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【怪奇】!空飛ぶイワシと【UDC-P】!

#UDCアース #【Q】 #UDC-P #途中参加OK

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「山麓近くの住宅地で、イワシを捕まえて欲しいんだ」
 集まった猟兵たちの前で、フロッシュ・フェローチェス(疾咬スピードホリック・f04767)が言い放った第1声に、【なんだって?】とみんなの表情が、一様に引きつった。
 だがそれは無理からぬことだろう。
 イワシはいわずもがな、海に住む生物だ。
 また漢字で、鰯と書くことからも分かるように、身が柔くとても腐りやすい。
 ……そんなイワシを、海から放れた山麓の、しかも住宅地で捕まえてこいと言うのだから、自分の耳を疑うことこそむしろ正常な反応と言える。
 フロッシュの表情は真剣そのものであり、決して冗談を言っているようには見えないのも、先の発言のいびつさに拍車をかけた。
 そしてさすがに、言葉が足りなすぎたと思ったか、1度あやまってから補足し始める。
「正確にはイワシ型の、UDCだね。……奴らの中に、まぎれこんだイワシのUDC-Pを、捕まえて来てほしい」
 それで合点がいったと、猟兵たちは納得したように頷いた。

 UDC-Pとは、オブリビオンとしての【破壊の意志】を持たない、かつてはシャーマンズゴーストも属していた、UDCの総称だ。
 極めて珍しい存在ゆえに、これまでも彼らの保護依頼が、複数出ている。
 無事助けられたUDC-P達は今もUDC組織で、研究対象としてではあるものの、人道的な手段に限定しているおかげか、比較的穏やかにすごしているらしい。
 つまり今回のイワシの捕獲もその類なのだ。

 ……しかし、疑問が晴れたと同時に、別の問題が首を出してくる。
 イワシ型ということは、群れで動いている可能性が、とても高いはず。
 猟兵は【対象がUDC-Pか否かを見分けられる】のだが、無数のイワシの中から、特定の1匹だけ探し出すなど、いくらなんでも骨が折れてしまう。
 どうすべきか……そう悩む猟兵たちに、フロッシュは大丈夫だと声をかけて来た。
「すぐ分かると思うよ。だってそいつだけ、3m半はあるオキイワシ型だから、うん」
 まさかの情報にみんなしてずっこけてしまった。
 そりゃ小魚の群れに、マグロ並みの魚が混じっていれば、いやでも目立つだろう。
 しかもシルエットまで違うのだから分かりやすすぎる。
「だけど出現時刻は夜だ。遠間からだと群れのせいで、闇にまぎれて見えづらいから、まずは自分の足で散策したり情報を集めて、徐々に追いつめてね」
 対象がとにかく分かりやすい以上、見つけさえすれば、取れる手段はいくらでもある。
 イワシ型UDCもそこまで強くはないようで、あわてず騒がず確実に、オキイワシUDC-Pを連れ出し、目的を達成すれば良い。

 各々で作戦を練る猟兵たちを見渡して、フロッシュは〆の言葉を告げた。
「そう難易度が、高い依頼じゃないけれど、油断は禁物だよ……しっかりと、UDC-Pを保護してね。……健闘を祈る」


青空
 水着コンテスト間近の日に、どうも、青空です。
 今回のシナリオは『UDC-Pの保護』が目的となります。

 第一章では住宅地でイワシたち捜索してください。夜間なので、なんらかの手段で視界を確保すると、良いかもしれません。
 第二章は集団戦。フロッシュが語った通り、そこまで強くはありませんが、UDC-Pを守りつつ戦うことを、忘れずにお願いします。
 第三章ではUDC-P対処マニュアルを作成します。UDC組織へ譲渡する前にUDC-Pと交流し、できる限り正確なマニュアルを作りましょう。
 それでは皆さん頑張ってください。
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第1章 冒険 『真実探し』

POW   :    しらみつぶしに探す。

SPD   :    技能を発揮して探す。

WIZ   :    情報を集めて探す。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 とある山麓の、とある住宅地。
 そこでは夜な夜な【イワシが飛び回る】とのうわさが流れている。
 だが住民達はおろか観光客ですら、ただのデマだと取り合わない。
 もしそれがまごうことなき真実だと聞いて、いったい何人が腰を抜かすだろうか。

 そのイワシの大群の中で、たまたま体が大きかったがゆえに、ボス認定されて困り果てている、巨大オキイワシがいると聞いたら……いったい何人が絶句するだろう。

 そんなもしもなどつゆ知らず、イワシは今日も闇夜を飛ぶ。否、泳ぐ。
 今はただ回遊しているだけだが、いつ住民やUDC-Pに牙をむくか、分からない。
 ここは早急に探し当て、彼らを追い詰めるのが先決だろう。

 そして彼らに混じったオキイワシを保護するために、猟兵たちが近づいているとも知らず。
 木々と少ない廃屋に囲まれた住宅地で、今日も今日とてイワシの群れが……我が物顔で泳ぎ回り始めた。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

そうですよね。普通、海洋生物は空中泳ぎませんよねー。
陰海月(ジャイアントくらげ)が身近にいるので、すっぽ抜けてましたー。

その陰海月の手を借りつつも暗視使いましてー。
あとは、強化した結界術を利用して、道に探知結界を設置していきましょう。
ふふ…しかし、どうしてそういうUDCが発生したんですかねー?
本当に不思議ですねー…。


陰海月「ぷきゅ?(ぼく?)」首かしげ
ぺちぺちと結界設置手伝い。



 すっかり夜も更けた、山麓近くの住宅地。
 今回の依頼の舞台となるそこへ、早速一人の猟兵が赴いた。
 穏やかな顔つきに、落ち着いた色合いの着流し、そして1本だけ異なる色が混じった黒髪の男性……馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)だ。
 ぽつぽつ家々に明かりが灯る以外、ほとんど闇に包まれた周囲を見渡しながら、顎に手をやり、何やらしみじみとした表情を夜空へ向けていた。
「そうでした。普通、海洋生物は空中なんて泳ぎませんよねー……」
 当然の事実をうっかりしていたように呟くが、実は彼の傍にはジャイアントクラゲ・陰海月が潜んでおり、身近に空飛ぶ海洋生物がいた為、そのあたりが抜けてしまっていたらしい。
 千差万別に未知なる力や事情を携える、なんとも猟兵らしいうっかりだ。
 とは言えズレはとうに認知し終えているのだから、探索準備は既に万全である。

「陰海月、手を借りてもいいですか?」
「ぷぎゅ」
 義透のつぶやきに応え、彼の足元から巨大なクラゲが、水面より浮き上がるが如く姿を表す。
 呼ばれた陰海月は、返答と取れるやわらかな音色を返し、触手をゆったり振った。
 今言った通り、今回講じる【策】の手伝いをして貰う様だ。
 義透はクラゲへと、同じく手を掲げ返してから、次いで己の目へと手をやる
 ……何らかの術で暗視を発動させたのだろう。暗闇へと踏み出すその足取りに、迷いがない。
「しかし闇雲に駆け回ろうと、よい結果が得られるとは、限りませんね」
 言うが早いか、彼は手の内で霊力を練り上げ始めた。
「なのでここは罠、もとい結界でもはりましょう。では陰海月、手をこちらに」
「ぷぎゅ?」
 首をかしげるように、かさを傾けたクラゲの手を取り、練り上げた霊力の一部を受け渡す。
 そして陰海月が数本の触手で、霊力を大切そうに包み込んだのを見計らい、眼前で両の掌を内へと向けて……結界術の準備、最後の工程に入る。
「四面の1つ、出で参れ。……ここは悪霊のあるところ」
 発動したのはユーベルコード、【四悪霊・『界』(シアクリョウ・サカイ)】。
 効果は義透が持つ力のうち結界術、天候操作、生命力吸収、呪詛の力を上昇させるというもの。
 異空間の生成すら可能とするほどに引き上げられたその技能で、道の各所へ結界を張っていく。
 ……だがこの結界は閉じ込める類の物ではない。
 これは天候操作を活かした空気の乱れの察知と、生命力吸収と呪詛の応用による気配感知を、結界術でまとめた【探知結界】なのだ。
「ぷぎゅ、ぷぎゅ」
 少し離れた場所では、ぺちぺちと触手を叩きつけ、設置の手伝いをしている陰海月が目に入る。
 1人では時間が掛かると踏んだがゆえクラゲを呼び出したのだろう。

 結果、手順を幾分か省略できたお陰で、滞りなく設置は終わる。
 予想以上に効率よく終わったこともあって、義透はふふ……と笑んでもいた。
 余裕ができたからか、彼の思考は別の方へとシフトする。
「しかし、どうしてそういうUDCが、発生したんですかねー?」
 もれたつぶやきは、件のイワシに対するもの。
 UDCはどれもこれもが不可思議だが、だからと言って何の理由もなく、突拍子もない場所に出現したりはしないのだ。
 だからこそイワシが山に現れた事にも、何らかの意味を持つのだろうと、彼はそう考えているのである。
「本当に不思議ですねー……。海とこの山麓は、なにか関係があるのでしょうか?」
 情報は少ないが何とか答えを導きだそうとする義透。
 されどその疑念の表情は、すぐ別のモノへと変わる。
「おや? かかりましたねー……」
 どうも探知結界へイワシが触れたらしい。ある方向を見やり、ゆっくりと頷く。
 そのまま端末のようなものを取り出し、他の猟兵達へと情報を送信。
「さて、私達も向かいましょうかねー」
「ぷぎゅ……」
 そして穏やかな雰囲気を崩さないまま、義透もまたそちらへと向かっていった。
 さあ……異端なる【追い込み漁】の始まりである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニケ・ブレジニィ
使用能力値:WIZ
象っている沖イワシについて調べてみました。
きっと、その性質に大きく左右されるはず

サケ目ニギス科ニギス属
浅い海に棲み、動物プランクトンや魚の稚魚、イカ類を食べる

UDC組織にお願いをして、現場付近の住宅地一帯に夜間はカーテンを閉めるよう促してもらう
又、工事用の強力な全面放射ライトを借りて空き地に設置し、寄ってくる羽虫を動物プランクトンに見立ててオキイワシ型UDC-Pを誘き出します

