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猟兵達の夏休み2021~カクリヨ夏海デート物語

#カクリヨファンタズム #お祭り2021 #夏休み #夏休み2021 #恋愛 #デート #友情デートも◎

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#恋愛
#デート
#友情デートも◎


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 水着コンテスト2021の舞台はカクリヨファンタズムだ。
 カクリヨファンタズムには新し妖怪親分『バズりトレンディ』が作った夏のビーチサイドが広がっている。
 ここに四人の妖怪親分達が集結していた。
 曰く、妖怪花火を用意したので一緒に花火を楽しまないか、という誘いであった。
 曰く、この花火は人が中に入って打ち上げが可能で、そのまま花火の模様の上を歩けるらしい。
 つまり、親しい者同士、仲睦まじく誰の邪魔が入らずデートが出来るのだ!

「皆様、これからデートをしてきてくださいまし!」
 単刀直入に蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』/IGNITE POP DiVA・f30196)が言い付けた。ちょっと期待に目を輝かせながら。
「水着コンテスト、お疲れさまでした! 妖怪親分の方々の粋な計らいもあって、今、カクリヨビーチは絶好のデートスポットですの! ここでデートをすれば、コンテストの熱気が後押しとなって、ふたりの仲は急接近すること間違いなしですわ♪」
 どうやら、ライムは人様のイチャイチャ恋愛模様に興味津々のようだ。
 恋に恋するお年頃の乙女である。
「大丈夫ですわよ! 私、皆様の邪魔にならぬよう、ユーベルコードで蛇になって物陰に隠れて見守っていますの! 怪奇人間女性部門1位は伊達じゃありませんわ!」
 ……つまり、ライムをデートに誘いたい場合、物陰に隠れてる蛇を見付ければいいわけだ。
 まぁ、そんな稀有な猟兵がいるかどうかはさておき、花火に打ち上げられての空中散歩デートの他に、海水浴や砂浜での海遊びデート、海の家の屋台飯デートなど、各々で夏を楽しんでもらいたい。

「それでは、お相手の方を誘ったら私に声を掛けてくださいませ!」
 キラキラと笑顔を輝かせるライムが、カクリヨファンタズムへの転送の扉を開く。
 猟兵達は、意中の相手や親しい仲を誘っては、その扉をくぐっていったのだった。


七転 十五起
 デートですよ、デート! 友情デートも可っ!!
 老若男女問わず、イチャラブなカップルさん集まれーっ!!!!!
 なぎてんはねおきです。

●参加したいけど、ぼっち猟兵はデートできないじゃろがい!
 そんな猟兵の方は、グリモア猟兵のライムを誘うことが出来ます。
 ユーベルコードで蛇になったライムはコソコソ周囲のデートを観察してます。
 ですので捕獲、もといデートに誘えば、性別関係なく喜んでライムは同行します。
(ただし公序良俗違反行為は、プレイングまるごと不採用とさせていただきます)

●この砂浜で出来ること
 花火を一緒に見上げる。
 花火で打ち上がって空中散歩。
 砂浜で遊ぶ。
 一緒に泳ぐ。
 海の家で御飯食べる。
(なお、大抵の物品はバズりトレンディ親分がマネーパワーで解決して調達しています)

 それでは、ひと夏のデート、ごゆるりとお楽しみ下さい!
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW   :    妖怪花火で空へGO!

SPD   :    妖怪花火の上で空中散歩

WIZ   :    静かに花火を楽しもう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鹿村・トーゴ
ケイラf18523と

夏だし花火見に行こってお誘いに乗った(ICの浴衣姿)
(相棒ユキエはだいたい頭の上で居眠り『ユキエもデート…』←寝言
ユキエ?寝ちゃったか
夜だしな

うーん
まさか花火に打ち上げられるなんて体験するとはね
あ、でもすげーや!
この花火の上歩く感じ、不思議ー
狭いとか不安定な場所進む訓練はしたけどこれはさすがに初めてだな(身軽く器用に歩いたり跳んで渡ったり)
ケイラも猫科ならこゆとこ得意だろ?それとも手貸そっか?
高いとこ来たら星が近い気がする…

さて、食べる物はオレが調達しよっか(UDCで気に入ったのでやきそば2人分)
ケイラが何か欲しがれば追加で注文、水着や服を可愛いねェと褒めたりする

アドリブ可


ケイラ・ローク
トーゴ【f14519】をお誘い
黒猫パーカーに黒ビキニで♥
ってキミ浴衣ね
夏祭りと思った?ま、いっか♪
あらユキエちゃん寝ちゃったの

んふ
キマフューでもなかなか巡り会えないデタラメさ!花火で打ち上げられるとか~
いやでもキミ
ここ修行場じゃないから
そうよっあたしも身軽ですからね
でもデートらしく手を引いて貰おうかしら?
空中散歩で星の話なんてロマンチックだけど
キミの場合天文談議なりそうなのよね
友達デートだし色気はないわね
♪~鼻唄

ね?何か食べましょ
…問答無用で焼きそばが(もぐもぐ
あとかき氷欲しいな
はいあーんしてあげよう♥(がっつり掬ってトーゴの頭キーンとさせる

あら~褒めてくれるんだ?
お色気ないけど可愛いでしょ♥



 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)とケイラ・ローク(トパーズとアメジスト・f18523)は親愛なる悪友同士である。
 これまでも何度か2人で任務もとい旅行に出かけている仲だ。
 そんな2人が、今回カクリヨビーチに足を運んで花火を楽しもうと話し合っていた。
「ケイラのヤツ、遅いなぁ……誘った方が姿を見せないってどういう了見なんだ?」
 鹿村は浴衣姿でビーチに立っていた。
 周囲にはまだ他の猟兵達もおらず、鹿村が一番乗りだったようだ。
『ユキエもデート……スゥ、スゥ……』
「ユキエ? ……寝ちゃったか。夜だしな」
 頭上に止まっている相棒の白鸚鵡ユキエが寝たのを確認したその時、砂浜を駆けってくるケイラの姿をようやく捉えた。
「おっ待たせー! 実はトーゴが来る前に転送してもらってて、水着に着替えていたのよ♪」
 華奢なケイラの素肌に纏うは、上下黒のビキニだ。その上から黒猫パーカーを羽織っており、ねこまたキマイラらしいコーデを披露する。
 だが、鹿村の浴衣姿にケイラはしかめっ面になってしまう。
「ってキミ浴衣ね? 夏祭りと思った?」
「花火見に行くって言われたからなー? まさか海でやるとは思わなかった」
「ま、いっか♪ 海に入らないなら何着ても変わらないし♪」
「にしてもケイラの水着、可愛いねェ?」
「あら~褒めてくれるんだ? お色気ないけど可愛いでしょ♥ えへへ♥」
 ケイラはトーゴの腕に自分の腕を絡ませると、微笑みながら擦り寄ってみせる。
「それよりも早く花火のとこ行こ♪ って、ユキエちゃん寝ちゃったの」
 クスッと笑みをこぼして、優しく白鸚鵡の頭を指で撫でるケイラ。
 そのままケイラは強引に鹿村を引っ張ってゆくのだった。

