラウマ
燃える大地、いくら走ってもたどり着けない壊滅するアジト
組織の壊滅の時に間に合わなかったあの日のこと
「どうして来てくれなかった」と頭領の姿をした偽物が俺に銃を向ける
ああ、俺を遠方に配置した頭領がそれを言う訳ない事はわかっとる
ただ俺が俺をずっと責めとるだけや
宝蓮灯
躱しはせえへん
傷は全部俺の力になる
俺が頭領に槍を向けられるのはあの日を乗り越えられたからとちゃうねん
俺たちは味方同士でもいつだって殺しあえる
そんな仲やったんやから、今日もそうするだけや
俺の槍は頭領のいない内に二槍に増えた
この二槍で頭領を貫いて、後ろのクソアマもぶち貫く
さあ、蹂躙といこうやんけ
「キイキイ喧しわ、その口引き裂いたろか」
何かにつけてヒステリックに騒ぐ女領主に心底嫌そうな顔をして、シャオロンは殺意の籠もった視線を向ける。あるいは縫い付けてやったほうが少しは静かになるだろうか? どちらにせよ殺すことに変わりはないが。
「野蛮な男ね……貴方みたいな奴が屋敷に上がるのを許可した覚えはないわよ!」
何を言われたところでダッチェスのヒステリーは収まらない。髪を振り乱して叫ぶと、黒猫の使い魔【Cheshire puss】が出現し、青年のトラウマとなる姿に変身を始めた。
「俺のトラウマか」
黒猫が変身したものを見て、シャオロンの記憶から呼び覚まされた光景は燃える大地、いくら走ってもたどり着けない壊滅するアジト。ヴィラン時代の組織【鋼の鷲】の壊滅の時に間に合わなかったあの日のことだった。
『どうして来てくれなかった』
と、頭領の姿をした偽物が彼に銃を向ける。偽物だと分かっているのに心がざわつく。
あの日、遠方にいた自分は組織の数少ない生き残りの1人となり、収監からヒーローへの転属を経て、今は気儘な武侠の身だ。だが例え身体は自由の身になっても、心の一部は今も燃えるアジトに置き去りになったままだ。もう過去を取り返すことはできないのに。
(ああ、俺を遠方に配置した頭領がそれを言う訳ない事はわかっとる。ただ俺が俺をずっと責めとるだけや)
偽物から放たれる言葉はシャオロン自身の心の声だ。どうしたって癒えきらない心の古傷がじくじくと疼く。だが――こんなところで立ち尽くしたままブチ殺されたりすれば、それこそ頭領に笑われるに違いない。
「はは、どうかしら! そのまま自分のトラウマに取り殺されて――」
「黙れや、クソアマ」
調子に乗る女領主の言葉を、低く、絞め殺すような声で遮る。その気迫にダッチェスは思わず息を呑み、慌てて「殺しなさい!」と命じる。シャオロンの頭領に化けた使い魔が恨めしげな顔をしてトリガーを引き、乾いた発砲音が屋敷に鳴り響いた。
『小龍……』
放たれた銃弾をシャオロンは躱さなかった。姿は偽物とはいえダメージだけは本物だ。
だからこそ受け止める。彼が心身に受けた傷は全て、【宝蓮灯】により彼の力になる。
「……ほんなら、闘ろうか」
「なっ……貴様っ?!」
シャオロンの全身が闘志と殺意で覆われ、朱いニ槍が偽物に突きつけられるのを見て、ダッチェスは驚いた。誰にとってもトラウマを突きつけられるのは耐え難い苦痛のはず、それをこの男は真っ向から闘うというのか。
「まさか、この瞬間にトラウマを克服したとでもいうの?!」
「ちゃうねん」
シャオロンが頭領に槍を向けられるのは、あの日を乗り越えられたからではなかった。
悪党(ヴィラン)の絆とは余人が考えるようなお綺麗なものではないのだ。例えるならそれは血の匂いと死臭の染み付いた、固く切れない鉄の鎖である。
「俺たちは味方同士でもいつだって殺しあえる。そんな仲やったんやから、今日もそうするだけや」
楽しく闘ろうや、なぁ? と、本気の殺意を頭領の偽物に向けて、彼は前に踏み出す。
さらに銃撃を浴びせられても怯まず、退かず。弾倉が空になったタイミングでちょうど間合いに入ると、左右に握りしめた槍を突き放つ。
「さあ、蹂躙といこうやんけ」
彼の槍は頭領のいない内にニ槍に増えた。竜氣を帯びた槍と爆炎を発する槍のニ槍が、頭領に化けた使い魔の頭蓋と心臓を貫き――そのまま後ろにいるダッチェスもぶち貫く。
「がは……ッ!!?」
トラウマから受けたダメージをそっくり返すような強烈な刺突。衝撃で吹き飛ばされた女領主の体は向こうの壁に叩き付けられ、串刺しにされた使い魔はその場で崩れ去った。
消えていく頭領の似姿を眼に焼き付けながら、シャオロンは敵から奪った生命力で傷を癒やす――体に刻まれた弾痕が消えても、心に残ったままの傷は、やはり疼いていたが。
大成功
🔵🔵🔵
瀬河・辰巳
耳がキンキンする…この領主、普通に面倒でお断りのタイプだな。
死角から弓を放つと共に、UC発動用にわざと赤子の人形を狙う形で影に襲撃させる。
トラウマで出てくるのは、幼い頃に一番の相棒だった熊。吸血鬼に襲われた際に自分を庇って八つ裂きにされた、当時の無残な姿。
多くの友(動物)と母を失ったあの日の光景と、血の臭いや味を思い出して…理性なんかブッ飛ばして、衝動のままに殺したくなるね。
「ははは……かつての相棒の、無残な最期の姿か……ますます殺意が湧くな!!」
理性を失った攻撃に見せかけて、使い魔を縛り上げつつUC発動。領主にもしっかりトラウマを見せて、影の囮を利用し死角から使い魔ごと鎌で切り伏せてやる。
「耳がキンキンする……この領主、普通に面倒でお断りのタイプだな」
劣勢になるにつれて喧しさを増す敵に、うんざりだと言いたげな表情で辰巳がぼやく。
さっさと仕留めて黙らせてやろうと、骨や赤薔薇で装飾されたロングボウを構え、死角より矢を放つと共に、床からは影を這わせて敵が抱きかかえている人形を狙わせる。
「っ……貴様ぁ!」
案の定、ダッチェスは自分よりも大事な"赤ん坊"が襲撃された方に強い怒りを示した。
激情と共に膨れ上がった魔力から、一度は滅ぼされた【Cheshire puss】の使い魔が現れる。召喚の直後は黒猫の姿をしていたそれは、辰巳を見るなり瞬時に姿を変えた。
「君は……」
辰巳のトラウマから出てきたのは、幼い頃に一番の相棒だった熊。それも吸血鬼に襲われた際に自分を庇って八つ裂きにされた、当時の無残な姿を克明に再現したものだった。
多くの動物の友達と母を失ったあの日の光景と、血の臭いや味が瞬間的に脳裏に甦る。理性なんかブッ飛ばして、この悪趣味を仕立てた吸血鬼を衝動のままに殺したくなる。
「ははは……かつての相棒の、無残な最期の姿か……ますます殺意が湧くな!!」
怒りと悲しみの感情が臨界を超えると、どうやら人は涙ではなく笑いが漏れるらしい。
弓弦が切れそうなほどに引き絞り、鏃をダッチェスに向ける。激情のあまり手が震え、照準を合わせるのが難しいほどだ。
「あらあら、動揺しているわね? いい気味だわ!」
ダッチェスは傲慢な態度で高笑いを上げながら、熊に化けた使い魔に辰巳を襲わせる。
理性を失った彼を与し易い相手と見くびったのだろう。使い魔を盾にして攻撃を防ぎ、トラウマを刺激しながら翻弄する。悪辣だが効果的な戦法である。
「自分自身のトラウマに引き裂かれて、今度は貴方が八つ裂きになるがい――」
「……そいつは御免だ」
彼女にとっての誤算は、衝動に心をかき乱されながらも、辰巳が最後の一線で理性の糸を切らなかったこと。キレたふうに見せかけて、実は彼も敵の感情を誘導していたのだ。
「彼らの苦しみを。無念を。身をもって知れ」
発動するのは【虚像の復讐劇】。辰巳の足元から無数の黒い影が召喚され、襲ってきた使い魔を縛り上げると、さらに後ろでふんぞり返っていたダッチェスに逆襲を仕掛ける。
「ひっ……な、なによこれ……イヤァァァァァァッ?!」
無残な死を遂げた動物達の無念が宿った影は、触れた者にトラウマを植え付ける衝撃波を放つ。ついさっきまで嘲笑っていた惨劇の苦しみを、身をもって味わう側に落とされた女吸血鬼は、絹を裂くような金切り声を上げた。
「やめて! やめなさい……やめてぇっ!!」
半狂乱になってわめき散らしながら、術の発動者を止めようと飛びかかるダッチェス。
だが、トラウマ映像によりぼやけた視界で彼女が捉えたのは、影で作られた囮だった。本物の辰巳は音もなく死角に回り込み、苔や蔦を纏った大鎌を振りかぶっている。
「堪能したか? だったら死ね」
「ひっ……!!!」
酷薄な宣告と共に振るわれた"ネメシスの遺物"が、ダッチェスと使い魔を斬り伏せる。
朽ちたような見た目に反した切れ味が、吸血鬼の肉体を深々と切り裂き――戦場に赤い血の花を咲かせた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(人形への言動を見)
言った所で詮無きことでしょうが…
貴女の犯したその非道を死を以て償う時が来た、という事です
お世辞にも戦闘に適さぬ巨大赤ん坊の短躯のバランスと可動域、挙動をマルチセンサーでの情報収集と瞬間思考力で計測
必要最小限の出力で受け流せるタイミング見切り拷問具を怪力で振るう剣と盾で守勢を維持し応戦
赤ん坊の理性喪失に乗じ館の広い場所へ二人を一直線上に並ぶよう誘導
さて、反撃と参りましょう
ワイヤーアンカーを射出、ロープワークで人形の脚を絡め引き倒し転倒
電脳剣の簡易電脳魔術で電脳空間に収めUC持たせていたロシナンテⅡを召喚
(物を隠す、騙し討ち)
立ち上がる人形にUC突撃
そのまま女領主まで押し潰し
「言った所で詮無きことでしょうが……貴女の犯したその非道を死を以て償う時が来た、という事です」
騎士らしい毅然とした態度でそう告げ、トリテレイアは女領主ダッチェスと対峙する。優れた人形師でもあるかの吸血鬼が、さも我が子のように扱う人形への言動を見ながら。
「償いですって……? だったら貴方達も、この子の邪魔をした償いをしなさいよ!」
ダッチェスは己の罪を自覚せず、感情をヒステリックに吐き出すばかり。妄執にも近い思い込みから猟兵を"我が子の敵"と認識した彼女は、抱えた人形を【Cry baby】により巨大な赤ん坊に変身させ、猟兵に襲い掛からせた。
『オギャァ、オギャァァ』
室内が震えるような大音声で泣き喚きながら、拷問具を玩具のように振り回す赤ん坊。
無邪気な暴力の塊のようなそれの挙動を、トリテレイアは冷静にセンサーで計測する。
「お世辞にも戦闘に適さぬ短躯のバランスと可動域ですね」