ドレスアップ・プリンセスで飛んで空き地に向かってオキイワシの群を追い立てます

それで合っているのか不安な中[勇気5]を出して、実行します

リプレイの為に、このキャラクターを自由に扱って頂いて全く問題ありません



 先行した者から送られてきた、イワシの大まかな位置情報を耳にし、後続も各々の判断で動き出す。
 夜風で桜織衣を静かに揺らして、なにやら復唱している小柄な桜の精、ニケ・ブレジニィ(桜の精の王子様・f34154)もそのひとりだ。
「オキイワシを象っているのなら、きっとその性質に大きく左右されるはず」
 彼女が繰り返し確認している事……それは本物のオキイワシに関する情報である。
 UDCは人知及ばぬ、猟兵並みに埒外な存在。
 だがモチーフと全く異なる行動を取るかと言えば、それは違う。
 無論、対象にもよるのだが、今回のUDCおよびUDC-Pはほぼイワシそのまま。つまり実在の生物に則した作戦が成功する可能性は高い。
「基本的に浅い海に棲み、動物プランクトンや魚の稚魚、イカ類を食べる。……サケ目ニギス科、ニギス属で、1mに達する個体もいる魚。だから……」
 生真面目な性格なのか、とことんまで調べて来たらしいニケ。
 そんな彼女は、とある空き地に到着するとすぐさま、借りて来たらしい工事用の、全面放射ライトを手早く設置する。
 用途からして光量はとても強いはず、つまりそれだけの明かりが必要らしい。
 そしてここだけでなく、下調べ中に目を付けた近場の空き地へも赴き、同じようにライトを置いていた。

「そろそろでしょうか」
 ……やがて全てのライトを設置し終えたニケだが、すぐには点灯させず、未だ明かりの灯っている家屋の方を見やっている。
 どうも作戦実行に必要な条件が揃っていないらしい。
 しかし呟きから察するに、もうすぐ全てが満たされるようだ。
「きましたね!」
 彼女の、その発言から間を置かず、どういうわけか家屋の明かりが、徐々に薄れていくではないか。
 見れば電気を消したのではなく、カーテンを閉め切っていると分かった。
 住人同士が示し合ったかのようなこれには……もちろん、からくりがある。
 ニケは事前に場所を下見するだけでなく、UDC組織にも掛け合っており、【工事を行うなどといった理由を告げてカーテンを閉めるよう促してほしい】と頼んだのだ。
「今です、ライト点灯……!」
 遠隔操作で全面放射ライトのスイッチを入れれば、あたり一帯の暗がりが光で切り拓かれる。
 釣られて、集まる先の無くなった羽虫達までもが集い始めた。
 だが肝心のイワシは影も形も見えない。
 そも、イワシは基本的に、光になど集まらない。作戦は失敗したのだろうか?
 否、ニケの真の狙いはこの羽虫達を、あの場へ誘因することなのである。

 先にも挙げられていたが、オキイワシが主食とするのは稚魚やイカ、そして動物プランクトン。
 これら主食の中でプランクトンは、稚魚と比べても群を抜いて小さい。……そう、まるで虫のように。
 すなわち彼女はまず強烈な光を焚いて、そこに集う羽虫達をプランクトンに見立てて、オキイワシ型を誘い出そうと考え付いたのだ。
「視界を確保しなければ」
 念には念をと、ユーベルコード【ドレスアップ・プリンセス】も発動する。
 豪華絢爛なドレスを身にまとい、宙へと身をひるがえして、上から疑似餌を見つめながら……祈り待つこと数分。
「あっ、やりました!」
 どこからともなく現れた、イワシ型UDCが集まってきた。
 その中には遠間からでも分かるほどの巨体で、闇に浮かぶシルエットすらまるで違う、オキイワシ型が1匹混じっている。
 あれこそ目当てのUDC-Pに相違ないだろう。
 現にその身姿だけでなく、他のイワシ達が荒々しくライトの周りを泳ぎ回る中、居心地悪そうに消極的な泳ぎを見せており、明らかに群れから浮いていた。
「よし、勇気を出して……追い込みを実行します」
 目標を確認し、目測は付いた。残るは最後の仕上げのみ。
 ニケは己を鼓舞するひと言を口にし、ユーベルコードの飛翔力を活かして、勇んで群れへと突貫していく。
 彼女を見たイワシ達は始めこそ敵意を見せていたが、勝手にボス認定しているオキイワシ型が驚いて逃げたせいか、士気を上げられず渋々とばかりに追従。
 ニケはそのままイワシを追い立て続け、住宅地傍の一角への誘導に成功する。
「あとは徐々に追い詰めていくだけですね」
 その後、影こそ闇に紛れたが、範囲はかなり限定された。
 ……追い込み漁の終わりは近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

備傘・剱
昔っから、探し物といえば、人海戦術って、相場が決まってるんでな
デビルダイスロール、発動

俺はサイバーゴーグルの赤外線機能で索敵しつつ、一足りない達には二人一組で索敵に当たらせるぞ
見つけたら、俺に知らせるように言いつけておくぜ
式神もつけておくから、何かあった時の連絡もばっちりだ

で、見つけたら、現場に直行して追跡しつつ、意思疎通を図ってみるぞ
動物会話である程度の意思疎通はできるはずだしな

それにしても、山で海の幸が暴れるってのは、あれか?
山の神様に喧嘩でも売ってるんだろうかね?
何度か同じような事件を見てきたが、邪神たちの真意が見えないぜ
狂気耐性もあるから、何とかなるだろ


アドリブ、絡み、好きにしてくれ


エドゥアルト・ルーデル
【OK】

もう面倒だしPも含めて全部焼いて食べちまえばいいんじゃない?
昔マグロ見てぇなUDC食べてたヤツいたでござるよ?ダメ?そっかー

しょうがねぇ追いかけるか…文明の利器で!拙者が原始的に脚使うよりええやろ
という訳で新鮮な魚を追いかける為に新鮮なUAVを用意します
更に腕につけてる戦闘支援ツールに特定のコンソールコマンドをカタカタッターンッ!と打てば雑にUCが発動して雑にUAVの性能を三倍にします

赤外線カメラやレーダーを活用して魚群を割り出せば後はついていくだけでOKでござる!
急な魚群の加速等にも性能三倍のUAVはしっかりついていくので予めコマンドを打っておく必要が有ったんでござるねぇ


乗原・やや
POW:しらみつぶしに探す

「イワシ……ね、魚釣りはできないから脚で探すしかないわ……」
夜目を頼りに散策します。
とても歩いて歩いた先で泳ぎ着かれてはぐれた一般イワシを見つけます。
「『群れで動いている可能性がとても高い』って云ってたし……ややの血で元気になれば、本能のまま群れに戻ってくれないかしら……?」
アイテム:不老長寿の血を消費し、実行に移そうとします。



 徐々に、徐々に追い詰められ、活動範囲を狭められ……ようやく、無作為に探す必要がなくなった、UDCのイワシ達……及びオキイワシ。
 しかし、時間と共に辺りはいっそう暗くなっていくうえに、開始時と比べたら範囲が狭まっただけで、依然として場所の特定が難しいことに、変わりはない。
 つまりここから必要になるのは、多少なりとも限定された範囲をより効率よく、より確実性を高める捜索手段を持ち得るかどうかになる。
 だが奇しくも……今回の状況にうってつけな術を持つ猟兵が、連絡を受けて指定区域へ集っていた。
 
「報告にあったのはこの辺りか?」
 その猟兵こそが備傘・剱(絶路・f01759)。
 闇の中で、なお浮き上がる漆黒の髪と瞳をもち、二本刻まれた顔の傷が特徴的なスペースノイドだ。
 彼は現場に付くと同時、まずは場所を間違えていないかどうかを確かめる。
 目印を見つけ素早く確認作業を終えた剱は、早速とばかりに何やら、謎のダイスを取り出した。
「さて、まずは下準備からだ」
 どうやらこのダイスこそが、イワシUDC捜索の鍵となるようす。もしや、運気や占いを活用した絞り込みを行うのだろうか?
 その予想を裏切るかのように……指へダイスを挟んだまま、唐突に腕を交差させた。
「出でよ、ダイスの妖怪よ!」
 剱がそう唱えた瞬間、ダイスはまばゆく光り出す。
 奇妙なダイスを媒介として、何者かを呼び出すつもりらしい。

「我が声に従い、総員出撃!」
 高らかな彼の呼び声に応え、発動するはユーベルコード【デビルダイスロール】。
 その力を得て現れる協力者達は、その名も【妖怪一足りない】だ。
 あとひとつ多ければ、あとひとつ少なければ。
 ……ダイス遊びをしたことがある者なら、一度は覚えがあるだろう、無念と悔恨をもたらす妖怪である。
「昔っから、探し物といえば人海戦術って、相場が決まってるんでな……頼むぜ【一足りない】」 
 何とも言えぬ小憎らしいフェイスで剱を見る彼らだが、今回ばかりは悪さをする必要が無いからか、まとう雰囲気に邪気は見られない。
 110体全員がジェスチャーを決めて彼の言葉を素直に聞き入れ、そのままあたりへ散らばっていく。
 【一足りない】達を見届けた剱もまた、モノクル型のハイテク製多機能サイバーゴーグルを起動させて、人員の薄い場所へ自ら赴き探し始めた。



 ……この場に集った猟兵達の中で、イワシの探索にお誂え向きな技能を持っているのは、なにも剱だけではない。
「ん~、やはり真っ暗でござるなぁ」
 ゴーグル付きの軍用ヘルメット、迷彩服に防弾ベスト。
 黒いひげをあごヒゲをたくわえた、これぞ歴戦のアーミーと言わんばかりの風貌を持つ、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)もその手段を持つ内のひとりだ。
 しきりにあたりをきょろきょろ見回す彼はどこか胡散臭いが、この依頼に望む姿勢は本物である。
 ……ちなみに。
 実はこのエドゥアルト、以前マグロに酷似したUDCを猟兵が捕食していたことを例に挙げ、【もう面倒だしPも含めて全部焼いて食べちまえばいいんじゃない?】と出撃前に提案していたりする。
 しかもあっという間に七輪を取り出し、炭の用意もバッチリという、いつでもOKの準備万端な体制で。
 まあ当然ながらその案は即時却下。
 そして念のためにと、地味に高かった七輪と炭は、あわや没収の憂きめにあった。
 無情である。