 妖怪親分達が用意した花火は、自身が一緒に筒に入ることで夜空へ飛び出すことができる。これを聞いたケイラは、自身の故郷であるキマイラフューチャーと比較して想いを馳せていた。
「んふ、キマフューでもなかなか巡り会えないデタラメさ! 花火であたし達が打ち上げられるとか~」
「だよなー? うーん、でもさ、まさか花火に打ち上げられるなんて体験するとはね。この大筒に入るのか……」
 鹿村がおっかなびっくりに筒に入ると、そこへケイラも入り込んできた。
「おいケイラ、狭いって……」
「いいじゃない♥ こうして抱き締めたほうが怖くないでしょ?」
 ぎゅっと鹿村の背中に体を押し当てるように抱きつくケイラ。
 それに首を傾げる鹿村。
「オレは別に怖くはねーって。そういうケイラのほうが怖いんじゃないか?」
「あら奇遇だわ、あたしも怖くないんだけどね? それよりトーゴ? 強がらなくてもいいのよ? 女の子と密着できて嬉しいでしょ?」
「そっちかよ……! てかケイラ、ちゃんと飯食ってるか? さっきから肋骨が当たって背中が痛てェーよ」
「なによ! どうせあたしは胸よりも肋骨のほうが立派よ!」
「は? いきなりなんでキレて……」
 大筒の中であわや口論が始まろうとしていた次の瞬間、ボッという点火音とともに2人の体は花火玉と一緒に夏の夜の闇へと打ち上がっていた。

 足元で炸裂する花火玉。
 その模様が超スローモーションで広がってゆけば、2人はその模様に降り立つことができた。
「すげーや! この花火の上歩く感じ、不思議ー。狭いとか不安定な場所進む訓練はしたけど、これはさすがに初めてだな」
 よっほっはっと光の模様の上をバランス良く渡り歩く鹿村に、ケイラは思わず呆れていた。
「いやキミ、ここ修行場じゃないから。デート中に修行はなくないかしら?」
「いや知ってるけどさ、身体が勝手に……てかさ、ケイラも猫科ならこゆとこ得意だろ?」
「そうよっ! あたしも身軽ですからね。こんなの余裕よ!」
「では、お手並み拝見っと。それとも手貸そっか?」
 差し伸べられた鹿村の手を、ケイラは少し恥ずかしそうに掴んだ。
「……それじゃ、デートらしく手を引いて貰おうかしら? しっかりエスコートしなさいよ?」
「できるかどうか分からないが、善処してみる」
「そこは嘘でも任せろとか言ってほしいわ。はぁ……トーゴはまず、女の子との接し方を修行したほうがいんじゃないの?」
「うるせーな、オレは色々忙しいんだって……」
 小言を言われながらも鹿村はケイラの手を取り、模様の上を飛んで跳ねてとはしゃいで回る。
「高いとこ来たら星が近い気がする……なぁケイラ! カクリヨってUDCアースの裏側の世界ってことは、星座も全部裏返しなのか?」
「いや知らないわよ。って、空中散歩で星の話なんてロマンチックだけど、キミの場合は天文談議をあたしが聞いているだけになりそうね?」
「星の話は面白いんだけどなー? ちぇーっ!」
 ふてくされる鹿村に、ケイラは彼の手を引いて天の川めいた枝垂れ花火を渡り歩く。模様の上限定だが、歩を進めるたびに鹿村は次第に笑顔が戻っていった。
「――やっぱ、友達デートだし色気はないわね」
「ん、今なんか言った?」
「なんでもなーい! ♪フン、フフン、フ~ン」
 ニヤニヤするケイラが鼻歌を口ずさむ。
 その顔はどこか晴れやかであった。

「ね? 何か食べましょ?」
 地上へ降り立った2人は、海の家で食事をすることに。
「食べる物はオレが調達しよっか。待っててくれ」
 忍者らしく素早く掛けてゆき、数分後に猛ダッシュで戻ってきた。
「おまたせ、ケイラ! 焼きそば大盛りだ!」
「いや問答無用で焼きそば一択って何なんの?」
 ケイラの呆れた声に、鹿村は嬉しそうの答えた。
「UDCアースで食べてから、すごく気に入っててな? こんなうまい食べ物があったのかーって感動したねェ」
「いや、それはトーゴの話であたしは関係なくない? まあ、食べるけど……って美味しいわ、この焼きそば!」
「だろ? ほら、大将も喜んでるぞ?」
 海の家の厨房から、西洋妖怪親分のしあわせの王子様が満足そうに2人を眺めていた。
「え、王子様が焼きそば焼いてたの? マジ……?」
 驚愕の事実に、ケイラの中で目の前の焼きそばのレアリティが急上昇していく。
「ねぇトーゴ? あたし、かき氷欲しいな」
「分かった、すいませーん!」
 ということで、イチゴ味のかき氷2つを追加注文。
 ここでケイラがトーゴへかき氷を一匙差し出してきた。
「はい、あーんっ♥」
「あーん」
 そこは恥じらわないんかいっと内心ツッコミを入れるケイラ。
 自然体で口に運ばれたかき氷のせいで、鹿村は頭痛を起こしてしばらく悶絶。
「イテテテ……」
「あははははっ! なっさけないわねぇ~!」
 それをケイラは大笑いしていたのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
(ライム捕獲しようとして即座に機神に捕獲される盗賊

UC常時発動
なんでおめーとデートしなきゃいけねーんですかっ
「いいじゃーん♥シーフ部門一位記念だよ☆お祝いしよーよー☆」
…ぅ…しかたねーな
お前のお陰でもありますしね
やるからには満喫するぞっ
先ずは海水浴だっ
「水着である事を生かしてこそだね☆」
透明感のある海はなんだかんだで楽しい

屋台飯
こういうのって大したこと無い気がするのに…
「冷えた体に焼きそばや拉麺美味しい!」

空中散歩
おっかなびっくり一緒に飛ぶ
「こういうのも面白いねー☆」
自分で飛べないと少し不安ですねっ

不思議ですね
花火の模様に立てるとか

「落ちないよう気を付けないとね☆」(手を取り

一緒に空中散歩



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は草むらの中を掻き分けていた。
「ライムー! 僕とデートしましょう! いるなら出ておいでー!」
 グリモア猟兵のライムは、ユーベルコードで蛇に変身して草むらの中に潜んでいると聞いたカシムは、海なのに草と格闘していた。
「ふぅ、ライムはシャイなのですかね? なかなか見付かりません……っておや?」
 一瞬、草むらの一箇所が動いた。
 そ~っと忍び足で近付き、ゆっくり草むらを分け入ってみれば……。
 そこには、まごうことなき美少女がいた。
「ご主人サマ! お ま た せ ☆」
 ただし、いつもの白い美少女メルシーの方だった。
「クソがッッッ!!!!!」
 カシム、この夏一番の罵声が飛び出した瞬間である。

 で結局、2人はデートを開始した。
「なんでおめーとデートしなきゃいけねーんですかっ!」
「いいじゃーん♥ シーフ部門一位記念だよ☆ お祝いしよーよー☆」
「僕はライムとデートしにきたんです!」
「ふーん? メルシーのおっぱいで票が集まったのに、そんな事言うんだ~? 男性部門なのに~?」
 ニチャァ……という擬音が聞こえてきそうな笑みを浮かべるメルシー。
 さすがにこれはカシムも反論できない。
「……ぅ……しかたねーな。確かにお前のお陰でもありますからね。ただし、やるからには満喫するぞっ!」
「やったーっ!」
 こうして、いつもの2人の全力デートが始まった。

「先ずは海水浴だっ! 泳ぐぞ、メルシー!」
「水着である事を活かしてこそだね☆」
 メルシーが全力で泳ぐと、クルーザー並みの馬力で海面を突き進んでゆく。
 見た目は少女だが、その正体はキャバリア型の神様なのだ。
 人間とは推進力が違う。
「お前なぁ!? 泳ぐだけで高波起こしてんじゃねーよ!」
「ごめーん、ご主人サマ♥」
 カシムの背中に柔らかい感触が2つ伝わってきた。
 メルシーが後からカシムの背中越しに抱擁してきたのだ。
「……許してくれる?」
「ゆ、許す……おぅふ……!」
 不意打ちで体の一部が反応してしまい、カシムは敗北感を味わった。
 でもなんだかんだ、透明度の高い海ってきれいで最高だな、とカシムはメルシーにモゾモゾされながら思っていた。