赤子ゆえに加減も知らないのか、膂力だけは相当のもの。だがそれだけなら恐れる必要はない――必要最小限の出力で受け流せるタイミングを見切り、叩き付けられる拷問具を剣と盾で防ぐ。ウォーマシンであれば巨大赤ん坊の怪力にもそうそう力負けはすまい。
『オギャ、オギャ、オギャャァァァ!』
しばらく守勢を維持して応戦していると、赤ん坊の挙動は乱雑に激しさを増していく。
【Cry baby】には時間経過に伴って徐々に理性を喪失するという弱点がある。それに乗じてトリテレイアは戦場を移動し、館の広い場所へ敵をおびき寄せる。
「逃しちゃダメよ、赤ちゃん!」
『オギャァァ!』
もはや怪獣の鳴き声のように喚く赤ん坊に、果たして母の声も聞こえているかどうか。
衝動的に目の前の相手を襲う敵を、後ろにいる敵と一直線上に並ぶよう誘導するのは、彼にとっては容易いことだった。
「さて、反撃と参りましょう」
準備が整ったところでトリテレイアはワイヤーアンカーを射出。巨大な赤子人形の脚にワイヤーを絡め、満身の力を込めて引き倒す。やり返してこない相手を追いかけ回すのにすっかり夢中になっていたか、敵はろくな踏ん張りもきかずに転倒した。
『オギャァ!!』
「赤ちゃん!?」
人形とダッチェスが動揺している間に、機械騎士は電脳禁忌剣を起動し、簡易電脳魔術によって電脳空間に収めていた「ロシナンテⅡ」を現実空間に召喚する。0と1の次元から帰還した機械白馬の背には、予め【艦船強襲用超大型突撃機械槍】が搭載されていた。
「暴れ馬ならぬ暴れ槍ですが……御してみせましょう」
巨大な機械槍を馬上で構え、ブースターに点火。穂先から傘状のバリアを展開すると、トリテレイアは自らを含めた機体と装備全てを一振りの槍として猛烈な突撃を仕掛けた。
必要なスペースは充分、そして標的は目前。ヨタヨタと立ち上がろうとする赤子人形の土手っ腹に、機械槍の穂先が深々と突き刺さった。
『オギャァァァァアァァッ!!!』
「な、なにをして……きゃぁぁぁぁぁぁっ?!!!」
機械騎士の突撃はそこで止まらず、人形を串刺しにしたまま後方の女領主にまで迫る。
哀れダッチェスは愛しい"我が子"の巨体に押し潰され、全身の骨が軋む音を聞きながら壁まで叩き付けられる事となる。突撃の衝撃で揺れる館が、その威力を物語っていた。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
ダッチェスが腕に抱いた赤ん坊の人形は透き通るような美しい声で汚い言葉を発した。
『さっきからうっせーんだよBBA』
「なっ!?ちょ、何?」
『てめぇのヒステリックボイスで寝れやしねぇ』
ダッチェスが始めて喋ったかわいい赤ちゃんに抱いた感情は底知れぬ恐怖だった。
『他人に迷惑かけるんじゃねえよ、それに子守唄下手過ぎなんだよ!ド下手な子守唄聴くだけで一日最悪な気分で過ごさなきゃいけねえこっちの身にもなってみろっつーの。五月蝿いっててめえの声が一番喧しいわ。どっかの荒野で一人で生活してろ!』
その正体はカビパンだった。
普段から降霊させている彼女は、今悪霊だし逆に憑依できんじゃね?と思い人形に憑依したのである。
「う、うぅぅ……よくも、よくもぉ……」
深い傷を負わされて、ダッチェスはわなわなと震えながら呻く。戦いの流れはもはや彼女の元にはなく、勝利の風は猟兵達に吹いている――それを納得できずに喚いていると、ダッチェスが腕に抱いた赤ん坊の人形が透き通るような美しい声で汚い言葉を発した。
『さっきからうっせーんだよBBA』
「?!」
当然ながら赤ん坊はこんな流暢に喋らない。ましてやそれは人形である。ダッチェスの腹話術や一人芝居という事もないようで、人形を抱きかかえた当人もびっくりしている。
「なっ!? ちょ、何?」
『てめぇのヒステリックボイスで寝れやしねぇ』
幻聴ではない。たしかに赤ん坊の人形から声がする。ダッチェスが始めて喋ったかわいい赤ちゃんに抱いた感情は、底知れぬ恐怖と困惑だった。そんな親の気も知らずに人形はさらに口汚い口調と語彙でダッチェスを罵りまくる。
『他人に迷惑かけるんじゃねえよ、それに子守唄下手過ぎなんだよ! ド下手な子守唄聴くだけで一日最悪な気分で過ごさなきゃいけねえこっちの身にもなってみろっつーの』
「そ、そんな……!」
良かれと思って毎日聞かせていた子守唄を、まさかそんな風に思われていただなんて。
母親的に普通にショックな感想を聞いて、ダッチェスはがくりとその場に崩れ落ちた。
――さて、当然ではあるがこのダークセイヴァーでも、何のからくりもなしに突然人形が喋りだしたりはしない。ダッチェスの赤ん坊の人形が喋ったのにも勿論原因があった。
(いやあ、試してみるもんね)
その正体はカビパンだった。普段から降霊術で他者の霊を自分に降霊させている彼女は(今悪霊だし逆に憑依できんじゃね?)と思ってダッチェスの人形に憑依したのである。その結果は見事成功で、動くことはできないが人形から声を出すくらいのことはできた。
『五月蝿いっててめえの声が一番喧しいわ。どっかの荒野で一人で生活してろ!』
ダッチェスが大事にしているお人形を乗っ取って、汚い罵倒を浴びせまくるカビパン。相手はもともと思い込みの激しい性格だったこともあって、それが本当に赤ん坊の声だと信じ切ってしまっている。
「ああ、そんな。ゆるして、私の赤ちゃん……!」
他の人間どもからどんな罵倒をされても彼女の心は折れなかっただろうが、他でもない我が子に罵られるのは別だった。人形に許しを乞いながら悲痛な顔で泣き崩れる女領主。
彼女が冷静になって原因に気づくまで、カビパンは延々と精神攻撃を続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
話にならん、気が触れているな
どれほど力があろうと、それでは領主の器ではあるまい
【怪力】を以って聖槍を振るい、巨大な赤ん坊人形を打ち据える
やかましい
生きているならともかく、オブリビオンが、それも人形が喚くな
針だのペンチだの車輪だの、或いは用途の知れない拷問具を手に、いきり立って襲い掛かる領主
しかし戦闘力が増加しようが、ただでさえ希薄な理性を喪失した攻撃など【見切り】躱すのは容易い
真実相手を見ていない攻撃など当たるものか!
そういった道具は金属製、そして尖ったものが多い
であれば、これが良く通る筈
【属性攻撃】【全力魔法】【灼烈轟雷槍】
聖槍から轟く雷霆を放ち、夜の闇を白き閃光で塗り潰す
灼き穿て――!
「話にならん、気が触れているな」
此方とまるで噛み合わない言動を続ける領主ダッチェスを、オリヴィアはそう断じた。
血の通わぬ人形を我が子のように愛で、そのために幾百の屍を積み上げて、果たすべき務めを放棄する。これが気が触れた者の所業でなくて何だというのか。
「どれほど力があろうと、それでは領主の器ではあるまい」
「煩い、うるさいうるさいうるさいッ!!!!」
糾弾と共に聖槍を突きつけられたダッチェスはヒステリックに喚き散らすと、人形を包んでいた布を引きむしって【Cry baby】を発動。人形を泣き喚く巨大な赤ん坊に変身させると、目障りな猟兵共を捻り潰すように命を下した。
「私の赤ちゃん、今日のオモチャはその女よ!」
『オギャァ、オギャァ』
ダッチェスに言われるまま、巨大な赤ん坊はぬうっと手を伸ばす。その大きさにかかれば人間などたやすく握りつぶせそうだが、挙動そのものは見かけ通りに緩慢で単調。歴戦の猟兵にとっては恐れるほどの脅威ではない。
「やかましい。生きているならともかく、オブリビオンが、それも人形が喚くな」
並外れた膂力を以て聖槍を振るい、手を伸ばしてきた赤ん坊の人形を逆に打ち据える。
魔を斬り裂く力を秘めた破邪の聖槍に叩かれると、人形は一層大きな鳴き声を上げた。
『オギャァァァァァ!』
「な、なにをするのッ!」
大事な"我が子"を痛めつけられ、今度は激昂したダッチェス本人が襲い掛かってくる。
針だのペンチだの車輪だの、或いは用途の知れない拷問具を手に、いきり立って近付いてくる女領主を一瞥し、オリヴィアは今度はそちらに聖槍の穂先を向けた。
(いくら戦闘力が増加しようが、ただでさえ希薄な理性を喪失した攻撃など躱すのは容易い)
冷静さを欠いた乱雑な攻撃を見切り、禍々しい凶器をさっと避ける。赤ん坊か拷問具、どちらかの攻撃が一度でも当たれば痛手になるだろうが、その"一度"を届かせるには大きな実力の隔たりが両者の間にはあった。
「なぜっ?! なぜ当たらないの!」
「真実相手を見ていない攻撃など当たるものか!」
猛牛を捌く闘牛士のように敵の攻撃をいなしながら、オリヴィアは聖槍に力を込める。
敵が武器として扱う拷問具は金属製、そして尖ったものが多い。であれば、これが良く通る筈だと、発動するのは【灼烈轟雷槍】。
「轟け閃光!」
「なッ――?!」
其れは異教の神槍の再現。神罰の象徴たる雷霆を槍に纏わせ、邪悪を討つ裁きの一撃。
担い手の号令の下、聖槍から凄絶な稲妻が放たれ、夜の闇が白き閃光で塗り潰された。
「灼き穿て――!」
拷問具が避雷針の代わりとなり、轟く雷霆はオリヴィアの狙い通りに敵へと導かれる。
その威力は落雷そのもの。直撃を食らったダッチェスの全身の毛が逆立ち、口から獣のような悲鳴が飛び出す。
「ぎ、いぃゃぁぁぁぁぁっ!!!?!」
神経から骨の髄まで駆け巡って焼き焦がす電熱は、吸血鬼とて耐え難い苦痛であろう。
焦げ臭い匂いを立ち上らせながら、破邪の雷霆に打たれた女領主はばったりと倒れた。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
案ずるな、其方達家族を引き裂くようなマネは
誓ってせん。只『在る』処を変えるのみよ。
■闘
戦闘開始と同時に【神宿】を発動、代償は【激痛耐性】で我慢。
俺に似た人形は、戦法や癖も同じかも知れぬ……なれば、
「後の先」を狙ってくるだろうな。
仕掛けようとする【フェイント】をかけて防御或いは回避を誘い、
身構えられたら【残像】を伴う動きで真横をすり抜け、そのまま
ダッチェスの懐まで【ダッシュ】。
人形が刀を空振れば完璧だ。
辿り着いたら刀に【破魔】の力を込め、猫の使い魔と其の手に
持った人形共々一刀両断に【切断】し、『送る』のだ!