 そんな紆余曲折はさておき、ダメならダメでやれることをやるだけだと、エドゥアルトは担いできた荷物へ手を突っ込む。
「ダメならしょうがねぇ、追いかけるか……この文明の利器でっ!」
 どーんとオノマトペが付きそうな勢いで取り出されたソレは、新品同然なピカピカの無人航空機だ。
 泳ぎ立て新鮮な魚を追いかけるのだから、こちらもまた新鮮なUAVを用意せねばと勇み、はりきって持ち出したらしい。
「この鬱蒼とした地形、少々不安が残りますなぁ。とは言え拙者が原始的に脚を使うよかええやろ」
 そんな訳で次の段階へさっさとシフトするでござる、と笑みながらにやや袖をまくり、戦闘支援ツールに特定のコンソールコマンドを打ち込んでいく。
 それはただのコマンドにあらず。ユーベルコード【コンソールコマンド】による強化のコマンド。
 ここでさらに、洗練された無駄のないタイピング技術が火を吹いた。
 ……よく見ると雑に見えるが恐らく気のせいだろう。
 ……まだ打ち終わっていないのに装備が鈍く光ったのもきっと見間違えである。
 なにあれ、ともあれ、強化を受けたUDVが暗い夜空へと舞い上がっていく。

 そこから先は早かった。
 取り付けられた赤外線カメラによる暗視や、レーダーによる探知、エドゥアルトの持つ操作技術をフル活用したお陰で、数分と掛からず遠くにイワシ型UDC達を見つけたのだ。
 誰かが彼らを再び追い立てたのか、魚群は一気に加速するものの、予め打ち込んでおいたコマンドのお陰で見失うことはない。
 先のユーベルコードはこれを予測した物であったのだ。見つけてからでは遅いのだから、先んじて手を打っておこうと考えたのだろう。
「よーしよし! 後はついていくだけでOKでござる!」
 追い込んでくれている猟兵のお陰で、場所を割り出すのはとても容易く、彼は意気揚々と現場へ向かって走っていく。



 そして。
 特定の手段を持たないながら、魚群を見つけ出そうと奮戦している、とある少女が離れた場所で息を切らせていた。
 くせっ毛をたなびかせる、彼女の名前は乗原・やや(絶望した人魚喰らいの少女・f34501)、神器使いの猟兵だ。
 魚釣りなどできないと自身について評した彼女は、まずしらみつぶしに探すことを選択し、皆から貰った情報を元手に、目を凝らしながら走り回っている。
 とある事情から【特別な身体】を持つ彼女ではあるのだが、小柄な体だからこその能力限界が存在しており、あまり継続して走れないでいた。
 今や歩く方が多くなっている。
 それでも彼女もまた猟兵達が行う、追い込み漁の輪の一端を担っているため、スムーズに包囲を狭めるその一端を担っているのも事実である。
 されど……このままアテなく、真の意味でしらみつぶしに探し回っていては、本当に夜が明けてしまう。
 流石にそれでは意味がない。
 なればこそ、どうにかならないかとややは目を細め、歩きながら思考し始める。

 そのままとても、とても歩いた先で……彼女は、とある影を目に映す。
「……あれは、イワシ……?」
 少々見えづらくはあったが、夜目が利くおかげか影の正体は容易に分かった。
 どうも追われた際に群れから弾き出され、泳ぎ疲れて休憩しているようす。
「そういえば」
 ここで彼女はふと、出撃前に猟兵達が策を組み上げていた途中で聞こえた、とある言葉を思い出す。
「みんなが言っていたわね……『群れで動いている可能性がとても高い』って」
 群体型だからこその性質を持ち得る可能性の話であり、特定の一匹を見つけるのは骨が折れるかもしれないという、当然の不安から出た情報。
 無論3mのオキイワシが標的であったために、数に惑わされるなどあり得ないと、とうに分かっている。
「でも逆に言えば、はぐれ続たままでいるのは、めったにないって事なのよね……? なら……!」
 それをどうやら彼女は利用するつもりらしかった。

「静かに、ゆっくり……」
 最大限に警戒しながら木陰に隠れてややはイワシへ近寄る。
 いくら疲労していても、相手は猟兵の敵であるオブリビオンだ。気付かれたが最後、相打ち覚悟で突撃してくる可能性もある。
 それゆえの隠密行動であろう。
 やがてどうにか、腕を伸ばせばギリギリ届く距離まで接近できた。
 ……ここからが本番だ。
 まず彼女の持つ【不老長寿の血】をたらし、その血の持つ回復効果でイワシを快癒させ、そして元気になったイワシの目に入らないように隠れ、対象の動向を見守る。
 この2工程を狂いなく行う必要がある。
「そっと……」
 ややは息を殺してそっとイワシに垂らし、なるべく音を立てないようにして、素早く茂みへ戻った。
 やがて……イワシははっとしたように起き上がると、本能で何かを感じ取ったか、どこへともなく泳いでいく。
 眼前の光景にややは上手くいったと頷いて、気付かれないようイワシの後を追いかけた。





「よし、ビンゴだぜ」
「やっとこさ追い詰めたでござるな!」
「……あれが……」
 三者三様の方法は全て大当たり。
 さして予想外も無く大成功で終わり、その結果剱とエドゥアルト、そしてやや視界の先で、イワシの群れが同じ場所をしつこくぐるぐる回遊中。
 逃げ場はないと薄々感づいているのか徐々に殺気立って来てもいる。
 同時に標的であるUDC-Pが段々弱って来ているのも見て取れた。
 どうするべきか……そう考える三人の元へ、突如としてとある声が聞こえてきたではないか。
『イワシは弱くない、イワシは強いのだ』
『イワシは脆くない、イワシは硬いのだ』
 それはある意味呪詛のようでもあり、ただの恨み節にも聞こえる、イワシの叫び。
『イワシは山でも泳げる、イワシは海だけに住まう存在ではない』
『イワシは個にして群、群にして個、イワシは全てを兼ね備える』
 荘厳な響きを内にたたえ、連ねて紡ぎ続けられる、いまいちしっくりこない言葉。
『イワシこそ至高なり、イワシはとうとう頭を得た』
『イワシ住まわぬ地へ陣を広げる、イワシの天下はここからだ!』
 ここでいったん言葉は途切れ、また同じことが繰り返し叫ばれ始める。
 ……つまるとこ出現の理由はそれらしかった。
 ある意味、人知を超越した光景に、剱は納得いったかのように頷いていた。
「山の神様に喧嘩でも売ってるんだろうかと思ったが……なるほど、そういう訳か」
「いやはやなんとも、微妙にせせこましいというか、みみっちいでござるなぁ」
 遠慮ないエドゥアルトの意見にも特に否定は上がらない。
 ややこそ無言だが、それはなんと言っていいか分からないからのようだ。

「とにかく固まっていてもらちが明かない。ちょっと対話してオキイワシを引っ張り出してくる」
 この中で唯一動物と会話できる剱が立候補し、エドゥアルト、やや、頼猟兵達は何時でも飛び出せるよう、武器を構える。
『猟兵……猟兵だ!』
 やはりオブリビオンだからか、剱を認識するなり敵意を一斉にぶつけてきたイワシ達。……しかしそんな彼らには目もくれず、ここに来ても存在が浮いている、オキイワシへと呼びかける。
「あんた、そこのでっかいあんた、聞こえるか」
【自分ですか?】と言いたげに、オキイワシは何もしゃべらず、猟兵達を敵意無き瞳で見据える。
 頷き、それを確認してから剱は会話を再開した。
「なあ、あんたは俺達と戦いたいか?」
『いうまでもなし、仇敵同士が出会ったならば、戦うのはやむを得ない』
『イワシの天下を世に布くまで、頭は共に行かねばならぬ』
「……とか言ってるけど、あんたはほんとにそれでいいのか? イワシの天下を取りたいのかよ?」
 血気盛んなイワシに対し、オキイワシが猟兵へみせた反応は……【否定】の意。
 首を横に振るその動作でイワシ達が一斉に振り向くものの、気にせず剱は説得を続けた。
「ならこっちに来ないか? 心配するな……とはちょっと言い辛いが、少なくとも身の安全は保障するぞ」
 散々追いかけた身からして大丈夫と断言するのは気がひけたのだろう。
 決定打に欠ける言葉はしかし、オキイワシの心を揺さぶるには充分だったようで、行くか戻るかでソワソワし始める。

 その膠着状態へとどめを刺したのは……皮肉にもそれまで、仲間であったはずのイワシ達だった。
『裏切るのか頭!』
『裏切るのならば、喰らわねばならぬ』
『裏切りなど許さぬぞ……っ!』
『裏切れぬよう、止めてしまわねば』
 あまり血気盛んではないだろう、そんなオキイワシ型UDC-Pに、純然たる敵意を向ければどうなるのかは自明の理。
 案の定、オキイワシはユーベルコード性らしき分身で盾を作ると、泡を食って猟兵達の方へ泳いでくる。
「自分達で裏切りを促すとはこれまた見上げた忠誠心だぜ」
「いやいやお寒いジョークとしても使えぬ類まれな雄姿でござるなぁ」
 悪い笑みを浮かべたエドゥアルトと、無言で武器を構えたややに続き、他の猟兵達が横に並んで人力バリケードを作成した。
 【追い込み漁】はこれにて閉幕。
 そして、さあ……いよいよ網にかかった、害魚駆除の始まりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『六二五『デビルズナンバーいわし』』