 次は海の家。
「どうして王子様が鉄板の前で焼きそば焼いてるのですかね?」
「一度やってみたかったらしいよ?」
 メルシーは焼きそばにラーメン、カシムは焼きそばにカレーをチョイス。
「美味しい~♪ 泳いで冷えた身体に、熱々の焼きそばとラーメンが嬉しいね☆」
「麺類と麺類がかぶってるじゃねーか。まだまだ初心者だな、メルシーは」
「ご主人サマだって炭水化物かぶりでしょー?」
「米と麺を一緒にするんじゃねーですよ。それと、なにかもう一品頼みましょうか」
「メルシー、フランクフルト!」
「お前が食べるとろくな事が置きなさそうだから却下だ!」
「ええー!」

 そして、メインイベントの花火で打ち上げられてからの空中散歩だ。
「完全に人間大砲ですねこれ……!」
「大丈夫、ご主人サマ? フェロモン全開の魅惑のメルシーバディーに抱きついていいんだゾ☆」
「いや誰が……って今回は流石に甘えましょうか。これはちょっと怖いですね……」
 珍しくカシムは怯えて、メルシーの身体にしがみついた。
(ご主人サマが、デレたあぁぁぁぁー!!)
 メルシーはこの状況が永遠に続けばいいと願った。
 だが3秒後には2人とも空へ放り出されてしまった。
「そんなぁぁぁぁぁっ!」
「ふう、助かりましたよ、メルシー。ってなんで泣いてんだ?」
「な、なんでもない……それより、こういうのも面白いねー☆ バビューンって!」
「僕はやっぱり自力で飛んだほうが安心しますがね!?」
 ちょっとカシムの足元が震えていた。
「にしても、不思議ですね。花火の模様に立てるとか」
「落ちないよう気を付けないとね☆」
 2人は手を繋ぎ、模様の上を渡り歩いてゆく。
「ねぇご主人サマ?」
「なんだ、メルシー?」
「……ありがとね」
 唐突なお礼にカシムは首を傾げた。
「何言ってんだ、お前?」
「だって、メルシーの封印をクロムキャバリアで説いてくれたおかげで、こうやってご主人サマとデートできてるんだもん……」
 メルシーは星を見上げながらこうも言った。
「いろんな世界を一緒に見てきて、一緒に楽しんで……メルシー、とってもとっても嬉しかったよ……!」
「メルシー、お前、まさか泣いて……」
「嬉し涙だよ!」
 そう言って、メルシーはカシムの唇を己の唇で塞いだ。
 わずか数秒間の出来事。
 メルシーはカシムから離れると、ポロポロと涙を零した。
「大好き。本当に好きなの。でもご主人サマとメルシーは、人間と神様だから……」
 きっと、結ばれない。
 そう言い切る前に、カシムが言った。
「はぁ、馬鹿か? 僕はお前が必要だ。これからもな?」
 それ以上はカシムは黙り込む。
 メルシーは涙を拭うと、カシムの腕に抱きついて空中散歩を楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
水着)基本的には猫耳フード被りっぱなし
デート)本人は友情のつもり

「ラーイムちゃん、デートしーましょ」
とは言っても、僕もデートらしい事なんてした事ないから、
それらしい事をすればいいかなーなんて思う程度なんだけど!
「まぁ、まずはライムちゃんの行ってみたい所に行こうか」
レディファーストってやつだね(礼儀作法/団体行動
※必要であれば水泳/素潜り/高速泳法等臨機応変に技能使用
「あ、そーだ!後で屋台巡りでもする?」
僕としてはオム焼きそばとか食べたいなーって
「僕、結構大食いな方だから…食べてみたい物、二人でいーっぱい頼んじゃおっか」
鰻の白焼きとか、焼饅頭煎とか…
ん~、他のヒトと一緒に食べるのも格別だねぇ…♪



 夜のカクリヨビーチに藍色の髪を猫耳パーカーのフードから覗かせる青年が、草むらの中をかき分けていた。
「ラーイムちゃん、デートしーましょー?」
 インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は、蛇に変身しているグリモア猟兵のライムを探しているのだ。
 程なくして、体全体が赤とライムグリーンの縞々模様の蛇を発見する。
「あ、いたいた! キミ、ライムちゃんだよね? 僕とデートしましょ?」
 インディゴが笑顔を湛えて蛇の頭を指先で撫でる。
 すると、蛇は鈍い光を放ちながら真っ赤な水着を着込んだ少女の姿へ変化してみせた。
「わ、私がお相手でよろしいのかしら……?」
 まさか誘われるとは思っていなかったライムは、既に顔を赤らめてどぎまぎと視線を泳がせていた。
 これにインディゴは首を縦に振った。
「もちろんだよ! あ、とは言っても、僕もデートらしい事なんてした事ないから、それらしい事をすればいいかなーなんて思う程度なんだけど! LoveよりLikeというか、友情デートっやつかな?」
「そ、そうでしたの……。では、私達はデート初心者同士ですわね」
 ライムがくすっと笑い声を漏らせば、インディゴも釣られて声を出して笑い始めた。
「あははっ! 初心者同士、よろしくね、ライムちゃん?」
 インディゴはライムの手を取り、草むらから連れ出すことに成功した。

 ひとまず、ビーチまでやってきた二人。
「まぁ、まずはライムちゃんの行ってみたい所に行こうか。こういうの、レディーファーストって言うんだよね?」
 インディゴの屈託のない微笑みを向けられ、気恥ずかしさで彼を直視できないライム。
「で、でしたら、海で泳いでみたいですの」
「うん、いいよ! 泳ごっか?」
 インディゴが波打ち際にライムを誘おうとするが、ライムは何故かそれを躊躇する。
 ライムはおずおずとインディゴに打ち明け始めた。
「えっと、実は……私、泳ぎはそこまで得意じゃなくて……いえ、泳げますのよ? でも、少々無様な姿を晒すことになるので、そこはご容赦してくださいまし?」
「なぁんだ、だったら僕が教えてあげる!」
「本当ですの?」
 インディゴがすかさず首肯すると、ライムは安堵して肺から大きく息を吐いた。
「良かったぁ……海で泳ぎたいけど、殿方の前で恥を晒すのは抵抗があったから。そう言ってくれると気が楽になるわ」
「あ、素の口調はそれなんだね?」
「……しまったっ!」
 油断したライムがこぼした素の口調に、インディゴは優しく告げた。
「いいよ、僕に対して気を遣わなくてもね? そっちのほうが年相応の女の子って感じでカワイイよ?」
「カワ……っ! インディゴさんって、そういうこと言うのね? ずるい……」
 顔を真赤に染め上げるライム。
 そんな恥ずかしがるライムの手を、インディゴは優しく波打ち際へ導いていく。
「ずるくてごめんね? でもこれ、正直な感想だから。さっ、僕が丁寧に泳ぎを教えてあげるよー!」
「よ、よろしくね? インディゴさん?」
 色んな感情のせいで体がガチガチなライムを、インディゴは手取り足取り泳ぎのコツを教えてあげていった。

 小一時間ほそ経過し、2人はシャワーを浴びて海の家へ。
 ここで腹ごしらえをしていると、インディゴがライムへ提案を持ちかけた。
「あ、そーだ! 後で屋台巡りでもする?」
「いいわね。でも、今ご飯食べちゃってるけど大丈夫かしら?」
「僕、結構大食いな方だから……食べてみたい物、二人でいーっぱい頼んじゃおっか?」
 インディゴの誘いに、普段は体型維持のために食事制限をしているライムは決意を固めた。
「そういうことなら、私も今日はとことん食べ尽くすわよ! 屋台は東洋妖怪親分の山本さんが取り仕切っているのよね?」
「へぇ、そうなんだ? なら、これは期待できそうかな? 鰻の白焼きとか、焼饅頭煎とか……僕としてはオム焼きそばとか食べたいなーって」
「私はお寿司が食べたいわ。いいネタを仕入れたって、山本の親分さんが張り切ってわよ?」
「お寿司! うん、行こ行こ! ん~、他のヒトと一緒に食べるのも格別だねぇ……♪」
 海を家をあとにした2人は、屋台が立ち並ぶ箇所へ手を繋いで歩いてゆく。
 友情デートとはいうが、その仲睦まじさは傍から見たらカップルのそれの雰囲気であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリガ・ホーリエル
アンナ(f03717)と一緒に

毎年恒例、水着の時期が来たわ。ライムさんの許可も出たし、やる事は一つ!アンナと、テートするわよ!