其方の行いを許すわけにはいかぬ。
されど、約束は果たさせて貰ったぞ。
※アドリブ歓迎・不採用可
「う、うぅぅ……渡さない……この子は、絶対に……」
「案ずるな、其方達家族を引き裂くようなマネは誓ってせん」
満身創痍となっても、赤ん坊だと信じ込んだ人形だけは手放すまいとするダッチェス。
見ようによっては哀れとも取れる女領主に、清綱は厳しくも落ち着いた態度で告げる。
「只『在る』処を変えるのみよ」
このまま現し世に在る限り、かの母親は赤子のために残虐な非道を繰り返すであろう。
なれば彼岸へと立ち退いて貰うのみ――前線に踏み込むと同時に男は【神宿】を発動、自身が仕える『山霊社』に祀られる三柱の神の御霊を宿し、決戦の態勢を整えた。
「嘘よ、信じられるものですか! 貴方も私を裏切るんでしょう!」
自分の思い込みに囚われた女領主に誠意を伝えるのは、残念ながら至難の業であった。
どす黒い敵意と疑心暗鬼を清綱に向けながら、ダッチェスは【Maultasch】を発動。自身の魔力を代償にして、相手の姿を模倣した人形を次々と呼び出す。
(俺に似た人形は、戦法や癖も同じかも知れぬ……なれば、「後の先」を狙ってくるだろうな)
自分と同じように刀を構える人形共を見て、清綱は一瞬で思考を巡らせ一計を案じる。
神宿しの力は強力だが代償は大きく、耐性があるからとて多用はできない。望むるのは短期決着――1体ずつ人形を相手取るよりは、その操り手を仕留める。
『――……』
清綱を模した人形はオリジナルを半包囲する布陣を取り、無表情でじりじりと間合いを測っている。此方から仕掛けるのではなく、相手の動きに応じて後の先を取るつもりだ。
ならばと清綱は銘刀「心切」を構え、此方から仕掛けようとするフェイントをかける。切っ先の動きや足幅や重心の変化といった、同じ武人にしか分からない些細な所作で敵を惑わせるのだ。
(似ているとはいえ、只の操り人形に駆け引きで負けはせん)
上辺の戦法や癖をなぞっただけでは模倣できない駆け引きの妙。人形がそれに釣られて防御や回避の為に身構えた瞬間、清綱は全力で駆け出した。天空舞う剣神と雷を司る蛇神の力を借りた動きは残像を伴って、一瞬の内に視界から消え去る。
「な……ッ?!」
真横をすり抜けられた模倣人形にも、後ろからそれを見ていたはずのダッチェスにも、清綱の動きは捉えられなかった。背後で人形達の刀が空振るのを無視して、彼はそのまま女領主の懐まで全力疾走する。惚れ惚れするほどに完璧な包囲突破であった。
「『送る』ぞ」
一足一刀のの間合いに辿り着くと、清綱は刀に破魔の力を込め、真一文字に一閃する。
鬼の如き鍛冶神の力を借りた剛の斬撃。それは背後にいる猫の使い魔とその手に持った人形共々、女領主を一刀両断に斬り伏せた。
「其方の行いを許すわけにはいかぬ。されど、約束は果たさせて貰ったぞ」
「かは……っ!!!」
刃が標的を断つ確かな手応えを得て、刀を鞘に納める清綱。鍔鳴りの音から一拍遅れ、ダッチェスの身体から噴水のように血飛沫が上がり――抱えていた人形が2つに割れた。
「あ、ぁぁぁぁぁぁ……ッ!!!!!」
その時の彼女の叫びは悲痛で弱々しく、まるで陽炎の様に存在感が急速に薄れていく。
死者を彼岸へと送る破魔の一刀により、ダッチェスという『過去』を現世に繋ぎ止める力は絶ち斬られた。後生大事に抱えていた"我が子"と共に、後はただ去りゆくのみ――。
大成功
🔵🔵🔵
安寧・肆号
まあ、まあ!
ただいま、お母様。
アナタのお人形が帰ったわ。
あたしを見つけたお母様。
あたしに4番目をくれたお母様。
あたしというお人形の所有者。
自分勝手でごめんなさいね。
アナタのお傍はとても窮屈なの。
お外の世界はとても楽しくて····縛られているなんてまっぴら!
あたしの悪夢(トラウマ)は黒猫。
お母さまの怒鳴り声。お人形の壊れる音。それをニヤニヤ笑って逆撫でする黒猫!
あたしはもう、動けないお人形じゃないわ。
UCで隙を突いたら、革命剣で攻撃。人形ごと胸をめがけて部位破壊。
さようなら、御機嫌よう。
あたしというお人形のお母様。
あたしは自律人形。
素敵な物語を持つ猟兵。
悪い夢―過去のページはいらないの。
「う、ぅ……嘘よ、こんなことって……」
猟兵達の攻勢に追い詰められたダッチェスは、満身創痍の姿で血溜まりに蹲っていた。
壊れた人形を必死に抱えて、迫る"敗北"という現実を受け入れられずに髪を振り乱し。そんな彼女の元にかつんと靴音を立てて、ひとりの少女が訪れ――否、帰還する。
「まあ、まあ! ただいま、お母様。アナタのお人形が帰ったわ」
少女の名は安寧・肆号、あるいは「自律人形アンネ」。とある魔女の手で生み出された4番目の作品。彼女の造り手たる「お母様」こそ、他ならぬ女領主ダッチェスであった。
「ぁ……貴女は……アンネ?」
ダッチェスのほうも彼女のことを覚えていたらしい。目隠しの上からでも分かるような驚きの表情で、血まみれの手を伸ばす。壊れた人形ががしゃんと音を立てて床に落ちた。
「帰ってきたのね……ああ、嬉しいわ! 一体どこに行っていたの?!」
喜びや怒りがないまぜになった感情の濁流が、言葉になってアンネに叩き付けられる。
我が手を離れていった"我が子"の帰還を、彼女は彼女なりに歓迎しているらしかった。もっともその愛情は酷くいびつなものだと、今のアンネにはよく分かる。
「あたしを見つけたお母様。あたしに4番目をくれたお母様。あたしというお人形の所有者」
自分勝手でごめんなさいね――そう言って、アンネは母たる創造主に剣を向ける。
彼女がここに戻って来たのは、所有者に玩ばれるただのお人形に戻るためではない。
この世界の救済のため、そして自分の過去の悪夢(トラウマ)に決着を付けるため。
「アナタのお傍はとても窮屈なの。お外の世界はとても楽しくて……縛られているなんてまっぴら!」
こんな暗くて狭いお屋敷の中だけではない、広い世界があることを今の自分は知った。
もっともっと、その世界を冒険していたいから――少女は飾り気のない素直な言葉で、母との決別を宣言する。
「……なぜ? どうしてそんな酷い事を言うの? また私の元から離れようというの?」
4番目の人形から告げられた言葉の意味を、ダッチェスの頭は理解できても感情は納得できない様子だった。取り落した人形を抱えなおし、次にアンネに向けられたのは敵意。
「許さない、そんなの許さないわ! 言うことを聞かない悪い子は、手足をもいで何処にも行けないようにしてあげるッ!!」
髪をかきむしる音。ヒステリックな喚き声。地団駄を踏む足音。どれも聞き慣れた音。
怒り狂うダッチェスの身体から染み出した魔力が、黒猫の形を取る。他者のトラウマを刺激するカタチに変身するその使い魔は、アンネにとって悪夢の象徴そのものだった。
「あたしの悪夢(トラウマ)は黒猫。お母さまの怒鳴り声。お人形の壊れる音。それをニヤニヤ笑って逆撫でする黒猫!」
アンネにとってはこの現状の何もかもがかつてのトラウマを刺激する。過去の自分ならお部屋の隅に転がって、嵐が過ぎ去るのをじっと祈っている事しかできなかっただろう。だけど、今は違う。
「あたしはもう、動けないお人形じゃないわ」
その手に携えるのは意志に呼応する革命剣。闇夜を照らす輝きは、彼女の心そのもの。
ガラスのハートに宿った魂を束縛することは、もう誰にもできない。それを証明するために、彼女は【ミレナリオ・リフレクション】を発動する。
「まねっこ遊びをしましょ」
「なっ……?!」
ダッチェスの使い魔とは鏡合わせの様によく似た、白猫の使い魔が黒猫に飛びかかる。
二匹の使い魔は互いを引っ掻き、齧りつき、相殺され、ニヤニヤ笑いを残して消える。
その隙にアンネは踊るようなステップで靴音を鳴らし、革命剣の間合いに飛び込んだ。
「さようなら、御機嫌よう。あたしというお人形のお母様」
光り輝く"Vorpal*Sword"の剣閃が、ダッチェスの胸をめがけて吸い込まれていく。
抱えられていた人形を砕き。脈打つ心臓を貫き。命を奪う手応えがアンネに伝わる。
「ぁ……アン、ネ……」
"我が子"の手で止めを刺された女領主は、震える唇で最期にその名を呼び――斃れた。
血溜まりに崩れ落ちたその亡骸が起き上がる事は二度と無く、人形と一緒に灰となる。
「あたしは自律人形。素敵な物語を持つ猟兵。悪い夢――過去のページはいらないの」
過去に終止符を打った少女は、風に散らされていく母の遺灰を見届けて、剣を収める。
骸人形の操り手、狂乱の女領主ダッチェスとの戦いは、ここに終結を迎えたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『滅亡卿』ヴォルフガング』
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POW : 滅び歌え轟砲連打の葬送曲
【処刑斧による大地割り砕く全霊の一撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を敵対者を自律砲撃する攻城兵器群に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 怒りの日
【世界焼き払い死者蘇らせる忌まわしき呪炎】を降らせる事で、戦場全体が【滅亡卿の操る屍兵が溢れる死者の帝国】と同じ環境に変化する。[滅亡卿の操る屍兵が溢れる死者の帝国]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : 常闇の信徒
自身の【生身と相手の記憶の“自身に関する情報”】を捨て【影という影を瞬時に渡る闇そのもの】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
イラスト:赤井 夕
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「レナ・ヴァレンタイン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「やったぞ……俺達の勝利だ!」
「「おおおおおーーーーっ!!」」
猟兵と『闇の救済者』の奮戦により、この地を治めていた領主ダッチェスは討たれた。
残党となった敵軍も大半が掃討され、勝利を宣言する人々の雄叫びが戦場に響き渡る。これで人類はまた新たな地をオブリビオンから取り戻し、救済に一歩近付いたのだ――。
――だが。戦いはまだ終わってはいない事を、予知を聞いた猟兵達だけが知っている。
人類がヴァンパイアに勝利する結果を望まない者が、この世界の地下には潜んでいる。彼らは領主が敗れた時に備えて、勝者を亡き者にするための刺客を送り込んでいたのだ。
終戦から間を置かずして、猟兵は彼方から不穏な気配が近付いて来ているのを感じた。
闇の救済者から離れ、その方角に向かうと――果たしてそこに居たのは、漆黒の大斧と大盾を携えた、一人の戦士だった。
「……やはり、ダッチェスは敗れたか」
山羊の骸骨のような頭部の奥から聞こえてくるのは、歳経た落ち着きを感じさせる声。
佇まいにも隙はなく、老練な武人といった印象を受ける。傷だらけの胸甲の上には宝石のような『紋章』が張り付いており、闇の中で不気味な光を放っていた。
「ここ数年で、貴様達は驚く程に力を付けている。もはや我らも座視できぬほどに」
『滅亡卿』ヴォルフガング。自らを吸血鬼に仇為す者たちを滅ぼす装置と定めた男は、恐れも侮りも油断もない眼差しで猟兵達を見据えていた。敬意でもなく、敵意でもなく、純粋な"脅威"として猟兵を捉えるその視線は、他のヴァンパイアには珍しいものだ。
「百年に及ぶ我らが盤石なる支配を打ち崩す者がいるとすれば、それは貴様達であろう。ゆえに、滅亡させねばならぬ」
恐らくは過去にもこの男は、吸血鬼に反抗する者の芽を根絶やしにしてきたのだろう。
そして猟兵が彼の生涯においても最大最強の天敵である事は間違いない。誰あろう本人がそれを強く認識しているからこそ、彼は今日ここに現れたのだ。
「征くぞ。『滅亡卿』ヴォルフガング、我が全霊を以て貴様らを鏖殺する」
主君より授けられた『殺戮者の紋章』を輝かせ、歴戦の老兵はゆっくりと構えを取る。
もし、ここで猟兵が敗れれば――『闇の救済者』達への徹底的な殲滅と殺戮が行われ、この地から希望の灯は失われるだろう。強者であれ弱者であれ、彼は吸血鬼に仇為す者に一切の容赦をしない。
既に領主亡きこの地での勝利を完全なものとし、闇の世界に芽生えた希望を守り抜く。
度重なる連戦により消耗した心身を奮い立たせ、猟兵達は再び戦いの構えを取った。
シャオロン・リー
呵々、呵呵呵呵ッ!!