POW   :    悪魔の魚群(デビルフロック)
全身を【「デビルズナンバーいわし」の群れ】で覆い、自身の【群れの大きさ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    悪魔の犠牲(デビルサクリファイス)
対象のユーベルコードに対し【数十匹のデビルズナンバーいわし】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    悪魔の共食(デビルカニバリズム)
戦闘中に食べた【犠牲となったデビルズナンバーいわし】の量と質に応じて【悪魔の力が体に凝縮され】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『イワシの覇権を!』
『イワシの天下を!』
 ボス認定していたオキイワシが抜けてもその敵意と熱意、野望は消えない。
 イワシ達は、今まで追われていた鬱憤を注ぎ込んだが如く、猛烈に渦を描いて泳ぎまわり始めた。
『イワシよ、同胞よ!』
『イワシよ、今こそ決起する時だ!』
 そんな叫びに釣られたが如く、どこからともなく集ってくる謎のイワシ型UDCの群れは、脅威的な大きさの魚群塊を作り出す。
 あちらもあちらで、戦闘準備万端と言ったとこらしい。

 構える猟兵達の後ろでは、その陰にこっそりと隠れつつ、オキイワシ型UDC-Pが不安そうに顔をのぞかせている。
 所作こそどこか可愛げがあるものの……それでも彼、あるいは彼女は、3mサイズの大魚だ。全く隠れ切れていない。
 このままでは殺気立ったイワシ達に標的とされかねないだろう。
 先に見せたユーベルコードを見るに、いくらか隙は作れるのだろうが、数が数だけに安心はできない。

『裏切り者を喰らい尽くせ!』
『仇成す者共を蹂躙せよ!』
 そうこうしている内に、我慢できなくなったイワシ達が、我先にと突貫してきた。
 猟兵達もまた武器を構えてオブリビオンへと向き直る。
 ……オキイワシに手は出させないと……。
ニケ・ブレジニィ
「向こうから自発的に攻撃する事はないみたいですけれども、これだけの数がいると脅威ですね。」

『革命剣』をすらりと抜いて、オキイワシ型UDC-Pを[勇気5]を出して背に庇いつつ声を掛けて[鼓舞7]します。
「皆もいるし、あなたには手を出させないわ、絶対に!」

戦闘が終わったのを確認してからユーベルコードの『桜の癒やし』でオブリビオンの『六二五『デビルズナンバーいわし』』の群れの魂を[慰め9]て、彼らが転生出来るよう[祈り8]ます。
「…もう鎮まりたまえ、あなた方の名を忘れないように私は憶えておいてあげるから。」

リプレイのために、このキャラクターを自由に扱っていただいて、全く問題ありません。


乗原・やや
さすがに疲れ、ました……
群れとは云いますが少し多くないですか?
叩いても叩いてもキリが……ないっ

小娘って心配されるかもしんないですが、ややだって『伊達に長く生きて、ない……ですっ!』



『イワシこそ最上なり!』
 前を見るとイワシ、右を見たらイワシ。
『堅固なるもの、それ即ちイワシ!』
 左を見ればイワシ、上を見てもイワシ。
『イワシを眼に焼きつけよ!』
 あっちにイワシ、こっちにイワシ、どこもかしこもイワシまみれ。
 夜闇の黒に包まれていたはずの山麓が、今ではイワシが作り出す青いドームでおおわれている。
 言わずもがな、おびただしい数の魚群に周りを囲まれているのだ。
 逃げ場や、安全地帯など、当然どこにも存在しない。
 唯一救いがあるとすれば……実力の差を測りかねているらしく、自ら積極的に襲うことはせず、猟兵の攻撃に合わせて一斉にカウンターしにかかることぐらいか。
 反撃自体も十分怖ろしいとは言えるが、襲いかかるそのタイミングさえ分かっていれば、蹴散らすことはそう難しく無かろう。

「なるほど……。どうやら自発的に襲ってくることは、まずないみたいですね」
 その事をニケ・プレジニィは早々に察し、バラの花弁で彩られた細身の【革命剣】をすらり、抜き放つ。
 行動パターンを解せばそれだけ、保護対象であるオキイワシ型UDC-Pを、敵の魔の手から守りやすくなるというもの。
 まだ戦い始めたばかりであるために、作戦を後々変えてくるかもしれない。だが裏を返せば少なくとも、今この場においてはカウンター前提の考えでも、支障無いと言えよう。
 ならばこそ、必要なものは、あとひとつだけ。
 殺気立つイワシの群れを相手に、怯まず立ち向かう勇気の心である。
「……いきます!」
 5つ数えるうちに覚悟を決めたニケは、剣の切っ先を向けてイワシUDCの元へ駆け出した。
 待っていたぞとばかりに、顎を開いて襲い来るイワシ達。
 それは風に舞う花びらよろしく、ふわりふわりと回避され、流水の如く振われるニケの太刀筋を前に、もれなく寸断されていく。

 同様の攻防を、更に数度繰り返したおかげで、徐々にだがその数は減っている。
 だが彼らとて学習するのか、一度群れを集めたその際に、まとっていた空気が変化した。
『偽りの頭、イワシならぬ者!』
『貴様にイワシの裁きをっ!』
 またもや群れでくるのだと、思ったのもつかの間。唐突に、オキイワシの方へと狙いを変えて、憎悪の言葉と共に、喰いかかろうとしていたのだ。
 びくりと驚き体を震わせ、逃げようとするオキイワシは……その前方に、ハート形のなにかが立ち塞がったのを見て、動きを止めた。
 正体はニケのプリンセスハートという、空飛ぶ謎のハート型武装だ。
「あなたには手を出させないわ、絶対に!」
 飛んできた、鼓舞するような叫びを受けて、オキイワシのパニックも自然と収まる。
 そしてそれに呼応したかのように、プリンセスハートはひときわ大きな鼓動を放ち、音の防御壁でイワシの突進を弾き飛ばした。
 必然、彼女の後方から前へ向けてイワシ達は吹き飛んでいく形になる。
 隙を逃さないと、ニケは前からくるイワシにも対処しつつ、弾かれたイワシ達へも切りつけていた。



「せえっ!」
 ……その傍らで乗原・ややが、特殊な大樹を切り出して作った武骨な打突武装、【吸血大樹の棍棒】を両手に振っている。
 使用者の血を吸う度に強化されていく特殊な武器だからこそ、避けきれず傷を負うことに頓着せず、むしろチャンスだとばかりにイワシを叩き伏せていた。
 小さな体躯が逆に目立つほど太く、シンプルな造形をした木製の棍棒。その威力は計り知れない。
 現に、半ば防御を捨てているにもかかわらず、小さな傷を負うだけで済んでいるのだから、叩き出す撃力がどれぐらい脅威的か、分かろうというものだ。
「はぁ……はぁ……」
 息を整えながら再び棍棒を振るえば、イワシの塊がばらけて飛ぶ。
 勢いで一回転して振り上げれば、イワシの散弾が放たれ、群れへと衝突。
 武装を高く掲げるポーズをとったままイワシを待ち受け、僅かに傷を負いながらも叩き潰す。
 この攻防、着実に倒していくややの方が優勢なのは明らかだった。

 このままいけば御の字なのだが……しかし、現実はそうもいかない
「群れとは、言いますがっ、少し多くないですか……っ?」
『イワシとは英傑なり!』
「このっ! ……さ、すがに疲れました……!」
 呼吸の乱れが、大きくなっている事からも分かるように、ここに来てややのスタミナが切れ始めたのだ。
 無理もない。
 なにせ彼女は先ほどまで、己の脚であちこちを駆け回りながら、しらみつぶしにイワシを探していたのだから。
 そこへ終わりの見えない魚群退治まで上乗せされれば疲労が重くのしかかって当然である。
「叩いても、叩いても、キリが……」
『イワシの天下を布く贄となれ、猟兵!』
「……ないっ!」
 その疲労は、気を抜いていないのに懐に入られかけてしまう程。
 あわや激突と言う所でイワシを一旦抑えつけ、途中から再加速させて殴り他を巻き込むと言う、搦め手と荒業の合わせ技で、この窮地からは逃れてみせた。
 だがこれではもう長く続かないだろう。

「させません……そんなことは」
 立ち込めたかけた暗雲を、しかしてニケは許さない。
 剣をピシッと垂直に立てて、多い書けた暗闇を晴らすべく、穏やかな声音で一言唱える。
「鎮まりたまえ」
 祝詞を触媒に、【桜の癒やし】による桜花の吹雪が発現。
 指定した対象を夢の世界へといざなうそのユーべルコードは、チャンスとばかりにややへ殺到しようとしていた、イワシ達へと正面からぶつかった。
 魚群の多くは慌てて回避したようだが、【悪魔の共食(デビルカニバリズム)】を発動しようとしていたイワシの一団は、軒並み眠らされている。
『友の力を糧とする! イワシの力を好みに集めよ!』
『我らイワシを、次なる領域へ!』
 されど、奥に隠れていたもう一段のユーベルコードは完成してしまう。
 今度こそとばかりにややへ向けて、強化されたイワシが再突撃。

 思わず振り向いたニケの目に……重い気迫を称えた、小さな神器使いの姿が映った。
『長きにわたり紡がれた、イワシの力を見るがいいっ!』
「ややだって……伊達に長く生きてない、ですっ!」
 力漲る強化イワシに対し、彼女も武器を力の限り振りかぶる。
 それはユーベルコード【草生衰亡萬重ノ劫(トテモナガクナガクイキタワ)】始動の合図だ。
 少し斜めにぶつけられた棍棒の一撃で、相手の突撃を見事に相殺し、イワシを地に叩きつけてみせた。
『イワシはあきらめぬ、それこそがイワシなのだ!』
 なのにそれでは全く止まらず、しつこくややへと攻撃を仕掛けるイワシ。
 未だ棍棒は宙にある。彼らの執念は実るだろう。
「あ……」
 跳んだややが掲げた手に、勇気を出したオキイワシが尾で弾いた、棍棒が収まらなければ。
「……これで、さいご!」
 落下を合せて叩きつけられた棍棒により、今度こそ強化イワシは倒れる。
 どうにかこの一角の魚群を全て退治する事に成功したのだ。
「あなた方の名を忘れない」
 未だ戦闘音が響く中……イワシ達のいたその周囲に、ニケの桜吹雪が舞い始め、その傍らで彼女は祈っていた。
 強い無念をまとった彼らの魂が、慰められるようにと。
「私は憶えておいてあげるから」
 ……幻朧桜無きこの世界でも、どうか転生できるようにと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
【OK】

良いこと思いついた祭りしようぜ

こいつは流体金属君、見ての通りかはともかく頭のいいヤツでござる
放たれるいわし目掛けて流体金属君をそぉい!と投擲!
いわしを放つことを覚えた流体金属君は110秒間いわしを放ち続ける、デビルいわしも相殺するためにいわしを放ち続ける
拙者はその辺で応援!がんばれ♥がんばれ♥
いわしが舞い飛び、いわしがいわしを相殺し、さらなるいわしがいわしを呼びいわしが尽きることのない…さながら無限に続くワルツのよう…つまり!