アンナは海に来た事が無かったはずだから、海遊びに誘ってみようかしら。でもアンナは腹部の傷跡の関係上泳げないから、足首が浸かる程度の浜辺で遊びましょう。

アンナが尻込みして来ないなら、手を握って一緒に浜辺へ向かうわ。
「ほら、一緒に行けば怖くないわよ。」

浜辺では歩いてみたり、水を掛け合ってみたり、浜辺で出来そうな事は一通りしてみるわ。これでアンナが少しでも喜んでくれたら、あたしは嬉しいわ。

「ええ、また二人で遊びに来ましょう。…え、今好きって?」(アンナの言葉を聞いて)


アンナ・フランツウェイ
オリガ(f12132)と共に

海か…。そういえば来た事なかった気がする。ってオリガお願い、ちょっとで良いから黙ってて!人前でデートデート言わないで!

オリガに浜辺へ連れてこられたのは良いけど、磯の匂いや海の風とか、今まで感じた事がない感覚に最初は少し緊張しちゃうかも。でもオリガに手を引いてもらえるなら、

そしてオリガに教わったりして遊んでいる内に、なんだか楽しいと思って来た。今まで水辺で遊ぶことは避けて来たけど、水遊びってこんなに楽しいんだ…。

少ししたらタイミングを見計らい、オリガに話しかけよう。感謝とまた来年も、二人で遊びにこようって。…あとこれ言うなら今しかない。
「オリガ、…大好き」



 オリガ・ホーリエル(黒き天使を支える者・f12132)は潮風に青い髪をなびかせながら、水平線へ向けて決意を固めていた。
(毎年恒例、水着の時期が来たわ。ライムさんの許可も出たし、やる事は一つ! アンナと、デートするわよ!)
 拳を高々と突き上げる表情は嬉々と輝いている。
 そんなオリガの『奇行』をぼーっと見守る緑髪の呪われた天使ことアンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)。
 今年の水着は大きなフリンジが特徴的な赤のワンピース水着だ。
(海か……。そういえば来た事なかった気がする)
 水着姿で人前に出るのはやっぱり気恥ずかしい。でも、親しい間柄のオリガの前なら、それも和らぐというもの。
「というか、オリガは何をしているの?」
「あ、えっと、これからアンナとデートするから気合を入れようとかと! 海デートよ、海デート! しかもアンナとデートできるなんて、気合い入れなきゃだめでしょ!」
「まってオリガお願い、ちょっとで良いから黙ってて! 人前でデートデート言わないで!」
 頬を朱に染めるアンナに、オリガは心のなかで尊いと拝んでた。
 そんなオリガは、優しくアンナを波打ち際へ誘う。
「アンナ、せっかく来たんだから海に入ってみない?」
「でも、お腹の傷が……」
 アンナは諸事情でお腹に大きな傷跡がある。
 そのせいで水遊びをアンナはずっと避け続けていたのだ。
「大丈夫! 波打ち際の、足首が浸かるくらいまでならアンナだって平気よ。波が引くときに海水と砂が足元を流れる感触が気持ちいいわよ!」
 オリガがアンナの手を引き、波打ち際へ歩を進める。
「ほら、一緒に行けば怖くないわよ」
 声を掛けられたアンナも、普段は敬遠していたはずなのに、親しいオリガの手なら引かれていっても苦痛にならなかった。
「ねえオリガ?」
「なあにアンナ?」
「……私、磯の匂いや海の風とか、今まで感じた事がない感覚に少し緊張してた。でも、オリガに手を引いてもらったら、全部どこかへ飛んでいったみたい……」
「よかった! あたしもアンナが海遊び出来る手助けができるなら、いくらでも手を引くわ!」
「……ありがとう、オリガ」
 少女達は波打ち際で水音を立てながら歩いたり、ときに駆け出してみたり。
 腰まで海水に浸かることはできなくても、アンナは気が付けば海を楽しいと思えるようになっていた。
「今まで水辺で遊ぶことは避けて来たけど、水遊びってこんなに楽しいんだ……」
「そうよ! アンナだって楽しめる水遊びはまだまだたくさんあるわよ! あたしが教えてあげる!」
 このあともオリガは岩場での生き物捜索や貝拾いなど、アンナに色々な海での遊びを伝授していった。
 そうこうしているうちに月は宵空の天辺を周り、辺りは人もまばらになって静かになっていく。
 二人はヤシの木の根元に座ると、一定のリズムで押し寄せる波をただずっと無言で眺め続けていた。
 自然と2人の手の指先は絡み合ってゆき、いつしか互いの体を預け合うような格好になっていた。
「……オリガ、起きてる?」
「寝てないよ、アンナ。どうしたの、急に?」
「……ありがとう。私を、デートに誘ってくれて……」
「良かったわ。アンナが少しでも喜んでくれたら、あたしは嬉しいわ」
「それと……その……」
 急に口ごもるアンナに、オリガは黙って言葉を待ち続ける。その代わり、握る手に籠める力を、ほんの少しだけ強くした。
 しばらくして、アンナが言葉を振り絞った。
「また来年も、二人で遊びに来よう……」
「ええ、約束するわ! また二人で遊びに来ましょう?」
「それと……もうひとつ……」
「今度はなぁに?」
 アンナが勇気を振り絞ろうとする様を、愛おしそうに見守るオリガ。
 そんなオリガの優しさに応えようと、アンナは青髪の少女の目を見つめて告白した。

「オリガ……大好き」

「……えっ? 今、好きって?」
「言った……私、オリガのことが大好きって、言った……」
「……アンナ~!!」
「わっ!」
 愛が暴走して、アンナを思い切り抱きしめるオリガ。
 それに困惑しながらも、アンナは心の奥の温かさをたしかに感じ取っていた。
「たとえ呪いに染まったこの体でも……私は、オリガが大好き……」
「アンナの気持ち、受け取ったわ!」
 2人の心の距離が、ぐんと縮まった瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノインツィヒ・アリスズナンバー
海に来たなら、やる事は決まってるよね☆
めちゃくちゃ遊んじゃお☆
ね、ライムちゃん!此度はAlices祝勝会として、思い切り遊んじゃおうね☆