おうおうなんや、ようやっとちぃとはおもろそうな相手が出てきたやんけ
ええで、わめき倒すクソアマと違って手応えもありそうやんか!
「暴れ竜、シャオロン、暴れ倒しに来たったで!禍焔竜槍『閃龍牙』発破竜槍『爆龍爪』!この二槍即ち火竜の爪牙!まずは挨拶代わりに食らってけや!」
二槍で突きかかってなぎ払い、串刺し
降ってくる呪炎は火炎耐性で凌ぎ
敵からの攻撃は見切って躱して激痛耐性と継戦能力で堪える
三尖刀
「俺の槍はどこまでも増える!どこまでも飛ぶ!避けれるもんなら避けてみい、食らえや、オラァ!」
無数の槍すべてに火炎属性を付与
範囲攻撃からの一斉発射、貫通攻撃
貫かれろォ!
…ああ、暴れたりへんなぁ!
「呵々、呵呵呵呵ッ!!」
膨大な瘴気と殺意を纏う強敵を前にして、堰が切れたように大笑するのはシャオロン。
今までの敵とは一瞥しただけで「違う」と分かって、闘争心が剥き出しとなっている。
「おうおうなんや、ようやっとちぃとはおもろそうな相手が出てきたやんけ。ええで、わめき倒すクソアマと違って手応えもありそうやんか!」
口の端を獣のように釣り上げて叫び、二本の槍をぶおんぶおんと振り回し構えを取る。
なんの邪魔もなしに全力をぶちこめる、対等以上の敵のご登場だ。過去やトラウマだのに後ろ髪を引かれるよりも、自分はただ暴れるほうが性に合っている。
「暴れ竜、シャオロン、暴れ倒しに来たったで! 禍焔竜槍『閃龍牙』発破竜槍『爆龍爪』! この二槍即ち火竜の爪牙! まずは挨拶代わりに食らってけや!」
高らかに名乗り口上を述べ、男は烈火の如く『滅亡卿』ヴォルフガングに突きかかる。
刺突となぎ払いの連続攻撃を、敵は巨大な戦斧と盾をもって防ぎ、弾き、即座に反撃のユーベルコードを仕掛けてきた。
「強者よ、地獄の業火に抱かれて眠るがよい」
闇に覆われた空から忌まわしき呪炎が雨のように降り、戦場を【怒りの日】に変える。
戦場全体を包む規模の攻撃に避けきれず炎を浴びるシャオロンであったが、火炎に耐性を持つ彼はこれしきの熱ではビクともしない。
「呵々、ちっとも熱うないわ!」
「然様か。だが彼奴らはどうだ」
炎上する大地の底から這い出るように現れるのは死者の群れ。滅亡卿の意のままに動く屍兵の軍団が、十重二十重にシャオロンを包囲する。先程戦ったここの領主の兵よりも、ともすれば練度は上だろう。
「此の地は既に屍者の帝国。冥府から貴様を迎えに来たぞ」
「ええやんけ、連れていけるもんならやってみい!」
呪炎と共に襲ってくる屍兵の攻撃を見切り、躱し、反撃する。だが数的不利は歴然で、一体倒しても二体目三体目がすぐに炎から溢れ出してくる。まるで地獄の釜の蓋が開き、この世の全ての死者が蘇ったかのような光景に、それでも彼は笑みを浮かべた。
「さぁ、限界までいかしてもらうで!」
斬られても焼かれてもシャオロンの動きは鈍らず、燃え盛る闘志が痛みを忘れさせる。
今こそ、この身に流れる竜の血の封印を解く時だ。槍に炎を纏わせてぶんと振るうと、陽炎のゆらめきに合わせて槍の分身が現れる。二本が四本に、四本が八本に、十六本に。
「俺の槍はどこまでも増える! どこまでも飛ぶ! 避けれるもんなら避けてみい、食らえや、オラァ!」
あっという間に無数に増えた朱槍の全てに火竜の力を付与し、敵軍へと一斉発射する。
呪炎なぞより何倍も熱く激しい烈火の槍が、屍兵どもを串刺しにして再び灰燼に帰し。瞬時に一掃された戦場で、その矛先はさらに『滅亡卿』に向かう。
「貫かれろォ!」
「――……ッ」
先程二槍を払ってみせた老兵の腕前でも、無数となった槍を全て防ぐことはできない。
【三尖刀】がヴォルフガングを貫くのを見て、シャオロンはにいと口元を歪めながら、まだまだこれからだと二槍を構え直す。
「……ああ、暴れたりへんなぁ!」
「竜め。この程度では落ちぬか」
相手もこれしきで斃れてくれる程やわではなく、『殺戮者の紋章』に強化された身体を奮い立たせた。炎の応酬によって幕を開いた戦いは、さらに熱量と激しさを増していく。
大成功
🔵🔵🔵
瀬河・辰巳
へえ、吸血鬼に玩具や家畜ではなく脅威と見られる日が来るとは思ってなかったよ。
精神攻撃は無駄そうだし、物理的に動きを鈍らせるかな。
まずは身を潜め、背後から弓で攻撃。自分の存在を知らせる。
敵の攻撃を見たらオトモダチで応戦しつつUC発動。生者を、己を苦しめた者達への憎しみの唄を、ただ歌い嘆くが亡き者の常。死者の帝国は都合が良いはず。
「どれだけ湧こうが憎しみのままに、本能のままに殺し尽くすまでだ」
雑魚はすぐに灰になるし、奴もかなり殺してそうだから灰化スピードも速いと思うけど……万が一、奴が灰と化した足を切り落とす等で止めたとしても、足を失えば動きは悪くなるはず。影で妨害しながら紋章に一撃加えてやろう。
「へえ、吸血鬼に玩具や家畜ではなく脅威と見られる日が来るとは思ってなかったよ」
敵の視線からこれまでにないものを感じ取り、辰巳は意外だという顔でぽつりと呟く。
蔑まれ、侮られ、嫌われる事が常だった連中から、純然な脅威として認識されている。これまでに猟兵が挙げてきた実績を、敵も無視できなくなったと言うことだろう。
(精神攻撃は無駄そうだし、物理的に動きを鈍らせるかな)
心に付け入る隙はなしと判断した彼はまず、味方の戦闘に乗じて身を潜め、背後から敵に矢を射掛ける。「樹海の祈り」からひょうと風を切って放たれた矢は、防具の隙間から『滅亡卿』の体に見事突き刺さった。
「増援か」
ヴォルフガングは矢を抜きもせずに背後を振り返り、即座に【怒りの日】を発動する。
世界を焼き払わんとする忌まわしき呪炎が戦場に降り、燃え盛る大地から死者が甦る。生者への憎しみをもって襲い掛かってくる屍兵に、辰巳はオトモダチの影で応戦する。
「我が率いるは死者の帝国。呪いの炎で仇為す者を焼き尽くさん」
「なら俺は地へ還ることも赦さない、憎しみの業火で応えよう」
炎と死者を操る『滅亡卿』に対抗して、彼が発動するのは【亡者の激情】。先刻は領主の軍勢を灰にするために用いられた黒焔のユーベルコードが、再び屍人に襲いかかった。
(生者を、己を苦しめた者達への憎しみの唄を、ただ歌い嘆くが亡き者の常。死者の帝国は都合が良いはず)
敵のユーベルコードによる環境変化は、辰巳が使役する「友達」の無念をも強化する。
獣の形をとって疾走する黒い焔は、呪炎をより強い呪いによって上書きし、屍兵の群れを焼き払っていく。
「どれだけ湧こうが憎しみのままに、本能のままに殺し尽くすまでだ」
格下の死者はその呪いに耐えられず、すぐに灰となって散る。何度蘇ろうと同じ事だ。
そして黒焔は屍人の主たる『滅亡卿』にも襲い掛かり、黒い武具に覆われたその身体を足元から徐々に――いや、恐ろしいほどの速さで灰化させ始めた。
(奴もかなり殺してそうだから灰化スピードも速いと思うけど……)
流石に敵は歴戦の老兵、判断速度も並ではない。辰巳が見ている前でヴォルフガングは斧で自らの足を切り落とし、それ以上の灰化の進行を食い止めた。おそらくは治癒・再生の機能も『殺戮者の紋章』で強化されているのだろうが、それでも大胆な決断である。
「……まだ我はここで朽ちる訳にはいかぬ」
「やるね。でも足を失えば動きは悪くなるはず」
欠損した部位を再生する暇を与えず、オトモダチの影をけしかける辰巳。斧と盾による攻撃や防御をそれで妨害しつつ再び矢を番え――胸甲に装着された『紋章』を狙い射つ。
「これならどうだ」
「ぐ……ッ!」
放たれた矢が過たず『殺戮者の紋章』を捉えた瞬間、ヴォルフガングの反応が変わる。
宿主に力を与える紋章は、それ自体が宿主の弱点でもある。加えたのは一撃とはいえどダメージは大きかったらしく、敵は炎上する大地にがくりと膝をついた。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
アハハ、ダッチェスさま~どこですか?ボクを見捨てないでもう加護も導きもない、おや?アナタは・・・敵なんですね?なら死んで頂きますね!
アハ、そんな攻撃簡単に避けられるんですよ?アナタもヘドロまみれにしてあげますよ・・・これは!
周りが自律砲台に?く、ウグッなんて威力だくそ、止め、やめろ、そんな哀れなヤツを見るような目でボクを見るな、ボクを蔑むな!
UCを発動して戦闘力向上し飛翔能力で攻城兵器群を突っ切って妖刀の一撃を入れそのまま闇の中に消える
チタノの加護も反抗の導きももうない、ボクは一匹のヘドロ怪人さ、アハハハ
「アハハ、ダッチェスさま~どこですか? ボクを見捨てないでもう加護も導きもない」
呪いの業火に包まれた戦場に、フラフラとおぼつかない足取りでやって来るニクロム。
既にダッチェスは斃れ、人形化の洗脳も解かれたはずなのだが。敗北した彼女にもはや反抗の竜の加護はなく、先程までとは同一人物か見紛うほどの姿に変わり果てていた。
「おや? アナタは……敵なんですね? なら死んで頂きますね!」
そんな状態でもまだ倒すべき相手は見失っていないらしく、立ちはだかる『滅亡卿』にヘドロのような視線を向け、口からは汚染された涎を垂らしてニタリと笑みを浮かべる。
「心折れた者か。ならばここで我が処刑してくれよう」
その重装備に見合わぬ疾さで距離を詰め、巨大な処刑斧を振り下ろすヴォルフガング。
大地を割り砕く全霊の一撃を、怪人に落ちたニクロムは獣のような身のこなしでぱっと避ける。反抗の加護は失ったものの、過去の戦いで培われた戦闘能力自体は健在である。
「アハ、そんな攻撃簡単に避けられるんですよ? アナタもヘドロまみれにしてあげますよ……これは!」
だが。余裕ぶって反撃を仕掛けようとした彼女は、斧がかち割った地面からバリスタや大砲などの攻城兵器群が出現するのを見て顔色を変える。敵は初撃を避けられる事を想定した上で、自身の状況を有利にするユーベルコードを発動していたのだ。
「周りが自律砲台に? く、ウグッ」
「滅び歌え轟砲連打の葬送曲」
戦場に轟く砲火のメロディに乗って、無数の砲弾がニクロムの身体に叩き付けられる。
何発かは避けられるものの、とても凌ぎきれる物量ではない。痛みに耐えかねた彼女は慌てて後退し、アッパー気味だったテンションはネガティブ思考に埋め尽くされた。
「ウグッなんて威力だくそ、止め、やめろ、そんな哀れなヤツを見るような目でボクを見るな、ボクを蔑むな!」
砲火の向こうからヴォルフガングの視線が突き刺さる。敵には一切容赦も油断もしない『滅亡卿』が、本当に彼女を哀れんでいるかは分からない――当人の被害妄想も多分に含まれるだろう。反抗の加護を無くしたニクロムを誰より蔑んでいるのは彼女自身だから。
「む……なんだ、この臭いは?」
ふと、ヴォルフガングは砲撃の向こう側から血とも硝煙とも異なる悪臭を嗅ぎつける。
それはニクロムの全身から垂れ流されるドロや有毒ガスの臭いだ。口から垂らした涎を【汚染の衣】として身体を覆った彼女は、汚液を撒き散らしながら空に飛び立つ。
「アハ、アハハハハハハハ!」
ボロボロの衣服や肌に何重にも重ね塗りされた涎が、防御膜となって敵の攻撃を弾く。
予期せぬ反撃に『滅亡卿』が次の一手を打つよりも速く、その懐に飛び込んだ少女は、かつて反抗の竜に与えられた妖刀を――今は加護なき刀を振るう。
「ぐっ……!」
加護と引き換えにヘドロの力を得た妖刀の斬撃は、敵の装甲を腐食させ体を汚染する。
見事『滅亡卿』に一撃を入れたニクロムは、そのまま猛スピードで闇の中に消えた。
「チタノの加護も反抗の導きももうない、ボクは一匹のヘドロ怪人さ、アハハハ」
嘆きとも嘲笑ともつかない自虐的な笑い声がしたが、すぐにそれも聞こえなくなる。
反抗を忘れた悪堕ちヘドロが、果たして希望の光を取り戻す時はあるのだろうか――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
来た……否、待っていたぞ、刺客よ。
この清綱がお相手致そう!