大いわし祭り
 開 幕

まあいわしが尽きれば相手の負けでござるが

どしたん流体金属君、働いたから腹減ったンでござるか
うんうん食べていいでござるよォいわし



 ある一角の魚群こそ大きく減ったが……イワシ型UDC達全体の総数でいえば、まだまだ何のその。
 依然、おびただしい数の同胞を引き連れながら、我が物顔で泳ぎ回っている。
 もはや結界とも呼ぶべき包囲網を前に、しかして猟兵達は怯まない。一角のみとはいえ、数を減らせているのもまた事実。
 ならば士気は高まっていき、引き気味になっていた気持ちも、俄然引き締まろうというもの。
「ヒャッハー、新鮮なイワシでござるー!」
『ギャアアア! イワシの力がー!』
 その勢いを極端に体現しているのが、今まさに声を上げて7.62mm弾使用のオートマチックライフルをぶっ放いしている、エドゥアルト・ル-デルだ。
 弾幕もかくやと襲い来るイワシへ、ならばこちらも弾幕で対抗だと言わんばかりに、映画さながらのド派手な撃ち方でイワシを次々落としていた。
「どんどんいくでござるよ……それ、イワシは直火焼だー!」
 続けて場所を問わず使える、万能な火炎放射器まで持ち出し、グラサンとモヒカンでばっちり決めているかのような、ノリにノったセリフと共にぶっ放す。
 猛烈な炎でまたもイワシをごっそり減らした。
 ただ戦いそのものは好調なのだが、撃っても焼いても貫いても、後から後からイワシが出てくる。
 このままでは弾も燃料も切れてジリビンに陥りかねない。
「ホント、イワシ多過ぎ! 祭りかなにかのようでござるなぁ、これは!」

 ハイテンションで愚痴を叫ぶエドゥアルト。
 だがそこで、ふと何かに気が付いたらしく、もう一度弾丸と火炎ををばら巻いてから、立ち止まる。
「あ……そうだ良いこと思いついた」
 ピンと指を立てながら、そう言いつつ懐より鉄塊、のようなものを取り出した。
 液体のように揺れており、どう見ても普通の金属ではない。
「祭りしようぜ! と、言うわけで早速お前の出番でござるよ、流体金属君!」
 それの正体は立派な生物。
 なにがあったかSpitfire(癇癪)と言う名を付けられた、金属生命体・オウガメタルである。
 見た目はいまいち頼りないが、こう見えて頭も良い頼りになる戦力だ。
『何者であろうともイワシは食らうのみ!』
『イワシは激流をもしのぐ、故にイワシであるのだ!』
 新たな戦力に焦ったイワシは次から次へと突撃を開始しながら、【悪魔の犠牲(デビルサクリファイス)】の準備を整え、エドゥアルトを倒さんと迫る。
「さあ、流体金属君! その強さを見せつけるでござるよ!」
 構えたエドゥアルトの腕の中で、Spitfireはその光沢のある体に、だんだん力を溜め込んでいく。
 突撃による対抗か、武器化による殲滅か、はたまた未知の技か。
 様々な可能性を秘めたまま、エドゥアルトはSpitfireを強くつかむ。
「そぉい!」
 豪快に、そしてとても綺麗なフルスイングと、なぜか感じる凄まじい迫力をたたえながら……ぶん投げた。
 マシンガンもかくやとツッコむイワシへ、ぶん投げたのだ。
 当然ながらそのままなすすべもなく、イワシ達へと衝突したSpitfire。このまま主人ともども押し流されてしまうのか……。

 そんな一抹の不安は、発動したユーベルコード【アマルガム(ユベコトリコムノアサメシマエトハホンニンノダン)】が、一気に払拭していった 
 群れを前にぶん投げて、寧ろ希望を見いだすと言う、その力とは……果たして。
『イワシだ、敵にもイワシがいる!』
『何というイワシだ、悪魔的な力を持つ、我らに匹敵するとは!』
 そのものずばり、イワシカウンター。
 正確には凡そ110秒間、Spitfireを基点にコピーした敵UCを放つと言う技なのだが、対象が対称なだけにここで世にも珍しい、イワシ弾幕のがっぷりよつが実現。
 かくして大イワシ祭りが開幕する。
『イワシイィッ!』
 吼えるイワシ。攻め立てるSpitfire。
 反撃するイワシ。抑え込むSpitfire。
 イワシが舞い飛び、相殺され、デビルイワシとコピーイワシの、世にも奇妙なワルツが続く。
 後から後からイワシが現れ、生臭い激流は尽きることが無い。
 そんな一進一退の攻防……その傍らで、主人であるエドゥアルトもまた、血潮をたぎらせ、力を注いでいた。
「がんばれ♥ がんばれ♥」
 ……割と上手な猫なで声で、後ろから行う、拳をかかげての応援に。
 なぜ戦わないのだろうか。
 持っていた銃火器はどこへ行ったのか。
 後方にある荷物の中身を、なぜ使わないのか。
 その理由を誰も明かせないまま……やがてUDC側のイワシストックがそこを突き、場に嘘のような静寂が訪れる。
 どうやらSpitfireの方が一枚上手であったらしい。
 あたりに散らばるイワシを見やり、満足げに頷くエドゥアルトの足元へ、戦いを終えたSpitfireがにじり寄る。抗議でもするのだろうか。
「ん? どしたん流体金属君……あれま、働いたからお腹が減ったんでござるか」
 どうやらただ単に食事が欲しかっただけのようだ。
 健気である。
「うんうん食べていいでござるよォ。ここにはイワシが大量にあるでござるからな」
 許可も出たからとSpitfireは遠慮なくイワシの残骸に食らいついていき、青魚がばらまかれていた周辺も、徐々にきれいになっていく。
 こうしてこの一角のイワシも、無事に殲滅し終えたのであった。

 ちなみに。
 保護対象のオキイワシはと言うと、そのカオスな弾幕勝負を前に逃げることを忘れ、口も開けず固まっていたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

備傘・剱
いやー、最近、こういう機会が、あんまりなくってな
腕がなるぜ
それでは、ご唱和ください

鰯、魚肉おいてけ!
調理開始発動!
衝撃波、呪殺弾、斬撃波、誘導弾で弾幕を貼りつつ、結界術で封じで、三枚に卸してくれるわ
魚肉は、念動力で清潔に空中キープ、後で、木の葉で包んで美味しく食べれるようにしておかないとな

なぁ、鰯共?
喰らう覚悟はあるんだよな?
なら、喰らわれる覚悟も、在るよな?
さぁ、何方が捕食者か、決めようじゃないか
安心しろ、俺は、お前らの魚肉(命)を粗末には扱わないからな
後で、美味しく料理していただいてやろう

…あ、オキイワシ、お前も食べる?
鮮度抜群で美味しいぞ?

アドリブ、絡み、好きにしてくれ



 とある場所では魚が舞い、ある場所では桜が舞い、またある場所では弾が舞う。
 イワシの濃霧が晴れたかと思えばまた霧がかり、大きく穴が空いてもすぐさま覆い隠される。
 やたらと総数が多くとも……張られた青いドームの範囲は最初より狭くなっており、猟兵達の奮戦はしっかりと、徐々に効果を上げていることが伺える。
 その影響もあるのだろう、戦況の傾きは先までのゆったりとしていたものから、大きく目覚ましい物へと変貌を遂げ始めていた。
『イワシィィッ!』
『サーディィン!』
 ひと際ひらけた、荒れ地のような一角での戦闘がその優勢っぷりを、分かりやすく表現している。
 なにより迫力が段違いだ。
 まるで魔物か怪物か、異質な存在が大暴れしているかのよう。
 否、それは魔物や怪物では、断じてない。……耳をすませば、跳びこんでくるだろう。
「肉おいてけェ!」
 その証拠たる、これぞまさしく妖怪といった、備傘・剱の裂帛の叫びが。
 その迫力、まさに狩人の如し。

 ……こうなった発端はほんの数分前。
 大量のイワシ達を目前に、剱はいつになく張り切っていた。
 それは猟兵である故にと言う使命感でも、UDCは倒すべしと言う戦意の発露でも、まして義務感でもない。
「いやー、最近、こういう機会が、あんまりなくってな」
 実は彼は、とある飲み屋を経営している店主であり、更にオブリビオンを料理し提供する、いわゆる【オブリ飯】を生業の1つとしている者。
 ならばもうお分かりのはず。
 見た目からしてただの海の幸でしかないイワシ達は、彼にとっては文字通りの獲物に等しいのだ。
 発動したユーベルコード【調理開始(チョウリカイシ)】により、野外料理の準備も凄まじい早業で終えられる。
「腕がなるぜ。そんじゃあ……」
 ゆえにこの後起こることが何かなど、想像に難くないだろう。
「イワシィ! 魚肉、おいてけぇ……!」
 かくして……今夜限りなイワシの天敵が、ここに爆誕したのである。
 暗闇に目が浮き出る恐ろしげな形相と、いきなりな宣言を前に、イワシ達の注目が全て、剱へ集まった。
「なぁ、鰯共? 喰らう覚悟はあるんだよな?」
『無論だ、イワシこそ万物を喰らう頂点なり』
「なら、喰らわれる覚悟も、在るよな?」
『何を今更! 喰らわれ続けてきた我らにとって、覚悟することは日常と同義!』
「いいぜ……さぁ、何方が捕食者か、決めようじゃないか」
『よかろう……!』
 その対話は正しく、武人達の一騎打ちの前哨戦、その代わりの舌戦に似たり。
「お前らの魚肉(命)、粗末には扱わないさ。あとで、美味しく料理していただいてやろう!」
『言ってくれるものだ……同胞を喰られた分だけ、こちらが喰らい返すのみよ!』
 例えそのうちにあるのが飯目的と、気が抜ける大望の、ぶつかり合いだったとしても、まとう空気は偽りなく戦場に生きる武士そのものだった。