そんな訳で一緒に砂浜で遊んだり、せっかくの水着で泳いだりしちゃおう!
アイドル稼業は今のところ一休み☆
あ、でも求められるなら答えるのが一流アイドルだぞ☆

最後は花火を見ながら振り返る。
楽しかったね。夏休み。
こんなこと言うとライムちゃん困惑するかもしれないけど……

アイドル、楽しい?
私ちゃん、たまにキツくなるんだわ。
自分がなりたかった物のはずなのに、理想と現実は遠くて。
偶に自分がわかんなくなるんだわ。

私、アイドル向いてないんかな。
少し、意見聞かせてよ

アドリブ・絡み歓迎



 夜のカクリヨビーチの一角が、にわかに光り輝くようなオーラを放つ猟兵が現れた。
 ノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)、水着コンテスト2021に初参戦で見事に総合3位の大健闘を見せた今年の顔の一人だ。
 彼女の登場に、猟兵達や妖怪親分達がにわかにざわつき始めた。
 そんな彼女の傍らには、グリモア猟兵のライムが連れ添っていた。
「海に来たなら、やる事は決まってるよね☆ めちゃくちゃ遊んじゃお☆ ね、ライムちゃん!」
「ええ! ノインさんの大活躍と、私の入賞! お祝いも兼ねて!」
「だよね☆ 此度はAlices祝勝会として、思い切り遊んじゃおうね☆」
 ノインツィヒとライムは、アイドルユニット『Alices』を結成している。
 今年の水着コンテストで、ライムも初参加と入賞を果たしたのだ。
 それをノインツィヒは自分のことのように喜んでくれる。
 ライムはそれを心から嬉しく思い、ノインツィヒの活躍を祝うべく、こうして彼女の誘いに乗ったのだ。
「それじゃ、まずはビーチバレーしよっか? ライムちゃん、さっきめっちゃ食べてたから運動しないと!」
「み、見られてたのね……!」
 先程まで藍色の髪の青年と屋台巡りをしていたライム。
 確かに、アイドルとして体型を維持するためには、摂取したカロリーを消費しなくてはならないだろう。
 ノインツィヒはニコニコと笑みを浮かべながら、少し大きくなったライムのお腹を擦っている。
「偶然だけどね? ライムちゃんってば、イケメンと一緒に、そりゃぁもうパクパクと! よほど美味しかったのかな~?」
「さ、さあ! 食べた分は動いて消費するわよ!」
 友達デートとはいえ、アイドルの先輩にハメを外しているところを目撃されたのはものすごく恥ずかしかったようで、ライムは猛ダッシュで海の家へビーチボールを取りに行った。
 
 ということで、豪腕系アイドル同士のガチンコのビーチバレーが始まった。
「ライムちゃん、いっくよー☆」
 ボールを高々と宙に放り投げたノインツィヒ、そのまま力の限り砂浜を蹴って大跳躍!
 そのまま体全体を弓のようにしならせてから……。
「っしゃァオラァ!!」
 雷鳴のようなインパクト音がビーチに轟く!
 いきなりジャンピングサーブを叩き出したのはノインツィヒ!
 これにライムが砂浜に飛び込んでレシーブ!
「うぐッ!? まるで砲弾ね!」
 ライムが痺れる右腕を庇う間もなく、ネットを超えたボールへ再び飛び付くノインツィヒ。
「そこ、いただきだよ☆」
 ガラ空きの逆サイドへの弾丸スパイク!
 しかしライム、コートの反対側へ跳躍して拾い上げた!
 これはよく反応した! 体幹が強いぞ!
「ノインさん、そんな焦らずに。もう少し楽しみましょ?」
 挑発するような物言いで、打ち上がったボールを自分でトスするライム。
 そのままネット際に打ち上がったボールへ駆け寄るライム、そして砂を蹴って翔んだ!
「お返しよ!」
 ゴッドハンドの膂力から打ちされる火の玉アタック!
 ボールのインパクト音はまるで砲撃音めいた凄まじい音量を発生させた!
 しかし、同じ目線にノインティヒがいる!
 これはまさか!?
「ざーんねん☆ ブローックッ!!」
「そんなっ!?」
 ライム渾身の一撃はノインツィヒの鉄壁のブロックに遮られ、無情にもライムのコートへボールが突き刺さった。
 一瞬でレシーブではなくブロックで決めにかかったノインツィヒ、見事に作戦勝ちだ!
「ハァ……ハァ……ライムちゃん、まだまだ甘いね☆」
「フゥ……あそこで受け止めずにブロックを判断する……ノインさんの戦術眼……フゥ、恐ろしいわね!」
「まだまだ後輩に負けないよ☆ もう一本こいやー!」
「望むところよ!」
 2人の白熱した試合展開に、猟兵達と妖怪親分達もいつしか観戦し始めていた。
 そして――。
「これでトドメだドラアァァーッ!」
「グワーッ!?」
 コートの砂が衝撃で舞い上がるほどの強烈なスパイクが、ライムをコートの外へ弾き飛ばしてゲームセット!
 ノインツィヒの圧勝だ!
「いっけなーい☆ つい熱くなって、レーザー射撃的な技能でスパイク繰り出しちゃった、てへ☆ ってライムちゃん、大丈夫?」
「え、ええ、怪我はないけど、さっきの一撃で砂浜にクレーターができたわね……」
 その言葉通り、ライムがいた場所の砂が吹き飛ばされて、大穴となって抉れているではないか。
「いや、夢中になってたとはいえヤバくね? これ、ユーベルコードでオブリビオン相手に使ったら爆発四散出来るんじゃね? ……気が向いたら検討してみるか?」
 思わず凹んだ砂地から目を逸らすノインツィヒであった。
 ちなみに、このあと野次馬の猟兵達にノインツィヒが囲まれてサインを求められるのだが……。
「うーん、今日はライムちゃんとデートだから、アイドル稼業は今のところ一休み☆ でも、求められるなら答えるのが一流アイドルだぞ☆ ってことで、は~い! 押さずに密を避けて並んでね~☆」
 ファン達がソーシャルディスタンスを保ちながら整列すると、ノインツィヒは真摯にファンサービスを徹底していった。