■闘
なぎなた『真武』を片手に戦闘へ入る。
其の一撃を喰らうつもりはないが、外させるわけにもいかん。
滅亡卿の懐までわざと【ダッシュ】で接近し、振るう斧を
タイミングに合わせて【武器受け】し【怪力】で止め続ける。
攻撃と強化の双方を無力化し、何もできなくさせる作戦だ。
上手く止めたら一時的に右手をなぎなたから放し、髪留めの
『隠蜻蜓』を【早業】の手つきで構える。
そこから間髪入れず胸甲目掛けて【真爪・剛】を放ち、紋章を
暗器で抉り取るのだ!
其方等吸血鬼の目論見は、必ずや我等が止めて見せよう……
※アドリブ歓迎・不採用可
「来た……否、待っていたぞ、刺客よ」
地の底より差し向けられた猟兵を抹殺せんが為の刺客を、清綱は泰然自若と迎え撃つ。
事前に予知を受け、此の時を待ち構えていたのは此方も同じ。人族鏖の所業を阻む為、覚悟はとうに完了している。
「この清綱がお相手致そう!」
「武人であるな。良いだろう」
その正々堂々とした態度は、徹底的な殺戮と殲滅を旨とする『滅亡卿』にも感じ入る所があったらしい。老兵らしい隙のない振る舞いで斧と盾を構え、正面より距離を詰める。
「――執行する」
全霊を込めて振り上げられる処刑斧。大地を割り砕く程の威力を誇るその一撃は、例え外れたとしても敵を自律砲撃する攻城兵器群を創り出し、【滅び歌え轟砲連打の葬送曲】を響かせる二段構えのユーベルコードである。
「其の一撃を喰らうつもりはないが、外させるわけにもいかん」
『滅亡卿』の気質を現した様な隙のない二者択一をどう攻略するのか。清綱はなぎなた『真武』を片手に走り出すと、あえて敵の懐まで接近する。断頭台に首を差し出すような重圧を肌で感じながらも、冷静にタイミングを見極めて――。
「……ここだ」
処刑斧が振り下ろされるのに合わせてなぎなたを突き出し、全霊の攻撃を受け止める。
卓越した技術と膂力がなければ不可能な行為。だが避けるのではなく受けるのならば、攻撃と強化の双方を無力化する事ができる。
「我が処刑斧を凌ぐか」
斬撃を受け流されたのを見て、ヴォルフガングは二度三度と即座に追撃を仕掛けるが、清綱はそれも同様の手際で止め続ける。初撃は紙一重といったところだったが、続け様に受けることで彼は敵の動きを把握し、より適切な受け方を瞬時に導きだす。
「次は此方の番だ」
上手く攻撃を捌ければ反撃の機会が訪れる。清綱は一時的に右手をなぎなたから放し、髪留めの『隠蜻蜓』を素早い手つきで構える。力の拮抗が崩れたことで敵は体勢を乱し、手放されたなぎなたに斧ごと体を持っていかれるように前のめりとなった。
「……もらったり」
「ぬぅ……っ!」
そこから間髪入れずに彼は敵の胸甲目掛けて、狙い定めた【真爪・剛】の刺突を放つ。
暗器として研ぎ上げられた鋭利な簪の先端が、敵の急所たる『紋章』を過たず捉えた。
「――……ッ!」
暗器が急所を抉る確かな手応えと共に、苦悶を押し殺したような吐息がヴォルフガングの兜の奥から漏れる。清綱の放った一撃は『殺戮者の紋章』に大きな損傷を与えていた。
「其方等吸血鬼の目論見は、必ずや我等が止めて見せよう……」
歴戦の兵(つわもの)は静かな気迫を込めてそう宣言し、簪をより深く敵に押し込む。
ピシリ、と音を立てて『紋章』に亀裂が走り、どす黒い流血がその傷から溢れ出した。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
フン、先程のヒステリー持ちとは一味違うようだな
…戦場傭兵で人形遣いのキリカ・リクサールだ、私の全てを持ってお前を打ち倒そう
UCを発動
強敵を相手に小細工は無しだ、ヴェートマ・ノクテルトのリミッターを解除して敵に全力で切り込む
ナガクニを装備し、近距離から斬り付けつつ相手が離れたら斬撃波を撃ち出して攻撃を行う
屍兵が溢れる死者の帝国か…
フッ、私の渡り歩いた戦場と同じだな
私は屍の山と血の大河で出来た地獄を何度も潜り抜けた
この場所の適応も問題ない
念動力で屍兵を破壊しつつ、滅亡卿を攻撃する
『世界が灰燼に帰し、全てが裁かれる』
そんな「怒りの日」に生き残るのは私かお前か…その答えはすぐにわかるさ
「フン、先程のヒステリー持ちとは一味違うようだな」
感情的で隙も多かったダッチェスとは対照的に、『滅亡卿』ヴォルフガングは理性的で隙を見せない。己を戦士や騎士ではなく一種の暴力装置と定義する事で、何事にも動じぬ鋼の意志を得ているのか。キリカとしても油断ならぬが、ある種の敬意に値する相手だ。
「……戦場傭兵で人形遣いのキリカ・リクサールだ、私の全てを持ってお前を打ち倒そう」
「我が為すべき事は変わらず。来るがいい、全霊を以て滅ぼしてくれよう」
キリカが短刀「ナガクニ」を黒鞘より抜き放つと、ヴォルフガングは斧を掲げ呪炎の雨を降らせる。たちまち戦場は死者の帝国と化し、炎上する大地が屍兵の軍団で溢れ返る。
「強敵を相手に小細工は無しだ」
キリカは身に着けたバトルスーツ「ヴェートマ・ノクテルト」のリミッターを解除し、【デュランダル】を起動。拡張されたスーツの補助機能により身体能力を劇的に強化し、猛然たるスピードで『滅亡卿』に接近する。
「正面から来るか。余程自信があると見える」
女傭兵の全力の切り込みを、ヴォルフガングは大盾で受け止める。竜の骨を混ぜ込んで鍛えられた短刀は凄まじい切れ味を誇るが、巧みに力を受け流されたか切断には至らず。斬り付ける力を利用して敵が距離を取れば、キリカは斬撃波を撃ち出して追撃を試みる。
「成程、自信に違わぬ……屍兵よ、その者を押さえつけよ」
僅かな攻防でキリカの実力を推し量ったヴォルフガングは、召喚した屍兵に命を下す。
一対一や正々堂々という思考は彼にはない。持てる全ての戦力を用いて吸血鬼に仇為す敵を徹底的に殲滅・殺戮する。それこそが『滅亡卿』たる所以だ。
「屍兵が溢れる死者の帝国か……フッ、私の渡り歩いた戦場と同じだな」
だが、屍兵の群れに周りを取り囲まれても、キリカは動じず笑みすら浮かべてみせた。
精神統一すると強固な意志が念動力となって周囲に迸り、敵の進撃を押し返していく。
「私は屍の山と血の大河で出来た地獄を何度も潜り抜けた」
此の程度の環境への適応など造作もないと、呪炎の熱風を涼風のように受けるキリカ。
ヴェートマ・ノクテルトに搭載されたセンサーは、リミッター解除中は彼女の念動力を強化する増幅器(ブースター)として機能する。超高層ビルすら数瞬で圧潰させるという不可視の暴力が、屍兵の群れを握り潰していく。
「この程度で私を押さえられると思うなよ」
周囲の敵を押しのけて強引に道を切り開いた彼女は、再び『滅亡卿』に攻勢を掛けた。
収束された念動力の放射が暴風を起こし、大地ごと呪炎を吹き飛ばしながら敵に迫る。
「『世界が灰燼に帰し、全てが裁かれる』。そんな『怒りの日』に生き残るのは私かお前か……その答えはすぐにわかるさ」
スーツの力を借りた限界を超える念動力の酷使により、脳に凄まじい負荷を受けながらもキリカは笑う。何度も地獄を潜り抜けてきた彼女には、それだけの自負と実力がある。
「っ、オぉぉぉぉォォ……ッ!!」
今度は短刀のように受ける事もできず、ヴォルフガングの大盾と鎧がミシミシと軋み、全身から血が噴き出す。堪らず漏れた苦悶の叫びは、死者達の懊悩の声とよく似ていた。
大成功
🔵🔵🔵
春乃・結希
うんうん、炎の戦場、いかにも決戦て感じで好きです。さすがおじいちゃん、定番というのがわかってますねっ【火炎耐性】
焔の雨と共に突撃
周囲の屍兵の動きを鈍らせ、自身は滅亡卿を真っ直ぐ目指す
全部相手にしてもキリが無いから、踏み台にして飛び越えたりしつつ
滅亡卿まであと一息になったら、焔を前方に集中【焼却】
道を一気に開いて接近する
みんなで勝ち取った希望の地、絶対に渡さない
私の痛み、あなたに全部返します
全ての焔を滅亡卿に集中
傷が増えても私にとってはチャンスだから、攻撃の手は緩めない【激痛耐性】
withを盾で受け止めても、衝撃までは防げない【重量攻撃】【鎧無視攻撃】
防御を崩し、胸の紋章を狙いたい
「……やはり、貴様達は強い。我が生涯においてこれ程の強者はかつて存在しなかった」
なればこそ滅ぼさねばならぬと、殲滅の意志をなお強める『滅亡卿』ヴォルフガング。
【怒りの日】を継続する彼の周囲では呪炎が燃え盛り、絶えず死者が溢れ続けている。
「うんうん、炎の戦場、いかにも決戦て感じで好きです。さすがおじいちゃん、定番というのがわかってますねっ」
そんな灼熱地獄さながらの光景の只中で、ひとり平然としているのは結希。炎の使い手ゆえに炎熱に対する耐性の高い彼女は、これしきの呪炎ではまるでダメージを受けない。軽口を叩く余裕すらあるほどに、むしろ適した戦場と言えた。
「我が死者の帝国にあってその態度。肝が据わっているな」
ヴォルフガングは"おじいちゃん"呼ばわりも平然と受け流し、呼び出した屍兵の指揮を執る。忌まわしき呪炎と共に進撃する軍勢は、おそらく先刻の領主の軍より強大だろう。
対する結希は多勢に無勢と後退するでもなく、迂回して敵将の首を狙うのでもなく――真っ向から突破するつもりで『with』を構え、傷口から焔を噴き出す。
「『狙って当てる』んやなくて、『狙わなくても当たる』って思えば大丈夫って、教えて貰いました」
放つは特訓により会得した【焔の雨】。『絶対当たる』という強固な自己暗示に基いて焔は無数の杭を形作り、敵陣目掛けて降り注いだ。攻撃範囲は視界全域、見えている限り的を外すことは無い。
『グオォォォォォ―――!?』
杭の雨に刺し貫かれて、屍兵の群れの動きが鈍る。その隙に結希はまっすぐ『滅亡卿』を目指して全力疾走。進路上にいる死者をなぎ倒しながら、炎上する戦場を駆け抜ける。
(全部相手にしてもキリが無いから)
道を塞ごうと割り込んでくる屍兵はブーツで蹴倒したり、踏み台にして飛び越えたり。
一瞬たりとも足を止めず、前に、前に、前に。屍兵に反撃されても避けようともせず、増えた傷からまた焔を噴き出しながら進む。
「あと一息……!」
『滅亡卿』まであと数メートルまで迫ったところで、結希は噴出する焔を前方に集中。
集束された膨大な熱量がその先にいた屍兵の群れを燃やし尽くし、一気に道を開いた。燃えていないのは大盾にて焔を防いだ、老練なる古強者のみ。
「来るが良い」
言われずともそのつもりだった。呪炎よりも熱く激しく己の焔を燃やして斬り掛かる。
紅蓮の焔を纏った『with』の刀身が、ヴォルフガングの盾と激突し火花を散らした。
「みんなで勝ち取った希望の地、絶対に渡さない」
扱える焔の全てをただ1人に集中させて『滅亡卿』を攻め立てる結希。豪雨となり降り注ぐ焔の杭を、ヴォルフガングは処刑斧と大盾で巧みに捌きながら反撃を仕掛けてくる。