 その後の戦いは冒頭の通り、剱の独壇場であり、その戦闘能力、もとい調理能力は圧倒的の一言。
「なあ、マイワシだろ!? マイワシだろうおまえ!」
 妖怪かなにかのような圧力をもって戦場を駆け抜ける。
 イワシ達も自身のユーベルコードをもってして、剱の手足を食いちぎろうという、強引な力技で止めようとしてはいた。
 だが包丁代わりの短刀を握った彼の、類稀なる調理技能の前に、全てスパッと捌かれているのだ。
「魚肉だけおいてけ!」
 しかも各武装から、放たれる妨害がイワシの進路を妨げる。
 それは吹きとばす衝撃波に、また直線移動を強制する呪殺弾だったり……あるいは離れていても切りおろす斬撃波や、追いかけて押し込む誘導弾だったり。
 バリエーション豊かな遠距離攻撃が、イワシ達に多彩な攻撃方法など、選ばせない
 それでもと迂回する者達も、結界術による封じ込めで、内部へ通し込んでいく。
「もっともっと……全てのイワシを、三枚におろしてくれるわ!」
 さらに職人芸と評しても、決して過言ではない卓越した短刀さばきにより、通り過ぎたUDCイワシを切り身へと変える。
 それだけでなく、念動力で空中にキープし清潔さと鮮度を保つ徹底ぶりだ。
 極めつけは、剱のそばにある木の葉だ。これで包み込み、後で美味しく食べられるようにと言う、心づかいがまたニクい。
「あ、オキイワシ、お前も食べる? 鮮度抜群で美味しいぞ?」
 やがて、この一角のイワシの殆どがおろし尽くされたときを見計らい、剱が後ろに庇っていたオキイワシへと、そんな提案をする。
 対するオキイワシは意外や意外、大きさやモチーフの食性が違うからか、若干ながら興味を示す。
 ……それでも、多少後ろに下がりながらだったのは、致し方あるまい。
 そんなこんなでこの一角のイワシもまた、無事倒しきれたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:漆黒風

本当にイワシの群れですねー…。しかし、見事に離反する会話でしたねー。
さてー、やりましょうか。
先制攻撃で【四悪霊・『解』】を使用しましてー。
ふふ、これ、呪いなんですよ。見えないこれを、どうやって打ち消そうと?
生命力吸収もしてますからね、だんだん活力低下するでしょうねー。
運も低下してますからねー、泳いだ先に結界術の壁があったり、私が投げた漆黒風がいいところに刺さったりしたりねー?

守れるものは守る。それが『私たち』ですからー。


陰海月、オキイワシの護衛をしている。海洋生物仲間ー!と張りきってる。
敵が来たら触手パンチする。ぷきゅーるるる。



 アレだけ視界を遮り、先をおおっていた闇の黒がやや薄れ。明るくなってきた頃。
 長かったUDCイワシとの戦いにも終わりが近づいていた。
 増援に次ぐ増援も漸く打ち止めとなり、障壁と化していたイワシの軍も今やその大半が瓦解し……大きな魚群が存在するのは、残すところあと一角のみである。
「本当にイワシの群れでしたねー……。なんとまあ、凄まじい数でした」
 その一角を請け負う馬県・義透は、その声に少しばかり疲れの色を見せながらも、落ちついた雰囲気を崩さず、手慣れた動作で棒手裏剣を投げつけながら、そう呟く。
 過去形でこぼれた感想は、余裕が出てきているその証左でもあり、それはこの戦いに間もなく決着がつくことを、暗に示しているかのよう。
「……しかし、まあ……あれは、見事に離反する会話でしたねー」
 だからなのか、ふと義透はこの戦いが始まる、その最初も最初の出来事を思い返していた。
 オキイワシを引き留めようとして、その実離反を促すようなあのやり取りは、いっそ打ち合わせでもしていたのかと言うぐらい、見事なもの。
『頭を失えどわれらはイワシ!』
『イワシとは全にして個の存在なり!』
『強きもの、イワシよ、永遠なれ!』
 加えてUDC-P側のリアクションと、今も続く威風堂々高らかな発言からするに、恐らくあれを天然でやっていたのだろう現実が、その見事さに拍車をかけている。

 内心、なんともいえぬ勘定で支配されている義透だが、しかしイワシ達はそんなことなど知る由もない。
 そして知ったとこで変わらなかろうと思えるほどの、圧倒的執念をオーラとして纏いながら、このまま朽ちてなるものかと、彼を逃がさないよう泳ぎ回り始める。
 敵のユーベルコード【悪魔の犠牲(デビルサクリファイス)】の隠れみの目的であろう遊泳……囮技のための囮行動は、しかし充分な殺傷力を持つだろう速度で義透の周りを囲っている。
 まかり間違って突撃して来れば、どれだけの被害を生んでしまうだろう……。
「さてー……とどめの準備を、やりましょうか」
 これを見てもなお、棒手裏剣を懐へ一度しまい込む彼の表情は、穏やかなままだった。
 イワシの大群を真っすぐ見据えながら、探索時と同じように、そして似て非なる質の霊力を手に宿し、解放の言葉を紡ぎだす。
「四面の1つ、出で参れ。そのもの、すなわち……悪霊なり」
 被害など生ませないとばかりに、先制攻撃として放ったのは、ユーベルコード【四悪霊・『解』(シアクリョウ・ホドキ)】だ。
 唱え終わると同時に、彼の周囲の空間がゾッとするような何かを、放出し始めていた。
『これはいったい……いや、関係無し!』
『無論なり! 怯えるなどイワシのすることではないっ!』
 ……はずなのだが、何も見えず聞こえないからか、イワシ達はむしろ戦意を刺激され、突撃していった最初の1匹を皮切りに突撃を慣行する。
「かかりましたね?」
 だがそれはこの場でイワシが最もとってはいけない悪手。
 なぜなら義透が発動したユーベルコードの正体は、そのものずばり呪いであり、しかも見えも聞こえもしないので、物理的な手段では打ち消せない。
 発動者である彼本人へと、直に突貫すれば話は違うが、そう簡単に行くほど甘い技ではない。
『な、なぜだ、イワシの身体がぁ!』
 解放されたその呪詛は、運気、霊力、生命力を吸い取るため、闇雲に動けば動くほど、蜘蛛の糸よろしくからめ取られるのだ。
 そのため、活力が低下したイワシがまず地面へ激突する。
「ほっ」
『な、なぜ当たるのだ! このイワシにぃ!』
「おお、これは幸いですね―」
 さらに吸い取った力を義透自身の幸運へと還元するおまけ付き。おかげで、棒手裏剣を適当に投げても、しっかりヒットしてくれていた。
 本人の技量で狙えば急所にもあたるのだから、このコンボはかなり痛い。
 ダメ押しとばかりの結界術で迂回すら封じられ、不運から止まれずもろにぶつかり、脅威的な速さで魚群が散り散りになっていく。

『ならば、ならば元頭よ……裏切りものの、貴様だけでもぉ!』
 それでもやはり、運は運。妨害の中を力技で抜けてくる個体もいるもの。その数匹が今まさに、オキイワシへとアギトを開いて、道連れにせんと風を裂き、泳ぐ。
 義透は未だ多くの群れのせん滅に当たっており、オキイワシの元へすぐには駆けつけられない。
 されどこれでもまだ義透の顔に焦りは浮かばない。
「ぷきゅるー!」
『イワシィッ!?』
 そして泰然自若である理由を、自ら体現するかのごとく、ジャイアントクラゲ・陰海月の触手パンチが炸裂した。
 焦らなくて当たり前だったのだ……先の探索でも助手として手伝っていた陰海月が、オキイワシの護衛をしているのだから。
「ええ……守れるものは守る。それが『私たち』ですからー」
「ぷきゅーるるる」
 同じ空飛ぶ海洋生物仲間だからか、見て分かるぐらい張りきっており、溢れ出るやる気と漲る自信を前にしては、さしものイワシも歯が立たない。
 しかも陰海月の雄姿を見て、同じ理由で奮い立ったのか、ちょっとした隙をオキイワシが勇気の体当たりで埋め、即席で連携すら取っている。
『イワシの、天下よ……夢、まぼろしと消えるなぁ! 永遠なれぇ!』
「いいえ、夢まぼろしと消えてください。この世界の皆さんや、ここにいるオキイワシの安寧のためにも」
「ぷきゅーるー!」
 ついにこの一角最後の数匹を影色の手裏剣、透き通るパンチ、鈍く光る体当たりが捕らえ、残ったまばらなイワシ達も他の猟兵がとどめを刺していく。
 こうして……イワシ達が海を離れ、山麓で抱いた小さな野望は叫び声と共に、白み始める空の向こうへ、消えていった。
「さて、あとはオキイワシをUDC組織へ、つれていかねばなりませんが……」
 しかし終わったは良いものの小さな問題が残る。
 元々彼、あるいは彼女が猟兵側に来たのは、その場で注がれた敵意を恐れてだ。
 同胞が倒されたことに対しては、特に何も無さそうではあれど、それ以外の理由で拒否されかねない。
 ではどう説得するかと義透が思案し始めたのもつかの間。陰海月に連れられて、オキイワシがゆっくりと、こちらへ泳いでくるのが見えた。
 すでに警戒心はない様で、大人しくついて来てくれるらしい。
「大丈夫そうですねー。ありがとう、陰海月」
「ぷきゅる」
 思わぬ存在が決め手となり、今回の任務は無事、達成されるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『UDC-P対処マニュアル』