 熱くなった体を海水浴で冷ますノインツィヒとライム。
 先程教わった泳ぎを早速披露するライムへ、ノインツィヒはなんだかご満悦。
「やっぱライムちゃんの水着カワイイよね☆ 赤くてフリフリだから、海の中だと熱帯魚みたいでキレイだよ☆」
「そういうノインさんこそ、本当に可愛い水着だわ! フリルビキニ、すごく似合ってる!」
「でしょー? このピンクのサメさんもお気に入り☆」
 ピンク色のサメ型浮き輪にしがみつきながら、プカプカとノインツィヒは夜の海を漂ってる。
「星が綺麗だねー」
「ええ、本当にとってもキレイ……」
 2人はしばらく無言で、海の上の星空を眺め続ける。
 ――沈黙を破ったのは、親分たちが打ち上げる花火がきっかけだった。
「みてみてライムちゃん! 花火だよ! すっごいね!」
「おっきな花火だわ! あんなに大きな花火は見たことないわね?」
 海の上でゆらゆらと浮かびながら、2人は花火を見上げてキャッキャと声を上げて喜ぶ。
 そして、花火が一段落したところで、ノインツィヒは急に声色を硬くした。
「……楽しかったね。夏休み。あのさ、こんなこと言うとライムちゃん、困惑するかもしれないけど……」
 ノインツィヒはライムの元まで泳いでくると、ライムの肩に自分の額を預けた。
「……どうしたの、ノインさん?」
 戸惑うライムに、ノインツィヒは絞り出すように語り始めた。
「ライムちゃんってさ、アイドル、楽しい?」
「ええ、楽しいわ! まだまだ知名度は乏しいけど、みんなに笑顔を届けられるようなアイドルを目指して頑張ってるわ」
「そっか……実はさ、私ちゃん、たまにキツくなるんだわ。自分がなりたかった物のはずなのに、理想と現実は遠くて。――偶に自分がわかんなくなるんだわ。本当に私ちゃんがなりたかったアイドル像って、こんなんじゃなかったんだけどなぁって」
 その声は、ところどころが震えていて、ライムの肩には熱湯のように熱い熱いノインツィヒの涙がこぼれていた。涙の熱は、ノインツィヒが描いていた理想のアイドル像のそれで、使っている海水が現状に例えられるなら、その温度差はもはや歴然の差であった。
「水着コンテストの前さ、私ちゃん、ちょっと白けてたんだよね。過去2回の入賞者の水着や、獲得票数なんか見ちゃったらさ? 今の私ちゃんに足りないものが可視化されてきちゃう気がして……。結果は、うん、本当に多くの人に応援、ぐすっ、してもらっで、3位ってびっぐりしだよ? でも、1位になりたかっだけど、なれだぐて、3位でもすごいってみんな言ってくれるけど、やっぱり、1位になりたがっだよぉ……!」
 十分な好成績だが、ノインツィヒはあのコンテストの中で自分の力量に賭けた。そして、ある意味では願望は成就し、ある意味では実力の差を思い知らされた。しどろもどろで吐露するノインツィヒの想いは、まさに理想と現実に押し潰されそうになっている彼女の苦悩そのものであった。
 だから、ノインツィヒは同じユニットを組むライムに打ち明ける。
「……私、アイドル向いてないんかな。少し、意見聞かせてよ」
「そんなことない……!」
 ライムは即答した。
「ノインさん、私にとって、貴女は猟兵最強のアイドルよ! それに、知名度の低さは私にも責任があるわ……もっと色々と露出を増やしていかないといけないもの」
 それに、とライムはノインへ反論する。
「いつの日か、打ち明けてくれたじゃない。ノインさんがアイドルを目指した理由! コンテストで1位になることも大事だけど、もっと根本的なことを、いまのノインさんは忘れてないかしら?」
「根本、的な、こと……?」
「そうよ。ノインさん、アポカリプスヘルでお姉さんを手に掛けざるを得なかったあとの夜、ラジオから掛かったアイドルソングを聞いて衝撃を受けたんでしょう? それがアイドルを目指すきっかけだって!」
「……覚えててくれたんだ?」
「当たり前じゃない。私はAlicesの、貴女のパートナーなんだから」
 ライムの緑の蛇眼がまっすぐにノインツィヒを見据える。
 身を寄せるノインツィヒの金髪の頭をライムは撫でた。
「それにアイドルは、絶望で暗くなった心の闇を照らす希望の星(スター)よ!」
「心の闇を照らす、希望の星……あ……」
 水着コンテストのロビー活動中、たくさんの猟兵達が笑顔をみせてくれた。
 頑張って、と応援してくれた。
 あれ? これって、もしかして……?
「私ちゃんの理想像に近くね……?」
 完璧とは言い難いけど、それでも、あのときに憧れたキラキラした存在になれていた。
 全員とは言えないけど、自分を応援してくれる人たちを笑顔にできた。
 それが出来る存在といえば……。
「なぁんだ、私ちゃん、ちゃんと『アイドル』できてるじゃん?」
 向き不向きの問題ではない。
 今の自分の存在がが、アイドルか否かの問題であった。
 ならば、今のノインツィヒは間違いなく、誰が何と言おうと……。
「やっぱり、私ちゃんってば天性のアイドルなんだね☆ よーし、もっと頑張って、36ある世界ぜ~んぶを私ちゃん推しにしちゃうぞ☆」
「その意気だわ、ノインさん! ってちょっとっ!?」
 ノインツィヒのいつもの調子に喜ぶライム。
 そんな彼女をノインツィヒは海の中で抱き締めた。
 そして素の口調で、ライムの耳元に囁きかけた。
「……ありがとさん。やっぱ、持つべきものは可愛いパートナーだわ」
「ひゃ、ひゃいぃ……」
 あこがれの先輩の腕の中で、ライムが冷たい海水の中でのぼせそうになっている。
 緊張で体を固くするライムをサメ浮き輪にしがみつかせ、ノインツィヒは海面に浮かんだまま満天の星空へ手を伸ばす。
「でも、遠いなぁ……スターの道は本当に遠いなぁ? でも、自分は独りじゃないって知った今なら……いつか、あの星空の中で誰よりも一番に輝いてみせる!」
 それがファンのみんなと自分のパートナーに見せたい景色だ、とノインツィヒは心に固く誓うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・コーエン
POW

眞白さん(f00949)と今年の水着姿で。
眞白さんの水着姿はとても綺麗だが、それ故に他の野郎どもの好奇の視線に晒したくない。
眞白さんを独占できるような場所は無いものかと思案して妖怪花火に注目する。

花火で打ち上げてもらう事が出来るのはカクリョくらいだろうなあ。
面白そうだし、是非挑戦しよう。
大丈夫だと思うけど、空中でバラバラにならないよう眞白さんを抱き寄せて一緒に打ち上げてもらう。

空中に着いたら花火の模様の上を眞白さんと手を繋いで一緒に歩く。

花火って下から見上げるものだけど、上しかも間近から見ると水中に咲いた大きな花みたいだ。
眞白さんの綺麗な水着姿と大きな花火、俺はとても得しているなあ。


神元・眞白
【SPD/割と自由に】シンさん(f13886)と一緒に。

せっかくのこんな日ですからお誘いをしないと。
花火の上を歩けるなんて珍しいお話、是非体験してみたいですから。
妖怪の世界の花火はとても不思議。どんな景色が見れるのでしょうか。

上がってみてからの景色やそこから見る花火。横から見る花火は初めてです。
シンさん、夏の楽しみは色々な世界を回ればもっとありそうですよ。
世界が見つかるだけ、それだけ楽しいことを見つけられそう。
まだ行ったことが少ない世界でも2人見れば違う面がきっとあって。
……そうですね。だいじなのは一緒に行くこと、ですから。



 シン・コーエン(灼閃・f13886)と神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)は、互いを『連理之枝』と認識するほどの親密なカップルだ。
 愛しの女性の今年の水着姿は、露出度の高いスカイブルーの眼帯ビキニ。ショーツも布面積が少なく、肉感的な眞白の肉体が夜の潮風に晒されている。そこに彼女の白銀の長い髪が潮風になびけば、シンの心が一瞬で奪われてしまうのは当然の結果であった。
(せっかくのこんな日ですからお誘いをしないと。花火の上を歩けるなんて珍しいお話、是非体験してみたいですから)
 眞白が髪を掻き上げれば、月と星の輝きに白銀の髪が照らされて粒子を放つかのように照り返す。
 シンは思わず呼吸を止めて魅入っていた。
 そうとは知らずに、眞白はシンへ勇気を出して誘いの言葉を投げかけた。
「妖怪の世界の花火はとても不思議。どんな景色が見れるのでしょうか。よろしければ一緒に……って、シンさん?」
「んっ、ああ! すまない、あまりにも眞白さんが美しすぎて、俺の時が止まっていたよ……!」
 濃紺のサーフパンツに引き締まった筋肉が映えるシンの水着姿も素晴らしいのだが、彼は目の前の女神の魅力にメロメロだ。
「これはいけない。眞白さんの水着姿はとても綺麗だが、それ故に他の野郎どもの好奇の視線に晒したくない。でも俺のガードだけでは全方位を守り切ることができない! 一体どうすれば!」
 まるでカバディか、たはまたバスケットボールのディフェンスかと疑うほど、シンは愛しの女性の周囲をぐるぐると素早く回って、自身の体で眞白の水着姿を遮ろうと奮戦している。
「えぇっと、シンさん……?」
 そんなことしなくても、他の男性達は自身のパートナーしか見てないのに。
 妖怪親分の男性陣である、王子様と碎輝に至っては、海の家でカレー作りに没頭中だ。
 愛ゆえに暴走するシンに、せっかく誘おうと頑張っていた眞白はオロオロと戸惑ってしまう。
 そんなシンは、頭上に打ち上がる花火を見てハッと息を呑んだ。
「……そうだ、あの妖怪花火は俺達を空に打ち上げてくれるらしい。ならば、眞白さんを独占できるような場所は夜空しかない……!」
 名案だとばかりに顔を明るく輝かせると、シンは眞白へ“さりげなく”尋ねた。
「花火で打ち上げてもらう事が出来るのはカクリョくらいだろうなあ。眞白さん、面白そうだし、是非挑戦しよう」
「……ええ、参りましょう」
 形はどうであれ、眞白は念願叶ってシンと妖怪花火での空中散歩を実現するのだった。