「貴様等の希望を悉く摘むのが我が使命。止めたくば力を示せ」
結希の脇腹を斧刃が掠め、鮮血が飛び散る。だが、彼女は怯まず目前の敵を睨み返す。
傷が増えても自分にとってはチャンスになる。鮮血と共に噴き出した焔を杭に変えて、手を緩めずに攻撃を続ける。その様はまさに一心不乱という言葉がよく似合う。
「私の痛み、あなたに全部返します」
怒涛の焔撃で敵を押し込みながら、渾身の膂力で『with』を振り下ろす。たとえ盾で受け止められても衝撃までは防げまい。重さと力で防御を打ち崩し、決定打を叩き込む。
「ぐ、オォォ……ッ!!」
斬撃の重さに盾が弾かれた直後、間髪入れず放たれた焔の杭が敵の『紋章』を捉えた。
結希の執念とも言える灼熱に胸を焼かれ、ヴォルフガングの口から苦悶の声が漏れる。数多の敵を滅ぼしてきた『滅亡卿』にも、焼き尽くせぬ魂の焔がそこにあった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
【冥界獄】で戦場全体をわたしの呪力結界で閉鎖…
この【冥界獄】の中では呪力によって敵対者の力は半減し、UCや吸血鬼の不死性といった特性や技等も全て封じる…。
わたしを倒さない限り、この結界が解ける事は無いよ…。
もし敵が何等かの方法で結界を破るか結界から脱出する等で常闇の信徒を使った場合は【九尾化・天照】による太陽の光で闇を祓い、怒りの日は【unlimitedΩ】で屍兵を殲滅…。
悪いけど、貴方の力はわたしと相性が悪いみたいだね…。
そして、ここはわたしの世界…。
わたしの呪力が満ち、力を最大限に発揮できる空間…。
敵を呪力で侵食しつつ、魔剣達に【呪詛】を込めて凶太刀、神太刀で連続攻撃…。
一気に押し切るよ…
「我に仇名す全ての敵を深淵の闇へ……!」
『滅亡卿』ヴォルフガングが味方と戦っている間に、璃奈は【呪法・冥界獄】を発動。
闇そのものが雫になったような濃密な呪力の雨が降り注ぎ、大地をしとしとと濡らすと共に、猟兵と敵を囲う半球状の閉鎖結界を創り上げた。
「この【冥界獄】の中では呪力によって敵対者の力は半減し、ユーベルコードや吸血鬼の不死性といった特性や技等も全て封じる……」
「成程。我を此の地に封じ込めたという事か」
大幅な能力低下は堪えるだろうが、それを受けたヴォルフガングは動揺を見せない。
技を使えずともこの武具があれば十分とばかりに、処刑斧と大盾をぐっと握りしめる。
「わたしを倒さない限り、この結界が解ける事は無いよ……」
「ならば、先ずは貴様からだ」
侵食された大地をずんと踏みしめ、一気に璃奈との距離を詰めるヴォルフガング。呪力による能力低下を『紋章』の異常な強化で補っているのか、その動きはまだ十分に速い。
「我は吸血鬼に仇為す一切を滅ぼす者……これしきの脅威、踏み躙ってみせよう……」
繰り出された処刑斧の一撃を、璃奈は凶太刀と神太刀の二振りを交差させて防御する。
ガッと鈍い音を立てて火花が散り、重圧が少女の体躯にのしかかる。確かに強烈だが、この程度なら十分に対処できるレベルだ――敵にもうこれ以上の手がなければ。
「我は常闇の信徒なり……我が名を記憶する者は不要……」
山羊頭の奥から不気味な言葉が囁かれたその瞬間、ヴォルフガングの肉体が闇と化す。
完全な発動ではないらしく、身体の半分は生身のままだが、それでも驚くべき事態だ。璃奈の【冥界獄】の結界内で不完全ながらもユーベルコードを発動してみせたのだから。
「この環境にもう適応した……?」
「我等は闇と呪いの中で生きる者。驚く程の事でもあるまい」
闇化した肉体は防御力を高め、欠損した足を再生させる。依然として結界が破られた訳ではないが、絶対的な優位性は失われた。それでも璃奈は慌てる事無くいつもと変わらぬ無表情で、【常闇の信徒】と化した敵に対抗するユーベルコードを新たに発動する。
「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
「ぬぅ……ッ!?」
冥界よりも深い闇そのものと化したヴォルフガングを照らすのは、燦然たる太陽の光。
【九尾化・天照】の封印を解いた璃奈は自在に光を操る金髪九尾の妖狐となり、その力で闇を祓う。明けぬ夜の世界に朝を告げるかのような暁光が、結界の中を照らし出した。
「不味い、か……」
敵は闇化すことで自らを強化する代償として、太陽光でダメージを受けるという特性を負っていた。本来この世界では突かれるはずの無かった弱点は、天照の出現により覆る。
咄嗟に彼は【怒りの日】を発動、屍兵の軍団を蘇らせて光を遮らせようとするが――。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
結界の呪力で弱体化した屍兵など、もはや何の障壁にもならない。璃奈が【Unlimited curse blades Ω】を発動すると、呪力で強化された"終焉"の魔剣達が一斉に放たれ、敵軍を殲滅する。
「悪いけど、貴方の力はわたしと相性が悪いみたいだね……」
「……その、ようだな」
常闇の信徒には天敵となる太陽で。屍兵の群れには魔剣の物量で。これだけ相性の良い対策を璃奈が保有していたのは幸運もあるが、この世界で長く戦い続けてきたからこそ、瞬時に有効な手段を打ち出せたのだろう。
「そして、ここはわたしの世界……。わたしの呪力が満ち、力を最大限に発揮できる空間……」
屍兵共を駆逐した直後にはもう、璃奈は新たな魔剣の現身を顕現させている。戦場全体を包み込んだ濃密な呪力は敵を弱体化させるだけでなく、彼女と魔剣達を強化していた。
この結界にいる限り、彼女と敵の力関係が覆ることは決してない。再び優勢を取り返した魔剣の巫女は、一気呵成に攻勢へと転じた。
「一気に押し切るよ……」
「ッ……――!!」
解き放たれた魔剣の弾幕をヴォルフガングは辛くも凌ぐが、その直後に飛び込んできた璃奈の攻撃は防げない。凶太刀の力で加速した斬撃が、不死や再生力を封じる神太刀の力を共に、常闇の信徒を切り刻む。
「……見事、だ」
数瞬の内に数十の斬撃を浴びせられた『滅亡卿』は、闇化を解いてがくりと膝を突く。
ここまでして斃れないのは、流石に歴戦の強者か。だが、今はその傷を再生する事すらままならず、冥界獄の侵食は着実に彼の力と生命を奪い続けていた――。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
その支配を終わらせる時が来たという事よ。
わたし達も立ち上がった人間達も貴方に負けはしないわ
魔槍で敵と数合打ち合い【見切り、第六感、怪力、切断、早業】を行い、ブラッディ・フォール】で「誇り高き狂気」の「異端なる太陽神仰の寵児」の力を使用(光球を展開し、服装も変化)
敵が闇へ変化したら、【陽の恵みに享受されるがいい】で闇を照らしてダメージを与えて追い込み、【信仰による神の力】で光球を増やして強化。
【陽の光を仰ぎ見ろ】による太陽の小球で一気に焼き尽くしてあげるわ!
この世界では異端の太陽神の力よ。…個人的には父様の悲劇を齎した相手って事であまり使いたくない力ではあるけど、有効なのは間違いないわよね。
「我等の敵は滅ぼさねばならぬ。我等が永劫なる支配の為に」
「その支配を終わらせる時が来たという事よ」
反逆者を抹殺する装置たる『滅亡卿』ヴォルフガングに、フレミアは堂々と宣言する。
百年に渡るヴァンパイアの支配の時代は終わる。他の誰でもない自分達が終わらせる。そのために自分達はこれまでも、そしてこれからも戦い続けるのだから。
「わたし達も立ち上がった人間達も貴方に負けはしないわ」
「確かに。貴様達は我が生涯において最も驚くべき脅威である」
だからこそ己も負ける訳にはいかぬと、ヴォルフガングも全身全霊を以て戦いを挑む。
その為ならばもはや『滅亡卿』という名すら不要であると、自身に関する情報を捨てて【常闇の信徒】に変じた彼は、闇そのものと化しながら猛然と襲い掛かってきた。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
フレミアは魔槍「ドラグ・グングニル」で使徒の斧と打ち合いながら、【ブラッディ・フォール】の詠唱を行う。父ヴラドの力に代わって彼女が呼び出すのは、同じ事件で討伐した『異端なる太陽神仰の寵児』の力。
「その、光は……!」
数合の打ち合いの内に、フレミアの服装は『寵児』の格好に変化していた。その周囲に浮かんだ光球を見て、ヴォルフガングの反応が変わる。それは紛れもなく太陽の輝き――この世からは失われたはずの吸血鬼の天敵であり、常闇の信徒にとっては最大の弱点だ。
「この世界では異端の太陽神の力よ」
大いなる神格の力を得たフレミアは、その超高温の光を全方位に放射して闇を照らす。
闇そのものと化した今のヴォルフガングに、この攻撃は耐えがたい。逃げるように影に溶け込んで距離を取るが、陽光はそんな彼を容赦なく追い立てていく。
「……個人的には父様の悲劇を齎した相手って事であまり使いたくない力ではあるけど、有効なのは間違いないわよね」
苦い記憶を蘇らせつつも、フレミアは【信仰による神の力】を発動し、光球の操作数と射程距離を強化する。思う所があるにせよ、この輝きが常闇の信徒とは決して相容れない力なのは間違いなく、強大なる地底都市からの刺客を打ち破る最大の武器であった。
「よもや、古の仇敵までもがここで立ちはだかるとはな」
増えつつある光球とその輝きを見て、逃げ場はないと悟った敵は捨て身の反撃に出る。
闇の力による再生力と『殺戮者の紋章』の強化があれば太陽光にも多少は耐えられる。その数秒のうちに一気に距離を詰め、全力で光の発生源を断つつもりだ。
「陽の光を仰ぎ見なさい」
手負いの猛獣さながらの勢いで迫る『滅亡卿』に対し、フレミアはさらなる力を発動。
太陽を模した小球を出現させると、そこから高熱を孕んだ光線を放ち、一気に敵を滅ぼさんとする。
「焼き尽くしてあげるわ!」
「負けぬ……我は……!」
未来を照らす太陽の熱線と、過去を留める常闇の信徒が激突し、互いを消滅させようと荒れ狂う――息が詰まるような拮抗の末、勝利したのはフレミアの奮う太陽の力だった。
「ぐ、おぉぉぉぉぉッ!!!!」
陽光に呑まれた『滅亡卿』が炎上し、常闇への変身が解除される。超高温に焦がされたその肉体は所々炭化しており、耐えがたい苦痛からの絶叫が夜の戦場に響き渡った――。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
私の名前ってダッチェスだったかしら?アサリだった気も…ヴォルフガング?