POW   :    UDC-Pの危険な難点に体力や気合、ユーベルコードで耐えながら対処法のヒントを探す

SPD   :    超高速演算や鋭い観察眼によって、UDC-Pへの特性を導き出す

WIZ   :    UDC-Pと出来得る限りのコミュニケーションを図り、情報を集積する

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 なんとも壮大な、あるいは微妙な決戦を終えて、無事にオキイワシUDC-Pを組織に引き渡した猟兵達。
 ただ夜も遅いどころか、すでに朝が近くなっていたためにひとまず休息を取り……後日、オキイワシの状態を確認するため、再び組織を訪れる。
 出迎えてくれたUDC職員は、どういうわけかなんとも、微妙な表情をしていた。
「あのですね……件のオキイワシくんなんですけどね? 暴れはしないし、こっちの言葉やジェスチャーにも反応するしで、大きな問題は無いんですけども」
 言いながら職員はかなり大きな楕円形の部屋をちらりと見る。
 そこには部屋内を、泳ぐように飛んでいるオキイワシが目に入るが、なぜだかちょっと元気がない。
 部屋が殺風景なことを差し引いても、どこか、落ち込んでいるように見えるのは否めない。
 またソワソワと落ちつきがないように感じる。
「ちゃんと泳げる部屋を用意したんですけどね……なんでかな?」
 原因が分からないと首をかしげる職員は、雲海と青空を模した内装や、食事らしき稚魚や普通サイズのイカを見やってから、猟兵たちに視線を戻す。
「会話自体は特に問題ないので、まずはオキイワシくんをなんとかして、元気づけて貰えませんか?」
 どうかお願いしますと職員は頭を下げる。
「あ、そうだ。オキイワシくん、名前が決まっていないので、できれば付けて挙げてください」
 そう告げてから簡易的なマニュアルを渡して、職員はもう一度頭を下げた。
ニケ・ブレジニィ
WIZ:UDC-Pと出来得る限りのコミュニケーションを図り、情報を集積する。

職員さんから渡された簡易的なマニュアルに目を通してから、オキイワシ型UDC-Pさんを元気付けようと話し掛けます。
「なんだか、元気がないみたいですね。
昨日は、ありがとうございます。
私は、ニケという名前なのです。
あなたのお名前は、何と言うのですか?」

[慰め24][幸運9][心配り7][鼓舞7][勇気5][優しさ4]
を、フル活用します。

リプレイのために、このキャラクターを自由に扱っていただいて、全く問題ありません。


馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

陰海月もつれてきましたよー。その方が安心するでしょう?

ここ、青は青でも、空だけですねぇ。もしかして、水(とくに海)が恋しいですか?
私は陰海月…それに妹が巨大熱帯魚つれて、と。空中に浮かぶ海洋生物がそれぞれいるんですよ。
で、うちは水槽(※注:家一個分の敷地使用)あるので。そこでたまに泳がせてリフレッシュさせてるんですよ。

あと、名前は陰海月の方から案が。


陰海月、ぷきゅぷきゅー(お久しぶりー)と鳴く。
ホワイトボードに『Chirocentridae』と書いてから消して、『ロセン』と書いた。名前候補らしい。
ペン字に慣れてない、というか無理やりペン持ってるため、字はヘロヘロ。


備傘・剱
うむ、同じ海の生き物同士で、ってのはどうだろうか?
鳥獣技、発動!

と言うわけで、海豚になって、接触してみよう
大丈夫、食べる意思はない!
…まぁ、先の戦闘で思いっきり食用にしたが、今はその意思は、無い!

で、動物会話で意思疎通を図ってみるぞ
あの様子だと、ちゃんとした意思疎通は出来てなさそうだしな
どうしたいのか、どうなりたいのか、それがわかれば、元気も出るってもんだ
あと、一緒に泳いだりすれば、一時でも楽しめれば、な
ストレスも解消…するよな?

さて、名前だが…
どうしよう?
オキイワシだから…オキシ君なんてどうだ?
いや、鰯の巨大版だから、ツヨシでもいいんだが…
どんなのがいい?

アドリブ、絡み、好きにしてくれ



 上を見て見れば、澄み切った青空。
 横を流れる雲と共に、運ばれてくる涼しげな風。
 床に広がった、雄大な雲海。
 UDC組織の技術力を、余すことなく活用された特製の部屋は、一見すると空の上だと錯覚してしまいそうなほどリアルで、途轍もない完成度を誇っていた。 
 何より部屋がかなり広い。
 本来は多少狭く感じる、楕円形の間取りとなっているはずなのに、そんなことを微塵も伺わせないのだ。
 もしここにいるのが空の主であるならば、きっと大喜びする事だろう。
『………』
 しかし居るのは海の生物、オキイワシである。
 泳ぐように宙を跳ぶが、空は全く関係しない。
 どうにもミスマッチに思え、またその所為なのか件のオキイワシも、どことなく元気が見られなかった。
 だがそれは第一印象での話……真実は異なるかもしれない。
 ネガティブなままにさせておくわけにもいかないため、なぜ彼あるいは彼女に元気がないのかを、即急に解明すべきと言える。
「こんにちはオキイワシさん」
「先日以来ですねー」
「ぷきゅ」
「よう、またあったな」
 そして、まさに今その小さな謎を解き明かし、マニュアルを簡易から完全に仕上げるべく、UDC-Pのいる部屋を訪れている、3名と1匹。
 桜の精、ニケ・ブレジニィ。
 多重人格者、馬県・義透。そして相棒のジャイアントくらげ、陰海月。
 スペースノイド、備傘・剱。
 いずれもオキイワシと面識がある、今回の依頼にあたった猟兵達だ。
「さて……たしかに職員さんが言っていた通り、どことなく元気が無いみたいですねー」
「名前を付ける前に、まずは元気の源を探らなきゃいけないな」
「会話は問題ないんですよね? ならコミュニケーションを取りつつ、聴いていきましょうか」
 簡易マニュアルを覗き込みながら、三者共に考え、案を出していく。
 やがてアイデアはつつがなくまとまり、取りあえず1つづつやっていこう、と言う運びになる。
 そしてお待たせしましたと、陰海月と何やら遊んでいたオキイワシを呼び寄せて……不安の種の究明が、ここにスタートした。



「昨日は、ありがとうございます」
 最初にUDC-Pとコンタクトを取ったのはニケ。
 何もかもが初の挑戦だからこそ、色々と心配事もあったようだが、勇気をもって己を鼓舞し、緊張を抑えつつ優しさの含まれる声色で話しかける。
 先日のお礼にと一礼し、それを受けたオキイワシも、小さく礼を返したのを見計らってから、改めて手元の簡易マニュアルへ目を通す。
 必要最低限の事しか書かれていないが、だからこそ彼女には取るべき手段が、すぐ浮かんだようで……ひとつ頷き、まずは聞きたいことを聞こうと口を開いた。
「私は、ニケといいます。あなたのお名前は、何と言うのですか?」
 UDC職員は【名付けて挙げて欲しい】と言っていたが、聞いていないだけで元々名を持っている可能性があるかもと、彼女はそう考えたらしい。
 ニケの問いに、オキイワシは少しだけ悩んだあと……ゆっくりと首を横に振った。
 どうやら元々の物は存在しないらしい。
 ならばUDC職員のお願いを聞き入れ、後々つければ良いだろうと考えて、次の質問に移る。
「なんだか、元気がないみたいですね?」
 その問いに今度は、ゆっくりと縦に首を振ったオキイワシ。
 第一印象で彼、あるいは彼女に感じたものは、決して間違いではなかったのだ。

 ではその理由は何なのか?
「部屋の環境、ですか? それとも、食事ですか? もしくは、全く別のものでしょうか?」
 慰めるように、そして心配りを忘れないよう努めながらに、少しずつ聞いていく。
 最初の問いはYES。
 次の問いも、リアクションは小さいがYES。
 最後の問いは……少し間を置いたがYES。
 どうやら色々と悩みの種が、重なっているようす。
 それを見たニケは手あたり次第に聴くよりも、海洋生物であるならそちらに関連した物から、詰めて行こうと考え、みたび言葉を重ねた。
「やっぱり、空の上よりも、海の中が良いですか?」
 彼女の問いに対しオキイワシは大きく2、3度も頷く。
 この後に聴いた食事についても、質や種類については何も言わなかったが、量については大きくジェスチャーを返している。
 これで何となくではあるが、彼、あるいは彼女の、元気がない理由に迫る事ができた。
「より詳しくは、もっと専門的な方々に、任せましょうか」
 指針となる、重要な情報を聞き出せたことは、かなりの収穫だ。彼女のコミュニケーション能力と、物おじせずに踏み込んだ勇気の、賜物と言えるだろう。
 ニケはオキイワシへ軽く手を振り、彼の胸ビレと握手を交わしてから、控えている者達と交代した。



 次にオキイワシとコンタクトを取ったのは、ジャイアントクラゲの陰海月を引き連れた、義透だ。
 依頼で仲を深めたからか、オキイワシはいそいそと、陰海月の方へ近よっていく。
「ええ、相棒もつれて来ました。その方が、安心するでしょう?」
「ぷきゅぷきゅー」
 彼の声かけと、陰海月の【お久しぶりー】というジェスチャーに対し、ありがとうと言いたげな瞳で、オキイワシはぺこりとお辞儀をする。
 やはり海洋生物仲間が、同じ部屋で一緒にいるということは、彼、あるいは彼女の、心の栄養になるらしかった。
 しばらく2匹を好きに遊ばせたのち、義透は先の案件について切り出し、本題に入り始める。
「部屋と、食事と、あとはその他。全てにおいて、悩みがあるそうですねー」
 オキイワシは小さく肯定を意を示し、そのままぐるりと、部屋を見渡した。
 広がる空は、作り物だとは思えないぐらい鮮やかに青く、そして透き通っていた。
 綺麗な景色に浸るのならば、いっそ充分すぎる出来だろう。
 けれども先ほどの話から彼、あるいは彼女の求める【青】が、それでは無い事は分かっている。
 ここにいるUDC-Pが欲しい青は、天にあるものではなく、海の中にあるもの。
「海の中が良いと言っていましたし、やはり水が恋しいですか?」
 牙の生えそろった口を閉じつつ、どこか興奮したように、その通りだとリアクションを返すオキイワシ。
 ……ならば変えるべきはやはり内装だろう。
 そう考えた義透はマニュアルの内容を、部屋は海中をイメージする物に変えるよう、書き換えておいた。