 大筒に入った2人は、打ち上げの衝撃で離れ離れにならないよう、しっかりと抱き寄せ合う。
「しっかり掴まってて」
「は、はい」
 密着状態のまま、打ち上げの時間をじっと待ち続ける。
 そして遂に、合図とともに2人は夏の夜空へ飛び出していった。
「きゃあっ! シンさん!」
「眞白さん、大丈夫っ?」
 下から突き上げられる強い衝撃、そのまま空中へ投げ出されると今度は顔面に凄まじい風圧が浴びせられる。そして数秒後、大音量で炸裂する大玉の妖怪花火が、眼下で七色の光の大華を咲かせていた。
 だが普通の花火と違い、光の軌道がやけにゆっくりだ。
 恐る恐るシンが光の模様の上に足を運ぶと……。
「すごい。地面みたいにしっかりした足場がある。もう大丈夫。模様の上に足を置けば、墜落することはなさそうだ」
「見てください、追加で花火が打ち上がってます。わぁ……こんな至近距離で、しかも真横から見る花火は初めてです」
 地上では、長く空中散歩が出来るようにと親分達が妖怪花火を連射してくれているようだ。
 この心遣いを感謝しつつ、甘々愛々な2人は誰にも邪魔されずに空中散歩デートを満喫してゆく。
「花火って下から見上げるものだけど、上しかも間近から見ると水中に咲いた大きな花みたいだ」
「ええ、でも私、シンさんは宇宙での景色を想像するかと思ってましたが」
「ああ、言われてみればそうかも。真っ暗な空間に花咲く花火。空気があるのに宇宙遊泳しているみたいだ」
「でももし模様の外へ足を踏み外したら、私は真っ逆さまに落ちてしまうのでしょうか?」
「そんなことはさせない。俺がしっかり手を繋いでいるから、眞白さんはずっと俺の隣にいてほしい」
「まぁ、まるでプロポーズの言葉ですね?」
「……気持ちに嘘はないよ。でも、どうせならもっと素敵で、もっとロマンチックな状況で、眞白さんが嬉し涙を流すようなセリフでプロポーズしてみせる」
「随分とハードルを高く上げましたね?」
「できないことを口にするつもりはないからな。期待してほしい」
「……ええ、待ってますね」
 そうして2人は自然と視線が重なり、徐々に顔と顔の距離が近付き……花火の閃光の中で、2つの影がしばし1つに重なった。
 吐息混じりに2人が離れると、シンと眞白は手を繋ぐだけではモノ足りずに体を寄り添い合う。
「シンさん、夏の楽しみは色々な世界を回ればもっとありそうですよ。世界が見つかるだけ、それだけ楽しいことを見つけられそう。まだ行ったことが少ない世界でも2人いれば違う面がきっとあって――」
「ああ、もっともっと世界を見て回ろう。2人で、ずっと一緒に」
 力の籠もったシンの口ぶりに、眞白の顔の血色が更に良くなってゆく。
 そして、口元を笑みで歪ませてシンの顔を見詰めた。
「……そうですね。だいじなのは一緒に行くこと、ですから」
「眞白さん、愛してる。眞白さんの綺麗な水着姿と大きな花火、同時に見られるなんて、俺はとても得しているなあ」
「私もシンさんを深くお慕いしています。今夜の思い出は、生涯忘れることはないでしょう」
 足元で盛大に打ち上がるスターマン。
 その彩光と輝きに混じって、再び2人の顔は1つに重なっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
◆ウィンディア

デートかぁ
まぁ、久しぶりに3人でゆっくりもいいよね。

花火と一緒に空に打ち上って、夜空を楽しむよ
ふふ、こんなに星が近いなんて、素敵だよね~

落下し始めたら…
ん、もうちょっと、一緒に空を感じたいね

言って、リオと手を繋いで
空中浮遊で空に少し止まってから
リオと手を繋いだまま、テラと空中機動で夜空を飛び回るよ

テラ、少し速度落としてね
リオ、空はどう?気持ちいい??

自由落下に逆らって、しばらく空の散歩を満喫だね

そろそろいい時間になったら、テラとリオの手を繋いで…
さ、それじゃ、降りようか
そのまま空中機動で降下そして、着地するね

それじゃ、おいしいもの食べに行こうか?


テラ・ウィンディア
♦ウィンディア

いやな
おれはデートとか良く分からないが友情デートがありなら姉妹デートもありかなと思ってな(黒ちび子猫も頭の上でぴょこり

花火で一緒に打ちあがって

空は何度が飛んでいるけどこういうのは凄く新鮮だな

っと本当だ…星が近い

あ…(落ち始めた所で

っとと…凄いぞ!本当に花火の模様に乗れるっ

【空中機動・見切り・第六感】
花火の模様の展開を見切って上をとんとんと足場にして跳ねてシルと飛ぶぞっ

途中速度を落としつつリオに合わせ

うん
考えてみたらしばらく戦ったり冒険ばっかりだったものな
そうか
夏休みってこういうのを言うんだな

ゆっくりと花火が収まれば静かに降りて

ああ
こういう海の家のご飯って凄い美味しいらしいぞっ


リオ・ウィンディア
◆ウィンディア
姉妹デートね
なんだかすごく久しぶりなふわふわした気分だわ
えへへ、今日はお姉ちゃんたちの手を取って
ヒューンって打ち上がれば子供らしい無邪気な歓声をあげる
お空が近い、三人だけの世界だ!
花火の上歩けるよ、すごい!
落下する寸前パラソルで空中浮遊
お姉ちゃんの手は離さなわ
わわ、ぐるぐる回るのすごく面白い!

うん、お姉ちゃんの手はいつも大きくって、
お空はどこまでも私たちの世界を応援してくれて、
私はすごく嬉しい

地上に着地すれば
さぁ、美味しいものいっぱい食べるよ!