そんな物思いに耽っていたら、突然新手の無職もとい、新人がやってきた。
滅亡卿とか言う中二病の化身みたいなヤツ。
先輩だとしても威張り散らすのが嫌な私は同じプーでヴォルフガングどうし仲良くしようと手を差し伸べたら怒り出した。彼をコケにしてしまったらしい。
「あのぉ~あたくしたちの勝ちにしない?アナタ全霊を以て貴様らを鏖殺するとか言っていたけど…既に死んでいるから鏖殺できないですしおすし」
闇の世界から無理矢理ギャグ世界に放り込まれ、
『ギャグ卿』ヴォルフガングVS『滅亡卿』ヴォルフガング
彼にジャンルを超えた最大最強の天敵が襲い掛かった。
「私の名前ってダッチェスだったかしら? アサリだった気も……ヴォルフガング?」
猟兵と『滅亡卿』が存亡を賭けた熾烈な戦いを繰り広げているのとはまるで関係なく、カビパンは自らのパーソナリティの混乱に悩んでいた。あれこれ他人の名前を拝借したり偽名と本名を使い分けているうちに、どれが本当の名前だか分からなくなったらしい。
「……貴様も猟兵の一員か」
だが、そんな物思いに耽っている奇妙な女にも『滅亡卿』は容赦をしない。彼女が領主との戦いで功績を挙げたのは事実である以上、吸血鬼の敵として滅ぼすのは当然の事だ。一方のカビパンから見た彼は、突然やって来た新手の無職、もとい新人でしかなかった。
(なにこの滅亡卿とか言う中二病の化身みたいなヤツ)
【常闇の信徒】の力で闇そのものと化したヴォルフガングに、カビパンは冷めた視線を向ける。これまでに自分自身を含めてさんざん神秘体験や超常現象と遭遇しているのに、今更これを「中二病」の一言で片付けるのは逆に大したものである。
「同じプーでヴォルフガングどうし仲良くましょう」
「……我は無職ではない。主君があり、使命がある」
そんな事を考えつつも、威張り散らすのが嫌なカビパンは友好的に手を差し伸べるが、相手にはそんな先輩からの気遣いは伝わらなかったようだ。戦士ではなく暴力装置として己を律しているヴォルフガングも、彼女の不可解な言動には苛立ちが垣間見える。
「またまた強がっちゃって。いいのよそういう年頃は誰にでもあるから」
「……何を言っているのかは分からんが、どうやら我は侮辱されているようだな」
それでもなおカビパンが彼をこじらせ中二病扱いしていると、冷静沈着な『滅亡卿』もとうとう怒り出した。此方は真面目に使命を果たそうとしているのに、それを茶化されてコケにされればキレて当然だろう。
「懐柔策のつもりなら逆効果だったな。我は貴様らを一人として生かすつもりはない」
闇と同化した腕で巨大な処刑斧をゆらりと担ぎ上げ、断頭の一撃を振り下ろさんとするヴォルフガング。だが、絶体絶命のピンチに陥ってもなお、カビパンは平常運転だった。
「あのぉ~あたくしたちの勝ちにしない? アナタ全霊を以て貴様らを鏖殺するとか言っていたけど……既に死んでいるから鏖殺できないですしおすし」
自分が悪霊なのを良いことに勝手な勝利宣言。【ハリセンで叩かずにはいられない女】の奇妙な(本人的にはバカウケな)ギャグの嵐は戦場を彼女のペースで塗り替えていく。
「……一体、なんなのだ貴様は?」
自分の中で闘争心と殺意が急速に萎えていくのを感じて、ヴォルフガングは困惑する。
闇の世界から無理矢理ギャグ世界に放り込まれた彼からすれば、動揺も大きいだろう。そして一度巻き込まれてしまったが最後、カビパンワールドからの脱出は困難である。
「私の名は『ギャグ卿』ヴォルフガング」
激しく狼狽える『滅亡卿』に、カビパンはたった今付けたような称号を堂々と名乗る。
『ギャグ卿』ヴォルフガングVS『滅亡卿』ヴォルフガング。本来なら交わるはずのない二人は、運命と(主に後者の)不運によって出会ってしまった。
「さあ、世紀の対決の幕開けよ!」
「いい加減にせよ……!」
ことごとくペースを乱されノリを崩されるトークに、ヴォルフガングはもうタジタジ。
ジャンルを超えた最大最強の天敵に襲い掛かられ、彼はやむなく一時後退を決意した。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
最早、互いに語るべき事はありませんね
機械騎士トリテレイア、我が騎士道を以てその殺戮の使命、阻ませて頂きます
…参ります!
処刑斧を怪力で振るう電脳剣で受け止め、大盾殴打を混ぜた近接戦で暫し応戦
得物握る戦いでは、敵手として力を示せたかと…
さあ、次はどういたします!
攻城兵器の砲撃を脚部スラスターの推力移動で回避
確かに『人族鏖』を行うに易い大規模火力です
ええ、私の剣に掛けられた制限が緩む程に
その砲火に、人々の希望の灯を消させはしません
UC起動
剣と盾表面に展開する電脳魔法陣で砲撃無力化、復元、加速、反射
強化反射した砲撃で攻城兵器群を更地にする地形破壊
覚悟!
砲撃で吹き飛ばされた敵へ急速接近
剣を一閃
「最早、互いに語るべき事はありませんね」
吸血鬼の支配に仇為す者と、それを滅ぼさんとする者。決して相容れぬ道を強固な信念を以て進む者同士、であれば戦いは避けられぬが道理。『滅亡卿』ヴォルフガングと対峙したトリテレイアは、己の道に恥じぬ堂々たる名乗りを上げる。
「機械騎士トリテレイア、我が騎士道を以てその殺戮の使命、阻ませて頂きます」
「……来るがいい、鋼の騎士よ」
滅亡を語る使者は『殺戮者の紋章』を闇夜に煌めかせ、巨大な処刑斧と大盾を構える。
手負いなれども凄まじいプレッシャー。装甲がびりびりと振動する錯覚を感じながら、機械仕掛けの騎士は覚悟を決めて踏み込んだ。
「……参ります!」
間合いに入った瞬間、轟と唸りを上げて処刑斧が振り下ろされる。『滅亡卿』の全霊が籠もった一撃を、電脳剣で受け止めて応戦するトリテレイア。ウォーマシンの怪力を活用し、大盾を鈍器とした殴打も混じえた力強い近接戦だ。
「……強いな」
機体性能に傲らず磨き上げられた技巧と戦術に、ヴォルフガングが感嘆したように声を上げる。『紋章』の力で強化された彼と真っ向から打ち合える者は世に多くはあるまい。互いの得物が火花を散らし、一歩も譲らぬ応酬が暫し繰り広げられる。
「得物握る戦いでは、敵手として力を示せたかと……さあ、次はどういたします!」
引けを取らぬ実力を見せた所で、トリテレイアは敵に次の手を誘うように声を上げる。
ヴォルフガングもこのままでは埒が明かぬと判断したか、徐ろに処刑斧を大きく振り上げると――眼前の騎士にではなく、足元の地面に叩き付けた。
「……滅び歌え轟砲連打の葬送曲」
割り砕かれた大地より出現するのは黒く禍々しい攻城兵器群。それらは自動的に敵対者に照準を定め、自律砲撃を開始する。分厚い鎧甲冑もたやすく砕きうる大火力の洗礼が、機械騎士に襲い掛かった。
「確かに『人族鏖』を行うに易い大規模火力です」
攻城兵器の砲撃を脚部スラスターの推力移動にて回避しながら、トリテレイアは呟く。
あの斧が地形を破壊するたびに新たな兵器が出現する。このまま守勢に徹しても敵の戦力は増していくばかりで、いずれは避け切れなくなる――使命に殉じる『滅亡卿』の性格をよく現した、一切の情け容赦のないユーベルコードだ。
「ええ、私の剣に掛けられた制限が緩む程に」
「……何?」
騎士が所持する電脳禁忌剣アレクシアも、それが尋常ならざる脅威であると認定した。
これにより【銀河帝国未配備A式反射防衛機構】の使用制限が解除。剣の内部から魔力とも自然光とも異なる光があふれ出すのを、ヴォルフガングは見た。
「その砲火に、人々の希望の灯を消させはしません」
絶え間なく放たれる攻城兵器の自律砲撃に合わせて、トリテレイアは剣と盾を構える。
その表面に展開された電脳魔法陣が砲弾を受け止めた瞬間、砲撃の威力は完全に無力化され、直後に復元、加速、反射される。
「そっくりそのまま……いいえ、それ以上の悪意の報いを受けて頂きます」
強化反射された砲撃は発射元である攻城兵器群へと襲い掛かり、その悉くを粉砕する。
濛々と立ち込める土煙。それが晴れた後には、兵器があった場所は更地と化していた。
「――……!」
反射防衛機構の反撃を受けたのは兵器群だけではない。ヴォルフガングは咄嗟に大盾で砲撃を防いだものの、激突時の衝撃を打ち消すことはできずに真後ろへ吹き飛ばされる。
体勢が崩れたその隙を逃さず、トリテレイアはスラスターを全開で敵へ急速接近する。
「覚悟!」
電脳の輝きを放つ禁忌剣が一閃され、鎧の装甲を貫いてヴォルフガングを斬り伏せる。
さっと飛び散ったどす黒い血と、「ぐぅ……ッ!」と押し殺しきれない苦悶の呻きが、彼の者が受けたダメージを物語っていた。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
敵UCの呪炎を呪詛耐性で受け流し屍兵の動きを戦闘知識を基に見切り、
「呪宝珠弾」を銃撃して敵の殺気を反転させて同士討ちを試み、
敵の集団戦術が乱れ体勢が崩れた隙を突き戦場に吸血鬼化した影を広げUCを発動
…名乗られた以上、たとえお前達のような輩が相手でも名乗り返すのが礼儀ね
…私の名はリーヴァルディ・カーライル。お前を狩り、この百年の支配に亀裂を刻む者よ
影から生命力を吸収する無数の呪槍を乱れ撃ちして敵陣をなぎ払い、
屍兵達の霊魂を大鎌に降霊して限界突破した闇の魔力を溜め、
呪詛のオーラで防御ごと敵を切断する闇属性攻撃の斬擊波を放つ
…目覚めなさい、過去を刻むもの。死を喰らい、その力を解放せよ
「……名乗られた以上、たとえお前達のような輩が相手でも名乗り返すのが礼儀ね」
『滅亡卿』を名乗る地底都市からの刺客を鋭い眼光で睨みつけながら、リーヴァルディは口を開く。呪弾を装填したマスケット銃を突きつけ、自らの信念を示すべく堂々と。
「……私の名はリーヴァルディ・カーライル。お前を狩り、この百年の支配に亀裂を刻む者よ」
絶対に相容れない使命を抱いた者達が対峙する。もはや問答を挟む余地はないだろう。
吸血鬼狩人の少女が動き出すのと同時に、敵は処刑斧を掲げ【怒りの日】を発動する。
「呪炎よ、世界を焼き払え。屍兵よ、大地を埋め尽くせ」
忌まわしき呪いの炎が闇空から降り注ぎ、炎上する大地から屍兵の大群が起き上がる。
死者の帝国と化した戦場で、リーヴァルディは持ち前の耐性によって呪いを受け流し、攻め寄せる屍兵の動きを過去の戦闘知識を基に見切る。
「……死者の相手は慣れているわ」
肉迫される前に銃の狙いをつけ、トリガーを引く。放たれた「呪宝珠弾」は軍勢の中にいた屍兵の1体を捉え、その殺意が向かう先を反転させる。召喚された死霊の命令に割り込み、同士討ちを引き起こすのがこの弾丸の特性だった。
『ウゥ……ァァァ!!』
呪弾を受けた屍兵はすぐ隣にいた同胞に刃を向け、それを切っ掛けに軍勢内で同士討ちが始まる。リーヴァルディはそこに次々と銃撃を叩き込み、敵の混乱を加速させていく。
「ぬぅ……やってくれる」
ここまで集団が乱れれば、ヴォルフガングも統率を取り戻す事は困難だろう。敵の体勢が崩れた隙を突き、少女は銃を捨てて【限定解放・血の影槍】を発動。ここからが本番だと言わんばかりに、その身を一時的に吸血鬼化する。
「……限定解放。影より来たれ、呪われし槍」
呪炎に照らされて戦場に広がったリーヴァルディの影が、物質化した呪槍に変化する。
大地より放たれた無数のそれは敵陣を足元から貫き、屍兵達のかりそめの生命を啜る。
『ギィィィィィァァァァァ……!』
断末魔の悲鳴を残して屍兵は塵に還り、その霊魂は少女が持つ黒い大鎌に降霊される。
何百という死霊を基にして限界を超える闇の魔力を手に入れた彼女は、凄まじい呪詛のオーラを放ちながら告げる。
「……目覚めなさい、過去を刻むもの。死を喰らい、その力を解放せよ」
それは死者の想念を吸収して力とし、過去を刻み未来を閉ざす魔装、グリムリーパー。
この世界を支配する吸血鬼を滅ぼすために、狩人が最も多くの血を吸わせてきた武器。
鈍い輝きを放つ刃にオーラを纏わせ、リーヴァルディは大鎌を一閃。夜よりも暗い闇の斬撃波が、大地を切り裂きながら『滅亡卿』に迫る。
「ぐ……おぉぉッ!!!」
配下の霊魂まで利用された極大規模の一撃の前では、いかなる防御も無意味であった。
咄嗟に構えた大盾ごと、ヴォルフガングはその身を断たれ――絶叫と血飛沫が上がる。蓄積されたダメージの重みに耐えかねるように、彼はがくりとその場に膝をついた。
大成功
🔵🔵🔵
安寧・肆号
遺灰は散って夢の中。
悪夢は覚めたはずなのに。
まだ、あたしたちには夢を見せてくれないのね。
めぇ、めぇ、黒ヤギさん!