 これで部屋については、万事解決……とはいかない。
 もう一つ、義透にはこの流れに入る前から、ずっと気がかりなことがある。言わずもがな、【その他】に位置するの悩みの方だ。 
 住み家とご飯が問題ならば、それだけ答えればいいはずなのに、なぜだかオキイワシはそっちにも、若干のタメこそあったがYESと言っている。
 スルーして構わない程度のことなら、あそこで肯定はしないだろう。
 そこで義透は、ふとあることに、思いあたった。
「オキイワシさん……水の中で、泳ぎたいですか?」
 緩慢に放たれた、彼の質問に対する答えは、瞳を輝かせてのアクロバット遊泳。
 やはりと言うべきか、内装が海仕様では無いから不満だったのは、ただ空は合わないと言う理由だけでなく、生の水への憧れも強かったがゆえなのだろう
 それに気が付いたのは、義透の家庭事情が理由にある。
 実は【宙を泳ぐだけでは物足りないかもしれない】と、彼の妹が勝っている浮遊熱帯魚ともども、陰海月を時々水槽で泳がせ、リフレッシュさせているのだ。
 身近に例があったからこそ、オキイワシの願望にたどり着くことができたのである。
「それではUDC職員さんへ掛け合ってみましょうか」
 UDC-Pにとっては思わぬ提案に、跳び上がる……もとい、泳ぎ上がるほど喜んだオキイワシは、陰海月といっしょに、楽しそうにくるくる回り始めた。
 それを、マニュアルへ再度書き込みながら、義透は微笑ましそうに見つめるのであった。
 ……後日【家屋1軒分】に相当する面積の巨大水槽が、今ある部屋の横に併設され、オキイワシがビックリ仰天していたのは、完全な余談である。


あと、一緒に泳いだりすれば、一時でも楽しめればストレスも解消…するよな?


 何とか、2つの悩みを取り除き、いよいよトリを務めるのは……先刻の戦いで料理人として、獅子奮迅の活躍を見せた剱である。
 そんな彼を見たオキイワシは、いったいどういうわけか、ちょっとだけ距離を置いていた。
 少々警戒し過ぎにも見えるが、無理もあるまい。
 幾ら恐怖の対象で、情状酌量の余地なく敵に回ったとは言え、それでも同じイワシを魚肉目的でさばいていた男が、目の前にいるのだ。
 あの時は緊張の影響により、考えもしなかっただけで、考える余地が出来た今は、信頼と疑念が半々になっているのだろう。
「仕方ないよな。……よし! ここはひとつ同じ海の生き物になって、接触してみよう!」
 宣言するや否や、剱はとあるユーベルコードを発動した。
 『獣の戯れ、鳥の群。交り変わりて常世に姿を映せ。百鬼夜行も、旅の道連れ』と、謎の文言を口にして、静かにたたずむこと、しばし。
 すると……驚くことに彼の体が、見る間に海生哺乳類である、イルカへと変貌したではないか。
 予想外の御業にオキイワシは驚き、流石に距離を取ってばかりはいられず、近よって来てくれた。
 このユーベルコードの名は【鳥獣技(メタモルモーフ)】と言い、肉体の一部から全身までを対象に、多種多様な動物へと変貌させることを可能とする、とてもユニークな技なのだ。
 剱が元々身につけていた、パーツじみたアクセサリーこそそのままだが、見た目は立派な黒いイルカである。
「大丈夫、食べる意思はない! ……まぁ、先の戦闘で思いっきり食用にしたが、今はその意思は、無い!」
『ホント……ですか?』
 今の剱はイルカであり、持っている動物会話能力が強化されたのお陰なのか、きちんとした言葉が聞き取れていた。
 なのでいぶかしさからの呟きもバッチリ耳に届き、若干空気が崩れかけるものの、ここまでやってくれたのだからと、信用してすぐ近くまで泳いできてくれるオキイワシ。
 無事、コンタクトを取れるとこまで来たのを逃さず、単刀直入に剱は質問を投げようとする。

 しかしそこでいったん、情報を整理しようと立ち止まった。
 名前はこの後付けれればOKで、部屋の内装やリラックス法もOK。
 ……そうなると残りは意外な鬼門である【食事】だ。
 なにせこればかりは、あてずっぽうで聴くわけにもいかない。そのため、動物会話をフルに活かせる、イルカ形態となったのは良い判断と言えよう。
 何より依頼中にみえた様子では、ちゃんとした意思疎通ができているとはあまり言い難かったため、ここで本腰を入れておこうと、剱は自らに活を入れた。
「まずは泳いでみないか」
『泳ぐんですか?』
「会話ばかりじゃ煮詰まるからな。いったんリラックスして、遠慮なく言える状況を作った方が良い」
 彼の提案にオキイワシは分りましたと頷いて、そのまま一緒に泳ぎ始めた。
 室内での遊泳に不安は残ったが、なかなかに広い為か加速はしっかりつけることができ、また時折交差しながら泳ぎ回る。
 より信頼してくれた空気を見計らい、剱は本題へと入る。
「どうなりたいかは、ちょっと分かった。ならあとは、どうしたいかだ。飯の何が不満なんだ?」
『あの、さすがに稚魚やただのイカは小さくて……それに、もっと他に色んな種類を食べたいです』
「……あー……」
 打ち解けたらか、遠慮のない本音が乗せられた返答は、まさにごもっともな意見であった。
 考えてみれば、彼、あるいは彼女は3m半の大魚であり、なおかつ魚そのものではなく、魚型のUDC-Pに属する者。
 量だけふんだんに用意されても、それが稚魚サイズだったら、食べ応えが無くて当然だし、味覚が普通と違っても、なんら不思議ではないのである。
『それとですね』
「おう、それと?」
『住まわせてもらっている身として、こんな我がままを言うのは気が引けるんですが……その……オキイワシくん扱いは、止めていただきたいなって』
 なにを言っているのかと一瞬考えかけた剱だが、そこである可能性が頭をよぎり、しかしまさかと思いつつ聞いてみた。
「……きみ、女の子なのか?」
『はい』
 今ここに明かされた真実。オキイワシUDC-Pは、彼ではなく、彼女の方が、正解だったのだ。
 これまでもどちらか分からなかったが、それでも見た目からして男じゃなかろうかと剱は考えていたために、大口を開けて驚いている。
 そりゃあ女の子が素でくん扱いされていれば、段々と不満も堪るものだろう。
 動物会話だからこそ発覚した、ある意味予想もつかない不満要素に、剱は改めてこの技を使って良かったと、胸をなでおろしていた。



 漸く全ての問題点が解消され、オキイワシくん……あらためオキイワシさんの顔にも、どことなく元気が戻って来ていた。
 これで残る課題は、名づけのひとつだけである。
「どうしましょう? 申し訳ないんですが、私はちょっと、思いつかなくて」
「俺は最初、鰯の巨大版だからツヨシでも良さそうだと思ってたんだが、女の子にツヨシはなぁ」
 けれどもうひとつの名前はあるんだよなと剱。
 その名前は【オキシ】。
 オキイワシから3文字抜き取り、組み合わせた名前のようだが、なんともかっこよさげなである。
「私はありませんねー。ただ陰海月には、案があるようでして」
 ふよふよと浮いたまま、触手で無理やりペンを握り、なにやらホワイトボードに書き込んでいる陰海月。
 やがて書き終わり、ぷきゅるーと鳴きながら見せたボードには、ヘロヘロの字で『Chirocentridae』という、しゃれた名前が書きこまれていた。
 だがどうにもお気に召さなかったのか、うつむいて字を消し、すぐに振り返り書き直した【ロセン】と言う名前を見せる。
「どちらも素晴らしいですね」
「じゃ、最後は……オキイワシさんに決めてもらうか」
「それがいいですね。どちらでも構いませんよー」
 悩みながらも、両方の名前を行き来しながら、オキイワシはじっくり考え始める。
 そして剱と、陰海月が書いた名前の間に、小さく中黒を入れた。
 つまり。
「【オキシ・ロセン】……ははっ、両方欲張るとはな!」
「繋げただけなのに、とてもおしゃれにかわるものなんですねー」
「オキシさん、名前の決定、おめでとうございます」
「ぷきゅるるー」
 オキイワシ、あらためオキシ・ロセンは、新しい自分となった証を聞いて、とても……とても嬉しそうに笑っていた。

 ……やがて時間も過ぎ……。
 ニケや義透と談笑し、剱や陰海月と泳ぎ回る、楽しい時間も終わりを告げる。
 だがこれでお別れではない。
 UDC組織を訪れれば、また会えるのだ。
 だから、その時のため楽しい話題を溜めてきますと、ニケが。
 巨大魚仲間も連れて来ますよーと、義透と陰海月が。
 自慢の料理をまた今度来た時に振舞ってやるぜと、剱が
 再開する時を、楽しみに待っていてほしいと、3人はオキシ・ロセンへ、それぞれ告げる。
 広すぎる世界で、窮屈な野望にさいなまれることは、もうない。
 これからは屋根の下であろうとも、広さと自由を謳歌できるのだ。
 その事実をかみしめるかのように、オキシ・ロセンは少し下を向いてから、部屋を出る三名の背中を見やり、嬉しそうに胸びれを振りつつ見送る。
 そして……もう会話が届かないはずの、彼らの耳へ、こんな言葉がたしかに聞こえたと言う。
 『また会いましょう、みなさん!』と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月04日


挿絵イラスト