 デートと一口に言っても様々な種類や形態がある。
 愛する者同士、親しい友達同士、そして家族とのデート。
「いやな? おれはデートとかよく分からないが、友情デートがありなら姉妹デートもありかなと思ってな」
 そう力説するテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)の頭上に、小さな黒猫の子供がひょっこり顔を出す。
 その名はヘカテイア。愛らしい黒毛の子猫の姿は仮の姿だったりする。
 シル・ウィンディア(青き閃光の精霊術士・f03964)はヘカテイアの可愛さに顔を綻ばせつつ、テラの持論に見解を出す。
「デートかぁ……まぁ、これがデートかどうかはともかく、久しぶりに3人でゆっくりもいいよね」
 シルの言葉に、白髪金眼の末妹が喜びの声を上げた。
「ウィンディア姉妹の三姉妹デートね! なんだかすごく久しぶりなふわふわした気分だわ」
 リオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)は喜びで真っ白な頬を赤く染めている。
 実はリオ、この中で一番『デートとは何ぞや?』を知り得る者だ。
 つい最近だって、大好きで大切なパートナーの少年と同じ映画を見たりと、末妹ながらおそらく最も恋愛事情に精通している。
 長女のシルも『はじめて』を経験させてくれた緑のロリコンハーレムマンもといイケメン少女愛好家に首ったけだったりするのだが……。
 閑話休題。
「それにしても、リオもちゃんと水着で来てくれたんだな!」
「わたし達が言い聞かせても、なかなか水着に着替えることに首を縦に振ってくれなかったけど……よく似合ってるよ、リオ!」
 シルとテラは互いのトレードカラーを交換したワンピース水着を着ている。
 シルが赤と黒、テラが青と白。
 姉妹で水着をコーディネートしているのだ。
 一方、リオは水着コンテスト2021にエントリーしておらず、露出の少ない黒一色のドレスでカクリヨビーチに来たからさあ大変!
 上の姉2人が説得をして、リオは水着に着替えることになったのだ。
「……やっぱり、恥ずかしいわよ。本当に、よく似合ってるかしら?」
 リオは肌を露出することを嫌がり、また黒以外の色の水着を断固拒否した。
 故に、七分丈ウェットスーツのような競泳用水着の上に、レースとフリルをふんだんに使った黒いサマードレスを着込んでいた。
 これにテラは満面の笑顔で何度も首肯する。
「もちろんだぞ! これで水に濡れても安心だな! 可愛いぞ!」
「テ、テラねぇってば……本当、そういうところよね?」
「ん? どういうところだ?」
「……なんでもないわ!」
 ぷいっと顔を背けるリオに、テラは機嫌を損ねてしまったと大慌て。
 そんな2人を傍らから見守るシルは、ちゃんとお姉ちゃんをしていた。

 ウィンディア三姉妹は、仲良く3人とも同じ大筒の中に入り込む。
「それじゃ、3つ数えたら発射するにゃ!」
 東洋妖怪親分の山本五郎左衛門が導火線に火をつけた。
「さーん、にぃー、いーち、どーんっ!」
「「どーんっ!!」」
 3人は打ち上げ花火と一緒に夜空へ高々と打ち上げられていった。
「きゃぁぁっ! すごい、すごいわ! もう海の家が親指の爪の大きさくらいになっちゃったわ! ほらシルねぇ、テラねぇ、見て見て!」
 テンションが上りすぎて、普段の大人びた口調が剥がれて年相応の無邪気な反応を見せるリオ。
「お空が近い、三人だけの世界だ! あ、花火の上歩けるよ、すごい!」
 リオは足元の花火の模様に降り立つと、バランスを保ちながら器用に飛び跳ねる。
 さすが舞台で鍛えた体幹の強さ、細い模様の上もプリマドンナめいて華麗に飛び移ってはクルクルと円舞を披露した。
「ふふ、リオったらはしゃいじゃって。それに、こんなに星が近いなんて、素敵だよね~」
 シルも花火の模様の上を掛けがるように夜空の星海を目指す。
 懸命に手を伸ばすが、それは決して掴むことができない。普段よりも近い分、自分の手で届かないことをまざまざと思い知らされ、シルはどこか切なくなってしまう。
(本当に、わたしは掴めているのかな……? あの人の心を、ちゃんと……)
 彼を真の意味で独占することはできない。
 それはシルが一番理解できている。
 でも2人きりのときは自分だけを見てくれているなら、それで十分だ。
 ――本当に?
 ――この星の光みたいに、実際はただ手を伸ばしてるだけで掴めていないとしたら?
(……何考えてるんだろう、わたしってば)
 そんなはずは万にひとつもない、とシルは信じている。
 あのときに注いでくれた愛情を偽りだとは思えないから。
「どうした? なにか悩み事か?」
「えっ?」
 テラに背中をバシッと叩かれ、我に返ったシルが飛び跳ねた。
「ご、ごめんね? 花火や星がすっごく近くて、つい見とれちゃってた」
「おお、そっか! すごいよな! 目の前でドカーン!だもんなー! 本当に、星が近いな……!」
 唯一、真の意味で無邪気にこの状況を楽しむテラは、頭の上に乗っかるヘカテにゃんと一緒に光の模様の上を駆け巡っている。
「そういえば、これ、どれくらい歩いていられるのかしら?」
「……花火の模様って消えちゃうからね?」
「というか、もう消えかかってないか?」
 リオの言葉に、シルとテラはお互いの顔を見合わせた。そして足元を見た。
「落ちちゃう!」
「……あ、ああー!?」
「シルねぇ、掴まって!」
 リオが手を差し出し、シルがそれを掴む。
 シルの空いた手でテラの手を掴んでみせる。
「持ってきてよかったわ! これで……!」
 魔法銀の糸を編み込まれた星空の傘を空中で開くリオ。
 すると、傘の布地に星空が浮かび上がり、空気抵抗と魔力で浮力が発生した。
 だが風圧で3人は撹拌されるように回転してしまう。
「わわ、ぐるぐる回るのすごく面白い! 安心して! お姉ちゃんの手は離さないわ! だって、お姉ちゃんの手はいつも大きくって、お空はどこまでも私たちの世界を応援してくれて、私はすごく嬉しいもの!」
 リオはシルに向かって、珍しく表情筋を動かして笑顔を作った。
 シルもこの珍事に驚くが……。
「リオ、ありがとう! まさか笑顔を見せてくれるなんて! でも……」
「あわわわわ、目が回るぞ~!」
 一番下にぶら下がるせいで遠心力が色々とヤバいテラ。
「吐く。もうおれ吐くぞ……つらたん……うっぷっ」
「待ってテラねぇ! それだけは! ウィンディア三姉妹のネタ要員の汚名を着るつもり!? 本当にそれだけは!」
「みんながデートしている頭上への垂れ流しって、もはやバイオテロだよね!? ヘカテイア、お願い! テラを助けてあげて!」
 狼狽するリオ、そして黒猫へ助けを求めるシル。
『わかりました。主人がご迷惑かけて申し訳ありません……』
 黒猫が喋ると、途端に空中で光を放つ。
 その影はみるみるうちに巨大化してゆき、体高5mを誇る白銀のキャバリアへと変化した。
『お待たせしました! 三界神機『ヘカテイア』! 出ます!』
 ヘロヘロのテラを搭乗席に格納したヘカテイアは、シルとリオを肩に乗せてカクリヨビーチの空を飛翔してゆく。
「テラ、大丈夫?」
「あ、ああ。ヘカテのおかげで助かった。お手柄だぞ!」
『いえ、こちらこそ、三姉妹のデートに水を差してしまい、申し訳ないです……』
「いいわよ、別に。テラねぇの尊厳を守れたのだから。それに大きなロボットで夜の海の空を満喫できるのも気持ちいいわね?」
 三姉妹はしばらくヘカテイアで空中飛行を満喫する。
「テラ、少し速度落としてね。リオ、空はどう? 気持ちいい??」
「最高よ、シルねぇ! でもそろそろお腹が空いてきちゃったわ」
「おれもお腹が空いたぞ! こういう海の家のご飯って凄い美味しいらしいぞっ! 早く食べに行こうか!」
「まぁ、そうなの? なら、美味しいものいっぱい食べるわよ!」
 テラとリオが何を食べるか相談し始める。
 そのやり取りにシルは思わず苦笑い。
「もう2人ともすっかり食い気に走っちゃって……。でも確かにはしゃいだらお腹がへったかも。そろそろ地上へ降りようか?」
 三姉妹はこころの中で、同じことを考えていた。

 ――夏休みってこういうのを言うんだな。

 特にテラは恋愛らしい出来事が乏しく、任務や戦闘に明け暮れていた。
 だからこそ、今日のような平穏がとても愛おしく感じていた。
「それじゃ、おいしいもの食べに行こうか?」
 地上に降りた三姉妹。
 シルの言葉に、下の妹たちが喜びの声を上げる。
 猟兵達の夏休みは、まだまだこれからが本番だ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月02日


挿絵イラスト