刈りとれる毛はなさそうね?
屍になっても動くだなんて、きっと働き者なんだわ。
あたしも働き者を呼びましょ。
小さな骸骨から大きな馬車へ―!
きりきり働いてお馬さん!
屍兵たちへ突撃。加速して蹂躙よ。
そのまま魔力の大元を辿らせて、黒ヤギさんへ突撃。
躱されてしまったら、あたしだけ勢いのまま飛び降りて革命剣で攻撃・部位破壊を試みるわ。
どうぞ休んで黒ヤギさん。
あたし、今、とても晴れやかな気分なの!
「遺灰は散って夢の中。悪夢は覚めたはずなのに。まだ、あたしたちには夢を見せてくれないのね」
過去との因縁に決着をつけた余韻にひたる間もなく、勝利を台無しにしようとやって来た『滅亡卿』を見て、アンネは嘆くように、或いは歌うように抑揚をつけて語りかける。
「めぇ、めぇ、黒ヤギさん! 刈りとれる毛はなさそうね?」
「然り。今宵刈り取られるのは貴様達の生命なれば」
その返答はユーモアに乏しい生真面目なもので、いささか魅力に欠ける。そんな相手は忌まわしき呪炎にて戦場を炎上させ、またも新たな屍兵の軍団を蘇らせようとしていた。
「怒りの日は来たれり……死者よ、生者を鏖殺せよ」
深手を負ったヴォルフガングに代わって、屍兵の軍勢がその意のままに進軍を始める。
まさに死者の帝国と言うべきその光景を目の当たりにして、しかしアンネは微笑んで。
「屍になっても動くだなんて、きっと働き者なんだわ。あたしも働き者を呼びましょ。小さな骸骨から大きな馬車へ――!」
そう叫んだ彼女の元に現れたのは、骸骨馬に曳かれたバルーシュ型の黒い馬車だった。
普段は髑髏にして持ち運んでいる、その車輌の名は「Venefica*Barouche」という。
「きりきり働いてお馬さん!」
ひょいっと軽やかに馬車に乗り込んだアンネは、骸骨馬に命じて屍兵たちへ突撃する。
【少女具現・骸馬車】。ガラガラと音を立てて疾走する魔女の馬車はそれ自体が武器となって、進路上の敵を蹂躙する。
『ギィヤァァァァァァァ……!!』
さながらダッチェスが率いていた戦車部隊の突撃を、より優雅にアレンジしたような。
轢き倒された屍兵が断末魔の叫びを上げる中、その魔力を学習した骸骨馬は加速して、敵陣の奥深くに駆けていく。
「あの馬車、何らかの魔法が掛かっているのか……? 屍兵では止められぬか」
屍兵を操る魔力の大元を辿って、骸馬車はまっすぐに「黒ヤギさん」へ突撃してくる。それを見たヴォルフガングは割れた盾と処刑斧を手にして迎撃の構えを取った。
「そのまま轢いてしまって、お馬さん!」
「甘く見るな。斯様な単調な突撃など……」
紋章の力で強化されたヴォルフガングの運動能力は重装備とは思えぬ機敏で、真正面に突っ込んできた馬車を余裕のある動きで躱す。そのまま車内にいるアンネを斬り捨てようと処刑斧を振りかぶるが――。
「……居ないだと?」
覗き込んだ車内には誰もいない。突撃を躱された直後にアンネは飛び降りていたのだ。
疾走の勢いのままに跳んで、敵の死角へ。ヴォルフガングがはっとふり返った時には、彼女はもう攻撃の構えを取っている。
「どうぞ休んで黒ヤギさん。あたし、今、とても晴れやかな気分なの!」
高らかに告げて放たれる革命剣「Vorpal*Sword」の一撃。過去を振り切ったばかりの少女の想いを乗せて、明けの明星のように煌めいた刃は、過たず敵の紋章を刺し貫いた。
「がは……ッ!!」
力の源であり弱点でもある『殺戮者の紋章』を的確に壊され、『滅亡卿』は喀血する。
過去を置いて未来へと駆けていくアンネとは対照的に。過去による支配を守護せんとするヴォルフガングには、骸の海に還る時が迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
そこまで脅威に思ってくれるとは光栄だ
【怪力】を以って聖槍を振るい、処刑斧と斬り結ぶ
強者にありがちな遊びが全くなく、闇というこの世界における最大の地の利を活かし、確実に殺しに来る攻勢に苦戦は必定
だが――違う。貴様は思い違いをしている
猟兵という武力は、ただの切欠に過ぎない
この世界を取り戻すという人々の意思、諦めない心、それこそが貴様たちの支配を打ち砕く、何よりも大きな力だ
【闇の世界に青空を】
煌めく黄金の太陽が、瞬く間に闇を駆逐する
再び斬り結び――今度は負けはしない
斬り打ち穿ち薙ぎ払い、怒涛の如く攻め立てる
我らの勝利、そして貴様らの敗北を魂に刻み、骸の海に還るがいい!
「我が見立てに間違いは無かった……やはり貴様達こそ、我が生涯最大の天敵……」
「そこまで脅威に思ってくれるとは光栄だ」
この世界に未来を取り戻さんとする者達にとって、その評価は敵からの称賛に等しい。
オリヴィアは破邪の聖槍を構えると油断のない足運びで間合いを計り、白兵戦を挑む。対するヴォルフガングは【常闇の信徒】を発動し、闇そのものと化して彼女を迎え撃つ。
「この命に代えてでも、貴様達はここで滅殺する……!」
「いいや。滅びるのは貴様の方だ」
オリヴィアは並外れた怪力を以て聖槍を振るい、ヴォルフガングの処刑斧と斬り結ぶ。
敵は重量のある巨大武器を腕の延長のごとく自在に操り、影から影へ瞬時に渡りながら攻め立ててくる。蓄積された負傷はもはや無視できないレベルの筈だが、動きが鈍らないのは流石に歴戦の古強者という他ない。
(強者にありがちな遊びが全くなく、闇というこの世界における最大の地の利を活かし、確実に殺しに来る攻勢……)
彼女もこれまでに数多くの吸血鬼を屠ってきた猛者だが、それでも苦戦は必死だった。
打ち合うたびに腕が痺れ、一瞬でも気を抜けば死角に回られる。純粋な武力において、この吸血鬼がオリヴィアを上回っているのは確かだった。
「だが――違う。貴様は思い違いをしている」
「何だと?」
敵の猛攻に食らいつきながら、オリヴィアは毅然と語る。『滅亡卿』は猟兵を天敵だと語るが、それは武勇一辺のみの評価に過ぎない。真に彼らが恐れるべき"力"は他にある。
「猟兵という武力は、ただの切欠に過ぎない。この世界を取り戻すという人々の意思、諦めない心、それこそが貴様たちの支配を打ち砕く、何よりも大きな力だ」
儚くも失われる事無く紡がれてきた心こそが、反抗の大火を燃え上がらせるに至った。
そんな意志を象徴するのは【闇の世界に青空を】という、誰もが抱いたひとつの願い。
「切なる願い、尊き祈り、希望の象徴を、今ここに」
生きとし生けるものの願いを束ね、オリヴィアはその想いをひとときだけ現実にする。
夜の帳は晴れ、頭上には青空が広がり、煌めく黄金の太陽が、瞬く間に闇を駆逐する。
「な――……!!」
百年に渡ってこの世界から奪われていたその輝きは、全ての吸血鬼にとっての天敵だ。
常闇の信徒と化したヴォルフガングが受ける影響は殊更大きく、陽の光を浴びるだけでその躰は焼けただれていく。
「――今度は負けはしない」
燦々と降り注ぐ太陽の光をその身に受けて、オリヴィアは再び『滅亡卿』と斬り結ぶ。
攻防の流れはこれまでとほぼ同じ――だが力関係は完全に逆転していた。渡る先となる影は失われ、陽光に灼かれ続ける敵を、彼女は怒涛の如く攻め立てる。
「我らの勝利、そして貴様らの敗北を魂に刻み、骸の海に還るがいい!」
斬り打ち穿ち薙ぎ払い、息吐く暇もない猛攻に、とうとうヴォルフガングが後退する。
破邪の力を宿す黄金の穂先は、太陽に照らされて普段よりも燦然と輝く。人々の願いがこの地に青空を実現できたのは僅かな時間だったが――それで十分であった。
「ッ――……これ、が。貴様達の……『闇の救済者』の、真の力か……」
灰となって崩れ去っていく『滅亡卿』ヴォルフガングの、それが最期の言葉となった。
胸甲に張り付いていた『殺戮者の紋章』が砕け、本体もろとも跡形もなく消滅する。
太陽と青空が去り、夜の帳が戻ってきても、そこに常闇の信徒の姿はもう居なかった。
かくして猟兵は『闇の救済者』の勝利を確かなものとし、吸血鬼の支配を打ち破った。
消えることなき反抗の灯火は、この世界の夜明けに向けてまた一歩前進したのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年08月21日
宿敵
『ダッチェス』
を撃破!
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